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ドキッ! 水着だらけのデッドヒート・ネオ四駆レース

#アスリートアース #その他スポーツ #ネオ四駆レース #安藤|姉弟《シブリング》 #伊上模型店

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●夏休みが終わろうともまだまだ暑いよ

「夏休みが終わるってのにまだ暑いよな。この暑さで延期されてたネオ四駆の四大レースのひとつ、グレート・サマー・カップレースの開催が遂に決まったぜ!」
 様々な世界で連日にわたり記録的猛暑が観測されている中、そんな外界とは縁がないとばかりに涼し気なグリモアベース内にウィル・グラマン(電脳モンスターテイマー・f30811)の興奮を隠しきれない声が叫んだ。如何にも小学生好みな透明の水着ケースの中にはタオルや水中ゴーグルの他、彼の|愛車《ネオ四駆》であるベアキャットGがあった。前回の猟兵たちによる激戦に感化されたのか、走るのが苦手と公言したウィルも今回はレースに参加するといった様子が見て取れよう。

「オレ様のベアキャットGでぶっちぎってやるぜ! って言いたいところだけどよ。まーたダークリーガーが邪魔する予知を視ちまったから、そうも言ってられねぇんだよ」
 ちぇっと口を尖らせながら悪態付いている様子からして、ウィルは相当参加したかったに違いない。前回のグレート・スプリング・カップレース同様に観客席からの応援となろうが、それなら彼の分まで猟兵たちが自らのマシンと共に走る勇姿で魅せて楽しませてやろう。

「えーと、何だったかな……そうそう、今回のダークリーガーは幽霊なんだよ。それもネオ四駆以前のポケ四駆時代に不慮の事故で無くなった、伝説的なアスリートの幽霊なんだぜ!」
 ネオ四駆へ音声での指示を送るスマートウォッチ型端末の|GP《グランプリ》ウォッチを始めとした最新技術によってネオ四駆は自分の意思に従い自由自在に制御できるが、その前身となったポケ四駆はそうでなかった。一度スイッチを入れれば何かにぶつかるまで止まることはなく、止まろうとすればマシントラブルか電池切れかである。
 そんな旧来のポケ四駆が隆盛した時代に有名な女流ポケ四レーサーが居た。数多くのレース首位を飾った彼女はポケ四駆とタイアップしていた児童誌以外にもTVや新聞にも度々報道され、一時代の華を飾ったネオ四レーサーと言えども知らぬ者は居ない所謂レジェンドレーサーである。しかし、皮肉にもその名を後世にまで残すこととなったのは|不幸な事故《交通事故》でこの世から亡くなったからであった。その原因は今も謎に包まれたままで、様々な憶測や流言がインターネット状の電子掲示板や動画サイトなどで語られており今日まで伝わっている次第である。

「まさか夜ならともかく真っ昼間に幽霊が走っているなんて誰も想像が付かねぇぜ。名前は……あー、なんつったかな。顔は覚えたけど、名前までは覚えきれなかったんだよなー……ま、いっか! どうせ優勝しちまえば良い訳なんだし」
 にゃはははと笑うウィルであるが、身も蓋もない言い方をすれば確かに最終的に勝てば良いだけの話だ。既に草ネオ四駆レースで打ち負かしたネオ四駆レーサーもダークリーガーの配下となっている上、なまじ生前は有名人であったとすればば当日のレース会場では『実は生きていたレジェンドレーサー』として黒山の人集りが自然と出来るので問題ないだろう。

「と、その前にこの前はアスレチックな山登り山下りだったけど、今回走って貰うグレート・サマー・カップレースは木陰なんか一切ない長い砂浜も走る熱に弱いネオ四駆にとって過酷なレースになるぜ。現地協力者だった双子のネオ四レーサー『安藤姉弟』もレース前の調整で一足早い調整をしてるみてぇだから、まずはレース本番に備えたチューニングを済ませておくと良いぜ」
 前回のオフロードは剥き出しの山肌であったので特に問題なかったが、今回のオフロードは砂浜である。何も対処しなければタイヤが砂に取られてしまう上にサンサンとまだまだ肌を突き刺すように強い夏の日差しがネオ四駆のCPUやモーターを熱で苦しめるのは必定。これらの対策を万全としなければ、ダークリーガーとの勝負はおろかレースの完走すら怪しいといったところだ。

「んじゃま、準備が整ったんなら早速送るぜ。忘れ物はねぇか? まぁ、何か忘れても向こうの店でパーツとか買えばいいしな。にゃはははは!」
 言ってる本人が一番忘れ物をしそうな気もするが、それは言わぬが花だろう。
 現実と見間違える|電脳空間《グリモア》が猟兵たちを包み込み、一同はグレート・サマー・カップレースが開催される会場近くのリゾート地へと転送されたのであった。


ノーマッド
 ドーモ、ノーマッドです。
 お盆を過ぎればこの涼しくなるだろうと思いきや全く一向に暑さが収まるどころかより暑くなれば、夏も冬も外仕事な身なので厳しすぎると言った次第でございます。
 幸いながら夜も朝も虫の鳴き声が鳴り響くまで涼しくなりましたので、ようやく再稼働を果たしてネオ四駆レースシナリオ第二弾をお送りします。

●ネオ四駆レースとは?
 ネオポケット四駆、通称『ネオ四駆』と呼ばれるバッテリーと模型用モーターで走行する小型マシンと併走してゴールを目指す小型自動車模型競技です。
 小型チップが搭載されている事で専用スマートウォッチ『GPウオッチ』を介した音声操縦が可能であり、従来の小型自動車模型に無かったよりテクニカルな挙動も実現できる爆走兄弟な超ハイテクスポーツなのだ!

 参考先の前回シナリオ
 https://tw6.jp/scenario/show?scenario_id=47657


 第一章は【冒険】フラグメントとなります。
 専用フラグメントになっています。
 現地協力者のネオ四レーサーに接触したりマシンと組み立てたりしながら、初めてネオ四駆を走られる方はルールを学びつつ一緒にマシンのセッティングをしていきましょう。

 第二章は【集団戦】フラグメントとなります。
 シナリオで扱うスポーツのルールに則り、ダーク化チームと試合レースが開始されます。徒党を組んで妨害してくる彼らのマシンを、思う存分とぶち抜いてやりましょう。

 第三章は【ボス戦】フラグメントとなります。
 試合はいよいよクライマックスを迎え、ダークリーガーとのレースを迎えます。試合に勝利すると選手たちのダーク化は解除され、ダークリーガーも消滅します。誰よりも早くチェッカーフラッグゴールに到達するべく、ネオ四駆レースを征して勝利を飾りましょう。

 二章と三章につきましては、状況が進展した際に逐次情報の開示を行いますので、こちらもご了承ください。


 それでは、まだまだ暑い残暑の暑さにも負けない皆様の熱いプレイングをお待ちしています。
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第1章 冒険 『その他スポーツを練習しよう』

POW   :    体当たりで果敢にチャレンジする

SPD   :    器用にコツを掴みながら練習する

WIZ   :    ルールや戦術の理解を深める

👑7
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 燦々と照りつける太陽の日差しは、季節が晩夏に差し掛かったのにも関わらず猟兵たちの肌を突き刺すように暑い。アスリートの超人スポーツで熱戦に沸き立つ観客席に太陽も熱狂したのか、各地で38度以上の気温が観測されたアスリートアースであったが、コレでも涼しくなった方となれば当面は真夏日続きであろう。だが、それも夏のスポーツシーズンがまだまだ続くとなれば、それはそれでまだ夏を楽しめると前向きに考えれなくもない。
 元にグレート・サマー・カップレースの開催地である都内より電車で二時間弱ほど離れた、県有数の観光地である大荒井町も酷暑が収まっても夏日続きとなれば避暑を求めてやってくる観光客で大いに賑わいを見せている。休日も相まって北関東最大のリゾート地である大洗井サンビーチ海水浴場は大勢の家族連れや観光客らによってすっかり埋まっているが、遠巻きに見れば海水浴場の片隅で建築シートに覆われた櫓のようなものが一望できよう。

「おーい! こっちだ、こっち!!」
 猟兵たちの耳に聞き慣れた声が入り、振り返れば今回も協力者を買って出た双子のネオ四レーサーの片割れ……安藤・豪児少年がすっかり日で焼けた肌を見せつけるかのように手を振りながらこちらへと向かってくる。その後ろに目を送れば、同じくすっかりと肌が焼けた赤髪の少女であって双子の姉……安藤・烈華がスポーティな水着姿で追いかけて来るのが分かるだろう。

「もう、いくら待ってても来ないんだから探しに来たんだからね!」
 頬を膨らませながらぷりぷりと怒っている烈華の姿に何のこっちゃと首を傾げる猟兵たちであったが、彼らの話を聞けば連絡役であるグリモア猟兵に『目印』を伝えていたそうだ。グリモアベースでの話ではそのことを全くもって伝えていなかったので、はっきりと言えば彼が言い忘れてしまっただけの伝達ミスである。
 しかし、そのお陰でか設営途中のグレート・サマー・カップレース会場を遠巻きながら確認できたので良しとしておこう。ふたりに案内されるまま猟兵たちが付いていけば、焼きそばの食欲がそそられる香りが流れてくる海の家や出店が並び立つ一角に、見慣れた文字が描かれたタープテントがあった。

 ──|伊上《イガミ》模型店。
 そう、前回のネオ四駆教室を国立競技場のスペースで開いていた模型店の名前だ。

「いらっしゃーい……ああ、烈華ちゃんに豪児くんお疲れ様。暑い中大変だったでしょ? 今麦茶出すから……じゅんぺー!」
「はいはい、遠くから声が聞こえてたからもう準備してるよ母さん」
 レオタード水着の上からテントと同じく店名が描かれたエプロンを掛けている|伊上《イガミ》・|遥子《ヨーコ》が快活な声でテントの奥へと声をやると、そんな彼女とは正反対のダウナー気味な声が帰ってくる。
 麦茶が注がれた紙コップを両手に持ちながら顔を上げた、特徴的な丸眼鏡をかけている少年の名は、|伊上《イガミ》・|淳平《ジュンペイ》。伊上模型店の一人息子であって、安藤姉弟とは同じ小学校に通う同級生という間柄だ。口ひげが特徴的な模型店の店主である父親の姿が見えないのを尋ねれば、親父さんも付いて行きたかったそうなのだが店を休む訳にも行かず来れなかったとのこと。そんな訳で、まだ学校が夏休み期間中なだけあって現地に泊まり込みしている安藤姉弟の保護者として遥子ママが同伴しており、その息子の淳平くんも手伝いにかこつけて特訓という名の海水浴へと付いてきたそうだ。

「淳平くん、ありがとう!」
「んぐっ、んぐっ……かーっ! 生き返るぜ!! そういや、淳平もグレート・サマー・カップレースに出るんだよな?」
「勿論だよ。グレート・スプリング・カップレースはレーサーネオ四駆とかフルカウルネオ四駆しか出場できなかったけど、砂地がコースのグレート・サマー・カップレースはダートレースが得意なワイルドネオ四駆が出場できるからね」
 説明しよう!
 一口にネオ四駆と言っても様々な種類があって、一般的なF1マシン然めいたフォルムのネオ四駆らはレーサーネオ四駆と呼ばれている。これらはスピードを追求して空気抵抗を限りなく減らした結果オンロードのコースを疾走るに特化されているが、その反対でオフロードコースを走るのに特化したネオ四駆こそワイルドネオ四駆なのである。
 まず外見的な特徴となれば、真っ先に目に行くのが巨大なタイヤと大型カウルだろう。内部のギアボックスも泥水や砂利が入り込まれない処置がされており、サスペンション回りも通常のネオ四駆よりも強化されていれば、正に|荒れ地《ダート》を走るに特化されたネオ四駆だ。タイヤの経も通常のネオ四駆より大型なのでセッティング次第ではオンロードコースでも中々な速度を発揮するのであるが、重心が低いレーサーネオ四駆とは異なって高いためか、カーブを曲がる際や空気抵抗の影響が大きく受けやすいのでバランスを崩して転倒しやすいという欠点がある。
 そのため、一般的にワイルドネオ四駆は上級者向けとされており、公式大会の場でもその巨大さが仇となって出場ができないレギュレーション的な面も相まってユーザーの数はそう多くない。しかし、砂地がコースとなるグレート・サマー・カップレースにおいてはレギュレーションが認められているだけあって、ここぞとばかりにワイルドネオ四駆愛好家らが出場するのだ。そのひとりが伊上模型店の一人息子、伊上・淳平なのだ。

「この日のために『ギガントフット』の仕上げたんだ……烈華と豪児のキャリヴァーに負けない走りを見せてあげるよ!」
「へっ、その勝負受けてやってやるぜ! ……の、その前に」
「えへへ………ミラージュとブレイブのオフロード用プログラミング設定、お願い!」
 改めて説明しよう!
 ネオ四駆とは走れば走れるだけ学習し、経験値が積み重なっていく要素がある。だが、それにも|限界《容量》というものがあって、何かの特徴を伸ばすのであれば何かの特徴を消して上書きせねばならないのだ。今回の例で言えばオンロードに全振り、もしくはオンロードとオフロードのどちらでも走れる経験を積み込んだネオ四駆をオフロードに全振りするとなると、相当な経験の上書きと時間が要される。
 そのため、モーターにも色んな設定がある通りにレースの種類に応じて最適化されたネオ四駆の頭脳たる|CPU《チップ》も発売されているのであるが、ネオ四駆のグレードアップパーツの中でも群を抜いて結構高いのだ。救済措置としてパソコン経由でプログラミングし直しての上書き手段もあるにはあるのだが、安藤姉弟は競技者としてはまさに超人スポーツの申し子とも言える稀有な素養があっても、こういうことに関してはからっきしである。なので、プログラミング設定が得意である|淳平少年《メカニックマン》にお願いして設定し直して貰うのが大半であった。

「ま、いいけどさー……お互いにライバルなんだから、そういうのに気を付けた方が良いと思うよ?」
「大丈夫! 淳平くんはそんなズルをしないって信じてるから!」
「そうだとも! 淳平は文句を言っても、何だかんだちゃんと仕上げてくれるし!」
 性格は真逆だけどそういうお人好しさは双子だよなと言わんばかりにため息を深く吐いて、淳平はふたりのマシンを再設定するためにノートパソコンを取り出す。

「うんうん、淳平はそんなことをしない子だって|母《かあ》ちゃんが一番知ってるからね。さ、父ちゃんを店に残してきたんだし、母ちゃんも商売に専念しないとね。レーサーネオ四駆が砂地でも上手く走るようになるグレードアップパーツに、砂地を上手く走れるワイルドネオ四駆も色々揃えているよ。猟兵さんたちにはお安くしてあげるから、ジャンジャン買って行ってね?」
 一児の母とは思えない若々しい美貌である遥子ママだが、通常のネオ四駆では不利な砂地でのレースとだけあってな商売人の抜け目さは否めない。しかし、渡りに船とはこのことでもあるので、ここを拠点としてあと数日で開かれることになるグレート・サマー・カップレースに向けた調整を万全に仕上げたいところだ。
 海の家周辺は海水浴客らでごった返しているが、レース会場の反対側に向かえば遊泳禁止区域でゴツゴツとした岩場が点在する砂浜が続いている。そこでセッティングしたネオ四駆の試走をすれば、まず海水浴客らの邪魔にはならない筈だ。かくして、猟兵たちの短い夏の思い出が始まりを告げたのであった。
鳥居・祐介(サポート)
『ユウ・ウインドルーラーです、よ、よろしくです』
 人間のマジックナイト×竜騎士、14歳の男です。
 普段の口調は「男性的(ボク、~さん、です、ます、でしょう、でしょうか?)」、家族には「丁寧(私、あなた、~さん、です、ます、でしょう、ですか?)」です。

 ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し、多少の怪我は厭わず積極的に行動します。他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。また、例え依頼の成功のためでも、公序良俗に反する行動はしません。
 あとはおまかせ。よろしくおねがいします!



「わぁ、ポケ四駆だ。懐かしいなぁ」
 アルダワ魔法学園に通うマジックナイトの少年、鳥居・祐介(「風魔神に憑かれし者・f05359)はネオ四駆のキットを手に取りながら目を輝かせるの無理はない。
 ユウ・ウインドルーラーとも名乗っている彼の出身はUDCアース、つまり同じ平行世界で文化はそう大きく変わらないアース系世界の出身者なのだ。自分も小学生だった頃はポケ四駆遊びをやっている友人が居たのだが、この頃からいつもおどおどとした気弱な性格だったので見ている専門だった。いつか自分もポケ四駆をとは思っていたが、そうこうしている内に別のホビーが流行ると友人たちの興味もそちらに移り遊べず仕舞いであった。
 だが、そういう苦い記憶もまた当時を懐かしむ記憶である。あの頃は周りにやってる人が居なくなったので遊ぼうにも遊べなかったが、ここアスリートアースではネオ四駆レースという競技があるので定期的に走れる。そうであれば、過去の後悔は今ここで果たすというのは自然な流れであったろう。

「たくさんあるから迷うけど……うん、これに決めた」
 祐介が手に取ったのは、ピックアップめいたシャシーのワイルドネオ四駆『オーバーナイトパンプキン』。如何にも不整地を走破する頑丈な無骨さが少年の心に突き刺さったのだろう。それに彼がこれを選んだのにはもうひとつの理由があった。

『なーに、それ?』
「これかい? これはね、ユーベルコードで今作ってみた|蒸気《スチーム》エンジンさ」
 自分のマシンを調整中の烈華が興味津々そうに覗き込むが、それもそのはずで魔導機関車、飛行船、蒸気船が行き交う、蒸気と魔法が発達した蒸気文明の自作GUPである。ネオ四駆は蓄電されたバッテリーとモーター、それと自律した動きを可能とするCPUによって走者と共に走行する科学技術の結晶だ。それをアルダワ流にアレンジしてカスタムしようと祐介は行っているのだ。
 ただいくら小型化されているとは言え蒸気エンジンを積むとなると、それなりのスペースを取ってしまう。空気抵抗を限りなく減らして平たいボディであるレーサーネオ四駆では到底収まりきれないのであれば、いくらか空間に余裕があるワイルドネオ四駆という選択に至ったという次第である。

「ほら見て。圧力調整で水蒸気を放出すると、飾りでしかないマフラーから出るんだよ」
 今はまだ自分が思い描いている機能がその通りに動くかどうかを実証する段階の仮組み状態だが、バッテリースペースに収まっている魔導蒸気タンクの安全弁が動作するとパイプを通して水蒸気の白煙が高らかな音とともに排出された。

『わぁ! 本当のクルマみたい!!』
「あとはそうだね……。蒸気で回したモーターから発電して|CPU《チップ》に給電させる仕組みを取らないと……でも、その前に名前をつけないとね」
 ──フレスヴェルクJr.。
 アルダワ学園へ転移した際に取り憑かれた風を司る魔神の名を冠しているが、中々手を貸してくれない彼も自分の名前から取られたと知れば何だかんだ言うが照れるかもしれない。そんな自身の相棒が取るであろう反応を楽しみながら、万全な状態へと仕上げるために祐介はグレート・サマー・カップレースに挑む準備を進めるのであった。

成功 🔵​🔵​🔴​

吐院・ぐるめ(サポート)
 人間の「ぐるぐるバット」アスリート×シャーマン、17歳の女です。
 普段の口調は「キャプテン(私、あなた、~さん、だ、だね、だろう、だよね?)」、真剣な時は蒼白「(私、あなた、~さん、言い捨て)」です。

 ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し、多少の怪我は厭わず積極的に行動します。他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。また、例え依頼の成功のためでも、公序良俗に反する行動はしません。
 あとはおまかせ。よろしくおねがいします!



「これが噂に名高いネオ四駆なのね」
 照りつける真夏の日差しで溢れ出る汗を拭いながら、吐院・ぐるめ(虹色の彼方・f39773)は興味津々そうにネオ四駆のキットを眺める。近所の子供たちが安全な路上で草ネオ四駆レースをやっている風景を通学や下校の途中によく見かけはしたが、いざ実際に自分もネオ四駆を走らせるとなると何処か親近感が湧いてくる。ダークリーガーとの戦いが終わったら、自分もネオ四レーサーであると子どもたちに打ち明けてレースを楽しむのもまた一興だろう。
 そんな訳で無造作に彼女が手に取ったキットは、ワイルドネオ四駆ではなくレーサーネオ四駆の『レインボー・サイクロン』。通学カバンのスペースを取らずに済むのであればという判断であった。

「でも、このままだと砂にタイヤが取られて進みそうにもありませんし、ダートレース用のパーツを買って……っと」
 基本的に整地されたオンロードを走るのがノーマルなレーサーネオ四駆である。そうなればまず手を付けるのはタイヤからだろう。

『それなら、このピンスパイクタイヤにトレッドタイヤがお勧めだよ』
 どれにしようか悩むぐるめの姿を察してか、はたまた商売っ気を出してか遥子が砂にタイヤが取られずに進めるGUPを勧めだす。片やタイヤから無数の突起がせりだしており、片や横斜めに溝が深く刻まれている。どちらも砂にタイヤが取られる心配はないのは確かだが、どれが自分とマシンとの相性が良いのか再び悩みだすぐるめ。どちらも小学生のお小遣いで買える良心的価格なお値段であれば、どちらも買ってしまえの精神は高校生ならではの財布の強さであろう。

「まずはこのピンスパイクタイヤから確かめてみましょう。その前に……」
『え、バットなんか取り出してどーするんだよ?』
 組み上がったレインボー・サイクロンを試走しようとしたぐるめが取り出したるは、頑丈そうな野球用バットだ。到底ネオ四駆レースとは関係ない道具を取り出されて豪児は目を丸くさせてしまうが、その答えはすぐ彼女から返される。

「ふふん、こうするのよ。レッツ・ゴー・サイクローン!!」
 説明しよう!
 吐院・ぐるめはドマイナなその他スポーツ『ぐるぐるバット』のチーム『バット・サイクロン』のキャプテンである!
 ぐるぐるバットの伝道師たる彼女としては、ネオ四駆レースの大規模レースであるグレート・サマー・カップレースはぐるぐるバットの宣伝も果たせる良い機会とも捉えていたのだ。とは言え、郷に入れば郷に従えの精神で他のスポーツ大会自体をぐるぐるバットにする訳にはいかない……となれば、自分だけぐるぐるバットをすれば良いのだ!!
 つまり、スタート直前にネオ四駆を手にしながらバットを軸にぐるぐると回転してスタートするというプレイスタイル。それこそがぐるぐるバット式ネオ四駆レース。もし流行ったら、ぐるぐるバット普及の足がかりになろう。

『すげー! なんだか分からねぇけど、ぐるめ姉ちゃんからすげぇ気迫が感じれるぜ!』
 だが、ここで問題が生じる。
 ぐるぐるバットの第一人者であるぐるめであるが、その三半規管はKUSOZAKOレベル。まだ10回転にも満たないレベルでバットをから手を離せば、目は白目を剥きかけており額からは脂汗が滲んでいる。

「嗚呼、見える……見えるわ。私の意識が虹の彼方へと旅立って……赤い回転流の神が、私の体を植物に……うぷっ!?」


 ・・・・・・・ジ

 盛大に🌈を噴き出したぐるめの上空をトンボらしいモノが通り過ぎる。それが不幸中の幸いとなり、周囲の人々の視線は季節外れのトンボへと移ったので貰い🌈という自体は避けられたのだ。

『まだまだあっちぃけど、もうすぐ秋かぁ……って、うわぁ!? ぐるめ姉ちゃんどうしたんだよ!?』
 ピクピクと痙攣しながら仰向けとなっているぐるめの姿を目の当たりとした豪児が駆け寄るが、吐き散らされた🌈の痕跡など彼の眼中には入らない。
 かくしてぐるぐるバット式ネオ四駆レースを果たすべく、ぐるめのぐるぐるバット強化合宿が幕を開けたのであった。

成功 🔵​🔵​🔴​

メディア・フィール
POW選択
プレイング改変・アドリブOK
他PCとの絡みOK

前回の大会で使ったワンダラー・A・飛翔は真っ白に燃え尽きてしまったので、仕方がないので新マシンを探します。しかし、元々機動力と軽快さを旨とする戦い方が得意なので、重量調整による不整地踏破を得意とするワイルドネオ四駆のレギュレーションには苦戦するでしょう。結局、安藤姉弟に頼ってしまうことになってしまうかもしれません。

「さすがに燃え尽きちゃった前の車体は使えないからな……新しいのを探さないと」
「これ……かな? ワイルド・|A《アームズ》?」
「よし、最後に前の機体のワンダラー・A・|飛翔《ウィング》が残してくれたこのパーツをつけよう!」



「はぁ……ボクのワンダラー・A・|飛翔《ウィング》……」

 ──鉄の車軸は萎え
   鉄の車輪は力を失い
   溶けた車体は二度と風を切ることはない
   風の戦士は死んだのだ
   狼も死んだ 獅子も死んだ
   心に風を持つ者は逝ってしまった……

 普段なら活気に満ちている筈のスク水姿なメディア・フィール(人間の|姫《おうじ》武闘勇者・f37585)であるが、彼女がここまで気を落としている正体は『後悔』だ。
 前回のグレート・スプリング・カップレースの終盤、いい大人な迷惑ダークリーガーのネオ四レーサーとの勝負に勝つためとは言え、自分のマシンはユーベルコードに耐えきれず文字通り真っ白に燃え尽きてしまったのだ。フレームはおろか基盤さえメディアの焔によって融解しており、奇跡的に残った部品といえばネオ四駆の頭脳であり魂でもある|CPU《チップ》ぐらいだ。幸いあの後で安藤兄弟からそれさえ残っていればワンダラー・A・|飛翔《ウィング》は復活できるとフォローを受けたものの、まだ彼女の胸にはぽっかりとした喪失感が残ったまま。

「さすがに燃え尽きちゃった前の車体は使えないからな……新しいのを探さないと」
 そうだ。またあの時みたいにワンダラー・Aを手にとって、また組み上げてしまえば……。幾度も屈辱にまみれては歯を噛み締めて何度も立ち上がってきた。今回もそうすれば……そう考えて少しは気を持ち直したメディアであったが、ここでホビー・スポーツならではの新たな壁にぶち当たってしまうのであった。

『ごめ~ん、メディアちゃん。ワンダラー・Aのキット、レースが終わったら物凄く人気になっちゃって売れ切れちゃったの』
「ええーっ!?」
 そう、人気に火がついてしまった商品の在庫問題……メディアの勇姿は全国ネットで生中継された後、ポケ四駆ブームを支えた往年のキットが飛ぶように売れに売れてしまったのだ。メーカーや問屋の在庫は枯渇済みで、インターネットの通販サイトやオークションでは高値での取引も行われているまでの人気っぷりは誇らしいのであるが、こうして実害が出てしまうのは正直困ってしまう。
 そこで仕方なく遥子ママの勧めで様々な試走用のネオ四駆を走らせてみたのだが、やはりどうも違っている。重量調整によって不整地踏破を得意とするワイルドネオ四駆主体のレギュレーションもあるが、機動力と軽快さを旨とする戦い方が得意とするメディアと相性が良いマシンは中々見つからない。
 あるとすれば、やはりメディアにはワンダラー・Aしか考えられない。

『気持ちは分かるけどよぉ……』
『ワンダラー・A・|飛翔《ウィング》を復活させるためのキットがなかったらねぇ……』
 この事態には、流石の安藤姉弟もお手上げと言った次第だ。
 だが、忘れていないだろうか?
 新たな助っ人として、今回は新たにメカニックのネオ四レーサーが加わったことを。

『話は聞かせて貰ったけどさ。だったら、一から組み上げて行けば良いんじゃない?』
「でも、キットが無いと……」
 淳平からの思わぬ一言にハッとする烈華と豪児とは対象的に、メディアはまだイマイチ要領を掴めていない様子に彼は深い溜め息を吐きながらあるものを取り出す。

『だからさ、キットを使わずにワンダラー・A・|飛翔《ウィング》を復活させるんだよ。こんなこともあろうかって持ってきたジャンクパーツを使ってさ』
 説明しよう!
 ネオ四駆はプラスチックモデルと電子工作を掛け合わせたハイテクホビーであるが、血も滲むような企業努力の賜物によって小学生のお小遣いでも何とか買える値段となっている。
 が、ただ走らせるだけならいざ知らず、ネオ四駆と並走してゴールを目指す超人スポーツであるネオ四駆レースとなれば話は別となってくる。何せ旧来のレーンが切られたポケ四駆とは違って、一度で走る距離はキロ単位なのだ。そうなってくれば各パーツの損耗は極めて激しく、一回のネオ四駆レースを走っただけでパーツを使い潰すことは至って当然でもある。
 だが、新しい商売とはそんな隙間需要を見つけて興る物。伊上模型店の一人息子である淳平は友達から壊れてしまったネオ四駆を引き取ったり、もしくはフリーマーケットで使い潰されたり要らなくなったネオ四駆を格安で買ってはバラして供給するというビジネスを展開したのだ。
 一見すると錆びでくすんでしまったローラーもペカールで磨き上げれば新品同様の輝きを放ち、回転が悪くなったベアリングローラーも蓋を開封してグリスを入れ直せばまだまだ使える。新品のGUPもそれなりの量を買うとなると小学生のお小遣いでは厳しいところであるが、淳平が整備した再生品とも言えるジャンクパーツはそれより遥かに格安である。安藤姉弟も使い潰しがちなトレーニング用パーツの淳平商店から度々お買い上げしているお得意様であり、ふたりの活動を支えている縁の下の力持ちという訳だ。

「そうか! こういう作り方もあったんだ」
 そうと決まれば、ワンダラー・A系統のパーツを見つけ出しながら組み立てる作業にメディアは取り掛かる。前回の反省を活かしてシャシーは競技用GUPで耐熱性にも優れた強化シャシーを選び、ワンダラー・A・|飛翔《ウィング》のセッティングを思い出しながら再生パーツを次々に組み込んでいく。

『あー……ワンダラー・Aのカウルは無かったか』
『じゃあさ、これなんてどうだ?』
『ワイルド・|A《アームズ》ね。ワンダラー・Aとはお互いにライバルだったけど、レース中にふたつともバトルレーサーから壊されたと思ったらお互いに手を取り合ってニコイチしたマシンで勝ったのを再現するつもりね?』
『へへ、あたりぃ♪』
 そうして三人の協力を得て、メディアの新たなるマシンが組み上がっていく。

「最後にこれを組み込んで……」
 ワンダラー・A・|飛翔《ウィング》が唯一遺した|CPU《チップ》を組み込み、メディアは新たな|翼《マシン》を得た。
 ワンダラー・Aの直進性とワイルド・|A《アームズ》の安定性を兼ね備えた自作マシン……『ワンダラー・|A《アームズ》・|飛翔《ウィング》』だ!

「今度はキミを燃え尽かせることなんてさせはしない……。よろしくだよ、ワンダラー・|A《アームズ》・|飛翔《ウィング》!」
 ネオ四レーサーとして復活したメディアに応えるように、ワンダラー・|A《アームズ》・|飛翔《ウィング》は動作確認用の軽快な電子音を奏でたのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

クロエ・ボーヴォワール(サポート)
「カネならありますわよ~!」
◆口調
・一人称はわたくし、二人称はあなた様。典型的なお嬢様風
◆性質・特技
・好奇心旺盛にして仕事熱心
・実はゲテモノ料理好き
◆行動傾向
・ボーヴォワール社の持て余した圧倒的カネの力にモノを言わせ、万事解決を目指す
・法すらカネで買い取る自由奔放すぎる性格であるが、ノブレスオブリージュの精神に則り他者の為ならば才と財を惜しまない(混沌/善)
・猟兵としての活動は異世界を股にかけたボーヴォワール社の販路開拓と考えており隙あらば自社製品を宣伝し、「実演販売」に抜かりはない
・教養として体得したシンフォニアとしての技術をビジネス話術にも応用する
・細かい仕事は老執事セバスチャンに一任



「これがネオ四駆。噂はかねがねお聞きしていましたが、マシンと共にゴールを目指すレース……なんと高貴なスポーツですわ」
 如何にもお嬢様な水着姿であるクロエ・ボーヴォワール(ボーヴォワール財閥総裁令嬢・f35113)の高笑いがビーチに響き渡る。好奇心旺盛のクロエ嬢にとってはネオ四駆というホビースポーツは非常に興味深く、そして自分が最も好きな金の匂いがプンプンとしてくるものだ。
 つまり、これは売れる。この世界における宮田模型が販売なりメディア展開を行っているが、流行り物に付き物である|類似品《パチモノ》が出回るのは時間の問題だ。たがそれを阻んでいるのは、ネオ四駆の自律性を生み出す|CPU《チップ》を始めとした数々の機構で特許が絡んでくるからだ。
 だが、アルダワ魔法学園のインフラを担う「ボーヴォワール魔導蒸気技術(株)」の次期総裁筆頭候補の手にかかれば、その壁など取り払うのは容易い。つまり、同じ構造でも同じ技術を使わなければ良いのだ。

「前回のグレート・スプリング・カップレースの録画放送は非常に参考になりましてよ。そこから我がボーヴォワール社が巨額の研究開発費を投じて開発した、魔導蒸気技術で走るアルダワ製ネオ四駆……『ノーブルアックス』を実演するにはもってこいですわ。おーっほっほっほ!」
 太陽の光を反射する24金の塗装が施されたゴールドフレームを搭載したボーヴォワール社が開発したネオ四駆『ノーブルアックス』を自慢気に持ちながら、クロエはより高らかに甲高い笑い声をビーチに響かせる。一見するとただのレーサーネオ四駆であるが内部はアルダワ魔導蒸気技術の結晶となっており、例え砂地だろうが泥濘だろうが完全走破できるボーヴォワール社の特許が盛り込まれている。

「ふふ、見物人も集まってきましたわね。セバスチャンめには我がボーヴォワール社を大会スポンサーとしての協賛金、新商品であるノーブルアックス宣伝のCM広告、その他諸々をお任せしておりますわ。あとは……このわたくしめが有終の美をノーブルアックスと共に収めれば、万事目標達成でしてよ。おーっほっほっほ!」
 しかし、いくら完璧な仕上がりとは言え、ネオ四駆レースは何が起きるか分からない。お嬢様は勝利を確信しても足元を掬われべからず、そんな学んだ帝王学の一節を思い出しつつも、クロエは物見遊山で集まりだした群衆の視線を一身に受けながらノーブルアックスの電源スイッチを入れる。

「さぁ、ノーブルアックス。レース本番前のデモンストレーションですわ。貴方の走りで見物人を思う存分と魅せなさい!」
 果たしてノーブルアックスに搭載された機能とは何か?
 砂地のハンデをものともせずに力強く走るマシンの姿を追いながら、上機嫌なクロエは再び高らかな笑い声を砂浜に響かせたのであった。

成功 🔵​🔵​🔴​

百地・モユル(サポート)
熱血で好奇心旺盛
本が好きな小学生

正義感が強く困っている人は見過ごせない

UDCアース出身
技能の世界知識でほかの世界のこともわかるかも
あとボクが持ってる技能で
使えるのは…
情報収集、コミュ力、時間稼ぎ、救助活動、学習力、暗視、聞き耳あたりかな?
それに勇気と覚悟と気合い!

このあたりの技能を使って調べられることは調べたいし

もし力仕事とかで必要ならトリニティエンハンスやストロンゲストモードなどのパワーアップ系UCも使うよ

今日はここの世界か…どの世界も、ボクたちがちょっとずつ良くしていければいいね

アドリブ絡み歓迎



「いっけー! バーニングダッシュ!!」
『なんの! ぶち抜くぜ、ブレイブ!!』
 セッティングが完了した安藤・豪児のマシン、ブレイブキャリヴァーと並走するのは百地・モユル(ももも・f03218)のマシン『バーニングダッシュ』。
 今はまだ慣らしの段階で、砂地での走りを自動学習するネオ四駆に覚え込ませるための謂わばトレーニングであるのだが、お互いに熱血なふたりが走れば自ずとこうなる。
 だが、対象的に違うのは生身の身体かサイボーグ化された機械の身体かどうかだ。一般常識ではサイボーグの方は速いといった印象であるが、豪児少年はモユルの速さに迫るものである。これもアスリートアースの人間ならではな超人性がなせる技であって、図らずしもそのことがモユルにとって同年代の子と思い切って遊べるということに繋がった。
 今まで自分側が手加減しなければだったのが、心の行くまで思い切って猟兵以外の子とかけっこ勝負することができる。このことがモユルの闘争心に火が付き、慣らし運転だったのがガチンコ勝負にエスカレートした次第である。

「バーニング・ダッシュ、折返しの岩だ! まっがれー!!」
 中間の折返しとなる目印の岩を自身のネオ四駆と一緒に曲がれば、輪だちを残した道のりを戻るだけ。ゴール地点には豪児の双子の姉である安藤・烈華と伊上親子らが立っており、猛スピードで戻ってくるふたりへと声援を送っていた。

『豪児、あともうちょっとよ!』
『モユルくーん、ファイト~♪』
 だが、互いに走っているふたりの耳には足元でモーター音を唸らせて疾走するマシンしか入っていなかった。砂地へのレース用にセッティングしたレーサーネオ四駆同士は、抜いては抜かれての繰り返しをするだけ。決定的な差を作ることなくふたりはゴールをし、判定は審判を務める淳平少年の手に委ねられた。

「はぁはぁ……ボクのバーニングダッシュでしょ!?」
『ぜーぜー……俺のブレイブだろ!? なぁ、淳平!!』
『そうがっつくなって。えぇっと……映像判定の結果は、モユルのバーニングダッシュだな』
 ほらよと、淳平は詰め寄るモユルと豪児にビデオ撮影した動画をコマ送り再生してみせる。一見すると同着なのだが、よく見るとモユルのバーニングダッシュが9mmボールベアリングローラー分の差でゴールをしている。僅かな差であるが勝ちは勝ち、このレースの勝者はモユルであった。

「うわぁい!」
『っくしょー! 後でリペンジレースするぞ!!』
『はいはい。レースに熱中するのも良いけど、適度に休まなきゃ駄目だよ? スイカを冷やしているけど、休憩がてらにスイカ割りするかい?』
 やいのやいのと騒がしかったモユルと豪児のふたりは遥子ママの口から出た『スイカ割り』の言葉を聞くや否や、今までの騒がしさがピタリと止まる。

「スイカ割り!? うんうん、やる!!」
『ひゃっほい! スイカ割りだぁ!!』
 簡単だなぁと呆れ顔となってしまっている烈華と淳平の視線を他所に、モユルと豪児はスイカ割りに目を輝かせながら再勝負は一旦お預けとした。
 そういった感じの日が幾度なく続き、遂にグレート・サマー・カップレース当日を迎えるのであった。

成功 🔵​🔵​🔴​




第2章 集団戦 『燃焼系アスリート』

POW   :    できますできます、あなたならできますッ!
【熱い視線】が命中した敵に、「【ユーベルコードを封印して競技に熱中したい】」という激しい衝動を付与する。
SPD   :    もっと熱くなりましょうよッ!
【見せれば見せるほど熱く激るアスリート魂】を見せた対象全員に「【もっと熱くなりましょうよッ!】」と命令する。見せている間、命令を破った対象は【耐久力】が半減する。
WIZ   :    どうしてそこで諦めるんですかそこでッ?!
対象への質問と共に、【拳や口、または競技に使用している道具】から【レベル×1体の火の玉マスコット】を召喚する。満足な答えを得るまで、レベル×1体の火の玉マスコットは対象を【殴打、および熱疲労の状態異常の付与】で攻撃する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


「うぉおお!! 来たぜ来たぜ、グレート・サマー・カップレースだぁ!!」
 残暑とは言え真夏日のように照りつける日差しに負けないとばかりに、熱血少年の豪児が熱く叫ぶ。本来ならここで双子の姉である烈華や冷静な淳平が暑苦しいだろうがとツッコミを入れるところなのだが、そんな気を起こさないまでに暑い。

「あんた、本当に元気ねぇ……」
 数日の強化合宿であったが、すっかりと全身がこんがり焼けている豪児に対し、愛用のレーサーキャップを被って肌に刺さるまでに強烈な日差しを凌いでいる烈華。

「だって豪児だし……夏の馬鹿騒ぎって言うじゃん」
 淳平もビーチジャケットを羽織って日差し対策をしており、こうも暑ければ熱中症対策をしなければ予選はおろか本番のレースまで体力が保たないのが本音だ。

『メーラメラメラ! 良いレース日和メラよ~!』
 既に暑さで参っている二人が見やれば、何やらメラメラと燃えているネオ四レーサーが居る。一瞬熱中症で幻覚でも見ているかと錯覚を覚えてしまうが、アレは実際に闘争心が炎となって燃えているダーク化済みのアスリート『燃焼系アスリート』である。
 大方、草ネオ四駆レースで打ち負かされたネオ四駆レーサーの成れの果てであろうが、彼らが居ると言うことは今回予知されたダークリーガーも既に現地入りしていると見て良いだろう。問題は有名選手だが過去の話なので誰かが『あの選手は……?』と訝しまない限り分からないという点だが、いずれ決勝に上がれば自ずと相まみえる事となる。
 猟兵らが今できるのは、上から注がれる暑い日差しとそれによって熱せられた砂浜から伝わる熱にヘコタれず、自らのマシン共々予選を突破することだけだ。

「ようこそネオ四レーサーの諸君、グレート・サマー・カップレースへ!! 大会当日に記録的な猛暑日和となってしまったが、ネオ四駆レース実況兼司会をするネオ四駆侍ことネオ四ウォーリアーが君たちが挑戦するコースの説明をするぞー!!」
 レースを主催する宮田模型広報であるネオ四ウォーリアーは、すっかりと日に焼けた己の肉体美を見せつけるようにポージングして予選レースを説明する。

「予選レースは、浜辺のビーチフラッグレースだ! ルールは単純明快、砂浜に立てられたゴールラインの旗を目指して短距離ダッシュをするだけ。だが、普段走っているオンラインやオフラインと違った細かい砂にタイヤが取られてしまう砂浜ならではの環境をどう攻略し、自分自身も砂に足を取られないようにしながらネオ四躯への指示が重要になってくるぞ!!」
 早い話が、ビーチの花形競技『ビーチフラッグス』を掛けたコースと言うわけだ。
 違うのは旗の奪い合いではなく、それを目指してマシン共々にゴールを目指す点だけ。
 ネオ四ウォーリアーが説明したように簡単そうだが、タイヤが砂にハマったりこの炎天下で熱ダレするというアクシデントが大番狂わせを起こす可能性もあるということだ。
 特に予選で相手するダーク化済みアスリートの多くは『燃焼系アスリート』。自身の身体から発せられる熱による妨害行為をやってくるのは想像が容易いので、これも併せて対策を講じねば予選突破は厳しいだろう。

「一体誰がグレート・サマー・カップレースの予選を突破するのか!? それではレースを開始するぜーッ!!」
風峰・水羽(サポート)
 人間のトライアスリート×運動会マスター、21歳の女です。
 普段の口調は「女性的(私、あなた、~さん、なの、よ、なのね、なのよね?)」、暗いところでは「無口(わたし、あなた、呼び捨て、ね、わ、~よ、~の?)」です。

 ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し、多少の怪我は厭わず積極的に行動します。他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。また、例え依頼の成功のためでも、公序良俗に反する行動はしません。
 あとはおまかせ。よろしくおねがいします!



「これがネオ四駆の大会……」
 たかがホビースポーツ、されどホビースポーツ。
 会場となった大荒井町サンビーチ海水浴場は、海水浴のシーズンが越えたというのにも関わらず黒山の人だかりに溢れていた。
 その熱気に風峰・水羽(人間のトライアスリート・f37852)は圧巻されてしまうが、クルマの玩具と併走して走るというスポーツがこうも人気であるのかとも肌で実感する。

『メラメラメラ~! 初めてのレースで緊張してるめら?』
 立てられた|旗《ゴール》を目指して砂浜を一直線に走る大会予選のビーチフラッグレース。くじの結果、第一レースを走ることとなった水羽の隣で燃焼系アスリートが彼女の顔を覗き込んだ。
 メラメラと燃えたぎる熱く激るアスリート魂の顕れとも言えよう燃えるダーク化アスリートであるが、ネオ四レーサーとは物事の解決をネオ四駆の勝敗で解決するもの。その掟はダーク化しても揺らぐものではなく、自身のマシン『バーニング・イフリータ』を万全な状態と整備済みだ。

「え、ええ……」
『できますできます、あなたならできるめらッ! 緊張せず走るめら!』
 なんとも有り難いアドバイスであるが、既に勝負は始まっている。
 確かに勝負はネオ四駆の競争が全てであるが、GPウォッチを通して指示を送る走者への精神的な揺さぶりは別の話だ。
 ダーク化したとは言え勝敗はレースで決める不文律を破らない範疇で、燃焼系アスリートは自らの熱い視線を通したユーベルコード攻撃を開始していると言って過言ではない。

「緊張せずとも……そうよね!」
 まさかユーベルコードを与えられているとも知らず、水羽は自らのマシン『トライスピリット』を手にした指に力を込める。そうしたやり取りをしていると、レース開始のアナウンスが鳴って両者は位置につく。

「『ゴー!!』」
 クラウチングスタートに近いフォームで電源スイッチを入れて車輪が高速回転しているネオ四駆を手放すと同時に、スタートの合図の号令が叫ばれる。両者のネオ四駆は細かい砂を四輪のタイヤから舞い上げながら走り出し、その姿を追って予選レースに挑む水着姿なネオ四レーサーたちも跳躍して駆け出す。

(ふっふっふ……ユーベルコードさえ封じてしまえば……)
 確かに燃焼系アスリートの方法は正しく、生命の埒外たる存在の猟兵とは言えユーベルコードが封じられれば、だ。
 だが、それは浅はかな考えであったと彼女は思い知らされることとなる。

「トライスピリット、行っけぇえええッ!!」
『うぇええぇっ!?』
 そう、ユーベルコードの発露と言えよう爆発のオーラに包まれた水羽とトライスピリットが一気に躍り出たのだ。
 どうしてと狼狽えた燃焼系アスリートであるが、確かに彼女のユーベルコードは効力を発揮したが……封じたのは玉入れ競技力のみに過ぎない。仮に徒競走の競技力も封じられていたとしても、水羽のどんな時でも諦めないアスリート魂によって凌駕されたかも知れないが。

「ゴォォォォル! 予選レース一位は、終始ぶっちぎりだったトライスピリットだぁっ!!」
 そんな筈ではと策士策に溺れる結果となってしまった燃焼系アスリートがうち崩れる中、己のすべてを出し切って一位を勝ち取った水羽は勝利のフラッグを勝ち取ったのであった。

成功 🔵​🔵​🔴​

メディア・フィール
プレイング改変・アドリブOK
他PCとの絡みOK

ワンダラー・|A《アームド》・|飛翔《ウィング》の特性と自分の【空中機動】の技能を組み合わせて、まるで低空を滑空するように最小限の砂地との接触でグレート・サマー・カップのコースを走り抜けます。ターンもカーブもほんの少しの力の方向の変更で、スピードダウンを防ぎながらこなします。同時に、前回のレースの失敗から学んだ、ネオ四を灰にしないようなユーベルコードとの一体化で、自分の【邪竜黒炎拳】を纏わせ、むしろ防御に使う形で敵アスリートの熱を相殺します。

「せっかくの砂地を存分に体感しないのは邪道かもしれないけど、これがボクのマシンの特性だからっ!」



 ──ゴー!!

 レースシグナルの合図と共にワンダラー・|A《アームズ》・|飛翔《ウィング》がメディアの手から放たれ、灼熱の砂浜を疾走する。
 マシンのセッティングはオンロード仕様だが、前日現地入りの特訓により自らのユーベルコード『邪竜黒炎拳』の黒炎をマシン全体に纏わせることにより低空飛行さながらな砂地との最小限の接触を実現させた。

(うん、いいぞ。上手く炎を|制御《コントロール》できている!)
 前回参加したレースの最終盤、メデイアは先代ワンダラー・A・飛翔をダークリーガーに勝つためとは言え己のユーベルコードにより大破させてしまった。今回こそは灰にさせまいとトレーニングにトレーニングを重ね、遂にメディアはマシンを喪ってしまったトラウマを克服して立ち直れたと言えよう。

『メーラメラメラ! 私と同じ走法とは奇遇メラ!』
 メディアと並走する燃焼系アスリートの『バーニング・イフリータ』も、自身のユーベルコードによって紅き焔によって包まれている。だが、メディアとは異なり彼女のマシンは見せれば見せるほどアスリート魂を熱く激らせるユーベルコードを発している。
 『もっと熱くなりましょうよッ!』という命令に従えばマシンが熱暴走、拒絶してもバーニング・イフリータが発する高熱にあてられて熱ダレしてしまうというカラクリだ。無論、その効力はメディアにも向けられている。

「……確かに、ボクの中で燻っている暗黒の炎はもっと燃えたいと訴えている」
『なら!』
「だけど……たとえ闇の力でも、正義の心で制御して見せる!」
 燃焼系アスリートの甘言を振り払うかのようにメディアの身体が暗黒の炎に包まれ、ワンダラー・|A《アームズ》・|飛翔《ウィング》もより激しく燃え上がる。
 黒き炎と赤き炎は互いにぶつかり合いながら直前に迫ったゴールのビーチフラッグに迫るが、ここで急にバーニング・イフリータのスピードが衰え始めてくる。

『そんな!? 私のバーニング・イフリータがメラぁ!』
 一見するとメディアが発する熱にやられたと思えるが、答えはその逆でワンダラー・|A《アームズ》・|飛翔《ウィング》は防御に徹して相手方の熱を相殺していたに過ぎない。つまるところ、相手は熱くなるに我を忘れてマシンの限界まで熱く燃えてしまったことによるマシントラブルである。

「せっかくの砂地を存分に体感しないのは邪道かもしれないけど、これがボクのマシンの特性だからっ!」
 砂地に黒き熾火の轍を残しながら、メディアとワンダラー・|A《アームズ》・|飛翔《ウィング》は予選レースのゴールラインに一番乗りしてみせたのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

馬県・義透
支援用プレイングとなります

四人で一人の複合型悪霊。生前は戦友

第三『侵す者』武の天才
一人称:わし 豪快古風

スポーツに向いているのが、わしだということで…まあ、来たのである。
事実、そうであるしな。ルールは読んで理解したし、サッカー、テニス、野球ならば実際にやった。
なお今回、攻撃せんでもいいようなら、普通にその競技をする。
攻撃が必要なら、その競技に使う道具を武器とみなしてやっていくからな。
故にこのUCであるのよ。


陰海月と霹靂は応援要員です。ぷきゅぷきゅクエクエ



 スポーツに向いているのが、『|侵す者《わし》』だということで……まあ、来たのである。事実、そうであるしな。
 ルールは読んで理解したし、サッカー、テニス、野球ならば実際にやった。
 なんなら生前は武の天才として、現在行われている近代スポーツの原型になったであろうサッカーに似た血生臭い球戯を幼少から嗜んでいた。
 だが……

「ぷきゅ! ぷきゅ!」
「クエッ! クエッ!」
「まさか、このわしがホビースポーツとはのぅ……」
 第三の人格として顕現し、年相応の落ち着いた水着姿の馬県・義透(死天山彷徨う四悪霊・f28057)はどこか気恥ずかしさを覚えた。
 応援場では自分を含めた四人の悪霊らが孫同然に可愛がっているジャイアントくらげの陰海月に、ヒポグリフの|霹靂《かむとけ》が仲良く並んで応援している。
 そんなおじいちゃん……あいや、武の天才の悪霊たる『侵す者』の腕にはネオ四駆に指示を送るためのスマートウォッチ型の制御装置であるGPウォッチが巻かれ、孫らが作ったネオ四駆『フォース・スピリット』が握られていた。
 出来栄えは模型スポーツ『プラクト』から模型作りを楽しむようになった陰海月らしく何処か手の込んだもので、それを霹靂が追い回しながら走り遊んでいるのを見て楽しんでいたのだが……公式レースとなればルールに則らねばならない。
 つまり、高速で走るネオ四駆と併走しながらGPウォッチを通して指示を送るのは自分以外において他ならないということだ。

『メーラメラメラ! 随分と御年配な競争相手だメラ!』
 粒ぞろいとは言えない玉石混交な予選レースで対等に渡り合える相手が居ないと確信した燃焼系アスリートは、勝ち誇ったような高笑いを上げた。
 まぁ、ホビースポーツというのは御年配よりも少年少女が主体となってやるものなのだから致し方ないが、レースは走り終えるまで結果が分からないものだ。
 ……なのだが、こんな相手にはユーベルコードを使うまでもなくレースをしてやろうと云うダーク化してもアスリート魂が仇となろうとは。
 彼女の慢心は予選レースを告げるシグナルと共に打ち砕かれることとなろうとは、思いも知らなかったであろう。

「おっと、少々馬力が過ぎたかの?」
 武の道を往く者であれば、相手が兎であろうとも獅子の如く全力を出す物。
 それは火のように高速回転するネオ四駆の車輪が生み出す暴威とも言えるもので、早い話が後輪によって周辺地形を破壊しながら巻き上げられた尋常なまでの砂嵐が燃焼系アスリートのマシンを飲み込んだのだ。

『メラぁ!? バーニング・イフリータが!!』
 数粒程度なら砂であればユーベルコード由来で発せられる炎で溶かされるのであるのだが、こうも瞬時に大量の砂を浴びせ掛けられればそうとは行かない。溶けてガラス質となった砂が車軸にへばり付き、本来の速さを発揮できないまま燃焼系アスリートは見下していた泡沫候補の参加者にも遅れていく。

「ゴオォォォォル! 予選レースを制したのは、馬県・義透選手だぁ!!」
「ぷきゅ!」
「クエッ!」
 まずは準備運動代わりの予選レースを制したものの、応援していた陰海月と霹靂の喜びようと言うと自分たちが作ったマシンが予選を突破したことで大はしゃぎである。

(これは……決勝レースも負けれんな)
 孫たちの期待に答えようと静かに燃える『侵す者』であったが、その心の奥底では魂が悪霊と化してもなお健在な童心に火が着きつつあるのでもあった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

キノ・コバルトリュフ(サポート)
キノキノ、キノが来たから
もう、大丈夫だよ。
キノノ?キノだけじゃ心配だって?
マツタケ!キノには星霊の仲間がいるから大丈夫!!
トリュフ!!キノ達の活躍を見せてあげるよ。
シメジ?キノが苦戦はありえないけど、その時は一発逆転を狙っていくよ。
キノキノ、みんなよろしくね。


数宮・多喜(サポート)
『アタシの力が入用かい?』
一人称:アタシ
三人称:通常は「○○さん」、素が出ると「○○(呼び捨て)」

基本は宇宙カブによる機動力を生かして行動します。
誰を同乗させても構いません。
なお、屋内などのカブが同行できない場所では機動力が落ちます。

探索ではテレパスを活用して周囲を探ります。

情報収集および戦闘ではたとえ敵が相手だとしても、
『コミュ力』を活用してコンタクトを取ろうとします。
そうして相手の行動原理を理解してから、
はじめて次の行動に入ります。
行動指針は、「事件を解決する」です。

戦闘では『グラップル』による接近戦も行いますが、
基本的には電撃の『マヒ攻撃』や『衝撃波』による
『援護射撃』を行います。



『メラメラメラ~……よもやここまで負けるとはメラ』
 予選レースを尽く猟兵らから惨敗に惨敗を喫したことで、燃焼系アスリートらは脱落を続けて意気消沈した姿が砂浜の影で重なり合っている。

「さぁて、残るはあたしたちだね!」
「ウミタケ! 頑張るキノ!」
 ライフセーバーに間違われそうな水着姿の数宮・多喜(撃走サイキックライダー・f03004)が入念に柔軟体操をしている傍ら、マイタケをイメージしたフリルが可愛らしい水着姿のキノ・コバルトリュフ(|キノコつむり《🍄🍄🍄🍄🍄》の星霊術士・f39074)が最後の予選レースに意気込む。 
 多喜のマシンは自身の超能力をイメージさせた|ネオ四駆《マシン》『サイキックブレイカー』、キノのマシンはキノコでデコらせた|ネオ四駆《マシン》『クイン・マッシュルーム』。それぞれは万全な状態に|整備《セッティング》済みで、あとはレースに挑むだけだ。

「予選レースも遂に最終レースとなった! 今までは一位だけが決勝レースの切符を手に入れていたが、最終レースは規定タイムでゴールすれば決勝レースに挑めるチャンスがあるぞ!!」
 正に大盤振る舞いな宣言をネオ四ウォーリアーであったが、事前にその情報を公開していただけあってかチャンスを狙うネオ四レーサーが多い。
 果たしてこの混戦極まる予選レースを突破するのは誰か?

 「「『ゴー!』」」
 ほぼ同時のスタートだったが、先頭をリードするは残存する燃焼系アスリートらによる『バーニング・イフリータ』軍団。これらがフォーメーションを形成すれば炎の壁となって、後続をタイム落ちさせるといった腹構えだ。

『メーラメラメラ! 諦めるのはまだ早いメラぁ!』
 バーニング・イフリータから発せられる炎の一部が火の玉となって切り離されると、それらが火の玉マスコットめいた精となって後続のマシンに強襲!
 ナムサン! ユーベルコード・アタックだ!!
 このままではネオ四駆に取り憑かれ、熱暴走を招いてタイムがロスしてしまう!

「マツタケ! キノには星霊の仲間がいるから大丈夫!!」
 キッと敵方から放たれたユーベルコードを睨みつけるキノの瞳の奥底にユーベルコードの煌めきが宿ると、身体から|GP《グランプリ》ウォッチを通してクイン・マッシュルームへと伝播される。
 ネオ四駆のカウル部分に生えたキノコが震えると、胞子とともに芳しい香りが海風に乗って周囲に拡散されていく。本来はキノの身体から発せられるベルベットパフュームであるが、これによってネオ四駆からでも放たれるという訳だ。
 小鬼めいた笑い声を上げながら襲いかかろうとする火の精らはこれにあてられれば、戦意が喪失して霧散していく。後はバーニング・イフリータの壁を突破して規定タイム以内でゴールするだけである。

「アタシに任せな! 行くよ、サイキックブレイカー!!」
 戦意高揚成分も含まれたベルベットパフュームのマツタケに似た残り香を受け、多喜の身体に青白い稲妻が|疾走《はし》る。
 念動力起因の|電流《ユーベルコード》が自身のマシンにも伝播し、人車一体となった必殺技が放たれる……と思っただろ?
 そんな時に限ってアイツが現れるのだ。

「あぶなかったね多喜ちゃん! さあ今のうちに変身を!」
 何処の誰だか知らないが、誰もがみんな知っている。
 |疾風《はやて》のように現れて、|疾風《はやて》のように去っていく。
 愛らしい神獣は|可愛い相棒《シンヨウデキナイアレ》。

『ぶふぉ!?』
 後続の様子を伺っていた燃焼系アスリートが吹き出すのも無理はない。
 まばゆい光に包まれた多喜が、年甲斐もない魔法少女な水着姿となっていたのだから。
 だが、それは誰も違和感を感じさせなかった。
 その様な勝負服へのフォームチェンジは、ここアスリートアースではチャメシ・チャメシ・インシデントなのだ!

「だから、テメェは何者なんだよ!?」
 気づけば既に何処かに消えた愛らしい神獣(?)に罵声を上げながら激昂する多喜の叫び声を受けたサイキックブレイカーが、蓄えられたバッテリーの電力を解放しながら加速する。シャシーには青白い電流がスパークし、衝撃波を伴う風圧を受けたダークリーガーのネオ四駆がバランスを崩す。
 これにより鉄壁のフォームに穴が空き、更にはネオ四駆の制御装置たる回路系統がショートしたことによって砂浜ならではな起伏に富んでタイヤが取られるオフロードに対応できなくなって失速する。

『メラ~!?』
 様子を伺っていた後続にも追い抜かれ、レース前半は先頭を独占していた燃焼系アスリートらはマシンが走行不能となったことで予選レース失格と相成ったのであった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​




第3章 ボス戦 『レジェンドアスリーテス』

POW   :    レジェンド降臨
【伝説のアスリート】のオーラを纏い、自身の【陸上】競技力と【水泳】競技力を2〜8倍にする(競技が限定的である程強い)。
SPD   :    疾風のごとく
自身と武装を【敵を切り裂く疾風】で覆い、視聴嗅覚での感知を不可能にする。また、[敵を切り裂く疾風]を飛ばして遠距離攻撃も可能。
WIZ   :    アンリミテッド・スピード
【全力疾走】の継続時間に比例して、自身の移動力・攻撃力・身体硬度・勝負勘が上昇する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


「ッしゃあ! 予選突破だぜ!!」
 豪児がガッツポーズする傍ら、双子の姉である烈華は突破して当たり前じゃないと言いたげな顔持ちで大はしゃぎする弟を見やる。

「さて、ここからが本番だな」
「そうね。このコースをどう攻略するか……」
 烈華と淳平が難しい顔でにらめっこしている相手は、予選レースを突破して遂に明らかとなったグレート・サマー・レースの決勝コースだ。
 スタートは予選同様に砂浜からだが途中でオンロードコースへと切り替わり、海中に設けられた水中トンネルを通って水上コースを走りながら砂浜のオフロードコースに戻る周回制のコースだ。
 今まではオフロードに特化させたマシンだったが、決勝はオンロード用のセッティングもせねば距離を開けられるのは必定なものの、決勝レース開始までの再セッティングタイムが設けられている。安藤姉弟もメカニックである淳平少年の手を借りて、オンロードにも対応した設定をネオ四駆のCPUに上書きしている最中である。

「でもよぉ……皆は再セッティングでやっきになってるてのに、あの綺麗なお姉さんだけは何も調整してねぇよな」
 豪児が顎で示したのは、トライアスロンの勝負服を着た若い女性のネオ四レーサーだ。
 三人は有力選手の顔は一通り覚えているが、記憶の中では彼女に合致する情報が一切ない。予選レースの記録で最上位を叩き出したともなれば実績あるネオ四レーサーか、それとも今回の公式レースが初となるダークホースか。
 三人が何とか思い出そうと難しい顔になっている中、あっと何かを思い出した保護者の遥子が神妙な顔つきとなった。

「もしかして……」
「おばさん、何か知ってるの?」
「ええ。それはポケ四駆がブームだった頃……」
 ──彼女の名は、|風車《かざぐるま》・たまみ。
 男子のホビー・スポーツであったポケ四駆界に流星の如く現れた女性ポケ四レーサーであり、当時ブームであったのもあってメディアに取り上げられると一躍時の人となった。
 だが……。

「公式レースの大会に出る途中に事故に遭って……帰らぬ人となったのよ」
「えっ……すると……」
 その事実を聞いた烈華の顔が急に青ざめてくる。

「烈華姉って幽霊とかオバケが苦手だもんな」
 そんなこと無いわよと、烈華はにししと笑う豪児の頭をポカっと殴りつけた。
 それを端を発してやいのやいのと姉弟喧嘩が起きるが、毎度何時ものことだと淳平少年は仲裁に入ることもなく母親の遥子の話に耳を傾けていた。

「もしかして、その公式レース大会って……」
「そうさ。このグレート・サマー・カップレースだよ」
 つまり、彼女は無念のあまりに幽霊となってダークリーガー『レジェンドアスリーテス』として転生したということになる。
 自らがダーク化させた燃焼系アスリートを統率していない辺り、彼女の目的はただひとつ……不慮な事故で走ることがままならなかったグレート・サマー・カップレースに優勝することだけ。
 しかし、それは先程の予選レースのみならず決勝レースで風車・たまみに負けた者すべてのネオ四レーサーがダーク化することになる。
 未だ成仏できない彼女に憐れみを覚えてしまうだろうが、猟兵たちは心を鬼としてこの決勝レースに勝たねばならないのであった。
キノ・コバルトリュフ
エリンギ!今日は楽しくハイキング!!
シメジ、なんだか周りが騒がしいね。
でも、キノたちは気にしなーい。
キノ?スピちゃんどこに行ったのかな?
シイタケ、おいしいお菓子とか用意したのに。
帰ってきた、どこに行ってたの?
軽く運動でもしてきたのかな?
マイタケ、それじゃあ、いただきます。



「ゴー!!」
 スタートの合図と共に予選レースを潜り抜けた精鋭たちの手から自らの|ネオ四駆《マシン》が解き放たれ、歓声を浴びながら決勝レースに挑む。

「いけぇ! ブレイブ!」
「いくわよ! ミラージュ!」
 安藤姉弟のダブルキャリヴァーが互いに競り合いながら砂を舞い上げながらスタートダッシュする中、オフロード寄りのセッティングで挑んだギガントフットがふたりを追い抜いた。

「悪いけど、ここで距離を稼がせて貰うぜ!」
 一般的に重心が高く高速時のカーブに弱いとされているワイルドネオ四駆であるが、このような不整地だと土壇場であると意気込む淳平。だが、そんな彼らをあざ笑うかのように一陣の風が彼らの横を駆け抜けた。

『……邪魔』
 真夏に近い残暑の暑さも一瞬の内に冷ややかになるかと思える氷の声がぽつりと呟き、三人のマシンを一気にゴボウ抜きしてトップに躍り出るは風車・たまみの|ポケ四駆《マシン》『ミストラル』である。
 一見すると旧式のマシンであったが、彼女が幽霊ならばマシンも同様に当時のセッティングなのだろう。しかし、そのスペックは最新のネオ四駆に引けを取らないものであることを雄弁に物語っていた。

「キノ? スピちゃんどこに行ったのかな?」
 そんな激戦が繰り広げられているトップ層の後方で、キノはクイン・マッシュルームと併走しながら周囲を見渡していた。
 普段は彼女のキノ傘の中に居たり外側にしがみついている星霊スピカのスピちゃんがまたもや何処かに行ってしまったのだ。そのことに気がついたのはレース直前で、言うなればそれが頭に残ってレースに集中できていない次第である。

『一気に……勝負をつけるわよ』
 たまみ、いや『レジェンドアスリーテス』の瞳に青白い炎が宿ると、それに呼応するかのようにミストラルもユーベルコード由来の蒼い炎に包まれる。通常のネオ四駆ならば到底考えられない加速により、このまま安藤姉弟と淳平に猟兵らを引き離す……かと思えたが、その前方に何やら青い毛の塊がコース上でペロペロと毛づくろいをしていた。
 キノが探していたである。
 迫りくるミストラルに怖じけることなく星霊スピカはどく気配を一向に見せない。
 そして、たまみの脳裏にあることがフラッシュバックした。生前の自分が最期に見た光景である……車に轢かれる瞬間だ。

 ──危ない!

 走馬灯の如く鮮明な記憶、いや幽霊となった今はトラウマか。
 ネオ四駆はおろかポケ四駆にはブレーキと呼ばれる機能は備わっておらず、止めるには何かにぶつかるしかない。自身の命を奪ったような真似を行うことは彼女の競技者としてのプライドが許すわけもなく、念じて軌道を逸らすしかなかった。

『おおっと! どういうことか!? トップを激走していた風車選手のミストラルが、謎のカーブを切ったぁ!!』
 ネオ四ウォーリアーの実況により、たまみは全てを悟った。
 この動物は彼らには視えていない。視えているのは自分だけだ、と。
 砂を舞い上げながらカーブを切ったミストラルの傍らで、後続のマシンが次々と追い抜いていく。

「帰ってきた、どこに行ってたの?」
 程なくしてキノも追いつけば、待ってたとばかりに星霊スピカは彼女に寄るとそのまま肩へと飛び乗る。
 まだ初戦のグレート・サマー・カップレースであるが、大波乱なレースとなることが予想される一幕であった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

百地・モユル(サポート)
熱血で好奇心旺盛
本が好きな小学生

正義感が強く困っている人は見過ごせない

UCは業火の一撃、灼熱の束縛に加えて
自分たちが押し切られそうになったらオーバーヒートバッシュ
🔴の数が多い場合はバーニングリベンジャーだ

攻撃には怪力、属性攻撃、2回攻撃、グラップルなどの技能をのせる

逆に敵の攻撃をからみんなをかばう、耐えるために
武器受け、挑発、おびき寄せ、時間稼ぎ、激痛耐性なども使用
敵に一撃入れられそうなら咄嗟の一撃や捨て身の一撃、カウンター
こいつがボスか…
みんな大丈夫?助けにきたよ!

そんなの許せない、ボクの炎で焼き払ってやる!

技能の勇気、覚悟、気合いは常に発動状態

アドリブ絡み歓迎

影朧などの場合は説得もしたい



「わぁ! すっごぉい、海中トンネルだ!!」
 スタートの砂浜オフロードコースを越えた先、ポッカリと開いた洞窟のような入り口へ『バーニングダッシュ』と一緒にモユルが吸い込まれるように入れば、そこは幻想的な空間だった。上を仰げば差し込む太陽の光がキラキラと輝く水面が、下を仰げば色取り取りのサンゴ礁が望める透明なチューブで構成されたオンロードコースである。
 その光景はさながら自分とバーニングダッシュが海の中を走っているような錯覚を覚えるものであったことに、モユルの胸をときめかせるには十二分のものだった。

『まだ……まだ、追いつけれる』
 しかし、いつまでも見惚れている場合ではない。
 直線コースで突如謎のカーブを切ったことで後続に追い抜かれた風車・たまみのマシン『ミストラル』が迫りつつある。

「来たね! 特訓の成果を見せるよ、バーニングダッシュ!」
 自らもマシンも風を切り、非業の最期を迎えた伝説のアスリートたるオーラに包まれたたまみとマシンがモユルたちを追い抜こうと加速する。
 ダークリーガーならば反則行為も辞さずに相手のマシンをレースから脱落すべく何らかのユーベルコード攻撃を仕掛けてくるものであるが、彼女の場合はポケ四レーサーとしての矜持がそんなことを許さず、反則行為を仕掛けてくる気配は一向にない。
 草レースで彼女に負けてダーク化されたアスリートも手駒として扱っていた訳でもないとすれば、ただ結果的にそうなったことに過ぎず、彼女自身は純然に勝つことのみを求めているだけに過ぎない。その顕れが、自身とマシンに纏った幽火の如く青白い炎のオーラなのだろう。

『いいわ。なら、見せなさい……その特訓の成果を!』
 入り口と出口しかない密閉されたコースで紅き炎と蒼き炎が互いにせめぎ合う。

(参ったなぁ……ここでボクの炎で焼き払えばコースは駄目になるし、何より相手は正々堂々とレースに臨んでるし……)
 モユルは相手が非道な行いを行えばマシンごと破壊して阻止するつもりであった。
 しかし、幽霊となって半ばオブリビオン化したことでレジェンドアスリーテス化しているたまみはそのような真似をする気配が全くない。そんな中で業火の一撃や灼熱の束縛を行えば、まるで自分が悪者になってしまう。正義感が強いモユルとしては、そんなことは絶対に避けなければならない。
 だが、葛藤すればするほどたまみとミストラルは徐々に距離を詰めてくる。直線では同一のスピードで距離を保てるが、コーナーリングでは明らかに技量の差が浮かび上がっている。
 そして、海中トンネルコースの最終盤となる急勾配な坂道が両者を立ちはだかる。ここで追い抜ぬかれるか距離を離すかが今後のレースに重大な影響を及ぼすだろう。
 ならば……。

「換装っ! ボクのマシンはこんなことだってできるんだぜ?」
 それはモユル自身の義腕をバスターフレームに変形するユーベルコードから着装を得たバーニングダッシュに備わった機能だ。
 カウル部分が変形し出すとマシン後方に噴射口のような物が現れ、ユーベルコード由来の炎の煌めきがノズルの奥底で輝き始める。そう、ブースターである。

 ──ゴウッ!!

 着火するや否や、急勾配の坂をバーニングダッシュは加速を強めながら登攀する。これには幽霊ポケ四駆を操るたまみと言えども追いつけるはずがなく、どんどんと距離は開く一方であった。

「出た! 外だ!!」
 遂に海中トンネルコースを出れば、そこは海の上を走っている感覚を覚える海上コースであった。高らかに飛び上がったバーニングダッシュは着地に成功し、距離を十分に開けたところでたまみもようやく海上コースに出たようだ。

「まだまだ一周目、勝負はまだ分からないよ!」
 勝つことに拘るたまみへレースその物を楽しむべきと言い含めた言葉を送り、モユルは心地よい潮風に抱かれながら烈火の如き走りを緩めることはなかった。

成功 🔵​🔵​🔴​

馬県・義透
引き続き『侵す者』にて

……わしらのことは、話さぬ方が良いな←悪霊集合体
しかして、負けるわけにはいかんのよ。

マシンには【四悪霊・『界』】をこめたからの。
内部の『疾き者』にも手伝って貰って、天候操作+結界による風纏いをして。密かな呪詛による位置特定もしとるからの。
ゆえに、あとはコースに合わせて指令を送るのみよ!騎乗はしとらんが、こういうのもわしの領域であるからなぁ。

※応援ぷきゅクエ
陰海月と|『疾き者』《びゅーびゅーおじーちゃん》が最終調整しました。|『侵す者』《あつあつおじーちゃん》は下手すると壊すので…
霹靂、とても楽しみにしている



 古来、怨霊の類はもっとも『陰』の強い時間帯である草木も眠る丑三つ時に出るものだと云われてきた。不気味なほどの静寂と相まれば、人は闇の中に蠢く何かを感じ得て畏れたのだろう。
 だが、今は日が高く昇りつつある中でふたりの怨霊が肩を並べながら走っており、草木も眠るどころか砂の中に隠れたカニも思わず驚いて飛び出してしまうまでの歓声が海上にまで届いていた。

(……わしらのことは、話さぬ方が良いな)
 義透は多重人格者と自称するが、それは表向きの姿。
 その正体は、オブリビオンによって故郷を喪い殺された挙げ句に悪霊と成った四人の魂が長い時を経て寄り集まった複合型悪霊。
 彼らの無念は幾万のオブリビオンを呪っても晴れずいるのもあって、|義透《侵す者》は何処か風車・たまみに憐れみを覚えてしまうが、彼女もまたオブリビオン同様に現世への無念で世に仇なす怨霊と化したダークリーガーだ。力ずくで祓えてもいずれ復活するのであれば、生前の無念であるこのレースで互いに正々堂々と力の限りをぶつける他に無いのだ。

「しかして、負けるわけにはいかんのよ。のぅ、『疾き者』よ?」
 痛く刺さるような残暑の日差しで額に浮かんだ汗を払いつつ、侵す者はたまみのマシン『ミストラル』と接戦を繰り広げる孫たちが作り出したマシン『フォース・スピリット』へ語りかければ、半透明なコックピット越しにLEDランプが点滅する。
 その様子を海上で滞空する中継撮影用のドローンカメラが捉え、会場応援席に設けられた巨大スクリーンに映し出された。

「ぷきゅ! ぷきゅきゅきゅっ!
(特別意訳:びゅーびゅーおじーちゃん、がんばれー!」
「クエッ! クェクェ、クェッ!!
(特別意訳:あつあつおじーちゃんもがんばってー!」
 じぃじが走る場面が映し出されれば二匹の孫たちの応援も力が入り、現世に留まる理由が恨み辛みよりも目に入れても痛くない|ジャイアントくらげ《陰海月》と|ヒポグリフ《霹靂》の喜ぶ様を思い浮かべた侵す者の足にも力が入る。

『勝負を仕掛けて来るなら……私だって……っ!』
 一向に離れずしつこいまでに追いすがるフォース・スピリットに苛立ちを隠せない様子でたまみがキツく睨んだ。すると、穏やかだった風はたまみと彼女のマシンに吸い寄せられるように渦巻き始め、それらを触媒として新たに生じたユーベルコード由来の気流が空気の刃となって襲いかかり始める。

「ほっ! やりおるな!?」
 その異変に気づいた侵す者が指示を出す間も無く、ネオ四駆に搭載されたセンサーが異常な風圧を感知したのかミストラルから距離を取ろうとモーターの回転数を落として減速する。直撃こそは免れたが、たまみのマシンと隣り合っていたカウル部分がまるで鉋掛けをされたかのように表面が削られてしまった。

『追い抜こうとしたら……今度こそ真っ二つよ?』
 たまみの冷ややかな視線が警告めいて送られるが、そんな彼女の様子に侵す者は笑ってみせる。

『……何が可笑しいの?』
「ハッハッハッ……いや、意外と優しいものとな?」
 事実、あと数ミリ寄られていればフォース・スピリットのカウルとシャシーは切り裂かれてしまっていただろう。だが、たまみは非情に徹しきれず威嚇攻撃にだけ留めていた。生前は自らの意志や存在意義を示すために武威を示すのが習わしであった侵す者にとっては、なんと甘いことか。それがこの笑いの元である。

「真に勝利を求めるのであれば、手段は選ばぬはず。しかし、お前は初手で手段を選んでしまったのじゃからな?」
『……ッ!』
 ダークリーガーとは、手段を問わず勝負に勝つ存在。
 しかし、相手に手心を加えたとなればダークリーガーとしての矜持よりもポケ四レーサーとしての矜持が勝っている証拠である。

『……さい、うるさい、うるさい、うるさい! 真っ二つがお望みなら、今すぐそうしてあげるわ!!』
「応! 真っ向勝負は望むところじゃ!!」
 正に売り言葉に買い言葉。血気盛んな侵す者の挑発に乗ったレジェンドアスリーテスは疾風のごとく疾走ると本来のユーベルコードの力を発現して透過し始める。
 それは風を纏うことによる光の屈折を利用した、謂わば光学迷彩。視覚による距離感覚など掴めることは叶わず、また風を感じれば即斬り裂かれる運命となる。故に命が惜しければ、マシンが大事であれば二の足を踏むのであるが、穏やかな海面に突如白波を立たせる迅風が吹き抜けたのに合わせて侵す者が邁進する。

「クエッ……クェー!?
(特別意訳:そんなことをしたら、あつあつじーちゃんもネオ四駆も真っ二つだよ!?」
 霹靂が気が気でない叫びを上げるが、陰海月は至って落ち着いているご様子。
 それもそのはず、決勝レース前の最終調整では『疾き者』と自身で万全に仕上げたのである。(なお、侵す者はレース中に緩まないようにと必要以上の力でネジ締めをしようとしたとの理由で交代させれた模様)

「目には目、歯には歯……。風には風、じゃ!」
 たまみとミストラルの領域へ踏み込む直前、ユーベルコードにより生まれた暴風がネオ四駆のCPUに憑依した疾き者と走者の侵す者に集まると、それらは空気の壁を形成してたまみが放つ風刃を相殺する。これにより大凡の位置は把握できるが、念のためにと霊が放つ呪詛を捉えれば後は渦巻く風の隙間を潜り抜けるだ。本来であればGPウォッチによる音声操作となるが、互いに融合し合った悪霊同士となれば道具を介さずとも念じるだけで会話が可能である。

『そ、そんな……信じられない』
 己の全てを出し切ったはずなのに抜け切られてしまった。
 たまみがユーベルコードを解除すれば呆然とした顔持ちとなっており、奇しくも丁度一周目の終わりを告げる砂地コースに差し掛かるところであった。

「さぁて、まずは一周目かの。まだ油断は出来んじゃな」
 トップに躍り出たハイライトとして大画面に映し出されたふたりのじーちゃんの勇姿に、観客席で応援する二匹はひときわ大きい歓声を上げていた。 

大成功 🔵​🔵​🔵​

メディア・フィール
プレイング改変・アドリブOK
他PCとの絡みOK

決勝もこれまでと同じようにワンダラー・|A《アームズ》・|飛翔《ウィング》で挑みます。ただし、ちゃんとコースに合わせて再セッティングはします。幸いなことに基本オンロード仕様の車体をユーベルコードでオフロードでも対応できるようにするという戦法なので、セッティング自体はそれほど難しくないでしょう。オンロードとオフロードの兼ね合いに悩んだ末にどっちつかずになりそうになるというありがちな失敗に陥りそうになりますが、安藤姉弟や淳平君に助けられ事なきを得ます。
風車たまみの無念には涙を禁じえませんが、だからこそ、同情したり手を抜いたりせずに全力で挑みます。



「遂にグレート・サマー・カップレースも|最終周回《ファイナルラップ》に突入だぁ!! 一体誰がネオ四駆夏レースの栄冠を勝ち取るか!! 見逃せないぜ!!!」
 ネオ四ウォーリアーの実況を受けて会場が今まで最も湧き上がる瞬間を迎えた。

「へっ! やるじゃねぇか、淳平!!」
「そういう豪児もコースアウトしないなんて、もしかして明日は台風じゃないのか?」
 速度重視のブレイブキャリヴァーとバランス型のギガントフットがお互いに競う合うかのように走っているのは、周回を重ねたことでコースの特徴をCPUチップに学習されたからである。これによってGPウォッチを介して指示を送らずとも、ネオ四駆最大の特徴である自己判断能力で自身のセッティングに合った走りを自動的に行い始めていた。

「はーい、男子は仲良く喧嘩しながらのおっ先ぃ♪」
 さながらレースその物を楽しんでいるようにじゃれ合ってるふたりの隙間を縫って、烈華のトルク重視セッティングであるミラージュキャリヴァーとメディアのワンダラー・|A《アームズ》・|飛翔《ウィング》が抜いて躍り出る。

「とうとう最後の周回か……」
「どうしたの、メディアちゃん?」
「……ボクの使い方が間違ってなければ、もしかしたらワンダラー・A・|飛翔《ウィング》が走ってたのかなって」
 今になって思えば、何故ダークリーガーとの勝負に勝つためとは言えマシン一台を自らの炎で溶かして大破したのかとメディアに自責の念が込み上げてくる。現在の走行距離は概ねグレート・スプリング・カップレースと同等だとすると、如何に自分が未熟であったのかをまざまざと実感させられる。

「うーん……確かに、そうかもしれないけど……」
 思わず言葉が詰まってしまう烈華だったが、事実である以上否定はし辛い。
 現に今のワンダラー・|A《アームズ》・|飛翔《ウィング》は、メディア単独で復活させたわけでなく皆の力を借りて再生できたのだ。
 そう思うと、幾度も困難に立ち上がり続けた|姫《おうじ》武闘勇者の名が廃れるというものだ。

「うわぁあああっ!?」
「じゅ、淳平!! おわぁーっ!?」
 なんとも気まずい雰囲気が流れる中、突如後方から叫び声が聞こえた。
 淳平と豪児の叫び声だ。

「どうしたの……きゃあぁ!?」
「烈華ちゃん!?」
 その刹那、一陣の風が吹き抜けた。
 突然のことでメディアは何が起きたのか分からなかったが、目の前に風車・たまみが纏っていた風を解いて姿を見せたことでようやく理解できた。

『大切なレース中にぺちゃくちゃぺちゃくちゃ……止めてくれない?』
 今では積極的な破壊行為を留めていた彼女であったが、決定的な差を作れぬままに最終周回を迎えたことで背に腹は代えられなくなったか。ユーベルコードを伴う疾風が刃となってマシンのタイヤのみならず車軸をも寸断され、仮にピット作業で復旧出来たとしてもその時点でたまみとの差は歴然となっている。

「も、もう……駄目だ……。あの時と一緒で、ワンダラー・|A《アームズ》・|飛翔《ウィング》もワンダラー・A・|飛翔《ウィング》と同じことに……」
 無惨にもダルマ同然の姿と成ってしまったワンダラー・|A《アームズ》・|飛翔《ウィング》を見せられ、メディアは悲観に暮れてしまいそうになる。

「バカ! 諦めてどうするんだよ!!」
「そうだ。諦めたらそこでレースは終了なんだよ」
 だが、豪児と淳平は諦めずにマシンを分解し始めて復旧に取り掛かろうとしている。

「そうだよ! 私たちは直さなきゃ走れないけど……メディアちゃんは私たちに無い力でまだ走れるじゃない!!」
 そのように烈華が叱責して、ようやくメディアは自分に備わっている|力《ユーベルコード》の存在を思い出した。


「いち早く最後の中継地点に到着したのは……風車・たまみ選手のミストラルだぁ!!」
『当たり前に決まってる……このために、私は戻ってきたのだもの』
「そして、その後をとてつもない速さで追い込みをかけているのは……メディア選手のワンダラー・|A《アームズ》・|飛翔《ウィング》だぁ!!」
 この言葉にたまみは愕然とした。あそこまで壊せばすぐに直らず、もっと後方のはずなのに、と。
 確かにレースで呼吸が乱れている中、さらに焦る気持ちも混ざれば部品交換もままならない。しかし、メディアは即座にレースに復旧してみせたのだ。かつて、ワンダラー・A・|飛翔《ウィング》を大破にまで追い込んだ炎の力によって、だ。

「まだだ! まだ勝負は終わってない!!」
 たまみが迫りつつあるワンダラー・|A《アームズ》・|飛翔《ウィング》のタイヤ部分を見やると黒いタイヤが装着されているように思えるが、よく見るとそうでないことに気づく。

『これは……黒い炎のタイヤ?』
「そうだ! 特訓で編み出したオフロードでも対応できるようにするユーベルコード戦法を応用した、即席の|邪竜黒炎拳《ダークネス・ファイアー》ホイールだ!!」
 ワンダラー・|A《アームズ》・|飛翔《ウィング》が通った後には暗黒の炎のラインが残り、黒き残炎がどこまでも続いている。
 あともうちょっとのところでとたまみが舌打ちするが、オンロードから砂地のオフロードに変わってゴールが目前となっている今、下手に迎撃しては失速の原因となる。そうなれば、ここからは純然たるマシンの競争となるのだ。

『行け、行け、行けぇええッ!!』
 全てを賭してミストラルに激を飛ばずが、長時間に渡るレースによってタイヤが摩耗してか上手く加速出来ずに居る。その反面、メディアのワンダラー・|A《アームズ》・|飛翔《ウィング》は黒炎の熱によって砂をガラス質に変えることでオンロードと同等の速度を維持してる。
 遂に両者は並び合い、ゴールを迎えた。

「おぉっと! まさかの同着か!? 判定の結果は……メディア選手のワンダラー・|A《アームズ》・|飛翔《ウィング》がコンマ数秒差で一着と判明したぁぁっ!!」
 互いに全力を出し合い、そして倒れ込む。

「やった……やったよ、ワンダラー・|A《アームズ》・|飛翔《ウィング》……そして、ワンダラー・A・|飛翔《ウィング》!!」
「やったじゃないか、メディア!」
 メディアが倒れ込んで数分後、修理を終えて追いかけてきた伊上模型店チームもゴールインして、まるで自分たちが勝ったかのように彼女の勝利を褒め称える。

『……負けちゃった』
(あ……っ)
 ぽつりとそんな言葉を残し、たまみの身体が徐々に透明となっていく。
 思えば、彼女の無念さには涙を禁じえなかった。
 かと言って、だからこそ、同情したり手を抜いたりせずに全力でメディアは彼女に挑んだ。まぁ、途中で身体に染み付いた負け癖が出そうになったのは秘密にしておきたいところではあるのだが。

『次……負けないから』
 この言葉を最後として、たまみの姿と彼女のマシンは完全に消えてしまった。
 果たして彼女は成仏できたのか?
 それとも意味深な言葉通り、猟兵である自分に負けた後悔でまた化けて出てくるのか?
 だが、確かなのは恨み辛みを込めた言葉でなく、自分自身と同じように心地よい疲れに包まれているような柔らかい言葉であった。。
 きっと彼女も自分と一緒になんとも言えない達成感に包まれていると信じて、メディアは満足に力が入らない五体を奮い起こしたのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2024年02月09日


挿絵イラスト