戦火に咲く花の歌
●牴牾
歌は人の心を癒やすものであるし、時に人の心を奮い立たせるものである。
だから、私は歌のだ。
『機械仕掛けの歌姫マリア』は歌う。
けれど、今は歌うなと言われている。
なぜなら、己の歌を聞く者は一様に倒れ伏していくからだ。
「――……」
声を発することもできない。
バタバタと倒れて喪われていく生命を知っているから。だから、私は歌わない。
鴉の獣人である『機械仕掛けの歌姫マリア』はゆっくりと歩む。
ヨーロッパ、超大国が一つ『ゾルダートグラード』に支配された街を歩む。
獣人たちは皆、この監視された街での生活を余儀なくされている。彼等にとって、この街は監獄だった。
機械化されるまでの猶予でしかない。
それは悲しいことなのだと彼女は思う。
開放してあげなければと思う。
それはきっと『平和』に繋がることなのだと思う。
「貴様、そこで何をしている!」
『ゾルダートグラード』の機械兵士が彼女の肩を掴む。どうやら自分が不審者に思えたようだ。だが、振り返った自分の姿を見て機械兵士は思い直したようだった。
「なんだ改造獣人ではないか。てっきり獣人の連中が規則通りに行動していないのかと思った。さあ、行け。お前にも与えられた任務があるのだろう」
「――……」
言葉を発しないが、私は頷いた。
その方が良いと思ったからだ。
与えられた任務。
それはたった一つ。
この『ゾルダートグラード』に潜入し、この街を破壊すること。
すでに街中のあちこちに爆弾を仕掛け終えた後である。後は、己の歌声で起爆するだけだ。
けれど、全て同時に起爆しなければならない。
自分の歌声に反応すると知っているけれど、それは等間隔に響かせなければならないものだ。
だから、何処に行かねばならないかを自分は知っている。
ゆっくりと、歩みを進める。
機械仕掛けの体は、ただ『平和』を胸に破壊を齎すために進む。
なのに、どうしてか彼女は街中の花に惹かれる。
そんな回り道をしている時間などないというのに。
けれど、どうしても気になる。広場には花が咲き乱れる。一面が花に覆われている。なんて心地よい光景だろうか。
『機械仕掛けの歌姫マリア』は歌うことさえしなかったが、どうしても戦禍にありながらも花咲く広場へと足を向けてしまうのだった――。
●スパイ
グリモアベースに集まってきた猟兵たちを迎えたのはナイアルテ・ブーゾヴァ(神月円明・f25860)だった。
「お集まり頂きありがとうございます。獣人戦線において未だ知られざる『超大国』の一つ、『ワルシャワ条約機構』のスパイが同じく超大国『ゾルダートグラード』の支配する街にて潜入していることがわかりました」
グリモア猟兵の予知。
それによってスパイなどの行動は筒抜けである。
しかし、問題がいくつかある。
「スパイ……『機械仕掛けの歌姫マリア』は、街中に仕掛けられた複数の爆弾による殲滅任務を遂行中なのです。しかし、この街は『ゾルダートグラード』よって支配されています。大っぴらに戦えば、『ゾルダートグラード』の機械兵士たちとも戦わなければなりません。そうなれば……」
如何に猟兵たちと言えど立ち行かなくなるだろう。
つまり、誰にも知られることなくスパイである『機械仕掛けの歌姫マリア』を打倒しなければならないのだ。
「機械兵士の巡回の目をかい潜らねばなりませんが……スパイ『機械仕掛けの歌姫マリア』は何故か、街中の花咲く広場に本来の進路から離れて移動しているようです。この機会を逃さず、彼女を尾行しましょう」
とは言え、街中の広場で彼女を襲おうものなら『ゾルダートグラード』の機械兵士たちに見つかってしまう。
しかし、広場から離れて歩む彼女を追うのも監視の目があって困難だ。
彼女の目的地が何処であるのか不明である以上、仕掛けるのは目的地についてからだろう。
「街中に仕掛けられた爆弾の解除をしている暇はないでしょう。となれば、やはり起爆を行うことができる彼女を打倒するしかありません」
敵地への潜入。
そして、スパイである『機械仕掛けの歌姫マリア』の探索。
その上で『ゾルダートグラード』に勘付かれぬように戦わなければならない。
「困難な事件であることは百も承知です。ですが、この街は支配されていてもまだ獣人の皆さんがいるのです。彼等の生命が無為に散らされることなどあっていいはずがありません」
ナイアルテはそう言って頭を下げる。
たとえ、スパイを打倒できたとしても人々が『ゾルダートグラード』から開放されるわけではない。けれど、スパイを送り込んだ『ワルシャワ条約機構』の意図が見えぬ以上、これを打倒しなければならないのだ。
「どうかお願い致します」
無為なる破壊。
それを阻止するために転移する猟兵たちの背中をナイアルテは見送る――。
海鶴
マスターの海鶴です。どうぞよろしくお願いいたします。
『獣人戦線』において『超大国』の一つ『ワルシャワ条約機構』が『ゾルダートグラード』へと放ったスパイが行う殲滅任務を阻止するシナリオになります。
●第一章
日常です。
『ワルシャワ条約機構』のスパイである『機械仕掛けの歌姫マリア』は、どうやら本来の進路とは外れて街の花咲く広場に立ち寄っているようです。
何処にいるのか、その姿を捉えるためには、この街中に溶け込まねばなりません。
とは言え、怪しい動きをすれば『ゾルダートグラード』の機械兵士に気取られてしまうでしょう。
この広場に溶け込みながら『機械仕掛けの歌姫マリア』を追う必要があります。
●第二章
冒険です。
前章の結果、『機械仕掛けの歌姫マリア』の姿を捉えることができました。
ですが、彼女は『ゾルダートグラード』の機械兵士たちの監視の目を、同じ機械仕掛けということで黙認されています。
逆に猟兵である皆さんはオブリビオンである機械兵士たちに見つからず、けれど、街の獣人たちから怪しまれないように彼女を追わねばなりません。
●第三章
ボス戦です。
第二章の結果、スパイである『機械仕掛けの歌姫マリア』が何処に向かおうとしているのかが判明します。
彼女が爆弾を起爆させぬようにしながら、急ぎ倒さねばなりません。
また、第一章、第二章の結果を受けて『ゾルダートグラード』の機械兵士たちも戦場にやってくる可能性があります。
この場合、難易度が上がることになります。
それでは『ゾルダートグラード』の街を殲滅せんとしている『ワルシャワ条約機構』のスパイ、彼女の凶行を止めるために奔走する皆さんの物語の一片となれますよう、いっぱいがんばります!
第1章 日常
『戦禍の地にも花は咲く』
|
POW : 花の香りに包まれ、昼寝を楽しむ
SPD : 花を摘み、花束や花冠を作る
WIZ : 平和な光景を絵や写真に残す
|
種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
猟兵たちは転移してすぐに『ワルシャワ条約機構』のスパイである『機械仕掛けの歌姫マリア』の姿を探す。
彼女は鴉の獣人であり、機械化改造を受けているようである。
であれば、すぐに見つけられそうなものである。
だが、この広場は花で覆われている。『ゾルダートグラード』に支配されているとはいえ、この街には多くの獣人たちがいる。
よそ者である猟兵達がこの場に溶け込むことは容易であろう。
だが、スパイである『機械仕掛けの歌姫マリア』の背中を追うことは難しい。かと言って派手に動くこともできない。
なぜなら、『ゾルダートグラード』の機械兵士たちの目もあり、また獣人たちが不審に思えば、通報される可能性だってある。
ひとまずは『機械仕掛けの歌姫マリア』の姿を捉えることから始めなければならない――。
イリスフィーナ・シェフィールド
街をまるごと爆破とは物騒な話ですわね。
ただ隠密行動は得意ではありませんのよね。
でもユーベル・コードで透明になれば大丈夫でしょう。
人前で消えると問題なので最初から消えておくか、
人気のない路地に入ってから透明になりますわ。
仕様で誰かに触れてしまうと怪しまれてしまうので
慎重に行動してマリアを探しますわ。
超大国が一つ、『ワルシャワ条約機構』が同じく超大国である『ゾルダートグラード』へとスパイを放っている。
それは同じオブリビオンでありながらも覇権を相争う間柄であることを示していたことだろう。そして、機械兵士たちによって支配された獣人達の街は、ただの薪に過ぎない。
燃え盛る炎でもって、敵対する超大国を疲弊させる。
そこに大義はない。
あるのは破壊という結果だけであり、獣人たちは生命を薪に変えられているだけに過ぎない。とは言え、この監獄のごとき街で生きるということは、ただの猶予に過ぎない。
機械化兵士へと改造されるまでの幾ばくか。
それでも一時でも平穏を得られるのならば、とかんがえるのは弱い者の考え方であっただろうか。
「街をまるごと爆破とは物騒な話ですわね」
イリスフィーナ・シェフィールド(女神様の巫女兼スーパーヒロイン・f39772)は転移した街中を見回す。
獣人たちと機械兵士たちが行き来する街から離れるようにして花咲く広場がある。
ここにスパイである『機械仕掛けの歌姫マリア』がいる、とういうことであったが……。
「……とはいえ、隠密行動は得意でありませんのよね」
ユーベルコードでもって、ブリザード・カモフラージュを張り巡らせる。
光を反射させない氷で持って己のが身を覆う。
視聴嗅覚での他者からの感知をさせぬユーベルコード。それを纏い、イリスフィーナは花咲く広場を歩む。
触れさえされなければ、今のイリスフィーナは無色透明と同じ。
転移してすぐに透明化したため、彼女を見咎める者はいないだろう。
広場は背の高い花々が咲き誇っている。
今の季節ならばコスモスだろうか。おかげでかがむだけでも姿が隠れられる。とは言え、悠長に時間を掛けてはいられない。
「『機械仕掛けの歌姫マリア』、でしたわね……確か鴉の獣人であると聞き及んでいますが」
イリスフィーナは周囲を見回す。
コスモスの花の背の高さが逆に仇となって、それらしき人物の姿は見えない。
「日常に溶け込んでいるとは言え、機械改造された兵士であるというのなら、そこかしこに痕跡がありそうなものです」
イリスフィーナは慎重に慎重を期す。
彼女にとって、この行動は容易いものではなかったが、視聴嗅覚で感知されないというのならば、このユーベルコードの力を使って探索を進めるのみである。
「歌姫というぐらいですから歌って居ても良いようなものの……何処にもいませんわね」
まさかもう彼女の目的地へと進んでしまったのか。
しかし、それは杞憂であった。
広場の中心に一人立ち尽くす黒い女性。
それが『機械仕掛けの歌姫マリア』であることをイリスフィーナは一瞬で理解する。
己が猟兵であり、彼女がオブリビオンである以上、一目で理解できる。
あれだ、と。
「……立ち止まっている?」
「――……」
彼女は目の前にある花の美しさに心を囚われているようだった。
ただただ、その場に立ち尽くす。
風に揺れるコスモスの花にふれることもなく、ただ見つめている。触れてはならないと思っているのだろうか。
ひたすらに見ている。
イリスフィーナは、その光景に僅かな違和感を覚えながらも、しかし『機械仕掛けの歌姫マリア』がいつまた動き出すのかわからぬため、身を潜め、息を殺して監視を続けるのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
ナターリヤ・トゥポレフ
潜入した|超大国《ワルシャワ条約機構》の工作員を見つけ出す為に|超大国《ゾルダートグラード》占領下への|潜入作戦《スニーキングミッション》ですか…
古巣で越境潜入作戦は何度も経験済みですが、流石に街の中への侵入は訓練された工作員の領分なので難しいところです
ですが、不可能という事はありません
ここは都市に流入する難民に扮して紛れこみましょう
不穏分子が入り込まない為の検問が敷かれている筈ですので、武器や身分を示す物の持ち込みは一切禁止とする現地調達方式の潜入です
この場合、子連れであれば警戒が緩くなって済むのですが…流石にミーシャを危険な目に遭わせる訳には行きませんからね
孤児が居ましたら利用しましょう
超大国が一つ『ワルシャワ条約機構』。
猟兵たちにとって、未だその超大国は詳細の知れぬ不気味なる存在である。しかし、同じく超大国『ゾルダートグラード』に干渉しているというのならば、そこから闇に覆われているかの如き『ワルシャワ条約機構』に解れが生まれることもまた理解していた。
その一端。
『ゾルダートグラード』の支配する街の一つを殲滅するための任務を帯びたスパイ。
『機械仕掛けの歌姫マリア』の所在を突き止め、機械兵士たちの目をかいくぐって彼女を打倒しなければならない。
即ち、|潜入作戦《スニーキングミッション》である。
ナターリヤ・トゥポレフ(母熊は強し・f40514)は古巣において越境潜入作戦を何度も経験し、その度にいきのこってきた兵士の一人である。
だが、敵の支配下にある街への侵入は彼女の領分ではない。
どちらかというと、それは工作員の仕事である。難しい、と端的に言ってナターリヤは感じていたが、しかしそれでもやらねばんらないと感じている。
不可能ではない、ということは可能、ということである。
「ミーシャを連れてくるわけにはいかないとはいえ……」
彼女は難民に扮して『ゾルダートグラード』の支配する獣人の街へと紛れ込んだ。
確かに機械兵士たちの動きは規則正しく、隙を見つけ出すことは難しいだろう。
子連れであったのならば、幾分警戒も解かれるかもしれないが、しかし、己の子を危険な目に合わせるわけにはいかない。
いわば、ここは戦時下の街。
如何に難民を装ったとしてもチェックがあるのは言うまでもない。難民とは不穏分子としてみなされることも往々にあるからだ。
彼女は愛用の武器や身分を示すであろうドッグタグの類を全て廃して、街中へと潜入する。
武装を持ち込めぬということは、スパイでありオブリビオンである『機械仕掛けの歌姫マリア』との戦いにおいては不利な条件となることだろう。
けれど、それでもそもそもの前提条件に踏み込めなければ意味がないのだ。
ふと、同じ難民の群れを見やれば幼子が一人心細げに体を震わせている。
「……どうしたの?」
ナターリヤが声を優しく声を掛けると幼子は震える瞳でこちらを見上げている。
検問を通ることはできたが、ナターリヤはこの幼子が両親と生き別れになったことを悟る。言葉を発し無くとも、この戦乱が渦巻く世界にあっては珍しくないことだった。
「……少しの間だけれど、ママと呼んでちょうだいね。落ち着けるまで一緒に居てあげるから」
「……本当?」
「ええ、本当。だから、一緒にいきましょう」
そう微笑んでナターリヤは街中の花咲く広場へと足を踏み入れる。
子連れの母親。
己の指に触れる幼子の指の冷たさに彼女は微笑んで膝をついて手を合わせる。温めるようにこすられる掌の柔らかに幼子の頬は少し赤く上気していく。
ぬくもりに飢えていたのだろう。
「あなたのお名前は?」
「名前?」
「ええ、名前があるでしょう? 息子の名前を知らないママなんておかしいわ。だから、ね?」
ナターリヤは一時の母親を演じるにしても、彼の名前を知らなければと思ったのだ。
「……『フュンフ』」
「そう、『フュンフ』ね。ママと一緒にお花を見ましょう。そうしたら、少しは寂しさも紛れるかもしれないわ」
そう言ってナターリヤは彼を連れて広場を見回す。
彼の心が癒やされるかもしれない。けれど、彼女は目的を見失ってはいない。『機械仕掛けの歌姫マリア』。
その背中を見つけるまで、彼女はできうる限りゆっくりと花咲く広場を見回し、その黒き影を見つけ出そうとするのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
村崎・ゆかり
|目標《ターゲット》の足取りを尾行しながら、人気のないところで討滅する、か。その程度の手札はいくらでもある。
行きなさい、黒鴉たち。あなたたちのお仲間の足取りを追ってくるのよ。
その間、あたしは手頃なカフェの中に入っていましょう。ミルクティのホットをお願い。砂糖は入れないで。
目標の捕捉が出来たなら、十分な数の式を残して、残りを|機械兵士《ゾルダード》の巡回経路や詰所などを調べ上げておく。
これはきっと、終局の時に必要なこと、討滅を実行する時に、横やりを入れられるわけにはいかない。これは他の猟兵にも情報共有しておくわ。
歌わない歌姫は、今はどこをうろついているかしら?
あたしの黒鴉は何者も見逃さない。
潜入することにおいて目立たぬということは、最重要なことであっただろう。
獣人の街。
とは言え、超大国『ゾルダートグラード』に支配された街である。そこかしこに獣人達が暮らしているが、しかし、それは仮初めでしかない。
彼等が待ち受けるのは機械化改造という未来でしかない。
故に、この街のそこかしこには機械兵士たちの目が光っている。
予定されていない行動を獣人たちが取れば、それだけで彼等は動き出す。となれば、猟兵達がこの街に転移してきているということが判明してしまうのだ。
「|目標《ターゲット》の足取りを尾行しながら、人気の無いところで討滅する、か」
この状況にあって、村崎・ゆかり(“紫蘭”/黒鴉遣い・f01658)は己の手札という名のユーベルコードを発動させる。
黒鴉召喚(コクアショウカン)。
鴉に似た鳥形の式神を召喚し、空へと飛び立たせる。
獣人戦線において獣の姿をしたものというのはありふれているが、しかし同時に機械兵士たちの目が光る中においては、空は自由なものではなかった。
「とは言え、目立たぬように動くことはできる。肝心なのは私が歌がwれないこと。行きなさい」
ゆかりは獣人の街のカフェテラスめいた場所に陣取る。
「ミルクティのホットをお願い。砂糖は入れないで」
獣人の給仕が頷く。
とは言え、このような状況だ。物資も多くはないだろう。ゆかりは味は期待できないなと思いながらも、意識を集中する。
五感を共有する鳥形の式神の視覚は己の視覚である。
周囲を見回す。
獣人階梯0――即ち、自然階梯とも呼ばれる獣人達がいる。動物そのままの姿。如何に式神とは言え、カラスの獣の姿をしている以上、機械兵士たちの警戒の対象であろう。
『ゾルダートグラード』の機械兵士たちの動向を知りたいと思ったが、それは危ない橋である。
此処で自身の存在が露見することは避けるべきだった。
「やはり『ゾルダートグラード』の機械兵士たちは街のあちこちにいるようね。これは厄介だわ。スパイである『機械仕掛けの歌姫マリア』を見つけたとしても、これに気が付かれないようにことを運ぶことは難しいわね」
短期決戦。
それも隠密的に、である。横槍を入れられないためには、条件が厳しい。けれど、それでもやらなければならないのだ。
「……歌わない歌姫の探索に注力したほうが懸命ね、これは」
鳥形の式神を花咲く広場へと向かわせる。
どこをうろついているのだろうと思っていたが、広場に咲く花を見て、立ち止まっているのが見える。
すぐにわかった。
黒尽くめの喪服めいた衣装に機械化された体。
ただ、声も発さずに花を見ている。
じっと。
ただ、そこに在るものを触れるでもなく、ただ眺めて見つめている。
それが彼女に唯一許された心の慰めであるように――。
大成功
🔵🔵🔵
雨飾・樒
潜入作戦、失敗したら逃げる隙もなさそう
機械兵士が見れば、規則通りに行動してない獣人はすぐに分かる
なら見られないように隠れながら、マリアを探すしかない
まずは広場の周囲の建物の陰に身を潜ませて、見える範囲にマリアがいないか確認
見つからないなら兵士の様子を観察して、隙を見て建物の屋根に上って見渡してみる
兵士や他の獣人達とか違う目的で行動してる相手だから、広場全体が見えれば不自然な存在が見つかるはず
"眠り薬の魔弾"を使うのは緊急時に限定
兵士に見つかりそうで、そいつを排除すれば周囲にも気付かれないで済む、みたいな場面だけ
一瞬でも見られたら失敗、怪しまれそうな物音も立てないように、慎重に行こう
「潜入作戦、失敗したら逃げる隙もなさそう」
雨飾・樒(Dormouse・f41764)は転移した獣人の街の片隅に隠れながら現状を把握する。
此処は獣人の街だが超大国が一つ『ゾルダートグラード』によって支配されている。この街を開放することは叶わないが、時が経てば、スパイとして潜り込んだ『ワルシャワ条約機構』のオブリビオンが街を破壊する。
どちらにせよ、獣人たちには破滅の未来しか待っていない。
ならば、スパイたる『機械仕掛けの歌姫マリア』を速やかに、密やかに打倒することで破壊的な破滅からは逃れる延命策を取るしかない。
樒は広場を取り囲む建物の影から伺う。
花咲く広場。
目標である『機械仕掛けの歌姫マリア』は鴉の獣人であるらしい。
黒尽くめの姿は目立つはずだ。だが、コスモスの花々が咲いている。背の高い花々に隠されて、目標の姿が此処からでは伺えない。
「機械兵士たちも広場の外にうろついているのが厄介」
少し考える。
此処で広場を観察していても『機械仕掛けの歌姫マリア』は見つからないだろう。ならば、と彼女は隙を見て一気に建物の屋根に駆け上がる。
「機械兵士に支配された街ならば、此処は規則正しく動くことを強要されているはず」
なら、と彼女は俯瞰する視界から広場を見やる。
獣人たちの姿も見えるし、先立って行動しているであろう猟兵たちの姿も見えるだろう。
確かに建物の屋根に上がることはリスクも存在している。
けれど、樒はいざとなれば、眠り薬の魔弾(ヒプノティク)がある。
ペールブルーの魔力弾は当たれば、眠りを齎す。これで切り抜けることができるはずだ。とは言え、それは最終手段だ。
一瞬でも己の姿が見られてしまえば、それだけで猟兵達にも自分にも危険が及ぶ。
ここは強攻策に出るわけにはいかない。
慎重に建物の屋根の影から広場を伺う。
「あれ、か?」
樒は広場の中心にて立ち尽くす黒い影を見つめる。
黒い服。
まるで喪服のようだ。鴉の獣人らしいことは理解している。故にさらに真っ黒な姿は陰鬱な影のようであり、鮮やかな花々が咲く広場にあってはさらに浮きだつようだった。
「何をしている?」
立ち尽くしているだけだ。
ただ、たって、頭を垂れるようにして花を見ている。
『機械仕掛けの歌姫マリア』はただ花を見ている。
何かをするわけでもなく。
ただ、見ている。
それだけが彼女の心を慰めているかのようだった。その様子に樒は訝しむ。スパイであるというのならば、彼女は機械兵士たちにも疑われぬように日常に溶け込まねばならない。
だというのに彼女は立ち尽くしている。
それはあまりにもスパイという存在理由からはかけ離れていたものだった。
「ともあれ、これで背中を追える」
そう、後は機械兵士たちに悟られぬように尾行を続け、人気のない場所で彼女を打倒するだけだ。
樒は追うべき背中を確認し、慎重に建物の屋根から降り立つのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
ユーリ・イグナーチェフ
アドリブ/連携可
「我々『クヴァルタル』としてはゾルダートグラークとワルシャワ条約機構の潰し合いは歓迎するところですが、一般市民が巻き込まれるのはよろしくないですね」
この異形の見た目を隠すため、迷彩機能を発動。機械兵士からの発見を防ぐため、同時にジャミングも行います。これで目立たないはずです。
念の為公園内を対象にUCを発動し、機械兵士の銃を封じます。私もディスクガンを使えませんが、いざとなったら殴ればいいんですよ。
公園内部の様子をカメラで撮影します。もしマリアの撮影に成功したら、他の猟兵にも画像を共有します。手掛かりは多いほうがいいですからね。
オブリビオンの超大国。
それは獣人たちにとって脅威でしかない。しかし、超大国同士とは言っても覇権を争う存在でしかない。
故に『ワルシャワ条約機構』は他国にスパイを送り込む。
獣人たちの抵抗は確かに激しいものだ。
だが、『ワルシャワ条約機構』はその先を見据えているようでもあった。スパイを送り込む行動も、その一環であろう。
「我々『クヴァルタル』として『ゾルダートグラード』と『ワルシャワ条約機構』の潰しあいは歓迎するところですが」
ユーリ・イグナーチェフ(副官兼マネージャー兼プロデューサー・f41527)は転移した縦陣の街にて、スパイがいるという花咲く広場へと向かっていた。
己の異形を隠すために明細機能を発動し、機械兵士たちから視認される可能性を潰す。
同時にワールドハッキングプログラムによって己の周囲の世界をサイバーファンタジーへと交換する。
ジャミングも兼ねている。
これならば己の姿が機械兵士たちに見咎められることはないだろう。
それに己が置き換えた世界は、飛び道具使用禁止の法則を付与されている。もしも不測の事態になったとしても、彼等が己に銃を発砲することはできないだろう。
よしんば発砲できたとしても、彼等の行動は著しく阻害されるはずだ。
「まあ、私もディスクガンを使えませんが、いざとなったら殴ればいいんですよ」
ユーリは少しばかり過激な思考担ったことに頭を振って広場を見やる。
手にしたカメラを向ける。
広場の中央。
その花咲く広場のコスモスの花を『機械仕掛けの歌姫マリア』は見つめている。
喪服めいた黒い服。
カラスの獣人であるということであったが、その姿はまるで不気味な黒い影のようだった。
陰鬱な空気が、この花咲く広場にありながら彼女から放たれている。
彼女は何をするでもなく花を見続けている。
触れることもなく。
手折ることもなく。
ただ見つめ続けている。
「――……」
「……何をしているのでしょうか」
ユーリは理解できなかった。
彼女が何を思って、花を見ているのか。何一つ。いや、他の誰にも理解できないことであったかも知れない。
花と共に佇む彼女はカメラのファインダーに収める。
その画像は猟兵たちに共有される。
「手がかりは多いほうがいいですからね」
この後彼女は動き出すだろう。彼女の目的のために。殲滅任務のために。
その際にまた見失うとも限らない。その時のこの写真の画像があれば、また追う手がかりになるかもしれないと思ったのだ。
ともあれ、尾行はこれからだ。
彼女の背中を見失わぬようにユーリは、その黒い影のような背中を追うのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
ジョゼフィーヌ・メイラム
ゾルダートグラートは敵国ですが、超大国同士の思惑に市民の皆様が巻き込まれるいわれはございません。この度の破壊工作、必ずや阻止してみせますとも!
【UC:侍女精神】(SPD)により進みましょう。あくまでも普段通り、一介の小間使いとして〈目立たない〉ように〈追跡〉いたします。もし呼び止められたならば、〈暗号作成〉にて偽造しておいた指令書を小道具に〈言いくるめ〉ることといたしましょう。
お勤めご苦労様で御座います。私、司令部の補給担当官よりご用命を受けまして、消耗した燃料の補充のため行動しております。上の方より通行許可証も頂いているのですが……ご確認なさいますか?
(アドリブ連携等歓迎)
スパイが潜入した超大国『ゾルダートグラード』に支配されている獣人の街。
超大国同士の争いは、両方を敵とする猟兵にとっては与するところであったはずだ。だが、スパイが行おうとしているのは殲滅任務。
街の全てを破壊することである。
確かにその結果、『ゾルダートグラード』の勢いは削がれることだろう。
けれど、街に生きる獣人たちはどうなるだろうか。
此処にいては機械改造される運命でしかないだろう。だが、スパイによる殲滅任務によって生命は喪われてしまう。
一体どちらが幸せであろうか。
わからない。
しかし、それでも生きているのならば、いつか猟兵達が獣人の街を開放することだってできよう。
故に、ジョゼフィーヌ・メイラム(Ms.Bergamot・f40470)は超大国同士の思惑に市民が巻き込まれることなどあってはならないと、スパイ『機械仕掛けの歌姫マリア』が齎す破壊を阻止せんと一歩を踏み出す。
とは言え、このまま無策で『ゾルダートグラード』に支配された街を歩むことはできない。
獣人の小間使……つまりは給仕たるメイドとして街中に溶け込む。
それは難しいことだったが、しかし確率として考えるのならば0%ではない。
0%でないのならば、メイドである彼女は己の行いの成功確率を最低でも六割にまで引き上げることができる。
それこそが彼女のユーベルコード。
機械兵士たちの目が光る街中にあっても、彼女は堂々たる佇まいで持って歩む。
その姿に規則通りに行動することを共用している機械兵士たちとて、迂闊に言葉を掛けるこができないほどであった。
作戦名:侍女精神(オペレーション・メイドサーヴァント)。
これによってジョゼフィーヌは、機械兵士に咎められることなく、花咲く広場へと到達していたのだ。
「おい待て、メイド。何故、その広場へと足を踏み入れる」
だが、ジョゼフィーヌは呼び止められてしまう。
彼女の佇まいは凛としていた。
だからこそ、であったのかもしれない。花咲く広場にメイドの用はないはずであろうと機械兵士の一人が彼女を呼び止めたのだ。
その言葉にジョゼフィーヌはカーテシーを恭しく披露するように一礼し、手にした指令書を示す。
「お勤めご苦労さまでございます」
「そういう前置きはいい。何故、この広場に踏み入ろうとする。それを聞いている」
「私、司令部の補給担当官様よりご用命を受けまして、消耗した燃料の補充のために行動しております」
「この先の施設にか」
「はい、そのとおりでございます。上の方より通行許可証も頂いているのですが……ご確認なしますか?」
淀みのない言葉。
それに機械兵士は頭を振る。疑うまでもないと思ったのだろう。
「確認のためだ。時間をとらせたことは詫びよう。行け」
「それでは」
ジョゼフィーヌはまた一礼して広場へと足を踏み出す。
彼女が予め偽造しておいた指令書に小道具。
そうしたものを使うまでもなかった。これならば、と彼女は広場を見渡す。花々に囲まれた広場はたしかに戦火にさらされていながらも何処か心を癒やされるようであった。
その中央に一つの影を認める。
黒い影。
この華やかな広場にあって、ただ一つだけ陰鬱なる影を落とすものがあるのだとすれば、それこそが『機械仕掛けの歌姫マリア』であった――。
大成功
🔵🔵🔵
ミラ・オルトリア
現状に合わせて行動します
マスタリング&アドリブ◎
機械仕掛けの歌姫は
どんな思いで花の許へ向かったのだろう?
歌姫ということは彼女もまた…歌う理由を胸に秘めた歌うたいだったのかな…?
味方であろう姿へ
一瞬だけ視線を向け位置把握(瞬間思考力)してから行動を心掛ける
目立たないように最善の注意を払って”追跡”
正体をなるべく隠せるように
まわりの雰囲気に倣い
気取られぬよう巡回任務を行う”演技”をする
オブリビオンになる前
彼女はどんな人だったんだろう
広場にあるコスモスを見つめるマリアを息を潜めて
その様子を見守る
想い出の花だったのかな…?
道を外れてまで、その場所へ向かった理由は――
彼女を見失わないように追跡を続けよう
思いを馳せる。
花咲く広場の中に陰鬱な影が一つ佇んでいる。
それは確かに何かを思っているようにも思えただろうし、また微動だにせず、ただ花が風に揺れる姿を見つめているだけのようにも思えた。
もしも、その影『機械仕掛けの歌姫マリア』が『ワルシャワ条約機構』のスパイであったというのならば、その行動はあまりにも不可解であり、不合理であったことのように思えただろう。
少なくともミラ・オルトリア(デュナミス・f39953)にはそう思えた。
「彼女は」
どんな思いで花の許にいるのだろう。
触れることもない。手折ることもない。ただ、ひたすらに花を見つめ続けている。
ミラもまた戦場の歌姫である。
彼女が歌う理由は2つ。いや、誓いだ。想いと約束のために彼女は歌っている。
きっと己は声が枯れるまで歌い続けることだろう。
そんな想いをまた『機械仕掛けの歌姫マリア』は持っているのだろうか。そのような理由を胸に秘めているのだろうか。いや、秘めていた、のだろうか。
広場には猟兵たちの姿が見える。
オブリビオンである『機械仕掛けの歌姫マリア』の視界に入ること無く、一定の距離から彼女の背中を捉え続けている。
自分もそうだ。
目立たないように最善の注意を払う。
追跡しようと思っても、彼女は動かない。ただ花を見つめ続けているだけだった。
「オブリビオンになる前、彼女はどんな人だったんだろう」
その背中から読み取れるものはない。
けれど、ミラは知りたいと思ってしまっていた。
「あの花は、コスモスは、想い出の花だったのかな……?」
だとすれば、オブリビオンとなってしまい、そしてまた同時に『ワルシャワ条約機構』のスパイとして日常に溶け込むように任務を持っていてなお、それを押しのけるほどの何かが、花にはあったのかもしれない。
本来ならば、この広場に彼女が足を踏み入れる理由など何処にもなかった。
なのに、それでも彼女はこの場所に足を踏み出した。
なにかに誘われるように。引き付けられるように。
その理由をミラは知りたいと思ってしまっていたのだ。
『調和』こそがコスモスの花言葉。
この世界に調和などない。
あるのは争いばかりだ。超大国同士の覇権争い。獣人たちは抵抗を続け、戦火に花は吹き飛ぶだろう。
生命だってそうだ。
彼女だって、その犠牲者の一人でしかない。
けれど、それでも花を見つめ続けている。微笑むこともできない機械仕掛けの体ができるんは、ただ見つめることだけなのだとすれば。
「それは悲しいね」
ミラは呟く。
己の魂が今、燃えるような灯火を宿したように思えた。己の中にある弱さが思える。手にした剣が己を律する。
そう、機械仕掛けの歌姫には終焉が必要なのだ。
そう想い、ミラは揺れる影のように広場を後にしようとする『機械仕掛けの歌姫マリア』の背を追うのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
ルクス・アルブス
【ステルク】
すーてーらーさーん……。
やっぱり|獣人戦線《この世界》、肌に合わないですよう(ラムネぼりぼり)
でもでも歌や音楽を破壊活動に使うなんて、勇者としても、音楽家としても許せません!
絶対に止めないとですよね。
とりあえずは旅の音楽家って体で、『花咲く広場』に行ってみて、演奏してみるのはどうでしょうか。
綺麗なお花が好きみたいですし、そこに素敵な演奏が加われば、
こちらに興味をもってくれると思うんです!
え?いいんですか!?
あ、いえ、まさかおっけーがでるとは思ってなくて……。
いえいえいえいえ!よろしくお願いします!
ステラさんとのセッションはかなり久しぶりです。
これならマリアさん、きてくれますね!
ステラ・タタリクス
【ステルク】
|エイル様《主人様》の!香りがしまーすっ!!(小声)
いえ、見つかるとダメとのことでしたので愛だけ迸らせました
鴉の獣人ということは熾天大聖様の親戚とかの可能性?
しかし歌えば聞いた者が倒れるとか
どこのルクス様です?
つまりこれに対抗できるのはルクス様だけ
|奏魔法《破壊音波》の使い手…はい?
音楽を破壊に使うのが許せない?????(宇宙メイド顔)
あ、はい、演奏ですね了解……しまった!?
あまりにも衝撃的でイエスを返してしまいました?!
ええい、仕方ありません
街の平和の為に私も歌うしか
【アウルム・ラエティティア】
戦闘ではないならルクス様の破壊効果もどうにか相殺できるでしょう
それでは皆様、ご照覧あれ
「すーてーらーさーん……やっぱり|獣人戦線《この世界》、肌に合わないですよう」
ルクス・アルブス(『魔女』に憧れる『出禁勇者(光属性)』・f32689)は肌に走る蕁麻疹に悩まされながら、ラムネをぼりぼりしながら花咲く広場の片隅に身を隠すようにうずくまっていた。
そう、ルクスはシリアスアレルギーである。
類稀なるっていうか、そんな体質ってある!? と思わないでもないのだが、実際に蕁麻疹が出ているのだから、そういうものなのである。
解決策はラムネ。
力技である。
しかし、そんなルクスの訴えにステラ・タタリクス(紫苑・f33899)は小さく叫んでいた。小さく叫ぶ?
「|『エイル』様《主人様》の! 香りがしまーすっ!!(小声)」
これである。
いやもうなんていうか、こう、ステラがいるだけでシリアスがブレイクしているような気がするのだが、気の所為であろうか。いや、気の所為ではない。
ルクスの蕁麻疹がちょっと収まっている。すごい。
「ステラさん、しーっ! なんで小声でも叫ぶんですか!」
「いえ、愛故に、と申しましょうか。声は小さくとも、愛は迸っていることを表現したかったと申しますか」
何の言い訳をしているのかさっぱりわからない。
だが、ステラはスパイ『機械仕掛けの歌姫マリア』が鴉の獣人であるということに『熾天大聖』と呼ばれる大鴉の獣人との共通点を見出していた。
親戚とか? そういう可能性が? 微粒子レベルで? なのである。
しかし、ステラの嗅覚は花咲く広場に広がる花の香りの隙間に己が求めるものの香りを感じ取っていた。
いや、正確に言うなら、その親類縁者とも言うべき香りである。
それは『機械仕掛けの歌姫マリア』からではない。
「ふーむ……これは一体どういう……」
「それにしても歌や音楽を破壊活動に使うなんて、勇者としても、音楽家としてもゆるせません!」
ふんす、とルクスが憤慨するのでステラは思考を中断する。
条件反射である。
ルクスが音楽とか言い出すと、また演奏しだすからである。
いや、ていうか今なんていった?
ステラは宇宙メイド顔になってルクスを見る。
|奏魔法《破壊音波》の使い手であるルクスがそういうことを言うのは、ちょっと解せない。ていうか、どの口で言っているのだろうかとおもったが、ルクスはかまわなかった。
「絶対に止めないとですよね!」
「それはそうですが」
二人は旅の演奏家という体で、この獣人の街に溶け込んでいる。
怪しまれないように、というのであればわからないでもないことであった。
「あの人、きれいなお花が好きみたいですし、そこで素敵な演奏が加われば、こちらに興味を持ってくれると思うんです!」
そう力説するルクス。そうはならんやろ。いつもならステラはそう云うのだが、宇宙メイド顔になっていたために、頷いてしまっていた。
「え? いいんですか!?」
「あ、え、はい。演奏ですね、了解です……しまった!?」
「しまった!?」
「あまりに衝撃的でイエスと返していました!」
「わたしもまさかオッケーがでるとはおもっていなくって……」
でも街の平和的になぁってステラは思った。いや、待てよ、とステラは思う。
ルクスの破壊的な演奏に対抗できるのは、己の歌声ではないかと。
どうにか相殺できるのではないかと。
「でもでも、ステラさんとのセッションはかなり久しぶりです!」
「ええい、腹をくくるしかありませんね!」
ステラは意を決する。
己の歌声でどこまでルクスの破壊音波を相殺できるかわからない。けれど、やらねば機械兵士たちが殺到してしまう。
己の鼓膜が先か! それとも己の喉が潰れるのが先か!
結果はまあ……その。
ステラの喉が潰れることになるのだが、ルクスはとっても満足し、無事に街の日常に溶け込むのであった――。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ティルライト・ナハトギフト
ここが『|GGO《ゲーム》』の外の世界……
……えっと、なんかここも|統制機構《コントロール》みたいになってるのかしら?
どこの世界もよく似た問題、抱えているのね
猟兵がどんな存在かはまだよく理解してないけど
やらなきゃいけないということだけはわかる
いきましょう
|目標《ターゲット》は花の咲く広場に行っているのね
まずはそちらに移動
目立たないように『|天青のローブ《セレスタイト》』は脱いで
この肌なら目立たないかしら?
気配を消すのは得意なんだけどそれだけでもバレそうね
うーん
スノウチャクラムを使って大道芸
目立つかもしれないけど改造獣人の任務ってことで移動しながら芸を披露しましょうか
どうにか追えるといいんだけど
ティルライト・ナハトギフト(ブルーゲイル/ゲッカビジン・f41944)は猟兵である。
しかし、彼女の真の姿……『統制機構』と呼ばれる世界にある姿は、世界の外にあっても何故かゴッドゲームオンラインのアバターの姿であった。
「ここが|GGO《ゲーム》の外の世界……」
だが、彼女の瞳が見つめる世界は、『統制機構』と似た雰囲気を持っているように思えた。
支配。
停滞こそが美徳たる世界に生きるティルライトと同じく、この獣人戦線の世界にあるのは支配だった。
共通するのはそこだけ。
異なるのは常に闘争が行われているということだけだった。
「どこの世界もよく似た問題、抱えているのね」
そう思うしかなかった。
たしかに自分は猟兵として覚醒している。だが、その使命というものが世界を救うこと以外においては理解できていない。
「でも、やらなきゃいけないということだけはわかる」
スパイたる『機械仕掛けの歌姫マリア』を発見し、尾行し、秘密裏にこれを打倒すること。
ゲームの世界であれば、スニーキングミッションというところであろう。
「|目標《ターゲット》は花咲く広場に行っているのね」
まずは、そちらに移動しなければ、と己を覆っていた美しい色のローブを脱ぐ。
気配を消す、というのは得意であるが、しかしそれだけでは機械兵士たちの目に止まってしまうだろう。
この縦陣の街、それも広場に溶け込む、というのならばどのような方策がよいだろうかと考える。
少し目立つかも知れないが大道芸人として雪色の戦輪を指先で遊ばせる。だが、ティルライトは見ただろう。
広場の中心にて佇む陰鬱な影を。
それがなんであるのかを彼女は即座に理解する。
知識がなくてもわかる。
初めてであってもわかる。
アレがオブリビオンであるということが本能的に理解できてしまう。己が理解できるということは、相手も己を見れば己が猟兵……即ち、滅ぼし滅ぼされる間柄であるということが理解できてしまうということだ。
「――……!」
故に彼女は背の高いコスモのすの花々の影に隠れる。
幸いにして『機械仕掛けの歌姫マリア』は佇んでいるだけだった。暫く花を見つめ、それだけに注力していたために、他のことには意識をむけることはなかったようだ。
揺れる影は広場の中央から歩みだす。
それを認めてティルライトは立ち上がる。
まるでこちらのことを意識していなかった。『機械仕掛けの歌姫マリア』は、ただ本当に花を見つめていただけだった。
触れることもなければ、手折ることもなく。
ただただ見つめるだけだったのだ。
その不気味さにティルライトは、どこか悲しげな雰囲気を感じる。
どうしてそのようなことをしていたのかわからなかい。
「けど……なんだろう。本当に殲滅任務のためだけに、此処にいるなら……」
あんな行動を取る必要なんてなかったはずだ。
なのに、それでも『機械仕掛けの歌姫マリア』は花を見るためだけに予定にない行動を取っていた。
それがどうしてなのかはわからないけれど。
ティルライトは、その陰鬱なる影の背を追うしかないのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
エドゥアルト・ルーデル
ゾルダートグラードって気持ち故郷の風景に似てる気がするんでござるよね
飯食いに行こうぜ!この世界肉が少ねぇのが玉に瑕でござるが糧食の味はようやっとる…調査?えっああ…そっすね
大丈夫でござるよちゃんと怪しまれず調査できるような現地の協力者を…誰こいつ…?誰?ねぇ…誰なの?怖いよおッ!!
【知らない人】だこれ!誰だお前は!
まあいいや、この知らない人が例の鴉の調査を進めてくれてるでござるよ
どこに立ち入っても大丈夫でござるししれっと兵士たちの会話を盗み聞いても大丈夫ででござる、極めて発見され難いらしいでござるし
街角で、広場で、室内で、花畑で、知らない人はこの街のどこにでもいるのです
ほら、あなたの後ろにも…
エドゥアルト・ルーデル(黒髭・f10354)は謎の男である。おっさんというと怒りそうであるが、まあ、謎の男である。不審者成分マシマシの歩いているだけで職質されそうな人柄である。
そんな男が、この超大国『ゾルダートグラード』に支配された獣人の街をみやり、どうにも己の故郷の風景ににているなぁって思ったのである。
「気持ちね、気持ちでござるよ」
誰に対しての言い訳なのかもわからないが、エドゥアルトは頷き、隣人と肩を組む。
「まあ、難しいことは後にして、まずは飯食いに行こうぜ!」
何はともあれ、まずは腹ごしらえである。
とっても大切なことだ。
とは言え、この獣人戦線の世界には肉が少ないのが玉に瑕である。
糧食と呼ばれる特別な食料があるおかげで肉食も草食の獣人も仲良く生きることができている。
所謂まがい物でしか肉を食べることができないのだ。
それはこの世界とは別の世界からやってきたエドゥアルトにとっては、どうにも味気ないもののように思えたのだが、でもまあ、ようやっとるよね、と思うのだ。
「……調査? えっああ……そっすね」
腹ごしらえを終えたらお仕事である。
お仕事のことを考えるだけで陰鬱な気持ちになっちゃう。だって社会人だもん。仕方ないじゃん。どうにかして仕事しないでもお金がもらえるようなシステムにならんだろうか。
それも5000兆円ほどもらえるお仕事。
「そんなもんはねぇでごあるよ! とは言え、まあちゃんと仕事はやるであります」
まったくもう心配性なんだから、と隣人を肘で小突く。
なんていうか、この時点もう怪しさ満点すぎて、すぐさま通報したい。
「ちゃんと現地の協力者だってこうして……」
そこでエドゥアルトは気が付く。
隣人、それは彼が現地の協力者として雇った……知らない人である。
「誰コイツ……?」
エドゥアルトが知らなければ、誰も知らないのである。
こっちが聞きたいくらいである。ていうか、今の今まで誰に喋ってたの?
「誰? ねぇ……誰なの?」
隣人はだまりっぱなしである。何も言わない。表情も変えない。ただ、ひたすらに其処に在るだけである。
「なんとか言ってほしいでござるよぉ! 何か喋ってくだされよぉ! 怖いよおッ!! 知らない人怖い! 誰だお前!!(ダレコイツ)」
ユーベルコードである。
一応説明しておく。
エドゥアルトが知らない人を召喚し、極めて発見されにくい知らない人はエドゥアルトと五感を共有し、指定した対象……つまり『ワルシャワ条約機構』からの『ゾルダートグラード』へのスパイである『機械仕掛けの歌姫マリア』を追跡してくれるのである。
「ユーベルコードならユーベルコードって言ってほしいでござるなぁ。本当にもう」
はーもー、忙しい忙しいて主婦みたいなことを言いながらエドゥアルトは、ささーっと花咲く広場へと到達する。
ふむ。
知らない人からの説明では、どうやら此処にいるらしい。
「でもまあ、知らない人って便利でござるなぁ。コピーロボット宜しく、全部コイツに拙者の仕事を丸投げすれば、丸儲けなのでは?」
エドゥアルトは訝しんだ。
だが、その肩をトントンと叩く手があった。
其処に居たのは、知らない人!
「拙者の後ろにも!?」
いや、多分、調査費用の請求である。
「あ……ちゃんと請求されるでござるな……じゃあ、これを……」
エドゥアルトは渋々という具合に給料袋を手渡し、知らない人からのしけてんなぁって言う舌打ちに肩を震わせるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
ロニ・グィー
アドリブ・連携・絡み歓迎!
つまりは…潜入ミッション!
任せてよそれならボクはゲームでたくさん…たくさん…
いつも面倒になってすぐ銃を使っちゃう!
●でもリアルかくれんぼだと思えば
ふんふんふーん♪
見つからなければいいのはゲームと一緒だけど自分でやる分には楽しいかもー♪
と街中を捜索していこう!
むむ!ここでストップ!ここではダッシュ!
そしてときには兵士くんに声をかけ振り向いてできた死角をすり抜ける!
と【第六感】に任せて見られないように行動してこう!
目標の彼女は―…うん、こっちにいる気がするー!
なんだけっこう楽しいじゃん!
このまま被発見ゼロ実績を達成しちゃうぞー!
スパイ。
それは潜入ミッションの花形である。花形とは言え、それを悟られてはならない。誰にも見られちゃいけない、知られちゃいけないのがスパイってもんである。
そして、そのスパイを見つけ出し、これまた秘密裏に始末しなければならないのが、今回のミッションなのである。
「任せてよ、それならボクはゲームでたくさん……たくさん……」
やってのけたのだと即答してほしい。
ロニ・グィー(神のバーバリアン・f19016)は、にっこり笑う。
「いつも面倒になってすぐ銃ぶっぱなしちゃうけど!」
それは褒められたことではない。
別のゲームである。破れかぶれのやけっぱちになって無双する未来が見えそうである。
「でもまあ、リアルでかくれんぼだと思えばいいんだよね!」
見つからないのが大正義。
つまりはゲームと一緒だと言わんばかりにロニは縦陣の街、その花咲く広場へと足を踏み入れる。
背の高い花々、コスモスの花が風に揺れている。
これならば、別段身をかがめるだけでスパイである『機械仕掛けの歌姫マリア』からの視線は切ることができるだろう。
こそこそと歩き回るのはなんていうか性に合わない感じがしたが、しかしこれがゲームであると思えば、なんていうかちょっと楽しい。
「むむ! ここでストップ! ここではダッシュ!」
なんかこうすでにやっていることは大げさなアクションゲームみたいになっているが、ロニは構わなかった。
第六感という素晴らしいものがある。
これがあれば、大抵のことはなんとなーくで済ませてしまえるのだ。理屈なんて要らない。世の中フィーリングで生きているのだ。
そういうものなのだと言うようにロニは理詰めでもなければ、テクニックもなんにも無い動きで持って花咲く広場を駆け抜けていく。
迷路じみた光景をしているが、しかしロニの嗅覚は鋭く、一気に『機械仕掛けの歌姫マリア』の傍までやってくる。
「――……」
「うーん、あれが目標の彼女かー」
隠れて様子を伺う。
どうやら彼女は花を見ていることに注力しているようで、こちらには全く警戒の意識を向けていないのだ。
ともすれば、今ならば全く持っての無防備であるとも捉えられただろう。
けれど、ロニは知っている。
オブリビオンという存在がどういうものかを。逆に言えばオブリビオンもまた猟兵というものを知っている。
だからこそ、肌にひりつくような感覚に第六感がビシバシ反応しているのだ。
「イージーモードかと思ってたけど、結構楽しいじゃん!」
ただ見つからないように尾行するだけ。
それがこんなにも、とロニは笑う。
「どうせならこのまま被発見ゼロ実績を達成しちゃおう!」
トロフィーというのはゲーム内にしかない実物ないものであるが、たくさんもらえるのならば、たくさん欲しいものである。
「さ、このまま尾行を続行だ――!」
大成功
🔵🔵🔵
第2章 冒険
『監視された街』
|
POW : 怪しまれないように堂々と行動する
SPD : 監視の死角になりそうな場所を探す
WIZ : 暗号や符丁を使って会話する
イラスト:del
|
種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
『機械仕掛けの歌姫マリア』は街中を歩む。
花咲く広場において、彼女は花を見ていた。ただ見ていた。本来ならば行動予定にない行動であったが、しかし、彼女の目的地は変わらない。
広場を出てからというものの、『機械仕掛けの歌姫マリア』の警戒の色は濃いものへと変わっていた。
先程までの広場での様子とは真逆。
少しでも視界の端に猟兵の姿が映るものならば、即座に反応してしまうほどの圧倒的な警戒網を自身の周囲に張り巡らせていた。
あまりにも別人すぎる。
それに加えて、街中で手を出せない。彼女を打倒するのだとすれば、それは彼女の目的地についた瞬間であろう。
「――……」
「おい、待て、貴様……いや、すまない。こちらの間違いだ」
機械兵士に呼び止められる。しかし、彼等は同じ機械兵士である『機械仕掛けの歌姫マリア』の姿を認め、即座に彼女の道行を阻まぬように道を開ける。
猟兵たちにとってはさらなる障害が増えたのと同じだった。
花咲く広場よりもさらに尾行の難易度は上がっている。そこかしこにある機械兵士たち飲めをかいくぐり、さらに彼女を追わねばならない。
見失ってしまえば、『ワルシャワ条約機構』の殲滅任務は達成させられてしまうだろう。
「――……」
『機械仕掛けの歌姫マリア』は、ただ歩む。
己の歌声を響かせるために。その虚ろな瞳が見据える先にあるもの。そこへと到達するために。
嘆くことは許されない。
嘆く死角などない。
あるのは、ただの命令のみ。破壊すること。『平和』を胸にいだきながら、その対極たる行いをこそ為すために、彼女は機械兵士たちの瞳が交錯する街中を悠然と歩んでいく。
それが破壊と嘆きを生むのだと知りながら――。
イリスフィーナ・シェフィールド
引き続き透明化して追跡中ですの。
まとう雰囲気が変わりましたが休憩タイムは終了でしょうか。
より一層慎重に行動しなければなりませんわね。
うっかり石とかゴミとか蹴飛ばして誰もいないはずなのに動いたりしたら不自然極まりませんし。
巡回してる獣人の機械兵士にも接触しないようしなくては。
超大国『ワルシャワ条約機構』のスパイ『機械仕掛けの歌姫マリア』は街中を往く。
彼女の姿は機械改造された鴉の獣人である。
機械兵士たちは獣人であれば、規則通りの行動を取っていないことを見咎めるが、しかし同じ機械改造された獣人である彼女のことは見咎めない。
それ故に溶け込んでいるとも言えるのだろ。
「……彼女の纏う雰囲気が変わりましたね」
イリスフィーナ・シェフィールド(女神様の巫女兼スーパーヒロイン・f39772)は、引き続き己のユーベルコード、ブリザード・カモフラージュでもって己の体を光を反射しない透過させる氷で覆いながら街中を進む。
スパイ『機械仕掛けの歌姫マリア』は今何を思っているのだろうか。
それをイリスフィーナは知る由もない。知るすべもない。けれど、彼女が花に見惚れるようにして動かなかったことだけは知っている。
それがどのような意味を持っているのか。
けれど、今はそれにかかり器に理なるわけにはいかないのだ。
「何か彼女を知る一端でもあればよかったのですが…・…」
あちこちに機械改造された兵士たちが行き来している。
「とは言え、透明化している以上私の姿を捉えられるわけもないのです。油断は大敵というものです」
イリスフィーナは慎重に『機械仕掛けの歌姫マリア』を追う。
彼女の目的地が何処なのかは、未だ判然としない。
だが、彼女の背中を見失うことはあってはならないのだ。
うっかり小石を蹴飛ばすとか、ゴミ箱を倒してしまうだとか、そんな三文芝居めいた失態を演ずるわけにはいかない。
「それにしてもあの電波塔はいつになったら完成するというんだろうな」
「そう言うな。あれさえ完成してしまえば、こちらの通信網はさらに拡大する。そうなれば作戦遂行も楽になろうというものさ」
機械兵士たちの言葉にイリスフィーナは耳をひそめる。
彼等が言うのは、この獣人の街の中心にそびえるように建築されている塔のことを言っているのだろうか。
であるのならば、と彼女は『機械仕掛けの歌姫マリア』の背中を見やる。
彼女の進路方向はたしかにあの電波塔のように思える。
「あそこが目的地でしょうか。とは言え……いえ、そういうことなのでしょうか?」
確定したわけではない。
けれど、街中に仕掛けられた爆弾を同時に起爆する、というのならば、この街の中心に向かうのは理にかなっているように思えたのだ。
しかし、それを知るためには引き続き気を引き締めてかからねばならない。
巡回している機械兵士たちに近づきすぎることのないようにイリスフィーナは透明化したまま躱し、『機械仕掛けの歌姫マリア』の背中を追って走る。
戦いの場は近づいてきている。
その気配を感じながらイリスフィーナは着実に『機械仕掛けの歌姫マリア』との距離を詰めていくのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
村崎・ゆかり
見つけたわ、『歌姫マリア』。
あとは|機械兵士《ゾルダード》に見つからないよう尾行するだけ。
摩利支天隠形法で周囲の耳目から逃れて、密やかに後を追う。まだ使える黒鴉たちには、建物の屋根伝いに慎重に周囲を監視させて。
角を曲がったところで機械兵士にぶつかったら、隠行どころじゃないもんね。
黒鴉の式が調べた限りの範囲で、彼女の目的地は分かるかしら?
ただ、先回りして外れたら目も当てられないから、大人しくあとをついて行くしかないわけだけど。
あたしはとにかく、他者との接触を避けるのを最優先で。人混みがなくて助かるわ。
だからといって機械兵士に感謝はしないわよ。
そろそろ目的地が近そうね。状況開始の準備よし。
陰鬱な影を追う。
その背中は確かに『機械仕掛けの歌姫マリア』のものだった。
鴉の獣人。
機械化改造された成れの果て。オブリビオン。
その背中が纏う気配は、どこまでも陰鬱だった。彼女にとって大切なことは、この街を殲滅すること。
街中に仕掛けられた爆弾を一斉に起爆し、破壊という名の歌声でもって獣人たちを開放することである。
開放とは即ち、この戦乱満ちる地獄の如き世からである。
それを逸脱と呼ぶことを村崎・ゆかり(“紫蘭”/黒鴉遣い・f01658)は理解していた。
陽炎を纏うようにして、ゆかりは街中を走る。
「見つけたわ、『歌姫マリア』」
摩利支天隠形法(マリシテンオンギョウホウ)によって、ゆかりは視聴嗅覚でもって感知されぬ体へと変貌している。
揺らめく陽炎に触れた敵は、正常な判断能力を失ってしまう。
これは二段構えの方策であった。
仮に彼女の見えぬ姿に機械兵士たちがぶつかたったとて、そこに正常な判断力はない。何にぶつかったのかも理解できないのならば、何が以上であるかもわからない。
とは言え、他者との接触が無い方にこしたことはない。
「彼女の目的地は一体どこ?」
『機械仕掛けの歌姫マリア』は何も語らない。何も言葉を発しない。
これまで彼女が見てきたのは、ただ花々を見つめる姿だけだ。それ以外はなく、それ以上でもないと言わんばかりに彼女は街中を往く。
穏やかなりし雰囲気があったのは、僅かな時だけだった。
あの花咲く広場にいた時だけが、彼女の身寄り発せられる警戒が解かれた時だったのだ。
「先回りしたいところだけど、外れたら目も当てられない。大人しく後をつけるしかないっていうのは後手に回っているみたいで正直嫌なものね」
とは言え、人通りが少ないのも助かっている。
もしも、『機械仕掛けの歌姫マリア』が人混みの中をかき分けて目的地に向かうのならば、ゆかりのユーベルコードはたちまちに意味をなくしてしまう。
ならばこそ、ゆかりはこの状況にこそ感謝すべきだろう。
「でも機械兵士に感謝はしないわ。これはあっちの都合なんだもの」
ゆかりは『機械仕掛けの歌姫マリア』が向かう方角を見やる。
そこにあるのは建設途中の電波塔だった。
街の中心。
そこに立てられるそれが如何なる目的を持つのかをゆかりは知らない。
けれど、完成すればオブリビオンの良からぬ目的に使われることは言うまでもないだろう。
「もしかして……あの『歌姫マリア』が向かうのは、電波塔なの……?」
街の中心。
仕掛けられた爆弾での殲滅任務。
一度に同時に起爆しなければならない。
ならば、街の中心に向かうのは理にかなった行動のようにゆかりはおもえたのだ。
「これはもしかしなくても、目的地が近いってことね……なら、状況開始の準備を始めましょう」
ゆかりは己のユーベルコードの効果が生きていることを確認し、さらに『機械仕掛けの歌姫マリア』との距離を詰め、電波塔へと向かう道を急ぐのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
ナターリヤ・トゥポレフ
●SPD
(…あの人の姿はここにも居ませんでしたね)
作戦行動中に未帰還者となった夫が超大国の捕虜となって…と、もしかしたらの望みで作戦に志願しましたが空振りでした
ゾルダートグラードは投降した兵はおろか戦火で焼かれて行くアテがない難民をも機械兵士へと改造させます
勿論、身寄りのないフュンフも…
決めました
予定を変更して、作戦完了時はこの子と一緒に帰還致します
|小隊長《ドーラちゃん》から「また拾ってきたのか」と小言を言われそうですが、何人居ようとも血が繋がっていなくても子育ては変わりありません
『母性本能』に赴くまま、この子を護り通しながらで作戦再開です
まずはこのまま尾行を続けていれば勘付かれてしまうかも知れませんので、道を逸れて路地裏へと入ります
当然ながらここも機械兵士が巡回して警戒にあたっているでしょうが、道が狭いだけあって一人が殆どです
物陰に身を潜めながらやり過ごしますが、クマ用のライフルを携行していましたら頂戴します
こう見えても私、コマンドサンボの使い手ですから
後は匂いを辿りながら追跡です
戦禍は分かつ。
何をと言わず全てを分かつ。分かたれたものは、己が何処にあるのかもさえ理解できなくなってしまう。
たとえ、戦火に己が包まれていたとしても。
身の置き所がない。
もがき苦しんでも、誰も助ける者はない。故に戦火は人の心をえぐり続ける。そこにあり続けるだけで、人の心から例えようのない血潮を流し続けるのだ。
ナターリヤ・トゥポレフ(母熊は強し・f40514)もまた、その一人だろう。
彼女の視線が探すのは、いつだって未帰還者となった夫の姿であった。
戦死したのかも、虜囚となっているのかもわからない。
けれど、生きているのならばと願うのは悪しきものであろうか。弱きものであろうか。
彼女がこうして『ゾルダートグラード』の支配する街へと潜入するという危険極まる任務に志願したのは、彼女の夫の姿が何処にあるかもしれないという僅かな望みを持っていたからだ。
捕虜となっているのならば、と思う。
それを悪しきものであると、弱きものであると謗る者などいないだろう。
誰もが望んでいる。
生きてさえいてくれれば、と。どんな形であれ。
けれど、ナターリヤは理解している。
「……」
「『フュンフ』、こちらにおいで」
そう言って彼女は孤児であった少年を抱き寄せる。彼女の体躯からすれば、あまりにも体格差が在りすぎるものであるが、しかしてその愛情は一時のものではないことを彼に伝えるには十分であったかも知れない。
わかっている。
『ゾルダートグラード』は投降した兵士はおろか戦火で焼きだされた民間人もまた機械兵士へと改造する。
今彼女の胸に抱いた少年もまた同様の運命をたどるだろう。
わかっている。
その運命がどんなに過酷なものであるのかを。
「決めまして。あなたはママと一緒に帰りましょう」
「どこへ?」
「私の小隊へ。小隊長は良くない顔をするかもしれませんが、そんなの関係ありません。たとえ」
そう、たとえ血が繋がっていなくっても子育てに変わりはない。
惜しみない愛情が己にはある。
母性本能(マターナル・インスティンクト)と一言で済ましてしまえば、それだけであったのだろう。
けれど、ナターリヤは己の中にある母性愛を信じる。
これが己のユーベルコードである。
『フュンフ』を抱いたままナターリヤは街中を疾駆する。裏路地へと素早く飛び込み、彼女が追うスパイ『機械仕掛けの歌姫マリア』を見失う前に巡回する機械兵士たちの目をかいくぐるためである。
跳躍する。
その音に一人の機械兵士が振り返る。
「なんの音……だっ!?」
振り返りざまに放たれたナターリヤの膝蹴りの一撃が機械兵士の頭部をひしゃげさせる。凄まじい一撃だった。
体躯の大きさもあるのだろうが、それ以上に彼女の溢れる母性愛が、その一撃をさらなる強烈なものへと変貌せしめていたのだ。
「すっごい」
「そうでしょう。ママはすごいんです。こう見えても私、コマンドサンボの使い手ですから」
「サンボ」
「ええ、『フュンフ』もこれくらいできるようになりますからね」
ナターリヤは微笑んで機械兵士の装備を弄る。
武装の殆どは潜入のためにおいてきた。現地調達するつもりだったのだ。これを拝借しようとライフルを手に取る。
「ママはすごいんだね」
「ええ、だから安心してちょうだいね」
頭を撫でる。
亜麻色の髪がくしゃりと揺れる。星映すような黒い瞳が自分を見上げている。
ナターリヤはさらに己の中の母性愛が込み上げてくるのを理解しただろう。鼻を揺らす。『機械仕掛けの歌姫マリア』の匂いは覚えている。
ならば道をたどることは容易だろう。
あとは、この路地裏を進んで彼女の目的地に至るまでだ。
「さあ、いきましょう『フュンフ」
「うん――!」
大成功
🔵🔵🔵
雨飾・樒
こんなに様子が変わるなんて、意外
やることは決まってる、見失わないように追跡する
マリアが向かう先、建物が続く限り屋根を伝って追いかける方が見つかり難そう
下にいる連中がこっちを見上げようとする動作は分かり易いし、すぐに身を隠せる
足音を極力抑えること、向かいの建物から誰かに見られてないかは注意
動く時間が長いほど見付けられる危険も高いだろうから、マリアの進んでる経路を考えて、先回りできそうなら一気に進んで、隠れて待ち構える
建物が低くなったり途切れたりで屋根が使えないなら、下りて隠れられそうな物陰に潜んで行こう
"眠り薬の魔弾"は撃つ以外に解決できない時だけ、本当に必要になるのはもう少し先だから
『機械仕掛けの歌姫マリア』の纏う雰囲気が変わっている。
明らかに警戒している。
ただ歩んでいるだけだというのに、全身から迸るのは周囲の全てを信じていないかのような拒絶めいた雰囲気だった。
先程まで居た花咲く広場の雰囲気とはまるで別人だった。
「こんなに様子が変わるなんて、意外」
雨飾・樒(Dormouse・f41764)は建物の屋上から彼女の姿を捉え続けている。
未だ己の存在は敵に感知されていないようであるが、油断はできない。
俯瞰した街並みを見ることができたのは幸いだった。
スパイである『機械仕掛けの歌姫マリア』がやろうとしていることは、この街の殲滅である。そのために各所に仕掛けられた爆弾を起爆するために何処かに向かっているところまではわかっている。
後は、その目的地に到達した瞬間に彼女を打倒するだけだ。
「――……」
「彼女の目的地……街の中央?」
樒は進路方向から当たりをつける。街の中央には建設途中の電波塔がある。そこに向かっているのだろうか。
「いや、それなら解る気がする」
爆弾を起爆するのが如何なるものであるかはわからないが、電波信号のようなものであったのならば、街の中央が最も効率よく、それでいて最大に効果を発揮できるからであろう。
それならば、と樒は建物の屋根伝いに彼女を追う。
とは言え、眼下には機械兵士たちの巡回がある。派手に音を立てれば、不審に思われるのは当然のことだった。
「極力足音を抑えよう」
静かに屋根を蹴る。
それに、と樒は考える。如何に建物の屋上を伝っているとは言え、他の建物からは己の行動は丸見えである。
できうる限り物陰に身を潜めなければならない。
何処に機械兵士たちの目があるかわからないのだ。
それにいつまでも『機械仕掛けの歌姫マリア』の進路上に建物があるとも限らない。
「一端下に」
降りよう、と彼女は路地裏に降り立つ。
すると、そこには頭部のひしゃげた機械兵士の姿があった。隠されているが、樒にはわかった。
一撃で倒されている。
なるほど、と彼女は理解する。
他の猟兵がやったことであるな、と。装備がいくつか存在していないところを見るに、潜入して武装は現地調達しようということなのだろう。
「それなら、私は先回りできる」
たとえ、見失ったとしてもカバーリングができているのならば、己が見つかる可能性を排除する方向で動いた方がいい。
確かに己の眠り薬の魔弾(ヒプノティク)は機械兵士に見つかっても対処できうる札である。しかし、この札を切るわけにはいなかい。
本当に弾丸を打つ必要があるのはもう少し先であろうからだ。
「行こう」
『機械仕掛けの歌姫マリア』の目的地、おそらくは電波塔。
そここそが決戦の地であると彼女は先回りするように路地裏を走るのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
ジョゼフィーヌ・メイラム
むむむ……ああして警戒されていてはこちらも動きづらいというもの。彼女の足取りからして、おそらく目的地まではそう遠くないはずでございます。少々の無茶をしてでも、見失わないようにしなければ。
マリア様を直接追いかけるのは中断し、〈戦闘知識〉として得ていたこの街の地図の記憶を頼りに、彼女の進む道と並行する路地などを進みます。接近する者を〈気配感知〉で捉えたら、【UC:紫菫羊】(WIZ)により一時的にお眠り頂き、その隙に進むことといたしましょう。
ここまで至れば、あと一息でございますね。それにしても、マリア様はどのような心持ちで広場に留まっていらっしゃったのでしょう……。
(アドリブ連携等歓迎)
唸る。
『機械仕掛けの歌姫マリア』が放つ気配。それは警戒一色であった。
周囲の全てを感知するかのように彼女は機械的な動作で街中を歩んでいる。一見隙だらけに見えてしまうのは、花咲く広場での彼女を知っているからだろう。
けれど、あれほどの警戒をされては迂闊に近づくことはできない。
それに加えて、機械兵士たちの巡回がある。
目につく行動は取れず、けれど、彼女を見失う事は許されない。
ジョゼフィーヌ・メイラム(Ms.Bergamot・f40470)は、それを理解して唸っていた。
「とは言え、目的地はそう遠くないはずでございます」
多少の無茶は承知の上で彼女を追わなければならないとジョゼフィーヌは決心する。
己の記憶を引き出す。
この街に潜入する前に頭に叩き込んでいた、この街の地図。
毛細血管のような路地裏まで詳細に刻み込んだ頭の中の地図に『機械仕掛けの歌姫マリア』と己の所在地にピンを立てる。
記憶だよりである。
けれで、『機械仕掛けの歌姫マリア』が何処に行こうとしているのかを予測することができたのならば、先回りができるかも知れない。
予測される『機械仕掛けの歌姫マリア』の進路と並行する路地を選択し、ジョゼフィーヌは走る。
「貴様、何を走っている!」
だが、その走る姿に機械兵士が見咎める。
ジョゼフィーヌは恭しく一礼して見せる。己の行いに非があることを認めるような所作に機械兵士は近づいてくる。
「何故走っているのかと聞いている! 答えぬか!」
「おやすみなさいませ」
瞬間、ジョゼフィーヌが放つのは特殊調合したポプリより放たれる香りであった。
それは、機械兵士であろうと、その内部に入り込む。
膝から崩れるようにして機械兵士が意識を失ったのをジョゼフィーヌは確認してすぐさまルートを変更する。
わかっている。
これはロスだ。けれど、己たちの存在が露見するよりはマシである。
「ここまで至れば、後一息でございます」
失敗は許されない。
この作戦名:紫薫羊(オペレーション・ラベンダーシープ)は迅速さが肝要である。
かと言って、乱用もできまい。
眠りに落ちた機械兵士が多ければ多いほどに的に己たちの存在を感知させてしまうからだ。ジョゼフィーヌは慎重に頭の中のルートを選択する。
とは言え、である。
彼女は思う。
『機械仕掛けの歌姫マリア』が如何なる気持ちでもって、あの花咲く広場にとどまっていたのか。
少なくとも、あの広場にいるときの彼女はスパイでもなければ、オブリビオンでも無かったように思えた。
ただ花を見つめ続けるただ一人の歌姫であったように思えたのだ。
だからこそ、ジョゼフィーヌは走る。
「あなた様の心が何処にあるのか。どうして、あのような顔をされていたのか」
己は知らなければならない。
誰かに仕えるためではない。
彼女もまた戦火によって疲弊した心に荒んだものを持つのならば、己が癒やさねばならぬと思うのだ。
それが、それこそが、己のあり方だと示すように――。
大成功
🔵🔵🔵
ミラ・オルトリア
マスタリング・アドリブ可
ここから先
彼女の任務の本番ってことだね
私もこの世界の兵士
警戒範囲に足を踏み入れないよう務めて行動するよ
引き続き目立たないよう徹底して追跡
機械兵士たちにも気取られないように最善の注意を払う
万が一は
UD《蜜惑唱》を使用
蜜彩の眼を向けた対象が私に友好的になる催眠術に
仲間だと思い込ませられる演技も一押し
他にもUDが利用できる場があるなら積極的に使用
調和の花言葉を持つコスモスに
惹かれたあなたも平和を胸に強く願う歌姫だとこの心は感じた
私にできる事は
あなたが目的地へ到達し戦闘になった時
その志がこれ以上嘆きの海に囚われぬよう
――|助ける《歌う》から
今日この戦は、彼女の為に決意を固める
花咲く広場から離れた『機械仕掛けの歌姫マリア』の気配は、より一層オブリビオンめいたものになっていた。
それまで花を見つめ続けるだけだった彼女は最早別人である。
彼女の放つ気配は警戒一色であった。
とてもではないが、花咲く広場の時のように近づくことはできないことをミラ・オルトリア(デュナミス・f39953)は理解した。
此処から先が、彼女の任務の本番であるのだと。
それを為すためだけに彼女は此処にいるのだと理解した。
その理解が示す先にあるのは、彼女との対決にほかならない。
わかっている。
どれだけの悲劇があるのだとしても、悲しみが苦しみを呼び、苦しみが痛みを想起させるのだとしても。
それでも。
「私もこの世界の兵士」
戦うということ。歌うということ。
ミラは走る。路地を、大通りを。けれど、それは巡回する機械兵士たちの目を引き付けるものであったことだろう。
けれど、彼女の眼差し……蜜彩色をした瞳が機械兵士たちを捉え、その唇から甘やかな声が響いた瞬間、彼等は足を止める。
「ありがとう。見逃してくれて」
「いいさ。他の奴らは知らないが、俺は何も見ていない。歌を聞いただけだ」
機械兵士の言葉にミラは微笑む。
蜜惑唱(ファシネイト・デュナミス)は敵であろうと生命体、無機物、自然現象であろうとミラに味方する。
それは無意識な友好。引き出す歌声と共にミラは『機械仕掛けの歌姫マリア』を追う。
あの陰鬱な影となった背中を。
そして、思い出す。
彼女が見ていた花の名を。
コスモス。花言葉は『調和』。そこにある思いを彼女はどのように思っていたのだろうか。
「あなたが惹かれた花は、きっとあなたの心の片隅にあるのものを映し出したもの」
そうだよね、とミラは歌を口ずさみながら蜜彩色の瞳を陰鬱な影の如き『機械仕掛けの歌姫マリア』の背中に向ける。
『平和』を胸に抱いて歌う歌姫。
それは願いであり、祈りであった。祈りは願いに昇華する。
それが真実であろうと、誤りであろうと関係ない。
ミラの心が強くそう感じたのだ。ならば、自分ができることは唯一つ。
「あなたが、その志がこれ以上嘆きの海に囚われぬよう」
そう、目的地は街の中央にある建設途中の電波塔であろう。これまでの進路からそう理解できる。
そこが最期だ。
「――|助ける《歌う》から」
だから、とミラはこの戦いはきっと彼女のためだけに己の決意を固めなければならないと理解する。
心を救うことができるか。
機械仕掛けとなってしまった体躯に秘められた願いは、祈り。
誰かのためになりますようにと祈られた願いは、己の中に舞い込む風のように今渦巻いている。
オブリビオンとなってもなお『平和』を望む誰かのために――。
大成功
🔵🔵🔵
ルクス・アルブス
【ステルク】
あれが『マリア』さんですか。
あの方について行けばいい……え?尾行?
ということは、目立たないように、ってことですか!?
シリアスだけでも厳しいのに、ステラさんのやべーオーラを目立たないようにするとか、
これってかなりの難題じゃないですか!?
光の勇者ルクスちゃん、ルクスちゃーん!どうしたらいい?
いつも通りでいいの?なになに?
大気中のエイル粒子が薄いから、ステラさんが有能メイドのままなんですか?
暴走モードにならないなら安心ですね!
それじゃわたしはステラさんについていけばいいんですね。
『マリア』さんの匂い、わかるんですよね?
ちゃんと尾行できたら、また『エイル』さんのモノマネしてあげすからー♪
ステラ・タタリクス
【ステルク】
さて、真面目なメイドのターンです
【ヴァレット・パープル】
ええ、メイドに不可能などありません
ゆえに目立たずに尾行など朝飯前……ルクス様?
どこにいても目立つ|光の勇者《破壊神》様??
誰がやべーメイドですか
しかもユーベルコード使ってまで問い合わせることですか
あとエイル様の香りは別の方向からしているので
マリアの追跡には使えません
……ということはこの事件に噛んでいる者が他にいるということですか
少なくともエイル様関係者と……おそらくノイン様の関係者
まぁ
ルクス様のおかげで街には溶け込んでいるのでこの調子で追いかけましょう
捕捉はお任せください
何事も完璧にこなせる、超有能なメイドに不可能はありません
真面目なメイドのターン。
一体全体何を言っているのかと思われるだろうが、言葉面の通りである。額面通りである。
「ええ、メイドに不可能などありません」
ステラ・タタリクス(紫苑・f33899)は小さく頷く。
「あれが『マリア』さんですか。あの方についていかないといけないんですよね……目立たないように……」
ルクス・アルブス(『魔女』に憧れる『出禁勇者(光属性)』・f32689)は思った。それは無理じゃないかなって。
だってシリアスというだけでもルクスは蕁麻疹が酷いことになってしまうのである。
それだけじゃあない。
ステラのやべーオーラを隠すなんて到底無理なように思えたのだ。
かなりの難題である。
というか、無理。ステラのやべーなオーラは最早、常識みたいなもんである。メイド=やべー。風評被害甚だしい。
しかし、まあ、いつものステラを見ていたら、それもあながち間違いではないのではないかと思うのだ。
「何を仰っていらっしゃるのかわかりませんが、ルクス様? 一つ申し上げても?」
「なんです?」
「どこにいても目立つ|光の勇者《破壊神》である貴女様には言われたくないのですが」
「やべーメイドにそう言われるのは心外と申しますか!」
「誰がやべーメイドですか!」
やんややんや。
ケンカである。昭和の表現技法のケンカである。仲良くケンカしているだけなので、ご心配なく。ちゃんとブックもあるからプロレスである。
「光の勇者ルクスちゃ、ルクスちゃーん! どうしたらいい?」
「ユーベルコード使ってまで問い合わせることですか」
ルクスはたまらず勇者の特権(ユウシャノトッケン)を発動する。
このような状況をかいくぐるには、ユーベルコードでもなければ無理である。
『このままでいいんじゃないかなーっておもうんです。いつも通りで。だって、大気中の『エイル』粒子が薄いから、ステラさん有能メイドのままなんですから!』
「へー確かに。暴走モードにならないから安心ですね! それじゃ、わたしはステラさんについていけば良いんですよね?」
「ですから、先程からそう申し上げております。メイドに不可能など無いと」
「『マリア』さんの匂い、わかるんですよね?」
「わかりませんが」
わからんのかい。
ですが、ステラは頭を振る。
「『エイル』様の香りが別方向からしてきています。どうやら他の猟兵に保護されているようですが、しかしこれは……」
ステラは鼻を鳴らす。
己の知っている『エイル』の香りとは少し違う気がする。言うなれば、ハーフ、というか。混じっているというか。
うん、とステラは頷く。まあ、恐らく『エイル』の関係者様であろうと位置づけて彼女は気を取り直す。本当に暴走してない! ただの有能メイド……!
「ちゃんと尾行できたら、また『エイル』さんのモノマネしてあげますからー♪」
「『エイル』様はそんな事言いません」
ガシ、とルクスの肩を掴んでステラの顔が真っ黒な影に塗りつぶされる。
赤い瞳だけが爛々と輝いていた。
「え、あ、はい」
「いいですか。『エイル』様のなんたるかを……」
「あ、あっー、『マリア』さん行っちゃいますよ! 何事も完璧にこなせる超有能メイドのステラさん! 追わないと!」
「……そうでした」
ステラは気を取り直して『機械仕掛けの歌姫マリア』の後を追う。
ルクスは助かった……と思ったが、戻ったらステラによる『エイル』演技指導という名の25時間に渡る猛特訓が始まるのだろうが、この場においてなんとなく成功を引き寄せるためには致し方ない犠牲であったと、光の勇者ルクスちゃんは黙りこくるのだった――。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ティルライト・ナハトギフト
(引き続き設定は一緒)
(目立たないように気配を抑えながら)
うーん?
やっぱり行動原理が全然見えないわね……
もう少し様子を見ましょうか(スノウチャクラムを手で弄びつつ)
それにしてもあの悲し気な雰囲気は何なのかしら?
自身の行動に疑問を持っている?
機械仕掛け……なのに心があるということなのかしら?
そうすると心とは何か……って話になってしまうのだけど
花……に何か感じ取っているということよね?
獣人に無くて花にあるもの?
あー、ダメね。全然わからないわ
私に出来ることは彼女を見失わないだけ、ね
おっと、怪しまれないようにしないと
監視の死角を抜いていくとしましょう
伊達に|暗殺者《アサシン》してないのよ?
気配を押し殺す。
それはゲームの世界においても有効なスキルであった。目立たないように敵の背後を取る。バックスタブを決める条件には、兎にも角にも特定の状況を生み出すことにあるのは言うまでもない。
ゲームの世界、ゴッドゲームオンラインでもそうだったのだ。
ティルライト・ナハトギフト(ブルーゲイル/ゲッカビジン・f41944)は、しかし首を傾げる。
「うーん?」
彼女が追うのは『機械仕掛けの歌姫マリア』である。
スパイであり、この街の殲滅任務を帯びた存在であることは最早言うまでもないことである。手にしたスノウチャクラムを弄びながらティルライトは首を傾げる。
『機械仕掛けの歌姫マリア』の行動原理がまったくわからないのだ。
言ってしまえば、パターンである。
花咲く広場にて彼女は花に見入っていた。何をするでもなく、ただ揺れる花を見ていただけに過ぎなかった。
なのに、と思う。
この警戒の気配はなんだろうか。元々こちらが本来の『機械仕掛けの歌姫マリア』であるというかのような別人さ。
なのに、何処か漂う悲しげな雰囲気。
「自分の行動に疑問を持っている? 機械仕掛け……なのに心があるということなのかしら?」
その憶測が何処まで正しいのかを知る術をティルライトは持ち合わせていなかった。
機械仕掛けの体。
だというのに心があるかのような行動。
わからない。
心とは何か、という話になってしまう。花に何かを感じ取っているのか、それとも特別な思い入れがあるのか。
獣人になくて花にあるものだろうか。
逆じゃないのか、とも思う。獣人には花にないものを多く持っている。けれど、花は歩くこともなければ、言葉を発することもない。
ただ、そこに在り続けるだけだ。
人、獣人であるのならば、他に多くのことができる。
言葉をかわすことも、寄り添うこともできる。なのに、『機械仕掛けの歌姫マリア』は花にこそ心を繋ぎ止められているようにさえ思えたのだ。
けれど、答えはでない。
「あー、ダメね。全然わからないわ」
ティルライトは街の物陰に潜みながら機械兵士たちの目をかいくぐるようにして『機械仕掛けの歌姫マリア』の背中を追う。
彼女の心の内を知ることはできない。
自分にできることは彼女を追うことだけだ。見失わないということだけだ。
「ふぅ……目的地は、どうやら街の中央……」
建設途中の電波塔。
そこが彼女の目的地であろう。街中に仕掛けられた爆弾を一気に起爆させるために街の中央を選んだのならば、恐らく、彼女の持つであろう起爆スイッチが最大に、それこそ効率よく作動させられる場所なのだろう。
「機械兵士の監視の目が鬱陶しいけれど……伊達に|暗殺者《アサシン》してないよ」
彼女はフードを目深に被って街中の影から影へと飛ぶ。
ゲームの世界で培ったスキルは、ゴッドゲームオンラインの外でも通用する。
それを示すようにティルライトは『機械仕掛けの歌姫マリア』を追って、街の中央、建設途中の電波塔へと走るのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
エドゥアルト・ルーデル
知らない人は置いて来た、もうついてきそうにない
しかし兵士多すぎでござるね、コミケかな?まあどうということはないでござるが
全身を【ドット絵】に変換でござるよ!パパッパッパパッパ!
レトロゲームめいた拙者だ!ドットピクチャーでござるゆえぺらっぺらでござる、そしてペラくなった今だと凡そ全ての隙間が道となるでござるよ
兵士がぜってぇ通れないような隙間を通っていこうぜ壁の隙間とか!隠れる時も隙間に潜るだけでいいから楽でござる
ただ気を付けないといかん事があるでござるよ、今迂闊にジャンプすると鳴るからな…やたら軽快なSEが…!
どんぐらい火薬を盛ったんでござるかねェ…軽率に見てぇなあ…爆破するとこ…
「知らない人は置いてきた、もうついてきそうにない」
いや、振り切ったの間違いではないのだろうか。
知らない人、それはエドゥアルト・ルーデル(黒髭・f10354)が現地で協力を頼んだ……頼んだ、のか? まあ、そういうあれである。深く追求はしないでおく。なんか深淵を覗き込んだら、深淵から覗き込まれてしまうような気がするので。
「しかし、兵士多すぎでござるね、コミケかな?」
そこまでは多くないんじゃない?
単純に街中にある獣人たちを監視するために巡回しているというだけである。
「わーってるでござるよ! 比喩、比喩表現でつよ! まったくもう!」
これだから、とエドゥアルトは憤慨する。
傍から見たら、誰に言っているんだという話である。
だがまあ、エドゥアルトは冷静であった。
確かに巡回の機械兵士たちは厄介極まりない。
自身が追わねばならないのは『機械仕掛けの歌姫マリア』だ。彼女の警戒の気配は色濃く、近づきすぎれば気取られてしまうであろうことは言うまでもない。
けれど、それ以上に巡回の機械兵士が多いのだ。
これを如何にして躱すかがカギとなるだろう。
「まあ、これくらいの数など拙者にはどうということはないのでござるが。つまり!」
ドット職人の朝は早い(ドットショクニンノアサハハヤイ)。
どういうことなのだろうか。
さっぱりわからん。わからんが、しかしエドゥアルトのユーベルコードに寄って、彼の体はドット絵に変換させられる。
……。
どういうこと?
「ババッ、バッバ、バッバ!」
なんか印を結んでいる。ニンジャか?
「そうとも言うかもしれんでござるが、レトロゲームめいた拙者だ! ドットピクチャゆえ、ぺらっぺらでござる!」
見事に二次元。
内蔵とか骨とかどうなってんの? 後なんか幼稚園児のクレヨンで描いた似顔絵みたいになってるけど。
「むふぅ。これこそがフリーSOZAIたる拙者のちから! ぺらっぺらでござる故に、どんな細い道であろうが、隙間であろうが、拙者の道なのでござるよ」
これならば機械兵士たちが絶対に通れない場所にだって、ぬるんって入り込めるのである。
居てしまえば、バグ技である。
世界間違ってない? 間違ってない? あ、そう……。
「は~楽ちんでござるよ! 隙間にぬるっと入って、ぬるっと出るを繰り返すだけでスニーキングミッションが楽ちん楽勝ばんばんざい! ヒュー! 拙者もしかして、RTA最速理論を構築しちゃったでござるか~!?」
ぴょいん。
なんか軽快なサウンドエフェクトが鳴る。
本当に一昔前の音。
「……」
エドゥアルトはそれを聞かなかったことにした。
そう、迂闊にジャンプするとなんか変なエフェクトが出るのである。あと音も。
これが8Bitの弊害ってやつでござろうか。
「ジャンプコマンド押さなければいいだけの話でござる。Bダッシュでござるよ!」
というかぁ、とエドゥアルトは思った。
この街に爆弾が仕掛けられているのだという。
どんだけ火薬盛ってるだろうか。軽率に見てみてぇなぁって思った。爆破するところ。派手に派手派手で、ド派手なんだろなぁ。
みてぇなぁって思ったが、エドゥアルトは己の猟兵としての本分を忘れないようにBボタン連打してダッシュダーッシュダッシュ! するのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
ロニ・グィー
アドリブ・連携・絡み歓迎!
チュートリアルは終わりってとこかな
じゃあボクもここからはスキルを使ってこう!
そうボクはスーパースパイな神さまだからね!
UC『神知』を発動!スキルツリーをあーしてこーして…
●キミは、何も、見なかった!
オブビリオンの彼女はまだしも機械兵士くんたちの目を欺くなんてのは簡単なものさ!
とばかりに[叡智の球]くんを中継ぎにして機械兵士くんたちや街中の監視装置を【ハッキング】!生身のアイボールセンサー持ちにも【催眠術】で働きかけて…
ハロハロー!ボクのこと見えてるー?と彼らの前で手を振ってみよう!
後は彼女に見つからないよう追いかけるだけ…
彼女は、それをするのにどこを選んだのかな?
言ってしまえば、これまでの花咲く広場での『機械仕掛けの歌姫マリア』の姿を捉えるのはチュートリアルであったということだろう。
少なくともロニ・グィー(神のバーバリアン・f19016)にはそう思えたのだ。
彼女の放つ気配は、警戒色濃く。
そして、不用意に近づきすぎれば確実に気取られてしまうことは言うまでもなかった。
「じゃあ、ここからはボクもスキルをつかってこう!」
神知(ゴッドノウズ)輝く瞳がユーベルコードの光を灯す。
「そう、ボクはスーパースパイな神様だからね!」
スキルツリーを弄り回す。
あれをこれして、どーして、そーなるの、となんだか歌うようにしながらロニは己の技能の全てを引っ掻き回し続ける。
『機械仕掛けの歌姫マリア』はたしかにオブリビオンであるし、警戒している。
それは猟兵である自分たちを警戒しているのではない。
特定の何か、というわけではなく、自身の任務を妨げれるであろうすべての可能性を警戒しているとも言えただろう。
「なら近づきすぎなければいいってことだけ。あとは機械兵士くんたちをどうにかすれば簡単なものさ」
それに、と有象無象たる機械兵士ならば自分がどうとでもできるという自負があった。
「球体くんは中継ぎにして街中の監視装置をハッキングしちゃおう」
さらに機械兵士たちの眼球に施されたセンサーをもハッキングし、ロニは彼等の前に姿を現す。
手を振って笑う。
「ハロハロー! ボクのこと見えてるー? 聞こえてるー?」
ロニは堂々と彼等の前で余裕綽々な態度を取って見せる。
だが、そんなロニを彼等は気にもとめない。
いや、見えていないかのようだった。
その様子にロニは深く頷く。うまく行ったみたいだ、とロニは納得して大手を振って街中を歩む。
確かに『機械仕掛けの歌姫マリア』の警戒は広い。
彼女が帯びた殲滅任務を達成するために最大限の力を発揮していることがわかる。ならば、あの花咲く広場での行動はなんだったのだろうか。
わからない。
けれど、ロニは彼女が何処に行こうとしているのかを理解する。
「なーるほどね。街の中央。あの電波塔か~」
でもあれ、見た感じ建設途中って感じがするよね、とロニは首を傾げる。
あれを利用するのかな?
それとも、必要だったのは電波塔という施設ではなく、ただ高さが必要だったのではないかと思うのだ。
街中に仕掛けられた爆弾。
これを一斉に起爆し、街を殲滅する。
「そのために必要なのは彼女の歌声によるコードってわけなんだね~」
破壊を齎す歌姫。
かつてはどうであったのかはわからないけれど、その結果がどうなるのかなんて言うまでもない。
なら、とロニは背中を追う。
あの陰鬱な背中を。
その背中の行く先が、どんな地獄なのかと――。
大成功
🔵🔵🔵
第3章 ボス戦
『機械仕掛けの歌姫マリア』
|
POW : アリア「我が血肉は怒りの炎に焼き裂かれ」
【胸に埋め込まれた拡声器】から【戦場全体に響き渡る歌声】を放ち、敵及び周辺地形を爆発炎上させる。寿命を削ると、威力と範囲を増加可能。
SPD : アリア「いざ行かん、怒りに震え身を任せ」
【自身の喉】から、戦場全体に「敵味方を識別する【荒ぶる歌声】」を放ち、ダメージと【混乱とバーサーク】の状態異常を与える。
WIZ : アリア「止まるまいぞ、鉄を纏う古強者よ」
自身の歌う「【アリア「止まるまいぞ、鉄を纏う古強者よ」】」を聞いた味方全ての負傷・疲労・状態異常を癒すが、回復量の5分の1を自身が受ける。
イラスト:SA糖
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
|
種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「仇死原・アンナ」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
猟兵たちは陰鬱な影を追う。
それは『機械仕掛けの歌姫マリア』の背負うものであり、鴉の獣人である彼女の翼でもあった。
彼女が向かったのは街の中央に在る建設途中の電波塔。
時は夕暮れ。
作業をしていたであろう人員は引き上げ、誰一人としていない。
そこに彼女は足を踏み入れる。その天頂にて己の歌声を響かせれば、街に仕掛けられた爆弾が一斉に起爆する。
彼女に必要だったのは、この施設の機能ではない。
この電波塔の高さが必要だったのだ。己の歌声を介した起爆コード『A』ubadeを歌えば、街は確実に破壊される。
電波塔の天頂、鉄骨と足場が組み上げられた場所で彼女はヴェールに覆われた奥の瞳でもって、街を見下ろす。
「――……」
歌わなければならない。
嘗ては人を癒やすために歌った。
戦いに疲れた人の心を癒やすために。
死に行くしか無い運命にわずかでも安らぎを齎すために。
歌う。
歌う。歌う。歌う。歌う。
なのに、眼下の街に住まう獣人たちを、花々を彼女は敵として見れなかった。歌えなかった。歌うことを拒否していたとも取れたし、機能不全に陥っていたとも取れただろう。
けれど、彼女は知る。
己が最後の歌を歌おうとした瞬間、迫るいくつかの影を。
そして、それが己の存在理由であることも知る。
猟兵。
己が街を殲滅することを止めるために迫る戦士。花が散るのは忍びない。生命が散るのもまた悲しみに沈むことだ。
だが、戦うことは別である。
己に理由ができた。『理由になっていない』戦意が今此処に漲る。
滅ぼす。猟兵は滅ぼす。滅ぼさなければならないという意志だけが、彼女にとっての救いであった。
「『戦いに際しては心に平和を』――」
歌う。歌うことは戦うこと。ならば、そのヴェールが風に救われるようにして、その瞳を示す。
その瞳に満ちる光は闇を切り裂く、造られた虹の輝き――。
村崎・ゆかり
また纏う空気が変わったわね。その方がやりやすくてありがたいわ。
さあ、あたしたちの明白な関係を始めましょう。
「結界術」「全力魔法」酸の「属性攻撃」「範囲攻撃」で紅水陣。
『歌姫マリア』だけじゃなく、ゾルダートグラードが建設中の電波塔にも損傷を与えて完成を遅らせてやる。
この狭い電波塔の上に、逃げ場はないわよ。
あたしも「オーラ防御」「環境耐性」「霊的防護」で紅水陣に突入して、薙刀で「なぎ払い」「串刺し」狙い。
鴉の声は嫌いじゃないわ。だから、その歌が終わる前に決着を付ける。
あなたに使命があるように、あたしたちにも使命はあるのよ。この街を守るっていうね。
互いに退けない戦いなら、最後まで踊りましょう!
世界に確かなことが唯一もないのだとしても、猟兵には確かなものが唯一だけ存在している。
それは世界のは滅を齎す存在。
オブリビオンを打倒するという使命である。
滅ぼさなければならない。さもなければ、滅ぼされてしまうものであるから。
故に村崎・ゆかり(“紫蘭”/黒鴉遣い・f01658)は、機械仕掛けの歌姫マリア』が纏う空気が変貌したことを歓迎した。
陰鬱な影纏う姿は、何処か憐憫を感じさせるものであった。
「さあ、あたしたちの明白な関係を始めましょう」
滅ぼし、滅ぼされる。
その単一の関係性しか猟兵とオブリビオンは持ち合わせていない。
それを悲しむべきか、喜ぶべきかは、その命題を抱えた猟兵のみが答えを出すことができるものであり、また千差万別である。
確かな事柄の中にさえ、正しさと過ちが内在している。
「『戦いに際しては心に平和を』――そして」
絶叫が迸る。
それは『機械仕掛けの歌姫マリア』の胸部に備えられた拡声器。放たれる絶叫は衝撃波となって戦場を駆け抜ける。
その一撃をゆかりは結界で受け止める。
この戦場、建設途中の電波塔は、完成すれば『ゾルダートグラード』に利するところになるだろう。ならば、とゆかりは己の瞳をユーベルコードに輝かせる。
「古の絶陣の一を、我ここに呼び覚まさん。魂魄までも溶かし尽くす赤き世界よ、我が呼びかけに応え、世界を真紅に塗り替えよ。疾っ!」
戦場に降り注ぐは真っ赤な血のような、全てを蝕む強酸性の雨。
あらゆるものを腐食させる赤い靄が広がる中、『機械仕掛けの歌姫マリア』は己の身に降り注ぐそれらを全て歌声で持って吹き飛ばす。
「――!」
「歌声で吹き飛ばすか、けれど、この狭い電波塔の上、逃げ場はないわよ!」
ゆかりの手にした薙刀の一閃が『機械仕掛けの歌姫マリア』を襲う。
衝撃波の如き絶叫と薙刀の刃が撃ち合う。
凄まじい威力に薙刀を持つ手が震える。
「鴉の声は嫌いじゃないわ」
ゆかりは目の前にて輝く人工の虹の如き瞳を見据える。
改造され、獣人であることを忘れたかのような、その力を前にしても彼女はそんな事を言う。
「あなたが歌うは、終わりの歌。でも、その歌がこの街を破壊してしまう前に決着をつける。あなたに使命があるように」
振るう薙刀の一閃が衝撃波を切り裂く。
歌声が途切れる。
踏み込む最中にゆかりは見ただろう。
その輝きが曇るのを。
歌声が響かぬことに、ではない。己が歌うことで何が怒るのかを理解しているがゆえの表情であった。
「あたしたちにも使命はあるのよ。この街を守るっていうね。だから、互いに退けない」
「『平和』を。『平和』を齎すためには」
「戦いが必要だっていうんでしょう。なら、最後まで踊りましょう!」
腐敗する鉄骨を蹴って、ゆかりは薙刀の一閃を叩き込む。
それは閃光のように赤い靄を切り裂き、破壊齎す夕暮れの歌をも切り裂きながら『機械仕掛けの歌姫マリア』の体を貫く。
機械部品が撒き散らされる。
そこに生身の部分は何一つ無く。
嘗ては歌声で誰かを癒やしていたであろう、喉さえも機械部品に置き換えられている。
何一つ自身のものはなく。
何一つ己の心の拠り所もなく。
けれど、歌うということだけが彼女の意義であることを縛り付けられた糸をゆかりは薙刀の一閃でもって切り払うのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
イリスフィーナ・シェフィールド
ふむ、他の猟兵に気づいたかやる気満々ですわね。
ですが透明なままのわたくしには気づいていないでしょう。
折角の優位を捨てることもないですしこのまま不意打ちとまいりましょう。
卑怯千万ですが咎めるような方も回りにはいらっしゃいませんし。
胸元の拡声器っぽいものに全力で一撃叩き込みますわ。
爆発はカモフラージュだけでは耐えられないかもですからオーラ防御も併用します。
煙は通さないので巻かれることもないので気にしないで良いでしょう。
火も熱を奪って無力化できるので同じですわね。
戦場に赤い血のような雨が降り注ぐ。
鉄骨を腐食させていく赤い靄は亮平のユーベルコードだろうか。
だが、ブリザード・カモフラージュによって有害なものは阻む氷で身を覆い、己の姿を隠したイリスフィーナ・シェフィールド(女神様の巫女兼スーパーヒロイン・f39772)は、建設途中の電波塔を見上げ、小さく呟く。
「ふむ、他の猟兵に気がついたのかやる気満々ですわね」
彼女は透明化を解除しない。
未だ己の姿は『機械仕掛けの歌姫マリア』には察知されていないだろう。
ならば、このまま彼女は不意打ちを仕掛けることに決めた。
わざわざ優位を捨てることはない。
敵は打倒しなければならない。
あの『機械仕掛けの歌姫マリア』の歌声が街中に仕掛けられた爆弾の起爆コードになっているというのならば、その歌を響かせるわけにはいかない。
「卑怯千万と咎められるかもしれませんが」
だが、それでも街の破壊を行われるよりは良い。
卑怯であるとそしられるのと、街が破壊されること。
それらを天秤にかけた時、イリスフィーナは迷うべくもなかった。如何に己がヒーローを自称するものだとしても、生命に変えられるものなどないからだ。
故に瓦解していく足場を蹴ってイリスフィーナは天頂にある『機械仕掛けの歌姫マリア』へと飛ぶ。
己の身を守る氷は光を反射しない。
そして、この赤い靄もまた通り抜けることはない。氷纏う拳を握りしめる。
「覆え氷雪」
己の拳からは熱を発しない。
しかし、己の胸に滾るものは熱を発し続けている。
護られねばならない。
それ故に自分はヒーローを名乗っている。
「――……!」
「『戦いに際しては心に平和を』……」
「その言葉は! 戦う者だけにふさわしいもの。歌うだけの貴女には!」
振るう拳の一撃が『機械仕掛けの歌姫マリア』の胸元の拡声器じみたパーツへと叩きつけられる。
同時に炸裂するは、凄まじい爆発。
『機械仕掛けの歌姫マリア』は己の胸に拳が叩き込まれた瞬間、絶叫じみた歌を響かせる。
それは起爆コードではない。
猟兵を、己の敵を打倒するために放たれる歌。
吹き荒れる爆発の中にイリスフィーナは居た。爆発は確かに凄まじく、敵を吹き飛ばすには十分な威力を持っていたはずだ。
だが、彼女は健在だった。
それどころか無傷だった。
何故、と問うことをしない。それは『機械仕掛けの歌姫マリア』にとって無意味なことであったからだ。
「その生命を」
歌う。
歌う。歌い続ける。炸裂する爆発がイリスフィーナを襲う。
だが、彼女の体を覆う氷は熱を奪い続ける。熱波は彼女には届かない。そして、再びイリスフィーナは、その瞳をユーベルコードに輝かせながら拳を握りしめる。
「生命を見るというのならば、あなたの歌声は!」
こんなところで響かせるものではないだろうに、と彼女は振り抜いた拳で持って硬い機械仕掛けの肉体、その躯体を打ち据える。
拳に走る痛みは、悲しみの音色。
体に走り抜ける音は、いつだって戦火に消えゆくものであった。イリスフィーナは打ち据えた躯体が電波塔の天頂をひしゃげさせ、『機械仕掛けの歌姫マリア』が土煙の向こうできしんだ音を立てるのを聞くのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
雨飾・樒
抵抗するなら撃つ、手加減しない
起爆を防ぐためには高い所に陣取らせないこと、歌わせないこと
機械化した獣人が相手でも"眠り薬の魔弾"は使える
まず狙うのは頭、効けばそれだけで止まってくれるかもしれない
狙い難かったり効き目が薄いなら、手足や翼を撃って動きを鈍らせる
動きが速くて正面から撃っても避けられるなら、鉄骨や足場の間を素早く駆け抜けて回り込み、相手の側面や背面から狙ってみる
喉や胸を撃てば機械化された身体でも歌えなくなるかも、それでも止まらないなら何発でも撃ち込んでやる
絶対に逃がさない、反撃の隙も与えない、動かなくなるまで撃ち続ける
戦闘になって初めて、マリアを間近で見ることになるけど
本当に意外、こんなに綺麗な瞳だったんだ
歪んだ鉄骨。
軋みを上げる建設途中の電波塔。
そこが戦場だった。『機械仕掛けの歌姫マリア』が歌うは、殲滅のための歌。その歌こそが、この街に仕掛けられた無数の爆弾の起爆コードだった。
しかし、未だその歌は歌われていない。
なぜなら、猟兵がいるからだ。
たとえ、ここが超大国『ゾルダートグラード』に支配された街であったとしても、ここに生きる人々は獣人達だ。
機械兵士に改造されるまでの猶予、その監獄でしかないのだとしても。
それでも今は生きている。
ならば、殺し殲すことなどさせはしないと雨飾・樒(Dormouse・f41764)は戦場たる電波塔へと駆け上がっていく。
「起爆を防ぐ」
そのために己がしなければならない。
何を、と問われたのならば戦うことを、と彼女は応えるだろう。
『機械仕掛けの歌姫マリア』は起爆コードたる歌を歌うのを躊躇っているようだった。そこに自分たちが付け込む隙がある。
起爆を躊躇っているのならば『機械仕掛けの歌姫マリア』を高い場所には陣取らせない。歌わせない。
己の手にした六式拳銃丙型に装填された眠り薬の魔弾(ヒプノティク)を樒は確認する。
狙うのならば、頭。
たとえ、機械化した獣人であったとしても、彼女の魔弾は睡魔を持って眠らせるだろう。いや、もしも効かなかったのだとしても、いくらでも打ち込むつもりだった。
「――……『戦いに際しては心に平和を』」
「何度も呟いている。その言葉に」
意味はあるのかと問う代わりに樒は引き金を引く。
放たれたペールブルーの魔力の弾丸。
それは『機械仕掛けの歌姫マリア』の体へと叩き込まれ、その躯体を揺らがせる。しかし、浅い。
眠りを強制的に打ち払うようにして『機械仕掛けの歌姫マリア』が歌う。
己を鼓舞するように歌う声は絶叫めいていた。
「――……! 開放しなければ。『平和』のためには争いが必要なのだから。もう十分に争いは与えられたはずだ。なら、『平和』が訪れなければならない」
『機械仕掛けの歌姫マリア』が歌う。
戦いの後に平和はやってくる。平和の後に争いがやってくる。
それはいわば刹那滅めいた思考であったことだろう。どちらも内在している状態が世界であるというのならば、表裏一体であるというように彼女はユーベルコードの歌声でもって、睡魔を振り払いながら樒に迫る。
放たれる弾丸が次々と『機械仕掛けの歌姫マリア』の腕や翼を撃つ。
動きが鈍っている。
だというのに、それでもなお動く。
歌う。
その歌声は衝撃波となって樒を打ち据えるだろう。鉄骨に打ち据えられながらも樒は走る。
戦いになって初めて彼女は『機械仕掛けの歌姫マリア』の顔を見る。
ヴェールに覆われた顔。
その先にある虹色の輝きを放つ瞳。
機械化された肉体。
その体は、何処まで行ってもオブリビオンのものだろう。けれど、『平和』を求めている。
きしむ体を押して樒は走る。鉄骨を蹴って、迫る衝撃波を躱しながら宙を舞う。
黄昏に沈む空に彼女の髪が揺れる。
風が吹いている。電波塔の上は、風が強い。引き金を引く度に叩き込まれる弾丸を受けながら『機械仕掛けの歌姫マリア』は歌う。
それは起爆コードではない。
猟兵を倒すための衝撃波としての歌声だった。
そこに救いを見出すかのような瞳。
それを樒は綺麗だと思った。敵の瞳ながら、しかし、敵を得たがゆえに起爆コードを歌うことを免れているかのような、そんな瞳を見やる。
「逃さない」
それは樒にとって、ただの事実でしかなかったかもしれない。
起爆コードを歌わせない。
反撃なんてさせない。
動かなくなるまで弾丸を打ち込むまでだというように彼女は引き金を引き続ける。
崩れた鉄骨を足場にして樒は衝撃波を受け止めながら手にした拳銃の銃口を向ける。
押しのける。
「その歌は響かせない」
戦火に咲く花の歌は。
造られた虹の輝きを見据え、樒は引き金を引く。
弾丸が走る。
ペールブルーの弾丸は、一直線に『機械仕掛けの歌姫マリア』の頭部の茨の輪を打ち抜き、引きちぎる。
ヴェールが引き裂かれ、その瞳を見据える。
「沈め、静寂の奥底に」
ユーベルコードの煌めきが、電波塔の天頂に走る。
それは確かに『機械仕掛けの歌姫マリア』の造られた虹の輝きをこそ貫いた――。
大成功
🔵🔵🔵
ユーリ・イグナーチェフ
アドリブ/連携可
情報収集で猟兵の皆様の話を集めた結果、マリアはこの電波塔に向かっていると踏んだので先回りしてアンブッシュを仕掛けることにしました。
ディスクガンにエネルギー充填を行い、暗視+集中力で初撃を確実に当てに行きます。
その後UCを発動。
「視えるか、この姿が」
金縛りで行動を封じ、ポルターガイストで周囲の瓦礫を飛ばして攻撃。あとディスクガンも撃ちます。
「君の歌声は私が覚えていよう。だから今は――」
ディスクガンから一発が飛ぶ。
『機械仕掛けの歌姫マリア』が目指したのは街の中央に在る建設途中の電波塔だった。
その頂は今や戦場となっている。
猟兵のユーベルコードと彼女の歌声がぶつかっている。
戦いはいつだって、傍らにあるものである。
いつだってそうだ。
吹きすさぶ風は戦火と同じように花を散らす。
平和という名のかけがえのないものでさえ、当たり前のように吹き飛ばしていく。
それを厭うからこそ『機械仕掛けの歌姫マリア』は街に仕掛けられた殲滅任務のための爆弾を起爆することを厭うのかもしれない。
かもしれない、と思ったのはユーリ・イグナーチェフ(副官兼マネージャー兼プロデューサー・f41527)が他の猟兵たちが集めた情報を集約した結果であったからだ。
手にしたディスクガンにエネルギーが充電されていく。
己が狙うのはアンブッシュ……つまりは不意打ちだった。
歌わせるわけにはいかない。
たとえ、厭うのだとしても、それが任務であるというのならば、それをなそうとするのが兵士であるからだ。
「彼女が兵士であるとは思えないが」
しかし、改造された機械兵士でもある。
ならば、望む望まざるとて彼女は歌わされてしまうだろう。
放たれるレーザーの一撃が『機械仕掛けの歌姫マリア』の背を撃つ。
貫いた一撃は、電波塔の頂上で閃光となって走る。けれど、よろめいただけだった。彼女の歌う歌は、彼女自身を倒れさせない。
踏みとどまるようにして振り返った彼女の造られた虹色の輝きをユーリは見ただろう。
「『戦いに際しては心に平和を』――」
響く歌声。
それは衝撃波となってユーリを襲う。
打ちのめされる体。きしむ体。
けれど、ユーリは止まらなかった。
己の存在は未知の存在。己を知らぬというのならば、『機械仕掛けの歌姫マリア』は、その体を金縛りによって縛り付けられる。
これこそが己のユーベルコード。
輝くユーベルコードの輝きは、周囲に波及していく。
未知なるということは見えないということ。軋みあげる音が響く。それは『機械仕掛けの歌姫マリア』が己の身を縛る拘束を振りほどかんとしている音だった。
なんたる力であろうか。
骨格はフレームに。されど、その鋼鉄さえも捻じ曲げて彼女は己に迫ろうとしている。
「視えるか、この姿が」
残霊残穢たるポルターガイストが周囲で破壊された鉄骨を浮かび上がらせる。
その鉄骨は槍の穂先にようにして『機械仕掛けの歌姫マリア』の体を貫く。
血潮の代わりに噴出するはオイル。
すでに血の一滴すら彼女の中にはない。
正しく機械仕掛け。機械改造された獣人でしかない。
ディスクガンから放たれた光線の一撃がオイルすら蒸発させていく。
「君の歌声は私が覚えていよう。だから今は――」
今は。
何を伝えるべきであろうか。
歌うことのできない歌姫に。望まぬ歌を歌わされようとしている彼女に何を伝えるべきか。
ユーリは放つ。
答えの代わりに光条の一撃を――。
大成功
🔵🔵🔵
ルクス・アルブス
【ステルク】
『戦いに際しては心に平和を』?
そして、歌うことは戦うこと……なるほど。
これは、演奏バトルってことですね!(きらりん
わたしたちの演奏で、相手の歌を打ち消せばいいってことですよね! ね!
ステラさん、どうしましょう♪
相手から演奏バトルを挑まれちゃいましたよ♪♪
これはもう受けざるを得ないですよー♪♪♪
さぁステラさん、セッションですよ。
わたしたちの本気の演奏をお届けしましょう!
ステラさん、よく聞いてください! いいですか、ここをコンサート会場とします!
ステラさんはさっきの歌をお願いしますね。
わたしは【音楽の可能性(そのに)】を引き出しますので!
いっきますよー!
これがわたしのアドリブ演奏だー!
ステラ・タタリクス
【ステルク】
花を愛でる行動、ようやく思い当たりました
この既視感は超人皇帝パッセンジャー
……!?エイル様の香りが強くなりました?!
え、まさか近くにエイル様が??
……ん?
パッセンジャー様とエイル様の香り??
これはあのノイン様絶許コンビでは……?
……あ、なるほど
マリア様
貴女様は……|過去でありながら過去より逃れようと《生きようと》しているのですね
ならば……って何をしていますかこの勇者は!(すぱーん!)
ええい、勘違いにも程があるのですがやってることが正解過ぎてもー!
いいでしょう
【アウルム・ラエティティア】
せめてこの歌声で魅了してさしあげます
生命はこんなにも輝かしいのだと
貴女様の想い、未来へ届けましょう
歌声は響かない。
『機械仕掛けの歌姫マリア』にとって、歌えばそれでおしまいであったはずだ。
起爆コードに使われる彼女の歌声。
それがこの電波塔の頂上から街に放たれれば、それだけで街のあちこちに仕掛けられた爆弾は起爆し、獣人の街は破壊に呑まれるだろう。
そうするべきだったのだ。
すぐさまにでも。
しかし、彼女はそれをしなかった。
待っていたようにも思えた。己が歌うよりも優先されるべき存在が現れることを。
オブリビオンにとって猟兵とは滅ぼさなければならない存在である。
己の存在を許さぬからだ。
ならば、それはあらゆる事柄に優先されるべき本能とも言えるものだっただろう。
故に、『機械仕掛けの歌姫マリア』のヴェールに隠されていた瞳がきらめく。造られた虹の輝き。
その虹彩放つ光と共に狂えるような絶叫めいた歌声が響き渡る。
「『戦いに際しては心に平和を』――!」
高らかに歌う。
その歌声は、ルクス・アルブス(『魔女』に憧れる『出禁勇者(光属性)』・f32689)とステラ・タタリクス(紫苑・f33899)の体を電波塔の頂上から吹き飛ばすほどの勢いであった。
ステラはルクスの手を掴んで踏ん張る。
「花を愛でる行動、ようやく思い当たりました。この既視感は超人皇帝『パッセンジャー』!」
ステラは花を見つめる『機械仕掛けの歌姫マリア』に既視感を覚えていた。
そして、己が感知する存在の香りも。
鼻が動く。
匂いが濃ゆくなっているような気が、する。いや、違うとも思う。これは己の求める主人のものではない。混ざっている。
何に、とはわからない。
けれど、一つだけはっきりとしていることがある。
ステラは叫ぶようにして『機械仕掛けの歌姫マリア』の放つ絶叫めいた歌声の中告げる。
「マリア様、貴女様は……|過去でありながら過去より逃れようと《生きよう》としているのですね」
歌えばそれで任務は終わりになるはずなのに歌わず。
花を見ては足を止め。
それ以外に興味を示さない。
そして、何より。
己達がこの電波塔にたどり着くまでこらえていたかのような衝動。破壊すること。『平和』を求めるが故に、彼女は踏みとどまっていたようにステラには思えたのだ。
故に、衝動を上回るオブリビオンとしての本能の対象たる猟兵を、電波塔にて待っていたのだろう。
「ならば……」
「『戦いに際しては心に平和を』? そして歌うことは戦うこと……なるほど。これは演奏バトルってことですね!」
きらりとルクスの瞳がユーベルコードに輝く。
いける、と彼女はおもったのかもしれない。
何が、というと。まあ、大手を振って演奏できるという状況に、である。
「わたしたちの演奏で、相手の歌を打ち消せばいいってことですよね! ね!」
ルクスはご機嫌だった。
長く猟兵をやっているが、相手から演奏バトルを仕掛けられたことなんて初めてではないだろうか。いや、初めてでないかもしれないが、なんとも機会を得られぬことであったのは間違いないだろう。
故にルクスはうっきうきであった。
「これはもう受けざるを得ないですよー♪♪♪」
これみよがしに音符記号が炸裂している。
「さあ、ステラさん、セッションですよ! わたしたちの本気の演奏をお届けしましょ――」
スリッパがルクスの後頭部に炸裂する。
一応、ちゃんとルクスを電波塔の上に立たせた上でこれである。
優しいんだか優しくないんだかわからんが、とにかくステラはルクスの後頭部を叩いた。
「何を行っていますか、この勇者は。ですが、勘違いであってもやってることが正解すぎてもー! ってなるんですがもー!!」
「え、えぇ……正解ならよくないですか? なんでわたし今叩かれたんですか……?」
「理解できても納得できないということがございましょう! 今まさに私はそれです!」
「は、はぁ……でも、ステラさん、よく聞いてください! いいですか、ここをコンサート会場とします!」
そんなキャンプ地にします、みたいな事言われても、とステラは思った。
きらめくユーベルコードの瞳。
「音楽の可能性・そのに(オンガクノカノウセイソノニ)! 音楽は可能性に満ちています! それこそ無限に! ステラさんの歌にだって!」
やってることだけがまともである。
言っていることはメチャクチャなのに。
それなのに、とステラは思った。ルクスの行動は誠に勇者であったことだろう。
演奏していること意外は!
響く不協和音。
それは『機械仕掛けの歌姫マリア』の放つ歌声の衝撃波とルクスの演奏が激突しているからだ。
その最中にステラは立たされる。
「ええい! いいでしょう! せめてこの歌声で知らしめましょう! 生命はこんなにも輝かしいのだと! 貴女様の想い、未来経届けましょう」
「いっきますよー! ここからがわたしのアドリブ演奏だー!」
「余計なことしない!」
そんな不協和音は束ねられていく。
音は音。
響かず、合わさらず。
されど、音は世界に満ちていく。それを示すように電波塔の頂上では音が相殺され続けるのだった――。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
エドゥアルト・ルーデル
んもーここまでお膳立てしといて爆破しないなんて片手落ちでござるよね
じゃあやるっきゃないじゃん拙者が爆破を!
選べよ
今ここで拙者と街を爆破するか
貴様が死ぬか
いいんでござるよ拙者は街が汚い花火になったってよォ
ブッブー時間切れでござる!発煙手榴弾をそぉい!戦場の視界を奪ったら音もなく背後に近づいてしまえばよろしいでござる
そして背後から【スリ渡し】にて相手の懐にヤバイ「手榴弾」をIN!チェーホフの銃でござる、一度爆弾を出したなら爆発させねばならないッ!
マリア氏が起爆できねぇと言うのなら自らが爆発してもらうしかあるまい!爆発で心をまっすぐにして来るのですねッ!
いやあ爆破って本当に良い物ですねッ!
街中に仕掛けられた爆弾。
それを起爆さえすれば、この街は瓦礫の山へと変わる。どうしようもないほどの破壊がもたらされる。そのはずだった。
けれど、『機械仕掛けの歌姫マリア』は歌わない。
歌うことをしなかった。
起爆コードは彼女の歌声のフレーズ。けれど、そのフレーズは響かず。
「『戦いに際しては心に平和を』――」
響くは猟兵に対する攻勢の歌声。
衝撃波となった歌声が電波塔の頂上にて響き渡る。吹き荒れるような風は、刃となって対する猟兵たちの頬を切り裂くだろう。
けれど、それでも街に爆発は一つも起こっていない。
「んもーここまでお膳立てしといて爆破しないなんて片手落ちでござるよね」
エドゥアルト・ルーデル(黒髭・f10354)はなんともつまらない、と思った。
爆破を見たいとも思っていたのだ。
純然たる興味であろう。一体どれだけの爆薬を使えば、街一つをまるごと破壊できるのか。そういう興味である。
故にエドゥアルトは言う。
「じゃあやるっきゃないじゃん拙者が爆破を!」
そうはならんやろ。
「選べよ。今此処で拙者と街を爆破するか。貴様が死ぬか」
エドゥアルトは荒ぶ衝撃波の中を走る。
鉄骨が崩れながらも、建設途中の電波塔はたしかに戦場としての役割を果たしていた。
「――」
「いいんでござるよ拙者は。街が汚い花火になったってよォ」
言ってることは本当に三下の悪役である。
しかも、なんていうか、それは選択肢になっているのだろうかという支離滅裂さであった。
「ブッブー時間切れでござる!」
さらには人の話聞いちゃいねぇ。
手にした発煙手榴弾をソォイ! 電波塔の上は高所。風が吹き荒れているが、一時『機械仕掛けの歌姫マリア』の視界を奪うには十分な煙幕がたかれる。
その目くらましの煙の中をエドゥアルトは、ぬるりと『機械仕掛けの歌姫マリア』の背後に迫る。
本当にぬるっと現れている。ニンジャもびっくりだよ。
「そして、手榴弾をイン! そのポッケにシューッ!」
そう気がついた時には終わりである。
「マリア氏が起爆できねぇというのなら自らが爆発してもらうしかあるまい! 爆発で心をまっすぐにしてくるのですねッ!」
炸裂する手榴弾の爆発。
躯体の内側から炸裂する爆発に『機械仕掛けの歌姫マリア』は防ぐ手立てを持たない。
絶叫は爆風にかき消された。
その様をエドゥアルトは花火でも見るように電波塔の頂上から飛び降りながら、うんうんと頷く。
「いやあ爆破って本当に良いものですねッ!」
なんかしたり顔で言っているが、結構な高さからダイブしておるよね?
次の瞬間、ばふっと広がる落下傘。
ぬかりなどないのである。エドゥアルトは電波塔の上にさく大輪の爆破の花を見上げて笑うのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
ティルライト・ナハトギフト
ここが|決戦の地《ラストステージ》ね
愛を謳うには最高かもしれないけれど
あなたに歌わせるわけにはいかないの
結局、あなたのことは何もわからなかったけれど
不思議ね
こうやって敵対して、絶対に相容れないとわかっても
戦意は感じるのに、殺意も敵意も感じられない
あなたは何がしたいの?
任務じゃない……あなた自身の願望
最後に願ってもいいんじゃない?
それを砕くのは私の拳かもしれないけれど
その言葉くらいは持って行ってあげる
真正面からはちょっと分が悪いけど
多少のダメージは計算の内
ダッシュとステップで爆発を切り抜けることができたら……いける!
【ソニックブロウB】!!
狙うは胸の拡声器!
……綺麗な虹の瞬き
花みたいな輝きね
炸裂する爆発。
電波塔の頂上は爆発にまみれていた。広がる歌声。それはユーベルコードの歌声であり、街中に仕掛けられた爆弾を起爆させるものではなかった。
あくまで迫る猟兵という脅威を振り払うための歌声。
『機械仕掛けの歌姫マリア』が歌う度に爆発が吹きすさび、その熱波が猟兵を近づけさせぬと言わんばかりに生まれていく。
その光景を見上げ、ティルライト・ナハトギフト(ブルーゲイル/ゲッカビジン・f41944)は此処こそが|決戦の地《ラストステージ》にふさわしいと思った。
「愛を謳うには最高かもしれないけれど、あなたに歌わせるわけにはいかないの」
ティルライトは手にしたスノウチャクラムを振りかぶって投げ放つ。
その一撃は『機械仕掛けの歌姫マリア』が歌う歌と爆発に阻まれ、弾かれる。
凄まじい力だ。
自身の躯体、その性能の全てを猟兵を退けるために使っているとも取れるほどの絶叫めいた歌声。
そうすることで己の望みが叶うとでも言いたげな歌声にティルライトは眉根をひそめる。
「結局、あなたのことは何もわからなかったけれど……」
「『戦いに際しては心に平和を』――」
そればかりを歌う彼女を見上げる。
近づけさせないとばかりに炸裂する爆発を躱しながら、ティルライトは崩れた鉄骨を駆け上がっていく。
「不思議ね。こうやって敵対して、絶対に相容れないとわかっても、戦意を感じても、殺意も敵意も感じられない」
それは不思議なことだった。
ゲームの世界であったとしても、敵意や殺意みたいなものは透けて視えるような気がした。
けれど、目の前の存在から伝わるのは戦うという意志だけだった。
まるでそれだけのために彼女は力を全て注いでいるようにも思えたのだ。
「あなたは何がしたいの?」
その問いかけに応える声はなかった。
答えてしまえば、それが真になるというのならばそうしたかもしれない。
けれど、とティルライトは思うのだ。
任務でもない、自身の願望。それを願ってもいいのではないかと。
「どうせ最後なのだから。でも……」
ティルライトは拳を握りしめる。
その願望を砕くのは己の拳である。砕くことしかできなくて、叶えることもできない。
けれど、その言葉だけは未来に持っていくことができるかもしれない。
爆発の中を走りながら、ティルライトは駆け上がっていく。
熱波が肌を焼く。
ダメージのかわりに皮膚が爛れていく。けれど、それでも構わない。
「……いける! ソニックブロウB(ソニックブロウ・ビー)!!」
魔法に寄る身体強化。
それによって固められた拳の一撃。
振り抜かれる一撃は『機械仕掛けの歌姫マリア』の胸部、その拡声器たるパーツへと叩き込まれる。
吹き荒れる爆風を押しのけるティルライトの拳が生み出す風。
ヴェールが舞い上がり、その下に隠されていた瞳の色を彼女は見た。
「……綺麗な虹の瞬き。まるで」
花のような輝きだとティルライトは呟く。
それはきっと彼女と『機械仕掛けの歌姫マリア』の間にしか響かぬ言葉。
吹き荒れる拳に込められた魔法が開放され、その機械仕掛けの体躯は打ち据えられるのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
ナターリヤ・トゥポレフ
●WIZ
ここは…確かに電波塔なら歌声は起爆コード代わりの歌声は街全体に響き渡りますわね
ですが、建設途中だけあって足場が不安定だったり、補強しきてなくて私の身体と体重では壊れてしまいそうな箇所は多々あります
そして、相手は機械化されていても烏の獣人
てっぺんに佇む彼女の元まで辿り着けたとしても、その身軽さと羽ばたきで更に高く羽ばたかれては空を飛べない私にはライフルでしか対抗する術しかありません
であれば…フュンフ、ママの背中にしがみついているのよ?
『冬将軍の襲来』…この電波塔のみに留めて置きたいところですが、街中に仕掛けられた爆弾に対冷却システムが備わっていなければ、強烈なシベリアの冬将軍が起電力を喪ったり起爆装置を凍りつかせる筈
それに機械仕掛けの歌姫も例外ではなく、僅かなオイルも固着して動作不全に陥りましょう
それとフュンフ、誰かに「暖かいか?」と問われても「暖かい」と答えるのですよ?
そうすれば|霜の精《ジェド・マロース》が貴方を祝福して味方してくれます
「寒い」と答えれば…死あるのみです
見上げる先にあるのは電波塔。
建設途中であったとしても、高さを誇る場所。
確かに、とナターリヤ・トゥポレフ(母熊は強し・f40514)は理解した。ここならば、『機械仕掛けの歌姫マリア』の放つ起爆コードたる歌声は街全体に響き渡ることだろう。
そうすれば、彼女の任務は完了する。
わずかでもよかったのだ。
それだけの余裕があれば『機械仕掛けの歌姫マリア』は、任務を完遂することができた。けれど、彼女はそうしなかった。
歌わなかったのだ。
起爆コードたる歌声のワンフレーズすらも。
彼女の背に負った孤児の少年『フュンフ』もまた見上げていた。
「泣いている人がいるね」
その言葉にナターリヤは頷く。
確かに泣いているような歌声だった。響く歌声は全てが張り裂けんばかりの絶叫であった。迫る者全てを拒むかのような歌声。
それが『機械仕掛けの歌姫マリア』の放つユーベルコードであり、猟兵と戦うためだけに振るわれる力であった。
戦いの余波であろう。
電波塔の周囲に組まれた足場や鉄骨が瓦解しかけている。
補強しきれていなかったのだろうし、また戦いの衝撃で脆くなっている。ナターリヤは己の体躯のことを考え、戦いに意識を切り替える。
相手は機械化されていても鴉の獣人である。
わざわざこの天頂に陣取っているのは、彼女の歌声を響かせるだけではなく、その身軽さでもって任務を邪魔だてするものを翻弄するためもあったのだと理解したのだ。
天頂より更に高く飛ばれでもしたのならば。
「ママの背中にしっかりとしがみついているのよ?」
「うん、わかった……でも」
ナターリヤは『フュンフ』と名乗った幼子の姿を見る。
己の目がおかしくなければ、彼の体は揺らめいているようにも思えた。だが、次の瞬間には揺らめくこと無く彼の幼い体がそこにある。確かめるように触れるも、何も以上はない。
「でも?」
「あの人にあんまり痛いことしないであげてね」
その言葉にナターリヤは頷く。
「わかったわ。けれど、『フュンフ』、誰かに『暖かいか?』と問われても『暖かい』と応えるのですよ?」
「なぜ?」
「それはママと『フュンフ』、そしてあの天頂にいる人に|『霜の精』《ジェド・マロース》がいるから」
ナターリヤの瞳がユーベルコードに輝くのを『フュンフ』は見ただろう。
それがユーベルコードであると彼は理解しなかったかもしれないが、しかし、ナターリヤの言う言葉に頷く。
「『暖かい』とさえ答えていれば、きっとあなたを祝福して味方してくれます。けれど」
『寒い』と答えたのならば。
その先にあるのは死あるのみ。
ナターリヤは、冬将軍の襲来(ジェド・マロース)を持って『機械仕掛けの歌姫マリア』へと猛烈な吹雪と凍てつく寒さを迸らせる。
季節外れ、とも取れるような吹雪が彼女を中心にして吹き荒れる。
そう、彼女は電波塔のみならず、凄まじい寒波を街中に迸らせた。
それがユーベルコードの力。
彼女の狙いは、『機械仕掛けの歌姫マリア』だけではなく、街中に仕掛けられているであろう爆弾。
その爆弾に対冷却システムが備わっていなければ、この猛烈な寒波によって起電力を失うだろう。仮に『機械仕掛けの歌姫マリア』の気が代わって、起爆コードを歌うのだとしても、もはや彼女の歌声は破壊を齎すことはしない。
「『戦いに際しては心に平和を』、ですか」
頂上から降り注ぐ歌声のフレーズがナターリヤの耳に届く。
彼女の背に負った『フュンフ』にもまた届いたことだろう。
猛烈な寒さだ。
彼が凍えなければいいと思いながら、ナターリヤは彼を抱く。
抱きしめられた暖かさを彼は忘れないだろう。
凍えるような孤独も。
心折るような現実も。
全ては母の愛の前に溶けて消え、添え木となるのだ。
「暖かい?『フュンフ』」
「うん、暖かい」
「そう、それはよかった。ママも暖かいわ」
微笑む。
この猛烈なる吹雪と凍てつく寒さで頂上の『機械仕掛けの歌姫マリア』は、その躯体内部のオイルやフレームが軋みを上げていることだろう。
自分にできることは此処までだ。
抱きしめた少年の体は確かにそこに在る。でも、揺らぐ姿をみやり、ナターリヤは一層力強く彼を抱きしめ、『霜の精』の加護と共に戦いが終わることを祈るのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
ジョゼフィーヌ・メイラム
私は悲劇を望みません。その試みは阻止させていただきます。平和を想う心をお持ちのマリア様であれば、おわかりいただけますね?
簡易的な暗示話法による〈催眠術〉と拳銃の〈牽制攻撃〉にて、彼女を仕掛けの直上へ誘導いたしましょう。予定位置へ誘導したなら【UC:黒祁門】(WIZ)を使用でございます。ここへ昇る前に仕掛けた爆薬を起爆いたしましょう。計算通りであれば、彼女は2階層ほど下へ墜落する筈でございます。
その歌をご披露頂く訳にはいかないのです。もし、貴方様が目的を果たしらなら、背後に広がる街は、あの広場はもう元には戻りません。そんなこと、貴方様は望まれてはいないはずです。
(アドリブ連携等歓迎)
電波塔の上は戦場だった。
そして、瓦解した足場。崩れた鉄骨。打ち据えられたがゆえに生まれた陥没。さらに吹き荒れる吹雪。
そうした猟兵との戦いによって電波塔の上に未だ座す『機械仕掛けの歌姫マリア』は砕かれた胸部の拡声器をわずかに震わせる。
「『戦いに際しては心に平和を』――」
そのフレーズを壊れたように響かせ続けている。
肉体を、いや、躯体と成り果てた機械の体を修復しながら『機械仕掛けの歌姫マリア』は一歩を踏み出す。
悲劇めいたものが其処にはあった。
歌うことだけが彼女の心の慰めであったことだろう。戦火が荒ぶ世界にあって、歌うことで誰かが癒やされるのならばと歌い続け、そしてオブリビオンへと成り果てた躯体。
鴉の獣人であった頃の名残。
その翼がふるえているのをジョゼフィーヌ・メイラム(Ms.Bergamot・f40470)は見た。
「私は悲劇を望みません」
その言葉は確かに街の爆破を阻む宣言であった。
だが、同時にジョゼフィーヌが望むのは、望まざる行いに抗えぬ『機械仕掛けの歌姫マリア』の心の救済であった。
平和を。
思う心がそこにあるとジョゼフィーヌは感じていた。彼女はそれを持っている。
ならばこそ、己の短い言葉を彼女は理解するだろうと思ったのだ。
だが、悲しいことだが、相手はオブリビオンである。そして、自分は猟兵である。
本能でわかっている。
相対し、真っ向から見据えるだけでわかる。
あれは滅ぼさなければならない。そうでなければ、滅ぼされてしまう。わかっていることだ。
けれど、とジョゼフィーヌは思う。
『平和』を思うのは彼女だけではない。自分だってそうだ。『平和』になってほしい。争いに巻き込まれず、平穏の中、暖かな日差しの下でお茶を飲んでいてほしい。
時には談笑だってしたい。
笑いあいたい。
「それは叶わない」
歌う声が響く。
衝撃波となって荒ぶ方向めいた歌声。悲しみに満ちている。悲劇だ、これは。だから、ジョゼフィーヌの瞳がユーベルコードに輝く。
戦わなければならない。
己に対する暗示。
それと同時に放たれるは、己へと意識を引き付けさせる話術。『機械仕掛けの歌姫マリア』は己へと意識を向ける……いや、彼女自身も猟兵である己に意識を向けることを望んでいるのだ。
この街を破壊することよりも、猟兵を打倒するというオブリビオンの本能にこそ彼女は賭けているように思えた。
拳銃から放たれる弾丸は、まるでダンスの誘いの手のように。
「その歌をご披露頂くわけにはいかないのです」
ジョゼフィーヌにはわかっている。
花咲く広場で花を見つめ続けていた彼女。
何をするでもなく、ただ見つめ続けていた彼女をジョゼフィーヌは知っている。どんあにオブリビオンと猟兵とい間柄が己との間に横たわっているのだとしても。
そして、己のユーベルコード、作戦名:黒祁門(オペレーション・ブラックキーマン)が彼女の体を焼くのだとしても。
それでも、その歌は。
「ご理科いただけているのだと思います。貴方様が目的を果たしたなら、街は、あの広場はもう元には戻りません」
そんなこと、とジョゼフィーヌは息を吐き出すように呟く。
目の前に降り立つ『機械仕掛けの歌姫マリア』。
手をの差し伸べようとするような挙動。
互いに立場は違う。
だからこそ、ジョゼフィーヌはためらわなかった。彼女が求めたもの。彼女が願ったもの。
それを炎に飲み込ませぬためには。
「貴方様が望まれていないことは、わかっているのです」
だから、と予め設置されていたダイナマイトの一撃が『機械仕掛けの歌姫マリア』の体を包み込む。
そして、ジョゼフィーヌは見ただろう。
爆風に巻き上げられる彼女のヴェールの奥。
造られた虹の輝き。
その虹彩の色を。そして、その瞳に浮かぶ……ジョゼフィーヌは『微笑み』だと思った感情の色を――。
大成功
🔵🔵🔵
ロニ・グィー
アドリブ・連携・絡み歓迎!
どーしてそんなに歌いたいのー?
ここではボクは歌いたいなら歌わせてあげたい悪魔くんなボクといやいややっぱダメでしょーという天使くんなボクを戦わせなければいけない
でもよくよく考えたらボクの中には天使くんも悪魔くんもいないのでやっぱり好きなようにやろう!
●歌って
一回ドッカンッ!と爆発したような気もするけれど時間は巻き戻った
キミの歌声はボクにしか聞こえない街には響かない
だってボクが独り占めしたいから
そうしてUC『神論』発動条件を揃え彼女のUCを封印!
それでも彼女は抵抗も歌うこともやめないだろうしボクも見逃すわけにはいかないけれども
でもまー
それまで好きなだけ好きに歌えばいいよ
歌いたいのならば歌わせてあげればいいのにと思う。
どうしてそんなに歌いたいのかはわからないけれど。
それでも、とロニ・グィー(神のバーバリアン・f19016)は思ったのだ。
心のなかに悪魔と天使がいる。
歌わせればいーじゃんという悪魔。
いやいややっぱダメでしょ。爆破だよ、という天使。
「やっぱり好きなようにやるのが一番でしょ!」
ロニは元から己の心のなかに天使と悪魔はいないのだと頭を振る。
ちょっとした寸劇というやつである。そういう良心の呵責というものを自分なりに表現してみせただけにすぎない。
いや、再現というのが正しいのかも知れない。
人の子が抱く呵責。
それを知ってはいるが、しかし、己にはない。いわば真似事に過ぎないのだ。結局自分は好きなように生きるしかないのだ。
好きじゃないことをしなければならない、なんていう生き方はできようはずもない。
なぜなら自分は神性であるからだ。
それ以外の生き方や可能性というものを持っていない。
そういうものだということしかわからないのだ。それはともすれば『機械仕掛けの歌姫マリア』とも同じだったことだろう。
「いやー一回ドッカンって爆発したような気もするけれど、時間は巻き戻った」
ダイナマイトの爆発の最中、『機械仕掛けの歌姫マリア』は電波塔の頂上から数メートル落下していた。
その爆発の後、『機械仕掛けの歌姫マリア』の放つ歌声が響いたようであるが、ロニの瞳がユーベルコードに輝いている。
「キミの歌声はボクにしか聞こえない」
神論(ゴッドクィブル)。
それは子供屁理屈じみたものであったかもしれない。
なぜなら、己が『機械仕掛けの歌姫マリア』の歌声を独り占めにしたいからだ。そして、時間は巻き戻された。
放たれた歌声は、とたんに巻き戻される。
歌っても、歌っても、歌っていないことにされてしまう。
理不尽過ぎる世界改変。
これこそが自身のユーベルコードである。
「君は歌いたいんだろうね。けれど、その歌声が誰かを害することが嫌なんだ。だから、街を破壊することよりも、猟兵であるボクらを打倒することを優先している。望んでそうしている。誰かに強要されたわけでもなく」
自らの意思で。
オブリビオンと猟兵の間に横たわる絶対的な敵対関係を持って、街を破壊するという殲滅任務を上書きしているのだ
そういう意味ではロニはしてやられてるなぁと感じたが、しかしロニは笑う。
「ボクのユーベルコードの効果がある時間だけは好きに歌いなよ」
「『戦いに際しては心に平和を』――」
「そのフレーズしかないのかい?」
もっと、もっといろんな歌があっただろう、とロニは笑う。
好きなだけ好きに歌っていいんだと笑う。
歌は自由だ。
どんなに歌っても良い。
けれど、とロニは己だけに聞かせるのだというように、破壊齎す歌声たるユーベルコードを封じるのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
ミラ・オルトリア
マスタリング・アドリブ◎
――あなたの唄が平和を臨みを示すなら
私はその虹の輝きを守るためにマリア…
あなたの歌の本音を掬ってみせる
それが私の戦場の歌姫としての志しでもあるから
去り逝く命の願いも掬い集めて
私は歌う…歌い続ける
あなたの歌い紡ぐ想いをここで潰えさせはしない
私たちが戦いの果てに望む平和な未来に運んでみせる
黒い翼で…さながら青い鳥のように
歌いましょう
このひと時だけ
どうかわたしと共にデュエットを
夕暮れに満ちる世界へと
歌唱のオーラ防御を展開
彼女の唄を包みむ音の障壁
何人も傷つけさせない譜歌
音は反響しあなたの唄と重なる
音響弾と成りて彼女を翻弄
《虹彩想歌》
私は歌う
あなたの心に募る想いを洗い流す雨歌
或いはそれを照らす陽歌
この唄は虹色となりて
その歌を浄化する標となりますように
天かける虹の橋のように祈りを込めて
平和を願うあなたの|希望《デュナミス》は
わたしが引き受ける
安心して眠りについて
あなたを縛る滅びの命令も
祈り妨げる言葉もない
もう大丈夫だよ、マリア
あなたと同じ漆黒の翼を揺らして微笑みかけた
願いは祈りを呼び起こす。
祈りは願いに昇華する。
誰かのためにと願った祈りは、巡り回って因果となる。悪しき心が呼び出す因果だけが力を得るのではないことは言うまでもない。
ユーベルコードの煌めきが、幾度となく電波塔の頂上にて明滅した。
それは猟兵と『機械仕掛けの歌姫マリア』のユーベルコードが激突する光景であった。
「――あなたの歌が平和を望み示すなら。私はその虹の輝きを守るためにマリア……あなたの歌の本音を掬って見せる」
広げた掌は、ただの二つ。
遍く全てを掬い上げることなどできようはずもない。
けれど、ミラ・オルトリア(デュナミス・f39953)は『機械仕掛けの歌姫マリア』の前に己の翼を広げて降り立つ。
己が志。
胸に宿した想い。
生命とは去りゆくものである。どうしようもなく喪われていくものである。仕方のないことだと割り切ることができたのならば、どんなによかったことだろう。
けれど、生きていくということは、そういうことではないのだ。
たとえ、死にゆく定めを変えられず、死にゆくために生きるのだとしても。
それでも、ミラは生きている。
「私は歌う……歌い続ける」
「『戦いに際しては心に平和を』――」
機械仕掛けの歌声が響く。
破壊を齎す爆発が熱波となってミラを襲う。しかし、歌声が響き、歌と歌とがぶつかり合う。
いや、ぶつかり合っているのではない。
音は、音と共に遊ぶ。
跳ねるように、スキップを踏むように。そうしてミラは一歩を踏み出す。
「あなたの歌い紡ぐ想いを此処で潰えさせはしない。私達が戦いの果に望む平和な未来を運んで見せる」
いつだってそうだ。
『今』望んだことは、『今』此処には現れない。
いつだって望んだものは『未来』に訪れるのだ。たとえ、己が手にすることのできない未来であったとしても、いつかの誰かが願った想いが、必ずいつかの誰かのもとへと届く。
羽ばたく黒い翼は二対。
黄昏の光に触れて色を変える。
濃紺、群青。
その羽根は二人の翼を彩る。
「歌いましょう。この一時だけ、どうかわたしと共にデュエットを。夕暮れに満ちる世界へと」
ミラが手を差し伸べる。
歌が響き続けている。音の障壁。嘗ては誰かを癒やした歌。それを誰かを傷つけさせぬための歌声に変えるためには。
己が傷つくことも厭わぬ祈りを込めなければならない。
心が穿たれれば、血潮が溢れる。
とめどなく。それをミラは掬うというのだ。それこそが、虹彩想歌(アコンシェル・デュナミス)。
「あなたのこころに募る想いを洗い流す雨歌。或いは」
それを照らす陽歌。
雨の後に日が差し込むから虹が生まれる。
悲しみも喜びも、一過性であるというのならば、そんなにも悲しいことはない。表裏一体であり、常に波間のように遅い来るもの。
なら、とミラは微笑むのだ。
「私は心に闇を持つ。恐れる心を。闇を恐れよと叫ぶ声がある」
「知っているよ」
悲しみの涙は雨に。されど、歌は陽光に。
生まれる虹の架け橋の袂にミラは佇む。込めた祈りは、万感。
「されど恐れるな、と叫ぶ声もあって」
「だから、『平和』を願っているんだね。あなたの|希望《デュナミス》は、わたしが引き受ける」
過去の化身。
オブリビオン。
それが未来に行けぬことは知っている。『今』を生きる者だけが先に行くことができる。
知らしめることはできない。
けれど、示すことはできる。
きっと明るい未来があることを。一寸先は闇やる未来なではなく。誰もが笑ってくれる未来が在ることを信じることはできる。
「安心して眠りについて。あなたを縛る滅びの命令も、祈り妨げる言葉もない」
ユーベルコードの輝きが、歌となって『機械仕掛けの歌姫マリア』の身にある痛みと悲しみと苦しみ、そして何よりも。
絶望を照らす。
瞳が見開かれる。
たとえ、造られた虹の輝きであったとしても。
その瞳に映した花の美しさが真であったように。
「もう大丈夫だよ、マリア」
同じ翼がの色をゆらしながら、ミラは微笑んだ。
そうすることで、彼女は示したのだ。
「あなたの心に哀雨が降るなら、私が陽となり光となって――そして、虹となろう」
その虹の先を。
どんなに痛みと悲しみと苦しみ、そして絶望が暗闇に閉ざすのだとしても。
誰かのためになりますようにと願った心は、きっと誰かの未来を照らす虹色になるだろう。
それを示したのは、戦火に咲く花の歌――。
大成功
🔵🔵🔵