闇の救済者戦争㉒〜地に堕ちた星、勝利掴む者~
●光を齎す者
「暁の子、地に堕ちた星、諸々の国を打ち倒し堕ちたる星は、宵を導く者となる」
グリモア猟兵スフィーエ・シエルフィートは、とある分厚い本に書かれた一節を朗々と読み上げていた。
嘗て神に最も近き御使いでありながら、神に歯向かった名高き魔王の名、その由来を口にしながら。
「闇の支配する世界に、|光を齎す者《ライトブリンガー》とは……いや、運ぶのは運んだかな。奪い去るという形だけれどね」
パタリと分厚い本を閉じ、彼女は薄金色に輝くグリモアを取り――それが羽根ペンの形を象ると、ペン先を虚空につけ、世界の色が変わる。
「さぁ語ろうか。舞台は|普く闇と堕落の世《ダークセイヴァー》だ。君達には、かの世界を支配する敵の一角を落として貰いたい!」
全てのヴァンパイアの始祖であり、ダークセイヴァーの真の支配者である|五卿六眼《ごきょうろくがん》が統率者、ライトブリンガーとの決戦が始まった。
欠落がまだ無事な為か、滅ぼすことは出来ないものの、滅ぼせば滅ぼすだけダメージは与えられるとのこと。
当然、敵はダークセイヴァーのトップに属する以上、素でも強大な力を持つが。
「何よりも厄介なのは、奴の話す言葉は全てが儀式魔術【Q】となる。そしてその力で、これまでのフォーミュラ級との戦いのギミックを再現してくるんだ」
例えば――帝竜ヴァルギリオスの【再孵化】の力では|強力な個体《ボス格》を呼び出して共に攻撃をしてきたり、大祓骸魂の持つ膨大な【|慮《おそれ》】を広げカタストロフを巻き起こしてくる。
無論これは一例に過ぎず、他にも手段と対抗策については纏めてあるのでと、スフィーエは儀式魔術によって再現される力を書き出したメモを猟兵達に配った。
「ま、尤も再現し切れていない能力もあるようだが……それでも強力なことには変わりない。十分な対策を練ってから行って欲しい」
ここで語り切るには膨大――配ったメモ帳に書かれた内容を、グリモアの力でも改めて、鞘に納めたままのサーベルを指示棒代わりに示し、油断のないことは大前提であると改めて警告し。
「この世界の光を取り戻すのは我々、そして……絶望の中に抗ってきた者達だ」
一通り、猟兵達が儀式魔術による再現ギミックと、想定される対応策について目を通し終えたのを確認すると、スフィーエは改めて語り出す。
かの始祖が何を思い挑もうとも、この閉塞した闇の世に輝く正義と希望は、猟兵と、共に立ち上がってきた名も無き民達の力だとも語り。
「どうか勝利を。堕ちた光に負けず、六番目の猟兵の力を示して欲しい」
――そしてグリモアの輝きが、光を齎す者の名を持った始祖へと続く道を開いた。
裏山薬草
どうも、裏山薬草です。
過去のボスラッシュや、今まで出てきた能力に対抗する展開って燃えますよね?
ということで、今回は五卿六眼の統率者ライトブリンガーとの戦いをお送りします。
敵は儀式魔術【Q】によって、今まで戦ってきたフォーミュラの力や戦場ギミックを再現してきます(異門同胞は再現し切れてないようですが)
なので皆様は戦う再現能力を指定し、それに対抗すればボーナスとなります。指定が無ければ此方でサイコロを振って決めます。
また今回のプレイングボーナスは非常に膨大です。
なので詳細は戦争紹介ページを参照してください。
●プレイングボーナス
「ライトブリンガーの儀式魔術【Q】」をひとつ選び、それに対抗する(参照:https://tw6.jp/html/world/event/039war/039_setumei_dsv1957.htm#04)
プレイングの受付状況に関しては、タグにてお知らせします。
それでは皆様のプレイングをお待ちしております。
裏山薬草でした。
第1章 ボス戦
『五卿六眼『ライトブリンガー』』
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POW : 【Q】天翔ける五つの黄金剣
【天翔ける五つの黄金剣】から、レベル×5mの直線上に【光】を放出する。【精神力】を消費し続ければ、放出を持続可能。
SPD : 【Q】匣の中の太陽
【手にした匣】から、戦場全体に「敵味方を識別する【太陽の炎】」を放ち、ダメージと【超業炎】の状態異常を与える。
WIZ : 【Q】欠落の月より至る光
戦場にレベル×5本の【光の柱】が降り注ぎ、敵味方の区別無く、より【弱い】対象を優先して攻撃する。
イラスト:ハルヨリ
👑11
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
七那原・望
【Q】「聖杯武器の賦与」
目隠しをして戦場へ。
光を齎す者とか名乗りながら光を奪うのですか。くだらない。
第六感と心眼と気配感知で敵の行動と各聖杯武器、黄金剣とそこから放たれる光の挙動を見切ります。
強化属性の全力魔法で自身の身体能力を限界突破。
引き寄せる力には抗わず、寧ろその力を利用して加速し、黄金剣の光を回避しつつ接近。必要に応じて高速詠唱結界術で防御もします。
敵がリリスの槍か聖杯剣を使おうとしたら足元に忍ばせたオラトリオの不意打ちでがんじがらめに縛り上げ、それらを封じます。
そのまま接近し、スタッカートによる早業の絶・蘇威禍割でリリスの槍と聖杯剣を砕き、追撃でライトブリンガーも斬り伏せます。
ウィルヘルム・スマラクトヴァルト
対応する【Q】:【Q】「聖杯武器の賦与」
聖杯武器は、まだ記憶に新しいですからね。
「いんよくのかぜ」が無いなら、対処は楽です。
『神の左手』の引き寄せ、『聖杯剣』のUC奪取には抵抗しません。
近接戦闘が主な私に引き寄せは逆に好都合ですし、UCがなくても十分戦えます。
耐えるべきはUCの太陽の炎からのダメージ、超業炎の状態異常、そして『リリスの槍』の毒。
これらは、『エメラルド・オーラ・バリア』による【オーラ防御】、【毒耐性】、【火炎耐性】、【激痛耐性】、【継戦能力】で耐え抜きます。
「UCを奪った程度で、甘く見てもらっては困る!」
『緑の斧槍』を構え、引き寄せられるままに【串刺し】を狙います。
●引き寄せられる死の因果は
大きく捻じれた山羊か何かのような角、夜を溶かしたような黒い髪が広がり虚空に吸い込まれそうな片目と、眩く蠱惑的な金色の片目のコントラスト。
誰もが高位の悪魔と聞いて納得もできれば、同時に神のような威容と威厳を持つ――夜の鬼を統べる始祖。
相対せしは目を布で覆い隠し、口元に明らかな嫌悪を潜ませた|御使い《オラトリオ》の少女と、全身を透き通った翠鮮やかな姿と大盾を構えた|結晶人《クリスタリアン》の騎士。
「光を齎す者とか名乗りながら光を奪うのですか」
発する言葉が儀式魔術ともなる相手に、誰も彼もが口を閉ざし、唯々相対する緊張感を保ちながら――それを破るようにオラトリオの少女が口を開いた。
「くだらない」
七那原・望(比翼の果実・f04836)はかの吸血鬼の始祖の名と、それに反する行為と敬意に心の底からの侮蔑を交えて吐き捨てた。
望の言葉にライトブリンガーは怒るでもなく、さりとて罪悪に悔やむでもなく、ただただ事実と現状を受け入れているように。
【Q】「されど奪ったが故に戦うが責務。来るが良い、六番目の猟兵よ」
――ライトブリンガーの過去も何もかもは分からない。
然れどもこの場で強大な敵を、討つ。
それは変わらない。
「言われなくとも。……貴様を倒し、この世界の光を取り戻してみせる!」
やはり始祖というだけあって、否応なしに身体が打ち震えるようなものを感じつつも、クリスタリアン――ウィルヘルム・スマラクトヴァルト(緑の騎士・f15865)は気高く言い放った。
【Q】「天翔ける五つの黄金剣」
互いの闘志と闘志がぶつかり、火花を散らすような幻影すら見える中、先陣を切ったのはライトブリンガーだった。
浮かべられた光剣より放たれる黄金の光線が、望とウィルヘルムを撃ち抜かんと走る。
望は視界を敢えて隠していたことによって研ぎ澄ませた感覚で光の初動を見抜き、光線が着弾しても最初からその位置にいなかったように回避し。
ウィルヘルムは翳した大盾と、体中から張り巡らせたエメラルドの闘気の被膜を以て真っ向から受け止め弾いていた。
【Q】「匣の中の太陽」
回避されるのならば、受け止められるのならば、その先ごと全てを焼き尽くす。
ライトブリンガーの手に持つ小さな匣が開かれれば、夜の世界を照らす――否、光を齎すことはないが、その脅威となる熱の炎が広がる。
だが身に纏うエメラルドの闘気をも奮い立たせ、大盾と自らの身を影とするように望の前に立ち、ウィルヘルムは灼熱より己と彼女を守る。
「大丈夫ですか? ……俺の後ろなら安全です!」
「……すみません。ですが、ウィルヘルム様一人に押し付けたりはしませんので」
「助かります!」
そう言って望の翳した手から、ウィルヘルムの闘気と盾に重なるように、手早く詠唱と共に張り巡らせた結界が共に太陽の灼熱より二人の身を守る。
それでも――前線で灼熱を受けるウィルヘルムの身体を、灼熱と業火は容赦なく包み削っていく。
やはり儀式魔術による過去の強敵の再現がなくとも、単品だけで十二分なほどの強敵。
エメラルドの身体が溶け落ちそうな、太陽の業火が齎す熱と痛みに耐えながらも、ウィルヘルムは逆にそれが最高の武器ともなると、己の大盾を更に一つ突き出して。
「この緑の大盾で受け止めたユーベルコード、そっくりそのまま――」
【Q】「聖杯武器の賦与」
大いなる逆襲が行われようとしていた瞬間、ライトブリンガーは儀式魔術に依って再現をしていた。
浮かべられた三つの、かつての強敵――直近の戦争で相対した聖杯による武器、黄金の籠手と、槍と、剣。
「――オラトリオ!」
その槍が――絶えることなき毒を注ぎ込む槍がウィルヘルムの脳天を貫かんと切っ先を向けたその瞬間、望の足元に潜んでいた影が閃く。
エクルベージュの影が絡みついて縛り上げ、毒の槍を落としたものの――逃れた聖杯の剣が望に飛来する。
「おおっと!」
ならばこちらは自分が受け止める――望を襲おうとしていた聖杯剣を、真っ向から大盾で受け止めるウィルヘルム。
無論、その代償に蓄えていた太陽の熱は消え失せ、逆襲の一手も失われてしまったが。
それでも、二つの武器を制した二人に対し追撃は終わらない。
あらゆるものを引き寄せる籠手の魔力が、二人を引き寄せに掛かった、正にその時だった。
「「――今です!!」」
重なり合う声。
二人が奇しくも狙っていた、引き寄せの勢いを逆用する行為――二人を迎撃せんと光線と太陽の熱が襲おうと、それぞれが引き寄せの勢いに従いつつも、躱し、熱を耐え抜きながら飛び込む。
望が己の魔力を以て極限まで自身の身体能力を高め、黒と白の対をなす双剣を構え。
そしてウィルヘルムが、彼の身体の色と同じくエメラルド色に彩られた斧槍を力強く構え――
「ユーベルコードを奪った程度で、甘く見てもらっては困る!」
自分の本命は近接攻撃、鍛え抜かれた騎士としての力――逆に引き寄せる勢いを仇とするように、斧槍が強かに突き刺さる。
吸血鬼殺しの王道、心臓に杭を打つという王道中の王道を以てライトブリンガーをその場に縫い付けて。
「外すなんて有り得ない。絶対に割ります」
視界を閉ざしたことで行われる、目にも止まらぬ、神すらも捉えること能わない神(をも超える)速の刃が。
走る無数の剣閃が、槍と聖杯剣を粉と変え、そしてライトブリンガーの身をも等しく斬り刻んでいた。
大成功
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馬県・義透
四人で一人の複合型悪霊。生前は戦友
第一『疾き者』唯一忍者
一人称:私 のほほん?
武器:漆黒風
【Q】ワープドライブ
こういうとき、役目は私ですからー。
ええ、忍ですから。私の領分ですよー。
最初は漆黒風を右手で投げて届かない感じに。全て投げたように見せかけて。
もし光線が飛んできても、見切って横に避けて。
…ワープしてきたのならば、左手の内に隠していた最後の一本を、早業にて…暗殺要領にて刺しますよ。
このとき、私は怪我をしてもいいのです。激痛耐性で耐えますから。
私の左手が動けば、それでいいんですから。
…まああとあと、三人(+二匹)からのお説教あるでしょうねー…。
●肉を斬らせて骨を断ち、骨を断たせて首を刎ね
自分「達」の強みというのは相手によって様々なスタイルを取れる選択肢の多さである。
のほほんと、およそ戦場に赴く者の気配ではない――否、逆にそれだからこそ油断のない恐ろしさすら伺える。
「まあこういう時の役目は私ですからー」
馬県・義透(死天山彷徨う四悪霊・f28057)――正確には、それを構成する四つの要素の一つ、『疾き者』だった。
「さてー、参りましょうかー」
おもむろに取り出された黒い棒手裏剣、何の変哲もないように見えるそれが、ほんのりと緑の軌跡を伴いながら無造作に投げ放たれた。
その切っ先が今にもライトブリンガーの脳天を貫こうとした、僅か数ミリに迫ったその時だった。
【Q】「ワープドライブの賦与」
発動されるは、銀河皇帝の血族のみがなし得る空間を超越する法。
最初に猟兵達を苦しめたフォーミュラの能力を以て、空間を跳躍しては、ライトブリンガーは一瞬で位相をずらし、棒手裏剣の勢い削がれ落ちていく光景と為す。
それでも引き続き、疾き者は棒手裏剣を懲りずに投げ続けるものの、その全ては悉く位相を外し、避けるライトブリンガーには届かない。
【Q】「ワープドライブに距離の概念は無意味。あなたの攻撃は届かない。私の攻撃からは、逃げられない」
「でしょうねー……まー、攻撃からは逃げれますがー」
やがては手裏剣を撃ち尽くしたように見える彼へと引導を渡さんと、黄金の光線を放たれても、まるで当たらないと軽々と疾き者は横跳びに光線を躱していく。
互いに互いの攻撃は当たらぬまま、膠着の泥試合となるかと思われたが。
【Q】「天翔ける五つの黄金剣を至近距離で」
ならば絶対に避けられない場所で――単純故に覆し難い道理を実行する。
撃ってその後に、攻撃の届かぬ距離に一瞬で離れればカバーもできようか――瞬き一つの時すら与えることなく、ライトブリンガーは一瞬で至近距離を詰めて。
そして解き放つ――この距離ならば避けようもない距離で、必殺の光線を。
流石の疾き者も、避け切れずダメージを負う羽目となるか――が。
「ッ……!」
光線が解き放たれると同時、深々とライトブリンガーの胸元へと突き刺さっていた棒手裏剣が、一つ。
隠し持っていた左手の手裏剣を、相打ち覚悟で――実際に光線が肩口を貫いていたものの、痛みを強引に捻じ伏せてのダメージレースに競り勝つ手を選んだのだが。
「こうでもしなければ、当てられそうになかったのでー……」
尤も、後で同居人の三人には大いに怒られるかもしれないが――これもまた|必要不可欠な痛み《コラテラルダメージ》と割り切る他ないか。
既にワープで己から遠く離れ、痛みに蹲るライトブリンガーに競り勝った疾き者は穏やかに微笑みを浮かべるのだった。
大成功
🔵🔵🔵
キラティア・アルティガル
盟友エンマ殿(f38929)と
記憶を失うておるゆえ己の最強が良く分からぬが
「現実改変ユーベルコードの賦与」以外では手に余ろう
ゆえに選び参る!
「エンマ殿、覚悟は良いかや」
臆す事無きと知れど口に出すはこの際大事じゃの
念じると即座に現実が歪む
おお!角が!身に鋼が宿る!そして狂おしい力が満つる
姿もあれこれ変わったの
毛皮の縁の長マントとは豪奢で良い!
なるほど、我の元はこうであったか?
違うやもしれぬが、これがよし我が身が覚えたる最強なれば
「負ける気はせぬの!」
彼奴めのQもくるが…なに回避は容易い
身から生えたる鋼にて防ぎ
UC魔死の大鎌もちて振りかぶり
「死に堕ちよ!」
エンマ殿と合わせ決まれば少しなと削れよう!
エンマ・リョウカ
盟友のキラさん(f38926)と
なんとか最終戦には間に合ったようだ
倒し切ることはできないのも問題ない
今はただ全力の一刀と
エンドブレイカーである私達の技をお見せしよう
「では、また背中は頼むよ、キラさん」
儀式は『【Q】「現実改変ユーベルコードの賦与」』を選択
これであれば今の中途半端な強さの私でも
この相手にも太刀打ちできるだろう
膂力も、技の冴えも、神速の突きも
全てが満ち溢れて冴え渡るのを感じる
「さぁ、我が天地無双の太刀。受けて貰おうか」
基本戦術はUCの通り「受け」の一手
敵の攻撃をひたすら待ち、どんな攻撃であろうと
太刀で受け止め、いなし、流れるように前へ
「これが…私の最強の一撃だ!」
●|想像の及ばぬ終焉を打ち破る最強の破壊者《エンドブレイカー》
気が付けば戦争も終盤――大きな戦いには参加できなかったものだが、それでも最後の最後、敵の大物という花の舞台が待ち受けている。
相対しているだけでも迸る、圧倒的強者の気迫に気圧されまいと、気を確かに持ちつつエンマ・リョウカ(紫月の侍・f38929)は一言。
「なんとか間に合ったようだ」
「何、ここからが本番よ」
エンマと共に戦う盟友である、キラティア・アルティガル(戦神の海より再び来る・f38926)が答える。
「では、また背中は頼むよ、キラさん」
「うむ!」
気持ちの上では一切負けてはいない。
互いの存在を確かに信じ、背を預け合う信頼と、個の圧倒的な威容がせめぎ合う中、重々しくライトブリンガーが口を開く。
【Q】「現実改変ユーベルコードの賦与。最強の力を、お見せしよう」
その言葉と共に、戦場に明らかに空気の変わった感覚が張り巡らされていく。
吸血鬼の始祖が、|鬼の始祖《オウガ・オリジン》の力を扱うという奇妙な縁も感じられる中、戦場が変わる。
想像力がモノを言う、想像力を以て最強を描き、それを具現する世界を。
変わる世界の恩恵を以て、唯でさえ強大な敵が、更に強大な――数多の次元を渡り歩く怪物が如き強く、そして恐ろしい姿を以て二人の猟兵に立ちはだかる。
「ッ……!」
「エンマ殿、覚悟は良いかや」
「――問題ない!」
「うむっ! 我もじゃ!!」
だが条件はこちらも同じ、そして今、中途半端と自嘲する自らの力で、強大極まりない敵に立ち向かえるとしたら、この戦場しかない。
エンマが臆することは無いとは分かっていても、敢えてキラティアは問う。
口にすれば覚悟は更に強固なものに――力強い頷きと共に答えるエンマの決意と闘志に己もまた言葉を以てその二つを固め。
先んじて一歩をキラティアが踏み出して、戦場の恩恵をその身に浴びる――!
「……おお!」
空間が歪み現実を捻じ曲げる、想像を具現する力がキラティアの思い描く最強――失われた記憶など関係ない、最強の力が彼女の身体に漲っていく。
頭部より恐ろしい鬼の如き角が生え、身体は強固な揺るぎない鋼を宿し、体中に感じたことのない|超越した力《ハイパーモード》が顕現する。
狂おしいまでの力が満ち溢れ、迸る力を示すかのように、毛皮による緑の長い|外套《マント》がたなびきを何度も奏でていく。
もしかしたら自分の元はそうだったのだろうか――それを確かめる術は今はなくも、ただ漲る力から分かるのは。
「負ける気はせぬの!」
「だが――油断なく行こう」
目の前の怪物にも劣らぬ最強の力を得た盟友に、勝るとも劣らぬ力を漲らせながら、エンマはゆったりと大太刀を抜き放ち、両腕を大きく広げる。
緩慢にも見えるその動作の一つ一つに、一切の隙は見られず近づけばそれだけで切り裂かれそうな空気が、ライトブリンガーですらも圧し。
「さぁ、我が天地無双の太刀。受けて貰おうか」
伸ばされた怪物の手を優雅に受け流し、逆に斬り込む――返しの一刀より、地を擦りながらの研ぎ澄ませた斬撃、其処からの流れるような突きを叩き込み、ライトブリンガーを盛大に後退させる。
膂力も、技の冴えも、神速の突きも――何もかもが、普段の力とは別次元だ。
|全てが満ち溢れて冴え渡る《ハイパーモード》実感が、ここにある。
小手調べの段階でもあまりにもハイレベルな応酬、されどライトブリンガーはそれでも殆ど決定打を受けてはいないようで。
【Q】「想像し得る最強は人知の及ばぬ最強に叶いはしない――天翔ける五つの黄金剣」
如何なる想像を以て最強の高みに到ろうと、所詮は人の身の考え得ること――人を超越せし存在の最強には叶うまいと告げる。
その証明をしてやるといわんばかりに、繰り出される五つの黄金の閃光は膨大なものであり、最強の高みに自らを至らせた二人ですらも、一瞬、その威容に呑まれそうになるも。
「我が秘剣、破れまい! ……その|人知の及ばぬ最強《エンディング》すら打ち破ってみせよう!」
極めた最強の武芸は、想像の力が|増幅《ブースト》する最強の武芸は、容易くに黄金の閃光を太刀で受け流させ、流れるようにエンマの身を一歩、また一歩と前へ踏み込ませて行き。
「そう、我等、|及ばぬ終焉を超える者《エンドブレイカー》よ!」
文字通りに光の速さで放たれるそれを、最初から見抜いているかのように躱し、そして体に備わった鋼は放たれる光芒に焼かれることなく、一切の傷も刻まれることなく弾き返していき。
そして――閃き続ける光線を潜り抜けた二人が、言葉を同時に重ねる。
「これが……私の最強の一撃だ!」
「死に堕ちよ!」
光芒を受け流し、流れるように――激しい太陽の光閃くが如く鮮やかな、神懸かり的な速度を以て放たれたエンマの突きが盛大にライトブリンガーを縫い付けて。
強大な身体を抑えつけている最中、キラティアが大きく大鎌を振り被る――陽の太刀が刻んだ好機に叩き込む、|夜《デモン》を極限まで高めた一撃の為に。
そして――最強の防護も容易く、紙のように打ち破る凝縮された夜の力を宿した大鎌の一撃が深く抉り込まれる。
光を齎す者を今度こそ、死という闇に鎮めてしまうように――
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
榊・霊爾
【Q】天災天賦の賦与 に対処
拷問器具地獄か
はは、面白いことしてくれるじゃないか
『復讐』にて超高機動暗殺者形態へ
トラップと相手の攻撃は【気配探知・ダッシュ・見切り】で避け、相手の攻撃が直撃してトラップが破壊される様にも誘導
攻撃はすれ違いざまに白鶺鴒・背黒鶺鴒による徹底的な【早業】の【抜刀】態勢が崩れたら鶚・蓮角の【切断・急所突き】
懐に飛び込み、小夜啼鳥で斬り刻んで、ねじ斬って、叩き斬って、ボロ雑巾になるまで斬る
頭上に気を付けたまえ
巨大なギロチンがヤツの頭上に出現する様に移動し、刃物が下りた瞬間、【ダッシュ】で抜ける
冥土の土産さ
欠落さえ作らなければ直ぐ死ねただろうに
次会ったときは楽に殺してあげるよ
●人を呪わば何とやらというものの
【Q】「天災天賦の賦与」
ライトブリンガーが簡潔にその言葉を述べれば、それは儀式魔術となり、戦場に何やら似つかわしくないものが現れた。
それ以上を何も言わずに、ただそれをコンコンコン、と閉じこもっていた何かを引き出すように叩いてみれば――びっくり箱から飛び出してくるかのように、戦場張り巡らされていくものがあった。
「拷問器具地獄か」
古式ゆかしいと言えば聞こえは良いのかもしれないが、無尽蔵に生み出され続け戦場を覆い尽すことは洒落にはならず。
尽き果てぬ狩猟の為の罠と、拷問の為に誂えられた器具の襲い掛かる現実に榊・霊爾(あなたの隣の榊不動産・f31608)は顔色一つ変えずに呟いた。
「はは、面白いことしてくれるじゃないか」
――首どころか身体を真っ二つに変えかねないほどのギロチンの刃が落とされようとも、崩れぬ表情を僅かに崩し顔を歪ませながら、それを紙一重で躱す。
原始的な括り罠が足元に引っ掛けられようとしても、括り罠が収縮する前に足をその地点から外し、トラバサミの咬合は虚しく宙に火花を散らすのみとさせる。
何時まで経っても罠も拷問器具も意味を為さぬ状況に次第に業を煮やしライトブリンガーは小箱を取り出すと。
【Q】「無数の罠を抜けても待ち受けるは逃れえぬ灼熱。匣の中の太陽」
ぱかりと何処か間の抜けた音を奏で小箱が開けられる。
凝縮された閃光と灼熱が広がり、周囲を焼き尽くしていく――敵味方を識別する光は拷問器具や罠を焼き払うこともなく、的確に霊爾を襲う。
されど拷問器具を物陰に回避するのを見れば、判別を敢えて捨てて全てを焼き払う。無尽蔵に生み出せるが故のなりふりを構わぬ手段であった。
「逃げないよ。逃げずに、先回りして殺してやる」
尤も――それすらも霊爾の術中であり、悉くを躱されながら肉薄もされ。
白銀と漆黒の居合刀が一瞬で閃き、痛烈にして鮮烈な刃の閃がライトブリンガーの体勢を打ち崩し。
更に抉り込む。
超伝導の高周波と鋸のえげつない刃が肉を抉り切り裂き――追い撃ちに大太刀を取り出し、容赦なく、切り刻み、捻じ斬り、叩き斬る。
微塵の容赦も情けもない程に、ボロボロとしたライトブリンガーの身体を蹴り出して。
「頭上に気をつけたまえ」
注意は既に遅く、落とされた巨大なギロチンはそのままライトブリンガーの下へと落ちる――鋭く、質量を備えた人道的な処刑具の筈が、吸血鬼の始祖の生命力を仇とし、刃の食い込む痛みを永劫に与えていて。
「冥土の土産さ。……欠落さえ作らなければ直ぐ死ねただろうに」
そして――彼はそれはそれは、大変に良い笑顔を以て、ギロチンの刃の下で忌々し気に手を伸ばすライトブリンガーを目掛けて、こう言い放った。
「次会ったときは楽に殺してあげるよ」
――伸ばされた手はついぞ届くことなく、虚しく宙を切っていた。
大成功
🔵🔵🔵
ロリータ・コンプレックス
そう。彼女は光を齎すはずだった。猟兵として双子に挑んだのよね?
でも結果は敗れヴァンパイアは全滅、オブリビオンと化した……。
同情の余地はある。でも私はやはり吸血鬼は許せない。
どの道オブリビオンは倒すしかないの。だから、躊躇なんてしないわ。第六の猟兵の責務としてあなたを滅ぼす!例え今は倒せなくとも地獄の果てまででも付き合うわよ!
【Q】オブリビオンストーム?
近づくなって?
ならこっちは|UC《これ》よ!
雑魚は不要!あいつのとこまで直通路を作るわ!
多少は紛れ込むのもいるだろうけど……ほら来た、光の柱!雑魚もろとも射抜くつもりね!?甘い!壁よ!
これでもう障害はないわね!【全力魔法】の光を喰らいなさい!
●明けの明星
――|光を齎す者《ライトブリンガー》。
その名の通り、この世界に光を齎すはずであった存在が、憐れに敗れ去ってそして、この世界を闇に閉ざしてしまった。
少女ロリータ・コンプレックス(死天使は冥府で詠う・f03383)の心にも――家を吸血鬼の手によって失った彼女にも、同情の念はある。されど。
「嘗て光を齎そうとした者であっても……今はオブリビオン。そして私は躊躇わない」
二度も居場所を奪った吸血鬼を、許すこととて出来ないのだから。
確かに言葉を以て決意を固め、真っ直ぐにライトブリンガーを、力強く翼を広げながら見据え宣言する。
「だから、第六の猟兵の責務として、あなたを倒す! ……例え今は倒せなくとも地獄の果てまででも付き合うわよ!」
【Q】「その意気や良し。ならば光奪った者の責務として、全力を以て応えよう。故に」
鬱屈としたダークセイヴァーの空気をも揺るがすロリータの宣言に対し、かく答えるライトブリンガーの表情を推し量ることはできない。
語調は淡々と、吸血鬼の始祖は正義とも悪ともつかぬ語り口で告げ――その周囲に、黒く渦巻く風が巻き起こり始めていく。
【Q】「オブリビオン・ストームの賦与――その覚悟が、口だけではないことを証明して貰おうか!!」
ライトブリンガーの身に纏われる機械の甲冑――そしてその隙間から噴出する、黒き大嵐。
数多の亡霊を中に宿し、亡霊以外の存在を毒で犯し滅ぼす圧倒的な暴力の風が、ロリータの行く末を阻んでいく。
――これで屈するならば、終わりだと。願わくば来るなと。
「ならこっちはこれよ! ロリータちゃんのおもてなし力を、魅せてあげる!!」
身を蝕む毒も、行く手を阻む有象無象の雑魚の亡霊も要らない。
求めるのはその首一つ――ロリータとライトブリンガーを一直線で繋げるは、彼女の想像を以て作り出された迷わぬ道。
強固な壁にて作られたそれが毒の暴風をぶち破り、吹き荒ぶ風の勢いも毒を歩み出すロリータの気高さを阻むに至らず、有象無象の軍勢は壁に阻まれ向かうことも能わず。
幾許かの雑魚が紛れ込んではいたようだが、お構いなしにロリータは足を進めていき――彼女の進軍を迎え撃つべく、ライトブリンガーは掌を突き出し。
【Q】「欠落の月より至る光」
「ほらきた!! ……甘い、壁よ!!」
やはり雑魚諸共貫くつもりだったか――だが、そんなものはお見通しである。
降り注ぐ光の柱を、イメージを以て変化させた迷宮の壁を以て阻む――己を導く一直線と、敵の攻撃と妨害を惑わす迷路を自在に作り替え、そして彼女は難なく、ライトブリンガーの眼前に辿り着き。
「これでもう障害はないわね――喰らいなさい!!」
解き放たれる、全ての魔力を注いだ激しい閃光――光を齎す者に齎される裁きの光が、真っ直ぐに吸血鬼の始祖を飲み込んでいた。
大成功
🔵🔵🔵
シキ・ジルモント
※儀式魔術【Q】「ワープドライブの賦与」
ヴァシリッサ(f09894)と
ああ、ここは我を通させてもらおう
拳銃で応戦
黄金剣の光は放出と同時にその場を離れ回避を試みる
敢えて完全には躱さず、手元を掠るように受けて銃を取り落としてみせる
隙を見せて敵の攻撃を誘う
ワープドライブ時は近距離攻撃を待ち受ける
反撃や回避は考えない
近接攻撃を受けた瞬間に相手の体や武器を掴み、不意を突いて動きを止める事に集中
一瞬でいい、ヴァシリッサが攻撃を仕掛ける好機を作りたい
負傷を厭わず、刺し違える覚悟は決めている
しかし、以前ヴァシリッサと交わした“何があっても必ず生きて帰る”という約束も忘れていない
近距離攻撃を受けた直後にユーベルコード発動
強化された真の姿を解放(月光に似た淡い光を纏う。犬歯が牙のように変化、瞳は夜の獣のように鋭く光る)
何度も戦場を共にしたヴァシリッサを信頼し全て託し
高めた身体能力と膂力で敵を押さえ込む
これ以上好き勝手な真似はさせない
吸血鬼の始祖だろうと、この世界の未来を譲る気は無い
…そうだろう、ヴァシリッサ
ヴァシリッサ・フロレスク
シキ(f09107)と
何でも歓迎
Q:ワープドライブ
漸くお出座しか
本丸の双子はもう陥落秒読み
ただアイツだけは無傷で帰す訳には
終わり無き闘争、絶望の元凶
この血の、|祖《ルーツ》
忌むべき血統は
他ならない己の矜持でもあり
蟠りが微塵も無いと云えば嘘になる
ただ、だからこそ
手前ェの仕業は心底気に入らねェ
HA!傍若無人はコッチの専売だ
何方の我儘が上等か?白黒つけようじゃないか
なァ、シキ?
始祖だかなンだか知らねェが蜂の巣ンなりゃ一緒だろ等と挑発しつつ、UCの射線を見切り退きながらノインテーターとディヤーヴォルの弾幕を浴びせ宛も遠距離が本命と思わせたい
ワープに合せシキが決死の
否、絶対に生きて帰ると
此方を信じ繋いでくれた隙を逃さずUC
回避姿勢から、軻遇突智を師直伝の神速抜刀
元より独りで斃せると思う程驕ッちゃ無い
だが今は
貴方を、約束を
師の技を
己を
明日を信じて此の一閃に全てを籠める
あァ
此の血で|花道を咲かして《引導を渡して》やるよ
剣閃から迸る浄火の華片が敵を剞む
カーテンコールは期待すンなよ
もう、アタシたちの明日だ
●地の底の血の誓いは交わされた
――この戦争を仕掛けた祈りの双子は最早虫の息。
数々の大物も順当に消え失せ、残るは――いや、こいつだけは、無傷で帰せない。
「漸くお出座しか。真打登場? 満を持して?」
散々に勿体づけて現れた、全ての吸血鬼の始まりの存在。
黙して何も語らず、佇んでいるだけであっても本能が訴える――只ならぬ圧倒的という言葉すらも陳腐となるかの者の威容を。
ヴァシリッサ・フロレスク(|浄火の血胤(自称)《エンプレス・オブ・エンバー》・f09894)の口にも、それは黙って佇んでいる――それだけなのに、この血は堪らなく疼いてしまうのだ。
終わりなき闘争、全ての絶望の元凶、この血の|祖《ルーツ》――忌むべきものでありながらも、己の矜持でもあり、思う所が微塵もない訳でもなく。
ただ、だからこそ。
「――気に入らねェ。全く気に入らねェ」
「ヴァシリッサ」
吐き捨てるように語るヴァシリッサ、今すぐにでも飛び掛かりかねない――尤も易々とはやらないだろうが――彼女を一言で、隣に立つシキ・ジルモント(人狼のガンナー・f09107)の声が制した。
【Q】「傍若無人なもの。我を通したくば通すだけの力がなくば意味も無きこと」
ここにきて漸くに開かれる、ライトブリンガーの口――発する言葉全てが儀式魔術となる触れ込み通り、もしかしたらそうなのかもしれない、と思わせる何かが感じ取られる。
「HA!」
されど、発生しかけた閉塞感を打ち破るように、ヴァシリッサの嘲りにも似た強い笑いの声が、何時までも残響を刻むようにライトブリンガーを制し、そして告げる。
「傍若無人はコッチの専売だ。何方の我儘が上等か? 白黒つけようじゃないか。なァ、シキ?」
「――ああ」
横目で促し、拳銃と重機関銃を取り出すヴァシリッサに短く頷き、シキもまた拳銃を取り出すと
「ここは我を、通させて貰おう」
二人よりそれぞれに突きつけられた銃口と、トリガーに掛けられる指――銃弾が発砲されるその瞬間、ライトブリンガーは己が言葉を魔術とする。
【Q】「ワープドライブの賦与。天翔ける五つの黄金剣」
同時に解き放たれた二人の凶悪な弾丸より、銀河皇帝の血族がなし得る空間転移の法を以て位相を変え、銃弾を躱し。
逆に黄金の剣より、二人を飲み込むべく光線を放つものの――歴戦の猟兵二人に射線を見切るは容易く、一本調子のそれを軽々と躱されてしまう。
「大した腕前だなァ。流石始祖って? けど……」
嬉々として笑いながら、ヴァシリッサの銃が踊る。
「蜂の巣になりゃァ、一緒だろ!」
例え距離を幾ら離されようと、銃弾で何度も泥臭く、喰らい付いてみせようか。
解き放たれる圧倒的な弾幕が、回避先ごと薙ぎ払う勢いでけたたましく作られ、空間転移を繰り返すライトブリンガーを翻弄する。
その一方で、シキもまたヴァシリッサの作る弾幕をフォローするかのように、着実にライトブリンガーを狙い撃ち込んでいく。
「…………」
遠距離と遠距離の決着はつかない拮抗状態、されど攻撃を行うはライトブリンガーもまた同じことであり、再び彼等を貫かんと閃光が迸る。
それでも軽々と横跳びに射線をずらし回避するヴァシリッサであったが、シキの方は銃が弾かれ――その隙を逃がさないライトブリンガーが一瞬で空間を飛び越え、気が付けばシキの懐に潜り込んで爪を向けていた。
【Q】「この距離ならば躱せない。そして私はすぐに離れられよう」
「シキィ!」
「ぐっ……!」
口角を釣り上げ、爪を深々とシキの身体に食い込ませ――至近距離から放たれる、五つの黄金の剣より瞬く閃光が傷口より彼の身に吸い込まれ。
分かりやすいヴァシリッサの声が張り挙げられ、シキの顔が苦痛に歪む――鮮血を口より吐き出し、その血を顔中に浴びながらも凄惨に笑みを浮かべ、ライトブリンガーが更なる追撃をかけに、喰い込ませた爪を以てシキの内をより惨く抉ろうとしたその刹那。
シキの筋肉が収縮し、食い千切らんばかりにそれを捕らえ――そしてシキの爪が、逆にライトブリンガーの腕を深く杭を打つが如く刺し穿っていた。
――だが、何の為に銃を主として戦ってきたと思っている。それが、狙いだった。
「離さない……!」
このまま握り潰さんばかりの勢いで力を込めながら、目の前の相手を睨みつける。
するとどうだろうか――月光にも似た淡い輝き、白とも金とも、銀ともつかぬ人を惑わす輝きに包まれ、シキの犬歯がそれを超えた狼が如き牙と変わり。
青く鮮やかに、強く光り輝く夜の獣の如き瞳を輝かせ、ライトブリンガーの身体を捻り、その地へと抑え込んでいく。
元より、刺し違える覚悟など出来ている。
この吸血鬼の始祖を滅ぼし倒す為ならば、この|生命《いのち》すらも惜しくはない、つもりだった。
例え如何なる負傷を受けようと、こうして今、無数の光が身を焼き内臓を貫く激痛に身を幾ら侵されようと覚悟の上だ。それでも。
この約束は、ヴァシリッサと交わした“何があっても生きて帰るという約束”は、違えない。そう、違えない。
「――必ず」
誓いの下に解放された真の姿は、強大な吸血鬼の始祖であろうとも、容易くに抑えつけるだけの力を以て。
ワープドライブの発動が行われようとすれば、突き立てた爪を、握り込む力を強め、痛みを以て強引に制し、収縮させた筋肉が容赦なくライトブリンガーの手爪を圧し縛り付けていく。
「これ以上好き勝手な真似はさせない。吸血鬼の始祖だろうと、この世界の未来を譲る気は無い」
――そして、今此処に、何度も戦場を共にした|大切な人《ヴァシリッサ》へと、全てを託す時とシキは彼女へと目を向ける。
「……そうだろう、ヴァシリッサ」
【Q】「ワープドライブにて――」
「いいや、|終《しま》いだよ」
――あァ。此の血で|花道を咲かして《引導を渡して》やるよ。
元より一人で勝てるとも思っていない。
|いとおしい人《シキ》が命懸けの――否、命をベットし、その上で賭けた命を取り戻しそれ以上の戦果を挙げてくれると信じていたが故に、踏み込む力に躊躇いはなく。
ヴァシリッサを目掛け放たれた光線を身を低く屈め、下方より摺り抜けるように駆け抜けては踏み込み、距離を一瞬にて詰める。
痛みを振り切ってまで空間を跳躍して逃げる隙など、シキが掴みとってくれたものを踏み倒そうなど、絶対に認めないと言わんばかりに刹那で迫り。
そして――次の瞬間には、ヴァシリッサの姿はライトブリンガーを抜いていた。
そして極々僅かな、刀身が鞘に納められる音――神懸かり的な速度を以て放たれた抜刀がライトブリンガーの身体を通り抜けるかのように刻まれていた。
極限、否、極限以上に、師より受け継いだ技を、そしてこの好奇を必ず活かすという決意の下に研ぎ澄まされた心と技が、吸血鬼の始祖を今、確かに強く斬り裂いていた。
身体を刻まれ、腕を斬り落とされたライトブリンガーは、驚愕を顔に張り付けつつ、シキとヴァシリッサを交互に睨み、数歩離れ――
「カーテンコールは期待すンなよ。もう、アタシたちの明日だ」
そして――閃いた剣の軌跡より迸った夜を焼き浄める炎が、遥かな天井をも貫く勢いで立ち昇り揺れていき。
浄火が鮮やかに戦場を照らす中、戦い抜いた二人が軽く手を打ち合わせていた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵