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闇の救済者戦争⑮〜人狼の料理人と腸詰の紋章〜

#ダークセイヴァー #闇の救済者戦争 #第五の貴族

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 かつて、吸血鬼たちの圧政によって食べ物を得ることができずに飢えた少女がいました。
 そんな彼女はふと隣の人間を見た時、思いました。
『美味しいお肉が、こんなに……みんなに食べさせてあげよう、喜ぶに違いない』
 そして彼女は、鶏や豚を屠殺するように人間を殺しました。
 人間の肉は鶏や豚と違って吸血鬼に献上する必要がありません。
 そうして彼女は飢えから解放されました。
 毎日満腹でいるという彼女の噂を聞きつけた人間はご相伴に預かろうと彼女の家を訪ねます。
 彼女は喜んで、彼らに今日の食事を分け与えました。……その肉の正体を聞いて悲鳴を上げて放り投げたり激怒したりした者達を除いて。
 そういう態度を取った人は、その日の晩か翌日の彼女の食卓の料理の中に入れられてしまいました。
 彼女の評判は吸血鬼の耳にも入ります。
 同族には忌避されても、吸血鬼にとっては普通の食材。
 痩せ細った美味しくない人間がどれだけ共食いしようと、吸血鬼にとってはどうでもいいことです。
 でもそんな存在を美味しい料理に変えているという少女の存在には興味を持ちました。
 ある日、吸血鬼は順番待ちをしていた人間を血祭りにあげてから彼女の元を訪問します。
 震えながら彼女が出してきた料理を口にした吸血鬼はその味に感嘆し、彼女をその場で口説き落としました。
 そうして彼女は吸血鬼に雇われて、ダークセイヴァーでも有数のレストランの主人となったのです……。

 「第五の貴族」の中でも限られた者だけが運用を許されていた、生体実験室「祭壇」。
 おびただしい量の犠牲を経て作り出される「紋章」はヴァンパイア達に大いなる力と異形の攻撃手段を与えていることは既に周知の事柄である。
「今回皆さんに突入していただく祭壇の所有者は人狼の料理人です」
 そう言って問題の人狼についての情報を記した資料をルウ・アイゼルネ(滑り込む仲介役・f11945)はホワイトボードに貼り付けていった。
「問題の祭壇は彼女のレストランの地下にあります。彼女のレストランの料理は人肉を使ったメニューが多く、料理に使えなかった部位を紋章の材料にしているようです」
 そんな彼女が有している紋章は「腸詰の紋章」。
 塩や香辛料、ハーブ等で調味した挽肉を羊などの腸に詰めて作られる物を模した紋章の効果は「混ぜ物の攻撃しか受けない」という物。
「聞いただけでは分からないと思いますが……簡単に言うと『剣の刃に魔力を纏わせる』とか『炎と氷が交わった一撃』とか異なる性質・属性の物を2つ以上組み合わせた攻撃でしかダメージを与えることができないようです」
 普通の人間には難しい攻撃条件だが、歴戦の猟兵達にとってはお手のものだろう。
「……話は変わりますが、彼女のレストランには生きている人間も納品されているそうです。早急に彼女を討伐し、囚われている人々を救出しましょう。皆様、対応のほどよろしくお願いいたします」


平岡祐樹
 お疲れ様です、平岡祐樹です。

 このシナリオは戦争シナリオとなります。1章構成の特殊なシナリオですので、参加される場合はご注意ください。

 今案件にはシナリオギミック「紋章の『弱点』を突いて戦う」がございます。
 これに基づく対抗策が指定されていると有利になることがありますのでご一考くださいませ。
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第1章 ボス戦 『人間大好きな人狼の料理人』

POW   :    食べないのかい?こんなに美味しいのにさ!
戦闘中に食べた【魔獣、人間を調理したもの 】の量と質に応じて【全身の細胞が活性化して新たなレシピを考案】、戦闘力が増加する。戦闘終了後解除される。
SPD   :    食べたいものを言いなよ!肉料理がオススメさ!
手持ちの食材を用い、10秒でレベル×1品の料理を作る。料理毎に別々の状態異常・負傷・呪詛を治療する。
WIZ   :    食材が足りないねぇ……ちょっと取って来ようかい
戦場に、自分や仲間が取得した🔴と同数の【食材となる人間たち 】を召喚し、その【倫理観の欠如した料理の見た目と匂い】によって敵全員の戦闘力を減らす。

イラスト:番場たくみ

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠編堵・希亜です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

佐藤・和鏡子
いわゆる、合わせ技一本、ですね。
なら、ガジェットショータイムで作った火炎放射器を救急車に取り付けた火炎放射救急車で敵めがけて突っ込みますね。
さらに車体に火炎放射器燃料を吹き付ける機能も付けて救急車そのものを火の玉にして(火炎放射器による炎攻撃+救急車による物理攻撃)、コンボ攻撃の威力を高めますね。
その方が見た目も派手になりますし。
熱や炎は武器受け(救急車の車体とエアコン)でしのぎます。
運転(正確に目標めがけて超高速で突っ込める技術)+蹂躙・吹き飛ばし・重量攻撃(速度と重さによる威力)+武器改造・属性攻撃(火属性攻撃)の私のフルコース(お客様兼主菜はあなた)、存分に味わってくださいね。



「いわゆる、合わせ技一本、ですね」
 佐藤・和鏡子(リトルナース・f12005)は手を合わすと白衣の天使をモチーフに作られた柔和な笑みを浮かべた。
「なら、【ガジェットショータイム】で作った火炎放射器を救急車に取り付けた『火炎放射救急車』で敵めがけて突っ込みますね」
 その口から告げられたとんでもないパワーワードに周囲が凍りつく。
 確かに車による突進と火炎放射器による炎上は全くの別物で、腸詰の紋章の防御を悠々と突き破れる物だろう。
 だが看護用ミレナリィドールから出て来ていい単語ではないだろう……という感想を持たれているとは思いもしていない和鏡子は楽しそうに火炎放射救急車の更なる強化案を練っていた。
「さらに車体に燃料を吹き付ける機能も付けて、救急車そのものを火の玉にして、コンボ攻撃の威力を高めましょう。その方が見た目も派手になりますし」
 そうして出来上がった救急車は火だるまになりながらけたたましい警報を鳴らして、人狼が仕込みをしているであろう開店前のレストランへ突っ込んだ。
 煉瓦造りの壁に正面から激突したことでバンパーがひしゃげたことに動揺せず、和鏡子はクーラーの効いた車内で涼しい表情を浮かべながらハンドルを回して椅子やテーブルを薙ぎ倒していく。
「なになになに!!?」
 表から聞こえてきた轟音に泡を喰ったように厨房から出てきた人狼は、すっかり風通しの良くなった店内に言葉を失った。
 目標が出てきたことに気づいた和鏡子は切り返して人狼を正面に見据えると思いっ切りアクセルを踏んだ。
 世の中にはブレーキとアクセルの位置を間違えたり、車止めから強引に抜けようとして急発進してしまう人というものがいる。
 パニックになって、急いでいて、踏み間違えて……とそれを犯した後に彼らはそんな言い訳を言うが、和鏡子の場合は「確信犯」であった。
 正確に目標めがけて超高速で突っ込める技術と速度と重さによる威力。さらにそこに合わさった炎を一度に叩き込まれた人狼は轢かれ飛び、厨房の中へ叩き込まれた。
「私のフルコース、存分に味わってくださいましたか?」
 注文の多い料理店ばりの「お客様兼主菜はあなた」をお見舞いした和鏡子は運転席から降りると見事なカーテシーをしてみせる。
 何日もコトコトと煮込んでいたデミグラスソースをつけたパンを賄いにすることで轢かれた傷を癒した人狼は、未だに何が起きているのか理解できずに困惑の表情を浮かべ続けていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ペトニアロトゥシカ・ンゴゥワストード
アドリブ・連携歓迎

ふむ、まあ正直言って人喰いに思うところは特に無いのだけどね。
飢えてりゃそういうこともあるだろうし。
吸血鬼の側に立つというなら、人の側に立つあたしの敵ってだけの話だね。

さて、混ぜ物の攻撃しか受けないねえ。
まああたし自身が混ぜ物みたいなもんだし、得意分野だね。
【超獣祇我】を使って、電撃を纏った打撃で攻撃していけばいいかな。
ついでに料理に電撃を撃ち込んで焦げさせて質を低下させられれば、
相手の戦闘力の増加も抑えられるかな。

料理を駄目にするのは少し気が引けるけど、食べるのは遠慮しておくよ。
人間の側に立つ以上、人間を喰うのは避けてるんでね。



「ふむ、まあ正直言って人喰いに思うところは特に無いのだけどね。飢えてりゃそういうこともあるだろうし」
 散乱した木片やガラス片を素足で踏みつけながらも痛がる素振りを見せず、ペトニアロトゥシカ・ンゴゥワストード(混沌獣・f07620)は厨房に入る。
「吸血鬼の側に立つというなら、人の側に立つあたしの敵ってだけの話だね」
 人狼は口の中に溜め込んでいたパンを飲み込むと、口の端についたデミグラスソースを舌で舐め取ってから無邪気に笑った。
『食べないのかい? こんなに美味しいのにさ!』
「うん。料理を駄目にするのは少し気が引けるけど、食べるのは遠慮しておくよ。人間の側に立つ以上、人間を喰うのは避けてるんでね」
 穏やかながら確固たる意志で拒否したペトは微調整するかのように右手の指を動かした後、ぎゅっと握りしめた。
「しょうがないなぁ、なら人間料理を今まで試さなかったことを後悔するような料理を作ってあげるよ! 今ちょうど良さげなレシピを思いついたんだぁ」
 鼻歌を歌いながら人狼が床を開くとそこから冷気が湧き上がってくる。人狼は臆することなくそこへ手を突っ込み、中から綺麗に処理された人間だった物を取り出した。
 だがどれだけ目の前で作られようと食わない物は食わない。
「さて、混ぜ物の攻撃しか受けないねえ。まああたし自身が混ぜ物みたいなもんだし、得意分野だね」
 バチバチと体内から溢れ出した電流が音を立て始める。そしてペトが人狼の背中に発勁を叩き込むと電気が人狼の体に一気に流れ込んだ。
「いっだ!? 何するのさ邪魔しないでよ!」
 体を派手に震わせた人狼は近くにあった鉈を掴んで投擲してくる。
 ペトは体を反らしてそれを避けるとすぐそばにあった人骨と野菜がプカプカ浮かぶスープに触れて電流を流し込む。
 すると常温だったスープが一気に沸騰して、そのまま蒸発し出した。
「あー! 何してくれたのせっかく仕込んだのに!」
 異常に気づいた人狼が怒りの声を上げる中、ペトは肩を竦めて言い返す。
「どうせお客さんに提供することはないんだ、捨てる時がちょっと早まっただけだよ」
「うるさーい! 勝手に決めるな!」
 そう言って両手で掴んだ肉切り包丁を構えて突っ込んできた人狼をペトは体内電流で活性化した筋骨隆々とした豪腕で迎え討ち、力任せに殴り飛ばした。

大成功 🔵​🔵​🔵​

神樹・鐵火
知っているか?人間が人間を食うと震え狂って死ぬと
...もうこいつは狂っているも同然だが
複合攻撃しか受け付けない...か、簡単過ぎる
聖拳と魔拳、ダメ押しで霊拳の三属性複合打撃だ

...何だ?御供か?
言い忘れたが私は肉より魚派だ
穢れた人肉を生贄(御供)に出すな
神に向かってなんだその態度は!無礼者!
(出された大皿人肉料理を皿ごと【怪力】任せに顔面に叩き付け、即【覇気】の炎を纏わせた清酒『鐵神樹』の酒瓶でドタマをかち割るが如く追撃)

ああ、実に機嫌が悪い!!
作り直しだ!!(轟拳を纏わせた『鬼神蹴撃』で厨房に向かって蹴り飛ばす)



「複合攻撃しか受け付けない……か、簡単過ぎる」
 ルウが見守る中、神樹・鐵火(脳筋駄女神・f29049)は足元に落ちていた岩を軽く上に放り投げると数発の殴打で粉々にしてみせる。
「聖拳と魔拳、ダメ押しで霊拳の三属性複合打撃だ。貴様の言う通りならこの程度でも腸詰の紋章は防げないのだろう?」
 まだまだ余力はあると豪語して半壊したレストランへ向かう道中、鐵火は片頬を大きく膨らませた人狼を見つけた。
 人狼も鐵火のことに気づくと今にも泣き出しそうな声で話しかけてきた。
「あ、そこのおねーさーん……。アタシの料理、ちょっと食べてくれませんか?」
「何だ? 御供か?」
 神たるもの、信ずる者から捧げられた物は一瞥はしようと鐵火は足を止める。
 人狼は背中に背負っていた荷物の中からまずは大きな皿を岩の上に置き、続けて金属製の箱を取り出した。
「あ、よかった無事だった……。実はよく分からない人達に店の中で暴れられて、ここまで吹っ飛ばされちゃったんです」
「そうか」
 大体の察しがついた鐵火の目つきが厳しくなったことに気づかず、人狼は蓋を開けてひっくり返すように皿の上に乗せる。
 中から出てきたのは人間の挽肉や切った野菜、香辛料を骨から取ったゼラチンで固めた物だった。
「よかった、崩れてないや! これ、今度店で出す予定だった人肉のゼリー寄せなんです! ぜひ食べて感想を聞かせてください!」
 人狼は嬉々としてゼリー寄せをナイフで切り分け、そのうちの1個を鐵火に差し出す。しかし鐵火がそれを受け取ることは無かった。
「……言い忘れたが私は肉より魚派だ。穢れた人肉を|生贄《御供》に出すな!」
「え、でも、これほんとにおいし」
「神に向かってなんだその態度は! 無礼者!」
 鐵火は怒りに任せて大皿を奪い取ると鐵火は怪力任せに人狼の顔面に叩き付け、間髪入れずに覇気の炎を纏わせた清酒「鐵神樹」の酒瓶でドタマをかち割るが如く追撃をかける。
 初撃の皿は何ともなかったが、炎を纏った打撃で脳を揺らされた人狼は声をあげることも出来ずに目を回す。
「ああ、実に機嫌が悪い!! 作り直しだ!!」
 仕上げに鐵火は轟拳を纏わせた【鬼神蹴撃】で人狼を蹴り飛ばす。
 高々と物理的法則を無視した弾丸ライナーで飛んでいった人狼の体は半壊したレストランに着弾した。
 ひとしきり暴れて落ち着いた鐵火は砂に塗れたゼリー寄せの上に土を山盛りに乗せると、材料に使われた人々の来世の幸せを願って手を合わせた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

大燐花・サヤ
うむ、歪んだ美談だねぇ。
仕事熱心なのはいいが、それで人の命を弄んでいるのは見過ごせないねぇ。

UCを使用して燐火の渦を作成、あたしの武器【名閃・イカルガ】にそれを付加するよ。
炎の属性と剣の属性で、ヤツの紋章は破れる見込みさね。
戦闘では適度に距離をとって、薙刀ゆえのリーチを生かしていきたいねぇ。
もし懐に接近されたら、あたしの体自体を炎に変えて攻撃を避けるよ。

もし人間を召喚されたならば、UCで炎に変えた体を伸ばして、安全な位置にケガしないように弾き飛ばすよ。
あたしの炎は燃やすかどうかも自分の意志で選べるからねぇ。
何も知る由もない人々は怖がるだろうしれないが、火傷を負わせはしないよ。



「うむ、歪んだ美談だねぇ。仕事熱心なのはいいが、それで人の命を弄んでいるのは見過ごせないねぇ」
 人狼の立身出世物語を聞いた大燐花・サヤ(亜音速の炎・f38548)が嫌悪感を抱きつつ肩を竦めている頃、人狼はレストランのカウンターに叩きつけられていた。
 だがその衝撃は腸詰の紋章の力で無効化され、人狼は顔を顰めながら蹴られた腹だけを摩った。
 そしてこの数分間が夢であって欲しいと、人狼は表と違って原形を保っている厨房を覗き込んだが仕込んでいた物がいくつかダメになっていた。
「はぁ……『食材が足りないねぇ……ちょっと取って来ようかい』」
 ため息をつきながら店を出た人狼が裏にある木造の小屋の扉を開けると、少年が飛び出してきた。
 運動不足によって肉質が悪くなってはならないため、人狼は|材料《ニンゲン》を拘束していない。ただ逃げられる道は扉1つしかなく、鍵を内から開けることは出来ないために人狼が開けた瞬間を狙うしかなかったのだろう。
「おお、活きが良いのはいいことだ!」
 だが人狼は慌てることなくすかさずその首元を掴んで持ち上げ、奥まで行って吟味する手間が省けたと2人目3人目が来る前に扉を閉め直す。
 そこへ入れ違いでレストランに入り、厨房に残されていた人肉料理の見た目と匂いで気分が悪くなって外の空気を吸おうと出てきたサヤと出会した。
「……裏手にいたんだ。その子をあんなゲテモノになんかさせないよ」
「ゲテモノなんて言わないでよ、美味しいんだから!」
 人狼の反論を流しつつサヤは燐火の渦を作成し、名閃と名高い薙刀に纏わせる。これで炎の属性と剣の属性が合わさり、腸詰の紋章を破れるだろう。
「うーん、腱切っておこうかな……」
 流石に人1人持ちながらは戦えないと、少年の足に目を向けた人狼に一突き。あまりの熱さと痛みに人狼は短い悲鳴を上げ、少年を投げてしまった。
 騒ぎを聞きつけて駆けつけた猟兵がその体を受け止める中、人狼は歯を食いしばってサヤに切りかかった。
 燃ゆる薙刀に臆することなく懐にまで踏み込んだ斬撃に、サヤは自身の体を全て炎に変えることで攻撃を避ける。
「速っ……流石は人狼と言うべきか……」
 薙刀のリーチを活かしつつ人狼の鉈の届かない範囲を考えて取っていた距離を一瞬で詰められたことに内心舌を巻きつつ、サヤは体を元に戻しながら距離を取り直す。だが人狼もおめおめと逃す気はなく、ひたすらに突っ込んできた。
 追い込まれたサヤは小屋に背中をぶつける。そして閉められた扉の前で泣きじゃくる子供の声を聞きつけた。
 サヤは振り下ろされた鉈を避けるために再び全身を炎に変えるとそのまま小屋を燃やして押し入り、中にいた人々を全員絡め取る。
 サヤの炎は燃やすかどうかも自分の意志で選ぶことが出来る。何も知る由もない人々は怖がるだろうが、火傷を負わせはしない。
「ああ、なんてことを……!」
『これがあたしのやり方だ!』
 渦巻く炎に煽られながら遠ざかっていく食材の姿に狼狽する人狼を見下ろしつつサヤは胸を張った。

成功 🔵​🔵​🔴​

夷洞・みさき
咎人殺しとして生者を殺す者に罰を

ゲテモノ喰らいもね。
他の世界でも緊急事態とか儀式とかあるしね。
僕達は口にしたいと思わないけれど。

それに、なにより、君は咎人《オブリビオン》だ。
存在自体が咎だ。だから僕達は君を身削ごう。

さぁ、同胞達。ここに咎人が…

なんかきた。

食材が足りないとの言葉に大量の新鮮な野菜を大解放
彼等はずんびなので悪臭とか効果はない
彼等はずんびなので食べる物に倫理観とか少ない
自分達ばかり食べるのは悪いので人狼にも互いの食材を使った料理をお勧めする

…僕が呼んだわけだけど、見ていて楽しくないね。
贖罪が足りないようだしね。

満腹な人狼とずんび両方を自身の武装で身削ぐ



「他の世界でも緊急事態とか儀式とかあるしね。僕達は口にしたいと思わないけれど」
 そう言ってから、夷洞・みさき(海に沈んだ六つと一人・f04147)は人の手と魚の鰭が混ざったような見た目の指で人狼を差す。
「それに、なにより、君は|咎人《オブリビオン》だ。存在自体が咎だ。だから僕達は君を身削ごう」
 同胞達がまだかまだか今か今とみさきの背後で車輪を回す。
「咎人殺しとして生者を殺す者に罰を。ゲテモノ喰らいもね」
「だからゲテモノじゃないって! もう、みんなゲテモノだって決めつけて食べずに捨てて何様なの!」
 人狼は憤慨して地団駄を踏み出す。だがその癇癪をみさきは鼻で笑った。
「さぁ、同胞達。ここに咎人が……」
「お疲れ様ーっす。いつものでーす」
 しかしそんな緊迫した状況に相応しくない呑気な声が割って入ってきた。
 した方を向けば、サムライエンパイアの農民のような装束を着た男達が大量の野菜を積んだ荷台を転がしてきていた。
「……なんかきた」
 みさき達が突然の乱入者に呆気に取られる中、人狼は一転して笑顔になって男達へ駆け寄る。
 交わす話の内容を聞いている限りどうやらこの男達は取引先らしい。
「にしても今日はどうしたんです? なんか入口がめちゃくちゃになってたり炎が上がったり何だったりしてますけど」
「いや、猟兵って奴らがいきなり営業妨害してきて、今もメインの食材を盗まれたところなの。このままじゃ明日以降の食材が足りないよ」
「なんですって!?」
 人狼の愚痴に男は腐って落ちかけている目をひん剥かせながら伝票を破り捨てた。
「それはいけませぬ! 本来ならば市に出す分も運んできましたが、全部無料で置いていきましょう!」
「え、そんな、ダメだよ!?」
「いえ、あなたは見向きもされぬ我々の野菜を選んでくださった。その恩に報いる時なのです!」
「うわーん! ありがとー!!」
「……ナニコレ」
 突然始まった感動物語にみさき達がゲンナリする中、すっかり盛り上がっている人狼と農民達はぞろぞろとレストランの中へ戻っていく。
「そうだ、お返しにはならないかもだけど今度メニューに加える予定の料理を試食して行ってよ!」
「ええ、いいんでさ!?」
 農民はずんびなので悪臭に対する嫌悪はなく、食べる物への倫理観も少ない。故に嬉々として人狼の出す料理を貪り食った。
「うめぇうめぇ! こんな美味しいのを吸血鬼様より先に食えるなんて!」
「ね、美味しいよね!」
「そうだ、いつもは合わねぇと思って納品してなかったんだが……こっちの漬け物と合わせるのはいかがでひょ」
「え、なにそれ見せて見せて食べさせて!」
「……僕が呼んだわけだけど、見ていて楽しくないね。贖罪が足りないようだしね」
 我に返って店内に入ったみさきは嘆息しつつ同胞へ許可を出す。
 回転を速めた車輪は弾かれたように厨房へ突っ込んで、人狼とずんび双方の身を等しく削いだ。

成功 🔵​🔵​🔴​

城田・紗希
なるほど…。……なるほど?(頭でわかっても理解を拒んでる)
…まぁいっか。ちょっと試したいこともあるし。

「私、人間と魔獣と昆虫だけは食べるなって祖父の遺言で言われてるんです!」
「ここで倒れるわけにはいかない、故郷で待ってる恋人のためにも!」
…まぁ恋人居ないけど、死亡フラグと言えばこのあたりだよね。

攻撃を回避しつつ材料調達できれば、木材とか瓦礫を適当に組んで「見ろ、ゴミが人のようだ!」とかもやっておく。
これで王家の血を引いた人が滅びの呪文唱えて私に死亡フラグが立つはず。

一応、ウィザードミサイルの手前ぐらいの魔力を乗せれば、斬撃でもいけるかな?
…死んだふりは怖いし、攻撃後はすぐに離れて監視する。



「なるほど……。……なるほど?」
 頭でわかっても理解を拒んでるのか、理解してないのに生返事を繰り返しているだけなのか、城田・紗希(人間の探索者・f01927)はそれが判断できない表情を浮かべながら何度か頷いた。
「……まぁいっか。ちょっと試したいこともあるし」
 そうして不穏な一言を残しつつ、紗季は問題のレストランへ足を運んだ。
「うわぁ、超先鋭的? デザインー」
 これまで訪れた猟兵の手によって半壊したレストランを平常運転だと認識した紗季のすぐ横を風を切る速度で投じられた車輪が横切る。
 人狼は投げ終わった姿勢から足をつくと、腐った死体が転がる厨房で肩で息をする。そのテーブルに置かれた人肉料理を見つけた紗季は悲鳴を上げた。
「私、人間と魔獣と昆虫だけは食べるなって祖父の遺言で言われてるんです!」
 お前に出された料理じゃないだろう、と言うツッコミを紗季は受け付けない。というか大半の意見は右の耳から左の耳にすり抜ける。
 しかし自分の料理を食べないのにもかかわらず来店してきた冷やかしだと、頭に血が昇っている故に断定した人狼は暴言を吐きながらカウンターを飛び越えてきた。
「なら、くんじゃねー!!」
 振るわれた切先をすんでのところで避けた紗季はヘッドスライディングから起き上がって叫ぶ。
「ここで倒れるわけにはいかない、故郷で待ってる恋人のためにも!」
 まぁ恋人居ないけど、と心の中で毒づきながらも死亡フラグと言えばこのあたりだよねー、と呑気に思いつつ、このあとのために木片を集めていく。
「ああ、今思いついたレシピをすぐに試作したいのに! こうなったらあんたを食材にして作ってやるー!」
 追いかけてくる人狼の間に無事だったテーブルを挟みつつ、紗季はその上に木片を重ねて人形を作った。
「見ろ、ゴミが人のようだ!」
 これで王家の血を引いた人が滅びの呪文唱えてくれれば死亡フラグが立つはず、と紗季は自信満々に胸を張るが、残念ながらここにはネタが分かる者はいても言葉の位置が逆だし王家の血筋の者はいなかった。
「だーまらっしゃーい!!」
 テーブルを乗り越えるついでに人形を薙ぎ倒した人狼が突き出してきた鉈を紗季は咄嗟に抜いた刀で受け止める。
 そしてそれで満足せずに刃へ【ウィザード・ミサイル】に昇華しない程度の魔力を流し込み、人狼が次の攻撃のために鉈を離した瞬間に斬りかかった。
 脇腹を切られたことに人狼は顔を歪ませるが怯まず鉈を振るい、紗季の服を破り取る。
「こっ、こんなとこにいられるか! 私は部屋に戻らせてもらう!」
「二度とくんなー!!」
 下着を丸見えにされた紗季は顔を真っ赤にしながら逃げた……が、近くの茂みに飛び込み隠れて人狼の監視を始めた。
 ……単純に、あんな怒り狂う人狼の前で死んだふりをするのが怖かっただけだ。本気で解体しそうだったし。

成功 🔵​🔵​🔴​

メフィス・フェイスレス
あーあ、美味しそうな香りが漂ってくるわね
反吐が出そうなほど馨しい血生臭さ……

(ずかずかと祭壇に乗り込んでいきながら
骨肉の翼と刃を備えた骨尾を生やし、顎門を剥き出すコウモリめいた眷属の群れが躰から湧き出して、敵と調理済みの「料理」と紋章に集って食い荒らしていく)

……生きてるヤツはダメよ。外に連れ出しなさい

(「飢渇」が生存者を咥えて戦域外に飛んでいく)

んで、次は料理人の始末ね。混ぜ物じゃないときかないんだっけ
確かにただ喰らい付かせるだけじゃなんともなさそうね
……じゃ、爆ぜなさい
(敵に集る「飢渇」が「微塵」に砕けて爆発、爆風とそれに乗せた「骨身」の破片で同時攻撃する)

ま、腕は良かったわよ。ご馳走様



「あーあ、美味しそうな香りが漂ってくるわね。反吐が出そうなほど馨しい血生臭さ……」
 大きな大きなため息を吐きつつ、メフィス・フェイスレス(継ぎ合わされた者達・f27547)はずかずかとレストランの地下に広がる祭壇に乗り込んでいく。
 一歩一歩踏み出すたび、骨肉の翼と刃を備えた骨尾が生え、顎門が剥き出しになる。
 そしてコウモリめいた眷属の群れが躰から湧き出し、調理済みの「料理」と紋章に集って食い荒らし始めた。
 祭壇への扉が開けられていたことに気づき、慌てて追っていた人狼も捕まり、悲鳴があげる。だがメフィスは一旦それについて考えるのを後回しにして、祭壇の近くに吊り下げられていた者に視線をやった。
 料理に使われたのだろう、体の一部が無惨に欠けているが……まだ辛うじて息はある。
 どうする、一思いに介錯するか、と視線だけで訴えかける飢渇に対し、メフィスは首を振った。
「……生きてるヤツはダメよ。外に連れ出しなさい」
 食い扶持が減ったことにがっかりする様子もみせず、飢渇は生存者を咥えて戦域外に飛んでいった。
「んで、次は料理人の始末ね。混ぜ物じゃないときかないんだっけ」
 目を凝らしても見えなくなったところで、メフィスはようやく人狼へ視線を移す。
 人狼は鉈で自分の肉ごと飢渇を削ぎ取り投げ捨てる。削がれたはずの肉はいつの間にか元通りに戻っていた。
 だが飢渇からは確かに人狼の肉の味が伝わってくる。恐らく単一である鉈の攻撃によって飢渇による傷が上書きされ、無かったことにされているのだろう。
「確かにただ喰らい付かせるだけじゃなんともなさそうね……じゃ、爆ぜなさい」
 メフィスの指示を受け、人狼に集っていた飢渇が微塵に砕けて爆発し、爆風とそれに乗った骨身の破片が人狼の体に突き刺さる。
 その痛みで人狼は忘れていた記憶を思い出す。
 吸血鬼の勧誘を必死に拒否し、扉を閉めて拒絶しようとしたところを背後から噛まれて……。
 その後気づいたら吸血鬼の言うことを何でも聞くようになって、こうなっていた。
「なんであたし、吸血鬼のためにご飯を……?」
 正気に戻った瞬間に人狼は抵抗しなくなり、屍肉を混ぜ合わせて作られた物から湧き出した衝動の化身に成すがままにされる。
 メフィスは人狼が持ち込んだ荷物に入っていた人肉料理を全て飲み込み、足元に転がった人狼を見下ろしつつ空になった箱を見せる。
「ま、腕は良かったわよ。ご馳走様」
 猟兵でも受け入れてくれる人はいたんだ……という安堵と感動の思いを得て、人狼は息を引き取る。そしてその遺体を骨の髄まで飢渇が平らげるのを見届けてからメフィスは地上へと戻った。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2023年05月15日


挿絵イラスト