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エンドブレイカーの戦い⑪〜火花の呱々

#エンドブレイカー! #エンドブレイカーの戦い #骸殻工房ガルシェン

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『おおーい、火を熾せ!』
『叩くぞ、揃えろ!』
 威勢の良い声と槌が熱き鋼を鍛える音の響き渡る街の名は、ガルシェン。
 ガルシェンとは、超巨大獣の骨の中を中心に建設された巨人達の都市国家の一つである。
 かつては“骸殻荒野”と称された地底都市であったが、現在は地上部に工房街が積み上げられ賑やかな職人の街へと発展していた。

●火花の|呱々《うぶごえ》
「皆様はご存じ?ガルシェンという国家の地上部に建造された工房街には、沢山の武器工房や防具工房が存在しているのですって!」
 にこにこと楽し気に手を打った壽春・杜環子(懷廻万華鏡・f33637)が“そこで”と前置いき、地図の工房街の部分にぐるりと大きな丸を付けた。
「此処にいるのはそれぞれ腕の立つ鍛冶職人の巨人の皆様ですゆえ……“バシュムの毒液に対抗できそうな装備”を開発してもらうのにはうってつけではなくって?」
 ふ、と笑む杜環子の瞳がにんまりと笑ってから、素材は何でもよろしくってよと付け足した。
「宝石に文様や術式を刻むもよし、アクセサリーなどの彫金や、皆様がお持ちの武器を変化させるアタッチメントの類、弾丸なども可能ではないから」
 工房の素材は自由に使うのもよく、持ち込みも可能なのだという。
 気に入りの宝石類や鉄などの素材、昔から大切にしていた物を取り込むのもいいだろう。また、自身の力を込めた鉄や宝石、魔石なども使えると杜環子はわらって。
「毒液だけを過信した愚か者を討つには研いだ得物を持たねばね!あ、ですが……」
 “ただ、一つ問題がございますの”と杜環子が溜息をつき、肩を竦め悩まし気に口にした。
「職人達は巨人。ゆえに“身長8メートルの巨人”向けの武装しか作ったことがございませんの。皆様向けの武装を開発する為には、使用者たる皆様が必要不可欠」
 “どうか、お気をつけて刃を研いでいらしてね”
 そう微笑む杜環子が鏡を撫でグリモアを輝かせた。


皆川皐月
 お世話になっております、皆川皐月(みながわ・さつき)です。
 武器は!!ロマンだ!!!!!!

●注意:こちら一章のみの『エンドブレイカーの戦い』の戦争シナリオです。

●プレイングボーナス!:巨人の職人と一緒に自分にぴったりの『対毒武装』を開発する

●第一章:『巨人の武器工房』

●戦争シナリオだけれど数は気にしません。
 オーバーロードだとより繊細に詳しく職人と話し合いが出来るかもしれません。

●その他
 複数ご参加の場合はお相手の【呼称+ID】または【グループ名】がオススメです。
 【★今回のみ、団体は2名組まで★】の受付です!
 IDご記載+同日ご参加で確認がしやすいので、フルネーム記載より【呼称+ID】の方が分かりやすく助かります。
 マスターページに文字数を省略できるマークについての記載がございますので、良ければご活用ください。
 ご縁がございましたら、どうぞよろしくお願い致します。
 最後までご閲覧下さりありがとうございました。
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第1章 日常 『巨人の武器工房』

POW   :    巨人と一緒に鎚を振るい、武装を自作する

SPD   :    武装を試し振りし、使い心地を確かめて調整する

WIZ   :    職人と話し合い、武装の設計を考える

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🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

瞳ヶ丘・だたら
◎WIZ

よい街だ。とはいえ故郷を投げ出した身には少々堪える。
どれ、あたしも一つ頼もうか。いいや、大きさの調整は結構。
巨人用兵装を搭載する|人型戦車《ガジェットタンク》を、あたしが造るからな。

鍛治師の方々には敬語混じりで話す。慣れてはいないのだが。
依頼するのは大太刀だ。サイズ感からすると斬馬刀か?
或いは用途を考えるなら、斬蛇刀とでも呼ぶべきかな。
材質は任せる、もっともよいものを。刀身に耐毒術式の彫りをお願いしたい。
可能ならばあたしの|呪法《てもち》もまぜこみたいが、そこは応相談だな。
その他、あたしの持っている知識で行える〈武器改造〉の口出しを行おう。
職人には嫌がられるかもしれないがね。



●鉄槌工房細工腕
「(……なんとも、懐かしいものだ)」
 仰いだ空に昇る煙も、響く金属ぶつかり合う音も、瞳ヶ丘・だたら(ギークでフリークな単眼妖怪・f28543)に郷愁を覚えさせるには十分だった。
「(――少々、この身には堪えるがな)」
|似て非なる故郷《製鉄と鍛冶生業の隠里》を投げだしただたら自身への嘲笑は、一際高く響いた槌音に掻き消された。

「失礼、こちらで一つ頼みごとが出来ると聞いたのだが」
 ふと目についた工房の扉をノックしながら声を掛ければ、奥から現れた老巨人が爛々とした瞳でだたらを見た。
『お前さん、猟兵か』
「いかにも。あなたが|人型戦車《ガジェットタンク》の職人だと伺い、此方へ参りました」
 礼を欠く気はない。だが慣れぬ敬語はついばらけてしまう。
 そんなだたらの様子にすぐ気づいた職人は低く笑うと、|巨大な《巨人サイズ》の椅子をだたらに勧め笑った。
『俺は下らん仕事はしない。遜りもいらない。欲しいのはお前さんの考えと言葉――つまりは“注文”だ』
「これは失礼を、」
『謝罪もいらねえ。お嬢さん、あんたの“注文”はなんだ』
 爛々とした瞳の意味を、だたらはやっと気が付いた。
 この男、ただ“作りたいだけ”なのだ。自身では思いつかない、|他人《猟兵》のアイデアを作りたい……ただ、それ“だけ”。
「巨人用兵装搭載の|人型戦車《ガジェットタンク》」
『ほう。何を搭載する……ハルバード、アックスソード、レイピア野太刀にフレイムソード……』
「斬馬……いや、斬蛇刀とでも呼ぶべきか」
 だたらの言葉に瞳を輝かせた職人が手近なカタログ興奮からかテーブルに叩き付ければ、衝撃でだたらは一瞬浮いた。更に頁が捲られる風圧に耐えながら注文を告げれば、“おお!”と上がる歓声。
『あぁそうだ、お前さんらは奴を斬るんだったな!あぁいい、いいぞ、なら研ぎを変えねば!』
「材質は任せるが、“もっともよいもの”で頼む。刀身に対毒術式の掘り込みは出来るだろうか」
『ならば……おおい!ミーナ、アマツカグラの黒鐵を揃えとけ!掘り込み。掘り込みなら対腐食アリの古いのがあったな……で、お前さんは何を持ってきた?』
 ミーナと呼ばれた少女の巨人が“はぁい!”と奥で答えるのを横目に、だたらを見下ろすその目には興味。視線に笑っただたらが、“呪法”をと口にすれば職人の視線が続きを促した。
「出来るなら、あたしの|呪法《手持ち》をその彫り物に混ぜ込みたい。出来るか?」
『出来る。お前さんのその呪法とやらの方法は炎にも付与できんのかい?』
「なるほど、それならこちらの方が――」
 俄かに白熱し始めるモノづくり好き同士の会話は、槌打つ時だけは静寂で。それ以外常に話ながら製作は行われた。
 途中から細工・呪工職人、装甲職人も加わった結果|人型戦車《ガジェットタンク》の装甲に文様を入れよう、砲弾に掘り込みより砲門に防毒魔法陣の展開を、更に武器改造の知識を持つだたらは椅子ごと色々運ばれあれやこれやと大盛り上がり。
「(口出しは嫌がられるかと思ったが……この工房は違うのか)」
『おい嬢ちゃん、お前さんこの古いのは読めいるかい?あんたの付けてる文様とちいと似てる』
「分かった、見よう」

 試行錯誤の末に出来上がったのは、対腐食と対毒呪法の文様と紋章を対呪破の繊細な掘り込みで守護した|人型戦車《ガジェットタンク》と、同様の文様と呪法・紋章を刻んだアマツカグラの黒鐵で製 斬蛇刀。
『これを使うのも名付けも、お嬢ちゃんの役目だ。負けるなよ、蛇公なんぞに』
「これほどのお膳立てでは、負ける道理などあるまいよ」

大成功 🔵​🔵​🔵​

鏡宮・ノエル
材料を持ち込んでいいのかい?なら、ちょうどよかった!
この『卵形の宝石』を材料の一つにしよう
(レベル個あるので、めっちゃゴロゴロしている。減っても規定個まで増える)
対毒武装も、この戦が終わったあとにも有用だからね!

あ、これ砕いて粉にしてもいいからね。大丈夫、神力は留め置いてあるから爆発はしない。
武器としてほしいのは、刀なんだ。この世界、太刀と野太刀あるでしょ?それがいいかな。
長さの目安は…この退魔刀の1.5倍くらいかな。
やっぱりね、使い慣れたこの退魔刀と形が近いほうがいいかなって。
他人に貸すと、近距離攻撃しにくくなっちゃうし…で。
だから、刀系統を二本持とうとしてるんだ。



●其は毒斬り春呼ぶものなれば
 出発前、“材料を持ち込んでも良いのかい?なら、ちょうどよかった!”紅水晶色の瞳で微笑んだ鏡宮・ノエル(よく圖書館にいる學徒兵・f38658)は今、色取り取りの卵型の宝石を職人に見せていた。
 意外なことに、巨人の職人は器用にも細いピンセットで一つ一つ宝石を摘まみ光に飾り眺めては“ほう”と言葉を溢す。
『坊ちゃん、こりゃあ唯の宝石ではないな?』
「これは僕の神力を溜めた宝石だよ。あっ、これ砕いて粉にしてもいいし、神力は溜め置いているだけだから爆発はしないんだ」
『ほうほう。――なるほど。で、坊ちゃんは何が欲しい』
 ニッと微笑んだ巨人の職人がノエルへ尋ねるのは“注文”。その問いを待っていたノエルが綺麗に微笑むと、取り出したのは愛用の退魔刀。
『打ち直しかい?』
「ううん、武器として欲しいのは刀なんだ。たしかこの国には太刀や野太刀があるでしょ?それがいいんだ。で――長さの目安はその退魔刀の……1.5倍くらい、かな」
 なるほど、とノエルの言葉に耳を傾ける職人が宝石同様、ノエルの退魔刀をピンセットで摘まむと興味深げに様々な角度から眺めている。触れながら退魔刀の構造を確認しているらしい。
『厚みも同じくらいか?』
「うん。やっぱりね、使い慣れたこの退魔刀と近い形や大きさの方がいいかなって」
『分かった』
 “同じ長さでなくていいのか?”という職人の問いにノエルが頷けば、職人が微笑む。
『ならこの宝石を砕いて刃に重ねるとするかの。そうすりゃあきっと坊ちゃんの力が伝いやすくなろう』
「力が伝う?」
『おう。こいつに似た“毒斬り”を作るっちゅーこっちゃ』
 職人曰く、鉄を腐食させる毒というのも存在しているし、毒によっては武器を伝い使い手を蝕む毒も存在している。
 それを弾き、斬る――……退毒刀を作る、と職人は言ったのだ。
『毒を斬るっちゅーのは坊ちゃんの力次第じゃが、そう難しいこともあるめぇ。問題は使い手の判断次第。こいつは一刀で使うんか?』
「ううん、二本。さっき見せたこれと一緒に使おうと思ってるんだ」
 ノエルの言葉に“ほうか”と答えた職人がノエルをじっと見つめた後、机上へ視線を落とし摘まんだのはノエルの瞳の色に似た色の卵型の宝石。
『坊ちゃん、この色だけ餞別してくれんか。それはさっき言った通り刃に塗布して研ぐ』
「ありがとう、任せてっ」
 そこからはノエルはお手伝い。巨人の職人は槌音を響かせ刃を打つ。
 轟々と燃える鮮やかな炎は凄まじく、その雰囲気にも何もかもがノエルには非日常。圧倒されそうなほどの鬼気迫る勢いで刃を打つ傍ら、ノエルは次に指示された通り仕分けした宝石を渡せば、それは全て粉砕機へ。
『お、そうじゃこっからは儂だけの作業だから坊ちゃん、お前さんは|ここ《柄》のことあいつと話してきてくれんか』
「ありがとう、いってくるね」
 そうしてノエルが柄と鍔装飾について相談する傍ら、研ぎ上がったのは薄っすら桃薔薇色にも見える刃。
「……――綺麗。不思議……触ってもいい?」
『構わんよ。じゃが完成してからでなくていいんか?』
「うん、今少しだけ……わっ、これ、」
『理解が早くて助かるわい。ええじゃろ、“力の伝播”が強い方が』
 指先が刃に触れた瞬間、ノエルは“繋がった”と理解が出来た。同時に脳裏を過ったのは刃を振るう自身がそれをまるで手足の延長のように使い熟す光景。
「……これは僕が自在に扱える、ってことだよね」
『勿論。はじめから坊ちゃんだけの武器を儂はあくまで作っただけ。如何様に振るうも坊ちゃん次第』

 柄にノエルの選んだ色を巻き結び、鍔を整えれば毒斬る一刀が出来上がる。
『負けるんじゃねぇぞ!』
「――うん。ありがとう」
 その生ゆえに、きっと鏡宮ノエルはこの一刀を使い熟す。
 誰よりも美しく鮮やかに。
 
 
 

大成功 🔵​🔵​🔵​

ウーシャン・ラビットポスト
うーしゃんをかわいくするアイテムが欲しいうしゃ!くれ!!(直球

えーどれに付属するのが決めろってーそれを考えるのそっちじゃないの?
そうしゃねー(羽をパタパタはためかせ)…うーしゃんのこの翼に対毒のなんか凄い効果足すとかどうしゃ?
こう…滑空した下にいる対象に解毒効果をもたらすとか
うーしゃんにあらゆる対毒耐性がつくとか
うーしゃんがもっとかわいくみえるとか

ということでうしゃっと頼むしゃ
…対毒重視になるからかわいさは無い?がんばってかわいさを強調するなんか入れてくれうしゃ



●天高くうさきらきら
「――うーしゃんをかわいくするアイテムが欲しいうしゃ!くれ!!」
 工房へと勢いよく飛び込んできた小さな毛玉――……ではなく、ウーシャン・ラビットポスト(バルバ「ウサギ」のスカイランナー・f39076)が声を張り上げれば、“なんだ”“どうした”とそこかしこから上がる野太い声。
 寄り来るおじさん爺さんの波に“うしゃーーー!!”という甲高い悲鳴が上がったのは一時間前のこと。

「うーしゃんはうーしゃんを可愛くするアイテムが……」
『おう、兎。可愛くってぇのは一体どうなりてぇんだ?』
「えー。どれに付属するのか決めろって、それを考えるのそっちじゃないの?」
『いやでも使い勝手というもんがあるだろう?だから俺達は“注文”を受けたいんじゃがの』
「うーしゃんにあらゆる対毒効果をもたらして尚可愛くするアイテムがいいうしゃ」
『んん~……あんまり複雑なもん刻み込むと可愛さっちゅーんは重視できんのう』
「そこをなんとか、がんばってかわいさを強調するなんか入れてくれうしゃ」
 という会話がループし始めてもう幾度目か、その間にウーシャンは考えた。
「(この会話埒が明かねぇうしゃ。なら此処は一つ、うーしゃんがもっと可愛くてもーーーっとなんかしてあげたくなるようにするしかないうしゃね)」
 “まったくしょうがない巨人うしゃね”と小さな肩を落とすジェスチャーをしたウーシャンだが、まったく巨人には伝わっていなかったが、割愛。
 背で煌めく小さな羽根をぱたぱたとはためかせながら、唸り考え続ける巨人へ、ウーシャンは囁いてみる。
「――そうしゃねー……うーしゃんのこの翼に対毒のなんか凄い効果を足すとかどうしゃ?」
『ほー……なるほど。なら兎、お前さんが自体に……』
 うしゃ?と首を傾げるウーシャンの前、どんと置かれたのは大きなカタログ。勢いよく捲られるページの風圧になんとかウーシャンが絶えたところで、“ほれ”と見せられたのは美しい宝石を使ったネックレスの一覧。
『お前さん小さいじゃろ?ならこれを改造してリュックと、外れねぇように肩とこの翼にガードと――……そうじゃ!お前さんが羽を羽搏かせれば散布できる毒解除の陣を刻むのはどうじゃ!』
「それ可愛くなるうしゃ?」
『着こなしはお前さん次第じゃが、似合う石の色を決めるとええ』
「うーしゃんにあらゆる対毒耐性付くうしゃ?」
『そうじゃな、翼のカバーには毒解除の陣を刻むとして、背負う宝石には毒耐性がええじゃよう。それを煌めきの陣で覆えばお前さんきらきらすっぞ。どうかね』
「……輝けるうーしゃんの降臨?!」
 ここでウーシャンは考えた。キラキラな宝石リュックのようなものを背負い、翼に金の翼カバーを纏わせたウーシャンがキラキラと瞬きを溢しながら毒で困窮する戦場に降臨する光景を――……。
「……かっこいいうしゃね?」
『ええんじゃないかの?あれじゃあれ、救いの天使のようにお前さんがこう、ふわっとこう、』
「おっ、いいうしゃね。高度上げてこうふわっといけばいい感じにぽいうしゃ」
『翼の方に滑空補助つけるとするかの』
「おぉー……!あっ、軽量化もしてほしいうしゃ!」
『ええのうええのう。全体にそれは刻んでおくかの』
「やった!ということでうしゃっと頼むうしゃ。あ、宝石は……うーん、うーしゃんこの空みたいな綺麗なアクアブルーのが良いうしゃ」
『ほう、お前さん見る目があるのう。そりゃあ空に近い鉱山でとれた一級品じゃよ』
「ほんとうしゃ?!ならこれ付けたらうーしゃんもっと可愛くなっちゃううしゃね!」
 そうして、原石をウーシャンの背中のサイズより二回りほど小ぶりにカットし、研磨してゆく。徐々に艶々と空のような煌めき零す宝石に対毒紋章を刻み、その周囲を煌めきの紋章で覆えばなお輝きが増した。
 石を雲のような爪で止め、背負えるように革製のベルトを付ける。更に耐腐食と解毒、拡散の紋章を刻んだ翼のカバーにも石の欠片を飾れば、きらきらのウーシャン専用リュックの完成!
『どうじゃ、煌めきは』
「うーしゃんがもーっと輝いて毒なんかに負けねーようにしてやるうしゃ!」
 
 
 

大成功 🔵​🔵​🔵​

マオ・ロアノーク
同じ戦場に居れば、UCで状態異常を癒すことは出来る。…でもそれが間に合う保証も、同じ場所に居続けられる確信もない。
だったら、離れていても守ってもらえるようにお守りを作ろう。手先が器用な自信はあるし、巨人さん達に教えてもらえばきっと出来る!

毒耐性効果のある|お守り《チャーム》を作成

具体的な効果は…そうだな。常時発動型で、受けた端から浄化してっちゃうような。
”弾く”というよりは、水になるぐらい”分解する”、みたいな感じかな…?
…うん。このくらいイメージが固まってれば、付与することは可能なはず。これは宝石に込めて…っと。

あとは彫金だね! シンプルだけど、可愛い感じに出来たらいいな。
…よし、頑張るぞ!



●清らななる|輝き《祈り》を籠めて
「(……同じ戦場に居れば、UCで状態異常を癒すことは出来る。……でも)」
 そこに“必ず”の保証はなく、すれ違ってしまえば仲間を助けることができない。
 更に言えば、運の良し悪しで自身 マオ・ロアノーク(春疾風・f40501)がその一瞬に上手く動けなければ……?
「――だから、離れていても守ってくれるお守りを作りたいんです」
『なるほど。お嬢さんとリンクするもんがええか?それとも個別で互いに守るもんのがええかね?』
「そんな細かい事まで出来るんですか……?」
『できる。わしらも職人。お嬢さんら猟兵が成そうとしとる手伝いの出来る道具を作るっちゅうのは、お嬢さん達が思う以上にわしらには栄誉なんじゃよ』
 ほっほっほ、と笑い顎髭を撫でる職人に、マオは瞳を瞬かせて少し驚いた。
 今こうして会話をしていても明確な身長差があり、それは見える範囲で積み上がった道具は、マオにはちょっとした遺跡のようにも見えるほど。
「でも私も手先が器用な自信があるので、一緒に作らせて頂けたらいいなと……!」
『ええじゃろう。じゃがわし厳しいよ?あと個々の工房はお嬢さんにゃすべて大きかろう。そうじゃな……指示をくれ。心配せんでええ』
 こうしてまず、は共同作業。
 巨人の職人が出したチャーム用の宝石をマオが選ぶ。散々悩み、様々な産地から考えた結果、マオの刻みたい効果の一つ“浄化”ならばと職人が進めてくれたのはアマツカグラ産の春空色の一つ。
「わぁ……綺麗」
『じゃあこれから磨く。そこに座ってええぞ』
 示されたのは研磨台が上から見えそうな高さの飛沫用ガード板の上。ひょいとマオが飛び乗ったのを確認すると、職人が研磨を始めた。
 原石であった時には感じられなかった透明感がみるみると現れ、ほうっと溜息を溢したくなるような輝きが現れた。
『よしっ、これで磨きは完了じゃ。お次は術式の刻みじゃな』
「はい!んー……基本的に常時発動型で、」
『ふむ。ならその常時発動、という引鉄になる術は石留の金属に刻むとしよう。宝石には浄化がええかの?』
「ええ。でも弾くより浄化で水になるぐらい“分解”する、みたいな感じを考えているんです」
『ほう。ならアクエリオ様の紋章をこの石留の皿の裏に刻むのはどうじゃ。で、宝石には浄化の紋章を分解の文様で囲み、そっちの方向への式にする』
「組み合わせ、噛み合うかな……?」
『心配せんでええ、そこがわしら職人の腕の見せどころじゃ』
 マオと職人は製作の間只管に言葉を交わしていた。
 職人は常にマオが使いやすいよう、いかなる工夫をすべきかを話し、マオはその様子を眺めながらよくその指先を見て学んで。
『そうじゃ、お嬢さんは器用と言っておったな?』
「はい、自信があります……!」
 なら、と職人任せられたのは先程相談していた宝石の爪へ刻む、常時術式発動用のトリガーとなる術式の刻み。
『どんな方法でも構わん。やってみんか?』
「彫金だね!……よしっ、頑張りますっ!」
 マオの姿を笑顔で眺める傍ら、他の作業が終わった職人が何やら宝石片と金属片を組み合わせる一方、マオは真剣に繊細な指揮を詰めと皿へ刻み込んでいた。
 響くのはカリカリと金属を削る音のみ。
 暫し、その工房の音に浸かったのち、無意識に詰めていた息を吐きだしたマオがうーん!と伸びをしてそれは完成した。
「お、終わったんだよ……職人さん!できました!」
『お疲れさんお嬢さん。ほう、いい出来じゃな。これで、こうして……ほれ、完成じゃ。これは武器にも飾れるよう皮ベルトも付けた。これでどこでも行けるじゃろう。それと、お嬢さんは弓使いじゃろ?これを使っておくれ』
「わ、良いんですか……!」
 職人から添えられたのは、繊細な浄化紋章の刻まれた鏃。
 チャームと共に受け取れば、にっこりと笑った職人が“負けるでないぞ”と微笑んだ。
「ありがとう。このお守りと鏃があれば僕はいつも以上に戦えそうだよ……!」

大成功 🔵​🔵​🔵​

真宮・響
ふむ、腕の立つ巨人が沢山いる鍛治工房の国。これからの戦争に備えて武器を鍛えて貰うのもいいか。しかし大きいねえ、何もかも。

鍛えて貰うのは敵の装甲を突き破れるように穂先がドリル状になったランス。作るのが難しそうだが頼めるかい?毒液の効果で倒れる前に倒せるようにね。あ、この宝石を柄に嵌め込めるかい?(赤い宝石を取り出して)アタシの炎の魔力が込められたとっておきの宝石だ。

作ってもらったランスを振って見て使い心地を確かめる。さすがの出来だ。大事に使わせて貰うよ。さて行こうか、戦地へ。



●浄炎の一槍を
「……ふむ、腕の立つ巨人が沢山いる鍛治工房の国」
 ほう、と溜息零し見上げる看板さえ真宮・響(赫灼の炎・f00434)には巨大で、ほうっと溜息が零れる。
 この|大いなる争い《戦争》に当たって武器を鍛えてもらおうと扉を叩いた工房へ一歩、響が踏み出した。

『ようこそ、お嬢さん』
「お嬢さんと言うよりはアタシは大人だよ」
『ほっほっほ。わしからすれば十分お嬢さんだとも。で、お嬢さんの注文はどんな物かね?』
 柔らかに微笑む好々爺の職人に微笑み返した響が取り出したのは自身の槍。
「私が鍛えて欲しいのは“敵の装甲を突き破れるような、穂先がドリル状になったランス”。作るのが難しそうだが、頼めるかい?」
『鍛え直しではなく、作るなら新規じゃな。……ほっほっほ。お嬢さん、わしらはガルシェンの巨人じゃよ。それは挑戦状と受け取って良いのかね?』
 響の気遣いに大きく笑った職人の瞳がギラリと輝いた。
 職人からすれば物の大小など関係無い。ただ、“注文”を“顧客が満足以上の感情を持てる一品で返す”ことこそ喜びなのだから。
「まさか!毒液を受ける前にアタシは奴を斃したい。その効果を受ける前に、ね」
『ほう。なら風の後押しが出来るよう柄に術式を刻むのがええかもしれん。それと火力を上げるなら……』
「あ、ならこの宝石は柄に嵌め込めるかい?」
 響が取り出したのは深くも鮮やかな、まるで裡で炎が揺らめくルビーのような宝石。
『……ほう。失礼、こりゃあ中々の純度じゃのう』
「それはアタシの炎の魔力が込められたとっておきでね」
 “失礼”と繊細なピンセットで響の手から宝石を摘まむと、単眼鏡の倍率を変えながら嬉々として眺め楽し気に体を揺らす。
「これほどの物なら刃と柄の境に止め、毒焼く炎に変換して纏わせるのも悪くは無かろう。だがこれが使い手になるお嬢さんだからこそ、刃に伝道の式を刻めば叶うじゃろう」
『毒を焼く炎……?』
「そう、所謂ファイアランスといえるじゃろう。だが常時は燃えとらんでええ、お嬢さんの使いやすい任意のタイミングで炎を付けりゃええんじゃ」
 力の親和性。
 無理矢理引き出すには負荷の掛かることも、響の力籠められたファイアルビーだからこそ叶うそれを嬉々として語る職人はまるで子供のよう。
 そんな姿に響の脳裏を過ったのは愛娘と愛息子と、その子らを見る夫の姿。最も響が守りたい存在だ。
「……――アタシが守りたい人を、毒から守れるような。触れさせる隙も与えないような一槍は作れるかい?」
『当然だ、待っておれ。お嬢さんには使い勝手を試して欲しい』
「任せておくれ」
 拳を交わし、始まる槌音。
 飛び散る火花の眩さも、叩きつけられる槌にも響は決して目を反らさなかった。
 ガァン!と響き渡る槌音。バチバチと飛ぶ火花の産声に感化されるように、近くに置かれた響の力籠められた宝石がとくんとくんと息衝き、何かを学んでいるようにも見える。
「(……すごい。炎がシンクロしている?)」
 燃え上がる刃が瞬く間に冷まされ、じゅうっと上がる水蒸気。
「(研ぎも美しい……それに、宝石が)」
 輝き増すように磨かれた宝石に、繊細な留爪に刻まれたのは解毒の文様。その繊細な輝きを纏った宝石が柄に飾られ、炎が迸るような装飾をもって飾られ、輝いた。
『ほれ、出来たぞ。使ってみてくれんか』
「ありがとう。それじゃ――……ハッ!」
 受取り振るい、突く。
 風のように疾く突きを放て、まるで長年扱ってきた一槍のように震える取り回しのしやすさは響も驚くほど。
 更に意図して力を籠めれば炎が尾を引き、鮮やかな焔に感じた聖なる輝きは悪しき毒を焼く――……響は直感的にそう感じた。
「――凄い!これなら十分アタシは戦える!」
 “負けるでないぞ”そう豪快に笑った職人に、響は綺麗に微笑んだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

夜刀神・鏡介
単体で世界を殺し得る存在。今回もまたとんでもない奴が出てきたというか……
そんなのを相手にするのなら、強力な装備があって困る事はない
だが――新しく刀を用意するのもなんだし、何を作ってもらうべきか

そうだな、今の俺が持っていないもの……面頬を作ってもらうか
毒を浴びたり、吸い込んだりしないような防具を持っておきたいものな。

視界は確保したいから、形状は顔の下半分……鼻のあたりまでを覆うもので
素材は金属類か。あまり重くないものがいいかな

そして大きさの調整は……彼らが無理なく作れる大きさで作ってもらって、そこから調整していくか

完成したものを身に付けて、軽く刀を振ったり動いてみる
ああ、これで良さそうだな



●毒の道切り開く鍵を
「(それ単体で世界を殺し得る存在……か)」
 字面だけでも、これからとんでもない化け物と戦わねばならないことに、どこか慣れのようなものを感じているような、明確に驚きや動揺を感じない自身に夜刀神・鏡介(道を探す者・f28122)はやや苦笑いしてしまう。
 猟兵である鏡介は今まで神や準ずる異形を相対した経験のあり、今回も件の敵を知った時、若干顔が引きつる程度で“また”と感じている面が無いわけではなかった。
「本当に、今回もまたとんでもない奴が出てきたというか……」
 毎度碌でもないものをよくも探すというのか、生み出すというのか、持ってくる奴がいるものだとつい溜息が出そうな衝動に駆られてしまう……が、今は後だ。
「そんなのを相手にするのなら、強力な装備はあって困る事は無い。だが――……新しく刀を用意するのも難だし、」
『ほお。お前さんのその刀、どっちも変わっとるがようお前さんに合っとるな。もう馴染んどる』
 二刀と鏡介を一目見てそれを理解した職人は、優秀な職人なのだろう。
 そして職人の言う通り、鏡介自身にも武器は足りているというのは理解していた。逆に足りないのは鏡介自身が毒を浴びることを防ぐ手段の方だ。
『うーん二刀流のお前さんなら、今持ってはいない両手の空く防具が必要……といったところかね?』
「なるほど。そうだな、今俺が持っていない物……面頬を作ってもらえないだろうか」
『ふむ……どのあたりまで覆う?』
「毒を浴びたり吸いこんだりしないように、視界は確保したいから――……形状は顔の下半分、鼻の辺りまで覆うもので、素材は金属の類か。あまり重くないものが良いな」
 鏡介の注文を“ふむふむ”と聞いていた職人がガリガリと紙にペンを走らせる。
『悪いが、ちょいと失礼するぞ』
 そう告げると、ぺたぺたと大きな手で鏡介の顔に触れ、指先で大きさや角度を確認するようにじいっと見ながら触れてはガリガリと図面にスケッチしてゆく。
 ちらりと見ればそれは酷く正確で、触れただけで鏡介の顎や鼻の角度、大きさ、幅等を理解し職人は絵図面を引いてゆき、ペン先で軽く叩くと鏡介に問う。
『作るサイズについては型を取ろうと思ったが大丈夫そうじゃ。して、重くない……というと、わしの知ってる範囲ならのランスブルグの天山鋼かのう』
「天山鋼?」
『ええと、あったあった。ほれ、軽いぞ。巨人には重さが無いとあまり人気は無いんじゃが、お前さんの要望は叶えられるんじゃないかのう』
 サンプルの金属が入った引き出しから天山鋼を取り出すと、人間には大きな鋼塊を職人がひょいと鏡介へ投げ渡す。
「わ、わっ……え?あ、あれ?これは、軽い……!」
『じゃろ。中々やりやすかろう。じゃが強度は申し分ないんじゃ、分かるかね』
 触れただけで、分かる。
 軽いが堅牢で鋼であることが鍛冶職人ではない鏡介にもよく理解できた。
『ちょいと型を取らせてもらおうかとも思ったが微調整にお前さんの顔を借りる程度で問題なさそうじゃ。それでいいかの?』
「お願いします」
 好々爺のように笑った職人が“待って居れよ”と言うと、職人は鍛冶場へ向かい天山鋼を火へと投じれば火の粉が上がる。
 ガァン!と響き渡る槌音が凄まじく、幾度も幾度も響き渡り徐々に調整されてゆく様は何とも美しい。
「(凄い光景だ……火花が、眩しいな)」
 幾度も幾度も打たれる熱された天山鋼から舞い散る火花の|産声《呱々》は、打たれるごとに徐々に澄む不思議な音だろうか。
 リィン!と最後の音が響き渡った時、それは仕上がった。
『――よぉっし!出来たぞ!』
 熱された鉄が投じられれば、ジュウ――!と沸騰する水。勢いよく上がる湯気を振り払い、暫しののち引き上げられた面頬は艶々と輝いていた。
「……これは!」
『待っておれ、つけられるように……こうして、と。これは仮の紐じゃ、調整するから付けてみい』
 面頬を付ければ、不思議と顔にピタリと合う。
「(すごい……)」
 これがガルシェンの職人というものなのだろうか。
 ピタリと不思議な程鏡介の顔に沿った面頬を装着し、佩いた二刀に手を掛け向かうのは試し切りの出来る一角。
「……――フ、」
 短く息を吐き、地を蹴り断つ――!
 ズゥン!と両断された巨人用の木偶。重くも苦しくも無い面頬は、初めて付けたはずなのに一切の違和感はない。
「ああ、これで良さそうだな」
『よし。ちょいとおまけで毒を吸わんように内側に解毒耐腐食の文様を刻んでもいいかの?』
「頼む」

 出来上がったそれは、きっとかの毒怪をもを退けるための力の一端となるだろう。

大成功 🔵​🔵​🔵​

紫・藍
藍ちゃんくんでっすよー!
カモンステーッジ!
巨人の皆様の目や首が痛くないように、藍ちゃんくんを良く見聞きできるようおっきく映し出してくれる舞台なのでっす!
ではではライブをお楽しみくださいなのでっす!
武器を作っていただくには藍ちゃんくんを知ってもらうのが一番でっすからねー!
インスピレーションが湧いてくだされば何よりなのでっす!
武器はええ。対毒ステージなどどうでっしょうかー?
対毒スポットライトや舞台装置といった機材込の舞台を!
皆様方が藍ちゃんくんにライブして欲しい舞台を!
作ってください、いえ。
一緒にライブを作り上げ様なのでっすよー!
スケール負けはしないのでっしてー!
巨大ステージも大歓迎なのでっす!



●その輝きこそが武器なれば
「――こんにちわ!藍ちゃんくんでっすよー!――カモンステーッジ!」
 UC―藍ちゃんくん、ショーッタアイッム!―によって、槌音ばかりの工房に鮮やかな声が響く。
 不思議そうな顔をした巨人の職人たちの視線の先には即席で設置された巨大なスクリーンと、そこに映る紫・藍(変革を歌い、終焉に笑え、愚か姫・f01052)の眩いほどの笑顔。
『お、なんだこりゃ』
『へぇ、面白れぇよく見える』
「そのとーりっ!巨人の皆様の目や首が痛くないように、藍ちゃんくんを良く見聞きできるようおっきく映し出してくれる舞台なのでっす!」
 ある巨人の職人の言葉に、“おぉ”と疎らな拍手が起こる。
『ほうほうほう、なるほど面白い。こりゃあ増幅器の類かね』
『あっアンタそのちっちゃいのでこんなに大きな音をさせてるのかい?』
「これは藍ちゃんくん専用のマイクでっす!ではでは……」
 巨人からすれば小さなマイクも藍には手に丁度良く収まる武器の一つ。藍が思うのは、いついかなる時でも“この音”を届ける、最高の自分で居たい。時にラブリーに、時にクールで、またある時はクレイジーだっていい。
「ライブをお楽しみくださいなのでっす!武器を作っていただくには藍ちゃんくんを知ってもらうのが一番でっすからねー!」
 何事も、知ってもらうというのは大事なことであった。
 ――名前一つで人間は勘違いをする。だからこそ、藍は今この時誰より自身を職人に理解して欲しかった。知って、|彼等から見える藍《藍に似合う対毒武器》を教えて欲しかった。
 しかし、皆まで言っていない。ゆえに藍の想いが完璧に届くなど思ってはいない。だが、|届かせる努力《・・・・・・》をすればきっと“心”に届くから。
 輝く意味も、誰より自分が自分に誇れるように在り続けようとする意味を藍自身が作り続ければいい!
 上がる歓声。重なり合う拍手の雨が降って来る。
『なるほど、アンタのその歌をもっとたくさん届けたい……ってことで良いか?』
「インスピレーションが湧いてくだされば何よりなのでっす!武器は――ええ、対毒ステージなどどうでっしょうかー?」
 ワンステージで藍が息を切らせるはずもなく、顎を撫で問いかけた一人の職人に応えれば“なるほどな”と声が返って来た。
『じゃあ……うーん、こうやってお届いた音で毒を弾くとか、そういうのが良いか?』
「んー……対毒スポットライトや舞台装置といった機材込の舞台を!皆様方が藍ちゃんくんにライブして欲しい舞台を作ってください!」
『なるほど面白そうだ!』
『いいんじゃないか』
 そう口にしてから、ハッと藍は気が付いた。職人を、ただ武器を作る人にしたくない。
 ライブとは歌手だけがいて成り立つものではないからだ。演出を考える者、演出装置の制作をする者、合わせて稼働させる者、音響を――……と“ライブ”とは一人一人の仕事の結実。
 計算された最高の瞬間の凝縮なのだから!
「いえ!一緒にライブを作り上げ様なのでっすよー!」
『言ってくれるじゃねえか!俺は乗ったぜ、アンタが輝ける場所だな?なら――』
 巨大な紙の上を迷いなくペン先が走る。
 引かれる絵図面は藍が立つ中央を除き、縁にはエンドブレイカーの各都市国家をモチーフとしたオブジェが囲む。派手さを出すと同時に世界との一体化を図ろうというのだ。
『で、あんたが猟兵ならどんな武器でも扱える。けど俺はあえてアンタの“歌”をもっともっと引き出したい!』
「藍ちゃんくんの歌を?」
『おうよ!折角なら各都市国家の武器があるだろう。あれを全部アンタの使ってた“マイク”にするのはどうだ?で、それぞれこの装置から出る音の種類を変える!』
「……音の重低、歌に合わせたエフェクトを変えるといったところでっすか?」
『それもいいな!だがアンタの“歌”を武器にする。武器は見た目通りにも使えるが、アンタの歌を刃にするんだ』
「歌を、刃に――!」
 職人曰く、スピーカに藍の歌を聴いた者に毒等の対状態異常を付与する紋章を刻み、更にステージへ飛び入りの敵がいようと対応できる武器型マイクでスピーカーから発される音の刃が可能なステージが考案される。
 海のように透き通るステージは藍色。
『さぁ、作業を始めよう!頑丈に作るから楽しみにしてろよ!』
「とーっぜん、スケール負けはしないのでっしてー!巨大ステージも大歓迎なのでっす!」
 声高らかに毒の脅威など吹き飛ばせ!

大成功 🔵​🔵​🔵​

陽殿蘇・燐
さてと、流石に生配信するわけにはいかないわね。
確認の手間を取らせるわけにもいかないし、こういうのは門外不出だったりするから。
協力してもらっているのは、こちらだし。
作ったとだけ報告すればいいわ。

そしてここは…持ち込み可の工房なのね。
ちょうどよかった、この『芭蕉扇』をどうにか改造しようと思ってたのよ。
だからね、いっそ。その毒をも燃やせる力を持たせようと。
…そうね、そのような魔石を付ける形で。私の魔力を込められる魔石ならば、あとは解放すれば炎はできるから。
私は『炎術士』だもの、簡単よ。



●羽音に火花を見る
 ドア一つとっても、巨人サイズ。
 その大きさに陽殿蘇・燐(元悪女NPC・f33567)は面白さを覚えるものの、今は面白おかしくしていい場面ではないだろうと燐はすぐ察した。
「(流石に生配信するわけにはいかないわね。確認の手間を取らせるわけにもいかないし、こういうのは門外不出だったりするから」」
 技術を盗む気など燐には毛頭ない。
 妙な誤解を生み武器作りを断られては意味が無いと今回は癖のような動画配信をやめ、小さく工房の戸を叩く。
『ん?やあ、猟兵さんかい?ようこそうちの工房へ!』
「こちらこそ、ご協力をありがとう。ここは……持ち込みOKな工房なのね」
『ええ!やっぱり長く使っていただくには好きな物を使って欲しいってお客様も多いんです!』
「そうなの……なら丁度良かった。|これ《芭蕉扇》をどうにか改造しようと思っていたの」
『そちらは異国の扇、でしょうか』
 エンドブレイカー生まれの職人は芭蕉扇を初めて見るらしく、あまりに興味深げに眺める様子に燐の眦が僅かに緩む。
「えぇ。おそらく貴方方の国には似ていてまた違うものがあると思うけれど、これに……そうね、いっそ毒を燃やせる力を持たせたいと思ったのよ」
『毒を燃やす、ですか。なるほど、ならば炎の力は必須ですね』
「……そうね、そのような魔石を付ける形で。私の魔力を込められる魔石ならば、あとは解放すれば炎はできるから」
 芭蕉扇を興味深げに眺めながらいつの間にか設計図を描いていたらしい職人が燐の言葉にきょとんとした後、パッと瞳を輝かせた。
『貴女様は炎の魔術師なのですか?』
「合っているけれど少し違うわ。私は“炎術士”だもの。その程度、簡単よ」
 燐は“炎術の天才”と言われた才女。
 上品に微笑み職人へ告げれば、“すごい!!!!”と大きな声と純粋な賞賛に一瞬吹き飛びかけたけれど。
『すごいですっ!貴女様は多才なのですね!』
「――そんなことは、ないのよ」
 燐はとある和風RPGで主人公達に最後に立ちはだかる悪女であった。
 強い力を振るい、敗れる役。けれどひょんなことから猟兵へと覚醒し、今がある。
『あの、つかぬことをお伺いするのですが……』
「ええ、なにか?」
『貴女様の炎の在り方を教えていただけませんか?作品の参考にしたいのです』
 “いいわよ”と呟いた燐が伸ばした指先を鳴らせば、顕現するのは炎を纏う黒揚羽。
「これが私の|力《炎術》よ」
『――少々お待ちください、俺が貴女様に似合う物を必ず作ってみせます!』
 黒揚羽に見惚れていた職人は燐の言葉にハッとすると絵図面を描きながら燐へ構想を話し始める。
『折角なら貴女様の力が扱いやすい、伝わりやすい形……振るいやすい形にいたしましょう。素材は軽いアマツ産の青竹にして、形は貴女様の力と似た黒い蝶に』
「私の力そのものを模る……ということ?」
『はい!そして魔石は細い楕円形を扇の中央にして、扇自体は蝶を再現。柄の下部分、ここにもう一つ蝶型にカットした貴女様の力を籠めた宝石を飾り、扇から発される力の増幅を図ります』
 さらさらと書き込まれる絵に色も付けばリアリティが増し、製作はすぐに始まった。
 燐が魔石に力を籠める傍ら、職人は竹を手で加工し繊細に蝶の形へと仕上げてゆく。
『軸にした竹と紙には対毒や腐食などの耐性を。更に紙に毒を打ち消す風を起こせるよう術式を組み込んでみました。貴女様の炎で風の勢いの増幅も出来るかと!更に力を籠め仰げば毒を浄化し焼く、炎の風が起こせるはずです!』
 一息に話した職人から驚くような速さで製作された芭蕉扇が手渡され、そっと受け取ってみる。
「ありがとう……いいわ、これならきっと毒など瞬く間に燃やせそうよ」

大成功 🔵​🔵​🔵​

深山・鴇
【逢魔ヶ刻】
対毒用の武器とはまた、縁があるというかなんというかだねぇ、逢真君
ふふ、嫌味ではないよ、俺はその恩恵にあやかってるからね
毒を以て毒を制すとも言うが、さて何がいいか
専門家のご意見はどうだい?(逢真君に向かって笑い)

宝石に術式を刻んで眼鏡のチェーンに付けるのが最善かな
それなら戦闘中に邪魔にもならないからね
どの宝石がいいか…ん、この真紅のルビー猫目のようなスターが出ているね
これにしようか。宝石が小さいから左右に四つずつ配置するのがいい?ああ、四つ葉みたいにするのはいいね、そうしよう(職人や逢真君と相談しつつ決めていく)

合わせて八なら八重にもなるか、ふ、店の名にも縁ができたね


朱酉・逢真
【逢魔ヶ刻】
会話)何ンだい、嫌味かえ? フン…毒薬変じて甘露となると言う。俺という毒の専門家と、巨人サンらという耐毒の専門家がいりゃア、いかな毒とて通しゃせン物ができるだろうさ。
行動)旦那の耐毒武装を手伝うよ。俺は|宿《カラダ》も服も毒の塊、誰にも直に触らぬよう影の手を使うさ。ああ、そいつを使うのかい? 4つたァ豪勢だね。そのままプラプラしてたらジャマだろう。四つ葉みてェにしちまったらどうだい。ひひ、枯れ四葉だな。ああ、確かに八重か。ちょうどいいじゃアねェか。じゃ、後は俺がどっさり毒を込めて、壊れンかどうか試そうか。俺の武装? なら俺が持てる宝玉作ってくれや。無機物も触っと腐食しちまうンでね。



●毒を薬とするならば
『わぁ、猟兵さんうちの工房へようこそ!』
 微笑む職人の巨人に迎え入れられた深山・鴇(黒花鳥・f22925)と朱酉・逢真(朱ノ鳥・f16930)は、朗らかな笑みで次々と繰り出されるサンプル品の山に圧倒されていた。
 鉱石、金属、鍛冶工房と言いながらも訪れた工房には彫金職人もいるらしく、紋章から文様などの魔導書の類など多岐に渡る。
『猟兵さんの武器を作っていいってお達しが来てから僕達すっごく楽しみで!!ぜひ色々見てください!あっいけない作れるカタログも持ってきますね!』
 どすんどすんと大きな足音で勢いよく走る若い職人を見送りながら、ちらりと鴇が逢真に視線を流す。
「それにしても対毒用の武器とはまた、縁があるというかなんというかだ……ねぇ、逢真君」
「何ンだい、嫌味かえ?」
 言葉ほど気にした様子もなく寧ろ薄く笑んで見せる逢真に鴇が“まさか”と首を振り、並ぶサンプルの山を覗きながら笑っていた。
「ふふ、嫌味ではないよ。俺はその恩恵にあやかってるからね」
「フン…毒薬変じて甘露となると言うだろう」
「毒を以て毒を制すとも言うね」
「そ。俺という毒の専門家と、巨人サンらという耐毒の専門家がいりゃア――……ン?」
 そう、逢真が口にした時、どさりと本の落ちる大きな音。
 慌てて振り返れば、唇を戦慄かせた職人が立っていて……。
『……――本当ですか!!ありがとうございます!僕、僕頑張ります!!猟兵さんのご期待に沿えるように頑張ります!!』
 手放しに子供のように喜ばれ、眩しいほどの視線を浴びるのはなんともこそばゆい。
 “こちらこそ”と上品に口角を上げて見せる逢真は鴇が妙に綺麗に微笑む様子に“何ンだい”と視線をややきつくしてみたのも束の間、落とした本の山を拾った職人が興奮気味に机へ置いた風圧と衝撃で座っていた鴇と逢真が一瞬浮いたのは二人だけの秘密である。
 “何をお作りしましょう!”と目をキラキラさせて問う職人に、鴇は自身愛用の眼鏡に触れてから、指先でチェーンを辿り示して。
「そうだね、宝石に術式を刻んで眼鏡のチェーンに付けるのが最善かな。それなら戦闘中にも邪魔にならないからね」
『なるほど!常時お付けいただく物なら、軽さを重視した方が良いでしょうか……?』
 鴇の希望を聞いた職人は山のようなサンプルを横へずらし、机上に広げた紙へデザインを書き込みる。
『……なら、チェーンその物に毒除け、いや解毒の方が良いでしょうか。けれどチェーンを守る対腐食の文様も刻みたいですし、猟兵さんの眼鏡にもその効果が発揮された方が良いですし、ええっとー……』
「……専門家のご意見はどうだい?」
「――旦那、飾りの石はなににするンだい」
『あっ、石のサンプルは……これですっ!』
 どこか楽し気な鴇の言葉に、ふうっと煙管の煙と天へ吐いた逢真がちらりと机上のサンプルの山へ目を向ければ、重なる内から一つ大きは箱を取り出した職人が蓋を開いた。
『こちらは|ここ《エンドブレイカー》で採取される鉱山石からモンスターの体内生成石、目や歯から採取される鉱物もございます!』
 物珍しいラインナップに、俄かに二人の好奇心が擽られる。
「色々あるんだね。どの宝石がいいか……」
 どれ、と箱を覗いた鴇の目に最初に留まったのは、燃えるような紅を宿すルビーに似た宝石。
「ん、このルビーは他よりも紅いし、猫目……いや、スターが出ているね」
『はいっ!そちらは火口にのみ生息する10m級|緋蛇《ヒュドラ》からのみ採取される緋蛇の眼石です!』
「ヒュドラ……毒蛇かえ。火口に棲むのなら殊更火に強いのかい?その星は?」
『そちらは特に毒が強かった個体の証です。視線さえも毒になる特殊な個体で、数は少ないのですが、餌も少ない火口だから共食いからか進化を遂げたようなんです』
 職人の言葉に“ほう”と溜息を溢した逢真が影の指先で石を摘まんだ緋蛇の眼石をランプに透かせば、原石であってもその星はよく見えた。
「(……この石自体、悪くは無いだろうさ。だが、恐らく“|奴さん《バシュム》”の毒には一つでは足りなかろうよ)」
 鴇の直感が選んだ石自体は良品。だが相手が相手なだけに一つでは生半になってしまう……のは、あくまで推測の域。
「旦那、こいつを使うのかい?」
「そうだね、これにしようか。どれも小ぶりだから一つ以上は使おうかと思うけれど……いくつ使えるんだい?」
『複数飾ることも出来ますっ!チェーン自体から作りますので……猟兵さんのお使いになるあのチェーンの長さなら多くても八つです』
 鴇の問いに答えた職人の言葉に、指先の爪ほどの石を眺めていた逢真がふっと淡い笑みを浮かべ鴇見る。
「8つたァ豪勢だね。そのままプラプラしてたらジャマだろう、左右に4つ……四つ葉みてェにしちまったらどうだい」
「そうか、左右に四つずつ――ああ、四つ葉みたいにするのはいいね、そうしよう」
『なるほど、左右四つずつなら出力を均等にしながら一段階強力に出来ると思います!』
 逢真の提案に朗らかに笑った職人が“お詳しいのですね!”と喜びながら、徐々に話は時のチェーンへと変わる。
 毒が複雑ならば解毒の式より弾くべきか。それとも毒を無害な物へ変化させる術式を構築すべきかと相談しあい、サンプル帳の紋章と式を組み合わせ、たとえ万が一切れたとしても対応できるよう三人で考案の末、鎖の両面に細かな文様と紋章をチェーン状に繋がることでブーストの掛かる術式と、石には浄化と解毒、そして4つ揃うことでブーストが掛かるよう式を組み上げてゆく。
 組み上がれば急いで作業へと向かい、すぐに工房らしい音が二人の耳にも届いてきた。
「ま、こんなとこじゃないかね。組みすぎれば|薬が毒になっちまう《枯れ四葉》だろう」
 “ひひ”と笑った逢真の言葉に鴇が僅かに瞠目するも、すぐにいつものように瞳細め人好きする穏かな笑みを浮かべると、細かな作業をする職人の背から逢真へ視線を映し微笑んで。
「でも逢真君のお陰で四つ葉が二つ、合わせて八重にもなるだろうから……ふ、店の名にも縁ができたね」
「ああ、確かに。ちょうどいいじゃアねェか。じゃ、後は俺がどっさり毒を込めて壊れンかどか試そうか」
「いいね、楽しみだ」
 ふふと笑った鴇への軽口も提案も、全ては友の為。ちなみに逢真の毒試験は耳聡くも職人の耳に入り、少々離れた工場から“よろしくおねがいしまーーーーす!!”と聞こえて来て二人でひらりと手を振った時だ。
「――で」
「ン?」
「逢真くんは何を作るのかな?」
 唐突に水を向けられた逢真が僅かに瞠目すれば、笑顔崩さない鴇がほら、とサンプルを指差し“考えよう”と積み上がった書籍を一つ手に取った、その時。
『もうすぐチェーンは仕上がります!そして貴方様のお作りになりたいお品も是非教えてください!』
 無邪気な笑み。
 逢真は自身の手を握って開いて、考える。|人成らざる《神ゆえ》の自身の|特性《毒性》を。
「俺の武装は――」
 逢真自身、|宿《肉の器》も纏う物も何もかもが毒塊になる自身の属性を熟知している。だから、工房へ来てから勧められた椅子にさえ、一見至極普通に腰掛けているようでその実座っているわけではない。
 有機無機問わず“物”を毒で|喰らう《蝕む》特性から、物に触れることは勿論人に触れるなどもってのほかだからだ。
 だから、毒の武装も数多の試案を経ても諦めず作る職人への挑戦状を出そう。
「……|俺《病毒の神》が持てる宝玉を作ってくれや」
『宝玉……それはどんな、』
「無機物も触っと腐食しちまうンでね」
 逢真の言葉にあんまりにも驚いた顔で瞠目したかに見えた職人の目が驚くほど輝き始めたではないか。
『――すごいです!!!それは!僕ら負けていられません!どうしよう何にしよう防毒術を材質自体に掛けてしまおう。均衡の紋章の周囲を維持の紋章で囲って解呪解毒……いや浄化と分解、それに弾く?いや周囲に被害が出るかも。いっそ吸収分解かな。でもでも解呪も欲しいし……あ!!!古い紋章と式は、ええと、ええっとどこに書いてあったんだっけー!』
 一人でぶつぶつと立て板に水流すように喋っていた職人が何かを思い出したように慌てて鴇と逢真に見せようと積み上げたサンプルの山を漁り出していた。
「逢魔君」
「何ンだい」
「ふふ、これは楽しみだね?」
「巨人サンらという耐毒の専門家がいりゃア、いかな毒とて通しゃせン物ができるだろうさ」
 “俺は何ンの心配もしてないさ”――そう逢真が笑った瞬間、“あったーーー!”と嬉しそうに呪文や式、紋章などの組み合わせ記録帳面が発見された。

「……こりゃア楽しみだ」
 完成品にじかに触れてきっと知る。
 心からの信頼と祈りと、鍛冶という一つの応援の力を。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ラップトップ・アイヴァー
《……エンドブレイカー。
ここに来ると、とっても暖かい気分になるの。
アスリートアースとはまた違った、不思議な暖かさなの。

真の姿でいきなりぶらぶらしてみるのね。
黒髪に黒のドレス、紫の瞳の美希姫!

今はここガルシェンの工房…って、いっぱいあるし。
何なら戦争だし。世界が危機に脅かされているなら、正義の味方が助けないと。だよねお姉ちゃん!

お姉ちゃんお返事は!

無いので巨人のセンセ方に拳銃を作ってもらおうねー!!
勿論弾丸もねー!!
知識の基盤は美希が持ってるから、8メートルクラスのおっきい人しか出来ないような武器を美希たち人間に合うようにリサイズする為に、みきは協力を惜しまないの!

術式や文様も盛り込めるの? うーん、どうしよう…?

優しい魔力と、心を織り込むことはできないかな?
美希の優しさが魔法になって、わるーいバシュムの悪の手を挫くきっかけになると思うの。
そうしたらばーんって、きっと退治してしまえるかも知れないの!

この世界に終わりが訪れちゃうなんて、そんなのみきも嫌だし。
みきなりに、頑張ってみるの!》



●優しさで|ハート《心臓》を撃ち抜いて
「(エンドブレイカー……なんだかふしぎなの)」
 先程“よう!よく来たな猟兵!”と笑顔で迎えられ勧められた大きな椅子に腰掛けながらきょろきょろと首を巡らせるラップトップ・アイヴァー(動く姫君・f37972)は、どこかそわそわと落ち着かなかった。

 少し遡るが、今日は艶やかな黒髪にぴったりの黒いドレスを品良く着熟しながら|ラップトップ《美希》は戦争の只中だからか、慌ただしく駆け回る見習いらしい職人や響く槌音、威勢の良い声が賑やかな街工房街をぶらりと歩いていた。
 赴く直線、どこの工房へ頼めばと杜環子に聞けば、“あらやだ。ラップトップ様のお好きな……んー、勘?で選んでいただいて結構でしてよ”なんて曖昧な答えが返って来たせいでもある。
 紫色の瞳を瞬かせる|ラップトップ《美希》はというと降り立って以降、非常に迷っていた。
 申し訳ないがどれもこれも同じに見えなくもない……。
 かといっていい加減な選び方をしたいわけではないので真剣に。
「だって、みきも皆も真剣だもん」
 この戦いで、皆失えない日常がある。既に奪われたからこそ奪還するべきもの、奪われそうだからこそ全力で抗うものも、数多ある。
 誰も彼もが真剣で、ふざけているように見えても行動は反抗戦で電撃戦。
「(誰かが泣いたままなんて、みきは嫌)」
 世界が危機に瀕すならば、|“正義”が救わねば《正義の味方が助けなければ》ならない。
 そう決意し燃え上がる美希がの内側で無言で腕を組む姉、シエルに“だよね、お姉ちゃん!”と同意を求めれば――無言。
「(お姉ちゃん、お返事は!!)」
 きゅう、と眉間に皺寄せたシエルは無言。どうやらうんともすんとも言いたくないらしい。だが美希からすれば慣れたもの。お姉ちゃんってそんなもの。
 まったくもう、と思いながら足を止めた美希がふと見上げた時だ。
「あ!」
 キィと軋む音立て揺れる看板に描かれているのは銃や弓などの所謂飛び道具。
 書いてある文字は掠れて読めないが、どうやら飛び道具専門店らしい。
「みーつけっ!ここで巨人のセンセに拳銃作ってもたおうねー!」
 ドーン!と開けようとしたものの巨人仕様の扉が思いの外開かず手を打ち付け悶える美希と裡で“おーっほっほ!”とか笑ってくるシエルとすったもんだ揉めたのはここだけの話しである。

「弾も全部お姉ちゃんにツケとくからね……!」
 くっ!と悔しいのでそう言ってみれば“なんですって!?”とか聞こえた気がするけど今度は美希がスルー。さっきのお返しである。
 そんなこんなで迎え入れられたお客様席がまた、大きい。
「これはどのくらい……8メートル級の巨人さんの席なの?おっきい人専用ね……!」
『あっ、すみません!えっと乗れそうですか?』
「ありがとう、大丈夫!……――でね、小さいみき達サイズのこういう銃が欲しいの」
 |ラップトップ《美希》がそう切り出し取り出したのは|ラップトップ《美希とシエル》の愛銃。
『これは……紫煙銃とはまた異なりますね。構造は把握されていますか?それに一度解体して頂き、ぜひ構造を教えていただきたいのですが……』
「もっちろん!そこは任せて!だって、センセはいつも巨人さん達のを作っているでしょう?だから細かい説明とか、みきは協力を惜しまないの!」
 恐る恐る手に乗せた銃を手に乗せた職人の言葉に花のように微笑んだ|ラップトップ《美希》が宣言すればパッと表情を明るくした職人と徐々に話が盛り上がる。
 あれやこれやと盛り上がる内、どこに対毒や解毒など様々な効果を盛り込むか、ということへゆき当たってしまう。
「術式や文様も盛り込めるの?うーん、どうしよう……?」
『あ、あのこちらをご覧ください!』
 まず様々なサンプル帳の式や紋章を指差し説明する職人が悩みながら提案したのは銃自体へ対腐食毒の術式を刻むことと撃鉄、銃口、バレル、およびグリップへ個別に術式を施すことであった。
「うん、銃口とバレルは分かるの。でもどうして撃鉄とグリップもなの?」
『えっと……まず、グリップに施す理由は猟兵さんが万が一毒を受けた時、銃自体を離さなければ毒を解除できる解毒の紋章を施した方が良いと思ったからです。また、撃鉄には毒を焼く浄炎の紋章を施すことと、先程仰っていた弾丸に施す毒を分解する術展開への合図というか……“発射されたら即術式展開”の追加をそこでするためです!』
 職人の言葉に|ラップトップ《美希》が“なるほど”と呟く。
 弾丸への常時術式展開は弾丸にも負担が掛かる。よって使うべき時に最高の状態で使えなければ意味は無い。また戦闘中、恐らく血清などを打つ暇もないだろうからグリップへの解毒術式は自身を救う手段になる。
「じゃあ、バレルと銃口は?」
『あっ、それはバレルに細かく銃口へ向け速射、いわゆるヘイストの術式をらせん状に2……いや、5層は刻みたいです』
「そんなに!?」
 驚く美希に頷いた職人が、美希の説明をもとに描いた設計図へ更に書き足しながら説明を始めたのは|ラップトップ《美希》がこの武器を手に相対する敵|バシュム《11の怪物》のことだ。
『得体が知れないからこそ、引鉄を引けば撃てる構造であれば戦いやすいと思ったんです。……実際、5層の速射術式は構造上かなりギリギリです。貴女ならきっとうまく使って下さると思い、この提案をさせていただきました。そして銃口には解毒ではなく毒を壊す毒の紋章を貴女様が戦闘の意志持ち銃に触れた時だけ浮かぶようにしようと考えています』
「毒を分解……?」
 職人曰く、発射する弾丸に上乗せで纏わせるのだという。
 そして弾丸には銃口とは異なる毒を分解する術式を刻み、撃ち落とされたとしても毒で満ちるバシュムの身を壊し、当たればさらに傷を大きくする二重構造だ。
 それを一気に話し切った職人の目はどこか爛々としていて、美希は内心なるほどと考えた。
 これは所謂科学的な掛け算なのだと。
 だが、正義の“こころ”をもつからこそ美希は少しの勇気を以て職人へと尋ねてみる。
「あの……優しい魔力と、心を織り込むことはできないかな?」
『優しい魔力と心……できます』
「えっ」
 てっきり断られるかと思って警戒していた美希から毀れたのはやや間抜けな声。
 “えっ、えっ、どうやってやるの!?”と慌てて身を乗り出せば、職人は案外と冷静にサンプル帳を捲ると開いたのは使用者と武器をリンクさせる術式のページ。
『これを基盤に先程銃口に展開したい紋章の上に二重展開にするのは如何でしょうか!』
「その紋章を通せばみきの優しさが魔法になって、わるーいバシュムの悪を挫く切欠になる……ってこと?」
『はい!』
「ばーんって、きっと退治できるかもしれないの!」
『そうですばーんですっ!』
 ばんざーい!と大きさの差異ゆえにハイタッチができなくても大きな拳と小さな拳をそっと合わせてのグータッチ。
 わいわい盛り上がった勢いで作業を勧め、美希は始めてみる鍛冶と魔術式を組み込む特殊な加工を始めから終わりまで見届け、後に一丁の銃を手にすることになる。

「この世界が終わっちゃうなんてみきは嫌。よーっし、これと一緒にみきなりに頑張ってみるの!」

大成功 🔵​🔵​🔵​

シキ・ジルモント

毒への対策は困難だ、職人の力を借りたい
普段作る物が巨人用の装備と考えるとかなり小さな品になるが、この街の職人の腕を信じて作成を依頼する

毒を浄化する力を持つ銃弾が欲しい
銃から発射した時に発動する術式を刻み、銃弾だけでなく自分や周囲にも毒への耐性を…例えば発射の瞬間に毒を防ぐ結界のようなものを付与する仕組みには出来ないだろうか?

いつも使っている拳銃や銃弾を実際に見てもらった上で相談する
術式を刻んだ銃弾を新たに作るか、今ある銃弾の弾頭部分の金属に術式を入れてもらうかは任せる
素材についても注文は付けず職人に判断してもらう
適した作成方法や素材は職人の方が詳しい筈だ

使用感については使う側の意見も参考になるかもしれないな
試作品を実際に試し撃ちをして、細かな変更点の希望等はその都度伝える
職人の腕を信用すればこそ、僅かであっても妥協は出来ない

出来上がった銃弾を有り難く受け取る
職人の仕事に恥じない戦いを、そう思えば自然と戦意も昂まる

こちらも猟兵としての仕事を完遂すると約束する
件の毒蛇の好き勝手にはさせない



●銃口を覗け
 毒、と一口に言ってもその種類は多岐に渡る。
「(……おそらくバシュムの毒は特殊なはず。下手をすれば吐く度に効果が変わる可能性がある)」
 常に最悪を考えろとは誰の言葉だったか、シキ・ジルモント(人狼のガンナー・f09107)が思案するのはそういう意味の“困難”だ。
 ただ“毒”だけでどれも厄介な11の怪物の中で抜きん出て厄介である意味を思案しどうしても行き当たったのが“常に変わり続ける毒”と言う可能性。
 だからこそ今、名高きガルシェンの職人の力を借りる。
『わぁ!うちの工房へようこそ、猟兵さん!』
 愛らしく微笑んだ職人らしい巨人の少女に案内され巨大な椅子にちょこんと腰掛けながら、ふと目についた長大な剣を見たシキは考えた。
「(待てよ……職人達が普段作る装備よりも遥かに小さい物を頼むのか、俺)」
 シキの身の丈以上の剣は職人の手で軽々と片付けられ、片付けた職人がニコニコと楽し気にシキの向かいへと腰掛け、すぐさま机上に広げたのは設計図用の細かな方眼が書かれた紙。
『初めまして猟兵さん!ご注文は何でしょうか!』
「……毒を浄化する力を持つ銃弾が欲しい」
『ほうほう。拳銃の形式は?自動小銃かリボルバー式か色々ありますが――……お客様が最も使う銃の形状をベースにするのをお勧めしています。装弾数も異なりますし』
 職人の言葉に頷いたシキが取り出したのは長らく共に戦場を駆けて来た愛銃、ハンドガン・シロガネだ。もともと恩人から継いだそれは以前よりも使い込み、細かな傷が増え重なっても未だ何の異常をきたしたことも無い。
『少し触れてもよろしいですか?』
「ああ」
 大きな手に乗せてやれば、ほうっと溜息を溢した職人が指先で優しく摘まみ、くるくると色々な角度から眺め、単眼鏡で細部まで覗き“大切にされていますね”と微笑んだ。
『こうして大切に使っていただいているお品物を拝見させて頂け、とても幸せです。ありがとうございました、猟兵さん』
「いや、こちらこそまずこうも小さい物を作ってくれることに感謝する」
『いいえ!私あの、その……細かい物を作る方が得意で……いっつも大きいものが上手く作れなくて、親方に怒られてばかりなんです!』
 そう頭を抱えた巨人の青年が勢いよく顔を上げたと思うと、シキを見てスグに微笑んで。
『だから、宜しくお願い致します!』
「俺の方こそよろしく頼む」
 大きな拳と小さな拳でグータッチを交わし、共に向き合うのは机上の設計図。
 “では先程の銃なら……”とさらさらと慣れた手付きでペンは知らせた青年の描く線に迷いは無く、美しい。
 細かな説明もなく描かれゆく自動拳銃の断面図を間に、シキと職人と紙の睨めっこが始った。
「銃から発射した時に発動する術式を刻み、銃弾だけでなく自分や周囲にも毒への耐性を……例えば発射の瞬間に毒を防ぐ結界のようなものを付与する仕組みには出来ないだろうか?」
『なるほど、なら銃口に紋章か魔法陣をお勧めしますが、中央に弾丸が抜けることで発動する式でなくてはなりませんね』
「そうか、ならその形状で……」
『そして猟兵さんがご希望の耐性拡散、それは――』
 ガリガリと設計図に追加される説明。
 職人曰く、銃口の魔法を弾丸が通る瞬間、それを起爆剤にその魔法陣を囲むように八方位に配置した魔法陣へ耐性伝播と拡散の魔法陣が必要だと言う。
『――で、“体制”ならまずこの中央陣の外郭二層目を耐性に、一番外角は伝播で、八方位魔法陣と中央を繋ぐこの部分に連結維持の文言を書き込みましょう。じゃないとたぶん、詰込みすぎは同時発動で崩壊の危険も無くは無いので』
 そこまで話して、はたと気付いた青年がシキを見つめると酷く真剣に問いかけたのは“銃自体”についてだ。
『そういえば1からの設計で図面を引いていますが、この後付けならアタッチメント式にして、口径と接続部を先程見せていただいた銃口に合わせれば出来ると思います』
「ならそれで頼む」
 “任せてください!”と笑う職人と改めてシキは話を詰めてゆきながら、アタッチメント内部に沈黙の紋章を刻みサイレンサー機能の付与案や、シキが持っていたアタッチメントの構造を共有し、そちらにも氷の魔石でアタッチメント内の銃身を作ることで氷の魔力の増加が計算上見込める旨と、その理論で魔石で銃身を作る案など様々飛び交い白熱してゆく。
『いけないっ、つい盛り上がってしまいました…でですね、先程仰っていたお品ですが八方位陣の中央には防毒オーラ結界にしましょう。』
「オーラ結界?」
『はいっ!何故かと言いますと、オーラという弾力がある効果をベースに硬質な防御とはまた異なる対応と、猟兵さん達の動きへ即時臨機応変対応を想定しての組み込みですね』
「なるほど。動きすぎれば結界が追いつかないでは話にならないからな」
 想定される激戦は一時たりとも落ち付いてなどいられないだろうことは想像に難くない。
「そうだ、新たに術式を刻んだ弾丸を作りたいと考えているんだが」
『弾丸ですか!』
 細かい作業と察せばすぐに瞳を輝かせた職人がシキに見本として借り受けた弾丸を単眼鏡の倍率を細かに変えながらチェックし“なるほど”やら“ほうほう”やら楽し気に隅から隅まで見た後、シキに問うのは“注文”だ。
『猟兵さんの構想はどのような感じですか?』
「俺は今ある銃弾の弾頭部分のここ。この金属に術式を入れて……ていうのを考えたが、あんたは?」
 弾丸に触れながらシキがそろりと口にすれば、顎を撫で考えるような仕草をした職人が、“いくつかプランが”と言い書き出すのは設計図の空いた部分に拡大した弾丸のイラスト。
『まず薬莢の内側の此処に速射の紋章で発射された瞬間から弾丸自体をダッシュさせるような形にします』
 ペン走る設計図を眺めながら興味深げに頭上の耳を揺らすシキへ更に職人が語る弾丸の構造は酷く細かいもの。
『で、中の火薬には“毒というもの”を“分解する”と定義づけた微細粉魔石を混ぜ込み詰め、バシュム自体にとって毒にするのはいかがでしょうか』
「――バシュム自体に毒!?」
『はい。毒を以て毒を、という東方の言葉もありますが、毒の種類の特定は恐らく現段階で無理です。けれどだからこそ、そこに余地があると思うんです』
 シキ自身、そこがネックだと思っていた。
 特定できない毒にどう対処すべきなのか、という点が。
『ただ、諸刃の剣でもあるとは思いますが、対バシュムという毒塊相手なら話は別です』
 バシュムは存在が毒だ。
 その毒だけで11の怪物の頂点に立つ存在。だからこそ、その強みであり弱点をピンポイントで刺す――それが職人の案だ。
「……なら、」
『はい。猟兵さんの仰る断頭の術式。これは金属自体に防毒と耐久をメインにした金属を使います。そして刻むのは必中の術式』
 じっとシキの瞳を見つめながら、職人は言う。
『ですがこの必中はあくまで補助です。全ては猟兵さん、貴方の腕にかかっています』

 強い瞳に総毛立つような感覚、これはきっと武者震いだ。
 その答えは職人が仕上げたアタッチメントと弾丸を手にした瞬間、シキの爪先から耳の先を一気に駆け抜けた。
「……必ず、俺が|奴を斃す《仕事を完遂する》」
 真摯なシキと職人の交わした握手は種族を越え、新たな絆を生んだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

リコ・リスカード
工房街……なんだか祖星を思い出すな。
此処の人たちの技術も、きっと素晴らしいものなんだろうね。
巨人向けの武装も見せて貰いたいな。きっと技術の勉強になるだろうから。

巨人の職人達は素材は択ばないと言っていたけれど……一番得意なのは、やっぱり金属なのかな?
それなら俺が対毒武装にしてもらいたいのは防具。
一度自分が封印されてた魔石を砕いて強化したことはあったんだけど……
巨人の職人の技術なら、軽量化も対毒武装化も出来るんじゃないかなって。
……欲を言えば魔術強化も出来たらありがたいけど……我儘、かな。
負担にならない範囲でお願いしたいな。

防具を最適化するための採寸とかが必要ならそれもやろう。
彼らにとってミニチュアを作るようなものだろうから、細かすぎる部分もあるかもしれない。
あなた達程ではないけど、俺も多少は物を作るんだ。指示をしてくれれば細かいところは作業できるよ。
不慣れなものを作る時は少し不安になることもあるだろうから。
いつも通りの職人の腕を振るえるようにするためなら、いくらでも協力するよ。



●暮空を織りの一番星
「(なんだろう、懐かしい……かも)」
 見上げた工房街の空は|故郷《祖星》とは似て非なるもののはずなのに、どこかリコ・リスカード(異星の死神・f39357)には煙突から煙吹く空も煉瓦壁の街も似ている気がして、ふるりと頭を振り“気のせい”と振り切った。
「(巨人向けの武装って、見せてくれるのかな。きっと勉強になる。だって、大きさが変われば強度を上げる構造が増えたり、負荷を除く何かが施されているかもしれないし)」
 作ることは勿論、知ることが好きなリコにとって、初めて訪れるこの街は全てに興味を惹かれてしまう。
「……そういえば、職人は素材を選ばないって言ってたけど――……やっぱり金属のが得意、かなぁ」
 リコ自身武器にも大いに興味はあるのだが、|相棒《シャーキィ》がいるため存外武器には困っていなかった。
 自覚がある自身に足りない物と言えば、防具だ。
「対毒の防具ってできるかなぁ」
 ちなみに長身なリコでも巨人工房の扉を気軽な気持ちで開けるには余りに重すぎて踏ん張って押し開けようと奮闘していたところを老職人に救われたのは二人だけの秘密である。

『ほいほい、ようこそ坊ちゃん』
「俺、坊ちゃんって歳じゃないよぉ?」
 腰曲がっても尚健脚な職人はリコを見つめ“ほっほっほ”と笑うとまた“坊ちゃん”と話を切り出した。
『坊ちゃんは何が欲しいんかのう』
「うん、防具が欲しくて」
 “ほいほい”と頷くとすぐ取り出されたのは古くボロボロな分厚い見本帳。
『……――なるほど、坊ちゃん自身に展望はまだ薄いんじゃな』
「なっ、無くは無いけど、その……俺、一度自分の封印されてた魔石を砕いて、強化したことがあって……」
 リコの言葉が琴線に引っ掛かったのか顎髭を撫でて笑っていた職人の視線が鋭くなり、どこかおっかなびっくり喋るリコの言葉を穏かに促した。
 ちらりと職人を伺った後、おずおずとリコが切り出したのは自身の経験。
「それで、このくらいの魔石を砕いて、その一部をこういう風に使って……で、そうすると親和性が上がるから、俺は扱いやすいし力を籠めるとこんな感じで副次効果が得られることが分かったからそういのを生かしたくって!で、生地は案外重くても副次効果の軽量化とか、異質変化も使えるけど、ちょっと常時発動はまた新しい負担が増えたからそういうのを軽減する方法も知りたいし、かと言って他の効果が失われたり弱まったりする起因になりたくはないけど使う俺に負荷がかかると別のことが疎かになってまた別の困りごとが生まれたり余計な先手を取られるのは嫌だし困るから改善点をっ所に考えてもらえればと思っていて、それに逆に負荷軽減と効果倍増の方法も相談したいのとあと、えっと、あ、あの、」
 徐々にヒートアップするリコの様子を孫を見るような目で相槌を打っていた老職人が微笑むと、“なら考えんといかんのう”と至極楽し気に口にし慣れた手付きで見本帳を捲ってゆく。
『なら、その魔石残っとったら使うか。じゃがただ縫い付けと埋め込むのはいかん。宝石にもこうして爪や枠などの留め具があるように、坊ちゃんの魔石にも受け皿たる石座が無ければならん』
「受け皿……石座があれば、魔力強化とか……我儘、かな」
『なーーーーに言うちょる!坊ちゃん程度の赤子がなんか言うたってなーーんも問題無かろうて!あっはっはっはっは!』
「だ、だから赤子でも無いんだけどぉ!?」
 豪快な職人の言葉に言い返したものの、優しさというよりも甘やかしのような行為に募る気恥ずかしさというのは何とも言えず、慣れないリコからすれば余計に恥ずかしくなってしまう。
『まずあれじゃな、石座にはお前さんらが戦う毒蛇対抗で毒殺しでも彫っておくかの』
「毒殺しって、そういう術式あったから……?」
 調べるのも学ぶのも好きなリコも聞いたことのない術式に小首を傾げて見せれば、“当たり前じゃ”と素気無い言葉。
『だって、考えたのわしじゃし』
 ちなみにこの後、この老職人考案の彼以外知らない術式やら紋章やらの組み合わせのオリジナル術式と紋章というには複雑でだが術式というには紋章のような紋章術など、まるで魔法のように繰り出される全てが一切の図解や図面引きなく連続で繰り出され、魔石片に合わせ全て繊細に老職人が手作りしたオリジナルの石座が揃った頃にはリコの手はメモの取り過ぎで震えていた。
「(……ぜんっぜん見本帳の意味無いよねぇ……!!)」
『お前さん今|これ《見本帳》の意味無いと思っとるじゃろ』
「そっ、そんなことないよぉ!?」
 じいっと見つめる巨人の職人の視線が明らかに“いや思っとるじゃろわしには分かる”と書いてある。
 所謂チベットスナギツネ顔の老職人にリコは謎の悔しさを覚えるも、にいっと悪戯が成功したような顔になった老職人に“もう!”と怒って見せれば“ほっほっほ”と穏やかな空気へと戻り次は手伝いを申し出たリコと共に職人は石留の作業へ移る。
 石座は個別で細かな変化と術式の掘り込みが並行で行われたため見学のみであったリコも、説明を受けながら石留の作業を楽しみ、腕を奮ってゆく。
『――で、こうして上を剥かせる面は平らに揃えた方がええ。さっき全部研磨してもらったから輝きが違うじゃろ?』
「うん。こうしてみるとちゃんと宝石みたいだ……」
 電灯に翳せば毀れたオパールのような輝きに、ほうっと息を溢したリコが視線を下に向けたその時、そっと職人が囁きかける。
『……ええか、坊ちゃん。こりゃあ魔力塊じゃ』
「これが魔力塊?」
『ある程度は知っとると思うが、この魔石自体、坊ちゃんをおさめられる程度には器がデカいちゅうこった』
 黙して聞く姿勢になったリコへ老職人がゆっくりと語り始めたのは、初めて触れた封印魔石への感想にも近い物。
『この石自体、坊ちゃんの魔力が馴染んどる。だからさっきも見せたが石座の最も受け皿たる所以の内に魔力を行き渡らせる回路を描いたんじゃ。爪の内側には飛散防止、外側には伝導の回路紋。で、側面とお前さんサイズのこの外套全体にわし特性の“毒”解除と“毒”弾きの紋章って訳じゃ』
 “弟子にも教えたんじゃが”と前置いた老職人考案のバシュムの毒という恐らく複雑な物を“毒”という一言で定義し、“毒”を弾き|解除《解毒》する言葉より複雑で高度な紋章は非常に細かく、一見黒の外套にはよく見れば細い金銀糸で老職人の紋章が刺繍されていた。
「これって、さっきの人がやってくれた……」
『そ。あれわしの弟子』
「弟子!?俺も多少物を作るけど……あれほどの腕があっても弟子、なのかな?」
『まぁの。坊ちゃんという猟兵の客がおったからあいつもしゃんとしとったが、まだまだひよっこよ』

 厳しい言葉も愛あればこそ。裾と袖に爪留めの魔石を飾り、動けば時折煌めく繊細な金銀刺繍の茄子紺の外套が完成する。
「すごい。これ、物凄く魔力が循環してるんだね」
『誰が作ったと思うちょる。わしじゃぞ』
 自慢げに胸張る職人の矜持に袖を通し、その軽さは羽のよう。
「――うん。これなら俺どこででも自由に戦えそうだよ。ありがとう」
 交わした固い握手で、向かうはいざ戦場――!

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2023年09月13日


挿絵イラスト