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エンドブレイカーの戦い③〜ダルク金貨が欲しくて

#エンドブレイカー! #エンドブレイカーの戦い #戦神海峡アクスヘイム

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●君のお金は君だけのものなのさ!
「ああ……またやってしまった」
 男はポケットに、ぐっと押し込んだダルク金貨数枚のことを思う。
 もっと多くのダルク金貨をポケットに詰め込んでいたのは、昨日。
 その金貨はもう手元にない。酒代に飛んでいるのだ。
 勤め先の貴族の家で、偶に金貨を盗みポケットに詰め込んで、働いた分の金貨も更に貰う。
 恰幅のいい貴族は治安を守る事にご満悦で、雇った掃除係の召使いもどきのことなどきにかけてなどおるまい。
 男はずっとそう想っている。
 だが、また手が伸びてしまった。
 貴族の金貨に手を出して、毎日数枚ずつくすねて居ることをやめられない。
 これで一体何枚目だろう。
 100では足りない。もっと幕体な数、酒と飯に変えてしまった。
 どうしても豪華なものが、裕福に食べたいという湧き上がる欲求に負けた。
 ばれたらどうしよう。今更ながら後悔が生まれる。
 どうしたら、どうしたら……なやむ男の隣に、ととと、と軽い音が聞こえる。
 足音。気づいた時、視線がぶつかった。

「どうしたの?どうしたら?って願った?その願いを、僕が叶えてあげようか?」
「え?」
「今、考えちゃったでしょう?どうしたらいいかって。その願い、いい感じに叶えてあげちゃうよ!」
 だからちょっと、僕と契約してくれるよね!男の手の甲に、刻まれるのは契約完了の証。傷。
「気弱そうな君の願い、叶えてあげちゃうからさ!」

●上層階の貴族はなにも、知らぬまま
「故郷の風は、やはりいつも通り気持ちがいいね」
 少しだけ話しを聞いてね、とソウジ・ブレィブス(天鳴空啼狐・f00212)は笑う。
「此処は、戦神海峡アクスヘイム。おおよそ、軍事と交易の盛んな都市国家さ。都市国家の説明はおおよそを省くけれど、知らない人のために、少しだけ話すね」
 都市であり国家。
 その全容は、縦に積み上げる特殊な星霊建築を扱って溶接し、伸ばして継ぎ足して既に建てられた建築物の屋上に住める場所を継ぎ足してくらしている。
 人が増えればその分増える、この都市国家は全体として平和だ。
 身分が相応の下層、人が賑やかに行き来する中層、貴族や立場在る者たちが住まうという上層。
 ざっくりと、そんな地域的な傾向差がある。
 継ぎ足してつくりあげた新たな土地が増えれば小規模の領地が、領主が生まれる。
 立場在るものが生まれれば自警団もまた、生まれる。
「皆の言葉で言う"エンドブレイカー"の世界の住人は、基本的に自分の事は自分でなんとかする行動力が在るから……」
 どこへでも行くし、どこへでも探検に出かけてしまうの。
 小さな村の村長も領主だし、大きな街区を管理するのも領主。
 領主の仕事は土地を管理することと、治安を守ることだ。

「僕の予知は、此処から先の話だよ」
 上流貴族の住まう上層階。
 その一部にも黒い世界は生まれるもの。
 廃墟となり、放置された場所。
 そこへ住まうものは、危険な動物――あるいは、裕福層ではない犯罪に走ったもの。
「自分の繰り広げてる罪の重さに耐えかねて……逃げ出して。治安の行き届かない地域でね、願ってしまった男がいるんだ」
 男は貴族に仕える身。
 執事などという立場ではなく、末端だ。金銭を少しもらえる程度の、バイト、というやつ。
 日銭を稼げるだけで、それこそ立派。なのだが――。
「謝りたい。彼はそう願っていたようだけど……願いを叶えてあげると持ちかけた存在が、悪かった」
 強大なエリクシル――の使徒だ。
 願いを叶えるために、契約を強いるそんな破天荒さを持つ獣。
「獣は、願いを叶えるために"契約者となった男"を代償に、貴族の男を殺しに行こうとしているみたい。罪の始まりが死亡したならば、悩むことなんてないものね」
 エリクシル関連の存在だけあって、歪な形で願いを叶えようとする。
『該当する貴族の死を持って罪の意識を根本から無くしてやる』という願いを叶えようとする。
 契約者の体を乗っ取って、自分のかわりに"自らの手で"殺させようとするだろう。
 殺しが完遂されれば、男はさらに罪の意識に囚われる。救われるものは、なにもない。
「君たちには、貴族の邸宅に到達する前の男に接触――エリクシルの使徒を、討伐して欲しいだけど、強力な存在だから、対処が必要だろうけど……ここだけの話、何だけどさ。獣の弱点は、ずばり「願いの重複」。敵の弱点を突く準備を万端に整えれば、大丈夫さ。男はね、お金、ええとダルクという金貨が沢山ほしいんだ。働くんでもの、給料アップ、誰でも望むでしょ。男の願望は働く人が持つ感情によくにてるね、ええと……お金絡みのやつ」
 他のも考えられるだろう。
 今のは例えばの話で、実行の方法は君たちに任せるけれど、とソウジは笑って送り出す。
「男は獣が消えたりすれば、不安もきっと消えてちゃんと謝れる勇気が生まれるだろうし……」
 僕たちはほんの少しだけ、誰かの命といやーな未来を壊しに行くだけで、いいのさ。


タテガミ
 こんにちは、タテガミです。
 この依頼は【一章で完結する】戦争系のシナリオです。

 ●プレイングボーナス
 敵の弱点を突く準備を万端に整える。
 このシナリオの場合は、男の願いがブレるように仕向けること、と同意義です。

 ●ざっくりとした概要
 アクスヘイムのとある貴族と、その下で働く掃除係の話。
 場所的にはひと目のない静かな街道。
 ざっくりと分かれば良いことは、働く男はお金(ダルク)が実はたくさん欲しい。
 貴族は羽振りはいいけど、働き相応しか払っていません。
 日々の繰り返しを『敵に目をつけられて』、貴族をころしにいざいかん、というシーンから始まります。
 男の手には、人間一人を殺せそうないい感じのナイフを所持と思って貰って大丈夫。
 戦いに使われるのはフラグメント通り。敵は、基本的に「男」です。
 精神的に『敵』に言い含められているので、『殺しに行く事を目標としています』ので、止めようとする人にはナイフを向けてきます。その表情まで伴われているかは、わかりませんが。
 弱点をつくと、びっくりした『敵』が融合系の要素を解きます。隙が生まれます。
 男が正気に戻って、優柔不断になります。

 ●その他
 貴族:シナリオ上には出てきませんが、ほっとくと殺されます。

 ダルク金貨:エンドブレイカーの通貨。金貨のみ。
 おおよそ、1ダルクは100円ぐらいの価値です。だいたい。

 男:男の願い「貴族様に謝ったほうがいいだろうか」「隠したほうが良いだろうか」等など優柔不断。
 獣:敵の叶え方「殺してしまえば、罪を精算する必要はなくなるでしょ?」それ一択。

 ●その他2
 断章などはありません。場合により全採用が出来ないかもしれませんし、サポートさんを採用しての完結を目指す事もあるかもしれません。可能な範囲で頑張ります。ご留意いただけますと幸いです。
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第1章 ボス戦 『契約の使途『リグザイル』』

POW   :    さあ、僕達の敵をやっつけるんだ!
自身の【契約者の願望を歪めて暴走させること】を代償に、【英雄、あるいは魔女に変身させた契約者】を戦わせる。それは代償に比例した戦闘力を持ち、【契約者の寿命を削って発動する必殺技】で戦う。
SPD   :    特別に、神騎の力を貸してあげるね。
対象に【神剣を装備したエリクシルの天使】を憑依させる。対象は攻撃力が5倍になる代わり、攻撃の度に生命力を30%失うようになる。
WIZ   :    ちょっと君の身体を貸してもらうね。
【自身の契約者】と合体し、攻撃力を増加する【代わりに契約者の生命力の一部を奪う光の剣】と、レベルm以内の敵を自動追尾する【代わりに契約者の記憶の一部を奪う魔力弾】が使用可能になる。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠エスカ・ブランシェールです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

ディルティーノ・ラヴィヴィス
お金は良いよね、僕も大好き!
でも死んじゃったら、それはお金でも戻らないんだよ
今よりも、もーっとお金から遠ざかる。言いたい事も言えなくなる
それって嫌じゃない?僕は嫌だね!

お金って意外とね、死ななきゃどうにだってなるんだ
言うだけ言って、そこから考えてもいいんじゃないかな?
突き付けるならナイフじゃなくて言葉、ってね
ま、どうするかは任せるけどさ

僕を刺すならどうぞ。僕の右手は呪詛で痛覚はないんだ
でも寿命が削れるのはよくないね。【天地無双剣改-絶-】でナイフを掴んで飛ばしちゃおう
『本当の敵』が出てきたなら、男から遠ざけて遠慮なく野太刀でなぎ払おう
可愛くても駄目だよ。…エリクシル関連なら尚更ね



●会話の刃

 男は、ひたすらぶつぶつと小言を呟く。
 男の姿にふわり、と勇者のマントが羽織られる。
 男の願いは暴走中。優柔不断の感情は、既に良いように扱われていた。
 ぎゅ、と握り込むナイフは何人も殺す鋭利な煌めきを灯すだろう。
 それは、エリクシルの使徒が授けた願い達成に必要な形――さあ殺しに行こうじゃないか。
「………そうだ、殺せば。殺してしまえば所持金は」
「ぜーんぶまとめて俺のもの?うんうん、私腹を肥やすってそういうものだよねえ」
 建物の上から、声をかける誰かの姿――ディルティーノ・ラヴィヴィス(黄昏の獅子・f38911)は降り立つ。
 先へ進むのを拒むように、気さくに話しかけられる空気感を出すように。
 どうも、なんて手を上げて男の視線を覗き込むが正気の欠片も見て取れない。
「お金は良いよね、僕も好き!」
 でもさ、と声を書ける頃には男はディルティーノを敵と見たのか、ナイフを突き詰めんと構えている。
「でも死んじゃったら、それはお金でも戻らないんだよ?働き口もなくなっちゃうし………君は結局困るのだと思うけれど」
「今!解決策として殺してしまうべきと思います!」
『そうそう!その勢いだよ、やっちゃえやっちゃえ~!』
 囃し立てる口調がどこからともなく聞こえるが、後押しを受けた男は止まる事をやめることもない。
「まずは貴方を殺して、そして最終目標へと至ります!」

 ああ、このエリクシルの叶え方は厄介だな。
 ディルティーノは経験則から考える――心の弱い人の隙にうまいこと入り込んでいる。
 やり口がマスカレイドに近すぎる、悪意のない最善策を授けてくれちゃって。
「賞金首じゃないから、僕を殺してもお金は手に入らないよ?むしろ、今よりも、もーっとお金から遠ざかる。君を後押しするありがたい言葉を吐く誰かのせいで、君はもっと言いたい事も言えなくなるだろうね!」
 ナイフの軌道を半歩下がることで躱して、尚もディルティーノの語り続ける。
 神父が名残、語り諭し、揺さぶらんとしたのだが――『問題や障害をとりあえず殺して解決』の概念が強すぎるようだ。
「そんなのさあ――それって嫌じゃない?僕は嫌だね!」
 反撃するけど、仕方がないよね。
 そのまま殺せるかもしれない、なんて自信を持たれても困るし。
 その状態は、あまり良いことだと思わないんだ――力の代償は常に、命を削るだろうからさ。
「生きてるんだ、立場はあっても自由に言葉は言えなくちゃ!言わなくちゃ、息苦しいでしょ?」
「………そ、それはそうだが………」
 男が自身言葉で返事をした。瞬間、ディルティーノのニヤリと笑う。
 掛かった、とさえ思った。
「お金って意外とね、死ななきゃどうにだってなるんだ。生きてるだけで価値があるってねー!」
 言うだけ言って、話はそこから。
 まずは謝ったあとに全ては始まる。経験は何よりも輝かしい人生の価値だから。
「………ま、どうするかは任せるけどさ。突き付けるならナイフじゃなくて言葉、ってね。覚えておいて」
「う、うるさい!」
 ぐっ、と右手に突き刺さる刺突。男はハァ、と嬉しそうな声を零してディルティーノはただ、ため息混ざりに男へ囁く。
「僕の右手は呪詛で痛覚はないんだ」
 左の手に握るは白銀刃の野太刀、風の旅人は飄々と握り込み、そして刃を持つモノへと構える。
 人の命を奪わんとするのなら、奪われる覚悟を持って挑め。相手を見定めろ、これなるは歴戦の獅子なれば。
 男の胴体を峰打ち狙いでぶん殴り、吹っ飛ばす。
「よかったね、殺人未遂で」
 刺されたナイフを、|棘《ソーン》を纏った右手が掴む。天地無双剣改-絶-(テンチムソウケンカイ・ゼロ)。
 男は驚いたようにたたらを踏み、そして――投げ捨てられたナイフがカランとおちる時、変身が解ける。
「あ、あ……!」
『もう!油断しちゃだめじゃない!』
 ふわあ、と融合が解けた獣は姿を表し、契約で結ばれた男を嗜める。
「油断をしたのはどっちかな?」
 男は遠く。獣は近く。
 半径で言えば、ディルティーノの野太刀の届く距離。
「キミの助言は本当に悪魔の囁きだ、その分の痛みはキミも受けるべきだね」
 獣――『リグザイル』の反論を聞く前に、その体を野太刀が叩く。
 可愛い顔で何を言おうが駄目なものはダメだ。
 願いを叶えるエリクシル絡みなら、――尚更。

大成功 🔵​🔵​🔵​

禍神塚・鏡吾
技能:情報収集、世界知識、言いくるめ

優柔不断な人がもっと優柔不断になればそれで良いのですよね?
直接打撃を与えられないかもしれませんが、弱点を突く準備を整えましょう

光学迷彩で姿を隠して、横を歩きながら話しかけます
「殺人で捕まると、どれ位の刑罰になるのか知っていますか?」
予め情報収集して得たラッドシティの法知識を基に、罰金刑の額や禁錮刑の年数を挙げ、その損失が被害者の日当に換算してどれだけになるかを丁寧に説明します
「これはフェアな契約ではありません。解約をお勧めしますよ
第一、その獣は都合の悪いことを伏せています」
獣に照魔鏡を使います
「あなたの能力の代償で契約者が死んだら、あなたは気にしますか?」


マウザー・ハイネン
…この方は少々懲らしめられるべきでは?
そんな矮小な満たし方は自分の首を絞めるだけです。

一先ず貯蓄財産から一万ダルク程用立てます。
彼に遭遇したらダルク袋見せつつコイントスの賭けを申し出ましょうか。
貴方が五回連続で投げてその裏表を私が当てる、当てられなかった回数だけ千ダルク支払いますが、私が全て当てたら勝ち分をなかった事に。
盗んだ事を帳消しにできる金額ですよ?と誘います。
それを二回行い願いを謝罪ではなく賭けに勝ちたい、という方向に誘導。
二回目は視力で裏表見切り当て、負けたことをなかった事にしたいと願いを誘導。
敵が分離したら容赦なくUC発動し滑走加速、氷細剣で斬り捨てましょう。

※アドリブ絡み等お任せ



●神の剣は心を鋼とは至らせず

『まだだよ!諦めちゃダメ!も~特別だよ?』
 一度の妨害で諦める心を持っていなかったのは、『契約の使途【リグザイル】』の方だ。
『契約はまだ結んだままだもの、叶えなくっちゃね?叶えようね?』
 キラキラと、男の元へ獣から天使へと姿を変えたリグザイルが力の本質として翼をはやして憑依する。
 神剣を装備した神騎、見るものによっては神に使わされた使者とも思ったことだろう。
「………粛清を」
 男は確かに、呟いて。新たに与えられた剣を軽く振るいながら殺すべき貴族を目指して歩き続ける。
 その武器は、該当者を切り捨てるまで本質として振るわれない――。
 ――優柔不断な人が、もっと優柔不断になれば良いのですよね。
 光学迷彩で姿を隠し、禍神塚・鏡吾(魔法の鏡・f04789)は声を潜め、近づく。
 ターゲットは気づいていなどおるまい。気配を察知する力もまた、あるまい。
 彼の視線は、別の存在へと向いているから。
 だからこそ、横を歩くように声を殺し、囁きながらもう一人の"天の声"を|騙《語》る。
「殺人で捕まると、どれくらいの刑罰になるか知っていますか?」
『えっ?』
 予め収集したのは、この世界の――エンドブレイカー世界の常識。
 いや、とある都市国家、紫煙群塔ラッドシティの知識に目をつけた鏡吾。
 犯罪を取り締まるの騎士団なら当然アクスヘイムにもある。
 だが、警察内部の腐敗や犯罪を捜査し断罪する精鋭騎士が敷く法ことが、覿面だと考えた。これは、ラッドシティの懲罰騎士団が団則。
 綱紀粛正は、何より色濃いのだと調べ上げて知ったのだ。
「罰金刑。これだけでも相当な重さがあります。貴方が行った罪の金額を覚えていたとしても、その額から逆算された年月貴方の人生は、禁錮刑の年数の中に閉ざされる。故郷の土地ならまだ良いでしょう、私はとても有名な監獄の看守の皆々様とも話を通す自信がありますので、より長く、寄り強固な場所へ幽閉されることになるでしょうね」
 あれと、これと。
 さてあなたは幾らをお使いになったのですか?
 鏡吾の鏡は、キラリと輝く色を向けるだろう。
 照魔鏡(ショウマキョウ)――質問と共に投げかけられる輝き。
「人生の損失は金銭の損失より、最も重く――あなたは監獄から出ることが叶わなくなるかもしれませんね。それでも、そのナイフで殺害を狙いますか?」
「うっ……」
「これはフェアな契約ではありません。解約をお勧めしますよ。第一、その力を後押しする獣は、都合の悪いことをすべて伏せています」
 さあ答えなさい。
「あなたの能力の代償で契約者が死んだら、あなたは気にしますか?」

『そんなの、答えは簡単だよ。僕は気にしない。次の願いを探しに行くだけさ』
 男を操るように、獣は剣を振るわせる。
 精神負荷のようなダメージを確実に受けたエリクシルの使徒は未だ、離れようとしない。
 鏡吾の問いかけに抵抗し、振り回す剣の勢いに、嗚咽を薄く漏らす男の声。
 契約者の苦悶の声を無視しながら、願いを叶えるために外敵を払おうとするさまを、もうひとりのエンドブレイカーは、マウザー・ハイネン(霧氷荊の冠・f38913)はため息を付いて見た。
「………この方は、少々懲らしめられるべきでは?」
 いいですか、と声を鋭く、そして聞く耳持たずでも構わぬと語りかける。
「そんな矮小な満たし方は、いずれ自分の首を締めるだけです」
 早々に自主なさい。それが、恐らく最短の罪滅ぼしだ。
 マウザーは思うが、その言葉は飲み込んだ。
 説得よりも、"現物"で。
 アクエリオでとあるバルバ用呉服店を営んでいたこともある彼女は歴戦の証が懐より覗くのは、マウザー個人の貯蓄財産であり、手持ち金ともいう誰もが欲しがる丸々と太ったダルク袋。
「貴方様がどこの誰で、何を行うには興味がございませんがご覧ください。此処に、一万ダルクあります」
 ピィン、と弾く金貨は宙を舞う。
 音につられて、男は上を向いて眺める。
 ――音でも、これが"金貨"であるとわかるのでございますね。
 本能。そして、願望。
 どうしても、彼はこれが、誰の余裕物であろうと"欲しい"のだ。
 もらえるものなら、手に届くものなら、なんでもいい。
「勝負いたしましょう。単純な橋でございます」
 パシッ、と掴みコイントスの裏表を問う。
「私が、掴んだ金貨の上はうらおもて、どちらであると思いましょう」
『それをして、どうなるっていうんだい!いいから、キミの願いを叶えに行こうよ!』
「………お待ちを。貴方が五回連続で投げてその裏表を私が当てる、当てられなかった回数だけ千ダルク支払いますが、私が全て当てたら勝ち分をなかった事に」
「………ほんとうに?下さるのですか、賭けに勝ったなら」
「盗んだ事を帳消しに出来る額ですよ?こちらを収めて丸く収めることも可能でしょう」
「や、やる!今、握り込んだ金貨は表だ!」
「………お見事」
『ちょ、ちょっとぉ!?』
 マウザーが手を開けば、金貨は表を上に向けていた。これで男は一勝を得て、歩みを止める。
 男は獣の融合を振り払うように、集中する。お金欲しさ、それは何度も強欲で。
 綺麗なものではなかったけれど。しかし、自分の心に素直な姿は認めざる追えない。
「では、第二回、いきます」
 指で弾き飛ぶ金貨はくるくる回る。
「裏!」
 男の願いは、男への謝罪――を上回り、この勝負に、賭けに勝ちたいという形が上回る。
 天使のエリクシルが男から分離し、獣は反動で男に張り付いて憑依していた姿を顕す。
 まろびでたのは、諸悪が根源。囁くのは悪魔の口車。
 二回目のコイントスにマウザーは表、と呟いて駆け抜ける。
 コイントスの結果は――表。
 男は願う「こんな結末はありえない!勝ちたい!負けたことなどなかったことになれ」。
 そのどちらであろうとも、願いの上書きで獣は慌て、憑依が解けるというものだ。
 無防備今、その胴体を穿たん。

 星霊クリンが引く氷の滑走路を滑り、発動するのは封印の凍土(コキュートス)。
 悪路を滑り、加速した勢いでマウザーは切り結び捨てていく。
 氷が芸術の剣戟を、その白き体に薔薇が如き傷跡を遺して。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

キャスパー・クロス
付け入る隙がありすぎるのもまた面倒な物だねえ
ちょっと可哀想だけど、思考を追い詰めてみる作戦で行こうかな

事前にUC《移色は謐か》を発動

【空中浮遊】で上空から男の前にふわりと降り立ち
「貴方を止めに来たよ」と不敵な笑みで相対
その間もずっと地面から浮いて『滞空』しておく

貴方は主人を一人殺せば済むと思ってるみたいだけれど、本当にいいのかなぁ?
貴族って人との繋がりが強いから、殺されようものならすぐに噂は広まるだろうね
他の貴族たちも明日は我が身じゃ困るからねぇ。絶対犯人を捕まえろ!って躍起になるよね
そしたら貴方はまた追われる身。お金をくすねたのがバレるかどうかなんてレベルじゃないよねぇ
追手が来たらまた殺す?また罪が重くなるね。一生?それを一生続ける?


「ねえ。もうどうしようもないんじゃない?」


と【恐怖を与える】一言を、UCの効果で成功率を上げて放つ

願いがブレにブレまくって何を願えばいいのか分からなくなったらこっちのもの
融合が解けた獣に蹴撃からの【斬撃波】を【連続コンボ】でぶち当てて一気に仕留める!


フェルヴァイス・グロー
エリクシルと言う奴は好かんな。契約は契約。きちんと遂行すべきだろうに。(デビキン的良い子ちゃんな価値観を持ち出してくる悪魔)

どれ、まず【ディモラライズ・ボイス】にて戦う気力を奪うか。(【盗み攻撃】併用)
これで必殺技とやらを出せないようにするぞ

あとは男の願いをブレさせる、か。なら少し【誘惑】してみよう。

貴様は金をどうしても盗んでしまう。だから罪の意識に苛まれているのだろう? やってしまったと思うのだろう? ならばその金を盗もうとする気を今した様にワタシが奪ってやろうか? そうすればもう罪を重ねることはなくなるぞ? どうだ、ワタシに全て委ねる気は無いか?(囁く

こうして男に願わせ、エリクシルを外に出そうと思う。



●言葉は何よりも勁きものだから

 ふわり。建物の上より、眺める人物がある。
 空と、共にあるのだと――キャスパー・クロス(空色は雅やか・f38927)と心に想う。滞空時間は移ろう色と共に謐かに来たる。
「あーあ。付け入る隙がありすぎるのもまた面倒な物だねぇ」
 人生がエリクシルによって理不尽な侵略を受け、悪魔の囁きに乗せられて。
 今度は取り返しの付かない事に手を染めてしまうかもしれない。
 しかし、自分の意志で止める勇気もないと来た。
「ちょっと可哀想だけど……」
 良心がある証拠だ。
 ならばそこへ、語りかけ追い詰めてみようじゃないか。
 思考が揺らぎやすいのならば、揺らぎを与えてみるのだって一つの手段。

「エリクシルという奴は好かんな。契約は契約。きちんと遂行すべきだろうに」
 デビルキングワールド流に言うならば、きっちり完遂させてこそだ。
 ストロベリーブロンドを揺らし、白い衣装を身に纏う囁きの悪魔――フェルヴァイス・グロー(囁く白魔・f33734) の良い子な属性が見え隠れする。
「勤勉でないというのなら、促そう」
 どれ。自らの手で行わないというのなら、囁こう。
 汝が耳は、男の耳。契約は契約、叶えさせるまでは離れられないだろう?
 ほら、聞こえるだろう?聞かせてやろう。
 ディモラライズ・ボイス――フェルヴァイスは魔力を込めて囁く。
「楽になりたいだろう? 手放す手伝いをしてやろう」
 まずは悪魔より悪魔な愚者を手放す手伝いを。
 盗ませてもらおう。男の関心。
 獣との間に強引に結ばれているだろう契約意識。
「お前はどうしたい?そのまま願いに飲まれ続けるだけでいいのか?」
 誘惑が言葉は頭の中へどろりと入り込み、反芻される。
「どう、したい……」
「そうだ。どうしたい?貴様は金をどうしても盗んでしまう。だから罪に苛まれているのだろう?」
 それは既に起きたこと。
 使い倒した金貨は戻らない。変えようがない事実だ。
「やってしまったと思うのだろう? やっと、その意識が正しいのだと気がつけたのだろう?」
 そのまま耳を傾け給えよ。
 聞いているだけで、拒否する気持ちさえ足りない人間よ。
「ならばその金を盗もうとする気を今した様にワタシが奪ってやろうか? そうすればもう罪を重ねることはなくなるぞ? どうだ、ワタシに全て委ねる気は無いか?」
 フフフと耳元で囁いて、笑う。
 これこそ正しく悪魔の囁き。
『……だ、だめだよ!この男は僕の契約者なんだから!』
「これは手厳しい……しかし、ワタシの言葉は貴様に届いているな。ではどうする?そちらが疲れ果てるまで、ワタシは囁き続けよう。頭の中へ、耳の奥まで。心に染み渡り、手放さなければキツくなるばかりだ。さて、どれほどまでに耐えられようものか……」

 ふわり、と男の前に降り立ちキャスパーは友好的な微笑みを向けた。
 決してその足は地面を舐めず、ふわふわと浮かぶ彼女の視線は男のやや上をいく。
 見上げてご覧、声を届けるスカイランナーの声を。
「貴方を止めに来たよ」
 それは、どちらかといえば不敵な笑みで、反応したのは獣――リグザイルの方。
『邪魔はさせないよ!願いを叶えるまでは、彼は何だってするんだから。ね?そうでしょ?』
「あ……ぁ……」
 僕たちの敵だよ、やっつけよう!殺し尽くすんだ、罪自体をなくしてしまおう!
 皆倒して、君が正しいんだって、教えてあげちゃえば良いのさ!
 英雄が如き、振る舞いで。心を閉ざしたような顔で。
 手にした刃をキャスパーへと向けた。
「貴方は主人を一人殺せばいいと思ってるみたいだけれど。今は私達を含めて皆殺せばいい、って思っているのかな」
 首を狙う狙いすました一撃を、良く見て躱し、そして言葉を掛け続ける。
「本当にいいのかなぁ?貴方の手を、汚してしまって」
「……何?」
「罪の掃除のつもりかもしれないけど、貴族って人との繋がりが強いから……殺されようものならすーぐ噂は広まるだろうねえ」
 広がるとどうなる?わかるかな。
 キャスパーの言葉は重さを増して、男の気持ちを揺さぶる。
「?罪はねずみ算式に増えていく?」
「そうだねー、ネズミの小型バルバ、ラットマンみたいにすごい勢いで増えていくかも」
「……それ、は……」
「他の貴族たちも明日は我が身じゃ困るからねぇ。絶対犯人を捕まえろ!って躍起になるよね。自警団まで動くだろうし、どんどん罪は重くなる。そしたらさ、貴方……」
 男の視線は泳いでいる。罪の重さに意識が向いて、これを行って本当に良いのかと葛藤が引き起こっている。
 手が止まる。足が止まる。獣の言葉さえ、男の耳には入っていない。
 考える。自分の望みを。
 手にかける――その手は何を。
「そしたら貴方はまた追われる身。お金をくすねたのがバレるかどうかなんてレベルじゃないよねぇ」
 相手が来たら皆殺す?
 追手が来たら、すぐ殺す?
 殺して、殺して、罪を重ねて。
「どんどん罪が重くなるね。一生?それを一生続ける?」
 追いかけてきた者を殺し尽くして、一生、エリクシルの奴隷でいるつもり?
 単純に謝って、少しだけ痛い目を自分が負う方が――きっと軽く済むのに。
「ねえ。もうどうしようもないんじゃない?」

 恐怖を与え続ける一言は、重さを増して。
 男はカランとナイフを取りこぼす。
 膝が震え、足が震え。罪から逃げたい男は、罪を犯す事は願いの外に飛び出した。
「……や、いやだ。そんなの」

 耐えられない。
 願いがぶれて、自分が犯した小さな罪に溺れる。
「殺したくない!お、俺は……」
『ちょっとちょっと落ち着いてよ!君は、やれば出来るんだよ!殺し尽くすだけで願いは叶えられるんだから!』
「でも、何を、何にすがれば……」
 契約者の命を削る技も、男の願いがブレれば役には立たない。
 獣は男との融合が解け、その姿を猟兵達の前へ晒すのみ。
『……あっ』
 何に願うべきかわからなくなったのなら。
 キャスパーはニコリと微笑んで、素早い蹴撃から放つ、衝撃波が胴体を叩いた。
 スカイランナーは止まらない。風に乗り、空中殺法が如き、衝撃波のラッシュは獣の悲鳴さえかき消していく。
『ねえ願ってよ。僕は願いを、力を、僕は僕は……』
「往生際が悪いねぇ、あんたの力は借りないって言ってるんだよ!」
 連続回転蹴りが最後の一蹴が、決まった時。
 獣は宝石が如き、煌めきを放ち砕けるように塵となって消えていく。
「あんたがしたいようにするといいのさ、今ならきっと」

 その罪は、軽い方で済むのだから。





 ――尚、男はその後貴族のもとに出頭し、謝罪したという。
 貴族は、怒りはしたが――男との間柄を解消しなかった。
「使った分は、自らの働きで払って返せ。分かったな。勤勉な態度でいたならば、今度一杯、行きつけの高い酒を奢ってやろう」
 勤勉な者を好むのだと、へらへらと笑い、貴族はただ、寛大な心で受け止めたのだという。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2023年09月08日


挿絵イラスト