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エンドブレイカーの戦い⑨〜白亜に降る

#エンドブレイカー! #エンドブレイカーの戦い #山斬烈槍ランスブルグ

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#山斬烈槍ランスブルグ


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●思慮の都
 その館はランスブルグ玉壁街にある。
 白亜と言って差し支えないほどに眩しい白の壁と、晴れ渡った空のように青い扉が印象的な館だった。
 館の正面にある門は鋳鉄の装飾も美しく、中央には家紋なのだろう白と黒のグリフォンが二対、七宝で鮮明に色分けされていた。
 その館に住まう者は山斬烈槍第一階層の住人として当然ながら身分高い者達であった。彼らは代々紋章術や星霊術に造詣深く、日々研究に勤しみ、己が居館に資料を際限なく収集させたと云う。希少な書物が収まる書架はとみに名高く、現当主が街を再建させた現在では学びを志すもの全ての為に解放されている。

 ――白亜の街が燃えていた。
 降り注ぐ闇の塊が、影となり白を抉り取る。夜を冠する者達の嗤笑に混じり、剣戟が響き渡る。
 街を包み込まんとする悪魔の群れに仇なす者達が在った。

「第一槍兵団は前へ! 紋章師団は援護に回れ、二度とこの街を奪わせるな!」
「鎮火を急げ! 第二槍兵団は民衆を守れ、ただの一人も命を落とすことは許さんぞ!」
「我等の命は女王陛下と女公が御為に!」
「今こそ恩義に報いる時! 誉高きその名を讃えん!」

 天槍を掲し鎧兵と、青き薔薇を掲げた騎兵が地鳴りのような蹄の音と共に駆け抜けていく。
 彼らこそがランスブルグ女王直属の天槍騎士団。そして、この地を治める領主の近衛騎士団だった。

 その地を治める一族の名は、オラージュ。
 智を尊び学を愛する、誇り高き血族の名であった。

●夜の帷
「よう。……あのさ、ちょっと皆の手を借りたいんだけど」
 何時になく神妙な面持ちで、ラウム・オラージュ(闇鴉・f39070)は重い口を開いた。
 緊張している訳ではない。決して、嫌な訳でもないけれど。
「俺たちの世界の終焉が見えた。それも特別デカいやつだ。ランスブルグって都市国家に行ったことのあるヤツは居る?」
 曰く。ランスブルグ第一階層、玉壁街にマスターデモンと呼ばれる知性と肉体を持つ『具現化した夜』の大群が顕現し、街を丸ごと宵闇で食らい尽くしてしまう終焉を見たのだと少年は語った。
「俺が見た終焉だけじゃない。今、世界中で異変が起こってる。ここで食い止めなきゃ、人の心が負けちまう。|棘《ソーン》やエリクシルは、そういう……ニンゲンのこころの隙間に潜り込むんだ」

「玉壁街ってのはランスブルグのいちばん上の階層だ。女王さまの目が届くところで、王侯貴族が住むキレイな街。皆に行って欲しいのは、この区画」
 広げた地図の先をとんと突く。使い古されて破れた地図は所々擦り切れているが、上から清書した痕跡がある。思い入れのある場所なのだろうか、少年は懐かしむように目を細めた。
「王都随一の書架がある街だ。こんな時じゃなかったら、案内してやりたいとこなんだけど……いまは仕事のハナシな。顕現したマスターデモンの群れは宵闇で街を閉ざそうとしてる。それを止めて欲しい。奴らはとんでもない数だ、それなりに骨が折れると思う。でも、王都の皆も黙ってやられている訳じゃない」
 女王の勅令を受け、都市国家中の騎士達が一丸となって巨悪に立ち向かっている。天槍騎士団はランスブルグ最強の戦力であり、彼等と連携を取る事が出来れば街の被害を最小限に抑え、敵群を速やかに一掃することも不可能ではない。
「天槍騎士団と、この街の領主の近衛騎士団。皆と力を合わせて戦うことが街の命運を左右する。助けてくれなんて、ホントは情けねえって思うけど……」
 そこで少年は言葉を区切った。
 仕事には直接関係のない話だ。知らせるべきか、否か。迷う間をたっぷりと置いた後。
「……俺のねえちゃんが、そこにいるんだ。だから、……だから、頼む」
 血の繋がりがあるわけではない。だが、それが何だと云うのか。
 姉と、姉が愛する街を、書を。どうか、守って。
 自らが向かうことの叶わないその場所へ。
 血を吐くような祈りを込めて。少年は宵の扉を開き、猟兵達を導いた。


なかの
 こんにちは、なかのと申します。
 こちらは戦争『エンドブレイカーの戦い』のシナリオです。一ヶ月間、一緒に頑張りましょう!

●進行順序
 【第一章】👾『マスターデモン』(断章追加なし)
 真昼を多い尽くす夜。
 ランスブルグ第一階層、玉壁街のとある街を覆い尽くさんとするマスターデモンの群れとの市街戦になります。ことは一刻を争います。速やかに敵を討ち倒し、脅威を打ち払いましょう。
 天槍騎士団と領主の近衛騎士団がマスターデモンの群勢と交戦中です。彼等と力を合わせることが物語の鍵となります。

●プレイングボーナス
 プレイングボーナス……天槍騎士団と連携して戦う。

 皆様のご参加を心よりお待ちしております。
 よろしくお願いいたします!
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第1章 集団戦 『マスターデモン』

POW   :    デモニックエクリプス
【真なる「夜」 】に変化し、超攻撃力と超耐久力を得る。ただし理性を失い、速く動く物を無差別攻撃し続ける。
SPD   :    ダークネスフォール
【破壊力を持つ闇の塊 】を降らせる事で、戦場全体が【|悪魔《デモン》の来た異界】と同じ環境に変化する。[|悪魔《デモン》の来た異界]に適応した者の行動成功率が上昇する。
WIZ   :    デモニックアルター
X体の【実体を持つ「具現化された夜」 】を召喚する。[実体を持つ「具現化された夜」 ]は自身と同じ能力を持つが、生命力を共有し、X倍多くダメージを受ける。

イラスト:タヌギモ

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

仇死原・アンナ
アドリブ歓迎

…時は来たれり!
この世界を救う為に…忌まわしき宝石を破壊する為に…!
さぁ行くぞ…私は…処刑人だッ!

鉄塊剣と宝石剣を振るい騎士団と共に集団戦術で敵群と戦おう
鉄塊剣と宝石剣を振り回し怪力と範囲攻撃で敵群を切り捨ててやろう

私は|常闇の世界《ダークセイヴァー》で生まれた…
闇に包まれた世界…だがそこで人々は立ち上がり吸血鬼と闘い勝利を得た…!
明けぬ夜などないのだ…まして…偽りの闇夜なんぞに!

地獄の炎纏いて【ブレイズマインド】を発動
共に戦う騎士団を回復し、彼らの武器に地獄の炎を灯して
迫る敵群を地獄の炎の属性攻撃で一気に蹂躙し殲滅してやろう…!

偽りの闇夜め…炎に焼かれ消え去れッ!!!



●炎獄の舌
 群がる鴉のように広がり、執念とも呼べる執拗さで穢れなき真白を喰らわんとするものがあった。
 夜だ。
 宵闇が、あらゆるものを覆い尽くさんとしていた。
「……時は来たれり! この世界を救う為に……忌まわしき宝石を破壊する為に……!」
 逃げ惑う人々の悲鳴を、ぶつかり合う剣戟の残響を打ち消すかのような、凛とした声だった。
 常の薄ぼらけた様相をかなぐり捨て、赤黒く燃える刃を地に突き立た仇死原・アンナ(処刑人、地獄の炎の花嫁、焔の騎士・f09978)は己が内に燻る熱病が如き衝動を剥き出しにして吼え猛る。
「さぁ行くぞ……私は……処刑人だッ!」
 断罪者と成った女は大きく地を蹴り迫り来る闇へと飛び込んだ。
 終焉の幕を下ろさせはしない。我が身は常闇に生まれし執行者也や。

 白亜の街に炎と闇が混ざり合い溶けていく。
 闇がひとつ侵食していく度にぼろぼろと美しい邸宅が湿気を帯びた角砂糖のように崩れていった。
 一際高い嘶きが響き渡る。次いで響いた、がしゃんと鈍く質量を持った金属音にアンナが振り返れば、視線の先に落馬した天槍騎士が、そして今にも戯れにその命を弄ばんとする夜の化身の姿があった。
 迷いはない。音もなく、影と一つになったかのようにアンナは身を躍らせた。鉄塊の如き錆色の乙女が弧を描くと同時、騎士を囲んでいたマスターデモンの巨体がひとつ、ふたつと断たれて弾け飛ぶ。
 耳を劈くような不協和音は悲鳴だろうか。声と呼ぶには余りに醜いその音に眉を顰めながらも、アンナは背後に庇い立てた騎士を一瞬だけ降り仰ぐ。
「ぁ、ぐ、」
 利き腕を折ったのだろう。兜の隙間から覗く痛みと恐怖で引き攣った表情の中に、それでも屈さぬ、戦意を失わぬ強い光を見た。
 それでも槍を手放さぬ矜持を、見た。
「私は|常闇の世界《ダークセイヴァー》で生まれた……。闇に包まれた世界……だが、そこで人々は立ち上がり吸血鬼と戦い勝利を得た……!」
 ああ、ならば応えよう。
 抗うことを、人の強さを。私はもう、知っているのだから。
「明けぬ夜などないのだ……まして……偽りの闇夜なんぞに!」
 掲げた宝石の刃を自らの胸に突き立てる。血の代わりに吹き上がるのは深淵より出し炎。宵闇を青々と照らす光が、身を砕いても尚闘志を失わぬ騎士の横顔を照らし出した。
「……腕、が」
 動く。
 使い物にならなくなった筈の腕は勿論、鎧の継ぎ目から流れ出ていた血が止まっている事を知る。
 自らに舞い降りた奇跡を喜ぶよりも早く、若き騎士は直様槍を携えアンナの傍に並び立つ。共に戦うと、確かな意思を瞳に宿して。
「名も知らぬ来訪者よ、ありがとう。……ああ、無駄死になど決してするものか……!」
「――その意気や良し!」
 これを地獄と呼ぶならば、喜んで身を投じよう。
 我こそは死と救済を齎す者。
 迫る昏き一群をアンナを中心として伸びた獄炎が絡め取り、その存在ごと燃し尽くす。地獄を纏うた天槍と二対の刃が悪しき夜を貫いた。
「偽りの闇夜め……炎に焼かれ消え去れッ!!!」
 炎と踊るアンナの姿は、若き騎士の目には正しく救済者として強く焼き付いていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ネルコ・ネルネコネン
厳しい状況であっても騎士として戦い続ける方々、見過ごすことなど出来はしません!
敵なる悪魔が闇で全てを覆おうというのであれば、私は聖者として闇を払う光を掲げましょう!
装備したメイスに聖なる祝福を付与し戦闘に参加致します。
闇の中で活動するような悪しきものが相手であれば、メイスより放たれる聖なる光は目をくらませるのに十分でございましょう。
敵の目を眩ませることができれば、共に戦う騎士団の方々もより安全に敵を攻撃できるはずです。
理性を失い襲いかかる悪魔には祝福が付与されたメイスの一撃で持ってお相手致します。聖なる光の爆発は真の夜に変身したデモンには効果的に働くでしょう。
(アドリブ連携歓迎でございます)



●天なる光
 劣勢にあっても尚立ち向かう騎士達の激昂と、夜闇から放たれる軋んだ鬨が幾重にも折り重なって反発し合っていた。
 絶望の淵に立たされた、厚い闇に閉ざされし街に一筋の光が落ちる。
 普く地を照らす穢れなき白。舞い降りたネルコ・ネルネコネン(呪いを宿した聖者・f13583)の姿は、血と夜に似付かわしくない美しき天の御使が如き眩さで以って人々を照らし出した。
「厳しい状況であっても騎士として戦い続ける方々、見過ごすことなど出来はしません!」
 誰もが言葉を失っていた。
 ネルコの内より滲み出す光の眩さに、マスターデモンさえもがひととき息をすることさえ忘れていた。
「……騎士達よ、どうか立ち上がって!」
 掲げたメイスが夜の群れを指し示すなら、放たれる暗闇を照らす眩い光に導かれるかのように。ひとり、またひとりと騎士達が立ち上がる。彼らは誰ひとり屈してはいない。その背を押すかのように、ネルコは高らかに声を上げた。
「敵なる悪魔が闇で全てを覆おうというのであれば、私は聖者として闇を払う光を掲げましょう!」

「――ギギ、キ――!」
 錆びた金属同士が擦れ合うような鋭い奇声を上げながら、マスターデモンの巨大な爪がネルコを引き裂かんと四方八方から襲い掛かる。真白の壁が、煉瓦道が、柔くなった蝋を削り取るかのように抉られていく。理性を手放した獰猛なそれをいなし、聖女は羽の如く軽やかに宙を舞った。
「これ以上、この世界から何をも奪わせはいたしません。……光よ!」
 悪と戦う力を。ネルコの祈りに応えるように、聖なる槌矛が一層眩い光を放つ。
 闇より出し夜と相反する閃光はマスターデモン達の目を灼き、大きな悲鳴を上げた夜の群れをぐらりと大きく揺らがせた。
「――今です!」
「歩兵団、彼女に続け! 光は我らが御許に!!」
 踏み込んだネルコの掛け声に合わせ、体制を立て直した騎士団が応じる声が波紋のように戦場を満たしていく。
 マスターデモンが怯んだのはほんの僅かな間だったかもしれない。けれど、夜闇が再び牙を向くよりも早く、振り上げられた天槍が磔刑にするが如くその巨体を何重にも貫いていた。
 踏み込んだネルコの槌矛がいまだ凶刃を振るわんとする一際大きな真なる夜に変じた個体を捉え、勢いを衰えさせぬままに強く強く地に打ち据える。祝福を受けし戦棍の聖なる光は闇を一瞬膨れ上がらせたかと思えば、内側から炸裂する閃光で以って邪悪なる夜を食い破る。光と音が、僅かな違和感と共にずれて――ほんの数秒後に、光の雨となって夜の残花を照らした。

 オォオォォォ……!

 勝鬨の声が、何時しか人のものへと塗り替えられていく。
 未だ戦火は鎮まらぬ。なればこそと、ネルコは騎士達と共に次なる戦場へと再び駆け出した。

大成功 🔵​🔵​🔵​

夜鳥・藍
ランスブルグは先日お伺いした都市ですね。
不思議と懐かしい風景を見る事が出来たと記憶しております。
ええ、あの風景を奪わせませんとも。あの景色は守らなければ、そう強く思うのです。

前線にともに立ち戦うには私は未だ素人。統率が取れた中に紛れ込むには異端過ぎましょう。
ですから騎士団の方々の援護に回りましょう。
騎士団の方々に声がけと共に複製した鳴神でユーベルコード雷光を発動、マスターデモン達を追い込み倒していきます。
なるべく多くを倒すようにしダメージを重ねます。
包囲を抜けて近づいてきたものは青月で斬りはらうようにします。そこまで騎士団の方の手をおかけする事はしません。



●VIII. Justice
 |郷愁《帝都》を思わせる風景を見た。
 異なる世界、異なるその場所で、懐かしい彩を見た。
「ええ、あの風景を奪わせませんとも」 
 夜鳥・藍(宙の瞳・f32891)は藍晶石の瞳に強い光を宿し、今は闇に閉ざされた白亜の街を降り仰ぐ。
「……あの景色を、守らなければ」
 この胸に宿る想いに、願いに嘘はない。
 月光と宵。二対の刃を抜き放ち、藍は戦火の只中へと駆け出した。

 誉高き天槍騎士団。一国家を担うその存在は藍にとっても厳かな響きを感じさせた。
 前線で共に戦うには、私は未だ――、
「!」
 強く金属同士を打ち合う音が間近で響く。怯んで一歩後退った藍の視界のすぐ先で、初老の騎士がマスターデモンの牙を今まさに受け止める姿が飛び込んできた。
「お嬢さん、早くお逃げなさい」
 庇われたのだと。理解するまでそう長く時間は掛からなかった。
「あ、」
「ここは我らが承る。早く安全なところへ!」
 人ならざる夜が侵食する。老いて尚衰えぬ二の腕が、ぎしりと軋む音が聞こえるようだった。老騎士は勝てぬと分かる相手でも尚、藍を、民を逃がさんと前へ前へと身を押し出していた。
 ざり、と大きく老騎士の体がマスターデモンの剛腕に押しやられて揺らぐ。
 ――素人の己が統率が取れた中に紛れ込むには異端すぎる。そう、思っていた。
「違う、……――違う!」
 臓腑の奥から湧き上がるのは、衝動だったのだろうか。
 違う。
 てのひらの中で弾け飛んだ雷光が四散して意思を持つ。
 複製された神器は鳴神と成り、マスターデモンの実態を伴った夜を青き雷光で撃ち抜き焼き払っていく。
「お嬢さん……あんた」
 騎士団の手を煩わせることなどするまいと思った。
 けれど。この場に於いて彼女は決して脇役などではない。
 今この瞬間、藍は巨悪に立ち向かう|抗う者《英雄》の一人に他ならない。
「私は猟兵。数多の世界を渡る、第六の猟兵。――助太刀いたします!」
 音を立てて頽れる夜闇を背に、藍の言葉に、老騎士の瞳に熱い炎が湧き上がる。
 それは生きようと抗うものの光。ああ――その瞳を恐れることなどあろうものか。
「――ならば征こう。数多の命が、誇りが、我らが双肩に掛かっている!」
 鳴神の包囲を抜けて迫り来るマスターデモンを、藍の青き刃が、老騎士の天槍が貫き消し去る。
 たとえその一歩が小さなものであろうとも。決して屈することのない輝きは永き夜を打ち砕く光となり、人々を照らす希望となるだろう。
「――轟け!」
 雷鳴が響き渡る。
 稲光とふたつの刃が迸り、怨嗟の夜の群れが揺らいで大きく割れた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

マウザー・ハイネン
ランスブルグはやはり変わりませんね。
三勇者決戦の時も精強な騎士の方々と共に戦いましたし、人々を守る強さは信頼に値します。
それに昔共に戦ったラウム様の願いです。全力で応じましょう?

支援中心に行動。
戦況…マスターデモンの数、夜の濃さを観察し数が多そうな位置に向けてUCの吹雪を喰らわせましょう。
特に数が急増…具現化された夜が大量に召喚されたなら狙い目です。
吹雪は戦場全体の敵の自由を奪いますからね。
一緒に飛来してきた聖剣は天槍騎士団の方々が使えそうならどうぞ。
私も一つ使い継戦能力を底上げしましょうか。
弱った個体は氷槍で確実に仕留めつつ滑走するように戦場を駆け回り夜を喰い止めます。

※アドリブ絡み等お任せ



●怜悧なる花
 変わらぬ日々が、風景がそこにあると信じて疑わなかった。
 巨大な薔薇が根を張ろうとも、マスカレイドの悪意に侵食されようとも。
 山斬烈槍ランスブルグは幾度となく窮地に晒されようとも、国を統べる女王、そして彼女の愛する民草は決して遜ることも諦めることもなかった。それはきっと――今日に至るまで、ずっと。
「この国はやはり変わりませんね」
 高く響き渡る靴音。銀花のような長い髪をたなびかせ、マウザー・ハイネン(霧氷荊の冠・f38913)は銀灰の双眸をすうと細めた。
 三勇者決戦。嘗てエンドブレイカー達が戦い抜いた、第二階層――鉄壁街に待ち受ける三柱の堕ちた勇者を退けた大きな戦があった。奇術師ゼペットに捕らわれ、今まさに処刑されんと云う瞬間でも尚。歯向かう意思を捨てずに抗い続けた鋭い蜜色の瞳を。マウザーをこの地に導いた少年の『姉』の面影を、マウザーは未だ覚えていた。
「……良く似ていること」
 血の繋がりはない。それでも、ふたつの眼差しに宿る光は、とても。
「嘗て共に戦った者たちの願いです。全力で応じましょう?」
 白亜の街に冬が降りる。
 風が一陣吹き抜け、後にはひとひらの霜が舞っていた。

「怯まずに。そして――恐れずに」
 敵味方が入り乱れるその場所へマウザーはひらりと身を翻して飛び込んだ。
 生み出された宵闇から渦を描き、更に生まれ出ようとするマスターデモンが蠢くその中心へと。鏡面にも似た氷の刃より撃ち放たれたそれは氷獄。凍て付く冬の檻だった。
 今まさに数を増やさんとしていた幼体とも呼べる具現化した夜の四肢が凍り、均衡を保てずにぐらりと巨躯を揺らして倒れ伏す。数の暴力で圧倒されようとしていた騎士達のすぐ傍で起こった一瞬の出来事が新たな援軍のものであると知れば、わあ、と大きな歓声が上がる。それは、彼等が皆終焉を破壊する者を知るが故の喝采だった。
「槍兵、前へ! 前へ!」
 波状のように広がる勇ましい声に、騎士達が気力を取り戻していくことを知る。
 なればと。飛来せし聖剣を掴み取ったマウザーが滑走の勢いをそのままに、ひとつ、ふたつと夜の爪を、顎を刎ね飛ばしていった。
「我等が英雄に遅れをとるな、今一度天槍を掲げよ! 我等が忠誠を捧げ給え!」
 天槍で胴を貫かれたマスターデモンに最期の足掻きさえ許すことはない。
 分身を失いよろめいたその身体に、氷柱が如き教皇の氷槍が深々と突き立てられた。

「それにしても……英雄と持て囃されるのは、いまだに慣れませんね」
 騎士達を鼓舞するためとは言えど。
 それが事実であったとしても――誰に届けるでもない呟きを溢すマウザーの表情は、常と変わらず淡々としたものであったけれど。
 透けるような白皙の目元は、ほんの少しだけ朱に染まっていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​


●蒼き恩寵
「ラウムも立派になったなあ」
 出会ったばかりの頃の少年は。森の外への期待に胸を膨らませ、何に対しても人一倍好奇心旺盛で――ああ、でも、きっと。恐らくは彼の根本は変わっていないのだろう。
 ルシエラ・アクアリンド(蒼穹・f38959)は懐かしさと年の離れた友人の成長を噛み締めるように呟いて、はらりと髪を撫でては抜ける風の中に血と硝煙の匂いを感じ取ってその歩みを一層早めた。
 戦地へと急ぐ傍で、血の色よりも濃い絆で結ばれた姉を想う少年の姿を思い起こす。
 『俺はまだ行けない。……だから。頼むよ』
 噛み殺すような嘆願。しかし少年の口振りはもう随分とこの地に訪れてはいないようなものであった。
 今は――会っていないのだろうか?
「行こう」
 答え合わせは後でいい。
 大切な友人の、大切な願いを叶えに。
「それに。私としても放っては置けないもの」
 守るために戦う。
 再び弓を引く理由は、それだけで充分だから。

 雨が降る。
 厚い闇に覆われた宙から降り注ぐは幾百をも超える矢弾の雨が形成する蒼の天蓋だった。
「キ、ギ――――」
 耳障りな金属同士の摩擦音のような声を上げてマスターデモンの群れの動きが軋んで鈍る。その一瞬の隙は劣勢にあった天槍騎士団達にとって慈雨が如き恩寵のように――否、正しく救いの一手となった。
「あなたは、」
 支隊長であろう男がルシエラを仰ぐ。
「援護に回ります。私が隙を作るから、その間に攻撃を」
「――恩に着る! 騎兵隊、第一第二、進め!」
 終わっていない。終わりはしない。
 傷を負った者も、昏冥に心を閉ざしかけた者も。皆一様に顔を上げ、追い風を受けたかのように戦意を取り戻していく。兜の隙間越しに重なった視線、その瞳に|終焉《おわり》は今や映ることはない。
「隊列を崩すな! 一斉に掛かれ、怯むな!」
「槍騎兵、構え――進め、進め、進めッッ!!」
 ルシエラの蒼き檻はマスターデモンの行動そのものを縛り止め、更なる夜闇を生み出すことを許しはしない。吹き荒ぶ旋風はやがて嵐となり、慌て惑い身体同士をぶつけ合いながら縺れてまろぶ巨躯の群れを、休み無く番えては放たれる矢が、体制を立て直した騎士団の天槍が一寸の迷いもなく貫いては退けていった。

 白亜の街は至る所を闇に侵食されてはいたが、その被害は他の区域よりも軽微なもの。
 二度もこの地を奪わせる訳にはいかない。
 この終焉も、壊してみせる。
「……それがきっと、私がここに居る意味だと思う」
 合流した騎士団と共に玉壁街をひた走りながら、ルシエラは天鵞絨が如きうつくしい翠の瞳を細めて火の手が上がる街並みを仰いだ。
 誰かを、何かを傷付けることは今でも苦手だ。それでもこの胸の中で息衝く人を慈しむ心は変わらない。可能性の開花を、成長を。ルシエラは決して諦めることはない。この愛しき命の営みを守ることが出来るならば、何度だって迷わずに走っていける。
 ――これは未だ序曲に過ぎぬ。
 けれど今。人々は確かに反撃へと転じ、力強い一歩を踏み出したのだ。
ルシエラ・アクアリンド
ラウムも立派になったなあなんて嬉しく思ったり
相変わらず家族を大切にしてるんだね
行こう、大切な友人の大切な願いを叶えに
それに私としても放っては置けないもの

連携は主に後方からになるけど
様子見つつ前に出る感じかな

初手生成ん攻撃織り込みのUC発動させ地の利を此方へと
ダークネスフォール自体を使わせない様にしたい
阻害がどれだけ効いたか確認した後
弓を用いて二回攻撃の一度目を囮にした攻撃や
矢弾の雨での手数を増やしつつの攻撃で
護りつつダメージを蓄積させる
隙をりつつその間に騎士団には攻撃をお願いしたいな
押される様なら心持攻撃寄りの動きで

周りにも留意して被害は必要最低限に抑える
それがきっと私がここに居る意味だと思う



●蒼き恩寵
「ラウムも立派になったなあ」
 出会ったばかりの頃の少年は。森の外への期待に胸を膨らませ、何に対しても人一倍好奇心旺盛で――ああ、でも、きっと。恐らくは彼の根本は変わっていないのだろう。
 ルシエラ・アクアリンド(蒼穹・f38959)は懐かしさと年の離れた友人の成長を噛み締めるように呟いて、はらりと髪を撫でては抜ける風の中に血と硝煙の匂いを感じ取ってその歩みを一層早めた。
 戦地へと急ぐ傍で、血の色よりも濃い絆で結ばれた姉を想う少年の姿を思い起こす。
 『俺はまだ行けない。……だから。頼むよ』
 噛み殺すような嘆願。しかし少年の口振りはもう随分とこの地に訪れてはいないようなものであった。
 今は――会っていないのだろうか?
「行こう」
 答え合わせは後でいい。
 大切な友人の、大切な願いを叶えに。
「それに。私としても放っては置けないもの」
 守るために戦う。
 再び弓を引く理由は、それだけで充分だから。

 雨が降る。
 厚い闇に覆われた宙から降り注ぐは幾百をも超える矢弾の雨が形成する蒼の天蓋だった。
「キ、ギ――――」
 耳障りな金属同士の摩擦音のような声を上げてマスターデモンの群れの動きが軋んで鈍る。その一瞬の隙は劣勢にあった天槍騎士団達にとって慈雨が如き恩寵のように――否、正しく救いの一手となった。
「あなたは、」
 支隊長であろう男がルシエラを仰ぐ。
「援護に回ります。私が隙を作るから、その間に攻撃を」
「――恩に着る! 騎兵隊、第一第二、進め!」
 終わっていない。終わりはしない。
 傷を負った者も、昏冥に心を閉ざしかけた者も。皆一様に顔を上げ、追い風を受けたかのように戦意を取り戻していく。兜の隙間越しに重なった視線、その瞳に終焉おわりは今や映ることはない。
「隊列を崩すな! 一斉に掛かれ、怯むな!」
「槍騎兵、構え――進め、進め、進めッッ!!」
 ルシエラの蒼き檻はマスターデモンの行動そのものを縛り止め、更なる夜闇を生み出すことを許しはしない。吹き荒ぶ旋風はやがて嵐となり、慌て惑い身体同士をぶつけ合いながら縺れてまろぶ巨躯の群れを、休み無く番えては放たれる矢が、体制を立て直した騎士団の天槍が一寸の迷いもなく貫いては退けていった。

 白亜の街は至る所を闇に侵食されてはいたが、その被害は他の区域よりも軽微なもの。
 二度もこの地を奪わせる訳にはいかない。
 この終焉も、壊してみせる。
「……それがきっと、私がここに居る意味だと思う」
 合流した騎士団と共に玉壁街をひた走りながら、ルシエラは天鵞絨が如きうつくしい翠の瞳を細めて火の手が上がる街並みを仰いだ。
 誰かを、何かを傷付けることは今でも苦手だ。それでもこの胸の中で息衝く人を慈しむ心は変わらない。可能性の開花を、成長を。ルシエラは決して諦めることはない。この愛しき命の営みを守ることが出来るならば、何度だって迷わずに走っていける。
 ――これは未だ序曲に過ぎぬ。
 けれど今。人々は確かに反撃へと転じ、力強い一歩を踏み出したのだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

マシュマローネ・アラモード


この国には手出しさせませんわ!
モワ!手数には手数……少しだけお時間いただきます!

UC、十二皇の擬権能、二皇招聘!
子の隠密(UC影の追跡者相当)!
戌の護衛(UC空より至る百億の星相当)!

召喚が完了するまで複数に分たれた分身を巻き込むように斥力(吹き飛ばし)で攻撃、騎士団の死角をカバーするように飛行して、上を取る利点をつぶしていきましょう!
召喚完了後は、一気に地上に重力剣と流星で落としていき、追跡者がトドメを刺す、ダメージを蓄積させて数が利点にならないことを教えて差し上げます!

モワ、騎士団のみなさん、追い詰めた敵の掃討をお願いしますわ、完全に滅ぼせば数は一気に削られるはずですわ!



●気高き者
 誰もが諦めていない。誰もが諦める事はない。
 皇女たるマシュマローネ・アラモード(第十二皇女『兎の皇女』・f38748)だからこそ理解出来る騎士団の高潔なる意志。彼方此方から火の手が上がる街並みを仰ぎ見て、マシュマローネは一度だけ悲しげにきゅっと唇を引き結び道を急ぐ。
 それぞれの祈りの強さを以てしても尚、影から影へと尽きる事なく沸き続けるマスターデモンの数の暴力に、騎士団は次第にじりじりと炙られるように弄ばれながら内へ内へと陣形が崩れ始めていた。

「ごめんあそばせ!」
 ぴょんと最前線に躍り出たマシュマローネの戦鎚がマスターデモンの群れを薙ぎ払う。
 傷付いた騎士の手を引いて笑みかける。突然の可憐な乱入者の姿に目を瞬かせた騎士達は、直ぐに彼女が戦う者であるのだと理解した。
「レディ、助力に感謝致します。……しかし、この場は余りにも危険だ。貴女一人でも、どうか――」
 女の声だった。
 自分達よりもマシュマローネを案ずるような言葉に、兎の皇女はにっこりと大輪の笑顔を見せる。
「モワ、わたくしこう見えてとってもおてんばなんです! 騎士団の皆さん。少しだけお時間作って頂けませんか?」
 そうすればきっと、道を切り拓いてみせるから。
 ね、と言葉を重ねるマシュマローネの声に応えが返る。戦鎚による一撃、その威力を見た女騎士が判断を下すのは迅速であった。
「……聞いたか、皆の者! 彼女を全霊でお守りしろ! 今は無理に倒さずとも良い、一人とて欠ける事無きように!」
 掲げられた天槍に重なるように、細波が如き声は何時しか激声となって地を揺るがせた。
 大丈夫。彼等は決して屈してはいない。すう、と大きく息を吸えば、マシュマローネは強く意識を研ぎ澄ませ始めた。
「――十二皇の擬権能、二皇招聘!」
 騎士団の包囲網は厚く、マスターデモンの猛攻はいずれもマシュマローネの召喚を遮ることが叶わない。
 故に、至る。迅速に、最速で。
 銀河の煌めきを宿した数え切れぬ程の権能者の影が禍つ夜を照らし出す。皇女がマスターデモンを指し示せば、瞳があるべき箇所が一斉にぎらりと強く輝き、無数の影はその瞬間成すべき事を忠実にこなす兵と成る。宙空より飛来せし流星が夜の群れに降り注ぎ、夜よりも昏き影に沈んだものは倒れた巨躯を決して逃しはしない。
 圧巻。その言葉しか浮かばぬ光景だった。
「モワ、騎士団のみなさん、追い詰めた敵の掃討をお願いしますわ!」
 前へと再び歩み出たマシュマローネが分身に気を取られていた夜の化身を煌めく影ごと斥力にて吹き飛ばせば、はっとした女騎士が戦旗を掲げて声を張った。
「……惚けている場合ではない! レディが作り出して下さった好機だ、畳み掛けろ!」
「おおッッ!!」
 関の声が其処彼処から上がり、勢いを増したマシュマローネとその分身、そして騎士団の天槍がマスターデモンの分身を待たずしてひとつ、またひとつと夜闇を打ち消していく。
「完全に滅ぼせば数は一気に削られるはずですわ! 最早数など悪魔達の利点にはなりません!」

 誰ひとりとて取り零してはいない。
 この場にいる全ての者達の祈りが、夜を退けるに至る瞬間であった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ディフ・クライン
友が助力を願うのならば
その家族の危機ならば
往かぬ道理がない
任せて

あれがデモン、具現化された夜
夜が敵になるなんて、と思わなくも無いが
もとより昏きものの領域か…

ならば貴方を喚ぶ――王よ

夜の世界より来たれり淪落せし騎士王
礼を尽くし、共に騎馬の馬上へ

騎士団と共に並び立ち
助力します
ここから戦線を押し上げましょう
静かに鼓舞するように告げて
合図と共に駆けだす

襲い掛かるものを手繰る氷結の力で縫い留め
王の剣で斬り騎馬の蹄で砕く
王の剣に斬れぬものなどないさ
それがたとえ昏き夜だろうとも
世界を宵で覆ってしまおうとも

夜と呼ばれた
宵の護り手と呼ばれた
王の剣は
オレという存在は
夜明けを齎す為に在る
止まることなく駆け抜けろ



●暗夜の覇者
 噛み締めた唇の隙間から溢れる嘆願を聞いた。
 怒り。悲しみ。火薬よりも強い焦燥と懊悩を抱いて、すべての感情を綯い交ぜにしたような表情で少年は請うた。『きょうだい』の危機に駆け付けられない。その痛みも悔しさも、ディフ・クライン(雪月夜・f05200)は今ならば理解することが出来た。
 たとえ真に理解することが出来なかったとしても、友が助力を願うのならば。その家族の危機ともなれば尚のこと。
「往かぬ道理がないよ。任せて」
「……あんがと」
 ――別れ際に擦れ違った少年の顔が今にも泣き出しそうな程に歪んでいたことには、気付かないふりをして。

 夜と共に生きてきた。
 宵を纏うて生きてきた。
 器たれと在ろうとしていた頃のディフにとって、夜は最も身近なもののひとつだった。
「あれがデモン、具現化された夜」
 マスターデモン。世界を闇夜に閉ざさんとする者。嘗て世界革命を実現する為に多くの悪魔憑きを真なる夜へと変じさせた者達――その、総称である。
 意志と知能を持ち、実態を持つそれはディフの愛する静寂とは似ても似つかぬ悍ましさで以て白亜の街を闇で今なお穢し続けていた。
 夜が敵になるなんて、と思わなくも無いけれど。
「もとより昏きものの領域か……。……ならば、貴方を喚ぼう」
 空気が凍る。
 周囲の温度ごと引き下げながら、ディフが紡ぐ陣は意味を成し異界へと繋がる門となる。
「――王よ」
 手袋に覆われた黒い指先が描き出した門の先から姿を現すは、夜の世界より出づる淪落せし騎士王。
 異なる世界の異なる夜。盟約により結ばれし者へ敬意を払いこうべを垂れたならば、ディフは騎馬の馬上へと乗り上げた。
 重い蹄の音に振り返った騎士の何人かが一瞬身構えたけれど、助力を告げるディフの声が届いたなら、おお、と猛る声が幾つも上がる。歴戦の騎士団は善戦を繰り広げていたものの、マスターデモンによる数の暴力は止まることを知らず彼等の多くには疲労の色が伺えた。
「ここから戦線を押し上げましょう」
「任されよ、異界の勇士よ! 『我らは描かん、偉大なる将の闘志をここに!』」
 静かな鼓舞に大きないらえがあった。
 紋章術師達が描き出すは山斬烈槍ランスブルグに名を残した名将の紋。
 鉄壁の守護を。不屈の信念を。
 ディフのもとに齎された名将の恩恵に、これならばとディフは王と共に戦乱の中心部へと迷いなく飛び込んだ。
 王とのよすがを結んでいる間、ディフは攻撃をすることが叶わない。それでもと、|心臓《コア》に負荷を掛けながらも襲い来る夜の爪を氷雪の鎖で縫い留めたならば、その先に続く漆黒の剣が一太刀にてマスターデモンの昏き闇を断ち切った。
 尚も影を伸ばし再生を試みる残滓を騎馬の蹄が容赦無く踏み潰す。漆黒の鎧の隙間から覗く緋に染まった人ならざるものの光は、意志を持つデモンの本能を揺らがせることが叶ったか。
 騎士団を背に死霊騎馬は蹄に砂煙を巻き上げながら猛進し、王は臆したものから纏めて切り伏せる。
 たとえ昏き夜そのものだったとしても、この刃に斬れぬものなどありはしない。

 夜と呼ばれた。
 宵の護り手と呼ばれた。
 迷いはするまい。故に止まる事はない。
 自分と云う存在は、王は、来たるべき夜明けを掴む為に在るのだから。

大成功 🔵​🔵​🔵​

フィオリーナ・フォルトナータ
わたくしも騎士の端くれです
ラウム様の想いに応えられるよう
力を尽くしましょう

状況を確認し、なるべく敵の多い所に向かいます
怪我をした方や狙われている方がいらっしゃるならば
積極的に庇いに入りつつ
破魔と浄化、光属性の力を込めた剣で
攻撃回数重視の燦華ノ剣舞にて攻撃を
速く動けばその分マスターデモンの狙いを引きつけられるはず
わたくしが敵を引きつけますから
天槍騎士団の皆様はその隙に攻撃を
敵の攻撃には盾受けとオーラ防御で守りを重ねながら
多少の負傷は気にせず攻め立てていきます

たとえ何があったとしても
夜は必ず明けるもの
破滅の終焉は必ずや壊してみせます
真なる夜の帳を払い
天槍騎士団の皆様と共に
新たな夜明けを導きましょう



●躍る玉沓
 白亜の街並みが、ひとつ、またひとつと瓦礫の世界へと塗り替えられようとしていた。
 夜闇が嘲笑うかのようにゆっくりと降り掛かるその様は、時間としてはほんの一瞬のことだったのかもしれない。周囲の空気ごと舐めずるように抉り取っていくマスターデモンの喉と思しき器官から、蛙を捻り潰したかのような下卑た嗤笑が響き渡っていた。
「……酷い」
 戦火の街を駆けるフィオリーナ・フォルトナータ(ローズマリー・f11550)の口から溢れたのは無意識の言葉。少しでもこの地を侵さんとする敵の多いところへと急ぐフィオリーナの脳裏に過ぎったのは、この地へ導いた少年の切実たる願いだった。
 (「わたくしも騎士の端くれ。その想いに応えられるよう、力を尽くしましょう」)
 今なお母国が為に戦い続ける騎士達の誓いを、誇りを穢されぬ為にも。
 ――鈍く蠢く闇が、直ぐそこまで迫ってきていた。

 武器を弾かれた騎士の手に握られた手綱が反動で強く引かれ、星霊グランスティードが悲鳴のような嘶きを上げて白き体を大きく仰け反らせる。無防備になったその姿勢に追撃を覚悟した騎士が更なる追撃を受ける事を確信して歯を食い縛った、その瞬間の事だった。
 鏘然とした響きと共に瞬きほどの間火花が散る。
 マスターデモンの兇刃を受け止めたるは、うつくしき金色を編み上げた柄から伸びる穢れなき刃。
 舞うが如く切り込んだ花影。オールド・ローズの豊かな髪が風に踊るその様は、自身の花弁の豊かさに耐えかねる大輪の薔薇のようだった。
「わたくしが敵を引きつけます、天槍騎士団の皆様はその隙に攻撃を」
 落馬を覚悟した騎士は、刹那見た光景を眩しい舞台を見ているのではないかと我が目を疑い気遅れしそうになるけれど、凛と耳に響いた声にそれが現実であるのだと直ぐに理解した。
 手綱を確りと握り直し、天槍を構えた騎士が吼える。
「感謝する、気高き花の騎士よ。――歩兵隊は方陣を崩すな! 騎兵隊は彼女を援護せよ!」
 沸き立つ歓声に、彼等の心が未だ脅威に屈してはいない事を知る。フィオリーナは騎士達の信へと応じるように淡く笑み、真なる夜へと変じたマスターデモンへと向き直った。
「たとえ何があったとしても、夜は必ず明けるもの。破滅の終焉は必ずや壊してみせます」
 思考を放棄した獣のようなその姿。無尽蔵に襲い来る鋭い牙を盾でいなし、魔を打ち砕く清浄なる刃で以て、ひとつ、ふたつと跳ねるように邪悪なる夜の動きを封じ込んでいく。
 それは絢爛なる剣舞。一際華やかに、それでいて鋭く。浄化の光を宿したフィオリーナの剣の舞踏は理性を失ったマスターデモンの注意を惹き付けるには十分過ぎる程だった。
 光に群がる羽虫が如く統率を失った猛攻は、然して『それ以外』の脅威に気を遣るには至らない。
 流麗なる花が散らされるよりも早く。体制を立て直した騎士団の幾百もの天槍が、マスターデモンの実を持った闇の体を何重にも貫き弾けさせていった。
 真なる夜の帷が少しずつ瓦解しながら後退していく。
 それは人々の抗う意志。生きようとする命の輝き。
 たとえその身が傷付こうとも、フィオリーナの舞は決して止まらない。
「――新たな夜明けを、ここに!」
 明けぬ夜はないのだと。何度でも証明してみせる。
 ひとの可能性を、わたくしは信じているから。

大成功 🔵​🔵​🔵​

リヴィ・ローランザルツ
血の繋がりとは不思議な物だと俺も良く考える
エルフの戒律問題は相当な物だったしな
力を貸すというと烏滸がましい感じがしてしまうから
手伝わせて貰う、で

騎士団と人々への援護射撃で連携
結界術との併用した六華の舞で周囲への被害を抑えつつ人々の避難援護
デモンへ行動の阻害が効いているうちに
アイスレイピア用い四重双撃発動分身と互いに死角を作りつつ
2回攻撃や属性攻撃等組み込み確実にダメージを
逆に見切りや軽業、空中機動、索敵を利用しつつ被弾を避け万一の時は生命力吸収

時折懐がもぞもぞするけどもう少し待っててな
お前も大事な家族なんだし、なんて小鳥に話かけ

彼の姉『も』きっと無事
…落ち着いたら改めて書物を見に来たい場所だな



●旋風のリゾルート
 色濃く胸に刻まれた、血よりも濃い絆がある。
 それはリヴィ・ローランザルツ(煌颯・f39603)の原点とも呼べるもの。
 山斬烈槍ランスブルグ。そして、永遠の森エルフヘイム。如何にしてふたつが交わり、そしてここへ導かれたのか。
 (「エルフの戒律問題は相当な物だったしな」)
 解は持ち得ぬ。けれど、彼の人格を成すに至った歪な『きょうだい』の在り方を、夜闇に否定させたくはなかった。
 直接面識のない彼らに、力を貸すなどと自分が口にするのは烏滸がましいような気がしてしまったから。
「手伝わせて貰う、で」
 告げられた言葉に目を丸くした少年は、泣き出しそうに顔を歪めて「なんだそりゃ」と不器用に笑った。
 それでいい。
 戦う理由など、その涙を溢させはしないと云うことだけで充分だ。

「うそよ、嘘……いや、いや……!」
 豪奢なドレスに身を包んだ貴族の令嬢が、花のかんばせを涙でくしゃくしゃに濡らしながら地に這い蹲っていた。覆い被さるようにその身が守ろうとしていたのは、彼女を庇ったのであろう、傷付き倒れたひとりの騎士であった。
 考えるよりも早く駆け出したリヴィの澄んだ刃が今まさに無慈悲にふたつの命を刈り取らんと伸ばされた夜の爪を弾き飛ばす。それと同時に浮かぶ光の陣が折り重なるように蹲る貴族の令嬢と騎士を包み込む。紡いだ魔力は僅かな間でも彼女らを守る結界となるだろう。
「ああ、……どうか……お願い、彼を、彼を助けて……!」
 枯れぬ涙を溢れさせながら嘆願する令嬢の声に、騎士にまだ息があると知る。
「怪我人だ、まだ生きている! ご婦人と負傷者の避難を、ここは俺が承る!」
 リヴィは咄嗟に常は余り荒げぬ声を張る。人々の救助に奔走する騎兵たちへと自らの所在を強く告げれば、程なくして蹄の音が近付いて。横目に馬に乗せ上げられる二人の姿を見てリヴィは安堵に目を細めた。
 憂いは拭い去られたと、拮抗状態にあるマスターデモンに向き直る。これ以上闇を拡大させてしまえばより深き侵食を許すことになる。一つでも多く、ここで押し留めなければ――それならば。
「其を、確実にする為に」
 リヴィの身体が陽炎のように揺らめいたかと思えば、完全に分離した分身がたん、と前に躍り出る。目前の敵が突如増殖した事に惑ったマスターデモンががむしゃらに爪を、牙を繰り出すも、揺らめく残影を捉えるには至らない。
 繰り出される刃と戒める風に翻弄されて、動きを乱された悪魔の喉笛をリヴィの剣魔を融合させた鋒が強く穿つ。抉り込む勢いをそのままに夜の闇を貫けば、砂の詰まった頭陀袋を思い切り叩きつけたような重い音を立てて崩れる夜が霧散する。

 彼の姉も、きっと無事。
「……落ち着いたら、改めて書物を見に来たい場所だな」
 なればこそ、被害を最小限に抑え込まなくては。
 まずはひとつと討ち取った残滓を見遣れば、先ほどから忙しなく懐でちいさなものが動く気配に数度瞬く。
「もう少し待っててな。お前も大事な家族なんだし」
 チュピ、とちいさな応えがあった。セラと名付けられたましろの桃花獣が渋々といった体で大人しくなる様子に微かに笑むと、未だ交戦中であろう戦火の立ち上る街の中心へとリヴィは再び駆け出した。

大成功 🔵​🔵​🔵​

キース・アルベルダ
ラウム、きっと君自身が一番此処に駆けつけたかったことだろうな――

この街はラウムの大切なもので溢れているのだろう
そう思うと俺にとっては初めて訪れる場所なのに、俺にとっても守るべき場所のように思えた
今は観光する暇も無いがエンドブレイカーの戦いが終えたその時は――ゆっくり案内して貰えたら嬉しいな

思い入れ深い場所、お姉さん、そして君が心を砕くものを守る為に。俺が守りたいと思うからこそ俺は闇を裂く剣となろう

交戦しながら手短に騎士団達へラウムの友人だと話して協力する事を伝える
俺は未だ無傷だから邪魔にならないよう最前線へ
悪魔の群れを見ると心が奮い立つ
ああ、この街を丸ごと宵闇で食らい尽くし!飲み込もうとする程の脅威的な闇だとしても恐れるに足りない!貴様らの闇など偽りの夜に過ぎないからな!
そう、本物の夜は怖いものなんかじゃない――俺は|友人《ラウム》が証明する夜を信じている。
その為にこの闇を切り裂いてみせるぞ!

そして彼らと共に守ろう、この街を!人を!

迅速に倒す事が目標
騎士を含む人命と書架と街の安全は最優先



●導きのアルビレオ
「ラウム、きっと君自身が一番此処に駆けつけたかったことだろうな――」
 蒼穹の瞳に憂いを乗せ、キース・アルベルダ(スローライフの旅人・f38871)は痛ましげに眉を顰めて喉を震わせた。
 キースとっては初めて訪れる場所だ。それでも血を滲ませる程に唇を噛み締めていた友の姿を思えば、自身にとっても守らねばならぬ場所のように思えた。
 本当ならばうつくしい白亜の街を何処か気恥ずかしげに案内していたかもしれない少年の姿を思い浮かべ、直ぐにその考えを打ち消すようにかぶりを振った。
 (「この戦に打ち勝ったなら、その時は……。……ゆっくり案内してくれたら嬉しい」)
 ゆかりのある場所。
 姉と慕う存在。
 君が心を砕くものを守る為に。
 お節介だと、君は視線を逸らしてしまうかもしれないけれど。
「俺が守りたいと思うから――だからこそ、」
 我が身はこの闇を裂く剣となろう。
 キースの胸から、一条の光が刃となって引き抜かれた。

 夥しい数の夜の群れに立ち向かうは胸に青き薔薇を掲げる騎士の一団。それは女王の天誓騎士団ではなく、この地を治める領主が抱える近衛騎士の精鋭達だった。
 最前線へと共に身を投げ打つキースの姿に、黒衣に身を包んだ紋章師が「誰か」と声を上げる。
「俺はラウムの……この地に縁ある者の友。義によってこの剣を預ける!」
 名を紡げば、黒衣の隙間から息を呑む音が僅かに響く。そうか、と。短く告げられた是は、彼らがキースにこの場を共に駆ける信に至ったものの証。多くを語らぬまま紋章師が宙空へと描くは偉大なる騎士の紋。それは勇壮たる者達の背を押す力となり、夜闇を切り拓く光の道となる。
 闇が大きく裂けた瞬間、預けられた信に応えるように誰より負傷の少ないキースが先陣を切って大きくマスターデモンの群れに踏み出した。
「ああ、この街を丸ごと宵闇で食らい尽くし! 飲み込もうとする程の脅威的な闇だとしても恐れるに足りない!」
 具現化された夜が光に群がる虫の如く湧き出ては、街の営みを、命そのものを不純物と見做して牙を剥く。
「貴様らの闇など偽りの夜に過ぎないことを、俺は知っている!」
 けれど、キースは無秩序な暴虐を許しはしない。
 舐めずる舌が街を、そして騎士達を抉り取ろうとするより早く。光の刃が夜の顎門を受け止め、振り抜く勢いのままに両断する。獅子奮迅が如き勇ましさに、騎士達も遅れを取らぬとばかりに鬨の声を上げながら各々の武器を振り上げマスターデモンの群れを押し止めていく。決して浅くない傷を負いながらも、彼らの目には消えぬ命の炎が燃え上がっていた。
「……そう、本物の夜は恐ろしいものなどではない」
 紋章師が僅かに口を開く。友よりも淡々とした声音の、女の声だ。けれどその言動は、ああ、友の言葉と瓜二つの――、
「ああ。……ああ、そうだとも! 俺は|友人《ラウム》が証明せんとする夜を信じている!」
 その為に。この偽りの夜闇を何度でも切り裂いて見せる。
「そして貴方達と共に守ろう――この街を! 人を!」
 光の一閃が真なる夜を騙る偽りの悪魔を、ひとつ、またひとつと斬り伏せていく。
 終わり無き闇との攻防の中、味方に誰一人として膝を折る者はいなかった。

 ギィイ――――…………!

 そうして、猟兵達は至る。
 階層を満たす程の鋭い断末魔が残響の果てに溶け、闇の切れ間から蒼き空の光が溢れ、街を、人々を照らし出す。
 一瞬の静寂が満ちて――次の瞬間、割れんばかりの凱歌が白亜の街に溢れた。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2023年09月08日


挿絵イラスト