2

エンドブレイカーの戦い⑧〜外の理の宴

作者：黒代朝希

「皆、この度の『11の怪物』との最終決戦『エンドブレイカーの戦い』にて順調に戦っている模様なのだわ」
　そう言って桜色のストレートヘアを靡かせてシビュラ・ヴェルムリープ（光桜天樹スプリールの聖女・f39562）は霊峰天舞アマツカグラでの依頼を、盟約の地にて集っているエンドブレイカーも含めた『六番目の猟兵』へと斡旋していく。
「今回はエンドブレイカー世界人類の母たる人類の魔女『此華咲夜若津姫』様が地下に封じられていた東方の都市国家、巨大な二本の天津太刀を頂く「霊峰アマツ」を中心に広がる、独自の文化を持つ『霊峰天舞アマツカグラ』にて大宴会を披露してもらうわ」
　既に『7th KING WAR』にて会敵した通り、かの大母は既に没している。
　しかし死しても尚、彼女の「ぼうや達」に対する慈愛は今なおこの地に残されている。
「人類の魔女『此華咲夜若津姫』様が封じられていたアマツカグラの地下深くに広がる「奈落」にて、賑やかな大宴会を行う事で、『此華咲夜若津姫』様に猟兵達の「元気な姿」を示すこと……そうしたら、今後の戦いに有利に働く「何らかの加護」が得られる可能性が予知されたのだわ！」
　そうする事が人類の母に対する親孝行であり、母からの愛を託されるきっかけになるというのだ。
　是非とも、愉快な宴にしてほしい。
「また、エンドブレイカー世界以外の世界……本当の意味での『外の世界』の食材や娯楽用品を用いて宴会をすれば、外の「ぼうや達」の営みを見れて『此華咲夜若津姫』様も張り切ると思うわ」
　是非とも、エンドブレイカー世界では見た事も無い様な食べ物等を用いて、宴会を盛り上げて欲しい――

第1章 日常 『奈落大宴会』

POW   :    豪勢な宴会料理を楽しむ SPD   :    宴会芸や話芸で場を盛り上げる WIZ   :    自慢の料理や飲み物を持ち込み、給仕する イラスト：麦白子 👑5 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

「よーし、宴を盛り上げればいいんだな！」
　まず最初に勝守・利司郎（元側近NPC・f36279）が持ってきたのは『クーラーボックスに入れてきた大容量アイス』と『冷めないよう、魔法瓶に入れてきた紅茶』である。
　これらはキマイラフューチャーのコンコンコン……かの世界のオブリビオン・フォーミュラが創り出したシステムは、叩けば特定の食べ物や衣服や道具が手に入る。そこから持ち出してきたものだ。
「便利だよな、コンコンコン。場所さえ分かればすぐに手に入るんだから」
　オブリビオン・フォーミュラ『ドン・フリーダム』……このシステムの設計者は『叩けば望むものが望むだけ手に入る』という完全版にしようと試み、カタストロフを起こそうとして阻止された。
「宴会と聞きたらどこへでもいくぞ！」
　と、そこに高柳・源三郎（幕府に目をつけられた｜旅芸人《呑んだくれ野郎》・f15710）はサムライエンパイアに存在するたぬきの隠れ里の長老からもらった『いくら飲んでも無くならない酒』である『銘酒・狸酔』を持ち込んで一杯呷っている。
　宴会技能に特化した源三郎は、それ等の技能を用いて宴会をもっと盛り上げていく。
　コンコンコンに匹敵する大名酒である『銘酒・狸酔』の存在も、盛り上がりの一端であろう。
「まだこの世界にはあまりなじみが無いから食文化がどの程度なのか、あんまり詳しくないんだけど……得意な料理技能であらかじめいくつか作って来ようかな」
　一番得意な料理の薔薇のアップルパイに種類ごとに異なるフルーツをあしらったマリトッツォやパンケーキを持ち込んできたのは、栗花落・澪（泡沫の花・f03165）。
　飲み物としてタピオカミルクティーを持ち込みながら、澪はかつてのデビルキングワールドでの大戦『7th KING WAR』にて協力してくれたエンドブレイカー世界における人類の母の事を想う。
「若津姫様には戦争でのご縁もあるから……ちゃんとやりたい」
「と、先ずは一旦盛り上がる事だな！」
　しんみりした雰囲気になりそうな所、源三郎がタピオカミルクティーを受け取って水分補給を。
　ガチデビルとの大戦の中で交流した『此華咲夜若津姫』の人柄を想えば、自分を悼む事よりも今を生きる人の為を想い笑顔になる事を望む……源三郎は、この戦場における大原則を何よりも体現しているが故に、その意図をくみ取っていた。
「本来ならアマツカグラ料理を振る舞いたいところですが……外の世界の食材ならば……！」
　アルジェン・カーム（銀牙狼・f38896）はラーメン……家系に次郎系、塩ラーメン等を伸びない様に茹でてスープを入れる形でバイキングに。
　更にハンバーガーにフライドポテト、焼きまんじゅう等のジャンクフードを持ち込んでいく。
「外の世界では割りとジャンクとされるものなんですが不思議と人気もあるんですよね」
　ハンバーガーも各種店舗の各種類があり、月見を食べる澪にボリュームのあるバーガーを手に取る利司郎、フライドポテトを肴にする源三郎等、アルジェンの言う通り好まれている。
「あのでっかくて格好いい女神様が居た場所か！　よし、女神様のお望みとあれば、いっちょ頑張らなくてはいけないな、うん！」
　鼻息を立てて久留米・圓太郎（自称魔法使いの一番弟子・f00447）は異星人から貰ったバックパックで剣舞を披露する。
　使うのは、宝剣や箒、魔法の杖で刃は入っていない武器だ。
「と、いうわけでここは師匠にもお手伝い願わなくては、な」
　そう言ってユーベルコードを使い師匠である魔法使いを召喚する圓太郎。
　幻影として出てきた魔法使いも、乗り気のようだ。
「此華咲夜若津姫の母ちゃん亡くなってたべか……」
　と、悲しそうに呟くのはフェリチェ・リーリエ（嫉妬戦士さんじゅうはっさい・f39205）。
　アクスヘイム最下層の村出身のエンドブレイカーにして15年前の戦いに身を投じたエンドブレイカーとして、かの『母』の喪失に思いを馳せる。
「辛気臭いのは性に合わんべな、若津姫の母ちゃんに元気なとこ見せるべ！」
　しかし『ぼうや達』の一人として『母』が何を望むかを理解しているフェリチェは、笑顔でとある物を取り出していく。
　それは獣人戦線の｜糧食《レーション》だ。
「驚かされたべなー。果実や穀物から作られてるとは思えんくらいにしっかり肉の味と食感で」
　これにより獣人戦線の獣人達は、食肉衝動を抑え込む事が出来る。
　また、兵站の観点から見てもこの技術は大いなるパラダイムシフトを引き起こす事は間違いない。
「で、ラムチョップを作って……ローズマリーで香り付けし、焼き上げる！」
　ライフベリーで作った特製のベリーソースをかければ獣人戦線世界とエンドブレイカー世界のコラボ料理が完成。
　アマツカグラの村で領主やってる友人からもらった特産品のワインを添えて、宴会を楽しんでいく。
「お、いい酒じゃな」
　アマツカグラ特産品ワインの味は、源三郎も気に入る風味。
　それを圓太郎は羨ましそうに見つめるが、彼はまだ飲酒が認められていない年齢だ。
「なら……これなら女神様は喜んでくれるかな？」
　そう言ってアルジェンが試しに用意していた巨大次郎系ラーメン……根菜が山の様に聳え、脂と大蒜が山盛りのそのラーメンらしき食品を、少年は平らげていく。
「そうそう、娯楽用品と言えば……これですよね」
　と、巨大ラーメンを用意していたアルジェンは、テレビと最新ゲーム機器とソフトを用意。
　界渡りで非アース系世界の住民が触れ、好んだ者はとことん引かれるゲーム機だ。
「僕の子供達もものすごく夢中になりまして……恥ずかしながら僕もかの最新作であるソフトを少々」
　クロムキャバリアの如くロボットに乗り込んで戦うソフトの最新作を澪と利司郎がプレイするのを見学しながら、しみじみと呟くアルジェン。
「す、すごく難しいけど……ハマる人にはハマるだろうね、このソフト」
「難しいけど、慣れればサクサクやれるんだろうな」
　撃墜されて再コンティニューした二人を見据え、アルジェンは冒険の話を同胞にして同郷であるフェリチェと語り合う。
　更に澪が圓太郎の剣舞に合わせ、バトン状に縮小させた杖を操りながらのダンスと歌唱を披露していく。
「若津姫様が褒めてくれた僕の歌……少しでも、届きますように」
　ただ、己の歌を褒めてくれた者の為に……祈りを込めて澪は歌う。
　その様子を、利司郎はバニラアイスを食べながら見続ける。
「それに、バニラアイスで口さっぱりさせてから他の料理を摘むってのもいいと思うだよ、オレ」
「うんうん、焼いた肉等には口直しで他のを食べてから挑むのもいい味わい方だべ」
　彼の理論に、自由農夫にして超級料理人のエンドブレイカーであるフェリチェは同意を見せる。
「楽しんで元気な姿を見せるってのは、そういうことでもいいと思ってるんだ」
「そうですね……それを、何よりも望む方でしたから」
　アルジェンも、遠い目をしてかの『母』を思い返す。
　トライブのエンドブレイカーの言葉に、彼女を『でっかくて格好いい女神様』と形容した少年は内心で頷く。
　フェリチェも、目を閉じて『母』を想った。
　彼女の想いに応えるには一つ――このエンドブレイカー世界を『11の怪物』を撃破する事で救い、勝利する事だけだ。
「……頑張ろう」
　澪の言葉に、源三郎が杯を上げる――それは決して献杯ではなく、乾杯であった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

最終結果：成功 完成日:2023年09月03日