11
汝、楽園に至ることなかれ

#サムライエンパイア #戦後 #クルセイダー #安倍晴明 #弥助アレキサンダー

タグの編集

 現在は作者のみ編集可能です。
 🔒公式タグは編集できません。

🔒
#サムライエンパイア
🔒
#戦後
🔒
#クルセイダー
🔒
#安倍晴明
🔒
#弥助アレキサンダー


0




●超・魔軍転生
 待ち望んだことがある。
 サムライエンパイアにおいて猟書家『クルセイダー』は望んだ。
 己が手にした『ぱらいそ予言書』が語るは、主死すとも『魔軍転生』は死なず、選ばれし者に宿ると。
 そして、選ばれし者とは己のことである。
 徳川が恐れ、己を殺そうとしたのは己、『クルセイダー』が選ばれし者であったからだ。
「ですが、私は逃げ延び魔軍転生を得た。すべては『ぱらいそ予言書』の思し召し」
 故に、と『クルセイダー』は、オウガ・オリジンより得た力により『魔軍転生』をさらなる力へと変える。
『超・魔軍転生』――これにより、かれは己に陰陽師『安倍晴明』を憑装しようとしていた。

「これもまた『ぱらいそ予言書』の思し召し。『超・魔軍転生』……選ばれし者である私、『クルセイダー』に宿れ」
 その言葉とともに『クルセイダー』の体に満ちる。
 だが、彼は知るだろう。
 力宿れども、己の体の自由が効かぬことを。
「……これはこれは。何処の誰が貴方を『選んだ』というのでありましょうか……」
 頭に響く声。
 ゾっとするほどに関心のない声。抑揚のない声であった。
 あまりにも平坦すぎて、『クルセイダー』は一瞬己が何者を相手にしているのかを忘れるほどだった。

「私の体が動かない! 馬鹿な、『ぱらいそ予言書』にはこのような事一言も……!」
『クルセイダー』はたじろぐ。
 平坦な声とは裏腹に彼は動揺しきりであった。
 これまで多くの子男柄を『ぱらいそ予言書』の通りに進めてきた。何一つ間違うことはなかった。
 だというのに、これはなんだ。
 何一つこのような事柄は『ぱらいそ予言書』には書かれていなかった。

「意外な事がありましょうか。大した|業《カルマ》も無き貴方の躰を奪うことなど、造作もありませぬ」
 己の中に響く声は陰陽師『安倍晴明』。
 彼は『クルセイダー』の躰をゆっくりと動かす。
「何が目的なのです……私の乱を、防ごうともでも……?」
 そうとしか思えなかった。
 己がなそうとしているのは徳川転覆。それは未曾有の災いをこのサムライエンパイアに齎すことだろう。それを防ぐ、という意味では己を殺そうとするのは至極真っ当だった。

 だが、次なる『安倍晴明』の言葉に彼は絶句する。
「少し、興が乗りましてね」
『安倍晴明』は平坦だった声色を少しだけ変えて語る。
「私の生殖ゾンビに憑装を施した『魔軍将ゾンビ』をこしらえようと思いまして。これを速やかに量産すれば、エンパイアにゾンビ日野富子や上杉謙信が跳梁跋扈することになるでしょう。その滑稽で無様な景色、見てみたくはありませんか?」
『安倍晴明』の言葉は、本当に少しだけ弾むようだった。
 饒舌に己の計画を語るのは、きっと本当に興が乗ったという以上の意味はないのだろう。だから、語る。語り、その悪辣さを持って己に怒りを抱くように仕向けている。
 己を憑装し、利用しようとした『クルセイダー』が滑稽にも己に恨み言を言うだろうと『安倍晴明』は期待しただろう。

 恨み言ほど耳障りの良い言葉はない。
 己を怨み、自身の失態を棚上げにして激烈なる言葉でもって謗る様ほど面白いものはない。それを見下ろすことで己の中にまた衝動めいた|業《カルマ》が溜まるであろうとさえ思ったのだ。
 だが、『クルセイダー』は絶句した後、何も語らなかった。いや、語れなかった。
 そう、『安倍晴明』に憑装された時点で彼の生命の灯火は潰えていたのだ。
「もう死にましたか。誇り高き『グレイズモンキー』に連なる者と聞きましたが、取るに足らぬ最期でございましたな」
『安倍晴明』はまったくもってつまらなそうに奪った『クルセイダー』の躰を操り告げる。

「さあ、お止めになるが善いでしょう。すでに此方の動きは徳川……江戸幕府には察知されているはずです。ならば、私は『魔軍将ゾンビ』の量産化に勤しむと致しましょう――」

●最終決戦
 グリモアベースに集まってきた猟兵たちを迎えたのはナイアルテ・ブーゾヴァ(神月円明・f25860)だった。
「お集まり頂きありがとうございます。今回はついにサムライエンパイアに侵攻していた猟書家『クルセイダー』……いえ、『清明クルセイダー』との決戦になります」
 猟兵たちはナイアルテの言葉に言いようのない不安を感じたかもしれない。
 そう、『清明』と彼女は言った。
 嘗てサムライエンパイアを巡る大いなる戦いの最中に現れた存在。
『安倍晴明』――かの存在が『クルセイダー』の肉体に憑装され、逆に彼の肉体を奪ったのだ。
 故に『清明クルセイダー』と名のり、己の尖兵である『生殖型ゾンビ』に『超・魔軍転生 によって『魔軍将』を憑装させ、『魔軍将ゾンビ』として復活させているのだ。

「その力は言うまでもありません。『清明クルセイダー』はすでに天空に浮かぶ『魔空原城』に在りて、『魔軍将ゾンビ』の量産化を目論んでいます。しかし、江戸幕府はすでに動いてくださっています」
 そう、首塚の一族の呪詛に寄って地上に『魔空原城』は引きずり降ろされている。だが、その時間は多くはない。
 疾く、『魔空原城』より現われる『島原一揆軍』のゾンビ化したオブリビオンを蹴散らし、『超・魔軍転生』によって『魔軍将ゾンビ』となった大帝剣『弥助アレキサンダー』を撃破し、『清明クルセイダー』へと迫らなければならない」

「言うまでもなく、呪詛の鎖が切れ『清明クルセイダー』が逃げるより早く彼を打倒しなければなりません。ですが、『清明クルセイダー』は強敵……『クルセイダー』の肉体と『安倍晴明』の霊体による『ニ回攻撃』は恐るべきことにユーベルコードを同時に二つ放ってくるのです」
 それは極めて『清明クルセイダー』が興的であることを示していることだろう。
 これに対抗する手段を講じなければ、猟兵達の勝利はありえないだろう。

「ゾンビ化された『島原一揆軍』と『魔軍将ゾンビ』たる『弥助アレキサンダー』……それに加えて『清明クルセイダー』。いずれも強敵と言うに相応しい力を持つ者たちばかりです」
 ですが、とナイアルテは猟兵たちを送り出す。
 危険伴う戦い。
 けれど、それでも猟兵たちならば、と彼女は見送るのだった――。


海鶴
 マスターの海鶴です。どうぞよろしくお願いいたします。
 ついに猟書家『クルセイダー』との決戦……ではなく、陰陽師『安倍晴明』によって肉体を奪われた猟書家との決戦になります。
『清明クルセイダー』と名乗る彼の力は凄まじいものです。
 迫る軍勢と『魔軍将』を退け、彼を打倒するシナリオになっております。

●第一章
 集団戦です。
 すでに首塚の一族の呪詛による鎖に寄って『清明クルセイダー』の座す『魔空原城』は地上に引きずり降ろされています。
 ですが、内部から湧き出す『妖魔忍者』たちは皆、ゾンビ化されており『異常な信仰心』により極めて高い士気を持っています。
 頭や足を吹き飛ばしても止まりません。
 これを止めるためには無慈悲かつ完膚なきまでに敵を打ちのめす必要があります。

●第二章
 ボス戦です。
『魔軍将ゾンビ』、大帝剣『弥助アレキサンダー』との戦いになります。
 彼は嘗て大帝剣と呼ばれていた時と遜色ない力と理性を持つ強敵です。
 三種のメガリスを用いた戦いでもって皆さんを圧倒することでしょう。

●第三章
 ボス戦です。
『魔軍将』を退けた皆さんを『ぱらいそ礼拝堂』にて待ち受けるのは『清明クルセイダー』です。
 彼は『クルセイダー』の肉体と『安倍晴明』の霊体によって、一度の攻撃で二度のユーベルコードを放ってきます。
 使うユーベルコードはフラグメントの中から組み合わせてきます。
 極めて強敵でありますが、この『ニ回攻撃』に対抗する方法を撃ち出すことが勝利の鍵となるでしょう。

 それでは、『クルセイダー』の肉体を奪った『安倍晴明』こと『清明クルセイダー』の目論見を阻む最終決戦、皆さんの活躍を彩る物語の一片となれますよう、いっぱいがんばります!
273




第1章 集団戦 『妖魔忍者』

POW   :    忍法瞬断
【忍者刀】による超高速かつ大威力の一撃を放つ。ただし、自身から30cm以内の対象にしか使えない。
SPD   :    忍法鎌鼬
自身に【特殊な気流】をまとい、高速移動と【斬撃による衝撃波】の放射を可能とする。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
WIZ   :    忍法鬼火
レベル×1個の【鬼火】の炎を放つ。全て個別に操作でき、複数合体で強化でき、延焼分も含めて任意に消せる。

イラスト:カス

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 首塚の一族は空に浮かぶ『魔空原城』を見上げる。
 その筆頭たる『斎藤・福』は己達の呪詛を鎖に変えて、空浮かぶ城へと放つ。
 それは侍たちに寄って増幅されたユーベルコードを放ち、燃え盛る炎と化して『魔空原城』の防護を焼き尽くす。
 同時に巨大な城を地上に引きずり下ろすのだ。
 轟音と地鳴りが響き渡る。
「……はぁ、はぁ……また上様になでなでしてもらわないと……」
 呪詛の声を放つ『斎藤・福』と首塚の一族たちは膝をつく。
 消耗の激しい力。
 彼女たちは確かに役目を果たした。あの『魔空原城』は空にありて鉄壁。故に『清明クルセイダー』は、居城に選んだのだ。彼が推し進める『魔軍将ゾンビ』の量産化。これを成さしめるわけにはいかない。

「……! あれは『島原一揆軍』……! でも様子が……」
『斎藤・福』の目が見開く。
 彼女の瞳に写っていたのは、むすうの『島原一揆軍』であったが、それは明らかに様子がおかしかった。
『異常なる信仰心』に裏付けされた士気だけではない。
 彼らは死を厭わぬというよりも、死すら知覚していないように思えたのだ。
 事実、迫る『島原一揆軍』たる『妖魔忍者』たちの瞳に光はない。あるのはただひたすらに動くものを殺すために当たられた単純な命令を命がけで……いや、例え己達の四肢が砕かれて尚、敵の喉元に噛み付いてでも喰らいつかんとする狂気めいたものだった。
「ぱらいそにこそ我等が向かうのだ。我等がぱらいそに」
「『クルセイダー』様が導くぱらいそこそが我等の求める場所。徳川の治世を終わらせ、この世に真に安寧を」
 口々につぶやく『妖魔忍者』たちは、例え脚を吹き飛ばされても、それでもなお敵を求めて膨大な数で持って『魔空原城』から迫るのだった――。
村崎・ゆかり
さて、間抜けな猟書家を使って復活した安倍晴明を止めに行かなくちゃね。
それにはまず、この軍勢が邪魔。十絶陣で殲滅する。
「結界術」「全力魔法」酸の「範囲攻撃」「呪詛」「仙術」で紅水陣。

真っ向勝負してくる忍者なんて、笑い話にもならないわ。結界に囚われ、酸の雨で溶けて消えなさい。肉片一つ残さずにね。

あなたたちの放つ炎なんて温い温い。「オーラ防御」「火炎耐性」の火伏の符で十分よ。
反撃はそれで終わり? それじゃあ、さっさと溶けて消えなさいな。あなたたちには用が無い。
目指すは大陰陽師・安倍晴明。ここであなたたちにかかずらってる暇なんて無いわ。
絶陣に捕らえ損ねた忍者と打ち合いながら、魔空原城へ入りましょう。



 空より墜ちた『魔空原城』よりあふれかえるのは『島原一揆軍』であった。
 彼らの信仰は『異常なる信仰心』であると言わざるを得ない。
 もとより生命等必要としていないかのような苛烈なる攻勢は、まるで命懸けであった。
「間抜けな猟書家を使って復活を果たした『安倍晴明』を止めなきゃいけないけれど……」
 それにはまず、この『島原一揆軍』が邪魔であると村崎・ゆかり(“紫蘭”/黒鴉遣い・f01658)の瞳がユーベルコードに輝く。

「真っ向勝負してくる忍者なんて、笑い話にもならないわ」
 彼女が見据える『妖魔忍者』たち。
 それは苛烈なる攻勢を支える者たちであった。
 ふくれ上がるユーベルコードの炎。
 それは鬼火のように揺らめいて、ゆかりへと迫りくる。
「我等こそがぱらいそに至る者。我等は信仰によって、楽園へと至るのだ」
『妖魔忍者』たちは、ゆかりが思う以上に理性的な動きをしていない。もしも、彼らに理性というものが残っていたのならば、このような大攻勢を仕掛けるはずがない。
 影から影に飛ぶようにして此方の不意を突くようにして戦うはずだ。
 だというのに、彼らはただただ一気呵成に、猛烈にして愚直に突進を繰り返すばかりだった。

「古の絶陣の一を、我ここに呼び覚まさん。魂魄までも溶かし尽くす赤き世界よ、我が呼びかけに応え、世界を真紅に塗り替えよ。疾っ!」
 戦場に赤い靄が満ちる。
 真っ赤な血のような、全てを蝕む強酸性の雨は『妖魔忍者』たちの肉体を溶かしていくだろう。しかし、彼らは己の体が溶け落ちるのも構わずに鬼火を使ってゆかりへと解き放つ。
「あなたたちの放つ炎なんて温い温い」
 符を持って張り巡らせたオーラと火炎への耐性でもってゆかりは鬼火の一撃を防ぐ。
 肌を焼く猛烈なる炎。
 けれど、それでもゆかりの瞳はユーベルコードに輝き、紅水陣(コウスイジン)を維持し続ける。
「やっぱり溶けた程度では止まらないか。反撃も弱まっているとは言い難いけど。あなたたちには用がないの」
 ゆかりが振るう力は、徐々に戦場に満ちていく。

 時間が経てば経つほどに『妖魔忍者』たちの肉体は溶け果てていく。
 どれだけゾンビ化によって頭や四肢を吹き飛ばしても止まらぬのだとしても、骨まで溶けてしまえば動くことはできない。
「無駄よ。どれだけ足掻いても、この絶陣の中では何人たりとて溶けることは防げない」
 ゆかりは己が目指すは『安倍晴明』と定めている。
 ここでゾンビ化した『妖魔忍者』たちに手間取っている暇はないのだ。

「我等がぱらいそに迫る者を排除するのが我等が使命!」
「ほんとしつこいわ」
 ゆかりは薙刀でもって鬼火を払い、せまる『妖魔忍者』を絶陣の中へと叩き返す。
 敵の勢いは凄まじい。
 例え、手足を喪っても、というのは比喩でもなかった。
 骨身を完全に溶かすまで、『妖魔忍者』たちが己に迫ってくることを理解する。
「なら、徹底的にやってやりましょう」
 ゆかりは手にした薙刀と符を手に道をひらくように赤い靄の中を突っ切る。

 左右上下から迫りくる『妖魔忍者』たち。
 彼らは正しく血肉溶け落ちたゾンビそのもの。しかし、脆くなった血肉はただしつこい、という一点しか脅威ではないのだ。
 そして、ゆかりのユーベルコードは確実に彼らを溶かし滅ぼす。
 時間さえかければ、それができる。
「大陰陽師『安倍晴明』……厄介なことばっかりしてくれるけれど、此処で討滅してあげるわ」
 ゆかりは血のような赤い雨降りしきる戦場の中を、さらに突き進むのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ダーティ・ゲイズコレクター
私はダーティ!ダーティ・ゲイズコレクター!
凶悪で極悪で劣悪で最悪な魔王ダーティとは私のことです!

ゾンビってあんなに俊敏に動けるものでしたっけ?

まぁいいです!ゾンビで埋め尽くされた大地を颯爽と切り拓けば
目立てること間違いなしでしょうから!

(UC【元悪!纏絡堕落醜穢終】発動)
圧倒的視線を感じます!これがぱらいそってやつですね!
(オーラを{立て看板}に纏わせ物質化しハルバードのように『武器改造』後、『怪力』で振り回してUCで遅くなったゾンビたちの手足を斬り飛ばす)
手足が無ければ動けませんからね!
後は体を『念動力』で浮かせて盾になってもらいますよ!
魔軍将よりワルな魔王ダーティの戦い、ご照覧あれ!



 天空より墜ちた城、『魔空原城』よりあふれかえるのは『島原一揆軍』である『妖魔忍者』たちであった。
 彼らは亮平のユーベルコードによって血肉溶かしながらも、しかして己の手足がないものであるかのようにただひたすらに戦場を突き進む。
「ぱらいそこそ我等が求めた地。ならば、我等は生命捨ててでも、この道行をゆかねばならぬのだ!」
 彼らの咆哮が聞こえる。
 しかし、その咆哮を塗りつぶすかのような宣言が戦場に響き渡る。

「私はダーティ! ダーティ・ゲイズコレクター! 凶悪で極悪で劣悪で最悪な魔王ダーティとは私のことです! っていうか、殺到していますね!?」
 名乗りを上げたダーティ・ゲイズコレクター(Look at me・f31927)が戦場に降り立つ。
 血肉溶け落ちながらも、骨身となってなお『妖魔忍者』はダーティの宣言に釣られるようにして彼女に殺到してくる。
 どれだけ溶け落ちたとしても、彼らには躊躇いがない。
 手足を喪っても、それこそ頭を吹き飛ばされても彼らは止まらない。何故なら、それは『晴明クルセイダー』によって彼らも知覚できぬ内にゾンビ化されているからだ。
「ゾンビってあんなに俊敏に動けるものでしたっけ?」

 ダーティは思い直す。
 ゾンビが、うーあー言いながらのんびりと迫るタイプだけではないと。
 そう、時には走ってくるタイプのゾンビだっているのだ。
 緩慢な動きがゾンビの証と誰が決めたのだというように『妖魔忍者』たちは溶け落ちた血肉を振り乱しながら、一気にダーティへと迫ってくるのだ。
「まぁ、いいです!」
 ダーティの瞳がユーベルコードに輝く。
「今より此処、底に至る。汝ら魂、憐れなり」
 彼女の存在感は燦然と輝く太陽であった。

 彼女が其処に居る、という事実だけで戦場に存在する全ての『島原一揆軍』、『妖魔忍者』たちは視線を向ける。
「なんだ、この輝きは。見ずにはおられぬ!」
「目が灼けるほどの光を感じるというのに、おお、我等は如何にしてこの輝きを知れば良いのだ!」
『妖魔忍者』たちの戸惑う声が響き渡る。
 それもそのはずだ。
 彼女のユーベルコードは己の強烈な存在感で蝕む無数の視線を己に向けさせる。
 それを楽しめない者は、須らく行動を減ぜられる。
 即ち、ゾンビ化した『妖魔忍者』たちは動けるゾンビから、緩慢な置物と化したゾンビに堕することになるのだ。
「圧倒的視線を感じます! これがぱらいそってやつですわね!」

 彼女が打ち立てた看板を引き抜く。
 オーラを纏ったそれは、振り回せば戦斧の如き働きを見せるだろう。
 振るう一撃は強烈な存在感と同じように痛烈なる一撃を持って『妖魔忍者』たちの体へと叩き込まれ、その胴を薙ぎ払う。
 しかし、胴を両断してなお、彼らは地を這うようにしてダーティに迫るが行動を減ぜられた彼らはただ、そこに這いつくばることしかできない。
「手足がなければ動けませんからね! さらに!」
 ダーティは念動力でもって胴を両断した胴体を持ち上げ、盾にしながら戦場を突っ走る。
 目指すのは『魔空原城』。
 この戦場に溢れるゾンビ化した『妖魔忍者』たちにかまってはいられないのだ。

「数が多いのならば押し通るまで! 故に、元悪!纏絡堕落醜穢終(テンラクダラクシュウワイシマイ)と私はユーベルコードに名を付けました!」
 煌めくユーベルコードはダーティが其処に居るという存在感だけを植え付けていく。
 本来ならば迅速に行動できる『妖魔忍者』たちは、ダーティのユーベルコードに寄って注意力も散漫に、さらには行動すら減ぜられ、ただひたすらに置物となる。
 そんな戦場を駆け抜けることなどダーティには容易以外の何物でもなかった。
「魔軍将よりワルな魔王ダーティの戦い、ご照覧あれ!」
 振り回す立て看板に吹き飛ばされていく『妖魔忍者』の残骸を雨のように降り注がせながら、一直線にダーティは戦場を切り開いていくのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

馬県・義透
四人で一人の複合型悪霊。生前は戦友

第三『侵す者』武の天才
一人称:わし 豪快古風
武器:黒燭炎、四天霊障

またまあ…迷惑な話よな。だからこそ、わしはここに来たのだが。
霹靂に乗り、避けやすいようにしておこう。

乱を呼ぶわけにもいかぬし、溢れさせるわけにはいかんのでな。ここで止めよう。
黒燭炎で薙ぎ払い、UCつきの四天霊障による広範囲攻撃をしよう。
一気に完膚なきまで叩きのめすには、これが一番なのよなぁ。


霹靂「クエ」
ゾンビいっぱいでビックリ!第六感で避けていく。
たまにキックする。



 空より墜ちし城。
 それが『魔空原城』である。この機会は逃せぬ好機であることは言うまでもない。
 戦場にあふれかえるゾンビ化した『島原一揆軍』は確かに障害としては脅威であった。手足を、頭を吹き飛ばしても尚、五体が残る限り彼らは猟兵達に襲いかかってくる。
 例え、赤い雨が血肉を溶かし、強烈な存在感によって視線を集め、その動きを留め置くのだとしても、それでも肉体を損壊させながらも迫るのだ。
「我等がぱらいそに至るために!」
「ぱらいそこそが我等の到達すべき場所!」
「そのためならば、この五体が如何ように切り裂かれようとも!」
 立ち止まらぬというように『妖魔忍者』たちが襲いかかってくる姿を馬県・義透(死天山彷徨う四悪霊・f28057)の一柱『侵す者』はひたすらに迷惑な話だと断じる。

「まあ、だからこそ、わしはここに来たのだが」
 空を飛翔するヒポグリフ『霹靂』に騎乗し、その手に黒槍を携え見下ろす。
 敵の優位は数と、その耐久性である。
 ゾンビ化した『妖魔忍者』たちは確かに忍びとしての優位性を欠くものであったが、それを上回る耐久性を持っている。
 これまで猟兵のユーベルコードに寄って血肉を溶かされようが、胴を薙ぎ払われようが、それでも如何なることがあろうとも敵である猟兵に迫ってきていた。
「なるほどの。動く屍。ならば頭なくとも脚がなくとも、完全に滅するまで動き続けるというのは分からぬ道理ではない。ならば」
『侵す者』の瞳がユーベルコードに輝く。

 このサムライエンパイアに再び世界の混乱たる乱を呼び起こすわけにはいかない。
 嘗ては一度大いなる戦いが巻起こったが、しかし、再び猟書家が、この世界を阿鼻叫喚地獄へと叩き落とそうとしているのならば、己はそのためにこそ戦わねばならない。
「ここで止めようぞ」
 振るう黒槍が旋風のように『霹靂』の上で振り回される。
 風が巻き起こるのと同時に猛烈なる熱さが身を焦がしていくようだった。
 己の瞳に宿るユーベルコードの輝き、それは火のように(シンリャクスルコトヒノゴトク)立ち上り、彼が手にした槍の一撃は『霹靂』の急降下と共に叩きつけられる。

 放つ一撃は衝撃を伴って『妖魔忍者』たちを吹き飛ばしていく。 
 地面がひび割れ、肉体が砕けてなお、『妖魔忍者』たちは忍者刀の一撃を『侵す者』へと叩き込もうとする。
 だが、それを防ぐのが霊障である。
「ぱらいそ! ぱらいそにこそ我等は至るのだ!」
「いいや、至れぬよ。オブリビオンたるお主らは、骸の海へと変えるのみ」
「クエ!」
 嘶くように『霹靂』が無くと『侵す者』は己の槍で受け止めた忍者刀の一撃をいなすようにして『妖魔忍者』を大地へと叩き落とす。
 吹き荒れる炎のようなユーベルコード。

 放つ一撃は単純で重いもの。
 すなわち、如何なる防御も、如何なる力もねじ伏せる力そのもの。
 純然たる力の一撃は小細工を必要としない。
 いや、ただそうあるだけで良いというように槍の穂先が『妖魔忍者』の胴を貫き、衝撃波を撒き散らす。
「わしの一撃、受けきれるものではあるまい」
 完膚なきまでの一撃が『妖魔忍者』の体を吹き飛ばし、塵も残さない。
「さあ、次はどこのどいつだ。わしの槍を受けて五体満足で居られるわけもなし。その生命が要らぬというのならば、わしが全て、尽く貫いてくれよう」
 振るう槍の風を斬る音が轟くように響き渡り、『霹靂』を駆る『侵す者』は、戦場を疾駆し、次々と『妖魔忍者』たちの体を貫き、切り裂き、完膚なきまでに叩き潰し続けるのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

大町・詩乃
この晴明はどうしようもないですね!

憎まれて業を溜める事にも、滅ぼされる事にも慣れていそうなので、
滅ぼすだけでなく、きっちりお仕置きして躾けてあげましょう!
と激おこ。

晴明の戯れで犠牲者が出ないよう、島原一揆軍に安らかな眠りを与えます。

《慈眼乃光》で一揆軍の忍者達・鬼火などを友好的に、
その上で念動力・範囲攻撃・捕縛にて忍者達を金縛りに「痛くはしませんよ♪」、
鬼火は結界術・高速詠唱による防御結界で防ぐ。

忍者の皆さんには「どうか安らかにお眠りください。」と、光の属性攻撃・
浄化・破魔・全力魔法・高速詠唱・範囲攻撃で一揆軍に安らかな眠りを
与えます。

これを繰り返して出来た突破口から魔空原城へ突入しますよ。



 怒りが満ちる。
 心のなかに。静かに。けれど、燃え上がるように。
 それは陰陽師『安倍晴明』に対する怒りであった。確かに猟書家『クルセイダー』の目論見は捨て置くことのできぬものであった。
 江戸幕府の転覆。
 サムライエンパイアの世界の破滅をもたらさんとした彼の目的は猟兵にとっては打倒しなければならない。
 けれど、大町・詩乃(阿斯訶備媛・f17458)は憤る。
「この晴明はどうしようもないですね!」
 戦場に満ちるのは『妖魔忍者』たち。

 彼らは『島原一揆軍』であったが、しかし密かにゾンビ化されたオブリビオンでもある。
 例え頭部を吹き飛ばされても、脚を切り裂かれようとも止まることはない。
 ただひたすらにお乗れ達の敵である猟兵を打倒せんと身を引きずってでも襲いかかってくるのだ。
「ゾンビ化など……これがどれだけ私達の怒りを買うことか理解していながら、それを躊躇わず実行に映す。それどころか、業を溜めることをこそ目的とするかのような行い」
 それを許せるはずもなかった。
 煌めくユーベルコードの瞳。
 それは身に満ちる怒りとは裏腹なものであった。

 確かに『妖魔忍者』たちはオブリビオンである。『クルセイダー』の麾下であったし、それは打倒しなければならない存在でしかなかった。
 けれど。
「ぱらいそに我等が至る! ぱらいそこそが、我等の救い!」
 彼らは救いを求めている。
 戦乱の世であるサムライエンパイアにおいて、楽園を求めるのは間違いではないし、否定されるべきものではないだろう。
 誰もが争いから逃れ、平和な世界に生きたいと願う。
 その心さえも『安倍晴明』は弄ぶ。

「これ以上痛みに喘ぐ必要はないのです」
 慈眼乃光(ジガンノヒカリ)たる瞳の光が詩乃より放たれる。
 それは彼らに注がれ、彼ら自身の意志とは裏腹に彼女を傷つける行いをできなくさせていた。
 目の前の存在は猟兵だ。
 滅ぼし滅ぼされる間柄でしかない。
「だというのに、何故我等の体は動かぬ!」
「ゾンビ化された肉体に気が付かず、ただひたすらに肉体が残る限り私達に向かうことを定められた躯体。それを開放するためには」
 詩乃の手が天に掲げられる。
 それは救いを求めるようでもあり、救いを齎すようでもあった。

 満ちる光は浄化と破魔の力を宿し、空より墜ちる光の柱となって戦場を穿つ。
 迸る光。
 それらが『妖魔忍者』たちを滅ぼし、霧散させていく。
「どうか安らかにお眠り下さい」
 詩乃は願う。
 どれだけオブリビオンが欲望のままに過去の化身として世界の破滅を齎すのだとしても。それでも弄ばれて良いものではない。
『安倍晴明』が齎すのは渦巻く業だ。
 それがいつしか人を、世界を巻き込んで膨れ上がっていくだろう。
「連鎖し、束ねられ、燃え盛る炎。それを私は許すわけにはいかないのです」
 彼女の瞳は『魔空原城』へと注がれる。

 その内部にある『ぱらいそ礼拝堂』にこそ『安倍晴明』……いや、『晴明クルセイダー』が居る。
 この悍ましき業を撒き散らす存在が。
 故に詩乃は満ちる光と共に『妖魔忍者』たちを滅ぼしながら進むのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

テリブル・カトラリー
……。

『戦争腕・覇穿』発動。片腕を戦争腕に換装【エネルギー充填】
【怪力】片腕で汎用機関銃を保持、【制圧射撃】
ウォーマシン用の大型弾で島原一揆軍の下半身を【なぎ払い部位破壊】
携行浮遊砲台を展開【砲撃】纏めて【吹き飛ばし】
武装機関銃から氷結手榴弾に変更【投擲】氷結【属性攻撃】動きを止める。
【早業】適時武装を持ち替え、充填まで【時間稼ぎ】

覇穿、充填完了……|発射《ファイア》

戦場上空、魔空原城へ向けて【ドリル状エネルギー弾】を射出。
魔空原城へ続く戦場全体の妖魔忍者群へ【範囲攻撃】
ドリル状エネルギー弾から敵を穿つ極大威力の電撃高エネルギーを降らし、
妖魔忍者の肉体を蒸発させ活動できなくさせる。



 戦争腕・覇穿(ウォーアーム・ハバキ)は、即座にテリブル・カトラリー(女人型ウォーマシン・f04808)の腕を武装へと換装する。
 腕部に集まるエネルギーはウォーマシンである彼女の炉から直接汲み上げられる。
 片腕で機関銃姿を振るい上げる。
「……」
 言葉はない。
 目の前に広がるのは大地に失墜した『魔空原城』より溢れるようにして飛び出してくる『島原一揆軍』の『妖魔忍者』たちであった。
 彼らは決して止まらない。
『異常なる信仰心』によって彼らは止まらないのではない。

『安倍晴明』が憑装し、その肉体を乗っ取った『クルセイダー』……いや、今は『晴明クルセイダー』と成り果てたオウガフォーミュラによってゾンビ化された『妖魔忍者』たちは、例え手足が吹き飛ぼうが、頭部が欠損しようが止まらないのだ。
「充填……」
 未だ彼女のユーベルコードはエネルギーを充填する時間を必要としている。
 だからこそ、彼女はウォーマシンたる所以を示すように全身から武装を展開する。振るい上げた機関銃より放たれる弾丸が迫る『妖魔忍者』たち脚を吹き飛ばす。
「なんのこれしき! 鉄の礫が降り注ごうが! 我等の信仰は途絶えぬ! 必ずやぱらいそへとたどり着くのだ!」
 彼らは下半身を吹き飛ばした程度では止まらない。
 身を引きずりながら、さらにテリブルへと迫るのだ。

 しかし、テリブルは取り乱すことはなかった。
 携行浮遊砲台を展開し、さらに彼らを吹き飛ばす。
「氷結榴弾装填」
 機関銃に装填される銃弾を変更する。
 どれだけ吹き飛ばしても『妖魔忍者』たちは止まる所を知らない。ならば、強制的に足を止める。
 つまり、その場に縫い留めるために必要なのはなにか。
 そう、大地に彼らを凍結させるのだ。
 そのために放たれた弾丸が炸裂し『妖魔忍者』たちを次々と大地へと縫い留めるように凍結させる。

「充填完了……|発射《ファイア》」
 テリブルの瞳がユーベルコードに輝く。
 瞬間、彼女の武装腕に換装された砲口より放たれるは螺旋衝角の如き形を為したエネルギーの弾丸であった。
 それが空へと放たれる。
「空に砲撃……!?」
「如何なることか、これは!」
 見上げる『妖魔忍者』たち。しかし、次の瞬間彼らは理解しただろう。
 テリブルが何故空へと砲撃を行ったのかを。

「螺旋のエネルギーから稲妻が……!?」
 そう、エネルギーの弾丸は空に在りて、そのエネルギーを放出するように戦象全体に降り注ぐ。
 電撃が次々と『妖魔忍者』たちの体を穿ち、その肉体を蒸発させていく。
 まさに無慈悲な蹂躙劇であったことだろう。
 テリブルは止まらない。
 たとえ、己の武装腕が今まさにオーバーヒートを起こしているのだとしても、それでも彼女は歩みを止めない。
「……」
 言葉はない。
 あるのは目の前の敵を滅ぼすという目的のみ。
 それが理由だ。ならば、テリブルは己が兵器であるという自認を持って、生ける屍と化したオブリビオンに滅びを齎す雷と共に『魔空原城』へと進むのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

凶月・陸井
相棒の時人(f35294)と参加

クルセイダーは正面からぶん殴ってやりたかったけど
まさか清明が乗っ取るとはな
どちらにしてもどっちも逃す事はできない敵だ
相棒と武器を合わせながら
「あぁ、きっちり阻止してやらないとな」

ゾンビ化の上で異常な信仰心で止まらないか
それならそれで、やることは決まってるな
「最大火力で、一気に吹き飛ばすぞ、時人」

戦闘開始時はまず相棒のサポートを
広範囲攻撃で漏れはないとは思うが
まだ突進してくる敵が居れば銃と短刀で迎撃
「打ち漏らしは任せとけ」

相棒の攻撃が終わると同時に【戦文字「水晶」】を使用
水晶の文字の中に死龍葬弾を宿して打ち出す
「俺の最大火力の更に倍だ。全部ふっ飛ばさせてもらうぞ」


葛城・時人
相棒の陸井(f35296)と

この世界はほとんど初めてだ
予知を聞いた限りでは凄まじい強敵

接続された色々な世界で戦ってきたけど
戦争が終わっても完全に平和になった世界は無い…
それは俺達の世界もそうで

でも立ち止まっていても解決しないから
それに
「何処の世界の破滅も許さない…だろ?」
相棒と武器を合わせてから跳躍し高台へ駆け上がり

UC白燐大拡散砲詠唱
戦場全てを無数の​|俺の蟲《ククルカン》の突撃が覆う
この数の暴虐を潜り抜け到達するモノたちは
相棒のUCが狩る!
「デカイのお見舞いしてだよ!」

必要なら二度でも三度でも詠唱を繰り返し
それでもしぶとければ錫杖で叩き伏せ
欠片一つも動かなくなるまで完全殲滅を
「塵に還れ!」



 サムライエンパイアは、呪術法力存在する戦国日本に良く似た世界である。
 多世界を知る猟兵であるからこそ、それが己達の世界の日本とは異なるものであると理解することができただろう。
 葛城・時人(光望護花・f35294)は、この世界に訪れることはほとんど初めてであった。
 予知にて知ることになった猟書家『クルセイダー』……いや、今は『超・魔軍転生』によって憑装された『安倍晴明』に肉体を乗っ取られたがために『晴明クルセイダー』へと名乗る存在のことは強敵であると知ることができる。
 時人は己たちが戦ってきた意味を知る。
 世界は一つではなかった。

 どれだけ大いなる戦いに勝利し、オブリビオンが骸の海よりにじみ出る事がなくなった世界があるのだとしても、完全に平和になった世界は存在していなかった。
 己達の世界。
 銀色の雨が振る世界もまた同じだった。
 何処でも変わらないことだった。
「でも立ち止まっていても解決しないから」
 そう。
 どれだけ諦観に塗れ、足を止めてしまうのだとしても、時が待ってくれることはない。時の流れは残酷なまでに己たちを急かすのだ。
 故に彼は止まらない。
「何処の世界の破滅も赦さない……だろ?」
「あぁ、きっちり阻止してやらないとな」
 時人の言葉に凶月・陸井(我護る故に我在り・f35296)は頷く。
 共に『魔空原城』よりあふれかえる『妖魔忍者』たちの姿を認める。

 彼らはすでに『島原一揆軍』ではない。『晴明クルセイダー』によって密かにゾンビ化されたオブリビオンたちである。
「ぱらいそ! ぱらいそに我等は!」
 叫ぶ言葉は虚しい。
 彼らは其処にはたどり着けない。骸の海に還るしかないのだと知るからこそ陸井は『クルセイダー』のことを思う。
 平和になった世界を転覆せんとした者。
 いつかは正面からぶん殴ってやりたいと思っていたのだが、それはあえなく機会を失うことになった。
 けれど、それは理由の一つがなくなっただけに過ぎないのだ。

「やることは決まっている。奴らは止まらない」
「ああ、異常な信仰心ではない。ゾンビ化しているのだから」
「最大火力で一気に吹き飛ばすぞ、時人」
 互いの拳が打ち鳴らされる。
 これまで多くの戦場を駆け抜けてきた相棒だからこそ、言葉は少なくて構わなかった。己達に迫る『妖魔忍者』たちのユーベルコードが煌めく最中、陸井の銃が轟音を盾、短刀の一撃が『妖魔忍者』たちを打ち据える。
 それは小手先を合わせたものでしかなかった。
「この程度で我等がぱらいそに至る道筋を邪魔だてするとは!」
「そうだろうな。だが、時間は充分に稼げたんだよ」
 相棒、と陸井は己の背に守る時人へと投げかけた。同時に彼の瞳がユーベルコードに輝く。

「デカイのをお見舞いしてやるんだよ!」
 それは白き奔流であった。
 みちるは白燐蟲の大群であった。迫りくる『島原一揆軍』である『妖魔忍者』たちを飲み込む白燐蟲の大群は白燐大拡散砲(ビャクリンダイカクサンホウ)と呼ぶに相応しい威容でもって戦場を横断する。
 まるで天ノ川が地上に生み出されたかのような光景であった。
 淡く輝く白き光。
 その最中に陸井もまた同時にユーベルコードに瞳を輝かせる。
「反射はさせない。悪いけど喰らってもらおうか」
 彼の煌めくユーベルコードが描くは、戦文字「水晶」(イクサモジ・スイショウ)。
 生み出された光は、水晶の文字を宿し、弾丸となって飛び出す。
『妖魔忍者』たちはたまらずに身を穿たれ、さらに肉体が光の中に飲み込まれていく。

「数が多いな」
「討ち漏らしは任せておけ。俺の最大火力の更に倍だ。全部ふっとばさせてもらうぞ」
「頼もしいな、相棒」
 時人は陸井の援護を受けてさらに詠唱を続ける。己の白燐蟲が、戦場を白き天の川へと変えていく。
 敵は完全に滅ぼすまで幾度だって己達に迫るだろう。
 だからこそ、加減はできない。
「塵に還れ!」
 完全殲滅。それが目指すべき道。
 彼らは戦場を切り裂くようにして走る。光満ちるはユーベルコード。
 激突する光がどれだけまばゆく己達の視界を埋め尽くすのだとしても、それでも彼らが見据えるのは『魔空原城』。
 その最奥に『晴明クルセイダー』がいるのならば。

「征くぞ」
 ただ一言、それだけでいいのだと二人は白き川の流れと共に戦場を走る――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

冴島・類
晴明に好き勝手されてしまうのは…嫌すぎるんですよね
単純な戦とかより、いやらしく戦いにくいことしますし、彼の陰陽師は
エンパイアを守るために繋ぎ降ろされた機、逃しませんとも

数が多い上に、半端な傷ではものともしない相手
なら…放つ斬撃も強化しないとかな
共に駆ける瓜江に、力を借りるよ…と彼の持つ風の魔力を
破魔の力降ろした枯れ尾花に纏わせ攻撃力強化
薙ぎ払いにて鎌鼬のように合わせた力放ち
至近に寄りすぎる前に、全力で斬り倒していければ

敵の攻撃は、見切りで避けたり
手繰る瓜江のフェイントで引きつけ
生まれた隙に斬るなど、連携し多数に対応
背は取らせぬように位置どりも注意を

ここで手こずっているわけにはいかぬ
押し通ります



 陰陽師『安倍晴明』。
 彼は嘗てサムライエンパイアを巡る大いなる戦いの最中に打倒した敵である。
 けれど、彼の悪辣さは言うまでもない。
 彼が|業《カルマ》と呼ぶものを蒐集することを目的としていたことは知られているが、此度のように憑装した『クルセイダー』の肉体を逆に乗っ取ったことを考えると、彼を野放しにしていい理由はない。
「晴明に好き勝手されてしまうのは……嫌すぎるんですよね」
 それは単純な力の激突以上のものを予見させるものであったからこそ、冴島・類(公孫樹・f13398)は首塚の一族の呪詛に寄って天空より引きずり降ろされた『魔空原城』へと走る。

 しかし、そんな彼の道行を阻むのは『島原一揆軍』であった。
『妖魔忍者』たちは皆一様に、ぱらいそへと至るのだと叫んでいる。それが彼らの欲望であることは言うまでもない。
「ゾンビ化している……ということは半端な傷はものともしないということ……なら」
 類の瞳がユーベルコードに輝く。
 身に満ちるのは炎の精の加護を得て、森の友からの祈りを聞く。
 そして、己の相棒である指に繋いだ赤糸で操る濡羽色の髪たおやかたるからくり人形より満ちる風の魔力でもって、類は手にした短刀の柄に飾られた組紐を揺らす。

 銀杏の色が戦場に走る。
 祈り、唱え、降ろし、祓う。
「エンパイアを守るためには、この機を逃しはしませんとも」
 類は多生の縁(インネンショウキ)によってこれまで生きてきた。繋がれた赤い糸も、縁を結ばれた数多の人々も、森の友も。
 全て守るために戦う。
 人を慈しむ。
 己が器物であることは幸いでもあり、苦しみでもあったことだろう。

 喪われたものは二度と戻らぬと知るからこそ、己の器物たる胸には残響だけがある。
 そして、見るのだ。
 煌めくユーベルコードを彩るのは、あの日宿った色。
「ここで手こずっているわけにはいかぬ」
 手にした短刀が煌めく度に『妖魔忍者』たちの体を散り散りに切り裂く刃。
 かまいたちの刃を思わせるような風の魔力の迸りが『妖魔忍者』の体を引き裂く。細切れにするように、次々と類は彼らを滅ぼしていく。
 例え、彼らは頭一つになったとて、己を滅ぼそうと食らいついてくるだろう。
 それが『安倍晴明』、『晴明クルセイダー』の施したゾンビ化である。

 許しがたいことだ。
 弄び続けている。|業《カルマ》を蒐集すると嘯く『晴明クルセイダー』は、ただいたずらに己に怒りを向けて欲しいだけだと知る。
 故に類は躊躇わず押し通るのだ。
「背は取らせぬよ」
 背後から迫る敵を見やることなく手を揮って短刀の一撃を叩き込む。
 この戦場に在りて、彼は縦横無尽に切り裂き続ける。
 目指す先は『魔空原城』。
 その最奥たる、ぱらいそへ礼拝堂にこそ、この戦場に満ちる業を渦巻く中心が存在しているのならば。
「戻らぬを嘆く……だが、その代わりがあるはずだと僕は探している」
 得難きものに手を伸ばす。
 故に、この世界を護らんと類は己の手にした短刀の煌めくままに風の魔力をほとばしらせ、迫る『妖魔忍者』たちを切り裂き、道中を切り抜けるのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

鹿村・トーゴ
死地にある戦忍びは信仰が付き物だが
それに惑わされちゃダメだろねェ
てかお前さん方はもう黄泉の者
なのに骨肉割き撒いてまだ前線に出張るかね、痛ましい事だ
なぁ
死して殺生重ねる輩に
ぱらいその扉は開かねーんじゃないの?

何処かの忍びの末路に些か動揺してちょい饒舌になるも敵物理攻撃は【野生の勘と視力】で見極め躱し、敵UCの炎は【念動力】で圧し逸らすなど直撃、接触を避けるか受けても【激痛耐性】で堪え【軽業】で避け敵忍者を足場に敵中へ
UC詠唱しつつ手にしたクナイで【暗殺】敵の腹、腿を裂き動きを鈍らせる
詠唱完了で【スライディング】交え走り抜けるか後ろへ飛び去りUC発動

浄土にはぐれた奴らだ
道連れ欲しいってさ

アドリブ可



 戦場にありて恐怖とは切っても切れぬものである。
 恐怖は容易に肉体を弛緩させるであろうし、また躊躇いを生ませるものである。であれば、その恐怖を打ち消すものはなんであろうか。
 勇気ではない。
 必要なのは信仰である。
 信仰こそが死に至る恐怖を打ち消す劇薬そのものであった。
「死地にある戦忍びは信仰がつきものだが、それに惑わされちゃダメだろうねェ」
 鹿村・トーゴ(鄙村の外忍・f14519)は己の故郷を思い返す。
 信じる者があるからこそ、人は多くのことを成すことができる。
 恐怖だって振り払うことができる。

『島原一揆軍』の『妖魔忍者』たちも同様であろう。
「我等が至るはぱらいそ! 死を恐れることなく、ぱらいそに至れぬことをこそ恐れるべし!」
 彼らは例え頭を吹き飛ばされようとも己に迫るだろう。
 手足がなくなっても、這ってでも、その牙を刃を、骨身ですら突き立てようとするだろう。それは狂気にも似たものであるとトーゴは思うのだ。
 惑わされている。
 信じることは、確かに恐怖を紛らわせることのできるものであるけれど。
「それでもお前さん方はもう黄泉の者。なのに骨肉裂き撒いてまだ善戦に出張るかね、痛ましいことだ」
 それは勇猛苛烈というよりは、あまりにも悲しいものに思えたのだ。
 己の生命を大切にできないから、他者の生命を蔑ろにする。

 戦とは常にこういうものだ。
「死して殺生重ねる輩に、ぱらいその扉は開かねーんじゃないの?」
「語るに値せず!」
『妖魔忍者』たちのユーベルコードが煌めく。
 トーゴはその光を見て、己が動揺していたことを自覚する。饒舌になっていたのは、きっとそのためだ。
 迫る忍者刀の一撃を受け止めながらトーゴは己の不明、いや、未熟さを恥じる。
 けれど、それでもこの身に走る痛みは甘んじて受け入れなければならないものだと理解する。

 弾かれるようにトーゴの体が宙に舞う。
 体を捻りながら『妖魔忍者』の攻勢を躱しながら、その瞳をユーベルコードに輝かせる。
「『荒野の朽ち身の落ち梯子 楽土へ至る鳥路の逸れ路 彷徨う死魂の成れの果て 其は其は 不浄の迷い魂 聞けや 此の血此の魔の言寄せの」
 詠唱されるは禍言。
 それは、虚ろな鳥の姿をした不浄なる魂。
 飛ぶそれは、一気に『妖魔忍者』たちに触れ、たちまちに爆発を持って、彼らの体を吹き飛ばす。
 手にしたクナイと共にトーゴは『妖魔忍者』の群れへと飛び込んでいく。
「惑い魂寄せ(マドイタマヨセ)……浄土にはぐれた奴らだ」
 切り裂くクナイの一線が『妖魔忍者』たちの大腿を切り裂く。

 例え、それで動きが止まらないのだとしても、切りつけられた大腿では動きが鈍るだろう。そこに飛ぶ鳥の姿をした不浄魂が触れれば、否応なしに爆発に巻き込まれる。
「道連れがほしいってさ」
 鳴くような不浄魂の風を切る音をトーゴは聞くだろう。
 どれだけ彼らが骸の海に還ることしかできない存在なのだとしても。それでも、彼らは侵攻を寄る辺にしてここまで戦ってきたのだ。
 それを愚かだとは言うまい。
 人間は誰しもが心に恐怖を持つ。
 その恐怖を耐え難いものとしながらも、しかし、信仰の光で照らすことができるからこそ、生きていけることもある。

「だから、死してなお、過去になりてなお、その魂を穢す必要はねーさ」
 トーゴは戦場を駆け抜け『魔空原城』を目指すのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

乙葉・あいね
むむむむー!ゾンビさんがたくさん湧いたらみんな困っちゃうのです!第一、ゾンビで妖魔で忍者なのは盛り過ぎと思うのです!

魔剣の影を召喚・射出して牽制します!でも近付かれると厄介そうなのです……という訳で!(雰囲気が変わり、白と黒が反転)
……こっからはボク「黒陰の哀音」の出番だよ!魔剣の影射出での牽制に負けずに近付いて来た相手が忍者刀の間合いに入るより先にUC「轟破雷鎚みょるにーるぶれいく」!巨大すぎて切れない程大きくなった刀を振り回して片っ端から「叩き潰し」ちゃうからね!



『島原一揆軍』の士気は猛烈な高さを誇っていた。
 それが『異常なる信仰心』に裏付けされたものであることは間違いない。だが、しかし生命を厭わぬ突撃を繰り返す様は異様そのものであった。
『妖魔忍者』たちは猟兵達のユーベルコードを受けても構わずに突撃を敢行する。
 それこそ手足が吹き飛び、頭部が消し飛んでもである。
 彼らはすでに『晴明クルセイダー』によってゾンビ化された存在。
「ぱらいそ! ぱらいそこそが我等の到達すべき場所!」
「我等の居場所だ! それこそが! ぱらいそ!」
 狂乱と言っても良いだろう。彼らの瞳には狂気の如き輝きが満ちている。

「むむむむー! ゾンビさんがたくさん湧いたらみんな困っちゃうのです!」
 乙葉・あいね(白と黒の刃・f26701)は、迫る『妖魔忍者』の群れを見やる。
 彼らは一撃では止まらない。
 手足を吹き飛ばしても止まらないのならばどうするか。
「近づかれると厄介そうなので!」
 彼女の影から剣が飛び立つ。
 それは『妖魔忍者』たちの肉体を貫くが、それでも止まらない。牽制になっていないのだ。
「無駄だ! 我等がぱらいそへと至る道程に! 斯様な邪魔はぁ!」
 忍者刀を振り上げ、あいねに迫る。
 しかし、次の瞬間あいねの雰囲気が変わる。
 白と黒とが反転するように彼女の姿が変わる。
『黒陰の哀音』と呼ばれる反転した姿。
 器物である彼女がヤドリガミへと至った理由。
『陰陽の双星』と呼ばれた二刀一対。

「こっからはボクの出番だよ!」
 振るわれる忍者刀の切っ先を彼女は見据える。
 煌めく瞳はユーベルコードの輝きを湛え、その力を発露する。
 それは、轟破雷鎚みょるにーるぶれいく(ミョルニール・ブレイク)。彼女が手にしていたのは、剣と呼ぶにはあまりにも不似合いな雷をまとった巨大化した本体であった。
 即ち、二振りで一対の己の器物としての本体。
『陰陽の双星』と呼ばれた刀を超巨大化させえた一撃。

 まさに雷槌と呼ぶに相応しい一撃。
「さすがに大きすぎてこれじゃ斬れないけど……まあこれはこれで!」
 その一撃は大地を割るようにして『魔空原城』より迫る『妖魔忍者』たちの大群を一気に押しつぶす。
 どれだけ手足を切っても、頭を吹き飛ばしても己達に迫るというのならば、超巨大な質量で叩き潰すことを彼女は選んだのだ。
 確かに正しい。
 だが、その一撃は凄まじいの一言に尽きる。
 戦場を砕く雷槌の一撃は衝撃波と共に吹き荒れるようにして『妖魔忍者』たちを吹き飛ばす。

「ちょーとやりすぎちゃったかな!」
 でも、とあいねは思う。
 敵はどれだけ切り捨てても、ゾンビのように群れるのだ。這いつくばってでも己たちを止めようとしているのだ。
 ならば、やっぱり叩き潰すのが最適解だと頷く。
「第一、ゾンビで妖魔で忍者なのは盛りすぎだと思うんだよね! 名前からしてよくわからなくなっちゃっているんだもの!」
 あいねはさらに巨大化した己の本体を振るい上げる。
 戦場は未だ切り開けていない。
 こんなゾンビ化されたオブリビオンを放置はしておけない。ならばこそ、あいねは己を振るうことを躊躇わない。
「道は自分で拓くものだもんね! さあ、どんどん行くよ!」
 雷槌が再び叩きつけられ、吹き荒れる衝撃波と共にあいねは、さらに戦場へと飛ぶように駆け出していくのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

サマエル・マーシャー
ぱらいそ…そんなにも楽園を望んでいるのですね。
では、救世主である私があなたたちをそこへ送って差し上げましょう。

UCの力によりまずは分身。
私と分身たちとで翼から神の毒が染み込んだ羽を周囲に飛ばす範囲攻撃を仕掛け、戦場を私たちの羽、つまりは私たちの攻撃で満たします。
羽に触れた敵に与える認知は、彼らが望む『ぱらいそ』の光景。
そしてそのぱらいそに土足で踏み込む不届き者たち…猟兵たちですね。
その猟兵たち、実際のところは妖魔忍者たちなのですが。
UCの効果で味方同士を敵同士だと誤認させる認知を与えました。逆に猟兵のことは認知を奪うことで彼らの知覚から外します。

あなたたちの教義では火葬でも救われるのですよね?



 人は苦しみから逃れるために信仰の光を欲する。
 死の恐怖を照らすものもまた同様である。故に『島原一揆軍』のオブリビオン『妖魔忍者』も同様であったことだろう。
 ぱらいそ――楽園へと至ることを目的としているから、生命をなげうつことも躊躇わない。
 恐怖を勝る信仰というものがあるのならば、きっと今彼らの中に宿るものがそれであったことだろう。
「ぱらいそに至ることこそ、我等が生命を使う意義にして意味!」
 彼らの言葉を前にして、サマエル・マーシャー(電脳異端天使・f40407)は首を傾げた。
 疑問を思ったというよりも、確認しているような仕草であった。

「ぱらいそ……そんなにも楽園を望んでいるのですね」
「ぱらいそこそ我等が至る道筋よ!」
『妖魔忍者』たちの放つ鬼火がサマエルを取り囲む。
 だが、彼女はたじろぐことはなかった。
 己に迫るゾンビの如き『妖魔忍者』たち。彼らの力はわかっている。
 どれだけ手足を吹き飛ばしても止まらない。頭を消し飛ばしても止まらないことも。それは『異常なる信仰心』があるからだと彼女は知っている。
 ならば、自分が何をすべきかを既に彼女は本能的に理解していた。

「では、救世主である私があなたたちをそこへ送って差し上げましょう」
 ゆっくりと頷き、彼女の瞳がユーベルコードに輝く。
「この世が地獄で、ぱらいそが楽園であるというのならば、地獄を今見る必要はありません」
 ヤルダバオート・パラダイスロスト。
 それが彼女のユーベルコードの名。
 己の分身を生み出す力。
 羽撃くは翼。
 天使の翼を模したそれは、しかし、猛毒。神の毒とも言うべき強烈なる毒素を持つ羽根が戦場を満たしていく。

「おお、おおお……! これが、ぱらいそ! 我等が求めた楽園!」
『妖魔忍者』たちは足を止めていた。
 打倒すべき敵が存在しているというのに、悠長にも足を止めて天を仰いでいた。彼ら以外の何者も、彼らが天に何を見ているのかを理解できなかっただろう。
 それこそが、サマエルのユーベルコード。
 認知を奪う力によって、『妖魔忍者』が見ているのは、ぱらいそへと至ることのできた夢幻。
 彼らが望むものを見せる。
 それが彼女の力であった。

「ええ、楽園だけを見ていれば良いのです」
 サマエルはゆっくりと頷く。
 だが、『妖魔忍者』たちの表情が変わる。
「……猟兵! 我等がぱらいそを踏み荒らすか!」
「許せぬ! ぱらいそを簒奪せんと目論むか! 何人たりとて、我等がぱらいそを踏みにじらせてはらぬ!」
 彼らは忍者刀と鬼火を交える。
 己の視界に映る同胞を猟兵と誤認しているのだ。
 それもサマエルのユーベルコード。認知を奪い、与える。
 楽園を見せながら、楽園を蝕む存在を見せる。己以外の全てを敵と認識させれば『異常なる信仰心』を持つ彼らは敵を徹底的に排除しようとするだろう。

「……ええ、楽園だけを見ていれば良い」
 サマエルは相争う『妖魔忍者』たちを見下ろす。
 己が生み出した分身達の放つ羽根から放たれる毒は、『妖魔忍者』たちが如何にゾンビ化していようとも身に染み込み、認知を奪い続け、また与え続ける。
 楽園に至ったという喜び。
 己の敵を排除しようという敵愾心。
 それを同時にもたらしながら、サマエルは鬼火が彼らの体を包むのを見た。
「あなたたちの教義では火葬でも救われるのですよね?」
 煉獄が生命の穢れを濯ぐ。
 サマエルにとっては、それはどうでもよかった。必要なのは、彼らが救われるという一点のみ。

 オブリビオンであっても関係ない。
 例え、他者からはゴミとゴミとが混ざりあった『救世主らしき何か』なのだとしても。
 それでもサマエルは愛しているのだ。
 己以外の他者全てを須らく。
「だから、私を愛してください」
 偽りのメシアはつぶやく。 
 例え、その先の未来に救いがないのだとしても。それでも救うとい行為を止めることなく、彼女は満たされぬ胸の内に乾きを覚えるように、ユーベルコードの見せる偽りの認知でもって『妖魔忍者』たちを滅ぼし、悠然と『魔空原城』へと至るのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アルファ・オメガ
がう
ちょっとボクの出番かなと思ったけど、体のサイズ的にボク圧倒的に不利なのでは?

久しぶりに【エレメンタル・ファンタジア】でどーん!
「炎の竜巻ーーっ!!」
がう、オーソドックスが一番
鬼火使ってきたとしてもがぶっと竜巻で飲み込んじゃおう
これでとりあえずたいだい削ったら後は各個撃破だねー
お次はっと
「氷の発芽ーっ!」
イメージ的にはこう、氷のタケノコがにょきにょきっと
仕留めきれなくても串刺しにしておいたら動けないよね

がう、今日は調子がいいぞー
これは大技いっても大丈夫なはず
「大地の津波ーーっ!」
地面を隆起させて、ってボクの足元から津波ー?!(暴走した)
「がうーーーっ!?」(ぽーんと空に飛ばされる猫)



 戦場をちょこまかと駆け抜け、小さな体躯は跳ねるようにして『島原一揆軍』の『妖魔忍者』たちの放つ鬼火から逃げ回っていた。
「がう!」
 アルファ・オメガ(もふもふペット・f03963)は茶トラの毛並みが乱れるのも構わずに、鬼火を躱して走り回っていた。
 戦場に満たされる『妖魔忍者』たちの姿は膨大だった。
 あの『魔空原城』から溢れるようにして敵が飛び出し続けているのだ。
 けれど、アルファは、この戦場こそ己の出番だと思っていた。
 サムライエンパイアに現れた猟書家。
『クルセイダー』と呼ばれる存在は、すでにもう亡く。
 今は陰陽師『安倍晴明』によって肉体を乗っ取られた『晴明クルセイダー』が、世界に業をばらまくかのようにゾンビ化した『妖魔忍者』を操り、『超・魔軍転生』によって『魔軍将』を量産化しようとしているのだ。

 だから、と思っていたのだが、彼はケットシー。
 体躯の差を考えた時、圧倒的に自分が不利であると漸くに理解したのだ。
「けど、そんなのかんけいないね!」
 アルファは小さな体躯を跳ねさせながら瞳をユーベルコードに輝かせる。
 どれだけ体躯の違いがあるのだとしても、戦うと決めた以上、アルファは躊躇わない。常に暴走の危険を持つユーベルコード、エレメンタル・ファンタジア。
 属性と自然現象を合成した力を解き放つ。

「久しぶりだけど! 炎の竜巻――っ!!」
 それは炎と竜巻を組み合わせた現象。
 吹き荒れる炎は、次々と『妖魔忍者』たちを飲み込んでいく。だが、如何に空に高く舞い上げられ、大地に叩きつけられ炎でもって焼かれても彼らは動くことをやめない。
「ぱらいそこそ我等が求めるもの」
「ぱらいそに至る前、我等は立ち止まらぬのだ!」
 おぞましい耐久性。
 彼らは手足がもがれようとも這ってでも己達に食い下がろうとしている。恐るべき事だが、これが『安倍晴明』の施したゾンビ化である。

「がう、削ったと思ったんだけど……燃え尽きるまでとまらないとか!」
 まったくもって厄介なことである。
 炎の竜巻を消し、アルファは次に氷と発芽を組み合わせる。大地に溢れるは萌芽の如き氷の柱。
 それらが『妖魔忍者』たちの体を突き上げ、その肉体を氷結させるのだ。
「これで、なんとか動きは止められるよね。仕留めようと思ったら難儀だけども、こうしちゃえば動けないんだからね!」
 楽勝楽勝とアルファはご機嫌だった。
 普段は暴走する危険性が高いユーベルコードだが、今日の調子はとってもいい。
 これならば、と彼はちょっと調子に乗る。

「炎の竜巻、氷の発芽と来たらー……次は、大地の津波――っ!」
 行ける行ける。
 今日は行ける日。そんなふうにアルファは思っていた。だからこそ、大地を隆起させ、津波のように『妖魔忍者』たちを一息に押しつぶしてしまおうと思ったのだ。

 けれど、それは調子に乗っていた彼を嗜めるように暴走し、彼の体を上空へと跳ね飛ばすのだ。
「がう――っ!?」
 あれー!? とでも言うべきか。
 アルファにとっては、格好良く大地の隆起でもって敵を押しつぶすつもりだった。けれど、現実はどっこい違う。
 彼はまるでミサイル発射台に載せられたように大地に寄って打ち出され『魔空原城』へと飛んでいくのだ。
 正直に言って怖い。
 ものすごく怖い。けれど、これは結果オーライと言うべきだろうか。
「城がすぐ近くにあるっ! じゃあ、このまま突撃――っ!」
 アルファは小さな体を砲弾のよにして、『妖魔忍者』たちを躱し、一直線に『魔空原城』へと飛び込むのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『大帝剣『弥助アレキサンダー』』

POW   :    大帝の剣
単純で重い【両手剣型メガリス『大帝の剣』】の一撃を叩きつける。直撃地点の周辺地形は破壊される。
SPD   :    逆賊の十字架
自身の身体部位ひとつを【触れた者の闘志を奪う超巨大肉塊『視肉』】に変異させ、その特性を活かした様々な行動が可能となる。
WIZ   :    闘神の独鈷杵
自身からレベルm半径内の無機物を【無尽蔵に破壊の雷槌を放つ『闘神の渦潮』】に変換し、操作する。解除すると無機物は元に戻る。

イラスト:みやこなぎ

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


『魔空原城』の内部に一人の巨躯を誇る男が立っていた。
 手にはメガリス『大帝剣』。
 そう、サムライエンパイアにおける大いなる戦いにおいて『魔軍将』として猟兵達に立ちふさがった『弥助アレキサンダー』であった。
「秀吉殿の孫殿が大将と聞いていたが、ありゃどういうことだ?」
 彼は困惑していた。
『超・魔軍転生』によって憑装した『生殖型ゾンビ』は、己の理性を完全なものとしている。
 ただ力を操られているのではない。
 己の理性でもって然と手繰ることができる。それは生前の力を十全に使うことができることを示していた。だが、彼の困惑も尤もである。
 彼が大将であると思っていた『クルセイダー』はすでに亡き者となっている。
『安倍晴明』によって逆に体を乗っ取られ時に、すでに彼の生命は絶命しているのだ。

 だから、彼は困惑していた。
 状況が飲み込めていないと言っても良い。
「……まぁいいや、俺も侍。主君の命は果たすまで!」
『弥助アレキサンダー』は己の手にした三種のメガリスを稼働させる。
『大帝剣』、『逆賊の十字架』、『闘神の独鈷杵』。
 いずれも彼の手にしたメガリスであり、強力無比なるユーベルコード。
「さあ、来い。猟兵。俺の侍としての矜持を見せてやるぜ――!」
村崎・ゆかり
今回は秀吉はいないのね、『大帝剣』。それなら、一気に抜かせてもらうわ。

摩利支天九字護身法でダメージを防ぎつつ、薙刀で打ち合う。
どうせなら、『クルセイダー』の仇討ちに『晴明クルセイダー』と死合ってくれればよかったものを。

『大帝剣』のユーベルコードは、身体部位一つの変化か。薙刀の間合いで戦えば手足は届かないだろうけど、触手に変異させて触れてこようとするかもしれないわね。
ここは、偶神兵装『鎧装豪腕』も呼び出しておきましょう。『大帝剣』の肉体があたしに触れるのを防いで。

『大帝の剣』の振り下ろしは何とも重い! その代わり、こちらは小回りを利かせて「串刺し」狙い。動きの少ない胴の辺りを重点的に狙ってみる。



 肌黒き体躯に力を漲らせながら嘗て大帝剣と呼ばれた『弥助アレキサンダー』は己のメガリスを駆動させる。
 彼の肉体は『逆賊の十字架』によって触れた者の闘志を奪う『視肉』へと変異する。
「今回は秀吉は居ないのね、『大帝剣』」
「ならば、なんとするよ猟兵。秀吉殿がいなくても俺は侍としての役目を、使命を果たすのみ!」
『弥助アレキサンダー』は『魔空原城』の内部へと突入してきた猟兵の一人、村崎・ゆかり(“紫蘭”/黒鴉遣い・f01658)と相対する。
 その瞳にはユーベルコードの輝きが満ちている。
 互いにとって必殺の一撃を叩き込むために、その戦いの技能を十全に回しているのだ。

「それなら一気に抜かせてもらうわ」
「まかり通らぬことだよ、猟兵。俺にとって、主の命は絶対だ。死んでも通さない、と言わせてもらおうか!」
 互いに踏み込む。
 手にした『大帝剣』を振るう『弥助アレキサンダー』の踏み込みは凄まじいものだった。彼が己を侍と呼ぶのもうなずけるもの。
 斬撃の一撃を薙刀で受け止め、ゆかりは軋む骨身の痛みに耐えながら、しかし、その瞳をユーベルコードの輝きで満たす。
「オンマリシエイソワカ。摩利支天よ、この身に験力降ろし給え」
 摩利支天九字護身法(マリシテンクジゴシンホウ)によって強化されたオーラ防御の力。
 それによって彼女は『弥助アレキサンダー』のメガリスである『逆賊の十字架』による肉体変異、そして、その変異した肉体である『視肉』による闘志を奪われることを警戒していた。

「そうだろうな。警戒するだろうな。俺のこのメガリスの意味を知っているのならば!」
 振るわれる斬撃は確かに尋常ならざる間合いのもの。
 しかし、ゆかりが振るうのは薙刀だ。
 剣と薙刀。
 そのリーチの差は言うまでもない。
 だが、薙刀が優れているのはリーチだけではない。遠心力による一撃は、容易く斬撃の一撃を強烈なものへと変える。
「『鎧装剛腕』!」
「式神も手繰るか、余程俺に触れられるのを警戒していると見る!」
「その『視肉』のことは知っている。闘志を奪う、即ち戦意を削ぐということ。なら、こちらを封殺する手段であるということも!」
「そのとおりだ! だからこそ!」
 そう、だからこそ猟兵たちは選択を迫られる。

 敵に選択を強いることは戦いにおいてアドバンテージとなるだろう。
 距離を詰めねば戦えず。
 さりとて距離を詰めれば敵の斬撃が重くのしかかってくる。
 だからこそ、ゆかりは『鎧装剛腕』でもって己の死角を守り、『弥助アレキサンダー』とまともに打ち合うことができてるのだ。
「まともに打ち合ってなんていられないのよ!」
「そうだろうな! 故に勝負を決めるは、刺突の一撃!」
 振るわれる斬撃を薙刀で受け流しながら、ゆかりが前に踏み込む。
 大地を抉るような剣の一撃が放つ衝撃波が、彼女の体を打つ。ユーベルコードに寄ってオーラの防御を高めて尚、この身に走る衝撃。

「『弥助アレキサンダー』! どうせなら『クルセイダー』の仇討ちに『晴明クルセイダー』と死合ってくれればよかったものを!」
「変わらぬさ。憑装され、『超・魔軍転生』によって肉体を得たのならば、俺を呼び出したものの命に従うまで! それが侍というものだ! 即ち!」
 振るう斬撃の軌跡をゆかりは見ただろう。

「侍とは、死ぬことと見つけたり、だ!」
 斬撃がオーラの防御を砕く。 
 だが、ゆかりはそのさなかを飛ぶようにして踏み込む。『鎧装剛腕』が砕ける。それは、『弥助アレキサンダー』の一撃を受け止めたからだった。
 砕ける破片の最中、ゆかりは『鎧装剛腕』の砕ける破片の中にて刺突の一撃を叩き込む。
 防御と敵の視界を奪う二段構え。
 己の傷は浅からぬもの。
 されど、この一撃を叩き込むためにゆかりが支払った代償。
 故に、その一撃は『弥助アレキサンダー』の胴を穿つのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

馬県・義透
引き続き『侵す者』にて

まあ、困惑はわかるが。乗っ取りとか思わんだろ普通。
しかして…わしも武士。いくぞ!

そのUCの性質は知っておる。わし、さっき使ったからな!
気を付ければよいのは、あの大剣ぞ、霹靂。任せた。

わしはなあ…黒燭炎を薙ぎ、突き…距離をとって投げる!
なんでかと言うとな、投げたらUC使って掴んで、そのまま薙ぐのよ。
真っ直ぐに来るかと思ったところに横とか、わりと不意打ちなのよな。


霹靂「クエー」
慣れてる。その動きは直撃しないよう、第六感で見切って避ける!



 撃ち込まれた一撃。
 刺突、と理解した時『弥助アレキサンダー』は咆哮する。傷口は浅からぬものであった。だからこそ咆哮する。
 己の肉体を。
 五体を震え上がらせる。
 確かに痛みは体に走る。されど、その血肉は未だ生命を諦めたわけではない。己の五体を持って主の命を果たす。
 それが侍である。
「故に、俺は俺の矜持でもって命を果たす!」
 確かに困惑はある。
 大将に添えられているはずの『クルセイダー』は既に『晴明クルセイダー』へと変貌を遂げている。
 厳密には主とは呼べないのかも知れない。

「困惑しておるようだな。太刀筋に迷いが見えるが」
 馬県・義透(死天山彷徨う四悪霊・f28057)はヒポグリフに騎乗し『侵す者』として『弥助アレキサンダー』に相対する。
 共に武士。侍。もののふと語る者であるからこそのシンパシーが其処にはあった。
「いかにも。だが、俺は俺の侍としての在り方を貫くのみ!」
「その意気や良し。わしも武士。いくぞ!」
 言葉は多くは必要ない。
 何故なら、己達の太刀筋こそが全てを物語るからだ。

 全身全霊を込めた一撃。
 放つはメガリス『大帝剣』の斬撃。
 最上段に構えた『弥助アレキサンダー』の巨躯が力を練り上げるようにして掲げた剣の煌めきは、それだけでユーベルコードの領域にまで到達することを『侵す者』は知る。
 だが、それは己もまた同様だった。
「単純な振り下ろしがユーベルコードにまで昇華する。その性質をわしは知っておる!」
「技と呼べぬものかもしれない。ただひたすらに打ち込み鍛錬と練磨によって得られたもの。故に!」
「誤魔化しが効かぬ力。純然たる力の結晶!」
 振るわれる一撃を『侵す者』は騎乗した『霹靂』へと横腹を蹴る足でもって伝える。
 あの一撃は受けてはならない。

「クエー!」
 その合図でもって『霹靂』が横っ飛びに跳ねるようにして躱す。
 衝撃が身を打つ。
 凄まい一撃。 
 ただの一撃で地面を割り、『魔空原城』を揺るがす。
 それが放つ衝撃がただの衝撃であるはずがない。震えるような一撃。見惚れるような一撃。
『侵す者』はしかして、笑う。
 戦いにおいて笑うことは別段珍しいことではないかもしれない。
 魂が震えるからこそ笑う。
 生命のやり取りを行うからこそ、死力が尽くされる。

 故に、と己もまたそれに応えるのだ。
 傷つきながらも距離を取った『侵す者』は構えた槍を投げ放つ。
「投擲か!」
「いいや、ポルターガイスト、ともいうのだ」
 放った槍を飛来するさなかに掴むものがあった。
 それは己たち四悪霊の呪詛。
 腕のように、掌のように伸びたそれは、投げはなった槍を掴む。投擲の一撃は当然まっすぐに飛び、直線的な動きを見せる。

 だが、掴んだ呪詛は己の手足と同様。
 なれば『弥助アレキサンダー』はまっすぐに来ると思っているが、実際には。
「薙ぎ払い……!?」
「そうさな。わりと不意打ちでなのよな。だが、卑怯とは言うまい。持てる全ての術を使って生命を取る。それが戦働きというものよ!」
 振るう横薙ぎの一撃が『弥助アレキサンダー』の胴を薙ぎ払う。
 横一線に刻まれた一撃を、しかし、『弥助アレキサンダー』は斜めに受け流す。
 大腿に刻まれた一撃。
 血潮が噴出する。
 そのさまを『侵す者』は見事と褒め称えるだろう。

「割腹を避けたか」
「ああ、侍である以上、それが」
「矜持であるな!」
 互いの瞳がユーベルコードに輝く。
 純然たる力と変幻自在たる力。その激突は『魔空原城』を揺るがし、その戦いの苛烈さを伝えるのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

テリブル・カトラリー
……どうあれ、
敵同士である事に変わりはないしな。

マシンヘルム【情報収集】刀身長さを【見切り】僅かに下がり、
【破壊工作】事前に冷却と充填を完了させておいた『戦争腕・覇穿』を弥助アレキサンダーへ向け【クイックドロウ】・【カウンター】
振り下ろし途中の大帝の剣へ、【ドリル状エネルギー弾】を射出。
【吹き飛ばし】エネルギー弾で剣を押し留め勢いを殺し、
【範囲攻撃】電撃エネルギーでその肉体を焼く

【部位破壊】切り離しオーバーヒートしていた戦争腕を壊させ、
アームドアクセル【早業】義手黒剣換装、機械刀抜刀【なぎ払い】
剣が振り下ろされ切った瞬間を狙い、スラスター【空中機動】
機械刀で弥助アレキサンダーを溶断【属性攻撃】



「やるなぁ、猟兵。流石は信長様を打ち破った強者たちだ。だが、俺も侍だ。そのためには!」
『弥助アレキサンダー』は己に迫る猟兵達のユーベルコードの輝きを真っ向から捉えていた。
 吹き荒れるような力の奔流も。
 刃交える火花散る衝撃も、全てが彼の持つ侍としての矜持を際立たせるものであった。
 負けられはしない。
 例え、主君の肉体が奪われているのだとしてもだ。
 命ぜられたのならば、それを如何にしても成す。それこそが侍というものだ。そのためならば生命など必要ない。投げ捨てるものであるというように『弥助アレキサンダー』は己の身に刻まれた傷跡から血潮が噴出していながら咆哮する。

 その咆哮に応えるように手にした剣のメガリス『大帝剣』が煌めく。
「……どうあれ、敵同士であることにかわりはないしな」
 テリブル・カトラリー(女人型ウォーマシン・f04808)はしかして、つぶやく。
 彼女にとって『弥助アレキサンダー』の矜持はどのように映っただろうか。
 否定はしないだろう。
 己もウォーマシン。
 存在意義を考えるのならば、それは目的を果たすために己の存在を保持することは理解できる。しかし、己が造られた目的をはてせぬのは、侍の矜持と共通するものがあったかもしれない。
「来るか、猟兵!」
「……」

 テリブルは己の 戦争腕・覇穿(ウォーアーム・ハバキ)より放たれた衝角螺旋のエネルギー弾を放つ。
 その一撃を『弥助アレキサンダー』は『大帝剣』で切り払う。
 しかし、その一撃は電撃となって彼の肉体を灼くだろう。
「まだまだよ! 俺の侍の矜持をとくと見るがいい!」
 振りかぶった最上段の一撃。
 それをテリブルは見上げるしかなかった。敵の動き、その勢いを完全に押し留めたと思っていたのだ。殺しきれていたと思っていた。
 けれど、『弥助アレキサンダー』は迸る雷撃をものともせずに己へと突き進んでくる。
 雷撃程度では止まらないのだとテリブルは理解した瞬間、振るわれた斬撃の一撃を己の武装腕で受け止める。

「止まるものかよ! 腕一本は貰うぞ、猟兵!」
 その一撃は純然たる力を込めたものであった。
 防げるものではない。けれど、テリブルは己の武器腕を切り離し、オーバーヒートしていた腕部を爆発させる。
「面妖なことをしやがる!」
「……確かに強い。だが」
 テリブルは瞬時にスラスターを噴射させ、爆風の中を突っ切るように『弥助アレキサンダー』へと迫る。
 この爆発で『弥助アレキサンダー』を仕留められるとは思っていない。
 これは目眩ましに過ぎない。
 そして、目くらましをしたということは、彼の予期せぬ場所からの攻撃を警戒させる。だからこそ真正面から突っ込むのだ。

「――……っ! だが、真正面から来ようとも! 腕一本分お前の不利……!」
「ウォーマシンであるということはこういうこともできる」
 テリブルの喪った腕部は即座に義手黒剣へと換装されていた。機械刀が抜き払われる。完全に『大帝剣』を振り抜いた瞬間であったがゆえの隙。
 この一瞬の隙を生み出すためにテリブルは己の腕を犠牲にしたのだ。
「正しく肉を切らせて骨を断つ、か!」
 テリブルは答えない。
 己がすべきことを理解している。だからこそ、その機械刀の一閃は『弥助アレキサンダー』の身に袈裟懸けに振るわれ、その強靭な胸板を切り裂くのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

サマエル・マーシャー
侍の矜持とやらのために戦うことが救いになるというのであれば、お相手させていただきます。

翼で飛行し空中戦。相手は飛べるようには見えないので制空権を確保すれば戦いやすくなるでしょう。
翼から神の毒を含んだ羽を飛ばし、薬物の効果で隙を作ったところに接近。神の悪意で敵の体に手を侵入させ急所を握りつぶします。

…敵の強力な攻撃もあるので、そう上手くはいかないでしょうが。

敵の攻撃は結界術によりなんとか即死しないように防ぎながら喰らい、その上で盲目の天使を発動。死にかけながらUC使用。

盲目の天使を早く解除しないと流石に死にますね…。

ですが、愛するあなたを救うためです。
あなたの最期の時までお付き合いしますよ。



 救いたいという願望がある。
 救世主願望はサマエル・マーシャー(電脳異端天使・f40407)は彼女の行動理念であったのかもしれない。それを彼女は否定するかも知れないけれど、彼女は至極と当然のように『弥助アレキサンダー』へと言葉を投げかける。
 そうせざるを得ないのではなく、そうしたいと思ったから、そうしたのだろう。
「侍の矜持とやらのために戦うことが救いとなるのであれば、お相手させて頂きます」
 静かに。
 ただひたすらに抑揚なくサマエルは告げる。
 彼女の翼が羽撃き、空を舞うようにして飛ぶ。
 その様を見上げながら『弥助アレキサンダー』は己の体躯より溢れる血潮を咆哮で止め、メガリス『闘神の独鈷杵』を握りしめる。

 周囲の無機物全てが雷槌へと変化し、サマエルを襲う。
「侍とは生命をなげうつ者のことをいう。主君の命あらば、即座に命をかける。それが侍だ。その在り方は変わらない。少ないど必要ないさ、猟兵!」
「そうですか。ですが、あなたを愛しています。だから私を愛してください」
 それを『弥助アレキサンダー』は冗談と受け取ったようであるが、サマエル自身は本気だった。冗談のような、冗談にもならぬような、そんな言葉ですら彼女にとっては偽らざるものであった。
 例え、己が偽りの救世主であろうとも。

 雷槌がサマエルに降り注ぐ。
 毒を含んだ羽根が雷槌降りしきる最中を飛ぶ。
「隙をうかがっているようだが、俺がその程度で止まるものかよ。『闘神の独鈷杵』は!」
 絶え間なく降り注ぐ雷槌。
 周囲の無機物の全てを雷に変えているのだ。
 サマエルが如何に制空権を握るように飛ぶのだとしても、迫りくる雷撃を躱しきれるものではない。
 一瞬の隙さえ見出す事ができたのならば、己の手を透過させ、『弥助アレキサンダー』の急所たる心臓を掴むことができたはずだ。

 だが、それができない。
『弥助アレキサンダー』は己のメガリスを完全に使いこなしている。
 生み出された雷槌は次々とサマエルを追い込むように空に満ちていく。結界術でなんとか即死は免れているが、数発立て続けに撃ち込まれてはどうなるかわかったものではなかった。
 それでもサマエルは己の中にある願望を違えない。
 救いになること。
 唯一、それだけのために彼女は戦うのだ。
 己の肉体に宿るは、痛み。
 激痛が走る。雷槌が己の神経を灼く。びりびりと音を立てるような痛みだ。体が震える。発汗が認められる。動悸が走る。
 けれど、サマエルの瞳はユーベルコードに輝く。

「……妙なことをしているな。猟兵。まるで徒に自分を追い詰めているような……」
「ええ、確かにこれは私の痛み。解除しなければ流石に死ぬでしょう。当然のように死ぬでしょう。ですが、愛するあなたを救うためです」
「何を言っている?」
『弥助アレキサンダー』にとって、サマエルの言葉は理解できないものであった。
 けれど、サマエルにとっては彼の理解すら不要だった。 
 彼を救うという目的。
 ただそれだけのために己のユーベルコードはあるのだ。侍の矜持を持って戦うこと。ただそれだけを成さしめるように、サマエルは愛の言葉を囁く。

「わたしにあなたを救わせて下さい」
 それはバルベロ・エンコード。ユーベルコードの輝きはサマエルの愛の言葉となって『弥助アレキサンダー』の心臓を掴む。
 己の痛みは他者の痛み。
 相対する者へと転写するような痛みは、サマエルが今感じている死に至るような痛みだ。

 軋む。
 生命が軋むのを『弥助アレキサンダー』は理解したのだろう。飛び退くようにサマエルから距離を取る。
「あなたの最期の時までお付き合いしますよ」
 サマエルは、輝く瞳で見つめる。
 ユーベルコードの輝き。それは己の窮地であるほどに輝き、愛囁く者の生命を奪う言葉となって『弥助アレキサンダー』を後退らせるのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ダーティ・ゲイズコレクター
はじめまして魔軍将さん!
私はダーティ!ダーティ・ゲイズコレクター!
凶悪で極悪で劣悪で最悪な魔王ダーティとは私のことです!

貴方のその瞳!忠義の士とお見受けます!
であればワルさは私の方が上!しかしその
大きな身体に大きな剣にアフロヘア―!
視線誘導率の計算式に当てはめたところ
私の約3倍ほど注目されると算出されました!

許せません!いざ尋常に勝負!

({立て看板}を斧のように振りかぶり相手に向かって突撃する)
カウンターを狙っていますね!?視線ありがとうございます!
(UC【強悪!妖光堕澱醜穢閃】を発動し目くらましをすると即座に距離を取って胸の谷間から取り出した{ダーティリボルバー}でオーラの弾丸を発射する)



『弥助アレキサンダー』は飛び退きながら、猟兵達の力が未だ健在であることを知る。
「流石は猟兵であると言わざるを得ないな」
 彼の力は『生殖型ゾンビ』に憑装される『超・魔軍転生』によって完璧なまでに生前の力を取り戻している。
 己の三つのメガリスが完全に駆動していることを考えれば当然であった。
 けれど、それ以上に猟兵は己を追い詰めている。
「だが、俺も侍としての矜持がある。ならば、魔軍症の一人として役目を果たすまでさ!」
 メガリス『大帝剣』を振りかぶる。
 傷を負い、生命を追い詰められながらも『弥助アレキサンダー』の咆哮は、ただそれだけで大気を震わせ、相対する猟兵達に重圧を解き放つ。

「はじめまして魔軍将さん! 私はダーティ! ダーティ・ゲイズコレクター! 凶悪で極悪で劣悪で最悪な魔王ダーティとは私のことです!」
 ダーティ・ゲイズコレクター(Look at me・f31927)は自己紹介を欠かさなかった。
 彼女にとって、この名乗りこそがどうしてもしたいことであったし、また名乗りを上げることは侍としてこの場に居る『弥助アレキサンダー』にも理解できるところであったはずだ。
 正々堂々。
 真正面から戦いを挑むこと。
 それこそが侍の矜持を刺激するであろうと彼女は理解していたはずだ。

 いや、悪魔で魔王なのだから、もっと卑劣に行っても良い気がするのだが、其処は良いこの種族である悪魔たる所以であろう。微妙にきっちりしているのだ。
「名乗りを上げられちゃあ、こちらも名乗らずにはいられないな! 俺は魔軍将! 大帝剣『弥助アレキサンダー』!」
「素晴らしい。貴方のその瞳! 忠義の士とお見受けします! であればワルさは私の方が上!」
 ダーティは己が悪魔であることを思いだす。
 そう、悪魔とはワルなことがクールだと思っている種族である。それはデビルキング法のためだとか色々な要因がカランでのことなのだが、まあ、今回それは置いておく。

 もっと言えば、ダーティの関心事はそれではなかったのだ。
「大きな身体に大きな剣にアフロヘアー!」
「これが俺であることの証明だからな!」
「ええ、わかっておりますとも。視線誘導率の計算式に当てはめたところ、私の約三倍ほど注目されると算出されました!」
 初めて聞く単語が出てきたことに『弥助アレキサンダー』は首を傾げる。
 なんて言った?
 理解できない言葉が出てきている。

「許せません! いざ尋常に勝負!」
「何故かはわからんが釈然としないな! だが、勝負であるというのならば受けて立とうじゃあないか!」
 振るう『大帝剣』とダーティの振りかぶった立て看板が激突し、火花を散らす。
 凄まじい力の奔流。
 ダーティは悪魔である。
 悪魔とは全世界を見回してみても、ぶっちぎりで最強の種族なのだ。そんな彼女の一撃は確かに『弥助アレキサンダー』を押しのけるものであった。

「だが! 単純な力だけで勝利が得られるほど俺は甘い相手ではないぞ!」
「カウンターを狙っておりますわね! 視線ありがとうございます!」
「よくわからんことを!」
『弥助アレキサンダー』はダーティの言う事がわからなかった。
 それは彼女が視線誘導の悪魔であることに起因している。
 同時に彼女の瞳がユーベルコードに輝く。

「穢れ堕ちたる光を貪りて煌く日輪よ! 今ここに顕現せよ!」
 その言葉と共に彼女から太陽のような強烈な光を放つ赤紫色の光輪を『弥助アレキサンダー』へと解き放つ。
 それは目をそらしてしまえば目を焼くことのない光。
 だが、彼女のユーベルコードは『目を逸らさないこと』を命ずる。
 命令を破った者には須らく罰則が与えられるのだ。それが『弥助アレキサンダー』には理解できないからこそ、その命令を遂行するしかない。

「わけがわからないな……! だが、この光さえしのげば!」
「それをさせぬのが私です! さあ、この一撃を受けなさい!」
 ダーティは胸元から取り出した『ダーティリボルバー』でもってオーラの弾丸を『弥助アレキサンダー』に叩き込む。
 そう、これこそが強悪!妖光堕澱醜穢閃(ヨウコウダデンシュウワイセン)!
 これがダーティの魔王としてのやり方!

 目を逸らすなと命令し、破れば罰則。破らずともオーラの弾丸が『弥助アレキサンダー』に叩き込まれる。
 二段に構えた罠。
 その罠を張り巡らせたダーティは良いこの種族であることを返上するように、デビルキングワールドであったのならば拍手喝采もののワルを披露してみせるのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

鹿村・トーゴ
主…てゆーか主君の命に従う、か
戦国の世の武士らしいぜ
その闊達、豪快
気持ち良いぐらいだねェ
オレは羅刹、名を鹿村
あの外道を討つ為にもアンタと勝負だ

片手にクナイ構え巨躯と剣の射程圏を測り【情報収集】
でも考えるより【野生の勘と軽業】で躱し【武器受け】で威力を削ぎ懐に入り体当たりと腹にクナイを突き込み更に【傷口をえぐり】即後ろへ跳び離脱後【念動力】でクナイを押し通し【串刺し】
城の機構【地形の利用】足場に跳び動いて背後、脇から一撃離脱
敵が焦れて又は狙いUC仕掛けてきたら…
羅刹の戦闘欲を刺激するねぇアンタ
さァ勝負!
被弾しても致命傷避け【激痛耐性】で凌ぎつつ【カウンター】気味にUCを近距離で撃ち込む

アドリブ可



 例え大将である『クルセイダー』の肉体が『安倍晴明』に奪われたとしても、命ぜられたことを遂行する。
 それが侍の矜持であると大帝剣『弥助アレキサンダー』は言った。
 そこに己の矜持があるのだと。
 故に、鹿村・トーゴ(鄙村の外忍・f14519)は思う。
「主……てゆーか主君の命に従う、か」
 戦国の世の武士らしい考えであると思う。闊達であるとも思うし、豪快であるとも思う。
 気持ちが良い男だと思うほどにトーゴの心の中にあるものは爽やかな風のようであった。
 ただひたすらに己の純然たる力を振るう。
 それが侍であると示す男を前にしてトーゴは、暫し『晴明クルセイダー』のことを忘れた。

「オレは羅刹、名を鹿村」
「名乗るか、猟兵。良いね。これが侍の戦いだと理解できる心根を持つものは」
「あんたこそな。だが、あの外道を討つ為にもアンタと勝負しなくちゃあならねェ」
 それが少しばかり気に食わない。
 願わくば単純な力と力とで勝負したいものであったと思うかも知れない。けれど、互いにそれは叶わぬことであると知っている。
 戦に出ては、あらゆるしがらみが己達にかかるものである。

 トーゴはクナイを手にし迫る『弥助アレキサンダー』の大帝剣の斬撃の乱舞の中を走る。
 致命打は受けなくとも、振り下ろされる大帝剣の衝撃波が凄まじい。
 まるで嵐そのもの。
 猟兵達の斬撃を受けて尚、それでも『弥助アレキサンダー』は己の力を示し続けていた。
 何たる敵であろうかとトーゴは思ったことだろう。
「凄まじい集中だな、猟兵! だがいつまで保つかな!」
「アンタを倒すまでさ!」
 放つクナイの一撃が『弥助アレキサンダー』の肉体に刻まれた傷口を抉る。
 だが、彼は呻くこと一つしなかった。

「羅刹の戦闘欲を刺激するねぇアンタ……!」
「楽しさを見出すか、それが俺とお前たちの違いだ。俺は主君のために生命を懸ける。お前たちは世界のために戦う。それだけのことだ!」
「なら、勝負と行こうじゃねェか!」
 放たれる大帝剣の斬撃。
 その一撃をトーゴは受け止める。クナイが軋む。むしろ、クナイ一本でよく受け止められたと言うべきであろう。
 だが、トーゴは火花を散らしながらクナイでもって大帝剣の一撃を受け流し、前に進む。
 いや、受け流しきれていない。
 身を削ぐような衝撃波が己の肉体を打ち据える。痛みが、苦しみが、その肉体に刻まれるが、しかしトーゴの瞳は『弥助アレキサンダー』を見据えていた。

 かの敵は純然たる力を振るう。
 メガリスの力であれど、それを己の手足のように操り斬撃を見舞ってくるのだ。
 ならばこそ、己もそれに応えなければならない。
「“視ずの鳥其の嘴は此の指す先に” …穿て大鉄嘴」
 呼気が溢れる。
 それは裂帛の気合を凝縮したものであった。
 吹き荒れるはユーベルコード。
 超圧縮した空気。
 それが己の拳の前面に形成され、トーゴは撃ち出す。
 叩きつけた一撃は、空嘴(カラバシ)。

 狂うような空気が『弥助アレキサンダー』の肉体に叩き込まれた瞬間開放され、その衝撃は凄まじい勢いとなって彼の身体を打ち据える。
『弥助アレキサンダー』の身体が吹き飛ぶ。
 それをみやり、もっと単純な世の中であったのならばよかったのに、とトーゴは思ったかもしれない。
 己が猟兵ではなく。
 彼がオブリビオンではなく。
 ただひたすらに力比べができる世であったのならば、と。
 だが、それは言うまい。
 それは叶うものでもなく。そして、望むべくものでもないのだから――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

乙葉・あいね
そのいきやよし!いざ、勝負なのです!
さっきと同じように魔剣の影を召喚、射出していくのです!

それと……あなたの武器、わたし達「陰陽の双星」と同じような、「此処とは違う世界の気配」がします!
侍といっていても接近戦だけとは考えず、常に相手の位置と距離を意識して、すぐに魔剣や双星で攻撃に割り込み迎撃や防御できるよう集中、とくにお肉の部分に触られないように注意するのです!

とはいえ、ずっと距離をとるのも難しいから、狙うは一瞬、放った魔剣の影や、迎撃でできた僅かな動きの乱れ、隙へとユーベルコードの一撃をお見舞いして、その不埒なおさわりお肉をこんがり焼き斬っちゃうのです!



 猟兵の一撃を受けてなお、『弥助アレキサンダー』は倒れることをしなかった。
 決して一度も背を大地につけることはしなかったし、膝をつくこともしなかた。身に刻まれた傷から血潮が溢れ、その黒き肌を濡らす。
 されど、彼の瞳は未だ戦意に満ちていた。
「これだから侍というのはたまらねぇものがある。俺が侍であると自覚できている以上、俺は侍としての戦いを貫くことができる」
 彼にとって主の命は絶対である。
 命をかけて遂行する。それこそが侍であると知っている。
 彼にとって、それだけが最も大切にすべきことであったのだ。だからこそ、今も偽りの主たる『晴明クルセイダー』の命令だろうと関係なく遂行しようとする。

 それ自体に意味があるというように彼は溢れる血潮を止めるように咆哮するのだ。
「そのいきやよし!」
 乙葉・あいね(白と黒の刃・f26701)の瞳がユーベルコードに煌めく。
 あの敵、『弥助アレキサンダー』の性根は邪悪ではなかった。
 ただ純然たる矜持がそこにあったのだ。だからこそ、あいねは正々堂々と戦うことを宣言する。
「いざ、勝負なのです!」
 魔剣の影が飛ぶ。
 射出されたそれを『弥助アレキサンダー』はものともしていない。手にした『大帝剣』を揮って打ち払い、さらにあいねに踏み込んでくる。
「小手先で止められる俺ではないぞ!」
「ええ、そうでしょうとも!」
 あいねは己の手にした刃と打ち合う『大帝剣』の刃を見やる。
 メガリスと呼ばれるもの。
 この世界とは異なる世界の由来であるとあいねは思っただろう。まるで自分たちと同じような気配を持っていると。
 だが、その答えはでない。

「俺のメガリスがただ一つだけだと思うな!『逆賊の十字架』!」
 その言葉とともに『弥助アレキサンダー』の腕が変容する。
 それは『視肉』と呼ばれるもの。それに触れてしまえば、戦意を消失されてしまう。知らなければ、初見であったのならば、それだけで勝負が決するたぐいのメガリスであった。
 けれど、あいねは知っている。
 予知により得られた情報は猟兵たちが共有している。
 なればこそ、彼女は『弥助アレキサンダー』の肉体が変容した『視肉』をこそ警戒していたのだ。

「それは知っているのです! そのお肉! それに触れてしまえば此方の戦意を喪わせることも!」
「ほう、やはり知っていたか。幾度となく『魔軍転生』によって復活すれど、此方のメガリスに対抗する手段を得られるというのは厄介だが!」
『弥助アレキサンダー』の言葉にあいねの瞳が一層ユーベルコードに輝く。
 己の異界の魔剣たる力。
 界を灼く蒼き炎。
 それが彼女の身体を覆う。

 瞬間、彼女の眼前に迫っていた『視肉』の腕が寸断される。
「何……?」
『弥助アレキサンダー』は驚愕した。
 己の『視肉』へと変貌した腕。それが一瞬で寸断されたのだ。斬撃の軌跡を見ることすら叶わなかった。
 何故、と思うよりも早く本能的に彼は『大帝剣』でもってあいねの斬撃を受け止める。
 いや、受け止められていない。
 己に肉体に刻まれた斬撃は炎を傷跡に立ち上らせる。

「ふっふーん! 今のわたしなら、この目に映る限りどこまでだってどこだって、全部切り捨てちゃえるのです!」
 それが己のユーベルコードであるとあいねは告げる。
 越界焔刀ればてぃーんすとらいく(レヴァティーン・ストライク)。
 それこそがあいねのユーベルコード。
 障害を無視する斬撃。
 あらゆる防護も無にする一撃は、『弥助アレキサンダー』の強靭なる肉体に炎をもたらし、その身を灼くのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

凶月・陸井
相棒の時人(f35294)と参加

敵の持つ獲物を目にして
懐かしさとあの力を相手にすることに
色々な感情が混ざった笑みが零れる
「っと…わくわくしてる場合じゃなかったな」

侍としての心構え、天晴だ
相棒と合わせて名乗ろう
「同じく、猟兵。銀誓館の凶月陸井だ…いざ尋常に」
戦闘開始と同時に、あの剣を良く知っているからこそ
破壊される地形に足元を掬われないよう大きく回避
「じゃあ、後は手筈通りに。任せとけ、相棒」

接近して【水遁「爆砕繋鎖」】を使用し
全力の一撃を与えつつ互いを鎖で繋げる
「さぁ、俺の相手をしてもらおうか」

背後の相棒の気配でタイミングを合わせ
相手が鎖を利用しようとしたところで解除
体勢を崩して、後は相棒の番だ


葛城・時人
相棒の陸井(f35296)と

信長の部下か
徳川の世に物は言いたいだろう
けどオブリビオンでゾンビなら埒もない

相対したら名乗り
「猟兵、銀誓館の葛城時人だ」
何となく弥助に対する礼儀な気がした
けど肯定はしない

「悪いけどお前の考える世界は不要だ」
主君も孫も既に果てた
「待たせるの良くないんじゃない?…勝負!」

飛び退り一旦距離を
弥助が持つ獲物を俺達は良く知ってる
「実際の攻撃用にはしなかったけど…相棒!任せた!」
言い置き光蟲の槍詠唱

相棒が集中の間の攻撃は完全に捌く事を全幅に信じ
瞳を閉じ光を追い創出
「往くよ!」
投擲命中するとダメージと共に光の柱が縫い留める
後は二人で追い打ち、止めを!

「主君の供をして逝くがいい!」



 三種のメガリス。
『大帝剣』、『闘神の独鈷杵』、『逆賊の十字架』。
 いずれもその名をシルバーレイン世界で聞くことのできたものである。しかし、それは過去のこと。
 骸の海よりにじみ出る存在、過去の化身オブリビオンである『弥助アレキサンダー』が手にしたそれと同一のものであったのかはわからない。
 けれど、その力を、その漲る奔流を前にして凶月・陸井(我護る故に我在り・f35296)は己の頬がどうにも緩んでしまうというか、笑みの形を作ってしまうことをなんとも言い難い感情でもって迎えるしかなかった。
 懐かしさ、と一言には言えない。
 けれど、同時にそれを憎むのかと言われたらそれも違うかもしれない。
 ああ、これは、と陸井は理解する。
「っと……わくわくしてる場合じゃなかったな」

 確かに『弥助アレキサンダー』は猟兵達の攻勢によって傷を負っている。
 けれど、それは此方が優勢である、という理由にはならない。
 彼の咆哮を聞けば、それがわかる。
「猟兵たち! 強者であるな! やはり侍の戦いとはこうでなくちゃあならない! 俺もどうやら男であるらしい。侍である前に!」
 強敵との戦い。
 それに心躍らせるのは陸井だけではなかった。
『弥助アレキサンダー』もまた同様であったのだ。

「徳川の世に信長配下の物言いはわからないでもないが……けど、オブリビオンでゾンビなら埒も無い」
 葛城・時人(光望護花・f35294)は共に陸井と立ち並び、その脅威をまざまざと見せつけられる思いであった。
 三種のメガリスを手繰る『弥助アレキサンダー』。
 その力は此れまで猟兵たちが攻勢を仕掛けて尚、倒しきれぬものだった。
 猟兵とオブリビオン。
 その個としての力は、完全にオブリビオンの方が上なのだ。だが、己達猟兵は繋ぐ戦いをしてきた。
 紡ぎ、つなぎ、そうして強大な敵を退けてきたのだ。

 これまでもそうだった。そして、これからもそうなのだ。
「猟兵、銀誓館の葛城・時人だ」
「同じく、猟兵。銀誓館の凶月陸井だ……」
 互いを相棒としているからこその名乗り。二人で一つ。故に『弥助アレキサンダー』は己の傷より流れる血潮をいとわずに相対する二人の名乗りに頷く。
「『弥助アレキサンダー』、故あって、主は違えているようだが、命に従って此処に居る。いやぁ、猟兵というのは気持ちのよい者たちが多いな。これで存分に力をふるえるってものだ」
 闊達に笑う。
 その在り方は共に敵でなければと思うものだった。

「……いざ尋常に」
「応ともよ!」
『弥助アレキサンダー』は『大帝剣』を構える。
「わかっているよ。これは礼儀の話だ。けど、この世界を転覆しようっていう命に従うお前は肯定しない。だから、悪いけど」
「そう言うな、猟兵、葛城・時人よ。これは俺達の戦いだ。なら、生命を懸けるのが礼儀ってものだ! そうだろう!」
 踏み込む。
 互いに踏み込んだ先にあるのはユーベルコードの輝きであった。
 振るわれる『大帝剣』の一撃が大地を割る。
 凄まじいまでの衝撃が二人を襲う。致命打にならずとも、その余波だけで身体が軋むような思いだった。

「じゃあ、後は手はず通りに」
「……相棒! 任せた!」
「任せとけ、相棒」
 陸井と時人は互いに視線で応じる。戦いに際して、二人の連携は見事なものだった。
 これまで共に駆け抜けた戦場がそれを成さしめたのだろうと容易に『弥助アレキサンダー』に理解させるものであった。
 わかっている。
 これが猟兵の強み。
 そして、過去に彼が打ちのめされてきた者たちの力だ。

 だからこそ、遠慮など無い。
 打ち据える『大帝剣』が次々と衝撃波でもって二人を翻弄する。
「今は遠くても、力の記憶は俺の中に」
「その一撃はさせはしないさ!」
 衝撃波が身を打つのも構わず、時人の瞳はユーベルコードに輝く。
「水遁「爆砕繋鎖」(スイトン・バクサイケイサ)……最後まで付き合ってもらおうか」
 陸井の瞳もまたユーベルコードに輝いていた。
 全力の一撃を叩き込んで尚、『弥助アレキサンダー』は倒れない。これまで紡いできた猟兵達の傷跡から血潮が噴出して尚、彼は倒れないのだ。
 なんたる強靭なる意志と肉体であろうか。

 敵ながら陸井は己の胸に去来した衝動を確信した。
 それは『弥助アレキサンダー』も同様だっただろう。彼と己を繋ぐ鎖。水の鎖は、己に集中しろというように呼びかけるようでもあった。
「いいさ、猟兵! そうも熱烈に言われたのならな!」
 鎖が軋む。
 互いを繋ぐということは、互いの間合いに常にあるということだ。『弥助アレキサンダー』にとって、それは彼らの目論見であると看破するところであったが関係ない。
「全て踏み潰していけばいいだけの話!」
 衝撃波が振るわれる。 
 凄まじい、の一言だった。

 吹き飛ぶ肉体を起こし、陸井が水の鎖を引き絞る。
 それは苦し紛れであったかもしれない。『弥助アレキサンダー』の身体が傾ぐ。同時に時人はそれこそが、好機であると知る。
 掲げたるは、光蟲の槍(コウチュウノヤリ)。
「往くよ!」
 漲る力。
 彼がこれまで集中することができたのは、相棒たる陸井を信頼しているからだ。彼が決して己の集中を斬らせることがないという全幅の信頼があるからこそ、彼は脇目も振らず光蟲の槍を形成する力の奔流に集中することができた。

「主君も孫も既に果てた。待たせるのは良くないんじゃない?」
「そんなことで目くじらを立てる主君じゃあないな! だから、来いよ! 猟兵!」
「その先で主君の共をするが良い!」
 陸井の引き絞る鎖が軋み、弾けようとしていた。だが、彼は躊躇わなかった。体勢を崩す。そうしたのならば、相棒が必ずや仕留めてくれると理解していた。
 だから、躊躇わない。
 放たれた光の柱が『弥助アレキサンダー』の胴を穿つ。
 迸る光。
 その最中で二人は見ただろう。

 己たちが信じたものの力を。
 放たれた光は『弥助アレキサンダー』の強靭なる肉体を穿ち、二人の力が『弥助アレキサンダー』を上回る瞬間を此処に結実させたのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

アルファ・オメガ
がう
大帝の剣はともかく、逆賊の十字架と闘神の独鈷杵は本当に良い思い出が無いよ!!
というかメガリスは壊してなんぼだから!!(シルバーレイン的価値観

使用の代償とか気になることもあるけどとりあえず
いくよ!弥助アレキサンダー!
キミの|侍の矜持《正義》が上か、ボクの|もふもふ《正義》が上か、勝負だ!!

【すーぱー・もふもふぱわー!】
大帝の剣の攻撃はまさしく一撃必殺だけど
当たらなければ大丈夫だし
地形壊されても飛んでるから平気だよ!!
なので真正面から力比べ!

もふもふは正義という理論を崩せるなら崩してみるがいい!
あ、戦場でもふもふは役に立たないだろっていうツッコミは無しで
そこだー!ちぇすとー!(頭から飛翔突撃)



 光の柱が『弥助アレキサンダー』の胴を貫通する。
 迸る力の奔流の中にありて、なおも彼は咆哮する。胴に空いた空洞。溢れる血潮。
 されど、彼は立っている。
 まだ己は本懐を遂げていないというただ一点に置いて、彼は立っているのだ。
「まだだよ、猟兵。俺は立っている。立って此処を守護している。ならば、侍として俺は此処に在り続けるんだ」
 手にした『大帝剣』を掲げて見せる姿をアルファ・オメガ(もふもふペット・f03963)は見た。
 穿たれた胴を塞ぐは『視肉』。
 メガリス『逆賊の十字架』による力だろうと推察される。

 けれど、彼にとってメガリスとはその力を振るうのではなく、破壊した時に生じる力をこそ脅威と感じるのだ。
 生命賛歌。
 あの歌を今でもアルファの耳に憶えている。
「それらに良い思い出はないんだけど! けど、代償もなしにそれだけの力を使っているのはオブリビオンであるからかな!」
「そうでもあるといえるし、そうでもないとも言える。どちらにしたって構わないだろう。俺はオブリビオンでお前たちは猟兵。ならば」
 アルファは頷く。

 確かに己の体躯は小さいものだ。
『弥助アレキサンダー』の強靭なる肉体とは異なる。けれど、戦うことを決めたのだ。己の正義のために。
 故にアルファは名乗りを上げる。
「いくよ!『弥助アレキサンダー』! キミの|侍の矜持《正義》が上か、ボクの|もふもふ《正義》が上か、勝負だ!!」
「応よ! それでこそ戦うもの! これが侍の戦いだと教えてやろう!」
 振るわれる『大帝剣』の一撃が地面を割る。
 凄まじい一撃だ。
 ただの一撃で地形を変えるほどであるし、何より衝撃波が余波としてアルファを襲う。

 だが、アルファは言った。
 己の正義もまたその強大な力に立ち向かうものであると。
「もふもふだって戦えるんだ! これが! すーぱー・もふもふぱわー!(モフモフハセントウリョク)」
 アルファの身を包むは不思議なもふもふぱわー。
『弥助アレキサンダー』には理解できない力であったことだろう。彼の体躯は頑強にして精強。硬さをこそ至高とするものであったからだ。
 だが、アルファは信じる。
 己の『もふもふは正義』と信じる心を信じる。
 煌めくユーベルコードの光に包まれるアルファの身体が一直線に『弥助アレキサンダー』へと飛び込んでいく。

「何だその力は!」
「もふもふは正義! この理論を崩せるなら崩して見るがいい!」
 何がなんだかわからない。
 何がなんだかわからないのならば、それを否定することもできないだろう。故にアルファは突撃する。
 飛び込み、ただ只管の己の信じるものが持たらす力を信じ、己の黒き刀身に赤き波紋走る刃を振り上げる。
 もふもふ。
 よくわからない。けれど、と『弥助アレキサンダー』は思う。

「その一つを信じる心、それもまた侍であると言えるだろう! だからこそ、俺は受け止めよう! その真っ向勝負を!」
 理解できずとも感じ取ることができる。
 アルファの身を包むすーぱー・もふもふぱわー! それを正面から打ち砕くことしか彼にはできないのだ。
 放たれる『大帝剣』の一閃。
 それをアルファは躱し、身を翻して『弥助アレキサンダー』の頭上へと飛ぶ。
「そこだー! ちぇすとー!」
 振るい上げた一撃は『弥助アレキサンダー』の頭部へと叩きつけられる。
 火花散るようなユーベルコードの激突。
 その最中にアルファは己のもふもふを信じることしかしなかった。

 故に彼の太刀の一撃は確かに『弥助アレキサンダー』に届き、その額から迸る血となって決着を知らしめるのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

カシム・ディーン
機神搭乗
やれやれ…天下のオウガフォーミュラが随分無様かましてやがるな
「寧ろ清明君がやばかったのかもしれないねー?もしかすると世界によっては彼もフォーミュラクラスだったのかも?」

「そういえば弥助君にも言いたいことがあるんだぞ☆…「大帝の剣」の映画面白かったぞ☆」
おめーは何言ってんだ!?

【戦闘知識・情報収集・視力】
弥助の動きと戦い方を分析
視肉の性質からどう動かすかを分析

まぁいいや…取り合えず混乱してそうだな…それなら…
UC発動

呼び出すは…クルセイダー!
よぅ…いきなり体パクられたポンコツ猟書家…リベンジのチャンスだぞ?

さぁ…その力を見せてやれ…!クルセイダー…いや…森長可!
「!?」

長…クルセイダーと連携
【集団戦術・属性攻撃・迷彩】
光水属性を機体とクルセイダーに付与
光学迷彩で存在を隠し水の障壁で音を隠蔽
【念動力・弾幕・空中戦】
飛び回りながら念動光弾で蹂躙し動きを止め
【二回攻撃・切断・集団戦術・盗み攻撃・盗み】
人間無骨発動!
やっぱりお前森…
「違います!」
連携連続斬撃で猛攻
メガリスも容赦なく強奪!!



「やれやれ……天下のオウガフォーミュラが随分無様かましてやがるな」
『むしろ晴明君がヤバかったのかもしれないねー? もしかすると世界によっては彼もフォーミュラクラスだったのかも?』
 界導神機『メルクリウス』のコクピットでカシム・ディーン(小さな竜眼・f12217)は猟書家『クルセイダー』の末路を知る。
 憑装した『安倍晴明』に逆に肉体を乗っ取られ絶命した『クルセイダー』の顛末は確かにその通りであったのかもしれない。
 けれど、『メルシー』はそれ以外にも言いたいことがあったようだ。

『そう言えば弥助君にも言いたいことがあるんだぞ☆』
 額から血潮を噴出させ、肉体のあちこちに猟兵たちから受けた傷跡を遺しながら『弥助アレキサンダー』は『メルクリウス』を見上げる。
『大帝の剣の映画面白かったぞ☆』
「おめーは何言ってんだ!?」
 思わずカシムが突っ込む。『メルシー』が言いたのは、きっとUDCアースの娯楽映画のことを言っているのだろうと思った。
 いや、それが『弥助アレキサンダー』に通じるのかと言われば、それはわからぬことであったけれど。
「なにを言っているんだ?」
「いや、本当に草莽よ。けどまあ、仕方ねぇ。やることやらないといけないのが猟兵とオブリビオンってやつだ。ならよ!」

 カシムの瞳がユーベルコードに輝く。
『弥助アレキサンダー』の保つメガリス、『逆賊の十字架』による『視肉』は触れたものの戦意を奪う力がある。
 あれを受けては己達の戦意は喪失し、まともに戦う事もできなくなるだろう。
 だからこそ、カシムは『弥助アレキサンダー』の動きを見定める。
「万物の根源よ…帝竜眼よ…時空を操りし書架の王たる竜の力を今こそ示せ」
 外典帝竜眼「ブックドミネーター」(トキヲスベシショカノオウ)。
 それはユーベルコードにして、敵対者にとって最も有効なオブリビオンを呼び出す力である。
 手にするは人間無骨。
 骨なき肉のごとく切り裂く刃。十字槍の形をしたそれを振るう存在の名を『弥助アレキサンダー』は知っていた。

「あれは秀吉殿の孫殿じゃあないのか……?」
「そうだよな。よぉ、いきなり身体パクられたポンコツ猟書家……リベンジのチャンスだぞ?」
 カシムの言葉に『クルセイダー』は答えないだろう。
 答えられないというのが本当であったのかもしれない。彼は今、カシムのユーベルコードに寄って出現している。
 カシムが知る以上のことを彼もまた知り得ないのだろう。
 だが、わかっていることがある。
 ユーベルコードで縛られている以上、己がすべきことは戦うこと。

「そうか、そうだよな。戦わざるを得ないというのならば、刃を交えるのみ!」
『弥助アレキサンダー』の方がまだ事態をよく飲み込んでいるとも言えた。
 いや、一切合切を切り捨てたとも言える。
 己の主君であっても、秀吉の孫であろうとも、まるで関係がない。己の矜持。侍の矜持を信じるのならば、今己に架せられた命をこそ遂行しなければならい。
 その命に勝る生命など己には持ち合わせていないのだから。
「やっぱり動くだけか。だが、これで二体一! その力を見せてもらうぞ、『クルセイダー』!」
 その言葉に呼応するように呼び出された『クルセイダー』が戦場を走る。
 手にした十字槍の一閃が『弥助アレキサンダー』の放つ斬撃とかちあい、火花を散らす。
 水の障壁で持って己の存在を隠した『メルクリウス』が念動光弾を解き放つ。
 弾幕のように降り注ぐ一撃が『弥助アレキサンダー』の動きを止め、そこに『クルセイダー』の槍の一閃が走るのだ。

 血潮が噴出する。
 だが、それで終わる『弥助アレキサンダー』ではない。
 己の腕を『視肉』に変え、『クルセイダー』の顔面を掴む。そうすれば、たちまちの内に『クルセイダー』は戦意を失うだろう。
 だが、カシムは理解している。
 例え、戦意を失うのだとしても、あの『人間無骨』は必ずや『弥助アレキサンダー』の肉体を切り裂く。
「怒涛の連続攻撃ってやつだよな! なら、遠慮なくやらせてもらうぜ、『弥助アレキサンダー』!」
『メルクリウス』の姿が現われる。
 迫るその巨体。
 それを『弥助アレキサンダー』は見上げる。

「からくりの巨人というところか!」
「ああ、そういうもんだと思ってくれて構わねぇですよ!」
『クルセイダー』が視肉によって戦意を喪失したものの、しかし、残されたものがある。それは『人間無骨』。
 十字の槍。
 あらゆるものを切り裂く刃。
 それをもってカシムは『弥助アレキサンダー』の身体を切り裂く。
 その一閃は、仮初めの召喚であったとしても。
 刻んだ傷跡は仮初ではない。吹き荒れるようにして血潮が噴出し、『弥助アレキサンダー』は遂に膝を屈するのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

冴島・類
矜恃、ですか
どうなんでしょうね
言葉としては麗句なんですけど
まあ、呼び出され使われる側は…
望んでではないとしても
諾して、この地に害なすならば

直に受けると面倒だな
彼の放つ視肉の攻撃を避ける為
瓜江と共に、残像残すフェイントで撹乱
狙いをぶらしつつ見切り、避け
避けきれぬ分は、瓜江が庇い戦意喪失を防ぐ

至近に近づくこと叶ったら
枯れ尾花で薙ぎ払い…軌道上に生まれた旋風に引き寄せ
相手の体勢を崩したい

隙が出来るのを注視、できたら逃さず踏み込み
破魔の力込めた刀で斬る

主命を守るばかりで
主が乗るべき相手でなくても従う
それは、晴明にとって良き駒になってしまうばかり
あの手合いに使われるより
ここで、終わりにしましょう



 血潮を噴出しながら膝をつく。
 それは『弥助アレキサンダー』にとって、己の矜持を穢すものであった。
「だが、まだ俺は消えてはいない。なら、まだ戦えるはずだ!」
 一度は屈した膝をもって、再び立ち上がる。
 その姿を見遣り、冴島・類(公孫樹・f13398)は思う。
 それこそが彼のいうところの侍の矜持なのだろうと。
「言葉としては麗句なんですけど、まあ、呼び出され使われる側は……望んでではないにしても、諾してこの地に害なすならば」
 類は立ち上がった『弥助アレキサンダー』へと飛び込む。

 彼の持つ三種のメガリスは厄介そのものだった。
 だからこそ、類は己の指先から手繰る絡繰り人形と共に走る。あの『逆賊の十字架』は、『弥助アレキサンダー』の喪った胴や傷を塞ぐようにして変異している。
 あれらに触れてしまえば、己の中に在る戦意は霧散してしまう。ならばこそ、己の絡繰り人形『瓜江』と共に撹乱するのだ。
「人形とて、主なければ動けぬだろう! ならば、その主を討つが定石!」
 迫る『視肉』。
 けれど、それを『瓜江』が防ぐのだ。

 しかし、同時にそれは『弥助アレキサンダー』の狙いでも在った。
「そうなるだろうな! 身を挺して守るが主の命に従うもの! ならば、お前の人形もまた侍であろうよ! 故に!」
 視肉が視界を覆う。
 類は見ただろう。己を襲う視肉の天幕の如き様相を。あれで己を包み込み、戦意を喪わせるつもりなのだ。
 だが、類もまた狙っていたのだ。
『弥助アレキサンダー』はたしかに強大な存在である。 
「引き寄せることはできる」
 振るうは銀杏色の組紐踊る短刀。
 その瞬間、類と『弥助アレキサンダー』の間に生まれるのは破魔の炎を伴う旋風であった。

 それは、焔旋風(ホムラツムジ)。
 運んで、と呼びかける声は、ユーベルコードの輝きとなって『弥助アレキサンダー』を視肉の向う側から引き寄せる。
 そこに物理的な距離は意味をなさない。
 己が手にした短刀が振るわれ、破魔の炎が立ち上がり、旋風が彼の肉体をy引き寄せる。
「……!? 一体これはどういうことだ!?」
「これが送る火。主命を守るばかりで、主が乗るべき相手でなくても従う。それは、晴明にとって善き駒になってしまうばかり」
 侍とは主君に仕えるものである。
 そこに価値観の総意があれど、しかして思うものがあるのであれば、やはりと類は告げる。

「あの手合が如何なる者かを見極めずにいること。そして、ただ使い潰されること」
 確かに高潔な魂なのだろう。
『弥助アレキサンダー』とは己の主君に生命を捧げた侍であるとわかる。
 けれど、と類は思うのだ。
 それはあまりにも盲目が過ぎる。
 過ぎれば、それは害悪にしかなり得ないことだ。
 だからこそ、類は短刀を振るう。
「ここで、終わりにしましょう」
 ただいたずらに矜持を語ることも。
 生命を使い潰されることも。

 そして、その業が導く未来が齎すものも。
 今日、ここで終わらせるのだというように類の短刀の刃が引き寄せられた『弥助アレキサンダー』の首元を引き裂く。
「……そうだな。それもそうだと思う。俺は最期まで侍であった。その先を考えるのはいつだって民衆であるはずなのにな。ああ、だが」
 この戦いは悪いものではなかったと『弥助アレキサンダー』は溢れる血潮と共にむさんし、崩れ去っていく。
 肯定できずとも否定もできない事柄。
 それが矜持であるというのならば、類は、それに終わりを見せることで暴走めいた生命の消費を防ぐように、最奥たる『ぱらいそ礼拝堂』へと歩みを進めるのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『憑装猟書家『晴明クルセイダー』』

POW   :    十字槍「人間無骨」
【十字型の槍】が命中した対象に対し、高威力高命中の【体内の骨を溶かす光線】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
SPD   :    憑装侵略蔵書「ぱらいそ預言書」
【預言書に書かれた未来の記述を読むことで】対象の攻撃を予想し、回避する。
WIZ   :    『魔軍転生』秀吉装
レベル×5体の、小型の戦闘用【豊臣秀吉(フェンフェンだけで意思疎通可)】を召喚し戦わせる。程々の強さを持つが、一撃で消滅する。

イラスト:kawa

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


『魔空原城』の最奥、『ぱらいそ礼拝堂』にて『晴明クルセイダー』は一人待っていた。
 美しきステンドグラスより差し込む光は色とりどりにして極彩色を思わせるものであった。見上げるだけで信心が湧き上がるような光景でも在ったことだろう。
『島原一揆軍』が夢見た、ぱらいそというものがあったのならば、こんな場所であったかも知れないと思わせる。 
 だが、其処に立っているのは『クルセイダー』ではない。
 彼の肉体を奪った『安倍晴明』であり、今は『晴明クルセイダー』と名乗る者。
「私の憑装を試み、エンパイア転覆に導かんとした蛮勇は見事でございましたよ」
 ええ、と己の肉体である『クルセイダー』を褒めそやす『安倍晴明』。
 されど、彼はうっすらと笑むばかりであった。
 心からの言葉ではない。
 ただ興が乗った、というだけで彼は徒に『クルセイダー』の肉体を奪ったのだ。ただ只管に『業』を集めるためだけに彼は笑み、迫る猟兵太刀を前にしていた。

「ならばこそ、私はこの肉体とユーベルコードにて、これよりその望みを叶えてご覧にいれましょう」
『晴明クルセイダー』はユーベルコードの輝きを瞳に宿す。
 されど、それは通常のユーベルコードのそれではなかった。
 同時に煌めく二つの輝き。
 そう、『晴明クルセイダー』は己のユーベルコードを同時に二度使うことができる。

 猟兵が扱うことができるのは、ただ一つのユーベルコード。されど、『晴明クルセイダー』は、その一度の間に二つのユーベルコードを同時に放ってくる。
 脅威というほかない。
 だが、それを打ち破らねば勝機などあろうはずもない。
「その怒りこそ私が欲したもの。『業』の源たる怒り。その蒐集こそ、私の心を動かすもの。故に、もっと動かしてくださいませ。私の凍てついた心を、その怒りでもって――」
村崎・ゆかり
大陰陽師・安倍晴明公! いえ、今は『晴明クルセイダー』が正式な名前なのかしら?
あなたが紡いだ|呪《しゅ》を扱うものの末裔として、あなたを討滅しに来たわ。その重ねた|業《カルマ》を払い落とす。
お覚悟!

「全力魔法」風の「属性攻撃」「範囲攻撃」「衝撃波」「なぎ払い」「仙術」で風吼陣。
絶対先制権を持っていないのは致命的だったわね。
風吼陣の竜巻の中では、『人間無骨』を届かせることも、『ぱらいそ預言書』での先読みも、ミニ秀吉の攻撃も、全ては風に乗る刀剣に裁断される。
このままあなたを削り尽くすわ。こんなお城、壊れたって構わない。

そろそろあなたも屍に戻る時間よ、安倍晴明! 死者は骸の海で静かに眠りなさい。



『ぱらいそ礼拝堂』のきらびやかで美しい光景の最中、飛び込む者たちが居た。
 それを『晴明クルセイダー』は騒々しいとも思わなかった。
 心が揺れない。
 まるで動かない。
 きっと猟兵たちであろうと彼は理解していたが、しかし、向けられる怒りの視線にすら彼は動じることはなかった。
「おや、これはこれは」
「大陰陽師『安倍晴明』公! いえ、今は『晴明クルセイダー』が正式な名前かしら?」
 彼の前に躍り出たのは、村崎・ゆかり(“紫蘭”/黒鴉遣い・f01658)であった。
 彼女は己もまた陰陽師として力の成り立ちを持つ者である。
 故に、その源流にあるであろう名を持つオブリビオンを前にして思うところがあったのだろう。

 だが、『安倍晴明』――『晴明クルセイダー』はやはり心を動かすことはなかった。
「そうでしょうとも。私がそう名乗っているのですから。ですが、やはり『業』には遠く及ばず。もっと苛烈なる怒りを持っているものとばかり思っておりましたが……」
「あなたが紡いだ|呪《しゅ》を扱う者の末裔として、あなたを討滅しに来たわ。その重ねた|業《カルマ》を払い落とす。お覚悟!」
 ゆかりの瞳がユーベルコードに輝く。
 吹き荒れる嵐のような力。
 風吼陣(フウコウジン)と呼ばれた絶陣の一。
 無数の刀剣を孕む暴風圏がゆかりを中心にして生まれる。刀剣が乱舞するように『晴明クルセイダー』へと迫り、その斬撃を叩き込む。
 それどころではない。
 彼女の放つユーベルコードは『ぱらいそ礼拝堂』さえも切り刻むように破壊していく。

「おお、なんとも苛烈なる風でありましょうや。人の業をもって建造した城が崩れてしまうではありませんか」
『晴明クルセイダー』は、その瞳をユーベルコードに煌めかせる。
 彼の手にあるのは憑装侵略蔵書『ぱらいそ預言書』であった。開かれたページが記すのはゆかりのユーベルコードにより、城が瓦解する様であった。
 それが現実のものとなりながらも『晴明クルセイダー』は表情を崩すことはなかった。
 余裕がある、というわけではない。
 現に彼の身体は刀剣によって刻まれている。
 血潮が溢れ、『クルセイダー』の肉体は夥しい血に塗れていく。

「絶対先制権を持っていないのは致命的だったわね。あなたの預言書があろうとも、この竜巻の中では、意味をなさない。その呼び出すミニ秀吉だって全て風に乗る刀剣に裁断されるわ」
「そうでしょうな。そのように書かれております故」
 ですが、と『晴明クルセイダー』は首を傾げる。
「おかしいですな。それほどの力を振るいながらも、しかしてわたしを滅ぼした、とは『ぱらいそ預言書』には記されておりませぬ。ならば、私は此処で滅する謂れはないということになりませぬか?」
 まるで己の生命すら他人事のように『晴明クルセイダー』は語る。
 ゆかりは刀剣荒ぶ嵐の中で『晴明クルセイダー』を見据える。

 確かに敵のユーベルコードは封じた。
 己のユーベルコードで先制することで、潰した、とも言える。だが、あの余裕はなんだ。明らかにおかしいとおもえる。
 どれだけ刀剣で囲うのだとしても、彼は微動だにしない。
 刀剣が『晴明クルセイダー』を切りつけてなお。
「あなたのユーベルコードは、攻撃力、攻撃回数、射程、装甲、移動力のいずれかを高め、いずれかを半分にするもの。なれば、この状況を省みるに」
『晴明クルセイダー』は傾げた首のまま、ゆかりを見据える。

「攻撃回数を底上げし、移動力を半分にしているのでしょう。私めを滅ぼしたいと思うのであれば、これでは足りませぬ。攻撃回数をあげたのは、『魔軍転生』を警戒してのこと。ですが、私には底上げされていない刀剣程度では滅びるに値しないのでありますよ」
 ですが、と彼は笑む。
 良い怒りだとゆかりを見据えて笑むのだ。
「でも、それでもあなたの足は止まった。逃げることもできたはず。あたしたちにとって最も嫌がる逃走という手段を封じたのよ!」
 ゆかりは刀剣はらむ暴風圏に在りて、そう宣言する。
 その通りだった。
 ここで逃走することこそが猟兵にとっての最悪。
 足を止められた、という事実こそが二種のユーベルコードを同時に発動することのできる『晴明クルセイダー』にとっての最悪。

 故にゆかりは信じる。
 己の後に続く猟兵達の力を。
 それを信じ託すからこそ、これまで強大な敵を打倒してきたことを示す――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

馬県・義透
引き続き『侵す者』
武器:灰遠雷

業だのなんだの。難しいことはまったくわからん!(深く考えないタイプ)

さてな、足止めの重ねとするか。いくぞ霹靂。
先制攻撃として足止め呪詛+炎属性+UCである。
これは逃れられぬ攻撃であるから、予知の対象がわしであろうと、回避もへったくれもない。燃えよ。
回避は霹靂に任せておるが…うむ、なるほど?


霹靂「クエ!」
槍は横に避ける、秀吉は蹴るし翼で撃つ。
後ろは振り向かせないようにする。

陰海月「…ぷきゅ…(こっそり)」
自立して動いて予知回避する思惑。後ろからこっそりの麻痺触手。
秀吉いたら、こそこそぺちぺち。



 刀剣の嵐が戦場たる『ぱらいそ礼拝堂』を破壊に導く。
 ステンドグラスの破片が舞い散る最中にありながら『晴明クルセイダー』は平然としていた。
 肉体をどれだけ傷つけられるのだとしても、彼は構わなかった。
 己の肉体ではないから、とでもいうのだろうか。
 いや、それだけではない。
 例え、これが己の肉体であっても『安倍晴明』は頓着しないだろう。何故なら、彼には揺れ動く心がない。
 ただ只管に世に満ちる『業』を蒐集するためだけに彼は存在している。
 興が乗った、というのも、きっと己の平坦なる心に波間を生み出させるであろう猟兵の怒りを買う行いであると判断したからに過ぎない。
「ともあれ、しかし、もっと苛烈に怒り狂っているものとばかり思っていましたが……」
 刀剣の嵐の中を一歩また一歩と踏み出し『晴明クルセイダー』は、その瞳をユーベルコードに輝かせる。

 瞬間、彼の周囲に現われるのはミニ秀吉。
 無数の黒き塊の如き獣たちが溢れ出し、数でもって猟兵たちへと迫るのだ。
「『業』だのなんだの。難しいことはまったくわからん!」
「クエ!」
 破壊された礼拝堂の上空から『霹靂』に騎乗した馬県・義透(死天山彷徨う四悪霊・f28057)が飛来する。
 槍の一撃を叩き込みながら、炎噴出させる呪詛でもって『晴明クルセイダー』を貫こうとするが、彼は平然とそれを躱していた。
「なるほど。ですが、理解していなくても体感することはできましょう。それが生命というもの……ああ、なるほど。あなた方は生命ではない。流石、生命の埒外にある者。猟兵というわけですね」
『晴明クルセイダー』はうっすらと笑む。

 オブリビオンを憎み、呪詛を噴出させ、溜め込み、束ねる存在。
 悪霊たる四柱を見遣り、彼は笑むのだ。
 その憎しみが、怒りが、己の平坦たる心に波間を作ってくれるものであると信じるからこそ、『侵す者』の到来をむしろ歓迎するように手を広げている。
「ですが、ええ。我が憑装侵略蔵書『ぱらいそ預言書』は、記しています。その攻撃の在り方を。故に私にはわかってしまうのです。全てわかっているということは飽き飽きするものでございますゆえ」
 故に、とあふれかえるミニ秀吉たちでもって『侵す者』と『霹靂』を圧殺せんと迫る。
 彼らは膨大な数でもって上空にある『霹靂』の翼へと己たちを土台にして迫ってくる。

「なんとも……!」
「クエッ!」
 任せて、と鳴く声が聞こえる。
『霹靂』は己も戦えると迫るミニ秀吉を翼ではたき落とし、また蹴りつける。
「おお、なんとも献身的なことでありますか。ですが、それも『ぱらいそ預言書』に記されております」
「『陰海月』……!」
『侵す者』は見ただろう。『霹靂』だけではなく、『陰海月』もまた自ら動いてミニ秀吉たちが迫るのを阻んでいたのだ。
 己のユーベルコードを発露させる隙を見出すために。

「ぷっきゅ!」
「……飽き飽きだと言ったな『晴明クルセイダー』! ならば、悪霊からは逃れられないことを知るがいい!」
 煌めくユーベルコートが迸る。
『灰遠雷』と呼ばれる弓が黒く染まる。
 己達の溢れる呪詛を持って染まる弓につがえられるは雷の矢。
 迸る光と共に放たれたそれは、一瞬で空へと駆け上り、頭上より分裂して雨のように降り注ぐ。
 それはミニ秀吉をも穿ちながら『晴明クルセイダー』へと迫る。
「なるほど。考えましたね。私の『ぱらいそ預言書』が攻撃を回避することに特化していると見るやいなや、回避も何もない飽和攻撃と」
「その通りよ。如何に予知で躱すのだとしても、躱しきれぬ矢、分裂し、追尾するというのであれば!」
 その矢が迸るようにしてミニ秀吉を貫きながら『晴明クルセイダー』の躰を貫く。
 燃えるようにして肉体から流れる血潮が蒸発していく。

「燃えよ」
 ただ、それだけを告げる。
『晴明クルセイダー』は弄ぶもの。徒に生命を浪費させ、怒りを買うことで『業』を蒐集せんとしている。
 その傲慢そのものたる在り方に付き合う理由はないと『侵す者』は己のユーベルコードによる飽和攻撃で持って、その傲慢を打ち砕かんとするのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

サマエル・マーシャー
安息な死の淵から呼び戻されてしまったあなた、自我を失い人形となってしまったあなた…なんて憐れな命。(泣きながら)
あなたたちは私が救ってあげます。

私のUCは古代エジプトに齎された十の災いを戦場に同時に再現。
バッタ、アブ、ブヨ、カエルの大量発生。疫病の流行。人々に腫物が生じる。雹が降る。暗闇に覆われる。この戦場で意味があるのはこれらでしょうか。
更にUC効果により災いに触れた対象は切断されます。

秀吉たちも無数の虫よりは数が少ないでしょう。それに雹という天候を躱すことができますか?
暗闇に覆われた戦場で未来の記述を読むことができますか?
疫病と腫物に蝕まれて満足に槍が振れますか?

どうか、安らかにお眠りを。



 哀しみの涙が溢れて止まらない。
 それは彼女の心の内より現れたものであって、偽りではない。
 例え、彼女は『偽りの救世主』なのだとしても、その事実だけは変わらない。故に、彼女の瞳は告げる。
 その言葉の全てが真実である。
「安息の死の淵から呼び戻されてしまったあなた、自我を失い人形となってしまったあなた……なんて憐れな生命」
 彼女は、はらはらと涙を流し続けていた。
 見据えるは『晴明クルセイダー』である。

「これはなんとも。不可思議なことをおっしゃられますな。私を怒りではなく哀れみでもって見つめる猟兵がいようとは。これもまた新たな『業』の形であると言うわけでありましょうか」
『晴明クルセイダー』はサマエル・マーシャー(電脳異端天使・f40407)の言葉を理解しかねているようであった。
 彼の心を動かすのはいつだって怒りだった。
 どうしようもない怒り。
 非道の全てを煮詰めたような己の業を持って怒りを買うことが、己の心を動かすものであったはずなのだ。

 だというのに目の前の猟兵は違う。
 己を哀れんでいるのだ。
「あなたたちは私が救ってあげます」
 サマエルにとって、目の前の存在は憑装された『安倍晴明』も、彼に肉体を奪われ絶命した『クルセイダー』も等しく救う対象であった。
 溢れるようにして『晴明クルセイダー』の輝くユーベルコードはミニ秀吉を呼び出し、サマエルへと走らせる。
 だが、それよりもサマエルは己のユーベルコードを解き放つ。
 それは戦場に満ちた古代エジプトにもたらされた十の災いがうちの一つ。

 そう、飛蝗。
 それも黒き飛蝗。群生相たる色。それが意味する所を人は知る。故に恐怖の代名詞として語り継がれることになったのだ。
 激突するは互いに黒。
 黒き獣と黒き飛蝗。
 互いが互いを蝕むようにして喰らい、霧散していく。
 さらにそれだけではない。共に血を喰らう害意。腐臭放つ蛙の災い。
 そこに満ちているのは災の全てであった。また同時にそれらはあらゆる者を切断する。
「それだけではありませぬな。これは十の災い。疫病、はれもの、雹、暗闇。これは愉快でありますな。人ならざる天の災いなれど、しかし、それを望むのは人ありき。そうでありましょう? これは自然の営みの環の一つに過ぎませぬ。これを災いと遠ざけるのは人の怒りにして業でありましょうや」
 その言葉にサマエルは頭を振る。

 戦場に満ちる災の最中、彼女は己が救いたいと願う二つの生命を見やる。一つは絶命し、一つは哄笑する。
「ありきたりな台詞だと思いますが、苦しみに満ちた生から解放されるという意味では死も救いです」
「そうでありましょうな。わかりますとも。されど、あなたの言うところの救いとは与えられるものでしかありますまい。それでは私が求める業は満たされますまい」
 故に、彼の手にある憑装侵略蔵書が開かれる。
 だが、彼がそこに記されたものを見ることはできなかった。
 サマエルのユーベルコード、モーセ・パニッシャーは、十の災いを持って切断を齎す力。

 暗闇覆う最中にあって、記述を読み解くことなどできはしない。
「ああ、なるほど」
 これは、と思う。
 目の前の存在は業を背負っている。
 己以外の全てを救わねばならぬという業。
 故に彼女は。
「どうか、安らかにお眠りを」
 煌めくユーベルコードの光すら飲み込む暗闇の中でサマエルは告げる。災いは常に人のそばにある。
 故に、それは『晴明クルセイダー』に降り注ぐ。
 身を切り、血を流し、それらを吸ってさらに新たな災いが輪廻のごとく彼に襲いかかる。それらより逃れる術は死しかない。
 故にサマエルは涙するのだ。
 憐れなる生命に救いを。死という名の救済をと――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ダーティ・ゲイズコレクター
晴明クルセイダーさんですね!
私はダーティ!ダーティ・ゲイズコレクター!
貴方を倒し世界で一番のワルになる予定の
魔王ダーティとは私のことです!

ちょっと!本ではなく私を見てください!
え?未来が見えた?ユーベルコードは使わせないって
わわっ!モコモコが沢山!視線がこんなに!
テンション上がってきました!
(大量の視線を{ゲイズ・パワー}に変換し圧倒的なオーラによる『オーラ防御』で槍と秀吉の攻撃を防ぐ)

こんなに視線をくださるってことは一番派手な技で倒されたいってことですよね!
承りました!
({ダーティウィング}を大きく広げて空気が震えるほど『魔力溜め』を行うとUC【酷悪!濁穢花蕾狂咲】を全員に向けて発射する)



『晴明クルセイダー』は息を吐き出す。
 其処に浮かぶ感情は諦観でも絶望でも、ましては希望でもなかった。
 ただ只管に飽いた、という表情を浮かべていた。
 彼にとって心を動かすのは己の『業』に対する怒りだけである。
「とは言え、生命の埒外、猟兵。面白いものでありますな。悪魔ですら猟兵として覚醒するに至る可能性がある。最強の種族。その怒りが私に向けば、一体どれほどの『業』を集めることができましょう」
 だが、それはあまり意味のないことだと彼は知る。
 悪魔は確かに強靭なる種族。
 しかし、悪魔の性根は悪ぶっていても善良そののものであったからだ。

「『晴明クルセイダー』さんですね! 私はダーティ! ダーティ・ゲイズコレクター!」
 折り目正しく破壊された『ぱらいそ礼拝堂』にてダーティ・ゲイズコレクター(Look at me・f31927)は一礼して見せた。
「貴方を倒し、世界で一番のワルになる予定の魔王ダーティとは私のことです!」
 劣悪にして極悪。極悪にして最悪。
 その魔王たるを目指す彼女に『晴明クルセイダー』は感じ入るようなふりをしながら頷く。
「ええ、ああ、はい」
「生返事!?」
「ええ」
 明らかな軽い返事にダーティは目を剥く。
 彼女を前にして『晴明クルセイダー』は己の憑装侵略蔵書『ぱらいそ預言書』を開く。
 其処に記されたるは未来。

 相対するダーティの行動が記されているのだ。
「ちょっと! 本ではなく私を見て下さい!」
「いえ、僅かに気になる未来がみえましたもので。ミニ秀吉。少し相手をしておいて下さい」
 彼の陰から無数の黒き獣たちが溢れ出す。
 ミニ秀吉。
 フェンフェンと鳴く彼らが一気にダーティへと迫る。まるで黒い洪水のような様相となりながら彼らは襲いかかるのだ。
「わわっ! モコモコが沢山!」
 ダーティはたじろぐ。いや、たじろいでは居ない。
 無数のモコモコことミニ秀吉。その両眼があるということは、彼女にとって脅威ではなく。

「テンション上がってきました! 視線が! こんなに!」
 彼女は視線誘導の悪魔。
 即ち、己に向けられる視線が多ければ多いほどに『ゲイズ・パワー』として得ることができるのだ。
 そして、ミニ秀吉たちが無数にあるということは。
「ええもうこれはあれですね! やりでもてっぽうでもってことです!」
 溢れるオーラ。
 圧倒的過ぎる力の奔流が彼女より放たれ、迫るミニ秀吉たちを吹き飛ばす。どんなに数が多かろうが、相対的に彼女のオーラは増強されていくのだ。
「やはり、厄介でありますな。悪魔というものは。行動の根底。その善悪がひっくり返っている。しかも肉体まで強靭と来ましたか」

 ぱたん、と『ぱらいそ預言書』を閉じる『晴明クルセイダー』。
 彼の求める業とは正反対な悪魔という種族に彼は飽いた。善良なだけの存在など彼にとっては心震わせるものではなかったからだ。
「こんなに視線をくださっているってことは一番派手な技で倒されたいってことですよね! 承りました!」
 ダーティは対してテンションのボルテージが凄まじいことになっていた。
 天井知らずに上がっていく『ゲイズ・パワー』。
 視線誘導の悪魔の名を恣にする彼女は、今此処に在りて膨大な力を得ているのだ。
 チャージされていくオーラは最早止めようがない。天井なんてすでにぶっ壊れているのだ。

 彼女の背に広がる悪魔の羽根。
 それが膨大な広がりを見せていく。溜め込まれたオーラを受けて励起する力は、大気すら震わせる。圧倒的なパワー。
 それを前にして『晴明クルセイダー』は肩をすくめる。
『ぱらいそ預言書』を閉じたのはこのためだ。
 一点に集中した一撃ではなく。
 目の前のダーティがなすは、膨大な魔力を一気に開放する無限の矢印。
 赤紫色のオーラが発露する。
「恐れ慄け! 泣き叫べ! 終焉を告げる花よ咲け! ご覧になって下さい! これこそが!」
 迸る矢印のオーラ。

 酷悪!濁穢花蕾狂咲(ダクアイカライキョウショウ)。

 それは無限に攻撃対象を増加させるユーベルコード。
 即ち、逃げることが叶わぬ攻撃。
「飽和攻撃は預言書の許容範囲を超えておりますので……」
「これが私! 凶悪で極悪で劣悪で最悪な魔王ダーティです――!」

大成功 🔵​🔵​🔵​

鹿村・トーゴ
業の蒐集だか気が向いたか知らねーが怒りが欲しいならくれてやる
名なんぞ呼ぶも業腹よ
民草貪りやがる偏執外道の木偶亡霊め…

UCで全強化し代償の殺戮呪詛を抑えず黒曜石の鉤爪化した右腕で殴り付ける

テメーはその躰がどんだけ損壊してもしれっとしてんだろーが
「器」はいつかダメになる
そしたら一旦退くかその器ごと滅ぶかだ
今度こそ消えてくれよ外道

>十字
強化された【視力と軽業】で初手槍を見切り左手のクナイで弾き軌道逸らし
躱して鉤爪で身をえぐり裂いて【暗殺】
>ぱらいそ
回避されても【だまし討ち】で反撃
【追跡し念動力】で手裏剣を死角から【投擲】
>秀吉
鉤爪腕を振るい蹴散らし流血を【目潰し】利用
本体を鉤爪で【串刺し】

アドリブ可



 降り注ぐ飽和攻撃。
 赤紫色のオーラの矢印が次々とミニ秀吉と『晴明クルセイダー』を穿つ。
 だが、それでも『晴明クルセイダー』は頭を振るばかりであった。彼にとって肉体とはあまり意味がないものであったのかも知れない。
 傷つくことも。
 痛みも。
 苦しみも。
 何もかも彼の心を動かすことはなかった。何故なら、彼にとって己の心を震わせるのは、己に対する怒りだけであったからだ。
「『業』の蒐集だか気が向いたか知らねーが!」
 鹿村・トーゴ(鄙村の外忍・f14519)の瞳が降り注ぐ赤紫色の矢印のオーラの最中にユーベルコードの輝きを解き放つ。

 降魔化身法によって己の肉体を強化し、己の身に流れる呪詛、その流血をものともせずに『晴明クルセイダー』へと黒曜石の鉤爪と化した腕を振るう。
 激突する音が響く。
 火花が散りながら、『晴明クルセイダー』は薄く笑む。
「よい怒りです」
「怒りがほしいならくれてやる。名なんぞ呼ぶも業腹よ。民草貪りやがる偏執外道の木偶亡霊め……」
 その言葉に『晴明クルセイダー』は首を傾げる。
「それはどちらに向けての言葉でありましょうや。民草を、というのならば『クルセイダー』。偏執というのならば私でありましょうか? いやはや、どちらにしたところで、貴方の怒りは尤もなことでありましょう」
 振るう槍の切っ先がトーゴの赤い髪を切り裂く。

 はらりと舞う数本の髪。
 だが、トーゴは躊躇わなかった。あの槍、『人間無骨』と呼ばれる槍の鋭さは言うに及ばず。またあの切っ先から放たれる光線は骨すら溶かす。
 故に触れてはならない。
 己の強化された目と身のこなしだけが頼りであった。
 初手をいなすようにクナイで斬撃の軌道をそらすことができたのが幸いであった。放つ鉤爪の一撃が『晴明クルセイダー』に迫る。
 だが、彼は躊躇わずに踏み込んできた。

「ふむ。なるほど。カウンターを狙っていると」
 手元に広がる『ぱらいそ預言書』。
 そこに記されているはトーゴの行動の全て。
「テメーは」
「はて、どうなされた」
 振るう槍の斬撃を躱しながらトーゴは『晴明クルセイダー』を見やる。
「その躰がどれだけ損壊してもしれっとしてんのは……自分の躰じゃねーからだな」
「ええ、これは『クルセイダー』のもの。まあ、すでに絶命しておりますので、骸と言えばよいでしょうが。それがなにか?」
「『器』はいつかダメになる。そしたら、一旦退くか、その『器』ごと滅ぶかだ」
「そうでしょうな」
 だから、それがどうしたというように『晴明クルセイダー』は薄く笑む。

 その笑みすら作り物であるとトーゴは知る。
 彼にとって、この戦いですらただ一つの興がのった行いの一つでしかないのだ。
 トーゴは手裏剣を放つ。
 念動力で死角から『晴明クルセイダー』を狙うのだとしても、『ぱらいそ預言書』に対応されるだろう。
 だが、構わない。
 目の前の存在は己の肉体の損壊を気にしない。ならばこそ、己の鉤爪が唸りを上げる。
 黒曜石の煌めき。
 それを持ってもたらすは確実に当たる攻撃。
「ほう、未来を見られていると理解してもなお身を差し出しますか」
「テメーが気に食わねーからだ。その気に食わないって感情もテメーを喜ばせることにしかならんのだろうが!」
 構わないと、背後から迫る手裏剣とトーゴの鉤爪が『晴明クルセイダー』を挟み込むようにして撃ち込まれる。

「今度こそ消えてくれよ外道」
 その怒りこそ求めるものだというように、その一撃を受入れた『晴明クルセイダー』は胸を穿つ黒曜石の鉤爪によって血潮を噴出させる――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

大町・詩乃
(冷たく)あなたは何を言われ、何をされようと、非道な行いを止めない。
せめて、あなたとっての初体験をプレゼントしましょう。
精々、心を動かしなさい。

◆槍は心眼・第六感で予測して、見切り・ダンスで舞うように回避するか、
天耀鏡で盾受け。
◆小型秀吉さんは結界術・高速詠唱で防御壁を作って防ぎつつ、
風の属性攻撃・高速詠唱・範囲攻撃でまとめて倒す。
◆攻撃予想に対しては、「晴明、止まりなさい。」と催眠術を掛けつつ、
更に念動力で捕縛して、回避不可状態に。

右足に神罰と雷の属性攻撃を籠めた功夫の蹴り(鎧無視攻撃・貫通攻撃)、
《真・黄金玉砕蹴》で、晴明が憑依している肉体のアレをグシャッ!
とします。痛みは晴明にいくかな~



 鉤爪の一撃が血を噴出させる。
『晴明クルセイダー』は己の肉体に突き立てられた黒曜石を思わせる鉤爪の一撃をみやり、しかし飛び退くようにして溢れる血潮が張り付く手を見やる。
 赤い。
 燃えるように赤い血潮。
 けれど、その赤さを持ってしても己の心を震わせることはなかった。
 飽き飽きした色だと彼は思った。
「やはり怒り。怒りこそが『業』を善きものにしてくださいますな。猟兵の皆様方。そうは思いませぬか。理不尽に、不条理に、非道に怒る心があなた方にはありましょうや」
 その言葉に大町・詩乃(阿斯訶備媛・f17458)は冷たい視線を向ける。

 普段の彼女を知る者であったのならば、彼女のそんな一面に驚くものであったことだろう。
「あなたは何を言われ、何をされようと、非道な行いを止めない」
「ええ、『業』の蒐集とはそういうものでして」
 故に、溢れるようにして影からミニ秀吉たちが飛び出す。
 黒い獣。
 無数、と呼ぶにはあまりにも膨大な数。それが一斉に詩乃へと迫るのだ。
 洪水をせき止めるように詩乃は結界術の防壁で持って押し止める。
 しかし、それは一時しのぎでしかない。結界術を破るようにして振るわれた『人間無骨』――その十字槍の刃の切っ先が詩乃の眼前に迫る。
 骨すら溶かす光線。
 それを詩乃は既のところで躱す。

 結界術がなければ、きっと今頃は全身の骨を溶かされていたことだろう。
 その未来が容易に想像できる。
 だが、詩乃にとって、それはどうでもいいことだった。
 己の身がどうなろうと関係ない。
 目の前の存在。『晴明クルセイダー』の行いを非道と彼女は言った。けれど、それは人の行いの側面でも在る。
 彼にとって、これは人の『業』そのものであったからだ。
 誰かを利用する。誰かを蔑ろにする。誰かを貶める。
 全て人の『業』だ。

 だから、彼は飽き飽きしているのだろう。
「どれもこれも取るに足りないものでありますな、女神『アシカビヒメ』。そうは思いませぬか。悠久の時を生きる神性にとっても、この世の流転する理にはうんざりするものでありましょう」
「いいえ。私には人の営みが何一つ同じにはみえません」
 例え、どれだけ輪廻が巡るように、季節が巡るように人の営みが繰り返されるのだとしても。
 刹那のように煌めく虹色の輝きこそが生命。
 ならばこそ、詩乃は『晴明クルセイダー』の言葉を否定する。
「飽き飽きしているのならば、あなたにとっての初体験をプレゼントしましょう。精々心を動かしなさい」
 煌めく瞳。
 ユーベルコードの輝く。

「悲鳴を上げなさい」
 予備動作などなかった。
 詩乃の振りかぶるような足のしなやかささえ見せることはなかった。
 その一撃は真・黄金玉砕蹴(シン・ゴールデン・ボール・ブレイク)。何が、とは言わないが、暗く一撃である。
 神罰の力を込めた一撃。
 男性諸君は今頃震え上がっているだろうし、経験していなくても何故かすくみ上がる思いであった。
 共感というものではない。
 これは全人類の半分に共通する痛みであり、幻肢痛そのものである。

「これは電撃走るような痛みでございますな」
 詩乃はその言葉に冷ややかな視線と声を向ける。
 意味など無い。
 目の前の存在が生命に飽き飽きしているというのならば、応える義務もない。
 己と『晴明クルセイダー』は異なる存在。価値観も、存在も決して交わることはないのだ。だからこそ、詩乃は冷ややかに『晴明クルセイダー』の躰を蹴り飛ばし、凍えるような視線で持って睥睨するのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

テリブル・カトラリー
…………。

マシンヘルム戦場内【情報収集】騎乗型浮遊砲台搭乗【空中浮遊】
騎乗型浮遊砲台【推力移動】距離を取り『戦争腕・奏嵐』発動。両腕換装。
騎乗型浮遊砲台の|光学砲《バルカン》【制圧射撃】
晴明クルセイダーへ【先制攻撃】接近を防ぐ。

同時にミサイルポッド展開【誘導弾】逃げ場・秀吉を爆撃で吹き飛ばし、
携行浮遊砲台展開【砲撃】氷結榴弾で【属性攻撃】体勢崩しを常に狙う。
両腕ガトリングガン【一斉発射】巨大徹甲弾【部位破壊貫通攻撃】
以上【範囲攻撃】撃ち続ける。

【念動力】武装と躯体に流動黒剣を纏い触れてきた秀吉は【切断】
強引に接近してきた時は槍の矛先を見切り、絶対物質盾展開【盾受け】
距離を取ってガトリング斉射だ



「まったくもって猟兵というものは突拍子もない事をしでかすものばかりでありますな。いやはや」
『晴明クルセイダー』は己の肉体に走る痛みに無頓着だった。
 いや、他人事であったようにさえ振る舞っている。
 それもそのはずだろう。彼、『安倍晴明』はあくまで霊体。肉体は『クルセイダー』のものであるが、しかし、その生命はすでに絶命して骸そのものである。
 だから、というわけではない。
 彼にとって己の肉体も、永劫の生きる生命も、興味の対象ではなかった。
「飽き飽きしていたところでありますが、中々に刺激的でありますな。これは」
 彼は己に迫る火線を見上げる。

 雨のように降り注ぐ弾丸。
 それを一瞬で影より溢れ出した黒い獣、ミニ秀吉たちに受け止めさせる。
「……」
 己を見つめる瞳があった。
 感情の乗らぬ瞳。己と同じであると『晴明クルセイダー』は思ったことだろう。
 だが、それ以上にテリブル・カトラリー(女人型ウォーマシン・f04808)は己の頭部を覆うマシンヘルムから伝わる戦場の情報を下に騎乗型浮遊砲台『ロートレック』に収まり、火線を解き放つ。
 戦争腕・奏嵐(ウォーアーム・ガトリング)。
 換装された腕部。
 ガトリングガンの銃身が伸びる腕を静かに『晴明クルセイダー』に向け、回転と共に発泡する。
 弾丸がばらまかれ、秒間数千発という弾丸が戦場にばらまかれる。
 それだけではない。

「ほう、光学兵器。かの銀河の海往く世界の代物でありましょうか。興味深い」
 ミサイルポッドより誘導弾が走り、爆風を生み出す。
 ミニ秀吉たちが吹き飛ばされ、さらにテリブルは砲撃を緩めることはなかった。
 氷結榴弾が飛ぶ。
 触れれば、その足場を凍りつかせ動きを鈍らせるだろう。
『晴明クルセイダー』は『ぱらいそ預言書』によってあらゆるテリブルの火砲を凌ぎ続けていた。
 これだけの砲火にさらされながらも、しかし彼の瞳には恐怖が欠片もなかった。
 何も感じていない。
 脅威にすら感じていない。
 生命を火砲の前に晒しても尚、『晴明クルセイダー』はたじろぐこと一つしなかったのだ。

「だが、それがなんだというのだ」
 合成音声が響く。
 マシンヘルムにて合成された音。それはただの音でしかない。感情乗らぬことば。恐れを抱かぬもの。それはすでにウォーマシンである己に在る揺らぎであり、すでに克服されてきたものである。
 故にテリブルは『ロートレック』と共に飛ぶ。
 距離を詰める。
『晴明クルセイダー』の薄っぺらい笑みが近づく。
 ミニ秀吉たちは火線と火砲によって排除した。だが、『ぱらいそ預言書』は飽和攻撃を前にしては意味がない。
 そこに矢のようにテリブルは飛ぶ。

 己を嚆矢にして飛ぶ。
 ガトリングガンの銃身が焼き付くほどに弾丸をばらまいたのだ。残されているのは己の身。
 いや、それだけではない。
 焼け落ちるようにしてガトリングガンの銃身がパージされる。煙を放ちながらテリブルは新たなる武装腕へと換装する。
 それは黒き刃。
 流動剣。
 液体型の黒剣は、地獄の炎を宿している。故に変形し、自在たる刃を生み出し『晴明クルセイダー』へと走る。
 交錯する身と身。
 互いに生命に執着せぬ感情持たぬが故に、その決着は淡白そのものであったことだろう。
 しかし、勝負は決する。

 心揺らがらぬのと、揺らぐ心を克服したとでは意味が違う。
『晴明クルセイダー』の肉体に刻まれるは十字の傷跡。
 血潮を焼き焦がし、地獄の炎が立ち上る様こそが、テリブルの勝利を示していた――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

乙葉・あいね
むー……難しいことはよくわかりませんけど、
あなたをこのままほっとくのだけはダメな気がするのです!

相手の槍の間合いを外すようにこちらも常に(時折残像を織り交ぜながら)動いて距離をとって、
無数の『魔剣の影』を呼び出しては飛ばしてセイ…セイ……セイセイダーさん本体への牽制と、
当たれば倒せるおフェンフェンさんへの攻撃に使うのです!
おまけで『戦槍』も投げるのです!

それで、こっちの攻撃に対して向こうが回避に軸を移して距離を詰めなくなったら『天衝』を起動、
思いっきり炎を込めて、炎の刃で周りを一気に焼き払います!
そして魔剣の影、戦槍、天衝で逃げ道を減らしたところに『白陽』でのUCをお見舞いするのです!



 十字に刻まれた胸板より噴出するは地獄の炎。
 血潮を焼き焦がし、痛みが全身に巡っているだろう。けれど、『晴明クルセイダー』は痛みに喘ぐでもなく、怒り狂うでもなく、憎悪に身を任せるでもなく、薄っぺらい笑みを浮かべるばかりであった。
「やはり怒りとは良いものでありますな。我が身を灼く、切り裂く怒り。やはり『業』はこうでなくてはなりませぬ」
 彼にとって猟兵の怒りすら、己の波立つことのない心を動かす一因でしかない。
 故に彼は笑む。
 薄っぺらく。
 心から笑むことなく、ただ只管に生命を嘲笑うよりも非道を持って染め上げんとしている。

 その相対する『晴明クルセイダー』に乙葉・あいね(白と黒の刃・f26701)は理解できずに居た。
 けれど、分かることがたった一つだけある。
 難しいことはわからない。彼が何を欲しているのかも、何を言わんとしているのかもわからない。
「あなたをこのままほっとくのだけはダメな気がするのです!」
「ええ、そうでありましょう。その直感は正しい。私の行いは全ての生命に仇名すもの。『業』とはそういうものでありましょう。それを集めることこそ私の役目でありますれば」
 影より溢れるは黒き獣。
 無数の獣はミニ秀吉であり、その洪水のような物量で持って、あいねへと迫る。
 彼女が警戒していたのは、骨すら溶かす光線を放つ十字槍『人間無骨』である。あれを受けては、如何にヤドリガミとは言え、己の本体さえも溶かされる可能性があった。

 無数の魔剣の影が飛ぶ。
 ミニ秀吉たちが、それを受け止め砕いていく。
「数では不利……でも!」
 あいねは振りかぶる。その手にあったのは穂先に奇妙な文字の刻まれた戦槍。
 握りしめた指の骨がきしむ。
 その握力と投擲能力で持って放たれた一射はミニ秀吉たちを貫きながら、一気に『晴明クルセイダー』へと迫る。
 だが、それを彼は十字槍『人間無骨』で弾く。
「やりますね、セイ……セイ……セイセイダーさん!」
「『晴明クルセイダー』でありますね。呼びづらかったでしょうか?」
「ちょっとだけ!」

 一直線に投げ放たれた槍は、しかし『晴明クルセイダー』を穿つには至らなかった。だが、それでもいいのだ。
 彼女が狙ったのは黒い洪水のように壁となっているミニ秀吉たちを排除すること。。
 全てを排することはできない。
 どれだけ魔剣の影でもって打ち払うのだとしても、無限にあふれかえるようにしてミニ秀吉たちはあいねに迫るのだ。
 だが、戦槍の一射は、道をひらく。
 一直線に。
 けれど、確かに『晴明クルセイダー』へと続く道程を示す。

「越界焔刀ればてぃーんすとらいく(レヴァティーン・ストライク)!」
 あいねの瞳がユーベルコードに輝く。
 吹き荒ぶは界を灼く蒼き炎。
 噴出する炎をまといながら、あいねは己の視界に映る全てを一瞬で炎の斬撃でもって切り裂く。
 黒き獣、ミニ秀吉も同様であった。
 一瞬の間隙。
 戦場に今、存在しているのはあいねと『晴明クルセイダー』のみ。
 邪魔だてするものはない。
 もしも、それでも障壁があったとしても、あいねのユーベルコードは全ての障害を無視する。
 彼女の刃は届く。
 あらゆる道程を無視して、『晴明クルセイダー』にと届くのだ。
『人間無骨』の煌めきが、あいねに迸る。
 けれど、あいねにとってはあまりにも遅い行いであったといえるだろう。
「ふっふーん! ぜんぶぜんぶ、おっそいのです!」
 全て切り裂く。

 界灼く蒼き炎は『人間無骨』の放つ光すら切り裂きながら『晴明クルセイダー』の肉体を切り裂く。
 斬撃は須らく届く。
 己は『陰陽の双星』。
 その名を持ってあらゆるものを断ち切る。例え、それが『業』であっても、だ――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

メンカル・プルモーサ
んもー……扱えきれない奴を迂闊に憑依させるからー…
…自滅するのは勝手だけどもっと面倒な奴が出てくる始末だし…

…憑依させるなら同意の上で主従契約か雇用契約は結ばないとね…
まずは現影投射術式【ファンタズマゴリア】で幻影の暗闇を作って周囲を闇に閉ざすことで『読むこと』を妨害…
…そして【我が身宿るは熟達の師】を発動…体の操縦権を達人に受け渡すよ…爺さん、心眼ぐらい使えたよね…
(同然じゃろ雇い主殿、と言う達人からの返答)
…気配と殺気を頼りに秀吉を切り捨てながらまるで暗闇が見えているかのようにクルセイダーへ接近…黎明剣【アウローラ】で十字槍を受け流してクルセイダーへと斬撃を繰り出すよ…



 大陰陽師『安倍晴明』。
 その存在を猟兵たちは知っている。
 サムライエンパイアにおける大いなる戦いの際に姿を見せ、打倒した存在。
『超・魔軍転生』によって、その存在を憑装した『クルセイダー』が何を望んでいたのかなど言うまでもない。
 江戸幕府の転覆。
 サムライエンパイアに争乱を持って世界の破滅に導く行い。
 それを高望みであると『安倍晴明』は言った。同時に『クルセイダー』の肉体を逆に乗っ取るという業すらしてみせたのだ。

 その力は鮮烈であった。
 だが、その当の本人は何もかもに飽いたように猟兵達の苛烈なる攻勢を身で持って受け取る。
 身に刻まれた傷跡は浅からぬものばかり。
 されど、彼は薄っすらと笑むばかりだった。
「これが怒り。私の心を唯一動かすもの。もっと苛烈なる怒りでもって私を追い詰めなければ、サムライエンパイアに再びの争乱が訪れるでしょう。如何にしてこれを止めますか、猟兵」
 己に向けられた怒り。
 ただそれだけのために『晴明クルセイダー』は己の影よりミニ秀吉たちを呼び出し、洪水のように猟兵たちへと差し向けるのだ。

「んもー……扱いきれない奴を迂闊に憑依させるからー……自滅するのは勝手だけどもっと面倒なやつが出てくる始末だし……」
 メンカル・プルモーサ(トリニティ・ウィッチ・f08301)は息を吐き出す。
 呆れた、と言っても良い。
 確かに『超・魔軍転生』は過去の存在を呼び出し、己の身に装備する恐ろしき術である。だが、契約というものはしっかりと結ばねばならない。
 メンカルがいうところの主従契約か、もしくは雇用契約。
 契約というのは縛るものである。
 互いの楔。
 故に効果を発する呪いそのものであった。
 陰陽師とよばれた『安倍晴明』であるのならば、なおさらであろう。それを怠ったことが『クルセイダー』の不始末であるとも言えた。

 だからこそ、メンカルは、その面倒な者『安倍晴明』、『晴明クルセイダー』を打倒すべく、現影投射術式『ファンタズマゴリア』でもって戦場を暗闇に落とす。
「ほう、『ぱらいそ預言書』の脅威を悟りましたか」
「その預言書は読むことによって力を発する。同時にユーベルコードを二つ使う……お前の力は理解している……なら」
「それを潰すのが定石。なるほど、そういう意味では猟兵、あなたは『クルセイダー』よりは賢いと言えるでしょうな」
 だが、暗闇の中であっても『晴明クルセイダー』の余裕は崩れていなかった。
 これまで猟兵が攻勢によって傷を与え続けて尚、それでも彼は痛みも、苦しみも感じていないかのように飽いた表情を崩さなかった。

「とは言え、如何に致します。私は『ぱらいそ預言書』を読めない。さりとて、あなたはミニ秀吉の猛攻を躱せますかな?」
 その通りであった。
 闇の洪水のように溢れるミニ秀吉たち。
 彼らの洪水を躱すことは恐らく無理だ。
 だが、メンカルの瞳はユーベルコードに輝く。

 最も面倒だと思ったユーベルコード『ぱらいそ預言書』は暗闇によって封殺した。残るミニ秀吉の群れが己に迫るまでの僅かな時間で勝負を決しなければならない。
 ならばこそ、彼女の瞳は彼女の瞳ではない別の……。
「我が身宿るは熟達の師(コンバート・ウェポンマスター)――……爺さん、心眼ぐらい使えたよね……」
 それは己の体内に過去の達人の魂を召喚するユーベルコード。
『超・魔軍転生』と似て非なるユーベルコードに寄って宿る達人の技量を持って、メンカルは暗闇の中に飛び込む。
 ミニ秀吉たちもまた暗闇を見通すことはできない。
 けれど、メンカルの体に宿った達人は違う。

 心眼によって気配を、音を、震動を。
 あらゆるものを知覚し、『晴明クルセイダー』の存在を探り当てる。ならば、それは常人と異なる視界を持つことと同義。
「……古強者よ」
 メンカルの手に握りしめられた黎明剣『アウローラ』の剣閃が暗闇で煌めくようにして放たれる。 
 それは『晴明クルセイダー』を過つことなく切り裂く。
「なんと」
「……言葉の割りには驚いていないな……でも、これで」
 振るわれる斬撃は帰す刃で振るわれようとした十字槍すら切り払う。
 そう、全てみえている。メンカルにとって、この暗闇こそが『晴明クルセイダー』を圧倒する。
 どれだけ生きることに飽いたのだとしても、それでも過去の化身に終わりを持たすのが己だと示すように、その黎明たる輝きを示すのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

冴島・類
怒る……何故?
貴方が欲するものなど
渡す気はないし
目論みを止める
貴方を前に抱くのは、その意志だけ

熱は静かに腹の底へ
思考は冷やして鯉口を切り…瓜江と駆け
フェイントと残像使う彼と連携し
牽制や注意引く間に薙ぎ払いで仕掛ける、と見せ

その実
二回攻撃の内、預言書を使うものもあったはず…ならば
そちらではなく、相手が攻撃技を放つ機を判断する為
見切りと六感総動員し注視

兆しが見えれば、瓜江は死角に向け
自身は脱力し糸車で受け…
受けたものをのし付けてお返し
返したものの回避に、もし相手が技を使う可能性も高いので…
返した後二回攻撃
薙ぎ払いで予言書持つ手へ向け放ち弾くことで
妨害出来ぬかと試して

掻い潜り、隙は作らねば生まれまい



 己の身を切り裂く剣閃。
 血潮が噴出する。
 痛みが走る。呼吸が乱れる。だが、それでも『晴明クルセイダー』の心にはさざなみ一つ立つことはなかった。
 彼にとって、それは飽き飽きしているものだからだ。
「私の心を動かすのは怒りのみ。『業』を蒐集するために非道を齎す者。それが私でございますれば、当然猟兵の皆様方に置かれましては、私に怒りを抱くこともまた自然なことかと」
 だが、彼の目の前に踏み込んだ冴島・類(公孫樹・f13398)の顔には怒りの表情などなかった。
「怒る……何故?」
 彼にとって、それは至極当然な疑問であったのかもしれない。
 
 己が『晴明クルセイダー』の所業に怒りを覚えることは、彼の欲するところを渡すことに他ならない。
 そして、彼の目論見を止めることは量へ至る己の責務である。
 ならば、類にとってそれは意味のないことだった。
「貴方を前に抱くのは、その意志だけ」
 熱は己の腹の底に沈めてある。
 たとえ、怒りが渦巻くのだとしても、思考まで熱せられてはならぬと知っているからこそ、短刀の鯉口を切る。
 揺れる銀杏色の組紐が揺れるのと同時に濡羽色の人形と共に類は『晴明クルセイダー』へと駆け抜ける。

 はらりと頁が翻る。
 それは『ぱらいそ預言書』。敵の行動を知るがゆえに、絶対たる回避を齎すユーベルコード。
 同時に煌めくは十字槍『人間無骨』。
「骨溶かす光線はいかがでありましょうや。如何に絡繰りと連携を取るのだとしても、今の私にはその動きさえつぶさに知ることができるのです」
「わかっている。けれど、それに意味があるの?」
 類は己の感覚を頼りにする。
 指先に感じる絡繰人形『瓜江』が走る。
『晴明クルセイダー』の死角へと走る躯体。迫る十字槍の切っ先。
 あの一撃を受けてはならぬと知っている。
 受ければ骨まで溶かす光線を放たれてしまう。そうなれば『ぱらいそ預言書』によって得た力で類は後付されるだろう。

 だからこそ、己の感覚を研ぎ澄ます。
 放たれる一撃。
 十字槍。その切っ先を前にして類は脱力する。恐れは体を固くする。走るであろう痛みを前に硬直を引き出す。
 けれど、恐れを超えるものがあるからこそ、類は、それをユーベルコードに昇華させる。
「廻り、お還り」
 煌めく瞳。
 見開かれた瞳の先に切っ先が迫る。だが、瞬時にそれを無効化する。

 それこそが、糸車(イトグルマ)。
 完全なる脱力に寄って十字槍の一撃を無効化し、そして――。

「受けましたか、ですが、無効化してそれで終わり」
「いいや、終わりではない。『人間無骨』。骨無きか如く切り裂く刃。それを示すは、骨溶かす光線、だった」
 なら、と類の瞳は未だユーベルコードに輝く。
 絡繰人形『瓜江』より放たれるは『人間無骨』が解き放つ骨溶かす光線。
 ユーベルコード受け止め、排出する力。
 それこそが彼のユーベルコード。

 だが、その光線の一撃を『晴明クルセイダー』は知ることができたはずだ。だが、それは類の放った短刀の一撃が振り払っている。
「どれだけ堅牢なるものであっても、掻い潜り隙を造らねば生まれまい。故に」
 類は走る。
『晴明クルセイダー』の体を切り裂くのではなく、推す。
 背後より迫る光線。
 それが彼の肉体を溶かす。
 己の身を顧みず。さりとて勝利を譲るわけでもなく。つなぎ、紡ぐからこそ得られる未来があると知るからこそ、糸車は回る。
「撚り合わされた糸はより強靭な未来を引き寄せるから――」

大成功 🔵​🔵​🔵​

カシム・ディーン
機神搭乗

おめーが森長可に取り憑いたはるあきらか!
「ハル○ララみたいだねー☆」
メルシー…イケるな?
「やってみるぞ☆」

突っ込みには
人間無骨持ってる奴なんて長可以外にいるわけねーだろ!秀吉との関係者なら理屈も通るし!

【属性攻撃・迷彩】
光水属性を機体に付与
光学迷彩で存在を隠し
水の障壁で音を隠蔽

【空中戦・弾幕・念動力・スナイパー】
飛び回りながら念動光弾を乱射
予言書をさりげに狙い打ち緒として読ませず
槍も届かせない

【二回攻撃・切断・盗み攻撃・盗み】
鎌剣による連続斬撃から…武装や予言書強奪狙

たまぬき発動!

「メルシーもその能力は興味あるぞ☆だからハル君…ちょっと魂頂戴☆」
晴明の魂(一部)強奪!機神が吸収!



 骨溶かす光線が『晴明クルセイダー』の腕へと照射される。
 ユーベルコードを反射する力。
 それによって『晴明クルセイダー』の手にしていた『ぱらいそ預言書』は地に墜ちた。
 だが、それでも彼は薄っぺらい笑みを浮かべ続けていた。
「これが猟兵の戦い。知っておりましたとも。どれだけか細いものであっても、可能性であってもより合わせてくることは」
 故に、と彼はどうじた様子もなく『ぱらいそ預言書』を拾いあげ、懐にしまい込んで手にした十字槍を向ける。

 その切っ先の先にあるのはカシム・ディーン(小さな竜眼・f12217)の駆る界導神機『メルクリウス』であった。
「おめーが森長可に取り憑いたはるあきらか!」
『ハル◯ララみたいだねー☆』
「はて。秀吉殿の孫、ということしか存じておりませぬが、あまり興味がありませぬので、何が正しいのかまでは。ただまあ、分不相応な野望を抱くと身を滅ぼすということだけはご理解頂けていらっしゃるかと思います」
「『人間無骨』を持ってるやつなんて森長可以外にいるわけねーだろ! 秀吉との関係者なら理屈も通るし!」
「それはこのサムライエンパイアにおいてもそうなのでしょうか。似て非なる世界。異なる世界。骸の海に浮かぶ世界の一つ。全てが正しくおもえるようであれば、全てが正しくないということの口裏合わせではありませぬか?」
『晴明クルセイダー』はカシムたちの言葉に首をひねって見せた。
 何を言っているのかわからないのであろうし、またそれについてあまり興味を見出だせていないようだった。

「メルシー……イケるな?」
『やってみるぞ☆』
「頼もしいことでございますな。いかなるをやってもらえるのでしょうか。私にとって、それは関心事、というものでありましょう。人の業にて人の怒りを買う。これにより私の心は揺らめくのですから」
 彼の目の前で『メルクリウス』の姿が消える。
 光学迷彩。
 光と水除くせいに寄って付与された熱源すら隠蔽する術。だが、それを前にしても『晴明クルセイダー』は問題にしていないようだった。

「それはあまり意味がありますまい。私の『ぱらいそ預言書』にはすべて記されております故。狙うは、これでありましょうや」
 すでに知ったる未来。
 故に迫る念動光弾の乱射の中を涼しい顔で『晴明クルセイダー』は歩くようにして手にした『人間無骨』を振るう。
「だろうな!」
『メルシーもその能力は興味あるぞ☆ だからハル君……ちょっと魂頂戴☆』
 煌めくユーベルコードの光。
 強化された盗み攻撃。
 敵の魂魄を奪う魔技。それを持って、たまぬき(ソウルスティール)と呼ぶ。

 されど、霊体たる『安倍晴明』は薄っぺらい笑みを浮かべたままだった。
「いやはや。それもまた人の『業』でありましょう。いけませんな。そのような『業』。私めも、それは飽き飽きしておりますよ」
 十字槍が『メルクリウス』の伸ばされた手を払う。
 瞬間、機体の内部フレームを溶かす光線が放たれ、機体が傾ぐ。けれど、それでも伸ばすのは鎌剣の一閃だった。
「騙し、騙され、ってな!」
 弾くは『ぱらいそ預言書』。
 宙に舞い上がるそれが、砕けるようにして霧散していく。

 これで敵のユーベルコードの選択肢は狭められた。
 最も厄介な『ぱらいそ預言書』。未来を読み解く。それをカシムは払う。
 魂を奪う、強奪する、ということは叶わずとも、あとに続く者たちに繋げることはできた。
 ならばこそ、敵に後退させる暇など与えるはずがない。
 振り上げた鎌剣の一閃が『晴明クルセイダー』の構えた十字槍ごと叩き潰すように振るわれ、『魔空原城』の地面を砕くのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アルファ・オメガ
【理緒と】
がう、やっと理緒と合流できたね
ここからが本番だー!

ユーベルコード同時ふたつ使いかー
でも先制攻撃とか自動反撃とかじゃないし
たぶんコンビで同時攻撃したら勝てる気がする!
野生の勘だよ!

でもその前に活路を開こう
『ぶらっく・せいばー』を手にしつつとっつげきー!
ここは敵もユーベルコードも通さないよー
フェンフェン出てきてもせいばーでぺしぺし叩いて排除

理緒にはボクがちょこまかしている間に
ユーベルコードの準備をお願いしよう!

理緒が敵ユーベルコードを封じてくれたら
あとは一撃叩き込むだけだね
クルセイダーも春明も線細いし叩けば倒せるよね?
だからここはユニゾンアタックだ!
え、理緒その顔なに??


菫宮・理緒
【アルファさんと】

ふぅ、やっと合流できたよ!
サージェさんがいないからって、ちょっと忍びすぎたね。
だいぶ遅刻っぽくなっちゃったよー。

ユーベルコード2つ使い?
なにそのチートっぽいキャラ。

ま、いいか!
2個でも3個でも使うといいよ。使えるなら、ね。
ここからはアイテムと技術の勝負をさせてもらうよ。

とどめは、アルファさんの野生の勘を信じよう!

って、え? ゆにぞん?
わたしがアルファさんのスピードについていけると?

そんなの無理に決まってるじゃないですかー♪
援護はするから、いってらっしゃーい!
(【M.P.M.S】を援護のガトリングモードで斉射)

あ、当てないつもりだけど、あぶなそうなときは野生の勘で避けてね!



「遅れてごめんね! でもやっと合流できた!」
 空より引きずり降ろされた『魔空原城』、その最奥たる『ぱらいそ礼拝堂』はすでに猟兵と『晴明クルセイダー』のとの戦いによって瓦解していた。
 だが未だ『晴明クルセイダー』を打倒できたわけではない。
『ぱらいそ預言書』は砕け、あるのは十字槍『人間無骨』と黒き獣を呼び出す力のみ。
 選択肢を狭めた、という意味では確かに猟兵たちは優勢を保っていたが、まだだと菫宮・理緒(バーチャルダイバー・f06437)は理解していたからこそ、アルファ・オメガ(もふもふペット・f03963)の元へと駆けつけたのだ。
「がう、やっとだね!」
「ちょっと忍びすぎちゃったね! 大分遅刻っぽくなっちゃったよー」
「敵のことはわかる?」
「ユーベルコードを同時に二つ使ってくるんでしょ。なにそれチートっぽいキャラ!」
「いやはや、確かにそうでありましょうが。ですが、一つは喪われておりますので、そうそうちーととは言えぬでは?」

 二人の会話に割り居るようにして『晴明クルセイダー』が薄っぺらい笑みを浮かべて手にした十字槍を構えている。
 悠長だと思うだろう。
 だが、それも彼にとってはどうでもいいことだ。
 己の肉体が滅びるよりも、己の心を突き動かす猟兵達の怒りのほうが重要であったからだ。
「充分チートだよ! でもね、負ける気がしないんだ。理緒とコンビを組めるのなら、勝てる気がする」
「それって野生の勘ってことかな?」
「がう、そういうこと!」
 アルファは笠を、外套を投げ放つ。より身軽に。己のユーベルコードの力を十全に満たすために彼は己の身にまとう外套を投げはなったのだ。
 瞬間、彼は走り出す。
 迫るは無数の黒き獣。ミニ秀吉の洪水めいた攻勢。
 だが、それらを押し止めるものがあった。
 究極の現実。
 World Without Abilities(ワールド・ウィズアウト・アビリティズ)。
 理緒のユーベルコードは世界を置換する。

 戦場は一つの世界へとかわり、ユーベルコードを含む全ての特殊能力の使用を禁ずるものであった。
 それは己だけではない。
 アルファにすら作用し、『晴明クルセイダー』もまた己のユーベルコードが発露せず、ミニ秀吉たちが次々と霧散していく様を見ることになる。
「なるほど。如何に私がユーベルコードを同時に二つ発動するのだとしても、その発動自体を禁ずるユーベルコードを、と。なるほど。なるほど。ですが、それはそちらも被る法則。なれば、私を討つには」
 足りない、というように槍を掲げ、撃ち込まれたアルファの一撃を受け止める。
 細身であったとしてもオブリビオン。
 その膂力は図り知れぬものではなかった。
「倒せない……!」
 手にした『ぶらっく・せいばー』の一撃でも足りない。理緒の援護によるガトリングの斉射でも足りない。

「なら、ここからはユニゾンアタックだ!」
 一人でも足りない。
 二人でも足りない。
 ならば、とアルファの瞳が理緒を見つめる。瞳と瞳で通じ合えることができる。きっと、とアルファは信じていた。
「え、ゆにぞん? なに? え、だってわたしがアルファさんのスピードについていけると?」
「え、理緒その顔なに!?」
 だが、理緒は無理無理、と手を横に降っている。
「でもやるの!」
「ええー……あ、でもこうすればいいよ!」
 瞬間、理緒の瞳に輝くユーベルコードが消える。

 それは一瞬の勝機であった。
 アルファの野生の勘とスピードが合わさるのならば、その究極の現実とよばれるユーベルコードを禁止する法則を説く一瞬の間にアルファのユーベルコードが叩き込むことができると信じるからこその解除。
 そして、アルファは、それを見逃さなかった。
 加速する一撃。
 それは、駆け抜ける黒き刃(ブラック・セイバーオウギ)そのもの。
 アルファは躊躇わなかった。
 この一瞬、理緒が己の瞬発性を信じたように、己もまた理緒のことを信じたのだ。ならばこそ、何も信じず、何も理解せず、ただ業を集めるのみの存在に己の刃が届かぬ理由など無い。
「起きて『黒刃』、キミの力を見せてくれ!」
 光さえ追い越すかのような黒き刃の一閃が『晴明クルセイダー』の躰を切り裂く。
 血潮が噴出する様。
 その光景を二人は、共に掴んだのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

凶月・陸井
相棒の時人(f35294)と参加

クルセイダー自体も倒すべき相手だが
だからと言ってそんな目にあって良いとは
ましてや嘲笑う事は許さない
「同意だよ、時人」

やることは決まってるな
そのにやけ面に一発ぶち込んでやろう
「大丈夫だ。これは俺も同じ気持ちだしな」
お互い、これだけのやり取りでどうするかも伝わる

戦闘開始と同時に【護の誓い】を使用
俺は少し成長した、あの頃の能力者としての姿
その姿であれば高威力であろうと攻撃は回避し
小型の敵も相棒と協力して排除

あとは心に強く「絶対に全員を護る」と念じて
特に今回はクルセイダーの怒りも代弁するつもりで
相棒と合わせて全力の一撃を叩き込む
「悪いな。お前の思惑通りにはさせないよ」


葛城・時人
相棒の陸井(f35296)と

下等獣を見るような目が不愉快だ
クルセイダーの必死を嗤ったのも
「そういうのすっご嫌いなんだよ俺」

元々そんな感情も持ち合わせてないのかもだけど
俺達も塵芥にしか見えてないんだろうな
「思い知らせてやりたいな」
傍らの相棒を見ると打てば響くようにいらえが
それだけでどう戦うかは、決まった

護の誓い詠唱
俺は元の姿に、そして能力者としても動ける
全力で跳躍し十字槍の初撃を躱し小さな敵も大鎌で刈り
蟲達でも攪乱を
『世界を人々を護る』意志で強くただ強く!

「猟兵は見て来ただろうけどね!」
これは想定外だろう

そうでなくても陸井と一緒だ
「悪いが此処までだよ」
追い詰め振りかぶり
陸井と完全に同時に一撃を!



 刃に切り裂かれた躯体は、すでに骸めいていた。
 手には『ぱらいそ預言書』はない。砕けて散った。片腕は骨身を溶かされ使い物にならぬ。
 手にした十字槍『人間無骨』と影より溢れ出す黒き獣、ミニ秀吉たちだけが『晴明クルセイダー』の持てるユーベルコードであった。
 だが、同時に二つのユーベルコードを手繰る力は健在。
 いや、それ以上に、と葛城・時人(光望護花・f35294)は己たちを見やる『晴明クルセイダー』の薄っぺらい笑みに喉元に何かを突きつけられる思いであった。
 己たちを見下している。
 いや、己以外の全てを見下しているのだと理解できる。
 それがどうしようもなく不愉快で、それ以上に『クルセイダー』の在り方を嗤ったことが許せなかった。
「そういうのすっごい嫌いなんだよ俺」
「同意だよ、時人」
 凶月・陸井(我護る故に我在り・f35296)もまた同様だった。互いに絶対に相容れぬことのない存在。

 猟兵とオブリビオン。
 滅ぼし、滅ぼされる間柄でしかない。『晴明クルセイダー』とて、それは理解しているはずだ。
 だが、彼はその言葉に薄っぺらい笑みを消して平坦な表情で告げる。
「そうでありましょう。理解しようとすることは、不理解への一歩でありますゆえに。理解しよう、という考え方自体が傲慢そのものでりましょうや」
『晴明クルセイダー』の言葉に時人は頭を振る。
「嘘をつくな。元々そんな感情も持ち合わせていないのだろう。全てに飽いたがゆえに、俺達も、他の誰でも塵芥にしかみえていないんだろう」
 陸井また同意する。
『クルセイダー』自体は倒すべき敵であった。
 けれど、肉体を乗っ取られ、失意の内に絶命してよかったものなのかと問われると、それもまた違う気がしたのだ。

「何が違いましょう。全てが特別であると説くことは、全てが特別ではないという無価値に至る道程でしかありますまい。そも、生命に価値を説くこと自体が無意義であります。故に私は『業』を求める。私の心を動かす怒りにふるえて頂いたほうが、まだ有益」
 その言葉を告げるより速く、二人が駆け出していた。
 煌めくはユーベルコードの輝き。
「団是にかけて!」
「絶対に護る」
 二人のユーベルコードは奇しくも――否、必然的に同じものであった。

 護の誓い(マモルノチカイ)。

 それは嘗て在りし真の姿。
 能力者としての力。全盛の力と言っても良い。己たちは戦いの青春を生きてきた。死と隣り合わせの青春。
 確かに苦しいこともあっただろう。
 哀しみにくれたこともあっただろう。
 何故戦わなければならないのかという懊悩もあっただろう。
 けれど、それらの全てが教えてくれている。どうして己達に力が宿っているのかを。それは決して『晴明クルセイダー』のいうところの無意義ではない。
「能力者。なるほど。そういうものでありますか。猟兵とは生命の埒外。故に、そのような形もあるのでしょうな」

 彼の影より溢れるミニ秀吉たち。
 黒き獣たちは一斉に飛び出し、陸井と時人へと襲いかかる。
「猟兵は見てきただろうけどね! 悪いが此処までだよ」
 振るわれる十字槍があった。触れてしまえば、骨をも溶かす光線が飛ぶ。受けてはならない。だからこそ、時人は振るわれる一撃を踏み込んで、柄を受け止める。
 だが、骨身が軋む。
 真の姿、その誓いが正義であるほどに強化された力であっても、凌ぐことが難しい一撃。
 だが、己は一人ではない。
「そうだ、俺も同じ気持ちだ」
 陸井が踏み込む。
 一人では受け止めきれぬ痛みも。
 二人であったのならば、受け止めることができる。軋む骨身は互いに同じ。けれど、跳ね返す力はニ倍になる。

 振るわれた『人間無骨』の柄が砕ける。
 それは二人出会ったからこそできた芸当。
「なんと。ですが……」
「悪いな。お前の思惑通りにはさせないよ」
 陸井は踏み込む。ミニ秀吉たちを蹴散らしながら、己の拳を握りしめる。そこにあったのは、己の怒りだけではない。
 怒りだけで誰かを護ることはできないからだ。
 確かに『晴明クルセイダー』の言う通りだろう。

 理解しよう、とい試みそのものが不理解へと人を導く。
 それは行き違うからだ。
 言葉を持ってしても、それでもなお人は違える。間違えてしまう。今回のような出来事だって、幾度でも起こり得ることだろう。
 戦いが終わったと思った世界ですら、戦いは終わりを見せてはくれない。
 新たな戦いがある。
 時人は、わかっていた。
 生きている限り、戦いは続くのだ。けれど、それでも己たちが求めたことは間違いではなかったのだ。

 戦による決着か。
 話し合いによる和平か。
 願われたものがある。あの日の続きが此処にある。ならば、己たちは手を伸ばさなければならない。
 不理解の極みにある者が目の前に居るのだとしても。
「この字にかけて!」
「絶対に護ると誓ったんだ!」
 だからと、二人の振りかぶった拳の一撃が『晴明クルセイダー』を打ち据える。
 轟音が響き渡る。
 黒き獣たちが次々と霧散していくだろう。その霧散の波が『晴明クルセイダー』へと押し寄せ、その体を足元から崩していく。

「それが如何に無益なことか知りながらも。あらゆるものが無に還ると知りながらも」
 それでも、と『晴明クルセイダー』は最期まで感情乗らぬ笑みを浮かべひび割れていく。
「ああ、それでもだ」
「理解が不理解を生み出すのだとしても。それでも、俺達の手には」
「あの青春の日々から続く世界の明日がある」
 二人は、その字を持って誓いとなす。

 護ること。
 それが世界か人かの違いでしか無い。
 けれど、それでもと願い続けることがより善き未来を引き寄せるのだと知っているからこそ、『晴明クルセイダー』の言葉を退け続けるのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2023年05月31日


挿絵イラスト