魔術学校爆散!? 空から急降下する魔王
「うむ、緊急連絡だ」
(自称)レイリス・ミィ・リヴァーレ・輝・スカーレット(厨二系姉キャラSTG狂・f03431)がいつもの如くゆったりと椅子に座って手を組んでいる。
「アルワーツ魔術学園が空から急降下する魔王に爆撃されて滅ぶ」
要素が、要素が多い……!
「整理しよう。まず現場はけものマキナのアルワーツ魔術学園。多くの生徒達が魔術系デモンズコードを学ぶ全寮制の学園だ。こんな所を爆撃されたらとんでもない被害が出るのは言うまでもない」
アルワーツに教師として行った猟兵も居る。当然看過は出来ない。
「で、問題はこの空から急降下する魔王だ。アルワーツ側も当然、何も出来ない訳では無い。そもそもアルワーツには高度な防御系魔術デモン障壁がある。だがまあ、知ってるかもしれないが……防御を貫通するユーベルコードが多いように、防御を貫通するデモンも多い」
特にケルベロスディバイド辺りか。あの世界、親を防御力に殺されたUCが多い印象。
「結果的には一発の爆弾で勝負が決まる。この爆弾を予定通りに投下されたら阻止は不可能と思ってくれていい。つまり、これを落とされないか外させれば一先ずは凌げるという訳だ」
魔術結界を一撃で貫通して爆散させるほどの爆弾。普通の物ではありえない。
「ならば当然、爆弾を落とす奴をどうにかすればいい訳だな。まあ、この爆弾を落とす奴が大問題なんだが……」
モニターにその爆弾を落とす奴を表示する……これは、一体何だろう? キャバリアのような戦闘機のような物体の後方に大量のブースターが増設されている。
「コレの正体はキャバリアだ。正確にはキャバリア専用の増加外装、強襲用超大型ブースター”ヴァンガード・オーバー・ドライブ”だ」
何その有害粒子まき散らしそうな奴。
「コジマ技術は使われて無い筈だ、多分。アサルトアーマーは使って来るけど、パルス由来の方だから汚染は大丈夫だ。まあそれはともかく、高レベルの猟兵でも追い付けない速度で飛んでくる」
猟兵、軽率にレベル×100km/hで飛ぶからマッハ2とかじゃ余裕で追いつけちゃうんだよなぁ。今の私のレベルで時速12300km/hだぞ。
「たぶん、マッハ20とか出てるんだろう。物理法則仕事しろ……とは、私からもあまり言えないが。ともかく、後ろから追い付くのは恐らく不可能だ」
ちなみに、マッハ20は24696km/hになる。
「なので、正面から迎撃する形が最善か。コイツのイカれた挙動はこの超音速のまま減速せずに急降下爆撃を仕掛けてくる所だ。つまり、マッハ20で真上から急降下してくる」
それは完全にイカれてる。
「この速度の急降下爆撃とか止められる筈がない。だからその前に対処だ。幸いと言うべきか、相手は一度アルワーツの上空を通過して上空でループ軌道を描いてから急降下に移行する。減速せず直角に落ちて来るとか言う無茶はしないし、細かい軌道変更は出来ないようだ」
出来ててたまるかそんな事レベルである。物理法則仕事した……してるかなぁ……?
「このループ軌道中が狙い目だな。とは言え相手はマッハ20。地上から何か撃っても当たらない。通り道ははっきり分かっているから通り道に何かを仕掛ける方が現実的じゃないかな」
空中に仕掛ける事が出来る何かがあれば、ではあるが。
「マッハ20で飛べるだけの構造体を持った相手である事は忘れてはならない。相手の防御力も相応に硬い。だが、代償に回避性能を捨てた装備だ。軌道を妨害してやれば少なくともアルワーツへの直撃は避けられる。出来れば爆弾を落とされない方がいいが、直撃を避けられればアルワーツ自体の魔術障壁で被害を抑える事は出来るだろう」
椅子に深く座って偉そうに手を組むレイリス。
「私は見えた事件を解説するだけ……この最初の攻撃をどうにかして防がなければ次は無い。頼むぞ」
そして、アルワーツ魔術学園と繋がる転送用のゲートを開く。
「では、往くがよい」
Chirs
ドーモ、Chirs(クリス)です。今回はマッハ20で飛んでくる何かを落としてもらいます。何かって何でしょうね? まあ、察しのいい方は見当付いてるかもしれませんが。
連作シナリオになる予定です。なんか途中で完全に止められたらそのまま戦闘になるかもしれません。
今回もいつも通りアドリブも連携もマシマシになります。ある程度の人数が集まってから書き始めます。皆さんに超音速の危機一発を提供出来れば良いなと思う所存でございます。
第1章 日常
『プレイング』
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POW : 肉体や気合で挑戦できる行動
SPD : 速さや技量で挑戦できる行動
WIZ : 魔力や賢さで挑戦できる行動
イラスト:仁吉
👑11
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種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
桃枝・重吾
アドリブ歓迎
【梵天丸】|空戦形態搭乗《可変戦闘機風》
■日常
ガジガジ白菜と白菜のミルフィーユ鍋はやはり正義!
生徒達も喜んでくれてだけど、
次はマキナの子達も楽しめる様にしたいね。
うーん…
電脳系はまだまだ|土地《ストレージ》が足りてないし。
ガルベリー資格が無い生徒でも収穫体験位なら…
■スイッチ
情報共有完了。
うん、こんなこともあろうかと梵ちゃんの仮免試験手続きもしといたし、
星降丸には地上から予測進路の観測お願いして、
今回は梵ちゃんと行くよ。
『マスターようやく俺の巨神…』
人型はまだ許可降りてないから空戦形態でね。
先ずは上で相手にあわせてから(UC使用)アブホランスウィールで重力ネットで安全域に降ろそうか
●それはただの白菜鍋ではない
「ガジガジ白菜と白菜のミルフィーユ鍋はやはり正義!」
桃枝・重吾(|スペースデコトラ使いXL《スペース食べ歩き道中》・f14213)は自ら開発したそれを味わいながら食べる。
ガジガジ白菜と白菜ってそれは白菜だけなのでは? と、思うだろう。いや、私も当初はそう思っていた。ガジガジ白菜は敵に向かって飛び掛かって噛り付く野菜である。植物が動くのはまだいい。だが、猛犬のような勢いで敵にだけ襲い掛かると言う点が色々とおかしい。
まあ、一応植物なので光合成は出来るはずである。しかし、あの動きをする為には本来植物には不要なはずの筋肉が無ければ説明が付かず、筋肉があるなら光合成ではエネルギーが足りない。ごく短時間で標的を無力化して土壌の栄養に変える、そう言う恐ろしい生態を持つ光合成できる生物と考えた方が辻褄が合う。
何が言いたいかと言うと、ガジガジ白菜とは動物であり肉である。肉と白菜なのでミルフィーユ鍋でも何も問題は無い。ちなみに、食感は野菜だけど味はちょっと肉っぽい旨味はある。
「生徒達も喜んでくれてだけど、次はマキナの子達も楽しめる様にしたいね」
それでも大分白菜寄りだし、パンをパンで挟むような物なので誰も思い付かなかったし、調理法も分からなかったのでだろう。マキナも一部味を理解する機能を持っていたり、生体パーツが食事を必要とする事もあったりはするが極少数派だ。
「電脳系はまだまだ|土地《ストレージ》が足りてないし」
一度完全に死滅した通信網を復旧しようとしているのだ。そう簡単に出来てもらっては困る。
「ガルベリー資格が無い生徒でも収穫体験位なら……」
どうもガジガジ白菜が敵対識別をするのはこの収穫時らしく、これを失敗するといきなり襲われるので大変危険な収穫作業である。
●超音速戦闘
「情報共有完了」
標的は視認するまで待つ時間すらない。この作戦に正確な情報共有は必須だ。
「うん、こんなこともあろうかと梵ちゃんの仮免試験手続きもしといたし、星降丸には地上から予測進路の観測お願いして、今回は梵ちゃんと行くよ」
『マスターようやく俺の巨神』
「人型はまだ許可降りてないから空戦形態でね」
『えぇぇ……』
仮免だからダメなんだろうか。
地上を先行していた星降丸から正確な軌道予測情報が来る。空戦形態の梵天丸に乗り込み、離陸。可変戦闘機であるそれは、ブースター部分が可動する所謂ガウォーク形態のような形状になれるので垂直離着陸機のような動きも可能だ。本来であればその最高速度は純粋な戦闘機には劣る物ではある。
本来であれば、だが。
十分な高さまで離陸した梵天丸は一気に音速の20倍、即ちマッハ20へと加速し標的に迫った。
【|ゴールデンライセンス・ホルダー《アストロマルチドライバーノホンリョウ》】それは最も接近した対象の機体性能と出力を同値にするユーベルコードだ。猟兵であっても容易く出す事は出来ないマッハ20の速度を出す事が出来る数少ない手段の一つと言えるだろう。
本来なら徐々に相手を上回る事が出来るのだが、今回の作戦は秒で終わる超短期決戦。同値以上を出す事は出来ない。加えてあくまでも同値の性能である以上相手が切り捨てた機動性をこちらも切り捨てる必要がある。予測可能な軌道でしか動く事は出来ない。
だからこそ正確な軌道予測が必要だった。本来なら可動する銃器を前方固定配置しか出来なかったのもこのためだ。
マッハ20で飛翔するそれと肉薄する。既にアルワーツ魔術学園の上空を通過済み。上昇し、数秒後にはアルワーツ魔術学園を一撃で爆散させる爆弾を急降下爆撃する事が出来る状態だ。
全ては既に計算済み。前部に固定した双銃アブホランス・ウィールが重力ネットを紡ぎ吐き出す。
相手も妨害してくる事は予想していたはずである。機首に固定された40mmアヴェンジャーは物理的な障壁であれば容易く貫通する。爆撃をする前にこれで障壁を破壊するのだ。まあ、そもそもこれだけでアルワーツを粉々にできる程の破壊力がある化け物なんだが。
え、アヴェンジャーは30mmだって? 某漫画では40mmだったんだし、キャバリア規格じゃ40mmなんだろう、たぶん。まあ、あの漫画30mm機銃が他の機体でも当たり前みたいに搭載されてたから格上げしたんだろうが。
加えて側面からの攻撃にもかなりの強度を持つ。そもそもマッハ20で飛ぶ事を前提としているので相応の機体強度が無ければ空中分解は必死。
だがアブホランス・ウィールは糸を吐く銃である。しかも重力操作機能まである。物理的防御力はあまり関係が無い。ネットを突き破る度に重力の糸が重さを増していく。マッハ20を出す為には色々な物を切り詰めている。そこに余計な重量を継ぎ足されれば飛行に支障が出ない訳はない。目に見えて速度が落ちていく。
だからこそこれは、パイロットの腕なのだろう。元がマッハ20だ。少々減速しても十二分に早い。機体が負荷限界をギリギリで越えない速度にスロットルを緩めている。
安全圏と言えるまでは、落ちない。それは事前の計算で分かっていたが、重吾にはこれ以上打てる手番が無かった。
今回の作戦時間上、猟兵達に与えられる手番は僅か一手のみである。それ以上は速度が、時間が許さない。
大成功
🔵🔵🔵
五ヶ谷・グレン
アドリブ絡み歓迎
■余談
グレンは幼い頃に師匠に『よく言われる優雅とはなんぞや(略)』
と訪ねた。
ちからもちにしては割となんでも器用に熟すグレン少年の普通に過ごした惨状を前に師匠は答えた
『ゆっくり丁寧に動けば大体良い(略)』
■心情
こっちの魔術、
正しくは、なのましん?だとか…
兎に角、その学校が大変らしいと聞いたが、
いやはや、ビリビリきてるな【覚悟】って奴が
■|花《バフ》を添える
正直、カラテに明るくないが…
だがまあ少女が征く道には魔女が花を添えるべきだろう。
UCで文字通り空に道を描こう、
咲いた花は曼珠沙華…
かの少女の御技が届くように…
さて、後は全力で逃げる!
カラテを穢す?と
ハラキリで詫びだと言うからな!
●|魔女《ウィッチ》
『よく言われる優雅とはなんぞや』
幼い頃にグレン少年が師匠に尋ねた事だ。実際にはもう少し別な言い方をしたようだが、ようやくしたら意味は同じだろう。
ちからもちにしては割となんでも器用に熟すグレン少年の普通に過ごした|惨状《・・》を前に師匠は答えた。
『ゆっくり丁寧に動けば大体良い』
これもやはり、もう少し違う言い方をしているようだが要約するとそんな物なのだろう。
「こっちの魔術、正しくは、なのましん? だとか……」
発達した科学はもはや魔法と見分けが付かない。よくある話だ。
「見た感じだと俺の知ってる魔法と殆ど差異は無いみたいだが」
魔法使いっぽいローブを着て、短い杖を持ち、呪文を唱えて魔法を発動する。むしろ|典型的《テンプレート》感すらある。
「兎に角、その学校が大変らしいと聞いたが、いやはや、ビリビリきてるな”覚悟”って奴が」
五ヶ谷・グレン(竈の魔女はだいたい筋力で解決する・f33563)が見た現場は正しく戦場の様相を呈していた。大勢の魔法使いが並び、空に杖を向けている。一糸乱れぬ統率という訳では無いが、それはあたかも合戦前に整然と槍と大盾を構えてその時を待つ|歩兵大隊《ファランクス》のようだった。
「いいですか皆さん。|防御魔術《プロテゴ》が使える生徒は何かが見えたら即座に使って下さい」
アルワーツ魔術学園には常時稼働している魔術防壁はある。だが、今回の相手はそれを容易く貫通してくるという確かな情報が得られているのだ。ならば防御を重ねると言うのは妥当な判断ではある。ただ、今回の相手はそれでも防御を貫通してくるので無意味でもある。
「馬鹿共め! |防御魔術《プロテゴ》なんかで防げるか!」
それに異を唱えたのはラオモト・ドラゴ・チバだ。彼のいつもの反骨的な態度ではあるが、チバとてこの学園を粉砕させる気は無い。
「|浮遊魔術《レヴィオーソ》だ。爆弾なんか浮かせて落とさせなければいい!」
「ですがチバ=サン。その……」
チバに意見をしたのは取り巻きのオニヤス。彼がチバに意見をするのはかなり珍しい事だ。それだけ状況が切迫しているという事を理解しているのだろう。
「どうやって|浮遊魔術《レヴィオーソ》を当てるんですか?」
|浮遊魔術《レヴィオーソ》は起点となる一発の光弾を当てなければ発動しない。それは通常、視認できる相手なら超高速かつ高度な誘導性能を持っている為当たらないという事はほぼない。
だが、今回の場合その視認が問題だ。マッハ20の速度で上空を通過する相手を視認するという事自体がまず困難だ。
「数を撃つしかあるまい。フン、本来ボク一人で十分なんだがお前達にも手伝わせてやろうと言うのだ」
まともに当てられないなら弾幕を張る。間違いとは言い切れないが、まだ賭けと言う領域を出られてはいない。
「やってみる価値はある」
これを後押ししたのは意外にもマスダラであった。
「事前情報では防御は貫通されると出た。だが、迎撃できないとは言われてない」
「馬鹿でも少しは考えたようだな。ならどっちが当てるか」
「おれ達は他にやる事がある」
「ええ、私達には他にやらなきゃならない大切な事があるのです」
「仕方ねーから俺は手伝ってやるよ」
「……タキ野郎の手伝いなんぞ要らん! お前は|防御魔術《プロテゴ》でも撃ってろ!」
「|防御魔術《プロテゴ》なんて出来ねーんだよ! その点、|浮遊魔術《レヴィオーソ》なら何回かに一回くらいは成功するし」
割と本気で嫌そうなチバと一応やる気だけはあるらしいタキ野郎。
「|浮遊魔術《レヴィオーソ》ですか。確かに一理ある意見ではあります……そうですね、|防御魔術《プロテゴ》で受け止めた所に|浮遊魔術《レヴィオーソ》を撃つ。これなら双方の不利な点を補えるでしょう」
「それだと始動が遅くなる気はするが……フン、妥協案だ」
「大体の話はまとまったかな」
グレンが、大釜をかき混ぜながら聞いた。
「叶える願いが決まって無ければ叶えようが無いからね」
「お前も猟兵だろう。追い付いて何とかしろよ」
「マッハ20って猟兵でも早々出る速度じゃないんだよ。俺向きじゃない」
今回の事件は猟兵にとっても対応は難しいのは事実だ。出来ないのならば、出来る奴にやらせればいい。そういう手もある。
「でも、俺は願いを叶える事は出来る。|魔女《ウィッチ》だからな」
「……お前、男だろ。どう見ても」
「そうだが?」
何を当たり前の事を言っているんだ? と言う顔で聞き返されたらもう何も言えない。
「願う、芽吹き、息吹く、一助たらん事」
グレンは大釜をかき混ぜながら唱える。
「誓う、この腕、その瞳にうつる夢幻にさしのべること」
大釜の中で何かが、確かにその形を成していく。
「我が瞳がうつす諸人の星々よ心のまま息吹け……」
そして、大匙で中からそれを掬い取ると、ちからもちの|力《パワー》でそれを豪快に投げ広げた!
「正直、カラテに明るくないが」
「いや、カラテナンデ?」
今回の件、今の所まだカラテ関係無い筈である。今の所。
「だがまあ、少女が征く道には魔女が花を添えるべきだろう」
大釜で産み出され、広域に投げ付けられたそれは地面に着くなり急速に成長し空に向かって茎を伸ばしていく。
アルワーツの上空に到達した無数の蕾が、一斉に花開く。
|曼殊沙華《スパイダーリリィ》。
空に向かって大輪の花を咲かせる紅き彼岸花は大気中のナノマシンに作用し、魔術効果を飛躍的に高めていく。
「この世界の魔術、ナノマシンだっけ? 科学の産物らしいんだけど」
それを見届けたグレンはここに来た時から思っていた事を口にした。
「親和性が高すぎるんだよな、俺の使う魔女術と」
魔女術。即ち本物の魔法である。科学で疑似構成された魔法モドキとの親和性など本来持ち合わせない筈だが。
「さて、やる事はやった! 後は全力で逃げる!」
「いや、逃げるにはもう遅いだろ」
その時既に、|魔王《ウィッチキング》が空を駆ける轟音が届いていた。音の20倍の速度で進むそれが聞こえてしまっているという事はもう避難するには遅いという事である。
既に、上空で勝負は決しているのだ。
大成功
🔵🔵🔵
空野・プゥピィ
※一瞬の出来事なのでプレイングのセリフは回想でお送りするプゥ
グリモア猟兵のおねえさんに残滓ヒコーキごと旋回軌道中のターゲットの真上に転移してもらうプゥ!
あたいにはこれ位しか出来る事はないけど、一瞬で決めてやるプゥ――|爆発《ボンバーダ》プゥ!
ゆけ!サイズはそのままに、重さを極限(1兆トンぐらい)まで重くした90個の爆弾!
くーきていこーがあるぐらいの上空だったら重力加速度で追いつくプゥ!
この際細かい事は抜きプゥ!木っ端微塵にできるだけの火薬があれば周囲に降り注ぐぐらいの被害で済むプゥ。後は|防御《プロテゴ》よろしくプゥ。
失敗したら追いうちになっちゃうけど、流石に追いつくプゥよね?1兆トンプゥよ?
●成層圏の絨毯爆撃
上空での戦いは成層圏まで到達していた。梵天丸は重力ネットを重ね続け、徐々に速度を落とし続けてはいるがそれだけでは間に合わない。
梵天丸が対象から離れた。高度限界という訳では無いが、次の仕込みのタイミングだからだ。巻き込まれたらただでは済まない。
そう、今回の作戦は秒で終わる以上、全て事前に準備しておかなければ意味が無い。全ての猟兵は事前の打合せ通りに行動している。幸いない事に、相手は回避も反撃もしてこない。するだけの余力が無いのだろう。だから、全て計画通りに事が運ぶのは必然である。
最も、計画通りの事が遂行できる腕があればの話であるが。
「管制官よりポーク1へ、エンジン始動を許可」
「ポーク1了解プゥ」
空野・プゥピィ(飛ばない仔豚はただの仔豚・f38289)が|始動機《イナーシャ》を回して繋ぐ。ブルルンッ! とレシプロ機めいた見た目の残滓ヒコーキのエンジンがうなりを上げる。
一応、私の保有機体の中にも見た目レシプロ機はあるので電源器はあるのだが、|始動機《イナーシャ》を手で回した方がレシプロ機感が出ていいと思う。
そう、ここは現場ではない。私のグリモアベース内だ。私のグリモアベースは宇宙空母を模した形をしているのでその気になれば機体を発進させる事も出来るのだ。
今までは私のユーベルコードと関係する機体しか使った事は無かったんだが。たぶん、他人の機体でも行けるだろう。
「ビフォアテイクオフチェックリスト」
「コンプリートだプゥ!」
何をチェックしたのかは知らんがヨシと言っているのでヨシ!
「離陸は5分後だ。0.1秒たりともタイミングを外すなよ」
「了解プゥ」
そう、離陸する所から全て計算済み。後はその計算通りに動けるかどうかだけなのである。
「10秒前、9、8、7、6、5、4」
操縦桿を握るプゥピィの手(前足か?)に緊張が走る。
「3、2、1、レッツゴー!」
「空野・プゥピィ、|出撃《でる》プゥ!」
十分に温めたエンジンが大きく唸り、プロペラを全速力で回す。リニアカタパルトを起動し、残滓ヒコーキを亜空間内にて射出。速度を上げながら前方に作られた転送ゲートを突き抜ける!
「|幸運を《グットラック》!」
硝子が粉々に砕ける様に世界の壁を突き抜けた先はけものマキナ上空の成層圏。眼下には雲と、それを突き抜けてくる二機の機影。
全て|計算《シミュレーション》通り。相手の位置は目視出来ないがトリガーを引くプゥピィに迷いはない。
「あたいにはこれ位しか出来る事はないけど、一瞬で決めてやるプゥ――|爆発《ボンバーダ》プゥ!」
投下した爆弾は重力に従い下に向かって落ちる。は相手がほぼ垂直に上昇しているタイミングを見計らって90個の爆弾を投下した。
【|こぶたの爆弾降下術《ザ・ホーミングボマー》】サイズはそのままに、重さだけを極限(自己申告では1兆トン)まで重くした爆弾の雨。明らかに積載できる質量じゃないがデモンズコードなら当たり前に出来る。
猟兵相手に回避を捨てた代償は重い。重力ネットで重くなった機体が爆弾の雨に突っ込んで空中連鎖爆発! タマヤ!
まあ、外してもアルワーツの防御魔術でどうにかするだろうと思ってはいたようだが、そもそもこの密度の爆弾投下したら空中で連鎖爆発するよな、と言う話である。破片は広範囲に飛び散るが、爆弾自体が落ちて来るよりはマシだろうし、それこそ防御魔術でアルワーツに被害は出ない。
「やったプゥ!」
計算通りの大爆発。だが、その爆炎を一機の機影が突き抜けて行った。
「やってなかったプゥ」
損傷は軽くない。だが、それでも。空の魔王は止まらなかった。
そこに、垂直に黒い稲妻が昇った。
大成功
🔵🔵🔵
●爆弾
そもそもアルワーツに投下される爆弾とは何なのか。既に接敵した猟兵も居るが、それらしきものを見たという報告は無い。当然である。爆弾なんぞ最初から搭載していないのだから。
マッハ20で飛翔する飛行体、爆弾とはこれその物の事である。マッハ20の速度を出せる強度の構造体と、燃料を直接ぶつければ壊滅的な被害が出るのは間違い無い。しかも、このブースターはそもそもが使い捨てであり制御するキャバリアを切り離す事が出来るのだ。
まあ、それでもそんな物を直接ぶつけるという事自体が並みの腕では不可能であり、かの大戦時に”魔王”と呼ばれた大英雄の腕だからこそ可能な荒業である事に違いは無いのだが。
叢雲・凪
※ 容姿は新イラスト状態(メンポバージョン
道場にて地面に『叢雲家の家紋』を血で描く。
もはや手段は選べない。
念じて内なるコトダマ空間にアクセスし 夜天九尾との対話を行う。
『ドーモ… ご無沙汰しています。夜天九尾=サン ジンライ・フォックスです』(礼儀作法
対面する夜天九尾を睨みつけつつアイサツ。
『夜天九尾… 取引だ…』
『ボクの寿命を差し出す。だから 力を貸せ』
呪い 怒り 破壊衝動 忌むべき存在に囲炉裏を囲んで頼まねばならない。嘲笑われたって良い 罵倒されても良い
『正義 人道 仁義 お前にそれらは分からないだろう』
『この取引… お前が断るならボクは迷いなくあの飛翔体に対して【カミカゼ】をする。ボクがぶつかって数ミリでも射角がズレるならキンボシオオキイだ』
迷いも恐怖もない。断るなら即座に行動する。
『ボクと一緒に心中するか? それとも ボクの肉体から離れるか?』
『仮に離れたとして お前の破壊衝動は止まらない。いずれオブリビオンとして狩られる定めだ。』
『だから 安住できる器がいる… そうだろう?』
●|信念《Faith》
「スゥー……ハァー……」
叢雲・凪(断罪の黒き雷【ジンライ・フォックス】・f27072)は自身の建てたドージョーにてアグラ・メディテーションしていた。その時が来れば勝負は一瞬。地面には既に叢雲家の家紋を己の血でペイント済みである。コレにいかなる呪術的効果があるのかは定かでは無いが、凪の決意の表れである。
「行くのか」
問いかけたのはマスダラである。凪は一つ大きく頷いた。
「そうか」
「どうか、無事に帰って来て下さい」
凪は、その問いには……頷けなかった。
「スゥー……ハァー……」
ただ黙し、アグラ・メディテーションを深める。自らのローカルコトダマ空間へとアクセスする為に。
コトダマ空間とは通常ハッカーがUNIX等のコンピューターネットワークと深く接続した際に、あたかも仮想現実のように幻視される空間の事である。だが、コンピュータ接続を伴わずともあらゆる生命は己の内にローカルコトダマ空間を持っている。
心理学でいう所のイド、エゴ、スーパーエゴ。或いは仏教の阿頼耶識、は少し違うか。
「ドーモ……ご無沙汰しています。夜天九尾=サン。ジンライ・フォックスです」
「グググ……ドーモ、ジンライ・フォックス=サン。夜天九尾です」
ローカルコトダマ空間とは本来他者が入り込める場所ではない。だが、夜天九尾は凪の精神に既に不可逆的に取り込まれている。これは次の継承者を見つけるまで変わらない事だろう。もし、見つけたとしても一部融合した精神を切り取る事自体可能なのかどうか、それは分からない。
「グググ、どうした? あの程度の玩具が潰せぬと泣き言を言いに来たか」
凪の精神の一部である以上、夜天九尾は凪の状況を正確に把握している。
「そうだ、夜天九尾。取引だ」
凪はあえて、その罵倒をそのまま受けた。実際、凪には対象を撃退する手段を何一つ思い付かなかったのだ。
「ボクの寿命を差し出す。だから、力を貸せ」
「これは異な事よ。元より時が来ればその体は貰い受ける。元よりの契約であろう」
夜天九尾の力を内に宿すとはそう言う事だ。凪に老て死ぬ事は許されない。その前に夜天九尾に肉体を支配されるのだ。
呪い、怒り、破壊衝動。忌むべき存在でありながら悠長に時を待っているのはたかが人の一生など些細な時に過ぎないと言う超常的存在であるが故か。
「正義、人道、仁義。お前にそれらは分からないだろう」
「然り、然りよ。そのような物はカラテの至らぬ惰弱者が縋る寄る辺に過ぎぬ」
「この取引……お前が断るならボクは迷いなくあの飛翔体に対して”カミカゼ”をする。ボクがぶつかって数ミリでも射角がズレるならキンボシオオキイだ」
「グググ……愚か、愚かよのう!」
「ボクと一緒に心中するか? それとも、ボクの肉体から離れるか?」
「グググググ……愚か、実際愚かの極みなり。そうしたとてお主の精神が消えた瞬間にその体を貰い受け、儂が現世に降臨するまでの事よ」
夜天九尾は鷹揚にチャを一杯啜った。
「仮にそうなったとて、死にかけのボクの体で何が出来る。お前のお前の破壊衝動は止まらない。その場でオブリビオンとして狩られる定めだ」
「奴らか、確かに面倒ではあるが」
「だから、安住できる器がいる……そうだろう?」
「今までのように、か?」
「そうだ」
「グググ……良かろう。お主の無様な願い聞き届けてやろう」
夜天九尾は立ち上がった。
「凪よ、そこでよく見ておけ。お主の師が本当に教えたかったのはどういう事なのかを」
「教えたかった、だと? それはどういう事だ」
「儂が不甲斐なきお主に、インストラクションを授けてやろうと言うのだ」
アグラ・メディテーション姿勢から立ち上がる。キツネ・オーメンでは無くハーフサイズメンポとして新たな装束を整えたジンライ・フォックスから九本の黒雷の尾を生やす。
もはや叢雲凪でも、ジンライ・フォックスでも無い。夜天九尾の顕現体その物であった。
「イヤーッ!!」
凄まじいカラテシャウトと共に、大輪の爆風華が咲き乱れる空へと垂直に昇った。
『グググ、実際こんな玩具如きに泣き言を言うとは情けない』
次の瞬間、夜天九尾は既に飛翔機体結合部の上に直立していた。
『先端のアレを破壊するのは確かに少し面倒。だが、この玩具砕くには実際児戯』
これは夜天九尾が発言しているのではない。ローカルコトダマ空間の凪へとインストラクションをしているのだ。時間は泥めいて鈍化している。それも、殆ど時が止まっているかのように。
『百発で倒せぬ相手に千発当てろと言われたな。だが、実戦にそんな時間は無いと……それゆえの秘奥義。グググ、真にカラテの至らぬ惰弱な答えよ』
強制的に状況を見せ付けられているだけの凪は何も答えられない。この体感時間鈍化速度にニューロンが追い付かぬのだ。
『アレは言葉通りの意味よ。刹那の間に千発叩き込めばよい。このように』
夜天九尾は右拳を握り、カラテを滾らせた。
「イヤーッ!」
そのまま打撃! だが、傷一つ付かない。
「イヤーッ!」
夜天九尾は左拳を握り、打撃した。やはり傷一つ付かない。
当然である。この機体はマッハ20の速度で空中分解しない程に異常な硬さの構造体を持っている。どれほどのカラテであろうと生身の体で数回打撃した所で効果など無い。
そう、数回であれば。
「イヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤッ!」
ハヤイ! ハヤイスギル!
「イヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤッ!」
鈍化した時間の中でさえ認識困難な速度のカラテラッシュ!
「イヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤッ!」
凄まじき速度のカラテ!
「イヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤッ!」
しかも、それはただ乱雑に回数を重ねるのではなく、
「イヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤッ!」
打撃点を中心に収束させ、
「イヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤッ!」
衝撃を楔めいて撃ち込み、
「イヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤッ!」
装甲を、内部構造物さえも、
「イヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤッ!」
貫き通し崩壊させる、
「イヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤッ!」
緻密なカラテ。
「イヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤイヤッ!」
両手の拳だけでなく、両足の蹴りも交えて。
「イィィィィヤァァァーッ!!!」
最後に一撃、蹴り抜いた。
だが、この恐るべきサツバツラッシュを受けても飛行機体には何の変化も無い。打撃痕すら……否! それはこの極度鈍化した時間間隔ゆえの錯覚!
『稲妻の速度とは光の速度、この世に比類する物無き速度よ。それは時さえも置き去りにする』
ふらり、と。その両足が機体から離れる。極度圧縮された時間が戻っていく。
『グググ、今のお主の肉体では精々この程度か。次はもっとカラテを高めるのだな』
そして、夜天九尾はジンライ・フォックスへと戻った。
空を裂く魔王の機体が、くの字に折れ曲がる。突然の強打。元より重力ネットで限界近い負荷を与えられた所に爆撃連鎖。実際機体は姿勢安定性能負荷をギリギリで持ちこたえている状態だった。
そこに千発のカラテである。持ちこたえる余地は無い。
「今度こそやったプゥ!」
「いや、まだ終わってはいないね」
だが、その状態でも魔王は動く。鉄屑となった接合部を切り離し、キャバリアを人型形態へと移行。分解しかけているブースター部分を掴み、アルワーツに向けて投げ付けたのだ!
「でも、悪足掻きだ」
星降丸のアブホランス・ウィールが吐く糸が投げ付けられたブースターを捕らえる!
「今だプゥ!」
プゥピィの残滓ヒコーキの固定機銃が捕らえたブースターを銃撃! ブースターは爆発し燃料タンク四散!
「これで、万が一にもアルワーツの防御魔術を貫通する程の威力は無くなったけど」
「ここまで来たら被害ゼロを目指すプゥ!」
二人は砕けてばらけた多数の燃料タンクの位置情報を地上に送信する!
「座標が来たよ、あっちだ」
グレンが空に向かって指を刺した。
「もう|防御魔術《プロテゴ》も要るまいが」
「君達が取りこぼしたら必要でしょう?」
「ふん、なら落とさないようにしてやるよ」
グレンの【|ちからもち式ウィッチクラフト《力ずく魔女術序》】は本来願いを叶えるユーベルコードだ。それはこの場では生徒達の魔術能力をブーストする役割の他に、もう一つの役割がある。
「良く見えている。これなら外しはしないぞ」
視認可能であれば魔術はほぼ外さない。問題は視認の方にあった。だから遠くまで見通せる眼を与えた。それでも、散った燃料タンクの方向が分からなければ見つけるのは難しかったが、その方向なら上空の二人から共有されている。
後は撃つだけだ。
「「「|浮遊魔術《レヴィオーソ》!」」」
空に向かって無数の生徒が杖を伸ばす。その何割かは未熟で空中であらぬ方向に向かってしまったが、チバを始めとしたグループや上級生達は正確に、はるか上空に撒かれた燃料タンクを捕らえた。
「成功だプゥ!」
「空中で叩き落としてもよかったんだけどね」
燃料タンクが落ちる速度が緩慢になっていく。魔術の光が当たる度にその重量は軽く、羽のようになっていく。この様子なら数分後には地上に軟着陸するだろう。
「これだけの高圧燃料、ただ捨てるには勿体ないプゥ」
爆弾として使う為に燃料は多めに入っている。貰える物は貰ってしまった方がいいだろう。
『やれやれ、こんな機体を与えられた時はどんな任務でも楽勝だと思っていたが』
魔王は、既に次の動きを取っている。
「さあ、もう一仕事だ」
急降下していく魔王を二人は追跡した。
「……ヌゥー!」
ジンライ・フォックスはただ、地面に向けて自由落下していた。その両手両足は骨折し、折れ曲がっている。
打撃を与えれば、殴った方もダメージは受ける。これが武器であればただ交換するだけで済むが、素手のカラテではそうも行かない。それでも、通常であれば千発殴ったとてこうはならない。
それはジンライ・フォックスの四肢にも千発分の反動が刹那の時に帰ってきたが故だ。無事で済む筈は無い。
四肢が無事であれば成層圏からの落下でもグレーター・ウケミで地面に衝撃を逃がし、無傷とはいかなくても着地する事は出来る。だが、四肢がこの状態では実際ニンジャでも不可能であった。
「夜天九尾め、無茶な事を!」
『グググ、これはしたり! 地面に落ちるだけで死ぬとは忘れておったわ』
本気とも冗談とも取れない戯言。
「……ハイクを、詠む、か」
四肢の激痛を堪えながらも、ジンライ・フォックスは打開するカラテを思案し続けた。だが実際、この状況でジンライ・フォックスに取れる手は……無い。
そう、ジンライ・フォックス|には《・・》何も。
曼殊沙華の咲き誇る道を少女が駆ける。|馬人《セントール》の少女と、その背には少年が直立している。
「こっちも見えました!」
「ああ、確かに捕らえた」
二人は杖を手に、高らかに叫ぶ。
「「|浮遊魔術《レヴィオーソ》ッ!!」」
放たれた魔術の光は正確にジンライ・フォックスを捉え、浮かせる。
「|引き寄せ《アクシオ》ッ!」
更にマスダラが落下速度を落としたジンライ・フォックスを引き寄せた。
「もう、全然無事じゃないじゃないですか!」
コトホギはぷんぷんと怒っている。
「飲め」
マスダラは口にウィゲンウェルド薬を突っ込んだ。ジンライ・フォックスはそれを飲み込んでいく。
「ゲホーッ! ゲホゲホッ! 苦いしマズい……」
「よく効く薬ほど苦い」
魔術の力で事故治癒能力を急速促進させ、自前のニンジャ治癒力で四肢の負傷を癒していく。
「スシ、スシの方が良かった……出来ればオーガニックの」
「そうか。知らん」
「反省してください! こんな無茶をして」
「ごめん、でも……」
ジンライ・フォックスは手足の感覚が戻ったのを確かめた。負傷は完全に癒えた訳ではない。だが、カラテは出来る。
「まだ、やらなきゃならない」
『戦争にはフェアも何も無いと思うがね』
魔王は、学園の郊外に降り立った。
『私の爆撃を止めた奴の顔が見たくなった。えーと、こうすればいいんだったか』
そして魔王は、オジギした。
『ドーモ、ハンス=ウルリッヒ・ルーデルです。この学園を壊しに来ました』
大成功
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