エンドブレイカーの戦い⑰〜破蕾の棘
●産声
戦火に燃える森が、街が、営みがあった。
嘗ての面影をそのままに、邪悪なる因子を埋め込まれいびつに歪んだ存在があった。
すべては調和。すべては我が身を育む温床となろう。
燃えろ。燃えろ。焼け爛れ、のたうち回り、苦悶の声を上げて絶望せよ。
創世の神なるものも、忌まわしきアウィンの血族も、全て。全て。
……11の怪物。
あの強きだけの者達に、「拒絶の壁」が構築できるとでも?
あの無知蒙昧なる輩に、「大地母神暗殺」が立案できるとでも?
私だ! ラハムを喰らい「再孵化」した私が、全て考えたのだ!
もうすぐ……私は以前の力を取り戻す。
過去を何度でもやり直せる究極の能力、『エンドテイカー』を!
私の力は既に他の魔女や往時のイヴを凌駕する。この戦争を全て最初から「やり直し」してくれよう。
私こそが、世界の全て。
私に勝てるものなど、この世にありはしないのだ……!
――数多の怒りと嘆きの苗床で、棘の女は破蕾の時を待っていた。
●至る
「いやあ、参った参った。完膚なきまでに叩きのめしたつもりで居たんだが……」
少なくない傷を抱え、最低限の手当てを終えたシャスカ・リアン(翠燕・f40001)は大きな大きな溜め息を吐く。それでも仲間達が集まった事に気付けば、親しい友人に接するような気易さでひらひらと手を振って見せた。
「11の怪物。そのひと柱たる大魔女スリーピング・ビューティ……ああいや、この世界に馴染みのない皆には「ラハム・ジ・エンドテイカー」と呼んだほうが宜かろうな」
十数年前にこの世界を覆い尽くしたもの。その根源と呼ぶに等しい存在が再び蘇り、嘗ての居城、そして怪物ラハムなる悍ましき苗床から孵化しようとしている。
彼女が世界を己のものにせんと決意した切っ掛けは何だったのか。
マスカレイドなる恐るべき存在を産み落とした切っ掛けは何だったのか。
「はじまりは、そうさなあ……嫉妬、だったのかもしれないな」
エンドテイカーの能力を捨てた人類の魔女たる此華咲夜若津姫と、その子供達の成し遂げた現在に至るまでの偉業。
その賞賛を、喝采を浴びるのは、他ならぬ私のものであった筈なのに――。
「あれも可哀想な女ではある。あるが、放っておけばこの世界はおろか、世界線さえも容易に越えて大魔女はその猛威を振るうだろう。……だから今、ここで。その為に、どうか力を貸してほしい」
シャスカは続く終焉の欠片を、嘗て見たその力を口にする。
「望まぬ未来を何度でもやり直す、過去を遡る力。それが「エンドテイカー」の能力だ」
本来は生物の進化を見守る為に魔女達に与えられたエンドテイカーの能力を、大魔女は躊躇う事なく己が欲望の為だけに使用する。自身が劣勢になれば時を遡り、それまでの攻防を全て「なかったことにする」と云うものだった。
「永遠に繰り返される戦いのように思えるかも知れん。けれど孵化したばかりの大魔女が巻き戻せるのは、今の段階では最大60秒が限界のようだ」
幾万もの過去を掌握した大魔女は猟兵達の戦い方を学習し、それらを容赦無く嘲笑い踏み躙らんとするだろう。それでも。
「ここで止めることが出来なければ、我々に未来はないだろう」
淡々と告げる声に裏はない。
不意に、シャスカは悪戯に目を細めて唇の端を持ち上げた。
笑っている。
この場に於いて尚も、女は楽しげに笑うのだ。
「信じているよ、猟兵諸君。あなた達は数多の世界に選ばれた「可能性の証明」なんだろう?」
――暴れておいで。
とん、と女が背を押したその先に、いばらの花が咲いていた。
なかの
こんにちは、なかのと申します。
こちらは戦争『エンドブレイカーの戦い』のシナリオです。
受付期間の詳細はマスターページとシナリオタグをご確認頂けましたら幸いです。
●進行順序
【第一章】👿『ラハム・ジ・エンドテイカー』
いばらの魔女は再び出づる。
スリーピング・ビューティ改め、ラハム・ジ・エンドテイカーとの決戦です。
自らの望む未来を得られるまで、何度でも過去をやり直す「エンドテイカー」の能力へ如何にして抗うかが戦いの鍵になります。
状況は絶望的ではありますが、敵が「エンドテイカー」でやり直せる、すなわち時間を巻き戻せる範囲は今のところ「最大60秒」に留まっているようです。そこに何らかの突破口を見出せるかもしれません!
●プレイングボーナス
「エンドテイカー」への対抗策を考える(敵は必ず先制攻撃してきます)。
皆様のご参加を心よりお待ちしております。
よろしくお願いいたします!
第1章 ボス戦
『ラハム・ジ・エンドテイカー』
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POW : 遺失魔術パワーワードキル
【過去をやり直すエンドテイカー能力】を使い、予め設置しておいた【内部の敵の命を奪う『死の魔法円』】を起爆する。同時に何個でも、どんな遠距離からでも起爆可能。
SPD : 遺失魔術メテオスウォーム
自身が【勝利への意志を失わずに】いる間、レベルm半径内の対象全てに【降り注ぐ隕石】によるダメージか【過去をやり直すエンドテイカー能力】による治癒を与え続ける。
WIZ : 私こそが、世界の全て。
【エンドテイカー能力により繰り返される戦闘】の継続時間に比例して、自身の移動力・攻撃力・身体硬度・勝負勘が上昇する。
イラスト:須田デジタル
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
カタリナ・エスペランサ
……度し難いわね
力には責任が伴うもの
果たした務めは必ず誰かに認められる
仮にその称賛が届かないとしても揺らがない誇りになる
だというのに――
欲するしか知らない愚物に終焉を。
死は永劫満たされない貴女への慈悲と知りなさい
先制対策
既知の戦法には《戦闘知識》、未知の挙動には《第六感》を働かせ敵の狙い・動きを《見切り》先読み
持ち前の|速度《SPD》を《空中戦》で活かし攻撃回避
先制を捌けば【神狩りし簒奪者】秘匿発動
時空への《ハッキング》干渉により
《ものを隠す+迷彩+目立たない+破壊工作+罠使い》の要領で黒炎・白雷・影鎖の包囲網を仕込む
その《陽動》も兼ねて羽の《属性攻撃+蹂躙+弾幕》を軸に
膨大な|手札《技能》を組み合わせ《時間稼ぎ》
大魔女相手に片手間で渡り合うハンデはオーバーロードの強化、
|神紛いの僭称者《エリクシル》に遅れは取らないという《|負けん気《プライド》》で補うわ
巻き戻しても不可避の盤面を整えればUCの《封印を解く》事で一斉起動
三重の《略奪+神罰+属性攻撃+全力魔法》で敵UCを封じ葬り去る!
●時の天秤
「……度し難いわね」
今まさに|殻《檻》を破らんとするもの。ただ在るだけで終焉を招くものを強く見据え、カタリナ・エスペランサ(閃風の舞手・f21100)は花のかんばせを顰めた。
力には責任が伴うもの。果たした務めはその大小に関わらず、必ず誰かに認められる。仮にその賞賛が自分自身に届かなかったとしても、成し遂げた責務は功績となり揺らがぬ誇りとなる。だと云うのに、女は何処までも強欲だった。他の魔女らと協調するような精神性を、後に悪しき大魔女と成るスリーピング・ビューティは持ち合わせていなかった。
「欲するしか知らない愚物に終焉を。死は永劫満たされない貴女への慈悲と知りなさい」
全ては過ぎし日の罪禍。
今ここでその輪廻を断ち切らんと、カタリナは嵐の巻き起こる戦場へと飛び込んだ。
星が降る。降り注ぐ隕石が大地を破り、荒れ狂う風が行く手を阻む中――嘗ての宿怨たるエンドブレイカーの戦いを踏襲する大魔女の執拗なる攻め手は猟兵達の戦闘知識を遥かに上回るものではあったが――カタリナの研ぎ澄まされた第六感、そして類稀なる身体能力は身に降り掛かる痛みを最小限に留めていた。
「ふふ。あはは! 羽虫め、無駄な足掻きを……!」
全てが無意味。全てが無価値だと高らかに嗤う魔女を尻目に、カタリナは密かに機を窺っていた。
防戦一方のように見せ掛けた彼女の翼から放たれる弾幕は全て|陽動《デコイ》。威力を削ぎ、見目と音の派手さに力を注いだ閃光弾は魔女の、そして魔女の苗床たる災害竜に目立った外傷を与えることが出来ずにいた。魔女はそれを彼女の全力であると、自らの力に酔い痴れ嘲笑う声を上げ、羽虫と称した哀れな娘を弄ぶかのように星の雨を降らせ続けていた。
傲慢。
それこそが、この女の嘗ての敗因に他ならない。
「お生憎様」
「……なに?」
繰り返される時の狭間で、カタリナは確かにその綻びを視た。
|神紛いの僭称者《エリクシル》に遅れは取らない。それはカタリナの胸に抱いた誇り。
今、この力を全て解き放とう。
広げられた翼が咲き綻ぶ。虹の天蓋が如く光を放つ二対の翼は薔薇の魔女の居城を淡く照らし出す。うつくしき光輪を抱き佇むその姿は、今まさにこの瞬間、時の調停者がお前だけではないのだとこの場にいるすべての存在に知らしめるかのようだった。
「盤上は整ったわ。――その力、貰い受ける!」
光弾により巧妙に隠されていた時空の歪みから一斉に影の鎖を解き放つ。魔女の力をも揺らがせる異能封じの鎖は女の基盤となっていた災害竜の身体を何重にも絡め取り、逃れようともがけばもがく程にきつくその身を縛り上げた。
「貴、様。小癪な真似を……!」
「巻き戻しても無駄よ。貴女は最早、私の支配から逃げる事は叶わない」
白き稲妻の槍が、黒き炎の裁きが大魔女の体を貫き爆ぜる。
女の苦悶の叫びが、玉座の間に響き渡った。
大成功
🔵🔵🔵
仇死原・アンナ
アドリブ歓迎
時は来たれり!
この世界を救う為に…終末の魔女を屠る為に…!
さぁ行くぞ…私は…処刑人だ!
全身から地獄の炎を放出し炎を範囲攻撃で戦場全体に広げてゆき
さらに敵を追尾する慈悲の剣と拷問具を投げつけよう
過去を巻き戻そうが広がる炎と追尾する武器は貴様をどこまでも攻撃する…!
敵が放つ死の魔法を宝石剣を振るい魔力吸収し魔力を溜めて魔力供給し禁呪の力を蓄えよう
燃える心臓より生じる不眠不休と継戦能力で死を超越しバーサークと化し敵へ迫ろう
先制攻撃を退けたら宝石剣から【暗黒不死鳥炎獄破】を放ち
敵の生命力を吸収する地獄の炎で焼却し敵を継続ダメージで弱らせ
宝石剣を振るい切り裂き傷口をえぐってやろう…!
●罪の礎
|終焉《おわり》が、直ぐ側まで迫ってきていた。
棘の魔女。嘗て、この世界を支配した存在。十数年の時を経て、再びこの地に産声を上げんとするもの。
「――時は来れり!」
数多の血が流れた。数えきれぬ程の涙が流れた。
過去の痛みが癒えぬ内に、傷跡を無惨に暴かれた人々が居た。
余りにも多くの犠牲。人々の嘆きと屍を踏み躙り、嘲笑う者がそこに居た。ラハム・ジ・エンドテイカー――大魔女スリーピング・ビューティは今再びこの世界に咲き誇らんとしていた。
仇死原・アンナ(処刑人、地獄の炎の花嫁、焔の騎士・f09978)は僅かな瞑目の後、光なき瞳に|燃える炎《怒りと決意》を宿して吼える。
「この世界を救う為に……終末の魔女を屠る為に……! ……さぁ、行くぞ!」
人知れずとも、罪禍を断ち切ることこそ我が宿業――我は処刑人、断罪者也や。
すべての災害がそこにあった。
大地は割れ、吹き荒ぶ嵐は炎と濁流を呼び、生きとし生けるもの全てを拒絶する災厄の形があった。
「矮小な人間風情が……! 惨たらしく、惨めに死ね!」
苛立ちを見せる大魔女が描き出すは命の終焉。この地に足を踏み入れたもの全てを喰らい尽くす死の魔法。躱すことさえままならぬ絶対なる力に、それでも抗う人間の姿があった。
「ゥ……ぁ、……あぁぁあッッ!!」
獣の如きアンナの咆哮が城内を満たす。
鈍く、あかく、闇より出づる炎があった。それはアンナの心臓から湧き立つ地獄の炎そのもの。
振り上げた剣の赤き刀身が死を取り込んで力となる。それでも尚侵食する圧倒的な拒絶の魔力を、自我を、我が身に宿る地獄へ捧ぐ。目前の存在を屠らんと迫り来るアンナの全身から噴き上がる炎が、魔女の薔薇を、棘を燃やし尽くさんとその威力を増して、
――ぶつり。
不意に世界が音を立てるかのように途切れて、肉薄していた筈の距離が開く。
「はは。……ははは! 無駄だ、貴様が幾ら足掻こうとも。私の魔術が劣ることは、な――」
時が遡ったのだと。知れとて、自我と死を超越したアンナの勢いが衰えることはない。戦場を満たしていた炎は魔女を苛み続け、迫り来る慈悲の剣が災害竜の胴を貫いて行く。
「がッ、――ァ――!」
だん、と。強く地を蹴ったアンナが跳躍する。黒々と燃え盛る炎の軌跡を描きながら袈裟懸けに振り下ろされた剣が、地獄の刃が、魔女の傷口から猛り狂う爆炎を噴出させた。
「奪える、ものか……、……奪ってみせろ、終末の魔女よッッ……!」
その姿は不死なるもの。
闇より出でし不死の翼そのものだった。
大成功
🔵🔵🔵
ルシエラ・アクアリンド
姫と同じ力を持ちつつも別れた路
抱いたのが違う感情であったのなら全く違ったかもしれないね
現実は現実で
ただ私がすべき事をするだけ
…これも暴れるに入るのかな?
対処
自身にオーラ防御
蒼の天蓋とelementumに魔力溜め、結界術と精神攻撃を組み込ませ発動
防御重ね混乱効果狙う
光弾は攻撃用
巻き戻りの際に彼方の有利な場所に居ない様
巨体利用し死角を見つけ自身の立ち位置とし
攻撃を避ける事が出来る最低限の範囲で対応
避ける際は身軽さ生かし空中機動使用も視野に
魔力溜めし纏わせた魔導書の風と羽根と光弾で攻撃
光弾は隕石相殺にも使用
100秒経過位を目安に強力な総攻撃放ち危険な攻撃と
印象づけ敢えて巻き戻しさせダメージ蓄積を狙う
●白藍の風
此華咲夜若津姫。彼の大魔女と同じ力を持ちつつも、別たれた道を歩んだ存在。
他の魔女達から変わり者だと笑われようとも、彼女は何処までも慈悲深く、愛に満ちた存在であった。
「抱いたのが違う感情であったのなら全く違ったかもしれないね」
眼前に広がるは、嘗て見た|終焉《おわり》の形。母なる森に愛された翠の瞳を揺らがせて、胸に残る憂いを振り払うようにルシエラ・アクアリンド(蒼穹・f38959)は柔くかぶりを振った。
これは現実。泡沫の夢などではなく、明確な悲劇の終焉なればこそ。
「私は、私がすべき事をするだけ」
不意に、自身を送り出した若草のおんなが浮かんだ。
子供の喧嘩でも見送るような気易さで告げられた言葉に、思わず気が抜けてしまいそうになるけれど。
「……これも暴れるに入るのかな?」
ああ。戦う理由など、この胸に一つあればいい。
「口惜しや。呪わしや、我が悲願を打ち砕かんとする者よ。忌まわしき此華咲夜の落とし子、アウィンの血族達よ! お前達の存在そのものが、我が生涯の最大の汚点だ!」
降り頻る星々がぶつかり合って砕け、隕石の群れとなって視界に留める目障りな人間達を押し潰さんと襲い来る。
繰り返し。繰り返し。
歩を進めた先からばつんと音を立てて無理矢理に時の因果を捻り回して引き戻される感覚。けれど、瞬きの内に眼前に迫った隕石にもルシエラが動じることはない。
「勝手なことばかり。……だから、貴女は『そう』なんだね」
この祈りが紡ぐは元素の結界。あらゆる脅威を拒絶する天幕。ふたつの力を織り混ぜ形成された強固な守りの力は星を弾き返し、砕け散った欠片を巻き込みながら巨大な渦となって大魔女の巨体を包み込む。
自身が放った術が自らを苛み始めた事に気付いた魔女が、半狂乱になって髪を掻き毟りながら暴れ出す。災害竜の尾は地を薙ぎ払い、降り注ぐ星々は勢いを増して行くが、正気を掻き乱されたその攻撃は戦場を風のように舞うルシエラを捉えることは叶わない。
「死ね! 未来永劫、明日を望むこと叶わぬと知れ!」
「悪いけれど。これから急いで友人の御見舞いに行かなくちゃならないの」
振り払われる巨大な腕にひらりと飛び移ったルシエラの手繰る魔導書から――それは魔女が時を遡らせてから、きっかり百秒後の事だった――嵐と共に撃ち出された光弾の雨が、魔女の全身を灼いて行く。
「……だからね。貴女に構っている暇はないんだ」
何度時を遡らせようとも、この戦いが無駄になる事はない。
過去は過去に。夢は夢へ。
嘗ての災厄に決して戻し切れぬ傷を刻み付けながら、ルシエラは微かに笑った。
大成功
🔵🔵🔵
ヴァニス・メアツ
女の嫉妬面倒臭ぇ…
大きく息吐きバンダナ締め直し
最初は魔女
次はエリクシル形態
今度はこの怪物、と
…やりますか、三回戦目
己を過信してるが故に勝利を疑わない、と
死んでもクソ性根は直らないんですねクソ女
降り注ぐ隕石は上空警戒し、回避と銃での迎撃試み
UC発動
銃撃加え一斉に数の暴力で攻撃
星霊クロノスよ、あの女の時を止めろ
戻させない、やり直させない
時の逆流をくい止め、前に加速させて相殺
流血等のスリップ系異常有ればそいつも加速
何度もやれると思って舐めてかかるから負けるんでしょ貴女達
やり直せないからこそ、たった一度を真剣に全力全霊を賭けるのが我ら人類
…竹を割った様な性格の若津姫の強さを考えたら当然なんですよ、ね
●廻り出す羽車
此華咲夜若津姫の、そしてその子供達が成し遂げた偉業を。彼女がもう少し謙虚で誠実であったならば、『こう』はならなかったのだろう。
『もう少し早く生まれていれば、その偉業は、その声望は、自分が得たはずのものであった』
自らにはそれが成し得たであろうと云う絶対的な自負。
満たされぬ日々の中、彼女がエリクシルに見初められたのは必然であったのかも知れない。
「女の嫉妬面倒臭ぇ……」
全てはそこに帰結する。ヴァニス・メアツ(佳月兎・f38963)の嘆息は重く深く、如何にも忌々しげなものだった。
己を過信するが故に勝利を疑わない。
それはエンドブレイカーに倒され、今一度蘇らんと息を吹き返した今も変わらない、大魔女が根本から|変化《成長》がないことを示す証のようなもの。
「死んでもクソ性根は直らないんですね、クソ女」
はじまりは魔女として。その次は、万能宝石へと囚われて――そして、今。
「……やりますか、三回戦目」
踏み出したその先に、薔薇の大魔女の高笑いが響いていた。
ぶつかり合い、砕けて尖る隕石が槍の如く降り注ぐ中、ヴァニスは紫煙銃の弾道で自らの道を切り拓きながら一歩ずつ距離を確実に詰めていた。砕けた石の破片が頬を、肩を掠めて抉ろうとも気にする事はない。全ては女が勝利を確信したまま、此方を脅威と見做すよりも早く接近する事に意味がある。
「愚かなり、人間ども! 全ては幻、貴様等の描き出す未来など泡沫の夢と知れ!」
「は。そっくりそのままお返ししますよ、その言葉」
「なに、」
カチリ。
鳴り響いた秒針の音は嵐の中では頼りなく、誰の耳にも届く事はなかったかもしれない。けれど、ヴァニスの足元から飛び出したましろの兎――懐中時計を手にした星霊クロノスは魔女の巨大な胴へと飛び乗り、今なお高らかに笑う魔女の姿をそのまま、時の彼方へと置き去りにした。
戻させない。やり直させはしない。
時の逆流を押し留め、一瞬の静寂を勝ち取ったヴァニスの紫煙銃がありったけの弾を弾き出す。
「あァ――――、が、かッ――――!?」
動き出した時の流れ、前へ前へと加速する力が一斉に放たれた弾丸へと収束し、避けることも受ける準備も叶わぬ魔女の体へと降り注いだ。聞くに耐えない醜い絶叫に目を眇め、ヴァニスは再び体制を立て直す。勝利への確信を大きく揺らがせた今、魔女を恐れる事はない。
「何度もやれると思って舐めてかかるから負けるんでしょ貴女達」
やり直せないからこそ。たった一度の瞬間に全力全霊を賭けるのが人類と云うもの。
故に示そう、明日を望む命の輝きを――今は遠き、我らが母へと。
大成功
🔵🔵🔵
ロズヴィータ・リューゲン
随分と悪趣味な姿じゃないか
まあアンタがどんなになったって
仮面は叩き割るだけだが
浮かんだ隕石をよく見て避けつつ走る
多少喰らっても止まらず
できるだけ側面か背後へ回り込んで
狙える距離まで近付いたら【薔薇の桎梏】で拘束
相変わらず厄介な力だね
だけどこうして捕まえとけば
アタシも動けないがアンタも動けない
六十秒
いやもっと
後戻りできなくなるまで縛り付けててやる
何、言いたいことは山ほどあるんだ
楽しい話じゃないのは確かだが
ゆっくり昔話でもしようじゃないか
アンタの創った仮面が|相棒《アイツ》を殺して
アイツのつけたこの傷が
アタシをEBにした
だけどそんな皮肉もね
今のアタシは気に入ってるのさ
アンタの勝手で奪わせやしないよ
●幕引き
竜の胎を食い破り半身を露わにした魔女が怒りと苦悶の声を上げながら災害竜の身体を掻き毟る。うつくしき面影は見る影もなく、嘗ての支配者たる尊厳も最早遠い。
「随分と悪趣味な姿じゃないか」
てのひらの中のナイフをくるりと弄び、ロズヴィータ・リューゲン(花酔・f38918)が片眉を上げ微かに笑う。
最大にして最古の魔法を失えどもエンドテイカーの力は健在か。相変わらず厄介な女だ、けれど。
「まあアンタがどんなになったって、仮面は叩き割るだけだ」
一歩、踏み出す。
そう悪くない日々の記憶と、少なくないえにしで結ばれたこの世界を守る為に。
「無力なる己を呪いながら絶望し、失意のままに死ぬがいい!」
降り頻る星の雨の前に小細工は要らない。地表ごと大きく抉る質量を持った天災の隙間を縫って駆け抜ける。
割れんばかりの轟音と共に大地が揺れて裂け、哀れな人間をそのまま飲み込まんとするよりも早く。少ない足場を蹴って跳躍し、砕け散る隕石の破片を足場に飛び移り魔女に肉薄したロズヴィータの腕から|悪魔《デモン》が萌え出て、術者自身の血を吸い上げたかのような血の紅を咲かせ――スリーピング・ビューティへと、至る。
魔女が次なる手に至る間を与えずに、薔薇の桎梏が竜の顎を、尾を、踠く四肢を、その全身を戒めた。
「御免だね。……アンタの力は厄介だ。だけどこうして捕まえとけば」
――アタシも動けないが、アンタも動けない。
鈍い音を立てて更に肉に食い込む棘に、自らの根源たる力に動きを阻害された魔女が大きく呻く。
「何、そう睨むなよ。言いたい事は山ほどあるんだ」
「小賢しい真似を……羽虫の言葉に私が耳を傾けるとでも思ったか、戯言を!」
十秒。
三十、六十秒。
女が遡れる時よりも、更に先へ。
「なんだい、アンタちゃんと返事はするんだね。楽しい話じゃないのは確かだが、ゆっくり昔話でもしようじゃないか」
大魔女が蓄積した傷を戻せぬ程。後戻りが出来ぬ迄に時が経ったその先で、最早人間が矮小な存在ではないのだと認識したことを肯定するかのように女が吼えるが、ロズヴィータは世間話でもするかのように、とん、とん、と軽い調子で竜の殻を登りながら言葉を紡ぐ。
「アンタの創った仮面が|相棒《アイツ》を殺して」
戒める力は解かぬまま。薔薇の棘が自身を苛もうとも、ロズヴィータは歩みを止めない。
「アイツのつけたこの傷がアタシをエンドブレイカーにした」
竜の頭から、魔女の肩へ。
血走った金色の瞳がロズヴィータを映して、視線が重なる。
そこで漸く。それでも尚『やり直せる』と慢心していた女の貌から、ざっと血の気が引いていく。
「……だけどそんな皮肉もね。今のアタシは気に入ってるのさ」
|痛み《声》は消さぬまま。
この胸に抱いて、アタシは|アンタ《アイツ》と生きて行く。
「止め、――――!」
掲げたナイフは消えぬ傷を付けたもの。
振り被ったそれを、ロズヴィータは女の仮面へと振り下ろす。
「アンタの勝手で奪わせやしないよ」
音を立てて割れた仮面。
血の赤は花弁へと変わり――それさえもやがて、風に溶けて消えて行った。
大成功
🔵🔵🔵