その愛と恋は、世界を壊す
「事件発生です。リムは猟兵に出撃を要請します」
グリモアベースに招かれた猟兵達の前で、グリモア猟兵のリミティア・スカイクラッド(勿忘草の魔女・f08099)は淡々とした口調で語りだした。
「シルバーレインにて『聖杯剣揺籠の君』が所持していた超メガリス、『聖杯』の復活が予知されました」
1月の第二次聖杯戦争にて、オブリビオン・フォーミュラの滅びと共に聖杯も破壊されたはずだった。しかしメガリスには自己修復機能がある。戦後復活を果たした聖杯は、あの『ハビタント・フォーミュラ』の命令を受けたオブリビオン集団によって密かに回収されていたのである。
「聖杯を回収したのは『ナイトメアビースト』という、悪夢の力を操る異能者のオブリビオン達です。彼らは『|新・最悪の最悪《ネオ・タルタロス》』と名乗り、かつて銀誓館学園の能力者達が阻止した『世界結界破壊儀式』を成就させようとしています」
もしも今、この儀式が成されてしまうと、破壊された世界結界から大量の|銀色の雨《シルバーレイン》が降り注ぎ、どこかにいる「未知のオブリビオン・フォーミュラ達」を強化してしまうと予測される。揺籠の君は倒されたものの、シルバーレイン世界には複数のフォーミュラが存在するようなのだ。
「世界結界の破壊は能力者やゴーストにも恩恵をもたらしますが、現状ではそれ以上のデメリットが必至でしょう。大至急『|新・最悪の最悪《ネオ・タルタロス》』を壊滅させ、世界結界破壊儀式を阻止してください」
儀式が行われている場所は滋賀県・比叡山延暦寺。天台宗の総本山でもある広大な寺院と山地を占拠したナイトメアビースト達は、ここを自らの拠点にして儀式を完遂しようとしている。その中でも強力な個体はハビタント・フォーミュラから『旧・|最悪の最悪《タルタロス》』の能力を移植されており、危険度は非常に高い。
「世界結界破壊の儀式場は『透明城壁』と呼ばれる見えない城壁に囲まれた、渦巻き型の戦場で守られています」
この見えない城壁を破壊する手段はないため、猟兵もこれに沿って移動するより他に手はないが、それを待ち構えるように、城壁内部には大量のリリス化オブリビオンの軍団が蠢いている。儀式場を守護する番人というわけだ。
「敵は『リリス忍・廻輪衆』。リリスで構成された忍者集団です」
基本的に臆病で生き汚く、作戦成功より生存を優先する連中だが、透明城塞の中に配置された彼女達にも逃げ場はない。そのため儀式場を守るためだけでなく、自分達が生き延びるためにも必死になって抵抗してくるだろう。単純な戦闘能力は大した事はないが、外見と嗜虐心を煽る態度で油断を誘う技に長けているので注意が必要だ。
「『透明城塞』の中心付近には、この能力を移植された『|新・最悪の最悪《ネオ・タルタロス》』の1人、『揺籠中忍』が待っています」
彼女は第二次聖杯戦争で死んだ『揺籠の君』の信奉者であり、主を滅ぼした猟兵には並々ならぬ殺意をもって襲い掛かってくる。組織の中では中間管理職的な立場にいるオブリビオンで、その経験により培われた作戦立案能力や要人暗殺に色仕掛けなど多彩な能力を有する。
「さらに彼女は『透明城塞』を戦闘中も使用して、戦場の構造を変化させながら戦います」
これは既存のユーベルコードの中では【ガラスのラビリンス】に類似した能力と推測される。他のユーベルコードと同時にこの『透明城塞』を使いこなす揺籠中忍は強敵だが、彼女を撃破すれば城塞は消滅し、世界結界破壊儀式を進めるオブリビオン本人の元へ侵攻が可能になるだろう。
「儀式を主導するオブリビオンの名は『宇佐美・藍沙』。『|新・最悪の最悪《ネオ・タルタロス》』を名乗るナイトメアビーストの中でも指折りの実力者ですが、その性格は完全に破綻した『超・恋愛脳』です」
藍沙は誰かと目が合うだけで、声を聞くだけで男女問わず恋に落ち、恋人になれと執拗に迫ってくる。相手からの攻撃も拒絶も跳ねるように躱し、一方的な愛情を押し付ける、彼女の恋心はただの暴力だ。一般人はおろか、能力者やゴーストですら彼女の求愛には耐えられない。
「彼女もハビタント・フォーミュラから能力を移植されていますが……それは『ハレムキング』という、『絶対に失敗しないメチャモテマニュアル』を得る能力で、戦闘ではまったく役に立ちません」
1日3分の簡単ドリルをこなすだけで、あらゆる女性にめちゃくちゃモテるという、人によっては渇望しそうな能力ではあるものの、猟兵を魅了して骨抜きにするとか、そういう戦闘に関係するような特殊効果は何もない。ハビタント・フォーミュラがこんな能力を与えたのは、おそらく藍沙本人の希望だと思われる。
「逆に言うと……宇佐美・藍沙は移植された能力を抜きにした素のままで『|新・最悪の最悪《ネオ・タルタロス》』指折りの実力者と目されている訳です」
恋に恋する兎の化け物には理屈も説得も通じない。道中のリリス忍や揺籠中忍を上回る熾烈な戦いになるだろう。
それでも彼女の「恋心」を跳ね除けなければ、世界結界破壊儀式は止められない。オブリビオン・フォーミュラの強化と、それに伴う未曾有の混乱を防ぐためには、勝つしかないのだ。
「『|新・最悪の最悪《ネオ・タルタロス》』による、まさに最悪の事態を止めるために、皆様の力をお貸し下さい」
説明を終えたリミティアは手のひらにグリモアを浮かべ、比叡山延暦寺に展開された『透明城塞』への道を開く。
待ち受けるは不可思議な異能を操るナイトメアビースト集団。復活した聖杯と世界結界を巡る戦いの幕が開ける。
「転送準備完了です。リムは武運を祈っています」
戌
こんにちは、戌です。
今回のシナリオはシルバーレインの世界にて、世界結界破壊儀式を行うオブリビオン集団『|新・最悪の最悪《ネオ・タルタロス》』を撃破する依頼です。
1章は『リリス忍・廻輪衆』との集団戦です。
戦場は比叡山延暦寺に展開された『透明城塞』内部となります。城塞全体は大きな渦巻き状になっていますが、見えない壁でできているので構造の把握が難しい点には注意が必要でしょう。
廻輪衆は直接戦闘能力に長けたオブリビオンではありませんが、相手の油断を誘って不意をつく戦法が得意なので、ご注意ください。
2章は『揺籠中忍』とのボス戦です。
彼女が使用する『透明城塞』は【ガラスのラビリンス】に相当する効果を持つユーベルコードとして扱います。
通常のユーベルコードによる攻撃に加えてこの能力を使ってくるので、合わせて対処が必要になります。
揺籠中忍を撃破すれば、儀式場を守る城塞は全て消滅します。
3章は今回の儀式を進行するオブリビオン『宇佐美・藍沙』との決戦です。
彼女は『|新・最悪の最悪《ネオ・タルタロス》』でも指折りの実力者です。ハビタントに与えられた能力『ハレムキング』は戦闘の役にはまったく立ちませんが、そんなこと関係なしに今回のシナリオの中では頭ひとつ抜けた強敵です。
性格的に会話が通じるタイプでもないので、|殺《愛》されるのが嫌ならやるしかありません。彼女を撃破すれば世界結界破壊儀式の阻止は成功です。
それでは、皆様のプレイングをお待ちしております。
第1章 集団戦
『リリス忍・廻輪衆』
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POW : 「ひ、ひどいことしないでください!」
対象にひとつ要求する。対象が要求を否定しなければ【害したりちょっかいかけようとする意欲】、否定したら【嗜虐心がそそられて冷静な判断力や危機感】、理解不能なら【理解しようとして他の行動をするための時間】を奪う。
SPD : 隠し蛇
自身の身体部位ひとつを【相手の死角から襲いかかる】の頭部に変形し、噛みつき攻撃で対象の生命力を奪い、自身を治療する。
WIZ : 歯車手裏剣
【歯車状の手裏剣】が命中した部位に【相手を意のままに操る精力】を流し込み、部位を爆破、もしくはレベル秒間操作する(抵抗は可能)。
イラスト:カラス
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
龍巳・咲花
行方をくらませていたハビタントは暗躍していたでござるか
拙者等の世界を混沌に巻き込む所業は見逃せぬでござるな
それに揺り籠の君も敵ながら信念を持った相手でござったし、拙者等はそれを理解した上で世界の為に屠ったのでござる
信奉者が悪だくみをしているのなら後始末をしないわけにはゆかぬでござろう
二体のムシュマフの首を呼び出すでござるな
ムシュマフの首と共に死角をカバーしつつ、見えない壁で渦巻き状となっているのならば、火炎放射で通路を埋め尽くせば敵も倒せて通路も把握できて一石二鳥でござろう?
忍び相手に忍びが油断するわけにはいかぬでござるからな
倒した後は壁に手を添え進んで行けば透明城壁も攻略できるでござろうか
「行方をくらませていたハビタントは暗躍していたでござるか。拙者等の世界を混沌に巻き込む所業は見逃せぬでござるな」
第二次聖杯戦争を起こした元凶の1人であり、戦争以降行方をくらましている『ハビタント・フォーミュラ』。その配下による事件と聞いて龍巳・咲花(バビロニア忍者・f37117)は黙っていられなかった。これ以上、この世界でヤツに好き勝手させるものか。
「それに揺り籠の君も敵ながら信念を持った相手でござったし、拙者等はそれを理解した上で世界の為に屠ったのでござる」
以前の『世界結界破壊儀式』は生前の揺籠の君も関わっていた事件と聞いた。それもあってか再現された今回の儀式には、揺籠の君に心酔するオブリビオンも関わっている。なら彼女と信念をぶつけあい討ち取った猟兵の一人として、怨みには向き合う覚悟がある。
「信奉者が悪だくみをしているのなら後始末をしないわけにはゆかぬでござろう」
確固たる信念のもとでこの事件を止めると決意した咲花は、儀式が行われている延暦寺の『透明城塞』に突入する。
比叡山全域に展開された、この見えざる城塞を守るのは『リリス忍・廻輪衆』。要所要所に配置された彼女らを屠らなければ先へは進めない。
「ひぃっ、来た!」「ら、乱暴しないで……!」
リリス忍たちは猟兵がやって来ると怯えた素振りを見せつつクナイを構える。いかにも臆病で弱そうだが、そう見えるのはリリスの籠絡術の応用だ。か弱い仕草で油断させたところを奇襲で仕留める、それが彼女らの戦法なのである。
「来るでござる、炎竜ムシュマフ!」
もちろん忍者である咲花がリリス忍の手口に引っ掛かるはずもなく。【龍陣忍法「バビロニアン・ムシュマフ・フレイム」】を発動し、龍脈から呼び出した二体のムシュマフの首に自身の死角をカバーさせる。360度を常に警戒するようにすれば、奴らも奇襲する隙はあるまい。
「っ……この子、全然油断しない……!?」
死角から【隠し蛇】による不意打ちを狙っていたリリス忍達が、竜の首に睨まれてたじろぐ。正面からの戦闘は不利だと連中も自覚しているようだ。これで有利な状況に持ち込めた咲花だが――彼女が龍陣忍法を使った理由はそれだけではない。
「見えない壁で渦巻き状となっているのならば、炎で通路を埋め尽くせば敵も倒せて通路も把握できて一石二鳥でござろう?」
咲花がそう言うのと同時にムシュマフは顎を開き、二方向へと同時に火炎放射を仕掛ける。それは見えない壁に沿って戦場を呑み込み、逃げ場のない灼熱地獄を作り出す。押し寄せる紅蓮の炎を見たリリス忍達の表情が、驚愕と恐怖に染まった。
「「ひっ……きゃぁぁぁぁぁぁぁっ!!!?!」」
あっという間に炎に包まれた彼女らは、甲高い悲鳴を上げて灰燼に帰す。結局自らの得手を披露するチャンスを一度も与えられぬまま。相手が忍者の同類でありくノ一の手練手管にも理解していたのが、彼女らの不幸と言えるだろう。
「忍び相手に忍びが油断するわけにはいかぬでござるからな」
見事廻輪衆を撃破した後、咲花は見えない壁に手を添えて移動する。先程火炎を放った際に浮かび上がった、この辺りの通路の構造はちゃんと覚えている。あとは記憶と手元の感触を頼りに進んでいけば透明城塞を攻略できるだろう。
この城塞を構築したという揺籠の君の信奉者『揺籠中忍』。彼女の居場所へと龍陣の忍びは着実に迫っていた――。
大成功
🔵🔵🔵
シルヴィ・フォーアンサー
……寒そうな格好だね。
『異性なら目を奪われたり効果があるのかもな……我々には無意味だが』
迷宮で相手の陣地だし不意打ちに気をつけてレーダーで索敵しながら前進。
討伐対象を発見したら死角から部位変形で襲われる前にパラライズ・ミサイル。
麻痺させた所にフレア・ブラスター、持続発射で全員薙ぎ払うよ。
……寒そうだから暖めてあげよう。
『体の芯まで暖かくなるな……黒焦げだ』
「……寒そうな格好だね」
それが、透明城塞にて世界結界破壊儀式を守る『リリス忍・廻輪衆』に対するシルヴィ・フォーアンサー(自由を求めた脱走者・f41427)の感想だった。リリスらしい露出度の高い服装も蠱惑的な容姿も、なんら彼女の感情を刺激するものではない。
『異性なら目を奪われたり効果があるのかもな……我々には無意味だが』
至極当然だが、それは彼女の相棒であるサポートAIの「ヨルムンガンド」も同じだった。惑わされずに油断もせず、邪魔をするなら排除する。クロムキャバリア《ミドガルズ》に乗って透明城塞に突入した彼女らは、直ちにリリス忍との交戦状態に入った。
「こ、こんな強そうなロボットと戦うなんて、できるわけないよぉ~……」
シルヴィのキャバリアを見た時点で、リリス忍は戦意が挫けたように後ずさる。透明城塞の中では彼女達も逃げ出すことはできないが、ぷるぷる震えながらクナイを構える姿はとても猟兵に敵う相手には見えず――だが、そうして相手を油断させるのがリリスの常套手段だ。
「……隙ありっ!」
ビビったふりをする味方を囮に、別のリリス忍が山の茂みから飛び出し、死角から【隠し蛇】の不意打ちをかける。
リリスの籠絡術と忍びの技術。この二つを活かした奇襲が彼女らの特技であり、多くの人間を葬ってきた必殺技だ。
「……気付いてたよ」
「え? ウソッ?!」
だが。こうした不意打ちも想定していたシルヴィは、レーダーによって敵の潜伏位置を特定し、攻撃される前に【パラライズ・ミサイル】を発射する。ここは迷宮で相手の陣地なのに、彼女もヨルムンガンドも警戒を怠るはずがない。
「……ビリビリってするよ」
「「ぴぎゃぁっ!!?!」」
ミサイルの着弾地点からは高圧電流が撒き散らされ、奇襲役も囮役もまとめてリリス忍を麻痺させる。オブリビオンを一撃で感電死するほどの威力は無いものの、戦場で痺れて動けなくなる事がどれだけ致命的か、考えるまでもない。
「……寒そうだから暖めてあげよう」
『体の芯まで暖かくなるな……黒焦げだ』
間髪入れずにシルヴィは【フレア・ブラスター】を発動。機体バックパックの左右に装着された荷電粒子ビーム砲、「BS-Sハイペリオンランチャー×2」から超高温の熱線を照射し、敵を全員なぎ払う。エネルギーの消費は大きい装備だが、そのぶん火力は折り紙付きだ。
「「い、いやあぁぁぁぁっ!!!!」」
甲高い悲鳴とともに焼き尽くされていくリリス忍たち。ビームの照射は彼女らが骨まで消し炭になるまで持続した。
やっぱり逃げれば良かったと後悔しても後の祭り。ここで猟兵に合った時点で彼女らの命運は尽きていたのだった。
「レーダーに反応は?」
『ないな。進もう』
一帯の敵を文字通りに一掃したシルヴィは、その後も索敵を続けながら城塞内を前進する。世界結界が壊される前にこの城塞を作っている能力者を倒し、儀式場の本丸に辿り着かなくてはならない。緒戦を圧勝で終えたとは言え、彼女はまだ微塵も油断していなかった――。
大成功
🔵🔵🔵
暗都・魎夜
【心情】
聖杯戦争の再現、そういう形で来たか
うーちゃんの奴、早いところ止めねえとろくでもないこと量産し続けるな、こいつは
ひとまずは、世界結界破壊儀式の阻止と行こうか
【戦闘】
リリスの忍者ね、嫌な予感しかしないって言うか
全力で相手の隙を突きに行く訳だから、少しでも油断したらこっちはあの世行きだ
油断も隙もありゃしねえ
UCを用いて「見切り」「武器受け」で死角からの蛇による攻撃を防ぐ
「まあ、そう来るよな?」
「カウンター」「斬撃波」で反撃
こんな戦いに巻き込まれたことだけには正直同情する
本音言うと見逃してやりたいが、よそでやらかさない保証もないんでな
「死に方位は選ばせてやるぜ?」
「聖杯戦争の再現、そういう形で来たか」
前回の世界結界破壊儀式の実行者であった「揺籠の君」は倒れ、儀式の要となる超メガリス「聖杯」も失われたかに思われた。だが、密かに復活・回収されていた聖杯によって儀式は再演され、かつて戦ったナイトメアビーストを彷彿とさせる能力を移植された『|新・最悪の最悪《ネオ・タルタロス》』までもが姿を現した。
「うーちゃんの奴、早いところ止めねえとろくでもないこと量産し続けるな、こいつは」
あの『ハビタント・フォーミュラ』が何故この世界にちょっかいを出し続けるのか、理由は不明だが実害は無視できない。なるべく早いうちに決着をつけたいものだと、暗都・魎夜(全てを壊し全てを繋ぐ・f35256)は苦々しい思いを噛みしめるのだった。
「ひとまずは、世界結界破壊儀式の阻止と行こうか」
この世界の神秘の力を封じ、現代の「常識」を守る世界結界の重要性を、銀誓館学園出身の魎夜が知らぬ訳もない。
臨戦態勢で比叡山延暦寺の『透明城塞』に突入した彼を待っていたのは、忍び装束に身を包んだ美女の集団だった。
「こっ、来ないでくださぁ~い……!」
腰が引けた様子で身構える彼女たちは『リリス忍・廻輪衆』。人間を籠絡する術に長けたリリスが忍びの技を身に着けた集団だ。臆病で生き汚い性格をしているが、どこまでが素の反応でどこからが演技なのか見破るのは難しい。見た目に反して狡猾な連中だ。
「リリスの忍者ね、嫌な予感しかしないって言うか」
学生時代からリリスの危険性を身に沁みて味わってきた魎夜は、リリス忍たちがどんなに弱々しい仕草を見せても、決して油断はしなかった。単純な殴り合いでは十中八九こちらが勝つとしても、そうした腕力以外の"強さ"に長けているのがリリスなのだ。
(全力で相手の隙を突きに行く訳だから、少しでも油断したらこっちはあの世行きだ。油断も隙もありゃしねえ)
彼は歴代ストームブリンガーの記憶と自身の経験、【銀の嵐の記憶】から類似する事例を探し、このリリス忍たちが仕掛けてきそうな攻撃を予測する。正面に立ってる連中が囮だとするなら、警戒すべきは死角からの奇襲。リリスには種族の生態特徴ともいえる「蛇」がある――。
「まあ、そう来るよな?」
「ウソ、なんでっ?!」
【隠し蛇】による死角からの攻撃を見切った魎夜は、手にしていた魔剣「滅びの業火」を一閃して蛇を斬り捨てる。
渾身の騙し討ちを見抜かれたリリス忍たちの動揺は激しく、顔が青ざめているのは演技ではあるまい。籠絡と奇襲に特化した彼女らのスタイルは、手の内がバレてしまうと弱い。
「こんな戦いに巻き込まれたことだけには正直同情する。本音言うと見逃してやりたいが、よそでやらかさない保証もないんでな」
相手がオブリビオンである以上、魎夜も手加減する訳にはいかず、カウンターの斬撃波で迷わず追い打ちをかける。
見えない壁に囲われた城塞の中ではそもそも逃げ場もなく、儀式の番人にされた時点で詰みだったと思って貰うしかあるまい。
「死に方位は選ばせてやるぜ?」
「せ、せめて痛くしないで……ぴぃっ!!」
要望通りひと思いにばっさりと、痛みを感じる暇もない早業でリリス忍たちを斬り伏せていく魎夜。あっという間に立ちはだかる敵を一掃した彼は、その後も警戒を保ったまま城塞の最深部に向かう。この先にまだ何体の警備がいるかは知らないが、一度手の内を見た以上、銀誓館の能力者に同じ技が通じることは無いだろう――。
大成功
🔵🔵🔵
鈴乃宮・影華
『最悪の最悪』……年始に続き懐かしいフレーズが襲いかかってきましたね……
まぁかつてもこれからも、やる事は変わりません
「――|起動《イグニッション》」
じゃあ、また世界を救いに行きますか
古今東西、迷宮踏破の基本は「左右どちらかの壁に沿う」事
見えない城壁でも触れば其処に存在はするはず、中心に着くまでは構造固定だというならひとまず右側に沿って移動します
移動時、道幅が許す様なら『ソリウム・ベルクス』を使用し時短
敵については指定UC起動
「――にゃーははーっ、光華お姉ちゃんのお通りだにゃー♪」
纏ったサイクロンで手裏剣をポイしつつ『破蘭華』をぶちかましてやるにゃ!
「『最悪の最悪』……年始に続き懐かしいフレーズが襲いかかってきましたね……まぁかつてもこれからも、やる事は変わりません」
来訪者ナイトメアと人間が融合した『ナイトメアビースト』による犯罪者集団『|最悪の最悪《タルタロス》』。銀の雨が降る時代に銀誓館学園と敵対し、壊滅したあの組織が復活したとの報せを聞いた時、元・銀誓館学生である鈴乃宮・影華(暗がりにて咲く影の華・f35699)の決断は迅速だった。
「――|起動《イグニッション》」
何度復活しようと人々の平穏を脅かすなら、何度だって叩き潰すまで。イグニッションカードを掲げて戦闘態勢に入った彼女は、比叡山延暦寺に展開された『透明城塞』に足を踏み入れる。現在ここは世界結界破壊のための儀式場となっており、城塞の奥からは禍々しい魔力を感じる――もし、この儀式が成功した時、起こる災禍は計り知れない。
「じゃあ、また世界を救いに行きますか」
この程度の危機はもはや学園に在籍していた時代から慣れたものだと、影華は透明な壁に手をついて城塞内を進む。
古今東西、迷宮踏破の基本は「左右どちらかの壁に沿う」こと。見えない城壁でも触ればそこに存在しているなら、このセオリーも通用するだろう。
(中心に着くまでは構造固定だというなら、ひとまず右側に沿って移動しましょう)
実際に触って確かめてみたところ、この城塞の道幅はかなり広く、ヒトより巨大なものも通行できる規模感がある。
それならと彼女は身に着けていた髑髏のキーホルダーを、骸骨馬が曳く6頭立ての馬車――移動式皇国本陣『ソリウム・ベルクス』に変身させ、移動時間の短縮を図った。
「と、止まってくださぁ~い!」「ここから先は通行止めですぅ!」
ガタゴトと車輪と馬蹄の音を響かせながら走る影華の進路に立ちはだかったのは、『リリス忍・廻輪衆』の一団だ。
半ば無理やりに透明城塞の守護を任じられた彼女たちは、不気味な黒馬車にビクビクしながら【歯車手裏剣】を投げつけてくる。士気は高くなさそうだが、かといって油断すると危険だろう。
「彼の力を以て世界を騙す――記憶より現れよ、我が親愛なる家族」
そこで影華は【黒燐幻想劇弾・記憶再現『光華』】を発動。これは姉の「光華」の口調や言動を演じることで、本業である「シルフィード」の能力まで再現するユーベルコードだ。馬車から出た彼女の周りを、激しい風が吹き荒れる。
「――にゃーははーっ、光華お姉ちゃんのお通りだにゃー♪」
物静かな態度から一変して、イケイケな姉の演技を完璧にこなす影華。その身に纏ったサイクロンの風圧が、飛んできた歯車手裏剣をポイと吹き散らす。風を自在に操り攻防に活かすシルフィードの異能は、ふざけているようにに見えても威力は折り紙付きだ。
「ぶちかましてやるにゃ!」
「「え、ちょ、待っ……きゃぁぁーーーっ!!!?」」
お返しとばかりに試作詠唱バズーカ『破蘭華』を撃ち込めば、リリス忍たちは黒い呪詛の爆発により吹き飛ばされ。
邪魔者がいなくなれば影華(光華モード)は馬車に戻り、ノリノリのまま透明城塞を突き進んでいくのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
マリク・フォーサイト
巡礼士にとって象徴とも言える存在、聖杯が蘇っていようとは
今の世の中、その使用の是非の問題はありますが、それでもオブリビオンに奪われたままにはしておけません
ましてやそれが、悪しき儀式に使われようというのであれば、なおさらです!
「心眼」で道に関しては警戒をしながら進みます
しかし、ここまで直球で仕掛けてくるリリス型は初めてですね(赤面)
正直言うと、やり辛い相手ですが、この道は通させてもらいます
「行きます、リベレイション!」
手裏剣を「心眼」で読んで「盾受け」「武器受け」で防ぎます
距離を詰めて「グラップル」でUCで動きを封じ、「功夫」でとどめを刺します
「巡礼士にとって象徴とも言える存在、聖杯が蘇っていようとは」
かつて『忘却期』と呼ばれた時代から|銀の雨が降る時代《シルバーレイン》にかけて、世界結界と聖杯を守護してきた能力者集団『巡礼士』。その一族の末裔であるマリク・フォーサイト(銀嶺の少年騎士・f37435)にとっても、かのメガリスは思うところのある存在だった。
「今の世の中、その使用の是非の問題はありますが、それでもオブリビオンに奪われたままにはしておけません。ましてやそれが、悪しき儀式に使われようというのであれば、なおさらです!」
運命の皮肉と言うべきか、彼の両親は世界結界破壊儀式が行われた第一次『聖杯戦争』で命を落としている。揺籠の君が滅んだ後も、かの聖杯の悪用が続くというなら、それを止める事が巡礼士の――そして猟兵としての使命である。
「ここが透明城塞……警戒して進みましょう」
『|新・最悪の最悪《ネオ・タルタロス》』に占拠された比叡山延暦寺は、無人と化した他には普段と変わらぬ様子を保っているように見えて、渦巻き状の見えない城壁に囲われている。目視では捉えられない進路をマリクは心眼によって見極め、何が起きても対応できるよう慎重に進んでいく。
「ひっ……誰?!」「こ、殺さないでください……!」
そんな彼の前に現れたのは、やたら露出度の過剰な忍び装束に身を包んだ、妖艶な美女の集団。この城塞を守護する『リリス忍・廻輪衆』だ。彼女たちは侵入者と出くわすなり怯えた態度を見せ、媚びるような仕草で命乞いをする。その弱々しさと戦意の低さは、オブリビオンと思えないほどである。
「しかし、ここまで直球で仕掛けてくるリリス型は初めてですね」
これが相手を籠絡するリリス化オブリビオンの手口と分かっていても、マリクはつい赤面してしまう。若くして鍛錬を積み猟兵となったとはいえ、まだ14歳の少年なのだ。美女の媚態を前に心が揺れるのも仕方がない――その上で、情動に流されない高潔な精神を持っていた。
「正直言うと、やり辛い相手ですが、この道は通させてもらいます」
「だ、ダメですかぁ?」「許してくれません……?」
どんなに媚びてもマリクの意思を変えることはできないと悟ると、リリス忍たちの表情が変わる。籠絡術で相手を油断させて騙し討ちを仕掛けるのが、忍びとしての彼女らの常套手段だった。それが上手くいかなければ、逃げ場のない城塞内では戦うしか無い。
「行きます、リベレイション!」
「こ、来ないでくださぁい!」
巡礼士の象徴たるメダリオンを掲げ、銀嶺の鎧を身に纏うマリク。そこにリリス忍の【歯車手裏剣】が飛んでくる。
この手裏剣は命中した対象に精力を送り込んで意のままに操ってしまう、籠絡術と忍術の合せ技とも言えるユーベルコードだが――ようは、当たらなければ意味はない。
「効きません!」
マリクは長剣と白銀の盾を巧みに操り、手裏剣を叩き落しながら前進する。より研ぎ澄まされた彼の心眼の前では、直接戦闘力の低いリリス忍の攻撃など脅威にはならない。あっという間に距離を詰めると、武器を手放しグラップルの構えに移行する。
「失礼します」
「うぐっ……か、体が……?!」
隙を見せない動きから繰り出された【砕甲掌・改】が、リリス忍の身体の中心点を捉える。玄武拳士の奥義がひとつを喰らった敵は、まるで全身石になったように身動きできなくなり――そこに間髪入れず追撃の一打が叩き込まれる。
「とどめです!」
「きゃぁぁっ!!!?」
練り上げた功夫を込めた拳によって、骸の海へと還っていくリリス忍。ほどなくしてその場にいた敵は一掃される。
障害を排除したマリクは呼吸を整えると、儀式が行われている城塞の中心に向かって、急ぎ足で移動を再開するのだった。
大成功
🔵🔵🔵
村崎・ゆかり
これもこの世界の歴史再現ってわけね。OK、やってやろうじゃない。
来なさい、アヤメ。同じクノイチ同士、あなたの方がずっと格上だってところを見せてやりなさいな。
互いの死角をカバーしあって奥へと進んでいくわ。そう簡単に死角はできない。連中の蛇も来るのが分かってれば防げる。
アヤメはクナイで投げたり刺したりでお願いね。あたしは薙刀で「衝撃波」「斬撃波」を放って討滅していくわ。
こんなところでもたもたしてる暇はない。急ぐわよ、アヤメ。
敵が潜んでそうなところは、アヤメの方が見当付けやすいでしょ。クナイを投げてあぶり出して。
生憎、クノイチはもう間に合ってるの。
(アヤメ:ですます口調、主は「ゆかり様」と呼ぶ)
「これもこの世界の歴史再現ってわけね。OK、やってやろうじゃない」
シルバーレインの世界で過去にあった重大事件が、関係者とともにオブリビオンとなって再演される。同じような例の事件を村崎・ゆかり(“|紫蘭《パープリッシュ・オーキッド》”/黒鴉遣い・f01658)はすでに何度か経験していた。かつて阻止された悲劇の復活など、見過ごしていい話ではない。
「来なさい、アヤメ。同じクノイチ同士、あなたの方がずっと格上だってところを見せてやりなさいな」
「はい。ご命令とあらば」
今回の敵には忍者もいると聞いて、彼女は【愛奴召喚】を発動。エルフのクノイチの式神・アヤメを召喚し、二人で『透明城塞』に乗り込む。彼女達は主従の関係を超えた恋人同士であり、信頼して背を任せられるパートナーだった。
「ひっ、来た!」「ひ、ひどいことしないでください……!」
城塞内の道中に立ちはだかるのは『リリス忍・廻輪衆』。番人としては随分と臆病でやる気のなさそうな連中だが、それを相手を油断させる手練手管とする、妖艶なクノイチ集団だ。弱そうに見えても油断できないと、ゆかりはアヤメと共に戦闘態勢に入る。
(そう簡単に死角はできない。連中の蛇も来るのが分かってれば防げる)
二人で互いの死角をカバーしあって、どこから不意打ちが来ても対処できるように。言葉にせずとも式神は主の意を汲んでくれた。どんなに媚びた態度を取っても彼女らが警戒を解くことはなく、そうなればリリス忍もやり方を変えざるをえない。
「うぅぅ……えーいっ!」
長く伸びたリリス忍の髪の毛の先が【隠し蛇】となり、鎌首をもたげて襲いかかる。能力としては単純ながら、奇襲に用いれば強力なユーベルコードだが――手が割れてしまっていては効力も半減だ。即座に反応したゆかりが、薙刀『紫揚羽』で蛇を切り落とす。
「アヤメ、お願いね」
「分かっています、ゆかり様」
同時にアヤメが手を動かせば、リリス忍が「ぐえッ!」と倒れる。その喉笛には一本のクナイが突き刺さっていた。
一方が守ればもう一方が攻めに回る、攻守一体のコンビネーション。これも打ち合わせたものではなく、自然に生じた連携だ。
「こんなところでもたもたしてる暇はない。急ぐわよ、アヤメ」
ゆかりは恋人に微笑みながら薙刀を振るい、斬撃波と衝撃波でリリス忍をなぎ倒していく。アヤメもクナイの投擲や刺突で、戦果を競うように敵を圧倒。奇襲の好機を与えず正面対決に持ち込めば、この二人の勝利は揺るがなかった。
「う、うぅ……」「こんなことって……」
無念の言葉を吐きながら、骸の海に還っていくリリス忍。近くにもう潜んでいる敵がいないことを確認して、二人は移動を再開した。こうしている間も世界結界破壊儀式は着々と進んでおり、城塞を突破するまで一刻の猶予も惜しい。
「敵が潜んでそうなところは、アヤメの方が見当付けやすいでしょ。クナイを投げてあぶり出して」
「承知」
道中でまた敵の奇襲がある場合も警戒して、ゆかりは恋人に指示を出しておく。クノイチとしての格を見せつけろという最初の言いつけ通り、エルフのクノイチは鋭敏な感覚と経験を元にしてリリス忍の潜伏を暴きだす。目には目を、忍びには忍びをという訳だ。
「きゃう?! ど、どうして……」
「生憎、クノイチはもう間に合ってるの」
あぶり出されたリリス忍を容赦なく始末しながら、見えない城塞の奥へと進んでいくゆかり達。ここまでは大した事のない相手だったが、流石に『|新・最悪の最悪《ネオ・タルタロス》』を名乗る連中は一筋縄ではいかないだろう――順調に探索を続けながらも、彼女らは油断していなかった。
大成功
🔵🔵🔵
第2章 ボス戦
『揺籠中忍』
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POW : 中間管理職の性
【あり得ると思える不測の事態一人対策会議】時間に応じて、攻撃や推理を含めた「次の行動」の成功率を上昇させる。
SPD : 暗殺の時間
【自身の愛刀を引き抜く】事で【不可視の暗殺攻撃状態】に変身し、スピードと反応速度が爆発的に増大する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
WIZ : 誘惑の術
【自身のメリハリのある体を使った誘惑術】を披露した指定の全対象に【この者と一緒に気持ちいい事をしたい】感情を与える。対象の心を強く震わせる程、効果時間は伸びる。
イラスト:sio
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「久遠・翔」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
「来たか……猟兵」
儀式場を守護する『リリス忍・廻輪衆』を退け、透明城塞の中心付近にまで到達した猟兵達。
そこで彼らを待っていたのは、渦巻き模様の奇妙な仮面で顔を隠した、1人の女忍者だった。
「揺籠の君を弑した貴様らをこの手で討てる機会がやって来るとは……ハビタント・フォーミュラに感謝せねばな」
彼女が『透明城壁』の能力を移植された『|新・最悪の最悪《ネオ・タルタロス》』のメンバー、『揺籠中忍』だ。
第二次聖杯戦争で滅んだリリスの君臨者「揺籠の君」の信奉者である彼女は、その仇である猟兵に並々ならぬ憎しみを抱いていた。
「忌まわしき世界結界も今日この時をもって崩壊し、世界には再び銀の雨が降り注ぐ……その前祝いとして、貴様らの血と臓物を亡き主に捧げよう!」
殺意に満ちた宣言と同時に、見えない壁が迫ってくるような気配を感じる。
おそらくは実際に壁が動いているのだろう。これまで猟兵達が通ってきた透明城壁を、彼女は戦闘でも活用できる。
戦場の構造変化と忍者の技を同時に使用する揺籠中忍は、先程までの連中とは明らかに格が違う。
だが、ここで彼女を倒せば『透明城塞』は消滅し、儀式場の中心に到達できるはずだ。
世界結界の破壊を阻止するため、猟兵達は恩讐のくノ一と対峙する――。
マリク・フォーサイト
第一次『聖杯戦争』では、決して少なくない犠牲を払っています
この戦いが『聖杯戦争』の再現であったとしても、同じような被害を出させるわけには行きません
「『新・最悪の最悪』、お前たちの好きにはさせない!」
UCを発動し、「怪力」「トンネル掘り」をもって、透明城壁を粉砕します
たとえ、いかなる城壁であっても、聖杯へと向かう巡礼士を阻むことはできません
時間をかけたら、僕の攻撃への対策を成してしまうでしょう
目的地まで一直線
「気合い」「勇気」「ランスチャージ」のUCでまっすぐ突撃します
肉薄したら「武器受け」しつつ連続攻撃
「人々を守る、それが僕の使命です!」
「揺籠の君」が恋しいのなら、同じ場所へ還してやるまでです
「第一次『聖杯戦争』では、決して少なくない犠牲を払っています。この戦いが『聖杯戦争』の再現であったとしても、同じような被害を出させるわけには行きません」
かつて揺籠の君はゴーストと『|最悪の最悪《タルタロス》』を率いて、琵琶湖で聖杯による世界結界"修復"儀式を執り行おうとしていた巡礼士達を襲い、修復儀式を反転させた結界の破壊を企んだ。この戦いで巡礼士が被った被害は大きく、戦死者のリストにはマリクの両親も名を連ねる。ならばこそ、巡礼士の使命を継ぐ彼には負けられぬ使命がある。
「『新・最悪の最悪』、お前たちの好きにはさせない!」
「貴様、巡礼士か……あのカビの生えた連中まで猟兵になっているとはな!」
過去のナイトメアビーストの能力を移植され、復活を果たした『|新・最悪の最悪《ネオ・タルタロス》』。その1人である『揺籠中忍』は仮面の奥から嘲りの言葉を発する。一度は敗北を喫した組織の残党になにができようか。そういった侮蔑がありありと感じられるようだ。
「貴様らなぞに、揺籠の君が敗れるとは……好きにさせぬはこちらの台詞だ!」
嘲笑を一転して殺意に変えて、揺籠中忍は『透明城壁』を発動。比叡山に城塞を築くために使ってきた能力を、自身の身を守り敵の攻撃を阻むための力とする。この戦場の地形は彼女が掌握しているようなものであり、近付くことさえ容易ではない。
「たとえ、いかなる城壁であっても、聖杯へと向かう巡礼士を阻むことはできません」
対するマリクは【セイクリッドバッシュ】を発動し、光のオーラを纏ったドリルガントレットで城壁を粉砕しながら突撃する。巡礼士の本業能力「聖杯探索」は、この先に儀式の要たる聖杯があると直感的に告げている。ならば、ここで立ち止まっている時間など一刻たりともない。
(時間をかけたら、僕の攻撃への対策を成してしまうでしょう)
揺籠中忍の【中間管理職の性】は、あり得ると思える不測の事態を考えて対策を打つユーベルコードだ。これを発動させる十分な時間を与えないためにも、マリクは速攻戦法を取った。まるで工業用の掘削機のように、見えない城壁にトンネルを掘り進めていく。
「こいつ、力押しで私の城壁を……?!」
こうも簡単に自慢の城壁を破られたことは、揺籠中忍にとっても驚きだったか。一人対策会議を行う暇もなく、突っ込んできた巡礼士との白兵戦を余儀なくされる。もちろん彼女の忍者刀さばきも熟練だが、マリクはそれ以上の自信があるという事だろう。
「人々を守る、それが僕の使命です!」
「ッ……綺麗事をッ!」
敵に肉薄したマリクは、巡礼士一族に伝わる「聖槍ロゴス」に装備を持ち替えて攻撃を仕掛ける。揺籠中忍も必死とわかる勢いで忍者刀を振るうが、彼はそれを槍の柄で受け流しながら連続攻撃を繰り出し、リーチと手数で敵を圧倒していた。
「これが守りし者の力です!」
「がはッ?!」
連撃をさばき切れなくなった揺籠中忍の胸に、破邪の力を宿した聖槍が突き刺さる。穢れしリリスの信奉者に対し、理性の名を冠した聖遺物はまさに天敵であり――血肉と魂を浄化される激痛に、彼女はたまらず苦痛の悲鳴を上げた。
大成功
🔵🔵🔵
村崎・ゆかり
アヤメは下がってて。こいつはあたし『達』で相手しなくちゃいけない。
淫雅召喚。来て、あたしの愛しい|揺籠の君《ゆりゆり》!
魅了の踊りをお願いね。あなたの信奉者らしいから、よく効くでしょ。思考力を奪うだけで十分。この透明城壁の動きさえ止めてくれたら、あたしがあのオブリビオンを討滅する。
あん、あなたの顔見たら濡れてきちゃった。帰ったらお願いね、愛しいゆりゆり。アヤメはゆりゆりの護衛を頼むわ。
あなた、魅了対決であたしのゆりゆりと張り合える気? あなたそんなタマじゃないでしょ。
薙刀で「薙ぎ払い」「串刺し」にしてあげる。
(ゆりゆり:聖杯剣で無い通常の方。口調はご存じの通り。ゆかりを「いとしいひと」と呼ぶ)
「アヤメは下がってて。こいつはあたし『達』で相手しなくちゃいけない」
揺籠の君の復讐を誓う『揺籠中忍』と対峙したゆかりは、ここまで一緒に城塞を攻略してきたアヤメを退去させる。
だが、一人で戦うという訳でもない。あれを相手にするならもっとも相応しい――ここで呼ばずしてどうするのかという眷属がいるのだ。
「来て、あたしの愛しい|揺籠の君《ゆりゆり》!」
【淫雅召喚】。今治市解放戦を再現した事件で『揺籠の君』と交戦した記憶を縁に、彼女が作り出した式神である。
本物のオブリビオン・フォーミュラを再現してはいないが、少なくとも容姿については瓜二つ。彼女の尋常ならざる欲望と執着が成し遂げたユーベルコードである。
「揺籠の君……?! 貴様、なんという冒涜を!」
無論、熱狂的な揺籠の君の信奉者である揺籠中忍が、猟兵に使役される式神を本当の揺籠の君と認めるはずがない。
仮面でも隠しきれないほどの殺意を漲らせ、透明城壁を変形させながら忍者刀で斬り掛かってくる。速攻で喉笛を掻っ切るつもりだ。
「魅了の踊りをお願いね。あなたの信奉者らしいから、よく効くでしょ」
だが、ゆかりは笑みを浮かべて式神に敵の籠絡を命じる。第二次聖杯戦争で揺籠の君が披露した力には及ばずとも、これも強大なリリスには違いない。命じられるまま披露する淫猥な舞は、見た者の理性を蕩かすほどに魅力的だった。
「くッ……その顔で……そのお姿で、やめろォ……!」
頭では別物だと認識していても本能は逆らえないのか、揺籠中忍の動きに迷いが生まれる。完全に籠絡されはしないが、戦闘中に思考力を奪うだけでも十分だろう。透明城壁の動きさえ止まれば、あとはゆかりが敵を討滅する作戦だ。
「あん、あなたの顔見たら濡れてきちゃった。帰ったらお願いね、愛しいゆりゆり」
「はい、いとしいひと」
自分の式神の魅了で興奮したのか、彼女は頬を紅潮させながら薙刀『紫揚羽』を構える。アヤメには護衛を頼んであるので、式神を直接攻撃される心配はないだろう。そもそも揺籠中忍に、愛しき主君と同じ顔をした存在を傷付けられるかも疑問だが。
「くそっ……だったら逆に、貴様を私の肉体の虜にしてくれる……!」
「あなた、魅了対決であたしのゆりゆりと張り合える気? あなたそんなタマじゃないでしょ」
揺籠中忍もくノ一として【誘惑の術】は心得ているものの、夜ごと眷属達と愛し愛されての日々を送っているゆかりの心を震わせるには魅力が足りない。躊躇も容赦も一切なしに薙刀でなぎ払い、体勢が崩れたところに刺突を加える。
「あ、ぐぅッ……おのれぇッ……!!」
串刺しにされて悶える揺籠中忍だが、その激痛が魅了も吹き飛ばしたのか、仮面の奥から憎悪と殺意を向けてくる。
流石は『|新・最悪の最悪《ネオ・タルタロス》』にして揺籠の君の信奉者。これしきでくたばる輩ではないかと、ゆかりは微笑を浮かべたまま薙刀を構え直すのだった。
大成功
🔵🔵🔵
龍巳・咲花
それぞれ譲れぬものが合った故に戦い、その果ての結果に今があるでござる
拙者は復讐に対してとやかく言うつもりはござらん
お主の激情を受け止めた上で世界の為に討つでござるよ!
生み出した龍脈鎖で透明城壁の見えない壁にアンカーを射込んでいくでござる
壁が動けば鎖も動き壁の位置が分かるでござろう
無論、壁を動かし鎖で逆に拙者を追い詰めることも可能でござるが、それも拙者の目論見の一つでござる
されればわざと苦戦し捕えられて見せ、最も相手が油断しやすい止めを刺しに近付いてくる所を狙い鎖を消すでござる
この鎖は龍脈の力でござる故、出すも消すも拙者の意のままでござるからな
意表を突き相手に触れ、龍牙葬爪を叩き込むでござるよ!
「それぞれ譲れぬものが合った故に戦い、その果ての結果に今があるでござる」
能力者も、来訪者も、ゴーストも、その一点において違いはなく、流血の歴史を刻んだ末に今日の世界が生まれた。
この時代を担う能力者の1人として、咲花は過去の因縁を背負う覚悟はできており、どんな怨恨からも逃げるつもりは無かった。
「拙者は復讐に対してとやかく言うつもりはござらん。お主の激情を受け止めた上で世界の為に討つでござるよ!」
「いい覚悟だ。我らが怒りを思い知れ、猟兵……!!」
堂々と己の"譲れぬもの"を宣言した咲花に対して、揺籠中忍も"復讐"の御旗を掲げる。和解の道など存在しない事はすでに示されており、残れるのはどちらか一方のみ。思いの丈をぶつけあうように、二人の忍者は同時に駆け出した。
「寝ても覚めても、貴様らを殺す事だけを考えてきた……!」
【中間管理職の性】による脳内対策会議の結果を元に、揺籠中忍は「透明城壁」を操作する。これまでは儀式場の防衛拠点として機能してきた能力だが、戦闘では主に移動や回避の妨害に使用できる。これに対して咲花は龍脈の力を鎖状にした「龍脈鎖」を生み出し、見えない壁にアンカーを射込んでいく。
「壁が動けば鎖も動き壁の位置が分かるでござろう」
「フン、その手も想定済みだ!」
鎖を目印にして壁を避ける作戦を立てた咲花だが、それは揺籠中忍も読んでいた。張られた鎖も障害物として壁ごと動かし、逆に彼女を追い詰めるために利用してくる。まるで巣に入った虫けらを追い詰めるように、龍陣忍者の周りに包囲が築かれていく――。
(それも拙者の目論見の一つでござる)
忍者同士の戦いとはある種の騙しあい。どちらの対策が相手の上をいくか、より深い読みを通せた者が勝利を掴む。
咲花はわざと相手の術中に嵌まったように苦戦を演じ、じりじりと追い詰められ最後には自分の鎖に捕らえられた。
「しまったでござる……!」
「馬鹿め、もらったぞ!」
好機とみた揺籠中忍は忍者刀を抜いて斬り掛かってくる。だが止めを刺しに近付いてくる瞬間こそ、最も相手が油断しやすい時。このタイミングを狙っていた咲花は、自分の手足に絡みついた龍脈鎖を消し、身体の自由を取り戻した。
「この鎖は龍脈の力でござる故、出すも消すも拙者の意のままでござるからな」
「なッ……?!!」
様々な状況を想定して対策を立てていた揺籠中忍も、龍陣忍者の能力に関しては情報が不足していたようだ。完全に意表を突かれた彼女の忍者刀は虚しく空を切り――すっと流れるような動作で懐に潜り込んだ咲花が、相手の胸元に手を添える。
「龍陣忍者の力の一端、見せるでござるよ! 龍陣忍法 龍牙葬爪!」
「っ……グハァッ!!!?」
触れた箇所から流れ込む龍脈エネルギーの奔流が、標的の肉体を内部から破壊する。龍の爪牙に穿たれた揺籠中忍は血反吐を吐きながら吹き飛ばされ、自らの作り出した壁に叩きつけられた。透明な壁面に浮かび上がる血の痕が、彼女の受けたダメージの深さを物語っている――。
大成功
🔵🔵🔵
鈴乃宮・影華
確かに私達は仇ですが、殺られてあげる訳にもいきません
「かかって来やがれ、です」
異空間で待機中のE.N.M.Aにアクセス
(※『デア・オクルス』のつるにある通信スイッチをポチっとな)
召喚した『ミーレス』の遠隔操作を頼み、私の身体を持ち運んでもらいます
その間私は右手の『トニトゥルス』を起動、電気鞭を周囲にぺしぺしして壁の位置をおおよそ検討つけます
左手には『黒の葬華』を装備、こちらは指定UCを使用
揺籠中忍は多分壁で潰すだけでは止まらない――きっと、抜いた刀を私に突き立てに来る
「それが私に見えずとも、『あの人』は見逃さない」
後は麻痺した彼女を斬るだけです
「確かに私達は仇ですが、殺られてあげる訳にもいきません」
目前の『揺籠中忍』から発せられる殺意をひしひしと感じながらも、影華は一歩も退こうとしない。復讐の正当性がどうであれ、ここを突破できなければ世界結界破壊儀式は止められず、世界規模で様々な影響が出るのは間違いない。それを防ぐのが能力者の使命だ。
「かかって来やがれ、です」
「言ったな、貴様ッ!」
物静かな口調できっぱりと挑戦的な言葉を吐いた影華の前で、揺籠中忍は愛刀を引き抜く。すると彼女の姿は不可視となり、スピードと反応速度が爆発的に向上する。ここからは命乞いの暇さえ与えない、【暗殺の時間】の始まりだ。
「E.N.M.A、お願い」
影華は眼鏡型視覚支援デバイス『デア・オクルス』のつるにある通信スイッチをポチっと押し、異空間で待機中のAI『E.N.M.A』にアクセスする。すると即座に召喚されてきた要人護衛端末『ミーレス』が、彼女の身体をひょいと抱えて走りだした。
「逃がすかッ!」
揺籠中忍は不可視の暗殺態勢を保ったまま「透明城壁」を操作して移動妨害を行う。見えない暗殺者と見えない壁、二つの脅威に迫られて生き延びる術はあるのか。少なくとも黒服人形に抱えて運ばれる影華の目は、諦めているようには見えなかった。
「壁はこの辺りですね」
影華は右手に仕込んだ兵装『トニトゥルス』を起動し、指先から伸びる電気鞭で周囲をぺしぺしと叩く。返ってくる感触から壁の位置におおよそ検討がつけば、それに合わせて「E.N.M.A」がミーレスを操作して回避を行ってくれる。
「この身に集いし皆に願う――もう一度聞かせて、あの人の声を」
さらに彼女は【黒燐想鋼・再臨呪言】を発動し、左手に握りしめた魔剣「黒の葬華」にとある呪言士の霊を降ろす。
結局、一番欲しい言葉は貰えなかったけど、あの人の言葉は今でもはっきりと思い出せる。刃に宿った言霊の力が、あの忍者を倒す切り札だ。
(揺籠中忍は多分壁で潰すだけでは止まらない――きっと、抜いた刀を私に突き立てに来る)
自分達猟兵に向けられた憎悪と殺意の強さから、影華は敵の行動をそのように推測した。透明城壁はあくまでこちらの動きを封じる布石であり、とどめは絶対に自分の手で刺さなければ気が済まないだろうと。つまりその瞬間は必ず、近接範囲に接近することになる。
「それが私に見えずとも、『あの人』は見逃さない」
「……――ッ?! なに、が……」
範囲内に入った瞬間に揺籠中忍は呪言の効果を受け、悲鳴と共に姿を現した。その忍者刀の切っ先は、影華の喉元に触れる寸前で止まっている。対象の強化に応じて麻痺の状態異常をもたらす呪言の効果は、【暗殺の時間】を発動中の彼女には覿面だったようだ。
「さようなら」
あとは麻痺した敵を斬るだけの簡単な作業。とある友から教わった通りに魔剣を振り下ろせば、黒の葬華はばっさりと揺籠中忍を斬り伏せた。真っ赤な血飛沫が刃を濡らし、仮面の奥で「……ッ!」と押し殺した悲鳴が漏れる。いかに復讐の念が強くとも、多くの仲間との絆や想いを背負った彼女の剣もまた、軽いものではなかった――。
大成功
🔵🔵🔵
シルヴィ・フォーアンサー
……揺籠の君とか言われても知らないけど。
『逆恨みの類いだろう、聞き流せば良い』
見えない壁が邪魔そうだから攻撃よりカウンター狙い。
透明になるならコードで居場所を把握。
スピードと反応速度増大には瞬間思考力をドーピングで強化して対抗。
不可視を解除したわけじゃないからある程度余裕を見切って回避。
カウンターで数打ちゃ当たるとミサイル、ガトリング砲、ハイペリオンランチャーの一斉発射で弾幕を張って範囲攻撃。
透明な壁が横とか足元とかから伸びるかもしれないからそういうのにも注意しておくね。
「……揺籠の君とか言われても知らないけど」
『逆恨みの類いだろう、聞き流せば良い』
シルバーレインの戦争に参加したことのないシルヴィからすれば、『揺籠中忍』の復讐は完全に見に覚えのない因縁だった。仮に縁があったとしてもヨルムンガンドが言うように、逆恨みには違いないだろう。戦場での命のやり取りにいちいち仇討ちなど言ってたらキリがない。
「貴様に覚えがあろうがなかろうが関係ない。全ての猟兵が私の仇だ……!」
対する揺籠中忍はもはや憎悪と妄執に衝き動かされている様子で、理屈なき殺意とともに愛用の忍者刀を抜き放つ。
鍔鳴りの音が【暗殺の時間】の始まりを告げ、彼女の姿が視界から消える。同時に周囲に構築されていた透明城壁がゴゴゴゴと音を立てて動きだした。
(見えない壁が邪魔そうだから、攻撃よりカウンター狙い)
愛機ミドガルズのコックピットから、冷静な戦況判断を行うシルヴィ。ここまでの道中とは違って壁が動いているのなら、下手に飛び回れば衝突する恐れもある。向こうが暗殺を仕掛ける腹積もりなら、それを迎え撃ってやればいい。
「ボスは何処かな……探知開始」
シルヴィは機体から【ディテクション・ウェーブ】を発信し、消えた揺籠中忍の居場所を把握する。レーダーに浮かび上がった敵の座標は常に高速移動しているが、捉えきれないほどではない。彼女もドーピングによって瞬間思考力を一時的に高めているのだ。
「……来る」
レーダー上の敵影が急速にこちらに向かってくる瞬間を、シルヴィは即座に察知する。コックピットを通じて彼女の神経と直結接続された機体は、その思考に応じて回避機動を取った。不可視を解除した訳ではない点を考慮して、ある程度の余裕を見切った挙動で。
「なっ……避けられた、だと?!」
忍者刀はミドガルズのオーバーフレームに傷を付けたが、致命的なダメージには至らない。最も得意とする暗殺を回避され、揺籠中忍は動揺を抑えきれず。攻撃後の隙と精神の乱れが足を鈍らせる好機を、シルヴィは見逃さなかった。
「……見えなくたって数打ちゃ当たる」
暗殺のお返しに放たれたのは、ミサイルポッドとガトリングキャノン、そしてハイペリオンランチャーの一斉発射。
ミサイルと弾丸とビームによる、蟻が入る隙間もないほどの密度の弾幕が、敵のいるであろう範囲にばら撒かれる。
「くっ……舐めるなッ!」
それでも揺籠中忍は驚異的な反応速度で射線から飛び退き、透明城塞による妨害を図る。この戦場にある全ての城壁は彼女の支配下であり、既存のものを動かすだけでなく変形や生成もできる。こいつで不意打ちを仕掛ければ、まだ逆転の芽はある――。
「分かってたよ、それも」
だが。横や足元から伸びてきた透明な壁を、シルヴィはひらりと回避する。【ディテクション・ウェーブ】の反響波を頼りにすれば、敵だけでなく城壁の構造も把握可能だ。このような反撃も想定して注意を怠っていなかった彼女は、伸びた壁の上に機体を立たせ、撃ち下ろすように弾幕を張り続ける。
「くそッ、まだだ、まだ私は……ぐあッ!!」
ユーベルコードと透明城塞、どちらも見切られた揺籠中忍に残された手立てはなく、必死の回避にも限界はあった。
爆風を浴びた忍び装束が破れ、銃弾を受けた仮面にヒビが入る。『|新・最悪の最悪《ネオ・タルタロス》』を名乗る復讐者にも、いよいよ最期の時が迫りつつあった――。
大成功
🔵🔵🔵
暗都・魎夜
【心情】
世界結界の破壊
実の所、現時点で世界結界自体がすでに妙な復活を遂げてしまったものである以上、
いっそのこと俺が破壊したい位の気持ちはあるんだがな
とは言え、悪党のペースで運ばせるわけにもいかねえか
【戦闘】
「透明城壁」、ガキの頃も苦しめられたが、面倒な能力だぜ
UCで壁を破壊しながら、「索敵」で壁の見落としが内容にしつつ
オブリビオンに向かって「ダッシュ」で突撃
中間管理職なんて言い方過小評価だな
とんでもなく有能な副官じゃねえか
ゆりゆりへの忠誠で、まだ世界を亡ぼす儀式を行うって言うんなら俺が相手だ!
「先制攻撃」「二回攻撃」で「リミッター解除」した「捨て身の一撃」をぶつける
これ以上の時間は与えねえぜ!
「世界結界の破壊。実の所、現時点で世界結界自体がすでに妙な復活を遂げてしまったものである以上、いっそのこと俺が破壊したい位の気持ちはあるんだがな」
かつての銀誓館学園の見立てでは、世界結界の消滅は不可避であり、それに伴って変わりゆく世界に対応する準備が進められていた。世界結界のオブリビオン化により|銀の雨が降る時代《シルバーレイン》から変わらぬ常識が続いている現状は、実のところ不自然なのだ。なので魎夜は世界結界の重要性を認識しているが、躍起になって守る必要を感じてはいない。
「とは言え、悪党のペースで運ばせるわけにもいかねえか」
今ここで世界結界が破壊されると、発生する大量の|銀の雨《シルバーレイン》が未知のオブリビオン・フォーミュラを強化してしまう。それにより敵の行動が活発化すれば、後手に回らされたこちらの不利は否めない。以上を考慮すれば、やはり世界結界破壊儀式を達成させる訳にはいかなかった。
「後少しで世界結界の破壊は成る……そして私は、揺籠の君を討った貴様らに復讐を!」
儀式場への道を阻む『揺籠中忍』は、もはや満身創痍なれども殺意を全身に漲らせて、見えない城壁を操り続ける。
これまではただ道を阻むだけだった壁が、害意をもって変形し近付いてくる。移植された旧『|最悪の最悪《タルタロス》』メンバーの能力を、彼女は完全に使いこなしているようだ。
「『透明城壁』、ガキの頃も苦しめられたが、面倒な能力だぜ」
学生時代にもこの能力を体感した覚えのある魎夜は、皮肉げに口元を歪めながらも【レッドダイナマイト】を発動。
戦場にある全ての火気を取り込んで己を「太陽の爆弾」に変え、壁が迫ってくる方向に体当たりを仕掛けた。生半可な攻撃で透明城壁を壊せないのはすでに周知の通りだが――。
「全力で行くぜ、耐えられるかどうか試してみやがれ!」
衝突の瞬間、発破のような爆発音が戦場に轟き、見えない壁が砕け散る。学生時代から研鑽を重ね「戦略級能力者」と呼ばれるに至った魎夜のユーベルコードは、かつてのアビリティの威力を凌駕していた。そのまま彼は敵に向かってダッシュで突撃していく。
「力技で我が城壁を崩すか……だが、それも想定内だ!」
このような事態もあり得ると【中間管理職の性】から予想していた揺籠中忍は、魎夜の進路上に新たな壁を立てる。
突撃を阻めずとも減速させられれば対処は容易になる。余裕をもって回避しつつカウンターを決める算段のようだ。
「中間管理職なんて言い方過小評価だな。とんでもなく有能な副官じゃねえか」
窮地に立たされても任務を放棄しない忠実さ、復讐に心滾らせながらも熟考できる冷静さを、魎夜は高く評価する。
だからこそ、こちらも全力で挑まなくてはならない。壁の見落としがないよう索敵を厳としつつ、彼は正面の壁を突き破って一直線に敵に向かった。
「ゆりゆりへの忠誠で、まだ世界を亡ぼす儀式を行うって言うんなら俺が相手だ!」
「いい覚悟だ……貴様の首を揺籠の君の墓前に捧げよう!」
自身に反動がくることも承知の上でリミッターを解除し、回転動力炉をフル回転。これで障害物による減速を補い、敵の想定を上回るスピードで機先を制する。これを見た揺籠中忍も忍者刀を抜き放ち、乾坤一擲の覚悟で迎え撃った。
「これ以上の時間は与えねえぜ!」
捨て身の覚悟で体ごとぶつかるように繰り出される「滅びの業火」と「月魎斬式」。紅き魔剣と蒼玄の刀による二連撃は、敵の忍者刀よりもわずかに速く突き刺さった。心の臓を穿たれた揺籠中忍の仮面が剥がれ、口元からごぼりと音を立てて血があふれ出す。
「無念……揺籠の君よ、申し訳ありません……」
信奉する主に、仇を討てなかった謝罪を口にして――それを最期に揺籠中忍は事切れ、亡骸は骸の海へ還っていく。
同時に、比叡山全域に展開されていた『透明城壁』が消えていく。世界結界破壊儀式の儀式場への道が、ついに開かれたのだ。
大成功
🔵🔵🔵
第3章 ボス戦
『宇佐美・藍沙』
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POW : どうしよう、好きになっちゃいました!
自身の【恋心に素直】になり、【恋の告白をし続ける】事で回避率が10倍になり、レベル×5km/hの飛翔能力を得る。
SPD : きっとあなたも私の運命の人!
【自身や恋人たちの手での引っ掻き】で攻撃する。また、攻撃が命中した敵の【声や容姿といった魅力的なところ】を覚え、同じ敵に攻撃する際の命中力と威力を増強する。
WIZ : 恋人になってくれなきゃ離れない!
【恋心】を向けた対象に、【全身全霊全腕でのハグ】でダメージを与える。命中率が高い。
イラスト:飴屋
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「夏目・晴夜」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
『|新・最悪の最悪《ネオ・タルタロス》』の『揺籠中忍』を撃破したことで、比叡山延暦寺の透明城壁は解除された。
もはや、猟兵達の道行きを阻むものは何もない。山中から漂う邪悪な気配を辿って、一同は儀式の中心地へ向かう。
「わあ、すごい! あなたたち、ここまで来れたんですね!」
そこで一同を待っていたのは、血まみれの学生服を身に纏った1人の少女。
彼女は猟兵を見るなり目をキラキラと輝かせ、頬を染めて無邪気な笑みを浮かべた。
「廻輪衆のみんなも、揺籠中忍さんも強かったのに、勝っちゃうなんて! どうしよう、私、あなたたちのことが好きになっちゃいました!」
彼女の名は『宇佐美・藍沙』。
揺籠中忍と同じ『|新・最悪の最悪《ネオ・タルタロス》』のメンバーだが、その実力は組織内でも指折りと言われる。
だが実力以上に厄介なのは、彼女の異常なまでの「惚れっぽさ」。ただ目が合っただけで、声を聞くだけで、性別も年齢も敵味方も関係なく好きになってしまう、非常識な恋愛脳なのだ。
「きっとあなたたちも私の運命の人! ここに来てくれたってことは、私の恋人になってくれるってことですよね!」
藍沙の恋心に拒否権はない。どれだけ断られようと執拗に付きまとい、全身全霊で標的を愛する。
その愛に耐えられた者はこれまで誰もいない。彼女の体に繋げられた多数の腕は、かつての「恋人」達のものだ。
腕の持ち主がどうなったかなど、語るまでもあるまい。
「ふふふ、嬉しいなあ……ハビタントさんに無理言って貰った『絶対に失敗しないメチャモテマニュアル』が、さっそく役に立ちますね!」
その暴走する恋心のあまり、藍沙がハビタント・フォーミュラから移植されたのは『ハレムキング』という、戦闘時は一切役に立たない能力である。たとえ女性であっても猟兵なら、彼女のマニュアルの効果で魅了される恐れはない。
それでも彼女が『|新・最悪の最悪《ネオ・タルタロス》』指折りの実力者と呼ばれているのは、ひとえに常軌を逸した精神性と実力ゆえである。
「ああ好き、好き、もう大大大大大好き! あなたも好きって言って、ねえ言って!」
殺意も敵意もまるでない、ただ狂える恋心のままに、藍沙は猟兵達に襲い掛かる。
もはや世界結界破壊儀式の事など忘れてそうな勢いだが。この化け物を倒さない限り、儀式を止める事はできない。
かつての能力者達にかわって、忌まわしき儀式を今一度阻止するため、猟兵達は戦闘態勢を取った。
シルヴィ・フォーアンサー
……初対面だしいってる意味わからないし見た目からしてやばすぎるんだけど。
『聞く耳はなさそうだな、いつも通り実力行使でお断りするしかなさそうだ』
間違っても近寄られたくないからシルエット・ミラージュからのパラライズ・ミサイルで念入りに麻痺させる。
動きが止まったところへレインボー・バレットで集中砲火。
弾丸を撃ち込みながら……そもそも私は見えてないわけだしヨルが好きって可能性ない?
『馬鹿な……もしありえても私は君の以外の相手をする気はないのでお断りだ、特にあんなのは』
足を止めて撃ってる以上に弾幕が勢い増した気がすると思ったりしつつ撃ち続けて蜂の巣にする。
「……初対面だしいってる意味わからないし見た目からしてやばすぎるんだけど」
『聞く耳はなさそうだな、いつも通り実力行使でお断りするしかなさそうだ』
相手の気持ちなど一向に考慮しない『宇佐美・藍沙』から向けられた一方的な求愛に、シルヴィは引き気味だった。
ヨルムンガンドも同意見のようで、会話が成り立たないなら武力で退けるしかない。相手が『|新・最悪の最悪《ネオ・タルタロス》』指折りの実力者であろうとも。
「うふふ♪ きっとあなたも私の運命の人!」
藍沙は恋する乙女の無邪気な笑みを浮かべて、飛び跳ねるようにこちらに迫ってくる。本人に害意があろうがなかろうが、その伸ばす手には人を殺めるに十分な威力を秘めていた。衣服や身体を染める血糊が、どうやって付いたかなど説明の必要はあるまい。
「……来ないで」
間違っても近寄られたくなかったシルヴィは、愛機ミドガルズを【シルエット・ミラージュ】により分身させ、全機一斉に【パラライズ・ミサイル】を発射する。14機の残像と同時に放たれるミサイルのカーニバルは、全て藍沙を標的としていた。
「残像だけど本物……ボコボコにする」
「まあ! いっぱい増えるなんてステキ……きゃっ!!」
藍沙は機敏な身のこなしでミサイルを避けるが、全弾回避することはできず。1発被弾すれば放出される高圧電流が身体を痺れさせ、続くミサイルが立て続けにヒットする。確実に動きを止めるためにも、シルヴィは念入りにミサイルを叩き込んだ。
「よし……止まった」
対象が停止したところでシルヴィは【レインボー・バレット】を発動し、機体両手のガトリングキャノンから集中砲火を仕掛ける。求愛の言葉もかき消すような轟音と共に放たれる弾丸は、対象に当たると花火のような七色の光を撒き散らす。見た目は綺麗だが、威力は花火どころではない。
「ああん! これじゃ近寄れません……ぎゅって抱きしめたいのにぃ!」
藍沙も流石に動けないようだが、視線はじっと"愛するひと"を見つめ続けており、変わらぬ笑顔がいっそ不気味だ。
ここで手を緩めたら一瞬で肉薄されそうだ。シルヴィは足を止めて射撃姿勢を維持したまま、無限に供給されるユーベルコードの弾丸を放ち続ける。
「……そもそも私は見えてないわけだしヨルが好きって可能性ない?」
弾丸を撃ち込みながらシルヴィはふと、そんなことを考える。城塞突入からここまでずっとキャバリアに乗っている彼女は、敵に直接視認されることがなかった。とすれば藍沙が好意を向けている対象はキャバリアなのかもしれない。その場合、あのオブリビオンの守備範囲は性別や種族はおろか生物と機械の垣根すら超えることになるが。
『馬鹿な……もしありえても私は君の以外の相手をする気はないのでお断りだ、特にあんなのは』
もっとも当のキャバリアに宿るAI――ヨルムンガンドから見ても、藍沙の愛は迷惑以外のものではなかったようだ。
彼の思考は常にシルヴィが一番大事だ。ただでさえ手のかかるパイロットがいると言うのに、このうえ話の通じない恋愛脳の面倒まで見るつもりはない。
(足を止めて撃ってる以上に弾幕が勢い増した気がする)
ヨルの拒絶の意思が射撃にも影響したのかなと思ったりしつつ、シルヴィはコックピットでトリガーを引き続ける。
藍沙の恋愛対象が自分であれヨルであれ、譲る訳にはいかないのは彼女も同じだった。蜂の巣にせんと唸る銃弾の嵐が、返り血ではない鮮血で標的を染めていく――。
大成功
🔵🔵🔵
村崎・ゆかり
ふふ、可愛い娘は大好きよ。でもその前に、身繕いをする必要があるんじゃないかしら? 好きな人の前では綺麗な自分を見せたいでしょう?
さて時間稼ぎの間に、幽世千代紙でやっこ型の式神を大量に折って、「式神使い」で辺りを歩かせる。彼女の恋心、これにも引っかかるのかしら?
ゆりゆり、また魅了の踊りをお願い。アヤメはあたしと一緒に彼女の死角から襲うわよ。
恋で目を曇らせているなら好都合。やっこ型式神の陰に隠れながら、薙刀を繰り出し「串刺し」にする。アヤメは飛びかかってクナイで首筋かな? まあ、細かいところは任せるわ。
あなたがもう少し大人しければ恋人になってあげたのにな。本当、残念だわ。
さようなら、宇佐美藍沙。
「ふふ、可愛い娘は大好きよ。でもその前に、身繕いをする必要があるんじゃないかしら?」
狂気をはらんだ『宇佐美・藍沙』からのラブコールにも、恋愛経験豊富なゆかりは落ち着いた態度で返す。ここで馬鹿正直に断ったところで、この手の女子は勝手に燃え上がるだけだろう。なので相手のペースに合わせつつ、こちらの意図通りになるよう誘導する。
「好きな人の前では綺麗な自分を見せたいでしょう?」
「はっ、確かに! 『絶対に失敗しないメチャモテマニュアル』にも書いてあった気がします!」
案の定、藍沙はゆかりの言葉に納得した様子で身嗜みを整えだした。と言っても服についた血や恋人たちの手などはすぐにどうにかできるものではない。本来戦場でこんな隙を晒すのは危険だと分かりそうだが、彼女にはそもそも目前にいるのが「敵」という認識すらないのだった。
(さて時間稼ぎの間に、と)
藍沙が身繕いをしている間、ゆかりは「幽世千代紙」でやっこ型の式神を大量に折って、辺りをトコトコ歩かせる。
果たして彼女の恋心はこれにも引っ掛かるのだろうか。ダメな時も最低限、身を潜める遮蔽物になれば十分だろう。
「お待たせしました! ……あら、あのひとはどこにいったの?」
多少はマシな格好になって藍沙が顔を上げた時、ゆかりはすでにやっこ型式神の陰に隠れていた。いつの間にか増えていた人(?)の姿に、彼女は笑顔で目をキラキラさせたまま。見つけるまで片っ端から式神をハグしそうな勢いだ。
(ゆりゆり、また魅了の踊りをお願い。アヤメはあたしと一緒に彼女の死角から襲うわよ)
さらに敵の気を逸らすために、ゆかりは引き続き【淫雅召喚】で呼び出したリリスの女王に藍沙の籠絡を行わせる。
ただでさえ異常に惚れっぽい相手の前で、気のある素振りや誘うような仕草を見せれば、心を奪うのは容易いこと。
「きゃあ、ステキ! もう恋人になってくれなきゃ離れない!」
瞳にハートマークが浮かびそうな勢いで見事に籠絡された藍沙は、ウサギの如き脚力でリリスの女王に飛びかかる。
彼女が恋心を向けた対象に仕掛ける全身全霊全腕でのハグは、能力者やゴーストだろうと「抱き潰す」威力を誇る。ひとたび標的を定めれば諦めることを知らないため、命中精度も非常に高い。
「恋で目を曇らせているなら好都合」
だが、その性質を逆手に取って、ゆかりは藍沙の死角から奇襲を仕掛ける。やっこ型式神の陰から飛び出した彼女の手には薙刀。すっかりリリスの女王に魅了された敵は、紫に煌めく刃が背後から迫っているのに気付きもしなかった。
「つかまえた……きゃうっ!!?」
背中からの衝撃の直後、胸から飛び出す刃の先端。串刺しにされた藍沙は何が起きたか分からぬまま悲鳴を上げる。
その直後、別の式神に潜んでいたエルフのクノイチ・アヤメが、クナイを逆手に構えて首筋めがけて飛びかかった。
「あなたがもう少し大人しければ恋人になってあげたのにな。本当、残念だわ」
誰彼構わず無差別に好意を抱き、凶器に等しい愛をばら撒く。そんなオブリビオンを恋人に加えるのは流石のゆかりも断念せざるを得なかった。残念というのは本音なのだろう、表情には未練を残しつつも、薙刀を握る力は緩めない。
「さようなら、宇佐美藍沙」
「そんなぁっ……!!」
捻り込んだ刃が傷口を広げるのと同時に、クノイチの刃が首を刈る。ぱっと鮮やかな血飛沫を散らし、藍沙が叫ぶ。
ハビタント・フォーミュラに『ハレムキング』の力まで与えられた自分が、どうして拒絶されるのか、その顔は本当に理由が分かっていない表情だった。
大成功
🔵🔵🔵
鈴乃宮・影華
正直、尊敬しますよ貴女の事
「好きな人に『好き』と伝えるのって、凄く大変な事なのに……そんなにも簡単に言ってのけるなんて」
私が自分の想いに素直になれたのは、相手を亡くした後だったから
でも、素直なのはいい事ばかりじゃないですよ?
貴女がそうやって|告白《強化》を見せつけるから、こちらは指定UCの条件を満たせました
今、時速何キロ出してるのか知りませんけど
戦場全体に響き渡るこの声、躱せるものならやってみやがれ、です
後は、恋心に身を蝕まれた彼女を
『ミーレス』に持たせた『ウルカヌスⅡ』で蜂の巣にしましょう
かける言葉があるとすれば、やはりこれかな
「ごめんなさい。私、他に好きな人がいるから」
「好きな人に『好き』と伝えるのって、凄く大変な事なのに……そんなにも簡単に言ってのけるなんて」
正直、尊敬しますよ貴女の事――と、影華は『宇佐美・藍沙』の奔放なる恋心に評価を示す。ある種の狂気じみているとはいえ、あの娘の"好き"は全て本気の"好き"であり、良くも悪くも自分の気持ちに忠実に動く姿は、真似できないからこそ眩しく見えた。
「私が自分の想いに素直になれたのは、相手を亡くした後だったから」
「まあ、なんて可哀想……その憂いのある表情もステキ。どうしよう、好きになっちゃいました!」
この世を去ってしまったあの人を想い、物憂げに語る影華に、藍沙はまた新たな恋心を芽生えさせる。相手の気持ちをまったくお構いなしの、無遠慮で素直な告白はまさに対照的。爛々と輝くその眼差しは、獲物を狙う肉食獣のようでもあった。
「でも、素直なのはいい事ばかりじゃないですよ? 貴女がそうやって|告白《強化》を見せつけるから、こちらは条件を満たせました」
まっしぐらに飛びかかってくる藍沙に対して、影華は【黒燐幻想劇弾・記憶再現『燕馬』】を発動。闇色の靄の如く湧き出た黒燐蟲の群れが、地獄の如き叫び声を一斉に上げる。それは遠き日の想い出を元にした、世界を騙す呪詛だ。
「今、時速何キロ出してるのか知りませんけど。戦場全体に響き渡るこの声、躱せるものならやってみやがれ、です」
「きゃッ……!!?!」
藍沙の告白は速度と回避を強化するユーベルコードでもあるが、それでも音速で拡散する攻撃からは逃げ切れない。
黒燐蟲の絶叫を浴びた少女の全身は黒い靄に包まれ。同時に、身体の内外から焼けつくような痛みを彼女は感じた。
「いたいっ! なんですか、これ……っ!?」
影華の【黒燐幻想劇弾・記憶再現『燕馬』】は、対象の得ている強化を本人を蝕む猛毒に変えるユーベルコードだ。
敵が何らかの強化を得た事を、術者が観測していれば威力はさらに増す。彼女が「条件を満たせた」と言ったのは、最大の効力を発揮する準備が整ったという意味であった。
「……苦しんでるって事は、|告白《強化》も本気だったってことでもありますけど」
黒い靄に包まれて悶え苦しむ藍沙へと、影華は「ミーレス」に持たせた強化詠唱機関砲「ウルカヌスⅡ」を向ける。
それは能力者時代に使用していた詠唱兵器を強化改修した六銃身ガトリングガン。動力炉とともに回転する銃身が、轟音を響かせて弾丸の嵐を解き放った。
「きゃあああああっ!!?」
猛毒の苦痛に加えて弾幕を浴びせられ、悲鳴を上げる藍沙。恋した相手にここまで激しい拒絶を喰らったのは過去の経験でもなかなか無いだろう。そんな彼女に影華は(かける言葉があるとすれば、やはりこれかな)と考えていた一言を口にする。
「ごめんなさい。私、他に好きな人がいるから」
「そ、そんなぁーーーっ!!!?」
ある意味では、その一言のほうが与えたダメージは大きかったかもしれない。ショックを受けてよろめく藍沙の全身は、毒靄と銃弾で痛々しく傷つけられ――それでもまだ諦めきってはいないのか、瞳には煌々と恋の炎が燃えていた。
大成功
🔵🔵🔵
暗都・魎夜
【心情】
世界結界破壊儀式を遂行するオブリビオンとしては最悪のキャスティングだな
思い込んだら何があろうと止めることはねえ
当人も思い込みを強さにするタイプなわけだしな
ただ、俺にも守りたいものがあるんだよ!
【戦闘】
『ハレムキング』のマニュアル、たしかに仲間を増やすことにかけては危険な能力だ
ガキの頃、ちょっとだけ欲しかったけどそれはさておき
ここに至った以上、余計な能力を気にする必要はねえ
決着つけてやるぜ!
「激痛耐性」で耐えながら「限界突破」で「グラップル」を放つ
「熱愛の言葉は感謝するが、生憎とこちとら既婚者だ……って聞いてねえか」
『絶対に失敗しないメチャモテマニュアル』、後でちゃんと読み直しておけよな
「世界結界破壊儀式を遂行するオブリビオンとしては最悪のキャスティングだな」
思い込んだら何があろうと止まることのない『宇佐美・藍沙』のようなタイプは本当に厄介だと、顔をしかめるのは魎夜。言葉や暴力で翻意させるのが不可能である以上、ヤツを倒して儀式を止めさせるのはなかなか骨が折れそうだ。
「当人も思い込みを強さにするタイプなわけだしな」
「ふふ♪ 褒められちゃいました。好き♪」
その発言を褒め言葉と受け取った藍沙は、またたく間に魎夜への恋に落ちた。乙女らしく瞳をキラキラと輝かせる姿は、身体に繋いだ"元恋人"達の手や、衣服についた返り血がなければ魅力的だったかもしれない。恋も儀式も何ひとつ譲らない狂気の精神性こそ、彼女が『|新・最悪の最悪《ネオ・タルタロス》』指折りの実力者と呼ばれる由縁だ。
「ただ、俺にも守りたいものがあるんだよ!」
「きゃっ、カッコいい……私の恋人になってください!」
威勢よく身構える魎夜に対して、瞳にハートを浮かべた藍沙は【恋人になってくれなきゃ離れない!】と叫びながら飛びかかっていく。それもハビタント・フォーミュラに貰った『絶対に失敗しないメチャモテマニュアル』に書いてあったのだろうか。
(『ハレムキング』のマニュアル、たしかに仲間を増やすことにかけては危険な能力だ。ガキの頃、ちょっとだけ欲しかったけどそれはさておき)
そのマニュアルの唯一の欠点、そしてこちらにとっての幸いは、猟兵を強制的に魅了するほどの効力はないことだ。
一般人なら幾らでも虜にできうる能力であることを考えれば、ここで彼女を倒す理由がひとつ増えたと取るべきか。放っておけばまたヤツの犠牲になる"恋人"が増えることになる。
「ここに至った以上、余計な能力を気にする必要はねえ。決着つけてやるぜ!」
狂える恋慕のままに向かってくる藍沙を、魎夜は真っ向から迎え撃つ構えを取った。外見は人間の少女であっても、オブリビオンである彼女の身体能力は常軌を逸しており、その全身全霊全腕でのハグは、人体を真っ二つにへし折れるほどの威力だ。
「ぎゅーっ♪」
可愛らしい掛け声にそぐわない圧力が全身を締め付ける。だが学生時代から鍛え上げられた魎夜の肉体は、その激痛にも耐えた。向こうが恋を原動力に戦うなら、こちらが戦う理由は愛だ――愛するものを守りたいという気持ちが、彼に限界を超えさせる。
「熱愛の言葉は感謝するが、生憎とこちとら既婚者だ……って聞いてねえか」
皮肉げに笑いながら【嵐呼ぶ銀色の戦士】に変身する魎夜。肉体を詠唱銀で再構成することで自身を詠唱兵器そのものとした彼は、密着状態からグラップルの打撃を繰り出す。その一撃は銀の光を伴って、狂恋の怪物に突き刺さった。
「『絶対に失敗しないメチャモテマニュアル』、後でちゃんと読み直しておけよな」
「きゃ……ッ!!!!!」
砲弾のように吹き飛ばされ、放物線を描いて地面に叩きつけられる藍沙。きっぱりとした拒絶と言葉の衝撃で、すぐには立ち上がることさえできない。たとえ心は折れずとも、肉体に与えられたダメージは間違いなく蓄積されていた。
大成功
🔵🔵🔵
龍巳・咲花
ホラー作品とかで出てきそうな相手でござるなあ
拙者も色々な相手と戦ってきたでござる故、夢に見るなんてことはないでござるが……
それは兎も角として拙者は自分の恋人は自分で探すでござる故、丁重にお断り申すでござる!
敵がハグで攻撃してくると分かっているならば拙者も仕込ませてもらうでござる
手甲などの防具の硬い部分に糸や鎖で繋いだ撒菱や手裏剣などを纏うでござるな
無論これが本命に非ず相手を拙者の領域内に誘い込み足止めするためのもの
相手が拙者に攻撃したタイミングで特殊空間を展開するでござるよ!
お主が罪の意識も無く犠牲者へと行ってきた所業を自分自身で味わうでござる!
「ホラー作品とかで出てきそうな相手でござるなあ」
どれだけ拒んでも執拗に迫り、愛の重さで相手を殺してしまう、恋する怪物こと『宇佐美・藍沙』。かつての恋人達の返り血ともぎ取った腕にまみれたグロテスクな外見は、本能的な恐怖感を呼び起こす。正直、下手なゴーストよりもよっぽど恐ろしそうだと咲花は思う。
「拙者も色々な相手と戦ってきたでござる故、夢に見るなんてことはないでござるが……それは兎も角として拙者は自分の恋人は自分で探すでござる故、丁重にお断り申すでござる!」
「そんなあ!? やだやだ、あなたも私の運命の人なんですっ!」
曲解の仕様がないくらいハッキリとお断りを入れても、藍沙は一度惚れた相手のことを絶対に諦めない。一目惚れの恋心をユーベルコードの力に変えて、猛然と飛びかかってくる。見た目だけならウサギだが、迫力は肉食獣のそれだ。
(敵がハグで攻撃してくると分かっているならば、拙者も仕込ませてもらうでござる)
恋愛も戦闘も直球勝負な敵は行動も読みやすいのが幸いだ。咲花は手甲などの防具の硬い部分に、糸や鎖で繋いだ撒菱や手裏剣などを纏っていた。抱きつこうとすればこれらの仕込みが突き刺さり、痛みで攻撃を阻害するという訳だ。
「いたっ……でも、恋人になってくれなきゃ離れない!」
咲花の準備は功を奏し、組み付いてきた藍沙の身体に棘や刃が突き刺さる。しかし敵はそれでも抱擁を諦めようとはしなかった。拒まれれば拒まれるほど燃える恋の熱が、全身全霊のハグで恋人候補を抱き潰さんとする――間に挟んだ防具がミシリと軋む音が聞こえた。
「龍陣忍者の神髄受けてみよ、でござる! 龍陣忍法 禍福糾纆」
しかし咲花にとってこれは本命には非ず、相手を足止めできれば十分だった。藍沙が攻撃を仕掛けてきたタイミングで、彼女は【龍陣忍法「禍福糾纆」】を発動。活性化した龍脈で展開する特殊空間に、相手を強制的に引きずり込む。
「あら? なんだか雰囲気が……きゃっ?!」
周囲の空間に満ちる霊気の流れが変わったことに藍沙も気付いたようだ。その直後、彼女の身体に鋭い痛みが走る。
見れば、誰かに引っ掻かれたような傷が腕に刻まれ、みみず腫れと出血を起こしている。何者かに攻撃を受けた気配は一切なかったのに。
「それはお主が恋した相手に与えた傷でござる」
咲花が展開した特殊空間の中では、龍脈に眠る記憶を呼び覚ますことで、被害者が受けた致命傷を加害者の身に再現することができる。殺めた相手の数が多ければ、それだけ再現される傷も増える――禍福糾纆の名に相応しい、相手の因果を武器とする忍法だ。
「お主が罪の意識も無く犠牲者へと行ってきた所業を自分自身で味わうでござる!」
「いたいっ?! なに、なんなんですかっ!? いぎゃぁっ!!!?」
バラバラになるまで引っ掻かいた傷、潰れるまで抱きしめた痛み。過去の"恋人"に与えたダメージを体感させられ、藍沙は血まみれで悲鳴を上げる。罪のない犠牲者達の無念を思えば、これでもまだ報いとしては軽い方だろう。咲花は龍脈の制御に専念することで特殊空間を維持し、全ての致命傷の記憶を恋する怪物に与え続けるのだった。
大成功
🔵🔵🔵
マリク・フォーサイト
これが最後の『新・最悪の最悪』
ここを抑えれば、『世界結界破壊儀式』を止められる
かつて戦った巡礼士のためにも、戦いの中で散った父と母のためにも
絶対に勝利をつかんでみせます!
「我は銀嶺の騎士、マリク・フォーサイト」
「罪なき人々を守るため、そして聖杯を取り戻すため、今ここでお前を討つ!」
どんなに早く飛翔しようと攻撃手段は接近戦しかないはず
であれば、「心眼」「盾受け」で防御
「功夫」で間合いを見切り、「気合い」「勇気」で「ランスチャージ」を放ちます!
すいません、僕はあなたに「好き」ということはできません
僕にはまだ、人を好きになるということは分からない
だけど、そんな僕にも分かる
あなたの愛と恋は、世界を壊す
「これが最後の『新・最悪の最悪』。ここを抑えれば、『世界結界破壊儀式』を止められる」
今回の依頼もいよいよ最終盤とあって、マリクはより一層気合いを入れる。儀式の遂行を努める『宇佐美・藍沙』は廻輪衆や揺籠中忍と比べても別格の強敵。世界結界の破壊を阻止する上で、ここが最大の難関なのは間違いなかった。
「かつて戦った巡礼士のためにも、戦いの中で散った父と母のためにも、絶対に勝利をつかんでみせます!」
英雄霊となった先達も、きっとこの戦いを見守っているに違いない。彼らの名誉と誇りのためにも負けられぬ戦いがここにある。メダリオンを固く握りしめた彼の全身は今一度銀嶺の鎧に覆われ、聖槍ロゴスの穂先が太陽に照らされて輝きを放つ。
「我は銀嶺の騎士、マリク・フォーサイト。罪なき人々を守るため、そして聖杯を取り戻すため、今ここでお前を討つ!」
立ちはだかる邪悪なオブリビオンの前で、少年は勇ましく名乗りを上げる。若くとも佇まいは一人前の騎士のものであり、凛々しくも頼もしい印象を与える。それは、ただでさえ惚れやすい藍沙が、一目で恋に落ちるには十分過ぎた。
「カッコいい……! さすがは私の運命の人! 好きです! 大好き!」
まっすぐな恋心の矢印を向けながら、肝心の敵対宣言については一切耳に入っていない辺りが異常性を感じさせる。
どれだけ拒まれようが嫌われようが、それは彼女の恋の障害にはなり得ないのだ。相手の気持ちを一切考慮しない、恋に恋する化け物たる由縁である。
「ああ、もう好きすぎておかしくなっちゃいそうです!」
素直すぎる恋の告白をし続けながら、藍沙は猛スピードで戦場を跳ね回る。乙女の愛情は重力さえも凌駕するのか、その跳躍はもはや飛翔に等しい。この状態になった彼女は回避力も飛躍的に増しているため、攻撃を当てるのは至難の業だろう。
(どんなに早く飛翔しようと攻撃手段は接近戦しかないはず。であれば……)
しかしマリクは敵が飛び道具を持っていないのを察して、焦らず冷静に防御の構えを取る。向こうから近付いてくるのなら、反撃のチャンスは必ず訪れる。そのタイミングを絶対に見逃さないよう、全ての感覚と心眼を研ぎ澄ませた。
「はやく私の恋人になってえええええ!!!」
そして、その時は訪れる。跳躍を重ねたトップスピードで飛び込んできた藍沙の攻撃――本人には攻撃の意図すらない暴力を、マリクは白銀の盾で受け止める。少女のものとは思えない衝撃が伝わってくるが、鍛錬と技術の成果が彼を支えた。
「すいません、僕はあなたに『好き』ということはできません。僕にはまだ、人を好きになるということは分からない」
討つべき敵とはいえ真摯な態度で、マリクは藍沙の告白を断る。彼もいずれ成長する中で誰かに恋をして、愛する人に出会い、結ばれるかもしれない。だがそれは今ではないし、彼女でもない。オブリビオンという脅威が世界を脅かしている現在、恋愛について考えている暇もなかった。
「だけど、そんな僕にも分かる。あなたの愛と恋は、世界を壊す」
ならば世界を守るため、マリクが為すべき事は決まっている。功夫の技で間合いを見切り、刺突を食らわせるための距離を確保した彼は、聖槍ロゴスによる乾坤一擲のランスチャージを放つ。聖なる光を帯びて非物質化したそれは、肉体ではなく対象の魂を直接貫く【神霊剣】の一撃と化した。
「英霊よ、照覧あれ! これが悪を討ち滅ぼす力です!」
「――……!!!?」
接近の瞬間を完全に見切られた藍沙は、これを回避することができず。聖槍の穂先は吸い込まれるように胸を穿つ。
傷はおろか血の一滴すら流れることはなかったが――この若き巡礼士の一撃が、恋する化け物へのとどめとなった。
「あぁ……そんな……どうして、好きになってくれない、の……」
拒絶の理由を最期まで理解しないまま、無念の言葉とともに『宇佐美・藍沙』は骸の海へと還っていく。
実行者を失った儀式場は機能を停止し、満ちていた魔力が霧散する。世界結界破壊の危機は、ここに阻止された。
かくして『|新・最悪の最悪《ネオ・タルタロス》』の企みを打ち砕き、聖杯戦争の再来を阻止した猟兵達。
人々の常識を守る世界結界は、いまだ維持され。銀の雨一滴も降らぬ晴天が、彼らの頭上には広がっていた――。
大成功
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