闇の救済者戦争⑳〜せかいをみたすあかいうた
「皆、重ね重ね苦労をかける」
猟兵達を出迎えたエルフィア・エルシュタッド(闇月の魔術剣士・f35658)の顔には、珍しく疲労の彩が濃く見えた。
「此度の戦……その最終目的である、オブリビオン・フォーミュラ。彼奴等に引導を渡して来てくれ」
戦況が切詰められていた戦争中盤期に戦端が開かれた、オブリビオン・フォーミュラ「祈りの双子」。その喉元へと迫る道を、エルフィアのグリモアが指し示したのだ。
転送される先は、天蓋血脈樹さながらの血管に四方天地を埋め尽くされた空間。脈打つ血管に囲まれた其処で、祈りの双子は血を贄に自分達に強化を施し、異なる存在を喚び出し、使役して来る。
「どうやら其処は異なる存在を喚び出す儀式の為の場らしいのだが……彼奴等でなくとも儀式を行えるようだ」
魔術師の裔であり、その素質を継いだエルフィアが、其れ故に蓄えた知識からすると、随分と杜撰な儀式にも思えるのだが、角度を変えて考えれば、其れだけ制御が難しく、強大な存在を喚び出す儀式なのかもしれない。
「其れによって何が貴殿等に応えるかは、判らぬ。
だが、貴殿等に応えるモノだ。彼奴等が喚び出すモノ共を凌駕し、喰らうであろう」
例え其れがどのような存在であろうとも。
そうエルフィアが続けるより先に、|魔導書《グリモア》の頁が焦れたように淡く光を放った。
「……と、言うわけだ。皆、宜しく頼む」
苦笑混じりにエルフィアはそう言うと、グリモアの力を解き放った。
●
其処は、確かに脈打つ血管で満たされていた。
「「……ようこそ、猟兵……」」
暗茶と明茶の髪が、風もないのに揺れる。
「「……此処はこの世界で流された血が、辿り着く処……」」
対のような隻眼の乙女達は、猟兵達を見据えたまま、その手にした武器で無造作に血管を切り裂いた。
「「……此れを贄に、私達は猟兵と比肩する……」」
噴き出した血がその身を濡らすが、些末な事とばかりに言葉を続ける。
「「……さあ、六番目の猟兵達よ。『はじまりのフォーミュラ』の死力を、此処に……」」
最後の戦いの火蓋が、噴き積もる鮮血の裡に、切って落とされた。
白神 みや
お世話になります、|白神《しらかみ》です。
やっぱりフォーミュラは乗り込んでおきたいなって、おもってしまったのです。
今回はタグなしの単発です。ただし、いつものように終戦後になると思われますので、ご了承ください。
●プレイングボーナス
周囲に溢れる鮮血を生贄として、超常存在に対抗しうる「恐るべき存在」を召喚する。
皆様が何を喚び出すかを、プレイングに記載してください。対する双子が何を喚び出してくるかも、ご希望があれば是非。かいじゅうだいけっせんが出来るかも……? 双子が呼び出すモノはご希望がなければ白神が知恵を絞ります。
●お願い
MSページはお手数ですが必ずご一読ください。
このシナリオのプレイングは、先行シナリオ完結後に受付開始予定です。詳細はタグ等を参照ください。
基本的には締切までにいただいたプレイングを全採用で進行予定ですが、受付開始前のプレイングはお返しする可能性が高いです。ご了承ください。
第1章 ボス戦
『五卿六眼『祈りの双子』』
|
POW : 化身の祈り
自身の【支配するダークセイヴァーに溢れる鮮血】を代償に、1〜12体の【血管獣】を召喚する。戦闘力は高いが、召喚数に応じた量の代償が必要。
SPD : 鮮血の祈り
あらゆる行動に成功する。ただし、自身の【支配するダークセイヴァーに溢れる鮮血】を困難さに応じた量だけ代償にできなければ失敗する。
WIZ : 双刃の祈り
自身の【支配するダークセイヴァーに溢れる鮮血】を代償に【血戦兵装】を創造する。[血戦兵装]の効果や威力は、代償により自身が負うリスクに比例する。
イラスト:ちゃろ
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
|
種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●
徳川・家光(江戸幕府将軍・f04430)は、転送された脈打つ血管で四方を囲われた空間と、噎せ返る血の香りにその端正な顔に不快を過らせた。
(確かに此処では一介の猟兵なんだけれど、これは……)
骸の海に浮かぶ三十六世界の半数以上が詳らかになった昨今、世界を跨いで干渉する勢力や策略も見受けられるようになってきた。それは猟兵としては勿論の事、|江戸泰平の世界《サムライエンパイア》の将軍としても憂慮すべき事態である。
「流石に、猟兵としても将軍としても、捨て置けないよね」
そう呟いて対峙するのは、この|闇深き世界《ダークセイヴァー》のオブリビオン・フォーミュラ。暗茶と明茶の毛色の人狼の姿を取る二対。片や少女剣士といった風体であるが、その傍らに立つのはその身の半分以上の肉が削げ落ち、骨が露出した異形の姿。
「「……血よ、贄よ。我等の敵を凌駕する力を、此処に……」」
二人が重ねた手に力を籠めると、対峙する間にも流れ溜まっていた血が逆巻く。そうして姿を顕したのは、頭の大きさだけでも家光の実の丈を超えるような、巨大な異形の生物だった。
異形を見上げながら、家光は武器を振るう。斬りつけられた血管が脈打ちながら夥しい血を降らす。
「……さて、僕に力を貸してくれますか?」
血をその身に受けながら家光がそう呟くと、何処からともなく何かの啼き声が聞こえた。その啼き声と共に姿を顕したのは、黒鹿毛の馬と龍の特徴を併せ持つ生き物だった。
「宜しく頼みます!」
その姿を目にした家光は、そのままひらりと身を翻しその背に跨った。家光をその背に乗せた龍馬はその意を汲むかのように、異形の生物へと疾駆する。
その間に家光は鎚曇斬剣を抜き放ち、構える。
「『天の水甕よ、土蜘蛛より奪いし剣を伝い、我が敵を飲み込め!』」
構えた鉄剣から夥しい水が放たれ、部屋に満ちる血を双子諸共押し流さんとする。異形が盾のようになり双子を庇うが、濁流に為す術も無く打ち砕かれ、双子が血を使い纏おうとした血戦兵装諸共に流されていった。
「……こんなに血の匂いがしてたら、皆が退いちゃいそうですね」
血と水に濡れた家光は苦笑いしながら、そう呟いた。
徳川・家光
白神 みやマスターにおまかせします。かっこいい徳川・家光をお願いします!
『将軍なんだから、戦わなきゃね』
『この家光、悪は決して許せぬ!』
『一か八か……嫌いな言葉じゃありません!』
サムライエンパイアの将軍ですが、普通の猟兵として描写戴けると嬉しいです。
ユーベルコードは指定した物をどれでも使いますが、全般的に「悪事を許せない」直情的な傾向と、「負傷を厭わない」捨て身の戦法を得意とします。
嫁が何百人もいるので色仕掛けには反応しません。
よく使う武器は「大天狗正宗・千子村正権現・鎚曇斬剣」です。
普段の一人称は「僕」、真剣な時は「余」です。
あとはおまかせです!
●
徳川・家光(江戸幕府将軍・f04430)は、転送された脈打つ血管で四方を囲われた空間と、噎せ返る血の香りにその端正な顔に不快を過らせた。
(確かに此処では一介の猟兵なんだけれど、これは……)
骸の海に浮かぶ三十六世界の半数以上が詳らかになった昨今、世界を跨いで干渉する勢力や策略も見受けられるようになってきた。それは猟兵としては勿論の事、|江戸泰平の世界《サムライエンパイア》の将軍としても憂慮すべき事態である。
「流石に、猟兵としても将軍としても、捨て置けないよね」
そう呟いて対峙するのは、この|闇深き世界《ダークセイヴァー》のオブリビオン・フォーミュラ。暗茶と明茶の毛色の人狼の姿を取る二対。片や少女剣士といった風体であるが、その傍らに立つのはその身の半分以上の肉が削げ落ち、骨が露出した異形の姿。
「「……血よ、贄よ。我等の敵を凌駕する力を、此処に……」」
二人が重ねた手に力を籠めると、対峙する間にも流れ溜まっていた血が逆巻く。そうして姿を顕したのは、頭の大きさだけでも家光の実の丈を超えるような、巨大な異形の生物だった。
異形を見上げながら、家光は武器を振るう。斬りつけられた血管が脈打ちながら夥しい血を降らす。
「……さて、僕に力を貸してくれますか?」
血をその身に受けながら家光がそう呟くと、何処からともなく何かの啼き声が聞こえた。その啼き声と共に姿を顕したのは、黒鹿毛の馬と龍の特徴を併せ持つ生き物だった。
「宜しく頼みます!」
その姿を目にした家光は、そのままひらりと身を翻しその背に跨った。家光をその背に乗せた龍馬はその意を汲むかのように、異形の生物へと疾駆する。
その間に家光は鎚曇斬剣を抜き放ち、構える。
「『天の水甕よ、土蜘蛛より奪いし剣を伝い、我が敵を飲み込め!』」
構えた鉄剣から夥しい水が放たれ、部屋に満ちる血を双子諸共押し流さんとする。異形が盾のようになり双子を庇うが、濁流に為す術も無く打ち砕かれ、双子が血を使い纏おうとした血戦兵装諸共に流されていった。
「……こんなに血の匂いがしてたら、皆が退いちゃいそうですね」
血と水に濡れた家光は苦笑いしながら、そう呟いた。
大成功
🔵🔵🔵
ヴィオレッタ・エーデルシュタイン
恐るべき存在、ね。
それならうってつけのがあるわよ。
「来たれ、我を呪い死んでいった者たちの無念」
勝手に人を希望の宝珠扱いして、うまくいかなかったら呪っていった人々の無念。真っ黒な巨大な死神の姿なんじゃないかしら?
適当に敵にけしかけるけど、双子は何を呼び出すのかしら…天使だったりすると皮肉が利いていて面白いのだけれど。
あとはユーベルコードの準備。
じっくり詠唱して、【ブルー・インフェルノ】。
「全てを焼き尽くす星界の炎よ」
鮮血ごと焼き尽くしましょう。
●
「ふぅん……恐るべき存在、ね」
転送された空間を見渡しその手に降りしきる血を受け止めながら、ヴィオレッタ・エーデルシュタイン(幸福証明・f03706)は呟いた。
「それならそれならうってつけのがあるわよ」
そして、相対する双子の人狼に向けて不敵な笑みを向けながら、その血を束ねるように握る。
「来たれ、我を呪い死んでいった者たちの無念」
そうして姿を顕したのは、死神のような黒づくめの巨大な人影。フードに隠れているからか、その顔は暗い影になって見る事は出来ない。
ヴィオレッタが言ったようにそれは彼女の本体である宝珠に願いを捧げ、その代償に不幸な最期を迎えた者達の意思。一方的に願いを押し付け、勝手に呪って死んだ者達の意思が、時を経ても未だに彼女に纏わりついていたという事だろう。
(人の意思って……なかなか離れないわね)
モノにすら生き物のカタチを与えてしまい、時にヤドリガミにまでしてしまうのが意思だ。ヴィオレッタはその根の深さに知らず苦笑する。
「「……『生贄魔術』を利用するとは……」」
「「……しかし、私達のほうが長じているのだから……」」
双子が互いの手を重ね祈る。その祈りに応じ姿を顕したのは、ヴィオレッタが喚び出した死神と相対するような、巨大な天使のような騎士のようなモノだった。
「まさかと思ったけれど、本当に天使なのね」
双子と同様に剣を携えた天使がヴィオレッタが喚び出した死神と切り結ぶのを見上げながら、ヴィオレッタは詠唱を始める。
「「……如何に猟兵の力といえ、私たちの血戦兵装があれば……」」
双子は周囲に満ちる血を防具に纏うが、そこに十全に詠唱されたヴィオレッタのユーベルコードが襲い掛かる。
「鮮血ごと焼き尽くしてあげるわ」
深紅の血を、蒼焔が焼き尽くした。
大成功
🔵🔵🔵
スターレイル・エストレジャ
(酷い…私が眠る前よりも)
怒りが湧いてきた
【プレイングボーナス】
私も超常存在に対抗する為に「恐るべき存在」を呼び出す
虐げられた魂が集まっていく
私の…姿だと?
姿は巨大な赤い私
敵は私の弟子の姿と同じだった
…弟子と戦うとは
恐るべき存在は斬撃波を敵に放つ
【敵のUC対策】
敵の血管獣に対しては【視力】と【心眼】で敵の動きを見て【オーラ防御】で身を守りながら星虹【属性攻撃】で凍結の性質を付与した斬撃波を放ち敵を凍らせて残りの敵には【エネルギー弾】で攻撃
【反撃】
指定UC発動
鳴り響け…魂の心音!
トゥントゥン…キーン!
私は星虹の力により加速の性質を付与して【推力移動】で敵に迫り星虹帝・天叢雲剣の【斬撃波】を放った
●
(酷い……私が眠る前よりも)
スターレイル・エストレジャ(星虹の超越者・f40527)は、視界を覆う脈打つ血管と、その隙間から僅かに垣間見える戦場の光景に怒りを隠しきれず、相対する|双子《敵》を睨めつける。
「「……怒るか、猟兵……」」
「「……私達の死力を此処に……」」
ばしゃりと、足元に溜まる血が爆ぜた。
爆ぜた血が、ヒトの形を模られたと、スターレイルの表情が更に苦々しい表情へと変わる。それは、彼女が呪詛を受けて眠りに就く以前に取っていた、弟子達の似姿。
そう、それが似姿であり、本人では無い事は判っている。それでも、よく知る姿が敵として現れるのは、不愉快だ。
(……弟子と戦うとは)
ならばこそ、スターレイルも場に満ちる血を以て、この世界で虐げられた魂たちへと力を与える。この地に集まる血が、この世界で流された血であるならば、その魂達は眼前の敵を屠る存在を喚び出すと信じて。
そうして導き模られたものは、巨大な血の色の女の――スターレイル自身の姿。
流石に己の姿が模られた事に驚きはしたが、その心を支配する怒りのままに、武器を振るった。血のスターレイルもそれに倣う。
「「……血よ。祈りに応えよ……」」
衝撃波が血の偽人形に届くより前に、双子の祈りが血管で編まれた獣を召喚し、その何体かが身代わりに散った。
「『鳴り響け……魂の心音!』」
反撃を受けるよりも先に、スターレイルはユーベルコードを起動し、自身に加速の性質を付与する。
「常識とルールは壊す為にある……けれど、このやり方は許せない」
その手の武器が血人形を斬り裂き、放たれた星虹の光が軌跡を描いて生き残った血管獣と双子へと襲い掛かった。
大成功
🔵🔵🔵
忠海・雷火
この世界で流れた血、ね……あまり気乗りはしないけれど、使えるのならば使わせて貰うわ
これは鮮血を動力とするもの。この地に満ちる血を全て使うくらいの気持ちで、召喚陣の刻印を稼働させましょう
喚ぶのは可能な限り強い邪神。通常では門を通せず、制御も出来ない人智を超えたモノ
さあ、来たれ。そして今だけは私に従いなさい
此処からは人格を交代
UC発動。召喚されたものは邪神に任せ、得物を抜き双子へ肉薄する
兵装を纏おうが関係はない。人型である以上、動き自体は人と大差ない筈
対人型への戦闘知識で攻撃を見切り、或いは受け流し。滅びの力を乗せた刀を振るう
上手く見切れない場合でも、受ける攻撃の敵意を糧とし、捨て身の一撃を行おう
●
この世界で流された血。その総てがこの血に集まるという。それを力に変えて戦うというのは、忠海・雷火(襲の氷炎・f03441)をほんの少しだけ逡巡させた。
とはいえ、この戦いの引鉄を引いたオブリビオン・フォーミュラ――祈りの双子に対抗する為の手立てはこれをおいて他には無いのだ。
(……あまり気乗りはしないけれど、使えるのならば使わせて貰うわ)
そう腹を括って割り切った雷火は、魔術装置を起動させる。雷火の持つこの装置は、鮮血を動力とし、非正規の品でありながらも召喚する力に特化したもの。
空間に満ちる血を総て奪い取ろうとするかのように、装置は血を吸い上げていく。
「「……私達の贄を……」」
「「……此方も、召喚しなければ……」」
相対する双子も鮮血に祈りを込め、自分達の盾となり牙となる存在を喚び起こそうとする。
「――さあ、来たれ」
二つの喚び声に応えがあったのは、ほぼ同時。
雷火に応えたのは名状し難いモノ。恐らくは邪神に類されるであろうモノ。ヒトの想像の域を超え、瞬きする度にその姿が変わっているようにも見える。
双子が喚び出したのは、彼等が獣と化したらこうなのだろうかと思わせる、巨大な獣の姿だった。
(……さあ、後は、頼むわよ)
邪神と獣の姿をその目で確認すると、雷火は己の裡の「もう一人」へと己を託した。
「……『狂える力、沸き立つ混沌よ。我が身が浴びる意志の主こそ汝の贄、汝の渇きを刹那彩る響音なり』!」
「カイラ」と名乗るもう一人の雷火は、その身を掌握すると即座にユーベルコードを起動する。その身が陽炎のような包まれた。
「あのデカブツはお前が対処なさい!」
邪神へ獣の対処を命じた|雷火《カイラ》は、そのまま武器を手に双子へと肉薄する。
「「……血戦兵装を……!」」
双子は周囲の血を武器に纏わせて、|雷火《カイラ》の攻撃を受け止めようとするが、そうして向けた感情を己の力にし、滅びの力を纏った|雷火《カイラ》の一撃が兵装ごと双子を斬り裂いた。
大成功
🔵🔵🔵
セシリー・アリッサム
鮮血に刻まれた記憶、恐るべき存在……ううん
違うわ。共に歩む筈だった大切な二人
きっとあなた達にとって恐るべき存在になるだろうけど
ね、パパ、ママ!
最後の戦いに覚悟を決め己を鼓舞して祈りを捧げる
鮮血を生贄に召喚するは、在りし日の父と母の姿
白銀に輝く鎧を纏った人狼騎士の父
慈愛の光と共にあるオラトリオの母
さあ行こう、手をつないで決戦の地へ
わたしは高速多重詠唱で焼却の炎属性攻撃と結界を張り
血管獣の動きを押さえながら焼き焦がして無力化を狙う
ダメージはママが回復してくれるだろうし
『祈りの双子』にはパパが先だって攻撃する
戦線を少しずつ押し上げて確実な勝利を考えるよ
これは戦争だもの、容赦しないわ
分散した敵を各個撃破していたらきっと戦力を結集させる筈
それが狙い――【天狼煌刃】を発動
|蝶の断片《紋章》の力で自らの地獄の炎を最大限昂らせる
蒼炎の翼を解き放ち|飛翔《空中浮遊》して間合いを詰めて
身の丈の三倍の蒼炎の刃を振りかざし双子を切断する!
積み重ねた時間は決して無駄じゃない
だから、この地獄はここで必ず終わらせる!
●
セシリー・アリッサム(焼き焦がすもの・f19071)は、足元に溜まる鮮血に、父譲りの尾が、ブーツのファーが、濡れそぼる事も厭わず足を進める。
(鮮血に刻まれた記憶、恐るべき存在……ううん。違うわ)
毛が吸った血の重たさを感じながらセシリーは頭を振ると、満ちる鮮血に祈りを捧げる。
血を贄に喚び出だすのは「恐るべき存在」であると聞いていた。だが、それは何にとって、或いは誰にとってなのかは、明示されていない。ならばと、思い浮かべるのはセシリーにとって共に歩む筈だった大切な存在。
「「……此処に満ちる鮮血は、私達の贄……」」
「「……これ以上、猟兵達の好きにさせない……」」
対する双子の人狼は、幾度も鮮血儀式に相乗りされたが故に、|猟兵《セシリー》より先に召喚を試みようとする。
(パパ、ママ……力を、貸して……!)
セシリーの祈りが、鮮血を贄にカタチを得る。
方や白銀の鎧を纏う人狼騎士。
方や白い翼を広げ、慈愛の光纏うオラトリオ。
それはセシリーが祈りと共に思い浮かべた、懐かしき在りし日の父と母の姿。心の奥底を灼く郷愁を押し隠して、セシリーは双子を見据えたまま、父と母の写し身へと手を差し出す。
対峙する|双子《オブリビオン》にとって、「恐るべき存在」としてカタチを成した二人はセシリーに言葉を返す事は無いが、それでもセシリーの差し出した手を取り応えた。
「さあ行こう」
今こそ、決戦へ。
●
「「……私達もただやられるわけにはいかない……」」
双子が互いの剣を持たぬ手を重ね祈る。彼女達が構築した|儀式《システム》は、忠実にその祈りに応え、血管で構成された獣を生み出していく。
「パパ、ママ……お願い!」
対するセシリーは自分の前に立つ父母の写し身と己の前に炎の結界を貼り、その炎を以て獣を焼き払わんとする。炎を掻い潜って来た獣を、白銀の騎士の刃が斬り裂いた。
白銀の騎士の斬撃とセシリーが放つ炎が獣たちの数を減らし、慈愛の光が二人が獣によって負う傷を癒していく。
「「……まだ、祈りは尽きない……」」
双子は周囲を覆う血管を剣で斬り裂き更なる|鮮血《贄》を用いて喚び出した巨大な魔狼を差し向ける。
それこそが、セシリーの狙い。
「『この地獄の刃をもって、歪められた今を斬る』」
手にした|蝶《紋章》の欠片がセシリーに力を与え、吹き上がる蒼焔がその身を包んでいく。蒼焔が形作るのは、父の写し身に似た鎧の巨大な騎士の姿。しかし、その面差しはセシリー自身。鎧と共に作り出された蒼焔の翼をはためかせ、空を舞う。
「積み重ねた時間は決して無駄じゃない。
――だから、この地獄はここで必ず終わらせる!」
この世界の怨敵である双子めがけて、手にした蒼焔の刃の剣を振り抜いた。
大成功
🔵🔵🔵
夜奏・光花
こちらに応えてもらえるなら、恐るべき存在は相手にとっての、でしょう。
このUCの術式を基にいつもより少量の私の魔力と血にこの鮮血を混ぜ「恐るべき存在」を呼び出します。
ここは…本当に凄い血の匂いです。
この世界で流れる血を完全に無くす事は出来なくても、その血がもっと減っていくようにする事は出来ると私は信じてます。
相手が何を呼び出そうと負けられません!
だから、私と一緒に戦ってください!
元のUCと似た感じのものが出るとは思っていましたが、巨大な真っ赤な化け猫で蝙蝠の羽みたいなのもありますね。応えてくれてありがとうございます。
あちらが召喚したモノの相手は基本任せて私は双子に集中します。
敵とは中距離で魔法や衝撃波で戦いつつ、距離が近づいたら見切りや受け流しで攻撃をさばきながら接近戦で戦いましょう。
もし戦闘で必要ならこの化け猫さんに乗せてもらい戦います。
この世界は貴女達が好き勝手に傷つけめちゃくちゃにして良い物ではありません!
・アドリブ連携歓迎
●
「ここは……本当に凄い血の匂いです」
夜奏・光花(闇に咲く光・f13758)は足元を浸す血の感触に眉を顰めつつそう呟いた。
光花もまた血を代償にする力を扱う身であり、例え目の前に対峙するオブリビオン・フォーミュラであるこの双子が斃れたとしても、この世界に流れる血は完全に無くなる日は未だ遥か遠くの事だろう。
「それでも、その血がもっと減っていくようにする事は出来ると私は信じてます」
光花はそう言いながら己の掌に傷を作り、そこから流れる血を足元の鮮血に落とす。それと共に光花の周囲の血が逆巻いて、血液が魔力の塊と化し、光花の抱える翡翠の名を持つ黒猫人形へと収束する。
「「……世界に満ちる血は、私達の贄……」」
「「……猟兵達に比肩し得る今なら……」」
対する双子もまた祈りによって血を逆巻かせる。
「何を呼び出そうと負けられません!
――だから、私と一緒に戦ってください!」
そんな光花の声に呼応して現れたのは、光花が日頃黒猫人形から喚び出す魔物とよく似た、血色の魔物。黒猫の魔物と異なるのはその毛色だけではなく、その背に蝙蝠のような飛膜翼があるという事。それでも、よく慣れた獣と似た存在が傍らに居るのは、立ち回り易いような気がする。
「応えてくれてありがとうございます」
光花が魔物に向けて謝意を告げると、魔物もまたにゃあと、猫の鳴き声で応える。そうして一人と一体が見据えるのは、祈りの双子と、彼女達が喚び出した、黒い獣。
「あちらは、お任せします」
黒い獣を見据えたまま光花が血色の魔物へそう言うと、魔物は意を得たというように短く啼き、それを合図にするかのように一人と一体は駆け出した。
「「……此処に満ちる血は、贄であり、私達の兵装……」」
迎え撃つ双子は、満ちる血を武器に纏わせ、更にその血を自分達の鎧の如く纏わせて力を得る。
光花は魔法や武器から放つ衝撃波で牽制をしつつ、武器を振って双子の攻撃をいなしていく。
「この世界は貴女達が好き勝手に傷つけめちゃくちゃにして良い物ではありません!」
魔物が黒い獣へと食らいつくと共に、光花の白い大鎌が双子が手にする血を纏った剣を両断するように斬りつけた。
大成功
🔵🔵🔵
鈴乃宮・影華
見渡す限りの赤、紅、赫……
今回の戦争で斃されたヴァンパイア達の分も有るのでしょうが
きっとその何倍もの犠牲者がこの光景を形作っているのでしょうね
――その無念、少しお借りします
ひとまず指定UC起動
かつての銀の雨降る世界を駆けた銀誓館学園の有志に出陣願います
後は『ソリウム・ベルクス』で飛翔すれば双子の攻撃を回避するくらいなら何とかなるでしょう
残る問題は双子が喚ぶ超常存在……あれって、原初の吸血鬼の誰かでは?
つい年初の金沢市での戦争を思い出して、こちらが喚べる存在を思いつきました
『黒竜鐘』をメガリスの【封神台】に見立て
それっぽい儀式のように周囲の鮮血へ|『錬銀』《詠唱銀》の欠片を振り撒き
かつて銀誓館学園と対峙した6人の「神将」を召喚します
私達の手を取ってくれた人、お別れせざるを得なかった人……結末は様々でしたが、その強さは全員が折り紙付きだった事を覚えています
そして、事情どころか世界が変わった今なら全員と共闘できるはずです!
さぁ、皆で合言葉を唱えましょう
「――|起動《イグニッション》!」
●
(見渡す限りの赤、紅、赫……)
転送され、視界を埋め尽くす血の赤と血管の赤に鈴乃宮・影華(暗がりにて咲く影の華・f35699)は眉を顰める。全てが赫く染まり、沁みつきそうな血の香りに、影華は思いを巡らせつつユーベルコードを起動する。
「『彼の力を以て世界より喚ぶ――我が呼び声に応え、いざ来たれ生命使い!』」
影華の詠唱に応え、髑髏のキーホルダーが、解けるようにその形を変えた。現れたのは、骸骨馬が引く馬車の型をした本陣。その中には、既に武装した人影が数百人乗り合わせ、馬車本陣の窓から外の様子を偵察する者や、本陣の内部で作戦会議を始めだした者等が見受けられる。
「「……確かに、怒らせた猟兵は、脅威……」」
「「……これ程までとは……」」
対峙する祈りの双子は手を合わせ影華を見据える。ばしゃりと血が跳ね、ヒトの形を創る。
(……あれって)
居並ぶのは吸血鬼と思われる者達。恐らく今回の戦争で斃されたヴァンパイア達だろうと思ったが、纏う気配に違和感を感じ、影華は目を凝らす。|闇深き世界《ダークセイヴァー》の|吸血鬼《ヴァンパイア》ではなく、|銀の雨降る世界《シルバーレイン》の原初の吸血鬼と思しき者達。
(こちらにあわせた存在を喚び出すとは聞いていましたが、それならば……)
数か月前の戦争を思い出しながら、影華は愛用する梵鐘型の封神台を鮮血の只中へと設置する。
「――その無念、少しお借りします」
梵鐘の周囲へ|『錬銀』《詠唱銀》の欠片を振りまき、過去を強く想起する。
(私達の手を取ってくれた人、お別れせざるを得なかった人……結末は様々でしたが、その強さは全員が折り紙付きだった事を覚えています)
そうして影華が喚び出したのは、対峙する吸血鬼達より少なく六人。そのうちの一人は、今も|銀の雨降る世界《シルバーレイン》の鎌倉で、彼女の無事を祈ってくれているであろう存在だ。
(……また待っててもらっているのに、姿を借りるわね)
影華は瞑目し心の中でそう友へと告げると、本陣から降り立った人影――嘗て共に肩を並べたかもしれない、|銀の雨降る世界《シルバーレイン》の能力者達の|幽霊《影法師》達、そして、梵鐘が喚び導いた六人と共に、武器を構える。
「――|起動《イグニッション》!」
懐かしき言葉と共に、嘗ては共闘が叶わなかった者達が共に武器を、力を交わす。虚ろな化身であれども、猟兵ほどの埒外の力ではなくとも、その力は双子が喚び出した吸血鬼達を遥かに凌駕していた。
大成功
🔵🔵🔵
キラティア・アルティガル
猟兵が集うておるの
我も参ろう
皆考えておることは一であろう
心強いの
これら双子が諸悪の根源か
骨の身、まさしく骸であろうに死なぬが悪鬼の証だの
根源と言えど大方は倒したとて解決せぬ事は多いが
それは後からじゃ
「貴様らがどれほど妨げようが命は止まらぬよ」
我は術師に非ず
だが我とて|終焉の破壊者《エンドブレイカー》
赤の濁流と骨の双子に向き合い一念想起
過去が無い故、何が出やるか解らぬが
何だって良い
「貴様らを倒せればの!」
現れしものに思わず膝うち笑うた
なるほどの
これぞ我が救世主!我の命を救ったもの
船と魚が合わさっておるわ!
よかろう!なれば
「あれなる奴ばらを漁ろうぞ!」
船魚に飛び乗り号令
逆巻く血波も攻撃も鋼の鱗が跳ね返す
良いぞ!
技を発動し身構えよう
魔死の大鎌は使い所を選ぶでな
「己が技で追い込まれる気分はどうじゃ?」
見ればなんとまあデカイの強そうなの山盛りだの!
他の者共に負ける訳にはいかぬ!
「突っ込め|船魚《リヴァイアシップ》!」
名は悪いが適当じゃ!済まぬの!
突撃しそのまま我が手で骨を断ち斬ってくれよう!
●
「貴様らが諸悪の根源か」
血赤の空間に、暗茶と明茶の双子の前に白銀灰の女が立つ。
「骨の身、まさしく骸であろうに死なぬが悪鬼の証だの」
白銀灰の女――キラティア・アルティガル(戦神の海より再び来る・f38926)は、双子を何かを見定めるように見据えながら言う。
「「……人によっては、確かに私達はそうなのかもしれない……」」
「「……それでも、私達は、為すべき事がある……」」
武器を持たぬ手を重ねた双子は淡々とそう返し、周知の血管を武器で斬り付け、部屋を更に血で満たす。人の身であるキラティアでも顔を顰めそうになる血の香り。|人狼《けもの》である双子であればキラティア以上にこの香りは鼻を刺激する筈だが、変わらず淡々とした表情のままである。
「「……例え殺す事は出来なくとも、力を削ぐ事は可能……」」
「「……一方的な勝利など、与えない……」」
二人の声に応じるように、足元を満たした血だけが揺れ、波紋を描く。その波紋が徐々に大きくなると、血が逆巻くように昇り、龍の型を取る。
「貴様らがどれほど妨げようが命は止まらぬよ」
龍を見上げながら、キラティアは静かに言う。キラティアは術を扱う者ではない。更には己の過去すら無い。だが、彼女も|終焉の破壊者《エンドブレイカー》であり、猟兵だ。
「何が出やるか解らぬが、何だって良い。
貴様らを倒せればの!」
その声と共に、低い音が足元より響く。音は徐々に大きくなり、やがて轟音と共に血を割って現れたのは、巨大な魚と船が一体になったかのような生物だった。
「――っははははは! これぞ我が救世主!」
キラティアはその威容を見上げ視線を交わし、其れがこの地に顕現した理由、その所以を悟り、笑う。それは嘗て彼女の命を救った|生物《もの》だった。
白銀灰の女船長は地を蹴ると、器用にその背にある甲板へと乗り込んだ。船は今の主は彼女であると言わんばかりに、その身を屈め、指示を待つ。
「よかろう! なれば、あれなる奴ばらを漁ろうぞ!」
その声と共に船は血の海を掻き分けるように泳ぎ、龍へと向かう。その背の上でキラティアは愛用の大鎌を構え、ユーベルコードを起動し魔の気を纏わせる。
「他の者共に負ける訳にはいかぬ! 突っ込め|船魚《リヴァイアシップ》!」
名を与えられた船は主の声に応えるように血の龍へと突進する。
「「……好き勝手にも、程がある……」」
「『死に堕ちよ!』」
振り下ろされた大鎌が双子に振り下ろされるのと、|船魚《リヴァイアシップ》が龍に喰らいついたのは同時だった。
大成功
🔵🔵🔵
キアラ・ドルチェ
【花園】
全ての人とこころを一つに
皆が流した血と涙と汗が、この大地には染み付いている
ならば。白魔女たる私は、その染み付いた中にあるであろう「こころ」を血肉に変え、「恐るべき存在」を召喚しよう
そう、祈りの双子すら想像つかず、そしてその「世界」すら破壊出来うる存在を…!
マントをたなびかせ、真の姿である4歳に変身!
いざ来たれ、我が最大最強の守護者よっ!
「れっすぁああ!! ぱんだぁああ!!」(仁王立ちし両手を掲げ威嚇する超巨大レッサーパンダ召喚
さあ、戦いの酢豚もとい火蓋は切って落とされた!
この世界観に双子さんは付いてこられますかっ!?
真面目シリアス一辺倒な貴方達では、無理でしょう!
それでは貴方達はパイナップルの入ってない酢豚も同じなのです…ふっ…(意味不明なノリ(いや狂気)の世界である
そこ! 狂気こそがわたくしの世界における強さの秘訣なんですよっ!?(第四の壁越えるな
さあゆけゆけれっさーぱんだ!
必殺…ぱーんだ、ぱーんち!(韻を踏む
「ええリグノアさん、『KAWAII』は正義ですよー!」
とっつげきぃ!
リグノア・ノイン
【花園】
皆様と共に
そしてキアラ様とご一緒に
此処で断ち切りましょう
この戦争の中、どの戦いにも何処でも必ず
彼らの命が、血と涙が溢れておりました
「|Ja《肯定》.終わらせましょう」
皆様方の召喚を目にして得心致します
双子の埒外であり、誰にも負けないという想い
それをイメージ、描く事を
「|Ja, ich verstehe《承知致しました》.それでは、最強を構築」
誰にも負けず、折れず、命令を忠実にこなし
敵の攻撃にも耐える強固な装甲
そして、隣に立つキアラ様の様な心強さと可愛らしさ
その上のれっさーぱんだ…Ailurus fulgens?
思わずキアラ様を見てしまいますがイメージに侵食されます
「|Ahh Einzigartiges Bild《あぁ…特異なイメージが》.」
で、ですが最強のイメージと最強の可愛らしさ
二つが合わさる事で更なる最強となる事でしょう
鋼鉄とシリンダー、油によって稼働する最強で巨大な
|Ailurus fulgens《光り輝くねこ》.
「|Generaloffensive《総攻撃です》.蹂躙を」
●
「皆が流した血と涙と汗が、この大地には染み付いているんですね……」
できれば血管を踏みたくはないと思いながら転送されたキアラ・ドルチェ(ネミの白魔女・f11090)は、その思いは厳しいものであると突き付けられる。
「キアラ様」
同じ寮に居を置くリグノア・ノイン(感情の渇望者・f09348)がその傍らに降り立ちながら声を掛ける。リグノアもこの地の戦いのいくつかの局面に身を投じてきた。そうして見つめてきた戦いでは無辜の人の血が涙が溢れていた。それらが、此処に集積しているだろう事は、キアラの弁を聞くまでもなく思い知らされた。
「……ならば。白魔女たる私は――」
杖を握り、キアラは対峙する祈りの双子を見据えながら、この地に染み付いたものの中にあるであろう「こころ」が上げる声なき声に耳を傾けようとする。
「「……猟兵達は|他者《私達》の|贄《もの》を勝手に消費していく……」」
その様に、ここまで表情の揺らぎの少なかった双子の声音に、己が追い詰められているという焦燥感にも似た苛立ちの彩が混じる。
「貴方達が想像つかず、そしてその「世界」すら破壊出来うる存在を……!」
マントをたなびかせたキアラの姿が、大人の女性の姿からするすると幼子の姿――キアラの真の姿へと転じる。
「|Ja.《肯定。》 終わらせましょう」
キアラに同意をしたリグノアはその周囲を見回し、周囲に残る幾多の戦いの痕に、此処に召喚された「恐るべき存在」の多様さに気付く。それは、過去が朧な己にとっては何よりも大きな標となった。
「|Ja, ich verstehe.《承知致しました。》それでは、最強を構築……」
その標を基に、リグノアはその存在のイメージを構築していく。
誰にも負けず、折れず、命令を忠実にこなし。敵の攻撃にも耐える強固な装甲。そして――。
「いざ来たれ、我が最大最強の守護者よっ!
れっすぁああ!! ぱんだぁああ!!」
隣に立つキアラ様のような心強さと可愛らしさを……と、イメージしかけたリグノアのイメージに割り込むように、キアラの声が朗々と響いた。
(……|Ailurus fulgens《レッサーパンダ》?)
動物界、脊索動物門、脊椎動物亜門、哺乳綱、食肉目、レッサーパンダ科、レッサーパンダ属、レッサーパンダ。アース系世界においては、宅地開発などによる生息地の破壊、毛皮・ペット目的の密猟や狩猟による混獲により絶滅危惧種に指定されている生物。
リグノアが思い浮かべたそれの第一印象と、「恐るべき存在」という言葉の乖離具合に、キアラの方へとその視線を向けると、キアラを護るように呼び出されていたのは。
赤褐色をベースに、黒と白の長く柔らかい体毛。同じく長く柔らかい毛に覆われた尾は淡褐色の帯模様。その前肢を空に掲げ、後肢で直立するその姿は、一時アース系世界では話題を集めた威嚇のポーズ。
そう、それは紛れもなく、レッサーパンダ。ただし、大きさだけは、仰ぎ見る程の大きさの。
(|Ahh Einzigartiges Bild.《あぁ……特異なイメージが。》
……イメージに侵食されます)
それほどまでに、そのインパクトは絶大だった。いや、リグノアには、絶大すぎた。
現れ出でたのは、鋼鉄とシリンダー、油によって稼働する最強で巨大な、生物のカタチをした――。
「にゃあ、ん」
――|Ailurus fulgens.《光り輝くねこ。》
その厳つい構成でありながら、リグノアの躯体と同じく真白なねこのカタチをしたそれは、同じく仰ぎ見る程の大きさで。
「さあ、戦いの酢豚……もとい火蓋は切って落とされた!
この世界観に双子さんは付いてこられますかっ!?」
キアラがテンション高く早口で双子に向けて言う。
「「……生命の埒外の力は出鱈目だという事は身を以て知っていたけれど……」」
「「……これは、儀式魔術にも、比肩するのでは……」」
半ば呆然とそう零した双子を護るのは、双子と同じ毛色をした貂だった。
「狂気こそがわたくしの世界における強さの秘訣なんですよっ!
さあゆけゆけれっさーぱんだ! 必殺…ぱーんだ、ぱーんち!」
そんな双子に対してキアラはテンションと早口を維持した勢いのまま、呼び出した巨大レッサーパンダへと指示を出す。召喚主の指示のまま、天に掲げていた前肢を対峙する貂へと振り下ろす。
「|Generaloffensive.《総攻撃です。》 蹂躙を」
リグノアもまたいつもと変わらぬように見える平坦さで召喚したねこへと指示を出すが……心なしか声が何かを堪えるように震えているようにも思えなくもない。
そんな召喚主の心をねこが察したかは判らないが、命令は忠実に実行された。
「貴方達はパイナップルの入ってない酢豚も同じなのです……」
リグノアのねこの攻撃の爆炎を背に、キアラが満足そうに頷いたが、戦いが始まってから繰り広げられた、その渾身の洒落に気付いたものは、その場には残念ながらいなかったのだった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
神臣・薙人
全ての猟兵と共闘を
皆さんと一緒なら怖くありません
これだけの血をこの世界の人が…
これ以上の悲劇を重ねる前に
討たせて頂きます
真の姿解放
血を生贄とする事には抵抗がありますが
双子を討つためには躊躇うべきではないでしょう
力をお借りします
召喚するのは幽世蝶に似た紅の蝶々達
取り付いた相手の生命力を吸い尽くす存在です
召喚された超常存在の相手は
この蝶々に任せましょう
葛城さんのククルカンさんには感謝を
蝶々が頑張っている間に
祈りの双子本体を叩きます
蟲笛で白燐蟲を呼び出し
動きを阻害するように指や手足を噛むよう指示
仲間の攻撃に追撃するよう
タイミングを合わせ食らい付かせます
負傷者が出れば桜花乱舞を使用
私達が召喚した存在にも効果があるようでしたら
召喚した者達が負傷した際にも使用
超常存在が倒れれば
蝶々にも双子を攻撃させます
手数は多い方が良いですからね
倒された際は再召喚
双子の攻撃に兆候等あれば
白燐蟲を追加で召喚
妨害を試みます
血戦兵装も白燐蟲に噛み付かせ
破壊出来ないか試します
無理でもダメージは与えられる筈
最後まで諦めません
葛城・時人
此処に集う全ての猟兵と意を同じくして
この血はこの世界に住まう人たちとオブリビオンから
ある意味分け隔てなく絞り取られたもの
概念でなく本当の命
許せる訳も理解できる訳もない
こんな冒涜は許さない
だからこそこの戦、全力でそれを否定して見せる
仲間達のまた集う猟兵凡ての願いは双子の撃破
絶対に勝てると信じて
「征くよ!」
「ククルカン!」
血の濁流の逆巻く風が勝手に手助けしてくれる
蟲が幾らでも湧き出す
怖気づいた風は無い
いつもの可愛い声で応えてくれる
「俺達は無防備に近い!皆を護って!」
声を掛け返事を聞いて瞳を閉じる
此処からの防御は全力励起した技能とククルカンが頼り
喚ぶものは決まってる
銀誓館に入る時に憧れ手にし
猟兵になって一度は失いまた得たもの
何時も借りているその輝かしい力を
創世の光神として此処に
「光神!この血を!そして許されないモノを」
光蟲の槍を掲げ願う
「焼き尽くしこの地に安寧を!」
何時もは重量を感じない槍がずしりと重い
「貫けっ!」
全力で投擲すると光神の加護得し光柱が双子を覆う!
「逃さない…此処で終わらせよう」
天城・潤
何方であれ共闘という認識です
此処の出身者で当事者であるからには
沢山の猟兵の手を借りた戦争のフィナーレは
「自分の手でもと思うのです」
此処には敬する方が、仲間が優しい佳人が
他にもこんなに
「実際には個人戦に近いですが」
層の厚いこれだけの方々を擁し
暴虐に立ち向かうなら怖いものなどありません
召喚術は僕は使えそうにないですが
でもたった一人相応しい外道が居ます
「ふふふ…せいぜい役に立ってもらいましょう」
顕現させるのは本来なら敵側に居たはずの父
僕が返り討ちにし喰らい尽くし糧にしたモノ
真の姿だけでもそのままそうですが
「吸血鬼だか魔族だかの力、遠慮なく使役して差し上げます」
真の姿を解放し反吐が出る憎い姿を想起します
取り込んだ全てを場の力で増幅し
根本的には繋がったまま
「さぁ…往け!僕達の敵を倒せ!」
こんなに滑稽で愉快な事はありませんね
僕を滅ぼしたい悪霊が僕の命令で戦うなんて!
こんな時ですが楽しいです
僕は本当の意味で今父に勝ちました
「貴女方のお陰ですね。そこには心から感謝を」
いつもの笑顔で謝し自らもUCで攻撃を
シリルーン・アーンスランド
全ての皆様と共闘を
此度見て参りました全ての外道や下郎の大本に近い二人
「殊にこの世界が一番許せませぬゆえ」
命を弄び嬲り愚弄する世界自体を肯定する存在もまた
「断じて許すべからざる敵でございます」
幸いにして頼もしき猟兵の皆様と同道でございます
我が夫も強き意志持ちいつも通り泰然自若
「何も怖くはありませぬ…参りましょう」
葛城さまの守護の蟲に感謝し、なればと全力で希います
この力場を借りるのは業腹なれど倒す為には!
お呼びするのはわたくしが見るを得ぬ
お力を十全に振るわれる大切な方々
戦争でわたくしを身の裡に乗せた大きさと
忘れ得ぬ皆様全てが合体され、強く雄々しく在られたなら
このようにと考え得る
いつかあり得たかもしれないお姿
どれ程双子の力が強かろうと
「負ける事は断じてありませぬ!」
「ロボさま!」
声にお応え下さった雄々しきお姿に
一瞬は見とれながら、いつも通り一礼し
「どうか邪悪に鉄槌を!我が願いお聞き届け下さいませ!」
どのような攻撃も跳ね除け振るわれるお力は見事の一言
輝かしき守護神さまの雄姿を胸に刻み込みましょう
凶月・陸井
共に戦う仲間達と一丸となって
さぁ、変わらずに次の戦いへ
絶対に勝って、この世界に少しでも自由を
そして、この冒涜的な場に終焉を
「手加減は無しだ。全力で行くぞ」
周りで共に戦う仲間達はいるが、この場の特異性の事もある
俺自身、喚ぶものの事を考えると
皆にはあまり積極的に見せたいものではない
「ん…でも、皆が傍に居てくれるから、相対できるな」
召喚する存在は聞いてすぐに思いついた
俺自身の中で敵に対抗しうる恐るべき存在
いつの日か相対して、倒すべき相手
自分にとっての全ての仇である父が
召喚しただけの物言わぬただの存在としてそこに居る
そのことに怒りが溢れそうにもなるけど
「…勝手に喋ったり敵対しないだけマシか」
召喚した存在を先行させ全力で戦闘
自身は【水遁「水刃手裏剣」】を片手に構え
銃撃で支援しながら相手の間合いに迷わず踏み込む
見知った型だからこその戦いやすさに苦笑しながら
「速攻で、終わらせようか」
トラウマと、はるか昔の古傷が痛むが
切り開いて片手に構えた水刃の一撃を叩き込む
「悪いな。終わりにさせてもらう」
●
「変わらずに次の戦いへ……と、言いたいところなんだが」
凶月・陸井(我護る故に我在り・f35296)はそう言いながら、共に立つ一同を順番に見渡す。
「陸井?」
葛城・時人(光望護花・f35294)は、その理由をなんとなく察しながらも、視線を受けてその様子に名を呼ぶ。
「凶月さん?」
天城・潤(未だ御しきれぬ力持て征く・f08073)は尊敬する人物の様子に名を呼ぶ。
「……凶月さん?」
神臣・薙人(落花幻夢・f35429)が視線を受けて首を傾げる。
「陸井さま、如何なさいました?」
そして、陸井の妻であるシリルーン・アーンスランド(最強笑顔の護り風・f35374)が、何か疑問でもございますか? と、笑顔でその視線を受け止めた。
陸井としては、妻が危険な戦場へ立つ事を望まない。無論、彼女とて、|銀の雨降る世界《シルバーレイン》の銀の雨降る時代を駆け抜けた能力者であり、今は猟兵である。故に、この場に立つ事は至極当然なのだ。それでも、出来る事ならと、陸井が常から内心思っているにも拘らず、今この場に彼女は居るのだ。
「わたくし、殊にこの世界が一番許せませぬゆえ」
命を弄び嬲り愚弄するこの|闇深き世界《ダークセイヴァー》。その在り方を肯定し、利用する|五卿六眼《ごきょうろくがん》と名乗る存在達。
「断じて許すべからざる敵でございます」
にこりと微笑んで、シリルーンは陸井へと返す。泰然自若を常とした陸井が追い込まれている、この決戦の場の空気と離れた様子に、三人は思わず笑いを漏らす。
「シリルーンだしね。それに……」
そう。この世界の生まれの仲間が、此処にはいる。異なる無常な摂理が許せないのも当然なのだが、その存在が彼等が此処に並び立つ事になった理由でもある。
シリルーンに続き一同の視線を受けた潤は、いつも通りの笑みでそれを受け止める。
「確かに僕はこの中では一番当事者という立場ですね」
数多の猟兵達の手により終局へと向かっている戦争。この世界の生まれであり、猟兵でもある潤だからこそ、この戦いの終焉の一端は自分でと、この地に来たのだ。
(まさか、敬する方が、仲間が、優しい佳人が、同道してくれるとは思いませんでした)
共に戦場に立つ仲間達。自分達よりも先にこの双子と戦った猟兵達。これ程の多彩な|猟兵《人々》がこの世界を救おうをしてくれるというのは不思議と面映ゆい。この世界に対して、自分がそんな愛着めいたものがあったという、内心の意外さもあるのかもしれない。
「何にせよ……これ以上の悲劇を重ねる前に、討たせて頂きます」
薙人の声に仄かに怒りの彩が灯り、周囲の鮮血をその身から振り払うように姿を幼子の姿――真の姿へと転じる。友の世界の故郷が危機に瀕し、それが無辜の人々を玩具のように扱われている事を許容出来る訳などなかった。
「……そうだね。許せる訳も理解できる訳もない」
時人が頷く。この場を覆う血管と、足元を浸す血が、この世界に住まう人たちとオブリビオンから、それこそある意味分け隔てなく絞り取られた、概念ではなく本当の命である事を噛みしめる。
「この戦、全力でそれを否定して見せる」
その言葉に、此処まで一同を黙して見つめていた双子が口を開く。
「「……わたし達は、わたし達の意図に則って動いている……」」
「「……その為に必要なのが人の血という贄……」」
「「……猟兵とわたし達が相容れないのは承知の上……」」
双子が武器すらもその場に落とし、互いの両の手を重ねる。
「「……これが最後。だからこそ……」」
「「……全てを、此処に……」」
血が、逆巻く。逆巻いた血は二つに分かれ、一つは双子のの身を包む。もう一つの逆巻く血は柱となり、巨大な二首の獣を形作る。双子が獣になり、そして巨大化すればこのようになるのではないかと思わせるような、茶色の毛並みと半身から骨が露出するような獣が、濁った眼を猟兵達へと向ける。
「「……見るがいい、猟兵達……」」
「「……これが、わたし達の……」」
双子の身を覆った血が双子の背に巨大な翅を形作っていた。その薄い紅の色――血の色の翅は、足元を満たす血を、周囲の血管から吹き出す血を、吸い上げさらに力を増していく。決戦の為の、血戦兵装。
「「……あなた達もまた、この血から召喚するのは、もう承知の上……」」
「「……さあ、召喚なさい……」」
双子の声に重なる様に、付き従う巨獣が吼えた。
●
「ククルカン!」
先ず動いたのは時人。血による召喚よりも前に、|白羽の白燐蟲《ククルカン》を喚び出す。
「俺達は無防備に近い! 皆を護って!」
「きゅいっ!!」
召喚する事に意識を向ければ、その隙に獣が、双子が仕掛けてした場合、不利になるのは自分達だ。だから、|白羽の白燐蟲《ククルカン》達に護りを任せ、瞳を閉じる。
喚び願うのは、自身が嘗て手にし、猟兵と成った折に一度手放す事になったが、再びその手にした力の、その源。それが、時人の想起する創世の光神の姿で立つ。
「血を生贄とする事には抵抗がありますが……躊躇うべきではないですね」
自分の周囲にやって来た|白羽の白燐蟲《ククルカン》へと感謝の意を示すように頷いた幼子の姿の薙人が、その手を虚空へ差し伸べる。その手に向けて血飛沫が舞い上がると、手や袖に触れるよりも前に紅の蝶の群れへと転じる。|幽世幻想《カクリヨファンタズム》に舞う蝶の如く力を纏った蝶の群れが、薙人の周囲を舞い踊る。
陸井は、この戦いについての話を請けた時点で思いついていた。自身の中で敵のような、否、何時か相対して倒すと決めている相手。陸井にとっては怨敵にも相当する、父親。
それ故か、その召喚は静かに、迅速に行われていた。傍らに無言で佇むその存在が視界に入ると、昏い怒りがこみ上げてくるような感覚に襲われる。
「……勝手に喋ったり敵対しないだけマシか」
無言で使役を待つ姿に、そう零して湧き上がる感覚を抑えつける。
(この力場を借りるのは業腹なれど倒す為には!)
シリルーンもまた、|白羽の白燐蟲《ククルカン》へと謝意を示してから、贄に生命を利用する事に幾許かの申し訳なさを抱えながらも、全力で希う。
それは、シリルーンと今なお共に在り、見守り、猟兵になった今はその力の一端をシリルーンに貸し与えてくれる、頼もしき存在。彼等がその力を十全に振るう姿。彼等がその、あり得たかもしれない姿で呼び声に応えてくれたならば。
「――負ける事は断じてありませぬ!」
「個人戦のようになるかと思いましたけれど」
仲間達が召喚した存在を見渡して潤が零した声には、思わぬ展開と層の厚さに感嘆の彩があった。皆歴戦の猟兵であり、その扱う力が多彩である事は、これまでに幾度も共に困難に当たってきたので知っていた。それでも彼等が召喚した存在は多彩であり、頼もしくあった。
「暴虐に立ち向かうなら怖いものなどありません」
それに背を押されるように潤は喚び出す存在を定めた。暴虐に退治させる恐ろしき存在に相応しい外道。
「ふふふ……せいぜい役に立ってもらいましょう」
いつもと似て非なる笑みで潤はそう呟くと忌まわしき記憶の姿を解き放つ。その場に立つのは、ねじ曲がった二対の角と大黒翼を持つ魔物が二体。
一体は、真の姿を解き放った潤。そしてもう一体は、潤が喚び出した、吸血鬼である自身の父親。
「吸血鬼だか魔族だかの力、遠慮なく使役して差し上げます」
くぐもった声でそう言う潤の声音には、仄暗い悦びがある。自分を滅ぼそうとし、返り討ちにあった悪霊が自分の使役下に居るのだ。元々潤のこの姿は、この悪霊から奪ったもの。それ故に、その力も繋がっているような感覚がする。
此処に、五者五様の、双子が召喚した獣も含めれば六様の存在が顕現した。
●
「速攻で、終わらせようか」
己の中の昏い感情を見せぬよう、心の裡の古傷が痛むのを悟られぬよう、陸井は振舞う。
「何も怖くはありませぬ……参りましょう」
その裡を知ってか知らずか、シリルーンが寄り添った。その気配に、陸井の裡の昏い感情が凪いでいく。
「逃さない……此処で終わらせよう」
時人も、相棒の言葉に頷いたのと重ねて、薙人も|白珠の白燐蟲《残花》を呼び出せば、魔物の姿の潤もその気配が同意を示した。
「「……数の問題ではない。それに……」」
「「……わたし達は常に力を得ている……」」
その声と共に、巨獣が地を駆ける。その獣の動きを阻むように|白珠の白燐蟲《残花》がその脚に喰らいつき、薄紅の蝶が纏わりついてその生命を奪いとる。
「ロボさま! どうか邪悪に鉄槌を! 我が願いお聞き届け下さいませ!」
シリルーンが、鋼の守護者へとその意を伝えれば、獣を抑えつけるように立ちはだかる。
「さぁ……往け! 僕達の敵を倒せ!」
足止めをされた獣へ、潤が喚び出した存在と陸井が喚び出した存在が、その爪牙を、刃を突き立てた。
「光神! この血を! そして許されないモノを――」
時人がその手に光蟲の槍を掲げる。力の引き出し方が何時も異なるせいだろうか。手にした槍にいつもは感じない重さを感じながら、願いと祈りを槍へと籠める。
「――焼き尽くしこの地に安寧を! 貫けっ!」
その全力を籠めた投擲が、獣を貫き、双子へと襲い掛かる。その|血戦兵装《翅》が光蟲の槍を受け止め、槍そのものがその身を貫く事を阻むが、光柱が双子を包み込む。
「終わりにさせてもらう」
喚び出した存在との連携のしやすさに皮肉を感じながら、陸井が双子へと距離を詰め、手にした水刃を叩きこんだ。
「「……侮ったわけではない。けれど、六番目の猟兵。その力……」」
庇うように刃を食らった片割れを支えながら、それでも祈りの双子は斃れない。その双子に覆いかぶさるように影が落ちる。それは潤が召喚した魔獣が落とした影。
「貴女方のお陰ですね。そこには心から感謝を」
その影に紛れて双子に近寄った潤は、平素の人の姿でいつものように笑みを浮かべていた。その手には闇を纏った長剣。無造作に振るわれたそれが、双子を諸共に一閃した。
●
双子が斃れた事で、血管の領域も双子諸共に崩れて消えていく。それと共に、猟兵達が召喚したモノ達も解けるように消えていった。
斯くしてこの地で繰り広げられた戦いは、一先ずの終焉を迎える事になる。この|闇深き世界《ダークセイヴァー》は、未だ上層を目指す道の途中であり、オブリビオン・フォーミュラである祈りの双子こそ斃す事が叶ったが、彼女達が属していた|五卿六眼《ごきょうろくがん》の正体も未だ隠された部分がある。
それでも、鮮血の洪水は阻止され、オブリビオンの脅威は収束へと向かう筈だ。
今は、束の間の休息と平穏を。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵