エンドブレイカーの戦い⑭〜 ただ理想へ。そよ風は奔る
「この世界での、この人が元はどんな人だったか知らないけど、| そよ風《ゼファー》と言うには、結構な激情家だよね?」
その様な軽口を叩きつつ、シーネ・クガハラ(ただいまB級テンペストプレイヤー・f01094)が話すのは、かつて「バトルオブフラワーズ」で完全に滅ぼされた筈の『ウインドゼファー』の事。
そして、どういう訳か「11の怪物」の1柱として蘇った『ウシュムガル・ザ・ウインドゼファー』の話である。
「それに速いと来た物だ。まあそういう訳で、知ってる人も知らない人も居るだろうけど、もう一度彼女を倒してもらうよ」
蘇った『ウインドゼファー』の能力は超スピードによる攻撃と、あの時とそこまでの違いはないとシーネは語る。だがスピードと威力の方は格段に上がっており、何の対策も無ければこちらの攻撃を当てる所の話では無く、一方的に倒される事は火を見るよりも明らかだ。
「風前の灯火な事にならない様に、キチンと対策してね?その火力と回避力の一方で、防御力自体はそこまで固くない……っていうか、私達のどんな攻撃だろうと当たれば致命傷になりかねないレベルみたい。なので、そこを上手く突いてねー」
砕くに脆く、触るに鋭利。まるでガラスの剣の様。と、評するシーネの言葉通り。超スピードを攻略し、どれだけ弱い攻撃であろうと当て続ける事さえできれば、『ウシュムガル・ザ・ウインドゼファー』を倒す事に繋がるのだ。
「個人的に、ああいう一つの物事に全力な人って嫌いじゃないけど、敵としてまた出会った以上、倒さない訳にはいかないからね。中々の強敵だけど、みんな頑張ってくれいー」
風狼フー太
昔のキミ、今のキミ、どちらも嫌いじゃないけど。敵として前に立ち、後に引かないなら、やる事は一つなのだ。
閲覧ありがとうございます。風狼フー太でございます。
プレイングボーナス……敵の「超スピード」と先制攻撃に対処する。
プレイングボーナスは上記の通りとなります。度合いはともかく、やってくる事は単純明快です。それ故の強敵ともいえますが。
なおこのシナリオの難易度は『やや難』となります。判定が厳しめになりますのでご注意ください。
まだまだ夏の暑さが残りますが、季節はそろそろ秋となり、冬が近づいてまいりました。春の風と言うには、芽生える物が無く。冬の風と言うには、そこまでの冷たさはない。そんな夏の様な熱と、秋の様な寂しさを携えた、そよ風と呼ぶには激しい風を齎す台風の様な彼女を、もう一度終わらせる為に。皆様の素敵なプレイングをお待ちしております。
第1章 ボス戦
『ウシュムガル・ザ・ウインドゼファー』
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POW : アクセラレイト・デザイア
全身を【エリクシルの輝き】で覆い、自身の【誰に邪魔はさせないという意志の強さ】に比例した戦闘力増強と、最大でレベル×100km/hに達する飛翔能力を得る。
SPD : ゼファー・タイフーン
レベル×100km/hで飛翔しながら、自身の【嗤う剣ダイアモード】から【勢いを増し続ける竜巻】を放つ。
WIZ : 嘲笑せし斬風
【嗤う剣ダイアモードから放たれる衝撃波】を【スピード怪人の加速能力】で加速し攻撃する。装甲で防がれた場合、装甲を破壊し本体に命中するまで攻撃を継続する。
イラスト:藤本キシノ
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
種を大地へ運び、時には家を壊す程の強さになって。
命を育む雨雲を運び、でも時にはそれが人を脅かす雷雨となって。
誰かの為に生きれて奔る彼女は、間違いなく風なのだろう。
そよ風の名前は、もしかすれば誰かを幸せにする春風を願って付けられた名前なのかもしれない。
でも、もう。彼女は世界を壊し尽くす事も厭わない狂風なのだ。
「エリクシルを掌握するには時間が必要だから、猟兵に邪魔される訳にはいかない。
かつて革命に生きた私が、今は自らのエゴで、彼らをこの世界から放逐しようとしている。だけど、それで構わない。誰にも、邪魔は、させないッ!」
だからこそ。今でも友達の為に戦える彼女の願いは、打ち砕かなくてはならない物なのだ。
リカルド・マスケラス
「ヒーローマスクのいるキマフューで幹部やっていたり、こっちでもマスカレイドと手を組んでたり、仮面と縁のある御仁っすね〜」
順番は逆かもっすけど
「頼むっすよ、アルタイル、ヴェガ!」
宇宙バイクと合体したサイキックキャバリアに搭乗して【念動力】で空に上がり【空中戦】。敵の攻撃や衝撃波で回避できないものは【結界術】で防御し、ミサイルで牽制しつつビーム砲で上から攻撃
結界を削られるまで攻撃され続けるだろうが、時間が稼げればそれでいい。
「機は熟したっす」
ビーム砲で攻撃するように見せかけて魔法陣を描き、ミサイルの目眩しでカムフラージュ。UCによる【破魔】【属性攻撃】結界を下からぶち当ててやるっすよ!
「頼むっすよ、アルタイル、ヴェガ!」
戦場に到着し声を張り上げたリカルド・マスケラス(希望の仮面・f12160)が乗る宇宙バイク『アルタイル』が速度を上げて宙に舞う。それに呼応し、虚空より現れたのは一体のキャバリアだ。
コックピットらしき場所にぽっかりと空いた所へ、宙に浮かんだ宇宙バイクがリカルドごと収まり、バイクのボディが分解すると共にキャバリアの全身へと装着されてゆく。
こうして攻撃力を補った、結界展開型キャバリア『ヴェガ』の操縦を任されたリカルドは、地上にいる『ウシュムガル・ザ・ウインドゼファー』へと向き直る。
「ヒーローマスクのいるキマフューで幹部やっていたり、こっちでもマスカレイドと手を組んでたり、仮面と縁のある御仁っすね~」
そこには、ヒーローマスクである自分にも。と言う意味合いも含まれているが、たったこれだけの言葉の間に豆粒程に見える大きさだった距離を、ウインドゼファーはリカルドの眼前にまでに迫っていた。
「そうね。切っても切れない関係だった」
「ヒャヒャヒャ、まさに俺とお前との関係みたいだよなあ!!」
穏やかな口調で、しかしながら攻撃は苛烈に。目にも止まらぬ、と言うより彼女の姿が目に映らない速さで高速で空中機動を描くキャバリアへと切りかかる度、屋根が激しい雨に打たれるが如くの、嫌な音をキャバリアを覆う結界が立てている。
どうにも機体の周りを纏わりつくように切りかかっている彼女を引きはがそうと上昇し、ミサイルの雨が四方八方に飛び出し、それに合わせ下に向けてビーム砲も発射しているが、音が止まない所を見るに当たってはいない。
だが、それで問題ない。
「機は熟したっす!」
もう一度、陽動のミサイルを全発射し、最後の一筆を添える為にビーム砲を放つ。下を見れば、ビームはある場所で途切れ、代わりに空中に紋様を刻んでいる。
元よりミサイルやビームを当てる事ではなく、気付かれない様にこの結界を描く事がリカルドの狙いであった。
「ここに悪しきを払い、恵みをもたらせ!」
言葉と共に光を帯びて、キャバリアを包み込むように上空へと破魔の力を放出する結界にウインドゼファーが気付いたのだろう。あれほど降り注いでいた斬撃の音が、はたと止む。
「あっぐ……!!」
そして結界の端で、苦しそうな声をあげるウインドゼファーの姿をほんの少しの間だけ捉えたのだった。
成功
🔵🔵🔴
叢雲・紗綾
本当に馬鹿みたいな速さですね…照準を合わせるどころか合わせようとする暇すら無ぇって感じです。
ですが、まあ、やってみるとしましょうか。
先制UCの竜巻からはひたすら逃げの一手。
建物の間や路地を逃げ回って【時間稼ぎ】。
適宜スティンガーグレネードで煙幕弾を放って【目潰し】、私の逃げた先を撹乱していきます。
UCが使えるようになったら、敵が追い付いてきた処でインフィニットゼロを発動。
静止した時の世界に飛び込み、そこで敵の現在位置と移動方向を確認。
後は「雀蜂」の射撃準備を整え敵に狙いを定めた上で、敵の死角の扉から元の世界へ戻ります。
戻ると同時に【レーザー射撃】で撃ち抜いてやります。
「本当に馬鹿みたいな速さですね……照準を合わせるどころか合わせようとする暇すら無ぇって感じです」
姿が見えないが上空から迫り何度も自身に向けて『嗤う剣ダイアモード』を振るい、勢いを増し続ける竜巻を放つウインドゼファーを前に、何度目かのスティンガーグレネードを辺り一帯の地面に向けて投げ、爆発すると同時に溢れ出た煙幕に身を隠した叢雲・紗綾(嘲り詰る兇弾・f40836)は小さく舌打ちをする。
ウインドゼファーの猛スピードは、彼女の姿を目に映す事すらなく。煙幕は瞬間的に何度も放つ竜巻を前に直ぐ剥がされてしまう。そして姿を晒してしまえば、狙いすました竜巻が襲ってくる為、再び煙幕で身を隠す。
先程から、そういったいたちごっこを何度も繰り返している。少しでも身を隠せるようにと大岩の影に身を潜め、ユーベルコードで作り上げた次元を超える不可視の扉の中に手を入れて、二度目のスティンガーグレネードを補充する紗綾。
この扉に繋がる世界の中に、予備の弾薬を用意はしておいた。後は、これが尽きるまでに勝機を作らねば。と、考えていた所で。身を隠していた大岩に竜巻が命中し、空気を入れすぎた風船の如く爆発する。
「ったく、ツキがねえです」
その勢いに押されて煙幕の外へと勢いよく飛び出した紗綾を追い掛けてくる気配を察し、備えあれば患いなし。と、紗綾は再びスティンガーグレネードを地面へとばら撒いて行く。
「でも、此処で不幸は売り切れ。幸運の入荷ですよ」
そう言うなり、スティンガーグレネードの補充に使っていた次元扉を飛ばされている先へと作り上げた紗綾。
そして勢いのままその中へと入り、スピードを緩める様に受け身を取って止まると。
「漸く見つけましたです」
そう言って見上げた先には、紗綾を追いかけてきた筈のウインドゼファーが空中で制止する姿が見えた。まるで動画を止めたかの様にピタリとも動かないが、それは紗綾が飛び込んだ世界では時間が静止しているからだ。
この世界へ出入り出来る扉を作る為、紗綾は先程から逃げの一手を撃ち続けていた。先程までの忙しさは何処へやら、とばかりにこの世界に置いておいた、自分の身の丈程もある長大な『弐拾三式光線狙撃銃「雀蜂」』を拾い上げて構えると、ゆっくりとウインドゼファーの一番近くで、背後にある扉へと移動する。
「呼吸を落ちつけて……大丈夫、時間だけはたっぷりと有るです」
扉から出なければ銃弾の時も止まる。と、歩けるように立って身長程もある銃身を支える。時が止まっているからわかりずらいとはいえ、姿が見えなくなる程の速度を出している事を計算に入れて、その速度が銃弾よりも早くない事を祈る。
そして、覚悟を決めて一歩。時が動いた世界に踏み出した瞬間に引き金を引く。
動きながらという不安定な姿勢だったからだろう。反動を殺し切れず、再び時の止まった世界へと押し戻された紗綾は、体中に鈍く響く痛みをこらえて前を見る。
そこには、大きく綺麗な一筋の光を放つレーザーの光と、不意をつかれながらも避けようとして、殺戮の光によって僅かに腕を焼かれているウインドゼファーの姿が、止まって見えていた。
成功
🔵🔵🔴
ヘスティア・イクテュス
超スピード…と言ってもテレポートや瞬間移動でないなら始点と終点はある
デコイとしてのホログラムを展開【残像・フェイント】し足場を不安定にさせるためアペイロンで地に『凍結攻撃』
これで数瞬でも攻撃を遅らせ&外させる
過去のキマイラフューチャーでの戦闘データを『情報収集・検索』し攻撃方向などの予測…
その上でトムテクロークで|《バリアを展開【オーラ防御・受け流し】》ダメージを最小限で抑える
そして初撃を対処したら
ティターニアで飛び『空中戦』
リミッター解除!空中でのスピード勝負なら負ける気はないわよ!
レーヴァティとマイクロミサイル、ブラウニーズの『一斉発射』&『範囲攻撃』で
「違う。これも違う。うっとおしい」
「ギャハハハ!ハエ叩きでもしてるみてえだな!!」
何度も何度も、苛立ちを隠さず『嗤う剣ダイアモード』を振るい、『ウインドゼファー』が上空から地上へと放つ、勢いを増し続ける竜巻に飲まれて幾つかのヘスティア・イクテュス(SkyFish団船長・f04572)が、パァン!という音を立ててはじけ飛ぶ。
その正体は『偽装用風船端末パックプーカ』が創り出した、ヘスティアの姿をホログラムで纏った風船であり、本物のヘスティアを見つけるべく『ウインドゼファー』は目に映る全てのヘスティアに竜巻を飛ばしていたのだ。
斯くして『ウインドゼファー』を出し抜いたヘスティア当人はと言うと。一人物陰に隠れ『ウインドゼファー』の戦いぶりを注意深く見守っていた。
「さてと。過去のキマイラフューチャーでの戦闘データを収集、そして今しがた戦っている最中のデータを分析ね」
人には些細であろうと癖という物がある様に、『ウインドゼファー』にもそういった物がある筈と考えたヘスティアは、先ず情報を収集する事に専念する事にした。
デコイを多数放つ事で現在の戦闘データを収集し、その上で過去のデータを集め、現在の戦い方との相違を見つけて修正する。
例え超スピードで動いている敵の姿が見えなくても、何処から攻撃を行うかは見る事が出来る。特に多数のデコイを潰す為に竜巻を連続で放っている今は軌道が読み取りやすい。
膨大な量の正確なデータは正確な予想を生み出す。そして正確な予想とは予知に他ならない。
「よし。仕掛けるわよ!」
意を決し『重力防御外套トムテクローク』を纏って、バリアを展開しながら物陰から飛び出したヘスティアを『ウインドゼファー』が見逃すはずもなく。
誰も居ない様に見える場所から突然現れた竜巻を見て、事前の予想から導き出した答え通りにヘスティアが『アペイロン』から放った冷凍光線は、宙に氷のつぶてを作りながら直進を続ける。
その直ぐにでも落ちてきそうな氷の粒で出来た橋の手前で、空中に出来た物体へ超スピードでぶつかる訳にはいかないと立ち止まろうとしている『ウインドゼファー』の姿を一瞬だけ捉える。
「見えた!リミッター解除!」
今立ち止まろうとしているこの瞬間であればスピード勝負で負ける気はない、と。
上空へと飛んだヘスティアは、二機の球体型ドローン『ブラウニーズ』と共に氷の橋の方へ追い込む様に包囲陣を組むと、『ティターニア』と繋がるビームライフル『レーヴァティ』を構え、『ブラウニーズ』と共に放つビームによる射撃と『ティターニア』に内蔵されている『マイクロミサイル』の一斉発射によって『ウインドゼファー』を追い詰めてゆくのであった。
成功
🔵🔵🔴
夜刀神・鏡介
どんな事情があろうとも。世界に、他者に不可逆の犠牲を強いた上で目的を果たそうとするのであれば……倒す他はない
神刀の封印を解除して、神気を纏う事で身体能力を強化
ゼファーからは逃げ切れないが、彼女が先制攻撃で放つ竜巻なら、どうにかできそうかな
都市内の曲がりくねった道を進む事で、竜巻の勢いが増さないようにする
竜巻から適度に距離を取ったなら、陸の秘剣【緋洸閃】を発動。神気によって緋い刀を無数に生成して、降り注がせる
どれだけ高速で移動しようと、大量の攻撃は躱しづらいだろう
そして、掠めるだけでも相手の行動速度を下げる事もできる
一度で倒しれなくとも、相手の動きが鈍れば対処がしやすくなるな
「負けられない。私は、もう一度友達に会う為に!」
「ギャハハハ!流石にケツに火が付いてきたって感じだなあ!!」
己を鼓舞するが為に自らの願いを口にして、目の前で都市国家に並び立つ建物の隙間を縫って走る夜刀神・鏡介(道を探す者・f28122)へ竜巻を放つ『ウインドゼファー』
その姿は見えずとも、ちらりと後ろに視線を落とし、建物を盾にして横の道へと逸れた鏡介の隣を、竜巻は建物を吹き飛ばしながら通過してゆく。
「どんな事情があろうとも。世界に、他者に不可逆の犠牲を強いた上で目的を果たそうとするのであれば……倒す他はない」
あの吹き飛ばされた建物は誰かの思い出を育んでいた筈。この都市国家は、そういう育まれていた思い出のアルバムである。
そのページを無残にも、己が想いと願いの為とは言え破り去ってゆく『ウインドゼファー』を許すわけにはいかない。と、鏡介は刀に手を掛ける。
「神刀解放」
そう短く告げて鋭く抜き放った『神刀【無仭】』の刀身は、夕焼けを宿したかの様な緋色へと変わり、刀より放たれた神気は鏡介の全身を覆って身体能力を強化する。
「行くぞ。オブリビオン」
再び放った竜巻を見て、おおよその位置を把握した鏡介は曲がりくねった建物の隙間を抜けて追跡してきた竜巻を避けると、近くにある建物の壁を蹴り、その向こう側にある建物の屋上へ。
また次の竜巻が来るまでの一瞬、それを更に瞬く様な時間の間に。
ふぅ。と、息を一つ吸って刀を両手に持ち、大きく上段に構えると、刀に纏った緋色の神気が、ほんの僅かに揺れ動いた。
「斬り穿て、千の刃――陸の秘剣【緋洸閃】」
そのまま大きく振り下ろすと、刀に纏っていた神気は空へと飛び上がると、打ち上げた花火が花を咲かせるが如く、斬撃の鋭さを保ったまま辺り一帯へと降り注いだ。
「斬撃が、別れた!?」
「どんな攻撃が掠めるだけでも致命傷になりかねないと聞いたからな。どれだけ高速で移動しようと、大量の攻撃は躱しづらいだろう」
驚愕の声を上げる『ウインドゼファー』と鏡介の言葉通り、無数に降り注ぐ斬撃へと竜巻を放ち対処する『ウインドゼファー』に鏡介へと手を回す余裕はない。
そして追撃とばかりに再び刀を振り上げた鏡介を見て、忌々しそうに『ウインドゼファー』は鏡介から距離を取り、その場から離脱したのであった。
成功
🔵🔵🔴
数宮・多喜
【アドリブ改変・連携大歓迎】
よォ。
久しぶりだなぁ、|ウィンドゼファー《お仲間さん》。
やっぱり|疾《はし》り足りなかったかい?
気持ちは分からなくもねぇよ、アンタの在り様はアタシにも似てる。
友への思い、|迅《はや》さへの想い。
そうさ、意地の張り合いだ。
テメェのその矜持、アタシの覚悟で押し通してみせる!
奴を倒すにゃ、アタシ自身の力だけじゃ絶対に足りねぇ。
何しろ「速さ」が絶対的に足りないからね。
だから、敢えて死中に活を求めるよ。
……そうさ、【人機一体】でアーマーを纏いながら荒れ狂う竜巻の中へ身を投じる!
その中に身を任せ、増す勢いのままに速度を上げて。
暴風の切れ間を見計らい、【黄昏砕く脚】をぶち込むよ!
「よォ。久しぶりだなぁ、| ウィンドゼファー《お仲間さん》。やっぱり| 疾《はし》り足りなかったかい?」
今からやる事を思い、何もない荒野を戦場に選んで。
両腕を胸の前で組んだ数宮・多喜(撃走サイキックライダー・f03004)は風を待っていた。
目の前から、姿は見えずとも気配が迫っている事を感じ取って、それでも多喜は大地に二本の足を突き立て、ただ立っていた。
何故ならこれから来る風は友達思いだ。そして| 迅《はや》さに自信がある。
つまる所、自分と同じ物を多喜は感じ取っていたのだ。
「猟兵、私の、願いは、踏みにじらせはしない!」
「気持ちは分からなくもねぇよ、アンタの在り様はアタシにも似てる」
向かって来ているという感覚から、僅か数秒足らずで『ウインドゼファー』は多喜を射程に捕らえていた。痛む肺から悲痛な願いを声に出して、今まで蓄積したダメージで軋む腕で『嗤う剣ダイアモード』が放った竜巻は、多喜のすぐ目の前まで迫っている。
それでも。多喜は覚悟を以て、その場に立ち尽くしていた。
「そうさ、意地の張り合いだ」
当然、竜巻は都合よく止まるはずもない。相棒たる宇宙カブをパワードスーツへ変形させて身に纏い、身構える多喜。
「テメェのその矜持、アタシの覚悟で押し通してみせる!」
そして竜巻はチョコレートを頬張るが如く呑み込み囚えた多喜の全身を容赦なく振り回し、風の刃が次々と切り裂いて行き、巻き込んだ土石がパワードスーツを叩きつけてゆく。
「ま、まだだ……」
勢いを増し続ける竜巻は、どんどんと威力とスピードを上げていく。が、それでも多喜の意識は辛うじて繋がっていた。
こうなる事は分かっていた。それでも、やらねばならないと思ったからこそ多喜は今ここにいる。
自分と彼女のスピードは絶対的な差だ。それを埋めるには別の何かが必要だと感じている。
「そうだ。もっとだ、もっと強くなれ!」
だからこそ、その足りない物を多喜はこの竜巻に見出したのだ。何処までも勢いを増し続ける竜巻に身を任せて『ウインドゼファー』に勝るスピードを手に入れる。
どどのつまり、これは最初から多喜の走り屋としての矜持であり、我が儘である。
「エンジン、サイキック、全開……!」
見せたかっただけなのだ。見たかったのだ。自分が出せるスピードの、その向こう側を。
「これが、アタシとお前の合わさった、スピードだぁぁぁぁ!!」
暴風の切れ目に突っ込む様に、竜巻の勢いに背中を押されて、熱と電撃を纏った超高速の飛び蹴りと共に多喜は竜巻の外へと放り出される。
その速さは人が目に追える速度を優に超えており、地上に置いて出せる速度、その先へ届いた| 宙《ソラ》に駈け上がる流星であり。
空気を圧縮して衝撃波を生み出し、姿の見えぬ『ウインドゼファー』の体を叩きつける、願いを砕く流れ星だった。
大成功
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ルシエラ・アクアリンド
友達、出来たんだね
うん、そうかあ
人の為に必死だった貴女よりは正直今の方が好きかな…私は
でも止めさせて貰うね、ゼファー?
障害物があればスピードは落ち攻撃を受け止められずとも反らせる筈
都市国家の入り組んだ裏道の入り組んだ道に逃げつつ
自身をオーラ防御で強化且つ魔力貯めしたUC発動し更に防御上げ
光弾での進路阻害
空中機動、第六感、軽業、索敵も駆使し速度を落とさせる
初撃を魔力溜めの魔力を纏わせた魔導書で反らし凌いだ後はUC蒼の天蓋発動
足止め、嵐での攻撃と超混乱で追い打ち
其のまま魔導書の風と羽根で対応
出来れば先に剣を落とさせたい
彼女の為にも私の為にも
基本回復は風に任せて自分はスピード対応と攻撃専念で立ち回る
身体の底から口へとこみ上げる何かは、鉄の味がする。
自分の体から、どうしようもない程に力が抜けてゆく。
それでも『ウシュムガル・ザ・ウインドゼファー』のスピードは衰える事無く、此処に居る。
「ヒャヒャヒャ……ひでえナリだなおい」
「そうだね。どうして私も、まだ立てているのか不思議なくらい」
そして戦えるならば、やる事は一つだろう。と、目の前の猟兵へと闘志を燃やす。
対して、対峙するルシエラ・アクアリンド(蒼穹・f38959)は悲しげな目を、命を燃やして速さを保ち、姿を見せない彼女へと注いでいた。
「友達、出来たんだね」
しかしながら発する言葉は温かみを含んだ声で。
「うん、そうかあ。人の為に必死だった貴女よりは正直今の方が好きかな……私は」
脳裏に浮かぶのは思い出だ。誰かの為に戦って、でも結局は誰かを犠牲にして踏みつけにして、その誰かと同じだけ自分を犠牲にした少女。
そしてまた、同じ事をしようとしている少女へ、ルシエラは告げる。
「でも止めさせて貰うね、ゼファー?」
いったい何度目になるだろうかと言う『ウシュムガル・ザ・ウインドゼファー』の放つ竜巻を前に、ルシエラは魔導書を構える。
魔力を込める事で手に持った魔導書のページは勢いよく一人でに捲られてゆき、ユーベルコード『elementum』の結界の上に、水滴が広がる様にオーラを纏わせた防御を張り、竜巻へと立ち向かう。
この世の物ではない物が割れてゆく、澄んだ音を立てながら竜巻は結界を引きちぎってゆくが、結界の強度が僅かに上回ったことで軌道を逸らし、ルシエラは乱雑に立ち並ぶ建物が織りなす入り組んだ路地裏へと入り込んで身を隠した。
「思う侭に、飛べ」
そして再び開いた魔導書のページとページの間から、空に向かって色とりどりの色と属性を持つ光弾が空へと打ち上げてゆくと、再び現れた竜巻が生まれた場所へと飛び立ち、その周囲を旋回し始める。
「このっ!」
これ以上ダメージを受ければ間違いなく消滅しかねないと、回避に力を割かざる追えなくなった『ウシュムガル・ザ・ウインドゼファー』の苛立ちが籠る声が、ルシエラの耳にも届いた。
それでも、ルシエラは迷わない。
「どうか力を貸して!」
魔導書に籠めた魔力は蒼い光となって、蒼く薄い壁を持つ空間を編み上げてゆく。
どんどん広がり、辺り一帯を包み込むまでの大きさとなった蒼い空間は、姿は見えずとも『ウシュムガル・ザ・ウインドゼファー』を飲み込み捕えると、大気は逆巻き『ウシュムガル・ザ・ウインドゼファー』が放つ竜巻とは違う嵐を巻き起こしてゆく。
右も左も、前も後ろも。上下でさえ分からない程に嵐に揉まれて。速度を保てず『ウシュムガル・ザ・ウインドゼファー』は遂にその姿を現した。
「ゼファー!」
その姿を見るなりルシエラは跳び上がり、彼女の元へと駆けよると『嗤う剣ダイアモード』へと目をやる。
「この剣さえなければ……!」
在りし日の事は起らなかった筈だと。彼女の手から剣を手放させようとして。
剣を持つゼファーの手は、ルシエラを切り裂かんと動いた。
「……猟兵は私の敵だ」
反射的にゼファーから距離を取り、剣に恨み節をぶつけようとして、ルシエラは確かに少女の言葉を聞く。
「貴方達は、私の願いを踏みにじった。でもそれは正しい事だから、私は何も言わないよ」
だから、と。風の名を持つ少女は確かに言った。力なく剣の柄を握って、宣言したのだ。
「これ以上、私から何も奪わせない。例えこんなロクでもない物でも、これは私が選んだ道だ」
「ヒャヒャヒャ……だとよお、お嬢さん!そういう訳で、骸の海には主様と一緒に行かせてもらうぜえ!!」
もう彼女に戦う力はない。飛翔する力を失い、地面へと堕ちて、堕ちきる前に身体は消えるだろう。
だから。血に塗れた様な赤い宝石の仮面が剝がれ落ちていったのも、ほんの偶然である。
「……あの時の、誰かが選んだ先に私は居ない。でも良い。それでみんなが、少しでも幸せになるなら……この先の誰かが、そんな世界を作り続けてくれるなら」
何処かやり切った様に目を閉じた、でも困った様な笑みを浮かべた、そして少し悔しさを口に滲ませている様な、あどけない少女の顔がほんの少しだけ見えて、その姿はユーベルコードが生み出した嵐の風の中へと消えてゆくのであった。
成功
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