闇の救済者戦争㉑〜オムネス・プロ・ダムド
●コープス&オブリビオン
燃え盛る人体。
炎が立ち上り、その半身は焼け爛れるようにして崩れ落ちていく。だが、それは完全に崩れ落ちることはなかった。
骨身があらわになって尚、『それ』は爛々と輝く炎の瞳でもって猟兵たちを見つめる。
「私は『生と死の循環』を操るもの……」
静かな声色だった。
ただひたすらに『死』を齎す者。
その名を『腐敗の王』と言う。
五卿六眼の一柱。
ダークセイヴァー第二層、血管に埋め尽くされた大地にありて、彼の周囲には『死の循環』によって死の気配が充満していた。
「私が『死の循環』を操れば、即ち世界は腐敗に満ち……」
その指が振るうまでもなく『腐敗の王』の周囲は腐り果ててていく。
恐るべきことに腐りながら、渇き果てるように血管の大地が崩れていく。
それは異なる死生観を同時に持つものであった。
腐ることと乾くこと。
同時に起こりうるそれらが、如何に恐るべきことか。
「腐り落ちて『過去』となった万物は、オブリビオンとして蘇る……」
揺らめく炎の向う側に人影が見える。
それが『腐敗の王』のいうところの『過去』であるというのならば、そうであったことだろう。
「腐り落ちたお前の肉から、お前のオブリビオンを拵える事もできる……」
しかして、『腐敗の王』は、その爛々と、煌々と輝く瞳で対する瞳を見据える。
「だが……!」
「ええ、幾度でも言い返しましょう。私達、猟兵は立ち止まらない。鮮血の洪水も、数多の危機を前にしても、立ち止まらない」
ナイアルテ・ブーゾヴァ(神月円明・f25860)はグリモアによる転移を維持しながら、その瞳を爛々と輝かせて言い放つ。
「死を厭わぬ方々がいるのです!」
故に己が恐れる理由にならないと彼女は猟兵たちを送り出す。
「ならば、正々堂々とお相手しよう……!」
燃えるように『腐敗の王』の瞳が煌めく。
炎を思わせる輝き。
熾火のごとく『腐敗の王』の瞳は光を放つ。
加速していく『死の循環』――それ彼の『腐敗の王』の視界に映る全てを腐敗させていく。
猟兵たちは己の体が崩れるようにして腐敗していくことを悟るだろう。
抗うことのできぬ腐敗。
「この『死の循環』において、己の魂を奮い立たせられぬ者は、劫火に焼き尽くされるより早く腐り落ちる。俺が『生の循環』を廻すまでもない」
『腐敗の王』の傍らには対峙する猟兵達の腐り落ちた肉体より生まれた万全な肉体を持つ『猟兵自身のオブリビオン』であった。
各々の姿をしたオブリビオン。
『死の循環』によって消耗した己達ではない、完全にして万全なる己達の『オブリビオン』と『腐敗の王』を同時に相手取らねばならぬという窮地。
されど、猟兵たちには退けぬ理由がある。
そう、『腐敗の王』の存在こそがダークセイヴァー世界において『魂人』を生み出す要因であるからだ。
『生と死の循環』を操るがゆえに、人は死して『魂人』へと転生し、さらにむごたらしい運命に巻き込まれていく。
もしも、『腐敗の王』を滅ぼせずとも打倒できれば。
「――『魂人』へと人々が転生する確立を下げることができるはずです!」
ナイアルテが告げる。
恐らくそれは予知で見た事実であろう。
ならばこそ、猟兵達の瞳にユーベルコードが輝く。
そう、此度の猟兵は……否、いずれの猟兵達もそうであっただろう。
彼らが戦うのはいつだって世界の悲鳴に応えるものであったが、しかし、人を救うためである。
他者のために。
己のためではなく。
誰かのために心を、魂を奮わせることのできるものであるからこそ。
「良いだろう。生と死を超克した者の刃しか、この|私《俺》には届かない」
煌めくユーベルコード。
激突する光が世界を震わせる。
「さあ、|私《俺》に見せてくれ。今度の猟兵たちが、果たしてどこまで戦えるのかを」
『腐敗の王』は、告げる。
那由多の如き永遠を前にして、猟兵達の生命は刹那の如き輝きであったことだろう。
絶望的な戦いだ。己達の血肉は腐敗し、崩れていく。肉体を引きずりながら完全たる己のオブリビオンと『腐敗の王』を相手にしなければならない。
だが、しかし。
猟兵たちは告げねばならない。
「灰の永遠よりも虹の煌めきを」
生命の燈火は今、昌盛する――。
海鶴
マスターの海鶴です。
※これは1章構成の『闇の救済者戦争』の戦争シナリオとなります。
ダークセイヴァー世界を支配する五卿六眼の一柱『腐敗の王』との戦いになります。
『生と死の循環』を操る絶対者であり、ダークセイヴァー世界において人が死んでも魂人となって転生してしまう原因でもあります。
『腐敗の王』の欠落は建材なためか、彼を滅ぼすことはできませんが、倒す度に『生と死の循環』が開放されていきます。
確率で、ダークセイヴァー世界の人々はそのまま死ねるようになります。
ですが、『腐敗の王』は『死の循環』を加速させています。
この戦場に置いて、彼の視界に映るもの全てを腐敗させていきます。猟兵である皆さんの体も同様です。防ぐ手立てはありません。
さらに腐敗した皆さんの血肉より、それらは全て『腐敗の王』の傍らで蘇り、皆さんに襲いかかってきます。
それも万全な肉体を持つ自分自身です。
皆さんは逆に崩れる肉体を引きずりながら戦わなければなりません。
ですが、この『死の循環』を加速させている間『腐敗の王』は自身の傷を癒やすことができません。なおかつ耐久力も低くなっています。
絶望的ではありますが、少しずつでも与えた傷を積み重ね、『腐敗の王』を倒しましょう。
プレイングボーナス……僅かずつでも腐敗の王に与えたダメージを重ねる。
それでは、『鮮血の洪水』を防ぎ、己の弱点をひた隠しにしようとする闇の種族を打倒する皆さんの物語の一片となれますよう、いっぱいがんばります!
第1章 ボス戦
『五卿六眼『腐敗の王』』
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POW : フレイムビースト
自身の【全身】を【熱き魂の炎】化して攻撃し、ダメージと【装備焼却】の状態異常を与える。
SPD : オブリビオンソード
【腐敗による「消滅と忘却の宿命」】を込めた武器で対象を貫く。対象が何らかの強化を得ていた場合、追加で【ユーベルコード知識忘却】の状態異常を与える。
WIZ : 死の循環
【この世界を司る「世界法則」そのもの】から、戦場全体に「敵味方を識別する【死の循環】」を放ち、ダメージと【肉体腐敗】の状態異常を与える。
イラスト:佐渡芽せつこ
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
村崎・ゆかり
腐敗の王……。まるで『生と死を分かつもの』ね。いいでしょう。あなたを撃滅する。
「呪詛耐性」「環境耐性」で、少しでも腐敗に抵抗を。
使うは「全力魔法」酸の「属性攻撃」「範囲攻撃」で紅水陣。
腐敗の王、あなたを腐食してみせる。
あたしのオブリビオンも十絶陣使ってくるだろうなぁ。「オーラ防御」でどこまで耐えられるか。
でもあたしのオブリビオンも紅水陣の効果範囲内。一緒に溶けてしまいなさい。
『死の循環』が加速する。どこまでこの身体がもつか。ぎりぎりまで紅水陣を維持して、倒れても立ち上がる。
世界の理を乱すものを野放しには出来ないのよ! 意志ある限り絶陣であなたを追い詰める。さあ、どれだけ損害を与えられたかしら?
湿り、腐り落ちる。
渇き、崩れ落ちる。
それが同時に起こりうるのが五卿六眼の一柱『腐敗の王』の力である。
『生と死の循環』を加速させる力。
『腐敗の王』の視界に入るものは全て、この理から逃れることはできない。『死の循環』を加速された戦場は、ひたすらに腐り落ちる。
如何に猟兵が生命の埒外であろうとも、その肉体は脆弱であると言わざるを得ない。
「『腐敗の王』……まるで『生と死を分かつもの』ね。いいでしょう。あなたを撃滅する」
村崎・ゆかり(“紫蘭”/黒鴉遣い・f01658)は『腐敗の王』へと立ち向かう。
ただその視界に入っただけで己の皮膚が渇きひび割れ、そして内部は嫌な音を立て、湿り気を帯びて腐敗の匂いを立ち込めさせる。
異なる死生観。
腐り落ちる不浄と渇き果てる清浄。
いずれにしても滅びることに変わりはなく。
ゆかりのくずれた皮膚の一片からとて『腐敗の王』は『村崎・ゆかりのオブリビオン』を生み出す。
「私を撃滅することはできない。ただひたすらに私に相対するものの『死の循環』を加速させるためだ。如何なるものにも滅びは訪れる。如何なる力にも無が訪れる」
故に、と『腐敗の王』は静かに手を掲げる。
加速していく『死の循環』。
ゆかりは己の体が重たくなるのを感じただろう。
これは呪詛ではない。
逆に環境でもない。
ただ、ひたすらに世界の法則を書き換える力。
『死の循環』を加速させることによって、ゆかりの体は脆弱なる肉体を、さらに衰退させていく。
「『腐敗の王』……どれだけ『死の循環』を加速させるのだとしても、あなた自身を守る力がないというのなら、あなたを腐食して見せる」
ゆかりの瞳がユーベルコードに輝くのと同時に、オブリビオンのゆかりもまたユーベルコードを発露させる。
言葉が重なる。
『古の絶陣の一を、我ここに呼び覚まさん。魂魄までも溶かし尽くす赤き世界よ、我が呼びかけに応え、世界を真紅に塗り替えよ。疾っ!」
紅水陣(コウスイジン)が広がっていく。
真っ赤な血のような、全てを蝕む強酸性の雨。
同時に放たれたユーベルコードはゆかりの体を溶かし、また同時にオブリビオンのゆかりと『腐敗の王』を同時に蝕んでいく。
あらゆるものを腐食させるということは、己の中の力をも腐食させることである。
「相打ちを狙うか。己の死を厭わぬがゆえに、それを超克、私に届かせるのか」
『腐敗の王』は感情乗らぬ言葉で降りしきる赤い雨と靄の中に立つ。
ゆかりは思う。
どこまで己の体が持つかわからない。
己が思う以上に己のユーベルコードは強烈だった。崩れた足が膝をつく。だが、それでもゆかりは立ち上がらねばならないと思う。
「世界の理を乱すものを野放しにできないのよ!」
「理を握る者が、理を操る。乱す、というのならば確かに加速させる私の力は乱しているとも言えるだろう」
『腐敗の王』は赤い靄の向う側からゆかりを見やる。
溶け落ちるオブリビオンのゆかりと共に、そのユーベルコードの輝きを煌々と燃え盛るような瞳でもって見つめ、また同時に力をもって『死の循環』へとゆかりを引きずり功。
だが、ゆかりは躊躇わない。
己の戦いが、繋がっていくことを知っている。猟兵の戦いはつなぎ、紡ぐもの。
立ち止まらぬ限り、その道筋は繋がり、誰かの助けになるとしるからこそ、ゆかりは己の力の限界まで腐り落ちる己の手足を支え、赤い靄満ちる戦場を維持し続けるのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
バルタン・ノーヴェ
POW アドリブ歓迎
ヒャッハー!
所業は許容できマセンガ、その性根は買いマショー!
オーライ!
正々堂々とバトルと参りマース!
お見せしマショー、我輩の魂の情熱を!
腐敗の王のUCには当たらないよう滑走靴で翻弄しつつ、間合いを維持して射撃戦デース!
HAHAHA!
正々堂々とは、真っ向から斬り合うだけではありマセンヨー!
じわじわと削りつつもこちらも腐敗してオブ化していきマスガ、ドントウォリー!
ワタシを! 料理しマース!
オブった我輩を万能鍋で殴り飛ばして美味しい食材化することで、敵を減らすプランニング!
まさか自分自身を料理することになるとは、稀有な経験デスネー!
さあ、魂人のエブリワンを解放してもらいマスヨー!
加速していく死。
赤い靄の中に不浄と清浄たる死の観念が満ちていくのをバルタン・ノーヴェ(雇われバトルサイボーグメイド・f30809)は感じたが、しかし笑う。
こんな時こそ笑わなければならない。
己の前に絶望が横たわっているのだとしても、笑わなければならないとバルタンは知っている。それを教えてくれた者がいるからこそ、今の己がある。
絶望を前にして笑わなければ、誰が笑うだろうか。
この状況をひっくり返すためには、己がせねばならないことを彼女は示す。
「ヒャッハー! その所業は許容できマセンガ、その性根は買いマショー! オーライ! 正々堂々とバトルと参りマース!」
「加速した『死の循環』を前にしても立ち止まることをしないか、此度の猟兵。いいだろう。どれほどのことができるのか。この循環の中でお前たちの生命の煌めきを見せてくれ」
加速していく『死の循環』。
バルタンの体が『腐敗の王』の視界に捉えられる。
瞬間、彼女の体は渇き果てると同時に腐り落ちていく。肌が、肉が、血潮が。
あらゆるものが崩れる瞬間、揺らめくように『腐敗の王』の炎揺らめく半身から影が飛び出す。
いや、違う。
あれは己自身であるとバルタンは知るだろう。
ふくれ上がる炎と共に『バルタン・ノーヴェのオブリビオン』が彼女自身に襲いかかる。
「お見せしマショー、我輩の魂の情熱を!」
崩れる足。
痛む体。
肉体という肉体が今や脆弱へと落ちる。バルタンの体はサイボーグである。ゆえに、その無機物たるフレームだけが体支えるのだ。
「HAHAHAHA!!!」
笑い声が重なる。
己のオブリビオンは万全にして健在そのもの。切り合う刃は火花散らせど、しかしバルタン自身は押し込まれていく。
削られていく力。
だが、バルタンはまだ笑う。
この絶望の戦場にありて、高らかに笑う。
「絶望なんてものは笑い飛ばすに限りマース!」
確かにバルタンの体は万全ではない。だというのに押し込まれた刃をさらに押し返す。
「笑うか、猟兵。この状況で、なおも笑うか」
「ええ、笑いますとも! どれだけ吾輩の体が腐り落ちるのだとしても! ドントウォーリー! ワタシを!料理しマース!」
煌めくはユーベルコード。
バルタンの瞳は己のオブリビオンを見つめる。
そう、食材ならば目の前にある。
振るうは万能鍋。
その鍋の一撃がオブリビオンのバルタンの横っ面をぶっ飛ばす。遠慮などなかった。己の顔をぶっ叩くなどそうあることではない。
「HAHAHA! これは貴重な体験をしましたデース! これで吾輩は!」
オブリビオン化したバルタンは万能鍋でもって食材へと変わる。
それは薄茶色の板切れ。
所謂チョコレートというものだった。
今の己を構成しているものの一つ。
過去である己のオブリビオン。ならば、それこそが己という猟兵を形作る一つであるからこそ、その形へと至ったのだと知る。
手に取った板切れ……チョコレートをバルタンはかじる。
甘い。
忘れることのないあの日の甘さが口に広がる。
なら、まだ戦える。
あの日思ったことも。今思ったことも。何もかもひっくるめて歩んでいく。絶望さえも笑いに変えてバルタンは振るう一撃でもって『腐敗の王』を打ち据える。
「さあ、魂人のエブリワンを解放してもらいマスヨー!」
そう、この戦いは敵を打ち倒すための戦いだけではない。
『生と死の循環』によって魂人へと転生するダークセイヴァーの人々を永劫たる苦しみから開放するための戦いであるのだ。
だからこそ、バルタンは鍋を振るい『腐敗の王』へと果敢にも戦いを挑むのだ――。
大成功
🔵🔵🔵
フォルク・リア
「どんな力を持っていても此処で相対ているなら戦う事が出来る。
戦う事が出来るなら勝利を求めてやるさ。」
表の呪い裏の呪詛を発動。
(俺では奴の『腐敗』を受けて距離を維持したまま
戦うのは不可能だろう。なら自分の攻撃を当てる事に集中した
方が得策か。)
足が動く内に接近し冥府へと繋がる闇と【呪詛】で
敵を捕らえ可能な限りの【呪詛】を流し込みつつ
敵の攻撃は【見切り】でその軌道を予測し【オーラ防御】で軽減
する事で一撃で戦闘不能になる事を避け。
腐敗や攻撃で受けたダメージは、ダメージを肩代わりさせる呪詛により
攻撃に使用。蘇った自分も攻撃範囲内にいるのなら【呪詛】に巻き込む。
「俺が倒せずとも次に繋げる事はしてみせる。」
猟兵は世界に悲鳴に応える選ばれた戦士である。
だが、同時に人々の悲鳴にも応える者でもある。この常闇の世界ダークセイヴァーにおいて死は救いではない。
死した後にある転生を経て尚、牢獄の如き美しき地獄から逃れる術はない。
それが魂人である。
ただひたすらに闇の種族の玩具となることが運命づけられる。
その運命を手繰る者が目の前にいる。
『腐敗の王』――五卿六眼の一柱。
『生と死の循環』を操る存在。
彼の煌々と燃えるような瞳に捉えられた者は、須らく腐り落ちる。同時に渇き果てるように崩れていく。
赤い靄と痛打の一撃を受けて尚『腐敗の王』は猟兵たちを見据える。
確実に猟兵たちが弱体化し、疲弊していることは明らかだ。ただ、視界に納められただけで猟兵たちは、『死の循環』の加速に寄って肉体の万全さを喪う。
それだけではない。
「……俺のオブリビオン、か」
フォルク・リア(黄泉への導・f05375)は己に迫る己自身の過去を見やる。『腐敗の王』と戦うということはこういうことだ。
『死の循環』の加速による肉体に腐敗。
そして、腐り落ちた血肉から生み出される己自身のオブリビオンとの対決。
「どんな力を持っていても此処で相対しているというのなら、戦うことができる」
「戦うことができるなら勝利を求めてやるさ、と思っているな」
己のオブリビオンがフードの向う側で瞳をユーベルコードに輝かせる。
重なるユーベルコードの輝き。
フォルクは理解していた。
あの『腐敗の王』を己が倒せるとは思えないことを。そして、これは繋ぐ戦いであることを。
そう、自暴自棄になっているのではない。
確かに個としての己の力は『腐敗の王』には敵わないだろう。
だが、これまで幾度となくオブリビオンとの戦いに挑んできて理解できたことがある。それは猟兵たちが、己自信を楔となし、鎹となって、ユーベルコードの嚆矢を放ってきたからこそ、紡いだ未来であると。
「冥府の果てにある忌わしき呪詛。我が手に来たりてその死の力と転変の呪い、現世のものに存分に振るえ」
詠唱の言葉が重なる。
己の魔力を代償に冥府へとつながる闇を纏うフォルクと己のオブリビオン。
周囲にある者全てに湧き上がるのは内側からの死の呪詛。
『腐敗の王』も例外ではない。
「この私に死の呪詛を放つか。意味のないことだ」
吹き荒れる炎があった。
それは確実にフォルクへと死をイメージさせたことだろう。
ただでさえ、彼の体は『死の循環』によって腐敗が加速している。皮膚が、肉が、血が、腐り落ちていく感覚は例えようがない。
「こうも考えているな。目の前の己のオブリビオンに己のダメージを肩代わりさせようと。だが、無意味だ。互いに同じ力を持っているのならば」
互いに己のダメージを押し付ける。
だが、しかし、フォルクは違う。
彼は腐敗によるダメージも上乗せして、己のオブリビオンへと押し付けている。ダメージの総量が多いほうが勝るというのならば、フォルクは『死の循環』によって、その総量を上回っているのだ。
「なら、先に倒れるのは俺のオブリビオンだ」
フォルクは呪詛を嵐のように解き放つ。
ユーベルコードの輝き。明滅する光。それこそがこの戦場に猟兵たちを呼び込む光となるだろう。
己が勝てなくてもいい。
「俺が倒さずとも」
「己を顧みないか。死を厭わず。朽ち果てる未来すら幻視してなお」
「ああ、俺は、俺達は猟兵だ。次に繋げることはして見せる」
例え、此処で滅ぼしようがないのだとしても。
それでも次に繋げるための楔を打ち込むこと。それをすることが己の役目であるというようにフォルクは死の呪詛を以て『腐敗の王』の内側へと光を叩き込むのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
黄葉・契次
(アドリブ歓迎)
生と死の循環…俺はもう、そこから外れてる
身体が腐るのは、流石にいい気分じゃないが
それで死ぬぐらいなら、俺は今ここにいねえよ
【CODE:DULLAHAN】使用、黒い鎧を纏う
一度死んでる俺が腐り落ちて、そこからオブリビオンの俺が生まれて
俺は死を運ぶ首無し騎士になって、敵は生き死にを回す王とやら
…もう滅茶苦茶だな。後はここを、誰がどう塗り潰すか、だ
鎧姿で敵を殴る
負傷も腐敗も気にしない、首は飛ばされても腐っても問題ない
戦いながら色々な事を忘れていく
自分が「その能力で首無し騎士に変じている」事も
それでも、電力切れまでは攻撃を続ける
俺が眠って腐った肉塊になり果てても
後を託せればそれでいい
生命というものが如何なるものであるかを定義するのは難しいことであったかもしれない。
特に亮平という存在については特にそうである。
悪霊、デッドマン――そうした存在は生命と定義されるであろうか。
生命の埒外にあるもの。
それが猟兵であるというのならば、今まさに腐り落ちる肉体を引きずっているものはなんであったのか。
少なくとも、黄葉・契次(牙折りクロムイエロー・f25437)には持ち得ていなかった。
「『生と死の循環』……俺はもう、そこから外れている」
自覚していることはただそれだけだ。
蘇生措置によってデッドマンとなったこと。
それだけが事実であるがゆえに、契次は戦場を走る。
この戦場、五卿六眼の一柱『腐敗の王』へと迫る。
だが、彼の視界に収まっただけで契次の体は腐敗していく。皮膚はひび割れ、渇き果てる。それは『死の循環』を加速されたが故であると知るだろう。
「流石にいい気分じゃないが」
「死とは生命にとって最も忌避すべきものである。死へと向かう旅路でありながら、しかしてそれを先延ばしにせんと伸ばすものである。故に私は加速させる。『死の循環』をもてば、如何なる存在であろうと滅びる。死せるのだ」
『腐敗の王』の炎の半身の向う側から揺らめくようにして男が現われる。
それは鏡合わせのように契次と相対する。
そう、腐り落ちた血肉より生み出されたのは『黄葉・契次のオブリビオン』であった。
まったく己と同じ。
いや、己と違うのはあちらは万全の状態であり、こちらは体が腐り始めているということだ。
だが、それでも契次は歩む。
己の崩れる体を引きずりながら、己のオブリビオンを前にしても。
「それで死ぬぐらいなら、俺は今ここにいねえよ」
煌めくユーベルコードが重なる。
互いに同じユーベルコード。
死を視る。死を知る。死を運ぶモノ――それは骸魂『首なし騎士』。
「――来い、デュラハン!」
契次の体が鎧に覆われていく。黒い鎧。
CODE:DULLAHAN(コード・デュラハン)と呼ばれる、己の肉体を一時的にオブリビオン化するユーベルコード。
心臓たるヴォルテックス・エンジンが衝動を以て電力へと変化させていく。迸るような衝動は、オブリビオンを滅ぼせと叫ぶ亮平としての本能。
故に、『腐敗の王』の振るうオブリビオン・ソードの一撃を受けても契次は止まらな方。如何にユーベルコードの知識を忘却されたのだとしても。
咆哮する。
多重の咆哮。
己と、己の過去。
その咆哮は、ただひたすらに世界を塗りつぶすためのものでしかなかった。同じ衝動を持ちえながら、契次が変じた首なし騎士は、黒い鎧を砕かれながら突き進む。
過去に在りし己は、そこで衝動が止まっているものだ。
「なるほど。衝動ゆえに歩みを止めないか。オブリビオン化した時点で、オブリビオンのお前はすでに終わっているということか」
「――ッ!!!」
『腐敗の王』の言葉に契次は答えない。
意味がない。
たとえ、己の体が『死の循環』を加速され、その肉体が腐っていくのだとしても。
己が首なし騎士に変じているユーベルコードを忘れているのだとしても。
それでも衝動を電力に変えるエンジンは回り続ける。
「これが俺の衝動。俺の慟哭。俺という存在」
止まらない。
腕が吹き飛び、腐り落ち、肉体が限界を越えようとも、衝動だけはなくならない。それが己を己たらしめるものであると知っているからこそ、契次は、その渾身の一撃を『腐敗の王』へと叩き込む。
生み出される電力が底をついて己が眠りに落ちるのだとしても、腐った肉塊となるのであっても。
「後は託せればそれでいい」
故に、その一撃は死を厭わぬ超克の一撃となって『腐敗の王』の燃える体を打ち据えるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
紫・藍
【藍九十】
死は藍ちゃんくんにとって胸を張って生きた末に最後に得るものでっす。
あなたのものではないのでっす!
皆々様の死は皆々様自身のものなのでっす!
腐敗し、老いるということは変化していくということ!
生きるということ!
どれだけ痛もうとも藍ちゃんくんはその変革に胸を張るのでっす!
熱き魂で攻撃してくるというのなら!
藍ちゃんくんは熱き魂で歌うのでっす!
おねーさんへの藍、おねーさんからのアイも込めて歌うのでっす!
藍ちゃんくんでっすよー!
おねーさんの権能による抑制と愛による生命の抱擁と身体強化でダメージを軽減・回復しつつも!
世界に、己に胸を張って生き、死という完結を迎えて完成するのを目指すこの“藍”を歌い続けるのでっす!
藍ちゃんくんのオブリビオンでっすかー?
藍ちゃんくんだった彼は自身が変わることのない過去、オブリビオンとなってでもあちらにいるのでっす。
それはあちらのおねーさんを一人にしないためなのでっす。
なので、ええ。
大丈夫かと!
彼の歌は王様のためでも猟兵のためでもなく!
藍する彼女に捧げる藍ですので!
末代之光・九十
【藍九十】
君はそうやって。藍の故郷の死と生命の循環を歪めてたのか…
まあ……藍はそんな君にも歌を届けるんだろうけどね。
でも。藍の終わりは藍だけのものだ。誰にも……僕にも……歪める事は許さない!
|生《マムシ》よ|生《マムシ》。|生命の神《マムシカムイ》よ此処に。
|昔日《ありしひ》より収集し。|今日《こんにち》に結合し。
代行権に基づき此の領域に理を転写する。
悪意ある停止。私欲なる加速。否。否也!
其を正しき運行とは認めない!
(UC使用)
異界の異国のそれも末席でも一応死と生命の循環の管理神何でね。君の力の抑制位は出来る。
腐らされ様と身を苛まれようとこの領域は維持だ。
死の循環は出来るだけ僕自身の|生命の循環《ホノリの力》で相殺して。後は耐える!
僕のオブビリオンは。ま……好きにしなよ。
過去に堕ちたって藍と一緒に居るなら大丈夫。悪い様にはならないさ。きっとね。
さーそれじゃあ後は藍のステージだ!
君も聞きなさい腐敗の王。
人を救う世界も救う僕も救う。
死も生命もそして腐敗も|愛《藍》して見せる。彼のさ。歌だよ!
『生と死の循環』――それを手繰る五卿六眼の一柱『腐敗の王』。
彼の力があるが故にダークセイヴァー世界において死せる者は魂人として第三層へと転生を果たす。
字面だけ視るのならば、次なる生が保証されているものであったことだろう。
だが、この常闇の世界において死は救済ですらない。
第四層にてヴァンパイア支配に寄って苦痛のうちに死せる生命は、第三層にて闇の種族に弄ばれる運命を持つ。
「私が『生と死の循環』を操るからだ。それが許せないか、猟兵」
『腐敗の王』は言う。
これまで猟兵たちの一撃を受けて尚、健在であることを揺らめく炎の半身によって示していた。
彼の『欠落』は破壊されていない。
故に彼を打倒することはできない。だが、それで止まる理由にはならない。
例え、彼と相対することに寄って『死の循環』を加速され、その肉体を腐敗と乾きによって死へと近づけさせられるのだとしても、猟兵は誰一人として止まらなかった。
ユーベルコードの煌めきは強大な存在である『腐敗の王』の肉体を確かに消耗さえていた。
「君はそうやって」
末代之光・九十(何時かまた出会う物語・f27635)は紫・藍(変革を歌い、終焉に笑え、愚か姫・f01052)の姿を見やる。
彼の世界の、故郷の、その生と死の循環を歪めている存在を前にして憤りを胸に抱く。
けれど、藍は構うことがなかったようだった。
どれだけダークセイヴァーの現状が哀しみと苦しみに満ちているのだとしても、彼は変わらないことを彼自身が示している。
「死は藍ちゃんくんにとって胸を張って生きた末に最後に得るものでっす。あなたのものではないのでっす」
「確かにそのとおりだ。私は『死の循環』を加速するだけだ。死は生命に平等に訪れるものだ。旅路の最後である。故に、それを私が得ることはないだろう」
「ええ、皆々様の死は皆々様自身のものなのでっす!」
藍は歌う。
例え、己の身が腐敗に満ちていくのだとしても。
それでも歌うように告げるのだ。
「腐敗し、老いるということは変化していくということ! 生きるということ!」
藍の言葉に九十はやっぱり、と思う。
相手がダークセイヴァーの苦しみの一端を担う者であったとしても、藍は変わることはないのだと知る。知っているのだ。
でも、だからこそ、と九十は思う。
藍を思う。
瞳にユーベルコードの輝きをともしながら彼女は煌めく力を発露させる。生の髪が定める理と概念の支配領域。
藍が歌を届けるというのならば、己のやるべきことは決まっている。
『生と死の循環』を操るのが『腐敗の王』の視界に収まるという条件であるのならば、己は、畢竟、死と生命の運行を歪める事は認められない(マムシ・アラハバキカムイ)とユーベルコードの力を発露する。
「|生《マムシ》よ|生《マムシ》。|生命の神《マムシカムイ》よ此処に。|昔日《ありしひ》より収集し。|今日《こんにち》に統合し。代行権に基づき此の領域に断りを転写する」
九十のユーベルコードが発露する。
それは『腐敗の王』の操る『生と死の循環』を操る力を塗りつぶすものであったが。概念と概念のぶつかり合いではない。
如何にして敵の戦場をテクスチャーでもって塗りつぶすかの戦いでしかない。
これは生と死の理を歪めぬための戦い。
故に、九十はユーベルコードで持って示す。
「悪意ある停止。私欲なる加速。否。否也!」
「否定するか。循環の加速を。停滞を。猟兵であるのならば、そうであろうなと思うものであるが」
「其を正しき運行とは認めない!」
「だから、と言わせて頂こう。如何に私が弱体化しようが『死の循環』は止まらない。概念を以て支配を強めるユーベルコードであろうが」
『死の加速』を前にしては無意味であると告げる。
如何に加速を否とするのだとしても、弱体化されるのだとしても、その加速は無限に続く。
彼が煌々と燃える炎の瞳で見つめる限り、弱体化されどしかし、『死の循環』の加速は止まらない。
腐り落ちる肉体。
乾く皮膚。
血潮さえも無くす表皮の下の血管。
「どれだけ変わろうとも! どれだけ傷もうとも藍ちゃんくんは、その変革に胸を張るのでっす!」
歌う。
ただ歌う。
それだけが己であるというように。
生命を以て愛と呼べるならば(アイスルキミヘ)、藍は歌う。
世界に胸を張って生きる。死という完結を迎えて完成するのがこの“藍”であるというのならば、きっと己の身が崩れ果てても歌い続けるだろう。
現われるオブリビオンもそうであろう。
『紫・藍』と『末代之光・九十』のオブリビオン。彼らを前にしても尚、藍は歌う。歌うことはやめられない。
生きている。
目の前のオブリビオンは歌わない。それもそのはずだ。生きている限り歌うのが藍という存在ならば、目の前のオブリビオンは死んでも居なければ生きても居ない。
ならば、歌は響かない。
「ああ、でも、どうしてそちらに藍ちゃんくんのオブリビオンがいるのかなんて」
言うまでもない。
「わからないな。私には。存在意義すらなくしたオブリビオンに、存在する意味などないはずだが」
「そんなの決まっているのでっす!」
藍は叫ぶ。
これが愛であるというのならば、そうなのだろう。
今も尚、腐る皮膚を抑えながら、それでも己の権能、ユーベルコードでもって戦場を塗り替え続ける九十がいる。
どれだけ身を苛まれたとしても立ち続ける彼女が居るのと同じように。
オブリビオンとして現れた過去の藍は。
「おねーさんを一人にしないためなのでっす!」
そう、己がいなくなったのならば、九十のオブリビオンは一人になってしまう。歌わない己に意味はないのかも知れないけれど。
けれど、其処にあるということで助けになることがあるというのならば、歌えない己であってもきっと九十のそばにいるであろうことはわかっている。
それを再確認するように藍の歌が迸る。
「ええ、ほんとうに!」
「ああ、そうだね。過去に堕ちたって、藍と一緒にいるなら大丈夫。悪いようにはならないさ。きっとね」
権能と権能がぶつかる。
歌は響き続ける。
故に、彼らは、彼らの道を歩む。
「君も聞きなさい『腐敗の王』」
「何をだ」
「人を救う。世界も救う。僕も救う――死も生命も、そして腐敗も|愛《藍》して見せる。彼のさ。歌だよ!」
九十の瞳がユーベルコードに煌めく。
己の権能は唯一つ。
此の世界の大地ではなく、空気を、大気を加速させない。
乾き腐り果てる肉体があれど、それでも響くものがある。心があるということは幸いである。
震える身があるよりも、震える心があるのならば、それはきっと彼女のいうところの悪いようにはならないということだ。
過去の己の権能を超え、さらに『生と死の循環』すらも越えて、藍の歌を響かせる。
「彼の歌は王さまのためでも、猟兵のためでもなく!」
藍は歌う。
過去の己が歌えない歌を。
過去と今とに歌う。
これはそう……。
「藍する彼女に捧げる藍ですので!」
だから、響くのだ。世界に、理に。加速していく循環の最中で、謳われる藍は、『腐敗の王』のちからすら吹き飛ばすのだった――。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
国栖ヶ谷・鈴鹿
海鶴マスターにおまかせします。カッコ可愛い国栖ヶ谷・鈴鹿をお願いします!
◎
ハイカラさんの天才発明家&パテシエイルの多才なパーラーメイド。
お手製の二挺銃の扱いと、小回りの利くフロヲトバイの紅路夢、空鯨型航空巡航艇ヨナ、ワンオフのスーパーキャバリア阿穹羅と、守護稲荷きこやんの護法術、ハイカラさんの後光のパワーを駆使した、発明と天性の才能を武器に明るくも自信に溢れた心持ちで挑みます。
【デウスヱクスマキナ】
腐敗のダメージ……いや、こういう時は……神頼みも手かな?
意識を放り投げて呼び出すのは三体の機械神、それぞれの役割を果たし、腐敗の王と分身を攻撃、鈴鹿の治療と護衛を行い、戦いを継続する。
炎が噴出する。
煌々と輝く瞳に捉えた者は全て『死の循環』の加速に寄って腐り果てる。乾き、不浄と清浄とによって死へと至る。
「だからこそ、猟兵は抗う。此度もまた滅びに抗う。滅ぼせぬ私を前にして、それでも」
五卿六眼の一柱『腐敗の王』は告げる。
それは事実であった。
彼は滅ぼせない。『欠落』が健在であるからだ。
此の戦いは、如何にして『腐敗の王』を退けるかにかかっている。だが、それでも猟兵たちは果敢にユーベルコードを煌めかせながら、『腐敗の王』へと迫る。
己の死を厭わぬのではない。
此の世界、ダークセイヴァー世界において人々の生命は死してもなお魂人として転生させられ、その生命を弄ばれる。
それは『腐敗の王』が『生と死の循環』を操っているからにほかならない。
彼を打倒すれば、するほどにダークセイヴァー世界の人々が生命を落とした時、魂人へと転生する可能性が減っていく。
「だから、ぼくは戦うんだ!」
国栖ヶ谷・鈴鹿(命短し恋せよ乙女・f23254)は迫る炎を前にしながら、その瞳を湯ユーベルコードに輝かせる。
確かに恐ろしい敵である。
ただ視界に納められただけで彼女の皮膚は乾き、血潮もまた喪われていく。崩れるようにして皮膚が落ちれば、その内にある肉は腐敗していくだろう。
これが『腐敗の王』の力。
圧倒的過ぎる。
痛みが走るより先に鈴鹿は己の足元がおボツ化に事を知るだろう。
「……!」
「無駄だ。それは徒労というものだ。猟兵。私はお前たちが何処まで抗うことができるのかに興味を持っている。だが、わかっただろう」
『腐敗の王』と今の猟兵との間に横たわる深い溝の如き圧倒的な力の差を。
加速する『死の循環』に抗うことはできない。
放たれる劫火の如き炎は鈴鹿の駆るキャバリアや護法さえも燃やし尽くすように広がっていく。
熱に汗が落ちることもない。
それすらも乾きはて、肉を腐らせていく。
だが、鈴鹿の瞳はまだ光を喪っていない。
確かに実力差は如何ともし難いほどに開いている。『死の循環』を操る敵など、どうしようもないとわかっている。
「けど! それでもさ!」
鈴鹿の瞳はユーベルコードに煌めく。
既に瀕死と言っても良い傷を負いながら、それでも鈴鹿は叫ぶ。
それを『腐敗の王』は無駄だと言うだろう。
けれど、鈴鹿は頭を振る。確かに己は『死の循環』の加速に寄って死に瀕している。『腐敗の王』に敵うべくもないだろう。
けれど、鈴鹿は信じている。
自分を。
天才たる己を。
そして、己が創り出したものを。
それは最重要秘匿機構デウスヱクスマキナ(デウスヱクスマキナ・トリムールティ)。
例え、腐り落ちた血肉により鈴鹿のオブリビオンが同じ対抗手段を取ろうとしても無駄である。
彼女のユーベルコードは自動的なものだ。
死に瀕すること。
それがトリガーとなって発露するユーベルコード。
『状況、創造者ノ生命活動ノ危機、当該機ハ此レヨリ、コヲド、デウスヱクスマキナ発動』
守護と破壊。再生と創造。
それぞれを司る機械仕掛けの三神が戦場を疾駆する。
「ぼくはぼくの天才性に確信を持っている。だから、ぼくが例え『腐敗の王』、キミに勝てなくても。僕の発明したものはキミに打ち勝つ。きっとね!」
迸るユーベルコード。
鈴鹿の身を腐らせる『死の循環』をも治療する機械神と破壊を齎す機械神が『腐敗の王』へと迫る。
「猟兵自体ではなく、猟兵の力が私を」
「打倒するって信じてるんだよ!」
生命に対して絶対的なアドバンテージを持つ『腐敗の王』とて、機械仕掛けの神には通用しないだろう。
三神が振るう破壊の力が、ユーベルコードの輝きを持って『腐敗の王』を打ち据えた。それはきっと次なる猟兵の戦いを助けると信じた鈴鹿の思いの発露だった――。
大成功
🔵🔵🔵
肆陸・ミサキ
※絡み苦戦ケガアドリブOK
やれやれ、熱血だなんて、僕には冗談にしてもタチが悪い
血も肉も熱すぎる相手に魂まで燃やせ、なんてさ
だいたい、炎で燃やすなんて生ぬるいことしないでよ
太陽の光熱に晒されてから出直してきて
POWで
僕の様な虚弱で力でごり押ししかできないような存在が敵になったところでどうするんだい?
そんな死んでも蘇るような安い命の右腕に、重さなんて乗るものかよ
熱には強いつもりだけれど、強いってのは耐性があるだけできついのはきついんだ
だからやるのは迅速に短期決戦で、捨て身の一撃で利き腕をくれてやる
痛みも傷も、もう忌避するには遅すぎるだろう、お互いにさ
『死の循環』が加速していく。
五卿六眼の一柱『腐敗の王』は、『生と死の循環』を操る存在である。
彼の視界に写されたものは須らく『死の加速』によって肉体を腐敗させていく。どれだけ強靭な肉体を持っていたのだとしても関係ない。
そして、腐り落ちた血肉よりオブリビオンを生み出す。
「魂を燃やすことのできぬ者は、『生の循環』を廻すまでもなく、滅び果てる。故に私は知りたい。此度の猟兵がどれほど戦うことができるのか」
炎が発露する。
吹き荒れる嵐のような炎。
煌々と立ち上る炎の揺らめきの向こうに、肆陸・ミサキ(黒白を弁ぜず・f00415)は己の姿を見た。
「やれやれ、熱血だなんて、僕には冗談にしてもタチが悪い」
ミサキは迫る『肆陸・ミサキのオブリビオン』を見やる。
確かに己である。
ミサキは思う。
血も肉も熱き相手、『腐敗の王』。彼の肉体派思えている。それを相手に魂まで燃やさなければならないとは何の冗談化。
「だいたい、炎で燃やすなんて生ぬるいことしないでよ。太陽の光熱にさらされてきてから出直してきて」
振るう大鎌と大鎌が火花を散らす。
オブリビオンの己を見やる。
こうしてみるとわかる。
ミサキは自身のことを虚弱で力でゴリ押しすることしかできないような存在だと言う。
だが、彼女の振るう大鎌の刃は鋭い。
そもそも自分のような、とミサキは己を見下げる。
「どこまで言っても僕だ」
「そうだ。お前の腐り落ちた血肉より生み出したお前自身のオブリビオン。同じ力、同じユーベルコード。それらを使う者を前にして猟兵、お前はなんとする」
炎を躱しながらミサキは戦場を走る。
自分ならばこうする、という先々にオブリビオンの己が駆け込み大鎌の斬撃を叩き込んでくる。
そこに炎が迸り、肌を焼く。
痛みが走る。
熱には強いという自負がある。あるが、しかし、耐える事ができると言うだけの話だ。痛みは変わらず体に走っている。
「くれてやる、遠慮なく受け取ってよ」
オブリビオンの己の瞳がユーベルコードに輝く。
振るう拳。
己の利き腕。
それをミサキは理解しただろう。己のオブリビオンが何をするのか。それは必殺のユーベルコード。
己の身を顧みない一撃。
故に必殺。だが、ミサキの瞳はさらにユーベルコードに輝いていた。
「そんな死んでも蘇るような安い後の右腕に」
目の前の存在はオブリビオンだ。
生きることも、死ぬことも。受動的な存在を前にしてミサキのユーベルコードは、赫灼たる絶焼(カクシャクタルゼッショウ)へと至る。
「――重さなんて乗るものかよ」
振るう拳が激突しオブリビオンの己を焼き焦がす光が戦場を埋め尽くしていく。
焼き焦げた腕は、腐敗するより早く乾き果てるだろう。
これもまた死の一つ。
腐り果てる不浄と乾き果てる清浄。二つの死がミサキを襲う。
だが、ミサキの瞳は『腐敗の王』を見つめる。己が打ち払うべき敵は何か。己のオブリビオンなど問題にはしていない。
ひしゃげた右腕をさらに握りしめる。血潮が噴出するように皮膚よりとめどなく放たれる。
「ダークセイヴァーを救う」
ただそれだけのためにミサキの拳はさらに光を放ちながら『腐敗の王』へと放たれる。
焼き焦がす光。
炎揺らめく半身を吹き飛ばすように、その一撃はミサキの渾身へと昇華し、戦場を白く染め上げるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
レナータ・バルダーヌ
生きてこそ希望があると思っていますし、魂人さんの力に助けられもしました。
それでも、永遠の苦しみに囚われた存在を生み出していい理由にはなりません。
これ以上そんな人たちを増やさないために、あなたを倒します!
焼かれて困る装備はないので、防げる攻撃はサイキック【オーラ】で防御。
体の腐敗は【痛みに耐える】しかありませんけど、炎の翼は継ぎ足せるので移動や回避もできます。
自身のオブリビオンは、負傷すると却って厄介なはずなのでやり過ごします。
庇われないよう【念動力】で動きを封じ、敵本体がなるべく近付いた瞬間に【C:L.ナパーム】で【カウンター】。
生身で防ごうと炎化して飲み込もうと、榴弾の爆発力で四散させます。
発露する光と炎が激突する。
膨大な熱量が戦場を埋め尽くし、それでもなお五卿六眼の一柱『腐敗の王』は健在であった。
彼の周囲は死で満ちている。
「まだ追いすがるか、猟兵」
『腐敗の王』は『欠落』を未だ健在なるものとしている。
故に猟兵が彼を滅ぼすことはできない。
けれど、猟兵たちが『腐敗の王』に立ち向かうのには理由があった。
そう、魂人。
「生きてこそ希望があるのです。魂人の皆さんにも助けられもしました」
レナータ・バルダーヌ(護望天・f13031)はだから戦うのだという。この絶望的な戦場にありて、彼女の瞳は意志の光に煌めいていた。
彼女は誰かのために戦う。
己の傷を厭うことはない。
そうすることが当然であると思っていたし、傷を負うことには慣れていた。だからこそ、その傷の痛みを知っている。
確かに魂人たちのユーベルコード、永劫回帰の力は死を否定する。
けれど、それは彼らの暖かな記憶を代償としたものだ。
それ故に永劫に苦しみ続けなければならない。
「だから、戦うのです。これ以上彼らを、魂人の苦しみが増えていくことだけは! それ故に、あなたを倒します!」
気迫満ちる力。
レナータは迫る炎をオーラで受け止める。
しかし、ユーベルコードの炎は、容易く彼女の体を焼くだろう。それだけではない。『腐敗の王』は彼の視界に納めたレナータの『死の循環』を加速させる。
凄まじい勢いでレナータの皮膚が乾燥し、その表皮の下にある血肉を腐らせる。
痛みが走り抜ける。
「っ……あっ!」
痛い、というものじゃあない。
『死の循環』は容易く自分を死へと追いやる。その痛みをレナータは噛みしめるようにして『腐敗の王』を見つめる。
「如何なる生命も死という運命からは逃げることはできない。早いか遅いかの違いだけでしかない。猟兵。お前たちは何処まで戦える」
その言葉と共に腐り落ちた血肉から『レナータ・バルダーヌのオブリビオン』が生み出され、レナータへと迫る。
煌めくユーベルコードは地獄の炎。
その炎が球体へと変わり、レナータへと放たれる。弾幕のような炸裂火球が戦場を埋め尽くしていく。
炎と『死の循環』がレナータを襲い、その熱が彼女の体を焼く。
「……それでも!」
レナータは己のオブリビオンに目もくれなかった。
オブリビオンとしての己の力は完全にして万全。ならばこそ、己のオブリビオンに手傷を与えることは却って己を不利にすると知っていたからこそ、レナータは炎の翼を羽撃かせ、一気に『腐敗の王』へと迫る。
腐敗する体。
身を灼く炎。
いずれもが彼女の身を傷つけるものであった。
けれど、レナータは諦めていなかった。迫る己のオブリビオンを念動力で拘束し、『腐敗の王』を見上げる。
「この威力なら……!」
掲げた掌より放たれるは、地獄の炎を掌に集めた炸裂火球。
己のオブリビオンが使っていたユーベルコードと同じ、C:L.ナパーム(コンビネーション・ランベントナパーム)。
「届くか届かないかじゃないです。わたしたちはあなたに勝たなければならない。永遠の苦しみに囚われた存在を生み出して良い理由なんてどこにもありません。だから!」
吹き荒れる炸裂火球の一撃。
それは極大にまで膨れ上がったレナータの念動力と地獄の炎が合わさった痛烈なる一撃。
煌々とした炎がレナータに迫る。
「必ずあなたを倒してみせます!」
それすらも彼女のユーベルードは飲み込んでいく。
苦しみが、哀しみが、此の世界に満ちているのならば、それを取り除きたいと思う。
彼女の炎は、迫る炎すら飲み込んで『腐敗の王』ごと、第二層の天を灼くのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
西院鬼・織久
生きては屍山血河を築き、死してなお怨念となり戦い続けた我等が怨念、たかが絶望如きで止められると思うな
己の血肉さえも糧とし我等が怨念喰らい尽くすまで、我等が怨念尽きる事なし
【行動】POW
怨念の炎を宿したUCの範囲攻撃で周辺一帯を延焼させ、自分以外の全てがその場にいる限り焼却+生命力吸収の呪詛を付与される状態にする
自分の血肉から生まれた物も同様に呪詛を付与され継続ダメージを受けるため、なぎ払い+切断の範囲攻撃で更に呪詛を付与して行き消耗させる
腐敗する体の苦痛や敵攻撃の状態異常を各耐性で堪えつつ受ける攻撃の魔力吸収を行い継戦能力に変換
手足の腐敗で武器を持てない場合手足の必要がないUCや影面で戦う
炸裂する火球が第二層の天井を焼き、五卿六眼の一柱『腐敗の王』の肉体を灼く。
彼にとって痛みというものは如何なるものであっただろうか。
意味のないものであっただろうか。
煌々と燃える炎の半身。
そのゆらめきの中より影がにじみ出る。それは己の視界に納め、『死の循環』の加速に寄って腐り落ちた血肉より拵えられた猟兵自身のオブリビオンである。
過去によって歪みながらも、しかし完全なる力を放つ猟兵のオブリビオンと『腐敗の王』の攻撃は苛烈だった。
絶望の戦場。
されど、その絶望の中であっても猟兵たちは駆け抜ける。
何故なら、此の戦いは無駄ではないからだ。
無敵たる力。『欠落』が健在であるがゆえに『腐敗の王』は滅ぼすことができない。それでも戦うのはダークセイヴァーに生きる人々の死した後転生する確率を下げるためだ。
「他者のために生命を奮わせるか」
「否。生きては屍山血河を築き、死して尚怨念となり戦い続けた我等が怨念、たかが絶望如きで止められると思うな」
西院鬼・織久(西院鬼一門・f10350)はその身を腐らせながらも、しかし吹き荒れる怨念と殺意の黒い炎でもって戦場一体を燃やしていた。
揺らめく炎。
されど、その最中にあってなお織久の体は『死の循環』の加速を免れることはなかった。「止まらぬか、猟兵。しかし、止まらぬからといってお前たちの敗北が覆るわけではない」
『腐敗の王』の炎と、そして織久は己達の怨念の炎が遅くるのを知る。
「これが我等の過去。オブリビオンと成り果てた我等が血肉」
同じ姿。
同じ声。
同じ力。
されど、決定的に違う。己たちは猟兵であり、対するは己でありながらオブリビオンという存在。
変わらない。
何一つかわらない。やるべきことは何一つ変わっていない。
「我等が怨念尽きることなし」
故に、殺意の炎(サツイノホノオ)は此処に燃え上がる。
「どれだけ我等と同じ姿をしていようとも」
「我等が怨念は此処にある」
言葉が重なる。己自身のオブリビオンであるがゆえに、同じ力。されど、あちらは万全にであるが、此方は違う。
崩れる血肉。肉体が思うように動かない。だが、それでいい。
己の怨念。呪詛は、他者の生命をすする。
それによって織久の肉体は復元し、またその端から『死の循環』によって崩れ智慧くのを繰り返す。
激痛が走り続けている。
常人であれば、狂い果てるであろう凄まじい痛み。だが、それでも織久は己の中に在る怨念が勝ると知るだろう。
「この炎は己達の怨敵を燃やし尽くすためにこそある。故に」
戦場に張り巡らされるは、己の影。
満たされた怨念は影となって戦場に飛び、己のオブリビオンと『腐敗の王』へと迫る。迸る力。
例え、手足が腐り落ちたとしても、織久には関係ない。
手足もがれようとも、己の歯がある。
食らいついてでも殺す。
ただそれだけの怨念が己に満たされていることを知るからこそ、織久は殺意の炎と共に『腐敗の王』の揺らめく半身へと飛びかかる。
燃える体と共に叩き込まれた呪詛が、煌々と立ち上る炎をすら侵食し、これまで積み重ね続けてきた西院鬼一門の狂戦士の怨念を示すのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
馬県・義透
四人で一人の複合型悪霊。生前は戦友
第二『静かなる者』霊力使いの武士
一人称:私 冷静沈着
武器:白雪林
…『我ら』は悪霊ですから。一度は経験してるんですよね。
だからこそ…再びの苦痛も激痛耐性で耐えましょう。
『我ら』のように、自ら生き返ったのは良い。選択のない蘇りなど…。
私なれば、それは弓を使いましょう…。どう射かけるかは、わかっていますから。
UCを使用。『氷の大津波』…それに破魔を足してますよ。
この『氷の大津波』は、制御が難しい…敵味方に牙を剥きましょうが。私はそれで構わないのです。
…私のオブリビオン、中に『炎(侵す者)』いないでしょう?
侵「無茶しよる」
そのまま、『腐敗の王』も飲み込んでしまえ。
生と死を超克する者。
それしか五卿六眼の一柱『腐敗の王』へと届く刃はない。
死を厭わぬ者にこそ力が宿るのならば、皮肉なことである。悪霊とは、死を一度経験している。死したが故に猟兵となったのならば、馬県・義透(死天山彷徨う四悪霊・f28057)の四柱は、生と死の外側に在ると言ってもいいだろう。
「……『我等』は悪霊ですから」
四柱の一柱『静かなる者』は言う。
静かに。
どれだけ己の身が『死の循環』の加速に寄って腐り果てるのだとしても、痛みは知っているからこそ耐えることができる。
自分の痛みは誰かの痛み。
己の死は誰かの死につながる。
この常闇の世界ダークセイヴァーにおいて死さえ救いではない。己たちがそうであるように、それは誰かに許しを請うものではないと知っている。
故郷を滅ぼされたこと。
己が己であるための呪詛尾が湧き上がってくる。
「悪霊と成り果てても尚、私に立ち向かってくるか。愚かしくも、とは言うまい。ただ、再び腐り果てるだけだ。私の前に立つということはそういうことだ」
『腐敗の王』の言葉が痛みと共に響く。
『死の循環』の加速は凄まじい。
己達の身を束ねているものや、呪詛すらも腐るようであった。
不浄と清浄の間で痛めつけられているようなものであった。
「『我等』のように、自ら生き返ったのは良い。選択のない蘇りなど……」
『静かなる者』は炎のゆらめきの向う側に己の姿を見た。
オブリビオンとなった己。
弓を構える姿まで鏡写し。それは今までの己。過去となった己だ。
故に分かる。
己であるから、どのように弓を射かけるかなど理解できないわけがない。
故に、『静かなる者』の瞳はユーベルコードに輝く。
地の底から響くような声だった。
ふくれ上がる力。
属性と自然現象を合成した現象を齎すユーベルコード。
「四悪霊・『階』(シアクリョウ・キザハシ)――制御が難しいですが、私はそれで構わないのです」
氷の大津波が戦場に立ち上る。
山のような氷の波が一斉に埋め尽くしていく。制御などできようはずがない。矢をいくらいかけようとしても無駄だ。
これだけの氷の波を前にして矢を射掛けることがどれだけ無意味か理解できないわけではない。
「己の身を厭わぬか。いや、わかっていたことだ。猟兵とはそういうものだ」
「ええ、そうです。我が身可愛さに退く者など猟兵にはおりませんので……そして、私のオブリビオン、『私』の過去であるがゆえに中に灯さぬものがあるのもまた事実」
『静かなる者』は己たちが如何なる存在であるかを知っている。
四柱を束ねる悪霊。
ならばこそ、異なる属性を持つ者がいるということ。
そして、過去たる己には、それがない。
「『炎』などいないでしょう。私の過去であるというのならば」
「無茶しよる」
己の中の『侵す者』が言う。
こうでもしなければ『腐敗の王』と己のオブリビオンを同時に相手取ることなどできようはずもない。
これまで猟兵たちが紡いできたものがある。
『腐敗の王』は滅ぼせない。
けれど、徐々に『腐敗の王』を消耗させている。
『欠落』が健在であるためだ。けれど、彼を倒すことを諦められない。
望まぬ転生を強いられ、死すら解放にならぬ世界に人々の涙がこぼれるのならば、己たちがそれを認めてはならぬと、『静かなる者』は氷の大津波と共に過去の己ごと飲み込ませるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
朱鷺透・小枝子
……死しても死ねず、終われない。
貴様が人々から安寧を奪い、誇りを奪い!人生を奪っているか!!
壊せ、壊せ!壊せ!!朱鷺透小枝子!!!これを、こいつを、
【継戦能力】『戦塵の悪霊』|過負荷《腐敗》が体を壊しても、
【|念動力《意志》】で体を、魂を走らせる。
|亡国の戦塵《ジカクナキアクリョウ》を前へ進ませる!!
どれほど蝕む腐敗が強かろうと、何がなんでも!
この煉獄の循環を!!壊せ!!!
”万全な”オブリビオンの自分が振るう騎兵刀を、
呼び寄せた破壊の【呪詛】放つ騎兵刀で壊し、その頭を掴み、|念動力《意志》を繋げる!
敵に落ちた己如きがッ! 自分の邪魔をするなッッ!!!
オブリビオンの自身、その|魂、狂気怨念《エクトプラズム》を捻じ伏せ、己のものとし、その肉体を【闘争心】の劫火に焚べて火力を上げる!
燃えろ!燃えろ!!
腐るより早く、奴を、この魂を!!!
この|世界を燃やせ《輪廻を廻せ》!!!!
劫火の霊障で腐敗の王の魂の炎に喰らいつき、同化し、
奴の魂を、その意志を、己が|闘争心と呪詛《魂と意志》で破壊せんとする!!
慟哭が響き渡る。
それはダークセイヴァー世界の人々のことを思ってのことだろうか。きっとそうであったことだろう。
「……死しても死ねず、終われない」
そう、常闇の世界ダークセイヴァーにおいて死とは救済を意味しない。ただの通過点にしか過ぎない事柄なのだ。
第四層以下で死した者は、第三層へと魂人として転生を果たす。
しかし、それは救済ではない。
ただひたすらに闇の種族にもてあそばれるだけの新たな地獄が始まるだけだ。
故に朱鷺透・小枝子(亡国の戦塵・f29924)は咆哮する。
「貴様が人々から安寧を奪い、誇りを奪い! 人生を奪っているか!!」
「そのとおりだ。私が『生と死の循環』を操るが故に、人間は死した後も魂人として、その生命を繋ぐ」
五卿六眼の一柱『腐敗の王』は炎揺らめく半身と共に小枝子に言う。
ふくれ上がる炎が噴出し迫るのを小枝子は睨む。
赦してはおけない。
こんな存在を赦してはおけない。ただひたすらに小枝子はそう思った。許せるものではない。これは壊さなければならない。壊す。壊す。壊す!!
己が!!! これを、こいつを。
「――壊す!!!」
炎さえも意味がない。
ユーベルコードの煌めきと共に人工魔眼が炎を噴出させる。己の体に過負荷が重く伸し掛かる。
けれど、それだけではない。
『死の循環』の加速。
『腐敗の王』は、猟兵達の腐り落ちた血肉から彼ら自身のオブリビオンを生み出す。
炎が揺らめいている。
言葉が重なる。
「壊れるまで、戦い続けろ!!」
ニ体の戦塵の悪霊(ジカクナキアクリョウ)が戦場で激突する。
火花が散る。慟哭が交錯する。
「無駄だ。過去は不変。そして今のお前たちは『死の循環』の加速に寄って腐り続けている。不完全な状態でどれほど抗うことができる」
『腐敗の王』の言葉は小枝子には届かなかった。
己の今は魂でもって戦場を走らせる。
どれが腐敗が体を蝕むのだとしても。
「この煉獄の循環を!! 壊せ!!!」
騎兵刀が激突する。砕ける。破片が飛び散る最中に血肉が散乱する。痛みが脳を、魂をきしませる。
痛みなどもう知らない。知ったことかと小枝子は咆哮する。
己がしなければならないことはわかっている。呪詛が砕けた騎兵刀の破片を重ね合わせる。振るう。
手より抜けた騎兵刀がオブリビオンの己の胴を貫く。
さらに伸ばさえた手がオブリビオンの小枝子を頭を掴む。
「敵に落ちた己如きがッ! 自分の邪魔をするなッッ!!!」
振り上げた頭を己のオブリビオンの頭へと叩きつける。
額が割れ、血潮がどろりと己の顔面を伝うのを感じた。暖かい。いや、熱い。血潮は未だ熱く、燃え上がるような思いであった。
これが己だ。
この熱さが己だ。
燃え上がる魂と共に小枝子は己のオブリビオンの魂そのものを捻じ曲げ、己の中へと引きずり込む。
過去は確かに変えられない。変わらない。歪むだけだ。
だからこそ、小枝子は咆哮する。己の中に過去がないわけがない。己は過去を踏みつけて前に進んでいるのだから。
ならば、これは前に進むための。
「過去の己を燃料とするか」
「燃えろ! 燃えろ!! 腐るより早く、奴を、この魂を!!! この|世界を燃やせ《輪廻を廻せ》!!!!!」
迫る劫火すら関係なかった。
己の体と、過去の己を引きずりながら小枝子は前に進む。
炎が身を灼く。それでも前に進むことはやめない。炎さえも小枝子は同化しながら、噴出するユーベルコードの輝きを人工魔眼に灯す。
「如何にして私を滅ぼすというか」
「――何がなんでも、だ!!!!」
壊す。墓の化身は、あまねく全てを破壊する。取りこぼさない。己の闘争心だけが炎となって噴出する。
過去も今も関係ない。
明日の誰かのためにこそ己は存在しているのだというように、その魂を燃やす。過去は変わらない。けれど。
「壊れるまで、戦い続けろと叫ぶ過去がある。今の自分がいる! それだけで充分だろう!!!」
呪詛が過去の己を騎兵刀と混ぜ合わせ、その刀身を握りしめる。
振りかぶった、それを放つ一撃が一直線に炎を切り裂いて『腐敗の王』の体を貫く――。
大成功
🔵🔵🔵
メリー・スペルティナ
……貴方が、彼らの魂をこの地に縛りつけている張本人ですわね
その呪縛、ぶち壊しにしてやりますわよ!
忘却させられる前に先手でUC、発動さえさせればわたくしの知識は関係ない、腐敗に時間限定の不死化で対抗し、オブリ化したわたくしも含めた敵の動きは紅き鎖で妨害、守りを回復任せに血晶石とブルートヴァッフェ、そして血の持つ呪詛を浴びせひたすら時間一杯攻め込みますわ!
血や肉が腐り、朽ち、この世から消え去ろうと、そこに在った想いが残るのならば呪詛も問題なく機能する、止められるものなら……止めてみなさいですわ!
炎が噴出している。
五卿六眼の一柱『腐敗の王』の体に突き立てられた刃を彼は引き抜き打ち捨てる。
未だ彼の『欠落』は健在。
故に滅ぼすことはできない。けれど、それでも猟兵たちは果敢に立ち向かう。
「滅ぼせぬと知りながら、尚絶望の戦場に足を踏み入れるか」
彼にとって此度の猟兵は如何なる存在に写っただろうか。
これまでの猟兵と変わらぬ者であると思えただろうか。
その答えは此処にある。
「……貴方が、彼らの魂を此の地に縛り付けている張本人ですわね」
「然り。私の『生と死の循環』を操る能力に寄って、人の魂は永劫にこの地獄に囚われ続けている」
『腐敗の王』の言葉にメリー・スペルティナ(暗澹たる慈雨の淑女(自称)・f26478)の瞳がユーベルコードに輝く。
煌めく光は常闇の世界を照らす。
腐り果てる血潮があれど、しかしてメリーは立ち止まらない。
世界を書き換える力。
紅の雨が振る戦場へと書き換えるユーベルコード。此の世界が五卿六眼の支配というテクスチャーを張り巡らせたものであるのならば、此の世界を、戦場をメリーは己の戦場へと塗り替える。
「ふふん、見せてやりますわよ、今を生きる者の強さ、その想いを。……さあ、死んでる暇なんかありませんわよ!」
紅い鎖が飛ぶ。
それは『腐敗の王』と彼の傍らで生み出された『メリー・スペルティナのオブリビオン』をも拘束する。
だが、それは瞬時に切り裂かれる。
過去の己。
わかっている。メリーの体は『死の循環』の加速に寄って腐敗が進んでいる。皮膚が乾きはて、不浄と清浄の死が生を蝕んでいる。
だが、それでもメリーのユーベルコードは己の体を不死化する。
どれだけ『死の循環』を加速させるのだとしても、彼女の体は死を拒絶し続ける。
「血や肉が腐り、朽ち、この世から消え去ろうと、其処にあった想いが残るのならば」
「無駄だ。どんな力も、どんな生命も死に向かうものであるのならば」
メリーは『腐敗の王』と過去の己へと立ち向かう。
止まらない。
止まってはならない。
終わり無き戦いを征く己が言う。どれだけの痛みがあろうとも。どれだけの苦境が目の前に広がっているのだとしても。
それでも己の中には不朽たる想いが宿っている。
「過去の存在を捕らえなさい、紅き鎖よ!」
メリーの言葉と共に鎖が迸り、己のオブリビオンと『腐敗の王』を再び拘束する。だが、それは僅かな時間でしかなかった。
過去の己がそれを切り裂いているのだ。
けれど、それでいい。
己は此処に在る。
身を苛む呪いの血が迸るようにしてメリーの手にした呪いの血を宿す剣へと満たされていく。
冥想血界:果てなき永劫の戦(ヴェルトート・ヴァルハラ)。
それは此処にあるということ。
見果てぬ夢のような、そんな戦いが永劫に続く。
その夢の中を彼女は生きている。
戦い続ける呪い。死ぬことを許されぬ呪い。それは魂人たちもまた同様であったことだろう。
死するのだとしても、その魂を自由にしようとする者がいるのならば。
メリーは己が戦う意味を知る。
「止められるものなら……止めてみなさいですわ!」
限界を超える。
限界は己の体を止める危険信号ではない。そこから先に一歩踏み出せという熱き猛りであった。
故にメリーは迸るようにして呪いの血宿す剣を『腐敗の王』へと振り抜く。
たとえ、過去の己が盾のように迫るのだとしても、今を生き続ける己が過去を乗り越えられぬ道理など無いというように、オブリビオンの己自身ごと剣をもって『腐敗の王』を斬りつけるのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
董・白
僵尸の私が言えた義理ではありませんが、加速された『死の循環』…必ず止めて見せます!!
…ところで、私たち僵尸やデッドマンの方々は兎も角、腐る肉がないスケルトンの片の場合どうなるんでしょう?塵化??
(死体仲間的に疑問/ぉぃ)
あ、…。いえ何でもございません。
腐敗の王…ご覚悟!!
『呪詛体制』『環境耐性』の効果を付与した『結界術』をこの身に展開して対抗します。
肉体の『リミッター解除』して『限界突破』肉体が腐敗の恐怖は慣れっこです。体はまだ動きます。
宝貝「化血神刀」を発動。
化血神刀で攻撃し、切り傷を『こじ開け』て『毒使い』の『道術』による猛毒を流しつつ『傷口をえぐる』と『破魔』の斬撃で『吹き飛ばし』ます
己の身は僵尸である。
死した体。
骸を突き動かすものはなんであっただろうか。
死とは絶対的な末路である。けれど、それを越えた者は、どうなるのだろうかと『死の循環』加速する戦場にありて、董・白(尸解仙・f33242)は思う。
答えは単純だった。
己の皮膚が乾き果てるのだ。
崩れるように。
砂の一粒に成り果てるように、崩れ始めているのを彼女は見ただろう。
「死生観は一つではない。腐り落ちる不浄。乾き果てる清浄。いずれにしても迫るは死だ。例え、死を超越した者であったとしても、無に還るという絶対的な理からは逃れ得ぬのだ」
揺らめく炎の半身。『腐敗の王』より現われるのは、白自身のオブリビオンだった。
「塵化……確かにそうでしょうね。無に還る。どんな存在も、其処に行き着く。それが死を越えた先にあるものだということは同意しましょう、『腐敗の王』。ですが!」
白の瞳がユーベルコードに煌めく。
彼女の手には、宝貝「化血神刀」(パオペエカケツシントウ)がある。それは猛毒と流血を与える者。
一太刀。
たった一太刀でいい。この一撃を『腐敗の王』へと叩き込むことができたのならば、あとに続く者たちの戦いは随分と楽になるはずだ。
未だ『欠落』が健在たる五卿六眼の一柱。
彼を滅ぼすことはできないが、退けることはできる。『生と死の循環』を操る存在の力を削ぐことで、ダークセイヴァー世界に生きる人々が転生する確率は落ちる。
「……ご覚悟を!」
白は絶望的な戦場に飛び込む。
過去の己。崩れていく体。
引きずりながらも、それでも白は走る。迫る過去の己は万全な状態だ。過去であるがゆえに不変。これ以上変わりようがないがゆえに『死の循環』の影響を受けないのだろう。
手にしているのは己と同じ化血神刀。
交錯する刃が激突して、火花を散らす。
無に帰すという恐怖は白にとっては慣れたものだった。
恐れは常にある。
けれど、それを恐れ続けることの無為さを彼女は知っている。常に死と共に在るが故に。彼女は今を生きる、在るということの尊さを知る。
故に、如何に『死の循環』が加速するのだとしても、彼女は立ち止まらないだろう。
肉体の限界を超える。
死した肉体であるからこそ、人体の制御は解き放たれている。
打ち据える度に己の体のあちこちに亀裂が走る。
けれど、それでも止まらない。
「過去の私にないもの。それが明日を夢見ること」
故に、と彼女の一撃が過去の己を切り裂く。走る猛毒が過去の己を内側から蝕み、その動きを止める。
「肉体の限界があるということは変わること。不変たる過去のあなたが、私が、進めるわけはないのです」
白は手にした化血神刀を振るう。
これまで『腐敗の王』の体に刻まれた傷は深いものではなかった。けれど、わかる。猟兵たちが決死の思いで立ち向かい、その体に刻んできた傷。
「過去の己を踏みつけにしても尚、私に迫るか」
「そうすることでしか前に進めないと知っているからです。どれだけ『死の循環』を加速されたのだとしても!」
前に路がある。
轍がある。
多くの猟兵達の刻んだ楔を繋げる鎹のように猛毒と流血を与える刃が今、『腐敗の王』へと刻み込まれる――。
大成功
🔵🔵🔵
ペトニアロトゥシカ・ンゴゥワストード
魂だの生死の超克だの、いちいち大仰だねえ。
どうせあたしがやれる事もやるべき事も、何一つ変わりやしないってのに。
さて、今必要なのは倒すための威力より一発届かせる為の耐久力だね。
【耐性進化】で可能な限り代謝を上げて腐るそばから治るようにして、
出来るだけ身体能力が落ちないよう対抗するよ。
あたしのオブリビオンは倒す必要が無いなら捕獲にだけ気を付けていればいいかな。
あたし自身の攻撃なら事前に全部耐性を得ておけるからね。
腐敗の王が炎の体で攻撃してきたらそこがチャンスだね。
万象喰らいの力で炎のエネルギーを吸収して腐敗した体に活力を与えて、
燃やされながら殴り返してダメージを与えるよ。
これで少しは満足したかい?
五卿六眼の一柱『腐敗の王』の身より血潮が溢れ続ける。
しかし、その血潮は炎によって燃えていく。傷口が開き続けている。これまで猟兵たちが刻んできた傷。
それは確かに深いものだった。浅いものであったと言えるだろう。
未だ『腐敗の王』の『欠落』は健在。
故に滅ぼすことはできない。
「だが、それでも私に迫るか猟兵。魂すら燃やし、超克し、生死の垣根すら越えて」
『腐敗の王』は此度の猟兵たちの姿を見据える。
己が視界に収めるだけで、『死の循環』は加速していく。
相対する者全てに腐敗を齎す。
血肉腐り落ちる不浄と乾き果てる清浄。
それらを持って『腐敗の王』は猟兵たちを滅ぼさんとしている。
「魂だの生死の超克だの、いちいち大仰だねえ」
ペトニアロトゥシカ・ンゴゥワストード(混沌獣・f07620)は、加速した『死の循環』の中にあってもとまらなかった。
自らに成すことのできることを知っているからだ。
どれだけ絶望的な状況であっても、ただ一つのことを成すために彼女は走る。
迫る炎は、あらゆるものを燃やす劫火となってペトニアロトゥシカへと迫る。身を焼くユーベルコードの炎は彼女の肉体を腐らせ、さらに乾かすだろう。
異なる死生観が同時に己の体を蝕むという異常。
それを目の当たりにしながら、彼女の瞳はユーベルコードに輝く。
耐性進化(イミュニティ・アルター)。
彼女が選択したのは、たった一つのこと。
肉体の性質と形状を自在に変形させる力。己の身はすでに『死の循環』に対する耐性を得る。だが、得たところで腐り落ちることにはかわりはない。
「やっぱりあたしのオブリビオンも来るか」
目の前には異形たる姿へと変貌した己自身のオブリビオンが迫る。
互いに互いのことを理解している。
自分がどのような存在であるかを。どのように戦うかを完全に理解している。
「過去の己を前にしていかに戦う」
『腐敗の王』の噴出する炎の勢いを前にしてペトニアロトゥシカは頭を振る。
「戦う必要なんて無い」
彼女は自身のオブリビオンを組み合うことなく、その打撃の全てを受け止めた。身に響く一撃。
骨身が軋む。
だが、しかし、今のペトニアロトゥシカは進化している。
過去に決定された過去の己の打撃では止まらない。常に変容し続ける。打撃を受けるのならば、其れに対する耐性を得る。
刺突も、斬撃も。何もかも彼女は肉体を変質させて耐えきるのだ。
「変わらないことを選んだ過去のあたしなんて、意味がない。変わり続けることがあたしなのだから」
吹き荒れる炎の中をペトニアロトゥシカは飛び込むようにして『腐敗の王』へと迫る。
あらゆるものを喰らう力。
体内に溜め込んだ炎をペトニアロトゥシカは腐敗した己の肉体へと賦活する。漲る膨大なエネルギー。
荒れ狂うような力の奔流を体の内側に感じながら彼女は拳を握りしめる。
燃えるような力は事実、彼女の肉体を灼くだろう。
けれど、止まらない。
「止まらないか、猟兵」
「そうだよ。あたしができること。やれること。その一つはなんら変わることはないから。どれだけ加速した『死の循環』の中であってもね」
振るう拳の一撃が『腐敗の王』を捉え、打ち据える。
吹き荒れる体内に取り込んだエネルギーを放出する。その一撃がダークセイヴァー第二層の血管の大地を砕きながらペトニアロトゥシカは『腐敗の王』を遂に吹き飛ばす。
これまで紡いできた猟兵達の戦いが、今此処に結実を見せ始めていた。
「これで少しは満足したかい――?」
大成功
🔵🔵🔵
メフィス・フェイスレス
【アドリブ歓迎】
誰の許可得て私の肉獲ってっんのよ
腐ろうがはなから『醜態を晒す』躰
だが腐り落ちた肉が敵の糧にされた怒りで沸騰しそうになる
『微塵』で弾幕を張り敵の視界を遮り、
『反旗』の裏から出した予備の『禁忌』で理性を繋ぎ止める
でもアンタは違うわよね
『飢渇』同士が喰らい合う中で
体も心も丸裸な敵の私に貪られる。腕を、脚を持って行かれて…
――あえて盾にして喰わせた
喰う事しか考えてないのね、仕留める事なんて二の次
獣としても三流じゃない
頭を残しちゃダメでしょ?――返して貰うわ
UCで頭部を噛み千切る、再生される前に何度も、全て【呑】みこみ己の中に戻す
次はアンタよ。食い逃げなんてさせない
ツケは払ってもらうわ!
腐り果てる血肉があった。
その血肉は過去に成り果てる。己の血肉より生み出された過去の己を目の当たりにし、メフィス・フェイスレス(継ぎ合わされた者達・f27547)の瞳にあるのは、怒りの輝きだった。
同時に血肉が沸騰するような思いでもあった。
己の体は、体躯は元より『醜態を晒す』ものである。腐ろうが、乾こうが変わりはない。
不浄と清浄を加速させる死生観。
『死の循環』を手繰る五卿六眼の一柱『腐敗の王』の姿をメフィスは、その怒りに燃える瞳で持って見据える。
「誰の許可得て私の肉獲ってんのよ」
「過去に流れ着いた者は、誰かのものではない。故に『これ』は誰のものでもない」
『これ』と示したのは過去の己。
『メフィス・フェイスレス』のオブリビオン。
醜態。
そう表現するしか無いとメフィスは思った。
オブリビオンに成り果てた体。
それをメフィスは怒りに燃えるようにして飛び出す。炸裂する眷属の爆発。そのさなかを彼女のコートの下から飛び出したベルトが走り、過去の己、オブリビオンたる己を縛り付ける。
同時に己の肉体も縛るのだ。
理性をつなぎとめる。
怒りは確かに彼女の力を増幅させるだろう。しかし、同時に衝動をも膨れ上がらせるものであった。
だから、彼女は敢えて己を縛る。
どれだけ加速した『死の循環』の中にあって、己が身が腐り果てるのだとしても、それでもメフィスは構わなかった。
「でも、アンタは違うわよね」
互いの影と影が捕食し合う。眷属を生み出し、炸裂する戦場の中心に近づける者は誰も居なかった。
己と己のオブリビオン。
それだけが捕食し合う。
互いの顎が。
互いの爪が。
互いの顔を、手足を、胴を、臓物を貪るようにして食う。
目の前にあるのは己だ。過去の己。わかっている。これが己だ。
「わかってるわよ」
そんなことはわかっている。どれだけ、これが醜態を晒すものであるかなど。
けれど、同時にメフィスは吹き荒れる『腐敗の王』の放つ炎が過去の己、オブリビオンの己を燃やすのを見た。
それは敢えて食われることによって、彼女を盾にしたのだ。
炎はあらゆる不浄を焼き滅ぼす。
煉獄、とはよく言ったものだ。生あるからこそ穢れが身より生まれる。それを振り払うことができるのは炎と水だけだ。
だからこそ、メフィスは己の不浄を誰かに渡すつもりはない。
「喰うことしか考えてないのね、仕留める事なんて二の次」
メフィスは過去の己を見やる。
残された頭部が変形する。広がる顎が一息に過去の己を噛み砕くようにして引きちぎる。
「獣としても三流じゃない。頭を遺しちゃダメでしょ?」
捕食する。
過去の己さえもメフィスは丸ごとに捕食する。それはまるで、貸し与えたものを返してもらうようだった。
「呑(ノミコム)――次はアンタよ」
「私すらも捕食の対象と視るか」
メフィスの炎が迸る。
すでに肉体は十全。過去の己を喰らい、今の己がある。故に、彼女は戦場に満ちる炎の中を駆け抜けて、『腐敗の王』へと迫る。
「食い逃げなんてさせない。ツケは払ってもらうわ!」
メフィスの顎が引き裂かれるようにして広がる。
強大な顎が『腐敗の王』の放つ炎と共に、その炎の半身を噛み砕く――。
大成功
🔵🔵🔵
ステラ・タタリクス
ふむ、|オブリビオンの私《『私』》
見ている分には美人過ぎて最高ですね
ですが戦うとなると…こういう時に出来るメイドは辛いですねえ
それでも退くわけにはいきません
『私』が美人過ぎるのも問題ですし
腐敗の王ともどもここで倒すとしましょう
真正面からがお望みですか?
メイドたるもの、ご期待には沿うとしましょうか
『ニゲル・プラティヌム』を両手に
【スクロペトゥム・フォルマ】にて
ええ、私が不利なのは承知ですが
真正面からなら決して『私』は|私《脅威》を無視できないでしょう?
メイドですものね?
私と『私』、決定的な違いがひとつあります
それは|現在《生者》と|過去《オブリビオン》という違い
過去は|過去《オブリビオンマシン》を従えられますか?
フォル、いらっしゃい!
私ごと【ファム・ファタール】で吹き飛ばしなさい!
最近、少しわかってきました
私がエイル様に惹かれるわけ
根本が一緒なのでしょうね
そこに勝利があって掴み取るためなら私は私すら捨てる
「戦いに際しては心に平和を」
冷静に、|腐敗の王への一撃《勝利》を、この手に!
そこです!
噛み砕かれた半身が炎によって補われる。
五卿六眼の一柱『腐敗の王』は猟兵を侮っていたわけではない。ただ、ひたすらに猟兵達の攻勢が彼の力を上回り始めていた。
くさびを打ち込み、鎹となり、そして絆いでいく。
それが猟兵達の戦いであった。
煌めくユーベルコードの最中に揺らめく炎を見た。
「これが六番目の猟兵。無敵たる私をも追い詰めてくる」
揺らめく炎の半身からオブリビオンが現われる。
それは紫の髪をなびかせる、瀟洒たるメイド。あまりにも其れは、精錬されたものであった。
「ふむ、|オブリビオンの私《『私』》、見ている分には美人過ぎて最高ですね」
ステラ・タタリクス(紫苑・f33899)はわけからなんことで関心していた。
過去の己を見て、そう思うことはなんというか。
「ですが戦うことになると……こういう時にできるメイドは辛いですねえ」
迫るオブリビオンの己。
その力は凄まじい。なんといっても、なんでもできるメイドである。メイドであるから、という言葉で全てをひっくり返してくるのだからたちが悪い。
とは言え、退くわけにはイカないのだ。
「『私』が美人すぎるのも問題ですし。『腐敗の王』ともども此処で倒すとしましょう」
「真正面からがお望みとあらば」
「ええ、それならば」
「メイドたる者、ご期待には沿うとしましょう」
互いの言葉が重なる。
ユーベルコードの煌めきが満ちる。
手にした二丁拳銃の応酬がステラとオブリビオンの間で躱される。
弾丸が打ち出される度に、銃身が打ち据えられる度に、蹴撃が交差する度に。
二人の応酬は嵐のように戦場を席巻するだろう。
『銃の型』による応酬。
それはステラ同士であるからこそ決着のつかぬものであった。いや、ステラは腐り落ちる肉体を引きずりながら、よくここまで持ちこたえているとも取れる。
対するオブリビオンは腐ることはない。
過去であるがゆえに腐ることがないのだ。だからこそ、ステラは追い詰められる。不利であるとは先刻から承知している。
だが、ここで止まる訳にはいかない。
退くことができない。ここで己自身を食い止めることをしなければ、共に戦う猟兵たちの戦いが無意味になってしまう。
「メイドですものね?」
自分自身が最も脅威であることなど言うまでもない。
無視できない。
自分であるからこそ、自分を捨て置いた瞬間に何をしでかすかわからないという脅威こそが、腐敗していながらも戦う己を完全なる過去の己を引き止め続けている。
「確かに私の体は不完全。ですが、私と『私』、決定的な違いが一つだけあります」
空に手を掲げる。
その手に導かれるようにして飛来するのは、鋼鉄の翼。
『フォルティス・フォルトゥーナ』。
オブリビオンマシン。
体高5m級の戦術平気でありながら、オブリビオンマシン。それを手繰るは今を生きるステラ自身である。
「それは|現在《生者》と|過去《オブリビオン》という違い。過去は|過去《オブリビオンマシン》を従えられますか?」
できようはずもない。
オブリビオンであるがゆえに御することのできない存在。
生者だからこそ御することのできる存在。
故にステラは掲げた手をマーカーにして迫る『フォルティス・フォルトゥーナ』の突撃を見る。
羽撃く鋼鉄の翼が生み出す旋風。
吹き荒れる風の中、ステラは思う。
最近わかったことがある。己がどうして『主人様』に惹かれるのか。焦がれるのか。
それは根底にあるものが同じだからだ。
「其処に勝利があって、掴み取るためなら私は私すら捨てる」
それが滅私奉公の精神であるというのならば、そうなのかも知れない。
ステラは己の胸に抱くものを知る。
その言葉をつぶやく。
「戦いに際しては心に平和を」
「――その生命を見ろ」
『腐敗の王』が迫る。炎を纏いながら、脅威を滅ぼさんと迫る。
その身にはこれまで猟兵達の戦いの軌跡がある。
誰もが絶望的な戦いに立ち向かった。滅ぼせぬ相手を前に、それでも魂人たちの、これより死せる者たちの安息を願うために走ったのだ。
旋風が迸りながら、過去の己と『腐敗の王』を飲み込んでいく。
「そこです」
ステラは銃身を上げる。
引き金を引く指は軽かった。冷静だったからかもしれない。勝利を得るために手を伸ばすことに躊躇いはない。
いつだって誰かのために。いつだってそうしてきたからこそ、得られるものがあると知るからこそ、ステラは加速する『死の循環』の中、飛ぶ弾丸が『腐敗の王』を貫くのを見た――。
大成功
🔵🔵🔵
クック・ルウ
(腐り落ちた私の一部から産まれたオブリビオン
心のどこかが欠落した様子のそれは飢えた目をしている
アレを、野放しにする訳にはいかない)
『好きなままに食べればよいのだ』
笑う声に否と告げてやる
信念も覚悟も師匠の教えも失った化け物め
(抗うための魔法で自身を奮い立たせ
戦い続ける覚悟の意念を込めた剣で迎え撃ち)
全てを溶かし食うお前を、溶けぬ刃で斬り裂いてやろう
これはその為の剣だ
(一瞬の時も惜しい。動きを止めず、武器に魔法を纏わせ、腐敗の王へ斬撃波を放つ)
腐敗の王よ
あなたがこうして人を弄ぶというのなら
私達は抗い続けるのみだ
ブラックタールの体が腐り落ちる。
それは五卿六眼の一柱『腐敗の王』の加速させた『死の循環』によるものであった。己の体躯が腐り落ちていく感触はおぞましいものであったことだろう。
生きながらに腐る。
目の当たりにする死。
しかし、それ以上にクック・ルウ(水音・f04137)は、己の腐り落ちた血肉より生み出された己自身のオブリビオンを野放しにしてはならないと悟る。
虚ろなる目。
心が欠落したかのような飢えた目。
そこにあるのは貪欲なる食欲衝動。故に、あれを野放しにしてはならない。あれがもしも、己の衝動のままに力を振るうのならば、世界のすべてを飲み込むものであると知るからこそ。
『好きなままに食べればよいのだ』
笑う声があった。
それが己の過去が発したものであったのか、それとも『腐敗の王』が発したものであったのかをクックは判然としないままに駆け出す。
目の前の過去は、確かに己の過去である。
しかし、同時にクックは否と告げる。
「信念も覚悟も師匠の教えも喪った化け物め」
「それが過去の自身であると否定するか、猟兵」
『腐敗の王』の言葉が響く。
腐敗を加速させる『死の循環』を手繰る存在は嘲笑うでもなく、また同時に憐れむでもなく、その高校たる炎の瞳をクックに向ける。
耐えようのない痛み。
己の体が腐り、乾き、異なる死生観がクックの脳を苛む。けれど、それでも彼女は己を鼓舞する。奮い立たせる。
黒きタールの体の全身から迸るのは、抗うための魔法(アラガウタメノマホウ)。
負けるものかと叫ぶ己が居る。
迫る食欲の権化たるタールを見上げる。
全身から発せられた光のオーラが過去の己の顎を食い止める。
「全てを溶かし喰らうお前を、溶けぬ刃で切り裂いてやろう」
彼女の手に有るのは、蒼銀の剣。
意志は水へと変わる。吹き荒れるような水は決して溶けない。交わることはあれど、溶け消えることはない。
故に己に対するカウンター。
過去の己はあらゆるものを喰らう。どんなものであっても変わらない。好きに喰らい、好きに取り込む。
際限などない。
故に、暴食そのもの。だが、クックは違う。
今の己は人らしい食事を大事にしたいと願っている。過去の己が持ち得ないものを今の己は持ちながら進んでいる。
それは己を縛る枷であると言えるかもしれない。
けれど、己が選んだのは、魔法だ。己を守り、皆を守り、未来を守ることができる。好ましいと思う。
世界はこんなにも好ましいと思えるもので満ちている。
だからこそ、守りたいと願う心があるものと、ただ貪り喰らう者との間には埋めがたい溝がある。
故にあれは化け物だ。
「負けるものか! これはそのための剣だ」
魔法纏う斬撃が過去の己を切り裂き、道をひらく。
それは僅かな一瞬の時間。
動きは止めない。過去の己を仕留めきれていないにしても、それでも彼女は前に進む。
「過去を踏みつけにしてもなお、迫るか」
「そのとおりだ、『腐敗の王』よ。あなたがこうして人を弄ぶというのなら、私達は抗い続けるのみだ」
それが人らしく生きていたいと願うクックの思いだ。
どれだけ肉体が腐敗するのだとしても、此の胸に宿る願いと思いだけは決して朽ちることはないのだと示すように、迸る魔法の水纏う剣の一撃が斬撃波となって宙を走り、猟兵たちのユーベルコードによって傷ついた『腐敗の王』へとさらなる傷を刻み込むのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
夜刀神・鏡介
戦場に身を置く以上、いつだって覚悟はできている
例え絶望的な状況であっても、歩み続ければ道は開けると
神刀の封印を解除。神気によって身体能力を強化して、腐敗のダメージを少しでも抑え込み
バイク『八咫烏』に騎乗……こいつには無理をさせる事になるが、移動に使う体力も温存したい
オブリビオン化した自分の戦闘手段は基本的に近接なので距離を取れば比較的安全
そして腐敗の王の攻撃も、そこまで射程が長くないだろう
オブリビオン化した自分からは距離を取り、迂回するようにして腐敗の王へと接近
必要なら斬撃波で牽制しよう
腐敗の王に対しては一撃勝負。接近中に力を溜めて、絶技【無我】
代償上等……渾身の一刀を叩き込む
いつだってそれは当然のことだった。
死はいつだって目の前に横たわっている。
己の隣にいたかもしれないし、頬をかすめたかも知れない。戦場に立つ以上、それは避けられぬものであったし、己が他者に与えるものでもあったのだ。
「いつだって覚悟はできている」
己の身を苛む『死の循環』の加速。
腐る血肉。
どれだけ強靭に鍛え上げられた肉体であったとしても、腐り落ちることにあらがうことはできない。
血潮が溢れる。
崩れた皮膚と肉によって抑えられなくなった、それは点々と大地に刻まれていくようだった。
これが絶望なのだと夜刀神・鏡介(道を探す者・f28122)は理解する。
けれど、同時にこうも思ったのだ。
「歩み付ければ道は開ける」
「それが徒労に終わるのだと知ってもか」
五卿六眼の一柱『腐敗の王』の言葉が響く。重たく、頭に伸し掛かる。
けれど、それでも鏡介は己のオブリビオンを前にして、神刀の封印wの解除し、神気に寄って腐り落ちる肉体を抑え込む。
だが、抑え込めるものではない。
強化した端から体が、その筋肉が落ちていくのを感じる。
けれど、それでも歩むことは止められない。
騎乗したバイクが唸りを上げる。無理をさせる、とわかっていてもなお、それでも戦わなければならない。
「それでもだ。それでも前に進まなければならない。路が前にあるから進むのではなく、俺がそう望んだからだ『腐敗の王』!」
吹き荒れる炎の中をバイクが疾駆する。
その正面から炎を切り裂くようにして斬撃が迫る。
その一撃を鏡介は知るだろう。
何故ならば、己と同じ太刀筋であったからだ。強烈なる刃。距離を取ろうとしたが無駄だった。踏み込んでくる。
バイクの性能を持ってしても逃れられぬ己の斬撃の間合い。
斬撃波の牽制では到底抑えきれない。
「当然だ。腐り果てる不完全なる自身と、過去故に腐ることのない完全なる俺。どちらが勝つかなど自明だろう」
過去の己が立ちふさがる。
振り切れない。
己であるがゆえに己のやることを理解している。
背後には『腐敗の王』。迫る炎が身を焦がし、さらに乾きを持って、己の体を死へと近づけさせる。
「構えろ。俺が俺にできることは多くはない」
その言葉に鏡介は己の肉体を代償にする。
抜き払った神刀の煌めきがユーベルコードに満ちる。
神器化していない体。
それを代償にして放つ一撃。どんな防御も、距離も無視する切断の神気が刀身に満ちていく。
代償など考えるまでもなかった。
「我が身をただ一振りの刃として、斯く在るべきなのが、俺だ」
過去の己が言う。
そのとおりだ。だからこそ、己はユーベルコードを解き放つ。
過去の己も、討つべき敵も。
「避け得ぬ路の前に俺がいるのなら、それを乗り越えて……いや、違うな。これはそんなものじゃあない」
煌めくユーベルコード。
放つ一撃は、己を捨てた一撃。
己と他者との壁面を取り払うことによって森羅万象に合一することに寄って放たれる斬撃の一撃。
其の名は。
「――絶技【無我】(ゼツギ・ムガ)」
あらゆる防御を無視する神気の迸りが過去の己自身をも切り裂きながら、『腐敗の王』の体を切り裂く。
滅ぼすことのできぬ存在。
されど、鏡介は構わないと思った。己の斬撃に己は勘定されていない。
誰かのためにという一振りとして振るうからこそ、到達できる境地があるのだと、知らしめるように放つ斬撃は『腐敗の王』へと刻まれるのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
バーン・マーディ
…そうか
それは理である
神へと堕ちてしまって我が身も摂理に縛られる時が来たか
善い
それもまた理である
だが…このひと時はその節理に叛逆せん
【武器受け・オーラ防御・属性攻撃】
対自分
…耐えるのみ
全盛期の肉体を持つ相手に劣らぬものがあるとするならばそれは意志である
炎のオーラを展開し武器を受け止め耐える
我が粉砕するのは貴様ではない
腐敗の王への叛逆のみ
腐敗の王に猛攻
【カウンター・二回攻撃・鎧破壊・鎧無視攻撃】
そして熱き魂の炎に対し己もまた炎を吹き上がらせて受け止め
我が血肉よ…耐えよ
まだ叛逆の刃は届いておらぬ
そして肉も骨も断たせながら
UC発動
防御を捨て収束させた力と腐敗の王の魂の炎の力を込めた鉄拳を叩き込む!!
ユーベルコードの煌めきが戦場を埋め尽くしていく光景をバーン・マーディ(ヴィランのリバースクルセイダー・f16517)は見た。
これが理である。
戦場に満ちるは『死の循環』の加速。
五卿六眼の一柱『腐敗の王』が齎す『生と死の循環』を操る力は、彼の肉体すら腐敗へと導く。
腐り落ちる不浄と、乾き果てる清浄。
其の異なる二つの死が今まさに彼の体を蝕んでいく。
「神へと堕ちてしまた我が身も摂理に縛られる時が来たか」
「如何なる存在も無に還る。力も、何もかも変わらぬことだ。此度の猟兵」
『腐敗の王』の揺らめく炎の半身、その高校たる瞳がバーンを見据える。
そのうちより現われるのは『バーン・マーディのオブリビオン』。
過去の己。
目の当たりにして尚、それでもバーンは頷くだけだった。
「善い。それもまた理である。だが……この一時は、その節理に叛逆せん」
何故ならば、己は大いなる叛逆(オオイナルハンギャク)によって前に進むものであるからだ。
そうしなければならない。
理由は言うまでもない。
悪には悪の正義があるように。摂理を前にして抗わぬ道理などないというように。腐り果てる己の血肉を引きずりながらバーンは己自身が振るう刃を受け止める。
骨身が軋む。
痛みが走る。
だが、それすらもバーンは己の意志でもって、炎のオーラを噴出させる。さらに迫る『腐敗の王』の放つ炎が全てを燃やし突くさんとするように煌めく。
「我が粉砕するのは貴様ではない」
言葉が重なる。
己が振るう刃の意味を知るからこそ、過去の己も、今の己もまた目の前の敵を敵と認識しない。
振るわれる一撃を受け止め、バーンの瞳がユーベルコードに輝く。
「我が望むは『腐敗の王』への叛逆のみ」
弾く一撃と共に過去の己へと叩き込む。それは万全にして完全たる己の力を載せた一撃。カウンターの一撃は耐え難き一撃となって過去の己を斬り捨てる。
確かに過去は変わらぬがゆえに腐敗を免れるだろう。
しかし、それは停滞と言っても良い。立ち止まる己は己にあらず。故にバーンは切り捨てた己を見やることなく『腐敗の王』へと迫る。
手にした剣の煌めきが炎の揺らめきを写していた。
「腐り果てながらも、なお迫るか」
己の血肉を信じるしかない。
耐えるしか無い。まだ叛逆の刃は届いていない。だからこそ、と己に言い聞かせるようにバーンは炎の中を走る。
肉が爆ぜる。骨が砕ける。血潮が噴出する。
それでもなお、己の中にあるものは何一つ輝きをかげらせることはなかった。
見据える敵を切り裂くこと。
ただそれだけの刃と己を成すために彼は、己の防御に回していた力を刃に集める。完全なる過去の己のが撃ち込んだ力を糧にする。
「これが過去を踏みつけた、と貴様はいうのだろうな。だが、過去は今を前に進ませるためにある。故に」
振るう剣は砕けた。
炎の前に砕け、燃え落ちる。だが、それでもバーンは拳を握りしめた。
「どれだけ加速した『死の循環』が我に迫るのだとしても。我は我であることをやめはせぬ」
振るう一撃が『腐敗の王』へと叩き込まれる。
炎の力を取り込みながら、込められた一撃。吹き荒れる炎と共に振り抜いた拳が砕ける。それでもバーンは構わなかった。
この弾圧。此の圧政。あらゆるものに叛逆するのならばこそ、バーンは今まさに『生と死の循環』にこそ本逆を成すのだ――。
大成功
🔵🔵🔵
メンカル・プルモーサ
…視界に移るもの全てが腐敗する…
…そして腐敗した血肉がそのままオブリビオンになって襲いかかってくる…
…長期戦はダメだなこれ…全力の一撃をぶつける方がまだ分が良いか…?
…まずは現影投射術式【ファンタズマゴリア】で濃霧を作って視界を制限…
これも当然のように腐るだろうけど…多少でも時間を稼げればよい…
…腐り始める体に術式組紐【アリアドネ】を巻き付けてをそれを操って強引に動こう…
…重奏強化術式【エコー】で強化した【精霊のの騒乱】を『無詠唱』で発動…
…炎の嵐を暴走させて腐敗の王や自分のオブリビオンを巻き込んでダメージを与えるとしよう…
…月並みではあるけど…死と言うものは安息であるべきだね…
「……視界に映るもの全てが腐敗する……」
それは恐るべき力であったことだろう。
五卿六眼の一柱『腐敗の王』の『生と死の循環』を操る力。その片割れとも言うべき『死の循環』の加速。
「……そして腐敗した血肉がそのままオブリビオンになって襲いかかってくる……」
メンカル・プルモーサ(トリニティ・ウィッチ・f08301)は長々と時間を懸けることができないと判断した。
だが、それでも『腐敗の王』は未だ『欠落』を健在なものとしている。
無敵であるがゆえに滅ぼすことができない。
されど、猟兵たちは己の過去と『腐敗の王』の迫る力を前に絶望的な戦いに果敢に挑んでいる。
煌めくユーベルコードが満ちる戦場をメンカルは見る。
己の持てる全力の一撃。
これに懸けるしか無い。幻影を投射する術式に寄って濃霧を創るが、しかし、それを突き抜けてくるのが『死の循環』の加速であった。
「無駄だ、此度の猟兵。お前たちは己のオブリビオンによって滅びる。私がこさえた血肉より生まれしお前たち自身は、それを破る方策を持っているのだから」
『腐敗の王』は揺らめく炎の半身からメンカルのオブリビオンを生み出し、幻影を打ち消す。
「……当然のように腐らせてくれる……」
メンカルはそれでも止まらなかった。
いや、『死の循環』の加速も止まらない。どうしようもないほどに肉体が腐り果てていく。痛みが走る。
皮膚が乾くのと同時に内側にある血肉が腐り落ちていく感触。
得も言われぬ痛みにメンカルの顔が歪む。
しかし、その腐る体をメンカルは術式組紐でもって強引に操る。
それは引きずる、といっても過言ではないほどの惨憺たる状況だった。だが、それでもメンカルの瞳は前を見据えていた。
己のオブリビオンを生み出しているのならばわかる。
此方の最大の一手を無効化しようとしてきているのだ。
「……なら……制御出来な一撃を叩き込むまで……」
喉が枯れる。乾く。張り付いた舌がもつれていく。
だが、それでも詠唱を途中で止め、無詠唱でメンカルはユーベルコードを発露させる。
過去の己を超えるために必要なのは、己でも制御できないものをぶつけること。
それは、精霊の騒乱(エレメンタル・ウォー)。
制御不能たる自然現象。
更に術式で強化された属性と合わさり、炎の嵐が吹き荒ぶ。
強烈な力の奔流。術式に寄って増幅された力は、すでにメンカルの制御を離れている。
「何故そうまでして抗う」
『腐敗の王』は己と己が生み出したメンカルのオブリビオンと共に今や立っているのがやっとという有様のメンカルを見据え告げる。
何故無駄と知りながら抗うのかと。
「……月並みではあるけど……」
メンカルの瞳がユーベルコードに煌めき続ける。
炎の嵐の向う側。
己の持てる最大の一撃。それを叩き込むためだけに彼女はユーベルコードを増幅させ続ける。
「……死というものは安息であるべきだと思うから……」
此の常闇の世界において死とは救済ですらない。
ただ魂を縛られ、弄ばれるだけの生命。
世界は変えられない。ならば、せめて死だけはと願うが故に。メンカルの迸る炎の嵐は、自身のオブリビオンをも飲み込んで吹き荒れ、『腐敗の王』へと叩きつけられるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
リア・アストロロジー
「ふ、ふふっ……」
拳銃の反動でさえ腕が壊れ、踏み止まれずに
『バルタザール』の重力操作で誤魔化しながら立ち上がり。
偽神細胞の拒絶反応で全身グズグズになって死んだ恩人。
あの人もこんな感じだったのかな、少しは近づけたのかな……なんて思ったり。
「だいじょうぶ。やるべきことを、やるだけ」
過去がわたしを生かしてくれたように。
いまのわたしがここで潰えるとしても、
「あなたにとってこれがそうなら、わたしは――」
いつかまた出会える日を夢に見て。
泣きながら生まれて、笑いながら死んでいける世界を。
本体を囮に『メルキオール』の音響兵器でオブリビオンを牽制。
指定UCで意識の間隙をついて元気な『わたし』での攻撃を試みます。
構えた銃が重たいと思った。
支える筋繊維が崩れるようにして腐り果てているからだ。引き金を引く指さえも重たい。こんな風に銃をままならなくなるとは、リア・アストロロジー(M2-Astrology・f35069)は思いもしなかった。
けれど。
「ふ、ふふっ……」
自ずと笑みがこぼれていた。
やっとの思いで引いた引き金。放たれた銃弾の反動で彼女の腕が壊れ、踏みとどまることもできずにその場に倒れ込んだ。
背に痛みが走る。
立ち上がろうとして、己の腕が崩れる。
その光景を見てリアは笑む。やはり笑むのだ。
「きっと……」
あの人もこんな感じだったのだろうと、過去を胸に去来させる。
浮かぶは偽神細胞の拒絶反応で全身グズグズに成り果て死んだ恩人の顔だった。大切だと思った思いがある。
自らを救った人。
その最期を今まさに自分が体験しているようにさえ思えたのだ。
なら、きっと己は近づきたいと思った恩人に、少しは近づけたのかもしれないとさえリアは思ったのだ。
「腐敗を越えて。死を越えて。それでもなお、立ち上がるか猟兵」
五卿六眼の一柱『腐敗の王』の煌々たる瞳の炎が己を見ている。放たれ続ける『死の循環』の加速。
その最中でリアは腐り果てる己の血肉より生み出された己のオブリビオンを見据える。
今の己と違って完全な状態。
過去であるがゆえに腐り果てることのない存在。
でも、少しも羨ましいとは思わなかった。ああであってほしいとも思わなかった。後悔もない。
何故なら、今の彼女の中には満ち足りたものがあるからだ。
わかっている。
だって、これは。
「だいじょうぶ。やるべきことを、やるだけ」
ドローンによる重力操作で、やっとのことリアは立ち上がる。
「過去を踏みつけにして尚迫るか」
「いええ。これは違う。確かに過去を踏みつけなければ今はない。けれど」
そう、けれど、とリアは笑むのだ。
絶望たる戦場にありながら、笑むのだ。
「過去がわたしを生かしてくれたように。いまのわたしがここで潰えるとしても」
その瞳にユーベルコードが輝く。
暁を残して(アカツキヲノコシテ)灯るは闇夜に走るネットワークの光。
「あなたにとってこれがそうなら、わたしは――」
永すぎる夜のために燈火を宿す者となりたい。
だからこそ、彼女を核とした精神感応によるネットワークが構築される。それは過去の己にも繋がり、『腐敗の王』にすらつながることだろう。
リアは思う。
いつかまた出会える日を夢に見ている。
泣きながら生まれて、笑いながら死んでいける世界を幻視する。
それがきっと此の世界に生きる者たちの願いなのだろう。
いびつなる世界の理ではなく。
ただ純粋に生命として終える事のできる世界を望むがゆえに。
「だから、わたしは過去のあの人がしてくれたことをなかったことにさせない。過去になんてさせない」
満ちる過剰リソースがリアの体を復元していく。
己の体は十全。
加速に寄って腐り果てるのだとしても、構わない。構えた拳銃の重さを知る。こんんあにも重たかったのだと知る。
引き金を引く力も。
けれど、リアは見るだろう。当たり前なんて何処にもない。
だから。
「生命は、人は懸命に生きていく。どれだけ加速した循環が迫るのだとしても、それでも未来永劫に生きるのではなく。虹のような煌めきを瞳に宿すのよ」
放たれた弾丸が一直線に腐敗の王』へと吸い込まれる。
響く音は祝福か。
それさえもリアは分からず。けれど、それでも確信するのだ。きっと此の行いが誰かの明日のためになるはずなのだと――。
大成功
🔵🔵🔵
ロニ・グィー
アドリブ・連携・絡み歓迎
んもー
循環なんて言いながら中途半端なことをしてー
●循環
死と腐敗は生命の存在といっしょに在り始めたもの
死体を食んで育つ子たちが次の命の礎になるように
結局の所、死は生きるものにとって循環の一部に過ぎず、それが無ければ再生も無い
再生は病や腐敗から始まり、絶望から希望は生まれる
相反する様な事象も連鎖し繋がりをもち、一方が現れるからもう一方が現れる
んもー
その繋がりを乱しておいて腐敗の王さまだなんてよく名乗ったものだね!
然して人は病と腐敗を恐れ、定命の死の宿命に弄ばれるのか?
いいや、ただ受け入れやしない
抵抗するのさ
そう危機にあってこそ生命はその真価を問われ、次の階梯へ進もうとするように…
どうやるのって?簡単だよ
―――にっこりと、笑うのさ!
不完全なボクでも腐敗するのなんてはじめてだ!
でも大丈夫、欠けるのには慣れてるし身体の使い方は【第六感】で解かる!
万全なボク?それがどんなに隙だらけかボクが一番よくご存じさ!
【第六感】で彼らの攻撃かいくぐって相討ちUC『神撃』ドーーーンッ!!!
五卿六眼の一柱『腐敗の王』が齎す『生と死の循環』の力。
加速された『死の循環』による腐敗を免れることのできる者は居ない。
「んもー循環なんて言いながら中途半端なことをしてー」
ロニ・グィー(神のバーバリアン・f19016)は憤る。
彼にとって循環とは『腐敗の王』のそれとは異なるものであったことだろう。
死と腐敗は生命の存在と一緒に存在したものである。生命があるから腐敗が起こる。腐敗があるからこそ新たな生命の礎となる。
故に、死は生きる者にとっては一部に過ぎないのだ。
生命がなければ死はなく。
破壊がなければ再生がないように。
「再生は病や腐敗から始まり、絶望から希望は生まれる。相反する事象の連鎖から逃れることはできない」
揺らめく炎の半身より噴出する炎が煌めくユーベルコードとなってロニを襲う。
己の体が腐り落ちる感触。
欠けている己であれど、腐ることとは初めてだとロニは笑った。
「んもー、その繋がりを乱しておいて『腐敗の王』様だなんてよく名乗ったものだね!」
「王は司る者ではない。その力を手繰る者だ。故に循環を乱すという感覚はない。操っている、だけだ。故に」
神聖であろうと腐り果てる。
乾き、異なる死生観の下に共通する死を齎すのみである。
「腐り果てたお前の血肉からお前のオブリビオンを生み出す」
ロニは見ただろう。
揺らめく炎の向う側に己自身が存在することを。
「なんともまあ、欠けている不完全なボク!」
人は恐れる。どうしようもなく死を恐れる。如何なる存在も死を逃れられない。そして、また如何なる力も無に還る。
それは世界の必定ではない。
その在り方の問題でしか無い。
故に、病と腐敗を恐れる人は、弄ばれるだけだ。
この常闇の世界、ダークセイヴァーがそうであるように。そうあるべきであると定められたものに従うしかないのだろうか。
「でも、わかっているよ。不完全なボクだからこそね。人が恐れるものはわかるよ。ただ受け入れなければならないってことも。でもさ、それじゃあつまんないよね!」
ロニの瞳がユーベルコードに煌めくのと同時にロニのオブリビオンもまた、その拳を振るう。
激突する。
信心というものが存在しなくても、煌めく光は神々しさを見せつけるものであったことだろう。
強烈な光。
そのまばゆい光の元でロニは笑う。
「抗うこと! 簡単なことさ!」
笑って、笑って、笑い続ける。
生命は死の危険にさらされることによって、その真価を問われ、進化する。
故に抵抗するのだ。
どれだけ強大な力に翻弄されるのだとしても。
受け入れること無く突っぱねるのよにして、その笑顔で持って乗り切るのだ。
軋む体。
それも当然だ。自分の体は今、腐っているのだから。対する己のオブリビオンは万全。過去であるがゆえに腐ることはない。
そして、ユーベルコードの力も同等。
ならば、己が一方的に打ち負かされてしまう。けれど、わかっているのだ。
どれだけ不完全であっても。
不完全であるがゆえに完璧であることを人から神性は知っている。。
「万全であるがゆえに、キミがどんなに隙だらけかボクが一番よくご存知さ!」
煌めくユーベルコードと共にロニの一撃が叩き込まれる。
オブリビオンの己の拳を砕く。
完全であるということは、それ以上がないということ。不完全であるがゆえに、完璧を超えることができる。
それを人は可能性と呼ぶのだとロニは拳を振り抜く。
神撃(ゴッドブロー)は、己のオブリビオンを打ち砕くままに、『腐敗の王』を捉える。
循環を持って理を手繰る者。
その傲慢を。
打ち砕く一撃は、今まさに頂点に至り、さらにその先を見据えるように迸るのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
ロー・シルバーマン
生と死の循環…これが止められている限り儂の大切な者達に安寧はないのか。
たとえ僅かずつしか傷つけられずとも、絶対に倒す!
浄化の結界で全身、特に足と喉、腕等攻撃や移動に必要な部位を重点的に護り腐敗の進行を遅らせつつ腐敗の王へダッシュ。
血肉より生じた万全の儂は集中し動きを見切ってとにかく一瞬やり過ごし突破。
苦痛で思考は乱れるかもしれんが…この怒り、救わねばならぬ責任で強引に押し殺す。
苦痛の王を射程内に捉えたら向こうが武器でこちらを貫いてくる前にUC起動、全力の咆哮を腐敗の王に叩きつけてやろう!
その際にも敵の攻撃には全力で警戒、咆哮妨害されぬよう山刀を合わせて受け流し時間を稼ぐ。
※アドリブ絡み等お任せ
常闇の世界、ダークセイヴァーにやすらぎはない。
死すら救済ではない。
開放されることのない魂は、美しき地獄においてさらなる責め苦を味わうことになる。
第四層、第三層。
連なる世界は、死せる人々の生命を転生でもって縛り続ける。
永劫回帰の力は死を否定するだろう。
だが、それは永劫に苦しみ続ける定めを背負ったものであることを人は知る。
何故、と問う声があったとして、それに応える者は今でなかった。答えはなく。理解できぬ闇だけが目の前に広がっていたことだろう。
「『生と死の循環』……これが止められている限り、儂の大切な者達に安寧はないのか」
ロー・シルバーマン(狛犬は一人月に吼え・f26164)は、多くのものを喪ってきた。失い続けてきた。
何のために生きてきたのかわからない。
失い続けるために生きてきたのか。
どうして己も、と思うこともあっただろう。
腐り落ちる肉体がある。
痛みが走る。どれだけ浄化の結界で持って覆うのだとしても五卿六眼の一柱『腐敗の王』の手繰る『死の循環』の加速を前にしては無意味であった。
「そのとおりだ。私が手繰るがゆえに、此の世界の生命は巡らない。回らない。開放されない。猟兵。それは無駄なことだ。受け入れることだ」
未だ『欠落』は健在故に『腐敗の王』を滅ぼすことはできない。
けれど、倒し続けることで『腐敗の王』がダークセイヴァー世界における魂人への転生する確率を落とすことができる。
それが僅かな希望となるのならば、ローは躊躇わなかった。
腐る足が軋む。
骨身にさえ響く痛み。
だが、それでも彼は迸る感情と共に戦場を走る。
「絶対に倒す!」
踏み込む。
走る姿は閃光のようであったが、しかし、己の眼前に現れた己自身んいローは目を剥く。
完全なる己。
過去の己。腐り落ちた血肉より生み出されたオブリビオン。己自身だと理解した瞬間、己の体を吹き飛ばすのは激しい咆哮であった。
身を打つ一撃。
強烈な咆哮は衝撃波となってローの体を吹き飛ばした。
地に転がりながら、なおも腐り続ける肉体を引きずり、それでもローは前を向く。牙をむき出しにし、怒りをあらわにする。
怒りが痛みを凌駕していた。
「救わねばならぬ。死が救済でないのならば、その死を救う。弄ばれるばかりの魂がこれ以上生まれぬためには!」
山刀を抜き払う。
迫る過去のオブリビオンたる己を打ち据える。此方が渾身で奮って尚、返って己の腐る身が引きちぎれるようにして血を噴出させる。
痛みが。
苦しみが。
己の過去をえぐり出すようだった。肉体に走る痛みよりも、魂に走る痛みこそがローを苛む。
失って。喪って。失い続けた過去がめの前にある。
許せるものではない。
「ならばどうする」
問う言葉が重なる。過去の己と『腐敗の王』。
最早猶予はない。
己の持てる力の全て込めて、ローは咆哮する。
ユーベルコードの煌めき。
それこそが己が込めた万感たる想い。
失い続けても人生は続く。繋がりの全てを喪って尚、それでも続く。痛めつけられ、苦しみに苛まれても、夜眠ることのできぬ悪夢が襲うのだとしても。
「それでも生きていなければ、真に全て失われると知るからこそ!!」
己は生きてるのだとローの咆哮が戦場に迸る。
その裂帛たる一撃は己の過去たるオブリビオンと『腐敗の王』を吹き飛ばす。
咆哮の中心でローは天を仰ぐ。
その瞳から何もかもがこぼれ落ちぬように、腐る体躯を支えるのは一体なんで在ったか――。
大成功
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ギヨーム・エペー
そうだ、おれたちは立ち止まった事は一度もない。生きる事は死に向う事だ。だが、死の先にはまたしても世界があった。その循環はこの世界の法則かもしれない
その法則が目前に居る。目の前に在る。ならばわしも世界に立つ。流転を逆転しようと逆らい出でる。このユーベルコードの輝きが洪水に呑まれたとしても。手を掲げる事は止めはしねえ
腐り落ちる肉体は炎で燃やして進行を妨げる。骨を見せて、白を煤で汚したって、攻撃の手は止めない。ただ前に進むことに意識を集中させる。激痛を通り過ぎて最早無痛かもしれねえが、生きてるって感覚は有るぜ。わしは人間よりは丈夫な作りだ、だがわしが痛えって事はヒトはもっと痛むんだよな。それはあんまりだろ。生きてる命も死んでる命も、向いたいところがあるんだ。やがて海に還れればいいとわしが思うように、魂には、彼らには行きたい道が存在する。それは法則に縛られない。その輝きは腐敗しない!! このわしもまた太陽に祝福されし生命体であり、強き生きものである!!
汝、魂を襲うならば、わしに襲い殺されん!!
「なおも立ち止まらぬか、猟兵」
無敵たる証明『欠落』。
それを未だ破壊できぬ猟兵たちは、五卿六眼の一柱『腐敗の王』を滅ぼすことができない。されど、彼を退け続けることで得られるものがある。
それはダークセイヴァー世界における人の死だ。
此の常闇の世界において人の死は救済ではない。死した後にさえ、魂を縛る輪廻がある。
転生した第三層において魂人たちは、弄ばれる。
美しき地獄の中で、ただ苦しみと哀しみに沈むしか無い生を進むしか無い。
そんな地獄を開放するためにこそ、猟兵たちは立ち向かっているのだ。
「そうだ、おれたちは立ち止まらない。立ち止まれない。立ち止まってよかったことなど一度もない」
人の足を止めるのは諦観である。
絶望でも苦しみでも、死でもない。それを示したのは『腐敗の王』だ。
『生と死の循環』を止めたからこそ魂人たちは生まれる。それでもなお、彼らは生きている。懸命に。どれだけ苦しみと哀しみに塗れても尚、生きているのだ。
それをギヨーム・エペー(Brouillard glacé calme・f20226)は示す。
「生きる事は死に向かう事だ。あが、死の先にまたしても世界があった。その循環は此の世界の法則かもしれない」
わかっていたことだ。
歪な法則。
訪れぬ安息。
その現況が目の前に在る。
「ならばなんとする」
「わしも世界に立つ。流転を逆転しようと逆らう」
「だが、そのユーベルコードは無意味だ」
ギヨームは己の血肉が腐るのを知る。
痛みが走る。どれだけ強靭に鍛えられた体躯であろうとも、腐敗を前にしては何もかもが無意味だ。
乾く皮膚。
崩れるそれは、異なる死生観を示すものであった。
死を不浄とするか、それとも清浄と取るか。
いずれにしても、ギヨームは手を掲げた。無意味だと謗られるのだとしても、それでも己は、このユーベルコードの輝きを常闇の世界に灯さねばならないと知る。
「その車輪の轂に太陽は昇る。降り注ぐ御光は輻となり、灯は星と生り円環を回る。紅く咲かせ、日輪の蓮」
重なる言葉があった。
それは過去の己の告げた言葉であり、同じユーベルコードの輝きであった。
燃える炎が己の肉体を灼く。
少しでも腐敗の進行を抑えようとしたためだ。だが、それでも間に合わない。目の前には己自身のオブリビオンが居る。
「意味がないぜ。それは。結局滅びるのであれば、生きているってことは死に向かうってことだ。何をそんなに生き急いでいるんだ」
己が言う。
己の過去が首を傾げている。
確かにそうだと思う。
生きることは死に向かうこと。死ぬことが生きることの最終目的だ。けれど、とギヨームは思う。
身に走る痛みは激痛そのもの。
だが、痛みがあるからこそ生きていると実感できる。
「ハハハッ、そうかい。わしは人間よりは丈夫な作りだ、だがわしが痛えってことは、ヒトはもっと痛むんだよな」
己でさえ脳を灼くような痛みに喘ぐ。
だが、人間は痛がりだ。
悲しいことに、ずっと弱い。この痛みをさらに倍増したような痛みをヒトは背負っているのならば。
「それはあんまりだろ」
ギヨームはユーベルコードに輝く瞳で過去の己と『腐敗の王』を睨めつける。
「生きてる生命も死んでる生命も、向かいたいところがあるんだ」
「おれが海に還ればいいと思うようにか」
「そうだ! 魂には、彼らには生きたい路が存在する」
それを縛る法則がある。
力がある。存在がある。『腐敗の王』は力を手繰り、縛り続ける者だ。だからこそ、ギヨームは前に進む。
腐敗進む肉体。過去の己より放たれるユーベルコードの炎。
焼かれる痛みは己の生命を意識させる。
胸の内に在るものを知る。
燦然たる太陽。
それこそが己。
「この輝きは腐敗しない!!」
「いいや、腐敗するとも。猟兵。如何なる力も想いも、いずれ必ず無に還る」
『腐敗の王』が告げる。
迸る『死の循環』の加速の中を藻掻くようにギヨームは進む。
多くの猟兵たちが重ねてきた傷。
それを無駄にせぬためにこそ、彼は進む。多くの猟兵たちがそうしたように。すべての傷を繋げていくのだ。
「このわしもまた太陽に祝福されし生命体であり、強き生き物である!! ならば、わしは示さねばならんのだよ! ヒトはわしらよりも脆弱であろうが、しかして負けるようにはできていないと! 見よ!」
煌めく炎。
生命の存在を許さぬ領域まで燃え上がった炎がギヨームの掲げた掌の中にある。
「これがヒトの願いだ。この陽の光の元を歩みたいと願い、生きることをやめない者たちの力だ!」
叩きつける魔術の炎が過去の己が生み出すそれに勝るのは、今を生きているからだ。過去は完全だが、停滞している。更新しない。
故に、今に勝ることあないのだ。
そして、ギヨームは握りしめた炎と共に『腐敗の王』へと叩き込む。
「汝、魂を襲うならば、わしに襲い殺されん!!」
炸裂する炎。立ち上る熱。凝縮された一撃はつながる傷跡を引き裂くようにして広げていく。
だが、これでも『腐敗の王』は滅びない。
例え、滅ぼせなくても。
結実するものがあると知るのならば、誰かのためにこそ力を振るうのが猟兵であると示すように、此の戦場に集った猟兵達の生命の煌めきが重なり、『腐敗の王』の打倒を成すのだった――。
大成功
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