白鯨は夏の向こうに沈殿する
「………………暑いよう……」
少年は、全身から汗を噴き出し、ふらふらとよろめきながら森を彷徨っていた。
あの辛く苦しい仕事から逃げ出して、追手も来ないところまで逃げてきたと言うのに。季節さえ少年の味方にはなってくれないらしい。
それでも気力を振り絞って、歩き続ける。すると、流石の運命の女神も哀れに思ったか――森を抜け、視界が開ける。
何処までも続く青い空、白い雲。水平線の向こうから、漣が寄せては返す。砂浜は熱を持ってはいるが、素足になって踏み込めば柔らかく足を包んでくれた。
ああ、海だ。海へ出たのだ!
少年は暑さも疲れも忘れて駆け出した。あの海へと飛び込むのだ、きっと涼しくて楽しい!
その姿はまさに、年相応の少年のものだった。
――その身体が絶えず、光を放っていることを除いては。
●
「夏と言えばアイスにシャーベット! ……んじゃなくて、水着に海。だよね」
一瞬職業病が出たクレープ・シュゼット(蜂蜜王子・f38942)であったが。
気を取り直して、皆をここに集めた理由を。
「と言うわけで、皆には海で遊びたがってる男の子と海で遊んできて貰います! ちょっと偽神になっちゃってるけど、それ以外は普通の男の子だから」
ちょっと待って。
「この子はヘリオトロープって言って、召喚師の男の子だね。その能力に目をつけられて後ろ暗い仕事をさせられてたんだけど、それに嫌気が差して脱走したんだって。でも、追手に追いつかれて、弾みで殺されちゃったみたい」
そのまま、オブリビオンと化してしまったと言うわけか。
「本人はその辺りの記憶が一切なくて、追手からは逃げ切ったし今も自分は生きてると思い込んでるよ。だから暑いのもあって年相応に海で遊びたいだけみたいなんだけど……そこは偽神だしオブリビオンだから、敵意や悪意はなくてもユーベルコードが暴発しちゃうんだ」
成程。今回はその少年の討伐が目的か。
確かに同情の余地はあるが、意図せずとは言え被害をもたらすならばそれもやむなしと、
「ダメダメ! 言ったでしょ、皆の任務は遊んであげることだよ!」
あれっ?
「遊び疲れて満足したら消滅するらしいから。アマツカグラ的に言うと成仏? する? みたいな感じ。可哀想だから一緒に遊んであげてよ」
いいのかそれで偽神。
と言うか、意思に反してとは言え攻撃してくるのに、遊び相手も何もあったものではないと思うが。
「ああ、そこは安心して。依頼を持ってきてくれたパラディンくんが全部肩代わりしてくれるから。攻撃的な援護は出来なくなるけど、無敵城塞でダメージも状態異常も全部無効化するから何の気兼ねもしなくていいってさ」
有能!!
「勿論、普通に遊べる時間も取る予定だよ。無事に偽神を消滅させる頃には日が沈み始めると思うんだけど、その時間になると、沖に真っ白に光る鯨が顔を出すんだよ」
淡く柔らかく光り輝く白鯨。
とても人馴れしていて、有効的に接すれば背中に乗せて海を泳いだり、潜ったりなどしてくれると言う。
また、浜辺には羽耳兎が現れ、砂遊びに興じている。彼らと戯れることも出来るし、空にはこれまた友好的な飛竜がいて、彼らと共に空から海や沈む日を眺めることも出来るようだ。
その他にも、何種類かの小さな幻想動物たちの姿も見かけられる様子。
「勿論、鯨とか関係なく思い思いに泳いだり遊んだりしても大丈夫。冷たいものが欲しかったら、俺アイスとか配ってるから声かけてくれればいいし。パラディンくんを労ってあげるのもいいかもね!」
比較的平和な依頼だから、戦うのが苦手な猟兵でも歓迎だとクレープは言う。
最初は少年と。彼の後は幻想動物と戯れる、海での一日。
偶にはこんな依頼も悪くないでしょ? と、クレープは目配せひとつして見せた。
絵琥れあ
お世話になっております、絵琥れあです。
やっぱり私も海に行きた………………くない!!!!!!(出不精)
流れと詳細は以下の通りになります。
第1章:ボス戦『孤独の屍『テイマー・ヘリオトロープ』』
第2章:日常『冒険者達の旅路』
第1章では、海で遊びたいテイマー・ヘリオトロープくんと戯れていただきます。
偽神ですが害意はなく、暴発するユーベルコードもパラディンくんが吸収・防御してくれます。
攻撃の必要はありません。遊び疲れれば満足して消滅します。
第2章では、平和になった海に姿を現した、光る白鯨たち幻想生物たちと海で遊べます!
彼らと戯れるもよし、思い思いに遊んだりのんびりするもよし。幻想生物たちの詳細は断章にて。
また、拙宅グリモア猟兵のクレープと、共闘したパラディンくんがお声がけあれば会話に応じたり、一緒に遊びます。
(※呼ばれていないところに乱入はしませんのでご安心ください)
☆アイスについて☆
第2章ではクレープがアイスとシャーベットを作っていますが、彼の登場なしでもそれらを受け取ることは可能です。
第2章でのプレイング冒頭に🍨でアイス、🍧でシャーベットをリプレイ外で受け取ったことになります。(後者の見た目がかき氷と言ってはいけない)
指定がなければアイスはバニラ、シャーベットはオレンジになりますが、記号の後に以下の数字を指定でフレーバー変更可能です。
1:イチゴ、2:メロン、3:チーズ(🍨のみ)、4:チョコレート(🍨のみ)、5:白桃(🍧のみ)、6:グレープ(🍧のみ)
☆パラディンくんについて☆
色素が薄く、非常に整った顔立ちの美少年。但しもやしっ子ではなく、靭やかな筋肉を有しており見た目に反し頑丈。
寡黙で自分の名すら語らない……と言うより言葉を発せない模様。クールで話しかけても割と素っ気ないけれど、異世界文化に興味はある様子。
パラディンとしての能力は高く、皆さんが遊んでいる間にもしっかりユーベルコード着弾地点を予測し引き受けてくれる仕事人。
第1章開始前に、断章を執筆予定です。
各章での追加情報も断章での描写という形で公開させていただきます。
断章公開後、プレイング受付開始日をタグにて告知させていただきますので、ご縁がありましたらどうぞよろしくお願いいたします。
第1章 ボス戦
『孤独の屍『テイマー・ヘリオトロープ』』
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POW : 召喚タイガー『スターチス』
自身が【孤独や恐怖】を感じると、レベル×1体の【黄金化能力を持った黄金のトラ】が召喚される。黄金化能力を持った黄金のトラは孤独や恐怖を与えた対象を追跡し、攻撃する。
SPD : 召喚ハーピー『リンドウ』
自身が【孤独や恐怖】を感じると、レベル×1体の【石化能力を持ったハーピー】が召喚される。石化能力を持ったハーピーは孤独や恐怖を与えた対象を追跡し、攻撃する。
WIZ : 召喚スライム『ナズナ』
自身が【孤独や恐怖】を感じると、レベル×1体の【凍結能力を持った魚型スライム】が召喚される。凍結能力を持った魚型スライムは孤独や恐怖を与えた対象を追跡し、攻撃する。
イラスト:さいばし
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠テフラ・カルデラ」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●
「………………」
無声のまま、色素の薄い10代半ば頃の少年――とは言え水中での行動に支障が出ない程度の軽装で、細身に見える肉体は存外引き締まっている――が海岸を指差す。
そこには、聞いていた通りの少年の姿があった。マントと靴下、そして靴を脱いで砂浜に揃え、後は服が濡れるのも気にせず波と戯れている。
その笑顔はあどけなく、楽しげだ。純粋に海と、その水の冷たさを堪能しているように見える。ただ、その表情に時折、寂しげなものが混じるのも事実だ。
彼は孤独だった。組織の人間と接する機会は多かったが、あくまで商売道具として扱われてきたのだろう。その心が安らぎ、満たされることはなかったのだろう。
死してなおオブリビオンとして蘇り、偽神と成り果てなお、年相応の少年らしい生き方を求めた彼――ヘリオトロープ。
ならば、その最期くらい幸せなものであってもいいだろう。
彼が安らかに眠れるような、想い出を齎そう。
ティティス・ティファーナ
*アドリブ歓迎
「オブリビオン『テイマー・ヘリオトロープ』を確認、敵意・害意無し?! 現状での“最適化”を思案し実行する」と『アストラル・エレメント・トランスフォーメーション』を使って必要なファンネルビット/シールドビット/リフレクタービットを創造して展開し遊具や玩具にも似せたファンネルが想像出来てクスリと笑いながらも積み木や小野ごっこなどでも遊び相手になって他の猟兵とも協力できるのなら行動を思案して実行します。
他にも思考やパルスを読み取りながらづ維持に最適化を試みながら必要な創意工夫を怠らずに思案し思考します。
テイマー・ヘリオトロープが声も無く消え行く中で「満足か、良き旅路に付かん事を願う」と
●
「オブリビオン『テイマー・ヘリオトロープ』を確認」
実際にオブリビオンの少年を前にして、ティティス・ティファーナ(召喚獣「アストラル・エレメント(幽魔月精)」・f35555)が思わず驚きの声を上げたのは。
「敵意・害意無し?!」
全身から光を放っているし、オブリビオンであり偽神であることに間違いはないのだが、確かにグリモア猟兵やパラディンの言う通り、世界に対する敵意や害意を感じ取ることが出来なかったのだ。
そう実感してしまえば、本当にただ遊びたいだけの子供なのだなと思えてくる。さて、そうなると肝心のアプローチ方法であるが。
「現状での“最適化”を思案し実行する」
己の身体は機体にして幽体。その特性を活かし、ファンネルビット、シールドビット、リフレクタービットを創造。後はこれを遊具化、玩具化すれば少年は喜ぶだろうか。
すると積み木のようなファンネルや、板状の水泳用具に似たシールドなどが形成された。やはり遊びたいのだなと思えばクスリと笑みが漏れつつ、ティティスは少年に声をかけた。
「お姉さん……だれ?」
「怪しい者ではない。海を堪能しに来た者だ」
とは言え。
少年の代わりに警戒する様子を見せたハーピーが、石化の吐息を吹きかけてくるも、すかさず割って入ったパラディンが阻んだ。今の内に少年を懐柔してしまおう。
「ここに玩具もある。浜辺で鬼ごっこをするのもいいだろう。君の好きなことをするといい」
「あっ、あのね、じゃあ僕……!」
玩具、と聞いてきらきらと目を輝かせる少年。これは手応えありだ。
ティティスは少年の希望を全て叶えた。思考やパルスを読み取ることで、常に最適化――つまり少年を満足させ続けた。必要な創意工夫を怠らずに思案、思考を続けたことが功を奏したのだろう。
「満足か」
「えへへ、うん。楽しかった!」
「そうか。……良き旅路に付かん事を願う」
「?」
首を傾げる少年に、ティティスは涼しげに微笑む。
今はまだ解らずとも、現世に未練を残さず旅立てるように。
大成功
🔵🔵🔵
ミルナ・シャイン
ウェディングがテーマの23年水着姿。
(まあパラディンくんイケメン…!いい体してますわねぇ…攻撃を全て引き受けてくださるなんてなんて男らしいの!わたくしより少しばかり年下のようですけれど、将来有望ですわね!)
パラディンくんに熱視線を送る人魚。
わたくしも元パラディンですし、後で色々お話してみたいですわ。
さあ、彼のためにも遊び倒しますわよ!
そこの貴方、ビーチバレーしませんこと?このボールを落とさないように交互に打ち合うのですわ、簡単でしょう?
やり始めるとガチでのめり込んでしまう。だって…結婚式にお呼ばれした時のブーケトスの練習と思えば、あのビーチボールが花嫁のブーケと考えたら絶対に落とせませんの!
●
まるで花嫁衣装を彷彿とさせる出で立ちのミルナ・シャイン(トロピカルラグーン・f34969)。純白を纏い夢見るようなその瞳の中には。
(「まあパラディンくんイケメン……!」)
オブリビオンの少年、ではなく。今回の依頼を持ち込んだパラディンの方だった。
マントのような上着を肩に掛ける形で羽織り、下は水着のような軽装だが、晒された上半身は色白かつ細身であるものの、しっかり引き締まっている。
(「いい体してますわねぇ……それに攻撃を全て引き受けてくださるなんてなんて男らしいの! わたくしより少しばかり年下のようですけれど、将来有望ですわね!」)
パラディン本人は鈍感なのか気づいていないようだが、ミルナの熱視線を独り占め状態だった。
「わたくしも元パラディンですし、後で色々お話してみたいですわ。さあ、彼のためにも遊び倒しますわよ!」
ともあれまずは、依頼を解決しなければ。
勿論、やるからには真摯に少年と向き合います!
「そこの貴方、ビーチバレーしませんこと?」
「えっ……?」
声をかけられた少年は、一瞬戸惑う様子を見せたものの、ミルナの抱えたボールに気づくと少年らしく目を輝かせた。
しかし召喚獣がバリバリ警戒モード。黄金の虎が唸り、一睨みすればたちまちミルナの身体が冷たい金属へ――とはならず。
割って入ったパラディンがそれを受けつつ打ち消した。その仕事人っぷりにミルナは再びきゅんと心ときめかせるものの。
今は少年を満足させることが先決。改めて、ボールを手に向き直り。
「このボールを落とさないように交互に打ち合うのですわ、簡単でしょう?」
「うん……やってみたい……!」
そんなわけで。
最初はミルナも少年にコツを教えつつ、少年も落としたり上手く飛ばせなかったりという時間はあったが。
やがて慣れてきてラリーが続くようになってくると、ミルナも段々ガチでのめり込み始め。
(「だって……結婚式にお呼ばれした時のブーケトスの練習と思えば、あのビーチボールが花嫁のブーケと考えたら絶対に落とせませんの!」)
掴み取れ花嫁のブーケ! いやビーチボールなんですけどもね!
「お姉ちゃん凄いね……一回も落としてないや……!」
そんなこととは露ほども知らないヘリオトロープ少年は、尊敬の眼差しをミルナに向けたのだった。
大成功
🔵🔵🔵
茜崎・トヲル
【モノクロフレンズ】
2023水着で海へ! あーさん、スーさん交互に呼びます!
うん、あーさん!
いっぱい遊んで、いーっぱい、楽しい思い出をつくって、上書きしちゃおう!
こんにちは!おれはトヲルだよー。
スーさんの親友!君も今日からフレンズ!
出たねデカシャーク・ウキワ!わ~~乗る乗る~!体くくりつけた方がいーい?いらない?
じゃあ、よろしくね、あーさん!あんたもつかまって~!(男の子に言います!)
ありがとね、あーさん!よーしっ、次はおれのターン!
【肉体改造(UC)】!大きなネッシーにへーんしん!
もちろんいいよ!写真もいいよ!さあ二人とも!背中に乗って!(ヒレばしゃばしゃ)
楽しいねえ~!
スキアファール・イリャルギ
【モノクロフレンズ】
2023水着で海へ
哀しい過去を持った子ですね…
せめて少しでも楽しい思い出を作ってあげないとですね、トーさん
こんにちは、あなたのお名前は?
私はスキアファール、こちらのトーさんの親友です
よかったらこの、ものすっごくでっかいサメの浮き輪に乗って遊びませんか?(※2022年水着参照)
トーさんも乗ります? 安全運転で参りますよ!
最初はゆっくり、慣れてきたらスピードを上げて漕ぎますね
えっ、トーさんすごい、これがネッシー…!
これは超貴重な体験ですよ!(男の子に力説)
トーさん後で写真撮ってもいいですか、あと乗りたいです(キリッ)
わぁすごい、茜崎・ネッシー・トーさんに乗っている…楽しい…!
●
望まぬ仕事を強要され、果ては逃亡の先に命を落とした少年。
それが今、海辺で波と戯れている。偽神となってなお、一切の邪気すら感じさせずに。
「哀しい過去を持った子ですね……」
スキアファール・イリャルギ(抹月批風・f23882)のその言葉が、少年の全てだった。それしか、なかった。
「せめて少しでも楽しい思い出を作ってあげないとですね、トーさん」
「うん、あーさん! いっぱい遊んで、いーっぱい、楽しい思い出をつくって、上書きしちゃおう!」
頷く茜崎・トヲル(Life_goes_on・f18631)の快活な笑顔が眩しい。そして、その身に纏う和のテイストを取り入れた純白の水着もまた眩しく、このコンボだけで夏の暑さが和らぎそうな爽やかさだ。
一方のスキアファールもまた、頭部以外を覆う黒包帯こそそのままだが、雪豹を思わせる柄と色合いの上下セットの水着で涼やかさを演出している。サンバイザーも装着済みで、互いに準備は万端なのだ。
この完璧な態勢で少年に挑みます! 早速少年と接触を図る二人。
「こんにちは、あなたのお名前は?」
「え? えっと、ヘリオトロープ……」
「私はスキアファール、こちらのトーさんの親友です」
「こんにちは! おれはトヲルだよー。スーさんの親友! 君も今日からフレンズ!」
「フレンズ……ともだち。僕も?」
勿論! と二人で告げれば少年の表情がふわと和らぐ。今までは召喚獣以外にそう呼べる存在がいなかった彼には、きっとこれほど嬉しいことはなかった。
そこでスキアファール、背後に隠していたあるものを少年へと見せる。
「よかったらこの、ものすっごくでっかいサメの浮き輪に乗って遊びませんか?」
「わあ……! いいの……!?」
目を輝かせる少年。
彼の前に掲げられたのは、水色に水玉模様の、スキアファールの身長をも凌駕するジンベイザメのフロートだ!
因みにこれ、去年の水着コンテストの際にお披露目したもの。そのためトヲルにとっても馴染みの浮き輪。
「出たねデカシャーク・ウキワ!」
「トーさんも乗ります? 安全運転で参りますよ!」
「わ~~乗る乗る~! 体くくりつけた方がいーい? いらない?」
なんてやり取りを交わす内に全員恙なく乗船完了! 少年もワクワク顔だ!
「じゃあ、よろしくね、あーさん! あんたもつかまって~!」
「うん……!」
トヲルと少年の安全を確認したスキアファールがゆっくりと浮き輪を漕ぎ出す。
最初は安全を心がけつつ、二人が慣れてくればスピードを上げて、三人を乗せたジンベイザメは青く広い海を往く。
弾ける飛沫のかかる冷たさも、風を切って進む軽快なスピードも、きっと少年にとっては全てが未知の感覚。
わああと叫び声を上げながらも、変声を迎えぬままのその声音は心底楽しそうだった。
●
「ありがとね、あーさん!」
「サメとお兄さん、すごかった……」
波打ち際へと帰還したジンベイザメから三人が降りる。
少年は、スキアファールへと尊敬の念のこもった輝く瞳を向けていて。
「よーしっ、次はおれのターン!」
これは自分も負けていられないとばかりにトヲルは身一つで再び海へ。
きょとん、と首を傾げる少年の前で彼は。
「肉体改造! 大きなネッシーにへーんしん!」
「わあっ」
ざばん、と。
大きな音と共にほぼ波も同然な飛沫が上がる。
思わず目を瞑った少年が、恐る恐るその瞼を持ち上げると。
「えっ、トーさんすごい、これがネッシー……!」
何とユーベルコードの力でトヲルはネッシーへと姿を変えてしまったのだ!
これには思わずスキアファールも驚きの声を上げ、少年もぽかんと目と口を大きく開き、ネッシーとなったトヲルの顔を見上げている。
「これは超貴重な体験ですよ!」
「う、うんっ、おっきくてすごい……!」
興奮気味で力説するスキアファール。少年も感嘆の声を上げていた。
「トーさん後で写真撮ってもいいですか、あと乗りたいです」
キリッ。
真面目なキメ顔をしているが、言動から未だ興奮冷めやらぬ様子がありありと見て取れるスキアファール。
しかしトヲルはわざわざ野暮なツッコミを入れることもなく、からからと(多分)笑って。
「もちろんいいよ! 写真もいいよ! さあ二人とも! 背中に乗って!」
ヒレをばしゃばしゃとして、背に乗るように促せば。
恐る恐る、しかしワクワクした様子の二人の重みを覚えて。
「よーし出発!」
トヲルネッシー、海へと発進!
「わぁすごい、茜崎・ネッシー・トーさんに乗っている……楽しい……!」
「うんうん、楽しいねえ~!」
あなたはどうですか、とスキアファールは少年へと問うた。トヲルも己の背を振り返って見守れば。
「うん、うんっ……とっても楽しい!」
笑顔で頷くその姿は、やはり光を放っていたが。
純粋な少年のそれであることに、何も間違いはなかった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
蒼乃・昴
少年は俺に似ている
俺も廃棄処分されかけたあの日に、逃げ出してきたばかりだったから
遊ぼう少年
彼の望む遊びをしよう
彼が楽しいように
彼のしたいように
出来るだけ全部を叶えてあげたい
多分虎とハーピーとスライムは
少年の事をずっと守ってきたんだろうな
姿が見えたらよしよししよう
これから何がしたい?
生きたくて
自由を求めて
逃げ出してきたのだろう彼のやりたいことを聞く内に
胸は苦しくなっていく
…なんでもない、ただ
君が生きていてくれて良かったと思ったんだ
流してしまった涙が見られないように
彼が見てない所で涙を拭う
彼の幸福を祈る
どうか彼の魂が癒されますように
彼が安らかに眠れますように
ずっと傍に居て祈ろう
最期のその瞬間まで
●
話を聞く度に、胸が痛んだ。
目の当たりにして、もっと痛んだ。
(「少年は俺に似ている」)
蒼乃・昴(夜明けの逃亡者・f40152)は想起する。
悪逆たれ、兵器たれ。心を得てその使命を棄てて、そうして廃棄処分とされかけたあの日。
生きたいと願い、逃げ出してきたばかりのこの身にとって、少年の末路は余りにあり得た未来。
だから、彼の元へ。
首を傾げる少年に、控えめに微笑む。
「遊ぼう、少年」
彼の望む遊びを。
彼が楽しいように、彼のしたいように。
彼の心の望むままに。
「出来るだけ全部を叶えてあげたいんだ」
「……遊んでくれるの?」
少年はあどけなく問うが、攻撃の術を封じられてもなお召喚獣らは警戒したまま。
その頭を、昴は臆さずによしよしと撫でた。
(「多分彼らは、少年の事をずっと守ってきたんだろうから」)
それを思えば、警戒するのも当然だと思えた。
少年の周りの大人は、信じるに値しない者ばかりだっただろうから。
彼らも少し、警戒を緩めてくれたらしいところで、海を泳いでみたいが泳ぎ方が解らない、と言う少年の手を昴は取った。少しだけ波打ち際から遠くへ出て、ばた足で泳ぐ彼の手を引く。
冷たい波を身体に受けて、少年は涼しそうだ。徐々にその表情が和らぐのを見て、昴の口元にも自然と笑みが浮かぶ。
そうして足を動かすのに疲れたら、少し休憩。波打ち際に並んで座り、どちらともなくぽつぽつと話し始める。
「これから何がしたい?」
「え?」
「ここでやりたいことでも……未来のことでも」
「……んーと……」
少年は語り始めた。未来があると疑わず。
生きたくて、自由を求めて、逃げ出してきたのだろう彼のやりたいことを聞く内に、昴の胸はまた苦しくなっていく。
自分は幸運にも未来を手に入れた。だが、少年にはもう――、
「……どうしたの?」
声をかけられ、はたと我に返る。
ふと顔を逸してしまったが、声は震えていなかっただろうか。
「……なんでもない、ただ」
我知らず流れた涙。
少年には、見られていないといい。
「君が生きていてくれて良かったと思ったんだ」
この気持ちは、本心だから。
悟られぬ内に涙は拭って、ただ彼の幸福を祈ろう。
(「どうか彼の魂が癒されますように、彼が安らかに眠れますように」)
だから今は、彼のために傍に在り、祈り続けよう。
最期の、その瞬間まで。
大成功
🔵🔵🔵
テフラ・カルデラ
※アドリブ可・トドメ希望
宿敵である彼をこれ以上苦しまないよう、わたしが【魔法少女式封印術】で封印します…!
彷徨うだけじゃない、もっと素敵なところだっていっぱいあるのです!
…と言う事で海なのですー!既に水着に着替えて敵意すら微塵も感じないどころか遊ぶ気満々なのですよぉ!
最初は警戒されてましたが、外見の水着に興味を示している模様!
…そういえばそういうのとは無縁でしたよね?
水を掛け合ったりして段々警戒心も解いていき…気づけば遊び疲れて眠ってしまいましたね
寝言なのか彼はまだ遊び足りないようです…そろそろこれでお別れ…ではないです!これからは過去の辛い思い出を塗り替えるように色々な素敵な場所を見たり思い出を作っていきましょう!
今なら【魔法少女式封印術】が通用するはず…!
●
(「このまま彼を消滅させれば、確かにこの場は平和的に解決出来るでしょう……」)
だが、それでは少年自身、即ちヘリオトロープにとっては根本的な解決にはならない。
彼はまた骸の海から世界に染み出しては、己が既に死んでいることに気づかず彷徨うのだろう。今まで世界で得た記憶が還元されることもなく。
骸の海に在り続ける限り、彼に残るのは辛く悲しい記憶のみ――だからテフラ・カルデラ(特殊系ドMウサギキマイラ・f03212)は、全てを終わらせるべくここに来たのだ。
「宿敵である彼をこれ以上苦しまないよう、わたしが魔法少女式封印術で封印します……!」
この宿縁ごと、己の元へ。
そうすれば、楽しく優しい想い出を憶えたまま、この世界に留まることが出来る。彼を商売道具として酷使する大人のいない環境で。
(「彷徨うだけじゃない、もっと素敵なところだっていっぱいあるのです!」)
悲劇のままその短い生涯に幕を下ろしたからこそ、『ヘリオトロープ』として彼と世界を巡りたい。その一心で、テフラは少年の元へと駆け寄った。
――勿論、彼と存分に海を堪能するつもりで!
「……と言う事で海なのですー!」
既に海遊びの準備は万全。水着だってこの夏のために新調したものがある。パステルカラーに赤いリボン、兎とハートをあしらった、魔法少女を思わせるデザインだ。丁度ユーベルコードとのシナジーも抜群。ビジュアル的な意味で。
「敵意すら微塵も感じないどころか遊ぶ気満々なのですよぉ! というわけで遊びましょう!」
「……お姉さん、だぁれ?」
思いっきり性別を間違われているがまあよしとしよう。実際、少女らしい容貌に加えて魔法少女の装いなのだし。
兎に角、そんな魔法少女ルックな水着には興味を示している様子の少年。警戒はまだしているようだが、それはこれから解いていけばいいだろう。
(「……そういえばそういうのとは無縁でしたよね?」)
今は味方の猟兵たちと沢山遊んで、ボトムス以外は脱いでいるようだが、それでも普通の衣服であることに変わりはないので。
余り沖には出ずに、遊んだ方がよさそうだ。
「わたしはテフラと言います。わたしもあなたと遊びたいので、浅瀬で水遊びしませんか?」
「う、うん……!」
水遊びの誘惑に瞳を輝かせ、テフラの手を取る少年。それを軽く引いて海に出た。
きらきらと冷たい水を掛け合ったり、砂の城を作ったり、貝殻を集めたり……楽しい時間を共に過ごせば、段々と少年の警戒心も解れてゆく。その時には時折、攻撃を仕掛けてきていた――阻まれてはいたが――召喚獣らも、見守りの姿勢に入っていた。
やがて、日が傾く頃には遊び疲れてうとうと、そのまま眠ってしまった少年。
「んん……お姉さん……まって……」
浜辺で追いかけっこの夢でも見ているのだろうか。
(「まだ遊び足りないようです……でも、そろそろこれでお別れ……」)
現れた魔法少女の杖を掲げる。
それは少年を骸の海に送り還すため――、
「ではないです!」
そう、忘れてはいけない。
テフラは少年を、広い世界へ連れ出しに来たのだ!
「これからは過去の辛い思い出を塗り替えるように、色々な素敵な場所を見たり思い出を作っていきましょう!」
少年の身体の輝きが、薄れていく。
それに反してテフラの杖が輝きを増していく!
「今ならこの魔法少女式封印術が通用するはず……! 骸の海に囚われたこの哀れな存在を今、わたしの元に……!!」
杖の輝きが最高潮に達した瞬間、少年の身体もまた光となり、召喚式カードの中へと吸い込まれていく。
やがて光が収束したその時、カードの中にはあどけない寝顔を見せる少年の姿があった。
大成功
🔵🔵🔵
第2章 日常
『冒険者達の旅路』
|
POW : 羽耳兎の生息する陸地を歩む
SPD : 優しき竜達と共に自由な空へ
WIZ : 光る鯨が友を想い歌う海を渡る
イラスト:三橋
|
種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●
少年の声の、響かなくなった浜辺にて。
望む水平線には、金の光が混ざりつつある。
傾き始めた日に、色を変え始めた空の色に、誘われるように。
鯨の咆哮が、低く穏やかに響く。
海を揺らして、緩く柔く波立たせる。
水平線を覆い隠すような白が、光を受けてきらきらと淡い金の光を放つ。輝きの正体はきっとこれなのだろう。
巨体ゆえに波打ち際までは寄れないようだが、泳げば彼の元に辿り着くことは出来そうだ。
そして白鯨は歌う。来訪を告げるように。友を呼び誘うように。
空より来たるは優しげな眼差しで見渡す飛竜。賢く歌を、言葉を解する空の民。
浜辺に駆け出したのは小さき者たち。羽耳兎は砂遊びに興じ、波打ち際を涼し気に楽しげに駆け回る。
少し離れたところでは、淡いシャーベットカラーのリスにも似た生き物が、美しい貝殻を拾い集めているようだ。
木の枝の上には、綿雲のような真っ白な小鳥が何羽も止まっている。雄はすらりとして美しく、雌はふわふわとして愛らしい。
また、茂みの中にも何かが隠れているようだ。時折、きらりと何かが光っている。同じ気配がひとつしかないところを見ると、どうやら迷い子だろうか。
彼らと戯れてもいいし、彼らと戯れずとも思い思いに遊んでもいい。
グリモア猟兵に氷菓を貰うも、独り海を眺めているパラディンを労うのもいいだろう。
何をするのも各々の自由だ。だってここは、幻想動物たちが訪れるほどに平和となった海なのだから。
ティティス・ティファーナ
「『孤独の屍『テイマー・ヘリオトロープ』』🍨、🍧確か見好きそうだな」
と呟いて献杯とカップを軽く上げて冷たい甘味を楽しみます。
光る白鯨を眺めて歓喜と歓迎のパルスを感じ取り微笑みながら波間を追従して波間と潮騒の音色を「自然の織り成す調和のパルス…心地良く美しい」と囁いて白鯨の流れやイルカの動きに合わせて流れ米踊り進みます。
小魚やタツノオトシゴなどの流れにも合わせて小さくも懸命な生命のパルスを感じて「生命と運命の波間を生きる波長は美しく逞しい」と微笑み、両手を広げて感じ取ります。
追従したり合わせる猟兵がいるのなら合わせて行きます。
「運命の迷い子なオブリビオンも確かな運命への還らざる刻の終わりへ」
●
「孤独の屍『テイマー・ヘリオトロープ』」
光る海、輝ける白鯨。
横たわる光景を前にして、ティティス・ティファーナ(召喚獣「アストラル・エレメント(幽魔月精)」・f35555)は静かにその名前を呼んだ。
「確かに氷菓は好きそうだな」
短く呟いた、その手にはアイスとシャーベット。
今日この日以前にも、散っていった彼らのためにもと。
献杯の代わりに器を掲げてから、自らも氷菓を楽しむ。
滑らかで優しい甘みのバニラアイスと、爽やかで清涼感のあるオレンジシャーベットをそれぞれ堪能しながら、光る白鯨を眺めれば。
歓喜と歓迎の|信号《パルス》を感じ取り、微笑む。
それから白鯨を目指して進み、追従する波間と潮騒の音色を感じながら。
「自然の織り成す調和のパルス……心地良く美しい」
囁いて、白鯨の流れに合わせて、舞い踊るように海を往く。
小さな魚たちの流れを感じて、その流れに乗った。小さくも懸命な生命が放つ確かな信号は、ティティスにとっても好ましいものだった。
「生命と運命の波間を生きる波長は美しく逞しい」
小さくとも、生きている。確かにそこに息づく生命だ。
微笑み、両手を広げて感じ取る。その身に、余さず刻み込むように。
それは、あの少年に対しても。
「運命の迷い子なオブリビオンも確かな運命への還らざる刻の終わりへ」
多くの信号を、この母なる海から感じ取り、ティティス自身もまた満たされてゆく。
願わくば、どうかあの少年も心満たされてあればと――。
大成功
🔵🔵🔵
ミルナ・シャイン
🍨4
グリモア猟兵のクレープ様からアイスを2つ頂いてパラディンくんのもとへ。
お疲れ様ですわ!アイス頂いてきましたの、チョコとバニラとどちらがお好き?
申し遅れましたわ、わたくしはミルナ・シャイン。今は城塞騎士、元はパラディンですの。人を護るって素晴らしいですわよね!わたくしのお母様も守りを命題に、世界を救った偉大な騎士なんですのよ。
その…差し支えなければお名前を聞いてもよろしくて?
言葉が発せないのなら砂浜に書いてみるとか…
お名前が分かっても分からなくても、一緒に遊びたいですわ。
あのリスのような小動物可愛いですわよね、あの子達と貝殻拾いなんてどうかしら。
綺麗なの拾ってアクセサリー作りたいんですの!
●
騎士としての役割を果たした少年は、浜辺に腰を下ろして茫洋と海を眺めていた。
そんな彼に、ミルナ・シャイン(トロピカルラグーン・f34969)は声をかける。その手に二種類のアイスをしっかりと確保して。
「お疲れ様ですわ!」
ミルナの声に反応して、パラディンは彼女へと顔を向ける。アクアマリンに似た淡い海の色をした瞳を縁取るように伸びる、長い睫毛が瞬きで揺れた。
「アイス頂いてきましたの、チョコとバニラとどちらがお好き?」
手元のアイスを掲げれば、彼の視線がゆるりと持ち上がった。彼は少し思案しつつもバニラアイスを指したので、ミルナはそちらを手渡した。
並んでアイスをいただきつつ、ミルナは言葉をかけ続ける。
「申し遅れましたわ、わたくしはミルナ・シャイン。今は城塞騎士、元はパラディンですの。人を護るって素晴らしいですわよね!」
パラディン――と言うより、城塞騎士にか。彼が反応し、改めてミルナへと視線を向けた。聞き慣れない職種に興味を示したのだろうか。
「わたくしのお母様も守りを命題に、世界を救った偉大な騎士なんですのよ」
「………………」
パラディンは一瞬、口を開こうとしたようだが。己が声を持たないことを思い出し、思い留まった様子だった。
「その……差し支えなければお名前を聞いてもよろしくて? 言葉が発せないのなら砂浜に書いてみるとか……」
声のない己を、彼はどう思っているのだろう。
解らない。ならば、確かめるしかない。それに純粋に、名前を知りたかった。答えたくないのなら、無理に聞き出すつもりもなかったけれど。
すると、パラディンは一瞬、微苦笑を浮かべてから。
砂浜に、白い指を滑らせた。
「……イザク、様?」
ミルナがその文字を、名前を呼べば、パラディン――イザクが頷く。
ミルナの表情が、我知らずぱっと華やぐ。そのまま彼を連れ出して、波打ち際へと向かえば淡く色とりどりのリスたちが、綺麗な貝殻を集めていた。
「あの子達と貝殻拾いなんてどうかしら。綺麗なの拾ってアクセサリー作りたいんですの!」
リスたちは逃げ出すこともなく、イザクも頷く。
そうして暫し、貝殻集めに興じていたが。ふと、ミルナはイザクが貝殻を全てリスに渡していることに気づく。
すると、リスが頬袋から何かを取り出しイザクに渡した。それをイザクは海水で軽く洗ってから、更にミルナの手に握らせてくる。
「これは……真珠?」
リスにとっては手伝いの礼、イザクにとってはアイスの礼のつもりだろうか。
「まぁ、ありがとうございます……!」
少し歪だが、美しく煌めくそれを、ミルナは笑顔で受け取るのだった。
大成功
🔵🔵🔵
テフラ・カルデラ
※アドリブ可
さっそくヘリオトロープさんを召喚したいところですが…
これ、みんなの目の前でやるのはさすがに混乱を誘発させるので人気のいない場所で召喚しましょう…
「あ…あれ?僕は…?」
おはようございます♪突然ですがこの氷菓どうぞなのです♪
少し戸惑っていますが、氷菓を一口食べたら目を輝かせ始めます
わたしも食べましょう~♪海を見ながら食べるのもまた良いですね~
遠くからは白鯨さんが見えますね?波が輝いてとっても綺麗なのです!
これからはもっと素敵な景色を見に行きましょう♪
●
浜辺には平和が訪れた。
幻想動物たちも次々に姿を見せ、長閑な時間が過ぎてゆく最中。
「さて、さっそくヘリオトロープさんを召喚したいところですが……」
先程封印したヘリオトロープの眠る召喚式カードを手に、テフラ・カルデラ(特殊系ドMウサギキマイラ・f03212)は少し思案する。
(「これ、みんなの目の前でやるのはさすがに混乱を誘発させるので人気のいない場所で召喚しましょう……」)
と、言うわけで浜辺からは少し離れて茂みの方へ。
辺りに人の目がないことを確認してから、いざ召喚!
くるくるとカードが宙に舞うと、光と共にヘリオトロープが現れる。但し彼自身は先程のように、もう光を放ってはいなかった。
「あ……あれ? 僕は……?」
「おはようございます♪」
「あ、お姉さん……?」
少々戸惑っている様子の少年。
己が既に死んでいること、今はテフラによって封印・召喚を受ける身となったことを、まだ理解してはいまい。それでも、己の在り方が変化したことだけは、本能的に何となく察したようだ。
「突然ですがこの氷菓どうぞなのです♪」
クールダウンと水分補給を兼ねて、オレンジシャーベットを少年に手渡すテフラ。
恐る恐る口をつけた少年は、その甘さと冷たさにぱっとその目を輝かせた。
「美味しい……こんなの食べたことない……!」
「よかったです♪ わたしも食べましょう~♪」
テフラもアイスを一口。舌先には甘さが広がり、日中に火照った身体も心地よく冷えていく。
「海を見ながら食べるのもまた良いですね~」
「うん、……本物の海を見られるなんて……」
感慨深げに呟く少年は、一生を組織で終えるものだと思っていたのだろうか。
それでも何とか逃げ出して、本人も知らぬ間に命を落としてしまったけれど、それでも、こうして外の世界を巡る機会を得られている。
ならば自分は、彼を外の世界に連れ出した者として、彼を導いていこう。テフラは、そう思うのだ。
「遠くからは白鯨さんが見えますね? 波が輝いて、とっても綺麗なのです!」
「ほんとだ、きらきらして……綺麗。外の世界って、こんなに素敵なものが沢山あるんだね……」
世界はまだまだ、少年の知らないもので満ちている。
いいことばかりではないけれど、いいことだって沢山ある。
素敵なものを探す少年の旅は、これから始まるのだ。
「これからはもっと素敵な景色を見に行きましょう♪」
「うん……うん!」
テフラと、共に。
歩いていく。
大成功
🔵🔵🔵
蒼乃・昴
茂みの中を覗く
迷い子だろうか?
その存在の正体は分からないが
悪い事が起こる気はしないので
もしその光が生き物なら
帰る場所があるなら連れていく
ついておいで
少年がいなくなった海は
こんなに美しくて平和なのに
楽しめるような心境ではなかった
……けれど、少年には見せてやりたかったな
心が生まれてから色んな感情が俺の中で暴れてばかり
人間はいつもこんなに苦しいのか?
でも…
落ち込んでいる俺へ、クレープが🍨を持って来てくれた
甘くて美味しい
皆を笑顔に、か
道理で優しい味がする筈だ
ほんの少し微笑んで
胸に手を当てて想いを馳せる
苦しい、は収まらなかった
でも
少年を想う気持ちも
甘くて美味しく感じる気持ちも
心のおかげなんだろう
●
蒼乃・昴(夜明けの逃亡者・f40152)が茂みの中を覗くと、雪豹の子供に似た生物がぱちりと瞬いた。その額にはアメトリンのような宝石を宿している。これが夕陽を受けて光ったのだろう。
(「迷い子だろうか? 見たことのない生物だが……悪い事が起こる気はしないな」)
それに、何より。
何処か、あの少年に雰囲気が似ていた。
「ついておいで」
帰る場所があるなら、そこへ帰してあげよう。
それがきっと、この子のためになるから。
手を差し出せば、謎の生物は好奇心旺盛に昴の肩へとよじ登った。
落とさないように押さえつつ、ふと海を見やる。
ああ、少年がいなくなった海は、こんなにも美しくて平和だ。
なのに、とても楽しめるような心境ではなかった。
(「……けれど、少年には見せてやりたかったな」)
少年の存在も、この想いも、世界には許されない。
染み出した過去は現在を食い潰す。それを解っていても。
掌で掴まれ、握り潰されてしまいそうなこの心の痛みは、消えない。
(「心が生まれてから、色んな感情が俺の中で暴れてばかりだ」)
耐えるように俯く昴を見つめて、謎の生物が首を傾げている。
この子に悪気はないのに、その仕草がまた痛みを強くした。
(「人間はいつもこんなに苦しいのか?」)
自分に問いかけても、答えは出ない。
答えをくれるような、誰かもいない。
それでも。
「お疲れ様〜っ」
明るく軽やかな声が、すぐ傍で聞こえた。
その主であるクレープの手に収まる器に、バニラアイスが細かな氷の粒を煌めかせている。
「沢山遊んで疲れてるでしょ。はい、糖分補給!」
差し出されたそれを受け取って、スプーンで口に運ぶ。
昴の舌の上で、優しい甘さがふわりと広がった。
「……甘くて美味しい」
「でしょー? やっぱり夏はアイスにシャーベットだよねっ」
ニカ、と笑うクレープは、確かスイーツで皆を笑顔にと。
そう、願いを掲げて修行を続けていたのだと、覚えていた。
ほんの少し、けれど確かに、昴は自然と微笑んでいて。
「道理で優しい味がする筈だ」
取り戻したその微笑みで、心も少し軽くなる。
痛みの和らいだ胸に手を当て、想いを馳せる。
(「苦しい、は収まらなかった」)
全てを拭い去ることが、出来たわけではないけれど。
(「でも」)
だからこそ、解ったことがある。
「少年を想う気持ちも、甘くて美味しく感じる気持ちも……心のおかげなんだろう」
心がなければ。
この痛みも、優しい気持ちも。
「……心がある限り、辛いことや苦しいことからは逃れられない」
ぽつり、クレープが呟く。
「でも、胸の痛みを知るからこそ……喜びや幸せを、尊く感じるのかも知れないね」
――なんてね! と。
昴に向けられた笑顔は、何処までも明るかった。
●
「……ところで、その子……フィオリェパンテラだね」
「?」
クレープが言うには、それがこの生物の名前らしい。
ここよりもっと北の地が原産で、密猟されることもしばしばあると言う。
「多分、この子は運よく逃れた個体なんじゃないかな」
「………………」
昴は、クレープに悟られないよう唇を噛んだ。
これでは、この子はまるで。
「昴くんに懐いてそうだし、親代わりになってあげるのもいいんじゃないかな」
「俺が……?」
「命を預かることだから、無理にとは言わないけどね」
今一度、昴は首を傾げるフィオリェパンテラの顔を見た。
この命を預かるか、託すのか。どちらを選んでも、目の前の男は肯定するだろう。
大成功
🔵🔵🔵
茜崎・トヲル
【モノクロフレンズ】🍨3
(人以外に話しかける時「◯◯の人」と呼びかけます)
海だーーーーっ!!
見て見て、あーさん!海!くじら!アニマル!
何しよっかー!あっ、おれ、パラディンくんにアイス渡してくるね!(お疲れさまとありがとうを伝えます!)
その間に決めといてねえー!
ただいまー!何したいか決ーまった?ウサギの人なでる?
飛竜に……乗る!いいねいいね、乗せてもらおー!飛竜の人ー!のーせてー!いいってー!
スーさん前に乗る?それとも別々に乗ろっか!
わーすごい!すごい!空がひろいー!海きれいー!あーさん、楽しんでるー?!歌うー!
飛竜の人、飛竜の人、クジラに近寄ってもらっていー?ありがとー!うひゃー!
スキアファール・イリャルギ
【モノクロフレンズ】5🍧
わぁ……綺麗な景色です
そして色んな幻想生物がいますねトーさん!
これは何をするか悩みますねぇ……
確かにパラディンさんに大変お世話になりましたからね
私の分のお礼も一緒にお願いしますトーさん
(何をするか考えつつシャーベットぱくり
(周囲の羽耳兎さんが可愛いのでスマホで写真ぱしゃり)(風景の写真も!)
決めました、飛竜さんに乗りましょう!
では別々に乗って並走してもらいましょうか?
わっ、地上に居る時と全然景色が違う……!
楽しんでますよトーさん! 楽しいので歌を口遊む程に!
トーさんも飛竜さんも一緒に歌います?
飛竜さん、私たちも白鯨さんへ近づきませんか?
ありがとうございます、わー……!
●
「海だーーーーっ!!」
一仕事終えた達成感に、そして何より目の前に広がる海と横たわる白鯨の煌めきに、茜崎・トヲル(Life_goes_on・f18631)は声高に叫ぶ。
「見て見て、あーさん! 海! くじら! アニマル!」
「わぁ……綺麗な景色です」
幻想的な光景に、スキアファール・イリャルギ(抹月批風・f23882)も思わず感嘆の溜息ひとつ吐いて。
「そして色んな幻想生物がいますねトーさん!」
脅威が去ったことを察して集まってきた幻想動物たちも、多種多様な姿と動きを見せていて。
思い思いに戯れるその様子は、それぞれに目を惹かれるもの。
「遊んでいいんだよね! 何しよっかー!」
「そうですね、これは何をするか悩みますねぇ……」
小動物と戯れるのも、巨大生物と触れ合うのも楽しそうだ。悩む時間もまた楽しい贅沢。
そんな中、ふとトヲルの目には離れたところで海を眺めているパラディンの姿が留まり。
「あっ、おれ、パラディンくんにアイス渡してくるね!」
少年のユーベルコードを一人で受け切ってくれた、影の功労者だから。
しっかりと、お疲れ様とありがとうを、伝えておきたかった。
そしてその思いは、スキアファールも同じ。
「確かにパラディンさんに大変お世話になりましたからね。私の分のお礼も一緒にお願いしますトーさん」
「りょーかい! じゃ、その間に決めといてねえー!」
駆け出していくトヲルを見守って。
さて、何をしようか。考えつつ、シャーベットを一口ぱくり。
スキアファールの舌の上で蕩ける白桃の上品で風味豊かな甘さは、まるで果実ををそのまま凍らせたかのよう。それでいて食感はしゃりしゃりと冷たく爽やかに。
堪能していると、なにそれ? と言わんばかりにちょこちょこ寄ってくる羽耳兎。その余りの可愛さはまさにシャッターチャンス。
スマホを構えて、まずはメインの羽耳兎だけをぱしゃり。次いで風景と一緒に。最後は風景だけを写したものも。
そうして時間を過ごす中、トヲルがたたっと戻ってきて。
「ただいまー! 何したいか決ーまった?」
「お帰りなさい。おや、トーさんの分のアイスは?」
「パラディンくんが美味しそうに食べてたから、一緒に食べてきちゃった! 美味しかったよー!」
トヲルの選んだチーズアイスもまた、濃厚でしっかりとした、けれどしつこさのない滑らかな味わいだった。後味も爽やかで、甘さと酸味の調和が絶妙な案配だった。
「で、どーする? ウサギの人なでる?」
「悩ましいですが……決めました、飛竜さんに乗りましょう!」
空を仰げば雲間を優雅に竜が泳ぐ。
優しげな眼差しで、海を、浜辺を見守っている。
「飛竜に……乗る! いいねいいね、乗せてもらおー! 飛竜の人ー! のーせてー!」
ぶんぶん手を振りトヲルが呼べば、少し離れた場所に飛竜たちが降りてくる。
「いいってー!」
その側へと向かえば、飛竜たちは二人の準備を待っているようにも見えた。
「スーさん前に乗る? それとも別々に乗ろっか!」
「では別々に乗って並走してもらいましょうか?」
それぞれに別の竜の背に乗り、いざ空の旅!
ぐんと上昇すれば、水平線へと向かう黄金の輝きも見下ろす形に。海と白鯨の煌めきも、眼下に大きく広がった。
「わっ、地上に居る時と全然景色が違う……!」
「わーすごい! すごい! 空がひろいー! 海きれいー! あーさん、楽しんでるー?!」
「楽しんでますよトーさん! 楽しいので歌を口遊む程に!」
それほどまでに気分がいい。
緩く風を切る涼やかさと、心地よさ。まだ夏の気配は色濃いけれど、その空気にこそ特別感を覚えて。
「トーさんも飛竜さんも一緒に歌います?」
「歌うー!」
スキアファールとトヲル、二人声を揃えて歌えば飛竜たちもそれに加わり大合唱。
するとその中に、低くも楽しげな歌声が混ざる。
白鯨までもが、重ねて朗々と歌っていた。
「そうだ、飛竜さん、私たちも白鯨さんへ近づきませんか?」
「いいね! 飛竜の人、飛竜の人、クジラに近寄ってもらっていー?」
問いかければ、二人の乗る飛竜二頭はこくりと頷くようにして。
高度を下げ、泳ぐ白鯨と並走するように、その傍らへと。
「ありがとー! うひゃー!」
「ありがとうございます、わー……!」
思わず二人、同時に声を上げ、言葉を失う。
だって、近くで見れば余りに綺麗で、そして大きかったから。
圧倒されながらも心は弾む。今この時、この夏でしかきっと体感出来ないことだから。
白鯨は、沈む夕陽を目指す。飛竜たちと、その背に乗る二人も追いかけていく。
夏の向こうに、白鯨が沈むまで。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
最終結果:成功
完成日:2023年08月15日
宿敵
『孤独の屍『テイマー・ヘリオトロープ』』
を撃破!
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