憂うはエースの憔悴
●燻るは熾火
誰にだって守りたいものは一つや二つあるだろう。
小国家『ビバ・テルメ』での生活は悪くない。いや、悪くないどころではない。きっと楽園というものがこの世にあるのならば、この場所のことを言うのだろうとさえ思えた。
豊富な温泉資源。
背後の鉱山は天然の要害。前方の廃棄工場群は宛らバリケードだ。
恵まれた立地にありながら、この観光小国家としてトップに立っている四人のアンサーヒューマンたちは独裁ではなく、広く意見を求めている。
彼らは言う。
「僕たちも間違える。こればかりは避けようのないことだ。だから、僕たちが間違った時のストッパーがいる」
「確かにプラントの保有数こそ、私達は劣っていますが、みなさんが居ます」
「だから、協力して欲しい、です。戦うことは、わたしたちが、します」
「何も心配しなくていい」
自分たちには小国家にて営みを続ければ良いのだと言う。
戦うことをしなくていいのだと。
確かに彼らの駆るキャバリアは特別であった。
サイキックキャバリア『セラフィム』。
赤と青の装甲を持つ機体。それは『神機の申し子』と呼ばれたアンサーヒューマンである彼らを得て、『憂国学徒兵』の再来めいた活躍を見せている。
けれど、だ。
自分たちは焦れている。
同じ新興の小国家『第三帝国シーヴァスリー』は、いつだって己達の生活を脅かそうとしている。
静かに暮らすことさえできない。
だったら、戦うしかないだろう。
アンサーヒューマンである彼らが戦うなと言うのだとしても。
「奪われないためには奪うしかないんだから――」
●不和
瓦解する時の切っ掛けというのは、些細なことである。
確かに『ビバ・テルメ』は奇跡のような小国家だ。だが、奇跡は酷く危ういバランスの上に積み上げられたものである。
ならば、そのバランスは些細なことで崩れ去る。
瓦解させるには針の先ほどの切っ掛けでいい。
「ほ、本当にこれを……?」
「ええ、私共はこれを『イカルガ』と呼んでいます。優れた機動力と運動性能、背面のアクティブバインダーはフライトユニットと兼用しており、高高度未満での自在なる空中機動を可能としております」
『ビバ・テルメ』の住人たちは、とある小国家『プラナスリー』からのエージェントと接触していた。
彼らをこれまで守ってくれていた四人のアンサーヒューマンたちは確かに心強い味方である。
けれど、いつまでもそれに甘えていて良いのかと彼らは漸く得た安住の地を脅かされ続けている事態を憂いていた。
自分のために、だけではない。
『ビバ・テルメ』の運営を取り仕切っている四人のアンサーヒューマンたちは戦いすぎた。
故に徐々に疲弊して行っているのだ。
このままで彼らが保たない時が来る。
だからこそ、『ビバ・テルメ』の人々は己たちも戦おうとしたのだ。
けれど、それは四人のアンサーヒューマンたちにとっては好ましくないことだった。自分が傷つくのは良いが、他者が傷つくのを酷く厭うのだ。
「いつまでも彼らにおんぶに抱っこではいけない」
「そうだ。俺たちだって戦える。キャバリアさえあれば!」
そう、キャバリアさえあれば、自分たちも彼らの役に立てるし、もしかしたら『第三帝国シーヴァスリー』だって押し返せるかもしれない。
だったら、迷っている必要なんてないのだ。
幸いにして、小国家『プラナスリー』という自分たちの意志に共感してくれる近隣国を得た。
「そのとおりです。キャバリアなど道具に過ぎません。いくらでも代えが聞きます。ですが、皆さんの意志はかけがえのないものです。尊ばれるべきものです。それを守るためには、協力は惜しみません。では、期日の、このポイントにて受け渡しの準備を」
「ああ、頼んだ。助かるよ」
「いえ、尊きものは、皆様の不屈の意志。『平和』への意志。共に戦いましょう。抗いましょう」
そう言って、『プラナスリー』のエージェント『ノイン』は笑むのだった――。
●イカルガ
グリモアベースに集まってきた猟兵たちを迎えたのはナイアルテ・ブーゾヴァ(神月円明・f25860)だった。
「お集まり頂きありがとうございます。今回の事件はクロムキャバリア世界。温泉小国家『ビバ・テルメ』は今現在も敵対する小国家『第三帝国シーヴァスリー』との衝突を散発的にですが繰り返しています」
戦いの火種はくすぶり続けている。
いつまでたっても戦いは終わらない。『平和』は仮初めで、いつでも崩れ落ちてしまう可能性を秘めていた。
だからこそ、人々は戦うのだろう。
真の『平和』を求めて。
「『ビバ・テルメ』は一騎当千の神機の申し子である四人のアンサーヒューマン『エルフ』、『ツヴェルフ』、『ドライツェーン』、『フィーアツェン』達の駆る四機のサイキックキャバリアで迫る『第三帝国シーヴァスリー』の部隊を撃退し続けています」
ならば、今回も自分たちの出番はないのではないかと猟兵たちは訝しむ。
小国家同士の争い事態に猟兵達は介入しない。
彼らが介入すべきはオブリビオンマシンの存在が確認された時だけだ。
ということは。
「はい、今回は『ビバ・テルメ』側にオブリビオンマシンが現れます」
その言葉に緊迫した空気が走る。
『ビバ・テルメ』側のキャバリアは『セラフィム』と呼ばれる四機のキャバリアのみ。それがオブリビオンマシン化するということなのかと。
だが、ナイアルテは頭を振る。
「いいえ、彼らの機体はオブリビオンマシン化しません。『ビバ・テルメ』の住人たちが『神機の申し子』たちに無断で新興国家『プラナスリー』より援助を受け入れ、得たキャバリア『イカルガ』こそがオブリビオンマシン化しているのです」
彼らはこれまでゲリラ的に『第三帝国シーヴァスリー』の前哨基地を叩き潰している。
この勢いに乗って『ビバ・テルメ』に迫る脅威を振り払おうとするのだ。
「ですが、この『プラナスリー』より送られる援軍の『支援部隊と武装』もオブリビオンマシンに汚染されており……」
つまり、この状況が続けば、『ビバ・テルメ』は内部よりオブリビオンマシンに汚染されて滅びる。
「……今回為すべきことは一つ。援軍のオブリビオンマシンをすべて壊滅させ、なおかつゲリラ活動を行っている『ビバ・テルメ』の部隊のオブリビオンマシンも撃滅することです」
それは容易ではないだろう。
だが、やらねば『ビバ・テルメ』は滅びる。
オブリビオンマシンのもたらす破滅的な思想に染まり、必ず滅びる。
「はじまりは、ただの善意。けれど、歪めば悪意へと変わるもの。取り返しがつかなくなる前に」
そのとおりだと猟兵達はクロムキャバリア、『ビバ・テルメ』へと転移するのだった――。
海鶴
マスターの海鶴です。どうぞよろしくお願いいたします。
今回はクロムキャバリア、温泉小国家『ビバ・テルメ』にて流入しようとしているオブリビオンマシンの暗躍を未然に防ぐシナリオになります。
キャバリアをジョブやアイテムで持っていないキャラクターでも、キャバリアを借りて乗ることができます。ユーベルコードはキャバリアの武器から放つこともできます。
ただし、暴走衛星『殲禍炎剣』が存在しているため、空は自由に行き来できません。
●第一章
冒険です。
『ビバ・テルメ』のゲリラ部隊は、小国家を運営している四人のアンサーヒューマンの預かり知らぬ所で『第三帝国シーヴァスリー』との戦端を開いています。
これに遅まきながら気がついた四人のアンサーヒューマンたちと共に、ゲリラ部隊に抵抗する『第三帝国シーヴァスリー』の前哨基地との間にある戦場を突っ切って『ビバ・テルメ』側のゲリラ部隊へと迫りましょう。
●第二章
集団戦です。
『ビバ・テルメ』のゲリラ部隊は少数精鋭でもって『第三帝国シーヴァスリー』との戦線に散らばっています。
こちらも四人のアンサーヒューマンたちと共にゲリラ部隊が駆る『イカルガ』と、援軍として送り込まれてくる『イカルガ』を撃退しなければなりません。
●第三章
日常です。
皆さんの活躍でオブリビオンマシンは破壊されました。
ですが、それは『ビバ・テルメ』のゲリラ部隊の敗北を確定付けるものです。『第三帝国シーヴァスリー』は『休戦協定』という名の不平等条約を突きつけてくるでしょう。
それはゲリラ部隊とは言え、『ビバ・テルメ』の所属の人々が起こした戦端の不始末。
戦争の定めというものです。
みなさんが口を出すことではないかもしれませんが、しかし、皆さんはこの戦場では『ビバ・テルメ』のゲリラ部隊を撃破した戦功者。
この二国間会談に参加し、発言する権利が保証されています。
どうにかして次なる争いの火種となる行いを止めるように説得、演説、交渉が可能かもしれません。
それでは、燻る熾火が火種へと変わることを防ぐために駆けつける皆さんの物語の一片となれますように、いっぱいがんばります!
第1章 冒険
『共同戦線』
|
POW : 先制攻撃を加え橋頭保を確保する
SPD : 偵察活動を行い情報を共有する
WIZ : 攻略作戦に向けて罠を仕掛ける
|
種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
『神機の申し子』にして小国家『ビバ・テルメ』の運営に携わっているアンサーヒューマンの一人、『ドライツェーン』は呻いていた。
「何故だ! どうして彼らが戦場に出ている!」
「わからない。プラントはすべて食糧生産に割り振ってある。どう計算してもキャバリアを生産する余裕なんてないし、その事実もないんだ」
「だが、現に彼らはゲリラ部隊化して『第三帝国シーヴァスリー』の前哨基地を叩いている!」
『エルフ』の言葉に彼は憔悴した表情を噛み砕くように歯噛みした。
何故、という言葉が渦巻く。
「戦いは俺たちがすると言ったはずだ。なのに……!」
「理由は、わかりません、が……でも、あの人達だって悪意でやっているわけではないはず、です」
彼女の、『フィーアツェン』の言う通りだった。
彼らは自分たちばかりが戦いに赴くことを良しとしなかったのだろう。
優しい人達なのだ。
だからこそ、戦いから遠ざけたかったのだ。彼らの誰も戦いの犠牲になって欲しいとは思わなかった。
「曲がりなりにも戦えてしまっている、というのが問題です。このままでは、『第三帝国シーヴァスリー』に口実を与えてしまうでしょう」
難しい顔をしながら『ツヴェルフ』が己のサイキックキャバリア『セラフィム』と共に砲火が鳴り響く戦場へと疾駆する。
そう、彼女の言う通りだった。
これまで自分たちの戦いは迎撃だけだった。己たちから攻め込むことはせず。ただ専守防衛に終始していたのだ。
それは己たちが他国への侵攻をしないという意思表示でもあったのだ。
だが、ゲリラ部隊の彼らは積極的に『第三帝国シーヴァスリー』の前哨基地を叩いてしまっていた。
謂わば、蜂の巣を叩くのと同じ行いである。
「……とにかく、今は彼らを止めなければ……!」
四人は己達のキャバリアを走らせ、最早、不可逆たる争い、その戦場へと飛び込むのだった――。
シルヴィ・フォーアンサー
タダでキャバリアくれるなんておいしい話
『美味い話には裏がある、今回も例外ではないようだ』
戦わなくていいって言われてるのに自分から戦うなんて変わった人達
『人は何もせずに漫然と生きてると不安になったりする、君も仕事せずに遊んでたまえと言われて安心するかね』
ヨルが言うなら信じるけど、他の人なら大丈夫かなって思うかも
『信頼されて喜ばしいがそういう事だ、お互いそこまでの信頼がなかったという事だろう……小国家とはいえ防衛戦力が4人だけというのは不安を覚えても無理ないと思うが』
戦場突っ切れっていうから突っ切る
今更だけど帝国に攻撃しないほうが良いみたいだからコード+クリムゾン・ウィンドで当たらないよう突破する
無償の愛。
無欲の勝利。
多くの事柄において、それは尊ばれるべきものであるように語られる。
しかし、この世において、無償というのは裏があるということと同義であったことだろう。特に戦乱の世界クロムキャバリアにおいては顕著のはずだ。
人の善性に付け込むのが悪意持つ存在のやり方である。
それを知るからこそ、シルヴィ・フォーアンサー(自由を求めた脱走者・f41427)は小国家『ビバ・テルメ』のゲリラ部隊に供されているというキャバリア『イカルガ』を手に入れた経緯を訝しむ。
「タダでキャバリアくれるなんておいしい話」
あるわけがない。
裏があるに決まっている。そういうものだとシルヴィは理解していたし、サポートAIである『ヨルムンガンド』も同意を示す。
『美味い話には裏がある、今回も例外ではないようだ』
「戦わなくて良いって言われているのに自分から戦うなんて変わった人達」
シルヴィにとって、『ビバ・テルメ』のゲリラ部隊は理解に苦しむ人種であったことだろう。
戦いは四人のアンサーヒューマンに任せれば良いと言われているのに。
徒に傷つきに行こうとしている。
自ら痛みを得ようとしている。
それがどうしたってシルヴィには理解できなかった。
今だってそうだ。
シルヴィは己のキャバリア『ミドガルズ』を借り、砲火荒ぶ戦場を突っ切っている。
「理解に苦しむ」
『人は何もせずに漫然と生きてると不安になったする、君も仕事もせずに遊んでいたまえと言われて安心するかね』
その言葉にシルヴィは少し考える。
もしも、である。
もしも、サポートAIである『ヨルムンガンド』が言うのならば、信頼することができる。けれど、それ意外の人間が言うのなら?
「『ヨル』がそういうなら信じる」
『信頼されて喜ばしいが、私以外は信じられないと。そういうことだ。お互い其処までの信頼がなかったということだろう』
小国家の運営というのは難しいことだ。
如何に一騎当千の『神機の申し子』とサイキックキャバリアが存在するのだとしても、防衛戦力がたったの四人だけといううのは不安を覚える。
無理もない、と『ヨルムンガンド』は理解する。
人々の不安を解消するためには武器を手に取らせなければならなかった。
ただ日々の生活を送るという平穏だけでは、人は異規定はいけない。
刺激がなければ、ただ死んでいるように生きているだけに過ぎないのだ。それは本当に生きていると言えることだろうか。
「人まずは、この砲火を切り抜けないといけない」
今更だけど、とシルヴィの瞳がユーベルコードに輝く。
残像を生み出す分身と共に戦場を駆け抜け、真紅の旋風となって突っ切っていく。ただ突っ切るだけなら簡単なことだった。
今後のことを考えるのならば、自分たちが『第三帝国シーヴァスリー』を刺激することは得策ではない。
これが例え、オブリビオンマシンによって仕組まれた策略であったとしても、だ。
むしろ、逆であろう。
『これは欺瞞作戦とでも言えば良いだろうか。『第三帝国シーヴァスリー』しか特をしない戦いだ』
「なら、帝国側には一切手出ししない。『イカルガ』だけを叩く。オブリビオンマシンの」
『そういうことだ。できるな?』
「そこは信頼して。信頼しているんだから」
そういってシルヴィは己のかるキャバリア『ミドガルズ』と共に真紅の旋風まとい、一気に戦場を突っ切るのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
ガイ・レックウ
【SPD】で判定
『これは…利用されてる嫌な感じがするな…とにかく、今は止めるだけだな!』
【情報収集】と【戦闘知識】による見極めで戦場を分析、愛機、コスモ・スターインパルスを駆けらせ、データを機動戦艦『天龍・改』を通して共有しながらゲリラ部隊のもとへ急ぐぜ
小国家『第三帝国シーヴァスリー』。
彼らは策動を持って他国を侵略する。オブリビオンマシンによって思想を歪められているがゆえに、彼らには侵略すること事態が目的となっている有様である。
それは止まらない。
仮にオブリビオンマシンの全てを破壊したとしても、侵略という行為事態が目的となっているのだから、止まらない。
「これは……利用されてる嫌な感じがするな……」
ガイ・レックウ(明日切り開く流浪人・f01997)は砲火荒ぶ戦場を己のキャバリアと共に駆け抜ける。
砲撃の衝撃が機体を打ち据える。
敵は『第三帝国シーヴァスリー』ではない。
彼が今背に負っているのは、正しく『第三帝国シーヴァスリー』の前哨基地である。これを守るためではないが、徒に『ビバ・テルメ』のゲリラ部隊に攻撃させないためにこそ洗浄をかけている。
これまで『ビバ・テルメ』のゲリラ部隊はいくつかの前哨基地を叩いている。
それ自体は戦果として数えられるものであったし、戦いばかりの世界、クロムキャバリアにおいては目覚ましいものであるようにも思えたことだろう。
「だが、そう簡単にうまくことが運ぶか?」
そう、如何に精鋭化した部隊による散発的な攻撃だとしても、だ。
圧倒的な国力を持つ『第三帝国シーヴァスリー』が、前哨基地が叩かれることなどあるのだろうか。
ゲリラ部隊の利点は少数精鋭による一撃離脱の戦法だ。
確かな補給線と損害を軽微に抑えるための方策が噛み合ってこそ初めて、その効果は発揮されるものである。
だが、『ビバ・テルメ』は観光資源ばかりが頼りである。
そこにキャバリアを量産する余裕などない。
「なのに高性能キャバリアを使っている。数が多くはないとは言え、何処から供給されている?」
しかも、それがオブリビオンマシン化している。
援軍の『イカルガ』も同様であろう。
なら、そこに策動の意図が見え隠れするように思えるのは当然の帰結であった。
「これは急ぐしかないな。止めることでしか、解決できないってんなら!」
ガイは『コスモ・スターインパルス』と共に戦場を駆ける。事態は一刻を争うかもしれない。
もしも、ゲリラ部隊に援軍の『イカルガ』が届いてしまえば、『第三帝国シーヴァスリー』との取り返しの付かない戦争状態へと突入してしまうだろう。
そうなれば、国力で勝る『第三帝国シーヴァスリー』と『ビバ・テルメ』、どちらに勝利が傾くかなど言うまでもないことだ。
だからこそ、止めなければならない。
戦いを止めるためには武力が必要だ。だが、同時に戦いを呼ぶのもまた武力である。
そのジレンマに苛まれるからこそ人は、この戦乱の世界においてオブリビオンマシンが撒く火種によってくすぶり続ける。
「善意に付け込むのが悪意。悪意に火をつけるのが善意ってやつか。厄介だぜ、これは」
ガイは思う。
己が正義であると思い込むこと事態が人の悪性である、と。
己が正しい場所にいると誰が認めてくれるだろうか。誰が正しいと言い切ることができるだろうか。
誰も、それができない。
だからこそ、争いが起こるのだ。
その欺瞞に満ち、好んで争いを拡大させようとする悪意をこそ、猟兵達は討たねばならないのだと、砲火を突っ切りガイはゲリラ部隊の拠点へと飛び込むのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
風車・拳正
(……不安になるのも自分に何か力になれないかって思うのも当然の事だと思う)
ーーその気持ちを利用するなんて、ろくでもない外道がいたもんだぜ、全くよ
(そいつは後でとっちめると決めながら今は目の前の事へと向き直す)
話に聞いた感じ、ゲリラ部隊は未熟で、正面からの戦闘の経験は少ない筈。なら、そこを突けば止められるしれねえな
現場に着いたら部隊の前に生身で立って、まずは言葉で説得を試みる
おい!聞こえてるか!お前達が今してる事はお前達の為に頑張ってる人達の顔に泥を塗ってるんだぞ?だから少し落ち着いて、考えてみてくれ
この行動が正しいかどうか
説得が駄目なら衝撃波で飛んで空中機動してキャバリアの武装を破壊する
人が不安を覚える時、欲するのは力であろう。
力があれば不安を払拭することができる。力さえあるのならば、力ある他者への牽制となる。もしも、自らに力がないのならば、力在る者は奪いに来るだろう。
そうした不安が人を争いに駆り立てる。
奪われぬために奪うという思考に至ってしまう。
それは当然のことであると風車・拳正(衝撃の鉄拳・f41386)は思った。
不安を抱えるのが人間だ。
「――その気持ちを利用するなんて、ろくでもない外道がいたもんだぜ、全くよ」
拳正は戦場に飛び出す。
この絵図を描いた者がいる。
力なき『ビバ・テルメ』の人々にキャバリアという力をちらつかせる。
彼らの行いを肯定し、意志を尊ぶ。
その言葉の裏に如何なる悪意を含んでいるのだとしても、巧妙に隠された悪意は善意と見分けがつかない。
故に彼らは、『ビバ・テルメ』のゲリラ部隊化した人々は悪意という糸に絡め取られ、滅びていくしか無いのだ。
別段これが珍しい事態であるわけではない。
クロムキャバリアという世界においては、いつだって、どこでだって起こりうる事態である。
全てはオブリビオンマシンの所業である。
オブリビオンマシンはどんな高潔な意志を持つ者であっても、騎乗する以上、その思想を歪めていく。
「オブリビオンマシンを供与しようって奴は後でとっちめる!」
砲火荒ぶ中を拳正は駆け抜ける。
敵を倒すことなど二の次だった。
自分がすべきことは唯一。
「おい! 聞こえているか!」
叫ぶ。
いや、呼びかける。
彼にとって、それだけが己の拳を振るう以外にできることだった。
人は争う。それは止められない。
生身の拳正の姿にゲリラ部隊の一つが砲火を止める。
「な、なんだ、あいつは……こんな戦場の、砲火のど真ん中で生身……!?」
「『シーヴァスリー』の罠かもしれないぞ」
当然だと拳正は思った。
そう考えるだろうと。
「お前たちが今していることはお前たちの為に頑張ってる人達の顔に泥を塗ってるんだぞ?」
「何を言う。俺たちは奪われないために戦っているんだ。それを!」
「だから少し落ち着いて、考えてみてくれ! この行動が正しいかどうか!」
拳正の言葉は届かない。
すでに彼らはオブリビオンマシンの影響下にあるのかもしれない。
砲撃が拳正の周囲に注ぎ、爆風が彼の体を吹き飛ばす。大地を蹴る衝撃波と共に彼は拳を握りしめる。
「わからないか。もうわからなくなっちまったのか! その兵器が! 力がお前たちの最初の! 原点にあったものを忘れさせたか!」
誰かのために。
そのために戦うことを決意したのだろう。
最初の思いを濁らせ、歪めるのがオブリビオンマシン。破壊するしかない。
拳正は、その瞳をユーベルコードに輝かせ、拳を振るう――。
大成功
🔵🔵🔵
月夜・玲
…何処のどいつ、こんな事をしでかしたのは
いや、この世界はこんなもんか
何せ闘争の世界、鉤爪の男の言った通りだもんね
民意として闘争を望むんならそれは仕方ない
けれども、それでも
オブリビオンマシンはダメ
人の意思を曲げて、戦わせるのはダメだよ
…まあ、トップが頑張りすぎてるのも不安の原因か
全くしっかりしなよ4人ともー
何故か仕事多いみたいで大変らしいけど、何故か
…別に今回だって休んでて良いよ、私達が解決してくるし
それくらいの雑用、やったげるし
さてと、それじゃあ戦場を突っ切ろうか
【code:U.G】起動
飛翔し、ついでに周囲に敵機がいたら自重で潰れる程の重力で潰しながらゲリラ部隊の居るところにひとっ飛びしようか
戦場が生まれている。
それはまるで明滅する空の星のようであった。
生まれては消えていく。
人知れず。誰にも認められることなく消えていく。
そういうものだ。この戦火の、闘争の世界クロムキャバリアにおいては小国家とは、即ち明滅する星々であった。
「急げ! 敵が来るぞ! すぐさま退け! 体制を整えてから再度突撃だ!」
「余計に装備を運び出そうとするな、身軽さで勝負だ!」
小国家『ビバ・テルメ』のゲリラ部隊化した人々は、確かによくやっているように思えた。
少ない装備。
キャバリアの数だって限られているだろう。だというのに、複数の小国家を滅ぼし、無数のプラントを有する国力を示す『第三帝国シーヴァスリー』を相手の前哨基地相手とは家、此処まで戦えている。
「……何処のどいつ、こんな事をしでかしたのは」
月夜・玲(頂の探究者・f01605)は苛立っていたのかもしれない。
『ビバ・テルメ』の人々の健闘を称えるつもりはない。
こんな事態を歓迎していない。
己が『ビバ・テルメ』を興したのは、こんなことのためではない。ただ温泉を楽しみたかっただけだ。
なのに、という想いが駆け巡るも玲は息を吐き出す。
「いや、こんなもんか」
『鉤爪の男』の言葉を思い出す。
闘争の世界。それがクロムキャバリアだ。人々が戦うと決めたのなら、それは民意だ。総意であるとも言える。
それに従うことでよりよい未来を得られることもあるかもしれない。
言い換えれば、一致団結しているとも言える。
一つの目的のために邁進すること。それによって得られる推進力の凄まじさを玲は知っている。
けれど、それでも。
「オブリビオンマシンはダメ。人の意志を曲げて、戦わせるあれは、ダメだよ」
玲は頭を振る。
戦場を突っ切るようにして四機のサイキックキャバリア『セラフィム』が見える。
なまじ彼らが戦えているのもまた、今回の状況を作り出した遠因だった。
「全くしっかりしなよ四人ともー」
飛び出し、玲は戦場を走る。
ユーベルコードに煌めく彼女の体が重力制御携帯へと変貌し、一気に戦場を突っ切る。
その速度はスラスターや推力を利用したものではなかった。
完全なる重力制御。
Code:U.G(コード・アンロック・グラビティ)は、周囲の重力すら操って見せる。それによって『ビバ・テルメ』のゲリラ部隊たちのキャバリアの動きが止められる。
「機体の動きが止まっている……これは……」
「この重力……あの人ですか!」
『エルフ』と『ツヴェルフ』がディスプレイに表示される玲の姿を認める。
「何故か仕事が多いみたいで大変らしいじゃん、何故か」
『エルフ』と『ツヴェルフ』は、あなたがいなくなったからでしょうが、と言いたかったが堪えた。これは自分たちの問題だからだ。
自分たちが不甲斐ないからだ。
「……別に今回だって休んでて良いよ、私達が解決してくるし。それくらいの雑用、やったげるよ」
玲は、そんな彼らを、『セラフィム』を振り切るようにして一気に『ゲリラ部隊』を逃さぬとばかりに飛翔するのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
ソフィア・エルネイジェ
自分の国は自分達で守護る…その思いに至るのは誰しも当然の事でしょう
その為に武器を取るのもまた必然
力無くして守護れるものなど極限られているのですから
彼等の判断は性急だったかも知れません
ですが家族を守護りたい、営みを守護りたいと思う行動を誰が一方的に責められましょうか
正すべきは民を唆し思いに浸け込む者達です
インドラ!参りますよ!
突撃は戦の華!
正中突破を求むならば、正々堂々と推し通らせて頂きましょう!
ラウンドシールドを構えイオンスラスターを点火
ナイトランスの鋒を正面に!
剛雷突破で私とインドラは戦場を奔る雷光そのものとなりましょう
目的はあくまでも戦場の突破
交戦する事なく障害を跳ね除け前へと突き進みます
守らなければならないものが人には多い。
己の土地を。己の安住を、己の家族を、己の生命を。
全てが己を起点としたものだ。
他者とは、己の手の伸ばせる外側に在るもの。そうであるのならば、己の領域に入り込んできた者を排除しようとするのは自然なことだった。
例え、それが自分たちが侵略者となり得る可能性を持つのだとしても、だ。
「自分のくには自分たちで守護る……その思いに至るのは誰しも当然のことでしょう」
ソフィア・エルネイジェ(聖竜皇女・f40112)は『インドラ』と共に戦場に降り立つ。
すでに砲火が荒ぶ戦場は小国家『ビバ・テルメ』のゲリラ部隊と『第三帝国シーヴァスリー』の前哨基地との間で生み出されている。
本来ならば『ビバ・テルメ』には戦力らしい戦力は存在していなかった。
四機のサイキックキャバリア『セラフィム』だけが『ビバ・テルメ』の戦力であり、その全ては専守防衛に割かれていた。
それ以上の戦力は過剰とし、他国を刺激するものであるとしていたのだ。
だが、現実は異なる。
プラントも多くは持ち得ない『ビバ・テルメ』は、そもそもがキャバリア生産に不向きな小国家である。
「ですが、キャバリアの供与があった。誰もが願うでしょうから。守りたいということは力を持ちたいということ。武器を手を伸ばすのもまた必然」
力なくして守護れるものなど限られている。
多くはないのだ。力なき正義が愚劣なるものであるように。力もなく何かを守ろうというのは、おこがましさを通り越して愚かそのもの。
「彼らの判断は性急だったかもしれません。ですが、家族を守護りたいという行動を誰が
攻められましょうか」
忌むべきは唯一つ。
正しく守りたいと願った者たちの善意を悪意という糸で持って操ろうとする者。
「『インドラ』! 参りますよ!」
ソフィアの声に応えるようにして『インドラ』の咆哮が轟く。
ラウンドシールドが構えられる。
手にした槍の穂先は恐るべきものであったが、しかし『ビバ・テルメ』のゲリラ部隊たちは冷静だった。
火器を保たぬ突撃仕様の機体。
ならば、まともにやり合う必要はない。即座に彼らは撤退を選んだ。
「退却だ。敵の攻撃は速い。突撃仕様だ!」
『イカルガ』を駆るゲリラ部隊たちはソフィアとまともにやり合おうとはしない。これまでもそうだったのだろう。
まともにぶつかれば己たちが敗北することは目に見えている。
ならばこそ、敵を己達の領分に引き込み、敵の本分ではない部分で叩く。
冷静であったし、また戦術、という点においては十分であった。
けれど、ソフィアを彼らは見誤っていた。
イオンブースターの閃光が戦場を切り裂くようにして迸った瞬間、剛雷突破(サンダーチャージ)たる一撃がゲリラ部隊の撤退しようとする『イカルガ』たちを吹き飛ばす。
「な、なんだぁ!?」
「ら、雷鳴が遅れて聞こえてくる……!」
それはまるで稲光のような突撃であった。
ソフィアの目的はあくまでゲリラ部隊の陣中へと至るための突破。機体の撃破ではない。
故に彼女は交戦を避けるようにして、『インドラ』と共に走り抜け、ゲリラ部隊の中枢の奥深くへと食い込むのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
ユーリー・ザルティア
「地獄への道は、善意によって舗装されている…とはよく言ったものね。」
そしてその善意を悪意で利用しようとしている者たちがいる。
許せないわね。
さて、レスヴァントMk-Ⅱで駆けつけるわ。
レーダーユニットのアマテラスを射出して周囲を『索敵』して『情報収集』
時間が惜しいので『瞬間思考力』で素早く精査して、最短ルートを割り出す。
その情報を四人に提供して情報を共有しつつ、ボクは先行する。
オーバーブースト・ラストスパートを発動し、全速力で駆け抜ける。
…とはいえ、今回の事件は四人の反省点ね。
命と生活を守れても、心まで…尊厳まで守れていなかった。
彼らだって守りたいものがある…。少し対話が不足してたね…。
こんな言葉がある。
地獄への道は、善意によって舗装されている。
「よく言ったものね」
ユーリー・ザルティア(自称“撃墜女王”(エース)・f29915)は白いキャバリア『レスヴァントMk-Ⅱ』を駆り、戦場へと駆けつける。
すでに『ビバ・テルメ』のゲリラ部隊と『第三帝国シーヴァスリー』の前哨基地との戦闘は開始されている。
ゲリラ部隊たちは、その身軽さでもって突撃と撤退を繰り返す散発的であるが、一撃離脱の戦術でもって前哨基地に打撃を与え続けている。
確かにうまく戦えていると言えるだろう。
素人に毛の生えたようなものであるが、ここまで圧倒的な国力を誇る『第三帝国シーヴァスリー』と戦えている事自体は褒められるべきことだった。
「けどね……その善意を悪意で利用しようとしている者たちがいる。許せないわね」
そう、『ビバ・テルメ』は奪われない為奪うことを選択した。
守りたいという純然たる意志。
奪われない為に何が出来るかと考えたのだろう。己たちが得た平和。それを失わないためにはどうすればいいのかと。
皮肉にも、それは最も平和からは遠ざかる行いであった。
守るために戦う。
傷つけられぬために傷つけるということ。
それがわからない。何故なら、クロムキャバリアで生きる彼らには『平和』というものがわからないからだ。
恒久的な平穏たる平和。
それを知らない。知り得ない。だから、そういう結論に至ってしまうのだ。
『レスヴァントMk-Ⅱ』より射出されたレーダーユニットが周囲の情報を収集する。時間が惜しい。
一瞬で膨大に流れ込む戦場の情報をユーリーは一瞬で精査し、ゲリラ部隊の本陣へと至る最短ルートを割り出す。
「『神機の申し子』のみんな、聞こえているよね。こっちからデータを送るから!」
ユーリーの言葉、通信に『神機の申し子』、アンサーヒューマンたちは振り返る。
「これは……?」
「ゲリラ部隊の所在。そっちで判断して。ボクは先行する。こんなバカみたいな事態はすぐに収集つけなきゃ!」
ユーリーは彼らにデータを託し、特殊粒子でもって機体を包み込み飛翔する。
そう、時間が惜しい。
恐らく、この戦いは長引けば長引くほどに後々に遺恨を残す。
故にユーリーは飛ぶ。
『ビバ・テルメ』を運営していた四人のアンサーヒューマンたちにとって、今回の事態は手痛い勉強となったことだろう。
彼らは確かに生命は守れる。生活も守れる。
だが、人々の心までは守れなかったのだ。
彼らが胸に宿す思いにまで心を配ることができなかった。だが、それを言うのは酷であろう。
人の手は二本しかない。
遍く全てを救うことなど、アンサーヒューマンである彼らにだってできはしないのだ。
「だから、人は腕のかわりに言葉を選んだんでしょう。対話ってそういうことだよ」
ユーリーは白き機体と共に戦場を突っ切る。
この善意を悪意で操る者を打倒するために。
そして、純然たる思いさえも必ず歪める存在、オブリビオンマシンを破壊するために――。
大成功
🔵🔵🔵
ジェイミィ・ブラッディバック
ここしばらくはクロムキャバリア世界アンサズ地方の「ガラハド計画」やスペースオペラワールドのとある惑星での仕事にかかりっきりでしたが、そろそろ猟兵の仕事もしませんと。
その「とある惑星」から持ち帰った装備を試すよい機会です。
「こちらはアンサズ地方のPMSC『イェーガー・ミリタリー&セキュリティ』社所属機、TYPE[JM-E]。当機及び麾下のセラフィム・リッパー中隊がエスコートします」
ビバ・テルメのセラフィム隊に通信を入れ、セラフィム・リッパー隊を展開。目は多いほうがいいでしょう。
今のところ背後関係は不透明ですが、状況を利用しようという者がいるのであれば、私も私なりに利用させていただくまでです。
多くのことが出来る者であっても、世の全てを掌に収めて動かすことはできない。
人ならざる者であっても手が足りないと感じることがあるのだ。
「アンサズ地方の『ガラハド計画』、スペースシップワールドの惑星での仕事……掛り切りでしたが、猟兵としての仕事もこなしませんとね」
ジェイミィ・ブラッディバック(脱サラの傭兵/Mechanized Michael・f29697)は、己の機体と共に小国家同士の争いへと介入する。
戦場は二色。
小国家『ビバ・テルメ』のゲリラ部隊と『第三帝国シーヴァスリー』の前哨基地。
大きく分ければ、そういうことになる。
だが、この戦場を横断する勢力が在る。
それが猟兵と『ビバ・テルメ』の四人の首脳とも言うべきトップのアンサーヒューマンたちの駆るサイキックキャバリア『セラフィム』である。
それを認め、ジェイミィは通信をいれる。
「こちらはアンサズ地方のPMSC『イェーガー・ミリタリー&セキュリティ』社所属機、TYPE[JM-E]。当機及び麾下のセラフィム・リッパー中隊がエスコートします」
「『セラフィム・リッパー』……!?」
青と赤の装甲を持つサイキックキャバリア『セラフィム』を駆る『ドライツェーン』が驚いた声を上げる。
同じ『セラフィム』の名を持つ機体。
それと接触するのは初めてであったのだろう。
「アンサズ地方の民間軍事会社が、一体どうしてこの戦場に介入する」
「疑問はご尤も」
「私達を援護する、ということも、です」
『ドライツェーン』と『フィーアツェン』の駆る二機がジェイミィのキャバリアを前に立ちふさがる。
突如として現れた機体に警戒しているのだろう。
だが、ジェイミィは構わなかった。
ユーベルコードに輝く機体のアイセンサーと共にSERAPHIM LEGION(セラフィムレギオン)たるAI制御の『セラフィム・リッパー』の中隊が戦場に飛び出す。
「……中隊規模……!」
「これらは私の目。状況をいち早く把握することこそ、戦場における最優先事項。特にこの戦場はゲリラ部隊によって戦線が長く広く伸びている。彼らの状況を知りたいとは思いませんか?」
ジェイミィの言葉に『ドライツェーン』は頷く。
理解できることだった。
「理由を聞いていない。貴方が俺たちに味方するという理由が。民間軍事会社であるというのならば、無償というわけではないのだろう」
「ええ。私が求めているのは、この事態の背後にある存在。不透明に思える状況こそ、見通さねばならぬ状況でしょう。私の敵は貴方達でもなければ、『第三帝国シーヴァスリー』でもない」
現状では、と注釈をつける。
そう、子の状況を生み出した者がいて、その者は必ずほくそ笑んでいるだろう。己の悪意の意図通りに善意に走るゲリラ部隊は『ビバ・テルメ』の破滅を呼び込む。
そういう筋書きを描いた者こそ、猟兵が打倒しなければならない存在であると知る体。
「この状況を利用しようという者がいる。ならば、それを私も私なりに利用させていただくまでです」
「持ちつ持たれつである、と?」
「今はそういうビジネスライクであることのほうが信用できるでしょう。信頼でなくとも」
そう言ってジェイミィは『セラフィム・リッパー』中隊と共にアンサーヒューマンたちの『セラフィム』を守るようにして戦場を突っ切るのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
防人・拓也
「全く…戦いを始めるのは簡単ですが、終わらせるのは難しいんです。攻めた側なら尚更です。まぁ、事態の悪化を防ぐ為にも急ぎましょう」
まずは『光学迷彩機能付き軍用飛行サーチドローン』を飛ばして、拠点までの道のりを偵察。ドローンは光学迷彩を起動し、敵からの索敵を避ける。自分は『光学迷彩機能付き強化戦闘服』の光学迷彩を起動し、隠れてドローンを操作。情報は4人のアンサーヒューマンと共有する。最適な道のりを見つけたら、疾風瞬身を発動して一気に駆け抜ける。
「それにしてもイカルガ…ですか。あの博士が開発した機体はあちこちにばら撒かれて、悪用されているようですね。困ったものです…」
と溜息をつく。
アドリブ・連携可。
「全く……戦いを始めるのは簡単ですが、終わらせるのは難しいんです」
防人・拓也(独立遊撃特殊部隊ファントム指揮官・f23769)は嘆息する。そうするしかなかったことだろう。
すでに小国家『ビバ・テルメ』のゲリラ部隊と『第三帝国シーヴァスリー』との間には小規模ながら確実に戦端が開かれ、ゲリラ部隊は戦果を上げ、前哨基地は被害を被っている。
これは当事者にとって見れば、結果でしかない。
しかし、俯瞰者にとっては異なる。
視線の高さ、位置。
そうしたものが異なるだけで、見える事実は万華鏡そのものだ。
「攻めた側ならなおさらです。まぁ、事態の悪化を防ぐ為にも急ぎましょう」
拓也は光学迷彩をまとうサーチドローンを戦場に飛ばす。
ゲリラ部隊の本陣は地形などを利用して巧妙に隠されている。即席の、それこそありあわせの急増の部隊にしてはよくやっている方だと言えるだろう。
逆に『第三帝国シーヴァスリー』の前哨基地は稚拙であると言える。
まるでなっていない。
これでは素人に毛が生えた程度のゲリラ部隊でも叩かれるのがうなずけるというものだ。
現に『第三帝国シーヴァスリー』側の前哨基地からの砲撃は少ない。
「これを意図的と見るか。それとも、本当にただの練度不足と取るべきか。欺瞞は戦場に溢れた情報の数だけあるといいますが」
拓也の瞳がユーベルコードに輝く。
得た情報は精査されている。
四人のアンサーヒューマンがこの戦場に現れたのはゲリラ部隊に加勢するためではない。
ゲリラ部隊を引き返させるためだ。
すでに遅きに失するものであったが、まだ決定的ではない。これで前哨基地が叩かれてしまえば、それだけで戦争の引き金となるだろう。
今ならば、前哨基地の損害の賠償程度で済む。
けれど、此処でゲリラ部隊が敗北すれば……。
「不平等条約の口実を与えてしまう。休戦協定など、ハリボテでしかない」
だから拓也は急ぐのだ。
風の魔力と自身の生命力を上昇させ、一気に戦場を駆け抜ける。
「急ぎましょう。時間が今は一刻も惜しい」
「わかっています。情報、ありがとうございます」
『ツヴェルフ』と呼ばれたアンサーヒューマンからの通信を受けて拓也は戦場を駆け抜ける。
この先にあるのは多くのオブリビオンマシンの存在するゲリラ部隊の本陣と、オブリビオンマシンの援軍が合流しかねない新たな戦場だ。
「それにしても『イカルガ』……ですか。あの博士が開発した機体はあちこちにばらまかれて、悪用されているようですね。困ったものです」
拓也は二度目の嘆息を吐き出す。
優秀すぎるというのも問題なのかもしれない。
彼の知り合いの博士が生み出した『イカルガ』。
それが如何なる経緯をもってオブリビオンマシン化したのかはようとして知れず。
けれど、差し迫った状況だけが確実に世界を破滅に追いやる。ならば、拓也は己が為すべきことを為すのだと四人のアンサーヒューマンに先んじてゲリラ部隊へと迫るのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
村崎・ゆかり
飛鉢法で『シーヴァスリー』前哨基地へと向かう。
疑いを知らない善人ほどつけ込みやすいものはないわね。
誰がただでキャバリアをくれると思うのかしら?
『ビバ・テルメ』の統治機構があの四人の子たちに頼りすぎなのは事実。
せめて政治や行政の方で肩代わり出来るように考えればよかったものを。
違法ゲリラ部隊が『シーヴァスリー』を攻撃する前に予知が出来てればまだ何とかなってたのに。
いえ、言っても詮無いわね。状況をよりベターなものにしつつオブリビオンを討滅するのが肝要。
片方に肩入れする義理は本来無いけど、帝国を名乗る『シーヴァスリー』はいつ近隣に侵略戦争を仕掛けるかしれたものじゃない。
とにかく全ては現地に着いてから。
純粋無垢とは無知蒙昧と同義であるように思えたかも知れない。
善意とは即ち疑いを知らぬこと。
疑うことを知らぬから純粋であるというのならば、それは浅はかなことであっただろう。そういう意味では『ビバ・テルメ』のゲリラ部隊化した人々は己の善性に振り回された者であるとも言えただろう。
「疑いを知らない善人ほどつけこみやすいものはないわね」
キャバリアの無償での提供。
それはこの戦乱の世界においては、あまりにも不自然なことであった。
『ビバ・テルメ』に生きた人々だって承知していたかもしれない。
戦火によって小国家という寄る辺を失い、漸く辿り着いた安住の地。
そこで行われていたのは、隔てりのない生活だった。四人のアンサーヒューマンたちは彼らに強いることはしなかった。
戦うこと。
傷つくこと。
労すること。
そのいずれもが彼が担っていた。それは確かに尊ばれるべきことであっただろう。
しかし、人は慣れる。慣れた瞬間に、それが本当に永遠に続くものではないと知るからこそ、此度のようなすれ違いが起こってしまうのだと村崎・ゆかり(“紫蘭”/黒鴉遣い・f01658)は思った。
「あの子達に頼りすぎていた、と彼ら自身が気がついてしまったのが、今回の騒動の一因よね」
なにか一つでも彼らの肩の荷を降ろしたいという想いが、却って彼らの首を締める行いになるなどとは彼らは思いもしなかっただる。
この戦乱の世界において戦うことは難しくないことだ。
キャバリアという兵器がありさえすれば、誰だって戦うことができる。
けれど、政治や行政と言った事柄においては誰も才能を持ち合わせているわけではない。誰かが、そう、誰かが肩代わりできていれば、とゆかりは思う。
「けれど、それも詮無きことよね。誰かが、と思っている時点で破綻しているのだから」
せめて、ゲリラ部隊が『第三帝国シーヴァスリー』の前哨基地を叩くというなまじ戦果を上げる前に予知することができていたのならば、まだ最悪の事態は避けることができたかもしれない。
けれど、そうはならなかったのだ。
「ベストにまで持っていけなくても、ベターなものにしなくちゃ。そのためにはオブリビオンマシンの討滅は必須」
『ビバ・テルメ』、『第三帝国シーヴァスリー』。
そのどちらかに肩入れする義理は彼女にはない。けれど、『第三帝国シーヴァスリー』は確実に他国に侵略を開始するだろう。
これまでの動向を見ていてもわかる。
彼らは滅びるべくして滅びる小国家だ。
だが、それは周囲を大きく巻き込んでの滅びである。そうした破滅的な思想が根付かされた小国家だから。
「なら、なんとかしてそれをとめなければ、またオブリビオンマシンの暗躍を赦してしまうわね」
飛鉢法(ヒハツホウ)でゆかりは戦場を飛ぶ。
砲火荒ぶ中、一直線にゲリラ部隊の本陣を目指す。全ては現地に到着してからだ。
グリモアの予知とて万能ではない。
すべてを見通すことはできないし、敵のこともある。
オブリビオンマシンを供与するという謎の新興小国家『プラナスリー』。その正体を見極めるため、ゆかりは現場へと急ぐのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
アルカ・スィエラ
小国が軍備に不安を覚えて、軍備増強の為他所からキャバリアを導入する。まあよくある話よ
(しかしそれが配備された部隊は中央の意図に反して勝手な行動を始めた)
(そして――)
……アルカ・スィエラ、プロトミレス……出るっ!!
ドラグレクスを伴い、コルヴィルクスのスラスター全開で前線へと突っ込むわ
シーヴァスリーの部隊にはUC【分身】を使用、分身を囮にして陽動を掛け、こっちにちょっかいを出そうとするならドラグレクスでにらみを利かせつつ威嚇射撃する、急ぐわよ、ドラグレクス……!
(――そして最後は他国による侵攻と同時に反乱を起こし、護るべき者へとその銃口を向け)
(……私の大事なものは、この世界から永遠に失われた)
クロムキャバリアにおける小国家の国力とは即ち、遺失技術よって造られた生産施設プラントを保有する数で決まる。
そういう意味では『ビバ・テルメ』はプラントを多く有していない。
その代わり、温泉資源や天然の要害といった多くの立地的な条件に恵まれている。そして、その豊富な資源を持って彼らは他国を侵略するのではなく、専守防衛に務めている。
己たちから手を出す事をしないかわりに、他国からの干渉を封じていたのだ。
けれど、今は違う。
ゲリラ部隊が何処からか供与されたキャバリアでもって『第三帝国シーヴァスリー』の前哨基地を叩いてしまっていたのだ。
そして、いくつかの前哨基地を壊滅させることができてしまっていたのだ。
この事実は『第三帝国シーヴァスリー』においても、周辺の小国家においても衝撃と共に駆け抜ける。
通信方法の限定されたクロムキャバリアにおいて、それは尾ひれをもって駆け抜けるだろう。そうなれば、不和が生まれる。不和は確実に不実を含み、戦乱を呼び込む火種となるだろう。
「まあよくある話よ」
アルカ・スィエラ(鋼竜の戦姫・f29964)は『ビバ・テルメ』の現状を把握する。
まるで見てきたかのような物言いであった。
そう、戦う力。
キャバリア。
それは力だ。力の象徴だ。力を得た者は己が正しきように力を扱えていると錯覚するだろう。錯覚を正す者がいなければ、その力は徒に振るわれるようになる。
戦線が伸びれば伸びるほどに、それは顕著になっていくだろう。
アルカは知っている。
「……アルカ・スィエラ、『プロトミレス』……出るっ!!」
鈍色のキャバリアが戦場に降り立ち、機竜と共に『ビバ・テルメ』のゲリラ部隊を目指して砲火の中を走る。
スラスターを噴射させ、前線へと突っ込む姿は、ゲリラ部隊からすれば突如として現れた敵性戦力であった。
「なんだ、急に機影が……!」
「様子がわからん。静観して足を止めるな。後退しろ。現状は破棄する!」
ゲリラ部隊の判断は速かった。
自分たちが判断できない、と見るやすぐさま思考を放棄する。すぐに撤退するという戦法が身にしみているのだろう。
此方の消耗は最小限に。けれど、敵の突出を誘って囲い込むというゲリラ部隊の戦術は、確かになまじ大国と戦えるだけのものであるとアルカは理解する。
「威嚇の必要はなかった、か……とは言え」
現状はあまりにも『ビバ・テルメ』にとって不利なものになっている。
ゲリラ部隊は『ビバ・テルメ』の所属であり、また同時にオブリビオンマシンを要している。
予知によって判明している援軍もまたオブリビオンマシンであるというのならば、これを猟兵は滅ぼすしかない。
となれば、『第三帝国シーヴァスリー』は中立たる己達の戦果を傭兵部隊として喧伝するだろう。それは正しくはないが、しかし傍から見ればそうとしか映らない。
「『第三帝国シーヴァスリー』の思いのまま不平等条約を推し進められる。急ぐわよ、『ドラグレクス』……!」
何処かで見たような、聞いたような顛末をアルカは脳裏に浮かべる。
不平等条約が結ばれれば、隷属か破滅かの二択しか無い。
そして、そこにオブリビオンマシンがいるのならば。
最後に残るのは。
「……」
在るかは自らの大切なものを思い出す。
二度と戻らぬもの。
この世界から永遠に失われたもの。その悲劇の主は、惨劇の引き金を引かせたのは。
「オブリビオン――!」
大成功
🔵🔵🔵
朱鷺透・小枝子
回点号操縦。神機の申し子達と行動を共にしましょう。
……無断戦闘行為は国への裏切りだ。なぜこんな事が起きたのか、彼らがどんな思いを以て戦っているかを、知らなければならない。
理解しなければならない。そのためにも、機体から引きずり出して、対話しなくてはならない。
でなければ直らない、罰する事も、赦す事もままならない!
『戦塵侵撃』を発動。
サイキックシールドを広く展開し【オーラ防御】神機の申し子達を守りつつ、【推力移動】で戦場の突破を試みます。
そして、
プラナスリーだろうがシーヴァスリーだろうが何処のどいつだろうが、彼らに道を踏み誤らせたオブリビオンマシン共は残らず壊せ!!良いな!朱鷺透小枝子!!!
四機の『セラフィム』が戦場を疾駆する。
四人のアンサーヒューマン、『神機の申し子』たちは、今回の事態が発覚するまで『ビバ・テルメ』の人々がキャバリアを得ていたことを知らなかった。
いや、知らされていなかった。
彼らが如何にして戦おうとしたのか。その理由はわからないでもない。
「……無断戦闘行為は国への裏切りだ」
朱鷺透・小枝子(亡国の戦塵・f29924)は共に砲火荒ぶ戦場を疾駆する彼らに告げる。
当然のことだ。
自らを兵士として定義する彼女にとって、それは利敵行為と変わらないことであった。
「わかっています。けれど」
「なぜこんな事が起きたのか、彼らがどんな思いで持って戦っているかを、知らなければならない」
小枝子は頷く。
彼らの言うこともわかる。
罰することは容易い。断じることは容易い。いつだってそうだが、それは性急すぎるものである。だが、簡単なことだ。
理解できないとすぐに排除することは誰にだって出来る。
理解することはあまりにも難しいことだったからだ。
けれど、理解することを放棄してはならない。
「それはきっと正しくない道だから。遠回りで厳しく辛い道であったとしても」
「そのためにも、機体から引きずり出して、対話しなくてはならな。でなければ直らない。罰することも、赦すこともままならない! だから、貴殿たちは進め!」
戦塵侵撃(アクティブ・キャバリア)たる勢いで小枝子の駆るキャバリア『回点号』がサイキックシールドを展開し、一気に戦場を突っ走る。
それは鏃のようであり、またこの欺瞞に満ちた戦場を切り開くものであった。
「『ビバ・テルメ』の人々にキャバリアを供したと云う『プラナスリー』だろうが『シーヴァスリー』だろうが、何処のどいつだろうが」
小枝子は思う。
いつだって、人の善性を信じることはできる。
けれど、同時に人の悪性もまた存在しているのだ。
故に人は間違えるし、惑う。
それが人というものだ。だからこそ、誤ちは繰り返してはならない。正さなければならない。
人の心を歪め、思想を歪め、世界を破滅に導かんとする存在、オブリビオンマシンを赦してはおけないのだ。
「彼らに道を踏み誤らせたオブリビオンマシン共は残らず壊せ!!」
踏み出す。
小枝子は前に進むことしか知らない。
後退することは己の歩みを止めるだけにとどまらないことを知っている。だからこそ、傷を厭わない。
砲火が己の展開したサイキックシールドを削る。
構わない。装甲が削れようが、機体が破損しようが構わない。
ただ只管に進むだけだ。
「良いな! 朱鷺透小枝子!!!」
己に言い聞かせる。
壊す。破壊する。オブリビオンマシンのことごとくを破壊する。それだけが己に残された使命であり、目的である。
故に己の人工魔眼が赤く燃える。
その瞳に映るのは白銀の『イカルガ』。
壊されるべき歌の名は、その色に輝いているのを彼女はとらえるのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
ルクス・アルブス
【ステルク】
こういう時どんな顔すればいいのかわからないの。
……えーっと。
叫びは慣れましたけど、後方母親面には慣れないです。
ステラさん、|ブルアカとクロキャ《『エイル』さんの本場》にくると、
やべーがいつもの1.5倍増しになりますよね。
(3歩離れて、すん、と真顔で)
って!?
ちょちょちょちょちょ!?
ついて行くも何も、またぶら下げられてるじゃないですかー!?
わたしもコックピットに入れてくださいよぅ!
な、なんかステラさん、場を締めようとしてるっぽいですけど、
わたしそれどころじゃないんですけど!
と、とりあえず、ルクスちゃーん、どうしたらいいー!?
え? どうしようない? 死なないからじっとしてて!?
ステラ・タタリクス
【ステルク】
|エイル様《主人様》の! 香りがしまぁぁすっ!!
というか、4人とも立派に行動して|メイド《母》はとっても嬉しいです
ルクス様、どうしました?
えらく引き気味で?
早くこちらへどうぞ?
まぁアイスブレークはこれくらいにして
誰がやべーメイドですか
ともあれ
振り下ろしてしまった拳を元に戻すことは難しい
ならば今は傷口を最低限に留めるしか
フォル!いらっしゃい!(鳥型キャバリアを呼び寄せ)
速さ&本気で突っ切ります!
ルクス様、着いてこないと吹き飛ばされますよ?
何故、彼らが戦場に出ているか?
人は施されるだけでは不安になるものです
善意は少しすれ違っただけで悪意になる
その赤と青のように隣り合っているのですから
いつもの、と言われたのならばもう賢明なる方々は理解していただろう。
そう、いつものやつである。
「|『エイル』様《主人様》の! 香りがしまぁぁすっ!!」
そう、ステラ・タタリクス(紫苑・f33899)のいつものやつである。
四人のアンサーヒューマンたちは、もう驚かなくなっていた。
いつもの、という認識であっているし、別段特に反応しなくても彼女はいつものように大暴れするだろうな、というのがわかっていたので、あえて反応しなかった。
下手に反応したらとても面倒なことになるっていうことを彼らは身をもって体感していたからである。
ともすれば塩対応。
いや、思春期の子供らの両親に対する白けた反応とでも言えばいいだろうか。
そんな対応にすらステラはいたく感激していた。
「四人とも立派に行動して|メイド《母》はとっても嬉しいです」
目元がうっすらと潤んでいるところが更に怖い。怖い。
育てられた覚えもないけど、なんか後方母親面しているので、どういうことなのかまったく理解が及ばない。
まさに人知を超えたなんかそういうあれにしか思えなかった。
四人のアンサーヒューマンたちと同様にルクス・アルブス(『魔女』に憧れる『出禁勇者(光属性)』・f32689)も思った。
「こういう時どんな顔すればいいのかわからないの」
叫びは慣れた。
あれだけ隣で叫び倒されているのだ。なれない方がおかしい。けれど、だ。
四人のアンサーヒューマンを子として扱っているところがメイドの変なところである。有り体にいって、事実無根の血縁関係を結ぼうとしている。既成事実として。
「ステラさん、|ブルーアルカディアとクロムキャバリア《『エイル』さんの本場》に来ると、やべーがいつもの1.5倍増しになりますね」
後方に三歩ほど離れて、わたしは無関係です、という顔で、すん……としているルクスにステラが振り返る。
「ルクス様、どうしました? えらく退き気味で? 早くこちらへどうぞ?」
「って、ちょっちょちょちょ?! な、何シユっていうんです!?」
「何って、『フォル』にルクス様を運んでもらおうかと」
「運ぶってぶら下げられてるって言いませんこれ!?」
ルクスは目を剥く。
それもそうだ。巨大な鋼鉄の鳥型キャバリアの鉤爪がすでにルクスの体をむんず、と掴んでいるのである。
え、運ぶ、というのならば、別にこういうやり方でなくてもよくないだろうか?
いやだって、前はコクピットに複座で搭乗していたりしたではないか。今回もそれでいけると思っていたのだ。
「わたしもコクピットににいれてくださいよぅ!」
「あ、ルクス様、コクピット出禁ですので」
「なんでですかぁ!?」
演奏したからじゃない? 内部であの演奏をされて『フォルティス・フォルトゥーナ』は内蔵っていうか、内部メカニックがおかしくなってしまったのかも知れない。言ってしまえば異物っていうか。
「何故、彼らが戦場に出ているのか? あの子達はまだ答えを知らない。わかっているのかもしれませんが、それでも言葉にしなければ互いに伝わらないということを今回知らなければならないのです」
ステラはなんか真顔になっていた。
急に真顔になって締めようとしているのをルクスはひしひしと感じ取っていた。
「ねえ! す、ステラさん! なんか今良いこといって締めようとしていません!? わたし、それどころじゃないんですけど!!」
「人は施されるだけでは不安になるものです。善意は少しすれ違っただけで悪意になる」
ステラは己の瞳で、四人のアンサーヒューマンが駆るサイキックキャバリア『セラフィム』の装甲を見やる。
赤と青の装甲。
それは悪性と善性入り交じる天秤めいた揺れを見せるもの。
故に、とステラはルクスの喚く声を背に『神機の申し子』たる彼らに言うのだ。
「その赤と青のように隣り合っているものが心にある。人は誰しも、それを持っている。だから……」
「ひ、光の勇者ルクスちゃーん! どうしたらいいー!? 子の状況をどうやったら切り抜けられるー!?」
ルクスは大騒ぎである。
すでに『フォルティス・フォルトゥーナ』に鷲掴みにされて、高速で戦場を飛ぶ味蕾は決定されている。
もうどうしようもない。
眼の前に出現した光の勇者ルクスちゃんは、肩をすくめている。
「え、なに、そのどうしようもないから何もしないほうがいいっていう顔!?」
「大丈夫です、ルクス様。じっとしていれば、死には致しません」
「そういう問題じゃないですよね!? あっ、やめてやめて! 今内蔵にふわっとした嫌な重力感じましたー!?」
あーっ! というルクスの悲鳴と共にステラは『フォルティス・フォルトゥーナ』と共に戦場を地表スレスレに飛ぶ。
其の様を見て『神機の申し子』たる彼らは静かに目を伏せた。
「……多分、あの人なら平気だろうね」
「ええ……勇者さん、ですから」
「多分な!」
「フォローは後でしておきましょう、ね」
そんなふうにして飛び出す鋼鉄の鳥型キャバリアの後を彼らは追うのだった――。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第2章 集団戦
『イカルガ』
|
POW : クイックスラッシュ
レベル×100km/hで飛翔しながら、自身の【ビームソード 】から【連続斬撃】を放つ。
SPD : クイックショット
レベル×100km/hで飛翔しながら、自身の【アサルトライフル 】から【連続射撃】を放つ。
WIZ : マイクロミサイル
レベルm半径内の敵全てを、幾何学模様を描き複雑に飛翔する、レベル×10本の【超高機動小型誘導弾 】で包囲攻撃する。
イラスト:タタラ
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
|
種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
伸び切った戦線。
それが『ビバ・テルメ』のゲリラ部隊と『第三帝国シーヴァスリー』前哨基地との間に横たわる戦線の有様だった。
「敵が来る! 迎撃を!」
「援軍の手はずは! ポイントは此処のはずだ!!」
ゲリラ部隊たちは己たちが頼りにしている援軍……即ち小国家『プラナスリー』より供されるキャバリア『イカルガ』の到着を待っていたのだ。
だが、そこに迫るは猟兵たち。
凄まじい勢いでいくつかのポイントに猟兵達は到達していたのだ。
このままでは援軍が到着しても食いつぶされてしまうかも知れない。故に彼らは焦っていた。
「予定を繰り上げた甲斐があったというものです」
それは『プラナスリー』よりの援軍。
キャバリア『イカルガ』の群れであった。その先頭に立つ一騎の白銀めいたカラーリングの『イカルガ』のコクピットで『プラナスリー』のエージェントである『ノイン』は笑む。
「間に合ったのか!」
「ええ、皆様を喪うわけには参りません。さあ、共に戦いましょう。貴方達から奪おうという者たちに、徹底的に抗いましょう」
その言葉にゲリラ部隊は高揚したように叫ぶ。
援軍の『イカルガ』へと次々と乗り込む。
彼らは待っていたのだ。己の力を。意志を形にできる器を。
そして、その器に注がれるは純然たる意志にして善意。
だが、その器が悪意でもって歪められているのなら。
「守るためには奪わなければ。他の全てを奪ってでも、俺たちの大切なものを守るためには、敵は!」
滅ぼさなければならない。
故に善意は悪意によって歪む。
悪性と善性を持つがゆえに、人の心は一元ではない。だが、オブリビオンマシン『イカルガ』は歪める。人の心を歪め、悪意に染め上げ、世界の破滅を願わせる。
その一歩こそが、己以外の全てを破滅させることでしか、己の善意を護れぬという歪みへと至るのだ――。
風車・拳正
ーーてめぇ等か、コイツらを焚き付けたのは
善意を利用した| 悪意 《 外道 》はーー!
……そっちから出向いて来てくれるのは助かるぜ
そんじゃ、一発殴らせて貰うぞ……!
最初から一気に飛ばしてく! ーーぶっ飛べ、ショック・ザ・ビッグバンォ!!【限界突破】
(力を解放した男は拳を構えて、ただその場に立ち尽くす。どんな攻撃もただ耐えて、耐えて)【激痛耐性】
どんなに速く飛び回ろうが
どんなに遠くに居ようが
(そして集団が重なるその瞬間を見切った男は拳を引いて集団へと向かい跳んで)【見切り、勝負勘、集中力】
ーー関係ねえ。俺はてめぇ等をぶっ飛ばす【衝撃波、空中機動】
自分達の国まで、ぶっ飛んで、そのまま出てくんなーー!
争乱を呼ぶのは、いつだって悪意であるとは限らない。
善意から生まれる悪意だって存在しているものである。それは人の心に悪性と善性とが内在しているからであろう。
単一ではなく。
一元ではなく。
そこに存在している、ということさえ自覚できぬのが人の心というものだ。
「故に、とは言わないけれど。私は思うんだよ、猟兵」
『ノイン』と名乗る小国家『プラナスリー』のエージェント『ノイン』は白銀の『イカルガ』を駆り、『ビバ・テルメ』と『第三帝国シーヴァスリー』の戦線に立っている。
「私がいなくても、彼らは早かれ遅かれ相争うことになっていただろうし、破滅を迎えることになっていただろうとね」
「だったら、なんだってんだ」
風車・拳正(衝撃の鉄拳・f41386)は、その言葉に生身で体高5m級の戦術兵器であるオブリビオンマシン『イカルガ』へと飛び込む。
許しておけるものではなかった。
彼女たちが、オブリビオンマシンが『ビバ・テルメ』のゲリラ部隊を焚き付けたのだ。
善意を利用した|悪意《外道》だというのなら。
「……そっちから出向いてきてくれるのは助かるぜ」
振り抜く拳の一撃が白銀の『イカルガ』から振り抜かれたビームソードと激突し、火花を散らす。
生身単身でオブリビオンマシンに戦いを挑む拳正の姿は超常の人そのものであったが、しかし白銀の『イカルガ』を駆る『ノイン』には驚くに値はしていないかったようだった。
「そうかい。私としてもね、君たちを打倒することが出来る機会は多くはないのでね!」
「だったらなんだってんだ! こっちはなぁ!」
そう、怒りに燃えている。
他者を悪意で。善意を弄ぼうとしたのだ。ならば、そのツケは払ってもらわなければならない。
瞳がユーベルコードにきらめき、そのほとばしる拳の一撃が放つ衝撃波が『イカルガ』より放たれるビームソードの連続攻撃とかち合っては明滅する。
だが、迫る『イカルガ』のビームソードの熱量が彼の体を焼けただれさせる。
しかし、それでも拳正しいは立っていた。
痛みがあるのだとしても、だからなんだと言うように耐えて、耐えて、耐え続けていた。
凄まじい速度で飛び回る『イカルガ』の性能は凄まじいと言える。
だが。
「どんなに速く飛び回ろうが、どんなに遠くにいようが、どんなに巨大だろうが!」
拳正は戦う相手を見誤らない。
踏み込む。
迫る『イカルガ』の一閃とかなさるような拳の一撃。
下半身が沈む。
否、沈んだのではない。屈んだのだ。屈伸を利用して大地を蹴った彼の体が拳ごと『イカルガ』の頭部へと叩き込まれる。
「正気かい? このキャバリアを、オブリビオンマシンを前にして生身で飛び込んでくるだなんんて」
白銀の『イカルガ』駆る『ノイン』をして、それは正気の沙汰ではなかった。
けれど、拳正にとってはまるで関係のないことだった。
そう、己が正しいと思ったことを為す。どれだけ己の心に悪性があるのだとしても、それを打ち消すだけの、同じ善性が己にあることを信じる。
それは他者においてもそうだ。
「――関係ねぇ。俺はてめぇ等をぶっ飛ばす」
振り抜いた一撃が白銀の『イカルガ』の頭部を砕く。
「……自分たちの国まで、ぶっ飛んで、そのまま出てくんな――!」
大成功
🔵🔵🔵
ソフィア・エルネイジェ
新手のイカルガ達は…プラナスリーの増援でしょうか
ブリーフィングの情報通りですね
ビバ・テルメのゲリラ部隊との混成となってしまいましたが、止める手立てはまだあります
ビバ・テルメの防人たるを望む達よ!我が名はソフィア!
これより先に進むなれば!私とインドラが道を阻む壁となりましょう!
殲禍炎剣の天井があるとは言えど、敵の立体的な機動と俊敏性は侮れません
実直に喰らい付けば翻弄されるは必至
聖雷縛封の力を蓄えつつ今暫く堪えましょう
接近させ過ぎないよう牽制程度にショットガンで応射し、懐に潜り込まれる兆しがあれば槍を薙ぎ、盾と耐衝撃、聖竜装甲の三重の守護で誘導弾の嵐を甘んじて受け止めます
撃ち込みから伝わる重さ…唆されていたとしても芯の思いは誠であると見ました
故に私も騎士としてその思いに応えましょう!
ナイトランスを天に向かって掲げて聖雷縛封を解き放ちます
ご安心を
機体を地に伏せさせるだけです
少々痺れて痛い目に遭うやも知れませんが…その痛みは戦いの記憶として心身に刻まれる事でしょう
状況は最も厄介な事態に陥った、と言う判断を下すしかなかった。
グリモアの予知よりも若干早く、新興小国家『プラナスリー』の援軍が到着してしまっていた。
まるで猟兵の介入があることを見越したかのような繰り上げの行軍。
白銀の『イカルガ』を筆頭になだれ込むようにして『ビバ・テルメ』と『第三帝国シーヴァスリー』との戦線の間に無数のオブリビオンマシンたる『イカルガ』が流入し、もとより居たゲリラ部隊との区別が付かなくなってしまっている。
「これもまた悪意の手繰り手の思惑なのでしょう」
ソフィア・エルネイジェ(聖竜皇女・f40112)は冷静に努めて戦況を理解していた。
敵はこうなる状況を予測し、猟兵が事態を最も収拾し辛くしているのだ。
元よりいたゲリラ部隊となだれ込んできた『プラナスリー』より供された援軍。
入り交じることによって、『第三帝国シーヴァスリー』から全ての『イカルガ』が『ビバ・テルメ』の戦力であると認識することができるだろう。
これが策の一つであるというのならば。
「すでに敵の術中ということ……ですが、まだ止める手立てはあります!」
ソフィアは『インドラ』の外部スピーカーをオンにして声たかだかに宣言する。
それは貴人たる振る舞いであり、また彼女にしかできぬことであった。
「『ビバ・テルメ』の防人たるを望む者たちよ! 我が名はソフィア!」
「あの機竜は……!」
「聞きなさい。これより先に進むなれば! 私と『インドラ』が道を阻む壁となりましょう!」
その言葉に『ビバ・テルメ』のゲリラ部隊はたじろぐ。
何故なら、彼女の機体はこれまで『ビバ・テルメ』に味方してきていたからだ。だというのに、彼女の機体が背に負うのは『第三帝国シーヴァスリー』の前哨基地。
言ってしまえば、味方であった者が敵に回ったと『ビバ・テルメ』のゲリラ部隊には映る。いや、事実そうなのである。
彼女はこれ以上の戦闘行為によって『ビバ・テルメ』が『第三帝国シーヴァスリー』に打ち勝つのではなく、不平等なる条約を結ばされる未来を知っている。
ならばこそ、これ以上の損害を『第三帝国シーヴァスリー』に与えてはならぬと『インドラ』と共に立ちふさがるのだ。
「ふざけるな! 俺たちは俺たちの守るもののために戦っているんだ!」
「傭兵風情がどっちつかずで!」
『イカルガ』を駆る『ビバ・テルメ』のゲリラ部隊が一気に『インドラ』へと肉薄する。
背面のアクティヴバインダーが展開し、飛翔し、さらにマイクロミサイルが飴のように『インドラ』へと襲いかかる。
だが、それらの全てを『インドラ』は放つ散弾で打ち抜き、空中にて爆散させる。
荒ぶ爆風の最中をソフィアは駆け抜ける。
「何故わからぬのです、とは言いません」
ソフィアの『インドラ』が掲げたシールドに打ち付けられる『イカルガ』の一撃。
その重さをソフィアは知る。
たかが一兵卒、とは侮らない。
彼らの全てが兵士であり、戦士である。守りたいものを、と歪められた思いを持ちながらも、その本質は尊くまた重たいものであると知るからだ。
槍の横薙ぎによって『イカルガ』を吹き飛ばしながらソフィアは瞳をユーベルコードに輝く。
人はすれ違う。
これだけの思いの重さを持ちながら間違えてしまう。
道を違えてしまうのだ。
だからこそ、争いは終わらない。
「その思い、その誠、正しく真であると私は見ました」
例え、歪められても。それでも願う心のにある善性のきらめきをソフィアは見たからこそ、応えるのだ。
『インドラ』が掲げた槍の穂先が明滅する。
「負けられないんだよ! 奪われないためには! 負けてしまえば、全て奪われてしまうから! 奪わなければならないんだよ!!」
フレームがきしむほどの強烈な打ち込みをソフィアは受ける。
「故に私も騎士として、その思いに応えましょう!」
明滅する槍が天に掲げられる。
瞬間、ほとばしるは稲妻。
古来より雷とは即ち神也。
神性の象徴にして絶対たる力のほとばしり。
その稲妻は一気に戦場を駆け抜け、オブリビオンマシン『イカルガ』の内部電装を焼き切る。
「ショート……!? いや、回路がやられたのか!?」
機体がかく座するようにして、次々と大地に膝をついて動かなくなる。
コクピットから這い出した『ビバ・テルメ』のゲリラ部隊の人々は見ただろう。
天に突き上げられた槍の穂先。
その輝きと共にソフィアの姿を。
彼女は『インドラ』のコクピットから姿を晒し、人々に宣言する。
「……その痛みは戦いの記憶。心身に刻まれるものでしょう。戦いが迫る度に痛むのもまた道理。戦いとは恐れるべきもの。忌むべきもの。ですが、その痛みを正しく理解できるのならば、あなた方は真の戦士となることでしょう」
ソフィアは願うしかない。
その痛みが他者に強要するものではなく、己の中の戒めとして成ることを。
誰もが戦わずにいられない世界にあって、優しさだけがきっと人々の心の善性を支え、悪意に負けぬものになるであろうから――。
大成功
🔵🔵🔵
無能力者・ジーニアス
はじめまして。私はジーニアス……ユーベルコード未覚醒者だからクロムキャバリアにも乗れない、|無能力者《ただ》の人間の女の子だよ。
指定スキル+【天賦の才】併用
先ずは|ポジショニング《戦場内の有利な地形に移動する事で、戦闘態勢を整える事》を。
勝負感を働かせて咄嗟の一撃の|クイックドロウ《目にも止まらぬ速さで弾丸もしくは礫を放ち、敵の武器を砕く》で機体やアサルトライフルを狙うよ。
|制圧射撃《弾丸や礫をばら撒くように放ち、敵の侵攻を食い止める》に|跳弾射撃《壁や地形を狙って射撃し、跳ね返った弾丸で敵の死角を貫く》と|ヘッドショット《卓越した銃捌きで、敵の頭部を素早く正確に撃ち抜く》を混ぜて攻撃するね。
「はじめまして、の挨拶は要らないかな」
無能力者・ジーニアス(無能の英雄「銀誓館学園の劣等生」・f41455)は戦場を見下ろす。
彼女はキャバリアを有してはいなかった。
けれど、何の問題もない。
確かに彼女はヴィジランテと呼ばれる無能力者だ。
だが、それが戦いにおいて彼女を殺す理由にはならない。むしろ、彼女の鍛え抜かれ、卓越した技量は最早ユーベルコードと区別がつかない。
自らをただの人間の女の子と自称する彼女。
その手にしたリボルバー銃を起点にして周囲にあったキャバリアの残骸から組み上げた固定狙撃銃を軽く叩く。
「確かに体高5m級のキャバリアは怖い。戦場の花形と言われるのもわかるよ」
けれど、と彼女はスコープを覗き込む。
キャバリアはクロムキャバリアにおける戦術兵器。
それなくば、戦場で生きることは難しい。故に力を求めるのだ。
わからないでもない。そうすることでしか行きられず、平和とは程遠い闘争ばかりが渦巻くのならば、力を求めることは咎められることではないのだ。
「けれど、それはこの世界に限ったことだよ」
ジーニアスは、スコープを覗き込み、その内部に映り込んだ『イカルガ』を認めた瞬間、引き金を引く。
それは一瞬で『イカルガ』の頭部を射抜く。
「例えば、頭部に集約されたセンサー系。これを撃ち抜けば、君たちは外を目視で確認するしかできなくなる」
そして、さらにまた引き金を引いては、『イカルガ』の武装を射抜く。
「けど、それを判断するまでの時間が悠長にすぎる。その間に武器を破壊すれば、無力化できた、と言えるよね」
彼女の手際は凄まじいものであった。
生まれながらの天才と言われるのならば、その卓越した技量や技能を培うだけの時間は必要なかったのかも知れない。
年齢など意味をなさない。
どれだけ生きて来たか、ではない。
どれだけ濃密な経験をしてきたか、でしか彼女を語ることはできないだろう。そして、それは余人に語ることでもない。
「そうしたらお次は」
組み上げられた固定狙撃銃から離れる。
既に此方の位置は把握されているだろう。なら、躊躇いもなくポジションを捨てる。
ジーニアスは移動し、事前に組み上げていた武装の前に立つ。
敵の侵攻を食い止めるというのならば、自分にだって出来る。
「何も難しいことじゃない。制圧射撃、跳弾射撃、ヘッドショット。やれることはいっぱいあるさ。そのやれることを全部活かし切って初めての戦いってやつだよね」
生き抜くには自らの技能の全てを活用しなければならない。
次々と『イカルガ』たちが沈黙していく。
そのオブリビオンマシンとしての存在技のことごとくを否定して見せる。キャバリアなくば無力と示される世界其の者を否定して見せる。
生身単身であろうとも、出来ることは在るのだと示すようにジーニアスは引き金を引き続ける。
それが無能力者と呼ばれる自分の生き方であるのだと示すように――。
大成功
🔵🔵🔵
ガイ・レックウ
【POW】で判定
『てめぇか、悪意の元は…。まあ、てめえ等が何を企もうと全てぶっ潰す!猟兵はそういうもんだぜ!』
【オーラ防御】を纏い、【限界突破】した【操縦】で【フェイント】を織り交ぜながら突撃。
電磁機関砲での【制圧射撃】とブレードでの【鎧砕き】を叩き込んでやるぜ!
『悪意はたしかに誰の心にもあるし、善意からも生まれるだろう…たがな!それを乗り越える可能性を誰もが秘めてんだよ!ド三流!』
ユーベルコード【獄・紅蓮開放『ヴリトラ・ファンタズム』】の焔で焼き尽くすぜ!
頭部の吹き飛んだ白銀の『イカルガ』のコクピットハッチが開く。
「やってくれたものだ。いやはや、と言うべきか」
ハッチを開けたのは頭部センサーが全て死んだことによるモニターが機能しなくなったことに起因しているのだろう。
しかし、通常はコクピットハッチを開くなどおいそれできるものではない。
「てめぇか、悪意の元は……」
白銀の『イカルガ』の前に『コスモ・スターインパルス』が立ちふさがる。
ガイ・レックウ(明日切り開く流浪人・f01997)は新興小国家『プラナスリー』のエージェントと目される『ノイン』を逃さぬとばかりに追い込む。
スラスターが噴射し、背面のフライトユニットが展開する。
「悪意の元、というのなら、私に物を言うのはお門違いじゃあないかな」
「何を言っていやがる。『ビバ・テルメ』にキャバリアを……オブリビオンマシンを横流ししておいて!」
「いやいや、違うよ。猟兵。そういうことじゃあない。悪意というのは誰にもあるものさ。幼子でさえ無自覚に持っているものだよ。覚えがないかい」
その言葉にガイは頭を振る。
振り抜いた一撃がビームソードと激突して火花を散らす。
パワーで押しきれないと見るや、ガイは電磁機関砲でもって弾丸をばらまく。
しかし、その一撃さえ白銀の『イカルガ』は躱す。
「やる気のない牽制射撃なんていうのはね!」
ビームソードの一閃が電磁機関砲を両断する。
「こうして容易く切り抜けられるものなのだよ!」
「まずはその企みを洗いざらい吐いてもらうためには、生かしておかねばならないだろうが!」
「問答無用、とは言わないのかい? そんなにも私の持つ情報は大層なものだろうか?」
ガイの『コスモ・スターインパルス』のブレードが振りかぶられる。
激突するビームソード。
火花が散る度に『コスモ・スターインパルス』は『イカルガ』の連続攻撃を前に押し切られそうになる。
「テメエ等が何を企もうと全てぶっ潰す! 猟兵はそういうもんだぜ!」
「そうだろうね。私にはそれがよくわかっているよ」
「だったら!」
ガイの瞳がユーベルコードに輝く。
吹き荒れる獄炎が戦場を包み込む。
周囲に走る『イカルガ』たちは『ビバ・テルメ』のゲリラ部隊が操縦しているものだろう。彼らを巻き込まず、この絵図の裏で糸引く白銀の『イカルガ』を駆る『ノイン』と呼ばれるエージェントだけは捉えねばならない。
「言ったな、お前は。悪意は誰の心にもあるものだと。だが、悪意があるからこそ善意かもある。そこから悪意が生まれることだってな。だが、それを乗り越える可能性を誰もが秘めてんだよ!」
ガイの言葉は真実であろう。
誰しもの心に悪意と善意がある。だからこそ、揺らぐ良心がある。
けれど、『ノイン』は開けたコクピットハッチからガイの機体を見つめて、嗤った。
「それを誰しもに求めるのは酷じゃあないかな? 人はそんなに強いものだろうか。自らの悪意にも気がつけず、自らが善性ばかりであると思う人間の方が多くはないかな。正義、という言葉こそ、それを示すものであると私は思うがね」
「今更、それを語るか、ド三流!」
ガイの放つ、獄・紅蓮開放『ヴリトラ・ファンタズム』(ゴク・グレンカイホウ・ヴリトラ・ファンタズム)の一撃が、9つの首を持つ竜を模した獄炎と共にほとばしり、白銀の『イカルガ』を飲み込んでいく。
凄まじい熱量が戦場を駆け抜けていく――。
大成功
🔵🔵🔵
シルヴィ・フォーアンサー
……守りたいだったのに奪いたいになってるね。
『アレ(オブビリオンマシン)はそういう代物だからな』
何はともあれ皆落とすしかないよね、飛び回られてても鬱陶しいし。
攻防一体のシルエット・ミラージュからパラライズ・ミサイル、オマケにブレイン・ウォッシュ。
ヨルもハッキングで手伝ってね、攻撃にはジャミングと立体映像(残像)投影で妨害。
麻痺って落ちたり洗脳で下ろした機体の四肢やら推進装置を破壊して無力化していくよ。
……もし落下で死んだりしたら運がなかったと諦めてね。
奪ったら奪われても文句は言えないんだからね。
目的と手段が入れ替わっている。
『ビバ・テルメ』のゲリラ部隊たちにはまさにその言葉が当てはまる。
守るため、という善性から出た想いは、今オブリビオンマシンによって歪められている。
奪われぬために奪う。
そして、奪うために戦うことへとねじ曲がっている。
戦場を疾駆する『イカルガ』たちを前にシルヴィ・フォーアンサー(自由を求めた脱走者・f41427)は知るだろう。
「守るために奪う。奪うために戦う。そのためには!」
ゲリラ部隊たちは一斉に『第三帝国シーヴァスリー』の前哨基地へと飛ぶ。
それはさせてはならない。
何故なら、その行いは国力で勝る『第三帝国シーヴァスリー』に戦争の口実を与えてしまう。大義名分を与えてしまう。
これはそのために仕掛けられた罠でしかないのだろう。
そして、この戦場において『ビバ・テルメ』が敗北するのならば、休戦協定という名の不平等条約が突きつけられる。
ゲリラ部隊のキャバリアが全てオブリビオンマシンである以上、『ビバ・テルメ』の敗北は決定づけられている。
「……守りたいだったのに、奪いたいになってるね」
『アレはそういう代物だからな』
オブリビオンマシン。
人の思想を歪めるマシン。どんなに高潔な人物であっても、狂わせるマシン。それがオブリビオンマシンである。
『ビバ・テルメ』のゲリラ部隊が持ち得ていた善性さえ捻じ曲げてしまっている。
「何はともあれみんな落とすしかないよね」
シルヴィは『ミッドガルズ』のアイセンサーをか輝かせる。
ユーベルコード。
彼女はすでに心に決めていた。
オブリビオンマシンは全て落とす。それによって『第三帝国シーヴァスリー』の勝利が確定するのだとしても、不平等条約が突きつけられるのだとしても。
それでも、オブリビオンマシンによる破滅よりはマシだと思えたかもしれない。
「舐めるな! 此方の機体の性能は!」
「敵の数は少ない! こちらの方が上なんだ!」
アサルトライフルを構えた『イカルガ』が低高度でありながら、空中機動を可能とした性能を遺憾なく発揮し、『ミッドガルズ』へと迫る。
放たれた弾丸が装甲を貫く。
いや、違う。それはシルヴィのユーベルコードに酔って生み出された残像分身を貫いただけに過ぎなかった。
シルエット・ミラージュ。
精巧なる残像。分身めいたそれは、『イカルガ』を駆るゲリラ部隊たちを翻弄するだろう。
「さっき迄一騎だったはずだ! なのになんで……センサーに反応しない!? いや、アラート!?」
「遅い……残像だけど本物。ボコボコにする」
シルヴィは『ミッドガルズ』の性能を発揮し、ミサイルを打ち放ち、さらに『ヨル』のハッキングと共に機体の制御を奪う。
機体が次々と大地に失墜していく。
『イカルガ』の本領は空中機動だ。
だが、ジャミングとミサイルによって彼らの機体は大地に落ちている。すでに行動はできないだろう。
けれど、シルヴィはビームサーベルで念入りに『イカルガ』の四肢と推進機を破壊する。
「……死んでないよね」
『内部バイタルは正常の範囲内だよ』
「そ、ならよかった。でもね、覚えておいて……」
シルヴィは回線を開いて己が失墜させた『イカルガ』のコクピットへと告げる。
「奪ったら奪われても文句は言えないんだからね。あなたが奪ったのは、あなたの明日なのかもしれないんだから――」
大成功
🔵🔵🔵
ユーリー・ザルティア
「やれやれ、急いできたせいでもう特殊粒子は在庫切れか…。まあレスヴァントMk‐Ⅱに他に手は沢山ある!」
一気に行かせてもらうよ。
アマテラスで戦場を『索敵』して敵機の位置を『情報集』
うん、この位置ならボクはこう動く!!『瞬間思考力』で一瞬で把握。
機体を『操縦』テクで素早く動かし、攻撃を『見切り』回避しつつ敵陣の中枢に飛びこんで、<プラズマ・スフィア>を発動だよ。
集団の敵にはこれが一番でね。
動きの止めた敵機をアストレイアの『制圧射撃』で破壊する。
「死にたくないなら機体から脱出しなさい!!」
まあ、一応コックピットブロックは狙いからはずけどね。
モニターに浮かぶ『EMPTY』の文字。
それは『レスヴァントMk-Ⅱ』の機体に貯蔵されていた特殊粒子が切れたことを示していた。もはや、高高度を維持することはできない。
白い機体は戦場に土埃を立てながら降り立つ。
「やれやれ、急いできたせいでもう在庫切れか……」
彼女の機体の特性。
暴走衛生である『殲禍炎剣』に感知されぬという脅威の特殊粒子。それはすでに消耗しきっていた。
その状態で高高度を飛べぬまでも、低空であれば空中機動を自在に為すオブリビオンマシン『イカルガ』は脅威であったことだろう。
こちらが二次元の機動をする時、『イカルガ』は三次元の立体的な動きをすることができるのだ。
こちらに選択を強いる戦い。
しかも、それが複数迫るともなれば、単騎でゲリラ部隊の展開した渦中にある『レスヴァントMk-Ⅱ』の運命は言うまでもない。
「敵機! 数は1!」
「これなら潰せる! いくぞ!」
マイクロミサイルが噴出するように背面のバインダーから解き放たれる。
だが、ユーリー・ザルティア(自称“撃墜女王”(エース)・f29915)は軽く舌を濡らす。
「『レスヴァントMk-Ⅱ』には他に手は沢山ある! 一気に行かせてもらうよ!」
サーチドローンによる情報の習得。そして、精査。
それによってユーリーは一瞬で戦場の状況を識る。確かに『イカルガ』の数は多く、そのいずれもが空中機動を行っている。
当然だろう。
こちらが地を這うキャバリアであるというのならば、空よりの三次元たる選択肢でもって追い詰めるのが上策。
放たれるマイクロミサイルから迫る弾頭をユーリーは見る。
彼女の視界に映る全てとサーチドローンから当たられる情報の全てを彼女は処理して、一気に機体を走らせる。
爆風が機体を揺らす。
だが、それだけだった。白い装甲が粉塵に塗れたとしても、傷を負うことはない。
「かわした!? あれだけのミサイルを!?」
「甘い甘い! この程度ならボクはこう動けるんだよ!」
ユーリーの操縦テクニックは『エース』と呼ぶに相応しいものだった。
その技量に追従する機体の動きは、さながら性能を凌駕するもののように思えたことだろう。
「速い……! 何……!?」
懐に飛び込んだ『レスヴァントMk-Ⅱ』。だが、すれ違うだけだった。
『イカルガ』のパイロットたちは訝しむ。
今ならば確実にコクピットを潰せるタイミングだったはずだ。なのにユーリーはそれをしなかったのだ。
「別に殺すつもりはないってやつ。けどね、そのマシンは壊させてもらうよ!」
ユーリーの瞳がユーベルコードに輝く。
瞬間、彼女の頭脳から発せられるのは、電子機器の全てをダウンさせる強電磁波。
プラズマ・スフィアと呼ばれるそれは、全ての電気エネルギーを完全に破断させる。つまり、エネルギーインゴットから流入する電力の全てを『イカルガ』内部から切り離したのだ。
「動かない! どうなっている!」
「死にたくないなら機体から脱出しなさい!!」
ユーリーの言葉と共に機体が揺れる。
『イカルガ』の武装が放たれた弾丸で撃ち抜かれ、さらに機体の四肢を破壊する。
彼女の目的はオブリビオンマシンの破壊。
圧倒的な操縦テクニックと強力な電磁波でもってユーリーは、パイロットではなく、オブリビオンマシンとしての機能を完全破壊してみせるのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
村崎・ゆかり
空戦型の機体か。『ブラック・クロウ』が印象深いけど。
この数が相手だと『|迦利《カーリー》』を出しても苦しいわね。
それじゃ、悪いけど絶陣で行きましょ。
「全力魔法」「範囲攻撃」衝撃の「属性攻撃」「薙ぎ払い」で風吼陣。攻撃回数五倍、移動力半減。
刃を含んだ竜巻に、イカルガを可能な限り飲み込む。複雑な気流は、機体の弱いところから引きちぎっていくわ。機体同士がぶつかることもあるでしょうね。
もはやビームソードを振るうどころじゃないでしょ。
風吼陣から逃れ出てきた機体には、火行の「属性攻撃」でとどめを刺す。
ちゃんと設計された機体なら、コクピットは堅牢だろうから、遠慮無く叩き潰させてもらうわ。
「空戦型の機体か」
村崎・ゆかり(“紫蘭”/黒鴉遣い・f01658)は、低高度とは言え空中を飛ぶオブリビオンマシン『イカルガ』の姿を認める。
彼女にとって空を飛ぶオブリビオンマシンと言えば『ブラック・クロウ』と呼ばれる機体が印象深いものであった。
しかし、あれは単騎であることが多かった。
逆に『イカルガ』は多数でもって連携を取ってくる。
地底帝国での戦いにおいても確認された機体。高性能量産機と言えばいいのだろうか。
量産機は扱いやすさ、メンテナンスの煩雑さというものを共用化するところにこそ真価があるものである。
しかし、『イカルガ』は、いずれをもクリアした上で一般兵を歴戦の兵士へと仕立てあげる。
その結果は『ビバ・テルメ』のゲリラ部隊を見れば押して図る事ができるだろう。
「とは言え、このままでは厳しいわね」
ゆかりは己のキャバリアによる空戦を行うことを諦めた。
数が多い、ということはそれだけ圧倒される可能性が高い上に、時間が掛かってしまう。
この戦いにおいて時間をかければかけるほどに『ビバ・テルメ』への影響が強くなってしまう。
どちらかの小国家に肩入れするつもりはなかったが、しかし、徒に両者の間に力関係が発生してしまうことは避けたかった。
「それこそ、黒幕の思い通りということでしょうからね。なら、悪いけど」
ゆかりの瞳がユーベルコードに輝く。
「空を飛ぶのなら、風の影響は無視できないでしょう! 古の絶陣の一を、我ここに呼び覚まさん。天上までも響き渡る破壊の風よ。その身に宿せし無限の剣刃により触れるもの悉くを裁断せよ。疾!」
ゆかりを中心にして風吼陣(フウコウジン)が展開する。
周囲の効果範囲全てを無数の刀剣を含んだ風で荒ばせる。突如として現れた暴風を前に『イカルガ』を駆るゲリラ部隊のパイロットたちは皆動揺する。
「なんだ、急に風が……それに、これはなんだ……? 礫……? いや、刀剣!?」
彼らは眼の前の光景が現実のものとは思えなかっただろう。
突如として暴風が吹き荒れ、さらには刀剣が舞うのだ。
あまりにも非現実的。
「幻じゃあないわ。それに、その機体、空戦を想定しているから軽いでしょう。となれば、暴風を前にあなたたちの機体は煽られる」
となれば、機体は空中での制動を困難なものとして地上に降りるしかない。
空戦にこだわれば、僚機と激突して失墜するしかない。
「接近戦もできない、かと言って火器も迂闊には使えない。そうしたら」
「あれか! 超常の人! あれを潰せばこの風は!」
暴風を突破してきた『イカルガ』の巨体がゆかりに迫る。
だが、ゆかりは動揺していなかった。
彼らがそうすることは容易に想像することがデキていたからだ。
「突破してくる。そこに」
放たれる火行の一撃が『イカルガ』のメインカメラを撃ち抜く。
機体はモニターをやられ、視界を奪われた状態で立ち止まるしかない。そこにさらに暴風から放たれた刀剣が四肢を寸断する。
「ちゃんと設計された機体でよかったわね。コクピットが堅牢なのは、知っているわ」
だから、とゆかりは暴風を手繰り、ゲリラ部隊の『イカルガ』を残らず戦闘不能に追い込むのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
防人・拓也
情報によればゲリラ部隊の連中は確か場数は少なかったはずだ。
なら、無力化するだけならそう難しい事は無い。
イカルガの頭部へ術式付クナイを投擲。クナイが刺さる又は一番接近した時に指定UCを発動し、クナイの場所へワープ。組み合わせるUCは古代魔術・旋風丸。イカルガの頭部を破壊する。頭部にあるメインカメラを破壊する事で視界を奪えば、戦闘に慣れていない奴らは混乱するはず。後は4人のアンサーヒューマンに任せてもいいだろう。
手練れの敵には術式付クナイとコンバットナイフを投擲し、フェイントを仕掛ける。ナイフの方にはマーキングを施しており、そちらにもワープ可能。ワープ後、同様に頭部を破壊する。
アドリブ・連携可。
小国家『ビバ・テルメ』のゲリラ部隊は戦いなれていない。
とは言え、ゲリラ戦法でもって小国家『第三帝国シーヴァスリー』の前哨基地を叩けていたことも事実。
しかし、それは供与された『イカルガ』の性能によるところが大きいだろうと防人・拓也(独立遊撃特殊部隊ファントム指揮官・f23769)は分析していた。
わからないことでもない。
戦える、ということと場数を踏む、ということはイコールではない。
ならばこそ、彼らを無力化することは容易いことであると彼は理解していた。
「力を手にするだけでは戦えない。素人はそういうところの区別が付いていない」
戦場に溢れるはオブリビオンマシン『イカルガ』。
『ビバ・テルメ』のゲリラ部隊が望んだ力だ。
そして、同時に歪む装置でもある。
彼らの善意は悪意によって形を歪める。
オブリビオンマシンとはそういうものだ。どれだけ高潔な人間であっても、オブリビオンマシンに乗れば心を歪められる。
歪められた心は思想さえも歪める。歪められた思想は狂気へとかわり、破滅への道をひた走る。
クロムキャバリアという世界において、平和が訪れない要因の一つ。
それがオブリビオンマシンなのだ。
「だから、それを破壊しなければならない」
拓也は己の瞳をユーベルコードに輝かせる。
生身単身である。
体高5mの戦術兵器を前にしては無謀極まる行為であったことだろう。
手にしたクナイを投げ放つ。それはたしかに『イカルガ』の頭部へと突き刺さる。だが、それだけだ。メインカメラを破壊されたわけでもなんでもない。
『イカルガ』からすれば礫がぶつかった程度にしか思えなかったことだろう。
「なんだ……? 機体頭部に異常検知……ッ!?」
瞬間、『イカルガ』のコクピットのモニターに映っていたのは拓也の姿であった。
いつの間に、と重暇もなかった。
瞬間、放たれたなんらかの一撃が『イカルガ』のメインカメラを打ち抜き、ブラックアウトさせる。
パイロットは何が起こったのか把握することもできなかった。
「何が……!?」
次の瞬間、機体が傾ぐ。
やられた、と思ったが生きている。ただ戦闘不能にされただけだと理解するのにパイロットは時間を必要としただろう。
「役割分担と行きましょう」
「ええ、わかっています。コクピットではなく、頭部のカメラを潰してくれたこと、感謝します」
四人のアンサーヒューマンたちにとって、『イカルガ』のパイロットたちは味方だ。
その味方である『セラフィム』が攻撃してきた、と人々に認識させるのは得策ではない。
故に拓也は、時空間魔術・迅雷天神(ジクウカンマジュツ・ジンライテンシン)でもって瞬間的に『イカルガ』のカメラへと居たり、それを潰して回っているのだ。
『ビバ・テルメ』のゲリラ部隊には四人のアンサーヒューマンの駆る『セラフィム』の姿は認識されていない。
「いえ、後々のことを考えるのならば、これが最良でしょう。俺にはそれができる。そして、後の機体の破壊は貴方達が効率的になす。何事も役割というもの」
だから、と拓也は次なる戦場に飛ぶ。
不和を生み出すのが不理解であるというのならば、理解できぬ行動を理解させようとして誤解が生じるのもまた人の営み。
すれ違いこそが互いの位置を遠ざけるのならば、不理解の遠因たることは覆ってしまえば良い。
それが特殊部隊ファントム指揮官たる己の役割だと拓也は戦場の影から影へと飛ぶのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
桐嶋・水之江
【桐嶋技研】
ビバ・テルメって比較的新しい国らしいわね
その新興国が兵器を欲している…
シノギの匂いがするわ
もうすっかり盛り上がってるわね
早く前線に行かないと未来の顧客が死んじゃうわ
こんな時はセミ・ワープドライブでひとっ飛びよ
前線に出てるソフィア皇女を転移座標にするわ
今日はワダツミで出ましょう
いきなりお船がワープしてきたら驚くんじゃない?
早速挨拶代わりにミサイル…を撃ったら死んじゃいそうね
CIWSでちまちま迎撃するわ
相手は対艦装備を持っていないみたいだし、被弾は気にしなくていいわよね
後はメサイア皇女が適当に何とかするでしょう
それにしてもちょこまかよく動くわねぇ…
誰がこんな面倒な機体を作ったのかしら?
メサイア・エルネイジェ
【桐嶋技研】
わたくし知っておりますわ!
ビバ・テルメには温泉がありますのよ!
わたくし温泉大好きですわ〜!(話しをちゃんと聞いてない)
ヴリちゃん!スカイルーラーで参りますわよ!
おワダツミからレッツおダイブですわ〜!
わたくしの温泉はどちら?こちら?
あら〜?おキャバリアですわ!
わたくしの温泉を邪魔するつもりですわね!
いけませんのよ〜!
ぴゅんぴゅん飛び回ってうざってぇですわね!
なんの!ヴリちゃんだって飛べますのよ!
ガンポッドで叩き落として差し上げますわ〜…速過ぎて当たりませんわ〜!
むきー!
なら切りかかって来た瞬間にスイングスマッシャー!わっしょい!
初めからこうすればよかったのですわ〜!
「……なんだ、センサーの故障か、まさか……」
『ビバ・テルメ』のゲリラ部隊のパイロットは、己の駆るオブリビオンマシン『イカルガ』のセンサーがアラートを発するのを認めた。
巨大な影。
それは視界には映らぬものであった。
だが、確実にセンサーは異常を知らせている。だが、わからない。何が、と思った瞬間、彼は見た。その信じがたい光景を。
戦場に突如として戦艦の姿が現れる。
それはあまりにも唐突であった。
ワダツミ級強襲揚陸艦『ワダツミ』。その威容が突如として彼らの眼の前に現れたのだ。
セミ・ワープドライブ。
それは桐嶋・水之江(機巧の魔女・f15226)のユーベルコードによって可能となったワープ転移であった。
「もうすっかり盛り上がってるわね」
水之江は『ワダツミ』の艦橋シートに座り笑む。
そう、彼女にとって『ビバ・テルメ』は大事な未来の顧客である。
新興小国家である『ビバ・テルメ』は兵器を欲しているという噂を耳ざとく聞きつけてきたのだ。いや、シノギの匂いを嗅ぎ取ってきたと言えばいいだろうか。
とは言え、である。
「あら、もうすでにすっかりやられちゃっているじゃあない。でも、これはこれでよい塩梅よね?」
機体が壊れている。
修理することもできるだろうが、修理メンテナンスっていうのは面倒なものなのだ。買ったほうが安い、ということもあるだろう。
そこで、水之江が登場である。
そうすれば、どうだろうか? 売れるのである。商品たる兵器が売れに売れるのである。だがしかし、どうやって此処が判明したのだろうか。
「わたくし知っておりますわ!」
知っているのか、メサイア・エルネイジェ(暴竜皇女・f34656)殿下!
うむ、あれは……。
「『ビバ・テルメ』には温泉がありますのよ! わたくし温泉大好きですわ~!」
「……そういうこと私、聞いているんじゃあないんだけれどね……まあ、いいわ。ちょうどよくソフィア皇女が戦場に立っているってんで助かったわ」
本当はメサイアに『ビバ・テルメ』の所在座標を教えてもらおうと思っていたのだが、この調子である。
温泉のことしか喋らんのである。
「ミサイルは火力が高すぎる。メサイア、任せてよくって?」
「おまかせあれですわ~! ヴリちゃん! スカイルーラーで参りますわよ!」
『ワダツミ』の甲板から黒竜たる機竜『ヴリトラ』の航空先頭仕様装備がはためく。翼のエンジンがうなりをあげ、陽炎でもって周囲の大気を歪ませた瞬間、『ワダツミ』が大きく揺れる。
「もっと丁寧に飛び立ちなさい!」
「おほほのほ! ごめんあそばせですわ~お優雅に空よりわっしょい!」
メサイアはもう温泉一直線であった。
しかし、どこにもない。温泉のおの字すらない。え、どういうことですの?
「あら~? わたくしの温泉はどちら? こちら?」
ぐるん、と『ヴリトラ』が尾を振り回しただけで迫る『イカルガ』をなぎ倒す。
あら? わたくしなにかいたしまして? みたいな感じでメサイアがコクピットで首を傾げる。
「……まあ良いわ。対空防備だけしておけばいいでしょう」
水之江は、『ワダツミ』のシートの上で息を吐き出す。
メサイアの奇行は今に始まったものではない。もう慣れたもんである。ああいう時のメイサアは下手に止めるのではなく、被害が及ばぬところで静観している方が安全安心なのである。
さながら台風であるから。
「機竜……! 二体目! 海に来たやつとは違う!」
「取り囲んで、包囲火力ですり潰せば!」
「あら~? おキャバリアですわ! わたくしの温泉を邪魔するつもりですわね!」
噛み合わない。
悲しいことに物凄く噛み合っていない。だが、その噛み合ってないギアを強引にぶん回すのがメサイアである。
『ヴリトラ』のアイセンサーが煌めく。
迫る『イカルガ』のビームソードが振り下ろされる。
周囲を飛び回る『イカルガ』の姿にメサイアはイライラし始めていた。真っ向からこない。周囲を飛び回って、己を撹乱しようとしている。目を回してしまうではないか。
「びゅんびゅんとまあうざってぇですわね!」
ガンポッドから弾丸が放たれる。
しかし、低高度とは言え空戦を行うことのできる『イカルガ』の性能は凄まじいものだった。
「本当によく動くわねぇ……あれじゃあ、メサイアもクロウするわけだわ」
「むきー! 当たりませんわ!」
「今なら、行ける!」
「畳みかけろ!」
『イカルガ』が一瞬で数機『ヴリトラ』へとビームソードを抜き払い、迫る。
だが、次の瞬間『ヴリトラ』のアイセンサーが煌めく。
振り抜かれる尾。
その一撃が暴力となって『イカルガ』をなぎ倒すのだ。一瞬の出来事だった。『ヴリトラ』というキャバリアを前にして接近戦を挑むということは即ち、死を意味する。
そう、接近戦において無類の格闘能力を有する『ヴリトラ』は『イカルガ』の機動性を無為に返す。
「エルネイジェ流横殴術(スイングスマッシャー)ですわ~! わっしょ! やっぱり暴力! 最初からこうしておけば簡単だったのですわ~! わたくし賢い! いえいいえい!」
メサイアは吹き飛ばして大地に沈む『イカルガ』を前にしてVサインを作ってドヤる。
その様子を見やり、水之江は息を吐き出す。
『イカルガ』を売り渡すのはやめとこうと思った。
あんな面倒な機体を誰が作ったのかは知らないけれど。いや、知ってるだろ、と誰かが突っ込むかもしれないが、水之江はだんまりを決め込むのだ。
そう、言葉をはっしなければ追求なんてできないんだからね――!
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ジュディス・ホーゼンフェルト
ビバ・テルメねぇ…
確か暫く前に巨神が出現したとかナントカって聞いたけど…
ま、シーヴァスリーとプラナスリーの情勢もひっくるめて調査させて貰いますか
イェーガーが状況をどう転がすのかもね
あの4人は神機の申し子って言ったっけ?
イェーガーでは無いようだけれど、たった4人で国を守って来たってならホンモノだろうね
あっちも要チェック…ってげぇ!?
ヴリトラにインドラ!?
エルネイジェのアホアホプリンセスじゃん!
ビバ・テルメに出入りしてたって情報はマジだったんだ…絡まれると面倒だなぁ
ま、目立ち過ぎないよう隅っこでセコセコやりますか
ダークイーグルで出るよ
オーバーブースト・マキシマイザーで突っ込む
ゾディアスでガンガン攻めて距離を詰めよう
向こうも撃ってくるだろうからブレイゾンをぐるぐる回して弾を防ぐよ
追い付いたら一太刀浴びせてスティングテールのクローでとっ捕まえる
尻尾のキャノンをチラつかせて「まだやる?」
降参するならOK
しないなら叩きのめして終わるまで寝てて貰おう
漆黒の機体が戦場に降り立つ。
だが、その姿を見咎める者はいなかった。煌々と内部フレームから漏れ出す橙の輝き。それを発露しながら、『ダークイーグル』と呼ばれる機体は周囲に気取られることなく情報を収拾していた。
「『ビバ・テルメ』ねぇ……」
その漆黒の機体の中でジュディス・ホーゼンフェルト(バーラント機械教皇庁三等執行官・f41589)はつぶやく。
新興国家『ビバ・テルメ』。
天然の要害たる立地と豊富な温泉資源による観光でもって運営される難民さえも受け入れる小国家。
プラントの数こそ少ないが、四機のサイキックキャバリアと『神機の申し子』と呼ばれるアンサーヒューマンによって強大な国力を持つに至った『第三帝国シーヴァスリー』を退け続けているのである。
この脅威をアレース大陸に存在する『バーラント機械教国連合』が捨て置くことなどなかった。
特にサイキックキャバリア『セラフィム』。
あの赤と青の装甲を持つ四機の性能は特筆すべきところがあった。
「明らかにキャバリアの範疇を超えている。サイキックキャバリアという分類は、どう考えても後から無理矢理にカテゴライズしたみたいな雰囲気さえあるわね……」
とは言え、である。
以前に巨神と呼ばれるキャバリアが出現したことも小耳に挟んでいる。
『第三帝国シーヴァスリー』がそれを狙っていたことも関連しているのだろう。そして、新たに新興した『プラナスリー』と呼ばれる小国家も気になる。
「何より、この状況をイェーガーがどう転がすのかもね」
ジュディスはコクピットの中で戦場を見定める。
四機の『セラフィム』は猟兵のサポートを得て、『ビバ・テルメ』のゲリラ部隊の目から隠れるようにして彼らの機体を無力化している。
カメラアイを潰したとは言え、ああも鮮やかに動けるものであろうか。
戦術兵器キャバリアめいた効率化された動きではない。
「まるで、きぐるみみたいな動かし方ね。人間のモーションをそのまま反映してみるみたい」
興味深い。
新機軸の操縦系統が用いられているのか。
いや、それとも……と彼女はモニターにて収拾される情報を確認して目を剥く。
そこにあったのは白銀と黒の二体の機竜の姿であった。
「……げぇ!?」
思わず声を上げていた。
口元を抑えたのは、別にコクピットの声が漏れるから、とかではない。とっさの反応であった。
「『ヴリトラ』に『インドラ』……!? なんであの機竜が! ということはあのエルネイジェのアホアホプリンセスがいるってこと!?」
うわ、とジュディスは思わず呻いていた。
『ビバ・テルメ』に『エルネイジェ王国』の皇女が確認されている、という情報は確かなものであったということだ。
うわー、ともう一度ジュディスは呻いてから天を仰いだ。
とんでもないところにやってきてしまっていた。
どうなっているんだ。この地方は。
百年前から、この地方は警戒されていた。『サスナー第一帝国』に、それを打倒した『憂国学徒兵』……『ハイランダー・ナイン』と呼ばれる英雄たち。
だが、ここにきて。
寄りにもよって『エルネイジェ』の凶暴皇女たちがいるなんて思って見なかったのだ。
「絡まれると面倒だなぁ……ま、目立ちすぎないように隅っこでセコセコやりますか」
黒い機体が動き出す。
戦場に刻まれるは橙の残光。
その直後『イカルガ』たちは機体の機能を停止する。エネルギーインゴット部分のみを切り裂いているのだ。
「何が……!?」
『イカルガ』のパイロットたちは目を剥く。
機体が無事な者は残光を見やり、敵が己たちを撃破していることを識る。
だが、認識し弾丸を放ってもそれらをことごとく弾かれ、機体を鷲掴みにされてしまう。
「……ッ!」
「まだやる?」
『ダークイーグル』の尾のキャノンの咆哮が頭部に突きつけられる。
次の瞬間、頭部が砲身の尾で叩き潰されクローから開放された『イカルガ』が膝をつく。
「……さて、これくらいでいいでしょ。やることやった、ということだけは示しておかないとね」
そう言ってジュディスは『ダークイーグル』のコクピットの中で背を伸ばすのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
朱鷺透・小枝子
「貴殿らは回収と呼びかけを行ってください。|制圧《暴力》は我らがやります!」
神機の申し子達へ、破壊されたイカルガから出てきた者たちの回収と機体から降りる事を呼びかけるよう要請しながら─
壊れろ。
回点号【操縦】メガスラスターの【推力移動】でイカルガへ突っ込みながら『|瞬間思考力《フォーアンサー》』と人工魔眼の【動体視力】で状況を知覚、思考によって周囲の敵機機動を【見切り】、ブースター【空中機動】弾丸の軌道の合間を縫い、接近、【早業】ダブルブレード変形フォースサーベルでイカルガ共を【なぎ払い切断】なで斬りにし、ほぼ同時にブースターから砲撃に切り替えたウィングキャノン2門で別敵へ【呪殺弾】機能停止攻撃を適宜、撃ちまくる。
壊れろ!
【闘争心】で集中力を持続させ、鈍化した時間の中でノインを凝視、
【学習力】ノインの操縦技術を学習し、瞬間思考力でとるべき行動を算出し、サーベル双剣変形【武器受け】【カウンター】【貫通攻撃】
壊れろ!!
【追撃】シールド纏う手でコクピットを抉り取る【急所突き】を放つ。
白銀機!!!
『イカルガ』が次々と撃破されていく。
しかし、それらの全てのコクピットは無事だった。
オブリビオンマシンとしての死。
それだけをもたらすように猟兵達のユーベルコードがきらめいている。四人のアンサーヒューマンたちにとっては、それは幸いであったことだろう。
だが、数が多い。
これだけの『イカルガ』を一体何処から用意してきたのか、彼らには理解が及ばなかったのだ。
「一体どうしてこんなにも……」
「考えるのは後にして頂きたい。貴殿らはパイロットの回収と呼びかけを行って下さい」
「でも!」
朱鷺透・小枝子(亡国の戦塵・f29924)の言葉に『神機の申し子』、『フィーアツェン』が言う。
そう、自分たちは確かに『ビバ・テルメ』のゲリラ部隊の味方だ。
この無為なる戦いを止めるために来た。
けれど、『イカルガ』の破壊、ゲリラ部隊の打倒という汚れ役、その泥を猟兵たちが被り続けている。
それが彼女たちにとっては憂うことだったのだろう。
「問題なく。|制圧《暴力》は我らがやります! それが自分の役割でありますから!」
小枝子は己のキャバリア『回点号』を在り、戦場を疾駆する。
メガスラスターの推力を得て、一気に『イカルガ』へと肉薄する。敵機の性能は十分に理解している。
空戦能力を有し、空中戦でなくても多大な機動性能でもって圧倒する。
マイクロミサイルは手数という意味では脅威であったことだろう。だが、小枝子は構わずに踏み込む。
彼女の人工魔眼が赤く燃える。
演算しているのだ。
マイクロミサイルの膨大な数の軌道を予測し、その中にあるたった一筋のルートを見極めるのだ。
ブースターがさらに加速させる。
機体にかかる負荷をものともせず、小枝子は飛ぶ。
「壊れろ」
そう、願う。
いや、祈る。
違う、そうでもないと小枝子は思ったかも知れない。それは命令である。壊れなければならない。
オブリビオンマシンは壊れる運命しか許さない。
存在することは許されない。その存在が人の善意を歪めるのならば、悪意にも勝るアものであると識るからこそ、ダブルブレードのフォースサーベルがマイクロミサイルの弾頭を切り裂く、爆風の中を『イカルガ』と共に飛ぶ。
「この間合いを詰める!?」
「壊れろ!」
放たれる斬撃の一撃が『イカルガ』の腕部を切り裂き、跳ね飛ばす。
さらにウィングキャノンが展開し、その咆哮が呪殺たる弾丸を放ち、『イカルガ』の機体を停止させる。
「次! 頼んだであります!」
小枝子は、『神機の申し子』たちへと告げ、さらに戦場を飛ぶ。
戦線は長く伸びている。
ならばこそ、此処だけではない。オブリビオンマシンは一騎たりとて残してはおけない。必ず一騎でも人の思想を歪める。
歪めて、その心を狂気に満たす。
満たされた狂気は伝播していき、小国家全体を飲み込んでいく。
小枝子は知っている。小国家『ビバ・テルメ』に生きる人々の善良さを。戦いを厭う彼らの心を。
その心を戦いにさえ追いやった存在を許せるものではない。
全ての争乱の大本はオブリビオンマシンである。
「なら、壊れろ!!」
瞬間思考力(フォーアンサー)は、小枝子の思考を加速させる。
鈍化する世界の中で小枝子は『イカルガ』を睨めつける。
一気に駆け抜ける。
マイクロミサイルを放つ暇すら与えぬ凄まじい速度の軌道でもって『回点号』が走り抜ける。
その後に残るは残骸としての『イカルガ』のみ。
「見つけた、白銀の!」
爆煙の中から飛び出す白銀の『イカルガ』を小枝子は認める。
それは他の猟兵の放った獄炎に撒かれる『イカルガ』であった。頭部は失われて、損壊しているがまだ動いている。
「おや、見つかったか。うまく撃破されたように見せかけたつもりだったが」
「お前は!」
放つシールドの切っ先が『イカルガ』のコクピットを狙う。
殺気解き放つ一撃。
だが、それを腕部を犠牲にして白銀の『イカルガ』は防ぎ、その勢いのまま背面のバインダーを展開して飛び立つ。
「殺気がただ漏れだな。分かり易いよ、猟兵。それではね」
己を壊せない、と『ノイン』は笑み、小枝子のもとから飛び立つのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
ルクス・アルブス
【ステルク】
うっぷ、ズデラざぁん……きぼちわどぅいですよう
今日の操縦、ぢょっどハードじゃだいでずが……?
生きてますけど!
もー乗らないですから、
少なくともぶら下がりは嫌ですからねー……。
でも、先制することはできそうですね。
今日はゲリラのみなさまの心に敬意を表しつつ、
空飛ぶキャバリアということで、【ボレロ】いっちゃいますよー!
ゲリラのみなさまの国を、人を想うその気持ち、
歪んだゴーレムにはもったいなさすぎなので、墜とさせていただきます!
ってステラさん!?なにするんですかー!
敵、あっちですからね!
これ以上のダメージは勇者らしからぬことになっちゃいますよ。
ゆうしゃれいんぼーあたっく、は、禁じ手ですから!
ステラ・タタリクス
【ステルク】
出てきましたかノイン様
目下、|エイル様《主人様》の対極にある
エイル様が平和を求めて戦いを引き起こすなら
貴女様は平和を戦いとするもの
同じ言葉を使いながら違う目的へ至ろうとするもの
世界に関与するつもりはありませんが
人の心を歪めようというのなら
それを許すわけにはいきません
…ルクス様生きてます?
最近、耐久力が足りないのでは?
演奏ばかりしているからですよ
いえ、まあこのシチュは演奏向きですが
いいですよコンサート
私たちは|後方から鑑賞したいと思います《巻き込まれない範囲に逃げますね》
さぁフォル、新技お披露目です!
悪魔が来りて!
ええ、この場合どっちが悪魔かはお任せします
あ、ルクス様誤射しました!
飛び立つ白銀の『イカルガ』。
それに乗るのは新興小国家『プラナスリー』のエージェント『ノイン』。
頭部は吹き飛ばされ、機体は損壊してなお、その機体は逃亡を開始しようとしていた。アクティヴバインダーが展開している。
飛び立つつもりなのだとステラ・タタリクス(紫苑・f33899)は理解した。
「出てきましたか『ノイン』様」
「いいや、もうお暇しようと思ってね」
その言葉に『ノイン』は笑む。
あくまで余裕たる表情を代えていない。その名をステラは知っている。幾度か耳にした名前。
「目下、『エイル』様《主人様》の対極にある貴方は!」
「大げさだな。あれと比べないで欲しいものだが」
ステラにとって、彼女の存在は異質だった。
『エイル』と呼ばれる存在が平和を求めて戦いを引き起こしてしまう存在であるというのならば、『ノイン』と名乗る存在は、平和を戦いに変えようとするものである。
同じ平和という言葉を使いながら、目的も違えば至る結果もまた違うように思えた。
世界に関与するつもりはない。
けれど、人の心は歪めるのがオブリビオンマシンというものだ。
「それを使う貴方は!」
赦すわけにはいかないのだ。
「……うっぷ」
だが、そのステラのシリアスをいきなりぶち壊す声が響く。
それは鳥型キャバリア『フォルティス・フォルトゥーナ』にぶら下げられたルクス・アルブス(『魔女』に憧れる『出禁勇者(光属性)』・f32689)のうめきごえであった。
「ズデラざぁん……きぼちわどぅですよう」
すんごい声であった。
まあ、高いところをすごい速度で飛んでいたので、さもありなんって感じである。
「あら、ルクス様。生きておられますか?」
「生きてますけど!?」
今日の操縦はいつもにましてハードだった。なんかこう作為的なものを感じないでもない。
しかし、ステラは頭を振る。
「最近、耐久力が足りてないのでは?」
「運動不足では? みたいなノリで言わないでくださいませんかね! もー乗らないですからね! 少なくともぶら下がりは嫌ですからねー……!」
「演奏ばかりしているから、そういうことになるのではないでしょうか」
『演奏って体力使いますからね!? 文化系に見えて体育会系ですからね!? 演奏って!!」
ルクスが吠える。
わからないでもない。
とは言え、ゲリラ部隊を同士に貸しなければならない。そのうえで、白銀の『イカルガ』を駆る『ノイン』もどうにかしなければならない。
「今日はゲリラの皆様の心に敬意を表しつつ、そらとぶキャバリアということで、ボレロ、いっちゃいますよー!」
「……どういうわけなんです?」
「わかりませんか、ステラさん!」
ルクスがふふんとした顔をする。ぶら下げられているのに。
「ゲリラのみなさまの、国を、人を思う気持ち。それは尊いものです。歪んだゴーレムごときにはもったいなすぎて、一欠片だって渡してはダメだってわたしだってわかります!」
だから、と彼女が何処から取り出したのかグランドピアノを示す。
降ろして、と。
「……」
いつもならステラは彼女の演奏を止めようとするだろう。
だが、ステラは一つうなずいた。
「いいですね、コンサート。わかりますとも。私達は|後方から鑑賞したいと思います《巻き込まれな範囲に逃げますね》。だから、それまで演奏はちょっと」
「はじめまーす!」
ボレロが鳴り響く。
その旋律は強烈だった。
「あーもー! 決まると思ったものが決まらない雰囲気が!」
ステラは呻いたが、しかし、『フォルティス・フォルトゥーナ』は飛ぶ。
新技のお披露目がこれである。
なんとも締まらない。
だが、『イカルガ』を打倒するのならば、これしかない。
「ル・ディアーブル・ヴィアン――悪魔が来りて。ええ、この場合、どっちが悪魔かはおませします!」
「どういうことですか!?」
そのままの意味である。
『フォルティス・フォルトゥーナ』を悪魔とするか。ルクスの演奏を悪魔とするか。
「騒々しいものだ。だが、この混乱は使えるね」
『ノイン』は笑み、悪魔の如き旋律と『フォルティス・フォルトゥーナ』が解き放つ全射撃武装の嵐の中を飛び、他の『イカルガ』の爆発に紛れて消えるのだった――。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
月夜・玲
ツケは払って貰うよ
無用な戦、無用な戦力
悪意を持って戦力を供給し意思を曲げるというのなら……超克の力を持ってその全てを破壊する
確かに、トップにだけ全てを任せるのに不安を覚えるのは仕方ないよ
それは善意、正しい気持ち
けれども、その機体はその気持ちを捻じ曲げる
それなら、私がそれを破壊する
超克……オーバーロード!
外装転送、模造神器全抜刀
さあ、この姿を恐れないならかかってきな
その出来損ないを壊してあげる
4剣を持ち、キャバリアに攻撃を仕掛ける
超克の力で『なぎ払い』、関節を『串刺し』にして機体にダメージを与え続ける
同時に自傷
【断章・焔ノ血】起動
血を流し、イカルガを蒼炎で焼き、パイロットを紅き炎で癒す
空を得ようが関係無い
私の射程に入れば、全部燃やして上げる
ミサイルに対しては『斬撃波』を放ち迎撃
此方を誘導してくるなら逆に都合が良い!
近づいて来るミサイルから順に迎撃し破壊していく
自身が傷を負った場合も、紅き炎で回復
……これが終わったらお説教だよ
ま、私はしないから多分トップの4人がやってくれるでしょ
善意を歪める悪意。
それは他者の善意を食い物にする者の手繰る糸そのものであったことだろう。
正しい意志があれど、注がれる器が歪んでいるのならば、意志さえも歪んで見えることだろう。そうなった時、人は破滅への道をたどる。
心は流動的であれど、しかして、その器が傷つけば元に戻ることはない。
歪んだ器を直しても、どこかもとには戻らないものだ。
故に人は懊悩する。
その懊悩は一生掛かって向き合っていくしかないのだ。
「だから、そのツケは払って貰うよ、オブリビオンマシン」
月夜・玲(頂の探究者・f01605)は二振りの模造神機を抜き払う。
青い残光が交錯し、彼女の眼前に生まれる。
「無用な戦、無用な戦力。悪意を持って戦力を供給し、意志を捻じ曲げるというのなら……超克の力を持って、その全てを破壊する」
確かに、と思う。
小国家『ビバ・テルメ』は一見うまくいっているように見えたかも知れない。
けれど、四人のアンサーヒューマンたちはあまりにも自分たちの責任で全てをこなそうとしすぎていた。
その体質めいたものが今回の事件を呼び込んだと言っても良い。
わからないでもない。
己達の全てをトップに任せるのに不安を覚えるのも。
だが、それは善意から発したものだ。彼らに負担をかけぬようにと、誰かのためになるようにと願った思いを、善意を歪めたものがいる。
それが、許せないと思うのは玲もまた同様であったのだ。
「それなら、私がそれを破壊する。超克……オーバーロード!」
外装が転送される。
背後に副腕がさらに二振りの模造神器を抜き払い、十字が再び交錯する。
「模造神器、全抜刀……さあ、この姿を恐れないならかかってきな」
「生身で何が!」
ゲリラ部隊の『イカルガ』が玲へと殺到する。
このクロムキャバリアにおいて戦場の花形はキャバリアだ。体高5mの戦術兵器。それなくば戦いにはならず。故にキャバリアとは力の象徴であったのだ。
だが、玲はそれと真っ向から向き合う。
生身であっても構わない。
彼女の手のひらが模造神機の刃に触れ、血潮が流れる。
「偽書・焔神起動。断章・焔ノ血読み込み開始。名を、断章・焔ノ血(フラグメント・ファイアブラッド)!」
流血が燃え盛るようにして蒼き炎へと変貌を遂げる。
膨れ上がる蒼炎は一気に『イカルガ』を飲み込む。低高度なれど空中機動を行うことのできる『イカルガ』でさえ逃れ得ぬ凄まじ勢いで炎が彼らの機体を巻取り、失墜させる。
さらに大地に落ちた機体が延焼し続ける。
「その機体は、君たちの思いを、気持ちを捻じ曲げる。なら、私がそれを破壊する。さおれだけのことだよ」
玲の模造神器の刀身が『イカルガ』の頭部へと突き立てられる。
「この出来損ないを壊して上げる」
次の瞬間、玲は蒼炎と共に戦場へと飛び出していた。
『神機の申し子』たちが戦場に至る前に彼女の蒼炎と斬撃が『イカルガ』をことごとく切り捨てる。
超克、オーバーロードの輝きを宿す玲の速度は凄まじいものだった。
圧倒的なまでの速度と斬撃。
それらの全てが『イカルガ』の関節を切り裂き、戦闘能力を奪っていく。
だが、ただ一人の死傷者すら出ていない。
コクピットから這い出したパイロットたちは、紅き炎によって身を守られているのだ。
「な、何が……」
「起こっていたんだ……?」
『エルフ』と『ドライツェーン』が呻く。
彼らが現着した時、そこにあったのは破壊された『イカルガ』と五体無事たるゲリラ部隊のパイロットたちの呆然とした姿だけだった。
彼らが視線で負うのは、蒼炎まとう四振りの模造神器が描く光の奇跡のみ。
「一体何があったんです?」
「……いや、これが」
『エルフ』の言葉にパイロットたちは呆然としていた。
見上げた先にあるのは、『神機の申し子』たちの『セラフィム』。
その姿を見て、彼らはつぶやくことしかできなかった。
「……あの人が、超常の人が」
「これが終わったらお説教、だと……そう言っていたんだ」
「俺たちの行いが、あんたたちを苦しめるだなんて思ってもいなかったんだ。それは、本当のことなんだ」
ゲリラ部隊たちの言葉を聞き『神機の申し子』たちは己達の行いが如何なるものであったのかを識るだろう。
それを示すように戦場の遠くで蒼い二重十字の残光が輝いていた――。
大成功
🔵🔵🔵
アルカ・スィエラ
融合合身してアルカレクスで行く……!
生憎だけど、その機体も戦法も、前に見てる。
他でもない、シーヴァスリーとの戦いで!
確かに戦意は高いし戦法や戦術も決して悪くない、元軍人か何かかもしれない、けれど…!!
攻撃に対しEフィールドを張り、合間を縫ってUCを発動させ、機体もミサイルも全部地面へと叩き落して動きを封じる!抵抗する気ならドラグカプトを展開し、機体の手足をレーザーで焼き切ってやるわ。手出しするならシーヴァスリーの機体も同じよ
……|竜《私》の怒りを買う前に、さっさと退きなさい
確かにあの国には「力」が足りない。武力だけじゃなく、諜報や外交、財力、そういった「力」が
だから協力者の思惑も図れず、自分達だけでは物資弾薬を満足に用意する事も出来ない
周囲の国どころか自国内とも連携を取れぬまま勝手に行動し、挙句国の立場を悪化させた
……こんな様で、「力を得た」「俺たちが守る」だなんてよくも抜かしたわね
……本気で守りたいっていうのなら、ちょっと玩具をもらった程度で!
浮かれてるんじゃない!!
機竜『ドラグレクス』と融合合身したアルカ・スィエラ(鋼竜の戦姫・f29964)の『プロトミレス』が『アルカレクス・ドラグソリス』としての姿を戦場に顕す。
大地揺るがす巨神めいた姿。
その姿を見やる『ビバ・テルメ』のゲリラ部隊は、しかし戦慄することはなかった。
どんな敵が眼の前に現れるのだとしても、彼らは戦うことをやめないだろう。
彼らの中には善意から発した戦いの意志がある。
だが、同時に彼らの善意をも歪める器。オブリビオンマシンが、彼らを破滅へと導く。
「進め! どんな敵だろうと、俺達から奪う者であるのなら!」
『イカルガ』が飛ぶ。
この空に蓋をされたクロムキャバリアの世界にあって、低高度であっても三次元的な機動を獲得した機体は、一切に『アルカレクス・ドラグソリス』を抹殺せんと迫るのだ。
「生憎だけど、その機体も戦法も、前に見てる。他でもない、『シーヴァスリー』との戦いで!」
アルカは知っている。
あの地底帝国での戦いを知っている。
あのときもそうだったのだ。『イカルガ』による三次元機動。
放たれるマイクロミサイルの膨大さも、その機動でもって此方を撹乱してくる動きも。そして、何よりも戦意が高いことも承知している。
「選んだ戦法も、戦術も決して悪くない。元軍人が混じっているのかもしれない、けれど……!」
マイクロミサイルの爆風をエネルギーフィールドで防ぎながら、アルカは揺れるコクピットの中で思う。
彼らの想いは純然たるものだ。
わかっている。
彼らがただの悪意で戦っているわけではないことを。だから。
「……抵抗するのなら!」
全てのマイクロミサイルを叩きお問いしながら『ドラグソリス・アルカレクス』が踏み込む。飛び立つドラグカプトより放たれるレーザーが『イカルガ』の四肢を分断し、コクピットブロックを大地に叩き落とす。
「……|竜《私》の怒りを買う前に、さっさと退きなさい」
爆発が起こる。
きっとこれで彼らは退かないことをアルカは理解していた。
何故なら、彼らはオブリビオンマシンに乗っているからだ。
自らの滅びなど、破滅など勘定に入れていない。
「奪うつもりなら、怒りなど!」
「そうだ、力がないから! こんなことが起こる! 俺たちの生活を脅かすものがいるというのなら、それを!」
排除しなければならないと『イカルガ』を駆る『ビバ・テルメ』のゲリラ部隊が、爆煙の中をさらに突き進んでくる。
その一騎と組み合う。
火花が散る。
きしむフレーム。だが、アルカはためらわなかった。
「確かに貴方たちの国には『力』が足りない。武力だけじゃなく、諜報や外交、財力、そういった『力』が」
けれど、とアルカは思うのだ。
この戦乱の世界において不和こそが最も解消しがたき事象である。
他者を信じ切ることはできず、何かを代償にしなければ、信用というものさえ覚えることができない。
「だったら!」
「無鉄砲さ。その無用心さが、今を呼び込んだのでしょうが!」
アルカは組み合った『イカルガ』を薙ぎ倒し叫ぶ。
周囲の小国家どころか、自らの小国家を運営するトップさえも信じ切る事ができない有様。それどころか、小国家の立場を危うくすることしかできず、それに気がつくことさえできない。
「……こんな様で守りたいっていうのなら、ちょっと玩具をもらった程度で!」
アルカは踏み出す。
『イカルガ』という名の玩具。
オブリビオンマシン。
それによって呼び込まれる災厄の意味も知らぬ者たちに彼女は告げるのだ。
「浮かれてるんじゃない!!」
周囲に満ちるは、陽皇剣エクス・ドラグキャリバー(エクス・ドラグキャリバー)の放つ光。
十二の竜をもした紅炎が一気に『イカルガ』たちを飲み込み、その機体をひしゃげさせる。それはアルカが示した彼らへの鉄槌。
許されざるのではなく。
新たな道を示す光だった――。
大成功
🔵🔵🔵
ジェイミィ・ブラッディバック
今回私にはグリモア猟兵とは別口でとある都市国家から依頼を受けていましてね。
それがあのイカルガの鹵獲です。
以前別の国で見かけた時は正規軍に属していた機体であり、
様々な政治的事情で鹵獲は断念しましたが、
今回は鹵獲に関わる政治的事情もクリア。ゲリラに非正規に供与された機体ですから頭数が減っても誰も文句を言いません。
そして私もこれを試せる。
(TYPE[JM-E]の肩部に装着されたWORM KILLERで狙いを定める)
帯電させた弾体を撃ち込み、高い衝撃力と命中時の高圧電流で敵機動兵器を行動不能にする新兵器、スタンニードルランチャー。
UCで敵の未来位置を把握し狙撃。
これで求める結果が得られるはずです。
基本的に猟兵が戦うのは世界の破滅を防ぐためである。
世界に選ばれた戦士。
汎ゆる世界から選ばれてグリモアベースを介して転移する。それが基本である。だが、そこに別の思惑が絡むこともあるのだろう。
その思惑を抱える猟兵の一人、ジェイミィ・ブラッディバック(脱サラの傭兵/Mechanized Michael・f29697)は『ビバ・テルメ』と『第三帝国シーヴァスリー』との間に広がる戦線の長く伸びた光景を見やる。
戦力がバラけている、と思えただろう。
それもそのはずだ。『ビバ・テルメ』が大国とも言って良い国力を持つ『第三帝国シーヴァスリー』の前哨基地を叩いてこれたのは、彼らがゲリラ戦法に終始していたからだ。
故に戦線は長く伸び、薄い。
逆にそれが『第三帝国シーヴァスリー』にとっては敵を叩き難い理由になり、『ビバ・テルメ』のゲリラ部隊にとっては己達の損害を極力減らすことのできる理由にもなっていた。
「『イカルガ』の捕獲。別口ではありますが」
それを抱えるジェイミィは以前見かけた『イカルガ』を鹵獲することはできなかった。
正規軍の機体である、ということが第一に断念する理由だった。
様々な政治的な事情。
そうした雁字搦めの状況では、おいそれ鹵獲して持ち去る、ということはできなかった。
だが、今回はそうではないように思える。
第三者とも言える新興小国家『プラナスリー』が供与したという『イカルガ』。
ジェイミィが識るそれとは、性能が異なるようであるように見受けられる。
「ゲリラへの非正規の手続きを経て供与された機体。頭数は当然把握しているでしょうが、黒幕がそれに言及することはないでしょう」
何故なら、言及した瞬間に黒幕の思惑と所在が知れてしまうからだ。
故にグレー。
存在しているが、存在していない機体として扱いほか無いのだ。
「そして、私もこれを試せる」
己の機体の兼部に装着されたのはニードルランチャー。
とある惑星における機動兵器用の装備である。それをジェイミィがキャバリア兵装用に再設計したものだ。
「S.K.U.L.D.System ver.3.0.1 Stand by... Completed.」
三次元的な機動を行うオブリビオンマシン『イカルガ』を前にして、S.K.U.L.D.System(スクルドシステム)は補助AIによる演算を絶えず行うことで、挙動を予測している。
放たれるニードルは、高圧電流と機体の制御を不能にする衝撃力の高い一撃だ。
「この程度で!」
「いえ、それで終いですよ」
ジェイミィはゆっくりと大地に落ちた『イカルガ』を見やる。
できれば無傷で捕らえたかったのだ。
敵機は沈黙している。
高圧電流による回路を一時的に遮断させる機能は生きているようである。
それに加えて、ジェイミィの補助AIによる演算。未来予測めいた一撃は、確実に『イカルガ』の機能を停止に追い込んでいるのだ。
「パイロット、機体を頂きます。降りて頂きましょうか」
突きつける銃口の意味をパイロットも理解しているだろう。
ジェイミィはかく座した機体のコクピットから転げるようにして降りたパイロットを目線で捉えながら『イカルガ』の機体を見やる。
やはり、違う。
今まで己が知っている『イカルガ』とは異なる改修が加えられているように思える。
だが、今の戦場の状況ではそれを調べる余裕はないだろう。
ジェイミィは己の確保した『イカルガ』が破壊される前にエネルギーインゴットを引き抜く。
停止しているとは言え、オブリビオンマシンである。
捨て置けば、それだけで破滅を導きかねない。
破壊するにせよ、何にせよ、動かぬことを保証しなければならないのだ。
「求める結果である、という確信はないですが……まあ、良しとしましょう――」
大成功
🔵🔵🔵
カシム・ディーン
やれやれ…まあ問題は元々ありまくりだし、解決策があれば飛び付くわな
しかもあのマシンは僕らしか認識できねーって奴だし
【戦闘知識・情報収集・視力】
敵群の機体構造とコックピットの位置
その動きと陣形把握
【属性攻撃・迷彩】
UC発動
光水属性を機体と竜達に付与
光学迷彩で隠れ水の障壁で熱源隠蔽
【空中戦・念動力・弾幕】
飛び回りながら念動光弾を打ち込み動きを止めて
【集団戦術・二回攻撃・切断・盗み攻撃・盗み・補食】
竜達は複数で一体にかかり手足を破壊して武装は強奪
但し乗り手は不殺徹底
多少威嚇して逃げさせる
ま…お前らは間違えちゃいない
ただ…悪いものを掴まされただけだし…考えなきゃいけない案件だしな
それは後で考えな!
小国家『ビバ・テルメ』だけに限った話ではないが、クロムキャバリアと呼ばれる世界は戦乱が渦巻く世界である。
問題は山積している。
多くのことが解決できないままである。
一つはプラントと呼ばれる生産施設。
これがなければクロムキャバリアでの生活はままならない。これを増産すればよい、という声もあるかもしれないが、そもそもが遺失技術の上に代替物が存在していない。
故に奪い合うしかないのだ。
小国家が己達の生活を豊かなものにしようとするのならば、常に他者から奪うしかない。
その構図が戦乱を長引かせているのだ。
「やれやれ……そういうもんだよな、人間というのは。自分の問題を解決してくれるように思えるものがあれば飛びつくわな」
しかも、とカシム・ディーン(小さな竜眼・f12217)は己の乗機『メルクリウス』のコクピットで息を吐き出す。
問題の大元。
オブリビオンマシンは猟兵にしか認識できない。
猟兵以外の人々には、キャバリアなのかオブリビオンマシンなのか区別できないのだ。そして、それに乗り込んだ者は例外なく心を狂わされる。
そうして破滅に導かれてしまうのだ。
「だがまあ、僕らしか対応できねーってんなら」
光学迷彩を施した機体と共にカシムは飛ぶ。
オブリビオンマシン『イカルガ』は確かに空中戦を可能とした高機動型である。
とは言え、己の機体を光学迷彩でもって隠したのならば、彼らには己を攻撃する術などない。
周囲を駆け抜けながら放つ念動光弾が乱舞し、一気に『イカルガ』の機体を貫く。
「どこだ、どこから……! 一体どこから打ってきている……!」
『イカルガ』のパイロットたちは混乱するしかない。
さらには、帝竜眼「ダイウルゴス」(ブンメイヲシンリャクシユウゴウスルモノ)によって呼び出された小型ダイウルゴスが『イカルガ』の四肢を噛み砕くのだ。
機体の制御をするどころではない。
正体不明の、それこそ認識できない何かが己の機体を噛み砕いているという恐怖は、彼らの戦意を砕くには十分すぎる衝撃であったことだろう。
「ひっ……!」
「……ま、逃げるがいいさ。別に誰に咎められるわけでもなし」
カシムは見下ろす。
彼らは間違えていない。
力を欲したのは誰かのためだ。己たちの生活を守るためではあるが、しかし、それは己たちを守るために戦っている四人のアンサーヒューマンたちのためでもあったのだ。
誰かに責任を負わせたいわけではないのだ。
共に生きることを決めたのならば、誰だって力になりたいと思うのが自然だ。
ただ、運がなかっただけのことだ。
「悪いものを掴まされただけ、と考えるのが良いだろうさ。犬に噛まれたとは言え、傷は残るんだ。その傷をどうするかは……」
己たちが言うことではないだろう。
自分たちが考え行動した結果が間違っていたのだとしても、人は、その結果を持って前に進むことのできる生き物だ。
彼だってそうだとカシムは信じる。
「後で自分たちで考えれば良いんだよ。自分たちだけじゃあなくな、他にも頼りになるやつらがいるだろ」
そうやって人間は支え合って生きていくものだ。
社会性の獣。
人間。
なら、とカシムは破壊され尽くした『イカルガ』の残骸を前に息を吐き出して、彼らの背中を見送るのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
第3章 日常
『休戦協定会談』
|
POW : 情熱と勢いで会談参加者達の説得を試みる
SPD : 市井の人々になるべく悲劇が及ばないよう、会談内容を誘導する
WIZ : 堂々と会談の場で演説し、主張を述べる
|
種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
猟兵達は立場上、『第三帝国シーヴァスリー』に与した傭兵の立場を得ている。
それだけではない。
この戦いにおいての最も戦果を弾きだ出した戦功者でもある。
すでに戦いは終わり、二国間における協定の場が設けられている。その場への列席を『第三帝国シーヴァスリー』が拒めるわけがなかった。
『ビバ・テルメ』からは四人のアンサーヒューマンと一人の元『シーヴァスリー』の軍人が列席している。
その様子を見るに『神機の申し子』たるアンサーヒューマンたちも、自分たちだけでは解決できないことを痛感していたのだろう。故に、『第三帝国シーヴァスリー』の前身である『シーヴァスリー』の元軍人の意見を求めて、彼をこの場に列席させているのだろう。
だが、それはあまりにも無意味であった。
そう、すでに両者の間柄は決まっている。
つまり、加害者と被害者。そして、勝者と敗者である。
『第三帝国シーヴァスリー』は前哨基地を破壊された被害者であり、この戦いの勝者である。
『ビバ・テルメ』は敵基地を襲った加害者であり、敗者。
最も『第三帝国シーヴァスリー』の望む最高の形での停戦協定。いや、一方的に此方の条件を飲ませる下地が揃っているのだ。
「では、はじめましょうか」
『第三帝国シーヴァスリー』の席に座っている女性。
その女性はまず、と名乗る。
「『第三帝国シーヴァスリー』の首席『ノイン』と申します。まずは此方からの休戦協定の申し出を受けられたこと、賢明であると申し上げましょう。此方の要求はそう多くはありません。まずは」
彼女が示した条件は、
一つ、今回の前哨基地襲撃に参加したゲリラ部隊の人員の処刑。
一つ、前哨基地施設の損害に対する補填としてプラントを一基譲渡。
一つ、『ビバ・テルメ』の領域、海岸線に面した領土の譲渡。
この三つ。
「小国家間おいてプラントは国力を維持する上で必須。これは休戦協定ですが、いつまた破棄されるとも私どもも恐れています。ならば、休戦協定を守る、という『ビバ・テルメ』の意志を証明していただくには、プラント一基は安いものであるとお考えになったほうがよろしいかと」
「待って下さい。ゲリラ部隊の人員の処刑、は」
『ツヴェルフ』が言う。
確かに処罰しない、というのは角が立つ。
けれど、生命を奪うまでは、と思うのが彼女たちの甘さだった。
「彼らは二重で罪を犯しているのです。まず、我らの基地を破壊したという罪。そして、あなた方『ビバ・テルメ』の上層部に無断で敵国との戦闘行為を働いたという罪。分かり易いではないですか」
『ノイン』と呼ばれる首席が微笑む。
「ご決断を」
これが不平等条約。
戦争の末路。敗者の既定路線。どちらにせよ、オブリビオンマシンの存在が『ビバ・テルメ」のゲリラ部隊に渡った時点で定められていた破滅であったのだ。
だが、此処には猟兵たちがいる。
この戦い最大の戦功者。
彼らの言葉を無視できるほど『第三帝国シーヴァスリー』は、猟兵たちに強権を発することができない。
これより『ビバ・テルメ』に降りかかるであろう略奪、虐殺、処刑。これらを回避できるのは、最早猟兵達しかいないのだ――。
月夜・玲
じゃあ無関係の功労者として要求させて貰おうかな
私からの要求は1つ、ゲリラの処刑
ゲリラは全員処刑では無く、私のこの剣で1度心臓を貫く
私が全員
これにしてくれないかな?
問題無いよね?普通は死ぬんだし
とりあえず今ここで1人、ゲリラの頭目を君達の目の前で貫こう
不満なら斬首でも良いよ?
良いならきちんと文書にして、頭目を連れてきてよ
事情はあったのは知ってる
けれども先走って行動したのは許されない
だからこそ、血と痛みで償わなければならない
それは、仕方ない事だよ
【断章・焔ノ血〈焔ノ絆〉】起動
処刑対象と私を繋ぎ…そして斬る
…さて、これで人員については解決
私は全員にこれやらないといけないからね、忙しいから後は任せたよ
休戦協定が行われる場には重苦しい空気が漂っていた。
いや、重く四人のアンサーヒューマン『神機の申し子』たる彼らと、彼らに従う『シーヴァスリー』の元軍人……ゲリラ部隊を率いていた彼たちの肩にのしかかっていた。
対する『第三帝国シーヴァスリー』の面々は笑むでもなく、静かに彼らの決断を待っていた。
サインをすればいい。
ただそれだけのことだ。
簡単なことだ。だが、『神機の申し子』たる彼らには決断できなかった。
「げ、ゲリラ部隊の、責任者である私の首一つでは」
元軍人が言う。
けれど、『ノイン』をはじめとする『第三帝国シーヴァスリー』の面々は首を縦に振ることはなかった。
「責任者の首をすげ替えるだけでしかないでしょう。問題は根本から解決しなければなりません。なら、部隊に所属していた者たち全てを処刑する他無い。おわかりでしょう?」
やるなら、徹底的に、と告げる『ノイン』の言葉に彼らは押し黙るしかなかった。
だが、一人だけ声を上げるものがいた。
それも『第三帝国シーヴァスリー』側からである。
「じゃあ、功労者として私が要求させてもらおうかな」
その声に『ノイン』は僅かに眉根を寄せたが、すぐさま、それを消す。
「どうぞ」
「了承してくれたね。なら、私の要求は一つ。ゲリラの処刑」
月夜・玲(頂の探究者・f01605)は、ハッキリと言い切った。
四人のアンサーヒューマンたちの目が見開かれる。彼女の口からそんな言葉が出るとは思わなかったのだろう。
だから、言葉が続かない。
彼女を非難する言葉も、なじる声も、何も出てこない。
自分たちが敗者であることを理解しているためだ。
「あなたが?」
「そ。私のこの剣で心臓を貫く。私が、全員」
これ、と玲が示すは抜かれた模造神器の刀身。これでね、ぶすっと、と玲は首を傾げる。
「問題ないよね? 死ぬんだし」
「首を刎ねることを加えても?」
『ノイン』の言葉に玲は頷く。
あっさりとしたものだった。
「じゃあ、ほら、きちんと文書して。君が頭目だよね。なら、ほら、サクッと覚悟を決めてよ」
「……わかっています。わかっていますとも……ですが、ゲリラ部隊に参加していない住民の安全は」
『ノイン』は肩をすくめて頷く。
「保証致しましょう。休戦協定を破るような行いは、私共からは決して。約束を守るのが私の美点です」
文書が認められる。
それを認め、玲は頷く。
「じゃ、やろっか」
玲の瞳がユーベルコードに輝く。
それを『ノイン』は咎めるべきだった。何をするつもりだ、と。そう、彼女の誤算は唯一。
玲の言葉を鵜呑みにしたこと。
そして、それを文書として残したこと。
「事情があったのは知ってる。けれど、先走って行動したのは許されない。だからこそ、地と痛みで次ぐわなければならない」
「……無念です。私は」
元軍人は『シーヴァスリー』から追放された身である。
それを拾ってくれた恩義を返せると思ったのだろう。
だが、失敗したのだ。それはオブリビオンマシンがいなければ、成り立つものであったかもしれない。
けれど。
「仕方ないことだよ」
玲の瞳がユーベルコードに輝き、それ以上の言葉を紡ぐことを許さなかった。
放たれた斬撃。
それは見紛うことなく元軍人の首を跳ねた。
そして、玲は次々とゲリラ部隊に参加した者たちの首を刎ねていく。
これが血と痛みで贖わなければならないことであると示すように。罪は注がねばならない。そして、玲はそれらを一手に引き受けたのだ。
「……さて、これで人員については解決」
そして、彼女は振り返る。
そこには怒りを顕にした表情を浮かべる『ノイン』の姿があった。
「何が……!」
「ちゃんと刎ねたよ、首。処刑は既に済んだ。ならさ、その後の処遇はないでしょう?」
そう、玲のユーベルコード、断章・焔ノ血〈焔ノ絆〉(フラグメント・ファイアブラッド・リザレクション)によって彼女は全てのゲリラ部隊に参加した人員と蒼炎で繋がっている。
そして、その蒼炎が繋がれた者同士は、『同時』に死なない限り死なないのである。
だからこそ、玲は言ったのだ。
処刑を執り行う。斬首にて、と。
「斬首したからって人が死ぬとは限らない。これで罪は裁かれた。これ以上の罪を加算することも、さばくことも最早できない。だって、もう『処刑した』んだからね」
「屁理屈を! そんな理屈が!」
「通るでしょ。ちゃんと文書したためた。なら、それは公式のもとして扱う」
もしかして、と玲は笑う。
ほら、とさっきまでの余裕の笑みを浮かべなよ、と。
「約束は守るのが?」
玲は『ノイン』の顔を見て満足する。
「さ、私は全員の首を跳ねるのに忙しいんだ。さ、行った行った。まだ休戦協定は全てに調印が施されていないんでしょ――?」
大成功
🔵🔵🔵
シルヴィ・フォーアンサー
……人いっぱいの所で話すとか無理。
『変わってやりたいが無理だろう、頑張りたまえ』
……仕方ない参加する前に自分にコード。
強烈な自己暗示の要領で人前でもはきはきと平気で喋れるようにする。
シルヴィの要求はゲリラ部隊の人員の処刑撤回。
オブビリオンマシンを彼等に渡したプラナスリーの者と名乗っていた人物を
知っているのは彼等だけでしょ、そっちの連中にも
責任とらせないうちに片方だけ裁くのはどうかな。
証人にもなるわけだから罰はわかるけど殺されちゃ困るよ。
……とかなんとか。
マッチポンプくさい向こうにしちゃ消えてほしいんだろうけど。
プラントとか領土はもっと頭の回る人に期待してよ。
シルヴィにはここまで……疲れた。
猟兵は『ビバ・テルメ』のゲリラ部隊を多数撃破した功績によって、『第三帝国シーヴァスリー』との休戦協定を為す場における発言権を認められている。
しかし、『第三帝国シーヴァスリー』の『ビバ・テルメ』に対する休戦協定は不平等条約そのものであった。
ゲリラ部隊に関わったものたちの処刑。
領土の分割。
プラントの譲渡。
いずれもが敗戦国という存在に対する仕打ちとしては十分すぎるものであり、また同時にそれだけの要求で手打ちにするのは温情であるというな雰囲気さえ漂っていた。
「認められるわけがありません。あのようなペテンめいたやり方で処刑を行ったとするのは!」
『第三帝国シーヴァスリー』の首席『ノイン』は歯噛みする。
猟兵の一人が示したゲリラ部隊を実行した人員たちの処刑。それはユーベルコードを使った剛腕たる裏技だった。
首を刎ねる、と敢えて『ノイン』が付け加えたことも大きかった。
そのユーベルコードによってゲリラ部隊に参加していた『ビバ・テルメ』の人員たちは首を刎ねられながらも死ななかった。
だが、刑は処した。
故にすでにその身に罪はなく。処刑とは即ち死を意味しない。いや、首を跳ねれば人は死ぬのだ。
だが、そこにユーベルコードという超常が加わった瞬間抜け道が生まれる。
「……『第三帝国シーヴァスリー』の前哨基地に打撃を与えた者たちの処刑を意味していたのならば」
『ノイン』の言葉を遮るようにしてシルヴィ・フォーアンサー(自由を求めた脱走者・f41427)は己自身を己のキャバリアから発せられる洗脳電波によってブレイン・ウォッシュしていた。
人前で話す、ということは彼女には難しすぎることであった。
慣れていない、というだけではないのだろう。
けれど、彼女はやらなければならない。補助AIである『ヨルムンガンド』も手助け出来るのは此処までだ。
ブレイン・ウォッシュによって彼女の言葉遣いはハキハキとしたものであった。自己暗示。強烈なそれによって己の正確を無理矢理に変えたのだ。
「『プラナスリー』と名乗る小国家も、一枚噛んでいる」
「私共では確認できておりませんが」
「それはこちらも同じ。それを知っているのは、刑に処された彼らのみ。この争いの責任を取らせるというのなら、片棒を担いだものたちは咎めがないというのはどういうことだろうか」
シルヴィは『ノイン』の眼光にも物怖じしなかった。
普段であっても物怖じしなかっただろう。
彼女が恐れているのは人間が多数いるこの場という状況のみ。ならば、『ノイン』の他者を圧倒するような視線など怖いものではないのだ。
そして、彼女の言葉は、『第三帝国シーヴァスリー』がこの休戦協定において事を急ぎすぎるような印象を与えたに違いない。
つまり、十分な精査なくゲリラ部隊を処刑することで得られる何かがあるのではないかと。
それは『神機の申し子』たちにも伝わったことだろう。
「証人にもなるわけだから罪はわかるけど、殺されちゃ困るよ。あ、違ったね。もう刑に処された後だから、証人として召喚することができる」
シルヴィは『ノイン』に突きつける。
ハッキリとした物言い。
これが彼女の普段の人前に出ることを厭う性格を矯正したものであるとは誰も思わないだろう。
「……シルヴィの言い分は此処まで」
後は判断して、とこの場に集まったものたちを見回す。
息を吐き出す。
どっと疲れが押し寄せてくるのをシルヴィは感じただろう。
『代わらずともやり遂げたな。よく頑張ったな』
『ヨルムンガンド』の声が響く。
その言葉にシルヴィは頷く。
「……もう二度とは御免かも――」
大成功
🔵🔵🔵
アルカ・スィエラ
【SPD】
(……本当、向いてないけど…そうも言ってられないか)
ちょっといい?
報酬の話。傭兵の一人としては当然でしょ?
私は、ゲリラ達に国の意図を離れ他国にプラント一基分の損害を出させるに至らせた「戦力の提供者」の情報を要求する
具体的にはビバ・テルメのゲリラ部隊と増援の「提供者」の部隊――まさか一人も捕えていないとか言わないわよね――の身柄、彼らの使用してたキャバリア「イカルガ」の解析権ってところね。
理由は個人的なものだけど……そもそも複数の小国家の存在するこの近辺、裏で不満を煽り他国襲撃を誘導する連中なんてどこでも不安要素。無視する理由はない筈。今回被害を被り、周囲からの印象の良くない国なら特に
ゲリラ部隊の処遇を巡っての論争は休戦協定の場に噴き上がる。
それもそうだろう。
猟兵の一人によって、いや、『第三帝国シーヴァスリー』の首席『ノイン』の承認を得てすでに処刑は済んでいる。
とは言え、そのやり方は剛腕がすぎるものであった。
ユーベルコードを用いた、死なぬ罪人の処刑。
刑に処されたが、ゲリラ部隊に参加した人員は死なない。
言ってしまえば、『ノイン』が求めたのはゲリラ部隊に参加した不穏分子の排除ではなく、口封じであったのかもしれないということがわかるだろう。
そこまで考えて、アルカ・スィエラ(鋼竜の戦姫・f29964)は本当に、こういうことには自分が向いていない性分であることを理解した。
だが、そうも言っていられない。
自分たちはこの戦いの功労者。それも最大の、だ。
ならばこそ、この休戦協定においての発言権は確保されている。それを活用しなければならない。
『第三帝国シーヴァスリー』と『ビバ・テルメ』の争いの帰結として休戦協定は落とし所としては十分なものだ。
けれど、その休戦協定はただの不平等条約でしかない。
一方的な要求を『ビバ・テルメ』は飲み込むしかない。
だからこそ、自分たちが発言するのだ。
「ちょっといい」
「……なんでしょう」
『ノイン』の苛立つような感情の色をアルカは見ただろう。
努めて冷静に言葉を紡いでいるが、内心穏やかでないことがアルカにはわかった。もう一押しできる、とアルカは判断する。
できるできないではない。
やるのだ。
息を吸い込む。
「報酬の話。傭兵の一人としては当然でしょう」
「それでしたら後ほど」
「いいえ、今すぐにでも済む話」
「……」
「私は報酬に『戦力の提供者』の情報を要求する」
その言葉に空気がひりつくのを感じた。
一連の猟兵達の発言から続くからこそ得られた状況であった。そう、今まさに二国間でもって条約が締結しようという時に、第三国の存在をちらつかせたのだ。
『第三帝国シーヴァスリー』にとっては、この条約事態が破棄しかねない状況。
「何を、と?」
「だから、ゲリラたちに国の意図を離れ他国にプラント一基分おn損害を出させるに至らせた『戦力の提供者』の情報を要求する。それは『ビバ・テルメ』からも、『第三帝国シーヴァスリー』からも、よ」
アルカは続ける。
あの戦いにおいて、『イカルガ』の存在を『第三帝国シーヴァスリー』も認識していないとは言わせない。
これまでの『ビバ・テルメ』においてはあまりにも過剰な戦力であった。
あの出処が火種になりかねない、と言外に言っているのだ。
「誰一人として関連する者を一人として捉えていない、なんてことはないわよね?」
「私どもは確認できておりませんが」
「では、彼らの使用していたキャバリア『イカルガ』の解析の権利をもらうわ。あれを洗いざらい調べれば出るものも出るでしょう」
「それは承服致しかねます」
「何故? あの『イカルガ』という機体。他の小国家の争いにも姿を確認されている。二国間だけではない影がちらつくのは不穏の種として徹底的に調べるべきではない?」
アルカの言葉は通っていた。筋が、という意味で、である。
通常なら捨て置くこともできた事柄である。
けれど、アルカはそれが捨て置いたものではなく、敢えて触れなかった部分であると突く。
「……良いでしょう」
「それに付随してだけど、ゲリラ部隊に参加した者たちへの尋問も第三者を利用するのが最もよね。どちらかが行えば必ず偏りが出る。それは真実を明らかにするにはあまりにも褒められたやり方ではないわ」
アルカは『ノイン』に詰める。
「特に普段から周囲へと喧嘩を吹っ掛けるような国においては他国からの信用など得ようはずもないわよね。なら、当然、そうするのが妥当」
アルカはそう告げ、書類へのサインを『ノイン』から勝ち取るのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
防人・拓也
「(やれやれ…不平等条約を結ばせるのを阻止しろと言われているが…なかなかに難しいぞ、これ)」
ちょっと面倒そうな表情をしながら手を挙げる。
「では私から提言を。まずプラントの1基譲渡に関しては賛成です。基地は実際に損害を受けていますし、補填としては妥当でしょう。しかし領土の譲渡に関しては反対です」
と言い、理由を求められたら
「今回の戦いで受けた基地の損害に対して、他の領土の譲渡は過剰ではないでしょうか? それに休戦協定を守って貰いたいのであれば、過剰な請求は避けるのが賢明かと。過剰な請求を突き付けるのは、まるで帝国が休戦協定をビバ・テルメ側が破るのを狙っているかのように思えます」
と言う。
アドリブ可。
猟兵達は着々と『第三帝国シーヴァスリー』と『ビバ・テルメ』との間に交わされようとしていた休戦協定と云う名の不平等条約を是正していく。
その手並みは時に剛腕であり、時に緻密なものであった。
いや、状況が確実に猟兵達によってコントロールされていることを防人・拓也(独立遊撃特殊部隊ファントム指揮官・f23769)は感じていたことだろう。
簡単なことではない。
わかっていたことだ。
『第三帝国シーヴァスリー』の要求は過剰なものだ。
だが、戦争の勝者とは即ち、そういうものだ。過剰な要求は飲ませる。そうするために争いを引き起こしたのだ。
ただ、今回の戦いは偶発的であることを装われている。
謂れのない侵攻、ゲリラ的な攻撃に寄る被害。
そうしたものの補填を求めているという体で『第三帝国シーヴァスリー』は休戦協定を締結させようとしている。
中々骨の折れる、タフな交渉になりそうだと拓也は難しそうな顔をする。
はっきり言って面倒だ。
こうした事柄において譲歩を引き出す、というのは本来勝者側の特権だからだ。そして、自分の立場は、戦場での最大の戦功者である。
敗者側の譲歩を助長させる、というのはあまりにも不自然に映ってしまう。
だからこそ。
「良いですか」
手を上げて耳目を拓也は集める。
冷静に。努めて。
「私から提言を」
「良いでしょう。この場に置いての発言権はあなた方にあります」
「では……まず第一にプラントの譲渡に関して。これにおいては基地の被害と照らし合わせて見て妥当でしょう。諸々の補填とあわせても。ですが、領土の譲渡に関しては反対です」
「何故です? 当然の権利であると思いますが」
『ノイン』の言葉に拓也は内心笑む。
焦ったな、と。
「いえ、領土の譲渡というのであれば、前哨基地のあった『第三帝国シーヴァスリー』と『ビバ・テルメ』の国境を頂くのが筋ではないでしょうか。今回の争いの発端は境界線の武力衝突です」
それに、と拓也は続ける。
「今回の戦いで受けた基地の被害に対して、やはり第三者からみても領土の譲渡は過剰ではないでしょうか?」
「いいえ。プラントは確かに国力を増強させます。ですが、我らは膨れ上がる人工を支える大地が必要なのです。故に領土の……」
「それならば、なおのことです。海岸線は、それに適さないのでは? それに休戦協定は結ばれど、過度な締め付けは反発を生むもの」
「それを抑えるのが『ビバ・テルメ』の首脳陣の手腕というものです。他国の政情に私達が関与するところではありませんから」
「内政への干渉は望むところではないと。ですが、それではまるで」
拓也の眼鏡のレンズが光を反射させる。
ブリッジを指で添えて大仰に声を上げる。
「帝国が休戦協定を『ビバ・テルメ』側が破るのを望んでいるように捉えられてしまいます」
その言葉に『ツヴェルフ』は続く。
「一度結ばれた約定を破ることは、私どもとしても望むものではありません。故に領土の譲渡は」
「……謂れなきことを事実のように語られるのも我らとしても、と言っておきましょう。国境線はこのままに。ですが、制海権は譲れない所です」
「譲歩している、と?」
「そのとおりです。そちらの言い分を飲んだのです」
これ以上は、と互いに思惑がしのぎを削るようであった。故に拓也は此処が落とし所だと判断する。
「では、『ビバ・テルメ』が手渡すのは沿岸部の制海権。それで合意でよろしいですね」
この状況で譲歩を引き出せた。
その事実を良しとするしかないと拓也は息を吐き出すのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
朱鷺透・小枝子
自分では軽はずみな言動でかえってつけ込まれる隙を作り出しかねません。
ので、話し合いは他の猟兵に任せ、少し離れて警備に徹しましょう。
ノイン、あれが自分の知る者なら、警戒しておくにこした事はありませんから。
戦いが終わったとはいえ、両国ともに相手へ思う所が残っておりましょう。
話し合いをメチャクチャにするような不届者がでないとも限りませんからね。とでもいえば建前には十分でしょう。
いつでもディスポーザブルを呼び出せるよう気にしつつ、
『眼倍』を使用して一帯の【情報収集】、ノインの情報、イカルガの情報、周囲の会話、怪しい行動をする者や不審物がないか情報を【瞬間思考力】で処理しながら警戒しておきます。
状況は刻一刻と変わっていく。
休戦協定を交わす場は猟兵の発言によって流動的に変化して行っているように朱鷺透・小枝子(亡国の戦塵・f29924)は思えた。
この流れを途絶えさせてはならない。
だが、己の発言が軽はずみなものであったのならば、却って『第三帝国シーヴァスリー』に、いや『ノイン』に付け込まれる隙を生み出しかねないと思っていた。
あの首席『ノイン』は政治的な手腕も持ち得たものであるように思えた。
いや、『ノイン』という名に自分が過剰に反応しているだけの可能性もないわけではない、と小枝子は思った。
己の知る『ノイン』と同一であるのかどうかの確証が、彼女には持てなかった。
だが、己の勘が告げている。
あれは警戒すべき存在であると。
故に小枝子は休戦協定の場を警護する。
「戦いが終わったとはいえ……いえ、だからこそであります」
そう、戦いが終わった。
敗者と勝者が生まれた。それは戦争の行く末を決定づけたものである。だが、だからといって人間の感情までもが決着したことを意味しない。
遺恨が必ず残るのが戦争である。
そして、遺恨というのは飲み込み難いものである。誰も彼もが苦々しい思いをして飲み込めるわけではないのだ。
故に小枝子は、この休戦協定を邪魔だてする存在があるやもしれないと周辺の警護を買って出ていたのだ。
「眼倍(ガンマ)起動」
小枝子の瞳がユーベルコードに輝く。
己の人工魔眼は周囲の情報を把握する。この状況において敵機の襲来は予想し難いものである。
だが、戦場の痕を見る。
残されているのはオブリビオンマシン『イカルガ』の残骸ばかりである。
あの白銀のオブリビオンマシン。
あれは、あの色は。
「……『ノイン』のパーソナルカラー」
他世界の出来事とは言え、無関係であるとは思い難い。
猟兵であるからこそ気がつく事のできる事実である。だが、その事実が他の事実と結びいつく光景が思い浮かばない。
「この場に居る『ノイン』とあの『ノイン』は異なる存在なのでありましょうか……」
仮に『ノイン』が獣人戦線に存在していたオブリビオンでるのならば、己たちがひと目見てオブリビオンであると気が付かぬはずがない。
「相違は」
何処に在る、と瞳が探る。
手がかりはオブリビオンマシンである『イカルガ』。
そう、『イカルガ』である。小枝子は幾度か戦ったことがある。
一度はクロムキャバリア地底帝国での戦い。
二度目は獣人戦線の中国戦線、須弥山型都市での『宝貝オブリビオンマシン』としての『イカルガ』。
三度目は、此度の戦い。
そこに相違があるというのなら。
「……これは、宝貝……いや、待ておかしい」
『イカルガ』の残骸の中に宝貝の破壊されたパーツが在るのを小枝子は見ただろう。しかし、それが全てではないことを知る。
宝貝の残骸が極端に少ない。
他の無数の『イカルガ』には残っていない。そもそも組み込まれた部分すらない。
なのに、此処に宝貝の破壊されたパーツがある?
「どういうことだ……? いや、まさか」
白銀の『イカルガ』。
猟兵たちの攻撃を受けて破損していた。戦火の最中見失ったが、確かに損壊していた。それから溢れたものであるというのなら。
繋がりかけた点に小枝子は手を伸ばす。届かぬと知りながら。
だが、その事実を彼女は手にしたのだ。
如何なる様相を描く点であるかは未だ判然とせず、されど、しかし確実に彼女は一つの点を掴んだのだ――。
大成功
🔵🔵🔵
ルクス・アルブス
【ステルク】
……どうしましょう。
これたぶん蕁麻疹コースまっしぐらですよね。
しかたありません、まずはこっそりラムネを……。
な、なんですかステラさん?生きてがんばってます!?
え?わたしが頼り?ステラさんがデレた!?
え?え?何でここに来て!?
ま、まぁ頼られちゃったなら、勇者としてはお応えしないわけには!
って、『ノイン』さん……?
『ノイン』って、さっき戦う前にイカルガ乗って逃げていきましたよね?
人違い?それはありえません。
だってわたしの演奏、聴いてくれなかったじゃないですか!
わたしが『演奏を聴いてもらわないといけない人』リストのトップにいる方を、
見間違えるはずがないです。
あ、ちなみに2位はステラさんなんですけどね。
どちらにしましても、あのとき真っ白いイカルガが逃げていったのは確実です。
探させてもらっても構わないですよね?
どうやって……って。光の勇者に聞けばいいんです。
え?うん。うん。それでいいんですか?
『ノイン』さん、ちょっとこの演奏聴いて、
感想頂いてもよろしいですか?(グランドピアノ取り出し)
ステラ・タタリクス
【ステルク】
まさかここでノイン様とは
流石は『平和を戦いに変えようとするもの』
下拵えは完璧というわけですか
ルクス様?生きてます?
さっきよりキツイとかないですよね??
トドメはルクス様が頼りです
直感で良いので助けてくださいませ
この休戦条約
実行不可能な項目が一つありますね?
まさか最初から決裂させるつもりで?
シーヴァスリーの
自ら大嘘つきと宣伝する姿勢、非常に斬新です
今回の前哨基地襲撃に参加したゲリラ部隊の人員の処刑
とありますが離脱したイカルガが1機います
私たちが取り逃したのですが
この条件を満たすにはあの機体を確保しませんと
それは関係ない?どうして?
こちらの誠意を見せろと言っているのでしょう?
取り逃したのは事実
それを捕まえたいと言っているだけです
それとも私たちの証言が嘘だとでも?
そんな機体はいなかったというのなら
それは証明してもらいませんと
悪魔の証明は難しいですよ?
おやどうしました?
騒々しい悪魔はルクス様の方ですよ?
まぁ、それもあの戦場に居なければわからない事ですが、ね?
はい、ルクス様出番です
うーわー。
ルクス・アルブス(『魔女』に憧れる『出禁勇者(光属性)』・f32689)が最初に思ったのは、これが恐らくシリアスな雰囲気である、ということであった。
休戦協定の場には重苦しくも張り詰めた空気が漂っている。
それもそのはずだ。
勝者と敗者が会しているのだから。
いや、それだけではない。『第三帝国シーヴァスリー』に有利な不平等条約として休戦協定が締結されようとしているのに、最大の功労者である亮平たちが圧倒的に不利な不平等条約を傾けようとしているのだから。
「……どうしましょう」
本当にどうしようとルクスは思った。
これってあれだよね。たぶん、蕁麻疹コースまっしぐらである。手にしたラムネの蓋をこっそりと開ける。
がんばらなければならないところであるのだ。
うん、がんばろう。
だって自分は勇者である。
「ルクス様? 生きてます?」
「な、なんですかステラさん? 生きてがんばってます!?」
後ろからステラ・タタリクス(紫苑・f33899)に肩を叩かれてルクスは飛び上がった。シリアスな場でラムネをポリポリしていたところを咎められた生徒みたいな反応になってしまたった。
「先程よりきついとかないですよね? ルクス様がこの場では便りなのです」
「ふえっ!? 私が頼り?」
え、何、急にステラがデレてきたではないか。
自分を頼りにしてる?
あの完璧メイドのステラが? え、これ夢? 夢なのだろうか? というか、なんでここに来て自分が? という思いがルクスの中に駆け巡っていく。
いやでもぉ、まんざらでもぉ、ないっていうかぁ。
そんな感情が胸に去来する。やぶさかではない。うん、悪くない。悪くない、とルクスは、むふーって鼻息を吐き出す。
「ま、まぁ頼られちゃったなら、勇者としてはお応えしないわけには!」
「そうですか、それは助かります。直感で良いので助けてくださいませ」
ステラはそんなルクスをさらっと交わして、休戦協定の場に足を踏み出す。
「よろしいですか? この休戦協定。実行不可能な項目が一つございます」
「……どういう意味です。この期に及んでまだ何か難癖をつけると?」
『第三帝国シーヴァスリー』の首席である『ノイン』の眼光がステラを射抜く。
『ノイン』――彼女が本当にステラたちの知る『ノイン』であるのかはわからない。判別がつかない。
いや、彼女がもしもオブリビオンであるというのならば、猟兵である己達であれば一目でわかるはずだ。
だが、こう相対してもオブリビオンであるとは思えなかった。
おかしい。
違和感だけが募っていく。
「いえ、今回の前哨基地襲撃に参加したゲリラ部隊の人員の処刑……は、まあ、すでに解決済みですが、まだ取り残した襲撃犯がいます」
「……『ビバ・テルメ』側が私達を欺いてると?」
「いえ、そうは申しておりません。今回の襲撃に関して行方の知れぬ機体が一騎、確実に存在しています。そう、白銀の『イカルガ』」
ステラの言葉にルクスはあれ? と思う。
『ノイン』。
オブリビオンマシンとなったゲリラ部隊の『イカルガ』と交戦した時に、戦火に紛れて消えた者である。
「そうです! そうですよ!『ノイン』さん! あの『イカルガ』に乗ってましたよね!?」
「私は本国からこうしてやってきただけに過ぎません。戦場に出ている確証がございますか?」
確かにそのとおりである。
彼女が白銀の『イカルガ』に乗っていたという事実は立証できない。あれだけの乱戦の最中出会ったのだから当然といえば当然であるかもしれない。
だからこそ、ステラはルクスに頼ったのだ。
「私達が取り逃した責はございます。ですが、すでに行われた処刑と言えど、条約を締結するためにはクリアしなければならない問題でもあります」
「些細なことです。一騎のキャバリアなど」
「どうしてでしょう? この条約は『ビバ・テルメ』側の誠意であるべきです。確かに私達が傭兵として不甲斐ない、とおっしゃられるのならば、挽回の機会を頂きたいものです」
「傭兵の仕事は、戦場を範疇にするものと思いましたが?」
「論ずるに値しない、とおっしゃられるのですか」
「ええ。確かにあなた方は、此度の最大の功労者にして戦功者。なればこそ発言を認めています。ですが、その発言が真である証明は」
「……ない、と」
「そもそも白銀の『イカルガ』など存在したのでしょうか?」
『ノイン』の言葉は取り付く島もないものであった。
こちらの反証が確実に潰される。
いや、握りつぶされている。どうしようもない状況であった。何か一つ。もう一つ確証に近いものがあればよかったのだが、あの戦いの中、それを見いだせ、というのが無理筋であった。
「うーん、でもですね」
そこでルクスがあまりにも空気を読まずに言う。
「でも、あの白銀の『イカルガ』に乗っていたのは『ノイン』さんだと思うんです」
「でっち上げもそこまで行くと真実に成るとでも言いたげな発言ですね」
「いえ! だってわたしの演奏聞いてくれなかったんですよ! わたしが『演奏を聞いてもらわないといけない一』リストのトップにいる方を、見間違える筈がないです!」
それはあまりにも暴論であった。
『ノイン』は肩をすくめている。
語るに落ちる、というものだと言うようでもあった。ステラは、あーと天を仰ぐ。
だが、ルクスはさらに続けた。
どんなに相手が聞く気がなくても聞かせてみせるのが演奏家としてのルクスである。
ちなみにリストの二番目に居るのはステラである。怖い事実が発覚した。
「なら、わたしたちが見たのが誤りであるということも言えないじゃないですか。わたしたちはわたしたちの証言が正しかったことを証明するために探させてもらっても構いませんよね?」
「無限に待つ、ということはできないですが」
「いえ、十分です!」
あ、とステラは思った。
これは悪魔の証明である。
白銀の『イカルガ』がいた、という証明ができない。けれど、いなかった、という証明もできない。
だが、ここに来て別の悪魔がやってきている。
そう、演奏の悪魔である。あ、いや、勇者。
「じゃあ、これを聞いて下さいね」
どすん、と休戦協定の場に置かれるグランドピアノ。よっこいせって感じで取り出すもんではない気がするが。
「……何を」
「いえ、この演奏はあの戦場にいた方でなければ知らない演奏なんです。はい、ルクス様、どうぞ」
私は耳栓していますから存分に、とルクスを焚き付けるステラ。
こんなにすんなり演奏を許されたのは久しぶりかもしれないので、ルクスはにっこにこである。
他の面々も同様である。
ルクスの演奏の酷さを知らないものばかりであった。
故に、被害は甚大であった。
『ノイン』は思った。
耳が変になる、と。
あまりの演奏にルクスとステラはつまみ出される。彼女たちの行いは、不平等条約を覆すものではなかった。
けれど、一つだけはっきりしたことがある。
あの『ノイン』はオブリビオンではない。けれど、白銀の『イカルガ』に乗っていた『ノイン』ではない、という確証にも至らない。
故に、彼女は。
「結界オーライ、といいましょうか」
「えー、もっと演奏していたかったですー」
「ええい、ルクス様はもう少しここぞ! というタイミングを弁えて頂きたく!」
そう、『ノイン』は『プラナスリー』という新興小国家を騙る、この事態を引き起こした、裏で糸引く悪意だと――。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
桐嶋・水之江
●塩沢家
ビバ・テルメは不安よね
水之江、動きます
まずは両方面との名刺交換から始めましょう
どうぞお見知りおきを
ビバ・テルメの皆さんには辛い要求よね?
突っぱねるしかないわよね
するとどうなる?
よろしい、ならば戦争よ
そんな戦力無い?
大丈夫
キャバリア、売るわよ
カタログの束をドン
さっきのイカルガは気に入ってくれた?
アレの設計元は私なのよ
それとも安くて扱い易い機体が好み?
ならこちらのグレイルは?
頑丈なのがいい?
だったらジオルードがお勧めよ
海岸の守りが心配?
ではウバザメをご提案するわ
兵隊の数が確保出来ないから量より質?
アークレイズ・ディナとカナリアでどう?
電子戦の備えが心配?
アークレイズ・エレノアをご用意してるわ
圧倒的なパワーで蹂躙したい?
そんなお客様にはゼルグ・ジールがピッタリよ
輸送はどうするって?
ワダツミもお買い求め頂ければ解決よ
戦艦に求めるのは火力と指揮能力?
セイヴザクイーンをどうぞ
お金が無い?
リボ払いでニコニコ返済よ
ふふふ…シーヴァスリーには感謝しているわ…
未来の顧客の危険意識を呼び覚ましてくれて
ソフィア・エルネイジェ
●塩沢家
全てはオブリビオンマシンによる所業…などと主張しても納得は得られないでしょう
メサイア!静かになさい!
ノイン首席の口振りがどうも気掛かりかですね
初めから結論を用意していたかのように思えてなりません
クィンタブル様が同席しているならノイン首席の人物像をお尋ねします
ところで…先程からハロウィンの仮装をした猟兵の方から視線を感じるのですが…
私はそれほどおかしな格好でしょうか?
発言が認められるなら私からも意見を述べさせて頂きます
被害者であるシーヴァスリーの意向は至極当然かと
ですが結論を出すには性急とも思われます
まずは事件の背景の調査を進められては?
具体的にはゲリラ側に提供された兵器の出自を明らかにしてからでも遅くないのでは?
急ぎ断罪しては判明する事実も闇の中に沈んでしまうでしょう
その方が都合が良いというのであれば別ですが
加えてビバ・テルメとシーヴァスリーの衝突を望む第三第四の勢力が存在しないとも限りません
事実、今正に水之江女史が商機を得る為に状況を利用しようとしているではありませんか
メサイア・エルネイジェ
●塩沢家
わたくしがお線香ですって!?
お墓の前にお供えされてしまいますわ〜!
お線香でなくお戦功?
わたくし偉い子ですわ〜!
ご褒美に温泉に入らせてくださいまし〜!
あら〜?
皆様どうして難しいお顔されてますの?
わたくしの温泉はどちら?
ぴいっ!
ソフィアお姉様に怒られてしまいましたわ…
温泉にも入れず怒られてしまうわたくしかわいそうですわ〜!
わたくし悲劇のお姫様ですわ〜!
はっ!そうですわ!
わたくしお戦功者なのでわたくしにもご褒美くださいまし!
温泉がよろしいですわ〜!
ご馳走も沢山欲しいですわ〜!
…ん?
そういえば先ほどの戦いでおシーヴァスリーの方々のお姿が見えませんでしたわねぇ
さては!
何もしてないのにご褒美を貰うお魂胆ですわね!
お手柄の横取りはいけませんのよ〜!
ジュディス・ホーゼンフェルト
●塩沢家
やっぱりエルネイジェのアホ姫いるじゃん…
お互い敵国同士だしバーラントの執行官の正装で行くと速攻身バレして絡まれそうだなぁ…
かと言って引き揚げたら聖下に怒られるし…
何かいい手は…
あ、そうだ
ハロウィンの仮装用に買ったアレ着ればいいじゃん!
ハロー
アタシはハロウィンの魔女ダヨー
よし完璧!
まあこうなるよねぇ
シーヴァスリーが仕組んだ茶番なんだろうけど
だって襲撃自体がシーヴァスリー側に都合良過ぎじゃない?
そりゃゲリラが決起した理由にはオブリビオンマシンの影響もあるんだろうけどさ
あのノインって首席は上手に立ち回ったねぇ
ありゃ要マークかな?
海岸線に面した領土の譲渡?
目的は港…だけじゃなくて例の巨神が本命かな?
ゲリラは口を破られる前に処刑しちゃう寸法?
アタシならそうするけど
申し子達は押され気味っぽいねぇ
まぁ政治より腕っぷしを使うタイプみたいだし、相手も手強いもんね
さぁてイェーガー諸君はこの交渉をどう転がす?
え?アタシの意見?
いやアタシは見ての通りのハロウィンパーリーピーポーですんで!
見学だけで結構!
『第三帝国シーヴァスリー』と『ビバ・テルメ』における争いは決着を見た。
ゲリラ部隊の壊滅。
オブリビオンマシンによる人々の心が狂気に囚われていたとは言え、その爪痕は深々と『ビバ・テルメ』に刻まれるものとなっただろう。
決定的な破滅に至らなかったのは、猟兵たちがオブリビオンマシンを駆るゲリラ部隊を打倒したからだ。
しかし、それは『ビバ・テルメ』に休戦協定という名の不平等条約を突きつけるものであった。
まず第一にゲリラ部隊に参加した人員の処刑。
これは猟兵の一人による剛腕たる手段によって解決され、如何にしてでもゲリラ部隊の人員を抹殺しようとした『第三帝国シーヴァスリー』の主席『ノイン』を他の猟兵達は弁舌でもって押し込んだことによって生命の損失は免れた。
とは言え、である。
これらは全てオブリビオンマシンによる所業であると説明したところで、一般人たちには通用しない。
なぜなら、オブリビオンマシンとキャバリアの区別ができ、認識できるのは猟兵だけであるからだ。
どんなに言葉を尽くしたところで、猟兵以外の人々にはオブリビオンマシンの存在すら認識できない。故に争いが起きる。
破滅の原因がオブリビオンマシンとわかっていながらも、それを口にしたところで何の解決にも至らないのだ。
ソフィア・エルネイジェ(聖竜皇女・f40112)はそれを理解していたからこそ、それまで休戦協定を締結しようとする場において発言を控えていた。
とは言え、主席たる『ノイン』の言葉、その口ぶりがどうにも気がかりである。
猟兵によって一部撤回、または譲歩を取り付けたとは言え、その口ぶりは最初から結論を知っていたかのようなものであったからだ。
故に彼女は『シーヴァスリー』の元軍人であり、『ビバ・テルメ』に帰属した見知った者……ゲリラ部隊を率いていた頭目たる『クィンタブル』の姿を認める。
彼はいの一番に首を刎ねられ処刑が済んだ、とみなされたゲリラ部隊の人員である。
彼は首元をさすっているが、何が起きたのかわかっていないのだろう。猟兵によるユーベルコードによって、斬首されても死なない状態にされての刑を処すという抜け道。
剛腕がすぎるやり方であったが、『第三帝国シーヴァスリー』からすれば、ペースを一気に猟兵に握られる要因ともなっていたのだ。
「もし、『クィンタブル』様」
ソフィアは戻ってきた彼に一つ礼をしてから尋ねる。
その様子に彼は酷く慌てた様子であった。今回のこと、そして以前のこと。それらをひっくるめてやんごとなき立場にあるのだとソフィアの人となりを知っているからだ。
「……此度は、不甲斐なきことを」
「いえ、構いません。それよりも……」
ソフィアは彼の内心を慮り、それ以上の言葉を紡がせるのを遮った。騎士として、そして目の前の将、『エース』としての彼の心に寄り添った結果であった。
だが。
「わたくしがお線香ですって!? お墓の前にお供えされてしまいますわ~!」
メサイア・エルネイジェ(暴竜皇女・f34656)の悲嘆たる叫びが響き渡った。
ソフィアのこめかみが、ピクリと動く。
「いえ、お線香ではなく。戦功、です」
『ノイン』が頭痛をこらえるようにしメサイアの言葉に告げる。先程まですんごい酷い演奏が響いていたので、まだグラグラしているのだろう。
そんな彼女の言葉にメサイアは目を、明るくする。
涙目であったからか、きらめいている。
「お線香ではなく、お戦功? わたくし偉い子ですわ~! ご褒美に温泉入らせてくださいまし~!」
メサイアの振る舞いは、皇女のそれではなかった。
幼子のような空気の読まなさ加減。
この休戦協定締結の場において、もっとも似つかわしい皇女がメサイア、彼女であった。いやまあ、立場を公にしていないのだから、いいけど。いや、よくはないでしょ。
なんで此処に『エルネイジェ王国』の皇女が二人も揃ってんの!? とジュディス・ホーゼンフェルト(バーラント機械教皇庁三等執行官・f41589)は頭を抱えていた。
エルネイジェのアホ姫ことメサイア・エルネイジェ。
彼女の動向は機械教国連合においても注視されるものであった。故にジュディスは一方的に彼女のことを知っていたし、またメサイアの姉であるソフィアのことも知っていた。
けれど、此処で自らが存在することを明かすわけにはいかない。
互いに敵国。
己はバートランとの執行官の正装を身にまとっている。メサイアはともかく、ソフィアの前に出れば一発で身元が割れる上に絡まれてしまう。
かと言って、である。
「此処で引き上げたら何の成果もなし、ってことになるし……聖下に絶対怒られるし……」
何か上手い手は……とジュディスは頭をひねる。
あ、そうか、と思ったのだ。
「この格好だからバレるわけで。なら、ハロウィンの仮装に買ったアレ着ればいいじゃん!」
そういうわけで今のジュディスはバートランとの執行官ではなく。
ただのハロウィンの魔女なのである。
そこはかとなくコスプレ感が漂っている。休戦協定という重苦しい空気の中では浮きまくっている。あと露出がすごい。ものっすごい浮かれた人が場の空気を読まないあれであった。
メサイアとかなり良い勝負の空気読まない感じ。
「ハロー、アタシはハロインの魔女ダヨー」
なんて言っていると、メサイアの温泉コールに怒髪天を衝くソフィアの怒号が響き渡る。
「メサイア! 静かになさい!」
「ぴいっ!」
「はいっ!」
ついでにジュディスも背筋を伸ばした。
「それで『クィンタブル』様」
「はい……『ノイン』、と呼ばれる主席は、私が『シーヴァスリー』に居た頃には、いませんでした。名も、姿も、存在も。無論、同期や部下にも。私が取りこぼしていなければ、ですが……」
「よしなに」
ソフィアは、その言葉だけで十分であった。
『ノイン』。
その名。多くの猟兵が違和感を覚えている存在。
彼女が元より『第三帝国シーヴァスリー』と名乗る以前の『シーヴァスリー』に居たのならば、此度の事態はもっと単純だったのだろう。
だが、そうではない、ということがソフィアに『クィンタブル』の言葉から確証が得られる。
というか、なんでしょう、とソフィは首を傾げる。
メサイアを尻叩きしながら、どうにも視線を感じる。その視線の主はジュディスであった。ハロウィンの仮装をした猟兵、魔女コスプレなジュディスからの視線にソフィアは自分がメサイアを尻叩きの折檻をしているのがあまりにも可笑しいと思われているのかも知れないと勘違いしていた。
ジュディスにとっては幸いなことであるが。
「お悲劇ですわ~温泉にも入れず、ソフィアお姉様からは尻叩き……わたくしかわいそうですわ~!」
尻叩きから開放されたメサイアがチラッとジュディスを見る。
いや、そんな目で見られても、とジュディスは思った。いや、本当に困る。え、なんなのあのエルネイジェの姫。ずっとこっち見てるんだけど!
もしかしてバレてる!?
「わたくし悲劇のお姫様ですわ~!」
メサイアは慰めて、という感じであったが、期せずしていい具合に敵国であるバートラントの執行官を牽制していたのである。本当に偶然であるし、まったく意図してないけど!
「これにて条約は締結でよろしいですね。両者合意の元……」
「もう一つ。私からも意見を具申させて頂きます」
ソフィアが手を上げる。
その佇まいに両国の関係者は、空気が張り詰めるのを感じたことだろう。ただそこにある、だだ声を発する。それだけで溢れるは場を支配する力。
王族、というのならば、正しくソフィアがその貫禄を一瞬で見せつけたものであった。
ジュディスはこれがあるから、とエルネイジェが脳筋めいた思考を持ちながら長らくバートラントとの敵対関係を続けてきた要因であると理解する。
「被害者である『シーヴァスリー』の意向は至極当然。ですが、性急であるとも」
「何故、そう思われるのですか」
「事件の背景の調査が進んでいないからです。事の起こりを全て詳らかにしてからでも条約締結は遅くはないかと」
だが、すでにゲリラ部隊に参加した人員の処刑は済んでいる。
いや、『ノイン』、『第三帝国シーヴァスリー』の思惑とは異なる決着で、だ。故にソフィアの言葉は無用なるものであるように思えたかもしれない。
「確かにすでに刑は処されて罪は灌がれています。ですが、此度のような事態を憂う気持ちもまた両国共にあるもの。ならばこそ、再発を防ぐためにも、因果関係ははっきりさせなければならないでしょう」
「……具体的には」
『ノイン』の眉根が寄っている。
ここまで表情に感情が出る、ということ事態稀であるのだろう。
彼女の忌々しげな表情をソフィアは読み解きながら頷く。
「はっ! そうですわ!」
だが、そこから付け入ろうとした瞬間、メサイアが飛び上がる。
「わたくしがお戦功者なのでわたくしにもご褒美下さいまし!」
空気読まない。
マジで? とジュディスは思った。マジでこの姫、ヤバい、と。
「温泉がよろしいですわ~! ごちそうも沢山ほしいですわ~!」
だが、ソフィアは止めなかった。
その瞳に在るのは怒りでもなく、愚妹に対する諦観でもなかった。ジュディスは背筋が凍る思いだった。
こうなる、と。
理解していたかのようなソフィアの振る舞い。
「……ん? そう言えば先程の戦いで、お『シーヴァスリー』の方々のお姿が見えませんでしたわぇ。さては!」
そう、先程の戦いにおいて終始砲撃はあったが、しかし『第三帝国シーヴァスリー』側のキャバリアは出てこなかった。
戦場にあるのは猟兵達と『ビバ・テルメ』のゲリラ部隊の『イカルガ』のみ。
言ってしまえば『第三帝国シーヴァスリー』は漁夫の利を得たようなものであった。
それを指摘する者は誰もいなかった。
けれど、メサイアは空気読まずに、いや、敢えて空気を読まなかったのではないかという印象さえ『第三帝国シーヴァスリー』に与えたことだろう。
おちゃらけてポンコツめいた振る舞いは、こちらを欺くためのブラフなのだと。
「何もしていないのにご褒美を貰うお魂胆ですわね! お手柄の横取りはいけませんのよ~!」
「メサイア」
「ぴゃい」
そんなメサイアを一言で御すソフィア。
戦慄が走る。
「このように事を急ぎ断罪するような物言いをすれば、真実とは闇の中に沈んでしまうもの。そうなれば、此度の戦いから得られたものは全て水泡に帰す、というもの。その方が都合が良い、というのであれば話は別ですが」
「そんなことは」
ない、と言い切る『ノイン』にソフィアは笑む。
「なれば、背景の調査を。加えて、此度の戦いには『ビバ・テルメ』と『第三帝国シーヴァスリー』の衝突を望む第三、第四の勢力が存在しないとも限りません」
その言葉にジュディスは気がつく。
気が付かれているのではないかと。ただ、今己が見逃されているだけではないかと。いや、と頭を振る。
バートラントの影を察知しているのか。それとも、と考えをめぐらしたジュディスをよそにソフィアは、手を『ビバ・テルメ』の『神機の申し子』たちを集めて何やら、桐嶋・水之江(機巧の魔女・f15226)が休戦協定の場の隅でごそごそやっているのを示す。
「あちらで水之江女史が商機を得ようと状況を利用しているではありませんか」
そう、彼女が示した先にいたのは水之江が分厚いカタログを広げて『ツヴェルフ』以外の『神機の申し子』たちに己の商材を提示していた。
そう、水之江、動きます、というやつである。何が? え、わからん。
「彼女は一体……」
「『ノイン』主席……これを」
『ノイン』は動揺していた。
だが、同時に側近が何やら一枚の紙片を手渡す。
其処に在ったのは『桐嶋技研』の名が刻まれた名刺であった。
「どうぞお見知りおきを」
そっちは後で、と言わんばかりに水之江は『エルフ』、『ドライツェーン』、『フィーアツェン』を前にプレゼンテーションを開始していた。
何をって?
当然、桐嶋技研で生み出されたキャバリア兵器群のプロモーションである。
「わかるわ、わかるわよ。この不平等条約、辛い要求よね? 突っぱねたいわよね? でも、それをするとどうなる? よろしい、ならば戦争よ、ってことよね?」
「え、あ、はい」
あまりの強引さに三人は互いに顔を見合わせるしかない。
だってそうだろう。
いきなりすぎる兵器群紹介に目を回すのだから。
「戦力がないっていうのは辛いところよね。四人だけで今まで保たせてきた戦線。でも、不平等条約で更に闘うのは厳しくなってしまう。そうなってしまえば、戦力の増強なんてできやしないわ。だって国内の生活で手一杯なんだもの!」
でもね、と水之江は笑む。
すごく良い笑顔であった。すごく怪しい笑顔でもあったけど。
「そこでこれ! キャバリア、売るわよ!」
大丈夫、桐嶋技研のキャバリアだよ。
そんな攻略本みたいに言われても、と思ったかも知れない。いや、『神機の申し子』たちにとってはあまりにも膨大な資料だった。
「さっきの『イカルガ』気に入ってくれた?」
ぼそ、と水之江は『エルフ』の耳元に囁く。
「……何を、どういう!?」
「あれ、設計元は私なのよ。あ、もしかして高性能量産機じゃなくて、もっと安価で扱いやすい機体が好み? ならこっちの『グレイル』なんてお勧めよ」
「いや、そうじゃなく」
「あ、頑丈なのがいいのかしら。人員の安全を最優先。わかるわ。機体はいくらでも作れるけど、経験を積んだパイロットは簡単にはいかないものね。なら『ジオールド』なんてお勧め!」
なんて言ったって、実体武装に強固な装甲を有しているからパイロットの安全性、生還率はピカイチ!
止まらない。
マジで水之江のプレゼンテーションが止まらない。
「それは大切なことですが……」
「あ、もしかして、さっき取られちゃった制海権のことが気がかりかしら。なら、『ウバザメ』をご提案するわ。無人制御可。高周波ダガー・レーザー発振機搭載触手・小型魚雷を装備して、支援ユニットもオマケでついてくるお得感! あ、それよりも兵隊の数が確保できないから今までみたいに量より質? それなら『アークレイズ・ディナ』と『カナリア』でどうかしら? どちらも高性能よ。他を圧倒する機体性能を引き出せるパイロットが必要だけど、使いこなせれば貴方達の『セラフィム』に近しい働きをしてくれるわ!」
グイグイ来る。
すんごい来る。『ドライツェーン』はたじたじであった。
「そんな不安な顔しちゃって! 電子戦だってお任せよ。『アークレイズ』シリーズの『ディナ』にかわり、『エレノア』でカバー! そういう細かいことはいいんだよ! 圧倒的なパワーで蹂躙しちゃう? そんなお客様には『ゼルグ・ジール』がぴったりよ!」
水之江の精神が形になったスーパーロボットのカタログスペックは目をむくようなものであったが、どれもこれも過剰である。
それを今まさに水之江は『ビバ・テルメ』に売っぱらおうとしているのだ。
『第三帝国シーヴァスリー』からすれば、厄の種である。
「輸送だって簡単よ。ワダツミ級戦艦もあるわ! あ、でも戦艦に求めるのは火力と指揮能力よね?『セイヴザクイーン』もどうぞ!」
「ま、まってください。お、お金が、用意できません……!」
「大丈夫、リボ払いでニコニコ返済よ」
どうあっても買わせる気だ、と三人の『神機の申し子』たちは『ツヴェルフ』に助けを求めるが、彼女だって今いっぱいいっぱいなのだ。
「……あのような方もいらっしゃるのです。水之江女史だけに限った話ではないでしょう。第三国、第四国の存在もちらついています」
故に、とソフィアは『ノイン』たちを始めとする『第三帝国シーヴァスリー』に告げる。
性急さは身を滅ぼす、と。
そして、締結された休戦協定は当初の不平等条約からは、大幅に譲歩が引き出せるものであった。
一つ、ゲリラ部隊の処刑はすでに行われている。そして、背後関係の調査を行うことを確約する。
一つ、プラントの譲渡は一基。
一つ、海岸線の領土の譲渡ではなく、制海権を『ビバ・テルメ』から『第三帝国シーヴァスリー』へと移管する。
「はー、こうなったか。まあ、『第三帝国シーヴァスリー』が仕組んだ茶番にしては上出来な譲歩を引き出せたってことろね。とは言え」
ジュディスは締結された休戦協定の場から離れ『ダークイーグル』のコクピットで浮かれた衣装から着替える。
そう、この争い事態が『第三帝国シーヴァスリー』に都合が良すぎる。
オブリビオンマシンという要因あれど、それは猟兵にしか認識できないことだ。
となれば、あの『ノイン』という主席こそ、今回ジュディスが得る情報の中では最も価値がある存在だ。
「上手に立ち回りすぎている。ありゃ要マークだね。ともすれば」
己の国にさえ牙を向く可能性がある。
そして、海岸線の領土の譲渡。
あれはおそらく港が目的ではなかったのだろう。制海権を主張したところから見ても、真っ黒だ。
「海底に再び沈んだっていう『巨神』が本命だね、あれは。でも、一番の誤算は、ゲリアの口を封じれなかったってことか」
自分ならば他の二つの条件を破棄してでも口を封じるだろう。
けれど、この状況では無理押しに過ぎないこともわかる。
この場に猟兵がおらず、『神機の申し子』たちだけであったのならば、良いように言いくるめられていたことだろう。
「イェーガー諸君の働きのおかげってことかな。ま、良いように転ぶでしょう」
少なくとも、とジュディスは思う。
これが『第三帝国シーヴァスリー』にある悪意を手繰る者の意に沿う結果ではなかったのだと。
今はまだ、そうであったと『ビバ・テルメ』の人々は安堵を覚えるしかないのだ。
どれほどの戦乱がこれより迫るのだとしても――。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵