その街には古くから続くワイン蔵があった。
そこから出荷されるワインがあまりに美味しかったため、それを口にしたヴァンパイア達は次々とそこへの進軍や重税を取り止めた。……彼らにとっては非常に珍しく、自らの懐を満たすよりもワインの味やそれを作り出す醸造家の生活を優先したのである。
そして家族や街を守るため、生き延びることを許された醸造家達は時に悪魔の力を借りながら悪化した環境の中で味を維持するだけでなく発展させた。
そうして生み出されたワインはヴァンパイア達を唸らせ続け、約100年以上その地の安寧を保ち続けた。
ある方向から見れば自らの腕や経験を盾にして自分や家族、仲間達を守ったと言える。
だが別の方面から見れば「ヴァンパイアにゴマを擦り続けて生き延びてきた者達」とも言うことが出来る。
「反抗せず、無様にヴァンパイアに尻尾を振った者に天誅を!」
猟兵達の猛攻でヴァンパイアの勢力が弱まった今こそ、そのような裏切り者を一掃する好機だと黒い鎧に身を包んだ人狼達が一斉に鬨の声を上げる。そんな彼らの力になるために伝説のヤドリガミも重い腰を上げた。
その動きを知らされた、街の中央にある最も優れたワインを作るとされている醸造家が住む館では怒鳴り合いが繰り広げられていた。
「私が無理矢理作らせていたことにすれば、少なくとも貴方だけは逃げられるかもしれないじゃない!」
ダンピールであることもあってか、高齢であるにも関わらず今も若々しい見た目の美女が目に涙を溜めながら顔を真っ赤にして叫ぶ。
女は見栄っ張りのヴァンパイアが手をつけた人間の腹から産まれ、ワインを買うためだけにこの地へ嫁に出された。
ちなみにそのヴァンパイアは格好つけのための浪費によってどんどん首が回らなくなり、爵位を手放してからの足取りは掴めなくなっている。
そして女と相対する老齢の男性は頑なに険しい表情で首を振った。
「奴らはワインに関わっていた者全てが悪だと言っているんだ、お前が犠牲になったところで止まるわけがない」
言い争う夫婦の気迫に、遠巻きに集まった子供達も使用人達も息を呑んで見守るしかない。
「……何より、お前を犠牲にしてまでワインを作り続ける気はない! お前を死なして生き残るくらいならば嬲り殺しにされた方がマシだ!」
そう叫んで男は女を抱きしめた。
男はこの家の三男坊として産まれ、最初は兄の補佐及び有事のスペアとしてでしか期待されてなかった。そのため、ヴァンパイアに押しつけられた少女の受け入れ先を任される格好となった。
しかし長男が病で倒れ、次男がヴァンパイアへの反抗のために家を出奔して行方知れずになったことで後継の御鉢が回ってくることとなった。
その頃には最初こそ政略で義務であった、それぞれの家にとって重要でない者同士の婚姻はいつの間にか愛に変わっていた。
男の胸に押し付けられた頭から啜り泣く声が聞こえてくる。
その間にもこの地を焼き払おうとする者達の怒りの炎は刻一刻と迫っていた。
「『必要悪』って言葉、ご存知ですか?」
どこか重々しい雰囲気をまとったルウ・アイゼルネ(滑り込む仲介役・f11945)は集まった猟兵に問いかける。
「一般的には『何らかの事情によって本来悪と見做されることを行うことを避けられない時』に使われますかね。ダークセイヴァーの場合は『ヴァンパイアに与する行為』が当たります」
その「必要悪」で暗黒の世界をどうにか生き抜いてきた街がある。これまでにも何度か、猟兵達が訪れたことのある場所だ。
ヴァンパイアの間で交わされた条約によってこれといった防備が為されていないそこへ、先の戦争での猟兵の勝利に乗っかる形で挙兵した「闇の救済者達」が一斉に突撃しているのだと言う。
「闇の救済者達は趣向を凝らした『虐殺道具』なる物を持っており、それで街の人々を惨たらしく殺すつもりです。利敵行為をしていた者はこう言う末路を送るぞ、という見せしめとして」
この情報だけならどちらに与するべきか非常に迷う展開だろう。しかしこの「闇の救済者達」はとんでもない問題を抱えていた。
「……ただ、この闇の救済者達は本物ではなく、オブリビオンが騙っている集団です」
彼らはヴァンパイアを倒すという大義を盾に、ヴァンパイアの庇護を受けてない町村に対して「このような街を攻め落とした」という実績を脅しにして食糧や武器を強奪するオブリビオン。
彼らが過ぎた後には何物も奪い去られて飢える者達しか残らないという。
「今回の件は正直、どちらにも問題があるパターンです。そこで皆様にはいくつか選択肢があります」
1つ目、オブリビオン達を街に入られる前に強襲して全滅させる。
2つ目、オブリビオン達が街を潰した直後にその背後を取って強襲する。
3つ目、悪は全て滅ぼす。オブリビオンも街も自らの手で葬り去る。
「どの選択肢を選ぼうと、自分が皆様を責めることはありませんしする気もありません。ですが、このオブリビオンを放置していれば『闇の救済者』に対する風評が落ちることは間違いないです。それだけは絶対に阻止してください。……以上、よろしくお願いします」
平岡祐樹
自分が黒ずんでいることにも気づかず、もしくは黒ずんでいることを自覚しているからか、人は他人にひたすら完璧な白を求める。
お疲れ様です、平岡祐樹です。
当シナリオは「ワインシリーズ」の第4作目にあたります。タグ検索を行うと前作がすぐに読めますが、舞台が同じだけで読んでない・出ていないと楽しめないわけではございません。お気軽にご参加くださいませ。
裁きの鉄槌を振るうか、未来を迎えさせるかは皆様のプレイング次第です。
どのようなエンドを欲するのか、皆様の選択をお待ちしております。
第1章 集団戦
『蜂起する銀狼軍』
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POW : シルバーバレット
自身の【命】を代償に、【他の構成員を超強化。彼ら】を戦わせる。それは代償に比例した戦闘力を持ち、【銀の弾丸】で戦う。
SPD : 決死の覚悟
【自ら頸動脈を切断する】事で【最終戦闘形態】に変身し、スピードと反応速度が爆発的に増大する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
WIZ : 抹殺の意思
【戦闘後の確実な死】を代償に自身の装備武器の封印を解いて【高速連射形態】に変化させ、殺傷力を増す。
イラスト:白狼印けい
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
ベティ・チェン
1
「生き延びる、努力を。どうして、踏み潰せる?」
敵が本物の闇の救済者でも
ボクはキミ達を踏み潰すのを躊躇わない
生き延びようと足掻いた者と
ただ奪おうとする者
ボクは足掻いた方に味方する
奪う者は奪われる
ボクが誰かに命を奪われるまで
ボクは奪う者を踏み潰す
「ドーモ、ニセモノ=サン。ベティ、デス。ゴートゥ・アノヨ!」
マッハ12で吶喊
自分の身長ほどある大剣(偽神兵器)振り回し電撃しながら敵を叩き潰すヒット&アウェイ攻撃繰り返す
敵の攻撃は素の能力だけで回避
「キミ達が、行かなくても。困るヒトは、居ない。キミ達が、ホンモノでも。困るヒトは、居ない。ボクは、ボクのために、した。だから。あの街は、知らなくて、いい」
「葡萄畑だけは全部焼き尽くせ! あれさえあればいくらでも奴らは再興出来るからな!」
吸血鬼を唸らせた醸造技術や闇の中でも葡萄を育てるやり方など知ったことではない。吸血鬼に与することで暴利を得た者は皆等しく天罰が下るべきである。
そしてこの高貴な活動に人々が応援するのは当然であり、早く吸血鬼とその取り巻きを根絶やしにするための投資として全財産を差し出すのが道理。
渋ったり断ったりする愚か者は皆か弱い一般市民のフリをした吸血鬼側の人間、後ろから刺される前に殺すべき。
そう固く信じる人狼達の行く手を阻むように、山道のど真ん中に自分の身長ほどある大剣を携えた少女が1人立っていた。
何者かは分からないが華奢な体つきと不釣り合いな武装に違和感を覚えた人狼達は一旦脚を止めるが、件の街へはこの道を行くしかない。
銃にちゃんと弾が込められているか確認している人狼達へ少女は手を合わせてから一礼した。
「ドーモ、ニセモノ=サン。ベティ、デス。ゴートゥ・アノヨ!」
少女———ベティ・チェン(|迷子の犬ッコロ《ホームレスキリング》・f36698)は挨拶を終えるとマッハ12に至る速度で一気に肉薄した。
先頭にいた人狼達がベティが起こした衝撃波で全身を粉砕されながら吹き飛ぶ中、大剣が振り回される。
高速で飛び散った仲間だった物を全身に浴びた人狼達の首が飛べば、生き残った者達はほんの一瞬で何十人もの同胞を惨殺されたことへ怒りの声を上げた。
「貴様っ……我々が誇り高き|闇の救済者《ダークセイヴァー》と知っての狼藉か!!」
「お前、この先の醸造家に雇われた者だろう! 吸血鬼に無様に尻尾を振って生き長らえている人でなしにどうしてく」
「生き延びる、努力を。どうして、踏み潰せる?」
人狼達の言葉を最後まで聞かずに割り込む形で、ベティは冷めた視線を送る。
「キミ達が、本物の闇の救済者でも、ボクは、キミ達を、踏み潰すのを、躊躇わない。生き延びようと足掻いた者と、ただ奪おうとする者。ボクは、足掻いた方に、味方する」
「……狂っている、貴様のような者がいたから100年前我々の先祖は吸血鬼に負けたのだ!」
人狼達は自ら頸動脈を切断することで銃剣にかけられていた封印を解く。そして噴き出した血を潤滑油にすることでベティと負けず劣らずの速さで動き出した。
「奪う者は、奪われる。ボクが、誰かに命を奪われるまで、ボクは、奪う者を、踏み潰す」
これまで吸い取った血と命を燃料にしたかの如く青い電撃が刃から迸り、人狼達を痺れさせて強引に動きを止める。そこにベティが飛び込めばまた、大量の首級が宙を舞った。
「キミ達が、行かなくても。困るヒトは、居ない。キミ達が、ホンモノでも。困るヒトは、居ない。ボクは、ボクのために、した。だから」
ヒットアンドアウェイでのらりくらりと避け続けた末にこの場にいた最後の人狼を切り捨てたベティは、中の景色もそこに住まう人々も全く知らない関所を一瞥して呟く。
「あの街は、知らなくて、いい」
限られた条件で懸命に生きようとする者に、闇よりも深い影を知る必要はないだろう、と。
大成功
🔵🔵🔵
インディゴ・クロワッサン
1)
僕もそのワイン飲みたーい!から絶対許さーーーん!!!
偽救済者軍団を強襲しちゃうぞー!!!
敵が街に到達する前に、気合いで一対二翼を生やして空中からこんにちわ!(空中浮遊/威圧
「キミらが本物だろーが偽物だろーがどーでもいい」
怪力を込めた|Vergessen《愛用の黒剣》によるなぎ払いと衝撃波と斬撃波でずばーん!
「さっさと消えて?」
敵がUCで強化されたら、第六感と野生の勘で見切って空中機動で回避しつつ、UC:飛翔する黒の刃 を発動!蹂躙だー!
「ねぇ、僕から逃げられると思った?」
運|良《悪》く生き残った連中は|Pisces《愛用の鎖付き短剣》で死角から丁寧に暗殺してくよ!(忍び足/鎧無視/串刺し
「僕もそのワイン飲みたーい!」
あの吸血鬼達が「それを飲みたいがために街を滅ぼさなかった」ワインと聞いて、インディゴ・クロワッサン(藍染め三日月・f07157)は爛々と目を輝かせた。
「から絶対許さーーーん!!! 偽救済者軍団を強襲しちゃうぞー!!!」
そうしてインディゴは気合いで生やした一対二翼で空を駆け、整備された街道は使わずに闇深い森の中をまぎれるように進軍する人狼達へ頭上から声をかけた。
「こんにちわ!」
誰にも気づかれないと思っていたのか、人狼達は虚を突かれたように足を止めて声をした方を見上げる。
そしてインディゴの小柄な体から発せられる威圧感に思わず唾と息を飲んだ。
「キミらが本物だろーが偽物だろーがどーでもいい」
インディゴは見せつけるようにゆっくりと愛用の黒剣を振り上げる。
「さっさと消えて?」
そして衝撃波と斬撃波でずばーんと人狼達だけを薙ぎ払った。
「くそ、やはり吸血鬼に救援を要請していたか……! こうなったら仕方がない、命1つで世界の平和に繋がるなら……この人生捨てても惜しくはない!」
生き残った人狼のうちの1人が持っていた銃剣を丸呑みする。そして全部飲み込み終わると白目を剥いて痙攣し出し、いきなり上を向いた。
そして大きく開かれた口から巨大な砲塔が伸びてくると、全身を揺らしながら人の力では実現できないスピードの連射が始まった。
インディゴは第六感と野生の勘で見切って空中機動で回避すると、愛用の黒剣を模した短剣を空中に何十何百本と展開する。
「蹂躙だー!」
無邪気に言い放てば短剣は幾何学模様を描きながら降り注ぎ、大砲人間と化していた人狼とその周りにいた者達を総じて八つ裂きにした。
宙をひっきりなしに飛んでいた弾幕が途絶えたところで、インディゴは不意に明後日の方向を見た。
「アイツが命を張って注目を集めている間に一旦潜伏して、奴らが安心して帰るまで」
「ねぇ、僕から逃げられると思った?」
最初の薙ぎ払いの直撃から逃れ、早々に退却していた人狼達の背後を取ったインディゴは愛用の鎖付き短剣の片割れを、指示を出していた者の首へ突き刺してからその体を吊り上げる。
人狼達は複数人がかりで周囲を警戒するが、ほんの一瞬の油断から生じた死角をインディゴは見逃すことなく丁寧についていく。
緊張感に耐えられず発狂してくれたら儲け物。1人また1人と減っていくたびに隙は大きくなり、インディゴは悠々とこの場にいた全員を暗殺してみせた。
果たして初動を乗り越えて生き残れたことは運が良かったのか。苦しまずに死ねなくなったのは、本当は運が悪かったのかもしれない。
大成功
🔵🔵🔵
サエ・キルフィバオム
アドリブ歓迎!
何を武器に生き残ろうとするかなんて、他人に迷惑かけてなきゃ文句言われる筋合いないよね
てなわけで、あたしは1つ目で参戦かなー♪
結局、弱者を甚振るのが好きな偽物って事を暴いてきっちりカタつけてやろうかな?
「あ、あの……。この先のワイン蔵を襲うのはやめてくれませんか……?」って、下手に出て声かけてみよっか
あたしの事も侮ってくれたら【因果速報】の条件ばっちりだよね
自分たちの命を削る戦い方は生命力吸収とは相性最悪だよ、自分で自分の事を詰ませてるって思い知らせてやろっか♪
……あらかじめ糸を周囲を回しておいたから、逃がしはしないよ
容赦なく、吸いつくしちゃうからね!
「何を武器に生き残ろうとするかなんて、他人に迷惑かけてなきゃ文句言われる筋合いないよね。てなわけで、あたしは1つ目で参戦かなー♪」
そう堂々と宣言していたサエ・キルフィバオム(突撃!社会の裏事情特派員・f01091)は無力な少女を装って、人狼達に声をかけた。
「あ、あの……。この先のワイン蔵を襲うのはやめてくれませんか……?」
「……娘よ、なぜか理由を聞こうか」
「わ、私の姉がそこで働いているんです。この辺りではそこしかお金になる仕事がなくて……」
どうせ潰す先のことなど調べもしてないだろう、とでっちあげの理由を告げてみる。すると何人か憐れみの視線をサエヘ送ってきた。
「そうか。だが、そこは吸血鬼に利する行為を続けていた我々人類の敵。……当然お前の姉も天誅の対象になる」
「どうか、どうかそれだけはっ……! 姉が行かなければ、我が家は年を越せなかったのです……!」
必死に訴え続けるサエの姿に人狼達は口を真一文字に結ぶ。
このような悲劇が起こるのも本を正せば全ては吸血鬼の圧政によるもの。彼女のような者が今後生まれないよう我々が悲劇の連鎖を断たなければならないと、人狼達は改めて誓った。
「……行くぞ」
どれだけ待っても折れる気配のないサエの説得を諦め、人狼達は先に進もうとする。擦れた布の音を聞き取ったサエは慌てて人狼達に縋り付く。
「お願いします!どうか、どうかっ……!」
「ちっ、さっきから黙って聞いてたら……吸血鬼からの金で生き永らえたってお前を撃ってもいいんだぞ!」
諦めの悪いサエに癇癪持ちの人狼は声を荒げると仲間の制止を跳ね除けてサエを蹴り飛ばす。
地面を転がったサエは唇を手で拭いながら挑発的な視線を送り返した。
「下手に出てたら調子に乗っちゃって……結局、弱者を甚振るのが好きな偽物って事を暴いてきっちりカタつけてやろうかな?」
「ふざけっ……!」
堪忍袋の尾が完全に切れた人狼の銃から、銀の弾丸が放たれる。サエは先程までの気弱な態度をかなぐり捨てて跳び避けた。
「あいつ、ただの生娘じゃないぞ!」
機敏な身のこなしに人狼達の警戒心が一気に湧き上がる。だが【因果速報】のトリガーに使う分の感情はもう十分に集まっていた。
「正解。でももう遅い」
桃色の糸が急速に巻き上げられて癇癪持ちの人狼の首を締める。
「……あらかじめ糸を周囲を回しておいたから、逃がしはしないよ」
全身の力が抜けた同胞が吊るされたのを見て、人狼達はあの命乞いは罠が仕掛けるための前座だったことに勘づく。
そしてもう敵の手中に落ちてしまったのならばせめて相打ちに持っていこうと人狼達は悲痛な覚悟で銃を飲み、一体化して襲いかかってきた。
「自分たちの命を削る戦い方は生命力吸収とは相性最悪だよ、自分で自分の事を詰ませてるって思い知らせてやろっか♪」
放たれる真っ赤な弾丸を避けながらサエは糸を操り、次々とその身を拘束していく。
「容赦なく、吸いつくしちゃうからね!」
自分の身を縛る糸を切ろうと頭の銃剣を何もない虚空へ振り回す人狼へサエはウインクを投げかけた。
成功
🔵🔵🔴
館野・敬輔(サポート)
※アドリブ、他者連携、派手な負傷描写OK
※NG:恋愛、性的要素、敵との交渉、UC名へのルビ使用
『吸血鬼をこの世界から駆逐する。例外なく骸の海に還れ!』
ダークセイヴァー出身の、青赤オッドアイの青年黒騎士です。
吸血鬼に家族と故郷を奪われたため、吸血鬼やオブリビオンに強い憎悪を抱いており、敵からの交渉には応じず、憎悪を以て敵を冷酷に斬り捨てます。
直情な性格ですので、黒剣1本だけで真正面から叩き潰す戦術を好みます。
集団戦では衝撃波で一気に複数の敵をなぎ払ったり、誰かを庇ったりもします。
ユーベルコードは指定されたものをどれでも使用。
迷惑行為や公序良俗に反する行動は、依頼成功のためでも行いません。
吸血鬼相手に商売を行っていた醸造の街を守るか否か。館野・敬輔(人間の黒騎士・f14505)であるが、身内を守るために自らの技量を吸血鬼に売った醸造家を責める気はなかった。
醸造家の作った酒を買う金を得るためだけに吸血鬼に激務を課された領民のように、彼らがその択を選んだ結果不幸になった人はいるだろう。
しかし吸血鬼の圧政下で人間の権利などあってないような物。もし醸造家達が条件を突っぱねて滅ぼされていたとしても、領民達の暮らしが楽になる保証などない。きっと別の理由で同じ目にあっていた可能性の方が高い。
そんな|吸血鬼《やつら》だからこそ、敬輔は強い憎悪を抱き続けているのだ。
『魂たちよ! あらゆる困難を防ぐ護り手となれ!!』
人狼達の側面から襲撃した敬輔は1本の黒剣で真正面から叩き潰された人狼を中心として放たれた衝撃波が周りにいた者達を一気に薙ぎ払う。
仲間の敵討ちをしようと体勢を立て直した人狼は銀の弾丸で敬輔を蜂の巣にしようとするが、頭部を狙ったはずの弾丸はひとりでに曲がって肩や胸に当たる弾丸に、人狼は苛立ちの声を上げる。
「くそっ、こんな至近距離なのになんで逸れる!」
原因が分からず、人狼は銃剣による近接攻撃に切り換えていくがやはり当たらない。
自分の身につけている鎧と違い、魂魄の加護の無い軟い革鎧を切り捨てながらふと何の気なしに呟く。
「オブリビオンのくせに闇の救済者を名乗るとは片腹痛いな。……あの街が吸血鬼を匿っていたなら話は別だったが」
「あの街の代表の嫁は人間と吸血鬼の混血だぞ! そいつは見逃すのか!」
獣の聴覚でその一言を聞き逃さなかった人狼が咄嗟に叫ぶ。しかし敬輔の冷徹な眼差しは一切揺らがない。
「酒のためだけに生まされた哀れな存在を甚振る趣味はないな。それに、そもそもそいつが実家のことを盾にして周囲に悪影響をもたらしたか?」
ここで被害をでっち上げて訴えていれば敬輔の手は止まっていただろう。しかし人狼は何も思いつかず口籠もってしまった。
「無いならわざわざ出向いて殺す必要はない。お前達と違ってな」
そう言って敬輔は口を開きかけた人狼の首を刎ねた。
成功
🔵🔵🔴
雫石・凛香(サポート)
アドリブ・MSの解釈による下記に沿わない動きも歓迎
貴方の書く雫石凛香が見たいです
オブリビオンへの恐怖で眠れなくなった姉のため戦う妹キャラ
性格はクール枠。冷静に物事を見て、必要そうな行動をとれます
敵への態度は苛烈。相手にどんな事情があろうと容赦はなし
魔剣【鞘】という凛香の意思に従い姿を変える剣を持っており、形状変化による攻め手の多さとスピードと手数で勝負するタイプ。逆に相手の攻撃を剣で受けるような行為は(子供なので)パワー不足、ほぼできないです
UCは基本的に妖剣解放のみ
高い機動力で相手をかく乱し、衝撃波でまとめて敵を薙いでいくのが主な動き方
動きを封じることで先の展開が有利になれば剣戟結界も使用
雫石・凛香(鞘の少女・f02364)にとって、ワインとは縁もゆかりも無い代物である。
眠れない姉のためにアルコールをよく飛ばしたホットワインを作るよりも、その不眠の根源たるオブリビオンを根絶やしにする方がよっぽど効果的だからだ。
だからあの町がどうなろうと正直知ったことではなく、ただ闇の救済者を騙る|不審者達《オブリビオン》を蹴散らすことだけを考えていた。
「【鞘】、応えて!」
凛香は自らに鞘から溢れ出る怨念を身に纏うことで加速し、人狼達を側面から強襲する。
剣と言うにはあまりに歪な形の武器から放たれた衝撃波で、不意を突かれた人狼達は次々に宙を舞っていく。その斬撃波で鎧に傷はつかず、背中や足から落ちれればまだ無傷か軽傷で済んだが運悪く頭から落ちてしまった者の中にはそのまま動けなくなってしまう者もいた。
「くそ、追いつけないっ……!」
薄暗い闇を駆け抜ける白銀の髪と赤い眼の軌跡は捉えれど、その動きを予測して射撃しても凛香は直前で身を翻して避ける。応援を呼ぶための角笛を取り出しても、口につける前に突然肉薄してきた刃によって粉砕される。
この場にいる自分達だけで対処しなければならない、と覚悟を決めた人狼のうちの1人は銃剣を自らの首に沿わせる。
そして斬撃波が襲いかかってくる前に引くと、頸動脈から大量の血が噴き出して人狼の白い毛を赤く染め上げていく。
突然の自傷に驚く凛香へ、人狼は血で濡れた銃剣を携えて突貫する。
まるで溶けかけの氷のように先程までよりも俊敏になった動きから放たれた突き上げを受けた剣は凛香の華奢な握力から簡単に離れ、高々と宙を舞った。
喉を深々と切ったことでもう声は出せないが、このまま押し切れると確信した人狼は目を爛々と輝かせながら追撃を仕掛けていく。
だが凛香は息を飲みながらも腰から咄嗟に抜いた|鞘《・》を全力で振るうと、人狼の首についていた傷が更に広がり音を立てて地面に転がった。
前のめりに倒れてくる体を避けた勢いそのままに凛香は地面に刺さっていた剣へ駆け寄り、引き抜く。するともう一方の手に握られている鞘にぴったり収まりそうな形になっていた剣は急激に膨張した。
成功
🔵🔵🔴
第2章 ボス戦
『星杖『ゲファレナー・シュテルン』』
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POW : 星槍モード
技能名「【第六感】【見切り】【なぎ払い】【串刺し】」の技能レベルを「自分のレベル×10」に変更して使用する。
SPD : 錬成カミヤドリ
自身が装備する【自分の本体(星杖)】をレベル×1個複製し、念力で全てばらばらに操作する。
WIZ : 世界の滅び以外に人々への真の救済を行えるものか
対象への質問と共に、【次々と骸の海】から【かつて自身を装備していた者達】を召喚する。満足な答えを得るまで、かつて自身を装備していた者達は対象を【それぞれの手に持つ星杖による魔法攻撃】で攻撃する。
イラスト:山本 流
👑11
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠リカルド・マスケラス」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
「……猟兵が、なぜ大義のために戦う我らを害する」
人狼達の骸が転がる道を一瞥した、両端に星の飾りをつけた杖を持つ青年が目前にいる猟兵達に訴えかける。
「ヴァンパイアと、それに連なる者達が、天下を取る世界の滅び以外に人々への真の救済を行えるものか。だからこそ、我らはお前達がやっていたように、ヴァンパイア達に反旗を翻したのだ。なのになぜ、お前達はあちら側につく?」
外見よりもしっかりとした口調だが、年相応に涙を目尻に浮かべる青年はあくまで闇の救済者だと嘯き続けるようだ。……それとも自分達はそういう存在であると思い込んでしまっているのか。
「まさか、救いの手が差し伸べられたと勘違いしたところを裏切り、真の絶望へ叩き落とすつもりだったのか? ……ならばそこの街ごとお前達を葬り去ろうではないか。この伝説の星杖『ゲファレナー・シュテルン』の力をもって!」
どちらにせよ、すでに賽は高々と投じられた。ここから後悔し、後退し、転換することは許されない。
ベティ・チェン
「アンタイセイの騙る、大義に。ホンモノなんて、ない」
小さく笑う
「ボクの居た、最下層は。単独でハクスラ出来る、犯罪者を。パラディンって、呼んでた。キミは、正しくパラディン、だ。吸血鬼の手下が、メガロ妄想。それともただの、ヤバレカバレ?どちらでも」
「ドーモ、ヨタモノ=サン。ベティ、デス。キリステ・ゴーメン!」
自分の身長ほどある大剣(偽神兵器)振り回し全力攻撃
複製ごと敵をぶった斬る
「ボク達、猟兵は。オブリビオンが、分かる。この世界の人が、分からなくても。キミの言う、ウソは。ボク達には、分かる。だから。街の人が、騙される、前に。キミは…ここで、サンズ・リバーを渡れ」
支離滅裂なことを言いながらこちらへの敵意を剥き出しにする青年を前にベティは小さく笑う。
あり得ない話だが、もしベティ達が街を滅ぼそうとする同志であったならここで殺すのではなく手を組んだ方がよっぽど有意義であろう。
それとも骸にさせた人狼の仇を討つことを優先してるのか、オブリビオンとしての本能がそう言わせてしまったのか。どちらにしても平常心とは言い難い。
「何がおかしい!」
微笑みに気づいた青年がベティを凝視して怒鳴る。注がれる視線に、ここは自分が返すべきだと判断したベティは息を吸って、吐いてから告げた。
「アンタイセイの騙る、大義に。ホンモノなんて、ない」
「何!」
謝罪どころかさらに侮辱された青年は顔を真っ赤にしながら杖を天に掲げる。すると同型の物が大量に空中に現れる。
それらは勢いよく一回転すると両端から白と桃色の混ざった魔力の刃を生やした。なるほど、あれらが勢いよく降り注いできたら防具を着てないただの人なら簡単に串刺しにされてしまうだろう。
「ボクの居た、最下層は。単独でハクスラ出来る、犯罪者を。パラディンって、呼んでた。キミは、正しくパラディン、だ。吸血鬼の手下が、メガロ妄想。それともただの、ヤバレカバレ? どちらでも」
「何をごちゃごちゃと! 死ね!」
槍と化した杖が降り注ぐ中でもベティは慌てずに手を合わせ、青年に頭を下げる。
「ドーモ、ヨタモノ=サン。ベティ、デス」
なぜならそれこそがシノビの、ニンジャの流儀だからだ。
「キリステ・ゴーメン!」
顔を上げるとすぐさま地面に置いていた自分の身長ほどある大剣の柄を拾い上げ、構え直すことなくそのまま全力で振り回して片っ端から杖を切り払う。
そして回転しながら足を前に出すことで攻撃範囲をどんどん青年へ近づけていく。
徐々に勢いを増す風圧に青年は息を飲んでベティのいる方を見ながら後退をし出す。
「ボク達、猟兵は。オブリビオンが、分かる。この世界の人が、分からなくても。キミの言う、ウソは。ボク達には、分かる。だから。街の人が、騙される、前に。キミは……ここで、サンズ・リバーを渡れ」
慄いて背を向けて脱兎で逃げないことに感心しつつ、ベティは青年の体を胸の辺りから真っ二つに切り捨てる。
防御に使われなかった杖は上半身と共に宙を舞い、死後硬直が始まる前に手からこぼれ落ちる。
すると切られた青年と瓜二つな見た目をした青年が森の中から飛び出して、猟兵に拾われる前に杖を掴み取った。
「双子? 兄弟? ドッペル? ……でも、どれでも、関係ない」
自称闇の救済者が何人残ってようが、どんな見た目だろうが、やることに変わりはない。ベティはカラカラに乾いた土をしっかりと踏み締めて、剣を振るう方向を転換した。
大成功
🔵🔵🔵
インディゴ・クロワッサン
「僕はね、あの街のワインが飲みたいんだ」
攻撃は可能な限り見切った上で、敵の周囲をダッシュやジャンプで回避!
「だから、あの街を消そうとしてる|キミ達《敵》を薙いだ。ただそれだけ」
UC使っての魔法攻撃は、斬霊刀:藍染三日月で放つ衝撃波や斬撃波で相殺!
ついでに衝/斬撃波に破魔と浄化も乗せて、元持ち主さん達を強制送還だー!
「キミ達が本物だろうが偽物だろうがどーでもいい」
居合いの構えに怪力も込めて力を溜め込んだら、抜刀してなぎ払ってずばーん!
「つまりは、|さ よ う な ら《骸の海へ還れ》って事さ」
にんまりと笑ったら、UC:薄氷薔薇陣 発動ー!
「降り注げ、|澆薄《ぎょうはく》なる氷華!」
「僕はね、あの街のワインが飲みたいんだ」
なぜ道のりを阻むのかという問いに対するインディゴの無邪気な答えに、闇の救済者の間で張り詰めた空気が一瞬緩む。
しかし笑った時に上唇から覗いた犬歯で|相手《インディゴ》が憎き吸血鬼であることを思い出し、顔を引き締めながら杖を構える。
それら杖は、青年が持っている物と全く同じ意匠がなされていた。
「だから、あの街を消そうとしてるキミ達を薙いだ。ただそれだけ」
先端に集まった魔力が眩い桃色の光を放ちながら球体となって放たれる。
インディゴは飛び交う弾を可能な限り見切った上で、まるで嘲笑うように闇の救済者の周囲を走って跳んで回避していき、段々自ら近づいていくことで避け切れなくなった物は藍染三日月を振るうことで相殺した。
「キミ達が本物だろうが偽物だろうがどーでもいい」
薄氷で出来た薔薇が周囲で花開く中、闇の救済者達は攻撃を止め、使い果たした魔力を溜め直す。その隙をついてインディゴも藍染三日月を鞘に入れ直し、力を溜め込んでいった。
「つまりは、|さ・よ・う・な・ら《骸の海へ還れ》って事さ」
先に動いたのはインディゴの方だった。
ずばーんと鞘から振り抜かれた衝撃波で宙に浮かされた闇の救済者達の体が破魔と浄化の力も込められた斬撃に飲み込まれていく。
すると先程の斬られた青年と違い、その体は真っ二つになることなく服や杖と一緒に空気に溶けるように消えていった。
その一部始終を見届けた青年の持つ杖の先が怪しく光ったかと思えば、どこからともなく杖を携えた闇の救済者達が再び出てきた。その姿は先ほど薙ぎ払った者達と瓜二つ……全く同じと言っても過言ではなかった。
だがすでに刀を戻していたインディゴは魔法を唱えられる前に居合切りを放ち、闇の救済者達を一掃する。
先陣と同じように死体を残さず消え失せた仲間の姿に青年は苛立ちの混じった唸り声をあげながら再び杖に魔力を集中させる。するとまた全く同じ見た目と装備をした次の一団が現れた。
「そういえば伝説のヤドリガミがいるとか言ってたっけ」
1人2人程度なら気のせいかなと思うが、ここまでの大人数が全く同じ姿で現れ続けたら流石に疑わざるを得ない。
「この人達、全部キミが魔法で呼び出してる使い魔みたいなヤツでしょ? |杖《ヤドリガミ》が認めた者、ってことは昔の持ち主さんの姿とか模してるのかな?」
声は返ってこない。しかし忌々しげに睨んでくる視線が予想が正しいことを暗に証明していた。
「それじゃあこの人達何度切っても意味ないねー、倒しても魔力に戻っちゃうだけなんだから。……なら、親玉のキミをぶっ飛ばさないとね?」
にんまりと笑って、インディゴは刀の先で地面をつつく。
『降り注げ、|澆薄《ぎょうはく》なる氷華!』
その言葉を合図に、落ちてきた巨大な薔薇の形をした氷塊が青年の頭頂部を捉えた。
大成功
🔵🔵🔵
館野・敬輔(サポート)
※アドリブ、他者連携、派手な負傷描写OK
※NG:恋愛、性的要素、敵との交渉、UC名へのルビ使用
『吸血鬼をこの世界から駆逐する。例外なく骸の海に還れ!』
ダークセイヴァー出身の、青赤オッドアイの青年黒騎士です。
吸血鬼に家族と故郷を奪われたため、吸血鬼やオブリビオンに強い憎悪を抱いており、憎悪を以て敵を冷酷に斬り捨てます。
直情な性格ですので、黒剣1本だけで真正面から叩き潰す戦術を好みます。
ボス戦では積極的に他猟兵を庇ったり、衝撃波や投擲用ナイフで牽制したり、他者連携を意識した戦い方もします。
ユーベルコードは指定されたものをどれでも使用。
迷惑行為や公序良俗に反する行動は、依頼成功のためでも行いません。
顔を上げた青年の、髪に隠れた箇所から血が流れてくる。それはゆとりのある袖で拭っても止まる気配はなかった。
「吸血鬼がここまで必死に防衛しにくるとは。やはりここを狙ったことは間違いでは無かったが……」
だがあまりにも戦力が足りなかった。猟兵の進撃によってだいぶ勢力を弱めたとはいえ、生き残りが全て弱いものばかりだとは限らなかったのだ。
もっと道中の町村から支援を募るべきだったかと歯噛みする中、黒剣を構えた敬輔が攻め込んできた。
青年は杖の両端から魔力の刃を展開し、その一撃を受け止めて鍔迫り合う。敬輔の姿を至近距離から見た青年は、その身に宿る魔力の揺らぎに気づいた。
「お前、首筋の辺りの魔力が揺らいでいるな。……真人間のフリをしているが、本当は吸血鬼の魔力にもう堕ちているのでは」
「ふざけたことを、抜かすな!」
大声で青年の言葉を掻き消し、力任せに押し切る。
仇を討ち、家族を解放したことで首筋にあった傷はもう痕を残さず消え失せている。後遺症じみた変身能力は残っているがもう関係ないはずだ。
だが勢いに押されて後退した青年は両脚を広げて踏み止まると自らを鼓舞するように叫んだ。
「激昂するということは認めたと同義。我々の大義は吸血鬼とその傘下に下った者を1人でも多く狩って人々の暮らしに安寧をもたらすこと! 猟兵の皮を被って吸血鬼に尻尾を振る者どもの好き勝手にはさせぬ!」
「そう言って今を生きる者達の生活を苦しめるお前達を見過ごすわけには行かないんだよ!」
2人が再び交錯する。槍の穂先を模した魔力と刀身に宿る魂魄がぶつかり合うことで火花が散り、その周囲がぼんやりと明るくなる。
お互いに歯を食いしばって睨みつけ合う中、敬輔が突然刃を引いた。
前からかかる力に対抗していた青年はそれが不意に失われたことで攻撃に転じることが出来ないまま前につんのめる。そこを敬輔は見逃さずすぐに懐に潜り込んで青年の体を下から上へ切りつけた。
大量の血が敬輔の体に浴びせかけられる中、力を失った手から離れた杖が宙を舞う。
敬輔は気を抜くことなく、使い手を失った杖を真っ二つに切り捨てようと衝撃波を飛ばす。しかし杖|自身《・・》が咄嗟に展開した魔力の壁によってそれは弾かれ、使い手を新たに生成するまでの時間が稼がれた。
成功
🔵🔵🔴
サエ・キルフィバオム
アドリブ歓迎!
大義といいつつ、やることは生きるために手段を選べなかった人たちへの迫害
無関係なあたしでもその傲慢、許せるものじゃないよね♪
念力で攻撃してきた錬成カミヤドリを手で防御する事で【コード・スカルプチュア】の条件を満たして、杖には杖って形で対抗しよっか
元々イライラしてるみたいだし、千日手染みた戦いになったら焦れてくるよね……♪
あたしの本命はコード・スカルプチュアと同時に使える【狐の罠糸】、見えている杖の動きの合間を縫って本体への攻撃を狙うよ
……あたしの糸も、人の行動の意図も見えないもの
上辺で全てを判断するのは間違ってるってね!
「大義といいつつ、やることは生きるために手段を選べなかった人たちへの迫害。無関係なあたしでもその傲慢、許せるものじゃないよね♪」
「何が傲慢か、吸血鬼相手に尻尾を振って命乞いをすることが愚の骨頂! 武器を持ち対抗することこそが最も清き行為であったというのに」
自分の思う事が全て正しいと価値観で動いているのは持ち主が皆そういう思想を持っていたのか、オブリビオンと化したことで植え付けられたのか。そう至った理由は分からない。
「だーかーらー、そういうとこが傲慢なんだって」
ただ肩を竦めて鼻で笑い、呆れた素振りを見せて挑発することは出来た。
歯を砕きそうなほどに力を入れて顔を歪ませた青年が杖を天に掲げると、同型の杖が大量に召喚される。
「【錬成カミヤドリ】か。流石はヤドリガミってとこかな♪」
青年が持った杖が振り下ろすと同時に空中の杖が槍として、鈍器として降り注いでくる。サエはそのうちの一本を突き指覚悟で受け止めて、離れようとするそれの柄を握り取った。
『つまみ取った……♪』
不敵な笑みを浮かべた瞬間、追加の杖が召喚される。しかしそれらは青年の指示に従わず、すでに展開されていた杖にぶつかっていった。
「な、何が起きている! なぜ私が私の指示に従わないのだ!」
それもそのはず、従わない杖はサエの【コード・スカルプチュア】で作られた模倣品の模倣品。同じ見た目でも作り手が違えば、リンクの有無もまた変わってくるのだ。
だがそのことに気づく様子もなく、青年は思っていることと真逆の行動をする「自分」に苛立ちの声を上げた。
「元々イライラしてるみたいだし、千日手染みた戦いになったら焦れてくるよね……♪」
出会った当初に比べて杖の数が減った上に動きが雑になったところでサエの口角が上がる。
『ごめんね……♪仕込みは完了だよ!』
サエの真の本命は狐糸「舌端」による目視が難しい攻撃。サエだけが目で追えている桃色の髪が杖の動きの合間を縫って無音で張り詰め、青年の四肢を拘束した。
「な、何が起きている!?」
突然何かに引っ張られて動かなくなった体に青年が焦りの声を上げる中、近づいてきたサエは見せつけるように見様見真似で杖の先端に魔力の刃を生成する。
「……あたしの糸も、人の行動の意図も見えないもの。上辺で全てを判断するのは間違ってるってね!」
そして反論の怒鳴り声が耳元で響く前に突き刺し、魔力を上乗せすると急激に膨張した刃に押し出される形で青年の体が八つ裂きになった。
しかし器物が本体である青年は人体なら即死である傷を受けても憎まれ口を叩いた。
「これで私を止めれたと思うな! お前達が倒した私はただの幻! 次会う時は必ずお前達を貫き殺してやる!」
「はいはい、やれる物ならやってみなさいなー? どっかに隠れてる臆病者な伝説のヤドリガミ様♪」
サエの切り返しに青年は口を開いて反論しようとしたが、生成する魔力が絶えたのか声が発せられる前に蒸発した。そして周囲に大量に転がっていた杖もまた、初めから無かったかのように影も形も消え去っていた。
大成功
🔵🔵🔵
物々しい音を立て、固く閉ざされていた関所の門扉が開かれる。
そこからは古びてはいるがよく手入れされた武具に身を包んだ男衆が列を成して現れた。
相打ちでもいいから敵を1人でも多く止めようと覚悟を決めて出てきた彼らの目に映ったのは大量の人狼の死体と、その周りで見聞する猟兵たちの姿だった。
「猟兵が、彼らを止めてくれたのか?」
目の前の状況が理解できず呆然としていた彼らだったが、街が危機から救われたことを徐々に理解していき歓喜の声が上がり出す。
その輪から抜け出した初老の男は猟兵へ深々と頭を下げた。
「私達の街を救っていただき、本当にありがとうございました。大した礼は出来ませぬが……もしよろしければ感謝の宴を開きましょう。私達の街はワインで有名ですので、きっと皆様のお口にもあいましょう」
そう飲ませる前から断言する男の瞳には、長年作り手として街を吸血鬼から守ってきたことで熟成されたであろう絶対的な自信が浮かんでいた。