古代神機皇国ジャパニアの巨神(男の娘)
クロムキャバリア・科学小国家ジャパニア改め、科学連邦国ジャパニア。
この世界の中でも、稀有な科学力の高さを誇る小国家だ。
だが、ジャパニアの成り立ちは千年も前に遡り、しかも科学力ではなく魔力で成り立っていた事を知る者は少ない。
現在のジャパニアの前身国家、つまり古代神機皇国ジャパニアは……現在のジャパニアの技術をもってしても解析できない謎が多く残されているのだ。
古代神機皇国ジャパニアの伝説のひとつに、神機シリーズと呼ばれる『巨神』が何機も存在した。
此等はなんと、自我を持ち、自律稼働し、千年前のジャパニアの統治者であったと伝えられている。
しかし、200年ほど前に突然、謎の滅亡を迎え、神から人への統治に切り替わったとされている――。
そして、現在。
ジャパニアと約2年間、今も敵対関係にある『神聖ブリオン教国』が動いた。
2年前の大海戦から両国間で小競り合いが続いていたものの、依然として敵国の目的は不明のままであった。
だが今回、その狙いがジャパニア各国に未だ眠る『巨神』の覚醒と鹵獲だと判明した。
更に、既にジャパニア各地の遺跡から『巨神』……神機が鹵獲されている事も確認された。
そして今から6時間後、覚醒間近な『巨神』が眠る遺跡に、敵国『神聖ブリオン強国』が侵入して拠点を作り上げてしまう上に、その『巨神』を無理矢理に操って大量破壊兵器として運用してしまう予知を、蛇塚・レモン(白き蛇神憑きのシャーマンクイーン・f05152)が察知したのだ。
「今から転送すれば、敵国が乗り込んでくる前にみんなを遺跡へ送り届けられるよっ! でも……」
1秒でも時間が惜しい状況のはずだが、レモンの口振りが重い。
その訳を、彼女が躊躇いがちに話し始めた。
「眠っている巨神さんは、数百年前に勃発したジャパニアの巨神同士の内乱で酷いダメージを負ってて動けないっぽい! あとその影響か、深い絶望に囚われてるんだよっ! 巨神さんの名前は『幻惑神機ディオニュソス』で、本来はお酒と宴会が大好きな陽キャ系ギャルの“男の娘”らしいよっ!」
なん、だと……?
『巨神』にも、男の娘概念があったらしい……。
となると、ただ単に修理するだけでは、彼(あるいは彼女)の絶望の闇を打ち払うことはできない。
勿論、修理も重要だが、ディオニュソスのメンタルケアも同時に行ってほしいとレモンは猟兵達へ願い出た。
手段は各自に任せるだけと告げて。
レモンは猟兵達を早速、クロムキャバリア世界の科学連邦国ジャパニア辺境の古代遺跡への転送準備を開始。
果たして、猟兵達は絶望の淵に沈む『巨神』の心と機体を『なおす』ことが出来るのだろうか……?
そして、迫る『神聖ブリオン教国』のキャバリア軍団を打破できるのか?
七転 十五起
気付けば、2年ぶりのクロムキャバリアでのシナリオ公開です。
古代遺跡に眠る『巨神』キャバリア(男の娘)にまつわるお話。
なぎてん はねおきです。
●伝説の『巨神』ルール
1〜3章のいずれかで巨神と心を通わせた猟兵は、3章で巨神を操縦することができます。
巨神のことは直接コックピットに乗り込んで操縦しても構いませんし、遠隔での命令にも対応しています。
巨神の能力は非常に強大です。これを(暴走したり周囲に無用な被害を出したりしないよう)制御しつつ攻撃させるというプレイングには、プレイングボーナスが発生します。
リプレイで「巨神に認められた」ことが描写されたお客様が、この巨神をアイテム化したり、巨神を用いたユーベルコードを作成することは自由です。
※本シナリオでは、最終的に候補を1名に絞らせていただきます。
●概要
第一章日常、猟兵達は敵国軍よりも早く古代遺跡に転送されます。
そこで大破した『巨神』を目の当たりにするでしょう。
猟兵達のパワーに呼応した『巨神』こと『幻惑神機ディオニュソス』のコアが起動するものの、戦いはもうこりごりだと拒絶してしまいます。
猟兵達は、絶望に染まった彼(男の娘)の精神を癒して説得しつつ、急ピッチで機体を修復します。
なお、ディオニュソスが好きなのは『酒』と『宴会』です。
第二章は集団戦、遅れてやってきた敵国『神聖ブリオン教国』のキャバリア軍隊を撃破してください。
第一章で各猟兵が十分な信頼と説得を済ませ、かつ機体の修復が間に合えば、『巨神』に乗り込んで敵軍を蹴散らすことができるかもしれません!
ちなみに巨神の権能は『対象に酩酊状態による強力な幻覚を見せる』ことです。
ただし、少しでも力加減を間違えれば、猟兵達を容易く撒きこむので注意が必要です。
第三章はいよいよ敵オブリビオンマシン軍団の指揮官機体との決戦です!
敵も強力な機体ですが、もしも猟兵の誰かが『巨神』に認められ、操縦することに成功していたなら、強力な幻覚で敵を惑わしてくれるので、戦闘を有利に進めることができます!
(ここでも暴走させて、猟兵達を巻き込まないようにくれぐれもご注意ください)
●その他
クロムキャバリア上空には、高速飛翔体を無差別砲撃する暴走衛星「|殲禍炎剣《ホーリー・グレイル》」が存在しているため、高高度の飛行が制限されています。
それでは、皆様のご参加をお待ちしています!
第1章 日常
『伝説が眠る場所』
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POW : 故障したままの部品を一つずつ修理してあげる
SPD : 自己診断プログラムを走らせて修理を手伝う
WIZ : マシンの記録から過去の戦いの記憶を探る
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種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
――なに? 誰……ウチを起こすんは?
うぅん、てかウチ、どれくらい寝てたん……?
まだ『|神殺戦争《ラグナロク》』は続いてるん?
だとしたらウチ、このまま寝てるしー。
なんでみんな喧嘩ばっかするん?
なんでみんな仲良くできんの?
もうやだぁ……もう戦いたくないし、ジャパニアがどうなろうがウチに関係ないし……。
ウチはみんな仲良くズッ友でお酒飲んでパリピってアオハルしたいだけなのに……。
つら……お願いだから起こさないでねぇ?
スヤァ……。
シルヴィ・フォーアンサー
SPD判定。
ヨルもお酒飲んで酔っ払ったりできるの?
『私をトンデモな代物と一緒にしないでくれ』
強い力があって嫌なモノがあるなら自分で消さないの不思議だね。
『君はそうしたからな(私がそそのかしたのだが)』
ミドガルズで修復を手伝いながら語りかけてみる。
このまま寝てると頭の中弄り回されてやりたくない事やらされちゃうよ。
嫌な事は嫌だって伝えるぐらいはしたほうが良いと思うけど。
言っても聞いてくれない人もいるけどそうなら私達が追い払ってあげるし。
やりたくない事やらされるのは嫌だもんね(キャバリア相手なので怖くない)
それとお酒飲めるの?パリピってアオハルするって何?
(説得する気あるのかないのか、向いてない)
古代遺跡へ真っ先に転送されてきたのは、シルヴィ・フォーアンサー(自由を求めた脱走者・f41427)と彼女専用機ことクロムキャバリア《ミドガルズ》であった。
「あった」
薄暗い石造りの遺跡の中で、何かもモニュメントめいて横たわる『巨神』。
見た目は崩れたボロボロの巨大石像で、猟兵のような異能を持つ存在でなければ、目の前の巨像が意思を持つキャバリアだとは誰もが思いもしないだろう。
それだけ巧妙な認識阻害の古代魔術が掛かっていたようだ。
「シルヴィが一番乗り。『幻惑神機ディオニュソス』、グリモアベースで聞いたけど、お酒が好きなのかな?」
『……え? さっきの聞こえてた? マジ? うわぁ、恥っず……!』
巨神は身動きこそしないが、何故かシルヴィの脳内に『派手な髪色に染めて学生服を着崩した少女のような存在があたふたする様子』が浮かび上がった。
シルヴィはこの脳内に浮かび上がった姿が巨神の何に相当するのかは判別付かなかったが、ボロボロの機体から声が響いていた方がむしろ接しやすいと感じ、意識的に脳内のイメージを遮断するように心懸けた。
彼女は他の人間とのコミュニケーションを恐れて非積極的な態度を貫いているからだ。
「そういえば、ヨルもお酒飲んで酔っ払ったりできるの?」
シルヴィが疑問を投げ掛けた相手は、自身の専用機であった。
クロムキャバリア《ミドガルズ》の専用成人男性型サポートAIユニット『ヨルムンガンド』は、相棒へ呆れた口調で言葉を返す。
『私を目の前のトンデモな代物と一緒にしないでくれ』
『ひっどぉ……! ウチ、なんかキケンな神機だと思われてる系? ウチは最後まで戦争を回避しようと尽力してた、根っからの和平派だったのにぃ……』
巨神はヨルの言葉にショックを受けて更にいじけてしまったらしい。
さすがにこれ以上、相手がへそを曲げたら、猟兵達の協力を拒みかねない。
シルヴィはそれとなく話題を変えてみる事にした。
「巨神って、すごい力を持ってるんだよね。そんなに強い力があって嫌なモノがあるなら、自分のすごい力で消さないの不思議だね」
『君はそうしたからな』
「うん。だからシルヴィは今、自由だよ」
彼女は相棒のコクピット内部の装置を優しく撫でて、その当時の感謝の意を伝えた。
それにヨルは何も答えはしなかったが、心中では迷いを抱えていた。
あれは、私が彼女をそそのかしたから――。
「ヨル? どうしたの、黙って?」
『いや、巨神の機体損傷がかなり酷いと考えていた。これはオーバーホールも覚悟してもらわないとだな』
『え、ウチを分解すんの? 大丈夫なん……? そもそもウチ、神機であって普通のキャバリアと違うし?』
巨神の不安の声にシルヴィは躊躇せずに告げた。
「任せて。普段からミドガルズの整備をシルヴィはやってる。古代の巨神でも、装甲や可動部の補修くらいなら問題ない」
早速、シルヴィは専用機に乗り込んだまま、人間のような繊細な動きで巨神の破損した脚部から修復を開始した。
「それで、さっきの質問。どうして、戦わなかったのかな? すごい力、持ってるんだよね」
シルヴィはその生育歴から、暴力にさらされるのを嫌う一方で暴力でしか物事の解決方法を知らない。
故に、強大な力を持ちながらも戦わなかった、この巨神を理解できないでいた。
『だって……怖いし?』
巨神はおずおずと古代のジャパニアであった戦争の事を話し始めた。
『ウチには、命の恩人と言えるほどリスペクトしてた、神機の王様がいてね? 色々とぶっ飛んだ王様だったけど、めっちゃウチに絡んでくれるし、ウチも大好きだったんだけど……ある日を境に、その王様を国中で取りあいになっちゃって。国が真っ二つに割れちゃってマジ最悪。つか昨日まで仲良かった面子が武器持ってウチを襲ってくるの、超怖くて。最初はウチの能力で鎮圧とかしてたんだけど、その報復でウチが倒した数倍の戦力にずっと狙われ続けて……憎しみの連鎖が断ち切れないウチに、巨神だとかすごい力とか……全然ないっつーか? 最後は王様を庇ってこのザマだし? ……なんで仲良く酒飲んで騒いで、ずっとピースフルに出来なかったのかな? はぁぁ……』
「話が長い」
『ええ……』
シルヴィの直感的な感想に巨神は唖然としてしまう。
「ディオニュソス、このまま寝てると悪い奴らに頭の中弄り回されて、やりたくない事やらされちゃうよ」
シルヴィはグリモアベースで見た予知の内容をかいつまんで巨神へ伝えた。
『ウチが鹵獲されて、悪の破壊兵器に? そんなんガチ嫌なんだけど!』
「うん、だから普段から嫌な事は嫌だって伝えるぐらいはしたほうが良いと思うけど」
『うぅ……相手が傷付くかもって思うと、ウチ、嫌と言えなくて……』
『なんだかナイーブすぎる巨神だな』
ヨルも巨神の煮えたぎらない態度にイライラが積もってゆく。
シルヴィはそんな巨神だからこそ、相手が人間ではないからこそ、優しい言葉で提案してみせる。
「言っても聞いてくれない人もいるけど、そうなら私達がそいつらを追い払ってあげるし。やりたくない事やらされるのは嫌だもんね。シルヴィも嫌だよ」
『シルヴィ……』
寄り添ってくれるシルヴィの態度に、巨神も徐々に打ち解けていったようだ。
「ところで、巨神はどうやってお酒飲むの? パリピってアオハルするって、何するの?」
『距離感縮まったら質問攻めパネェし!? あ、お酒飲むときは人間の姿になって、パリピってアオハルはとにかく楽しい事をするっつー意味で……』
「えっ、巨神って人間になれるの?」
その後もシルヴィの質問攻めは他の猟兵達が来るまで行われるのであった。
成功
🔵🔵🔴
鳴上・冬季
「男の娘コンビと見せかけて女性同士の方々もいらっしゃいましたが。今回は男の娘同士でパートナーになるでしょうか。興味が尽きませんね」
嗤う
「出でよ、黄巾力士金行軍」
黄巾力士144体召喚
3隊に分け
・周囲の片付けと予備パーツ探し
・巨神補修
・新規パーツ搭載
命じる
自分は普段連れ歩く黄巾力士連れ巨神とおしゃべり
「こんにちは、お嬢さん。さっさと目覚めて、貴女のやりたい活動を始めたらいかがです?」
「巨神密売会場潜入という依頼を受けたこともあって、巨神に会うのは貴女で16体目です。皆さん自分のパートナーを見つけて新しい趣味に邁進してらっしゃいました。貴女もどうです」
「腰部保護パーツをスカート風にこう増設しては?」
鳴上・冬季(野狐上がりの妖仙・f32734)にとって、巨神に絡む事件は見慣れた任務内容であった。
だが、今回の巨神が男の娘だと聞いて、彼は知的好奇心を刺激されて嗤った。
「男の娘コンビと見せかけて女性同士の方々もいらっしゃいましたが。今回は男の娘同士でパートナーになるでしょうか。興味が尽きませんね」
妖仙は結末を見届けるべく、グリモアベースからクロムキャバリアの科学連邦国ジャパニアの遺跡へ転送していった。
遺跡に到着するやいなや、ボロボロに朽ちた巨神の機体がモニュメントめいて横たわっていた。
『今度は誰なん……? って、イケメン来たんじゃね!?』
鳴上の脳内に直接響く声は、変声期の少年の声というよりも女性のそれに近い印象を持った。
「貴女が『幻惑神機ディオニュソス』ですか。こんにちは、お嬢さん。さっさと目覚めて、貴女のやりたい活動を始めたらいかがです?」
『え、いきなりなんなん……? つかウチ、見ての通り動けないし?』
上から目線の物言いに、巨神は思わず距離を置いてしまう。
だが鳴上はお構いなしに、巨神の修復を開始してみせた。
「出でよ、黄巾力士金行軍。このお嬢さんの修復を開始せよ」
横たわる巨神の周囲に出現した114体のキャバリアめいた宝貝人形軍団。それらの手には、様々な次第が抱えられており、鳴上の宝貝の素材を運搬させた物であった。
「ああ、怯えなくて結構です。これらは十分ん時間があれば、城や街を築くほど優秀ですので」
口ぶりは柔らかいが、何処か棘がある嗤い方で巨神を見遣る。
『え? ちょ、いきなりそんなところから!? って、あ、意外とこの子達、仕事は丁寧かよ……うぅ……』
巨神も警戒心を取り下げる者の、顔の良い鳴上の斜に構えた笑みに口数が少なくなってしまう。
(ふむ、なかなか心を開いてくれませんか。でしたら……)
黄巾力士らの修復作業と並行し、鳴上は巨神の信頼を勝ち得るために積極的に話しかけ始めた。
「私はこれまで、巨神密売会場潜入という依頼を受けたこともあって、巨神に会うのは貴女で16体目です」
『そんなにウチみたいな子がいるの!? って、密売会って何なん!? ヤバ、こっわぁ……』
鳴上は神機みたいなキャバリア達が販売されている現場へ実際乗り込んで、その現場をぶっ潰してきたわけだが、ここで眠っていた巨神にとっては恐怖でしかなかった。
「大丈夫です。此処とは遠く離れた小国家の出来事ですので」
あの密売会場を取り仕切っていたテロリストの末路を思い浮かべると、今でもどす黒い嗤いが込み上げてくる。
「おや、黄巾力士達が戻ってきましたね。遺跡の周囲に使えそうな資材が落ちてないか探索させていました。どうやら収穫があったようです」
宝貝人形達が見つけたのは、大小さまざまな宝珠の数々だった。
これに巨神が声を上げた。
『それ、うちの神器じゃね!? うわ、バラバラになってる~! なにもここまで破壊しなくってもいいじゃ~ん……マジかぁ~!』
どうやら、この大小の宝珠を繋ぎ合わせて、神器を媒介として巨神の権能を発動させるらしい。
「ならば、復元して差し上げましょう。この程度、宝貝開発で培った技術があれば造作もないですので」
『マジで? ウケんだけど!』
「では、早速取り掛かりましょう」
自信たっぷりに妖仙は嗤うと、黄巾力士の属性を土行に変更して召喚し直して復元を試みる。
その最中、鳴上は巨神へ尋ねた。
「ところで、その密売会を始めとした16体の巨神は、皆さん自分のパートナーを見つけて新しい趣味に邁進してらっしゃいました。貴女もどうです? 戦いなど好まないのなら、早くパートナーを見つけていっそ自由に放蕩してみては? 腰部保護パーツをスカート風に増設すれば、見目麗しくなって相手の気を引けるかもしれませんが」
冗談めいて嗤う鳴上の言葉に、巨神は何か考え込む様子。
『パートナーかぁ……他の子は知らんけど、ウチは神機だし? 神機って操縦者を伴侶として迎えるんでさ、そう簡単に見付けろっていわれても……ウチの大好きな王様だって、同じ神機とはたくさん婚姻関係を結んだけど、最期まで操縦者を迎えることがなかったくらいだし……? できれば……優しい年下の男児を希望……えへへ……』
聞けば、ここジャパニアに眠る神機はヒトと交わる事を前提に操縦者と契約を結ぶらしい。そしてその契約は何があっても覆されず、違えることが出来ないのだという。
(なんとも“重い”巨神でしょうか。そしてショタコンとは業が深い)
面倒臭さが増して嗤いたくなる。
鳴上はどうしようかと考えていると、巨神が彼に話しかけてきた。
『それはそれとして……腰部保護パーツをスカート風に増設するヤツ、お願いできん?』
「ええ、お安い御用です」
巨神のチョロさに再び鳴上は嗤い、巨神の脚部がスカートを纏うのであった。
大成功
🔵🔵🔵
スイート・シュガーボックス
(遺跡の壁をぶち破ってくるキッチンカー)
ここのディオニュソス…ちゃん?ちゃん付けでいっかッ!が元気が無いって話を聞いたから駆けつけたよ。
元気になるにはそう、おやつだねッ!
キッチンカーで手持ちの『極上食材』で【甘い幸せ彩る調理錬金】。
アオハルに相応しいおやつといえば…熱々のチーズ、色とりどりのトッピング、そうピザだよッ!
ピザはおやつかって?おやつだよ(断言)
更に何枚かのピザ、ポテチ、お酒を使ったケーキやチョコを作って…レジャーシートを敷いてアオハルパーティーの開幕さ。他の猟兵の人もご一緒にどうぞ。
『不思議なティーポット』で好きなお酒を淹れてあげよう。
先ずは元気になる事が先決さ。
【アドリブ歓迎】
箒星・仄々
さすが神機さん
色々と属性をお持ちなのですね
ディオさんのお心と体を癒しましょう
お酒をお出ししてお酌します
飲み始めて下さいましたら
起動したリートで賑やかな曲を奏で歌います
リクエストも受け付けますよ
千年前の歌曲とか教えて頂けると嬉しいです♩
仲間同士が相争うとは
さぞお辛かったことでしょう
その体験に今なお
お心が囚われておいでのは
眼差しが未来を向いていないから
お酒を飲んで歌ったり踊ったりして
楽しい気持ちになれば
今を慈しみ今を生きる意思が湧いてくるはず
自ずと未来へと進むお心が生まれ
心の闇が晴れることでしょう
歌曲に共感して下さったら
その心と体を治療です
素敵な未来を
これから私たち自身の手で作り上げていきましょう
箒星・仄々(ケットシーのシンフォニア・f07689)はジャパニアの遺跡に転送されると、朽ち果てて横たわる巨神に歩み寄る。
「さすが神機さん。色々と属性をお持ちなのですね。お酒を持ってきましたよ。貴女の心を癒して差し上げましょう」
箒星にメカニックの心得はない。なので直接的に巨神の修理を行うことはない。
箒星にできるのは、巨神へ酒を捧げる事と竪琴で音楽を奏でる事だけだ。
だとしても、彼は出来る事を精一杯やるだけだ。
これに巨神は驚きの声を上げた。
『わぁ! 二足歩行で喋る猫ちゃん! ヤバイ! カワイイ!』
「ディオさん、私はケットシーです。神機さんは私も見知っていますよ。なかなかキャラの濃い方で」
『え? 今も神機がいるの? マジで? 名前は分かったりする系?』
巨神の問いに、箒星は記憶を辿ってゆく。
「そうですね、確か、メル……」
箒星が名前を言いかけたその時。
突然、箒星の背後の岩の壁が爆発し、一台のキッチンカーが壁の中から飛び出してきた!
『えええええっ! ウチの寝床を壊さないでほしいんだけど!?』
驚愕する巨神を尻目に、キッチンカーの運転席から降りてきたのは……傷ひとつない少年の脚。
『えっ? ショタ? ショタなの!?』
急に興奮しだす巨神。
そして姿を見せたのは……お菓子の缶箱に少年の脚が生えたミミック、スイート・シュガーボックス(おかしなミミック・f41114)であった。
「ここのディオニュソス……ちゃん? ちゃん付けでいっかッ! そのディオちゃんが元気が無いって話を聞いたから駆けつけたよ。元気になるにはそう、おやつだねッ!」
『ウチ、めっちゃ混乱してんだけど? あれなに? ねえあれなに?』
巨神はケットシーを見たことなければミミックも知らない。猟兵特性で怪しまれないとはいえ、遺跡へダイレクトエントリーをブチかました都合、スイートは怪しまれて当然である。
だがスイートがキッチンカーから取り出したあるものに、ついさっきまで困惑してた巨神は釘付けになってしまう。
『あっ! それ、赤ワインじゃね!? ウチ、お酒の中で赤ワインが一番好きなんだけど!』
「そうだよ! しかも高級な一本だよ! これに合わせるおやつ、それは……ピザだよッ! 俺がとびきり美味しいピザを焼いてあげるから元気出してねッ!」
『ん? ピザって何なん?』
なんと巨神はピザを知らなかった。
そして箒星は思わずスイートへツッコミを入れる。
「お菓子なのにピザを焼くのですか?」
「そうだよ」
スイートは迫真の語気で箒星へ力説した。
「誰が何と言おうとも、ピザはおやつだよッ! 熱々のチーズ、お肉やシーフードをたんまり乗っけてッ! 焼き立てをシェアしながらフライドポテトと一緒に食べて騒げば、これぞアオハルパーティーだからねッ!」
『見た目にびっくりしたけど、キミ、めっちゃアオハル理解してんじゃん! ウチとダチにならん?』
巨神もスイートのプランに興味津々だ。
と、ここで箒星が再び疑問を口にする。
「そういえば、ディオさんはこのまま飲食が出来るのでしょうか? 私の知ってる神機さんは人間の姿になってましたけども」
『あ、待ってて? 200年ぶりにやるからうまくいくかな? ふんぬぬぬぬ……オラァッ!』
野太い掛け声と共に、巨神の身体からすぽんっと人間が飛び出してきたではないか。
『あ、出来た! いぇーいっ! やっぱこの姿、超アガるわ~! これが人間の姿のウチ! めっちゃ漏れてね? かわいくね?』
飛び出してきた人間の姿の巨神は、まんま女子高生のようなギャルの格好であった。
『これでようやく飲み食いできっから! さあさあ、飲もーぜー!』
自分の機体の掌の部分に腰を掛けたギャル巨神は、何処からともなく金の杯を掲げて酒を催促。
慌てて箒星が持参したビールをその杯に注いだ。
「お酌が遅れて失礼しました。よく冷えたビールですよ。私は未成年なので飲めませんが、その代わりに歌って踊って演奏して、パーティーを盛り上げさせていただきます。千年前の楽曲なんかがあれば教えて頂けると嬉しいです。即興でアレンジして奏でさせていただきますよ♪」
『マジで? じゃあ……っていうの、イケそう?』
「お任せください。それでは、賑やかに参りましょうか♪」
箒星は竪琴を掻き鳴らしながら、その場でステップを踏んで朗々と歌い上げる。
この歌声自体がユーベルコードであり、巨神の心の傷を癒してゆくのだ。
だが、流石に巨神本体の装甲が自動修復するわけではない……と思われたのだが。
『うぇ~い! 酒と宴会でウチの権能が戻ってくるし! このまま朝までアゲてこ~♪』
なんと、ギャル巨神が酒を飲んで箒星の歌と演奏に合わせて踊り出すと、ボロボロの巨神の機体が徐々にきれいに戻ってゆくではないか。
「なるほど、失われた権能を取り戻せば、自己修復が可能なのでしょうか」
納得した箒星の鼻先に、かぐわしいチーズと小麦粉の焼けた香りが漂ってくる。
「おまたせッ! トマトソースをベースに、チーズたっぷりのミートピザと具沢山のシーフードピザノハーフ&ハーフが焼き上がったよ! フライドポテトも揚げたて熱々ッ! 定番のビールにも合うけど、今日はコク深い赤ワインでどうぞッ!」
キッチンカーのオーブンから運ばれた大きなピザに、ギャル巨神は目を輝かせた。
『これがピザなん!? やっべ! まじ映えんじゃん! ねえ、食っていい?』
「勿論さ! 俺もお酒は飲める年齢だけど、帰りもキッチンカーを運転するからコーラで乾杯するねッ! 黒猫さんもどうぞ!」
「ありがとうございます。私は演奏が終わったらご相伴に預かりますね」
演奏を止めるわけにはいかないので、箒星は生唾をごくりと飲みながら竪琴を搔き鳴らし続けている。
『そんじゃ、いただきま~す! あむっ! ……んんっ!? 熱っ! てか美味ッ! ピザ、超美味ぇし! マジやっばぁ! んで赤ワイン! っくぅ~! 合うッ! この白くて伸びる具と赤ワイン、めっちゃ合う!』
「赤ワインとチーズは鉄板の組み合わせだからねッ! ほら、もっと食べて! 俺の料理は食べれば食べるほど、色んなバッドステータスが解消されて元気になれるんだッ!」
スイートの料理もまたユーベルコードを用いたものであり、ギャル巨神がピザを頬張るたびに彼(女)の権能が呼び覚まされていった。
「仲間同士が相争うとはさぞお辛かったことでしょう。その体験に今なお、お心が囚われておいでのは眼差しが未来を向いていないから」
箒星は巨神の背負った悲劇に想いを馳せていた。
直接的に彼は神機の何たるかを知っているわけではない。
しかし、何度か神機と共闘の経験を重ねて、目の前の巨神の王があれではなぁと同情していた。
「お酒を飲んで歌ったり踊ったりして楽しい気持ちになれば、今を慈しみ今を生きる意思が湧いてくるはず。自ずと未来へと進むお心が生まれ、心の闇が晴れることでしょう」
巨神の権能が戻ってゆく様に、自身のやっていることが無駄ではなかったと安堵する箒星。
「素敵な未来を、これから私たち自身の手で作り上げていきましょう」
「そうだよ、ディオちゃん! というかさっきは驚かせてごめんねッ! お詫びにピザのお代わりはいくらでも作れるから、遠慮しないで言ってよ! 俺がいくらでもアオハルパーティーを盛り上げてあげるッ!」
『やったー! シュガー君、とりまピザもう1枚よろ~! マジでピザ美味ぇわ! 200年前になんでなかったん? これあったらワンチャン戦争、起きんかったんじゃね?』
どうやら、巨神はピザをいたく気に入ったようで、この後もクワトロチーズピザをまるまる1枚平らげてしまうのだった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
カシム・ディーン
「ご主人サマー!!ディオちゃんだ!ディオちゃんだよ!」
やっぱりおめーの知り合いか!
「よかったぁ…何とか修復して誰にも見つからないように隠したんだけど…あの後も無事だったんだぁ…!ご主人サマー!ディオちゃん助けよう!」
準備
ジャパニア名物の食材と他の世界の食材…そして各世界の酒!酒!!酒!!!
いやなんでだよ!?
「ディオちゃん物凄いお酒好きで宴会好きだからねー☆神殺戦争の時はあまりできなかったから辛そうだったし☆」
【料理】
各種スシ
各種天ぷら
唐揚げ
ポテト
サラダ
諸々
という訳で再会?
「ディオぢゃぁぁぁぁん!!」
だぁぁ!兎に角修理とケアだろ!
【情報収集・視力・戦闘知識・医術】
神滅戦争の事は一応聞いてる
そりゃつれーだろうな
仲良かった奴に刃向けられりゃな…
取り合えず…まずは傷を癒して休んでろ
「お酒とご飯もあるぞ☆」
UC発動
神機にどこまで有効かだが…!
「寧ろ神機ならいける筈だよ☆」
「ディオちゃんが眠った後も色々あったぞ☆」
そして経緯を伝え
ま、争いが怖いなら
「今度はメルシー達がディオちゃんを守る番だぞ☆」
防人・拓也
「うーん…これは相当心身共にダメージがあるようですね」
巨神の酷い姿を見て一言。
「確かディオニュソスさんはお酒好きだとお聞きしています。アイリス、何かお酒を用意できますか?」
と人化状態のアイリスに聞く。
『そうですね…あ、これならありますよ。芋焼酎『巨神殺し』!』
とアイリスが酒が入った瓶を取り出す。
「何でそんなネーミングの酒を持っているんですか?!」
『巨神さえも酔わせるお酒と聞きまして。隙あらばマスターに飲ませて、その後に介抱して楽しもうかと』
「そんな目的で使用しないで下さい! しかし、芋焼酎は度数が高めのはずです。ディオニュソスさんが飲めればいいのですが…」
と酒を差し出してみる。
アドリブ・連携可
防人・拓也(独立遊撃特殊部隊ファントム指揮官・f23769)が現着すると、早速、遺跡に横たわる巨神……と酔っ払ったギャルを確認。
「何故、こんな遺跡にギャルが……? 猟兵ではなさそうですし……?」
拓也の眼鏡の奥の目付きが険しくなる。
対して、彼に同伴している巨神『アイリス』……人化モードでメイド服を着込んだ若い女性のそれは、目の前のギャルが自分と似通った存在だとすぐに察したようだ。
『マスター、あの方が恐らく『幻惑神機ディオニュソス』様かと。私やメルシー様同様、人間の姿に変身できるのでしょう』
「なるほど……巨神の姿のままでどうやって飲酒をするか気になってましたが、人化すれば……いやアイリス、待ってください。本体ががっつりそこにあるんですが?」
拓也の疑問はもっともだ。
アイリスは巨神からメイド姿の女性に変身したのであって、目の前のギャルのように本体を残して変身するのはどうなのだろうか?
ツッコミどころが多すぎるこの状況、打破してくれたのは、ディオニュソスの敬愛する神機の王であった。
「ディオぢゃぁぁぁぁん!!!」
酔っ払いギャルへ目掛けて、ラグビー強豪国めいた低い姿勢からのタックルを仕掛ける銀髪の馬鹿!
「ひさしぶり~!! デスドミネイト☆サンシャインッ!」
「いきなりEXゲージMAX消費しそうな必殺技をぶっ放したですって……!?」
拓也のコンマ2秒のツッコミが吠える!
その間にも銀髪の馬鹿ことメルシーが出会いがしらに突き上げる閃光の拳が泥酔ギャルを襲う!
しかし! メルシーの声に泥酔ギャルがむくりと顔を上げた。
「その声はウチのズッ友、メルぽよじゃね!? ヴァーミリオン・リフレクトッ!!」
「グワーッ!」
泥酔ギャルは酔拳の挙動で拳を避けると、即座にメルシーの腕を掴んで投げ飛ばして遺跡の壁へ叩きつけてみせた!
叩きつけられたメルシー、ハイクも詠めぬまま、しめやかに爆発四散!
「無防備だと思わせてからの酔拳……! 相手の力を受け流し、転化して、メルシーさんの攻撃力をそのまま跳ね返しただと……? あのギャル、なかなかの手練れですね……」
『マスター、感心するところ、そこではないです。それとメルシー様がワンターンキルされました』
拓也はこのカオスに抗おうと必死だが、一番冷静なのはアイリスであった。
「いきなり何やってんだ、おめーらはーっ!?」
この状況に置いてけぼりを喰らうカシム・ディーン(小さな竜眼・f12217)は、砕け散った白銀スライムの残骸を掻き集めてこねくり回す。
すると、あっという間にメルシーは五体満足で復元されたのだった。
「メルシーの身体は賢者の石だからモーマンタイだぞ☆ あとさっきのはディオちゃんとの恒例アイサツだよ☆」
当事者自身がそういうなら、そうなのだろう。
拓也はこの時点で困惑しっぱなしである。
「カシムさんにメルシーさん、やはり来ていましたか。私も少し興味が湧いたのでやってきたのですが……ええと、カシムさん、いつもこんな感じでしたっけ?」
「お、拓也じゃねーか。つーか、いつもって聞かれてもな……? |この馬鹿《メルシー》がふざけてるのはいつもの事だろ? だから僕はこいつを躾けてるだけだが?」
そう言いながら、当然の如くメルシーを四つん這いにさせるとカシムはその背中に座ってみせた。
「あっ♥ ご主人サマの全体重がメルシーの背骨に♥ おっ♥ バランス取るのにメルシーの髪を引っ張っちゃらめぇ♥」
デレデレのドM笑顔のメルシーに、拓也とアイリスは旅団で見せる二人の関係性とは違った一面を見てしまった。
この光景に、メルシーをズッ友といった巨神はというと……?
「メルぽよ、おめでとう~っ! 1000年も拒んできた婚姻魔導契約の相手が見つかったん!? マジめでてぇじゃん! つか、さっきのエリアル技も気合入ってたの、そういうワケねー把握したわー!」
カシムの椅子になって虐げられている相手を祝福していた。
これにメルシーも四つん這いになりながら、旧友を助けたいとカシムへ懇願する。
「ご主人サマー!! あれがディオちゃん! ズッ友のディオちゃんだよ!」
「やっぱりおめーの知り合いか! 分かってはいたが、彼奴も大概にイカレてやがるな!」
「いわゆる類友だぞ☆ でもよかったぁ……メルシーが内乱中にディオちゃんを何とか修復して誰にも見つからないように隠したんだけど……あの後も無事だったんだぁ……! ご主人サマー! ディオちゃん助けよう!」
「わーったよっ! おめーは米を炊いた後に彼奴の修復をやれ! 僕は……カシムさん30分クッキングの時間だ……」
カシムはメルシーの背から降りると、担いでいた巨大リュックを下ろす。
その中からキャンプ用の折り畳み机や調理器具、食材を取り出して並べてゆく。
「ご主人サマ? わざわざ此処で調理しなくても、メルシーの賢者の石の身体に突っ込めば保存できたよ?」
メルシーの疑問にカシムは断固拒否した。
「おめー、保管した料理や食材を取り出すとき、決まって口から吐くだろーが! 食欲失せるだろ、嫌がらせか!」
「えー? じゃあ次からお尻から出すね☆」
「もっと駄目だろ! 下品か! ケツから出すのは純金インゴットだけにしやがれ!」
カシムとメルシーの通常運転に、拓也は宇宙の真理を垣間見たかのように呆然としていた。
「すごいですね……あのおふたり、お互いの事を信用しているからこそ、あんなクソみたいな茶番を繰り広げられるのですね。それに引き換え、私はアイリスの事を全部理解しているかと問われると……」
ネガティブ気質の拓也は、ひとり勝手に気が滅入ってゆく。
これにアイリスはそっと主の腕に自分の身体を寄り添わせ、拓也の顔を見上げて告げた。
『ご安心ください。マスターの事は、私もこれからいろいろ知ってゆきたいです……。だから、マスターも少しずつ私の事を知ってほしいです……今後も、だ、大好きなマスターとの末永いお付き合いを、私は所望しますので……』
顔を赤らめ、上目遣いで瞳をうるうるさせるアイリス。
拓也との顔が近い!
だが、アイリスの感情に鈍感な拓也は、無言でアイリスの腕を振り解いて、巨神の損傷具合を確認しに行ってしまうのだった……。
頑張れ、巨神アイリス。
異種族間異性交遊の成就への道は始まったばかりだ……!
「うーん……他の猟兵が手を加えて下さったとはいえ、これはまだまだ相当心身共にダメージがあるようですね」
本体の巨神ボディとギャルの身体を拓也は調査し終えると、腕を組んで考え込んでしまう。
ギャルから聞いた話では、今の姿は幽体離脱みたいな状態であり、魂だけが人化しているらしい。
本体が完全修復すれば、巨神ボディごとメルシーやアイリス同様の変身が可能になる、とも教えてくれた。
「確かディオニュソスさんはお酒好きだとお聞きしています。アイリス、何かお酒を用意できますか?」
『はい、そう仰るかと思いまして、事前に準備しております。どうぞ、7年熟成のサツマ高級芋焼酎、その名も【巨神殺し】です』
「何でこの状況でそんなネーミングの酒を持ってくるんですか!?」
アイリスが持参した一升瓶のラベルに拓也はノータイムツッコミを入れた。
「いくら何でも物騒すぎませんか? 人の心がないんですか?」
『そう言われましても、私は巨神です。それと此方、巨神さえも酔わせるお酒と聞きまして。駄目でしょうか?』
「駄目ではないですが、もっと相手に配慮した銘柄を選べませんでしたか? というか7年熟成の芋焼酎って普通に美味しいんでしょうけど」
拓也の駄目出しにアイリスは逡巡する。
『……そうですか、確かにマスターのお言葉は理に適っています。一応、もう一本、別の銘柄を持参してきました。こちらは飲みやすい純米焼酎です』
「なら最初からそっちを出してください……」
『失礼致しました。では、こちらをどうぞ。度数25度、純米焼酎【無量空処】です』
「特級呪術みたいな銘柄なんですが!?」
『呑むと知覚が鋭敏になって、のどごし0.2秒で人間の約半年分の情報量が脳に叩き込まれるような酩酊を味わえるそうです』
「ディオニュソスさんを立ったまま気絶させる気ですか……?」
呆れる拓也に、アイリスは悪びれる素振りもなく話を続ける。
『ともかく、飲みやすさとは裏腹にガツンとしたのどごしを味わえます。ちなみに、マスターにはこちら2つの銘柄を飲み比べしていただき、隙あらば泥酔させて介抱して差し上げた後に、私も酔った勢いで馬乗りになって楽しむという画策でした』
「完全に私の操を狙いに来ている、だと……!?」
『既成事実さえ作ってしまえば、あとは生んで育むだけですので』
「何を!?」
拓也の脳天に電流が走り、アイリスはその欲望を垣間見えさせた。
「いや、そもそもお酒をそんな目的で使用しないで下さい! 犯罪ですからね? というか、私みたいな男に欲情したところで虚しいだけですから。アイリスはもっと自分の身体を大事にしてください」
この拓也の低すぎる自己肯定力と相棒への遠慮を体現した言葉が、アイリスの心に風穴を開けてしまう。
『だからこのマスター、ずるいんですよね……』
アイリス、今回の作戦は失敗したが、拓也への想いはより一層強まった……かもしれない。
拓也はめちゃくちゃになったこの状況を収束させるべく、アイリスが持ってきた酒瓶2つをディオニュソスへ差し出す。
「芋焼酎は度数が高めのはずです。そしてこの米焼酎もかなりのどごしがきついようです。ディオニュソスさんが飲めればいいのですが…」
ディオニュソスは自前の金の盃に焼酎を注ぐように催促する。
「大丈夫っしょ! とりま飲んでみたいし? つーか、ウチ、酔えば酔うほど権能が戻って強くなれっから!」
「そうですか。では……」
拓也は並べられた2つの金杯にそれぞれ芋焼酎と米焼酎を注いだ。
そこへ、カシムが様々な料理を持参してディオニュソスの元へ参上する。
「メルシーからレシピを聞いて、作ってやったぞジャパニア料理! スシ! サシミ! テンプラ! カラアゲ! ポテサラ! ヤキトリ!」
「完全に海鮮系居酒屋のメニューじゃないですか、カシムさん……」
拓也はジャパニアのソウルフードがナントカ水産系居酒屋メニューだということに驚きを隠せない。
「勿論、炊き立て白米もあるよ☆ 宴会好きのディオちゃんのために、今日は楽しもうね!」
メルシーがおひつでご飯を持ってくる。
「そうそう、ディオちゃんが眠った後も色々あったぞ☆」
神代のジャパニアが滅んで200年間、メルシーはカシムとの出会いや他の神機との出会いと激闘をディオニュソスへ伝えた
カシムもディオニュソスへ慰みの言葉を投げ掛ける。
「|神滅戦争《ラグナロク》の事は一応聞いてる。そりゃつれーだろうな? 仲良かった奴に刃向けられりゃな……。取り合えず……まずは飯と酒かっ喰らって、宴会を楽しめ。んで傷を癒して休んでろ」
カシムはディオニュソスの巨神ボディを治すべく、ユーベルコードを発現させる。
「アポロンソウル、リンク開始……ナノマシン起動……システム『|医術の神の子《アスクレピオス》』起動! 太陽神の子よ……万物を癒せ!」
メルシーに搭載されたアポロンソウルから治療型ナノマシンを発散させてゆく。
「このユーベルコード、神機にどこまで有効あるか、だが……!」
「寧ろ神機ならいける筈だよ☆」
メルシーの言葉通り、メルシーの持つ賢者の石の特性と治療型ナノマシンのおかげで、ボロボロになった巨神ボディが徐々に復元されてゆくではないか。
「これが神機シリーズの本領発揮ですか。自己復元能力が初期搭載されているのは強みですね」
拓也は目の前で起きている修復の様子に感心しながらスシを頬張っていた。
治療されている当のディオニュソスは、拓也の持ってきた焼酎二本を飲み比べし、カシムの手料理を楽しんでいるせいか、どんどん機嫌がよくなり、巨神ボディの修復も捗っていた。
「まぁ、なんだ……ディオニュソス?」
此処で突然、カシムがつっけんどんに言い放つ。
「争いが怖いなら、無理すんな。僕達がおめーを守ってやる」
「そうだぞ☆ 今度はメルシーとツンデレご主人サマがディオちゃんを守る番だぞ☆」
「ツンデレは余計だろーが!」
睨むカシム、ニマニマするメルシーに、ディオニュソスは今日初めて満開の笑顔を見せるのであった。
と、ここで拓也は気になっていたことをディオニュソスへ尋ねた。
「そういえば、先程、ここで作業をしていた猟兵から聞いた話なんですが……ディオニュソスさんは、その……ショタコンだそうで?」
「あ、お兄さんもイケるクチ? ショタの半ズボンと膝小僧で一升瓶空けられる系?」
「い、いえ、私は違いますけど? そうではなくて……カシムさんは、ショタ好きとしてどう映っているのでしょうか?」
この問いにディオニュソスは困った顔をして答えた。
「あ~ね、ナシよりのアリってカンジ? つか、メルぽよのダンナに手は出せねぇべ? 千年間も頑なに自分のコクピットに人間乗せなかった、あのメルぽよが、あのコのクセ激強性癖を受け止めてくれる人間と一緒にいるってことだけで、ズッ友のウチは酒が進んじゃうんだけど!」
拓也はニッコニコのディオニュソスの話を聞いて考える。
ヒトと巨神。
種族は全く違えど、その間に愛情や絆が芽生えればメルシーとカシムのようにお互いを曝け出せ合う関係性を築けるのだと。
そしてディオニュソスの話が正しければ、メルシーにとってカシムは『一目惚れ』に近い相手だったのだろう。
「アイリスは私と出会った時も、そういう気持ちだったのでしょうか」
自己肯定力の低い男は、周囲で甲斐甲斐しく給仕に走り回る自身の相棒を見遣る。
「……いえ、そんなわけありませんね」
だが拓也は溜息をひとつ吐くと、脳裏に浮かんだ感情をヤキトリの味でうやむやにしてしまった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
バーン・マーディ
…此処がジャパニアとやらか…マーズよ…随分と気にしているようだが?
「本当に昔の話なんですが…この都市国家の全身たる神機皇国の政務を手伝った事があるのですよ。この経験が…私を崇めてくれた国の政務に生かせましたからね…ある意味恩義はあります。…神皇は度し難かったですがね…」
UC発動
半数は祝宴の用意
ヴィランたるもの享楽を楽しむのも在り方の一つよ
和牛ステーキ
ハンバーグ
ポテトサラダ
魚介類も豪快に焼いたもの
ほうれん草ディップ
基本アメリカンスタイル
酒
ビール
ワイン(各色
「久しいですなディオニュクス。そなたが健在であった事…実に喜ばしい。ロクシアスもディアーナも躯の海に沈みオブビリオンマシンへと堕ちた故」
随分と奴は驚いているようだが…以前から思っていたが…貴様…過去は何をやらかしていたのだ…?
「…若気の至りです(こほん)」
まぁよい…まずは修理と…宴よ
(工作部隊が状態確認と修理開始!
安心せよ
我らはこれより来る敵を粉砕する為に来た
この国への蹂躙に対して叛逆せん
「…少々忌々しい輩の気配を感じますからな?」
「……此処がジャパニアとやらか……」
バーン・マーディ(ヴィランのリバースクルセイダー・f16517)が現場へ転送されるやいなや、遺跡内をぐるっと見渡して状況判断に努める。
そして相棒の破城神機『マーズ』の巨体がしきりに遺跡内をきょろきょろと見渡すのをバーンはふと気になった。
「マーズよ……随分と気にしているようだが?」
『はい、本当に昔の話なんですが……この都市国家の前身、つまり神機皇国の政務をかつて私は手伝った事があるのですよ。この経験が……流浪の身であった私を軍神として崇めてくれた、あの国の政務に活かせましたからね……ある意味、ジャパニアには恩義はあります。まぁ……神皇であったメルクリウスは……度し難かったですがね……』
「ああ……あの、銀髪の……」
バーンは見知った盗賊の相棒がそんな名前だったなと思い返す。確かに破天荒な存在だと認識していた。
バーンと神機マーズは、横たわる巨神とその傍らに佇む男の娘……外見ははどう見ても女子高生くらいのギャル系ファッションに身を包んだ少女……に声をかけた。
「貴様がディオニュソスか?」
「うお、ガタイの良いおっさん来たわ。そそ、うちがディオニュソスだけど?」
機体が大破しているとは思えない口ぶりの軽さだ。
それもそのはず、もうかなり神機の修復が進んでおり、猟兵達との宴会で心の傷も癒えてきている様子。
あとはバーン達が仕上げをすれば完了だろう。
と、ここでマーズが巨体を屈めて、人型のディオニュソスへ頭を下げた。
「久しいですなディオニュクス。そなたが健在であった事……実に喜ばしい。このマーズ、再会できて心から喜ばしく思っていますよ。あの忌まわしきロクシアスもディアーナも、骸の海に沈みオブビリオンマシンへと堕ちた故、予断は許しませんが現世で貴女を虐げる存在はもう……って、何か?」
ディオニュソスはじっとマーズの顔を妖怪か何かのように訝しがって見詰めていた。
「あのさ? アンタ、マジであのマーズ? 武闘派で人の話を聞かないって有名だったチンピラ神機のマーズが、敬語を使って相手のことを心配してるって、信じらんねぇわ~」
「……マーズよ、散々な謂れようだな? それに随分と奴は驚いているようだが……? 以前から思っていたが……貴様……遥か過去に何をやらかしていたのだ……?」
バーンの怪訝な表情に、マーズは面目ないと肩を下げる。
「あ、いや……若気の至りです……今は心を入れ替えましたので!」
「はぁ~、神機も心変わりってするんだ? ウチ、目覚めて一番びっくりしたけど?」
ディオニュソスは目を丸くして、先程の宴会の残り酒をぐびぐび呷っていた。
バーンはその酒が尽きぬうちに、自らの目的を果たすべく行動を開始した。
「ふむ、その酒、もうそろそろ切れる頃であろう……こちらで新たな酒の用意がある。ビールでいいか?」
「もち! いいね~! そろそろビール飲みてぇ~ってマジ思ってたし!」
「ならば僥倖である。これより、ビールに合う食事を提供するべく、調理を開始する……しばし待つがよい……」
バーンはユーベルコードで140人のデュランダル騎士団員を召喚すると、何処からともなく食材と酒を運び込んできた。
「今宵の宴の締めは……叛逆者に相応しく、肉を喰らえ……ヴィランたるもの享楽を楽しむのも在り方の一つよ」
A5ランクの牛肉や上質な豚肉の塊を豪快にブツ切りにして合挽き肉にしてゆく。
これはハンバーグだ。
そこへパン粉ではなく高野豆腐を削った粉末を“つなぎ”として代用、調味料と共に肉だねをよく混ぜてみせる。
140人のうち、100人近くが調理に携わり、ハンバーグ以外の肉料理を調理していた。
「まずはローストビーフ……次に厚切りステーキ……。肉の本来の旨味を感じるがいい……それをビールで流し込めば、つらい事など溜飲が下がるというものだ……」
「プハァ~! これは極楽じゃん! 肉、美味ぇ~!」
ディオニュソスは運ばれてくる肉を次々と頬張り、それをビールで一気に喉奥へ流し込んでみせた。
そこへ運ばれてきたのは、牛肉とアボカドのサラダだ。
「野菜も一緒に食せ……胃もたれしては、折角の宴の席が台無しだ……」
「やだ……ウチ、イケオジ属性ないんだけど……キュン……!」
バーンの年上の気遣いに、ディオニュソスはメロメロになってしまっていた。
「安心せよディオニュソス。我らはこれより来る敵を粉砕する為に来た。この国への蹂躙に対して叛逆せん」
「そうですとも。それに……少々忌々しい輩の気配を感じますからな?」
デュランダル騎士団員の巨神補修作業も完成し、遂に『幻惑神機ディオニュソス』は完全に復活を果たすのであった。
大成功
🔵🔵🔵
第2章 集団戦
『ガーディスト』
|
POW : グレイブカウンター
【EPキャバリアシールド】を構える。発動中は攻撃できないが、正面からの全攻撃を【大盾】で必ず防御し、【RXキャバリアグレイブ】で反撃できる。
SPD : シールドアタック
【EPキャバリアシールドを押し出した】突進によって与えたダメージに応じ、対象を後退させる。【仲間】の協力があれば威力が倍増する。
WIZ : ヘビーガンナー
【両手持ちBSキャノン砲による砲撃支援体勢】に変形し、自身の【移動速度と|近接兵装《盾と槍》】を代償に、自身の【攻撃力と射程距離】を強化する。
イラスト:イプシロン
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
|
種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
2年前の海戦にて、量産型の神機軍団を率いてきた『神聖ブリオン教国』。
あの時に違和感を覚えるべきだったのだろう。何故、他国に量産型神機を保有できる技術があるのかと。
今となれば結論は容易に出せる。
『神聖ブリオン教国』は最初から、クロムキャバリア世界に散らばる神機を復活・鹵獲して国力を拡充しているからだ。
そして、遂に数々の神機の墓場と言えるジャパニアへ魔手を目前まで伸ばしている。
予知では容易く占領されてしまっていたが、今は先んじて猟兵が遺跡に布陣を引いている。
故に拠点防衛型キャバリアを編成して押し寄せた『神聖ブリオン教国』は、この状況に目を白黒させていた。
「どういう事だ? 我々の動きが筒抜けではないか!」
敵上官が血相変えて怒鳴り散らす。
よもやグリモア猟兵の予知で先回りされたなどとは、敵国は思いもしないだろう。
「やむを得ん! ガーディスト部隊の防御力を頼りに、じりじりと遺跡へ前進する! 遺跡に最大戦力である私の神機が辿り着ければ、本作戦は成功だからな!」
上官の命令により、防衛特化型キャバリア部隊が密集形態で巨大な壁を形成。
その隙間から砲撃を開始すると同時に、突進して遺跡へ詰め寄ってくる。
何とかして前線を食い止めないと、折角復活した巨神を奪われかねない!
遺跡の中で、『神聖ブリオン教国』軍を物見する巨神が懇願した。
「みんな……ウチも戦う! 怖いけど……みんなの指示に従う!」
それと、と巨神こと『幻惑神機ディオニュソス』は、その巨体の手をひとりの猟兵へ差し出す。
「キミはウチに乗って戦ってくんね? キミの作ったピザ、もう一度食いてぇし! んで、あとで膝小僧をじっくり眺めさせて!」
ミミックの猟兵が操縦者に指名され、これで準備は整った。
猟兵達の巨神防衛戦が、今、始まる!
(※巨神と共闘するとプレイイングボーナスが発生)
(※ただし巨神のパワーは超強力です。加減を間違えると他の猟兵の戦闘に悪影響が及びます)
(※巨神の権能は『対象の酩酊による幻覚生成』『神器からの酒(主にワイン)の生成』です)
シルヴィ・フォーアンサー
治って良かったねディオニュソス。
『ああ、ところで選ばれなくて残念か』
んーん、シルヴィにはヨルとミドガルズがいるしね、選ばれても困っちゃう。
『そうか、で相手は防御を固めて詰めてくるがどうする』
亀さんみたいにのんびりしてたいならいっそ動けなくしてあげよ。
砲撃対策と攻撃力強化にシルエット・ミラージュ。
更にミラージュユニットで立体映像を投影とジャミングに加えてヨルのハッキングで撹乱。
相手を射程に捉えたら突進される前にグラビトンミサイルを分身と一斉発射。
ご自慢の装甲も盾ものし掛かる重力は防げないよね……潰れちゃえ。
「敵影確認。ディオニュソス、行ってくるね。悪い奴らを追い払ってあげる」
そう告げてクロムキャバリア《ミドガルズ》に乗り込むシルヴィ・フォーアンサー(自由を求めた脱走者・f41427)。
コクピット内でシルヴィ自身の神経とミドガルズの回路を直結接続させてゆき、彼女自身の身体の動きと連動させてゆく。
『全神経接続を確認。稼働率99.8%で安定。全機構、異常なし。こちらはいつでも出撃可能だ、シルヴィ』
ミドガルズ専用成人男性型サポートAIユニット『ヨルムンガンド』が各種駆動部の安全をシルヴィへ告げて臨戦態勢へ移行する。
と、ここでシルヴィがヨルへ小声で呟く。
「治って良かったね、ディオニュソス」
『ああ、なかなか癖の強い相手だったがな。ところで、あれに選ばれなくて残念か?』
ヨルの言葉はAIなのに、何処か嫉妬のようにも聞こえる。
そんな相棒にシルヴィは電子パネルを宥めるようにそっと撫でてやる。
「んーん、シルヴィにはヨルとミドガルズがいるしね、もし選ばれても困っちゃう」
『そうか』
短い返事だったが、明らかに語気に喜びが滲み出ていた。
『で、相手は防御を固めて詰めてくるが、どうする』
さしずめ重火器版ファランクスと言ったところか。
狙撃手は機体を変形させてほぼ固定砲台化するようだが、周囲のシールドが狙撃手を守っているため此方から狙い撃ちすることはできない。盾の間から伸びる槍衾も注意が必要だ。
むしろあの盾の壁を波濤のように押し寄せられたら、一気に遺跡へ詰め寄られてしまうだろう。
現に、敵部隊は出撃するのがシルヴィのミドガルズ単機だと踏んで、盾を構えたままゆっくりと突撃してきている。
シルヴィは相手の布陣を遺跡から俯瞰しながらヨルへ作戦を立案した。
「亀さんみたいにのんびりしてたいなら、いっそ動けなくしてあげよっか」
『なるほど。こちらはまたジャミング領域を展開しておく』
「ん、出来ればハッキングで、敵部隊の駆動系システムをダウンさせるのは可能?」
『ああ、任せろ』
言葉でのやり取りはしているが、神経直結接続しているシルヴィとヨルは考えがシームレスに伝わる。
故に、ミドガルズを全速力で前へ走駆させると、まずは盾を構える敵前衛部隊へ制圧射撃を敢行。
機体の左右の手には大型ガトリングキャノンが装備されており、それを盾の事などお構いなしに銃弾をばら撒き始めた。
当然、敵部隊はご自慢の盾を密集させて銃弾を弾き返して守りに徹する。そうなれば前進もままならなくなる。
凄まじい金属同士の激突音が戦場で一定のリズムを刻み、シルヴィの放つ弾幕の圧で敵部隊の進攻は著しく鈍った。
「まずは足止め。これ以上、ディオニュソスへは近付かせない」
弾幕で相手が盾を構えざるを得ない状況に追い込んでからの、ユーベルコード『シルエット・ミラージュ』発動!
13体のミドガルズと寸分狂いのないほど精巧な残像分身群が戦場に出現すれば、更に弾幕の圧は増して敵軍全体をその場に釘付けにする。
前衛部隊が留まったことで、後列の部隊が次第に押し寄せて敵軍全体が一塊になってゆく。
シルヴィはこの瞬間を狙っていた。
「目標、有効射程範囲内に到達。ヨル、お願い」
ヨルは敵機の妨害工作を開始した。
『ジャミング領域を展開。同時に敵機体の駆動システムに侵入、シャットダウンまで、あと100秒』
「ガトリングキャノンの残弾は?」
『残り40%を切ったな。ギリギリかもしれないぞ』
この後も恐らく指揮官機との戦闘が待ち受けている。
出し惜しみするつもりはないが、それでも残弾に余裕を持ちたい気持ちは当然あった。
幸い、敵機の妨害工作はうまくいっている。
あと50秒もすれば敵機は完全沈黙、その後はシルヴィの必殺のユーベルコードで一掃できるはずだ。
だが、動かなくなった敵僚機を押し退け、後列から槍衾の刺突がミドガルズを狙ってくる!
ユーベルコードではない、単なる力任せの通常攻撃。
それでも数の暴力と共に繰り出されれば脅威となる。
無数の矛先が次々とミドガルズに突き付けられた、その時だった。
「ちょっ! やめろしーっ!」
後方の遺跡の中に控えていた『幻惑神機ディオニュソス』が叫ぶと、色とりどりの宝珠が連なった神器を天に掲げていた。
「ウ、ウチのダチをイジメんな!」
叫ぶ声が震えている。
だがシルヴィの危機に勇気を振り絞り、己の権能を発動してくれたのだ。
すると、たちまち槍を構えた敵機がへたへたとよろけて、遂にあちらこちらにすっ転んでしまったではないか。中には明後日の方向へずっと槍を繰り出す機体さえ出てきている。
「敵を、め、酩酊状態にさせたから! そんでやつら、幻覚を見てるから! シルヴィ! 今のうちに!」
巨神の勇気ある行動に、シルヴィの無表情の目元に闘志が燃え盛った。
「ありがとね、ディオニュソス。その勇気にシルヴィは応えるよ」
ヨルによる敵システムのシャットダウン、完了時刻に到達!
本体合わせて14機のミドガルズが両肩のミサイルポッドから重力変異弾頭を装填したミサイルを垂直射出!
弾道は上空へ登り詰めた後、上空で地上へ方向転換。
そのまま盾を構える敵部隊のど真ん中へ着弾し、地獄の花火を咲き乱れさせた。
轟音と共に爆ぜる鉄くずが赤熱して戦場に煌めく!
更に着弾点に100Gの超重力領域を発生させれば、敵機は盾を構える事も出来ずに自重で圧壊してしまうのであった。
「ご自慢の装甲も盾ものし掛かる重力は防げないよね……潰れちゃえ」
先陣を切ったシルヴィのミドガルズが、強固な守りを誇る『神聖ブリオン教国』の第一波を見事に押し潰してみせた。
大成功
🔵🔵🔵
鳴上・冬季
戦う神機見て
「生命には生き延びたいという欲があり、器物には使われたいという欲があります。戦うために作られた貴女にとって、戦いに身を投じるのが正しいという欲求は覆せませんでしたか。願いを乗り越える欲に従う方が、生き方としては悩まず素直でしょうが」
「朽ちるまで逃げる在り方を選ばなかったのですから、それを誇って存在を証し立てるのも在り方の1つです。それ自体には良し悪しなどありません。神機がどういうものか勉強させていただき納得した、そういうことです」
嗤う
「神機ばかり働かせるのも気が引けます。露払いくらいしますとも…七尾転仙」
盾腕と伝って敵機内に入り込み中から雷鳴電撃
内部機構を焼き尽くし次の敵機へ移動
「……戦うのが怖いと、窺っていましたが。なるほど」
鳴上・冬季(野狐上がりの妖仙・f32734)は、猟兵の窮地を救った『幻惑神機ディオニュソス』の行動に独りで合点がいっていた。
「生命には生き延びたいという欲があり、器物には使われたいという欲があります。戦うために作られた貴女にとって、戦いに身を投じるのが正しいという欲求は覆せませんでしたか。願いを乗り越える欲に従う方が、生き方としては悩まず素直でしょうが」
『は? なんて?』
ディオニュソスは鳴上の言葉に首を傾げていた。
『ウチはただ、ダチを助けただけだし? つかウチが戦うために作られたとかフカシだわー! なんか勘違いしてるみてーだから言っておくけどさ? そもそも前提が違くね?』
「と、申しますと?」
鳴上の言葉に、ディオニュソスはうんうんと唸りながら言葉を紡ぎ出す。
『うーんと、ウチ、馬鹿だからうまく言えないけどさー? 神機って道具とか器物じゃねーし? ひとつひとつに自我があって、命があって、感情もあって、自由に動けて、だからダチを守りてーって思ったら身体が勝手に動く的な? 戦わなくて済むなら、それが一番だし? 戦いが正しいとも思わねーし? だからウチら神機は、生きてっから! 道具とか言われるとマジでテンサゲなんだけど?』
ディオニュソスは自分達が『人間と対等の存在』だと言いたいらしい。
それはキャバリアの姿をしていながら、独立した種族である可能性を秘めた埒外の生命体を示唆する。
鳴上はこれに思わず肩を竦めてしまった。
「朽ちるまで逃げる在り方を選ばなかったのですから、それを誇って存在を証し立てるのも在り方の1つです。それ自体には良し悪しなどありません。神機がどういうものか勉強させていただき納得した、そういうことです」
ディオニュソスを見下すような目つきで見遣る鳴上が鼻で笑った。
『ん~? お兄さんの言ってること、ウチにはよく分かんないけど、とにかくウチを鹵獲しようとする悪い奴らをやっつけてよ! ウチが幻惑で援護すっから!』
対してディオニュソスは馬鹿にされてるとは理解しておらず、戦闘力のない自身を守ってもらうように懇願してきた。
鳴上は溜息まじりに戦場へ生身のまま駆け出してゆく。
「まったく、能天気な神機ですね。とはいえ、神機ばかり働かせるのも気が引けます。露払いくらいしますとも……七尾転仙」
鳴上は人化の術を解除した途端、稲妻の如き巨大な七尾の妖狐へと姿を変えた。
稲妻の性質を持つ妖狐姿の鳴上は、轟音を戦場に響かせながら光速で敵キャバリア部隊を次々と貫通してゆく。
ディオニュソスの手など借りないと言いたげなその縦横無尽の無双劇に、敵部隊は完全に為す術がない。
「どんなに強固な盾と装甲をもってしても所詮は機械。高電流高電圧の通電に内部回路は焼き切れて当然。ただの鉄屑に早変わりします。無様ですね」
屈強なキャバリア部隊が何も出来ずに機体内部から白い煙を上げて沈黙してゆく光景に、鳴上は嗜虐的な笑みを浮かべて戦場で吠えたのだった。
大成功
🔵🔵🔵
スイート・シュガーボックス
んじゃ遠慮なくディオちゃんに乗らせてもらおうかなッ!
俺達の友情パワーを見せてやろうッ!
…ところで何で膝小僧見たいんだろう?
敵神機軍団は砲撃支援体勢になってるな、迂闊には近付けないね。それじゃディオちゃんの力で前方に神器で酒の生成、そのまま敵の方に津波のように流し込んじゃえ。
敵達が怯んだら狙いを定めて【君に届け、幸福のお菓子】、洋酒入りチョコだよ。
敵達を戦意喪失に出来たらもう一押し『酩酊による幻覚生成』。
敵上官の幻覚を見せ命令、『至急本国に帰還、お菓子と飲み物買ってアオハルパーティーだ。』
戦意喪失と酩酊で頭が働かなくなり、言われるがまま撤退させる俺とディオちゃんとの協力技だッ!
【アドリブ歓迎】
スイート・シュガーボックス(おかしなミミック・f41114)は巨神こと『幻惑神機ディオニュソス』に選ばれた。
『さあ、ウチに乗って!』
差し出された巨大な手に、スイートはぴょんと飛び乗ってみせた。
「んじゃ遠慮なくディオちゃんに乗らせてもらおうかなッ! 俺達の友情パワーを見せてやろうッ!」
『ウチらの友情パワーとかヤバくね!? めっちゃアガってきたんだけど!』
コクピットにスイートを乗せたディオニュソスは、その巨体を起こして遺跡から200年ぶりの外の戦場へ歩き出す。
『ふ、ふふ……ショタの膝小僧がウチの中に……ヤッバ……興奮してきた……』
スイートの膝に何かときめきを感じたディオニュソスの出力がどんどん上昇してゆく。
「すごいすごいッ! これが巨神、いや神機ディオニュソスの真価なんだねッ!」
溢れるパワーをスイートも実感すれば、目の前の『神聖ブリオン教国』の部隊などものともしないと確信した。
しかし、彼は内心でひとつ疑問を抱えていた。
(……ところで、何で俺の膝小僧をそんなに見たいんだろう?)
スイートは自身の強みをまだ把握していないらしい。
戦場に搭乗した巨神の姿に、敵軍は俄かにいろめきたつ。
自分達が鹵獲しようと画策していた存在が、今は自軍に牙を剥こうとしている。
これ程までの恐怖があるだろうか。
「ぜ、全隊! 砲撃支援体勢へ移行……!」
部隊長の号令ひとつで、盾隊があっという間に砲撃部隊へ様変わりする。
これにディオニュソスが声を裏返した。
『ひぃっ! 全部ウチに砲門が向いてる~!』
怖気づいてしまう神機へ、スイートが励ましの言葉をかけた。
「敵部隊は砲撃支援体勢になってるな、迂闊には近付けないね。それじゃ、ディオちゃんの力で前方に神器で酒の生成、そのまま敵の方に津波のように流し込んじゃえ」
『え、あっ、うん! ウチ、やってみるわ!』
宝珠が連なった輪を天に掲げるディオニュソス。
すると、敵部隊の目の前に真っ赤な大量の液体が噴き上がる。
「なんだ!?」
「血か!? いや、ワイン……?」
「いや、赤ワインが津波になって押し寄せてくるぞ!」
砲撃支援体勢を維持していた敵部隊は、移動力を犠牲にしているため津波を即座に回避できない。
その多くが赤ワインの大波に呑み込まれて後方へ押し戻されていった。
倒れた機体からは、多くの敵兵士が這い出てくる。
ここでスイートが動く。
「今だ! 君たちへ美味しいお菓子のお届けだッ!」
ユーベルコード『|君に届け、幸福のお菓子《スイーツシュート》』を発動!
コクピットから身を乗り出したスイートのお菓子の缶箱から、赤ワインボンボンチョコの弾丸が兵士の口の中へ飛び込んだ。また、この洋酒チョコ弾幕は分厚いオブリビオンマシンの装甲を透過し、ダイレクトに敵兵士の口へ送り込まれてゆく。
すると、どうだろう。
「「うンまァ~いッ!!」」
敵兵士達は、口にした洋酒チョコのあまりの美味さに多幸感で胸がいっぱいになってしまう。
「おれ、もうたたかいたくねえや……」
「こんなうめぇもんくったのはじめてだ~」
「ぎぶみーちょこれーとぉ!」
兵士達はみな何処か虚ろな目で空を見上げていた。
『ど、どうしたん? あれ?』
ディオニュソスが不思議そうにスイートへ尋ねると、彼は自慢げに教えてくれた。
「俺のお菓子のパワーで敵の兵士さんたちを幸福な気分にしてあげたんだッ! そしてディオちゃんのお酒も利用させてもらったよッ! お陰でもう誰も戦おう難敵は起きないねッ! これでみんな戦わずにピースでハッピーさッ!」
スイートはディオニュソスの戦いたくないという気持ちを精一杯汲み取り、戦闘をそもそも成り立たなくさせるように動いたのだ。
これにはディオニュソスも心が動かされる。
『スイート君……マジでイケショタじゃん……! 推せるわ~』
「ん? よく分からないけど、ありがとうッ!」
まさか巨神の推しの子にされたとは理解していないスイートは、仕上げに取り掛かる。
「ディオちゃん! 『酩酊による幻覚生成』をお願い! そして――」
スイートの作戦を聞いたディオが思わず笑ってしまう。
「いやなんなんそれ? 超ウケんだけど!? オッケー! ウチ、やってみるわ!」
ディオニュソスが戦場に酒気を充満させてゆくと、たちまち敵部隊全体が酔っ払ってしまう。
すると、敵部隊がすごすごと何処かへ消えてゆくではないか。
「上手くいったねッ! これで敵部隊は『上官の命令でお菓子と飲み物をジャパニアで大量に買い込んだあと、至急本国に帰還して皆でアオハルパーティー』っていう幻覚を実行するよ! ジャパニアの経済にも貢献して、戦争の脅威も立ち退いてくれる、まさに一石二鳥だねッ!」
つまり、敵部隊は戦意喪失と酩酊で頭が働かなくなり、散々カネをジャパニアに落とした挙句、言われるがまま撤退してゆかざるを得ない!
ディオニュソスは本当に戦わずに済んだことを喜びつつも、声のトーンがどこか暗い。
『すげー! マジで戦わずに済んだし! でもさ、ウチの幻覚は一種の洗脳系つーか? あんまり使いすぎると、ウチが悪い奴みたいで罪悪感が……!』
「でも、誰も傷付いていないよッ! これが俺とディオちゃんとの協力技だッ! ディオちゃんは優しい神機だって、俺が保証するよッ!」
200年ぶりに目覚めたディオニュソスは、お菓子の缶箱のミミック猟兵という、掛け替えのないズッ友を得たのだと改めて喜びに浸るのであった。
大成功
🔵🔵🔵
バーン・マーディ
成程…防衛型か…騎士としては正しい在り方である
マーズの権能では中の人間も殺してしまうか
仕方あるまい
ディオニュソスよ…貴様の権能は敵を酩酊させるのであったな?
では敵の動きを止めよ
その間に我が仕留めよう
「突撃は我らのスタイルですからな!」
【戦闘知識】
敵陣の動きと敵の構造とコックピットの位置を把握
防御陣形の隙も見出す
【空中戦・切り込み・鎧砕き・鎧無視攻撃・切断】
UC発動
神速で飛び敵の正面以外から襲い掛かり軍神の剣で手足を切断
一気に無力化
他の敵も襲い掛かり同じく手足を切り裂いていく
不殺徹底
乗り手は殺さず
良き防衛陣形よ
故に残念だ
本来なら守る戦いでその力を発揮するべきものだろうからな
バーン・マーディ(ヴィランのリバースクルセイダー・f16517)は相棒の破城神機『マーズ』に乗り込み、コクピット内部のモニターから敵軍を見渡した。
「成程……防衛型か……騎士としては正しい在り方である」
自身もかつては騎士だったバーンは、敵兵士達の心情を推察する。
自分達のやっている事こそが正しいと思い、他国の巨神ですら鹵獲せんとする野蛮な行為を悪だと疑わない。
そんな彼等に罪はない、悪いのは彼らを利用する『神聖ブリオン教国』とオブリビオンマシンだ。
「となれば、マーズの権能……軍神の火炎では中の人間も焼き殺してしまうか」
操縦者が悪ではない以上、バーンは敵機の壊滅ではなく無力化へ方針を切り替えざるを得ない。
「仕方あるまい。ディオニュソスよ……貴様の権能は『敵を酩酊させる』のであったな?」
『え、まぁ、そうだけど?』
「では貴様は敵の動きを止めよ。その間に我がオブリビオンマシンのみを仕留めよう」
バーンの言葉にディオニュソスは黙って頷いた。
『おや、心配してくれているのですかな? 突撃は我らのスタイルです! 一騎当千を体現してみせますよ!』
『うん、マーズの戦闘力はウチも知ってるし。……いや物腰柔らかすぎて、未だに信じられないんだけど』
どうもディオニュソスは昔のマーズの粗野な言動が脳裏にこびりついているようだ。
マーズはそれに何も返さずに、ただ苦笑を漏らすばかり。
「では……征くぞマーズ」
『仰せのままに!』
今、軍神が戦場を駆け抜ける。
対して敵部隊は密集陣形から一斉にシールドを積み重ねるように展開し、大型グレイブによるカウンターを狙う。
「成程……正面から叩き合うのは無謀か……」
『ならば空から強襲ですな!』
バーンのつぶやきにマーズはすぐさま炎の覇気を全身から噴き出して飛翔。
ただし高高度まで飛ぶと攻性衛星に撃ち落とされてしまう為、精々、敵機の槍の射程外に高度を留めた。
「マーズよ……決着は一瞬である。もたもたすれば、貴様の身体が槍衾で穴だらけになるだろう……」
『ご心配には及びません。やってみせますとも!』
巨大な軍神の剣をマーズが掲げれば、バーンはユーベルコードを発動させる。
「悪とされたる者達よ。正義という暴力に蹂躙されし者達よ。我はバーン・マーディ。我は今ここに宣言しよう。悪には悪の……正義があると! ヴィランズ・ジャスティス!」
マーズの機体が禍々しい紅きオーラに包まれた途端、マッハ14の超音速で敵機の頭上を通過せんと急降下。
「今だ……ディオニュソス!」
『うん! みんな、酔っ払っちゃえ!』
ディオニュソスの権能で、戦場が酒気に満ちてゆく。
すると、あれだけ隙間がなかった盾の壁がぐらぐらと揺らぎ、崩れ、隙間が生まれたではないか。
「マーズ……!」
『承知!』
敵陣系の隙間に上空から突っ込んだマーズは、超音速の斬撃で敵機の腕部をことごとく斬り捨てて素通りしてみせたのだった。
気が付いたときには、敵機は両腕を失い、自慢の盾と槍は持つ事も出来ず。
そのまま兵士達は酔っ払いながら投降をバーンに願い出るのであった。
「フ……良き防衛陣形であった。故に残念だ……本来なら守る戦いでその力を発揮するべきものだろうからな」
マーズから降りたバーンは、投降した兵士達を捕縛して遺跡の内部へ連行してゆく。
勿論、彼らを傷付ける事などせず、丁重にバーンは捕虜を扱うのだった。
大成功
🔵🔵🔵
箒星・仄々
ディオさんが前向きなお心を取り戻して下さって
嬉しいです
力を合わせて
敵軍を倒しましょう
レンタルキャバリアさんに搭乗です
キャンディをぱくり
搭乗機のデザインが
ちょっと格好良くなるかも知れませんね
敵の攻撃を
びよーんと伸びたり
通常の機体ではあり得ない動きで
回避します
もし当たっても
びよーんと伸びて衝撃を相殺します
ディオさんの酩酊幻覚で
敵同士が同士討ちになれば協力も出来ませんね
その混乱に乗じて
超弾動のパンチやキックで敵機を破壊し
パイロットさんを救出していきます
オブリビオンマシンに操られて
大変でしたね
…さて次は指揮官さんの救出ですね
ディオさんまたよろしくです♪
箒星・仄々(ケットシーのシンフォニア・f07689)は巨神の復活を手放しで喜んでいた。
「ディオさんが前向きなお心を取り戻して下さって嬉しいです。力を合わせて敵軍を倒しましょう」
『ウチの力が役に立つなら!』
ディオニュソスも猟兵達と共闘を重ねる事で、自分の権能が誰かを守れることを実感できて勇気が湧いてくるようだ。
箒星はあらかじめ手配していたジャパニア製の量産型キャバリアに乗り込み、出撃しようとする。
「その前に、キャンディをぱくりです」
すると、ケットシーの小柄な体型がみるみるうちに、八頭身の美丈夫の姿へ大変身!
『ちょ、すげー! イケメン黒猫男子になったし!』
驚くディオニュソスへ、箒星はなんと腕をびよ~んと伸ばしてみせた。
『うわっ! なんかキモッ!』
「驚かせてしまって申し訳ありません。ユーベルコード製のミラクルキャンディを口にすると、私の肉体はこのように変化を遂げるのです。これでキャバリアさんもびよ~んと伸びるでしょう。搭乗機のデザインがちょっと格好良くなるかも知れませんね」
箒星はそのままキャバリアへ搭乗しようとするが、これをディオニュソスが制止した。
「いや、あくまでその飴で変化するのってキミの肉体だけだべ? キャバリアは変化しなくね?」
ディオニュソスの言うとおりである。
ユーベルコードの拡大解釈をもってしても、変化するのは『自身の肉体』のみ。
キャバリアが飴を食べるわけではないのだ。
そして現在のジャパニアのキャバリアは神機ではなく、他国同様の人型汎用兵器である。
恐らく、箒星はジャパニア産のキャバリアはみな、ディオニュソスのような自我のあるキャバリアで飲食が可能だと思い込んでいたのだろう。
そんな箒星から疑問が投げかけられた。
「でも、搭乗者の方が音速で飛ぶユーベルコードは、キャバリアも音速で飛びませんか?」
『あれはパイロットのオーラや闘気でキャバリアの機体を包み込んでるから『身体の一部』って判定されるんじゃね? さすがに今回とそれとじゃ、発動トリガーが違いすぎるっしょ?』
ディオニュソスの言葉に、八頭身の箒星は腕を組んで逡巡する。
「ふむ。では、今回は生身で参りましょう。ランさん、お願いしますね。あと、このキャンディをどうぞ」
箒星は自分の足元の影から体長5mの空飛ぶ雌メカジキを召喚すると、その口の中にミラクルキャンディを押し込んだ。
これでランさんもゴムのように強い伸縮性と弾力性を獲得できた。
「私がキャバリアに乗るか、ランさんに乗るかの違いで、作戦のそのものは変わりありません。では、予定通りに参りましょうか」
箒星は颯爽と地面すれすれにランさんを回遊させ、その背にしがみついた箒星は魔法剣カッツェンナーゲルを鞘から抜き払った。
この光景に、敵部隊は目を疑った。
「隊長! 空飛ぶ魚に乗った八頭身の黒猫が剣を振るって突撃してきます!」
「貴様は何を言ってるんだ!?」
部下からの方向に部隊長は当惑してしまっている。
敵のシールドバッシュ突撃をゴムのような柔軟性を持つ肉体でボヨヨンと受け流し、ダメージを完全に吸収・無効化してしまう。
「無駄ですよ。もし当たっても、びよーんと伸びて衝撃を相殺しますので。ではディオニュソスさん、お願いしますね?」
箒星の合図を受けたディオニュソスは、再び戦場を酒気で満たしてゆく。
「ディオさんの酩酊幻覚で敵同士が同士討ちになれば、盾での突撃も部隊間の連携も出来ませんね」
酔っ払って操縦がおぼつかなくなった敵兵達は、幻覚のせいであちこちで殴り合いが発生!
お互いに盾と槍をぶつけさせ、キャバリア部隊は徐々に再起不能へ陥っていった。
その混乱に乗じて、箒星の身体がグニャァ~リと歪み、伸びてゆく。
「これが、超弾動の黒猫パンチです!」
後ろへ限界まで延び来た腕が反動で前へ飛び出す!
その凄まじい速度の拳が敵機の装甲をぶち抜き、反射した勢いで別の敵機を粉砕してみせる。
ランさんもプルバックさせた玩具の車のように、溜めた運動エネルギーを一直線に前へ突き刺さってゆく。
まるで巨大なピンボールゲームのような様相になっていく戦場は、とてもカオスであった。
大破した機体からは、投降を願う敵兵達が這い出てくる。
「ランさん、パイロットさんを救出してください。皆さん、オブリビオンマシンに操られて大変でしたね」
箒星は乱反射しながら兵士達へねぎらいの言葉をかける。
なんだかこういうゲームを見たことあるが、気のせいだろう。
「……さて、次は指揮官さんの救出ですね。ディオさん、その時はまたよろしくです♪」
『乱反射しながら笑顔を向けるとかすげーし!?』
箒星のピンボール大作戦は、アプローチこそ変更があったが、終わってみれば大戦果を挙げたのだった。
大成功
🔵🔵🔵
桃枝・重吾
アドリブ絡み歓迎
巨神【梵天丸】視点のプレイングです
◼️梵天丸補足
一人称:オレ
元高汎用空間戦闘用巨神群グラトニーズーの一体。
なにかにやられたけど記憶が曖昧。
補給が難しい環境を想定して何でもエネルギーに変換できる。
基本的には飄々としている予定の常識枠(過労)
重吾:マスター
宇宙開発関係仲間と思ってたら気が付くと助手席に座って宇宙を走ってた。
衛星軌道にテントはって生身で一緒にキャンプしてた。
常識ってなんだろう
星降丸:先輩
輸送機かと思ったらガチの指揮官機で年上でしかも自分の管理権限まで掌握されてた、
熊のヌイグルミ詰刑怖い
◼️電脳サロンの一コマ
先輩、デュオニソスについてですか?
悪い子じゃないけど呑兵衛…
あ、リスト入り…
◼️助手席にて
米所っぽい名前って叫んだマスターが地酒とか用意してて出遅れたが無事そうだな。
地形概略しか映してないし、UC?何が起きてるんだ。
取り敢えずデュオニソスに連絡、
知ってるかわからんがこちら元グラトニーズーのB01…
誰が悪食熊だ!
え?デコトラがジャックナイフで敵機に突っ込んでく?
どうも、オレの名前は汎用環境対応型高機動巨神【梵天丸】です。
大層な名前がついてますが、自分自身の記憶は曖昧です。
ところで、聞いて下さいよ皆さん。
そうです、この辺鄙なBlogを閲覧してる読者のあなたです。
オレのマスターは桃枝・重吾(|スペースデコトラ使い《XLスペース食べ歩き道中》・f14213)っていう、しがない個人経営の宇宙配送業者なんですが、オレを悪徳巨神闇市から買い取って救い出してくれたまでは良かったんですよ。
その後のテロリスト壊滅にも一役買ったあとですよ、問題は。
オレの先輩……スペースデコトラの『星降丸』さんっていう、桃枝家に代々伝わるコアユニットがですね?
『ウチの会社に入社したんだから、お前は私の命令に従え』
……なんて言って、オレが目を覚ます前にメインシステムをいつの間にか書き換えておいたとか、そんな事言ったんですよ!
いやなに赤の巨神のコアプログラムをいじるような犯罪行為を軽々やってんですか、って話ですよ!
信じられませんよね? 完全にパワハラですからねこれ?
おかげで元々は5~6mの巨体だったオレは、マスターの助手席に座れるまでサイズダウンしてました。
うん、あの先輩、いつかぶっ■す。
あとマスターの会社、あまりにもブラック経営が過ぎます。
惑星間航行なのでそりゃ長時間拘束はやむを得ないにしろ、航行軌道中の小惑星に着陸して生身でキャンプしだすのはどうかと思うんですよね?
マスター曰く、
『一定時間の連続航行したら休息を取れって、組合から義務付けられているんだよ』
なんて言ってますが、だったら星降丸先輩の中の居住スペースで過ごせばいいじゃないですか。
元々、あの先輩って運輸ユニットのほかに食料プラントと貯蔵庫も備えてるんですから。
それを『マスターが休憩中は私もオフなんで』の一点張りで、オレら二人を締め出すとか、マジで何考えてるですかね?
控えめに言って狂ってますよ、あのデコトラ。常識がなさすぎます。
それと機嫌が悪い時に憂さ晴らしとして、巨神モードのオレのコクピットの中に『ヒトデナシ』のぬいぐるみを詰め込むの、本当に勘弁してください。
これ、社内イジメですよね? 宇宙労働基準局へ駈け込めば勝てますよね?
そうそう、イジメといえば先日、クロムキャバリアって世界へマスターと一緒に出掛けたんですよ。
遺跡に眠る巨神を救出して、従業員を増やすんだって張り切ってて。
でもマスターが米処っぽい名前を叫んだり、地酒を用意している間に当の巨神は別の猟兵が操縦者に選ばれてしまってて。
まあ、結論から言えばとんだ無駄足だったんですよね。
ちなみに、星降丸先輩がこの予知の巨神の事を知ってると豪語してました。
なのでオレが聞いてみたところ……。
『ディオニュソス? 酒カスだが人畜無害。でもアルコールチェックに引っかかるから運転業務は全部無理だ。ブラックリストに入ってる』
そんな事をいうので、ヤバい奴だと思ってました。
オレもディオニュソスっていう名に心当たりがあったのですが、そんな奴だったっけ?と首を傾げていました。
で、実際に遺跡へ行って、その疑問が解消されました。
オレが実物のディオニュソスに話しかけたんですけど、
『よう、オレだオレ。知ってるかわからんが、こちら元グラトニーズーのB01……』
『は? 誰だテメェ?』
男の娘ギャルにドスの利いた低音声で拒絶されました。
……お判りいただけたでしょうか。
完全に巨神違いでした。もう赤っ恥でしたよ。
念の為、星降丸先輩の事も尋ねてみましたが、
『デコトラに知り合いなんぞいねーし?』
の一言で一蹴されました。
先輩のその時のAI回路の異常発熱ぶりといったら、嗤っちゃいそうになりましたね!
マジでざまぁでしたよ。
で、困惑したのはマスターですよ。
燃料費をかけて収穫ナシですからね。
これどうすんだ、って話になりまして。
オレは身の危険を感じたんで、真っ先に先輩の助手席から降りましたね。
だってこれ、どう考えても先輩が悪いですもの。
あんな温厚なマスターがブチギレたの、オレ初めて見ましたよ。
んで、お土産の地酒だけディオニュソスに渡して、どうにか戦場をかく乱してくださいってマスターが頭下げて。
ディオニュソスも、そこまでやられたら断れないって話でとりあえず共闘することになったんです。
で、ここからが本当に笑える話なんですが。
マスター、何を思ったのか、星降丸先輩に乗り込んでアクセルべた踏みの急発進しまして。
鼻歌まじりに戦場を駆け抜けていったかと思えば、え? デコトラがジャックナイフで敵機に突っ込んでく?
そのまま敵の堅牢な盾部隊に正面衝突ですよ。
一応、マスター自身はユーベルコードで外部からの攻撃を遮断し、生命維持も不要になる効果が付与されてるんですが、これって非戦闘行為に没頭している間のみなんですよね。
つまり、盾部隊と激突する=戦闘行為なので、激突直前にマスターは緊急脱出して、星降丸先輩をカミカゼ爆弾として突っ込ませて爆発四散させたってわけですね。
不謹慎ですが、あの瞬間、マジでスカッとしましたね!
いや、会社で一番重要な仕事道具を躊躇せずに爆散させるマスターもイカレてますけど?
でもマスターはケロリとした様子でした。
『大丈夫、私が生存してる限り、ナノマシンで24時間以内に完全復元するから』
アッハイ。左様ですか。過去に爆散した前例があるんですね、先輩も案外苦労してたみたいで。
つまり、一番ヤバイのってマスターでした。
オレ、この職場で今後やっていけるか心配です。
読者の皆さん、俺宛ての慰めやアドバイスをコメント欄でお待ちしてます。
#オレの職場 #超ブラック企業 #泣きそうだけど #負けないぞ
大成功
🔵🔵🔵
アルジェン・カーム
神機
「アルジェン!ディオ姐さんだよ!ディオ姐さんが目覚めてるよ!」
お知り合いなんですか?
「そうだよ!ボクに男の娘としての服装とか立ち振る舞いとか教えてくれた人だよ!」
そ、そうですか…どうやら愉快なお方のようですね
「ディオ姐さん!助けに来たよー!」
あ、お初にお目にかかります
アルジェンと申します
之より貴方に齎される|悲劇の終焉《エンディング》…破壊させて頂きます
カシムさん達もいるようですね…ならば
僕らが防衛に回ります!
貴方達は自由に動いてください!
【戦闘知識】
敵機の陣形や動きを分析
【念動力・オーラ防御】
UC発動
念動障壁とオーラ障壁を展開し
ディオニュソス防衛!
防衛型ですか…とはいえ火力がないわけでもなさそうですね
「でも正面攻撃は防がれちゃうよ!」
問題はないでしょう?
【弾幕・切断・二回攻撃・貫通攻撃】
ケルベロス展開
英霊剣群展開発動
英霊剣により背後や上部から襲撃して手足を切断して動きを止め
念動光弾でエンジンを破壊し停止狙
不殺徹底
ディオニュソスさんは敵機に乗ってる人を酔わせて頂ければ!
カシム・ディーン
神機
「ディオちゃん元気になったー☆よかったー☆」
…だが防衛線か…カシムさんは苦手なんだがな…?
「って…げぇっ!?ぷっさん!?」
彼奴らも来やがったか
…OK利用させてもらうぞ
「それじゃメルシー達は…?」
何時ものあれでいくぞ!
【情報収集・視力・戦闘知識】
敵機の構造と動きと陣形
地形状況を正確に収集し把握
特にエンジンや動力源も捕捉
【属性攻撃・迷彩】
光水属性を機体に付与
光学迷彩で存在を隠し水の障壁で熱源も隠蔽
電撃とかで一気に殲滅してーが
「中に人が居たら危ないよね☆」
それじゃ…強奪タイムと行かせて貰おうか?
【念動力・弾幕・空中戦・電撃】
飛び回りながら念動光弾と電撃を撃ち込んでその動きの封鎖と機能停止を狙
【二回攻撃・切断・盗み攻撃・盗み】
鎌剣で連続斬撃で手足を切り落とした上で
たまぬき発動
中の人間の精神を強奪して気絶させる
時間が経てば目覚めるだろうがそのころには全て終わりだ
一応オブビリオン以外はなるべく殺さないようにが猟兵スタンスらしいんでな?
当然資源や金目の物は根こそぎ強奪させて貰うがな!
アルジェン・カーム(銀牙狼・f38896)は冥皇神機『プルートー』に乗り込み、彼の導きに従いクロムキャバリアのジャパニアへ転送されてきた。
プルートーは戦場の上空を敵機の頭上よりもやや上あたりの低空飛行を維持しながら、200年ぶりに復活した『幻惑神機ディオニュソス』の姿を見た。
『アルジェン! ディオ姐さんだよ! ディオ姐さんが目覚めてるよ!』
「お知り合いなんですか?」
アルジェンの問いに、コクピットの中の小鴉3Dホログラムがぴょんぴょん飛び跳ねて答えた。
『そうだよ! ボクに男の娘としての服装とか立ち振る舞いとか教えてくれた人だよ!』
「そ、そうですか……どうやら愉快なお方のようですね」
アルジェンは思ってもいなかった回答に声を詰まらせてしまった。
そうこうしているうちに、プルートーは遺跡へ降り立ち、神機の姿のまま挨拶を交わした。
『ディオ姐さん! 助けに来たよー!』
『あっ! ぷるちゃむじゃーん! 200年ぶりー! って、操縦者いんじゃん!』
ディオニュソスの指摘にプルートーが驚く。
『えっ! なんで分かったの!?』
『そりゃ魔力の流れがガチだからさー? って、誰乗ってんの?』
「あ、お初にお目にかかります。アルジェンと申します。之より貴方に齎される|悲劇の終焉《エンディング》……破壊させて頂きます」
『なにそれ? ウケんだけどー!』
エンドブレイカーのアルジェンの決め台詞を理解できないディオニュソスは、ちょっとキザな言い回しくらいにしか受け取れなかったようだ。
『アルジェン、姐さんに悪気はないんだ……』
「え、ええ。勿論、理解しています……」
そうは言っても少し動揺するアルジェンであった。
と、そこへカシム・ディーン(小さな竜眼・f12217)とメルシーが、アルジェンとプルートーの存在に気が付いた。
「って……げぇっ!? ぷっさん!?」
「なんだ、彼奴らも来やがったか」
上空から近付く漆黒の神機に、カシムは腕を組んで逡巡している。
「ご主人サマ! ぷっさんの女装や男の娘属性は、全部ディオちゃんの手解きのおかげだよ!
「今、その情報いるか!? だが……納得だな。おめーも見た目は完全なギャルだしな?」
『えへへー。めっちゃ盛ってるからね!』
ディオニュソスは神機の姿でご機嫌の様子。
「それにしても、ディオちゃんが元気になったー☆ よかったー☆」
「おいメルシー、それどころじゃねーぞ? 今回の戦いは防衛戦だ……カシムさんは苦手なんだがな……?」
「えー? そうなの?」
意外そうな声を上げたメルシー。
カシムはこれに億劫そうに言葉を返した。
「僕は奪う側であって守る側じゃねーんだよ。とはいえ……アルジェン達が来てくれたのは都合がいい……彼奴等を利用するか」
「共闘って言わないところがご主人サマのツンデレポイントだぞ☆」
「うっせー! とにかくメルシーも神機の姿に戻りやがれ!」
「おけまる!」
少女の姿から白金の装甲を纏いし王の神機へと戻ったメルシーは、カシムをコクピットの中へ誘うとひとつ尋ねた。
『ご主人サマ? メルシー達はどうするの……?』
「当然、何時ものあれでいくぞ!」
カシムの言葉に、メルクリウスの機体が周囲の景色にたちまち溶け込んでゆく。
お得意の光学迷彩魔術で、完全に気配と敵からの認識を断ってみせたのだ。
一方、アルジェンも突然消えた魔力反応に覚えがあった。
「ぷっさん、カシムさん達もいるようですね……ならば――」
『うん、メルクリウスなら速攻を仕掛けるはずだから、ボク達の役目は……!』
「ええ! 僕らが防衛に回ります! カシムさん、メルシーさん! 聞こえますか!? 貴方達は自由に動いてください!」
『遺跡は絶対に守り抜いてみせるよ!』
アルジェンとプルートーのコンビの声が戦場に響けば、それに応えるが如く敵部隊の最前線が次々と沈黙していった。
「本当は電撃で一掃しちまいたいところだが……」
『敵国とはいえ、オブリビオンマシンに操られてるだけだからね? 人命優先だよ!』
「わーってるって! んじゃ、ちょっと眠っててもらうか……!」
カシムはメルクリウスとの魔力回路を通じて、自身のユーベルコードを発現させた。
「万物の根源よ。我が手にその心をも奪い去る力を宿せっ……!」
ユーベルコード『|たまぬき《ソウルスティール》』……対象の魂魄を奪う盗賊の魔技を放つ。
これで敵兵の意識を奪う算段だ。
だがそのためには、盾を構えるキャバリアをどうにかしなければならない。
「成功確率は五分か……カウンターが怖いが……こちらの気配は悟られていない……一撃で決めるぞ、メルシー!」
『任せて、ご主人サマ!』
光学迷彩魔術を纏わせたビーム大鎌剣ハルペーを、盾を構えた敵キャバリア部隊の目の前で横一文字に薙ぎ払う!
凄まじい膂力で盾は上下真っ二つに裂け、敵胴体部の装甲まで剥ぎ取られてゆく。
「これもスリのテクってことだ……!」
カシムは巧みな操縦で敵の装甲を剥いで“盗み取る”と、敵機のコクピットを剥き出しにしてしまう。
そこからメルクリウスの指先で操縦者を触れれば、あっという間に誰もが意識を失って昏睡していった。
「安心しろ……あとで魂は返してやる……でなくとも時間が経てば目覚めるだろうが、そのころには全て終わりだ。一応、オブビリオン以外はなるべく殺さないようにが猟兵スタンスらしいんでな? その代わりと言っちゃんだが、当然資源や金目の物は根こそぎ強奪させて貰うがな!」
超絶盗賊技法で敵機が分解され、売り飛ばせそうなパーツは全てメルクリウスの機体の中へ吸い込まれてゆく。
敵部隊があっという間に解体されてゆく光景を、後方でアルジェンとプルートーは眺めていた。
「相変わらず容赦ない方々ですね……。ではぷっさん、こちらも踏ん張りどころですよ」
『任せて、アルジェン!』
カシムとメルクリウスの猛攻を避けてきた、別の部隊が遺跡へ急接近中だ。
これらを迎撃するは漆黒の冥皇神機『プルートー』。
まずは遺跡と自機の前方に、念動障壁と破壊のオーラ障壁を展開。
更にユーベルコードで防御力を向上させた。
「土よ……大地よ……我が声を聴きその力を示したまえ……玄武門……開門!」
プルートーの機体の後方に、巨大な大地の障壁が出現!
「敵部隊は防衛型キャバリアですか……とはいえ、火力がないわけでもなさそうですね」
『遺跡は守れるけど、ボク達はまともに正面から攻撃したら防がれちゃうよ!』
プルートーの懸念に、アルジェンはふと笑みを漏らした。
「問題はないでしょう? ぷっさん、ケルベロスで側面から砲撃を開始してください」
『そっか! 分かったよ!』
プルートーは自身の兵器のひとつである自律稼働型三連砲浮遊砲台ケルベロスを射出させ、敵部隊の側面から容赦なく砲撃を加え始めた。
予想外の方角から攻撃を加えられた敵部隊は、たまらず足止めを喰らってしまう。
「ぷっさん、今です! 万能近接砲撃戦闘兵装『バイデント』を!」
『いっけぇー!』
ケルベロスの砲弾が飛んでくる方角へ盾を構えていた敵部隊は、プルートーへ横腹を見せている状態だ。
ここへプルートーの破壊のオーラを纏った弾丸が撃ち込まれればどうなるか?
敵部隊は一瞬で吹っ飛び、容易く戦線崩壊してしまったのだった。
『アルジェン! 操縦者達はみんな無事だよ! オブリビオンマシンの駆動ユニットだけを破壊したからね!』
「お手柄ですよ、ぷっさん。ええ、クロムキャバリアの操縦者はオブリビオンマシンの犠牲者……不殺を徹底しましょう」
こうして、二柱の神機の連携によって、敵部隊は壊滅的なダメージを被ったのだった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
防人・拓也
「ディオニュソス、早速君の力を借りたい」
と言い、巨神には敵部隊に対して酒を浴びせて欲しいと頼む。
「君の準備が整うまで、俺達が時間を稼ぐ。アイリスはバックアップを頼む」
『かしこまりました、マスター』
そう話して術式付きクナイを戦場のあらゆる場所へ複数投擲した後、クナイを持って敵部隊へ突撃。キャバリアにも乗らず、単独突撃してくる相手に敵は油断するはず。敵が攻撃してきた瞬間、指定UCを発動し、クナイがある所へ転移し攻撃を避ける。
「今だ、アイリス」
そう言って人間状態のアイリスに合図を送り、人間サイズの古代武装『神弓カラドボルグ』で攻撃してもらう。威力は適度に抑えてもらう。もし彼女が敵に狙われたら転移して助ける。彼女にはもしもの時の為に術式をマーキングしてある。
「ディオニュソス、準備はどうだ?」
と聞き、OKだったら実行してもらう。
「さぁ、仕上げだ」
と言い、両手で術印を結んで大きく息を吸い
「炎術・豪火焔!」
と言って炎を口から吹き出し、酒を浴びた敵部隊を燃やす。投降者は炎を消して助ける。
アドリブ・連携可
「ディオニュソス、早速君の力を借りたい」
防人・拓也(独立遊撃特殊部隊ファントム指揮官・f23769)は真摯に『幻惑神機ディオニュソス』へ願い出る。
「君の誰かを護りたいという勇気を、私とアイリスの為にも振るってほしい。ただ、無理強いはしない。本来、君は保護対象だ。後方で控えてもらっていても――」
『ううん、ウチ、やるよ。みんなを、ダチを護りたい!』
ディオニュソスは神器の数珠を握り締め、拓也の申し出を快諾した。
『マスター、ディオ様は芯の強い御方です。むしろ、この場で後方待機を進言する方が酷というものでしょう』
相棒の巨神アイリスに諭され、拓也はハッと息を吞んだ。
「……そうだった。今のは俺の失言だったな。すまない」
『いえ、自分よりも他者を優先する、マスターらしいお言葉だと思います』
愛する貴方のそこに心惹かれたのだから、とアイリスは拓也の耳元で囁いた。
拓也は虚を突かれた形で目を見開くが、すぐに冷静を取り戻して真顔に戻る
今は特殊部隊ファントム指揮官としてこの戦場に臨んでいる。
そもそも相棒がいくら想いを寄せられても、この身はこの数秒後には潰えるかもしれないのだ。
だから自身の事など二の次、三の次だ。誰かを救う為には、自分を斬り捨てるのが最善だ。
これが防人・拓也という|兵士《ヒーロー》の魂に刻まれた、鉄の掟である。
「ディオニュソス、敵部隊に対して酒を浴びせてほしい。なるべくアルコール度数の高い……それこそウォッカやスピリタスのような度数90度以上の酒を生成できないか?」
『う、うん……やってみる! でも、そこまでの度数まで高めるのに時間がかかるけど……』
心なしか自信のなさそうなディオニュソスだが、拓也はそれを織り込み済みで言葉を継いだ。
「大丈夫だ。君の準備が整うまで、俺達が時間を稼ぐ。アイリスはバックアップを頼む」
『仰せのままに、マスター』
スカートの左右の裾を摘まんで一礼するアイリス。
作戦方針は固まった。
「合図を送ったらバックアップを頼む。では、行ってくる」
『ちょ、たくやん!? キャバリア相手に生身で挑むとかヤバいって!』
「たくやんって……いえ、今はそこじゃないか。ディオニュソス、心配するな。これが俺の戦い方だ」
ディオニュソスの心配この絵をよそに、拓也は遺跡の石階段を駆け下り、戦場へ飛び込んでゆく。
身をかがめて前傾姿勢のまま全力疾走、その姿は韋駄天めいたニンジャ……!
既に壊滅寸前の敵部隊だが、よもや生身の人間独りが体高5mの人型決戦兵器に突撃してくるなんて思ってもみなかっただろう。
故に、残る敵部隊は拓也の進路上を巨大な鉄の壁めいたキャバリアシールドで封鎖し、そのまま前進を開始。
巨大な壁を押し出して矮小な拓也を轢き潰そうという算段だ。
「……まぁ、そうくるよな」
拓也はファントム仕様光学迷彩機能付き強化戦闘服の機能を作動して周囲の景色と溶け込んでみせる。
ただでさえ小さい標的が、光学迷彩で姿を紛らわせた事で、敵部隊の中に動揺が走る。
そもそも、歩兵の単独行動で50機のキャバリアを相手取ること自体無謀だと思わせていたこと自体が拓也の作戦のうちだった。そこに必ず慢心が生まれる。慢心は思考を停止させ、起こりうる別の可能性を放棄させる。
だからこそ、目の前で拓也の姿が消えただけで敵部隊の統率が乱れ始めてしまうのだ。そんな可能性など、とっくに捨て去っていたのだから。
(第一段階完了。作戦を第二段階へ移行する)
心中で冷徹に作戦内容を反芻する拓也は、時空間魔術・迅雷天神の術式が施された三又の左右非対称の十文字型クナイを周囲にランダムに放ち始めた。むやみに明後日の地面に突き刺したかと思えば、敵機の盾へ向けて投擲したりと、その標的に法則性は見られない。
しかし拓也は視認性の薄さを活かして敵部隊の更に中へ潜り込み、クナイをばら撒いてはひたすら走り回る。
(第二段階完了。これより第三段階を決行する。さて、一旦戻るか)
拓也はここから電光石火で作戦内容を畳みかけてゆく。
実は拓也がばら撒いていたクナイ、その正体は彼のユーベルコードの『マーキングポイント』である。
この苦無が刺さっている場所へ、拓也の視認している20km圏内であれば一瞬でワープが可能なのだ。
「悪いが、時間を掛けるつもりはない。すぐに終わらせる!」
拓也の身体が、一瞬で遺跡の元まで瞬間移動して戻ってきた。
そしてこれが合図だ。
「今だアイリス、古代武装の使用を許可する」
拓也の言葉に、アイリスは何処か迸るような黒い感情を発散させていた。
『古代兵器の使用許可を確認。神弓カラドボルグを人間サイズに小型化して顕現』
巨神のメイド少女の両手に、光輝く弓矢を出現させた。
『権限を確認。目標、敵性キャバリア部隊の無力化。ところでマスター? ひとつお尋ねしたいのですが』
「このタイミングでなんだ、アイリス?」
『はい。誠に身勝手ながら、この不肖アイリス、ディオ様を寄って集って虐める不届き者へ憤怒を抱いておりまして。そこでディオ様の“ズッ友”としましては、敵部隊の無力化について、少々手厳しい措置を加えたいと考えております。どうか、許可を下さってもよろしいでしょうか?』
アイリスの言葉に拓也は眉をひそめる。
「え? あ、ああ……。操縦者はオブリビオンマシンの洗脳で操られている可能性が高いから、彼らの人命を保証できる範囲であれば許可する」
拓也の言葉に、アイリスは見ているこっちが背筋が震えてしまう極寒の笑顔を浮かべてみせた。
『上官の許諾を確認。神弓カラドボルグの制限を1段階解除します』
「ア、アイリス? 一体何を?」
拓也が相棒を二度見する。
アイリスは……笑ったまま激怒していた。
『巨神が様々な勢力に狙われている事実は存じ上げていたはずでした。しかし、ディオ様はかつて身を挺してメルシー様を守った挙句にこのような目に遭うなんて、同じ巨神として理不尽の念を禁じえません。ですので、あの有象無象の鉄屑共には、少々私の憂さ晴らしに付き合っていただきましょうか』
アイリスの神弓がかつてないほどの輝きを放ち始める……!
|This is solid lightning, a sword that stretches to infinity《是なるは固き稲妻にして、星薙ぎの剣》――.
アイリスの魔導詠唱、開始……!
|This is also the bow and arrow of divine punishment that shoots down evil《また、是なるは邪悪を撃滅せし天罰の弓矢でもある》.
|I will release its true name《真名解放》――.
『……“轟き叫べ”。神弓カラドボルグ!』
アイリスが敵部隊の真上へ向けて光輝の矢を放つ!
『マスター、着弾まで残り13秒です。お願いしますね』
アイリスの言葉で、拓也は為すべき次の行動を悟った。
「ディオニュソス、今だ」
『おっしゃ! アルコール度数95%の酒の雨だ~!』
ディオニュソスが数珠を振り回したその時、敵部隊の頭上からザバァッと高純度のアルコール液体が降り注がれた。
そして拓也は再び瞬間移動で戦場へ。
むせかえる気化したアルコールを吸わないように呼吸を抑えつつ、クナイが刺さった場所へ到達。
同時に天空からアイリスが放った矢が、敵部隊のど真ん中に着弾!
稲妻めいた高エネルギーの塊の矢が気化アルコール漂う戦場に突き刺さればどうなるか?
更に、拓也が危険を省みずに両手で素早く印を結び、追撃のユーベルコードを放てば、何が起きるのか?
「炎術・豪火焔!」
口から火炎を吐き出し、アイリスの矢の着弾点へ大火球を放つ。
すると、気化アルコールに引火した火気が一瞬で引火し、敵部隊を丸ごと大爆発の中へ飲み込んでいった!
爆――ッ!!!
『うおおっ!?』
『マスター!?』
後方の遺跡まで爆発の振動が鼓膜に轟くほどの衝撃。戦場が一瞬で紅蓮に染まってゆき、熱波が押し寄せた。
これでは拓也も巻き添えは必至……!?
しかし、ものの数秒後に遺跡へ帰還してくる拓也。
その傍らには、全身に軽い火傷を負った敵兵達が抱えられていた。
「投降した兵士達を捕虜として保護してきた。アイリス、彼らの面倒を頼む。あとさっきの詠唱は何だったんだ? 全力で放てば山を撃ち抜く威力があるカラドボルグの制限を解くとか言ってたよな?」
拓也の疑問の言葉に、アイリスはニコニコしたまま答えた。
『あの時、怒っていたのは事実です。でも詠唱は……まぁ、気分です』
「え、気分……?」
『はい、その方が盛り上がるかと思いまして。実際、カッコよかったでしょう?』
『ウチはああいうのしゅき! めっちゃ熱いヤツじゃ~ん!』
どうやら、あの詠唱はアイリスの“演出”だったらしい。
ディオニュソスは能天気にアイリスの言動に感動していたが……。
「いや、明らかに想定を超えた威力が出てなかったか?」
かつてテロリスト集団のアジトで放った時は、もっとおとなしい威力だったはずであった。
それを知っている拓也は、アイリスの言動が何処まで本当の事か、分からなくなっていた。
(いや、今はそれよりも残敵掃討が先決だな……)
拓也は再びクナイのマーキングまで瞬間移動し、ゲリラ戦術の要領で残るオブリビオンマシンへ大火球を吐き出してはコクピットから這い出てきた兵士を捕虜として遺跡まで運び出す。
これを何度も繰り返し、酒気で燃え盛る中、拓也は見事に生身のまま、単独で50機のオブリビオンマシンを全て掃討してみせたのだった。
自身の危険を省みずに、他者の人命を優先する。
一歩間違えば、自分の身が爆散するかもしれないにもかかわらず、だ。
防人・拓也という男は、そんな|勇者《ヒーロー》同然の行動を平然とこなす猟兵であった。
大成功
🔵🔵🔵
第3章 ボス戦
『護城神機『ミネルヴァ』』
|
POW : EP-BS攻性障壁『アイギス』
全身を【護る光盾を構え石化光線を打ち出せる状態】に変える。あらゆる攻撃に対しほぼ無敵になるが、自身は全く動けない。
SPD : EP-F『グラウクス』/島投げ
【梟型索敵ユニットの超広域索敵】が命中した対象に対し、高威力高命中の【敵の上空より島に匹敵する大質量の岩石】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
WIZ : 戦術報復機構『輝く瞳を持ったもの』
自身の【RXキャバリアグレイヴ『エリクトニオス』】から、戦場の仲間が受けた【損害】に比例した威力と攻撃範囲の【超高速連続刺突と弾幕の如き光弾】を放つ。
イラスト:柿坂八鹿
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「テラ・ウィンディア」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
戦場にアビ・インフェルノ・ジゴクめいた大火炎が蔓延する。
むせかえる高濃度の酒気は、常人が一呼吸するだけで酩酊してしまいかねない。
散在するは、神聖ブリオン教国のキャバリア精鋭部隊の残骸ばかり。
この日のためにジャパニアへ長きにわたって潜伏し、ようやく最善の時期に出撃をしたはずだった。
『この作戦が筒抜けになっているのは、間違いなさそうですね』
白銀の円盾を掲げた巨神が呟く。
その名は護城神機『ミネルヴァ』――かつては、神代のジャパニアにて人民と国を外敵から守り続けていた神機の一柱である。
今やオブリビオンマシンへと堕ち、神聖ブリオン教国に鹵獲され、隊長機としてこのジャパニアを侵略していた。
『もはや敗戦は濃厚。しかし私には敗走は許されない。ならば、標的は、かつての我が友、ディオニュソスのみ!』
RXキャバリアグレイヴ『エリクトニオス』を掲げ、女神の名を冠する神機は戦場に堂々と降臨した。
そして、遺跡の奥で覗き込む巨神……『幻惑神機ディオニュソス』へ穂先を突き付けて宣言した。
『我が名は、護城神機『ミネルヴァ』。今はオブリビオンマシンだが、現在のジャパニアの前身である「古代神機皇国ジャパニア」の国防を任されていた神機です! そして、その遺跡の影で怯えているディオニュソスは、かつての友でもありました。……ある日を境に袂を分かつまでの間でしたが』
そして、自らをパイロットを擁さずに自律稼働するキャバリアであり、自我を持つ神機だと明かした。
『猟兵達よ。敵兵とはいえ人命を優先する働き、見事です。私は武人です。その行動に敬意を表し、既に先程、部隊長の洗脳を解いて撤退させました』
つまり、全力で掛かってこい。そういう事なのか。
『さあ、猟兵達よ。我が盾と槍に立ち向かってきなさい! 武人が戦いの中で果てるのならば本望です! 背水の陣の私を、止められますか……?』
すると、ミネルヴァの内包魔力が急激に増幅してゆく……!
「念動障壁、展開……! ダメージ軽減効果、発動……! 全属性耐性、超強化! これが私の全力です!」
エネルギー出力が機体の限界を超えるほど放出され、ミネルヴァの全属性耐性が大幅にアップ!
まさに堅牢な防御力を獲得した女神だが、徐々に装甲に細かな亀裂が走っていくのも同時に確認できる。
つまり、相手の防御を上回る超決戦級の大ダメージをぶつけるか、持久戦で相手が自壊するのを待つか、その二拓を迫られている……。
果たして、猟兵達は最強の矛と盾を持つ女神に、どのように対処するのだろうか?
そして、ディオニュソスの力を借りて、巨神を守り抜くことが出来るだろうか?
ユーベルコードの高まりを感じるっ!
シルヴィ・フォーアンサー
……友達だって、はじめてできた。
『親しい相手一人もいなかったものな』
……うるさいし、行くよ、あいつを吹っ飛ばす。
パラライズ・ミサイルと同時にディオニュソスに幻覚をお願い、一瞬でも止めて先手がとれれば。
『強敵相手にぶっつけ本番とは』
……それこそ強いからね。
(先手でも後手でも)シルエット・ミラージュからのハンドレッド・イリュージョン。
上手くいけば最低1136体(シルエット・ミラージュ残ってれば1150体)のミドガルズがでるはず
瞬間思考力をドーピングで強化しリミッター解除して限界を突破。
ヨルにも一部、戦闘演算を肩代わりしてもらって全機を操縦するよ。
後手なら岩ごと、先手ならボスに直接武装を一斉発射。
シルヴィ・フォーアンサー(自由を求めた脱走者・f41427)は依然としてクロムキャバリア《ミドガルズ》のコクピット内部で戦場に待機していた。
そして、ディオニュソスの言葉を思い返して、ほぅ……と軽く息を吐いた。
『どうした、どこか不具合が発生したか?』
ミドガルズのサポートAI『ヨルムンガンド』ことヨルは、ぼーっとするシルヴィを心配して声をかけた。
すると、シルヴィはヨルへ即答した。
「……友達だって。はじめてできた」
赤いルビーのような瞳をキラキラ輝かせて、なおかつ声を弾ませていた。表情筋は相変わらず仕事を放棄していたが。
「友達……シルヴィは、ディオニュソスの友達……すごく、いいかんじ……胸の中が、あたたかい……」
『心拍数の上昇を確認。そうか、嬉しいいのか。そういえば、シルヴィは今まで親しい相手が一人もいなかったものな』
「……うるさいし。むぅ」
ヨルの割とデリカシーのない発言に、珍しくシルヴィは頬を軽く膨らまして不満の感情を発露させた。
そしてすぐに気持ちを切り替えてゆく。
「行くよ、ヨル。あいつをぶっ飛ばして、友達、たすけるよ」
ミドガルズがスラスターを噴射させて緊急発進。
空気を切り裂きながら護城神機『ミネルヴァ』を目指して間合いを図りながら、対象を周回する。
「……ヨル、ディオニュソスと連絡とりあえる?」
『ちょっと待っていろ……よし、いけるぞ』
「ありがと、ヨル。えっと……ディオニュソス、きこえる? シルヴィだよ」
『うん、バッチリ聞こえっし! で、どしたん?』
最初とは打って変わって、自身に満ちた快活な声で返事するディオニュソスへ、シルヴィは連携の段取りを手短に伝えた。
「……シルヴィ、これからミサイルをたくさん撃つ。そしたら、ディオニュソスはまた、相手を酔わせて幻覚をみせてほしい」
『りょ! でもミネるの耐性強化を貫通させるほどの権能を発揮するから、巻き込まれないように気を付けてな?』
ディオニュソスの通信を脳裏に留めたシルヴィは、出来るだけ接近せずに戦う事を心掛ける。
そのまず布石として、新たなユーベルコードをこのタイミングでぶつける決心をするのだった。
『強敵相手にぶっつけ本番とは。大丈夫なのか?』
不安視するヨルだが、“友達を護りたい”という初めての感情を覚えたシルヴィは、今までの戦闘では味わったことのない底力を沸々と感じ取っていた。
それゆえの決断力で、彼女は断言した。
「……それこそ、あのカミサマが強いからね」
『神、か……あれがそんな大層な相手なのかは知らないがな』
シルヴィもヨルも、このジャパニアが200年前までは人々を巨神達が支配して政治を為していたという話に、半信半疑かもしれない。
しかし、ディオニュソスの話が全くの噓だとはどうしても思えなかった。
ならばあの、ミネルヴァと名乗った巨神は、まぎれもなくかつてこの国を支配していた神様であり、オブリビオンマシンへ堕ちた悪の手先なのだ。
「……どんな理由か、しらないけど」
ミドガルズの両肩に搭載された、ミサイルポッドのハッチをフルオープンに。
「シルヴィの友達を泣かす奴は……ゆるさない」
『ミサイル全弾、ロックオン。行けるぞ、シルヴィ』
ヨルの射撃管制システムが照準を固定した。
シルヴィの新たなユーベルコード『パラライズ・ミサイル』が全弾発射される!
「……ビリビリってするよ」
断続的に瞬くマズルフラッシュと共に、ミドガルズの両肩部から白い発射煙が空へ伸びてゆく。
それを合図に、ディオニュソスの権能が先程よりも濃い濃度で働き始めた。
「……うわ」
その濃密な酒気に、シルヴィも危うく視界が反転しかける。
しかし、友達を思うと、不思議と酔いが醒めてくる。ぐっと腹に力を入れ、機体を踏み止ませた。
一方、凄まじい酒気を浴びたミネルヴァは、強化した全属性耐性を持ってしても、僅かに酩酊による幻覚を発症していた。
「くっ……ディオニュソス、完全に本調子じゃないですか……! よもや私の守りを貫通してくると、ぅあああっ!?」
次の瞬間、パラライズミサイルが念動障壁と自慢の円盾に激突!
ダメージこそ激減するものの、着弾時の高圧電流によるスタン攻撃はミネルヴァに通った。
「おのれ、小癪な真似を……!」
動けなくなった神機の周囲だけ、念動障壁が僅かに薄くなった。
今なら攻撃が通るかもしれない!
とはいえ、ミネルヴァの本命は自身ではなく、既に空中へ放っていた梟型索敵ユニットであった。
その超広域索敵レーダーに引っかかったミドガルズへ、上空より島に匹敵する大質量の岩石が降り注ぐ!
「残念でしたね、猟兵……! 本命は、空からです!」
隕石と言って等しいほどの岩石が、ミドガルズの機体を今にも押し潰そうと降り注ぐ。
これにシルヴィは直結接続されている自身の神経とミドガルズの回路とのシンクロ率を限界突破、212%の超過同調による瞬間思考力を発揮して状況判断!
「……このまま避けたら、ディオニュソスも無事じゃすまない。だったら……あの岩ごと超火力でぶちぬく」
先程のユーベルコードの効果で追撃のユーベルコードを発動できるシルヴィは、迷わず必勝のユーベルコードをである『シルエット・ミラージュ』を発動させた。
「……岩石だろうが、ボコボコにする」
そして即座にハンドレッド・イリュージョンを発動させ、更に手数を増やしてみせる!
「……いっぱい、いっぱい、超ボコボコにする」
残像分身を含めて合わせて1150機のミドガルズ軍団が、一斉に装備している砲撃を空へ向けて乱射!
『おいおい、こりゃ大変だな』
シルヴィの脳の処理速度をとっくにオーバーしてしまう為、ヨルもフル稼働で彼女をバックアップして戦闘演算を手助けする。
その甲斐あってか、超巨大岩石は地表に激突する前に破片となって爆発四散してみせたのだ。
『あれを、破壊したですって?』
未だ麻痺から解放されないミネルヴァは、天変地異クラスのユーベルコードが防がれた現実に目を疑った。
そして、残像分身が消えても戦場に居座る1136機のミドガルズ軍団の砲口が、すべてミドガルズへ向けられてゆく。
「……言ったよね? シルヴィの友達、泣かす奴は……ぶっ飛ばすって」
『全砲塔、ロックオン』
ヨルの仕事の早さに感謝しつつ、シルヴィは初めての友達を守るために戦う。
「……みんな、やっちゃえ」
刹那、万雷めいて轟く火器の発砲音!
念動障壁の薄いところを貫通した無数の弾丸は、シルヴィの宣言通りにミネルヴァを木の葉の如く勢いよく後方へ吹っ飛ばしてみせた。
大成功
🔵🔵🔵
鳴上・冬季
神機に
「貴女は随分人寄りですね」
「もしも貴方が仙になるなら。命の胎から生まれぬ貴女は器物上がりと称される。命の肚から生まれた私は妖物上がりです。後は人から仙になった人上がり。まあ仙でなければ関係ない見方です。戦闘に集中しましょうか」
嗤う
「オブリビオンになる前の貴女なら今を厭うたことでしょう。疾く眠らせて差し上げます。…紡げ蜃夢」
「雷公鞭は宝貝、黄巾力士は存在自体が宝貝ですから」
嗤う
自分は雷公鞭で雷撃
黄巾力士は砲頭と金磚で射撃
(同じ組成でも大地から生まれた石と人工的に作られた石では同じ器物上がりでも宿る意志は違いますが。仙になれば全て同列、そして仙から見れば全て同列です…貴女は嫌がりそうですが)
「貴女は随分と人寄りですね」
唐突に鳴上・冬季(野狐上がりの妖仙・f32734)が護城神機『ミネルヴァ』へ尋ねた。
先程の戦闘で吹っ飛ばされたミネルヴァは、キャバリアグレイヴ『エリクトニオス』を支えに立ち上がると、鳴上の言葉に訝しがった。
『この私がヒトに似通っている? 痴れ事を抜かすな。ヒトは我々が管理・支配せねば秩序を乱す愚かな者達を指す。この神機ミネルヴァと一緒にしないでいただきたい』
「いえ、そういう事ではないのですが。……むしろ、だからこそ、でしょうか」
目の前の神機を愚物と弄する笑みを浮かべる鳴上。
「もしも貴方が仙になるなら。命の胎から生まれぬ貴女は器物上がりと称される。対して、命の肚から生まれた私は妖物上がりです。後は人から仙になった人上がり。まあ仙でなければ関係ない見方です。戦闘に集中しましょうか」
別にどうでもいい、と言いたげに嘲笑う。
彼にとっての判断基準は『仙人か否か』の二極化であるため、目の前の神機が古代に人間達を支配していた神話の住人も路傍の糞と同じ価値にしか見ていない。鳴上という妖仙とは、この世界の全てを見下しているからだ。
そんな鳴上が宝貝を展開、ユーベルコードを発現させてゆく。
「オブリビオンになる前の貴女なら今を厭うたことでしょう。疾く眠らせて差し上げます。……紡げ蜃夢」
巨大な蛤が鳴上の傍らに出現すると、その口から大量の蜃気楼が吐き出され始めた。
みるみるうちに現実世界が浸食されてゆけば、戦場全体が仙界の光景に塗り替えられてゆく。
しかし、この景色は蛤の吐き出した幻であり、正確には夢の中である。
「これは蜃が吐く気が見せる夢の世界。ただし、これを夢に出来ないものには現実です。良夢となるか悪夢となるか、全ては貴方次第です」
鳴上は宝貝・雷公鞭を振り上げ、青空から稲妻をミネルヴァの頭上へ撃ち落とした。
虚を突かれたミネルヴァは、落雷のダメージで再び膝をついてしまう。
『がはッ!? 天候を操れるのですか……!?』
「いえ、この夢の世界全てを操れますので」
鳴上は虚空から宝貝・黄巾力士を出現させると、ミネルヴァへ向けて砲撃を開始させた。
「キャバリアだとっ? どこから現れたのですか!?」
シールドでどうにか砲撃を防ぐミネルヴァは、落雷のダメージを蓄積しながらもどうにか守りに徹して立ち続ける。
これに宝貝・風火輪で飛翔する鳴上が地上のミネルヴァを見下しながら鼻で嗤った。
「言ったはずです、この世界全てを操れると。ああ、攻撃しても構いませんよ。ですが生憎、この世界は宝貝でしか攻撃できませんので。雷公鞭は宝貝、黄巾力士は存在自体が宝貝ですから」
勝ち誇る鳴上は上空から電撃を降らせ、黄巾力士は大地が抉れるほどの弾幕を張り続ける。
(同じ組成でも大地から生まれた石と人工的に作られた石では、同じ器物上がりでも宿る意志は違いますが。仙になれば全て同列、そして仙から見れば全て同列です……貴女は嫌がりそうですが)
口には出さずとも、相手を息を吸うように見下げる鳴上。
さてトドメを刺そうかと、天空に万雷を呼び寄せんと力を溜めた、その時だった。
「貫け、エリクトニオス! 戦術報復機構『輝く瞳を持ったもの』!」
繰り出される巨大な機械槍が光り輝き、無数の光弾と共に連続突きを繰り出し始めた。
それらは黄巾力士を貫き、爆散させ、完全に沈黙させてしまったのだ。
「……おや?」
鳴上は眉尻を上げる。
「宝貝でしか攻撃できないはずでは?」
これにミネルヴァが反論する。
「まかりなりにも私は神の名を冠する器。そしてこの槍も神話を宿し、宝具としての権能を有しています。すなわち、宝貝と比類する性能を持つわけです。更に、このユーベルコードは私がダメージを負うほど強力になる特性を持つのです。それが通ってしまうこの世界など恐れるに足らず! それとも私が幸運だっただけかもしれませんが、どちらにせよ……通させていただきましたよ!」
鳴上は侮っていた。
本当ならば戦闘は宝貝に限定されるはずだった。
だが、知恵と戦争の女神の名を冠する神機に幸運が訪れた。ユーベルコードの特性も重なり、不可能を可能にした。
元より、ユーベルコードとは不可能を可能にする『罪深き刃』のはずだ。
そして運命が振るった賽の目は、無情にも鳴上の必殺のユーベルコードに綻びを発生させたのだ。
要するに、完全に『想定外の事故』だ。
「……まぁ、そういう日もあるでしょうね」
ミネルヴァ自体にダメージは十分に与えられた。
ならば黄巾力士が破壊された今、長居は無用だ。
「神機……巨神とは似て非なるもの……そうですか」
鳴上は一瞥して嗤うと、ユーベルコードを解除して何処かへ姿を消していった。
妖仙の胸中に漂う感情は、怒りか、失望か、はたまた別の何かなのか……?
成功
🔵🔵🔴
桃枝・重吾
アドリブ絡み歓迎
バディ物初期のチグハグ感
◼️心情(重吾)
しまった!
としか言いようがない。
あのUCは恒星間輸送してる星降丸の耐久性と、
そもそも、僕が敵や戦場と言うものを認識しないで走り続けて初めて発動するのに…
梵ちゃんのフォローで停車して、
思い切り相手を見てしまった。
慌てて性梵ちゃんへのフォロー失敗したかも?
◼️ジャパが付く地名は大体米所(宇宙トリビア)
家財とコアはあらかじめそこに置いといたから無事だけど、星降の体はしばらく動けないから私が出る。
梵ちゃんはまだ二種免許無いからね。
乗れないし援護射撃を頼む!寅さんならちゃんとすれば光線も梱包出来る筈。
デュオニソスさんにも通信、
失礼して心苦しいけど、援護をお願いします。
地酒とかキューカンバーに自慢の作物も色々用意したから打ち上げは任せて!
だからお酒を霧状にしてミネルヴァさんの光線減衰出来ないかな?
私はマスターキーに悠々荷台を纏わせたのに乗って滑空接敵!
お国も大事だけどなぁお百姓さんの命、大地を石礫にするとか何様だゴルァ!
本音もらして渾身のUC!
桃枝・重吾(|スペースデコトラ使い《XLスペース食べ歩き道中》・f14213)は冷静に状況判断し、この現状を俯瞰した。そして、重大な事に気が付く。
「しまった……!」
ウカツ!
先程のスペースデコトラ『星降丸』でのカミカゼ・アタックは明らかに間違いだった。
そもそも、あのカミカゼ・アタックは『星降丸』の耐久性に依存する点も大きいが、そもそも重吾が敵や戦場と言うものを認識しないで走り続けて初めて発動しうるものであった。
しかし、彼は助手席に乗せていた新人従業員にして巨神の【梵天丸】……が変身したクマ型獣人の“熊季”君の言葉に反応し、戦場を意識してしまった。
結果、敵軍勢と激突し爆散した『星降丸』は大破。
戦果は挙げたものの、部隊長機こと護城神機『ミネルヴァ』へ生身で挑まざるを得なくなっていた。
「ごめんね、熊季君、いや梵ちゃん。僕がフルスイングで駆け抜けなかったから、こんな窮地に追いやってしまって」
「いや、あそこでフルスイングで駆け抜けてたら、オレ、別の意味でマスターを軽蔑してましたんで」
「うっ!?」
「星降丸先輩には悪いですけど、マスターに良心の呵責があるって分かって、オレは安心しましたけど」
「おぅ……」
梵天丸の鋭い言葉のキレ味に、重吾は胸を押さえて呻いてしまう。
そんな落ち込むマスター相手に、梵天丸はここぞとばかりにしゃしゃり出てくる。
「で、この後どうするんですか? あの防御力オバケ、放っておいても自壊しそうですけど。なんならオレを元の巨神に戻してもらえればやれますけど?」
ここぞとばかりに、梵天丸はロックされた巨神化をマスター権限で解除してもらおうとそそのかす。
(あのパワハラ先輩が大破してる今がチャンスだ! ここで認められれば、マスターはオレをあの先輩より重用してくれるはず!)
梵天丸は自尊心を取り戻すべく、重吾へさりげなく自身の有用性をアピールしてみる。
だが、当の重吾は真っ赤な鉄の塊をどこからともなく引っ張り出すと、それを肩に担いで梵天丸へ告げた。
「いや、ここまで梵ちゃんに迷惑をかけておいて、厚かましい事を頼めないよ。ここは僕がでる。それにほら、梵ちゃんはまだ二種免許持ってないからね。だから乗れないし。というわけで援護射撃を頼む!」
「ええ……?」
梵天丸は想定外の言動をブッかます重吾に唖然としてしまっている。
「いやいや、ここはキャバリア戦へ持ち込むもんでしょう? 一部例外はいましたけど、ほとんどの猟兵がキャバリアに乗って戦ってたじゃないですか。あとオレ、巨神ですからね?」
梵天丸の言葉に、重吾は首を傾げた。
「うん? 分かってるよ? 僕はこれから|悠々荷台《ユニヴァースユナイトキャリア》と合体するから。でもその間、完全に無防備になっちゃうんだよね。その間は梵ちゃんが援護射撃と防御をお願いしたいかな」
「あ、ああ、そっちっすか……」
梵天丸、まさかの荷台以下の扱いにショックを受けていた。
そんな彼を脇に、重吾はディオニュソスへ頼み込む。
「失礼して心苦しいけど、援護をお願いします。地酒とかキューカンバーに自慢の作物も色々用意したから、祝勝会の打ち上げは任せて! だから、戦場内にお酒を霧状にして充満してもらえる? ミネルヴァさんの光線を空気中の水分の屈折と乱反射で減衰出来ないかな?」
『なかなかトリッキーな事を考えるね、おっさん……でも、なんか面白そ! ワンチャンいけんじゃね?』
意外とノリノリなディオニュソスは、早速、言われた通りに戦場を高濃度のアルコールの霧で覆ってゆく。
しかし、これでは重吾達も酔っ払ってしまわないか心配だ。
そこへ取り出したのが、持参した大吟醸の酒瓶であった。
「知ってる? ジャパが付く地名や惑星名は大体が米所でお酒が美味しいんだ。そしてあらかじめ酔っぱらうことで、自制心を取っ払って酔いつぶれるまでに殴る!」
「マスター?」
梵天丸はとんでもない理論を耳にして、真顔で聞き返してしまう。
だが、酔っ払った重吾は盾を構えたミネルヴァへ紅の鉄の塊を振り上げて身構えている。
「お国も大事だけどなぁお百姓さんの命、大地を石礫にするとか何様だゴルァ! アストロNOMINの脳筋殺法ならぬ“農筋”殺法を見せてやる!」
重吾の身体に荷台ユニットが次々とが合体してゆき、振り上げた鉄の塊にエネルギーとエクステンドパーツが装着されてゆく。
しかし、この間は完全に無防備だ。
当然、この瞬間にミネルヴァは掲げた盾から石化光線を発射する!
「喰らえ! 攻性障壁『アイギス』!」
重吾へ眩い光線が一気に濁流めいて押し寄せる。
しかし、それを遮るように分厚い弾幕が重吾の視界を覆い尽くした。
「マスター、こういう事でいいんですよね!?」
梵天丸が遠隔操作した荷台固定ユニット群『ビームロープの寅さん』を突っ込ませながら、弾幕とユニット群を遮蔽物にして石化光線を遮ったのだ。
これで『寅さん』とその弾幕は一瞬で石塊へと変わってしまうが、その影の中にいた重吾は素早く射線から離れてミネルヴァへ突っ込んでゆく。
「こういうのは敵を倒すと元に戻るっていうのが相場だよね! なら問答無用でぶっとばす!」
巨大化した真っ赤な鉄の巨塊を振り下ろせば、今度こそフルスイングで盾と念動障壁ごとミネルヴァへ鮮烈な自重い一撃を叩き込む。
その衝撃はミネルヴァが立っていた場所が深々と抉れてクレーターになるほどであった。
「馬鹿な……? 護りごと私を押し潰す気ですか!?」
「農家の力を思い知れ! この罰当たりが!」
STAAAAAAAMP!
重吾の農家パワーがユーベルコードへ変換されれば、ユーベルコードの防護破壊の効果が発動してミネルヴァを大地に沈めてみせたのだった。
大成功
🔵🔵🔵
箒星・仄々
その覚悟はお見事です
オブリビオンさんではありますが
そうなる前のお人柄も垣間見えますね
そんなミネルヴァさんを海へと導きましょう
持久戦の構えをしつつ
防御の隙間を狙って大ダメージも狙います
量産機さんを操縦し
武装を指揮棒のように振るって魔力を紡ぎ
三属性の矢を放ち続けます
距離をとって槍の間合からは外れるように位置どり
更に光弾を矢で迎撃します
持久戦狙いではありますが
出来るだけのことをしましょう
色が重なれば透明となるように
三属性を重ねて融合させれば無属性の矢に
だからダメージ軽減効果をスルーして被弾します
装甲の亀裂を更に広げていきます
そして水の魔力は
この空間に充るディオさんの酒気を孕んでいます
亀裂から染み入るそれは
ミネルヴァさんを弱せたり幻を見せたりするでしょう
そうなれば最早千鳥足のミネルヴァさんは
攻撃や防御もままならないはずです
一気に罅へ矢を放って倒していきます
お友達からのお酒です
どうぞ酔うたまま海へとお還り下さいね
終幕
演奏を続けて
鎮魂とディオさんとの縁も祝しましょう
「はぁ……はぁ……まさか、私の守りを破壊してくるなんて……!」
猟兵のユーベルコードの無限の可能性を、その身で味わった護城神機『ミネルヴァ』。
しかし、まだまだ彼女は立ち上がり、猟兵達へ挑みかかってくる。
そのタフさに、箒星・仄々(ケットシーのシンフォニア・f07689)は量産型キャバリアのコクピット内で拍手をして讃えてみせた。
「その覚悟はお見事です。オブリビオンさんではありますが、そうなる前のお人柄も垣間見えますね。そんなミネルヴァさんをこの私が骸の海へと導きましょう」
決意を籠めて宣言した箒星は、持久戦の構えをしつつ防御の隙間を狙って大ダメージも狙ってゆく。
その布石として、量産機が握る棍棒状の武器を指揮棒のようにリズミカルに振るうと、ユーベルコード『トリニティ・ブラスト』を発動させた。
「さあ、ちょっと派手に行きますよ~」
量産機の背後に炎・水・風の三属性の魔法矢がそれぞれ725本生成されて空中に留まって、箒星の号令を今か今かと待ち構えている。
対してミネルヴァはキャバリアグレイヴ『エリクトニオス』から無数の光弾を量産機へ躊躇せずに発射!
「先手必勝です!」
放たれた光弾の“壁”に対抗するべく、箒星の魔法矢は一点突破を狙う。
「壁に穴をあけて、そこから突撃します!」
高密度の魔法の矢の束が、光の壁の中心を一気に穿ち貫く。
だが、ミネルヴァはそれを想定していたのか、グレイブの矛先を超高速で何度も突き出してきたのだ。
「甘いです! 串刺しにしてくれる!」
量産機の目の前に迫る、神速の槍捌き!
これに箒星は指揮棒代わりの棍棒を投げつけ、身代わりにして一瞬の隙を作る。
そのまま量産機の機体を横に逸らすと、滞空させていた残りの魔法矢を合成してみせる。
「光の三原色をご存知ですか? 私の魔法も三色を重ねると無属性魔法になるようなのです。槍を弾き返しましょう!」
透明の無属性魔法矢の束が、ミネルヴァのグレイブの柄を強かに打ち据える。
長柄武器の短所は、てこの原理を応用されるとその軌道を逸らされやすい点が挙げられる。
穂先の真下辺りを矢で命中させて弾けば、少ない膂力でミネルヴァは槍を大きく横へ弾かれてしまうのだ。
「なっ!?」
想定していなかった槍の挙動に動揺したミネルヴァの肩に、箒星が放った透明の魔法矢の弾幕が次々と突き刺さってゆく。
「何故だ!? 念動障壁を貫通してきただと!?」
驚くミネルヴァの視界がふらつく。
まるで酩酊したかのような感覚に、まさか、と神機は量産機を睨みつけた。
「これは、ディオニュソスの権能……!」
「ようやくお気付きになられましたか」
箒星の駆る量産機が神機の目の前まで追い詰めている。
「ディオニュソスの幻惑で矢の視認性を低下させ、水魔法にディオニュソスさんのお酒を拝借しました。貴女が認識して防御しているのなら、認識できない攻撃は弾くことが出来ないと踏んだのですが。よもやバッチリ決まるとは思いませんでした」
無色透明の魔法矢は箒星の力だけではなく、神機ディオニュソスの力添えもあっての現象であったわけだ。
それを見破れずに矢を受けたミネルヴァは、機体に直接ディオニュソスの酩酊効果を流し込まれて膝を突いてしまった。
「く……っ! 耐性を無視してくるとは……不覚!」
悔しがるミネルヴァの頭上には、まだまだ箒星の作り出した透明の魔法矢が滞空している。
「お友達からのお酒です。どうぞ酔うたまま骸の海へとお還り下さいね」
オブリビオン“救済”の使命を果たすべく、箒星の号令が無慈悲に下された。
「ぐわあああぁぁっ!?」
鉄壁を誇るミネルヴァの護りは容易く貫かれ、その機体は数多の矢雨に晒されてしまうのだった。
戦場に、友を偲ぶ竪琴の旋律だけが物悲しく響いていた。
大成功
🔵🔵🔵
スイート・シュガーボックス
(引き続きディオニュソスに搭乗)
デュオちゃん、あの神機『ミネルヴァ』ちゃんと友達だったんだね。俺は知的なミミックだから分かるんだけれどミネルヴァちゃんはそのうち自壊するよ…デュオちゃんはそれでいいのかい?
…うん、友達との決着を自分で付けたいなら俺も全力で協力するよッ!
もし皆に怒られちゃったら、その時は二人で謝ればいいさッ!
『斬艦チョコレー刀』を出す。デュオちゃん、これ使ってッ!
更に神器をデュオちゃんの背中に着けて生成したお酒を高出力噴射して高速移動だ。名付けて『VOB(ヴァンガードお酒ブースト)』だッ!
オヴヴヴヴッ!?凄いスピードッ!戦場、ミネルヴァちゃんの周りを縦横無尽に駆け抜ける。
噴射したお酒をジャミングミストにして梟型索敵ユニットを撹乱だ。酩酊の幻覚強化にも繋がる筈だよ。
チャンスは一瞬、スピードを乗せた【ほろ苦い黒刃の一閃】で防御ごと斬り抜くよッ!
戦いが終わったら、せっかくズッ友になったんだからデュオちゃんに一緒に来ないかお誘いするよ。気ままに旅をするのも楽しいよ。
【アドリブ歓迎】
カシム・ディーン
…防衛戦の要が特攻とかさー…
ヘカテといいリビティナといいディアーナといいおめーといい…
神機の女神は脳筋だらけかよ!?
「あ、冥界の元女王だったプロセルピナちゃんも脳筋系お嬢様だったぞ☆」
いらねぇよその追加情報!
ディオニュソス
ほんの一瞬…1秒でいい
奴を一瞬だけ酔わせろ
【情報収集・視力・戦闘知識】
ミネルヴァの動きと梟の察知能力の把握
更に武装の性質把握
【属性攻撃・迷彩】
光水属性を機体に付与
光学迷彩で存在を隠し水の障壁で熱源を隠蔽し察知から逃
【空中戦・弾幕・念動力】
UC発動
超絶速度で飛び回りながら念動光弾を叩き込み念動障壁の相殺
【二回攻撃・切断・盗み攻撃・盗み・電撃】
「今だよディオちゃん!」
一瞬酔わせた瞬間
距離を詰めて岩石投げしたら巻き込まれる距離感に
梟型ユニットを破壊狙
速度で威力を高め鎌剣による超連続斬撃を叩き込み
傷口に電撃を叩き込み内側からも崩壊させる!
「ミネルヴァちゃん…今迄ありがとうね…でも…こうする事でしか君が止められないなら!」
最後に…電撃を鎌剣に纏わせ
超加速させての斬撃を叩き込む!
バーン・マーディ
「ああ…やはり奴でしたか…!」
…貴様の好敵手ともいえる輩か
「奴もまた私と同じ戦の神…だが…過去彼女に私は勝つ事は叶いませんでした。故に疎まれたものです」
そうか…貴様もまた我と同様に悪神
ミネルヴァもまた戦女神としてはまさに正義の側であろう
善い
マーズよ
貴様には我が付いている
存分にその力を振るえ
「承知しましたバーン殿!」
【戦闘知識】
ミネルヴァの動きと状態を正確に把握
そして…
対峙する神機達
「…ミネルヴァぁぁぁぁぁ!!」(機神咆哮
【属性攻撃】
炎を機体に付与
UC発動
【切り込み・鎧無視攻撃・オーラ防御・二回攻撃・切断・怪力・鎧砕き・カウンター】
破壊のオーラを強化
天より飛来する不条理の権化たる巨大岩石に対し
恐るべき力だ
「…昔から思っていたが…ミネルヴァぁ!貴様の方がよほど暴力的ではないか!ヘカテイアやリビティナと変わらんぞ!」(神機における暴言!(酷い
だが…之より叛逆を開始する
力を示せマーズよ!
「承知ぃ!!」
その岩石を…カウンターで敵に叩き込む!
そして突撃し破壊のオーラを纏った軍神の剣の一撃を叩き込む!
アルジェン・カーム
「ミネルヴァ…!ジャパニアの守護を手伝ってくれてた人だよ!メルクリウスやディオ姐さんと同世代の神機だよ!」
前に聞いた機神達以外にもおられたのですね
とはいえその覚悟…宜しい
ならば僕もまた武を以て挑ませて頂きましょう
その障壁…撃ち抜かせて頂きます!
「ミネルヴァ…!貴方を止めさせてもらうからね!」
ディオニュソス
幻惑をお願い
梟ユニットの索敵を騙せるレベルのぷっさんの機体の幻影…いけます?
【戦闘知識】
敵機の状態と亀裂など防御の切れ目の捕捉
【念動力・オーラ防御・空中戦・弾幕】
UC・英霊剣群発動
飛び回り破壊のオーラを込めた念動光弾を叩き込み
飛来する巨大岩石もディオニュソス側に落ちそうなのは破壊して迎撃
…神機って恐ろしいですね
「うん…あの人本質的に超防御超攻撃型だから!マーズよりも暴力の化身だよ!」
それでも全霊は尽くす!
我が武!我が力!ぷっさんの力も全てを尽くし貴方に捧げましょう!
【二回攻撃・切断・怪力・串刺し・貫通攻撃】
英霊剣群と宝剣での連続斬撃から槍で串刺しにして内部に破壊の波動を叩き込む!
防人・拓也
「巨神…か。俺がアイリスのマスターとして真に相応しいかどうか…試せる相手だ」
『…マスター?』
「アイリス、ディオニュソスを頼む。ディオニュソスはアイリスのフォローを。岩を落としたり光弾を撃ってきたら、古代武装で撃ち抜け。俺が奴に直接仕掛ける」
『待ってください?! 巨神相手に生身で戦うのは…!』
と指示しクナイを投げて指定UCを発動し、転移を繰り返して敵へ接近。光線は転移で避け、光弾や岩はアイリスが何とかしてくれる。刺突はアレでグレイヴごと破壊する。
ある程度接近できたら、クナイとナイフを投げてフェイントを仕掛ける。ナイフにはマーキングを施し、クナイが弾かれたらそちらへ転移して意表を突く。
敵が刺突を繰り出したらそれに合わせて旋風術・疾風を発動し相殺させる。
「俺には守りたいものを守るという意地があるんだ! だから…勝たせてもらうぞ!!」
と言い、更に魔力を込めて術の威力を上げてグレイヴごと破壊して本体にダメージを与え、可能なら敵のコア本体にマーキングし、それごと転移して助ける。
アドリブ・連携可。
『あれは、ミネルヴァ……! アルジェン! あの神機、かつてジャパニアの守護を手伝ってくれてたんだよ! メルクリウスやディオ姐さんと同世代の神機だよ!』
アルジェン・カーム(銀牙狼・f38896)の相棒こと冥皇神機『プルートー』が言い放つ。
白銀の装甲と巨大な円盾と槍を携えるキャバリア……護城神機『ミネルヴァ』は、プルートーにとって見知った顔であった。
それは、この場にいる神機達も同様だ。
バーン・マーディ(ヴィランのリバースクルセイダー・f16517)の相棒である破城神機『マーズ』も、神代のジャパニアで武神と称された仲であった。
『ああ……ミネルヴァ……やはり奴でしたか……!』
「……貴様の好敵手ともいえる輩か」
バーンは言葉少なにマーズへ尋ねた。
マーズはこれを是と認めた。
『奴もまた、私と同じ戦の神……だが……私は、彼女に一度も勝つ事は叶いませんでした。何度も何度も挑んだのですが、私の剣は全てあの盾に防がれてしまいました。故に周囲から疎まれたものです。勿論、しつこく勝負を挑んできた私を、彼女も嫌っていた事でしょう」
「そうか、そんな因縁が……つまり、貴様もまた我と同様に悪神と言ったところか。そしてミネルヴァは戦女神として、まさに正義の側であろう。昔も、いや……ミネルヴァにとっては今も正義なのだろうな
バーンは正義の定義の移ろいやすさと危険性を、身をもって経験していた。
だからこそ、オブリビオン側で正義を貫くミネルヴァが哀れな強者だと認めざるを得なかった。
一方、限界を超越した出力で自壊が進むミネルヴァの機体を確認するカシム・ディーン(小さな竜眼・f12217)は、界導神機『メルクリウス』のコクピット内で目を細めて呆れ返っていた。
「いくら背水の陣とは言えよー? 防衛戦の要である隊長機が限界突破で特攻とかさー、マジねぇわぁ……」
神聖ブリオン教国は本当に幻惑神機ディオニュソスだけ入手できれば、他の神機など使い捨てにしても構わないらしい。
その強引な遣り口に、カシムは思わず言葉が荒っぽくなってゆく。
「あのなぁ……? ヘカテといいリビティナといい、ディアーナも、おめーもよぉ……? 神機の女神って奴は揃いも揃ってパワーでゴリ押し大好きな脳筋だらけかよ!?」
作戦も何もあったもんじゃねぇよ、と目の前の3D雄鶏ホログラムをぶん殴って空振りしてみせた。
メルクリウス(ホログラムアバター)がコクピット内をバサバサと翼を羽ばたかせながら答えた。
『だってパワーで殴れば解決するもん☆ あ、冥界の元女王だったプロセルピナちゃんも、ですわ口調の脳筋系お嬢様だったぞ☆』
「いらねぇよ、その追加情報! つかディオニュソス! てめーの権能でミネルヴァの動きを止められるんだよなぁ!?」
カシムのがなり声に、ミネルヴァは驚いて尻込みしてしまう。
『ヒッ!? え、あぁっと、うん……完全には止められないけど、精々……動きが鈍るくらい?』
「分かった……ほんの僅かの時間……1秒だけ、特濃の酒気を彼奴にぶつけて酔わせろ。僕の合図でな?」
カシムの作戦を、他の神機乗りも頭の片隅にいれて、活用するべく勝ち筋を構築してゆく。
そしてそのディオニュソスに乗り込んでいるお菓子の缶箱のミミック男子ことスイート・シュガーボックス(おかしなミミック・f41114)は、操縦桿から伝わってくるディオニュソスの不安を払拭するべく声をかけた。
「デュオちゃん、あの神機『ミネルヴァ』ちゃんと友達だったんだね。俺は知的なミミックだから分かるんだけれど、ミネルヴァちゃんはそのうち自壊するよ……デュオちゃんはそれでいいのかい?」
スイートの問いに、ディオニュソスが声を絞り出す。
『……そんな終わり方、ウチはイヤだし! ちゃんと決着を付けないと!』
「……うん、友達との決着を自分で付けたいなら、俺も全力で協力するよッ! もし皆に怒られちゃったら、その時は二人で謝ればいいさッ!」
『とりま、なんとかなるっしょ! 最後までよろ!』
神機同士の因縁に、ひとつの終止符が打たれようとしていた最中で……防人・拓也(独立遊撃特殊部隊ファントム指揮官・f23769)だけが生身で戦場に臨もうとしていた。
「敵は巨神……か。俺がアイリスのマスターとして真に相応しいかどうか……試せる相手だ」
『……マスター?』
メイド服を着た女性の姿だが、れっきとした巨神の一柱であるアイリスは、自分のマスターの悪癖がまた出始めたと顔をしかめる。
『何を考えているのですか、マスター? 試さなくても、私にとってマスターはかけがえのない存在に変わりはありませんよ』
嫌な予感がひしひしと伝わってくるアイリスは、必死に拓也を宥めようと声をかける。
しかし、拓也は思いつめた表情でアイリスへ告げた。
「アイリス、ディオニュソスを頼む。聞こえるかディオニュソス? アイリスのフォローは任せた。アイリス、ミネルヴァとやらが空から岩を落としたり光弾を撃ってきたら、全力をもって古代武装で撃ち抜け。その隙に俺が奴に直接仕掛ける」
『待ってください?! 巨神相手に生身で戦うのは……!』
「これは命令だ。作戦内容を速やかに決行せよ」
そう言い残し、拓也は一番槍を掻っ攫ってゆく。
先程の戦闘でばら撒いたクナイを転移ポータルとして活用するユーベルコード『時空間魔術・迅雷天神』で、一気にミネルヴァの懐まで接近してゆく拓也。
まさに電光石火! 僅か数秒でミネルヴァへ攻撃が届く間合いに飛び込んでいった!
『ご主人サマ! あれ見て!』
「げぇ!? 拓也ぁ! 抜け駆けはずりーぞこらぁ!」
カシムとメルクリウスが連続で瞬間移動をしてゆく拓也を発見すると、居てもたってもいられなくなって急発進!
全速力で低空飛行し、メルクリウスの機体が光学迷彩魔術を纏って周囲の景色と同化してゆく。
これにバーンもアルジェンも、そしてスイートもすかさず追従。
「善い。マーズよ、貴様には我が付いている。存分にその力を振るえ」
『承知しました、バーン殿!』
炎の闘気を全身に纏った漆黒の機体が、戦場を駆け抜けてみせる。
『アルジェン! ボク達も!』
「ええ、分かっています……!」
相棒であるプルートーに促され、アルジェンも静かに闘志を滾らせていた。
「オブリビオン側へ堕ちても、使命のために自らを犠牲にして守ろうとするその覚悟……宜しい。ならば僕もまた、武を以て挑ませて頂きましょう。ですので……その障壁を、撃ち抜かせて頂きます!」
『ミネルヴァ……! 貴女を止めさせてもらうからね!』
プルートーは人型から鴉型に機体を変形させると、攻性衛星に狙われる一歩手前の高度と速度を保って接敵を試みる。
そして、肝心のディオニュソスとスイートはというと……。
「はいこれッ! 『斬艦チョコレー刀』だよッ! ディオちゃん、遠慮なく使ってッ!」
スイートはお菓子を媒介にしてあらゆる器物を生成する錬金術を用いる。
キャバリアサイズの巨大剣を作る機会は滅多にないが、大事な友達のためなら気合を入れて錬成してみせるのだ。
「それと、ディオちゃんの神器を背中に着けて、生成したお酒を高出力噴射するんだ。これに点火すれば即席高速移動スタスタ―機関の完成だよ! 名付けて『VOB(ヴァンガードお酒ブースト)』だッ!」
『うわぁぁぁぁぁぁぁ! なにこれ、チョーかっけぇ! ウチ、スイート君のために頑張るし!』
スイートの『結局、オトコノコってロボット系ギミックのこういうところが好きなんでしょ?』的ツボを押さえる言動に、男の娘のディオニュソスは感動!
戦闘への恐怖心も軽減し、いざ旧友の暴走と因縁に決着をつけるべく『VOB』で大地を滑走するのだった。
「……そうです。掛かってきなさい、かつての我が同胞達。今こそ雌雄を決しましょう!」
ミネルヴァは念動障壁を最大出力で展開、斥力による物理排除を試みる。
しかし、そこへ飛び込んできたのが拓也であった。
「うぐっ!? 身体が押しつぶされそうだ!! だが!」
自身の体重の10倍近い圧力をものともせず、日々鍛え上げた筋力で拓也はクナイをミネルバへ投擲!
「なんですって!?」
ミネルヴァは虚を突かれ、クナイを思わず円盾で防いでしまった。
人間サイズが放つ投擲武器など、神機が食らったところで大した被害は出ないはずなのに。
戦士としての勘が、危機管理能力が、自然と女神をそう駆り立てたのだろう。
そして、その直感は正しい。
「この間合いなら、その巨大な槍を振り回せないはずだ!」
盾に刺さったクナイの元へ瞬間移動した拓也は、体格差を活かしてミネルバの腕を伝って彼女の腹部へ潜り込む。
「俺には守りたいものを守るという意地があるんだ! だから……勝たせてもらうぞ!!」
右手の指を槍めいて先細らせ、貫手を放つ拓也。
なんと、ミネルヴァの装甲を生身の人間が撃ち砕く!
「これでケリを着ける。旋風術・|疾風《ハヤテ》!」
神速の貫手はジェット気流めいた螺旋の空気刃を回転させて穿孔!
全部で143箇所の穴を穿ち抜き、自壊しかかっているとはいえ、まさかヒトの手で神機の、しかも鉄壁で名高い戦神の、分厚い装甲を粉々に砕いてみせた。
「ぐわあああぁぁ!?」
破壊された腹部から、コアユニットが露出してしまうミネルヴァ。
拓也は念動障壁内の斥力で骨肉が引き裂かれそうになりながらも、見事に大ダメージを与えてみせた。
「はぁ……はぁ……日課の体幹トレーニングが役に立った、か……」
しかし、魔力を消費した拓也が膝を突く。
『マスター!?』
後方で待機していたアイリスが、反射的に神弓カラドボルグを番えてミネルヴァを狙う。
しかし、これを拓也が大声で静止する。
「命令を無視するな、アイリス! “上”を狙え!」
拓也の言葉通り、アイリスと他の猟兵達は一斉に上を見上げた。
島一個分なんてどころではない。
あれは太陽が隠れるほど巨大な隕石だ。
ミネルヴァのユーベルコード……解き放ったフクロウ型ユニットの探知に引っかかった対象へ超巨岩を降らす攻撃だ。
しかも最悪な事に、この巨大隕石を狙って攻性衛星が地上を狙い澄まし始めている。上空の真っ赤な輝きが死兆星めいて輝いているからだ!
「これで私の勝ちです……私はオブリビオンマシン……この機体が破壊されても、また次の『私』が奮起するでしょう。ディオニュソスも破壊して、オブリビオンマシンとして蘇らせます。ですが、猟兵はここで死に絶えるのです!」
「そういうことだ、アイリス! 早く撃て!」
拓也は最初からこれを危惧していた。
故に、コアユニットを真っ先に狙いにいったのだ。
『だったら最初から私にも教えておいてくださいよ、マスター! 報連相を徹底してください!」
情報を握ったまま勝手に飛び出す上官兼マスター兼片想いの男性に呆れ返りつつ、アイリスは半ばヤケクソ気味に魔力を急速充填する。
視界を覆うほどの巨大隕石と攻性衛星のダブルパンチに、たかが山ひとつ吹き飛ばせるだけの射撃武器でどうにかできるだろうか?
アイリスは自分の不甲斐なさを悔やみながら、己の魔力が早く高まれと焦ってしまう。
だが、今、此処にいるのはアイリスだけではない。
神代ジャパニアで活躍した神機達が、現代にいるのだ!
「ぷっさんの幻影は無意味でしたか。あれだけの巨大質量をぶつけられたら、確かに……」
アルジェンはフクロウ型ユニットをかく乱させるべく、プルートーの残像幻影を戦場にばら撒いて対処していた。
しかし、相手が脳筋だということをすっかり忘れていた。
『探知できなければ全部押し潰す! ミネルヴァってば、相変わらずのゴリ押しだなぁ!? あの人、本質的に超攻撃型絶対防衛主義だから! 破壊真のマーズよりも暴力の化身だよ!』
「感心している場合ではないですよ、ぷっさん? 早くあれを処理しなければ、衝突ダメージと攻性衛星の砲撃で戦場が火の海です」
『分かってる! だからボクの全武装をぶつけるよ!』
プルートーは自律稼働型浮遊砲台を射出し、更にアルジェンの召喚した英霊剣群を巨大化させて発射させた。
同時に、地上からアイリスの光芒の矢が上空へ撃ち出される。
「真名解放、神弓カラドボルグ!」
万雷の如き轟音と共に、捻じれ狂った一筋の閃光が上空を切り裂く。
巨大隕石へ二柱の攻撃が命中する……だが、隕石は砕け散りながら流星群となって広範囲に被害を拡散させてしまう。
「おいやべーぞ! 破壊できてもこれじゃ……!」
『ジャパニアの市街地に隕石が落ちちゃう!』
カシムとメルクリウスはすかさずユーベルコードを発動させ、驚異のマッハ43.5という超音速機動力で流星群をビーム大鎌剣ハルペーで砂利粒レベルまで粉砕して回る。
『ボクも破壊のオーラを纏って突っ込むよ!』
「ぷっさん、それしかなさそうですね……!」
アルジェンもユーベルコードを発現させ、プルートーの機体に物質分解オーラを纏わせる。そのまま流星群の中へ突撃すると、機体に触れた隕石群は分子分解されて一瞬で消滅していった。
と、ここでバーンが駆る戦神マーズがマッハ14の速度で隕石を粉砕しながら、ミネルヴァの元へと突撃開始!
『ミネルヴァアアァァーッ!!』
軍神の巨大剣が念動障壁を叩き割り、ミネルヴァの盾を押し込む!
耳をつんざく金属音と共に、炎に包まれる神機が咆哮する。
『昔から思っていたがミネルヴァぁ! 貴様の方がよほど暴力的ではないか! ヘカテイアやリビティナと変わらんぞ!』
これにミネルヴァは盾を跳ね除けてマーズの機体を僅かに弾くと、すかさず巨大槍で操縦席を狙う。
『それは私にとって褒め言葉だ!』
『ぐッ!』
咄嗟にバーンが己の神気により構成される十字型オーラの障壁をマーズに纏わせ、槍の穂先を受け止めてみせる。
「……ふむ。なんと凄まじく恐ろしい力だ。だが、ミネルヴァとやら……かつて貴様等こと神機が、人間に一度は滅ぼされたことを忘れたか? このジャパニアという国がそういう国なのだろう?」
『な、何が言いたいのです!? くそ、念動障壁が、崩壊する……!』
バーンとマーズのオーラ障壁が、ミネルヴァの念動障壁を凌駕!
これにより、拓也は身体の自由を取り戻して一時避難をしてゆく。
「あれが神機同士の戦い……人間を支配していたキャバリアか」
拓也は既に“王手”をかけている。彼の指先ひとつでこの戦闘はすぐに勝利できる状態なのだ。
だが、今は“詰め”に入るタイミングではない。
「厄介だな……普通のキャバリアと違って、巨神や神機には感情がある……。それを解決できるのは、当事者だけだ」
拓也の役割はいわば介錯人だ。
それまでは無粋な真似をせず、緊急事態に備えて魔力の最充填に努めることにした。
バーンは戦況を押し返しつつあることに、自然と口元を弧に歪ませてみる。
「之より叛逆を開始する。力を示せ、マーズよ!」
『承知ぃ!!』
マーズはミネルヴァの円盾から離れると、降り注ぐ隕石群を大剣で狙い澄ます。
そして……まさかの千本ノックを開始した。
「敵の攻撃を利用するだと!? なんて戦闘センスだ!」
地上で退避していた拓也が思わず見入ってしまう。
『どうしたミネルヴァぁッ! 己が降らせた巨岩だろう!? 攻性衛星が起動完了する前にくたばる気か!?』
「相変わらず奇をてらうのがお好きのようですね、マーズ!」
岩石を打ち出しては斬りかかるというヒット&アウェイ戦術は、実際ミネルヴァのような真正面から構える戦術とは相性が悪いようだ。
何処から飛んでくるか分からない岩石に紛れて突っ込んでくるマーズの斬撃は、機動力に掛けるミネルヴァなどただの的でしかない。
『あーっ! なんかマーズ君ばっかオイシイところ持ってこうとしてるよ!』
「てめーこらバーン! この天才魔術盗賊のカシムさんの出番を残しやがれ! ってことでメルシー! ちょっと因果律いじりやがれ!」
『おけまる☆』
メルクリウスはユーベルコードで戦場内の因果律を“調律”することで、攻性衛星の停止と市街地への被害の確率を極端に低減してみせる。
そして敢えて光学迷彩魔術を解除し、ミネルヴァへその姿を晒すメルクリウス。
『もうやめようよ、ミネルヴァちゃん! 勝負は決まったよ!』
「あ、あなたは! メルクリウス叡智皇陛下!? お目覚めになられていたのですか!」
グレイブの石突で身体を支えるミネルヴァ、もう既にかなりのエネルギーを消費しているのは明白だった。
ミネルヴァの前に降り立ったメルクリウスは、今までのふざけた口調から一変して、高貴な口調へと変わる。
『退きなさい、ミネルヴァ。今なら昔のよしみで見逃しましょう。ディオニュソスを諦めなさい。この叡智皇の勅命です。聞き分けなさい』
祈りにも似た声を絞り出すメルクリウス。
しかし。
「いえ、陛下の讒言といえども、此度ばかりはお断りします」
ミネルヴァはボロボロの身体でメルクリウスへグレイブの矛先を向けた。明白な謀反の意思だ。
『もとより、私は200年前に陛下と親友に矛を向けた逆臣です。あの|神殺戦争《ラグナロク》から目覚めたあと、オブリビオンマシンへ堕ちた神機の大半は、陛下に楯突いたものばかり。つまり、あそこが運命の分かれ道だったというわけです』
既にユーベルコードと攻性衛星の合わせ技は無効化されかかっている。
限界突破の反動による自壊も進んでいる。
覆しようのない劣勢だが、それでもミネルヴァは矛を収めなかった。
「故に……陛下、今一度、お覚悟を!」
ミネルヴァがグレイブをメルクリウスのコアこと操縦席を狙って突き出す。
しかし、その姿は一瞬で掻き消え、代わりにミネルバのグレイブを持つ腕が宙を舞った。
『遅い。契約を結んだ今の私には止まって見えます』
マッハ43.5の超音速機動からの視認不可能のビーム大鎌剣ハルペーでの斬撃!
「へ、陛下が、人間を乗せている、ですって……! つい200年前まで、あれだけ人間を拒んでいたあなたが!?」
『森羅万象は移り変わるのです。時代も、神機も。そして人間も』
威厳あるメルクリウスの物言いに、普段のアホアホメルシーを見ている者達はびっくりして黙りこくってしまっている。
(いや僕が一番困惑してるけどな!?)
コクピット内でメルクリウスと魔力回路が繋がっているカシムが特に動揺していた。
「……お見事です、陛下。ですが、先程申し上げたはずです。この身は滅んでも構わないと!」
ミネルヴァの身体が突如、白光に包まれ始めたではないか。
「おいメルシー! これってまさか!」
『ご主人サマ、ミネルヴァちゃんが自爆覚悟で攻撃してくるよ!』
メルクリウスはいつもの口調に戻ると、念動障壁を展開する。
もはや身を守るしか他に手立てがないと、神機の王が物語っていた。
これに対抗するべく、ミネルヴァも最期のエネルギーを消費して念動障壁を展開!
「マーズ! 抑え込め!」
『やっておりますぞバーン殿!』
『マーズ! もっと出力を上げてよ! このままじゃボク達、押し潰されちゃうよ!』
「ぷっさん! 僕のパワーも使ってください……!」
アルジェンもプルートーへ力を注ぐも、じりじりと後ろへ神機達が押し退けられてゆく。
これを見守っていた拓也は決断を迫られていた。
介錯をするなら、今しかない。だが、このまま神機達のわだかまりを残したまま終わらせていいのか?
「いや、人命優先だ。やむを得ない!」
拓也が仕込んでおいた『切り札』を発動させようとした、まさにその時だった。
「オヴヴヴヴッ!? 凄いスピードだぁぁッ!」
『うわああぁぁぁぁ! ミネるぅぅぅん!』
猛スピードで念動障壁へ突っ込んでくる神機ディオニュソスと操縦者スイート!
高濃度の酒を点火して推進力を得たブースト移動は、戦場に酒気を蔓延させるにはもってこいだ。
「ねえ盗賊さん! さっきの合図ってまだなのッ!?」
スイートの声にカシムはハッと我に返る。
「あっ? そうだ、ディオニュソス! さっさとこいつを酔わせろぼけぇ!」
『うっさいなぁ! ウチ、ずっと合図を待ってただけだし! もう痺れ切らして突っ込んじゃえって話になっただけですぅ!』
「ディオちゃん! 喧嘩してる暇はないよッ! 友達に、言うことあるでしょッ?」
スイートがコクピット内でディオニュソスへ諭すと、神機は巨大なチョコレートで出来た斬艦刀を振り上げる。
「ミネるん……! こんな再会はウチ、望んでなかったけど……会えてよかった! おかげで勇気を出して戦えるよ! 本当に……ありがとう!」
斬艦チョコレー刀の周りに酒気が纏わりつき、一気に燃え盛る!
ミネルヴァは酒気に当てられてふらつき始め、念動障壁を保てなくなってゆく。
そこへまず、メルクリウスの雷電の斬撃が放たれた。
『ミネルヴァちゃん……今迄ありがとうね……。でも、こうする事でしか君が止められないなら!』
もう片方の腕も、ミネルヴァの身体から切り離される。
矛も盾もなくなった神機へ、残された念動障壁と装甲を無視して放たれる必殺の一撃が迫る。
「ディオちゃん! 今だよ! 必殺! 『|ほろ苦い黒刃の一閃《ビターチョコレート・スラッシュ》』だッ!」
『ミネるん……バイバイ……!』
背中の酒の噴射が強まり、機体を加速させる。
その速度に加え、刀身の燃える熱で装甲を押し切り、遂にミネルヴァの身体を容易く上下真っ二つに斬り裂いてみせた。
あらゆる防御を無視し、攻撃力を高める埒外の斬撃だ!
「……み、ごと……でした」
両断されたミネルヴァはそのまま爆発四散!
残心を取るディオニュソスのコクピットから、スイートが顔を出して決め顔で言った。
「この一撃は、甘くないよ。……今の決め台詞、格好良くなかったッ!?」
『やっば! マジかっけぇんだけど!』
勝利した即席コンビは、互いに笑い声を零してみせた。
と、そこへ拓也が瞬間移動してきた。
「勝利、おめでとうございます。ディオニュソス、あなたにこれを」
拓也が傍らに転送させてきたのは、成人男性の背丈ほどの大きなクリスタルであった。
これにディオニュソスは声を裏返す。
『これ、神機のコアじゃん! まさか、ミネるんの!?』
「ええ、まぁ。オブリビオンマシンを乗りこなす猟兵もいるので、コアを保全すればもしかしたらと思いまして」
拓也の介錯方法とはこの事だった。
貫手でコアを露出した際、密かにコアへクナイを刺し込んでおいたのだ。
神機にとって、人間が差し込むクナイ程度で痛がることはない。
拓也はそれを逆手に取っていたのだ。
すべては、ディオニュソスの心を救う為に。
「これでミッションコンプリートです。そして生身でも巨神相手に立ち回れるということが証明されましたね。やれやれ……」
疲れ果てて大の字にその場で仰向けになる拓也。
そこへアイリスが全速力で駆けつけてきた。
『マスター? 私、今……色々と物申したい気分なんですが』
全力の笑顔が却って凄みを感じるアイリス。
「あ、ああ。言葉足らずなのは申し訳なかった。だが今は疲れ切って指一本も動けないんだ、説教なら後で……」
『なんですって? 今、マスターは動けないのですね? かしこまりました!』
アイリスの目が野獣の覇気に染まる!
『つまり今ならマスターに何をしても、介護という名目で私は許されますよね! それではすぐさまグリモア猟兵様の元へ向かって帰還しましょう! そして互いに身体を清めてから既成事実もとい献身的な介護をしますので! 勿論、枕には【YES】って書かれた刺繍を添えておきますので!』
「まて、アイリス? おいアイリス!? お姫様抱っこはやめてくれ! 話を聞けアイリス、アイリスぅぅぅぅ!?」
『うふふふふふ! 私の体温、今、何℃でしょうかっ!』
拓也とミネルヴァのコアを抱えて荒野を疾走するメイド服姿のアイリスの背を、猟兵達は見送る。
それはまるで、ライオンがガゼルの子供を仕留めて巣穴へ連れ込むような生存戦略の厳しさを思わせた。
「えっと、結婚おめでとう!」
スイートの場違いな声援が荒野に木霊した。
「それはさておき、せっかくズッ友になったんだからさ、デュオちゃん、俺と一緒に来ない?」
スイートの申し出に、ディオニュソスはしゅるしゅると人間サイズへ戻って顔を赤面させてしまう。
「え、それって、ウチとこれからも一緒にいてくれるってコト!?」
「勿論さッ! 俺はケルベロスにして猟兵だッ! これからも、色々な世界を巡って、一緒に思い出を作ってゆこうよッ! この遺跡で眠っているよりも、ずっと楽しいよッ!!」
エクトプラズムの手を差し出されたディオニュソスは、恥ずかしさで目を瞑りながら握手を交わした。
「よ、よろしくおねがいしましゅ!」
……恥ずかしさのあまりに噛んだディオニュソスであった。
こうして、ジャパニアの遺跡に眠っていた巨神こと『幻惑神機ディオニュソス』は、お菓子の缶箱のミミック男子ことスイート・シュガーボックの相棒となり、これから世界を巡る旅に出る。
他の神機達も仲間の新たな門出を祝福し、この任務は大団円で終わるのだった。
<了>
大成功
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