エンドブレイカーの戦い⑤〜暴食の悪魔
●その海賊は
水神祭都アクエリオがエリクシル配下の「ゴンドラ海賊」に襲撃されている――ヘーゼル・ナイチンゲール(葬送の城塞騎士・f38923)はそう切り出した。
現状、都市国家の守護神である「水神アクエリオ」を旗印に、現地の勇猛な冒険者やゴンドラ乗り達が水上の戦いを繰り広げている。
「ゴンドラ海賊というのは、エリクシルが蘇生させたモンスターどものことだ。バルバであれ、ピュアリィであれ、ひとしく海賊だ」
ヘーゼルはそういって嘆息する。
水神祭都アクエリオは、その殆どを運河で移動する作りの水上都市なのだが――海賊達は運河をゴンドラで爆走しながら、悪さをしているのだ。
ゴンドラさえ巧みに操れれば、街の至る所へ入り込み、運河に接する露店やらなんやら、さんざ暴れ破壊することが可能なのである。
果たして、敵は……ウーパーイーターなる、なんだか無垢な瞳をしたモンスターである。
「ああ、皆まで言うな――……私も覚えがある。こういう種類のモンスターが、一番厄介だ」
きゃつらは一見愛らしい見かけをしながら、性質は凶悪。
どんなものでも貪欲に喰らいつくす。運河には水上マーケットなどもあり、先程いったように運河に接する露店などがうける被害たるや。
眉間をぐりっと押さえながら、ヘーゼルは猟兵達へと告げる。
「害獣駆除のような話だが、努々油断はせぬよう。相手のペースに巻き込まれぬようにな」
一匹たりとも、取り逃がすな。
榛色の瞳を眇め、厳かに告げると。
猟兵達の武運を祈り、送り出すのであった――。
●お騒がせモンスター
「ウパー!」
「ぎゃあ、林檎が!」
「ウパー!」
「わあ、ミートパイが根こそぎ!」
ピンク色の悪魔が群れとなって、水上マーケットを襲う……食欲旺盛なそれらは、ゴンドラを軽々飛び回り、ゴンドラに山と積まれた商品を、がつがつと貪り始める。
「…………かわいい」
「コレも食べるかな?」
一見、その姿は愛らしく……むしろ、餌付けしてみたい欲求に駆られるのだが。
「お前達、早く逃げろ! そいつらは、人も喰うぞ!」
駆けつけたゴンドラ乗りが、警句を発す。
ひぃ、と悲鳴をあげた商人達が、慌てて船をこぎ出す。しかし、ウーパーイーターどもは、自分でもゴンドラを漕ぎ漕ぎ、商人達を追いかけ出す。
締まらぬ絵面だが、これらに丸かじりされて死ぬなど、笑えぬエンディング。
つぶらな瞳も爛々と。
すべてを飲み乾すべく、無数のモンスターは、人々を追い回すのだった。
黒塚婁
どうも、黒塚です。
すごく久々に、ちょっとコメディ調に書けたらいいな、と思いました。
書けない気がします。プレイング次第で!
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プレイングボーナス……ゴンドラを操り、ゴンドラ海賊を追跡する。
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●プレイングに関して
導入はありませんので、公開時より送っていただいて構いません。
期限はシステム上受けつけている限り。
書けそうな方を書けるだけ。
プレイングの送信は何時でも構いませんが、締め切りの都合で書けないということも多々あります。
内容問わず、全員採用はお約束できませんので、ご了承の上、参加いただければ幸いです。
それでは、皆様の活躍を楽しみにしております。
第1章 集団戦
『ウーパーイーター』
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POW : ウーパーウイング
【ウーパーの翼】を生やし、レベル×5km/hの飛翔能力と、レベル×5本の【魅了光線】を放つ能力を得る。
SPD : ウーパーオーラ
体内から常に【ピンクのオーラ】が放出され、自身の体調に応じて、周囲の全員に【絶望的な無気力】もしくは【制御不能の食欲】の感情を与える。
WIZ : ウーパークラッシュ
自身の【額】を【超硬質】化して攻撃し、ダメージと【スタン】の状態異常を与える。
イラスト:橡こりす
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
ナターリヤ・トゥポレフ
●POW
まぁまぁ、何と愛らしい姿なのでしょう!
このつぶらな瞳、おもわず抱きしめたくなってしまう丸い身体…ですが、とっても食いしん坊さんすぎて害獣でしかないのがとても残念です(しょぼぼーん
私も一児の母親でありますから、大きなお口を開けられましたら餌付けしたくなる気持ちは大変良く分かります…分かりますが、心を鬼にして躾けるのも母親の務めです
人々を追い回す子達をゴンドラの上からライフルで狙いを定めますが、躊躇いで引き金が引けなっても良いように『ストライク・イェーガー』を保険に使いましょう
もし魅了されたとしても駆除できますが…それを見せられるのは大変心苦しいです
持ち帰ってダメですか?
ダメですよね、はい
●教育的制裁
ゴンドラ漕ぎ漕ぎ、露店に並ぶフルーツを見つけたウーパーイーターらは、次々と露店に跳び込んでいく。
あーんと大きな口を開け、大きな果実を丸呑みして、んぐんぐと咀嚼する姿を目の当たりに、
「まぁまぁ、何と愛らしい姿なのでしょう!」
ナターリヤ・トゥポレフ(母熊は強し・f40514)は翠の瞳を潤ませ、熊耳を震わせ、思わずそう零した。
ウーパーイーター達がその背をよじのぼり、別の果実を囓りにいく姿とか。
大きな肉に左右から噛みついて、引っ張り合ったり、わちゃわちゃとしている。
「このつぶらな瞳、おもわず抱きしめたくなってしまう丸い身体……ですが、とっても食いしん坊さんすぎて害獣でしかないのがとても残念です」
しょんぼりと肩を落とし、ナターリヤは、はぁと溜息を吐く。
何せ今まさにワゴンの中身を食い尽くした彼らは、再びゴンドラにぽんぽんと飛び乗り集結すると、その隙に逃げ出した商人のゴンドラを狙って、巧みな連携で運河に漕ぎ出したからである。
あーん、と大きな口を開けて餌をねだる、ウーパーイーター。
ライフルの標準を合わせていると、自ずとその愛らしい一挙一動が目に入り、引鉄にかけた指が、びくりと止まる。
「私も一児の母親でありますから、大きなお口を開けられましたら餌付けしたくなる気持ちは大変良く分かります……」
切ない声音で、ナターリヤは眉に困惑を漂わせる。
「……分かりますが、心を鬼にして躾けるのも母親の務めです」
きっ、とおっとりとした優しき貌を、厳しい母の面差しに変え。
引鉄は自分の意思で引いた。
射貫かれたゴンドラが、木っ端と弾け、ピンク色の生き物たちは周囲に投げ出された。
ゴンドラを失ったウーパーイーターらは、その背から、ふんわり柔らかな翼を生やし、つぶらな瞳を少しだけ怒らせて、しかしぬいぐるみのような愛らしさで、ナターリヤに迫り来る。
彼らが魅了光線を放つよりも、早く。ぱん、と一体、一体、額を射貫かれ、弾けていく。
「……それを見せられるのは大変心苦しいです」
ほう、と切ない息を逃しながら。
水上の、不安定なゴンドラの上であっても――ナターリヤの射撃は正確無比であった。
もっとも、躊躇うことなく攻撃を続行できたのは、もしかしたら、ユーベルコードの力であったかもしれないが……。
こんな風に躊躇いが生まれるのは、彼らのユーベルコードの力なのか。天性の魅力か。
目の前に、ぽてんと落下したウーパーイーターがいた。
しばし浮かんで……あ、水平気だった、みたいな顔を水面からひょこりと覗かせたそれが、ナターリヤを見つめてくる。
きゅん、と胸が跳ねる気がした。
「持ち帰ってダメですか? ――……ダメですよね、はい」
高らかな銃声を、響かせ、彼女は項垂れるのだった。
大成功
🔵🔵🔵
ヴァニス・メアツ
その短い手足で?
ゴンドラを?
あのスピードで?
器用だな!!?
ゴンドラお借りしますね、と一言添えて乗り
水の流れを読みながら奴らを追う
視界に収めたら大声で叫び
貴方達、これが見えます?
🍭←これ=ペロキャン
食欲の権化なら飛んでくるかと、比喩じゃなしに
無論銃撃で撃ち落としますがね
UC発動
運河沿い建物の壁を蹴り上げながら高く飛び
向こうのゴンドラの漕ぎ手を襲い、すぐにまた高く飛び上がって次の舟を襲う
ニホンと言う国に伝わる八艘飛びとはこんな感じですかね
向こうも飛ぶのなら銃で撃ち落とし、敵の頭を踏みつけ宙で足場に
市街地での戦いはスカイランナーの独擅場ですので
所詮はナマモノ
菓子だったなら私を魅了したでしょうがね
●キャンディの誘惑
アクエリオの運河――駆け抜けていくゴンドラを目撃したヴァニス・メアツ(佳月兎・f38963)は、しばし呆然とした。
自分の目がおかしくないのなら、一人乗りのゴンドラに、複数のピンク色の生き物が乗って、櫂を握っていた。
「その短い手足で? ……ゴンドラを?」
首を傾ぐ間に、もう一台、しゃーっと走っていく。
「あのスピードで?」
泳いだ方が早そうなのに、確かにゴンドラをみんなで手分けして操舵している。
「器用だな!!?」
思わず迸ったツッコミは、美しい青空に溶けていく……。
――呆れ驚いている場合ではない。周囲のゴンドラ乗りに「ゴンドラお借りしますね」と断るや、鮮やかに漕ぎ出す。
今まで、色んなマスカレイドと戦った。攻撃を躊躇うような愛らしいモンスターだって存在した……でも、今回のは、まあまあ衝撃映像だった。
(「あれを『すまほ』で録画すれば、『ばずる』んじゃないか?」)
なんて頭の片隅で考えつつ、余所の世界について考える余裕に、皮肉げな笑みを唇に刻む。
すいすいとゴンドラは運河を走り、見る見るうちに、爆走ウーパーイーターどもに追いついた。
ウーパーイーターは、ちらっとヴァニスを見たが、前方の美味しそうな匂いに釣られて、速度を緩めない。
赤茶色の双眸を、ふっと細め――彼は懐から、何かを取り出した。
「貴方達、これが見えます?」
ヴァニスが高々と掲げたのは、ペロペロキャンディ。
彼方に臨むアクエリオの水瓶から反射した光で、後光が差している、何の変哲も無いキャンディ。
「うぱー!(あれは!)」
「うーぱー!!(あまくておいしいものだ!)」
「センテンスに対して、意訳、長くありません?」
きらきら、というより、ぎらぎら、とした眼差しで、ウーパーイーター達はヴァニスを凝視すると、操舵を止める。
ヴァニスを……キャンディ目掛け跳びかかって来るウーパーイーターを躱すように、ゴンドラを蹴って、運河を挟む建物を蹴り、頭上を制し、笑う。
「頭上からの攻撃、避けられますか?」
宙を舞いながら、突き出す彼の腕には、紫煙銃。
次々放たれた紫煙弾を喰らって撃ち抜かれたものも、再びゴンドラに押し返されたものもいる――。
それらの動きをきっちり見届け、ヴァニスは、彼らが乗ってきたゴンドラを足場に、再び高く跳躍する。
「ニホンと言う国に伝わる八艘飛びとはこんな感じですかね」
得意げに笑い、舟から舟、時にウーパーイーターの頭を無情と踏みつける。
市街地での戦闘は、スカイランナーの独擅場と、彼が自負する通り。
三次元的に躍動しながら、撃ち、貫く。
ピンク色の羽根も、うるうるの瞳も、魅了光線も、ヴァニスは一笑に付し。
「所詮はナマモノ――菓子だったなら私を魅了したでしょうがね」
キャンディを咥えると、伸身の宙返りに巻き付けた布を靡かせ――水面の輝きに目を細めつつ、小さな身体の中央を、ずどんと撃ち抜いた。
大成功
🔵🔵🔵
シキ・ジルモント
ゴンドラに乗って敵を追う
普段扱うバイクとは異なるが、ゴンドラの操作も運転の内だ
ゴンドラを操る間は手が離せない場面も出てくる
連れてきたバディペットの【ライ】へ、オーラの外から属性ブレスによる攻撃で援護を頼み
飛行が可能なライに接近する敵の足止めを任せる
そういえばライの好物の果物を持ってきていたな
食べ物に執着のある相手だ、これも奪うつもりかもしれない
…と、ライに聞こえるように呟いてみる
食欲ならライも負けず劣らずだ
自分の食事が奪われると思えば十二分に力を発揮してくれると期待
…小動物が戯れているように見えるがどちらも真剣だな
ライに気を取られている敵を、こちらもオーラの外から射撃で仕留める
その調子だ、ライ
●貪欲くらべ
ゴンドラを借り受け、シキ・ジルモント(人狼のガンナー・f09107)はスムーズに運河を渡る。
(「普段扱うバイクとは異なるが――」)
勝手は違うとはいえ、ゴンドラ操作も運転の内。あっという間にコツを掴み、体重移動から水の掻き方まで、熟練のゴンドラ乗りと変わらぬ操舵で標的を追う。
寡黙にゴンドラを漕ぐ彼の傍らには、月色の瞳を持つ宵闇色の仔竜がいた。
しかし、ライは暫し、物珍しそうに辺りをうろうろしたり、ゴンドラの隅で水を眺めたり、どこか緊張感がなかった。
「ライ、敵影が見えたら頼む」
標的が視界に入れば、また違うだろう……バディペットの様子を横目で見やり、シキは操舵に勤しむ。
果たして目前に、暴走しているゴンドラが見えた――複数のウーパーイーターが様々動き周っての操舵、器用なことである。
シキが言葉をかけるまでもなく――きりっと目つきも凜々しくライは、ひとっ飛び、ウーパーイーターらに迫る。
お互い、一目で敵と認識し合った彼らは。
ライは即座にブレスを吐き、ウーパーイーターらはピンクのオーラを周囲に放出し出した。
オーラに気をつけるよう指示はしているが、敵の数が多い。
仲間の頭を踏んづけて、ぴょんと跳ね上がったウーパーイーターが、ピンク色に輝いた。
途端、ライがよろよろと後退していく。尾がふにゃりと下がって、飛行の高度が下がっていく――絶望的な無気力に襲われたらしい、仔竜に。
シキはそれとなく呟いた。
「そういえばライの好物の果物を持ってきていたな……食べ物に執着のある相手だ、これも奪うつもりかもしれない」
聞こえるか、聞こえないかの声であったが、ぴん、とライの尾が立った。
(「食欲ならライも負けず劣らずだ。自分の食事が奪われると思えば十二分に力を発揮してくれるだろう」)
シキの目論見通り――月色の瞳が、きりりと以前より凜々しく輝き出す。
ぐわっと牙を見せて、ウーパーイーターらの正面に回り込み、ここは通さないと威嚇した。
愛らしくも堂々とした威嚇に、敵も怯まぬ――いっそ、この邪魔くさい仔竜を食べてしまえと言わんばかりに、次々と跳びかかった。
ライはその中央を突っ切って躱し、ブレスを吐く。
ウーパーイーターも負けじとその尾に食いついては、乱暴に振り払われて、運河に落ちる……。
「……小動物が戯れているように見えるがどちらも真剣だな」
ぽつり、シキが呟く。彼とて、バディペットの奮闘を傍観していたわけではない――ライが気を引いている間に、最適な間合いまでゴンドラを寄せると、銃を構えると。
前置きもなく、容赦もなく。背後がおろそかになっているウーパーイーターへ、鉛玉を喰らわせる。
「うー……ぱー……(やーらーれーたー)」
仲間が情けない悲鳴をあげ、水に沈んでいけども、それらは気にしない。
目の前の仔竜に夢中だ。ライも疲れた様子もなく、飛び回る――食欲とは、かくも強いものなのか。
「その調子だ、ライ」
先程も言った通り、ご褒美はちゃんと用意してある――ますます貪欲に敵へと挑み掛かる仔竜を、あとでちゃんと褒めてやろうと考えながら。
シキも銃弾を叩き込んでいった。
大成功
🔵🔵🔵
シアン・マグノリア
え。
え、可愛い。
えぇ…、可愛いんですけど……。
とはいえ、丸呑みエンティングは流石にちょっと
可愛いに罪はありませんが、ちょっともにもにしてから倒しましょう
口が滑った気がしますが気にしません!
それにしてもゴンドラですか
水神祭のゴンドラレースを思い出しますねえ、懐かしい
オールを捌きつつ海賊を追いましょう
近くまで迫ったら【軽業】でゴンドラに飛び移ります
「ちょっと失礼しますね!」
何て言いながら【ウインターコール】で【身体部位封じ】、頭以外を凍らせてしまいましょう
にっこり笑いながらウーパーイーターの頬っぺたをもちもちします
柔らかくてひんやりしてて、癖になりそうですねコレ
一通り堪能したら、【追撃】でトドメを
●もちもちぷにぷに
シアン・マグノリア(天空に紡ぐ詩・f38998)は借り受けたゴンドラを漕ぎ出して、微笑んだ。
「それにしてもゴンドラですか……水神祭のゴンドラレースを思い出しますねえ、懐かしい」
身体はゴンドラの操舵を忘れていない。
柔らかなオール捌きで、水の上を滑らかに走る――風が髪を浚い、アクエリオの美しい街並みを眺めながら運河を行く。
これが水神祭とか、平和なイベントであったら、それを楽しむだけでいいのだが……。
徐々に接近する、暴走ゴンドラ。
近づくにつれ、水面に千切れた布などの、ウーパーイーターらが食いちぎったものの、食べなかった残骸が浮かんでいるのに気付く。
悪い子達ですね、ときゅっと唇を結んで、彼女は敵を見据える。
愛くるしいシルエット、くりっとした瞳。短い手足。
――それらが数匹、ゴンドラの上で、上乗りになったりしっちゃかめっちゃかに動き周りながら、ゴンドラを動かしている。
「え」
シアンは息を呑み。大いに動揺した。
可愛い。
「え、可愛い」
心の中で思ったはずが、声も出ていた。灰色の瞳を大きく瞬かせ、相手の姿を、更にじっと見つめる。
「えぇ……、可愛いんですけど……」
なんかこう、思ったよりわちゃわちゃとグループで戯れているところが、ずっと眺めていられる種類の可愛さだ。
――とはいえ、放置すれば、人も食べるとか。
(「丸呑みエンティングは流石にちょっと……」)
心を鬼にしなければ。
彼らは退治せねばならぬ運命なのだ――シアンは自分に言い聞かせる。
そう、
「可愛いに罪はありませんが、ちょっともにもにしてから倒しましょう!」
なんか口が滑ったが、彼女に無粋なツッコミを入れる者はいなかった。
既に、距離を詰めていた彼女は――自分のゴンドラを蹴って、軽やかに宙を舞う。
「ちょっと失礼しますね!」
一言断った瞬間には、ふわりとウーパーイーターらのゴンドラに着地している。
突如と飛び乗ってきたシアンに、彼らは目をぱちくり見上げ――内心に込みあげる、可愛い、という感情を押し殺し、きりっと装い、アイスレイピア構えた。
「吹き荒れろ、冬の嵐!」
レイピアの刀身から凄まじい冷気が放たれ――彼女の周囲に、冬の嵐が吹き荒れる。
きらきらと白く凍結したウーパーイーター達の真ん中で。ゴンドラに膝を曲げ座ったシアンは、にっこりと満面の笑みを浮かべた。
凍結して動けぬ敵をいいことに――ほっぺをもちもち。お腹をふにふに。掌をもにもにと好き放題する。
「柔らかくてひんやりしてて、癖になりそうですねコレ」
きっと動いている時には触れなさそうな、外鰓から尻尾まで、しっかり堪能して。
「それじゃ、ごめんなさい、名残惜しいですがお別れです」
相手がピンクのオーラを放つ暇も与えず、レイピアで貫き――悲しそうに目を伏せながら、海賊退治を完遂したのであった。
大成功
🔵🔵🔵
クリスティナ・ミルフィオッリ
あら、可愛らしいウーパーさん
でも街の皆に迷惑を掛けるのなら、放ってはおけないわ
ねえ、変わった生き物を見なかった?
聞き込みしつつ
船着き場でゴンドラを借りて、海賊を追い掛けるわ
え――危ないからやめろって?
大丈夫よ、こう見えて私、エンドブレイカーだもの
操船の経験は殆どないけれど、歌うのも、コツを掴むのも割と得意
海賊船の姿を捉えたら、声の限りに歌うわ(UC)
頭突きは当たると痛そうだし、後はオールではたいて落としていくわね(雑)
何も知らなかった私を、助けてくれた人達がいて
何もできなかった私が、今は誰かの力になれる
ずっとずっと、憧れていたの
エンドブレイカー
あなた達と一緒に演じられるなんて、最高の舞台だわ!
●初舞台
何事か話し合う自警団と、ゴンドラ乗り達。厳しい貌を付き合わせるその団体の間に、臆せず、クリスティナ・ミルフィオッリ(千紫万紅・f39073)は首を突っ込んで、華やかに微笑んだ。
「ねえ、変わった生き物を見なかった?」
「く、クリスティナさん!」
「あら、知ってるの? 嬉しい」
年若いゴンドラ乗りの少女が彼女を見て、ぴょんと跳ねたので、クリスティナはにこにこと笑みを深めた。
「それでね、ゴンドラで悪戯している子達を探してるんだけど、見なかった?」
「丁度、悩んでいたんです……追い込んだんですけど、私達では手に負えなくって」
別のゴンドラ乗りが溜息を吐いた。
餌を使って袋小路に追い詰めたが、いかんせん、数が多い。自警団達も、ゴンドラに乗ったまま戦うのは、なかなか厄介だと。
エンドブレイカー――猟兵を待とう、という結論に落ち着きそうになったところだと説明する傍ら、クリスティナはマイペースに「ゴンドラを借りるわね」と櫂を手に取る。
「え……!」
驚きに目を丸くする。アクエリオの劇団に所属する看板女優――クリスティナは、そういう風に知られている。先程の少女が「あ、危ないですよ!」と叫ぶと、穏やかな眼差しで、大丈夫、と応える。
「え――危ないからやめろって? 大丈夫よ、こう見えて私、エンドブレイカーだもの」
皆が、えっ、と驚く間に、さっとゴンドラに乗り込んで、本職斯くやのオール捌きで走り出す。
操船の経験は殆どないため――最初は少し戸惑う様子を見せたけれど、彼女は女優だ。
ゴンドラ乗り達の姿勢を思い出し、真似ることで、コツを掴んでいく。
歌と一緒ね、と小さく零し、教わった袋小路へとスムーズに進む。前方、ゴンドラに山盛り積まれた果実に群がるウーパーイーター達がいた。
「あら、可愛らしいウーパーさん」
もぐもぐあぐあぐ、果実に夢中だ。それだけならば、和やかな景色なのだが……。
しかし、どれも丸呑みに近いので、あっという間に山が減っていく。
「……でも街の皆に迷惑を掛けるのなら、放ってはおけないわ」
胸に手を置き、すっと息を吐いて、吸う。
自分の身体の温かさを感じながら、歌う――紡ぐ声は、穏やかな見た目に反して、力強い。舞台中央に咲く花として、磨かれた声。
それはウーパーイーター達にも届いたようだ。きょとんとした顔が、そろってクリスティナを見た。愛らしさに、にこっと笑みを向ける。
陶然と聞き続けているものたちもいるが、彼女が敵だと気付いたウーパーイーターらは、額を超硬質させ、クリスティナへと躍り掛かってくる。
歌いながら、彼女は軽やかに櫂と踊る。くるっとターンしながら、跳びかかって来る彼らを叩き落とした。
(「当たると痛そうだし」)
自分がどこまで戦えるかはゴンドラ操船より未知であったけれど。
歌いながら、ダンスする――と考えれば、それほど難しい事ではなかった。
頭を強か殴られたウーパーイーターらが運河に次々沈んでいく。跳ね上がる水飛沫をキラキラ浴びて、初舞台を軽やかに、高らかな歌で彩る。
(「何も知らなかった私を、助けてくれた人達がいて――何もできなかった私が、今は誰かの力になれる……」)
ゴンドラの上から、綺麗にウーパーイーターらを一掃して、彼女はそっと囁く。
「ずっとずっと、憧れていたの」
エンドブレイカー――悲劇を打ち破り、人々を救う。友は失ったけれど、彼女の最後の一線を守ってくれた人達。
きっと、今も皆、それぞれに戦っている。
「――あなた達と一緒に演じられるなんて、最高の舞台だわ!」
だから、負けない――皆と、守り抜く。
やんちゃな海賊達から、ひととき平穏を取り戻した運河を見つめ、彼女は微笑んだ。
大成功
🔵🔵🔵