永久凍土に響く歌
●
止まない雪、溶けない氷、終わらない冬。
ここはロシア北部の未開拓地。あらゆる生命の存在を拒む、永久凍土の大地だ。
「毎日毎日、嫌になるぜ……」
この土地の「開拓」を命じられた獣人達は、今日もスコップで雪をかき、凍った土を掘り返す。
だが、この命令が建前に過ぎないことは、ここに送られてきた誰もが知っていた。
「クソっ! ワルシャワの奴らめ、よくも……」
「おい、声がでかいぞ。気をつけろ」
労働者達の上空には、今日も禍々しい目の形をした『|五卿六眼《シャスチグラーザ》』が浮かんでいる。
そして、開拓地の中央から聞こえる歌声――美しく、しかし無機的なメロディが、彼らを監視していた。
「公にヤツらの所業を批判してやったんだ。こうなる事はわかってたさ」
「けど……無念だ。こんな所で終わりだなんて」
もともと、彼らは民営のラジオ局のひとつとして活動していた。
だが、彼らの流した「放送」は、ロシアを実効支配する「ワルシャワ条約機構」のお気に召さなかったらしい。
ある日突然兵隊がやって来て、令状もなしに逮捕され、この開拓地に送られた。
彼らはここで死ぬかオブリビオンになるまで、不毛な開拓を続ける定めなのだ。
開拓地は強大なオブリビオンに監督・支配され、周辺も厳重に警備されている。
逃亡を試みた者は、いずれも凍土に屍を晒す羽目となった。
『♪~』
今日も歌声は響き続ける。勇士たちの悲哀を慰めるように、あざ笑うように。
止まない雪、溶けない氷。ワルシャワの支配に終わりはない。
●
「事件発生です。リムは猟兵に出撃を要請します」
グリモアベースに招かれた猟兵達の前で、グリモア猟兵のリミティア・スカイクラッド(勿忘草の魔女・f08099)は淡々とした口調で語りだした。
「獣人戦線のロシア方面にて、ワルシャワ条約機構に永久凍土送りにされた人々の開拓地を発見しました」
異世界のオブリビオンによる「超大国」の侵略を受けている獣人戦線。その広大なロシアの地を全域支配しているのが「ワルシャワ条約機構」だ。彼らが掌握したロシア上空には「|五卿六眼《シャスチグラーザ》」と呼ばれる、監視目的で作られたという大呪術が浮かんでおり、ダークセイヴァーの影響を強く感じさせる。
「ワルシャワ条約機構における獣人達の迫害は、他の地方にもまして苛烈なものです」
ロシア人はクマを主体とする勇猛な民族であるにも関わらず、彼らの反抗活動は尽く封じられ、反逆者達は「永久凍土送り」にされている。不毛な永久凍土の開拓を命じられた彼らは、極寒での過酷な奴隷労働により、いずれ全員死を迎える事となる。
「そして、その中でも真に強き者はオブリビオンとして死後蘇り、ワルシャワの勢力をより盤石にするのです」
ワルシャワ条約機構は支配地の住民を無理に生かしておく必要などなく、むしろ殺したほうが有益であると、よく把握している。過剰な取り締まりや粛清の果てにロシア人が全滅したとしても、彼らはまったく気にしないだろう。その冷酷さは他の超大国に勝るものと言えるかもしれない。
「今回、皆様に救出してほしい人々は、ラジオを通じてワルシャワ条約機構の非道を民衆に訴える活動を行っていました」
獣人戦線ではラジオ放送によるニュースやプロパガンダ、そして娯楽の発信が盛んだ。そこに目をつけたとあるグループは、オブリビオンに虐げられた人々を励まし、支配されたロシアの現状を国外に伝えようとしていた。当然ながら、このような活動をワルシャワ条約機構が見過ごすはずがない。
「彼らは『永久凍土開拓地』に送られ、極寒の地での強制労働により、無念の最期を迎えようとしています」
電波と言葉でワルシャワ条約機構に立ち向かった勇敢な反逆者達を、このまま見捨てる訳にはいかない。開拓地を破壊し、獣人達を助け出すのだ。ヨーロッパ・中国に続いてロシアにおける超大国への反撃は、ここからが第一歩になるだろう。
「まずは開拓地の周辺を哨戒するワルシャワ条約機構の『雪かき部隊』を撃破してください」
雪かき部隊は専用装備で武装したユキウサギ獣人のオブリビオンで構成されており、雪上での戦いはお手の物だ。
永久凍土開拓地の警備隊としてはこれ以上ない人選で、正面対決だと実力以上に難しい戦いを強いられるだろう。
「あまり時間をかけると、開拓地のボスにこちらの侵入を気付かれてしまいます」
そうなると、内部で働かされている獣人達も反逆者を手引きした疑いをかけられ、見せしめに殺されてしまう。
先述した通り、ワルシャワ条約機構は支配地域の獣人を殺すことになんの躊躇いもない。奴らに無用の血を流させないためには、迅速に雪かき部隊を撃破しなければならない。
「この開拓地を監督・支配しているボスは『機械仕掛けの歌姫マリア』というオブリビオンです」
彼女は超大国に捕まり兵器として改造されたカラスの獣人だ。かつてはその歌声で戦場の兵士達を癒していた歌姫だったが、今ではワルシャワ条約機構に従う自律式音響兵器として扱われている。機械のようにぎこちなく動き、高らかに歌う姿はさながら黒い天使である。
「強敵ですが、彼女を撃破すれば開拓地に主だった戦力は残っていません」
あとは強制労働に従事させられていた獣人達を救出し、開拓地を破壊して逃げるだけだ。すぐには追っ手のかからない場所まで逃げ切れれば、ひとまずは安心と言える。解放された人々はひとときの休息を経たのち、またラジオを通じてワルシャワ条約機構に立ち向かうことだろう。
「闇の支配にも屈しなかった勇士達の命を、ここで終わらせるわけにはいきません。どうか、皆様の力をお貸しください」
説明を終えたリミティアは手のひらにグリモアを浮かべ、ワルシャワ条約機構が支配する開拓地への道を開く。
溶けない永久凍土の地にて、氷に勝る非情と冷酷さで獣人達を虐げる、恐るべき超大国との戦いが幕を開ける。
「転送準備完了です。リムは武運を祈っています」
戌
こんにちは、戌です。
今回のシナリオは獣人戦線のロシアにて、ワルシャワ条約機構に「永久凍土送り」にされた人々を救出する依頼です。
1章は開拓地周辺を警備する『雪かき部隊』との集団戦です。
時間をかけると猟兵の襲来をボスに気付かれてしまい、開拓地にいる人々の身にも危険が及ぶため、迅速に撃破する必要があります。
2章は開拓地のボスである『機械仕掛けの歌姫マリア』との決戦です。
歌唱の才能を音響兵器として改造された悲劇の歌姫ですが、彼女を倒さずして開拓地の人々を救い出すことはできません。全力をもって撃破してください。
無事に戦闘に勝利すれば、3章は開拓地から脱出した人々との日常パートになります。
彼らはひとまず安全な場所まで逃げた後、再びラジオによるワルシャワへの抵抗運動を始めるでしょう。良ければ猟兵もそれに協力したり、交流を深めてください。
それでは、皆様のプレイングをお待ちしております。
第1章 集団戦
『雪かき部隊』
|
POW : 特攻そりドーザー
【そりをブルドーザーに見立てて前方に構えた】姿勢のまま、レベルkm/hで移動できる。移動中は、攻擊が命中した敵に【移動中に巻き込んだ雪をぶつけ、雪だるま化】の状態異常を与える。
SPD : 雪隠れステルスアタック
対象を【雪隠れマント】で包む。[雪隠れマント]は装甲と隠密力を増加し、敵を攻撃する【ための雪かきスコップ】と、傷を癒やす【と同時に身を隠す雪】を生やす。
WIZ : 雪兎塹壕線
【|大砲穴《トーチカ》と降雪放射器】【雪壁生成機、自動追尾式雪兎型氷結爆弾】【もしもの時の自爆スイッチ】を備え、内部の味方は睡眠不要になる塹壕を、1日にレベルm掘ることができる。
イラスト:あさぎあきら
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
|
種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
レティシア・ハルモニアス
夢幻戦線
成る程、天牙達はラジオ放送をしていた此奴らを夢幻戦線に入れようとしたが先を越されたと…
とりあえず、迅速かつ最速で奴等を仕留めるのじゃ…
小声で呟きながら敵を見ながらUC発動して敵に紅い矢弾の雨を敵を次々と撃ち抜いていく
次は…!何奴じゃあ?!
UCの効果で復活の魔眼を発動して敵の攻撃を予知してその場所に対して呪殺弾を放ち敵を撃ち抜き倒していく
吹き飛ばしてや…ちぃ!爆破だと敵にバレる!
仕留めそこねた敵が攻撃してきたのでオーラ防御で防ぎながら爆破を放とうとしたがバレると判断して熱属性のエネルギー弾と呪殺弾を放ち敵に攻撃
(隠密任務は難しいのう!…じゃが必ず全員助ける!)
と心に秘めながら敵に攻撃した
黎明・天牙
夢幻戦線
あいつ等を仲間にしようと思って接触を図ろうとしてたんだが…前の戦争で先延ばしになっている間に先を越されたか…くそ
戦争に行っている間にスカウトしようとした獣人達が捕まっていた自身の段取りの悪さを嘆く
『どうするの?こういう場所だし今いるの私達だけだし…』『仕方が無い…準備はいいか?』
弓矢を構えるリズとヴォルガが小声で俺達に指示を出していた
…行くぜ
UC発動して神眼で雪景色であろうと敵の姿がはっきり見えるので振動の力を纏った衝撃波を放ち敵に攻撃
『私も…!』
リズが電撃の矢を放ち敵を攻撃する
『ティニ、サポートする』
ヴォルガがUC牙狼狙撃・インソムニア・スナイプでティニに攻撃しようとした敵を狙撃した
「あいつ等を仲間にしようと思って接触を図ろうとしてたんだが……前の戦争で先延ばしになっている間に先を越されたか……くそ」
ワルシャワ条約機構の支配地域で、ラジオによる反抗活動を行っていたロシア人達。彼らの存在を黎明・天牙(夢幻戦線のリーダー『パラダイス・ブレイカー』・f40257)は以前から知っており、自分の隊にスカウトしようと考えていた。それ故に、彼らが捕まったとの報せを聞いた時には、もっと早く動いていればと自身の段取りの悪さを嘆いた。
「成る程、天牙達はラジオ放送をしていた此奴らを夢幻戦線に入れようとしたが先を越されたと……」
先月起こった別世界の戦争に参加している間に、ワルシャワ側に先手を取られた形だ。このまま彼らを見殺しにできない気持ちは、レティシア・ハルモニアス(奪われた全てを取り返す為に~吸血鬼戦線~・f40255)も同じだった。永久凍土の過酷な開拓が彼らの命を奪ってしまう前に、一刻も早く救出しなければならない。
「とりあえず、迅速かつ最速で奴等を仕留めるのじゃ……」
小声で呟きながらレティシアが見つめる先には、哨戒を行うユキウサギの『雪かき部隊』の姿がある。彼らに見つかり騒ぎが広がれば、開拓地にいる獣人達があらぬ嫌疑をかけられる恐れがある。正面から戦って負けるつもりは無かったが、倒し方にも気をつけなければいけない状況だった。
『どうするの? こういう場所だし今いるの私達だけだし……』
『仕方が無い……準備はいいか?』
同行する夢幻戦線のメンバー、ライオンのリズは弓矢を構え、オオカミのヴォルガが小声で指示を出す。これ以上の増援を待てない以上、今いるメンツで最善を尽くすしかない。とにかくボスへの報告はさせぬまま、雪かき部隊を隠密裏に壊滅させることだ。
「……行くぜ」
戦いの口火を切ったのは【『パラダイス・ブレイカー』神蛇雀男】を発動した天牙。神眼によって雪景色でも敵の姿をはっきりと視認し、振動エネルギーを纏った衝撃波を放つ。無限大の射程を持つその一撃は、奇襲には最適だった。
「うぎゃッ?!」「なんだ!」
「悪いが挨拶しておる時間はない!」
攻撃を受けて警戒態勢に入る雪かき部隊に、レティシアが追撃を放つ。吸血鬼の女王が力を込めた【紅い矢弾の雨】は、雪に覆われた大地を血の色に染めながら敵を次々と撃ち抜いていく。この不意打ちだけで4体のユキウサギ兵士が倒れ、骸の海に還っていった。
「次は……! 何奴じゃあ?!」
しかしまだ部隊を全滅させた訳ではなく、雪隠れマントに身を包んだ兵士が雪かきスコップで攻撃を仕掛けてくる。
この場所は連中にとって庭のようなもので、環境を利用した【雪隠れステルスアタック】を事前に察知するのは難しい。未来を予知する【復活の魔眼】を発動していたレティシアでなければ、不意を突かれていただろう。
「そこか!」
「ぎゃうっ!?」
レティシアは敵兵が潜んでいる場所を狙って闇刃銃『エレクトニアス・ヴァラージュ』を向け、呪殺弾を撃ち込む。
雪隠れマントには装甲の強化と一定の治癒力もあるようだが、彼女の銃撃はそれを上回る。呪いの弾丸に心臓を射抜かれた雪かき兵は、甲高い悲鳴とともに命を落とした。
『私も……!』
『ティニ、サポートする』
猟兵の二人に負けてはいられないと、リズも弦を引き絞って電撃の矢を放つ。敵からの攻撃は【牙狼狙撃・インソムニア・スナイプ】を発動したヴォルガが毒弾丸で撃ち返して相方を守る、二人で攻防隙のない戦いぶりを見せていた。
「うぬぬ……こいつら、どこからやって来たんだ?」「ここはボスに報告を……!」
旗色が悪いと察した雪かき部隊は、玉砕覚悟で戦い続けるよりも敵襲の情報を開拓地に報告することを優先しだす。
哨戒という彼らの任務を考えれば当然の行動だが、それを許してしまったら猟兵の作戦は台無しだ。遭遇した兵士は一人残らず倒さなければ。
「吹き飛ばしてや……ちぃ! 爆破だと敵にバレる!」
仕留め損ねた連中をまとめて爆撃しようと考えたレティシアだが、大きな爆発など起こせば自分達の存在を喧伝するようなもの。咄嗟に熱属性のエネルギー弾と呪殺弾に切り替え、逃げようとする敵から着実に数を減らすことにする。
「みぎゃんっ!?」「よ、よくもぉッ!」
反撃してくる兵士もいるが、ステルスアタックさえ見抜ければ、ただの雪かきスコップの攻撃が彼女のオーラ防御を突破することはない。直後に銃弾を浴びるか、電撃の矢に射られるか、振動の衝撃波に吹き飛ばされるか――いずれにせよ任務を全うすることなく死を迎える事となる。
「あいつ等を死なせる訳にはいかねえ」
人材確保では遅れを取ってしまった天牙だが、まだ手遅れになった訳ではないと、真剣な表情で振動の力をふるう。
リズも、ヴォルガも、リーダーである彼の勇戦に応えるような正確な狙撃で、敵を撃ち抜き進路をこじ開けていく。
(隠密任務は難しいのう! ……じゃが必ず全員助ける!)
そしてレティシアも、強い想いを心に秘めながら雪かき部隊を攻撃し、ボスの元まで情報を持ち帰らせない。あまり目立たないのは得意ではないが、それでもやらなければ多くの人が死ぬのだ。ならば成し遂げてみせようと、夢幻戦線のメンバーは密やかに開拓地へと迫りつつあった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ウルリック・イーゴン
(終わらない戦線か…。嫌な世界だな。)
だからこそ平穏を求めて戦う者を見過ごすのは目覚めが良くありません
捕虜は解放させて貰いますよ
【ブラッド・ガイスト】を起動し、全ての装備武器を殺戮捕食形態へ
俺自身も【リミッター解除】し【限界突破】した【第六感】で敵の動きを【見切り】攻防に活用
Deathstalkerで【騎乗突撃】を敢行しつつStingerの【誘導弾】で【制圧射撃】し【範囲攻撃】
【悪路走破】能力も貴女方と比べて劣るつもりはありませんよ
側面や背後から強襲し、処理を容易にしましょう
敵の攻撃は【グラップル】技術と殺戮刃物で【受け流し】つつ【切断】
雪も【解体】してしまえば雪だるまにされる心配は無い筈です
(終わらない戦線か……。嫌な世界だな)
異世界から現れた6つの超大国との戦争が、100年以上に渡って続く獣人戦線。その戦禍がどれほどの悲劇を起こしてきたかを想像し、ウルリック・イーゴン(Volker・f27829)は眉をひそめた。オブリビオンによる虐殺と支配は留まることを知らず、終結の兆しは未だない。
「だからこそ平穏を求めて戦う者を見過ごすのは目覚めが良くありません」
そう言って彼はカスタムバイク「Deathstalker」に乗り込むと、【ブラッド・ガイスト】を起動し全ての装備武器を殺戮捕食形態へ移行する。さらに彼自身もリミッターを解除して戦闘力の限界を突破。禁忌のオーバーテクノロジーによって生み出された「人造吸血鬼」が、極寒の凍土にて牙を剥く。
「捕虜は解放させて貰いますよ」
「なっ!?」「誰だオマエ!」
開拓地の哨戒にあたっていた『雪かき部隊』は、見慣れぬ敵襲を察知すると即座に迎撃体制に入った。ユキウサギの獣人のみで編成された彼女らは、その名の通り雪上戦に長けている。防具を兼ねた防寒装備に雪かきスコップの打撃、そしてソリによる機動力も侮れない。
「狙いは労働者どもの解放か!」「やらせないぞ!」
彼女らはソリをブルドーザーに見立てて前方に構えた姿勢で、猛スピードの【特攻そりドーザー】を仕掛けてくる。
これに対してウルリックは巧みなハンドルさばきで衝突を避け、敵側面に回り込むようにバイクを操縦する。リミッターの解放により強化された第六感が敵の行動を見切り、的確な対応を可能にしているのだ。
「Deathstalkerの悪路走破能力も、貴女方と比べて劣るつもりはありませんよ」
「なんだって……うわぁッ?!」
そのままウルリックは敵部隊の横腹を刺すように騎乗突撃を敢行すると、強襲兵器「Stinger」のトリガーを引く。
発射された誘導弾は雪かき部隊の兵士達を正確に追尾し、爆発によって制圧する。轟音と爆風が雪煙を起こすなか、彼を乗せたバイクは自在に雪上を駆け巡る。
「ウソだろ……ボクたちより速いっ!?」
「驚くほどの事ではありません」
極限環境に於ける戦闘力を追求して『調整』されたウルリックは、やや器用貧乏な側面こそあるが適応力においては比類ない。雪かき部隊のお株を奪うような雪上機動力をもって、容易に側面や背後を取り、迅速に敵を処理していく。
「ま、負けるかっ!」
雪かき部隊にも意地はあるのか、強引に方向転換して特攻を仕掛けてくる兵士もいる。決死の形相を見せる彼女らに対し、ウルリックはマスクの下で冷静な表情のまま――持ち前のグラップル技術で衝撃を受け流し、殺戮刃物を一閃。積み込まれていた雪ごとソリをばらばらに解体する。
「失礼、先を急ぐので」
「そんな……ぎゃッ!!」
おおかた雪をぶつけて雪だるまにする気だったのだろうが、雪ごとバラしてしまえばその心配もなし。まだ余裕さえ感じる所作のまま、彼は敵兵の喉笛をかき切り仕留めると、捕虜が囚われている開拓地へバイクを走らせるのだった。
大成功
🔵🔵🔵
レヴィア・イエローローズ
黄薔薇開花・虚構にして絶対の過去の契約履行と合わせ、UCを発動
貴方達には自害してもらう約束と命令があったはずだけれど?
そう言って『過去の約束』と『絶対的な精神感応』で、遠距離から隠密状態で効果を発揮させ、誰も来ない場所へ赴かせて自害させるわ
自害したオブリビオン兵を追いやるだけでなく、洗脳させたオブリビオン兵を使ってわたくしを捕えた侵入者として内部へと連れ込み、そこから警備内部を洗脳
脱出の際の準備を整えさせた後、自害する様に命じるわ
さて、準備は済ませたわ……後は放送局のメンバーを救出するだけよ
「我が黄色に応じて開花せよ、羨望の深淵。それは虚構の契約を過去に刻む黄薔薇の誓約書。例え虚構でも契約を交わしたならば遂行は可能」
雪と氷が支配する極寒のロシアに降り立ったレヴィア・イエローローズ(亡国の黄薔薇姫・f39891)は、遭遇した『雪かき部隊』の前で1枚の羊皮紙を取り出す。それは【黄薔薇開花・虚構にして絶対の過去の契約履行】。存在しない『過去の約束』を捏造し、他者に強制履行させるユーベルコードだ。
「貴方達には自害してもらう約束と命令があったはずだけれど?」
「え、ええっ?!」「そんな命令、された覚え……」
それを聞いたユキウサギ達は寝耳に水とばかりに驚くが、誓約書には確かに約束した旨が記されている。この能力は因果律に干渉するユーベルコードであるため、対象の合意は必要としない。どんなに理不尽で不都合な約束でも、必ず履行を迫るのだ。
「我が黄色に応じて開花せよ、羨望の深淵。それは精神ある存在に銘ずる絶対遵守の命令。それは正に王たる者の資格である」
ダメ押しにレヴィアは【黄薔薇開花・王位持つ者の絶対命令権】を同時使用。対象の精神領域に干渉する精神感応を放ち、雪かき部隊が命令を絶対遵守するよう圧をかける。強力な支配系のユーベルコードを2つも重ねがけされては、雪かき部隊に抵抗の余地はなかった。
「そういえば……そうだった……」「はい……わかりました……」
ユキウサギ達は催眠状態のようにぼうっとした表情になり、ソリを捨ててのろのろと歩きだす。そして誰も来ない場所まで赴くと、持っていた雪かき用のスコップで自分や仲間の頭をかち割り始めた。本人の意思を捻じ曲げて生命さえ捨てさせる、その光景はオブリビオン相手とはいえ恐ろしいものがあった。
「ああ、貴方達はまだ死んではいけません」
遭遇した雪かき部隊の大半を自害に追いやったところで、レヴィアは一部の者だけは死なせず洗脳下に置いておき、開拓地に潜入するための手引きをさせる。こいつらが自分を捕らえたことにして連行させれば、哨戒の目を容易にすり抜けられるだろう。
「わたくしを開拓地まで連れていきなさい」
「はい……」
今やレヴィアの傀儡となった雪かき部隊は、形式的に彼女に縄をかけて開拓地まで引っ張っていく。ほどなくしてたどり着いたのは、鉄条網と壁で囲われた収容所の如き施設だった。ここにワルシャワに反抗的な獣人達が押し込まれ、永久凍土の開拓という理不尽な酷使を受け続けているのだ。
「失礼します! 怪しい者を捕らえました!」
「なに? どこの手の者だ」「すぐにボスに報告を……」
哨戒の雪かき部隊が捕虜を連れて戻ってくれば、開拓地の警備員はしかるべき対応を取り始める。だが、まだここで猟兵の襲来を伝えさせるわけにはいかない――レヴィアはさっと縄を外すと、雪かき部隊にしたのと同じように警備員の洗脳を図る。
「貴方達には脱出の際の準備を整えてもらいます。その後は自害するように」
「ぁ……はぃ……」
下級オブリビオンで構成された警備員など、猟兵たるレヴィアにかかれば脅威にならず。囚われている獣人達を迅速にここから逃がすための算段を、あらかじめ立てておくのが彼女の目的だ。誰も気付かないうちに、警備内部は黄薔薇のユーベルコードに掌握されつつあった。
「さて、準備は済ませたわ……後は放送局のメンバーを救出するだけよ」
すべての仕込みが完了すれば、レヴィアはいよいよ本命に向かって動きだす。放送局メンバーを解放するには、ここのボスとの戦闘は避けられないだろうが負ける気はない。涼やかなる亡国の姫君の瞳には、静かな闘志が燃えていた。
大成功
🔵🔵🔵
リンカ・ディアベルスター
瘴気を抑える為に山に籠もっている内にこんな事になっているなんて…!
私は死宝の邪神に取り憑かれて瘴気を漏らさない為に籠もっていたが永久凍土に連れて来られた獣人の事を聞きかなり焦る
私も永久凍土に行ったが準備をしても死亡者が出るんだ…奴等正気じゃない!
ビハインドになった身だが敵の行為に腸が煮えくり返る思いだった
いたね、だけどね甘いよ?
敵と遭遇したが姿が見えなくなるがその瞬間に指定UCを発動して矢弾の雨を放ち攻撃した(敵が持っていた武器を見て遠距離武器が無いので自身の周りに矢弾の雨を放つ)
君達は切り裂かれる立場になってみるかい?
敵がUCの効果で消滅する敵に対して
シャベルから斬撃波を放ち追い打ちをかけた
「瘴気を抑える為に山に籠もっている内にこんな事になっているなんて……!」
死宝の邪神に取り憑かれて以来、リンカ・ディアベルスター(星神伝説を知る開拓者・f41254)は瘴気を漏らさないために俗世を離れることがあった。それは無関係な人々に悪影響をもたらさない為だったのだが、世間における時の流れは彼女の想像以上に速く、その間に永久凍土に連れて来られた獣人の事を聞くとかなり焦っていた。
「私も永久凍土に行ったが準備をしても死亡者が出るんだ……奴等正気じゃない!」
遥か昔の獣人戦線における開拓者の一人として、人跡未踏の地を拓いてきた彼女だからこそ、永久凍土の過酷さは知っている。十分な備えも訓練もなしに、ただの獣人に開拓を命じて送り込むなど、「死ね」と言っているのと同じだ。
「絶対に許せない」
必ずや獣人たちを救い出してみせると誓って、リンカは永久凍土の開拓地へと向かう。ビハインドになった身でも、ワルシャワ条約機構の邪悪極まる行為には、腸が煮えくり返る思いだった。奴らには一度、この過酷さと痛みを味わわせてやらなければ気が済まない。
「いたね」
「むッ、何者だ!」「侵入者だ、やってしまえ!」
彼女が『雪かき部隊』を発見するのと同時に、敵もこちらの来襲に気付く。開拓地の哨戒並びに警備を担当する彼らは雪隠れマントに身を包み、装甲と隠密力を向上させた【雪隠れステルスアタック】を仕掛けてくる。雪国育ちのユキウサギ獣人で構成されているだけあって、雪上での戦いは慣れているようだ。
「だけどね甘いよ?」
敵の姿が見えなくなった瞬間、リンカは【『壊滅』の星神 ナヌー・ザーク】を発動。全身に鎖を漂わせた黒い鳳凰姿の星神を呼び出し、自身の周りに矢弾の雨を放たせる。敵が持っていた武器を見て、遠距離武器が無いことに彼女は気付いたのだ。
「壊滅の星神はね、全てを壊すんだよ?概念も次元もね……」
「うぎゃあっ?!」「ぎゃふッ!!」
隠密攻撃のために接近したユキウサギ達は、周囲一帯に無差別に降り注いだ『壊滅』の力によってあぶり出される。
かの星神の権能は再生と復活を許さない絶対的な破壊をもたらす。撃ち抜かれた敵の血飛沫が雪原を赤く染め上げ、断末魔の悲鳴が吹雪にこだました。
「こいつ、つ、強い……?!」「ボスに伝えなきゃ!」
これまで開拓地送りにしてきた反逆者とはレベルが違う。星神の権能を使いこなすリンカの実力を目の当たりにした雪かき部隊は、手負いの体を引きずって報告に戻ろうとする。それが任務なのだから当然だが、もちろんリンカに許す気はない。
「君達は切り裂かれる立場になってみるかい?」
「ひっ……!!」「ぎゃぁぁぁっ!!」
星神の影響を受けて彼女の左眼は黒く染まり、背中には翼が生えている。その姿はまさに古き神々の写し身の如く。
開拓の重みを少しは味わってみろと、愛用のシャベルをひと振りすれば、斬撃波が敵に追い打ちをかける。『壊滅』の力にて断たれた兵士は骸すら残さず消滅し、リンカの視界から雪かき部隊が全滅するまで数分とかからなかった。
大成功
🔵🔵🔵
鏡島・嵐
やれやれ、不都合な情報を発信しただけで捕まるとか、おっかねえ話だ。しかも頭の上で監視付きとか、どんだけだよ。
(五卿六眼を睨みつけて)
……ともかく、放ってはおけねえよな。正直怖ぇけどなんとかしねえと。
隠れてる警備の連中を素早く無力化か。
UCを起動し、〈第六感〉を強化して、隠れている敵をそれとなくマーク。
気づいてないと見せかけつつ相手の攻撃を〈見切り〉、〈スナイパー〉ばりの反撃で無力化する。
全体的に〈目立たない〉ように動いて、向こうが身を隠すために増やした雪の〈地形の利用〉もして、他の敵が異常に気付かねえように、なるべくこっそりと数を減らしていく。
他の味方がいるなら適宜〈援護射撃〉でサポート。
「やれやれ、不都合な情報を発信しただけで捕まるとか、おっかねえ話だ。しかも頭の上で監視付きとか、どんだけだよ」
寒空に浮かぶ|五卿六眼《シャスチグラーザ》を睨みつけて、悪態を吐くのは鏡島・嵐(星読みの渡り鳥・f03812)。他の超大国も大概酷いものだが、ワルシャワ条約機構の支配地における獣人への締め付けはかくも厳しいものらしい。まさしく絵に描いたような恐怖政治である。
「……ともかく、放ってはおけねえよな。正直怖ぇけどなんとかしねえと」
嵐自身も恐怖を感じているが、それで誰かを見殺しにすればもっと後悔すると自分で分かっている。だからこそ永久凍土の只中にある、開拓地という名の収容所までやって来たのだ。旅慣れている彼でも辛さを感じる寒さ、普通の獣人にとっては尚更応えるだろう。早く救出しなければいけない。
(隠れてる警備の連中を素早く無力化か)
開拓地を守る『雪かき部隊』は雪上の戦いに長けている。隠密用のマントを身に纏った【雪隠れステルスアタック】は得意戦法のひとつだ。この豪雪地帯で雪に紛れられたら見つけるのは簡単な事ではない――そう、普通の人間なら。
(占いの真似事なんてガラじゃねえけど……茨の迷宮、百歳の夢、其を切り拓く導を此処に!)
嵐は敵の潜伏に気付いてないふりをしながら、【残されし十二番目の贈り物】を起動して第六感を強化する。祖母から教わった占いの技を応用すれば、隠れている敵の気配や居場所も感じ取れるようになる。そいつらを密かにマークしながら、彼は静かな足取りで開拓地に向かう――。
(侵入者め、覚悟しろ……!)
隠密中の雪かき部隊からすれば、嵐の素振りは奇襲する格好のチャンスに見えただろう。マントで身を隠し、足音を消しながら背後に近付き、雪かきスコップを振りかぶる。頭をぶん殴って気絶でもさせれば、あとは収容所に連行して尋問と強制労働の日々が待っている。
「悪ぃな、読んでた」
「なッ……嘘っ!?」
だが、気付いていないように見せかけて全てを見切っていた嵐は、死角からの奇襲をひらりと躱し、振り返りざまにお手製スリングショットを構える。彼の腕前ならこの距離で外すほうが難しい――放たれた弾丸は過たず敵を捉えた。
「ぎゃうっ……!」
正確に急所を撃ち抜かれたユキウサギの兵士は、一撃で無力化さればたりと雪原に伏す。起き上がってこないのを確認すると、嵐は警戒を維持したまま先を急いだ。目的は哨戒部隊の全滅でなく、密かに目的地に辿り着くことである。
(他の敵が異常に気付かねえように、なるべくこっそりと数を減らしていかねえと)
雪かき部隊のユーベルコードは自然の雪に紛れるだけでなく、自ら雪を発生させる効果もある。それにより増えた雪の地形を利用して、目立たないように行動すれば、大部隊に捕捉される危険は減らせるだろう。あとは、こちらの存在を報告されないよう、分散している敵を各個撃破していけばいい。
(他の味方の調子も順調みたいだな)
苦戦している味方がいれば適宜サポートに向かうつもりだったが、各自うまくやっているようだ。だったら俺も自分の事に集中しようと、嵐は移動のペースを上げる。現状、彼と遭遇した雪かき部隊の中で生き延びられた者はいない。
「ぎゃっ?!」「い、いつの間にこんな所まで……ぐえっ!」
奇襲へのカウンターか、あるいは逆にこちらから奇襲をかける形で、隠密裏に哨戒を排除しつつ開拓地に潜入する。
臆病ゆえの慎重さはこうしたミッションと相性が良かったのだろうか、ほぼパーフェクトに彼の作戦は進んでいた。
大成功
🔵🔵🔵
オリヴィア・ローゼンタール
天より地を睨めつける五卿六眼……
ライトブリンガーの【Q】にあったように、この世界に始祖人狼とやらを派遣しているのは間違いなさそうだ
黄金の獅子を駆り、吶喊(騎乗・騎乗突撃)
炎熱の魔力を帯びた聖槍(属性攻撃・武器に魔法を纏う)で【なぎ払う】
世界を跨ごうと関係なし、人々を虐げる圧制者に叛逆に牙を突き立てん!
獅子に乗って縦横無尽に駆け回り(ダッシュ)、敵を誘導
ひとかたまりになったところで……【獄炎魔神の召喚】
百を超える炎の魔神が徒党を組めば、周囲の雪など瞬く間に溶け去り蒸発する
ぐずぐずになった地形ではそりもブルドーザーも役に立つまい
獄炎魔神による炎熱の飽和攻撃(全力魔法)で一切合切【焼却】する
「天より地を睨めつける五卿六眼……ライトブリンガーの【Q】にあったように、この世界に始祖人狼とやらを派遣しているのは間違いなさそうだ」
目を象った禍々しい呪術紋様が、常に上空に浮かぶロシアの地。それを見上げるオリヴィア・ローゼンタール(聖槍のクルースニク・f04296)は、数ヶ月前の闇の救済者戦争を思い出していた。ワルシャワ条約機構の名を借りて、闇の種族と五卿六眼は獣人戦線でも圧政を敷いているようだ。
「行くぞ、獅子よ」
自身の守護霊獣たる黄金の獅子に跨り、彼女は獣人達が囚われている開拓地を目指して吶喊する。ダークセイヴァーのオブリビオンは彼女にとって不倶戴天の敵だ。故に、その闘志は永久凍土さえ溶かさんばかりに燃え上がっていた。
「世界を跨ごうと関係なし、人々を虐げる圧制者に叛逆に牙を突き立てん!」
手始めに撃滅する相手は哨戒を担当する『雪かき部隊』だ。オリヴィアは炎熱の魔力を帯びた「破邪の聖槍」を振るい、真っ向から敵陣をなぎ払う。大地に降り積もった雪も獅子の脚を鈍らせるものではなく、この騎乗突撃に耐えられる歩兵はいなかった。
「うわぁッ!?!」「てっ、敵襲だー!」
ひと薙ぎで数体のユキウサギ兵士が骸の海に還り、残った者達は慌てて厳戒態勢となる。ワルシャワ条約機構の命令で様々な戦闘を経験してきた彼らも、今回の相手はそこらの獣人共とはレベルが違うのが分かるのだろう。ライオンに乗った騎兵との戦いなど始めてだ。
「そんなそりで付いて来られるか?」
「ま、負けるかー!」「うぉぉーッ!」
獅子に乗って縦横無尽に駆け回るオリヴィアに対して、雪かき部隊はそりをブルドーザーに見立てて前方に構えながら疾走する。この【特攻そりドーザー】は見た目以上の速度が出るうえ、移動中に巻き込んだ雪をぶつければ敵を雪だるまにして動きを止められる。やはり雪上での戦いにおいては熟練度が違うようだ。
(そうだ、来い)
しかしオリヴィアは巧みな騎乗技術と槍さばきによって相手の動きを誘導し、雪かき部隊がひとかたまりになるよう仕組んでいた。こいつらがあくまで哨戒であり、目的地の途上にある障害に過ぎない以上、時間はかけていられない。一網打尽にしてさっさと突破するまでだ。
「天来せよ、炎熱統べる魔神たち。猛き炎で遍く邪悪を焼き尽くせ――!」
十分に敵部隊を引きつけたところで、オリヴィアは【獄炎魔神の召喚】を実行。聖槍の灯火に導かれるように、天空より炎の魔神達が降臨する。彼らの発する炎と熱の凄まじさたるや、まるで太陽が地に降りてきたような熱さである。
「なんっ……ああっ、雪が?!」「溶けちゃった!?」
百を超える炎の魔神が徒党を組めば、周囲の雪など瞬く間に溶け去り蒸発する。凍土に覆われていた地表が剥き出しになる事など、この地では一体いつぶりの事だろう。ぬかるんだ地面に足を取られ、雪かき部隊の兵士達が驚愕する。
「ぐずぐずになった地形ではそりもブルドーザーも役に立つまい」
雪かき部隊の強さとは、やはり雪の地形あってのものだった。それらを失った彼らの戦力は、一般の歩兵にも劣る。
そりを投げ出して逃げる暇も与えず、オリヴィアが総攻撃を命じれば、獄炎の魔神達は炎熱の飽和攻撃を開始する。
「「うぎゃぁぁぁぁーーーッ!!!?!」」
防寒装備とは逆に耐熱性能などまったく考えていなかった雪かき部隊は、抵抗の余地なく骨の髄まで焼き尽くされ。
かくして邪魔者がいなくなった溶けた大地の上を、オリヴィアと黄金の獅子は颯爽と駆け抜けていくのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
第2章 ボス戦
『機械仕掛けの歌姫マリア』
|
POW : アリア「我が血肉は怒りの炎に焼き裂かれ」
【胸に埋め込まれた拡声器】から【戦場全体に響き渡る歌声】を放ち、敵及び周辺地形を爆発炎上させる。寿命を削ると、威力と範囲を増加可能。
SPD : アリア「いざ行かん、怒りに震え身を任せ」
【自身の喉】から、戦場全体に「敵味方を識別する【荒ぶる歌声】」を放ち、ダメージと【混乱とバーサーク】の状態異常を与える。
WIZ : アリア「止まるまいぞ、鉄を纏う古強者よ」
自身の歌う「【アリア「止まるまいぞ、鉄を纏う古強者よ」】」を聞いた味方全ての負傷・疲労・状態異常を癒すが、回復量の5分の1を自身が受ける。
イラスト:SA糖
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
|
種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「仇死原・アンナ」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
哨戒にあたっていた『雪かき部隊』を蹴散らして、獣人達が囚われている開拓地までたどり着いた猟兵達。
そこは獣人――いや、生物が暮らすには最低限の建物と設備だけが整えられた、収容所の如き施設であった。
「あ、あんた達は?」
「奴らに捕まってここに来た……って感じじゃないな」
そこで凍った大地に向かってスコップやツルハシを振るっていたのは、やせ衰え、やつれ果てた獣人の集団。
ラジオの電波を通じてワルシャワ条約機構の非道を訴え続けたことで、永久凍土送りにされた悲運の勇士達だ。
彼らは最初、猟兵達もここに送られてきた被害者かと思ったようだが、雰囲気からしてすぐ違いに気付いたようだ。
「何にせよ、マズいぞ。そろそろあの女が見張りに来る時間だ……!」
彼らがそう言うや否やのタイミングで、開拓地の中心から歌声が聞こえてくる。
それと同時に姿を現したのは、喪服のような黒いドレスに身を包んだカラス獣人の女性。
ぎこちなく、機械的で、なのに美しいこの歌は、彼女の元から発せられているようだ。
「♪~♫~……」
近づいてくれば、その女の身体はあちこちが機械で改造され、胸に拡声器が埋め込まれているのが分かるだろう。
彼女の名は『機械仕掛けの歌姫マリア』。かつては戦場の兵士達を癒していた歌姫が、超大国の手で音響兵器に変えられた姿。生前の自我は奪われ、その歌声は今や同胞を苦しめるために使われていた。
「侵入者ヲ……排除シマス……」
今のマリアの役割は、この開拓地の監督と支配。その不穏分子たる猟兵を排除すべく、彼女は戦いの詩を奏でだす。
彼女を撃破しなければ、囚われの勇士達をここから救い出すことはできない――猟兵達はそれぞれの覚悟のもとで、戦闘態勢を取った。
リンカ・ディアベルスター
命への冒涜だね…許せない
彼女の姿を見てワルシャワ条約機構に対する怒りを思いながら彼女と戦う
不味い!うっ…!
彼女が荒ぶる歌声を放って来て混乱しかけるがUCを発動して状態異常だけでも防ぐ
まずは痺れて貰おうか!
敵がUCを放った隙に電撃属性の魔法を高速詠唱し素早く放ち動きを一時的に止めたらガンナイフからエネルギー弾を放ち攻撃する
これ以上彼女の尊厳を踏みにじらせない!
指定UCの効果でUC『狩猟』の星神 翠嵐を発動して心眼で彼女の動きを見ながら矢弾の雨を放ち彼女に攻撃してから彼女を蹴り飛ばして彼女の体勢を崩す
お願いだ…止まってくれ!
スコップから斬撃波を放ち彼女に攻撃した後振動の力で衝撃波を放ち追撃を放った
「命への冒涜だね……許せない」
無惨に改造された『機械仕掛けの歌姫マリア』の姿を見て、ワルシャワ条約機構に対する怒りを思うリンカ。反逆者は徹底的に酷使してオブリビオン化させ、死してなお自分達のコマとして利用するのがここの連中のスタンスらしい。
「排除、シマス……」
もはや自我さえ残っているのかどうか、開拓地の支配者となったマリアは猟兵達に冷たい殺意を向ける。哀れとは思えど、彼女を倒さなければ罪なき獣人の犠牲者は増え続ける一方だ。リンカももう、戦う覚悟は決めてここまで来た。
「♫~~♪~~」
「不味い! うっ……!」
マリアの喉から発せられるは【アリア「いざ行かん、怒りに震え身を任せ」】。開拓地全体に響き渡る荒ぶる歌が、聴衆の心をかき乱す。あわや混乱しかけるリンカだったが、咄嗟に【『豊穣』の星神 流転】を発動し、豊穣神の加護により状態異常だけは防ぐ。
「豊穣の星神はね……う~ん、優しいのかな? 死ねなくなるけど……」
かの星神が与えるのは再生と不死。尽きる事なき莫大な生命力だ。その加護を受けたリンカの左眼は緑色に染まり、生命のオーラが満ち溢れている。少しばかり過剰な気もあるが、これならマリアのユーベルコードにも十分耐えられるだろう。
「まずは痺れて貰おうか!」
敵が歌を奏でている隙にリンカは素早く詠唱を行い、星神の杖から電撃を放つ。カッと閃く稲光が開拓地を照らし、機械化されたマリアのボディを高圧電流がショートさせる。これだけで死にはしないだろうが、一時的に動きを止めることはできた。
「ア……ァ……」
「そこだ!」
歌が止んだ直後に「迷彩色のガンナイフ」を構え、追撃のトリガーを引くリンカ。星神の力を込めたエネルギー弾がヒットし、マリアがふらりとよろめいた。改造されても痛覚はまだあるのか、その唇から苦しげなうめき声が漏れる。
「これ以上彼女の尊厳を踏みにじらせない!」
一刻も早くこの苦しみから彼女を解き放つために、リンカは【『狩猟』の星神 翠嵐】を発動。藍色に染まり変わった左の神眼で、相手の動きを見ながら矢弾の雨を放つ。敵となれば容赦ない狩猟神の加護は、決して標的を逃さない。
「ァ……ウ……!」
「ごめんよ!」
嵐の如き弾幕を浴びて、呻きながら後退するマリア。そこに駆け込んできたリンカの飛び蹴りが彼女を蹴り飛ばす。
大きく体勢が崩れたところに振りかぶるのは、開拓時代から愛用のシャベル。塹壕の掘削や整備は勿論、武器としても優秀なそれはリンカが信頼する得物のひとつだ――。
「お願いだ……止まってくれ!」
祈るような思いで振り下ろされたスコップの斬撃波、そして振動の力による衝撃波が機械仕掛けの歌姫を追撃する。
破損した体から散らばるのは機械のパーツ、として血とオイルの混ざった体液。もはや中身まで作り替えられてしまった悲しき歌姫は、まだ歌を奏でることを止めない――。
大成功
🔵🔵🔵
レヴィア・イエローローズ
哀れね…せめて、安らかに
ラリクマとセレブラムで『改竄された属性・性質を復元する』機構を作り出し、音響兵器として使用
音波を相殺し、わたくしに降りかかる状態異常を『元の属性に戻す』事で回復
そのまま『機械仕掛けの歌姫マリア』を音響効果で癒やし元の存在に回帰させる事で倒していく
この悲劇を、わたくし達は断ち切らなければならない
その為にも、この戦いに勝ち抜きこの永久凍土から脱出するわよ!
そう言って避難準備を始めている放送局のメンバーに激励をかけながら戦っていく
ここから脱出した後は、マリアの歌とイエローローズ王国国歌を放送して貰うわよ!
そう言って音波をマリアに叩き込み、楽にさせるわ
「♪……♬~……」
開拓地に侵入した猟兵を排除すべく、歌を奏でる『機械仕掛けの歌姫マリア』。かつては戦場に立つ獣人の兵士達を鼓舞したであろう【アリア「いざ行かん、怒りに震え身を任せ」】は、性質ごと改造を施され、敵対者に混乱と狂乱をもたらす呪歌と化した。
「哀れね……せめて、安らかに」
そんな歌姫の成れの果てに憐憫を抱きながら、レヴィアは【黄薔薇開花・大魔王式魔導蒸気機関】を起動。災魔十属性のうち二つ、ラクリマとセレブラムを組み合わせた『改竄された属性・性質を復元する』機構を作り出し、音響兵器として使用する。
「我が黄色に応じて開花せよ、羨望の深淵。それは複合した災魔十属性に応じて組み上げられる魔導蒸気機関。その完成を以て蒸気の果てを見る」
レヴィアの機関とマリアの声帯が奏でるふたつの音波は互いを相殺し、降り掛かるはずの状態異常は『元の属性に戻す』事で治療される。これは機械仕掛けの歌姫に対抗するために黄薔薇の姫君が即席で開発した魔導蒸気機関。その効果のほどは歴然だった。
「ゥ……ア……」
そのまま機関の音響効果は敵であるマリアさえも癒やし、改造される元の存在に回帰させようとする。機械化された体のパーツが剥がれ落ちるにつれて、彼女は苦しげなうめき声を上げた。すでに不可逆なほどに作り替えられた肉体にとっては、治療さえもダメージとなる。
「この悲劇を、わたくし達は断ち切らなければならない。その為にも、この戦いに勝ち抜きこの永久凍土から脱出するわよ!」
「おうっ!」「誰だか知らんが、助かったぜ!」
機関の歌を奏でながら、レヴィアが激励する相手は開拓地にいた放送局のメンバー達。彼らも永久凍土に骨を埋める気はないだろう、猟兵達がやって来た直後から避難準備を始めている。過酷な強制労働により肉体は疲弊していても、電波の力でワルシャワ条約機構に反旗を翻した、その反抗心は失われていないらしい。
「ここから脱出した後は、マリアの歌とイエローローズ王国国歌を放送して貰うわよ!」
「もちろん!」「次の放送は特別ゲストのご登場だ!」
レヴィアの目標はここより西方にある超大国、クロックワーク・ヴィクトリアに滅ぼされた祖国を復活させること。
いまだ難民として各地に離散している国民達にも、ラジオを通してなら歌声を届けられるだろう。ワルシャワ支配圏だけではない、彼らの活動は世界中に希望をもたらせるのだ。
「貴女の歌は忘れない。だから、ここで眠りなさい」
「排除……シマ……ァァァ……!!」
そんな放送局員達の脱走を、あくまでマリアが阻むというなら、倒す他に道はない。戦士として幾度の経験を重ねたレヴィアは、どんなに哀れな相手であっても力を抜くことはない。叩き込まれる機関の音波は、機械仕掛けの歌姫の力を着実に削り取っていた――。
大成功
🔵🔵🔵
ウルリック・イーゴン
(歌姫の境遇に同情はする。だが…)
なればこそ、貴女を終わらせて貰いますよ
貴女の歌は、戦場を壊すものでは無いのですから…
【リミッター解除】
【限界突破】した【第六感】で敵の動きを【見切り】攻防に活用
回復は厄介ですが反動を受ける以上はいつか終わりが来ます
我慢比べと行きましょう
Deathstalkerで【騎乗突撃】しつつStingerの【誘導弾】で【制圧射撃】
敵の攻撃は【グラップル】技術と殺戮刃物で【受け流し】つつ【切断】
攻防を通じてダメージを蓄積していきます
…此処迄は前座です
一気に押し込めそうな程負傷を蓄積させたら【アルジャーノンエフェクト】を使用
【捨て身の一撃】のつもりで時間限界まで攻撃し続けます
(歌姫の境遇に同情はする。だが……)
かつては獣人達に希望を与える歌姫だったものが、超大国の手で兵器へと改造された『機械仕掛けの歌姫マリア』。
現在の彼女の痛々しく無惨な姿を見れば、ウルリックも憐憫の情を感じずにはいられない。このような形で自分の歌を利用されるのは、生前の彼女も本意ではないだろう。
「なればこそ、貴女を終わらせて貰いますよ。貴女の歌は、戦場を壊すものでは無いのですから……」
迷わぬ決意を口にして、人造吸血鬼は再びリミッターを解除。限界を超えた第六感をもって相手の動きを注視する。
機械仕掛けのマリアは再びその喉と埋め込まれた機械から歌を――【アリア「止まるまいぞ、鉄を纏う古強者よ」】を奏でようとしていた。
「♬~♪~」
それは戦場での負傷者を癒やすための歌。これまでの戦いでマリアが負った傷が、生身の部分だけでなく機械の部品まで「修復」していく。一方でその力は代償を伴うものであり、回復量に比例したダメージを歌い手が負う――自らを癒やしながら傷つく、矛盾に満ちた行為で彼女は自身の継戦能力を引き上げていた。
「回復は厄介ですが反動を受ける以上はいつか終わりが来ます。我慢比べと行きましょう」
ウルリックは「Deathstalker」のアクセルを全開にしてマリアへと突撃。片手でハンドルを切りながら、空けた手で「Stinger」を発砲する。バイクの機動力を活かしつつ誘導弾の制圧射撃を仕掛ける戦法は、雪かき部隊を撃破した時にも見せた戦法だが、ボス相手にもこれは有効だった。
「ワルシャワノ敵ハ……抹殺……」
癒やしたばかりの傷を誘導弾に抉られながら、マリアは歌術を攻撃用に切り替える。歌唱のトーンとメロディが変化した瞬間、音圧は敵を傷つける刃と化した。直感的にそれを察知したウルリックは、装備を「Stinger」から殺戮刃物に切り替える。
「この程度でやられはしません」
音波を、すなわち大気の振動を「切断」するという芸当も、戦闘用に調整されたフラスコチャイルドなら不可能ではない。余波を完全に受け流すことはできなかったが、戦闘継続には問題ない程度のダメージだ。彼はまたすぐに装備を変更し、攻防を通じて回復を超えるダメージを敵に蓄積させていく。
「ァ……ア……」
再び治癒のユーベルコードを奏でても、マリアが受けた傷は完全に修復はできず、痛ましい傷痕が随所に残される。
ここまで負傷を蓄積させれば、一気に押し込む好機だ。そう判断したウルリックは【アルジャーノンエフェクト】を発動した。
「……此処迄は前座です」
脳の演算速度を一時的に増強することで得られる、全能力の飛躍的向上。代償として効果時間後は昏睡状態に陥る、フラスコチャイルドの切り札だ。五感・運動能力・筋力、全てが超人の域に達した彼は、その全てで攻撃に注力する。
「終わりにしましょう……」
「ァ……ワタ……シハ……」
捨て身の覚悟でトリガーを引き、刃を振るい、時間限界までありったけの攻撃を繰り出すウルリック。阿修羅の如き猛攻が機械化されたマリアの体を切り裂き、撃ち抜き、砕いていく。それこそがオブリビオンにされてしまった者への最期の慈悲――ベールの奥で紡がれる女の声は、抑揚もないのに、どこか哀しげであった。
大成功
🔵🔵🔵
レティシア・ハルモニアス
夢幻戦線
何じゃ?!こいつは!
おぞましい姿を見て不覚にも恐怖を感じてしまう(奴隷にされていた時に同じように機械を埋め込まれていた奴隷を見たから)
?!何じゃこの歌は!この!
指定UCを発動するが混乱とバーサーク状態になってしまいあたり構わずに攻撃して敵には全く当たっていない
むぐっ?!…あっ
天牙に熱い糧食の天ぷらを食わされて正気を取り戻した周りには被害が出ていなかったが自分が正気を失っていた事に怒りを感じていた
…すまん、皆
そう言って指定UCの効果でUCソードミラージュ“吸血鬼の万華鏡”を発動して分身と共に再び紅い矢弾の雨を発動して変身した天牙をサポートした
…この精神のままじゃ皆の足を引っ張るだけじゃ!
黎明・天牙
ヴォルガ、リズ…悪りぃ今回はノーコメントだ
『…はあ』『ううっ…恥ずかしい思い出が…』
ヴォルガとリズが何かを思い出したように頭を抱えた
https://tw6.jp/scenario/show?scenario_id=50082
あっ…やべぇ!
俺達は素早く耳を防ぎながら敵には振動の力を敵に放ち中断させるが紅い矢弾の雨が飛んで来たので回避する
『ちょっ…何?!』『天牙!ティニが混乱状態になっている!』
ヴォルガがティニが混乱状態になっている事を知らせながら物陰に隠れてライフルで敵に呪殺弾を放つ
仕方ねえな、天ぷら食わせるか…
キャンピングカーから天ぷらを持って来てティニに食わせた
気にするなティニ、揺れろ…魂の振動!
自分を責めるティニを慰めながら自身の魂を振動の力で揺らし変身
ちゅ〜ん!
敵の拡声器の振動を幻想の力で殴り飛ばして敵にはね返した
ちゅんちゅ〜ん!
雪をドーム状にして幻想の力で固くしてから弾力でスーパーボールのように跳ね返りまくり敵を四方八方から攻撃
ちゅ〜ん!
回転しながら敵の腹に体当たりをお見舞いした
「何じゃ?! こいつは!」
改造された『機械仕掛けの歌姫マリア』のおぞましい姿を見て、レティシアは不覚にも恐怖を感じてしまう。かつて奴隷にされていた時に、同じように機械を埋め込まれた奴隷を見たことがあったのだ。その当時の記憶が鮮明にフラッシュバックし、足がすくむ。
「ヴォルガ、リズ……悪りぃ今回はノーコメントだ」
『……はあ』『ううっ……恥ずかしい思い出が……』
夢幻戦線のメンバー、ヴォルガとリズも危うく奴隷として洗脳されかけた過去がある。嫌なことを思い出したように頭を抱える二人に、天牙もかける言葉がない。流石の彼も、こうまで獣人の尊厳を弄ぶ超大国の所業には思うところがあるようだ。
「♪~……♫~……」
改造により生前の自我を奪われたマリアは、超大国の兵器として【アリア「いざ行かん、怒りに震え身を任せ」】を奏でる。彼女の喉から発せられる荒ぶるメロディには、聞いた者にダメージを与え、精神を錯乱させる効果があった。
「あっ……やべぇ!」
危機を察知した天牙は歌を聞かないように素早く耳を塞ぐ。ヴォルガとリズも同様だ。もし、あれを聞いてしまうと混乱状態に陥り、敵味方の区別もつかなくなって同士討ちを起こしかねない。メンバー間の連携を重視する夢幻戦線にとっては避けるべき脅威だった。
「?! 何じゃこの歌は! この!」
だが、過去のトラウマから一人だけ対応が遅れたレティシアは、歌姫のユーベルコードの術中に嵌まってしまった。
不快な歌を止めさせようと【紅い矢弾の雨】を発動するが、無自覚な混乱とバーサーク状態に陥った彼女の攻撃は、あたり構わず味方に襲いかかり、敵にはまったく当たっていない。
『ちょっ……何?!』『天牙! ティニが混乱状態になっている!』
「ちっ、やられたか」
次元を超えて降る紅い雨を、三人は血相変えて回避する。一番最初にレティシアの異常に気付いたのはヴォルガだ。
物陰に隠れて矢弾をやり過ごしつつ、ライフルで歌姫マリアを狙う。元凶の歌を中断させれば混乱も解除されるのではないかと期待してのことだが――。
『もう歌うな!』「悪いが黙っててくれ」
「♪~……ガッ……!」
ヴォルガの呪殺弾、さらには天牙の振動の力を受けてマリアの歌は中断される。だがレティシアの狂乱が収まる様子は無かった。今の彼女には周りにいる全てが敵に見えているのだろう、「く、来るな!」と叫びながら無差別に矢弾をばら撒いている。
「仕方ねえな、天ぷら食わせるか……」
こうなったら荒療治だと天牙はここまでの移動手段に使っていたキャンピングカーに取って返し、キッチンから熱々の糧食天ぷらを持ってくる。別にふざけている訳ではなく、レティシアにはコレが気付け代わりになるらしい――余程好きなのか嫌いなのかどちらかだろう。
「ほら食え」
「むぐっ?! ……あっ」
天牙は暴走中のレティシアの背後に回り込むと、熱い天ぷらを口に押し込んだ。あわや口内を火傷するところだが、それで彼女は正気を取り戻したようだ。焦点の戻った瞳で周りを見回すと、幸いにも人的被害こそ出なかったものの、矢弾の雨で破壊された開拓地が見えた。
「……すまん、皆」
「気にするなティニ、揺れろ……魂の振動!」
迂闊にも正気を失っていた事に怒りを感じ、自分を責めるレティシアを、天牙はいつも通りの態度で慰める。こんな時にフォローするのも仲間というもの。後悔するよりも今は敵を倒す方が先決だ。彼は自身の魂を振動の力で揺らし、【『楽園』奥義・OVER THE PARADISE】を発動する。
「ァ、ァ……♪~」
一時は歌を中断されていたマリアが、今度は胸の拡声器から歌術を奏でる。単純な音圧だけでも殺傷力を持つ彼女の歌は、まさに兵器と呼ぶにふさわしいものだ――だが、それを防いだのが楽園の力を解き放ち、巨大な白雀に変身した天牙だった。
「ちゅ~ん!」
彼は奇跡を引き起こす幻想の力で音波の振動を殴り飛ばし、敵に跳ね返す。自分の攻撃を食らうことになった歌姫の拡声器に、ピシリとヒビが入る。彼自身は陽気にさえずっているようにしか見えないが、その能力は奇想天外かつ予測不可能なものだった。
「ちゅんちゅ~ん!」
さらに天牙は雪をドーム状にして幻想の力で固くしてから、弾力でスーパーボールのように跳ね返りまくる。突如出現したかまくらのような檻の中で、敵は四方八方から彼の攻撃を受けることになる。音響兵器として改造されたマリアに、これを回避できるほどの運動性能はないだろう。
「ッ、アゥ……!」
跳ねる白雀の体当たりを食らってよろめくマリア。表情に変化こそ見られないが、ダメージは着実に蓄積している。
――その戦いの様子を、レティシアは奥歯を噛み締めながら見ていた。混乱して味方を攻撃した挙句フォローされ、彼女の胸には忸怩たる思いがあった。
「……この精神のままじゃ皆の足を引っ張るだけじゃ!」
このままでは終われないと、レティシアは己を奮い立たせて【ソード・ミラージュ"吸血鬼の万華鏡"】を発動。極めて精巧な自身の残像分身を作りだし、一斉に【紅い矢弾の雨】を再発動する。せめて、変身中の天牙のサポートくらいはしてみせる。
「これが妾の紅い矢弾の雨じゃ!」
「ッ……!」
分身含め14人による同時攻撃。正気に戻った彼女の攻撃はついに敵を捉え、紅い矢がマリアの体中に突き刺さる。
その直後、弾力による速度に回転を加えて威力を増した天牙の体当たりが、マリアの腹に勢いよくお見舞いされた。
「ちゅ~ん!」
「――……!」
夢幻戦線の猟兵二人による連携攻撃は機械仕掛けの歌姫に大きなダメージを与え、吹き飛ばす。鮮血やオイルと共に雪原に散らばる機械のパーツが、彼女の損傷度を物語っていた。拡声器から響く歌声にもノイズが走り――戦いの決着が徐々に迫りつつあることを、彼らは認識していた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
轟木・黒夢(サポート)
『私の出番?それじゃ全力で行くわよ。』
強化人間のヴィジランテ×バトルゲーマー、19歳の女です。
普段の口調は「素っ気ない(私、~さん、なの、よ、なのね、なのよね?)」、偉い人には「それなりに丁寧(私、~さん、です、ます、でしょう、ですか?)」です。
ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し、
多少の怪我は厭わず積極的に行動します。
他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。
また、例え依頼の成功のためでも、
公序良俗に反する行動はしません。
性格はクールで、あまり感情の起伏は無いです。
戦闘では、格闘技メインで戦い、籠手状の武器を使う事が多いです。
あとはおまかせ。よろしくおねがいします!
「私の出番? それじゃ全力で行くわよ」
永久凍土送りにされたロシアの獣人達を、ワルシャワ条約機構から救出できるかの正念場。そこにサポートとして駆けつけたのは強化人間のヴィジランテ、轟木・黒夢(モノクローム・f18038)だった。淡々とした口調で喋りながらも瞳の奥には闘志を燃やし、開拓地の支配者こと『機械仕掛けの歌姫マリア』を睨みつける。
「ァ……アァ……」
これまでの戦いで敵も大分損傷しているようだが、まだ活動停止には至っていない。改造された四肢で立ち上がり、壊れかけの喉で滅びのユーベルコードを奏でる。だが、それよりもほんの一小節早く、黒夢はぱちんと指を鳴らした。
「音で攻撃してくるなら、音よりも速く動けばいい」
【クロックアップ・スピード】により高速戦闘モードに移行した黒夢は、スピードと反応速度が爆発的に増大する。
マリアが歌う【アリア「いざ行かん、怒りに震え身を任せ」】は、ダメージに加えて混乱とバーサーク状態を引き起こす厄介な技だが――それも聞かされた場合の話。
「♪~♫~……」
荒ぶる歌声を超反応で躱し、雪降る凍土の上を駆け抜ける。彼女の得意戦法は格闘戦、まずは距離を詰めなければ。
音響兵器としての"運用"を想定されていたマリアの運動能力は特に強化されていない。強化された身体と達人の技術を持つ黒夢からすれば、ただの案山子同然だった。
「ここからは、私の番」
あっという間に間合いに入った黒夢は、籠手状の簡易武器「ナックルウェポン」をはめた拳でマリアに殴りかかる。
クロックアップの速度は維持したまま、まるで格闘ゲームの操作キャラクターのような連続コンボ。一度ヒットすれば途中で抜け出すのは困難を極めた。
「グ……ァ……ゥ……ッ!!」
さしもの歌姫もラッシュを浴びながら歌い続けることはできない。細身の女性の手足から繰り出される打撃は鋭く、重く、機械化された身体に響く。たまらずよろめいたところに、トドメのフィニッシュブローが急所に突き刺さった。
「こんなところね。……お腹空いたわ」
放物線を描いて吹っ飛んだ敵を見て、黒夢はユーベルコードを解除。激しい運動の反動が空腹感として襲ってくる。
強化された身体を維持するためか、彼女はかなりの大食いでもある。仕事はこれで果たしただろうと、補給のために颯爽と去っていくのだった――。
成功
🔵🔵🔴
オリヴィア・ローゼンタール
歌唱機械へと作り替えられたか
その境遇、憐れに思おう――だが容赦はしない
聖槍を携えて真っ向から吶喊(ダッシュ)
凍った大地であろうと一切の遅滞はない(環境耐性・地形耐性・悪路走破)
叩き付けられる荒ぶる歌声
暴風が如き声量に抗い、氷を踏み砕いて突き進む(気合い・根性)
身体だけでなく、精神まで揺さぶる爆音
しかし我が身に宿る聖なる霊気(破魔・オーラ防御)が【戦女神の聖鎧】となって弾き返す
まるで心が込もっていない
その空虚な歌の、どこに怒りがあると言うのだ
【怪力】を以って聖槍を繰り出し、突き穿つ――!(串刺し・急所突き)
「歌唱機械へと作り替えられたか」
開拓地の支配者として現れた『機械仕掛けの歌姫マリア』を、冷静に見据えるのはオリヴィア。ワルシャワ条約機構により改造されたその姿は異形であり、胸に無理やり埋め込まれた拡声器が痛々しい。『永久凍土送り』の刑といい、超大国が反逆者に対する仕打ちは、かくも厳しいもののようだ。
「その境遇、憐れに思おう――だが容赦はしない」
過去がどうあれ現在の彼女はワルシャワに従う兵器。倒して進まねば、この地に囚われている獣人達に未来はない。
オリヴィアは一切迷うことなく、破邪の聖槍を携えて真っ向から吶喊する。深く積もった雪も凍った大地も、彼女を遅滞させる要素にはならない。
「♫~……!!!!」
正面突撃を仕掛けた聖槍使いに、マリアの荒ぶる歌声が叩きつけられる。機械で増幅された【アリア「いざ行かん、怒りに震え身を任せ」】は、音圧という物理的衝撃にてワルシャワの敵を排除する。その威力はまさしく兵器の域だ。
「その歌が、貴様の武器か」
暴風が如き声量に抗い、氷を踏み砕いて突き進むオリヴィア。すでに極寒地に適応した彼女の足は、これしきの圧力では止まらない――しかし爆音は、身体だけでなく精神まで揺さぶる。これまでにも数多の反逆者がこの歌で混乱し、暴走と同士討ちにより果てたのだ。
「まるで心が込もっていない」
されどオリヴィアの気合と根性、そして身に宿る聖なる霊気は【戦女神の聖鎧】となって、機械の呪歌を弾き返す。
このユーベルコードは状態異常や行動制限を受けた時に自動発動し、その効果を敵に反射するものだ。何人たりとも彼女の精神を惑わせるのは容易ではない。
「♪……♫……?!」
自らの歌を跳ね返され、混乱に陥ったのはマリア。機械的に言えばエラーを起こした状態で、音程に乱れが生じる。
それでも、彼女の歌声は整っていたが――人の心を震わすにはまるで足りない。"技術"としては生前より優れていても、そこに歌い手の"魂"が存在しないから。間隙に乗じて、オリヴィアは一気に懐まで駆け込んだ。
「その空虚な歌の、どこに怒りがあると言うのだ」
オリヴィアは知っている。無辜の弱者を虐げる邪悪なる者への怒りを。胸の鼓動から烈火の如く湧き上がる感情を。
かつての歌姫マリアなら知っていたであろう。しかし今は歌声から失われてしまった「怒りに震える」想いを、彼女は聖槍に乗せて繰り出す。
「突き穿つ――!」
「――……!!!」
人並み外れた膂力にて突き立てられた黄金の矛先が、マリアの胸にある拡声器から、体内まで到達し心の臓を抉る。
どれだけ体を改造しようがヒトは不死身にはなれない。そのダメージは彼女を機能停止寸前に追い込むものだった。
大成功
🔵🔵🔵
鏡島・嵐
……正念場、だな。
怖ぇのを我慢してここまで来たんだ。ここで退いたら、助けられるモンも助からねえ。
おれはともかく、捕まってたあの人たちに逃げ場なんて無いんだ。
なら、血路を切り拓くしかねえよな……!
歌の力で爆発とか、ぞっとしねえな。直撃だけは避けねえと。
爆発が起きるタイミングを〈第六感〉で計って〈見切り〉、〈逃げ足〉を活かして躱す。
様子を伺いながら隙を突いて〈ダッシュ〉で接近、UCで生み出した針を突きさして動きを止める。
手向けの言葉と共に〈スナイパー〉ばりの〈限界突破〉した一撃を叩き込む。
ごめんな。……恨んでくれていいよ。
他に苦戦してる味方がいるなら適宜〈援護射撃〉などでサポート。
「……正念場、だな」
正面に立ちはだかる『機械仕掛けの歌姫マリア』をじっと見つめて、嵐は緊張の面持ちで呟く。ワルシャワ条約機構に開拓地の監督と支配を任されたオブリビオンとなれば、ここまで倒してきた兵卒とはものが違う。その歌声を聞くだけで肌が粟立つが、さりとて逃げる訳にもいかない。
「怖ぇのを我慢してここまで来たんだ。ここで退いたら、助けられるモンも助からねえ」
ワルシャワに不都合な内容を発信した咎で、永久凍土送りにされたロシアの獣人達。過酷な労働に疲れ果て、生気を失った姿が視界の端に映る。そんなのを見てしまったら、見捨てて逃げるなんて論外だった。今、この窮状から彼らを救い出せるのは、自分達しかいないのだから。
「おれはともかく、捕まってたあの人たちに逃げ場なんて無いんだ。なら、血路を切り拓くしかねえよな……!」
凍えかけた勇気をもう一度ふり絞って、お手製スリングショットを構える嵐。対するマリアは感情を窺えない機械的な表情と所作で、ぎこちなくそちらを向いて口を開く。その喉と胸の拡声器から放たれるのは、音響兵器として強化された歌術のユーベルコードだ。
「♪~……」
「っ!」
最初の一音が発せられる瞬間、第六感で危機を察知した嵐はその場から飛び退く。直後、【アリア「我が血肉は怒りの炎に焼き裂かれ」】によって彼がいた周辺は爆発し、真っ赤な炎に包まれる。あと一瞬遅ければ消し炭だったろう。
「歌の力で爆発とか、ぞっとしねえな。直撃だけは避けねえと」
冷や汗をかきながらも嵐は神経を研ぎ澄ませて、爆発が起きるタイミングを計る。一見対応が難しそうな攻撃だが、歌唱の旋律と爆発が連動しているなら見切りようはある。あとは得意の逃げ足を活かして、相手が隙を見せるまで躱すだけだ。
「♫~……♬~……♪~……」
せわしなく逃げ回る侵入者を排除するために、マリアは自身の寿命を削ってユーベルコードの出力を上げる。これにより爆発の範囲と威力はさらに増すが、本人の身体にかかる負荷も大きくなる。すでに激戦でダメージを負った身で、いつまで続けられる事か――。
「♪………ァ……?」
先に限界がきたのは歌姫の喉よりも、胸に埋め込まれた拡声器の方だった。戦場全体に歌を響かせるための装置が停止し、声量が減衰する。突然の事に呆然とするマリア――これにより爆発も弱まるチャンスを、嵐は見逃さなかった。
「麦藁の鞘、古き縫い針、其は魔を退ける霊刀の如し、ってな!」
彼は全力疾走で接近すると、【針の一刺、鬼をも泣かす】で生みだした針をマリアに突き刺す。凶器としてはあまりに小さいが、長年使い込まれた針には持ち主の思いが宿り、あらゆる異常を祓う力を得る。存在そのものが"異常"と呼べるオブリビオンに対しては、耐え難いほどの激痛をもたらす一撃だった。
「ァ……ゥグ……ッ!!?!」
これまで無機質だったマリアの表情が、苦痛によって始めて人間らしい変化を見せる。全身が痺れるほどの痛みは一時のものにせよ彼女から行動の自由を奪い、歌唱さえも停止させる。この一時が、彼女にとって致命的な隙となった。
「ごめんな。……恨んでくれていいよ」
手向けの言葉と共に、嵐はスリングショットから止めの弾丸を放つ。スナイパーばりの精度で叩き込まれたそれは、彼自身の限界を突破した一撃であり――ワルシャワに弄ばれた歌姫の舞台の幕を引くには、十分な威力を備えていた。
「ァ……ぁ………♪……」
最期に、彼女が伝えたかった言葉は怨みか、それとも感謝だったのか。それを知る機会はもう無いだろう。
ただ、美しいソプラノの一音だけを遺して、『機械仕掛けの歌姫マリア』は永久凍土にて機能を停止した。
大成功
🔵🔵🔵
第3章 日常
『獣人ラジオ放送』
|
POW : 熱いトークで盛り上げる
SPD : 軽快に分かりやすく情報を伝える
WIZ : 楽しい音楽や話芸を流す
|
種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
激闘のすえ『機械仕掛けの歌姫マリア』を撃破した猟兵達は、囚われの獣人達を解放し、開拓地から脱出を果たす。
ワルシャワ条約機構の兵士達も、ボスを倒されたことで動揺しているのだろう。大した追っ手がかかることもなく、一同は無事に逃げ切ることができた。
「助かった……本当にありがとう」
「あんた達には、いくら感謝しても足りないな」
ひとまず安全と思われる場所まで辿り着くと、獣人達は思い思いの感謝を伝える。
あの過酷な開拓地から逃げ出せる見込みもなく、彼らの希望は尽きかけていた。そこにやって来た猟兵達は、まさに伝説通りの英雄、あるいは救世主そのものであった。
「さて……これからどうする?」
「決まってるだろ。ラジオの再開だ!」
絶望の永久凍土を抜け出した今、彼らが考えることは一つ。
ワルシャワ条約機構の非道を電波に乗せて訴え、辛い日々を送るロシアの人々を励ますことだ。
ラジオ局員としての彼らの熱意、超大国への反抗心はまだ失われていないらしい。
「実は逃げるついでにヤツらの無線機と設備をかっぱらって来たのさ」
「ここをちょいと弄ってやれば、発信源も特定されなくなるぜ」
敵の支配地でゲリラ放送を繰り広げてきた猛者達は、限られた機材と環境でも瞬く間に放送の準備を整えていく。
この技術力があるからこそ、彼らはオブリビオンの超大国に立ち向かってこれたのだ。
「流石に追っ手が来るかもしれないから、今回の放送は短めにするが……」
「もし良かったら、あんた達猟兵も参加してくれないか?」
彼らはそう言ってマイクを猟兵達に向ける。
現在の獣人戦線において猟兵は英雄だ。それがラジオに出演すれば、きっと人々の励みになるに違いない。
参加するかは、個人の気持ち次第。
永久凍土の寒さにも負けなかった、獣人ラジオ放送のオンエアの時間だ。
レヴィア・イエローローズ
さて、では先ずはマリアの歌とイエローローズ王国の国歌の音源を
イントロとして流した後、ゲストとしてわたくし…イエローローズ王国の元王女が登場
クロックワーク・ヴィクトリアに抗う誇り高き者達よ
インド洋沖に浮かぶタンカーにてイエローローズ王国は存在している
我ら『六番目の猟兵』は六つ全ての超大国を必ず滅ぼす
次はイングランドか、アメリカか、日本列島か…それはまだ分からない
ただ言えるのは…遍く戦乱で蜜を啜る者よ、渇き飢えなさい
我らは戦乱ごと悉く滅ぼし、太平の世を作り上げる!
イエローローズ王国は、その未来の為に尽力すると宣言するわ!
そうして、イエローローズ王国の料理をラジオ局員に振る舞いながら進めていく
『このラジオをお聞きの皆様、お久しぶりです。少々お休みをいただきましたが、本日より放送を再開いたします』
即席の放送機材から電波に乗せて、なめらかな獣人の声が響く。ロシア各地の都市へ、そして国外や、戦場にまで。
先程まで強制労働させられていたとは思えない穏やかな声音が、ワルシャワ条約機構に屈しないという意志の現れ。これが放送再開された獣人ラジオの始まりだった。
『本日は特別ゲストの方々も来ています。早速一人目をお呼びしましょう……どうぞ』
パーソナリティの進行に合わせてイントロが流れる。それは心ならずもワルシャワに改造され、猟兵に討たれた歌姫マリアの歌――そして、イエローローズ王国の国歌の音源だ。この音楽に合わせて登場するゲストは1人しかいない。
『イエローローズ王国王女、レヴィア・イエローローズです』
その声は、かつての国民であれば聞き間違いようのないものだった。たまたまチャンネルを合わせたラジオ放送から敬愛する王女の声が聞こえてきた時、どれほど驚く者がいただろうか。姿の見えない国民に向けて彼女は話しかける。
『クロックワーク・ヴィクトリアに抗う誇り高き者達よ。インド洋沖に浮かぶタンカーにてイエローローズ王国は存在している』
イエローローズ王国臨時政府と称したその武装タンカーに、レヴィアは自国の生存者を集め難民保護を行っている。
国家滅亡の際に離散した国民の中には、この存在を知らない者もいるだろう。彼女がラジオに出演した理由はまず第一に、亡命政府の所在を広く報せるためだった。
『我ら「六番目の猟兵」は六つ全ての超大国を必ず滅ぼす』
さらにレヴィアは、今度は超大国の侵略を受ける全ての獣人に向けてはっきりと宣言する。それは一世紀以上続いた戦争に自分達の手で終止符を打つ、と言ったに等しい。無謀だと人は驚くかも知れないが、彼女は全て本気であった。
『次はイングランドか、アメリカか、日本列島か…それはまだ分からない。ただ言えるのは……遍く戦乱で蜜を啜る者よ、渇き飢えなさい』
レヴィアの言葉には断固たる決意と、超大国に属するオブリビオンへの怒りが宿っていた。祖国を滅ぼしたクロックワーク・ヴィクトリアに限らない。この世界を蝕む超大国全てが彼女の敵であり、のさばらせてはおけぬ悪の巣窟だ。
『我らは戦乱ごと悉く滅ぼし、太平の世を作り上げる! イエローローズ王国は、その未来の為に尽力すると宣言するわ!』
亡国の黄薔薇姫として伝えられたその宣誓は、世界各国に反響をもたらす。このラジオを聞いていなかった難民の耳にも、内容は人づてに届くだろう。生存者の保護及び臨時政府への支援もこれまでより盛んになるはずだ。ラジオ越しでは聞こえるはずのない、人々の歓喜の声と拍手をレヴィアは聞いた気がした。
「ありがとうございました、レヴィア王女」
「いえ、こちらこそ。この先も放送頑張ってね」
こうして自分のゲストとしての役を果たした彼女は、祖国イエローローズ王国の料理をラジオ局員に振る舞いながら続きの放送を聞く。この放送が自国の民の、さらにより多くの獣人の希望になるよう、協力は惜しまぬ姿勢であった。
大成功
🔵🔵🔵
リンカ・ディアベルスター
皆様ご機嫌よう、私はリンカ・ディアベルスター…コブラの猟兵だよ〜
獣人達の要望でラジオに出演する事にした
今回はワルシャワ条約機構の非道を見て強い怒りを感じたよ…機械を埋め込むなんて、非人道的な事を平気でする連中を私…いや我々猟兵が許さない!
必ず奴等を打倒すると私が信仰している星神達の名において誓おう!…少し興奮してしまったね、そろそろ時間だね…また機会があればゆっくり話したいな
と言ってラジオのマイクから離れた
…ラジオに話す機会をくださってありがとうございました
と獣人達にお辞儀をして外の空気を吸って気分転換する事にした
今回は非常に気分が悪い依頼だった…何とか超大国を潰したいが今のままじゃ厳しいな…
『皆様ご機嫌よう、私はリンカ・ディアベルスター……コブラの猟兵だよ~』
救出した獣人達の要望で、ラジオに出演する事にしたリンカ。猟兵の一員としてまずはマイクの前で自己紹介する。
伝説の『はじまりの猟兵』と同じく、超大国の侵略に対抗する希望である現代の猟兵達。その声を聞ける機会は一般人にとって珍しく、だからこそ貴重な放送になるだろう。
『今回はワルシャワ条約機構の非道を見て強い怒りを感じたよ……』
電波の向こうにいる人々に向けて、リンカは今の自分の思いを語る。反逆者を『永久凍土送り』にする刑罰といい、音響兵器として改造オブリビオン化された『機械仕掛けの歌姫マリア』といい、ワルシャワ条約機構が獣人の命をゴミ同然に扱っていることが、今回の件でよくわかった。
『機械を埋め込むなんて、非人道的な事を平気でする連中を私……いや我々猟兵が許さない!』
それはワルシャワ条約機構に限らない。ゾルダートグラードや人民租界――人の命を弄ぶオブリビオンの超大国は、全て猟兵の敵だ。愛する故郷を侵略する奴らへの怒りを、リンカはありありと言葉に乗せて発信する。その宣言には、聞き手の心を震わせるものがあった。
『必ず奴等を打倒すると私が信仰している星神達の名において誓おう!』
現代ではその伝説を知る者も少なくはなったが、|星神《アステリオーン》は今もこの世界を見守っている。担い手たる彼女がその証明だ。戦禍の闇を星の輝きが照らすたびに、人々もその名を思い出すだろう。かつて未開の土地を切り拓いた開拓者魂が、再び未来を導くのだ。
『……少し興奮してしまったね、そろそろ時間だね……また機会があればゆっくり話したいな』
上がった語気のトーンをすこし落として、リンカはリスナー達に別れの挨拶をする。他にもまだゲストが控えているのに、自分だけ時間を使いすぎる訳にもいかない。伝えたいことは伝えられたと、彼女はラジオのマイクから離れた。
『リンカさん、ありがとうございました。是非またゲストにお越しください』
パーソナリティは朗らかな口調でラジオを進行させ、控えていたスタッフが「お疲れ様でした」と水を渡してくる。
英雄たる猟兵から生の声を聞ける機会は、彼らにとっても貴重だった。今回は最高の放送になるとの手応えを感じているようだ。
「……ラジオに話す機会をくださってありがとうございました」
もらった水を飲み、ラジオの局員達にお辞儀をしてから、リンカは気分転換のために外の空気を吸いに行く。永久凍土地帯を離れたとはいえ、ここはまだ厳寒のロシア国内。冷え切った空気は肌に痛いほどだが、今の彼女にはそれくらいで丁度良かった。
「今回は非常に気分が悪い依頼だった……何とか超大国を潰したいが今のままじゃ厳しいな……」
ラジオで語った決意表明に嘘はないが、実現までの道のりはまだまだ遠いことを、彼女は痛いほどに理解していた。
足りないものが沢山ある。まずは1つずつそれを積み重ね、苦しんでいる人々を助けていくしかないだろう。こんな気分の悪さを誰かに味わわせないためにも、今回の件をしっかりと心に刻むのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
オリヴィア・ローゼンタール
なるほど、これが件の声を遠くまで伝える機械ですか
休憩している獣人たちに携帯保存食を分け与えて体力回復を図る
私は猟兵のひとり、オリヴィア・ローゼンタールです
つい先ほど、ワルシャワ条約機構の有する開拓施設の破壊に成功しました
超大国は確かに強大ですが、決して無敵でも不滅でもありません
こうした抵抗活動の積み重ねが、いずれ奴らの支配を喰い破る嚆矢となるのです
――人々よ、邪悪なる暴虐に膝を屈することなかれ
叛逆の拳を上げろ、剣を取れ、銃を構えよ
さすれば勝利の光を分け与えよう
圧政の鎖を打ち砕け――!
【聖戦】がラジオ越しに効果があるのか、確かめるすべはない
だがこれが、彼らの心に叛逆の火を灯すと信じて
「なるほど、これが件の声を遠くまで伝える機械ですか」
故郷にはまだ存在しない便利な道具を、興味深げに見つめるのはオリヴィア。もしラジオ放送がダークセイヴァーにあれば、遠く離れた『闇の救済者』同士で連絡を取り合ったりと様々な利点がありそうだが――今は羨んでる場合ではない。この世界もこの世界で大変なのだ。
「良ければこちらをどうぞ」
「おお、ありがてえ……マトモな飯なんて久しぶりだ」
休憩している獣人達の体力回復を図って携帯保存食を分け与えてみると、彼らは嬉しそうに齧りだした。硬いパンもチーズも塩漬けの干し肉も、開拓地から出てきたばかりの彼らにはご馳走だろう。これでラジオ再開に向けての活力も増したようだ。
『……ありがとうございますた。では、次のゲストをお呼びしましょう』
こうして始まったラジオ放送は順調に進み、いよいよオリヴィアがゲストに呼ばれる番がくる。パーソナリティーの獣人に呼ばれて対面に座った彼女は、緊張するふうもなく落ち着いた声音で、電波の向こうのリスナーに話しだした。
『私は猟兵のひとり、オリヴィア・ローゼンタールです。つい先ほど、ワルシャワ条約機構の有する開拓施設の破壊に成功しました』
反逆者への実質的な極刑である『永久凍土送り』について、このラジオのリスナーなら既にご存知だろう。厳重な警備を突破してラジオ局員達を救出した、この事実だけでもワルシャワ条約機構の支配下にある人々にとってどれほどの希望になるだろうか。
『超大国は確かに強大ですが、決して無敵でも不滅でもありません。こうした抵抗活動の積み重ねが、いずれ奴らの支配を喰い破る嚆矢となるのです』
ダークセイヴァーで『闇の救済者』という実例を知っているオリヴィアは、自信のある声で獣人戦線の人々に語る。
|五卿六眼《シャスチグラーザ》という監視機構を有し、盤石かに見えるワルシャワ条約機構の支配体制も、絶対ではないことを猟兵は証明した。次は、彼らの番だ。
『――人々よ、邪悪なる暴虐に膝を屈することなかれ。叛逆の拳を上げろ、剣を取れ、銃を構えよ』
1人1人は非力でも、この世界にいる「ごく普通の人たち」が立ち上がれば大きな力になる。そして、そうでなければ超大国の支配を打ち破ることはできない。ゆえにオリヴィアはラジオを通じて、熱心に人々の心を鼓舞する。彼らが邪悪に屈さぬ誇り高き人々であることを信じて。
『さすれば勝利の光を分け与えよう。圧政の鎖を打ち砕け――!』
演説や説得に同意した対象全てに神の加護を与えるユーベルコード【聖戦】。それがラジオ越しに効果があるのか、確かめるすべはない。だがこれが、彼らの心に叛逆の火を灯すとオリヴィアは信じていた。これで超大国への反抗の機運が、少しでも民衆に広がれば幸いだ。
『……我々も、我々のやり方でこれからも超大国の非道に立ち向かいます。本日は改めてありがとうございました』
少なくとも、ここにいるラジオの局員達には、オリヴィアの言葉はしっかりと届いていた。剣や銃ではなく電波と言葉の力で超大国に叛逆する彼らの闘志は、永久凍土でも凍らせられなかった。その瞳には、絶望を超えてなお光り輝く意志が宿っている――。
大成功
🔵🔵🔵
鏡島・嵐
ラジオにゲスト出演かぁ。
本当の勝利はまだまだ遠いけど、それでも助かった命には価値があるってヤツだな。
……うん、ちょっと照れくせぇけど、そういうことなら一肌脱ぐか。
とは言え、何を言ったモンか。
インタビューって受けるんは初めてだけど、いざ受けてみるとありきたりな言葉しか浮かばないのな……我ながら情けねえ。
しゃあねえ。こういう時は、歌でも披露するか。
さすがにこの場に楽器とかは無えだろうから、《笛吹き男の凱歌》を起動して伴奏させつつ、〈世界知識〉を動員してこの世界でそれなりに知られている歌を何か適当に歌ってみる。
ごくありふれた……けれど聴いているだけで希望が湧いてくる、そんな歌を。
「ラジオにゲスト出演かぁ。本当の勝利はまだまだ遠いけど、それでも助かった命には価値があるってヤツだな」
開拓地から自分らが救い出した獣人達が、早くもラジオ再開に向けて準備をしているのを、嵐はしみじみとした思いで眺める。ワルシャワ条約機構にはまだ虐げられている獣人が大勢いるが、今回の成果も少しずつ世界を変える原動力になるのだろう。そう感じさせてくれる光景だ。
「……うん、ちょっと照れくせぇけど、そういうことなら一肌脱ぐか」
自分達「猟兵」の言葉が人々の励みになるというなら、断る理由は特に無い。出演を許諾した彼は、パーソナリティの合図にあわせてゲスト席に座った。他の世界でもヒーロー扱いを受けがちな猟兵だが、こうした機会が多いわけではないので、多少緊張する。
『では、次のゲストをお呼びしましょう。よろしくお願いします』
『えぇと、鏡島・嵐だ。よろしく』
マイクの前でまず自己紹介をしてから、嵐は(とは言え、何を言ったモンか)と考える。このラジオを聞いている獣人達は、今も超大国の非道に苦しんでいたり、圧政への不満を溜めている人達だろう。そんな人々にどんな言葉をかければ心に響くのか、いいメッセージが思いつかない。
(インタビューって受けるんは初めてだけど、いざ受けてみるとありきたりな言葉しか浮かばないのな……我ながら情けねえ)
いくつかの言葉が頭に浮かんでは消えていく。ありきたりでも猟兵として伝えればいくらか響くのかもしれないが、せっかくの機会にそれでは勿体ないとも感じる。とはいえ放送中ずっと沈黙している訳にもいかず――パーソナリティも心配そうな目で見ている。
『しゃあねえ。こういう時は、歌でも披露するか』
『え、嵐さん?』
流石にここに楽器は置いてなかったので、【笛吹き男の凱歌】で楽器持ちの道化師を召喚して伴奏役に。旅の知識を動員して、この世界でもそれなりに知られている歌を頭から引っ張りだす。時には仰々しい演説よりも歌とメロディが人々の心を動かすことを、彼は知っている。
『よければ聞いていってくれ』
ノリノリで演奏を始めた道化師に合わせて、彼が歌いだしたのはごくありふれた――けれど聴いているだけで希望が湧いてくる、そんな歌。素朴ながら力強く、折れぬ麦穂と太陽の日差しを連想させるような、民衆のための歌だった。
『……ありがとうございました。心に沁みる歌声でした』
『そんなに大したもんじゃないさ。でも、良かった』
一曲歌い終えるとラジオ局員からはぱちぱちと拍手が沸き起こり、嵐は少々照れくさそうにしつつゲスト席を立つ。
きっと、どこかでこのラジオを聞いていた人々も、同じような感動を心に味わっただろう。今はまだ戦禍の絶望の中にいても、希望はすぐ傍に存在するのだと――彼の歌は、そう信じさせてくれるような歌だった。
大成功
🔵🔵🔵
黎明・天牙
夢幻戦線
見張りに行ってくるわ
UCを発動して見張りに行った
追っ手はいねぇな…帰るか
ある程度見回りをしたら帰ろうとした時
『待って頂けませんか?』
誰かが声をかけて来た
ん?誰だこいつ…
『げっ…此奴は』
吸血鬼に声をかけられて困惑していた俺だが邪神君の目が泳いでいた
『…厄災の邪神皇!よくもバージェス殿を!』
『天牙…余を守も…ギャアァァァ!』
吸血鬼が襲い掛かって来たので邪神君を盾にした
吸血鬼君、俺も手伝うわ
彼と一緒に邪神君をボコボコにした
『ヤアァァァァァァ!』
邪神君の断末魔が響き渡った
アンタ誰?何で邪神君に襲い掛かったの?
『…その邪神が連れて来た別の邪神のせいでバージェス殿は…殺され傀儡にされたのです』
邪神君に問いただした所、どうやらグリモアを破壊に失敗してティニ達がいる世界に逃げ込んでその異変に気づいたバージェスを別の邪神が殺したのが始まりだったらしい
(ちなみに邪神君は面倒だからさっさと逃げたらしい)
…どうりでティニにちょっかい出ていた訳か、二回戦行く?
『行く』
俺達は邪神君に近寄り再びボコボコにした
レティシア・ハルモニアス
夢幻戦線
分かった、気をつけるのじゃよ天牙!
と見送ってラジオに出演する事にした
ご機嫌よう、妾はレティシア・ハルモニアスという者じゃ!今回はこのラジオに参加出来てとても嬉しいぞ!
と楽しそうな声色で話す
今回の出来事を短く纏めて話し、その後は今後の目標を聞かれたのでこう答えた
この世界で苦しんでいる獣人達を開放し戦争を終わらせる…それが妾の目標じゃ!
と答えて出番終了
…はあ
外に出て天牙の帰りを待っていた妾だがラジオでは楽しい雰囲気を壊さないようにしていたが前の章のミスを引きずっていた
お帰りなのじゃ…?!
すると天牙が帰ってきたがもう一人の吸血鬼には見覚えが…
ら…ライメイザ?
『レティシア様!』
妾がその吸血鬼…ライメイザに駆け寄って抱き着く
あ…ライメイザ…う…うわぁぁぁぁぁぁん!
ライメイザの胸で泣き続けた
ふざけるな!よくもハージェスを!
『だから、ハージェスを殺ったのは矛盾の邪神であって余ではな…ギャアァァァ!』
逃げたじゃろうが!
妾はUC混沌の闇の波動を放ち邪神を吹き飛ばした
とにかく…無事で良かったのじゃ!
「見張りに行ってくるわ」
獣人達がラジオ放送の準備を始めたその頃、天牙は他のメンバーとは別行動を取っていた。ひとまず安全な場所まで逃げ切れたとはいえ、いつワルシャワ条約機構の追っ手がやって来るか分からない。周辺の警戒にあたる者が1人くらいは必要だろうと判断しての事だ。
「分かった、気をつけるのじゃよ天牙!」
一方のレティシアは彼を見送って、ラジオに出演する事にしたようだ。猟兵として自分が声をかけることで、罪なき獣人達が少しでも励みに感じてくれるのなら断る理由はない。それは異世界の王族として、人を導くものとしての使命感もあったかもしれない。
「追っ手はいねぇな……」
かくして【『パラダイス・ブレイカー』神鷲雀男】を発動し、振動の力を纏わせた翼で避難所を飛び立った天牙は、鋭敏な鷹の眼を活かして空から偵察を行う。開拓地のリーダーだったマリアを倒し、哨戒部隊にも損害を与えてやったのが効いているのか、見渡せる範囲に敵らしき影はない。
「……帰るか」
「待っていただけませんか?」
ある程度見回りをして、安全を確認してから帰ろうとしたその時――雪風をかき分けて、誰かが天牙に声をかけた。
振り返ってみればそこには見覚えのない男性が立っている。身に纏う闇のオーラと血の匂いはおそらく吸血鬼だが、オブリビオンの気配はしない。
「ん? 誰だこいつ……」
『げっ……此奴は』
ワルシャワ条約機構の連中とは別件らしき謎の吸血鬼に天牙は困惑するが、見回りに付いて来ていた邪神「オーガスト・ベイン」の目が泳ぎだす。それは明らかに相手のことを知っている反応で――吸血鬼の方も、邪神の姿を見るなり顔色が変わった。
『……厄災の邪神皇! よくもバージェス殿を!』
『天牙……余を守も……ギャアァァァ!』
突然牙を剥いて襲い掛かってきた吸血鬼に対して、天牙は冷静に邪神の発言を無視して盾にした。コイツとは一種の腐れ縁のようなもので憑き纏われているが、夢幻戦線メンバーのような仲間意識がある訳でもない。邪神の肩書きに違わず性格も悪いし、自分が知らないところで恨まれていても驚きには値しない。
「吸血鬼君、俺も手伝うわ」
「かたじけない!」
『ヤアァァァァァァ!』
どうせ道理はこっちにあると踏んだ天牙は、見知らぬ吸血鬼と一緒になってオーガスト・ベインをボコボコにする。
底知れぬ力を持つ神とはいえ万能無敵の存在ではなく、猟兵を含めた二人がかりだ。誰もいないロシアの雪原に邪神の断末魔が響き渡った。
「アンタ誰? 何で邪神君に襲い掛かったの?」
邪神が動かなくなったのを確認してから、改めて天牙は吸血鬼に理由を問う。本当は最初に聞いておくことのような気もするがまあいいだろう。邪神に激しい敵意を示した一方で、この吸血鬼に天牙と敵対する意志はなさそうだった。
『……その邪神が連れて来た別の邪神のせいでバージェス殿は……殺され傀儡にされたのです』
憎々しげな眼差しで邪神を見下ろしながら、その吸血鬼は事情を語りだした。彼が口にした「バージェス」という名前には、天牙も聞き覚えがある――たしかレティシアが元いた世界で、彼女を裏切り女王の力を奪った相手のはずだ。
「どういう事だ邪神君」
『そ、それは……』
オーガスト・ベインを問いただしたところ、どうやら彼はかつてグリモアの破壊を企んで失敗し、別の邪神と共にレティシア達の世界に逃げ込んだ。その異変に気付いたのが当時のレティシアの腹心、バージェス――それを目障りに感じた別の邪神が、彼を殺害したのだ。
『そのせいでバージェス殿は……レティシア様は……!』
レティシア達の世界を襲った悲劇の元凶は、こんなに近くにいたのだ。普段は飄々としている天牙も、流石に真顔にならざるを得ない。奴のせいでレティシア達が味わった苦しみと絶望の深さを慮り、彼は吸血鬼の肩をぽんと叩いた。
「……どうりでティニにちょっかい出ていた訳か、二回戦行く?」
『行く』
吸血鬼の気持ちを考えれば何百回殺しても飽き足らない相手だろう。二人は倒れている邪神を再びボコボコにする。
そのたびに響く断末魔の悲鳴を聞きつけて、駆けつける者は誰もいない。同情の余地もない制裁は暫し続いた――。
『ご機嫌よう、妾はレティシア・ハルモニアスという者じゃ! 今回はこのラジオに参加出来てとても嬉しいぞ!』
ところ変わってこちらは獣人ラジオ局。ゲストとしてラジオブースに招かれたレティシアは、楽しそうな声色で電波の向こうのリスナーに話しかけていた。つい先程までの戦闘と脱出劇による疲労を感じさせないのは、聞き手を安心させるテクニックだろう。
『妾達はワルシャワ条約機構の永久凍土開拓地を攻略し、捕まっていた獣人達を助け出した!』
『そのお陰で、私達もこうしてラジオを再開することができました。勇敢な猟兵の皆さんに感謝です』
彼女はパーソナリティと一緒に今回の出来事を短く纏めて話し、小気味いいトークで番組を盛り上げる。一般獣人にとっては絶望的な存在であるワルシャワ条約機構も、決して支配体制は盤石ではないことをアピールするのだ。今回のニュースが世界中に広がれば、超大国に反抗する民衆の機運を高められるだろう。
『では、レティシアさんの次の目標は?』
『この世界で苦しんでいる獣人達を開放し戦争を終わらせる……それが妾の目標じゃ!』
これからの方針を尋ねられたレティシアは、自信に満ちた声音でそう答える。果てしなく遠い目標のようにも思えるが、妄想で終わらせるつもりはない。いつの日か平和な世界を取り戻すまで、彼女達猟兵は今後も戦い続けるだろう。
『ありがとうございました。レティシア・ハルモニアスさんでした』
『うむ! また会おう!』
こうして円満な雰囲気のままレティシアの出番は終了し、ブースを出た彼女はスタッフ達からの拍手に見送られる。
出演への感謝やねぎらいの言葉に応じつつ、彼女は仮設放送局の外で一人になれる場所を探し――それまでの明るい態度から一変、深い溜息を吐いた。
「……はあ」
ラジオでは楽しい雰囲気を壊さないように明るく振る舞っていたレティシアだが、実は開拓地でのミスをまだ引きずっていた。トラウマを刺激されたとはいえ、戦闘中に敵味方の区別がつかなくなるとは。仲間のフォローのおかげで大事にはならなかったものの、そもそも取り乱してしまったのが心の弱さの表れだ。
「おーい、ティニ」
「む、お帰りなのじゃ……?!」
そんな憂鬱な気分で見回りに行った仲間の帰りを待っていると、雪を踏む音とともに見知った相手の声が聞こえる。
顔を上げると、そこには天牙ともう一人、依頼に参加した猟兵とも獣人とも違う人物が――その吸血鬼の姿に見覚えのあったレティシアは、瞳がこぼれ落ちそうなほど目を丸くした。
「ら……ライメイザ?」
『レティシア様!』
その吸血鬼はまさしく、かつてレティシアに仕えていた眷属、ライメイザだった。あの裏切りと凋落の日を境に生死さえ分からなくなっていた忠臣との再会に、彼女は考えるよりもまず駆け寄っていた。懐かしき顔を映す碧の瞳から、大粒の涙がこぼれ落ちる。
「あ……ライメイザ……う……うわぁぁぁぁぁぁん!」
屍人や霊魂ではない。生きている。抱き着いた相手のぬくもりから確信を得て、幼い子供のように泣きじゃくる。
ライメイザもまた、大切な主君の頭をそっと撫でながら涙を流し。別れていた時間を埋めるように、二人はしばらくそうして泣き続けていた。
「ぐすっ……ライメイザ、無事でよかった……今までどうしておったのじゃ?」
『それは……』
暫くしてようやく泣き止んだレティシアに、ライメイザは離れ離れになってからの経緯を語る。そこには当時の彼女らが知る由もなかった真実――バージェスの裏切りの理由も含まれていた。かの異世界の吸血鬼達はみな、別世界から訪れた邪神によって人生を狂わされていたのだ。
「ふざけるな! よくもハージェスを!」
『だから、ハージェスを殺ったのは矛盾の邪神であって余ではな……ギャアァァァ!』
「逃げたじゃろうが!」
全ての元凶(の片割れ)がオーガスト・ベインだと知った時のレティシアの怒りは、当然の事ながら凄まじかった。
遠慮も手加減も一切なしに【混沌の闇の波動】を叩きつける。概念すら喰い尽くす混沌に呑み込まれた邪神は、またも断末魔を上げて吹き飛ばされていった。
「とにかく……無事で良かったのじゃ!」
『……はい!』
感情を爆発させてスッキリしたのか、レティシアはようやく心から晴れやかな表情を浮かべてライメイザに微笑む。
あれから"色々な"という言葉では到底表せないほど辛いことが沢山あった。ライメイザもきっと同じだろう。それでも絶望を乗り越えて再会を果たした主従の心は、あふれんばかりの喜びで満ちていた――。
――こうして、猟兵達はワルシャワ条約機構の永久凍土開拓地を壊滅させ、その支配体制を僅かながら揺るがした。
解放された獣人達によって再開されたラジオ放送は、今後も超大国の非道を訴え、民衆の反抗心を鼓舞するだろう。電波に乗って広がる小さな希望が、やがて大きな炎となることを、ここにいる誰もが信じていた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵