トーラーは示すか、エースの帰還
●『ノイン』
『第三帝国シーヴァスリー』――その名はクロムキャバリアのとある地域においては悪名高き小国家として知られている。
それは仕方のないことだ。
これまでの路線は侵略を前提としたものだったからだ。
『第三帝国』を名乗る以前の『シーヴァスリー』はあるロボットヘッドによって生み出された破滅に至る思想をこそ植え付けられた人々の集まりであり、また画策したロボットヘッドの思惑通りに破滅していく運命にあった。
だが、人は滅びを否定する。
もしくは先延ばしにしようとする。
当然だ。金を得た者が次に望むのは権力だ。権力を得た者がさらに求めるのは永遠である。不死と言っても良い。
とあるロボットヘッド『エイル』――またの名を『ヴィー』と言う彼の思惑は猟兵によって阻まれ彼自身も|光の渦《サイキックロード》の彼方へと消えたが故に未来を知ることなどできようはずもない。
『シーヴァスリー』の人々は求めたのだ。
恒久的な『平和』を。
そして、それを実現させるためにはどうしたって力が必要だ。小国家としての力、即ち、プラントである。
未開地のプラントを求めたことも。
他国の領域を求めたことも。
「ええ、本当に。『あれ』……『巨神』、『セラフィム・シックス』を得られなかったのは残念なことでしたね」
『ノイン』と名乗る白銀のキャバリアを駆る女性はコクピットの中で笑む。
「……ですが、制海権は得ました」
もう一つの声が響く。
白銀のキャバリアのコクピットの中の『ノイン』は頭を振る。
「それだけではダメだったのです。あくまで、あの領域の支配権を得なければ、あの四機のサイキックキャバリアを敵に回してしまいます」
「なぜです。なぜ、そこまでして、あの小国家を警戒するのですか。たかが温泉で成り上がった小国家でしかないはず……」
「あの四機は四人のアンサーヒューマンを、それも『神機の申し子』を得ています。いいえ、それ以上に厄介なのは……あの四機は、光の渦を超えてやってくるということです。それが意味をすることをあなたも……いえ、知る術などないのでしたね」
『ノイン』は白銀のキャバリアのコクピットハッチから姿を現す。
キャバリア越しでしか、これまで応対してこなかったが、この段階に至っては最早隠す必要はない。
彼女はコクピットハッチに足を掛け、見下ろす。
其処に居たのは。
「な……なぜ」
「私は『ノイン』。お初にお目にかかります、『第三帝国シーヴァスリー』の『ノイン』首席」
彼女が見下ろしていたのは『第三帝国シーヴァスリー』の首席『ノイン』であった。
目を見開く彼女の表情が驚愕に染まるのを『ノイン』……ここでは便宜上『プラナスリー』の『ノイン』としようか――彼女は面白いものを見るような顔で見下ろす。
「わ、私と同じ顔……!?」
「顔だけではないですが、まあ、いいじゃあないですか……でも、いいですね。その顔。混沌めいて。混乱しているのでしょう。わかりますよ。でも」
『プラナスリー』の『ノイン』が指を鳴らした瞬間、白銀のキャバリアの腕が『ノイン』首席の体をつかみ上げる。
「あなたの役割はもう終わりです。よくぞ『第三帝国シーヴァスリー』を此処まで平和ボケにしてくれたものです。見事な手腕であると言えましょう」
彼女の言う通りだった。
『第三帝国シーヴァスリー』の本国。
その領域内部には戦力がほぼ存在しない。あるのは敵の侵攻に対する迎撃装置ばかりだ。
なぜなら、すでに『第三帝国シーヴァスリー』は『ノイン』首席によって平和的な小国家へと自浄されていたのだ。
だからこそ、『ビバ・テルメ』のゲリラ部隊にさえ前哨基地が圧倒されてしまっていたのだ。
全ては『平和』のために。
そのために彼女が有り余る政治的な手腕、そして何よりも。
「力で上層部をねじ伏せた。この世界ではキャバリアの操縦技術こそが物を言う。そこにあなたのような政治的手腕も持つ存在が現れれば、すぐさま上層部は掌握されてしまうでしょう」
「私を、殺す、つもりですか」
「いいえ? そんなもったいないことはしませんよ。あなたは『ハイランダー・ナイン』の本当の九人目。あの『ヌル・ラーズグリーズ』など……端から番外なのですよ。あのつくづく鬱陶しい女……」
「一体、なんのことを……」
「昔話です。これよりあなたは浄化の炎となる。この世界を浄化する燈火。いえ、熾火とでもいいましょうか。あなたは、示すのです。『フュンフ・エイル』の求めた『平和』こそ有名無実なる争いの火種であると――」
●己の闇を恐れよ。されど恐れるな、その力
グリモアベースに集まってきた猟兵たちを迎えたのはナイアルテ・ブーゾヴァ(神月円明・f25860)だった。
「お集まり頂きありがとうございます。今回の事件はクロムキャバリア世界。小国家『第三帝国シーヴァスリー』において、『ノイン』と呼ばれる首席のことをご存知の方もいらっしゃるかと思います」
ナイアルテの言葉に猟兵たちは、なぜその名が飛び出したのか疑問を抱く。
「はい、彼女はオブリビオンではなく、人間です。ですが、彼女は『古代魔法帝国』の末裔であり、また同時に先祖返りによって|『超能力』《サイキック》を得ているのです」
それだけであれば猟兵の出る幕ではない。
問題は――。
「はい……彼女は『第三帝国シーヴァスリー』の地下に眠っていた一騎のオブリビオンマシンの『動力』として捕らわれてしまっているのです」
そう、眠っていたオブリビオンマシンは『超能力者』である彼女を食い物にし、強大化することによって『第三帝国シーヴァスリー』を滅ぼし、さらには世界さえも破滅させてしまうというのだ。
「そして、同時に『超能力』の発露を察知した小国家『グリプ5』から彼女の誘拐依頼が皆さんに出ているのです」
なんとも混み合った事情になってきている。
猟兵たちはちょっとまってほしいとナイアルテを制する。
つまり、これはオブリビオンマシンから『動力』として捕らわれている『第三帝国シーヴァスリー』の首席を他の小国家『グリプ5』が誘拐しようとしている事件なのか、と。
「はい。そもそも『第三帝国シーヴァスリー』が擁していたキャバリアはすでに国外に全て流出してします。残されていたのはオブリビオンマシン一騎のみ。そして、如何なる事情からか『グリプ5』は『ノイン』首席が『超能力者』であることを把握し、その存在が破滅を齎すことを察知していたのです」
事情はどうあれ、猟兵たちが世界を破滅から救うためには『ノイン』首席を『動力』として捕らえているオブリビオンマシンを打倒さなければならない。
「彼女を救出した後のことは……皆さんの判断におまかせします。事態がどう動くのであれ、これは、この世界の危機は皆さんにしか救えぬことなのです」
そう告げ、ナイアルテは猟兵たちを送り出す。
言いようのない不安の満ちる渦中へと猟兵たちは飛び込まねばならないのだ――。
海鶴
マスターの海鶴です。どうぞよろしくお願いいたします。
今回はクロムキャバリア、『第三帝国シーヴァスリー』へと向かい、強大な|『超能力』《サイキック》を持つ超能力者『ノイン』首席を小国家『グリプ5』の依頼のもと、誘拐するシナリオになります。
キャバリアをジョブやアイテムで持っていないキャラクターでも、キャバリアを借りて乗ることができます。ユーベルコードはキャバリアの武器から放つこともできます。
ただし、暴走衛星『殲禍炎剣』が存在しているため、空は自由に行き来できません。
●第一章
冒険です。
皆さんは『第三帝国シーヴァスリー』の帝国領域へと踏み込みます。
ですが、すでに強大なオブリビオンマシンによって領域はすでに火の海の惨憺たる状況となっています。
キャバリアが一騎も国内に存在していなかったことや、自動迎撃装置が自国内には向けられない自動的な制御によるものであることに加え、多くの人々が瓦礫の下敷きになっていたり、シェルターに閉じ込められていたりと救助を必要としています。
帝国領域の中心に存在するオブリビオンマシンの元へと向かう最中、救助活動を行いましょう。
●第二章
ボス戦です。
『ノイン』首席の『超能力』を動力として強大化したオブリビオンマシンとの対決です。
コクピットに接続された彼女を救い出すためには、このオブリビオンマシンを破壊しなければなりません。
自律稼働し、なおかつ彼女の『超能力』を吸い上げるオブリビオンマシンは強大であり、また強敵です。
●第三章
冒険です。
オブリビオンマシンを撃破した皆さんは『ノイン』首席を救出しました。彼女は衰弱状態で何も喋れませんが、皆さんは安全な『グリプ5』へと移送しなければなりません。
この状況を快く思わない第三者の存在も匂わされています。
警戒することに越したことはないでしょう。不測の事態にも対応しなければなりません。
それでは、燈火は熾火に変わり、さらなる混迷を齎すオブリビオンマシンの影が揺れる戦禍に進む皆さんの物語の一片となれますように、いっぱいがんばります!
第1章 冒険
『燃える都市』
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POW : 瓦礫で下敷きになっている人々を救助する
SPD : 逃げそこなった人々を安全な場所へ誘導する
WIZ : 負傷者した人々を処置して命を救う
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
「『私』が、割れる……裂ける……!」
それは絶叫であった。
泣き叫ぶような、痛みに喘ぐような。悲痛なる叫びであった。
その叫びをまるで耳元で聞いた家のように目をきつく閉じるのは、小国家『グリプ5』の幼いアンサーヒューマンの少年『フュンフ』であった。
彼は一度、猟兵が絡んだ誘拐事件において、標的となり連れ去られそうになった少年である。
その名が示す通り、小国家『グリプ5』の国父『フュンフ・エイル』のクローンである。
『ラーズグリーズ』の性を持つ者が、嘗ての『憂国学徒兵』のクローンであることは、すでに知られていることである。
「わかるよ。痛いんだね。そんなことしたくないって。嫌だって」
彼は猟兵たちを前にして見上げる。
幼い彼の黒い星映す瞳が猟兵たちを見上げる。共に着ていた『ゼクス・ラーズグリーズ』と『ズィーベン・ラーズグリーズ』たちは、猟兵たちに『第三帝国シーヴァスリー』から『ノイン』首席の誘拐を依頼していたのだ。
なぜ、このようなことを、と問いかけることがあったのならば、彼女たちは答えるだろう。
「それが……この子が」
「『フュンフ』が、言ったんです。このままではダメだと。どうしてかは言葉にできないけれど、このままではこの地域の人々が『平和』から最も遠ざかってしまうと」
それは予言めいたことなのか。
「違うよ。そんなんじゃないよ。あの子は『平和』を知ってる。それを実現したいって思ったし、皆もそう思ったからあの子と一緒に生きているんだよ。でもね、皆が皆、善い心を持っているわけじゃないんだよ。どうしようもなく悪い心を持つ人も引き付けちゃうんだ」
だから、と『フュンフ』は風に揺れる亜麻色の髪を抑えて、猟兵たちに訴える。
「あの子を助けてあげて。あの子の力はあんなふうに使うものじゃないって僕も、あの子もわかっているんだ。なのに、それを悪いことに使いたいって思う人もいる」
『フュンフ』の瞳に猟兵たちは見ただろう。
純粋なる正しき心を。
それこそが人を人たらしめる。人の善性を信じるに値する輝きだった。
「何のために生まれた力なのかわからないけれど、何をして何を為すのかは自分で決められる。他人に決められるなんて、そんなのは嫌だ」
だから、助けて、と。
猟兵たちの耳に届く声があった。
それは『第三帝国シーヴァスリー』の帝国領域から響く。
多くの助けを求める声が炎と瓦解した建物のあちこちから響き渡る。
猟兵たちは見ただろう。
『第三帝国シーヴァスリー』の、嘗ては平和を夢見た楽園が、今やたった一騎のオブリビオンマシンによって地獄絵図へと変貌しているのを。
「助けて、誰か」
その声を猟兵たちは聞く。
それは近くからも聞こえ、また同時に遠くからも聞こえる。
「助けて、誰か。『私』じゃあなく、『私』以外の皆を助けて――」
風車・拳正
……わけわかんねぇ(ノイン、以前、彼女に騙され、いや、見抜けなかった) (そこはまあ、この際いい。自分の落ち度だ)(だが、解せないのは)
何で国が崩壊にしそうになってて、首席がヤバイことになってんだよ……!(あの件は許してはいない。しかし、彼女は国のためにやった事だと認めている。そんな国を守っていた彼女が何故)
……本人に聞くしかないな。(となればやる事は一つ。彼女の元へ、オブリビオンマシンの前まで行くのみ)
今度はちゃんと話して貰うぜ、首席さんよーー!
【聞き耳、集中】で瓦礫の下に人がいるか確認する。
そしていたら【衝撃波】で瓦礫を砕いて救出、そしてオブリビオンマシンの行方や特徴を聞きながら避難させる
「……わけわかんねぇ」
それが風車・拳正(衝撃の鉄拳・f41386)の抱いた率直な思いであった。
目の前に広がる戦禍。
瓦礫と炎。
いずれもが滅びを予感させるには十分なものであったし、また同時に此処が楽園の如き平穏に満ちていた場所であったことを実感させぬものであった。
『第三帝国シーヴァスリー』。
そこには確かに仮初めであっても平穏が存在していた。
けれど、今やその楽園めいた平穏は一騎のオブリビオンマシンによって破壊されて尽くしていた。
悲鳴と助けを求める声が充満し、拳正の耳朶を打つ。
どういうことなのか。
『ノイン』と呼ばれる『第三帝国シーヴァスリー』の首席が居た。
騙された、という感覚は正しくなかったのかもしれない。己が見抜けなかっただけだ。いや、この際それはいいのだ。
自分の落ち度であると納得できる。
だが、どうしても納得できないことがある。
「なんで国が崩壊しそうになってて、首席がヤバイことになってんだよ……!」
クロムキャバリアにおいて戦乱とは常なるものである。いつだって、すぐそばにあるものだ。
今日という平穏が明日も続くとは限らない。
その平穏を一日でも長く、それこそ恒久的なものとしたいと願うのは当然のことだ。
「……本人に聞くしかないってことかよ!」
往かねばならない。
あのオブリビオンマシンがこの惨禍を生み出したというのならばその中心に取り込まれている『ノイン』首席を救い出さなければならないのだ。
しかし、それよりも拳正は己がやらねばならないことを為す。
己の耳に届く悲鳴。
その大本へと駆け出す。
瓦礫に埋まった人々。うめきごえ。痛みに喘ぐ声。それを彼は聞きつけ、己の拳でもって瓦礫を吹き飛ばす。
「大丈夫かよ! 怪我は!」
瓦礫の下敷きになっていた人々を彼は見ただろう。
血と埃に塗れ、意識が朦朧としている。虚ろな瞳は間に合わなかったことを示していたし、また、多くの人々がそこかしこに居ることを彼は知る。
「どうしてこんなことになってんだよ……!」
同しようもないことばかりが、此処には渦巻いている。
何もかもが仮初であったとのだとしても、こんなことが許されて良いのか。
これが戦争というものなのか。
弱き者も、強き者も、争いの火からは逃れ得ぬというのだろうか。
それほどまでに残酷な現実が拳正へと押し寄せてくる。
「こんな、こんなことなら、なんでもっとちゃんと話をしてくれなかったんだ」
共に手を取ることだってできたかもしれない。
けれど、人と人との間に横たわる溝というのは、言葉だけでは埋まらない。埋めることができない。
だから、どうしようもない争いばかりが世界には満ちている。
「……うぅ……」
呻く声を聞いて拳正は瓦礫をどけ、人々を救出していく。救えた生命。救えなかった生命が己の腕の中を通り過ぎていくことだろう。
「首席さんよ……これが、あんたの望んだことじゃあないってことはわかるよ。だから」
だから、オブリビオンマシンをぶちのめす。
その意志を秘め、拳正は瓦礫とかした街中をただ只管に走るのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
シルヴィ・フォーアンサー
……先の戦いで戦勝国が滅びかけてるとかわけわかんないね。
『どんな代物でも壊れるときは一瞬ということだ、君も私もな』
……死ぬのは嫌だね、痛そうだし。
『だったら油断せずに望むことだ』
了解……まずは人助けだね。
シルエット・ミラージュからのハンドレッド・イリュージョンで1168機の複製を召喚。
瞬間思考力で並列操作しつつ足りない分はドーピングとヨルに(戦闘)演算を補佐してもらう。
後は人海戦術で瓦礫を撤去して埋もれてる人を助けたり逃げ道を作るよ。
今日の勝利者は明日の敗者。
それがこの戦乱の世界クロムキャバリアにおける常識であったのかもしれない。
敗者は滅びるのみ。
勝者はしかして、明日の敗者でないことの保証ではない。
「……先の戦いで戦勝国になったのに、それが滅び掛けてるとかわけわかんないね」
シルヴィ・フォーアンサー(自由を求めた脱走者・f41427)は己のキャバリア、『ミドガルズ』のコクピットの中で、戦禍に見込まれた『第三帝国シーヴァスリー』の瓦礫と化した街中を見やる。
多くの動態反応がセンサーに引っかかっている。
逃げ惑う人々は、この際置いておいてもいいだろう。
問題は、瓦礫の下敷きに成っている人々や、負傷した者たちである。彼等は戦禍から逃れようとしてものがることができない。
『どんな代物でも壊れる時は一瞬ということだ、君も私もな』
コクピットの中にサポートAIである『ヨルムンガンド』の音声が響く。
それは冷ややかでもあり、同時に諦観にも満ちた声であったかもしれない。けれど、それもまた真理である。
世の全ては砂上の楼閣。
形在るがゆえに、いつかは崩れていく。
それが遅いか早いかだけの違いでしかないというのならば、今日の平和すらも危ういものであることを人は知らねばならなかったのだ。
けれど、それでも、人は厭う。
破滅を、死を。
「……死ぬのは嫌だね、痛そうだし」
『だったら油断せずに臨むことだ』
目の前の惨禍からそむけてはならない。見なかったことにしてはならない。生きるということはそういうことだ。
苦しみと悲しみがだけが渦巻く世界を見続けなければならない。
それを得なければ、楽しいという感情も、喜ばしいと思うことも何一つ得られない。
故にシルヴィはうなずく。
「了解……まずは人助けだね」
彼女の瞳がユーベルコードに輝く。
己の機体、『ミドガルズ』を残像分身によって複製し、一気に瓦礫の山とかした街中を走り抜ける。
とは言え、シルヴィの脳に掛かる負荷は掃討なものだろう。
この瓦礫の山とかした街中には多くの情報が溢れている。瓦礫の中、制御を失ったシェルター機能。そうした場所に閉じ込められている人々を救わねばならない。
情報の波が彼女の頭に押し寄せる。
「……ッ! これは……!」
瞬間、コクピットシートの背面からシルヴィの首筋に針が突き立てられ、ドーピング剤が注入される。
瞬間思考の並列化。
その処理速度を挙げるドーピング剤によってシルヴィの瞳が見開く。
サポートAIの補助設けて、彼女は複製分身のキャバリアと共に残骸を退け、その奥に倒れている人々や機能を失ったシェルターを復旧させていく。
『人海戦術か。悪くない。だが、君への負担は……』
「……」
確かに他の人間は嫌い……いや、まだ怖い。深く関わり合いになりたくはない。
けれど、それでも。
それでも救える生命があって、己が手を伸ばすことができるのならば。
壊すことよりも救うことができるのならば。
それをしない理由をシルヴィは見つけることができなかっただろう。
善性と呼ぶには頼りない。
「……この先へ逃げて」
外部スピーカーでシルヴィは助け出した人々に呼びかけ、機体のマニュピレーターでもって、これより起こり得るオブリビオンマシンとの決戦の余波を受けぬようにと逃げ道を作り出すのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
村崎・ゆかり
あの『シーヴァスリー』が平和国家にねぇ。いつの間に衣替えしてたのかしら。
因縁のある国だけど、平和に拠って立つというなら手を貸しましょう。
ましてや、そこに住む民には、なんの罪もないのだから。
一刻を争うこの状況、必要なのは数。
「召喚術」「式神使い」で式神十二天将召喚儀。天の十二方に配された天将達を、ここに降ろす。
合わせて、幽世千代紙で大量の獣型式神を用意。
十二天将、力を貸して。この式神たちを率いて、生き埋めになった人たちを助けて回ってほしいの。
あたしも『鎧装豪腕』で救助活動に当たる。皆もよろしくお願い。
それじゃ、状況開始よ。
信じろという方が無理な話だ。
それは。
「あの『シーヴァスリー』が平和国家にねぇ。いつの間に衣替えをしてたのかしら」
村崎・ゆかり(“紫蘭”/黒鴉遣い・f01658)の疑念も尤もだった。
事実、その通りであったのだから。
『第三帝国』を名乗る前から存在していた新興の小国家『シーヴァスリー』は好戦的な小国家だった。
二つの小国家を滅ぼし、自らも滅びへと向かうような国だったのだ。
元に同じく新興の小国家ビバ・テルメ』にもちょっかいを掛けていた。
けれど、ある猟兵が潜り込んだ本国……即ち、今目の前に広がる瓦礫の山となった戦禍に飲み込まれた傷痕が生々しく残る帝国領域は、平穏そのものだったのだ。
少なくとも、一騎のオブリビオンマシンが起動するその時までは。
「因縁のあるくのだけど……」
ゆかりは、それが善きにつけ、悪しきにつけ、と加える。
平和を求めるのは人の心の本能であったことだろう。
そして、これまでの事を水に流そうとも思った。時の流れは水の流れと同じだ。待ってはくれない。
片時も淀むことなく流れていく。
ならば、ゆかりも己の中にある、わだかまりをすてようというのかもしれない。
そうすることで人と人との間にある不和は解消されていくのだと信じるのならば。
「そうよ、此処に住まう民には、なんの罪もない。明日を生きる権利だって、生きたいって願う祈りだってあるはずなのだから」
ゆかりの瞳がユーベルコードに輝く。
「急急如律令! 六壬式盤の導きによりお招き申す! 天の十二方位を支配する十二天将よ、我が言葉に応え顕現せよ!」
祈りは願いに昇華する。
式神十二天将召喚儀(シキガミジュウニテンショウショウカンギ)によって呼び出された式神の十二天将たちが一気に戦禍に飲まれた帝国領域を疾駆する。
「十二天将、力を貸して」
その言葉と共に召喚された十二天将たちがうなずく。
戦うためではなく、誰かを救うために。
あちこちでうめき声が聞こえている。生きているのか、それともこれから死ぬゆくのか。定かではない。
けれど、それを決めるのは己ではない。
少なくとも、今もなお生きようともがいている生命があるのならば、ゆかりは立ち止まれない。
己の鎧装剛腕でもって瓦礫を持ち上げ、押しのける。
「状況開始、なんて言っていられない状況ね、これは」
下敷きになった人々をゆかりは助け出す。
幼い子も、老いた者も、平等に不平等という名の不条理に踏みつけられている。血潮の暖かさは喪われていく。
どうしようもないことだ。
「それでもって思うのよ」
助けたいと、その祈りめいた願いのままにゆかりは、己のできうることをなし続ける。それが徒労であるとあざ笑う者がいるのだとしても。
止まらない。
立ち止まれない。
生が死に向かう行いであったとしても。生きている限り、ゆかりは助けを求める声に手を伸ばし続けるのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
ソフィア・エルネイジェ
シーヴァスリーが焼かれている…?
この様な形でシーヴァスリーの地に足を踏み入れる事になろうとは予想だにもしておりませんでした
ノイン首席がオブリビオンマシンに捕らわれてしまった経緯や、そもそも何故そのような機体が地下に眠っていたのか、疑問は尽きませんが…今は目の前の問題の解決に専念致しましょう
インドラと共に参ります
キャバリアに搭乗していれば多少の炎は問題にならないでしょう
キャバリアが持つ悪路走破性も瓦礫の街で役立つ筈です
人の手では微動にもしない瓦礫を撤去して、より迅速に人命を救う事も叶いましょう
問題はキャバリアにさえ手に余るほどに大きな瓦礫となりますが…ラースオブザパワーにて撤去致します
街が燃えている。
国が燃えている。
それはクロムキャバリアにおける平時の光景であったかもしれない。珍しいことではない。慣れた光景である。
けれど、慣れることと許せぬことは違うことだ。
『第三帝国シーヴァスリー』の帝国領域は、一騎のオブリビオンマシンによって全てが瓦解していた。
確かに帝国領域の内側だけ見れば平穏そのものであったことだろう。
しかし、その全てに納得がいったわけではない。
「この様な形で『第三帝国シーヴァスリー』の地に足を踏み入れることになろうとは予想だにもしておりませんでした」
ソフィア・エルネイジェ(聖竜皇女・f40112)は己の乗機と共に『第三帝国シーヴァスリー』の市街地が瓦礫の山となっている光景を見つめる。
見渡す限りが破壊の痕にまみれている。
黒煙が上がり、呻く声が聞こえる。
助けを求める声がある。
疑問はつきない。
なぜ、国家元首たる『ノイン』首席がオブリビオンマシンに囚われてしまったのか。その経緯。いかなる理由かはソフィアには判然としない。
「いえ、そもそもなぜオブリビオンマシンが地下に眠っていたのか……」
だが、考えている時間はあまりにも少ない。
目の前に助けを求める人々がいるのならば。
「インドラ!」
ソフィアの瞳がユーベルコードに輝く。
同時に『インドラ』のアイセンサーが煌めく。その腕部は巨大な瓦礫を持ち上げ、下敷きになっている人々を救出するために力を振るう。
助かる者。
助からない者。
ソフィアにとって、それは判別しなければならないことだった。手遅れの者に手を尽くせるほど、現状に余裕はない。
故にソフィアは『インドラ』と共に瓦礫の除去に徹する。
迅速に。
今喪われかけている生命があるのだ。ならばこそ、迷っている暇はない。
「動かせる者は手を!」
手が足りない。誰も彼もが自分のことで手一杯なのだ。
悲劇だけが充満している。何処を見ても悲嘆の涙が、血が流れている。
オブリビオンマシンの齎す争乱は、どこに行っても、このような光景を生み出す。
どこまでいっても戦いとは悲劇を生み出す火種でしかない。
だから、ソフィアは己の中に憤怒を宿す。
「戦えぬ者を背に。守る盾となることこそが武人の本懐。だというのに、これは……」
あまりにも酷い光景であると言えるだろう。
己は戦う力がある。
迫る炎をも寄せ付けぬ『インドラ』のコクピットの中にある。だが、彼等は違うのだ。『第三帝国シーヴァスリー』に住まう人々に戦う力はない。
『ノイン』首席がこうして人々を平穏の中に囲ったのは、争いから彼等を遠ざけたかったからだ。
領域の外に戦力を持ち出して、戦禍から遠ざけ続ける。故に、どうしても外との軋轢をうんでしまう。そこにオブリビオンマシンの付け入る隙があったというのなら。
「憤怒の剛力(ラースオブザパワー)は」
人を救うために使うのだと言うようにソフィアは『インドラ』と共に瓦礫の除去に務めるのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
ユーリー・ザルティア
「ホント、この世界ってやつはッ!!」
何が敵で何が黒幕かッ。
とにかく、思うところは沢山あるが…今は被害者の救助が先決だ!!
決戦に備え、レスヴァントMk-2はぎりぎりまで調整を行ってもらう。
ここは…久しぶりにレスヴァントで出撃する。
アマテラスを射出して周囲を『索敵』し『情報収集』
周囲の生体反応を調べ上げ、その情報を『瞬間思考力』で判断するよ。
さて、救助は時間との勝負。手数は多いほうがいい。
鉄血騎鋼団…出番だよ。
制御にはARICAにも手伝ってもらうとして、複製したレスヴァントとパールバーティで瓦礫の撤去や避難誘導させるよ。
戦乱の世界。
それがクロムキャバリアである。
平時であっても争いが絶えない。いつまでたっても平和というものは訪れない。何度争いの種を潰しても、水をかけても、燻るように火種は芽吹く。
炎となって燃え上がり、人々を灼く。
如何なる理由もない。
あるのは闘争という名の不和ばかりである。
「ホント、この世界ってやつはッ!!」
怒りを瞳に宿して、ユーリー・ザルティア(自称“撃墜女王”(エース)・f29915)は『第三帝国シーヴァスリー』の帝国領域、その市街地を『レスヴァント』と共に走る。
久方ぶりの『レスヴァント』との疾駆。
それがこの様な形になってしまったことをユーリーは暗澹たる思いに沈む心を引き上げて、己を叱咤する。
「何が敵で、何が黒幕かッ」
わからない。
多くのことがわからない。けれど、それでもはっきりとしたことが唯一だけある。
オブリビオンマシンの存在である。
この市街地の惨状は一騎のオブリビオンマシンによって引き起こされたことである。
人々は瓦礫に下敷きになり、またシェルターの機能動作不良によって閉じ込められていることがわかっている。
多くの人々が戦禍に飲み込まれていく。
どれだけ平穏を、平和を願っても、オブリビオンマシンがそれを許さない。
闘争を。
争いを。
ただ、それだけが世界を埋め尽くす事を望むかのように、火種を世界に撒き散らしている。
「要救助者は!」
ドローンを飛ばし、ユーリーは瓦礫の山と化した市街地の情報を集める。
多くの動態反応がある。
だが、手が回らない。救助を必要としている人々が多すぎるのだ。それに、瓦礫の山も厄介極まりなかった。
この小国家には国内にキャバリアを擁していない。
戦う道具の全てを国外に置くことで、この帝国領域だけは平穏に満たされていたのだ。故に、その弊害が今まさに押し寄せている。
「これだけの瓦礫……人の手ではどうしようもないでしょ」
時間との勝負だ。
キャバリアの増援は機体できない。そして、瓦礫に押しつぶされた人々たちを助けるためには時間を掛けてはならない。
「鉄血騎鋼団(アイゼンブラッドパンツァー)――出番だよ!」
戦うための力。
ユーリーの瞳がユーベルコードに輝く。
それは己の『レスヴァント』と『パールバーティ』を複製する力。
複製することはできても、その機体を念力でもって制御するほうが難しい。脳に多大な負荷が掛かることは承知の上。
「『ARICA』、制御サポート頼んだよ……瓦礫の除去と撤去、そして避難誘導。同時に全部行う!」
それはあまりにも無謀なことだっただろう。
制御が明らかに超過している。けれど、ユーリーは己の脳を最大限に活用する。サポートを受け、さらに踏み込む。
人を助けるためである。
キャバリアは戦う道具であるが、しかし、人を救うことだってできるはずだ。
「全機救助開始! 全兵力を持って人々を救助するッ」
ユーリーの言葉にしたがって複製された『レスヴァント』たちが市街地へと走る。
できるはずだ。
戦うことができるのならば、人を救うことだって――!
大成功
🔵🔵🔵
メルヴィナ・エルネイジェ
●水ヴィナ
どうしようもなく悪い心を持つ人も引き付けちゃうのだわ…?
それってこの人(水之江)の事なのだわ…?
セラフィム・シックスを狙っている国だから様子を見に来たのだわ
でももうそれどころじゃ無くなっているようなのだわ
私は生身でいいのだわ
火災の炎は海竜の寵愛で作った水球で身体を包んで防ぐのだわ
お願いされるのはいいんだけれど、なんだか消防車みたいな扱いをされている気がするのだわ…
封炎の暴雨を降らせるのだわ
もしもこの炎が科学的に消え難い炎だったり、そもそも消せない炎だったとしてもこれで消火出来る筈なのだわ
広い範囲に降らせれば延焼も防げるのだわ
ついでに水の加護を受ければ火傷もし難くなるのだわ
桐嶋・水之江
●水ヴィナ
あらあら
私の未来の顧客が大変な事になってるわ
折角うちの製品を売り込みに行こうと思ってたのに
こうしちゃいられないわ
早く助けにいかないと
今日はカナリアで行きましょうか
このカナリアの装甲はなんと熱を遮断する優れ物
火災現場もへっちゃらよ
へえ…民間人が犠牲にねぇ…
ここで恩を売っておくのも悪くないわね
と言う訳で本日はスペシャルゲストをお連れしました
それではメルヴィナ皇女、お願いします
さてはて消火はメルヴィナ皇女がしてくれるとして、私は傷付いた人達の人道医療支援に当りましょうか
再生光でぱぱっと治療してあげるわ
今日あなた達を助けたのは桐島技研の水之江よ
くれぐれも忘れないようにね
『フュンフ・エイル』のクローンである亜麻色の髪を持つ少年『フュンフ』は言った。
力を求める者がいると。
そして、その力はどうしようもなく悪い心を持つ者だって引き付けてしまうものだと。
その言葉にメルヴィナ・エルネイジェ(海竜皇女・f40259)は首をかしげる。
思い当たる節があったのかもしれない。
「それってこの人の事なのだわ……?」
彼女が示すのは、桐嶋・水之江(機巧の魔女・f15226)であった。
「あらあら、メルヴィナ皇女、随分な物言いではないかしら?」
「そうなのだわ?」
メルヴィナはさらに首を傾げた。間違ってないと言わんばかりである。
心外である言わんばかりに水之江は息を吐き出す。確かに『第三帝国シーヴァスリー』は彼女にとっての未来の顧客である。
多くのキャバリアを開発し、小国家に売り渡している張本人であるのだから、否定するところはおかしくないかと思わないでもない。
というか、このような事態になる前に水之江は、「第三帝国シーヴァスリー」に自身の開発した製品を売り込むべきであったのかもしれない。
そうすれば、少なくともこの様な光景は見なくて済んだのかもしれない。
「とは言え、まあ、まったくもってよくもまあ、ここまで一騎のオブリビオンマシンにボコボコニされるものね」
水之江は己のキャバリア『カナリア』のコクピットの中から『第三帝国シーヴァスリー』の帝国領域、その市街地の瓦礫の山と成った光景を見やる。
破壊の痕しかない。
炎が立ち上り、あらゆるものを燃やそうとしている。
平穏も、其処に生きる人々も。全て燃やしつくそうとしている炎だけが立ち上っている。
そして、その炎の中から聞こえるのは悲鳴と苦悶の声ばかりであった。
瓦礫の下敷きになるだけではなく、身動きのできないままに炎に飲み込まれようとしている人々がいる。
「ここで恩を売っておくのもわるくないわね、本日のスペシャルゲストとしてメルヴィナ皇女、よろしくおねがいしますね」
彼女は生身単身で炎盛る市街地に立つメルヴィナへと言葉を投げかける。
メルヴィナは己の身を水の球体で覆い、迫る炎を遮断していた。
それこそが彼女が受ける海神の寵愛である。
如何なる炎も彼女に触れrうことはない。
「『セラフィム・シックス』を狙っている国だから様子を見に来たのだわ……けれど、それどころじゃ無くなっているのだわ」
「どうしてかしらね。あれだけ『巨神』に固執していたわりに国内に戦力の常駐はなし。その上、あるのはオブリビオンマシン一騎だけ。それも秘匿されていたんだっていうんだから」
「それはわからないのだわ。でも、助けて、とあの子に言われたのだわ」
「そういうわけで火災現場はお任せね!」
「なんだか消防車みたいな扱いをされている気がするのだわ……」
「気の所為! 急ぎ恩を売り……じゃない、人命救助に勤しみましょう!」
メルヴィナはなんとも言い難い感情を水之江に覚えたが、此処で言っても仕方ないと、その瞳をユーベルコードに輝かせる。
「封炎の暴雨(ファイアオブザ・シール)……如何なる炎も、この雨に打たれれば消えてしまうのだわ……」
メルヴィナのユーベルコードと共に降り注ぐは、暴雨であった。
それは炎立ち上る市街地においては天からの救いだった。市街地を飲み込まんとしていた炎はたちどころに消えていく。
其のさまをみやり水之江は、正しく人間消防車だわ、と思ったが口には出さなかった。口は災いの元である。
「……さっすが、メルヴィナ皇女殿下! さ、私は人道医療支援に当たりましょうか」
あ、それ、と再生光(リペアライト)が『カナリア』の装甲から発せられる。
それは、みょんみょんみょんみょんと謎のサウンドエフェクト……いや、これ水之江が口で言ってるな? な奇妙な音と光でもって救助された人々のきずを癒やしていく。
水之江の体に疲労がのしかかる。
数が多いのだ。
治療を必要としている人間は次から次に運ばれてくる。だが、水之江は、それらの全てを精神力で跳ね飛ばす。
そう、彼等は皆、未来の水之江の顧客なのである。
何処でどう縁が繋がかわからないのが商人の世界である。ならばこそ、水之江は『カナリア』の外部スピーカーをオンにして声を張り上げる。
自らを鼓舞するようでも在ったし、同時に傷ついた人々を奮い立たせるものであった。
「今日あなた達を助けたのは桐嶋技研の水之江よ。桐嶋技研のね。大事なことなので二回でも三回でも、百回でもいけど、くれぐれも忘れないようにね」
水之江の商魂たくましい働きによって救助された人々……その手遅れに成らぬ人々の傷が言えていくのをみやりながら、メルヴィナはゆっくりと炎が迫る市街地へと踏み出していく。
「……炎の大本……これがオブリビオンマシンの力なのだわ?」
メルヴィナのユーベルコードによって市街地に燃え盛っていた炎は立ち消えた。
けれど、中心に向かえば向かうほどに炎が吹き荒れている。
まるで、そこから噴出しているようであった。
「……あの子の言っていたのは、これなのだわ?」
彼女は『フュンフ』の言葉を思い出す。
何のために生まれてきたのか。何を為すために生きるのか。
その問いかけに十全に答えられる者は多くはないだろう。けれど、それを誰かに……悪しき心に利用されたくはないのだと彼は言った。
正しいことを正しく行えるように。
そんな幼子に言って聞かせたような言葉にこそ、人は背中を押され、そして救われるのだ。
「『セラフィム・シックス』……あの子が眠り続けることこそ、きっとあの子が望んだ平穏なのだわ」
ならば、とメルヴィナは惨禍の源たる炎へと恐れなく踏み出すのだった――。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
防人・拓也
以前参加した依頼で戦勝国となった国が何故こんな状態になったのかは気になるが…今は救助活動に取り組もう。
指定UCを発動し、逃げそこなった人を抱きかかえて救出していく。障害物があれば、風の魔力に性質変化の切断属性を一時的に付与し、障害物を斬って排除する。これらを繰り返して救助活動を続ける。救助者に負傷があれば、ピルケースから治療薬を取り出し、適切に投与して必要な応急処置を施していく。
やれやれ…この案件も厄介事になりそうだ。周辺国へ悪影響が無駄に飛び火しなければいいんだがな…。
アドリブ・連携可。
戦勝国とは富めるものである。
多くを失ってなお、多くを得るからだ。
けれど、この戦乱の世界、クロムキャバリアにおいては正しくなかったのかも知れない。今日の勝者は明日の敗者。
戦禍の炎は汎ゆる物を飲み込んでいく。
市街地に吹き荒れる炎は、この帝国領域の中心から吹き荒れるようであった。
「なぜこんな状態になったのか……」
防人・拓也(独立遊撃特殊部隊ファントム指揮官・f23769)は不可解な状況に頭を悩ます。
だが、即座に切り替える。
考えても答えは出ない。
そして、今は目の前に助けを求める人々の声があるのだ。ならば、救助活動こそがま成さねばならないことだと理解している。
「あまり時間を掛けてはいられない」
風の魔力が全身を覆う。
同時に彼の瞳がユーベルコードに輝く。
時空間魔術・疾風瞬身(ジクウカンマジュツ・シップウシュンシン)、それは一気に炎を吹き飛ばしながら市街地へと飛び込み、その力を振るって障害物を巻き上げる。
風に巻き上げられた瓦礫の下には呻く人々の姿があった。
傷の度合いを拓也は判断する。
良くはない。けれど、これ以上悪くしないために己がいる。
手にしたピルケースから薬剤を取り出し、拓也は人々に含ませる。
「鎮痛剤です。痛みが和らぎます……貴方は助かります。気をしっかりもってください」
励ます。
それしかできない。
結局のところ、人を活かすのは、其の人の気力なのだ。故に拓也は救助した人々を抱え、適切な応急処置を施していく。
気休めだと誰かが言うかも知れない。
そんなことをしても、また戦禍の炎は彼等を飲み込むと。
全てが徒労に終わるのだと。
けれど、拓也は立ち止まらない。
立ち止まって救える生命など何一つ無い。己の手は二本しかない。あまりに長さも足りない。
「やれやれ……この案件も厄介事になりそうだ」
毒づくしかない。
確かに己の手は己の目に見える範囲にしか届かないだろう。
無力感にさいなまれることは、あとでいくらでもできる。今できることを今しないことこそが後悔を生み出すのだ。
ならばこそ、拓也は炎の最中を疾駆する。
風をまとい、人々を救い、処置を施していく。この惨禍の炎の先にこそオブリビオンマシンがいる。
争いの火種を撒き散らす存在。
明らかに今回の事件は周辺小国家への悪影響が懸念される。
けれど、それは平時のことだ。
オブリビオンマシンの蠢動が止まらぬ限り、終わらぬ闘争に人々は巻き込まれていく。
「……飛び火しなければ良いんだが……」
それが有りえぬ現実であると理解するからこそ、拓哉は今救える命に手を伸ばし続けるのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
ルクス・アルブス
【ステルク】
ステラさんー!?
どうしたんですか!?致死量の香りとかなんですか!?
え、だって、口元から嬉し汁とか零れてますし、
最近見た中でもトップスリーにやべーですよね?
それにしても……
『ノイン』さんが『ノイン』さんを捕まえて、なんか酷いことしてます……?
ステラさん、これってどんなプレイなんですか?
え? えっと……はい。
今回は『フュンフ』さんのお願い聞いてあげたいなー、
ってことでいいんですよね!
救出了解です!
それではさっそく【ソナーレ】で……アッ、ハイ。なんかごめんなさい!
で、でも、演奏しないと動かないですし、
【協奏曲第1番】でみなさまを回復しながら助けますから、
見逃してくださいですよー!
ステラ・タタリクス
【ステルク】
|エイル様《主人様》の!香りがしまぁぁぁすっ!!
ごふっ
ちょっと濃厚すぎ今日のエイル様|因子《の存在感》
いえ、大丈夫です(口元の血をぐいっと拭う
いいですかそこでドン引きしている光の勇者?
早く事態を収束させますよ
人の思いをつなぐのが|フュンフ様《エイル様》の力なら
平和を願う心を誰よりも痛感しているのも彼
その想いに応えるのが我々の役目ですので!
【テールム・アルカ】起動!
人型にリサイズしたデストロイドリルとパワークローで瓦礫を撤去していきますので
ルクス様は救出を!
しかしノイン主席様がハイランダーナインの本当の9人目?
これはまた問い詰め案件ですね
ノイン様の秘密主義、今度こそ暴いてみましょう!
開口一番である。
何が、とは言わなくてもすでにご存であろう。
そう、いつもの『アレ』である。
「|『エイル』様《主人様》の! 香りがしまぁぁぁすっ!!」
ステラ・タタリクス(紫苑・f33899)の叫びっていうか、咆哮っていうか。
そんな『アレ』であったが、ステラは叫び倒した後、盛大に吐血していた。喉が切れちゃったのかな。
「ステラさんー!?」
ええええ!? とルクス・アルブス(『魔女』に憧れる『出禁勇者(光属性)』・f32689)は吐血したステラをみやり、目を丸くする。
今まで叫び倒していたし、恒例行事みたいになっていたので気にしていなかったが、確かにアレだけ叫べば喉へ負担はすんごいことになっていそうだなって思い直す。
「ごふっ、ちょっと濃厚すぎ今日の『エイル』様|因子《存在感》」
「だ、大丈夫ですか1? どうしたんですか!? 致死量の香りとかなんですか!?」
ステラの言っていることが逐一わからん! とルクスは慌ててステラの背中を擦る。
わかるのはステラが戦う前から負傷しているっていうことである。
開幕初手バッドステータスとかそんなことある? あるのである。メイドだから。
ぐいっとステラは口元後を拭う。やってることは格好いいし、表情はシリアスなんだけど言ってることが、もうさあ、メイドさぁって感じである。
「いえ、大丈夫です」
「え、だって、口元から嬉し汁とか溢れてますし、最近見た中でもトップスリーにやべーですよね?」
あ、血ってそういう感じでルクスには変換されるんだ。
「いいですか、ドン引き勇者。早く事態を収拾させますよ」
「えっ、えっと……はい」
ルクスは思った。
この人どんな感情で、今までのことをなかったことにしているんだろうと。
状況はよろしくない。
『第三帝国シーヴァスリー』の帝国領域、その市街地は今や一騎のオブリビオンマシンによる炎によって惨憺たる状況である。
瓦礫の山と成った市街地。
吹き荒れる炎。
うめき声と悲嘆の声が助けを求める声となって響き渡っている。
この状況を生み出したのが、グリモア猟兵の予知を信じるのならば、『ノイン』ということになる。
『ノイン』首席と『プラナスリー』の『ノイン』。
二人の『ノイン』によって生み出された状況。
えっと、えっと、とルクスは状況を整理する。自分なりに、である。
「『ノイン』さんが『ノイン』さんを捕まえて、なんか酷いことしてます……? ステラさん、これってどんなプレイなんですか?」
詳しいでしょ、とルクスはステラに塔。
いや、何ってんのかわからんな、とステラは思ったがステラはステラで我が道を行く。二人は噛み合ってる用で噛み合ってないコンビなのである。
「人の思いを絆ぐのが|『フュンフ』様《エイル様》なら、平和を願う心を誰よりも痛感しているのも彼。その想いに応えるのが我々の役目ですので!」
「ステラさん、これって何プレイなんですか!?」
「光の勇者! プレイとか言わない! 勇者でしょ!」
「えっ!? あっ、はい、光の勇者なので……えっと、つまり今回は『フュンフ』さんのお願いきいてあげたいなーってことでいいんですよね?」
「そいうことです!」
ステラの瞳がユーベルコードに輝いた瞬間、リサイズされたキャバリア武装が転送される。
テールム・アルカ。
彼女のユーベルコードは、巨大な掘削機とパワークローでもって瓦礫を即座に粉砕除去していく。
「ルクス様は救助を!」
「救出了解です! それでは早速『ソナーレ』で……」
「演奏はなし!」
「で、でも演奏しないと動かないですし……あ、そうだ! 協奏曲第1番(キョウソウキョクイチバン)で皆さんの怪我を直していきますから! 見逃してくださいよー!」
「ええい、緊急事態に交渉事を盛り込んでこない!」
「いえ、交渉じゃないんですけど、人命救助なんですけど……」
いいから、さっとやる! とステラはルクスの演奏に目をつむる。いや、耳をふさぐ。
そう、彼女ンは考える事が多い。
『ノイン』首席が『ハイランダー・ナイン』の本当の九人目。
その事実はおかしいと言える。
なぜなら、『憂国学徒兵』……『ハイランダー・ナイン』と呼ばれた彼等の最後の九人目は『アハト・スカルモルド』だったはずだ。
「むぅむむむむむ、むむむむむー!」
だが、そんなステラの思索を裁ち切るようにルクスのユーフォニアムが響く。
最初はよかった。
でもなんかこう、あれである。
「ええい、『ノイン』様の秘密主義、今度こそ暴いてみせましょう! そうしましょう!」
ステラはルクスの演奏に思考をかき回されながら、市街地での救出に急ぐのだった――。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
アルカ・スィエラ
……シーヴァスリーの保有キャバリア全機が国外流出、正直嫌な予感しかしないわ
何処か昔を思わせる前回のやり口と言い……また誰かがあの国の裏で糸を引いていそうね
ドラグレクスは周囲を警戒し偵察を、プロトミレスはいざとなれば遠隔操作(これでもレプリカントよ?)で動かすとして、『フローリア』と『ステラリッパー』を連れて生身で行くわ
瓦礫はステラリッパーで切断し破壊、フローリアと、換装した私の右腕【インジェクター】で負傷者の治癒をしながら進むわ
……確かにこの国の方針は好きじゃないわ。でもそこで暮らす民が嫌いだと言った覚えはないけど?
第一、逃げ遅れた生存者がいるまま大規模交戦なんかする訳にもいかない、それだけよ
正直に言ってしまえば、『第三帝国シーヴァスリー』のことを良くは思っていない。
アルカ・スィエラ(鋼竜の戦姫・f29964)にとって、『第三帝国シーヴァスリー』はこれまで数多く戦乱をもたらしてきた小国家だったからだ。
どのように方針を転換し、上層部が入れ替わっているのだとしても。
それでも『第三帝国シーヴァスリー』が行ってきたのは戦乱を拡大させるものであったからだ。それは許しがたいし、忘れてはならぬことであると彼女は定める。
そして、何よりも。
「……本国の保有キャバリアが全て国外の外にあるという状況。嫌な予感しかしないわ」
この状況にアルカは見覚えがあるような気がした。
それは小国家『グリプ5』と『フルーⅦ』における和平条約が締結された時のことを想起させるものであった。
あのときも裏で手を引く者が居た。
絵図を描くものがいたのだ。
故に在るかは『プロトミレス』から降り立ち、最小限の武装と『フローリア』と呼ばれる修理装置と共に戦禍に呑まれた『第三帝国シーヴァスリー』の市街地へと向かう。
己の機体や機竜はいざとなれば遠隔操作すればいい。
今は瓦礫に押しつぶされた人々を救出することのほうが先決だった。
「助けて……」
呻く声をアルカは聞いただろう。
そこかしこから声が響いている。泣く子供の声も聞こえる。助けを求める誰かの声も聞こえる。
充満している。
此処には戦禍による悲しみと苦しみだけが渦巻いている。
この悲しみと苦しみがいずれ憎しみに変わっていく。
奪われた者が奪う者へと変わっていく。断ち切れぬ因果となって人々の運命を争いに縛り付けていく。
こんな光景をアルカは嫌というほど見てきただろう。
彼等を縛り付けようとするものを切り裂くように『ステラリッパー』の斬撃で持って瓦礫を除去し、助けを求める人々を救助し、手にした巨大注射ユニットから薬剤を投与して人々の治療を行っていく。
「大丈夫よ。少しだけじっとしていれば、直によくなっていくはずだから」
アルカは救出した人々を背に、さらに助けを求める声に引き寄せられるように市街地を走っていく。
確かにこの小国家の方針は嫌いだ。
けれど、この国の、平穏に生きる人々をも嫌いだとは思わない。ただ生きているだけだ。アルカの何かを奪ったわけでもない。
憎しみが湧き上がっては来ない。
それに、とアルカは思うのだ。
この想いが戦いと憎しみの連鎖を裁ち切るものだと。
「こんな戦いなんていつまでも続いていいわけがない。こんなくだらないことで命を落とすことなんてあってはならないし、今すぐにでも止めなければならないってことくらい、私にもわかっている」
今、己が走るのは、助けを求める人々を捨て置いて戦うことができない善性故である。
ただ、それだけだ。
そう、アルカは己に言い聞かせ、炎吹き荒れる市街地の中に溢れる救いを求める声に手を伸ばし続けるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
朱鷺透・小枝子
瓦礫、炎、悲鳴、死体、
見慣れた光景だ……キャバリア、起動。
『機影操縦』発動。
ディスポーザブル02群出現、広範囲に飛ばし、救助活動を行わせる。
……壊せ
劫火の|【念動力】《霊障》を操り、周囲の炎を吸収【エネルギー充填】
自身の元に炎を集めて一帯の炎上を無くし、
キャバリアの【怪力】と02の機動力を活かし瓦礫を退かし、人を拾いあげる。
何処か、炎の影響が薄い所や、避難所等があればそこへ置いていこう。
嘗て殺してやるとすら言った国の者たちを、今は救わんとしている。
変わったのか、この国は、お前がか、そうなのか、ノイン。
…フェンフが助けてと言った。だから助ける。
今は、それで良い。
……行くぞ、02。
視界に映るのは、いずれも見慣れたものであった。
瓦礫の山。
巻き上がる炎。
悲鳴を上げる者。
泣き叫ぶ子供。
物言わぬ躯。
いずれもが、朱鷺透・小枝子(亡国の戦塵・f29924)にとっては珍しいものではなかった。見慣れたし、もうんざりするものであった。
けれど、その感情を小枝子は覚える前に己のキャバリアを起動させる。
『ディスポーザブル02』。
その鋼鉄の躯体の影がゆっくりと、それこそ『ディスポーザブル02』と同じように立ち上がる。
「……壊せ」
小枝子のユーベルコードに酔って生み出された影法師のキャバリアたちが一気に走る。
迫りくる炎。
これがオブリビオンマシンの放つ炎の一端であることを小枝子は知った。
人々を飲み込もうとしている。
戦禍という恐るべき炎。
悲しみと苦しみを呑み込んで、憎悪を育てる炎。その炎を影法師のキャバリアが受け止め、その吸収していくのだ。
だが、吸収した炎が消えるわけではない。
「この炎が、憎悪の炎を育てるものであることはわかっているであります。だから、これは壊すであります!」
小枝子の咆哮と共に『ディスポーザブル02』の頭上に集まった炎を粉砕する。
霊障によって挟み込むようにして、その炎は立ち消える。
「……」
小枝子は炎の消えた瓦礫の山を崩すようにして除去していく。
小国家『第三帝国シーヴァスリー』は破滅的な小国家だた。存在している事自体が破滅への道をたどるような国だったのだ。
誰も彼もが平和を望みながら、しかし、その誰かの平和を脅かすことに躊躇いを保たぬ者たちばかりであった。
しかし、『ノイン』首席と呼ばれた彼女は、仮初とは言え平穏を成し遂げていた。
変わったのは、この国か。
それとも『ノイン』と呼ばれた彼女が変わったのか。
変えたのか。
わからない。答えが出ない。
けれど、あの亜麻色の髪の少年『フュンフ』……『フュンフ・エイル』のクローンである彼は言ったのだ。
「『助けて』と、彼は言った。だから助ける」
小枝子の中に渦巻く感情は、そう結論づける。
嘗て、『グリプ5』にいた数多くの敗北と、心が傷つけられ、折れてきた少年が居た。
その名を小枝子は知っている。
光の渦……サイキックロードの彼方へと消えた『フュンフ・ラーズグリーズ』。彼は今どうしているだろうか。
「今は、それで良い……行くぞ、02」
助けてと願う声があった。祈りが昇華した願いを受けて小枝子は走る。
この戦禍の源たる炎を止めるために。
これ以上の憎しみと争いが連鎖せぬように。
人々を縛り付けようとする鎖をこそ小枝子は壊さんと、炎の元へと走る――。
大成功
🔵🔵🔵
メンカル・プルモーサ
んもー……自動兵器だけに頼るからー……とか言ってる場合じゃないね…
……兎に角救出を最優先にしないとか……
…まずは要救助者の位置の把握だな…
…重奏強化術式【エコー】で効果を高めた操音作寂術式【メレテー】を発動…
…周囲から「音」を集めて要救助者の位置をハンドヘルドコンピュータ【マルチヴァク】のモニタにマッピングしていこう…
…周囲の要救助者の位置を確認したら……【彼方へ繋ぐ隠れ道】を使用…
自分や味方の元へ転移させるとしよう…
……あとは転移させた人達を医療製薬術式【ノーデンス】で薬を創って皆で治療するよ…周囲の人に薬を渡せるのはこの術式の便利なところだね…
『第三帝国シーヴァスリー』の本国、その帝国領域にキャバリアは一騎も存在していなかった。
あったのは自動迎撃兵器だけだった。
他国からの侵略をいち早く察知し、迎撃する。
人の手を借りず。ただ平穏の中にキャバリアは必要ないと示してみせたのだ。
外への防備は万全。
けれど、内側からの悪意には脆い。
それを示すように市街地の中心……その地下に存在する一騎のオブリビオンマシンによって、平穏は尽く炎に飲み込まれた。
「んもー……自動兵器だけに頼るからー……とか言ってる場合じゃないね……」
メンカル・プルモーサ(トリニティ・ウィッチ・f08301)は『第三帝国シーヴァスリー』の瓦礫の山と化した市街地に降り立つ。
兎にも角にも救出を優先しなければならない。
他の猟兵達によって炎や、瓦礫の除去は進んでいる。
けれど、要救助者たちの位置の把握や、今だ救われぬ者がいるのならば、これをメンカルは取りこぼすわけにはいかなかった。
「……まずは要救助者の位置の把握……」
術式を手繰る。
強化された術式によって効果を高めた操音作寂術式によって周囲の音を集める。
悲鳴が聞こえる。
泣きじゃくる幼子の声が聞こえる。
苦悶のままに息絶えそうな鼓動が聞こえる。
多くが戦禍の炎に寄って叩き込まれた地獄めいた音ばかりがメンカルの耳に届く。その音に、求めに、祈りに、願いにメンカルは顔をしかめる暇もなく即座に己の眼前に広がったモニターにマッピングを施していく。
誰も彼もが余裕がなかった。
自分のことで手一杯であった。当然だ。余裕なんてない。どこにも。
だから、自分がやらねばならないのだとメンカルは、その瞳をユーベルコードに輝かせる。
輝く瞳が見据えるは、彼方へ繋ぐ隠れ道(ロード・コネクト)。
彼女はモニターに認識した生命反応のマッピングを持って、ユーベルコードを発動し、詠唱と共に己の元へと一瞬でてレポートさせてみせたのだ。
「……これで、よし。まずは……」
メンカルは己の元へとテレポートされてきた人々の容態を観察する。
彼女のマッピングによってテレポートしてきたのは、まだ生きている者たちだった。その傷の度合は大小あれど、優先順位を決めねばならない。
時間との戦いだ。
「……君は少し待っていて。大丈夫だから……」
メンカルは術式で持って薬剤を生み出していく。
適切に。止血を。治療を。多くのことをメンカルは為していかなければならない。取りこぼしてはならない。
うしなわれてしまった命は戻らないことをメンカルはよく知っている。
だからこそ、今己の手が届く生命は取りこぼせない。
誰も彼もが生きたいと願っているのだ。ならば、己はそれに応えなければならない。
「……大丈夫だから……」
メンカルは血に塗れながらも薬剤を生み出し、重症者に投与していく。
汗が額から滲む。
止まれない。
少しでも早く。少しでも多くを救う。そのためにメンカルは戦禍の炎が渦巻く最中、人々を救うために奔走し続けるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
月夜・玲
…面倒な事になってる
というか状況がめんどくさ!
キャラ被りじゃなくて、同じ顔で別人…ソシャゲかな??
…ま、これも縁か
下見した分、多少は土地の心得はある
さくさくと効率良くいこう
【Code:M.C】起動
多目的小型マシンを展開
散って各所で人助けと、一時的にでも避難できる拠点を作らせよう
私も瓦礫をどかしたり、シェルターを開けて中に取り残された人達を助けていこう
扉が歪んでたりするなら、剣で斬って無理矢理開放
シェルター自体使えるなら、扉を良い感じに修復させて落ち着くまでそこに居てもらおうかな
とりあえず道すがら助けながら、私自身は中央へ行くのを優先
細かい人助けはマシンに任せよう
さあさあ、頼んだよ
「……すごく面倒なことになってる。というか状況がめんどくさ!」
月夜・玲(頂の探究者・f01605)は思わず呻いていた。
彼女は『第三帝国シーヴァスリー』の内情を恐らく、猟兵の中では最も良く知る者であった。何せ、彼女は一度『第三帝国シーヴァスリー』の、この帝国領域、その市街地へと足を踏み入れていたからだ。
平穏そのものであった市街地の様相は、すでにない。
戦禍の炎に飲み込まれた瓦礫の山だけが広がっているのである。
「『ノイン』首席』はオブリビオンじゃなかった……じゃあ、うん? んん?」
玲は首を傾げる。
グリモア猟兵による予知。
それにおいては『ノイン』と名乗る『プラナスリー』の存在が、この事態に関与していることは言うまでもない。
けれど、此処に来た『グリプ5』までもが食い込んできている。
状況がややこしい。
「その上キャラ頭じゃなくて、同じ顔で別人……ソシャゲかな?」
名前も顔も同じだから余計に面倒くさいな、と玲は頭を振る。
だが、これもまた縁である。
すでに彼女は、この『第三帝国シーヴァスリー』の土地の心得はあるのだ。ならばこそ、効率よく動くことができるはずだ。
「Code:M.C(コード・マシン・クラフト)、起動」
玲の瞳がユーベルコードに輝く。
同時に生み出されていく多目的小型マシンたちが、笑笑と彼女の足元に集っていく。
「まずやらないといけないのは人助け。けれど、それだけじゃあ、絶対に戦いの余波に巻き込まれちゃうよね」
瓦礫の除去や炎の鎮火などは他の猟兵達がやってくれている。
ならば、玲は己が成さしめなければならないところを正しく理解する。
「救出した人達の一時的な避難先……かくまえる拠点を作ろう。それじゃあまあ、いっといで」
その号令を受けて多目的小型マシンたちがすぐさま拠点を作り出し始める。十分な時間が必要であるが、その間に玲は機能不全に陥って閉じ込められているシェルターをがしだす。
「さってと、ハッキングするまでもないか。というか、これ扉歪んでるね」
なら、と玲は模造神器の刀身を抜き払い、その斬撃でもって扉を十字に切り裂く。
「……た、助かった……?」
「シェルターの中の状況は?」
玲はシェルターに閉じ込められた人々に問いかける。
「地下シェルターへと区画が移動するはずだったんだ。でも……」
「途中で機能不全になって止まった、と。他の区画もあるよね?」
「あ、ああ! シェルターの中の酸素の状況だって心配なんだ……!」
彼等の言葉を受けて玲はうなずく。
シェルターが機能しているのならば、戦いが落ち着くまで中に居てもらおうとおもったが、それも危うい。
ならば、と玲は模造神器の切っ先でもって己の呼び出した多目的小型マシンが作り上げている途中の拠点を示す。
「あっちに移動しておいて。シェルター移動の経路のデータとかってもらえる?」
「た、端末からなら……」
「おっけー。それじゃ、そっちは任せておいて」
そう告げて玲は走り出す。
炎の源へ。この炎こそがオブリビオンマシンの生み出すものであることを玲は知る。
中央へと向かう道すがら、機能不全となったシェルターを解放し彼女は走る。市民たちの安全は多目的小型マシンが作り上げる拠点で確保されることだろう。
細かい人助けも彼等がなんとかやってくれるだるし、助け合いもするだろう。
ならば、自分は一刻も早くこの状況を収束させるのみである。
「さあさあ、急ごうか。悠長に構えてる時間なんてないみたいだしね」
彼女の目の前で膨れ上がる炎。
それは浄化の炎にして、争いを呼ぶ燈火……否、赤い熾火であった――。
大成功
🔵🔵🔵
安野・穣
(アドリブ連携歓迎)
…なんだ、誰からの依頼かと思えば。
いいっすよ。一度…いや二度か?とはいえ縁のある国からの依頼だ。
それに…まあ、その名を持つ奴の言葉に応えねえ訳にはいかねえっしょ。
…ああクソ。もう既に街に被害が出てんな…!
…『カサンドラ』!【時津風】発動、『アズライト』を展開、探知した生命に<情報伝達>!
皆が皆自分以外をって言ってたらキリがねえんすよ!
自分と引き換えに誰かが助かったとして…遺された側がどう思うか考えないんすか!
思念を通じてこの声が聞こえてるなら…まず自分が生きたい、助けろって強く思え!
そしたらその思念を頼りに駆けつけて…あんたも、あんたが助けてほしいと願う人も助けてやる!
亜麻色の髪の少年『フュンフ』は、『フュンフ・エイル』のクローンである。
すでに『グリプ5』に存在していた『フュンフ・ラーズグリーズ』は|光の渦《サイキックロード》の彼方へと消えた。
そして、安野・穣(with"CASSANDRA"・f30162)は懐かしいものを見るような瞳で少年『フュンフ』を見た。
確かに面影がある。
いや、『フュンフ』に『フュンフ・ラーズグリーズ』が似ているのかもしれない。血縁の関係があるのかどうかは穣にはわからない。
けれど、確かに縁があるように思えたのだ。
「助けて、あの子を」
その言葉に彼はうなずく。
「いいっすよ。一度……いや二度か? 縁のある国からの依頼だ。それに……まあ、その名を持つ奴の言葉に応えねぇ訳にはいかねえっっしょ」
穣が手を掲げた瞬間、光の渦より現れるのは一騎のサイキックキャバリア『カサンドラ』であった。
「お願いだよ」
「任せておくっすよ」
そう笑って穣は『カサンドラ』と共に『第三帝国シーヴァスリー』へと降り立つ。
そんな彼の目の前に広がっていたのは、惨憺たる状況であった。
戦禍の炎が渦巻く市街地。
多くの生命が失われた事を示すように瓦礫が山となって積み重なっている。炎が生命を奪い、苦悶と悲嘆の声を呑み込んでさらなる憎悪を呼び込むようであった。
「……ああクソ」
穣は己の感情を噛み殺すようにして歯を食いしばる。
すでに被害は相当なものであった。そして、これから二次的にも被害が拡大していくことが容易に想像できたのだ。
「……『カサンドラ』!」
その言葉と共に己の乗機のアイセンサーがユーベルコードに輝く。
それは風だった。
一陣の風。
炎を前にしては、その炎の勢いを増すことしかなかっただろう。
けれど穣が求めたのは、救いを求める声に対する呼びかけだった。
「皆が皆自分以外をって言ってたらキリがねえんすよ!」
誰かを助けて欲しいと願うことは尊ばれるべきことだ。自分を引き換えにしてでも救ってほしいと願うものがあることは喜ぶべきことだ。
それが人の善性であることは言うまでもない。
けれど、穣は叫ぶ。
「……遺された側がどう思うか、考えないんすか!」
遺されたものはどうやって生きれば良い。
隣にあるはずだった平穏もなく、どう生きていけば良い。空いた穴のような空虚に流れ込むおはいつだって憎悪だ。
そして、それを利用しようという悪しき者がいるのならば。
穣はそんなのは嫌だと叫ぶ。
「誰かを助けてと願うなら! まずは自分が生きたい、助けろって強く思え!」
穣の言葉はユーベルコードによる思念の繋がりによって人々の元へと届くだろう。
必ず助ける。
その想いが穣を通して人々に繋がる。
「絶対に助けてみせる! あんたも、あんたが助けて欲しいと根がう人も、助けてやる! 必ずだ!」
膨れ上がっていく思念が繋がっていく。
それは嘗ての何処かで繋がれた想いであったことだ。膨れ上がる人々の思念を受けて『カサンドラ』の機体が鳴動する。
それこそが求められた者。
平和への希求も良いだろう。だが、それ以上に生きていなければならない。人とは、生命とはそういうものだと示すように穣は己の機体に流れ込んでくる思念を頼りに、今だ救いを求める人々の手を取るように救出活動へと走るのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
第2章 ボス戦
『アグネリウス』
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POW : 破邪の炎
光輝く【あらゆる行動阻害要因を焼払う炎を纏った姿】に変身する。武器は【炎で形作った近接武器】しか使えないが、[炎で形作った近接武器]の射程外からのダメージは全て100分の1。
SPD : 不滅の炎
戦場全体に【効果時間中は如何なる手段でも消せない炎】を発生させる。レベル分後まで、敵は【様々な形で襲い来る炎】の攻撃を、味方は【生命賦活・物質再生の力を宿す炎】の回復を受け続ける。
WIZ : 断罪の炎
戦場にレベル×5本の【万物を焼却せしめる灼熱の光線】が降り注ぎ、敵味方の区別無く、より【搭乗者の価値観において悪である】対象を優先して攻撃する。
イラスト:落葉
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠ルクレツィア・アストリュード」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
叫ぶ。
どんなに叫んだところで、止められないことを『ノイン』首席は知っていた。
これは己の自覚せぬ力による所で行われていることだ。
頭が割れるように痛い。
いや、実際にもう割れているのかもしれないと思うほどだった。身を引き裂くように、心さえも引き裂かれる。
割かれ、己が二つになる。二つになったものはまた分かたれ、四つに増える。四つに増えたものは、十六を超えていく。
痛みが、膨れ上がっていく。
「こらえようのない痛みでしょうね。猟兵は多く私を殺し殲しました。恐らく数が足りなくなっているから、今もあなたを分割しているのでしょうね」
『プラナスリー』の『ノイン』は其のさまを見やる。
『ノイン』首席を動力として組み込んだオブリビオンマシン……『アグネリウス』のアイセンサーが煌めく。
「私は、嫌だ。こんなのは、嫌だ。私は平和のために生まれて、平穏を齎すために生きて、それがわかっているから、懸命に……こんなのは嫌だ!」
叫ぶ『ノイン』首席に『プラナスリー』の『ノイン』は笑う。
「それが『フュンフ・エイル』の求めた『平和』というのならば無駄ですよ。それこそが争いの火種なのですから」
其の言葉に応えるようにして『アグネリウス』が地下より地上へと飛び出す。
隔壁を吹き飛ばしながら、其の溢れる衝動。浄化の炎でもって、平穏さえも焼滅さんと地上をさらなる炎で持って埋め尽くす――。
●熾火は『赤赤』く昌盛
赤き浄化の炎が地下より地上に吹き荒れ、オブリビオンマシン『アグネリウス』が出現した瞬間、空に渦巻くは光。
猟兵たちは見ただろう。
その|光の渦《サイキックロード》より現れるは、一騎の赤いキャバリア。
猟兵には知っている者もいるだろう。
それは『熾盛・改』。
『グリプ5』を中心とした戦乱の渦中にあり、地下帝国『バンブーク第二帝国』との戦い、そして『シーヴァスリー』を作り上げて世界の破滅を願ったロボットヘッドと融合を果たして消えた機体であると。
「……赤い、『セラフィム』……?」
『プラナスリー』の『ノイン』の眉根が寄せられ、訝しむような表情になっていた。
しかし同時に猟兵たちは己たちの知る『熾盛・改』とそれが異なる事を知る。
まるで二人羽織のように機体にかぶさった装甲が増設され、六本腕が存在していないのだ。
「……人を救うのに必要なのは二本の腕があればいい」
静かな声が響く。
それは『熾盛・改』のコクピットから響く。
その声を猟兵たちは知っている。
よく知っている。
「そうだろう、『フュンフ・ラーズグリーズ』。いや、『サツキ・ラーズグリーズ』。あんたは知っているはずだ。今は眠っているのかも知れないが」
『熾盛・改』の二人羽織のような装甲が剥がれるようにして変形し、赤いもう一騎のキャバリアへと変貌を遂げる。
眠るような機体が面を上げた瞬間、アイセンサーが煌めく。
それは睥睨する。
この惨状を生み出したオブリビオンマシンを。浄化の炎放つ『アグネリウス』を。
『熾盛・改』のコクピットの中で、声の主は伏せた瞳を開く。
揺れる艷やかな黒髪。
その瞳に満ちる光は闇を切り裂く、造られた虹の輝き。
「『戦いに際しては心に平和を』――そして、『己の闇を恐れよ』、『されど恐れるな、その力』……か。悪くない」
『熾盛・改』――名と体を改めた二機の赤い『セラフィム』は、地下へと飛び込んでいく。
それはまるで、オブリビオンマシンは猟兵たちに任せたと言わんばかりの挙動であった――。
風車・拳正
……謎が謎を呼ぶ。……更にワケわかんなくなってきたぜ。
(けどまあ、一つだけ分かったこともある。それは)
とりあえず目の前のお前はぶっ飛ばしていいんだな?
ノイン、聴こえるか分かんないが、一応言っとくぜ
住民は無事避難した。後はテメェだけだ。そのコックピットからぶっ飛ばして出してやるから、構えとけーー!
あの炎は……避けるのは無理そうだし、長期戦は……俺もノエルもキツいか。
となれば、仕方ねえ、一か八か、耐えて懐に入って一撃に駆けるしかねえな。【激痛耐性、覚悟】
【視力、情報収集】で相手の動きを観察して、相手が武器を振るった瞬間に懐に入ってUC放つ!【カウンター、勝負勘】
吹っ飛べ!ショック・ザ・インパクト!
これは恐らく焼き増しなのだろうと思う。
繰り返される事象。
そして、謎もまた刷り上がるようにして呼び込まれる。
|光の渦《サイキックロード》より現れた一騎のキャバリアが二機に分かたれ、地下へと飛び込んでいくさまをみやり、風車・拳正(衝撃の鉄拳・f41386)は正しく謎が謎を呼ぶような展開であると思ったことだろう。
「……更にワケわかんなくなってきたぜ」
だが、彼の瞳はに宿る意志は幾ばくも損なわれていなかった。
依然、己が為すべきことは決まっている。
そう、たったひとつだけだ。
「とりあえず、目の前のお前はぶっ飛ばしていいんだな?」
眼前に迫るは体高5m級の戦術兵器。
赤き人型。
その身より膨れ上がるようにして放出されるは浄化の炎。手にした炎の剣は二刀。
「――!!!」
絶叫が響き渡る。
それが『ノイン』首席の挙げる悲鳴であることを拳正は知るだろう。
身と心を引き裂かれるような痛みに喘ぐ彼女は、もはやオブリビオンマシン『アグネリウス』の動力でしかない。
意志はなく。
けれど、その力を悪しき心によって利用されているだけの存在でしかない。
ならばこそ、拳正は叫ぶ。
迫る炎纏う鋼鉄の巨人が相手だろうと退くことはない。
「『ノイン』、聴こえるか分かんないが、一応言っとくぜ」
息を吸い込む。
コクピットに届くかはわからない。そもそも意識があるのかさえわからない。
けれど、言わずには居られなかった。
「住民たちは無事避難させた。後はテメェだけだ。今から」
そう、拳を握りしめる。
迫る炎の刀が振り下ろされていたとしても関係ない。
恐れは今必要ない。振り払い、投げ捨て、かなぐり捨てた。
「そのコクピットをぶっ飛ばして出してやるから、構えとけ――!」
踏み込んだ先に迫る炎の刀の切っ先。
圧倒的なスケールの差があった。
身を焼く灼熱。
その痛みに肌が引き裂け、血潮は蒸発する。だが、それでも拳正は踏み込み、その腕を振るう。
それはクロスカウンターの一撃。
振るわれた炎刀をかいくぐるように、その身を焼き焦がしながら拳正は裂帛の気合と共に踏み込み、その小節の一撃を『アグネリウス』のコクピットハッチへと叩き込む。
轟音が響く。
それは内部にいるであろう彼女の意識に届いただろうか。
戦いの鐘を鳴らす。
それはゴングの音だ。これより始まる猟兵とオブリビオンマシン。
その間にて捕らわれた彼女を救い出すという戦いの始まりを告げる一撃。彼の拳の形にひしゃげたコクピットハッチをみやり、拳正しいは、その瞳をユーベルコードに輝かせる。
「これからだぜ! 吹っ飛べ! ショック!(ヒッサツノイチゲキ) ザ! インパクト!」
放つ拳が光を纏う。
炎を吹き飛ばし、その鋼鉄の檻めいたオブリビオンマシンを、その悪意を砕くように放たれるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
シルヴィ・フォーアンサー
……よくわからないけどとりあえず目の前のオブビリオンマシンを倒そうか。
『厄介そうな相手だ、気をつけろ』
……消すことはできないなら火に巻かれないようにする。
シルエット・ミラージュからのロケット飛ばしてからのトルネード・スラッシュ。
高速回転する本体とビームサーベルで炎を切り散らしながら接近。
分身と合わせて全方位から入れ替わり立ち替わり切り刻んで再生する以上のダメージを与え続けるよ。
泣き叫ぶ声が聴こえる。
それはオブリビオンマシン『アグネリウス』の動力としてコクピットの中に埋め込まれた『ノイン』首席の身と心を引き裂かれる痛みに喘ぐ声であった。
悲痛な声。
けれど、同時に対峙するシルヴィ・フォーアンサー(自由を求めた脱走者・f41427)は知る。
「……よくわからないけど、とりあえず倒さないといけないんだよね……」
痛みに喘ぐ声を聞く。
痛いのは依頼だ。怖いのも嫌いだ。
それを齎すものは全て嫌いだと言える。シルヴィにとって、そういうものは全て排除したいものであった。
それを撒き散らすものだって。
吹き荒れる炎は消えることがない。
『アグネリウス』の放つ炎は、そういうたぐいの物だった。|『超能力』《サイキック》によるものか、それとも『アグネリウス』というオブリビオンマシンに元来備わった能力7日は判然としない。
確かなことは一つ。
『厄介そうな相手だ、気をつけろ』
サポートAIである『ヨルムンガンド』の声がコクピットに響いた瞬間、モニターには『アグネリウス』が踏み込んできていた。
「……速い」
それに、とシルヴィは理解する。
『アグネリウス』の機体に纏った炎は、それ自体が燃え移れば、二度と消すことのできないたぐいのものだ。
如何に己の駆る『ミドガルズ』の装甲が堅牢であったとしても、あの燃え盛る炎でもって自分は蒸し焼きにされてしまうだろう。
ならばこそ、シルヴィの瞳はユーベルコードに輝く。
「……わかるよ。その痛みは。その苦しみは、怖さは。わかる。よくわからない敵だけど、それだけはシルヴィにはわかる」
だから、と彼女は無数のシルエット・ミラージュと共に戦場へと踏み込む。
迫る炎を躱し、かいくぐり、抜き払ったビームサーベルの残光が『アグネリウス』を刻む。
「……浅い」
身に纏った炎がビームを軽減させているのだろう。
『敵の熱量の方が上だと言うのか。有効打は……』
「……こちらの一撃が軽いっていうのなら、数を重ねるだけ。なんために分身したと思ってるの」
シルヴィは『ミドガルズ』の分身達と共に一気に『アグネリウス』を囲い込む。
一撃が炎によって有効打となりえないというのならば、重ねていくだけだ。斬撃を、己のユーベルコードを。
それは嵐のようだった。
分身と本体に寄る全方位からの『アグネリウス』を取り囲んでのビームサーベルの乱撃。
たしかに炎の出力に負けてビームサーベルの威力が低減している。
けれど、ならば数をこなすだけである。
嵐のように放たれる『ミドガルズ』の斬撃は、炎を切り裂いた瞬間、更に追撃の斬撃が刻まれる。如何に再生するのだとしても、それを上回る速度でシルヴィは攻撃を叩き込んでいくのだ。
「……痛いのも、怖いのも、全部壊してしまえばいいだよ。シルヴィはそうしてきた」
だから、と『アグネリウス』の中から響く痛みに喘ぐ声に応えるようにシルヴィはビームの嵐と共に、その痛みと恐怖を齎す存在……オブリビオンマシン『アグネリウス』の躯体を切り刻み、破壊するために攻撃を叩き込み続けるのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
ガイ・レックウ
【POW】で判定
『仕方ねえな…色々聴きたいが…まずは命をかけて救うだけだ!』
【オーラ防御】を幾重にも纏い、コスモ・スターインパルスを【リミッター解除】し【限界突破】させた駆動で突撃するぜ。
『救ってやるよ…平和を掴むために!』
電磁機関砲での【制圧射撃】とブレードでの【鎧砕き】で攻撃し、近距離で相手の攻撃を【戦闘知識】で【見切り】ギリギリで避けるぜ。
そして懐に飛び込んでからユーベルコード【ドラゴニック・オーバーエンドMAX】を叩き込むぜ!
吹き荒れる炎は動力として組み込まれた『ノイン』首席の痛みに呼応するものであっただろうか。
オブリビオンマシン『アグネリウス』は|『超能力』《サイキック》を有するが故に、動力と成った彼女の力を引き出し続けている。
不浄なるものを浄化する炎。
即ち、戦う者を煉獄へと誘う炎であった。
「仕方ねえな……色々聞きたいが……まずは生命を掛けて救うだけだ!」
ガイ・レックウ(明日切り開く流浪人・f01997)は己の乗機である『コスモ・スターインパルス』と共に戦禍の炎吹き荒れる戦場へと踏み込む。
炎は自在に吹き荒れ、形を為していく。
二刀の形を為した炎を手繰る『アグネリウス』の力は圧倒的だった。
しかし、同時にそれが乗り手……即ち『ノイン』首席の技量によるものではないと知ることができただろう。
それは自律稼働するオブリビオンマシン『アグネリウス』の持つデータとしての技量である。
故に直線的。能動的ではない動きで持って振るわれる斬撃は、いっそシュミレーターであると言われた方がしっくり来るほどであった。
「――!!!」
「泣き叫んだってな……!」
ガイは『ノイン』首席の身と心を引き裂かれるかのような痛みに喘ぐ声を聞く。
どれだけ泣き叫んだところで、戦禍の炎は待ってはくれない。
何処まで行っても結局、この戦乱の世界クロムキャバリアにおいて力だけが絶対的な事柄として君臨し続けている限り、己もまたその輪廻に囚われようとしていた。
機体の駆動系が悲鳴を上げている。
関節部が火花を散らす。
それほどまでの限界を突破しなければ『アグネリウス』の動きに『コスモ・スターインパルス』がついていけていないのだろう。
いや、違う。
ガイの操縦技術に追いついていないのだろう。
電磁機関砲の弾丸を炎刀が切り払う。高熱の炎は、ただ振るうだけで銃弾さえも溶かし尽くしてしまうのだ。
「チッ……牽制にもなりゃしねぇか!」
ガイは敵の懐に飛び込まねばならないと知るだろう。
見切ることはできる。
だが、炎刀の余波だけで機体の装甲が溶断されるのだ。
エネルギーインゴットに誘爆しようものなら、己のほうが先にやられるとさえ理解できるだろう。
「救ってやるよ……平和を掴むために!」
『コスモ・スターインパルス』のアイセンサーがユーベルコードに輝く。
踏み込んだ機体に振るわれる炎刀とブレードが激突する。
炎が吹き荒れ、凄まじい衝撃が機体のフレームを歪ませる。だが、それでもギリギリのところでガイは己の機体の右腕を犠牲にして直撃を避ける。
爆発が荒んだ。
瞬間、失った機体の右腕から炎が噴出する。
「燃えよ!灼熱の炎!猛れ!漆黒の雷!」
ドラゴニック・オ-バーエンドMAX(ドラゴニック・オーバーエンドマックス)。
それがガイのユーベルコードだった。
吹き荒れる炎は腕へと変化し、その小節の一撃を『アグネリウス』の頭部へと叩き込む。
裂帛の気合と共に放たれたそれは、己の機体右腕を犠牲にし、また同時に機体のあちこちを損壊させながら『アグネリウス』の頭部のフェイスガードを破壊し、瓦礫の山へと叩き込むのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
村崎・ゆかり
還ってきたの、あれが……!? 今この時に?
いいでしょう、オブリビオンマシンはあたしたちが片付けるわ。地下にある何物かは、任せるからね!
それじゃあ相対を始めましょう。踵をカツッと鳴らして。
「全力魔法」重力の「属性攻撃」で天威千里法。
重力千倍。いかに頑強な機体でも、全身に等しく負荷がかかれば、脆いところから壊れていく。当たり前の事ね。
炎か。ありふれてる。
「結界術」に「侵入阻止」「オーラ防御」「火炎耐性」を付与して、ドーム状に展開。
あたしの「継戦能力」舐めないでね。これ、一日は張っていられるわ。あなたの炎はどれくらい持つのかしら?
あたしは機体をガラクタに変えるだけ。『ノイン』主席救出の誉れは譲るわ。
一騎から分かたれた二騎の赤い『セラフィム』がオブリビオンマシン『アグネリウス』の存在していた地下へと飛び込んでいくのを村崎・ゆかり(“紫蘭”/黒鴉遣い・f01658)は見た。
「還ってきたの、あれが……!? 今この時に?」
赤い『セラフィム』。
元の名を『熾盛・改』、嘗て『シーヴァスリー』との戦いにおいて消息を絶ったキャバリアの名である。
その赤い……いや、形を変えたそれが今まさに己たちの前に光の渦より現れたのだ。
驚愕に値することだったのだろう。
だが、ゆかりは即座に思考を切り替えた。
あの挙動を見るに、あの赤い『セラフィム』の二騎はオブリビオンマシン『アグネリウス』を己たちに任せるつもりなのだろう。
ならば、それを果たさなければならない。
「地下に在る何物かを追った……ってこと? いいでしょう、オブリビオンマシンはあたしたちが片付けるわ」
「――!!!」
その言葉に咆哮するように『アグネリウス』の炎が吹き荒れる。
それは嵐のように渦巻く炎だった。
襲い来る炎を前にゆかりの瞳がユーベルコードに輝く。そして、その足が踏み鳴らされた瞬間、その踏み鳴らした足を中心に波紋が広がる。
迫る炎は苛烈そのもの。
だが、その炎を手繰る機体をこそ、ゆかりは天威千里法(テンイセンリホウ)によって重力を千倍にまで引き上げたのだ。
強烈なる重力がオブリビオンマシン『アグネリウス』を襲う。
見えぬ重力に捕らわれた機体が、大地に脚部をめり込ませながら、しかし見えぬ重圧に耐えるように……いや、堪えるようにきしんでいる。しかし、炎は止まらない。ゆかりを焼き殺さんと迫っているのだ。
「ありふれてるわね、炎なんて」
消えることのない炎。
結界で炎を遮断してもなお、高熱がゆかりの肌を焼く。
確かにこの炎は如何なることをしても消すことのできないものなのだろう。だが、これは根比べだ。
「体が重いでしょう? どんなに頑強な機体でも、全身に等しく負荷がかかれば、脆いところから壊れていく」
その言葉と共に『アグネリウス』のスタビライザーめいた鋭角な装甲が折れ曲がっていく。
『アグネリウス』は咆哮する。
ジェネレーターとなっている『ノイン』首席の超能力を吸い上げるようにして重力を捻じ曲げながら一歩、また一歩と進んでいくのだ。
ゆかりは炎を遮断しながら笑う。
「やるわね。それでもなお動くというの。でも、あたしは機体をガラクタに変えるだけ。千倍の重力の中で歪まぬフレームはない。フレームが歪めば運動性能に影響が出るでしょう?」
ならば、そこに『ノイン』首席救出の隙が生まれる。
「『ノイン』首席救出の誉は譲るわ」
それにそこまで執着も興味もない、とゆかりは迫りくる炎を防ぎながら、なおも重力の檻を脱っしようとする『アグネリウス』の機体の損壊を認めるのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
朱鷺透・小枝子
…何が私以外だ、自分はお前を助ける為に来たんだ!
だから、貴様は!!
『禍集・壊塵非生』ディスポーザブル02群を集合、融合。
敵を壊す為に、三眼で見据え、六腕を、拳を握る。
【推力移動】|灼熱光剣《ブースター》展開【空中機動】
アグネリウスへ殴り込む!
壊れろぉおおおおお!!!
【念動力】劫火霊障を纏い、不滅の炎を払いのけ、六腕の【怪力】で敵機を殴り飛ばし、己が霊障を広げ、襲い来る炎も、敵を治す炎も、捕らえる。
【呪詛】劫火伝いに不滅の炎を|【捕食】《融合》消せない炎なら、己が【闘争心】で捻じ伏せ、制御する。
貴様がそこに巣食うなら!より強く!!燃やせ──!!!
六腕の拳打【弾幕】と共に、壊した敵機の破片を、炎を、より強く燃える劫火の霊障で【焼却】溶かし、取り込み、己が物とし【肉体改造】
束ねた力の一つにする。拳を強くする。
お前が平和を求めるなら!その火は消えない!
お前がノインなら!目を逸らすな!!その心を!!!
|灼熱光剣《ブースター》六腕部展開【吹き飛ばし】拳打加速
より速く敵機を壊し切る!
捻じ伏せろ!!!!
『私以外の皆を助けて』
それは自己犠牲の精神から発露した言葉であったことだろう。
人の上に立つということ。
それは滅私奉公たる想いがあればこそである。それは尊きものに思えるだろう。まばゆいものに見えるだろう。美しいものに思えただろう。
だが、それが心より発露したものであったとしても、常に発露してはいけないものであることを朱鷺透・小枝子(亡国の戦塵・f29924)は本能的に悟っていたのかも知れない。
「……何が私以外だ、自分はお前を助ける為に来たんだ!」
己の乗機『ディスポーザブル02』の中で彼女の瞳は怒りの色に染まっていた。
『ノイン』首席は確かに『平和』を体現したのだろう。
破滅に向かう小国家『第三帝国シーヴァスリー』を変えたのだろう。
だが、こうやってまた善き心は悪しき心の食い物にされていしまう。それが世の理であり、常であるというのならば、なんとも無常なることだろうか。
故に小枝子は怒り、狂う。
「だから、貴様は!!」
対するオブリビオンマシン『アグネリウス』が噴出するは炎の嵐。
咆哮のさなかに悲鳴が聴こえる。
『ノイン』首席の身と心を引き裂く声だった。
魔眼が見開かれる。
人工であったとしても、そこに炎のごとき煌めきがある。
溢れるようにして無数の『ディスポーザブル02』が戦場に現れ、融合していく。束ねた機体は圧縮されるようにして機体が変貌していく。
大質量を凝縮したかのように小枝子の姿はオーバーロードへと至る。
その姿、三眼。
その腕、三対。
握りしめられた拳の硬さは言うまでもない。背に追う灼熱に輝く剣が凄まじ圧力を噴出しながら炎渦巻く嵐の中、その渦中に存在するオブリビオンマシン『アグネリウス』へと飛び込む。
「壊れろぉおおおおおお!!!!」
小枝子の咆哮が戦場を切り裂く。
不滅の炎が迫っている。如何なる現象をしても消すことのできぬ炎を前に小枝子の瞳が煌めく。
消えぬというのならば。
「切り裂くッ!!!」
振るった拳が霊障を纏いながら不滅の炎を吹き飛ばす。
その切れ間に小枝子は飛び込み、大地を踏み抜くようにして瓦礫の破片を巻き上げながら六腕に力をみなぎらせる。
「――ッ!!!」
「黙れッ!!! 貴様には用はない!!!」
裂帛の気合と共に襲い来る炎を六腕から放たれた衝撃波が吹き飛ばし続け、さらに切り裂いた炎を小枝子は顎をもたげ、噛み砕く。
身を内側から灼く炎。
されど、その炎をこそ己の中へと融合しながら、踏み込む。
「貴様がそこに巣食うなら! より強く!!! 燃やせ――!!!」
拳の殴打が炎を吹き飛ばしながら『アグネリウス』へと迫る。
己の内側は炉である。
あらゆるものを溶かし、燃やし尽くす炉。
情念ではない。
ただの衝動である。己が何者であるのかを知らなくとも。己が何を為すことは理解している。
即ち、破壊である。
握りしめた拳は救うためではない。
「人が!」
誰かが救うものではない。
己で救われるものである。だが、それができない。なぜか。それは、その心に巣食う闇があるからだ。雑念めいた障害。それを小枝子は破壊する。
「お前が平和を求めるなら! その火は消えない! お前が『ノイン』なら! 目を逸らすな!! その心を!!!」
どれだけ痛みに心を否定されそうになるのだとしても。
その燈火は途絶えさせてはならないのだ。
今日の自分が滅びるのだとしても。
明日の誰かが、その燈火を引き継いでくれる。決して為し得ることのできないような虚構めいたものも、そうやって紡いでいくからこそ形を変えてでも繋がっていくのだ。
背に追った灼熱の輝きが炸裂するようにして小枝子の体を『アグネリウス』の眼前へと飛び込ませる。
「捻じ伏せろ!!!!」
己の心にある燈火を消し去らんとするものを。
その思いを込めて、小枝子は『アグネリウス』のフェイスガードを砕き切るのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
メルヴィナ・エルネイジェ
●エルネイジェ御一行
新手のセラフィムは敵じゃないのだわ?
地下に行ったという事は地下に何かあるのだわ
でも今はアグネリウスを止める事がやるべき事なのだわ
ここからはリヴァイアサンの力を借りるのだわ
海竜の寵愛で機体を包めば擬似的に水中と同じ環境でいられるのだわ
本来通りの力を発揮出来る訳じゃないけど、リヴァイアサンにはこういう戦い方もできるのだわ
あの炎はただの炎じゃないのだわ
今こそ封炎の暴雨を降らせる時なのだわ
相手の炎を弱めてこちらの炎の耐性を高めるのだわ
更にオーシャンバスターで放水するのだわ
威力は高め過ぎないよう注意するのだわ
濡れると感電しやすくなるから姉上の雷も通り易くなるのだわ
ソフィア・エルネイジェ
●エルネイジェ御一行
あのアグネリウスにノイン首席が?
新手の二機は戦いに介入するつもりが無いと見えますが…
此方は当初の予定通りにノイン首席の身柄確保を優先致しましょう
なんたる熱気!
まさに焔の化身のような機体です
詠唱を始めつつ灼熱への防備を固めましょう
サイドブースターで横方向への瞬発加速を繰り返しながら、降る光線を盾で受け止めます
メルヴィナの暴雨が吹き荒れれば炎の熱も多少なりとも軽減されましょう
十二分な詠唱を重ねた後、ナイトランスを掲げて聖雷縛封を放ちます
確かに人を救うのに二本の腕があれば事足りますが、私としては更に悪を穿つ槍と闇を遮る盾、そして踏み留まる為の二本の脚が欲しいところですね
桐嶋・水之江
●エルネイジェ御一行
あーもー疲れたわー
なんて言ってられないのよねぇ
だって未来の顧客の目の前だし?
なんか妙なゲストも来たみたいだけど行っちゃったわね
邪魔する訳でも無いなら一旦置いておきましょう
引き続きカナリアで行くわよ
ソフィア皇女が前衛なってくださるようだから私は後衛で頑張りましょう
メガビームキャノンの速射で弾幕を張るわ
当てるのが狙いじゃないから適当にばら撒きましょう
続けて氷柱を発射
速射弾と誘導弾の合わせ撃ちを避け切れるかしら?
氷柱で凍結させられたら良し
灼熱レーザーはメルヴィナ皇女の雨で火の勢いを弱め、更に水の加護を受けたカナリア装甲で防ぐわ
二機に分かたれた一騎のキャバリア――『熾盛・改』。
しかし、光の渦より出現したその機体を見上げたメルヴィナ・エルネイジェ(海竜皇女・f40259)は、『セラフィム』の姿を想起させていた。
「新手の『セラフィム』は敵じゃないのだわ?」
「あの二機は戦いに介入するつもりがないと見えますが……」
『インドラ』を駆るソフィア・エルネイジェ(聖竜皇女・f40112)が水の膜に包まれたメルヴィナの元へと駆けつける。
そして桐嶋・水之江(機巧の魔女・f15226)の『カナリア』が捉えたのはオブリビオンマシン『アグネリウス』の吹き荒れる炎と、同時に地下に飛び込んだ機体の行く末だった。
「地下に向かったようね。一体何が目的なのかしら」
「何かがあるということなのだわ……でも、今は『アグネリウス』を止めることがやるべきことなのだわ」
メルヴィナの瞳が煌めく。
その意志は己の乗機を呼び寄せる。
「『リヴァイアサン』、来るのだわ」
彼女の体を包んでいた水の膜が膨れ上がるようにして竜の形を作っていく。それは彼女のキャバリア『リヴァイアサン』。
巨躯より放たれる咆哮が、今より此処を大海と定める。
如何に地上。如何に炎が吹き荒れる戦場にあるのだとしても、今の『リヴァイアサン』を止めることは何物にもできようはずもない。
「メルヴィナ、無理は」
「大丈夫なのだわ、ソフィアお姉様。あの炎はただの炎じゃないのだわ」
「ええ、なんたる熱気か。まさに炎の化身のような機体です」
姉妹故に互いの機体のことは良く承知している。
故に二人は弾けるようにして分かたれ、戦場に『インドラ』の疾駆が雷鳴のようにほとばしる。
迫りくる炎を、降り注ぐ光線を『インドラ』のシールドが受け止める。
「やはり……! 登場者の意志に呼応する力……!『ノイン』首席は私達のことを悪だと断じていない!」
本来のオブリビオンマシンに狂わされた思想を持つ搭乗者であったのならば、今の光線で『インドラ』の丸盾は撃ち抜かれていたことだろう。
だが、威力が低い。
それは即ち、『動力』として組み込まれている『ノイン』首席がオブリビオンマシン『アグネリウス』の齎す狂気の思想に染まっていないことを示していた。
「それならば……水之江女史!」
「あー、はいはい。もー疲れたわーなんて言ってられないのよねぇ」
水之江は『カナリア』のコクピットの中で肩を回す。
市街地での救助活動で彼女は疲弊していたが、この状況ではそうも言っていられない。人の命がかかっているからだ。
否。
違う。
水之江にとって、これは商機である。
未来の顧客たちが見ている前である。なんだか妙なゲストがいたが、まあ、それもどう繋がる商売の縁であるかわからない。
故に、水之江は『カナリア』のメガ・ビーム・キャノンでもって『アグネリウス』を牽制する。
弾幕のように放たれるビームの光条を『アグネリウス」は割れたフェイスガードの奥にあるマシンアイをむき出しにしながら躱し続ける。
「機体性能が落ちてるってはずなのに、まだこれだけ動けるとはね……でもまあ、当てるつもりのない攻撃をかわされたところではね!」
水之江の瞳がユーベルコードに輝く。
「ここからが本気の私。見せてあげましょう、私の氷柱を」
それは、瞬時に凍結する氷の柱。
例え、その氷柱は炎の嵐の中に『アグネリウス』が姿を消したとしても捕捉し、追尾して迫るのだ。
「――!?」
「言ったでしょう、私の本気。これがね!」
次々と氷柱が『アグネリウス』の機体の装甲を貫き、そのフレームごと凍結せしめるのだ。
「今こそ封炎の暴雨(ファイアオブザ・シール)が降る時なのだわ」
降り注ぐ雨。
それは消せぬ炎を消してみせる雨であった。『リヴァイアサン』より放たれる雨と共にオーシャンバスターのすさまじい水圧の一撃が吹き荒れる炎を吹き飛ばす。
だが、それは副次的なことに過ぎない。
メルヴィナが狙ったのは、炎を消し去ることとではなかった。
彼女が狙ったのは、己の姉が駆る乗機『インドラ』の特性を引き出すことであった。
「ソフィアお姉様……今なのだわ。これならば、『インドラ』の!」
「ええ、よくやりました」
ソフィアは『インドラ』のコクピットの中で詠唱を続けていた。
確かに、とソフィアは思う。
吹き荒れる炎の最中、水之江の『カナリア』がメルヴィナの水の加護を受けた装甲で熱線を受け止め、『インドラ』を守る。
長くは保たない。
わかっている。けれど、それでもソフィアは思うのだ。
「確かに人を救うのに二本の腕があれば事足ります。ですが」
ソフィアの瞳がユーベルコードに煌めく。
人を救う手は誰かの手を掴むことが出来る。けれど、悪しき心を討ち滅ぼすためには穿つ槍と悪意を阻む盾が必要なのだ。
「何よりも! 悪しき道へと落ちんとする時、踏みとどまるための二本の足もまた必要なのです! 受けなさい、雷の戒めを! 聖雷縛封(サンダーバインド)!!」
『インドラ』の咆哮とともに放たれる槍の穂先よりほとばしる稲妻。
それは『アグネリウス』の機体へと打ち込まれ、その悪意を滅ぼすように凄まじい衝撃を戦場に吹き荒れさせるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ルクス・アルブス
【ステルク】
……ぷしゅー……
『ノイン』&『ノイン』に『エイル』さん、『パッセンジャー』……。
あの、もう、いろいろオーバーヒート気味で、
ステラさんとは違う意味で暴走もーどに入っちゃいそうですよぅ。
なんだかおほしさまがとんでるきがしますー(きらきらちかちか
……へぅ?
え? 『ノイン』さん、わたしの演奏聴いてくれるんですか!
そういうことなら、頑張っちゃいますけどいいんですね! いいんですよね!(ずずい
そーれーでーはー! 魂の【ボレロ】いっきまーす!
音楽は全てを解決してくれます! たぶん!
わたしには『エイル』さんや『ノイン』さんの難しい思いはわかりませんが、
わたしとしましては、『エイル』さんの思いのほうが好きです!
……|コックピットで《ひとつ屋根の下》当てちゃった仲ですしね♪
あ、いえ、好きっていうのはそういうのではなくてですね!?
な、なんでしたっけ、
『戦いに際しては心に平和を』
この思いが勇者としてはとっても響くってことでしてですね!?
ステラさん目が怖いです!
てっぽうしまってくださいよぅ(えぐえぐ
ステラ・タタリクス
【ステルク】
不思議な|タグのプラクト《予感》の正体はこの赤いセラフィム!?
あれはアスアスのエイル様(仮)……?
いえ、この声、この口調、そしてその言葉
まさかオーデュボン皇帝パッセンジャー?!
そういえばBAで見たセラフィムも『|Ⅵ《シックス》』…!
色々と問い詰めたい相手が増えた上にそのまま逃げられそうですが!
ノイン様!そろそろ決着と行きましょう!
フォル、いらっしゃい!(鳥型キャバリア)
ルクス様、意識をしっかり!
ノイン様に演奏聞かせるなら最後のチャンスですよたぶん!
【スクファム・ヴー・デューレヴ】で仕掛けます
フォル!思うままに飛びなさい!
……おそらく
|フュンフ・エイルを中心とした関係《ハイランダーナイン》は
いつの時代でも構築されるのでしょう
この時代の『ノイン』は首席様で
ノイン様、貴女は『フュンフ・エイル』の側に在った者
そしてヌル様と『その座』を争った……
その根底にある感情をどう言っていいかはわかりませんが
だからこそ|エイル様《平和》を否定する
貴女の妄執、このメイドが断ち切って差し上げましょう!
「あれは……!」
|光の渦《サイキックロード》より現れた一騎の赤い機体。
その姿をステラ・タタリクス(紫苑・f33899)は知るだろう。
だが同時に彼女は目を見開く。確かにあの機体の名は『熾盛・改』である。小国家『グリプ5』において『フュンフ・ラーズグリーズ』が最後に乗った機体であり、『シーヴァスリー』との戦いの最後に|光の渦《サイキックロード》の彼方に飛び去った機体でもあるのだ。
故に、彼女は目を見開く。
「なぜ、その機体に……! この声、この口調、そして何より、あの言葉!」
ステラは二機に分かたれ赤い『セラフィム』が地下へと飛び込んでいく様に問いかけるように言葉を発する。
「『超人皇帝』、『パッセンジャー』!」
「……」
その言葉にルクス・アルブス(『魔女』に憧れる『出禁勇者(光属性)』・f32689)の頭が白煙を上げているようだった。
彼女にはよくわからなかった。
ただでさえ、この状況がよくわからないのだ。
『ノイン』と『ノイン』。
便宜上、『ノイン』首席と『プラナスリー』の『ノイン』とわけているが、しかし同じ顔と同じ声である。わからん。
さらには『エイル』と『パッセンジャー』。
大空の世界、ブルーアルカディアにおいて知った名である。だが、わからん。
何もわからない。
ステラはなにか点と点を線で結びつけたようであるが、ルクスにはもうさっぱりであった。というか、頭がオーバーヒート気味であった。
彼女とは別の意味で暴走状態に入ってしまいそうだった。
「なんだかおほしさまがとんでるきがしますー」
ちかちかする視界。
考えすぎである。知恵熱と言っても良いのではないだろうか。
「色々と問い詰めたい相手が増えた上に、そのまま逃げられそうですが!『ノイン』様! そろそろ決着と行きましょう!」
そんなルクスを無視してステラが手を天に掲げる。
「フォル、いらっしゃい!」
飛来する鳥型キャバリアの羽ばたきがルクスの頬を叩くようだった。
「ルクス様、意識をしっかり!」
「……へぅ?」
「ダメですね、これは。何か発破に……『ノイン』様に演奏聞かせるなら最後のチャンスですよ多分!」
「え?『ノイン』さん、わたしの演奏聞いてくれるんですか!」
目が見開かれるルクス。
今、演奏って言葉にだけ反応したよね?
「そういうことなら、頑張っちゃいますけどいいんですね! いいんですよね!」
ステラに詰め寄るルクス。
「詰め寄る相手が違います、ルクス様」
あっち。
演奏聞かせる相手はあっち、とステラはオブリビオンマシン『アグネリウス』を示す。
猟兵たちのユーベルコードによって強大な力を発露するオブリビオンマシンのちからは削がれ続けている。
ならばこそ、ここで畳み掛けねばならない。
「はい! 同意とみなしますね! そーれーでーはー!」
ルクスの瞳がこれ以上にないくらいに輝く。
それはユーベルコードの発露を示す輝きよりも、さらに輝きを解き放つものであった。そう、演奏できる。誰にはばかることもなく。誰に止められることなく。
演奏していいというお許しを得たルクスはこれまでにないくらいに活き活きとしていたのだ。
現金なもんであると言われれば、それまでであるが、仕方のないことである。
だってこれまで相当にルクスは演奏を止めに止められてきたのだ。いや、まあ強行したこともあったが、それはそれである。
抑圧された環境からの脱却。
「魂の! ボレロいっきまーす!」
グランドピアノの鍵盤に指を降ろす。
所作、見た目だけであったのあらば、名だたる演奏家のようでもあった。しかし、その音色は壊滅的であった。
空に『フォルティス・フォルトゥーナ』と共に低空なれど逃げ込めたステラはまだマシだった。
ひどい。
ものすごい音が響き渡る。
「音楽は全てを解決してくれます! たぶん!」
暴力、という言葉に置き換えても行けるやつである。暴論というやつである。
奏でられる演奏に『アグネリウス』の機体装甲がきしむ。
動きを止めざるを得ないほどの圧倒的な演奏によって『アグネリウス』の足が止まったことをステラは見逃さなかった。
「フォル! 思うままに飛びなさい!」
ステラの言葉と共に両翼から漆黒のサイキックエナジー光弾が乱舞するようにして『アグネリウス』の機体を打ち据える。
弾丸の雨めいたそれは『アグネリウス』の炎さえも吹き飛ばす。
『ノイン』という存在。
そして『フュンフ・エイル』という存在。
いつの時代でも、どの世界でも。その存在は争いと共にある。『ノイン』の感情が如何なるものかをステラは想像するしかない。
愛憎入り混じった感情の名をまだ知らぬがゆえに。
「だからこそ|『エイル』様《平和》を否定する。貴女の妄執、このメイドが断ち切って差し上げましょう!」
「そうです。わたしには『エイル』さんや『ノイン』さんの難しい想いはわかりませんが」
でも、とルクスは思うのだ。
魂の演奏が台無しにしてしまっているが。
「わたしとしましては、『エイル』さんの想いのほうが好きです! ……|コクピットで《ひとつ屋根の下》当てちゃった仲ですしね♪」
余計な一言を言った瞬間、ルクスは己の背に突き刺さるような視線を受けて背筋が泡立つ想いであった。
ゾクリとした冷たい感触。
振り返るとそこにあったのは『フォルティス・フォルトゥーナ』から見下ろすステラの強烈ながら、しかして冷めきった視線であった。
「め、目が怖いです、ステラさん! あっ、やめてください、てっぽうを向けるのやめてくださいよぅ!」
いらんこと言うからである――!
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ユーリー・ザルティア
彼女もまたオブビリオンに利用されてただけ…か…
このままにして黒幕の思い通りというのは…気に入らないね
逝くよレスヴァント。乗り換える暇なかった!
『ダッシュ』で敵機に肉薄して、敵機にクラッキングアンカーを撃ち込んで『ハッキング』してコックピットの正確な位置とノインの状態を『情報収集』
思い付きだけど、接続してる今なら…『読心術』でノインに『精神攻撃』で超能力を『ジャミング』
アグネリウスには『ハッキング』で『データ攻撃』でノインとの接続をソフト的に『切断』する。
超能力で動くのなら、少しは動きを封じれるはず!
その一瞬を『瞬間思考力』で『見切り』近距離からのアストレイアによる『制圧射撃』で一気に破壊する
戦況は目まぐるしく動き続ける。
変動し続ける状況を即座に読み取るのは難しいことだ。けれど、それを成さなければ生き残ることができないのもまた戦場であることをユーリー・ザルティア(自称“撃墜女王”(エース)・f29915)は良く理解していたことだろう。
当初の予定では機体を乗り換えるつもりだったのだ。
けれど、その余裕がないことを彼女は知る。
己の駆る『レスヴァント』。
確かに最新鋭とは言えない機体であるが、それでおこれまで彼女とともに数多の戦場を駆け抜けてきた機体である。
「彼女もまたオブリビオンマシンに利用されてただけ……か」
吹き荒れる炎をユーリーは見た。
地下より現れたオブリビオンマシン『アグネリウス』の力は強大そのもの。
それを『動力』とした『ノイン』首席の『超能力』でもって増幅させているのだろう。炎は更に勢いをまして『レスヴァント』へと迫るのだ。
「このまま黒幕の思い通りというのは……気に入らないんだよね!」
振り下ろされる炎刀の斬撃を装甲を溶解させながら『レスヴァント』が躱す。
直撃ではないにせよ、掠めただけで装甲が爛れている。
これが『超能力』で強化された性能なのだろう。恐るべき力である。
「でも、その超能力っていうのが、『ノイン』首席がいないとふるえないものだっていうんなら!」
ユーリーはクラッキンクアンカーを『アグネリウス』へと打ち込む。
機体の制御を奪うことはできない。
けれど、敵の機体……コクピットの所在を正確に把握し、また取り込まれた『ノイン』首席の状態を把握できたのならば。
『私以外の皆を助けて』
クラッキングアンカーから逆流してくる思念。
それはユーリーが試みるまでもなく流入してくる『ノイン』首席の思いであった。どこまでも愚直に平和を求める者。
完全なる善性。
それゆえに、目的以外の、平和以外の何ものをも切り捨てることのできる善性は、悪性と変わらぬものであったことだろう。
誰かにとっては救世主であっても。
誰かにとっては悪魔そのものであった英雄が居たように。
ユーリーは理解するだろう。彼女もまた人間であるのだと。悪性を排したがゆえに、善性は悪性と変わらぬものへと堕すことを知らぬ幼さを持った人間であったのだと。
「ならっ!」
ユーリーは流れ込む思念を押し流し、叫ぶ。
「他の誰かのことばかりじゃあなくって、自分のことも考えるべきだったんだよ、君は!――『レスヴァント』!!」
ユーリーは一瞬の思考の果から意識を取り戻し、迫る炎刀の一撃をかわしながら至近距離で『アグネリウス』の機体へとアサルトライフルの銃口を突きつける。
例え、纏う炎があるのだとしても、この距離である。防ぐことも躱すことのできない弾丸の一撃を受けて『アグネリウス』が失墜していく。
其のさまをみやり、ユーリーはつぶやく。
「ほんと、どうしようもない世界だけどさ……けれど、それでも悪いことばかりじゃあないからやっていけるんだよ。良いことばかりじゃないのと同じようにね」
そうつぶやき、ユーリーは『レスヴァント』の爛れた装甲を排し、『アグネリウス』を下したのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
メンカル・プルモーサ
(試作型術式騎兵【ツィルニトラ】に搭乗)
炎に特化した機体か……後を追いたいけどその前にこの機体を無力化しないと被害が広がるな…
…炎による攻撃と再生能力…ね…それならばこちらはこれで対抗しよう…
…【輝く星は我が身と共に】を発動…空に満天の星を呼び出すよ…
そして星々から供給される魔力による障壁と超再生能力で炎に対応して…
…魔力で数多の光の剣を生み出して再生能力を上回る勢いで連続攻撃を仕掛けるとしようか…
…『アグネリウス』が光の剣に対応しはじめたら重奏強化術式【エコー】により効果を高めた雷撃術式でキャバリアの機能の麻痺を狙うとしよう…
撃ち抜かれた機体が炎で塞がれていく。
それが『動力』とされた『ノイン』首席の超能力に寄って強化されたオブリビオンマシン『アグネリウス』の性能であったというのならば、凄まじいものであったことだろう。
きしむフレームも、砕けた装甲も。
全てが『超能力』によって再生していく。
吹き荒れる炎は、その機体に宿った悪性を象徴するかのように渦をまく。
「――!!」
咆哮めいた音が響くのは、その内部にて取り込まれた『ノイン』首席』の超能力を吸い上げているためであろう。
「炎に特化した機体か……」
メンカル・プルモーサ(トリニティ・ウィッチ・f08301)は突如として現れた赤い二機の『セラフィム』を追いたいという逸る気持ちを胸の内に押し込んで、『アグネリウス』と対峙する。
己の駆る試作型術式騎兵『ツィルニトラ』は己の術式を、ユーベルコードを増幅させる機体である。
確かに『アグネリウス』の炎に寄る熱量と、再生能力は厄介極まるものであった。
だが、それでもメンカルは己ならば対抗することができると判断していた。
「天覆う輝きよ、癒やせ、灯せ。汝は満天、汝は天球、魔女が望むは綺羅星映す天象儀」
その言葉と共に生み出されるは、満天の星。
言うまでもなく偽物である。
しかし、プラネタリウムの天蓋をみやり、偽物であるからといって、その美しさもまた偽りではないのと同じように、メンカルの生み出した戦場を包み込む星々は確かな美しさを持ち、また同時に星々から『ツィルニトラ』に流入する凄まじい量の魔力を示していた。
機体の装甲が受けた魔力に寄って明滅するように輝く。
其のさまをみやり『アグネリウス』は本能的に後退していた。
魔力の総量が圧倒的なのだ。如何に強大な超能力を持つ動力としての『ノイン』首席を擁しているのだとしても、それでもなおメンカルのユーベルコードは示してみせたのだ。
そう、輝く星は我が身と共に(プラネット・ウィズ)あることを。
「……いくよ」
魔力で生み出された数多の光剣が煌めく。
それは戦場に生み出された星々と同じ数だけ生み出されている。数えることもできない。全天を覆うかのような光剣の切っ先を『アグネリウス』は見ただろう。
『ツィルニトラ』の指先が『アグネリウス』を示した瞬間、その光剣が一斉に飛び、炎を貫きながら穿つのだ。
再生能力を、炎さえも物ともしない圧倒的物量。
それによって『アグネリウス』は圧倒されるのだ。しかし、それでもなお『アグネリウス』は対応しようとする。
引き出す超能力は、未だ健在である。
ならばこそ、物量とてメンカル側にも限りが在ると踏んだのだろう。
「……凌ぐことではなくて勝負を決めに来た……勝負を生き急いだね」
メンカルは冷静だった。
光の剣の群れを突破されたとしても、それは彼女の予想の範囲であったからだ。
「……無理に突破しようとすれば、ほころぶ。学習しなかったかな、猟兵のユーベルコードを受けて」
雷のユーベルコード。
それをすでに『アグネリウス』は機体に受けていたはずだ。だというのに、有り余る再生能力と超能力にかまけたがゆえに『アグネリウス』は失念していたのだ。
メンカルが手繰る雷撃の術式が、その機体の機能を麻痺せしめるものであると。
機体がパワーダウンした一瞬、メンカルは示す。
今こそが『ノイン』首席を救う絶好の機会であると――。
大成功
🔵🔵🔵
防人・拓也
案の定、厄介そうだ。だが、やってやるさ。
指定UCを発動し、自身の間合いまで接近を試みる。
クナイを複数投擲し、敵の攻撃が当たりそうになった時に攻撃が外れる場所にあるクナイの所へ転移し攻撃を避ける。
自身の間合いに接近できたら、合わせ技としてUC『旋風術・疾風』を発動してコックピットブロック部分を狙う。そこに傷をつけて、クナイが通りそうな穴が出来たら、中のパイロットを傷つけないように穴へクナイを投擲。
クナイが刺さったらコックピット内へ転移してパイロットを確保し、外の安全な場所へ転移して安置。
全く…とんでもない迷惑を掛けてくれたな、ノイン。
必要があれば戻って残った機体に止めを刺す。
アドリブ・連携可。
ほとばしる雷撃の術式がオブリビオンマシン『アグネリウス』の動きを止める。
たしかに厄介なオブリビオンマシンであった。
炎に寄る攻撃能力と再生能力。
それを支える超能力。
汎ゆる点において『アグネリウス』の性能は規格外なものであった。
「案の定、厄介そうだ。だが、やってみるさ」
防人・拓也(独立遊撃特殊部隊ファントム指揮官・f23769)は他の猟兵の術式が炸裂し、『アグネリウス』の機能が一時的にダウンした瞬間を見逃さなかった。
時空間魔術・迅雷天神(ジクウカンマジュツ・ジンライテンシン)は速度に勝るユーベルコードである。
術式を施した装備、もしくは術式に寄るマーキングを行った地点へとワープすることができる。
故に手にしたクナイに術式を付与して拓也は『アグネリウス』への距離を詰めるのだ。
手にしたクナイより放たれたユーベルコードが『アグネリウス』のコクピットブロックを狙う。
其処にはすでに他の猟兵に寄って打ち込まれたアンカーの楔が残っている。
「如何に再生能力があるのだとしても、打ち込まれた異物までは排除できないと見た」
拓也は生身単身がゆえの身軽さでもって『アグネリウス』へと迫る。
けれど、一時的なパワーダウンから復帰した『アグネリウス』が咆哮するようにして炎を噴出させる。
視界が炎で埋め尽くされる。
皮膚を焼く圧倒的な熱量。
これほどまでの力を支えているのは機体性能だけではない。
『ノイン』首席の持つ超能力故であろう。
「近づけさせない、か。オブリビオンマシンがこちらの意図を読み取っている……ならば!」
放たれたクナイが『アグネリウス』の装甲に突き去った瞬間、拓也の体は一瞬でその場へと転移していた。
「コクピットブロックはすでに他の猟兵が印をつけてくれている!」
ならば、と彼は己の手にしたクナイを即座にコクピットハッチに打ち込まれたアンカーを押し込むように投げな放つ。
さらにユーベルコードの輝きが明滅する。
押し込んだアンカーの先は無論、コクピットであり『動力』として組み込まれている『ノイン』首席』が存在している。
彼女を救出するためには、そこから引き剥がさなければならない。
故に、穴を穿ったのだ。
「このままでは飛び込むこともできない。だが、すでに穴は穿った。そこに!」
放つクナイがアンカーを押し込んだことによって生み出された穴へと放たれる。炎に寄る再生は、僅か一瞬。
その刹那を狙って拓也はクナイを放ち、同時にユーベルコードに寄ってコクピットへと飛ぶのだ。
「全く……とんでもない迷惑をかけてくれたな『ノイン』……これは」
動力。
そう、呼ぶに相応しい光景だった。
数多のコードに絡め取られた彼女の体。これを救出するには己では破壊力が足りない。拓也は、ならば、とコクピットにマーキングを施す。
この機体を破壊し、なおかつ『ノイン』首席を引きはがす事のできる猟兵に託さねばならない。
「本当に厄介だ」
だが、希望は繋がっている。
ここには己だけではない。
他の猟兵達だっている。ならばこそ、拓也は後に託すように、コクピットの外に飛び出し、そのハッチへとクナイの印をつけるのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
安野・穣
(アドリブ連携歓迎)
光の渦…?…っ、今はこっちが先か!
粘って動力切れを待てば少しは倒しやすくなる、だろうが…
…ま、その択はないな。言葉にならない叫びでも、そこに人がいる証に変わりはねえ。
時間勝負だ『カサンドラ』。搭乗者が食い潰される前に終わらせるぞ…!
<推力移動>で敵機に接近。欲しいのは攻撃が通る距離、一瞬の間隙だ。
ギリギリまで引き付けた迎撃を『ローレル』の<盾受け>で弾けば…
刃を突き立てる<戦闘演算>に必要な一瞬くらいは稼げるでしょうよ!
『ヘレノス』を敵機に突き立て【颪】発動、
これには…この力にはこういう使い方もあるんすよ!
力の源は傷つけない…機体へエネルギーを供給するラインを<切断>しろ!
安野・穣(with"CASSANDRA"・f30162)は空を見た。
そこに在ったのは|光の渦《サイキックロード》であった。
見知ったものであるかもしれない。己の乗機『カサンドラ』が出現する時にも発生するものであったのだから。
「光の渦……? なら、あれもサイキックキャバリア……っ、今はこっちが先か!」
己の乗機『カサンドラ』を襲う炎。
敵の動きは鈍っては来ているが、しかし凄まじい熱量は変わらない。
まるで汎ゆる者を浄化せんとする煉獄の炎めいた力の奔流を穣は知るだろう。
「粘って動力切れを待てば……いや、それは無理か」
『動力』が切れる、ということは即ち『ノイン』首席の生命が途切れた時ということである。
ならば、ではない。
そもそも、なのだ。
あの声に成らぬ叫びを穣は聞いたのだ。
そこに人がいる。
生命を吸われ、無為に生命を散らそうとしている。
ならば、己が臆することはない。ただ踏み込む。
「時間勝負だ『カサンドラ』……搭乗者が喰い潰される前に終わらせるぞ……!」
其の言葉に『カサンドラ』のアイセンサーが煌めく。
そう、時間がない。
確かに『ノイン』首席の超能力が途切れるのを待てば猟兵は容易くオブリビオンマシン『アグネリウス』を滅ぼすことができるだろう。
けれど、敢えて其の選択を取らない。
困難で厳しい選択であることは言うまでもない。けれど、いつだってそうだ。それこそが最もだ正しい道だ。
過ちは取り戻すことができるが、失われた生命は戻ってこない。
故に、『カサンドラ』は愚直にも似た直線的な動きで持って『アグネリウス』を追う。
「――!!」
「ハッ、俺たち猟兵に怒ってんすか? それならさ!」
踏み込まれ、『アグネリウス』の溢れるような炎刀の斬撃が『カサンドラ』へと迫る。
手にした盾で炎刀が受け止められる。
弾くことができない。
全てを溶解せしめるかのような炎刀の一撃が滑るようにして『カサンドラ』の機体へと叩き込まれようとしている。
「一瞬、いや、刹那! これくらいは稼げるでしょうよ!」
盾を溶解され、失った腕部をも切り裂こうとする炎刀を滑るは、火花。
それは腕部に内蔵されたブレードの煌めきであった。
斬撃を受け止めながら、しかし、その動作は攻撃へと転ずる。
僅かな一瞬。
その時間をこそ穣は求めていたのだ。
「これには……この力にはこういう使い方もあるんすよ!」
突き立てられたブレードが鳴動する。
それはサイキックエナジーを込めた振動波。
そう、穣のサイキックエナジーを増幅する『カサンドラ』の力が、ブレードを通して『アグネリウス』へと叩き込まれる。
それはコクピットに存在する『ノイン』首席』を傷つけるのではなく、その動力として彼女に繋がっているパイプラインを寸断してみせるのだ。
「――!?」
「力の源は傷つけない……その機体に供給されるラインだけを切断する! やれるだろ、『カサンドラ』! これは、そういう力っす! 見せてみろ!」
其の言葉に鳴動するブレードと共に『カサンドラ』のアイセンサーが煌めく。
振り抜いた一撃は確かに『アグネリウス』の機体を切り裂く。
そして、同時に機体に流れ込む超能力さえも寸断させ、『アグネリウス』を追い込んでみせたのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
アルカ・スィエラ
彼らに言いたい事が全くないとは言わない、けどそれは後
今は、目の前のオブリビオンマシンを…!
アルカレクスへと融合合身、そのままドラグカプトをⅠからⅣまで展開し砲撃、同時に左腕よりEフィールドでの拘束を試みるわ
遠距離砲撃を大幅軽減しても無効化ではなく、行動阻害も「焼き払う」という一工程が必要。故にじり貧にならない為にも、敵は必ず距離を詰め仕留めに来る筈。だから……そこにUCをカウンターで合わせる!
動きが止められないなら止めなければいい、
必要なのは「あのパイロットを守る為の」|盾《バリア》と、
あの機体を貫き破壊するこの|矛《ドリル》、
そして、アイツよりも速く、ただ打ち貫く事だけよ……!
二機に分かたれた一騎のキャバリアが地下へと飛び込んでいく。
それに乗っているのは、アルカ・スィエラ(鋼竜の戦姫・f29964)のよく知る者であったか、それとも知らぬ者であったかはわからない。
けれど、アルカは彼等に言いたいことがまったくなかったかと言われれば、そういうわけではないと思った。
それに今は。
「目の前のオブリビオンマシンを……!」
己のキャバリア『プロトミレス』に搭乗したアルカは飛来した機竜と融合合身し、機体装甲から変じた竜首『ドラグカプト』を展開し、迫る炎を真っ向から迎え撃つ。
「……この熱量……ッ!」
相殺しきれない。
左腕から発せられるエネルギーフィールドでもって、ようやく防ぎ切ることができるほどの地位撃にアルカは呻く。
だが、そんな彼女の前に踏み込んでくるのがオブリビオンマシン『アグネリウス』であった。
「機体フレームを損壊していてもなお、この動き……やはり『動力』とした彼女の『超能力』で機体を無理矢理に動かしているわね!」
炎が変じた刀をエネルギーフィールドで受け止めながらアルカは敵の力を思い知る。
同時に理解もしていた。
敵は己の行動を阻害するものを薙ぎ払う。
そのために攻撃と防御が一体となるように近接戦闘の二刀を炎で形成し、踏み込んでくる、と。
ならばこそアルカは、そこに勝機を見出すのだ。
「――!!」
「動きが止められないなら、止めなければ良い。来なさい、オブリビオンマシン!」
アルカの瞳がユーベルコードに輝く。
今必要なのは、『ノイン』首席を守るための|盾《バリア》と、あのオブリビオンマシンを貫き破壊するための|矛《ドリル》。
「フィールド、全開……!」
踏み込んでくる『アグネリウス』の機体を包み込む拘束フィールド。
しかし、それを炎刀が切り裂く。
捉えられない。
けれど、それでもアルカは踏み込む。
「ただ速く」
そう、ただ速く。他の誰もでもない『アグネリウス』より一瞬速く撃ち抜くことができれば良い。
踏み込んだ『アグネリウス』は炎刀を振り上げる。
勝利を確信しているのだろう。砕かれたフェイスガードの奥に煌めくマシンアイが、そう告げているようにさえ思えた。
「未来”を守護し、“過去”を滅ぼせ……! カエルム・インフェルヌス!!」
アルカはさらに先へと踏み込む。
迫るは互いの機体。
手にしたドリルの一撃が『アグネリウス』のオーバーフレームを貫く。
えぐり出すような一撃。
それはオブリビオンマシンのみを破壊する一撃だった。搭乗者は一切傷つけないバリアと機体を破壊する力。
その相反する、矛盾の如き力でもってアルカは衝角の内側に『ノイン』首席の体を包み込む。
くるり、と背を向ける。
『動力』とした『ノイン』を奪われた『アグネリウス』が己に迫るのも関わらずアルカは『ノイン』を救出し、その場から離れる。
「後は、頼んだわよ」
救出対象はすでに守られた。
ならば、残すはオブリビオンマシンの破壊のみ――!
大成功
🔵🔵🔵
月夜・玲
…気に喰わないなあ
黒幕気取りの奴も、後から出てきた癖に訳知り顔で通り過ぎて行く奴等も!
後者は勝手に先に行くな!
戻って来い、斬ってやる!
言っても仕方ないか
今できる事をするしかない
《RE》IncarnationとBlue Birdを抜刀
元より射程外から削るつもりは無い!
【剣技・暴嵐剣】起動
舞い上がり、そして急降下
『なぎ払い』、『串刺し』と連続して剣戟を放ち連続攻撃を叩き込む!
蒼嵐で敵の炎を『吹き飛ばし』、炎で形作った武器を不安定にさせ後は此方の手数で無理矢理押し込む!
|『超能力』《サイキック》を持つ者…
そして分割存在
…知った事じゃあないね
けど、猟兵に恨みがあるなら他人を巻き込まずにやって欲しいね!
『動力』――『ノイン』首席を奪われたオブリビオンマシン『アグネリウス』が咆哮する。
それは奪われたものを奪い返そうとするような所作であり、また同時に自律稼働していることを示していた。
強大な超能力を手繰る存在を動力とする。
意志は関係なく。
思想を狂わせることなく。
ただ、動力として組み込み、世界を破壊する楔と成す。それが『ノイン』首席を『アグネリウス』へと組み込んだ狙いだったのだろう。
「……気に食わないなあ」
月夜・玲(頂の探究者・f01605)は苛立っていた。
黒幕気取りの奴も。
後から出てきた割りに訳知り顔で通り過ぎていく奴も。
何もかもが苛立つ。
というか。
「勝手に先に行くな! 面倒ごと押し付けた感じにしか見えないでしょうが! 戻ってこい、斬ってやる!」
玲は模造神器の刀身を振り回して心底憤慨していた。
これがコースレースであったのならば、走路妨害ってやつである。許しがたい。ペナルティを加えてやらねば気がすまないとさえ玲は思ったかも知れない。
だがまあ、そう憤慨したところであの二機に分かたれた機体が戻ってくるわけでもないことを玲は知っていただろう。
「言っても仕方ないか。今できることをするしかない……それはつまり」
玲は振り返る。
猟兵が救出した『ノイン』首席を奪い返さんと、その再生能力を失ってコクピットブロックを抉られた『アグネリウス』が怪物めいた様相でもって迫って来るのだ。
「抜刀! もとより射程外からちまちまやるつもりなんてない! プログラムロード!」
玲の瞳がユーベルコードに輝いた瞬間、彼女の手にした模造神器の刀身が励起し、荒れ狂う蒼嵐を解き放つ。
風をまとった玲の体が舞い上がり、急降下と共に斬撃を横薙ぎに振るう。
「――!!」
「ここからは暴嵐の時間だよ。間違っても炎の時間じゃあない」
薙ぎ倒した巨体へと更に玲の斬撃が串刺しのように迫る。打ち込まれた機体が大地に叩きつけられ、瓦礫の破片を吹き飛ばす。
だが、其の破片すらも玲の放つ嵐が舞い上げ、礫のように『アグネリウス』の機体の装甲を穿つのだ。
すでに超能力による再生能力は喪われている。
装甲をひしゃげさせ、内部のフレームにまで到達する衝撃に『アグネリウス』は痛みに喘ぐようにして機体をきしませる。
「『動力』がなければ、炎で武器を形成することもできやしないでしょ! なら、あとは手数で押し込む!」
振るわれる模造神器の刀身が蒼い残光を残しながら赤い機体を切り刻んでいく。
それは最早一方的な攻勢であった。
反撃もままならぬ『アグネリアス』が何かを求めるように天へと腕部を伸ばす。だが、その腕部すらも蒼い残光が切り裂く。
頭部に突き立てられた斬撃をして、『アグネリウス』はようやくにして、其の機能を停止させた。
「……|『超能力』《サイキック》を持つ者……そして、分割存在。知ったことじゃあないね」
けれど、と玲は破壊された『アグネリウス』の機体の上から、この機体が飛び出して来た地下の虚を見下ろす。
「けど、猟兵に怨みがあるなら他人を巻き込まずにやってほしいね!」
この先に求める応えがあるのか。
それとも、あるのは別のなにかなのか。それを知るべく、玲は、その虚のごとき地下へと飛び込むのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
第3章 冒険
『噂のキャバリアを見つけろ!』
|
POW : ●『直感に従って探す』
SPD : ●『隅々まで足を運んで探す』
WIZ : ●『手がかりや探知のアイテム、術式を使って探す』
|
種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
オブリビオンマシン『アグネリウス』を打倒した猟兵たちは『ノイン』首席を救出してみせた。
彼女は『動力』として超能力を吸い上げられ続けたせいか、生命に別状なくとも衰弱している。彼女を『グリプ5』へと運ぶこともしなければならない。だが、この状況を捨て置くこともできないだろう。
それはあの赤い機体。
一騎が二騎に分かたれ、地下に在りし何者かを追っていったのを見たのだ。
それを追わねばならないと猟兵たちは直感的に理解しただろう――。
●熾火は巡る
地上でオブリビオンマシン『アグネリウス』と戦う猟兵たちのユーベルコードが明滅する中、地下は三機のキャバリアによる戦いの音が響いていた。
そこまるで地下鉄道のような場所であり、何処かへと繋がっているようにも思えた。
その仄かに光源が生きている坑道めいた場所で白銀のキャバリアを圧倒する二機の赤いキャバリアが手にしたプラズマブレイドの斬撃がひらめく。
「……ッ、このっ、二機がかりでなど! それが『エース』のやり方ですか!」
『プラナスリー』の『ノイン』は白銀のキャバリアを駆り、繰り出される斬撃をどうにか凌いでいた。
「『サツキ・ラーズグリーズ』は眠っている。眠っている機体など数に入らぬだろう」
「減らず口を! なぜ、邪魔をするのです。世界を破滅に導く。それが!」
「……」
問いかけられた赤い機体のパイロットは黒髪を揺らし、虹の輝き放つ理宝石の如き緑の瞳でもって『ノイン』を見据える。
「世界の破滅こそ、世界の破壊こそ、それこそが!」
「理由になってない」
「……は?」
それは汎ゆる理屈を否定する言葉だった。
己以外の理屈に興味を示さぬ者の言葉。その言葉と共に『ノイン』はプラズマブレイドの一閃に飲み込まれ、白銀のキャバリア毎爆散するのだった――。
風車・拳正
さて、これで少しは謎が解けるといいんだが……逆に深まりそうよな…(【集中、聞き耳、気配感知】で例のキャバリアを追う)…あっちの方だな。探偵舐めんなよ?
しっかし、この地下、見た感じ列車でも走ってたのか? ……て事は昔は何処か他の国と繋がりがあったって事か?(となると、何故それが失くなったか、気になる所ではあるが)
……そういうのは後でだな。今はキャバリアの方を追わねえとな。(邪魔になりそうな瓦礫や土砂を衝撃波で吹き飛ばしながら進む)
ーー!?今のは爆発音?……戦闘でもしてるのか?
(キャバリアに追い付いたら辺りを見渡して爆発音の元を探しながらキャバリアに問いかける)
なあ、お前達は……何をする気なんだ?
『第三帝国シーヴァスリー』の地下……それはオブリビオンマシン『アグネリウス』が安置されていた場所であり、また同時に炎と共に飛び出してきた場所でもある。
大穴の空いた其処を見下ろす猟兵、風車・拳正(衝撃の鉄拳・f41386)は、その先にこそ|光の渦《サイキックロード》より現れた二機に分かたれた一騎のキャバリアが追う者があるのだと知る。
「さて、これで少しは謎が解けるといいんだが……逆に深まりそうよな……」
彼はあの赤い二機に分かたれたキャバリアを追って虚のごとき大穴を下る。
戦いの音が響いているのがわかる。
なにかと戦っているのだろうか? とすれば、やはりオブリビオンマシンなのだろうか。
考えれば考えるほどに憶測は謎という輪郭を色濃くしていくだけであった。
「しっかし、この地下、見た感じ列車でも走ってたのか?」
坑道にはあちこちに寸断されたレールのようなものが残っている。ならば、彼の憶測は正しいものであるように思えた。
地下の坑道。
つまり、何処かへと繋がっているということである。
他国との繫がりがあったのか? いや、それだけでは証明がつかないかもしれない。そもそもそうであったのならば、なぜそれが喪われてしまったのかなど新たな疑問が噴出するからだ。
「……いや、それよりも今は……」
あの赤いキャバリアを追わねばならない。
瓦礫の破片を察するに古いものと新しいものがある。新しいものは言うまでもなく、あの赤いキャバリアが追っていった者との戦闘が行われていた証明であろう。
「戦いの痕……近いな」
拳正は己の拳で衝撃波を飛ばしながら障害を排除して進む。
すると、程なくして爆発音が彼の耳朶を打つだろう。
「――!? 今のは……!」
戦闘をしている、とは坑道の様子を見ればわかることであったが、しかし、近い。それにこの爆発の音は……。
「破壊された音!? あの赤いのがか!」
そう思って走ると拳正は坑道に佇む二機の赤いキャバリアが白銀のキャバリアの胴を薙ぎ払って立つ姿を見つける。
一騎の赤いキャバリアが、もう一騎のキャバリアに覆いかぶさる装甲のように接続され、拳正を振り返る。
アイセンサーの煌めきが拳正を見下ろしている。
「……」
言葉はなかった。
なにか言葉をこちらに発する理由がないとでもいうかのようにただ拳正を見下ろしている。
敵対する意志はないように思えた。
故に彼は口を開く。
「なあ、お前たちは……何をする気なんだ?」
目的は、と問いかける言葉に一騎へと変貌した赤いキャバリアを駆る者は告げる。
「生きることをしようと思っている。ただそれだけだ――」
大成功
🔵🔵🔵
シルヴィ・フォーアンサー
……同じのが何人もってクローンってことなのかな。
『別の世界の同一個体という可能性もあるかもしれん、まぁ聞いてみなければわからないが』
とりあえず地下探索するって事でディテクション・ウェーブ。
反応があった場所に向かうね、戦闘あるかもしれないし注意して。
シルヴィ・フォーアンサー(自由を求めた脱走者・f41427)は少しだけ迷っていたのかも知れない。
この先に進むことを。
目の前にあるのは虚の如き穴。
オブリビオンマシン『アグネリウス』が地下より飛び出した時に生まれた穴である。
続く穴の先には、彼のオブリビオンマシンが安置されていた場所があるのだろう。この先へと飛び込んでいった赤いキャバリアを追うのならば、此処からしか経路はないだろう。
炎とともに飛び出した『アグネリウス』によって、穴の付近、その直下は炎によって焼けただれていた。
「……なにかの研究施設だったのかな」
『それは判然としないな。地下より出現する際に破壊され尽くしていて、原型をとどめていない』
サポートAIである『ヨルムンガンド』の言葉が己のキャバリア『ミドガルズ』のコクピットの中に響く。
確かに、と思う。
此処が少しでも手がかりになれば良いと思ったのだが、それは難しそうだ。
それに加えて『ノイン』という存在に対しても思うところがある。
「……同じのが何人もって、クローンってことなのかな」
『別の世界の同一個体という可能性もあるかもしれん、まぁ聞いてみなければわからないが』
わからないことばかりだとシルヴィは思っただろう。
降り立った穴の先には、横ばいにさらに坑道が続いている。これがもし、線路であったというのならば、此処はプラットフォームめいた場所であったのかもしれないと想像できそうな光景であった。
「何処かな……これで逃げ出すなら大したことのないやつなんだろうけど……」
シルヴィの『ミドガルズ』より放たれる、ディテクション・ウェーブが坑道の中を走り抜けていく。
それは逃げ出したいという思考を誘導する電波であった。
もしも、この先にいる赤いキャバリアの乗り手が弱者であったのならば、逃げ出すだろうし、そうでないのならば痕跡が残ることになる。
「……逃げるつもりはないみたいだね」
『慎重にな。場合によっては』
「……戦闘になるかも知れないってことだよね」
わかるよ、とシルヴィは頷いて坑道を進む。線路めいた施設が途絶えている所を見るに、ここは地下鉄めいた場所であったのかもしれない。
そんなことを思っているとシルヴィは機体のレーダーに引っかかるものを見つける。
「……やっぱり居た」
「……」
赤いキャバリア。
二機が一騎へと合体するように二人羽織めいた装甲を持つキャバリア。すでに目的を達したかのように佇んでいるそばには、破壊された白銀のキャバリアがある。
状況を見るに、あの白銀のキャバリアはコクピットブロックを一撃で溶断されているようである。パイロットは即死であったことだろう。
「……君はクローンなの?」
シルヴィは己の疑問を問いかける。其の言葉に返答事態が無いかも知れないと思いながらも、しかして、その応えが帰ってくる。
端的な言葉だった。
「いいや。俺は、そのようなものではない――」
大成功
🔵🔵🔵
村崎・ゆかり
穴の底へ飛鉢法を使ってゆっくりと降りていくわ。念のため黒鴉の式を先行させる。
式の目からあたしに地下の様子が伝わってくる。それは考える猶予が生まれるということ。
お久しぶりね。せっかくだし、コクピットを開けて顔を見せてくれない?
あちこちで色々あったわよね。|青空と雲海の世界《ブルーアルカディア》にもいなかったかしら?
あの白銀の機体は、パイロットの回収は無理か。代わりにあなた達に、彼女が何者だったのか問いたいのだけどいいかしら?
そして、まるで次元移動存在のように世界を渡る力。それは、キャバリアのもの? それともパイロットの超能力?
事件の起きたまさにその時に駆けつけるなんて、まるであたし達猟兵みたい。
オブリビオンマシン『アグネリウス』が生み出した大穴へとゆっくり下降していく鉄鉢があった。
其の鉄鉢に座り、村崎・ゆかり(“紫蘭”/黒鴉遣い・f01658)は式神を走らせるようにして飛ばす。すでに戦いは終わっているようであるが、しかし何が起こるかわからない。
グリモア猟兵の予知では、こんなことは言っていなかった。
「真っ暗ね……」
式神の鴉の瞳から伝わってくる光景は焼け焦げた大穴の其処の施設ばかりだった。
凄まじい熱量に寄って溶け落ちたのだろう、原型は留めていなかった。
そして、大穴の底から横ばいにして道……坑道めいた道が広がっているのを見る。
これは線路の痕、とでも言えば良いのだろうか。
「……戦いは終わったの?」
すでに爆発音はなりを潜めている。
先行した猟兵たちが向かったはずであるが、戦いの音が聞こえてこないといことは脅威がいないということなのだろうか?
ゆかりが疑念を抱いた時、式神の鴉の瞳に映るのは二機に分かたれた赤いキャバリアが再び二人羽織のような装甲となって一騎のキャバリアへと変貌する光景であった。
以前見た『熾盛・改』には肩部にサブアームが設けられていた。
だが、それが喪われる代わりに二人羽織のような装甲が増設されている。その二人羽織の装甲は変貌を遂げキャバリア……もう一騎の『セラフィム』へと変貌を遂げたことをゆかりは知っている。
答えを知らねばならない。
ゆかりは鉄鉢と共に一騎となったキャバリアの前へと進む。
「お久しぶりね」
「俺はあんたのことを知らない。いや、覚えていないのかもしれない」
コクピットの中から声が響く。
その様子にゆかりは首を傾げる。
「折角だし、コクピットを開けて顔を見せてくれない? 対面すればなにか思い出すかもしれないわよ?」
ゆかりの言葉に赤いキャバリアのコクピットハッチが開き、一人の青年の姿があらわになる。
ハッチに足をかけ、立つ青年の顔は美しいものだった。
艷やかな黒髪に、翡翠を思わせるような緑の瞳。
一見すれば女性とも取れるほどに整った顔立ち。
「……|青空と雲海の世界《ブルーアルカディア》にもいなかったかしら?」
「知らないな。俺は」
「あなた……」
ゆかりは気がつく。
青年の体が透き通っている。つまり、それは。
「魂人……!」
「そう呼ぶ者もいる。あんた達が追っていたであろう、白銀の巨人は倒した。好きにするがいいさ」
「なぜそんなことを? 彼女が何者だったか問いたいのだけど良いかしら」
「この機体がそう言った。あれは戦いを齎す者だと。だから斬った」
青年は静かに言い放つ。
「世界を渡るような力を持っているようだけれど、それはキャバリアのもの? それともあなたの能力?」
「それも知らない。俺はこれを神隠しだと聞いたが。|光の渦《サイキックロード》は不安定なのか」
ゆかりは訝しむ。
不安定。制御できていないのか。それとも其の術を知らないのか。
いずれにせよ、ゆかりにとって彼等の出現は己達と同じように世界の危機に現れたようにさえ思えたのだ。
まるで猟兵のようだと。
だが、ゆかりは対峙して初めて理解する。
彼はオブリビオンでもなければ、猟兵でもない。ただの魂人である。
「どちらだって良い。生命を脅かす者がいる。ならば、それは理由となるだろう――」
大成功
🔵🔵🔵
ガイ・レックウ
【POW】で判定
『…まだまだわからないことだらけだが…聞いてみるか……』
天龍・改にコスモ・スター・インパルスを収容し、スター・ブラストな乗り換えて降りていくぜ。【追跡】と【情報収集】しながら【戦闘知識】とセンサーで分析する
『なあ、知った声だが名をなのってくれないか?』
戦いが終わり、オブリビオンマシン『アグネリウス』から『ノイン』首席は救出された。
だが、全てが終わったわけではない。
猟兵たちは彼女の誘拐を依頼されているのだ。
彼女を小国家『グリプ5』へと運ぶまでが仕事だというのならば、そうだろう。だが、猟兵たちにとっての関心事がもう一つ増えてしまった。
あの赤いキャバリアである。
一騎から二機に分かたれ、『アグネリウス』の飛び出した地下へと飛び込んでいった。
その顛末をガイ・レックウ(明日切り開く流浪人・f01997)は知りたいと思ったのだ。
「……まだまだわからないことだらけだが……聞いてみるか」
己の機動戦艦は大穴の中には降下できないようだった。
穴の直径が足りないこともあるが、その巨体で内部を探索するのは難しいからだ仕方無しにガイは己の機体を収容し、損壊した機体を変えて大穴の先へと降下していく。
大穴の殆どは『アグネリウス』が放った熱量で焼けただれ、判別がつかないようになっていた。
どうやら大きな空間がある以上、此処がプラットフォームのようになっていたことはたしかなようである。
横ばいの穴は坑道だろう。
線路の痕があることからも、地下鉄道だったのではないかと推測することができる。
嘗ての小国家の残滓か。
『第三帝国シーヴァスリー』が地下鉄道網を持っていたという情報はなかった。
「どうなっていやがるんだかな……っと」
ガイは己の機体の先に一騎へと変貌した赤いキャバリアの姿をとらえる。
どうやら他の猟兵がパイロットに何かを問うているようである。
パイロットの青年は美しい姿をしていた。
艷やかな黒髪が坑道に流れ込む風に揺れ、翡翠のように輝く緑の瞳を猟兵に向けている。そして、ガイの視線に気がついたのだろう。
コクピット越しでありながら、ガイは目を見張る、
「……なあ、知った声だが名を名乗ってくれないか?」
其の言葉に青年は言葉をはっしなかった。
ただ、じっとガイの乗るキャバリアを見つめていた。
「俺の声を知っているというのか。生憎と俺はあんたのことを知らない。そして、俺は俺自身の名を知らない。擦り切れてしまったのかもしれない」
「それでも呼び名が無いのは困るだろう」
「それは『フュンフ・ラーズグリーズ』……いや、『サツキ・ラーズグリーズ』にも言われたな。『エイル』にも」
「なら」
「だが、俺には到底困ったことには思えない。俺の名前に意味はあるのか。俺の名前が判然としないことでは立ち行かぬ事情があるのか。それが俺にはどうにもわからない」
些細なことではないのかと青年はガイに逆に問いかける。
「それはそうだろう。名前とは個人を示すものだ。俺にだってガイ・レックウという名前がある。それが俺を俺足らしめるのだから」
其の言葉に青年は一つうなずく。
「……どうせならば、と思ったが。いや、よそう。きっとこれは俺の名前ではない。俺は旅行者のように根なし草であるから……だから」
彼は思いついたように言うのだ。
「名乗ろう。俺は今より『パッセンジャー』だ――」
大成功
🔵🔵🔵
ユーリー・ザルティア
ノイン首席も無事…と言っていいのかは不明だけど、あえて無事救助できたみたいだし、ここは後顧の憂いを断っておくべきだよね。
レスヴァントで引き続き『操縦』するよ。
しっかし、地下とは…地下とか水中とか色々隠れてたり落ちてたりしすぎじゃない?地下帝国も古代遺物とか…
アマテラスの『索敵』機能を『限界突破』させて地下の『情報収集』して動体反応を集める。
さて、螺旋腕突撃衝を発動。
両腕をドリル化させて、地中を直接掘り進む!!
『ダッシュ』で加速しつつ、目標まで最短で突き進むよ。
敵機を見かけたらダークマンティスの『レーザー射撃』よる『威嚇射撃』しつつ警告するよ。
ホールドアップ。ここいらで観念して投降しなさい
最優先で確保しなければならない対象。
それが『ノイン』首席であった。猟兵達が小国家『グリプ5』から請け負った誘拐依頼。完遂するためには彼女の安全が最優先であった。
「無事……と言っていいのかは不明だけど、敢えて無事だと言っておかないとね」
衰弱した様子の『ノイン』首席は意識がないようだった。
けれど、ここで後顧の憂いを絶たねばならぬとユーリー・ザルティア(自称“撃墜女王”(エース)・f29915)は溶解した装甲を排除した『レスヴァント』と共に地下へと降りていく。
オブリビオンマシン『アグネリウス』が地下より飛び出した時に生まれた膨大な熱量に寄って地下にあったであろう設備の全てが『レスヴァント』の装甲と同じく溶解して爛れていた。
原型をとどめていられたものはほとんどないと言っていいだろう。
「しっかし、地下とは……」
また地下なのかとユーリーは思っただろう。
クロムキャバリアは暴走衛星によって空に蓋をされた世界である。
となれば、必然人の進出する場所は限られてくるだろう。そう、地下か海中である。これまでのクロムキャバリアにおける周辺小国家におきた事件を顧みれば、彼女が辟易とした息を吐き出すのもうなずけるところであった。
「地下帝国も古代遺物とか……厄介なものはみんな地下か海中に没する決まりでもあるのかしら」
大穴の先にあるのは横ばいの坑道だった。
恐らく線路跡地であったのだろうと判断できるが、しかし現状から読み取れる情報は多くない。
けれど、ユーリーはこのタイミングこそが襲撃者にとって最も有利な状況であることを知っている。
救出対象を得た者たちに走るのは安堵である。
そして、その安堵こそが決定的な隙になるのである。故に、あの『ノイン』首席を陥れた『プラナスリー』の『ノイン』ならば二段構えの策謀を張り巡らせている可能性がある。
ドローンに反応がある。
「見つけた!『レスヴァント』! ドリルアタックだッ!!」
機体の両腕がドリルモードへと換装された瞬間、ユーリーは障害物の全てを破壊しながら一気に最短距離で坑道をショートカットし爆発が起こった側とは反対側へと一直線に加速する。
「やっぱり居たね、伏兵!『ノイン』首席をこっちが確保した瞬間に動くように言われていたのか知らないけど!」
彼女が見つけたのは『イカルガ』と呼ばれるキャバリアであった。
突如として現れた『レスヴァント』に彼等は対応できなかった。
レーザー射撃に寄る威嚇射撃に彼等の動きは止まる。だが、それが威嚇であると理解した瞬間彼等はユーリーへと襲いかかってくる。
「ホールドアップ、とは言えないようね。問答無用とはッ!」
通信には応えない。
ならばと螺旋腕突撃衝(ドリルアタック)の一撃が『イカルガ』の機体の武装を貫く。
そしてレーザー射撃がアンダーフレームを貫く。
移動できなくなれば、とユーリーはあくまで生け捕りにするつもりだった。だが、次の瞬間、『イカルガ』たちのコクピットブロックが爆砕する。
「自爆……!?」
機密保持か、口封じか。
いずれにせよ、ユーリーは『イカルガ』の所属がいずれの小国家にあるかを知ることはできなかった。
けれど、いずれ訪れるであろう事件が明らかにすることだろう。
彼女の行動は一つの命を救い、そして新たなる事件への楔となるのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
アルカ・スィエラ
……コマンド・オン、全機召喚…お願いね、みんな。
【ARC-05 フェルム・アニマリア】達を召喚、周囲を探らせる
この施設で何かを「持ち出した」か「持ち込んだ」かどっちか、そしてどこに繋がってるか……それと、流出したのはキャバリアだけか、それとも兵士込みでかもいずれ探る必要があるわね
私はアルカレクスのまま先へと警戒しながら進む。
でさっきの機体だけど…この感じ、「あいつ」とは違う……?
警戒は解かずに、可能なら機体をスキャンして記録上の『セラフィム・エイル』そして消えた『熾盛・改』と機体の基幹フレーム等を比較するわ。
最低でも「装備を変えた同一の機体」か、「同型の別機体」かぐらいは探りたいところね
「コマンド・オン、対象:ARC-05………転送、完了」
アルカ・スィエラ(鋼竜の戦姫・f29964)は観測用自律機械を召喚し、大穴へと走らせた。
それは大穴の先に繋がる情報を少しでも多く得ようとしていたからにほかならない。
大穴の様相を見るに、オブリビオンマシン『アグネリウス』が飛び出した時に生まれた膨大な熱量で溶解し、如何なる設備であったのかは判別がつかない。
けれど、横ばいに続く坑道のような空洞から察するに、ここが線路めいたものであり、プラットフォームであったのではないかとアルカは判断できる。
とは言え、である。
「この施設で何かを『持ち出した』か『持ち込んだか』かどっちか……それはわからないけれど、何処に繋がっているのか」
アルカは考える。
線路の痕が残っているが、直近に破壊されたわけではないことは見て取れる。
どこまで続いているのかは、周辺小国家の位置関係を見ればわかるだろう。
「……『八咫神国』?」
アルカは周辺の地形と地図を持って、そう結論づける。
かつて在りし小国家。『シーヴァスリー』に滅ぼされた小国家である。あそこはすでに無人のはずだ。此処『第三帝国シーヴァスリー』と坑道で繋がっていたというのならば、あの電撃的な小国家の滅亡にも説明がつくと言えばつくだろう。
「キャバリアが流出した経路でもあるのか……とは言え、痕跡が残っていない。いえ、『アグネリウス』の炎で焼却された、というのが正しいのかしらね、この場合」
アルカは融合合身した機体と共に踏み込んでいく。
彼女の視線の先にあったのは、破壊された白銀のキャバリアと赤いキャバリアであった。この大穴に飛び込んだ時は二機に分かたれていた。
だが、今は戦いを終えたためか元の一騎に戻っているのである。
「……この感じ」
アルカは警戒を解かなかった。
赤い機体をスキャンし、記録に遺されていたデータと照合していく。
彼女が当たりをつけていたのは『セラフィム・エイル』と『熾盛・改』の二機であった。似通っている、と思えた。
装備が異なっているし、二機が合体分離するような機構などなかったはずである。
だが、アルカは照合したデータに合致する機体の名を目にする。
「『熾盛・改』……! 固有周波数からフレームまで一致している。どういうこと?」
其の言葉に赤いキャバリアのコクピットから身を出していた透き通る体を持つ黒髪の青年が翡翠の如き緑の瞳をアルカレクスへと向ける。
「そのままの意味だろう。アンタの知るところの『熾盛・改』という機体というわけだ。残念ながらアンタの知る『フュンフ・ラーズグリーズ』……『サツキ・ラーズグリーズ』は眠っているが」
其の言葉にアルカは訝しむ。
戻ってきた、ということか、と。
其の言葉に答えるように青年はうなずく。
「その通りだ。『彼』は帰還した――」
大成功
🔵🔵🔵
ルクス・アルブス
【ステルク】
ぽつーん。
なんだか今回は、放置プレイされてますね。
ステラさんは濃密な『エイル』さんの香りにテンション銀河ですし、
『ノイン』さんは特殊プレイでぐったりしてますし……。
だいたい『エイル』さんがいけないですよね。
いつもどおりでもステラさんにはやべーのに、2人になるとか、
それって、2倍じゃなくて2乗でやばくなるんですよ?
と、ブツブツ言いながら、それでもしかたないので、
シリアスなBGMでも。と、バイオリンを構えたら叱られました?
シリアス、盛り上げようと思いましたのに!
でもそうなると、なにしたらいいでしょうか……。
そうだこんなときは! ルクスちゃんに相談だ♪
『光の勇者』ルクスちゃーん、わたしどうしてたらいいですか?
え?なにもしなくていい?どうせ聞いてくれない?
ま、まぁそんな気もしますけども!
で、でもほら、せっかくですからなにか尋ねたりしてもいいんじゃないかと!
あ、そうです。
『エイル』さん、いろんなところにいらっしゃるみたいですけど、
『エイル』さんって、グリモア猟兵みたいな感じなんですか?
ステラ・タタリクス
【ステルク】
ああもー!やっぱりノイン様に逃げられてるぅぅぅぅ!?
どういうことか説明いただきましょうかパッセンジャー様!
それとも……フュンフ・エイル様、とお呼びしましょうか?
もちろんそのものではなく
先祖返りのようなもの、とは存じていますが
ええ、誰が毎回エイル様の香りを嗅ぎに来ているやべーメイドですか
主の後を追いかけるのは|メイド《犬》の習性です!
ルクス様、BGMはステイ
今はシリアスのターンです
さて
BAでの戦争の際、2機の赤いセラフィムが光の渦へと消えました
そこから色々考えるにその機体は2機が融合したものなのでしょう
シン・熾盛・改、みたいな
そしてあなた方は2人揃って初めて『エイル』となる
フュンフ・エイルの血を引くサツキ様と
フュンフ・エイルが|漂流《ドリフト》した先で遺した何かを継いだ貴方様
サツキ様は今【|夢の世界《プラクト》】へ旅立っていて
『完成』していないようですが?
ともあれ、|漂流《ドリフト》する前に
|たまにはメイドにご褒美ください《少しは事情を説明していってほしいです》
ご主人様を探し求める献身的なメイド(ホンニンハソウオモッテイル)――物は言いようである。まったくもって。
ステラ・タタリクス(紫苑・f33899)は破壊された白銀のキャバリアをみやり叫んでいた。
「ああもー! やっぱり!」
問い詰めたいと思っていた相手は、赤いキャバリアによって破壊されていたのだ。
その様子を赤いキャバリアのコクピットから身を晒していた、その透き通る体を持つ青年は首を傾げるまでもなく、変わらぬ表情で見やる。
何が問題なのかわからないというより、興味がない様子であった。
「どういうことか説明いただきましょうか『パッセンジャー』様!」
「確かに、俺は今後そのように名乗るとは言ったが気安いな、あんたは」
その言葉に拒絶の色はなかったが、しかし受容する態度でもなかった。
「それとも……『フュンフ・エイル』様とお呼びしましょうか? もちろん、そのものではなく先祖返りのようなもの、と存じていますが」
「その認識は正しくはないと思う。『フュンフ・エイル』、その名を俺は理解していない。そういうあんたは理解しているようであるが」
嗅覚なのか? と青年は美しい顔を少しだけ揺らしていた。
「ええ、誰が毎回『エイル』様の香りを嗅ぎに来ているやべーメイドですか」
「そこまで言ったつもりはないが」
「主の後を追いかけるのは|メイド《犬》の習性ですが!」
「理解に苦しむ」
そんな彼等のやり取りから、ルクス・アルブス(『魔女』に憧れる『出禁勇者(光属性)』・f32689)は一人ぽつねんとしていた。
取り残されていたと言ってもいい。
放置プレイって言うとなんか急にいかがわしい感じになるのでアレであるが、まあステラが今回の事件において並々ならぬ意気込みを持っていることを彼女は知っているため、多くを突っ込まない。
突っ込んだら負けである。
テンション銀河なステラを相手にすることほど難しいことはない。というか、止まらないから止めたって無駄だし。それに『ノイン』首席は特殊プレイでぐったりである。
正直に言って、此処で自分がなにか言ったところで変わるようには思えなかった。
「だいたいですね、『エイル』さんがいけないですよね。いつもどおりでもステラさんにはやべーのに、二人になるとか、それって、二倍じゃなくって二乗でやばくなるんですよ?」
「ルクス様、今はシリアスのターンです」
「なんでですか! 今、シリアスなBGMでもって思ったのに!」
「演奏ステイ! 空気読みましょう!」
「盛り上げようと思ったんです!」
「いいから」
その二人のやり取りを黒髪の青年は特に興味なさげに見ている。
透き通る体は恐らく彼が魂人であるからだろう。
「さて、アルカディア争奪戦において、二機の赤い『セラフィム』が|光の渦《サイキックロード》へと消えました」
「そう聞いている」
「そこから考えるに、その機体は二機が融合したものなのでしょう」
「融合というのはまた違うと思うが……いうなれば、旅を共にする者とでも言うべきか」
彼の言葉にステラは自分の憶測が異なることを知る。
『フュンフ・エイル』の血を引くのが『フュンフ・ラーズグリーズ』、いや『サツキ・ラーズグリーズ』であるというのならば、黒髪の青年もまた『フュンフ・エイル』が神隠しに寄って世界を渡った際に遺されたものではないのかと思ったのだが、青年の様子を見るにどうやら違うようであると思えた。
「なぜ、『サツキ・ラーズグリーズ』様は眠っているのですか?」
「わからない。この世界に来るまでは起きていた。原因はわからない」
「夢の世界へ旅立っているとでも?」
「そうとも言えるのかもしれないが、俺には判然としない」
ステラは事情を飲み込み始めていた。
己の推測とは外れるところもあったが、しかしあの機体に、この『パッセンジャー』と名乗ることに決めたと言った青年が乗っていること事態が運命めいたものに思えてならなかった。
この機会を逃せば、また他の世界に移ってしまうかもしれない。
そんな漠然とした不安がステラの中にはあった。
だが、そんな不安を打ち消すようにルクスが一人ぽつねんとしながら、一人……いや、『光の勇者』ルクスちゃんと二人で相談している。
「『光の勇者』ルクスちゃーん、わたしどうしてたらいいですか?」
シリアスアレルギーなるルクスにとって、現状の空気はちょっと耐え難いものであった。蕁麻疹が出る前になんとかしたい。
ふんふん、と『光の勇者』ルクスちゃんが頷いている。
なるほどなーって顔をしている。
「え? なにもしなくていい?」
どうせ聞いてくれないし。あと、シリアスな空気はステラが勝手に自らぶっ壊してくれる。
「ま、まぁ、そんな気もしますけども! で、でもほら、折角ですからなにか訪ねたりしてもいいんじゃないですか! ちょっと頭いいムーヴとかしてみたくなりませんか!?」
『光の勇者』ルクスちゃんはそういうもんかなーって顔をしていたが、ルクスはこの機会を逃してはならぬとばかりに黒髪の青年へと向き直る。
「質問です!」
「なんだ」
「ルクス様、今はメイドにご褒美頂ける時間ですが!」
ほら、何もしないでもステラがシリアスぶち壊した。
ね、と言わんばかりに『光の勇者』ルクスちゃんがうなずく。ほんとだ、とルクスは納得する。
「『エイル』さん、いろんなところにいらっしゃるみたいですけど、『エイル』さんってグリモア猟兵みたいな感じなんですか?」
その言葉に青年は頭を振る。
「違う。あれは『平和』のために争いの種を芽吹かせてしまう者。そういうふうに歪めて叶えられた者だ――」
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
メンカル・プルモーサ
(試作型術式騎兵【ツィルニトラ】に搭乗)
さて……地上は一段落付いたし……首席の方の『ノイン』は救出されたみたいだし…心置きなくあとを追うとしよう
……UCで効果増幅した操音作寂術式【メレテー】で戦闘音や機械の動作音を辿ってあの赤いキャバリアを探すとしようか…
…それにしても……あのキャバリアの操縦者の目的は勿論…あのキャバリアの製造目的は気になるところだね…
…なにしろ合体・分離機構と言う物はそう簡単に付与出来るものでは無い…
…それを組み込んでいると言う事はそこに何か明確な理由がある筈だからね…
…もしかしたら彼(彼女?)らの目的も何か関係しているのかも知れない…聞けるのであれば話を聞きたいところだ…
メンカル・プルモーサ(トリニティ・ウィッチ・f08301)は己の機体と共に大穴へと降りていく。
膨大な熱量で持って溶解せしめられた空洞は、何かのプラットフォームめいた場所であったことがうかがえる。
その空洞を横ばいに坑道が繋がっていることから、どうやら地下鉄道めいた場所であったことを彼女は知るだろう。
「さて……地上は一段落付いたし……」
救出対象であった『ノイン』首席の確保はできた。
衰弱していて何かを喋れる状態ではないことから、保護は他の猟兵に任せていて良いだろうと彼女は判断し、あの赤い二機のキャバリアを追うことに決めたのだ。
「起動:応用術式『増幅』(ラン・ブーステッド)」
メンカルの瞳がユーベルコードに輝く。
そのユーベルコードは彼女の術式をさらに増幅するものであり、坑道内部にて響き音を余さず拾い上げるものであった。
すでに戦いは終わっているようである。
キャバリアの駆動音などは聞こえてこないことからもうかがえる。他の猟兵たちも飛び込んでいったことから、どうやら猟兵と敵対しているわけではないことがわかるだろう。
「……それにしても……あのキャバリアの操縦者の目的は勿論……製造目的が気になる所だね」
メンカルの疑念も当然であった。
あの赤いキャバリアは嘗ての小国家『グリプ5』の周辺における事件にて確認されていた機体である。
最終的には|光の渦《サイキックロード》の彼方へと消えたわけであるが、しかし、あまりにも似通っているように思えた。
一騎のキャバリアにもう一騎が二人羽織の装甲のようにして合わさっている姿からも、それが機体の装備を変えただけではないことが理解できるだろう。
そうなったのには意図が必ずあるはずだとメンカルは思っていたのだ。
メンカルは己のキャバリアと共に坑道を進むと、そこには他の猟兵と赤いキャバリアそして破壊された白銀のキャバリアの姿があった。
「……一つ、いいかな」
メンカルは赤いキャバリアのコクピットから姿を表した、透き通る体を持つ青年の姿を認める。
艷やかな黒髪が揺れ、翡翠の如き瞳がメンカルをとらえる。
コクピット越しでも伝わる美しさを前にメンカルはしかし臆することはなかった。
知りたい、と思うことのほうが勝っていたからだ。
「構わない」
「……じゃあ、一つ。その機体はなぜ二つで一つに?」
「答えよう。それが最も適した形であるからだ」
「何をするために?」
「旅をするために。完全な形であると言えるからだ」
その言葉にメンカルはうなずく。
完全なる形。
『セラフィム・エイル』も『熾盛・改』も、当初の形は三面六臂の姿をしていた。だが、今の赤いキャバリアは二つの頭部と四本の手足を持つ姿をしている。
「神隠しという名の運命めいた力が作用するのならば、人は完全な形でなければならない。きっとそういうことなのだろうと思う」
そう、目の前の青年。『パッセンジャー』と名乗ることにした、と告げた青年はメンカルの問いかけに応えるのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
ソフィア・エルネイジェ
炎は潰えましたが…私は地下に消えた機体を追いかけましょう
何者かは存じませんが、何らかの目的があって地下に降りた事は間違いありません
それにアグネリウスは地下に眠っていたとのこと
この国の地下には何かがあるのでは?
引き続きインドラと共に参ります
崩落している箇所等があれば螺旋剛雷槍で掘り進み突破致しましょう
追い付く事が叶えば名乗りを上げ、二機の搭乗者の名を尋ねます
そしてこの国の地下で何をしようとしているのか、地下に何があるのかを問いましょう
先程の戦闘時の様子からして私達と交戦する意図は無いように見えましたが、突然気が変わらないとも限りません
こちらから仕掛ける事はしませんが、常に身構えておきましょう
桐嶋・水之江
さっきの二機…いや一機?が気にならないと言ったら嘘になるけれどねぇ…
ここは未来の顧客の方を優先させて貰うわ
あっちはソフィア皇女様がどうにかしてくださるでしょう
どれどれ、ノイン首席の容態は?
衰弱してる?お怪我は?
何にしたってやる事は変わらないわ
再生光をみょんみょんみょん
なんだか今日はこればっかりやってる気がするわねぇ
お陰で疲れて仕方ないわ…また温泉入って帰ろうかしら?
あ、閃いた
治療しながらノイン首席の耳元で囁きましょう
聞こえますか…あなたを助けたのは桐嶋技研の水之江ですよ…
感謝の証として…桐嶋技研の製品を…たくさん買うのです…
メルヴィナ・エルネイジェ
終わったけれど…
地下に行ったあの機体は戻らないままなのだわ
あちらはソフィアお姉様が追い掛けに行ったから、私はこのノイン首席という人をどうにかするのだわ
ひとまず何をどうするにも死なれたら困るのだわ
傷を治すために癒しの雨を降らせるのだわ
再び動ける位に意識も戻ればいいのだわ
目が覚めた後の事は他の人達に任せるのだわ
私は尋問も誘拐も得意じゃないのだわ…
でもアグネリウスに乗った経緯くらいは聞いてみるのだわ
今日の私は雨ばかり降らせている気がするのだわ…
これじゃ雨女なのだわ…
オブリビオンマシン『アグネリウス』との戦いは終わりを告げる。
炎は立ち消え、その残滓は破壊され尽くした『第三帝国シーヴァスリー』の市街地の様相を見れば解ることだろう。
いずれもが立ち行かない事態である。
小国家の国力とは即ちプラント。
そのプラントが無事でさえあるのならば、市街地という物的損害は時間を掛けさせすれば補修することができる。
だが、人の生命は還らない。
どうあがいたところで喪われてしまった生命は贖うことができないのだ。
故に、と戦いの後に残るのはなんとも言えぬ虚無感か、はたまた虚脱めいた感情のみであったことだろう。
「終わったけれど……地下に行ったあの機体は戻らないままなのだわ」
メルヴィナ・エルネイジェ(海竜皇女・f40259)の言葉に桐嶋・水之江(機巧の魔女・f15226)はうなずく。
先程まで戦いの音が響いていたようであるが、しかしその音も今は鳴りを潜めている。
戦いが終わったのか。
「……私が地下に消えた機体を追いましょう。メルヴィナ、後のこと頼めますか」
「ソフィアお姉様、おまかせを。私はこの『ノイン』首席という人の治療に務めるのだわ」
「頼みましたよ……水之江女史もどうかご自重を」
「えっ!? 私!?」
なんで今釘さされたの!? という顔を水之江はしていたが、さもありなんである。言うに及ばずっていうか、今それ言う? という具合であったが、まあ、それは普段からの水之江女史の行いのせいであろうことは言うまでもない。
だが、しかし水之江は胸を張って応える。
「おまかせをってね! 確かにあっちの二機……いや、一騎? 気にならないと言ったら嘘になるけどねぇ……まあ、ここは未来の顧客の方を優先させてもらうわ。そちらはどうにかして頂けるのでしょう? ソフィア皇女殿下」
「ええ、それでは」
その言葉と共にソフィアは『インドラ』を駆って大穴へと飛び込んでいく。
其のさまをみやりながらメルヴィナは他の猟兵が確保した『ノイン』首席の容態を見る。
「酷く衰弱しているのだわ」
「超能力を吸い上げられた弊害とでも言うべきかしらね。身体能力的なものに起因しているのかしら?」
『ノイン』首席の容態を確認した二人は、やはり彼女の衰弱の原因はオブリビオンマシンの『動力』とされたことが大きな要因であると知るだろう。
本来のオブリビオンマシンは搭乗者の思想を歪め、狂気に染めて破滅に突き進ませるものである。
だが、今回のオブリビオンマシン『アグネリウス』は違った。
搭乗者の意志を歪めるのではなく、明らかに自律行動を取っていた。いわば、オブリビオンマシンの意志とでも言うべきか。
「ひとまず何をどうするにも死なれたら困るのだわ」
メルヴィナは祈るようにユーベルコードを発露する。
彼女の祈りは癒やしの雨となって戦場となった『第三帝国シーヴァスリー』の市街地へと降り注ぎ、『ノイン』首席の外的な傷を癒やし、また同時に帝国領域にいた人々の傷も癒やしていく。
とは言え、今だ吸い上げられた超能力は戻り切っていないのだろう。
「外的要因は治療できたみたいね。じゃあ、私は……って、なんだか虚はこればっかりやっている気がするわね」
そう言って、癒しの雨(ヒーリングレイン)降り注ぐ最中、水之江はまた再生光(リペアライト)をみょんみょんやるのである。
口でみょんみょん言わないと力が発揮できないのか。いや、できるのかもしれないが、こういうのは雰囲気である。
「はぁ、これ疲れるのよねぇ……」
「人道的なことなのだわ。言っている暇ないのだわ」
「それもそうですけどぉ……あ、ひらめいた」
水之江はぴこん、と電球を頭上に輝かせる。表現が古いなどと言ってはならない。
「聞こえますか……あなたを助けたのは桐嶋技研の水之江ですよ……感謝の証として……桐嶋技研の製品を……たくさん買うのです……買うのです……」
「何しているのだわ!?」
「え、いや、こうして刷り込めばいいかしらって思って。終わったら温泉入って帰りましょうよ、メルヴィナ皇女殿下」
もち、経費で。無論、つけるのはエルネイジェ王国である。
そんな無茶な、とメルヴィナは思ったが、しかし、降り注ぐ雨を見て息を吐き出す。水之江ではないが、自分も今日は雨を降らせ続けている。
「これじゃ雨女なのだわ……」
意識戻らぬ『ノイン』首席をメルヴィナは担架に乗せ、息を吐き出す。地下へ向かった姉は無事だろうか、いや、なにか情報を偉ただろうかと、その視線を向ける。
其の頃、ソフィアは『インドラ』と共に大穴の底、横ばいとなった坑道の先へと歩んでいた。
此処にはオブリビオンマシン『アグネリウス』が眠っていたということ。
ならば、この地下には何かがあるはずなのだ。
すでに他の猟兵達が障害を排除してくれているので進むのには容易い。
「私の名はソフィア・エルネイジェ。その赤き機体の搭乗者の方に名をお尋ね申します」
ソフィアはすでに身を晒している赤いキャバリアのパイロットであろう青年を見つめ、名乗りを上げる。
「……礼節というものは大切なものだ。いつだって、それは相手の心を開かせる最初の段階であるからだ」
赤いキャバリアのコクピットから姿を晒していた青年の姿は透き通っていた。
それをソフィアは知っていたかもしれない。
『魂人』。
常闇の世界、その上層にて美しき地獄に囚われ続ける永劫回帰たるユーベルコードを手繰る種族である。
目の前の青年がそれであるとソフィアは気がついたかもしれない。
「俺はこれより、名を『パッセンジャー』と名乗ることにした。ソフィア・エルネイジェ。あんたは」
「ええ、お尋ねしたいことがあり参りました。この国の地下で何をしようとしていらっしゃるのですか、また何があるのですか」
其の言葉に艷やかな黒髪の青年は翡翠の如き緑の瞳を向ける。
「俺はこの地下に何が在るかなど知らない。俺がすべきことは、あれを打倒することだけだった」
示す先にあるのは白銀のキャバリア。
すでにコクピットが一撃のもとに破壊されている。
ソフィアはまだ身構えていた。
それは赤いキャバリアのパイロットが敵対するつもりがないとは言え、いつ気が変わるやもしれぬという緊張状態にあったからだ。
ソフィアの強者としての感覚が言っている。
目の前の青年は永劫回帰というユーベルコードがなくとも……。
「……お強い」
「俺にとって強さなど意味がない。『フュンフ・ラーズグリーズ』、いや『サツキ・ラーズグリーズ』は眠っているが、あんたたちは俺と事を交える気がないのだろう。なら、俺も戦う理由など見いだせない」
だから、とソフィアに彼は告げるのだ。
「そう身構えなくてもいいのだ。荒野に咲く一輪の白い花のようなあんたは――」
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
朱鷺透・小枝子
『激禍怨霊・眼倍』
炎と、炎が生んだ怨念を喰らいながら、約百㎞にまで広げた|【視力】《三眼》を凝らし【情報収集】『ノイン』主席移送の障害になりそうな者は居るか?
この地下は何処に続いている?その先に、何かがあるのか。
それが、白銀のがまだ居た理由か
『熾盛・改』は?フェンフは、エイルは、壮健か?
【瞬間思考力】で情報処理。地下にはいけない。
第一目標はノイン『主席』の護衛と移送。完了するまで傍を離れるわけにはいかない。直感だろうがなんだろうが、任務は任務だ。
…………彼らが壮健であることが分かれば、それで良い。
我らの間に「運命の糸」が結ばれているのなら、いずれまた何処かで出会うでしょう。
戦場に吹き荒れ、残っていた炎の全てを取り込みながら朱鷺透・小枝子(亡国の戦塵・f29924)は己の額に開眼した第三の眼を見開く。
それはユーベルコードによってさらに強化された視力による情報収集能力の拡大であった。
すでに他の猟兵達によって伏兵めいたキャバリアの撃破は終わっている。
残敵の存在は確認できていない。
小国家『グリプ5』への『ノイン』首席の移送への障害となり得るものは小枝子の視力の届く限りには見受けられなかった。
そして、大穴の底を彼女は見やる。
冥き穴。
しかし、其の底は全て炎によって焼けただれている。
恐らくなにかの施設であったことは小枝子にもわかるが、それ以上のことは分からなかった。
「この地下は何処に続いている? その先に何があるのか」
其の理由が、あの白銀のキャバリアを駆る『プラナスリー』の『ノイン』が居た理由なのかもしれない。
そう思いながら小枝子は穴を見やる。
地下へと己は行けない。
理由は単純だ。『ノイン』首席の誤送のためである。ここで彼女は再び第三者に奪われてしまうことがれば、再び争いの種になることは言うまでもない。
完了するまでそばを離れるわけにはいかないのだ。
警戒を怠らぬ小枝子は、他の猟兵が彼女の治療を行っている際も意識を途切れさせることはなかった。
猟兵としての直感が喚いているが、しかし、それでも小枝子は頑なに動こうとしなかった。
あの赤いキャバリア。
名を『熾盛・改』と言ったあの機体。あの機体に乗っていた『フュンフ・ラーズグリーズ』は今も壮健なのだろうか。
多くの争いに巻き込まれ、多く心を折られて着た彼である。
けれど、其の都度彼が立ち上がってきたのもまた小枝子は知っている。だから、と思うのだ。
生きているのなら、それで良いのだと。
今も小枝子は思う。
彼等と自分との間には『運命の糸』が結ばれている。
ならば、いずれまた何処かで出会うこともあるだろうと。
「……道は続いていく」
小枝子は他の猟兵たちの準備が終わるまで警戒を続ける。何処まで続くかのような瓦礫の山ばかりが目の前に広がっている。
失われた生命もなど数えることもできないだろう。
全てを救うことなどできないのかもしれない。
けれど、未だ争いの種を燻らせ、それを再び燃やそうとする者がいるのならば、小枝子はそれを見通そうとする。
戦乱の世界クロムキャバリア。
どうしようもなく争い続く世界にあって、それでも平和を求める心があるかぎり、小枝子は戦い続けるだろう。
そうすることで交錯するものがある。
「……ならば、言葉は不要でありましょう。ですが、敢えて言いましょう……また会おう、と――」
大成功
🔵🔵🔵
月夜・玲
…
……
え?あれ相手する系??
いや、しないけど…?
余計な仕事は…しない!
とりあえず首席を回収して脱出しーようっと
けど、あれが追い掛けて来ても困るから【Code:U.G】起動
自重で潰れる程の重力で足止めしながら、すたこらさっさだぜー
…これグリプ5に連れて行って大丈夫かな
いっそ回復するまでどっかで匿った方が良くない?
温泉で養生する?ん?
…それもアリだな
いやでも、受けた依頼を放り出すのもアレだし…
ちょっとした寄り道って体裁なら…うーん
というかシーヴァスリーの跡地を考えるとグリプ5で保護して貰った方が良いんだろうなあ
どうしよっかなー、悩むなー
ま、どうするかは後で考えればいっか
とりあえず此処から全力離脱!
月夜・玲(頂の探究者・f01605)は少し考えていた。
勢いで穴に飛び込もうとしたが、ちょっとやめたのだ。考えなしに行動してはならない。いや、飛び込んだ先にいるであろう、赤いキャバリア。
あれを相手にするのは余計な仕事のように思えてならなかったのだ。
それもそうかもしれない。
彼女たち猟兵が小国家『グリプ5』から請け負ったのは『ノイン』首席の誘拐だけである。
ならば、大穴の先に往くことは、彼女にとって余計な仕事である。
断じて報酬の外にあることをしようとは彼女は思わないのだ。
「いやでも、あれがこっち追い掛けてくる可能性だってあるわけだよね」
大穴を玲はじーっと見つめる。
動きがない。音も盛大な爆発音が一度きりである。
他の猟兵が飛び込んでいったものの、戦いが起こっている気配はない。ならば、玲にとって、それは杞憂であったのかもしれない。
ユーベルコードの発露を途中で止め、玲は息を吐き出す。
「ささっと首席の容態が安定したら、すたらこらさっさしようぜー……いやでもまってよ。これ『グリプ5』に連れて行って大丈夫かな?」
玲は外傷は癒えても意識が戻らぬ『ノイン』首席を乗せた担架を見下ろす。
確かにこのまま依頼された誘拐を完遂することはできるだろう。
だが、意識戻らぬままに渡す、というのもなんていうか人道的(!)にどうかと思うのだ。
「いっそ回復するまでどっかで匿ったほうがよくない? 温泉で養生するとかしてさ?」
思いつきで言葉にしたが、玲は、あれ? 悪くないな? と思ったのだ。
いや、自分が温泉入りたいからではないか、という無粋なことを言う者はいなかった。でもなーと玲は考える。
受けた依頼を途中で放り出すようなものであったからだ。
そういうのはなんていうか、玲のプロフェッショナルの矜持がアレして許さない感じであった。
だが、玲は己の心の中でいろんなものを拡大して解釈するのだ。
「ちょっとした寄り道って体裁なら……うーん」
でもそれでもなんていうかまだ無理筋であったように玲は思うのだ。
そもそもが『第三帝国シーヴァスリー』の跡地のことを考えると『グリプ5』での保護が最も打倒であるように思える。
悩む。
とても悩む。答えが出そうにない。けれど、ならばこそ逆に、である。
「そう、逆に、だよね!」
悩んでいることはいい。けれど、この場にとどまり続けることのほうが悪手であるように思えたのだ。
道すがら休憩に温泉小国家に立ち寄って湯治してきました! くらいのアドリブを効かせたところで、文句は言われないだろう。
「兎にも角にも厄介な連中がやってくる前にここから全力離脱しよう!」
準備が整い次第行こう、と玲は頷き、その道程を定める。
目指すは小国家『グリプ5』、ちょっとその前に温泉小国家『ビバ・テルメ』!
秋風そよぐ今の季節ならば、温泉は気持ちいいぞ~! と玲は人仕事終えた後の行楽気分を僅かに心に生み出しながら、しかして、最後まで依頼を達成するために気を抜かぬのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
カシム・ディーン
くそー…出遅れた!
「何だか修羅場だねー☆」
あの黒幕感マックスなノインがやられて…そいつをやった真の黒幕はぶっ殺され…なんだこりゃ
【情報収集・視力・戦闘知識】
機体の動き…立ち回り…何より…自分に対する反応を見る
己を知っているのかいないのか
おめー…フュンフか?
あー…ふわっとした言い方で煙に巻くな
ちゃんと主語を入れて話せ
中二病かよっ
…まぁ…幾つか想像はあるが…エリクシルの願いの産物か?
ぶっちゃけそうだったとしてもわけわかんねーけどな
「エイル君は何処でエリクシルが関わったんだろうねー?」
えれは今のところEB世界とUDCしかなかった筈だしな…?
まぁいい…おめー名前は?因みに僕はカシムだが後その機体は?
小国家『第三帝国シーヴァスリー』の状況はよろしくない。
カシム・ディーン(小さな竜眼・f12217)は状況が終わった後に転移してきた猟兵であった。が、しかし、それでもやれることはあるはずだと彼は周囲の状況を察する。
「くそー……出遅れた!」
『なんだか修羅場だねー☆』
己のキャバリアである『メルクリウス』の内部から周囲の情報を察知する。
どうやらすでにオブリビオンマシンは打倒された後のようである。
大穴穿たれた地面、その先にどうやらまた別のキャバリアがいるようである、ということをカシムは察知し、その奥へと進む。
大穴の中はオブリビオンマシンが放った高熱によって溶解し、原型をとどめていない。
横ばいの道は坑道だろうか。
線路の痕のようなものが見て取れる。
「……この先にいるようだな」
カシムは坑道の先、幾人かの猟兵たちが飛び込んでいった先へと到達する。
其処に居たのは赤いキャバリアのコクピットから身を晒す一人の青年であった。彼は黒髪を揺らし、新たに現れたカシムを翡翠の如き瞳で見据える。
そこに感情のゆらぎというものは存在していなかったように思える。
「おめー……『フュンフ』か?」
「幾度か問いかけられたが、そうではない。見ての通りな。あんたの言うところの『フュンフ』とは、『フュンフ・ラーズグリーズ』、『サツキ・ラーズグリーズ』のことを言うのだろうが、彼ならば眠っている」
青年の言葉にカシムは苛立つ。
「あー……ふわっとした言い方で煙に巻こうってのか? ちゃんと主語入れて話せ」
「そのつもりだが」
黒髪の青年は息を吐き出す。
カシムは目の前の青年が遅れてやってきた中二病に罹患したかのような態度であることに徐々にむずむずとしたものを感じ始める。
「『フュンフ・エイル』とどう関連しているのかしらねーが、これもエリクシルの願いの産物か?」
「エリクシル? それは知らないが、しかし『フュンフ・エイル』が分かたれた存在であることはわかっているだろう。願いを歪めて兼ねられた結果、そうなった、と。少なくとも俺はそう聞いている」
『エイルくんは何処でエリクシルが関わったんだろうねー?』
『メルシー』が口を挟む。
その行為にカシムは咎めることはしなかったが、しかし、気になる。
彼等の認識において『エイル』という存在は多くの世界にいないものである。だが、幾人かの猟兵たちの言葉を借りるのならば、似た姿の違う名前の存在が多く見受けられているのもまた事実である。
「よくわかんねーってことだけがわかってるということかよ」
こんなところまで出てきたというのに、とカシムは頭を振る。
だが、収穫なしで帰るわけにはいかない。
「まぁいい……おめー名前は? ちなみに僕はカシムだが。あとその機体は?」
「俺はこれより『パッセンジャー』と名乗ることにした。そうするのがしっくり来るからだ。この機体は『熾盛・改』。形が違うとは言われたが、俺が知るのは、この姿であるので、以前の姿とどれほどに相違があるのかはわからない」
そう告げ、黒髪の青年はコクピットの中に収まる。
逃げる、というわけではない。
けれど、共に往くのはカシムたちとではないというように彼は赤い機体と共に坑道の奥へと消えていくのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
安野・穣
(アドリブ連携歓迎)
衰弱はしてるが…死んではいない、か。
彼女を連れて行くまでが仕事っすからね。懸念があるとしたら…
…『シビュラ』起動。『カサンドラ』を自動操縦に切り替え。
ノイン首席の護衛は任せるっすよ。移送を担う者がいたらそれに付き従うように。
任せる以上…必然、生身か。最悪『カサンドラ』の位置を導に|転移《離脱》が可能とはいえ…
…降りるか。赤い二機が飛び込んでいったあの地下に。
…国内に残っている機体はあのオブリビオンマシンのみって聞いてたんすけれど。
『ジェード』展開。スキャンで<情報収集>。機体内部に確認できる生命反応の数は?
その全てに『アズライト』で伝達。
首席は拐っていくっすよ…止めますか?
「衰弱はしているが……死んではいない、か」
安野・穣(with"CASSANDRA"・f30162)は未だ目覚めぬ『第三帝国シーヴァスリー』の首席であり、今回の事件の中核である『ノイン』が担架に乗せられている姿を『カサンドラ』のコクピットの中から見やる。
今回、猟兵に託された依頼は一つ。
『ノイン』首席の誘拐である。
結果としてオブリビオンマシンから彼女を救出し、『第三帝国シーヴァスリー』の滅亡を一手前で食い止めたのだから、それは僥倖とも言えるものであったことだろう。
「懸念があるとしたら……」
穣は『カサンドラ』の操縦を任せ、オブリビオンマシン『アグネリウス』が飛び出して来た大穴の中へと飛び込む。
「『ノイン』首席の護衛は任せるっすよ」
他の猟兵たちもいることであるので、万が一のことはないであろうが、穣が『カサンドラ』を自動操縦に切り替えたのは、其の万が一のためである。
保険は二重に掛ける。
仮に大穴の先で己が命の危機に陥ろうというのならば、ユーベルコードで『カサンドラ』へと戻ることができる。
とは言え、である。
この大穴の先にあるのが鬼なのか、それとも虎なのか。
いずれにせよ、進まねば答えが出ないことを穣は知っている。
「……国内に残っている機体はあのオブリビオンマシンのみって聞いたんスけれど……」
己の眼球を覆うコンタクトレンズ型の端末によって坑道めいた横ばいの道……その中の状況を探る。
戦いの痕が残っているのは、赤いキャバリアが追った白銀のキャバリアとの戦闘の結果であろう。
すでに戦闘は終わっているようである。
「あれが……」
穣は生身であるが故に、二機に分かたれ、また一騎に戻った赤いキャバリア『熾盛・改』の姿を見上げる。
其の姿は二人羽織のようにもう一騎のキャバリアが装甲となって覆いかぶさっているようでも在った。
あれが状況によってもう一騎のキャバリアに変貌するというのならば、その制御は如何なるものが用いられているのか。
端末から機体をスキャンする。
内部に在る生命反応は3つ。
その穣の動作に赤いキャバリアは反応したのか、立ち止まり振り返る。
「……ッ、気が付かれた」
「あんたも何か聞きたいことがあったのか」
静かな声だった。
コクピットハッチが開き、其処から現れるのは透き通る体を持つ黒髪の青年。翡翠の如き瞳が穣を見下ろしている。
生命反応は3つ。
けれど、己に応対するように姿を現したのは一人。
「……他の方はどうしたっすか?」
「今は眠っている。それだけだ」
「首席は拐っていくっすよ……止めますか?」
其の言葉に青年は頭を振る。
止めるつもりはないようだった。むしろ、猟兵と敵対するつもりもない様子であった。問答無用で攻撃してこないところからも、それが伺える。
「止めないんすか? 一国の首席をさらおうっていうのに」
「理由になってない」
彼には猟兵たちの行動を止める理由がないのだろう。だから好きにすれば良い、そういうように赤い機体は穣に背を向けて坑道の先へと去っていく。
「……ともあれ、っすね」
依頼は為し得るだろう。
この先、周辺小国家は物々しい空気に包まれるだろうが……しかし、オブリビオンマシンの脅威は振り払うことができたのだ。
ならばこそ、それを良しとすることで穣たち猟兵は『ノイン』首席の身柄を小国家『グリプ5』へと移送するのだった――。
大成功
🔵🔵🔵