Super Koyo Race
御噺がちょっと古めの|悲劇《mystery》。
がらがら|お前《はこ》を乗せて運ぶ音、誠に懐かしい|質量《もの》であった。|西方《どこぞ》より生まれたとかそんなもんは覚えてもいなくて、代わりに詰め込まれた|余剰《もの》はといえば何よりもキラキラな宝石の山、或いは金銀の贅沢感。貢物ボックスとは宝物を輝かせるための|存在《showcase》、|生命体《ミミック》が背負いしはそんな|希望《treasure》。その煌めきが何処を照らしますか――東の国。
「くれはも大分育ってきたよ。なあ?」
「貢物入れるだけの“箱”に育つも何もあるか、っては思っていましたがね」
「皆でこうして旅路を行けるのも、今ならば悪くはあるまいて」
代わる代わるそうくっちゃべる、そんな彼らこそ遣| 《なんちゃら》使、優しいお兄さんにお姉さんにお祖父様など年齢こそ様々で、護衛も使者も学者も従者も御者も人足もよってらっしゃいみてらっしゃい、それはそれは大事にされたことだこの箱が。ただお国とお国が仲良くなる為の道中とはいえ数多の者が見た景色を箱そのものへ。そして箱が生命らしくなるのだ。その材質は何でできていた――言葉で言い表すにゃ簡単だけれど。
「そうだくれはー。くれはにこんな話教えてあげるよ〜」
そう述べて特に話を差し込んでくるのが使者のお姉さんであったことだ。彼女の話が、みんなの話が|紅葉《お前》の知恵。
「ええ、ええ、私も聞きたいですその話!」
全くなんて|思考《あたま》に優しい情操教育なんだ、暮れの国とも仲良くできそうじゃないか紅い箱さん。
光陰矢の如し。
名を与え給うたのが誰でその由来が何か、思い出したように聞こうとした時くらいか。
「ところで同志よ、あれは何ぞや」
「ああ? あれって、」
顔も見たくねえ有象無象共が声上げて――誰だ。
「…やっば、みんな構えて!!」
お姉さんが声を張り上げた瞬間武器持ち対応せし兵士の皆様、それはそれは勇敢に立ち向かい 秒速でお亡くなり。あまりに補正のかかり方が酷いのだよ、盗賊のカッコした奴らが一瞬にして引き裂いていく。言葉にしちゃズンバラリン、リズムの良さだけがタンバリン。ミミックはミミックなので逃げることが叶うはずなんだ、使者と貢物は損なわれてはならなくて、忽ちお兄さんも老人もその箱を第一に守り通すことを考えそして、|斬り裂かれ《wiped out》。ああ悲しいことだ、せめて逃げ あれ 叶うのに鉛が如く重い それはそうだ。
「こりゃ私が逃げるの無理ですね! 置いてった方がいいのでは!?」
せめて一人でも生きて欲しいなと考えて。
「できない! お前も貢物も使者も、全部護るのが務めだ!」
そう言ってまた敵の攻勢を凌ごうとした兵士一人――ずしゃり。やっぱり貢物は無くしちゃまずいんですかねと回る思考、回る間に有志がどんどん死亡、誰も彼も身を挺して守ってくれるこの現状、人望に溢れていらっしゃる。箱ですけど。
「…もしや」
そっと閃き零して何する気だ御者よ、箱をさらに飾るんですか生き延びる為に。
「紅葉の側面に車輪を付ければ逃げられるのでは、と」
「……あ! それ行けるかも! コロコロ転がってさあ!」
「素晴らしい!」
でもそんなに似合う車輪が都合良く転がっているわけ――うーん|ご都合主義《エクトプラズム》、これこそミミックの為せる業。
「よしこりゃいける! 行けましたよ!」
「なーいす!」
最後に使者のお姉さんを上に載せれば完璧です、レッツゴーする前に挨拶を忘れずに。
「こいつらはオレたちに任せろ!」
「必ず会いましょう…ぐはっ!」
悲痛な顔で手を振る使者ちゃん――ああ、生き残りの一人が箱ごと蹴り出して送り出した、瞬間すいすい大爆走、くるくる車輪が悪路をも制す。これこそお前たちの逃走経路、|本当に心痛むことです《仲間を見捨ててしまったね》。しかも後ろから矢の雨が止まら無え、まだまだ襲い来る|魔の手《danger scene》。ここで何か判断を違えたなら次に待つのが|終焉《dead end》であるからして――それでも。
「くれは、この道右に行こ!」
「分かりましたぁ!」
崖も行き止まりも寄せ付けるな、財宝もたっぷりに、東の国との仲を繋げる想いまで背負ってどこまでも頑張って……そんな願いが届いて、車輪の回転がついに止められるところまできた頃には、そこはもうお屋敷でございました――
「何とか紅葉はやり遂げました!」
|よしよしえらいねくれは!《Oh my god, she was dead!》
大変に致命的なことよ、一本だけ背中に刺さったそれ。血が止まってないのだよお偉い様の御前で――まあ唖然としましたよね彼。
――紅葉くん避け切れなかったのかね?
――はい!
――はは、この役立たずボックスめ!
笑い飛ばすしかないんです、しかして希望もそこに有り。お姉さんの右手にしっかりと在ったそれこそ大事な書状、そして無事に護られし金銀財宝、これらがまたお国とお国を繋ぐのだ。|職務全う《Mission complete.》。
めでたしを許さぬのは人の声よ。
人を護れぬミミックを飾りし『あかがみ』の烙印、遠くから人に蔑まれるだけの価値しか呼び寄せなかった。おまけに役目を終えりゃただの財宝入れ、どうしたって価値を産まぬもの。はてさて箱そのものに意味があるかどうかさえ疑問だったというので。
そうっとその辺の崖にでも身を投げてさよならバイバイまた来世――目を閉じて次に迎えたいなマシな一生、幼きその身には本当に耐え難かったから。
|死に損ないの再始動《Jump to the 20th century.》。
何百年も土に隠され埋もれ続けた結果がこの世界だ、大きな音が響き続けて目覚ましアラームみたいなんだ、おまけに眩しいな、では目を開けて世界をご覧になろう――。
「「「は、箱が出てきたぁ!?」」」
「え?」
|工事中《わぁお》。急に現代チックなお目覚めです、これは建物を建てがてら危険物や世界遺産の類が無いか確かめる発掘調査の真っ只中、その渦中でこれだから大騒ぎも必然の理。
「これは申し訳ない、すぐにどきますんで!」
とは言ったけれど、目覚めたばかりじゃ箱の|躯体《からだ》にもきついものよ、工事に携わる作業員の方々がお前を発掘品に分類するには時間はかからねえ。そしてあれよあれよと言う間に“彼”の下に運ばれてくれ、土地の所有者という名の未来のスーパーマーケットオーナー。
名前を教えたら目を瞬くオーナーです。
「紅葉……コウヨウと読むのかね?」
「はは、読みはご自由におまかせしますよ!」
なんという偶然か、なんて口から溢れたものだからその次を尋ねてみた。
「私の店もコーヨーと読むのだよ。面白い縁だ、うちで働いて見ないかい?」
偶然から繋がる奇跡。無価値が大金になるように、役立たずボックスが大切な箱になるように。
「お役目を頂けるというので? よろこんでお受けいたしましょう!」
職を頂けた“箱”、なんて嬉しそうな顔なんだ――|段ボール、誠に逞しく誇らしく在れ《Listen, the cardboard can find the good future.》。
どんな風に働いてみようか――40年もの遡り、1970だか60だか|記憶《むかし》のことはふらふらだけれど。
「おう紅葉、この荷物をあそこまで運んでくれんか?」
「お任せを!」
「配達してほしい荷物があって」
「どんなお荷物ですか!? 紅葉に出来ることならなんでも!」
「紅葉ちゃんや、今私ちょっと離れないといけないから、お客様の対応お願い出来るかい?」
「はいっ!!」
「紅葉さん、実は明日こんなイベントが……」
Wow, what a wonderful cardboard――何処に転がっても、何処をどう目指しても順風満帆じゃないか。先の世知辛い世とは大違いで、お前を頼ってくれる素敵な者どもの導きがあることで、しっかりと送れましたよ充実した日々。勿論お給料も付いてくる、飲み食い出来ることもこのミミックにとっての、はてミミックがどうやって飲食行為を行えるんですか。|曖昧《Mystery.》。思い返せば思い返すほどに懐かしいな、ピザ屋のバイクにも負けじと張り合ったことが特に印象的だと見える。安全運転を置き去りにしない箱。
お行儀良いからこそ出てくる声――今度も集まる先は|箱《おまえ》、しかし。
「もみちゃーん!」
「もみちゃんもみちゃん! あれやって! ぴょんと飛んでぐるーんってなるやつ! えっと、なんていうんだっけ?」
「ばっかおまえ、ローリングバク転だろ!」
それで紅葉がその通りに|芸《それ》を披露してみせたならば子供たちのテンションブチ上がりで――わーい嬉しいな、蔑みなどとうにありはせず、ただただ愛されるこの|日常《しあわせ》。その頃にゃ平成ですね、スーパーコーヨーの立派なマスコットキャラクターにまでなっちゃって、ご覧の様に子供たちに芸まで仕込まれて――塀の上疾走は流石にPTAがおこだったけれどてへぺろ――さらに不思議なことだが紅葉が幸せに向かうならば人々も然り。スーパーコーヨーと云ふお店、1998年にはとても満足度の高い従業環境と売上に恵まれて居たのであった。
とっても素敵なこと続き――ところでケルベロスディバイド、何が脅威だったかって不死の存在を相手にしなくてはならないところなのだよ。生命エネルギーを欲してやってきて、好き勝手奪っていく悪い奴ら――。
|外宇宙《じごく》からの使者様:デウスエクスのお通りよ。
「チクショウメ!」
名も無き誰かの悲鳴が聴こえて来てみればこれですよ、突如襲い来る永遠不滅の群れ、1人ずつ死の向こうに連れ去られようとしている罪無き民たち。刺激が強過ぎたんだ、誰も彼も生き場所を探して大混乱。おつまみにするにはあまりに不謹慎ですよデウスエクスさん、経験値もきっと泣いていることでしょう。いけないこれではまた前のようにたくさん死んでしまう。この街に決戦都市の設備は存在していたか――No.
ところで紅葉が思いっきり体当たりを目の前の1体にぶちかましてやれば、ものの見事に体勢を崩し殺しに失敗するのだ。
|箱、お目覚めでしょうか《But wait, how did the cardboard earn the rewards?》。
他にも立ち向かえる者が何名かいたのは幸運だった。何しろ向こうが経験値稼ぎをするのならこちらは適材適所で行くしかないもので。何分戦いへの学習会さえ足りてないというので…そう、専念に専念を重ね専念することで専念を専念することに専念してくれ。積み重ねて届いた結果が壊れた家屋、隙間にすいすい入りまして箱の中へどうぞおいでませ、要救助者を守り通すことなんぞそれで叶う。続けてどうした、隙間から這い出て今度は歩けないご老人ご病人を救ってみせましょう、これは箱に載せてとりあえず解決、安全地帯にまで郵送して、そうしたら受け取ります伝言に物資。どれもこれも配送してやれば間違いないんだから八面六臂が再度参上するのも自明の理。
自分を誉めながらじゃなきゃやってられないのだ――ヒュー、さっすがもみちゃん! コーヨーのマスコット! 炎上する高層マンションに|突撃急上昇《転がり外壁登り》、上層階を見れば子供たちが震えて怯えて助けを待っており、じゃあ声をかけて安心させようと息巻いており。
「お待たせ!」
「来てくれた!!もみちゃん!!」
「も……助からないかと、思ったよぉ……」
おおよしよし泣かないで、と宥めていたら ふと街を見下ろせたのだ なんたる地獄、あちこち火の手が上がり遠くに望めるのだ魑魅魍魎の跋扈状況 待て、何大切な場所が燃えてないか?
「あ」
ぐーるぐーる駆け巡る、心配が頭を駆け巡る、やっべ、オーナーちゃんと避難してますかね? いい歳こいて現場に顔を出す白髪のジェントルマンですが、流石に避難してますよね?
でもまずは目の前のやるべき事を。
「ちょっと本気で上下運動しますね」
子供たちを心配させぬようにと安全にびゅん、まるで大昔の|逃避行《Tragedy》、でもあれ以上の悲劇なぞ2度と望んでたまるものかと――|天井《そら》を見上げている間に終わりますからねとはよく言ったもんだが全ての子供たちを安全な場所にこれまた運べたのであればこれ幸い。
「ちょっとスーパーへ寄ってきます!」
それだけ残して爆速びゅん、なーに、大丈夫でしょうデウスエクスの初動で死人は若干出てはいますが、きっとたぶんメイビーちょっと待てメイビーにisn’tで返してくるなこの|現実《たわけ》が。
目の前でうつ伏せに倒れたのだよ、オーナー。
「……おおう」
急いで搬送すべき者だ、これこそ今もっとも守りたかったものだ、命に優劣なんぞつけるまいがエクトプラズムでそうっと確かめてやれば病院へでも何処へでも
「あ、死んでますね!」
今酷く哀しい言葉が出た気がしたが気のせいか、だってオーナーはまだ息があるはずなのだ。ほら温かい。鼓動が無いんじゃどうしようもないが。そもそも傷口から血の流れ行く量が酷過ぎてあっという間に命の灯火を持っていかれた事実が酷く箱の心を突き刺してくるようだった。千切れてしまうのだ心の段ボール、なんてこったい!
「また救えなかったゴミ箱くん!」
酷くフラッシュバックして居る。優しく声をかけてくれたかも知れなかった大昔の使者の死に顔。
「恩人の別れの言葉を聞くことも死に顔を拝むこともできないとは、本当にもうどうしようもないですね!」
笑えや笑え――もうそれしか出来ることが無え。あんまりだったから、こんなのは。想像以上のショックに、気づけば転がり進むことさえ忘れていたようなのだ。
「見つけたぞ、お前がケルベロスだな」
「さっきは俺たちの仲間にぶつかってくれたようだが、あそこまでの力は間違いなく……」
しかもバレていた、思いっきり覚醒の根源に辿り着かれていた――文句無しの完全捕捉、避難所に逃げたところで大勢を巻き込んでしまうのが大変なオチ。そんなところで何もかも落としちゃいけないのは事実だが。
(仕方ないね、ここで紅葉の長い旅路もフィナーレと……)
これにて幕を閉じましょうか、なんて考えが出てきた辺りもうダメかも知れない。全く酷い話だ、目の前の…よく見れば螺旋忍軍だと気づくことができるそれが、その爪を振り上げて。
「では死ね、取るに足らぬ箱が!」
「おや」
鼻先一寸で止まったその爪。やけにマニキュア塗るのが下手だこと――箱にマニキュアの知識が|そんなにあるわけではないのだが《そもそも取り扱っていた数も多くないし》――しかも何か、
「そちらのデウスエクスさんの爪、何か赤いですね?」
ぽたぽた行ってないか――しかもオーナー、うつ伏せだったじゃないか。
「オーナーの背中の傷痕とぴったりじゃありませんかね?」
どくん、どくん。何処にあるかも不明な|鼓動《rage》。
「そっかそっか、YOUがオーナーをKILLしたのですね? はははっ――」
――ぶつん
ざけんななめんなこの野郎よくもやりやがったな地獄に叩き落してやるオラ大人しく死ね轢き殺してやる避けんなボケナスが仲間盾にしてんじゃねぇドぐされ野郎逃げられると思うなこのノロマがすっとこどっこい当たる訳ねぇだろがこちとら何十年走り続けてると思ってんだ知るか死ねぇお前らに生きる権利はねぇオレが剥奪して磨り潰すからだ死ね死ね死んだよっしゃあテメェこの野郎あの世で土下座で反省し続けろさあ次はテメェか何逃げてんだこちとらただの箱だぞ恥ずかしくないんですか反撃されて逃げるとかよ逃げんじゃねぇ轢殺抹殺滅殺撃殺だぁオラァァァ!!
通り過ぎるアンチテーゼ、|衝突《ラム》の香り。
全速力などというレベルなぞ超越している――永遠不滅を砕かんとする|元グラビティ《ユーベルコード》、縁無きデウスエクスのそれを剥ぎ死を与えることなど出来はすまい、それだけが非常に残念だが――けれどまた曖昧にせねばならぬのだ。何せガチギレ紅葉の大激走、あのにっくき螺旋忍軍の持つその爪をズタズタに轢き飛ばしてやったことだけははっきりと言葉に出来るもの。しかしてその後の逆転劇が筆舌に尽くしがたいくらいに刺激的なレースシーンだったというので。
だから一言に纏めてやればいいのさ。
「ぶっ殺すぞデウスエクスてめぇ!!」
Meanwhile.
「ふぅ」
まことにお見苦しいシーンがありました、ご了承ください。
何処ぞに謝罪でも置いといて、改めて街を見回してみるのだがこれがまあ酷い惨状。あの初動で若干死人が出たらしいことは分かっていても、その辺に建っていた立派な建物は瓦礫の山と化し、今以上に強力な改造を施さなければ100%を取り戻すことなど永遠に叶わぬのだ。そもそも100%であったとして|覆水《いのち》盆に帰らず、箱を拾ってくれていたオーナーの死が大変心に突き刺さっていることだけが変えられぬ事実。
ふとご一考。
目を閉じて次に迎えたいなマシな一生――否、マシになった結果がこの心の痛みではないか。
「やっぱ死ぬしかねぇのかね」
大変に乾いた音声《word》です、誰にも届かぬそんな呟き。何でもないことのように、また現世も諦めるのかと――
「もみちゃん!」
そうは問屋が卸さ無え――箱はきちんと護れたじゃないか、子供たち……否、未来を守る|若者共《ケルベロス》の数々。
「ありがとう、もみちゃん。おかげで、母さんを守れたよ」
「紅葉のおかげで妹が無事に助かったって。本当にありがとう」
「今度はおれ、いや、おれたちがこの街を守るから。紅葉は、もっとたくさんの人を守ってくれよ」
そういえばこの街に住まう全ての|可能性《ケルベロス》を目覚めさせることができたのも、私なんでしたっけ――悲嘆と感慨が同居していたから。
「……私にもまだできることがあるのですね」
この街をいっそ抜けて、大都市に行ってみるのも献身の一つと知るがいい。一人で走り回るよりも大いに|有意義《よろしい》事。
それでも一瞬だけ、こう考えてしまうのだよこの箱。
私は、頑張れていましたか、これからも頑張れますかと――すっと若者共の奥から出てきた若者が何故に聞き届けたその心。
「頑張れてたよ」
知らぬのです、その子が誰なのか――だが偶然を感じたのだよ。嘗て|箱《おまえ》が護れなかったその|使者《おもかげ》、実によく似ていらして。段ボール、撫でられまして、
「よしよし。えらいね、くれは」
|生まれ変わりですか《Just a coincidence.》?
「……紅葉は、くれはは、」
――だとしたら、嬉しいことこの上ないったらありゃしない。
なんて、これ以上皆を心配させてはいけないか、そう思い直して。
「わかりました! 年末年始あるいはお盆辺りには帰省しますね!」
振り切っていけ哀愁、目指すは特務機関DIVIDE……少しは救われて、見送られて。走り回り、いろいろと届け、ついでにデウスエクスを轢き潰し、ケルベロスを増やすという役目を背負い、今箱が行きます何処へでも。手はエクトプラズムに任せてくれ、|形状《て》を取り合ってくれる猟兵、36世界にごまんと転がっているのだから。おっと「新しい敵?」なんて警戒はその辺の倉庫に片付けて置け、在庫処分してから広げましょう友好の輪。では二十数年を説明する必要性が出てくるわけだが。
「そんな訳で、今後ともよろしく!」
そう仰せなので、|現在《いま》は未だ。
成功
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