リグ・ヴェーダは、赫く燃えるか
●詩篇・次なる君へ
君は多くを知るだろう。
君は多くを見るだろう。
君は多く傷つくだろう。
「心を守ることは尊いことだ。誰だって己の心に酷く柔らかな部分があることを知っているだろう。触れてほしくない。けれど、凍えてはいたくない。触れて暖めて欲しいと思う部分があるはずだ」
声は、響かない。
虚のように穿たれた痕が『それ』にはあった。
それは海底に在りて、ゆっくりと揺らめく巨竜を見上げる。
視線がかち合うことがあったかもしれないが、さりとて互い触れることはなかった。あの巨竜にも『それ』にも必要なものがある。
「君の思う誰かへの理解が正しいと誰も肯定できなくても。その理解が誰かを傷つけるのだとしても。それでも立ち止まってはならない」
そう、『それ』に必要だったのは乗り手。
知を求め、力と成し、それを理性でもって手繰る者。
『それ』の名は『■■■■■』――第六世代戦術兵器。
「僕の名は『■■■・ラーズグリーズ』。君より前に『これ』に出会った者だ――」
●絶対凍結戦士
『それ』が小国家『ビバ・テルメ』の領域に存在する湾内に在る、ということを小国家『第三帝国シーヴァスリー』は知る。
先んじて投入された探索部隊は何者かに撃破された。
「まさかもうすでに『巨神』が乗り手を選んだということか!」
『第三帝国シーヴァスリー』は焦燥に駆られる。
『それ』――『巨神』と呼ばれる一騎のキャバリア。それを手に入れるために『ビバ・テルメ』の周辺を掘削し探し尽くしたというのに見つからなかった。
そして、最後に残ったのが『ビバ・テルメ』の領域に存在する湾。
その海底であったのだ。
だが、その海底すら派遣した部隊が撃滅されている。
その事実が彼等を駆り立てる。
「あってはならぬことだ。あの機体は我等が管理する。『フュンフ・エイル』の疑似脳に対応できる機体は、あれしか最早ないのだから――!」
●『巨神』
グリモアベースに集まってきた猟兵たちを迎えたのはナイアルテ・ブーゾヴァ(神月円明・f25860)だった。
「お集まり頂きありがとうございます。今回の事件はクロムキャバリア世界。嘗て『フォン・リィゥ共和国』であった小国家は温泉資源を主軸とした『ビバ・テルメ』として生まれ変わったことは記憶に新しいかと思われます」
その『ビバ・テルメ』の領域。
かの小国家は背に鉱山、前面に停止した清算工場地帯という天然の要害を擁する。そして、さらに湾に面している。
「『第三帝国シーヴァスリー』は、再び『ビバ・テルメ』に侵攻を行おうとしています。陸路からではなく、今回は海路から」
ナイアルテの言葉にどうしてそこまで『第三帝国シーヴァスリー』は侵攻を急ぐのかと猟兵たちは疑問に思うだろう。
その疑問に彼女は応える。
「どうやら湾内の海底に一騎の『強大過ぎる力と乗り手を選ぶ性質故に封印されていた、古きキャバリア』……通称『巨神』が在ることを突き止めたからであるようなのです」
それこそオブリビオンマシンに関連しないのではないかと言う疑問もある。
だが、この強力なキャバリアがオブリビオンマシンを擁する『第三帝国シーヴァスリー』に渡ればどうなるかなど言うまでもない。
ならば、現地の人々……つまりは『ビバ・テルメ』の人々に任せられないのかという疑問も噴き上がる。
「どうやら現地の人々の誰も乗りこなせないようなのです。皆さんの誰かならば、このキャバリアの操縦者に適合する可能性もありますが……」
ナイアルテは猟兵達に『巨神』と呼ばれる古いキャバリアの姿を見せる。
それは海底より隆起したかのように顔を出す氷山。
その氷山の頂点が溶け落ち、『巨神』の姿をあらわにしているのだ。
「青いキャバリアですね。予知に拠れば『第六世代』と呼ばれるカテゴリーを持つようですが……」
それ以上のことは予知ではわからなかったようである。
猟兵たちは現地に赴き、この機体を調査する必要があるようだ。そして、機体に猟兵達の存在を認識させなければならない。
氷山が溶け出してきたことにより、メンテナンスが必要なこと理解できるだろう。
また湾内に出現した氷山は『ビバ・テルメ』の住人たちや、訪れていた者たちにとって物見遊山にちょうど良いものであったのだろう。
彼等が戦いに巻き込まれる可能性もある。
「『第三帝国シーヴァスリー』のオブリビオンマシン部隊は湾内から襲ってきます。水中用のオブリビオンマシンであることから、海中戦が主となるでしょう」
物見遊山に湾岸にやってきた人々を護らねばならないのならば、猟兵達も海中へと飛び込まねばならない。
それは敵の得意とする領域に踏み込まなければならないということだ。
不利な状況であるが、人々に被害を出すわけにはいかない。
「どうかお願い致します。人々を守るため、また『巨神』をオブリビオンマシン擁する『第三帝国シーヴァスリー』に渡さぬために」
ナイアルテは頭を下げ、猟兵たちをクロムキャバリアへと送り出すのだった――。
●氷山
「それで、『あれ』がなんであるのかわからないということだけがわかったということなのかな?」
『エルフ』と呼ばれる『ビバ・テルメ』を運営している嘗て『神機の申し子』とよばれたアンサーヒューマンが首を傾げる。
共に調査に着ていた『ツヴェルフ』、『ドライツェーン』、『フィーアツェン』は首肯する。
「私達の『セラフィム』に反応していない。形は似通っているように思えるのですが」
「反応がない。海底に永く沈んでいたことで機能不全に陥っている可能性は?」
「そうだとしたのなら、コクピットブロックも完全に死んでるはず、です。でも、『これ』は……」
「動作を確認している。つまり、機能不全はない。僕たちの『セラフィム』とは別物なのか……なのに、どうして僕たちの『セラフィム』だけが反応して、『あれ』は無反応なのが気になるね」
彼等が見上げるのは海面から突き出す氷山の頂きに座す青いキャバリア。
『巨神』と呼ばれる機体。
己たちが操るサイキックキャバリア『セラフィム』は如実に、あの青いキャバリアに反応を起こしているが、肝心の『巨神』と呼ばれる機体は反応を示さないのだ。
「一方通行、というのが気になる。まるであちらには此方の信号を受信する機能がないような……認識していない、とでも言えば良いのか」
「どちらにしても、私達にはお手上げということです。誰もコクピットブロックに乗り込んでも機能しないのですから」
だが、このまま放置してはおけない。
この機体がもしも、『第三帝国シーヴァスリー』に渡ればどうなるかなど言うまでもないのだから。
『ビバ・テルメ』の『神機の申し子』たちは、途方に暮れる。
氷山が夕焼けに照らされ、座す青いキャバリアの装甲を赤く染めていく――。
海鶴
マスターの海鶴です。どうぞよろしくお願いいたします。
今回はクロムキャバリア、温泉小国家『ビバ・テルメ』の領域の湾内に沈んでいた氷山の頂きに存在していた『巨神』とよばれる一騎のキャバリアを『第三帝国シーヴァスリー』が奪うために湾内から侵攻しようとしています。
これを阻み、『巨神』を守るシナリオになります。
キャバリアをジョブやアイテムで持っていないキャラクターでも、キャバリアを借りて乗ることができます。ユーベルコードはキャバリアの武器から放つこともできます。
ただし、暴走衛星『殲禍炎剣』が存在しているため、空は自由に行き来できません。
●第一章
日常です。
湾内に浮かぶ氷山の頂きに座す青いキャバリア『巨神』について調査しましょう。
損傷箇所の有無や修理、または『巨神』との交流を試みることができます。
もしも、この働きかけに寄って『巨神』に猟兵を認めさせることができれば、『巨神』は猟兵をパイロットとして受け入れ共に戦ってくれる可能性がありあす。
●第二章
集団戦です。
予知で明言されていた『第三帝国シーヴァスリー』が湾の海中から迫ります。
彼等のオブリビオンマシン『WE-14アクア・ドギル』は海戦仕様となっています。彼等に有利な戦場で戦うことは皆さんに不利を強いるでしょう。
ですが、突如として現れた氷山に『ビバ・テルメ』の住人たちが物見遊山で湾岸にいるため、海中で戦わなければなりません。
皆さんの行動を『巨神』は常にモニタリングしているようです。
●第三章
ボス戦です。
オブリビオンマシンを率いていた大型要塞型オブリビオンマシン、機動殲龍『激浪』との戦いになります。
もしも、これまで章で猟兵の皆さんの誰かが『巨神』に認められ、操縦することができていれば、その『古代武装』によって敵の知らない超強力な攻撃を放つ事が可能です。
ですが、『古代武装』の破壊力はあまりにも強大です。
制御を失えば、敵どころか、周囲に甚大な被害を齎す可能性があります。
それでは『巨神』の目覚めとなるのか。オブリビオンマシンのもたらす戦乱を止める皆さんの物語の一片となれますよう、いっぱいがんばります!
第1章 日常
『伝説が眠る場所』
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POW : 故障したままの部品を一つずつ修理してあげる
SPD : 自己診断プログラムを走らせて修理を手伝う
WIZ : マシンの記録から過去の戦いの記憶を探る
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種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
青い装甲を持つキャバリア『巨神』は氷山の頂きに座す。
その姿は傷つき膝を折った戦士のような姿をしていたことだろう。頭部に存在していたであろうセンサーの一角がへし折れている。兵装の殆どが失われていることが、ハードポイントから見受けられる。
存在している武装は二対のプラズマブレイドと胸部砲口、そして背の推進ユニットらしきものだけであった。
「氷漬けになっていたせいか、機能自体は生きているみたいです。でも、誰も動かせない」
『エルフ』と呼ばれる『ビバ・テルメ』の『神機の申し子』たちの一人が猟兵達に説明する。
他の誰もが試してみたが、起動しないのだという。
何らかの要因があるのか。
それとも、何か足りないものがあるのか。
いずれも判明していない。
「で、でも、これを『第三帝国シーヴァスリー』が狙わないということは、ない、です……」
『フィーアツェン』の懸念も尤だ。
敵は必ず、この機体を狙ってくる。そうなれば、また小国家『ビバ・テルメ』は戦火に巻き込まれてしまう。
「起動するにしても、しないにしても、この機体を此処には置いておけない。強すぎる力というのは、いつだって要らぬ戦火を招きこむ」
「ええ、ですから、最悪の場合は破壊することも視野に入れています」
『ドライツェーン』と『ツヴェルフ』が頷く。
残された時間は少ない。
猟兵たちは、すぐさま作業に取り掛からなければならない――。
ウィル・グラマン
●SPD
うっひゃ-
でっけぇ氷山じゃねぇか
山はそこにあるから登るとか言われてっけど、何だかその気持ちが分かって来ちまうな
よーし、ベア
その巨神って奴の面を拝みに行ってみようぜ
へへんだ
オレ様のベアに掛かればこんな氷山なんて朝飯前だぜ
で、巨神は何処だよ?
ん?どうしたんだよベア、壁に指差して…のわー!?
デッケェェェ!!
スゲーぞ、ベア!
こんなでっけぇキャバリア、初めて見た…うん?何か頭の中で語りかけて来るけど…何言ってるかさっぱり分からねぇぞ!
へへ、コイツはオレ様への挑戦状と見たぜ
巨神と言ってもキャバリアに変わりねぇなら、オレ様の電脳魔術でハッキングして会話を試みるまでさ
それで何か分かったら修理してみるぜ
温泉国家『ビバ・テルメ』――そのあり方は戦乱渦巻くクロムキャバリアにおいて新しいあり方であったことだろう。
未だ暴走衛生の存在故に小国家間における情報のやり取り、共有は行われていない。
それが人の心に不和を呼び込むものであったのは当然のことである。
不和は不信を呼ぶ。不信は戦乱を呼ぶ。
互いを信じられぬのならば、それは相手と対等ではないということだ。平等と不平等との意味を誰もが肯定できないからこそ、否定することで戦乱は拡大していくのである。
「うっひゃー」
人が沢山いる、とウィル・グラマン(電脳モンスターテイマー・f30811)は思わず声を上げていた。
湾内に突如として現れた氷山。
それを一目見ようと『ビバ・テルメ』の人々は湾岸に集っているのである。
大騒ぎ、というのならばそうであろうが、どこか牧歌的な雰囲気が漂っているのは、緊張感がないからだろう。
氷山の頂きに座す一騎のキャバリア。
青いキャバリアであることが、此処からでもわかる。
「でっけぇ氷山じゃねぇか。山はそこにあるから登るとか言われってけど、なんだかその気持がわかって来ちまうな。おっ、なんだよ、かき氷とかも売ってるじゃねーか」
本当にこの湾岸は物見遊山の見物客ばかりであった。
なんとも戦乱の世界に似つかわしい光景でもある。
「っと、寄り道も程々にしとかねーとな。よーし、ベア」
『ガォン!』
ウィルの言葉に『ベアキャット』が太陽に照らされた黒き装甲と共に立ち上がる。氷山の頂きまで登らねば、件のキャバリアが一体どういうものか調査もできない。
「いっちょ、『巨神』ってヤツの面を拝みに行ってみようぜ」
ウィルは『ベアキャット』の肩に乗り、氷山をのぼっていく。
確かに急な斜面であるが、ウィルと『ベアキャット』にとっては朝飯前の行軍であった。
氷山の頂きに至れば、見える青いキャバリア。
センサーブレードの一角がへし折られたように失われているのがわかる。武装の殆どは損失しているし、機体の一部にも破損が見られる。
「こんなキャバリアは初めて見たな……」
ウィルは『ベアキャット』から降りて、青いキャバリアを見上げる。
頭に響く言葉があるように思えたが、ウィルにはよくわからなかったようだった。訴えかけているのか、それとも一方的に語りかけているのか。
どちらにせよ、ウィルはそれを挑戦状と受け取ったようである。
「へへ、オレ様にかかれば、このキャバリアの秘密全部まるわかりになるんだ」
「だ、大丈夫ですか? できますか?」
『ビバ・テルメ』を運営している『神機の申し子』の一人『フィーアツェン』がウィルの様子に心配そうな顔をしている。
電脳魔術と呼ばれるウィルの技術によって、本当にこの青いキャバリアの事がわかるのかと訝しんでいるのだろう。
「まかしとけって!『巨神』って言ってもキャバリアに変わりねぇなら、オレ様がハッキングして会話を試みるまでさ。修理しようにも、何処が悪いのかわからないとどうしようもねーだろ。ドクターが問診するのと一緒だぜ」
そう言ってウィルは青いキャバリアの回路へと電脳魔術でもってハッキングする。
「ふんふん。型式は……『A-Ex06』、『第六世代』、『セラフィム』……それがお前の名前か! えっ、違う? ん?」
ウィルにはどうにも青いキャバリアの語る言葉があやふやなようであった。
混戦しているとも言える。
情報と語りかけてくる言葉が同時に頭に響いて、ウィルには聞こえているのだろう。どっちつかずの状況にウィルは頭を抱える。
「戦闘記録も……なんだこれ、多すぎじゃねーか。ログだけざっと見ても……3000年!? え、どういうことだよ、これ。これだけの時間戦ってたってことか? 無補給で? 無整備で!?」
そんなことが在り得るのかとウィルは目を見開く。
本当にこれがキャバリアなのかと目を疑う。どう考えても千年単位で動いていた機体には思えない。
いや、とウィルは気がつくだろう。
戦闘の記録。
それはどうやら今も更新されているようである。
「……どっかに繋がってるのか、この機体……?」
ウィルは青い機体を見上げる。混線した声。矛盾する戦闘ログと機体の状況。
今しばらく機体を調査しなければ、とウィルはさらに電脳魔術での調査を続行するのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
ラスク・パークス
アドリブ歓迎
魂で理解した。勤務意欲を。
『・ω・) 温泉という素晴らしい天然資源があると聞いて物見遊山目的で駆け付けたラスクちゃんだったが、乗り手を求める謎の古いキャバリアの電波を受信したのであった』
私が|操縦者《そう》とは限らない、けど。
オブリビオンという、ブラック企業国家に、就職させるのは、忍びない。
『-ω-) 力になって進ぜよう。Hello New World!』
|人間型機械《レプリカント》故に、感じられる点も、あるはず。
サイバーリンクシステムからトランス入ります。
ドーモ、『巨神』=サン。ラスク・パークスです。
インタビューOK? 具体的にはご希望の労働条件など。
よろしければ、私が力になる。
ラスク・パークス(最後の死神・f36616)は思う。
賃金というのは労働の対価である。
それを支払われるからこそ、労働意欲というものが生まれる。労働があるから賃金があるのではない。賃金があるから労働があるのだ。
意欲というのは湧いて出てこないのである。
与えられるからこそ、労働しようと思うのが自然なのだ。
だから、ラスクは今も猟兵として世界をまたいで行動することができる。
細かいことを言うようであるが、こういうことは常に魂で理解するものである。
言葉も、理屈も、そうしたもの一切合切が意味をなさない。
『温泉という素晴らしい天然資源があると聞いて物見遊山目的で駆け出したラスクちゃんだったが、乗り手を求める謎の古いキャバリアの電波を受信したのであった』
彼女の目元を覆うバイザーのモニターから、なんかあらすじめいたものが流れる。
どうなっているのかはわからない。
サイバーザナドゥの脅威のテクノロジーとでも言えば良いのか。
「魂で理解した。勤務意欲を。私が|操縦者《そう》とは限らない、けど」
それでもと、ラスクは氷山の頂きに座す『巨神』と呼ばれる青いキャバリアを見上げる。
あのキャバリアがどうしたものかはわからない。
その推移がどうなるのかもわからない。
けれど、オブリビオンマシンの手にあのキャバリアを渡してはならないということだけはわかっている。
「即ち、それはオブリビオンマシンというブラック企業国家に、就職させるようなもの。それは忍びない」
『力になって進ぜよう。Hello New World!』
バイザーに走る文字と共にサイバーリンクシステムが有線接続型電脳を介して青いキャバリアと接続される。
「ドーモ、『巨神』=サン。ラスク・パークスです」
礼儀とは大切なものである。
サイバーザナドゥのサイバーニンジャ界隈であればなおさらのこと。人工ではないスシとか持ってくればよかったかしらと思わないでもないが、まあ、それは良いこととする。
「インタビューOK?」
「君は知るだろう」
何を、と問いかけるまでもなかった。
「君は多くを見るだろう。多く傷つくだろう」
それは反芻される情報の流れであった。ただ只管に声が電脳に響き渡る。
さらに流れ込む膨大な戦闘ログ。
殆どが宇宙空間での戦いであるように思える。火線が走り、火球が暗闇の中に明滅する。
恐らく同型機と思われる機体が戦場たる銀河の海を駆け抜けている。
時に連携し、時に単独で。
単騎で艦船すら沈めうる性能。
「……戦闘ログ。千年にも渡る時間戦い続けていた……? いや、違う。これは」
ラスクは己の電脳に流れてくる戦闘ログに共通性がないことを理解する。
このキャバリアが経験した戦闘データではない。
他の同一の機種が経験したことをフィードバックしている。結合している。そして、新たな戦術を組み上げているとしか思えない情報の濁流。
「戦い方を知りたがっている。『第六世代』……つまりそれは、『第五世代』があり、そして更に連なる機体があるということ……」
この膨大な情報が何処から送られてきて、何処に送ろうとしているのか。
わからない。
けれど、ラスクは告げるのだ。
「よろしければ、私が力になる」
その膨大な情報の流れの中にありて、ラスクは青いキャバリア『巨神』にさらなる深層があることを見出すのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
村崎・ゆかり
『GPD-331|迦利《カーリー》』で件の氷山まで移動しよう。
沿岸は物見遊山の観光客で一杯ねぇ。『神機の申し子』たちはちゃんとビジネスしてるかしら?
『迦利』が氷山の上の方に停泊したら飛び移る。
科学の産物って苦手なのよね。C言語とか触れたこともないし。
ということで、自分で喋ってもらいましょう。
コクピット無いの各種機器に対して、器物覚醒を使用。「式神使い」で彼らと自然言語による対話を試みる。
あなたたちの主演算機関と話をするにはどうしたらいい?
修復が必要なところがあれば教えて。
パイロットとして認められるのはどんな人?
質問ばかりでごめんね。あなたのことが全然分からないから。
微睡みはそろそろお仕舞いよ。
「まったく……沿岸は物見遊山の観光客で一杯ねぇ」
村崎・ゆかり(“紫蘭”/黒鴉遣い・f01658)は湾内に出現した氷山を取り囲むようにして沿岸部に集まった人々を己のキャバリアから見下ろす。
これだけの人間が小国家『ビバ・テルメ』より湾岸部にやってきているのだ。
正直に言えば、この後『第三帝国シーヴァスリー』のオブリビオンマシンが海中より現われることを予知によって知っている彼女からすれば、迷惑な話であったかもしれない。
けれど、知らぬことを知れ、というのは難しいことだろう。
だからこそ、彼女は『ビバ・テルメ』を運営している『神機の申し子』たちが上手くやれているのかを心配する。
だが、それは杞憂であった。
湾岸部に集まった人々は、各々が商売を始めるように出店めいたことをしている。
物見遊山に集まったものたちがいるのならば、それに合わせて商売をしようという気概が在るものたちが集まっているのだろう。
「商魂たくましいってことかしらね。なら、それはそれで」
ゆかりは氷山の頂きを見上げる。
キャバリアから降りて、『巨神』と呼ばれる青いキャバリアを見やる。
彼女にとって科学の産物たるテクノロジーは不得手とするところであった。まだ呪いのたぐいのほうが余程親しみやすいものであったことだろう。
けれど、ゆかりは、それでは芸がないとユーベルコードに瞳を輝かせる。
「こちらから調べるのは難しいなら、自分で喋ってもらいましょう。急急如律令! 汝ら、我が下知に応じ、手足の如く動くべし!」
器物覚醒(キブツカクセイ)。
ユーベルコードに寄って式神を憑依させる。
青いキャバリアに反応はない。
静まり返っているように思える。
「……どういうこと?」
ゆかりは訝しむ。
式神が憑依することによって付喪神へ無機物を変換するのが、彼女のユーベルコードだ。
なのに、『巨神』たる青いキャバリアは自由に動くことができるはずなのに動こうとしないのだ。
「あなたたちの主演算機関が存在していない、ということ?」
『それは誤ちである。我等は全で一。一で全。我等は『ファフニール』。炉たる『ヴァルキリー』と主を繋ぐ事柄』
声が聞こえる。
ゆかりのユーベルコードに寄って発生するのは青いキャバリアの意志ではないようである。
ならば、何が声を発しているのか。
『蓄積された戦闘データのコア。それが『ファフニール』にして『プロメテウス』。過去より連なる事柄』
「戦闘データのコアが何故喋っているの? 修復が必要なところがあれば教えて」
『連続した戦闘データの蓄積と最適化。我等が求めるのはそれだけである』
「パイロットとして認められるのはどんな人?」
『知を求め、力と成し、それを理性でもって手繰る者』
返答される言葉にゆかりは頷く。
「質問ばかりでごめんね。あなたのことが全然わからないから。けれど」
まどろみの時間は御仕舞であるとゆかりは告げる。
そう、猟兵たちがこの場に集ったということは、オブリビオンマシンが現われるということ。
その気配を感じ、ゆかりは『巨神』に告げる。
戦わなければならないのだと。
例え、これが流されるだけでしかない状況であるのにせよ。
迫りくる脅威は払わなければならないと――。
大成功
🔵🔵🔵
メルヴィナ・エルネイジェ
もしかするとあの時戦った奴等はこれを探していたのだわ?
リヴァイアサンと一緒に行くのだわ
巨神…
アーレス大陸の機械神と殆ど同じ言い伝えなのだわ
国によってはリヴァイアサンがレビヤタンの名前で伝わっているように、呼び名だけが違うだけで意味は同じものなのかも知れないのだわ
だから巨神の重要性はよく分かるのだわ
変な奴の手に渡ると碌な事にならないのだわ
壊れているようだから外側だけでも癒しの水で治してみるのだわ
出力を最小限にしたオーシャンバスターで優しく掛けるのだわ
この程度で復活するとは思えないけど、何もしないよりはましなのだわ…
機能の一部でも治ればきっと他の猟兵の人が何とかしてくれるのだわ
治しながらよく観察してみるのだわ
とても古い時代の機体に見えるのだわ
それこそ数千年以上も前…リヴァイアサンが作られた時代のような…
リヴァイアサンは何か知らないのだわ?
ひょっとしたらこの機体も継ぐ者を待っているのかも知れないのだわ
そしてそれはきっと私じゃない誰かなのだわ
もしかすると、とメルヴィナ・エルネイジェ(海竜皇女・f40259)は氷山を見上げる。
湾内に突如として氷山。
その頂きに青いキャバリアが座している。
「あの時戦った奴等はこれを探していたのだわ?」
彼女が嘗て海中で接敵した部隊。
『第三帝国シーヴァスリー』の海戦仕様のキャバリアたち。彼等は明らかに何かを探索していた。
もしも、これを探していたというのならば辻褄が合う。
そして、探していたのが『巨神』であるというのならば、彼女は奇妙な符号を感じる。
アーレス大陸に存在する機械神とほとんど同じ言い伝えなのである。
国によって己が乗騎『リヴァイアサン』の名が異なるように。
呼び名が異なるだけで意味は同じなのかもしれないと思えたのだ。『リヴァイアサン』、己の乗騎が僅かに反応を示している。
そして、頂きの青いキャバリアもまた僅かな反応を示している。
「反応している……?」
『ビバ・テルメ』を運営している『神機の申し子』たちが青いキャバリアの反応に目を見開く。
己たちがサイキックキャバリアを以て相対しても反応を示さなかった青いキャバリアが、メルヴィナの『リヴァイアサン』を前にして僅かに反応を示しているのだ。
「わかるのだわ。この『巨神』の重要性。変なやつに渡ると碌なことにならないのだわ」
メルヴィナは『リヴァイアサン』と共に『巨神』、青いキャバリアへと近づく。
「壊れているのね、お前。戦ってきたのだわ、きっと。だから傷ついている。喪ったものがあるのだわ」
彼女には僅かに共感できるようであった。
青いキャバリアは傷ついている。
信じていたものに裏切られたような、そんな様子を『巨神』たる青いキャバリアは……いや、とメルヴィナは頭を振る。
「違うのだわ。お前は私のように裏切られたのではないのだわ。置いていかれたのだわ。お前たちと人間が同じ時を歩んで行けぬように」
メルヴィナの瞳がユーベルコードに輝く。
癒しの水(ヒーリングウォーター)によって『リヴァイアサン』から放たれた水が青いキャバリアの装甲を修復していく。
だが、一点だけが修復されない。
ブレードセンサー。
頭部のセンサーの一部だけがどうしても修復しないのだ。
「そう、それは、修復されない、しようがないのだわ……だから、お前は、あなたは……」
彼女は頷く。
『――』
「『リヴァイアサン』、知っているのだわ?」
叡智の結晶。
メルヴィナの中に響く言葉がそれであった。
膨大な戦闘データを集約したコア。
それが『ファフニール』という名で呼ばれ、また同時に『プロメテウス』と呼ばれる存在であると『リヴァイアサン』が語る。
この機体に備わっているのが、それであるというのならば、メルヴィナは得心がいく。
数千年以上も。
星の海を征く世界に在りて、永き時を駆けた機体。
積み重ねられた戦闘のログは、いつしか機体のコアに知性を宿すこともあるのかもしれない。
「『セラフィム』。それがこの機体の名なのだわ」
メルヴィナは『リヴァイアサン』から伝えられた情報に頷く。
「『第六世代』の『セラフィム』……だからなのだわ。あなたたちの『セラフィム』に反応しないのは」
「どういう……?」
『神機の申し子』たちの駆るサイキックキャバリアもまた『セラフィム』と呼ばれている。
彼等の機体と同じ名であるのならば、反応しないのがおかしいと彼等は訴えるだろう。
「『リヴァイアサン』は言っているのだわ。時は積み重ねられていく。過去を踏みつけて時は前に進むのだわ。ならば、この『セラフィム』より更にあなたたちの『セラフィム』は時を重ねた機体なのだわ」
「つまり、それは……この『巨神』が古い機体であるから、私達の機体を僚機として認識できていない、と?」
「此方が反応していて、『巨神』が反応していないのは、そういう理由なのか」
「ええ、そう言っているのだわ『リヴァイアサン』は」
メルヴィナは青いキャバリアを見上げる。
きっと待っているのだろう。
継ぐ者を。
そして、それは己ではない誰かだという確信がある。
「その出会いが幸いでありますように――」
大成功
🔵🔵🔵
ユーリー・ザルティア
『強大過ぎる力と乗り手を選ぶ性質故に封印されていた、古きキャバリア』…ねえ。
そんな理由で封印っていうのも…なんかおかしな話ねぇ。
いや、『キャバリアじゃなくてパイロットを調整すればいい。』って話をよく聞くから…。
さて、ボクは『ハッキング』して『プログラミング』から『情報収集』するから≪壁の工房出張サービス≫の皆さん達には、『メカニック』と『武器改造』の技術から機体の修理と調査をお願いするよ。
ねえ『巨神』…貴方のことを教えて…
情報の波を『限界突破』した『瞬間思考力』で捌きつつ、巨神のデータを『読心術』利用しつつ読み解いていくわ。
キャバリアにだって…心はある。ボクはそれを知っている
小国家『ビバ・テルメ』の領域、湾内に突如として現れた氷山は人々の注目を集めるものであった。
この地は極北にあるわけではない。
冬であっても湾内が凍りつくことはない。
だが、確実に目の前には季節外れとも言って良い氷山が存在している。
「まるで、凍りついた氷山ごとこの世界に現れたみたいな……そんな感じ」
ユーリー・ザルティア(自称“撃墜女王”(エース)・f29915)は氷山を見上げる。
あの頂きにあるのは青いキャバリア『巨神』である。
名はまだ知らないが、『強大過ぎる力と乗り手を選ぶ性質故に封印されていた、古きキャバリア』であるのだという。
だが、ユーリーにとって、それはおかしな話であるように思えたのだ。
何故ならば、彼女の観点で考えると『キャバリアじゃあなく、パイロットを調整すればいい』というだけの話なのだから。
キャバリアが選ぶのではなく。
人が選ぶ。
そして、キャバリアの求める人材がいないのであれば、それに合わせて調整する。それが非人道的なことであっても、結果が伴えばいい。
それがユーリーの生きてきた過去で得られた事柄の一つであったのだろう。
いや、それを否定したいとも思っていたかも知れない。
ユーリーは青いキャバリアの装甲に触れる。
「壁ノ工房出張サービス(ヘキノコウボウシュッチョウサービス)の皆は機体の整備お願いね。修理は……大体終わっているみたい。機体のチェックと調査をお願いね」
さて、とユーリーは整備クルーとメンテナンストレーラーが氷山の手前で立ち往生しているのを見て苦笑いして、ゆっくりと『巨神』と向き直る。
「さて、『巨神』……と呼べばいいのかな。貴方のことを教えて……」
外部のインターフェイスからユーリーは情報の念を走らせる。
この機体がまだ生きているというのならば、回路に残った情報が読み取れるはずだ。
「……!」
ユーリーは目を見開く。
膨大なデータが頭に流れ込んでくる。
「これ……!」
目が回るような情報の洪水。だが、それを瞬間思考で彼女は受け流す。
そこにあったのは数多の戦場で巻き起こる戦闘の映像であった。光条煌めき、火球が生み出されては消えていく。
明滅する戦闘光景。
星の海での戦い。
青空広がる雲海での戦い。
暗闇の中での戦い。
割れた星での戦い。
雨降る銀色の世界での戦い。
凍結していく海での戦い。
多くの戦いがユーリーの脳を洗うように、押し流すように溢れていく。
煌めくユーベルコードの輝きを幾度も彼女は見ただろう。
「ハッ……! ハッ……!! これ、って……!!」
ユーリーは青いキャバリアを見上げる。
揺らめくアイセンサーの煌めきを彼女は見ただろう。多くの戦いの記憶。
「これが、貴方の戦ってきた記憶……!」
彼女は思う。
キャバリアにだって心はある。オブリビオンマシンにだって心があったのだ。彼女はそれを知っている。
破壊の化身として生まれながらも、それでも己の生命を守ってくれたマシンがいたように。
見上げた青いキャバリアにもまた、それが宿ることをユーリーは膨大な情報の濁流の中で見たのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
アルカ・スィエラ
【POW】
……考えていても仕方ないわね。機体制御系を解析できるなら解析する
少なくとも正規の武装はエネルギー供給系をはじめ、それを扱うためのプログラムがある筈
それが判れば本来の正規兵装と、現在欠損している装備は読めるわ
後は資材を基に金属細胞を増殖・分化させそれを材料に欠損部位を補うための「義肢」ともいえるパーツを作成、『フローリア』達にそのパーツで可能な限り欠損部位の修復をさせるわ
一応巨神への侵食を防ぐのと、逆に巨神がこれを利用して自己修復や自己進化を行う事を防ぐために、私とドラグレクス側で増殖等の金属細胞の機能はロックしておくわ
彼にその制御を渡すかどうかは……これから次第、ってところでしょうね
多くの不明点がある。
何故、この湾内に氷山が突如として現れたのか。
海水温を考えればありえないことだ。例え、海底にこの氷山があり、いかなる理由からか浮上を開始したのだとして、通常ではこのような現象などありえない。
まるで別の場所から突如として現れたかのような氷山の出現。
そして、氷山の頂きには青いキャバリア『巨神』が座している。
「……考えても仕方ないわね」
アルカ・スィエラ(鋼竜の戦姫・f29964)は頭を振る。
猟兵達のユーベルコードに寄って機体の修復と調査は進んでいる。
青いキャバリアの名は『セラフィム』。
『第六世代』の『セラフィム』であるのだという。
その言葉の意味をアルカはまだ噛み砕けていない。わからない点が多すぎるからだ。断定するには情報が足りない。
「少なくとも正規の武装はエネルギー供給系から流路を得ている……残された武装の一つ……プラズマブレイドを振るうのならば、マニュピレーター」
青いキャバリアの手のひらをアルカは見やる。
やはり、と思う。
マニュピレーターの手のひらの部分にプラズマブレイドの柄と接続するコネクタが確認できる。
「プログラムが残っているなら……本来の正規兵装と、欠損している装備は……」
アルカは思考を巡らせる。
コネクタは機体の各部に残っている。
恐らく、と推察することができる。
このアタッチメントは戦場の状況において換装されるものなのだろう。元々あったものが喪われた、というわけではないようである。
「『フローリア』、お願い。欠損部位の修復を」
アルカは小型の整備機械人形たちに『巨神』の整備を願う。
彼女たちは工具を手に、他の猟兵達の整備と合わせて動き出す。己の金属細胞を増殖、分化させ、それを資材にしようとしたが彼女は気がつく。
「……金属細胞?」
己のものとは違う。
だが、この組成は。この組み立てられたカテゴリーは確実に金属細胞と類似する部分が多すぎる。
「どういうこと……?」
アルカは細心の注意を払っていた。
嘗て己が金属細胞を以て修復した機体があった。あの機体は逆にオブリビオンマシンに利用されてしまった過去がある。
だからこそ、彼女は浸蝕を防ぐ以上の意味を以て、注意を払っていた。
なのに。
「すでに装甲に使われている……? いえ、フレームから……?」
これが数千年単位で存在していた事実を裏付けるものであったことだろう。
金属細胞によって代謝を起こして、この青いキャバリアは永き時に渡り機体を保持していたのだ。
「あなたは一体……」
青い装甲に触れる。
瞬間、アルカの脳裏に響き渡る声がある。
『知り得ざる者よ』
「何よ、これ……!」
濁流のような情報がアルカに流れ込む。
膨大な戦いの軌跡。それは『巨神』に残された、蓄積された戦闘データの集約にしてコアである『ファフニール』と呼ばれるもの。
膨大な年数の戦闘ログを集約して戦術を組み上げているのだ。
そして、それは現在進行形であることをアルカは理解する。
「今も何処で戦う機体があるということ……この機体、『何』と繋がっているの?」
蓄積していく戦闘ログ。
止まらない。そのログの進む先は、一体何なのか。アルカは答えぬ『巨神』を見上げるしかなかった――。
大成功
🔵🔵🔵
朱鷺透・小枝子
よくは分かりませんが、分かりました。
【視力】『眼倍』を起動し、
青いキャバリア『巨神』を精査【情報収集】
抗体兵器、逆鱗加速戦鎚と勝手に名付けたハンマーを出し、
【闘争心】で呪いと同調。
…当時の事はおぼろげですが、これも元はセラフィム。
とはいえ最悪嫌われたりするかもですが、物は試し、という奴であります。
|鉄片《パーツ》を呼び出し、巨神の損傷部位をこれで補修、
【呪詛】巨神に呪いを掛ける。自分を嫌う程度で、どうか…。
【第六感】組み込んだ鉄片伝いに巨神と自身を同調、自分を認識させる
…聴こえているか?貴殿は何だ?所属は?目的は?
…いや、これから戦いが始まる。
これだけ聴きたい。
貴殿は、心に平和を持っているか?
瞳に輝くユーベルコードは、情報を把握する。
理解できないことは多い。
判然としない事実が混沌のようにとっちらかっているようにも思えたし、それを整理するのは難しいものであるようにも思えた。
けれど、それで何もしないのは違うのだと朱鷺透・小枝子(亡国の戦塵・f29924)は知っている。
彼女の瞳が捉えるのは氷山の頂きに座す青いキャバリア。
湾内に浮かぶ氷山。
それが如何におかしな事態かを理解しているからこそ、知らねばならない。
手にした抗体兵器、『逆鱗加速戦鎚』と名付けたハンマーを手にする。
己の中にある闘争心は生命を殺さんとする呪いと同調する。
小枝子はこれを手にしたときのこともおぼろげであった。
けれど、彼女が手にしたハンマーは元は『セラフィム』とよばれた抗体兵器。
あの銀の雨降る世界にて出現したもの。
「これに反応するかどうか……」
小枝子は相対する青いキャバリアが如実に反応を示したことを知る。アインセンサーが輝いている。
明滅するアイセンサーと己の手にした抗体兵器。
「これはどういう……最悪嫌われることを覚悟していたのでありますが」
小枝子は反応を示す抗体兵器に訝しむ。
機体の損傷箇所の殆どが修復されている。だが、頭部のセンサーブレードが折れたように損壊している部分だけが治っていない。
それを治すことができないかと補修を試みたが、青いキャバリア自体がそれを拒否しているように小枝子は感じただろう。
「……拒否している。何故でありますか」
小枝子は手にした抗体兵器と共に青いキャバリアに触れる。
この青いキャバリアの名が『セラフィム』であるというのならば、装甲の青は善性を意味しているのだろう。
ならばこそ、小枝子は問いかける。
「……聞こえているか? 貴様はなんだ? 所属は? 目的は?」
『第六世代戦術兵器セラフィム。シリーズ・クロイツ。第二世代、君の役目と同じである』
それが青いキャバリアに搭載された戦闘データのコア『ファフニール』に宿った知性であることを知る。
『プロメテウスと名乗ることにしている。我等は熾火。灯火となるべく生み出されたもの』
「君は知るだろう。君は多くを見るだろう。君は傷つくだろう。君が思う以上に君を取り巻く世界は争いに満ちている」
「……この声は」
混線している、と小枝子は理解しただろう。
他の猟兵のいう、未だ戦闘ログが更新され続けているという事実。
「……いや、これから戦いが始まる。これだけは聴きたい」
小枝子はそれこそが問題の核心であると信じている。
目の前の青いキャバリアがどのような存在であろうとも。
「貴殿は、心に平和を持っているか?」
「僕の名は『サツキ・ラーズグリーズ』。キミの問いかけに僕は答えよう。僕は、『戦いに際しては心に平和を』持つ。そして、『その生命を見る』。どんな生命にも過去があるように。それを忘れてはならないと知っているから」
混線した言葉。
これが青いキャバリアのものではないと小枝子は理解する。
それを持つのは『乗り手』でしかない。
ならばこそ、小枝子は湾内を見やる。すぐそこまで争いの気配が迫っていた――。
大成功
🔵🔵🔵
ミレア・ソリティス
任務を受領しました。戦闘以外でどれだけのことができるかは分かりませんが、善処しましょう
UC【コード・モルフェウス】を使用、周辺領域ごと半電脳化し、氷山も含めて電脳魔術によるハッキング及び情報収集での解析を開始します
主に電脳系へのアクセスと、機体を構成する素材の解析、破損部位のダメージ原因の解析…何によって破損したのかの解析を行い、この機体がいつ、どこで建造されたのか、主に何と交戦していたのかを探りましょう
加えて既存のセラフィムのデータとの解析情報照会も行いましょう
……同時に巨神に対してのデータの送受信の有無を確認します
これらのセラフィムだけでなく、別の機体との通信が存在する可能性もあります
戦うことで存在が証明される。
それが自分であるとミレア・ソリティス(軍団たる「私」・f26027)は理解している。
だから、この任務を受領したとして、戦闘以外で自分がどれだけのことができるだろうかと考える。
「善処しましょう」
それは大いなる一歩であったことだろう。
前進。
他者から見れば、他愛のない一歩であったかもしれない。けれど、それはミレアにとっては大いなる一歩であったことだろう。
手には電子情報で生み出された杭。
氷山の一角ごと半電脳領域へと変換する。
「コード・モルフェウス、アクティブ。半電脳領域構築……完了。領域内への事象干渉・改変を開始します」
見上げるは青いキャバリア『巨神』。
その精査は急務であった。
機体の情報を解析する。半電脳化したこの領域であれば、機体の電脳へとアクセスすることができる。
彼女は見る。
流れ込んでくる情報の濁流。
濁流と表現したのは、それが分類分けされたものではないからだ。雑多な情報の流れ。戦闘データ。ログが常に更新されていく。
この機体ではない。
この機体を通して繋がっているものがある。
流れ込んできているのだとミレアは理解する。
「この情報の濁流の中から、この機体自体が経験した事柄をピックアップするのは……」
相当に骨が折れる作業であった。
この機体が氷山から現れた時、損傷を受けていた。
今は猟兵達によってほとんどの損壊が修復されている。
「建造元は……宇宙。何と交戦していたのです」
『あらゆる生命と』
「何に寄ってこの破損は」
『悪魔との交戦によって』
「既存の『セラフィム』との相違は……」
ミレアは理解する。この青いキャバリアが自らを『第六世代』と名乗った。嘗てクロムキャバリアにおいて交戦した『セラフィム』の名を冠する機体は『第五世代』と名乗っていた。
あれの後継機であると考えるのならば、不自然な点が見受けられる。
あの機体の武装は確かに二対のプラズマブレイドと胸部砲口、そして背面の推進機構。
だが、この機体には六腕の機構がない。
不要と廃されたのか。
「膨大な戦闘データを集約したコア『ファフニール』。この情報の送受信は如何なる場所へ……」
ミレアは戦闘ログが常に更新されていることを訝しむ。
この『巨神』に送られているのか、それとも。
「中継しているのですか」
『プロメテウスは過去に。知の番人たるファフニールは常に其処に在りて。『第二世代』は、すでに生命を滅ぼすことを放棄している』
知性宿すコアの言葉にミレアは情報が混濁していくのを感じる。
だが、確実に言えることがある。
この機体は中継機だ。この膨大な情報を何処からか受け取り、何処かへと届けている。
「ならば、この戦闘ログは『過去』。送る先は」
『未来』
「終わりははじまり。はじまりは終わり。時を踏みつけて生きていくのならば、過去は体積して滲み出す」
ミレアは接続を切る。
知りたいと願ったことの多くは知ることができた。
この青いキャバリアは銀河の海征く世界を根源にしている――。
大成功
🔵🔵🔵
ルクス・アルブス
【ステラさんと】
お久しぶりですステラさーん!
やっと会えました!
いやー、久しぶりの雄叫び、落ち着きますね!
それにしても寒いですねぇ。
で、この氷山の上に座っているのが『巨神』なんです?
え、シリアス? シリアスなんですかー!?
しかも演奏したらダメとかわたしにどうしろと!
ステラさんは雄叫んだのに!
(エイルさん関係なら、その叫びで『すん』ってなっちゃうとか)
なんてことは口が裂けても言えないですので、困り笑いをしておくとしまして、
わたしにパスされましても!?
しかもそんなに念を押さ……あ、わかりました!
これはあれですね。押すな、押すなよ! の法則ですね!
では法則に則って、斜め45度からの演奏をさ痛ぁ!?
ステラ・タタリクス
【ルクス様と】
いえ、ですから
エイル様関連のデータベースを全部遡り切れてないと何度申し上げれば
なのにっ!こんなっ!
|エイル様《主人様》の!! 香りがしまぁぁぁぁすっ!!
あとルクス様
シリアスになるかもしれませんが付いて来れますか?
雪山なので演奏禁止ですからね?
え?私の叫びは愛なので可
というか私の叫びで動きませんかね巨神?
動かないということはエイル様は関係ないセラフィム?
もしかして『この前』会った機体でしょうか?
おそらく……|V《ヴィー》様の原型、オリジナルのセラフィム
まだ残っていた、と?
うーん、ルクス様パス
私は少し散歩してきます
演奏は禁止…だから前振りじゃないッ!!
ええい!この勇者は本当にもう!!
「|『エイル』様《主人様》の!! 香りがしまぁぁぁぁぁすっ!!」
その叫びを聞いたルクス・アルブス(『魔女』に憧れる『出禁勇者(光属性)』・f32689)は帰ってきたなぁ、という実家のような安心感を覚えていた。
ステラ・タタリクス(紫苑・f33899)の雄叫び。
最初に聞いた時は鼓膜が破けるかと思ったが、慣れると趣があるように思えてしまうのは、毒された証拠であろうか。
まあ、どちらにせよ、久しぶりにルクスはステラに出会ったのだ。
懐かしさと嬉しさのほうが勝ってしまう。
というか、ものすごく二人は注目されていた。
此処は小国家『ビバ・テルメ』の領域。湾岸には突如として出現した氷山を一目見ようと物見遊山の人々で溢れかえっていた。
「えいるさまのかおりがしまーす!」
小さな子達がステラの真似をしている。
花火が打ち上がったときの、たまやかぎや的なあれだと思われている。やばいとルクスは思った。
「あ、あのあの、それはちょっとやめたほうが良いと思います」
「なんでー?」
「それはですね……」
「今『エイル』様の話しました!?」
「妖怪『エイル様語り』が来るからですよ!?」
そんなルクスの後頭部を襲う容赦のないツッコミ。
「痛ぁっ!? なんでぶつんですか!」
「いいですか、ルクス様。シリアスになるかもしれませんので、ここらでコミカルは品切れにしておいて頂きたいのです」
滅茶苦茶言っているなとルクスは思った。
自分は思いっきり叫んでた癖に、と思った。口には出さないが。
「ていうか、シリアス? シリアスなんですかー!?」
「ええ、ですから演奏禁止ですから。氷山とは言え、破壊音波で崩落しては危険ですから。演奏禁止ですから。大事なことなので二回言いましたからね!」
「じゃあ、ステラさんの雄叫びは……」
「私のは愛なので可です。というか、私の叫びで動きませんかね『巨神』?」
ちらっとステラは青いキャバリアを見やる。
びっくりするくらい無反応であった。
それはそれは見事な静寂であった。
「……」
ルクスは思った。絶対その叫びで『すん……』ってなったやつじゃあないかと。口が裂けても言えないので、ルクスは微妙な困り笑いをしてごまかすことしにした。
こういう時に余計なことをいうとまた後頭部にスリッパが飛んでくることを、彼女はこれまでの経験上知っているのだ。
「ふむ。動かないということは『エイル』様は関係ない『セラフィム』?」
ステラはデータベースを全て遡ることができていない現状を悔やむようであった。
「|V《ヴィー》様の原型……? オリジナルの『セラフィム』である、と?」
だが、それでは辻褄があわない。
猟兵達の調査で、この青いキャバリアは『第六世代』と名乗っていることがわかっている。もしも、ステラのいうところの『V』の原型であると仮定するのならば、『第五世代』であることを考えると後継機であると考えるのが打倒だろう。
「うーん、ルクス様、パス」
「えっ!? わたしにパスされまして!?」
ルクスは戸惑う。
何をパスされたのかもわからない。
「私は少し散歩してきます」
考えをまとめるには散策が一番いいとステラは己のルーティーンを信じる。
「演奏は禁止ですから」
3度目の念押しである。
その言葉にルクスはピコンと頭上に豆電球を輝かせる。
これってあれだろうか。コメディでよく見る。
「そんなに念を押さ……あ、わかりました! これはあれですね。押すな、押すなよ! の法則ですね!」
ルクスは段々とわかってきていた。
簡単なことだったのだ。
ボケのこと。
ツッコミのこと。
コメディのこと。
なんだこんなに簡単なことだったのだと、彼女はヴァイオリンを取り出す。わかる。わかる! とルクスの瞳がユーベルコードの輝きを解き放とうする。
「では法則に則って、斜め45度からの演奏を――」
斜め45度からの演奏とは一体。
もしかして叩いて直そうとしている?
誰もが不安になった瞬間、ステラの手刀がルクスの首に叩き込まれる。
これがフィクションであれば、うっ! とかいってルクスが気絶する流れである。もしくはみぞおちにパンチして気絶させる流れるである。
だが、これはメイドのツッコミである。
「前フリじゃないと! ええい! この勇者は本当にもう!!」
「痛いっ! 痛いです!? いっそ気絶できていたらよかったのにと思うほどに痛いですけど、ステラさん!?」
「真面目な! シリアスな! と言っているのですが!」
ステラは己の考えがまとまらないばかりかルクスが演奏を開始しようとして頭痛がする思いであった。
「だって、ステラさんが前フリするからぁ……」
ぐすんぐすん。ちらっ。
「鳴き真似しない!」
「だって、ステラさんさけ叫ぶのずるいです! 私だって演奏したいです。湾岸だってこんなにお祭り騒ぎなんです、ちょっとくらいいいじゃないですかー!」
「あなたの演奏は、それをぶち壊すと言っているんです!」
いつも通りのやり取り。
二人は猫とネズミよろしく氷山の周りをぐるぐる追いかけっこに興ずるのだった――。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
月夜・玲
聞こえるか聞こえるだろう
つまり伝説な巨神が出たって訳だ
氷山から出てきたとか凄いじゃん、使わずもう一回氷山に埋め込んで観光資源にしようぜ!
ダメかー…なら弄るか
各部のパーツを見て、『メカニック』の知識で採寸と損傷部分を見て…
壊れた所があるなら、直すけど…コンピュータの中に仕様書とか残ってないかな
…互換性のあるパーツで中身を入れ替え続けたら、それは何処まで巨神なのだろうか!
やらないけどさ!
折角だから【Code:M.C】起動
マシンで巨神用の小屋作ろ
氷山の上だから、まあ簡易的なので良いや
それで全高や細かいディティールも観測して…
よし、巨神の観察終わり
データから原型作って…型取りして…
巨神のガレキ発売中!
ハウリング音が響く。
小国家『ビバ・テルメ』の持つ湾内に突如として出現した氷山。そして、その氷山を一目見ようと集まってきている物見遊山の人々は、そのハウリング音に一瞬肩をすくませたり、耳をふさぐ。
「聞こえるか聞こえるだろう」
メロディに乗った声。
それは月夜・玲(頂の探究者・f01605)の歌声であった。
湾岸部はお祭り騒ぎであったので、特設されたステージで歌のパフォーマンスが開かれていた。
玲はマイクを手にしてなんか歌っていた。
著作権的な意味でかなりギリギリのアウトな歌であった。
「つまり伝説な巨神」
あってるけど、それ以上は行けない。
赤と白のカラーリングでないことが幸いであった。
氷山の頂きに座す『巨神』は青い装甲を持っていた。
「ていうかさ、氷山から出てきたとかすごいじゃん。使わずも一回氷山に埋め込んで観光資源にしようぜ!」
「あの、わかるんですけど、それはちょっと……絶対、侵攻の理由にされます……」
玲の言葉に『エルフ』と呼ばれる『神機の申し子』は申し訳無さそうな顔をしていた。
まあ、わからんでもないと玲はマイクを『エルフ』に手渡す。
えっ、と困惑する『エルフ』を他所に玲は自由人さながらに氷山の頂きに至る。
目の前には青いキャバリア。
ほとんどの損壊部分は他の猟兵たちが修復している。
だが、頭部のセンサーブレードの一角だけが修復されていない。
「なんであそこだけ?」
「きょ、『巨神』自身が拒否しているみたい、なんです……」
『フィーアツェン』が示す先にあるのは、たしかに折れたように喪われたセンサーブレードがあった。
その先端をみやり、玲は眉根を寄せる。
なんか見覚えがある。
「ん? んん……?」
彼女はメカニックである。その知識があれば、損壊箇所の有無や用途を理解することができる。
この青いキャバリアが他のキャバリアと互換性があるのならば、中身を入れ替え続けたら、それは何処まで『巨神』なのだろうかと要らぬ考えを巡らせていたところで、その知識から破損しているセンサーブレードの損失部分がどうにも見覚えがあってならないのだ。
「んー? えーと……どこしまったっけ」
Code:M.C(コード・マシン・クラフト)によって青いキャバリアの周囲に小屋を作り上げる。
高所作業用のクレーンゴンドラに玲は乗って青いキャバリアの頭頂部に接近する。
へし折れたような傷跡である。
「……すごい力でへし折られたような……? なんだっけ、これ」
あっ、と玲は思い返す。
猟書家。
あるオウガ・フォーミュラとの戦いの際に彼をジャンプさせ、ポケットの中身をひっくり返してカツアゲ……じゃなく、強奪……じゃなく、戦利品として得た物品。
青い装甲のかけらのようなものを彼女は得ていた。
「これ?」
これまで修復を拒否していたという部分。
そこに彼女は手にした青い装甲を合わせる。ぴたり、と合う。
瞬間、機体の装甲が合わさるようにしてセンサーブレードが修復される。
「これかー……え、ていうかこと、この『巨神』、悪魔と交戦したことあるってこと?」
えぇ……世界跨ぎ過ぎでしょ、と玲は呆れ半ばの思いであったが、やることをやらねばと小屋で囲った青いキャバリアをスキャニングしていく。
細かな形状まで逃さずデータに起こしていく。
「ふんふん。これで前身データは得られたってわけだ。後は微細部を調整してっと……あっ、分割しないとだなぁ……関節部は既存の関節を使えるように置き換えて、と……」
何をやっているのだろう、と『神機の申し子』たちは玲の作業を見守ることしかできなかった。
「これ? 原型作ってる。あとは粘土に埋めて……そう、この作業が一番しんどいんだよね。綺麗に平らにしないといけないし……レジンが流れる湯口もね」
「え、何、なんて?」
「だからー型取り! シリコン流し込むからどいたどいた!」
そう、玲は青いキャバリアを、『巨神』のデータを取ってレジンキット、即ちガレージキットを販売しようという魂胆であったのだ。
「離型剤を塗って、レジンを流し込んで、はい完成! ゲート処理してバリとって洗って塗装して!」
完成!
「これ発売してがっぽりいこうよ!」
調査ってそういう? と『神機の申し子』たちは玲のマイペースさにがっくりと肩を落とすのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
第2章 集団戦
『WE-14アクア・ドギル』
|
POW : RX-Aハンド・アンカー
レベル×1tまでの対象の【体へ拘束用アンカーを発射し、命中した部位】を掴んで持ち上げる。振り回しや周囲の地面への叩きつけも可能。
SPD : RSステルス機雷
【予め周囲に設置していたステルス機雷群】が命中した箇所を破壊する。敵が体勢を崩していれば、より致命的な箇所に命中する。
WIZ : BS水中用偏光ビームライフル
【敵の死角に隠れ、水中用偏光ビームライフル】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
イラスト:スダチ
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
|
種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
氷山浮かぶ湾の岸辺には多くの人々が物見遊山でのんびりとしていた。
あまりにも穏やかな光景。
しかし、彼等は知ることになる。
湾内に浮かぶ氷山。
その向こう側から海面を突き破るようにして飛び出す無数のキャバリアの姿。
「やはり、此処にあったか『巨神』!」
「前回は海中で遅れを取ったが、今回はそもそも数が違う! 如何に『ビバ・テルメ』が規格外のキャバリアを手に入れようと!」
「展開せよ。敵勢力を無力化、後に『巨神』を確保する!」
オブリビオンマシン『WE-14アクア・ドギル』が氷山の周囲に展開する。
彼等の機体は海戦仕様である。
海中での戦いにおいて比類なき性能を発揮する。だからこそ、戦うのならば海中であってはならない。
けれど、猟兵たちは知っている。
この場には多くの人々が物見遊山で来ているのだ。彼等を巻き込めない。ならば、戦場は海中しかないのだ。
「僕たちは彼等の避難指示と確保を!」
『神機の申し子』たちがサイキックキャバリア『セラフィム』を出現させ、人々の避難を買って出る。
ならば猟兵たちは湾岸部に被害が出ないように立ち回るだけだ。
海中での戦い。
慣れぬこともあるだろう。
戦場は敵に有利。数も圧倒的だ。
だが、それでも人々に犠牲を強いることはあってはならない。迫る『アクア・ドギル』はそんな猟兵たちをあざ笑うゆに海中から攻勢を仕掛けるのだった――。
ユーリー・ザルティア
あの戦闘データに移る光景なんだったのかしら。
正直負荷が強すぎてちょっとくらくらするけど…貴方のことを守って見せる。
だからもっとあなたのこと…あとで教えてね。
しかし、水中戦闘用仕様とはッ
このクロムキャバリアで運用するにはニッチが過ぎるぞ。資材がもったいないって言われなかったのかッ!!
確かにこちらは備えは少ない。だがボクのレスヴァントMkⅡは全環境運用を視野に入れている。簡単に落とせんぞ!!
アマテラスで『索敵』し『情報収集』で機雷の位置探し出す。
自慢の『操縦』テクで『水中機動』で軽やかに機雷を回避しつつ、射程に収め『水中戦』を行う。
≪高軌道攻撃≫で撃破しつつ、残った足場をトラップに利用してやるよ。
多くの戦いの軌跡を見た。
それが青いキャバリア『巨神』の得てきたものだけではないことをユーリー・ザルティア(自称“撃墜女王”(エース)・f29915)は理解する。
世代を重ねるように積み上げられてきたもの。
あれは過去そのものであった。
集約されたもの。
「あれは、あの光景は一体……」
ユーリーは己の脳にかかる負荷の強さ故に未だ頭が揺れる思いであった。けれど、戦いの気配は迫っている。
氷山を取り囲むように湾内に展開する水中専用のオブリビオンマシン、『アクア・ドギル』たち。
「貴方のことは守って見せる。だからもっと貴方のこと……後で教えてね」
ユーリーは己のキャバリアに飛び乗る。
『レスヴァントMkⅡ』――それは異世界の科学技術を取り込んだハイブリット型新世代機。
白い機体が海中へと即座に飛び込む。
機体の性能は水中専用に特化した『アクア・ドギル』に負けない。
全環境運用を視野に開発された『レスヴァントMkⅡ』はユーリーという乗り手を得て、そのアイセンサーをユーベルコードに輝かせる。
「そっちが水中戦仕様だからってッ!」
白いキャバリアが暗き海中にてスラスターを噴射させる。
「この『アクア・ドギル』を前にして海中に敢えて飛び込むか! 舐めた真似を!」
「機雷の餌食となるがいい!」
ユーリーは瞬間的に理解する。
敵がこれまで海中で何をしていたのか。
ステルス機雷。
彼等はすでにこの海中という戦場を支配している。機雷は海中での自由な行動を制限する。どこに存在しているか分からず、地上とは違って三次元的な戦いを強いられるのだ。
この空に蓋をされたクロムキャバリアの世界にあって、海中とは最も困難な戦場であるとも言えるだろう。
左右だけではなく、上下という全天を視野にいれなければならない。
「ニッチが過ぎる運用……資材がもったいないって思うけど、これは……!」
だが、ユーリーは構わなかった。
己の機体より放たれたレーダーユニットドローン『アマテラス』から情報が頭に直接流入していく。
あの膨大な戦闘データを受け止めるよりは、まるで気楽なものであった。
海中のデータ。
水流、水圧、そして敵機体が発する音。
それらを全て反響し、あらゆる情報をユーリーは一瞬で精査し終える。
「簡単に落とせるとは思わないでよね! コンバットアサルトモーション、パターンッ!」
水中であろうと『レスヴァントMkⅡ』は凄まじい速度で加速する。
手にしたアサルトライフルから放たれる弾丸が『アクア・ドギル』のシールドに激突して敵の体勢を崩す。
「機雷が見えているのか……こいつ!?」
「水の抵抗、水圧、そうしたものを全部理解できるのなら、この程度!」
機体から放出される粒子さえも足場に使って放たれる敵機の攻撃をユーリーは躱す。それは白い残像を残すかのように海中に在りて敵を翻弄するものであった。
「この『アクア・ドギル』の海戦性能を凌駕するだと……!?」
「海戦仕様ではないキャバリアが!? なんという、性能……!」
機雷などものともしない。
ユーリーには見えている。
「その動き、イージーだよねッ! 見ているよッ!」
敵の動きが、機雷の位置が、全て。故に彼女は華麗なる水中軌道でもって海中を舞うように『レスヴァントMkⅡ』と共にアサルトライフルの弾丸を解き放ち、手にしたキャバリアソードの剣閃でもって『アクア・ドギル』を切り裂き、撃破するのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
ウィル・グラマン
●POW
即席の翻訳プログラムで何とか何喋ってるか分かるようになったと思ったら、とうとうおいでなすったか
電脳展開で空陸水両用のベアキャット・ブースターを増設したベアは水の中で連中の相手だ
オレ様は『アローライン・スクリーム』で水流を変えて、連中がヤジ馬に向かわねぇように時間稼ぎしている間に避難誘導するぜ
ギドン、空を飛んでオレを対岸まで運んでくれよ
メラニャも一緒に安全な場所への誘導を頼むぜ!
生憎だけどよ巨神、お前の出番は無いぜ?
下手に動いちまったらここにいる連中も巻き添えになっちまうから、大人しくオレ達に守られてろってんだ
それにオレ様自慢のベアは、あんな連中にやられるモンじゃねぇ
今頃自慢の鉄拳を叩き込んでいるはずだぜ…水の中じゃないのに何で分かるかって?
そんなの決まってんじゃん…『信じている』からだよ
どんな時でも、どんな相手でも、オレ1番の子分が戦って勝ってきたんだ
親分のオレ様が子分を信じなくてどうするんだよ?
まぁ、オレ様の頭脳とベアの馬鹿力が合わさったら最も凄いんだけどな!
頑張れよ、ベア!
青いキャバリア『巨神』の言葉は混線しているようだった。
あの機体の内部に存在する戦闘データを集約したコア『ファフニール』。そして、膨大な戦闘ログによって宿った知性『プロメテウス』。
さらに何処かと繋がっているがゆえに混線して流れ込む言葉。
その波長を解析しウィル・グラマン(電脳モンスターテイマー・f30811)はなんとか情報を得られるようになった、と算段を取付けたが、すでに『第三帝国シーヴァスリー』のオブリビオンマシン部隊が湾内に侵入していたのだ。
彼等の目的は『巨神』の鹵獲であろう。
未だ乗り手は定まっていない。
「とうとうおいでなすったか」
ウィルは己の相棒である黒いスーパーロボット『ベアキャット』の背面に装備されたブースターを見上げる。
「ベア、頼んだぜ!」
『ガォン!』
ウィルの言葉に応えるようにして氷山の頂きから『ベアキャット』が海中へと勢いよく飛び込む。背面のブースターに寄る加速と共に弾丸のように海面に激突し水柱を立てる。
その轟音に海中に在りしオブリビオンマシン部隊『アクア・ドギル』たちはたじろぐ。
「何か、飛び込んできた……!?」
「馬鹿な、機雷が恐ろしくはないのか!」
彼等は当然、氷山を取り囲む前に海中で機雷を敷設していた。敵である猟兵達、『ビバ・テルメ』の戦力を海中に引きずり込んで撃滅する作戦だったのだろう。
だが、ウィルは『ベアキャット』を懐中へと躊躇うことなく飛び込ませる。
「はっ、その程度の嫌いでオレ様の『ベアキャット』が怖気づくと思ったか! そして!」
ウィルの瞳がユーベルコードに輝く。
周囲をレースゲームを元にした電脳空間へと覆う。
それはあらゆる物質に矢印マークを付与するものであった。同時に矢印の向きによって加速と減速のルールを付与する。
「生憎だけどよ『巨神』、お前の出番は無いぜ?」
彼は青いキャバリアを見上げる。
猟兵達によって修復された機体は未だ氷山の頂きに在りて座している。
動こうとしていないのか、それとも猟兵達の戦いを見つめているのか。
どちらにせよウィルは構わなかった。
そう、彼の言葉通り出番はない。
「下手に動いちまったら、此処に居る連中も巻き添えになっちまうから、大人しくオレたちに護られてろってんだ」
それに、とウィルは海中に飛び込んだ『ベアキャット』を見守る。
電子頭脳の寄って自律行動する『ベアキャット』に『アクア・ドギル』たちは次々とアンカーを解き放つ。
機体の四肢に絡みつくアンカー。
鎖が絡みつき、その四肢を引きちぎらんと『アクア・ドギル』たちは海中を走る。
「オレ様自慢のベアが……」
『ガ――』
「そんな程度のモンでやられるわけでもなければ、止められるわけなんてねぇだろうが!」
『――ォン!!』
海中に在りて咆哮が轟く。
それは『ベアキャット』の鉄拳がアンカーによって繋がった『アクア・ドギル』を無理矢理に引きずり寄せ、叩き込まれた音だった。
水柱が盛大に海面から立ち上がる。
その遥か空中には『ベアキャット』の鉄拳によって打ち上げられた『アクア・ドギル』が機体をバラバラにされながら破壊される光景が広がっている。
「わかるだろ、『巨神』。これが信じるってことだ。海中は此処からみえない。見通せない。わからない。けどな」
ウィルは氷山の頂きから海中を覗き込む。
見通せぬほどの暗き海中。
けれど、ウィルにはわかっている。
己の『ベアキャット』は海中という不利な状況にも関わらず、その鉄拳の一撃を『アクア・ドギル』に叩き込んでいる。
また一騎、海中から叩き出される『アクア・ドギル』の残骸が舞う。
「な? これが『信じている』ってことだぜ。どんな時でも、どんな相手でも、オレ一番の子分が戦って勝ってきたんだ」
なら、とウィルはいう。
青いキャバリアのアイセンサーが揺らめいている。
「親分のオレ様が子分を信じなくてどうするんだよ?」
信じるということ。
ただ一方的に信じることはただの重荷でしかないだろう。
けれど、ウィルは互いに『ベアキャット』と通じ合っているからこそ、溢れる力があるのだと示す。
「海流が早くなっているだと……!?」
「馬鹿な、この湾内でこれだけの海流が発生するなど!」
「引き寄せ、られる……!!」
ウィルのユーベルコードに寄って生み出された海流が渦を巻くようにして加速していき、そのさなかを『ベアキャット』が駆け抜けるようにして己に絡みつく鎖を『アクア・ドギル』ごと引き寄せひとかたまりにする。
「さあ、頑張れよ、ベア! お前の力を見せてやれ!!」
その言葉に呼応するように『ベアキャット』が咆哮する。
渦巻く海中の中心。
そこに立つ漆黒のスーパーロボットが放つ剛拳の一撃が一塊に引き寄せられた『アクア・ドギル』を打ち据え、ウィルの信頼に応えるように破壊するのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
メルヴィナ・エルネイジェ
あの時とは敵の規模が全然違うのだわ
それに今度は初めから本気で戦うつもりで来ているようなのだわ
だけど私とリヴァイアサンのやる事は変わらないのだわ
第六のセラフィムはそこで待っているのだわ
すぐに終わらせてくるのだわ
海中で戦うのだわ
敵はどこに隠れているのだわ?
マルチスキャニングソナーで探索するのだわ
モーターの音や引き金の音…敵の出す色んな音を聞いて隠れている場所を見つけるのだわ
大体の場所が分かったら集中攻撃される前にすぐに向かうのだわ
海竜装甲があるけれど再生が間に合わないほど攻撃を受け続けるのはよくないのだわ
そして帰還の渦潮を使うのだわ
降参して帰るならそれでいいのだわ
帰らないなら隠れている敵を纏めて渦潮でリヴァイアサンに引き寄せるのだわ
引き寄せたらクローフィンで叩いたりテールフィンで薙ぎ払うのだわ
巨神を継ぐべき者はあなた達ではないし、無理矢理手に入れたとしてもあなた達はきっと選ばれないのだわ
リヴァイアサンもそう言っているのだわ
怒りを買う前に去るのだわ
向かってくるなら何度でも海の底に沈めるのだわ
『第三帝国シーヴァスリー』は今度こそ本気なのだとメルヴィナ・エルネイジェ(海竜皇女・f40259)は知る。
湾内に迫るオブリビオンマシン『アクア・ドギル』たち。
その数は嘗て彼女が撃退した部隊よりもさらに多い。
巨大な海竜型キャバリア『リヴァイアサン』が氷山に立つメルヴィナの背後にそびえるようにして立ち上がり、そのコクピットハッチを開く。
迎え入れられるようにしてメルヴィナはコクピットに収まる。
点滅する内部モニター。
全天を覆うモニターに数値とターゲットサイトが立ち上がっていく。
「あの時とは敵の規模が全然違うのだわ」
すでに猟兵たちとオブリビオンマシンの戦いは始まっている。
オブリビオンマシンの本領は海中。
彼等の得意とする戦場に猟兵たちは飛び込まねばならない。何故なら、湾岸部に集まった『ビバ・テルメ』の人々を戦いに巻き込まぬためだ。
『神機の申し子』たちが避難誘導を行ってくれているが、戦いの余波が及ばないとは言い切れない。
だからこそ、メルヴィナたち猟兵は敢えて海中に飛び込む。
「私と『リヴァイアサン』のやることは変わらないのだわ。第六の『セラフィム』はそこで待っているのだわ。すぐに終わらせてくるのだわ」
メルヴィナと共に『リヴァイアサン』が海中へと飛び込む。
巨竜のごときキャバリア。
その海中での威容は凄まじき怪物のように『アクア・ドギル』たちに映ったことだろう。
「これが報告に在った海中の防衛戦力か! だが!」
彼等のビームライフルが光条を放つ。
海中でも熱量の変わらぬ偏光ビームが一気に『リヴァイアサン』の装甲を穿つ。
揺れる機体。
海中にあってこれだけの熱量を実現する技術にメルヴィナは顔をしかめる。
暗い海中にありて、メルヴィナはマルチスキャニングソナーでもって敵の数を把握する。
圧倒的な戦力。
嘗て彼女が撃滅した部隊より遥かに多い。
「本気の本気というわけなのだわ。でも、だから、それがどうしたというのだわ」
メルヴィナの言葉に『リヴァイアサン』のアイセンサーが煌めく。
偏光ビームの光条に焼かれた装甲が瞬時に再生していく。
そう、これが『リヴァイアサン』が深海においても水圧に耐えることのできる要因の一つ。
強靭な装甲を持つ、という意味ではない。
水を吸収することによって常に装甲を変形させ水圧をいなし続けている。即ち、光条で焼き切られたとしても、海中にある限り『リヴァイアサン』の装甲は即時修復、否、再生されるのだ。
「馬鹿なっ、装甲が再生しているだと!?」
「そう、あなたたちの攻撃は『リヴァイアサン』には無意味。降参して帰るのならそれでいいのだわ」
メルヴィナは警告する。
この戦いは無意味であると。こちらの装甲を抜く手段を『アクア・ドギル』は持っていない。だが、彼等は諦めない。
果敢にも『リヴァイアサン』へと向かってくるのだ。
光条が集中的に『リヴァイアサン』の巨体へと叩き込まれる。
「無駄だと……ッ!?」
メルヴィナは気がつく。
敵の挙動。明らかにこちらの攻撃を意識していない。反撃されないと思っているのではない。まるで、それは。
「特攻しようというのだわ」
「そうだ! 如何に怪物めいた装甲を持っていようとしてもッ! エネルギーインゴットの爆発に巻き込まれればッ!!」
狂気の沙汰としか言いようがない。
こちらの装甲を抜くためだけに己の生命を顧みないというのだ。
「帰る気がないのだわ。そんな……それで、悲しむ家族がいないとでもいうのだわ!」
メルヴィナにとって家族とは戻るべき場所である。
だが、彼等をそれを持っていながら帰らないという。それは許せるものではない。オブリビオンマシンに思想を歪められ、そして死すら厭わぬというのならば。
「エルネイジェ王国の第二皇女、メルヴィナ・エルネイジェが告げるのだわ!」
煌めくユーベルコードが『リヴァイアサン』のアイセンサーの煌めきと共にほとばしる。
海中にありて生み出される渦潮。
圧倒的な海流は如何に海戦仕様のオブリビオンマシンといえど、逆らうことのできないほどの激流であった。
「元着た場所に帰るのだわ」
引き寄せられる『アクア・ドギル』たち。
その一塊となった彼等を『リヴァイアサン』のヒュージテイルの一撃が弾き飛ばす。
薙ぎ払うように『アクア・ドギル』たちは海上に吹き飛ばされていく。
「『巨神』を継ぐべき者はあなた達ではないし、無理矢理に手に入れたとしても、あなた達はきっと選ばれないのだわ」
メルヴィナは己の頭に響く『リヴァイアサン』の言葉に頷く。
そして、彼女は告げる。
「ワダツミの機神、『リヴァイアサン』の怒りを買う前に去るのだわ。けれど」
そう、けれど、とメルヴィナは『リヴァイアサン』のアイセンサーを煌めかせながら大顎をもたげさせる。
「向かってくるなら何度でも海の底に沈めるのだわ」
静かなる怒りを。
死を厭わず、また同時にあるであろう温かな家族を省みぬ者たちを罰するように、その海神の力を振るうのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
村崎・ゆかり
水中戦か、これもあたしには苦手の部類だけど、泣き言は言えないか。「負けん気」で頬をはたいて気合いを入れる。
SSWの宇宙服と封魔装甲、「環境耐性」で海に潜ろう。
ビバ・テルメが温泉で栄えているなら、そこには必ず火山帯がある。
「竜脈使い」「全力魔法」炎の「属性攻撃」「範囲攻撃」「衝撃波」「呪詛」「仙術」で烈焔陣!
海底を一斉に崩壊させて、吹き上がる溶岩で『アクア・トギル』たちを飲み込む。
元から溶岩が流れてる以上、いつも以上に効果は大きい。
この湾内で魚を捕ってる漁業関係者さんには後で補償の交渉をするとして、今はオブリビオンマシンの殲滅が第一。
一気に視界が利かなくなった。襲われる前に下がった方がよさそう。
氷山の上から湾内を見下ろす。
そこにあるのは暗き海であった。
海中で明滅する戦いの輝き。ユーベルコードとオブリビオンマシンの放つ光条、機雷の爆発である。
「水中戦か。これもあたしには苦手の部類だけど、泣き言は言えないか」
村崎・ゆかり(“紫蘭”/黒鴉遣い・f01658)はスペースシップワールドの宇宙服と封魔装甲でもって水圧に対する備えをしてから海中に飛び込む。
四の五の言う時間はない。
敵である『第三帝国シーヴァスリー』のオブリビオンマシン部隊の数を見れば、一般人の被害など考慮に入れていない。
「だから海中で戦うしかないというわけね。敵の領域に足を踏み込むっていうのは戦いの常道から外れるけれど……」
それでも彼女は飛び込む。
それ以外の選択肢がないから、というのが正しいだろう。
「『ビバ・テルメ』が温泉で栄えているなら、そこには必ず火山帯がある。なら」
ゆかりの瞳がユーベルコードに輝く。
海中にありてオブリビオンマシン『アクア・ドギル』の運動性能は凄まじいものであった。
水圧を物ともしない速度。
「生身単身だと……? 我等をあまりにも舐めていると言わざるを得ないな!」
「キャバリアに乗っていなくとも!」
射出されるアンカー。
鎖が海中に走り、ゆかりへと迫る。
だが、彼女の瞳は見据える。
海底に走る龍脈を。
「古の絶陣の一を、我ここに呼び覚まさん。汚濁に染まりし三昧真火よ。天帝の赦しを持って封印より解き放たれ、地上を劫火の海と為せ。疾!」
烈焔陣(レツエンジン)は海底を割るように無数の火柱となって『アクア・ドギル』たちを巻き込んでいく。
熱せられた火は凄まじい圧力となって海底から『アクア・ドギル』たちを海上へと吹き飛ばしていく。
急激に熱せられた水は膨張する。
「何が……!?」
「龍脈をたどれば、そこに何があるのかわかる。海中にあろうとも怨念に満ちた呪詛の炎は消えず。絶え間なく燃えるそれは、海水を急激に熱し続ける」
ゆかりの瞳がユーベルコードに輝き続ける。
海中から飛び出し『アクア・ドギル』の四肢を薙刀で切り裂く。
「とはいえ、これ以上の無茶はできないわね。これが敵部隊だっていうのなら、必ず補給を行う艦艇か、それに準ずるものが海上か、それとも海中に潜んでいるはず」
オブリビオンマシンの殲滅を第一にした結果である。
海底の火山を刺激するやり方に、今後湾内の海水がどのような影響を受けるかは未知数であろう。
埋没している資源にもよりけりであろうが、少なくともゆかりは漁業関係に関しては己が補償しなければならないと理解する。
「我ながら無茶したわ」
でもこれで、と敵の足並みを崩せたのならば、とゆかりは思う。
敵の数は多く、海中戦を得意とする者が多くないのであれば、オブリビオンマシンの数で圧する戦いは必ず猟兵たちを不利にするだろう。
ここで敵の足並みを崩すことをゆかりは重要と考えた結果であった――。
大成功
🔵🔵🔵
アルカ・スィエラ
シーヴァスリー…性懲りもなく……!
確かにプロトミレスに水中用装備はないけれど…ってドラグレクス、水中戦も行けたの?なら行くわよ、ドラグレクス…!
水上に【RS-BR 背部搭載型マルチホーミングミサイル】を転送・追加装備したプロトミレス(コルヴィルクス装備)、水中にドラグレクスの組み合わせで移動を続けながら連携して迎撃するわ
ミサイルを「凍結」弾頭に調整、ドラグレクス狙いの敵には凍結ミサイルで周囲ごと凍結させ行動を妨害し、そこをドラグレクスが叩き、
こっち狙いの敵はドラグレクスの咆哮衝撃波を浴びせてからツインGランチャーを撃ち込んでやるわ
(ふとドラグレクスを見て)
……思えば、あなたも謎が多いのよね……
アルカ・スィエラ(鋼竜の戦姫・f29964)は己の駆るキャバリアと合身する機竜『ドラグレクス』のことを多く知っているわけではない。
数多の戦場を共に戦ってきた。
己の駆るキャバリア『プロトミレス』と合体できるという機能を持っている。金属細胞でもって変異する。それくらいだろうか。
「……思えば、あなたも謎が多いのよね……」
招来される機竜。
『プロトミレス』のコクピットでアルカは、『ドラグレクス』を見上げる。
だが、今は。
「『シーヴァスリー』……性懲りもなく……!」
湾内に迫るオブリビオンマシンの部隊。
海戦仕様であるオブリビオンマシンは海中で此方の出方をうかがっているようであった。この間にも機雷が敷設されていることだろう。
状況は良くはない。
時間をかければかける程に己たちが追い込まれていく。
「『ドラグレクス』! 行くわよ……!」
アルカは『プロトミレス』の背に乗り、戦場たる海へと氷山から飛び込む。
だが海中に飛び込んだのは『ドラグレクス』だけであった。
「弾頭換装……『凍結』弾頭確認」
アルカの瞳がユーベルコードに輝くのと同時に『プロトミレス』のアイセンサーが煌めく。
『プロトミレス』の背面に召喚されたRS-BR 背部搭載型マルチホーミングミサイル(マルチホーミングミサイル)がドッキングする。
同時に海中に飛び込んだ『ドラグレクス』の背に飛び乗る。
それはまるで海上の足場であった。
「『ドラグレクス』……あなたに向かってくる敵は私が抑える……!」
放たれる凍結弾頭の誘導ミサイルが火線を引きながら、海中へと飛び込んでいく。まるで魚雷のように海中を進み、『ドラグレクス』に迫らんとしていたオブリビオンマシン『アクア・ドギル』の機体を海水ごと凍結させる。
「凍結させる……!? 機体の制御が……!」
動きを止められた『アクア・ドギル』が『ドラグレクス』の尾によって叩きつけられ、機体をバラバラに破壊される。
さらに海中を滑るようにして『ドラグレクス』は推し進み、背に乗る『プロトミレス』からは誘導弾ミサイルが乱舞する。
「あの機体がミサイル砲台代わりというわけか……! ならば!」
海中から『アクア・ドギル』たちが飛び出す。
直接『プロトミレス』を叩こうというのだろう。だが、それを阻むのは『ドラグレクス』の咆哮であった。
凄まじい衝撃波が迸り、その一撃が『アクア・ドギル』たちを空中で弛緩させる。
「……そこ……!」
『プロトミレス』の背面装備がツイングラビティランチャーへと変換され、その二連の砲撃が『アクア・ドギル』を撃ち抜く。
「たやすく動きを止められるとは思わないことね……!」
アルカは『ドラグレクス』と共に海上を走る。
そのアイセンサーが捉えたのは、敵の部隊を排出する旗艦ともいうべき大型要塞型オブリビオンマシンの姿だった。
「……あれが、敵の要……なら!」
あれを叩けば、戦いは終わる。
その確信を得て、『プロトミレス』のアイセンサーが戦場に残光を刻むのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
ミレア・ソリティス
敵対存在を確認、作戦内容を更新……交戦開始します
確かに私には水中兵装もなくキャバリアでもありませんが……問題はありません
―――『system:AZOTH』アクティブ、【コード・テュポーン】を起動
UCにより全長20mクラスの「全領域対応ヒト型機動兵器」へと変身、ジャミングミサイルにより海上領域へのジャミングを実行、
後は推力任せのインパクトランスによるランスチャージと、足元へ対するプラズマグリーブから噴出させるプラズマでの攻撃を行い、
敵UCはセンサーによる周囲への情報収集で行動の前兆を察知、アンカーをつかみ出力任せに引き寄せた後ペインレスセイバーでアンカーを切断し、敵本体へと副腕での打撃を行います
湾内に侵入した『第三帝国シーヴァスリー』のオブリビオンマシン部隊の全てが海戦仕様であった。
海中はすでに彼等の領域。
敵の有利に働く戦場にありて、猟兵たちは陸地に彼等を引きずり出すことをしない。いや、できないというのが正しいだろう。
氷山。
これを物見遊山で集まっていた人々がいる。
陸地で戦うということは彼等に被害が出る可能性がある。
だから、猟兵たちは海中へと次々と飛び込んでいく。
地形の不利はある。当然、数の不利もあるだろう。敵の大部隊は確実に『巨神』を奪うために投入されているのだ。
「敵対存在を確認、作戦内容を更新……交戦開始します」
そんな中、ミレア・ソリティス(軍団たる「私」・f26027)は構うことなく氷山の頂きから海中へと飛び込む。
確かに彼女にキャバリアはなく。水中兵装も持ち得ない。
けれど、問題はない。
彼女の存在の根幹。
『system:AZOTH』が励起する。
「コード・テュポーン、起動」
ミレアの瞳がユーベルコードに輝く。
瞬間、彼女の体が巨大化する。
全長20mを超える全領域対応のヒト型機動兵器。それが今のミレアである。海中に飛び込んだ瞬間、質量故巨大な水柱が立ち上がる。
「……!? なんだ、巨人……!?」
「嫌にデカイ……! こいつは……!」
体高5mを超える戦術兵器キャバリアですらゆうに超える巨体。実に4倍はあろうかという圧倒的な巨躯たるミレアの躯体が海中で腕を振るう。
それだけで凄まじい海流が発揮されオブリビオンマシン『アクア・ドギル』の機体を吹き飛ばす。
「ええい、ただデカイだけだ! アンカーで!」
放たれるアンカー。
鎖がミレアの躯体に絡みつき、その巨体を押さえつけようとする。
だが、それで止まる彼女ではない。
「モード・テュポーンへのシフト完了、戦闘開始します」
ミレアは腕を振るう。それだけで鎖を引きちぎらんばかりの勢いで『アクア・ドギル』たちを振り回し、鎖を振りほどく。
「うおおおおっ!?」
「インパクトランス、チャージ。プラズマグリープ、起動」
20mを超えるミレアが振るう身の丈以上の大型ランス。そして、脚部の兵装であるプラズマ推進機が唸りを上げる。
彼女の突撃は、そのまま質量兵器となる。
吹き荒れるような、抗いがたい潮流のごとき一撃をミレアは放ち無数の『アクア・ドギル』たちを巻き込んでいく。
「問題はありません。敵対存在の全てを殲滅します。ここは|私達《私》がお相手します」
海中にて立ち上がる巨人。
それを取り囲む『アクア・ドギル』たちとの苛烈な戦いは、誰に見られることなく、しかし確実に迫るオブリビオンマシン部隊の大半を撃滅するのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
ルクス・アルブス
【ステラさんと】
なんだか普通のステラさんがいないですね。
まぁ、普通のステラさんなんて、最初からいなかったですけど。
かもん! 【セナーレ】!
……誰ですか、最近ますます職業不明とか言ったの。勇者ですよ。
って、たしかに勇者ですけど、丸投げですか!?
さすがに海を割るまではできませんがー……。
海の中だって音は通るんですから、海岸線には近づかせませんよ!
と、言いながら、ソナーレで海に飛び込んでいきますね。
さぁ、いきますよ!
と、増幅した【Canon】を水中に流したら、ゴーレムと一緒にお魚とかも浮かんできて……・。
え、賠償金!? 環境破壊ってなんですか!?
も、もうこれ以上の借金は許してくださいですー!?
ステラ・タタリクス
【ルクス様と】
ええい、本当にもうよくわからん!!(荒ぶるメイド)
エイル様をprprする私と、エイル様の痕跡を解析する私と、サイザナのメリサ様を追っかける私と最低3人は必要になるのですが!!!
しかしサツキ・ラーズグリーズ様
フュンフ・エイル様とヌル様の子供のようにも思えるのですが
お二人の子供はフュンフ・ラーズグリーズ様のはず
うーん?
とりあえず|エイル様のファンが増えて《感染して》よし!
その喜びを胸にメイド、参ります
はい、ルクス様海割って
私はフォル(鳥型キャバリア)を呼び寄せ
パルス・フェザーマシンガンとクリスタル・スパロウビットで
【アウクシリウム・グロウバス】
後はルクス様にお任せ
勇者ですし
ファイト
「ええい、本当にもうよくわからん!!」
ステラ・タタリクス(紫苑・f33899)は現在の状況を正しく理解していなかったのかもしれない。
突如として現れた氷山。
その頂きに座す青いキャバリア。
それを狙って迫る『第三帝国シーヴァスリー』のオブリビオンマシン部隊。
いや、そういうことではないのだとステラは頭を掻きむしる。
荒ぶっているなぁとルクス・アルブス(『魔女』に憧れる『出禁勇者(光属性)』・f32689)は思った。
「『エイル』様をぺろぺろする私と、『エイル』様の痕跡を解析するわつぃと、サイバーザナドゥの『メリサ』様を追っかける私と最低3人は必要になるのですが!!!」
本当に三人で足りるかな。足りないと思うけど。
「なんだか普通のステラさんがいないですね」
ルクスは冷静だった。
取り乱している人がいると逆に冷静になるっていうあれである。
「まぁ、仏のステラさんなんて、最初からいなかったですけど」
「なにか言いましたか!!!」
「いえー」
「それはそうと『サツキ・ラーズグリーズ』様、『フュンフ・エイル』様と『ヌル』様の子供のようにも思えるのですが、お二人の子供は『フュンフ・ラーズグリーズ』様のはず! 一体全体どういうことになっているのです!」
わかんない! とステラは氷山の頂きで突っ伏す。
そんなステラの様子にルクスは、どうしようかなと思った。ここで下手になだめても自分が巻き込まれるだけである。巻き込まれるのは嫌だなぁって思った。勇者だから巻き込まれ体質じゃないんだ? と思わないでもなかったけど。
「とりあえず!」
がばちょ、とステラが立ち上がる。お、リブートしたな、とルクスは頷く。
「|『エイル』様のファンが増えて《感染して》よし!」
ヨシ、じゃないが。
あと、あれは単純にステラの叫びを子供が勘違いして叫んだだけである。ファンになったわけでもなんでもない。
だがまあ、ルクスは言わぬが花だなと思った。
「その喜びを胸にメイド、参ります!」
「まあ、やる気になってくれたのなら良いんですけど……かもん!『ソナーレ』!」
指を打ち鳴らした瞬間、ルクスの背後に降り立つはスーパーロボット『ソナーレ』。氷山が揺れる。
もうしっちゃかめっちゃかである。
どういうカテゴライズの勇者なのかわからなくなってきていた。
ますますもって職業不明の勇者である。いや、勇者である。勇者ってなんだろうって思わないでもなかったが、まあいいのである。
「はい、ルクス様海割って」
「丸投げじゃないです!?」
「勇者だからできるはずです。やりましょう。私はフォルと共に参りますから」
「流石に海を割ることまではできませんが……でも!」
ルクスは『ソナーレ』と共に海中に飛び込んでいく。
海中にはすでにオブリビオンマシン『アクア・ドギル』たちが展開している。彼等の敷設した機雷、そしてアンカー、海中でも熱量を失わないビーム。
それらが『ソナーレ』を襲う。
けれど、ルクスの瞳がユーベルコードに輝く。
「海の中だって音は走る、それどころか海中ではもっと早く伝わるんですから! 海岸線には近づかせませんよ!」
Canon(カノン)が響き渡る。
『ソナーレ』はルクスの演奏によって動くスーパーロボットである。
彼女の奏でる不協和音……じゃあなくて、魔法は海中を瞬く間に駆け抜け『アクア・ドギル』のパイロットたちの耳に届く。
「な、なんだこの不快な音は……!?」
「体に、っ、響いて……!!」
操縦すらおぼつかなくなったパイロットたちと共に『アクア・ドギル』は海面へと浮かぶ。
「ふっ、これくらい朝飯前ですよ」
ルクスはドヤァっとした顔をして、海中から海面スレスレを飛ぶ『フォルティス・フォルトゥーナ』を駆るステラへと合図を送る。
「フォル、この場は任されたのです。支援もたしなみの一つ。やってみせなさい」
ステラの駆る鳥型キャバリアが海面に浮かぶ『アクア・ドギル』たちを次々とフェザーマシンガンとクリスタルビットで行動不能にしていく。
「勇者ですし、やはりコレくらいはできて当然ですね」
「でしょー! えへへっ!」
「ですが、ルクス様の怪音波の犠牲になったのはオブリビオンマシンだけではないようです」
えっ、とルクスが見上げる先にあったのは『アクア・ドギル』の機体だけではなく海洋生物もであった。
怪音波はたしかにオブリビオンマシンの内部にあるパイロットたちを気絶させた。
けれど、同時にそれは湾内の海洋生物にも打撃を与えるものであった。
「……これってもしかして」
「ええ、もしも『ビバ・テルメ』に漁業を生業にしている方がいらっしゃるのであれば……」
「ば、賠償金ですか?」
「答えは、はいとイエスでしょうね」
「え、えええー!? いやです! も、もうこれ以上の借金は許して下さいですー!?」
ルクスは思わず叫ぶ。
だってそうなのだ。
ただでさえ、諸々の破壊活動やら食費やらなんやらが彼女の生活を圧迫しているのだ。これ以上、逼迫した状況になんてなりたくない。
そんなルクスを前にステラはニコリと笑む。
「勇者、ファイト」
「ファイトじゃないですよ――!?」
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ラスク・パークス
アドリブ歓迎
しまった。『ラスクちゃんキャバリア持ってねぇ!』
神機の申し子に、借りに行く、時間は……。戦端、開いてる、し……。
……手間だし、タイムロス。このまま戦闘を開始する。
デスブレイドを手に、海の中を、揺蕩う。
『カモーン、アクア・ドギル! 獲物がここにいるぜ!』
露骨だけど、キャバリアでない、敵影。簡単に討てると、思うはず。
飛んで来るアンカーに、合わせて、UC発動。
『機体までの動線ありがとね!』
全身を漆黒の闇に変異させて、武器の隙間を、通る。
近づいたら、中に入って、内側から、破壊する。
これが、埒外の……私達の、戦い。
見てる? ファフニール、あるいは、プロメテウス。
それとも……新たな、名が必要?
「しまった」
『ラスクちゃんキャバリア持ってねぇ!』
ラスク・パークス(最後の死神・f36616)のCPUバイザーにそんな文字が流れる。
湾内に迫ったオブリビオンマシン部隊の数は圧倒的だった。
確実に『巨神』を手に入れるために数で推そうとしてるのがわかる。それだけではない。湾内に浮かぶ氷山を見ようと物見遊山で訪れていた人々のこともある。
オブリビオンマシン部隊が海戦仕様である以上、彼等に有利なる海中で戦うことは避けたいと思うところであった。
けれど、陸地に引っ張り出せば、人々への被害は免れないだろう。
そうさせてはならぬと猟兵たちは海中に飛び込んでいる。
「『神機の申し子』たちに、借りに行く、時間は……」
ない。
戦端はすでに開かれているし、機体とのフィッティングもある。
完全にタイムロスになってしまう。
そうなっては守れるものも守れず、守れたはずの生命も失うことになるだろう。
だからこそ、躊躇いは僅かな時間でしかなかった。
刹那と言っても良い。
ラスクは氷山の頂きから一瞬で海中へと飛び込む。
『カモーン、アクア・ドギル! 獲物がここにいるぜ!』
CPUバイザーに文字列が光り輝く。
生身単身。
その躰で持って海中に飛び込めば、体高5mの戦術兵器であるキャバリア、いや、オブリビオンマシン『アクア・ドギル』の標的になるのは言うまでもなかった。
「生身でキャバリアに立ち向かおうなど!」
アンカーの一撃がラスクを捉える。暗い海中にありて光を放つ、ということは狙ってくれ、ということと同義であった。
海中を飛ぶようにして迫るアンカーの切っ先。
しかし、それをラスクは受け止める。いや、受け止めたのではない。
海中に広がる漆黒の闇。
それに溶けるように彼女の躰が変容している。
そう、それは、ザナドゥの黒霧(フォグ・ザナドゥ)。彼女の体は輪郭を失い、黒い霧へと変わり、アンカーの一撃をすり抜けたのだ。
「手応えがない……!?」
『機体までの動線ありがとね!』
ラスクのバイザーに文字列が流れる。
彼女のユーベルコードは己の体を漆黒の闇へと変異させるものである。故にアンカーの物理的な一撃は彼女の体を打ち据えることも、貫くこともなかったのである。
靄のように広がっていく闇。
それ自体がラスクそのものなのだ。鎖で繋がれたアンカーを手繰るようにして、ラスクの変じた闇が『アクア・ドギル』へと迫る。
「これが、埒外の……私達の、戦い」
ラスクは『アクア・ドギル』の躯体へと闇へと変じた体のままに内部へと侵入し、内側から破壊する。
四肢の関節部分を砕き、戦闘能力を奪っていく。
「見てる?『ファフニール』、あるいは、『プロメテウス』」
ラスクは今も氷山の頂きに座す青いキャバリアを見やる。
膨大な戦闘ログを包括するコア『ファフニール』。それにより知性を得た『プロメテウス』。
それを身に宿す機体の名は『セラフィム』。
「それとも……新たな、名が必要?」
ラスクはあの青いキャバリアが必ず動くことを確信している。
戦うために生まれた存在であるのならば、それを全うすることこそが存在意義。だからこそ、ラスクはこの戦端開き、無辜たる人々が戦火に焼かれることをこそ憂うはずだと思うのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
朱鷺透・小枝子
理解できない事は多い。
だが、サツキ・ラーズグリーズ!
【環境耐性】回点号操縦、
海中突入メガスラスター【推力移動】
心に平和を持つ者!!
あれが貴殿と自分達を絆げたならば!
抗体兵器の呪い、己が闘争心を破壊の【念動力】に換え
守る為に、壊して進め!
【サイキックシールドバッシュ】
触れたステルス機雷を吹き飛ばし発破
機雷群を強引に突破し、敵機連中に肉薄、
【水中機動】破壊の呪詛と共に殴りつけ機能破壊!
BXS-Bウィングキャノン全砲展開
機雷のダメな所は残留し民間人をも巻き込む事だ!
諸共全部、壊せ!!
破壊呪詛と念動力を込めた【呪殺弾レーザー射撃】
枝分かれし、軌道を曲げ、【第六感】で知覚した敵集団、機雷群
全て、破壊する
理解できることは多くはない。
少なくとも、朱鷺透・小枝子(亡国の戦塵・f29924)にとってはそうだった。己の手にした抗体兵器に反応を示す青いキャバリア。
これを『第二世代』と呼んだこと。
『セラフィム』という戦術兵器のあり方。
わからないことばかりだ。
だが、小枝子は感じている。
「『サツキ・ラーズグリーズ』!」
小枝子は己のキャバリア『回天号』と共に海中へと突入する。
混線した声。
それを彼女はたしかに聞いた。過去に戦った者か、それとも今も戦っている者なのかはわからない。
けれど、そこに必ず居たという確信が彼女にはあった。
海中から迫りくるはオブリビオンマシン『アクア・ドギル』。
すでに敷設されて居た機雷がステルス性能を持って『回天号』へと迫る。
「心に平和を持つ者! あれが貴殿と自分たちを絆げたならば!」
小枝子は己の持つ抗体兵器の呪い、そして己の身の内側から溢れる闘争心を破壊の念動力へと変換していく。
噴き上がる力は機体を囲うサイキックシールドへと昇華される。
迫る機雷の爆発すら『回天号』はものともしなかった。
進まねばならない。
己は壊すことしかできないが、壊すことで護られるものがあると知っているからこそ、叫ぶのだ。
これが己のあり方だと示す。
「守るために、壊して進め!」
機雷が次々と誘爆するように爆発を起こし、海中に凄まじい衝撃波を生み出していく。
だが、それでもサイキックシールドに護られた『回天号』は一直線に敵群へと突き進む。
「こ、コイツ無茶苦茶だ! 機雷があるのだぞ!? それを突っ切ってくるなど!」
「待て、下手に動けば……!」
機雷などないものと同然というように『回天号』は爆発の中を突き進んでくる。
それを『アクア・ドギル』のパイロットたちは驚愕して見守るしかない。いや、恐怖するだろう。
爆発も何もかも恐れずに突き進んでくる敵。
その敵が、その敵意が己達に向けられているという事実。それを前に『アクア・ドギル』のパイロットたちは竦んだのだ。
戦いにおいて竦んだ方は負ける。
どれだけ高性能の武器を持っていたとしても、負けるのだ。
「機雷のダメなところは残留し、民間人を巻き込むことだ! 諸共全部、壊せ!!」
小枝子は何も考えなしに機雷群へと突っ込んだのではない。
敷設された機雷の除去は困難を極める。
ならば、己がこの戦いで一つ残らず作動させてしまえばいいのだ。作動して、何一つ残らないのならば、残留した後の被害は絶無。
「壊す! 全てだ! 全て壊して!」
肉薄する『回天号』のアイセンサーが暗闇の海中にきらめいた瞬間、『アクア・ドギル』の頭部が掴まれ、握りつぶされる。
「ひっ……」
「壊せ! 壊せ! 壊せ!!!!」
ひしゃげる機体。
放たれる破壊呪詛と念動力のレーザーが枝分かれし、海中を一瞬で巡っていく。
それは『アクア・ドギル』の機体を貫き、海上へと次々と吹き飛ばす。
「全て、破壊する」
平穏に仇為す者全て。
争いを生み出すものすべてを憎むからこそ、破壊の化身は海中に在りても尚、そのあり方を変えず、破壊を齎すのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
月夜・玲
アレこいつのパーツだったの
善意で譲ってもらっておいて正解だなあ善意で
海戦仕様だからビート板…
むしろカナヅチ感ない?
海かあ…海…水着…
皆さん水着コンテストはリクエストしましたか?
今年は何と、アイコンフレーム貰える!
…さて、仕事しよ
《RE》IncarnationとBlue Birdを抜刀
うーん、やり辛い…
氷山に登って上から攻めよう
これなら機雷も関係ない
【Code:T.S】起動
雷刃形成
水相手なら雷属性!
上から伸ばした雷刃で機雷ごと『なぎ払い』!
折角だから巨神には囮になって貰おうかな
氷山を登って巨神に近付く期待があれば『斬撃波』と雷刃で迎撃
用心して寄ってこないなら、巨神を斬るフリしておびき寄せてやろう
猟書家との戦いの戦利品であった青い装甲のかけら。
それがピタリと合わさるようにして、それまで修復を拒否していた青いキャバリアのセンサーブレードに合わさったのを月夜・玲(頂の探究者・f01605)は見て得心がいくようであった。
「アレってこいつのパーツだったの。善意で譲ってもらっておいて正解だったなあ。善意で」
確実に一つ言えることがある。
あれはカツアゲの類いであった。善意っていうか恐喝ってやつであった。
だがまあ、いつだって勝利者が正しいのである。玲は勝った。勝ったから何か頂戴っていうのはわからないことではない。
運命というものがあったのならば、数奇なるものであったことだろう。
「でもまあ、運命だからって飲み込むほど素直じゃあないんだよね」
今も湾内に迫るオブリビオンマシン部隊。
この襲撃が予知されていたことであるのは理解している。運命というものがこれであるというのならば、己達猟兵は、それをへし折るために来ているのだ。
「海戦仕様だからビート板……」
玲は冷静に海中を走るオブリビオンマシン『アクア・ドギル』の機体性能を推察する。
いや、なんか、むしろビジュアル的にカナヅチ感あるなって思った。
海だからってこともあるのだろうけれど。
わからんでもないけど。
「海かぁ……海……水着……」
うん、と彼女は一つ頷いて、共に戦う猟兵達に語りかける。いいですか、皆さん、今直接脳内にテレパシーを送っています。
水着……水着コンテストの重日はできましたか?
今年はなんと、アイコンフレーム貰えるであります! ばりぃってなんかメタの壁をぶち抜いてきそうな猟書家のイメージが幻視されたが気の所為である。気の所為ったら気の所為である。
「……さて、仕事しよ」
玲は何事もなかったかのような涼やかな表情で二振りの模造神器を抜き払い、氷山の頂きから、海中で明滅する戦いの光を見据える。
「機雷はこれで関係ないっていうか、他の猟兵が処理してくれるでしょ。ならさ!」
ユーベルコードが煌めく。
手にした模造神器の刀身が雷の刃を形成していく。
「Code:T.S(コード・サンダーソード)――出力上昇、雷刃形成」
長大なる刀身。
雷で形成された刀身が天に振りかぶられる。
その一閃が海中であろうと何処であろうと関係ないとばかりに振るわれ、一瞬で海水を蒸発させながら『アクア・ドギル』の機体を一刀両断する。
「直上から……!?」
「なんだこの出力は……! まさか『巨神』が起動しているのか!」
「おーおー、釣れる釣れる。ってことは、敵は『巨神』の性能を把握してないな?」
玲は次々と氷山に集まってくるオブリビオンマシン部隊を見やる。
まるで生き餌に群がる魚のようであるようにも思えたことだろう。
「なら、このまま『巨神』には囮になってもらおうかな」
入れ食いじゃん、と玲は笑う。
敵は躍起になって『巨神』を奪還しようとするだろう。海中での戦いを彼等がしようというのならば、陸地ではなく氷山に引っ張り込めば良い。
玲は簡単なことだというように雷の刃形成する二振りの模造神器を振るい、氷山に取り付く機体を薙ぎ払っていく。
「一網打尽てところかな」
玲は破壊されて海上へと落ちていく『アクア・ドギル』をみやり、湾内の外側から侵入してくる巨大要塞型オブリビオンマシンの機影を認める。
「あれが本丸だね。真打ち登場っていうには遅きに失するよね」
あの巨大要塞型オブリビオンマシンが『アクア・ドギル』の部隊と共に攻勢を仕掛けてきたのならば、猟兵たちは人々を守りきれなかっただろう。
「なら、ここで決めようか」
玲は迫る巨大なるオブリビオンマシンを前にして怯むことなく不敵に笑むのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
第3章 ボス戦
『機動殲龍『激浪』』
|
POW : 戦域一掃機構『激浪』
【背部激奔流砲と口内精密奔流砲】から【圧縮した水の大奔流】を放ち、【命中時大幅に対象を戦場外まで吹き飛ばす事】により対象の動きを一時的に封じる。
SPD : 国土洗浄機構『国鳴』
【周囲の水を艦装化し全武装の一斉砲撃】が命中した対象にダメージを与えるが、外れても地形【を一時的に海洋と同等の環境に変え】、その上に立つ自身の戦闘力を高める。
WIZ : 無限起動機構『満潮』
【周囲の水を自身に変換する修復形態】に変身する。変身の度に自身の【生命力吸収能力を強化し、水の艦装化限度】の数と身長が2倍になり、負傷が回復する。
イラスト:右ねじ
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
|
種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「ビードット・ワイワイ」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
オブリビオンマシン部隊『アクア・ドギル』が猟兵たちによって迎え撃たれたことにより、湾外に控えていた大型要塞型オブリビオンマシン、機動殲龍『激浪』は湾内に突入せざるを得なかった。
「手間を掛けさせおって! だが、この『激浪』があれば!」
巨大な海洋生物のごとき威容と共に『激浪』が湾内へと突入し、その猛威を振るうわんとする。
これまで相手取ってきたオブリビオンマシンとは一線を画する巨大さ。
「直ちに『巨神』を此方に引き渡せ。さすれば、無駄な血も流れまい」
『激浪』を操る『第三帝国シーヴァスリー』の高官が居丈高に告げる。
だが、猟兵たちは知っている。
オブリビオンマシンである以上、彼の言葉には偽りしかない。
こちらが『巨神』を渡せば、必ず彼等は『ビバ・テルメ』を滅ぼそうとするだろう。交渉という意味では無意味な言葉であったように思える。
「そうか。ならば、致し方あるまい。このまま抵抗する勢力ごと滅ぼすまで!」
言葉による対話など無用であった。
聞く耳など最初からない。
滅ぼすか、滅ぼされるか。
その二択しか、この戦乱渦巻く世界には存在していないのだ。オブリビオンマシンが人の心を狂わせる限り。
そして、それを許せないと思う知性がある。
氷山の頂きにて『巨神』、青いキャバリアがアイセンサーを揺らめかせながら立ち上がる。
戦場に在りし猟兵達の頭に直接響く声。
「コール、『プロメテウス・バーン』――」
青いキャバリア『セラフィム・シックス』は乗り手を選ばなかった。けれど、その力は猟兵達を助けるために漲る。
青いキャバリアの胸部砲口が煌めく。
コール、と告げられた言葉。
その言葉を叫べば、かのキャバリアはオブリビオンマシンに胸部砲口から火線を解き放つ。
選ばれたもう一つ。
それは猟兵達の求めに答え、迫る巨大なるオブリビオンマシンを打倒さんと、その力を貸すという一つの答えであった――。
村崎・ゆかり
相変わらず、機動殲龍は馬鹿でかい。それでもやるしかないわね。
「全力魔法」雷の「属性攻撃」「衝撃波」「仙術」で九天応元雷声普化天尊玉秘宝経!
海中で雷撃は効くでしょ?
『激浪』が体勢を立て直す前に、コール、『プロメテウス・バーン』!
どれほどの威力かしらね。
『激浪』の攻撃は、指向性の水流攻撃。なら海底に降り立って、やり過ごすのが一番。
「継戦能力」「環境耐性」「オーラ防御」で水流に耐えながら、そのまま落雷を落とし続ける。
十分に手応えを感じたら、『激浪』の放つ水流に乗って戦場から離脱しようかしら。
何かにぶつからないよう注意ね。
湾内に侵入した巨大な要塞めいたオブリビオンマシン、機動殲龍『激浪』。
それは海上要塞とも呼ぶべき圧倒的な威容であった。
あの機体からオブリビオンマシン『アクア・ドギル』は運ばれてきたのだろう。
なるほど、それならばあれだけの数を他国の領域に送り込むことは容易であるように思えたかもしれない。そして、『激浪』はただのオブリビオンマシンの戦力を運ぶ要塞ではない。
それ自体が海中を征く怪物めいた巨体で侵攻する戦力でもあるのだ。
「相変わらず、機動殲龍シリーズは馬鹿でかい」
村崎・ゆかり(“紫蘭”/黒鴉遣い・f01658)はしかし、躊躇っている時間はないと知る。
自らが一歩踏み出すことをためらえば、それだけ脅威は人の生命を脅かす。
故に彼女は海上に飛び出し、その瞳をユーベルコードに輝かせる。
己の全力の一撃。
漲る雷の力が仙術によって束ねられていく。
「九天応元雷声普化天尊! 疾っ!」
天より降り注ぐは、雷。
周囲の視界を白塗りに潰すほどの圧倒的な雷撃の一撃は、ゆかりのユーベルコードの中で最大の一撃であったことだろう。
だが、その一撃を『激浪』は背面に搭載された砲塔から放たれる激流でもって相殺する。
「ユーベルコード!?」
「甘いわ。雷撃に備えをしてないとでも思ったか! 口腔搭載主砲用意!」
『激浪』を駆る高官の声が高らかに響き渡る。
あの圧倒的な威容を誇る『激浪』の口腔が開く。
背面に装備された砲塔よりもさらに圧倒的な水流を解き放とうとする口腔に装備された砲。
それを受ければ、ゆかりは例外なく戦場の外まで吹き飛ばされてしまうだろう。
やり過ごすことも考えた。
けれど、それは後退することだ。
己の道は前にしかない。後退して進める道は何一つない。何より、やり過ごせば、未だ沿岸部に残る人々に被害が出てしまう。
ならばこそ、ゆかりは覚悟を決める。
「『セラフィム・シックス』とか言ったわよね! なら、どれほどの威力か見せて見なさい」
ゆかりの言葉に応えるように氷山の頂きにある青いキャバリア、『巨神』とよばれた『セラフィム・シックス』のアイセンサーが煌めく。
胸部砲口に湛えられた光が明滅する。
「コール、『プロメテウス・バーン』!」
ゆかりの言葉と共に放たれるは熱線の一撃。
いや、光条と呼ぶにふさわしい一撃が氷山を溶かしながら海中にある『激浪』目掛けて放たれる。
同時に放たれた口腔砲撃の水流と激突し、海が割れる。
激突する強大な一撃と一撃。
その一撃を相殺して有り余る『プロメテウス・バーン』の一撃。
嘗てヒーローとヴィラン、そして神が跋扈する世界にありて、一人のヒーローが持ち得た必殺の一撃。その名を冠する砲撃の一撃が『激浪』の巨体を傾がせる。
「……ッ!! 衝撃波がすごい……けど、これで隙ができた! ダメ押しのもう一撃!」
ゆかりの瞳がユーベルコードに煌めく。
ほとばしる雷撃。
天より打ち下ろされる鉄槌のごとき雷撃は『激浪』の巨体をさらに揺らがせ、戦場となった海上を荒れ狂わせるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
ユーリー・ザルティア
はあ、なにが『このまま抵抗する勢力ごと滅ぼすまで。』…よ。
抵抗しなくてもどうせ『不確定要素はこのまま滅ぼすまで。』とか言って銃口を向けていたでしょうに!!
さて、不慣れな『水中戦』だけど、もう少し頑張ってねレスヴァントMkⅡ!!
『水中機動』で移動しつつ『瞬間思考力』で砲撃を『見切り』『操縦』テクで回避。
このレスヴァントMkⅡはあらゆる『環境耐性』できてる。それが海洋でも!!
そして、接近したら…今必殺のッ≪キャバリアキック≫!!
「コール、『プロメテウス・バーン』――」
セラフィム・シックス…ね。うんいい子。お願い少しだけ力を貸して…。
この国の人たちを守る力を!!
巨大な要塞めいた大型オブリビオンマシン、機動殲龍『激浪』が湾内の荒れ狂う波間を征く。
「邪魔立てをしてくれる! 国土洗浄機構『国鳴』起動せよ!!」
『激浪』を動かす指揮を取る『第三帝国シーヴァスリー』の高官が口角泡を飛ばすように命ずる。
その言葉に動かされるように『激浪』は巨体を唸らせるようにひねり、海水を艦装へと変えていく。それがユーベルコードであると猟兵の誰もが知っただろう。
そして、その砲撃を受けては『ビバ・テルメ』の湾岸部は大波にさらわれてしまう。
そうなれば避難した人々さえも大波は飲み込んでいくだろう。
「はあ、なにが『このまま抵抗する勢力ごと滅ぼすまで』……よ! どうせ、その銃口は彼等にも向いていたでしょうに!」
ユーリー・ザルティア(自称“撃墜女王”(エース)・f29915)の駆る白いキャバリア『レスヴァントMkⅡ』が海中を飛ぶようにして走る。
敵の艦装に充填されたユーベルコードの輝きを止めなければならない。
「海中より迫る機体……馬鹿め、まずは貴様からだ!」
湾岸部を狙っていた艦装の砲塔がユーリーの『レスヴァント』へと向けられる。
放たれる砲撃。
それは海中を走り、『レスヴァントMkⅡ』に迫るだろう。
「この程度の砲撃で!」
『レスヴァントMkⅡ』が砲撃を躱す。
だが、砲撃は周囲の水を持って生み出される。
『激浪』はこの湾内という戦場にあって、その巨大なる体躯と砲撃装備を生み出すユーベルコードに寄って猟兵の接近を許さぬ要塞へと変貌しているのだ。
雨あられと打ち込まれる砲撃を前に『レスヴァンMkⅡ』の足が止まる。
「フハハハ! この『激浪』の力を舐めてもらっては困る! この火力! この物量! 貴様たち抵抗勢力が如何に力をつけようが、全ては海洋のごとき圧倒的な物量で押しつぶすことができるのだ!!」
高官の高笑いが聞こえてくるようであった。
砲撃の雨の中に『レスヴァントMkⅡ』が消える。
「ふん、我等に抵抗するものなど赦してはおけぬ。このまま『ビバ・テルメ』の国土を押し流す……」
高官が指示を出そうとした瞬間、『激浪』の中に警告音が響き渡る。
「なんだ、何が起きている!?」
「まったくわかりやすい思考回路だこと……そんなに数でボクたちを押し返せると思っていたのなら、本当におめでたい!」
砲撃の中に『レスヴァントMkⅡ』のアイセンサーが煌めく。
機体フレームが軋むように唸りを上げ、白いキャバリアが海上へと飛び出す。
見下ろす先にあるのは『激浪』の巨体。
「アンリミテッドモード起動」
煌めくユーベルコード。
その輝きを受けて『レスヴァントMkⅡ』の機体が重力フィールドを纏う。
「行くよッ! コールッ!『プロメテウス・バーン』――!!」
ユーリーの言葉と『レスヴァントMkⅡ』のアイセンサーの煌めきが同期する。瞬間、氷山の頂上に立つ『セラフィム・シックス』のアイセンサーが同時に輝く。
胸部砲口から解き放たれる火線の一撃が『激浪』が抵抗するようにしてはなった艦装の砲撃が激突し、打ち消される。
「力を貸してくれた……! ありがとう、君はいい子だッ! なら、後は任せてッ!」
空中で四肢を縮めるようにして『レスヴァントMkⅡ』が身をかがめる。
否。
それは力を溜める動作であった。
纏う重力フィールドと共に機体が弾丸のように『激浪』へと飛び込んでいく。
「くっ……『激浪』がこの程度で沈むものか……!」
「そうかもね! だけど、君たちが求めた『巨神』はこの国を守るために力を貸してくれている! ならッ!」
『レスヴァントMkⅡ』が漲る力と共に襲撃を解き放つ。
叫べ! これが!!
「超必殺脚……キャバリアキ~~~ック!!」
放つ一撃は明滅する光とともに『激浪』へと叩き込まれ、その巨体を海中へと再び沈めるのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
ラスク・パークス
アドリブ歓迎
改めまして。
ドーモ、セラフィム・シックス=サン。ラスク・パークスです。
『折角の生バトル! エンジョイしてエキサイティングDA☆』
共に戦おう。オブリビオンと。
『激浪』の奔流砲。脅威的。
直撃すると、戦線離脱、必至。受ける訳には、いかない。
さりとて、避けるのも、難しい。……なら、撃たせなければ、良い。
編み出すのは漆黒の闇、生み出すはザナドゥの黒腕。
百を超える腕で、背部、口部の砲口を、塞ぎ、妨害する。
駆動系にも、手を伸ばして、移動阻止。成功すれば、合図の時。
コール、『プロメテウス・バーン』
『YOU! ヤっちゃいなYO!』
セラフィム・シックス。あなたの機能、性能、その本領。
思う存分、奮って。
咆哮迸るように青いキャバリア『巨神』――『セラフィム・シックス』の火線が戦場たる海原を切り裂く。
蒸発する海水。
煙る水蒸気の向こうに揺らめくアイセンサーの煌めきを受け、オブリビオンマシン、機動殲龍『激浪』は激昂するように巨体を唸らせる。
「これが『巨神』の性能……! だが、邪魔だてする者たちを排除すれば、これが手に入る……!」
巨大な要塞めいたオブリビオンマシンにて『第三帝国シーヴァスリー』の高官は喚く。
確かにあの巨体である。
背面の砲塔が唸りを上げて激流のごとき砲撃が注ぐ。
口腔の如く配された砲塔がもたげ、ユーベルコードの輝きを解き放つ。
「薙ぎ払え!」
だが、その砲撃は轟かない。
「何をしている……! 何故……!」
「砲塔が捻じ曲げられて、艦首砲塔が……強引に閉じられています!」
「なんだと……!?」
高官は異常を告げる音を訊く。
何が起こっているのか理解できなかった。一体どうして己たちが駆る巨大オブリビオンマシンに異常が起こっているのか判別できなかったのだ。
それは当然である。
『激浪』の艦首たる頭部に配された口腔をもした砲撃。
それを漆黒の闇を帯びた無数の黒い腕が鎖のように閉ざしているのだ。
「改めまして」
それをなしているのは、ラスク・パークス(最後の死神・f36616)であった。
「ドーモ、『セラフィム・シックス』=アン。ラクス・パークスです」
『折角の生バトル! エンジョイしてエキサイティングDA☆』
CPUバイザーに文字列が走る。
漆黒の闇を帯びた腕は、ラスクのユーベルコードだった。
ザナドゥの黒腕(カイナ・ザナドゥ)。
それはあらゆるものを捉え、絡め取る力。どれだけ巨大な要塞の如きオブリビオンマシンであっても、口腔を模したパーツが余計であった。
ただの砲塔であったのならば、ラスクの操る無数の黒い腕は用をなさなかっただろう。
「その砲撃は、受けるわけには行かない」
『驚異的! 躱すも至難! ならなら!』
「そう、なら撃たせなければ、良い」
ラスクのユーベルコードは、巨大要塞の如きオブリビオンマシン『激浪』の巨体を海面に縫い付ける。
さらに巨体の駆動系にも手が伸び、その動きを止めるのだ。
たしかに『激浪』は海中にありて猛威であろう。
巨体でありながら戦場を自在に動き、巨体がゆえの出力でもって猟兵たちを圧倒する。少なくとも、この空に蓋をされたクロムキャバリアにおいて海中という三次元的な戦場は稀なる戦場であったのだ。
その海戦に特化した巨大なオブリビオンマシン。
本来ならば、為す術もない。
けれど。
「私たちがいる」
「何故だ、動かない……!『激浪』の推進力は並ではないはずだ!」
『たしかに! すんごい馬力だ☆』
ラスクのユーベルコードでは『激浪』の動きを止めるので精一杯であった。
けれど、ラスクは言った。
『私たち』と。
「そう、わたし達がいる。コール、『プロメテウス・バーン』」
『YOU! ヤっちゃいなYO!』
CPUバイザーに走る文字列。
『プロメテウス・バーン』。
ヒーローズアースにて存在したヒーロの必殺技の名。
なんの因果か、このクロムキャバリアにて響き渡る。瞬間、その言葉に応えるように煌めきが氷山を溶かしながら放たれる。
『セラフィム・シックス』の胸部砲口から解き放たれた砲撃の一撃は戦場を横断し『激浪』へと打ち込まれる。
その光条をラスクは見る。
「『セラフィム・シックス』。あなたの機能、性能、その本領」
煌めく輝き。
それは迸る存在の肯定であったことだろう。
故に、ラスクは告げる。
「思う存分、奮って」
それこそが、そこに在るという意味だと告げるようにラスクは『プロメテウス・バーン』の一撃が『激浪』の強靭な装甲を穿つのを見届けるのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
アルカ・スィエラ
……(溜息)
寝言はいいわ、その|機体《マシン》は潰す
……死にたくなければさっさと逃げる事ね
融合合身してアルカレクスへ、
通常の砲撃には『エナジーフィールド』の防御と
『リフレクションスケイル』でのエネルギー偏向で対抗し、『ドラグカプト』での砲撃で反撃、
向こうが勝負を決めようとUCを使うつもりなら……これ以上、あなた達に奪わせるものは何もない…!
纏おうとしたその水ごと、【虹剣ドラグキャリバー】で薙ぎ払う!
……あいつまでの射線は開けたわよ、決めなさい!
コール!『プロメテウス・バーン』!!
勿論、こっちも黙ってそれを見ているつもりはない…!
もう一太刀……ドラグキャリバーでの一撃を叩き込んでやるわ……!
ため息が出る。
どうしようもなく。
戦いというのはいつだってこうであるとアルカ・スィエラ(鋼竜の戦姫・f29964)は思う。とりわけ、オブリビオンマシンが絡んだ争いというのは、いつだってこうなる。
破滅に向かうのが当然であると言わんばかりの支離滅裂な行動。
『第三帝国シーヴァスリー』のオブリビオンマシン、機動殲龍『激浪』は巨大な要塞めいた威容を誇っている。
それが彼等の慢心を呼んだというのならば、皮肉なことだった。
「……寝言はいいわ、その|機体《マシン》は潰す」
「潰す? この『激浪』を潰すと言ったか! 堅牢なる装甲、海上においても海中にあっても、この『激浪』の性能の高さを見くびるか!」
高官の言葉が響く。
何もわかっていないとアルカは己のキャバリアである『プロトミレス』と『ドラグレクス』を融合合身させる。
機体の形状が変わっていく。
機竜と合体したキャバリアは、その力を十全に発露するように輝いていた。
「見た目が変わった程度で、虚仮威しを!」
周囲の海水が『激浪』の艦装へと変わっていく。
数多の砲塔が浮かび、その砲撃が融合合身した『アルカレクス・ドラグソリス』へと放たれる。
だが、それを『アルカレクス・ドラグソリス』のエネルギーフィールドがリフレクションスケイルでもって受け止める。
「無駄だ! 貴様の防御が如何に堅牢であろうと、こちらは海上。我が『激浪』は海洋にて力を増す!」
そう、周囲に水がある限り武装は尽きず。
絶えず放たれれう砲撃は海水を干上がらせない限り弾切れを起こさないのだ。さらに砲撃が外れたとて、それは『激浪』の力を増すフィールドに変わっていくのだ。
「……死にたくなければ、さっさと逃げることね」
アルカの瞳がユーベルコードに輝く。
敵は勝負を決しようと砲撃の雨を降らせている。
圧倒的な物量で持って此方を圧しようというのだ。だが、アルカは『アルカレクス・ドラグソリス』に剣を構えさせる。
「伸びて、ドラグキャリバー!」
煌めくユーベルコードと共に刀身が膨大なエネルギーに寄って形成されてく。
漲る力。
それは何かを奪おうとする者に対抗するための力。
「これ以上、あなた達に奪わせるものは何もない……!」
「ぬかせ! 我等は奪い続けるのだ。弱者を生み出すために!」
海水が『激浪』を覆っていく。
だが、アルカは、それを赦さない。
「薙ぎ払え、虹剣ドラグキャリバー(ドラグキャリバー・カラドボルグ)!」
振り下ろされた膨大なエネルギーが刀身へと形を変えたキャリバーの一撃が『激浪』を大椀とした海水を一刀の元に両断する。
「……あいつまでの射線は開けたわよ、決めなさい!」
アルカの言葉に応えるように氷山の頂きにある青いキャバリア『セラフィム・シックス』のアイセンサーが煌めく。
これまで幾度となく放たれた火線。
その膨大な熱量は氷山を徐々に溶かしていく。
「コール!『プロメテウス・バーン』!!」
叫ぶ言葉に呼応して、撃ち放たれる火線の一撃。
それが纏う海水を切り裂かれた『激浪』の装甲へと叩き込まれる。
朦々と立ち上がる海水の蒸気の最中、『アルカレクス・ドラグソリス』が駆け込む。
「ぐぅ……! だが!」
「黙って見ているつもりはない……!」
踏み込む機体。
振り上げたドラグキャリバーの斬撃の一撃が『激浪』の装甲を深々と切り裂き、内部フレームへと深刻なダメージを刻み込むのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
ミレア・ソリティス
敵中枢艦を確認、装備換装……戦闘を開始します
ヴィントシュトスを装備、ジャミングミサイルと同時にアクティブステルスを起動し回避しつつ敵の挙動を解析開始します
……周辺の水を攻防に転用する機構と判断、UCを起動し一時的に領域を電脳化、
敵機に対し電脳魔術による「耐性情報」のハッキングと改竄、構成情報へのデータ攻撃を実行し、
装甲崩壊と状態異常耐性・属性攻撃耐性悪化を付与します
そのまま『リアランチャー』から「氷結弾頭」を放ち周辺の水および敵装甲を「凍結」状態に追い込み敵機の「水」補給および行動を抑えます
……今です。コール、『プロメテウス・バーン』
脆弱化させた装甲箇所のデータを送ります、仕掛けてください
膨大な熱量を持つ火線の一撃がオブリビオンマシン、機動殲龍『激浪』の巨体へと叩き込まれる。
猟兵達のユーベルコードを導くように『巨神』とよばれた青いキャバリア『セラフィム・シックス』の胸部咆哮寄り放たれる火線が迸り、また火線を導くように猟兵達のユーベルコードが輝く。
傾ぐ巨体。
巨大な要塞めいたオブリビオンマシンであっても、度重なる攻撃に機体がきしみ始めている。
「これしきのことで……! 全砲門を開け!」
『激浪』に座す『第三帝国シーヴァスリー』の高官が喚き立てる。
海水がある限り『激浪』の弾薬は尽きることはない。
ユーベルコードに寄って弾薬へと変換しているのだ。砲撃の雨はやまず、迫ろうとする猟兵たちを寄せ付けぬとばかりに打ち込まれ続けているのだ。
「敵中枢艦を確認、装備換装……戦闘を開始します」
ミレア・ソリティス(軍団たる「私」・f26027)は己の武装を防衛・砲撃戦用拡張ユニットへと換装し、戦場たる海上に飛び出す。
ジャミングミサイルの発射と共にアクティヴステルスを起動し、己の存在を隠蔽する。
敵が巨大な要塞であるというのならば、敵が己の姿を捉えるのはレーダーの類によってであろう。
間違っても目視ではないことだけはわかる。
ならばこそ、ミレアの放ったジャミングとステルスシステムは『激浪』に彼女の所在を見失わせる。
「ええい、敵はどこか!」
「レーダーに映りません……!」
「何をやっておるか! 探せ! でなければ、弾幕を張り巡らせるのだ!」
砲火が荒ぶ。
そのさなかをミレアは走る。此方の所在がわからなければ、尽きぬ弾薬に頼るようにして弾幕を張ることは容易に想像できた。
だからこそ、ミレアの瞳はユーベルコードに輝く。
「コード・モルフェウス限定発動…半電脳領域、時間限定構築」
ミレアの言葉と共に展開する電脳領域。
敵である『激浪』は巨体である。
その巨体に電脳魔術に寄ってハッキングを仕掛け、その構成情報を書き換える。多くは書き換えられないだろう。
けれど、耐圧情報という限定的な情報であるのならば可能であった。
「完了。センダリコード『ポベートール』、展開します」
耐圧。
即ち、海中を征く機体である『激浪』にとって、それは堅牢なる装甲を意味する。だが、ミレアによって書き換えられた装甲は、減ぜられ、その装甲を本来のものではない脆弱なものへと変えられていた。
「氷結弾頭への換装完了。発射」
リアランチャーから放たれる砲弾が海水ごと『激浪』の巨体を凍結させる。
それは即ち、海水を弾丸に変える『激浪』の能力を封じ、また同時に動きも止める。
「……今です。コール、『プロメテウス・バーン』」
ミレアの言葉ともに電脳魔術によって脆弱化した『激浪』の装甲へと氷山から青いキャバリア『セラフィム・シックス』が膨大な熱量を伴う火線の一撃を解き放つ。
吹き荒れるようにして海を分かつ一撃。
それはミレアの伝える情報に従うように『激浪』の装甲を貫き、凄まじい爆発を巻き起こすのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
ルクス・アルブス
【ステラさんと】
なんだかおっきいのがでてきましたよ!
あれはさすがに無理ゲーじゃ……え?
氷のゴーレムさんが助けてくれるんですか?
ではよろしくお願いします!
どっかーんとやっつけて……って、動けない感じですか?
では足止めはなんとかしますので、
ステラさん、氷のゴーレムさんはお願いします!
……お願いですから、エイルさんの香り探しにコックピットとかやめてくださいね?
それでは!
【魔弾の射手】を演奏し、爆弾で動きを封じます。
ステラさん、いまですー!
って、え?
そのままだとわたしも射線に入ってないですか!?
勇者ならだいじょぶです、って、そんなわけないじゃないですかー!
けほっ……勇者じゃなかったら危なかったですよ?
ステラ・タタリクス
【ルクス様と】
(思案中。没頭中)
何やら聞き覚えのある……ふむ?
プロメテウス・バーン、ファフニール……レーギャルン?
なるほど
第六世代とは熾盛から分かたれた機能を特化して後継としたモノ?
いえ、セラフィムが生命に仇為す兵器というのなら
この断片で世代の意味を決めるのは早計というもの
とりあえず……
おや?珍しくルクス様がやる気ですね
あれなら私もフォルで支援といきましょう
【アウクシリウム・グロウバス】
Ⅵ様の頭上からパルス・フェザーマシンガンで援護しつつ射線確保
いきます!
コール、プロメテウス・バーン!
進路上の悉くを飲み込みなさ……ルクス様がいますね?
まぁ勇者ですし大丈夫でしょう
改めて、プロメテウス・バーン!!
多くの事柄を知る。
言葉の意味。
『プロメテウス・バーン』……かつてヒーローズアースにおいて炎のヒーローが扱う必殺技であり、また同時に簡易型『レーギャルン』と呼ばれたキャバリアの武装、胸部砲口の名でもあった。
そして、『ファフニール』。
『熾盛』とよばれた機体に搭載されていた膨大な戦闘データを集約したコア。
「何やら聞き覚えのある……ふむ?」
ステラ・タタリクス(紫苑・f33899)は戦いのさなかに一つの推測を立てる。
これらの名が全て無意味につけられているとは思えない。
ならば、『第六世代』と呼ばれた青いキャバリア『セラフィム・シックス』は『第五世代』である『熾盛』から分かたれた機能を特化し後継としたモノなのであろうか。
だが、猟兵が銀の雨降る世界にて手にした抗体兵器……あれもまた『セラフィム』と呼ばれる人型戦術兵器としても語られるところであった。
あれを『第二世代』とも呼んでいた。
生命に仇為す兵器。
これらは結局のところ。
「断片に過ぎませんか。世代に意味を求め、決めるのは早計というもの。とりあえず……」
「ステラさん!? なんだかおっきいのが出てきましたよ!」
ステラの推察を断ち切るようにルクス・アルブス(『魔女』に憧れる『出禁勇者(光属性)』・f32689)は彼女の裾を掴んでグイグイと氷山に迫る巨大なオブリビオンマシン、 機動殲龍『激浪』の姿を指差す。
本当にマジでこんな時に考えごとしている暇なんてないんだというようにルクスはステラをガクガク揺さぶる。
「あれは流石に無理ゲーじゃ……」
そういったルクスの頭に響く声がある。
それが青いキャバリア『セラフィム・シックス』の言葉であることを彼女は知るだろう。同時にそれはステラの頭にも響いている。
「あのゴーレムさんが助けてくれるんですか?」
「そのようですね。しかし、コール、とは」
「そんなの簡単ですよ。助けてって、呼べば助けてくれるってことです! なら、足止めはなんとかしますからね!」
そう言ってルクスは飛び出していく。
珍しくルクスがやる気に満ちているとステラはなんとなく嫌な予感がした。なんか楽器を手にしていたような気がする。
具体的にはクラリネットである。
どう考えても演奏する感じのあれである。
「ま、お待ちになってください、ルクス様!」
「いーえ、まちませーん! ていうか、お願いですから『エイル』さんの香り探しにコクピットの中に入り込むとかやめてくださいね!」
「しませんから!」
そもそもステラは今、自身のキャバリアに搭乗しているのだ。
そんな暇はない。
「何をごちゃごちゃと!」
『激浪』の巨体から爆炎が上がっている。
猟兵と『セラフィム・シックス』による攻撃に寄って、あの要塞じみた巨体も流石に傾ぎ始めているのだ。
「無限起動機構『満潮』、起動せよ!」
高官の言葉と共に『激浪』の体がさらなる巨体へと変貌し、これまで与えてきた損壊を修復しようとする。
「そうはさせませんよ!」
その言葉と共にルクスの瞳がユーベルコードに煌めく。
演奏されるは、『魔弾の射手』序曲(マダンノシャシュ・ジョキョク)。クラリネットの音色と共に生み出されるは音符型の爆弾。
それが『激浪』の巨体に降り注ぎ、爆発でもって、かの巨体を足止めしているのだ。
さらにステラの駆る鳥型キャバリア『フォルティス・フォルトゥーナ』がマシンガンで持って『激浪』の巨体を海上に釘付けにするのだ。
「敵の装甲が脆弱化しています……これならば!」
ステラは猟兵達のユーベルコードが装甲を修復しても尚、残る脆弱性を払拭できていない傷跡を『激浪』に残していることを知る。
これならば、とステラは『セラフィム・シックス』を見やる。
度重なる砲撃に寄って、その胸部砲口は赤熱している。だが、それでも、あの青いキャバリアは立っている。
「ステラさん、いまですー!」
「ならば、いきます!」
躊躇いは不要。
そうであるべきとして生まれたのならば、そうあるべきとして力を振るわなければならない。存在する意味を今まさにあの青いキャバリアは持とうとしているのならば、止める理由などない。
「コール、『プロメテウス・バーン』!」
煌めくアイセンサーの光。
吹き荒れるように火線が放たれ、一直線に『激浪』の巨体へと迸る。
だが、その一撃の直線上にルクスがいる。
あ、と二人とも思った。
「まあ、勇者ですし大丈夫でしょう」
「そんなわけないじゃないですかー!?」
無理なもんは無理、とばかりにルクスは慌てて海中へと飛び込む。凄まじい熱量の一撃は海水すら蒸発させていく。
改めて見ても凄まじい威力である。
それをみやり、ステラはルクスが無事かと『フォルティス・フォルトゥーナ』と共に荒れる海上へと降り立つ。
「けほっ……」
「ほら、大丈夫でした」
「そういう問題じゃないですよ!? 勇者じゃなかったら危なかったですよ!?」
「勇者だから平気だったということで」
「そういう問題じゃないです! 撃つときは射線上に味方がいないかどうかちゃんと確認してくださーい!」
ルクスは揺れる波間から『フォルティス・フォルトゥーナ』の鉤爪に手を伸ばし、引っ張り上げられながら『セラフィム・シックス』の放つ火線に打倒される『激浪』を見るのだった――。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
朱鷺透・小枝子
ウィングブースター稼働、回点号【推力移動】
サイキックシールド【オーラ防御】敵機に激突。
【破壊工作】激突と同時に回点号の手に持たせた逆鱗加速戦鎚の柄を
敵機装甲に突き立て、離脱。
戦鎚から鉄片を大放出、敵機の水艦装化に鉄片を混ぜ、
逆立て、壊せ!逆鱗!
【念動力】一斉に|抗体兵器《逆鱗》とともに破壊の【呪詛】を暴れさせ、
艦装を破壊、呪いと鉄の群れで激浪を海から隔離してやる!
コール、プロメテウス…?
そうか、プロメテウスと、いってたでありますな。
知性があるなら言っておく!
コミュニケーション能力はもっと磨いておけ!
念動力と逆鱗加速戦鎚の推進器で回点号の手に戦鎚を戻し、
【武器改造】呼び出した鉄片を戦鎚に結合させ|RX化《巨大化》
『劫火業臨』発動。更に巨大化!
それとどこかのロボットヘッドみたいに自分達の敵にならないように!
和を以て貴しと為せ!!
【水中機動】巨大化戦鎚を振るい【叩き割り】
激浪を海上まで【吹き飛ばし】
以上だ!!呑み込めぇええええ!!!
回点号、浮上推力移動
サイキックシールドの巨角で【頭突き】貫く!
キャバリア『回天号』が海中を突き進む。
ウィングブースターの推力を得て進む姿は宛ら魚雷のようであったことだろう。
オブリビオンマシン、機動殲龍『激浪』は、周囲の海水を伴って、これまで猟兵と青いキャバリア『セラフィム・シックス』による砲撃によって損壊した装甲を修復していた。
けれど、その装甲は脆弱性を遺したままであった。
「どれだけ外面を取り繕おうとも」
サイキックシールドを前面に押し出した突撃形態となった『回天号』は朱鷺透・小枝子(亡国の戦塵・f29924)と共に一気に手にした抗体兵器『逆鱗加速戦鎚』の柄を『激浪』の装甲へと叩きつける。
「な、なんだ、この衝撃は!?」
『第三帝国シーヴァスリー』の高官は、要塞めいた巨体を誇る『激浪』に打ち込まれた戦鎚の一撃によって傾ぐ機体に戸惑う。
いや、恐怖しているといってもいいだろう。
彼等はオブリビオンマシンによって思想を歪められている。例え、破滅に向かうのだとしても、彼等は立ち止まらない。
けれど、小枝子達、猟兵による攻勢は彼等に恐怖を齎すには充分であったことだろう。
「逆立て、壊せ! 逆鱗!」
赤と青の斑模様を描く戦鎚が鉄片となって『激浪』の内部へとと放出される。それは呪詛を伴っていた。
生命を仇為す兵器。
それが抗体兵器であり、戦鎚は赤と青という悪性と善性とに揺れ動く。
故に、その呪詛は『激浪』の艦装を内部から破壊し、さらに巨体を傾がせるのだ。そのさまはまるで痛みにあえぐ海洋生物のようにも思えたことだろう。
「何事か!」
「わ、わかりません! ですが、これは内部から攻撃を受けて……!」
『激浪』の内部から爆発が引き起こされていく。
それを小枝子はみやり、念動力でもって戦鎚を引き抜くようにして戻し、さらにアイセンサーをユーベルコードに輝かせる。
「呑み込め」
己のキャバリア『回天号』と抗体兵器である戦鎚を結合させる。機体が巨大化していく。すでにキャバリアとは呼べぬ巨躯へと変貌した小枝子の機体。
己の機体を霊物質で覆いながら、さらなる威容を知らしめる。
「機影……なんだ、これは……!? キャバリアじゃあない、ぞ!?」
「何を言っておるか! 我等が『激浪』以上の……」
高官たちは見ただろう。
レーダーに映る機影は、何かの間違いであると。
だが、そこにあったのは、小枝子の巨大化した『回天号』であった。
劫火業臨(ゴウカゴウリン)。
燃え盛るような念動力の迸りと共に立つ巨人。
「いいか、『セラフィム・シックス』。そこに知性ある『プロメテウス』をやどすというのならば、言っておく!」
小枝子はもう『激浪』を見ていなかった。
彼女が見ていたのは青いキャバリア『セラフィム・シックス』。
「コミュニケーション能力はもっと磨いておけ! どこかのロボットヘッドみたいに、自分たちの敵にならないように!」
言葉で互いを知るように。
他者を理解したいという知性が宿っているのならば、示さなければならない。
自らと共に歩む存在であることを。
交錯すれど、傷つける間柄ではないことを。それができるのが知性ある証であると小枝子はユーベルコードに寄って形成された戦鎚を振りかぶる。
「和を以て貴しと為せ!」
振るう一撃は『激浪』の巨体を海上へと打ち上げる。
凄まじい衝撃が海面を荒れ狂わせ『セラフィム・シックス』のアイセンサーに映し出す。
「以上だ!!」
吹き荒れる火線の一撃。
それは『激浪』の装甲をたやすく打ち抜き、その巨体を海面へと再び叩き落とす。
だが、そえで終わりではない。
『回天号』はさらに飛ぶ。
「呑み込めぇえええ!!!」
落ちる『激浪』目掛けて、己自身を弾丸とするようにサイキックシールドによって生み出された衝角を持って貫くのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
ウィル・グラマン
●WIZ
モササウルスメカはカッケーけど、大人しく巨神を引き渡せだの抵抗する奴らは皆殺しだのセリフは月並みなんだよ!
残念だったな、セラフィム・シックス
強力過ぎるお前の力をあてにすりゃ、まだ呑気そうに観戦見物してる連中も巻き添えだからな!
行け、ベア!
お前の鉄拳で土手っ腹に穴を開けて沈めちまえ!
ん?なんだありゃ…っておい!?
周りの海水を装甲代わりにしちまったり、水伝いにベアのエネルギー吸い取ったりしてる上に、変形してデカくなっちまってるじゃねーか!
こりゃマジーぞ、ベア戻って来い!
考えろ、考えろ…オレ
どうか考えてもコイツの力が必要だけど、被害をほぼゼロに抑える手段は…これしかねぇか!
プログラム・オーバーロード!
巨神と激浪の空間を【ディバインディング・ワールド】に置換
規模が規模で急拵えだから外から丸見えになっちまってるけど、これでも問題ねぇはずだ
これなら思う存分と力を発揮できる筈だ
オレはベアにしっかり守られているからお互いに信じてるぜ、|巨神《相棒》!
コール、『プロメテウス・バーン』…発動承認!!
機動殲龍『激浪』。
その姿はモササウルスを模した姿をしており、ウィル・グラマン(電脳モンスターテイマー・f30811)の心を大いに刺激したことだろう。
かっこいい、と思うこととオブリビオンマシンである、ということは関係ない。
どんな存在であれ、その造形を見て心が動かされることはあるのである。
けれど、それでもウィルは猟兵である。
猟兵とオブリビオンマシンは滅ぼし、滅ぼされる間柄でしかない。
だからこそ、ウィルは思うのだ。
どれだけかっこいいマシンを手繰るのだとしても。
「そういう月並みのセリフを吐く悪党には負けてなんてらんねーんだよ!」
『ガォン!』
ウィルの相棒であるスーパーロボット『ベアキャット』が咆哮し、その漆黒の巨体が海上へと飛び込んでいく。
握りしめた拳は、かの巨体に叩き込み、沈めるために固いのである。
ウィルは氷山の頂きに座す青いキャバリアを振り返る。
「残念だったな、『セラフィム・シックス』。強力過ぎるお前の力をあてにすりゃ、まだ簡単なんだろうが!」
だが、人の道において正しいのはいつだって厳しく険しい回り道である。
いつだってそうだ。
正しいのは、遠回りに見える道だ。
簡単で安直な道に正解などない。だからこそ、ウィルは『ベアキャット』を走らせる。
振るう拳は誰のためであったか。
「……ってなんだよありゃ!」
ウィルは見ただろう。
『激浪』の巨体が、膨れ上がり、その装甲が修復されていく様を。
「見くびるな! どれだけ我等を打ちのめそうが、『激浪』は海水があればなぁ!」
これまで幾度となく『セラフィム・シックス』の火線と猟兵達のユーベルコードが『激浪』の巨体を穿ってきたことだろうか。
それでもなお、あの巨体は海水を持って傷を修復しているのだ。
『ガォン!!』
「ベアのエネルギーが吸い取られている……!?」
さらに巨大化していく『激浪』。
「フハハハ! 無駄だ!『激浪』は、敗れはせんのだ!!」
「こりゃマジでヤベーぞ、ベア戻ってこい!」
その言葉に『ベアキャット』が後退する。
だが、それで事態が好転するわけではない。
ウィルは考える。
どう考えても『激浪』は地の利を味方に付けている。この海上にあって、自らの損壊を癒やす海水は無限にある。
全ての海水を使い切らせるなんて、現実的ではない。
ならばどうするか。
「考えろ、考えろ……オレ」
いや、と思う。
どう考えたところで、己ができることは一つだった。
「プログラム・オーバーロード! ディバインディング・ワールド!!」
ウィルの瞳が超克に輝く。
それは『セラフィム・シックス』と『激浪』との間にある空間を電子の仮想世界へと変換するユーベルコード。
即ち、現実世界への被害をゼロにするためには、戦場を別のテクスチャに置き換えれば良い。
たしかに『セラフィム・シックス』の火線の一撃な強力だ。
だが、それは周囲に被害を及ぼしかねない力。
これまでは上手く加減ができていたが、度重なる攻勢によって機体の温度が上がっているはずだ。
いつ自壊してもおかしくない。
「だけど、お前は自分の存在意義をもう見出しているんだよな! なら!」
ウィルは叫ぶ。
火線の余波は気にしなくて良い。
己の存在意義を。意味を。世界に示すためにこそ、その力はあるのだ。
強大な力はたしかに災いを齎すだろう。
だが、正しく使う事ができたのならば。
「壊すための力であっても、救うことができるはずだろう! それを示してみせろよ!」
ウィルの言葉に呼応するように『セラフィム・シックス』のアイセンサーが煌めく。
「コール、『プロメテウス・バーン』……発動承認!!」
『ベアキャット』がウィルを覆うようにして守る。
その隙間からウィルは見ただろう。
氷山すら溶かしながら迸る火線が『激浪』を守る水の膜すら突き抜け、その巨大な装甲を打ち抜き、破壊する姿を。
信じることは力へと変わる。
ともに戦うのならば、それは相棒と呼ばれるべき戦友であろう。
故に、ウィルは見たのだ。
己の機体が自壊しながらでも放つ一撃は、きっとあの『巨神』にとっても希望の光であったことを――。
大成功
🔵🔵🔵
月夜・玲
うわ、気持ち悪っ!
頭の中に直接話しかけないでくれない???
よし、聞かなかったことにしよう
聞いてない聞いてない
さて、激浪…
デカいなら戦いようがあるかな
それに周りが水なら…こうだ!
【Ex.Code:A.P.D】起動
転身、プラズマドラグーン
通電物質内移動…周囲の水の中を移動する!
奴が周囲の水を艦装化するのに紛れて…内側から激浪に潜り込む!
不用意に周りの水を使ったのが命取り
水はきちんと浄化して使いましょうってね
内側から雷鳴電撃を付与した『なぎ払い』で機体の電子回路を壊す!
あちこち内側から『部位破壊』して動けなくしてやろう
さて、漏電対策はどれだけしてる?
水中型だからって、内側までは万全じゃないでしょ
頭に直接響く声に月夜・玲(頂の探究者・f01605)は思わず顔をしかめた。
聴覚ではなく、脳内に響く声。
それは思っていた以上に気持ちの悪いものであった。
「頭の中に直接話しかけないでくれない???」
本気で嫌だった。
なんかこう、ゾワゾワするような忌避感があったのだ。だから、玲は聞かなかったことにした。
聞いてない聞いてない。
聞いてないから知らない。
そういうものなのである。
とはいえ、オブリビオンマシンは未だ残っている。
あの巨体である。
しかも、海水を媒体にして機体の修復や巨大化、艦装すらも生み出してしまうという規格外のオブリビオンマシンであった。
猟兵達のユーベルコードや、見なかった聞かなかったことにした青いキャバリアの火線が幾度となく叩き込まれて尚、決定打に至っていない。
炸裂する爆風が海面を波立たせる。
「たしかに破格の性能って言えるんだろうね。けど、デカいなら戦いようがあるかな。それなら」
周囲に満たされているのは海水。
玲の瞳がユーベルコードに煌めく。
「……こうだ! Ex.Code:A.P.D(エクストラコード・アヴァタールプラズマドラグーン)、起動。雷龍解放、転身…プラズマ・ドラグーン」
自身の体を稲妻の龍と融合した姿へと変える。
彼女の肉体は今、雷鳴電撃、物理無効の特性を持ち、また通電物質内の移動すら可能としている。
「機体を立て直せ! 装甲の修繕よりも、敵を撃滅せよ!」
『第三帝国シーヴァスリー』の高官が檄を飛ばす。
猟兵達の攻勢によって、『激浪』は傷ついている。だが、それよりも敵を倒すことを優先しているのだ。
海水に寄って生み出される艦装。
もしも、あの巨体を海水で覆い、装甲を修繕することに注力していたのならば玲の肉体を稲妻へと代えても電圧が分散して内部に入り込むことはできなかっただろう。
だが、艦装という限定的な空間に留めたことにより、玲の体は容易に『激浪』の内部へと入り込む。
「紛れるのは簡単だったよね。不用意に周りの海水を使ったのが命取りだし、装甲修繕に留めておけば、ここまで簡単に侵入を許しはしなかっただろうに」
玲は模造神器を抜き払う。
煌めくは電撃。
迸る稲妻の力は『激浪』内部で吹き荒れるように放たれ、その機体の内部を制御している回路を焼き切っていく。
「水はきちんと浄化して使いましょうねってね! さて、漏電対策はどれだけしてる? 水中型だからって、内側まで万全じゃないでしょ……それに」
内部よりの破壊。
そして、外からの攻撃。
この二重の攻勢に晒された『激浪』は、今まさに破滅の時を迎えようとしている。
玲は模造神器の二振りを十字に振るい、『激浪』の内部から外へと飛び出す。
荒れ狂う海。
吹き荒れる火線。
立ち上がる水蒸気。
「こんなところまでのこのこと出張ってきたのが運の尽きってね」
破壊の渦へと飲み込まれていく『激浪』の巨体。
それをみやり、玲は頭に響いた声を振りほどくように頭を横に振るのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
メルヴィナ・エルネイジェ
第六のセラフィムが起きたのだわ?
だからあなた達は継ぐ者ではないし選ばれないと言ったのだわ…
激浪が益々大きくなったのだわ…
しかもリヴァイアサンと似た装甲を備えているのだわ
どうすれば良いのかは解っているのだわ
再生出来ない程のダメージを一気に与えるのだわ
ただその為には力が足りないのだわ…
リヴァイアサン?どうしたのだわ?
ああ…猟兵になった私ならリヴァイアサンの真の姿を引き出せるのだわ…
オーバーロードでリグ・ヴェーダの名を冠する力を此処に
リヴァイアサンがより巨大な海竜になったのだわ
激浪に巻き付いて動きを封じて大海の奔流の発射準備を始めるのだわ
少しでも長く時間を掛けて威力を高めるのだわ
その間に艤装で攻撃されるかも知れないけど耐えるのだわ
吸水で再生するのはリヴァイアサンも同じなのだわ
準備が出来たら浮上してコール、プロメテウスバーンなのだわ
激浪の動きは封じているから構わず撃つのだわ
セラフィム・シックスが破った装甲に大海の奔流を放つのだわ
水は吸収出来ても勢いまで吸収できるのだわ?
高圧水流で切り裂くのだわ
漲るようにして迸る火線の一撃。
氷山はすでに溶け落ち、己の胸部砲口から放たれる火線の熱で青いキャバリア『セラフィム・シックス』の胸部は赤熱している。
ただれているようにも思えたし、また同時に青と赤に機体の装甲が混じるようでも在った。
「だからあなた達は継ぐ者ではないし選ばれないと言ったのだわ……」
メルヴィナ・エルネイジェ(海竜皇女・f40259)は己のキャバリア『リヴァイアサン』のコクピットの中に座し、静かに言い放つ。
『第三帝国シーヴァスリー』は『巨神』を求めた。
けれど、『セラフィム・シックス』はこれを拒絶する。
確かに生命に仇為す兵器でしか無い。
けれど、其処に宿る知性は、それ以外を求めていたように思える。だからこそ、破壊だけを目的とした者を選ばない。
「第六の『セラフィム』……あなたが求めるのは」
メルヴィナは猟兵たちの攻勢によって傷ついたオブリビオンマシン、機動殲龍『激浪』が、海水を吸い上げ巨大化していく姿を見やる。
走る雷撃が、火線が『激浪』の要塞じみた巨躯を内と外から破壊していく。
「なるほど、『リヴァイアサン』と似た装甲を備えているのだわ。なら、どうすれば良いのかは解っているのだわ」
確かに性能は似通っている。
だからこそ、理解できる。
あの装甲は確かに周囲の水によって修復を可能としている。けれど、それが万能ではないことを彼女は知っているのだ。
「再生する装甲。ならば、再生できない程のダメージを一気に与えるのだわ」
だが、問題がある。
己のキャバリア『リヴァイアサン』の火力では足りない。『セラフィム・シックス』の胸部砲口の一撃でもまだ足りない。
それはこれまでの連続した砲撃の結果を見ればわかる。
消耗はさせられているが、しかし、最後の一押しが足りない。
「――」
「……『リヴァイアサン』? どうしたのだわ?」
声が響く。
己のキャバリアから語られる言葉。
猟兵となった今ならば、己の力は『リヴァイアサン』の真の姿を引き出すことができると知る。
故にメルヴィナはためらわなかった。
躊躇いは僅かでも間隙を生み出す。悪意は、その間隙を縫うようにして迫りくる。だからこそ、メルヴィナは一瞬で判断したのだ。
「オーバーロード……『リグ・ヴェーダ』の名を冠する力を此処に」
煌めくは超克の輝き。
『リヴァイアサン』の装甲が変容していく。
有機的な鱗、鰭、尾、牙、角。
それは言うまでもなく幻想的な姿だった。御伽噺に語られるかのような龍の姿。
「な、なんだ、あの化け物は……!」
「怪物じゃないか、なんで、あんなものが……!
「ええい、まやかしであろう! あんなもの!『激浪』の力があれば、あんなもの、など……」
『激浪』に座す『第三帝国シーヴァスリー』の高官たちは戦慄する。
目の前の『リヴァイアサン・リグ・ヴェーダ』は幻想でもなければ、まやかしでもなかった。
現実のことだった。
動くだけで海流が『激浪』を翻弄する。
その巨体はぐるりと一瞬で巨大化した要塞じみた『激浪』の躯体すらも巻き取るようにして渦を巻き、締め付けていく。
軋む巨体。
砕ける装甲。
海水によって修復されるが、それよりも早く『リヴァイアサン・リグ・ヴェーダ』の鱗が、鰭が切り裂いていく。
「振りほどけ! 何故できん!」
「こ、こちらがパワー負けしています……! おそらく内部からの破壊が!」
猟兵達の攻勢が此処に結実する。
巨体が海中へと没する。
もがくように『激浪』が『リヴァイアサン・リグ・ヴェーダ』ごと海中に潜り込んだのだ。
「無駄骨なのだわ。その程度で『リヴァイアサン』を振りほどこうなどと」
身を捩るようにして逃れようとする『激浪』を逃さぬ『リヴァイアサン・リグ・ヴェーダ』。
その巨体が海中より飛び出す。
波が荒れ、飛沫が迸る。
「第六の『セラフィム』……今なのだわ。コール、『プロメテウス・バーン』なのだわ!」
その言葉と共に赤熱した装甲にも構わず『セラフィム・シックス』の胸部砲口より迸るは膨大な熱量。
火線となって走る一撃が『激浪』の脆弱化した装甲を貫き、さらには内部から破壊されたことにより海水に寄る装甲の修繕を不全へと追い込む。
「時間は稼げたのだわ……なら、『リヴァイアサン』!」
『リヴァイアサン・リグ・ヴェーダ』の瞳が煌めく。
ユーベルコード。
その煌めきよって口腔より放たれるは、超高圧の水流の一撃。
熱線により穿たれた装甲へと放たれる、一撃は大海の奔流(オーシャンバスター・エクシード)そのもの。
引き裂き、内部を破壊し、その躯体の動力の源であるエネルギーインゴットをも吹き飛ばし、凄まじい爆発と共に『激浪』が沈む。
メルヴィナは見ただろう。
最後の一撃を放った『セラフィム・シックス』が溶け落ちた氷山と共に海中へと沈んでいくのを。
その青い装甲は赤熱し、赤と青に染まる。
アイセンサーの輝きはもう失せた。
最後の最後まで力を振り絞ったあの機体は、もはや動けないだろう。残された氷山のかけらと共に、沈んでいく。
「あなたはあなたの役割を。そして、それが今ではないというのなら、眠りにつくといいのだわ」
メルヴィナは沈みゆく『巨神』を見送る。
誰の手にも届かぬ場所へ。
願わくば、かの存在の力を必要としない静寂の中へ。
波間に消えていく赤と青の装甲持つ『巨神』をメルヴィナは見送り、静かに瞳を伏せるのだった――。
大成功
🔵🔵🔵