桃華獣の傍らで
#封神武侠界
#戦後
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●桃華獣の傍らで
「ん……。戦争、お疲れさま」
グリモアベース──今は眼下にだだっ広い雲海が広がる|四阿《あずまや》へと姿を変えたそこで、リコ・ノーシェ(幸福終焉至上・f39030)は軽く首を傾げて見せた。
「祝勝、って言ったら大袈裟、だし。場所も、封神武侠界なんだ、けど」
……行く?
●桃源郷の霊獣
封神武侠界の中でも、特に仙界。
いつでも桃花の咲き乱れるそこで、ささやかながら宴が開かれるのだという。
水辺の宴。|点心《おやつ》や酒、あるいは桃の果実水に茶の類が饗されるが、宴の主目的はそれだけではない。
桃華獣と呼ばれる桃源郷に棲まう霊獣がひとの傍に寄り添ってくれるのだと言う。
「桃華獣っていうのは、総称らしくて。虎とか、鹿とか、鳥とか、いろんな形の霊獣で、共通するのはみんな、ベースの毛並みが白くて、角が1本生えてて、そこに桃の花が咲いてるんだって」
サクラミラージュの桜の精みたいな姿を想像してもらったら良いと思うと、リコは言う。
「子供になればなるほど、その角は短いらしい、よ。本来は警戒心が強くて、桃源郷の奥から出て来ないんだって、さ。……失礼なことさえしなければ、もふもふ、させてもらえる、かも」
左右色違いの双眸を心なしか輝かせて、リコは拳を握った。
「強く望んで、一緒に来て欲しいって言うなら、仙界の外にも寄り添ってくれるかも、な。相手は霊獣だから、ある程度の敬意をもってお話しないと、難しい、かもだ、けど」
そこまで言って、少年は集まってくれた猟兵へと視線を据えた。
「あ、でも。桃源郷に辿り着くまでに、ちょっとした結界がある、から。まあ、仕方ないよ、な」
気を付けて、な。軽い口調は、猟兵たちに対する信頼の証だ。
眠そうな目でゆっくり瞬きすると、リコは微笑む。
「綺麗な景色見て。美味しいもの食べて。もふったり、相棒を探したり。……良ければおれと、しに行こう」
朱凪
目に留めていただき、ありがとうございます。
がっつり冒険+日常だけシナリオ。朱凪です。
まずはマスターページをご一読ください。
▼進行
タグにて募集期間等を記載します。
大抵幕間を追加してからの検討になります。
無理ない範囲の採用にしようと思うので、全員採用はお約束できません。すみません。
▼桃華獣
基本的に霊獣ですので大人しく殺傷は好みませんが、絆を結んで連れ帰ったら心強い仲間となる……かもしれません。個体差はあると思います。
(アイテム等での配布はできません。シナリオで連れ帰る行動に成功したらRPやご自身でのアイテム作成等、ご自由に)
桃花咲く角もつ白いもふもふです。喋りません。
▼その他
2幕のみリコもいますが、特別に声を掛けられない限りは当然描写しません。
「挨拶しとこうかな」の一文だけだと描写が勿体ないので削る場合もあります。
では、宴ともふもふを楽しむプレイング、お待ちしてます♪
第1章 冒険
『花舞う結界』
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POW : 花と往く
SPD : 花を見る
WIZ : 花と知る
👑7
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●桃源郷の、その前に
本来であれば桃花の季節など疾うに過ぎているが、そこはまさしく桃色一色に染まっていた。
木々に咲いた桃の花。下草に生える種々の花々も、すべてが桃色。
それだけでなく、熟れた桃の果の甘く濃い香りに満ちている。
耳を澄ませば、目的地である宴の開かれる水辺のせせらぎが聴こえるだろう。それを追っていけば、辿り着くことはできる。
それまでの間、花や香りを楽しんでもいい。
敢えて迷子になるのも良いかもしれない。
深い場所に進んだなら、ひと足先に桃華獣の姿を垣間見ることもできるかもしれない。
そこら中に成っている仙桃を摘まみ食いしたっていい。食べれば寿命が延びるという謂れのある果実だが、誰が寿命が延びたと証明できるだろう。延びたと思いたい者はそう思えばいいし、気休めと思うならそれでもいい。
心赴くままに、進むといい。
ルシエラ・アクアリンド
どことなくエルフヘイムに似ているかもね
等と相棒の鷹に話しかけながらのんびりと進ませて頂こうか
結界があるという事なので此方も結界術で対応していこうかな
後、鷹に頼み空からの目で共有し些細な事に注意しつつも荒らさずに進もうか
第六感も信じよう
花の中へ迷子に
敢えてだからね?本当に迷っている訳ではないからね?
付合いの長さ故かお互い良く知っている箇所が多々あるからなあ
大丈夫だよ?
日常とはかけ離れた様な世界も偶に良いものだと思うだろうし
それらがもたらしてくれる景色を、この子とのんびり楽しみたい
もし何か飛ぶ様な影を見かける事ができたら聖獣かとは思うけれど
それは後のお楽しみとしようか
大切に考えるべき事だと思うから
●それは桃色の
木々の中と言えば、見慣れている。
「どことなくエルフヘイムに似ているかもね」
呟いてみたものの、桃色一色の景色は彼女──ルシエラ・アクアリンド(蒼穹・f38959)の日常とは掛け離れた世界のそれであることも肌身に感じていた。
甘い香りの風が吹いて、ルシエラと彼女の肩で羽を休める蒼い鷹も揃って目を細めた。
結界が張られているという事前情報から警戒していたけれど、霊獣の棲まう桃源郷への道だ、少し進むと害意のあるものではないことが彼女には知れた。ただ、護るためのものであることが。
歴戦の記憶から、無論完全に気を抜くことはなかったけれど。
それでもある程度力を抜いたルシエラは、薄く残された獣道を確認もせずにふらりふらり。
気付けばせせらぎの音にしばらく耳を澄ましていない。
「敢えてだからね? 本当に迷っている訳ではないからね?」
違う意味で再び細められた鷹の目はなにを語るのか。じっと彼女を見つめたあと、黙って大きく翼を広げて空へ舞い上がる相棒に、空から道の確認を行いに飛んでくれたことが判った。
──付き合いの長さ故か、お互い良く知っている箇所が多々あるからなあ。
困ったように眉を寄せながらも、その姿に心強さを感じるのも、昔から。
「……大丈夫だよ?」
肩に舞い戻った鷹に告げつつも、きちんと礼を伝えて更に先へと歩を進める。
その足取りはもちろん慎重さを失わないように。花や木々を少しであろうと傷付けることがないように。
「気持ち良いね」
小さく相棒に囁いたとき、相棒とはまた違う鳥のはばたきが聴こえ、「!」彼女は咄嗟に振り返る。はばたきの音は聴き慣れている。普段聴くものよりもずっと大きい翼のそれ。
けれど、そこになにものかの姿はなかった。
「桃華獣、かな」
警戒心が強いのだという霊獣。白くて桃枝の角を持つらしいその姿。追いかけて探してみたい衝動には駆られるけれど、ふ、とルシエラは唇に穏やかな笑みを刷いた。
「まあ、それは後のお楽しみとしようか」
霊獣との出会いは、大切に考えることだと思うから。
大成功
🔵🔵🔵
花色衣・香鈴
武侠界の中でも此処桃源郷は本当に空気が綺麗
仙丹の入手に今までほど苦労せず、その薬効もあるけれど
発作の頻度が減り、単独行動範囲は武侠界に移住する前より広くなった
「いい香り」
花咲き病の身なれども草花が憎い訳ではない
苦痛はあれど相利共生
不治の病なら尚更憎むと狂ってしまいそうで
愛してくれた人達の顔を覚えていたいから
そして花々を美しいと思える心に嘘を吐いて自分に刃を突き立てたくないから
わたしは花を憎むことを選ばなかった
花木を眼差しで愛でながら歩く
「仙桃…」
どれもよく実っている
盗人は罪だと思うけれど、このまま落ちる方が勿体ないだろうか
迷って
幾つか熟れた物を摘み、持ち上げた漢服の裾に載せて宴へ運ぶことにした
●息のできる場所
大きく胸に息を吸い込んで、細く長く吐いて。
安堵したように花色衣・香鈴(Calling・f28512)は口許を綻ばせた。
療養のため封神武侠界へ移住を決めた。蝕まれる彼女の身体を癒す仙丹も、今までほど苦労せずに入手できるようになり、その薬効もあって苛む発作の頻度は下がった。ひとりで行動できる範囲も、お蔭で以前より広がったけれど。
──武侠界の中でも此処、桃源郷は本当に空気が綺麗……。
「いい香り」
広い空気の中にも充満するほどのあまい桃の香り。花が咲いているというのに果実も生るのは仙界であるからこそと言えるだろう。
──この種も、もらってしまうでしょうか……。
一抹の不安はありながらも美しい枝ぶりに手を伸ばし、あるいは腰を折って髪を耳に掛け、香鈴は桃に満ちた景色を楽しむ。病に妨げられない身体は、自然と彼女の足取りを軽くした。
彼女を怪奇人間たらしめる『花咲き病』なれど、草花すべてを憎むわけではなかった。根付き身を裂き咲き誇る花々に苦痛はあれども、相利共生であると思うから。
「……」
──それに。
不治の病ならば、なおさら憎むと狂ってしまいそうで。
狂わずにいたいから。愛してくれたひと達の顔を憶えていたいから。
──そして花々を美しいと思える心に嘘を吐いて、自分に刃を突き立てたくないから。
様々な思いが織り交ざりたくさん悩み抜いたけれど、そうして香鈴は花を憎むことを選ばなかった。
清しい空気を何度も胸に吸い込んで、香鈴は素直な気持ちで花々を愛でながら桃色の世界を進む。ふと目に留まったのはまるまると実った果実。
「仙桃……」
これまでの道程で見かけなかったわけではない。ただ、今このときに香鈴の意識に浮上しただけのこと。
──盗人は罪だと思うけれど……。
どれもよく実り、熟している。甘い香りは落ちる前のそれに思える。
迷う。けれどこのまま落ちて、大地に押し潰されてしまう方が勿体ないだろうか。迷い、迷って。
香鈴は漢服の裾を広げて持ち上げいくつかの大きな桃を摘み取って、その香に頬を緩ませた。
「宴に饗するということで……許してくださいね」
大成功
🔵🔵🔵
エンマ・リョウカ
妻のアリサ(f38946)と
気付けばこの世界に来てから
以前よりも只管戦いの日々で一息つく暇もなかった
だからこそ、愛する妻と一緒に向かえたらと思う
園の説明を聞きながら思案に耽ってしまう
あの頃と違い死ぬことはないと分かってはいるが
どうしても妻を戦いに連れ出す事を躊躇う
妻自身が戦いたいと願うのであればそれは断れないが
気持ちを確認することも勇気がでない
「アリサ…あ、良く見つけたね。すごいよ」
折角見つけた実からも私の身を案じている事がわかる
妻の笑顔の瞳から伝わる気持ちに
今度は一緒に戦いに行こうと心に決め
優しく甘い果実を味わおう
「あぁ…癒しもだけど、本当に美味しいよ」
「折角なんだ、一緒に食べよう、アリサ」
アリサ・ラサラリーン
夫のエンマ様(f38929)と
戦争には貢献できてないので
祝勝、には二の足を踏みましたけど…
エンマ様にどうしてもとお誘いされて
戦いのお疲れ癒せたらって決心して来たのでした
天の園に入る前にご説明を聞いた
聖なる果実を探したいです
「寿命が延びるそうですから」
ほんの少し違う事も望みながら
草をかき分け細い道を辿って
「エンマ様!ありましたっ」
両手で捥ぐとなんて良い香り…!
ちゃんと半分こにしますね
刀子で剥いて差し出して
召し上がるのをにこにこ見ながら
(お身体の旧い傷が消えますように)
と心の中で祈ります
「わたしもちゃんと食べますよー」
美味しい甘い桃の実をご一緒に味わって
笑顔を喜んでみて下さるのがいま一番嬉しいです
●愛しの“思い”
帽子の上に桃色の花弁が落ちたのを、アリサ・ラサラリーン(太陽の詠・f38946)は淡く微笑んでそっと抓み上げた。
彼女の指先のその色に、エンマ・リョウカ(紫月の侍・f38929)も自然と眦を和らげた。
彼らが元より過ごしていた世界から、他の世界と行き来できるようになってから。
──気付けば以前よりも只管戦いの日々で、ひと息つく暇もなかった。
だからこそ、こうして愛する妻と共に過ごせる時がいとおしく、得難く感じる。彼女をこの遠出に誘うと、つい先日まで展開されていた大きな戦いに己は参加していなかったからと二の足を踏んでいたけれど。
エンマが隣を見ると、アリサは視線が合うだけで嬉しそうに笑む。最終的には得心してくれたようだと、彼は胸を撫で下ろした。
ふたりで桃色の花を愛で歩きつつも、アリサが求めて視線を彷徨わせるのは仙桃と呼ばれる果実。
「寿命が延びるそうですから」
ふたり揃って、ずっと一緒に居られますように。はにかみ微笑むアリサ。胸の裡にはほんの少しの違う望みが宿っていることは押し隠す。
「!」「アリサ、」不意に桃色に染まる草を掻き分け、彼女は足早に駆け込んだ。そして跳ねそうな勢いで振り返る。
「エンマ様! ありましたっ」
「……あ、良く見つけたね。すごいよ」
きらきらと輝く青みがかった灰色の瞳。ひとひらどころではない花弁がウェーブがかった藍色の髪に絡むのを除いてあげながら、彼女のまっすぐな思いが温かくてエンマは瞼を伏せた。
“猟兵”となった今。以前とは違ってもはや戦いの中で死ぬことはないと頭で理解はしていても、どうしてもアリサを、妻を戦場に連れ出すことに未だ躊躇いがあった。
──アリサが、戦いたいと願うのであれば。
それはエンマが断り止めるものではないと重々に承知している。だが、彼女を失う可能性すらすべて避けたいと願うエンマの欲が渦巻いて、彼女の願いを確認することすらできずにいた。
だけど、これだけ共にあることを願い、己を案じてくれる彼女に──そして間違いなくひとりの“猟兵”である彼女に、耐え忍び待ち続けるように告げるのは逆に不誠実かもしれないと思えた。
次に戦いに赴く機会があれば共にと誘おう。心に決めて、エンマは両の手で立派な桃をひとつ捥ぎ取り、顔を寄せるアリサの姿を見守った。
「なんて良い香り……! エンマ様、ほら……!」
「あぁ……本当だ」
頭の奥まで満たすほどの甘い芳香。
慣れた様子で刀子を使い丁寧に皮を剥いて、アリサは瑞々しいその果実をエンマの唇へと運ぶ。
「いかがですか? 寿命は延びました?」
「どうだろうな……ただ、美味しいよ」
にこにこと問う無邪気な妻の様子に、口いっぱいに広がる優しく甘い果実を味わい、笑んで応じる。すると彼女の頬がより嬉しそうに緩むから。
──お身体の旧い傷も消えますように……。
胸に秘めた、ささやかで切な祈り。この遠出も、彼の戦いの疲れが癒せるならと決心したアリサにとって、彼の無事が願いのすべてだった。
「折角なんだ、一緒に食べよう、アリサ」
「はい、わたしもちゃんと食べますよー。半分こにしますね」
しっかり熟れて柔らかな桃の身に刀子を滑らせ、滴る果汁を零さないようちょっぴり顎を上げて口に含む。
桃の甘みと香りが身体を満たし、「美味しいですねっ、エンマ様」アリサは共有できる喜びに相好を崩した。
「あぁ、そうだな」
──わたしの笑顔を、あなたが喜んで見て下さるのがいま、一番嬉しいのです。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
リィンティア・アシャンティ
桃源郷とは、お花ともふもふのユートピアだったのですね
桃華獣さんに出会ったら「拱手」でしょうか?
大きなヤギさんのような……そんなもふもふさんに会ってみたいです
楽しい探検方法を考えていたのですけど
UCを使ったら【まんまるボンボニエール】から
猫王さま(注*エルフヘイムにお住いの普通の猫らしい。勝手に王さまと呼んでいる)が出てきたので
気紛れに歩く猫王さまについて行ってみるのです
さすが猫王さま
威厳に満ちた足取りでどんどん進んで行くのです!
たまに立ち止まってくれるので、景色も楽しむことができます
目的地にはたどり着けるでしょう、たぶん
とても桃の木をくぐっていますが大丈夫でしょう
すごく冒険している気がします!
●秘密のお庭は広がって
もふもふの毛並みを揺らし、長くふさふさの尾をぴんと立てて。
『猫王さま』は、威厳にさえ満ちた足取りで、迷うことなく初めて見たであろう桃の木々の中を進んでいく。
「さすが猫王さま……!」
折角なら楽しく探検したいと願ったリィンティア・アシャンティ(眠る光の歌声・f39564)が、ぱかりと開いたボンボニエールから飛び出した見慣れたにゃんこ。
彼女のまんまるボンボニエールはユーベルコード製の花咲く森の中の小さなお家に繋がっており、彼はそことエルフヘイムの彼の住まいとを平然と行き来している……みたいだ。
桃色の下草にふんふん鼻を寄せ、時折甘い桃の香りにかふと足を止めて頭上を見上げ、気儘に闊歩する猫王さまを、リィンティアはわくわくと追っては同じものへと視線を向けた。
この桃色の結界を越えれば、桃源郷に辿り着くのだと思えば期待に胸が高鳴る。
──桃源郷とは、お花ともふもふのユートピアだったのですね。
お花ももふもふも大好き。
いつも傍にいるルノも、花も猫も好きだ。リィンティアが「ね」と微笑みかけると彼女もにこりと笑み返す。
足を止めた際には桃色の茂みの向こう側へと視線を向け、白い霊獣と視線が合ったりしないかと探してみるけれど、簡単には会えないみたいだ。
「桃華獣さんに出会ったら『拱手』でしょうか?」
初めて足を踏み入れる封神武侠界。そこでの挨拶もばっちり勉強済み。いっそ早く使ってみたいとそわそわしてしまうくらい。
いくつもの桃の枝をくぐり、花の下を過ぎて、甘い香りに包まれて。
ずっとほっぺゆるゆるなリィンティアへ時折ルノが大丈夫なのかと窺っては来るけれど、気にしない。
「たどり着けるでしょう、たぶん」
だって、こんなに大冒険をしているんですから!
「っあ、待ってください、猫王さま」
急にてててと速度を上げて進み始めた猫王さまを、リィンティアはまた追った。
その後ろ姿をゆったりとした白い毛並みのなにものかがそっと見守っているのを──彼女は知らない。
大成功
🔵🔵🔵
幽谷・倖
友達のすぐりさん(f34952)と
すごく綺麗なところ……
写真撮りつついきたいな
でも宴の場所にもきちんと向かわないとね
すぐりさんと並んで少しずつ進んでいく
目的地は……って
すぐりさん、マイペース……
でも私もね、桃は気になってるんだ
……食べちゃう?
適当な場所に腰掛けて一緒に仙桃をいただきます
……甘い!けどなんていうか、上品な甘さ?
確かにこれは寿命も延びそう
いくらでも食べられそうだけど、宴でも食べ物は出るだろうし
ほどほどにしよう
綺麗な桃の花や果実に囲まれるすぐりさん
すごく絵になるなぁ……
あの、写真撮ってもいい?
え、私も?
……うん、いいよ
カメラに自分達の姿を収めてシャッターを押す
いい思い出になるといいな
紅林・すぐり
友達の倖さん(f34952)と
桃の花は可愛らしい印象ですが、咲き乱れているとなると壮観です
この景色を楽しみながらいきましょう
いつものようにカメラを取り出す倖さんにも安心しつつ
……ところでずっと気になっていたのですけど
桃、食べても大丈夫、なんですよね
ほら近くで見るとこんなに美味しそうで
……食べちゃいましょう
腰掛けるなら桃の木の下がいいでしょうか
いただきます……おいしい
寿命を延ばす効能がありそうなのも分かりますね
っとと、そうです
宴も忘れちゃ駄目ですね
写真、ですか?
勿論ぼくはいいですが
倖さんも一緒に撮りませんか?
ほら、自撮りというやつで
二人で桃の花の前に立ち写真を撮りましょう
楽しいですね、こういうの
●切り取るセカイ
一本の枝に鈴生りの花。その枝が何本も伸び伸びと空、あるいは地面に向けて伸びる桃の木。
「すごく綺麗なところ……」
愛用の一眼レフカメラを手に、幽谷・倖(日華・f35273)はいつも俯き不機嫌……のように見えてしまう表情を今日ばかりは眉間を少し緩める。
その横顔をちらと見遣ってから、紅林・すぐり(しんくの月・f34952)は口角を上げて肯いた。
「桃の花は可愛らしい印象ですが、咲き乱れているとなると壮観ですね」
「宴の場所にもきちんと向かわないとね」
「ええ。この景色を楽しみながらいきましょう」
軽く写真を撮るような仕種をして、すぐりは倖を促す。彼女はその気遣いにこくりと肯いた。
接写でひとつの桃の花を写真に収め、少し進んでは次は花を手前にぼかし、薄い獣道を中心に撮る。
「あ、目的地は、」
「……ところでずっと気になっていたのですけど」
レンズを向けるのに夢中になってしまっていたと倖が隣のすぐりの左右色違いの瞳を見上げたら、彼のそれは花が咲いているにも関わらず枝をしならせるほどずっしりと丸く大きく生る、仙桃へとまっすぐに向けられていた。
「食べても大丈夫、なんですよね。ほら、近くで見るとこんなに美味しそうで」
「すぐりさん、マイペース……」
以前も、花より団子──否、花と団子のようなことを言っていたっけ。「でも、」ずぅっと甘い香りが漂い続けているからこそ、誘われる。
「私もね、桃は気になってるんだ」
カメラを下げて、ふたりは悪戯っぽく視線を絡める。
「……食べちゃう?」
「……食べちゃいましょう」
適当な場所を探した倖を、桃の木の下からすぐりが手招く。桃の木の根元に並んで座り、ひとつずつ捥いだ強い芳香の重い果実。果汁が滴り落ちるのに気をつけて細い毛の密集する皮を剥いたなら、よりいっそう甘い香りが弾けて、つやつや輝く白い果実の表面に思わず喉が鳴った。
「「いただきます」」
我慢できないし、する必要もない。
齧りつくと柔らかい身の歯触りと瑞々しく甘い果汁が幸福感へと変わる。
「……おいしい」
「……甘い! けどなんていうか、上品な甘さ?」
口許を親指で拭うすぐりに倖はハンカチを差し出し、ありがたく受け取って。
「寿命を延ばす効能がありそうなのも分かりますね」
「確かにこれは寿命も延びそう。……いくらでも食べられそうだけど、宴でも食べものは出るだろうし……ほどほどにしよう」
「っとと、そうです。宴も忘れちゃ駄目ですね」
いつも通りの笑みですぐりが言う。どこまで本当なのか判らないけれど、倖はくすりと小さく笑った。
そうして、ふたりでまた並んで歩き始める。いや、今度は半歩、倖が遅れて。
そっとファインダー越しに彼を見る。桃色の中に柔らかそうな漆黒の髪。穏やかな笑みを浮かべた横顔。
赤黒い月光のような後光が桃色一色の中に映えるけれど、暗い印象は与えない。ハイカラさんの後光はそのひとの感情に応じるのだと言うから、つまりはそういうことなのだろう。
──すごく絵になるなぁ……。
「あの、写真撮ってもいい?」
「写真、ですか?」振り返ったすぐりが目を丸くして瞬く。「勿論ぼくはいいですが」
「倖さんも一緒に撮りませんか?」
「え、私も?」
「ほら、自撮りというやつで」
明らかにあまり詳しくなさそうな口振りで言うすぐりがおかしくて、倖もほんの少し口許を緩めた。
「……うん、いいよ」
ふたりで桃の花の前に立って、すぐりはちょいと傍に垂れた枝を抓んで引き寄せて。自撮りというものにはあまり慣れていなかったから、精一杯手を伸ばして何度かシャッターを押した。
「……ふ、ふふ」
「楽しいですね、こういうの」
うまくいかなかった写真も、大切な思い出となって思い出す日が来るだろうか。来るといいなと、そう想う。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ユト・フォンデュ
【夜真珠】
世界は広いから
いつもの僕達の世界だけでなくて見聞を広げたくてやって来たよー
シャンティにも見せたくてさー
嬉しそうにしているのを見て、連れてきて良かったと心から思う
自分を継いでくれる存在が欲しいと思った
応えてくれるのが本当に嬉しい
やっぱり僕の目は間違ってなかったよね
歌に即興でハモりを入れて
扇子を広げて舞えば
ああ、楽しいね
気配に振り返れば白いもふもふ
賑やかすぎたならごめんね
聞き入って貰えたなら光栄だよ
桃華獣は神聖だよね
拝むように見ながら
白いもふもふも可愛いよねー
近づいてくれないかな、何か食べるかななんて鞄の中を漁りパンを出す
僕は狼も鹿も鳥も気になるけど
シャンティが鳥に焦がれるのは新発見だね
シャンティ・フォンデュ
【夜真珠】
わぁ…凄い
封神武侠界は初めて来たよ
師匠を振り返り
ここは一年中桃なのね…すごい…
きょろきょろするおのぼりさん
かつて貧困街の孤児だったけど
ユトさんに拾われて世界は変わった
裕福とは言わないし、歌を学びながら自分で稼いでいくことを考えるけど
少なくとも餓える事は無いから感謝してるの
沢山学びたい
師匠に自慢の弟子と思って貰えるように
耳をすませば
嗅覚を頼りに歩いてみれば
鮮やかな色彩を楽しめば
自然の中ってとてもいいって思わされるよね
自然の中で一曲
ソードハープの音が鳴り響く
歌が心地よくて
白いもふもふにうずうず
触れてみたい
軽やかに羽ばたく白の鳥を見て目を瞬かせる
わぁ……
憧れて、目を惹き付けるの
手を伸ばした
●つなぎ、つなぐ
「わぁ……凄い」
たたっ、と駆け出したシャンティ・フォンデュ(夜真珠・f38985)は「ねぇユトさん」くるんと振り返る。
「うん、世界は広いねー」
シャンティにも見せたくて。いつもの世界だけではなく、見聞を広げるために。ユト・フォンデュ(菖蒲咲の黒うさぎ・f39047)はおっとり言葉を返す。
「ここは一年中桃が咲いてるのね……すごい……」
封神武侠界に足を踏み入れるのは初めてだと、シャンティはきょろきょろと桃色一色の木々、草花へと視線を走らせ続けた。その青い瞳がきらきらと輝いているから、ユトも連れて来て良かったと心から思えた。
耳を澄ませばさわさわと桃の花や草が風に揺れる音が鼓膜を優しく叩き、一歩進むだけで頬に触れる風が甘い香りを届け、ただ鮮やかに、けれどたおやかに揺れる色彩に、心が奪われる。
──こんな世界に行けるなんて、想像もできなかった。
かつていた場所。飢えと渇きに苦しみ、楽しみなど見いだせない場所。そこで出会った師匠の芸や──歌。
世界が変わった。
こんなにも美しい音があるのだと。こんなにもこの胸が震えることがあるのだと。
知らせてくれただけではなく、彼はシャンティを拾い、その歌を教えてくれた。旅芸人のこと、裕福とは言わないし己の芸はまだまだで、自分だけで稼いでいくことに不安はあるけれど。
──感謝してるの。
少なくとも飢えることはないし。ちょっぴり悪戯心を覗かせて、少女は師匠の桃花を見つめる横顔を見上げた。
沢山学びたい。
──師匠に自慢の弟子と思ってもらえるように。
その思いは、自然とシャンティに愛用の竪琴を手に取らせた。宵海と呼ぶ、夜色のそれ。爪弾くとぽぉん……と柔らかな音が自然の中に溶け込んでいくようで。
いくつかの音を鳴らしたなら、あとは指が自由に動いた。喉を震わせ、唇から歌が溢れた。
森の音を邪魔せずに、可能であるなら引き立てたいと願うかのようなその即興曲に、ユトの口許も緩み、それから彼自身も音を重ねてハーモニーを生む。ぱらり扇を開いたなら、曲に身体が応じるままに舞いをひとつ。
──ああ、楽しいね。
ひらと舞う白い袖の蔭から視線を遣るのは弟子に取った少女の姿。
自分を継いでくれる存在が欲しいと思った。そんなエゴにまっすぐに応えてくれる彼女が眩しくて、本当に嬉しい。
──やっぱり僕の目は間違ってなかったよね。
胸に宿る温かな感謝は、この曲を共にすることで伝わるだろう。
「、」
ふと気配を感じて振り返ったなら、桃色の下草の中に白い姿があることにユトは気付いた。
「……賑やかすぎたならごめんね。聴き入ってもらえたなら光栄だよ」
それはまんまる|鶉《うずら》の雛のような。けれどもこもこの羽毛は白で、確かに額に小さな角がある。そして──鶉よりもずっと、大きい。明らかに雛の羽毛なのに成鳥ほども大きさがありそうだ。
敬意を示さないといけないんだよねー、と思い立って拝むようにしたユトの声と行動にソードハープの演奏を止めたシャンティはけれど、純粋な好意に瞳を和らげた。
触れてみたい。うずうずと指先が弦をぴんと弾いてしまったその表情にユトは軽く吹き出した。
「白いもふもふ可愛いよねー」
近付いてくれないかな。あわよくば触らせてくれないかな。なにか食べるかな、なんて。ユトは鞄をあさったけれど、鶉もどきの霊獣はばさりと大きな翼を広げ、空へと舞い上がった。
「わぁ……」
少女の感嘆が零れる。翼は鶉のものとはまるで違い、大きく長く広がって、ちいさな身体からは長い長い尾羽が流れて揺れた。
届かないと知りつつも、手を伸ばす。憧れて、惹きつけられて。
それを眩しい思いで見つめ、ユトは彼女の肩へ手を置き、己も霊鳥の行方を目で追った。
「僕はいろんな桃華獣が気になるけど、シャンティが鳥に焦がれるのは新発見だね」
素直な感想に、シャンティはひとつ肯いた。
自由だから? それとも、その自由に強さを見るから? 問うてみたい気はしたけれど。ユトは敢えて口を閉ざして一緒にもひとつ、肯いた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
炬燵家・珠緒
アドリブ歓迎
桃華獣お任せ
うわぁ、見渡す限りピンク色〜〜
すっごくキレイ〜〜
ご主人様もこ〜んな景色を見たら間違いなく優しいお顔になっちゃうね〜〜
ん、水の音?
きっとあっちだね〜〜
…ん、んん?
これは、もしかして…迷ったかな?
おかしいなぁ、ちゃんと水の音が聞こえる方に進んだのに〜〜
ん〜〜でも、この景色もすごくキレイだし
お花のいい匂いもいっぱいするし
お散歩だと思えば最高だよね〜〜
でも、いっぱい歩いたせいか、ちょっとお腹空いちゃったかも〜〜
どうしよう、なんか食べたら…怒られちゃうかな〜〜
このあといっぱい食べれると思うから、ガマン…
はっ!? お腹の音が…っ
誰も聞いていない…って、もふもふな子が〜!?
キミは誰?
●きみに捧ぐ、初めての
新調した、この世界に合う赤のワンピースにひらりと薄衣を揺らし、少女はぴくぴくと三角の両耳を動かした。
「うわぁ、見渡す限りピンク色〜〜、すっごくキレイ〜〜」
炬燵家・珠緒(まいごのまいごのねこむすめ・f38241)はそっと首に下げた柘榴石にそっと触れた。いつだって想うのは、ただひとり。
──ご主人様もこ〜んな景色を見たら間違いなく優しいお顔になっちゃうね〜〜。
一緒に来られたら良かったのにな~~。ちょっぴりぶっきらぼうな口振りだけど、優しくっていつも面倒を見てくれて、でも奥の奥の方では張り詰めた想いを秘めているあのひとに、肩の力を抜ける場所が提供できたらいいのに。
振り返っても桃一色の世界に彼の黒髪はなくて、珠緒はゆらりと尻尾を揺らした。
「いいも~ん。たっくさん想い出つくって、教えてあげるんだから~~」
猫の耳をぴんと立て、弾む足取りで猫娘は歩き出す。
だが。
「……ん、んん?」
行けども行けども、水辺に着かない。というか、水の音が近付いた気がしない。それどころか、水の音を“聴”失っている……?
「これは、もしかして……迷ったかな? おかしいなぁ、ちゃんと水の音が聞こえる方に進んだのに~~」
娘は忘れている。美しい景色に出会って自身が足を止め、歩き出したときの方向が違ったことを。馨しい花の香にしゃがみ込み、立ち上がったときに嬉しくてくるんと回ったことを。
「ん~~」
耳を澄ませばまだ、水のせせらぎは聴こえる気がするし。迷子の召喚獣はにっこりと微笑みに口許を和らげた。
「まあ、お散歩だと思えば最高だよね~~。……でも、」
元より焦る気持ちなんて皆無。いくらでも巻き返せばいい。けれど、そっと珠緒はお腹に触れた。
「いっぱい歩いたせいか、ちょっとお腹空いちゃったかも~~」
だってこの場所、ずぅっとおいしそうな甘い桃の香りが! 喉を鳴らして、まるまるした桃の果実を見上げ珠緒は耳を下げた。
──どうしよう、なんか食べたら……怒られちゃうかな~~。
ご主人様、ごはん前におやつ食べたら怒るもの。……ううん、怒るよりも、がっかり、って顔。
彼の顔を思い出したなら、珠緒は唇を引き結ぶ。このあといっぱい食べれると思うから、ガマン……!
「はっ?!」
決意とは裏腹に、くきゅるるとお腹が鳴ったから「誰も聞いてない……っ」赤い顔で珠緒は急いで辺りを見回して。
「あっ……!」
目が合った、もっふもふの白い兎。額にはちょっぴり小さな角が生えているところが、普通の兎とは一線を画している。まだ角は短いから、こどもだろうか。
「キミは誰?」
それは敬意というよりも、純粋な友好。
長い耳を揺らして身を翻す姿は、逃げると言うよりついてこいと言っているようで。止まり、振り返ったもふもふを、珠緒は笑って追い駆けた。
大成功
🔵🔵🔵
第2章 日常
『水辺に佇んで』
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POW : 野外活動を楽しんでいる
SPD : 語らい団らんしている
WIZ : 穏やかに過ごしている
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種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●水辺の宴
桃色の世界を抜けた先には、やはり桃色が広がっていた。
だけど、一色ではない。
空は青く高く澄んで雲は白く、下生えの草は緑を取り戻し、それを切り取るように澄み切った小川が流れている。
追ってきたせせらぎの音。水底の石に弾ける水滴。やわい陽光に光が散る。
草の上にそのまま座って点心に舌鼓を打つ者も居れば、薄絹の天幕を張った下で簡易の|卓《テーブル》と椅子に腰掛けることも可能だ。
点心もたっぷり餡子の|饅頭《まんとう》や胡麻団子に、あるいは杏仁豆腐に、タピオカの甘煮、そして仙桃を冷やしたものや、あるいは桃果汁を寒天で固めて賽子型に切ったものもある。
もちろん酒が振る舞われ、桃の果実水も飲み放題だ。……こどもと判断された者には酒はもらえないそうだが。
柔らかな弦楽が鳴り、緩やかに舞う者もある。
そして、白い毛並みの桃華獣が寄る。
家ほどの大きさの兎型や、白に黒い縞の虎、大小様々な狼に、真白の鷹、鶴、あるいは雀。毛玉のような幼獣たち。
そのどの鳥獣の額にも、桃の花咲く角がある。
それら以外の桃華獣も、探せば見つかるかもしれない。
彼らと親しむのに必要なのは慮る想い、それだけ。霊獣たる彼らは霞より英気を養う。
屋台の娘が右拳を左手で包み、微笑む。
「|欢迎《ようこそ》。寛いでいってね!」
エンマ・リョウカ
妻のアリサ(f38946)と
さっきの場の空気と
妻が見つけてくれた桃にも癒されたけど
この場の空気は更に別格だ
「成程…桃華獣達がここに居るのも納得だ」
私がアリサの傍に居て安心できるように
彼らもこの場と空気に安心して癒されているのだろう
「大丈夫。警戒してる様子もないからね…触れてごらん」
それに、獣達と戯れるアリサの様子を見ていたら
やっぱり次の戦いには共に行けたらと
この子達を護る為にもと思う
「アリサ…こんな時にでごめんな。次の戦いには一緒に向かおうか」
二人で話しながら柔らかな獣達と戯れて
それに話せた事で、落ち着いた安心感もある
だからこそまた約束しよう
「あぁ、約束だ。また一緒に遊びに来よう」
アリサ・ラサラリーン
夫のエンマ様(f38929)と
馥郁とした香りと光と水にただ見とれます
見ると思慮深い瞳の白狼と可愛い兎が
エンマ様と近づいて
「…触らせて頂けるでしょうか…」
ドキドキと手を伸べると…わぁ!
狼さんが優しく鼻を寄せ兎さんは膝へ
角から桃の香がふわり
狼さんがエンマ様に祝福を授けるように頭を寄せた後
悩み顔だったエンマ様がわたしに思いがけない言葉を
「はいっ!喜んで!」
今迄ご心配の余り戦いへ出ないよう仰ってたので嬉しい…
これから何処へもご一緒出来ますから!
願えばお連れできると聞きましたが…いいえ
この方々はきっと永遠に此処に
ですから
「覚えてて下さい。そしてまたいつか遊んで下さいね」
必ずまたと笑顔でエンマ様とも約束を
●きっと共に
さらさらと耳に心地よいせせらぎの音。降り注ぐ柔らかな光。
そして届く桃とすがしい緑の香りを胸いっぱいに吸い込み、うっとりと瞳を細めるアリサ・ラサラリーンの横顔に、エンマ・リョウカもそっと瞼を伏せた。
ここに到るまでのすべてを占めるほどの甘い香りと、妻──アリサが見付けてくれた、それに負けないほど甘く瑞々しい桃にも癒されたけれど。
──この場の空気は更に別格だ。
「成程……、桃華獣達がここに居るのも納得だ」
ほんの僅かな物音を聞き取り、瞼を開いて流したエンマの視線を追ったアリサは「まぁ……!」胸に手を添えて相好を崩した。
そこには、思慮深い瞳の凛々しい狼と、ぴょこりと跳ねる愛らしい兎。
二匹とも毛並みは真っ白。桃の枝のような角が一本額に生え、そこから桃の花が咲いている。兎の角の方が短いので幼いのだろう。桃華獣。桃源郷に棲まう霊獣。
眦は優しく、落ち着いた様子で川辺に伏せる狼。兎はぴんと立った耳を揺らし、夫婦を見上げている。この場の空気に安心し、癒されているのだろうとエンマは思う。
──私がアリサの傍に居て安心できるように。
「……触らせて頂けるでしょうか……」
愛しい妻へと視線をやると、彼女は恐る恐ると言った様子でそう呟く。エンマは笑みを浮かべ、軽く首を傾げる。
「大丈夫。警戒してる様子もないからね……触れてごらん」
相手の視界に収まるように意識しながらそろりと近付いて、アリサはそっと草の上に膝をつき、手を差し伸べた。胸の鼓動が耳まで聴こえそうだ。
「……」
狼の長い睫毛の下、アリサを見て。
「……わぁ!」
ぴょいと兎は彼女の膝に飛び乗り、狼は赦すとばかりに優しく鼻面を彼女の細い指に寄せた。近付いたことで角から桃の香がふわりと漂った。
兎の背に触れると、ふかっ、と指が柔く白い毛並みに埋まる感覚。
「エンマ様! 見てくださいエンマ様、とってもかわいい……」
「……」その姿を見つめるエンマはけれど、やはり先程から脳裏を占める思いが確かなものとなって胸の内に実るのを感じていた。
「アリサ……、こんな時にでごめんな。次の戦いには一緒に向かおうか」
美しい風景の中。穏やかで和やかに霊獣たちと戯れる妻の姿を見ていたら、やはりそう思えた。この子たち──否、この景色を護るためにも。
思案顔だった旦那様の口から、突然の思い掛けない言葉。アリサは兎に手を触れたままきょとんと目を丸くして。
それから、ぱぁっと輝かせた。
「はいっ! 喜んで!」
──今迄、わたしをご心配くださる余り、戦いへは出ないよう仰ってたので嬉しい……。
認めてもらったような。より傍に居ても良いと許してもらったような。あたたかな充足感が心を埋めて笑み崩れるアリサの前で、まるで祝福を与えるかのように狼がその角で祝福を与えるかのようにエンマへと触れた。
その様子にアリサは大きく肯く。
「これから何処へもご一緒出来ますから!」
だからエンマも首肯を返す。
「……頼む」
ずっと胸に仕舞い続けていた思いを口にして彼女に伝えられた安心感も手伝い、穏やかにエンマも狼のしっかりしていつつもしなやかな毛並みへと手を伸ばした。
兎が跳ね、それを追うアリサ。
そうしてふたりと二匹で優しい時を過ごし、アリサはふと振り返る。
──願えば外へもお連れできると聞きましたが……。
いいえ。彼女は自らの考えに首を振った。この方々はきっと、永遠に此処に。だから。
「わたし達のことを、憶えてて下さい。そしてまたいつか、遊んでくださいね」
身を屈め、霊獣たちへと約束をひとつ。
そして彼女は大切なひとへ小指を立てて差し出した。
「エンマ様も! 必ず、また」
「あぁ、約束だ。また一緒に遊びに来よう」
「約束は、それだけではありませんからね!」
そう、ふたりは微笑んだ。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
花色衣・香鈴
【花鈴】
宴はそっと通り抜け、桃華獣の許へ
「こんにちは、お初にお目にかかります。…召し上がられますか?」
持ってきた仙桃を見せるけれど、人の様な飲食をしない様で
「では、暫しお傍に居ることをお許しください」
そう断わって傍らに座し、それ以上彼らに触れるでもなく辺りを眺めていると
「花蓮さん」
やってきたのは今のわたしにとってお抱えの料理人みたい人
使用人の家に生まれたわたしにはいつも少しこそばゆい
「よかったら、一緒に食べませんか」
勝手に摘んできてしまった物だから日頃のお礼にはならないけれど
「もうひとつ差し上げるのでよかったら中の方にも」
美味は共有できる方が幸せになる
桃華獣の方々も満たされてくれていると嬉しい
瓊・花蓮
【花鈴】
「なるほど、確かに人界よりも更に美しく、清らかですね」
来たのは個人的な観光目的
宴を見遣れば、良い腕の者が居ると感じられる料理の数々
主との契約で自我を持って間もない私は知識や技術こそあれ正直幼子の様なもので
何もかもが新しくて眩しい
「…おや?」
纏った衣故か桃華獣に囲まれる様は仙女かと思うけれど体に花咲く姿は確かに主より見守る様仰せつかった相手
「馴染んでおられますね、香鈴さん」
傍らの桃華獣にも頭を下げてから座る
「これが噂の。…いただきます」
人を癒す超級料理人としては興味深い味
私の器になってくれた少女なら何と言うかも確かに気になる
「有難く頂戴します」
許されるなら帰る前に桃華獣と少し触れ合えたら
●|平静的《なごやかな》
「なるほど、確かに人界よりも更に美しく、清らかですね」
主より見守るよう仰せつかった少女。その身体が蝕まれずに済むらしい仙界の桃源郷へ足を踏み入れた瓊・花蓮(カティア・f38876)はあちこちの屋台から立ち昇る香りにひとつ、ひとつ、足を止める。
腕の良い料理人がいるらしい。蒸し上がった饅頭はふっくらほかほかとほの甘い生地の香りを漂わせ、胡麻団子は香ばしい。枸杞の実が鮮やかな杏仁豆腐は白くなめらかで艶めいている。
波打つ髪は軽い足取りで跳ねる。主たる竜神と契約を結び自我を持った花蓮にとって、初めて見る世界の料理や技術はなにもかもが新しくて眩しい。
「欢迎。おひとついかが?」
「ありがとうございます。では、おひとつ」
柔らかな漢服の裾を躍らせながら花色衣・香鈴は宴の中をそっと抜け、せせらぎの上流へと向かう。喧噪が離れた場所にはより警戒心の強いものたちなのだろうか。白い桃の角持つ霊獣たちの姿がいくつかあった。
拱手をしようにも、|裳《スカート》に仙桃を摘んでいるが故に、香鈴はそっと頭を下げて腰を折った。
「こんにちは。お初にお目にかかります。……召し上がられますか?」
真白な鹿の姿の桃華獣や、しなやかな雪豹の如き霊獣の黒い瞳が彼女を見上げ、そして穏やかに目を伏せる。許されたようだ。
霊獣は人のような飲食をしないらしい。示した仙桃には豹はぴるりと小さな耳を震わせ、白鹿は香りで満たされるかのように鼻面を寄せて優しい眼差しを香鈴に向けた。
「では、暫しお傍に居ることをお許しください」
そう断り、静かに彼らの傍に腰を下ろして清浄な空気を吸い込んで鮮やかな景色の中に浮かび上がる白い姿を眺め、小川のせせらぎに煌めく陽光の輝きを見るともなく見つめた。
どれだけの時が経ったのかは判らない。
「……おや?」
「花蓮さん」
聴き覚えのある声に振り返る。膝の上にある仙桃の甘い香りが身動ぎと共にふわり舞う。
この世界によく合う桃色の瞳の女性──花蓮は、今の香鈴にとってお抱えの料理人みたいなひと。目を丸くしていた花蓮は周囲の霊獣たちへも礼をし、香鈴へも了承を得てから隣に座った。その丁寧に過ぎる所作に、香鈴としてはくすぐったい。使用人の家に生まれた彼女にとってそれは、己こそすべき所作だったから。
「馴染んでおられますね、香鈴さん」
自然の中。川辺で桃華獣に触れるでもなくただ共に在った姿はまるで仙女のようであったと微笑む料理人に、花咲く娘は畏れ多いと小さく笑う。
「よかったら、一緒に食べませんか」
裳の上からひとつ、よく熟れた仙桃をひとつ取り上げる。勝手に摘んできてしまったものだから、日頃のお礼にはならないけれどと告げる彼女に、花蓮は「これが噂の」じっとその果実を見つめた。
ひとを癒す超級料理人としては、興味をそそられる。
「……いただきます」
「もうひとつ差し上げるので、よかったら中の方にも」
竜神によって生まれた人形。その形代を借り受けたのが精霊が花蓮であり、“器”でありながら今は“中”にいる人形──カティアへ。
美味は共有できる方が幸せになるからと告げる香鈴に、確かにと花蓮も肯く。
「有難く頂戴します。……あ、では、もしも宜しければ、香鈴さん、こちらも分けませんか?」
紙袋に包まれた蒸したての饅頭を差し出せば、香鈴もぱちりと目を瞬いた。
その香りが興味を惹いたのか、白いひよこの桃華獣がちいさい脚で十数羽、ぴよぴよと寄って来た。もちろん、結局ちいさな嘴に啄むことはなかったけれど、花蓮が「食べますか?」と差し出してみた千切った生地を握る手に、もふもふふわふわ、柔らかい羽毛がいくつも触れる。
「わぁ……」
ふかふかなひよこは我がもの顔で香鈴の膝の上にも行き交って、その自由な姿にふたりは顔を合わせて笑み合う。
「これは、癒されますね」
「はい。美味しい食事には楽しい同席者です」
ぴよぴよ!
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
リィンティア・アシャンティ
気付いたこと
振り向かず進んでいた
そっと振り返ってみると程よい距離に毛の長い大きなヤギのような姿のもふもふが
ずっと付いてきてくれていたのでしょうか
大丈夫でしたよ、たどり着けました
初めての拱手
それから感謝を伝えてみましょう
もふもふさせてもらえるでしょうか?
大きなもふもふさん
安心感があります、とても
魔王様もきゃって言うかも?
桃の木の下、猫王さまのためにボンボニエールを置いてのんびりと
ここはきらきらで、澄んでいて、素敵なところですね
エルフヘイムも素敵なんですよ
バイオリン演奏と歌で伝えてみたり
おいしいお菓子を作る意地悪魔王様の事を話したり
ほんのり桃の香りがするもふもふに包まれ
ずっとほっぺゆるゆる状態です
●やわい時間
風が渡ってリィンティア・アシャンティの翠がかった銀の髪が泳ぐ。濃厚な桃の香を吹き飛ばすみたいに、清廉な空気が抜けた。結界を越えたことを彼女は知る。
猫王さまがてこてこと怖じぬ足取りで先へ進むから、急いで追い掛けたリィンティアはふと背後の気配を感じて振り向いた。
「あ……」
少し離れた位置に、落ち着いた瞳の毛の長い山羊のような獣がいた。ぐるりと巻いた黒い角に咲く桃の花。桃華獣。
出会ってみたいと願っていた姿に、リィンティアはそっと右拳を左手で包み込む。初めての拱手。イメージトレーニングはばっちり。彼女の傍らに飛ぶルノも、彼女の見様見真似で挨拶をする。
軽く頭を傾げてから霊獣も応じる彼女の横、桃源郷の入口へと進んできた。並ぶと霊獣の体高はリィンティアの腰を優に越え、頭は彼女の胸辺りにある。そしてふかふかもふもふの柔らかそうな毛並み。
「……ずっと付いてきてくれていたのでしょうか」
楽しくて嬉しくて、振り向きもしなかった桃の木々の中。ふらりふらりと定まらぬ足取りのリィンティアを気遣ってくれていたのだろうか。
ふわと微笑んで、頭を下げる。
「大丈夫でしたよ、たどり着けました。……見守ってくださって、ありがとうございます」
立ち話もなんですからと促して、彼女たちは桃源郷の中、宴からすこぅし離れた桃の木の下に腰を下ろした。
膝の上にはまんまるボンボニエール。気にせず先に進んで行った猫王さまが好きなときに帰って来られるように。
「あ、あの、」
敬意を表せと言われているけれど。もふもふさせて欲しい気持ちには抗えない。だって大好きなのだもの! 失礼にならないかと窺うリィンティアの視線に、山羊の形の霊獣は彼女の身体に触れるようにして足を折った。
もふっ。
「ふゎ……」
想像以上の柔らかさに思わず声がこぼれ落ちた。その瞳を覗き込んで許可を得たなら、彼女はその背にしがみつくようにして抱き付いた。ふわっ、とやさしい毛が頬を撫でて、桃の香が鼻をくすぐった。
──安心感があります、とても。
──……こんなに大きなもふもふさん、……魔王様もきゃって言うかも?
愛しい旦那さまになんて報告しましょうか。いいえ、なんにも言わずにお連れしたいくらい。
身体を預けながら幸福の吐息を零し、リィンティアは呟く。
「ここはきらきらで、澄んでいて、素敵なところですね」
宴の賑やかさも溶け込んでいくみたいで、陽の光も川のせせらぎも、なにもかもがやわらかい。彼女が彼と過ごす森の都市国家も似ているけれど、どこか大きく違う。
「私たちの住む町も素敵なんですよ。温かくて、力強くて。そこでお菓子屋さんを開いているのです。おいしいって皆さん喜んでくれるのが、とっても嬉しいんです。……でもっ、いっつも魔王様が意地悪してくるのですっ」
聴いてくださいとぷんすかするリィンティアだけれど、その頬はずぅっとゆるゆるさん。
めいっぱい語ったら、聴いてくれたお礼にとバイオリンで一曲。奏でる音はうつくしい空気に溶けるように。
桃華獣がうっとりと瞼を伏せる傍らで、猫王さまはまんまるボンボニエールを前脚でころころと転がした。
大成功
🔵🔵🔵
陽向・理玖
【月風】
恋人の瑠碧と
天幕の下に腰を下ろし
いやー綺麗な景色だなぁ…
それに点心も美味そう
瑠碧何か食う?
俺杏仁豆腐…
っと
あれが噂の桃華獣
食べようとした手を止め近寄って来るのを待って
おおー白に黒い縞の虎!白虎っぽい!
本当に角生えて花咲いてる!
花があるせいか本当の虎より親しみやすい気がするな?
喉元撫でて
竜っぽいも居たらいいのに
って
瑠碧の周り鳥いっぱいじゃん!
それに何かもふもふ…もふもふに花咲いてる…
幼獣そっともふもふしてから瑠碧の頭に乗せて
瑠碧ももふもふもめっちゃ可愛い
こいつら何か食えるのかな?
仙桃とか…どうだろ?
差し出しつつもふもふ
おー美味そうに食うな
ほらやってばっかじゃなく瑠碧も
あーんと仙桃差出し
泉宮・瑠碧
【月風】
恋人の理玖と
一緒に天幕の下へ行き腰を下ろし
本当、桃の花も綺麗ですね
…と
点心に目をやる前に、桃の花が動いた気がして
じぃっと桃の花を見て
…あの子達が、桃華獣でしょうか
白虎が理玖の元へ近寄るのを微笑ましく見守った後
花が浮いているのは、鳥でしょうか
おいでおいでと鳥の桃華獣達を呼び
呼び…あれ?
何だか…沢山いらっしゃいました
一本角に花が咲いて、白いもふもふ…
どの子も可愛いです
肩に乗った子には頬を寄せて
乗れない大きさの子はよしよしと撫で
頭に重みが、と思ったら、更に幼獣が追加されておりました
掌の幼獣の子に、君も頭の上に乗る?と訊いてみます
鳥の子は桃も食べそうです
皮を軽く剥いて
どうぞと皆へ差し出しますね
●綿毛ときみ
「いやー綺麗な景色だなぁ……」
「本当、桃の花も綺麗ですね」
薄絹の天幕の下に置かれた卓についた陽向・理玖(夏疾風・f22773)と泉宮・瑠碧(月白・f04280)は図らずも同時に目を細めた。
見通す小川と緑、桃色の景色。きょろと理玖はいくつもある屋台にも視線を走らせた。
「点心も美味しそう……瑠碧何か食う? 俺杏仁豆腐、」
言い掛けた言葉が途切れる。「っと、あれが噂の桃華獣」のそりのそりと歩き寄ってくる獣の全容を確認した途端にかたんと理玖は立ち上がって瞳を輝かせた。
「おおー白に黒い縞の虎! 白虎っぽい! 本当に角生えて花咲いてる!」
天幕の下にも我が物顔でやってくる虎の前にそぅと膝をついてふかふかの毛並みに手を滑らせる。喉元をくすぐってやれば、ゴロゴロと猫科らしい音を鳴らして虎の霊獣は目を細め、頭を擦りつけるようにする。
しっかり大きいのに懐っこいのは、実はまだ子供なのだろうか。そう考えたとき、虎の蔭からより小さい幼獣たちがころころと転がり出てきて理玖の足許に纏わりついた。
はは、と一頭一頭が跳ねて寄ってするのに手を差し伸べる。
「花があるせいか、本当の虎より親しみやすい気がするな?」
竜っぽいも居たらいいのに。想像するだに格好いい。白い毛並み──鱗?──の竜に、桃の角を持つ竜。
でもこの虎も、瑠碧の傍らに侍る姿はさぞや絵になるだろう。
「なぁ瑠碧──、って、」
幼獣の一頭を抱き上げ振り返ると白い綿毛みたいなもふもふに覆われた恋人の姿。
「瑠碧の周り鳥いっぱいじゃん!」
「お、思ったより沢山いらっしゃいまして」
動けずあわあわと告げる瑠碧に、理玖は笑った。
理玖が白い虎と戯れるのを微笑ましく見守っていた瑠碧はふと視界の奥の桃の木の花が動いたような気がして目を凝らした。桃色の中にうずもれる、白。
「……あの子達も、桃華獣でしょうか」
おいでおいでと手招いてみたなら、ぱたたたた……と短い翼を羽ばたいて一羽がやってきたかと思うと「あ、あれ?」次々と小さな鳥型のもふもふたちが次々とやってきて、瑠碧を止まり木にしてしまった──という訳だ。
「なんかもふもふ……もふもふに花咲いてる……」
瑠碧の肩に留まるふかふかの毛玉を理玖がちょいちょいと指先でつつけば、ピュイと黒い瞳の霊獣が鳴く。
「ふふ、どの子も可愛いです」
肩の子たちには頬を寄せ、乗り切れず膝にいる子たちを撫でて眦を和らげ長い耳をちょっぴり下げる瑠碧に、理玖は大きく肯いた。
「ああ、瑠碧ももふもふもめっちゃ可愛い」
「っ、」
まっすぐな飾らない恋人の科白に瑠碧の頬が赤らむ。照れ隠しに僅か俯いた途端、ずし、と頭に重みが増えた。
「みゃあ」
小さな鳴き声。ふかふかのあたたかさに頭が包まれる。理玖が抱いていた虎型の幼獣だろう。掌に膝の鳥を掬い、
「君も上に乗る?」
「ピュイ」
「こいつら何か食えるのかな? 仙桃とか……どうだろ?」
「鳥の子たちは食べそうですが……」
頭の重みにふらふらしながらも桃の皮を剥き、理玖へと手渡す。瑞々しい果汁が滴る。
「よしよし」指を子虎の柔らかな毛に倦めるみたいにして掻いてやりながら理玖は受け取った桃を差し出す。が、獣たちはふんふんと匂いを嗅ぐだけだ。
「やっぱり、霞だけで充分なんでしょうか」
仙桃ならば霊獣でも口にしてくれそうだったけれど。鳥型の桃華獣たちもふわふわと身を寄せ合い、歌うばかり。
「じゃ、これは俺達で食おうぜ。はい瑠碧、あーん」
「あ、あーん……」
頭の上の幼獣が落ちてしまわないように押さえる必要があるから、手は使えない。雛みたいに唇を開いた瑠碧へ桃を与えて理玖は、に、と笑う。
「美味い?」
「……むぐ、……はい」
あまい味は、きっと桃のお蔭だけじゃない。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
幽谷・倖
すぐりさん(f34952)と
まずは仙人さん達に挨拶しよう
桃美味しかったけど、並べられた料理を見ればまた食欲が湧いてくる
私は胡麻団子が食べたいな
果実水も一緒に頂こう
すぐりさんと並んで草の上に腰掛ける
なんだかピクニックみたいだね
胡麻団子、よかったらすぐりさんもどうぞ
饅頭もありがとう
……美味しい
のんびりしてたら目についたのは桃華獣の姿
あの大きな兎さんとかどうやって生活してるんだろう……?
気づくと近くにいたのはふわふわした毛玉みたいな子
ちっちゃい子もいるんだね
……天心、食べるかな?
お団子を差し出したりして反応を窺ったり
身体も撫でさせてもらえたり……する?
あと、よければ写真も撮りたいな
今日の思い出に、ね
紅林・すぐり
倖さん(f34952)と
素敵な宴会、ありがとうございます
仙人さん達には忘れず挨拶
点心も有り難く頂きましょう
ええっと、饅頭と桃果汁にしましょうか
良い香りです
倖さんと一緒に座って食べます
え、胡麻団子頂けるんですか?
僕の饅頭も是非どうぞ
こうやって分け合うの、楽しいですよね
桃華獣も可愛いです
確かにウサギさんのインパクトは……凄いです
あれだけ大きければ強いのかもしれないですね
不思議な生き物もいるんですねぇ
あ、本当だちっちゃい子も
僕も饅頭を差し出してみましょう
動いている様もふわふわで和みますね
倖さん、表情はあまり動かない方なのは知ってますが
ふわふわさんを前にこう、表情が和らいでいるような
本人には内緒ですが
●いつもとは違って
「素敵な宴会、ありがとうございます」
「……ありがとうございます」
「こちらこそ、来てくれて|谢谢《ありがとう》! さぁ、なににする?」
まずはと屋台に立つ仙人へと挨拶を述べた紅林・すぐりと幽谷・倖へ、快活な仙人は目の前に並ぶ点心を腕を広げて示す。有り難く、と告げるすぐりの隣で、じっと倖はラインナップを見つめる。
──桃も美味しかったけど、……また食欲が湧いてくる……。
蒸したてほかほかの饅頭に揚げたてじゅわじゅわの芳ばしい香り弾ける胡麻団子。ぴかぴかに光る杏仁豆腐。
「良い香りです。……えっと、饅頭と桃の果実水にしましょうか」
「私は胡麻団子が食べたいな」
他のも食べてみたいけれど、とりあえず。
柔らかい川沿いの草の上に並んで腰を下ろして、借り受けた箱膳に食べ物やふたり分の果実水を並べておいたなら、
「なんだかピクニックみたいだね」
いつもの憮然とした表情のままのように見える倖の瞳が和らいでいるのを見つけて、すぐりも「そうですね」と空を見上げる。清々しい空気とせせらぎの音に、自然と口許も緩んだ。
そんな彼の前に、すいと差し出された丸いもの。
「よかったらすぐりさんもどうぞ」
「え、頂けるんですか?」
色違いの双眸を瞬くすぐりに、どうして? と逆に問うような倖の視線が返る。ピクニックに来たら友達と食べ物を分け合うのは当然だ。
その視線の意味をすぐりも察し、「いえ、」小さくかぶりを振った。
「では、僕の饅頭も是非どうぞ」
「あ、ありがとう」
ねだったみたいに思われたかな。ちょっぴり照れつつ、もらった饅頭を真ん中でふかっと割れば白い湯気が溢れて、甘い餡子の香りに包まれる。
熱々のそれをふぅふぅと吹き冷まし、「……」もういいかな。「……、あふっ」ひと口齧ってはふはふと熱を逃がす倖の姿を、すぐりはにこにこと笑みを浮かべたまま見守る。ついと果実水を彼女の方へ寄せてやるのを忘れずに。
「……美味しい」
やっとのことでひと口目を飲み下した倖の感想に「なによりです」と応じながら、すぐりももらった胡麻団子をひと齧り。ぱりぱりと胡麻の皮が割れる音がした。
「こうやって分け合うの、楽しいですよね」
「うん。……すぐりさんと来られて良かった」
特別な意味はなにもなく。言葉の通りの感想をこぼす倖に、すぐりもそのままの言葉を受け取って微笑む。
少し点心が冷めるのを待ちながら視線をやれば、必然のように目につくのは桃華獣。
それも、家ほどの大きさの。
目につくどころの騒ぎではない。完全に景色の一部を切り取っている。
「あの大きな兎さんとか、どうやって生活してるんだろう……?」
「確かにウサギさんのインパクトは……凄いです」
あれだけ大きければ強いのかもしれないですね、とすぐりはほんの少しずれた感想を漏らす。改めて見れば、確かに虎の形の桃華獣だって上から圧し潰してしまえそうだ。
耳を倒し目を細めて陽光に照らされるのを楽しんでいるふうの兎には、そんな気配は感じないけれど。
──……見てるだけで、こっちも眠くなりそう……。
饅頭を食み、穏やかな時間を過ごしていたら足に触れた柔らかいもの。
「っ? ……あ、ちっちゃい子もいるんだね」
「あ、本当だ。……まさかこの子があの大きさに? 不思議な生き物もいるんですねぇ」
ふわふわした毛玉には小さくて短い兎耳が生えていて、爪の先くらいの角が申し訳程度に生えていて。黒いまんまるの瞳がふたりを見上げる。
「……点心、食べるかな?」
「どうでしょうか。餡の部分はやめた方がいいかもしれません」
ふたりはそれぞれが求めた点心の皮を子兎霊獣に差し出してみるものの、ふんふんと兎は匂いを嗅ぐだけ。ぴょい、ぴょい、と短い前脚で跳ぶ姿は遠退かず、特に気分を害したようではなさそうだが。
「動いている様もふわふわで和みますね。可愛いです」
「撫でさせてもらえたり……する?」
窺う倖の視線に、ぴこぴこと短い耳を動かす霊獣。そっと手を伸ばせば柔らかい毛並みに瞳が輝く。
──倖さん、表情はあまり動かない方なのは知ってますが。ふわふわさんを前にこう、表情が和らいでいるような。
本人には内緒ですが。
「あ、そうだ、写真……」
傍に置いてあったカメラを倖の手が探し、けれど、無い。
「え?」
「視線、ください」
すぐりの声に向けば、倖と霊獣へレンズを向ける彼が居て。だから倖は照れつつも断りをいれてから霊獣の子兎を抱き上げ、共に写る。
「今日の思い出に、ね」
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ユト・フォンデュ
【夜真珠】
ありがとー、と看板娘にゆるふにゃ笑顔
僕はお饅頭と冷やし仙桃とお酒ー
届いてから饅頭にかぶりつき笑顔
シャンティにも差し出し
水のような感覚でお酒を飲み
おかわりくださーい
ザルに近いくらいに強い
弦楽や舞を笑顔で見て
白いもふもふを視界にとらえてそちらを見て手を組んで拝んで
やがて手を下ろして優しく見守る
先程の鳥さんじゃないかな
優雅にお辞儀をしてから、シャンティの動向を見守る
シャンティは本当に自分に自信がないなあ……
上を目指して進む君はとても魅力的なのに
……ねえ、霊獣様
もし良かったら、シャンティについて行ってみてくれないかな?
シャンティも本当は望んでるんだよねー
見守って
結果で激励したりお祝いしたり
シャンティ・フォンデュ
【夜真珠】
迷ってから杏仁豆腐と果実水に
師匠ありがとう…
優しい味がするね……
∑お酒スペース早い……
え、お酒だよね……
匂いから強そうだ
弦楽や舞に釘付け
もっと精進して、心を動かす演奏が出来るようになりたい
憧れの白い鳥にぱあっと目を輝かせる
真似して拝んで
また来てくれて嬉しいです
翼を持つ鳥が憧れで
小さな世界にひるまずに堂々と羽ばたけるところとか……
そっと近づいてお辞儀をする
手を伸ばして、撫でさせてもらえれば心が温かく
いつか成長したわたしを、貴方に見せに来るから…
そのときはまた会ってくれますか?
えっ、そんな恐れ多い……!!
師匠は隠したわたしの本音をさっと開けてしまう
■ダイス判定
60↑で連れ帰り
↓次の機会
●よりそい
「はい、|请《どうぞ》!」
「ありがとー」
十五年前から変わらないふにゃり柔らかい笑顔で、屋台の看板娘へと応じる。
卓の上には蒸し立て饅頭と冷やして切り分けた仙桃、ついでにことんと冷えたお酒を一本、……二本。いつもどおりのユト・フォンデュの選択にさっそく杏仁豆腐を掬うシャンティ・フォンデュは少しばかり呆れ顔。
「わぁ、ふっかふか! はい、シャンティもどうぞ」
あちちと半分に割った饅頭を弟子へと差し出し、さっさともう片方にかぶりつくユト。口いっぱいに甘い餡子の味が広がって、けれど厚めの皮のお蔭でしつこさはない。
「師匠、ありがとう……」
半分を受け取ったシャンティも、満面の笑みの師匠の姿に口角を上げつつ、ひと口ぱくり。
「優しい味がするね……」
「そうだね。おかわりくださーい」
「っ? ペース早い……え、お酒だよね……」
「? そうだよ?」
確かに二本あったはずの酒は視線を外した僅かの間にふたつとも空になっていた。空になった器からも度数の強そうな香りが漂っているけれど、ユトの白い肌はいっかな変化しない。
「……。……身体は大切にしてね、師匠」
言いたいことはたくさんあったけれど、結局シャンティはそれだけを伝えて匙の杏仁豆腐を口に運んだ。名の通りの杏仁の香りがやさしく喉を過ぎる。
視線を外せば二胡の調べに笛子の音が寄り添い、透ける絹をひらり舞わせて仙女が踊る。思わず感嘆の吐息が少女の唇からこぼれた。釘付けになる、というのはこういうことを言うのだろう。
弟子の視線を追ったユトもその弦楽へと耳を傾ける。洗練された楽だと判る。口許に笑みが自然を浮かんだ。
楽に、ではない。
決意を秘めた、シャンティの強い眼差しに。
──もっと精進して、こんな……心を動かす演奏が出来るようになりたい。
「あ」
「……え?」
ぽつりと声が落ちたのは白いもふもふが視界に飛び込んだから。かたんと椅子から立ち上がりユトは拱手して拝み、師匠の声と様子にシャンティもそちらへ視線を送り、ぱあっと目を輝かせて急ぎユトの真似をして拳を包んだ。
ちらと視線を向けた鳥は──鶉に似ていた。大きな鶉に。白く長い尾羽が目立った。
「先程の鳥さんじゃないかな」
「ま──また来てくれて嬉しいです」
優雅なお辞儀をしてから、ユトは一歩引く。シャンティは霊獣の前にそっと膝をつき、礼をする。
幼い頃から。師匠と出会う前から。
翼を持つ鳥は憧れだった。
小さな世界にひるまずに堂々と羽ばたけるところとか、どんな風だって読んで見せる姿とか。
許可を得てから手を伸ばして、ふかふかの毛並み……羽毛に触れれば自然と笑みが浮かんだ。
「……、」
撫でるたびに霊獣の黒い瞳が細められる。ふわ、と心が温かくなる。
何度も。
彼女が口を開いては声を呑み込むのを、ユトはもちろん見ている。
──シャンティは本当に自分に自信がないなあ……。上を目指して進む君は、とても魅力的なのに。
「いつか成長したわたしを、貴方に見せに来るから……、……そのときはまた、会ってくれますか?」
ようやく音になった言葉。
鶉もどきの霊獣は、ついと嘴を上げる。
なにかを伝えるみたいな黒い瞳。ユトはすいとシャンティの隣へ片膝をついた。
「……ねえ、霊獣様。もし良かったら、シャンティについて行ってみてくれないかな?」
「えっ、そんな恐れ多い……!!」
あわあわと手を振る弟子の少女に構わず、ユトはいつものゆるふわの笑顔を向ける。
「シャンティも本当は望んでるんだよねー」
「あ……、ぅう……」
──師匠は隠したわたしの本音を、いつだってさっと開けてしまう……。
勝てないと思う。背中が遠い。追いつけないって、いつだって思う。……いいや。追いつきたい。追いつくから。
その道程を見守っていてもらえたら。傍に寄り添ってもらえたら。
俯いた視線を上げ、ひたと桃の花の角をもつ霊獣を見据えた。
……桃華獣は応じた。
やわらかな首筋をすり、とシャンティの掌へと寄せる。
「! あ、ッありがとうございます……!」
「シャンティ、良かったねー」
肩の力を抜いてユトも微笑む。彼女の祝福にと更に弦楽の音が華やいで、シャンティは楽団たちへもぺこりと頭を下げたのだった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ルシエラ・アクアリンド
相棒と澄んだ水に高い空とそれを取り巻く風を楽しみつつ
先程の影を確かめるべく
神秘な雰囲気の花の中へ
大きな翼を思わせた音だから大きな鳥かと思ったけど
出会ったのはリコから聞いていた通りのほぼ真白なふわふわした
『龍』ではなく兎を彷彿させる様な小さな仔『竜』
正直愛くるしくも可愛らしい
生態は正直解らないけど仲間だったのかな?
(容姿他詳細お任せ
驚かさぬ様、微笑って「はじめまして」
当たり前だけど心からの言動で接していきたい
困っていたり何かをしたい様子なら許可を得手伝おうか
様子を見守り好きにさせつつ穏やかに時を共有したい
小さな事でも知れれば嬉しい
瞳を合わせ貴方も私と共に歩んでくれますか
良ければ未来を見守りつつ何気ない毎日を楽しまないかと。
心から頷いてくれるのなら一緒に行こうか
新しい世界だろうけれど馴染めるように力添えをしたい
人も隷従だって一人で生きる事はきっと難しい
けれどどうか思い通りに生きて欲しい想いも同居している
寧ろそれが私にとっては何よりの願い
無論肩の相棒に対しても
偶には里帰りに来るようにしないとね
●桃色の中で
桃源郷という名に相応しい宴の場を、頭上をくるりと旋回する相棒と共にルシエラ・アクアリンドは往く。
耳に心地よい音を立てて流れる小川は透明で、桃の木々の更に奥、高い高い空はどこまでも青い。
「さあ、お楽しみの時間だね」
悪戯っぽく微笑んで、ルシエラは歩き出す。向かうのは木々の間。
道中にもたくさん寛いでいる桃華獣がいたけれど、探求心が疼いた。一頭一頭、一匹一匹に丁寧に挨拶をしながら彼女は再び桃色一色の中へと進んだ。
結界を越えた先のそこは、完全なる神域。
静寂の中にも神妙な息吹を感じる。傷付けたりしないよう、より一層気を配りながら進む彼女の鼓膜を打ったのは、さっきも聞いた大きな羽ばたき。
「!」
狩猟者として気配の感知には長けている。間違いなくさっきの個体だと確信し、ゆっくりと振り返る。翼の音に怯えも警戒も無かったから。
だけど、落ち着いて振り返ったはずのルシエラの蒼穹帯びた碧の目はまんまるになった。
「お、大きな鳥かと思ったけど……」
「……?」
くて、と首を傾げるのは、ふんわりふかふかな真白の毛並みを持つ、まるで後ろ足で立つ兎のような姿。黒く丸い瞳に額から伸びる角と、そこに咲く桃の花。それが兎ではないと知れるのは、折り畳まれた白い翼と長く伸びる尾があるからだ。
最も近しい生物を挙げるなら『竜』。
角の短さを見るだに、まだまだ幼いこどもだろう。
結界の道中にルシエラを観察でもしていたのだろうか。もふもふの竜はちょこ、と両足で一歩跳んで彼女を見上げ、ふんふんと鼻を動かす。
──可愛らしい……。
きゅう、と胸が締め付けられるような情動を握り締め、慌てちゃだめ、とひとつ息をして整えて。
ルシエラは緩やかな動作で膝を折り、竜へと視線を寄せた。
「はじめまして」
幼獣と言えども相手は霊獣だ。真摯に、心からの言動で、丁寧に。
もしもなにか困っているなら手伝いたいと願っていたけれど、桃華獣にそんな様子はない。空を舞うファルコンスピリットを見上げて自由気ままにゆらゆらと尾を揺らしたかと思うと、ばさりと大きく翼を広げて飛び上がった。
相棒の速度に見慣れたルシエラだからこそ追うことが出来た速さだった。
見上げた先で、嬉しそうに蒼い鷹を追い回しじゃれる竜。聡明な相棒は無下にすることもできず、ぎりぎり追いつきそうなタイミングですいと翼を躱し遊んでやる。相棒のそんな姿を見ることも珍しく、自然と口許に笑みが浮かんだ。
しばらくそうして遊んだあと、ふわもこ竜はルシエラのところへ降りてくると彼女の足許にその柔らかい毛並みの頭をすり寄せた。
「……撫でていいのかな」
そっと耳の間を指先で触れると、黒い瞳がすいと細められて、長い耳が倒される。撫でられるのが好きなのか、あるいはそれだけ気を許してくれたのか。
見目が、仕種が、感じる信頼が、いとおしい。
頭だけでなく背に触れても竜は嫌がらず、ルシエラはやさしい毛並みを指に、掌に感じながら過ごす。相棒の鷹も肩へ戻ってきて、彼女は視線だけでおつかれさまと伝える。相棒の瞳は相変わらず優しく聡い。
「桃華獣さん」
呼ぶと細められていた黒い瞳がくりっと彼女を見上げた。その双眸を見つめ返す。
「貴方も私と共に歩んでくれますか?」
ファルコンと。かつては共に寄り添ったコヨーテと。大切な相棒たちと過ごした、何気ない毎日。良ければその中に加わって未来を見守りつつ、共にそんな日々を楽しまないかと。
「貴方が居てくれると、とても心強いよ」
彼女の風と寄り添う力とも相性が良さそうだし、
「……あと、たまには撫でさせてくれると嬉しいな」
悪戯っぽく微笑んで見せる。この子が撫でてもらうのが好きなんだとしたら、撫でる相手が要るだろう。ひとも霊獣だって、ひとりで生きることはきっと難しい。
──だけど……。
どうか、思い通りに生きて欲しいと願う気持ちも確かにルシエラの胸の裡には息づいている。肩の相棒に対しても、なによりも祈り願い続けていることだ。
彼ら、もしくは彼女たちが自らの意志でそこに居る──居てくれている。そうであることを望む。
静かに視線を重ねるルシエラに、幼い獣がどこまで理解しただろうか。それでも霊獣である。
「あ、」
ふか、と彼女の指先に首筋を擦りつけ、竜は耳をぴこぴこと動かした。
「……一緒に来てくれるの?」
ぴこぴこ。
当然のように言葉はないけれど、言葉以上に雄弁な仕種が語る。だから、ふ、とルシエラはまた眦を緩めた。緊張に強張っていた自分を、初めて知る。
「偶には里帰りに来るようにしないとね」
新しい仲間が、新しい世界に馴染めるように。息を抜いて、振り返って……何度でも、選択できるように。
その膝の上では、杞憂とばかりに仔竜が身を伸ばすのだけれど。
大成功
🔵🔵🔵
炬燵家・珠緒
アドリブ歓迎
桃華獣のお名前お任せ
白い兎?の後を追いかけて
ウサギさん…なのかな〜〜違うのかな〜〜
すっごく気になるけど、何て聞けばいいのか…
あ、考え事してると見失っちゃう〜〜
どこ〜〜!?
あ!美味しそうな点心がいっぱい〜〜
これ、わたしが食べてもいいヤツだよね?
わ〜〜い、ウサギさんも一緒に食べよ〜〜
いただきま〜〜す
胡麻団子美味しい〜〜
桃の形をしたお饅頭も好き〜〜
この白いの…なんだろう?不思議な匂いがするけど、甘くて美味しいかも
ちょっと固いつぶつぶも面白い食感〜〜
ウサギさんはどれが好き〜〜?
わたしは全部美味しくて幸せ〜〜でもやっぱり胡麻団子かな
お腹いっぱい
ウサギさんのお背中撫でてモフモフを堪能しつつ
そういえば、貴方のお名前聞いてなかったね〜〜
何て言うの?
わたしは珠緒〜〜
ね、よかったらわたしと一緒に行かない?
わたし、貴方にご主人様を教えてあげたいんだ〜〜
あのね、すっごく優しくていい人なんだよ〜〜
でも、怒るとめっちゃ怖いけど…
わたし、ご主人様のこと大好きなんだ〜〜
ご主人様元気かな?
早く逢いたいな〜〜
●しろうさぎを追って
ぴょい、ぴょい、と。
ある程度の頃からジグザグに跳び始めた白い毛玉を、炬燵家・珠緒は追う。もふもふまんまる白い兎、に、短い角。
時折振り向いては誇らしげにふかふかの胸を張るその仔が微笑ましい。ジグザグに進むものだから珠緒は歩いたままで全く問題なくついていける。
──ウサギさん……なのかな~~、違うのかな~~。
首を倒しながらてくてく進む。すっごく気になる。気になるけど、なんて訊けばいいのか。『桃華獣』であることは判っているのだけれど。見た目ごとに種が違うのか、あるいは見た目なんか些細なことなのか……。
「あっ!」
簡単だったはずの追跡劇が、いつの間にか|不思議の国《ワンダーランド》。周囲を見回すけれど、白い毛玉はどこにもいない。
「どこ~~?!」
でも、先は一本道。
桃色の中を珠緒はもう一度駆け出した。
「あ……!」
ぱぁっ……! と開けた視界。桃一色だった世界に青と緑も返って来て、途端に鼻をくすぐる美味しそうなにおい!
蒸し立てふかふかのあまい饅頭、揚げ立てカリカリの胡麻の芳ばしさ。くきゅる、とまた鳴りかけたおなかをめいっぱい手で押さえて誤魔化しながら、珠緒は屋台を覗き込んだ。
「美味しそうな点心がいっぱい~~、これ、わたしが食べてもいいヤツだよね?」
猫しっぽを揺らす彼女に、屋台の仙人は拱手で笑う。
「|你好《はぁい》! もちろんよ、おなかいーっぱいにお食べあれ!」
「わ~~い、桃の形したお饅頭好き~~」
仙人に手渡された食べ物を大切に抱えながら天幕の元へと向かった珠緒の行く先に、
「……あ! 居た! せっかくだからウサギさんも一緒に食べよ~~」
またふかふかの胸を張るさっきの白兎。椅子に座り卓にご馳走を並べたなら、なんて贅沢!「いただきま~~す」
「はむっ、ん! 美味しい~~!」
もっちりした皮の中、甘さ控えめ餡子ぎっしりの胡麻団子。ぴょいっ、と膝の上にウサギさんが乗るからその口許に差し出してみるけれど、霊獣たる仔兎──そこそこの大きさ──は食事を必要としないみたいだ。
「食べず嫌いはもったいないよ~~? なにが好き~~?」
「これもこれもいかが? これもオススメ!」
幸せそうに口に運ぶ珠緒に、仙人たちのおもてなし欲が刺激されるのか、卓の上には次々と新しい皿が運ばれ、珠緒は喜んで匙で掬う。赤い実が乗った、白くて柔らかいもの。
「この白いの……なんだろう? 不思議な匂いがするけど、……うん。甘くて美味しいかも」
これはどう? 兎はふんふんと鼻を鳴らす。香りは好きかな?
「ちょっと固いつぶつぶも面白い食感~~、全部美味しくて幸せ〜〜」
はぅ、とほっぺたに触れながらもっちもっち噛み締める。ちょっぴりあったかくて、じんわりと広がる甘さが良い。ウサギさんは? 珠緒の真似するみたいに、口許だけもぐもぐさせた。もう! とは思うけれど、なんだか嬉しそうだから許してしまう。
「でもやっぱりわたしは胡麻団子がいちばんかな~~」
とは言いつつ卓の点心をめいっぱい楽しんだなら、お腹いっぱい。膝の上から動かない白兎の背中を撫でながらひと休み。
「そういえば、貴方のお名前聞いてなかったね〜〜。何て言うの? わたしは珠緒〜〜」
黒い瞳を覗き込めば、兎も顔を上げて耳を動かす。けれど口は言葉を紡ぐことはなくて、珠緒も想定内。にっこりと兎に笑い掛ける。
「ね、よかったらわたしと一緒に行かない?」
ぴん、と兎の耳が立った。そっと珠緒は慌てず静かに桃華獣の背を撫で続ける。ふわふわ、ふかふか。温かい。
「わたし、貴方にご主人様を教えてあげたいんだ〜〜」
自然と和らぐ己の眦に、珠緒は気付かない。そっと指先を合わせてうたうように兎へ囁く。
「あのね、すっごく優しくていい人なんだよ〜〜。怒るとめっちゃ怖いけど……でも、わたし、」
ご主人様のこと大好きなんだ~~。
その彼女の表情に。彼女の掌に短い角を触れさせる。行こうって言ってくれてるのかな。察して珠緒はその獣をそぅと抱き上げ、胸に抱く。
「じゃあね~~、キミはぁ……りんご。|苹果《りんご》でどう?」
その仔は仕方ないなと言いたげに胸を反らし目を細める。どうも素直じゃない仔みたいだけど、そこも愛嬌だ。
よろしくねと微笑みつつ、そのふかふかの毛並みに珠緒は頬を寄せた。ご主人様元気かな?
「早く逢いたいな〜〜」
彼女の呟きに、ぱちぱちと黒い瞳を瞬いて。毛玉は──苹果はそっと身を寄せた。
大成功
🔵🔵🔵
リヴィ・ローランザルツ
百聞は一見に如かずということで
己の故郷とはまた違った自然溢るる世界へと
うん、やっぱり来てよかったな
空気が違ってそれがまた心地よいし
聖獣、というからにはこの土地の人にとっては大切な存在なのだろう
周りの雰囲気も神秘的だし
…アクエリオ様とはまた違う形で尊敬されているのだろうか?
ともあれ郷に入っては郷に従えともいうし
俺自身もやはりそういった存在には敬意を払いたいと思う
花霞の中真っ白な塊…いや違うな
小鳥にしても小さな角に桃の花
碧の瞳がどことなく懐かしい
そういえば話に聞いていた姉も自分と同じ瞳の色とは聞いていたけども
思わず口から出た言葉は「一人なのか?」で
敬語を使うことすら忘れてしまって
…何でだろうなあ。ともあれ気を悪くさせてしまったなら謝らないと
どことなく純真そうな顔立ちに見えるけれども
何となく傍に
邪魔にならない様付かず離れずの距離で傍に居させて貰おうかな
そのまま一緒に居てくれるのなら自然と笑顔になる
一緒にくるか?と尋ねたのは決して影が重なっただけじゃなく
この子自身と共に景色を見たいと思ったから
●僅かの距離
清しい澄んだ空気を感じる。様々な外世界が広がっている──ということは重々に理解していたつもりだった。
だが百聞は一見に如かず。
「うん、やっぱり来てよかったな」
リヴィ・ローランザルツ(煌颯・f39603)はぽつりとこぼした。己の故郷とはまた違った自然の溢るる世界。桃の木、白い霊獣たちの憩う川辺。
「……おぉ……」
否が応にも目に入るのは家ほどの大きさの白い兎。かつてみぃさと呼ばれる兎を救けた際のマスカレイドだって、犬程度の大きさだったと言うのに。
少々身構えてしまうけれど、茶色の瞳でもないし、もちろんあの仮面もない。霊獣と呼ばれるからにはこの土地の人々にとっては大切な存在なのだろう。
──……アクエリオ様とはまた違う形で尊敬されているのだろうか?
大きな水瓶から豊かな水の得られ続ける水路の張り巡らされた都市国家の水神。魔王ゼルデギロスと戦い封印したという伝承の元、人々は祭りを催してかの神を祀っていた。
ならば郷に入っては郷に従えとも言うし、非礼をするわけにはいかないとリヴィはそっと居ずまいを正した。
柔らかな下草の上をゆっくりと進み、温かな陽射しとせせらぎの音が彼の全身の緊張を解いていく。
ふと見上げた桃の花が乱れ咲く木々の枝。そこに、もふもふも真っ白な塊があってリヴィは意識をそこへ集中した。
「!」
突如白いばかりだったもふもふに碧の双眸と短い嘴、あんまりに短い角に不釣合いな大きさの桃の花が現れて、それが霊獣であり振り向いたのだとリヴィは理解した。
あどけなく、恐れもなくまっすぐに向けられる碧に、胸に去来するどこか──懐かしい気配。
──そう言えば話に聞いていた姉も、自分と同じ瞳の色とは聞いているけども。
何故だろう。はっきりとはしないけれど。どこか、似た面影とすれ違ったような。見覚えのあるような。
「一人なのか?」
胸を掠めた感傷に揺られ、思わず口から出た言葉。敬意を表すと決めていたのについ丁寧語を使うことすら忘れてしまった己に小さく苦笑する。
……なんでだろうなぁ。気を悪くさせてしまっただろうかと枝の上を窺うけれど、どことなく純真そうな顔立ちに見えるその小鳥──掌サイズの白い毛玉雛は、特に気にした様子もなく、くてと首を傾げた。
「許してくれるか? ありがとう」
言葉を解すだろうか。霊獣と言うのなら伝わるのだろう。
ぱたたと短い翼を開くと、毛玉は桃の木から川辺にある角の取れた岩の上に降り立った。ちょい、ちょいと川縁に跳んではリヴィのことを振り向くので、全く意に介されていないわけではないようだ。誘いに応じ、彼もつかず離れずの位置、川辺の草の上にそっと腰を下ろした。
すっと瞼を細めたあと、毛玉は気持ち良さそうに小川の浅瀬で転がり始めた。短い翼に跳ね上げられた|飛沫《しぶき》が光を虹色に弾き、ぱちゃぱちゃと立つ水音も心地良い。
自然と眦が和らぐのを感じながら、本の一冊でも持参しておけば良かったかと少し思う。白い羽毛の鳥はどのような種類なのだろうか。はしゃぐ小鳥の姿を見守りながらリヴィは想像してみる。枝のように角が伸び、より多くの桃の花が咲くのならば、猛禽類ほどの大きさに育つだろうか。あるいはもっと大きく?
穏やかな時間が流れたあと。ふと小鳥が岩の上にのぼり、ぷるぷるっ、と身震いして羽毛の水滴を振り払った。
そしてまたちょい、ちょいと跳んで、リヴィの脚の上に飛び乗った。
「なんだよ」
淡く微笑んでその小さな頭を指先で撫でてやれば、小鳥はまた目を細めた。懐っこい性格なのか、あるいはリヴィと波長があったのか。
「……一緒にくるか?」
その碧に惹かれた? 懐かしさに心惹かれた? ──いいや、それだけじゃない。
この子自身と共に、更に様々な景色を見たいと思った。新しい世界も、あるいはリヴィの故郷の景色も。寄り添って見る光景はこれまでとはまた別の彩りを灯してくれることだろう。
小鳥は再びくてと首を傾げると、今度は彼の肩へと飛び移り、襟元に潜り込むようにして身を擦り寄せた。くすぐったい。
「判ったよ。行こう、」
どこへだって、一緒に。
大成功
🔵🔵🔵