いずれ星に手が届く、その日を目指し
リカルド・マスケラス
多めに文字数を設定してあるので、一部返金になっても問題なしです。
自分が猟兵になったきっかけとなった場所へ墓参りに行き、そこに出現したマスカレイドと戦う話をお願いします。
・リカルドは青年の姿の依代(UCで作った分身)に本体の仮面をつけた状態
・場所は既に滅びた都市国家。その郊外に簡素な墓が建てられており、既に花やお酒などが供えられている
・「アイツも既に来ていたみたいっすね」などと言いつつ自分も花やお酒を供える
・「お師匠様、そっちはどうっすかね? いや、俺にお師匠様呼ばわりされても困るだけかもしれないっすけど」などと墓に語りかける
・そんなしんみりした中で、マスカレイドの集団(https://tw6.jp/gallery/?id=175472 )が現れ、リカルドを囲む。敵は何か喋ってても無言のままでもいいです。
・「ちょっと水を差さないでもらえるっすかね? ここが大事な所なんすよ」普段と違う剣呑な雰囲気で警告するリカルド。手にした暗器で襲いかかるマスカレイド達
・「俺達を、マスカレイドを生み出した魔女はもういない。生まれに縛られずにもう自由に生きったっていいんじゃないのか?」などと素に近い口調になりながら説得するも、結局は手にした鎖鎌や忍者系ユーベルコードを駆使して倒す。
・結局倒すしかできなかったので、「やっぱり、お師匠様はすごかったんすね」などとポツリと零す。
非公式設定
・リカルド・マスケラスの正体はヒーローマスクではなくマスカレイド。
・エンドブレイカーであるリチャード・マクマリー(http://t-walker.jp/eb/status/?chrid=c02998 )が過去に半マスカレイド状態だった時に取り憑いていたのだが、リチャードがエンドブレイカーに覚醒した時に何故か浄化され、グリモアを得ると共に自由な意思を持つ。その後、グリモア猟兵となってエンドブレイカー!世界と繋がるまで異世界を転々とする。
・リカルドはリチャードと、彼が覚醒するきっかけになった師匠のことは知っているが、向こうは多分リカルドの事は認識していない。
・リカルドとリチャードの師匠(名前はレイチェル)は高レベルのスカイランナーだったが、リチャード達を支配していた親玉マスカレイドと差し違え、既に他界している。(http://t-walker.jp/illust/product/tw_c/029/c02998_pin1_2.jpg )
・リチャードに取り憑いていた時に師匠に教えられた言葉(「血塗れた手だろうがそれを守る力や資格はある」「笑え、笑顔が運命を切り開く一番の武器だ」など)を元に、リカルドはグリモア猟兵として人々の笑顔を護るために戦っている。
・エンドブレイカー!時代、リチャードが墓参りに行った時のリプレイ(http://t-walker.jp/eb/adventure/rp.cgi?sceid=20302 )あります。
だいたいそんな感じでよろしくお願いします。過去作のエンドブレイカー!を知っていなくても大丈夫ですが、知っているとありがたいです。
エンドブレイカー!の大地を疾走する一台のバイクがあった。本来この世界には存在しないものだ。それがこの世界に存在する理由があるとすれば、この世に全部で36あるといわれる世界のどこかから何らかの原因で転送されてきたか、世界間を自由に行き来できる者が持ち込んだかのいずれかしかないだろう。今回の答えは後者だった。バイクにまたがる者……リカルド・マスケラスの私物であった。
「いい時代になったもんっすね」
ヒーローマスクであるリカルドは本来なら他の者の体を借り、運転の技術を貸し与えて代わりに運転してもらうものであるが、今回はユーベルコードで人型の分身を作り、それを操る事でバイクを運転していたのである。
「こいつのおかげで馬や大トカゲよりも楽に移動できるっすからね」
しみじみとつぶやきながらリカルドはバイクを走らせる。エンドブレイカー!において、多くの人々が住む大都市である『都市国家』の外側は『辺境』と呼ばれ、強力なモンスターたちが闊歩する非常に危険な場所だ。そのため大部分の人々はその生涯を都市国家の中だけで完結させる。辺境を通過して都市国家間を移動するなどという事は高い戦闘力を持つ一握りの者だけが行える事であり、到底常人には不可能な事であった……しかしこれはもはや過去形である。エンドブレイカーのための都市間転移装置『世界の瞳』はかつては限られた都市国家に行けるだけだったが、現在は世界のどこにでも移動できるし、小世界にだって行ける。それを使って移動すれば辺境を行くよりもはるかに楽だった事だろう。それでもあえてリカルドは不便な手段を選んだ。改めて、エンドブレイカー!の大地をじっくりと見てみたい。そんな思いが働いたのだ。
歴戦の猟兵であるリカルドは間違いなく強者に分類されるが、そんなリカルドであっても辺境は決して気を抜ける場ではない。確かに機械での移動は徒歩とは比べるまでもなく、乗用の生物の力を借りるよりもなおスムーズに移動できる。だが、例えば野生のモンスターや復活したマスカレイドに襲撃されたら?バイクにトラブルが起きたとしたら?
「……ま、その時はその時っすよね」
あっけらかんと言うリカルドだったが、幸いにも大きなトラブルもなく、旅は順調に進んでいった。
リカルドが自身をヒーローマスクではなく、もっと忌まわしい存在であったというのを知ったのは、皮肉にもリカルドがその存在である事を中断させられた瞬間であった。それ以前の記憶は……断片的にはあるようなないような、曖昧なところであった。ただ、自身が多くの罪を犯した存在であるという自覚は確実にあった。相手の罪を読み取る力を持つオブリビオンと戦った際、その罪のあまりの多さに相手が一瞬停止する事を確信し、その隙を狙い勝利したぐらいである。ともあれヒーローマスクと呼ばれるようになって以来、猟兵としてさまざまな世界を転々としてきたが、エンドブレイカー!に戻る術はなかった。グリモアベースがこの地に繋がり、リカルドが再びこの地に再び足を踏み入れる機会が訪れたのは本当につい最近の話だったのだ。
リカルドが訪れたのは既に滅びた都市国家のひとつ、その片隅にあるささやかな墓であった。
「アイツも既に来ていたみたいっすね」
リカルドより前に来た者が備えたであろう、花や酒。それを備えた者の名にリカルドは思い当たるところがあった。リカルドよりもはるかにここに来る正当な理由がある人物だ。彼に倣うというわけではないが、リカルドもまた持参した花を添えると、墓に語り掛けた。
「お師匠様」
さらに墓の前に器に注がれた酒を備えつつ見せる表情。それは普段のリカルドを知る者が見たら驚くであろう、寂しげな笑顔であった。
「そっちはどうっすかね?……いや、俺にお師匠様呼ばわりされても困るだけかもしれないっすけど」
リカルドが師匠と呼ぶ、墓の下に眠る人物は、実際リカルドと師弟関係にあった事はない。それどころか、おそらくリカルドの事すら認識していないに違いなかった。仮に『師匠』がリカルドに対してなんらかの認識を持っているとするならば、それは倒すべき敵、憎むべき邪悪として、であろう。それでもリカルドにとっては間違いなく師匠だし、自分を救ってくれた恩人だったのである。
かつてリチャードという少年がこの都市国家で|棘《ソーン》に憑依されてマスカレイドと化した事があった。その時他のマスカレイド同様、頭部に仮面が現れたのだが、それは他のマスカレイドのような、かつてはもっともありふれた形だったが今ではほとんど見る事が少なくなった、あの禍々しい黒のラインが入った白い仮面ではなかった。それは白い仮面ではあったが、獣のような耳のついている、赤いラインで目鼻口が描かれたものであった。アース世界における日本の『狐面』と呼ばれる伝統的な仮面を思い出す者もいることだろう。
リチャードは上級マスカレイドに命令されるままに暗殺者としてその手を地で染めてきたが、それを救ってくれたのがひとりのエンドブレイカーだった。レイチェルという名のスカイランナーはリチャードを力で打ち倒し、同時にいまだリチャードには人間の心が残っていると信じて魂からの説得を行い、そして最後にはリチャードを棘《ソーン》から解放したのだ。その後レイチェルは上級マスカレイドと相討ちになって死亡、リチャードはその後を継ぐ形でエンドブレイカーになったらしいと聞いている……もっともリカルドはリチャードと直接会話を果たしたわけではないのであくまで風の噂ではあるのだが。いずれにせよリチャードの解放とともに仮面は消滅し、そのまま消え去るか、新たな者に取り憑くか……と思われたのだが。
「……本当に、運命ってやつなんすかね。そうとしか、説明のつけようがないっす」
気が付いた時には狐面は別の世界にいた。そこはエンドブレイカー!には見当たらない、彼のような仮面めいた種族が普通に街を歩き、他種族と平和に過ごす世界だった。一体何が起こったやらさっぱり見当もつかない。リチャードがレイチェルによって解放された際、なんらかの原因でマスカレイドの仮面も浄化されたのだ、とでも言うしかないのである。だが、その事について考察するだけの十分な時間は与えられなかった。その世界もまた邪悪に襲われ、狐面……リカルドは『師匠』のように邪悪な相手と戦う道を選んだからである。
(血塗れた手だろうがそれを守る力や資格はある)
レイチェルがリチャードに呼びかけた言葉は、リカルドのおぼろげな記憶の中にも確かに残っていた。数多くの汚れた仕事に手を染めてきた自分にはもはや戻る道なんかないし、今更普通に生きる資格なんかありはしない……|棘《ソーン》の影響が弱まり、リチャードに人間らしい感情が戻って来たと同時に、悔恨、悲哀、絶望、そのような物に襲われ、再び|棘《ソーン》の虜になりかかった時、そんな状況での言葉だっただろうか。
(笑え、笑顔が運命を切り開く一番の武器だ)
その言葉はあくまでリチャードのみに向けられたものではあるが、それは確かにリチャードと同時にリカルドをも救っていたのだ。かつて邪悪な仮面だった自分がヒーローマスクの猟兵として邪悪と戦う事ができるのも、『師匠』の教えに従い、人々の笑顔を守るという使命のためなのだ。そして今日、こうしてリカルドは『師匠』と『初顔合わせ』を果たす事ができた。その事にしみじみと思いを馳せ……
「……ちょっと水を差さないでもらえるっすかね?」
振り向く事なく、リカルドは言った。
「ここが大事な所なんすよ」
いつしかリカルドは取り囲まれていたのだ。その姿を見る事なく、リカルドにはすぐにその正体がわかった。そのマスカレイド集団は少年少女のような姿をして、顔は一様に無表情だ。そして統一された忍装束に、白の狐面をかぶっている……かつてのリチャードのように。それはすなわち、かつてのリカルドの姿でもあったのである。むろんそれはかつてのような身寄りのない、絶望しか知らない子供に|棘《ソーン》を与えられた者たち本人ではない。かつての万能宝石、現在は万能の魔人たるエリクシルに復活させられた存在だ。果たしてマスカレイドたちに、目の前にいるのがかつて仲間だったかもしれない者だという事への認識はあっただろうか?それを承知の上で裏切り者を制裁する意図によるものか、そのような事はお構いなしにただ目についた者を殺すだけなのか、いずれにせよ、マスカレイドたちは暗器を手にリカルドに襲い掛かって来た。
「やめておけ、今日はお前達と戦う気になれない」
いつもの軽薄さなどかけらもない口調で拒否の言葉を投げかけたが、こうなってはリカルドも抵抗しないわけにはいかない。鎖鎌を手に連携攻撃を仕掛けてくる仮面の暗殺者たちを迎え撃った。マスカレイドたちは袖から飛び出す鎖付きの暗器で巧みな連携攻撃や思いもよらぬ手数の攻撃を繰り出してきたが、リカルドにとっては全て熟知している行動だ。鎖鎌で防ぎ、いなし、躱し、その攻撃のことごとくを防ぎきっていた。
「俺達を、マスカレイドを生み出した魔女はもういない」
反撃の代わりに、リカルドはマスカレイドたちに説得の言葉を投げかけていた。それはいつもの気の抜けたようなものではない、真剣な言葉であった。
「生まれに縛られずにもう自由に生きったっていいんじゃないのか?」
かつて師匠が自分を解放してくれた時のように、魂からの呼びかけで暗殺者たちの人間としての心に訴えかける。そこにわずかでも疑問が生じてくれれば、それが|棘《ソーン》と魂との間の隙間となる。あとはそれを広げ、ついには|棘《ソーン》から解放するのだ。自分になら。今の自分になら、きっとそれができるはずだ。そしてかつて自分が感動した生の喜びを、是非とも彼らにも味わってもらいたい……。それを強く願い、リカルドは説得を繰り返した。
「……」
リカルドの目の前で、全てのマスカレイドは倒れ伏し、やがて消滅していった。結局リカルドはマスカレイドたちの心を動かす事ができなかった。リカルドにできたのは、彼らが長い事苦しまぬよう、少しでも早くその息の根を止めてやる事だけだったのだ。
「やっぱり、お師匠様はすごかったんすね」
リカルドが言えたのは、ただその一言だけだった。
仮にこの言葉をレイチェルが聞いていたとするなら、おそらく豪快に笑い飛ばすか、あるいは苦笑いをした事であろう。そもマスカレイドから|棘《ソーン》を引きはがす事自体、並大抵の事ではない。魂からの説得もだが、それ以前にマスカレイドが迷いを持っている、いわゆる拒絶体と呼ばれる状態でなければなしえる事ではない。つまり説得できたのはレイチェルのみならず、リチャードの要因も大きかったのである。もともと精神が野獣並みの者や、完全に邪悪に染まってしまった者は最初から解放など絶望的なのだ。ましてや今のマスカレイドはエリクシルによって復活させられた者たちだ。説得の余地など、最初から存在したかどうかわかったものではあるまい。レイチェルにだって果たして説得などできたものだか、はなはだ怪しいものだっただろう。
それでも、リカルドは思わずにはいられない。師匠ならできた、と。それはリカルドの中で神格化され、あまりに高すぎる目標と化した偶像であったかもしれない。それでもリカルドの中ではそれが真実だった。本人ならばあるいはそれを否定したかもしれないが、もはやそれをする事は誰にもできない。師匠も過去も記憶も、全て遥か彼方の存在なのだ。
いつしか日は暮れ、夜空にぽつりぽつりと星が輝き始めていた。リカルドはそれを見ながらぼんやりと考えた。かつての自分なら、それは手が届くはずのないものと認識したかもしれない。だが今は違う。その気になれば空を飛び、宇宙を駆け、星にすら手を届かせる事ができるだろう。それと同じだ。今は高すぎる目標かもしれないが、いずれはそこに手が届く所まで行けるかもしれない。いや、そこまで行ってみせる。たぶん、それが自分が第二の生を与えられた理由であるから。
「……また、会いに来るっす、師匠」
リカルドは再びバイクを走らせた。一度だけ振り返ると、エグゾーストノートを鳴り響かせ、一直線に夜の闇へと突っ走っていった。
成功
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