エンドブレイカーの戦い⑦〜三竜聡慧
●願い
多くを知りたいと願うことは、強い願いであろう。
森羅万象、あまねく全てが識ることに溢れている。肌に触れる風の色も、瞳に映る心の流れも、耳に聞こえる星の声も。全てが識りたいと願うことの対象だ。
故に願う。
全てを知りたいと。
「その願いの先に待つものなんであるのかを知りたい。本当に『平和』とは訪れるものなのか。それとも勝ち取るものなのか。そもそも本当にそんなものが存在しているのか」
問いかける言葉に万能の魔神『エリクシル』は微笑むばかりだった。
識りたければ願うしかないと言わんばかりの表情であった。
嫋やかな女性の姿をしていながら、三つ首の竜を携えた赤き宝石の魔神『エリクシルドラゴン』は無言だった。
待っているのだ。
願うことを。
知的生命体が持つ知識への欲求を知っているからこそ、待っている。
強い願いというものは、自らの心の奥底より発せられるからこそ、強烈な輝きを放つ。
知識への渇望なくして強き願いは生まれない。
故に、待っている。
焦れるようにして言葉が発せられる。
「知りたい! どうしても知りたい!『平和』とはなんなのか! それを識りたいんだ!!」
その叫びと共に声の主の脳内には様々な『平和』が刻まれる。
『平和』とは一つの形をなすものではない。
正義が幾通りもあるように。
それもまた数多の数が存在する。見果てぬ『平和』を前に、願う者の脳は耐えられないだろう。
何かが己の中で砕けた音を聞いた。
瞬間、『エリクシルドラゴン』は初めて声を発する。
「『平和』とは何も識らないこと。白痴たること。揺蕩うこと。地獄を識らなければ天国の存在もまた認知できぬように。それを識った瞬間に『平和』とは形骸化するもの――」
●三塔戒律マギラント
「なんという力……!」
「これが願いの力を得た『エリクシル』!」
「従者兵器の起動が間に合わない!」
嘗て伝説の七勇者の一人によって建国された魔術研究に優れた都市国家は今や、存亡の危機に瀕していた。
迫りくる一体の万能の魔神『エリクシル』。
三つ首を持つ『エリクシルドラゴン』の力は圧倒的だった。苛烈なるドラゴンブレスに防壁は破壊され、さらに都市国家のシンボルである三つの塔を根幹からへし折らんと迫っているのだ。
迎撃に出したメイガス……動力甲冑を駆る勇士たちは何れも沈黙している。
「このままでは間に合わない……!」
「せめて猟兵の方々に『メイガス』を残さなければ! 搬出を!」
決死の行いであった。
迫る『エリクシルドラゴン』に容赦はない。
吹き荒れるドラゴンブレスが天を、そして三つの塔を染め上げるように吹き荒れる――。
●エンドブレイカーの戦い
グリモアベースに集まってきた猟兵たちを迎えたのはナイアルテ・ブーゾヴァ(神月円明・f25860)であった。
「お集まり頂きありがとうございます。都市国家の一つ、三塔戒律マギラントへと一体の『エリクシル』が迫っています」
彼女の言葉に事態が逼迫していることを猟兵達は知るだろう。
一体の強い願いの力を得た『エリクシル』は、圧倒的な力でもって三塔戒律マギラントを攻め落とさんとしている。
この『エリクシル』――『エリクシルドラゴン』の力は圧倒的すぎた。
猟兵と言えど生身での太刀打ちは困難極まるものであることが伺えるのだという。
「ですが、三塔戒律マギラントの『塔主』の皆さんが搭乗者の魔力を増幅して技の威力を高める動力甲冑『メイガス』の貸与を申し出てくださっています」
『メイガス』、それを知る猟兵もいるであろうし、実際に乗り込む者もいるだろう。
この動力甲冑に乗り込むことによって猟兵の力は増幅され、強い願いの力を得た『エリクシルドラゴン』にも対抗できるのだという。
自身の能力をブーストする。
それは時に力に振り回されることにもなるうるだろう。
しかし、ナイアルテは確信している。
猟兵たちならば、増幅された力であっても振り回されることないだろうと。
必ずや、これを使いこなして三塔戒律マギラントに迫る『エリクシルドラゴン』を打倒してくれるだろうと信じて疑わないのだ。
「『メイガス』を利用しない場合、この『エリクシルドラゴン』と渡り合うのは限りなく難しいものとなるでしょう。どうかお願いいたします。脅威に晒される三塔戒律マギラントを救って下さい」
そう言って頭を下げ、ナイアルテは猟兵たちを送り出すのだった――。
海鶴
マスターの海鶴です。
※これは1章構成の『エンドブレイカーの戦い』の戦争シナリオとなります。
三つの塔をシンボルとする都市国家、三塔戒律マギラントに迫る強い願いの力を得た『エリクシル』、『エリクシルドラゴン』。
その力は生身の猟兵の皆さんを遥かに凌ぐものであり、太刀打ちするのは困難であると言えるでしょう。
ですが、ここ三塔戒律マギラントは魔術研究に優れた都市国家です。
『メイガス』と呼ばれる動力甲冑を皆さんに貸与してくれます。
これに乗り込むことによって能力がブーストされ、増幅された力を行使することができます。これを用いて強大な『エリクシルドラゴン』を打倒しましょう。
プレイングボーナス……メイガスに乗り込んで戦う。
それでは、エンドブレイカー! 世界から猟兵たちを放逐せんとする『11の怪物』と対決する皆さんの物語の一片となれますよう、いっぱいがんばります!
第1章 ボス戦
『エリクシルドラゴン』
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POW : エリクシルブレス
詠唱時間に応じて無限に威力が上昇する【宝石】属性の【ドラゴンブレス】を、レベル×5mの直線上に放つ。
SPD : 願望喰らい
噛み付きが命中した部位を捕食し、【対象の願望にもとづく強化】を得る。
WIZ : 絶望の龍牙
【龍の首】が命中した敵から剥ぎ取った部位を喰らう事で、敵の弱点に対応した形状の【龍またはドラゴン】に変身する。
イラスト:key-chang
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
天城・潤
この美しい甲冑を纏い挑むなら
勝機は命の埒外たる猟兵にあります
装着に人手が必要ならお手数ですがと塔の皆さんへお願いを
僕は初めてですので
どんな激しい動きにも耐えると解るこの世界の叡智と魔術の結晶
「お借りしますね」
厳しい防衛の最中に猟兵へと託して下さった
その信頼に全霊で応えましょう
UC虚空斬・闇剣を詠唱し高空へ飛翔
ブレスが来ますが…機動力に優れた
甲冑の動きが鋭く左程の脅威に感じません
寧ろ綺麗に躱せ詠唱時間も与えず肉薄出来て最高です
生身でない分より苛烈に攻撃出来ますしね
さぁ…虚空より来る黒き死を味わうが良い!
この暴虐に命を狩らせはしません
仮に『平和』が幻に過ぎなくても
「それを決める権利は貴様には無い」
炎のように煌めく宝石の咆哮が轟く。
それは三つ首の竜。
放たれるブレスは天を焦がすかのような苛烈なる光。あらゆる光を反射し、集約し、その迸る熱量は三塔戒律マギラントの都市国家、その精霊建築を容易く溶かし落とす。
壁面が吹き飛び、その爆炎じみたブレスの向こう側に三つ首の竜を従えるかのような万能の魔神『エリクシルドラゴン』の威容が迫る。
嫋やかに笑み、何も言葉を発することのない『エリクシルドラゴン』は、その圧倒的な力でもって三塔戒律マギラントを攻め滅ぼそうとしていた。
「あれが此度の敵。ですが、勝機は未だ損なわれていないと言うべきでしょう」
天城・潤(未だ御しきれぬ力持て征く・f08073)は溶かされ突破された防壁の奥にて、マギラントの勇士達を背に負う。
かの『エリクシルドラゴン』の放つブレスによって焼け出されるようにして逃げ惑っていた彼らを助けていたのだ。
「猟兵の方、僕らのことはいいです! あれに対抗するためには……!」
「いいえ、捨て置くことなどできようはずもない。厳しい防衛の最中であるからこそ、手放してはいけないものがあることを僕は知っていますから」
だから、と潤は勇士達を捨て置くことはしなかった。
一人の勇士が言う。
「ならば、頼みます……! 動力甲冑を!『メイガス』を!」
「ええ、お借りします」
潤は頷く。
背負った彼らに促され、導かれた此処。そこは複数の動力甲冑が居並ぶ倉庫であった。迫る爆音。『エリクシルドラゴン』がブレスでもって迫ってきているのだろうことが知れる。
このまま手をこまねいていれば、確実に自分たち毎、勇士たちが滅ぼされてしまう。
故に潤はためらわず、動力甲冑の内部へと滑り込む。
「お手数ですが、説明を願えますか」
「わかりました。ですが、時間がありません。手短ですが! この『メイガス』はあなたの魔力を得て増幅します。通常の数倍以上の力に振り回されるかも知れませんが、あなたなら……」
「ええ、僕ら生命の埒外たる猟兵ならできる、と」
勇士の言葉に潤は力強く頷く。
みなぎる力があった。
纏う『メイガス』が唸りを上げるようにして動き出す。
わかる。
潤にはわかるのだ。これがどんな激しい動きをしても耐えてくれることを。
この世界の叡智と魔術の結晶。
それを感じ、潤は踏み出す。これほどまでに厳しい戦いの中、自分たち猟兵に託すために戦っていた勇士たちの姿を思い出した瞬間、潤の眼の前にあったのは『エリクシルドラゴン』の姿だった。
いつの間に、と思った。
接近されたのか、と。
「違う、これは……」
自分が『エリクシルドラゴン』に瞬時に肉薄していたのだ。
「ブーストされると、これほどまでに……」
「――!」
突如として眼の前に現れた潤の『メイガス』に『エリクシルドラゴン』のブレスが飛ぶ。しかし、それを闇纏う潤の『メイガス』は間隙を縫うようにして高く舞い上がる。
どれだけブレスが吹き荒れるのだとしても、届くことはなかった。
「さほど脅威にかんじませんね……むしろ」
潤は次々と迫るブレスを躱しながら、『エリクシルドラゴン』へと迫る。
「詠唱を与える隙など与えません」
闇纏う『メイガス』は一気に踏み込む。距離など関係ない。
「さあ……虚空より来る黒き死を味わうが良い!」
『メイガス』の腕部が合わさり、束ねられるは闇。
それは、虚空斬・闇剣(コクウザン・ヤミツルギ)。ユーベルコードに煌めく『メイガス』のアイセンサーと共に潤の『黒蒼刃』の斬撃の一撃が迫りくる『エリクシルドラゴン』の竜の首の一つ、その体表の鱗を一気に切り裂きながら、本隊たる魔神の体へと裂傷を刻むのだ。
「――……!」
「この暴虐に生命は狩らせません。仮に……」
「『平和』求め、それでもなお、それが仮初めであり、実態のないものであると知ってもか」
その言葉に潤は頷く。
そう、『平和』が仮初めで、存在しないものだと言われようとも。幻に過ぎなくても。
それでも。
「それを決める権利は貴様にはない」
『平和』とは形骸。されど器。その器に意味を注ぐのは、『平和』を求めて止まぬ人の心であると示すように潤の刃は『エリクシルドラゴン』の体へと傷を刻むのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
バルタン・ノーヴェ
POW アドリブ連携歓迎!
ヒャッハー!
加勢にワタシがただいま参上!
エリクシルドラゴンを撃退するために、力を貸しマース!
そのためにメイガスをお借りしマスネ!
魔力の扱いはピンとこないワタシデスガ、未経験ではありマセーン!
なぜならば、ワタシだけで戦う訳ではないのでありますから!
「カオスメモリ、ロゴスイグニッション!」
メイガスに乗り込んだ状態で、増幅された力を混沌魔法に投入!
カオスがさらにブーストされて、とんでもないことになりそうデスネ!
チェインハンマーを展開しつつ、無限増殖する混沌魔法『カオスヘッダー』!
詠唱時間は与えマセーン! 一体でも倒される前に、我輩たちの群れでエリクシルを囲んで叩きマース!
動力甲冑『メイガス』によって放たれた斬撃の一撃が万能の魔神『エリクシルドラゴン』の強靭な宝石の鱗を切り裂き、本体たる魔神の体へと斬撃を見舞う。
裂傷疾走る最中、さらに『メイガス』が飛び出す。
「ヒャッハー!」
その声を知る者は空を見上げただろう。
三つ首の宝石の竜が放つブレスにて爆炎上げる三塔戒律マギラントの空に駆け抜けるバルタン・ノーヴェ(雇われバトルサイボーグメイド・f30809)の搭乗する『メイガス』の姿を。
「偽りと、仮初めと識りながら、それでもなお『平和』を求めるか」
「加勢にワタシがただいま惨状! 詠唱する暇などありマセーン!」
バルタンは『メイガス』を借り、一気に『エリクシルドラゴン』へと肉薄する。敵のユーベルコードは詠唱時間を得ることによって威力を底上げしていくものだ。
ならば、詠唱する時間を悠長に与えてはならない。
三つ首の竜の一角は、その鱗を大きく損壊させられている。
付け入る隙がある、というのならば、そこだった。
「例え、魔力にピンと来てはいなくっても、ええ、未経験ではありマセーン! 行きマスヨ! カオスメモリ、ロゴスイグニッション!」
煌めくユーベルコードの輝く。
バルタンの『メイガス』のアイセンサーが煌めく。
それは模倣様式・混沌魔法(イミテーションスタイル・スーパーカオスマジシャン)。
カオスを具現化させる混沌魔術師としての姿が『メイガス』に施されていく。ユーベルコード、魔力を増幅する『メイガス』であればこそ、その力の影響を直接的に受けるのだ。
変容した『メイガス』の姿は、それだけにとどまらない。
動力甲冑たるバルタンの『メイガス』はさらに通常の『メイガス』よりも二倍にも及ぶ体高へと変貌を遂げている。
「巨大化した……!?」
三塔戒律マギラントの勇士たちは目を見開く。
ブーストされているとは言え、『メイガス』が姿を変えるなど思っても居なかったのだろう。
増幅されたバルタンの力によって注入された混沌魔法は、力以上に混沌さもまたブーストされているのだ。
「ヒャッハー! これは愉快なことになってマスネ! いやいや、失敬。笑い事ではないとわかっているのですが! これよりもっとカオスになりマース!混沌魔法!『カオスヘッダー!!」
瞬間、体高が2倍にまで巨大化した『メイガス』が一瞬で増殖していくのだ。
一騎だけではない。倍に。さらに倍に。倍の倍に。
「戦いは数でありマース! イエス、チェインハンマーセットデース!」
鎖に繋がれた鉄球を振り回しながらバルタンの『メイガス』の群れが一気に『エリクシルドラゴン』へと迫る。
放たれるブレスを躱し、さらに踏み込んでいく。
「形骸そのもの。それ自体は混沌なれど、収束もまた容易きもの」
「オーゥ、流石に理解しているようデスネ! 確かに混沌魔法『カオスヘッダー』は一体でも倒されれば連鎖的に消滅してしまうものデース! デスガ!」
それは一体でも倒せたらの話だ。
確かに『エリクシルドラゴン』は規格外の力を持っている。
それだけの強大な願いの力を得ているのだろう。だが、諦める理由になどなっていない。
「一体でも倒される前に取り囲んで、ぶっ叩けば良いのでありマース! 詠唱を諦めるのが先か、それともワタシたちにボコにされるのが先か、勝負デース!」
バルタンの言葉と共に一斉に鉄球が投げ放たれ、『エリクシルドラゴン』の体を覆う鱗の如き万能宝石を砕く。
そして、バルタンは戦場となった三塔戒律マギラントの空を爆炎ではなく、その破片でも持って、未来を照らすのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
アリス・フェアリィハート
アドリブ連携歓迎
【WIZ】
私にも
正直難しい事は
解らないです…
けど
今解る事は…
エリクシルドラゴンさん
貴女のしてる事は
平和とは
程遠いです…!
自身の機体
『太古の花晶』に搭乗
能力増幅
『この機体…そちらの仰います「メイガス」さんかどうかは解らないですけど…多分同じ様な技術が使われてるのではと…』
(しかもこの機体は貰い物で、誰がくれたのかも不明な代物。
外観自体は
かの氷河期女王の自動鎧にも酷似)
敵の攻撃等
【第六感】【心眼】【残像】
【結界術】【オーラ防御】で
防御・回避
BS-Fクリスタルトランプビット
を展開
【誘導弾】の【一斉発射】や
UC発動
氷晶の槍等の武装を創り出し
【なぎ払い】や
氷雪魔法での【凍結攻撃】等で
攻撃
『平和』を得るためには多くのことを識らなければならないと人は思うだろう。
それをなし得るのは難しいことであるから。
難しいことを成し遂げるには多くのものが必要だと信じて疑わぬのならば、それは幸せなことであったかもしれないし、また同時に不幸でもあったことだろう。
少なくとも万能の魔神『エリクシルドラゴン』の語る言葉に於いてはそうであった。
「『平和』とは形骸化するものである。形だけが、言葉だけが、意味だけが先走るもの。故に、それを得たいと知った時には、最早意味のないものである」
吹き荒れるブレスと共に『エリクシルドラゴン』の眼がユーベルコードに煌めく。
切り裂かれた宝石の龍鱗纏う三つ首の竜たちが咆哮する。
その鋭き牙をアリス・フェアリィハート(不思議の国の天司姫アリス・f01939)は見ただろう。
「私にも正直難しいことは分からないです……」
『エリクシルドラゴン』の語る言葉は、どれも彼女にとっては理解し難いことであった。
『平和』とは尊きものだ。
尊ばれるべきものだ。
だから、皆求めるのだ。けれど、アリスはハッキリと一つだけわかっていることがあった。
「貴女のしていることは、平和とは程遠いです……!」
アリスは己の『メイガス』、『太古の花晶』へと乗り込み、己の魔力を増幅していく、膨れ上がる力。
アリスにはわからないことが多かった。
自身の纏う動力甲冑が、このエンドブレイカー! 世界における『メイガス』なのかどうかもわからない。
けれど、それでも、これは己に託された力だ。
誰がくれたのかもわからない。
氷雪纏うかのような女王めいた姿の『メイガス』、『太古の花晶』と共にアリスは迫りくる『エリクシルドラゴン』の三つ首の竜の顎を防ぐ。
強烈な力。
『メイガス』であっても軋むほどだ。けれど、それでも張り巡らせた結界とオーラによって牙を弾き飛ばして飛翔する。
飛ばすクリスタルトランプビットが戦場を駆け抜け、『エリクシルドラゴン』の体を撃つ。宝石の龍鱗は硬く、貫くことはできなかった。
けれど、それでも十分だった。
「無駄だ。白痴であることを自覚しても、それを求める心がある限り、それは手の内には戻らない。手に入ることはない。永劫に、『平和』とは『平和』を知ろうとする限り、意味をなしえないのだから」
『エリクシルドラゴン』の言葉と共に迫る牙。
「――この力…太古の氷姫の力として…ここに…!」
膨れ上がる魔力があった。
機体に宿る力が満たされ、機体の姿がへんようしていく。
手にした氷晶の槍が巨大化していく。握りしめた槍に注ぐ力が、天に突き上げられた瞬間、プリンセス・ワンダーエンシェントアイスフォース――すなわち、魔氷武装郡となって、万物凍結の太古の氷雪魔法が炸裂する。
どれだけ言葉で『平和』が形骸化していると解くのだとしても、それは結局のところ言葉でしかない。
それをアリスは知っているからこそ、実感できる力をこそ信じる。
いつかのだれかが残した力。
誰かのためになりますようにと願った力があるのならば、万能の魔神が説く『平和』に意味などないと生きることができる。
「だから、私は戦うのです……その先にある『平和』があるって信じて」
振り下ろされる一撃と共に氷の武装群は『エリクシルドラゴン』へと叩き込まれるのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
レン・ランフォード
人格:れん
メイガス…異世界の技術にはとても興味があるね…
色々と調べてみたいけど…まずは竜殺ししておこうか…
借りていざ出陣…
速さは…うん…私達好みだ…
第六感も動員して敵の動きを見切り…残像を残して陽動・フェイントとし…
噛みつきを躱そう…当たらなければどうということはないよ…
向こうが慣れる前に更に加速してUC発動…3人でたたっ斬ろう…
1回…2回…3回…4回…4つ首落としてはいお仕舞…
平和ねぇ…時間と同じ流れかな…
終わりはあるけど…また始まるもの…
とりあえず…お前がいなくなればひと時は平和…
万能の魔神『エリクシルドラゴン』の咆哮が轟く。
未だ三塔戒律マギラントに攻め入った強大なる願いの力を得た『エリクシルドラゴン』の排除は叶わない。
膨れ上がる力。
三つ首の竜の顎は赤き宝石の力を受けてますます鋭さを増すようであった。
「まだ力を残している……!」
三塔戒律マギラントの勇士たちは、皆呻くしかなかった。
彼らの力では『エリクシルドラゴン』を止めようがない。整備された『メイガス』を攻撃から守ることが精一杯だった。
「大丈夫……?」
そんな彼らの元に馳せ参じたのは、黒髪碧眼の少女、レン・ランフォード(近接忍術師・f00762)であった。
彼女の瞳に映るのは動力甲冑『メイガス』。
力を増幅させると言われる技術にいつもは口数の少ない術式担当の『れん』は興味を持っているようだった。
しかし、『れん』は己の興味を優先しない。
何をしなければならないのかを理解しているからだ。
「あ、あなたは猟兵……! 頼みます、この『メイガス』でどうか……!」
「わかった……」
『れん』はためらわず、展開した動力甲冑の内部に身を収める。
術式が膨れがっていくのを『れん』は感じたことだろう。
これがエンドブレイカー! 世界の技術。
知ることと体感できることは大きくことなるだろう。詳しく調べたい、という欲求が溢れてきそうになるが、まずは『エリクシルドラゴン』を打倒しなければならない。
「此方の動きに反応する……うん……私達好みだ……」
踏み込むだけで凄まじい加速が『れん』の体に襲いかかる。確かに凄まじいものだ。けれど、好みである、といったのは己の普段の戦い方にそぐうものであったからだろう。
例え、ブーストされているのだとしても、戦い方を誤ることなど『れん』にはない。
迫る竜の顎を躱す。
第六感は総動員されている。
例え、第六感があるのだとしても、『エリクシルドラゴン』の猛攻の速度についていけるわけではない。
だが『メイガス』纏う今なら違う。
「……当たらなければどうということはないよ……」
『れん』は甲冑に顎をかすらせることさえしなかった。
しかし、敵の動きは徐々に迫っている。慣れてきているのだと彼女は理解し、その瞳をユーベルコードに輝かせる。
「行くよ、私達……!」
その言葉と共に瞬時に『メイガス』纏う『れん』たちが無数の残像を伴った神速の移動術でもって『エリクシルドラゴン』の三つ首の間合いに踏み込む。
嵐のような噛みつき攻撃を前にしながら、止まることはなかった。
一歩の躊躇いもない。
眼の前に迫る鋭さも、脅威も『れん』には、さほど恐ろしいものには思えなかったのだ。
それは実体化した己の別人格たちが共に並び立つが故。
彼女は『錬』、『蓮』、『れん』の三つの人格を持つ。
分身殺法・花鳥風月(ブンシンサッポウ・カチョウフウゲツ)によって実体化した別人格達と共に仕掛ける同時攻撃。
それは一つの『エリクシルドラゴン』の首を同時に切り裂き、砕く。
万能宝石『エリクシル』によって形成される首たちは目にも止まらぬ四連撃によって、その首を失う。
「『平和』を求めるのならば、知るがいい。それが如何に無意味なことかを」
『エリクシルドラゴン』の言葉を『れん』は頭を振って否定する。叩き切った『エリクシルドラゴン』の首を蹴って、さらに彼女は肉薄する。
「平和ねぇ……時間と同じ流れかな……それは終わりはあるけど……また始まるもの……」
とりあえず、と『れん』は他の人格と共に踏み込む。
その本体たる『エリクシルドラゴン』へと斬撃を見舞う。
切り裂かれた体躯から血潮の代わりに溢れるは赤き宝石のかけら。
「……お前がいなくなれば一時は平和……」
確かにそうだろう。
如何に形骸化しようとも、仮初めであろうとも。
得られた一時こそが、得た者にとっての真なのだ。故に、この動乱を起こす存在の排除を『れん』は為さんと切り落とした竜の首を踏み砕くのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
アルトリウス・セレスタイト
オブリビオンではないと聞くが
世界を沈める脅威に違いはない
では働くか
状況は『天光』で逐一把握
守りは煌皇にて
纏う十一の原理を無限に廻し害ある全てを世界の外へ破棄
要らぬ余波は『無現』にて消去
全行程必要魔力は『超克』で骸の海すら超えた“世界の外”から常時供給
破界で掃討
対象はエリクシルドラゴン及びその全行動
それ以外は「障害」故に無視され影響皆無
高速詠唱を無限に加速・循環
瞬刻で天を覆う数の魔弾を生成、周囲全てへ斉射
更に射出の瞬間を無限循環
戦域を魔弾の軌跡で埋め尽くす
遍く世界を編んだ創世の理に例外はない
万象尽く、無限量の全に触れれば溶け消えるのみ
万能である程度で何かを成し得ると思わぬことだ
ここらで挫折を経験して成長の糧とするが良かろう
最もこちらは猟兵だ
お前たちに次など与えぬが
※アドリブ歓迎
眼の前にいるのが世界の脅威であるというのならば、戦うのが猟兵というものである。
世界を破滅に導く最たる原因がオブリビオンというだけなのだ。
つまるところ、いつもとやることは変わらない。
それが万能の魔神『エリクシルドラゴン』に対するアルトリウス・セレスタイト(忘却者・f01410)の答えだった。
「オブリビオンではないと聞くが」
「我等、万能の魔神『エリクシル』。願いもつ知的生命体を求める者」
「そうか」
では、とアルトリウスに迫る三つ首の内の二つの竜の顎。
一つはすでに猟兵によって斬り落とされている。精彩を欠く、ということはない。ただ攻撃の手段が一つ減っただけに過ぎないと言うかのように『エリクシルドラゴン』はありあまる力でもって、アルトリウスへと襲いかかる。
音が響いている。
何かが砕ける音。
いや、砕けているのではない。猟兵が切り落とした三つ首が一つが根本から赤い宝石が集合するように変異しているのだ。
「再生ではないな。強化か」
アルトリウスは冷静に見定める。
己に対する攻撃は障害とみなして排除することができるが、敵の行動そのものを止めることはない。
「いずれにせよ、貴様はここで行き止まりだ」
アルトリウスの瞳がユーベルコードに輝く。
天を差す指先に集まるのは蒼い燐光。
障害を無視する万象を根源から消去する魔弾が放たれる。一つが放たれれば、それは一瞬にして天を覆うほどに広がっていく。
無限に加速し、循環する魔力が絶えず『エリクシルドラゴン』の身へと降り注ぐ。
「堂々巡りだな」
砕ける万能宝石。
消去する様から確かに自分の力は作用していると知れる。万象を根源から消去する魔弾。けれど、『エリクシルドラゴン』のそれは本当に万象に属するものであるのかと疑わしいものだった。
願いの力を得るがゆえに『エリクシルドラゴン』は強大な力を持つ。
『メイガス』――動力甲冑でもって増幅しなければ猟兵の力でもって打倒することは困難であった。
「だが、遍く世界を編んだ創世の理に例外はない。万象尽く、無限量の全に触れれば解け消えるのみ」
「全は一に勝るとでも」
「万能である程度何かをなし得ると思わぬことだ」
「為すのは我等ではない。万能たる力は、知的生命体の持つ願いを叶えるもの。知的生命体が持つ願いの力は我等の欲するところであるが、なし得るものではない」
魔弾とぶつかり合う万能宝石の破片。
消滅し、また生まれていく光景。
ゼロサムゲームめいた光景を前にし、アルトリウスは笑むでもなく苦々しく思うでもなく、ただひたすらに赤い宝石を消滅させていく。
「ここらで挫折を経験して成長の糧とするがよかろう」
万能の魔神『エリクシル』に成長はない。
あるのは多大な願いの力を得たという事実のみ。成長などない。
「最もこちらは猟兵だ。お前たちに次など与えぬが」
ただ願いを求める存在。
願いを歪めて叶え、破滅に導く存在。
それがこのエンドブレイカー! 世界における脅威であり、それさえも前座でしかないことを猟兵達は知っている。
『11の怪物』。
それこそがこの世界から猟兵とエンドブレイカーを放逐せんと目論む者たち。
「好きにはさせんさ」
例え、どれだけ膨大な力を持つのだとしても。
戦うことで撃滅できるのならば、この状況こそが楔であると示すように天を覆う魔弾は降り注ぐのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
鏡島・嵐
動力甲冑メイガス……、キャバリア……とは違うんか。
これを使えば、おれらでもあのおっかねえエリクシルと渡り合える……なんか実感湧かねえなあ。怖ぇモンはやっぱ怖ぇし。
……でも、今は躊躇ってる場合じゃねえ。考えるより、実践だ!
《笛吹き男の凱歌》でさらに能力をブースト。
確かにいつもよりもずっと力が湧いてくるけど……だからこそ、不安になる。
だけど〈覚悟〉を決めて、相手に対峙する。
やることはいつもと一緒だ。〈援護射撃〉で他の味方をサポートしたり、場合によっては〈スナイパー〉ばりに狙い撃ちしてダメージを与えたり。
向こうの攻撃は〈第六感〉を活かして〈見切る〉。弱点なんて攻められちゃたまんねーからな。
動力甲冑『メイガス』。
三塔戒律マギラントにおける魔術技術の結晶。装着者の魔力を増幅する力を持つ鎧が目の前に搭乗者をまつようにして開かれている。
マギラントの勇士たちは自分たちにこれを託した。
万能の魔神『エリクシルドラゴン』の力は強大そのものだった。今の猟兵であっても、恐らく太刀打ちできない。
それほどまでに凄まじい力を得たのは、強い願いの力を手に入れたからだ。
「キャバリア……とは違うんか」
鏡島・嵐(星読みの渡り鳥・f03812)は息を飲み込む。
これを使えば、自分であっても、あの強大な力を持つ『エリクシルドラゴン』と対等に渡り合うことができる代物なのだという。
実感がわかない。
まるで自分の力ではない力のように感じられる。背後で轟音が響き渡る。『エリクシルドラゴン』と他の猟兵の戦いの音だろう。
時間がない。
このまま戦いを長引かせれば、それだけ三塔戒律マギラントに住まう人々が犠牲になる確率が高くなってしまう。
怖い。
戦いが怖い。いつまでたっても、どれだけ経験しても、その恐れは消えない。消せない。
怖いものは怖いのだ。
嵐は自問自答する。
答えはすぐに出るのだ。
「……今はためらってる場合じゃねえ。考えるより!」
踏み出す。
『メイガス』纏う嵐が戦場に飛び出す。
『エリクシルドラゴン』の威容は凄まじいものだった。一度は切り落とされた三つ首の竜が復元されている。
三つ首が一斉に咆哮し、嵐を敵と認識したのだろう。一斉に襲いかかってくる。
「……恐怖で耳を塞いでなんていられねえからな!」
嵐の瞳がユーベルコードに輝く。
笛吹き男の凱歌(ラッテンフェンガー・パラード)が響き渡る。召喚された道化師による演奏。
その戦慄が戦場に響き渡り、嵐は目を見開く。
力が溢れる。
戦闘能力を増加させ、さらに『メイガス』によるブーストを得た嵐の踏み込みは一瞬にして『エリクシルドラゴン』の三つ首の内側へと彼の体を移動させていた。
「う、おっ!?」
嵐さえも予想してなかった力に、目を見開く。
本体たる『エリクシルドラゴン』の姿が眼前にある。振り払うようにして三つ首の竜が嵐へと襲いかかるが、それを振り切るようにして嵐は飛ぶ。
遥か上空まで飛び立った嵐は見下ろす。
スリングショットのように魔力が弦を張り、魔力によって形成された弾丸が指先で弾かれる。
瞬間、それは眼下にある『エリクシルドラゴン』へと叩き込まれる。
炸裂する魔力の爆風が赤い魔神の体を砕くように吹き飛ばす。
爆煙が立ち上り、しかし、その最中から『エリクシルドラゴン』の三つ首が迫るのだ。
「不安になるな……! 大きな力だけど、これはおれの力だ。見誤るな。恐れるな。おれは……やれるんじゃあない。やらないといけないんだ!」
迫る首を蹴り落としながら、さらに嵐は空中で身をよじるようにしてスリングショットの弦を引き絞る。
敵は確実にこちらを狙っている。
これならば、他の味方や三塔戒律マギラントに住まう人々に注意を払うことはないだろう。故に嵐は戦う。
恐怖を噛み殺すのが勇気だというのならば、今の嵐を支えるのは『メイガス』の力ではない。
それは嵐自身の勇気であると示すように煌めく魔力の弾丸が『エリクシルドラゴン』の体を砕くのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
紫・藍
あやー、エリクシルでっすかー。
願いの力を託されたから強い、と。
なるほどなのでっす。
でっすが、ええ。
願いを託されたのは藍ちゃんくんもなのでっすよー!
決死の覚悟でメイガスを託してくださったマギラントの皆様に応えてこその藍ドルなのでっす!
藍ちゃんくんでっすよー!
歌うのでっす!
皆々様が用意してくださったメイガスというステージで!
燃えに燃えてる藍ちゃんくんのパッションはメイガスパワーも相まってドラゴンさんの巨体さえも吹き飛ばすのでっす!
詠唱により威力が上昇しようとも射程は上昇しないのです!
詠唱し続けようものなら射程外まで吹き飛ばし続け、切り上げて撃ってきても威力不足&吹き飛ばしで射線をずらすのでっす!
「あやー、『エリクシル』でっすかー」
掲げた掌を目元にもっていって、遠くを見る。
赤い煌めきが明滅しているように思えた。それは戦いの光だ。
三塔戒律マギラント。
戦場となった都市国家にて『エリクシルドラゴン』は咆哮する。
猟兵達のユーベルコードが煌めき、その赤い躯体を砕き、しかし、膨大な強い願いを得た『エリクシルドラゴン』は万能宝石でもって身を再構成しながら戦い続けている。
確かに凄まじい力だ。
「あれが強い願いの力を託された『エリクシル』。なるほどなのでっす。でっすが、ええ」
紫・藍(変革を歌い、終焉に笑え、愚か姫・f01052)は笑う。
どんなに絶望的な状況であっても笑う。
自分が笑っていなければ、他の誰も笑うことができないと言うかのように藍は笑う。
「願いを託されたのは藍ちゃんくんもなのでっすよー!」
ステージと化した三塔戒律マギラントにて藍は歌う。
動力甲冑『メイガス』を纏い、マイクを手に取る。
いつだってそうだ。歌うことでしか自分を表現できない。
自分の思いを。
自分の願いを。
自分の叫びを。
人に共感してほしいと思ったのではない。
人の願いを己というアンプを通して世界に発露したいと思ったのだ。この『メイガス』だってそうだ。
三塔戒律マギラントの勇士たちが決死の思いで、自分にこれを託してくれた。
守ってほしいと。
脅威を打ち払ってほしいと。
「なら、応えてこその藍ドルなのでっす! さあ、歌いますよ。愛ちゃんくんでっすよー!」
藍ちゃんくんパッショネイトステージ!(エキサアアアアアアイットォォォッ)
ユーベルコードが煌めく。
煌めく光が明滅して、戦場を塗りつぶしていく。
自分の中にあるパッションが、ライブへの熱狂が、戦場を駆け抜けていく。
躱すことができるわけがない。
歌は歌。
音は見えず、走り、光よりも遅いのだとしても、それでも十分すぎるほどに速い。
その歌声を『エリクシルドラゴン』は受け止めたことだろう。
ビリビリと躯体に響く音に『エリクシルドラゴン』は訝しむように顔を歪めた。
異なる願い。
それは。
「『平和』! 歌こそ『平和』の象徴なのでっす! 歌って、歌って、歌い続けて! 無力だと言われようとも、それでも歌い続ける!」
吹き飛ばされる『エリクシルドラゴン』の体。
打ち上げられ、空に舞う。
だが、それをさらに追撃するように藍の歌声は響き続ける。
反撃の糸口すら与えぬかのような連続した歌声は、『エリクシルドラゴン』を遥か上空まで吹き飛ばし、ブレスの一撃を放とうとした三つ首の口腔さえも押し上げて吹き飛ばす。
問答無用だった。
「それでは皆様、ご一緒に! 藍ちゃんくんでっすよー!!!」
そのシャウトは、『メイガス』を通して増幅され、『エリクシルドラゴン』に一切を許さず、空へと吹き飛ばすのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
黒沼・藍亜
……「平和が幻想に過ぎない」ふーんなるほど、でもさ?
そうであっても今アンタを殴るのを止める理由にはならないんすよね
大体それ自体、その語をアンタはそう定義したってだけの話だし
メイガスを借りるっすよー……後味方には付近に近寄らないように言っておくっすよ、まあそもそも出てこれる状況じゃないかもしれないけど
さて、一応『電磁木刀』(サイザナ土産)は構えるけど肉弾戦しない系猟兵でそもそもその経験の少ないボクに長時間の打ち合いは無理、
なら魔力でもなんでもブーストしてくれるのだから一撃で決めるべきっすね
都合よく向こうからも近寄ってくれるみたいだし…
なので距離が近づいたら嚙まれる前にUC、それで終わりっすよ
万能の魔神『エリクシルドラゴン』は『平和』は幻想にすぎないものだといった。
形骸化しているのだと。
空虚なる言葉であると。それがあると信じて疑わぬ者にとっては、取り合うことのない言葉であったかもしれない。しかし、それはじくじくと信じるに値するものを蝕むようにして打ち込まれた楔めいた言葉でもあったことだろう。
「……ふーんなるほど。でもさ?」
黒沼・藍亜(に■げ■のUDCエージェント・f26067)は己が纏う動力甲冑『メイガス』と共に戦場に飛び出す。
力が膨れ上がっているのが感じられる。
増幅された能力。
これが魔術技術の粋を集めた『メイガス』の力である。
とは言え、藍亜はそれにかまけるつもりはなかった。
元より自分は肉弾戦には不向きだ。経験だって多くはない。長時間戦いを続ける自身はなかった。無理だと思った。
ならば、と彼女は決めたのだ。
何を、と問われたのならば心を、と応えるだろう。
眼の前にあるのは『エリクシルドラゴン』。
平和を望む心を歪んだ形で受け止めた虚の如き存在でしかない。力はあれど、願望なく。その方向性すら己では定められぬ彷徨者。
唯一だけ『エリクシル』たちに定められているのは願いの力を集めること。
それが彼らを生み出した『11の怪物』たちの目的であるからだ。
ただ、それだけのために。
さまよい続ける者に藍亜は負けるつもりはなかった。
『平和』を否定する者たちを前にして、彼女は言い放つ。
「そうであっても今アンタを殴るのを止める理由にはならないんすよね」
「ならばなんとする」
「ぶっとばして止めるってだけのはなしっすよ。大体、その『平和』に対したってそうっす。それ事態、その言葉をアンタはそう定義したってだけの話だし」
藍亜は踏み込む。
『メイガス』によって身体能力まで増幅されているのだ。
魔力もまたブーストされているのがわかる。膨れ上がる力。自分が踏み込めば、『エリクシルドラゴン』もまた踏み込む。
彼女にはわかっていた。
これまでの猟兵との戦いで『メイガス』を纏った猟兵は必ず突っ込んでくると。だからこそ、その出鼻をくじくために踏み潰そうと三つ首の竜をけしかけてくる。
けれど、藍亜にとって、それは好都合だった。
「どんなにアンタが否定するのだとしても、その言葉はアンタが弄して良いものじゃあないっす。それを決めるのはいつだって生きている人たちなんすから」
煌めくユーベルコードがあった。
そう、それを否定すること事態を、たとえかみさまがゆるしても(ワタシハワタシヲユルサナイ)。
否定する。
叩き込む黒い風は『エリクシルドラゴン』の内部へと染み渡る。
無差別に放たれた黒い風は『エリクシルドラゴン』の三つ首と本体へと打ち込まれる。
傷はない。
だが『エリクシルドラゴン』は訝しむだろう。
じくじくと生まれる胸の痛み。
いや、衝動と言えば良いのだろうか。己の言葉に自覚が持てない。
「我は」
「もう終わりっすよ。ようこそ、救いなんて無い黒い世界へ」
藍亜はつげる。
自己否定の衝動。それこそが黒い風の力。
願いの力を得てもなお、自ら願いを持つことのない『エリクシルドラゴン』は、存在の意義を見いだせない。
願いの力を得ることだけが存在意義であったというのならば、今の彼女は得てなお先に進めぬ、それ以上でもそれ以下でもない存在。
故に、その自己否定の衝動は、彼女の肉体を自壊させる。
己の否定。
それは願望なく、力のみを持つものがたどる最期にも似ていた――。
大成功
🔵🔵🔵
馬県・義透
四人で一人の複合型悪霊…だけど、諸事情により関係ない。
着いたらUC使用!
陰海月「ぷきゅ!」
…陰海月語を翻訳します…
力方面だと、あつあつおじーちゃん(『侵す者』)が最適なんだけど。メイガス壊しそうだから!
借り物だし、念のためってやつ!
それに…動力甲冑って、カッコいいよね!(荒ぶる少年心)
あ、借りるときはボードに挨拶書いておこっと(ヘロヘロ文字)
で、借りたよ!水棲バルバ?用のだって。
さあ、これで張り切って光珠をポイポイ投げちゃえ!出力上がってるから、いつもより大きいや。
む、その首に当たるわけにはいかないから、見切って捩って回避!で、四天霊障(極彩色)ぶつけちゃえ!
重量カウンターってやつだね!
三塔戒律マギラントの戦場にゲーミングカラーが明滅する。
四悪霊・『虹』(ゲーミングカゲクラゲノツヨサヲミヨ)。
それはユーベルコードであり、馬県・義透(死天山彷徨う四悪霊・f28057)と合体した『陰海月』が放つ1680万色に輝く呪詛であった。
「ぷきゅ!」
気合十分に『メイガス』へと乗り込んだ『陰海月』が鳴く。
戦いの場において最適であろう四柱『侵す者』。
されど、『メイガス』は動力甲冑。すなわち機械であると判別できるだろう。となれば、触れるだけで機械を壊してしまう『侵す者』との相性が悪い。
なら、自分が動かせば良いのだ。
そう張り切って『メイガス』を纏う『陰海月』は戦場に飛び出す。借り物を壊すことに気が引けたのだろう、四柱たちは沈黙するしかない。
飛び出す際に『メイガス』の格納庫のそばにボードで借用の挨拶の文言を残している所が抜け目ないというか、しっかりしているというか。
いや、それ以上に。
「ぷきゅ!」
そう、動力甲冑はカッコイイのである。
少年の心が高ぶってしまうのも無理なからぬことである。凄まじい光を放つ『メイガス』と共に『陰海月』は戦場を駆け抜ける。
凄まじいの一言だった。
戦場を埋め尽くす眩しいまでのゲーミングカラー。
赤い宝石、万能の魔神『エリクシルドラゴン』の放つ光さえもくらむものであった。
「どれだけ光を放つのだとしても」
三つ首の竜が咆哮し、ゲーミングカラーの光の中を飛ぶ。迫る『陰海月』の駆る『メイガス』をくらわんとしているのだ。
しかし、その三つ首の竜の顎へと叩き込まれるのは1680万色に輝く光珠であった。
炸裂する光珠の爆発が顎を砕き、宝石の破片を撒き散らす。
「……なに」
どういうことだと『エリクシルドラゴン』は訝しむ。
己の得た願いの力は強大そのものだった。
故に猟兵を打倒するのに足りると思っていたのだ。だが、これまで『メイガス』を纏い、力をブーストした猟兵達のユーベルコードが、その力を徐々に削ぎ落としているのだ。
本体たる『エリクシルドラゴン』の躯体にも亀裂が走り始めている。
「ぷっきゅ!」
いつもより威力の上がった光珠の力に『陰海月』は拳を握るように触腕を突き上げる。
振り下ろされる三つ首が鞭のようにしなって『メイガス』をきしませる。
身を捩り、受け流すようにして躱しながら跳ね上がり、霊障を束ねた『メイガス』の拳が『エリクシルドラゴン』へと叩きつけられる。
凄まじい轟音が響き渡る。
重量を載せた一撃は、ブーストされた身体能力と相まって『エリクシルドラゴン』を地面へと叩きつける。
これが重量カウンターというやつだと示すように『陰海月』は『メイガス』の拳を突き上げる。
集まるゲーミングカラー。
その光珠を再び『エリクシルドラゴン』へと打ち込み、爆発する光の中叩きのめすのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
白銀・龍兵
おいおいおい、「平和を望むならアホになれ」?考えることがめちゃくちゃだなおい!
で、このメイガスとやら、好きに使っちゃっていいんだな?(と、人型のやつ(格闘戦特化型)を装着し使用感を確かめてる)――ああ、できればこれ、後でテイクアウトしていいか?(ぇ)
(そして敵に向かって飛んでいき)当然、詠唱させる暇は与えない。UCで強化した(【武器に魔法を纏う】)拳で、その頭を【叩き割】ってやるぜ!ブレスが来るならその軌道を【見切り】かわしつつ【連続コンボ】で攻め立て、最後に【気合い】入れた拳で【吹き飛ばし】てやるぜ!
※アドリブ・連携歓迎
『平和』というものが形骸化しているのならば、それを知ることは空虚を識ることと同義であっただろう。
故に真に『平和』を甘受したいというのならば、白痴であるべきだと『エリクシルドラゴン』は言う。
それは一端の事実であったのかもしれない。
真実というにはあまりも暴力的な言葉であったもかもしれない。
故に、白銀・龍兵(Wings of Silver Dragon・f39248)は身にまとう『メイガス』の拳を打ち鳴らす。
甲高い音が響き渡る。
動力甲冑たる『メイガス』は搭乗者の能力をブーストする。
それが三塔戒律マギラントの魔術研究の粋を集めた結晶であることは言うまでもない。これを貸与された龍兵は咆哮する。
裂帛たる気合と共に踏み込む。
迫る三つ首の竜たちを打ち払い、蹴り飛ばしながら本体たる躯体へと肉薄する。
「おいおいおい、わかってんのか。てめえの言っていることは平和がほしけりゃアホになれって言っているようなもんだぜ? 考えることがめちゃくちゃだなおい!」
叩きつけられる拳の一撃に『エリクシルドラゴン』の赤い宝石が砕ける。
躯体そのものが万能宝石であるというのならば、『エリクシルドラゴン』は確かに消耗しているように思えた。
膨大な強い願いを得てもなお、ブーストされた猟兵達のユーベルコードが消耗を強いているのだ。
「事実だ」
「いいや、そりゃあ、てめえにとっての都合の良い事実ってやつだろうが!」
拳を振るう。
叩きつけるたびに宝石の破片が飛び散り、ドラゴンガントレットに変容した『メイガス』のマニュピレーターが苛烈なる爆発と共に撃ち出される。
「人とはそういうものだ。自らの願望から遠ざかることを願う。そういうものだ。知的生命体の中において、最も愚かである。既に己の手の中にあるものを取りこぼしておいて、それを手の内に戻すことを願う」
堂々巡りめいた行いをなし続ける。
有史以来変わらぬ愚かさであると示すように『エリクシルドラゴン』は力を振るう。
けれど、龍兵は笑う。
「そりゃあ、てめえらが願いを歪めて叶えるからだろうが! 端からてめえらは叶えるつもりなんてねぇのさ!」
踏み込む。
瞳にユーベルコードが輝く。
「ただ願いを得たい。より強ければ強いほどいい。なまじっか感情ってのが理解できるから、その落差を強弱と間違って覚えただけだろうがよ!」
人の道行が願いを叶えるためのものであるというのならば、『エリクシル』とは横道から横槍を入れてくる部外者でしかない。
故に龍兵は拳を握りしめる。
ドラゴンガントレットの内部で爆発的な魔力が迸る。
『メイガス』を通して、さらにブーストされた魔力がほとばしり、その拳が目にも止まらぬ速度で撃ち出され『エリクシルドラゴン』の躯体、その頬を捉える。
「だからよぉ! こう言ってやるのさ!」
「何を……!?」
「引っ込んでなってな! てめえらに叶えられなくっても、人は自分でどうにかできるんだよ! 力なくとも、願いがある。願いもねぇ、自分で何をしようとするでもねぇ、誰かの願いに相乗りしてやろうって魂胆丸見えの連中には!」
これが似合いだというように彼の拳は振り抜かれ、『エリクシルドラゴン』の躯体を砕くのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
董・白
あれが、絵陸汁…じゃないエリクシルですか…。
話には聞いていましたが、想像以上の脅威のようです。
すみません。実はこの世界…本日が初めてなんです。
はい、えーっとメイガスですか、お借りします。
使い方は『道術』で『情報収集』多分…コーやって動かすんだと知りました!多分、きっと、おそらくです!!
魔力はよくわかりませんが、『気功法』と『仙術』でそれっぽい力を送り込み起動させます。
敵の攻撃を『結界術』で防ぎつつ、なんとか『操縦』して回避。
今です。『龍脈使い』の秘術で周囲の霊気を集め、宝貝「五火神焔扇」の『リミッター解除』した最大級の攻撃をお見舞いします。
あ、魔力?尽きた…(メイガス転倒)
戦場に明滅する赤い光。
それは宝石のような輝きであったし、また剣呑な輝きを持つものであった。歪んだ力のおぞましさとでも言えば良いのか。
『エリクシルドラゴン』の放つ光は美しくも禍々しい。
「あれが、絵陸汁……じゃなく『エリクシル』ですか……」
話には聞いていたが、想像以上の脅威だと初めて訪れた世界、エンドブレイカー! 世界の三塔戒律マギラントの戦場に董・白(尸解仙・f33242)はだじろぐ。
『エリクシルドラゴン』は強い願いの力を得た『エリクシル』である。
その力は苛烈そのもの。
しかし、対抗する術はあるのだ。
それこそが動力甲冑『メイガス』である。
「すいません、『メイガス』、でしたよね。お借りします」
格納庫に飛び込んだ白は居ならぬ動力甲冑を見上げうる。搭乗者を待っていたかのように開かれた甲冑の中央部に白は乗り込む。
触れる。
道術によって操作系統を把握する。己の中にある知識ではわからないこと。
それを『メイガス』事態に教わるのだ。
意志を伝達する。それだけでいい。謂わば、己の手足の延長。増幅されていく魔力。
「多分、きっと、おそらく……コーやって動かすんですね」
後はフィーリングだと言うように白は格納庫から飛び出す。
吹き荒れる『エリクシルドラゴン』のブレス。
戦場を埋め尽くしながら、しかして『エリクシルドラゴン』は消耗しているのが見て取れるだろう。
他の猟兵達のユーベルコードが、それを為したことは明白だった。
『メイガス』によってブーストされた力は、如何に強大な力を得てしても、打倒できぬものではないことを示したのだ。
「魔力も気も同じものと考えるのならば!」
「やはり猟兵が障害である。我等の道行を妨げるもの。我等は『11の怪物』へと願いの力を示さなければならない。捕食するべき知的生命体を示さなければならない」
三つ首の竜が白へと迫る。
一直線に、それこそ槍のように迫るのを白は見ただろう。
結界術はブーストされているがゆえに通常よりも強固な出力でもって、一撃を弾く。しかし、数撃打ち込まれれば砕かれることが容易に想像できる。
事実、三つ首の竜の一撃が叩き込まれた瞬間、結界が砕ける。
けれど、それで十分だった。
「今です!」
周囲の霊気を吸い上げるようにして『メイガス』が煌めく。
手にするは、宝貝「五火神焔扇」(パオペエゴカシンエンセン)。手繰り寄せた霊気を煽るようにして舞い上げる。
「この炎は全てを焼き尽くし、この風は全てを吹き飛ばす。舞い散らんこの世の儚さよ……」
全てを塵に焼き尽くす猛火と狂風が生み出されていく。
リミッターなど最早関係ない。
白に許容できる霊力など、『メイガス』によってブーストされたことによって等に超えている。
吹き荒れる猛火を前にして『エリクシルドラゴン』たちの三つ首は無為そのものだった。
膨大な熱量が万能宝石の破片すら溶かし尽くすようにして吹き荒れ、その躯体を吹き飛ばす。
「あ、魔力……尽きた……」
すっからかんだ、と白は思っただろう。
渾身の一撃だった。故に体の中に残った霊気も、魔力も、全てが空になっているのだ。よろめくようにして『メイガス』が地面に膝を突く。
けれど、白はそれでも良いと思ったのだ。
自らがモテる最大の一撃。
それによって『エリクシルドラゴン』は確かに痛烈なる痛手を於い、その躯体に疾走る罅をさらに深いものとしたのだから――。
大成功
🔵🔵🔵
菫宮・理緒
【シャナミアさんと】
メイガス……これキャバリアみたいなものだよね。
なるほどなるほど、システム関係はやっぱり違うのか。
それじゃさっそくバラし……え?
あ、うん。それじゃそれは終わってからにしようか!
シャナミアさんとタッグマッチってことだし、
キャバリアと似た感じってことなら【モーフィング換装】使えそうだね。
チューンで攻撃力5倍、装甲半分にしていくよ!
武器は【トールハンマー】
シャナミアさんのひきつけてくれてた敵を狙撃していこう。
狙撃は一撃必殺が基本だから、威力は最大にして……。
『希』ちゃん、狙いはよろしくね!
あ。なんならトリガーも引いちゃっていいから!
わたしの狙撃とか不安でしょ?
シャナミア・サニー
【理緒さんと】
こ、これがメイガス……!
って吃驚してみたけど、これキャバリアと何が違うの?
あ、装備とか動力源とかそういうの?
じゃあ、キャバリア感覚でいけそうか
理緒さんいけ…メカニック魂は後にしようね?
それじゃタッグマッチといこうか!
やークロキャじゃないって解放感
あっちの技術に合わせて普段使わない|UC《魔法》も使えるしね!
理緒さん、私の方で敵を引き付ける
一発大きいの頼むよー
まずは【ドラゴニアン・チェイン】で物理的にこっちに引きつけ!
ドラゴンブレスは想定内
竜がそっちだけと思うなよ!
【ドラゴニック・ブレイヴハート】!
こっちだってドラゴン・ブレスくらい吐けるんだからなー!!
おし、今だ!理緒さん任せた!
「『メイガス』……これ、キャバリアみたいなものだよね」
菫宮・理緒(バーチャルダイバー・f06437)はシャナミア・サニー(キャバリア工房の跡取り娘・f05676)と共に三塔戒律マギラントの格納庫の中で動力甲冑『メイガス』を見上げていた。
確かに似ているのかもしれない。
けれど、異なるのは『搭乗者の魔力を増幅する』点であろう。
それによって乗り込んだ者は通常以上の力を発揮することができる。しげしげと理緒は『メイガス』の内部を見やる。
「なるほどなるほど、システム関係はやっぱり違うのか。キャバリアの特性は、汎用性だもんね」
オーバーフレームとアンダーフレームの現地換装が容易であるのがキャバリアである。
逆に『メイガス』は増幅器としての役割の意味合いが強いようの思えるかもしれない。
「ふんふん、なら、さっそくだけどバラし……」
「ちょいまち!」
流石にそろそろとシャナミアは理緒の肩を、ぐっ、と力強く掴む。
「え?」
「え? じゃないよ! いや確かに『メイガス』って吃驚ものだけどさ! わかるよ? メカニック魂燃えちゃうよねぇってわかるよ? でもさ、外見て、外」
そう言ってシャナミアが示すのは戦場であった。
そう、この三塔戒律マギラントは今まさに『エリクシルドラゴン』の猛威に晒されている。
すでに多くの猟兵達が戦いに赴いている。
此処で自分たちだけ油を売っている暇はないはずなのだ。なのに、理緒はメカニックとしての魂がうずいて仕方がないのだろう。
とにかくバラしたい! という意志が瞳に見え隠れてしている。
いや、というか、もう普通にバラしてもいいんじゃないかなって顔をしている当たりが、確信犯めいたものを感じさせる。
「あ、うん」
「わかってくれた?」
「うん、終わってからバラすよ!」
そうじゃないんだけど! と思ったシャナミアであったが、此処まで着てしまったのならばしかたない。
「タッグマッチ行くよ!」
「はいはーい! なら、モーフィング換装(モーフィングカンソウ)、行っちゃおうか!」
「また勝手にチューンして!」
シャナミアは『メイガス』に乗り込み、感触を確かめていたのに、理緒は早速ユーベルコードで持って己の乗る『メイガス』の仕様を書き換えていくのだ。
「一撃特化タイプに変更ー! じゃあ、シャナミアさん!」
「おっけー、惹きつけておけばいいわけね! 任せといてよ!」
此処は阿吽の呼吸である。
シャナミアは己の『メイガス』と共に戦場へと飛び出す。
見える『エリクシルドラゴン』の威容は凄まじいものであったが、しかし、その躯体には大きな亀裂がすでに走っている。
先んじて攻勢仕掛けていた猟兵達のユーベルコードのおかげであろう。
その力によって大きく消耗しているのだ。
放たれる三つ首の竜の攻撃を前にシャナミアは叫ぶ。
「ドラゴンにはドラゴンってね! ドラゴニアン・チェイン!」
膨れ上がる力。
『メイガス』によって増幅させられた魔力が、ユーベルコードとなって放たれ、ドラゴンオーラとなって『エリクシルドラゴン』とシャナミアの『メイガス』とをつなぐオーラの鎖へと変じるのだ。
その鎖を握りしめ、膨れ上がった膂力でもって『エリクシルドラゴン』を引っ張り込むのだ。
「……こっちだってドラゴニアンなんだからね! おし、今だ! 理緒さん任せた!」
その言葉と共に理緒の『メイガス』が駆け抜ける。
装甲を半分にしたがゆえの俊敏さ。
されど、それは一撃を貰えば瓦解する脆弱性を露呈しているようなものであった。
けれど、理緒にとって、それはさしたる問題ではなかった。シャナミアによって『エリクシルドラゴン』の躯体は惹きつけられ、動きを止められている。
ならば、攻撃を当てることなど容易であると言えるだろう。
「『希』ちゃん、狙いはよろしくね!」
『了解しました。トリガーはこっちに』
「あっ、私の狙撃不安って顔してない!?」
『してません。トールハンマー、発射』
『希』の言葉と共に『メイガス』より放たれる雷の鉄槌の如き一撃が『エリクシルドラゴン』へと降り注ぎ、その躯体をさらに砕くのだった――。
大成功
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厳・範
お爺、人間形態でやってきた
メイガス…若桐が知ったら、興奮しであるな。
だからこそ、話せるように使った方が良いだろう。
UC【桃花・侵】…わしに近づけば、この桃の花に切り裂かれよう。
まあ、わしは逃がすつもりもないのだが。
さらに、仙術による結界にて、貴様の周りを狭めた。花吹雪というものを、よりよけづらくするためにな。
その首は見切って当たらぬし、突っ込んできたら余計に切り裂かれる。そういうものだ。
元が雷公鞭であった花びらにて、雷撃を。
『平和』とは、勝ち取るものであろうよ。皆の力で、勝ち取るもの。
だが、それを齎すのは貴様ではない。
異世界の技術。
それは他世界を識る者にとっては、大いに興味を抱くものであったかもしれない。己の生きてきた世界を基準に物事を考えるからだ。
しかし、そこに上下はないのかもしれない。
一長一短、というのが正しい。
厳・範(老當益壮・f32809)の生きた世界、封神武侠界においても人界仙界の区別はある。そこにある技術体系とて、地続きであれどやはり隔てりがあるのだ。
ならば、他世界ともなれば、それはより顕著なものとなるだろう。
三塔戒律マギラントにおける動力甲冑『メイガス』の技術も、その一つだった。
「やれやれ……この動力甲冑……『メイガス』と言ったか、『若桐』が知ったら、興奮しそうであるな」
彼は己の妻のことを思い出す。
身に纏う『メイガス』は搭乗者の魔力を増幅させる。
仙力もまた同様であるように思える。魔力として『メイガス』が認識しているのだろう。となれば、これもまた『若桐』の研究に活かされることがあるかもしれない。
「ともあれ、この戦場を生き残るのが先決である」
煌めくユーベルコードが迫りくる赤い宝石じみた三つ首の竜の一撃を受け止める。
光が受け止めたのではない。
それは己の手にした武装を無数の桃の花弁へと変え、その花弁でもって一撃を受け止めたのだ。
だが、それだけでは済まない。
「舞いて切り裂け」
桃花・侵(タァォフゥア・チィン)。
それがユーベルコードの名である。舞い散る桃の花弁は『エリクシルドラゴン』を逃さぬように周囲を取り囲む。
すでに多くの猟兵達の攻勢によって『エリクシルドラゴン』は強大な願いの力を得てなお、消耗を強いられている。
躯体に刻まれた亀裂の大きさが物語っていた。
乱舞するように桃の花弁が飛ぶ。自在に空間を取り囲み、『エリクシルドラゴン』を逃さないのだ。
「貴様の周りは狭められておる」
花吹雪めいた結界の中に『エリクシルドラゴン』は追いやられる。三つ首が放たれようとも、花弁は舞い、その万能宝石の鱗を切り裂く。
「『平和』とは勝ち取るものであろうよ。皆の力で、勝ち取るものよ」
「だが、願うだろう。人とはそういうものだ。齎してくれるものを拒む理性などない」
「だろうな」
範は知っている。
長きに渡って見てきたからだ。望みながら己では行動しないもの。待っているだけで何かが得られると思っているもの。
それを時の運だと良い、労せずして得られることが尊ばれるものだと信じて疑わぬ、者達の姿を。
けれど、それを愚かと笑うことはない。
それもまた人なのだ。立ち止まることができるから、歩み出すことができる。苦しみを得るからこそ、楽しさを見出すことができるように。
人とはそういうものだ。
故に。
「勝ち取ると言ったのよ。まつだけでは得られぬと識るためにこそ、その行いは、その問答は人を人たらしめるのよ」
「ならば、その愚かしさを否定はしないか」
「愚かしさ、賢さで人が図れるものか。ましてや、『平和』を齎すのは貴様ではない」
故に、と舞う花弁の最中に範は佇む。
愚かしくとも、賢くとも。
人は、時の中を進んでいく。逆巻くことのない時間を、そこに意味を見出だし真にしていくのだと示すように――。
大成功
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メンカル・プルモーサ
(軽量化されたメイガスを装着しつつ)
これが噂に聞く魔導甲冑メイガス……甲冑と言いつつも色んな物があって助かった
重いものは単純に扱いづらいからね…
その魔力に振り回される可能性はあるらしいけど…力の取り回しのは慣れている
さて……貸与してくれたからには結果を出さないとだね
相手はドラゴン……ならば対抗策はこれだ
【竜屠る英雄の詩】を発動……メイガスに竜殺しの力を付与…
魔力の増幅によりドラゴンならば触れればダメージを受けるほどになったね…
あとはメイガスと一緒に借りた剣にも竜殺しの魔力を纏わせて切り裂いて仕留めるとしよう…
竜屠る英雄の詩(ドラゴンスレイヤーズ・バラッド)が戦場に響いている。
それはメンカル・プルモーサ(トリニティ・ウィッチ・f08301)の瞳に輝くユーベルコードが発する力であった。
「厄討つ譚歌よ、応じよ、宿れ。汝は鏖殺、汝は屠龍。魔女が望むは災厄断ち切る英傑の業」
身に纏う動力甲冑『メイガス』は軽量化されたものであった。
しかし、メンカルにとって重要であったのは、増幅された己の魔力であった。
音に聞く『メイガス』。
搭乗者の魔力を増幅させ、威力を高めるもの。
願いの力を得た『エリクシル』にさえ肉薄する力へと昇華した魔力のほとばしりをメンカルは理解しただろう。
確かにこれは増幅された魔力の振り回されてしまうかもしれない。
その可能性がある。
けれど、その可能性がある、ということを知れているのならば対策は如何ようにもできるのがメンカルという猟兵であった。
「……慣れている」
眼の前には数多の猟兵達によって消耗させられた『エリクシルドラゴン』の姿があった。
強大であった彼女の力は今や亀裂疾走るものであった。
躯体に刻まれた亀裂が物語っている。
「……振り回されていたのは君も同じだったようだね」
「我が振り回されていただと? 何を言っている」
「……強い願いの力を得た……他愛ない知的生命体の力だと思ったんじゃないかな。容易に御すことができると思ったんじゃないかな。だから、振り回される」
メンカルは告げる。
どんな存在だってそうだ。
強大な力を手繰るのは容易ではない。いつだってそうだ。だからこそ、メンカルは軽量化された『メイガス』を手繰る。
重量のあるものを自身が使い切れないと理解してのことであったし、また同時に軽くすれば己でも扱いきれると把握していたからだ。
自らの力の限界値を正しく知っているからこそ、できる芸当。
そして、何よりも。
「……君は『エリクシルドラゴン』。なら、これが刺さる」
『メイガス』の掲げるは剣。
竜にまつわるものを殺す竜殺しの概念術式を搭載された剣。一見すれば何の変哲も無い剣であったことだろう。
けれど、付与された術式は『エリクシルドラゴン』を確実に撃滅するためのものであった。
ある種の概念にのみ通用する術式。
使い勝手がいいとは言えない。
しかし、特定の何かを刺すのであれば、これ以上の最適解は存在しないと言わしめるほどの術式纏った剣を構え、メンカルは『メイガス』と共に踏み込む。
振るう一撃は『エリクシルドラゴン』をかすめる。
「当たらなければ……――!?」
がく、と『エリクシルドラゴン』の足がもつれるようにして大地に転がる。理解できていないようだった。
メンカルは息を吐き出す。
「……まだ解っていないようだね。これは『竜殺しの術式』。魔力がブーストされているのだから、触れるだけでもダメージはうけるよ……だから」
メンカルはもつれるようにして倒れ込んだ『エリクシルドラゴン』へと迫る。
飛翔しようとする『エリクシルドラゴン』であったが、その詩からは逃れられない。
響き渡る竜殺しの詩。
それは英雄譚に昇華するものであったことだろう。
「……君は見誤った」
人の力を。
願いを叶える万能宝石の力なくとも、人は大いなる力を退ける術を手にすることができる。力の象徴も、全てに勝るものではない。
示すユーベルコードの煌めき持つ剣の一撃をメンカルは『エリクシルドラゴン』に叩き込み、その赤き宝石の体を霧散させるのであった――。
大成功
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