ダークセイヴァーの戦いにひとまずの区切りがついたという。
遠く、あまりにも強大な者たちが支配しているという第三層で、大きな戦いがあったという。
しかしながら、その争いの波紋響かぬ第五層では、別の戦いが巻き起ころうとしていた。
奇しくも、こちらもまた決着に向けて精鋭を選りすぐった『|闇の救済者《ダークセイヴァー》』たちの規模はおよそ百と余名。
オブリビオンに絶対的な対抗力を持つ猟兵までとは言わずとも、いずれもユーベルコードを使用できるほどの使い手ばかりの最精鋭だが、目指す砦には恐らく第五の貴族の勢力が、これもまた多く存在しているはずだ。
「……」
部隊を率いるように先頭に立つ小さな人影は、ダークセイヴァーの薄闇の中でも、その瞳の夏空の様な青を目立たせていた。
人並外れた人形の美貌を持つ少女は、その作り物にしては出来過ぎている瞳の望遠機能を用いて目を凝らすが、どうやら遮蔽物が多く、奥まで見通せない。
「ミレナリィドールの眼を以てしても、森の奥は見通せませぬか。しかし、斥候の情報を信じるなら、目指す砦はこの森を超えた先。なるほど、天然の城塞という訳ですな」
少女の傍らに立つ、顔色の悪いダンピールの男が彼女の仕草からその行いを推察したらしい。
十字架の様な大剣を背負う長身の男は、ダンピールの生まれを厭われながらも自分と同じように迫害され続けた人々の為に戦い続け、ただの一人になっても生還する事から畏怖と皮肉を込められリターニングマンと呼ばれている。
「私の眼には、あまり多くの機能が備わっていないのです。技巧や研鑽は積めても、生まれ持ったものは変えがたいものですね。それでも、我々はどうにかここまでやってこれたのです。……目立つような真似をしてしまいましたね。すいません」
肩を竦めて苦笑する仕草はまるで年頃の少女のように自然であったが、ミレナリィドールとして人類を守る命題のもと、人々を導き時に剣として戦ってきた少女は『闇の救済者』の一団を担う者であった。
セルルアという名のこの少女の事を、ひょっとしたら覚えている猟兵も居るかもしれない。
「なんの。この規模の森ともなれば、攻めるはおろか守るも難いでしょう。それに、連中は警戒などしておりますまい。彼等にとって豆粒同然の我々が決起し、精鋭を率いて攻め込もうなどとは、思ってもみないかと」
「それはさすがに楽観的では……。しかし、一気に駆け抜けるには深すぎる森には違いありません。情報を集めながら進むしかないですね。それに、行軍が続いて皆さんも疲れが見え始めています」
「ふむ……幸い、森は資源の宝庫。敵前で英気を養うもまた、豪胆だが有用と言えましょう。皆に伝えましょうか」
「はい、皆さんどうか迷子にならぬよう、慎重に探索しつつ休みながら行きましょう」
人類の希望を背負った戦士たちは、勝てる見込みの決して濃くはない第五の貴族の砦を目指し、森へと足を進めるのであった。
「ダークセイヴァーで戦争があったのもついこの間だったように思うが、決着がついたそばから、厄介ごとは舞い込んでくるものだ」
グリモアベースはその一角。青灰色の板金コートにファーハットがトレードマークのリリィ・リリウムは、自らが予見した内容をまとめた資料を手に嘆息する。
第三層でオブリビオン・フォーミュラの存在が認められ、その撃破からまだそれほど時は経っていない。新たなオブリビオンは生まれない筈だが、それでも世界の大半を支配されているダークセイヴァーの危機は去っていない。
吸血鬼による支配から人々を救い、細々と活動していた闇の救済者は、今や吹けば飛ぶような組織ではない。
大小より集まって、猟兵ほどではないにしろユーベルコードを使えるほどの精鋭部隊を結成し、第五の貴族所有の砦に攻め込もうとしているところであるようだ。
決戦の時は近い。
「うん? この一団の顔役は、見覚えがあるな。まあ細かい事はいいか。とにかく、今回は森の奥にある砦を攻略するのを手伝ってほしいって話さ」
ただし、この森というのが存外に深い。
騎兵や馬車が通るような道も無く、鬱蒼と茂った森は薄明りすら届かない場所も多く、野生の獣なども生息しているらしく、すぐさま抜けられるようなものではないらしい。
「救済者たちもこの森を簡単に抜けられるとは判断しなかったみたいで、食料の調達も兼ねて調査しながら、砦への道を探るスタンスみたいだな。……タフなもんだ」
毒づくようなリリィの口ぶりはどこか誇らしげであった。
暗黒の世界に生きる者たちは、それでも逞しくあるようだが、過酷な旅路には変わりない。
常に万全とは遠いコンディションで、オブリビオンと対峙して無事で済む保証は無い。
彼等が砦に辿り着く手助けをし、大軍勢を相手取らなくてはならない。
「そうそう、砦に詰めてる敵の軍勢も、けっこうな規模でね。我々だけでは手数が足りない可能性も大いにある。救済者の力は猟兵には及ばないかもしれない。が、今必要なのは力じゃなく、勢いだ。猟兵たちの意気軒高たる戦いぶりこそが、彼等を奮起させるってものさ」
いつも以上に策に乏しい物言いだが、それほどの規模を相手にしなくてはならないということでもある。
闇の救済者たちと共に勝利を掴むため、猟兵たちは数を相手に最前線に出なくてはならないだろう。
「まあ、第三層の怪物たちを退けた実績がある君達なら、数の差をどうにかするぐらいはできるはずさ。あの薄暗い世界を本当に救うための、その一歩に手を貸してほしいんだ」
そうして帽子を取って一礼すると、リリィは猟兵たちを送り出す準備を始めるのだった。
みろりじ
どうもこんばんは。流浪の文書書き、みろりじと申します。
ダークセイヴァーの戦後シナリオとなっております。
数ある戦後シナリオと同様、通常のシナリオと違って2章編成のお手軽番となっております。
1章の冒険では、鬱蒼とした森で食料を確保したり、第五の貴族の砦までのルートを開拓したりするお話となっております。どれか一つでもいいですし、まとめて面倒見てやるぜ。というのもいいでしょう。
2章では集団戦。戦争イベントでもさんざん登場した紋章を付けたオブリビオンがいっぱいいっぱい出てきます。紋章は量産型ですが、やはり強力なのでそこそこ手ごわそうです。
救済者たちも苦戦は必至ですが、猟兵たちの戦いぶりに奮起して勢い付いたり、前章で頑張って色々やってたりしたら思わぬパワーや戦略がみつかるかもしれませんね。
プレイングボーナスとかは設けておりませんが、展開次第では1章の行動が反映される結果にもなるかもしれません。
1章の断章は投稿しませんので、プレイングはいつでも募集しております。
2章冒頭にちょっとした幕間的な説明が入りますが、基本的にいつでも受け付けております。
ただ、それぞれリプレイによって勝利数に達してしまうと、その章におけるプレイングはそれ以上受け付ける事ができない仕組みになっているので、ご了承くださいませ。
それでは、皆さんと一緒に楽しいリプレイを作ってまいりましょう。
第1章 冒険
『日々の糧を得るために』
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POW : 大型の獣や魔獣を戦って狩る。
SPD : 小~中型の草食動物を狩る、釣りなどで魚を釣る。
WIZ : 食べられる植物や木の実を探して採る。
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
ユリウス・リウィウス
変わらんな、この世界は。いや、違うか。反オブリビオンを掲げる人類組織|闇の救済者《ダークセイヴァー》が、こうして自ら決起するようになったのは前進というべきか。
この地に生まれたものとして、微力ながら力を貸そう。
鬱蒼とした森だな。少しずるをさせてもらうか。
|異世界《UDCアース》から|電動ノコギリ《チェーンソー》を何個か調達してきた。
使い方は簡単だ。電源を入れればブレードが触れるものを切り裂いていく。
まあ、俺の動き方をみて使い方を覚えろ。
静音設計のものを持ってきたつもりでいるが、砦が近くなったら駆動音で敵に気付かれないとも限らん。そこからは地道な伐採作業に移行する。
それでいいな、諸君。
月明かりも無い薄闇。
この世界にはいつも雲のかかった暗闇があるだけで、常に薄闇がこの世界の空であった。
それすらも偽物であり、ここは第五層とも呼ばれる地下である事は、もはや多くのダークセイヴァーの住民の知るところであった。
日も差さぬ、青空も無い、すぐ傍の足元すら危うい闇が支配する世界。
それであっても、人々も植物も、逞しく順応する。
支配の中でも芽吹く反骨の精神。そして、植物たち。
第五の貴族のものと思しき砦を覆う広大な森林は、鬱蒼としており、暗闇の中ではその輪郭の全てを把握する事も難しい。
火を焚けばむしろ影が濃くなるほどの薄闇の中で聞こえてくるのは、川のせせらぎとも梢の囁き声とも取れる様な掠れた音。
だがしかし、荒れ果てた世界の中で、植物の息吹を感じることは、多くの者を安堵させる。
吸血鬼貴族たちに反旗を翻し、今や大きなうねりへと変じつつある人々の勢力、闇の救済者。
その精鋭を組んで森へと進む中に、甲冑姿の男がいた。
ユリウス・リウィウス(剣の墓標・f00045)は猟兵である。
馴染みのある薄闇の中に身を置いていると、うんざりする気持ちが蘇ってくるのに、自身の棺桶でも見つけたかのような奇妙な安心感にも似た気分があった。
「変わらんな、この世界は」
やるせない結果に過ぎぬこの世界に対しても郷愁というものはあるのだろうか。
どうしようもないほどの戦力差に対して、一個人では逆立ちしても覆らなかったこの場所に、いい思い出はほとんどない。
だが、陰気な故郷の空気は、嫌になる程胸の内に胃の腑に落ちる様な気分だ。
「そこの御仁。どうやらかなりの使い手のご様子だが……大事ないだろうか?」
「ああ、心配いらん。ちょっとホームシックになってな」
闇の救済者たちの一員と思しき戦士に声をかけられ、ユリウスは冗談めかして肩を竦めると、戦士のほうもやや緊張した面持ちを緩めたらしい。
精鋭揃いとはいえ、その力は猟兵には及ばぬという。しかし吸血鬼たちとの戦いを繰り広げて生き延びてきたからには、相手の力量を見る力はあるのだろう。
「故郷もこのような森林が? もしそうなら、羨ましいな」
「いいや……俺の思い出はだいたいが、どうしようもない戦場ばかりさ」
暗黒と泥と、腐った草木とがドロドロに境目も見えぬほど混じり合った、死肉と鉄錆の浮いたどうしようもない戦場で、体力と体温を冷たい泥に奪われていく。
深い植物の薫りがしばらく嫌になるような、そんな戦場の一つが想起される。
それに比べれば、ここは足場もしっかりしているし、空気も爽やかだ。
それに仲間の骸も転がってはいない。
そうだ。反オブリビオンを掲げる人類組織|闇の救済者《ダークセイヴァー》が、こうして自ら決起するようになったのは前進というべきか。
すこしばかり、悪い思い出にとらわれ過ぎていたかもしれないな。
「そこもとも、辛い目に遭ったと見える」
「いやなに、何事も経験だ。この地に生まれたものとして、微力ながら力を貸そう」
シニカルに笑みを交わすのは、お互いに通ってきた修羅場をその眼差しに垣間見たからこそであったか。
とはいえ、天然の城塞と銘打たれただけあり、大地に深く根差した木々は、通り抜ける道を探す事すら難しい。
長い行軍を想定した救済者たちとはいえ、開墾の道具など持ってきている訳も無く、手持ちの道具や武器で道を切り開くも効率は悪かろう。
だが、事前に準備のできる猟兵ならば、ある程度のズルができる。
なんにしても、他の世界から知識や道具を持ってこれるというのは、他にはないユニークと言わざるを得ない。
ユリウスとて、いつものように双剣とアンデッドによる人海戦術というのも考えたが、今回は事前準備を精一杯利用する事にした。
「やはり最短ルートを通るには、木々を切り倒していくのが速いだろう」
そう言って手を掛けるのは、腰に帯びた剣の柄……ではなく、なにやら大荷物の頭陀袋であった。
荷を解いて引っ張り出すのは、この世界に似つかわしくない流線形の絵が印字された段ボール。
そしてそれと同じものが箱の中から出てくる。
長剣にも見えるが、板金とチェーンを組み合わせた様な刀身のそれは、|電動のこぎり《チェーンソー》であった。
片手でも扱えるバッテリー式のそれは、わざわざUDCアースから買い付けたものらしい。それが何十本か。
「これは、ナイフか? 刃が随分と特徴的だが」
「木を切る道具だ。一説では神をも屠るという逸話があるが、まあそれは忘れていい。使い方は簡単だ。電源を入れればブレードが触れるものを切り裂いていく。
まあ、俺の動き方をみて使い方を覚えろ」
「ふむ……?」
持ち込んだ文明の利器を手に訝しげな戦士たちを他所に、ユリウスは手にしたチェーンソーの電源を入れると、動作チェックのためにチェーンを駆動させる。
電動モーターによって微細な刃の付いたチェーンが回転すると剣呑な金属音が唸りを上げる。
静音設計のものを選んできたが、機械仕掛けの品は何かと動くと音が出る。
それにはちょっと眉を顰めざるを得ないが、動作は問題ない。信頼のマ〇タである。
そして回転する刀身を樹木に押し当てると、見る見るうちに微細な刃が樹皮を堅牢な幹を削り取り、ものの数分で伐採してしまう。
おお、とどよめく戦士たちに向け、ユリウスは木くずをまき散らすチェーンソーの回転を止めると、不具合が無いかをチェックする。
「この通り、刃が動くことで木を切る剣だ。引っ張られないよう注意して使ってくれ。
地道な作業になるが、それでいいな、諸君」
「応!」
ユリウスの先導により、チェーンソーを手にした救済者たちは、心得たもので次々と木を伐採していくのだった。
暗闇の森の中に、ダークセイヴァーにはあるまじきモーター駆動音が鳴り響く。
大成功
🔵🔵🔵
御園・桜花
「第三層も第五層も見た目はあまり変わらない気がします」
周囲見回す
「第三層の方は、其の世界の物しか食べられないと伺いましたけれど…此処の方々はどうでしょう」
森の食材探しに参加
「同じに見えて毒草、は良く聞く話ですから。現地の方の指示を聞きながら探そうと思います」
集める物の外見を確認してから探索開始
小動物や鳥を見かけたら高速詠唱で風の精霊召喚し音もなくスパッと首を落とす
高い所の木の実も精霊に枝を揺するのを手伝って貰って落とす
植物の根は桜鋼扇を棍のように使って無理矢理地面を掘り返す
食材を集め終わったら皆の所に戻ってUC「花見御膳」
毒消し効果のあるスープや体力回復効果のある野草パンを大量作成し配布する
夜の世界とは、静寂なるものだろうか。
実際に田舎の家屋で過ごしてみればわかる話だが、そんなことは全くない。
人の手の入らぬ大自然は、人の世に合わせてはくれないもので、その理はダークセイヴァーの薄闇の中でも逞しく鬱蒼と茂る森林も同じであった。
数歩先も見通せぬ暗い森の、その輪郭すら定かでない森の奥からは、何かしらの虫が騒めき、何かしらの獣が息を潜めている気配があった。
荒れ果て、吸血鬼に支配されたダークセイヴァーという環境でさえなければ、それは風流とも言える程に、自然の息吹を感じる。
ただ、どうにも、こうまで人の行く手を遮るかのような濃い自然の障壁は、意図的なものを感じずにはいられない。
「第三層も第五層も見た目はあまり変わらない気がします」
御園・桜花(桜の精のパーラーメイド・f23155)は、疑念を抱かずにはいられなかった。
強大な存在が跋扈し、それぞれに都合よく、それこそ箱庭に手を入れるかのような気軽さで自然環境すらも自在に作り変えては、魂人を弄ぶことに注力していたのが、第三層に住まう闇の種族だった。
第五の貴族もまた、そこまでの怪物ではないにしろオブリビオンには変わりなく、時間をかけて同じようなものを作らぬとも限らない。
この森林もまた、かの砦を隠すために作られたものではないのか?
穏やかな面差しの奥に浮かぶ疑念は、周囲に見渡す薄闇のように先が見えない。
立ち止まって考え込んでいるだけでは、何も解決には至らない。ひとまず行動だ。
桜の精のパーラーメイド。給仕をやるのは趣味が高じた側面もあるが、一日の多くの時間を割いているということは、その性分が身に染みているということでもある。
闇の救済者たちは、この森を攻略がてら、その恵みにあやかろうという豪胆な作戦に出たようだが、彼等は行軍に於いてあまり多くの物資を持っているわけではないだろう。
差し当たって桜花ができることは、そう、食だ。
「第三層の方は、其の世界の物しか食べられないと伺いましたけれど……此処の方々はどうでしょう」
時々忘れそうになるが、たしか、この世界で命を落とした者は、その魂を囚われ、第三層の魂人となるらしい。
生命の性質が変じていくのは、どこか影朧にも似ている気がするが、彼等が元の生物として返ってくることは……きっとないのだろう。
少し気落ちしそうになったものの、気を引き締めるつもりで森の夜気を胸いっぱいに吸い込む。
爽やかな木々の薫り。わずかな獣臭。植物の青臭い若い薫り。
ここは間違いなく生者の居場所の一部なのだと直感で理解した桜花は、いそいそと食材を求めて森に足を踏み入れていく。
流石に飲食の専門だけあり、その手の知識は多岐にわたる桜花であったが、問題がないわけではない。
暗闇の中で育った植物が、果たして自分の知識にある野草や木の実などと合致するだろうか。
「おや、さっそく見覚えのあるものが……よいしょ、よいしょお!」
食べられそうな野草を見つけて、根ごと引っ張り抜いてみると、球根の様な丸々と白い部分が露出すると共にネギに似た食欲をそそる青臭さが鼻をかすめた。
知識の上ではノビルに近いものに見える。
ネギやニラに似た薫りを持つ野草で、癖が無くおいしい。お浸しにして酢味噌がおすすめだ。
だがここは未開の地。万一にでも毒があるのはまずい。
「同じに見えて毒草、は良く聞く話ですから。現地の方の指示を聞きながら探すのが無難でしょうかね」
「それは毒性がないようですよ」
引っこ抜いた野草を矯めつ眇めつ思い悩む桜花の後ろから声をかける少女がいた。
この薄闇の中でも夏空を思わせる瞳と髪色は、仄かに光って見える。
確か彼女はセルルアという、ミレナリィドールだったはずだ。
「その格好は、察するに他所からやってきた救済者の方でしょう。私の眼は、人にとって害であるかどうかを見極める機能が備わっています」
「それは……便利ですね。では、この水仙に似た花は?」
「それは食用ではないですが、強心作用があるので一概に毒とは……もしや、試されています?」
「うふふ、ごめんなさい。私の知っているものと同じかどうか、確かめたくて」
出来過ぎた芸術品じみた人形の顔に困ったような笑みを浮かべるセルルアの仕草が、なんとも人間臭く見えたためだろうか。
人を生かすのにこの上なく便利な機能が付いたセルルアの助けを借りて、桜花は食べられそうな植物の採取を行う。
時折、視界の端を横切る小動物を見かければ、桜花は素早く精霊の力を借りる術式を手繰り、音も無くその首を刎ねて仕留める。
生存するために逃げ足を育てたらしい小動物を片手間に仕留める事ができるのは、猟兵の反射神経のなせる業だろうか。
その手並みに実力の差を垣間見たセルルアは肩を竦めながら、
「私も、人の助けとなるような機能は備えていただけましたが、肝心の戦う力は持たせてもらえませんでした。ある程度、研鑽は積んできたつもりですが……貴女がたが羨ましい」
「人は、自分に無い物をいつだって欲しがるものですよ。私だって、貴女の様な目があれば、食べるのに困りません」
人懐っこく頬を緩める桜花に釣られたように、セルルアもややはにかんだように相好を崩す。
「あっ、もしやこの蔓は……! 念のために尋ねますが、毒はありませんよね?」
「ええ、ご想像のものと同じかと思われますが……しかし、随分深いですよ。掘る道具が」
そんな二人は、ふと目に留まった地中から長く蔓を伸ばす植物に着目する。
見落としがちなこげ茶の蔓にハート形の長細い葉っぱは、その地中に滋養の高い塊を彷彿とさせる。
即ち、山芋である。
厳しい行軍に、この山の宝を見逃す事は、桜花にはできなかった。
掘る道具? ええい、なりふり構うものか。
さっと取り出したるは、桜の刻印された美しい鉄扇。薄く堅固に打ち延ばされた鋼を幾重にも重ねたそれは暗器でもあり、常ならば術の触媒にも使うのだが、それを畳んだ状態のまま、地面に突き立てる。
「あの、服が汚れるのでは?」
「だって、おっきいですよ! 掘らなきゃあ!」
「一体何が、貴女をそこまで……私も手伝いましょう」
そうして二人して慎重に、そして大胆に掘り出した山芋と、仕留めた小動物や野草を土産に、桜花たちは拠点に帰還する。
あまりにも粗野な食材。しかしながら、ここには飲食の専門家とも言うべき料理レベルを誇る者がいる。
そして、ユーベルコード【花見御膳】によって作り出されたのは、野趣を感じさせながらも上品に仕上げたスープとパンであった。
クルミなどの木の実、野草を練り込んだパンは、グルテン不足を補うようにすりおろした山芋を練り込まれてモッチモチであった。
そして小動物の小さな肉がほろほろになるまで煮込まれ、ノビルっぽい野草で爽やかな香りをつけたスープは、いくらでも食が進む滋味深さであった。
「まさか、敵陣前にこんなしっかりとご飯がいただけるとは……」
「ああ、あったけぇ……帰りてぇ」
「いや、仕事が済んでからだ。生きて帰ろうぜ」
真心と土にまみれて作り上げた料理を口にした救済者たちは、故郷を思わせる温かい味わいに勇気を貰うのであった。
大成功
🔵🔵🔵
リューイン・ランサード
食料確保すると共に勢いをつける。
それなら彼らの出番かな?
UC:シマドゥ島民大暴れを使用。
(ティラノサウルスの群れに「トリ狩じゃあ~!」と襲い掛かり、
一太刀で首を刎ね、素手で身体を引き裂いて”ひえもん取り”して殲滅。
最後はトリ鍋にしてしまう、コンキスタドールより強い島民さん。)
大型の魔獣くらいは楽勝でしょう。
あ、でも”ひえもん取り”は闇の救済者さん達へのインパクト強いので、
やらないで下さいね。
リューインは結界術で自身を隠蔽した上で、翼で飛んで砦方面を索敵。
第六感と瞬間思考力で注意すべき箇所に気付き、仙術による千里眼で
詳細に把握して情報を持ち帰る。
島民さんは料理も上手いので、みんなで食べましょう。
暗鬱とした黒い森。
ダークセイヴァーの環境下でも鬱蒼と茂る森は、薄気味悪い雰囲気ではあるものの、しかしながら実りは実りである。
行軍の最中に持ち歩けるものは少ないとはいえ、この天然の城塞を逆に利用しない手はない。
「うーん、本当に暗くて、先が見通せないな……」
リューイン・ランサード(|波濤踏破せし若龍《でもヘタレ》・f13950)は、身の丈をゆうに超える木々の生い茂るその輪郭を捉えようと視線を巡らせるが、薄闇の中に繁茂する自然の逞しさの全貌を捉える事は難しい。
ドラゴニアンでもある彼の翼を用いれば、この森を飛び越えていくことは可能かもしれないが、夜間飛行は安全だろうか。
ここは吸血鬼、第五の貴族の領域である。彼等の夜目には簡単にとらわれてしまうのではないか。
慎重さゆえに臆病さが勝るリューインは、自らが思いつく策にすら臆してしまう。
やる時はやる猟兵の一人ではあるのだが、その本質はあくまでもインドア気質であったりする。
それともこの空気だろうか。
暗鬱としたダークセイヴァー全体を覆う薄闇が、人を気落ちさせてしまうのか。
いいや、弱気になってはいけない。まだまだ戦いにすらなっていないのだ。
それに、幾度となく苦しい戦いを潜り抜けてきた猟兵でもない救済者たちは、命がけで第五層まで駆け抜けてきたのだ。
此処で尻込みしては、猟兵として立場が無いではないか。
「僕がやれると思ったなら、やるしかない……けど、やっぱり不安だな……」
森に入る手前から、既にリューインの額には冷や汗が浮かぶ。
いつだって、敵陣に踏み込む際には恐ろしさから汗ばむ。
いつもいつも、なけなしの勇気を振り絞る日々である。
ひょっとして森の中に既に第五の貴族の手の者が放たれていたら……。
この暗闇で奇襲を掛けられたらひとたまりもない。
彼等が慢心しているなどと、どうしてそう楽観的でいられるものか。
羽虫のように思っている人間を全力で叩き潰しに来る可能性だってあるじゃないか。
積極的に森を探索する救済者たちに比べ、やはりというかリューインの足取りは重たい。
慎重さが常にいい方向へ行くとは限らないが、彼の場合は心配性が過ぎるのかもしれない。
腹が据われば、行動は早いのだが……いや、そうだ、最初から腹が据わっている人たちの手を借りればいい。
彼等、闇の救済者のように、死に物狂いの勇気の持ち主。それには、リューインも心当たりがあった。
「食料確保すると共に勢いをつける……。
それなら彼らの出番かな。もう一度、彼等に勇気を貰おう」
そのユーベルコードは、自身の想起する記憶の中から創造する召喚術の様なものである。
人の想像とは存外にシンプルなもので、二つの穴と棒線が組み合わされば人の顔に見える。
『|似ているもの《シミュラクラ》』とも呼ばれる現象であるが、この創造魔法は思い込みが重要である。
遠く、海で隔てられた世界で出くわした首狩り族の島民、シマドゥ。
恐竜をも嬉々として狩猟するという蛮勇。その死生観の潔さ。なんとも気持ちのいいさっぱりとした気概。
ひえもん取りという文化は御免被るが、生きるか死ぬかを常に即断即決する勇気は、自分にはない思い切りの良さである。
【シマドゥ島民大暴れ】を想起すれば、そこに彼等はやってくる。
ぼろきれの様な着流しに野太刀を一振り。それすら無ければ頑丈そうな棒切れだけでも事足りるとばかりの、根っからの首狩り族が、そこに居た。
「皆さん、この森には魔獣などが出現するそうです。今回は、それらの首も取り放題。ですが、仲間もいますので誤チェストはダメですよ! できれば、味方の皆さんにお料理も振舞ってあげてください。あ、ひえもん取りはやらなくていいですからね!」
呼び出した屈強そうな薩摩兵子たちに、念を押して送り出すと、
『まっごっちゃあダメじゃち……チェストん前に、名ば尋ねるは女々か?』
『名案にごつ』
『そんなら、けもん首ぞ、もらっくっで……』
独特の訛りと共にぞろぞろと森の奥へと入っていくシマドゥの民。
ほどなくして、幽鬼の如きその井出達からは考えられない奇声があちこちから聞こえてくるが、まぁ、彼等の事だし、大丈夫だろう。
本当に大丈夫か?
『きえぃ! そっち、逃げっくっど! 首ば打てぃ!』
『おまんさ、名のらんでよかど! ワハハッ』
なんか楽しそうだし、平気だろう。
やはり気持ちのいい人たちだ。
蛮勇を想起し、その気になったリューインは、勢いが途切れぬうちにその翼を広げて夜闇に飛び立つ。
夜目に見られても平気なよう、結界術でしっかりと隠蔽して、目指す先である砦の偵察に向かう。
確かに、森の奥にまるで埋もれるかのように石造りの砦があるのが見えた。
明かりが洩れているを見ると、人、というより吸血鬼かその眷属が詰めているのだろう。
砦というからには、堅牢な外壁や見張り台という印象だったが、見た限りではただの洋館のようにしか見えない。
防衛装置らしきものの一つもない、なんとも地味で味気の無い造りだ。
こんなの、簡単に忍び込めちゃうんじゃないか?
いや、防備を固めていないのではなく、この森が過密すぎるのかもしれない。
人が通れるような道すら見出すのが難しい、育ちすぎた森は、防壁として優秀かもしれないが、物資すら運ぶのに難儀して、まともな建物にならなかったのだ。
「うーん、守るにも攻めるにも難しい砦って言われてるだけはあるのかもな……ん?」
しばらく観察した後、リューインは、鼻先においしそうなにおいを感じて振り返る。
どうやら、強敵の魔獣を幾つか狩ったシマドゥ島民が、さっそくそれを調理しているらしい。
砦に関する注意点や攻めやすそうなポイントも、幾つか発見したところで、リューインもまた小腹が空いてきた。
食事がてら、彼等とも情報を共有しに戻るべきだろう。
大成功
🔵🔵🔵
ベティ・チェン
「上も下も変わらない、ね。…なんでボク、来ちゃったんだろ」
俯く
隠れ里で貴族に怯えて息を潜めた
せっかく第四層から逃げ出せたのに
全身の細胞1つ1つがここに来てからずっと貴族が怖いと叫んでるのに
「…ブッダミット。分かってるんだ。困っている人を助けないのは、腰抜け」
「ボクは第四層で、貴族に会ってない。知らないから怖い、だけ。ブッダに会ったら、殺せ。ボクは今日、貴族を殺す」
「身体が元気でも、首を刎ねれば死ぬ…ガンバロ」
UCで透明化し単独で偵察
シノビらしく素の能力値で木々の上を跳んで移動し砦までのルート探す
「ボク自身が、見えなくても。足跡や葉擦れでばれる、から。他の人も、木の上を移動するのが、オススメ」
薄闇の中に人影が紛れる。
百人に届くか届くまいかという、闇の救済者たちの中でも精鋭を集めた一団が、鬱蒼と闇の中に繁茂する森へと次々入り込んでいく中で、他とは一風変わったサイバーなニンジャがその背を物陰から見つめていた。
ベティ・チェン(|迷子の犬ッコロ《ホームレスニンジャ》・f36698)は、実に数奇な経歴を持つ忍者であった。
その生まれは曖昧であるが、ダークセイヴァーの隠れ里で細々と、貴族に見つからぬよう暮らしていた頃の事は覚えている。
現在ほど戦える力を持っていなかった頃のお話だ。
力無きものの末路は悲惨である。特に、このオブリビオンに支配されている世界では、ただの人の子など羽虫の如く叩き潰されてしまう。
いつの間にかサイバーザナドゥのスラムで生活するようになってからは、一日一日を生きるために精一杯で、苦しく貧しいだけのこのくらい故郷の記憶など思い出す暇も無かった。
色めき、文明と知識という輝きのあったサイバーザナドゥでは、確かに貧しかったし一日を生きるのに必死だったが、充実してもいた。
しかし、隠れ里で怯えていた頃の記憶は、その恐怖は、細胞の一つ一つに刻み込まれていた。
「上も下も変わらない、ね。……なんでボク、来ちゃったんだろ」
俯くベティは、確かにあの頃よりも体は大きくなったかもしれないが、修行と知識を叩き込んで、練り上げられ筋張ったように硬さとしなやかさを備えた筋肉も、無に帰すかのような粟立ちが肩を震わせる。
何故戻ってきた。
せっかく第四層から逃げおおせたのに。
戻ってきたところで、お前は何も守れない。何も変える事などできない。
あの怪物が、貴族たちが、お前の大切なものを全て奪い取っていくぞ。
お前の細い腕は、貴族には届かない。身体をいくら鍛えたところで、恐怖そのものであるあいつらを斬る気概の無い、子供のお前では、奴らは倒せまい。
胸の内で叫ぶ声は、幼い自分の声に似ている気がした。
それは恐怖だ。ベティの心に刻まれた恐怖が、ここに来るべきではなかったと警鐘を鳴らしているのだ。
「おや、魔獣の類かと思えば……かような森に、可愛らしいお嬢さんが居ようとは」
「ムッ!」
唐突に声をかけられ、ベティは思うより早くその場を飛び退いて、手近な木の枝に着地する。
自身の体重を無視したかのような精妙な重心操作により、頼りない木の枝にも身を預ける事ができるのは、生来のセンスはもとより、ザナドゥで身に着けた今にして思えばけっこういい加減なニンジャ修行の賜物であった。
「驚かせてしまいましたな。それがしは、闇の救済者の一人。人からはリターニングマンなどと呼ばれてはおりますが、まあ、生き汚さでここまで来たようなもの。察するに、貴女はかなりの使い手とお見受けするが、その様子では少々……戦うには厳しいのでは?」
不覚。とばかり、ベティは唇を噛み締める。
闇の救済者はいずれも使い手揃い。とはいえ、その実力は猟兵には及ばない。
違いがあるとすれば、その覚悟であろう。
実力があろうとも、戦意の痩せ衰えた子供に何ができようか。
顔色の悪いダンピールの戦士リターニングマン。しかし、その暗い眼差しの奥には、深い悲しみと義憤が燃えている。
この森にトライする戦士の、恐らくすべてが、このような覚悟を持っているのだろう。
だというのに、クソ。自身の心のなんと脆いこと。
「……ブッダミット。分かってるんだ。困っている人を助けないのは、腰抜け」
「誰も貴女を誹りはしない筈だ。生きるためには、時に逃げるも肝要かと」
「ボクは第四層で、貴族に会ってない。知らないから怖い、だけ。ブッダに会ったら、殺せ。ボクは今日、貴族を殺す」
ああ、なんという優しい男なのだ。リターニングマン。
彼我の実力差を見抜いておきながら、子供を戦場に出すまいと諭してくれている。
命を燃やす覚悟ありや、と説いてくれている。
だからこそ、ベティは奮起する。
こんな男をみすみす死地へ送り出す自分は、愚かだ。
そして、嘗めるな。積み重ねた忍術は、奴らを葬るために鍛えたも同じ。
「すこし、先導する」
そうしてベティは、ユーベルコード【世界を分かつ神意】により、自身の持つ偽神兵器の齎す神意をその身にまとって姿を隠す。
そしてその身軽さを活かして、木々の合間を軽々と飛び交い、渡っていくことで、森を素早く踏破していく。
ベティの姿を早々に見失ったリターニングマンは、しばし途方に暮れていたものの、ややあってから戻ってきたベティは、ようやくその姿を現した。
「見つけた。目印はつけてきた。けど……ボク自身が、見えなくても。足跡や葉擦れでばれる、から。他の人も、木の上を移動するのが、オススメ」
「うーむ、しかしそのルートは、なかなか身軽でなくては……まあ、やってみましょうか」
ベティならではの侵攻ルートは、そこそこ重装備の救済者にとっては厳しい。
が、悪戦苦闘しながらもそのルートを慎重に開拓する事で、砦への道は切り開かせるだろう。
偵察を買って出ながら、姿を消してその様子を見張るベティは、一人、誰にも気づかれぬようにまだ見ぬ第五の貴族の軍勢に思いを馳せる。
「身体が元気でも、首を刎ねれば死ぬ……ガンバロ」
大成功
🔵🔵🔵
ミフェット・マザーグース
友達のアテナ(f16989)といっしょにお手伝いに来たよ!
アテナの後に続いて[暗視、視力]で見えたものを報告するね
重いものなら[怪力]でどかしちゃうよ!
休憩中は、静かに急いでこっそり……じゃなくても大丈夫なのかな?
アテナのお料理のお手伝いが終わったら、みんながゆっくり休めるように、元気が出る曲をちょっとだけ。控えめにリュートを鳴らすね
♪胸のそこに沈んでる 暖かいばしょ
大事な人たちの笑い声 やいたパンの匂い その思い出は————
アドリブ、連携、大歓迎だよ
アテナ・アイリス
友達のミフェット(f09867)と一緒に冒険よ!
救済者たちの砦までのルート確保をサポートするわよ。わたしはエルフだから森は障害でも何でもないわよ。
道が悪くても、「ブーツ・オヴ・エルヴンカインド」があるから問題ないわ。
道中、「シークレットレシピ」を使って、美味しく食べられる食材を集めながら進んでいくわ。
ミフェットにも手伝ってもらっていっぱい集めるわよ。
砦に攻め入る前の休憩で、ユーベルコード『アテナの手料理』を使って料理技能を1330レベルにして、
渾身の手料理を皆にふるまうわよ。
料理を作り終わったら、「オルフェウスの竪琴」を使ってミフェットの歌のサポートをするわよ。
※アドリブ・連携大好きです。
ダークセイヴァーの世界にも、枯野ばかりではなく、生い茂った森がある。
どうやら陽の届かぬ世界でもなお、健気に枝葉を伸ばして繁茂する植物はあるらしい。
それとも、第五の貴族とやらが砦をより堅固なものにするため意図的に増やしたものなのか。
とにかく、闇の救済者たちの行く手を阻む植物の要塞は、容易な立ち入りを許さない。
人の通る隙間もないほど、木々の列は厚く、返しの付いた茨の蔓が根や幹に這って伸びては、そこをただ素通りという訳にはいかないだろう。
極めつけに、生い茂って梢の隙間を埋めることで生み出される影は、ダークセイヴァーの薄闇をより濃い闇へと作り変えていく。
一体誰が、この森を抜けようと考えるだろう。
地面から罠の如く隆起した木の根の足場の悪さには、きっと誰もが踵を返して、森を迂回しようと考えるだろう。
それでも救済者たちは、猟兵たちの手を借りながら、せっせと森を進んでいく。
「第五層にも、こんなに立派な森があるのね。ちょっと暗いけど、いい空気だわ」
暗い森の中においても、アテナ・アイリス(才色兼備な勇者見届け人・f16989)の井出達は、ほのかに光を含んでいるかのようだった。
エルフであるその透き通るような白い肌も、この世界には久しく失われた青空を思わせる瞳も、夕陽を含んだ絹糸のような金髪も、それは僅かな光にも愛されているかのようであり、そしてその井出達は森によく似合っていた。
胸いっぱいに吸い込む自然の息吹は、ヴァンパイア貴族に支配され、寒村ばかりの第四層にはあまり見られなかったように思う。
砦の為にこさえたというのなら、敵ながらなかなかいい仕事である。
「すごい森。根がいっぱい張って、引っかかるかも。大丈夫かな?」
ミフェット・マザーグース(造り物の歌声・f09867)は、ブラックタールの液状の身体を人の形に擬態するのをアイデンティティのようにしているが、今回ばかりはそれが文字通りに足を引っ張りそうなものだ。
尤も、転んだところで彼女の身体がダメージを受ける事はほぼ無いのだが。
「足元までしっかり暗いから、注意しなきゃだね。ま、エルフにとって森は庭みたいなものよ。それに、いいブーツも履いてきたしね!」
アテナの装着する冒険靴『ブーツ・オブ・エルヴンカインド』は、あらゆる地形に対応し、多少の悪環境でも構わず駆け抜ける事ができるという。
幾重にも根の張った足元は、土の柔らかさを微塵も感じさせない、例えるなら長い時間をかけて波蝕し硬い層だけ残された海辺の岩場のようだった。
靴裏に感じるのも、石化したような固い根の感触ばかりで、歩くだけで疲労してしまいそうだ。
「人の手の入っていない、原生林みたいな深い森。誰の手も入らないから、木々が密集しすぎて化石みたいになって枯れて土に還っていく。そこに、キノコだとか、新しい植物が生えていくわけね。自然そのものだけど、健康的な森とは言い難いわ」
「そうなんだ……でも、今は人の手が入るところだね」
「そうね。頑張って、お手伝いしていきましょうか」
森に関する豆知識を交えて、二人は闇の救済者に手を差し伸べていく。
幸いにして、猟兵たちの助けもあって、目指すルートは既に決まっているし、森を切り拓く手立てもそれなりに備わっていたようだ。
彼女たちが敢えて、その猟兵としての比類なき力を発揮するまでもなく、砦までの道のりはどうにか確保できそうではある。
ただ、人手が足りないのは間違いなく、アテナとミフェットは基本的なところでまずはお手伝いする事にした。
「あっちに沼があるよ。泥の多い沼だから、間違って落ちたら出られないかも! 切り倒した木材を運んでおいて、うっかり落ちないようにするね」
「オーケイ、じゃあ運ぶためにロープがいるかしらね……。この蔦は頑丈そうだわ。利用してみましょう」
実は生物兵器でもある心優しいブラックタールのミフェットは、その視力もだいぶ進んだ科学技術の賜物であるらしく、足を踏み入れたらまずい地形もすぐに看破できるようだ。
また愛らしい見た目に反して怪力の持ち主であり、救済者たちが切り倒した木々をまとめて運び出したりと、主に体力面で貢献していた。
アテナは森歩きに一日の長があるようで、その知識や応用力は高く、手近にあるもので道具の代用をしたり、また食用可能な植物の知識も豊富であった。
「私の記憶だと、これはおいしい奴なのよねー……っと、あったあった。当たりじゃなーい」
「ラッパみたいな、真っ黒なキノコだよ? ……食べられるの?」
「マイタケみたいにシャクシャクしておいしい奴よ。それに、ダシがもう……うん、いっぱい採っちゃいましょう」
アテナの手にする『シークレットレシピ』には、今までに培ってきた経験と知識が詰まっている。料理のレシピブックである他に、それに必要な食材の入手法なども細かく記載されている。
ちなみにクロラッパタケはそれなりに高級素材である。見た目はグロいが本当においしいんですよ。
そうして行軍の手伝いの傍ら、知識と好奇心の赴くまま食材調達をしていくと、いつしか救済者たちは砦を目前とするポイントまで足を進めていた。
さすがに強行軍が続いたためか、突入は休憩を挟んでからということになり、アテナたち猟兵を含む闇の救済者たちは、ひとまず進む道を引き返し、英気を養うことにしたのだった。
「さあ、これからいよいよ突入ってことになるわ。その前に、十分に休憩して体力を回復させなきゃいけないわ。うんと精の付くものを作ってあげないとね。手伝って、ミフェット!」
「うん、もちろん! 何をする? 休憩中は、静かに急いでこっそり……じゃなくても大丈夫なのかな?」
「まあ、そこまでどんちゃん騒ぎにならなければ、平気かな……この森は本当に音が通らないくらいギッシリしてるもの」
てきぱきと、集めた食材、持ち寄った食材や調味料を広げつつ、さっそく調理にとりかかるアテナと、それを手伝うミフェット。
正直、子供であるミフェットの手伝えることはあんまり無かったりするのだが、髪の毛に擬態する手の様な触腕は大荷物を運んだりするのに便利だ。
「うんうん、いい手際だわ。後は私がやる。ミフェットは、皆に声をかけてあげて!」
「わかった!」
ある程度の準備が整うと、残すはアテナの戦場であった。
別段、ミフェットが邪魔であるという訳ではない。ただ、料理に全力を出すアテナには、きっと誰もついて来れないのだ。
ユーベルコード【アテナの手料理】によって料理レベル1300を超えたアテナの調理工程は、いかなる追随をも許すまい。簡易的なキッチンな彼女の聖域と化す。
技などという陳腐は振るうまい。真心と、長年の研鑽を積んだレシピをもとに環境と食材に合わせて変化させる直感と、味を確定させる感覚。
渾身の手料理が、凄まじい速度と愛情で以て形成されていく。
暗闇の森の中にひと時だけ生まれる、聖域。その中でただの食材に過ぎぬ可能性が、料理という命の糧に変じていく。その模様は、神秘的ですらあった。
美しいエルフの舞。ともすれば、エプロン姿の妙齢の女性が手料理を作っているだけという、男なら夢を見ずにはいられない姿に目を奪われる救済者たちの耳に、ふとポロンと優しい音階がよぎる。
真新しい木の切り株に座り込んだミフェットが、一抱えほどのリュートを優しく爪弾き、休憩する救済者たちに聞こえる様、歌を紡いでいる所であった。
「♪胸のそこに沈んでる 暖かいばしょ
大事な人たちの笑い声 やいたパンの匂い その思い出は──」
【田園を照らす暖かな陽の光の歌】ユーベルコードに乗せた優しくも力強く、生きる気力を奮い起こすような歌声は、遠く第五層にまで足を延ばしてきた救済者たちの郷愁を誘う。
なんとしても生きて帰らねばと、そう思わせる程に、この戦いを勝利へと導かんという願いを強めるのであった。
温かい手料理と、静かなひと時。
敵の砦を目前としているはずの状況ながら、食事をとり休憩を取る戦士たちの面持ちは一様に穏やかなものであった。
戦いのときは近い。
それだけに、その英気を養い、力を振るうために精一杯の休息を、求めるものであった。
「もう一曲、やりましょうか」
「うん、一緒にやろう!」
料理を提供し終えて、人心地というところで、ちょうどミフェットの歌も一段落。
そこへアテナが竪琴を手に、やってきた。
体と心を休めた者たちに対し、これ以上の癒しはもはや必要ないだろう。
二人で次に奏でるのは、戦いへ向かう者たちへの戦意を高めるものであり、同時にそれはエールでもあった。
この先の砦には、量産された紋章を施された者たちが居ついているという。
猟兵ではない救済者たちには苦しい相手になるかもしれないが、
もはや勝利を疑う者は、この場にはいなかった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第2章 集団戦
『黒百合騎士団員』
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POW : 斬撃
【装備している剣による斬撃】が命中した対象を切断する。
SPD : 闇斬撃波
【闇を纏う事】により、レベルの二乗mまでの視認している対象を、【斬撃の衝撃波】で攻撃する。
WIZ : 闇剣強化
【自身の寿命】を代償に自身の装備武器の封印を解いて【闇のオーラを纏った剣】に変化させ、殺傷力を増す。
イラスト:純志
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
『敵襲! 敵襲! 人間共が、森をこえて我等が砦に戦いを仕掛けてきたぞ! 迎え撃て! 愚か者どもに、鉄槌を下すのだ! 全軍、消灯!』
猟兵たちの手助けもあり、天然の城塞とも評された深い森を抜けた闇の救済者たち。
その体調は万全であり、十分な準備と偵察を行った上での急襲は、砦に詰めていた黒百合騎士団の者たちの対応を遅らせるに十分なものであった。
もとより、森が城塞替わりであり、デメリットでもあった深すぎる森の為に、砦の防備は強固なものではなかった。
物資の搬入もままならない、森に沈んだような砦は、守るにも攻めるにも難しい。
だが、詰めている騎士団の実力は本物である。
量産された紋章によりその力は強化されており、闇を力とする騎士団の者たちは、最初の襲撃にこそ後れを取ったが、救済者たちを砦の中に引き込む失態を受けて、手早く砦内部の明かりを全て落とした。
深い闇の中に覆われ、闇色の甲冑と、黒く鈍く光を含む剣を手に取った騎士団は、その規模すら定かでない数を展開する。
「むぅ、彼奴等は夜陰の中での戦いに長けている様子……。勢いのままに押しきれるかと思いましたが、少しばかり旗色が悪いですかな?」
顔色の悪いダンピールの騎士リターニングマンの、その十字架の様な大剣が暗闇を裂くように振るわれると、緋色の火花と共に剣を構える黒百合の騎士とかち合うことになる。
「ここまで来て、引き下がるわけにも参りません……。この身が朽ちて果てるまで、戦うのみです」
ダンピールの背を合わせるように、小さな人影、青い髪と瞳のミレナリィドール、セルルアが細剣を伸ばす先には、やはり黒百合の騎士が夜陰の中にいた。
救済者の中でも頭一つ分実力の秀でた二人は、他の救済者が惑わぬよう、敢えて大振りに、目立つように立ち回っていた。
火花を散らすほど剣を振るい、弾かれ床を削る切っ先がその軌跡に火の跡を残す。
「何より、この闇深きこそが敵……相手の土俵に立つままでは、勝機はありますまい」
「それならば、この身を燃やして皆さんを照らしましょう」
比喩ではなく、セルルアの髪や瞳は、闇の戦場の中で一際輝いていた。
彼女を作り、彼女を置き去りにした紅卿という謎の人物は、そのミレナリィドールの肉体を構成するあらゆる部位を、性質を変えた宝石から作り出したという。
その心臓も、瞳も、髪も、流れる血潮、骨や筋肉に至るまで、それは魔力を帯びた宝石であるという。
輝くために魔力を開放し、活動するのに必要な全てを燃やし尽くすかのように光を帯びるその姿は、あらゆる意味で命取りと言う他なかった。
「おやめなされ! それでは、セルルア殿ばかりが狙われてしまいますぞ!」
「それこそが狙いです。お気になさらず──我が血潮を筋道となさいませ!」
髪を振り乱し、荒々しく立ち回る少女の身体には、見る見るうちに傷が増えていく。
我が身を省みぬ、攻撃一辺倒の戦い方が、一人だけ目立つ少女に有利に働く筈も無く。
一太刀入れられるたびに、虹の如く輝く液状の宝石の飛沫が、黒百合の騎士たちを露にしていくのだった。
「求めよ人々よ。|然《さ》らば、与えられん……さらば、友よ……!」
命を燃やし、人々に道を示す少女の姿を、いったい誰が作り物などと誹る事があるだろう。
闇より救済するために、猟兵たちもまた、救済者たるのか──。
ユリウス・リウィウス
普通の砦ほど設備が整ってないとはいえ、城攻めは厄介だな。
「毒使い」で麻痺毒を撒き散らすヴァンパイアミストを使ってみるか。
麻痺毒なら、間違えて味方を中毒させても致命的にはならん。何人かに解毒剤も渡しておこう。突然動けなくなる奴が出たら使ってくれ。
さて、有毒の霧となって戦場へ流れ込むか。味方の間を抜ける時は足下だけを流れて、毒を吸わせないよう注意。本格的に行動するのは、敵陣の奥でだ。
オブリビオンだろうと毒は効く。後方でバタバタと仲間が倒れれば、前線の騎士も冷静ではいられまい。
この霧に気付く奴もいるだろうが、剣では霧は祓えんぞ。
戦うこともなく頽れろ。意識が戻る前に、あいつらがとどめを刺してくれるさ。
相手の拠点の一つである砦に攻め込むというのは、それはリスクの塊だ。
何しろ、地の利は完全に相手にあるということになる。
闇の中に生きる者たちとて、灯りを欲する。それは、あくまでも人間の常識なのか。
救済者たちの迅速な行動と、猟兵たちの補助もあり、城塞替わりだった森を抜け意表を突いた奇襲は、この砦に詰めていた黒百合騎士団の者たちを驚愕させたが、うまく仕留められたのも最初のうちだけであった。
闇を纏って戦う黒百合騎士団は、暗闇の中でこそ真価を発揮する。そして、ここは敵の牙城。
一斉に灯りを落とされ、闇に包まれた砦の中では、彼等の戦場という他なかった。
「普通の砦ほど設備が整ってないとはいえ、城攻めは厄介だな」
暗闇の中で奮戦する救済者たちを離れた位置から見やるユリウス・リウィウスは、相手の術中にはまっている状況に深く息をつく。
攻めるも守るも厄介な森一つのみを頼りに、防備を疎かにしていると思えないと踏んでいたところだが、攻め込まれたところを瞬時に地の利として最大限活用するのは、連中も戦い慣れているという事なのか。
だが、彼等とて想定外がある筈だ。
自らの命をも厭わぬセルルア決死の奮戦。それもあるが、猟兵──ユリウスという存在を、彼等はまだ把握しきれてはいない。
砦の中を見やるユリウスだが、その甲冑姿は、今やだれの目にも留まらない。
なぜならば、その身体は【ヴァンパイアミスト】によって、有毒の霧と化して戦場の真っただ中に蔓延していたからだ。
暗闇の中での戦闘に長けた黒百合騎士団。しかしながら、暗闇の中にたち篭める霧の存在を察知するには至らなかった。
『ちぃ、奴めの体液は輝き続けるぞ。あの人形を先に破壊せよ!』
『囲んで叩けば、あのようながらくた……う、む……!?』
『どうした! なんだ、身体の動きが……!?』
毒霧は静かに、しかし確実に騎士団の中に浸透していた。
獅子奮迅と戦うセルルア達に目を奪われた騎士団は、その足元から立ち上るユリウスそのものの霧の気配を気取る事ができなかったのだ。
『ど、毒!? いつの間に……ハッ!? 待て、何か見えぬものが居る!』
「どこを見ておるかッ!」
何かに気づいた騎士団の一人が、周囲に目を配ったその隙を、リターニングマンの大剣が一閃する。
倒れ伏す黒百合騎士。その拍子にむわっと立ち昇った靄は、闇の中でその異様さを露にした。
『毒霧……こんなものを使えば、貴様らとてただでは済むまいに!』
「でしょうな。しかし、何をするか事前に知れていればよいこと」
『おのれ、卑怯な──むぐう!?』
睨みつける騎士の目の前で、自身も毒に侵され顔を引きつらせながら、前もってユリウスの用意していた解毒薬をかっくらう。
すかさずそこへ斬りかからんとした騎士に、まるで意思があるかの如くヴァンパイアミストが覆いかぶさり、瞬く間に身動きが取れなくなってしまう。
ユリウスとて、味方を巻き込みかねない戦法は重々承知していた。
そのため、相手の足元から侵入し、後方へ回り込みつつ徐々にその身体の自由を奪っていった。
加えて、いつもはオブリビオンとて例外なく命を奪うほどの猛毒を使うところを、動きを封じる麻痺毒に限定して使用している。
前線に負担を強いる事にはなったものの、その効果は時間をかける程大きくなるのだった。
「戦うこともなく頽れろ」
『き、貴様ぁ!』
「おっと、剣ではこの霧は祓えんぞ」
ゆらり、と倒れた騎士の上に立ち昇る姿は、本来の甲冑姿だったが、その姿をみて襲い掛かれば、ユリウスは再び霧と化してむしろ斬りかかった者に毒を浴びせるのだった。
騎士としては不名誉だろうが、紋章付きのオブリビオンを効率よく倒すためならば、誉れも捨てよう。
あとはあいつらが止めを刺してくれるさ。
大成功
🔵🔵🔵
ミフェット・マザーグース
セルルアのことは心配だけど、それはきっとみんなも同じで
友達のアテナ(f16989)の言葉を聞いて、ただ心配するのは立派な戦士に失礼だって、思い直して後に続くよ
アテナがみんなに声をかけるなら、ミフェットは救済者のみんなが全力を出せるように応援するね!
暗闇の中でも[視力、暗視]で目を凝らして、触手を使って[盾受け、かばう、見切り]をして足を引っ張らないように、戦場いっぱいに声が届くように大きく声を張り上げて、みんなの心に灯をともそう!
UC【嵐に挑んだ騎士の歌】
♪明かりなき闇 おしよせる的 火花散らし 立ち向かう戦士
その瞳には 絶えぬ勇気の炎と 闇を照らす希望の輝き!
アドリブ、連携、大歓迎だよ
アテナ・アイリス
セルルアの行動は戦士としては立派だわ。なら、わたしは救済者達が最大限の力を発揮する指揮官になりましょうか。
ミフェット、もちろん手伝ってくれるわよね。
UC『Goddess Admiral』をつかって救済者達に、クラウ・ソラスをかざして周りを照らつつ、戦術と戦略を伝えながら、救済者達を強化しつつ一緒に戦う。
黒百合騎士団の者を倒すことよりも、常に周りの状況を把握しながら、クレリック呪文でサポートしたり、「武器受け」「ジャストガード」などを使って
相手の攻撃を受け止めて、攻撃できる隙を作ったりする。
ミフェットの歌が聞こえてきたら、みんなで総攻撃をかけるわよ。
さあ、わたしに続きなさい!
奇襲を仕掛けた救済者たちの攻勢は、敵中にあったためにその地の利で以て覆されようとしていた。
死線を生き抜いてきた戦士たちは、それでも戦いの中に活路を見出す。
生きるための戦い。されど、人ならざる強敵を相手取るには損傷を気にした上品な戦い方は厳しいだろう。
故に、人々の為に進んで身を粉にする命題を与えられたミレナリィドールは、使命を全うせんとその身に流れる魔力を放出し、流れ出る宝石の体液をも輝かせて見せた。
鼓動無き人形が、命の脈動を絶やさぬために、虚無に等しい魂を燃やし、暗闇に道を作り出したのだ。
なんという軽々しさ。なんという愚かしさ。
偶像とはいえ、彼女は既に人々の希望の姿の一つとなっていた。その身が傷つくことに、胸を痛めるものは少なくなかろう。
それでも、それでも、その雄姿、献身を、猟兵たちは心中では叱咤しながら、その心意気も理解できるのだった。
美しい人形の美貌が傷つき、血に等しいものをまき散らすような戦いを敢えて続けるセルルアの姿を、ミフェット・マザーグースは、その小さな手を握りしめて、やめてという言葉を飲み込む。
闇の中の導となるべく立つその背に、人々の不安を投げかけてはならない。
「なんて、馬鹿な事……」
傍らに立つアテナ・アイリスもまた、闇の中ですら白く浮いて見えるようなその横顔に引き絞ったような口の端を歪ませながら、しかしその言葉はあくまで傍にいたミフェットにしか聞こえぬ程度に抑えたものだった。
敵の数は多い。猟兵の手助けがあるとて、全てを相手をするのは厳しいかもしれない。
ここは総力戦が望ましい。
そこに水を差すのは、無粋というもの。
独断先行、それもまた戦の華。お叱りは戦いの後でもできるというもの。
だから、彼女を死なせないためにも、ここは何としても、他の救済者たちにも奮起してもらわねば。
険しい表情を改めて、アテナはミフェットに向き直る。
「セルルアの行動は、戦士として立派だわ。私達は、皆が最大限に力を発揮する為に行動しましょう。もちろん、手伝ってくれるわね、ミフェット!」
「……わかった! セルルアの事は心配だけど、それはきっとみんなも同じ。ただ心配するだけじゃ、立派な戦士に失礼だもんね!」
そうして二人で頷き合うと、戦う手立てを簡単にまとめる。
どんな相手であろうと、ミフェットは相手を傷つける戦い方を好まない。
ブラックタールの柔軟性と底知れぬ怪力を用いれば、この闇の中で惨たらしく相手を罠に陥れる事も不可能ではないかもしれない。
スタンスとしてそれをしないのは、ミフェットのミフェット足らしめているものである。
未知の生物兵器であるミフェットは、闇の中でも機能する採光技術を取り入れた両目を用いて、戦いに乗じて闇の中を回り込んで救済者たちに暗がりから襲い掛からんとする黒百合騎士を検知する。
「みんな! 後ろに気を付けて!」
見えたからには逃さない。力いっぱい叫んで、注意を促すと、弾かれたようにアテナが闇の中を疾駆する。
その手には黒光りするミスリル……もといミスラルの盾と、闇の中にひと際輝いて見える光の剣『クラウ・ソラス』が握られる。
「戦乙女の輝きと共にあらん! 彼女と──、私の剣が、闇の者たちを照らすわ!」
使うべき時に自ずから現れるという光の剣を掲げて、背後から奇襲を仕掛けんとした黒百合騎士を斬り伏せる。
よく通る声は、救済者たちを鼓舞するものであった。
【Goddess Admiral】は戦術、戦略に共感する者に力を与えるユーベルコードだ。
この場に於いて、その言葉は説得力を持っていた。指し示された戦略は、既に命を賭して行ったものがいたからだ。
だからこそ奮起せよ。お前たちがやるのだ。
「安心して。あなた達は、私達が守ってあげるわ。だから──、抵抗して戦うのよ!」
猛然と攻めてくる黒百合騎士団の、闇を纏った剣が救済者たちを襲う。
それを、アテナの剣が盾が、或は魔法障壁が守り、全力で応援するミフェットの長く伸びる触腕が鋼鉄のように硬質化して救済者との間に割って入る。
「う、うう……ま、まだまだ……皆さんを、導かねば……」
最前線で戦う青い髪のセルルアが、その手にした細剣の切っ先を床板に突き立てる。
うわ言のように呟く使命のもと、その目にはまだ火が灯っている。
いささか体液を流し過ぎたのか、その動きはやや緩慢になりつつあるが、それでも随分と負担が軽くなったのを覚えていた。
誰かに背を押されている。
誰であろう。自分を作ったあの方だろうか。それとも仲間だろうか。まだ見ぬ兄弟たちか。
ぼう、と思考にノイズが奔り始めるセルルアの集音機能に、ふと覚えのない歌声が聞こえてくる。
「♪明かりなき闇 おしよせる敵 火花散らし 立ち向かう戦士
その瞳には 絶えぬ勇気の炎と 闇を照らす希望の輝き!」
若干のたどたどしさもある、少女の歌声。
あたらな命は、この世界では珍しい。
一生懸命な歌声は、命のうねりを思わせた。
戦う理由を呼び起こすものだった。
ミフェットの歌い上げる【嵐に挑んだ騎士の歌】は、難敵に立ち向かう者に心の灯火を、勇気を与える力を帯びていた。
「そうだ、ここに居る皆さんが、生きて帰るために……もう一度……!」
脱力し、前のめりになりかけたセルルアの背を、歓声が押して立たせる。
思わず振り返ると、そこには、自身の輝く宝石の血を目印に、輝く剣を携えたアテナと、一生懸命に歌を歌って励ますミフェットと……、彼女たちに奮い立つ救済者たちが猛然と戦う姿があった。
「さあ、私に続きなさい!」
「みんな、頑張って!」
灯火を旗印に戦う者たち。燃える命の形。
そんな彼等、彼女たちの勇姿を目の当たりにして、セルルアは再び剣を握り直すのだった。
大成功
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リューイン・ランサード
シマドゥ島民さん達が「女首は手柄にはならん」と帰ってしまいました。
是非も無し、ここは身一つで頑張ろう・・・怖いけど。
暗闇の中なので、UC:罪砕乃炎で139個の炎を操作。
5個ワンセットで1人の騎士に取り付いて燃え上がらせます。
燃やして倒したら次の騎士を攻撃する形で。
これで攻撃と灯りの両方に役立てます。
リューイン自身も第六感と瞬間思考力でニュータ●プっぽく相手の攻撃に反応し、
見切りで回避したり、ビームシールドで盾受けしたり、オーラ防御で防いで反撃。
近接戦闘ではエーテルソードと流水剣に光の属性攻撃を宿して2回攻撃で斬る。
遠距離戦では炎の属性攻撃・全力魔法・高速詠唱・範囲攻撃で纏めて燃やします。
リューイン・ランサードは、動揺していた。
いよいよ敵の本拠地である砦に奇襲をかけるというところで、予想だにしない事が起こったのだ。
それは、救済者たちの仕掛けた奇襲が、彼の偵察も手伝って予想以上にうまくいったことではなく、量産型の紋章付きのオブリビオンにうまいこと健闘して救済者たちの力でも通じた事でもない。
ましてや、敵地にかけた奇襲がうまく運んだはいいものの、敵である黒百合騎士たちが自分たちの得意な戦場を作り出すため砦の灯を落として闇を作り出してから、救済者たちが防戦一方に陥った事でもなかった。
いや、それは十分にピンチであるし、集団戦と来ればリューインは呼び出したシマドゥ島の民たちをけしかけるつもりだったのだが──、
血気盛んなシマドゥ島民は、なんと敵が女顔をしているからという理由で帰ってしまったのだった。
そんなのありなのか。と聞いてしまいたいところだったが、曰く、「女首は手柄にならん」という話であった。
し、調べたわけでもないだろうに!
脂汗を浮かべつつ、リューインは理不尽な憤りを覚えるのだった。ただ、気の小さい彼がそれを大声でわめいたりはしないのだが。
ただ、言われてもみれば、首狩り族にとっての首級を誹られるのは、この上ない屈辱かもしれない。
まして、頭だけになってしまえば、男か女かを判断するのは難しい。その顔立ちが線の細い中性的なものであれば、底知れぬ戦意とて損なうのも、無理からぬこと……そう、そうなのか?
とにかく帰ってしまったのならば、もはや腹をくくるしかない。
もはや先制の利はこちらにはない。救済者たちは、傷つきながらも、不利な戦場で勇猛に戦っている。
ここで自分だけが怖気づいているままではいられない。
「是非もなし……ここは、身一つで頑張ろう……!」
怖いけど。と、弱音を口の中で飲み込む。
かのオブリビオンフォーミュラとしても登場した魔王の言葉を引用し、弱気を少しでも奮い立たせる。
敵の数は多い。それこそ、少数精鋭でやってきた救済者たちよりも。
その上で、相手は紋章付き。さらに言えば、相手の得意な暗黒の中での戦闘。
既に、他の救済者を導くべく、自らが灯りとなって戦う者が出てきている。
それは、勇敢だが無謀でもある。この場で光り輝けば真っ先に狙われるからだ。
ましてや彼女は、猟兵でもなければ、その身をいくらでも切り裂かれていいという訳でもない。
リューインは、これでも幾らか死線を潜ってきた。それこそ、猟兵としてのキャリアで言えば歴戦と言ってもいいほどだが、それでもなお、救えなかった者だってあったし、幾ら技を術を学んでも、万能であると奢る事は、その性分からできない。
守れるものは、せいぜい手の届く範囲のものだ。
だから、ほんの少しの勇気を奮い立たせて、闇の中に手を伸ばす。
「──冥府の罪人を焼霞する紅蓮の炎よ、我が元に来りて現世の罪人を昇華せよ」
逃げ場のないリューイン、腹をくくった男の、魔術を繰るその言葉は素早く、この渾沌とした闇の砦の中でもよく響いた。
敵味方のいくらかが、その声に目を向けた次の瞬間、【罪砕乃炎】は紅蓮の揺らめきで以て、彼の周囲を照らした。
闇の中で灯りを灯せば何が起こるか。
光源以外が、更なる濃い闇に染まる。
つまりは、周りが殆ど見えなくなるのだが、それでも、リューインは、自身に向けられた多数の視線を感じずにはいられなかった。
突き刺さるような敵意、殺意。
ぞわりと、怖気が巡るのを感じるが、もはやこうなってしまえば、退路はない。
弱気を捨てるために、振るえる口の端を引き結び、眉間に力を込めると、
「……僕が相手だ!」
140弱の紅蓮の炎を撃ち出し、リューインは駆け出す。
ミレナリィドールの彼女が行ったように、敢えて光源を作り出し、それを発射する事で目を引き、そして自らを追い詰める。
幸いにも、輝く宝石の体液を浴びていた黒百合騎士団の一人が、その炎に呑まれた。
一人に対して5発の計算で闇の中で蠢く騎士団を狙った炎は、その身と魂を燃やし尽くす炎である。
『ぬう! あの術士は危険だ! あやつを囲んで仕留めよ!』
激しく燃え上がる炎の威力を目の当たりにした騎士団が、一斉にリューインに襲い掛かるが、その予兆を察したリューインは動物的な逃避……もとい、第六感が作用して闇の中で闇の魔力を宿したほぼほぼ不可視の剣を避けて見せた。
逃げ足だけは鍛えずともうまくできる自信がある。
それはもう、眉間にフラッシュが灯り、フレクサトーンのようなピリリリリリリという音が聞こえたかのように、危険が産毛をなぞるかのように見て取れたのだ。
どうでもいいが、フレクサトーンとは、のこぎりのようなバネ板に鳴子をくっつけた様な打楽器であり、バネ板を曲げてテンションを掛けることによって音階を作ることができる。ニュータ〇プのあの音以外も結構いろいろできるんですよ。
「術士と思って、近づいてきましたね! やめてくださいよ、ほんとうに!」
マジックナイトであることには違いないが、騎士たちに囲まれるのは勘弁願いたいので思わず本音がこぼれる。
だが、それに対応しないわけではない。
エーテルソードと流水剣を両手に携え、そこに光の魔力を付与したリューインは、即座に相手の技の特性を見切り、闇の魔力には光とばかり対策を講じる。
さらには、周囲を浮遊するビームシールドを展開、これで守りも万全だ。
いや、そんなことを言ったらなんだか失敗しそうな気がするので、口には出さない。
奇しくも、自らが輝いて矢面に立つような形になってしまったが、いや、その、皆も戦ってくださいね。
僕が相手とか言っちゃった手前、それも口には出せないが。
勇ましい顔を作る、その精一杯のはったりの奥には、小心者が顔を出そうとしているが、後に続くであろう救済者たちの手前、リューインは張り切るしか道が残されていなかった。
『ぬううっ、こやつ、近接もできるのかぁ!?』
「こうなったらもう、前に出るしかないんだぁー!」
必死の攻防戦は、図らずとも救済者たちの希望の光の一つとなっている事を、リューインは必死過ぎて気づいていなかった。
大成功
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ベティ・チェン
「貴族が…この程度?」
「正体見たり枯れススキ、か…反省」
「ドーモ、キシ=サン。ベティ、デス。ゴートゥ・アノヨ!」
視聴嗅覚での感知を不可能にした状態で敵陣に突っ込み偽神兵器(自分の身長ほどある大剣)で斬りまくったら一旦離れまた再度突っ込んで斬りまくる
敵の攻撃は素の能力値で回避
「近くにいるだけで、ボクは、キミ達の存在を、食らう。触覚が、隠せなくても。ついた血糊を、目で追えても。思考力も生命力も落ちたキミ達は、ボクに、追いつけない」
「ボクはキミ達に、ハイク詠む暇も、知恵も、与えない…キリステ・ゴーメン、イヤァアアア!」
敵が減ったら救済者の動向を気にかけフォローに入る
「こんなところで、死ぬつもり?」
御園・桜花
「絶対許してはいけない戦い方をする方が、味方に居るとは思いませんでした…桜天では間に合わないかもしれません」
UC「幻朧桜召喚・桜嵐」
敵の攻撃は当たりにくく
味方は回復しつつ攻撃が当たりやすくなる状況作りセルルアの下迄吶喊
前に出てセルルア庇い桜鋼扇で敵を殴打しながらセルルアに1度下がって整えるよう諭す
敵の攻撃は第六感や見切りで躱す
「此処には、貴女達に憧れる子供達も居るのです。其の憧れである貴女が、子供達に命を粗末にしろと教えてどうします!貴族に会わずに散るつもりですか!」
「撤退戦の殿で命を賭けるなとは言いません。でも其れは、私達が集った今じゃありません。子供達に命の安売りを見せつけないで下さい」
戦いは再び、猟兵たち、そして闇の救済者たちのほうへ傾きつつあった。
敵の数は砦に詰めるにしては大規模であった。
それに対し、少数精鋭の救済者たちはせいぜいが百人程度。
数の利も、地の利も無く、奇襲とそして──、自らの命を燃やすかのようなミレナリィドールの少女の機転を皮切りに、危機的状況を乗り越え、そして猟兵たちの獅子奮迅たる戦いぶりに勢いを得た救済者たちは、再び奮起するのであった。
紋章付きの貴族。オブリビオンたるその力は、猟兵でこそ相手に出来るようなもの。
ユーベルコードを扱える屈強な戦士たちといえども、苦戦は必至。
それでも戦えているのは、先陣を切ったセルルアや絶対帰還する男、リターニングマンが不倒の背で引っ張り続けていること。
そして猟兵たちの奮戦もあるもだろう。
「貴族が……この程度?」
暗澹たる戦場を見回すベティ・チャンは、サイバーニンジャ。その視界は暗所に慣れている。
肩透かし、或は浅からぬ落胆であろうか。
そこに驕りがあったつもりはないが、砦に詰めていた黒百合騎士団の得意とする闇という戦場に於いても、今や戦況は傾きつつある。
そこには奇跡の様な救済者たちの底力もあったのかもしれないが、そうではない。そういうことではない。
その肌身に感じるのは、あの日、あの隠れ里で肌身を突き刺すかのように感じた恐怖と絶望とは程遠いほどの圧力だった。
無論、楽な相手ではないのだろう。しかし、今やベティの心に降りかかるものは恐怖ではなかった。
色褪せぬ思い出は、悲しい出来事の方が多いというが、骨身に焼き付いた凍える様な恐怖は、こんなものだったろうか?
「こんな、こんな……」
そんな黒百合騎士団に感じる圧力などよりも、すぐ近くの給仕服姿の女から感じる静かな怒りの方が、よっぽど恐ろしく感じる。
「絶対許してはいけない戦い方をする方が、味方に居るとは思いませんでした……」
接客時には絶対に出さないような低い声で呟く声は、異様な迫力。御園桜花はそれほどに、嫋やかな立ち姿すら鉄塔か深く根を張った古代樹の如き存在感を持っていた。
恨み辛みではない、純粋な怒りは、時として味方をも威圧する。
「とにかく、彼女を援護します。お手を拝借しても?」
「え、あー……うん。ドスエ」
有無を言わせぬ迫力を持っていた桜花に顔を向けられ、それが闇の中でも微笑んでいるように見えていたのは違いない筈だったが、ベティは異様に断りづらい雰囲気に流されるまま、初手を任される。
言われるまでも無く、この闇に乗じて斬り込むつもりではあった。
サイバーザナドゥのスラングに於いても、挨拶なく斬りかかるのはスゴイシツレイに相当するが、一発迄ならアンブッシュとして成立する。
背に負った偽神兵器は、身の丈ほどもある大剣。そこから溢れる神威【世界を分かつ神意】は、彼女の姿や臭い、この世界に在るという痕跡を覆い隠して認識できなくしてしまう。
「イヤッ!」
気合一閃。駆け抜け様に薙いだ一撃が、戦列をこじ開ける。
ベティの心のわだかまり、その疑念は確信へと変わりつつあった。
「正体見たり枯れススキ、か……反省」
黒百合騎士団の切り裂いた装備や肉片が飛び散る中で、ベティは目を細める。
その一撃は、想像よりも容易かった。
やはり、あの日の記憶に引きずられ過ぎていたらしい。
生きるために、報いるために、絶対に忘れずにいる思い出に拘泥するあまり、相手の実力を見誤っていた。
だが、プロフェッショナルニンジャとして、油断は禁物。
ともあれ、道をこじ開けるのには成功した。
暴風の如きベティの突撃に合わせて、開いた戦列に桜吹雪が吹き荒れる。
「桜天では間に合わないかもしれません。ならば──」
暗闇の中ですらうっすらと光を帯びる桜吹雪は、まさしくサクラミラージュに咲き乱れる幻朧桜のそれであった。
【幻朧桜召喚・桜嵐】。吹き荒れる桜吹雪はまさに嵐のように砦の闇の中を染め上げた。
荒ぶる魂を鎮め、惑う魂を慰め導くという幻朧桜は、桜の精である桜花ならではの術に伴って、相手の視界を封じ、味方を癒すという。
そして嵐と共に駆け抜ける桜花は、今まさに黒百合騎士たちに囲まれ、抵抗する力すら出し尽くしたように佇むセルルアの手前に間に合った。
闇を纏う剣を受けるのは、桜の印の付いた鉄扇『桜鋼扇』。
直後に遅れて吹き付ける花嵐に怯んだところを、畳んだままの鉄扇で打ち据える。
「桜花殿……か」
ちらりと明るみになった下で見えたセルルアの傷ついた姿に、桜花の笑みは崩れそうになるが、眉間に力を入れて堪える。
「此処には、貴女達に憧れる子供達も居るのです。其の憧れである貴女が、子供達に命を粗末にしろと教えてどうします! 貴族に会わずに散るつもりですか!」
「礎となるなら、それも本望……所詮、偽物の命。それは恐らく、人の為に在るのです」
「じゃあ、こんなところで死ぬつもり?」
桜花の鉄扇に打ち据えられ、倒れた黒百合騎士が起き上がって来ようとするところを、偽神兵器の大剣ごと降ってきて止めを刺すベティが、口を挟んでくる。
「勝利に繋がる死であれば……無価値ではない筈です」
膝をつくセルルアが、まだ余力があると細剣を杖代わりに立ち上がろうとする肩を、桜花がぐっと押し留める。
その顔はもう笑ってはいなかった。
「撤退戦の殿で命を賭けるなとは言いません。でも其れは、私達が集った今じゃありません。子供達に命の安売りを見せつけないで下さい」
有無を言わせぬその視線に根負けしたのか、その肩が力なく下がるをの確認すると、今度こそ二人の猟兵は、自分たちを包囲する黒百合騎士団に向き直る。
「大変お待たせ致しました。直ぐに、ご注文をお伺いいたしますね」
「ドーモ、キシ=サン。ベティ、デス。ゴートゥ・アノヨ!」
ばさり、と鉄扇を広げる桜花と、それに合わせて大剣を振るうベティとが、吹き荒れる桜の波を切り裂く。
『ぬうっ、見えん!? 我等が、闇の中で、敵を見失うだと……!?』
「近くにいるだけで、ボクは、キミ達の存在を、食らう。触覚が、隠せなくても。ついた血糊を、目で追えても。思考力も生命力も落ちたキミ達は、ボクに、追いつけない」
『馬鹿な、闇の魔力で我等の力は上がっている筈……何故、このような……!?』
桜花の桜嵐と、そしてベティの偽神兵器によって齎される神威は、その力を削ぎ、思考を鈍らせる。
幻惑するように光を含む桜に紛れた造られた神の因子とが、黒百合騎士団の連携を崩し、大前提である闇の中という優位性を挫いた結果、
『くそ、どこだ……!? なぜ、我等は孤立している!?』
「ボクはキミ達に、ハイク詠む暇も、知恵も、与えない……キリステ・ゴーメン、イヤァアアア!」
桜の花びらによるスクリーンプレイと、姿を消す神威による神出鬼没なベティの荒々しい戦いに引っ掻き回される形で、いつしか黒百合騎士団の作り出していた砦の闇は晴れ、誰かが灯した松明が、唯一残った自然の闇を照らした。
それが、この砦の中に巣食っていたオブリビオンの全滅を示していた。
砦の中に歓声が溢れる。
疲労困憊の救済者たちは、その場に座り込んだり、身を投げ出したりする者も居たが、やはり一番負傷がひどいのはセルルアであった。
桜花のユーベルコードには、味方を癒す作用もあったものの、彼女の身体を流れる体液は、ミレナリィドールにとっての潤滑剤でもあったのか、それを大量に消費したその身体の動きはぎこちないものだった。
だが、この場では彼女こそ立たねばならなかった。
「立ってください。あそこまでの無茶をしたのですから、最後まで張り通すべきですよ」
「無茶を仰る……猟兵とは、かくも苛烈なものなのですね」
「リーダーが、元気な姿、見せる。これ大事」
「左様。さあ、我等が御大将の凱旋と参りましょう」
桜花と、そして大儀そうに重苦しい甲冑を引きずるようにやってきたリターニングマンに肩を借りて、セルルアは力なく笑う。
ニンジャは表舞台の登場人物ではない。それ故に、戦闘以外に派手な事はしないのだ。たぶん。
力の限り戦った救済者たち。その健闘を称え合う空間を少しだけ眺めていたベティは、人知れずその表情を僅かに緩ませた後、いつの間にか姿を消していた。
そうして、最終的には砦に猟兵たちは、いつの間にか消えていた。
セルルア達の健闘を称え、あとお叱りも居れつつ本当にささやかな祝勝会じみたものを取り計らっていた桜花ですらも、いつの間にかその姿を見えなくしていた。
さながら、この場に於いて主役はあくまでもそこに生きる者たちであるかのように。
大成功
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