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エンドブレイカーの戦い⑥〜狂王の刻印

#エンドブレイカー! #エンドブレイカーの戦い #紫煙群塔ラッドシティ

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 周囲は既に血の海であった。
 恐らくは生け贄であるのだろう。折り重なった人と人をまるで鎖のように繋いで織られたかのような魔法陣は、笑ってしまうぐらい現実味というものが感じられなかった。
 陣はそれほど広くはない。けれども小さくもない。生け贄にされた人数を数えることは無意味だろう。中には人の原形すら留めていないような肉の塊が多数あったから。
 原理は解らない。解る必要もない。
 ただそれがこの怪物が作り出したものであり、そして壊さなければならないと解る。それだけで充分であった。
 悲鳴が上がっていた。すでに声にはならぬうめき声のようなものであった。
 一つ一つは小さいものであった。しかしながらその声は数多重なり、一つの声のようになっていた。
「……ふむ」
 その中央で、男が一人立っていた。ただ一人、血に染まらぬ姿で。いかにも面白くなさそうに天を仰ぎ鼻を鳴らす。
「我が国の民とは些か違う趣であった、所詮中身は同じか。うむ。……うむ」
 肉塊の一部が蠢いた。まだ息があったのだろう。手を伸ばした男がいた。男はせめて一太刀、死ぬ前にせめてと思ったのか。それとももはや意識がなかったのかはわからない。正面の男に手を伸ばし……、
「まあ、見どころはなかったがな。所詮は肉塊よ」
 そして、男に踏み潰されて息絶えた。
 悲鳴が遠くなる。ざわめきが消えていく。それは命が遠くなっていることを意味する。
 遠くから戦いの音が聞こえる。……来たのだ。彼を倒しに、新たなるものが。
「我に挑むか。……よかろう。目的のない陣遊びにも飽いたところよ」
 人の魔法陣が輝く。同時に周囲の景色がゆがんだ。男は目的がないと言った。つまりこの魔法陣にも、何の意味もなかったということだ。
 噎せ返るような血の中で、男の表情が変わる。
「相手をしよう。勇者の相手をするのもまた、王の役目よ。我を倒せばこの地の一時的な平穏という褒章を授けよう。我を倒せねば……そうさな。もう一段、大きな魔法陣でも作って「世界の瞳」とやらを破壊してみるか」
 男は。狂王アニールは。
 退屈で退屈で堪らなかったのだというように、笑ったのだという。
「どちらにしても、お前たちは、余を楽しませてくれるだろう。どちらでも、構わぬのだ。これは、余興なのだから」


「……」
 リュカ・エンキアンサス(蒼炎の旅人・f02586)は僅かに眉根を寄せた。
「俺もそう綺麗な人間じゃないから感想は差し控えるよ」
 端的に、感情面ではそれだけを告げ、リュカは次の説明に向かう。
「次の戦場は、ラッドシティっていう街みたい。「世界の瞳」っていう巨大な遺跡と融合した、なんだろうな……。歯車っぽい遺跡?」
 まあ、観光するわけじゃないからいいよね。と、リュカは説明を諦める。少々特殊な外見をしていたからだ。
「まずはおさらい。万能の魔神エリクシル達を創造した『11の怪物』っていうのが、この地にいる『大地母神』って言うのを狙っている。彼女が殺されてしまうと、俺たち猟兵はこの世界からはじき出されてしまうんだ」
 そして、彼らがその手段として打ってきたものの一つが、今回の事件なのだという。
「狂王アニールっていう、ちょっと質の悪いのが現れた。俺も話を聞いただけだけれども、エンドブレイカーの人はもしかしたら、縁があるかもしれないね」
 結局、行った事柄だけが伝わり、どのような理由があったのかなどはリュカにはわからない。
 ただ、狂王であった、と話を聞いているとリュカは言った。
「彼はラッドシティの一か所に陣取って、まあ、ありていに言うと、割とと好き勝手やってる。このままだと、ラッドシティにある「世界の瞳」も破壊されちゃうだろう」
 「世界の瞳」というのは、他の小世界群に繋がる扉のような認識でいい、とリュカは言う。すなわちそれを落とされるということは、惨劇がほかの小世界に広がることを意味している。
「勿論そのままにしておくわけにはいかない。だから、倒してきてほしいんだ」
 なお。そこでリュカは、持ってきていた手元のメモ帳に目を落とした。
「ええと。特にこの都市国家の、遺跡を守護する「長老衆」はエンドブレイカーや猟兵に対して非常に好意的で、今回の戦いへの全面支援を約束してくれています。……って事みたい。武器や防具の貸与を行ってくれるらしいから、気になる方は手に取ってみて。「ラッドシティ製の最高級武装」……って事らしいけど。銃とかないかな。こう、すっごい変わった銃とか」
 銃マニア的には若干気になるところだ。なんて冗談めかしてリュカは言う。勿論銃の貸し出しも行っているらしい。
「……ま、そういうこともありつつ」
 微かに彼は肩を竦めて、
「……」
 何かを言いかけて、やめた。前言通り、感想は差し控えるらしい。
「気を付けて、行ってきてね」
 最後にそれだけ。声を書け。リュカは話を締めくくった。


ふじもりみきや
いつもお世話になり、ありがとうございます。
ふじもりみきやです。
状況は大体リュカが言った通り。
POWなどは飾りです。割と好き勝手しますので、皆さんも好き勝手してください。

=============================
プレイングボーナス:ラッドシティの最高級武装を駆使して戦う
=============================
小世界関連はちょっと追いきれないのでご容赦ください。
アイテムの貸与も、気が向いたらくらいで結構です。こういうのってプレイングに指定していただければ、だいたい要望は通りますので、欲しい方は書いてみてください。
あっ。死者をよみがえらせるとか、一瞬で敵が死ぬとか、そういうのはなしの方向で。

以上になります。
それでは皆様、良い一日ヲ。
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第1章 ボス戦 『狂王アニール』

POW   :    クルーエルストリーム
レベルm半径内に【真紅の衝撃波】を放ち、命中した敵から【生命力】を奪う。範囲内が暗闇なら威力3倍。
SPD   :    暴走せし殺意
【剣】が命中した敵に、「【命を捨ててもアニールを殺したい】」という激しい衝動を付与する。
WIZ   :    我こそが王なり
自身の【王冠】から【恐怖のオーラ】を放出し、戦場内全ての【王ならざる者】を無力化する。ただし1日にレベル秒以上使用すると死ぬ。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

カーバンクル・スカルン
ランスブルグ史上最凶最悪の王。多くのアンデッドを生み出し、ランスブルグに死と混沌を振りまいた……ねぇ。いわゆる恐怖政治を展開した王様ですか。罪は探す必要もなく山ほどありそうで。

とりまハンクス長老ー、「最高級の武装」の中には当然|アレ《・・》も含まれてますよね? ……と一応確認。懲罰騎士の総本山なら当然あると思うけどね?

アニールを確認できたら……おいでませ、懲罰機エレキラー!!

エレキラーの役目は全身に内蔵された拷問器具によるアニールの拘束! 電撃は二の次で良し! そんで拘束出来たら借り物の紫雲銃で蜂の巣にしてやらあ!

剣を当ててもらう必要もなく、しっかり殺してやるよ国王様?


リカルド・マスケラス
「なるほど、これはいい武器っすね。ちょっと貸してもらうっすよ」
そう言って最高級の杖と、行使する依代に魔想紋章士さんの体を貸してもらう

「まーた、昔話で聞いたような有名人が。エリクシルはなんでもアリっすね」
などとボヤきながらも恐怖のオーラを【破魔】【浄化】を込めた【結界術】を展開してガード
「さすが最高級品。魔力の増幅具合もすごいっすね」
更には相手の足元に結界で魔法陣を描き【森羅穣霊陣】で攻撃
「今回はあんた用に特別アレンジっすよ」
魔法陣の紋様をかつてアニールを討ったとされる『勇騎士ジョナ』の紋章に仕立て、光【属性攻撃】の斬撃がアニールを切り刻むように発動
「あんたの凶行はおとぎ話の中だけで十分っす」



「とりまハンクス長老ー、「最高級の武装」の中には当然アレも含まれてますよね?」
「おお! 勿論ございますとも、ございますとも。もしもなければすぐにでも作らせていただきますとも!」
「へっへっへ。お主も悪よのう」
「ふぉっふぉっふぉ。あなた様こそ!」
 カーバンクル・スカルン(クリスタリアンの懲罰騎士・f12355)がにやりと笑って言うと、ラッドシティの「長老衆」、ハンクスもまたひときわあくどい笑みを浮かべた。
 一応念のために記載しておくが、ハンクスは悪人ではない。ただ顔と言動が非常に悪人なだけのただのエンドブレイカー&猟兵の熱烈ファンなだけである。
 対するカーバンクルも別に悪人ではない。お嬢様育ちの彼女がいかにも手慣れた悪人台詞を吐いたのは……さておき。
「よかったよかった。懲罰騎士の総本山なら当然あると思うけどね? 一応確認しておかなきゃと思って」
「ないものですらあるようにしますとも。皆様の為ならば!」
「なるほど、これはいい武器っすね。ちょっと貸してもらうっすよ」
 そんなあやしい台詞を深く気にすることなく、隣のリカルド・マスケラス(希望の仮面・f12160)がど派手な杖を手に取った。いくつもの歯車が先端についたモデルで、ラッドシティらしいかっこよさが光る一品である。
「ついでに行使する依代に魔想紋章士さんの体を貸してもらえるっすか?」
「どうぞどうぞ。何でしたらそのまま貰っていってくださっても構いませんよ!」
「!? やめてください! それなら自分がついていけばいいじゃないですか!」
 この子。といかにも学者風の女性。とリカルドが指定したのには訳がある。リカルドは過去はともかく、今はチャラめのヒーローマスクなのだ。かっこいい狐面には、装着者が必要なのである。
「! このハンクス、一生の不覚! そうでございますな。ぜひ、私の体をお使いください!!」
「うーん。走っただけで腰やりそうな長老はちょっと……」
「なんと……!」
 と。
 武器を一時借りる際は、そんな愉快な一幕があったともいう。

 そして今。
「まーた、昔話で聞いたような有名人が。エリクシルはなんでもアリっすね」
 武器を借りた二人は、急ぎ現地へと向かっていた。遠くからでもすさまじい血の匂いが鼻につく。それでもリカルドが普段通り走(依り代の女性の声で)ぼやけば、カーバンクルも肩を竦める。
「ランスブルグ史上最凶最悪の王。多くのアンデッドを生み出し、ランスブルグに死と混沌を振りまいた……ねぇ」
「うーん。温度差に風邪ひきそうっすね」
「いわゆる恐怖政治を展開した王様ですよ。罪は探す必要もなく山ほどありそうで」
「呼び出すならもっとこう、愉快な人にしてほしかったっすよー」
 角を曲がる。曲がった瞬間にひときわ血の匂いが強くなって周囲の見通しがよくなった。
 広がった視界の中。折り重なる死体、死体、死体。
 そしてその中央に立つ、それの姿が……、
「おいでませ、懲罰機エレキラー!!」
 問答するつもりなんてない。したい以外の生き物が目に入ったその瞬間、カーバンクルは全身に内蔵された拷問を展開した。
「拘束、行くよ!」
「おぉ。なかなかに威勢のいい来客だな……!」
「うっせ―黙って嚙みつかれてろ!」
 即座に拷問器具を組み立てると同時に敵の足や腕に食らいつかせる。同時にカーバンクルは借りていたあれ……支援銃を手の中でくるりと一回転させた。
「ふむ。なかなか手早いな……!」
 アニールもまた、動きを制限されながらも指先で紋章を描く。空中に描き出された紋章から深紅の衝撃弾がいくつも生まれた。
「魔法の撃ち比べっすね。負けないっすよ」
 それを見て、即座にリカルドが動く。破魔と浄化を込めた結界が、二人の前に現われた。
「さすが最高級品。魔力の増幅具合もすごいっすね。……っと、」
 魔弾が放たれる。その物量に対応するように次々とリカルドも紋章を描き出す。結界を盾にして、正面、横、さらには上下からの攻撃も塞いでいく。
「今回はあんた用に特別アレンジっすよ。……ここに悪しきを払い、力をもたらせ!」
 並行して描いていくのは、かつてアニールを討ったとされている『勇騎士ジョナ』の紋章だ。防御に織り交ぜて、光の斬撃がアニールへと降り注ぐ。
「あんたの凶行はおとぎ話の中だけで十分っす」
「ふん。小癪な……!」
 アニールもまた結界を交えて応戦する。リカルドがちらりとカーバンクルの方を見た。カーバンクルはにやりと……とても楽しそうな顔で笑った。
「はっはっは。剣を当ててもらう必要もなく、しっかり殺してやるよ国王様? ……蜂の巣にしてやらあ!」
 アニールとリカルドの攻防の側面から、カーバンクルが容赦なく借りていた紫煙銃を打ち込む。ラッドシティの中でも最高傑作に類する銃が、まっすぐに狂王の体をぶち抜いていく。
「ぐっ、貴様ら……!!」
 忌々しそうな声。それでやめる道理は二人にはない。止まることない攻防は、そのまま長い間、続くのであった……。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

紫・藍
やや、王様でっすかー!
我こそが王でっすかー!
でしたらええ、藍ちゃんくんも負けじと謳っちゃいましょう!

藍ちゃんくんでっすよー!

藍ちゃんくん、お姫様で王子様でっすので!
実質王様なのではないでっしょかー!
そもそもここは今、藍ちゃんくんのライブ会場!
地位だなんて関係ないのでっすよー?
地位や権力を振りかざす行為はめっ、なのでっす!
皆様が楽しめなくなるのでっす!
弱体化待ったなしなのでっす!
お借りしたロックギターや竪琴、ソードハープを次々と演奏しながら歌うのでっす!
ところででっすねー、藍ちゃんくんのライブ、悪意を弱体化させるのでっしてー。
狂王であることがアイデンティティな王様にはめちゃくちゃ堪えるのではー?



 紫・藍(変革を歌い、終焉に笑え、愚か姫・f01052)は、考えた。
「やや、王様でっすかー! 我こそが王でっすかー!」
 藍はアイドルである。アイドルというのは人を傷つけぬものである。ついでに言うと藍はアイドルなのでアイドルであるが故にごっつい剣とかでっかい盾とかは装備できないのである。つまり、
「でしたらええ、藍ちゃんくんも負けじと謳っちゃいましょう! ……さあ、お聞きください! 藍ちゃんくんでっすよー!」
 藍の周りにはロックギターや竪琴、ソードハープなど様々な楽器が用意されていた。
 ラッドシティ特製の良く通るピン系マイクもついでに完備している。
 戦場の真ん中で歌い出すとさすがに他の猟兵たちの邪魔になってはいけないので、
「藍ちゃんくんの今回のライヴ会場は、ここです!」
 戦場の公園近くにある時計台のてっぺんで、藍はマイクを手に取った。
「藍ちゃんくん、お姫様で王子様でっすので! 実質王様なのではないでっしょかー!」
 情報から声が降り注ぐ。なかなかいい感じに音が通っているのではなかろうか。
 そうして、藍は歌い始めた。……すでにここは藍のライヴ会場だ。歌う曲は何にしようか。今日はいっぱい、楽器があるから、きっといつまででも楽しく演奏できるだろう。
「あんまり悪いことをしてはいけないのでっすよー! 皆様が楽しめなくなるのでっす!」
 声を張り上げる。張り上げると同時に周囲に音の波が押し寄せてくる。ライヴに関係のない行為や悪意を弱体化させる音の波は、速やかに周囲に満ちていく。
 さすがに完璧に聞くとは思っていないが、あの狂気に満ちた王の動きを制限出来れば幸いであった。
「むやみに人を傷つける行為はめっ、なのでっす!」
 地上で敵が何かを言っているかもしれないが、ここからだと聞こえない。そもそも声を大きく張りあげているので、近くにいても聞こえなかったかもしれないが……。
「少しでも皆さんの応援になれば嬉しいでっす!」
 大きな剣や盾を持つ仕事は、カッコイイ皆さんに任せよう。
 だって藍は藍ドルなのである。歌って踊って、頑張る人を応援するのが仕事なのだから……。

大成功 🔵​🔵​🔵​

霑国・永一
狂王ねぇ。
人間使って玩具遊び。まぁやってる事はUDCアースの邪教団連中と大した差はないかな。
ああ気にしなくていいよ。俺の所感に過ぎないし、これからの戯れとは何の関係も無いからねぇ。

狂気の分身を発動。無尽蔵に分身を嗾けて戦わせるとするよ。せっかくだし幾人かの分身にはラッドシティのナイフ、俺は銃を使うかぁ。
『このナイフつえーのか分かんねぇ!』『殺せりゃなんでもいい!』
自爆分身達は剣を受けようが関係ない。元々命捨てて殺す気満々。至近距離で自爆して貰うまでさぁ。
『ハハハハッ!俺様死ぬぜー!』『お前も道連れだ、死ね!』
爆ぜれば分身はドンドン補充していくまで。俺は後方から銃でチクチクと。
いやぁ愉しいなぁ。



「狂王ねぇ」
 霑国・永一(盗みの名SAN値・f01542)は軽く、舌なめずりをした。
「人間使って玩具遊び。まぁやってる事はUDCアースの邪教団連中と大した差はないかな」
 あいつらもやることやってるからねぇ。なんて永一はさも可笑しそうに笑う。邪教関連の案件も、結構生産になることが多いのだが、それでも永一はまるでサークルの飲み会での出来事のように、楽しげに血と肉片が飛び散る魔法陣を眺めた。
「ふむ。我が陣では凄惨さが足りぬと申すか」
「もちょっとオリジナリティを強めにしてもいいんじゃねぇの? 例えば盗人の臓物だけで作るとか」
 予想していたか、いなかったのか。帰ってきた返答に、永一は楽し気に人差し指を立てる。狂王は他の猟兵たちと戦闘しながらも、永一にも隙なく視線を配っていた。
「盗人か……。逐一肉を属性に分けて振り分けるのは面倒だな」
「ああ気にしなくていいよ。俺の所感に過ぎないし、これからの戯れとは何の関係も無いからねぇ。何なら……」
 ぱちんと。
 永一はラッドシティ産の紫煙銃を構えたまま、己の分身を召喚した。
「こういう肉とかな。……さぁ、俺の為に散ってくれ」
『俺様の扱いひでぇなクソッタレ!!』
 永一が召喚したのは、無数の永一の分身だった。違いは、本体の永一とは違いラッドシティで支給されたナイフを持っていることと、
『このナイフつえーのか分かんねぇ!』『殺せりゃなんでもいい!』
 会話が(本体も若干成立するか怪しいが)成立しないことであった。
『ハハハハッ! 俺様死ぬぜー!』『お前も道連れだ、死ね!』
「むっ。なんだこの有象無象は!」
『ハハハハッ! ウゾームゾー』『ウゾムゾ!』
 わけのわからないことを言いながらも、どんどん召喚されていく分身たち。宣言通り、分身は使い捨ての消耗品だ。狂王や、周囲に障害のように散らばっている死体たちを爆破し、そうして己も爆散していく。
 狂王が紋章を描き出す。……本体の永一に向かって放たれた魔法は、即座に分身が盾となって霧散した。忌々しげに狂王が舌打ちする。それが堪らなく面白い。
 結果、分身は死ぬことになるが……構わない。どうせ次から次へと湧いてくるのだ。そして、
「いやぁ愉しいなぁ。何より偉そうなやつの邪魔をできるっていうのがとてもいい!」
 それを盾に背後から銃を撃つ。大体本体が安全というのも永一好みだった。そうして分身を盾に、じわじわと削っていくのは、とても楽しい時間となったろう……。

大成功 🔵​🔵​🔵​

夜刀神・鏡介
この言動……まさに狂える王だな。何故こうなったかはわからないが、どうでもいい
こうして相対した以上、碌でもないことをする前に倒してしまうだけだからな

最高級であっても、使い慣れてない武器で戦える相手じゃなし。分かりやすく刀を借りよう
使う武器の種別が同じなら、戦い方も普段と変わらない。落ち着いて相手の行動を見極めて、攻撃を刀で受け流し。隙を作ってカウンターを叩き込む

とはいえ敵もなかなかの実力者。長期戦になると押し切られる可能性もあるので、一つ手を打とう
打ち合いの中で、敵の攻撃によって刀を弾き飛ばされた風を装い、相手の油断を誘う
そこから肆の型【砕牙:爆】。利剣による高速の居合い切りと連続攻撃を叩き込む


冴島・類
『たちが悪い』を
現地の状況と、空虚な笑みで察し
嘗ては存じ上げぬが

此処で確実に斃さねばならぬ、な

お借りする武装は盾と戦闘用の籠手
どちらも瓜江に装備してもらい

自身は枯れ尾花での薙ぎ払い
放つ旋風で攻撃
序盤は引き寄せる対象は指定せず
風に伴う破魔の炎自体が攻撃手段と認識させたい

相手の剣の軌道は見切り
瓜江の盾によるかばいで命中を避け
攻撃手段を注視

王冠から何か放たれている?
隙を狙い、攻撃する先の軌道に入れ
王冠対象にし引き寄せ
瓜江の籠手に破魔の力込めた打撃で破壊を狙い
攻撃手段を抑え
戦況の有利に繋がれば

あなたに奪われなければ
この地の方にあって然るべきだった平穏を
褒章呼ばわりは、違う

この世界に返して
貴方はお帰りを



 冴島・類(公孫樹・f13398)の絡繰り人形、瓜江が宙を舞った。いつもと違ういでたちの瓜江は、戦闘用の盾と籠手をラッドシティから借りて装着している。
「ふん……っ!」
「……」
 瓜江は語らない。同時にアニールの呼吸に合わせて肉薄していた。
 同時に白刃が走る。瓜江の反対側から、夜刀神・鏡介(道を探す者・f28122)が刀を一閃させていた。……ラッドシティに刀があるかどうか。鏡介は若干怪しんでいたが、どうやらちゃんとあるらしい。……無駄に刀身が紫だとか、紫煙が吐き出されるとか、そういうのじゃないちゃんとした刀である。
 正直手慣れた得物を遣いたかったので、有り難かったと言える。
 そんな二人の攻撃を、狂王は指先に紋章を描いて……弾く。その様子に、冷静に類は分析する。
「ごく小さな、結界か……」
 発動が想定よりほんの少し遅い。……猟兵の誰かが、弱体化させる結界のようなものを這っているのだと類は判断した。
「畳みかけるしかないだろう。どちらが早いか……」
 勝負だ。と、鏡介は口の中でつぶやいて。そうして刀を手早く操った。類と合わせて、確実に手数を増やしていく。なるほど、とアニールも口の中でつぶやく。
「では、これは……どうかな?」
「っ!!」
 ざっ、と紋章が描かれた。先ほどまでとは違う。そう思った瞬間、鏡介の視界が覆われる。それと同時に深紅の衝撃弾が、その「障害物」越しにぐるりと曲線を描いて鏡介の腹に激突した。
「ぐ……っ」
「瓜江!」
 即座に類が反応した。次弾を瓜江が回り込み、盾で弾く。同時に類は己自身がもっていた、銀杏色の組紐飾りの付いた短刀を抜く。自分にも、同じ衝撃弾が来ると思って、
「――!!」
 目の前に現れた「障害物」。
 それは、もはや命ない、肉片と化した人々の死体だった。
「済まない、下がる!」
「ああ!」
 思わず、類は声を上げて後退していた。鏡介も同様だった。その「障害物」は狂王の身を守るように立ち塞がる。……とっさに切り伏せることは、出来なかった。すでにそれが、死んだ人であったとしても。それは、何の罪もない殺された人であったから。
「ああ。いい反応だ。取れると思ったのだがな。なかなかに見どころがある」
「見どころ……」
 呟いた。叫びそうになるのを類は堪える。何を叫びたいのか、自分でもわからなかったけれども、
「……」
 たちが悪いと。思った。ぎり、と瓜江を持つ絡繰り糸を引き絞る。一瞬の呼吸の後、類は瓜江を飛ばした。
「嘗ては存じ上げぬが……此処で確実に斃さねばならぬ、な」
 一瞬で迷いを捨て、愛刀の枯れ尾花を振るうと、破魔の炎が飛び出て、かつて人であったものを燃やし上げた。その炎をかいくぐるかのように、瓜江を走らせる。
「この言動……まさに狂える王だな」
 鏡介もまた、態勢をすでに整えていた。目の前に塞がる死体を切り捨て、その屍を超えて先に、進む。
「何故こうなったかはわからないが、どうでもいい……。――これ以上、碌でもないことをする前に倒してしまうだけだ」
 静かな、言葉だった。静かな言葉の中に、鏡介は怒りを滲ませる。……ふと。目の前の死体に刃を巻き取られたかのように、刀が鏡介の手から離れた。
「おや。その言葉の割には、得物が手の中にないようだが?」
 それを狂王も見て取ったのだろう。狂王が刀をさらに遠くに弾き飛ばそうと、衝撃弾を放った……その瞬間。
「こちらが……疎かになってますよ」
 類が狂王の目の前に迫っていた。類は鏡介の狙いを正しく理解していた。狂王が類の方に目をやる。動きを止めようと王冠が輝く……その前に類は狂王に向かって枯れ尾花を向けた。
「む……!?」
 狂王の体勢が崩れる。頭が引っ張られ、その王冠が類の方へと傾いた。
「ひとつ、封じる」
 瓜江が即座に動いた。籠手でその王冠に手を伸ばし、粉々に破壊する。……完全とはいかなくとも、これで力を削ぐことは出来る、はずだ。
「あなたに奪われなければこの地の方にあって然るべきだった平穏を、褒章呼ばわりは、違う」
 「この世界に返して……貴方はお帰りを」そう、丁重に言う類に狂王は何か言おうとするが、その隙を鏡介が逃すはずもない。
「噛み喰らい、爆ぜ砕く――肆の型【砕牙:爆】」
 既に刀は鏡介の手の中に戻っていた。……そうして、三度。今度は壁を作る間もなく、その喉笛に刀を突き立てる。
「この……小癪な奴らが……!!」
 血の代わりに黒い塵のようなものが喉元からしぶく。……そうして狂王は、初めて。苛立ちのような声をあげた……。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ウルザ・ルーナマリア
マウザーの姉ちゃん(f38913)と

なんつー酷い…同族こんな風にするのが王ってヤツなのか?
意味もなく?…わかんねー!
でもアレを倒さなきゃもっと酷いことになるんだろ。…頑張る。

借りるのは三叉銛を持てるだけ。
暗闇照らすランプも。
狂王と相対したら距離を取りつつ銛を投擲して牽制、一気に削られないよう立ち回る。
ランプは点灯、野生の勘で致命傷だけは読んで回避。
…余波で恐怖が膨れ上がるかも。
一方的に蹂躙してくる恐ろしい、人間というもの。
まともに見たくない…でも、倒さなきゃだから気合い入れて真っ向から見据えUC起動。
ばらまいた銛の先からも放たれる冷気を当て網で縛り、でっかいの叩き込むぜ!

※アドリブ絡み等お任せ


マウザー・ハイネン
ウルザ(f39111)と

来ましたね最悪の人間が。
少々刺激的すぎ…が、きっと知らねばなりませんから。

お借りするのは銀のガンナイフ。
王のオーラ…私も(不本意ですが)都市国家の女王ですので気を強く持ち耐えます。
余波…いや素でウルザが少々怯えているようですが…大丈夫、あんな悪意で出来てるとしか思えないような屑はそうそう居ません。
それに敵は生物、息を止めれば死ぬのです。王でも貧民でも。
…恐ろしくとも目を逸らさず、正しく見て為すべき最善を尽くすのが私達エンドブレイカーなのですよ。
助言しつつ氷細剣で攻撃受け流し、攻めれる機会にUC起動、回復支援しつつ借りた銃でデモリッションブラストを。

※アドリブ絡み等お任せ



 風が吹いて、血の匂いが遠くにまで流れてきていた。
「来ましたね最悪の人間が」
 マウザー・ハイネン(霧氷荊の冠・f38913)は首を横に振る。隣にいたウルザ・ルーナマリア(月に泳ぐ白き獣・f39111)は、呆然と目の前の光景を見つめていた。
「なんつー酷い……同族こんな風にするのが王ってヤツなのか? 意味もなく?」
 老いも、若いも、男も、女も。ただ等しく血だるまになって転がっている。最早嘆きも聞こえない。死に絶えた冷たい風が吹き、血の匂いを周囲にまき散らしている。
「……わかんねー! なんでそんな、ことすんだよ!!」
 ウルザは叫ぶ。その叫び声に狂王の方も気付いたのだろう。ちらと視線をウルザにやる。
「何故か」
 そして、
「特に意味などないな」
「……!」
 声とともに。血の匂いとともに。吹きすさぶその、残忍な気にウルザは思わず唇をかむ。
「(少々刺激的すぎ……が、きっと知らねばなりませんから。この世に、このような生き物がいるということを)」
 絶句したウルザに、マウザーは肩を竦める。アニールの所業は、エンドブレイカーであればまあ、知っているものも多いので。許せはしないのはもちろんだが、彼女にとっては想定の範囲内の出来事であった。
「……大丈夫、あんな悪意で出来てるとしか思えないような屑はそうそう居ません」
 あんなのいっぱいいたら困る。そう淡々と言いながら、マウザーは銀のガンナイフを握りしめてその機を堪える。……すでに猟兵の援護により、その王冠は砕かれ妨害の結界が作られていた。地面には狂王の血の代わりに大量の黒い塵が転がっている。不本意ながらも都市国家の女王を名乗る気はないがそうなっているマウザーは、その威圧感に耐えることが可能だった。
 だが、ウルザは。ちらりとマウザーはウルザの方に目をやると、
「アレを倒さなきゃもっと酷いことになるんだろ。……頑張る」
 ウルザもまた、決意を込めて小さく頷いた。……どうやら耐えたようであった。
「敵は生物、息を止めれば死ぬのです。王でも貧民でも。……恐ろしくとも目を逸らさず、正しく見て為すべき最善を尽くすのが私達エンドブレイカーなのですよ」
「うん!」
 頷いて、ウルザは手にしていた三叉銛を構える。暗闇を照らすランプとともに、ラッドシティの長老からありったけ借りてきたものであった。
「まずは止めてやるぜ!」
 投げる。投げると同時にマウザーは走った。アニールが空中に紋章を描き出す。放たれた深紅の衝撃弾が、跳ぶ三叉銛を撃ち落とした。
「まだまだ!」
 だが、それくらいではウルザも怯まない。狂王が逃げる隙もないくらいどんどんと、三叉銛を投げつけていく。大抵のものは撃ち落とされるが、当たったものは先端から凍てつく冷気を放ち敵の動きを拘束するように包み込んだ。
「そら」
「……っ!」
 しかし同時に、深紅の魔弾が飛ぶ。それを体で受けると、前進に痛みがはじけ飛ぶ。
「……でも、倒さなきゃだから……!」
 それでも。ウルザは真正面から敵の姿を見据えた。
「でっかいの叩き込むぜ!」
 何度目かわからない三叉銛。それを投擲する。狂王の腕に突き刺さったそれは、彼の動きそのものを鈍らせる。
 だが、その程度か。そう、アニールは言おうとした瞬間、
「この程度苦難ですらありませんよ」
 マウザーが目の前に立っていた。……この隙を、待っていたのだ。マウザーは銃を構える。
「動ける限り、前進しましょう?」
 ガンナイフから、マウザーは巨大な魔力の奔流を放った。それは光線となって狂王の胸を貫いた。
「そう……来るか!」
「ええ。そして、まだまだ行きますよ」
「マウザーの姉ちゃん、おれも、頑張るよ!」
 呻くような。どこか可笑しそうな狂王の声に、油断なくマウザーは銃を構える。戦いは、まだ始まったばかりだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

鏡島・嵐
【旅神】
やれやれ。余興で人殺しとか、とんでもねえ王サマも居たもんだ。
おれもテメェみたいなのの臣下になった覚えは無えからな。敬意抜き、対等でいかせてもらうぞ。

ラッドシティ謹製の最高級スリングショットを拝借。
……スリングショットで最高級とかあるとかびっくりだ。いやまあ、おれから見ても確かにすごい業物なんはわかるけど。
設計思想は残しつつ、自分の手に馴染むようにちょっとだけ〈武器改造〉しとく。

《我が涅槃に到れ獣》でクゥを召喚して騎乗。
前に出る詩乃を〈援護射撃〉でサポートしたり、〈目潰し〉〈マヒ攻撃〉で相手の攻撃を妨害したり。好きにはさせねー。
矛先がこっちに向いたら〈第六感〉を活かして〈見切る〉。


大町・詩乃
【旅神】

余興で人々を殺めるなんて許せません。
貴方の王位など人の間での約束事、私には通じませんよ!

扇を二つお借りして両手に持ち、前に出て嵐さんと連携します。

真紅の衝撃波は扇を振るって作り出した衝撃波で相殺し、余波は大型化した天耀鏡による盾受けで防ぎます。
一つは自分を、もう一つは嵐さんをかばいます。

剣による攻撃は見切り・ダンスにて舞うように回避します。

恐怖のオーラは結界術・高速詠唱・オーラ防御にて、嵐さんまでカバーできるオーラ結界を形成して相殺します。

扇で招いた雷(雷の属性攻撃・神罰・全力魔法・高速詠唱・貫通攻撃)を狂王に撃ち降ろし、更にダッシュで近づいて《改心の一撃》を放ちます。

悔い改めなさい!



「やれやれ。余興で人殺しとか、とんでもねえ王サマも居たもんだ」
「余興で人々を殺めるなんて許せません。貴方の王位など人の間での約束事、私には通じませんよ!」
 鏡島・嵐(星読みの渡り鳥・f03812)は思わずそう呟いた。隣では大町・詩乃(阿斯訶備媛・f17458)が憤慨している。
「そうだな。おれもテメェみたいなのの臣下になった覚えは無えからな。敬意抜き、対等でいかせてもらうぞ」
 嵐にも詩乃の怒りはよくわかる。頷いて、借りてきた武器に目を落とす。
 ちなみに何を借りてきたかというと、「ラッドシティ謹製の最高級スリングショット」だ。
「……スリングショットで最高級とかあるとかびっくりだ」
「私の方は扇ですけれども……こちらはなんとなくわかりますね」
 材質とか、飾りとかが高級な扇である。後強度がすごくてこれで殴り合えるらしい。それなのに軽いというのが自慢だと武器を貸してくれたお爺さんが笑っていた。
「いやまあ、おれから見ても確かにすごい業物なんはわかるけど。これで殴り合えそうなのもわかるんだけど」
『折角です! 弾がなくともビームが出るようにいたしましょうか! それとも鈍器に変形して撲殺できる方がいいですかな!?』
 なんて、嵐も武器を借りた爺さんの言葉を思い出し、ちょっと苦笑した。撲殺はさすがに怖いけれども、ビームもいるかいらないかって聞かれるとあんまり、いらない。だけど強度が上がって軽量化されたのはいいことなので、許可を得て自分用にほんの少しカスタマイズしておく。
『もしよろしければこのたびの記念にお持ち帰りくださいませ!』
 とか言ってたなあ、と嵐は思い出し、同じことを思い出したのだろう、詩乃も扇に目を落とした。
「でもこの不思議なにゃんこさん柄の扇、ちょっとかわいいです」
「そっか? 高級な感じしないけどなー」
 嵐の言葉に詩乃は笑う。「では、行きましょうか」というと、嵐も小さく頷いた。
「我ら光と影。共に歩み、共に生き、共に戦うもの。その証を此処に、その連理を此処に。……力を貸してくれ、クゥ!」
焔を纏った黄金のライオンを嵐は召喚して騎乗する。
《我が涅槃に到れ獣》でクゥを召喚して騎乗。
「好きにはさせねー」
「はい!」
 嵐の前に詩乃は前に出た。借りていた扇を両手で持ち、血の魔法陣を乗り越えて走る。
「!」
 狂王の指先が紋章を描き出す。呼び出されたのは衝撃の魔弾だった。深紅に輝いている。
「そこだ!」
 嵐はスリングショットでその手元を狙う。攻撃の狙いが、ぶれる。
「せい!」
 揺らいだ弾丸を、詩乃の扇が叩き落とした。落としきれない魔弾は、即座に詩乃は宙に浮いて詩乃に従う一対のヒヒイロカネ製の神鏡を展開する。
 ひとつは嵐に。もう一つは詩乃に。盾のように展開したそれで、詩乃は魔弾を防いだ。
「ほう」
 狂王の声はどこか面白がっているように聞こえた。衝撃波の次には波のようにオーラが走る。既に仲間の猟兵により妨害の結界が張られ王冠が壊され、弱体化されているとはいえ、それは充分な脅威であった。
「なんの……!」
 結界を張り、耐えつつ詩乃は走る。扇で雷を招き、それを撃ち下ろしながらも、
「悔い改めなさい!」
 雷が輝く隙に狂王の直近まで走り、そして躊躇いなくぶん殴った。
 即座に追撃のように嵐もスリングショットを放つ。
「そのまま、押し込もうぜ!」
「ええ!」
 この程度で改心する相手出ないことは二人も重々承知している。ならば数で圧すまでだ、そうして反撃の隙すらも与えぬよう、二人は攻撃を続けるのであった……。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

桂・卯月
手の内に収まるサイズの紫煙銃を借り受けたい
ご厚意に感謝する
必ず、応えよう

・心情
月帝姫は王に入るんだろうか
まあ、俺の振る舞いで向こうが勝手に判断するだろう

確かに貴様を倒せば一時的に平穏だ
だが、そも平穏とは都市の住民が積み上げる時間そのもの
退屈な貴様に所有出来るわけがなく、あまつさえ褒賞とは片腹痛い

・行動
左手に目立つ神火とブロッケン・ミラーで、右手の内に借りた銃を隠す
ブロッケン・ミラーは、衝撃波か剣による攻撃ギリギリに具現化する
複数枚を重ねて防ぐ間に離脱

神火で攻撃しつつ密かにUCの霧で剣の打撃力を奪い続け、弾丸一つに全て注ぐ
余興の対価をくれてやろう
都市の結晶だ

……魔法以外の遠距離手段も良いものだな



 桂・卯月(ルナエンプレスのブロッケン・f37506)は己の手の中にある紫煙銃を握りしめた。
「……ご厚意に感謝する」
「いえいえ。皆様の為とあらば、支援は惜しみません!」
 小さな。手の中に納まるような銃を借りた時、卯月はそんな会話をした。調子のいい長老にも、卯月は丁寧に礼を言う。
「必ず、応えよう」

 ……その紫煙銃が、手の中にあった。
 期待には、応えなければいけない。右手に紫煙銃を隠し、卯月は月の魔力によって燃え続ける神火を左手に持つ。より、紫煙銃を気付かれにくくするためだ。
「気のいい方々がいる街だ」
 さて、月帝姫は王に入るかどうかはわからない。
 だが、そう考えてばかりいても仕方がないと、卯月は戦場に飛び込んだ。
「一手、お相手願おう」
「ほう。すぐに潰されぬよう、気を付けることだな……!」
 すでに猟兵と交戦を開始していた狂王は、凶器の王冠は壊れ、前進から大量に黒い塵を流していた。あれは血の代わりだろうか。
 だというのに、その力はいまだ健在のようであった。恐怖のオーラは威力は削がれていても重圧となって卯月を襲う。……それを冷静に跳ねのけながらも、卯月は神火をぶつけておく。
「確かに貴様を倒せば一時的に平穏だ。……だが、そも平穏とは都市の住民が積み上げる時間そのもの」
 連続して神火を作り出し、それをぶつける。狂王が紋章を描き出す。深紅の衝撃弾が弾丸のように放たれて、
「退屈な貴様に所有出来るわけがなく、あまつさえ褒賞とは片腹痛い」
 即座に卯月は長方形の鏡を展開した。鏡を複数周囲にばらまくことによって、目標を惑わし、或いは盾にする。
「ふむ。それはどうかな。……愚昧な民に作り出せるものなど何もない。あれらはただ、無為に消費していくだけの者よ」
「……その考えがある限り、お前は俺たちには勝てない。……散り、参じろ」
 こうしてそう、油断するからだ。
 そこまで、卯月は言わなかった。……言う義理はなかった。
 卯月は原初の霧を展開する。触れた敵から力を吸収する霧だ。剣の一撃を鏡で逸らし、そして卯月は右手を閃かせる。
「余興の対価をくれてやろう。……都市の結晶だ」
 借りたばかりの紫煙銃が放たれる。
 それは的確に狂王の喉を貫いた。
「ぬ……!」
「まだまだ」
 重ねる。隙を見つけたら逃しはしない。卯月は銃を撃ち続けた。血の代わりに黒い塵が落ちる。……強い。
「(……魔法以外の遠距離手段も良いものだな)」
 この銃、強い。卯月は思わず心の中でそう呟く。
 今まで縁がなかった武器は、まるで卯月が最初から持っていたかのようにたやすく動くのであった……。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ルシエラ・アクアリンド
何となく彼がが差し控えた感想という物が分かるような
なんて言ったら烏滸がましい気もするけれど
…ちょっと誰かさんを思い出すなあと想い出の中の顔を探し

浸るのも程々に
時計の音が心地よいあの街へ

武器は小さめの紫煙銃を貸して貰えれば
…ハンクス長老は特に力入っているんだろうなあ

何時も通りの動きが基本
だからこそ銃も扱えるのだけど
UCを使用し足止め狙いつつ回復と攻撃の場を展開
効き目を強くする目的で結界術と精神攻撃織り交ぜる
攻撃は空中機動、第六感、気配察知や軽業で避けつつ隙を作れる様に
魔力溜めての銃で空中からも攻撃が出来れば狙う
不意打ちや2回攻撃を囮にしつつ効率よく動く

私は勇者ではなく見守りたい物が多い只の人だよ


シン・コーエン
犠牲者達に「間に合わなくてすまない」と詫びる

このラッドシティは俺の生まれ故郷
決してお前が治める土地では無い
故に王などと認めん、単なる殺人鬼として処分する!
(右手に灼星剣、左手に村正を構える)


相手の攻撃は第六感・心眼で読んで対応
【真紅の衝撃波】は灼星剣と村正を振るっての2回攻撃・衝撃波で相殺
【剣】は見切りで回避
【恐怖のオーラ】は結界術・高速詠唱による防御壁とオーラ防御・狂気耐性で防ぐ

UC:灼星凄雨を使用
130本の灼星剣の複製と、10本の透明な灼星剣の複製を創造。
130本で頭上及び前後左右から連続攻撃して対応させ、透明な10本が地を這うように迫って両足を切断。

次の瞬間、全剣による串刺し刑に処す。



 ルシエラ・アクアリンド(蒼穹・f38959)はなんとなく、懐かしいものを見るような目をしていた。
 少し、見知った人の顔を見つけた……気がしたからだ。顔自身は、さほど似ていなくとも。纏う雰囲気や言い回しが、とても懐かしかった。声はかけなかった。今はそんな場合ではないとわかっていたからだ。
「……ハンクス長老は特に力入っているんだろうなあ」
 同時に。借りてきた小さめの紫煙銃に目を落とす。……長老もまた健在のようで。ご機嫌にテンション高く銃を貸してくれたのだ。
 そんなささやかな、懐かしい心地も転移をした一瞬のこと。……時計の音が心地いいあの街は、一瞬にして風に血の匂いを孕んだ。懐かしい景色は、一気に惨劇の色とともに現実の世界としての形を持った。
「間に合わなくてすまない……」
 不意に、悔恨の台詞が聞こえてきてルシエラはそちらに意識を向ける。
 シン・コーエン(灼閃・f13886)がその血まみれの魔法陣を前に、僅かに、祈るように目を伏せていた。
「俺が、他の世界を旅している間に……。いたら、出来ることもあっただろうに」
「あなたの……せいではないよ」
 優しく言った、ルシエラに、シンは首を横に振る。
「ああ。自分がいたらなんて、烏滸がましい台詞であることは分かっている。だが……このラッドシティは俺の生まれ故郷なのだ」
「そう……」
 それは、辛いだろうと。言いかけて、ルシエラは言葉を飲み込む。それはルシエラが言葉を発する前に、シンが顔を上げたからだ。
「ここは、決してお前が治める土地では無い。故に王などと認めん、単なる殺人鬼として処分する!」
 右手に深紅に輝くサイキックエナジーの剣を。そして左手には美しい日本刀を構えて、シンは血だまりの向こう側に立つ男にそう、宣言した。
「ほう?」
 いかにも可笑しそうに、狂王は答えた。いかにも可笑しそうに。……楽しそうに。
「よかろう、勇者よ来るがいい」
「ほざくな……!」
 大仰に。まるでこれが芝居の一つだとでもいうように。高らかに両手を掲げて宣言するアニールに、シンは地を蹴った。
「……どうか力を貸して頂戴ね。みんなを助けて」
 そこに、即座にルシエラが蒼い空間の檻を展開する。いつも通り。味方には癒しを。敵には捕縛された感覚を与え、混乱させる風が吹く。
「……基本が大事」
 今日は結果術を比較的強めに。突っ込んでいくシンのフォローに回ることにする。そうしてルシエラは走り出した。
「行くぞ!」
 同時に、シンも走っていた。狂王が指を向ける。一瞬で文様を描き出す。
「なるほど、なかなかに勇敢と見える!」
 衝撃波を伴った魔弾が飛ぶ。真正面、シンは二刀を振るった。刀で魔弾を斬り裂く。
「……っ!」
 相殺した。剣を握る手に、凄まじい衝撃が走る。ダメージはぎりぎりまで殺したが、重い。
「……オーラ、展開……っ」
 即座に両手にまでオーラの防御を展開させる。その一瞬の隙をついて、再び狂王が紋章を描き出す。
「……させないよ」
 しかし、それは紫煙銃の弾丸によって阻まれた。ルシエラが銃弾が狂王の指を射抜く。即座に反撃のように空中から作り出した剣が飛ぶが、それを紙一重でルシエラは避けた。
「捕まらないよ」
 身のこなしには自信がある。そしてルシエラは無理せずに、魔弾を一つずつ対処して避け、銃弾を撃ち続けていく。なかなか捕まらないルシエラに若干苛立ちを感じたのか、深紅の魔弾が次々とルシエラに降り注ぐ。
「正面が……お留守だな。我が剣よ、全てを滅ぼす凄雨と化し、天空を駆け、大地に降り注げ!」
 その隙をシンが見逃すはずがなかった。深紅に輝くサイキックエナジーの剣の複製を作り出した。無数の剣が、アニールに降り注ぐ。深紅の剣は魔弾により撃ち落とされるが、その数は多い。
「串刺し刑に処す!」
 一部が足を狙い、そして全身を串刺しにしていく。ルシエラもまた、無言で結界の力を強くした。動きを封じ、数多の剣が狂王の体を貫く。
「は……ははははははははは! なかなかに愉快! やはり貴様らは、見どころがある!」
 狂王の哄笑が響く。血の代わりに大量の黒い塵をまき散らし、アニールは狂ったように高らかに笑う。
「……私は勇者ではなく見守りたい物が多い只の人だよ」
 ルシエラは応えない。その余興に付き合う気はない。ただ淡々と、銃を撃つ。
 大地には血に混じり、おびただしい黒い塵が流れていく。狂王はいかにも楽しそうではあるが……、余興の時間も、じきにおわると。二人は直感的に感じ取っていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ヴァニス・メアツ
『魔法陣』とやらを見、己の表情が険しくなるのが解る
狂王、貴方は蘇る都度に多くの命奪わずにいられないのか
ぶち壊される前にぶち壊しますよ
貴様も、悲劇も

言うだけ言ったら遺跡の地形を利用し壁を蹴って天井へ
そこそこ複雑な遺跡だ、身を隠す場所など幾らでもある筈
接近しての追跡は王様には無理でしょう
スカイランナーは都市内の戦いに向いてるんですよ

居場所悟られぬ様に愛用の紫煙銃で跳弾攻撃
狂王が魔法陣と一直線上に立った所で借りてきた紫煙ライフル構え狙い定め
UCに昇華したこの技、受けてみろ
遺跡に損害与えぬ様にぶっ放つ
そのクソな魔法陣は全部破壊してやる

確かに威力も命中も凄いな……今度私の銃もカスタマイズして貰いますかね


クロービス・ノイシュタット
他所から勝手に来といて、なァに居丈高な
楽しませる気など無いよ
…退屈する暇も無いだろうけど

最高級武装…
護りとかイケる?
こう、ダメージ軽くしてくれますよー的な外套とか
要は消耗には留意
視線や体の向き・動き
剣にかける手、腕の振り、踏み込み、等々
見切って、身軽さ活かして回避に繋げて
易々やられるつもりは無い…けど
端から|終焉らせる《殺る気》は満々だしなぁ…

俺も大概お綺麗な方じゃ無いが
アンタほど傍迷惑な趣味してないんだよね
自分のヒマくらい自分一人で何とかしなよ
それくらい出来ずに何が王だ

挑発に乗ろうと
哄笑し酔おうと
精彩を欠けばいい
退屈凌ぎの技なら、更に
死角に踏み込み、一閃でも多く――
薔薇の剣戟を差し上げようか



 戦場に足を踏み入れた瞬間、ヴァニス・メアツ(佳月兎・f38963)の表情が厳しくなった。
 目の前に広がる『魔法陣』という名の惨劇は、到底許せるものではなかったからだ。
「他所から勝手に来といて、なァに居丈高な」
 ヴァニスと同じような心境だったのだろう。クロービス・ノイシュタット(魔法剣士・f39096)が思わずそう吐き捨てる。その声に微かに頷きながら、
「狂王、貴方は蘇る都度に多くの命奪わずにいられないのか」
「然り。それが王という生きものであり、それが狂気というものである」
 答えがないと思っていた。その語り掛けに返答があった。……勿論納得できるものではない。狂王の目がこちらを向いていた。すでに猟兵の攻撃を数多く受けているはずだが、その姿は健在……に、見える。傷はついてはいないが、血の代わりとなる大量の塵がすでに地面にまき散らされていた。
「今、我が最も厭うのは退屈である。この命は、面白くなさすぎる」
「……勝手ですね」
 
「楽しませる気など無いよ。……退屈する暇も無いだろうけど」
 クロービスがアイスレイピアを構え、ヴァニスは僅かにクロービスに視線をやった。それだけで通じたらしい。クロービスが小さく頷いたので、
「ぶち壊される前にぶち壊しますよ。貴様も、……悲劇も」
 クロービスが走る。まっすぎに正面向かって書けるのに合わせて、ヴァニスは大きく後退した。正面切って戦う気は、ない。
「ぬ……」
「ほら、こっちだ!」
 さすがに狂王も、それを許すつもりはなかった。しかし指先を向けようとした瞬間、クロービスが正面まで肉薄する。
「俺も大概お綺麗な方じゃ無いが……アンタほど傍迷惑な趣味してないんだよねっ」
 紋章が描かれる。深紅の衝撃弾が連なりクロービスに打ち込まれるのを、クロービスは外套を翻して受ける。
「うん、さすがラッドシティの最強武装、守りも完璧だ……!」
 人体すら貫通する魔弾が殴られて痛いくらいにとどまっていた。そして流れるようにクロービスは一歩下がる。鼻先を剣が通過する。
「自分のヒマくらい自分一人で何とかしなよ。それくらい出来ずに何が王だ」
 もっとも、その何とかするの結果かこれなので、笑えないんだけど、とクロービスは口の中で嘯いた。魔弾が放たれ、同時に振るわれる剣をクロービスは己のレイピアで相対する。すでに王冠は破壊された。あと少し……、
「易々やられるつもりは無い……けど、端から終焉らせるは満々だしなぁ……」
「ふむ……なかなか粘る奴よ! だが、それでは我を倒すことは出来んぞ?」
 レイピアを衝撃弾で弾きながら、狂王が嘯く。クロービスは目を細めてただひたすら己の剣を振るう。
「(油断してればいい……今は)」
 今は。クロービスはその攻撃をさばきながら、そんなことを思った。
 既に敵は、目の前から消えた男のことなど忘れ去っているだろうと……。
「(そうやって、何でも油断するから、足元掬われるんですよ……っと)」
 クロービスがそんなことを思い、捌き損ねた剣が守りの外套をとらえた時。
 銃声が響いた。

 ヴァニスは市街地の中で場所を探していた。
 スカイランナーの身としては、接近戦で狂王と取っ組み合って殴るような事態は避けたかったのだ。
 クロービスを囮のようにして隠れることには若干気が引けたが、一瞬目が合ったとき、確かに彼は大丈夫だと言った。
 だからヴァニスは走っている。
「ここ……いや……」
 もしも追いかけてくるようなら、愛用の紫煙銃で跳弾を利用した攪乱をする予定であった。
 けれども、「逃げ出した塵芥」のヴァニスに、すぐに興味を失ったのだろう。
 彼は追ってこなかった。既に狂王アニールは、ヴァニスがいたことを忘れているかもしれなかった。
「そういう慢心するから、ころっとやられるんですよ」
 若干綺麗じゃない言葉を使って……ヴァニスは遺跡群を駆けあがる。
 そして見つけた。……建物と建物の間に挟まれるようにある。誰にも気にも留められないような隙間を。
「……」
 慎重に、借りてきた紫煙ライフルを構える。丁度一直線。狂王と、魔法陣が一直線に並んでいた。
「そのクソな魔法陣は全部破壊してやる。クソみたいなあんたと一緒にな」
 思わず地が出て、狙いを定める。……不意に、
「……!」
 クロービスが、しゃがんだ。転んだようにも見える。狂王が、好きを得たと剣を振り上げる。けれども彼は確かに、
「……所詮、壊れぬ存在など有り得ないと言う事です」
 クロービスを見ていた。それに気づいた瞬間、ヴァニスは引き金を引いた。
 銃声は一度だった。一度で見事に、その狂った王の眉間をヴァニスは撃ちぬいた。

「な……っ」
 銃声がした。狂王からすれば全くあずかり知らぬところで放たれた銃は、見事彼の眉間を貫いた。
 その一瞬でしゃがんでいたクロービスが踏み込む。幻の薔薇を放ちながら、狂王の心臓を呟いた。
「は……そうか。……そうか! 見事だ……!」
「いいから死んでてよ」
 もう一度、銃声。それに合わせるようにクロービスの薔薇の剣戟が捉える。
「俺たちは……暇じゃないんだよ」
 全身から黒い塵のようなものをまき散らし、狂王は倒れる。魔法陣はヴァニスの銃弾により吹き飛ばされた。元が人体であったからだろう。それは塵とならずに砕け散り……、
「死……。死か! はは。ははははははははは!」
 そうして。それは地に伏しそうな体を起こした。その淵で踏みとどまった。
「なんとも愉快! これを死と……死と申すか! ならば」
 拒まねばならぬと、王は笑った。
「……うぜぇ」
 思わず、ヴァニスは舌打ちした。遠くからでもその狂気を孕んだ声はよく聞こえた。耳障りだというように、彼は首を横に振る。
「付き合う気はないよ。ただ……」
 淡々と倒すのみだと。クロービスはアイスレイピアを振るう。手早くヴァニスも弾丸を打ち込んだ。
「確かに威力も命中も凄いな……今度私の銃もカスタマイズして貰いますかね」
 とはいえ、崩壊は時間の問題であろう。最後の最後まで気を緩めず、二人は攻撃を続けるのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

シキ・ジルモント
ラッドシティ製の武装を借りて挑む
よく見る拳銃型の紫煙銃だが、変形が可能のようだ

通常時は紫煙を変化させた弾を撃ち出す形態
そこからグリップを操作すると銃身が変形、奥に仕込まれた特殊機構から一度だけ、凝縮した魔力をレーザーのように撃ち出せる
銃身を変形させる事で効率的な魔力の射出が可能となり威力が向上した…らしい
しかし威力の代償として魔力レーザーを撃てるのは一度だけ、無駄撃ちは出来ないな

戦闘開始後、即ユーベルコードを発動
敵の剣を振る動作、衝撃波の発動を見逃さず、まずは回避を優先する
剣であれば刃へ紫煙弾を撃ち込んで軌道をそらす
衝撃波は後方や上へ跳躍し範囲から退避する

回避の直後に紫煙弾を撃ち反撃を差し込んでいく
剣を扱う腕や、体を支える脚を狙ってダメージを重ねる
焦らず着実にダメージを重ねて動きを鈍らせたい

ダメージを蓄積させてから銃を変形
本命の魔力レーザーの射出により大ダメージを狙う

奴を楽しませるつもりはないが手は抜かない
更なる犠牲を出さない為だ
…これまで殺された者達の無念も、これで少しは晴れるだろうか



「……これにしよう」
 その時、シキ・ジルモント(人狼のガンナー・f09107)が手に取ったのは、拳銃型の紫煙銃であった。
「ほうほう。これは面白いものを選ばれましたな!」
 長老がそれを知って、楽しげにそんなことを言ったのを覚えている。
「楽しい、か……まあ、確かに」
 どうやら変形が可能なようだ。こういう武器は若干、心躍らせる人もいるだろう。……まあ、シキにはあまりそういう感情はなかったのだけれど。
「この射出は……一度だけ、か」
 銃身を変形させる事で効率的な魔力の射出が可能となり威力が向上した……らしい。
 しかし威力の代償として魔力レーザーを撃てるのは一度だけ。
 これもまた、効く人が効いたら胸躍る話だろう。生憎とシキが思ったのは……、
「……無駄撃ちは出来ないな」
 どうせなら無限に撃ちこめるようにしてくれれば仕事がしやすかったのにとか、そんなことだったという。

 そうして無言で、シキは戦場を駆けていた。
 狼の耳をピンと立て、まずは回避を優先している。
 狂王もまた、戦場を把握している。他の猟兵ほど積極的に交戦しないシキの方にもまた、時折牽制するように紋章を描き出し深紅の衝撃弾をたたきつけた。
「(近寄るのは……避けた方がいいな)」
 他の猟兵たちと斬り合っているときも、剣を振るのを見ればそこに弾丸を叩き込み牽制し、他の猟兵に向けて紋章を描こうとすればその指を撃って行動を遅らせた。
 しかしながらなるべく回避に専念し、シキは攻撃は可能な時のみ、そして主に妨害を主とし、時々反撃を差し込む程度にとどめている。
「……」
「……」
 愉快な王だ。きっと戦いが好きでたまらないらしい。
「忌々しい、虫がいるな……?」
 だからこそ、奴を楽しませる気は毛頭ない。
 徹底的に、嫌がらせをする。その間にも狂王は他の猟兵と斬り合い、大量の血の代わりに塵を吐き出した。魔法陣は排除されて、徐々に追い詰めていく。
「(……まだだ)」
 それでも、シキは耐えた。ただ淡々と、的確に。見極め、衝撃波の発動動作を見れば後方に下がってそれを躱した。近づこうとしてくるのであれば、足元に牽制弾を撃ち込んで後退していく。
「(……まだ、だ)」
 耐える。相手のダメージが蓄積するまで耐える。そうしてついに、黒い塵をまき散らしながら倒れた……かに見えて。そしてそれでもそれが起き上がった。その瞬間、
「来たか」
「……あんたに話す言葉はない」
 いつの間にか。
 シキは狂王の前に立っていた。
「遅かったではないか。長い間ちまちまちまちまと」
 誇りはないのか、とそれは尋ねた。
「仕事に遊びは必要ない」
 そんなものは必要ないとシキは答えた。
「俺が気にしていたのは、更なる犠牲を出さないこと。それだけだ」
 例えばいざというとき、狂王が通行人を人質に取ったなら。
 例えば逃走のそぶりを見せたなら。
 最後の一撃は、残さねばならなかった。そしてそれは、決して楽しみの為ではない。
「……」
 ここで、騎士ならば言い残すことはあるかと聞くべきだろうかとシキは思った。
 けれども……聞かなかった。
 パチンと、シキは仕込まれてあった釦を押す。釦を押した瞬間、紫煙銃が変形する。通常の紫煙銃ではない。もっと大きなそれは、魔力をその銃口に溜め……、
「終わりだ」
 声とともに、狂王アニールの胴体を撃ち抜いた。
 体が一瞬にして蒸発する。残った体も塵となり消えていく。
 最後まで淡々と。相手にペースを譲ることなく。
 シキは変形した紫煙銃を元に戻した。
「……これまで殺された者達の無念も、これで少しは晴れるだろうか」
 狂った王になんて興味はない。シキがただ祈るのは、死んでいった者たちの為だけだ。
「そうであれば……いいと祈る」
 どうか、安らかに。その言葉はゆっくりと、血のにおいする風に溶けて消えていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2023年09月11日


挿絵イラスト