魔穿鐵剣 〜一切合祭太刀合せ〜(作者 ボンジュール太郎
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#サムライエンパイア 


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●時を省みず、影は奔る
 ――いつかは、この村もひっそりと消えてなくなるのだろう。
 老いた男は自宅の縁側に腰かけて、村の中心に広がる広場で遊んでいる子供たちを見ながら、そう思った。
 山麓の中腹にひっそりとあるここ、梶本村は古くから鍛冶産業で栄えた村であった。雄大にそびえる山からは武器などを鋳造するために必要になる、上質な鉱石が採れる。
 『梶本の灯は山にあり、その明るさは並ぶものなし』。この村で生み出された武器の数々――幾千もの刀に薙刀、手裏剣に扇、鎧に霊符、呪術的な意味合いの込められた武装や鉛弾などは、戦国の世にあってはエンパイア各地を周り、この村の経済を回す中核となっていた。
「でもようじっちゃま、徳川様の治世になってから向こう、俺達は干上がるばかりじゃねえかよ。もう売る刀もないんだぜ?」
 老人の隣に座る茂作という名の男がそう口を開く。江戸時代に入ってからというもの、徳川の治世は安定していた。それは即ち戦乱の機会が減ったという事であり、その事情によって梶本村の経済事情は確実にひっ迫していく一方であった。
 更に悪かったのは、この村が山麓の中腹にあるという事である。斜面ばかりが続き、山肌が顔をのぞかせるこの村では、鉱石は思うままに取れても農業はそうままならない。
 鍛冶産業で栄え、増えた村民を養っていくための金子も、作物も、もうこの村にはほとんどなかった。今は戦国時代に作っていた残り少ない名刀すらも売り払い、山道を降りて遠く離れた村で食物と交換してもらっているに過ぎない。そして、その場しのぎの策ももう終わりだ。もう、売れる刀も残り少ないのだから。
 釈泉、雷瑛、供花、水際、不知火、禊、戴天、氷来。
 あと八本のこの刀が一本いくらの名刀であったとして、何度そろばんを弾いても村民全員に食わせる作物に代わることはない。
「……茂作よ。武器が使われなくなったのなら、武器で栄えた村が滅ぶのは道理よな。老い先短い老人だけならば、この村の小さな畑でも食いつないで行ける。刀など振らずとも良い時代が来たということよ。……若い衆も、子供たちも、街に出たがっておる。『時代が変わった』ということじゃろうて。時の流れには誰も勝てぬよ。それが摂理というものじゃ」
「だけどよう、この村の鍛冶はこの辺一帯で一番だったじゃねえかよう。刀が売れねえなら、何か別のものを……。俺は、……。ああ、ダメか……。わけえのは鍛冶になんざ興味ないだろうしなあ……」
 時の流れという概念は、全てに滅びを与える。例えそれが過去にどれだけ栄えた村であっても例外はない。だが、老いた男はそれもまた良いと思っていた。
 栄え、滅ぶ。そのサイクルが時によってもたらされているのなら、きっとこの村が静かに消えるのも時によるものなのだろう。『その時』が来たというだけの話だ。それであれば、納得もできる。
 ――しかし、梶本の灯に危機が迫っていた。『時』によるひっそりとした滅びではない、『外敵』による悪辣な滅びが、今まさに村に迫っていた。

「行けい、行けい! 梶本に残ると噂の名刀八本、一切残らず我らが貰い受けるのだ! 我らの戦乱には刀が必要である、刀があれば我らの戦乱は終わらぬ! 我らの敵と成り得る強敵に備えるための祭を始めよ! これは略奪ではない、戦じゃ、祭じゃ! 誉れ高き戦であり、楽しき祭であるぞ! 我らの戦を終わらせるなァ! 邪魔をする猟兵との出会いすらも戦いとし、祭りとし、そして前に奔るのじゃァ!」
 梶本村に一本だけ繋がる狭い山道を、『影』が奔る。即ち――『オブリビオンの軍勢』であった。

●影を迎える強者たち
「皆揃ってるな? OKだ。それじゃ、説明を始めるぜ。今回の任務は、平たく言えば『防衛』だ。皆には一つの村を守って欲しい」
 猟兵たちが一室に集まると、控えていた正純が今回の事件への資料を配り始めた。今回の事件はどうやらサムライエンパイアで起こるらしい。
「今回はちと厄介な敵だ。というのも、敵はどうやら戦乱の世ってヤツが終わったことを認識できていない。行動原理は敵対する生き物を全て斬ること、そしていずれ来る強敵との戦いに備えること。つまり、今回狙われている梶本村は敵の目的にはピッタリだったってこった」
 手元にある資料に猟兵たちが目を通していくと、そこには梶本村の概要が事細かに乗せられていた。そして、敵の目的や外見も、だ。
 崖に囲まれている村への侵入経路は一つだけ。橋を越え、小川を渡り、曲がりくねった山道を越えてようやくその村の入り口である僅かに開けた空き地にたどり着く。つまり、そこを防衛すれば良いということだ。
「更にいやな情報を付け加えると、だ。今回のオブリビオンは多数の浪人を従えている。そのいずれもが治世が安定してから食い扶持を失った侍で、どうやらオブリビオンを首魁として徒党を組んでいるようだ。だから、オブリビオンを撃退するにはまずそいつらを片付ける必要があるだろうな」
 首魁であるオブリビオンが強敵であることには間違いないが、徒党を組んだ浪人共もまた侮れない相手であろうことは疑う余地のない事柄であった。
 しかし、正純は一つ笑って猟兵たちに向き直り、言葉を投げかける。
「敵は強い。……だが、俺は知ってるぜ。ここに集まった猟兵であるお前たちの実力は、そんな奴らよりも強いだろうってことをな」
 もちろん、油断は禁物だ。しかし、万全を期して戦いに臨めば、猟兵たちが叶わない相手ではないはず。正純はそう信じているらしかった。
「そうだ、今回の事件が解決したら、梶本村で少し息抜きしていくのも良いかもしれねえな。何でもこの村は鍛冶で栄えた村らしい。事件を解決したら、村民たちの物資なんかを借りて、『猟兵たちで手合わせ』出来る環境も作り出せるかもしれねえしな。それじゃ、説明は以上だ。幸運を祈るぜ」
 最後に事件解決後のことについても説明を行うと、猟兵たちに正純は頭を下げるのだった。

 ――さあ、猟兵らよ。
 魔を穿つ鐵の剣と成れ。

 一切合祭太刀合せ、火花散らして開幕である。


ボンジュール太郎
 令和の初エイプリルフールに失礼いたします、毎度おなじみボンジュール太郎です。
 今回は煙MS様との合わせシナリオとなっておりますので、そちらも併せてご査収のほどよろしくお願い申し上げます。
 読みは「ませんてっけん いっさいがっさいたちあわせ」です。
 【磨穿鉄硯】のもじりですね。強い意志をもち続け、物事を達成するまで変えないこと。 また、学問にたゆまず励むたとえだとか。

 ●構成
 以下の構成でお送りします。
 1章は多数の『浪人』との集団戦。
 2章は強力なボス『乱世の名将』との戦闘。
 そして3章は、平和を取り戻した村で猟兵の皆様に『修練』を行ってもらうことが目的となっております。
 首尾よくオブリビオンの群れを退治したならば、梶本村の人々に殺傷能力を有さない刀や銃弾、その他武器などを作成してもらい、『村人との交流、戦闘指南』、『示し合わせた猟兵同士での1対1での模擬戦』のようなこともできるかもしれませんね。
 もちろん、お一人様や2人以上の集団様での参加も大歓迎でございます。また3章に突入したころに、3章でできることの詳細をアナウンスいたします。
 とにもかくにも、まずは敵との戦いでございます。全編通して、『強敵との戦い』を格好よく書ければと思っておりますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。
 皆様の僅かな指の脈動から、足裏の動きに至るまで、頑張って書かせていただきます。

 ●アドリブについて
 アドリブや絡みを多く書くタイプであることを強く自覚しています。
 アドリブ増し増しを希望の方はプレイングの文頭に「●」を、アドリブ無しを希望の方は「×」を書いていただければその通りに致します。
 無記名の場合はアドリブ普通盛りくらいでお届けします。

 ●判定について
 その時々に応じて工夫が見えたり、そう来たか! と感じた人のプレイングはサイコロを良きように回します。

 ●参加制限など
 ございません。煙MSと私のシナリオの両方に参加することも可能ですし、どちらか一方の参加でも大歓迎です。
 よろしくお願い申し上げます。
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第1章 集団戦 『浪人』

POW ●侍の意地
【攻撃をわざと受け、返り血と共に反撃の一撃】による超高速かつ大威力の一撃を放つ。ただし、自身から30cm以内の対象にしか使えない。
SPD ●怨念の返り血
【自身の返り血や血飛沫また意図的に放った血】が命中した対象を燃やす。放たれた【返り血や血飛沫、燃える血による】炎は、延焼分も含め自身が任意に消去可能。
WIZ ●斬られ慣れ
対象のユーベルコードに対し【被弾したら回転し仰け反り倒れるアクション】を放ち、相殺する。事前にそれを見ていれば成功率が上がる。
👑11 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●これより先は、太刀合せにて
 梶本村に危機が迫っている。というのに、こんな時でも空は青いままであった。遠くで土埃が立つのが見える。――どどどど、という音が聞こえている。
 地面から響き足裏を伝ってくるその振動は、梶本村の前にある一番大きな広場の、さらに奥から聞こえてくるようだった。
 ――ヲヲヲヲヲヲオオオオオォォ! 耳を澄まさずとも聞こえてくる、野太い叫び。折り重なるように耳に入るその声は野卑そのもの。
「ほ、本当に……来た……。猟兵さん達の言うとおりだった……! 急げ、早く女子供たちを優先して隠せ……っ!」
「……茂作、子供たちを納屋から出すでないぞ。絶対に……絶対に、じゃ。きっとこれから先に起こることは、戦乱の世が過ぎてから育ったあの子らに見せてはならんものじゃろう」
 いち早く村に駆け付けた猟兵たちによって、既に村民たちは粗方避難を済ませていた。……が、やはりどこか村民も半信半疑だったのだろう。当然だ。『これからこの村は襲撃される』などと、聞いた途端から色の付いた実感を感じられる人間などいやしない。
 だが、足を伝うこの地鳴りが。耳にとどろくあの暴力の前兆が。村民たちにいよいよ危機感を覚えさせたのだ。
「……猟兵殿、……。村を……梶本の灯を、どうぞ、お守りくださいませ……。老い先短いこの命でも、やはり外道にくれてやるには惜しい。増して未来に生きる子供たちの命、奴ばらめには勿体のうございまする」
「無論だ、安心して欲しい。私たちは、『三千世界に蔓延る悪』と、それらが引き起こす悲劇を斬って捨てるもの。であるのならば、誓って奴らをこの村へは入れさせないとも」
「うむ。幕引きの時は、其処に住まう人々が何れ決めるべきもの。足下に踏み躙られて迎えねばならないものでは無いだろう。さあ、御老体も疾く避難めされよ」
 梶本村に危機が迫っている。青い空の下で陽光を浴びながら、悪漢の群れが暴虐と略奪の限りを果たさんとして駆ける。まるで自らの行いが後ろ暗いものであるとは僅かにも考えていないような風情である。
 しかし、『猟兵は間に合った』のだ。行われる非道を食い止めようとする対抗力は、既にこの場に呼び出されてそこにある。なら、もはや事態は一か八かではない。猟兵がここに来たのなら、どれだけ可能性が低くとも、きっと彼らは最善を尽くすのだろう。
 この村の攻防で巻き起こるであろう力のぶつかり合いが、日の下にさらされて始まる。正道も邪道もここにはなく、あるのは力と力がぶつかって弾ける火花と金切り音だけ。
 ――一切合切の全てが、互いの『力』という太刀にて語られようとしていた。
月凪・ハルマ
時代の流れってのは、時に厳しいもんだよね
栄枯盛衰、諸行無常ってやつか

けどそれを受け入れらないだけならまだしも、
刀の為に村を襲おうってのはな

流石に、ほっとけないよね

◆SPD
まずはUCでゴーレム達を召喚して
村へ侵入しようとする浪人達を止めてもらおう
敵の数が多いので、合体させずに運用する

自身は【忍び足】で浪人達の死角へ入り
そこから手裏剣で攻撃
(【早業】+【暗殺】+【投擲】)

敵が近づいてきたら【見切り】【残像】で攻撃を躱し
魔導蒸気式旋棍を叩きこむ
そして再度敵の死角に入り手裏剣、の繰り返し

別に、正々堂々となんて言わないよな?

まぁ言ったとしても、刀を奪うために村を襲おうって連中だ
まともに聞く気も無いけど


神羅・アマミ

狡兎死して走狗煮らる…へへ、妾知的キャラじゃろ?
じゃが、そうなんじゃよー!徳川のせいでなー!妾たちの家族の食い扶持もなー!わかる!わかるぞ村の衆!
その意味ではオブリビオンこそ新たなビジネスチャンスと言える!奴らをブッ叩くことこそ妾の天命にして本懐よ!

さて、侵入経路は一つだけ…とくれば、最後の一本を除きそれまでの道のりを逆に増やしてやったらどうじゃ?
コード『特機』にて森を拓き、それで橋を作ったり小川をせき止めたりして地図そのものを作り変えてしまうのじゃ。
敵を迷わせれば時間稼ぎに、戦力を分散させれば他の猟兵たちもコトに当たりやすかろ?

ホホホ…妾、いつになく頭脳労働担当大臣の軍師キャラじゃぜー?


鳳仙寺・夜昂
●絡み・アドリブ歓迎

時が流れること。時代が変わること。その中に取り残されること。
それが案外キツいことだってのは俺も分かっちゃいるが、
やることの免罪符にはならんわな。

『ダーク・ヴェンジャンス』で自分を巻いてから
相手の懐に突っ込んで『灰燼拳』で殴り飛ばす。
獲物の寸が違う以上、組み合う前にこっちが斬られるのは織り込み済み。
後の先、受けきれるなら受けきってみろ。


灰炭・炎火

あーしねぇ、戦うのは大好きなんやけど
したくない人にぐいぐい行ったりせぇへんの、そーいうのは嫌い
やけ、戦いたい盛りのあーしが相手になったげる
戦乱、したいの? 戦、楽しいの?
うん、あーしも同じよ、せやけ、あーしと遊ぼうよ
……一人も通さへんからね!

「ニャメの重斧」をかついで「ただの暴力」で、小細工無しで集団に突っ込むよぉ
もー、武器ブンブン振り回すよぉ、あたったら痛いと思うけ、気をつけてー

…………30cm以内にしか、あんたらの反撃届かないんよね?
あーしの武器、3mあるし。あーし自身は30cmないし。
あーしに殴られて、反撃できるかどうか、楽しみ!
あ、でも。
あーし、一撃で仕留め残ったこと、ないんよね!


シャルロット・クリスティア


変わりゆく時代を生きるのは難しいものです。
黙って滅びゆくのを認められないのも解ります。
……ですが、お互い過去の栄光にしがみつくだけでは未来はありませんよ……!

空き地の最終防衛は他の皆さんがやってくれることでしょう。
私のやるべきことは、その前段階。
【目立たない】ように、川底の【地形を利用】し足を取られるようなロープと、石の隙間に尖った楔を設置。
【罠を使い】【時間を稼ぎ】足を止めたところで、木々の隙間から【視力】を凝らして銃で【狙撃】。
【早業】で戦力を削ぎ落します。
全滅させる必要はありません。混乱させるだけ混乱させたら見つからないよう早々に撤収です。
後は、他の猟兵さんにお任せするとしましょう。


トリテレイア・ゼロナイン
この太平の世に乱を齎すだけでは飽き足らず、戦い、略奪すら祭りとするその姿勢
騎士として相容れるものではありません、貴方方に梶本村の土を踏まさせはしません

機械馬に●騎乗、浪人たちを●怪力で●なぎ払う槍と大盾での殴打で蹴散らしつつ、歩兵と騎馬とのアドバンテージを活かし戦います

突き出される刃は●武器受け●盾受けで受け流し、馬の●踏みつけによる●カウンターで反撃

もし反撃の一撃を繰り出せる余力があるようなら頭部格納銃器での●だまし討ちで止めを刺します

戦乱の世を望むなら、騎兵との戦いや、卑怯なだまし討ちも日常茶飯事
ならばお望み通りに応えてあげましょう
梶本村の人々を護れるのであれば私の誇りなど安いものです


信楽・黒鴉
●SPD
【ダッシュ】と併用する【残像】で敵を翻弄、その攻撃を【見切り】繰り出す【カウンター】の【盗み攻撃】によって相手の武器を強奪しつつ斬り捨てて、対多数の戦闘を切り抜けていく。乱戦にもなれば、どさくさに紛れて敵を仕留める【暗殺】の業も活かせるハズ。

時代の流れに取り残された亡霊には、此処でご退場願いましょう。
戦う事が本懐ならば、此処で存分に剣を交わそうじゃありませんか。
続く言葉はこの剣にて語るとしましょう。

ああ、正々堂々とかより、乱戦に紛れて隙を突くのが得意なんですけどね。合戦場での立ち回りが元になった流派ですので。
さて、剣で語ろうとか言う割に前置きが長くなって済みませんが……

じゃあ、死ね。


蔵座・国臣
刀を鍬に持ち替えるだけの事だろうよ。
刀が誇りだ、等とは言うまいな。村を襲う今の姿に誇りの欠片も見られんのだから。

さて、防衛だな。介入のタイミングはいかほどだろうか。
間に合うならば、医療用の拠点を用意しておきたいが。

戦闘が始まれば、
戦線より引いた位置から、全体を把握。宇宙バイクで駆けて負傷者へユーベルコードでの回復や、救援の指示だしを行う。それで足りない場合、気を失ってしまった場合はサイドカーに回収して、後方、拠点が作れていれば、拠点まで下げさせる。
味方とどめを刺されそうだ、など、場合によっては、横から不意を突いて轢くことも考えるが、私自身が正面からやり合うことはせず、支援に徹する。


伊美砂・アクアノート
●【SPD】…算盤弾けば、戦が無くならんワケがよう判るちや。こんな金が動くモンが無うなったら、斬られも刺されもせんでも、首が回らんようになる…ま、容赦はせんが。 分身し、ショットガンを持つ伊美砂さんと、マシンピストルを構えるワタシで敵を待ち構える。【スナイパー5、援護射撃5、拠点防御5、地形の利用5、視力5】…可能なら、橋を渡る箇所、小川を越える場所をゲリラ的に狙う。…渡河っちゅうんは、いつの時代も命がけやき。重たい金属の棒を持って、どれだけ走れる? 動き回れるんかねぇ? こっちは、正々堂々斬り合ったりはせぇへんよ? 途中で背を向け、二手に別れて逃走。…これは戦ぞね。追ってきても良えんよ?


ミルフィ・リンドブラッド
【朧月】
...自分達の戦いが過去に終わっていることにも気がつかねぇで戦いを求め続けるその姿。ちょっと哀れに思えるです。でも、このまま村に進行させるわけにはいかねぇです。みぃ、フィーと一緒にあいつらを骸の海に返してやるです。

今回の戦いは防衛戦。フィーの得意分野だぞ、です。まず、村の入り口に一番近い場所(空き地)に陣取って周囲に「フィーの血液セット」の血をばらまいておくです。近づいてくる敵がいたら周囲の血を利用して「血の弾丸」による弾幕で敵を牽制。みぃが動きやすいように立ち回るです。

敵のユーベルコードは返り血とともに反撃をしかけてくるものなので【血滴る悪夢の槍】を使うための材料にしてやるです


鷲生・嵯泉
幕引きの時は、其処に住まう人々が何れ決めるべきもの
足下に踏み躙られて迎えねばならないものでは無いだろう
此れ以上、この奥へとは進ません

進み来る相手は真っ向受けて立つ
攻撃は出来るだけ見切りと第六感で躱すか、武器受けで弾く
血を浴びせかける様な悪趣味な攻撃に付き合う気は無い
当然だが其れを喜ぶ様な趣味は無いからな
多少の負傷は激痛耐性で無視し、退く等せずに前へ出る
範囲攻撃となぎ払いで隙を作り
フェイントでの死角からの剣刃一閃、膂力にものを言わせて叩き斬る

強敵を求め、敵は全て斬る、か
戦場に在るならば、其れも在り様だろう
だが既に戦の喧噪は遠く、民は平穏の中で暮らす世だ
其れを脅かすならば放置は出来ん


ヨハン・グレイン


オルハさん/f00497 と

略奪する側の者が何を言おうと、正当性などありはしませんよ
馬鹿らしいというのは大いに同意しますね
こういう時は、助太刀する、とでも言うのでしたっけ
ええ、行きましょう

近付く敵は彼女に任せる。そのためにも
俺は近付かれる前に出来る限り敵を散らそう
蠢闇黒から闇を這わせ、絡めとるように呪詛を
足止めに専念しよう
彼女の攻撃範囲に敵が集うよう、闇を繰る

信頼しているとはいえ、
自分より俺を優先して欲しくはないのでね
オルハさんが血を浴びぬよう、彼女の守りは第一に

首魁と相対するまで、怪我などしていられませんよ
そうでしょう


オルハ・オランシュ

ヨハン(f05367)と

物は言いようだね……
祭だなんて馬鹿みたい
都合よく正当化しないでよ
親玉を一気に仕留められればいいんだけど、そうもいかないか
ヨハン、力を貸してくれるよね?
まずはこの人達を片付けちゃおう!

ヨハンが援護してくれているうちに【力溜め】
火力の底上げができたら
【範囲攻撃】で浪人達に効率よく攻撃を与えていこう
太刀筋が読めるわけじゃないけど
【野生の勘】で察せる部分があるかも!
自分への攻撃は『怨念の返り血』を浴びないように【見切り】、
ヨハンへの攻撃は
血を浴びるのを覚悟してでも【武器受け】で対処
攻めに転じる時は【早業】を見せてあげる
見切らせないよ

怪我はない?
この勢いでいこう!


神月・瑞姫
【朧月】
はいなの
フィーおねーちゃん
現世を彷徨う妖払うは神月の務め…
立派に果たしてみせるの

今回はフィーおねーちゃんがみぃを援護してくれるの
なら…みぃが使う術はこれ
【フォックスファイア】
背を守るおねーちゃんへの信頼と【勇気】をもって
22の狐火と共に浪人へ突撃
全身に纏う霊気【オーラ防御】で身を守り
同じく霊気を纏う薙刀による【鎧無視攻撃】

狐火躱せば斬撃が
斬撃躱せば狐火が襲い来る
舞う血飛沫
燃える血潮

その全てを2人は操り凌駕せん

いくよ
月天劫火…『紅観月』!
(血液を操るフィーの血滴る悪夢の槍に合わせ
炎を操るみぃは狐火を…周囲の炎ごと操り薙刀に一点集中
纏わせ放つは【破魔】の劫火
地を割り走る紅月の刃也


月舘・夜彦


刀の無い世界が戦の無い世界であれば良いのかもしれませんが
必要とされるのはより殺める力を求めた物
時代の流れに抗えないものなのでしょう
ただ一つ分かるのは、彼等の刀が奴等の手に渡るには余りにも惜しいという事

基本の立ち回りは2回攻撃による手数重視
敵からの攻撃は残像・見切りより躱してから斬り返し
敵も反撃がある為、攻撃を与えた後は素早く後退し抜刀術『静風』
返り血は極力避け、刀による攻撃は刀で受ける
血には警戒したいですが液体ですので全ては躱せない
ですが、この身が燃やされようとも痛みも熱も耐えられましょう
この程度で心が乱れるはずも無し
同じ侍として、最後までお相手致しましょう


太刀花・百華

嘗て武勇を馳せたであろう侍も、今はオブリビオンの配下に下る浪人風情か
武士としての誇りも失い、守るべき人々に手を掛けるというのなら
――私も一切容赦はせぬぞ

刃を交えながらの戦いは、剣士としての血が騒ぐ
こちらも気合いを入れてオーラを昂らせ、この合戦に臨むとしよう
まずは力任せに剣を振るい、怪力で以て相手を抑え込む
派手に立ち回り、注意を引き付けながら仲間が狙える隙を作りつつ
機を窺い、仲間と連携できれば一気に勝負と決め込もう

だが敵にも意地があるだろう
反撃狙いで来ればそれを見切って今度は逆にお返しだ
覚悟を決めて敵の一撃を武器で受け、力を溜めて【剣刃一閃】

なかなか大した手練だが、剣で負けるつもりはないのでな


リア・ファル

共闘歓迎

【心情】
時代の流れは止められるモノでも無いけれど、
まだ出来ることはあるはず
そう伝えるためにも、まずは守り切らなきゃね

【行動】
一本道なら立ちはだかる猟兵はきっといそうだし
ボクはフォローに回ろうか
「物を隠す」「拠点防御」「罠使い」「地形の利用」で
道々に投石や矢の罠を仕掛けて、猟兵には箇所を共有しておこう
ボクの操作一つで道々で発動可能にしておく

準備が終われば、情報収集を交えつつ、斥候しながら下がろう

「…来たね。まずは通過後に殿から罠にかける!」

斬り合いの時はボクは「迷彩」で紛れて、
味方の行動に併せ、敵にUC【凪の潮騒】を放つよ
場合によっては味方の防御に放つね

「真面目に働いた方が身のためさ」


矢来・夕立
●【絶刀】ヒバリさん(f15821)と

野伏、儲かってイイですよ。
運が向いてないと死んじゃうんですけどね。
少なくとも、あちら様は今日で店仕舞です。

ヒバリさんのことは放っておきます。
こういうのは一対一だから楽しいんです。隠密なんで知りませんが。

【忍び足】。オレは一旦引いて様子見です。
腐っても侍だったことがあるのなら、戦ってる人間を背中から斬ろうとする奴なんか…いそうだな。
そういう輩の背中を斬ります。

【暗殺】【刃来・緋縁】。

「助太刀」なんて言うつもりはありません。
オレもそいつも【だまし討ち】を狙うようなクズだ。
クズ同士で仲良くしましょう。
…真剣勝負に泥仕合を持ち込むな、って言ってるんですよ。


鸙野・灰二
●【絶刀】矢来(f14904)と

まるで野伏をやッていた様な云い方をする……やッてたんだな。
然し、嗚呼。奴ら死に損なッたのか。可哀想に。
今度はちゃんと、此の戦場で死なせてやるとも。

隠密は不得意なンでな、俺は馬鹿正直に真ッ正面から行く。
《先制攻撃》に《早業》だ。斬ッて、斬ッて、斬る。
集団で来る様なら《敵を盾にする》事で対処

【刃桜】で華々しく、黄泉路に送ってやろう。
《怪力》で人も刀も斬ッて折る。息が有るなら介錯を。
死にたく無いと云ったら如何しようか。いや、侍ならそンな事は思うまい。

さて、矢来は何処で戦って居るのやら。
……おッと、そンな所に居たのか。
はは、これで斬り合いに集中出来る。「助太刀感謝」。


オリヴィア・ローゼンタール
民に手をかけ、何が戦か、何が誉れか!
戦とは泰平の世を築くためのもの、それを解さぬ者に戦を語る資格などない!

【トリニティ・エンハンス】【属性攻撃】で聖槍に炎の魔力を纏い攻撃力を増大
聖槍よ、炎を纏え――彼の者らの増上慢を打ち砕く力を!

槍という武器のリーチを活かし、刀圏に踏み込まず斬り打ち穿つ
怪力と遠心力で衝撃波を起こし、まとめて薙ぎ払う
決死の反撃の間合いを見切り、タイミングを合わせてガントレットで殴り飛ばす
悪意の炎は聖なる炎を以って相殺し、確実にトドメを刺して打ち消す
他の方のユーベルコードを倒れて躱していたら、起き上がる前にグリーブで踏み潰す
脚力を活かして地を蹴り、跳び、滑り、戦場を駆け巡る


●刀光剣影待ッたなし
「ふんッ!」
「はァッ!」
 二振りの刀が敵の刀を受けて舞い、踊り、力任せの剣戟を受けてまた踊り、掌の握りから力を受けて迸る。猟兵たちの刀が空を走るたび、敵の浪人は受けることも出来ずに一つだけ悲鳴を上げて地面に倒れ伏すか、身体から血を流すのみ。
 蒼空の元で一太刀が悉くを断てば、嵐のように荒れ狂う災禍は絶ち切られていく。それは刃によって齎される技。敵の血露を掃う鋭い技。
 虚空の中を一太刀が緋く煌めけば、舞い上がる焔の如くに敵の身体に仇花が咲く。それは刃によってのみ裂く華。敵へと咲く手向けの華。
「……そちら、どうやら手練れと見受ける。末席とはいえ、同胞の無様な刀筋などで初太刀を出迎えるには無礼であったかな」
「嘗て武勇を馳せたであろう侍も、今はオブリビオンの配下に下る浪人風情か。武士としての誇りも失い、守るべき人々に手を掛けるというのなら――私も一切容赦はせぬぞ」
「これは。なにぶん拙者らもすでに武士を名乗るには些か格落ち。だからこそ、文字通りの『落ち武者』という物に身をやつしておるわけで。――死に場所を頂けるかな? ……かかれィ!」
 手始めに何人かの未熟な腕の浪人共を斬り捨てて、太刀花・百華(花と廻りて・f13337)の剣筋はなおも鋭く、さらに洗練されていくかのように空を舞う。
 百華が一つ、もう一つと腕を動かし、柔らかな掌の握りから刀へと力を移すたび、彼女の気合いが立ち上る。その威容、その異様が放つ言外の圧力は、百華に相対する浪人たちの目を曇らせ、僅かにその手を震えさせていく。その結果、百華へと振り下ろされる刃はわずかに彼女の身体の中心から逸れていくではないか。これには遠くで見ていた浪人の指揮官と思しき男も思わず舌を巻く他になかった。
「……っぅ、ぁ……いてぇ……! な、なんだよこいつ……! まるで、見えない何かに守られているみたいな……!」
「刃を交えながらの戦いは、剣士としての血が騒ぐものでな。こちらも気合いを入れてオーラを昂らせ、この合戦に臨むとしただけのこと」
 細腕ながらも信じられないほどの剛力を伴って力任せに振るわれる百華の剣は、幾人の浪人が相手であろうと構うことはなかった。せめてもの反撃すら許さずに横に大きく流れながら切り結ぶ百華の『太刀振る舞い』は、敵を一切寄せ付けることなく戦場にあってただただ大きく、派手に動く。
 右の足裏に力を込めて思い切り踏み込み、腰を回転させながら右へ大きく薙ぎを放ったかと思うと、次の瞬間には無駄な力の籠らない柔らかな握りから放たれる高速の突きが敵陣を蹂躙していく。艶めく烏の濡れ羽色の髪が血煙の中で映え、鮮やかな赤い二つの瞳は緋焔ノ桜が次に切り結ぶ相手を指し示していく。
「確か彼女は百華といったか。相当やる……。私も負けてはいられんな」
「何をかっこつけてやがんだァ!?」
「この人数差で勝てると思ってんのかよォ! ああァ!?」
 百華の隣で刀を振るうのは鷲生・嵯泉(烈志・f05845)。百華の刀が戦場の中で大きく燃え、敵の目を惹く力であるのなら、彼の刀は静かに意思を燃やして只管に敵を斬る静かな技であった。
 前線に配置されていた浪人たちが放つ四方から襲い掛かる攻撃に対し、嵯泉が特別なことをすることはない。彼が敵の攻撃に対して行うのは、『躱す』こと、そして『受ける』ことだけ。
 ただひたすらにシンプルで的確に繰り返されるその動作は、いくら浪人からの刃が多くあろうとも変わることはない。振り被られる逆袈裟は右に体を流すことで避け、見え見えの大上段は瞬時に見切って僅かに一歩下がるのみで難を逃れる。そして目の前の愚直な突きを秋水の振り下ろしで受けて無力化すると、自信の背後へと忍び寄っていた浪人へ向き直っては返す刀で左斬り合げを放つ。
「あっっっぐぁっ」
「俺らが斬られたァ!? こっちの方が数が多いのに……!」
 無論、嵯泉が敵の返り血を浴びるなどという事はなかった。計算された太刀筋は見事に敵を無力化し、そして飛び出す血しぶきは地面を濡らすだけ。
 当然ではあるが、嵯泉が敵の血を浴びせかける様な悪趣味な攻撃に付き合う気は無かった上に、其れを喜ぶ様な趣味は無い故である。
「ほう? 琥珀の髪とは珍しい。……どのような剣術を使うか見ものというもの。――だが、まだまだ。我らのように枯れた浪人の中にも、血気盛んな者はまだおるとも。相手をして頂けるかな?」
「何、構わんとも。まとめて来るが良い。進み来る相手は真っ向から受けて立つ。此れ以上、この奥へとは進ません。……お前たちのような無辜の民を襲うような者など、何人たりともな」
 百華と嵯泉の二人の猟兵は、数で勝る浪人の群れに対してどこまでも真正面から立ち向かい、そしてその力と技を示す。だが、だからこそ二人の太刀筋は圧倒的に強く、浪人たちを圧倒していく。
 災禍を断つ刃と悪を斬る刃が、散っては舞って煌めいていく。二人は高速で戦場をまっすぐ駆け、二人の位置を示すのはそこかしこで落ちる火花だけであった。
「お主、嵯泉といったな? どうだろう、ここは一つ協力と行かないか? 一気に勝負を傾けよう」
「同感だ。では、私が先に。『崩れた』時が仕掛け時と言う辺りでいこう」
 戦陣の中で僅かに言葉を交わした二人は、遂に敵陣の真っただ中で背中合わせに立って動くのを止めた。どうやら、ここで大きく勝負を動かす気であるらしい。
 無論、それを見た浪人たちは彼らに群がるように襲い掛かる。『飛んで火にいる夏の虫』の如くに。
「ひへへへっ、お前たちみたいな腕自慢とやりたかったんだァ!」
「ぎゃははァ! 俺達の刃を受けてくれよォ!」
「もう口を開くな。来い」
「ああ、受けてやるとも。代わりに、私たちの刃も受けてもらおうか」
 襲い掛かる刃にかけらも臆さず、退く等もせずにただ前へ出て先を取り、広くなぎ払って敵の刃をずらすことで敵の隙を作るのは嵯泉。
 瞬き一つもせずに敵が振り下ろした刃の軌道を確かに見切り、真正面からそれを受けて鍔迫り合いの形へと持っていくのは百華。
 二人の猟兵は背中合わせに『今』であることを確認すると、同時にユーベルコードを発動する。命中したもの全てを切断する絶技。即ち、『剣刃一閃』である。
「甘いんだよォ! こっちにも『侍の意地』ッてモンがあらァ! ……え、ああ」
「お前らの攻撃なんざ、受けて反撃してや…………あ?」
 嵯泉は敵へ大きく薙ぐフェイントを挟んで手首を捻り、死角からの逆袈裟を放つ。膂力にものを言わせたその一撃は、敵の反撃などという生ぬるい方策すらもたちどころに叩き斬っていく。
 百華は鍔迫り合いの形から一瞬で呼吸を整え、一度大きく力を込めて敵を押し返し、順薙ぎを放って敵の胴へと寸断なく自身の刃を届かせる。反撃はない。『次』を残すほど、彼女たちの太刀筋は甘くないのだ。
「強敵を求め、敵は全て斬る、か。戦場に在るならば、其れも在り様だろう。だが既に戦の喧噪は遠く、民は平穏の中で暮らす世だ。其れを脅かすならば放置は出来ん」
「なかなか大した手練たちだが、剣で負けるつもりはないのでな。……さあ、まだまだこれからだ! 命が惜しくないものからかかってくるが良い!」
 猟兵とオブリビオンの戦いは、苛烈な斬り合いで幕を開けた。その幕が下りた後の結末は、まだ誰も知りえないことであった。

●仇花が咲き、桜が散ッた
「食うに事欠くなら、野伏、儲かってイイですよ。運が向いてないと死んじゃうんですけどね」
「まるで野伏をやッていた様な云い方をする……やッてたんだな。然し、嗚呼。奴ら死に損なッたのか。可哀想に」
「さて、どうでしょうね。少なくとも、あちら様は今日で店仕舞です。否応なく、一切合切……、――これで終いにしてあげましょうとも」
「あァ。今度はちゃんと、此の戦場で死なせてやるとも」
 戦場に叫び声が上がり、血しぶきがあがる。戦場の黒い土は入念に真っ赤な血を吸って赤黒い泥と成り、足場は著しく悪化していくばかり。
 赤と黒、生と死、勝鬨と怒号が入り混じる戦場の中へと二人立って向かうのは、矢来・夕立(影・f14904)と鸙野・灰二(宿り我身・f15821)の二人組であった。
「隠密だの隠れるのだのは不得意なンでな、俺は馬鹿正直に真ッ正面から行く。矢来は」
「オレは一旦引いて様子見といこうかと。少し思い当たるところもあるので。死なないでくださいよ」
「諒解だ。それじゃァ……斬り合うとするかね」
 二人の猟兵は敵陣へと近付くと、そこで二手に分かれることにしたようである。灰二は荒れ狂う戦乱の中へ、真正面から挑む腹積もりである様子。その手に握った飾り気の無い刀、鸙野という名の一振りが、只々煌々と輝いて敵を求めていた。
 彼の隣で接敵の寸前に進路を変え、敵陣へ真っ直ぐ斬り込むよりかは『紛れ込む』ようにして移動を行うのは夕立。彼の運ぶ足取りは熟練の域さえ越え、まさに達人のそれ。上体を一つもブレさせることなく、踵から足先までの完璧な重心移動を用いて音もなく剣戟鳴りやまぬ戦場に入ると、夕立の姿はすぐに見えなくなった。
「新手か。……良き刀を持っておる。良く良く斬れそうな刀ではないか。そこまでぎらぎらと刃を輝かせておいて、よもやなまくらという事もあるまい? 切れ味のほどをお見せいただけるかな」
「言われなくても見せてやる。よォく斬ッて、斬ッて、斬ッてやるさ。――我が身宿る刃の切れ味、とくとその目で御覧じろ」
 指揮官が灰二へと標的を定めると、方向もバラバラに暴力をまき散らす浪人の群れに一つの方向性が生まれた。つまりは、灰二への集中攻撃である。それも、一人や二人で利くような数ではない。
「死ねェ、猟兵がァ!」
「刀自慢なら、見事その腕奮って見せやがれェ!」
 だが、そんな敵の大群を目にしても灰二は動じない。迷わない。恐れもない。なぜなら、この状況がどうであれやることは一つだけだからである。そう、灰二がこの場で取る方策は、こっきりたったの一つだけ。
 『斬られる前に斬る』。早い話が、それだけだった。敵の剣技に先んじて目にも止まらぬ早業を披露する灰二は、その掌の中で変幻自在に剣技を放つ。
「言われなくても、見せてやる」
 目にも止まらぬ突きが二つ、今まさに刃を振り被ろうとしていた二人の浪人に突き刺さる。かと思うと、次の瞬間に灰二は身を右方向に翻しながら腕を戻し、腰の回転すらも手の内に交え、速度を増した刃にて大きく右に薙いでは斬りかかろうとする浪人の群れを無力化していく。
 そして返す刀による逆袈裟で脇から忍び寄る浪人の足を潰すと、走り寄りながら突きを放ってくる浪人の刀を下段で力任せに弾いて無防備な顎を柄で殴り、意識を手放したその敵を掴んで盾にする。灰二の戦い方は正に――『斬る』ことに特化したものであった。
「御見事。……おい、出よ。いくら敵が強いと言えども、敵は一人。動きを止めて見せればそれでよい。一つの刃が止められたとして、十の刃のいずれかが届けばいいのだ。せっかく用意された極上の相手、最高の祭に……乗り遅れるでないぞォ!」
「御意に。者共ォ! この者が動きを止めたら儂ごと斬れィ!」
「少しはできる奴が現れたッて感じだな? さて、矢来は何処で戦って居るのやら」
 その時である。浪人の指揮官がいよいよ焦れたか、灰二に側近に備えた一人の兵を差し向けてきた。どうやら、そいつは浪人の中でも腕に自身があると見える。自身へ振るわれる刃を受け、時にきわどい攻めを飛ばし、分が悪いとみれば距離を離して時間を稼ぎ、猟兵の隙を伺っている。
 数が質を伴って灰二へと襲い来るその盤面で、いよいよ動くのは夕立であった。
「へへ……! 背中ががら空きだぜッ、死ね――ッ!」
「腐っても侍だったことがあるのなら、戦ってる人間を背中から斬ろうとする奴なんかいるんじゃないかと思いましたが……。こういうのは一対一だから楽しいんです。隠密なんで知りませんが。ねえ、『野暮』ですよ」
 灰二のすぐ後ろから忍び寄り、刃を突き立てようとする無数の浪人たちの動きを制し、夕立は自身の獲物である脇差、雷花を敵の背中に次々に突き立てていく。
「……へっ……、え? 何で、俺、俺が、おれが……?」
 彼の放つ【刃来・緋縁】は、夕立の足さばきと式神による身体強化によってのみ成り立つ神速のユーベルコード。一瞬の間に接敵と脇差による高速斬撃の二つを放つその姿を、浪人の誰もが捉えることなどできなかった。
 一つ、また一つ。身をかがめ、息を殺し、唐突な加速と静止で敵の視界から姿を眩ましながら、夕立は的確に立ち合いを行う灰二の周りへと群がる浪人たちを排除していく。効率優先の切断は、浪人たちの腱や頸動脈、首の骨や脊椎に繋がる背面を狙って次々に飛び交う。
 そうしてひとまず灰二の周りにいる浪人を全て斬り伏せると、夕立は背中合わせに灰二に何かを語り掛けた。まだ周囲に敵は残っているのにも関わらず、である。
「ヒバリさんのことは放っておきますから。そっちはそっちで、目の前の敵に集中してください」
「……おッと、後ろとは。そンな所に居たのか。はは、これで斬り合いに集中出来る。『助太刀感謝』するぜ、矢来」
「『助太刀』なんて言うつもりはありません。オレも、オレが斬ったそいつもクズなんで」
「テメ……ッ! 俺達がクズだとォ?! こっちは侍だぞ、訂正しやがれ、戦闘の途中で話しやがってテメェ!! 血に染まったその手袋、ものの見事に焼いて見せら――ァ?」
 夕立の黒い手袋が、一つ敵を仕留めるたびに赤い血に染まっていく。だが、敵の炎が彼の掌を焼くことはない。敵が夕立を視認して、ユーベルコードを使おうとする、その一瞬の間に――夕立の放つ雷鳴のように鋭い剣閃が虚空を裂き、敵の身体に花を咲かせるからだ。――そして、それは夕立が話していても何ら変わることはない。
 敵の喉笛に、背中に、目に、足元に。夕立の操る刀はまるで彼の手足の延長であるかのように空を行き来する。彼に隙があるとみて走り寄ってきた浪人の身体にも、今一輪の仇花が咲いた。
「話しているから、オレに隙があると? だから不意を突けるとでも思いました? ……まあ、そう見せかけたんですけどね。ウソですよ。だまし討ちです。そして、そっちも不意打ちを狙った。だまし討ちや不意打ちを狙うようなクズは、クズ同士で仲良くしましょう? ……真剣勝負に泥仕合を持ち込むな、って言ってるんですよ」
 灰二の背後左右で、夕立が多くの浪人との『何でもありの泥仕合』を行っている最中。いよいよ、灰二もその力を使っていく。どうやら敵もそれなりには刀を使える様子。――だが。
「そろそろ、刃桜で華々しく、黄泉路に送ってやろう。桜が散るように、その命を散らせ。『桜散る』」
「むゥッ……! これは!?」
 敵との斬り合いの最中に鍔迫り合いに持ち込んだ灰二の繰り出すユーベルコードは、【刃桜】。自身の装備する武器の全てを花びらに変えて、敵を攻撃する全包囲攻撃である。
 いくら敵の手練れが刀を使い、灰二の剣閃を何度か止めることが出来たとて、幾千幾万の花びらの全てを受けることなどできはしない。鍔迫り合いの形からいきなり鸙野を花びらに変え、敵の姿勢がぐらついたところを灰二は見逃さなかった。そのままいくらかのダメージを花びらの刃で与えると、再度鸙野を実体化して敵の刀に思い切りぶつけていく。
 『人も刀も斬ッて折る』。まるでそのような意図が感じられるほどに力強く鮮烈なその刃は、敵の刀を真正面から折り、そしてその勢いのままに胴を切り裂いた。敵は受け身を取ることもかなわず、地面に倒れ伏していく。浪人の中では力があり、数があるとは言えども、歴戦の猟兵が力を合わせて立ち向かえば、負けることなどありえない。
「まだ息があるな? ――どうする?」
「あァ……ゲホッ……見事、也……。……落ちぶれはすれども、拙者も武人。……介錯を。御頼み申す」
 灰二の刃が敵を斬り、そしてまた夕立の刃が敵を裂く。二人の猟兵はその力を惜しまず、ただただどこまでも、どこまでも自らの力を以て自分のありようを示すかの如くに戦うのであった。

●流星光底いざ知れず
 鳴る音は無情な金属音。響く声は無残な戦声。剣戟の応酬が巻き起これば、地面に血だまりが出来ていく。
 平和な村を背後に構え、水際で暴力を食い止めるのは猟兵たち。彼らは人々を守るため、その力を遺憾なく発揮していく。乱戦の中で、血混じりの空気が色濃く匂っていた。
「刀の無い世界が戦の無い世界であれば良いのかもしれませんが、そういった世界で必要とされるのは、恐らくより殺める力を求めた物。時代の流れには抗えないものなのでしょう。――ただ一つ分かるのは、彼等の刀が奴等の手に渡るには余りにも惜しいという事。お二人とも、協力していただきたい」
「おや、そちらも光り物には目がない質でいらっしゃる? 良いですよ、梶本の名刀とやらが目利きの出来ない奴らの手に渡るのも癪ですし」
「騎士としては異を唱えようはずもありません。罪なき民衆からの略奪など、許せるはずもない。まして、幼子もいる村での狼藉など……。私もお供いたします」
 三人の猟兵の真ん中に位置する男の掌の中で、曇り無き刃が日の光を浴びて輝いた。夜天に移す銀の月すら切り裂けるというその一振りは、永く連れ添った男の愛刀。その名は夜禱。浪人たちの持つ並の刀とは比べ物にならぬほどに鋒は鋭く、そして刃文の美しい刀であった。
 緑の眼を持つその男は腰を落とし、膝を僅かに曲げて。軸となる左足は不動のまま足先まで気を張り巡らせる。右足を僅かに引いて踏み込みの距離を測り、手の内こそを柔らかくして――。
「なァにをごちゃごちゃと言ってやがんだァ? ここは戦場だぜ? 何かを語りたいなら……その一切を全て刃に込めなァ! 見たところ、お前も侍だろうがァ!」
 次の刹那、刀を構えて攻撃を行おうとしていたその男に襲い掛かる浪人たち。数は二、いや三。前方より来る敵影が二つ、そして男の右側から走り寄るのが一だ。
「――言われずとも」
 瞬間、その男――月舘・夜彦(宵待ノ簪・f01521)が、愛刀夜禱を腰元に構えたまま右足を強引に動かして敵の攻撃を避けていく。残像が残ったようにさえ見えるその足さばきは、常人では不可能な域に達していた。
 三方から襲い来る、浪人の放つ刃の群れ。袈裟が二つ、突きが一つ。夜彦はそれらの軌道を正しく見切ると、最低限の移動のみでその全てを躱していく。そして、いよいよ自身の獲物を奔らせた。高速で振るわれる、三方向へ二回ずつ行われる、都合六度の斬り返しである。右切り上げ、順薙ぎ、袈裟、逆風、一瞬の内に刀を引いて突き、そして右方向へ刀を流す。
「……っがァ……!!!?」
「やる……、じゃ、ねえか……! 色、おと……こ…………」
 気付けば、そこに出来上がっていたのは三つの戦果。そのまま一度刃の血を拭いて納刀し、愁いを胸に秘めながら、それでも人のためにと参上した夜彦の刃はまさに――。梶本村、彼らの刃の如くであったのだ。
「へぇ? 御見事、やりますねえ夜彦さん。それにあの刀も良い刀――」
「よそ見してる場合かよッ! ちょこまか動き回りやがってェ、お前の相手は俺達だァ!」
 夜彦の活躍を横目にしながら、もはや混沌の最中、暴力の坩堝と化した戦場の乱れの中にあって、浪人たちの視線を鮮やかに斬りながら敵陣を翻弄する猟兵。その男の獲物は――なんと、『敵から奪った刀』であった。
 眼で追うことすら許さない速さの走りと、時折視界の端に残していく残像で敵を翻弄し、時に自身を捉えて刀を振りかざす敵の指に自分の指を絡みつかせると、その十指を丁寧にねじり曲げ、丹念に折っては握りを弱め、刀を無理やり奪っていく。『最高に手癖の悪い』、徒手による戦乱の最中の盗み攻撃である。
「えっ、――――いってェェェェあああああああああァァッァァ!?」
「この刀は……ふうん、別段特に見るところもないですね。使い捨てには丁度良いですが。それじゃあ、時代の流れに取り残された亡霊には、此処でご退場願いましょう。戦う事が本懐ならば、此処で存分に剣を交わそうじゃありませんか」
「て……ッ、てめェ! よりにもよって『刀を奪う』……だとォ……!! ふっ……ふざけるな! 俺達は、戦のために、その誇りを――! 戦のための刀を、今すぐ――」
 敵の刀剣を奪い取り、それを我がものとして用いる特異な古流剣術の遣い手。その名を、信楽・黒鴉(刀賊・f14026)といった。白いマフラーが血煙混じりの剣風を受けて静かにたなびいて、黒鴉の握った剣が確かな技術によって空間を奔る。
 黒鴉は地面に跡を残すほどの踏み込みで一気に距離を詰めると、彼の行いを見て憤慨している様子の浪人の喉を狙って薙ぎを放って見せた。確かな技のもとに行使された剣術は、一瞬のみ時間を置いて吹き出す敵の血を以て結果とした。刀を奪うために手指を折った敵も一刀のもと無力化し、彼はまた鴉の如くに赤黒い戦乱の中に身を潜める。
「この太平の世に乱を齎すだけでは飽き足らず、戦い、略奪すら祭りとするその姿勢……。騎士として相容れるものではありません、貴方方に梶本村の土を踏ませはしません」
「だったらどうしてくれると言うのか? 拙者らはただ求めておるだけのこと。生き物が食物を得なければ生きられないように、侍も戦わなければ生きていかれぬ。いや、生きるだけならできる。……が、それでは侍としては、死んでいるのと同じこと。――さァ、死に場所を頂けるかな? 行けィ、行けィ者共ォ! 馬上の鎧武者へしがみ付き、そっ首落として見せるのだァ!」
「――ならば、貴方方のお望み通りに応えてあげましょう。戦場を駆けますよ、ロシナンテ」
 機械白馬「ロシナンテⅡ」に騎乗し、戦場に並みいる浪人たちをその巨体が持つ怪力でなぎ払われていく槍の奔放さで蹴散らしていく影があった。その影もまた猟兵の一。戦場の中にあって人々の希望を背負うものの一人である。
 彼の放つ馬上槍の一撃は規格外の威力を誇り、ロシナンテの行く手を阻む敵をまとめて打ち果たしていく。時折槍を受けてまだ立つ敵などもいるが、そのような輩は3m近い大きさの大盾による直接的な殴打で蹴散らしていく。
 戦場における歩兵と騎馬とのアドバンテージ、そして刀と馬上槍というリーチの差。その二つを存分にを活かして戦う彼の名は、トリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)。機械の身体を持つ、紛れもない騎士であった。
「お前を狙おうとしてもダメならよォ……!」
「『将を射んと欲すれば先ず馬を射よ』ッてなァァァ!!」
 しかし、敵も馬鹿ではない。馬による突破力が厄介ならば、まずはその馬を仕留めれば良い。そうして突き出される複数の刃は、しかしロシナンテに届くことはなかった。
 トリテレイアが、敵の全ての反抗をその巨大な馬上槍で受け止めたからである。
「ロシナンテ、そのまま往きなさい。真っ直ぐに、悪辣な敵など意にも介さず」
 機械騎士の言葉に呼応するかのように、機械白馬は大きく嘶くとその速度を緩めることなく敵の浪人が無数にいる敵陣へと突っ込んでいき、そしてその巨体のまま跳躍を行う。
 その結果、トリテレイア達が着地する場所にいる敵は――、当然ロシナンテの蹄で踏みつけられることとなった。助走をつけた跳躍によってさらに勢いを増した彼らは、敵陣を思うままに蹂躙していく。
「舐めンな、ちくしょうッ! ちくしょうッ!! おいッ、テメェらァ! あの優男を前から止められねえなら、周りを押し囲んで――」
「くそがァ! 槍の反撃を受けたとしても、せめて一太刀入れて馬から引きずり落としちまえば――」
 猟兵たちと浪人たちとの実力の差は明らかなものであった。数で勝る浪人たちは確かに強く、数での勝負を挑まれれば猟兵といえどもなかなか厳しい。
 しかし、それでもやはり一対一の状況に近くなればなる程、猟兵と浪人たちの戦力の差は開いていくのは明らかだ。夜彦の敵を寄せ付けない研ぎ澄まされた刀運びが、トリテレイアの駆る戦場を自由に駆ける馬が、猟兵たちを数で抑え込もうとする浪人たちの動きを阻害し、疑似的に多対一を封じ込めている形である。
 だが、それでもまだだと言わんばかりに夜彦とトリテレイアの前進を阻もうとし、横から後ろから彼らに取り付いて至近への接近を狙おうとするものたちがあった。彼らにも『侍の意地』というものがあるのだろう。どれだけの痛手を被ろうと、せめて一太刀という腹積もりのようである。
「来るか。――『狙うは、刹那』」
 全方位から一斉に襲い掛かってきた浪人たちへ夜彦が取った方策は、至極単純なことであった。即ち、『向かってくる刃は神速の抜刀術からなる刃で退け、反撃の際に生じる返り血は極力避ける』という、それだけ。
 単純であるということは、突き詰めればとことん真理であるということでもある。浪人に刃を突き入れ、刀を右に逃がすと同時に敵を裂き、自身は左後方へと下がりながら身体を逃がして血を避ける。
 上段の刀を下段で受け、鍔迫り合いよりもさらに至近の距離に迫り、柄頭で敵の顔面を叩いてよろめかせると、そのまま敵を地面に押し倒しながら力で押し斬るようにして返り血が空気を汚すのを最小限にとどめる。
 夜彦の取る剣技とは、【抜刀術『静風』】。納刀して精神を集中することによって剣技の冴えを増した彼は、血液を受けることすらも最小限に留めていく。僅かに受けた血液が彼が袖の端にて発火したとして、それが彼の手足を止める原因にはなり得ない。
「――『騎士道を鑑みれば、言語道断なのですが』」
 トリテレイアは夜彦の隣で未だに前進を行いながら、縋りつくように左右から襲い掛かる浪人を見ることはなかった。目線の代わりに彼らへと寄越すのは、頭部に格納してある銃器の銃口。
 【機械騎士の二重規範】による、意識の外からの不可避の騙し討ちが浪人の群れを壊滅させていく。飛び交う銃弾のいずれもが敵の急所ともいえる場所へと次々に飛来し、連射の轟音が鳴りやんだ後にトリテレイアの背後左右に敵はいなくなった。反撃すらも許さぬ、二重の攻勢である。
 であるのなら、もはやこれよりは駆けるだけ。戦陣の中にあって戦場を駆けるだけである。白い鎧に身を包んだ機械騎士は、正道と邪道の二つの規範を持って敵を蹂躙していく。目の前の敵は槍技の冴えにて、自分を取り囲もうという敵には言語道断の銃弾の雨にて、彼はその道をただ愛馬と共に駆けるのであった。
「私は彼らの刃なれば、いくらこの身が燃やされようとも痛みも熱も耐えられましょう。この程度で心が乱れるはずも無し。同じ侍として、最後までお相手致しましょう」
「戦乱の世を望むなら、騎兵との戦いや、卑怯なだまし討ちも日常茶飯事。梶本村の人々を護れるのであれば私の誇りなど安いものです」
 トリテレイアが戦場を風のように駆け、夜彦が戦場の中で夜半の月の如くに刀を煌めかせる。
 二人の猟兵が混乱をもたらしている間に、黒鴉はただ走る。狙うは一つ。――『暗殺』だ。
「……あの白い鎧の騎士に、あの緑の眼をした剣士……。あれらが目立つな。それ故少々厄介か。それに……戦場全体が何故だか浮足立っておる。ここは一度皆の統率を――」
「――ああ、ようやく辿り着いた。あなたでしょう? この辺りの浪人たちに指示を下しているのは」
「何奴――ッッ、……そうか、貴様が『そう』か。見れば分かる。我が方の刀を奪い、そして戦陣を抜けてきた……。『乱戦に紛れて隙を突く』。貴様はそういう戦い方をするものか。周りが浮足立っているのも、よもや――」
 黒鴉は敵の目を盗みながらどさくさの中を進み、時折無防備な敵の首筋に刃を立ててまた進み、浪人たちの指揮官と思しき敵を目の前にしても、温和な笑いを崩さない。
「まあ、続く言葉はこの剣にて語るとしましょう。合戦場での立ち回りが元になった流派ですので、正々堂々よりかは乱戦向きな剣術なのは否定しないですけどね。さて、剣で語ろうとか言う割に前置きが長くなって済みませんが……。――じゃあ、死ね」
「――なんのッ、こちらの剣とてまだ語り足りぬわ――ッ!」
 敵が振るう剣技より疾く、早く、速く。黒鴉が放つ高速の斬撃は、三方向からの絶技を以てして敵の浪人に何もさせることなくその身体に確かなダメージを与えていく。
 どこかで盗んできた鞘に納められた刀は黒鴉の技術のもとに見事に鞘走り、一つ目の抜刀術は敵の浪人が握る刀身を横から捉えて敵の手から刀を取りこぼさせた。そのまま返す刀で右腕の腱を袈裟斬りで粉砕し、更に続けて左腕の腱を狙う逆袈裟斬りをお見舞いする。
「……ッ、速いな……ッ! 見事……! ……しかし……、しかし、しかし、しかししかしィ! 怨念の籠る我が血を、我が返り血を受けたなッ! では、燃え――」
「ああ、無駄ですよ。どんなご大層な技だろうと、攻めの枕を押さえりゃ良いンです。その技はもう使えないし……興味もない」
 そう、黒鴉が放ったのはただの三連撃ではない。ユーベルコード【秘剣・擒賊擒王】は、彼が放った三連の刃の走りを受けた者のユーベルコードを封じる超常の力である。
「な……ッ! ……クク、クハ、ハハハ……猟兵の、た、……戦いとは、まっこと……多様かつ、見事な物、よな……。」
 猟兵たちが風穴を開けていく。有象無象の浪人たちという暴力の嵐へと突き刺さっていくのは猟兵の持ち得る力。
 戦乱の中で圧倒的な数にも負けず、ましてや技の彼我の差など語るに及ばず。猟兵たちはその意を示していくのであった。

●暗中飛躍空騒ぎ
 さて、時間軸は僅かに巻き戻る。これは村の入口からからほど近い空き地で猟兵と浪人たちが真正面からぶつかり合う、少し前のこと。大量の浪人たちが村に押し寄せようとして山道を走っていた時のことである。
 浪人たちは切り立った崖と崖とをつなぐ吊り橋を越え、腰ほどまでの水かさのある川をなんとか渡り、曲がりくねった山道を荒れ放題の林などに邪魔されながらも何とか進み、既に先頭の方に位置する者たちは村への侵入を果たそうとしていた。だが、後方はと言うとそうでもなかったのだ。
「クソが、先に橋を渡ったやつらめ……。滅茶苦茶な速度で先行しやがって……、美味いところを食いそびれちまうだろが、クソ。女も飯も弱い者いじめも、誰かの後だなんて嫌だぜ俺ァ」
「まァそう言うなって、俺らはゆっくり行こうぜ。遅れてる奴らは別に戦を求めてるわけじゃねえ、俺もお前も、結局は食い扶持がなくて浪人やってるような身の上だろ? 俺は別に少し遅れていって楽に食いモンにありつけりゃァ……何だァ? 分かれ道?」
 浪人たちとて、全員が全員オブリビオンの思想の元に戦っているわけではない。彼らの中には働き口がなくて仕方なしに浪人に落ちぶれた者も多くいた。狭い橋や山道を通ってきた結果、戦いへと挑むその姿勢の差が、進軍速度の差として如実に現れたのである。
 そんな彼らの目の前に、唐突に分かれ道が現れた。獣道などではない、明らかに人の手が多少なりとも入っていると思しき分岐が現れたのである。
「あァ? 梶本村ッてのは一本道だって聞いたぜ? 地図にも……まァ良いわ、どうせどっちかはすぐに行き止まりにでもなンだろ? 虱潰しに良きゃ良いだけだ。戦力分散は任せたぜ、先行くぜ俺らァ。おいテメェらァ! 村までァもう少しだ、ぼちぼち急ぐぞォ!」
「……来たね。ハローワールド、展開。皆、聞こえる? 敵の後詰めが来た、各自スタンバイよろしく」
「ホホホホ……りょーかいじゃ! さあてどうしよう、妾いつになく今世唯一頭脳労働担当名誉大臣長官の軍師キャラになっちまうぜー?」
「了解です、リアさん。こちらも既に罠の設置は済ませてあります」
「あてらあのかまえも整うちょるき。敵さんらがこじゃんと来ようがかまんよ」
 ――そこを狙う猟兵たちがいた。村への道のりは一本のみ。であるのならば、そこを突くことで敵を一網打尽にし、戦力を大幅に削ることが出来るだろうと踏んだ者たちが。猟兵たちの知恵とユーベルコードを駆使したゲリラ作戦が、今始まろうとしていた。
 無論、梶本村への道が増えているのも偶然などではない。浪人たちは、既に猟兵たちの術中に自ら足を踏み入れようとしていた。
「なんだァ……?! 梶本村への道のりに、こんなに分岐がある訳がねェ! 一つならまだ気のせい、二つならまだ地図が古かったで納得も行く! だがよォ……! 『こンなとこに吊り橋はなかったし、あるはずの川がねェ』! こいつァいったいどうしたことだ!?」
 そう、浪人たちは既に猟兵たちのユーベルコードの影響をその身に受けていた。一つや二つという数ではない分かれ道に出会うたびに戦力を分散しながら先に進んで行く彼らは、気付けばもはや大群とは呼べなくなっていたのだ。
 度重なる分かれ道とその度に生じる戦力分散は、その分浪人たちの数を群から個へと近付かせ、目印になるようなもののない曲がりくねった山道は彼らの方向感覚すらも奪っていく。元々が曲がりくねっていた山道に増えた分岐は、もはや正しい道がどこにあるのか分からなくなるほどであった。
「さて、侵入経路は一つだけ……とくれば、最後の一本を除きそれまでの道のりを逆に増やしてやったらどうかとは思ったが……? くくくけけけ……! あやつら嘘じゃろーーッ、マジでちょろすぎる! 上手く迷ってくれとるわ! 鶏の群れのがあんよがお上手じゃっつーの!」
 この工作を事前に行っていたのは、他でもない。神羅・アマミ(凡テ一太刀ニテ征ク・f00889)その人であった。彼女はユーベルコード【特機】にて30体ほどの戦闘用ソードビットを召喚すると、それらを用いて作戦開始前に森を拓き、木材を調達ついでに道を増やして、調達した木材でどこにも通じてない新たな吊り橋を作ったり、小川をせき止めたりなどして河川の流れを操り、地図そのものを作り変えてしまったのだ。
 何という単純で、力任せで、『意地の悪い』作戦であろうか。――だが、だからこそ効果は覿面である。単純かつ大きな嘘ほど、その効果は大きいものだ。特に、超常の力まで用いた常識の範囲から外れた嘘だからこそ――。浪人たちを翻弄し、迷わせることも可能であったのだろう。
 実際に、浪人たちは村への道を見失ってたたらを踏み、戦力を分散させてしまっている。この状況は、正にアマミが思い描いていた状況と言っても過言ではなかった。
「この調子なら他の猟兵たちもコトに当たりやすかろ? ……お? ……連絡。もうそろそろ奴ら例の橋を渡るぞ」
「ちくと前からもう一人の「ワタシ」はそこにおる。いや、それにしてもようよう仕掛けに引っ掛かっとるわい。ちゃァんとこっちの想定の内よ」
 アマミの連絡を受けて木々の影から影へ、伸びた草の裏から裏へと移動を行うのは伊美砂・アクアノート(さいはての水香・f00329)。
 彼女もまた、浪人たちが村に到着する前にゲリラ戦法を行って戦力を減らそうと狙うものの一人である。既に作戦開始前にいくつかの攻撃を仕掛けるポイントに目を付けておいた彼女たちは、連絡一つで自在に移動を行いながら浪人たちの姿を追跡していた。
「なんだ、クソ……ッ! さっさと梶本に向かいてえのによォ、この吊り橋、崖からの風でやたらに煽られやがる……! オイ、早く渡っちまうぞっ……! お前らが先に行って橋の強さを見るんだよ、オラ行けッ!」
 伊美砂の眼が捉えたのは、戦闘開始前に定めておいた、『アマミが地形を変え、仕掛けを施しておいた場所』のうちの一つ、『断崖の崖にかかる吊り橋』。十分な高さと迂遠な長さの両方の性質を併せ持つその橋は、既に幾重にも分かれてこの場に到着した浪人たち全員が乗るにはちょうどいい大きさであった。
「……算盤弾けば、戦が無くならんワケがよう判るちや。こんな金が動くモンが無うなったら、斬られも刺されもせんでも、首が回らんようになる……ま、だからといって容赦はせんが。――落ちやぁ」
 ――だからこそ、今落とす。高所にかかった橋を渡ろうとする浪人たちを、今ここで全て落としてしまうのだ。直接的なゲリラ作戦の引き金には、最大限度の効率を誇る戦法こそが相応しい。
 【オルタナティブ・ダブル】で分身体を作り出していた伊美砂は、橋を渡ろうとしている敵群が橋の丁度中腹へその足を伸ばした瞬間に行動を開始した。右の伊美砂が握るのはブルパップ式ポンプアクションショットガン、『コントラファゴット』。左の伊美砂が構えるのは装弾数33発を誇るマシンピストル。
 二人の伊美砂が林の中から出、浪人たちの行く手を阻む。二つの火器の銃口が浪人たちに向き、山道の中に二つの銃声が轟いた。狙いは浪人たちではない。『吊り橋にかかる二本の縄』である。
「なッ、……?! 猟兵……!? はっ、走れッ!! 走れェ!! 向こう岸に戻るんだよォ!!」
「なに、こっちは正々堂々斬り合ったりはせぇへんよ? ……これは戦ぞね。追ってきても良えんよ? まぁ、追えるならの話やけんどのう」
 断崖の崖に新しく作られた吊り橋が、支えを失ったと同時に音を立てて軋んでいく。二つの銃火器から放たれた無数の弾丸は、狙いを違わず橋の縄へと吸い込まれていった。伊美砂は吊り橋が落ちるのを確認すると、再度林の中に身を隠しながら山道の中をひた走る。猟兵たちはすでに全体の正しい道の情報を共有済みだ。
 『いきなり現れた吊り橋』に、浪人たちが警戒していなかったと言えば嘘になるだろう。だが、その上で彼らは進むしかなかったのだ。『正しい道が分からない』という情報環境の下では、幾ら悪手であろうともそれを選択せざるを得ない時もある。
 猟兵たちは見事に『情報戦』で優位に立ち、そして浪人たちに悪手を押し付けたのだ。伊美砂の正確な狙いと、二方向からの同時射撃による橋の破壊。その行動もまた明確な妙手であり、山道内での戦闘という盤面の中にあって、攻め手を強めるのは猟兵の側であった。
「クソッ! クソォォォ! 最初はあんなにいただろうがァ、何でもうこんな数しかいねえんだよォ! おちょくりやがって……ッ!! アイツだ、あの橋を落として逃げたやつ! 戻って崖を迂回すンぞ、あのクソ野郎をぶっ殺してやらァ!」
「逃走も首尾は上々じゃ。後のことも予定通りに進めそうじゃき、そっちに向かうきの」
「了解しました、こっちの方で敵の集団の動きは粗方把握できてます。次は……河で仕掛けましょうか」
 吊り橋を渡ろうとしていた浪人たちは、既にその半数を失っていた。残っているのは橋の後方を渡っていた何人かの浪人だけで、それ以外は全て山の斜面に飲み込まれている。
 『戦う』という土台すらなく、猟兵たちは戦術で敵を圧倒していた。次のエンゲージポイントも決まっている。次の勝負はここだ。
「リアさん、伊美砂さんからの報告来ました。吊り橋に向かった敵も残り少なく、今こっちに向かっているみたいです。このタイミングなら……他の回り道を通ってくる浪人たちと合流して、ここに着きますね」
「分かった。ありがとう、シャルちゃん。こっちもハローワールドで周囲の動体反応を確認済み。ここで向かい打とうか。なに、仕掛けはもう充分してあるさ。細工は流々、あとは仕上げを御覧じろってね。まずは例のポイントを通過後に、殿から罠にかける……!」
 吊り橋から少し離れたポイントである、少し開けた河川で浪人たちを待ち構えるのはシャルロット・クリスティア(ファントム・バレット・f00330)とリア・ファル(三界の魔術師/トライオーシャン・ナビゲーター・f04685)の二人。
 既にこの場所にも猟兵たちの手は十分すぎるほどに入っている。元々、このように太い河川はこの辺りには無かった。何を隠そう、この河川もアマミの土壌改造によるものである。
 辺りを通る幾つもの細い川の全てをせき止め、流れを集約し、周囲の木々を伐採して土壌を整え――。今の梶本村にたどり着く正解への道のりの中心を邪魔するように横たわるこの大きな河川は、そうして出来上がったものであった。
「あッ、おい! お前ら、どうして道を戻ってきたんだよ?! 他の奴は?!」
「どうもこうもねェ! 俺らが行った道は罠だったのさ、吊り橋を落とされて仲間の殆どは落ちちまったしそれ以外の奴らとは分かれ道で分かれちまったよッ! 猟兵の仕業だ、アイツらどこにいやがるのか……ッ?!?! いッ……!! てェェェェェ!!」
 周囲の木々を無くしたことである程度拓けた河川にたどり着いた浪人の群れのいくつかは、互いを発見して一度そこで集合するに至った。当然だ。『どんな道のりを通ろうと、河川を渡る』以外に正解の道はないからである。
 この場所は戦力を分散してしまった浪人たちを各個撃破するための場所。『射線は通り』、『見晴らしも良く』、『対岸から道具も無しで渡河を行うには時間がかかる』。つまりは、迎撃のために作られたお誂え向きの場所なのだ。
「河川に通じる道には罠を大量に設置してある。キミたちはもうボクの掌の上って訳さ。さて、どう動くかな……」
「罠……ッ! 罠だッ! かッ、河だッ、河に逃げ込めッ、河を渡っちまうんだ、『後ろは危険』だァ!」
 村へと続く道が一本道であるのなら、その奥の広場で最終防衛線を張る猟兵は多いはず。ならば自らはフォローにと考えたリアが行ったのは、梶本村の道中へ罠を仕込むことであった。
 幸いなことに、木材はアマミが伐採を行ってくれたおかげで大量にある。後は簡単な工作と設置を行うだけだ。リアは戦闘開始前に木材と石材、それからわずかな電材を駆使した複数の罠を用意すると、それを道中に隠して設置し、敵の後陣がようやく到着したころにそれら全てを起動した。
 それは例えば木々の洞の中に。幾重にも重なる樹上の葉の上に。そして落ち葉の下に、茂みの中に。地形を利用するようにして隠された数々の投石や矢の罠は、そうして敵の殿に牙を剥いたのだ。
「河へと進んできてくれますか、それは好都合……。リアさん、こちらシャルロットです。発砲を開始します」
 そして、後ろから襲い掛かる矢の雨と投石のあられの中、痛みとパニックが支配する脳内で浪人たちが考えることは一つであった。『背後から攻撃を受けている。後ろは危険だ』。
 そう考えた浪人たちは、一目散に目の前の河川へと歩を進める。後ろの危険に気を取られ、新たな危険に自ら身を沈めたとも気付かずに。
「えがァッ……!? 撃たれッ、撃たれてるぞオイッ!!」
「ぎィ……ッ!! 馬鹿野郎、こっちだってそれどころじゃ……! 河の底に、なんだ、これッ、トゲ!? 楔?!」
 『河を渡る』。単純なことのように見えて、その行為は酷く難しい。水かさと流れがあるだけそれは難しくなり、足裏の石は地面のように踏ん張りを利かせてくれずつるつると滑る。河を渡ることは時間がかかり、難しいものだ。
 だからこそ、シャルロットはそのタイミングを狙ったのである。彼女の狙撃の腕前と、愛銃エンハンスドライフルがあり、敵の動きが鈍っているのなら遠慮はない。鴨撃ちだ。
 工夫は対岸だけではない、河底にも施されている。シャルロットは予め河の底の至る所に足を取られるようなロープを、石の隙間には尖った楔を設置していたのだ。焦る浪人たちはその上をまんまと通り、ただでさえ遅い進軍速度を更に落としていく。
「時代の流れは止められるモノでも無いけれど、まだ出来ることはあるはず。そう伝えるためにも、まずはここを守り切らなきゃね。……シャルちゃん、援護するよ!」
「ええ、変わりゆく時代を生きるのは難しいものです。黙って滅びゆくのを認められないのも解ります。……ですが、お互い過去の栄光にしがみつくだけでは未来はありませんよ……! 分かりました、タイミング合わせます!」
「俺たちは早く渡っちまうぞッ、周りの奴らはもうダメだッ! 足を止めたら撃たれちま――」
 更に浪人たちにとって不幸であったのは、リアの放つ【凪の潮騒】の存在である。彼女の片掌から放たれる共鳴波は、運よく罠にも引っ掛からずに河川を走る浪人たちの動きを片端から止めていく。文字通り、『静止』させていくのだ。彼らは今、時空間との接続を断絶させられ、リアの共鳴波を受ける数瞬前の状態で停滞している。
 シャルロットは言葉も出せず、振り出した足を降ろすことすらできずに静止している浪人たちを狙っていく。狙いは脚。時間をかけずとも狙え、そして動きを遅くし混乱を招ける良い箇所だ。木々の隙間から眼を凝らし、葉と枝の間から針を通すように銃で狙撃していく。一つ、いや二つ。重なって聞こえる銃声は彼女の早業を示す証。速射による断続的な射撃は、放たれた弾丸の全てを浪人たちに命中させていく。
「クソッ、クソォ! どこにいやがんだァ! 俺の脚、脚がァァァ……!」
「一定数の目標の脚を潰しました、一度ポイントを変えます」
 【隠れ身の外套】。特殊な外套を身に纏って透明になったシャルロットは、浪人たちの視界から姿を隠して大胆に移動を行う。河川の下流側から上流の方向へ向かいつつ、徐々に射線をずらしながら自分の位置を気取られないようにして動いていく。罠の起動音と敵の声、そして共鳴波の高音と銃声は鳴りやまない。
 これを正当な戦いによる結果ではない、卑怯な戦法だと宣う輩もいるだろう。だが、これは猟兵たちの見事な罠と戦略による結果だ。そして、これはそもそも外敵から村を守るための行動である。ならば、この結果は猟兵たちの正当な努力の結果であるだろう。
「ッッ、いたッ! オイッ、あそこに猟兵がい――」
「はい、そこまでだよ。ゴメンね。シャルちゃん、今!」
「ありがとうございます、リアさん! そこ……っ!」
 時にリアやシャルの姿を捉える浪人もいないことはなかったが、その情報を周りの味方に共有する前にその動きを止められ、そして脚を射抜かれていく。リアとシャルの二人は迷彩と透明という二つの視覚的な『有利』をどこまでも敵に押し付けていく。実に正しい戦略だ。自分の得意なことや有利を押し付けることこそ、戦いの本懐といえるのだから。
「さて、間に合ったようじゃのう。……渡河っちゅうんは、いつの時代も命がけやき。重たい金属の棒を持って、どれだけ走れる? 動き回れるんかねぇ?」
「『狡兎死して走狗煮らる』……へへ、妾知的キャラじゃろ? じゃが、そうなんじゃよなー! 徳川のせいでなー! 妾たちの家族の食い扶持もなー! わかる! わかるぞ村の衆! その意味ではオブリビオンこそ新たなビジネスチャンスと言える! 奴らをブッ叩くことこそ妾の天命にして本懐よ! つーわけで、妾のメシのために死ねーーッ!!」
「クソッ! クソォォ! 弱い者いじめは俺たちがする方だろうがァ! ふざけんな、ちくしょうッ! 殺してやらァ!!」
 リアとシャルが渡河を封じている隙に、浪人たちの背後から静かに近づく影が二つ。吊り橋の箇所から山道を降り、上流方面から走るのは伊美砂。そして最終的にこの河で敵を包囲することを読んで、最初から下流方面で待ち構えていたのはアマミだ。
 伊美砂の構えたマシンピストルとショットガンの猛威が、河に入った浪人たちの刀の間合いのはるか外から寄り来て蹂躙していく。狙いはこの段に至ってまだ猟兵たちへ殺意を持って突撃してくる浪人たちだ。その隣では、柄尻のデジタル表示器『33』と刻印された巨大なソードビットを無理やり両腕で構えたアマミが、味方を盾にしながら河の流れのままに身体を流そうとする、自分勝手な振る舞いの浪人たちを仕留めていく。
「真面目に働いた方が身のためさ。これに懲りて傷を治したら、今度は刀じゃなくて鍬を振るんだね」
 既に戦意を失って降参している浪人に対し、リアは静かにそう口を開くのだった。悪事に手を染めたとしても、反省の意思を持つものは逃がしてやってもいいだろう、ということだ。
 そうして四人の猟兵たちは、実に見事に浪人の軍勢が村へと侵入する前に一仕事を終え、敵の後詰めを壊滅せしめたのである。見事な手際、見事な作戦であった。

●和衷協同煌めいて
「物は言いようだね……。祭だなんて馬鹿みたい。都合よく正当化しないでよ。結局は自分の事情じゃない」
「ええ、その通り。略奪する側の者が何を言おうと、正当性などありはしませんよ。オルハさんの『馬鹿みたい』、『馬鹿らしい』という意見には大いに同意しますね」
 緑色と藍色の瞳がすれ違ったのは一瞬のこと。既に始まっている戦闘に対して駆ける二つの影は、互いを尊重するように速度を合わせて暴力の嵐の中に突入していく。
 『彼』と『彼女』の二人の獲物は全く違うと言っても良い。にも拘らず、ここまで二人が呼吸を合わせて進軍できているのは、ひとえに二人が互いを信頼しているが故であろう。
「親玉を一気に仕留められればいいんだけど、そうもいかないか。ヨハン、力を貸してくれるよね? まずはこの人達を片付けちゃおう!」
「こういう時は、『助太刀する』、とでも言うのでしたっけ。ええ、行きましょう。近付く敵はオルハさんにお願いしますよ。俺は近付かれる前に敵を散らします」
 そうして二人の猟兵は往く。無愛想と気分屋の二人――。ヨハン・グレイン(闇揺・f05367)とオルハ・オランシュ(アトリア・f00497)の二人組は、その力を迷うことなく行使するために敵陣に向かうのだ。
 濡羽の黒髪、藍染まる瞳を持つヨハンがその手に持つのは蠢く闇を封じた黒光石、蠢闇黒。それは銀の指輪の先で夜闇のように輝き、敵と相対するその時を今か今かと待っているようであった。
 彼の前を走り、その眼を敵へと向けながらウェイカトリアイナを構えるのはオルハだ。彼女がその手に持つのは、特注の三叉槍。全体の重さは軽いながらもその穂先は鋭く、オルハの手の中で彼女の視線と同じように敵の方向だけを向いていた。
「来たか、新手……ッ! 者共! 新しい客であるぞ、槍1、無手1! ……いや、何か指先が怪しい光を……!? ともかく、油断するでないぞォ!」
 浪人の群れへと走る二人を、やや遅れて敵の一人が捉えた。既に他の猟兵たちの活躍によってこの一帯を取り仕切るものはいないようだったが、すでにいくらかの時間が経った中で生き残っている浪人たちも、そのそれぞれが強敵といって良い存在。
 新しい敵、そして見慣れぬ武器。この情報だけで、生き残っていた浪人たちは警戒を新たにして二人へと襲い掛かってきた。誰かが指揮を取らずとも自然に統率の取れたその軍勢の動きは、常人であればすぐさま飲み込まれてしまうような類の重圧と熱気を伴ってすぐそこにある。
「猟兵ッてのとやるのは初めてだが……! 坊主にお嬢、貴殿らを甘く見てはならぬと感じるのは気のせいではあるまい……!」
「買ってくれるのは構いませんけど、別にあなた達に褒められたからといって嬉しくはないですね」
「ヨハン、もう少しだけ待ってくれる? やるなら一気にまとめて、の方が良いでしょ?」
「構いませんよ、オルハさん。掃き掃除の要領ですね」
 だが、それは常人であればの話である。ここにいる二人は常なる人ではなく、超常の力を持つ猟兵なのだ。で、あるのならば、これから起こり得るのは浪人たちが行う蹂躙ではない。純然たる力と力のぶつかり合いである。
 そしてヨハンの力とは、即ち研究に没頭したことで手に入れた闇であったのだ。戦乱の中で蠢闇黒がその威を示す。夜半の月の如く暗く静かに、しかして確かに。
「――暗闇よ、影よ、靉靆たる晦冥よ。姿をあらわし、そして示せ。その……『忌むべき力』を」
「なんだ、これは……ッ?! 奇ッ怪な術を! 皆避けよ、蠢く闇に触れるな!」
 蠢動する闇が赤黒い土に這う。泥のように影のように、水のように空気のように、そこらで自在に広がって伸び、また縮んでは加速して浪人に取り付く。浪人の刃が反射する光を吸って、敵の恐怖と驚嘆を横目に見ながら、闇はさらにヨハンの指先から増え、周囲の敵に絡みついていく。
「おや、これは心外ですね。まさか闇から避けられるとでも? 影を踏まずして歩めるとでも? ほら、そこですよ」
「ぐゥッ……!! わ、……! ワレ、ハ、ァァ! アシガ、カッテ……ニ……ッ!!」
 蜘蛛の糸のように伸びて絡まり、薄曇りの雲のように際限なく広がるその闇は、ヨハンとオルハに攻め入ろうとした浪人たちの動きを纏めて止め、そしてその場に縛り付ける。
 絡みつく闇は即ち呪詛の役割を果たし、浪人たちの脚を縛ってある場所に押しとどめたのだ。二人の猟兵からさほど離れていないある一帯に集められていく浪人たちを次に待ち受けるのは、オルハの槍捌きである。
「ありがとう、ヨハン! おかげで十分集中できたッ! 行くよ、『見切れるなんて、思わないでくれる?』」
「ちィ! 見事な槍捌き、見事な槍の冴え! 実に素早い……! これは、……! 受けきれんか……ッ!」
 脚の動きを止めた一部の浪人たちを、オルハのウェイカトリアイナによる鋭い一撃が次々と捉えていく。腰を下ろして槍は柔らかく持ち、軸足の踏み込みと同時に左手を押し出して右手を滑らせる。
 一つ目の突きは素早く。刀の範囲外から伸ばした斬撃は敵の手首付近を的確にとらえ、まずは敵の獲物を落としていく。二つ目の突きは鋭く。無防備となった浪人へとオルハは先の突きよりも深い一撃を放ち、敵を無力化していく。
「太刀筋が読めるわけじゃないけど……! 敵の反撃なら察せる部分くらいあるよ、そこッ!」
 更に次、更に次。抉るように薙ぎ、裂くように突く。時に斬るように技で払い、時に力任せに敵を裂く。オルハはヨハンの協力の下、脚を封じられた浪人たちへ効率よく攻撃を与えていく。反撃を許さず、二の太刀を許さず、ただただ敵を仕留めていく。
 だが、その時である。
「……ッ、貰ったァ! 影のッ! まずは貴様から――ッ!」
 そこには影から何とか脱し、ヨハンの背後から忍び寄る浪人の姿があった。既に刀は振りかぶられ、後は振り下ろすだけといったところか。
 だが、その攻撃すらもオルハは受け止めていく。敵への攻撃の最中に槍を掌の中で半回転させて逆手に持つと、ヨハンの頭上へと真っ直ぐウェイカトリアイナを伸ばし、見事敵の刀を受け止めて見せたのだ。
「甘いッ! ヨハンに手は出させないよ!」
「……チィ、……! 見事也……!」
 そして敵の攻撃を受け止めてからのオルハの反撃は正に早業。逆手から順手に持ち換えた槍を風を待とうかのごとくに軽く、疾く扱っては敵の見切りが間に合わないほど高速の突きを放っていく。
 それこそ彼女の超常の力、【フィロ・ガスタ】の槍捌きであった。
「信頼しているとはいえ、自分より俺を優先して欲しくはないんですけどね」
「まあまあ、二人ともなんとかなったんだから良いじゃない! ヨハン、怪我はない?」
「敵の首魁と相対するまで、怪我などしていられませんよ。そうでしょう?」
「よーし、それじゃあこの勢いでいこう! まだまだこの先もよろしくね!」
 敵の返り血を浴びることすら厭わぬとして、ヨハンを守るために瞬時に槍技を放ったオルハを守ったのは、奇しくもヨハンの闇であった。
 彼は敵がオルハの槍を受けたその瞬間、彼女の周りに闇を操って移動させると、彼女が浴びてしまいそうな軌道の返り血を全てその闇で飲み込んでしまったのである。
 互いが互いを守るために最善を尽くし、ここまでは無傷で来れた。ならば、この先も――同じようにするだけ。隣に立つ人物を信じて、自分の技を振るうだけだ。二人の猟兵は、もう一度戦場の混乱に向かって走りだす。目指すは敵の首魁、オブリビオンである。

●天網恢恢疎にして漏らさず
「ふはは、礼を言うぞ猟兵! オブリビオンとやらに本気で従うつもりもなかったが、よもや祭の前段階の小さな戦で貴様らのような強者に会えるとは! 武者としての誉れ、祭のような戦よな!」
「民に手をかけ、何が戦か、何が誉れか! 戦とは泰平の世を築くためのもの、それを解さぬ者に戦を語る資格などない!」
 吼えるのは怒り。唱えるのは三種の魔力を呼び出す超常の法。呼び出すのは炎。それを纏いしは破邪の聖槍。黄金の穂先は炎を湛えて朱に染まり、悪を穿たんとす彼女の握りは研ぎ澄まされていくばかり。
 先に放たれた浪人からの袈裟斬りを真っ向から槍で受け、力で押し切り間合いを保つ。槍の長さを活かして立ち回りながら周囲の敵にも警戒を行い、時に背後より来る攻撃を察知してステップを踏む。躱すために踏み出した足を軸にして衝撃の波が生み出されるほどの一突きを放つと、目の前の浪人を二人纏めて始末していく。
「聖槍よ、炎を纏え――彼の者らの増上慢を打ち砕く力を!」
 オリヴィア・ローゼンタール(聖槍のクルースニク・f04296)は戦闘が始まってすぐに【トリニティ・エンハンス】を用い、聖槍に炎の魔力を纏って攻撃力を増大させると、その力と自分の技術を駆使して敵陣の奥深くで暴れまわっていた。
 邪悪に対しては苛烈な一面を持つこの猟兵にとっては、自身への境遇に甘んじて、楽な道である悪に身を堕とした浪人の行いを看過することなどはできなかったのであろう。その由を考えれば、彼女が浪人たちの退治に手を抜くなど出来るはずもないことはすぐにわかった。
 自身の身体の全てを全力で行使し、全ての力と技を以て、黄金に光る槍の先、そこに赤く燃ゆる炎で敵を灼滅せしめんとオリヴィアは動く。その度に、彼女の居る場所で戦音が聞こえる。きっと彼女は自分の身体にどれだけ負担がかかろうとも、悪を赦しはしないのだろう。
「……自分達の戦いが過去に終わっていることにも気がつかねぇで、戦いを求め続けるその姿。ちょっと哀れに思えるです。……でも、このまま村に進行させるわけにはいかねぇです。みぃ、フィーと一緒にあいつらを骸の海に返してやるです」
「はいなの、フィーおねーちゃん。現世を彷徨う妖払うは神月の務め……立派に果たしてみせるの」
 オリヴィアの戦っている場所とは少し離れた場所、村の入り口に近い場所で陣取り、敵を待ち受けているのはミルフィ・リンドブラッド(ちいさな壁・f07740)と神月・瑞姫(神月の狐巫女・f06739)の二人組。
 今回の戦いは防衛戦ということもあり、彼女ら二人は士気も高い状態でそこにいた。なぜならば、防衛線こそはミルフィの得意分野であるからだ。『ちいさな壁』を自称する彼女は、友人である瑞姫と共に梶本村の盾とならんとしてここに立っていた。
「ほう、拙者らの相手は幼子か。……しかし! しかし、貴様らも猟兵であるのならば、もはや見た目や武器で侮ることなどすまい! 全力を以てお相手いたす!」
 二人の姿を見ても、浪人たちはもはや油断もなく全力で踏み込んでくるのみ。彼らは既に他の猟兵たちの戦いぶりと、その多様さを知っている故だ。
 故に油断も慢心もせず、ただただ強敵に挑むという一念を以て挑んでくる。戦いも後半に差し掛かり、これから先に刃を交える浪人はこのような者共が多くなっていくのだろう。
「ええ、全力でかかってくればいいです。……でも、全力できても……勝つのはみぃとフィーですよ。みぃ! 牽制はこちらでやります、前は任せましたですよ!」
 敵の姿を捉えたミルフィは、予め敵の侵入経路上に撒いておいた『フィーの血液セット』の血液と、そして今までの戦いで流れたその全ての血を用いて、一つの術式を展開していく。名を、『血の弾丸』。
 自身や周囲に存在する血を槍のようにして射出するその術式が魔力を伴ってミルフィの掌の中で輝き、空間に魔力が充填して魔方陣が形成されていく。そして、次の刹那には、攻め入ろうとしていた浪人たちを血の槍衾が襲うのだった。
「守るものがある戦いはフィーの十八番ってやつなのです。みぃ、今ですよ!」
「チ……ッ! 『血』を操る術者か?! 何人かがやられたが……しかし、そういった手合いは近くより攻め入れば良いと相場が決まっておるわァ!」
 戦場で流れた全ての血液を我が意のままに操るミルフィは、戦場の至る所から血の槍を出現させては飛ばし、時には壁や杭のように用いて戦場を支配する。
 何人かを仕留めて見せたのは、『この血槍に当たってはまずい』と敵に印象付けるため。本命は別にある。そう、瑞姫こそが攻めの本命なのだから。
「今回は、フィーおねーちゃんがみぃを援護してくれるの。なら……何も怖いことはないの。みぃが使う術はこれ。狐火よ、いざ顕れよ……【フォックスファイア】」
 ミルフィが作り出した血の槍は、戦場に『血が流れている場所』と『血の流れていない場所』があることを敵によくよく意識付けた。そして、『血の流れている場所は危険である』ということも。
 それが意味することは、つまり『敵の進軍のコントロール』である。敵はもう、血の流れていない場所を優先的に通る以外に選択肢がなくなり、この広い戦場で安全な道を確保するために一ヵ所に寄り集まっている。
 つまり――敵を一気に片付けるなら、今なのだ。
「青い……炎ッ!? これはッ、血の流れていない場所へと向かっているのか……!? ッチィ! 者共、目の前の狐面を被った幼子からだ! きゃつを殺して、まずはこの邪魔な狐火を――」
「狐火躱せば斬撃が 斬撃躱せば狐火が襲い来る 二つを躱せば血槍 ……来ないのなら、こちらから」
 そして、『血液の流れていない場所』は瑞姫の狐火が潰し、出来上がったのは細い、細い、一本道。一人しか通れないような血槍と炎の壁で出来上がった通路の先で待ち構えるのは、白月のような刃を持つ薙刀、狐月を構えた瑞姫である。
 ミルフィと瑞姫は、二人の力を用いて『一対一専用の通路』を作り上げたのだ。
「……~~ッ、これでは我らの数の利が無いのと同義……ッ! このままでは……!」
 万が一、血槍と狐火の壁を力技で通り抜けても、自分の後ろは背を守るミルフィがいてくれる。彼女への信頼と勇気をもって、瑞姫は手持ちの狐火と共に、浪人への突撃を敢行した。
 彼女の振るう薙刀と全身に纏う霊気は、不可視の力を用いて敵の刀を受け止めていく。そうして生み出された敵の隙に、瑞姫は的確に薙刀を振るって敵の致命傷を与えていく。1対1を強制さえしてしまえば、数で勝る浪人が相手であろうともこの結果を呼び込めるのは当然であった。
「っぐ、……ぁぁぁ! 貴様ら、……ッグ、ゥアアアアア!」
「みぃ、こちらの準備は良いですよ。敵の返り血も利用した、『血液による悪夢の術式』……! 一気に片を付けてやる、です!」
「分かったの、フィーおねーちゃん。なら、こっちもいくよ。月天劫火……『紅観月』!」
 瑞姫が見事な薙刀捌きで敵の一人を倒し、他の敵との距離が僅かに開いたのを、背後で見ていたミルフィは見逃さなかった。すかさず瑞姫に合図をかけると、二人は息の合ったコンビネーションで血槍と狐火の壁を解除していく。
 だが、それは敵の浪人たちにとって良い知らせではない。むしろ、悪い知らせであった。辺り一面に広がって、そこら中に流れている赤黒い血の全てが、巨大かつ大量の槍へと姿を変えたのだから。――ミルフィのユーベルコード、【血滴る悪夢の槍】。先程までとは規格外の魔力を注ぎ込んだ超常の力は、一点に集まって解放の時を待ち望む。
 その隣で、瑞姫の放った狐火の群れも一つの指向性を持って集結し始めた。ミルフィの術にタイミングを合わせ、炎を操る瑞姫は周囲の狐火やそれ以外の炎でさえ飲み込み、薙刀へと一点集中させていく。
「血よ、血よ、血よ、戦で流れ出でた血液よ……。我に迫る敵を貫け……! 【血滴る悪夢の槍】!」
「纏わせ放つは破魔の劫火、地を割り走る紅月の刃也……! 舞う血飛沫 燃える血潮 その全てを2人は操り凌駕せん」
 戦場を、血と炎が支配した。
 ミルフィの術が、瑞姫の術が、その二つが、戦場に流れ出でる血と燃え盛る炎の全てを飲み込み敵へと襲い掛かったのである。敵にとってはまさしく悪夢以外の何物でもない光景がそこにあった。
 どこを見渡しても、そこにあるのは血槍と炎の二つだけ。そしてその二つが、まっすぐ自分たちの方へ向かってきているのだから。
「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアア!」
 悪に染まった浪人の罪が、杭と炎とで浄化されていく。戦場にあって圧倒的な力を持つ猟兵たちは、もはや浪人たちの反撃すら許すことはなかった。
「時代の流れってのは、時に厳しいもんだよね。栄枯盛衰、諸行無常ってやつか。けど、それを受け入れらないだけならまだしも、刀の為に村を襲おうってのはな……。流石に、ほっとけないよね」
「同意見だ。時が流れること。時代が変わること。その中に取り残されること。それが案外キツいことだってのは俺も分かっちゃいるが、やることの免罪符にはならんわな」
「好きなように言うが良いわ。侍とはかくも戦を求めるもの。……暮らしのために刀を手放した侍など、誇りのかけらもないではないかァ!」
 敵陣深くで戦うオリヴィアたちのその後ろ、空き地の後方である村の入口付近で浪人たちを食い止める最後の壁となっているのは二人の猟兵。
 【魔導機兵連隊】によって召喚された30体近くの戦闘用魔導機械式ゴーレムが浪人の刀を堅牢な装甲で受け止め、その剛腕で敵の抵抗を止めていく。横一列に並んだゴーレムたちの脇をすり抜けようとする浪人たちを、しかして幾重にも重なる手裏剣の群れが制する。
 さらに手裏剣を手足に受けて動きを僅かに鈍らせた浪人へ向けて、鋭い眼光を持つ男が走り込んで至近へと至り、刀による迎撃を許さず顎へ横殴りのフックを浴びせては次々に気絶させていく。
「助かる、こっちの獲物は拳なもんでな。接近の前に怯ませてくれるのはありがたいぜ」
「まあ、そこはお互いさまってことで。追撃ありがとう。次は2時の方向、その次に10時。おっと正面から二人来た、そっちは任せていい? ええと……」
「夜昂だ。鳳仙寺・夜昂。良いぜ、目の前の二人は俺が請け負った。左右の敵は任せたぜ。そっちの名前、聞いても良いか?」
「了解、それじゃこっちは左右の方を。俺は月凪・ハルマ。よろしく、鳳仙寺さん」
 鳳仙寺・夜昂(仰星・f16389)と月凪・ハルマ(天津甕星・f05346)の二人の猟兵は、ゴーレムの壁を乗り越えて村へと入り込もうとする浪人を水際で押しとどめる最終防衛線としての役割を担っていた。
 前線では他の猟兵が戦い、敵の戦力を着実に減らしていく。だが、それでもやはり略奪を優先しようとして村へと前進してくる輩はいるものだ。そして、前線とは違ってこの場所では僅かな失敗は許されない。
 『最終防衛線』とは、つまりそういうことなのだ。一人の敵すらもこれより先に進ませてはいけないという、デッドライン。多数のゴーレムを使役して敵の侵入経路を潰せるハルマと、身軽であるがゆえに対応力の高い夜昂がここに立つのも納得と言えた。
「ちィ……! 飛び道具とはまっこと卑怯な手を使う! 猟兵とはそのような武器を使わんといけんのかァ!」
「そっちだって刀を奪うために村を襲おうって連中だろ。まともに聞く気も無いけどさ」
 ハルマは出来る限り腰を下ろして姿勢を下げ、踵を地面へと付けず、足先のみで戦場を駆け巡る。極力音が出ない忍び足のやり方ではあるが、その状態で高速の戦闘起動を行えるのはさすがと言うほかなかった。
 村の入り口の柵の裏、はたまたゴーレムたちの影、もしくは他の浪人などの背後。ハルマは戦場に存在する全てを遮蔽物として利用し、侵入してくる浪人達の死角へ入り、視線を切っては隙を見、掌を滑らせる機を窺っていく。
 向かって左側に位置する敵が一瞬こちらを見失ったのを確認するや否や、彼は敵の首元へ車剣を打って無力化する。更にはそれを好機と見て接近してくる右側の敵の刃すらも見切ると、残像が残るほどの速度で右足を軸に身を滑らせ、すれ違いざまにトンファー型ガジェット『魔導蒸気式旋棍』を腹に向けて叩きこんだ。
「ゲッ……ッ、! ハ、アア……!」
 斬撃ならともかく、打撃であれば返り血を浴びるようなことも考えずによい。ハルマが近距離での選択しに旋棍を選んだのも妙手であったと言えるだろう。
「さて、こっちの二人は済んだか。鳳仙寺さん、援護する!」
「おう、頼む。こっちでタイミングは合わせるからよ。やるぜ、ハルマ」
「無手とは舐められたものよなァ!」
「だが手は抜かんぞ、我らが剣の錆として――ッ?!」
 ハルマの次の狙いは正面からタイミングを合わせて突破を狙う二人の浪人。遠距離攻撃はこういった時に場所や角度をそこまで選ばずに連携が取れるのが強みの一つ。さらに言えば、今回は一人で止めまで刺す必要があった先ほどとは違う。
 夜昂が大連珠を掌に持って小指を折る。これは力だ。薬指を折る。それは至近でなければ当たらない。中指を折る。ただし、発動すれば超高速を伴って――。人差し指を折る。そして、大威力を持っている。四つの指を折りたたみ、その全てを親指で堅く、強く包んでやる。即ち――それこそ『拳』。【灰燼拳】の完成である。
「獲物の寸が違う以上、組み合う前にこっちが斬られるのは織り込み済みだったが……。ヘッ、こっちも一人じゃないもんでな。『先の先』、受けきれるなら受けきってみろ――!」
「ま、そういうことだね。そっちだって徒党を組んでるんだ。別に今更、正々堂々となんて言わないよな?」
 ハルマの打った二枚の手裏剣は浪人たちへと直撃し、敵は僅かな出血と驚愕を伴いながらも、しかし刃は離さなかった。だが、それでは遅いのだ。
 どこか敵の身体の先端にでも手裏剣を当てさえすれば良い。様々な形の手裏剣たちはハルマの掌と手首が生み出す回転と運動エネルギーを乗せて敵へと飛来し、時に車剣が回転しながら敵の手首へと。時に棒剣が直投げの勢いそのままに敵の足首へと過たず吸い込まれていく。
 そら、手裏剣に気を取られている間に、『拳』はもうそこにある。ハルマの支援もあって敵の懐まで一気に潜り込んだ夜昂は、その超常の力を解放していく。
「くぁ……ッ?!」
「が……ッ!!」
 身軽さを活かして高速で走り寄る夜昂は、敵の返り血をダッキングで躱し、刃は身をかがめて潜り抜ける。そして放つは超々至近距離から放たれるアッパー&ストレート。
 夜昂は向かって左に位置する敵の顎を潜り込んだ勢いそのままにアッパーでかち割ると、右側の敵にもストレートをまっすぐブチ込んで見せた。超常の力を纏ったその拳は、もはや兵器と呼ぶにふさわしい。
 彼らは今が初顔合わせにも関わらず、的確な連携と自身の得意とする技術を敵へぶつけることで、与えられた役割を十二分に果たしていく。まるでそれこそが猟兵の本懐であるかのごとく。
「すまない、タッチの差でここの迎撃には間に合わなかったか。二人とも、怪我はないかね?」
 そこに現れたのは、蔵座・国臣(装甲医療騎兵・f07153)。彼はどうやら愛機である鉄彦に騎乗して戦場を回り、避難が間に合わなかった村の子供たちなどを助けながら、怪我を負った猟兵たちの傷を癒して回っていたらしい。
 各種医療キットにポーションの詰め合わせ、サイボーグなどの治療に必要な修理キットを自分のメインウエポンとして各地の戦場を渡り歩く彼は、簡単に言えば辻医者である。戦闘開始前に村に現れた医療用の拠点は、どんな種族の猟兵がこの戦場で倒れたとしても十全な治療を施せるように国臣が用意したものだ。
 きっと、彼にとっての戦いとは多くの命を救うことなのだろう。それも、出来得る限りの直接的な行動で。多くの猟兵がいる中でも、彼は特別自身の行動にこだわりを持って動いているかのように思えた。
「ああいや、俺は大丈夫。前に出てくれてるのはゴーレムたちと鳳仙寺さんだし」
「俺も直接のダメージってのは特に。前の奴らのおかげもあるが、ハルマの助けもあってな。こっちは何とかってとこさ」
「そうか、何より。見事な守りに感謝する。誰かが安心して前に出られるのも、優秀な後備えがいるからこそだ。幸運を」
 そう言って国臣は再度鉄彦に騎乗すると、戦場の端から端へ再度駆けていく。
 猟兵たちのそれぞれに得意なことと役割があり、そしてその全ては等しく価値を持つ。敵と真正面から切り結ぶ猟兵が安心して前へ出れるのは殿を務める誰かがいるからこそ、そして優秀な回復役がいるからこそである。
 そしてそこから遠く離れた場所にも一人、無くてはならない役割を持った人物がいた。
「りょ、猟兵さんやぁ……本当に、大丈夫、なんですかの……?」
「うん、平気やよ。あーしだけやない、皆戦ってくれとる。あーしたちがいるかぎり、村のみんなには指一本触れさせんよ!」
「ばあさん、大丈夫やぁ。こぉんな頼もしいお嬢ちゃんが来て下すったんですものぉ。それに、わしらが不安になっちゃ納屋で待ってる子供らぁもかわいそうじゃ、どぉんとお任せしようじゃないか」
 この梶本村には年寄りが多い。ということは、彼ら全員を避難させるのにも時間がかかる、という事だ。村の方針として、優先して避難させたのが女子供であったという事情もあるだろう。『万が一』に備え、村から離れた畑に残っていた老人たちを連れて空き地を出来るだけ迂回しつつ、村内部の納屋への避難を先導していたのは灰炭・炎火(Ⅱの“破壊”・f16481)。
 彼女自身は小柄ではあるが、彼女が構える“ニャメの重斧”はどこまでも重く、そしてまた鈍く光を受けて輝いていた。長さは3m超、超重量と超密度を誇る、赤い宝石で出来た巨大な斧を持ち運ぶ彼女がいてくれるからこそ、移動する村人たちもどこか安心できている様子である。だが、起こって欲しくない時に限って万が一というものは起こるもの。それはどの世界でも変わらない、奇妙な不文律である。
「ヘヘッ、枯れた爺婆だけならもしかしたら気分次第で見逃したが……。お付きに猟兵様までいらっしゃるじゃねえか。あぶれっちまったかとも思ったけどよォ、その獲物、ワクワクするねェ。……いっちょお手合わせ願えるかィ?」
「……おじいちゃん、おばあちゃん。あーしの後ろに下がってて。絶対、前に出たらあかんよ。……ねぇ、あんた。あーしねぇ、戦うのは大好きなんやけど。したくない人にぐいぐい行ったりせぇへんの、そーいうのは嫌い。やけ、良いよ。戦いたい盛りのあーしが相手になったげる」
 そこに現れたのは、どうやら戦の中で戦う相手を探して彷徨っていたと見える浪人たち。彼らの眼に宿る光はもはや正気のそれではない。戦乱を求め、死に場所を求める眼光の色だ。
「おおッ、良いねェ。話が分かるお嬢ちゃんだ。遊ぼうぜ? アンタが強いとさらに楽しいから、それを期待するんだがね」
「戦乱、したいの? 戦、楽しいの? うん、あーしも同じよ、せやけ、あーしと遊ぼうよ。――村のみんなには指一つ触れさせん。これから先には……一人も通さへんからね!」
 戦場の端で、炎火の戦いが始まる。彼女の好きな事は戦う事で、この戦いも、もしかしたら彼女にとってはある種『望み通り』のものかもしれない。
 しかし、これは炎火のための戦いでは決してない。これは炎火による、誰かを守る戦いだ。暴力と破壊が得意な、それでいて村民を守るために戦う彼女の力は、故にこそ戦場の端が相応しかった。『心置きなく暴れられる』から。
「あたったら痛いと思うけ、気をつけてー」
「ハハッ、ハハハハハハァ!! すげェ、すげェなその獲物! はじめて見たぜ、そんな馬鹿でかい獲物よォ! 受けてみてェ、止めてみてェなァ、それェ!」
 ニャメの重斧を小さな肩に担ぎ、炎火は『小細工無し』で敵の集団に突っ込んでいく。間合いの取り方や呼吸など気にする素振りさえ見せない。
 彼女にとって戦いとは破壊であり、破壊とは純然たる暴力だ。そこには技術も思考も介在する予知などほとんどありはしない。『殴れば痛い』。突き詰めれば暴力などそのような物。
 だが、それを証明するかの如く、炎火がブンブンと音を鳴らして振り回す『ニャメの重斧』という名前の暴力は、余りにも圧倒的であったのだ。
「うっええっっっっ」
「ぎィッ、がッッ」
 炎火が振り回す暴力に当たった敵は、まるで紙切れのように空を舞っていく。重ねて言うが、これはただのぶん回しだ。だが、確かに『それ』はある。純然たる、どこまでも純粋な暴力というものは、時に説明すらを省いてしまう。
 彼女が思い切り殴ったから、それを受け止めきれなかった敵は吹き飛ばされた。そうとしか形容できないほど、この戦はどこか狂っていた。
「ハッハァ! 良いねェお嬢ちゃん、今度は俺の番だぜェ、その攻撃出して来いよォ!」
「…………30cm以内にしか、あんたらの反撃届かないんよね? あーしの武器、3mあるし。あーし自身は30cmないし。あーしに殴られて、反撃できるかどうか、楽しみ!」
 しかし、狂っていたのはこの戦場の在り様だけではない。きっともう、敵の精神構造も既に狂ってしまっていたのだろう。
 既に幾人かの仲間がちり芥のように吹き飛ばされたのを見て、それでも目の前の浪人が前進を止めないのは、戦乱を体が欲しているが故だろうか。もしくは、死を欲しているからであろうか。
「来なァ! お嬢ちゃんのその攻撃、受け止めきって反撃してやるからよォ! こっちにも『侍の意地』ってもんがあらァ!」
 炎火の放つ振り回しを視、目の前でまた一人味方の浪人が消えたのを目の当たりにして、それでもその男はニャメの重斧の射程内へと入り込んできた。既に抜剣も済ませている。炎火の場所まではあと大きく踏み込んで2歩というところだろうか。
 彼女がニャメの重斧を再度振り払うため、その手を戻す。その動作を見て浪人がもう一つ歩を進める。あと一歩。勝負は浪人は炎火の攻撃を受け止めきれるかどうか、という局面へと至っていた。
「……ッ!! ……ッ、ッ、ッ……! 受け……止めたァ……ッ!」
 そして、インパクト。振り戻された重斧を、浪人が全力で受け止めていく。その際の衝撃はすさまじく、辺り一面に響き渡った重い金属音がその一合に込められた力の量を物語っていた。
 何とか鍔迫り合いの形に持ち込んだ浪人は、全ての技術を出し切り、全身の筋肉をきしませながらも炎火の攻撃をその刀で受け止めて見せた。――だが。
「へェ? これは防がれるんや。あ、でも。あーし、こっちの一撃は……仕留め残ったこと、ないんよね!」
 浪人の必死の抵抗を、鍔迫り合いの形から【ただの暴力】が無理やり押しつぶしていく。――どごぉん。戦場一帯に、その日最も大きな轟音が轟いた。
 そう、先ほどまで炎火はユーベルコードを使用していなかったのである。もしかしたら、この技を使った結果の周辺地域の破壊を避けようとしていたのかもしれない。
 だが、心情は誰にも分からない。分かるのは結果だけ。つまりは炎火の超常の力が、とてつもない轟音と周辺地域の破壊を伴いながらも、ここら一帯の浪人全てを打倒したという一点のみである。
「凄まじい音だったが……む。そうか、……なるほど。では、ここからは私が彼らの避難を行おう。お二人とも、こちらに乗っていただけますかな? 少々狭くはありますが」
「あぁ、いやぁ、腰が抜けてしまったわい。お嬢ちゃんや、ありがとうさん。お強いんじゃなあ、あんたぁ」
 炎火が起こした音を聞き、何事かと国臣が鉄彦に乗ってやって来る。周りを見、そして状況を察した彼は、要救助者を乗せる為の鉄彦用のサイドカー、テツハコに二名の要避難者を収容していく。
「あ、お医者さん? 助かるよ、これでおじいちゃんおばあちゃんたちも安心やね」
「なに、このご老人たちを守ってくれていたのは紛れもなくそちらの功績だ。その働きに敬意を。回復は要るかね? 疲労は?」
「いやぁ大丈夫、ありがとう! それじゃあーしももう少し暴れてくるけん! 敵の親玉も一発殴ってやらんと気が済まんもんね!」
 国臣が異変があったと思しき場所へすぐさま向かっていけるのは、ひとえに彼が戦場を一歩引いた視点で俯瞰的に見ているからだ。その視点は誰かを救うという点において必須なものであり、それが出来ているからこそ、彼は助けが必要な場所へ的確に移動を行えている。
 愛機である鉄彦を走らせ、老人たちを連れて国臣は一度村の内部へ向かう。そして炎火は、また戦乱の中に身を投じるのであった。二人の行動は真逆のものといえるかもしれないが、その行動の根源たる思いは同じであったろう。即ち、『この戦乱の終焉』である。
「……ハッ、……ハァッ……! ガァァァァァァァァァ!!」
 炎火が轟音と共に戦乱の最中に突っ込んでいったその後、オリヴィアは今もまだ全力で敵陣の奥深くを進んでいた。単身で何十もの敵と戦い、時に反撃を受けて傷を負い、既に体に疲労は溜まっている。
 つまるところ、彼女は既に満身創痍であるのだ。当然だ、幾ら超常の力を持つ猟兵といえども、単身で怒りのままに敵陣の中を進めばそうもなる。だが、オリヴィアは立ち止まらない。崩れそうになる膝を気力で支え、邪魔な痛みを叫ぶことで退かして槍を放つ。
「ウアアアアア!!」
 決死の覚悟で放たれる敵の反撃の間合いを無理やり見切り、タイミングを合わせて振りかぶられた刀ごとガントレットで殴り飛ばす。浴びた返り血から顕れる悪意の炎は、自身の纏う聖なる炎で出来る限り打ち消していく。他の猟兵たちの攻撃を受けて大きく吹き飛ばされ、地面に転がってきたと見える浪人は、起き上がられる前に力を込めてグリーブで踏みつぶす。
 どれだけ自分が傷を負っていようと、彼女が悪を許さぬが故に、彼女は邪悪の狩りを辞められぬのかもしれない。
「そこまでだぜ、女……! ブッ殺してや……ギャアアアアアァ!」
「――食っていけなかった、だからこの略奪も仕方なかった、とでも? 刀を鍬に持ち替えるだけの事だろうよ。刀が誇りだ、等とは言うまいな。村を襲い、あまつさえ背後から敵を刺そうとする今の姿に、誇りの欠片も見られんのだから」
 そこに、文字通り――オリヴィアにとっての救いの手が現れた。
「……急患の気配を察知してな、鉄彦を急がせた甲斐があった。時間がない。この場で治療する。今回も死に損なって貰おうか」
 オリヴィアの背後から忍び寄って刃による刺突を行おうとしていた浪人を速度の乗った鉄彦で思い切り轢いてやりながら、彼女の危機に参上したのは国臣であった。
 彼は【戦線緊急治療】による医療用ナノマシンを用いて、オリヴィアの身体から傷や疲労などを取り除いていく。
「あ、え、あなたは……国臣、さん……? い、いえ……! ありがとうございます、これで……百人力です! 正式なお礼は、この戦いが終わってから、ということで! 今はこいつらを、そして……あのオブリビオンを!」
「ああ、そうしてくれるとありがたい。私は今回支援に徹するつもりなのでな。迅速、かつ適切に――処置を行っていこう」
 自身の体力を気にせず、全ての力を用いて悪を断じていく猟兵。そして、自身の疲労も厭わず、全ての力を駆使して傷を癒していく猟兵。二人の猟兵が敵陣の真っただ中で出会い、そして歯車は再度回り始めた。
 聖なる炎は、まだ消えやしない。猟兵たちが掲げた希望という名の炎は、今なおそこかしこで熱く燃えてここにあった。
大成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵

ヴァーリャ・スネシュコヴァ

待て待て待てーい!!
村に土足で踏み入って掠奪…到底サムライのすることではないのだ!
ここで成敗してくれる!
…俺、今のサムライっぽかったな? えへへっ

では、俺は『雪娘の靴』を中心とした戦い方でいくぞ!
あえて攻撃を外し地形を凍らせ、敵の動きを阻害しつつ
氷のブレードでアクロバットに【ジャンプ】しながら、回転【2回攻撃】!
向かってくる敵には、地形の氷面を利用し【残像】を残すほど加速
懐に潜り込んで、《スノードーム》でどんどん斬りつける!
悪いが、俺は氷の上なら無敵だ!

相手が攻撃を相殺してくるかもしれないが…
相殺するときに取るアクションに隙があるなら
氷の【属性攻撃】で、倒れたまま凍らせ身動き取れなくさせる!


鳴宮・匡

◆ヴィクティム(f01172)と

主戦場よりやや後方に配置
出来れば空き地全体を見通せる高所か
無理でも出来る限り視界の通る位置取りを

射線の通る相手から順に撃っていくよ
明らかに殺れる相手がいれば距離を問わず殺すけど
なるべくならより村の近くまで踏み込んできた奴からだな
少なくとも、自分の刀の届く距離までは絶対に踏み込ませない

混戦だろうが誤射するほど素人じゃない
狙い難い相手だろうが外すつもりはないけど
誘き寄せてくれるならありがたく肖ろう
仕事は楽なほうがいい、そのほうが結果が出るのが早いからな

……おい、あんまり持ち上げんなよ
こんな仕事、注目されていいことなんてないぜ
まあ、どうせ全員殺すんだしいいけどさ


ヴィクティム・ウィンターミュート


【鳴宮・匡と】

多数の猟兵が参加するんだ。それはそれは騒がしい戦場になるだろうよ。

つまり、それに紛れて隠密行動だってできるわけだ。
ユーベルコード発動、技能を超強化。
【忍び足】と【追跡】で敵の群れに音も無く近づき、一人を【暗殺】
そこで初めて俺の存在をあえて、気付かせる。当然敵は追ってくるよな?

追ってきたなら、匡のファイアレーンまで【おびき寄せ】て、BANBANBAN!ってな。
暗殺はこのための布石。本命は匡の腕を信頼した罠さ。
暗殺だけが能だと思ったか?一流のフェリーマンは稀代の【罠使い】でもあるんだぜ?

ヘヘッ、ここにおわすは鉄砲の名手、鳴宮・匡様だぜ?恐れ慄きな!
旧時代のサムライども!


荒谷・つかさ
【FH】

反撃が恐い相手なら、一撃のもとに打ち砕くのみよ。

ユーイの反重力シールドに同乗し、高さを稼ぐ
その後タイミングを合わせ【荒谷流重剣術奥義・稲妻彗星落とし】を発動
空中で大剣「零式・改二」に属性攻撃の風の刃を纏わせ、剣に装着したブースターで自身を吹き飛ばし加速
持ち前の怪力と鎧砕きの技能で敵群中央の敵を叩き斬る
叩き斬ったと同時に纏わせた風の刃を解放し、それと大地を砕く大破壊及び衝撃波による範囲攻撃で周辺の敵を一掃する

これぞ私達の、連携奥義……
名付けて、【双星の万有引力(ツインスター・グラビトン)】ッ!!!

その後は適切に間合いを取りつつ、浮足立った敵を各個撃破するわ


ユーイ・コスモナッツ
【つかささん(f02032)】と一緒に

彼女を抱えるようにして反重力シールドを起動
いつもよりとりづらいバランスは騎乗技能でカバー
高い位置から敵群を迎え撃ちます

納さんによれば、
UC【侍の意地】は
攻撃をわざと受けることで発動するとのこと
この情報を武器にします

わざと受けてくれるなら、
遠慮なく大技をお見舞いします
その一撃で決着をつければ、
反撃もなにもないでしょう

目と目で合図、急加速急降下!
つかささんの荒谷流重剣術奥義と
【彗星の重力加速度】の連携攻撃、
ひっさぁつ、【双星の万有引力】!!

辺りの地形も変えてしまいますが、
それによって複数の敵を巻きこみ、
血によるカウンターも防ぎます
こ、これも計算どおり!
うん!


●そは氷、そは盾、そは刃
「待て待て待てーい!! 村に土足で踏み入って掠奪とは……到底サムライのすることではないのだ! その悪行、許しておけん! 俺達がここで成敗してくれる!」
「あ、ヴァーリャさんかっこいい! あれに似ていますね、なんでしたっけ、ええと、サムライエンパイアの……」
「ユーイの言うそれって……侍かしら? でも、ええ。そうね、今の口上は侍みたいだったわ。ヴァーリャも中々カッコいいじゃない」
「今の、そんなにサムライっぽかったか!? えへへっ、二人ともありがとうなのだ! では、気を取り直して……。二人とも、アイツらを止めよう! 手伝ってくれるか?」
 三人の猟兵は、言葉を交わしながら地面を蹴る。数字にしておおよそ450mといったあたりに敵を捕捉しながら、超高速で敵へと向かっていく。
 彼らのうちの一人、ヴァーリャ・スネシュコヴァ(一片氷心・f01757)が通るのは、急激に冷やされて出来上がった、白銀混じりの氷の道。その上を進むヴァーリャは、トゥーフリ・スネグラチカに精製した氷のブレードを用いながらまさしく滑るように華麗な移動を見せていた。
 生来の氷と冷気を操る力と、類まれなスケートの技術。この二つがあってこそ成り立つ、ヴァーリャが得意とする移動方法は、滑走によって大きく推進力を得ながら進みつつ、自身の前方に地上に瞬時に氷の道を作り出して進むという芸当によって完成へと至っていた。
「ええ、もちろん。――何の罪もない村人を襲い、あまつさえそれを祭りとはやし立てる行い……。到底、看過できるものじゃないわね」
「つかささんに全面的に同意です。騎士道の観点から見ても、人道的な観点から見ても、彼らの略奪行為は見過ごせません! なんとしてもここで止めましょう! ……飛ばしますよ!」
 氷の道を描いて走るヴァーリャの隣で、反重力シールドを起動しながら最大限に推進力を得ているのはユーイ・コスモナッツ(宇宙騎士・f06690)。そして彼女のシールドに背中合わせに同乗し、巨大な剣である零式・改二を構えるのは荒谷・つかさ(風剣と炎拳の羅刹巫女・f02032)。
 彼女たち三人は示し合わせて戦場へと突っ込んでいく。狙うは真ん中、敵陣の真っただ中である。氷の道と重力の道が、交わり合って一つに重なる。三つの力が一つと成った作戦が、今まさに行われようとしているのだ。彼女らは放たれた矢の如くに高速で向かう。この戦闘を、終わらせるために。
「接敵まであと僅かです、お二人とも準備良いですか!?」
「いいわよユーイ、いつでもやってちょうだい!」
「こっちもOKだ、タイミングはそっち合わせで! 敵の動きを封じるのは任せてくれ!」
「では! ――――ッ、Goッ!!」
 浪人たちの間合いに入るその寸前で、三人の猟兵は二人と一人に分かたれた。地上を行くヴァーリャと、中空へと上ったユーイたちである。
 重力を速度に変えて進む盾は、風を伴った剣と共にどこまでも空高く進んでいく。そして、その下では氷を纏った滑走が目にも止まらぬ速度で浪人たちへ手痛い『挨拶』をしようとしていた。
「――なッ、なんだアレは!? 氷?! 皆の者、新――」
「――遅いぞ。そっちが喉を震わせて声を出すよりも、こっちがお前たちを凍らせる方が早い。……−273.15 ℃。何のことか分かるか? 俺の魔力がもたらす――温度の話だ!」
 『氷』。氷とは何か。即ちそれは物質の熱振動をもとにした運動の一つの表れである。温度が0度以下になると、水分に含まれた分子はその熱振動の動きを低下させていく。そして分子の動きが完全に止まり、分子間の結合が果たされた時、それを以て水は氷へと成るのだ。
 そして、エネルギー力学的な観点から見て熱振動の振り幅が最低となり、『原子の振動の全てが止まる状態』がある。その名は『Absolute zero』と言い、その温度は――『−273.15 ℃』。つまり、ヴァーリャの放つ魔力は、放たれた場所の分子間の運動を全て静止させていく。水は氷に。大気は霜に。土も、泥も、その一切合切に含まれるすべてすらも氷に変えて、その上を彼女は奔る。
 わざと魔力を『当てない』ことから生み出された氷道の上を駆ける、ヴァーリャの最大の得意技にして真骨頂。その超常の名は、【雪娘の靴】。『絶対零度』を操る娘は、踊るかのように戦いを始めた。
「ア……ッツ?! 『熱い』ッ……!!?!」
 不思議なものだ。極まって異常に冷たいものが肌に触れると、人はそれを冷たいとは知覚できなくなる。ヴァーリャの魔力を吸って熱いほどに冷やされた大気は、地面に流れた血液はもとより足元の土さえ凍らせて氷面とし、敵の肌に霜すら起こしていく。
 理解できないほどの冷気の中では、人の判断能力は著しく下がる。具体的に言うならば、『一つのことしか考えられなくなる』のだ。-50℃の環境では、命がかかっているのにも関わらず、薄着の人間が万全な意識を保って行動できる時間はあまりにも短いという。圧倒的な寒さは、時に思考や反射といった部分から人を害していくのだ。
 ――では、−273.15 ℃の魔力がまき散らされたこの場所で、浪人たちの動きはどうなるか? その答えは、ヴァーリャの行動によって回答が提示されようとしていた。
「はァッ! それッ!」
「ち……ッ! ちくしょう、目が! 目が開けねえ!! 俺の脚は何で動かねえんだ?! まるで地面にくっついちまったみてえにピクリともしねえ! なんでだ?! なんで!?」
「手が、刀の握りが……! なんでだ!? 刀に引っ付いちまって、取れ――ギャアアアア!」
 至る所に生み出された氷面を、自前の氷のブレードでアクロバットにジャンプしながら、踊るように蹴り、舞うように切裂く。ヴァーリャの動きは氷の上でどこまでも洗練されていき、浪人たちは対照的にどこまでも氷に翻弄されていく。
 動くための足元を、刀を振るうための手元を、視界を得るための目を、ヴァーリャの氷は見事に捉えて離さない。ブレード外側のエッジを用いて思い切り滑り、右足を踏み切ってダブルループを行った彼女は、動きを止めた浪人たちへ勢いを乗せた蹴りを放ち、的確にダメージを与えていく。
「悪いが、俺は氷の上なら無敵だ! そのまま動きを止めていてもらおうか!」
 自ら向かってくる敵には作成した氷面を利用して加速を行い、残像を残すほどの速度を得て懐に潜り込んでいく。バタフライを行って自身の身体を氷面と平行に保ち、刃を凌いで見せたヴァーリャは、そのまま手に持ったスノードームで横薙ぎに敵を次々に斬り裂いていく。
 いくら敵が『斬られ慣れ』ていようと、氷をここまで自在に操る猟兵と戦うのは初めての経験だったことだろう。足元すらおぼつかずに、敵の浪人たちは氷とスケートの申し子に成す術もなく倒れていく。そして倒れさえしてしまえば、後はヴァーリャが凍らせて身動きを取れなくする。
「貴様……! 好き放題やってくれたようだな! 皆の者、きゃつを囲め! 生きて逃がすでないぞォ!」
 しかし、敵の数もまた侮れるものではない。ヴァーリャが多数の浪人の動きを止めている間にも、彼女は次々と現れる浪人たちに包囲されていく。このままでは、数に押されて窮地に陥るのも時間の問題であるかのように思えた。
 ――しかし、それは違う。違うのだ。ヴァーリャは、いや、ヴァーリャたちは、最初からこの形を狙っていたのである。
「つかささん、少し良いですか? 予め得ていた情報によれば、敵のユーベルコードは攻撃をわざと受けることで発動するとのこと。で、あるなら……」
「ユーイもそう思った? 私もよ。反撃が恐い相手なら、一撃のもとに打ち砕くのみ!」
 ヴァーリャの上空、およそ50km。つかさとユーイの二人は、反重力を駆使してここまでやってきていた。山を見下ろし、雲を突き抜けて。成層圏と呼ばれる、その高みまで。
 二人の狙いはただ一つ。ただの一撃を放つこと。ただただ、超強力な一撃を放つこと。それだけだ。既に地上にいる浪人たちの多くはヴァーリャが動きを止め、そしてさらに彼女を包囲せしめんとして他の場所からも浪人たちが近寄ってきている。これ以上の好機は、今を置いてほかにない。
「わざと受けてくれるなら、遠慮なく大技をお見舞いします! その一撃で決着をつければ、反撃もなにもないでしょう? ――ひっさぁつ!」
「重剣術奥義……この剣に、打ち砕けぬもの無し! これぞ私達の、連携奥義……! 名付けて!」
 ユーイの反重力シールドを使用したユーベルコード、【彗星の重力加速度】。つかさの最も得意とする奥義、【荒谷流重剣術奥義・稲妻彗星落とし】。
 目と目で合図を行った二人は、二つの超常の力を同時に放つ。彼らの放った技は、重力と加速、風と剣技を纏って地に落ちていく。急加速、急降下、急突撃で狙う場所は、敵の動きを止める氷の陣が敷かれたその場所である。
「行けッ、二人とも! 浪人たちの動きは俺が! だから、決めろーーッ!」
「「はァァァァァッ! 【双星の万有引力(ツインスター・グラビトン)】ッ!!!」」
 つかさの剣のブースターによる加速、流星の運動方程式からなる運動エネルギー、位置エネルギー、そして重力的推進力(グラヴィティアクセル)。更に二人乗りの不安定さをカバーする見事なユーイの騎乗技術と、つかさの持つ怪力。
 その全てが乗り、ヴァーリャがお膳立てした場所へと吸い込まれるように彼女らは往く。ユーイのシールドが氷面中心へと確かに降り、つかさの剣が周囲の敵陣を全て叩き斬ったと同時に風の刃を解放していく。
 彼女たちの出来得る限り全てを乗せた大地を砕く大破壊と、衝撃波による範囲攻撃。衝撃、轟音、振動、濛々と立ち上る土煙と、至る所で割れていく霜。最早その一帯に大きな敵の反抗など残っているはずもなく、三人の猟兵は互いの無事を確かめて快哉を叫ぶ。
「うおおおー! すごい! すごいぞ二人とも! 俺も活躍したし、これは三人とも大金星という奴では……!?(きらきら)」
「しょ、少々やりすぎてしまった感もありますが……! こ、これも計算どおり! うん! ヴァーリャさんも、お見事でした!」
「一掃、完了ね。辺りの地形も変えてカウンターすらも防いでしまおうってユーイの発想には驚いたけど、これなら反撃のことも――、いや、まだね。今ので他の方面にいた敵たちが寄ってきたみたい。二人とも、浮足立って近付いてくるのからやるわよ!」
 だが、至強の一撃を放った後でさえ彼女たちに安息の時間はない。あるとすれば、それは敵の首魁であるオブリビオンを倒してからのことだ。
 氷が、盾が、剣が敵に向かって距離を詰めていく。三人の猟兵は、ここへ現れた時と同じように間を置かず敵陣へ突っ込んでいくのであった。

●願うは『凪の海』。ここに『冬の静寂』を。
「首尾は?」
「上々。崖上から見るこの村の眺めはどうだ?」
「悪くない。日が落ちれば、きっと山間に夕日が奇麗に……」
 典型的な顔立ちの東洋人。普通のお兄さん。浮かべる顔は、穏やかな表情。そして、各地を転戦した戦場傭兵。“凪の海”。浮かべる顔は、どこまでも穏やかで――。
 鳴宮・匡(凪の海・f01612)とは、つまりそのような男であった。飄々とあり、心を乱すことなく事態に対処し、平穏であり、柔和であり、…… Clack、 Clack、 Clack、 Clack。
「……見えるんじゃないか? そろそろ敵もこっちに気付くころだ、スタンバイ頼むぞ」
「ヒュゥ、良いねェ。やる気を出す理由がもう一つ見付かったぜ。それじゃァ……ウェットワークの時間と行くか」
 一定のリズムの下、梶本村に連続した銃声が鳴り響く。320、367、481、少し離れて510。主戦場よりやや後方にある、空き地全体を見通せる崖の上から匡が発砲した敵との距離である。
 匡が構える射撃間隔をセミオートに調整した特殊弾装填機構を備えたアサルトライフル、RF-738Cのフロントサイトに収められた浪人たちは、彼が引き金を引くたびに地面に倒れ伏していく。
 敵の足先、膝、刀を握る手の指先。もしくは、頭。匡が狙い、トリッガーを引いて撃発を行えば、バレルを通して鉛の弾丸が飛び出していく。そして敵は倒れてからこちらの存在に気付くのだ。遥か高所から撃たれている、と。
 いくら障害を排除し、浪人を撃っても、匡の表情から温和なそれが消えることはない。まるで凪いだ海の如くに、彼の心はどこまでも静かで、穏やかであった。
「そう言えば、さっき村の奥に避難していく村の子供たちと話したぜ。頼まれちまったよ」
「へェ? なんだ、また可愛い子から声でもかけられたか? 何て言われたんだよ色男。『大変恐縮だが』、聞かせてくれるかね?」
 『これは猟兵として自分が受けた仕事なのだから、銃の引き金を撃つだなんて、書類に判を押す作業と何ら変わらないだろう?』 そう言いたげに、匡はライフルの引き金を軽く引いていく。雑談さえ交える余裕ぶりだ。
 射線が通った。だから『撃つ』。つまりはそういうことだ。敵の獲物が刀であることと、攻撃手段が近距離しかないことも分かっている。だから『離れて撃つ』。実に理に適っている、実に見事かつ現実的で実用的な考えである。
「茶化すなよ、そこまで懇願されるようなことでもない。いや、な。――――『梶本村をおねがい』、だってよ。ほんの小さい子供だった。……花までくれてさ、これから起こることに震えてた。きっと怖かったんだろうな。なのに、あの子は涙をこらえながら俺に微笑んで――、そう頼んできたんだよ」
「――――。そうかい。なら……。尚更負けらンねェな。少し……ああ、少しだけ、――マジでやる気出てきたぜ。やンぞ。匡。あのクソ野郎ども、全員やる」
「だろ? 俺もだ。少しだけ、だけどな。やろう。――村の近くまで踏み込んで来る奴から優先して狙い撃つ。そっちの援護は最小限になるかもしれないけど、頼むぜ」
 既に戦場には多数の猟兵が参加しており、村の空き地は異常なまでのお祭り騒ぎとなっていた。刀と刀が擦れ合う金属音が太鼓で、時折聞こえてくる絶叫と怒号がお囃子の祭りだ。
 きっと、この音は村の奥、子供たちが避難している納屋まで聞こえている――『聞こえてしまっている』のだろう。ヴィクティムが戦乱に紛れるようにして接近していく。その顔はいつになく真剣だ。
 すぐにでも、ここを『静かに』しなければならない。一刻も早く。ASAP(出来るだけ早く)、この汚い祭り囃子を子供たちの耳から聞こえない場所に追いやらねばなるまい。例えば、地獄などに、だ。
 『凪の海』のようにまっさらで、『冬の静寂』のようにしんとした、平和を伴う静寂こそ――この村にはふさわしいのだから。
「ったくよ、騒がしいな……。少しは静かにした方が良いと思うぜ、沈黙は金っていうしな。どうせ六文銭だけじゃ、三途の川の渡し賃にしかならないんだ。あの世でお前らの沙汰を赦してもらうにゃ、もっと金が要るんだろうが……よッ!」
「ぎ……ッ、ぶぐぐご、ごば……」
 洗練され、滑るような足さばきはヴィクティムの歩く音を消し、赤黒い血が流れて泥と化した地面の上でも彼の痕跡をほとんど残すことはなかった。
 足のつま先のみを僅かに接地させ、それ以外を僅かに浮かしながら進むその歩法、『体幹で歩く』と称されたその歩き方は、サムライエンパイアの忍が良く行うもの。ヴィクティムはこの一瞬においては、本職の忍びに並ぶほどの忍び足の達人であり――そして、追跡と暗殺の達人でもあったのだ。
 『エクス・マキナ・カリバーンVer.2』が静かに最短距離で空を走り、浪人たちの中でも腕の立ちそうな者の首筋を深く縦に切裂いた。声は音にならず赤い泡となって喉に咲き、その段になってようやく周りの敵はヴィクティムの存在に気付き始める。
「何奴……ッ! 貴様、どこから現れよったかァ、卑怯な真似をォ!」
「うるせえな、名乗るほどのもんじゃねえよ。そうだな……『ブギーマン』とか『ババ・ヤガ』でどうだ? 良い子の味方、悪い子の敵のな。……ほら、来いよガキども。チャンバラ遊びは終いかい?」
 本職はハッカーであるヴィクティムではあるが、彼は元々最初からハッキングだけで生きてきたわけではない。ストリート育ちである彼は、本当の意味でのたたき上げなのだ。【Extend Code『Ferryman』】は、彼の経験を分かりやすい技術に置き換えただけに過ぎない。実に見事で手慣れた手際。一流と呼ぶにふさわしい仕事である。
 ヴィクティムは見事に暗殺を決めて見せると、挑発を繰り返して敵をおびき寄せていく。敵との距離は一定に、そして見晴らしの良い場所へ。そして訪れる敵の一群が他の敵群から離れた瞬間を、見逃すような匡ではなかった。
「混戦だろうが誤射するほど素人じゃない。狙い難い相手だろうが外すつもりはないけど……誘き寄せてくれるならありがたく肖ろう。早く済ませたい理由も出来たし……仕事は楽なほうがいい、そのほうが結果が出るのが早いからな。……見えた。――そこだな」
「ぎッ」
「ぐっっっっあ、おお、ええ」
 B-B-B-B-TATATatat.銃声、銃声、銃声。戦場にあって響くその音は、しかし浪人たちの怒号などよりずいぶんと耳触りが良かった。静寂を呼び込む、凪の音だ。
 それは先ほどまでの『狙い撃ち』ではない、バースト射撃に切り替えたアサルトライフルの斉射が、遠く離れた崖上からあれよあれよという間に敵陣を薙ぎ払っていく音。匡の射撃センスあってこそ出来得る、時間対効率を最優先させた芸当である。
「これは……!? 先ほどの射手の射線上にいつの間にか出てしまっておるのか!? あの暗殺者に、まんまと釣られ……ッ!」
「暗殺だけが俺の能だと思ったか? 一流のフェリーマンは稀代の罠使いでもあるんだぜ? ……それから、射線は元々通ってたさ。俺がやったのは優先順位を付けてやったってだけ。一個一個を狙うより、まとめて片付けた方が楽なんでな。そら。――BANG、BANG、BANG!」
 そう、最初からヴィクティムの行動は全て『罠』。鮮やかで非の打ち所のない暗殺も、その後にわざと敵に姿を現したのも、全ては匡の変幻自在な超常の射撃、【千篇万禍】にて敵を一掃せしめんとしての行動であったのだ。
 ヴィクティムは右手で指鉄砲を作ると、それを浪人たちに向けて撃つ真似をしていく。すると、ヴィクティムが敵に指した指の数ミリ横から、匡の放った鉛の弾丸が敵に向かって飛来していく。
 近くの敵が全て『沈黙』したのを確認すると、今の光景を目の当たりにして腰が引けた様子の浪人たちに向けて声をかける。浪人たちにとっては、ヴィクティムが指を向けただけで味方が死ぬ――そのように思えたことだろう。だが、違う。彼らは二人で一つの活躍をし、だからこそ浪人たちを寄せ付けていないのだ。
「ヘヘッ、ここにおわすは鉄砲の名手、鳴宮・匡様だぜ? 恐れ慄きな! 旧時代のサムライども! さっさと来いよ、俺一人だけなら万が一、億が一なら勝てるかもしれねえぜ?! まあ、ナイフ捌きでも負ける気はねえけどな、Sukuisshi!」
「……おい、あんまり持ち上げんなよ。こんな仕事、注目されていいことなんてないぜ? まあ、どうせ全員殺すんだしいいけどさ。……さっさと首魁も潰してやる」
 二人の猟兵は、戦術を以て最大限の効率で敵を屠っていく。それができるのは彼らに確たる信頼があるが故。そして、彼らが『やる気』であるが故だ。
 今は喧騒に包まれているこの空き地も、いずれは静寂が支配するのだろう。その時に立っているのが、オブリビオンだけではいけないのだ。最後に立つのは、この物語の主役である、猟兵と、そして村の人々でなければ。
大成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵

戎崎・蒼
●成程…防衛、か。
確かに、オブリビオンと浪人が徒党を組んでいるからこそ侮れないな。

【POW】で判定。
基本的には援護射撃を行おうか。
佚を以て労を待つ、少し意地が悪いけれどある程度疲労した所が狙い時だと思う。疲労させるまで銃弾で攻撃し、もしそう出来たらUCでなるだけ一発で仕留めたい。(スナイパー+援護射撃)
残党が残ったり、それでも倒れない場合はSyan bullet(捨て身の一撃+恐怖を与える)を使用。(※使用限界数有り)
これはテルミット系の弾薬だから跡形もなく破壊出来るかもしれない。………よっぽどの超人でない限りは。

取り敢えず、他の猟兵達の様子を鑑みて行動するけれど…堅実にいきたい所だね。


守上・火鈴

強くなりたければ鍛錬したらいいんです!
人様のものを取ろうだなんて悪いことしちゃいけませんよ!!

人数が多いですね!まずは近づかれる前に【疾風拳打・空撃チ】で
ぶっ飛ばせるだけぶっ飛ばします!

あとは囲まれないよう足を止めずに近くの敵から殴り飛ばします!
なるべく大勢固まってる所に敵をぶっ飛ばしてまとめてなぎ倒せるよう狙ってみますよ!
先手必勝です!一気に畳み掛けましょう!!


ティオレンシア・シーディア


終わりを認識できてないタイプ、かぁ…
文字通り、死ななきゃ止まんないヤツねぇ。
自分が終わってることを自覚してるより、ある意味タチ悪いのよねぇ。

〇拠点防御するなら遠距離から釣瓶打ちにして封殺、ってのが最上だけど…流石に無理よねぇ。
なら、前線構築してもらって敵を足止め、詰まって密集したとこに〇範囲攻撃、が次善策かしらねぇ。
●千里眼射ちでグレネードつけたシャフトを撃ち込むわぁ。
敵陣側に放り込むし、誤射も気にしなくていいわよねぇ。
上を取られる恐ろしさ、教えてあげるわよぉ。

自分から突っ込んで大暴れ、ってのも考えたけど…
近接戦闘ならさすがに向こうに分がありそうだし。
ここは素直に近接職に任せましょ。


●銃声鉄拳アンサンブル
「強くなりたければ鍛錬したらいいんです! 人様のものを取ろうだなんて悪いことしちゃいけませんよ!! 懲らしめ案件ですね!!」
「終わりを認識できてないタイプ、しかも火鈴ちゃんの言うとおり、略奪行為も戦のためなら辞さないタイプかぁ……。文字通り、死ななきゃ止まんないヤツねぇ。自分が終わってることを自覚してるより、ある意味タチ悪いのよねぇ」
「同感だ。しかし成程……防衛、か。確かに、オブリビオンと浪人が徒党を組んでいるからこそ侮れないな。二人とも、よろしく頼む。せっかくだ、僕たちで終わらせてやろう」
 戎崎・蒼(f04968)とティオレンシア・シーディア(f04145)、そして守上・火鈴(f15606)の三人が敵へと目を向ける。今だ敵軍は健在であるが、皆の活躍によって徐々にその数を減らしてきてはいるようだった。
 蒼とティオレンシアの二人はその手に獲物を持ち、敵へとその銃口を向ける。二人の猟兵が戦闘前に作成しておいた高台から敵を狙うのを、勘の良い何人かの浪人が気付いた。
「む……ッ?! 皆の者ォ、奴ら手に火筒を有しておるぞォ!」
「……厄介な……! だが、狙われていることが先に分かっているならば……!」
「少し遠いが気付かれたか。先に発砲するよ」
 まずは蒼の構えるSigmarion-M01。専用FMJ弾を用いる、意匠が特徴的な改造型マスケット銃が火を噴いた。狙いは浪人たちの頭。発砲音、弾の飛ぶ音、そして金属音。
 彼の放った弾丸の群れは寸分の衒いもなく、ただただ実直で理想的なラインを描いて敵陣へと飛んでいく。――だが、敵もさるもの。
「甘い……ッ! 我らを先に死んでいった者たちと同じと思うでないわァ! このような弾丸、軌道さえ見切ればいくらでもずらせるわッ!」
「斬られた? ……いや、僅かに刃を合わせて逸らされたのか。真っ直ぐから刀に当たれば折れたかもしれないけど、中々やるね。どうやら目的は置いておいて、振るう剣術は白痴のそれじゃないらしい」
 そう、ここまで生き残っている浪人たちは猟兵たちの猛攻を受け、それでもまだ凌ぎ切っている者たちなのだ。であれば、その実力はいよいよもって本物と言うべきであろう。
 彼らが振るう刀は蒼の放つ弾丸を斬るのではなく僅かに逸らすことで直撃を避け、その上で猟兵たちへと前進し距離を詰めていく。今はまだ刀の間合いよりも外ではあるが、その距離を詰めようとしているのだ。
「うわーっ、人数が多いですね! なな、や、ここの、とう……二十人ほどってところでしょうか、まっすぐこっち来てますよ!」
「拠点防御するなら遠距離から釣瓶打ちにして封殺、ってのが最上だけど……蒼さんの射撃で弾かれるなら流石に無理よねぇ。なら、火鈴ちゃんに前線構築してもらって敵を足止め、詰まって密集したとこに私たちが範囲攻撃……って辺りが次善策かしらねぇ」
「ああ、僕はそれで構わない。元々それに近い作戦を取るつもりだったしね、援護しよう。火鈴、頼めるかい?」
「そういうことならわたしに任せてください!! ぶっ飛ばせるだけぶっ飛ばします!」
「助かるわぁ。無茶はしないで良いからねぇ」
 しかし、敵がどのような戦法を取ってきたからと言って、それで打つ手がなくなるわけではない。それならそれで、その場に応じた最適解を探し、実行に移すだけだ。
 手段と言う『弾丸』はある。であれば、あとは『撃つ』だけだ。狙いは一発による総取り。そのための鍵は三人の猟兵たちがそれぞれ持っている。三人揃えばなんとやら。猟兵の力は、重なることでその威を増すのだから。
 火鈴が敵陣に向かって風のように走る。武器は彼女の鉄拳だ。それさえあれば十分である。蒼とティオレンシアの二人は、先程と同様に敵へ向けて自身の持つ武器を構える。だが、今回は弾丸をただ逸らされるつもりはないようであった。
「それじゃ蒼さん、合わせるわぁ。火鈴ちゃんが敵に当たる前に、少しでも敵戦力を減らしておきたいしねぇ」
「了解だ。そうだな……特に選ぶこともない。――『近い方』から行こう」
 そして、発砲音、弾の飛ぶ音。――だが、今回はあの耳障りな金属音は響かなかった。その代わりに流れて聞こえるのは、『敵の悲鳴のアンサンブル』。
 蒼とティオレンシアの二人が行ったことは、特に魔法でもなんでもない、至極単純なことであった。『タイミングを揃え、そして撃つ』。どこまでもシンプルな、だが互いに狙い撃つ銃の腕と信頼が無ければ到底叶えられない芸当である。
「ウギャァァッァァ! 脚を……ッ! 脚をやられたッ!」
「グアアア……ッ!! われの腕、腕を……ッ?! なぜだッ!?」
「悪いけど、もうそこリボルバーでも十分狙える距離なのよねぇ。上を取られる恐ろしさ、教えてあげるわよぉ。蒼さん、存分にどうぞぉ」
「おや、お上手。では、次だ。完全に無力化はできずとも、この分なら火鈴が近づく前に十分戦力を削れそうだね。……そこ」
 まずは蒼の放ったFMJの弾丸が、先程と同様に敵に向かってまっすぐ飛んでいく。『当てる』ことも勿論目的の一つだが、蒼の目的は既に『敵の手を動かす』ことに移行していた。敵に疲労の色が見えるまでは射撃を続けるつもりであったが、ティオレンシアがその手順を短縮してくれる。
 彼女の構える愛用のシングルアクション式6連装リボルバー、オブシディアンはガンプレイ用の改造とティオレンシアの技術によって、連続した射撃に『非常に向く』代物。異なる三か所への連続射撃、ゲット・オフ・スリーショットはティオレンシアの得意とするところであるのだ。
 そして、三人の敵が蒼の弾丸を弾く間に、ティオレンシアの放った弾丸が敵のいずこかをしっかりと捉えてダメージを与えていく。二人の猟兵の精密射撃は、もはや敵が弾丸を弾こうとも関係ないほどに強力であった。
「クゥ……ッ! 奴らめ、よもや化生の類か?! 火筒の音は一度しか響いておらぬのに、なぜ一挙に三人も倒れるのだ!? ……ッチィ、者共集まれィ! 密集陣形を取り、敵の攻撃を協力して弾くのだァ!」
 今の結果を見、もはや一人だけでは猟兵たちの射撃を防ぎきれないと見た浪人たちは、進軍速度を合わせ、密集陣形を取って猟兵たちへと歩を進めてくる。
 『普通の射撃を防ぐ』だけならそれも良い方策だ。実際に、蒼やティオレンシアの放つ何発もの弾丸の群れは敵の刀に阻まれてダメージを与えるには至らない。――だが、だが。それで十分なのだ。
 敵に攻撃を阻まれようと良い。こちらからの一方的な射撃を防ぎ、『敵を疲労させる』、『敵を密集させる』ことこそ、猟兵たちの狙い通りであったのだから。
「佚を以て労を待つ……。少し意地が悪いけれど。ある程度疲労した今が狙い時だと思う」
「ええ、敵陣側に放り込むし、誤射も気にしなくていいわよねぇ。さて、今までは防げたかもしれないけれど……これはどうかしらねぇ?」
 全ての用意は整った。二人の猟兵が超常の力を解放し、自身の獲物を持ち換えていく。一発必中は当たり前。一発必殺の絶技、戦場の流れすらも簡単に変え得るその力は、ユーベルコード。
 ティオレンシアの【千里眼射ち】は、強化型クロスボウ、クレインクィンから放たれる秘技。グレネードが取り付けられたシャフトは密集した敵陣の中、その中心へと迸り、敵の刀と視線の隙間を縫うように進んで、見事に撃ち込まれた。――そして、爆発が巻き起こる。
「ウアアアアアッ!! なんだ……ッ! なんだ、これはァ!? 爆発……ッ、火薬!? いったいどこからだ!? 投げ込まれる様子など、どこにも――」
「悪いけど、まだ続くんだ。これで終わりにしよう、クラヴェッタ。……Tiro volley」
 適切な場所へと進んで破裂したグレネードの破片は、浪人たちの至る所を荒らしまわって壊滅させていく。その全てが致命傷となるには至らないが、密集陣形を取っていた浪人たち全てに手傷を負わせ、そして何よりも混乱させることには成功した。
 突如して与えられた非常識なほどの轟音と痛みに悶える浪人たちへ、しかしまだ追撃が飛ぶ。蒼の【第二楽章 無言歌《1999》op.13】が放たれたのだ。普段は襟飾となっている蒼の愛銃、Cravatta-45.52ctの発砲音だけが辺りに響き、――そして、その弾丸に一発でも当たった敵たちは沈黙していく。
 まるで無言歌を演奏しているときのように、辺りには蒼の奏でる厳かな一斉射による銃声のみが轟いた。
「狼狽え……ッ、狼狽えるなァ! まだ終わりではない、来るぞ! ヤツが来る! 猟兵が接近しているのだ、皆の者武器を取らんかァ――」
「もう遅いですよ! 先手必勝です! 一気に畳み掛けますからね!!」」
 強烈な痛みを受けてパニックを感じた人間が取る行動はおおよそ一つに集約される。自分の身の安全を図ろうとすることだ。だが、空き地となっているこの場所に身を隠せるような場所などあるはずもなく、ティオレンシアと蒼の射撃を受けて尚も無事な浪人たちは、身を寄せ合ってなんとか立て直しを図ろうとする。
 しかし、それは火鈴にとってはむしろ好都合であった。何せ、彼女はもとより敵をまとめてぶっ飛ばし、まとめてなぎ倒せるよう狙っていたのだから。
「せぇのっ!! あたれえええぇぇッ!!」
 二人の猟兵たちの射撃を受けて混乱の最中にある浪人たちを、火鈴の【疾風拳打・空撃チ】による乱打が襲う。空中を殴って空気を伝う衝撃を生み出す彼女の技が、文字通り目にも止まらぬ速度で放たれていく。
 火鈴は残像を残すほどの速さと驚異的な怪力を以て、密集した敵の周囲を回るように駆けながら空気の流れを生み出し続ける。全方位からの空中を伝う衝撃波はその場に超々強力な上昇気流を作り上げ――。
 そして信じられないことに、火鈴は敵陣を纏めて上昇気流の嵐に巻き込んで、空中に浮き上がらせてみせたのだ。
「馬鹿な! 我らを纏めて空中に……だとォ!? そんなこと、超常の力でなければ不可能だッ!」
「っだああああああッ!! ちぇすとおおおおおおおッ!!!」
 弱った敵を纏めて空へ舞い上げた火鈴は、そのまま足に力を込めて跳躍すると空中で敵陣へと突っ込み、そしてその力を魅せていく。まずは足場となる浪人の腹を踏みつけながら更に上昇し、空中で半回転のひねりを加えながら横の浪人へ重い蹴りの一撃を放つ。
 その一撃で勢いを付け、さらにそこから自分の下にいる敵の顔面に打ち下ろす形の右ストレートを放ち、地に落とす。そのまま足を止めずに空中を舞うと、左右に控える近くの敵へは拳による乱打を、自分の上下に位置する敵には身体を立て回転させて放つ超高速の踵落としを決めて見せた。
「チィ……ッ! 化け物が! くそッ、早く降りて来やが――ッ、アア、ッ?」
「うわぁ、すごぉい。自分から突っ込んで大暴れ、ってのも考えたけど……近接戦闘ならさすがに向こうに分がありそうだと思って火鈴ちゃんに任せたのが良かったわねぇ」
「でも、今のを見て他の奴らが寄ってきたみたいだ。これからも堅実にいきたい所だね」
 火鈴が鬼気迫る格闘の乱撃を見せ、浮いた状態の敵陣の中で舞い踊るように自身の鉄拳で次々にトドメを刺していく横で、ティオレンシアと蒼の援護射撃が見事に光る。
 ティオレンシアの放つグレネードと、蒼の放つ透明色な硝子製弾丸、Syan bulletは、地上に新たに現れた敵の残党たちを粉々に蹂躙していくではないか。
 強烈な蒼い液状火薬の炸裂と、的確なグレネードの破裂が敵陣を跡形もなく破壊しつくして、そして火鈴は空中の敵をすべて倒して着地し、こう叫んだ。
「さあ! 次は敵の首魁ですね!! ぶっとばしてやりましょう!!」
 猟兵たちの長所という楽器が鳴り響き、敵を次々と沈黙させていく。猟兵たちの合奏は、敵の首魁を打ち倒すまで続くのだろう。
大成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵

荒・烏鵠
● いっちゃん(f14324)と
あらやだ、ダチが張り切りすぎててオレサマ困惑。
でもそーゆーノリ嫌いじゃないぜ!むしろ大好物!
マ、なんだ。これも一種のお祭りって奴だよなァ!

【SPD】
妖狐らしく化け戦と行こうかね。
大蛇になって敵をなぎ払い、鳥になって空へ飛び上がり、大量の砂になって絡め取り、再度大蛇になって絡め取り、いっちゃんの方へ投げ込んじゃろう。
犬になって駆け、馬になって蹴り飛ばし、サイになって跳ね飛ばそう。
その場その場で見る間に変わる、途中の顔なんざ見せやしねェ。
さァさ皆様ご笑覧あれ!古い狐の七色変化、万両役者にも劣らンぜ!!


イリーツァ・ウーツェ
● 烏鵠(f14500)と

これはまた、楽しそうな依頼を引っ提げてきた物だ。
戦っていいんだな。手加減せずに。
それは重畳。恐悦至極だ。
【POW】
堅州国の青き炎はUCを拒絶する。
反撃は出来ても威力は落ちよう。
杖で足を潰す。銃で胴体を砕く。尾でなぎ払う。翼で弾く。
首を狙ってきた刀は歯で噛み砕く。
殺る気などもはや有頂天へ飛んでいる。
私の持つ技能の全てを使って戦おう。
さあ、来い。人間。竜退治の時間だろう!


朱葉・コノエ

敵と認識するものは全て斬る…単純な行動原理ですが、それゆえに厄介なものですね。
しかし…ここの守りを任された以上、依頼を疎かにはできません。
この侍達の太刀筋と私の剣がどこまで通用するか…。
「…いいでしょう。一人の剣士として、お相手いたします」

集団で襲い掛かってくるとは言え、一人一人の実力は確かなようです。
私の剣は早さと居合に特化しています。下手に打ち合いで長引かせず、
敵の攻撃は【残像】を使いながら避けていきます。
僅かな隙を観察したら、【早業】を活かして【紅颪流・無風】で強烈な一撃を放ちましょう。
「いい太刀筋でした…ですが、ここは私の勝ちです」

※他猟兵との絡みもOK


ブラスター・ブレード
アドリブ・共闘歓迎

栄枯盛衰……銀河帝国が滅びたように、避けられぬ滅びが来るのは世の常か。
――だが、それを齎すのは貴様らではない。

既に主亡き身、人々を守ることが使命なれば、この身を盾とすることに些かの躊躇いもない。

来い、戦に憑かれた者共よ。この俺が健在である限り、村へは一歩も踏み込めんと思え。

【鋼の精神】で防御を強化。
地を埋め尽くす程の浪人が現れようとも、人々を守る俺の信念は欠片も揺るがん。
空き地の中心で仁王立ちし敵を迎え撃つ。
フォトンブレードで切り結び、ブラスターキャノンで仕留めるつもりだが、優先すべきは防衛だ。
仲間の動きを見て、突出しすぎないようにしつつ、いつでも援護できるように構えておく。


●千両役者並び立つ
「いっちゃん! 後ろちょい右!」
「ッ、そこ……ッ! 烏鵠!」
「分ーかってるって、合わせるぜェ!!」
 味方の背後に迫る敵の存在を荒・烏鵠(古い狐・f14500)が口に出したのと、言われた男が振り向きざまに象撃ち用の大口径リボルバーを敵に向けて発砲を行うのは同時のことであった。
 その銃弾をわざと左の肩で受けた浪人が、自分の半身を失ってもなお残った右手で斬りかかってくるのを止めるのは、烏鵠の神符による破魔の力だ。仲間の援護を受けて、猟兵は再度敵へ発砲を行っていく。今度は二度。狙いは胴と頭だ。
「……見事。良き連携であることよ。貴様らの手にかかったことを誇れるというもの。……良い果し合いであった。貴殿らの健闘を、拙からも、いの、る……」
 浪人の四肢の神経が神符の符力でその動きを止められ、威力の化身たる鉛玉が敵の眉間と胴を貫いた。この戦いもいよいよ大詰め。序盤は銃弾どころか僅かな切り傷を受けたのみで戦意を喪失する浪人などもいたが、今となってはもはや彼らは全て精鋭の生き残りと言っても良かった。
 持ち得る実力は同じなのかもしれないが、戦場にあって生き残った分、浪人たちの覚悟が決まったという事なのだろう。ただ、それは猟兵にとっても同じことなのだが。
「今回の話を聞いた時は楽しそうな依頼がきたものと思ったが……。ああ、まだまだ。俺はまだ戦っていいんだな。手加減せずに。それは重畳。恐悦至極だ。烏鵠、まだいけるな」
「あらやだ、ダチが張り切りすぎててオレサマ困惑。でもそーゆーノリ嫌いじゃないぜ! むしろ大好物! マ、なんだ。これも一種のお祭りって奴だよなァ! そーゆーコトなら、祭り囃子が聞こえなくなるまでは……踊ってないと損ッてなァ! いっちゃん!」
「応、合わせるさ」
 二人の猟兵は、敵陣の中で雑談を介しながら自身の超常の力を解放していく。一つは変化の技。一つは炎の技。
 烏鵠のユーベルコードは、【十三術式:九羽狐】。彼は妖狐らしく、この戦いにおいて化け戦を挑もうという腹積もりらしかった。自身の身体はもとより、触れた物体なども自在に変える、応用力に長けた烏鵠の得意技である。
「おのれ化生か! むざむざ化けさせてなるものかよ!」
「『葉っぱをお札に、狐を人に。変化は妖狐のたしなみさァ』。……遅いぜ、悪ィね!」
 彼の変化の前兆を視、そうはさせぬと上段から斬りかかってくる浪人が一人、後ろから隙ありと見て手に持つ刀で薙ぎを放ってくるのが一人。だが、遅い。烏鵠の技は彼の嗜みであり、意識して反撃を行う刀の振りなどに負ける速度であろうはずがなかった。
 幾千幾万と繰り返してきたのであろう彼の千変万化な変化術は、かくして敵の刀が襲い掛かる寸前にその起動を完了させる。僅かな白煙を伴って烏鵠は人型から狐へとその身を変化させると、ジグザグに地面を高速で這って斬撃を避けていく。
 かと思った次の瞬間、地を這う狐は梶本村にそびえる山を八巻してなお足りぬほどに大仰な大蛇へとその姿を変えてみせたのだ。巨大な質量へと変化した烏鵠が放つのは、これまた巨大な尻尾から振るわれる薙ぎ払い。
「……重い……ッ! 受けきれんッ!」
「そうだろうそうだろう、オレサマもそう思って繰り出しているンだ、悪く思うな! そォらいっちゃん、そっちに行くぜェ!」
 大蛇の尾の一撃を何とか受けた浪人たちではあるが、しかし重い一撃は彼らの動きを止め隙を作り、その隙は烏鵠が別のモノへと変化するのには十分すぎる程の時間であった。次に彼が変化したのは空を裂いて空を飛ぶ一羽のハヤブサ。
 全ての鳥の中でも空を駆ける速度はダントツであるとされる生き物に姿を変えた烏鵠は、時速180kmで中空へ舞い上がると、また別のモノへと姿を変える。今度は数えきれないほどの大量の砂になって敵陣を包むように風に乗って降り注ぎ、更に再度大蛇になった彼は、目に見える敵の全てをその巨大な体で締めあげて見せた。
「ッ、ギャアッ!! 変化が、見えん……! 貴様、化け物か……ッ!」
 烏鵠は敵を見事に翻弄し、そして絡め取った。『であれば』、あとはコイツらを仕上げるだけだ。巨体をうねらせて巧みにうねり、彼は捕まえた敵を空中へと放り投げていく。
 放り投げられたその先に、戦場の只中で静かに立つ男があった。――――名を、イリーツァ・ウーツェ(盾の竜・f14324)。彼もまた、この舞台に上がった役者の一人。烏鵠の仲間であり、戦という舞を力強く踊り続ける、武芸者の一人であった。
「九泉の底へ運んでやろう。この炎は、根の国への道程を示す篝火と知るがよい。さァ。――――黄泉路を往け」
「あの世へ逝きたくはないものよ、あちらでは貴殿らのような古強者に相対することも少ないであろうからな……! なんのォ!」
 空に放り投げられた浪人たちが、しかして空中で姿勢制御を行いその手に刃を握っては接敵に対し整えていく。だが、だが、だが。接敵に備えて全力を尽くすのは、イリーツァの方とて同じこと。
 彼の身に宿る炎は、天上から地の底までを等しく照らす、堅州国の青い灯火。名を、【黄泉平坂・押送脚】と言う。この世に戦と骸とが蘇り、死んだはずの過去が今を侵食せしめんとしたとて、イリーツァの掲げる青い炎は、その一切を灰燼に帰していくのだろう。
「堅州国の青き炎は、ユーベルコードを拒絶する。反撃は出来ても威力は落ちよう。超常の力、何するものぞ――来い」
「まだ夜目が効かぬ歳ではないわァ! ゆくぞォ!」
 空中で刀を構える浪人の何人かを、イリーツァは偏差射撃にて銃で捉えていく。彼の放った銃弾は敵の胴体を間違いなくとらえ、戦場の空に血しぶきの雨が降る。
 しかし、敵の返り血が燃えることはない。イリーツァの炎が、敵の超常の力を封じているからだ。そのまま彼は腰に力を入れて全身のバネを用いて跳躍し、空に漂う敵を次々と尾でなぎ払っていく。
 空中で振るわれる敵の刀もいくつかはあるが、その殆どは竜の翼で弾いていく。日ごろは意識的に消している堅牢で力強いその翼は、こういった戦いの時には非常に役に立つのであった。
「見事だ。まさか空中でも刀を振るい、私に当ててくるとはな。烏鵠の膳立ては完璧であり、超常の力を封じはしたが、これが貴様らの実力と言う訳か。……だが、甘い!」
「な……ッ?! 我が刃を……ッ、噛み砕いて……!! 認めざるを得んか……。我らの負けをッ! だが、せめて死ぬまで! 黄泉路駆け抜けるまで、貴殿らとの戦を途中で諦めてなるものかァ!」
 首を狙って放たれた浪人の突きは、その強靭な歯で噛み砕く。それでもとイリーツァの頭蓋を潰さんとして放たれる振り下ろしは、感覚増幅器である角で無理やり弾いていく。怪力から放たれる拳を敵に打ち込んで、痛みは耐え、また力を貯めて大きく踏みつける形の蹴りを放っていく。
 イリーツァのやる気、『殺る気』などは、もはや有頂天へと飛んでいた。それに比例するかの如く、彼の纏う炎は煌々と輝き、そしてイリーツァの持ち得る全ての技法を駆使した戦法は洗練されていくのだった。
「宙舞う竜も見栄えが良しだが、さァさ皆様ご笑覧あれ! 地上でこれより始まりますのは、古い狐の七色変化! 万両役者にも劣らンぜ!! さァさどんどん寄ってきなァ!」
 空で戦うイリーツァの下で、烏鵠は浪人たちの足の間を地獄への門が存在すると言われるな場所の固有種、阿波犬になって駆け、または巨大な黒馬になってその強靭な脚力と蹄で敵を蹴り飛ばし、犀となって恐ろしげな角で敵を跳ね飛ばしていく。
 その場その場で見る間に変わり、変わる途中の顔などもはや見えやしない。それほどまでに彼の変化は見事であり、高速であり、手慣れている。烏鵠の素顔を知るものは、戦場で僅かに立ち上る土煙だけであった。
「さあ、来い。人間。竜退治の時間だろう!」
「まだまだ芸はこれからだぜ! 首魁とやらに伝えておきな、次はテメェのド肝を抜かしてやるッてな!」
 空中での戦闘を終え、ほんのわずかに手傷を負いながらも敵を全て殲滅したイリーツァは、落下しながら魔杖“竜宮”を足元の敵へと突き刺していく。
 その後ろからイリーツァへと斬りかかろうとする浪人の刃を受け、更に斬り返して迎撃するのは人間の姿へ一瞬戻った烏鵠である。二人は背中合わせに敵へ吼えると、もう一度その力を魅せていくために駆けていくのであった。
 敵の胴元に会えるは、もうすぐのことである。

●風と共に一刀去りぬ
「……」
「……かかって、こないのですか?」
 戦場は、静まり返っていた。先ほどまでは大量にいた浪人たちの群れも、もはや猟兵たちの活躍によってその大半が無力化され、残るは僅かとなっていたのである。
 猟兵たちの行動で道を見つめ直し、改心して山を下りた者。戦乱を望んでいたとは思えないほど穏やかな顔で眠った者。まあ、だいたいはそのようなものだ。そして、ここに残っているのは――『死に損ない』の浪人たちのみ。
「なに、そこもとどこか名のある剣術の使い手と見える。一流の間合いに機を窺っておるだけのこと。――此度の戦は我ら浪人の負けであった。……いや、もしかしたら、戦う前から我らは……。……ふ、今更よな。……ゆくぞ。死に損ない共の剣、受けて頂く」
「……ここの守りを任された以上、依頼を疎かにはできません。あなた達の太刀筋へ、私の剣がどこまで通用するか……。……いいでしょう。一人の剣士として、お相手いたします」
 鴉天狗の少女、黒き風。四枚羽の鴉の翼を戦場ではためかせ、、闇夜のごとく暗く濡れた赤い瞳を敵へと向けるその人物の名は、朱葉・コノエ(茜空に舞う・f15520)。
 彼女の手の中にある愛刀と、彼女の周りを包囲するようにして立ち並ぶ浪人たちの腰に構えた刀。それらが黒い鞘から迸って進むのは、ほとんど同時のことであろう。
 ――敵と認識するものは全て斬る……単純な行動原理だが、それゆえに厄介なもの。今コノエが相手している浪人たちは、もはや自身の行いが間違っていたことなど既に認識しているだろう。だが、彼らがそれでも歩みを止めないのは、コノエを好敵手と認識しているが故。
 剣士たちの鍔鳴り音が春先の空き地に凛と鳴り、誰かが息をのむ音が風に乗って素早く走った。これが、浪人たちとの戦いを幕にする音である。
「栄枯盛衰……銀河帝国が滅びたように、避けられぬ滅びが来るのは世の常か。――だが、それを齎すのは貴様らではない」
「……ふ。避けられぬ滅びが訪れることなど、殆どのものが気付いておったわ。見ないふりをしていたのだ、誰も彼もが。……だが、我らは刀を手放せなかったのだよ。我らは戦に憑り付かれたのだ」
 数が少なくなってきたと言えども、敵の浪人たちが猟兵一人を囲むことなど容易いことであった。しかし、それでもブラスター・ブレード(ウォーマシンのフォースナイト・f14073)は怯まない。
 人々を守るという彼の信念が決して揺らぐことのないように、彼は広々とした空き地の中心で仁王立ちのまま敵を迎え撃とうとしていた。
「既に主亡き身、人々を守ることが使命なれば、この身を盾とすることに些かの躊躇いもない。来い、戦に憑かれた者共よ。この俺が健在である限り、村へは一歩も踏み込めんと思え。この身と剣は、人々の盾となるためにあるのだから」
「主亡き身にて人々を守る、か。……もしかすると、我らは道を違えたのやも知れぬな。戦乱の世が終わった時に、侍の名と共に刀を置き、鋤を持つべきだったのやも知れぬ。……だが、既にこの身は血に塗れ過ぎた。血の病に熟れた我らを、どうか刈り取っていただきたく存ずる。では――」
 フォトンブレードとブラスターキャノン。ブラスターのその名の通りの武具を用いる騎士のヒューマノイド型ウォーマシンは、仰々しく武器を構える。
 オブリビオンの脅威より人々を守るため。梶本村を略奪の手から守るため。彼はどこまでも人のために、浪人たちへと向かっていくのだった。
「貴様等がどのような事情を持っているのか、俺は知らぬ。だが、だからこそ……語るのならば、この刃にて! 守らなければならない……未来を、人間の可能性を! そのためならば、何人相手だろうと斬り伏せてみせる!」
「良い気概だ、ではとくと見せてもらおう。総勢若干名、我ら最後の戦憑き……。推して参る。どうか、詮索も同情もせず。語るのならば、この刃にて」
 翠玉色のサイキックエナジーで構成された光の刃が、ブラスターの手の中で自在に煌めく。目の前の浪人による上段からの斬りかかりを斜めから受けてい右になすと、その勢いのまま半身を回転させて左に位置する浪人へと薙ぎを放つ。
 腰元からの力を全て上体へと活かした薙ぎで一人の敵の刀を折って胴体を切り裂くと、右足を軸に再度反転。同様に身体を回転させながら薙ぎを放ち、敵陣の中で力強く暴れまわる。
「……ッく、裂帛の気迫というやつか! では、今度は我らの刀を受けて頂く! 卑怯と言ってくれるなよ!」
 自身の巨体とリーチを活かし、空間を広く使った剣術を披露していくブラスターに対して浪人たちが取った策は、複数方向からの同時攻撃であった。目の前からは突きが二つ、左には薙ぎが二人と、そして背後からも走り寄ってくるような音が聞こえる。
 ――だが、ブラスターとて猟兵の一。既に超常の力は発動している。その名は【鋼の精神】。輝ける勇気、揺るがぬ信念、正しき怒り。三つの思いを胸に自身の防御対応力を向上させた彼は、全ての刀を自身の剣で受けることにしたらしい。
  戦いにおいて最も重要なのは、武器や鎧の性能ではなく、決して揺るがぬ精神力である。そのことを、ブラスターは知っているのだ。
「貴様等も人であることに変わりはない。ならば、俺は――貴様等の思いを全て受け止めてやることにする!! さあ、来いッ!」
「有難い! 避けてくれるなよッ!」
 まずは目の前の突きが二つだ。ブラスターはまず両脚に力を入れて加速を開始し、突きの間合いへと自分から飛び出していく。そしてフォトンブレードにて敵の突きを右切り上げと逆袈裟によりはじき返し、無防備な胴へ返す刀で一撃を入れていく。
 休まる暇もなく、次。彼は二人の浪人を斬ったかと思うと、振り向きざまに左側に位置していた薙ぎを放とうと狙う男たちへ向き直り、力を溜めた横薙ぎを二つ放って刀を持つ手を切り落とす。その刃を放った瞬間に敵の動向を確認することも忘れない。
 唯一視認できていなかった後方からの攻めは、大上段からの切り下ろしであった。身体を潜らせて敵の間合いの中に入り込むと、敵の指に自身の指を搦めて骨を折り、戦闘能力を無くしていく。流れるような剣閃が一瞬の間にいくつも閃き、ブラスターは戦陣の中にあって僅かな傷を負うのみに被弾を留めていた。
「や……やる……! しかし、我らとて意地があるのだ! 『侍の意地』、受けて頂く――ッ!」
「来るが良い! その全てを受け止め、俺は勝つッ!」
 戦う意思を有していたのは、もはや胴を切りつけられながらも向かってくる目の前の二人のみ。上段から襲い掛かる二刀をブラスターは避けず、真正面から同時に一刀の刃のみで受けていく。
 そして力任せに浪人二人を押し切って間合いを開けると、左腕に内蔵された、サイキックエナジーを増幅させて撃ち出すブラスター砲を最大出力で開放する。彼らを戦士と、人と認めているからこそ、ブラスターはどこまでも全力で、彼らの意思を受け止めてみせたのだ。
「集団でかかり、ここまで剣技で圧倒され、最後の反撃すらも防がれるとは……。ああ、満足であった。良き好敵手に会えたこと、誇りに思うぞ……」
 ブラスターキャノンが戦場に響き、そして静かになった時。戦場に立っていたのは、遂にブラスターのみであった。
「……あちらは終わったようだ。どうやらな。……そろそろ、こちらも始めるとしよう」
「ええ。……終わりを、始めましょう」
 ブラスターの戦闘が終了した音を耳にしながら、浪人たちも刀を抜き放ち、コノエに向かっていく。それを見て、彼らがいよいよ自身の間合いに入った瞬間。コノエは、自身の獲物である業物「凩」を黒い鞘から抜き放った。
 握る手の内は柔らかく、左手の親指が鍔を弾いて刀を鞘走らせる。鞘の中で最大まで加速を得た刃が、最高速を保ちながら空中を走った。
「私の剣は早さと居合に特化しています。紅颪流・一ノ型……。基本の技であり、全てでもあるこの型を、果たしてあなた達は見切れますか?」
 【紅颪流・無風】。コノエの修める『紅颪流抜刀術』なる居合い剣術の中でも、神速の抜刀術と謳われるこの技は、同時に刃を抜いたはずの浪人たちの胴を捉えていた。
 コノエはただ、敵たちの攻撃を避け、そして反撃しただけに過ぎない。複数の方向から襲い掛かる攻撃の全てを残像が見える程に疾い一瞬の加速によって全て躱すと、彼女は納刀と抜刀を繰り返しながら敵の身体を裂いていったのだ。
 斬り下ろしは上体を逸らして刃を向け、薙ぎは潜り込んで躱しながら刃を届かせる。突きなどは最低限の動きだけで避け、敵の胴へと真っ直ぐ刀を振るってやった。木枯らしのごとくに敵からの攻撃を躱し、かまいたちが如くに敵を切り裂くコノエの剣術は、正に風と呼ぶにふさわしい絶技であった。
「……いい太刀筋でした……ですが、ここは私の勝ちです。……すでに、斬り落としました。貴方達には風(はやさ)が足りません」
「ああ。ゲホッ……、見事。流麗な風の如くの絶巧なる太刀運び……見事。御美事也。……健闘を。祈る」
 コノエが抜き身の刃に付着した血をぬぐい、鞘へと戻していく。浪人たちは斬られたというのに、どこか満足そうな笑みを浮かべていた。
 彼らとの戦闘が終わったのだ。残すはいよいよ敵の首魁のみ。多くの血を流させたオブリビオンを赦すわけにはいかない。ブラスターとコノエは互いに顔を見合わせて頷くと、一路オブリビオンへ向けて駆けだしていくのであった。
 梶本村の平和へと、あともう少しで手が届く。
成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴


第2章 ボス戦 『乱世の名将』

POW ●八重垣
全身を【超カウンターモード】に変える。あらゆる攻撃に対しほぼ無敵になるが、自身は全く動けない。
SPD ●八岐連撃
【一刀目】が命中した対象に対し、高威力高命中の【七連撃】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
WIZ ●永劫乱世
戦場で死亡あるいは気絶中の対象を【復活させ味方】に変えて操る。戦闘力は落ちる。24時間後解除される。
👑11 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠犬憑・転助です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●魔穿鐵剣
 空き地に、浪人と猟兵の血が流れていた。
 春先の空はどこまでも澄みきって青くあり、村へと聞こえた轟音はもう聞こえてこない。あの音を奏でていた浪人たちがいないからだ。
 痛みにうずくまる浪人たちの亡骸を蹴飛ばし、邪魔だと言わんばかりに足元で痛みに呻く浪人たちを斬り捨て、空き地の遠くの方からゆっくりとこちらへ歩いてくるオブリビオンがいる。
 八本の刀を身に纏いし此度の首魁は、乱世の名将。浪人たちも決して弱くはない。が、このオブリビオンの強さは圧倒的であるという事が、猟兵の眼から見ればすぐにわかったことだろう。
「……フン。此度の略奪は所詮祭。詰まるところ、誉れ高き戦などには程遠いただの祭よ。乱痴気騒ぎに他ならぬわ。煽ってやれば多少は使えるかとも思うたが……。よもや一人も殺せず仕舞いとは喃」
 その男は、今回の戦いが始まる前の熱のこもった言動とはまるで異なるようなことを言う。浪人たちを煽り、略奪を戦だ祭だとして煽っていたオブリビオンはもうそこにはいなかった。
 『本性を現した』、と見ていいだろう。つまり、彼の敵は最初から浪人たちのことを使い捨ての駒程度にしか思っていなかったという訳だ。
「そもそも、略奪によって梶本の名刀八本全てをこの手に掴むのは、儂を置いて他にはおるまいに。『我らの戦乱には刀が必要である』などと、薄い言葉に騙されおって。これだから貧乏御家人崩れの安い誇りしか刀に乗せん浪人はいかん。棒振りも悪い、頭も悪いとなればいよいよ醜悪ですらあるわい」
 浪人たちの流した血を踏みつけ、赤黒い泥の上を進み、亡骸にはもはや目もくれず、オブリビオンが見据えるのは梶本村の一番奥、名刀が収容され、村民が逃げ込んだ納屋のみであった。
 結局このオブリビオンにとって、戦などどうでも良かったのだろう。ただコイツは梶本村の名刀を全て奪うことさえ出来ればそれで良かったのだろう。
 周りなど顧みず、『自分一人がより良い武器を掴み、そして戦えればそれで良い』という考えの元に動いていたこのオブリビオンにとって、浪人は仲間などではなかったのだ。どれだけ口当たりの良いことを言って侍の意地ある浪人たちを従えていても、その本性はどこまでも自分本位。
「……おや、まだおったのか? 猟兵とやら。普段であれば有無を言わさず死合うところなのだが、今の儂は名刀を手にする機会に胸を躍らせていてな。お主らは見逃してやっても構わんぞ? 梶本の名刀の試し切りには、梶本の民がおるから喃。ほっほ。生み出された刀匠の村の血を吸った名刀というのも悪くなかろうて」
 目の前の敵は、しかし尚も自分勝手なことを『ほざきやがる』。愉快そうに仮面の下から笑みを溢し、猟兵たちを無視して梶本村へと歩いて入ろうとしている。まるで、浪人や猟兵たちなど本当に興味がないというような素振りであった。
 ――――待てよ。そう、猟兵たちの誰かが声を上げた。もしくは、誰かが無言のままに武器を構えてオブリビオンの進路上に立った。その様子を見、オブリビオンは一つため息をついてこういうのであった。
「……ふうむ。逃がしてやろうというのに、分からん者共よなァ。まァ良い。貴様らとて、ほんの少しは名の知られた者共なのであろ? であれば、まァ……名刀を手に入れる前までの、軽い戦にはちょうど良いか。そこらに転がっているクズ共と転がしておいてやるわい。野ざらしにしておけば、野犬や鴉が始末してくれるじゃろう」
 オブリビオンが、腰に構える刀を抜いた。敵の持つ八本の刃は、梶本の名刀に並ぶとも劣らない名刀揃い。刃はぎらりぎらりと鋭く輝き、猟兵たちの血を吸わんとして地面の赤を反射させていた。
 恐らくこの敵に手傷を与えようとした場合、通常攻撃だけでは足りないだろう。こ奴を倒すには、超常の力による攻撃と工夫が必須のように見受けられた。
「さァ、来るが良い。何人がかりでも構わんぞ? 折角の戦乱であるのなら、少しくらいは楽しませてもらわんと張りが無いでなァ。我が無敵の八刀流――――受けられるものなら受けてみよ」
 目の前の敵は紛れもなく強敵だ。だが、コイツを倒さなくては梶本村に平和はない。――で、あるのならば。
 悩むことなど何もなく、ただ刃を取るのみである。『勝つか負ける』か、ではない。『立ち向かい、討ち果たす』のみなのだ。君たちがそう願い、そう行使するならば――魔は即ち忽ち斬られ、剣の錆と姿を変えるに違いないのだから。

 春先の空はどこまでも澄みきって青くあり、村へと聞こえた轟音はもう聞こえてこない。
 ここにあるのは醜悪な敵と、ただただ一振りの剣のみ。即ち、オブリビオンと――――『魔を穿つ鐵の剣』と成った、猟兵たちのみであった。
※プレイング募集は以下の時間からですと助かります※
【04/07(月) 08:30~】
 また、プレイング期限は毎朝08:30に更新されますので、もしよろしければ深夜や早朝に頂けるよりは、08:30以降に頂けた方が一日分余裕があり、採用率があがるかと思います。
 無論夜中にしか投げられない! などなどの事情あると思いますので、臨機応変に。皆様のご参加、心からお待ちしております。
イリーツァ・ウーツェ
● 烏鵠(f14500)と参ずる
【POW】
貴様が首魁か。楽しい機会を与えてくれたことに感謝するぞ。
次は貴様だな。
(浪人たちを捨て駒にした黒幕に対し、竜は怒りを覚えない)
(長く生きる人外故に、しっかりと引かれた一線がある)
(故に竜は、ただ新たな強敵の出現に喜ぶばかり)
UCを発動し、まっすぐ奴に突っ込んでいく。
そのまま行けばカウンターされるだけだろうが、
私の後ろには烏鵠がいるからな。躊躇いなく突っ込もう。
なに、UCが発動している29分間は死なん身だ。
貴様の技術、竜の暴力で真っ向から砕いて見せよう。
さあ、楽しもうじゃないか。


矢来・夕立
●【絶刀】
介錯、全部ヒバリさん(f15821)に任せとけばよかったですね。
武士の作法を学ぶ必要はありませんでした。
相手が普通のよくいるクズなら、いつも通りに殺すだけ。
恐らく商売敵でもありますし、殺さない理由がない。

ヒバリさんは一振でも上手く立ち回れる刀です。
暫く単独で戦ってください。
さっきの『助太刀』の貸し、ここで返してもらいましょう。

こっちは【忍び足】で気配を絶ちます。
ヒバリさんと敵の斬り合いを観察。
太刀筋のクセや、自分で気づけない無駄。…って、どんな達人にもありますよね。
コレを【見切り】ます。
気配を殺したまま、隙を突く。
【暗殺】【神業・否無】。

──言うことはふたつ。
今から殺す。素直に死ね。


荒・烏鵠

竜(f14324)と参戦。

八本腕の剣士とかナニ、前世はおタコサマでいらしたり?死因はたこ焼きかしらネー。

【WIZ】
とにかく挑発すりゃ、多分ヤツは無視しねェはず。プライド高そう。
感情くれりゃあコッチのモンよ。羊喚び出して視力を奪う。できればイリーツァが突貫する直前、奴がカウンターしようとした瞬間に。必ず動揺するはずサ。

イルが奴とバトッてる間は邪魔しねーようにオレはゾンビ共から逃げつつ、あっちに向かう奴を札と扇とシナトで片付ける。あいつの邪魔はさせねエ。
相手も強ェからその内盲目に慣れンだろ。そしたら他の猟兵に任せてイリーツァは引かせる。

もとより長続きする技じゃない、ダチを見殺しにする趣味はねェ。


灰炭・炎火
自分勝手ね。
身勝手ね。
言っとくけど! アンタが奪えるもんはなーんもないよ、刀も人の命も。あーしがいるもの。あーし達がいるもの。ここから先は通行止めよ。

あんたのそのなまくらじゃ、あーしだって斬れやしないから!

いくよ、ニャメの重斧! 今だけでいいから力を貸して!

───刻器神撃!

最大速度で突っ込んで、何度も何度もぶっ叩く!
カウンター? 上等よ!
無敵? 完全じゃあないんでしょう?
あーしとあんたの根比べ、けど! ぜーったいに、負けへんから!


鸙野・灰二
●【絶刀】
惜しい事をした。まだ息のあッた浪人、皆俺が介錯しておくべきだッた。
悔いの残る戦場ほど嫌なものは無い。
手向け花の代わりに、あれの首を贈ってやらねば。

先刻、矢来(f14904)から受けた借りを返す。

浪人相手の時と同じく、馬鹿正直に正面から突ッ込むとしよう。
八本刀相手に立ち回るなら手数は多い方が良い。
《鎧無視攻撃》《2回攻撃》
【錬成カミヤドリ】で複製した刀を取ッ替え引ッ替えしながら時間を稼ぐ。
本物の「鸙野」が折れなきゃ何とでもなる。
《激痛耐性》で痛みも吹ッ飛ばして、泥仕合と行こうじゃアないか。

手中の八本刀は折ッて黄泉路へ送ろう。
お前はその身ひとつで骸の海に沈め。


月凪・ハルマ
ああ……そういう

まぁそれならそれで、気兼ねなく倒せる訳だけど

◆SPD
※他猟兵との連携前提に行動

相手の刀が届かない距離を保ちながら手裏剣を【投擲】
狙う箇所は特に定めない。【残像】【早業】も駆使して
とにかく数を射ちまくる

上手い事急所に当たれば儲けもの
そうでなくても手や腕に当たれば相手の攻撃力を、
脚部に命中すれば機動力を削ぐことができる筈だ

わざわざ接近戦を挑むような真似はしない
というかこんな奴を相手に、そうするだけの意味を見出せない

手裏剣もいずれ見切られるだろう
そうなったら手裏剣に加えて【錬成カミヤドリ】も使用
複製した宝珠を操り、手裏剣とは別の方向から相手を射つ

―祭りも終いだ。ここでくたばれ、亡霊


月舘・夜彦


奴にとって彼等は捨て駒か
彼等を斬り倒した身ではありますが、命を軽んじ、利用しようとは思いません
いえ……それはただの言い訳ですね
ただ単に貴方の行いに嫌悪があり、敵ながら武人である者に挑む欲求
戦う理由は其れで十分なのでしょう

武器の多さから隙は少ない為、間合いは詰め過ぎず相手の攻撃後の隙を見て攻撃
死者達を復活させた時は2回攻撃にて斬り払い一掃
八岐連撃へは回避を優先し、残像・見切り併せ相手の刀を同じく刀で受け流す
八重垣の発動に合わせて駆け足で敵に接近し、抜刀術『八重辻』
お前と風貌が似た者と何度も戦ってきた
性格や太刀筋はやや違えど、扱う技は同じ
是より放つは重ねた戦より身に着けた斬り返しの刃
覚悟されよ


アリシア・マクリントック
誇りある武人が相手であれば決闘、というところですが……ただの外道であればその必要はありませんね。
――変身!

「私の剣がどこまで通じるかはわかりませんが……参ります!」
私の剣は命を奪うためのものではないですから、歴戦の戦士には敵わないでしょう。
防御を中心に……邪道ではありますが【セイバーエッジ】に炎属性を纏わせて、武器へのダメージを狙っていきましょう。

できるだけ剣で戦いますが、限界を感じたら【A・キー】を使って【フェンリルアーマー】に切り替えましょう。
「新たな扉よ、開け!」
力も技も敵わないのであれば……圧倒的な速さで勝負です。一撃の傷が浅いのであれば無数の傷を刻めばよいのです!


荒谷・つかさ
……参ったわ、私の剣の通る隙が見当たらない。
なら、私に出来る事は……

まず事前に【五行同期・精霊降臨術】発動。
風迅刀を火行強化し火炎旋風の剣に、刃噛剣を水行強化し氷結の剣に其々強化(状態異常力強化)。

正面から一気に踏み込み、風迅刀で斬りつける。
恐らく斬撃は防がれるだろうが、構わず風迅刀に籠められた風と炎を解放し熱風を叩きこむ。
その後来るであろうカウンターに対し、見切りと早業を駆使して刃噛剣での武器受けを狙う。
私の本命は、このタイミング。
超高温の熱風で熱された鋼の刀に、超低温の氷を纏う剣をぶつけるとどうなるか。
答えは「熱疲労」。
急激な温度変化に分子構造が耐え切れず、脆くなって砕け散るはずよ。


戎崎・蒼

浪人は捨て駒扱い、加えて猟兵をもただの前座にしか過ぎないものだと言い捨てるだなんて、随分と舐められたものだね。
それなら僕は僕なりの方法で“討ち果たそう”か。

【SPD】
スナイパーだから立ち回りはあまり変わらず援護射撃って所かな。(スナイパー+援護射撃)
攻撃はある程度避けたら、わざと当たりにいくよ。…流石にSPDのUCが当たるのは危険だと思うけどね。
取り敢えず当たりにいったら自分の銃で一時的に斃死してUCを発動。
その攻撃が決定打になる一撃となればいいけれど…使うとしたら最終手段か。

それまでに使う必要のないくらい銃で攻撃出来たら、一等いい。


ヨハン・グレイン
オルハさん/f00497 と

所詮はオブリビオン
傲慢で独善的ですね
自信のあるらしい腕を圧し折って、
二度と刀を握れぬようにしてやりましょう
無理はしないでくださいよ、オルハさん

魔力を通す、指輪の先から真黒の闇を這わせ
前行く彼女の後ろから、死角を突いて刃めいた一太刀を

劣勢を演じる彼女と合わせて動こう
薄闇を影と交えて這わせ、四面を囲う

彼女の狙う時が来れば
蠢く混沌を
逃げ場を許さず四方から一点に闇を束ねる

操られる屍体には一瞥のみ、視て
足止めだけ出来れば良い

頭を垂れて ください とねだるなら可愛げもあろうものを
略奪には略奪で返してやるよ
お前という存在そのものを、奪い、捨て去ろう


オルハ・オランシュ
ヨハン(f05367)と

へぇ、随分余裕だね……
よほど腕に自信があるのかな
遠慮なく2人がかりで挑ませてもらうよ
ここまで無傷でこられたんだもの
大丈夫!私達ならなんとかなるよ!

まずは小手調べの一突き
……っ、堅すぎる
私の槍よりヨハンの闇の方が通りやすそうかな……

UCで[攻撃力]を借りるね
敢えて無敵状態を誘発したら、
適度に攻撃を与えて劣勢のふり
状態が解除されて敵が動き出したその瞬間、
――私が待ってたのは、今この時!

顔面めがけて【鎧砕き】の【2回攻撃】
私の目的は致命傷を与えることじゃない
最初から、こいつの隙を生じさせることだった
少しでも怯んでくれたら後はヨハンに託すね
頼んだよ!


朱葉・コノエ

…あれが今回の首級、といったところでしょうか。
確かにただならない実力は感じられますが…祭り、ですか。
名刀一本に心躍らせている程度であれば、実力も知れたものです。
鴉が始末すると仰いましたね…。では、私が貴方をその地へ転がす鴉となりましょう

八本の刀…手数が多いとはいえ、付け入る隙は必ずどこかにあるでしょう
勝負は相手の放つ一刀目、攻撃をいなしながらその隙を観察します。
相手が大技を繰り出すタイミングを見計らって、【残像】と【早業】で距離を詰めて、武器破壊も兼ねた【紅颪流・無風】をお見舞いしましょう。
…無敵の八刀流、ですか。どんなに刀の数があろうと、極まった一刀にはそんなもの――遠く及びませんよ。


トリテレイア・ゼロナイン
もはや全くもって相容れない価値観、問答はもはや不要ですね
騎士として貴方を倒します
ですが力に善も悪も無し、あの強者にどう刃を届かせるか…

防御を得手とする私と戦法が似ているのはやりにくいですね
遠距離からの銃撃は悉く防御されにらみ合い…

ならばその守りを崩すまで

遠隔●操縦する機械馬を突撃、接近時に●破壊工作で仕込んだ自爆機構を作動


爆発で体勢を崩した敵の上半身を狙って射撃しつつ視界を塞ぐように盾を投げ●目潰し
注意が向けられていない脚部へ選択UCで●だまし討ち、拘束。●怪力も併用しつつワイヤーを巻き取り転倒させ引き寄せます

防御態勢を取る前に私の剣の鞘を持ち柄で殴りつけ●鎧砕き
刀の一本くらいは奪わせて頂く!


信楽・黒鴉
●SPD ユーベルコードを発動、暴風を纏っての高速移動。
残像、ダッシュを併用し、撹乱。その殺気を見切り、八連撃の一刀目に合わせたカウンターの2回攻撃で一本の刀を狙い、傷口をえぐるように負荷を重ね、叩き折ってバランスを崩して初撃を凌ぎ、風の刃で斬り刻む。

遣り合う前からあれこれ勝ち誇るのは、三下のやる事じゃねーですかい。
どこぞのお武家かは知らねェが、賽を振るまで勝負の行方なんて分かりゃしねェんですよぅ。
大体てめェなんぞにくれてやる刀はねえ。アレはあわよくば僕が頂く心算なんですわ。

って事で、てめェの鼻っ柱はその剣ごとブチ折らせてもらうぜ……! 
さァて……。持ってけ稚児切…… 好きなだけ哭き叫べッ!!


神羅・アマミ

たらふく飯が食いたい、屋根のある部屋で寝たい、美女を娶りたい、人の上に立ちたい…
欲望にも色々あるが、価値ある名刀を携えたいというくだらねー自己実現のためなら全てを踏みにじるその態度、良心の呵責一切なしに屠れる心遣いと受け取り感謝申しあげる。

そして敵が八刀流とあらばコード『操演』を発動、六本脚のドローンを背負えば手数は互角!
捌きに全力を注ぎ、戦況が膠着すれば奴は必ず『八岐連撃』の発動に繋げてくるはず。
そこを狙う!
和傘を捨て、八本の腕にて一刀目の白刃取りを試みる!
刀をヘシ折る、奪う等で七刀流にしてしまえば、八岐の名に偽りが生じるというわけじゃ。
刃をそっくりそのままお返しまでできたら最高じゃなー!


ブラスター・ブレード
アドリブ・共闘歓迎

そうか、貴様はそういう者か。
いや、いい。俺からは何もない。どうせ貴様は説教など聞く耳持たんだろう?

ただ、一つだけ宣言させて貰う。
――貴様は俺の怒りに触れた。

【鋼の精神】で俺の怒りは力に変わる。選ぶのは防御強化。

八本の刀をフォトンブレード一つで止めるは不可能。ならばこの五体で以て封じるしかあるまい。
攻撃は最大の防御、ならば防御こそ最大の攻撃だ。

奴は恐らく鎧の間接部を狙ってくるだろう。だが、そこを狙うは悪手だ。鎧を駆動させ、人工筋肉を収縮させることで奴の刀を掴んで離さず、その手数を封じる。


ヴァーリャ・スネシュコヴァ

味方を蹴落として貶めてまで、強さを自慢する…
俺はそういうヤツがすごく嫌いだ
本当に強いのなら、どうして貶める必要がある?
お前はただ、受け入れようとしないだけだ
自分が滅んだことを、自分が負ける事実を!

カウンターで迎え撃つなら…初撃は必ず命中するということ!
まずは敵の周囲に氷の【属性攻撃】で、表面を張り巡らせ
相手がカウンター状態になったところで、『死神の鎖』を命中!
相手がカウンター攻撃を繰り出す前に、勢いよくスケートで滑り出し
敵の周囲をぐるぐる回って、鎖で雁字搦めに
【怪力】で相手をぶん回し、勢いを乗せ相手を地面に叩きつける!

叩きつけた後もすぐには動けないだろうから、この隙に仲間も攻撃出来る筈だ!


鳳仙寺・夜昂

随分お喋りじゃねえか、将軍様よお。
俺らなんか余裕でぶち殺せるって体だが……驕った瞬間地獄行きだろうがよ、戦場ってのはよ。
自分の拳叩いて【気合い】入れてくぜ。

言っても俺自身は有効打を思いつかねえからな……
相手の隙を見て脇から『月影』を放り込む。
妨害入れて味方の攻撃を助けるのも、集団ならではだろ。
味方使い潰したお前には悲しいねえ。

今まで見てきた中で強いのは、守るもんがある奴だった。それが良いものであれ悪いものであれ。
だからこそ俺は今ここに立つ。
ここで守るもんは……何だろうなあ。
強いて言うなら『誇り』ってやつかね。
俺自身のもそうだし、村のもな。


●狐竜来たりて意気軒昂、今より過去を断ち申す
 彼方より来て刀を振るう。彼方とはつまり過去であり、オブリビオンとはそこから現れて猟兵と切り結ぶ存在だ。
 浪人たちはサムライエンパイアの『今』を生きる者共であったが、今回の敵は既に存在のありようからして異なるもの。オブリビオンは猟兵にとっての宿敵であり、必倒の相手である。 
「貴様が首魁か。楽しい機会を与えてくれたことに感謝するぞ。次は貴様だな。烏鵠」
 梶本の灯を消そうと荒ぶる一人の外敵に対し、しかしてイリーツァ・ウーツェ(盾の竜・f14324)は静かに立ち向かっていく。意思持つ魔杖、“竜宮”が彼の手の中で静かにその出番を待っていた。
 敵はどこまでも自分勝手に、浪人たちを捨て駒にしてここまで来た黒幕。だが、それに対して盾の竜は怒りを覚えなかった。身体的な年齢を人間年齢に換算すれば弱冠25歳ではあるが、彼は長く生きる人外故に、しっかりと引かれた一線を持っていた。
 故に、盾の竜はただ新たな強敵の出現に喜ぶばかり。その血を湧き立て、肉を躍らせてくれる強敵に向かうその喜びを、彼が今日も甘受していく。
「いっちゃんよォ、あー……。やっぱ何でもねェわ。分かった、そういうことなら付き合うぜ。死ぬンじゃねェぞ?」
 イリーツァの隣に立ち、彼の相棒としてこの場にいるのは荒・烏鵠(古い狐・f14500)。仲間は大事で、人間は好きなこの古狐は飄々とした振る舞いのままに浪人たちとの戦いを乗り越えた、イリーツァにも負けず劣らずの古強者。
 それなりの付き合いにもなるのだろうこの二人は、ほんの僅かに口を開いたのみで互いの意図を把握し、そして協調の足取りを取っていく。イリーツァがオブリビオンに向けて真っ直ぐ二歩進めば、烏鵠も彼に続いて一歩進み、その間に様々な工夫を凝らしていく。
 正面切った一騎打ちを望むのはイリーツァ。そしてイリーツァを援護を行うのは烏鵠と言う形。オブリビオンは静かに二本の刀を構えながら、彼らの突撃を目にしていた。
「初陣は竜と狐の二人であるか。良いぞ、良い。精々生き急いで儂にこの剣を振るわせてくれれば、それで良い。願わくば、貴様らが剛の者であれば――儂も長く楽しめるというものよ。そう簡単に死んでくれるなよ? ほほほ」
「笑うか。それもまた良い。精々笑ってあの世へ行け。結局はこの斬り合い圧し合いを、私も楽しんでいるのだから。――――竜の力、ご笑覧あれ。全身全霊、お相手仕る」
 【悪性拒絶・竜人兵】。イリーツァは敵の間合いへと飛び掛かりながら、自分の心の臓腑が著しい速度で鼓動を立てるのを自覚する。彼が放つのは、致命傷すら瞬時に再生する過剰魔力供給形態へとその身を変えることで、自身の理性を維持しつつ戦闘行動に関わる全能力――握力や脚力などは言うに及ばず、咄嗟の判断力や耐久力、思考回路までもを強化する超常の力。
 だが、竜人形態になる唯一の技でもある強力な力は、しかして諸刃の剣でもある。この力は著しいほどの強化を術者に与えると同時に、術者の寿命を奪い、呼吸は深いままに際限なく速くなり、全身へ無理やり血液を回さんとして動く心臓は、血管の負担すら顧みずにどこまでも強くあって――イリーツァの身体に、激痛と流血を齎すのだ。
「ふは、竜が自らの身を苦しめてより来るとは。儂も見たことのない光景よ。貴様の筋、見切って我が剣に取り込んでやろう。来い。狐には悪いが、もう一度浪人共の相手をしてもらおうかの」
 ユーベルコードを用いて敵を倒すべく走るイリーツァに対し、オブリビオンも自分の超常の力を発動していく。その名を【八重垣】。
 自身を敵の攻撃を視、その上で返す刀による攻撃を放っていく状態にするその力は、剣技に集中するために移動を封印するものの、敵の攻撃を受けて返すという一点のみにおいて今まで敵なしの無敵の剣であった。
 さらに敵は烏鵠へもユーベルコードを使用していく。【永劫乱世】の名を持つその力は、戦場で死亡した浪人たちの血肉を術にてつなぎ合わせて操り、自在に操るという技。
「ハッ、八刀流の剣士とかナニ、前世はおタコサマでいらしたり? 死因はたこ焼きかしらネー。シナト、頼むぜ」
「ふん、口うるさい狐よな。好きに言えばよい」
 文字通り死兵と化した浪人たちは、崩れた手足で刀を用いて四方八方から烏鵠とイリーツァへ襲い掛かる。特にオブリビオンへ向かうイリーツァの進路は相当数の死人で溢れ、人一人通る隙間もない。
 だが、そんなことはさせぬ、イリーツァの邪魔をさせて堪るかとばかりに飛び出すのは烏鵠。彼は自身の持つすべてを駆使して敵を止め、血路を切り拓く。
 ゾンビ共からは上手く距離を話して安全な位置を保ちながら、自身の走る方向とイリーツァに立ちふさがる者共から的確に止めを刺していく。五行神宴扇で死人の首を切り、不浄の身体を神符で痺れさせ、風を操る科戸の狐精に命令して高速のかまいたちを戦場に呼び込んで死人の足を切り落としていく。
「その上、死体まで操る手段の選ばなさと来た。必死過ぎて哀れだな、そこまで戦と刀が好きなら地獄でやってりゃどうだい? 等活に剣山とよりどりだぜ」
「戦とは血の通ったものでなくてはならん。それが分からぬ相手であれば、こうして死人と遊んでいてもらっても不都合ないわ。……竜が済んだら次は貴様ぞ。やおら耳障りな狐風情が、覚悟しておれ!」
 合間合間に挑発を繰り返しながら、烏鵠は見事に仲間の足を止めさせずに道を作り出していく。二人の猟兵が進むは敵へと連なる赤黒い死への道。――――そして、準備は整った。
 イリーツァがようやく敵の刀の間合いに入り、それに合わせて烏鵠がユーベルコードを使用する。【十三術式:太平羊】。何かしらの感情を与えることに成功した相手に対し、桃の花で飾られた子羊の幻覚を駆使して敵の感覚を奪う秘技だ。
 今までの言動から目の前の敵のプライドが高いであろうことを読んだ彼は、だからこそ戦闘の合間合間に軽口による挑発を繰り返していたのである。
「勿論分かっていたとも。このままいけば、私は貴様の反撃の刃を貰うばかりで攻め込めないことくらいな。しかし、――――私の後ろには烏鵠がいる。であれば、必ず勝機はあると踏んでいたッ!」
「――――何ッ、狐! 貴様、儂の眼をッ!」
 ユーベルコードで強化されたイリーツァの杖と拳、蹴りに頭突きを、今まさにオブリビオンは八本の刀と確かな技術によって受け止め、反撃を行おうとしていた。
 そして、ある程度実力を持ったものが見れば、このままではイリーツァの攻撃は敵に通じないことくらい誰でも分かっていた。恐らく、彼が真っ直ぐ突き進んで一歩を重ねるごとに、オブリビオンは刀を振るってイリーツァの放つ杖に手足と、順々に切り落としていくだろうと。
 その未来を変えて見せたのは、烏鵠の力。喚び出された羊は間違うことなく空間を蠢いて、敵のオブリビオンがイリーツァの攻撃を受け止めようとしたその瞬間に視力を奪って見せたのだ。
「耳障りだろうがナンだろうが、感情くれりゃあコッチのモンよ。やりなァいっちゃん。直接殴ンのはそっちの領分だゼ」
「推して参る」
「チィィィッ!」
 そして一瞬の攻防が幕を開く。敵へと襲い掛かる暴力の雨あられは、イリーツァの放つ攻撃の群れ。
 一流の杖術とは、刃よりも自在にその姿を変えるもの。『千変万化』に変化する杖は間合いを変え、位置を変え、持ち手を変えと、イリーツァの掌の中で自由に踊る。突き、回転させて顎への打撃、掌の中で再度回転させながら勢いを乗せた打ち下ろし。
 そしてそのまま杖を止めて甲冑の合間から見えるオブリビオンの喉へと突きを放つと、空いた片手で敵の腹へ甲冑越しの正拳突きを放ち、最後は体を半回転させ、竜翼を槌のように用いて敵に打撃を与えて見せた。
「なに、少なくとも半刻ほどは死なぬ身だ。貴様の技術、竜の暴力で真っ向から砕いて見せよう。さあ、楽しもうじゃないか。まだ往くぞッ!」
「――ッ、いっちゃん! 一度引けッ! 『もう見えてる』!」
「甘いわ。目が見えねば……呼吸に音、肉の軋みに地面の揺らぎで貴様の動きを捉えれば良いだけのことよッ!」
 打撃をいくつも受けて敵の様子を確認したイリーツァは、まだいけると踏んで杖を再度振るう。――が、視覚を奪われたとて敵もさるもの。恐るべきことに、オブリビオンは僅かな時間で立ち直った上に視覚以外の情報からイリーツァの攻撃を受け、そして反撃に打って出たのである。
 それを救ったのは烏鵠の言葉。たとえ深く受けてもイリーツァは自力で回復できたであろうが、それでも無意味に相棒が激痛を負い、寿命を減らしていく姿を見たくないと思うのは当然のことであった。
「相手も強ェからその内盲目に慣れッとは思ったが、予想より早いな……。もとより長続きする技じゃない、ダチを見殺しにする趣味はねェ。いっちゃん、こっからは他の猟兵たちと足並み揃えていこうぜ」
「ああ、その方が良さそうだ。杖の手応えは確かにあった。しかし、敵の剣もやる。これより先は、力と技術の二つを駆使せねばならんらしいな」
 相棒の言葉に咄嗟に反応したイリーツァは、踏み込みを僅かに浅く留めた。それが功を奏したと見え、彼はオブリビオンの反撃を受けはしたが、傷は浅いようである。
 二人の猟兵の連携が、敵の牙城を崩して見せた。いくら守りに入った敵の剣術が無敵に近いものであるとはいえ、連携と工夫を持ってすれば、敵の反撃をすり抜けることも出来る。千変万化な竜の暴虐と万両役者たる狐の工夫が、見事噛み合い敵に刺さるのも道理と見えた。
 この一歩は非常に大きい。二人は再度息を揃え、敵の首魁と力をぶつけるべく走り出す。敵に初撃をぶつけるにふさわしい、実に見事な連携であった。

●『暁闇』『金剛』並び立つ
「惜しいことをしましたね。介錯、全部ヒバリさんに任せとけばよかった。『よく死んだ。殺してやる』って具合に」
「ああ、本当に」
 二人は走る。影を抜け、浪人たちの亡骸を越えて、前へ出る。
「惜しい事をしたな。まだ息のあッた浪人、皆俺が介錯しておくべきだッた。『此処で死ね、死に損なうな』ッてな」
「ええ、本当に」
 二人は往く。オブリビオンに向け、獲物を抜き、ただひたすらに前へ出る。
「武士の作法を学ぶ必要はありませんでした。相手が普通のよくいるクズと分かっていたなら、いつも通りに殺すだけで事足りた」
「悔いの残る戦場ほど嫌なものは無い。浪人共への手向け花の代わりに、あれの首を贈ってやらねば。だから――――、俺はいつも通りに馬鹿正直に、真正面から突っ込むとしよう。矢来」
「はい。ヒバリさんは一振でも上手く立ち回れる刀です。暫く単独で戦ってください。さっきの『助太刀』の貸し――――、ここで返してもらいましょう。どうか、悔いのないように」
 矢来・夕立(影・f14904)と鸙野・灰二(宿り我身・f15821)の二人は小声でしゃべりながら戦場を駆ける。狙うはオブリビオンの首。持つのは一振りの刀と隣を走る相棒。
 充分だ。これ以上ないほどに充分である。外道一人を殺すのに、刀と友がいてどのような不都合があろうか。夕立は赤と月と蝙蝠の脇差、雷花を。灰二は鸙野を持ち、野を駆ける。赤い血の上を駆け、過去を斬るために二人は往く。
「お次は……ほォう、儂と真正面からの果し合いを望むか。わぁっはっはっは! これは良い! これは良いぞ! よもや勝てると思うたのか? よもや儂の剣より自分の方が上じゃと? ……猟兵如きが、笑わせるでないわ。二人がかりで来るが好い!」
「オレは往きませんよ、痛いのは苦手だし……ここは逃げの一手を打たせてもらいます。それじゃヒバリさん、『また』」
 オブリビオンは先ほど胴体に打撃を受け、僅かに体幹を痛めたと見える。しかし、まだまだ。彼の敵は強く、痛みを受けたとしても振るう剣術に何の影響も及ぼさないだろう。
 腕を斬られたとしても片腕で八本の腕を振るい、両腕を失っても腰と肩を振るい、足で刀を操ってくる『だろう』。目の前の敵はそういう手合いだ。性格がどれだけ悪かろうと、宿る剣術に正も誤もありはしない。敵が振るうは積み重ねた経験と、八本の刃。どれだけ繕っても最終的にはそこになる。
 オブリビオンは刀を構える。体良く心悪く、それでいて技はこの上なく冴えている。――だからこそどうしようもない。夕立は僅かに言葉を残すと、オブリビオンの前から姿を消した。残るは灰二ただ一人。
「ああ、『また』後で。……お前の剣がどれだけ強かろうと構わん。浪人相手の時と同じく、俺がやることは変わらんのだから」
「なんと、一人で! 上等よォ、さァ来いッ!」
 八本刀相手に立ち回るなら手数は多い方が良い。そう考えた灰二が用いるのは、自分の本体の器物を複製し、その全てを自分の腕のように操る秘中の秘。【錬成カミヤドリ】と呼ばれるその技で、彼は銘『鸙野』と名付けられた自身の心臓たる名刀をいくつも複製していく。
 斬り合いが始まる。火花散らして花風乱れ、赤黒い泥と血の上で、一切合切は太刀合せによる力と力のぶつけ合いだ。
「小癪なァッ、貴様の用いる刀など儂の八刀流の前には脆くも崩れ去って終わりよォ! 疾く死に晒せィ!」
 空中を泳ぐ『鸙野』の複製たちは、灰二の手元と腰元に揺蕩う。念力によって操られる彼の刀で直接的の刀を受けないのは『足りぬ』、と灰二が判断したためであろう。念力だけでは足りぬのだ。力はあれども技がない。敵の刃を受けるには、『一振りの刃』を、思いと技力の二本の『骨』で振るわねば。そのために、あくまでこの刃たちはとっかえひっかえに用いるに留める。
 敵の刀が空を裂いて袈裟に襲い掛かる。真っ向から切っ先を受け、鍔迫り合いに持ち込んで勢いを無くす。しかし敵もさるもの引っ掻くもの、鍔迫り合いに持ち込んだ状況から片手で刃を抑えると、空いた片手で左肩の刃を取って薙いでくる。攻めの力、【八岐連撃】が発動したのだ。
「フハハハハハハハハハァ!! どうした、ええ?! 猟兵よ、受けてばかりでは戦には勝てんぞ!」
「一、二ィ……」
 灰二は鍔迫り合いを支えた刀を一瞬押してから手を離し、距離を作ってから薙がれた刃を手元に浮かぶ刀の腹で受けていく。だが、その次に襲い来るのは亜光速の突き。威力はもちろん速度も乗ったその刃を、彼は寸での所で打ち払う。
 しかし、それもまた敵の狙い通り。オブリビオンは突きを打ち払った灰二の刀が伸びきったのを見、刀の腹目がけて渾身の叩き下ろしを行う。カミヤドリで複製された灰二の刀が、敵の剣技を受けて腹から折れる。
「ギィヤハハハハハァ! いくら名刀とはいえ複製は脆いものよなァ! そォらァ、次は貴様の肉ぞォ! 儂の技を見よ! そして受けよ! 名誉な戦場による死をなァ!」
「三、四……」
 だが、複製した刀が折られるかもしれないことなど灰二は最初から織り込み済みだ。そのために刀を取ッ替え引ッ替えしているのだから。『相棒に借りを返すために時間を稼ぐ』、ただ、その一点のために。
 彼に更に襲い掛かるのは、広く深く繰り出される見事な逆袈裟。灰二が腰元に浮かぶ剣を取り、構えるその瞬間を敵も狙っていたのだ。だが、灰二もそう簡単に敵の攻撃を受けたりはしない。敵の刀を受けるに最適な形である下段の逆風を完璧な形で繰り出すと、額を少し抉られながらも敵の刃を受け止めて見せた。痛みはほんのわずかにあるが、そンなものは既に吹っ飛んでいる。
 そこへトドメと言わんばかりに振りかぶられるはオブリビオンの力任せな押し込み。彼が先ほど行ったように今度はオブリビオンが鍔迫り合いを押し込んで場を仕切り直すと、僅かによろめいた灰二へ向けて力任せの刀を再度振り下ろす。灰二もそれを受けはするが、オブリビオンの巨体から振るわれる上からの押し込みを持ちこたえるのは些か分が悪い、と言うところ。
「ゲァッハハハハハハハァ!! 儂の勝ちだな? え? 猟兵よ? そのような攻め気の薄い刃筋で、どうやって儂に勝とうと思ったのじゃ? ――このまま押し切って、終いよォ!」
「五、六。――気付かないのか? この太刀合せは――仲間への借りを返すためのものだということを」
「――なにを……まさかッ」
「当然。逃げる訳がないでしょう、ウソですよ。恐らく商売敵でもありますし、殺さない理由がない。御自慢の八連撃――、あと幾つでしたっけ?」
 泥にまみれる。血を被る。土と骸を輩に、夕立は戦場の中で見事に忍んでみせたのだ。いや、それを可能にしたのは夕立の技術と灰二の全力による果し合いあってのこと。
 夕立は浪人の亡骸や、血で固まった土の僅かな凹凸などの全てを駆使し、否応なく全てを使う。血は臭い、泥は汚い、死には触れたくない――そう思えるような贅沢な道徳や良識など、彼の矜持に比べればクソみたいなものだ。赤く乾いた血に塗れる。臭くて汚い泥で身を隠す。上等じゃないか。外道剣客に繰れて遣る刀など、それッくらいが好ましい。
「──お前みたいな腐れ外道に言うことはふたつ。『今から殺す』。『素直に死ね』」
 灰二と敵との斬り合いを影から間近で観察していた夕立は、そう薄く呟いて脚を動かした。つま先は敵の方だけを向き、踵は纏わりつく泥に構わず幾度も駆ける。狙うは敵の命、存在意義。
 オブリビオンの振るう太刀筋のクセや、自分で気づけない無駄は、既に灰二が引き出してみせた。どんな達人にもあるその動きの揺らぎは、真の達人との斬り合いで如実にその姿を現すもの。だから、夕立にはもう分かっていた。灰二が引き出した、敵の――――ほんのわずかな揺らぎが。
「ッ、ッチィ! 甘いわァ、そうは――」
「おい、待てよ。まだ『俺』はお前の剣を受けてねえ。あと二合の間は『泥仕合』と行こうじゃアないか」
 夕立の存在に気付いた敵が、押しつぶす刀を翻して振り向きざまに迎撃態勢に入ろうとした。しかし、それは灰二が許さない。彼は重圧から解放されるや否や、即回り込んで今度は敵に斬りかかっていく。
 初めて攻勢に出、その手に握るのは本物の『鸙野』。状態も良い。さっきはよくも。今度押し込むのはこっちの番だ。敵の操る二本の刃を、金剛たる一刀のみで受けて時間を稼ぎ、灰二は夕立の刀を『活かす』。
「手中の八本刀は折ッて黄泉路へ送ろう。お前はその身ひとつで骸の海に沈め」
「さあ。否応無く、死ね」
 灰二が生み出した隙を突いた【神業・否無】が、敵の首を狙って進んでいく。研ぎ澄まされた『刃の光』に目をとられた敵は『影』への反応に遅れ、烏鵠とイリーツァが生み出した体幹への打撃も響き、敵は僅かに夕立の攻撃を受け損じた。
 受け止められた刀で無理やりに首への一撃を防がんとしたオブリビオンは、血に塗れた夕立の手から放たれる雷花の突きを刀の腹で受け止める。『受け止めてしまう』。その結果――。
「き………………き、貴様……ッ! 貴様等ァァァァァ! 許さん! 我が八刀のうちの一を、『折る』などと……! 殺す!! 殺しきってやるわァ!」
 そう、猟兵たちの活躍は敵の刃を折ることに成功した。『八刀流のオブリビオン』は、もはやその存在を殺されたのだ。
 ここにいるのは、もはや『外道』。他の言葉など要らぬ。刃と影は一度目を合わせ、少し笑って敵に向かっていく。『借りは返したぞ』『はい、ご苦労様です』。などと。語るべきが語られたなら、外道に語る言葉は少なくて良い。あとは一切刃にて。

●天籟怒涛 大『太刀』回り
 オブリビオンの力を目にしても、猟兵たちはその足を止めない。当然だ。敵の強さによって歩む方向を変えるような人物はここにはいない。
 『赦せぬ悪』がそこにある。であれば、彼らは『立ち向かう』だけ。浪人よりも強いなど知るか。どのような技を繰り出そうと構わない。猟兵たちはただ、往く。超常の力と自分の獲物、そして最後に頼れる自らの力を以て、ただ往くのだ。
「誇りある武人が相手であれば決闘、というところですが……ただの外道であればその必要はありませんね。――変身!」
「ああ……そういう。『そういう奴』だった訳か。まぁそれならそれで、気兼ねなく倒せる訳だけど。えっと、炎火さんとアリシアさんだっけ。協力してもらえるかな? アイツに一泡吹かせてやりたくてね」
「自分勝手ね。身勝手ね。言っとくけど! アンタが奪えるもんはなーんもないよ、刀も人の命も。あーしがいるもの。あーし達がいるもの。ここから先は通行止めよ。……ええ、もちろん! ハルマくんだったよね、あーしで良ければ! 一泡だけじゃ済ませないよ、あーしたちでぼっこぼこにしてやろ!」
「はい、私も是非! 私の剣がどこまで通じるかはわかりませんが……微力を尽くして参ります!」
「いやいや、頼もしいよ二人とも。それじゃ行こうか。あの『七刀流』とやらには――ここでくたばってもらおう」
 『猟兵は多種多様な個性を持っている』。それは言わずと知れた不文律だ。刀を振るうもの、銃を構えるもの、徒手にて挑むもの、術や魔の法を用いるもの。猟兵たちの『得意』は枚挙にいとまがない。
 そして、ここに集まった三人の猟兵にもそれは同じことであった。だが、彼らが構える獲物はそれぞれ違えども、目指すところは変わらず一つである。『気に入らないヤツをブッ飛ばして、世界に平和をもたらす』。そこだ。猟兵たちの手に入る力の種類はどこまでいってもそこに集約される。
「何を、何を何を何を! 何を抜かしておるかァ! 詰まらぬ戦じゃァ、人を苛つかせおッて! 貴様らは殺す! もはやだれ一人として逃がしてなるかよ! そこから動くで無いわ、儂が直々に殺しに行ってやる!」
「そもそも逃げるだなんて誰も言ってないだろうに。悪いけど、俺はお前みたいなやつにわざわざ接近戦を挑むような真似はしないんで。みすみす距離を詰めさせたりはしないよ」
 月凪・ハルマ(天津甕星・f05346)はその手に持つ忍者手裏剣を指に揃え、そして敵へと放っていく。まずは車剣の雨あられだ。片手の四指にて都合三枚、それが両手で都合六枚、三度重ねて拾八枚。手首で回転を加えながら連続の横投げにて放たれていく手裏剣たちは、ハルマの早業も相まってまるで回転する壁のように、横並びの雨のように敵へ向かっていく。
 狙う箇所は特に定めずに、とにかくまずは数打ちで勝負だと言わんばかりの速度で、ハルマはその手から敵に攻撃を重ねていく。車剣の次は縦投げによる棒手裏剣。残像を残すほどの速さでオブリビオンから距離を取りつつ、ハルマは牽制を繰り返していく。彼の袖下から幾重にも現れる手裏剣たちはその数を切らさず、次々とオブリビオンの手、足、目、膝、刀と場所を問わずに降り雪いで行く。
「甘い、甘い甘い! 刀が一本減って七刀になった程度で、儂の動きが劣ると思うかよ! 手裏剣なぞで儂に致命を与えようと思っておるのなら、それは甘すぎるぞ猟兵!」
「上手い事急所に当たれば『儲けもの』……。もちろんこれでどうこうなるとは俺も思っちゃいないよ。でもさ、忘れてない? こっちの武器は、俺の手裏剣だけじゃないんだ」
 ハルマの放つ手裏剣の雨を、オブリビオンは七刀すべてを駆使してはじき返していく。腰元の刀を抜き放ちつつ斬り上げながら手を離し、その空いた手を肩の刀に伸ばして最小限の動きで手裏剣たちを斬り返す。空中に降り上げた刀は身体をずらすことで肩の空いた鞘に手を使うことなく納める。オブリビオンの剣技も、そう舐めたものではなかったということだ。
 特に敵の剣技で優れているのは、八本の刃を駆使した攻防両面に活かせる手数の多さである。『だからこそ』、ハルマはまずそれを抑えるために手裏剣の雨を放ったのだろう。見事な見識、見事な観察眼である。
 放たれた手裏剣は例え致命と成らずとも、手や腕に当たれば相手の攻撃を鈍らせ、脚部に命中すれば機動力を削ぐことができる筈。そして、なんなら――『ただ弾かれるだけでも良い』のだ。敵の手数を抑えれば、その分他の猟兵が動けるのだから。
「私の剣は命を奪うためのものではないですから、歴戦の戦士には敵わないでしょう。ですが、だからこそ向いたこともございます! 邪道ではありますが……その刃、狙わせていただきます!」
「なッ、……! 貴様ァ、ふざけるでないわ! そう易々と、儂の刀を連続で遣られて堪るかァ!」
 愛剣セイバーエッジに炎属性を纏わせながら接敵し、敵と連続で刃をぶつけ合うのはアリシア・マクリントック(旅するお嬢様・f01607)。彼女が振るうのはなにかを『奪う剣』ではなく、なにかを『守る剣』。
 それは彼女の振るう剣の在り様に如実に表れており、アリシアは敵の剣技に対して攻め込むではなく、流れる流水の如くに敵の攻撃を受けていく。敵の一刀を受け、時にいなし、自分からも攻め込みながらもう片方の刀による攻めをこちらも刃で受け流していく。
「面倒な剣を用いる女よ……。……ッ、チィ! 邪魔だ、退けィ!」
「いいえ、退きません! 貴方の手数のいくつかでも、私がここで受け止めて見せます!」
「ほざくな、小童がァ!」
 アリシアの剣技は確かに攻め手と言う面ではオブリビオンに劣るかもしれない。しかし、敵の攻撃を受け流すという点においては負けずとも劣らずの一流の剣捌きを見せていた。
 袈裟と逆胴の両打ちには、敵の懐に自ら入りながらセイバーエッジの刃で胴を放つ刃を叩いて袈裟を受け止める。突きと斬り下ろしには下がりながら突きを刃で受け止めつつ流し、敵の片腕が伸びきった所を見計らって反撃することで敵の切り下ろしを防御のための機動へと切り替えさせていく。
 受け流し、時に守るために攻める。アリシアの剣技が卓越した動きを魅せるのはまさしくそこであり、この動きに関してはオブリビオンでさえ舌を巻く。ただでさえアリシアの剣技を受けながらハルマの攻撃をはじき返しているのだ、敵が刀で受け止められる攻撃の許容量は、既にそこまで来ていたといっても過言ではない。
「いい加減に……! よほど儂の連撃を見たいと思える! 刀が七つしかなくとも、儂の剣に遅れなどないわァ!」
「うるさい! あんたのそのなまくらじゃ、あーしだってアリシアちゃんだって、ハルマくんだって斬れやしない! ……ううん、あーしが斬らせやしないから! いくよ、ニャメの重斧! 今だけでいいから力を貸して! ───『刻器神撃』!」
 巨大な斧を軽々操り、灰炭・炎火(Ⅱの“破壊”・f16481)はその力で出来得ることから最適解を叩き出す。いつだってそうだ。いつだって、彼女は力と破壊で状況を潜り抜けてきたのである。そして今回、彼女の隣には技と速さが揃っていた。であれば、彼女はいつも通り、――――ただまっすぐに突っ込むだけだ。
 ハルマの幾重にも投げ込む手裏剣を弾き、アリシアの『守る』剣技との応酬を重ねて、いよいよ手が詰まってきたと見えるオブリビオン目がけて、炎火はただただまっすぐに往く。そこには技などない。あるのは、純然たる力のみ。残るのは、純粋な破壊のみ。
「二人が敵を止めてくれるなら! あーしは最大速度で突っ込んで、何度も何度もぶっ叩くだけ! カウンター? 上等よ! 無敵? 完全じゃあないんでしょう? その証拠が、二人の攻撃で手いっぱいになってるって事やもんね!!」
 狙いがついに重なり、三人の猟兵の持ち得る火力が全て敵の身体に叩きこまれんとしていく。二人の猟兵とオブリビオンの至近で繰り広げられる火花の雨は、味方には当たらない絶妙な角度で敵へと向かう手裏剣の弾きも加えてさらに加速していく。
 刃が擦れ合う金属音が連続で鳴り、質量が弾かれる高音が戦場に鳴る。パーカッション不足のブレイド・ダンス・ミュージックはさらに加速して、いよいよサビを迎えようとしていた。
「ッ、がァァァァ! 小うるさい蠅が増えた程度、儂の連撃には支障ないわァ! 喰らうが好い、我が剣の攻め、【八岐連撃】の八連撃を! 見るが良い、我が剣の守り、【八重垣】による反撃の刃をォ!」
 オブリビオンが、炎火へ向けて防御態勢を取る。3m超の超重量を誇る赤い宝石製の斧、ニャメの重斧の質量に対し、敵は技術で受け流すことによって攻撃を捌いていく。炎火は重さを感じさせない斧捌きを見せ、力任せに敵の頭蓋目がけて連続で叩き下ろしを放っていく。
 それを二刀で受け、時に一刀でいなし、もう片方の一刀で炎火へと反撃を行っていく。両者の力は正に互角。剣戟はどこまでいっても鳴りやむところを知らないかと思われた。しかし、その時である。
「炎火さんが敵と打ち合っている、今なら……! A・キー! 私に新たな可能性を見せて! 新たな扉よ、今こそ開け!」
 アリシアが、至近で斬り合う一瞬の隙をついてその身に纏う鎧を変じていく。フェンリルアーマーと呼ばれる純白の鎧に切り替えた彼女は、更に獲物を変えて敵へとその力を放っていく。
 両手のフェンリルクローから高速のラッシュを放つアリシアの爪技を、オブリビオンは捉えきれずに幾つか受け、敵の鎧には無数の傷跡が出来ていく。
「力も技も敵わないのであれば……圧倒的な速さで勝負です。一撃の傷が浅いのであれば無数の傷を刻めばよいのです!」
「この程度の傷が響くと思うたかァ! 消えろ、猟兵ッ!」
 炎火の攻撃を刀で受け止め、アリシアの爪技を鎧に喰らい、それでもオブリビオンは刀を振るうのを止めない。ダメージを受けながら繰り出されるのは、いよいよ敵の真骨頂である攻めの刃。
 一撃さえ命中すれば残りの七撃も高速で放たれるその刃は、無慈悲にもアリシアへと向かっていくではないか。敵はどうやら攻撃を受けながらでも反撃を、という腹積もりであったらしい。
「覚悟せよッ、小娘ェ! 貴様は否応なく死ぬのだァ!」
「――そっちに見るべき何かがあれば、尊敬の念を込めて……その刃を邪魔することはなかったかもしれない。でもさ、あんたみたいな奴を相手にそうするだけの意味を俺は見出せないな。だから、その刃は邪魔させてもらうよ」
 手裏剣の雨を降らせるハルマが、自身の腕の中で更に渾身の力を込めて風魔剣を打つ。大きく速く回転しながら空を裂き、敵の刀目がけて飛んでいくハルマの『剣』が、アリシアを狙って放たれた悪しき一刀を弾いて一瞬の時間を作ってみせる。
 連続で行われるはずの八連撃。その一刀目を、ハルマが止めてみせたのだ。武士の仕合であれば卑怯と罵られたであろうこの行いも、真剣勝負の中にあってはむしろ道理。外道剣客は、猟兵たちの『真剣』によってその動きを封じられていく。
「はああァ! 私たちは……! 嵐は! だれにも止められません!」
「なにィ?! 貴様ッ、小癪な忍び風情が……! ふざけるなッ、がァァァァ!」
 そして一瞬の時間さえあれば、一流の猟兵たちにとっては十分だ。アリシアは守りに用いていた全ての力を攻めへと転じ、両手に構えた爪から敵に向けて息もつかせぬラッシュを繰り返していく。右、左、右、突き、斬り上げ、斬りかかり、再度突いて捻じる。
 アリシアは刀をずらされた敵の懐で思い切り攻撃を重ね、そして最後の力を振り絞って蹴りを放ち、その反動を活かして敵から距離を取る。――次の猟兵へ、場所を作るために。
「ナイスだよ、アリシアちゃん! さて! これはあーしとあんたの根比べ、けど! ぜーったいに、負けへんから! 『あーしがやるって決めたから、あんたは、ここで、ぶっとぶん!』」
「……ッチイィ、舐めるでないわァ! 幾ら攻撃を受けようとも、こうして再度距離さえ空けば、貴様の力任せの斧など……ッ?!」
「――――言ったろ。その刃は邪魔させてもらうって。――祭りも終いだ。ここでくたばれ、亡霊」
 攻撃を受けて僅かによろめき、しかし怯まずに炎火の追撃を防御せんと刀を構えたオブリビオンの目に飛び込んできたのは、ハルマが放つ手裏剣の群れ。そして、彼が【複製カミヤドリ】で複製した宝珠から放たれる、手裏剣とは別の方向からの――魔杖の宝玉による、不可避の力弾であった。
 手裏剣の雨がオブリビオンの指と首筋に当たり、力弾が敵の構える刀身に当たってその刃を弾いてみせる。猟兵たちの協力がオブリビオンの抵抗を無に帰して、敵が見たのは――――燃え盛る炎を背負って、尚紅く輝く宝石製の――――『破壊』であった。
「はァァァァァーーーーーーッ!!」
 【刻器神撃:『長針のⅡ』】。羽から吹き出る燃え盛る炎で全身を覆い、自身の持つ怪力の更に十倍の力を以て、炎火は戦場の赤の上で飛ぶ。
 血。炎。ニャメの重斧。その全ての赤を背後に置いて、今彼女は超々高速でオブリビオンへと飛んでいく。――――ニャメの重斧は、込めた力に応じてその質量を増加させる。その特性が、今、オブリビオンの身体に突き刺さる。
「ガァア……! ッ、貴様……!!!! ……チィ……! 猟兵如き、に……! 一太刀、入れられようとは……!」
 ここに来て、猟兵たちは再びオブリビオンに大きな一撃を喰らわせてやることに成功した。敵の持つ刀を減らし、ダメージを重ね、少なくとも、彼らは今有利な状況を掴んでいる。
 そして、それを手にすることが出来たのは、紛れもなく猟兵たちの工夫を凝らした戦法と協力によるものだ。見事な立ち合い、見事な太刀合いであった。

●剣先星へ力を魅せろ
「随分お喋りじゃねえか、将軍様よお。俺らなんか余裕でぶち殺せるって体だが……驕った瞬間地獄行きだろうがよ、戦場ってのはよ。だからよ……。――お前にも、地獄に行ってもらうぜ」
「……当然よ。虫に幾度か刺されたとて、虫を殺すのが容易いことが変わるはずもなかろうが。これは驕りではない、理を示しているだけにすぎぬわ。……貴様らは、日が沈む前に必ず殺す……! 出でよ死兵! 文字通り死んでも奴らの息の根を止めよ!」
 自分の両拳をガチリと音を立てて叩き、気合いを入れ直して彼は行く。もはやものを言うこともなく、意味あることを考えられず、ただオブリビオンの意のままにだけ動く『彼ら』を見て、鳳仙寺・夜昂(仰星・f16389)の拳は留まることを知らずキレを増していく。
 生きていた彼らに理を敷き、自分の矜持の元で拳を振るったように、彼は死兵となった彼らに対しても変わらず自分の拳一つで道を切り拓いていく。突出して襲い掛かる敵たちの脆い肉体を、虎形のままに握りこんだ左手の突きで打ち払い、鈍い足回りを高速の足払いで捉える。
 『物事の筋を通す』主義である夜昂にとって、死人が闊歩し悪行のための道具に用いられている目の前の光景など、到底許せるはずもない。この光景を、この光景を生み出しているものを、一刻でも早く。彼はその一心でただただ拳を振るうのであった。
「ハハ、いやいや、正に正に。夜昂さんの言う通りでさァ。遣り合う前からあれこれ勝ち誇るのは、三下のやる事じゃねーですかい。どこぞのお武家かは知らねェが、賽を振るまで勝負の行方なんて分かりゃしねェんですよぅ。大体、てめェなんぞにくれてやる刀はねえ。アレはあわよくば僕が頂く心算なんですわ」
「……ほう? 弱い身の上の癖に良く吠えた。少しは使えるようじゃが……。貴様の術からは見え隠れするわァ。その術……、合戦上りの泥剣術であろう? 腐れた血の匂いが漂って来おるわい。ふは、貴様の技は手に取るように分かるとも。儂と同じ、叩き上げの術じゃろうが?」
 夜昂の僅かに後方、そこで剣を振る猟兵が二人。死兵と成った浪人たちに刃を向け、オブリビオンへの突破口を探る彼らの名は、信楽・黒鴉(刀賊鴉・f14026)と月舘・夜彦(宵待ノ簪・f01521)という。
 場所を選ばず、敵の動きを邪魔することに特化した切り口で敵群の手首や足首などを狙い、最小限の術の動きと刃長三尺の刃の鋭さを以て敵を瞬く間に無力化していくのは黒鴉。彼と背中合わせに曇り無き刃を敵に向け、せめてもの慈悲と一刀にて敵の身体を二分していくのは夜彦である。
「貴方にとって彼等浪人は捨て駒か……。彼等を斬り倒した身ではありますが、命を軽んじ、利用しようとまでは思いません。いえ……それはただの言い訳ですね。ただ単に私の中に貴方の行いに嫌悪があり、敵ながら武人である者に挑む欲求もある。戦う理由は其れで十分なのでしょう。後は――剣にて」
「フン……。臭い、臭い、青臭くて堪らんなァ、ええ? 戦場にあって人のための刃とは! 所詮剣術は他人を殺し、自分を活かすためのもの。貴様の言葉も聞き飽きた。儂の中にもあるぞ、貴様への嫌悪と、小うるさい虫を潰したいという欲求が喃。……後は――剣にて」
 夜彦はどこか手慣れた様子で死者たちと斬り合いながら、細かな受けと大きな回避行動をとれない彼らの隙をついて大きく薙ぎを払っていく。一閃、また一閃。腰を落として手指を滑らせた光速の抜刀術は空間に二本の線を描き、左右に振られた斬り払いは猟兵たちを囲む兵士の群れに穴をあけて見せる。
 オブリビオンへと通じるその道を逃がすかとばかりに、夜彦の薙ぎに続いて黒鴉の刃が夜を飛ぶ猛禽の如くに鋭角に飛ぶ。彼は敵陣の穴へ姿勢を低くして上体から突っ込み、左右より来て穴を塞ごうとする者共の足首を諸共に斬り落としていく。右へ引っ掻くように薙ぎ、左へ引っ掛けるように足を斬る。そのまま倒れ込んだ敵に躓いた敵の顔面を連続で突いて、彼らはオブリビオンへの道を作って見せる。
「ヒュウ、さすが。見事な剣術じゃねェか、二人とも。さすがに攻撃範囲は刀に負けるぜ」
「私は……。そうですね、少しは『慣れ』がございますから。ですが、夜昂殿もこういった荒事にはずいぶん手慣れていらっしゃるご様子。黒鴉殿のお手腕も見事でございました、お二人の協力に感謝を」
「良いンすよォ、猟兵の間でお礼なんざ。コイツらが生きてた時からもそうだったじゃないですかィ。よく言うでしょ、『持ちつ持たれつ』ってね。――――さァて、あとはアイツだ」
 身軽な夜昂が突出してきた敵を瞬時に叩いて敵陣に隙を生み出し、夜彦がその隙をついて敵陣へ穴をあけ、黒鴉が敵陣にできた穴を押し広げて道とする。三人の猟兵は文字通り『血路を斬り拓いて』みせたのだ。
 だが、歩みを止めるわけにはいかない。歩みを止めてしまえば背後からの無数の死兵共が彼らの背中に喰いつき、刀を突き立てんとしてくるだろう。オブリビオンへの接敵もあと僅か。作戦は瞬時に決めねばなるまい。
「さて、だ。二人に聞くが、なんかいい案あるか? ちょっと俺自身は有効打を思いつかねえ」
「でしたら、間合いは詰め過ぎずに相手の攻撃後の隙を見て攻撃――――が、最も良い方策かと。奴の太刀筋は見知っております。武器の多さから見ても、隙は少ないでしょうから」
「へェ、夜彦さんに自信ありと見た。そういうことなら僕もそこに一枚噛ませてもらいましょうかねェ。夜昂さんは」
「それなら俺は敵の足止めと浪人たちの相手に回るとするか。妨害入れて味方の攻撃を助けるのも、集団ならではだろ」
 三人の猟兵は戦場の中にあって、僅かに作戦の方向性を決めて後は駆けた。戦闘に立つのは夜彦である。愛刀夜禱をその手に携えて、七刀を以て迎撃の構えを取る敵に向かい、彼は更に踏み込みを強めていく。
「何ごとかを喋っていたようだが無駄なこと! いざや猟兵、斬り合わん!」
「言われずとも――参ります」
 一人の猟兵と一体のオブリビオンによる殺陣が始まる。どちらともなく始まった斬り合いは加速を続け、袈裟には逆袈裟で受け、斬り下ろしには逆風にて流し、まるで鏡合わせのように彼らの剣戟は白熱するばかり。
 夜彦が狙っているのは、敵の超常の力、『八重垣』の発動。その発動を見てから接近を行えれば最も良かったのだが、死兵に囲まれている状況ではそうも言ってはいられなかったのだろう。それに、自分の背後には二人の猟兵が控えている。なればこそ、夜彦は彼らを信じて『人のための刃』と成るのみであった。
「くかか、儂には分かっているぞォ? 貴様ァ、我が剣の秘奥を見たいと見えるなァ? だがそう簡単に見せてやるものかよ、刀が一本折られているとはいえ、儂の七刀の鋭さを以てすれば! 超常の力など使わずとも、貴様ら一人一人を血祭りにあげることなど造作もないことじゃァ! それに周りを見よ、我が死兵は貴様の血を求めておるぞォ!」
 敵の言うとおり、徐々に徐々にではあるが夜彦の剣は僅かに押され始めていた。どれだけ性根が曲がり果てようとも、敵は名だたる実力者。一山いくらの敵とは違うその刃筋は、猟兵一人の抵抗などむなしく押しつぶそうとして迫っていた。
 そして更にまずいことに、背後から迫っていた死兵の一部がいよいよ夜彦のすぐそこまで迫っていたのである。
「――――この状況はまずい。ええ、そうでしょうね。ですが、それはあくまで一対一であればの話。私とて、何の策も信も持たずにここまで来たわけではありません」
「ま、そういうことだ。味方使い潰したお前には出来ない芸当さ、悲しいねえ。……それじゃいくぜ、夜彦!」
 だが、そう。『敵は独りだが、猟兵は独りではない』。この大前提は、敵がどれだけ強く、また堅くとも通用する、戦場における真実の一つであった。
 黒い戦闘用手袋である『黒手』に包まれた左手が、夜昂の意思の元に振るわれて夜彦の周りの死兵たちを吹き飛ばしていく。
 キックボクシングにも、形意拳にも、どこか近いような独特の拳を使う彼は、体幹に預けた重心を一気に爆発させながら踏み込んで、敵の顎や胴、鳩尾、眉間などの正中線を捉えて拳を放つ。そして夜彦の周りの敵を一掃した夜昂は、ユーベルコード【月影】を敵に放って見せた。
「なッ?! なんじゃ……!? ええい小癪な影如きがァ、儂の剣を邪魔立てするかァ! だがァ! だが、だが、だがァ! 我が『八重垣』の前にはすべてが無駄よォ!」
「夜昂殿、感謝致します。――――それを、待っていました」
 【月影】とは、夜昂の足元の影から闇より尚昏い影色の帯を放ち、敵の四肢を捕らえることにより対象の動きを封じ込めるという超常の力。それを彼は夜彦の剣を受け止めようとして薙ぎを振るわんとしたオブリビオンの左腕へ伸ばし、見事に一瞬動きを止めたのだ。
 超常の力に頼らぬ夜彦の一刀が敵へ伸び、それをさせぬと敵が先んじて超常の力を発動した。全ての攻撃を打ち返して斬り返す、秘奥の秘『八重垣』。――――だが。『それ』こそを、夜彦は待っていたのである。
「……ッ、ッ、ッ、……ッ、!! チィ! 何故じゃ?! 何故、貴様がそれを――! それは、まるで儂の――!」
 敵は夜彦の薙ぎを受け、袈裟を返す。突きを掃い、太刀合せにて力を示す。仕切り直して引き斬り、逆風にて敵の攻撃を封じ込め、もう一度袈裟を放ってから斬り返す。
 敵の剣術を、夜彦は全て返していく。袈裟を受け、突きを返し、太刀合わせに自分から身を差し出す。敵の仕切り直しに合わせて距離を取り、引き斬りを叩いて弾くと叩き下ろして敵へと斬りかかる。そして敵の袈裟を逆袈裟で受け、返す刀でもう一刀すら受け流してみせた。
 その剣術は、まるで――――。
「お前と風貌が似た者と、私は何度も戦ってきた。性格や太刀筋はやや違えど、扱う技は同じ。是より放つは、重ねた戦より身に着けた斬り返しの刃。全て返そう。覚悟されよ――――抜刀術、『八重辻』!」
 集中。全ての剣術はそこから生み出され、理は正しい斬撃にのみ術を与える。夜彦の【八重辻】は、極まった集中により全ての攻撃に対して刀による斬り返しが可能な状態へ自分を置く無敵の剣術。敵の用いる【八重垣】とは、対になる術理であったのだ。
 そして、敵は夜昂の足止めを喰らって夜彦の薙ぎを受けるために『一刀先に』超常の力を用いた。ならば、神域の返し刀が先に尽き、返しきれない刃をその身に受けるのは――――もう、言わずとも分かろうものだった。
「が、あ、あァァァ!! 貴様……ッ!! 貴様ァァァ……!! 儂の剣術を盗み、あま、あまつさえ、儂に斬りかかるとは……! 何たる不遜! 何たる傲慢! 許さぬ、貴様らは許さ――」
「おいおい、技を盗まれた程度でぴぃぴぃ泣いてちゃ、戦場には立てねェぜ? って事で、てめェの鼻っ柱はその剣ごとブチ折らせてもらうぜ……! 技も刀も、諸共に失いなァ!」
 夜彦の放った渾身の一刀が深々と敵の鎧を切り裂き、技を盗まれたことの衝撃と併せて敵は明らかに怯む。そこへ走り込むのは、黒鴉だ。隙を漁るように駆け、嘴で啄むように刀を構える。
 『浪人の嘆きを宿す』妖刀、稚児切の刃が彼の手の中で鳥類の眼のように爛々と瞬き、黒鴉は超常の力を発動させていく。禍々しい魔力と妖力を帯びた、常の剣術とは明らかに異なる太刀。その名は、【禍魔異太刀】という。
「『我が太刀は 雷火の如く空を裂き 颶風斬り分け血を啜る』……。受けきれると思うなよォ!」
「……来るか……ッ! 攻め、いや防御を……!? いや、ここは打って出るべきか……ッ!」
 風の防壁と暴風を纏い、残像を残すほどの駆け足を用いてオブリビオンを撹乱し、移動の際に発生する妖刀の呪いを帯びた禍々しい暴風の『余波のみ』で死兵を切り倒しながら、黒鴉は死と闇と血に隠れて往く。
 その移動にほんの僅かに征く手を眩まされたオブリビオンの一刀がほんの少し遅れ、そして焦った彼は『攻め』を選択せざるを得なかった。焦った状況は、時に堅実な逃げ道こそを見えなくさせてしまうものである。
 そうして放たれる、黒鴉を狙った【八岐連撃】。その殺気を見切り、黒鴉は敵の一刀目のみに狙いを絞ってカウンター気味に稚児切からの風の刃を集中させる。
「受けるか、しかし……! 一刀目を止めようとも、二刀目がある! 我が八連撃は――」
「……俺が今まで見てきた中で、強い奴ってのは守るもんがある奴だった。それが良いものであれ悪いものであれ。だからこそ俺は今ここに立つ。ここで守るもんは……何だろうなあ。強いて言うなら『誇り』ってやつかね。俺自身のもそうだし、村のもな。――――アンタにゃ、俺が見た限り……守るもんがねェよ。だから、将軍様。お前は俺たちに『負ける』ンだぜ」
「なにィッ?!」
 狙いすましたかのように【月影】を放ち、黒鴉に向かって飛ぶ二刀目を止めるのは夜昂。彼は最初から敵の足止めにのみ精神を集中させていた。であれば、二度攻撃のチャンスを作ることなど、彼にとっては造作もないことである。
「さァて……。持ってけ稚児切……! 好きなだけ哭き叫べッ!!」
「儂の、儂の刀が……! やめろォォォォ!」
 敵の反撃が無いのなら、黒鴉の剣を止めるものなど何もない。彼はまるで傷口をえぐるように何本も、何十本もの風の刃を生み出しては敵の刺し出した一刀に向けて斬撃を重ねていく。
 風を羽ばたかせて負荷を重ね、つつくように風で突き――、黒鴉は、敵の刃を『叩き折ってみせた』。そしてすかさず敵へも駆け寄ると、彼は風の刃で敵の鎧を斬り刻む。
 敵の刃は残り既に【六本】。八刀流を掲げる剣士の一人として、そして剣術を用いるオブリビオンとして。敵は、完全に猟兵との一合に敗北したと言って良いだろう。
 三人の猟兵が、それぞれの持つ力の『尖った部分』で敵の刃を穿ってみせたのだ。実に――実に、見事な殺陣であった。

●戦場の乱れに夜の帳を
「無理はしないでくださいよ、オルハさん」
「ここまで無傷でこられたんだもの、私とヨハンなら大丈夫! 私達ならなんとかなるよ!」
 猟兵たちは車懸りの如くに連続でオブリビオンへ殴りかかり、斬り付け、その威を示していく。そして、それはヨハン・グレイン(闇揺・f05367)とオルハ・オランシュ(アトリア・f00497)の二人も同じことであった。
 二人の猟兵は闇と槍を携えてどこまでも往く。武器の間合いが異なる彼らの距離は、しかし術者二人の信頼によって見事に成り立っていた。ヨハンが自身の武器である闇を操り、オルハの槍の間合いに潜り込んだ至近の敵や、背後に迫った敵たちへ的確にダメージを与えるその隣で、オルハはヨハンに近付こうと企む死兵や、影の一撃を受けて倒れる敵にトドメを刺していく。
 『彼』と『彼女』は、まるで一体であるかのごとくに呼吸を合わせ、敵陣の中を闇と槍とを駆使しながら進んでいく。狙うはオブリビオンの首、ただ一つだ。
「新手……ッ! ふん、上等よ……二人だろうと構わん、来るが好いわ……! 浪人共ォ、死んでいるなら我が意のままに動けィ! 我が剣の秘奥には届かぬその拙い腕を使ってやろうというのだ、地獄で感謝するが良いわァ!」
 受けたダメージがわずかに響いているのか、オブリビオンは自ら猟兵と斬り合うのではなく死兵を駆使して猟兵の動きを制限させる動きを取ってきた。しかし、オブリビオンの太刀捌きならともかくのこと、今更浪人たちの剣技に臆するような猟兵ではない。
 それも生前の話ならともかく、死んでいる浪人の振るう剣技など、文字通り『死んでいる』というものだ。それに、既に自我を無くした彼らは『闇への恐れ』という防御機構まで失っている。そんな敵など、物の数ではない。
「所詮はオブリビオン、傲慢で独善的な言葉ですね。では、自信のあるらしい腕を圧し折って、二度と刀を握れぬようにしてやりましょう」
「へぇ、随分余裕だね……。よほど腕に自信があるのかな。遠慮なく2人がかりで挑ませてもらうよ! せいッ!」
 手の内はただ握るだけ。剣閃などあるはずもない。そのような死んだ剣術であれば、オルハの槍の一閃で敵を沈黙させるなど簡単なこと。それでも数だけは豊富と見える敵の死兵共は、数に任せてオルハを取り囲もうとして蠢いてくる。
 だが、そんな泥にまみれた死体共の動きを止めるのはヨハンだ。【蠢く混沌】。黒闇を手足の如くに操るそのユーベルコードは、彼にとっての力であった。視線を向けた対象を須らく捉えてダメージを与えるその闇は、目が見えていない様子の死体共の足へと音もなく忍び寄ると、足首の腱だけを的確に断絶していく。そして動きを止めれば、オルハの槍は敵たちを消して逃さない。
「オルハさん、これから先敵の屍体は僕が対処します。僕も援護しますから、そっちはアイツに集中してください。……操られる屍体には一瞥のみ視て、足止めだけ出来れば良い。舐められたものだな」
 死兵共の軍勢の中に穴を開けながら二人は進んでいく。まるで引き放たれた矢のように真っ直ぐに、敵の集団の中で勢いを失うことなく移動していく二人の目の前に、いよいよオブリビオンの影が見えてきた。
 二人は瞬時に今後の敵の攻撃に対する処置を決めると、オブリビオンに向けて攻撃を行っていく。どうやら、死兵の群れはヨハン一人で対抗するようである。視線を向ければ影から出でる闇が対象を襲う彼の力は、意志を持たない敵の群れに対しての相性が抜群であったのだ。
「ヨハン、ありがとう! それじゃ私は、目の前のこいつを……! まずは小手調べの一突きッ!」
 オルハの放つウェイカトリアイナのいくつかの突きを、敵のオブリビオンは中ほどから何度も地面に打ちのめしていく。彼女の放つ槍の技が劣っているという訳ではない。しかし、敵もまた強敵という訳だ。
 その後ろで光るのは、魔力を通す銀色の指輪。ヨハンが構える蠢闇黒の先からは、泥よりも濃く、影よりも黒い真黒の闇が地面を這って敵に忍び寄り、オルハの槍を打ちのめした隙を掻い潜って死角を突いた刃めいた一太刀が放たれる。が、それすらも敵はオルハの槍の槍を弾いた腕とは逆の腕で刀を振り翳し、全ての攻撃を捌いていくではないか。
「こぬるいわ、小僧に小娘がァッ! いくら儂が手負いであろうとも、六刀であろうとも、そのような甘い槍と影に隠れた太刀では手傷一つすら儂には与えられんと心得よッ!」
「……っ、堅すぎる……! 私の槍よりヨハンの闇の方が通りやすそうかな……」
 状況は猟兵の圧倒的劣勢に見える。事実、二人が放つ攻撃は敵の刃捌きに全て止められ、その上で彼らは返す刀で行われるカウンターを受け止めるために防御に手を回さざるを得ず、徐々に押され始めているのだから。
 敵の【八重垣】から繰り出される、オルハの突きを刃でいなした勢いのままに繰り出される高速の突きをヨハンの影が何とか受け止め、ヨハンが繰り出す死角からの複数撃は連続した打ち払いと切り上げで無効化し、そのまま斬りかかろうとする刃はオルハが受け止める。
 正に戦況は一進一退。とはいえその実は猟兵が何とか敵の攻撃を捌いているというだけであり、少しでも気を抜けば猟兵側に多大な打撃が入るであろうことは誰の目にも明らかであった。それほどに『明らかな劣勢』だったのである。
「ハハハァ、猟兵押し切ったりッ! さァ、死ねィ!」
 そして、ついに戦況は動こうとしていた。
 猟兵の攻撃を、敵の斬り返しが上回ったのである。今、状況はついに猟兵たちの攻撃を受けるオブリビオンという状態から、猟兵たちに攻め入るオブリビオンという状態へ移ろうとしていた。
 ついに得た攻勢にオブリビオンが笑う。それはようやく『思い通りの状況』を手にしたが故。――――しかし、この状況が『思い通り』であるのは、猟兵たちも同じことであった。
「――待ってたよ……! この時を! その無敵の斬り返しが解除されて、私にトドメを刺そうと動き出したその瞬間を! ヨハン、合わせて!」
 『オルハの槍が何度も地面へ打ちのめされていた』のは、敵の技術が彼女より勝っていたからではない。むしろその逆だ。オルハは、丁度敵が叩き下ろしで対処したくなるような場所へ自分の槍を進ませたに過ぎない。
 魔力を宿した三叉槍で敵の影を突き刺し、特定の力を吸収することで自身を強化する、【スカー・クレヴォ】。それが彼女のユーベルコードの名前。オルハは敵の刀捌きを利用しつつ、太刀合いの中で槍の穂先を敵の影へ違和感なく潜り込ませ、敵の『攻撃力』を奪い続けていたのである。
 カウンターを誘ったのも、劣勢であるかのように動いたのも、全ては今この時のためなのだ。実に見事な作戦の組み立て、そして見事な実行である。彼女の槍の技術無くして、この作戦の成功はあり得なかっただろう。
「これでようやく本気で当たれる訳ですね。いきますよ、オルハさん。――――沈め」
 無論、この作戦のことをヨハンが知らなかったはずがない。劣勢を演じる彼女と合わせて動いていた彼は、オブリビオンとの高速の太刀合いの中で気付かれないように薄闇を影と交えて地面の泥に這わせ、静かに――――敵の四面を、闇の刃で囲っていた。
 我が威を得たりとばかりにユーベルコードを解除して、オルハに斬りかかったオブリビオンは、つまり――――彼ら二人に嵌められたのであった。
「私の目的は、致命傷を与えることじゃない……! 最初から、こいつの隙を生じさせることだった! 少しでも怯んでくれたら、後はヨハンがやってくれるはず! 頼んだよ、ヨハン!」
「なッ……?! では、今までの斬り合いは……立ち合いは、全て……!? 罠……だった、のか……ッ!!!」
 敵の踏み込みに合わせて崩れたふりを解き、オルハは右足で思い切り地面を蹴ると、前進しながら敵の顔面めがけて二連続の高速突きを放っていく。
 熟練の手腕から繰り出される、鎧すらもいとも容易く砕くであろう洗練された二撃に対し、オブリビオンは斬りかかろうとしていた二刀を眼前に戻して防御せざるを得ない。既に敵から力を吸収し終わっていたオルハは、刀と槍の刃競り合いへと盤面を持ち込んでどこまでも優勢に立っていく。
 オブリビオンはもはや、身動きも取れずにオルハの槍を受け止めるしかできていない。――ならば。そこに追撃を入れずしてどうするというのか。
「頭を垂れて 『ください』 とねだるなら、せめて可愛げもあろうものを。略奪には略奪で返してやるよ。――――お前という存在そのものを、奪い、捨て去ろう」
 オルハの槍先が敵の二刀を寸分たがわずに押しとどめる。彼女の穂先は悪を許さず、妥協を捨てて完璧なまでに敵を固めて見せた。そして敵が動けずにいるところへ、ヨハンが仕込んでおいた影が迫る。
 彼と彼女の全ての斬り合い、全ての動きは、今、この時のためのもの。地面の泥跳ねの一つ、戦場に吹く風一つに至るまで、全ては二人の『思い通り』。
 敵へと四方から逃げ場を許さず迫り、まとまって一つの巨大な剣と成るのは、【蠢く混沌】。浪人たちに向けられたのものとは違い過ぎる巨大な刃が、戦場の闇と影と黒と赤の全てを携えて敵へ迫る。
「……ッ、~~ッ! 乞うものか、乞うものかよ……ッ! 貴様……が、ァァァァァ!!」
 ――――かくして、バリバリと言う音が鳴る。戦場に『帳』が降りた音だ。
 二人の猟兵は敵の身に多大な打撃を与えることに成功した。敵の行動を読み、そして誘導し、全てを集約した黒闇の刃が、敵へと至ったのである。

●三刀奪うは四つの力
「……あれが今回の首級、といったところでしょうか。確かにただならない実力は感じられますが……祭り、ですか。名刀一本に心躍らせている程度であれば、実力も知れたものです。亡骸は鴉が始末すると仰いましたね……。では、私が貴方をその地へ転がす鴉となりましょう」
「たらふく飯が食いたい、屋根のある部屋で寝たい、美女を娶りたい、人の上に立ちたい……。欲望にも色々あるが、価値ある名刀を携えたいというくだらねー自己実現のためなら全てを踏みにじるその態度にはいやはや敬服するばかり。良心の呵責一切なしに屠れる心遣いと受け取り――――心から感謝申しあげる」
「ほざくが良い、貴様らの命は名刀の価値より低いことを証明してやるわ……! 貴様らの、死を以てなァ! 我が戦と我がものとなる刀、この世にはその二つさえあれば良い! 他の一切は全て価値のない、斬って捨てるためのクズ同然よォ!」
 【操演】。六本脚の蜘蛛型ドローンを背中に背負い、自身の足で立ちながらも上肢とドローンの補助脚の計八本を駆使しながら敵との間合いに果敢に立ち向かっていくのは神羅・アマミ(凡テ一太刀ニテ征ク・f00889)。彼女は自身の足で飛び跳ね、右背の蜘蛛足を地面に射しながら三次元的移動で敵へと組みつき、左背の脚の鋭利な先端と、自身の構える戦闘用和傘【第肆歩"目録"】を敵に向かってブチかましていく。
 だが、幾ら手数が同じであろうとも。いや、だからこそ、オブリビオンの技術が相当であることがアマミには理解できてしまう。既に『残り六本』になっているとはいえ、敵の剣捌きは相当な物。防御のために残した腰元の二刀でアマミの攻撃を受け止め、空中でばら撒いて浮かせた両肩の四刀を順番に手に取ってアマミに斬りかかる敵の剣技は、まさに強敵の使うそれと言って過言ではなかった。
 アマミの隣で業物「凩」を構えて敵へと風の如くに斬りかかり、素早く、そして的確な一撃を加えんとしているのは朱葉・コノエ(茜空に舞う・f15520)。彼女の四枚羽の鴉の翼が戦場の乱れの中で風を伴って揺蕩い、彼女の剣にはどこか冷たい木枯らしのような風が共だってはためいていた。
 コノエはアマミが生み出した隙を活かしながら敵の周囲を回るように踊るように移動し、そして敵の死角から自慢の抜刀術を放っていく。しかし、敵は背中から襲い掛かる彼女の攻撃がまるで見えているかのように腰元の刀の鍔口で彼女の剣を受けていく。目の前の敵は、強い。至近で戦う二人の猟兵は、そんなことを思わずにはいられなかった。
「そうか、貴様はそういう者か。いや、いい。俺からは何もない。どうせ貴様は説教など聞く耳持たんだろう? ただ、一つだけ宣言させて貰う。――貴様は俺の怒りに触れた。故に……覚悟してもらうぞッ!」
「もはや全くもって相容れない価値観、問答はもはや不要ですね。騎士として貴方を倒します。ですが力に善も悪も無し、あの強者にどう刃を届かせるか……。ブラスター様、私が血路を拓きます。その後はお任せ致しました」
 遠方からアマミたちを援護するべく、オブリビオンへ向けて腕部装甲に格納された銃火器を用いて射撃を行うのはトリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)。その傍らにはブラスター・ブレード(ウォーマシンのフォースナイト・f14073)もおり、彼ら二人もアマミやコノエと同様に敵の息の根を止めんとして走るものであった。
 そして、敵の剣技を一瞬でも食い止める方策にトリテレイアは心当たりがある様子。遠距離からの銃撃は全て片手間で弾かれてしまうことは承知しながら、それでも彼は弾丸を放っていく。『放つ銃弾の全てを敵に防がせることで、少しでも注意を惹くため』に。
「…………ッ、今! ロシナンテッ!」
「むゥッ?! 馬……!? しかし、馬上に敵影は……いや、これは! まさかッッ!」
 トリテレイアは元々防御を得手とする猟兵である。なればこそ、彼は弾丸をどこに撃てばわずかにでも多く『敵の意識を惹けるのか?』について熟知していた。
 彼の放つ銃弾とコノエの斬撃、そしてアマミの和傘を受けながら、敵はその戦乱の中で『あるもの』の接近に気付く。それは、トリテレイアの遠隔操縦によって敵の背後から迫る、機械白馬「ロシナンテⅡ」であった。
「私と戦法が似ているのはやりにくいですが、ならばその守りを崩すまで。所詮私は紛い物の騎士……ですが、だからこそ! 村を守るためならば、使えるものは何でも使わせていただくッ!」
「これは……、ッ! 『神風』かァッ! ちィ、……ッ、離れよッ! 小娘どもがァ!」
「……手数が多いとはいえ、付け入る隙は必ずどこかにあるでしょうと思いましたが……まさか、こんなに早いとは。逃がしませんよ」
 トリテレイアの向かわせたロシナンテは、何もその巨体で体当たりを仕掛けているわけではない。そのさらに一段階上。遠隔操縦にて操られた機械馬には、事前に破壊工作で仕込みを完了させていた自爆機構と爆薬が大量に載せられているのだ。
 つまり、これは突撃ならぬ自爆特攻。それに勘付いた敵はその場から離れるためにアマミの補助脚を斬り払うべく刃を動かすが、コノエがそれを許さない。敵が放つ逃げのための一閃など、彼女からしてみれば止まっているも同然。補助脚を守るようにコノエは抜刀を幾度か行うと、敵の刃を弾いて身動きを封じていく。
「小癪なァッ、では――――!」
「おいおい、先までの余裕が見えんぜ? この世の全ては戦と名刀以外斬って捨てるものだけなんじゃろ? だったら目の前の妾たちくらい、すぐに切り裂けずにどうするんじゃ、ええ?」
 であればと突出したコノエを切り裂かんとする敵の刃を、今度はアマミが止めていく。ドローンの補助脚で地面の泥深くを突きさして敵の周りを自在に動き回りながら、彼女は苦し紛れに放たれるオブリビオンの一撃へ合わせて和傘の一閃を放ち、とことん逃げ道を封じて見せた。
 そして――――爆発音が、戦場に鳴り響く。
「~~~~~ッッ、馬鹿な、馬鹿な、馬鹿な……ッ!! 『愛馬に火薬を載せ突撃させる』だとォ?! 猟兵共は気が狂っているのか……ッ!!」
「ああ。お前と言う悪を滅ぼし、それで人々の盾と成れるのなら――――俺たちは如何様にでも狂ってやるとも。『守らせてもらうぞ……未来を、人間の可能性を!』」
 ロシナンテに載せられた自爆機構が正常に動作し、オブリビオンは背中へ火薬の熱さと破片の鋭さを味わうこととなった。寸でのところでアマミの妨害から身を逃して直撃は免れたものの、敵の身体にはダメージが幾分か入り、そして敵はトリテレイアの工夫によって『体勢を崩した』。
 その機を逃さんとして全身の人工筋肉を震わせ、最大速にて敵の懐へと斬りかかるのはブラスターだ。輝ける勇気を用いて爆発の中に被弾覚悟でいち早く飛び込んだ彼は、揺るがぬ信念で土埃の中の敵を鮮明に捉え、正しき怒りで強化した自身の刃を敵へと伸ばす。
 【鋼の精神】。ブラスターのユーベルコードであるそれは、不利な体勢での斬り合いを敵に強要させ、守りの剣技である【八重垣】の発動を余儀なくさせた。
「俺の怒りは力に変わり、フォトンブレードの冴えは増すばかりだ。まさか逃げるとは言うまいな! 受けてもらうぞ外道剣客、斬り返せるものなら斬り返してこいッ!」
「がァァァァァ……、ッッ! 受けて見せようではないか、斬り返して見せようではないかァ! 儂の剣技の冴えが、翠玉色の光なぞに負けてなるものかよォ!」
 サイキックエナジーで構成された光刃と、オブリビオンの掲げる二本の刃が同時に振り被られ、彼らが太刀合い死合うのはほんのわずかな間のみであった。ブラスターの構えるブレードが大上段に振り下ろされ、敵の頭蓋目がけて韋駄天の如くに飛んでいく。
 思いを力へと変換し、剛力を以て放たれる一撃を受け止めるため、オブリビオンはブラスターへ向けて二刀による交差切りを放って光刃を受け止めてみせた。
「受け……たぞ……ッ! くたばれィッ!」
 そして二刀でブラスターの攻撃を受け止めきった敵は、一刀を戻して手首で回し、そのままブラスターへ薙ぎを放つ。狙いは彼の鎧の隙間である関節部である。
 敵の放つ斬り返しの一刀が戦場の空気を高音を伴って裂き、そしてブラスターの人口筋肉を斬り裂くに至った。――――だが、それもまたブラスターの術の中であることに、オブリビオンはまだ気付かずにいるのであった。
「……ッ、……! ――八本の刀をフォトンブレード一つで止めるは不可能。ならばこの五体で以て封じるしかあるまい。攻撃は最大の防御、ならば防御こそ最大の攻撃だ……!」
「抜けぬッ?! 貴様ッ……肉で我が剣を留めたとでもいうのか!? そんなこと……不可能じゃァッ、出来る訳がないッ!」
「普通ならば不可能だ。だが、超常の力を以て盾と化した我が身を切り裂いたその刃……、もはや二度と振るえると思うなッ!」
 オブリビオンは寸分の狂いもなく、統制された術理によってブラスターの鎧の関節部にその刃を届かせた。しかし、そこを狙うは悪手であったのだ。
 ブラスターの狙いは最初から『そこ』へ敵の斬り返しの刃を向かわせること。あとは鎧を駆動させ、全身の人工筋肉を収縮させることで敵の刀を掴んで離さず、その手数を封じてみせたのだ。
「そこに続かせて頂く。騎士の戦法ではありませんが……不意を討たせて頂きます。まさか卑怯とは言いますまいな」
 敵の動きを刃ごと止めて見せたブラスターに続くのはトリテレイア。彼は今の剣戟の最中で体勢を崩した敵の上半身を狙い、引き続き射撃を行いながらも空いた手で敵の視界を塞ぐように盾を投げ、敵の視界を奪ってみせた。
 持ち主の身の丈ほどの大きさを誇る重質量大型シールドは、敵の視界を間違いなく遮断する。至近でブラスターが敵の動きを止めているのだ、であればその逆サイドを詰めれば良いだけのこと。
「舐めるなッ、今更一本刀が使えなくなった程度で儂の剣技はどうこうなるものではないわァ――――!」
「ええ、もちろん。だからこそ、全力で行かせて頂きます。言ったでしょう? 使えるものは何でも使わせていただくと!」
 敵は最早ピクリとも動かないブラスターが受け止めた刃から手を離し、両の掌で一刀を構えて襲い掛かる銃弾と盾をその一刀のみで弾いていく。だが、その動きが命取りと成った。
 トリテレイアはブラスターの活躍と複数からの攻撃で注意が向けられていない脚部へと狙いを澄ます。そうして放たれるのは、彼の装備兼ユーベルコードでもある【腰部稼働装甲格納型 隠し腕】。
 だまし討ちの如くに死角から放たれた隠し腕は敵の足を見事に捉えて拘束し、更にトリテレイアは敵に巻き付いたワイヤーを巻き取ってバランスを崩させ、敵を思い切り転倒させてみせた。文字通り、『土を付けてやった』のだ。
「ッ、ガッ、猟兵がァァァ! 儂を転ばせるとはッ、何たる……ッ」
「まだ終わりではありませんよ。貴方の刀の一本くらいは奪わせて頂く!」
 泥の上で幾度か転がり、手に持った刃を地面へ突き立てて何とか無理やりに上体を起こした敵へ放たれるのは、トリテレイアの追撃である。
 敵が完全に防御態勢を取る前にワイヤーの巻取りを完了させ、至近へと敵を移動させた彼は自身の剣である、警護用の儀礼用長剣の鞘を持ち、その柄を以て敵を思い切り打ちのめしていく。
 甲冑術にも用いられるトリテレイアの強靭な鞘は敵の顎を強かに打ち付け、彼の力を失わせて――――そして、トリテレイアは緩んだ手の内からひったくるように、敵の一刀を奪って見せた。
「ギ、ィィィ、ギ、クク……! ギャハハハハハァァァァァ! 上等、上等じゃァ……! これで、『残りは四刀』と成った訳か……! 上等よォ、猟兵どもがァ! いくら刀を奪われようとも構わん……!! 貴様らを殺して、梶本からの名刀八本、すべてこの手に入れさえすれば良いのだからなァ! ここで失った刀など惜しくもなんともないわァ!」
「おいおいマジかビビっちまうぜ! さてさて将軍様、アイデンティティを失っちまった気持はどうかのー!? 天網恢々疎にして漏らさず! 世に蔓延るあらゆる悪事をこの妾が余さず絡め取り、尽く駆逐してくれようぞ! 死ねーッッ!!」
 ブラスターとトリテレイアの技と力を諸共に受け、オブリビオンはついに手持ちの刃を『残り四刀』まで減らしていく。ついに残り半分と成った彼の刃ではあるが、しかして敵の剣技はいまだ健在。
 刃数が少なくなろうとも、それなら技術で手数はカバーしてやるだけだとばかりに敵は一つ大きく笑って見せると、負け惜しみを言い放ちながら土埃に紛れて接近してきたアマミに向き直る。トリテレイアの打撃のダメージは体に残ってはいるが、それでも彼の行動は止まらない。
「甘い……、と! 何度も言っておろうが小娘ェェェェ! 真っ向から儂の刃を受け止めきるのが難しいこと、貴様とてよく分かっておろうが――――ッ」
「――――あーあァ、本当にビビっちまったのう。刀をヘシ折る、奪うなんかして七刀流にしてしまえば、八岐の名に偽りが生じるというわけじゃと思ったが……。まさか、『妾以外にも似たような狙い』の奴らがこんなにおったとはな!」
「ええ。確かに。『勝負は相手の放つ一刀目』……。その隙を観察していたのが、私以外にもいたとは思いませんでしたね。では、――――反撃と行きましょうか」
 劣勢に立たされたオブリビオンが反撃の択に選んだのは、【八岐連撃】。このまま膠着しては押し切られるばかりと読んだ敵は、ここでアマミの反撃に八連撃を選んでみせたのだ。
 ――だが、アマミと、そしてコノエが狙っていたのは正にそこ。アマミが和傘を捨て、八本の腕の全てを駆使して一刀目に放たれる敵の白刃――――その白刃取りを試みた正にその隣で、コノエは土埃の中から一陣の風の如くに現れると、残像を残すほどの足裁きと早業で距離を詰め、敵の懐へと推参した。
 アマミは敵の攻撃を一刀で受け止めきれないのなら、『八本の腕』で受け止めてみせるとばかりに全てをそこに賭けたのだ。なんと豪放磊落な作戦であろうか。そして、その隣のコノエの素早さは、まるで戦場の風を全て味方につけ、翼で空を駆けるかの如く。『黒き風』と成った彼女は、疾風迅雷の速度で敵へ刀を届かせんとする。
「オクタビアス! 全推力もっとあげよォーーーーーーッ!! 反応速度コンマ0.001の世界じゃぜコイツはよォーーーーーーッ!!」
「……無敵の八刀流、ですか。どんなに刀の数があろうと、極まった一刀にはそんなもの――遠く及びませんよ。――――行きます」
「見切られて堪るものか……ァ! 機械仕掛けの蜘蛛如きにィ、田舎者の鴉天狗などにィ!」
 勝負は一瞬のことであった。アマミはまるでスローモーションのように自身の頭蓋を割ろうとして振るわれる一刀目を視、そこに全身の神経を集中させる。
 そして、『蜘蛛の脚』が、敵を捕らえた。ドローンの補助脚は敵の刃をまるで糸で捉えるかの如くに掴み、そして空中で反転させながら――アマミは、蜘蛛型ドローンとの接続を切って単身で敵の懐で飛び込み、空中で敵の刃を掴んで一刀を振るってみせたのだ。
 そこに重ねるように合わせ、四人の猟兵たちの最後の超常が、今発動する。その名は、【紅颪流・無風】。コノエの用いる剣術、紅颪流の一ノ型。一にしてすべて。基本にして応用。至高へ至った一刀である。
 コノエの放つ神速の抜刀術による、見えない刹那の斬撃が。アマミの放つ、敵の刃を奪ってみせてからの打ち下ろしが。十字に交差しながら、敵の刃と鎧、そして敵本体へと大きくダメージを与えていく。
 これで、残りは――――『三刀』。
「――――殺った!」
「貴方の掲げるその傲慢、その不遜。……すでに、斬り落としました」
「ギャアアアアッ! ちく、……ッ、畜生めがァ、アア……!! アアアアアアアア!! ふざけるなァ、猟兵、猟兵……!! 許さんぞ、貴様らァァァァァ!!」
 猟兵を猟兵たらしめているのは、超常の力ではない。彼らが協力し、工夫を重ね、苦難へも立ち向かう力。『それ』こそが彼らを猟兵たらしめているのだ。
 彼らが敵へ向かい、何度でも立ち上がるのはユーベルコードのおかげではない。彼ら自身が血反吐を吐きながら得た努力が、あるいは脳髄をフル回転させて編みだした知略が、そして彼らの悪へと立ち向かう諦めない心こそが、何にも劣らぬ超常の力であるのだ。
 ブラスターが敵の刃を押し留め、トリテレイアが敵を翻弄して刃を奪い、そこに乗じたアマミが敵の刃を受け止めて返し、コノエの刃が重なって敵を見事に切り裂いて見せた。実に見事な手腕である。超常の力と彼らの覚悟、彼らの技術は、敵を刻一刻と追いつめていた。

●三者三様から騒ぎ
「味方を蹴落として貶めてまで、強さを自慢する……!! 俺はそういうヤツがすごく嫌いだ! 蒼! つかさ! 力を貸してくれ! 俺は……こいつを倒したい!」
「……ええ、ええ。付き合うわ、ヴァーリャ。さっさと倒してしまいましょう。見たところ、どうも敵の刀はあと三刀しか残っていないみたいだし……。ここは、押し切るべきね」
「浪人は捨て駒扱い、加えて猟兵をもただの前座にしか過ぎないものだと言い捨てるだなんて、随分と舐められたものだね。それなら僕は……いや、僕らは僕らなりの方法で“討ち果たそう”か。援護は任せてくれ、二人とも」
 ヴァーリャ・スネシュコヴァ(一片氷心・f01757)、荒谷・つかさ(風剣と炎拳の羅刹巫女・f02032)、戎崎・蒼(暗愚の戦場兵器・f04968)の三人は、戦場の中を駆けていた。
 空には雲一つない晴れ模様が広がり、梶本の山間から見える景色は今日も奇麗であった。しかし、この光景に似つかわしくないものが目の前にいる。
 浪人をたぶらかし、村を荒らすことを画策し、刀のために虐殺も厭わないこのオブリビオンと、彼の周りに広がる戦場は――――この平和な梶本村という場所に、ひどく似つかわしくない異物であった。三人の猟兵は、『平和』という絵に塗りたくられた異物を取り除くために奔るのだ。
「お前が本当に強いのなら、どうして他を貶める必要がある? お前はただ、受け入れようとしないだけだ! 自分が滅んだことを、自分が負ける事実を! もう今この世界は平和な時代なんだ、お前らのいる場所なんて……どこにもないッ!」
「……フ。耳が痛いわ。……戦は終わった……か。だが、残り『三刀』。……クク……。落ちたものよ、なァ? 八刀流が聞いてあきれるわい。……しかし、忘れておった。儂の剣術はそもそもが二刀流。名刀など、実際に振るうのに二刀もあれば……貴様らを殺すことに困りはせぬわ。……来い。もはや侮りはすまい。我が刀が全て折れるまでは、付き合うてもらうぞ、猟兵よ」
 そんな三人を見て、オブリビオンは傷だらけの鎧と、残り少ない刀を見て僅かに笑う。既に幾つもの打撃は彼の臓腑に多大なるダメージを与え、繰り返し刻まれた斬撃は鎧に多くの傷跡を残している。
 だが、そんな今だからこそ。極まった今だからこそ、オブリビオンは奮い立つ。そもそもが、敵の根本は『戦を求める』ことと、『強敵を求める』こと。外道に身を窶し、名刀に目を曇らせていても、その本質は変わらない。
 むしろ他の猟兵たちが与えた傷が、与えたダメージの量が、敵から慢心と油断を消し去っていたのだ。悪感情を消したオブリビオンの間合いは、怪我を負って刀を無くし、それでも尚鋭く研ぎ澄まされていた。
「……参ったわ、私の剣の通る隙が見当たらない。なら、私に出来る事は……」
 つかさは敵へ接近しながら、脳内で幾通りものシミュレーションを行っていた。敵の立ち合いに挑むまでの足運びを、そして挑んだ後の太刀運びを想像することで実際の立ち合いに備えていたのである。
 だが、つかさの脳内で行われた敵との立ち合い、そのいずれもが――――『普通に斬り合っては負ける』。そう結論を下していた。一流の使い手であればあるほど、敵の体幹や呼吸の取り方、構えの細部で彼我の力量さを感じ取れるという。今のつかさは『それ』をやったのだ。
 そして、彼女は自分のやるべきことを悟る。今はまだ自分が斬り合う時ではない。自分にできるのは、いずれ来るそのタイミングを仲間を信じてじっくりと待つことだ。
「つかさ、ヴァーリャ、僕が援護しよう。存分に走ってくれて構わない」
 そう、猟兵は一人ではないのだから。一人で出来ないことは、その分互いに協力しながら当たれば良い。蒼の構えるSigmarion-M01から連続して放たれる弾丸は、実に見事に敵の急所と呼べる場所へと飛来していく。
 目、手元、足先、腿、両肘。そこ目がけて蒼が寸分の狂いもなく弾を届けられるのは、ひとえに彼の技術あってのことだ。無論敵も彼の放つ弾丸を斬り弾くために両の刀を駆使して実に見事に弾いていくが、敵が蒼の攻撃へ対処している間は、その分味方が安心して走れるという事でもある。
「ええ、刃を合わせるまでの牽制をよろしく。すごく助かるわ、ありがとう。助けられた分、気合い入れていかなきゃね」
「分かったぞ、蒼! ありがとうな! 行くぞッ、つかさ! 覚悟しろよ、オブリビオン!」
 蒼は更にそこから敵が自分の弾丸を弾くために動かした刀身の動きを予測し、そこへも弾丸を当てていく。弾丸を弾くために動かした刃を弾かれて敵が一発自分の手元に被弾したのを見て、二人の猟兵が今だとばかりに接近を果たした。
「……ッ、銃手か! 忌々しいが、見事な腕前よ……!」
 ヴァーリャの氷を用いた高速移動は、彼女の氷属性への理解度の高さがあって初めて可能となる芸当だ。そしてヴァーリャが作り出した氷の道の横で、彼女と並ぶ速度で走るのはつかさ。
 戦闘前にユーベルコード【五行同期・精霊降臨術】を発動させておいたつかさは、自らに風属性の力を降ろすことで走る速度を限界まで高めていたのである。蒼の援護射撃の下、二人の猟兵は風と氷を共にしてただ駆ける。
「来い。神速には神速の斬り返しでお返しいたそう。二人相手であれば我が剣も足りる。貴様らは二人、我が方には三刀。お釣りがくるというものよ」
「ああ! 受けてもらうぞオブリビオン! はァァァッ!」
 先んじて敵に刃を放つのはヴァーリャ。今までの猟兵たちの戦いを見て、彼女は【八重垣】による超カウンター攻撃が間違いなくこの場で最も警戒するべき攻撃であると読んでいた。
 そしてその技を繰り出した時、敵は一刀目を確実に『受ける』ということも、ヴァーリャは気付いていたのである。ならばこそ――、打つ手はある。
「逃げられると思わない方がいいぞッ! 【死神の鎖】(ツェーピ・チェルノボーグ)ッ!」
 肝心要の一刀目。待ち構える敵に向かってヴァーリャが放つユーベルコードは、自身の氷の力で作り上げた鎌が命中した対象を爆破し、更に互いを伸縮自在の強固な氷の鎖で繋ぐ超常の力、【死神の鎖】である。
 彼女は敵の防御を崩すのが難しいとみて、打つ手を変えてみせた。つまりは、『攻撃が通じずとも猟兵たちにとって有利な状況を生み出す』という方向へ考えをシフトさせたということだ。
「この技……ッ?! いかん、これは受けてはならぬ、避けねばマズ――ッ、ッガァァァァ!!?」
「ああ。つまりそこだ。避けられるとマズいんでね、悪いけど――――脚を奪わせてもらおう」
 ヴァーリャの放つ氷の鎌の狙いに直前で気付き、受けるのではなく避けようとしてユーベルコード【八重垣】を解いたその瞬間を、蒼の銃弾は見事に射貫いた。
 硝子製の弾丸である、Syan bullet-#00FFFF。虎の子であるこの銃弾を惜しげもなく用いた彼は、敵の足元へ見事に放って敵の身体と足元の泥に命中させていく。硝子の弾丸が着弾と同時に砕け、蒼い液状火薬が激しい酸化還元反応を起こして起爆していく。
 テルミット系の炸薬を用いた蒼の銃撃は、見事に敵の足を『封じて』見せた。足を止めたなら、『死神の鎌』から敵が身を逃れる方策など――――もはやどこにもありはしなかった。
「サンキューだ、蒼! 初撃は必ず命中すると読んでいた……! 必ず当てる! ……~~ッ、『捕まえた』ぞッ! つかさッ! 合わせてくれッ!」
 蒼の援護を受けてヴァーリャの放った鎌は見事に敵の胴体へと延び、突き刺さったその瞬間に敵の身体には氷の魔力で出来た花が爆ぜ、敵の動きを搦めとっていく。
 鎌の刃と氷の魔力で出来た鎖によって敵と自身とをつないだヴァーリャは、そのまま敵の身体の周りを氷面の上で勢いよくスケートで滑り出して旋回を行う。彼女の狙いは敵の周囲を高速で幾つも回り、生み出した鎖で敵を雁字搦めにすることだ。
「この……ッ! 鎖は……?! 氷の、妖力によるものか……ッ!! 引き放せないッ!」
「当然だッ! 蒼が繋いでくれたせっかくのこの好機! 無駄にするものかッ! うおおおおおりゃァァァァーーーーーーッ!!」
 覚悟と怪力の乗ったヴァーリャの高速旋回はその日の中で最高のスケート捌きを見せ、敵の動きを止めるどころか、そのまま鎖ごとぶん回し、勢いを乗せて相手を地面に叩きつけてみせた。
 氷の魔力による鎖での拘束と地面の叩きつけ。蒼とヴァーリャが二つの隙を敵に与え、そこへつかさが走り込む。全てはシミュレーションによる予想通り。自分が最も活躍できる場面を、他の猟兵が作り出してくれた。ならば、つかさは――――全てを置いて、ただ刀のみで語る。
「――――はァァァァァッ!!」
 つかさが構える二振りの剣は、風迅刀に刃噛剣という二つの愛刀である。彼女はそこにユーベルコードの五行の力を降ろし、片方を火炎旋風の剣に。もう片方を氷結の剣へと属性を付与させたうえで、未だふらつく敵へと駆け寄っていく。
 そして、――――正面から一気に踏み込み、火を纏った風迅刀で斬りつけを行うつかさの刃を、敵は『受けざるを得なかった』。
「……ッ、分が悪いが……それでも我が【八重垣】は万夫不当の魔剣よォ! 貴様の攻撃の全て、この刃にて弾いて見せるわァ!」
「シィィィッ!!」
 つかさの放つ超高温の刃による袈裟斬りでの斬撃は、しかして敵に防がれてしまう。寸前でヴァーリャの鎖の拘束も解き放った敵は、見事に両の掌で自在につかさの攻撃を捌いていくではないか。
 だが、つかさの猛攻は止まらない。渾身の一撃ですら、まるで防がれることを予期していたかのように、彼女は構わず風迅刀に籠められた風と炎を解放して二の刀である熱風を敵に叩きこんでいく。
「甘い……ッ! 炎だろうと銃弾であろうと、我が剣の冴えは全ての技を受け止めると何故分からんッ! 工夫なくして、儂の剣はこれ以上折らせはすまいッ!」
 放たれた熱風ですら両の刀で舞いあげて無効化し、敵がつかさにカウンターの斬り返しを放つ。そこにあわせ、『猟兵たちは一斉に動いた』。まるでその瞬間を待っていたかのように――。いや、ように、ではない。『待っていた』のだ。猟兵たちは、この瞬間を。
 返す刀で斬りかかられる敵の二刀をそれぞれ見切って受け止めるのは、つかさとヴァーリャの二人組。見事な早業を駆使して刃を滑り込ませ、二人はそれぞれ五行の力による氷を纏わせた刃噛剣と、氷の属性を充満させたメチェーリで敵の刃を受けていく。
「――工夫、と言ったわね。私が……私たちが、何の工夫も斬りかかると思うの? 狙っていたのは――――ここよッ!」
「行くぞ、つかさ! 今回の諍いの要である、あいつの刀……! それを『折ってやる』ッ!」
 ――――簡単な話だ。『超高温の熱風で熱された鋼の刀に、超低温の氷を纏う剣をぶつける』とどうなるか、という質問。その答えは――――すなわち、『熱疲労』である。
 今、つかさの力で急激に熱された刃は、二人の氷の力によって急激に冷やされていく。超高速で変遷を遂げる温度変化は、敵の刃の分子構造に多大なダメージを与え、敵の反撃の刃である二本の刀は著しく脆くなった。
「……~~~~ッ! グウウッ、そうか、そういうことか……! 貴様ら二人の狙いはここにあったか……ッ! 見事じゃァ! 斬り合いには勝てずとも、別の切り口を模索する……! 『それ』が、猟兵のやり方ということか! ……だがァ!」
 しかし、敵はそれでも刃を止めない。たとえどれだけ刃が脆くなろうとも、そういうことなら『刃を打ち合わせること』を避ければ良いだけなのだから。オブリビオンは鍔迫り合いの形になっていた状態から一度身を引くと、そのまま圧倒的な技量による刃ずらしと引き胴を放ってみせた。
 つかさとヴァーリャの刃の届かぬ場所からの敵の斬り込みは、実に見事に二人の胴を裂かんとして迫り――――その寸前で、別の人物によって止められた。なんと、その場に疾風の如くに現れた蒼が、敵の刃を自ら受け止めたのである。
「なッ……?! そうか、援護射撃が暫し止んだとは思っておったが……! しかし、射手を切り裂けるのならそれはそれで良し! このまま押し切って――」
「悪いけど、そうはならないんだ。僕は『どうしようもなくて君の攻撃を受ける』んじゃない。『僕は自分の意思で、能動的且に斃死すること』を選んだのさ。――――『さようなら、再び垣間見えるその時まで。……A più tarbi.』」
 【第三楽章 『魔弾の射手』より「終焉」】。コルポ・デル・ナストロ・スピラーレ。それは、蒼が今持てる攻撃手段の中でも、最も究極にして至高に近い一つ。
 自身が能動的且つ一時的に自殺することにより、距離を問わず視認している対象を環状に浮游した無間の魔銃で攻撃するユーベルコード。つまりは、逃げられない、不可避の弾丸。魔弾。魔銃。魔の力だ。彼は敵の刃をその身に受ける寸前、飛び出したまま空中で自分のことを自分で撃ち――――『能動的且に斃死』してみせた。
「馬鹿なッ! 馬鹿な……ッ?! 死ぬ気、いや、実際に死んで……!? ……ッッッ、受けきれんッ!!」
 蒼のこの力は文字通り最終手段。そして、終焉を齎す決定打へつながる一撃だ。彼はそれまでに温存しておいたすべての弾丸、すべての銃火器を死の淵から操って、敵へ銃口を向けていく。
 死にながらにして銃を操り、死にながらにして死を届ける、蒼のその姿は――――さながら、『死の指揮者』であった。Sigmarion-M01、Steyraug-Armee0-、Cravatta-45.52ct、Accuracy-AS50が敵へ向き、そして残りの弾丸と、Syan bullet-#00FFFFの全てが敵へ向かい、敵へ飛ぶ。
 文字通り弾丸の雨あられは敵の身体と刃を捉え――――そして、敵の構えた二本の刃へヒビを入れていく。
「これで――――!」
「折れろォッ!」
「……、……、……ッ!! グ、アアアアアアアアアッ!!」
 蒼の射撃に続いてつかさとヴァーリャも自身の誇りを刀に載せて斬りかかる。敵の構える二本の刃へ、二人の猟兵の力が届き――――。
 三人の猟兵は敵へ多大なるダメージを与えると同時に、敵の刀を二本折ってみせたのだ。残りは『一本』。彼ら三人の猟兵の力がかみ合って生まれた、胸を張るべき戦果だと言えよう。
大成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵

鳴宮・匡

◆ヴィクティム(f01172)と

一つ良いことを教えてやろうか
腕の立つ奴は、それをひけらかさないもんだぜ
弱い奴ほどよく吠える、って言うだろ?

近接戦闘をするヴィクティムへ【援護射撃】
主には、あいつが首魁に集中できるよう
【永劫乱世】で起き上がってきたやつらの排除を
その合間も、首魁からは目を切らず
動きの癖をしっかり覚え込んでおく

……もちろん十分だ
無駄弾は遣わない主義なんでな

特殊弾を装填した後は攻勢に転じる
狙いは可能な限り装甲の薄い箇所
或いは傷害することで効果的に動きを封じられる部位

こちらへ接近してくるようなら
全神経を集中、初太刀の入りを見極めて回避し
刀を振り抜いた瞬間の隙を狙って
連続して弾を叩き込む


ヴィクティム・ウィンターミュート

【鳴宮・匡と】

いいねぇ!お前、凄くいいよ。滅茶苦茶に自己中心的で、自分の強さを微塵も疑っちゃいねぇ。最高にクソ野郎の悪党だ。それくらい気持ち良い気性じゃねぇと…

──潰した時に爽快感が無い

確かここは鍛冶の村だったか?なら、俺も鍛冶師になってやる
名無しの鍛冶師にな

UCを展開して近接戦闘だ
【ダッシュ】【見切り】【早業】を併用して高速機動。解析までの【時間稼ぎ】を行う
解析できたら、匡専用の特殊弾を収めたマガジンを渡すぜ
対象の身体を鎧ごと効果的にぶち破り、体内に神経毒をばら撒く弾だ。
いくら防御を固めても、内部からのダメージは…効くだろう?

オラ、お前専用の弾だ。
お前のことだから、ワンマガジンでいいよな?


伴場・戈子

やれやれ。バカだねぇ、アンタ。「名刀ならばなんでもいい」……フン、腰と背中の8本の刀が泣いてるよ。その子たちも結構な業物だってのにさ。

武器と心を通わせる気もない癖に、よく無敵だなんて大言壮語が吐けたもんさね。
来なよ。お仕置きの時間だ、ぼうや。

自分の半身にして真の姿。「アンチノミーの矛」を呼び出して敵の猛攻を受けるよ。8連撃?全部防いでやれば足りないオツム自分の技のなってなさを理解できるだろうさ。
それで反省するならよし ……まぁ、反省なんてできないからオブリビオンだねぇ。
魔力の投網。アンタがいい気になって延々攻撃してくれたからね。力を蓄えるのは簡単だったよ。


神月・瑞姫
【朧月】
自分だけが強ければいい…
本当にそうなのかな?
それで強くなれるのかな?
みぃとフィーおねーちゃん
2人でがんばってきたその強さ…見せてあげるの!
(薙刀を構え
狙うは後の先
カウンター

みぃよりも守りに長けるおねーちゃんに隙を庇われつつも
【勇気】をもって耐え忍び
纏う霊気【オーラ防御】や薙刀を盾に【時間稼ぎ】

それは敵のUCを観察し、その全てを破るため
力に驕り
その源たる刀の作り手を
仲間を返り見ぬ者へ真の強さと絆を見せるため

ありがとなの
おねーちゃん
月は満ちた…
【破魔】の光よ
いざここへ
【破魔月刃】!
(補助、攻撃、蘇生、悪しきUCその全てを打ち消す眩き光の刃
その軌跡を辿り
無防備な相手の鎧にフィーの拳が炸裂する


鷲生・嵯泉
必要なのは己のみ、という訳か
先達てに似た様な事を言っていた支配者が居たが……
その行く末がどうなったか
言うまでもあるまい

叶うならば他と連携を以って当たる
元より命を惜しむ心算は無い
刃に手を滑らせ妖威現界にて抗する
見切りと第六感で攻撃を躱すにも限界があるのは承知の上
激痛耐性と覚悟で耐え切ってみせよう
血反吐吐こうが膝は付かんぞ
鎧砕きに怪力を乗せ、狙うは一点、其の首のみ
フェイントを駆使し刹那の隙をも味方に付けて
この刃を届かせてくれよう

命を惜しむ心算は無いと言ったが、お前にくれてやる心算も無い
勿論、梶本の刀も村人の命も渡さん
くれてやるのは敗北のみだ
私の刃は護る為に在る
奪うだけの力に折る事等出来んと知れ


ミルフィ・リンドブラッド

【朧月】
…このオブリビオン、ムカムカするです
浪人たちは強者を求めて戦いを挑んできやがったです。村を襲うのは頂けねぇですが、あいつらの戦に求める想いは本物だったです。
でも、こいつは刀を略奪するためだけに浪人を焚きつけ、挙句の果てにクズ扱いしやがったです。こいつはぶん殴んねぇと気が済まねぇです

・戦闘
「…今度はフィーが前に出るです。みぃサポート任せた、です。」
フィーが前に出るからには後ろに攻撃は通させねぇです。
愛槌を片手に突貫。敵からの攻撃を受け止めみぃの術の完成を待つです。
【破魔月刃】の術式が完成した後、愛槌を敵に投げつけ、その隙を狙って【ただの右ストレート】で脇を抉るようにぶん殴ってやるです。


ティオレンシア・シーディア
※アドリブ掛け合い絡み大歓迎

なぁんかえらく芝居がかってるなぁと思ったら。ホントに芝居だったのねぇ。
まぁ、そこは正直どうでもいいんだけど。
もし手に入れたとして。その様子じゃ使い捨てるんでしょ?
…あたし、道具に愛着ないヤツってキライなのよねぇ。

さっきまで鉄火場だったし、周りに使えそうな材料、いっぱいあるわよねぇ。
いくら強くないって言っても囲まれて数で押されるとマズいし。露払いに回ろうかしらぁ。
●鏖殺の〇範囲攻撃で〇援護射撃して、ボスまでの道を拓くわぁ。
さっきみたいに軌道見切って逸らす、とか、もうできないでしょうし。
弾バラまいて少しでもボスの動き封じられたらいいんだけど…
こっちは望み薄かしらねぇ。


●月の刃、壁の拳
「……このオブリビオン、ムカムカするです。浪人たちは強者を求めて戦いを挑んできやがったです。村を襲うのは頂けねぇですが、あいつらの戦に求める想いは本物だったです。でも、こいつは刀を略奪するためだけに浪人を焚きつけ、挙句の果てにクズ扱いしやがったです。こいつはぶん殴んねぇと気が済まねぇです」
「自分だけが強ければいい……本当にそうなのかな? それで強くなれるのかな? みぃは、そうは思わないの……。あなたに、みぃとフィーおねーちゃんの……2人でがんばってきたその強さ……見せてあげるの!」
 ミルフィ・リンドブラッド(ちいさな壁・f07740)と神月・瑞姫(神月の狐巫女・f06739)の二人も、他の猟兵と同じくこの戦場にあって何も臆さずにただ前に出る。
 彼女たちには矜持がある。それが、目の前のオブリビオンがやってきた所業を許すなと、彼女ら二人の中で叫んでいる。『人を守るため』。二人はそのためにここに来た。そして、人の生命とは、けして生物学的な意味合いだけの言葉ではない。『人の尊厳』。それを踏みにじる行いは、人に命を踏みにじる行為と何ら変わることはない。
 瑞姫の狐月が、梶本村の人々を守るために振るわれていく。ミルフィの天竜砕きが、利用された浪人たちの尊厳のために奮い立つ。彼女たち二人は、人の尊厳を守るためにここに来たのだ。であれば、敵へと向かい立つことに何の恐れがあるだろうか。
「貴様らも語りたいことがあろう。良い。全て聞いてやる……儂のこの刃でな……! 全ては、刃にて語れィ! 貴様らの言い分を乗せ、矜持を乗せ、魂を乗せて儂へ挑んで来いッ!」
 死兵の群れが瑞姫の周りに立ち並び、オブリビオンの一刀がミルフィへと向かって伸びていく。しかし、彼女たちは見事にそれに対して対処する。そこに現れるのは彼女たちの技術と誇り、そして確固たる信念だ。
 瑞姫は時折ミルフィに隙を庇われながらも勇気を振り絞って死兵の群れの中で奮闘する。時には自身の纏う霊気を盾にして敵の刃から身を守り、襲い掛かる刀を薙刀の打ち払いではじき返して身を守り、後の先をとって的確に死兵たちの身体へと薙刀の一閃を放っていく。まるで、時間を稼ぐかのように。
「フィーおねーちゃんが頑張ってくれてるから……。みぃだって……!」
 ミルフィはオブリビオンへと果敢に攻め込み、ドラゴンと自身の血液を材料に作成された巨大なハンマーを自在に操って時に打ち下ろし、時に抉るように薙いで敵へと打撃を重ねていく。その全ては敵の防御の刃、【八重垣】によって防がれていくが、それでミルフィがたじろぐことはない。
 彼女とて防御することに絶対の自信を持つ猟兵だ。故に、敵の防御してからの斬り返しの軌道は『何となく察しが付く』。自身が打ち、そして敵が防いで斬り返してくるが、その反撃に合わせたミルフィの防御はまさに千変万化。
 時に天竜砕きで突きを受け、打ち下ろしを弾き、薙ぎは叩き下ろして刃を地に付けていく。それでも間に合わないときは紅血結界による簡易的な防御術式で敵の刃の勢いを殺し、竜の鎧で強化した自身の肌を用いて鍔元に身を差し出して最小限の被弾に抑えていく。実に見事な防御術に専念することで、彼女はオブリビオンの放つ瑞姫への攻撃すらも全て受け止めていくではないか。
「……今度はフィーが前に出るです。みぃサポート任せた、です。フィーが前に出るからには、絶対に……! 絶対に、後ろに攻撃は通させねぇです……!」
「身の丈は小さいが……むゥ! 実に見事な捌き技! 良いだろう、貴様の矜持は守ることと見受けた! 儂とはとことんまで相反する精神よ! 儂の刃は奪うことしか知らぬ! 乱し、壊し、切り裂くことしか知らぬ剣……、受け止めきれるものなら、やってみるが好い!」
「もちろん、です! 虐げられている人を守りたいという、フィーの信念……! 破れるものなら、破ってみろです!!」
 ミルフィとオブリビオンの打ち合い斬り合いは更に速度を増し、打ち、受け、薙ぎ、返し、突き、弾き、振り被ってはいなし、躱しては打ち込む応酬が数え切れぬほど続いていく。
 金属音と浅く速い呼吸音が戦場を支配して、足元の泥は幾たびも踏み鳴らされてすでに固くなり、彼ら二人は戦の金音と刃の擦れ合う音を頼りに踊っているかにも見えた。熟練同士の打ち合いは、時に舞っているかの如く見えるという。ミルフィとオブリビオンの打ち合いは、まさにその域に達していたのだ。
「なんのォ、なんのォ! 確かに貴様、『守る』戦は上手い! それは認めてやろう! しかし……!! 貴様の運びからは、貪欲さが足りぬ! 何をしてでも勝ちたいと願う貪欲さがなァ! 戦乱から人を『守りたい』というならば! これしきの卑怯、乗り越えて見せよッ!」
「……ッ、そんなッ! っまさか……!? 泥で、目つぶしを……!?」
 そんな一流同士の立ち合いの中で決め手となるのは、いかに相手のリズムを崩せるかという所である。オブリビオンはミルフィの槌による打ち下ろしを躱したその瞬間に自身の足で泥を蹴ると、ミルフィに『泥の目つぶし』を放ってみせた。
 いくら固められているとはいえ、所詮この場所は荒れ地に血が混じったことで出来た泥の上で成り立っている戦場。彼女の槌が打ち下ろされば、打ち下ろされた場所の周辺にいくつかの飛沫が残ってしまう。敵はそれを利用したのだ。
「どうしたッ! 乗り越えられぬのならそれで終いぞォ! せェいッ!」
「間に、あった……! ありがとなの、おねーちゃん。月は満ちた……。破魔の光よ、いざここへ! 【破魔月刃】!」
 危ういと思われたその瞬間、そこに瑞姫のユーベルコードが間に合った。【破魔月刃】は、瑞姫の構える狐月から、敵の攻撃や補助をかき消す破魔の光刃を放つことで相殺する超常の力。
 破魔の力を多分に含む、瑞姫の技の一つである。彼女はただ死兵たちと戦っていたわけではない。その全ては敵の動きを観察し、その全てを破るため。力に驕り、その源たる刀の作り手を、仲間を返り見ぬ者へ真の強さと絆を見せるため。
「月の刃よ……魔を切り裂け! フィーおねえちゃんに襲い掛かるすべてから……! おねえちゃんを、守って!」
「たす、かった……! みぃ、ありがとう……ッ! オブリビオンッ! 見せてやるです! フィーの……いいえ、フィーたちの『矜持』をッ! この拳に、全てを載せてッ!」
 瑞姫の放つ月の刃は、ミルフィへ襲い掛かって視界を塞いでいた泥を打ち払う。そして視界がクリアになれば、ミルフィの行動を制限されるものなど何もない。
 彼女は瑞姫に感謝の言葉を述べながら、自身の持つ槌を敵へと投げつけて身軽になり、更に走る。月の刃とミルフィの槌が敵の刃を一瞬塞ぎ、そして彼女はユーベルコードを発動する。
「……ッ!! 見事ッ!」
「はァァァァァッ! えい…………ッ……! ですッ!!」
 【ただの右ストレート】。単純で重い、そして彼女たちの思いと矜持を載せた、大陸を割る程の力を込めた右ストレートが、敵の振り翳した腕の脇を抉るように見事に入る。思いは矜持と成り、矜持は誇りと成り、誇りは力と成り、力こそはパワーである。
 敵は利き腕に多大なダメージを負い、彼女たちへの反撃を頓挫して一度距離を置く。その効果は絶大だ。全ての魔を祓う月の刃が敵の動きを阻害して、全てを載せて放たれた拳が敵へと刺さった。
 彼女たちコンビは、実に見事に自身の思いを文字通り『ぶつけて』みせたのである。これ以上の成功はないと言って良いだろう。

●勝利を鍛え、敗北を撃て
「ハハハッ! いいねぇ! お前、凄くいいよ。滅茶苦茶に自己中心的で、自分の強さを微塵も疑っちゃいねぇ。最高にクソ野郎の悪党だ。それくらい気持ち良い気性じゃねぇと……──潰した時に爽快感が無い」
 『エクス・マキナ・カリバーンVer.2』を構えて、太陽と空の下でヴィクティム・ウィンターミュート(impulse of Arsene・f01172)は幾度も刃を振り翳す。照りつける日光は彼の刃を煌めかせ、爽やかな風は流れた血の香りを乗せて鼻腔に届く。
 どれだけ明るく日が出ていても、どれだけ梶本村が平和な場所であっても──。災害をもたらす敵がいて、血が流れてしまったこの場所に、ヴィクティムは刃を振りながら少しだけ郷愁の念を覚えた。
 血が乗った風の匂いはどこでも変わらない。ナイフの冴えが増していくのを感じる。『ああ、この匂いはまるで昔に嗅いだような気がする。あの時も時間稼ぎのためにナイフ一本を使い潰したっけ』。そんなことを思い、彼は敵へ向けて逆手のナイフ捌きを見せていく。
「一つ良いことを教えてやろうか? 腕の立つ奴は、それをひけらかさないもんだぜ。弱い奴ほどよく吠える、って言うだろ? つまり、まあ、なんだ。自分の腕前を誇りたいだけの剣なら、お里が知れてるから──もう黙ってて良いぜ」
 彼を援護するべく、着かず離れずの場所から秀逸な一射を適宜敵の刃へ届かせるのは鳴宮・匡(凪の海・f01612)。彼はBR-646C"Resonance"にて敵へ近接戦闘を挑むヴィクティムへ援護射撃を行いながら、さらに自分とヴィクティムの周りに纏わりつこうとする死兵たちの動きすらも『消していく』。
 匡の掌で銃弾とナイフが最短距離で動く。ヴィクティムへ振り下ろされる刃の腹を横合いから殴りつけるように二発の銃弾で弾き、近付いてきた死兵の首を手に持ったSchwarzer Teufelの突きと斬りで排除していく。
 首に一突き、刀を持つ手首へ二度手首の回転による斬撃。もう一度ヴィクティムの動きを確認して、彼が狙っている動きを補助するべく敵の手元に三発ほど鉛玉を放っていく。
 ヴィクティムの眼に、もはや死兵が映ることはない。匡の見事な射撃は、どれだけの敵の軍勢が相手だろうと変わらず、そして確実に敵の動きを止めていく。彼の精神は正に常在戦場。放たれる弾丸に、揺らぎなどあるはずもなかった。
「ふっ……ふは、ふははは、ふはははははは! そうとも、そうよ! 儂は救いようのない悪党じゃァ。そして──貴様らへ、我が剣を届かせるものよ。梶本の名刀も、『今だけ』は良い。儂が求めるのは戦と……そして、貴様らの血だけよ。この者たちもそれを望んでおるわ。……最早語らぬ。後は、剣にて! 行くぞ、猟兵ッ! 殺し尽くして見せるわァ!」
 二人の猟兵の連携が、浪人の刀捌きと渡り合っていく。もはや一刀しかないとは言えども、オブリビオンの剣技は超絶を誇る。それこそ、慣れない猟兵一人だけでの反抗などはすぐにでも倒せるほどの、だ。
 では、それでも彼らが渡り合えているのは何故か。答えは至極単純なこと。ヴィクティムと匡は『自分の動きを、互いの動きを熟知している』が故。相手の動きが分かる、などという話ではない。
 その一つ先、二つ先。『自分がこう動けばお前はこう動くだろ? それに合わせてやるから──トチるなよ、相棒?』彼ら二人が考えているレベルは、つまりここまで達していた。一流と一流が互いの腕を信頼し、その上でさらに上を目指す動きを互いに要求しているからこそ、彼ら二人はまるで一つの生き物のように息の合った連携で敵と渡り合っていけるのだ。
「匡!」
「分かってる、前見とけ。声もいらねえよ」
 あくまで『時間稼ぎ』が目的のヴィクティムは、敵の刃を封じることに念頭を置いてそのナイフを動かしていく。先ほど匡の援護射撃のお陰もあって敵と鍔迫り合いに持ち込んだ彼は、巧みに力の荷重を変えて離れ、また敵の懐へ駆け込んで速さで圧倒していく。
 ヴィクティムが用いるのは、敵の刃を『防御』のために用いさせる、早さ重視のナイフ捌き。逆手の刃が浅く斬り上げ、右に払ってまた左からの一閃を受け止める。刀とナイフで真っ直ぐに打ち合うことはせず、あくまでも敵の刃を動かすこと、そして敵の攻撃をいなしながら鍔元で競ることを意識した実に見事なウェットワークだ。『時間稼ぎは慣れっこ』と言わんばかりの刃の冴えである。
 そして匡の援護射撃もまた、実に見事なものであった。ヴィクティムが力負けしそうな敵の一刀は、銃弾を『敢えて敵の視界に映らせる軌道にて放つ』ことで敵の刃を攻めから守りへと転じ、ヴィクティムが位置変えのために泥を蹴る時は、それに合わせて敵の足元と地面に銃弾を叩きこんでバランスを崩す。二人の動きは熟練の域へ達していた。
「……ほう、なるほど? そうか、何やら攻め気が足りんと思うておったが……時間稼ぎが目的と見えるわ。――舐める、なァッ!」
「――おい、下がれ。アイツ――防がねえぞ」
「ッ、チィッ! 随分とMadな攻めじゃねえか、上等だぜ!」
 しかし、幾ら二人の動きが見事であろうとも、攻め気を欠いた動きと太刀筋が幾度も続けば敵も感づく。彼は猟兵たちの思惑に気付くと、なんと匡の放つ首筋への射撃とヴィクティムの放つ胴への突きをそのまま『身で受けて』みせたのだ。
 二人の猟兵の放つ攻撃をもろに受け、首からは夥しい血を流し、脆くなっていた鎧はほんのわずかに胴から破壊されながらも、敵は防御に費やすための一刀をそのままヴィクティムに向けてみせたのである。覚悟の座った一撃が、ヴィクティムの皮膚一枚を裂く。首魁への警戒を怠っていなかった匡の視線が無ければ危うい所だっただろう。
「確かに……儂の持つ刀はもはやこの一本のみよ。だが、『儂の刃は、未だ八本ここにある』わ。儂の身体が、この場の空気が、足元の血が、――――視える全てが儂の刃よ。さァ来い、猟兵。儂の首を取りたいのじゃろうが」
 敵の流す血は、今までの猟兵たちが与えたダメージが可視化されたものだ。破壊された鎧は、猟兵たちの活躍によるものだ。敵の刀を残り一本。しかし、二人にはまるで敵が弱っているようには見えなかった。
 最初から舐めているわけではないが、敵がそう来るのなら尚のこと。――――こっちも、本気を出さないといけないようだ。
「今のは危なかったが……。おかげで至近距離でデータが取れたぜ。『解析完了』。……確か、ここは鍛冶の村だったか? なら、俺も鍛冶師になってやる。相棒のための弾を打つ、名無しの鍛冶師にな」
 ――――ハッキングが通じない?その程度で俺の手札が尽きると、本気で思っているのか? 先ほどの敵の決死の剣をバックステップで何とか躱し、そのまま後退したヴィクティムは、誰に聞かせるでもなくそう呟くと、ユーベルコードを発動していく。
 『ウィンターミュート』の処理演算は、既に先ほどから始まっていた。脳内の電脳に走るプログラム名は、【Nameless Blacksmiths】。武器職人の名を冠するそのコードの機動準備が完了したのを確認すると、ヴィクティムはそのデータを『ヒラドリウス』のゴーグル越しに現実のものへと昇華させていく。
 電子の数字は錬鉄の工房へ、虚空のデータは現実の力へと置換されていく。敵の弱点を解析して装備を作る携帯自動工房。それが、【Nameless Blacksmiths】の正体だ。自身が活躍や苦戦をする度に、解析結果に応じた装備を仲間に配布することができるそのユーベルコードで出来上がるのは、『弾丸』であった。
「オラ、お前専用の――――『銀の弾丸』だ。お前のことだから、ワンマガジンでいいよな?」
「……ふうん、縁起が良いな。もちろん十分だ。無駄弾は遣わない主義なんでな、お釣りが来るぜ。交代だ、道中は任す」
「All right, Ace.」
 『Calling-187』。そう刻印された銀の弾丸は、ヴィクティムの手から匡の手に渡る。そして二人は走り出す。敵に裁きを、悪に断罪を――――いや、違うか。『お前は気に入らない。だから、死ね』。そう言いたげに、二人は駆けるのだった。
 今度は先を往くヴィクティムが並みいる死兵をナイフで押し切り、匡をオブリビオンまでエスコートしていく。敵の死兵を薙ぎ払って切り裂き、二人はオブリビオンの目の前へ再度現れる。ダメージが残っている様子の敵は、しかしそれでも匡をしっかりと見て、必殺の剣を放ってみせた。【八岐連撃】。息もつかせぬ八連撃、その初太刀が、匡に向かって伸びていく。
「残りが一刀ならば、全てそこに込めるだけのこと。我が一刀による八連撃、避けられると思うな――――!」
 意味のない動きなどない。匡は視得たすべてを己の糧とし、そして力へと変えていく。ヴィクティムを援護していた時から観察を重ね、敵の動きの癖をしっかり覚え込んでおいた彼は、そのまま静かに敵へと銃口を向けた。
 狙いは先ほどヴィクティムが、猟兵たちの活躍がこじ開けて見せた、敵の鎧の僅かな穴。大きさにして1cmかそこらもないそこ。匡が狙うには十分すぎた。
「視える全てが自分の武器。さっき、そう言ったよな。――――俺もだよ。『悪いな、それは「視えて」るぜ』」
 接近してくる敵に全神経を集中した匡は、上段から叩き下ろされる高速の初太刀の入りを見極めて、体幹をずらさず、足裏から腿、そsて腰を動かして静かに一歩左へ身体を半身ずらす。『それだけ』だ。彼が取った回避行動と呼べる動きは、たったそれだけ。
 敵の力の入り具合、筋肉の軋み、手の内と柄が擦れる音。敵が踏み込むことで起こる足元の泥の響きと振動、敵の動きがもたらす戦場の空気の揺らぎ、日光の陰り。その全てが匡の知覚の範疇だ。彼はその全てを視、もしくは聞いて癖を読み、そして――――指を引く。
 【確定予測】。相手の動きを注視し、癖を読み取ることで対象の攻撃を予想し、回避するその力は、彼の洗練された感覚があって初めて効果を成す技。戦闘は一瞬だった。刃が空を裂き、放たれた銀の弾丸はBHG-738C"Stranger"から全弾発射され、見事に敵の鎧の穴へ向けて吸い込まれていく。その間、僅かに0.2秒のことであった。
「……フ、やる、な……ッ! ッグ……ゲボッ、が……!! グアアアアアアア、ギ、ギャアアアアア!」
「お前の身体を効果的にぶち破り、体内に神経毒をばら撒く弾だ。いくら防御を固めても、内部からのダメージは……効くだろう?」
 二人の超常の力は攻めと避け、その二つの見事な融合と調和を齎し、敵の身体へ文字通り突き刺さった。
 チームプレイとしてこれ以上ないほどの、素晴らしい作戦であったといえるだろう。

●戦場の音色、聴き候え
「やれやれ。バカだねぇ、アンタ。「名刀ならばなんでもいい」……フン、腰と背中の8本の刀が泣いてるよ。その子たちも結構な業物だってのにさ。武器と心を通わせる気もない癖に、よく無敵だなんて大言壮語が吐けたもんさね。『そんな』だから、肝心の刀も七本折られっちまうのさ」
「なぁんかえらく芝居がかってるなぁと思ったら。ホントに芝居だったのねぇ。まぁ、そこは正直どうでもいいんだけど。……もし、梶本村の名刀ってヤツを手に入れたとして。あんたのその様子じゃ使い捨てるんでしょ? ……あたし、道具に愛着ないヤツってキライなのよねぇ。まずは一刀でも大事にしてから、刀を集めた方が良いんじゃない?」
「ハ、刀も銃も、そして矛も……。窮極的には『全ての武器は使い捨て』よ。特に刀などはまさにそうであろうが。刃こぼれ、刀身のずれ、折れ……。一度振るえばそれで駄目になるようなものばかり。……だが、『それ』が良いのではないか。戦のためにあり、戦の中で壊れる刀だから良いのだろうに」
 ティオレンシア・シーディア(イエロー・パロット・f04145)と伴場・戈子(Ⅲつめは“愛”・f16647)の二人が、敵の至近で素早く剣戟を重ねていく。一人は銃。一人は矛。
 二人は距離が異なる武器を使いながらも、互いの息に合わせて戦場の中で上手く立ち回っている。戈子は最早一刀のみで戦う敵に肉薄しながら、如何なる楯にも破られない大戈である、アンチノミーの矛を自在に操り敵と覇を競う。
 そして戈子が一つ打ち合い、二つ打ち合うその間に、ティオレンシアは戈子の後ろから近寄ろうとする死兵たちの頭蓋を瞬時に六つ落としていく。彼女の構えるオブシディアンから六つの薬莢が落ちるのと、頭蓋を撃ち抜かれた敵が泥に倒れるのはほぼ同時であった。
「必要なのは己のみ、という訳か。先達てに似た様な事を言っていた支配者が居たが……その行く末がどうなったか、最早この場で言うまでもあるまい」
「……そして、そうよ。儂が刀を求める理由など、詰まる所『儂の戦に必要だから』以外にない。名刀も数うちも、全ては戦のためのもの。儂は殺されるまで戦を求め、平和な土地に戦を齎す。……来い、猟兵。儂の戦のために。来るが好い」
「別に、あんたに言われなくても行くわよぉ。全力で、ね?」
「そう、別に頼まれなくてもッてやつさ。来なよ。お仕置きの時間だ、ぼうや」
 銃が死兵の頭を潰し、矛が敵と剣戟を重ねるその場に、更にもう一人の猟兵が現れる。名を鷲生・嵯泉(烈志・f05845)。ここにあるのは唯戦を求める力と、それに抗おうとして戦う力のみ。
 敵が戦のために刃を求め、猟兵が平和のために戦うのなら、結局彼らは争うしかない。これはそういう盤面へ既に至っている話だ。奪う力と守る力。二つの力が、ねじれながら互いを打ち滅ぼさんとして動き出そうとしていた。決着の時は、既にそこまで来ている。
「さって、鉄火場には身を隠せる場所は多いけどぉ……。やっぱり結構な数いるわねぇ」
 戦場に転がる亡骸と、血。その夥しさは、つまりこの場所で死んだ浪人の多さを如実に物語っていた。そしてそれは即ち、敵の力で蘇った浪人も多いという事。
 ティオレンシアはその手に構えたリボルバーを休ませることなく次々と用いて敵群の動きを止めていく。そもそもの話、こうして誰かが死兵を打ち崩さないことにはおいそれとオブリビオンとの斬り合いも出来ないのだから。
「いくら強くないって言っても、囲まれて数で押されるとマズいし。アタシは露払いに回ろうかしらぁ。嵯泉さんに戈子さん、直接戦闘はお任せしたいんだけど、いいかしらぁ?」
「こっちはそれで構わないよ、もうアタシはこうして打ち合ってるわけだしね! そこの伊達男もさっさと来な、ババアに無理させるんじゃないよォ!」
「これは手厳しいご婦人だ。私は元より命を惜しむ心算は無い。叶うならば他と連携を以って当たろうとも思っていたところだ。援護に心からの感謝を」
 オブリビオンとの斬り合いに至るため、嵯泉もティオレンシアに近い場所にいる死兵のそっ首を手に持った刃で次々に斬り裂いていく。唯只管に、黒く、昏く。斬った首から溢れる血の紅を浴びて尚、一雫すらも見得ぬ闇色纏う禍断の刃。それが彼の振るう黒剣、縛紅だ。
 敵の死兵が繰り出す『死んだ』手の内から放たれる刃諸共敵の胴を薙ぎで切り裂き、返す刀で右方面に位置する敵の手首を逆袈裟で斬り払う。しかし、嵯泉が敵陣の中で万夫不当の活躍を見せても、敵はまだ減らずに彼へと纏わりついてくる。当然だ。
 『死人』を操る能力で生み出された敵をどれだけ殺そうと、それらはまた時間を置けば蘇るだけ。つまりは数に押される前に、敵の首魁を殺しきる必要があるという訳だ。
「ええい、まだかね! いくらアタシが達人だっていっても……! おおっと危ないねェ! ――――ッ、! いつまでも死んだ奴らに構うこたないよ! 若いもんは『前だけ見て、押し通り』なァ!」
「……見事也! 儂も長いこと生き永らえ、多くの戦を経験してきたが……! 貴様ほど矛の扱いに長けた者はおらんかったぞ! ……だからこそ……貴様と他の猟兵を合流させるのは危険と見たわァ! 者どもォ! 『死んでも他の猟兵を通すでない』ぞォォ!」
 二人が死兵の相手をしながら前進している間も、戈子はオブリビオンと見事な殺陣を演じていた。彼女は敵の突きは矛の刃でいなし、そのままいなしつつ勢いを乗せた突きを敵に放つ。
 しかしそれを読んでいたオブリビオンが刀を瞬時に戻して矛の突きを上段の切り落としで打ち落とさんとして迫るが、戈子は更にその返しを読んで身体ごと矛を半回転させながら敵の刃を避け、そして薙ぎを繰り出していく。
 彼らの立ち合いは正に一撃必殺の応酬であり、戈子が敵の刃を受け止め、オブリビオンが猟兵の矛をいなすたび、彼らの間には甲高い金属音と衝撃が発生していた。
「そこまで言われちゃやる気を出さざるを得ないわねぇ。……そうねぇ、やってみようかしらぁ。嵯泉さん、アタシがオブリビオンまでの道を拓くわぁ。後はよろしくお願いねぇ」
 ティオレンシアは先ほどまで浪人たちとの決死を演じた鉄火場であるここを見、僅かな凹凸と敵の亡骸を立ち回りの軸としながら、自身のガンベルトから手持ちの銃弾を取り出していく。
 そして彼女は自身の上空に手持ちの殆どの弾をブチまけると――――ユーベルコード、【鏖殺】を発動する。超高速のファニングと、神速のリロードによる連射は、もはや彼女の射撃に6連射での区切りを与えない。
「さっきみたいに軌道見切って逸らす、とか、そういう高等テクもオブリビオンには通用しないみたいだものねぇ。今回は数で勝負させてもらおうわぁ」
 BLAM! BLAM! BLAM! ティオレンシアの愛銃、オブシディアンが三度その声を轟かせる。BLAM! BLAM! BLAM! そして、もう一度三度の銃声。その音が鳴りやんだ時――――彼女の目の前から、都合36体の死兵が崩れ落ちていく。今の銃声は、何も一発分の発砲音ではない。これは、6発を同時に発射して、聞こえてくる音が一度だけという話なのだ。
 彼女はオブシディアンの撃鉄を六度動かし、そしてシリンダーから薬莢を排除しながら空中にばら撒いた落下してくる弾丸を空いたシリンダー内でキャッチして、そしてまた六度の発砲を行い――――という、魔法と区別がつかない極まった技術を見せ、猟兵たちを取り囲む敵の軍勢に穴をあけてみせた。
 その間、僅かにコンマ1秒フラット。ティオレンシアの卓越した銃捌き、そして狙いの上手さとガンプレイへの才能。その全てがあって、初めて可能となる離れ業である。
「……見事。……それでは、死兵の群れは全てお任せ致す。私はこれより――――首魁のみを見て突き進むことにしよう。道中、何卒宜しく申し上げる」
 嵯泉は戦場を奔る。死体の壁の中を走り、血と嵐の中を駆ける。彼の眼はひたすらにオブリビオンだけを見ていた。そして深葬で覆われた彼の片眼は何を見ているのか、何を見ないでいるのか。それは、嵯泉以外は分からないこと。
 彼は走りながらその手に構えた縛紅に手を滑らせ、超常の力を発動していく。【妖威現界】と呼ばれたその力は、己の血と精神力を深く失うことを代償に、自身の装備武器の封印を解いて自身の身を変じる力。
「――代償はくれてやる。相応の益を示せ。少なくとも――――目の前に立つ敵へ一刀を届けるだけの力を、ここに顕せ」
 そうして、彼は天魔鬼神と罷り成る。欲界の六欲天の最高位、第六天魔王とも称される天魔の鬼神。そういうものに、嵯泉は成って見せたのだ。
 彼に見えるものは、もはや目の前の敵のみ。そしてついにオブリビオンの前へ、矛と刀が揃った。
「へッ、ババァを待たせるとはいい度胸だ、待ちくたびれたよ! それじゃアタシも本気で行くとしようかねェ! 『その戈は、いかなる盾よりも不破である――刻器身撃』!」
「来るかァ! 来るか来るか来るか来るかァ! 儂の刀と貴様らの刀、どちらが上か……! 今! 雌雄を決すときが来た! 受けてもらうぞ、儂の刃を! はァァァッ! 【八岐連撃】ッ!」
「血反吐吐こうが、膝は付かんぞ。貴様はここで――――斬る」
 戈子が開放するユーベルコードの名は、【刻器身撃『単身のⅢ』】。自分の半身にして、真の姿であるアンチノミーの矛。彼女はその力を引き出しながら、腰を下ろして体良く心良く、手の内と呼吸を合わせて、敵の攻撃へ構えをとる。
 相手取るのは敵の猛攻、怒涛の八連撃である【八岐連撃】。敵の一刀から放たれる自在な八本の斬撃を、戈子は全て受け止めていく。いなしもせず、流しもせず。ただただ、真っ向から、である。
「なんの、まだまだァ……! はァァァァァ!」
「8連撃か何かは知らんがね? 全部防いでやりさえば、足りないオツムのあんたでも、自分の技のなってなさを理解できるだろうさ! さあさどうした! 遅い、手ぬるい、踏み込みが甘い! まだまだなんだろう、もっと本気出してみなァ!」
 敵の斬り下ろしを逆風の刃で受け、突きは鏡合わせに全く同じ動作で突きを放つことで相殺していく。斬り上げは僅かに体を引きながらの手首の回転のみの振り下ろしでその起点を受け、左右からの薙ぎには掌の中で持ち手を回転させながら素早く対処していく。
 戈子の守りは実に見事。『吾わが『矛』の堅きこと、よく陥とおす者なきなり』のままに、敵の攻撃を全て防いで見せていくではないか。そしてそのまま八度目の斬撃を受け止めた彼女は、敵に向けて流れるように反撃を行っていく。
「……ッ、何故、何故だ……! 何故、儂の剣は貴様ら猟兵に届かん! 何故なのだァァァ!」
「それで反省するならよし、なんだが……。まぁ、反省なんてできないからオブリビオンだねぇ。魔力の投網、放たせてもらうよ。アンタがいい気になって延々攻撃してくれたからね。力を蓄えるのは簡単だったよ。『矛盾の故事も知らないのかい?』ってなもんだ」
 そう、彼女のユーベルコードは戈子の防御力や技術を底上げする技ではない。その本質は、攻撃のエネルギーを魔力に変換し、魔力で編んだ網を対象に放つことで、命中した対象のユーベルコードを封じ、攻撃力を下げる技なのだ。つまり、敵の攻撃を全て防いだのは戈子の持つ元々の技術なのである。
「攻撃を躱すにも限界があるのは承知の上。……そう思っていたが、ご婦人がどうやら盤面を整えて下さった様子。であれば、この刃――――間違いなく敵に届かせてくれよう」
 敵がユーベルコードによる投網で僅かにたじろいだのを見て、そこに突き進んで追撃を加えんとするのは嵯泉。見切りと第六感を駆使した上で、それでも受ける斬撃の激痛は耐える覚悟でここまで走ってきた彼は、何一つ憂うことなくその力を全て一刀へと集約してみせる。
 手の内が伝える鎧を砕く技術、大きく振りかぶった怪力と走り込んだ勢いの全てを乗せ、担肩刀勢に近い構えで彼は走る。狙うは一点、敵の首のみだ。
「ック……! マズいッ! マズいが……!! 超常の力になど頼らずともッ! 儂の刀で防げばよいだけ――――」
「ええ、超常の剣なら望み薄だったでしょうねぇ。でも、普通の剣ならば――――アタシの銃弾で、弾いて見せる」
 魔力の網を寸での所でなんとか片腕のみ破り、敵は刀を構えて嵯泉の刃を防ぐための構えを取る。だが、そこに飛来して敵の刃を弾くのは一発の鉛玉。ティオレンシアが放つ、最後の一発であった。
 全ては整った。折れた時計の針が刻限を示すように、全ての材料と氷がグラスに入ってステアを待つように。――――終遠の刃が、敵に迫る。
「命を惜しむ心算は無いと言ったが、お前にくれてやる心算も無い。勿論、梶本の刀も村人の命も渡さん。くれてやるのは敗北のみだ。私の刃は護る為に在る。奪うだけの力に折る事等――――出来んと知れ」
「首がッ……! 儂のッ?!」
 そして、敵の首へ禍断の刃が深々と侵略を果たす。一瞬だけ間が開いて、敵の首が落ちる。三人の猟兵の放つ矛が、銃弾が、そして刃が。敵の力を悉く凌駕し、そして上回ったのである。
 ――――だが、戦いは、まだ終わろうとしていなかった。首を失ったオブリビオンの身体が、血を流しながらそれでも力強く動き出す。戦を求める怨念と化した敵は、もはや首を失ってでも猟兵を殺さんして動き始めた。
 それでも、敵は辛うじて立っているだけに過ぎない。三人の猟兵は、敵の止めの一歩手前に至る大活躍を見せた――――そう言って差し支えないだろう。実に、見事な戦闘であった。
大成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵

ユーイ・コスモナッツ
【FH】●

戦い散った者達に、
せめて手向けの一品
宇宙騎士ユーイ、
あなたの首を所望いたします!

たしかに変幻自在の剣術ですが、
二本の腕で剣を振るう以上、
可動域と射程は限られるはず……ですが、
人間のそれと同じとは限りません
真っ先に飛び掛かりたい気持ちを抑えて、
まずはそこを見極めます

そして【流星の運動方程式】
オリヴィアさんと入れ替わるようにして斬りかかり、
すぐに敵将の腕の可動域外(背面等)へ回りこむ
再び懐に飛び込み一撃、
斬り抜けるまま剣の間合いの外へ離脱
このように移動速度の利を活かして、
必殺剣を封じつつ攻撃していきます

連係プレーで隙が生まれたら、
上空からの袈裟斬り、
返す刃で斬り上げっ!
八刀流やぶれたり!


シャルロット・クリスティア
【FH】

さて、と……別行動をとっていたのは都合が良かったですね。
このまま【目立たない】ように身を隠しつつ、手近な木に紛れて潜伏。
戦端は……既に開いていますか。ならば他の皆に気を取られているところから【スナイプ】です。

5発。
5発あれば十分です。

初撃で当たればそれでよし、防がれるなら、残り4発を【早業】で叩き込みます。
2,3発目は逃げ道を塞ぐ牽制弾、4発目は腕狙い、当たればいいですが切り払われても構いません。
5発目。中に空気に触れると瞬間凍結する触媒を詰め込んだ氷結弾。これが本命です。切ったとしてもそこから凍りつきますよ。

味方をも欺いたんです。騙し討ちにやられるのも覚悟はしていたのでしょう?


オリヴィア・ローゼンタール
【FH】
名刀を欲するなどと、身の程を弁えよ
貴様にはなまくら一本でも過ぎたるものだ

【血統覚醒】で吸血鬼としての力を解放し戦闘力を増大させる
吸血鬼の頑丈さを活用し、最後まで前線で戦い、仲間を矢面に立たせない
私が前に出ます
皆さん、よろしくお願いします

聖槍の間合いの長さを活かして立ち回る
刀が八本でも腕は二本、一方を穂先で受け流し、もう一方を石突で弾く
斬撃、薙ぎ払い、刺突、時に衝撃波を伴わせ、技の多彩さで攻め立てる
仲間と連携し、隙を庇い合う
慢心し切っているが故に、上手くいかない苛立ちで強引に攻めてきたら、鎧ごと穿ち貫く全霊の一撃で逆襲する
我執に曇ったその眼で、我が槍の閃きを見切れるか――!


太刀花・百華

落ちぶれたとはいえ、浪人共の誇りを踏み躙るとは
武士にはあるまじき真の外道だな
あの者達の仇を討つつもりはない
だが剣士として、貴様のような悪は斬り捨てねばならぬ

とはいえどれ程外道でも、相手は乱世の名将、強敵には違いない
ならば此方も相応の覚悟で挑ませてもらう
相手が強い程、しかも剣士となればそれだけ気合いも入るしな
一筋縄では行かないならば、仲間と協力し合って付け入る隙を見出そう

八重垣で此方の攻撃を受け返すなら、それを利用するまでだ
敵が切り返して来られぬよう、動作を見切って力を溜めて
怪力で豪快に剣を薙ぎ、相手の武器を叩き落として吹き飛ばす
それでも反撃してきたら、剣で受け止めながら黒炎羅旋撃を叩き込もう


リア・ファル
【FH】●

【心情】
人を散々扇動した挙げ句、他人を一顧だにせず、その物言い
キミの進む先は、この先には無いよ

【行動】
敵の動きの起点にあわせて、援護射撃
「コードライブラリ・デッキ製の腐蝕弾だよ! そのエゴも刀も崩れ去ってもらおうか!」

敵に先んじて、戦場の遺体、もし気絶や負傷で生きている浪人がいたら、
グラヴィティ・アンカーで捕縛してから、
UC【召喚詠唱・白炎の不死鳥】で治療・保護しちゃおう
「操らせたりしないよ?」

味方の負傷も、不死鳥の炎が癒やしてくれる
「如何にキミが強かろうが、仲間と手を携えるボクたちは負けない」
他人を手駒にしか出来ないキミは所詮、武将の器では無いって事さ
骸の海へお帰り願おう!


守上・火鈴
◇アドリブ歓迎
刀を奪うだけでは飽き足らず!仲間すら切り捨てるなんて言語道断!
そんな悪い心で振るう力なんてわたしの敵じゃありません!
きっちり懲らしめますよ!

八振りも刀を使うなら懐に飛び込めば戦いにくいでしょう!距離を取られないように張り付いて殴りに行きます!
『怪力』で叩いて!叩いて!!叩きまくります!!!
カウンターも防御も関係ないです!倒れるまで殴れば勝ちです!
叩き続けて隙が見えたら【猛攻掌打・肋骨砕キ】でダメ押しです!ぶっ飛ばしてやりますよ!


●一切合祭太刀合せ
「戦い散った者達に、せめて手向けの一品を……! 宇宙騎士ユーイ、あなたの首を所望いたします! ……と、言いたいところですが、首ももはや無いとなれば! チームFH、そしてここにいる猟兵全員で! あなたの最後を頂戴いたします!」
「その通り! 刀を奪うだけでは飽き足らず! 仲間すら切り捨てるなんて言語道断! そんな悪い心で振るう力なんて! わたしの! わたしたちの敵じゃありません! きっちり懲らしめますよ!」
 ユーイ・コスモナッツ(宇宙騎士・f06690)と守上・火鈴(鉄拳・f15606)の二人は並び立って敵へと向かっていく。既に敵はもはや一刀しかその手にはなく、首すら地面に落としているが、襲い掛かる猟兵に向けて刀を振り被っては害を成さんとしてその刃を振るう。
 自分の首も、確固たる意志も、そしてあるいは名将であった時の矜持さえ地に落とし、それでも敵は『オブリビオン』として猟兵に向かっていく。もはや敵にあるのは破壊と喪失、そして合わせる刃のみ。
「K,kkkkk,kkk……KK,……斬る、切る、キル、KILL……! わ、儂の、儂の戦のために、儂の刀のために……!」
 斬れた首の孔から漏れ聞こえている音がどのようにして声に変換されているのか自分自身も分からぬまま、敵は火鈴に向けて刀を上段より向ける。斬り下ろし――いや、直前にて手首を返し斜め上から振り下ろされるそれは逆袈裟に近いか。
 確かな技術と筋力、そしてフェイントさえも交えながら放たれる敵の刃に対し、火鈴は自分の身を屈めてすり抜けるようにして懐へと飛び込み、敵の刃の根本を鉄の包帯にて受け止めてずらし、敵の背後へと高速で回りながら足刀蹴りを敵の腰元へ放って見せた。一度、二度。身体を捻りながら入れる打撃は焔の如くに自由にあり、敵の身体にダメージを与えていく。
「ちち、ち、ちょこまか、とォ……!」
 次いで敵の剣を見極めるべく飛び込むのはユーイ。彼女の狙いはまず敵の剣を見極めることにあった。オブリビオンの剣はたしかに変幻自在の剣術ではあるが、二本の腕で剣を振るう以上、可動域と射程は限られるはずだと彼女は読む。
 しかし、『本当にそうだろうか?』という思いも彼女の中には同時に存在していた。首を落とされて尚も動くような『モノ』の剣技が、果たして人間のそれと同じとは限らない。ユーイはそう感じたからこそ、まずは嘶く天馬の紋章が刻まれた白銀の剣、クレストソードにて防御の剣を振舞っていく。
 火鈴の速さに翻弄されて彼女の動きを見失ったオブリビオンは、ユーイの構えるクレストソードに向けて打ち込みを行う。袈裟、逆銅、突きからの引き斬り。幾度も振り上げては振り下ろされていく一刀を、ユーイは出来る限り丁寧に、得られる情報を最大限得ようとして受け止めていく。
「……! どうやら、剣術自体は幽鬼のそれではありませんね! 血の通った真っ当な剣術……っ、それも随分と練り込まれているものと見ました! ……っ、しかし、一刀のみならばその手数も恐ろしくありません!」
「くけけか、ききききききィィィィィィヤァァァァァ! 儂の! ワシの刃ハ……天下無双の八刀流! 者共ォォォォォォォォ!」
 ユーイの守りの剣技に全ての太刀を防がれたオブリビオンは、狂ったかのように声を出しながら再度周りの浪人たちの死骸を用いて操ろうと力を使う。【永劫乱世】と呼ばれるその技は、既に手首や足首を落とされてしまった浪人たちでさえ無理やりに起こし、そして戦乱の渦に呼び込む非道無情の技。
 しかもオブリビオンは浪人たちの死骸から、曲がった刀や根元から折れた刀など、既に技術の介在する余地がないような壊れた刀を寄せ集めていく。その両手で握るは一刀の研ぎ澄まされた刀が一。そして腰元と肩に入るは血塗られて泥に塗れた数打ちが七。もはや敵にはプライドや誇りすらなく、ただただ彼は邪な破壊のためだけに動いていた。
「今さら刀なんて拾って! 八刀流なんて名乗ったとしても! わたしがやることは変わりません!! 叩いて! 叩いて!! 叩きまくります!!!」
「火鈴さんの通りです! 幾ら形だけ八本揃えても、もはや無意味であることを知りなさいっ!」
 復活して無茶苦茶に刀を振り回す死兵の顎を抉るように殴り、踵落としを頭に決めて人体の伝達系から破壊していく火鈴の横で、ユーイも一度敵から距離を取りながら周りの死兵たちを先に排除する。
 彼女ら二人にとって、もはや死兵など時間稼ぎにしかならぬ。それすらもはやオブリビオンは分からぬのだ。火鈴の拳が纏わりつく死兵を黙らせ、ユーイの剣が猟兵を押し固めようと動く死兵の動きを止めていく。そんな二人が開けた敵陣の穴へと後ろから突っ込む影が二つあった。
「名刀を欲するなどと、身の程を弁えよ。貴様にはそこに落ちているなまくら一本でも過ぎたるものだ。……貴様を村になど行かせてなるものか。首無し外道が似合う場所は、平和な村ではない。陰惨な鉄火場の中で討ち果てるが良い」
「落ちぶれたとはいえ、浪人共の誇りを踏み躙るとは……。武士にはあるまじき真の外道だな。あの者達の仇を討つつもりはない。だが、剣士として、貴様のような悪は斬り捨てねばならぬ。私たちの刃……その身で受けてもらおうか」
 破邪の聖槍を携え、自分の目の前にいる敵の頭蓋のみを的確に落として進むのはオリヴィア・ローゼンタール(聖槍のクルースニク・f04296)。彼女の隣で同様に走り、鉄塊の如くに巨大な剣、紅刃鋼を振るうのは太刀花・百華(花と廻りて・f13337)だ。
 彼女ら二人は時に最短の閃きのみで死兵を貫き、時に力任せに振り上げた刃で大きく敵陣を薙ぎ払いながら、見事にオブリビオンの目の前に現れて見せる。
「シシシ……! シナヌ、死なぬゥ……! 儂は、我は、私は……おお、おお、おわ、終わらぬのだ、終わらせぬのだ、戦、戦を……血を、戦を、血を、刃を、戦乱を……! 全ての……すべてを、戦に駆り立てん……! アァァッギャアアアア!」
 どれだけ壊れて刃が欠けようとも、敵の手中には既に八本の刃が揃っている。首という肩口の刀を抜き放つのに『邪魔』な部位を無くして、敵の技の冴えはとどまることを知らずに動く。
 敵は一本残った名刀のみを腰元の鞘に納めると、残った七本と地面に刺さる一刀を駆使しながら八本の刃を自在に操っていく。自分の刀という部分に執着しなくなってから、敵の刃はむしろその幅を大きく使いながら戦場を嵐のように舞った。
「どれ程外道でも、さすがは乱世の名将……という訳か。なるほど、強敵には違いない。ならば此方も、相応の覚悟で挑ませてもらう。相手が強ければ強い程、しかも剣士となれば、それだけ気合いも入るしな。……ッ、!」
「百華さん、矢面には私が出ます! 敵の刃はお任せを! 攻めは皆さん、よろしくお願いします!」
 敵が片手で袈裟を放ち、もう片方の腕で斬り下ろしを放つ。二刀による攻めを弾き、受け止め、百華も自分の剣技にて凌いでいく。しかし、敵はそこから一度使った刀を鞘に戻すことなく手を離して空中へ投げ捨て、その上で肩口の刀を新しく取って二本の刃で押し切ろうとする。
 ユーベルコード【血統覚醒】で吸血鬼としての力を解放し、怒涛の攻め手を百華の横から聖槍の間合いの長さを活かして受け止めていくのはオリヴィア。彼女は振るわれる八本の刀がどれだけ奇抜な動きをしようとも取り合うことなく、敵の二本の腕に集中することで上手く敵の刃を受けていく。
 百華へと迫る二刀の一方を先んじて穂先で受け流し、もう一方を石突で弾いたオリヴィアは、更に空中に舞った刀を直接手に取りながら斬りかかるという敵の荒業にも上手く対処していく。それは、彼女が剣の間合いではなく槍の間合い、つまりは文字通り『一歩引いて』敵の動きを見ているが故。そしてオリヴィアが敵の刃を防ぐ間に、百華も自分の刃を魅せるべく動き出す。
「一筋縄では行かないならば、仲間と協力し合って付け入る隙を見出そう。一人孤独な貴様には分かるまい。――――そこっ!」
「ギギギギガガッガガァァァァァ! 要らぬウ、要らぬわァ! 儂、儂は……ァ! 戦に仲間など……不要ッ! ア、ギ、アガアアアアア!」
 その時、敵がユーベルコード【八重垣】の力を発動する。二人の猟兵が攻めと守りに分かれるのならばと、オブリビオンは自分の身一つで完結する超常の技を用いることで彼女たちへの対抗策としたのだ。
 無敵の受けと斬り返し。敵の用いる攻防一体の超技は、百華の放つ高速の横薙ぎを折れた刀の腹で受け止め、返す刀で折れた刀と曲がった刃の二つによる反撃の斬り返しを行っていく。
 しかし、それを受けるような猟兵たちではない。
「そうは……させるかッ、外道めが! 百華さんッ!」
「ああ、助かったよオリヴィア。……其方が八重垣で此方の攻撃を受け返すなら、それを利用するまでだ。――――受けて頂く」
 受けた刃ともう一つの刃。その二刀を駆使して斬り込んでくる敵の一本を、オリヴィアの槍が制していく。吸血鬼の怪力と頑丈さを活用した彼女は、敵の刃を滑らせながらいなし、槍の根元で受け止めては被弾を最小限に抑えていく。
 そして返す刀で振るわれる一刀目を彼女が防いでくれたのならばと、百華は曲がった刀で振り下ろされる敵の上段を見事に見切って一足飛びで避けながら腰を落とし、下肢へと力を溜めて腰へ回し、上体の捻りと共にもう一度横薙ぎを放つ。
 同じ軌道の刃ながら先ほどと異なるのは、此度の刃は味方の援護と力溜めを駆使して振るわれる怪力の一刀である、ということ。それは豪快に百華の手の内から先へ迸り、構える敵の武器すらを叩き落として鎧を切り付け、見事に敵を吹き飛ばしてみせた。
「さて、と……。先ほどの迎撃で、皆さんと別行動をとっていたのは都合が良かったですね。敵はまだこちらの存在に気が付いていない……。戦端は……既に終幕間近、というところですか」
「人を散々扇動した挙げ句、他人を一顧だにせず、その物言い……。キミの進む先は、この先には無いよ。ボクたちが、キミの歩みを止めて見せるからさ。……と言っても、もう聞こえやしないだろうけど。シャルちゃん、ボクは行くけど……どうする?」
 制宙高速戦闘機『イルダーナ』にシャルロット・クリスティア(ファントム・バレット・f00330)を乗せて走り、村の外れから空き地へと現れたのはリア・ファル(三界の魔術師/トライオーシャン・ナビゲーター・f04685)。
 先の迎撃にてゲリラ的な活躍を行っていた二人の猟兵は、むしろ空き地で繰り広げられるオブリビオンとの戦いにやや遅れることすら有利と変えて見せた。即ち、敵の意識外からの奇襲と援護を行おうというのである。
 リアのヘッドセットである『ハローワールド』が、電子的な測量を瞬時に終わらせて二つの道筋を表していく。一つは、リアがイルダーナの最高速を維持した状態で敵の背後を取るための戦場の通り道。そしてもう一つは、シャルロットの銃弾を敵に届かせるための弾道を描くラインだ。
「私はここに潜伏して、敵を狙い撃ちます。皆さんに意識が向いている今のうちなら、それも可能でしょうから。リアさんも、どうかお気を付けて」
「分かった、シャルちゃんの射撃なら信頼できるね。心配も、ありがとう。それじゃ……行こうか。あのオブリビオンは、ここで止めて見せよう!」
 シャルロットはリアと別れた後、戦場から少し離れた場所へ移動を行い、目立たないように身を隠しつつ、手近な木に紛れて潜伏を行う。そして敵をその照準内に捉え、観察を行う。観察、観察、観察――――そして、その時が来た。敵の刃が、再度オリヴィアに向かって放たれようとしたその時がついに来たのである。
 銃身にルーンを刻みこみ、シャルロット独自の改造を施したエンハンスドライフルが敵へと向いて嘶くのと、イルダーナが最高速で敵へと走っていくのは全く同じタイミングの出来事であった。
 敵が他の猟兵へ放つ一撃の動きの起点、敵の意識から自分という存在が消えてなくなるその一瞬。そこにあわせて、シャルロットは的確な指先で援護射撃を行っていく。彼女の放つ射撃の道筋は、リアの示した最も理想的な弾道と全く同様。シャルロットの射撃手としての腕前が如実に表れた結果である。
「コロコロコロ、コ、コ、殺、殺、殺……! ゲ、ガギャァ!」
 シャルロットの放つ鉛玉は的確に戦場の空気と風の中で踊って敵の胴体へと命中する。リアの弾道計算の的確さもさることながら、『片田舎』の風をシャルロットが読み違えるはずもない。
 彼女はどこまでも冷静沈着なままに、エンハンスドライフルの冷却機構をフル稼働させながら正確な狙撃を放って見せる。彼女の生真面目さと努力家な一面は、スナイパーとしての狙撃をより的確なものへと育て上げた。2発目。まだ撃つ。3発、4発。そして――――。
「――――5発。5発あれば十分です。初撃命中。それならそれでよし。これで最後……! 全部……持ってけ――――ッ!」
 シャルロットは『無駄弾』を嫌う。それはスナイパーとしては当然であるが、何よりも彼女の性格が大きいだろう。努力によって狙撃手としての腕を積み重ねてきたシャルロットは、だからこそ――――物事の『過程』に手を抜くことなどしなかった。
 ほとんど同時に放たれていく4つの弾丸。一射目の結果から微調整された弾道を描くその4つの『力』、そのうちの2発はあくまで敵の逃げ道を塞ぐ牽制弾だ。そして4発目は腕狙い。こちらは当たれば尚良いが、敵に切り払われても構わない。
 本命は『5発目』。最後に放たれたのは鉛ではなく、シャルロットのユーベルコード、【術式刻印弾・氷結】によるものだ。『空気に触れると瞬間凍結する触媒を詰め込んだ氷結弾』。彼女にとってはこれこそが本命であった。
「さあ、どう凌ぎます? 切ったとしてもそこから凍りつきますよ」
「ッ、援軍の――――。まだまだ、続くぞ」
 『着弾点に弾頭表面の術式を転写し、弾に内蔵した触媒と反応させて魔術を発動させる』その氷結の弾丸は、複数の世界で戦闘技術や魔術の腕を磨いてきた彼女だからこそ持ち得る知恵であり、力だ。
 シャルロットの4発目がオリヴィアへと斬りかかろうとする敵の右腕を見事に射貫き、動きが鈍った敵の左腕に氷結弾は見事に飛び込んでいく。それに反応した敵が手首を返して弾丸を切り裂くが、切断によって空中にまき散らされた触媒は空気を媒介にして敵の左腕を『完全に凍らせてみせた』。
 だが、シャルロットの射撃はあくまで援護射撃。猟兵の攻撃は、まだ終わっていない。
「味方をも欺いたんです。騙し討ちにやられるのも覚悟はしていたのでしょう? ――――あとは、お任せしましたよ」
「見事な援護だ、後で狙撃手に礼を言わねばならんな。――――往くぞ、オブリビオン。私の刃……その身で受けてもらう!」
「がアァァァアァァァァアァァァァァ!」
 瞬間的な氷結によって動きを封じられた敵の左腕に今迫るのは、百華の放つ【黒炎羅旋撃】。彼女の髪は戦場の風に舞い、鮮やかな赤い瞳は闇に灯った炎の如くに灯って敵をその目に映す。滾る心を刃に載せて、三千世界に蔓延る悪を斬らんとするために。
 百華の昂る戦意によって止めどなく噴き出る黒炎が、凍った敵の左腕を悉く燃やし尽くしていく。放たれた螺旋を描く漆黒の炎は敵の肩口にまで届き、なんと敵の左肩にある二本の鞘すらも灰に帰してみせた。
 氷による阻害、炎による破壊。二つの力は一つの刃を間違いなく殺し尽くし、その存在意義を破壊してみせた。剣豪としての敵に残るはもはや一つ、その右腕のみである。
「ギギギアギガイッ………ッ、ッ、ア、ッ、アアアアアアアアアア!!! 死、死ぬ、シヌ……嫌、嫌だァァァ! 永劫の乱世を、儂は……儂は……ァァァァァ!」
「……、ク、化け物……!」
「拙者らを殺すか、……。それも良かろう」
 窮した敵は痛みに耐えかねて戦場を転がり、血混じりの泥で傷口の炎を消し去っていく。そして戦場を転がり、亡骸や気絶した浪人たちの目線になって初めて彼の目に入るのは、幸運にも未だ僅かに息と意識を持ち得ている浪人たち。
 戦場で猟兵たちにその威を見せつけられて手傷を負い、戦意を喪失した彼らは、泥の中で横たえながら戦いの決着をその眼に焼き付けんがために、痛みに耐えて猟兵たちの活躍を固唾を飲んで見守っていたのだ。
「貴様……キサマ、キサマ、キサマらァ! 死ねィ……! 死んで骸と成り、永劫の乱世を――――」
 オブリビオンは戦場の土に塗れ、そこでようやく浪人たちの生き残りがまだいることを知ったのだ。そして彼は、新しい手駒を増やすためにまだ意識を手放していない浪人たちを殺そうとして刃を振り被る。
「おおっと残念。この人達は――――いや、キミにはもう、誰も操らせたりしないよ? 『コード承認! 電子の門をくぐり、幻想より来たれ、白き再生の不死鳥よ!』」
 そこにイルダーナに乗りながら高速で現れ、敵に先んじて行動を行っていくのはリアだ。彼女は戦場に転がる大量の遺体へはきつく、生きている浪人たちへは最低限に、環境制御ナノマシンで構成された重力の錨と錨鎖である、グラヴィティ・アンカーによる捕縛を行っていくではないか。
 敵の【永劫乱世】を、『亡骸などを最初から縛っておくことで』封じた彼女は、更にユーベルコード【召喚詠唱・白炎の不死鳥[※UC]】で浪人たちの怪我を瞬時に治療し、保護までを瞬時に完了させていく。死には癒しを、戦には施しを。リアの取った方策は、ある意味でオブリビオンのもっとも急所である部分を突いた良い策であった。
「なぜ、ナゼ癒す……?! 癒し、あアア、癒しなどいラヌ! ココニあるのハ否応ない破壊ノミ、ソウデナクては、オブリビオンたる儂は――――!」
「さて、癒しはこんなもんかな! 次のお届けは――――コードライブラリ・デッキ製の腐蝕弾だよ! そのエゴも刀も、崩れ去ってもらおうか!」
 そのまま高速機動にて敵の刃から身を逃しつつ、呪・魔・毒・ウイルスの集積データを複製した記録媒体複製魔術符、コードライブラリ・デッキから『腐食』のコードを現実へ召喚したリアは、『セブンカラーズ』.357マグナム・ワイルドキャットのマグナム弾にコードを乗せて引き金を引く。
 狙いは敵の構える折れた剣、そして右の肩口と腰元に備えてある鞘だ。運び屋としての彼女が『届ける』弾丸は正に銀河を駆ける流星の如くに敵の装備へと突き刺さり、見事にその刀の所在を無くして見せた。
「如何にキミが強かろうが、仲間と手を携えるボクたちは負けない。他人を手駒にしか出来ないキミは所詮、武将の器では無いって事さ。さあ――――骸の海へお帰り願おう!」
 リアが召喚した再生を司る不死鳥が放つ、白き炎。傷を癒やし状態異常を浄化、対象を蘇生するその炎は、リアと同様に高速で戦場を駆けめぐっていく。その炎が癒すのは、何も浪人たちだけではない。
 彼女の炎が癒すのは、ユーイやオリヴィア、火鈴や百華たちなどの負った傷全て。傷と疲労の大小に差はあれど、リアの放つ炎はその全てを見事に取り除いて見せた。さあ、彼女の言う通り。オブリビオンには、そろそろ帰ってもらう時間だ。
「そノ……ッ、ソノ炎を消せェ! 目障りジャァァァァァァ!」
「リアさんの炎、確かに受け取りました――――! これこそは、邪を断つ白き炎! 戦を燃やし、死を殺す、聖なる炎! 貴様ごときに受けきれるかッ!」
「ここは乗ろう! 悪を滅する黒き炎と白き炎に――――、身も魂も灼き尽くされるが良い!」
 オリヴィアは敵の斬撃を槍で受けながら、その穂先にリアから受け取った白き炎を載せて往く。斬撃、薙ぎ払い、刺突、時に衝撃波を伴う深い一撃。もはや片腕と成ったオブリビオンへと、彼女は技の多彩さで攻め立てる。
 隣に立つ百華と連携し、隙を庇い合いながら攻め入る二人の刃に黒白の炎が灯り、そしてその二つが敵を斬り裂いていく。敵も【八重垣】にて防御を重ねるが、それも既に無謀。二人の放つ斬撃の雨はとどまることを知らず、敵の刀よりも早く、深く、敵の懐へ飛び込んでいく。
「ギャ、ギャアア、ガ、アアッ! この炎……ヲ、ヤメロ……ッ!」
 敵は上手くいかない苛立ちを隠さずに飛び込み、強引な斬り返しを放たんとしてさらに踏み込んでいく。しかし、それこそはオリヴィアの狙い通り。そこを目がけて放たれた彼女の槍は、鎧ごと穿ち貫く全霊の一撃にて逆襲せしめんと空を走る。
「我執に曇ったその眼で、我が槍の閃きを見切れるか――!」
「オリヴィアさん、続きます! 火鈴さんも、どうぞよろしくお願いいたしますっ! 『ブースト・オン!』」
「もちろんです!! 敵への止めはこの時しかないですね!! いっぱい走って殴り込みです!!!」
 オリヴィアの黄金の瞳は紅く染まり、鮮血の涙が止め処なく流れ落ちていく。それは吸血鬼の力を宿したことの証。そして、彼女の槍に人ならぬ怪力が乗っていることの証である。
 全ての力が乗った彼女の槍は敵の鎧を破壊しつくして、敵の胴体を丸裸にして見せた。そこに、ユーイと火鈴がオリヴィアと入れ替わるようにして斬りかかり、突き破らんとして走りこんでいく。
「せぇぇぇぇぇい!!」
 ユーイの【流星の運動方程式】、そして火鈴の【猛攻掌打・肋骨砕キ】。二つのユーベルコードは同時に起動し、そして二人は戦場の中で光の如くに早く、どこまでも速く加速していく。
 すぐに敵将の腕の可動域外である背中へ回りこんで懐に飛び込み、剣で切り抜けながらもう一度加速を行うのはユーイ。彼女は自身が装備する反重力シールドに騎乗する事で、自身の移動速度と戦闘力を増強してみせたのだ。
 彼女は一刀を入れて斬り抜けるまま剣の間合いの外へ離脱、そしてもう一度超加速を行って敵の失った左腕に近い角度から敵へと踏み込んで再度切り抜けを放ってていく。再度。再度、再度、再度、再度、再度。彼女はまるで星にかかる重力と加速の全てを味方に付けたかのごとくに戦場を駆け、半重力シールド内蔵の反重力装置と加速装置を最大限に生かして敵を切り刻んで翻弄していく。
 【流星の方程式】の由来はここにある。光を浴びて輝く彼女の剣は、流星の如くに戦場の中でその軌跡を残していくではないか。
「はぁぁぁぁぁぁ!!」
 ユーイの剣捌きが流星の光なら、火鈴の拳は稲光の如くに鮮烈であった。彼女は敵の懐に常に入り続け、殴り、また殴り、そして接近して敵の右腕へ関節を極め、折れた刀を握る敵の手指を握りつぶして折っていく。
 距離を取られないようにどこまでも敵に張り付いて、常に常にと殴りに行く彼女の姿勢はどこまでも熾烈であり、鉄拳の異名のままに火鈴は敵の身体に絶大なダメージを与えていく。こうなってしまえばカウンターも防御も関係ない。
 『倒れるまで殴れば勝ち』を地で行く彼女の戦闘スタイルは、どこまでもその拳によって成り立っていた。
「ガ、ガアア……! 見事……!! お見事也!! だが……儂は、儂は……負けぬ!! この刀がある限り、儂は諦めぬ……ゥ! 来いッ! 猟兵ッ! 最後の……最後の一合じゃアアァ!!」
「乗りましたっ! ――――お覚悟ッ!」
 移動速度の利を活かして、必殺剣を封じつつ攻撃していく二人に、敵もいよいよ『最後の名刀』を抜き放って挑む。そのわずかな一瞬だけは、首のない敵の声にどこか理性の響きが混じっていた。
 敵が最後に放つのは、【八岐連撃】。攻めの力。一刀に全てを賭ける敵は、最後は攻めの姿勢で猟兵に立ち向かっていく。だが、それも――――猟兵たちの全力が押しつぶして見せる。いや、もう押しつぶしていた、か。
「――――言ったでしょう、5発で十分だって。その右腕はもう射貫いてあります。ならば――――」
「隙が……視えましたッ! ――――八刀流、やぶれたりッ!」
 シャルロットの放った弾丸による手傷が、最後の局面に来て光る。彼女の弾丸が、いや、全ての猟兵が与えたダメージが、オブリビオンの最後に『一刀を鈍らせた』。
 ユーイの剣は敵が振るう剣より少し、ほんの少しだけ早く。ユーイは大きく跳躍して上空からの袈裟斬りと、返す刃での斬り上げを放ち、彼女の剣は実に見事に敵の刃の腹を真っ向から叩いて――――最後の一刀を、敵の右腕を、敵の意地を、敵の技を。敵の全てを、『折って』みせた。
 であれば、敵にはもう何も反攻の手段はない。そこにダメ押しを仕掛けるのは火鈴だ。全体重と突進の勢いを乗せた両手での掌打による、超高速かつ大威力の一撃。全ての加速と全ての力が乗ったその最後の一撃は、既に粉みじんになった鎧のその奥、オブリビオンの胴体に深々と突き刺さっていく。
「これで……!! くだけろおおおッ!!」
「…………これが、……『負け』……か……! これが……死、か……! ああ、なんと……なんとも……」
 火鈴の放った拳は全てを砕いた。文字通り、オブリビオンの全てを、である。彼の鎧や身体は猟兵たちによって打ちのめされ、そして梶本村に至る前に消滅に至った。
 ――――猟兵たちの、『完全勝利』である。見事、見事な……太刀合せであった。
 全ての猟兵たちは、ここに至って――――魔を穿つ鐵の剣と成ったのだ。

 一切合祭太刀合せ、火花散らして一時閉幕である。
大成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵


第3章 日常 『修練』

POW滝に打たれる、巨大な岩を持ち上げる、素手で岩山を登る、湖で泳ぎまくる、訓練用木人を殴りまくる、など。
SPD馬と競争する、隠密行動の練習、素早い鳥や動物を狩る、訓練用木人に次々素早く攻撃しまくる、など。
WIZ戦いのイメージトレーニング、瞑想、ユーベルコードの研究、訓練用木人に魔法をぶつけまくる、など。
👑5 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●武の穢れは、武によって
「おういそこの若ェの! 番線寄越しな、大小それぞれ6本!」
「茂作の叔父ィ、もう南半分の始末は終わったぜ! 猟兵さんらも手伝ってくれたやァ」
「仏さんは丁重に扱えよ! どんな悪人だって野ざらしはよゥ、そりゃァ嫌なもんだろうからよゥ」
 とんてんかん、と小気味良い快音が梶本村の空き地で響いていた。村の若い男たちが、村の入り口で繰り広げられた惨劇の後始末と、柵の修繕などなどを行っている音である。
 いくら廃れたとて、ここは鍛冶で商いをしていた村。であれば、老境の域に達した老人はもとより、子供の時分から親の鍛冶仕事を見て育ってきた若い男たちも、その手に金づちが良く似合う仕事振りであった。
 彼らは猟兵の手助けを得ながら、なんと午前のうちに殆ど村の修復を済ませ、『死闘の跡』を子供たちに見せずに埋葬まで終わらせていた。血混じりとなっていた空き地の泥も穢れがあるとして一度まとめ、熱した草木灰と砂利を混ぜ込んで、襲撃が起こる元の状態へと出来るだけ近く戻していく。
 死は穢れではあるだろうが、梶本村に住まう殆どの住民は戦乱の世を生き残ってきた人物ばかり。であれば、戦いの終わった後はしっかりと『穢れを祓って』やるだけ。そこに死んだ浪人たちへの恨みなどあるはずもない。
「ほら、悪ィと思ってンなら手を動かしな! 良いんだよ、うちのじっちゃまが良いっつってンだから」
「う、ううむ……しかし、良いのか? 拙者らは其方らの村を襲ったというのに、この様な……」
 そこに聞こえてくるのは、戸惑いながらも村の修復と戦の後始末に協力する十数名ほどの浪人たちと、そして彼らを率いて柵の修理を行う、茂作という名の男の声。
 この茂作という男、梶本村の中にあって鍛冶の腕はからきしではあるが、同年代の男の中でも取り分け人情に篤く、そして金勘定にも強いとあって、村長や村の皆からも深く信を置かれている男であった。
「だ、だが……。……いや、もはや言うまい。そうだな。拙者らは……うむ。感謝を行動を示すのみ。この恩は必ずこの村にお返し致す」
「だから、もう良いんだよ。そういう湿っぽいのは! ……アンタらだって、聞けば食い扶持に溢れてたッて言うじゃねェか。満足に飯が食えねえ辛さが分からないヤツはこの村にゃいやしねェ。だから……刀は置いてもよ、食える道を探せば良い。逞しい二本の腕がお前さんらにもあるんだからよ」
 元々梶本村への襲撃を行ったその中にあり、今は慣れない腕を駆使して梶本村の再興のために尽力している、この男たち。ほんの一割にも満たない人数の、『元浪人たち』。彼らがこうしてここにおり、梶本村に起きた災厄の後片付けに手を貸している経緯は至極単純なものであった。
 簡単な話だ。浪人たちの中にいた、『食うに困っていた者たち』。その中の何人かが、戦闘の最中、もしくは戦闘後の救護活動の中で猟兵たちの行動と言葉に深く何かを感じ取り、『刀を置いて罪を償う』道を選択したのである。そして、梶本村の民はそれを『赦した』。それだけの話だ。
「さァて、ばつが悪いだの始末がどうだのの話はこれまでだ! それじゃ猟兵さんたち、最後に一つ頼まれちゃァくんねェか!」
 復興の最中にあって、茂作という男が猟兵たちに向き直っては頭を下げ、そして言葉を紡いでいく。
「お陰さんで梶本村は救われた、本当にありがとうよ。そして村が救われたってんなら、ここは一つ祭といかなくちゃなんねェよな? そこでだ、出来れば猟兵さんたちには祭の出しもんを披露してもらいたいのさ!」
 『穢れは、祭事によって祓われる』。そして今回の穢れが戦によって空き地に流された血によるものならば、それを乗り越えるような祭を、空き地の上で行わなければならない。話を纏めると、まあ大体はこのようものであった。
 そして、茂作は更に口を開いていく。猟兵に頼みたい事というのは、どうやら『猟兵たちの力を見せて欲しい』というようなことであった。つまり、『普段からの修練の様子』や、もしくは『猟兵同士による腕試し』を見せて欲しいということだ。
「……ここにゃ血が流れ過ぎちまった。だからこそよ、あんたらみたいな強い人達に是非祭に参加してもらって、そいつを盛り上げて欲しいのさ」
「儂からも、どうかお願いしたく。厚かましい願いではございますが、力による穢れは力で清めたいのです。皆様の振るったお力を、今度は我らに、……子供たちに、見せては頂けないですかの。用意はすべてこちらで行わせて頂きます故、必要なものがあれば、どうぞ何なりと」
 もちろんそういう意味を持つ願いだからこそ、『この場での過度な流血沙汰は無し』だ。多少の斬った擦ったならまだしも、猟兵たちの腕試しでそのようなことはこの場にいる誰も望んではいないことであった。
 さて、猟兵たちが出来ることは多い。『空き地で修練を行う』、または『安全な武器を借りて猟兵同士で腕試しを行う』、もしくは趣向を変えて『修練を見物』したり等して祭を盛り上げることもできる。もちろん、『模擬戦の応援』や『祭に乗じて何かを販売する』、『誰かが怪我を負った時のための待機』等の行動もすべて可能だ。言い換えれば、そのような行動も『修練の一環』であることには違いないのだから。
 梶本村の人や、生き残った浪人たちも出来る限りの協力はしてくれるだろうし、元は鍛冶で栄えた村だ。『斬れない刀』や『破壊力のない銃弾』など、『安全な武器』『修練に用いる備品』などの用意は万全であると言って良い。
 そのため、何か欲しいものや助力してほしいことがあれば言ってみると良い。射撃訓練の的や、刀の切れ味を試せるような何かなどの訓練に必要な物はは当然として、交渉の仕方によっては、村に残った『八本の名刀』のいずれかも譲り受けることが出来るかもしれない。
「それでは、どうぞ皆様よろしくお願い致しまする。村に残った一切の穢れ、『一切合祭太刀合せ』にて――――どうか、お清め願いまする」
 祭が始まる。武力による略奪ではない、武力による『お祭り』が、今始まろうとしていた。祭りはどこまでも賑やかに、そして楽しそうな声と共に始まろうとしていた。





 ※行動に『模擬戦』を選択される場合はお相手様と相談し、互いに相手を指名した上でご参加いただければ幸いです。また、戦闘描写を『決着』までやるか、『決着はぼかす』などの指定も可能でございます。

 『決着』をご希望される場合は、『勝者指定』か『勝敗お任せ』のどちらかも指定していただければ幸いです。『勝敗お任せ』の場合はこちらのダイスにて描写の判定を行います。

 また、模擬戦の相手に浪人を指名することも一応可能です。ただし、『過度な流血沙汰は禁止』であることだけご注意くださいませ。


 ※プレイング募集は以下の時間からですと助かります※
 【04/15(火) 08:30~】
 また、プレイング期限は毎朝08:30に更新されますので、もしよろしければ深夜や早朝に頂けるよりは、08:30以降に頂けた方が一日分余裕があり、採用率があがるかと思います。
 今回は再送をお願いするかもしれませんので、申し訳ございませんがその辺りもまたよろしくお願いできますと助かります。
 無論夜中にしか投げられない! などなどの事情あると思いますので、臨機応変に。皆様のご参加、心からお待ちしております。
蔵座・国臣
祭か。まぁ、仕舞までは居残るとしよう。

先ずは治療だな。前線にいた猟兵は当然、避難した村民も、『元浪人』もだ。
復興も、祭も結構。やるのであれば、少しでも万全でやるべきだろうさ。

祭中も、拠点待機。加減の出来ん輩が出るのだろうし、事故がないとも言えんしな。修練だの模擬戦だので怪我をするなど、馬鹿馬鹿しいばかりだが…一人二人で済むとも思えん。そういう輩には小言も言うし、拠点の撤去も手伝わせるが。


鳳仙寺・夜昂

喧嘩でもねえ殴り合いはあんま得意じゃねえな。
だから『修練の見物』といくか。

祭事ってんなら酒もあるだろ。
周りの村人や浪人と酒酌み交わしながら観戦。
村の連中もいいって言ってんだろ?まあとりあえず飲め飲め。
俺は日本酒飲もうが焼酎飲もうが大体ぴんぴんしてっけど、
他の連中が悪酔いしそうならそこそこで水でも差し出しつつ。

あとはのんびり修練を観戦しながら応援やら野次を飛ばしたり。
いいぞ、よくやった。良い腕してんな!

こういうのもいいよな。みんな楽しそうでさ。
必要なものだけが残っていく。そのままかもしれねえし、形が変わるのかもしれねえが。
時代の流れなんてそれでいいんだろうな。


荒・烏鵠
● いっちゃん(f14324)とバトる。
決着までの描写希望、勝敗はお任せで!

いやイヤ待て待て落ち着けいーちゃん。オレサマか弱い狐なの!今回前線に立ったンだって奇跡みてーなモンだって!

ヒエー真面目に怖ェ、勝てる気しねえ。
でもそーか、思えばオマエとはケンカしたコトなかったな……。

【SPD】
WIZで行くと思ってるな?そうは問屋が卸すかよ。舞って躱してカウンター、大声で嘘叫び、オカリナでシナトに指令、組紐使って足を引き、ビー玉指弾で怯ませ。札投げて貼り付け力を奪い。服捕まれたら風で切り、外套投げて目潰し、首に棒苦無を当てて勝利宣言。パフォーマンス万能!

いいぜ、来いよイリーツァ!兄貴分の意地見せたらァ!


月凪・ハルマ
んー……それじゃ、俺は模擬戦を
見物しにいくか

此処に居るのは手練れ揃いだし、
『見る』だけでも学ぶ事は少なくないだろう

まぁあとは単純に相手が居ないっていうね……
あっ止めてそんな目で見ないで心に刺さる

人が多いと見づらいから、何処か木の上だとか
高い場所から見物する事にしようかな

邪魔になるといけないから特に応援とかはしないけど、
代わりに自分ならどう躱し、どう攻めるか等
気付かない内に呟いたり、若干体が動いたりしてる

いやー……やっぱ凄いな皆

観戦である程度時間を潰したら、今度は
村に残ってる名刀を見せてもらえないか頼んでみる

職人って程じゃないけど、俺も色々作ったりするし
あとどんな刀なのか、純粋に興味もあるから


ティオレンシア・シーディア


各々の修練の成果にて汚れを祓う、ねぇ。
武辺の基なる鍛冶の村だからこそ、なのかしらねぇ。

あたしにできることで見栄えがいいのってなると…やっぱりコレかしらねぇ。
村の人たちにあたしを囲んでもらって、あたしに向けてどんどん的投げてもらおうかしらぁ。
〇クイックドロウからの●封殺、後●鏖殺でガンガン撃ち落としてくわぁ。
村の子供たちに投げてもらってもいいかも。
所々で見得切るような動作入れてもいいかしらぁ。
〇パフォーマンスだもの、見栄えは気にしなくっちゃねぇ。

あたしのUCって――自分で言うのもなんだけど――才能とかは別にして、どれも技巧と修練の結晶だし。
こういう場で見せるのには相応しいかしらねぇ。


トリテレイア・ゼロナイン
まずは、先の戦いで自爆させた機械馬の残骸の回収ですね
敵を倒す為とはいえ、自分の馬を犠牲にするとはある意味では騎士失格ですね……

自らの力の不足を戒める為にも、あの攻守に優れた八刀流のオブリビオンの領域に近づくためにも、修練を行いたいですね

浪人の皆様に取り囲むように、弓、鉄砲、投げ槍、色んな物で私を攻撃してもらい、そのすべてをセンサーで●見切り、●武器受け、●盾受けで弾き、いなし、防いでいきましょう
時間の経過と同時に攻撃の数も増やしていきます

雨あられと降り注ぐ攻撃を舞う様に効率よく、的確に防ぎ、目指す頂きは無敵の盾!

やがて増える一撃を防ぎきれず、剣盾の舞は終了
修練を見物していた方に一礼します


イリーツァ・ウーツェ
● 荒烏鵠(f14500)と模擬戦。決着希望、勝敗委任。
【POW】
模擬戦か。問題ない、手加減は得意だ。
構えろ、烏鵠。
腑抜けに見せようとしても無駄だ。
私の目は騙せない。友の力を見誤りはせん。
それに。弟分の我儘を聞くも兄貴分の器量というものだろう?
観念して相手をしろ。

戦闘。銃は使わない。尾で足を払い、杖で突き、打ち、薙ぐ。
攻撃は杖で流し、風弾などは翼で防ぐ。
変化をしてきても戦法は変わらん、よく見て、的確に打ち、受ける。
そして隙を見て服なり腕なり掴み、UCを使う。
血は流さずとも、関節技なり殴打なり蹴撃なり技はある。

力押しを笑い、流すのがお前だ。知っている。
それでも力で押し通る!
私が勝つぞ、烏鵠!


鸙野・灰二
●【絶刀】矢来(f14904)
『模擬戦/決着/勝敗お任せ』

誰が折ろうと構わんさ。あれが身一つで沈んで行ッた事、それが肝要だ。
俺が“活刃剣”だと云うなら、お前はさしずめ“殺人剣”……“殺刃剣”か。
ひともそれ以外もすべて、平等に殺してみせる在り方は潔くて好い。

矢来、お前難しい事を云うな。手本にしたッて残るものか。
それにしても模擬戦ッてのは初めてなンだが、どう―――
《早業》【刃我・刀絶】《激痛耐性》
全く油断も隙も無い。さッきの言葉も時間稼ぎか?
俺は死ぬなら戦場が良い
故にそう簡単に獲らせはせん と云いたいが、さて。

それに関しちゃ同感だ。だがそうじゃないからこそ俺の様なものが生まれるのさ、恐らくな。


月舘・夜彦
村の者達の無事も勿論ですが、浪人達も新しい道を見つけられたようで安心しております
村の様子を見て回り、その後は鍛冶師の方に刀の手入れをお願いします

此の刀は師より受け継いだ物、剣士として認められた証
誰が作ったのか分かりませんが変わらぬ切れ味と美しさ
だからこそ長く使えるように手入れは欠かせません

手入れの礼として金銭の他に、出来る事があれば良いのですが
そうですね、巻藁を使って居合の剣術をお見せします
久方振りにしますが動くものより容易でしょう

世界には刀よりも強い武器が存在する
ですが思い入れがあるものは簡単には手放せないものです
……私が物だったからかもしれませんね
手放して、寂しい思いはさせられませんから


矢来・夕立
●【絶刀】
『模擬戦/決着/勝敗お任せ』

オレが一本折っちゃいましたね。横から掻っ攫って。
ひとを生かすための剣をさして“活人剣”と言うのなら、ヒバリさんは“活刃剣”でしたよ。

次はそれをお手本に残す番ですね。これはいつか、『人“が”活かすべき剣』になる。
…とはいっても、オレ達は先生じゃない。神事の一環みたいな雰囲気ですし、演舞みたいな感じでやれば良《だまし討ち》【神業・絶刀】
神域の技を近くで見たおかげですかね。新しいUCを閃いてしまいました。
狙いは武器。…本体を壊されると、死ぬんでしたっけ?
獲れましたか? いまので。

ひとが死ぬのも、生きるのも、これくらいあっさりしてるのがいいですね。ほんとうなら。


神羅・アマミ
事実をありのままに受け入れる、敵へ遺恨を残さずに赦す、死者へ敬意を払い手厚く弔う…「過去を闇に葬らない」その姿勢こそが、オブリビオンを封じ込める最善の予防策であることを偉大な先達は知っておったのかもしれぬな…。

おセンチになるのもほどほどに、村人の所望するままお祭り騒ぎに興じようぞ!
誰ぞ妾に力比べで勝てる者はおるか!勝てる者はおるかー!
こういう時は景気よく米俵担ぎとかやったりするんかのぅ。
自らの底力を探求するには大変良い機会じゃ。
四股立ちにてつかまつれい!

(特に相手もいないので、他に力自慢で余っている人がいればそちらに合わせるか、さもなくば浪人相手で。決着はダイス目なり何なりご随意に)


鷲生・嵯泉
祭、か
此れも無事の証しなればこそ、というものか
そう思えば、賑やかさには馴染みの悪い身ではあるが
華やかな喧噪も、そう悪いものでは無いかもしれん

さて、難しいかもしれないが……
短刀を1振り打っては貰えないか頼んでみるとしよう
戦うには今有る2振りで充分とはいえ
万が一の備えは必要だろうと、ずっと探しているのだが
どうにも此れと馴染むものが見つからん
そんな折に今回の件を聞き、是はと賭けてみる事にした次第だ
勿論此れは仕事として依頼するもの
取引として正しく行おう
無理とあれば残念だが仕方が無い、黙って引くとする

もし引き受けて貰えるのならば
梶本の粋を信じ、委細任せて待つとしよう


神月・瑞姫

【朧月】
勝敗お任せ

きゅー♪
フィーおねーちゃんと訓練なの
昔はゴブリンさんでも怖いなって思ってた
みぃだけど、自分でも強くなってきたと思うの

今日こそおねーちゃん自慢の防御を突破して一本取るの!

みぃの武器は薙刀なの
村の人に狐月そっくりな安全なの用意してもらうの

いくよ
おねーちゃん
たぁーっ!
(初撃は飛び込みからの振り下ろし
恐らく弾かれるものの
それは想定内
怪力で弾かれる勢いを回転運動に変え
横【なぎ払い】
斜め【なぎ払い】
上下【なぎ払い】
小さな体を独楽のように扱う乱舞乱舞
怒涛の八方振り
刃煌めき
白尾が揺れる
幼くとも人を【誘惑】す妖狐の舞
その剣閃に混じるは【神月封縛符】

おねーちゃん気づくかな?
動けなくしちゃうよ


ミルフィ・リンドブラッド

【朧月】
勝敗お任せ
(攻撃を一度でも当てられたら負け、瑞姫が動けなくなったら勝ち)

フィー、穢れを祓うために神様に祈り、舞を捧げることがあるってどこかのすげぇ奴から聞いたことあるです。この村に神様がいるかどうかわからねぇですけどフィーも戦い(舞)を捧げて穢れを祓ってやる、です。

・模範戦
※大きな木槌を借りています。

みぃがどれだけ成長したか見せてもらう、です。
試合開始の合図と共にUCでコウモリの翼を生やし機動力を上げて回避、防御がしやすいようにしておくです。
攻撃をするのは最小限にして防御を優先する、です。

木槌を武器の側面に当てて攻撃を逸らし
時には正面から受け止め
バックステップで躱し
防いでやる、です


リア・ファル
【FH】●
つかささんvsオリヴィアさんの好カードも始まるようだし、観戦しよう!
子供達は目が追いきれないか
実況でもしようか

試合が終われば、白熱っぷりに盛り上がるでしょ?
なら出店の出番さ、お団子に氷菓子、綿飴に…男衆にはお酒と胡瓜の一本漬かな

さて、ボクの猟兵としての報酬は、
村の特産品を購入させてもらう権利で相殺にする

村に前払いで料金を支払うから、これを元手に刀だけじゃない
時代に即した鍬や鋤や、包丁も制作してくれない?
近隣の城下町で売って宣伝してくるよ
品が良ければ…次も買いたいって人も現れるだろうさ

あ、もう一つ、村の感謝を込めて包丁セットを納品して欲しいんだ、
今回の依頼を予知したソコのお兄さん宛で!


鳴宮・匡
◆ヴィクティム(f01172)と
◆勝敗お任せ

◆レギュレーション
心臓の位置に陶器の皿をそれぞれ付けて
相手のものを先に壊した方が勝ち


……こいつ死んでも負けを認めないタイプだからな
このくらい明快なほうがいいだろ
は? お前人を「主役」だとかに引きずり出しただろうが
慣れないことさせたんだ
ツケは払うのがならいだぜ

相手の動きを五感知覚全てで捉える
思考そのもの/思考に依らない反射的・直感的な行動も
僅かな目線の動き、息遣い、筋収縮から推測・対応
自身の回避行動は直感と反射に頼って
そもそも読む余地を与えないように立ち回る

――うまく捌いておいてよく言うぜ
お前も十分化け物じゃねーの?

ま、それでこそ、だけどな


アリシア・マクリントック
刀の作り方に興味があります。
私が普段使う剣は刀とは違うものですが、それでも刀の成り立ちを知ることも剣を扱うことの足しになるでしょう。
できることならば自分で作ったりもしたいですね。もちろん一朝一夕に身につく技術ではないですから、難しいでしょうけれど……

それはそうと、祭りには屋台がつきものだと聞いたことがあります。以前にアルダワで教わったみそ汁というものを皆さんに振舞いましょう。たしか、この世界にも似た料理があると聞いた覚えがあります。みなさんのお口に合うとよいのですが。
サムライエンパイアは初めてですし、この世界のことをよく知るためにも準備の手伝いに力を入れましょう。


シャルロット・クリスティア
【FH】●

つかささんとオリヴィアさんの試合をのんびり観戦と行きましょう。

……そうですね。
仲間との連携や、情報の差。誰にとっても、どんな戦い方でも、そこは大きな武器となるでしょう。
戦う前から勝負は始まっている……と言うことでしょうか。

……さて、と。
熱くなるのは良いですけど、皆さん、あまり無茶はしないでくださいよー?
私?あー……私は遠慮しておきます。
一応、刺剣の心得はありますが、護身術どまりですし……とてもじゃないですが敵いませんよ。
本職は狙撃や罠……奇襲や騙し討ちの類ですから。
勝てない戦いを避けるのも、立派な戦術です。
あぁ、その代わりに目は利きますから、審判ならやれますよ?


オルハ・オランシュ
ヨハン(f05367)と

あまり、気乗りはしないけど……そういうことなら
修練用の槍があったら借りてくる
いつかみたいに
また長い枝で代用しちゃおうかな

好機を待つのが私のやり方
這う闇は足止めだ……!
何度も見てきたんだから、
私にも通用すると思ったら大間違い
空中に回避するけどすぐには攻めないよ
安易に動いても読まれちゃうだろうしね

ひたすら防戦
一刃一刃、よく見て叩き落として
――今だ!
纏った風に乗って真正面から間合いを詰める
速さだけは彼に負けない自信があるから
この一突きで決着をつけたい

……彼の顔面すれすれで武器を止めたのと
喉に刃を突き付けられたのと
どちらが早かったのか、わからない

いいんじゃない?
どっちも勝ち、で


ヨハン・グレイン


オルハさん/f00497 と

模擬戦闘、か
やってみますか?
互いの力量や戦闘方法などある程度分かっていますけど
改めて向かい合って戦ってみれば
足りない部分を指摘し合えるかもしれませんよ

血を流す一歩手前で決着としましょう
遠慮はなしで

近付かれたら凌ぎきれないのは分かっているので、
距離をとる
進む道を予測し足止めのための闇を這わせ
空からくるなら軌道も読み易い
一刃ごとに冴えるよう黒い刃に魔力を籠め

やはり簡単には行きませんね
だが叩き落されるのも予想の範囲内だ

槍とは違う
不定形であればこそ
隙間を縫うように喉元に黒刃を突きつけ

――引き分け、ですね

まぁ、近付かれてしまったので俺の負けでもいいですけれど


ユーイ・コスモナッツ
【FH】●

つかささん対オリヴィアさんの試合を観戦します

武器での打ち合いに関しては、
文句なしに達人級の二人
目の離せない一戦になりそうです

感心したり、驚いたり、
心配したりとリアクションをとりつつ観戦
やっぱりこの二人はすごいや

「私ならどう動くか」も考えてみる
それと、勝負のゆくえがどうなるかも

タイプは違えど、
ふたりの実力は五分
勝敗を分かつのは、
わずかなコンディションの差と時の運、
それから……「情報」、かな

強い力も多彩な技も、
最後の狙いさえわかっていれば――

好試合を見たせいか、
私もからだを動かしたくなってきた
やっぱり、じっとしているのは性に合わないや
シャルさん!
リアさん!
私達も、ちょっと戦ってみません?


荒谷・つかさ
【FH】●
オリヴィアと模擬戦

こちらこそ、よろしく頼むわね

模擬戦用の刀を借りるわ
最初は軽く、普段使いとの差を埋めるように、型に沿った打ち込みと往なしを
その中で、オリヴィアの槍の間合いや体捌き等も観察

温まってきたら仕切り直し
次は全力を尽くし

――勝負ッ!



膂力勝負なら負ける気はしない
けれど、速度と技量は僅かに上を行かれている
ならば、私が仕掛けるのは「駆け引き」よ

最初にぶつかってから、牽制を除きオリヴィアの攻撃を捌くのに集中
焦れず、焦らず、じっくりと打ち合い
その中でわざと、隙を晒す
かかってくれたなら力ずくの制動で隙を無理やり消し、カウンターで一本を狙う

結果がどうあれ、健闘を称え合うわ


信楽・黒鴉
●SPD
【残像】の出るほど高速の【2回攻撃】で【傷口をえぐる】ような【殺気】の籠もった鋭い太刀筋によって、訓練用木人を容赦なく乱打する演武を披露する。
そのワザマエと【コミュ力】を活かし、8本の刀のいずれかを譲ってもらえないかを交渉。

僕は真剣勝負しかやらないんです。
元々、道場稽古で満足できないほど拗らせてしまっているので。
お相手が強ければ強いほど、寸止めできる自信もないですしね。
だからお見せするのは、このくらいで。

村に伝わる名刀には凄く興味があります。
……とはいえ、僕が『奪う』のは敵からだけ。
誠意を込めてお願いした上で、断られたら素直に諦めましょう。

ところで、僕に相応しい刀はあるのでしょうか!


ヴァーリャ・スネシュコヴァ

『模擬戦』

平和に終わってよかった。村の人たちや…改心してくれた浪人の人たちにも感謝だな

おおー模擬戦!俺も参加する!
正々堂々勝負して、この村の為になるのなら
村の模造刀、ありがたく使わせてもらうぞ

剣舞のように、軽やかに
くるりくるりと舞いながら戦う
氷の【属性攻撃】でスケートのように滑ったり
俺の本領はこの氷とスケートだからな
個性あった方が、猟兵の模擬戦らしくて楽しいのだ!

…刀…模造刀でも、とても綺麗で素晴らしい出来だと思うのだ
戦は終わった…だけど平和を守る刀だってきっと必要だ
だから刀を一振り、俺に作ってはくれないか?
もちろん、お金の方も任せてくれ!
想いの篭った武器ほど、強いものはきっとないのだ!


オリヴィア・ローゼンタール
【FH】●
つかささんと模擬戦

一手ご指南、よろしくお願いします

槍をお借りする
使い心地を確かめながら、まずは軽く打ち合う
やはり先の浪人とは膂力・錬度ともに桁が違う
間合い、踏み込む時の癖、呼吸音、視線、すべてを記憶する


距離を離して仕切り直し
今度は全霊を以って

――いざ、尋常に

初撃
まずはそれを何としても凌ぐ
そして返す刃で一太刀浴びせる
八相の構えにて迎え撃つ
意識を研ぎ澄まし、筋繊維一本の挙動すら見逃さない極限の集中力で、太刀筋を見切る
先の打ち合いの情報を最大限活用する
破壊力が最高潮に到る直前に割り込み、打ち合い、受け流す
寸毫でも太刀筋を逸らし、刃筋を立てさせないように
身体を撓らせ、穂先を翻す
届け――!


ヴィクティム・ウィンターミュート
●×2億

【鳴宮・匡と】

・レギュ
心臓の位置に陶器の皿をそれぞれ付けて
相手のを先に壊した方が勝ち

※勝敗お任せ

いやいや、お前俺と戦うとか虐めか?後方支援役だぞ!?
チッ…クソッ、わーったよ!やるよ!俺は強くはねーぞ?期待するなよ?

…こうして相対して見ると分かるが
正に"凪の海"ってか。奇妙な感覚だ
だが…ニューロンはビリビリ警鐘鳴らしてやがるぜ
ったく、こんなの相手にするオブリビオンに同情するぜ

お前の目何なんだよマジで!お前本当に生身か!?
あー嫌だ嫌だ!これだから戦闘タイプってのは嫌なんだ。化物かっつーの

直接戦闘は苦手だよ、マジでな
──だが、出来ないとは決して言わねえ
こちとら、何でもできなきゃいけねーからな


●祭
 わいわい、がやがや。
 やいのやいのと歓談が飛び交い、子供たちは今の村の貧しさからは考えられないほどの御馳走――それでも質素な部類ではあるが、それらに初めての舌鼓を打っていく。
 おうおうと気心知ったる野次と笑いが舞い、青年たちは取っておいた楽しみの酒をそれぞれ自分の家から持ち寄っては、一時の幸せに心行くまで酔っていく。
「ヒュゥ、すげェ活気だな! こいつは良いや、『人の営み』ってのはこういうのが一番楽しそうでな!」
「そういうものか。祭……。梶本村にここまでの活気があったとはな」
「祭ってのはそういうもんだぜ、いーちゃん。楽しいことも辛いことも同じ程度なら、目だけでも楽しいことを向いとかなきゃよ。それが『あるがまま』ってもんだ。どっちかだけじゃダメなのさ!」
 荒・烏鵠(古い狐・f14500)とイリーツァ・ウーツェ(盾の竜・f14324)の二人組も、梶本村で開かれている祭りに参加している二人であった。他の猟兵よりも一足早く、彼らは喧騒の中を歩きつつ様子を窺い、時折食べ物なんかを貰いながら村人たちと談笑を行っていた。
「おゥおゥ兄ちゃんたち! がははっ、村を助けてくれたんだってな! 本当にありがとうよ!」
「おうともよそうだぜそうだ! テメェらこの猟兵様にはよ、拝んだって拝み切れねェが、そこでだ! 『清めの武』、この人達にお願いしてみたかァねェか!?」
 うおおおおお! 二人にお礼を言いに来る村民は数知れず。その中の一人が、二人の猟兵にあるお願い事をして見せた。
 『清めの武』。即ち、猟兵同士の『力比べ』を見せて欲しい、というのである。
「模擬戦か。問題ない、手加減は得意だ。構えろ、烏鵠。腑抜けに見せようとしても無駄だ。私の目は騙せない。友の力を見誤りはせん」
「エッ。いやイヤ待て待て落ち着けいーちゃん。オレサマか弱い狐なの! 今回前線に立ったンだって奇跡みてーなモンだって!」
 村民の言葉にいち早く乗り、やる気を見せるのはイリーツァ。彼は相方である烏鵠に改めて向き直ると、その眼差しとその言葉の全てを用いて彼へと対戦を挑んでいく。普段はどちらかと言えば自分を抑えている質の彼が、ここまで烏鵠との力比べを望んでいる。少しだけ珍しいようにも思えたが、たまにはイリーツァとて我儘の一つも言いたくなるという事だろう。
 烏鵠は目の前の相方の思わぬ言葉に驚きを見せる。それが本心か、ポーズかは分からないが……少なくとも、『場所』の準備はすでに整っている。『惨劇の空き地』は今やすでにオブリビオンたちの襲撃が起こる少し前と何ら変わらず、そこにある。
 きめ細かい砂利と密度の高い草木灰は空き地の踏み心地を確かなものにして、もはや血混じりの泥などはどこにもその姿を見せやしない。ここは既に、『ケ』を取り除くための『ハレ』の舞台。『晴れの舞台』と姿を変えているのだ。
「日頃我儘を聞いているのだ、偶には逆転しても良かろうが。さあ、遠慮無く胸を貸せ」
「ヒエー真面目に怖ェ、勝てる気しねえ。でもそーか、思えばオマエとはケンカしたコトなかったな……。……上等! いいゼ、来いよイリーツァ! 兄貴分の意地見せたらァ!」
 一段と高くなった歓声の中で、二人の猟兵による力比べが幕を開けた。戦闘。しかし、殺し合いではない。互いの力を見定めるための武。そして、汚れを祓うための舞であった。

●化けの狐 VS 盾の竜
 先に動いたのは、イリーツァである。
「……ッ!」
 『銃は使わない』。用いるのは自分の体と手に持つ杖のみ。彼の鍛え抜かれた体捌きは頑強なる竜骨と、柔軟さを持ち合わせたしなやかな筋肉によって成り立っていた。
 剛柔一体。イリーツァの一歩は若い竹林の如くに締めやかに、身体は鍛えた鋼のように硬く烏鵠へ向かう。まず放つのは尾での足払いと、手に持った杖での鋭い攻撃。突き、打ち、薙ぐ。彼の手首の中で自在に変化する手の内は、杖へと明らかに生きた技術を吹き込んで動かしていく。
「ほっ、よっ、おらよっとぉ! 一発目ッから喰らってたまッかよッ! いーちゃん、『後ろに注意しな』ァ!」
「ッ、ブラフか!」
 その攻撃を烏鵠は風に乗って宙へ舞い、梶本村に吹きすさぶ山間からの強風を操る高速移動を用いて難を逃れていく。突きは横への突風で僅かに、打ちは回転を加えたつむじ風の如くに体を流し、薙ぎは浮き上がるように気流に乗って寸での所で躱していく。
 そこから放たれる烏鵠の攻撃は正に怒涛。彼はまず大声で嘘を一つ叫んでほんの一瞬だけイリーツァの意識を逸らすと、見事な楽器演奏の腕前にてオカリナの澄んだ音色を辺り一面に響かせた。仏に供える捧げ音としては、これ以上ないほどに奇麗な武の音色。
「おおおっ、こいつぁすげえ!」
「ああ、竜のあんちゃんの杖捌きったらねェぜ、ありゃ達人だ!」
「いやいやいや、狐の兄ちゃんの動きだってそうは見れたもんじゃねえ、ありゃァ千両役者もかくやってもんだろ!?」
 盛り上がる村民たちの声を後ろに、二人は互いだけを見ながら力のぶつけ合いを重ねていく。先のオカリナの爪弾きと呼吸にてシナトに指令を下した烏鵠は、風邪の精霊たる子狐と共にカウンターを仕掛けていく。
 彼は丈夫な組紐を指の微細な動きにて動かし、さながら蛇の如くにイリーツァの足元へと絡みつかせていく。中指の指しは組紐の跳ね、薬の引きは組紐の蠢きだ。【万両役者】。動き、舞い、巧みに操り演奏までも行って見せるのは、烏鵠のユーベルコードによる賜物だ。
「甘い……!」
 烏鵠の嘘でわずかに反応が遅れたイリーツァであったが、彼の反応は正に敏捷そのもの。組紐を見るや否や飛沫の如くに足裏を跳ねさせ、彼は何と組紐が動きを変えるしなりの中心部分のみを見事に杖で打ち据えて見せたのだ。
 芯を叩かれた紐は動きを止め、彼の目の前にただ垂れ下がるのみ。だが、そこで止まる烏鵠ではない。それすらも予測のうち。『狐の化かし』は『何が本命か分からなくなってから』が本番だ。
「だろうな! だから、まだあるんだよッ!」
 組紐を手指から話し、次の瞬間彼の袖内にある巾着から現れたのはなんとビー玉。もう一つ隣の袖から現れたのは、『竜縛り』の神符である。神話において荒ぶる竜を鎮める逸話は多い。その逸話を書き記したものならば、きっとイリーツァの動きもわずかに止められるだろうと読んでのことだ。
 巾着から転がり出でるビー玉を拳の上側、人差し指の皿に受け、親指の関節を弾いて指弾とし、まずは怯ませの一手。その後の本命の神符はもう片方の腕で直接投げ、シナトの風で速さを上げてイリーツァに向かわせる。
「飛び道具……。だが……ッ、」
 連続で飛んでくるビー玉はよく見、的確に打ち返し、間に合わなければ肩や角などの『烈い』部分で受けて一歩を進めていく。神符などは翼を一度思い切りはためかせることで風を起こし、勢いを殺した上で杖で弾いて尚接近を重ねていく。
 互いにそれなりに相手の手の内は見知っている。イリーツァは烏鵠がどのような変化をしてきても怯まず、いかなる術を使われようと真っ向から押し通る心積りであった。そんな彼の心意気が、遂に烏鵠の袖口を掴んでひっ捉えた。【格闘遊戯・流撃手】。掴んだ相手へ超高速での連打を放つ、イリーツァの超常の力である。
「こうなればもはや術は使えまい。烏鵠ッ! 歯を食いしばれ!」
「そうは問屋が卸すかよ――――ッ! 術で決めると思ってんだろうがお生憎様、オレは今回手癖の悪さと素早さで勝負しに来てるんでね!」
 しかし、相手の手の内を知っているのは烏鵠も同じこと。彼は掴まれた袖をシナトの疾風によるかまいたちで即座に斬り落とすと、そのまま羽織っていた丈夫なコートをあっという間に脱ぎ捨ててイリーツァに投げ、目つぶし代わりに用いて見せた。
 そしてその隙に彼は動く。狐の化かしは幾重にも。目を潰したのなら次は背後へ動いて不意を突く。次へ次への手練手管は人を騙す時の定石だ。イリーツァがコートをが払いのけたその瞬間に、烏鵠は背中側から接近して彼の顎の真下、首筋へと棒苦無を当ててみせる。
「パフォーマンス万能! イリーツァ、俺の勝――――!」
「――――ハァァァァァッ!!」
 『だが』。だが、イリーツァは止まらなかった。瞬時に行われた手品のような攻防の中で、彼がその拳を止めなかった理由は二つある。
 一つは、烏鵠の棒苦無がイリーツァの首筋に納まるのと、イリーツァが振り被った拳が烏鵠の腹目がけて進むのはほとんど同じタイミングであったということ。そして、もう一つは――――烏鵠は、伝説上の竜のあごの下、首元に1枚だけ逆さに生えるとされる鱗の場所へ――――即ち、イリーツァの『逆鱗』に触れたのだ。
「……元々、血は流さずとも、動けんくらいには殴るつもりではあった。私の勝ちだ、烏鵠。それで良いな」
「いってェ~~! いーちゃんこの野郎、ああいう時は拳は寸止めで負けを認める場面だろーが! 手加減は上手いんじゃなかったのかよ!」
「すまん、『手が滑った』」
「なんだとー! だいたいお前は……」
 勝ちを確信したタイミングで腹へ直接の打撃を受けた烏鵠は、僅かに吹っ飛ばされながらも空中で受け身を取って着地を行う。それに沸くのは村民たちだ。
「ガハハハハッ! すげーーッ! すげーーよお前ら!」
「竜のあんちゃん、良い拳の切れだったぜ! スカッとしたやァ! 気持ちのいい逆転だったぜ!」
「なんのォ狐の兄ちゃんの健闘だって大したもんだ、音色に小道具、風に術! こいつァ千両じゃ足りねェ、『万両役者』だ!」
 彼らにとって、棒苦無がイリーツァの首筋を捉えた後の一瞬の攻防は『殆ど』視えていなかった。だからこそ、この勝負は近くより組み合った二人組が互いの拳で勝負を決めた……そのように見えたのだろう。
「……ちぇ、まあ良いか、この場は! その代わり、又機会があったらもっかいやれよな! 今度はオレが勝つからよ!」
「いいや、その時も俺が勝つ。何故なら、俺は負けないからだ。修練ではない全力のお前が相手だったとしても、俺は真っ向からお前に勝って見せる」
「お前そういうとこだぞホントに!」
 二人の猟兵はいくつか言葉を交わしながら、喧騒の中に讃えられながら戻っていく。
 最高の力比べで幕を開けた祭りは、まだまだこれから始まったばかりだ。

●“活刃剣” VS “殺刃剣”
「オレが一本折っちゃいましたね。横から掻っ攫って」
 矢来・夕立(影・f14904)はそう嘯く。喧騒の中にあって、彼らの周りだけは少しだけ静かだった。
 群衆に見守られて、楽しい気に当てられながらも、二人の空間はどこか薄色の静謐を漂わせていた。
「誰が折ろうと構わんさ。あれが身一つで沈んで行ッた事、それが肝要だ。少なくとも、奴らは八本とも黄泉路に行けた」
 鸙野・灰二(宿り我身・f15821)はそう答えた。宿り我が身のその男は、誰が、ではなく何を、こそを重視していた。
 彼らは互いに梶本からの模造刀を構えてそこに立っている。灰二は中段に構え、夕立は獲物を脇に構えて敵を見据える。緑の眼差しがどこまでも真っ直ぐ空を斬って、赤の眼差しが相手の眼に届きそうで届かない。
「……ひとを生かすための剣をさして“活人剣”と言うのなら、ヒバリさんは“活刃剣”でしたよ。見事に、ひとを、刃を。そのどちらもを活かす剣でした」
「俺が“活刃剣”だと云うなら、お前はさしずめ“殺人剣”……“殺刃剣”か。ひともそれ以外もすべて、平等に殺してみせる在り方は潔くて好い」
 風。少し弱めに吹いたそれが二人の頬を撫でる。『達人の間合い』。既に彼らは一歩踏み込めば互いの獲物の間合いに入る場面にある。
 からりとして乾いた空気が手指の感覚を触り、真上にある日の光は二人の視界を邪魔しない。踏み込めば届く。足裏の動きはもう、どちらも動かない。『動かせない』のだ。動けば勝負は決まる。ならば、そう簡単にこの足を、この刃を動かすわけにはいかない。
「次はそれをお手本に残す番ですね。これはいつか、『人“が”活かすべき剣』になる。人の世に残る、大事な一振りに。……とはいっても、オレ達は先生じゃないんですけどね」
「矢来、お前難しい事を云うな。そんなの手本にしたッて残るものか。……人の世に残る剣は、いつだって最後までは残らないもンだ」
 肌に汗はない。ただ、少しだけ口の中が渇いてきた気がする。呼吸は深く、そしてどこまでもまた深く、静かに、そしてゆっくりと。相手の太刀筋はもう既に互いの手の中にある。
 ならば、この勝負は一太刀か、多くとも二太刀で決まるだろう。一瞬の打ち合いで極まるのだ。彼らが会話を続けるのは、これがその会話も含めての立ち合いであるが故。彼らにとって剣とはもはやただの一振りではない。矜持であり、命であり、技であり、泥中にあって身を保つ術なのだ。
 模擬戦であるとはいえ、この場において遠慮など無粋極まる。自分の刃を、兎にも角にも信の置ける相手に見せるのだ。ならば力も技も、思いでさえも――――全てを出さずして、どうするというのだ?
「ふむ、さて。それにしても模擬戦ッてのは初めてなンだが、どう――――」
「神事の一環みたいな雰囲気ですし、演舞みたいな感じでやれば良――――」
 ――――『仕合が動いた』。決まるのは数瞬の出来事だろう。仕掛けるのは夕立。彼の歩法は浪人たちとの争いに見せた時よりもなお洗練され、数秒の静寂の堰を切るかの如くにバチリという高音を立てて放たれていく。
 バチバチバチ、という音は彼の踏み出す脚先が空き地の砂利を叩く音。超々高速で戦場を駆ける彼の足先は見事なまでに地を蹴り、足跡を残して更に加速を重ねていく。その一歩で視線を切って、その二歩目で気配を断つ。三歩で刃を鞘走らせて、その四歩目で秘剣を編む。
 ――――即ち、彼の刃は『絶刀』。【神業・絶刀】。すべての刀を絶つ一振りの刃。目を盗み、空気を偽装し、口で騙して斬りかかる。夕立の呼吸はもはやどこまでも吐かれるばかり。一足を動かすごとに身体は酸素を欲して、もはやどこにも肺に新しい空気を入れる余裕などない。故に、一刀だ。一刀で仕掛ける。それ以上はいらない。
「――――全く、油断も隙も無い。さッきの言葉も時間稼ぎか? 俺は死ぬなら戦場が良い。故に。そう簡単に獲らせはせん――――。『斬る』」
 夕立の姿はもはや『視えない』。彼の神業の如くの足先の動きは、高音だけをこの場に残して彼の動きを悉く消してしまった。視えるものはない。全方位から聞こえる高音は、自分の周りを包囲しながら少しずつ迫ってきている。
 勝負は夕立が仕掛けて灰二が受けてから『一瞬』のこと。本来であれば聞こえるはずもない灰二の言葉が、夕立の耳には不思議と確かに届いていた。『斬る』と。ああ、斬ると言ったのか。斬ると。視えぬはずであるのに、灰二は確かにそう言ったのだ。なぜなら、彼にとって一番難しいのは、『真正面から突ッ込んで斬る』ことだから。相手の姿が斬る寸前まで見えなくとも、それならそれで構わないから。
 ――――即ち、彼の刃は『刀断』。【刃我・刀絶】。すべての刃を絶つ一振りの刀。手の内を締め、捻りを入れ、足腰から刃を振るう。灰二の呼吸はもはや全てこのためにあったのだ。脚は動かさず、ただ構えて丹田から呼気を練り、肺腑にある空気を吐いて両の腕から渾身を放つ。故に、一刀だ。一刀で仕掛ける。それ以上は要らぬ。
「始めてみる一刀だな」
「神域の技を近くで見たおかげですかね。新しい業を閃いてしまいました」
 勝負は僅かに一合。そして数瞬。だが、そこには異常なまでの密度があった。それは彼らの培ってきた全てがその数瞬の間に弾けたからであり、互いの刃が火花散らしてぶつかったからだ。
 超高速の歩法によって全ての目を騙しながら場を駆け、横合いから斬りかかった夕立。切り結ぶその一瞬のみに集中し、動かずにただ真正面から斬り受けた灰二。
 二人の装備はともに梶本の一。模造刀。強襲した夕立の刃を灰二の刀が見事に受け、そして――――夕立の構える模造刀が折れる。数瞬の差があり、灰二の構える模造刀もだ。二人の剣技と刃は互角であった。なればこそ、刃を振るう心の『立ち振る舞い』で勝敗は決したという事だろう。
 ――――この勝負、灰二の勝利である。
「……狙いは模造刀でした。多分、読んでましたよね。ヒバリさんのことだし。……本体を壊されると、死ぬんでしたっけ? 獲れましたか? ――――いまので。オレの刃は、あなたの心臓を」
「読んではいなかった。が、お前のことだ。ここに『嘘』は無いと思ったのさ。背後からはない、とな。後ろが無けりゃァ、反応でどうにでもなる。……さて。言ったろう、そう簡単に獲らせはせんと。だが……。お前が本当に俺を、『なんとしても殺す』ッて気持ちでやれば、――――どうなったかは分からんさ」
 ――――参った。それじゃ……全く参ったな。そう小さく呟いて、夕立は折れた模造刀を収める。それを見て、灰二も同様に模造刀を収めた。周りの村民たちに聞こえないくらいでの声量による問答が終わり、二人は互いに村民に向けて終わったという合図を送る。
 それを境に起こるのは大歓声。二人の剣技が極まり、一刀による試合運びが見れたことを、村民たちは大いに喜んでは二人にお礼の言葉を投げかけていく。
「……ねえ、ヒバリさん? ひとが死ぬのも、生きるのも、これくらいあっさりしてるのがいいですね。ほんとうなら」
「……ああ、同感だ。だが……そうじゃないからこそ、俺の様なものが生まれるのさ、恐らくな」
 二人が歓声の中に消えていき、後に残ったのは鞘に収まった二つの模造刀だけであった。実に見事な立ち合いである。

●無数の闇 VS 一つの槍
「模擬戦闘、か」
「うーん、すごい活気だね!」
 ヨハン・グレイン(闇揺・f05367)は漆黒の髪を揺らして梶本村の祭の中に一人立つ。
 既に何度か行われている戦闘に、彼は少し思うところがあるようで。技を競うように、相手への敬意を払いながら粛々と行われていく『模擬戦』、『清めの武』を横目に、彼は連れ合いに声をかけることにしたらしい。
「オルハさん、どうです? 僕たちもやってみますか? 互いの力量や戦闘方法などある程度分かっていますけど、改めて向かい合って戦ってみれば……。もしかして、足りない部分を指摘し合えるかもしれませんよ」
「あまり気乗りはしないけど……。うん、そういうことなら! すいませーん、修練用の槍を一本お願いできませんか? もしなければ、長い枝でも良いんですけど」
 ヨハンが声を掛けたのは、むろん彼女。今回の騒動を共に駆け、解決への嚆矢を放ってみせたオルハ・オランシュ(アトリア・f00497)その人であった。
 予期せぬ誘いではあったが、オルハも互いの技術向上に繫がるならばとヨハンの模擬戦の相手をすることに決めたらしい。ヨハンの術は彼の手加減でどうにかできるとして、彼女は梶本村の槍を一本拝借できまいかと周囲の人物に声をかけていく。
「いやいや、冗談! 見てたぜお嬢ちゃんの槍捌き! さざ波の如く引いて飛沫の如くに突き刺すその技を、そこら辺の枝っこなんぞに任せるには勿体ないってなもんだ!」
「その通り! それにどうやらそこの兄ちゃんの術とやり合うんだろ!? ちょいと待ってなよ、今兄ちゃんの術にも引けを取らねえ一等良いのを持ってくっから! 確か三叉なら赤備えに依頼された時の奴があったろ、アレ確か一本は刃ァ丸めてあったよな!?」
「……僕たちは、随分気に入られてるみたいですね」
「うん。どうやらそうみたいだね」
 ヨハンとオルハの模擬戦が開始されることを聞きつけて、村の一同はにわかに浮足立つ。当然だ。村を救ってくれた一流の猟兵たちの力のぶつけ合いを間近で見ることが出来るのだから。
 三叉槍を探して蔵を漁りに行った若い衆がその手に見事な修練用の槍を携え戻り、そしてオルハにその槍が手渡される。二人は槍の間合いよりも僅かに距離を取って、互いに公平な場所へと陣取ると、相手へ視線を送りながら試合開始の準備を進めていく。
 オルハは自分の手に持った槍の握りと振りを確かめ、ヨハンはそんな彼女の動きから目をそらさずに既にシミュレートを開始していた。
「血を流す一歩手前で決着としましょう。遠慮はなしで。手加減なんて以ての外ですよ」
「この槍、使いやすくて重心を取りやすいや、これなら……うん、いける。もちろん! やるなら全力で、だよね」
「それじゃァお二人さん準備良いな!? 仕合開始ィ!」
 村人の合図が呼び水となって、二人の模擬戦が始まった。先に動いたのはヨハンの操る『闇』の群れ。槍の間合いよりも外に身を置いた彼は、蠢闇黒からあふれ出る闇を自身の身体の延長のように自在に操ってオルハを包囲していく。
 『近付かれたら、彼女の槍を凌ぎきれない』。そのことはヨハンとて重々承知。ならばこちらが取る戦法は距離をとることだ。間合いで勝っているのならば、その有利を押し付けて自身の勝利を引きずり掴むのみ。
 ヨハンの召喚する暗闇は、日光の日を浴びながらも空き地の僅かな凹凸や村人たちが生み出す小さな影に身を潜ませながら着々と進み、戦闘前からシミュレートしていたオルハの進む道を塞ぐように足元へ闇を這わせつつ、包囲した影の刃で以て彼女を攻めたてていく。
「好機を待つのが私のやり方、ここは耐えさせてもらうよ……! ヨハンの戦い方は何度も見てきたんだから、私にも通用すると思ったら大間違い! 這う闇は足止めだ……!」
「ええ、知っていますとも。そして、その通りです。ですが、このままではオルハさんに勝ちの目はありませんよ? こちらとて、そちらの戦法は何度も見てきたのですから」
 オルハは風を友にし空中を舞って、迫りくる攻撃を見事に跳躍と足さばきにて上手く距離を取り、包囲を狙う影は風に乗って加速することで踊るようにしながら包囲網から身を逃していく。ヨハンの戦法はいつも見てきた。だからこそ、彼の闇にはいつだって『本命』があることを、彼女はよく分かっていた。
 ヨハンは闇を輩とし地面を這ってより来る攻撃を放ちながらも、その一方で自身の闇を少しずつ練り上げていく。今放っている攻撃はあくまで足止め。この攻撃でどうにかなるほど彼女は甘くない。オルハの槍捌きはいつも見てきた。だからこそ、彼女の動きは『本命』で捉える必要があることを、彼はよく理解していた。
「……空中であれば軌道も読みやすい。そこです」
「く、ッ! なんのッ!」
 地面から迫る闇の杭と影の刃を空中へと身を逃すことで回避したオルハへ、ヨハンが放つ昏闇の刃を何本も放っていく。影の中から現れて背後へと、地面を這って足元から。空中を裂いて手元へと、日の光を断って上空から。
 空中のオルハを狙って四方から迫りくるどこまでも黒いその刃は、一刃ごとにその色味と込められた魔力を増して洗練されていくかのよう。だが、それをやすやすと受けるオルハではない。
 彼女は空中にて槍を我がものとし、まずは振り向きざまに背後の闇を切り裂いていく。その勢いのまま片手の逆手持ちに替え、手首を捻りながら振り上げて足元の刃も一気に槍で弾いていく。
「まだ、まだ、まだ……! ――――今だッ!」
 そして足元の影を無効化した彼女は一度着地を経て、手首の回しによる槍の回転で手元の影を薙ぎ払うと、日の光が閉ざされた場所から予測して見もせずに上空の影に槍を突き立てていく。
 一刃一刃、よく見て、よく槍を操り、叩き落として。そして、彼女は一瞬の後に影の包囲網に開いた一つの小さな穴へ『跳んでみせた』。纏った風に乗って、真正面からヨハンへ間合いを詰めてみせ――――彼女は、一陣の風の如くに鋭い一突きを繰り出したのである。
 空中へ回避を主体に立ち回り、安易な攻めは読まれると考えて敢えてひたすら防戦を挑んだのはこのためだ。『速さだけは彼に負けない自信がある』。故に、オルハはこの一突きで決着をつける心積りであった。
「やはり簡単には行きませんね。だが、叩き落されるのも――――予想の範囲内だ」
 だが、彼女の反撃すらもヨハンは読んでいた。彼の『本命』は空中の彼女への全包囲攻撃ではない。『開いた穴へと突撃を行う、その一瞬の反撃の闇の刃』こそ、彼の本命である。
 どこまでも烈く、真っ直ぐ、一突きに全てを載せて進むオルハに対し、ヨハンが用いるのは無数の黒刃。一本の槍とは違う、彼が振るう不定形であればこその闇の刃は、姿をまるで水の如くに自由に変えて彼女へと迫る。
 ヨハンを守るように、オルハの攻撃の隙間を縫うように。彼は自身の身体の周りに『真っ黒い闇を纏う』かのごとくに展開すると、纏った闇の外套から幾重にも重なる黒刃を、オルハの首元に突きつけていく。
 ――――オルハの放った槍の突きが、ヨハンの顔面すれすれでピタリと止まったのと、ヨハンの繰る無数の闇の刃がオルハの喉に刃を突き付けられたのとは、ほぼ同時。『どちらが早かったのか、わからなかった』。
「――引き分け、ですね。まぁ、近付かれてしまったので俺の負けでもいいですけれど」
「いいんじゃない? どっちも勝ち、で」
「その通りだ!! がはははっ、すげえ試合だった! どっちも大健闘じゃねえか!」
「おうよおうよ、『両方の大勝利』だぜ、最高だった! ありがとうな猟兵さんたち! こんな良いもんが見れたんだ、俺らは大満足だぜ!」
 そう。――――結果は、引き分け。もしくは、『両者共に勝ち』。
 勝負が終わったと見るや否や、村民たちはヨハンとオルハの二人へと駆け寄って彼らの健闘を讃えていく。その事実こそ、今の立ち合いは二人共の強みが大いに顕れた、実に良い立ち合いであったという事実を如実に表していた。

●端役と、――――
「これで良いかい、兄ちゃんら? もう使わない皿と板紙、糊に紐なんぞで胴に固定しちゃみたが、動きにくいとかは無ェか?」
「いやいや、これで十分。動いてもずれないし、邪魔にならない。……俺はともかく、あいつ死んでも負けを認めないタイプだからな。このくらい明快なほうがいいんだよ。『負け』がハッキリ分かるようなのがさ」
「にーちゃん、頑張って! あたし、にーちゃんが勝ったら、またお姉ちゃんと一緒にお花摘んできてあげるね!」
「おう、ありがとうな。それじゃ、危ないから少し下がっとけ? 兄ちゃん今からちょっとやることあるからな」
 『心臓の位置に陶器の皿をそれぞれ付けて、相手の皿を先に壊した方が勝ち』。この戦いのルールとはおおよそそのようなものであった。
 その戦いに挑むのは二人の男。一人は鳴宮・匡(凪の海・f01612)。祭の中にあって気のいいあんちゃんであるその男は、胴に皿を付けられても寧ろどこか様になっている、という不思議な佇まいであった。
 人当たりと顔の良さから女性や子供たちからの人気も高いその男は、周りから多くの黄色い声援を受けて空き地の真ん中へと歩を進める。その逆から出てきた男が、もう一人の猟兵。つまりは、匡の相手である。
「いやいや、お前俺と戦うとか虐めか? 後方支援役だぞ!?」
「は? お前人を「主役」だとかに引きずり出しただろうが。人に慣れないことさせたんだ、ツケは払うのがならいだぜ、割増しで取っても良い位なんだ」
 匡の相手に選ばれた――――というか、半ば無理やり引きずり出されたその相手は、言わずと知れた後方支援の鬼。非合法工作員。ハッキングの達人。そして――――直接戦闘は苦手な男。
 その名を、ヴィクティム・ウィンターミュート(impulse of Arsene・f01172)と言った。彼へと投げかけられる声援の多くは不思議と酒気を帯びていて野太い声が多く、こう、なんだろう。ちょっと女っ気がない感じだった。
「大食い坊主、頑張って来いよー! ガハハハハッ、顔のいいあんちゃんに勝ったら、若い衆全員で胴上げしてやるぜ! 花はないけどな! がははは!!」
「うるせーっ酒のみ親父共! ちくしょう、アイツと比べてどうして俺の応援はこう……! むさ苦しいんだ……!! どうしてアイツは毎回……! こう……! 差っ……! 歴然たるっ……! 暗澹たる差っ……!」
「大人気じゃねーか大食い坊主。ビビってんのか?」
「うるせーッ!!! チッ……クソッ、わーったよ! やるよ! 俺は強くはねーぞ? 期待するなよ? 俺が勝ってお前の女性人気は俺が奪うからな! ゼッテー負けてやらねェからな!」
 そして二人が武器を構えた。二人の手元にあるのは全く同じ、梶本村で生み出された『刃を潰した短刀』だ。彼らが互いに使い慣れているナイフ程の大きさに近いものを探してもらい、彼らは安全な武器にて戦いを行おうとしている。
 これは意地と意地のぶつかり合い。(一方的に)負けられない男の戦いがここにはあるのだ。試合開始。
「オラッ!」
「よっ、と……」
 先に仕掛けたのはヴィクティム。彼は手に持った短刀を巧みに操り、匡を相手に連続で刺突を行っていく。時に皿を、時に手元の刃を。狙うのはあくまでこの戦いにおける勝利だ。
 別にそれ以外の部位に攻撃を仕掛ける必要はないし、彼らは別に互いを痛めつけ合うために戦っているわけでは到底ないのだから当然ではある。皿を捉えるか、もしくは心臓部への皿へ向かった攻撃を弾こうとして動かす匡の短刀を捉えられれば、そこでゲーム・セットなのだから。
 だが。――――だが。ヴィクティムの攻撃はどうしても匡に『届かない』。接近戦での経験値の差。そんな簡単な話では全くない。そもそも、ヴィクティムとて近接戦闘の経験自体は低くない。それなのに。匡を狙って放つ攻撃の全てに『手ごたえがない』。まるで暖簾に腕押し、糠に釘。どれだけ波紋を立てようと、目の前の男が反応という水面を揺らすことはない。匡という男の目が、それを物語っていた。
「お前の目何なんだよマジで! お前本当に生身か!? サイバーウェア仕込んでるだろどっかに! あー嫌だ嫌だ! これだから戦闘タイプってのは嫌なんだ。化物かっつーの!」
「言っとけ。――――そろそろ、終わらせるぜ」
 匡のユーベルコード、【確定予測】。相手の動きを注視し、癖を読み取ることで攻撃を避けていくその力は、彼の知覚能力の向上によって更に能力として上を見せていく。
 即ち、視覚だけでなく――――『相手の動きを五感知覚全てで捉える』ことすら、匡という男は可能にしたのだ。『思考そのもの』/『思考に依らない反射的・直感的な行動』も、目の前にいる男の癖、見える僅かな目線の動き、聞こえる息遣い、地面を通して伝わる筋収縮から、全てを推測し対応し、刃を躱して反撃の刃を突き立てていく。
 【確定予測】は『相手の癖を読み取れば読み取れるほど』強くなる。その意味で、ヴィクティム・ウィンターミュートという男にとっての天敵は、成宮・匡であると言っても過言ではなかった。彼の技は――――皮肉なことに、『付き合いが長い人物程、殺しやすくなる類のもの』だったということに、ヴィクティムはこの時気付くのであった。
「直接戦闘は苦手だよ、マジでな……! ──だが、出来ないとは決して言わねえ。こちとら、何でもできなきゃいけねーからな。簡単にはやられねえぞ、俺は! 何せ諦めの悪さにかけちゃプロみたいなもんだからよ! 終わらせるかよ畜生が!」
 匡の回避は直前の直感と反射のみに頼り、全く想像できないほどの速度での回避を可能としていた。そもそも読む余地を与えないように立ち回る彼は、ヴィクティムの短刀を素手でいなし、蹴りで弾き、ヴィクティムの身体が空いたところへ突きを放っていく。
 だが、何とかヴィクティムも返しの刀を何とか受けて弾いていく。そして彼は――――何と、匡に背を向けて群衆の中に逃げ込む道を選んでみせた。
「オラオラおっちゃんたち! すまん! 通る! その徳利貰うぞ!」
「がはははっ、なんだ場外乱闘かよ!? 良いねぇ、やれやれェ! 酒瓶ごと使えやァ!」
 『こうして、相対して見ると分かる。正に"凪の海"ってか。奇妙な感覚だ』。そんなことを、ヴィクティムは匡との立ち合いの最中に感じていた。彼の灰色の脳細胞はビリビリ警鐘鳴らして危険を知らせている。『アレ』を毎回相手にするオブリビオンに同情してしまう程だ。
 だが、それでもそう簡単にはやられてはやれない。『お前の隣に立つ男は、そう簡単に死ぬような奴じゃないことを、あの野郎に教えてやらなくてはならない』。
 ヴィクティムは酒飲み連中の酒盛りの中に思い切り駆け込んで入っていくと、目にも止まらぬ早業で彼らの持つ酒の入った徳利や豚汁の入った器、豚串、もしくはラッパ飲みされていた酒瓶そのものを見事に『掏って』いく。
「コーポの追っ手から逃げることくらい、ガキのころからやってたんだ。それこそ夢の中でもな。そう簡単に俺はやれねえよ、チューマ!」
「上等。ひっくり返したもんはお前が後で掃除しろよな」
 そして、ヴィクティムは奪ったもののいくつかを空中に投げながら自身も高く空中へと舞い上がった。【Extend Code『Parkourist』】。そして、『リアクション・エンハンサーVer.2』を起動。アドレナリンを体に流し、電気信号による伝達をクリアに、体感時間をスローに。放つのは掏った全ての武器と短刀の投擲による、皿と刃への同時攻撃だ。
 酒が、豚汁が。徳利が、器が。匡の上空から襲い掛かって彼の視線をくらまし、そして串と酒瓶、そして短刀が心臓部の皿目がけて飛び交っていく。やれることは全てやれ、使えるものは全て使え。それが『ストリートの掟』だ。
「食らいやがれこの野郎ッ! 避けれたらマジで尊敬してやらァ!」
「――そっちこそ、うまく捌いておいてよく言うぜ。お前も十分化け物じゃねーの? ま、それでこそ、だけどな。『悪いな、それは「視えて」るぜ――――。弾いて、終わりだ」
  ――耳に残る声。『意味のない動きなどない』、リフレインして、又聞こえてくる。最近、またそうなってきた気がする。『視得たすべてを糧とし、力としなさい』。
 ああ、分かってるよ。大丈夫。全部――――見えてるさ。『凪の海』は、浮かんだ僅かな波紋すら見逃さない。
 匡は手に持った短刀を三度振る。斬り上げ、斬り下ろし、薙ぎ。一度目の斬り上げは豚汁の入った器と、酒の入った徳利をブチ撒けられた液体ごと空中へ逃がす一刀。既にその動きは『見えていた』。
 二度めの斬り下ろしは酒瓶と串を諸共に地面に叩きつける一刀。既にその攻撃は『分かっていた』。三度目の薙ぎは、ヴィクティムの本命である短刀を切払う一刀。既にその動きは、相棒の癖は、何度も見たタイミングは――――『完全に、読んでいた』。
「――――そう思うだろ? でもよ、こいつは俺の一刀であって俺のじゃねえんだ。俺の癖は、『そこにはない』んだよ」
「ッ、!」
 だが、匡の読みは最後の最後で覆り、迎撃の薙ぎは僅かに早く空を裂き、ヴィクティムの短刀を防ぐのに失敗し――――皿を守ることに失敗した。『ブレイン・ハックVer.2』。この土壇場でヴィクティムが行ったのは、――――『自分へのハッキング』。
 彼は自分自身の脳に送られる電気信号を自ら改変することで、投擲のタイミングと癖そのものを僅かに遅らせたのだ。この勝負、ヴィクティムの勝利である。
「……マジかよ」
「言ったろ? 俺はそう簡単には死なねえのさ。……安心したか、チューマ? そう簡単に、俺はやれねえンだよ。……最も、ガチでお前が手段を選ばなかったら分からなかったけどな」
「……ふうん。ま……。そうだな。……掃除、手伝ってやるからよ。早く済ませようぜ」
「お、マジ? そしたらついでに今度飯とか奢れよ。お前ら最近飯食いに行ったらしいじゃん」
 そして、二人は互いの健闘を称えて喧騒の中に戻っていった。だが、黄色い声援は別に匡の元から離れることはなく――――。後に響くのは哀しき男の叫び声であったとか。

●壁へと挑め、狐巫女
「フィー、穢れを祓うために神様に祈り、舞を捧げることがあるって、前にどこかのすげぇ奴から聞いたことあるです。この村に神様がいるかどうかわからねぇですけど、フィーも戦いを……。舞を捧げて、穢れを祓ってやる、です。みぃ、付き合ってもらう、ですよ」
 140cm弱のその身に似合わぬ、非常に大きな木槌を借りて空き地へと出でるのはミルフィ・リンドブラッド(ちいさな壁・f07740)。彼女の持つ木槌は言うまでもなく梶本のもの。
 3尺ほどまでにも届くかというその武器は、非常に大きく、堅牢で、かつミルフィにとっては片手でも振り回せるほどの重量に納まり、非常に都合の良いものであった。特にこの硬さと大きさが丁度良い。
 ミルフィの戦闘スタイルである、『守り』。もしくは、『後の先』。その戦法を取るにあたってこの木槌の大きさは盾にするのに向き、また取り回しやすさの面で際立っていた。
「きゅー♪ フィーおねーちゃんと訓練なの。昔はゴブリンさんでも怖いなって思ってたみぃだけど、自分でも強くなってきたと思うの。今日こそおねーちゃん自慢の防御を突破して、一本取るの! いくよ、おねーちゃん!」
 そんなミルフィと相対するように現れたのは神月・瑞姫(神月の狐巫女・f06739)。彼女の武器は、その手に携えた薙刀である。
 梶本では刀の他にも薙刀などの装備も充実しており、彼女は村の備えの中から選りすぐりの薙刀を何本か選んで、そして出来栄えの良いその中から普段使いの薙刀である、『狐月』によく似た一品を選び抜き、そしてこの模擬戦のために用意してもらっていたのである。
 薙刀と木槌。中距離からの打ち合いでは間合いの面で瑞姫が有利だが、至近距離での打ち合いであればどうか。その場合、わずかにミルフィの選んだ木槌の取り回しの良さと獲物の大きさという面で薙刀を上回るだろう。
「みぃ、準備は良いですね? もう一回確認するですよ。この勝負……『清めの武』では、みぃがフィーに攻撃を一度でも当てられたらフィーの負け。攻撃を当てられず、みぃが動けなくなったらフィーの勝ちです。手加減は、無しですよ」
「大丈夫だよ、フィーおねーちゃん。みぃもちゃんと本気で行くの。みぃだって、色んな戦いをしてきたんだもん。どれくらい成長したか、見てもらいたいの。それじゃ……。いくよ、おねーちゃん。――――たぁーっ!」
「その意気や良し、です。みぃがどれだけ成長したか見せてもらう、です! 仕合、開始――――ッ!」
 ミルフィの試合開始の掛け声と同時に、瑞姫はすぐさま走り寄って飛び込みからの振り下ろしを初撃に選んでいく。踏みしめて力を伝えやすい空き地を踏みしめて彼女は空中へ飛び、初手から渾身の一撃を放つ。
 瑞姫とミルフィは今までも数々の戦闘を共にしてきた友人であり、友達であり、戦友でもある。既に互いの力量と手の内はある程度分かっている。だからこそ、ここはけん制もせずに最初からの全力での打ち合いが成り立っていた。
「良い踏み込みですね、みぃ! でも、多くの戦いの中で『成長』を重ねているのは――――フィーだって同じこと、ですよ!」
 【身体強化・吸血鬼】。鋭い薙刀の一撃を受けきるため、そしてその後に続く攻防に本気で挑むため、ミルフィが選んだ力はそれだ。今までの経験と成長を糧に、使えるようになったヴァンパイアの力の一端。全てを使いこなせる日はまだ遠い。だが、それでも。
 瑞姫が戦いの中で少しずつ勇気を得ているのと同様に、ミルフィも敵と戦い、自分のさだめに抗い、僅かではあるが少しづつその血をコントロールできるようになっている。そして、この力は目の前の友の全力に応えるためのものだ。
「さすがなの、おねーちゃん。でも、それも想定内だよ……!」
 正面からの高速の打ち下ろしにいち早く身を反応させたミルフィは、コウモリの翼による高速移動で寧ろ薙刀の間合いの中へと進み、そして薙刀の刃ではなく柄の部分を手に持った木槌で横殴りに弾いていく。
 だが、一撃目が弾かれることも瑞姫は想定していた。むしろ、薙刀が弾かれたのは彼女にとっても好都合。瑞姫は弾かれた薙刀を無理やり戻すのではなく、自分の重心を薙刀に預けることで、ミルフィの怪力で弾かれる勢いをそのまま自身の回転運動に変えて跳び、空中にて舞ってみせた。
 そこから放たれていくのは、横、斜め、上下の方向へと放たれる、息もつかせぬ連続の薙ぎ払い。ミルフィの渾身の防御と打ち払いを信じ、薙刀を空中でも扱えるほどの習熟を持っていたからこそ出来る、瑞姫の妙技である。
「甘い、です! 最初から大技で――――っ、バテてもしらないですよ、みぃ!」
 四方八方から襲い掛かる瑞姫の攻撃に対し、それでもミルフィは臆さない。今までと同じく、どのような攻撃が目の前に迫っても、彼女は目を閉じず、ただただ壁の如くにあって攻撃を止めていく。
 彼女はまずコウモリの翼による高速機動で踊るように、舞うように瑞姫の刃の中をすり抜けていく。胴への狙いは身を屈めて滑りこむように避け、肩口への狙いは身を捻って躱していく。ミルフィの回避のリズムに気付いた瑞姫が攻撃のタイミングをずらしながら薙刀を放つと、その攻撃は血液の結界による防御と大きな木槌で真っ向から受け止めていく。
 『攻撃をするのは最小限にして防御を優先する』。ミルフィの真骨頂ともいえる戦闘スタイルは、猟兵を相手取りながらも見事に冴えていく。
「みぃが疲れちゃう前に、おねーちゃんにどうしても攻撃を当てるの! 出し惜しみなんてしてたら、いつまでたってもおねーちゃんの本気の守りは崩せないの!」
 小さな体を独楽のように扱い、瑞姫は攻撃を止められてもお構いなしに空中で乱舞を行っていく。怒涛の八方振りは薙刀の刃を煌めかせ、彼女の白尾を揺らしていく。
 それはまるで、幼くとも人を誘惑する妖狐の舞。攻撃と迎撃の嵐の中にあって、瑞姫は見事な舞を踊ってみせたのだ。
「少し驚きました。みぃは、いつの間にかこんなに強くなってたんですね……。でも、フィーの守りを崩すには、まだまだ――――ッ!」
 ミルフィは獲物である巨大な木槌を振り下ろされた薙刀の側面に当てて攻撃を逸らし、また薙ぎ払いは正面から受け止め、自分が弾いた勢いを利用した回転斬りは紅血結界で凌ぎながらバックステップで躱し防いでいく。
 実に見事な防御術は、まだまだ瑞姫の薙刀だけでは崩せない、大きな壁だ。――――だが、それでも。瑞姫は、諦めない。いつまでも『守りたい』と思われるだけじゃ、嫌だから。自分がそう思うように、おねーちゃんにも対等な『友達』と思って欲しいから。だからこそ――――ここは、全力で。
「――うん。真正面からの打ち合い『だけ』じゃ、みぃはまだまだフィーおねーちゃんには勝てないの。でも……。おねーちゃん、気づいてた? 動けなくしちゃうよ……!」
「、な……ッ?!」
 薙刀と木槌の受け合いの中で、瑞姫はひと際深く空中で勢いを作ると三回転半のひねりを加えながらの一撃をミルフィへ向けて放つ。それも至近距離の防御にて弾かれるが、『それで良い』。至近距離での打ち合いとなれば、巨大な木槌は使用者の視界を覆う『壁』となる――――。
 至近の剣閃に混じって舞うのは、瑞姫の手作りのお札。普段から懐に仕舞われているらしいそれは、彼女の超常の力。【神月封縛符】。命中した対象を捕縛する、彼女の秘技だ。
「おねーちゃんの『鬼』の力――――! ほんの一瞬だけ、止めさせてもらうの……! 届けぇっ!」
 ミルフィの中に流れる吸血鬼の力。それに目を付けていた瑞姫は、最初からこうするつもりだったのだ。全ての力を出し切って挑む彼女の攻撃が、ほんのわずかな隙を作り出し、そして空を走る。これ以上ないほどの、渾身の突き。
「見事です、みぃ。でも……! フィーの力は、吸血鬼としての力だけじゃない……! 技で、流せば……!!」
 その渾身の突きを見て、しかし諦めないミルフィ。彼女は何とか体の拘束に抗いながら、生まれ持った力ではなく、磨き上げた技で対抗するべく身をよじる。木槌が滑り、薙刀を止めようとして――――そして、決着。
 瑞姫の放った突きは、見事にミルフィの木槌の戻りの早さを越えて――――、彼女へと届いた。既に力を出し切っていたのだろう彼女の突きにほとんど力は入っておらず、ミルフィに怪我はない。だが、止められなかった。そして、『当てられた』。
「……、っ、はぁ、はぁ……。おねーちゃん、どう? みぃの成長、見て、くれた?」
「……ふふ。ええ。ちゃんと、見てましたですよ、みぃ。お見事でした」
 この勝負、瑞姫の勝利である。互いに全力を尽くして挑んだ彼女ら二人は、戦いが終わるとすぐに構えを解いて互いの健闘をたたえ合うのであった。
 『友達』同士であるからといって手加減などせず、互いの実力を信じて真っ向から全ての力を駆使して挑む。実に、見事な打ち合いであったといえるだろう。

●背中合わせの演武が二つ
「猟兵さーん! あったぜ、多分コイツで全部のはずだ。村総出で探したからな、間違いないと思うぜ」
「ああ、ありがとうございます。……敵を倒す為とはいえ、自分の馬を犠牲にするなど、ある意味では騎士失格ですね……」
 祭りに参加する前、先の戦いで自爆させた機械馬の残骸の回収を行っていたのはトリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)。彼が一人で散らばってしまった機械の馬である『ロシナンテ』の部品の捜索を行っているところを見て、村の人達も何を水臭いと言わんばかりに協力してくれていたのだ。
 捜索に多くの人数が集まったこともあり、トリテレイアの狙いはすぐさま果たされることとなった。だが、彼はどうやら心のどこかで自分の未熟を嘆いている様子。
「……いやあ、そうかい? 少なくとも俺は……いや、梶本の奴らはそう思わないぜ! 猟兵さんは村を守るためにできることをやってくれたんだろうし、それにこのからくりの馬も修理すれば直るんだろう? あんたがしたことで俺たちは紛れもなく救われたよ。本当に、ありがとうな」
「……そう言っていただけると、ありがたいですね。ですが、やはり。ここは自らの力の不足を戒める為にも、あの攻守に優れた八刀流のオブリビオンの領域に近づくためにも、修練を行いたいところです。皆様、少し協力していただいてもよろしいですか?」
「お、何だい何だい? 俺たちにできることなら何でも言ってくんな!」
 そうしてトリテレイアの周りを囲むようにできていく人だかり。その人々の手元には、例外なく何かが握られていた。
 弓、鉄砲、火縄、投げ槍、酒瓶、短刀、お猪口、お椀、箸、諸々……。その全ては、つまりトリテレイア目がけて投げる――――即ち、攻撃手段であった。
「い、良いのかい? 猟兵さん。ホントに投げちまうぜ? いくらアンタでも、こうまで囲まれてちゃァさすがによう……」
「いえいえ、私のことはお気になさらず。それに、ご安心を。全て、受けきって見せましょう」
「いや、でもさすがにアンタ一人に寄ってたかってッていうのは少しよ、こっちもやっぱ恩人に気が引けるっつうか、その。せめて後ろから投げるのは無しにしちゃくれねえか?」
「――――各々の修練の成果にて汚れを祓う、ねぇ。武辺の基なる鍛冶の村だからこそ、なのかしらねぇ。ね、面白いことやってるじゃない? あたしも混ぜてもらってもいいかしらぁ?」
 さすがに恩人一人を取り囲んで四方八方から攻撃をする、というのは如何なものか。そのような理由で遠慮している様子の村人の前に、トリテレイア以外の猟兵がもう一人現れた。
 彼女の名前はティオレンシア・シーディア(イエロー・パロット・f04145)。この人物もトリテレイアと同じく、『清めの武』に村人の協力を得て何かを行おうとしていた人物であった。
「あたしにできることで、見栄えがいいのってなると……色々考えたんだけど、やっぱりコレかしらって思ったのよねぇ。まさか、似た考えの人がいるとは思わなかったけど。村人さんたち、一人で気が引けるなら二人ならどうかしら? あたしたちが『背中合わせ』に立ってれば、問題は解決でしょう? さ、あたしたちに向けて、どんどん的投げてもらおうかしらぁ」
「これはこれは。これだけの人数が集まれば、やはり似たことをやる猟兵もいる、という訳ですか。では、ティオレンシア様。背中はお任せ致します」
「はいはぁい。トリテレイアさんもよろしく、あたしの後ろはお願いねぇ」
「そ、そういうことなら……! よーし、それじゃあ行くぜ、猟兵さんたち! 皆、タイミング合わせろよ! せーのっ!」
 そして、背中合わせに構えるティオレンシアとトリテレイアを取り囲んだ村民たちは、思い思いにその武器を構えたり、的を投げたりなどしていく。
 番えられた矢は引き放たれて空を走り、投げられた短刀が空を飛び、火縄銃に込められた弾丸は火薬の勢いを乗せて飛んでいく。鉄砲の鉛玉は連続で放たれてトリテレイアの胴へ飛び、投げ槍はティオレンシアに向かって進んでいく。
 兎にも角にも大量の『弾丸』は瞬く間に二人の猟兵を取り囲んで、逃げ道を無くしていくではないか。
「――――ともあれ、これもまた面白い。一人での修練はいつでもできますが、二人となるとそうはいきませんからね」
 連続で飛来してくる弾、弾、弾。トリテレイアは自分に向けて飛んでくるその全てを、高感度マルチセンサーを用いることで全て見切っていく。攻撃の弾道を計算し、対処すべき優先順位を設けて、自分の身を護るための動きの最適解を導いていくその姿は正に騎士。
 彼は無数に飛んでくる矢を見事に見切りながら、自分の人差し指と中指のみを使ってその矢を全て『掴んで』いく。そしてもう一方から飛び、自分の胴目がけてやってくる鉛玉は『儀礼用長剣・警護用』を用いて全て両断していくではないか。
「――――背中合わせのガンプレイと殺陣だなんて、きっとここでしかできないでしょうしね。これもまたいい経験だわぁ」
 対してティオレンシアは自分の元へ飛来してくる火縄銃の弾丸を見切りながら、『全く反対の方向からの発砲』によって二つの弾丸を空中で衝突させ、ものの見事に弾けさせていく。『弾丸が真正面からかち合う』と、不思議なことに跡形もなくその場で砕けるのだ。
 そして隙を見せないクイックドロウによる、ファニングと神速のリロードによる超速連射で跳んでくる幾つかの投げ槍を落としきり、そしてその合間合間でトリガーガードに通した指を支点にしながら、愛銃であるオブシディアンのガンスピンを披露していく余裕さえ見せつける。
 そのまま短刀を割りながらグリップを下に回すリバース・スピンを見せ、空を舞う酒瓶に向けてスポットバーストを行いながらのグリップを上に回すフォワード・スピンを見せて見栄も切る彼女は、まさにエンターテイナーと呼ぶに相応しい活躍を見せてくれていた。
「せっかくのパフォーマンスだもの、見栄えは気にしなくっちゃねぇ。トリテレイアさん、まだまだいけるでしょう?」
「ええ、勿論。皆さん、もっと多くしてくれても良いですよ」
「なにー?! そこまで言われちゃ遠慮はしないぜ猟兵さん! ようし、こっからは子供たちにも参加してもらおうじゃねえか! いけっ、ガキどもー!」
「よーし、いくぞー! 猟兵さんたち、くらえー!」
「そうこなくっちゃ、祭は楽しまなくちゃよねぇ。どこからでもかかってきなさい?」
 ティオレンシアの銃弾はさらに加速して、増え続ける的を全て射貫いていく。31分の1秒による高速連射はもはや空に浮かんだ全てを見逃さず、皿が、お猪口が、箸が。全てが彼女に届く前に見事に撃ち抜かれて勢いを無くしていくではないか。
 その後ろでトリテレイアも防御の冴えを増して、子供たちからの攻撃も全て往なしていく。箪笥は受け止めて地面に置き、小石を打ち払いお椀を柔らかくキャッチし、紙飛行機は片手で受けて子供に投げ返してさえ見せる。
 雨あられの如くに二人の猟兵の周りで飛び交う『銃弾』の中で、ティオレンシアとトリテレイアはどこまでも効率的に、的確に、そして実に見事にすべての攻撃を受け、躱し、往なし、止め、撃ち、弾き、返していく。
 『無数の盾』、『無限の銃』。二人は自身が目指す頂きまで止まることなく攻撃を受け続けていくが、――――遂に、その時が来た。
「――――ッ、おっと、これは……避けきれませんね。受けるしか、ないか」
「当たった!? なんか当たったぜ、止め止め! 村のみんな、止めだァーーッ!」
 そう。トリテレイアが遂に増え続ける一撃を防ぎきれず。そして、それを皮切りに剣舞とガンプレイは終了となった。お彼が受けた『銃弾』。それは、とてもきれいなガラス玉。
 躱してしまえば地面に落ちて割れてしまうだろう。かと言ってその時トリテレイアは四方から飛来していた銃弾を弾き返している最中であり、はじき返しは不可能であったのだ。それに、はじき返してしまってもこのガラス玉を割ってしまうだろう。
 そう考えた彼は、胴にぶつかろうとしていたその『弾丸』を、掌で柔らかく『受けた』のである。
「猟兵さん、ご、ごめんなさい……! それ、僕の宝物なんだ! おじちゃんが間違えて投げちゃって……!」
「す、すまねえ坊主! とにかく手当たり次第に投げなくちゃって考えててよ……! すまんかった、おじちゃんが悪かった!」
「でしたら、良かった。ほら、きみの『宝物』は見事に私の手を射止めましたよ。ほら、傷一つないでしょう? 大事なものなら、今度はしっかり持っておくんですよ」
「わあ……!! かっこいい猟兵さん、本当にありがとう!」
 『騎士として』は、幼子の宝物に適う武器などない。彼の宝物を守ることが出来たのなら、自分の失敗など安いものだ。
 それに、十分剣舞として修練としても実のあるものが出来たと、そう言って差し支えないだろう。
「あたしのUCって――自分で言うのもなんだけど――才能とかは別にして、どれも技巧と修練の結晶だし。こういう場で見せるのには相応しいものなのかしらねぇ。……まぁ、とにかくあたしも良い経験させてもらったわぁ。村のみんなも、ありがとうねぇ」
「何言ってんだよ猟兵さん、相応しいなんてもんじゃねえ、最高だったぜ! すっげえもんを見せてもらったよ、ありがとうはこっちのセリフだぜ!」
 『ガン・ショー』とは、そもそもの話が戦のためのものではない。この技は、つまりは平時の――――人々を楽しませるためのもの。ティオレンシアの使う技は、もしかしたら戦場よりもこういった場所で用いる方が似合っているのかもしれない。
 だが、それでも。彼女はこれからも、戦のために銃を取るだろう。だが、それは『平和のため』。人々を楽しませるガンプレイも、人々を助けるための銃撃も、根本のところは同じなのだ。
「では、改めまして。皆様、修練にお付き合い頂きましてありがとうございました」
「楽しんでもらえたら何よりだわぁ。またの機会があったら、その時もよろしくねぇ」
 最後に二人は修練を見物していた村の人たちに一礼を行って、そして二人の『出し物』は終了となった。
 後に残ったのは、笑顔と笑い声、歓声と満足。実に素晴らしい、祭にはピッタリな報酬ではないだろうか。

●真剣勝負
「つかささん。……一手ご指南、よろしくお願いします」
「ええ。こちらこそ、よろしく頼むわね」
 次に村人の間を割って現れたのは、オリヴィア・ローゼンタール(聖槍のクルースニク・f04296)と荒谷・つかさ(風剣と炎拳の羅刹巫女・f02032)の二人。
 彼女たちは予め、この仕合の中での取り決めを行っていた。それは即ち、超常の力――――『ユーベルコード』の禁止。ここに立つ二人は、その力を確固たる積み重ねによってのみ見せ、相手と競おうというのである。
「武器での打ち合いに関しては、文句なしに達人級のこの二人! これは目の離せない一戦になりそうですっ」
「ほほー、そんなにあの二人の嬢ちゃんはすげえのか? いや、俺たちも猟兵さんたちと浪人の戦いだけは遠目で見れてたんだが、どうもあの二人の戦いは見えなくてなァ。……ん? そういや嬢ちゃんたちの活躍も見逃しちまってたか!? これはすまねえ、是非拝んでおきたかったんだが……!」
「いえいえ、そんな! 私とつかささんの二人はあの時空を走ってましたし、オリヴィアさんは敵陣深くで戦っていたので、それもやむなし、かな……?」
「空を……? ああ?! もしかして、あの流れ星みたいな光は嬢ちゃん二人組だったのか?! マジかよ、すげェ音だったからびっくりしちまったぜ!?」
 つかさとオリヴィアの戦いを見物しようとして集まっているのは、何も村民たちだけではない。そこに見えるのは、ユーイ・コスモナッツ(宇宙騎士・f06690)とリア・ファル(三界の魔術師/トライオーシャン・ナビゲーター・f04685)、そしてシャルロット・クリスティア(ファントム・バレット・f00330)の三人の猟兵の姿であった。
 彼女たちは仲間である彼女たちの模擬戦を観戦することで今後の糧にしようと考えたり、純粋にその白熱振りを楽しんだり、周りの子供たちへ実況のように説明をしようとしたり……。まあ、つまりはそのように、『思い思い』の時間を過ごしていた。
「ねぇねぇ白いおねえちゃん、あのおねえちゃんたちは何しようとしてるの? けんか?」
「こらっ宗太、いきなり話しかけるなんて猟兵様に失礼だろ!? ケンカじゃないよ、あのお姉ちゃんたちは……ええと……ううん、梶本村のために色々やってくれてるんだよっ!」
「はは、そんなにかしこまらなくても良いよ。特に子供の間くらいは、遠慮なんてね。『お兄ちゃん』も、そんな肩ひじ張らないでボクと一緒に見物しよっか。ボクの名前はリアっていうんだ。で、ええと……そうだね。喧嘩ではないことは確かかな。互いに本気ではあるけどね」
 目の前の好カードをしっかりと見るため、喧騒の中で最も良い場所に腰を据え、子供達へのフォローも行いながら試合開始を待っているのはリアだ。彼女に話しかけているのはまだ年端も行かない幼子と、そしてその兄であると思しき少年。
 彼らの目では、この先の真剣勝負は追いきれないと考え、リアは実況を行いながら見物する気であった。この立ち合いを、『野蛮で恐ろしいもの』と勘違いされたままではあまりに勿体ない。武は確かに恐ろしいが、それでも――――こうして、正しく振るわれることもあるのだということを、子供たちにも伝えていかねば。
「なあなあ嬢ちゃんたち、あのお二人さんの仲間なんだろ? 実際、どっちが勝つ見込みが高いと思う?」
「うう~ん……難しい質問ですね。タイプは違えど、ふたりの実力は五分と五分。勝敗を分かつのは、わずかなコンディションの差と時の運、それから……『情報』、かな」
「情報? 実際の剣の振り合いに、情報なんてモンが作用してくんのかい?」
「……そうですね。仲間との連携や、抱えている情報の差。目には見えないものであっても、それらは時に次の一手に影響を及ぼすことがあるんです。誰にとっても、どんな戦い方でも、そこは大きな武器となるでしょう。戦う前から勝負は始まっている……と言うことでしょうか」
 ユーイとシャルロットは村民たちからの質問を引き受け、そしてそれに返していく。彼女たちも一流の猟兵なれば、この仕合に対して思うことも多い。見定められることは少なくないが、しかし、やはり戦は始まってみなければ。
 二人の説明を受けた村民は『成程、そういうものか』と素直に引き下がる。オブリビオンと猟兵たちの先ほどの戦いを見ていたからこそ、ユーイとシャルロットの言葉に確かな説得力がある事を知っていたのだろう。今や村民たちの視線は他の猟兵たちと同様どこか真剣な光を湛えながら、この仕合の行く末を見守ろうとしていた。
「おっと、打ち込みが始まったね。ほら、応援応援!」
「おねーちゃんたち、がんばえー!」
「お……っ、お姉ちゃんたち、どっちも頑張れー!」
 つかさとオリヴィア。二人の力は互角と言って良い。技量の差、踏み込みの差、力の差、云々様々はあるが、兎にも角にも二人の実力は拮抗していると言って良いだろう。その証明はすぐにこの後行われる。いくら言葉を重ねようと、目の前で行われる刃の行き違い異常に雄弁なものはここになかった。
 彼女たち二人はその背に子供たちからの無垢な応援を受けながら、互いに自分の獲物ではなく梶本の獲物をその手に持って進む。オリヴィアは槍。そしてつかさは刀だ。まずは二人ともその手に自身の獲物の馴染みを確かめるべく、空打ちを幾度か振るっていく。
 空中へと振り下ろされる形通りの面打ち、そして胴突き。二人の感触は既に刀と槍に乗り込んで、その武器を我がものとして操ることに衒いをなくしていく。そして、彼女たちは異常に軽く、ゆっくりとした速度から打ち合いを行い始めた。正しい型に嵌った、正しい突きと正しい打ち下ろし。
「これは……。『演武』、ですね。互いの力量を確認し合うために行われる武。低速の打ち合いの中に全てを込める、熟練同士でしか成し得ないという打ち合いですか」
「? なあ、リア姉ちゃん。ゆっくりなのに難しい……なんてことがあるのか?」
「ええとね……。例えば、速い打ち合いの中でなら、少し受け間違えてもごまかせることが多いんだ。反射とか、力の入れ具合とかでね。でも、ゆっくりとした打ち合いでは、失敗した後の引き戻しが許されない。衝撃の瞬間、打ち合ってから返すまでの刃の動き、返す刀に込める力具合……。その全てを、誤魔化しの利かない動きの中で正確に動かさなきゃいけないんだ。それはすごく難しいことなんだよ」
 リアの言葉通り、槍と刀はごくゆっくりと空中を進み、そして相対して互いの力を伝え合う。そして同じタイミングで引き、今度はつかさが引かせた刃を手の内で握り込んで活かし、胴を放つ。その胴をオリヴィアは槍を立て、柄の中ほどを持つことで腹で受けていく。受けた刃からはつかさの力と技術の正しさと深さが良く良く理解できる。速さはなくとも、深い打ち込みだ。
 ――――刀を振るう時の基本は、何を置いてもまずは手の内の極まりである。手指の無駄なこわばりは即ち上腕と肩の硬直を引き起こし、筋肉のしなやかな動作を阻害する。かと言って手の内の締めが足りなければ、ほんの一合の打ち合いですら熟練同士での立ち合いによるインパクトに負け、刀を保持することは許されないだろう。
 その点、つかさの手の内とはまさに見事な物であった。彼女の親指は刀を握りつつも全く折れずにオリヴィアの方へと向かって伸び、第一指間腔は間違いなく刀の柄を締めながらも無駄な力は入っていない。腰から胴へ、胴から肩へ、肩から腕へ、腕から指先へ。その動きのどこにも無駄な力はなく、完璧なバランスによって彼女の構えは成り立っていたことと、そして何より彼女の実力を、オリヴィアはこの打ち合いの一瞬にて再確認するのであった。目の前の相手は正に熟練だ。
「むむ、……! つかささんの一刀、お見事ですね……! 過不足なく極まった腕の締まり、手の内の滑りのなさ……。クレストソードの振りにも、勉強になる部分があります! 見て良かった!」
 どちらともなく胴を払い、胴を引き、そして今度はオリヴィアの方がゆっくりと中段からの突きを行っていく。縦に構えた槍の穂先を下げながら平の構えへと戻し、その間僅かに手指をずらして柄をやや長く持つ。突きを行う際の槍の基本の型である。そして、オリヴィアは利き手とは逆の足を前に出しながらつかさの胴へ向かって突きを放つ。
 突きの利き手と逆の足を出しながら放つ突きは、どちらかと言えば防御的な側面が大きい。利き手と同じ側の足を出しながら突く際の身体の状態とは異なり、身体の体幹をあまりずらさずに突きを放つことが出来るからだ。その突きを、つかさは確かに中段からの打ち払いにて受けていく。
 そこから分かることは――――非常に多くあっただろう。オリヴィアの踏み込みの重さ、腰を捻らず体幹をずらさず放たれた槍の異常な重さ。鍛え抜かれた足腰と驚異的なバランス感覚は踏み込みの際に彼女の槍捌きがブレることを許さない。大地から得た力の全ては上肢へと伝わり、そして柔らかく持った槍の穂先は寸分の狂いもなく全ての力を載せてつかさの刀へとぶつかっていく。その力を実現するために、オリヴィアがどれだけの数槍を振るってきたのか。その重みを、技術を、実力を。つかさは一合の間に想像せずにはいられなかった。目の前の相手は正に達人だ。
「……見事な突きですね……。私も一応、刺剣の心得はありますが、護身術どまりですし……。とてもじゃないですが敵いません。オリヴィアさんの槍捌きはそれ程のものです」
 互いに時期を合わせ、打ちを引き、往なしを行う。もう一合。もう一合。彼女たちの演武は正に舞うかのごとく優美に、武はどこまでも洗練されて舞の如くあった。
 加速。加速。振り下ろされる刃が高速を載せてオリヴィアの肩口へと近付き、それを弾いて掌の中で半回転し、つかさへ向かう槍の一撃を引き返した刃がまた払う。
 ――――やはり、先の浪人とは膂力・錬度ともに桁が違う。二人は同時にそのようなことを思い、そして赤茶色と金色の瞳、そして互いの耳は互いの刃捌きを、体幹を、手の内を、間合いを、踏み込む時の癖を、呼吸音を、視線を、土埃を、大気の揺らぎを――――そのすべてを記憶するために機能を発揮していく。
「ん、そろそろ……。二人とも始めるつもり、ですね。ちょっと行ってきます」
 そして、遂にその時が来た。踊り、舞い、演じ、技を見せ、互いの力量を測る――――。それが終わり、舞が武へと転じる時がついに来たのである。
 二人の放つ突きと面打ちが空中で弾かれ、弾いた衝撃を活かしてつかさとオリヴィアは身体を一回転させながら半歩下がる。互いに察し、示し合わせた仕切り直し。次からの一撃こそ――――全力。
「……さて、と。では、審判は私がお受けします。熱くなるのは良いですけど、お二人とも、あまり無茶はしないでくださいよー? 勝負は一刀。有効打が入ったら、そこで止めますからね」
 間合いを離した二人の間に入り、審判を買って出るのはシャルロット。彼女の狙撃手としての『目』があれば、一刀のすり合わせのつぶさな光でさえも捉えきることが出来るだろう。
 これ以上ない人選であると言える。彼女以上の目を持つ人物はこの場にそういないだろう。
「ありがとうございます、それではお願いしますね。今度は、全霊を以て――いざ、尋常に」
「ええ、シャルロットなら信頼して任せられるわね。それじゃ、私の全力にて――勝負ッ!」
「仕合、開始ッ!」
 そして試合が始まる。審判と観客、実況が揃った豪華仕合が、今幕を開けたのだ。
 初撃。動きが早かったのはつかさだ。彼女は自身の持つ刃を煌めかせながら空き地の土を力強く踏み込んで、中段の構えから腕を伸ばしつつ理想的な打ち込みを行っていく。彼女の利き手と軸足は正に一体。体極まって放たれる刃は明らかになりながらオリヴィアの胴へと進んでいく。
 だが、オリヴィアの狙いはまずは初撃を何としても凌ぐ所にあった。真剣勝負に限らず、全ての立ち合いは最初の有効へ繋がる一手を差し込んだ方の優勢が非常に大きいことを、彼女は多くの立ち合いと戦を経ることによって理解していたのである。
 つかさの打ち込みに対し、オリヴィアは短く持った槍を刀の如くに構えて打ち込みを受けるべく踏み込んでぶつけた。一瞬の静止。火花が奔って空を舞い、込められた力同士が行き場を無くして停滞する。手指を駆使して組み合いから脱し、返す刃で引き胴を放ちながら一太刀浴びせんとするのはオリヴィア。つかさの呼吸を見計らい、彼女の生き次のタイミングを計って振られる引き胴は僅かに反応が遅れたつかさの身体へ伸びていく。
「わ、わ、わ! つかささんの一太刀もすごいですが、オリヴィアさんの引き胴もお見事――――! やっぱりこの二人はすごいや……!」
「でも、まだ決まりはしないでしょうね……。二人とも、今は様子見と見ました」
 瞬間、金属音。オリヴィアの引き胴を、何とか掌で逆手に持ち換えたつかさの刃が寸での所で止めた音だ。つかさの肌すれすれまで届いたオリヴィアの穂先を、彼女はしかして防いで見せた。だが、優勢は未だオリヴィアにあることは間違いない。
 深く引いて守らねばならなかったという事は、刃を再度攻めに転じさせるのに引いた分だけの力を必要とするという事だ。受けるための力が優れているからと言って、即座にカウンターを行えるどうかはまた別の話。寸での部分での防御に刃を用いたつかさを見て好機としたオリヴィアは、そこから高速の打ち合いへと盤面を動かした。
 演武の時のような、周囲に見せるためのゆったりとしたものではない。今行われているのは、相手だけ、もしくは自分だけが分かっていれば良いという正真の武だ。
「え、え、……!? リアお姉ちゃん、今、どっちが勝ってるの!? さっきのゆっくりな剣と全然違う?!」
「……そうだね、今有利なのはオリヴィアさんかな。短く持った槍捌きが見事に決まった形だ」
「……すごい……お兄ちゃん、おねえちゃんたち、なんだか綺麗だね……」
 高速の武のぶつけ合いに感動している子供たちへの説明をリアが行っている中で、槍の穂先を天に掲げ持ち、八相の構え――――西洋剣術で言う、屋根の構えに似た状態から打ち込むのはオリヴィア。八相の構えはそもそもとして鎧を着用している際などに重宝する構えではあるが、攻撃面における利点もある。袈裟の出しやすさ。そこに付け入れば、八相の構えは成る程僅かな打ち合いの中では優位に立つことが出来る構えだろう。
 ここから二人は本命の一撃を繰り出すための牽制の刃を敵に向けて打ち始める。八相の構えから澄まされた袈裟を放ち、そしてまた戻してはもう一刀。オリヴィアの放つ攻撃は次々に加速を遂げ、まるで超高速の立ち合いの中で来たる、決着の瞬間へと沸々と熱狂を溜めているかのようであった。
 『研ぎ澄まされた袈裟斬りは、真っ向から受けてはならない』。上段の打ち下ろしは避けるべき、という観点にも近いその事を、つかさはよくよく分かっていた。そう、大きく振り下ろされた刃を躱せないなら、受け止めてはならないのだ。受け止めては刃へ負担が入り、そして受け止めた力を足腰から地面へ逃がしているうちに相手のもう一刀が来るからである。だからこそ自分が守勢に回り、そして振り被られてしまった場合、受け止めることが最も悪手なのだ。
「『私がつかささんの立場なら、ここからどう動くか』……! うう、ん……今は守るしか、ない……! オリヴィアさんの立場であれば、ここは攻め切って崩し、一気に決めたいところと見ましたが……。勝負のゆくえは、最後の一刀がどちらの意図の元かで決まります!」
 この時つかさが行うべきなのは、焦れず、焦らず、じっくりとオリヴィアの袈裟を往なし、流し、捌くこと。その上でこちらからも牽制の刃を放ち、好機を待つことだ。それを理解しているからこそ、つかさは自分の膂力で真っ向から受け止めることはせず、振られる槍の穂先に斜めから刃を合わせる事で軌道をずらし、僅か僅かに凌いでいく。ユーイの想定通りといえるだろう。
 つかさは一つの袈裟に中段からの弾きを、次の袈裟へ刃を合わせて滑らせながら鍔迫り合いに持ち込み、下がりながらの胴をオリヴィアに放つ。まるで相手の太刀筋を読んでいるかのようだった。だが、意識を研ぎ澄まし、筋繊維一本の挙動すら見逃さない極限の集中力で、相手の太刀筋を見切っているのはオリヴィアも同じこと。攻め切って崩したいオリヴィアと、凌いで好機を待つつかさの勝負。
 そして依然、初手の有利を取って先の打ち合いの情報を最大限活用し、ほんの僅かなつかさの癖も脳と手首に焼き付けたオリヴィアの攻勢は揺るがない。――――そして、その時が訪れた。
「はァァァァ!」
「ッ、ッ……!」
 つかさがオリヴィアの攻撃を横に弾いた。その時、つかさの身体が僅かに横に逸れたのをオリヴィアは見逃さなかった。彼女はつかさに弾かれた刃を力で戻すのではなく、弾かれた勢いのままに身を回転させ、つかさの反撃すらも許さぬと言わんばかりに自分の突きを隙へと捻じ込んだ。
 寸毫でも太刀筋を逸らし、刃筋を立てさせないように。身体を撓らせ、穂先を翻したその槍は、全ての工夫と全ての技術、全ての力を駆使したオリヴィアの一。一槍と呼ぶのにふさわしいものだった。
「ッ、オリヴィアさんが決める気です! 利き手と踏み込む足を合わせ、腰の捻りも加えた! ……これで終わらせるという攻めの姿勢です!」
「この一合で、決まりますね……! 強い力も多彩な技も、最後の狙いさえわかっていれば――もしくは――!」
 『膂力勝負なら負ける気はしない。けれど、速度と技量は僅かに上を行かれているだろう。真っ向から打ち合えば振りを被るのは恐らく自分だ。ならば――――』。つかさは試合開始前にそのようなことを考えていた。剣技に長け、相手の実力を見切る力に優れた彼女は、当然オリヴィアという人物が如何ほどの強者であり、歴戦の猛者であったかということを即座に理解する。
 だからこそ、彼女が仕掛けるのは『駆け引き』であった。技術と速さで勝るオリヴィアの槍捌きを受けていれば、遅かれ早かれ優位は相手に握られるだろう。であれば、『わざと隙を晒すことで先に相手に優位を渡してしまえばどうか?』彼女はそう思考したのである。
 後は『出たとこ勝負』。オリヴィアの貫いた槍の一手が先か、合わせた後を狙うつかさの刃が届くか。全ての技術と力の集合である彼女たち二人の『実力』はまさに同じ。だとすれば、勝負が決まるのは――――。
「届け――――!」
「必ず、この一瞬の隙を突くと、そして届かせると……オリヴィアの槍ならやると、そう思っていたわ……! そこに、合わせる――――!」
 つかさの駆け引きが、この瞬間遂に表に現れた。彼女の姿勢が横に流れたのは、オリヴィアに隙を作らされる前にわざと自分で作って見せた、『誘い』であったのだ。全ての工夫と全ての技術、全ての力はお互いにもう出し合っている。ならば――――勝負を決めるのは、どこまで勝負を読んでいるかの差であるのだろう。
 オリヴィアの振るった槍がつかさへ迫り、彼女は力ずくの下半身の制動で隙を無理やり消して、そこに合わせた返しの刀で一本を狙うべく前へ出る。槍の穂先を刃で受け――――いや、違う。真正面から受けているのではなく、つかさは斜めの刃で受けることで槍を流している。
 一瞬の打ち合いの中で、オリヴィアの槍を読んだつかさが放つのは、彼女の攻撃を流しながらの抜き胴であった。放たれた修練用の刃が、オリヴィアの胴へと伸び――――この勝負、つかさの勝利である。
「……そこまでっ! 一本入りました! この勝負、つかささんの勝利です!」
「わー! お二人とも、対戦お疲れ様でしたっ! 『清めの武』に相応しい立ち合いだったと思います!」
「おねーちゃんたち、すごかったー!」
「うん、本当に! お見事な試合を見せてもらったよ!」
 つかさもオリヴィア、そして二人の戦いを見守っていた全員が、今の健闘を称え合うべく集まっていく。審判であるシャルロットの正式な試合を止める声も上がって、周りの観客たちは大盛況を見せていた。
「お疲れさま、オリヴィア。……いい勝負だったわね」
「ありがとうございます。……ええ、本当に」
 二人の戦士は試合終了後に握手を交わして、互いの技術に尊敬の念を込めて互いを讃える。その光景を見て、どうやらユーイも思うところがある様子。
「好試合を見たせいか、私もからだを動かしたくなってきた! やっぱり、じっとしているのは性に合わないや……! シャルさん! 私達も、ちょっと戦ってみません?」
「私? あー……私は遠慮しておきます。本職は狙撃や罠……奇襲や騙し討ちの類ですから。勝てない戦いを避けるのも、立派な戦術です、というところで」
「それならそれなら、離れた場所から開始してシャルさんの仕掛けた罠や狙撃で一方的に私を狙ってください! 奇襲も騙し討ちもなんでもアリで行きましょう、それを凌げたら私の勝ちというところで! ほらほらっ!」
「ユーイさん? ちょ、ちょっと?! 何か目がきゅぴーんって光ってますよ?! 押さないでください、私は……! ユーイさん、冷静に……! わああーーっ!」
 二人の戦いを間近で見て、自分の力量が如何ほどであるのかを試したくなったのだろう。ユーイはシャルロットを引きずってシャルロットの力が最大限出せるような場所へと彼女を連れていく。
 POWは全てを解決する。二点特化型のユーイの方が、バランス型のシャルロットよりもPOWの値は高いのである――――。
「わ、わあ……。ええと、怪我はないようにね? ……こほん。さて、試合が終わって白熱っぷりに盛り上がったなら! ここからはボクの出店の出番さ、お団子に氷菓子、綿飴に……男衆にはお酒と胡瓜の一本漬かな? 何でもあるよ、さあどうだ!」
「うおおお! 嬢ちゃん、酒だ酒! 見たこともない酒がいっぱいあるじゃねえか、それ全部くれ!」
「リア姉ちゃん、氷菓子一つちょうだい! 弟と半分こするんだ!」
 【我は満たす、ダグザの大釜】を使用して、自営ECサイト取り扱いの商品の中から多種多様な物品を村民に提供していくのはリアだ。
 彼女の持ち込んだ多くの品物は祭を楽しむ村民たちにとって非常にありがたいものであり、彼女の店は瞬く間に大繁盛の様相を呈していく。そこに現れたのは梶本村の村長。彼を見付けたリアは、店の繁盛とは別の、『猟兵としての報酬』を受け取るべく話を持ち掛けた。
 話の内容は一つ。ズバリ、――――『商談』だ。
「ねえ、村長さん? 梶本村に前払いで料金を支払うから、この金子を元手に刀だけじゃない、時代に即した鍬や鋤や、包丁も制作してくれない? 良ければ、ボクが近隣の城下町で売って宣伝してくるよ。品が良ければ……次も買いたい、あるいは直接卸したいって人も現れるだろうさ」
「っ、……ふむ? つまり……お嬢さんは報酬として、『村の特産品を購入する権利』が欲しい、と? この……今にも消えそうな梶本の灯を、そこまで『買ってくれる』というのかね? しかも、……先物買いで」
「ボクが見たところ、この村の鍛冶技術は完全に廃れてるわけじゃないよ。いくらかは落ちたっていうのは、過去の全盛期に比べての話さ。……刀以外の商材を揃えて、平和な世のニーズに応えられるようになれば、この村の技術は間違いなく戦乱の時よりも引っ張りだこになる。モノを見る目は、確かなつもりさ」
「……む、むう……しかし……、この村で鍛冶を続けたいというものが果たして何人おるか、……。済まんが、やはりこの話は……」
「――――ちょっと待ったァ!」
 難航するかに思えた村長とリアの商談に、こうしちゃいられんと勢いに任せて乗り込んできたのは茂作を筆頭とした梶本村の若い男たちであった。
「じっちゃま! いや……! 村長! この話乗ろうぜ! 若いもんとも話してたんだ、やっぱよ……! 梶本の灯は、絶やしたくねえ! 猟兵様方が折角守ってくれたのも何かの縁だ、こりゃァそう簡単に諦めるなってことかもしれねえじゃねえかよ! 刀がダメなら、刀以外で食っていこうじゃねえか! 俺らだけじゃ未熟かもしれんけど……! それでも、やっぱりこの村の技術は伝えていきてえんだ!」
 茂作の言葉にそうだそうだと同調していくのは、村を憂う若い男たち。彼らは梶本村を守ってくれた猟兵たちの健闘と活躍をその眼にして、『梶本村の終わり』を認めたくなくなったのだろう。
 若い男たちの言葉に押され、村長もそれならばと重い腰を上げる。
「お主、ら……。く、……馬鹿者が……。……分かり、申した。猟兵様方に守っていただけた、この梶本の灯……。刀鍛冶という形を変え、もう少しだけ、山の中からこの太平の世を照らしてみたく存じます。……ぐ、……くくっ……。あ、ありがとう……有難う、ございます……! 何卒、っ……! この村を、よろしくお願いいたす……っ!」
「――――『商談成立』、だね」
 猟兵たちの活躍と貢献、そして熱意。それらすべてが梶本村の若い男たちの鍛冶への思いに火を付け、そして村長の決意さえも曲げて見せた。
 年老いた村長のしわがれた目から諦観という名の雫が一つ落ちて、梶本村の放棄はここに立ち消えとなったのだ。
「あ、それからついでにもう一つ! 村の感謝を込めて、まずは包丁セットを納品して欲しいんだ! 今回の依頼を予知したお兄さん宛ってコトで!」
 リアの商談は見事にまとまり、梶本村の技術はここに『お買い上げ』となった。僅かに年月はかかるだろうが、刀以外も打つようになった梶本村の評判は、きっと瞬く間にサムライエンパイア中に広がるだろう。
 戦乱の世では刀などの戦道具のみで商売を回して居た村だ。であるならば、商材を増やしたこの村の鍛冶技術はきっと、またここの経済を回せるようになっていくはずだ。梶本村の危機は、これにて本当の意味で救われた――――そう言って良いだろう。
「ぐ、……! い、つつ……! 薬師殿、どうかもすこし手心を……!」
「訂正が二つある。私は医者だ。まだ研修の身だがな。それから、治療に手心も何もない。人を殺すよりも怪我を殺す方がよっぽど痛いのは当たり前のことだろう?」
 そこから少し場所を外して、村の喧騒からわずかに離れた場所。医療拠点となっているそのキャンプの中では、今回の騒動の中でこの場所に残った全ての傷を癒すべく、一人の男が今も奮闘していた。
 その男の名は蔵座・国臣(装甲医療騎兵・f07153)。彼はまだ『戦』の只中にいる。彼にとっての戦とは、全ての傷が癒えるまでのことを指すのだ。
 今回の騒動で不安を胸に抱えた村民が一人もいなくなるまで。怪我を負った浪人たちが自分の意思で歩き始めるまで。前線にいた猟兵の傷だけではない、戦のもたらした傷は全て癒す。国臣はそのような考えでここに残り、万全の態勢で村が祭を終えられるように待機していた。今も浪人たちと、模擬戦で怪我を負った猟兵たちの怪我を癒している最中である。
「拳による腹部打撲か。打ちどころは悪くない。受けが上手かったな? これなら……まあ、経過観察で良いだろう。痛みが長く出るようなら、その時はまた医者に診てもらうと良い。一応、そこまで食べ過ぎは避けるように」
「あーあ! だってよいっちゃーん! どうするー? 痛みが長く残ってたら」
「なんだ烏鵠、聞いていなかったのか? 医者に診てもらえ」
「ホントそういうとこだぞお前!」
「お大事に」
 復興も祭も、大いに結構。やるのであれば、少しでも万全でやるべきだ。国臣はそう考える。全ての行いに怪我や事故という危険は付きまとい、そして大きなことになると『死』の危険も出てくることがある。
 故に、国臣は祭中も拠点待機を行っているのだ。このような時に限らず、いつの世も加減が出来ない時や事故は起こり得る。そして、それが起こった時に万全が出来ていたら、もしかしたら死人が出ることはなかった――――など、よくある話だ。万全を期さなかったが故にこぼれる命など、どの世界にもあふれ過ぎて困るほど。
 『そうはさせるか』。自分がいる限り、救える命は全て救い、治せる怪我は全て治す。死に損なって生き延びた辻医者は、今日も今日とて世界の片隅で治療という名の戦を続けているのだった。【戦線緊急治療】というユーベルコードを用いる彼は、簡単な問診と超常の力、余りにも酷ければ自分の医療キットを用いて消毒などを行っていた。
 ――――そこに、新たな来客。
「すいません、その……模擬戦で、模造刀による胴を受けてしまいまして、診て頂ければ……」
「――――入り給え」
 新たな患者として運ばれてきたのはオリヴィア。彼女もまた他の猟兵と同じように決着の一撃を受けた身。
 国臣がどんな傷であっても模擬戦などで怪我を負った人物は必ず医療キャンプへと来るようにと、予め通達しておいたのが功を奏したのだろう。
「……いつも怪我を負っているな、君は」
「……すいません」
「修練だの模擬戦だので怪我をするなど、馬鹿馬鹿しいばかりだぞ? ……少しは怪我をしないやり方でも探してみることを、一人の医者としてはお勧めするがね」
「……うう……面目次第も……」
 オリヴィアに対し国臣は問診とユーベルコードによる治療を施しながら、少しだけ小言も挟んでいく。医療に携わる身としては、やはり率先して怪我を負うという行為を認められるはずもなく。
 だが、勿論彼としても『猟兵』という職業がどのようなものかは理解していて。
「まあ、……。猟兵として、怪我をしてでも、という面は分からんではない。だが、やはり今回の件は別だ。……祭の終了まで安静にした後、医療拠点の撤去を手伝うように。以上だ」
「は……はい! 分かりました、お手伝いさせて頂きます……!」
 いつも通り、彼は診察を終わらせる。オリヴィアへの診察結果は、祭りが終わるまでの安静と拠点の撤去の手伝い、以上の二つ。
 祭の喧騒は、まだまだ終わりそうにない。梶本村の大騒ぎは、今日はどこまでも、どこまでも長く続きそうな様相であった。

●梶本の灯
 梶本の祭が始まってからそれなりに時間も経って、猟兵たちと梶本村の村民たちは既に中々に打ち解けている様子。
「おういかーちゃん! 次の大根まだ煮えねえのかい」
「うるさいねアンタ! さっき食べたばかりだろうに! 酒飲んでばっかりいるんじゃなくてこっちのお嬢ちゃんみたいに少しは手伝いな!」
 祭。祭。祭。実に楽しくて良いものだ。好きに飲み食いし、騒ぎ、歌い、踊り――――。だが、だが、待って欲しい。その準備をしているのはこの村の料理番である女性陣と一部の男性であることを忘れてはならないのだ。
 祭の楽しさは入念な準備と裏方の努力あってのこと。アリシア・マクリントック(旅するお嬢様・f01607)も手伝っている料理組は、祭の中にあっててんてこ舞いなほどに忙しかった。
「お嬢ちゃん、大根取ってもらえるかしら!」
「はい、こちらに。すでに切ってありますから、このまま鍋へどうぞ」
「あらやだ! 気が利くわねぇ、ありがとう! 戦いも強くて美人さん、その上料理までできるだなんて……お嬢ちゃん良いお嫁さんになるわよ! あっはっはっは!」
 サムライエンパイアへは初めて来たという彼女ではあるが、持ち前の料理の腕前と気遣いの上手さもあって実に料理組の中にあって重宝されていた。
 やっておいて欲しいことを、気が付いた時にはアリシアがすでにやってくれている。野菜の皮むきに魚の骨抜き、肉の下処理などの手間のかかることでさえも上手くこなしてくれる彼女は、祭の準備という『戦』にあって八面六臂の大活躍をこなしていた。
「しっかし不思議なもんだねェ、まさか……ええと、『あるだわ』? だっけか、お嬢ちゃんの教えてくれた味噌汁と私たちの味噌汁にこんなにも差があるだなんて思わなかったよ! 特に海藻を入れるってのが良いね、一気に豪華になったわァ」
「ええ、私も少し意外でした。この世界にも似た料理があると聞いた覚えがありましたが、以前アルダワで教わったみそ汁と、梶本村のみそ汁にこれほど違いがあったとは……。みなさんのお口に合うと良いのですが」
 そしてアリシアも手伝いのみを行っているわけではない。彼女も率先して『ある料理』を作り、振舞っていた。お湯に味噌を溶かしてわかめや豆腐などいくつかの具を入れたもの。『味噌汁』である。
 戦乱も過ぎた頃の梶本村では、味噌汁はただお湯に味噌を溶かし、そこにわずかに根菜や米などを入れるものであった。しかし、アリシアの作る味噌汁は今まで思いも付かなかった具が多くあるとなって村人から非常に好評を得ていたのである。
「アリシアお嬢ちゃん! お嬢ちゃんの味噌汁もうなくなっちまったよ、まだお替りあるかい!?」
「あ、今お持ちしますね。また先ほどのように出来上がったらお鍋ごと屋台の方に持っていきますので」
 猟兵たちと村民たちの祭は、様々な形を取りながら盛り上がりを見せている。
 それは戦を切り取って浄化し、日常を取り戻すための立派な『戦い』。娯楽を最大限に楽しむのも、また祭のありようであり、戦であった。

「どわはははっはっはははっは!! はっはっはっはっは!! いやああんちゃん……! どわはははははははは! 見所がある奴だあんた! 酒も強いしな……どわはははははははは!!」
「ふはは、おっさんマジでもう何言って笑ってんのか分かんねえぜ? ……まあ良いか、飲め飲め! また付き合ってやっからよ、楽しい酒なら歓迎だぜ!」
 鳳仙寺・夜昂(仰星・f16389)は正にその筆頭であり、彼がいるところは他の場所よりも一段と賑やかに祭りを楽しんでいる様子。
 その理由は――――お酒だ。そう、夜昂はなんとうわばみであった。ざるとかいうレベルではない、もはや升だ。しかも底が抜けている。彼が強く勧めているわけではないのだが、夜昂の飲みっぷりについつい村民も浮かれてしまうのだ。
 彼が話しかける対象は、何も村民だけではなく――――。
「おう、おっさん。さっき振りか? ……顎。悪かったとかは言わねえぜ?」
「む、う……? きっ、貴様は……!? あ、い、いや……! 貴殿は、先ほどの……。……いや、うむ、何。先ほどはご無礼仕った。無手と侮るわけではなかったのだが……見事に負け申した」
 夜昂はちょくちょく場所を変えては、何となく楽しめ切れていない人物の話し相手になってくれているようだった。そんな彼が次に声を掛けたのは、梶本村に許された浪人の中の一人。
 しかも、先ほどの迎撃の際に相対した相手であった。彼は何となく所在なさげにしながら一人でちびりちびりと酒に口を付けるだけを繰り返している。酔いもできないであろうその飲み方は、どこか自分を責めているかのようで――――夜昂はそれを見逃すことが出来なかったのだろうか、声を掛けることに決めたらしい。
「こんなところで一人か、何してんだい? 俺は喧嘩でもねえ殴り合いはあんま得意じゃないッてなモンで、『修練の見物』といきながら祭を堪能してる訳なんだが……。アンタは、どうも堪能してるようには見えねェな?」
「……。貴殿に話を聞いてもらうのも異なこととは存じながらも……。拙も酒の席で口が緩んでおる。……梶本の民から、ここに住んではくれぬかと頼まれておるのだ。それで、悩んでおって、な……。この村の人々は優しすぎるように思うのだ。果たして、その、……優しさに付け込むようにして、拾ってもらっても良いのか、と……」
 夜昂の手には、一人では飲み切れないほど大きな酒瓶が一つ。そしてここには戦いを経た男が二人。酒の肴は模擬戦と、それから『村の優しさに戸惑う男』。酒を飲むには充分だ。
 彼は浪人の隣に腰掛けて、酒瓶を開けて自分と隣の浪人の計二つ、空のお猪口に並々まで酒を注いでいく。
「なっ、まっ、待て! 拙者は貧困の出ゆえ、酒を飲んだことなど、生まれてこの方一度もないのだ……! それに、話を聞いて――――!」
「『良い』と思うぜ、おっさん。住んじまえよ。梶本村で腰を落ち着けなって。村の連中もいいって言ってんだろ? アンタたちは、もう『赦されてる』のさ。村のみんなの優しさはな、別段特別なことじゃねえ。行く当てのないアンタらが、ここで真っ当に働いてくれるかもと思われたからこそ、アンタらは誘われてるんだろうが。まあ、とりあえず飲め飲め! 祭の席の酒はな、良いもんだぜ?」
「……。……そうか。そうなのかも、しれんな……。この村の人々も、そしてお主らも……特別に優しいのではなく、当たり前のことを、当たり前にしているだけ、か……。ふっ、考えもせんかったわ……」
 悪酔いしそうなら、そこそこで水でも差し出してやるからよ。夜昂のその言葉に浪人も意を決したようで、お猪口の中にある酒をひと思いに煽ろうとした――――正にその時。空き地では、新たな模擬戦が始まろうとしていた。
「今回の事件が、平和に終わってよかった。村の人たちや……改心してくれた浪人の人たちにも感謝だな! そして、模擬戦! 俺も参加する! 参加させてくれ! 正々堂々勝負して、この村の為になるのなら! 村の模造刀、ありがたく使わせてもらうぞ! 誰か相手はいないかー!」
 空き地に姿を現して、ヴァーリャ・スネシュコヴァ(一片氷心・f01757)は模擬戦の相手をご所望の様子。
 まるで踊っているかのような彼女の戦闘を見ていた村の衆からも彼女の人気は非常に高く、空き地に現れた時から歓声が響いていた。
「おおいそこの浪人さんよう! アンタ腕に自信ありと見たぜ!? まあ少なくとも俺たちよりかは強いんだろうから、ちょっとアンタも『清めの武』に参加してみちゃくれねえか?」
「はは、そいつァ良い。やってみちゃどうだ?」
「?! 拙者が……か!? い、いや、晴れの舞台で猟兵殿と打ち合うなど、そのような大任……!」
 ヴァーリャが相手を探している中で、村人たちが白羽の矢を立てたのは夜昂と話している浪人であった。既に酒も入っているのだろう村民たちに捲し立てられて、浪人は空き地の中へと連れ出されていく。
 そして、舞台は整った。向かい合うヴァーリャと浪人の手の中には模造刀が一本ずつ。安全に配慮された状態で、猟兵対浪人の模擬戦が始まろうとしていた。
「俺の相手は浪人……あれっ、あっ、元浪人か? どうぞよろしく頼む、お互いにいい試合にしよう!」
「む、むぅ……。いや、うむ。折角の機でもある、か……。僭越の身ながら、猟兵殿の胸をお借りする。いざ、尋常に!」
 ヴァーリャと浪人の模擬戦が始まって、最初に距離を詰めて斬りかかるのはヴァーリャであった。彼女は脚力を活かして走り寄ると、西洋剣術における鋤の構えからなる見事な剣捌きを見せていく。
 突きを主体に放たれていくその剣術は浪人の刃に向かって果断なく向かい、そして彼の獲物を叩き落さんとして空を走る。だが、それをやすやすと許す浪人ではない。彼とて剣術を齧った身なのだ。
「なんの……ッ! これでも、貧乏御家人の出にござるッ!」
「ハハ、良いぞー! どっちもよく頑張れよー!」
 夜昂の応援を背に受けて、浪人も何とかヴァーリャの刃を凌いでいく。右斜めからの突きを叩いて耐え、左下から迫る斬り上げはなんとか刃を合わせて受け止めて反撃の斬り返しを行っていく。
 彼は猟兵の剣を受けるが、その意味において先ほどの襲撃と今の戦いは全く異なると言って良い。略奪のための凶刃はもはやその場にはなく、ここにあるのはただただ『清らかな武』。力比べに用いられる、清廉そのものの武道であった。
「おおっ、やはり剣は中々やるな! では、これならどうだっ!」
「氷の……!? ぐう……っ?!」
 浪人の健闘に応えるかのように、ヴァーリャも自分の力を――――氷の魔力を解放していく。彼女の戦闘の本質は、氷とスケートを利用してくるりくるりと舞って敵の攻撃を躱しながら戦うところにこそあるのだ。
 氷の属性攻撃を巧みに扱って自分の進路上のみを凍らせ、陣地を作り出してスケートのように滑ったり、剣舞のように軽やかに模造刀を自在に振っていく。彼女の変幻自在な剣技は浪人の反応を越えていき、四方からの玄妙な技の冴えは遂に浪人の刀を弾いて見せた。
「俺の本領は、この氷とスケートだからな! 個性あった方が、猟兵の模擬戦らしくて楽しいのだ! でも、そっちの剣技も中々のものだったぞ! お手合わせ、ありがとうございました! へへっ」
「やはり……勝てぬ、か……。しかし、うむ。こちらこそ。手合わせ誠に感謝致す。猟兵殿、非常に良き体験をさせて頂いた。……ふ。うむ、決め申した。拙者は梶本村で厄介になることにする。其方らに代わって梶本を守る刃とならんことを、猟兵殿に誓おう」
 そして、模擬戦は――――『清めの武』は、ヴァーリャの勝利に終わった。ここで行われているのは『場所の祓い』ではあるのだが、浪人にとっては『自らの罪を清める儀式』であったのやもしれない。
 村民たちは手を叩いてヴァーリャの見事な戦法と、浪人の健闘を讃えて迎えていくのだった。
「いいぞ、よくやった。どっちも良い腕してんな!」
「ヴァーリャの嬢ちゃんの氷も滑走もめちゃくちゃ綺麗だったぜオイ! 俺もかみさんに内緒でふぁんくらぶとやらに入っちまおうかな、がはははっ!!」
 祭の喧騒は模擬戦の盛り上がりを経て更に高まっていき、人々は口々に先ほどの熱戦についての感想を言い合っていく。
 その中で意見を溢すのは夜昂もであった。
「こういうのもいいよな。みんな楽しそうでさ。必要なものだけが残っていく。そのままかもしれねえし、形が変わるのかもしれねえが。時代の流れなんてそれでいいんだろうな。……アンタも、そう思うだろ?」
「……うむ。拙者らも変わらねばならぬという事だ。『己のために生きた人生』――――。一度捨てて、これからは人のために生きることにする。……ふ、酒も飲めるようにならねばな」
 そして、酒盛りは続いていく。村の楽しみは、まだまだこれから始まったばかりだ。
「此処に居るのは手練れ揃いだし、『見る』だけでも学ぶ事は少なくないだろう――――。そう思ってはいたけれど、改めて目にしてみると……うん。やっぱ凄いな、皆」
「お? んんん? おわっ、なんだい兄ちゃんそんなとこに! ハハっ、特等席とは羨ましいねえ! 俺ァその枝に乗ったら多分木ごと倒しちまうんでな、登れねえわ! がははっ! そこからだと『清めの武』の様子がよく見えるだろ!」
「あ、どもども。うん、結構ここは良い席だったかも。今までの模擬戦も全部見れたしね、高い場所だから人の影で見えないってことも無かったや」
 模擬戦の様子を観戦していたのは夜昂だけではない。月凪・ハルマ(天津甕星・f05346)も、梶本村で行われていく模擬戦の様子を見物していた一人であった。しかも、『特等席』で。
 彼は祭りの賑わいから見て、この人の多さだと模擬戦の様子は見にくいだろうと考え、喧騒の中にある背の高い木の上、そこの太い枝に腰かけて見物する事にしていたらしい。
「そいつァ良かった! 俺も最初の方はがっぷり四つで見てたんだがなァ、子供たちに前の方は譲ってやったよ。……ところで、見物は良いが兄ちゃんは参加してこないのかい? 見てたぜ、見事に手裏剣を操って村を守ってくれてたのをよ。本当に、ありがとうな」
「いやいや、お礼を言われるためにやってるわけじゃないからね。でも、そりゃどうも。まぁ……参加は……ほら、見ることで自分の技術をさ、ほら……。あと単純に相手が居ないっていうね……」
「アッ……。……その、なんだ、すまんな? おでん食うか? おっちゃんが新しく取ってきてやろうか?」
「あっ止めてそんな目で見ないで心に刺さる。ありがとう、でも大丈夫だから。優しさを見せないで。その優しさぐいぐい刺さってるから」
 そう、ハルマは決して一人だから模擬戦に参加しなという訳ではないのだ。ないったらないのだ。彼は自身の技術向上のために観察を重ねていたのである。それは紛れもなく本当だ。
「しかし、見てるだけでそんな何かを掴めたりするもんなのか? ……あっ、もしかして静かに見てたのもそれに関係してるんだろ」
「ま、そう言うことにも繋がる……かな。特に応援とかをしてなかったのは、万が一俺の声で邪魔することになったらいけないなと思ってさ。それに、見てるだけでも十分練習にはなるもんだよ、案外。刀を受ける人を見れば、自分ならどう躱すかを考えるし。その逆ならどう攻めるかってのも考えられるしね」
 ハルマの行っているこの行動。一流同士の動きを手本にし、またはシチュエーションを明確に置いたうえで自分ならばどうするかを考えるこの行動は、どこか『見稽古』にも繋がる部分があった。
 実際、彼は多くの模擬戦を観察している間に自分でも気付かない内に自分ならどうするかということを呟いたり、若干ではあるが刃の受けなどを見て体が動いたりしていたのだから。この経験は、彼にとって無駄ではない。むしろその逆だ。
「成る程な……。上から俯瞰的にものを見てるのも、修練の一環って訳か? 上からの視点なら、確かにどっちの動きも見れるものな」
「分かってくれたようで嬉しいよ。……お、また何か始まるのかな? 今度は模擬戦じゃないみたいだけど、こっちも面白そうだ」
 村民が彼の行動の理由に納得するように頷き、ハルマがそれに答えていく。その時であった。武を競うという意味合いでの模擬戦が終わった後は、猟兵たちによる様々な修練が行われ始めたのである。
 ハルマの視界にまず最初に現れたのは、神羅・アマミ(凡テ一太刀ニテ征ク・f00889)。彼女はわははと笑いながら空き地に現れ、そしてそのまま村人の望む『お祭り騒ぎ』に興じるべく自らの力を示さんとしてやって来る。
「わはははー! 祭じゃ祭、そんならたっぷり楽しまんと損じゃぜー! 誰ぞ妾に力比べで勝てる者はおるか、勝てる者はおるかー!? ……ウェーイビビってんのかい力自慢ども! 何となく所在なさげフェイス晒してんじゃねーぜ、そんな暇があるなら妾との力比べを受けてもらおうか! 何なら何人がかりでも一向にかまわんぜ、妾はよー!?」
「な、え、俺たち……!? じょ、上等じゃねえか! いくら猟兵って言ったって、多くでかかればどうにかなる! やってやろうぜ皆!」
 アマミが目を付けたのは、村へとまだ馴染み切れていない若い浪人たち。梶本村に腰を落ち着けるかどうかを、喧噪の少し離れた場所で悩んでいた彼らをアマミはまとめて空き地の中心に引っ張り出すと、思い切り煽りながら浪人たちのやる気に火を付けていく。
 『清めの武』に、禍根を残すわけにはいかない。その事をアマミは考えてくれていたのだろうか。それは彼女しか分からないことである。もしくは彼女すらも分からないことである。
「えー、あー、こういう時は景気よく米俵担ぎとかやったりするんかのぅ。わからん。とりあえずいっぱい担いどくべか。おおい浪人ども! お前ら妾の力がどんだけあると思っとるんじゃ! POW216(執筆時調べ)じゃぞ! 分かっとんかああ~~ン?」
 アマミが浪人たちに所望するのは、力のぶつけ合いではなく力比べ。いわゆる、『力自慢』という奴であった。
 彼女は梶本村の蓄えである米俵を納屋から予め空き地の周りに用意しておき、それを利用して純粋な力比べを行おうとしていたのである。ルールは簡単、アマミと浪人たちが順番に米俵を一つずつ担ぎ上げながら個数を増やし、担ぎ上げられなくなった方の負けだ。
「自らの底力を探求するには大変良い機会じゃ、四股立ちにてつかまつれい! 逃げんじゃねーぜ浪人どもー! 妾一人に力勝負で負けたとなれば恥と思えよ」
「……くっ、そこまで言われちゃ引き下がれねえ! 良いだろう、受けて立つ! 猟兵だか何だか知らんが、負けて吠え面かくんじゃねえぞ!?」
 ぎゃははははー、と笑いながらアマミはその細腕に似合わぬ剛力を発しながら米俵の数々を持ち上げて見せていく。梶本の米俵は一つが大体3斗5升、つまりは一つ52kg程の重さを誇る。
 しかし、彼女は腕一本に当然のごとく3つ4つは余裕で乗せて、更には米俵をお手玉のように空中へ投げて柔らかくキャッチし、そしてまた空中に投げている間に更に新しい米俵をお手玉の輪の中へ組み込み、8つ、9つ、10、……。
 無数の米俵が彼女の手の中で廻り、そして最後にアマミは全ての米俵をひときわ高く空へと投げ、鉄製の和傘を開くとその上にバランスよく『縦に重ねて持ち上げる』までしてみせた。
「くっ、……! 猟兵ってェのはどいつもこいつも化けもんだとは思っちゃいたが、この嬢ちゃんのどこからこんな……!?」
「情けないのー、ええ? 『梶本村の力自慢ども』! 妾はまだ本気のほの字も出しちゃおらんぜ? せめて一人頭に米俵三つは担いでもらいたいもんじゃがなー! 人数増やしても良いんじゃぜ、けけけけーッ! まだまだ増やすぞ、耐えられるかーー!」
 対する浪人たちは精々が一人頭に米俵を一つ、力自慢でさえも二つがやっとというところ。まさに無数の米俵を一人で見事に持ち上げ、和傘の上でバランスを取りながら次々にその数を増やしていくアマミを相手取るには、10名ほどの浪人だけでは些か厳しかったか。
 個数が増えても労なく記録を伸ばしていくアマミに対し、そろそろ浪人たちの記録が伸び悩んで止まるかと思ったその時である。喧騒の中から、空き地に向けて新たに姿を現した男たちの影があった。
「待て待てーい! 話は聞かせてもらったぜ、力比べやってるんだろ!? それも、『猟兵さん』と『梶本村の力自慢』での戦いと来た! それならお侍さんたちだけじゃなくて、俺たちだって参加しても良いってこった、そうだろ!?」
「な、え……?! い、いや……! ありがてえ、助力感謝する! この先は俺たち元浪人だけじゃねえ、梶本村総出で相手してもらおうか!」
「クックックック……。数だけ揃ったところで意味などないわー! 上等じゃー! 元浪人だろうが村民だろうがまとめてかかってこんかーい! アマミちゃんに適うと思うなよッ!」
 そこに現れたのは今しがた話を聞きつけてやってきた、梶本村の若い男たち。日頃の農作業や力仕事などを一手に引き受けた彼らの筋肉は実用性に富み、米俵の一つは軽々と持ち上げて二つ目も難なく担ぎ上げていく。
 浪人たちと村人たちは互いに協力し合いながらも米俵を持ち上げていき、アマミの記録に並んでいく。アマミはそれを見て待ってましたとばかりに嗤うと、先ほどよりもペースを上げて米俵を大量に持ち上げていくではないか。記録は既に互いに24。遂にその次で25の大台に届こうとしていた。
「おい、村の! そっちの端は俺が持つ……! 25から向こうの米俵は二人がかりだッ!」
「応! ここまで来たんだ、お侍さんたちも梶本村の一員になるってんなら……! 根性見せてみやがれ! 猟兵さんを負かしてやるぞッ!」
 『清めの武』にはもう、『浪人』はおらず。ここにいるのは猟兵たちと『梶本村の住民』のみ。アマミが25個目の米俵を片手で構える和傘の上へ投げて上手く支え、梶本村の住民たちが何とかかんとか25個目を持ち上げようとしたとき、遂に――――。そして、唐突に勝負は決まった。
「……フン。わっはっはっは、止めじゃ止めじゃ! 見たとこお主らもうへろへろじゃろうが、そんな調子じゃ米俵を落としちまいかねんっつーの! 降参じゃ降参、妾の負けで良いわ! だが勝ったと思うんじゃねーぜ、青臭くて見てらんなかっただけじゃからなー! ギャハハハハハハー!」
「っ、おい?! ……おおお!? なんかよく分からんが……! 俺たち、勝ったのか!? 勝ったんだよな、勝ちで良いよなこれ!?」
「うおっしゃああああ! やったぜおい! 酒だ酒……の前に! お侍さんたち、その米俵を仕舞ってる場所……教えてやっからよ。先にに片付けて……それから祝杯と行こうぜ? 村に越してきた奴らへの祝い酒も込みでな!」
 勝ったのは――――梶本村の力自慢たち、であった。26個目を抱えようとしていたアマミが、村人たちの様子を見て降参を選んだのである。彼女は和傘の上に載っている米俵を器用に一つずつ下ろして掴み、地面に並べていく。
 そしてアマミは村人たちへ向けて一つ大きく呵呵大笑してみせると、喧騒の中で誰にも聞こえぬほどの小声で何かを呟いた。
「事実をありのままに受け入れる、敵へ遺恨を残さずに赦す、死者へ敬意を払い手厚く弔う……。『過去を闇に葬らない』その姿勢こそが、オブリビオンを封じ込める最善の予防策であることを偉大な先達たちは知っておったのかもしれぬな……。ま、おセンチになるのもほどほどに! おうこら祭で飲み食いさせろやー!」
 祭の騒ぎは新たな住人を加えてさらに大きくなり、まだまだ続いていく。
 アマミの力比べが終わった後も、空き地では間を置かずにその隣でまた何かが始まろうとしていた。
「うおおお、……! すげェ、あの兄ちゃんの剣技……! 刀捌きが、追い切れね、ェ……?!」
「うむむ、実にお見事。技前に優れている以上に……。あの猟兵様はどうやら、あらゆる技術によって自身の剣を描いている、と見た。皆、しかと目に焼き付けておけい。あの猟兵様の一刀は、どれもが……。その道における秘中の秘が込められた一刀であるぞ。刀鍛冶でなくとも……鋼を打つものとして、よく見ておくのじゃ」
 そこに立っているのは訓練用木人。そして、もう一人。欲深い一刀は多くの技術を吸ってそこにあり、振るわれれば極みへといとも容易く到達しながら木人を斬りつけて次の型へと移行していく。
 信楽・黒鴉(刀賊鴉・f14026)は自分の刀を振るうことで、『武とは即ち殺しの手管』であることをもう一度この場に知らしめていく。それほどまでに、様々な術理の秘奥が込められた黒鴉の剣術研ぎ澄まされていたのである。
「せっ、はァッ!」
「むらおさぁ、なんだか……、刀って怖いよ……」
「……うむ。そうよ。刀とは恐れられて当然のもの。……だが、先のような爛れた武を清められるのも、また……極まった武以外にはないんじゃよ」
 黒鴉の振るう剣技はどこまでも鋭く、それを見た村の子供たちがどこか怖れを抱いてしまうのも無理のないことと言えた。武は怖い。武は恐ろしい。当然だ。むしろそうでなければ、平和に意味などあるものか。
 混乱の最中にある武が恐ろしいからこそ、人は穏やかな日常を尊び、良しとするのだ。
「ようは、使い方次第。刀を振るうものの心根次第という事じゃ。武とは即ち人を傷つけるためのものではあるが、何のために武を用いるか。それが一番大事なことじゃよ。たとえ武は怖くとも、あの猟兵様を見て……お主たちはどう思う?」
「んんん。刀は、怖い、けど……。あのお兄ちゃんは……かっこいい。梶本を守ってくれた猟兵様だもん。……そのお兄ちゃんが振るう刀なら、うん。……怖くない、かも」
 腰を下ろして脚から放つ、手首の返しと柔らかさを駆使した胴。手首を返して刀を回転させ、そのまま勢いを載せた袈裟斬りは木人の肩口を思い切り切り裂き、また、刃が当たった刹那に黒鴉はもう一度手首の妙を用いて力を込めて押し切るような刃を空に描く。
 そして、ひと呼吸を置いてからの抜刀術。二歩踏み抜きながら右手の手の内は最大限に活かし、左手で鍔元を弾きながら腰の刀を抜き放つ。全身のバネを活かして引き放たれていく模造刀は鈍く光る刃を見せて木人に迫り、首元に刃が触れたと思った次の瞬間にはその首を落とす。
 黒鴉が用いる剣術のいずれもがまさに必殺。いずこかの剣術道場での最終技、皆伝へ至るほどの工夫と鋭さを伴った至高の技であった。木人を苛め抜くかのように振るわれる剣技を、彼はただただ『清めの武』のために見せていく。
「さて、それじゃこの辺りで締めに入りますか……ねッ!」
 最後に彼が魅せるのは、多くの模造刀を駆使した動作。黒鴉は梶本村から借り受けた『八本の抜き身の刀』を空中へと放り投げると、目にも止まらぬ速さで――――その八本の刃を空中で掴みながら止まることなく木人を切り裂いていく。
 まずは頭上の刀を持っての斬り下ろし、もう片方の腕で掴んだ刀での逆銅。残像が残るほどの、高速の斬撃。次に斬り下ろした腕から刀を離し、そのまま身軽にした腕を振り上げながら勢いを付けて刀を掴んだ瞬間の袈裟斬りを放つ。そしてやはりもう片方の腕では胴を放ち、これにて四刀。
 そのまま傷口をえぐるように同じ場所を狙って片腕の逆風と片腕の突きを木人に放ち、最後は殺気の籠もった二刀同時の交差切りを放って木人を両断せしめた。――――オブリビオンの技を盗んだ、見事な剣技である。
 黒鴉の剣舞を、空き地に集まった村民たちは見守り――――そして、一瞬遅れた大喝采が巻き起こるのは、両断された木人が地に落ちてからだった。
「すげー! すげぇぜ兄ちゃん! もっかい見せて、もっかい!」
「……いやあ、お見事。お見事でございました。その腕であれば、模擬戦などにも参加できましょうに」
「いやなに、僕は真剣勝負しかやらないんです。元々、道場稽古で満足できないほど拗らせてしまっているので。お相手が強ければ強いほど、寸止めできる自信もないですしね。だからお見せするのは、このくらいに。……ところで村長さん、ちょっとお願いがあるんですが……」
 猟兵たちの『清めの武』によって、血と死と戦、欲望と退廃に塗れたこの場所の『穢れ』は、猟兵たちの協力によって見事に取り除かれたといって良いだろう。
 赤に染まった土埃や腥い風はもうどこにもなく、そこに吹くのは祭の騒々しさと平和の香り、そしてほんの僅かに酒気を帯びた谷合からの風であった。
「……村の者達の無事も勿論ですが、浪人達も新しい道を見つけられたようで……。ええ、良かった」
 黒鴉が空き地を盛り上げているその隣で、祭に参加しながらも自主的に村の様子を見て回り、悪酔いに近い酔い方をしている人物などや泣いている子供があれば積極的に声をかけていくのは月舘・夜彦(宵待ノ簪・f01521)。
 彼が特に目をかけていたのは、今ではすっかり梶本に馴染み、しっかりと腰を下ろすことに決めたのだろう浪人たちだった。
 最初は所在なさげにしていた彼らも、今見れば楽し気に梶本村の中で溶け込み、周りの人物たちと酒を飲み交わしたり様々な話をしていたり、はたまた空き地の真ん中で村人たちへ刀の手ほどきなどをしている姿も見受けられた。この様子ならば、もはや彼らは大丈夫だろう。そう考えた夜彦は、祭の喧騒から少し離れた場所へ向かっていく。
「失礼。如何ですか?」
「お、夜彦さんかい。丁度良かった、こっちから探そうかと思ってたんだ。祭の終わる前に……終わったぜ」
 夜彦が向かったのは、梶本村の鍛冶場。彼は戦が終わった後、鍛冶師の方に刀の手入れを予め依頼していたのである。そして、その依頼はちょうど今終了したらしい。
 彼が梶本に預けたのは、夜天に移す銀の月、空に舞う小さな花弁さえも斬り裂く一振り。名を、『夜禱』という曇り無き刃の――――夜彦の、愛刀であった。
「しっかし、戦が終わってすぐにあんたから手入れを依頼された時は驚いたよ。手入れの依頼も久しぶりだったが……。いや、実に良い刀に触らせてもらった。その刃に負けない仕事ぶりが儂に出来たなら良いんだが」
「此の刀は師より受け継いだ物、剣士として認められた証なのです。誰が作ったのか分かりませんが、変わらぬ切れ味と美しさの一刀。だからこそ長く使えるように手入れは欠かせません。……お手前、拝見させて頂く」
 夜彦は老齢の鍛冶師から夜禱を受け取ると、自分の目で、自分の手でその手入れの微細を確認していく。オブリビオンらを切り裂いたその刃は――――、今見ても、その刃紋を変わらず雅に煌めかせていた。吸い込まれるように美しい刃筋は、今回の作戦行動に挑む前よりもむしろ輝いていて。夜彦は老獪な鍛冶師の腕前を見た心地であった。
「梶本の山の麓でしか取れない打粉の原料があってな、そいつがまだ切れていなくて良かったよ。拭い紙と一緒に袋にでも入れて夜彦さんにも渡しておくから、帰った後にまた自分でも手入れしてやってくれや。そいつは良い刀だ。大事に、丁寧に使ってるんだな」
 『梶本の打粉に夜藍胴あり、刃紋の煌めきの影に一流の手入れあり』。梶本が鍛冶で経済を回していた頃、重宝されていたのは作刀だけではない。戦で用いられていた刀剣の手入れも、梶本村の稼ぎの一つであった。
 長年培われてきた技術による刃金への直しと、そして梶本村でしか取れない質の良い打粉による磨き。『夜藍胴』は刀剣の手入れを行うのに向いた鉱物の一つで、それで手入れされた刀剣の刃は無明の闇の中でさえ輝く――――そう言われていた。
「……お見事。実に見事なお手入れでございました。有難う、ございます。打粉と拭い紙まで……。金銭は当然お支払するとして、手入れの礼として他に出来る事があれば良いのですが……」
「金は受け取れねえ……。と言いたいとこだが、儂も自分の仕事に誇りを持ってる。だから、夜彦さんからのお礼はありがたく受け取っとくよ。……それじゃ、一つ頼みたいことがあるんだが、そいつもいいかい?」
 鍛冶師の依頼。それは、『自分が手入れを行った刀が夜彦の手元に納まった時の切れ味を、この眼で直に見たい』というものであった。
 夜彦にとってもそれは願ってもないこと。誰しも、自分の刀剣が見事になって帰ってきたのなら、その切れ味を試してみたいと思うものだ。そこからの話は早かった。では、と夜彦が鍛冶師の願いを受諾して、空き地に並べられたのは巻き藁。
「では、これより……。巻藁を使った、居合の剣術をお見せします。久方振りにしますが、動くものより容易でしょう。私自身の剣技と、そして夜禱の刃の冴えに梶本の手入れ。その全てを、どうかご照覧あれ」
 すぅ、はぁ。静かに、それでいて深い呼吸を繰り返す。二、三。空き地にあるのは、腹式によって緩やかに行われていく夜彦の呼吸の音だけではないかと思える程の静寂が流れる。
 空き地にいる皆が、夜彦や鍛冶師も含めて――――。『夜禱』の切れ味に興味があるのだ。この世に二つとない名刀が、一流の手入れを施され、一流の手によって振るわれる。その第一刀を、――――みな、心待ちにしているのだ。
「参ります。全て、――――斬り捨てるのみ」
 そして、夜彦が愛刀に手をかける。【抜刀術『陣風』】。親指と人指しは締め、中と薬は柔らかに。小指のみは逃がしながら流れに任せ、手の内は確かに刀の柄を掴んで力を寸分の狂いもなく届けていく。
 鞘走って大気に触れる前に最大限の加速を得た夜彦の刃が姿を現して、――――ああ。なんと。なんと、『見事な一刀』か。曇り無き刃は日の光を浴びながら白銀に輝いて、まるで夜半に射す三日月の光のように煌々とある。
 光は奇麗な半月の軌道を描き、巻き藁へと到達する。放たれた刃は確かに一刀。だが、ああ。夜禱が鞘に収まって音を立てたその時、巻き藁にはいくつもの光る筋が現れて――――そして、巻き藁に無数の斬撃を受けた後が現れた。一流の刃と一流の技術が、音さえも置き去りにした一刀を披露して見せたのである。
「…………っ、……素晴らしい。夜彦さん、あんた……その刀……、一体いつから使ってる? 一年や二年なんて話じゃねえ、十年でも足りねえ! 今の一刀は、まさに……。一刀同体のそれだ。見事な、一太刀……!」
「世界には刀よりも強い武器が存在する。……ですが、思い入れがあるものは簡単には手放せないものです。……私が物だったからかもしれませんね。この刀を手放して、寂しい思いはさせられませんから。ご老人。お手入れ、ありがとう御座いました」
 居合いの試し切りを終え、夜彦は鍛冶師の老人に感謝を伝えながらその場を去っていく。彼の腰元に収めっている愛刀は、きっとこれから先も彼と苦楽を共にしていくのだろう。
 実直な刀の持ち主に愛された名刀は、きっと――――。長く、長く。手入れをされながら、その刃のきらめきを失うことなく、持ち主のそばにあり続けるはずだ。
 これにて、猟兵による『清めの武』は終了である。良き、武の用い方であった。
「……祭、か。此れも無事の証しなればこそ、というものか。そう思えば賑やかさには馴染みの悪い身ではあるが、華やかな喧噪も、そう悪いものでは無いかもしれんな」
 梶本の祭もいよいよ終盤。そろそろだと皆が切り上げて片付けの準備に入っている頃、鷲生・嵯泉(烈志・f05845)は単身梶本村の奥へ――――夜彦と同様、梶本村の鍛冶場へと足を向けていた。
 だが、彼は刀の手入れを頼みに来たわけではない。彼は、『新たな刀』を求めてここに来ていた。つまりは、『作刀』の依頼にここに来たのである。
「失礼する。私は鷲生・嵯泉と申す者。どなたかいらっしゃるか」
「おお? お客さんかい、今日は多いじゃねえの。……なんだ、猟兵さんか。あんたも刀の手入れの口かい? へへっ、今日は名刀に触れられる良い日だ、職人冥利に尽きる――――」
「いや、ご老人。刀の手入れではないのだ。難しいかもしれないが……。私に、短刀を一振り打っては貰えはしないだろうか」
「――――――――あんた、今なんて言った?」
 鍛冶場へと入り、そこの番をしている老人に向かって、嵯泉は礼を尽くしながら開口一番に依頼の旨を伝えていく。
 だが、老人は――――。嵯泉の依頼内容を耳にするや、顔から笑みを消し去って彼を見る。
「…………いや。先に、聞こうか。あんたが新しい刀を望む理由は――――どうしてだい? そいつを、まずは聞かせてもらおうか。先の戦を見たとこ、あんたすでに二振りは良いもんを持っているだろうに」
「如何にも。私は既に二本の刀を有している。だが、戦うには今有る二振りで充分とはいえ、万が一の備えは必要だろう、と。そういう訳でずっと探しているのだが……。どうにも此れと馴染む短刀が見つからん。そんな折に今回の件を聞き、是はと賭けてみる事にした次第だ」
 鍛冶場の番人の眼光は鋭く嵯泉を捉え、そして嵯泉もまた臆さず老人へ新たな短刀を求める理由を語っていく。
 二人の間にわずかな沈黙が流れ、そしてもう一度老人が口を開いた。
「……若いの。儂も鍛冶師の端くれだ。勿論求められりゃ刀の手入れはするし、俺個人の気持ちで言えば新しい短刀だって打ってやりてえさ。あんたには村を救ってもらった恩義もある。……だが、梶本はな、今新しい道を進もうとしてる。梶本の灯が燈るのは、もう……血を流すための刀を打つためじゃない、と……儂は思うんだがね。老人が出る幕は、もう――――」
「……そうか。無理とあれば、残念だが仕方が無い」
 『梶本の灯が燈るのは、もはや刀のためではない』。目の前の老人――――恐らく、梶本村で何十、何百と刀を打ってきたのだろう鍛冶師は、そう口を開いた。この村は変わろうとしているのだ。武を生み出す村から、生活の中の助けを生み出す村へと。
 嵯泉の申し出は元々仕事としての公平な依頼。取引として正しく行われる、金品と信頼を介したものだ。だが、相手に受ける気がない以上無理強いはできない。だが、彼が鍛冶師の老人へ頭を下げ、鍛冶場を後にしようとしたその時だ。
「――――ちょっと待ってくれ! ご老人、俺も嵯泉の意見に賛成するぞ!」
 そこに現れたのは、先ほど浪人との模擬戦を行っていたヴァーリャ。彼女もまた嵯泉と同じく、梶本に新たな一刀の作成願いを出しに来た人物である。
「……俺がさっき使った刀……。模造刀でも、とても綺麗で素晴らしい出来だったと思うのだ。戦は終わった……だけど平和を守る刀だってきっと必要だ。だから、刀を一振り、俺に作ってはくれないだろうか? 嵯泉も、きっと俺と同じ気持ちだ。勿論、村の人たちにも事情があるのは分かってる。でも――――この通り。お願いだ」
「私からも、もう一度頼む。仕事として、どうか新たな一刀の作成を――――お願いできないだろうか」
「……参った、な……。……どう思う、村長」
「ほっほ。『打って』やれば良いではないか。そもそもお主、意地悪をするには向いとらんわい。猟兵様方が刀を振るう理由――――。それが、『血を流す』ためではなく『流れる血を止める』ためであることくらい、お主もとうに気付いておろうが」
 鍛冶場に二人の猟兵が現れ、そして熱く鍛冶師へ作刀を頼みこんでいく。その二人の後ろで話を聞いていたのは、梶本村の村長だ。
 彼が鍛冶場に姿を現した理由は二つある。『作刀を頼まれるであろうことを予期していたから』。そしてもう一つは、『興味を示した猟兵たちに、梶本八つの名刀を見せるため』である。
「この村は変わる。ああ、変わるじゃろうて。だが、それは刀を打ってはならぬという事では無かろう。『戦を遠のけるための刀』ならば良いじゃろうが。そして猟兵様方なら――――。信頼できるとも。お二人とも、もう一度聞いても良いかの? 『何のために刀を欲す』?」
「俺は――――簡単だ! 平和を守るため!」
「私は――――護るため。万が一に備え、喪わないため」
「……くっ、くっくく……! はっはっは! 上等! 上等だ! あんたら二人、平和のための計二本! 数多の刀を生み出し、八振りの名刀を世に産んだ、この『梶本の灯が請け負った』! 数日貰うぜ、一等良いの寄越してやるから待ってやがれ! 村長、若いの借り受けた! 何日かは休みなしだぞと伝えとけ!」
 依頼は通った。猟兵たちの行いと願いの真摯さが、梶本村の鍛冶師の心に火を付け、そして炉に炎を入れたのだ。
「うおー、本当か! ありがとう、嬉しいのだ! もちろん、お金の方も任せてくれ! 想いの篭った武器ほど、強いものはきっとないのだ!」
「いえ、礼を言うのはやはりこちらの方ですとも。皆様のおかげで、静かだったこの村が……なんだか賑やかになったようで。やはり、梶本の灯を――――私たちは、心のどこかで求めていたのかもしれませぬ。完成までは少しばかり時間がかかるでしょう。お二人とも、今日の所は」
「かたじけない。梶本の粋を信じ、委細任せて待つとしよう。……では、失礼する」
 そして、梶本の灯が燈る。経験豊富で老練な鍛冶師と若く将来有望な鍛冶師。彼らは日夜休まずに働き、熱し、打ち、冷やし、休ませ、叩き、澄ませ、鍛え、研ぎ、心胆を込めて刀を作っていく。
 その隣では猟兵に依頼されたものとは別口で依頼された、リアの貿易網を介して信頼できる筋へと通っていく刀や、もしくは包丁なども作成されて、鍛冶場は久しぶりに大賑わいの体を見せていた。その様子を見物しにやってきたのはアリシアである。
「しかし、良いのかい? お嬢ちゃん。刀を打つところを見たいだなんて……退屈じゃねえか?」
「いえ、そのようなことは。私が普段使う剣は刀とは違うものですが、それでも刀の成り立ちを知ることも剣を扱うことの足しになるでしょうし、楽しませてもらっております」
 アリシアは梶本村の鍛冶場へと、刀の作り方に興味を持って現れていた。彼女は老練な鍛冶師の鋼の打ちを、若い鍛冶師の鋼の冷やしを、真剣なまなざしで観察していく。
 全ては刀が出来上がっていくその工程を後学のために学ぶため。彼女は時折職人たちに幾つか質問を重ねながらも、疑問は残さないようにしながら発見を得ていく。
「ふむふむ、なるほど……。一朝一夕に身につく技術ではないですから、難しいでしょうけれど……。できることならば自分で作ったりもしたいですね」
「うーん、そうだなァ。自分でやってみなきゃ分からんこともそりゃ多くあると思うぜ。……今依頼を受けている刀の鍛造がひと段落付いたら、お嬢ちゃんもやってみるかい? さすがに金子は少しばかり頂くことになると思うが」
「そういうことでしたら、是非。自分自身で刀を打つことも、また経験ですから。材料代等々はお支払いいたします。では、それまで見物していてもよろしいですか?」
 彼女の熱意が伝わったのか、『そういうことなら』と梶本の職人たちもアリシアに鍛冶場を貸す約束を結んでいく。その後、アリシアは鍛冶師たちの助力を得ながら一刀を新たに作成し、その経験は後々彼女の役に立ったというが――――。
 それはまた、別の話。
「お二人とも、こちらでございます」
 アリシアが鍛冶場の見物を行っている横で、村長に連れられて鍛冶場の最奥、もはや使われていないだろう場所へと歩を進めるのは二人。
 ハルマと黒鴉の二人であった。彼らは梶本村の名刀八振り。――――即ち、釈泉、雷瑛、供花、水際、不知火、禊、戴天、氷来の噂を聞いて、見ることはできないかと村長に頼んでいた二人でもあった。
 梶本村の奥の鍛冶場、さらにその奥の最奥。そこにあるのは物々しい扉が入る人を拒む場所であった。
「この先にあるのが、梶本の最奥。そして八本の刃にてございます。お二人は、また――――どうして、この先の刀にご興味が?」
「俺はどんな刀なのか、純粋に興味があるから、ですかね」
「あ、僕も同じく。村に伝わる八振りの名刀には元々興味があったので。ところで、僕に相応しい刀はあるのでしょうか!」
 そう、ハルマはこの場所へ名刀を見に。そして黒鴉は名刀八振りの中から一刀譲り受けることはできないかとの依頼を村長に依頼し、では実際に目を通してからという事でここに通されている。
 四つの鉄扉と八つの錠を解除して、階段を上がり、そして下がり。そして奥へたどり着いた彼らを待っていたのは、白木作りの神壇。そこには八つの刀が鎮座されている。
「へえ、こいつは……」
「……凄いね。見事だ」
「ここにある八つの刃は、梶本の歴史において最上の八本。出来だけで言えば世にある『最上大業物』にも引けを取らぬ……。そう、私らは思うております」
 最も静かに刃を湛えるのは釈泉。最も鋭く切っ先を尖らせるのが雷瑛。最も残酷な光を持つのは供花。最も優しい刃紋を持つのは水際。
 最も苛烈な陰りを見せるは不知火。最も情の薄い煌めきを放つのが禊。最も傲慢な光を持つのが戴天。最も美しい刃紋を持つのが氷来。
 梶本八振りの名刀は、この場にただある。長い年月動かされず、しかし手入れはしっかりと行われていたのだろうその八つは、どれも著しいまでの魅力を持ってそこにあった。
「黒鴉殿。一つ、二つ問いますぞ。立ち合いの時に見せてもらいましたが――――貴方にとって、武とは?」
「――――知れたこと。『武とは即ち殺しの手管。それ以上でもそれ以下でもなし』」
「やはり。では、貴方にとって、殺生とは?」
「それもやはり知れたこと。手段の一つです。不必要な殺生は行わないが、必要な場面では躊躇せずに取るべき方法の一つですよ」
「――――であれば、黒鴉殿。貴方に相応しいのは――――『供花』でしょうな。残酷な理は……。時に、どこまでも美しい。努々、見落とさぬことでございます。自らが何のために武を用いるのか、ということを」
 『供花』。二尺五寸の長さを誇る、梶本の名刀。身幅は広く、反りはやや浅く、中鋒はやや延びていた。濡羽の拵えは装飾性に欠けるが、どこまでも深い、吸い込まれそうな色合いを湛えていた。
 刃紋は小のたれに互の目、丁子風の刃などが烈しく交じって金筋に砂流しが見事にかかっている。黒と銀の鋼の中に、まるで夜の闇に浮かぶ星のような蒼く輝く特有の筋が美しかった。波状の綾杉肌がよく詰み、地沸厚くあり、――――そして、刃は良く斬れるだろう輝きを放っていた。
 生は当然として、死さえも。今はもちろんのこと、過去さえも。現実は無論、空想でさえ。全てのものを切り裂いて別れの『供花』を手向けていくのだろう。この刀のきらめきは、一目見ただけでそのことを猟兵たちに想起させるほどに眩い光を放っていた。
「その特殊な蒼い筋――――。玉鋼に混ざってるのは月辰砂と星輝銅鉱……かな。どちらもこの辺の固有の金属だね。梶本の名刀と言えるだけの輝きがある」
「おや、お詳しいですなハルマ殿。その通り。梶本の刀が強くあるのは、この辺りの山から取れる鉱物によるところが大きいのです」
「俺は別に職人って程じゃないけど、自分でも色々作ったりするから。その関係で見知ってただけですよ」
 黒鴉の手に渡った刃の輝きから、ハルマはその材質を見極めていく。彼も自分自身で装備を改造したりなどを行っているため、このような素材については詳しかったのだろう。見事な見識である。
 梶本の秘蔵の八本を目にしたことは、きっとハルマにとって一つの経験となり、いずれはどこかで活かされることもあるだろう。物作りとはそのようなものだ。
「刀賊鴉と呼ばれることもある僕ですが、何かを『奪う』のは敵からだけ。故に、この刀は……。『供花』は、信楽・黒鴉が、しかと『譲り受け』ました」
「……『供花』を、宜しくお願い申し上げます。猟兵様方、お二人とも……梶本をお守りいただき、本当に……何と言って良いやら見当もつかぬほど感謝しております。我らの命があるのも、梶本の灯が再度燈ったのも――――。全ては、皆様のおかげでございます。これからも、どうか。そのお力で他の戦を止め、各地に平和をもたらしてくださいませ。皆様の息災を願っております」
「ええ、村長さんたちもお元気で。俺も今回の騒動で様々勉強が出来ました。他の皆の戦いもそうだけど、名刀も見れて良かったです。こちらこそ、ありがとうございました」
 そうして、二人は神壇を後にする。鍛冶場を通り抜け、村民たちに見送られながら梶本を後にして。橋と細い山道を通り、山を下りて。降り切った時にはもう既に日は落ち始めていて、山間から見える夕焼けが奇麗だった。
 山の麓から村の方を見上げてみる。見えるのは、この場所に来るまでは燈っていなかった明るい光。『梶本の灯』。煙突からたなびいて紫雲の雲の切れ間に届こうとする煙が空高く立ち上って、夜になって、雲の代わりに星が空を覆っても。その下で、星々が空で散っていくきらめきに負けぬ明かりは――――いつまでも、燈り続けているのだった。
 猟兵たちは魔を穿つ鐵の剣となり、そして魔は見事に穿たれた。残った穢れは鐵の剣と正しい武によって清められ、村から確執と災厄の傷跡は消え失せた。君たちは、見事に梶本の灯を守り切ったのである。おめでとう、実に見事なお手際であった。
 一切合祭太刀合せ、星々散らして――――終幕である。

●後日談
 その後の話を少しだけ語るとしよう。梶本で再度灯が燈ったという噂はサムライエンパイア中を瞬く間に駆け巡った。
 リアの手助けもあり、梶本村で作られていく包丁やはさみなどの刃物、そして針や農具などの様々な工具は、評判の中で市場から迎え入れられたという。
 老獪な鍛冶師達は年若い鍛冶師たちに技術を伝え、そして年若い鍛冶師たちがまた率先して新しいものへ挑戦を重ねて――――。いまや、何か刃物や金属で困ったら梶本に頼れば良い、という声さえ一部では上がるようになっていた。
 ――――また。これは大っぴらには話されていないことではあるが、既に周知のこととして。
 『梶本の灯は既に戦のためではなく、平和のためにある。そして、平和のために武を求めるものが根気強く頼み込んだなら。梶本の灯は、その技術を上げて一つの刃を打ち上げることだろう』。
 実際にその噂を聞きつけた人物が、今も梶本には時折現れては直接鍛冶師に依頼を行うのだとか。そして、これもまた不思議なことなのだが――――。心悪しきものが梶本を目指そうとした場合、村へ繋がる一本道は猟兵たちの残した策略によってすぐさまその姿を変え、村への道を閉ざすのだとか。

 これはそんな不思議な話。ただの、ただの噂話だ。だが、やはり後日。二人の猟兵の手元に、手紙と共にそれぞれ刃が届いたという。

『村を救った猟兵の一人、鷲生・嵯泉殿にこの一刀を捧ぐ。一閃露を掃い鋭悉くを断つ、其方の持つ一刀の名を秋水というのならば、その備えとしての短刀は『春暁』としよう。春の暁。其方の刃が、闇を切り裂く夜明けの一刀であることを祈る。『夜明け前が一番暗い』。闇が現世を覆いつくすその間際に、其方の『護る刃』が、いつでも間に合い、そして全ての夜に夜明けをもたらさんことを願う。梶本一同』
 一尺足らずのその短刀は、小板目肌に杢交じりの、よく詰んだ刃を誇っていた。宵の暗闇でもなお煌めく刃紋は、複雑極まる大互の目、涛乱風に乱れてそこにある。梶本の粋を凝らした一品は、濃黒変塗鞘小刀拵を伴って彼の手元に届いていた。

『村を救った猟兵の一人、ヴァーリャ・スネシュコヴァ殿にこの一刀を捧ぐ。『一片氷心』。ひとかけらの氷のように、曇りのない澄みきった心を以て戦場で駆け、そして刃を振るう其方には、その名の通りの刃が良く似合う。故に、この一刀は『凛然』としよう。霜降に吹く風のように冷たく、霜花のように美しい刃捌きにて、どうか平和と、そして其方のために武を振るわれることを願う。梶本一同』
 二尺二寸のその刀は、地沸微塵に厚くつき、細かな地景がよく入っては淡く乱れ、映り立つようにある。刃紋は湾れ刃、丁字。焼き高く、そして重花風に華やかに乱れて舞い散るその輝きは彼女に相応しいと言える。こちらも梶本の粋を凝らした一品。蒲の穂散塗鞘打刀拵であった。

 以上で、この噂話と後日談も以上にしようかと思う。時代が変われば、またどこかで梶本の名を聞くこともあるかもしれぬ。そして最後に、黒鴉が譲り受けた『供花』以外の梶本の名刀八つは、今はもう梶本から離れているのだとか。今はもうどこにあるかは定かではないが――――。心正しき人物の手の中に納まっていることだけは、疑いようのないことだろう。もしかしたら猟兵の誰かが持っているのかもしれぬが、それをここでわざわざ記すのも野暮というものだ。
 梶本の語り草は、これにて――――本当に幕切れである。
 お後がよろしいようで。
大成功 🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵

最終結果:成功

完成日2019年04月21日
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