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菫色の薄暮より

#ブルーアルカディア #戦後

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#ブルーアルカディア
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#戦後


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 燦々と降り注いだ真夏の太陽が、青美しき天空の海へじんわりと沈んでゆく。
 迸る黄金の輝きも眩い中、パラソルの下に設けられた席には雲のようなクッションを敷き詰めた座椅子染みたビーチベッドは星の砂の浜辺を楽しみながら味わえるカフェへと様変わり。
 真白い貝殻も星の砂も、水平から迸る陽光が金色に染める中、空を仰げば暮れ行く空は美しいグラデーションを織り成していた。

 髪を遊ばせるような風が抜けてゆく。
 僅かばかり混じった夏の真昼の気配を少し惜しみながら、貝殻の飾られたランプを燈せば遊びの時間はもうおしまい。
 穏かにカフェタイムを楽しむ時間だ。
「ふぅ――やっと少し涼しくなりました。お昼はとーっても暑かったもの、少し休憩いたしませんこと?」

 “素敵でしょう?限定のサマーカフェだそうですの”そう言って此処へ案内した壽春・杜環子(懷廻万華鏡・f33637)がにこにこと案内した此処はどうやら日が沈む夕方からカフェタイムが始まる限定の島なのだとか。
「元気にいっぱい遊ぶのもいいですけれど、陽が沈みゆくこの美しい一時を眺める穏かな時間……というのも、また美しいものでしてよ」
 杜環子の先に、水平を黄金に染める夕日眩く、よく見れば足元の真白い砂浜は夕日の光によって染まっていた。
 天空でしか見られぬ空の時間を楽しむ一時――……それはここ、ブルーアルカディアが最も楽しめる特別な時間とも言えるだろう。
 柔らかな雲の椅子はゆったりとしたブルーアワーを楽しむのには最適だ。
 サイドテーブルに置かれたメニュー表には、美しい文字が綴られていた。

 °˖✧𝕞𝕖𝕟𝕦✧˖°
 ▷白昼アイスミルク
 グラスの底には煮詰めた陽光のような|芒果《マンゴー》のコンフィチュールを忍ばせて。
 ▷東雲ティーソーダ
 たっぷりのフレッシュなアプリコットと底には菫のコンフィチュールの微睡み。
 ▷|盈月《まんげつ》クリームソーダ
 紺色のソーダに沈めたのはレモンアイスの|盈月《満月》。

「この移り変わり薄明の中、空を飲むのも中々趣深い粋ではございませんこと?」
 艶やかに微笑んで見せた杜環子が次々とテーブルのキャンドルに燈火を分けてゆく。
 


皆川皐月
 お世話になっております、皆川皐月です。
 ブルーアルカディアの美しき空にて善き一時を。


●第一章:日常『誰彼時のソラカフェ』
 時間帯:夕暮れ
 OPのドリンクメニューに細やかなクッキーやチョコレート、琥珀糖などサービスを添えさせていただきます。

●第二章:冒険『宵のソラカフェ』
 時間:宵より穏かに
 
 ホッと一息できるような美味しいメニュー表に早変わり。
 メニューは断章にてご紹介を。
 ドリンクメニューも合わせて入れ替わりをいたします。

●その他
 全体的にお遊び&心情系の雰囲気重視のお話です。
 複数人でご参加される場合、互いの【ID+呼び名】または【団体名】などをご記載いただけますと助かります。(団体の場合会話の最中に相手への呼び名などがあると嬉しいです。ステータスの口調通りであれば記載無しでも大丈夫です)
 また失効日も揃えて頂けますとなお嬉しいです。
 マスターページに文字数を省略できるマークについての記載があります、よろしければご利用ください。
 プレイングにて当方グリモア猟兵とご指名頂きますとご一緒可能です。
 短縮絵文字は杜環子(🪞)、藍夜(☔)、ドルデンザ(👊)です。御用事があればお声かけください。

●オーバーロードについて
 あれもこれも!とご希望がある場合、またはじっくりお話がしたい方にオススメです。

 皆様のご参加、心よりお待ちしております。
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第1章 日常 『誰彼時のソラカフェ』

POW   :    空を眺めて

SPD   :    カフェを楽しんで

WIZ   :    一番星を探して

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

夜鳥・藍
POW
日も落ちたころは本当に。
だって高い位置にあるまではひたすらその暑さに耐えるしかないんですもの。
ゆっくりと過ごさせていただきましょう。

東雲ティーソーダを。
夕暮れを楽しむならあまり甘くはないものを。だってあの人(過去世の私)は夕暮れが好きだったから。
少しずつ思い出す、蘇るたびに今の私とは全く違うんだって実感する。
夕暮れにあの人は嬉しさを覚えてた。そんな気持ちをいだかせてくれる大事な人と共に街を眺めてた。
そして皆が無事に一日を終える事に安堵してた。
不思議。そんないろんな気持ちがあるのに複雑に絡む事もなくて、この飲み物のようにどこかすっきりとしてる。
このまま夜を迎えましょうか。



●ゆうぐれの瞬き
 高い雲が薄紫の夕方特有の色をしていた。
「……ふぅ」
 暑すぎた日中、いくらパラソルの下にいたとて涼しさは足りず、砂浜を美しく煌めかせる日差しを素敵だと思う反面、耐えるしかない暑さが少しばかり憎たらしいと思ったのは仕方の無いこと。
 カロン、と氷が躍る。
 しゅわりと立つ細かな泡が遊ぶグラスに眦緩めた夜鳥・藍(宙の瞳・f32891)が、ふっと空を仰ぐ。
 未だ夕日の眩しさが残るから、そっと陽光を手で遮りながら。
「綺麗……」
 じわりと汗をかきはじめたグラスを満たすのは東雲をイメージしたとされるグラスの裡は、今の空とは似て非なる朝迎える空のもの。
 そこに沈むのは菫の紫を凝縮した夜。
 くるりストローでグラスの口へ向け混ぜれば、ゆらりと夜空が天へと手を伸ばす。アプリコットの朝は鮮やかで甘酸っぱく、しゅわりとした炭酸の苦みが絶妙に心地良く、底で揺らめく菫の夜は想像よりも優しい甘さで後味はアプリコットよりも少々あっさりとしたもの。
「甘い……けど、甘すぎないのは炭酸のお陰かしら。これならきっと……この味なら、|あの人《過去世の自身》も好きかしら……?」
 この光景を楽しみながら朝を呑む。
「(水平線へ沈む光が、優しい……|あの人《過去世》みたい)」
 日が沈むこのブルーアワーの休暇の一時、誰もがほぅっと息をついているのが聞こえるような気がして、不思議と藍も胸を撫で下ろしていた。
 ――今日一日を、無事に終えている。
 その事実にどうしてか、安堵を覚えてしまう。
 何も。
 何も、柵を感じない。何も、憂いが無い。何も――ただ、ひどく穏やかな安堵だけが藍の胸にはある。

 猟兵の生活はまるで嵐のように慌ただしいからだろうか?
 それとも……――胸の奥で木霊した“良かった”というごく小さな声のせい?
「……――“よかった”」
 今日、この海岸に居られて。
 今日、あの夕日を見られて……――あぁ、よかった。

 しゅわりとグラスで瞬いた泡がカロリと氷を躍らせる。
 
 
 

大成功 🔵​🔵​🔵​

海藤・ミモザ
👊を誘い

2023水着コンの装い

お酒はないけど…こういう時間も素敵でしょ?
ドルデンザは何にする?
私は白昼アイスミルク
マンゴーもアプリコットも好きだけど
夜こそお酒があるんじゃないかなーと期待して
今の内に胃を整えておこうかな、って

ブルーアワーって見たことある?
私、妖精だった頃に見てたのかもしれないけど…
こういう一瞬一瞬の風景を、そうと知らずに…当たり前のように見流してた
二度と同じ刻なんてないのにね

だから、今日ドルデンザと一緒に見たこの景色は忘れない
この彩りも…あなたが傍に居ることも、心から感謝しながら

そして、また来年もその先も二人で見られたら…
あなたもそう願ってくれたらいいな、なんて
想いは内に秘め



●“勿論、約束ですよ”と笑うから
 カタン、とテーブルにグラスを置く音が耳を掠めた後、ぼうっと椅子に背を預けブルーアワー眺めていたドルデンザの視界を淡い黄緑が掠めた直後、突如視界が柔らかに塞がれる。
「おや、今日は悪戯好きな妖精さんなようだ」
「えへへ、だーれだ!」
 “ミモザ”と笑ったこの人の視界を、独占できたらいいのに。なんて乙女心を知ってか知らずか、するりと細い手を取ったドルデンザが喉を鳴らして笑っていた。
「んー、ドルデンザならびっくりすると思ったんだけど!」
 視界奪った手をすぐに外して微笑む妖精こと海藤・ミモザ(millefiori・f34789)が海色の瞳を甘やかに細めれば、笑った深緑の隻眼がつられて緩やかに細められる。
「これでも驚きましたよ?まったく。貴方という人はいつでも可愛らしい」
「……そんなこと言うのもするのも貴方だけだよ」
 軽やかに笑う貴方。濃い影がある癖に感じさせない貴方。そんな貴方がすき――なんて、あぁ。小さな声で呟いたミモザの声は漣に食われ、クゥと鳴いて高く飛んだカモメが巣へと帰ってゆく。
「ミモザさんはミルクですか?てっきり甘い物かと」
「そう、アイスミルクにしたの。ドルデンザは?」
 すっかり慣れたドルデンザの丁寧なエスコートと、その名の呼び捨て。ミモザ自身、まだ本当は心の奥底でドキドキしているのだけれど、ドルデンザはまるで日常の延長のように呼ぶものだから。
「(たぶんドルデンザ……自分で気付いてない、よね)」
 ミモザが呼び捨てにする度、ドルデンザは甘やかに微笑んでいるのだ。
「私はアプリコット抜きの東雲を。けれど付けてもらったので一口含んで飲んでみませんか?」
「い、いいの?」
「えぇ、ぜひ。“二人だからこそ分け合える”のでしょう?」
 受け取ったグラスが、夏の昼の名残に汗をかいている。
 熱い掌で受け取って片手で杏子のコンポートを一口。甘酸っぱさ残るまま飲めば、爽やかな甘みのある菫のコンフィチュールの酸味はきっと薔薇だろう。しゅわりとしたソーダの爽やかさにきゅっと目を瞑り、染み入る感覚を味わえば涼やかなミルクとはまた異なる甘さ。
「~~っ、おいしいっ!」
「それは何よりです」
 違う物に出来て良かった、なんて。そんなことをさも当たり前のように言うから。
「(……あぁもうっ)――ねぇ、ドルデンザはブルーアワーって見たことある?」
 話題を変えてしまえ!とグラスを置きながら問いかければ、“ふむ”と顎を擦るドルデンザが遠くを見て――……。
「ありません。きっと私は歳の数以上にこの空を経験したことでしょう。けれどこうも落ち着いてみた経験はありません……ミモザさんは?」
「私は妖精だった頃に見てたのかもしれないけど……こういう一瞬一瞬の風景を、そうと知らずに……当たり前のように見流していた」
 一羽、飛んでいたカモメにもう一羽のカモメが寄り添う。
「……――二度と同じ刻なんて、ないのに」
 遠く。
 ミモザがはるか遠くを見ているように見えてドルデンザは反射的にその手を取った。
「ドルデン――、」
「貴女とこの空が見られてよかった。今まだ夕日のある内に言わねば、と思いまして」
 珍しくドルデンザが焦った顔で言うものだから、ミモザはと言えばきょとんとするばかり。取られたその手が大きな手に包まれ、強すぎない力で握るから。
「……ねぇドルデンザ、また来年も、その先も、二人で……」
「まいったな、他の様々な物も一緒に見てくださるのではなかったんですか?」

「へ……へぇ!?」
「おやおやーわたしひとりでみないといけませんかねー?」
「ちがっ、そ、そんなことないけど!?」
 “おや困ったなぁ”なんて、狡い人!と頬膨らましたミモザの小さな拳を軽快に避けていたドルデンザがひょいとその手を取った。
「見ましょう。だってミモザ、貴女から約束してくださったではありませんか」
「ぜーったい!ぜーったいだからね!」
 カランと、グラスの氷が涼やかに踊る。 
 

大成功 🔵​🔵​🔵​

真宮・響
夫の律(b 38364)と参加

ブルーアルカディア。律にとって思い入れが深い土地だ。律が家族の元へ戻ってきた去年の夏に全力で世界を走り回った。今はこうしてゆっくり夏のひと時を過ごせるようになった。律も戦いじゃなくてこうしてブルーアルカディアを楽しむのもいいだろう。

アタシは盈月クリームソーダを頂く。夜空に浮かぶ月。まるで息子を表してるようだねえ。ああ、クリームソーダにレモンアイスが良く合う。暑く火照った体に良く沁みる。

律は東雲ティーソーダかい?ああ、黄昏を名乗る律にはお似合いだね。それも美味しそうじゃないか。

陽が沈む風景で律と過ごすカフェ。ああ、一緒にいるのが当たり前になったねえ。夢のようだ。


真宮・律
妻の響(f00434)と参加

去年の夏に家族の元へ還ってきてブルーアルカディアの戦場を駆け回った。もう一年なんだな。ああ、こうして戦い以外でブルーアルカディアを訪れ、響とゆっくりできるなんて感慨深い。

あ、好きなの注文していいんだな?じゃあ俺は東雲ティーソーダを。まあ、一応黄昏を名乗る身だからな。

ふむ、夕暮れを表すアプリコット色のソーダに菫のコンフィチュール。色の取り合わせもいいが、味もいい。響のクリームソーダも美味しそうだ。

還ってきて一年、こうして響と一緒に過ごすのが当たり前になった。無事に一年経って・・・カフェと二人でゆっくりできるとは俺は幸せものだな。



●君とだけ。
 たった一年。されど、一年。
 |この地《ブルーアルカディア》は昨年、世界として生存するか断絶するかを争った場であると同時に、真宮・響(赫灼の炎・f00434)にとっては13年前に亡くした夫 真宮・律(黄昏の雷鳴・f38364)が“魂人としてかえってきた”年でもあった。
 真白い髪を海風に揺らしながら、律が夕日沈みゆく空を見て、穏やかに微笑んだ。
「去年の夏、あんなに激しい戦いがあったとは思えないな」
「あなたは帰ってきたばっかりだったのに……全然、変わっていなかったんだよね」
 律に肩を抱かれながら感慨深げに夕日を見る響がそうっと律の手に触れれば、確かに握り返してくれる。何度この感触を感じてもただ、尊い。失った経験があるからこそ響は心から実感すると同時に、戦場へ飛び込んでゆく律の背も、鮮やかなグリーンの眼差しも。そして――必ず、自身を呼んでくれることも。律は何にも変わっていなかった。
 猟兵になった響だからこそ、“今度は逃げろと言わないで”と思っていたことを律へ声に出して伝えられる。共に戦える喜びをぐ深く実感する響の傍ら、律もまた|あの頃《別れざるを得なかったあの瞬間》から遥かに成長した娘と妻、そして義理の息子と共に存分に戦場を駆けられる喜びが胸にある。
 けれど今日は夏休みを楽しむ娘と息子はお留守番。夫婦水入らずで水平線を眺めた後、二人が向かったのかカフェスペース。
「律はどれにする?」
「あ、好きなの注文していいんだな?じゃあ――」
 種類は少ないがそれぞれが特徴的な時間をグラスへ込めたドリンク。
 響は盈月クリームソーダ、律は東雲ティーソーダにし、乾杯は静かなグラスのぶつかり合う音で。
 律は店員が教えてくれたようにくるりとストローでグラスの底から救いあげるように上へ混ぜれば、沈んでいた菫のコンフィチュールと沈みゆく杏子が緩やかに混ざってゆく中、しゅわしゅわと上がる細やかな泡が不思議な光景を描いてゆく。
「律のも中々綺麗だね。アタシとはまた違う感じ」
「まあ、俺は“黄昏”だろ?だから対のものも良いかと思ってな。響のクリームソーダ、たしかアイスはレモンだよな?」
 ゆっくりと夜空のようなソーダをブラックのストローで混ぜれば、しゅわりと立つ泡が緩やかにほろりと満月たる|レモンアイス《満ちた月》を欠けさせ行く様はなんとも美しい。ちゅうっと吸ったしゅわしゅわ。クリームソーダに感じる青春なんて、響自身ありはしないけれど、なんだか不思議と律と向き合ってこうして過ごす一時はとても懐かしい。
 13年の空白――……というには酷な時間、娘と息子にとっては響が母であり父だったのだ。孤独では無くて、それでも、律と向き合って初めて堰を切ったように溢れた寂しさも悲しさも悔しさも何もかも綯交ぜになったあの時間を、今は飲み干してしまおう。
「ふふ。そ、だって|あの子《瞬》に似てるだろ?それに火照った体には良く沁みる」

 ――当たり前でなくなり一時過去の幻だった時間が今、手の届く範囲にある。
 繋いで離さなくていい手が、此処に在る。
 “あぁ、君が居てよかった”
 きっとそれは様々な感情を混ぜ過ぎたからこそごく普通の響きとなった言葉であり、そのたった10文字に籠めたこころこそ、お互いだけが知っていればいい。
 |律《響》だけが知っていれば、十分。
 
 
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

風魔・昴
北十字・銀河(f40864)と
呼び方→銀さん
アドリブ歓迎

「でしょ?この世界は私の一番好きな世界なの」
この空を見とれている銀さんの顔を見つつ、ふふっとほほ笑む
「もしかしたら銀さんも気に入ってもらえるかなぁって……」
戦いの多い世界にいる彼だから、ちょっとでも落ち着けたらとおもって誘ってみたの
銀さんの表情が何かを思い出してるように見えるけれど……きっと元居た世界の事かな?

もう一度空を見上げる
「あ、見てみて銀さん。一番星!」
やったね!と笑顔で

星空も綺麗で好きだけど、この時間も優しさがあふれてる
もう少しこの景色を銀さんと楽しもう


北十字・銀河
風魔・昴(f06477)と
呼び方→昴
アドリブ歓迎

「綺麗な空だな」
昴に連れてきてもらったのはブルーアルカディアという空の世界だ
赤みを帯びたオレンジ色の夕日がゆったりと染める
「ん……なんだか心が落ち着くな」
彼女の顔を見て、ありがとうな。とほほ笑んで
これはきっと夜空も美しいのだろう、星空が好きな彼女の事だから
黄昏時はいろんな思いでもよみがえる
前の世界の事、こちらに来てからの事……

昴の声で我に返る
空を指さす先には一番星……
「本当だ、結構明るいな」
笑顔で彼女にそう答え、その星を見上げる

もうすぐ星達の時間になる
それまでもう少しこの空を彼女と一緒に堪能しよう



●遠き光の救いとは、
 少し前に立つ風魔・昴(星辰の力を受け継いで・f06477)の影を伸ばすのは煌々と輝く熟れた夕日の朱い光。
 ゆっくりと水平線の向こうへ夕日が沈んでゆく光景をどこか茫洋と眺めた北十字・銀河(星空の守り人・f40864)が、ぽつりと呟いた。
「――綺麗な空だな」
「ふふ、でしょ?|この世界《ブルーアルカディア》は私の一番好きな世界なの」
 すれば髪を風に遊ばせていた昴が空の国であるのに塩混じりの不思議な海風を両手いっぱい広げて受けながら微笑み振り向けば眩しそうに瞳細めた銀河がこくりと頷き、慣れない世界だからか無意識に肩に入れていた力を抜く。
「ん……なんだか落ち着くな。世界は違うのに、こういう空は変わらないのかもしれない」
「こんなに綺麗な夕日なら、もしかしたら銀さんに気に入ってもらえるかなぁって……」
 天空世界 ブルーアルカディアの移り変わり行く空ならば、言葉で飾らない時間を楽しめるかもしれない。
 その昴の想いは銀河にもよく伝わっており、どこか伺うような視線にも不思議と凪いだ気持ちのまま微笑むことが出来ていた。
「(黄昏――……)」
 ただ、どうしたって昴の脳裏を過ってしまうのは以前の世界のことと、現在居を置く世界のこと。
 よく“どこに至って空は繋がっている”なんてそれこそものの例えのような物だと思っていたのに、いざそう感じ始めると銀河自身、何気なく眺めていた空がこの世界と繋がっているのではないかと思えてしまう。
「(きっと違うだろうに、不思議だな)」
 騒がしくない静かな時間だからこそ、考えごとが増えてしまう……。そう銀河が思考の海に沈みかけた時、その横顔を見守っていた昴が、導かれるように空を仰いで――……。
「あ!見てみて銀さん、一番星!」
 紺色に染まり始めた夜空に、ぽつりと輝く眩い星を指差しまるで宝物を見つけたようにはしゃぐ昴が控えめに銀河の袖を引き、ハッと現実へ戻ってきた銀河が数度瞬きをした後クッと喉を鳴らし笑っていた。
「本当だ、結構明るいな。……――ありがとう、昴」
「どういたしまして!やったねっ、一番星みーつけた!」

 そう快活に微笑む昴自身、本当はどう銀河に声を掛けようか――迷っていた。
 元気を出して?大丈夫だよ?浮かぶのはどれもこれもが的外れに聞こえるような言葉ばかり。
「(……きっと違う。銀さんはそんなこと今考えてない、よね)」
 胸元で揺れた三日月のペンダントを握り、何となく空を仰いだ昴の視線を引いたのは銀色にも見える不思議な輝きを放つ一番星!
「(そうよ。きっと“今”はそんな時間じゃない……なくていい、のかも!)」
 “今”はきっと、ただこの空の国の美しい一時を楽しむ観光客でいていい。
 猟兵であっても、唯の人であっていい時間のはず……!

 見つけた一番星は、きっと二人を導くはずだから。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

楊・暁
☔と並んで座り

藍夜は東雲、俺は盈月のにしねぇか?
“お互い”を交換してぇな

…なぁ、去年二人で秋の海行ったの、覚えてるか?
あの時もう、藍夜の事好きだった
だから二人っきりで出かけられるのがすげぇ嬉しくて
前の日なんて(いつも眠りは浅かったけど)
わくわくし過ぎてあんまり眠れなくて
ふふ、なんか懐かしい

しゅわしゅわソーダと盈月を味わいながら
同じ気持ちなら嬉しくて頬緩み

…俺、藍夜と巡り会えて本当に幸せだ
いつも一杯幸せ貰ってるから、俺もお前を一杯幸せにしてやりてぇ
一緒にいるだけで、なんて好意に胡座かかねぇで
お前の喜ぶ顔が一番だから

ばっ…馬鹿…!
夕陽で赤く見えるだけだ…!

照れ誤魔化す&甘えるように藍夜の肩へ凭れる



●|藍《愛》へゆく時間
「――藍夜は|東雲《朝》、俺は|盈月《満月》のにしねぇ?」
「いいが、どうして?好きなので良いんだ?」
「だって……|俺《東雲》と|藍夜《盈月》、だろ?」
 雲の椅子を並べ二人一緒に腰掛けていた楊・暁(うたかたの花・f36185)がふと身を預けていた御簾森藍夜を見上げこてんと首を傾げ“だめ?”と問えば、“喜んで”と暁の想定通りの答えが二つ返事で返って来る。
「いいのか、俺が|朝《心音》を飲んじゃって」
「いっ……いいよ、藍夜なら。俺だって|月《藍夜》食うし!」
 意味深に聞こえそうな藍夜の言葉は揶揄いと愛情交じりのいつでも本気。以前ならきっと赤面して“やめろ”と言って、それこそ暁は藍夜から顔を背け逃げていたことだろう。
 一緒に暮らし、日々の藍夜を知ったからこそ暁は逃げなくていいのだと知っている。藍夜は装飾的に褒めているのではないし、説明すると長いのだが端的に言って全てが愛だから。
「(……藍夜、ほんと俺のこと好きだよな)」
 本音を言えば藍夜から暁自身へ向けられる感情は“すき”の二文字では収まりきらない代物だと暁自身よく理解している。
 純粋に愛おしいからこそ暁を褒め、|本当の名《心音》を呼ぶ声は何よりも甘く、繋がれた手を確かめるように指で撫で擦り握るのだ。
「俺は藍夜のそういうとこも好き。んっ、レモンアイスピール入ってて旨い!」
「俺も心音好き。それにそれくらいなら俺家で作れるし、こんな着色料入れないし……」
 小さく頬膨らます幼い藍夜の顔を至近距離で見られるのは暁だけだろう。
「知ってる。藍夜のが一番美味い。ほら、これはこーいう味。あーん」
「ん。レモンは砂糖漬……いや、煮か。あと果汁に柚が混ざってる」
「なぁ藍夜、俺これ家で食べたい」
「勿論作ろう」
 自身が食んだ匙で食べさせあいもお強請りも慣れたもの。暁にとって|藍夜《夫》は夫で、自身はその“妻”。息をするように自身を美しい言葉で褒め、真っ直ぐな愛を注ぐこの人を|これ《いとおしい感情》以上にどう思おうか。
 ただ大切な相手を愛で愛でられ、美味しいものを食べるという、贅沢。
「心音」
「ん。……なぁ。去年二人で秋の海行ったの、覚えてるか?」
 指絡め繋いだままの暁の手を軽く握る藍夜に甘やかに呼ばれ、頭を擦り寄せた暁が口にしたのは昨年秋の話。
「繰り返しの夏、だろ?」
「それ!あのな…おれ、」
 いつか、改めて自分から伝えたかったこと。
 “好き”も“愛”も何も知らなかった――否、無意識に分らないフリをしていた自分がいた、あの時間を|藍夜《愛おしい人》と答え合わせをしよう。
「……あのな、おれ|               《あの頃から藍夜のことすきだった》んだ」
「……は?」
「だって……二人っきりで出かけるのも、その、すげぇ嬉しくて。楽しみで……前日なんて――」
 緊張と興奮で眠れなかったこと。寂れた海岸の理由はきっと自身が強く“二人きりだ!”と思い描いていたからかも、なんて。
 きょとんとしてしまった藍夜が二の句を継がない。
 なんでこんな恥ずかしいことばかり!“やっぱり嘘!”と暁が誤魔化そうとするよりも早く、藍夜が動く。
「ちょ、らんっ」
「しおん」
「え?なに、なんっ、!」
 突然抱き締められたと思えば抱き上げられて藍夜の膝の上。
 必死に握っていたグラスは無事で、ただ肩口に額を当てるように抱き込んだ藍夜がもそもそと囁いた声を狐の耳はしっかりと拾っていた。
「……………………すきだ。けっこんしてくれ」

「忘れんなよ。結婚、2ヵ月前にしただろ?」
「した。すき。愛してる」
「俺もあいしてる」
 そう暁が口にした瞬間、ガバリと藍夜が顔を上げ漆黒の瞳とぶつかる。
「……――すまない心音、もう一回頼む。あとその顔も写真を撮ろう?」
「ば、……馬鹿っ!言ってはやるけどこれは夕日で赤いだけだ……!」

 募るばかりの愛おしさ。
 
 
 

大成功 🔵​🔵​🔵​

蓮見・双良
🪞さんと

案内お疲れ様です
笑顔で手を差し出し
エスコートのつもりですが…手を繋ぐのでもどちらでも

杜環子さんはどれにしますか?
彼女が悩むものあれば、選ばなかった方を僕が注文
特になければ東雲ティーソーダを
彼女に想いを告げた、あの日が過ぎって

ブルーアワー…
写真は見た事ありましたが、こんなにも綺麗なんですね
初めて見るのが杜環子さんとで嬉しいです

杜環子さんは?と問いかけて一瞬躊躇う
…彼女も初めてだったらいいなと思いつつ
彼女の方が経てきた月日が長いなら、違う事の方が多いだろうと
頭では納得しているのに

どうにも、彼女が絡むと我儘になってしまう

いつから自分はこんなにも欲深くなってしまったんだろう
自分らしくはない…かもしれないけれど
これが“生きる”という事なら…存外、それも悪くないし
これが本来の“僕”なんだろう
――この気持ちは嘘偽りのない、本物だから

この景色が互いの初めてじゃなくても
これからそれを増やしていけばいい
ならば問うのはこうだろう

…杜環子さんは、どんな景色が見てみたいですか?
僕は貴女となら、どこへでも



●君のようなそらと笑って
「案内お疲れ様です、杜環子さん」
「ありがとうそらくん、お待たせしてしましました」
 差し出された双良の手を上品に――ではなく、ぎゅっと握る。離さないように、たしかめるように。
 そんな杜環子に双良が瞠目したのも一瞬。何事も無かったように“やっと涼しくなりましたね”と微笑めば、どこか杜環子がホッとしたような顔をするから双良は柔く繋いだ手に力を入れた。離しませんよ、の意思表示。

 さくりと砂を踏み、差す夕日を惜しむように眺める杜環子の横顔へドリンクのメニューを手に、そっとそらは囁いた。
「杜環子さん、杜環子さんはどれにしますか?」
「そらくんは?……貴方、わたくしが選ばなかった方にしようとしているでしょう」
 むぅ、と眉寄せ“わたくし知っているんですからねっ”なんて膨れる顔さえ双良からすれば可愛らしい。どんな些細な顔も可愛らしいといえば、“あら贔屓目なのではなくって?誤魔化されませんからね!”なんて言うのだろう。
「――杜環子さんは可愛いですね」
「もー!関係無いでしょう今―!」
 ちょっと嬉しそうにしているのに、怒ったフリ。
 少しだけジト目になる杜環子が可愛らしくて、双良自身少し自分が彼女を揶揄っているような気もする。
「(だって、もっと貴女の色々な表情が見たいんです。僕は可愛らしい貴女の全てが知りたい)」
 メニューと睨めっこして百面相。
 “こっち?それともこっちかしら?”と、どうにも悩んでいるのは東雲ティーソーダと盈月クリームソーダらしい。ちらりと見れば目が合った。
 先程から指先がクリームソーダから動いていない、つまりはそういうことなのだろう。
「杜環子さん、僕ティーソーダにしますが杜環子さんはクリームソーダですか?」
 にこりと微笑みかければ双良とは違う青を持った瞳がじとりと据わる。
「そらく――……」
「杜環子さん、僕は別に貴女が悩んでいるから……ではありませんからね?」
「……ほんと?」
 言葉を遮ってしまったが、半分本当で半分嘘を伝えれば“むむむ”なんて唸る愛しい人。嘘も方便とはよく言ったもので、今こそ使い時だから許して欲しいと思いながら、双良は“分け合いませんか?”と微笑めば徐々に杜環子の表情が甘くなってしまう。
「じゃあ、絶対よ?わたくしだけなんてダメですからね?」

 運ばれたグラスの薄いガラス越し、シュワリと細かな泡が泳ぐ。ストローで混ぜればふうわり波打つ色が双良に思い起こされるのは杜環子に想いを告げた、朝のあの日。
「――ねぇ、そらくん。見て、夕日がとっても綺麗!ふふ、こうしてみると宝石みたいでしょう?」
 子供のように微笑んでいたかと思えば、ふふと微笑み艶やかな所作で手を伸ばした杜環子が、玉の様な夕日を指の上に。
 ふと夕日の照らされた杜環子の横顔がさっきよりも遠く見え、双良は無意識に手を伸ばしその手を掴んでいた。きょとんとする杜環子が、小首を傾げる姿にハッとして。
「……杜環子さんはブルーアワー、見たことはありますか?僕、写真では見たことがありますがこんなに綺麗だなんて初めて知って……」
「そうねぇ、」
 つい咄嗟に話を反らしてしまったけれど、言ってからみえおひきかk杜環子がそっと握り返してくる。
「……きっとね、わたくしは沢山の空を見てきたのだと思うの。でもね、落ち着いて見たことは無かったわ」
 毎日、幾年長い時間を歩いてきた。
 双良には分からない器物としての時間も、ヤドリガミとして人へと変じても双良の倍以上を杜環子は生きているのだから。
「こーらっ、わたくしの話は最後まで聞いてくださるのでしょ?」
「……えぇ、もちろん」
 ほの温かく小さな杜環子の手が双良の手を握り、迷いなく指を絡める。
 そうして胸に抱くと、フフと笑った杜環子が。
「あのね、貴方もわたくしも沢山きっと見る機会はあったのよ。けれど、きっと見ていなかった。だから“見た”のは今日が初めてでよいのではなくって?」
 “だめかしら?”なんて、さも当たり前のように欲しい言葉をくれる人。
 双良だって分かっている。杜環子の言う通り、歳を重ねる一年過ぎる中で見る機会も何気なくその時間を過ごしていることも沢山ある。
 それでもきっと、杜環子が初めてというのならばそうなのだと双良も思うから。
「――ブルーアワー、初めて見るのが杜環子さんとで嬉しいです」
「わたくしも嬉しいわ。大変、それに貴方がわたくしとの時間を飲んでいるんだもの。これ以上ないほど素敵ではなくって?」
 今、欲しいものの全てが双良の手中にあるはずなのに、どうしてこうも乾くのか。
「(どうして彼女が絡むと、僕はこうも我儘になってしまうんだろう)」
 “いつから自分はこんなに欲深くなってしまったんだろう?”、きっとこの気持ちも想いも欲望も“|蓮見双良《自分》らしく”ないのかもしれない。
 けれど目の前の彼女はそれでいいと、それがいいのだと、言っていた。
 “欲張りなさい”なんてお姉さんぶっていうのだ。こんなに幼い顔で笑うのに。
「……僕、また杜環子さんに教えていただきました」
「あら、そうかしら?……ん?そらくん?あの、手ぇ」
 くい、と指絡めた手を放そうとする杜環子の手を握り、今度は双良が指を絡めて離さない。“あら?えっと?”と徐々にあたふたし始める杜環子のグラスから金の貝殻が装飾されたスプーンを引き抜き、掬ったのは月のアイス。
「杜環子さんは、どんな景色が見てみたいですか?」
「……今聞きますの?」
「はい」
 微笑んで匙を差し出せば、ぱくりと杜環子が食いついて。
「わたくし、ん。今度はどーんってあがるおーっきな花火が見たいですっ」
「秋の花火大会を探してみましょう。きっと素敵な夜になります。そうだ、縁日に行くのも楽しそうですね」
 花火に屋台は付き物だと思い出した双良が口にすれば、パッと杜環子の瞳が輝いた。
「行きましょうね、約束よ!」
「勿論。僕は貴女となら、どこまでも」

 きっとこの嘘偽りない気持ちと共に“生きる”のも、存外悪くはないだろう。

大成功 🔵​🔵​🔵​

神野・志乃


水着の縁から滴る海水をタオルで拭って
少し泳ぎ過ぎたわね、とパラソルの下のふかふかに身を預ければ
そのまま微睡んでしまいそうな心地に

……いえ、いえ、久々の海にうっかり燥いでしまったけれど
ここへやってきた本命はこれから、と真正面へ向き直る

眼前に望む、暮れ泥む落陽
今はまだ、夏の勢いのままに朱金色を誇っているけれど
直視するのは少々眩しいからと、日が照らす海面の煌きのほうへと視線を移ろわせてしまえば
一瞬、その次の一瞬と、雄大が幽冥に成り変わっていって

目が離せないほどの茜色に漸う染まりゆく夕日が……あまりに綺麗なものだから
濡れた炎のように滲む空を、幼子のように泥む瞳で眺める

どれ程の時間が経ったのかしら
飽きもせず、微動だにせず、ただただ、ただただ、空を眺めていたけれど
空の端がようやく硯を擦り始めたころ、ふと思い立って
店員さんを呼んで、白昼アイスミルクをオーダー

グラスの底の甘酸い太陽の欠片をしばらく見つめ、柄にも無く口の端に笑みを浮かべながら
一人、陽の光の名残を惜しむ
今日は、良い天気だったから



●透明な空へ
 濡れてじっとりと重くなったサンダルをてに、艶やかな黒髪を滴り落ちる滴を柔らかなタオルで拭う。
「……ふぅ」
 常はロングスカートのセーラー服を纏う神野・志乃(落陽に泥む・f40390)も、今日ばかりはシンプルな黒のビキニに身を包み一時を楽しんでいた。
 ただ羽織っていたTシャツを絞らねばならなくなったのは、少し大きな誤算だったけれど。
「(波打ち際だったのに、岩で波が跳ねるのは想定外よ)」
 ビーチコーミングの際、丁度見つけてしまった潮溜まり。綺麗な色のアメフラシと白く艶やかな蟹が気になって志乃が覗きこんだ時、夏の洗礼のように頭から波を被ってしまったのだ。
 髪も絞り体も拭えば、訪れるのは緩やかな疲労。
 引き寄せられるように柔らかな雲に身を預け、襲ってくるのは眠気混じりの今日の散策の記憶。
「お話通り、綺麗な砂浜だったし……そういえば、これも」
 白い砂浜は常に美しく涼やかだが日差しは熱くも心地よい夏を含み、漣の音に塩混じりの海風が擽ったかった……なんて思い出す中、“そういえば”と志乃は見つけた貝を取り出し、そうっと耳当てる。
 不思議と聞こえてくるのは、押し寄せる漣とどこか深い海の記憶を凝縮したような音。
 本当は、音の根源が違うことを志乃は知っている。けれどそういう御伽噺に身を任せるのも悪くはない――……。
 と、微睡みかけてハッとする。
「――っ、いえ、いえ、いけないわ。此処の本番はここからなのよ……!」
 志乃自身、この穏かな一時を楽しみにしていたのだ。
 夏は暑いばかりではなく、日差しが出ている時間だけが楽しいわけではない。
 日中は真白く輝いていた太陽が徐々に黄金へ、そして熟れゆく美しい朱へ染まりゆく一時こそ、大人として楽しめる時間なのだから。
 志乃の視線は水平線へ。
「……――きれい」
 きらきら、きらきら。瞬く水面。迸る朱の陽光。
 無意識に口に出来たのはよく聞くような言葉だけで、これこそ所謂“言葉を失うような美しさ”なのだと志乃は理解できた。
 ――きっと、本当は約14年間重ねた人生の中、幾度も幾度も見てきたはずなのに……どうしてか今日は特別。
 とろりと蕩けゆく朱濃くする夕日の鮮やかな輝きが真白い砂浜を、志乃の爪先を染めてゆく。
 人間にも魔法にも、この夕日を目の当たりにした瞬間の感動の再現は叶わない。この一時は、尊い自然からの贈り物。
「(どうしてなのかしら……)」
 彼の夕日が直視できないことを志乃は幼い子供のように少し惜しいと思いながら、自身の大人の部分が淡々と“目を傷めてしまうのよ”と諭すのも分かっているけれど。
「(あの夕日は、美しすぎて人の目には|過分《眩過ぎる》のよ……)」
 貝殻が海の記憶を抱き、ずうっと耳寄せた者に漣の記憶を伝え続けるのと同じなのだ、きっと。
 この美しさの前に医学的な根拠も科学的な根拠もいらない。夢のよう、でいい。
 見つめられぬ夕日から志乃がそっと穏かに漣を織る水平へと視線を滑らせれば、遠くイルカの群れが今日の終わりを惜しむように遊んでいた。
 志乃はいつか読んだ本の一節を思い出し、口遊む。
「――夕日が燃えている。赫々、世界の何より鮮やかに」
 幼心に、そんなわけが無いと思っていた。
 学校でよく“作者の心情を、”などと先生は言うけれど自身はそんな感情を抱いたことは無いから模範的な回答を書き込んでばかりいたけれど、きっと授業で読んだあの本の作者は、こんな空を見たのかもしれない。
 幼気に泥む志乃の黒い瞳は、一つだけ大人になったのかもしれない。
「(そうよ、この空は燃えているよう)」
 これこそが、|目が離せぬほど《世界の何よりも》鮮やかなる夕日。
 そんな夕空を背に跳ねるイルカの影に志乃が瞳を細めたその時、一際鮮やかな光が迸る。
「あ……!」
 ほんの一瞬志乃が目を離した隙に、とろりと蕩けていた夕日がとうとう水平の向こうへと眠りについた。
 空へ下りていた菫色の帳が徐々に折り重なり濃くなれば、雄大だった風景は幽冥なる夜へとなって初めて、志乃は再び柔らかな背凭れに身を任せてふと気付く。
「……私、緊張していたのね」
 瞼を下ろせば思い浮かぶのは朱金に染まる鮮やかな水平線。目の端に見たあの夕日の赫も、煌めく漣の光景もきっと忘れない。
 夜空と馴染んだ水平を微動だにせず眺めながら、ぼうっとしていた志乃は深く夜へと染まり始めた“世界の境”が墨を落とす頃、ゆっくりと身を起こす。
 握っていたままだったらしい貝殻を優しくテーブルへと置き、くるりと回転する雲の椅子ごとテーブルへ向き直り視線を落としたのは涼やかな字の綴られたメニュー。
 ザァー……っと貝殻が抱いていた漣の音を横に、オーダーしたのは白昼のアイスミルクだ。

 透明なストローで底から救うように混ぜるのだと店員に教えてもらった志乃は、恐る恐る真似してみる。少しの理想を以て再現するのは日中の一時に見た、幻のように真白く見える海に差した鮮やかなる陽光。
「(……こう、して――こうよっ)」
 くうるり底を嘗めるように一周、からするりと上へ引き上げて!
「――悪くはない、わよね?」
 すうっとガラス越しに登った橙の陽光が散り沈んでしまう前にストローを差し味わえば甘酸っぱい陽光を追うのは柔らかなミルク。

「……甘い、けど酸っぱい。今日は、良い天気だったわ」
 常は表情硬い志乃の口角が柔らかに上がっていたのは、机上で波音を抱いていた貝殻だけの秘密。
 
 
 

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 日常 『宵のソラカフェ』

POW   :    少し冷えた時間に温かな料理を

SPD   :    流れ星を探しながらドリンクを

WIZ   :    目移りするスイーツを選んでじっくりと

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


「お待たせいたしました!ふふ、夜は夜で素敵でしょう?ご覧になって、ほら星が」
 瞬く星々は宇宙を除く数多の世界を探してもこれほど美しいのはブルーアルカディアかしら?そう微笑んだ壽春・杜環子(懷廻万華鏡・f33637)がクスクスと微笑み次に案内したのは夜の海――……ではなく、海上に設けられた真白いテラス席。
 曰く、海風を楽しみながら“空の海”も楽しめるのだと言う。
「ふっふっふ。こちらですのよ!」
 じゃじゃーん!と杜環子が取り出したのは戦端が光る所謂|マジカルロッド《魔法少女ステッキ》。
 海をイメージしているのか、巻貝やヒトデ、蛸の足で装飾された銀のロッドの先端には閉じた二枚貝が。
「えっと……んっと……ええっとぉ」
 マジカルロッドを手に一瞬ドヤ顔をしたのだが、どこか押しても何かが予定通りにいかず首を傾げて四苦八苦。そっと近づいたカフェの店長が“こちらです”と教えた場所を押せば、二枚貝が開き内の真珠がきらきらと瞬いた。
 ちなみにここでほとんどが「(あれ魔法少女系の)」などと思ったのは秘密であるが、Take2と言わんばかりに“こちらですのよ!”リターン。
「ここを――……そう、ここ!この蛸足の3つ目の吸盤を押すと……ほら!ふふ、あ!これ別に光るだけが楽しいのではなくってよ!」
 ほんとかなぁ?
 一部ちょこっとチベスナ顔になった人もいたりいなかったりしたが、もう一回“なくってよ!”と念押しされたので置いておいて。
「こうして空へ向けてゆっくり8の字を描きますの。大きくなくていいわ、中くらい?そうすると――……」
 ふわ、と何かが空から寄って来る。
 ふわ、ふわ、ふあ――……それは不思議な虹色に煌めく雲霞のような手のひらサイズのクラゲであった。
「これは夜夜中クラウドジュエリー。敵性は一切無く、雲に紛れて空を行く生き物ですのよ。この子達は温かい空の海好きですゆえ、がちょうど今時期この島上空を通過する時期だそうですの」
 夜夜中クラウドジュエリーは光で仲間を判断する。
 遠くとも広大な感知範囲で必ず仲間を見つける習性があり、その習性を利用したのがこのロッド。
「ほら、この輝きはこの子達のホログラムのような輝きに似ているでしょう?それでね」

 おいでおいで、遊びましょう。
 夏の夜の思い出に一つ、遊びましょう。

 温かな食卓を不思議な海月と囲む思い出も、良い思い出になるかもしれない。




 °˖✧|Dinner of the day《今夜の一皿》✧˖°

 🌕満月オムライス
  香ばしいケチャップの香りをたっぷり纏ったお米はツヤツヤ。
  細やかにカットされた緑黄色野菜のチキンライスの上には三日月型の黄金色の卵を。さぁ、そっとナイフで月を目覚めさせて。
 (タンポポオムライス)
 🌃深夜のビーフシチュー
  これは秘密。じっくり煮込んでとろとろのお肉も野菜も、ほろりと崩れる繊細さ。
  食欲をそそる香りのブラウンナイトには、真白いクリームで仕上げに描いた星がよく似合う。
  (牛頬肉のビーフシチュー)
 🌇黄昏のトマトクリームパスタ
  夕日色のトマトクリームで染まったのはペンネの街。
  中央に乗ったまん丸なトマトの夕日を崩して、どうぞ。
  (ペンネのトマトクリームパスタ)
 🕯灯燈し頃の団欒ピザトースト
  鮮やかなトマトソースの上にはカラフルピーマンとカリカリベーコン!
  簡単じゃがいもクリームソースのお布団をかけて、仕上げにはたっぷりとろけるチーズのリボンを結ぶ。
  集めに切ったパンの上には素敵な団欒。どうぞ美味しく味わって。
 (ポテトホワイトソースのピザトースト)

 °˖✧|Sweets of the day《今夜の甘き一皿》✧˖°
 🌙|暁月《ぎょうげつ》
  夜名残の葡萄寒天の下からは目覚めるは|果物時計草《パッションフルーツ》の朝。
  氷し姫林檎の三日月を隠す一皿。
 🌆|夕闇《ゆうやみ》
  クランベリーの夕暮れにチョコレートの影を伸ばすのはナッツ抱いたブラウニー。
 🏞️|真昼《まひる》
  暑い夏が焦がしたクリームブリュレには、向日葵色のレモンソースを忍ばせて。

 °˖✧|Drink of the day《今夜の一杯》✧˖°
 ⛅昼下がり
  不思議なブルーアルカディア限定の積乱雲の子雲がら蒐集した水で水出しした紅茶。
 🌌夜もすがら
  夜空を彷徨う不思議な朧雲を集め滴った水で水出しした珈琲。


 各メニュー頭の絵文字を字数短縮にお使いください。
 クラゲ遊びは強制ではございません。もし楽しむ場合、🪄の絵文字をご利用ください。
 絵文字なしだけれどクラゲ遊びをされている方はナチュラルに魔法少女ステッキがその手に。
 
 
 
 °˖✧|tonight's secret《今夜の秘密》✧˖°

       Attention!!
 これは大人だけの秘密。子供にはまだ早いのさ。

 🪸マーメイドラグーン
  グラスの縁に鮮やかなレモンを拭う。
  ウォッカにレモンジュースとクラッシュアイス、ブルーキュラソーのブルーにはチェリーをカットしたサンゴを沈めて。
 🌊ガルフ・ストリーム
  パイップル、グレープフルーツ、ピーチのジュースをウォッカ、ブルーキュラソーと合わせて。
  爽やかな夏の波で目にも眩しいブルーカラーにはお好きなカットフルーツの花を咲かせよう。
 🍓アルバ・アリバ
  クランベリー、ブラッドオレンジ、パイナップルをよくシェイクしたミックスジュースに蒸留酒コエコエイ、ウォッカでキレを持たせた夕日色の一杯。お好みでバナナリキュールをどうぞ。
 🧜マリン・スノー
  鮮やかなブルーキュラソー引き立てる真白い乳酸菌飲料への隠し味はビールと炭酸。
  グラスへ注げば青からグリーンへ変化する鮮やかな一杯へ。
 
 
 20歳以上の方のみ、限定品。
真宮・響
夫の律(f 38364)と参加

おや、この虹色のクラゲは敵意が無いんだね。律が目を丸くしてるが。まあ、経験上警戒しがちのようだが、この子らを見ながら夜ごはんもいいだろう?

メインは灯燈し頃の団欒ピザトースト、デザートは真昼、飲み物はガルフストリーム。折角だから統一感を持たそうと思ってね。

律の選んだのもなかなか美味しそうだ。いつか子供達も連れてきたい?そうだね、子供たちも好きそうな料理沢山だし。今はゆっくり夫婦で夜ご飯と行こうか。

目の先には変わらない深緑色の眼差し。ああ、いつまでも見つめていたいと思ってしまうよ。


真宮・律
妻の響(f00434)と参加

まあ、ふわふわ浮いてる小さいクラゲに敵意が無いのはわかっているが、散々ブルーアルカディアの戦場駆け回った身としてはつい身構えてしまうな。まあ、浮いてるだけのようだし、夜ご飯食べようか。

メインは満月オムライス、デザートは暁月、飲み物はマーメイドラグーン。はっきり言って選ぶのに苦労した。全部のメニューを制覇したいぐらいだ。

また機会があったら子供達を連れてくるのもいいかもな。ここのメニューは子供達も喜びそうだ。そうだな、ひとまず二人でゆっくり食べたい。

え?いつまでも俺を見つめていたい?俺も同じ気持ちだ。いつまでも響と穏やかな時間を過ごしていたい。



●この答えは“あなた”だけに
 ふわ、と夫婦のテーブルの横を柔らかで虹色に煌めくクラゲが通り過ぎる。
「おや、この虹色のクラゲには敵意がないんだね」
「ああ、クラゲに敵意が無いのは分かってるんだが……」
 クラゲを横目に真宮・響(赫灼の炎・f00434)はどこか苦い顔をする夫 真宮・律(黄昏の雷鳴・f38364)の姿に瞳を瞬かせたのち、くつくつと喉を鳴らして笑ってしまう。
「……響」
「ふふっ……だって」
 二人とも大人だ。だが、“分かっていても”というものがある。
「しかたがないだろ?散々|この世界《ブルーアルカディア》の戦場を駆け回ってこういうのと戦ったんだぜ?」
「そうだね。でもほら、ただ浮いてるだけだよ?」
 ふうわり空を泳ぐクラゲ――の、|一番小さなもの《掌に収まるくらい》が一生懸命泳いで二人の間へ。
「ほら。つい警戒しがちだが、この子らを見ながらディナーっていうのも……」
「ま、ただ浮いてるだけのようだし……ご飯にするか」
 ふよふよ泳いでいたクラゲが夫婦のテーブル中央で休むように落ちる。何とも幼子のようなそれを響が指先で突いてみれば、慌てて空の海へ逃げてしまった。
 可笑しな子達だと笑っていたのも束の間、今度はふうわりお腹を擽る香りが二人の間へ訪れる。
 “お待たせいたしました”と運ばれたのはピザトーストとオムライス。
デザートと大人の楽しみは食後に、と勧められたのは純白雲を絞ったこの国独特のすっきりとした味わいと極僅かな炭酸含まれた水へ旬のレモンを絞った一杯。
「「乾杯」」
 鈴の音よりも透き通った音を聞くのは夫婦だけ。
 湯気立つそれを一口食めば、美味しさに少し目を見開いて夫婦で見つめ合う。
「律、どう?」
「旨い。こういうところは子供達を連れてきてもいいかもな」
 2人きりなのに、つい夫婦の話題は可愛い子供達へ繋がることは、親なわではの無意識。
「オムライス、奏が喜びそうだ。具がごろごろしてない分、軽くいけそう。響は?」
「ん!……うん、ここのチーズ結構伸びるけどこれ自体優しい味だし、ベーコンがいい塩気だね」
 ザクザクのパンに酸味あるトマトソースはクリーミーなポテトに包まれ、互いを引き立て繋ぎ合う旨味のピザトーストは家族のよう。
 食べやすいケチャップライスは案外具沢山。三日月のオムレツをナイフで割った楽しみも全て絡み合うと楽しめる味もまた、どこか家族に似ている。

 そんな食事を終えた二人の下へお次はデザート。
 響の前へ一見シンプルなクリームブリュレには陽光の名残のような金箔の片鱗と繊細なチョコレートの飾りの真昼に、律のデザートと揃いの姫林檎を薄く削ぎ咲かせた朝顔は波音聞こえそうな海の傍に。
 律の前にはグラスに掬い取った暮れ行くような空の名残に凍れる薄い姫林檎の三日月抱かせた暁月に、響と同じくカクテルグラスの底にはブルーの海とチェリーのサンゴ。
 もう一度、今度は親ではなく“響と律”だけの顔で乾杯を。
 スプーンの背で割るカラメルの下は存外柔らかいカスタード。薄い皿から底のレモンカードごと、一口。
「――っ!わ、すっぱい。けど……ふふ、甘いね」
「ん?そうか、こっちは喉越し良好で食後には丁度良い」
 レモンカードの予想以上の酸っぱさにクスクス笑った響が見上げた、思慮深い深緑の眼差しはどこまでも優しい。
「(……全然、変わってないんだね、律は)」
 何時までも愛おしい貴方。
 どうしたって空白だった時間が響にいつでも新鮮に律を見せ、どこか泣きたくなってしまうような感覚を覚えさせる。
 けれど――……気丈な振る舞い方は、よく知っているから。
「律はいつでもかっこいいね。アタシの目が離せなくなっちゃうよ」
「俺も」
「……へ?」
 見つめる深緑が緩やかに細められ、そこに籠められた愛情はきっと響だけのもの。
「俺も、響といつまでも。一緒だろ?」

 改めて言葉にするのは恥ずかしいけれど――……君と、いついつまでも。
 
 
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

北十字・銀河

風魔昴(f06477)と
呼び方→昴

女性は表情がよく変わる
目の前の彼女は小さな事にも感動できてしまうようで
思わず微笑んでしまう
「本当に器用だな。一つ一つ星の形が違うのは」
俺の品が運ばれてくると、それだけ?というような顔をするから
「あぁ、俺のはカクテルだからね」
🧜が置かれるとじっと見ている彼女
くすっと笑って
「今日は昴の『騎士君』に許可をもらってないからね?」
騎士でなく幼なじみだと分かっていても少しからかいたくなる

そんな話をしながら宝石のように散らばる星空を見上げると、すっと流れ星
「お、今昴の後を流れたよ」
やれやれ、食後はどうやら流れ星の数の競争になりそうだ……

よし、受けてたとう。本気で行くぞ?


風魔・昴

北十字・銀河(f40864)と
呼び方→銀さん

「わぁ、美味しそう♪」
そして綺麗で可愛い!とワクワクしながら🌃を見て……
「この星を描いた人、とてもセンスあるわ」
点のものがあれば星型もある
銀さんの言葉に、でしょでしょ?とうなずいて
「食べるのがもったいない……あれ?銀さんは飲み物だけ?」
飲み物は限定のカクテルのようで……
(うぅ、飲みたい……)
そんな気持ちが出てたのか彼からの一言
「騎士じゃなくて幼なじみだからっ」
これ、絶対分かって言ってるわね?
んもう!と拗ねてみる

星空の中の食事は格別
話も弾んじゃうわ
「え?後なの……今度は私が見つける!」
少し負けん気心を燃やして……

どちらが多く見つけるか、競争よ!



●夏夜の遊びに
「わぁ、美味しそう♪」
 ふうわり立つ湯気は食べた瞬間の味と美味しさを想像させるには十分で、風魔・昴
(星辰の力を受け継いで・f06477)はそこかそわそわと落ち着かなくなってしまう。
 そんな、昴の幼くも見えそうな表情を柔らかな目で眺める北十字・銀河(星空の守り人・f40864)だけが、昴が今目の前にしている一品に決めるまでの道程を知っている。
「(さっきまで散々どれにしようとか、小さい声で言っていたのに)」
 少し前まで若干眉間に皺を寄せ“むぅ”とどれを注文しようかと悩んでいた昴の姿。メニューを行ったり来たりする指先と視線は、一瞬止まったかと思えばゆらゆら揺れて……また歩き出す。その繰り返しを経た結果が“深夜のビーフシチュー”と言うわけだ。
 コロコロ変わる昴の表情はどれもこれもが銀河の瞳にはどこか不思議に映り、今はにこにこと微笑む姿はなんとも女性らしい。
「銀さん見て、シチューの色が深いけれど真っ黒では無くて……でも、このクリームの星が丁寧で綺麗。それにこの星を描いた人、とてもセンスがあるわ」
「本当に着ようだな。型ではなくてこれ、もしかして手描きか?ほら、一つ一つ形が違う」
 とても繊細なことに銀河が気付けば昴は“そうなのよね”と頷いて、ふと気付くのは銀河の前には一杯のカクテルが置かれた後、何も運ばれていないと。
「食べるのがもったいない……あれ?銀さんは飲み物だけ?」
「あぁ、俺のはカクテルだからね」
 昴が“どうして?”と瞳を瞬かせれば、グラスを掲げウインクした銀河が“限定のカクテルだ”と言い、グラスの内で揺れた鮮やかなブルーグリーンが誘うように揺れる。
 先程コロコロ変わる表情を見ていた銀河は、また昴が若干眉間に皺を寄せたことに気が付いた。だからこそ、揶揄いを少しだけ。
「(うぅ、私も飲みたい……)」
「今日は昴の『騎士君』に許可をもらってないからね?」
 これは昴と銀河の二人……いや、友だから気が付ける暗黙の言葉のようなもの。
 当然昴はすぐに気が付き、日中の熱も冷めていたはずの頬に朱が差した。
「騎士じゃなくて幼なじみだからっ」
「くく……良いじゃないか、冗談だろ?」
 “分かってて言ってるよね……!?”と膨れた昴も、銀河の“シチュー、冷めちゃいそうだな”の一言に意識を皿へ……とするも、ちらりちらりとちくちくする視線くすりと笑いが漏れてしまう。
 また変化する表情も面白いが、話題の人物が昴の騎士ではなく昴の言葉通り幼馴染だとは分かっていながら変わる表情を見たいと揶揄ってしまったようなもの。
「(さて、そろそろ何か話題を……ん?)」
 変えようか、と銀河が思案した時、昴の背後ですぅっと一筋星が流れた。
「お、」
「?」
 突然声上げた銀河にきょとんとした昴が、その視線を辿って自身の後ろ――深まる夜空を振り返る。
「今さっき昴の後ろを星が流れたよ」
「え?後なの……今度は私が見つける!」
「(やれやれ、食後はどうやら流れ星の数の競争になりそうだ……)」
 もしかすれば何かの流星群と被っている時期か時間なのかもしれない!そう気が付いた昴はぺろりとシチューと楽しむ向かいで、友人だからこそ銀河は後の競争を想像するのは簡単で、当然のごとく訪れたのはデザートを待つ一時の空き時間。
 唐突に昴の心を燃やしたのは先程の揶揄いへの負けん気と、銀河に先に流れ星を見つけられた…!ということへの不思議な悔しさ。
「どちらが流れ星を多く見つけるか、競争よ!」
「よし、受けてたとう。本気で行くぞ?」
 必要なものは広い視野と動体視力。

 猟兵だからこそ、な夏の遊びへと一時興じよう。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

夜鳥・藍
POW
トマトクリームパスタに水出しコーヒーを頼んで。確かコーヒーは水出しだと苦みが控えめになるんでしたか。

品が来るまでにちょっとだけ杖を一振りしてみましょうか。……少し気恥ずかしさもありますので本当にちょっとだけ。
水族館でもクラゲって不思議な魅力がありますよね。
ふと気が付けば吸い寄せられるように水槽の前に行ってしまうもの。
今回は逆に寄ってきたこの子達。そっと手を伸ばして指先でつつくようにしてみたらどんな反応をするのかしら?
それに何を食べてるのかしらね。
海のクラゲはプランクトンとかって聞いた事あるけど空気中にはそういうのがいるって聞いた事ないし……。
……いけない。遊びすぎてパスタが冷めちゃうわ。



●柔らかな夜に
「……――では、パスタとコーヒーで」
 “かしこまりました”と夜鳥・藍(宙の瞳・f32891)のオーダーを受け下がる店員の背が小さくなったのを確認してから藍が取り出したのは海に纏わるもので装飾された銀のロッド。
「……ちょっとだけ、ですから」
 自分でつい言い訳めいた言葉が出るのも無理はない。少々……いや、結構少女めいた装飾のロッド自体はかわいらしいのだが、振るう藍自身大人の女性の自覚があるから恥ずかしい。
 言葉にした通り本当は気恥ずかしいけれど、あのクラゲを近くで見てみたいという小さな好奇心が疼いて、ロッドを借りていたのだ。
「(クラゲって、不思議な魅力があるのよね。水族館とか、吸い寄せられるように見てしまって……)」
 近年、その不思議さでUDCやシルバーレインなど現代社会系の世界ではちらちら注目され、取り上げられているような気のするクラゲ。
 専用のコーナーや特別な水槽で展示をする水族館も増えていることを藍は知っていた。そこのクラゲたちは丸い水槽の中、水流に身を任せふわふわ泳ぐ姿が何とも魅力的であったことを思い出しながら、緩やかに藍が手中のロッドを揺らせば、遠くに光。
「あら……?もしかして、」
 日も落ちしばらくたった今、漆黒の夜空からきらきらとプリズムのように光る何かがロッドの輝きを目指しやって来る。
「……この距離からあれくらいなら、そんなに大きく無いかしら」
 余り大きい物を呼ぶ気はなく、掌大くらいならば……と思っていたところなのだ。
 緩やかに導くようにロッドを振るいクラゲを導けば、やっとふわふわ遠い空の向こうから寄ってきた一匹のクラゲ。藍の目測通り、サイズは丁度よく掌大程度。
 ふわ、ふわ、と揺れて空を泳いで、時々沈む。またふわふわと空中を昇って、また――……その緩やかなサイクルが何とも美しい。
「不思議……あなた達はどうして光りに寄せられるのかしら?私……ううん、このロッドの光を、仲間だと思ったの?」
 言葉を解さないクラゲはただふわふわと泳ぐのみ……だが、藍のロッドの先端でクラゲと似たような輝きをする光へ一生懸命寄って行くのだからきっとそうなのだろう。
 仲間を想い泳ぐ、不思議なクラゲ。
 地上とはまた違う姿はやはり藍の心を擽って、再び頭をもたげた好奇心。そうっとそっと、藍は人差し指を伸ばす。
「(つついてみたら、どんな反応をするの?驚く?光る?それとも……でも、きっと攻撃はしてこない、わよね)」
 そろそろりと指を伸ばし、つん!と爪先が触れた瞬間――!
 驚いたのか、一際煌めきプリズムを溢したクラゲがふわふわりと逃げてゆく。
 仲間を惜しむように戻ろうとしてはふわふわと空へ逃げてゆく。
「ふふ……ふふふっ、不思議。素敵だわ、一体何を食べたらあんな風に光るのかしら?」
 ブルーアルカディアの大図書館などへ赴けば、あのクラゲの資料はあるだろうか?空という不思議なこの海に生きるあの生き物が大群になれば、きっと眩いほどの天の川が形成される。不思議な不思議な、クラゲの川が。
 クラゲを楽しみ終わった藍の鼻へ、ふわんとお腹を擽る香り。
「あ」
 “お待たせいたしました”と供された一皿はクリームの柔らかな香りにどこか酸味を感じるトマトの混ざったと黄昏のトマトクリームパスタと、かろんと氷が音を立てた夜もすがら。
「遊び過ぎたら冷めちゃうわ、いただきましょう」

 苦みの緩和さスッキリとしたコーヒーで喉を潤して、さぁ夕日を沈めて美味しく頂こう。
 
 
 

大成功 🔵​🔵​🔵​

海藤・ミモザ
👊を誘い

やった!お酒ある~♪
一番度数高いのどれかなー🪸かな?
でも最初に頼むのは🌊
ジュース感覚で飲めそう
ペアリングで食べるのは🕯
チーズと柑橘系、意外と合うんだよね。美味しー♪

ドルデンザは何を頼むんだろう?
同じのだったら好みが似てるってひっそり喜ぶし
違うのだったらどんな味なのか気になってつい見ちゃう

(好きな人の事だもの
どんな些細な事でも知りたいものでしょ

無意識に見入ってて
…物欲しそうな顔とか思われたら恥ずかしいから
視線合えば即逸らし
…でも、もしくれるならお裾分けは有り難く
好きな人がくれる物は、何だって嬉しいもの

(…今、楽しんでくれてるかなぁ
そうなら嬉しい

🪸を一気飲みして
火照る頬を誤魔化す



●乾杯は君と
 エスコートされながら一席へ腰かけた海藤・ミモザ(millefiori・f34789)は、勧められたメニューにきらきらと瞳を輝かせていた。
「やった!見て見てドルデンザ、どれにしよう?」
 鼻歌を歌いそうな様子で楽し気なミモザの姿に微笑んだドルデンザが“どれどれ”とミモザと一緒にメニューを覗き、“どれも海に纏わるものなのですね”と顎を撫でる。
「一番度数の高いのどれかな?マーメイドラグーン?」
「入れるアルコールを変えていただきますか?けれど緩やかな方が楽しめるかとも思いますが」
 “たしかに”と唸った末、ミモザは最初の一杯を決め、通りかかった店員を呼んだ。
「ガルフストリームと灯燈し頃のピザトーストとー……ドルデンザさんは?」
「あ、私はマリンスノーを。ロンググラスではなくミドルで、何か摘まめるものを二人分」
 “かしこまりました”と言った店員の背を見送ってしばし、先程の海の話をしている間に湯気立つトーストと冷えたグラスが二つ運ばれる。
「ふふ、やっぱり最初はちょっとジュース感覚の方が飲みやすいよね。それにチーズと柑橘系は合う……!美味しい♪」
「それは良かった。此処のお店は企画店だそうですが、人気だとは聞き及んでいましたから」
 “そうなの?”と海色の瞳を瞬かせるミモザに、“ええ”と笑ったドルデンザがグラスを差し出す。
 その意をすぐに気が付いたミモザが、細い指先でそっとカクテルグラスを手にして。
「「――乾杯」」
 涼やかなグラスの音は潮騒に吞まれてしまったけれど、二人の耳には確かに聞こえているから。
「そうだミモザさん、こちらもいかがですか?」
「いいの?」
 “勿論”と微笑むドルデンザに勧められたのは焼きトマトのチーズかけ、オリーブのピンチョス、オレンジのフルーツサラダだ。
 先程店員に注文していたらしい“摘まめる物”。
 ミモザも自身とはまた違う注文をしたドルデンザが気になっていたのは事実。ピックが二本、つまり二人分あるのは元々その皿は二人前――ミモザとドルデンザのものだ、ということなのだろう。
 |ドルデンザ《好きな人》の注文したアラカルトの一皿にそろりと手を伸ばしながら、伺うその横顔。
「(……きれいだよ)」
 自身のことを時折明確ではないが“汚れている”と卑下するドルデンザの横顔。
 空の星を見て、瞳を細める姿はミモザにはとても美しく見えたし、彼の言う“汚れた世界”の片鱗など微塵も感じられない。むしろそんなものとは無縁にさえ見えるほど。
 けれどきっと、それと同じくらい時々見える憂いにあるのは、その“汚れた世界”とドルデンザが一言でいう過去であり経験であり……――彼の生まれに、関りがあることはすぐに分かった。
 だからこそ、ミモザは空にしたグラスへ追加のオーダーでマーメイドラグーンを。
「ねぇ、ドルデンザ」
「ミモザさん?」
 物欲しそう、なんて思われたくない。募る好意――……には、少々大きすぎるこの恋心をバレてしまいたくない。だが、気持ちのどこかでは気付いてほしい。
「……ミモザ?」
 どうしたのですが、と伺おうとしたドルデンザの前を過った、一杯のグラス。青々とした飲める海がミモザの前へ。
「(ねぇ、貴方は楽しい?私は、とってもドキドキしちゃうよ)」
「ミ、」
 きゅ、と握ったグラスを、一気に呷って!
 慌てて自身の名を呼ぶドルデンザを、きっと見つめれば心配そうな顔をするから。だからぱくりとオレンジのサラダを食む。

「ドルデンザは、たのいしい?」
「……勿論。私の顔に、出てません?」
「でてなー……くはないけど!」
 ほら、と笑う貴方のその笑顔が、もっともっと欲しくなる。
 
 
 

大成功 🔵​🔵​🔵​

楊・暁
☔と!
ひとけのない場所で
スマホで想い出の写真撮りつつ

料理来るまで海月で遊ぶ
はい、藍夜(ロッド差し出し
…俺がやるわけねぇだろ…恥ずかしい…(ぼそ
でも海月は興味ある
お前月魔女だし、藍夜が喚ぶところ見てぇな
…駄目か?(意図的に甘え

🌕と🌃をシェア
お前モチーフのだからどっちも食いたかったんだ
んんっ、卵ふわっふわ
肉ほろほろ…!美味ぇ(幸せ
ふふ、勿論お前が作ったのが一番美味ぇぞ?
藍夜もほら、あーん
今日はお前が食うもん、全部俺が食べさせるから
いいだろ?

デザートは🌙。🌌を添えて
デザートはふたりで1つをシェアしてぇ
だって、藍夜が選ぶのもこれだろ?
三日月林檎は俺の
それ以外は全部お前にやる

珈琲飲みながら景色眺め
…去年の夏もこの世界来たんだけどさ
そういやまだ藍夜と出逢ってなかったんだよな
なんかずっと前から知ってる気分だった

あの頃の俺に教えてやりてぇ
…秋になったら、愛を知って…
夜も穏やかに寝られるようになるんだぞ、って

ありがとう、藍夜
俺を見つけてくれて

幸せ一杯に微笑んで
誰も見てねぇからと、頬へそっと口付けを



●十四夜の月へ
「月が海に映ってる。すげぇ綺麗」
 テラス席先端、大きなソファに腰掛けた楊・暁(うたかたの花・f36185)が隣の藍夜へ寄り掛かりスマートフォンのカメラで映すのは海と月。
 撮れた写真を藍夜に見せれば、藍夜が“上手いな”と微笑みが返る。
「心音、店に飾ろう?」
「うん?!み、店に!?でも、」
 所謂イカミミになった心音が藍夜を仰ぎ見れば、見慣れた甘い顔が“いいじゃないか”と微笑んだまま。
「じゃあこれだけ……カウンターに飾ってもいいか?」
「なら一番いい写真立てを――」
「買わない。この間家整理したらお祖父さんの写真立てあっただろ?」
「……あんなカビくさいもん使わなくても」
「そういうこと言うな!けどその方が店に良く馴染むだろ?」
 藍夜の思い出を大事にしたい、と心音が“おねがい”とアピールすれば藍夜の堅物顔もすぐに甘くなり、“しかたがないな”なんてチョロいもの。その勢いに乗じて心音はロッドを手に、にこりと笑ってみせた。
「そうだ藍夜、はいこれ」
 暁が差し出しすそれに藍夜がきょとんとすれば、もじもじと恥ずかしそうな暁が言葉を濁すが、至近距離だから聞こえた小声に藍夜の目がすうっと据わった。
「心音は?」
「お、俺がやるわけないだろっ恥ずかしいし……」
「でも見たいんじゃないのか?」
「藍夜は月の魔女だろ?こんないい月夜だしほら、藍夜がクラゲ喚ぶところ見てぇな……駄目か?」
 頬を染め乙女チックなロッドを恥ずかしく思う年相応な暁を尊いと藍夜は心から、否心の底から思う。あと写真も撮りたい。
 だが続いたセリフと意図しかないきゅるん、としたこの可愛いお顔は問題だ。良い意味でも悪い意味でも。
 可愛すぎて犯罪級ではという贔屓目があると藍夜自身も思うが、それをもってしても可愛すぎる。いやでもさっきも可愛かった――そう思考の海に耽りそうになる直前で踏み止まり、そっと暁へ手招きを。
「心音、おいで」
 そんな藍夜の思考を薄っすらと察しながら暁は何の疑いも無く藍夜へ更に寄り、素直にロッドを差し出す。何故なら暁は藍夜が自身を“おいで”と招く瞬間が好きだ。
甘く優しく自身を呼んで、そっと願いを叶えてくれるこの――……。
「え、うわぁっ!」
「こら、しー。じゃあお望み通りクラゲを喚ぼう?今夜は俺が心音を魔法使いにしてやろう」
 自身へ身を乗り出した暁を抱き込むとくるりと回し自身の膝の上へ。
 崩れたバランスに慌てた暁が握ったロッドの上から離させないよう藍夜の大きな手が包み込みこめば、師から指導を受ける少年魔法使いの誕生だ。
「や、やだっ!恥ずかしいって!」
「心音、お前俺が“魔法使い”とか“魔法”って言えば何でも食いつくと思ってるだろ」
「う゛」
 ぼそりと後ろから耳へ囁きかけられた言葉にぐっと暁が押し黙れば、“まったく可愛い奴め”、と暁を支えるように抱いていた腕が暁の頬へ。もちもちと揉む手に頬を摺り寄せ見上げれば、どこか困ったように笑む甘い顔とまた逢った。
「(……俺、この顔もすき)」
「ほら心音、ゆっくり揺らすぞ。どうやら早いよりあの野生のクラゲの真似の方が集まるらしい」
 観念した暁が寄り掛かれば、聞こえるのは藍夜の鼓動。“そうなのか?”と問えば“さっき婆さんに聞いた”なんて杜環子なんて余計なことを言う藍夜の口を手で押さえた暁が今度は“しー、だろ?”と微笑めば、遠くに煌めき。
「ん?あれ……なぁ藍夜、あれ!」
「……なぁ心音、あれちょっっっとデカくないか」
 遠目にも大きな輝きは近づくにつれより大きくなる。
 煌々と、いっそ月よりも巨大な一匹は茫然とする暁と藍夜の回りを悠然と泳いだ後、瞬きのような金の輝きを溢して去ってゆく。
 夏のように、夢のように。
「――すっげぇ」
「だな。大当たりを引いてしまった。流石俺の幸運の黒狐。ありがとう心音、良いものが見られた」
 頭を撫でる藍夜の大きな手が、心地良い。撫でられるたび、暁の狐尾はゆらりゆらりと揺れ、するりと藍夜の体に絡みつく。
 “幸運の黒狐”――それは長らく忌まわしさしか感じられない、ひどく一方通行の称号だと暁は思っていた。
 けれど今はどうだ、藍夜に言われるたび誇らしささえ感じるほどだ。
「ん……どーいたしまして。俺には研究熱心な魔法使いがいるからな」
 ただの運の良さだけではきっとで会えなかった小さな奇跡。
 事前に尋ね知った明かりの振るい方あればこそ来たんだろ?と藍へ寄り掛かった暁が甘え、ただ一時の素敵な時間――……に、鳴ったのは空腹を訴える腹の音。
「メシにしないか」
 どっちが言ったやら、笑っている内に運ばれた料理の湯気が夏の夜の海風に揺らぐ。
 いつもと変わらず分け合おうとした暁が尻尾を揺らし白い頬を花のような色に染めくふくふと微笑みそわそわ。
「へへ、お前のモチーフだからどっちも食いたかったんだ」
「そうか。じゃあこうしよう」
 可愛らしい言葉に笑み深めた藍夜が取り分け皿に掬ったオムライスにシチューを掛ければ新たな一品へ。
 瞳を輝かせた暁へ慣れた手付きで藍夜が“あーん”と匙勧めれば、暁は暁で当然のよう食む。
「~~~んんっ、卵ふわっふわだしシチューも美味ぇ……!」
「頬肉はどうだ。スプーンでは切れたが、」
「肉もほろほろ!あ、でも――」
 口の端に付いたブラウンソースを嘗めとった暁がニヒリと挑発的に笑み藍夜の手から抜いた銀匙で一掬い。
「お前が作ったのが一番俺、好みで好き。ほら、あーん」
「……ん」
 一見簡素な答えに見えるが、一心に見つめられる暁賀だけが黒く深い瞳に潜む藍夜の感情に気付きながらも、敢えて言わない。
 そのうち皿は空になり、届いたのはゼリーのグラス1つにコーヒーが2杯。
 暁自身、多少藍夜が自身を通し甘い物慣れしたからといって“好き”と公言するほどで無いことを良く知っている。だから選んだのは一番あっさりとしたゼリー。藍夜の瞳が“よかったのか?”と問うのに微笑み返せば二人の間に言葉は要らなかった。
「! これ思ってたより味濃い……!あとふるふるよりぷるぷるするっ」
「ん、これゼラチンじゃなくて寒天系か?この世界じゃ少し珍しいな」
 互いの匙で食べあった感想はほとんど同じ。だが、藍夜の“この世界”の言葉にふと暁の視線が水平の向こうへ向き、懐かしむように口にするのは昨年のこと。
「……――去年の夏、今頃もこの世界にきたけどさ……その頃、まだお前のこと知らなかったんだ」
 それは数多の兵と神さえ出現した苛酷な争い――ブルーアルカディア争奪戦。実は、二人の出会いはその後だった。
「今じゃ俺、藍夜のこともっともっと前から知ってる気分だ。でもあの頃は考えたことも無かったんだ、」
 こんな。
「こんな」
 愛に溢れ、愛おしいものを、手放せぬものを手に入れる自分なんて。まして――|必要とされる《・・・・・・》|楊暁《自分自身》に出逢えるなんて!
「こんな……秋になったら愛を知って……夜も穏かに寝られるようになるなんて。あの頃の俺に教えてやりてぇくらい」
 流れるように立ち上がった暁がデッキの柵へ背を預けて振り返り、ただ心のままに微笑み伝えるのは心からの言葉。

「ありがとう、藍夜。俺を見つけてくれて」

 きっと何度言っても言い足りない。募り続ける想いを口にした瞬間、暁は愛しい香りに包まれる。
 夜に解けそうな暁を失うまいと、反射的に踏み出した藍夜がきつく抱き締めたのだ。
「俺こそ、見つけれくれてありがとう。月は翳る。だが気付いてくれたのは心音、お前だ」
「俺だって夜にはとけちまう色。でも照らしてくれたのは藍夜だろ?」
 何時何度でも、君へ。
 きっときっとこの一瞬こそ、二人の永遠。
「藍夜、あの月ちょうだい?」
 テーブルに置いてしまったグラスを暁が指差せば、当たり前のように掬った藍夜が暁へ。
「本当にいいのか、これだけで」
「ん?ふふ、“|月《お前》”は俺のだろ」
 林檎を食んでネクタイを引き、真白い頬へ口付けを。
 “|月《藍夜》”は“|狐《暁》”のものなのだから。
 
 
 

大成功 🔵​🔵​🔵​

神野・志乃
◎🪞

目を閉じて何度も、何度も、先程の景色を思い返す
天の遥かに明々と溶けゆく大輪の光を、幾度となく繰り返し想い…

「‪──‬くちゅん」

…目を覚ますと、乾ききっていないTシャツが潮風に冷やされていて
居眠りして寝冷えするなんて、我ながら子供過ぎるわ…
…何か温かいものでも頂きましょう

と、カフェに向かう最中
きらきらを天から誘っている、ひらひらした小さな子を見つけ
あれは…グリモア猟兵の、壽春さん

「素敵なことをしてるのね。なぁに、それ?」

私が居眠りしてるときに説明してくれていたみたいで…聞き逃して悪かったわ

魔法少女みたいな出で立ちがどうも恥ずかしくて、気後れするも
壽春さんのお誘いに後押しされるように、|指揮棒《ロッド》を手にしてみる
たまには、子供じみていたって…良いわよね
もう、お天道様は見ていないのだから

月の光、カフェからの灯、壽春さんの咲う顔
色々なきらきらを受けて光り誇る海月の姿に、

「万華鏡みたいね…」

なんて言葉をぽつり

よかったらまた遊んで頂戴、と壽春さんに告げて
ひと夏の彩光を、大切に胸に仕舞いこむ



●錦眼鏡で見た夜に
 |あの一瞬《沈みゆく夕日の朱金》が、忘れられない。

「(……美しい時間だったわ)」
 空へと手を伸ばしながら瞼を下ろせば蘇るあの一瞬。
 きっと正面から見たら目が潰れるほどの今日の夕日の、最期の輝き。天の遥かへ明々と溶けゆく大輪は鮮やかに、散り際までもが美しいものであった。
 そう、まるでふわふわと夢でも見ているような、そんな心地で――……。
「――くちゅん」

 そこで初めて、神野・志乃(落陽に泥む・f40390)はハッと瞼を上げた。
「わた、し……?」
 眠っていた?今?あの一瞬で?自身のことながら首を傾げ自身に触れ、志乃はくしゃみの原因に気が付き少しだけ苦い顔。
「(……こんな、我ながら子供過ぎるわ……)」
 濡れたTシャツを適当に絞り、それが夜風で冷えたことが原因らしい。
 海から上がり軽く水で流して、それから夕日と心の裡の興奮で温められた体は志乃の想像以上に疲れていたらしい。
 いつのまにか船を漕ぐ身を意識を任せたことで冷えてしまった体を抱きしめ、そっと両腕を擦る。
「いけないわ……何か温かいものでも頂きましょう」
 たしか、此処へ案内した|グリモア猟兵《壽春杜環子》が夜には海上に作ったテラスへ海岸から、と言っていたことを思い出し、志乃が看板と案内のライトを辿って歩いていた時だ。
「あれは……?」
「――♪、ふん、ふふ、ふん♪」
 どうにも鼻歌を歌いながらくるくると踊るように杖のよう棒を振るう小さな子がいる。
子供が仰ぐ空を見た時、志乃はゆらゆらと動く不思議な煌めくものに気が付いた。
「(……あれは、いったい?)」
 再び小さな子が“おいで”と誘うように揺らしているのがどうしても気にりゆっくりと近付けば、それはグリモア猟兵の壽春杜環子。
 そういえば案内の時、平均的な志乃自身より若干低い視線だったことを思い出しながら、思えば“テラスへはまた折を見てご案内を”と言ったような気がした杜環子の話を聞きそびれたことを思い出し、胸に沸いのは小さな罪悪感。
 きっとあの棒……ではなく杖もきっと意味があり、ただ楽しそうに踊っているように見えるあの動きにも意味があるのだろう。
「――素敵なことをしているのね」
「えっ」
 ライトで杜環子がきちんと見えるようになった距離で志乃が声を掛けた瞬間、杜環子はぎょっとしたような顔の後、ハッとしてからみるみる頬を染めてゆく。
 何か驚くことがあっただろうか?そう思いながら小首を傾げる志乃へ、ひどく小さな声が問う。
「……も、も……もしかして、いまの……ごらんになって、らした……の?」
「? えぇ、だってとても楽しそうで。それ、なぁに?」
「やだーー!もー!神野様お声がけくださいまし!!」
 ふわふわ楽し気に踊っていた杜環子の様子は声を掛けたら一変、顔を覆って“きゃーやだーはずかしいー!”――と、叫んで暫し。
 沈黙が波音に攫われるくらいになった頃、ちらりと指の隙間から志乃を見た杜環子が、恐る恐る志乃を見た。
 そうしてきょとんとしたままの志乃へにこりと。
「神野様、こんばんは!」
「(……仕切り直しをされているのね)」
「もしやテラスへ行かれますの?であればこのランプを辿れば行けますよ。そして先程気にされたこれは、あれを呼ぶためですの」
「えぇ、テラスへは勿論。……あれ?――!?」
 視界の端できらりと瞬いた優雅なプリズム。
 ハッと杜環子の隣を見れば微笑み手に乗せたのは、小さな手に収まるほどの小さなクラゲ。
「これね、害はございませんのよ。このロッドの先端の光、この子達の光と似たような輝きを天使核から放てるように作られた品物でして。ふふふ、今年の夏の新作ですの」
「そう、害はないのね……なら、良かった」
「はい。で」
「?」
 にこ、と笑う杜環子が一歩ずつ志乃へと近付き、いつの間にかクラゲも手放しその手を取りきゅっとその手へロッドを握らせる。
「神野様もクラゲ呼び、なさいません?しましょ?」
「……でも、これ、その……」
「まぁまぁ!可愛らしいわ、素敵だわ!大丈夫、誰も見ていないんですもの……それに“一夏の思い出”にはとびっきりではなくて?」
 にひりと悪戯っぽく笑んだ杜環子に手を引かれ、波打ち際へ。
 まだ先程呼ばれた小粒のクラゲが舞う中、“このように”とゆっくりとロッドを点灯させ振るう杜環子におずおずと倣うように志乃も真似をしてみる。
 恥ずかしさが無くなった、と言えば嘘だ。だがどうしてだろう、無邪気に褒めるきらきらした海より深い青の瞳に負けたといえばそうなのだろう。
「(けど……たまには子供じみていたって……良い、わよね)」
 杜環子が“一夏の思い出”と笑った言葉が、志乃にも魅力的だったのは本当。
 握らされたあの一瞬、躊躇はした。けれど手を引かれ、“ほら!こうして?”なんてあんまり綺麗に咲うから――……ちょっと、誘われてみようと決めたのだ。
 ゆらゆらとプリズムを揺らせば、そのうち遠くにチカチカと光大きな光と、本当に僅かな輝きがちらほらが見えた。
「もしかして、あれ?」
「ええ、たぶ……ん?あ、神野様あれちょっと、その、」
 どうしたのだろう?そう志乃がまた首を傾げそうになった時、隣の杜環子を見ていた視界が巨大なプリズムに遮られる。
「!? なっ、」
「神野様お上手すぎて大きなものがー!」
 此処は空の国ブルーアルカディア。数多の巨大生物がいるとは聞いていたもののそれが目の前にくらべ驚いて当たり前。
 人間の子供ほどありそうな傘のクラゲが、長いレースのような触手を揺らし優雅に泳ぐ。
 その姿に湧いた既視感に、志乃はふとどこかで見たクラゲを思い出す。
「(たしか、別の世界でも2メートル級の足がレースのような――……パシフィックシーネットル?)」
 ふわ、ふわ、と志乃の周囲を興味深そうに泳ぐそのクラゲの煌めき。それはきっとこの夏の夜しか楽しめない、特別なものだろう。
 眩しすぎず、けれど明らかな人工物でもない。不思議ないきもののひかり……。
「これは……この小さいのは、子供なの?」
「おそらくは。まずこの時期、このクラゲ――クラウドジュエリーは育児のために南下いたしますの。仲間や仲間の子、自身の子を連れ、群れで空を行くのです」
 群れで空を。皆で南洋の空海で花や草を食むのだと話を聞きながら、志乃は人差し指を伸ばしてみる。するとその指先へ集まったのは、小粒の子供クラゲ達。
 ぽよぽよと志乃の指先へと我先に体当たりをしている様子から見て、習性だろうか?
「ふふ……くすぐったいわ」
 しばらくぽよぽよ志乃の指先に集っていた子クラゲも、疲れたのか大きいたクラゲの傘の下へ入ってゆく。
「(少しだけなら大丈夫、よね……?)」
 そっと、志乃は自身の周囲を遊泳する大クラゲに触れてみる。
 見た目から想像した通り、ガラスのような艶にゼリーのような柔らかさ。足にあたる触手部分も時折志乃に当たったが、杜環子の言葉通り一切の害はなくただ煌めくのみ。
 志乃達を仲間か子と勘違いし迎えに来た不思議なクラゲのプリズムのような瞬きに、見れば見るほど温もりが生まれてくる。
「万華鏡みたいね……」
 ぽつりと志乃が呟けば、隣から聞こえたのは“お褒め頂き光栄ですわ”と柔らかな声と志乃が誘われた咲う顔。
 くるくるりと数度志乃の周囲を回遊した大クラゲが、傘の下に子を抱き旅立ってゆく。ふわ、ふわ、と泳ぐ様は雄大で美しく、志乃はまた一つ瞼に残したい思い出の光景が増えたような気がした。
「神野様、今夜は秘密ですよ。わたくしと貴女様だけの秘密」
「えぇ、秘密。良かったらまた遊んで頂戴……?」

 “勿論、喜んで!”
 そんな微笑みに見送られたこの夜は夏の彩光。そっと大切に、志乃は胸に仕舞い込む。
 
 
 

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2023年08月30日


挿絵イラスト