#UDCアース
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おめんでわらう おじじさま
ひいなをひいて まきでくべ
やきぐり山ほど つくったら
大葉にくるんで いぬにやろ
おめんでわらう おじじさま
おうなをしめて まきでくべ
やきいも山ほど つくったら
紅葉にくるんで ねこにやろ
――鋏田村 とある伝承の歌
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「うむ、UDCアースの某所に|鋏田村《はさむたむら》という場所がある」
ヴィズ・フレアイデア(ニガヨモギ・f28146)はそう話を始めた。
都心から遠く離れ、すっかりと田舎と呼べる場所にあるのだそうだ。
「鋏田村では今が秋の盛りでな。紅葉が一杯で美しくてね、祭りが行われるそうだ。よくある豊饒に感謝する秋祭りさ。神輿を担いだり、神社には出店が出たりして其の時ばかりは賑やかになる。――のだが、此処にはとあるUDCの怪物が封印されている」
物騒になったね、とヴィズは子どものように笑う。
元より、この女の花唇から物騒でない言葉が出た事はあっただろうか。
「鋏田村には幾つか言い伝えの類が残っているらしい。其の中には“UDC怪物を封印した方法に関するもの”が含まれているはずだ。……古来から残るものは大抵そうだろ? 意味のないものに、意味を込める。恐らく封印がいつか綻びると、UDC怪物を封じた村人たちは気付いていたんだろうね。お前達には秋祭りを楽しむついでに、このUDC怪物を倒して貰いたい」
UDC怪物はとても強大だ。だが、封印の法が判れば、其の力を弱体化させる事が出来る。其の為に村を調べて貰いたいのだとヴィズは言う。
「そもそも鋏田村という名前自体、何らかの由来があるそうだ。調査では細部まで判らなかったが、秋祭りという雰囲気の中でなら喋ってくれる人もいるだろう。もしかしたら祭自体にも意味があるかもな」
青薔薇を冠した白磁の門が開く。
其の奥には空を染めそうなほどの紅葉が生い茂っており――ひらり、と一枚がグリモアベースに流れて来て落ちた。
ヴィズは其れを拾い、良い季節だね、と言う。
key
こんにちは、keyです。
今回は秋まつりとわらべ歌のお話。
●目的
「UDC怪物を撃破せよ」
●各章
第一章では秋祭りをお楽しみいただけます。
村特有の出店もありますが、おおむね普通の秋祭りと同じ様相です。
色んな出店があったり、夜には花火が上がったりします。
第一章のみのご参加もOKです。
第二章では、第一章で得たヒントを元にUDC怪物を弱体化させる何かを探す事になります。
其れは動作かも知れません。
物品かも知れません。
捜してみないと判りません。
第三章は戦闘になります。
●プレイング受付
受付は断章投下後に開始です。
〆切はタグ・マスターページにて適宜お知らせ致します。
●注意事項(宜しければマスターページも併せてご覧下さい)
迷子防止のため、同行者様がいればその方のお名前(ID)、或いは合言葉を添えて下さい。
また、アドリブが多くなる傾向になります。
知らない人と共闘する事なども在り得ますので、ソロ希望の方はプレイング冒頭に「🌼」を添えて頂けると助かります。
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此処まで読んで下さりありがとうございました。
皆様のプレイングをお待ちしております。
第1章 日常
『旬のもの食べよう!』
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POW : がっつり食べる、いっぱい食べる、見てて気持ち良いぐらい食べまくる、気合で勝負!
SPD : 素早く食べる、新鮮なうちに食べる、機転を利かせてより美味しく!
WIZ : 食材の知識で最適な食べ方を楽しむもよし、うんちくを披露するもよし、頭を使ってより美味しく!
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種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
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まずは焼きそば? 其れともたこ焼き?
遊びたいなら金魚すくいや飴の型抜き。
水風船掬いなんてものもあるよ。
デザートならりんご飴に綿あめ、京ケーキなんていかがでしょう。
――え? あの店は何かって?
あれはね、昔から誰かがやってる「はさみ打ち」ってやつだ。
射的によく似ているが、賞品を落とすんじゃない。
賞品の両脇にある小さな的を狙って撃つのさ。
俺は一時期都会にいたから珍しいと知ってるがね、この鋏田村ではメジャーなんだよ。
普通の射的を見た時はびっくりしたものさ、はっはっは!
どうだい、やっていくかい?
ああそうだ、夜には花火が上がるんだ。
田舎だから余り派手ではないけどね、是非見て行ってくれると嬉しいよ。
村崎・ゆかり
イクシア(f37891)と
この先が鋏田村ね。ちょっと待って。お祭を楽しむ前に出来る事をする。
「式神使い」で黒鴉召喚。村の地形を調べ上げ、注連縄を張った所や湖などがないか見て回る。
お待たせ、イクシア。手くらい、いくらでも繋ぐよ。
こんな地方のお祭でも出店は出るのね。何買おう? たこ焼きなんてどう?
イクシア、あーん。美味しい? あたしにもちょうだい。
挟み打ちもしよう。
心置きなく楽しみたくても神社が気になる。戦巫女として、お祭に何か違和感がないか察知したい。
「コミュ力」で接触。お邪魔します、神職さん。大学で民俗学部に通ってます。神社の由来やお祭の事を教えてください。
イクシアから電話。もう花火の時間か。
イクシア・レイブラント
ゆかりさん(f01658)と
今日はゆかりさんと二人っきり。出店の灯りが照らす参道を一緒に歩いていく。
その…手、繋いでもいい?
たこ焼きのやり取りはすごく照れる。
う、うん。おいしい。 えっと、ゆかりさんもどうぞ。はい、あーん。
噂の「はさみ打ち」に挑戦。なんども試しながら、店主から気になる由来や伝承を聞けないか話しかけてみる。
景品は何が貰えるんだろう。
ゆかりさんが神社に出かけたら、祭りの敷地内にドローンを展開。
事件の前兆で人の流れがおかしくなったりしていないか観察する。
花火を観測したらゆかりさんに連絡。
ここからすぐ近くに、見えやすい場所があるの。待ってるね。
●
空を鴉が舞っている。
あれは自然のものではない。村崎・ゆかり(“|紫蘭《パープリッシュ・オーキッド》”/黒鴉遣い・f01658)が飛ばした式神だ。
「――どう?」
イクシア・レイブラント(翡翠色の機械天使・f37891)が問う。
そうね、と式神の感覚を咀嚼しながらゆかりはゆっくりとイクシアを見た。
「神社は小高い丘の上にあるみたい。歩く分には判らないくらいの緩やかな傾斜だけど」
「そう。じゃあ神社の神主さんに聞いてみる?」
「其れが一番手っ取り早いかもね」
言いながら、イクシアはゆかりの嫋やかな手をみてそわそわとしていた。率直にいうと、手を繋ぎたいのだ。
でも――何て言おう。はぐれたらいけないって理由をつける? 素直に言ってみる?
そんなイクシアの様子を見て、くすりと笑みを浮かべたゆかりはそっと手を差し出した。
「ほら」
「え、……?」
「手、繋ぎましょう? はぐれたらいけないし」
「……! そ、そうだね。はぐれたら危ないしね、」
危ないから、と繰り返しながら、イクシアはそっとゆかりの手に手を重ねる。
そうして二人、何の事はない顔をして祭に繰り出した。
買ったたこ焼きを食べさせ合いっこして、イクシアが熱さと恥ずかしさで目を白黒させたり。ゆかりはそんな様を楽しみながらも、祭に違和感がないかどうか素早く視線を走らせていた。
「あ、ゆかりさん。射的だって」
「射的?」
「おう、ただの射的じゃないぜ! 此処特有の“はさみ打ち”ってやつよ」
興味を持ってもらえたからと、店主が気の良さそうな声で言う。
「景品の両脇にある的を落とせたら景品ゲットだ! ちょっと難しいだろ」
「確かに。普通の射的は景品を落とせば良いですからね」
此処は任せた、とゆかりがイクシアに目配せし、神社へと向かって行く。
イクシアは頷いて、じゃあ一回やります、とはさみ打ちの店主に代金を払った。貰ったのは5発。
「なんでも昔、怪物退治の話が元だって話だ。とある猿のようなのがいてなあ――」
「ごめんください」
一方、ゆかりは神社を訪れていた。
戦巫女として見てみたところ、神社は“明らかに左右対称に作られている”。社務所でさえ二つ作られているという手の込みようだ。
何か意味があるのだろうか。ゆかりは直接神主を訪ねる事にした。
祭の最中だというのに快く応じてくれた神主は老体で、はいはい、とゆかりの言葉に頷く。
「大学で民俗学部に通っているんです。良ければ神社の由来や、お祭りの事を教えて頂けると嬉しいのですが」
「勉強熱心な生徒さんだなあ。こんな片田舎の伝承を見付けるなんて大変だったろう。――此処の神社の作りは見たかね?」
「ええ。鏡で写したように対称でしたよね」
「そう。昔化け物を退治した伝承が此処にはある。猿のような翁のような――ああ、翁とはおじいさんという意味だけれどね、そういうものだったという。」
――昔。
其の猿のような化け物は、丘の上に居を構え、ふもとの村々を荒らし回っていたという。人を喰い、其の残骸をばらまくという鬼も怯えるような所業であったという。
其れにとある狩人が立ち上がった。倒さねばいつまでも被害は続くと。けれど、村人たちはすっかりと猿に怯えてしまっていたので、狩人は一人で猿を狩りに行った。
其処で使ったのが鏡である。猿は鏡というものを知らなかったので、狩人に追い詰められた時、鏡に映った自分を見て|挟み撃ちされた《・・・・・・・》と勘違いした。
其の一瞬の隙をついて、狩人は猿の頭を撃ち抜いたという。
「――狩人は猿の身体を五つに分けて、丁寧に埋めたと言われる。だから此処のご神体は鏡なんだ」
「成る程……興味深いお話ですね」
「そう思ってくれる若者がいてくれて嬉しいよ。――ああ、そろそろ花火の時間じゃないかな? 君は一人で?」
「いえ、もう一人――」
りりりりり。
ゆかりの携帯が鳴った。恐らくはイクシアからの連絡だろう。
花火が上がり始めたのだ。なら、少しの間は楽しみたい。ゆかりは神主に礼を言い、其の場を辞した。
――さて、鏡とやらがキーワードのようだが。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
インディゴ・クロワッサン
結構前に仕立てた浴衣姿でお祭りを満喫だー!
「焼きそば! たこ焼き! りんご飴ー!」
勿論、京ケーキももぐもぐするぞー!
「んー 美味し~」
出店を巡りながらも、UC:集め集う藍薔薇の根 も使って情報収集は欠かさないよ~☆
「…お?何あれー?」
はさみ打ち?へー…
(僕、銃の類いはほーぼ使わないからなぁ…)
まぁそれでもお祭りの射的とかは意地と根気と技能ガン詰みして当てるけどね!
見切り、審美眼、読心術、第六感辺りを併用して、的確に小さい的を狙うぞー!
そして、気合いと早業と2回攻撃で、素早ーくお会計して構えて2回目ぇ!
踏みつけでしっかり地面を踏みしめて!力溜めでよーく狙って!
居合の如き瞬間を狙って!今だー!
●
浴衣を仕立てておいてよかった!
インディゴ・クロワッサン(藍染め三日月・f07157)は焼きそばを頬張りながら、そんな事を思う。やっぱりお祭りを楽しむなら、形から入らないとね。
焼きそばでしょ? たこ焼きでしょ? 後はりんご飴に、京ケーキとか綿あめとか!
祭を楽しみながらも、情報収集は欠かさない。
ユーベルコードを使って聞き耳を立てる。
――今年ももう“おきなさま”の時期かぁ
――早いものだなあ
「――……?」
おきなさま、とはなんだろう。文脈だけ取るなら、この祭の事を指していると思えるが……
と、焼きそばを食べ終わりながらインディゴが顔を向けると、其処は射的屋だった。
「お! どうだい兄ちゃん! やってかないかい、はさみ打ちだよ!」
「へ? はさみ打ち?」
「知らないのかい? そういや街から帰った奴が特有のって言ってたな。ええとな、景品じゃなくてこの小さな的を狙うんだ。左右の的を倒せたら、景品は兄ちゃんのものだ」
「へえー! 面白そう! やるやる!」
「だろ? さあて、兄ちゃんは何処までやれるかねえ」
インディゴは銃の類を殆ど使わない。
だから正直、“引鉄を引けば玉が出る”くらいの事しか判らない。でも――折角のお祭りだもん。ちょっとくらい本気を出しても良いよね?
銃を構える。
――ああ、あのぬいぐるみの両隣なんて良さそうだ。地面をしっかり踏みしめて、よく狙う。
そしてまるで刀を抜き打つが如く、打つ!
「今だー!!! 食らえ!!」
ぽん、ぽん、と打ちだされたコルクの弾丸は、とん、とぬいぐるみの両脇を捕らえ……プラスチックで作られた小さな的がゆらゆらと揺れて……
「……」
ぐらぐらと揺れ……
「……!!」
ぱたん、と倒れた。
「やったー!! おじさんどう!? どう!?」
「こりゃあ参った! 一発で当てちまうとは流石だねえ兄さん! ぬいぐるみ持って行きな」
「わーい! ありがとう!」
小脇に抱えられるくらいのくまのぬいぐるみ。
インディゴは大事に抱えて、花火の為の場所取りに向かうのだった。
大成功
🔵🔵🔵
第2章 日常
『『 』を探せ』
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POW : お出かけ序で、駆け回って探す
SPD : グッズや地名を検索する
WIZ : そう呼べるものを作ったり、演出したり
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種別『日常』のルール
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昔々、鋏田村に老人がいたそうだ。
山のふもとに居を構え、常に猿の面を被る奇人だったという。
或いは化け物が人間のふりをしているのだと悪し様に言うものもいたが、果たして其れは真実であった。
老人は人の営みを真似る怪物だったのである。
怪物は程なくして牙をむいた。
最初は小動物が道端で死んでいる程度で、気味悪がりながらも村人は異常を感知できずにいた。
だが――其れが人間に及べば話は別だ。
とある日、女児が夕暮れにぽつりといなくなった。
親は半狂乱で、周りのものも必死になって探したが、女児はついに見付かる事はなかった。
次には老婆が攫われた。当然、疑いの目はふもとで暮らす謎の老人へと向く。男たちは猟銃を手に老人の家の扉を叩いたが――出てきた老人の顔を見て、とあるものは腰を抜かした。とあるものはどうして此処まで化け物を放っておいたのかと後悔した。
「こんにちは、何か御用ですか?」
老人が子の真似をして上げる声が此処まで悍ましいと思う事もそうそうないだろう。
彼は|女児の顔の皮を被って《・・・・・・・・・・》出てきたのである。
家の中には吊るされた肉に、女物の着物。そしてぐつぐつと煮たつ鍋……男たちは震える手で怪物へと銃を向けたが、老人は其れ等を猿のように素早い動きで避けたかと思うと、男たちの首元を素早く斬り裂き、殺してしまった。
「あーあ」
「男の肉は堅いから、食べたくないなぁ」
――其れを見守っていた男がいた。
臆病で有名だった村長の息子である。彼は護身用に包丁を持ってはいたが、刃物を振り回した事もなく、猟銃など言わずもがなである。
怪物は直ぐに其の存在に気付く。ひっ、と息を呑みながら、村長の息子は必死に頭を巡らせた。
何とか。
何とかしてこの怪物を倒さなければ。
彼は臆病ではあったが、其れでも自分に何が出来るかを捜していた。
そうして、下手くそな笑顔を作って話しかけてみる事にしたのだ。
「き、君の名前は?」
「るり」
目眩がした。
るり、とは老人が被る皮の少女の名前である。
「お、お、おべべが汚れてしまっているね。直ぐ傍の泉で洗ったらどうかな」
「泉?」
首を傾げる老人に、そう、と噛み合わぬ奥歯をこらえながら青年は頷き、怪物を泉へと案内した。
だが、これが思わぬ功を成す事となる。
怪物は泉というものを知らなかったのだ。本来なら水も要らぬモノだったのだろう。己が映る水面を見て吃驚したかと思えば、不思議そうに覗き込む。
――青年は己を鼓舞する叫び声を上げながら、怪物を泉に突き落とした。
「――斯くして怪物は犠牲者を出しながらも討伐された。其れが鋏田村に伝わる昔の話です」
最も、この話を知るのは私と村長の家系だけでしょうが。
鋏田神社の神主は静かに目を伏せ、そう語る。
「其れから“鏡”――特に“水鏡”はこの村では大事な意味を持つようになりました。そして“はさみ打ち”という言葉もいつしか意味を持ち、出店の出し物として伝わるようになりました。今でも村長の家は村の入り口に、この神社は村の最奥にあります。勇気ある若者の家と神聖な神社で村を挟む事で、悪いものをもう二度と村に近付けんようにするという意図ですな。しかし……そうですか。この村で“怪物”という言葉が差すものは恐らく昔話の老人以外にありますまい。彼には鏡、水鏡、……そういったものが弱点になると伝わっております。村のものには私が話しましょう。ご自由に村の周囲を探索なさってください」
どうやら件のUDC怪物には鏡が有用なようだ。昔話の泉を探すもよし、鏡になりそうなものを作るもよし、或いは怪物が出て来そうな場所を探すのも一つの戦法だろう。
子どもたちがわらべ歌をうたっている。
「おーめんでわーらう、おじじさま……」
インディゴ・クロワッサン
よーし、私服にお着替えしてから散策しよーっと♪(早着替え/早業
つまり、初めて見た泉に映る怪物自身の姿に驚いて隙を晒したから、封印された、と…
てことは、用意するなら、水鏡よりは鏡の方が興味引けるかも、って事かぁ…
「…よーし! 泉探すぞー!」
戦闘場所に鏡仕込むのも面白そうだし、それに僕ならUC使えば極め~て精巧な鏡もポコポコ量産出来るからね!
UCってホント便利~
泉探しと同時にUDCの怪物が出そうな所も探してみよーっと!
「まー、住んでたトコは山のふもとらしいし、その辺を重点的に…っと」
UC:運を天命に任せるが如く で発動したUCを活かしながら、山のふもとの泉っぽいとことかを捜索だ~!
●
よし、とインディゴは私服に着替えて散策を始めた。
目指すは――さて、何処を目指そうか。
「初めて見た泉に映る自分の姿に驚いて、隙を晒した……なら、用意するなら鏡の方がいいのかなぁ……よし! 取り敢えず泉捜すぞ~!」
戦闘場所に鏡を仕込んで、怪物をかく乱するのも悪くないし。
其れにインディゴのユーベルコードを用いれば、極めて精巧な鏡だって用意出来る。
「ユーベルコードって本当便利だよね~」
言いながらさくさくと歩むのは神社の傍の森だ。
神社と村長の家で怪物を挟んだというのなら、場所は自然と限られてくる。
其れから――UDCの怪物が出そうな場所も捜しておきたい。まだ封印されているなら良いが、封印が既に解けて飛び出してしまっているなら何処を狙うかもあたりを付けておきたいのだ。
「んー、僕ならやっぱり、仕返しするかなー。なら、村長さんのお家の周りを気を付けて置いたほうが……あ!」
きらり、と輝くものがあった。
インディゴは其れを見て、慎重に歩を進める。インディゴは怪奇ではなく、泉が危険なものと知っているからだ。
「……此処かな?」
其処は計らずとも、神社と村長の家で森を挟んだ真ん中あたり。
きらきらと陽光に照らされる小さな泉が其処にあった。
大成功
🔵🔵🔵
村崎・ゆかり
イクシア(f37891)と
『村長の家系』ね。多分公的な村長じゃなさそう。
それともその家が代々村長?
ま、そこはどうでもいい。
ポリスタキアを連れ『村長』の末裔に伝承の裏をとる。
最初に聞いた鬼も震わす悪行の猿と翁は相当違う。
二つ目の話には狩人がいない。
一つ目は逆にひいなもおうなもいない。
場所も丘の上と山の麓で違う。
伝承歌のひいなは「雛」、つまり子供で二つ目の話の女児。
おうなは「媼」。つまり老婆。これも二つ目。
童歌は二つ目の話が元。なら神社の最初の伝承は何?
事件は二回起こったの?
翁が猿の顔を剥がし面にした?
仮面は『真実を隠し成り代わる』道具。怪物が怪物に成り代わる?
式は一羽をイクシアに。他は泉を探索。
イクシア・レイブラント
ゆかりさん(f01658)と。
私のポリスタキアとゆかりさんの黒鴉を交換して別行動。私は村の方で[情報収取]。
かつて惨劇があった伝承は村人達も知っているはず。
なにかわかったら連絡するね。
浴衣姿のまま、村人たちに“おきなさま”の行事やわらべ歌について聞いてみる。
翁は村を襲った怪物であるはずなのに、どうして歌の中ではおじじさまと敬い、焼き栗や焼き芋を動物に配っているの?
わらべ歌の中で翁は退治されていないけれど、歌には続きがあるの?
ゆかりさんと情報共有したら、村を一旦離れて離れて鎧装を装着。
怪物を沈めた泉や、怪物を封印した場所へ飛翔して、
[偵察、索敵]【水煙封土】を使い、オブリビオンの反応を確認する。
●
「では、伝承に間違いはないのですね?」
ゆかりが問う。其の傍に天使のようなロボットを浮遊させながら。
彼の名はポリスタキア。イクシアの持つ偵察用ロボットだ。ゆかりは黒鴉を、イクシアはポリスタキアをそれぞれ交換して、情報収集を行う事にした。
「ええ、ええ。神社とまったくおんなじ話を、うちも伺っております。運よく泉に怪物を落とした青年がうちのご先祖様に当たります」
「でも、其れではつじつまが合わない部分があるんです。お祭りの時に聞いた伝承には狩人がいた。けれど、神主さんの話には狩人は出て来ない。逆にお祭りの時に聞いた話では、女児も老婆も出て来ない」
「ええ、そうです。――これもまた伝承ではあるのですが……村長の息子は全てを終えた後、幾つかの話を“作った”そうですじゃ」
「……作った?」
「ええ。其れが何故かは我々には判りません。『偶然倒したなんて恰好が悪い』とでも思ったのかもしれません。息子は幾つかのほら話を、戦果を問う村人に吹聴して回ったそうなのですわ。けれど――ただ一つ、『鏡』だけは話に共通しておったそうです。鏡を用いて猿を倒した……其れだけは全ての話で共通しておったと」
「……」
ゆかりは思い返す。
“猿の身体は五つに分けて埋められたそうだ”
――アレが比喩で、本当はほら話を五つ作って、伝承という形で化け物を封印したのだとしたら?
「――……わかりました、ありがとうございました」
「いいええ、大したお構いも出来ずに」
村長の家系にあたるという人当たりの良さそうな老婆はゆかりに合わせてゆっくりと立ち上がると、彼女を入り口まで見送った。
……。
…………。
一方でイクシアは、村人たちから情報を集めていた。
「ああ、うちの婆さんが言ってたなあ其れ。なんだったっけなあ、悪い事をすると『猿が来るぞ』って俺らを脅してさあ」
髪を金色に染めた若者は、其の見目とは裏腹に村の古事に少しばかり詳しいようだった。
「で、わらべ歌だっけ。うん、今も子どもに伝わってるアレだよな」
「ええ。翁は村を襲った怪物なのに、どうして『おじじさま』なのかなって」
「そりゃーアレよ、大学で習ったな、何だったかな……御霊信仰ってやつじゃねぇ? 知ってるかな、めっちゃ祟って来るようなこえー悪霊を、神様みたいに祭り上げるってやつ。『おじじさま』が祟ったって記録は村にはないけどさ」
「――敢えて動物に優しいおじじさまって歌う事で、其の魂を鎮めていた?」
「そー。そうそう、それ。だから退治されねぇし、だけどやっぱ嘘ばっかはつけないから、ちょっと本当…本当?の事織り交ぜて、みたいな?」
「みたいな」
成る程、とイクシアは頷く。
そうして時間を確かめると、ゆかりとの合流時間が近付こうとしていた。
「……ありがとう。とても参考になった」
「おー。オカ研も割と役に立つべ? ま、そういう事があったりなかったりな村だから面白くて俺は此処にいるんだって事よ」
若者は片手をあげ、イクシアを見送る。
そうしてまた煙草を吸ったのだろう。赤い光が暮れ行く村の空気の中にきらりと輝いた。
……。
…………。
イクシアとゆかりは村の外で合流し、互いに得た情報を共有する。
怪物を倒した若者が、ほら話を流布した事。
歌の中の『おじじさま』は、歌を作った者が恐怖から祭り上げたのではないかという事。
そうして矢張り水鏡――怪異を突き落としたという泉を確認すべきだろうと二人は頷き合い、イクシアは鎧装を装着し、ゆかりを抱えて飛翔した。
「イクシア、あれ」
空からならよく見える。丁度村長の家と神主の家の間に位置する泉は、夜になりかけの空の光を浴びてきらきら藍色に輝いていた。
イクシアは降り立ち、一旦ゆかりと離れると泉の傍に屈みこむ。
――水煙封土。
ふわり、とイクシアから漂うのは、浴びた全ての対象から戦闘意欲を削ぐ煙霧。だが本命はそちらではない。同時にイクシアはこの間、およそ半径140m内に存在する、殺傷衝動を維持した個体を感知する事が出来るのである。
――そして、イクシアの感知網の端に引っ掛かるものがあった。
「……ゆかりさん!」
「どうしたの、イクシア」
「封印は……もう解けています!」
水の中にオブリビオンの気配はなく。
其の意志は泉の端から森を伝い真っ直ぐに――神社に向かっていた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第3章 ボス戦
『嗤う無貌の百面老』
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POW : 紅螺旋撃
【被った女相の面】で攻撃する。[被った女相の面]に施された【紅き螺旋忍術を付与する力】の封印を解除する毎に威力が増加するが、解除度に応じた寿命を削る。
SPD : 百面神楽
【被った般若の面】で攻撃する。[被った般若の面]に施された【疾き反撃の一手を付与する力】の封印を解除する毎に威力が増加するが、解除度に応じた寿命を削る。
WIZ : 鉄扇戦線
【被った翁の面】で攻撃する。[被った翁の面]に施された【勝機を捉える直観を付与する力】の封印を解除する毎に威力が増加するが、解除度に応じた寿命を削る。
イラスト:カス
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠枯井戸・マックス」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
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時は数十年前にさかのぼる。
自らも落ちる覚悟で怪異を水に突き落とした青年は、腰を抜かして水辺にへたり込んだ。
怪異が浮かんでこない事を十全に確認した狩人は、そこでやっと猟銃を下ろした。
青年の脳裏に浮かぶ、昔じいさまから聞いた言葉。
『ええか』
『怪物を殺したかったら、其の四肢を八つに裂かにゃあならん』
『水に沈めてもいずれ這い上がる。焔で焼いても其の皮を破って蘇る』
『ええな。そういうものに出会ったら、八つに裂けよ』
青年は震える声で狩人にその旨を言った。
しかし怪異は既に五体満足なまま泉に沈んでしまっている。狩人は考える。どうすれば水の中の怪異を八つ裂きに出来るだろう。
――そうして二人が考えたのは、『話で八つ裂きにする』というものだった。
嘘を混ぜ。
大袈裟に。
そして真実をそっとくるんで。
幾つかの話を村人に流布する事で、怪異がどのようなものであったのか、どのようにして死んだのかを||八つ裂きにした《・・・・・・・》のである。
そして今。
伝承は歌となり、或いは言い伝えられ、怪異は確かに其の存在を八つに裂かれた筈だったのだ。
――なら、この光景は何だ。
獣の気配を追って神社に訪れた君たちを迎えたのは、凄まじい鉄錆びた香りだった。
嗅覚を辿って視覚すら刺激するような凄まじい臭い。
神社の白い石ころを、真っ赤な血が汚していた。
境内に誰かが倒れている。其れを見ている誰かがいて、
――べちゃり
嫌な音がする。
濡れた雑巾を叩き付けたかのようだ。
“怪異”はついに其の姿を現す。
||顔に貼り付けた神主の顔の皮《・・・・・・・・・・・・・》、其の上から笑みの面を被って……君たちをずるり、と見据えた。
「おおバにくルンで イぬにやロ」
UDC怪物、百面老。
此処で斃さなければ間違いなく、地図から村が一つ消えるだろう。
インディゴ・クロワッサン
僕には水鏡は無ー理ー!!そんなUC持ってないもん!!!
「ってー訳で、ありとあらゆる鏡を召・喚っ!」
UC:薔薇錬成 を使って両の手を合わせてから、鏡の裏に薔薇の紋章が刻まれてる、手鏡やら鏡付きドレッサーやら全身写せるやつを量産ー!
敵の攻撃で壊されても、マジックミラーを囮にその後ろに鏡を仕込んじゃったりして、どんどこ有利そうな場を作ってくよー!
僕自身は敵の攻撃を可能な限り見切って、残像とか野生の勘とか低空ジャンプとかで避けつつ、場の生成に徹する覚悟と激痛耐性で耐えるよー!
あ、いい事思いつーいた!
わざと敵に見える位置で鏡を生成するけど、実はその見える位置の僕は鏡に写った僕でしたー!
「生成しまくってるからって、攻撃出来ないワケじゃないんだよね」
腰付近で音もなく揺れてる拷問具:嘆きの金糸雀でドコドコ拷問具を呼んで攻撃だー!
…衝撃波で鏡も壊れるだろうけど、それはそれでまた作ればいいだけだもーん!
…何故かは分からないけど、鏡の破片に破魔や浄化が付与されてて、敵に地味~に蓄積してたりするかもね?
●
インディゴには水鏡は作れない。
水源を導く術も、水を湧かす術も場所も、空中に水を呼び出す術もないからだ。
しかし、|水でない鏡《・・・・・》ならば幾らだって召喚できる。鏡の恐ろしさを“最初に殺された時”に知った翁に何処まで対応できるかは判らないが、動きを止めるくらいなら出来るだろう。
「ってー訳で! ありとあらゆる鏡を! 召・喚っ!!」
「!」
ぱちん、と両手を合わせて大地に付ける。まあなんていうの? こういうのってフンイキが大事だよね。
という訳でインディゴの周囲に現れるのは、手鏡や姿見、鏡付きのドレッサーまで鏡という鏡がどっさりと。猿翁の全身を映し出し、彼が面を付け替えるのを四方八方から映し出す。
これらに共通しているのは、鏡の裏側に刻印された薔薇の紋章。本物と違わぬ精巧さで作られた其れは猿翁を鏡に映し、猿翁は其の姿を見て素早く後ろへ交代する。
――じゃりりりっ、
神社の白い石畳が音を立てる。
翁の脚が石畳を蹴り、笑ったまま棒立ちのインディゴへと其の凶手が迫った。
彼の心の臓を違えなく狙った其の一撃は、間違いなく『其の場所』を抉ったが……
――ぱりんっ!
インディゴの姿がひび割れて、砕け散る。
「へっへーん! 実は其の僕は鏡に映った僕でしたー!」
インディゴが手に持っていた鞭を振るう。鉄に幾つもの棘の塊がついたような鞭は、見ればすぐに拷問具であると判るだろう。
鏡の生成に力のリソースを回しているとはいえ、戦えない訳ではない。腰に下げた“嘆きの金糸雀”がかろん、と揺れた。
「――! イたい!」
鞭の一撃を避ける猿翁。だが其処には、割れた鏡の破片の雨が待っている。
鏡の雨を浴びて、まるで焼けたような湯気が猿翁の身体から上がった。
其れはまるで、鏡が悪しきものを払おうとしているかのようだ。
さあ、何でだろうね?
インディゴは再び追い込むように鞭を振るいながら、ネタバラシは無粋だと笑った。
大成功
🔵🔵🔵
村崎・ゆかり
【恋人たち】
待ってたよ、御星!
遅れていた御星も到着。簡単に話を伝え、二人の恋人と三人で怪異の討滅を目指す。
全くやってくれるわね、UDC怪物!
あたしは以前に友達からもらった神器『刻転空歪の理を手繰る虚神の魔鏡』を掲げて、百面老の動きを掣肘するわ。
イクシア、御星、あいつは任せた! あたしは神主さんを助けられないかやってみる!
鏡で敵を牽制しながら、あたしは生活続命の法を倒れてる神主さんにかける。即死してなければ、生き返らせることも出来るはずだけど。
イクシアや御星が手傷を負った時にも術式を使用。深手になる前に回復。
敵を倒すには八つ裂きにしないといけないのよね。
二人とも、そいつの身体、得物で切り刻める?
イクシア・レイブラント
【恋人たち】
了解よ。ゆかりさん、神主さんのことはお願い。
百面老が鏡によって掣肘されたタイミングで、発光部位を煌めかせながら[推力移動、おびき寄せ、陽動]。
敵の攻撃を私に向けさせながることで、御星さんが攻撃に専念できるようにする。
さらに、シールドビットやデコイドローンも広く展開して、みんなを[盾受け、かばう]事ができる状況を維持する。
任せて。御星さん、いけるね?
|加速する景象《パーソナルタイム・アクセラレーター》、起動。
[瞬間思考力、戦闘演算]で相手の反撃パターンも勝機をも上回り、大型フォースブレイドで[アクセルコンボ]。
御星さんの攻撃にあわせて【薔薇の剣劇】で八つ裂きにする。
東・御星
2人に遅れて到着。
イクシアとは初起動の時以来の仲。まさかこのような間柄になるとは思ってなかったけど。
「鏡、鏡、ね、ならこれはどう!」
睦の字を中空に描いて氷炎龍睦ノ型・「玲」で氷の鏡を追加で増やしながら、炎の幻影で多少幻惑できないかやってみる。
2人の意向で神主さんを助ける方向で動くから、私はイクシアと挟み撃ちしてオブリビオンを攻撃。
ヴァルガリアスロッドバレルとGRANDビットで浮いている面を狙い撃ちしながら、【オーラ防御】で相手の攻撃をいなしつつ、エアリアルダッシュユニットで細かく移動しながらのイクシアとコンビネーション。
敵は倒したら八つ裂き、ならフォトンエッジで同時に八つ裂き、ね。
●
「待ってたよ、御星!」
ゆかりとイクシアに合流した東・御星(旅は道連れ揺らり揺られ・f41665)に二人は簡単にだが状況を説明する。
UDC怪物が蘇った事。
水鏡――おそらく鏡の類が弱点であろう事。
伝承通りであるならば、八つ裂きにせねば討滅には至らない事。
判った、と御星は頷く。
三人の恋人たちは、そうして猿翁へと向き合った。
「やってくれるわね、UDC怪物――イクシア、御星、あいつは任せた!」
つまりゆかりは、神主を助ける方向で動くという事だ。
「了解よ。ゆかりさん、神主さんの事はお願い」
「オッケー、任せて。行こう、イクシア!」
ゆかりが合図のように鏡を投げ上げる。其れは小さな手鏡のようだが、使い込まれた形跡があり――なにより、猿翁には|身を焼くほどに《・・・・・・・》眩しかった。
「!!」
「効いてる! イクシア、」
「ええ」
ゆかりが投げ上げたのはただの手鏡ではない。立派な鏡の祭具であり、清浄さに関しては他の鏡とは一線を画す。一度死んだときに鏡と因縁づいてしまったのか、猿翁はオーバーなほどに手鏡を警戒し、空中に飛び上がると鏡を殴りつけ、大地に落とした。
「――女の子のアクセサリは大事にするようにと教わらなかった?」
イクシアが猿翁の意識をこちらに向ける。
シールドビット展開。デコイドローン展開。猿翁をこちらにおびき寄せ、ゆかりと御星が十全に動けるように盾役として立ち回る。
「鏡、鏡――ん! じゃあ、これはどう!?」
そうして御星はイクシアのサポートを得て、十全に動く事が出来る。指先で描く、『睦』。其れに応えて現れたのは氷と炎を操る龍である。
うおおん、と空気が哭いて、イクシアのシールドビットがきらきらと煌めく。其れは氷炎龍が作り出した氷鏡の煌めきだ。それぞれ猿翁の左右に作り出された鏡と疑似鏡、猿翁は素早く面を付け替えた。
「――神主さん! 神主さん、大丈夫!?」
イクシアと御星が猿翁の気を引いている間に、ゆかりは神主へと駆け寄る。助け起こせば無惨な事に、神主の顔の皮は乱暴に引き千切るように剥ぎ取られていた。
「……ぅ」
「……! まだ息がある……なら! 急急如律令――」
だが幸いにも、狙われたのは顔だけだったらしい。面に拘る猿翁ゆえか、神主は辛うじて息をしていた。
まだ黄泉路から引き戻せる。ゆかりは手印を組み、呪を唱う。
――『金烏玉兎集』裏三巻。反魂の秘術。
蛍のような光が渦を巻いて、ゆかりと神主を包み込む。其の優しい光は活力だ。生命の一粒一粒であり、神主の身体へとゆっくり染み入る。
「――……ぅ、ぁ……? 貴方は……」
「大丈夫、あなたはあたしが助ける。そして怖ろしい伝承は、此処で終わりにするわ」
「伝承……そうだ。伝承のような、翁が……猿が、現れて……」
「ええ。でももう大丈夫。……あたしの恋人たちが、八つ裂きにするから」
ハンカチを取り出し、汚れるのも厭わず神主の顔から流れた血を拭いながら、ゆかりはぱちん、とチャーミングにウィンクをした。
甲高い音が絶え間なく響いている。
「シャアアッ!!」
猿翁が手刀でイクシアのシールドビットを粉々にする。
向かい側にいる御星が其の隙をついて魔法の箒から弾丸を放ち、猿翁の背中を穿つ。
更にGRANDビットたちが己の判断で、光弾を容赦なく猿翁に叩き込む。
「無駄よ。私と御星さん、そしてゆかりさんがいれば――敵なんていないんだから。御星さん、いけるね?」
「いける。いこう、イクシア!」
二人は一気に攻勢に出た。
御星はGRANDビットを操ると、猿翁の面を狙い撃ち、攻撃の手段を狭めていく。
其の間にイクシアが加速装置を起動する。|加速する景象《パーソナルタイム・アクセラレーション》と名付けられた其れは、思考加速と反射神経を、この場で最適な速度に効率化させるものだ。
速く。
より速く。
速く、速く、疾く!
限りなく加速された思考に反射神経を繋げば、ユーベルコードに頼らない高速移動が可能となる。
シールドビットですら、デコイドローンですら、今のイクシアにとっては亀のように遅い。
疾風のように猿翁へと肉薄し、其の身体に強かに蹴りをいれれば薄い身体は容易く吹っ飛ぶ。
向かいにいる御星を、信じている。
御星もまた、イクシアほどではないが加速手段を持ち合わせている。脚部に装着したエアリアルダッシュユニットで細かく位置を調整し、箒のハンドルを“取る”。
光が一筋現れる。硬質残光を収束させた実体剣、フォトンエッジ。そうして御星もまた動いた。
吹き飛ばされながら、猿翁はただ一つ『残された』面に付け替えた。
勝機を見る面。あの時とは違う、不意打ちされた時とは違う、今なら反撃が……
……だが。
其の面を通してみても、勝機の線は一切見えず。
其処にあるのはただ、迫りくる永遠の|骸の海《やみ》だけだった。
猿翁は初めて恐怖した。水に落とされ封印された時には感じなかった、着実に歩み寄って来る死の恐怖。
「あ、あ、あああ」
「御星さん、合わせて!」
「判ってる!」
「あああああ! ああああああああ!!!」
生き残れない、という恐怖が猿翁の動きを鈍くする。
其処へ一気呵成にイクシアと御星の剣戟が叩き込まれ、そうしてイクシアの大型フォースブレイドが――
「これでおわり」
薔薇の花弁を舞わせながら、死の四撃目を叩き込み、其の身体をバラバラにした。
ことん、と面が落ちる。其れもすぐに青い塵に変わる。
被っていた顔の皮越しにも判る苦悶と恐怖の表情も、直ぐに青い塵に変わって風に流され――鋏田村に眠っていた怪異は、永遠の安らぎへと還っていったのだった。
「お疲れ様。神主さんは無事よ。二人は怪我はない?」
「ゆかりさん。ええ、私は特に。御星さんは?」
「私も大丈夫。神主さんが無事でよかった、誰も死なないのが一番だからね」
「ええ。――ふふ、」
「? どうしたの」
嬉しそうに咲うゆかりに、不思議そうに御星が問う。
いえ、とゆかりはそっと其の指を伸ばして、御星の顎を捉えた。
ちゅ、と其の頬に体温の温もり。
そうしてイクシアにも同じ祝福を与えると、ゆかりは艶然と笑った。
「私の恋人たちは流石ね、って思って」
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵