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Lady・Ocean to Crisis moon

#グリードオーシャン #戦後 #レディ・オーシャン #ザンギャバス大帝 #キャプテンレイジャック島

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#キャプテンレイジャック島


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●グリードオーシャン・キャプテンレイジャック島
 鱗を模したボディスーツを纏った女がその豊満な肢体を伸ばす様に腕を上げ、筋肉の緊張をほぐしていくと目の前の異形を見上げた。
「出来ました〜☆」
 女の名はレディ・オーシャン。
 大いなる「海を統べる者」にして……。
「『骸の月を喰らう月』完成で~す☆」
 幾度も世界を海に沈めた女。
「ザンギャバスさんには悪い事しましたけど☆」
 目元を隠したマスクの下からも分かるあどけなさを見せつつ口元に指を当て、首を傾げると。
「でも、良いですよね! グリモアの力、嫌いでしたでしょ~☆」
 悪戯っ子を思わせる笑みをこぼし、海へ振り返る。
「じゃあ、テイクオフまで頑張っちゃうぞ~☆」

 ――笑みが変わる。

 そこに立つのは女でも神でもあらず。

「|それがお前達の終わりだ、猟兵《That's the end of you, Jäger sixth》」

 海を統べ、生命奪いし者。

 月はただ鳴動する。
 女の背後で、時を待つかのように。

●グリモアベース
「……時は来た」
 グリモア猟兵、雷陣・通(雷轟一閃・f03680)が神妙な面持ちで振り返った。
「レディ・オーシャンは知ってるな?」
 まずは確認とばかりにあるオブリビオンの名を告げる。
「そいつがグリモアベースの座標を見つけた上に、そこへ転移する方法を儀式魔術【Q】によって完成させた――名は『骸の月を喰らう月』」
 口調がいささか硬いのは気のせいか。
「正直な話、俺も何でこんな名前なのかは良く分からねえ、だがグリモアベースに転移されたら面倒くさいことになるのは確かだ……少なくとも俺達はオブリビオンに好かれているとは思えねえしな」
 苦笑しつつ、テーブルに地図と資料を広げた。
「作戦は二段構え。一つ目はレディ・オーシャンとの戦闘。先制のユーベルコードは無いが強敵であることは確かだ。気を付けてくれ、普通に殴り合っても負ける」
 そしてもう一つの資料をテーブルに落す。
 そこに映るのは異形の姿。
「二つ目は『骸の月を喰らう月』との決戦だ、ヤツもただじっとはしていない。噛みつきや爪や翼による斬撃、握りつぶし、そして尾を構成する蛇の毒などで攻めて来る。色々な方法を以って倒しに行ってくれ」

 グリモア猟兵が左手の手袋を脱ぐと紋章が輝き、道が開かれる。

「場所はグリードオーシャン、キャプテンレイジャック島! 奴らは何度でも仕掛けて来る。他のグリモア猟兵の作戦を含めて二十回は倒してくれ!」

 門の向こうを見つめる学徒兵の姿には緊張の色しか見えなかった。

 ――戦いが始まる。


みなさわ
 滅びの月を伴い、海を統べる女はグリモアへと向かう。

 お世話になっております、みなさわです。
 今回はレディ・オーシャンとの決戦及び、グリモアベースに向かう『骸の月を喰らう月』の破壊をお願いします。

 難易度はやや難しめ。
 強敵との連戦です。

●敵
『レディ・オーシャン』
 大いなる「海を統べる者」にして「大海嘯」で一度世界を滅ぼし、ジャスティス・ウォーでも最大最悪の被害を齎したオブリビオンです。

『骸の月を喰らう月』
 旧七大海嘯最後の生き残りであるザンギャバス大帝が儀式魔術【Q】によって変貌した姿です。
 世界移動能力を持ち、レディ・オーシャンにグリモアベースの座標を教え込まれています。
 勿論、こちらも強敵ですので気を付けて戦ってください。

●場所
『キャプテン・レイジャック島』
 派手に暴れられる場所です、以上。

●その他
 マスターページも参考にしていただけたら、幸いです。

 では、皆様。
 海を統べる者とのダンスをお楽しみください。
 BGMは『In Other Words』
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第1章 ボス戦 『レディ・オーシャン』

POW   :    リヴァイアサン
無敵の【海水の身体を持つアトランティスの守護竜】を想像から創造し、戦闘に利用できる。強力だが、能力に疑念を感じると大幅に弱体化する。
SPD   :    オーシャンアーマー
自身に【清浄なる海水の鎧】をまとい、高速移動と【金属をも断ち切る高圧水流の刃】の放射を可能とする。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
WIZ   :    海を統べる者
「属性」と「自然現象」を合成した現象を発動する。氷の津波、炎の竜巻など。制御が難しく暴走しやすい。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

エル・クーゴー
タワーディフェンス戦型プロトコルを参照
敵行軍のインターセプトを実行

躯体番号L-95
これより、敵性の完全沈黙まで――ワイルドハントを開始します


・バトルスーツ背面よりバーニアを展開/噴射、空を高速で飛び回り場を広く使い応戦(空中機動+推力移動)

・破断用途の高圧水流ということは、その射線は発射後は直進性に強く縛られるものと踏み、敵に対し常に弧を描く軌道を意識し飛び回避を期す
・また、敵が水流を「鞭のように振るう」ことで曲線状の攻撃軌道を繰り出し得る可能性も想定し、応じて方向急転換も常に意識し飛ぶ

・間隙を縫って【L95式電磁投射砲】にて攻勢
・超高温の弾体で海水鎧をブチ抜く!!(スナイパー+貫通攻撃)



●First Attack

 戦いの始まりは空気の割れる音から始まった。
 海面スレスレをマッハを超えて飛行する姿。
 明らかに人型のそれは猟兵。
 故にレディ・オーシャンは躊躇いも無く高圧水流の刃を飛ばした。

 島の海岸ギリギリで止まったのは飛行していたミレナリィドール。
 飛行に費やしたバーニアの噴射と伴っていた衝撃波が相まって、海面が舞い上がり壁となって刃とぶつかり合った。
「仮装Z軸に対してX-3修正。タワーディフェンス戦型プロトコルを参照」
 切り裂かれた海の壁の向こうに立つのはエル・クーゴー(躯体番号L-95・f04770)。
「躯体番号L-95」
 直後、急上昇を開始するエル。
「これより、敵性の完全沈黙まで――ワイルドハントを開始します」
「嵐も台風も海から起こるんですよ~☆」
 やや小馬鹿にしたような口調で海を統べる者が笑うと、その身が海水に包まれる。

 |清浄なる海水の鎧《Ocean Armor》

 清濁全ての海を――あらゆるものを呑み込む海を身に纏うからこそレディ・オーシャン。
 空を飛ぶ猟兵に対し、オブリビオンは島を駆け抜けるように走り迎え撃つ!

 場の有利はエルにあった。
 空と言う自由なフィールドをキューバンエイトで八の字に刻み、ナイフエッジで砲門をオブリビオンに向け、牽制の為に飛んできたレディ・オーシャンの機械魚を撃ち落とし陸地を制圧する。
 その雨を貫かんばかりに走るのは高圧水流の刃。
 通常のウォーターカッターの水圧は300メガパスカルとなり、硬質の物質を切断するには弱い。
 だが、レディ・オーシャンの刃は金属をも切断する――その威力はギガを容易に超えるのは想像に難くなく、猟兵と言えど切断必至。
「仮装Z軸に対してY-2修正。分析完了しました」
 故にエルは速度の速い直線的な動きではなく、偏差攻撃による被弾を避けやすい曲線的なマニューバを以って対応した。
「本当にそう思ってます~☆」
 オブリビオンが右手を薙ぐように振ると幅広い水の刃がミレナリィドールの機動を塞がんとばかりに空を割く。
「|いいえ《No》」
 否定の言葉と共にエル・クーゴーが急上昇する。
「まだZ軸が修正されてませんから」
 その視界に見えるのはもう一つの刃、上昇した先を捕える海を統べる者の|狙撃《Marine snipe》。
 エルのバーニアから炎が消えた。
 推力を失う事で直線的に飛ぶ刃を回避すると、後は自由落下――いや違う。
 落下で生まれる慣性にて姿勢を整えて、砲門を一つ向ける。
 推力と身の軽さが産み出すマニューバ、またの名を木の葉落とし。
「修正完了。躯体番号L-95、これより|ワイルドハントを実行します《Execute Wild Hunt》」

 |L95式電磁投射砲《Railgun》

 ローレンツ力によって射出された弾丸はその速度もあって摩擦熱、ジュール熱といった運動エネルギーの損失を発生させる。
 だが――それこそがミレナリィドールの狙い。
 超高温の弾丸が海水による鎧を蒸発、貫通すれば、弾丸はレディ・オーシャンを貫き、鎧を構成した海水も蒸発することで水蒸気爆発を発生させる!

 その光景を、エル・クーゴーはゴーグル越しに見つめるのみだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アコニィ・リード
ごきげんよう、って感じじゃあ無いのよね
アンタの戯事で私が生まれた事を怨んじゃいないわ
少しは感謝してる
でもアンタは許されない
打上げは中止よ、レディ・オーシャン
一方的に奪われる恐怖を味わわせてあげる!

|シン・デバイス起動!《ドーピング・リミッター解除・限界突破》
耐性強化し荒れ狂う自然を真海竜醒――海竜の力で封じる
私も出来る様になったの。褒めてくれる?
訳無いわよね……じゃあ!
海竜の頭の上で腕を組んで仁王立ち
嵐で動きを絡め捕り雷を浴びせ行く手を阻む
その間に魔力溜め高速多重全力詠唱
風属性攻撃と天候操作で海竜の嵐と雷を更に増幅する気圧配置に
海竜で機械魚を喰らい回復した力で圧し潰す!

これが神罰、神への罰よ!



●I want to love the ocean

 爆発の中、歩くレディ・オーシャン。
「ごきげんよう、って感じじゃあ無いのよね」
 そこへ立ちはだかるのはアコニィ・リード(偽神暗姫・f25062)。
「お久しぶりですね~☆」
 傷つきはすれど、オブリビオンの口調に変わりはない。
「三年ぶりでしたっけ? 木偶人形さん☆」
 海を統べる者の皮肉に対し運命の少女は柔らかく微笑みを返す。
「アンタの戯事で私が生まれた事を怨んじゃいないわ」
 |クローン体《デッドコピー》は世界を駆け巡った過去を振り返り。
「少しは感謝してる」
 自分の意義を見つけ、言葉にした。
「だったら、お姉さんを見逃してくれませんか~☆」
「でもアンタは許されない!」
 レディ・オーシャンの軽口交じりの言葉を蹴り飛ばし。
「打上げは中止よ、レディ・オーシャン。一方的に奪われる恐怖を味わわせてあげる!」
 決別を告げる。
「……まあ、怖い☆」
 両手を頬に沿え、驚くそぶりを見せるオブリビオン。
「|なら、海に帰りなさい。私のお人形さん《Then go back to the Ocean. My doll.》」
 その言葉は深海よりも深く、冷たかった。

 島が揺れる。
 火山性の地震ではない、大地に何かが染み出しているのだ。
 それは泥から水、海へと変わり。
 二人の足元を濡らす。
 揺れは止まらない、けれど足元は動かない。
 アコニィが気づいたのはその時だった。
 水の地震――発生するバブルパルスが構造物を破壊するであろうそれこそが。

 |海を統べる者《The Lady・Ocean》

「|シン・デバイス起動!《ドーピング・リミッター解除・限界突破》」
 猛威に、運命に、立ち向かわんと叫ぶ少女の手首に痛みが走り、そして鼓動が響いた。
 潜在能力が全て開放され、アコニィは視た――海を、大地を。

 ――レディ・オーシャンの視る『世界』を!

 赤きロッドを掲げ。
 アコニィ・リードはその世界を『呑み込んだ』

 |真海竜醒《Call of Leviathan》

 ロッドは海竜となりて、海を統べる。
 竜の一瞥ひとつで足元の海水が消え、鳴動は収まった。
「私も出来る様になったの。褒めてくれる?」
 海竜の頭の上で仁王立ちした猟兵が軽口を叩く。
 レディ・オーシャンはただ見上げ、睨むのみ。
「訳無いわよね……じゃあ!」
 竜が叫ぶ、五感を共有したアコニィに呼応し、嵐がレディ・オーシャンを封じる。
「この程度ですか~☆」
 嵐を吹き飛ばし、海を統べる者が走る。
 続いて竜は落雷を落とし、オブリビオンを前進を止めた。

 ――海は好きだ、全てを受け止めてくれるから。

 ――海は嫌いだ、全てを呑み込んでしまいそうだから。

 レディ・オーシャンが水を操り、雷を遮断する。
 真なる水は絶縁体であるが故に。
 だが、その時間がアコニィには必要だった。
 高速多重全力詠唱。
 全てを込めた海へのシンフォニーが嵐を雷をさらに強める!
 猛威に動きを圧し負けたオブリビオンが機械魚を放てば竜がそれを呑み込み飛翔する。

 だから、私は海を好きでいたい。そのために――倒す!!

「これが神罰」
 アコニィ・リードが海竜を以ってレディ・オーシャンを圧し潰す。
「|神への罰よ《Your original sin》!」

 海を好きでいたいがために……。

成功 🔵​🔵​🔴​

荒谷・つかさ
普通に殴り合っても負ける、か。
それってつまり、普通じゃない殴り合いをすれば勝てるかもしれないってことよね。(|ポジティブ《脳筋》思考)

転送され次第、レディ・オーシャンへ突撃しつつ【筋肉の精霊さん】発動
立ち塞がるであろう無敵の守護竜は「怪力」を活かして真っ向から殴りつけ、普通に殴り合っているだけのように見せかける(実際は極力消耗を抑え時間を稼ぐ)
お楽しみは138秒後
レディ・オーシャンの全身を激しい筋肉痛と強烈なこむら返りが襲うわ
そんな状態で、無敵と信じる心と想像力も維持できるのかしらね?
(少しでも綻べば守護竜を力強くでかち割りレディに殴りかかる)

ねえ、知ってる?
海って、殴れば割れるのよ。


オリヴィア・ローゼンタール
この作戦が成就すれば、確かに我らの終わりだろう
だが逆に言えば、これを阻止すれば貴様の終わりだ
長年の因縁にケリをつけるぞ、レディ・オーシャン!

身に纏うのは海戦を想定した水着(水中戦・深海適応・高速泳法・水上戦・水中機動・水上歩行)
今は陸地でも、相手はレディ・オーシャン、海の魔神
瞬きの間に海中に没することも充分あり得る

強化された【視力】、極限の【集中力】で高圧水流刃を【見切る】
研ぎ澄まされた【第六感】からなる【心眼】で高速移動を先読み
未来位置を予測し――【爆殲魔槍】!!
それだけで討てるとは思っていないが、足は止まる筈
追撃に全身全霊(怪力・気合い)の【ランスチャージ】【急所突き】【串刺し】!



●A blow to the imagination

 重量物の落下に島が揺れた。
 塵芥が舞い上がり、汚い雨となって降る中、歩いているのはレディ・オーシャン。
 対するは二人の女。
 羅刹とダンピール、海を統べる者に対するのは鬼の血を引く無双二人。

「この作戦が成就すれば、確かに我らの終わりだろう」
 始めに口を開くのはオリヴィア・ローゼンタール(聖槍のクルースニク・f04296)。
「だが逆に言えば、これを阻止すれば貴様の終わりだ」
 言葉の通り、此処が運命分岐点。
「長年の因縁にケリをつけるぞ、レディ・オーシャン!」
「長年ってたったの数年じゃないですか~☆」
 オリヴィアの言葉につまらなそうに答える海を統べる者。
「|そんなのは海に水道水を一滴入れたようなものですよ~ニンゲンサン《That's like putting a drop of tap water in the ocean.understand》?」
 年月を重ねた冷たさを感じる言葉と共に纏うは水。

 |深く広い海の鎧《Ocean Armour》

 高速移動!
 間合いを詰めオリヴィアの前に立ったレディ・オーシャン。
 その貫手をはたき落とす手が一つ。
 衝撃で海戦に特化したクルースニクに水着の一部が切れる中、三人の中で最も小柄な女がそこにいた。
「普通に殴り合っても負ける、か」
 荒谷・つかさ(|逸鬼闘閃《Irregular》・f02032)であった。
「それってつまり、普通じゃない殴り合いをすれば勝てるかもしれないってことよね」
「殴り合いからは離れなれないんですか~☆」
 つかさの言葉にレディ・オーシャンが皮肉る。
「生憎ね。そんな考えじゃ、老けるわよ」
 ヒーローズアースの空気の中でも己を崩さない羅刹にオブリビオンは頬を膨らました。
「ふけませーん☆」
 そして現れるのは海を統べる巨大な竜。

 |リヴァイアサン《Guardian Dragon》

 海水の身体を持つアトランティスの守護竜がつかさへと襲い掛かれば。
 羅刹はただ拳を握るのみ。
「――破ァ!」
 竜の身が弾ける様子につかさは顔を歪める。
「海水の身体……だから無敵と言うわけね」
 失った肉体を海水で補っていく竜を見据え、羅刹はさらに距離を詰めた。
 踏み込みはコンパクト。力の伝達を破から震へとシフトし――掌の威力を浸透させる。
 レディ・オーシャンの無敵の守護竜に波紋が走ると沸騰するが如くその身が吹き飛ぶ。
 だが竜は海に還り、竜へと戻っていく。
 戦いは長引き、決定打を見出すには時が必要だと誰もが感じた……。

 一方でオリヴィアはレディ・オーシャンと直接対峙していた。
 破邪の聖槍を右手に持ち、それを振り下ろす。
 槍の長さが威力を生み出し、落下の速さがそれを増幅する。
「そうは行きませ~ん☆」
 オブリビオンが指を二本、突き出す。
 直後放たれた高圧水流の刃が槍を弾いた。
 直後、進むは海を統べる者。
 槍を振るいしシスターが同じように距離を詰めると視界が海に沈んだ。
「これぐらい!」
 瞬きの間にこの島を海に沈めるくらいは造作もない。
 レディ・オーシャンをそう評価していたオリヴィアだからこそ、躊躇うことなく槍を突き、それを阻む様にオブリビオンは泡立つ海水をその手に持て黄金の穂先へと叩き込んだ。
 振動が、槍を、肉を、血を、脳を揺らした。
 泡立つ水、水泡が弾ければそれは衝撃となる。
 故にレディ・オーシャンこそが海を統べる者。
 膝を着くクルースニクを見つめる、オブリビオン。
 だが、その表情が突如歪み、仰け反るように空を見上げ、倒れていく。
「つ……攣りました~☆」
 それは自然現象でもなんでもなく、つかさの放った精霊らしきものの仕業であった。

 |筋肉の精霊さん《MUSCLE・ELEMENTAL》

 筋肉の精霊と羅刹が定義しているものがレディ・オーシャンの筋繊維を微細且つ激しく損傷させ乳酸回路を暴走させ、増幅されたATPが強烈な筋痙攣を発生させる。

 つまりは……死ぬほど痛い筋肉痛とこむら返りであった。

 だが激痛の中、レディ・オーシャンは立ちあがってくる。
「水の鎧――そこからマグネシウムを補給し痙攣を抑え、水圧によるサポーター効果を使ってきたか」
 つかさとの付き合いの長いオリヴィアが冷静に状況を把握する。
 何かおかしい気もするが、もう慣れている。
 しかし、全てが万全である訳がない。
「そんな状態で、無敵と信じる心と想像力も維持できるのかしらね?」
 両手を広げた荒谷・つかさが問いかけ、人外の膂力を以って柏手を一つ。
 瞬間、掌から失われた空気が真空の刃となってリバイアサンを真っ二つにして、ただの海水へと変えていく。
「……ッ!」
 思わず、舌打ちを漏らしレディ・オーシャンが走る。
 しかし万全な時に比べその速度は遅い。
 ――故にオリヴィアはオブリビオンの軌道を読み、槍を天へと投げた。
 天空にて槍が分裂し、雨を降らせた。
 水ではない鋼の雨を。

 |爆殲魔槍《Gáe Bolg》

「くぅ……痛烈です~☆」
 聖槍の妄執の中、それでも軽口を叩いてレディ・オーシャンはオリヴィアを探し、その視界から消えたことを悟る。

 このユーベルコードは囮で本命は――本能的に避けてしまう空!
「ここだぁ!」
 クルースニクの咆哮、追撃のランスチャージは空から来た。
「それくらい、分かってしまえば何ともないです~☆」
「そうかしら?」
 これはオリヴィアより更に上から聞こえた。
「ねえ、知ってる?」
 落下の速度に回転を加え、全ての怪力を乗せたつかさの蹴り。
 それがオリヴィア・ローゼンタールの踵に合わさり、槍の破壊力に乗せられれば。
「海って、殴れば割れるのよ」
 そう、海も大地も割れる!

 つかさの言葉は急所を貫かれ、その衝撃で割れた大地が証明した。
 地面がはがれ、全てがはじけ飛ぶ――。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

毒島・雅樂
今回はアレさね…邪道、つまりは奇襲で戦ろうかネ。
手強いヤツを相手にする時にゃ、王道ばかりが最善手ではねェからなァ。推理小説の推理部分を吹っ飛ばシて犯人を当てるような戦り方だが、特にレディ・オーシャンとは面識も無いンで都合がイイ。首って云う犯人だけを目指シてブッた斬るサね。

…ってコトで、初手から【黯龍ノ哄笑】を使用して身を隠し、首を飛ばす機会だけを伺っての戢鱗潜翼。只管に待って待って待って、機会が来たトコで一気に首狙いで動いてから結果ノミ、派手に衆目に晒そうかィ。

そうそう。奇襲ってヤツだから他のヤツとの連携は喜ンで。
後、連携するンならヤバい時は助っ人するゼ。持ちつ持たれつ何とやら、だ。


川巳・尖
レディ・オーシャンって、何でそんなことが出来るんだろう
色々気になるけど、やろうとしてることは阻止しないとね

属性と自然現象の合成、高温とか乾燥するのを出されたら長くは耐えられないかも
大規模で制御が難しい能力を使ってくるなら、自身の安全はどうにかして確保してるってことなのかな
安全地帯があるとするなら敵の周囲だけ、水妖夜行で至近距離に飛び込むよ
間合いに入ったら即射撃、格闘は得意じゃないし撃てるだけ撃ち込むしかないね
回避するのも距離は取れないし、どっちが先に倒れるかの勝負になりそう

儀式魔術とか使って、そこまでして、あたい達を終わらせたいの?
そのやる気とか情熱とか、他のことに向けてよ



●Dragons and Specters Assassinate

 複数の爆発の余波が残る中、隠れるのはカクリヨの妖怪と竜神。
「レディ・オーシャンって、何でそんなことが出来るんだろう」
 川巳・尖(御先・f39673)の言葉に傍らにいた毒島・雅樂(屠龍・f28113)が面白そうに笑った。
「妾も知らンけれど」
 人ならざる雅樂のイントネーションが尖の耳に妙に心地よい。
「長く生キてりャ何でも出来るさネ」
「だとしたら」
 竜神の言葉に頷きつつ。
「色々気になるけど、やろうとしてることは阻止しないとね」
「アア、仕事ノ時間だ」
 水妖が口を開けば、竜も同意する。
 目的は同じであった。

 レディ・オーシャンの息が荒い。
 傷は何とか塞いだ。
 だが実質三回は死んでいる。
 ヒーローズアース、サムライエンパイアにて得た恐れと過去が無ければ質量全てを失っていただろう。
 そんなオブリビオンの前に少女が一人立ちふさがる。
「次は貴女ですか~☆」
「そうだったら?」
 レディ・オーシャンの問いかけに尖が答える。
「殺しちゃいます☆」
 口調を崩さず、海を統べる者が指を鳴らすと背後から赤い海――炎の津波が天を覆った。

 |海を統べる者《That's Lady Ocean》

 その熱さに水妖は眉を顰めた。

 時は少しさかのぼる。
「大規模で制御が難しい能力を使ってくるなら、自身の安全はどうにかして確保してるってことなのかな」
「良い考えだナ」
 尖の分析に雅樂は感心する。
 外見と違い、毒島・雅樂は智を好み、重んじる。
 勿論武闘派の血はまだ残っているが、今は引き出しが広がった。
「なら、今回はアレさね……邪道、つまりは奇襲で戦ろうかネ」
 だからこそ、手段にこだわりは無く、重んじるのは己の矜持。
「手強いヤツを相手にする時にゃ、王道ばかりが最善手ではねェからなァ」
「それって、つまり?」
 水妖の言葉に竜神はただ笑い。
「じゃあ、あたいは別のやり方でいくよ」
 少女は自分なりの選択をした。

 先ほどの会話を思い出し尖はレディ・オーシャンの姿を探す。

 ――居た。

 津波の遥か上、海水によって作られた竜に……。

 |リヴァイアサン《Guardian of Atlantis》の上に

「安全地帯があるとするなら敵の周囲だけ」
 だから水妖はその身の枷を解く。
 人からアヤカシへ全てを祟る悪霊へと。

 |水妖夜行《Specters・Apparition》

 悪霊へと身を変えた尖が津波を乗り越え、レディ・オーシャンへと迫る。
「近づくの、分かってました~。ザンネン☆」
 それが分かっていたかのようにリヴァイアサンが水の顎を開いた時。
「ザンネン?」
 人ならざるイントネーションと共に闇がオブリビオンの首に絡んだ。
「本当にソウ思ッてるさネ?」
 戢鱗潜翼とはまさにこの時。
 闇より現れた長脇差が全ての海を統べる者の喉笛を切り、六内入処――視聴嗅味触と主観、つまりは五感、六感を奪い取ったのだ。

 |黯龍ノ哄笑《Darkness・Assassinate》

「推理小説の推理部分を吹っ飛ばシて犯人を当てるような戦り方だが」
 竜神の台詞と共に消えゆく炎の津波。
「特にユーとは面識も無いンで都合がイイ。首って云う犯人だけを目指シてブッた斬るサね」
 そしてリヴァイアサン。
「ホラ、決めな――良く言うダろ?」
 落下していくレディ・オーシャンを見下ろしながら毒島・雅樂は呟いた。
「|時は金なりッさねェ《Time is Money》」
 それを逃す川巳・尖では無かった。

「儀式魔術とか使って、そこまでして、あたい達を終わらせたいの?」
 落ちていくオブリビオンの懐に飛び込んだ水妖が愛銃であるマコモHcの引鉄を引く。
 呪殺の針が込められた弾丸は悪霊と化した尖の霊気を喰らい威力を増している。

 一発。
 二発。
 三発。

 銃弾を撃ち込まれるごとに痙攣していくレディ・オーシャン。
 だがオブリビオンが少女の言葉に応える事は無い。
 視えも聴こえもしないのだから。
 分かるのは自らの死が近づいているという事だけ。
「そのやる気とか情熱とか、他のことに向けてよ!」
 最後の弾丸が放たれ、全ての海を統べる者は海へと落ちていった。

「……やったかな」
「分からンな……けどナ」
 尖の問いに答えつつ雅樂は島を……見え始めて来た月を仰いだ。
「まだ仕事は残ッているさネ」
 竜神の言葉に水妖は頷き、島へと走っていった。

 やるべきことはまだ残っているのだから。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

リューイン・ランサード
今回はヘタレている余裕も無いかぁ<汗>。
覚悟を決めます。

オーバーロードで真の姿(角が生え、翼は黄金の三対の光翼、尾は黄金の二股)に。
鎧の紋章、装甲外骨格《靂》瞬着!

敵攻撃は第六感・瞬間思考力で読み、空中戦・見切りで躱すか、ビームシールド盾受けで防ぐ。
オーラ防御も展開。
更に仙術で多数の分身を作り出して幻惑。

海水の身体を持つ守護竜ならば、通常攻撃無効な上に無限の回復力を持ちそうです。
ならばUC:オリジナル・ライト使用。

2回攻撃の1回目で『創世の光』を振るって、海水の身体を光に変換。
2回目で多重詠唱による風と炎の属性攻撃・全力魔法・高速詠唱・範囲攻撃による炎の大竜巻で、1回目で出来た守護竜の欠落部分を蒸発させつつ吹き飛ばして損害拡大及び回復阻害。
無敵でない事を証明して弱体化につなげる。

レディ・オーシャンには2回攻撃の1回目で光の属性攻撃・高速詠唱・範囲攻撃による広範囲の目くらましを放つ。
仙術の千里眼でレディ・オーシャンの居場所を見切り、2回目で『創世の光』を振るい、彼女を光に変換して倒します!


御桜・八重
レディ・オーシャンがグリモアベースに達したら。
ひどいことになるのは言うまでもないけれど。
そうまでして猟兵を憎むのは何故なんだろう。

あの人もオブリビオンなら過去の存在がある筈。
彼女は一体どんな過去を生きていたんだろう。

「大丈夫。任せといて!」
片手を挙げてゲートの潜り際に通くんとタッチ。
思うところはあるけれど、まずは全力で止める!

「……ほえー」
おっきい竜だ。
何か海水で出来てるっぽいけど、ものスゴイエネルギーを感じる。
そう見上げてる間にも立て続けに攻撃が!
躱し、跳んで、弾いて、避けて。
わたし一人じゃどうにもならなさそうな強大な力。
彼女の勝ち誇った様子に自信が見える。
「でも、それでも滅んだんだよね。貴女は」

どんなに強くても力は絶対じゃない。
彼女が過去になった時代、抗った人たちはこの力に打ち勝った。
きっと、力を合わせて。

桜色のオーラが強烈に吹き上がる。
この力はわたし一人のものじゃない。
わたしを支えてくれる全ての人の力だ。

レディ・オーシャン、見ていて。
わたしたちは、
貴女を、貴女の月を止める!



●Light transcends the past

 レディ・オーシャンがグリモアベースに達したら。ひどいことになるのは言うまでもない。
 ――だけどそうまでして猟兵を憎むのは何故なのだろう。

 御桜・八重(桜巫女・f23090)が青い瞳を閉じ、只考える。

 あの人もオブリビオンなら過去の存在がある筈。
 彼女は一体どんな過去を生きていたんだろう……?

 やがて視線に気づき、八重は瞳を開くと彼に笑って見せた。
「大丈夫。任せといて!」
 グリモア猟兵が掲げる手に合わせるようにハイタッチ。
 思うところは有るけれど、まずは全力で止める!
 決意と共に駆け出した桜の巫女が見た物は――。

 全てを呑み込む深きもの――海の象徴であった。

「今回はヘタレている余裕も無いかぁ」
 リューイン・ランサード(|波濤踏破せし若龍《でもヘタレ》・f13950)が冷や汗一つ。
 けれど、その表情に恐れはない。
 いやあっても、それを知り受け止めているのだろう。
 だから……。
「覚悟を決めます!」
「良いですね~覚悟☆」
 その言葉にレディ・オーシャンは妖艶に笑う。
「わたしも好きですよ――」
 だが笑みは邪悪な肉食獣のそれへと変わり。
「|そうやって決意した人が泣き叫ぶのは《That's how determined people cry out》☆」
 リューインの前に……猟兵の前へと立ちふさがった。

 先に動くのはレディ・オーシャン。
「お先に失礼しま~す☆」
 白い指が紡ぐのは海水から生まれし守護竜。

 |リヴァイアサン《Guardian Dragon》

「……ほえー」
 その大きさに八重は声を上げるしかない。
 空が海をいや、海の竜が支配していたかのように守護竜は巨大にして強大。
「今回は特別☆ 二倍マシマシです~☆」
 蠱惑的なウィンクの後、竜と海を統べる者は水弾の雨を猟兵へと叩き込む。
「……はっ!? いけない!」
 竜を見上げていた桜の巫女が咄嗟に跳ねる。
 水弾が叩き込まれた大地には小さなクレーターが一つ。
 涓滴岩を穿つとはよく言ったもの。
 高速で放たれる水の塊は砲弾と同様かそれ以上、当たればひとたまりもない。
 弾丸を躱し、距離を詰めれば竜の上に立つレディ・オーシャンが滝の様な水流を落としていく。
 八重が腰の二刀を振るい、水を切れば、そこへ竜の咆哮が轟き、オブリビオンは勝ち誇ったように笑う。
「でも」
 だが、それは桜の巫女の声に遮られる。
 咆哮と共に放たれた水弾は直撃したのか霧となって視界を塞ぐ中。
「それでも滅んだんだよね。貴女は」
 そう言い切った八重の前に立つのは竜の魔人。

 ――真の姿。

 黄金の光を翼としたリューイン・ランサードが超越を以って、人としての枷を外し、埒外への存在となって得た力で一撃を防いだのだ。
「八重さん、ここは僕が切り込みます!」
「うん、よろしく」
 リューインの言葉に少女は頷き、青年は紋章を刻む。
 闇の世界で得た紋章は鎧。
 虚空より現れし黒き全身鎧は紫電を発し、若龍へと繋がり竜の騎士へと変貌を遂げる。
 竜の水弾をビームシールドを受け止める。
 隙が出来るほどでもダメージがある訳でもない。だが、衝撃で足が止まるのは厄介だ。
 だからこそ分身を以って幻惑し、リヴァイアサンを見据える。
「海水の身体を持つ守護竜ならば、通常攻撃無効な上に無限の回復力を持ちそうです」
 ならばどうするか?
 簡単であった――|海水で無くなればいい《・・・・・・・・・・》。
 分身たちが二刀を、エーテルソードと流氷剣を掲げ、そして一つになった時。
 創世の光たる剣が。
 そう――。

 |始まりの光《Original・Light》

 光が刃となり海竜へと振り下ろされる。
 海水で出来たリヴァイアサンの身は刃に触れると光と化し、それを免れた海竜の肉体は続く炎の竜巻にて蒸発させられ、無敵たる存在を失わんとしていた
「むむ……やりますね~☆」
 だがレディ・オーシャンも黙ってはいない、過去幾度も打ち破られたのだからこそ知っているのだ――自分の心が完全に揺れなければ、海竜は無敵であることを。
 消えていくと同速度に創造されている守護竜。
 そこへ桜色の流星が尾を引いた。

「どんなに強くても力は絶対じゃない」
 流星たなびかせ、八重は口を開く。
 ――彼女が過去になった時代、抗った人たちはこの力に打ち勝った……きっと、力を合わせて。
 ユーベルコードに呼応して、魔法の竹箒が、何かを取り付けられたバスターブルーム・ホウキングがもう一つの流星となり桜の巫女に続く。
 桜色のアーマー。
 ヒーローズアースでの……レディ・オーシャンと戦った者達の意志の一つが御桜・八重と重なり強烈に吹き荒れる流星へと変わる。
「――流っっっ星☆」
「いや」
 オブリビオンが呟いた瞬間、八重は否定し。
「彗星ッッッだぁっ!!」
 桜色の光はレディ・オーシャンへとぶつかり、霧散した守護竜だったモノが残した雲すらも突き抜け、天空へと昇っていく。

 |桜彗星《SAKURA・COMET》

「この力はわたし一人のものじゃない」
 空へとオブリビオンを運びながら八重は叫ぶ。
「わたしを支えてくれる全ての人の力だ!!」
「ヒーローみたいなことを言います……ね☆」
 ユーベルコードに耐えながらレディ・オーシャンが呻くように答える。
 だが、それは事実。

 ――猟兵はもう一人いる!

 月の見える空に映るは影一つ。
 それは黒き竜騎士――リューイン・ランサード。
 天空より降るは創世の光。
 地より登るは人々が織りなす彗星。
「レディ・オーシャン、見ていて」
 二つの光がすれ違った時。
「わたしたちは、貴女を、貴女の月を止める!」
 八重は覚悟を告げると。
「ならば……」
 海を統べる者は。
「|骸の海で見物させてもらいます、猟兵サン《I'll let you observe in the sea of wreckage, Jäger》☆」
 21グラムの質量すら残さずに消えた。

 月が見える。
 戦いはまだ終わっていない。
 始まるのだ――これから。
 絶望へのカウントダウンが。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 冒険 『骸の月を喰らう月』

POW   :    真正面から敵の攻撃に耐え、エネルギーを削る

SPD   :    敵の攻撃をかわしながらチャンスを狙って攻撃する

WIZ   :    魔法や搦め手で敵の行動を誘導する

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●Fly Me G
 ソレは鳴動しつつ、空を見ていた。
 名は『骸の月を喰らう月』
 グリモアを憎みし者を儀式魔術によって変えた方舟。
 いや、船と呼べるだろうか?

 その三つ首はケルベロスを。
 山羊と獅子と蛇はキマイラを。
 炎吐く竜はドラゴンを。
 連想させる。

 だが、刃の如し前肢はどんな歴史にも存在せず。
 空を駆けんとする翼は悪魔の様。

 何者でもない何か。
 それこそが『骸の月を喰らう月』

 獣が吼える。
 猟兵を駆らんと。
 獣が吼える。
 全てを倒し、時を得て、飛び立つ時を。

 戦いは始まる。
 狩人たるは猟兵……君たちなのだから。
川巳・尖
グリモアベースには行かせない、ここで沈んでもらうよ

こっちを無視して移動されちゃうと最悪だよね、とにかく敵の注意を引かないと
水妖夜行を使って、狙えそうな首の鼻先や目玉を狙って撃ってみる
捕まらないように飛び回りながら嫌がらせを続けていけば鬱陶しいだろうし、炎とか吐いて始末しようとしてくるんじゃないかな
口を開けてくれたなら柔そうな所を狙うチャンス、焼かれる前にたっぷり撃ち込んであげる
尻尾の蛇にも同じ手が通用しそうかな?
こんな化物、どこまでやれば倒せるのか分からないし、弾が通用しそうな箇所は全部撃っておこう

骸の月を喰らう月、だったっけ
喰らうのはあたいの弾丸にしときなよ、サービスするからさ


白斑・物九郎
グリモアベースまで進撃しようとしてるって話なんですよな?
そしたらアイツは、猟兵サイドにとって過去最大級の『敵対行為』をキメてるって解釈でいっスよね

条件は十分揃いましたわな
見せてやろうじゃニャーですか――【亡霊船長式喧嘩極意】

ワイルドハント、白斑・物九郎
俺めのコトはキャプテンと呼べ

――ワイルドハント号、抜錨ォ!
どこの誰様に喧嘩売ったか教えてやりまさァ!


・『ワイルドハント号』に搭乗、敵進路上に布陣(飛空艇操作+船上戦)
・召喚したエル(f04770)には甲板で搭載火砲等を適宜管制させる

・コードの強化幅をフルに発揮し、鬼火を纏う船ごと突貫
・多少のダメージは【生命力吸収】で差し引きしつつ敵をとにかく削る



●Ram Attack The Wild Hunt

 最初に挑むのは人では無かった。

「グリモアベースには行かせない」
 川巳・尖が『骸の月を喰らう月』を睨む。
「ここで沈んでもらうよ」
「なあ、グリモアベースまで進撃しようとしてるって話なんですよな?」
 その傍らに立った白斑・物九郎(デッドリーナイン・f04631)が問いかけると尖は頷く。
「そしたらアイツは、猟兵サイドにとって過去最大級の『敵対行為』をキメてるって解釈でいっスよね」
 物九郎にとってはこの解釈と定義付けが重要であった。
「ああ……あれは敵だ」
 水妖の言葉に嵐の王は笑う。
「なら条件は十分揃いましたわな」
 解釈、定義、そして第三者の同意。
 全てが乗算されることで。
「見せてやろうじゃニャーですか――」

 |亡霊船長式喧嘩極意《Monochrome Arts' Black flag》

 甚平を纏った猫は海賊王の装いを纏う。
「ワイルドハント、白斑・物九郎」
 そして現れるは空をも征く汎用狩猟船、鬼火と共に顕現するはワイルドハント号。
「|俺めのコトはキャプテンと呼べ《Call me Captain》」
 ガレオンに乗った物九郎が顎で示せば、尖もそれに従う。
「――ワイルドハント号、抜錨ォ!」
 船が駆ける。
「どこの誰様に喧嘩売ったか教えてやりまさァ!」
 それへ羽ばたかんとする、滅びの月へと向かって。

「Grimoreaaaaaaaaaa!!」
 月が叫ぶ。
 そこに居ない何かを殺さんと。
 月を喰らう月が牙を向く。
 自らを殺めんとする猟兵へと。
「こっちを無視して移動されちゃうと最悪だよね、とにかく敵の注意を引かないと」
 甲板の上で尖が呟く。
「それなら、簡単でさぁ――エル」
『ラージャ』
 物九郎の声に対し先ほどのレディ・オーシャン戦にて初撃を叩き込んでいたエル・クーゴーの声がスピーカー越しに返ってくる。
「躯体番号L-95」
 ワイルドハント号の火器管制を一手に握るエル。
「当機は火器管制に非常に高い適性を発揮します」
 彼女とリンクした火器群が一斉に炎を吐く。
 大型貫通爆弾がオブリビオンを縫い付けるように叩き込まれ、砲の質量を押し込み、ミサイル弾頭のメタルジェットが熱を穿ち、機関銃弾が意識を執拗に引き寄せる。
「面舵ィ!」
 舵輪を持ったキャプテンが満面の笑みで船を操作し、火砲が効果的に叩き込めるように舵角を維持する。
「一端、戻してのぉ――取舵ィ!」
 そのまま『骸の月を喰らう月』を通り過ぎれば、ウイリアムソン・ターンで正面に陣取り。
「歯ぁ食いしばりなさぁ!!」
 |鬼火纏うワイルドハント号をオブリビオンへと激突させた《Ram Attack The Wild Hunt》!

 ワイルドハント号自体はユーベルコードではない。
 だが物九郎のゴーストキャプテンたる海賊の装いは敵意を……敵対行為を力に変え、それを船に乗せた。
 巨大なる『骸の月を喰らう月』はたたらを踏むどころか、跳ね上げられ腹を……見せた。
 そこに飛びこむのは川巳・尖。
 同じく敵対するもの――グリモアを憎むオブリビオンを祟る悪霊の姿と化しマコモHcの引鉄を引く。

 |水妖夜行《Specters・Apparition》

 霊力を喰らいし拳銃弾は悪霊の祟りを喰らい黒き弾痕を穿つ。
 それは肉を抉るのではなく、月たる化け物に呪いを刻んだ痕。
 対するオブリビオンも黙ってはいない、尻尾を翻し毒ある蛇の牙にて尖を喰らわんとすれば……。
「コッチ……忘れてないっスか?」
 物九郎が巨大な魔鍵で蛇を叩く。
 猫と妖が互いに視線を交わし、左右に跳ぶ。
『骸の月を喰らう月』が三つ首の内二つを左右に向け、接近を阻まんと鋭利な翼を振るう。
「足元がお留守っスよ」
 ゴーストキャプテンがスライディングで足元へと飛びこむ。
 肩口をバッサリやられたが問題ない。
 そのままオブリビオンの肢に下駄を叩き込めば生命力を吸収して差し引きゼロだ。
 月たる巨獣が崩れた。
「ほら……決めなさんな」
 月下の中、物九郎が見上げる。
 祟り纏いし水妖が薄く輝き空を待っていた。

 尖が拳銃を構える。
「GuuuRimoreaaa!!」
 咆哮が響き渡り『骸の月を喰らう月』の三つ首の内、竜が咢を開く。
「骸の月を喰らう月、だったっけ」
 竜の喉奥が赤く光り、炎が迸らんとした時。
「喰らうのはあたいの弾丸にしときなよ、サービスするからさ」
 弾丸が一つ、オブリビオンの頭を貫き、その余波で月たる化け物は吹き飛ばされた。

 かつての無敵たる肉体はもう無い。
 あとは……滅ぼすまで殺すまで!!

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

オリヴィア・ローゼンタール
骸の月を喰らう月……
レディ・オーシャンの最後の切り札が「海」ではなく「月」とは、なんとも意味深な
しかし問うても最早答える知性はあるまい
ならば刃を以って雌雄を決するのみ!

白き翼の姿に変身
飛翔して奴の上を取り、【空中戦】【空中機動】で爪牙や蛇を躱す

聖槍に聖なる力を集中・圧縮(全力魔法・武器に魔法を纏う)し、【赫怒の聖煌剣】を形成――まだだ、まだ足りない!
【気合い】と【根性】で【限界突破】! 際限なく出力上昇! 出力上昇!! 出力上昇!!!

万象を斬り裂く極煌の大剣を、全霊の力で振り下ろす!
黄金の光は【神罰】の属性を帯び(属性攻撃・破魔)、邪悪を滅ぼす【斬撃波】と化す!
ぉぉおおおおおおお!!!


リューイン・ランサード
引き続き、鎧の紋章、装甲外骨格《靂》瞬着!

ここは攻撃を重ねて、相手のエネルギーをガンガン削っていきましょう。
UC:フル・アヘッドを使用。

仙術で多数の分身を作って幻惑しつつ高速飛翔。
相手の攻撃は第六感・瞬間思考力で読んで、空中戦・見切りで回避。
毒に対しては結界術・高速詠唱で対毒結界を展開。
更にオーラ防御も展開。

その上で2回攻撃の1回目で、雷の属性攻撃・電撃を身体に纏ってのマッハ14の体当たり。
衝突の反動はUCによるバリアで無効化。
2回目で、多重詠唱による氷と爆裂の属性攻撃・全力魔法・高速詠唱・範囲攻撃・鎧無視攻撃によって広範囲で凍らせ且つ粉砕する。

これを繰り返してダメージを与え、後続に繋げます。



●Attack from the sky

 次の攻撃は空からやって来た。
 天高く輝く月に照らされる影は二つ。
 黒き竜騎士と白き聖騎士。

「骸の月を喰らう月……」
 オリヴィア・ローゼンタールの呟きには戸惑いが混ざっていた。
「レディ・オーシャンの最後の切り札が『海』ではなく『月』とは、なんとも意味深な」
「海に居たからですよ」
 紋章の力によって黒き鎧を纏ったリューイン・ランサードが答える。
「広い海の中を統べる者。見上げればあるのは太陽か月……彼女にはそれしかなかったのでしょう」
「しかし問うても最早答える知性はあるまい」
 猟兵二人が見下ろせば、そこには月を名乗る巨獣一体。
「GRu……Gru……GRaaa」
 オリヴィアの言う通り、聞こえてくるのは怨嗟ともいえる知性無き唸り声のみ。
「故に刃を以って雌雄を決するのみ!」
 聖槍のクルースニクの背中に顕現するのは白き翼。
 白に黒が続き、月を砕かんと空を駆ける!

「攻撃を重ねて、相手のエネルギーをガンガン削っていきましょう!」
 そう叫ぶリューインの心――心臓が締め付けられるように痛い。
 けれど、乗り越えなければいけない。
 これはそういう戦いなのだから。
 どんなに強くったって、どんなに力を身に着けたって、恐怖は消える事は無い。
 それが自分だと分かっているのだから。
 そうしないと守れるものも護れないのだから。
 今は――受け止め、そして乗り越えて。

 |前に進むのだ《full・ahead》

 バリアを纏った竜騎士が加速する。
 その姿はやがて陽炎のようにぶれていき、一が二、二が八、と増えていく。
 仙術によって練られた分身達。
 それを目掛けて『骸の月を喰らう月』が飛び上がり翼を振るう。
 薙ぎ倒されていくリューインの分身。
 だがそれは全てが幻惑。
 竜騎士自身はオブリビオンの懐に飛び込み――全力で体当たりを敢行する。
 空気が割れる音、空に響くは轟音一つ。
 月を名乗る巨獣が体勢を崩している内に吹雪がオブリビオンを凍らせ。
「――今だ!」
 爆発させる。
 島の空気が震え、割れる。
 無理もない、凍結させたものを爆裂させる……つまり『骸の月を喰らう月』の内部から水蒸気爆発を起こすようなもの。
 その威力は衝撃を伴う――爆轟現象なのだ。
 だが、それで倒れる敵でないことは分かる。
「まだだ!」
 攻撃はなおも続く。

 もう一人へと繋ぐために!

 一方でオリヴィアはオブリビオンに肉薄し、攻撃を掻い潜っていく。
 これは戦い方の違い。
 リューインが継続的な戦闘力の向上を選んだのに対し、クルースニクは強敵に対する一撃を狙う。
 だからこそ、それを決める機会を狙い、翼を羽ばたかせ挑まんとしているのだ。
 爆轟現象が響く中、煙をたなびかせてオリヴィアを襲う『骸の月を喰らう月』
 その爪を、牙を、そして執拗に絡みつかんとする蛇を躱し、クルースニクは空へ、月へと舞い上がる。
 近接から距離を取られ、追いかけようとした月たる化け物。
 そこへ前に進まんとするリューインのアタックが叩き込まれ、流れるように『骸の月を喰らう月』の全身が凍り付いた。

 ――時が来た。

 聖槍に聖なる力を纏わせ、月の光を背に浴びてオリヴィアは右腕の得物を掲げる。
「まだだ、まだ足りない!」
 人としての知性たる集中と圧縮。
 それでも足りなければ――精神の枷を引きちぎる。
 その声は歌姫のように美しく、獣のように空に響く。
 限界は一度越え、槍は大剣となる。
 さらに限界を超えれば、大剣は鉄塊が如き斬魔の剣となり。
 三度、限界を超えた時――光は柱となった。

 |赫怒の聖煌剣《Raging・Photon・Calibur》

「ぉぉおおおおおおお!!!」
 低く唸る声は咆哮となり。
 極煌は邪悪を滅ぼす神罰の刃となり、光は――振り下ろされた。
「GuuuRimoreaaa!!」
 返ってくるのは怨嗟の叫び。
 片翼を失った『骸の月を喰らう月』は錐揉みに落下していき、地面へと叩きつけられた。
 |空よりの一撃《Attack from the sky》は巨獣を大地に縛り付ける。

 後は――地に立つ者の出番だ!

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

荒谷・つかさ
さて、邪魔者が消えたところで本命の登場ね。
色々と尋常じゃないみたいだけれど……だからこそ、面白いわ。
やってやろうじゃない。いつも通り、正面からね!

【超★筋肉黙示録】発動しつつ正面から殴りに行く
力自慢として真っ向勝負を挑みに行く……という狙いも勿論あるが、最大の意図は「囮」
無敵の筋肉のお陰で耐久力にも自信があるので、攻撃を可能な限り引き付けることで他の仲間を支援する(いわゆるタンク役)
主な狙いは頭部と思わしき部分
弱点かどうかはわからないけど、間違いなく気は引けるはずね
立ち回りは体格差を活かし、敵の体表を鬱陶しく這い回るように
攻撃を避けることでの自爆も積極的に狙っていく

身体の大きさが、命取りよ!



●Bible

「さて、邪魔者が消えたところで本命の登場ね」
 地に叩きつけられ、大地が揺れ、塵芥が荒れ狂う中、一人の羅刹が歩く。
「色々と尋常じゃないみたいだけれど……だからこそ、面白いわ」
 名は荒谷・つかさ。
「やってやろうじゃない。いつも通り、正面からね!」
 力に優れる羅刹という種族の中でひときわ濃すぎる血を持つ女である。

 始まりは唐突に。
 牙を向く『骸の月を喰らう月』
 その獅子の頭を殴りつけるのはつかさ。
 だが、即座に動いた竜の頭が鞭の如く襲い掛かり、小さき羅刹の身体が吹き飛ばされる。
 荒れた大地に手を伸ばし五指で地面に突き刺せば、勢いは殺され後は大地に蹴りを穿つと、土を削りつつ女は体勢を整え、決して膝を崩すことは無かった。
「確かに大きいだけあって、威力は有るわね」
 つかさが舌なめずりをして、左の掌を空に向ける。
 この破壊力を生み出すのはあの体格から来る|重量《ウェイト》。
 ならば、それを補えばいい。
 輝きと共に現れるのは一冊の本。
 それを掴んだ羅刹の足元にヒビが走った。
 無敵の筋肉最強理論を記した書。
 荒谷・つかさが想像し創造した本はそのものが強さを証明する。
 シンプルに言うと硬くて重い。
 今の時点で1.5トンある本の名は――

 |超★筋肉黙示録《Hyper・Muscle・Apocalypse》

 今時点でつかさが開ける頁……1572ページを開くと書かれているは只、一説のみ。

『万物は原子で出来ている、鍛え、筋肉に意識を持つに至れば、最小の単位を使いこなせん』

「なるほど……分かったわ」
 羅刹が笑う。
 それは『知った』が故か、それとも闘争に『使える』が故か……。
 歩みは力強く、その身は揺らぐ事は無かった。

『骸の月を喰らう月』が吼え、跳躍と共に前肢の翼で切り上げる。
 その一撃をつかさが二指にて制す。
 返す刀で左に持った本の角で獣の三つ首の内、山羊の頭を叩き角を粉砕する。
 体格差のハンデは本の重さで補った。
 斬撃は――原子の単位にて受け止める。さすれば切れることは無い。
 その身が翻り、旋風の如き後ろ回し蹴りで獅子の頭の顎を揺らし、それ以上の攻撃はさせないとばかりに襲い掛かる竜を掻い潜る。
 拳が……叩き込まれる。
 体格差が圧倒的な場合、普通は大きい方が蹴散らして終わるだろう。
 だが互いの破壊力が同じ場合、小さい方が間合いを制した時、モーションの差によって早く当たる。
 重低音がオブリビオンの身体から響く。
 身体を殴って音が響き渡ることは普通少ない。
 だが、つかさの威力と月たる化け物の巨体がそれを可能としているのだ。
「GuuuRimoreaaa!!」
 痛みに耐えつつも『骸の月を喰らう月』が飛び上がり再び前肢にての斬撃を狙う。
 対する羅刹は一歩踏み込み、拳を脇に、捻転を以って力を溜める。
 後は互いに間合いを制し――一撃を撃ち込むのみ。

 風を切る翼の男が鳴った。
 遅れて正拳が空を貫く音が震え。
 そしてオブリビオンのもう一つの翼が刎ね跳んだ。

「身体の大きさが、命取りよ」
 原子を知り、最小の単位で楔の如き拳を放ったつかさが笑った。
 仕事は終わった。
 攻撃を引き付け、猟兵の攻勢に至るチャンスを作るのが羅刹の役目。

 そして――勝利への道が始まる。
 それは筋肉がもたらす、勝利への|黙示録《Bible)の始まりであった。

成功 🔵​🔵​🔴​

毒島・雅樂
あ゛~…昔の資料とは随分と違うツラをシてンじゃネーか。
まァ、経緯とかはどうでもいいンだ。ユーも特段の知り合いじゃねェシ、敵サンを前にシての感情の吐露は野暮天だろ。だから、妾…毒島雅樂は単純明快に、こう敵サンに言うのサ。「ブッ殺す」。

さっきは邪道だったンで今度は正面からノ王道…と、陳腐な流れだが燃えるだロ?

ンで…三ツ首だシ、ヤッぱ全部の首を潰さねェと狩れねェよナ。
流れ的には厄介そうなドラゴンの首から潰シて征くかネ。まァ、醜悪な竜の首が長く視界に入るのもナ…ってのは戯言で。後は特に首の順番は決めずに適当に。
殺り方とシては、多少の怪我は織り込み済みの接近戦。脳天に【赩龍ノ断罪】で風穴空けて殺ルさネ。



●Kill You

「GrouRaaa!!」
 月たる化け物が叫ぶ。
 それは怒りか、恨みか。
 その姿を毒島・雅樂は眺めつつ煙管の煙を肺に流し込む。

 ――あ゛~……昔の資料とは随分と違うツラをシてンじゃネーか。

 刻みの味を堪能しつつ、雅樂は思考を巡らす。

 ……まァ、経緯とかはどうでもいいンだ。ユーも特段の知り合いじゃねェシ、敵サンを前にシての感情の吐露は野暮天だろ。

 ひと時のくつろぎと会話のような思索が終われば、灰を落とし立ち上がり。

 だから、妾…毒島・雅樂は単純明快に、こう敵サンに言うのサ。

「|ブッ殺す《Kill You》」

 一言、告げた。

 対する獣は吼えるのみ。
 全てを蹴散らしグリモアへと行くのが自身の衝動なのだから。
 邪魔する者は殺すだけ。
 竜と獣は視線を交わし、そして距離を詰め始めた。

 ここから先は人外の戦い。
 人ならずだけの領域。
 魔術、鬼道、妖術、そんなものはいらない。
 ただ、ぶつかるのみ。

 牙を剥く『骸の月を喰らう月』
 その獅子の顎を紫電が蹴り上げた。
 雅樂が蹴り足を下したところに横から薙ぎ払うは刃持つ翼。
 竜神が長脇差を抜き、翼を跳ね上げたところに尾の蛇が鞭を打つようにうねり、女の鼻をしたたかに叩く。
 目の奥に火花が走る中、蛇の口が開いた――毒だ!?
 咄嗟に雅樂が紫煙を吹く。
 肺に溜め込んでいた煙は竜となりて毒を喰らい、互いに消える。
 一合と言うには数多くの手管が終わり、獣と竜神は間合いを取った。

 島から風が消えた。
 既に夜のさえずりは無い。
 ただ天頂の月が煌々と毒島・雅樂と『骸の月を喰らう月』を照らすのみ。
 その中で聞こえるのは。
 唸るように息を吐き、機を伺うオブリビオンと。
 流れる水のように静かな呼吸から、殺意を届かんとさせる竜神の。
 ――戦いの鼓動。

「GuuuRimoreaaa!!」
 先に走るのは『骸の月を喰らう月』で。
「ヤろうゼ」
 付き合うのは雅樂。
 月たる化け物の踏み込みが地面を揺らす。
 翼を奪われ、飛ぶことが叶わないオブリビオンが出来るのは全体重を乗せた斬翼前肢による袈裟。
 対する猟兵が神祇大史國家にて刃を受け、それを軌道として刀を滑らせて前に走るが勢いは殺しきれない。
 一尺九寸の長脇差が空を舞い、神が化けし衣すら切り裂き、赤いものを流す。
「……面白いもンだ」
 自分の右肩から流れる血の色に竜神は興味を示しつつも紫電と共に巨獣の視線から消えた。
 これを待っていた。
 全体重を乗せた袈裟の一撃は強烈無比であるが大きな隙を作る上に――頭が下がる。
 後は簡単だった。
 三つ首の中から気に入らない竜の頭へと一撃を落とすのみ。

 |赩龍ノ断罪《The・Scarlet・Absolution》

 竜頭の脳天目掛けて雅樂が貫手を放った時、紫電の柱が立ち登り。
 獣は頭を一つ、失った。

成功 🔵​🔵​🔴​

御桜・八重
かつてヒーローズアースの友から贈られたアーマー『サクラ・コメット』。
推進器として背に二本のホウキングを備え、抜群のスピードと機動力を誇る。
「使わせてもらうね。サクラ・コメット、セットアップ!」
彗星の様に桜色の尾を引き、いざザンギャバスの下へ!

「護りの花よ、咲きほこれ!」
複製した髪飾りは数個ずつまとめてオーラで覆い、バリア盾として使用。
ザンギャバスをスピードで翻弄し、髪飾りの盾で攻撃を弾き、
隙を見てはホウキングからオーラ弾を撃ち込む。

どんな相手でもいつかはチャンスが来る。
無限の体力に思えても、粘り強く諦めずその時を見逃さない様に。

「来た!」
大振りを躱してガラ空きになった隙に突撃。
低空飛行から急上昇し、ホウキングの接続部を軸に体を反転。
「彗星、キーック!!」
加速しながらかち上げるように頭に蹴りを入れる!
同時に合体した巨大髪飾りが回転しながら降下。
オーラの刃でギロチンの様に首を刎ねる!!

なぜあなたがグリモアを憎むのかはわからないけど、
ここから先に行かせるわけにはいかない。
今は、あなたを止める!



●SAKURA bloom

 地に伏せた『骸の月を喰らう月』
 それが突然に|頭《こうべ》を上げた。
 月夜に流れる一筋の流星――いや彗星。
 御桜・八重が空を駆けていた。
 身に纏うのはヒーローズアースにて友より手渡されたアーマー『サクラ・コメット』
 二本のホウキングが推進器代わりとなる『それ』は八重が使う事によって強大な敵を倒す星となる。
「使わせてもらうね。サクラ・コメット、セットアーッップ!」
 桜色の流星をたなびかせ、巫女は挑む。
 月たる化け物へと。

 先手は八重。
「ツインバスターブルーム!」
 大気や粒子をオーラで圧縮し推進するホウキングの正式名称はバスターブルーム・ホウキング。
 着弾すれば花が咲くが如きオーラの弾丸を発射するキャノン砲としても側面もある。
 しかもアーマーに二門取り付けられている結果、狙いも発射速度も通常の二倍以上。
 たちまち弾幕が開花し『骸の月を喰らう月』の歩みを止めようとすれば、対するオブリビオンも前肢の刃を振り抜き、オーラを切り裂き猟兵へと迫る。
 八重の髪飾りが光り、複数の輝きが咲くとそこには大量の桜の髪飾り。
「護りの花よ、咲きほこれ!」

 |花筏《SAKURA bloom》

 複数の髪飾りが重なるとオーラを作り出し、盾として『骸の月を喰らう月』の振るう斬撃を受け止め、牙を剥かんとした獅子頭の鼻先に立ちふさがる。
 その間隙を突き、八重は側背へと回ると強大な獣へと弾丸を叩き込んだ。
 そこへ蛇が襲う。
 尾を翻し、視界の外から毒を吐かんと動き、邪魔者の背を狙う算段であろう。
 だが桜の巫女は空へと飛びあがり、錐揉みを描きながら反転、蛇を掻い潜り間合いを取り、そして――蛇の頭をオーラの弾丸で狙撃した。

 戦いは続く。
 守りと射撃に徹した八重に対し、斬撃前肢を振るい蛇と獣頭で圧倒せんと迫るオブリビオン。
 一見すれば遠くより桜の巫女が牽制射で続けているように見えるが、実際は違う。
 互いに機会を――狙っていたのだ。
 八重は速度を生かした全身全霊の一撃を。
『骸の月を喰らう月』は体力差を活かし、全てを叩きつぶさんとする時を。
 やがて天頂の月が傾きを始めたころ、それはやって来た。

「GRaaaaaaaaaauuuuuu!!」
 先に動くのはオブリビオン。
 八重の動きが、集中力が落ち、わずかに出来た『機』を見出し、跳躍から前肢を振り下ろす。
 咄嗟に桜の巫女は全ての髪飾りを重ね巨大な光の桜を開花させ盾とした。

 だが、桜は散る物。

 髪飾りは空を舞い、御桜・八重は――そこに居なかった!

 空を切るは月たる獣の前肢斬撃。
 わずかに絡んだのは桜の色のオーラ。
 地を這うギリギリの高さで八重は飛び、懐に潜り込む。
「ホウキング!」
 桜の巫女の足元に花が咲く。
 噴出したオーラを大地が受けとめ広がる一輪の八重桜が。
「彗星……」
 大地へ吐き出された推進力。
 それは星まで行くであろう速さを生み。
「キーック!!」
 獅子の頭をかち上げるが如く顎を貫き天へ舞う。
 散った桜が集まり月夜を受けて輝く巨大な一輪となったのはその時だった。

「なぜあなたがグリモアを憎むのかはわからないけど」
 花筏は髪飾りを複製し、バラバラに操作するユーベルコード。
「ここから先に行かせるわけにはいかない」
 故に一つになることも可能で、更にあらゆるものから八重自身を守るオーラは。
「今は、あなたを」
 角度を変えれば、全てを断つ刃と変わる!
「止める!!」
 一輪の花がオーラを纏って回転しながら落下し、獅子の頭に引っ張られて動きを失った山羊の首を刎ね飛ばした。

 紅が咲き、大地にまた花が咲いた。
 血華という名の戦いの証たる花が。
 終わりの時は……近い!!

成功 🔵​🔵​🔴​

アコニィ・リード
こんな怪獣退治が始まるなんて……でも、やるしかないか!
|シン・デバイス再起動《ドーピング・リミッター解除・限界突破》、もう少しだけ頑張らないとね
空中浮遊と空中戦でX8を抱え海上へ移動し
ザンギャバスを誘き寄せる――わたしもグリモア持ってるから
これが狙いなら引っかかってくれないかしら?

上手く海上に導いたら武想界砲セット!
スナイパー
罠使い
重力の属性攻撃
これを奴の口から体内に直接撃ち込む!
あの大口よ、狙撃で外れる事は無いでしょ
それに注射より飲んだ方が効くらしいし!
更に魔力波動で動きを封じる――テイクオフなんてさせないわ
わたしも水中に移動してダメ押しの神罰を浴びせる!
自重でそのまま海の底深く沈みなさい!



●Fly Me To The Moon

 最後の時が訪れた。
 役目を担うのは|他の世界《In other world》の技術で生まれた運命の少女。
 名はアコニィ・リード。
 彼女の役目は『骸の月を喰らう月』を倒す事――否、深き海に沈める事。
 故に少女は最後を担う。
 それが自分を紡いできた『運命』を、歩んできた『今まで』で砕く事だから。

「こんな怪獣退治が始まるなんて……」
 そんなアコニィ本人は苦笑するしかない。
「……でも、やるしかないか!」
 正直、キャバリアでもあればいいが、生憎ここはグリードオーシャンだ。
 今はこの――腕輪にもう一度頼るしかない。
「|シン・デバイス再起動《ドーピング・リミッター解除・限界突破》」
 心臓が強く波打ち、視界が一瞬赤くなる、頬を伝う物が血と気づくのはそんなに掛からなかった。
「もう少しだけ……頑張らないとね」
 オーバードーズで動悸が沈まない中、アコニィは飛ぶ。
『骸の月を喰らう月』の前にグリモアを掲げて。
「Gru……GRa……」
「……おいで」
 誘いと共に少女は島を出て、海へと飛ぶ。
「GuuuRimoreaaa!!」
 咆哮と共にオブリビオンは海へと、その海上へ浮かぶアコニィへと走る。
 運命の少女はシャークシューターX8を構える。
 威力と射程を確実とする分隊支援火器のバレル。
 命中精度を上げるための機関部は狙撃銃の機構で銃身をフローティング化。
 確実に構えられる突撃銃のレイルシステムとフォアグリップ。
 そして貫通力に優れたPDWと同形状の弾丸。
 全てをコネクトし、放つ一撃の名は。

 |武想界砲《Armed Connected・Full Burst》

 重力の属性を付加された弾丸が精密な狙撃によって『骸の月を喰らう月』の最後の頭部である獅子の口を貫く。
 牙を以って少女を噛み砕かんとしたオブリビオンは頭から海へと落ちていった。
 そう重力によって海に沈めるという罠。
 それを成立させる技こそが――武想界砲なのだ。
 魔力波動が弾丸から放たれ『骸の月を喰らう月』の頭が吹き飛び、海面が波立つ。
 だが、それだけでは足りない。
「――テイクオフなんてさせないわ」
 アコニィも続いて海に飛び込んだ。

 蒼く、暗い世界。
 その深くで、浮かび上がろうとした者が居る。
 かつてはザンギャバスと呼ばれし、月たる獣。
 レディ・オーシャンが|グリモアベースへと行くために作り上げた月《Fly Me To The Moon》。
 だが、それももう終わりだ。
 レディ・オーシャンは死に、ここに居るのはそのデッドコピーにしてアコニィ・リードという一人の少女。
 神化に使う仮面を折りたたみ、光線銃へと変形させるとそれを片手にアコニィも深く潜る。
「自重でそのまま」
 |綿津見大祓《わだつみのおおはらえ》が放った光は。
「海の底深く沈みなさい!」
 神罰の一撃となって『骸の月を喰らう月』を海へと沈めた。

 …………。

 やがて海面に顔を出すのは一人の少女。
 見上げればそこには月一つ。
「……帰ろう」
 口から出てきたのはそれだけ。
 だけど充分だろう?
 運命は終わり、これからが始まるのだから。

成功 🔵​🔵​🔴​



最終結果:成功

完成日:2023年07月28日


挿絵イラスト