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エンドブレイカーの戦い⑯〜覗き、暴く者

#エンドブレイカー! #エンドブレイカーの戦い #燦然楼閣ゼルフォニア #ウリディムマ #リプレイ執筆中

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●『密告者』、再び
 復興した都市国家、燦然楼閣ゼルフォニア。その地は今、おぞましい桃色に染まりつつあった。
 空に、街道に、建物の中に。唇の形した不気味な存在が浮かんでいる。
『こんにちは、『ウリディムマ』です。かつては『密告者』とも名乗っていました』
 心に直接響く、静かな声。それは、人の心をかき乱す。
 ウリディムマは語り続ける。自分は『知的生命体の欲望から、無限に増殖できる』のだと。
 そして今、無限増殖をした上で、この世界を支配するため戻ってきたのだと。
『最早私に死角はありません。この世界を無限に増殖した私達で埋め尽くします。それはとても素晴らしい光景ですよ。ぜひ見せて差し上げたい』
 響く声は、楽しそうに。地獄のような光景を予見する『11の怪物』の一柱は、語りながらも増殖を止めないのだった。

●覗く者、暴く者
「……また、あの敵と対峙することになるなんてね」
 集まった猟兵達に、一礼した後で。ティアリア・ローゼス(青薔薇の星霊術士・f38962)はそう呟くと、大鎌をぎゅうと握り締めた。
「復興した都市国家『燦然楼閣ゼルフォニア』。ここに『11の怪物』の一柱、『ウリディムマ』が現れたわ。……エンドブレイカーにとっては、『密告者』と言った方が覚えがあると思うけれど」
 密告者。それはかつてエンドブレイカー達がマスカレイドと戦っていた頃、永遠の森エルフヘイムに封印されていた超越的悪意存在だ。マスカレイドの戦争の果てに封印から蘇ったのだが、その時は唯一の弱点である『無限増殖の開始直後を攻撃』という方法で倒された。しかし、今回はその時の反省を活かしたのか、敵はすでに増殖した状態で現れたのだと言う。
「『密告者』――いえ、『ウリディムマ』は、いまや明確な復讐心によってオブリビオン化して侵略を開始している。彼の増殖には『人間の隠れた欲望』が必要だから、人類の居住区……つまり都市国家を狙っているのね」
 ティアリアは語る、かつて『密告者』が復活した時のことを。どんどんと増える不気味な存在。それにエルフヘイムの人々もエンドブレイカーも一様に抵抗し、早々に撃破し事なきを得た。――立場の違う者達が、瞬時に結託し立ち向かう。それほどの、脅威だったのだ。
「あなた達が戦場に着くと、ウリディムマは猟兵全員の『隠れた欲望』を糧として『小さなウリディムマ』を作り出す。それは猟兵それぞれの傍に無数に出現して、どんどんと成長していくわ。やがて……完全なウリディムマの複製体へと成長する」
 成長されたら厄介だ、出現したら即座に叩き潰すのがいい。けれど、本体を倒すまで小さなウリディムマ達は無限に出現し続ける。何とか、本体のウリディムマを撃破しなければならないのだが――。
「考えられる方法は二つ。増え続ける小さなウリディムマを何とか減らしつつ本体を叩くか。あるいは……自分の『隠れた欲望』を、『隠れた欲望』ではなくしてしまうか、よ」
 ――つまり、隠さない。己が欲望をその場で叫び曝け出しでもすれば、敵は増殖するための糧を得られなくなる。実際これが確実な方法よ、とティアリアは告げて、それから眉を寄せた。
「ええ、わかっているわ。難しいことを提案していると思う。誰だって人に知られたくない欲望の一つや二つや三つ……いえ、私の話ではないけれど」
 紡ぐ言葉は、途中からごにょごにょと不明瞭になった。こほん、と咳払いして仕切り直して、それから青薔薇のグリモア猟兵は紫水晶の瞳を仲間達へ向ける。
「敵は強大よ、相応の覚悟が必要だわ。けれどこの世界を救うため……どうか、力を貸して」
 静かに頭を下げたティアリアは、真剣な眼差しでグリモアを起動する。行き先は燦然楼閣ゼルフォニア――暴く者との戦いが、そこで待っている。


真魚
 こんにちは、真魚(まな)です。

●お願い
 プレイングの受付につきましては、マスターページの「お知らせ」ならびにTwitterにて都度ご案内します。
 期間外に届いたプレイングは不採用とさせていただきますので、お知らせをご確認の上ご参加ください。

●シナリオの流れ
 第1章:ボス戦(ウリディムマ)
 当シナリオは第1章のみです。

●戦闘について
 ウリディムマは復興した都市国家「燦然楼閣ゼルフォニア」を占領しています。街中が戦場となりますが、周囲の建物や一般人への配慮は不要です。とにかく全力でウリディムマに対処してください。
 工夫しながら本体を狙うでも、開き直って欲望を暴露しながら戦うでも、やり方はお任せします。また欲望の内容は問いませんが、そのキャラにとっては深刻に秘密、と言うような内容を暴露いただく方が採用しやすくなります。ぜひ思い切ってどうぞ。小さなウリディムマは弱いです。ユーベルコードでも武器攻撃でも、一撃当てれば倒せます。ただ数がとっても多いので大変です。

●プレイングボーナス
 このシナリオフレームには、下記の特別な「プレイングボーナス」があります。これに基づく行動をすると有利になります。
 =============================
 プレイングボーナス:小さなウリディムマを即座に倒しつつ、本体に対処する/自身の欲望を隠すのをやめる。
 =============================

●その他
 ・ペアやグループでのご参加の場合は、プレイングの冒頭に【お相手のお名前とID】か【グループ名】をお書き下さい。記載なき場合は迷子になる恐れがあります。プレイング送信日を同日で揃えていただけると助かります。
 ・許容量を超えた場合は早めに締め切る、または不採用とさせていただく場合があります。

 それでは、皆様のご参加、お待ちしております。
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第1章 ボス戦 『ウリディムマ』

POW   :    抵抗を望む欲望も、私の餌となります。
【小さなウリディムマ】をレベルm半径内の対象1体に飛ばす。ダメージを与え、【言葉で指定】した部位の使用をレベル秒間封じる。
SPD   :    あなたが隠したい欲望は、何ですか?
対象への質問と共に、【対象の秘めたる欲望】から【新たな無数のウリディムマ】を召喚する。満足な答えを得るまで、新たな無数のウリディムマは対象を【欲望を奪う視線】で攻撃する。
WIZ   :    これもまた、素晴らしき光景の一端です。
【ウリディムマ】が自身の元へ多く集まるほど、自身と[ウリディムマ]の能力が強化される。さらに意思を統一するほど強化。

イラスト:タヌギモ

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

クロービス・ノイシュタット
最早私に死角は――ってか
教えておこう
それはぺんぺん草フラグだと…!

「秘密主義」だの「胡散臭い」だの「本心が分かり辛い」だの「眼鏡が本体」だのと評価を受けがちな俺…
さぞや小さいのが作れるだろう――

なぁんて思ったか、残念でしたー!
単純に何にも考えてない事が多いだけだもんねっ
隠したい欲望?
公衆の面前だから言えないだけで、対面ではよく言ってるし☆(つまりがそういう…

そう
俺は隠してやしないんだ
単に聞かれないだけでね

斬り込むのに適した箇所
意識が逸れる瞬間
攻撃前の癖
見切った全てを利用し
大小問わず手数でぶつ斬りつつ
一つくらい公言しようか?
今、一番欲してる事
それは――
君をまた|終焉さ《おわら》せることさ、密告者




 燦然楼閣ゼルフォニア。大魔女スリーピング・ビューティとの戦いの頃より復興したこの都市国家は、すでに大量に増殖したウリディムマに埋め尽くされている。
「最早私に死角は――ってか」
 大地に降り立ったクロービス・ノイシュタット(魔法剣士・f39096)は、桃色に染まる上空を仰ぎ見て呟いた。自信たっぷりにウリディムマ――かつて密告者を名乗った『11の獣』が語ったその台詞。そこにこそ勝機を見出して、彼は小さなウリディムマの先に見え隠れする本体を見据える。
「教えておこう。それはぺんぺん草フラグだと……!」
 ――かつてのエンドブレイカー達の活躍ぶりに、『ぺんぺん草も残さない』と言い出したのは誰だったろうか。強さを誇る敵こそ、エンドブレイカー達は|終焉《エンディング》を終焉させる力で屠ってきたのだ。
 地を蹴り駆け出したクロービスへ、ウリディムマの大きな瞳が向けられる。瞬間、彼の心に直接響く声がある。
『あなたが隠したい欲望は、何ですか?』
 それは、ウリディムマのユーベルコード。問いかけで秘めたる欲望を暴く力――しかしクロービスは歩みを止めず、ゆるり笑って口を開いた。
「『秘密主義』だの『胡散臭い』だの『本心が分かり辛い』だの『眼鏡が本体』だのと評価を受けがちな俺……さぞや小さいのが作れるだろう――なぁんて思ったか、残念でしたー!」
『何……ッ!?』
 声が響き、本体が僅かに体を揺らす。クロービスの周囲には、新たなウリディムマは一体も現れなかった。なぜなら、単純に何にも考えてない事が多いだけ――それを周囲に誤解されがちなのだと、彼は言う。
『まさか、隠したい欲望が、ひとつもないとでも……?』
「隠したい欲望? 公衆の面前だから言えないだけで、対面ではよく言ってるし☆」
 からっとした笑顔で、クロービスは答えた。そう、言うべき相手にはしっかり欲望だって曝け出しているのだ。それをここでまで曝す必要はない。――その暴露、お相手的には大丈夫なのか。そんな疑問が周囲のエンドブレイカーに浮かんだりしているけれど、皆そっと胸の内に仕舞った。
 藍色の鞘からアイスレイピアを抜き放ち、男はウリディムマへと迫る。周囲の小さなウリディムマが阻止しようとしてくれば、刃に属性の力纏わせて。
「Welche Farbe magst du am liebsten?」
 言葉紡いで揮えば、炎が、氷が、雷が、目玉と唇の怪物を切り裂いていく。
(「そう、俺は隠してやしないんだ。単に聞かれないだけでね」)
 彼が操るユーベルコード、その一撃は低威力だ。けれど生まれたばかりの小さなウリディムマならば、倒すのに十分な力があった。それを何度でも連続で繰り出していけば――やがて、本体への道が拓ける。
『……!?』
 最後の遮る一体を斬り捨てれば、本体たるウリディムマは大きく体を揺らした。無限増殖したって、無駄なのだ。エンドブレイカーは、そして猟兵は、必ずそれを凌駕する。
 蒼銀の刃が閃く。三属性纏う斬撃は、的確に斬り込む場所を狙って――ウリディムマの眼球に、幾筋もの傷を作っていく。
『あああああっ……!!』
 悲鳴が、戦場に立つ者の心の中に響く。震える『11の獣』を前に、クロービスは眼鏡の奥の藍色の瞳を細めて言葉を紡いだ。
「一つくらい公言しようか? 今、一番欲してる事。それは――君をまた|終焉さ《おわら》せることさ、密告者」

大成功 🔵​🔵​🔵​

七那原・望
隠したい欲望?ないですよ?もちろん欲望はありますけど、隠してないですし。

第六感と心眼と気配感知も駆使して周囲のウリディムマの挙動を見切り、攻撃を回避しつつ分離させたセプテットの制圧射撃やオラトリオ、全力魔法による範囲攻撃で殲滅を。

一つは旦那様をひたすら愛でたい。旦那様の可愛さをみんなに周知したい。だってあんなに可愛いのですもの。

そして足元から不意打ちの世界で本体を飲み込みます。

もう一つ。マスカレイドでも怪物でも猟兵でも一般人でも種族に関係なく、外道を極限まで苦しめて殺し尽くしたい。
一人残らず、生まれてきたことを後悔させて絶滅させたい。
もちろん、お前も。

ほら、隠すことではないですよね。




 七那原・望(比翼の果実・f04836)が降り立つと、周囲のウリディムマが一斉に彼女を見た。
 その不気味な視線には構わずに、望はエクルベージュ色の影『影園・オラトリオ』を操り『銃奏・セプテット』を七つに分離させて展開する。
 影は敵をまとめて飲み込み、七つの銃は銃弾の雨を降らせる。次々と小さなウリディムマを撃破していくオラトリオの少女は、自身の心に直接響く問いを聞いた。
『あなたが隠したい欲望は、何ですか?』
「隠したい欲望? ないですよ? もちろん欲望はありますけど、隠してないですし」
 即答だった。それがウリディムマのユーベルコードであると理解しながらも――オラトリオの少女は迷いなく答えて、桃色の群れの奥に隠れた本体を見つけ出す。
 魔法を放てば、ウリディムマ本体と望の間に立ち塞がる小さな怪物は消し飛んだ。そうして『11の獣』と対峙しながら、彼女はその欲望を口にした。
「一つは旦那様をひたすら愛でたい。旦那様の可愛さをみんなに周知したい。だってあんなに可愛いのですもの」
 語れば頬には朱が差して、少女は熱くなった頬を押さえる。堂々と言うことができる欲望だ、新たなウリディムマは生まれない。
 そして――次は、望が問う番だ。
「これがわたしの知る世界の在り方。お前に問います。世界に希望はあるか。それは、どのような物か。答えられる物なら、答えてみなさい!」
 凛とした声が響くと共に、ウリディムマ本体の足元から望が作り出した疑似世界が広がっていく。ユーベルコード『|世界《レ・ミゼラブル》』。悪意と絶望に包むその攻撃受けて、ウリディムマの桃色の体が大きく震えた。
『ア……アアア、ここは……! 欲望は、どこですか……!』
 唇の中の瞳が、救い求めるように動き回る。狼狽する敵へと静かに近付いて、望は再び口を開いた。
「もう一つ。マスカレイドでも怪物でも猟兵でも一般人でも種族に関係なく、外道を極限まで苦しめて殺し尽くしたい。一人残らず、生まれてきたことを後悔させて絶滅させたい。もちろん、お前も」
 ――ほら、隠すことではないですよね。薄らと微笑み浮かべた少女が見つめる中、ウリディムマは攻撃を受け続ける。彼女が知っている確かな『答え』、それがあることも知らずに。

大成功 🔵​🔵​🔵​

栗花落・澪
とりあえず自分にオーラ防御を纏い
スッとマイクを取り出し確実に言い聞かせるように拡声

身長欲しい
せめて170以上
もっと言うならこの童顔も良くない気がするよねぇ
髪伸ばしてるのは義姉の趣味だけど長髪男性ってことで妥協するとして
もっとちゃんと男物の服が似合う外見とかさぁ
勿論これ全部素直な欲望ですが何か
男が男らしさを願って何が悪い
身長もう数年止まってるんだよ願うくらい許してよばか!(八つ当たり

翼の空中戦で浮遊しつつ
えー、今時点では何体?
まぁいいや、妥協しないでおくから
オーバーキルになっても許してよね

指定UC発動
炎の鳥達の破魔、浄化攻撃でまとめて一掃狙い

…鳥さん
僕ちゃんと男の子できてるよね?(しょぼん




 周囲を見れば、桃色の怪物がそこかしこに存在する。そんな戦場に降り立った栗花落・澪(泡沫の花・f03165)は、オーラを纏いながら小瓶を取り出した。
 小瓶を振れば、花弁がひらり空中を舞う。それは瞬時に拡声マイクへと変化して――スッとそれを掴み取った澪は、上空に見えるウリディムマ本体へと言い聞かせるように言葉紡ぎ始めた。
「身長欲しい。せめて170以上」
『……!?』
「もっと言うならこの童顔も良くない気がするよねぇ。髪伸ばしてるのは義姉の趣味だけど長髪男性ってことで妥協するとして、もっとちゃんと男物の服が似合う外見とかさぁ」
 突然の吐露に、敵は動きを止めている。欲望を隠さず、曝して戦えと言うのなら。この際だから思いっきりぶちまける――!
「勿論これ全部素直な欲望ですが何か。男が男らしさを願って何が悪い。身長もう数年止まってるんだよ願うくらい許してよばか!」
 最後、昂ったあまりに飛び出たのは八つ当たりだった。澪の畳み掛けるような言葉に小さなウリディムマ達さえも硬直していて――新たな怪物が生まれる糧を断ち切った彼は、オラトリオの翼で羽ばたき上空へと浮遊した。
「えー、今時点では何体? まぁいいや、妥協しないでおくから」
 桃色を眼下に収め数を確認しようとして、やめた。あまりに数が多いし、桃色の唇のシルエットでは個体を見分けるのも難しい。掌を地上へと向けて、澪はユーベルコードを発動した。
「鳥たちよ、どうかあの人を導いてあげて」
 彼の声に応えて、周囲に現れるのは無数の赤き鳥。様々な種の鳥の姿模した浄化の炎達は、戦場へ流星のように降り注いだ。
 小さな怪物は掠るだけで燃やし、その数を減らしていく。軌道操り多くの敵を屠りながら、いくつもの炎鳥を集めて練り上げて――。
「オーバーキルになっても許してよね!」
 言葉と共に繰り出したのは、紅蓮の炎。その熱に包まれれば、ウリディムマが悲鳴を上げた。
『アアアアアッッ!』
 悶える敵に、確かな手応えを感じる。感じるけれど――澪は浮かない顔をして、ぽつり零した。
「……鳥さん。僕ちゃんと男の子できてるよね?」
 しょんぼりと、戦場に残す言葉。かわいい男の子、澪の欲望と悩みは今のところ尽きそうにないのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

フェリデル・ナイトホーク
うわあ。
一面目玉オバケだらけの光景、凄く不気味ですね…
こんなのが今以上に増える前にやっつけませんと!

…え。この小さいの、わたしの隠れた欲望から生まれてるんですか?
わ、わたしの隠れた欲望…?
も、もしかしたら…ですけど。

…その「素敵な恋がしたい」…とは、思ってます。
自分でもぼんやりしたコトしか考えてないんですが、こう、素敵な男性と出会って、色んな困難を乗り越えて、その末に永遠の愛を誓って結ばれあう…そんな恋がしたいな、って。
…こんなのでも、増殖の糧になってるのでしょうか?

…改めて口にすると凄い恥ずかしいですね!
ええい、こうなったら口封じを…!
(背の翼で【空中機動】しウリディムマ本体にUC叩き込む)




 戦場に降り立てば、周囲にいたウリディムマが集まってくる。その姿を見たフェリデル・ナイトホーク(想いの運び手・f37476)は、思わず『うわあ』と声上げた。
「一面目玉オバケだらけの光景、凄く不気味ですね……。こんなのが今以上に増える前にやっつけませんと!」
 ぐっ、と拳を握り締めてから、フェリデルは『SwallowTail』を構える。蒼く透き通った刃を揮うと、目玉の怪物達は一体、また一体と倒れていくが――その傍からまた小さなウリディムマ達が湧いてくる。これではきりがない……そう思った運び手の少女は、ふとグリモア猟兵が語っていた敵の生態を思い出した。
「……え。この小さいの、わたしの隠れた欲望から生まれてるんですか?」
 隠れた欲望を糧として、小さなウリディムマ達は生まれてくると言っていた。と言うことは、フェリデルの心に隠した欲望を曝せば糧失った敵は増殖を止めるのだろう。
 わたしの隠れた欲望……? 躊躇いつつも思考巡らせれば、思い当るものがひとつ。
「も、もしかしたら……ですけど」
 おずおずと、少女はそれを言葉にする。続けようと開かれた口は、けれど一度閉じられる。口にするか、否か。葛藤するフェリデルは、しかし最後には意を決して言葉紡いだ。
「……その『素敵な恋がしたい』……とは、思ってます」
 素敵な男性と出会って、いろんな困難を乗り越えて、その末に永遠の愛を誓って結ばれ合う――ぼんやりとしたコトしか考えていないけれど、そんな恋に憧れがあると。琥珀色の瞳で無垢なる夢を語った少女は、それから様子を伺うように周囲を見回した。
(「……こんなのでも、増殖の糧になってるのでしょうか?」)
 心に浮かぶ疑問には、彼女を取り巻く状況の変化が答える。先程まで小さなウリディムマが放っておいても増え続けていたのに、それがぴたりと止まったのだ。
 ――つまり、敵はやはりフェリデルの|隠した欲望《おとめごころ》を利用していたということで。それがわかれば一気に気恥ずかしさがこみ上げてきて、ドラゴニアンの少女は青き竜翼を羽ばたかせた。
「……改めて口にすると凄い恥ずかしいですね! ええい、こうなったら口封じを……!」
 顔を真っ赤に染めながらも、フェリデルは空を飛ぶ。風を味方につけて進めば、桃色の怪物達の向こうに見えた者――それがウリディムマの本体だと瞬時に理解して、少女は再度剣を構えた。
 とん、と。宙に大地があるかのように足でステップを踏む。それをバネのように使って、フェリデルは敵の本体へと踏み込んだ。
『!? そんな、いつの間に……!』
 狼狽えるウリディムマへ、少女は剣を繰り出す。その剣戟は薔薇の花弁を纏いながら、敵の眼球を斬りつけた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アルクス・ストレンジ
話を聴くにウリディムマとやらは
人類の敵としか言いようがねえな
なら、今回もさっさと退場させちまおう
それこそ、永遠にな

隠れた欲望…まあ、心当たりはある
オレの場合、意図的に隠してたというよりは
表に出なかったって表現が適切か
出す機会も理由も無かったし
どう足掻いても叶わないことだからな…

晒す必要があるって言うなら晒してやるよ
演奏に乗せればきっと、表に出せるからな
聴け、【アダマス】

――地球で生まれ、育ちたかった

けして叶わない、取り返しのつかない望み
そう理解していても捨てきれない欲

どうしたって過去は変えられない
だから未来の為に今、戦うんだ

オレはもう侵略者じゃない
|猟兵《ケルベロス》のアルクス・ストレンジだ!




 周囲を見れば、唇と目玉の怪物がそこかしこに浮かんでいる。その不気味な光景の中で、アルクス・ストレンジ(Hybrid Rainbow・f40862)は愛用のバイオレンスギターを取り出した。
(「話を聴くに、ウリディムマとやらは人類の敵としか言いようがねえな」)
 彼は、かつて密告者と名乗っていた此度の敵と対峙するのは初めてだ。けれど話を聴いて判断したのだ、この怪物を放置するわけにはいかないと。
「今回もさっさと退場させちまおう。それこそ、永遠にな」
 真剣な表情で、ドラゴニアンの男は言う。そしてその指でギターを爪弾き、チューニングを始めた。
 音色に誘われるように、小さなウリディムマがアルクスの周囲に増えていく。元からいた者もいるのだろうが――今まさに増殖した姿もいるのを見つけて、彼は自身の『隠れた欲望』が糧にされていることを理解する。
(「隠れた欲望……まあ、心当たりはある」)
 彼の場合、意図的に隠していたと言うよりは、表に出なかったという表現が適切だけれど。出す機会も理由もなかったし――どう足掻いても、叶わないことだから。
 けれど、今日はその欲望をメロディに乗せる。フレットの上で指滑らせれば、キュ、と弦の震える音がして。
「晒す必要があるって言うなら晒してやるよ。演奏に乗せればきっと、表に出せるからな」
 今日はこんなに聴衆がいる。響かせよう、この心を。そして届かせるのだ、ウリディムマの本体まで。
「聴け、【アダマス】」
 紫色の瞳で戦場の敵全てを見据えて、アルクスは演奏を始める。ギュオンと響くギターの音色に、力強い歌声を重ねて。
 曲に篭められた不屈の魂と決意。高らかに歌い上げ、そこに自身の欲望を織り交ぜる。
「――地球で生まれ、育ちたかった」
 それは決して叶わない、取り返しのつかない望み。そう理解していても、捨てきれない彼の欲望。
 彼は元々、|螺旋忍軍《侵略者》の一人だった。地球とは違う星で生まれ、地球へとリソース求めやってきた種族。どうしたって、その過去は変えられない。だからこそ――彼は今、未来のために戦うのだ。
「オレはもう侵略者じゃない。|猟兵《ケルベロス》のアルクス・ストレンジだ!」
 その決意に満ちた声は、広く周囲に響き渡った。力に圧倒されて、小さなウリディムマ達が瞬時にかき消えていく。
 そしてその音は、本体へも――。
『アアアアアッ!』
 一際大きな体の、ウリディムマ本体。それはアルクスの歌声に体を震わせて、大きな悲鳴を上げたのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ヘーゼル・ナイチンゲール
いつ見ても……形容しがたくも、解りやすい見た目をしている奴だ。

戦場の俘虜にて、小さいウリディムマを薙ぎ払う。
道を拓きながら進むつもりだが、確かに、キリがないな。

隠された欲望からウリディムマが生まれる、か。
少なくとも奴を倒したいという心がある限り、逃れようもないか。

私の欲。
騎士など不要な平和な世。
とうに失った……弱さゆえに捨てたものを再び、得るために。
弱いと斬り捨てた己の素のまま、過ごせる日を望む。

なれば、お前達を滅するより、他はない。
……密告する者に、これ以上語る義理もない。

小型のそれは、同じくウリディムマだと他ならぬお前が言う。
よって、お前の動きは充分に学んだ。
その目に一刀、くれてやる。




 ヘーゼル・ナイチンゲール(葬送の城塞騎士・f38923)が戦場に降り立つと、その周囲には小さなウリディムマ達が不気味に浮いていた。
「いつ見ても……形容しがたくも、解りやすい見た目をしている奴だ」
 ぽつり、葬送の城塞騎士は呟く。かつてマスカレイド達の戦いの果てに出現した『密告者』。その敵が再び現れたって、彼が為すことは変わらない。
 ――手にしたハルバードを、静かに構える。金の瞳で中空に浮かぶ小さな怪物達の動きを観察してから、彼は口を開いた。
「……捉える」
 紡ぐ言葉が武器持つ手に、そして踏みしめる脚に力を与える。ユーベルコード『|戦場の俘虜《シュトレーフリング》』。ぶんと風切り斧を揮えば、その薙ぎ払いだけで小さなウリディムマ達はかき消えていった。
 ヘーゼルが目指すのはただひとつ、ウリディムマ本体のみだ。斧で道を切り拓きながら進むけれど、撃破した傍からまた別の小さき敵が湧いて出てきてしまう。
(「隠された欲望からウリディムマが生まれる、か。少なくとも奴を倒したいという心がある限り、逃れようもないか」)
 確かに、これではきりがない。ヘーゼルは一度歩みを止めると、彼らの糧を奪うために口を開いた。隠していた欲望を、今ここで曝け出す。
 彼の欲、それは――騎士など不要な、平和な世。
「とうに失った……弱さゆえに捨てたものを再び、得るために。弱いと斬り捨てた己の素のまま、過ごせる日を望む」
 それは、|終焉《エンディング》を視る力得た代わりに失ったものであり。さだめを受け止め進んできた彼が、あったかもしれない『可能性』だ。ヘーゼルは信じている、己が欲は、平和の先にあるのだと。
「なれば、お前達を滅するより、他はない。……密告する者に、これ以上語る義理もない」
 冷静な彼の言葉には感情は然程見えず、けれど凛と鋭く戦場に響いた。瞬間、小さなウリディムマ達の増殖が止まった。再びハルバード揮って敵を倒しても、それは確かにかき消え次の敵は現れない。
 振り回し、突き上げ、振り下ろして。ヘーゼルは斧を巧みに操って、戦線を押し広めていく。
 やがて辿り着いたウリディムマ本体は――すでに傷付いた姿で、そこにいた。
『そんな……私の増殖は無限なのに……!』
 唇の奥の瞳を見開いて、ウリディムマが言う。血を流す目は、赤く濁っている。気付けば周囲の小さなウリディムマも、相当に数を減らしていた。この本体へと至るまでに、猟兵達が蹴散らした分が多くいたのだろう。――もちろん、ヘーゼルも多くを屠り、そして彼らの『戦闘の癖』を覚えている。
「小型のそれは、同じくウリディムマだと他ならぬお前が言う。よって、お前の動きは充分に学んだ」
 癖を覚え、そこから次の動きを読む力は最早予知に近い。悔しそうに震えたウリディムマは、次に浮上するだろう――ならばそこに、上より斧を振り下ろすだけ。
「その目に一刀、くれてやる」
 繰り出す一撃は、光の如き素早さ。唇も眼球も切り裂いて。
『アアアアアアッ!!』
 ヘーゼルのハルバードがそのまま大地へ突き刺されば、ウリディムマは大きく悲鳴を上げるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

クヤク・サンガ
数があってもすぐ落ちるなら、範囲攻撃で潰していけばいいか
累積ダメージを軽減するため生命力吸収は常に載せておく

欲望…欲望…
本気なら自分で叶えられるよう行動するしなあ
大体俺はとても素直な人間なので、言葉こそ変えるけど本音は駄々洩れですし
|誰か《眼鏡が本体の人》と違って
疑うなら思考のブレーキとかその辺りを封じてみるといい
「新しい名前覚えられない」とか「密告者さんの色ちょっと気持ち悪い」とか出てくるだろうから

ああ、でも一人じゃ叶えられないものってあるよね
他者の意志が絡むときとか
お膳立てはする、舞台は整える
けど最後の一手を他者に委ねる必要がある
だから君に願おう
ぺんぺん草になってくれ
さようならだ、密告者




 燦然楼閣ゼルフォニア――戦場となったその都市国家を埋め尽くしていた桃色は、クヤク・サンガ(f38921)が到着する頃には随分と数を減らしていた。先に戦った猟兵達が、奮闘し蹴散らしてくれたのだろう。――その中に|見知った顔《遊び友達》がいたことも、武芸者の彼は知っている。
「数があってもすぐ落ちるなら、範囲攻撃で潰していけばいいか」
 呟きながら構えるのは、愛用のアックスソード。その蒼き刃を閃かせれば、一体、また一体と周囲の小さなウリディムマがかき消えていく。
 けれど、消える傍からまた湧いてくる。それは彼の中に糧となる『欲望』があるのだと訴えてくるようだが。
「欲望……欲望……。本気なら自分で叶えられるよう行動するしなあ」
 キャスケット帽を被り直しながら自身の心の内に問いかけるも、欲望の正体になかなか至らない。
「大体俺はとても素直な人間なので、言葉こそ変えるけど本音は駄々洩れですし」
 ――|誰か《眼鏡が本体の人》と違って。離れた場所で今も戦っているであろう友を揶揄しながらも戦場を駆ければ、そんな彼の前にウリディムマの本体が現れた。
「抵抗を望む欲望すら、私の餌となります。あなたの中にも欲望は隠れているはずですよ。……思考のブレーキを封じてみましょうか」
「……!?」
 敵の桃色の唇が笑みの形に動けば、クヤクの周囲に小さなウリディムマが集まってくる。それらが喰らう欲望とは――先程までより深くまで至る思考があれば、クヤクにも正体がわかった。
「……『新しい名前覚えられるようになりたい』とか、『密告者さんの色ちょっと気持ち悪い』とか?」
「そうです、それも欲望ですよ」
 気持ち悪いですか、と続けて零す『11の獣』が一柱は、けれど然してショックを受けた様子でもなかった。それより新たに生まれた小さな分身に喜んでいる様子で――その姿見たクヤクの胸に、新たな欲望が湧いてくる。
「ああ、でも一人じゃ叶えられないものってあるよね。他者の意志が絡むときとか」
 思考を続けて声に出して、男はアックスソードを再び構えている。纏うは覚悟。敢えて群がる小さなウリディムマの攻撃を受け、クヤクは武器に溜めたユーベルコードの力を一気に解き放った。
「避けてくれるなよ」
 蒼き一閃は、電光石火。唇の奥の眼球へと刻み込まれた一撃に、ウリディムマは大きく体を震わせる。
『アアアアアアアアッ!!!!』
 ――まだ、倒すには至らない。一人では、それを叶えられない。お膳立てはする、舞台は整える。けれど最後の一手を、他者に委ねる必要がある。
 それを繋ぐことこそが、|終焉を終焉させる者《エンドブレイカー》の、そして猟兵達の力なのだ。
「だから君に願おう。ぺんぺん草になってくれ」
 クヤクの新たなる欲望。このかつて倒したはずの敵が、再び倒れる時に言いたい言葉がある。
 ――さようならだ、密告者。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ベルト・ラムバルド
【闇光】
気色悪いくちびるオバケめ~!このベルト・ラムバルドが相手する!
…しかし隠れた欲望の告白…しかも|彼女《アンナさん》の横で!?
なんでこういう時に限って…えぇい!

…アンナさん…耳を塞いでください…すこ~しの間お願いします…すぐ済みます…

こほん…私の欲望は…そりゃあもうアンナさんと|×××《自主規制》したいに決まってるだろ!?
式もあげたよ…偽りだったが!
キスもしたさ…くっそ怒られたが!
だからこそ…私は彼女と愛のある|×××《自主規制》がしたいんだよ!
私は男だベルト・ラムバルドだ!私の隠された欲望だどうだ~~!?

…おいなんだその冷めた視線は!?引くな引くな!お前が聞いたんだろー!?
くそ~くちびるオバケめ~!馬鹿垂れが~!

あ!アンナさん今です!あんのくちびるオバケやっちゃってください!
どうだ~焼けろ焼けろ~灰になれ~!わはは~!目玉焼きじゃー!

…ところで…アンナさんの欲望って…なんですか…?
いや…まぁなんとな~く…やっぱり死ぬまで処刑人…?
え…えぇ~ほんとに~!?フハー!!!(失神)


仇死原・アンナ
【闇光】
…時は来たれり!
この世界を救う為に…密告者を倒す為に…!
さぁ行くぞ…私は…煩いぞベルト!…まったく…

…欲望か…え?耳を塞げって…なんで…仕方ないなもう…


……
………
…………
(なにかギャアギャア喚いてるように見える…)
……………
…まだ?もういい?ねぇ?…もういいや…あぁ煩いなもう…

|あいつ《ベルト》が煩いのはともかく…
敵とその群れがなんだかあいつに冷めた目線を送ってるのはなんでだか知らんがともかく…
わかったわかった…はいはい…

緋色の天使を掲げて【大焦熱地獄】を発動
天候操作で終焉の炎纏う暴風を操り範囲攻撃で敵の群れと本体を焼却
鎧無視攻撃と継続ダメージで敵を焼き尽し殲滅してやろう…煩いなほんとにこいつは…

変わった敵だったな……は?私の欲望?
…欲望…命果てようとも処刑人として戦うこと…だが…だけどね…
もし…叶うことが出来るのならば…良き伴侶に出会い子を成して天寿を全うする…かな…
…恥ずかしいから誰かに言いふらしたら殺すからな…秘密だぞ…
…あ…鼻血出しながら倒れた…何なんだこいつは…はぁ…




 戦場となった都市国家、そこに広がるウリディムマの分身達は、今や僅かになっていた。
 ふわり、と仇死原・アンナ(処刑人、地獄の炎の花嫁、焔の騎士・f09978)が通りに降り立てば、小さなウリディムマが集まってくる。その不気味な姿を漆黒の髪の下から見つめて、彼女は凛と声を張り上げた。
「……時は来たれり! この世界を救う為に……密告者を倒す為に……!」
 密告者、それが此度の処刑対象であると。緋色の巨大剣を突き付けるように構えて、アンナはさらに言葉を続ける。
「さぁ行くぞ……私は……」
「気色悪いくちびるオバケめ~! このベルト・ラムバルドが相手する!」
 ――続ける言葉は、同行しているベルト・ラムバルド(自称、光明の宇宙暗黒騎士・f36452)によって遮られた。自信に溢れた顔の男は、アンナより遥かに声が大きい。驚き思わず『緋色の天使』を取り落としそうになった執行人の女は、武器を持ち直して背後の彼へと声掛けた。
「……煩いぞベルト! ……まったく……」
 叱責の声は、しかしすぐに愛ある呆れへと変わる。怒られてビクッとした後の彼の表情はまるで大きな子犬のようで、アンナもこれ以上は強く言えなくなってしまうのだ。
 気を取り直して、アンナは再び敵へと対峙する。全ての敵を増殖が追いつく暇も与えず倒そう――そんな気迫を見せる彼女だが、ベルトは別の策でウリディムマを打倒しようと考えていた。すなわち。
(「……しかし隠れた欲望の告白……しかも|彼女《アンナさん》の横で!? なんでこういう時に限って……えぇい!」)
 葛藤はあった。愛しい彼女の横で、曝け出すのはさすがに抵抗がある。けれどベルトはわかっているのだ、アンナと共に戦うなら、秘密を曝すのは己の役目だろうと。
 だから覚悟を決めて、ベルトはアンナの隣へと並ぶ。そして、ウリディムマへ仕掛ける隙を伺う彼女へと囁いた。
「……アンナさん……耳を塞いでください……」
「……え? 耳を塞げって……なんで」
 敵の前で? そう言いたげなアンナに、けれど説明するのも恥ずかしくて。ベルトは頼み込む作戦に出て、目の前で手を合わせて続ける。
「すこ~しの間お願いします……すぐ済みます……」
「……仕方ないなもう……」
 ため息と共に、緋色の大剣を下ろす彼女。そしてその手が両の耳をしっかり塞いだのを――本当にしっかり塞いだのを確認した後で、ベルトはこほん、と咳払いしてから敵へ向き直った。
『お話は済みましたか? では問いましょう、あなたが隠したい欲望は、何ですか?』
 直後、ウリディムマの声が心に直接問いかけてくる。生まれる無数の小さきウリディムマが彼を狙うが、攻撃する隙さえ与えないよう。彼は毅然とした表情で、声を張り上げた。
「私の欲望は……そりゃあもうアンナさんと|×××《自主規制》したいに決まってるだろ!?」
『……!!???!!』
 ――突然の暴露はそれはもう剛速球だった。欲望を好むウリディムマ達も、驚きに固まっている。しかし、ベルトの告白はまだ終わらない。
「式もあげたよ……偽りだったが! キスもしたさ……くっそ怒られたが!」
 捲し立てながら、男はじりじりと前進する。ウリディムマ達は後退する。それでも元より声の大きい男は、目一杯に息を吸い込んで、魂篭めた欲望を吐き出した。
「だからこそ……私は彼女と愛のある|×××《自主規制》がしたいんだよ! 私は男だベルト・ラムバルドだ! 私の隠された欲望だどうだ~~!?」
 ――それは、本能に近い欲望だ。大きな欲は、より多くのウリディムマを生んでいたのだろう。その証拠に、彼の叫びに気圧されるように小さなウリディムマ達はどんどんとかき消えていっていた。
 そして――戦場に残された少数のウリディムマのその奥に、本体であるウリディムマがはっきりと見える。
 やっと見つけた――しかし、その本体もどこかベルトに冷ややかな目を向けていた。
「……おいなんだその冷めた視線は!? 引くな引くな! お前が聞いたんだろー!?」
『それはそうですが……彼女、というのはお隣の方ですよね? 目の前でよくもまあ……そんな……』
 隠れた欲望を好む怪物だ、本来ならここは糧となるものが失われて落胆するところである。しかしあんまりに正直な男の大告白に、さすがの『密告者』ウリディムマもちょっと考えてしまっていた。そのあんまりな欲望、さっきまで糧にしてしまっていたし。
「くそ~くちびるオバケめ~! 馬鹿垂れが~!」
 悔しさとか恥ずかしさとか、色々な感情は藍色の瞳に涙を滲ませる。そんな男の横では――その『欲望』が聞こえていないアンナが、今もしっかり耳を塞いでベルトと敵の様子を伺っていた。
「……まだ? もういい? ねぇ? ……もういいや……あぁ煩いなもう……」
 なんだかギャアギャア喚いているように見えるな、と思っていたが、聞こえるようになったらやはりウリディムマへ向けて喚いていた。そして桃色の怪物が彼に向ける冷めた目線――どういうわけだかはわからないが、アンナにもこれだけはわかる。ベルトは何らかの『欲望』を曝け出して、無限に湧き続ける小さなウリディムマ達を消し去ったのだ。敵本体も奥に見つけた、今こそ獣を倒す時。
「あ! アンナさん今です! あんのくちびるオバケやっちゃってください!」
「わかったわかった……はいはい……」
 武器を構えるアンナの動きに気付き、ぱっと顔輝かせたベルトが言う。呆れながらもアンナは『緋色の天使』を掲げて、ユーベルコードを発動させた。
「地獄の炎よ……罪人共を焼き尽し終焉を齎せッ……!」
 言葉紡げば、緋色の剣が終焉の炎を纏う。それは炎の暴風を生み出して、戦場に荒れ狂い残りの小さなウリディムマ達を骸へ還していく。
「どうだ~焼けろ焼けろ~灰になれ~! わはは~! 目玉焼きじゃー!」
「……煩いなほんとにこいつは……」
 隣のベルトの様子に、思わず呟く。しかし彼も声を上げながら戦っているのだ――ユーベルコード『ごぉおいんぐ・まいうぇえい』で。シリアスな雰囲気やかっこよさを代償として敵を圧倒するこの力、今までも何度も見てきたから知っている。
 やがて、全ての小さなウリディムマが消滅した。残るは本体のみ――アンナが大剣を翻せば、地獄の炎は纏まり本体ウリディムマを狙う。
『アアアアアアアッ! そんな、私に死角はなかったはずなのに、こんな……!』
 赤い赤い煉獄の中で、ウリディムマは叫ぶ。もっと欲望を喰らいたかったと。もっと増殖したかったと。隠すことなく抱いていた欲望を言葉にしながら――桃色の怪物は、少しずつ消滅していった。
 ――かくして、戦いは終わった。アンナはひとつ息を零しながら、緋色の剣を鞘へと納める。
「変わった敵だったな……」
 都市を埋め尽くしていたウリディムマは、全て消滅した。これで避難していた人々も元の生活に戻れるだろう。
 しかし――帰還の準備をしながら、ベルトは思う。自分が暴露をした後も、未だ小さなウリディムマが彼らの元に集まっていた。あれはベルトの欲望から生まれたものではない、となるとアンナにも『隠れた欲望』があるということだが……?
 ごくり、とベルトの喉が鳴る。しかしウリディムマに有効と知っていても明かそうとしなかった欲望だ、踏み込むか迷うところだが――。
「……ところで……アンナさんの欲望って……なんですか……?」
 思い切って尋ねた。胸の鼓動が早鐘のように響く。
「は? 私の欲望?」
「いや……まぁなんとな~く……やっぱり死ぬまで処刑人……?」
 取り繕うように笑顔浮かべて、ベルトが続ける。すると、アンナは少し考えた素振りをした後で、『そうだな……』と頷いて。
「……欲望……命果てようとも処刑人として戦うこと……だが……だけどね……」
 そこで、アンナはベルトとの距離を詰める。彼にしか聞こえない大きさの声を、届けるために。そして、ぽつりと『欲望』――否、『願い』を彼にだけ告げるのだ。
「もし……叶うことが出来るのならば……良き伴侶に出会い子を成して天寿を全うする……かな……」
 ――それは、平凡でいて、幸福な生き方。処刑執行人として生きる彼女とのギャップに、ベルトは思わず瞳を瞬かせて。
「え……えぇ~ほんとに~!?」
「……恥ずかしいから誰かに言いふらしたら殺すからな……秘密だぞ……」
 羞恥からか、早口でぼそぼそと捲し立てるアンナ。そしてそのまま立ち去ろうと身を翻したが――。
「フハー!!!」
 ベルトの声に、思わず振り返った。するとそこには、敵と対峙した時よりダメージを受けていそうな男が倒れ込んでいた。
「……あ……鼻血出しながら倒れた……何なんだこいつは……はぁ……」
 そうしてため息零しながら、アンナはベルトを回収して都市国家を後にする。互いの欲望が叶うのかどうか――それはまだ、誰にもわからない。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2023年09月19日


挿絵イラスト