闇の救済者戦争⑭〜不死の紋章〜赦されざる救済
●堕ちたる天使に救いなし
「不老不死、か……。死を恐れる本能は全ての生物に共通するものとはいえ、実際に『死なない』身体を手に入れたが最後、その果てに待つものが幸福とは限らんだろう」
ましてや、半ば強制的に死から解放され、狂うことも許されないとなれば、その先に待っているのは永遠に等しい苦悶の時間。正に、地獄より酷い地獄であると、霧崎・紫苑(機械仕掛けの闇医者・f32327)は言葉を切り。
「ダークセイヴァーにて暗躍していた第五の貴族の中に、一度倒しても別の紋章を持って再び現れる者が存在していたのは知っているか? 調査の結果、実はやつらが禁獣『デスギガス』によって『魂人の如く死ねない存在』に改造されていたことが判明した」
もっとも、不死身の代償がないはずもなく、彼らは今や無限の苦痛によって理性を失い、ただ改造を通じて植え付けられた命令のままに、デスギガスの『欠落』の番人を続ける存在成り果てている。デスギガスの『欠落』が何なのかを判明させるには、この番人と化したオブリビオンを、全て撃破する以外に方法はない。
「お前たちに相手をしてもらいたい番人は、生獄のフェリックスと呼ばれるオブリビオンだ。どうやら、元は天使のような存在だったが、紆余屈折あって悪魔に改造されてしまったようだな。しかも、記憶や意識は残されたまま、肉体の主導権だけを奪われる形でな」
それだけでも酷い話だが、デスギガスにより更なる改造を施されたことで、彼女が改造されたことによって得た『傀儡としての意識』は完全に狂ってしまった。そのため、今の彼女は完全に発狂した自分の肉体が、自分の意志とは関係なしに、ひたすら近づく者を殺す光景を見せ続けられている状態だ。最初に悪魔へ改造された際に与えられた命令は消滅し、哀れな番人として、永遠にデスギガスのために戦わされているのである。
「デスギガスによる改造で、彼女は『死ねない存在』となっているからな。本人の意思とは関係なしに、死んでも即時復活するという特性を生かし、形振り構わず襲い掛かってくる。色々と思うところもあるだろうが、下手に手心を加えたところで、彼女にとっての救済にならんことは理解しておいて欲しい」
なにしろ、彼女は死ねない存在なので、単純な死でさえも救済にならないのだ。それでいて、狂った自分がひたすらに誰かを殺すのを見せつけられつつ、肉体が受けた痛みは本来の人格も感じるというのだから、これほど酷い無間地獄も他にあるまい。
「彼女を永遠の地獄から解き放つには、何度も殺し続けた上で、体表に『不死の紋章』を露出させる他にない。彼女の肉体とは異なり、紋章そのものは不滅でも不死でもないからな。体表に露出した時点で紋章の方を破壊すれば、彼女は跡形もなく消滅するだろう」
そのためには、幾度となく苦痛の果ての死を与えた上で、紋章を破壊しなければならない。なんともやり難い相手だが、唯一の救いは彼女の意識が絶対に表に現れることはないということ。表出しているのは完全に壊れた『傀儡としての意識』でしかないので、意思疎通や自己表現が不可能なのは、今回に限っては幸いと考えた方がよさそうだ。
「俺も医者である以上、安易な死が救済になるとは考えていない。だが……死でさえも救済にならないというのも、また地獄であることに違いはない」
それらの事情を抜きにしても、デスギガスの『欠落』を探るためには彼女を含めた全ての門番を撃破しなければならない。そう告げて、紫苑は猟兵達を、生獄のフェリックスの待つ戦場へと転送した。
雷紋寺音弥
こんにちは、マスターの雷紋寺音弥です。
このシナリオは戦争シナリオになります。
1章で完結する特別なシナリオです。
以下の条件を満たすとプレイングボーナスが得られます。
●プレイングボーナス
敵を何度も殺し続け、「不死の紋章」を破壊する。
実際には、1回のリプレイの中で、複数回敵を殺せるプレイングを書いたかどうかで判定します。
半永久的に復活する敵を何度も殺せるようなプレイングにはボーナスがつきますが、紋章を破壊できるのは止めを刺す人だけなので、紋章が表出していない状態で紋章破壊を狙ったプレイングを書いても無効となります。
反対に、特に紋章破壊を狙ったプレイングではなくとも、最後の止めを刺せる状態であれば、戦闘に勝利することで紋章は破壊されます。
第1章 ボス戦
『生獄のフェリックス』
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POW : 天魔蠢動
【体内から異形の悪魔細胞】を召喚し、自身を操らせる事で戦闘力が向上する。
SPD : 生獄の残滓
自身が【悪魔の肉体支配に抵抗して】いる間、レベルm半径内の対象全てに【禍き悪魔の血煙】によるダメージか【儚き天使の残光】による治癒を与え続ける。
WIZ : 外法傀儡眼
【額に埋め込まれている魔眼の邪視】が命中した部位に【外法魔力】を流し込み、部位を爆破、もしくはレベル秒間操作する(抵抗は可能)。
イラスト:塒ひぷの
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「ナギ・ヌドゥー」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
肆陸・ミサキ
※絡み苦戦ケガアドリブOK
やれやれ、酷いことをする
これでいて、あの化け物は良いことをしたとか宣いそうなのが、なおのこと腹立たしいね
まあ、これからそれ由来の苦痛を与える僕たちも、劣らず酷いのだろうけれど
WIZで攻める
目標は一撃を当てて、こちらの能力発動条件を満たすこと
そうすれば、僕の意識が失われない限り、攻撃を継続する事が出来るから
産み出した熱球の焼却攻撃で、ひたすら焼きながら、動きは回避をメインに時間稼ぎ
邪眼も当たらなければいいのだけど、避けられないなら右手から受け、右腕、右肩と分散して爆破してもらえば、何回かは耐えられそうかも?
限界が近付いたら、捨て身の一撃でもう一度、確実に殺す
●灼熱の無限地獄
デスギガスを倒すために必要な『欠落』へと至るには、そこまでの道を守る門番を全て倒さなければならない。
だが、そう聞いて門の前に辿り着いてみれば、そこにいたのは狂暴な獣でもなければ悪辣な吸血鬼でもなく、悪魔に改造され己の意識を封じ込められたまま、望まぬ戦いを強いられている天使だった。
「やれやれ、酷いことをする。これでいて、あの化け物は良いことをしたとか宣いそうなのが、なおのこと腹立たしいね……」
傀儡としての意識を奪われ、しかし本来の意識は肉体に残したまま、それでいて自分の意志では身体を動かせない。あまりに酷い無限の拷問に、肆陸・ミサキ(黒白を弁ぜず・f00415)は辟易した様子で呟きながらも、最後に小さく苦笑して。
「まあ、これからそれ由来の苦痛を与える僕たちも、劣らず酷いのだろうけれど……」
それでも、自分達が先へ進むためと、彼女を無限の苦しみから解放するためには、これしか方法がないのだと割り切った。どれだけ言葉をかけたところで、彼女の苦痛は和らがないし、彼女が元に戻ることはないのだから。
狂える堕天使、生獄のフェリックス。デスギガスの門を守るための殺戮マシーンと化した彼女は、情け容赦なくミサキへと牙を剥く。その肉体は悪魔と化してもなお強靭には見えないが、しかし額に備え付けられた邪眼による呪いは、視線を向けるだけで相手の肉体の自由を奪い、果ては爆破できるという厄介なもの。
「……来るか!?」
嫌な殺気を感じ、ミサキは咄嗟に横へと飛んだ。邪眼がある以上、正面から敵と相対するのは拙い。あれに睨まれたら最後、下手をすれば一定時間は自分の手足が使えなる可能性もあり、頭でも凝視されようものなら、そのまま頭部を木っ端微塵に粉砕されるかもしれない。
長期戦が想定される以上、それだけは避けねばならない事態だった。少なくとも最低1回は彼女を殺さなければ、次なる戦いにも繋げられない。
側面に回り込む形で接近し、ミサキはフェリックスを軽く殴り飛ばす。別に、これでダメージを与えようとは思っていない。ただ、1発でも攻撃らしい何かを当てることができれば、それで彼女の切り札は発動の条件を満たすのだから。
「生まれ落ち、幾多の朝を昇り、数多の夜を見送る。重ねた時間を振り返り、今終わりを痛感しろ。空を仰げ、地に伏せろ。それを、私は灼く」
瞬間、ミサキの殴り飛ばした個所が発光し、フェリックスは全身を巨大な熱球に包まれてしまった。こうなれば、もはや彼女に抗う術はない。邪眼で攻撃しようにも、周囲は紅蓮の炎の如き熱の塊で覆われているのだから、もはや視界さえままならない。
「あ……うぁ……ぁぁぁぁ!!」
狂っていても痛覚は残っているのか、熱球の中でフェリックスが悲鳴を上げた。恐らく、傀儡の人格だけでなく、封印された元人格もあの痛みと苦しみは感じていることだろう。
だが、それでも攻撃の手を休めることは許されない。幸い、ミサキの意識が持つ限りは、何もしなくても攻撃は続く。
やがて、フェリックスであったものが全て焼き尽くされてしまうと、ミサキは新たな敵の接近に備えて身構えた。案の定、灰と化したはずのフェリックスが、ミサキの前に何事もなかったかの如く現れる。さすがに、そう何度も同じ手は使えないと理解しているミサキだったが、それでも自分の限界が来るまではやるしかない。
「第二ラウンドか……。さあ、かかってきなよ。僕の限界が来るまでは、相手をしてあげるからさ」
邪眼の呪いで身体の一部を爆破されようとも、殺せる限りは殺し続ける。そんなミサキの揺るがぬ覚悟は、この後に続く猟兵達の戦いにも、大きく貢献するものとなった。
大成功
🔵🔵🔵
シキ・ジルモント
ああ、何度でも殺そう
この場を突破する為にも、デスギガスの引き起こした悲劇を止める為にも
まずは接近して相手の攻撃を誘う
ダメージは仕方がない、実際に血煙を受ける事で効果範囲を把握したい
その後、拳銃にエンチャント・アタッチメント【Type:I】を装着
ユーベルコードで攻撃し、凍結によって相手の動きを鈍らせたい
動きが鈍ったら先に調べた血煙の範囲の外から射撃で攻撃を行う
素早く動き回らなくなれば急所も狙いやすい
凍結を解除されるまで射撃を繰り返し、殺し続ける
…自分の意志とは関係なく強制的に他者を害してしまう
本来の人格からすれば耐え難い苦痛だろう
そう感じるからこそ、少しでも早く終わらせる為にも手心は一切加えない
●痛みさえも凍らせて
無限に復活を続ける門番を倒すには、その身に宿した紋章が表出するまで殺し続けねばならない。なんとも理不尽な条件であったが、しかしシキ・ジルモント(人狼のガンナー・f09107)は動ずることなく愛用の銃を抜いて構えた。
「……ああ、何度でも殺そう。この場を突破する為にも、デスギガスの引き起こした悲劇を止める為にも」
悪魔になってしまったフェリックスを救う唯一の方法は彼女を無限の死から解放し、在るべき場所に還してやることのみ。肉体の主導権を奪われてしまった彼女は、こちらから仕掛けることをせずとも目の前の敵に攻撃を繰り返すだけの、殺戮マシーンになってしまっているのだから。
「ぅ……ぅぅ……」
何かを伝えたそうに呻きながら、フェリックスは自らの肉体から悪魔の血を噴出させた。霧状に噴霧されたそれは、彼女以外の生物にとっては猛毒だ。ほんの少し触れただけで皮膚に焼けるような痛みを感じ、シキは大きく後退して距離を取った。
(「ダメージは仕方ないとはいえ……迂闊に近づけば、それだけでやられるな」)
想像していた以上の攻撃力に、シキは歯噛みする。恐らく、あれもデスギガスによる改造の結果のひとつなのだろう。喩えるなら、あれはまさしくマグマの血液。そんなものが身体の中を流れていては、彼女自身も苦痛を感じないはずはないのだが……それらも含めて、本来のフェリックスの人格が苦しむことなど、何ら意に介していないというのは悍ましいの一言だ。
どちらにせよ、これは遠距離から攻撃する他になさそうだ。幸い、シキの得意とする間合いもまた遠距離。拳銃にアタッチメントを装着し、シキは戦場全体に、凍れる魔力弾をバラ撒いた。
「……止まれ」
そう言って止まらぬ相手だとは理解していたが、それでも言うだけは言っておく。やはりというか、フェリックスは止まることなくシキへと近づいてくるが、無防備を晒して接近してくるだけの相手ほど狙い易いものはなく。
「あぁ……ぁ……?」
気が付けば、シキの放った凍結弾が、フェリックスの周囲を包囲していた。それらは容赦なくフェリックスの身体を射抜き、体内の血液ごと凍らせてゆく。どれだけ猛毒で、どれだけ熱くとも、所詮は液体。絶対零度の凍結弾を撃ち込まれれば、霧状に噴出した血液もまた、凍結してしまって役には立たない。
「……自分の意志とは関係なく強制的に他者を害してしまう。本来の人格からすれば耐え難い苦痛だろう。だからこそ……ここで終わらせる!」
全身が凍り付いて動けなくなったフェリックスの額を、シキは非情に徹して銃で射抜いた。未だ紋章は表出していなかったが、それでも頭部を射抜かれて無事な者などいるはずもなく。
「……まずは一回、か……」
崩れ落ちたフェリックスの姿を見ても、シキが警戒を解くことはない。果たして、そんな彼の予想通り、フェリックスは頭部をも再生して立ち上がって来た。
だが、それでも彼との戦いにより、フェリックスが消耗したのは紛れもない事実。現に、彼女の身体に埋め込まれた不死の紋章は、ほんの少しではあったものの、早くも表に姿を現し始めていたのだから。
大成功
🔵🔵🔵
レナータ・バルダーヌ
耐久力を頼みにするなら、一撃が重い相手は苦手なはず。
……といってもこれは自分の話なので、不死ともなると通用するかどうか。
それでも、他に方法が思いつかない以上はやるしかありませんね。
サイバーウイング「カノン」装備で参加。
スラスター6基を独立操作し変則的な【空中機動】で敵の攻撃を回避、さらに死角に回って【A.A.ラディエーション】を放ちます。
躱せない攻撃はサイキック【オーラで防御】するか、【念動力】で動きを抑えて凌ぎます。
ダメージレースは避けたいですけど、こちらも最後の頼みの綱は耐久力です。
変則機動で体に掛かる負担や傷の【痛みにも耐えて】、一撃でも多く撃ち込めるよう死力を尽くしましょう。
●異形の堕天使
何度殺しても紋章が破壊されない限りは、永遠に蘇り続けるデスギガスの門番。無限に等しい命を持っている相手を前に、レナータ・バルダーヌ(護望天・f13031)は自らの性質とも照らし合わせ、生獄のフェリックスを攻略する方法を考えた。
「耐久力を頼みにするなら、一撃が重い相手は苦手なはず……ですが……」
それは、あくまで自分のような護りを主体とした戦い方をする者に当てはまること。防御力の限界を超えた攻撃を与えれば、通常の相手ならそれだけで追い込めるはずだが……デスギガスの門番には、それは必ずしも当てはまるとは限らない。
彼らは耐久力が高いというよりも、無限に復活するという性質を持った存在だ。攻撃に何度も耐えられるというよりも、完全なるリセット。今まで受けた様々な効果も含め、死ぬことで全てをリセットし、無傷の状態で蘇ることができるのである。
それはまさしく、デスヒールと呼ぶに等しい代物。時に、自分の死でさえも戦況を覆す条件に組み込めるというのは、殆ど反則に等しい行為。
だが、それでも殺さねば先へ進めない以上、レナータに残された選択肢は限られていた。
サイバーウイングを広げて宙へと舞い、レナータは変則的な軌道を以てフェリックスとの距離を詰める。必殺の一撃は、まだ使わない。これを当てるには殆ど密着できる程にまで近づかなければならないので、遠間から放っても効果はない。
「あぅ……ぅ……ぉぉ……ぉ……」
レナータの接近に合わせ、フェリックスの身体が隆起した。未だ天使の面影を残していた肉体を内から破り、現れたのは異形の巨腕や不気味な触手。それらはフェリックスの身体を中心に広がり続け、レナータを捕縛すべく四方八方から迫ってくる。
「くっ……! さすがに、これを全て避けて近づくのは厳しいですね……」
ある程度は掠めるのも仕方ないと割り切って、レナータは一気に距離を詰めた。フェリックスの肉体を支配する異形の悪魔細胞は、放っておけばさらなる進化を遂げる可能性もある。そうなる前に、とりあえず彼女を一度殺しておかなければ、時間をかければかける程に、こちらが不利になるだけだ。
「痛めつける側は苦手なので、手加減できませんよ?」
発動の条件は、ほんの少し相手に触れるだけで構わない。懐に飛び込んだレナータは、その手からフェリックスの内部に念を流し込む。一度でも食らったが最後、防御は不可能。後は念の力で爆破するだけだったが、フェリックスもまた最後の抵抗を試みる。
「……がはっ! ご……ぶ……」
口から血を吐きながらも、なんとフェリックスは自らの肋骨を刃の如く外へ排出し、それでレナータを突き刺そうとしたのだ。
さすがに、こんなもので挟まれたら無事では済まない。危うく離脱するレナータだったが、あと少しタイミングがずれていたら、自分も爆発に巻き込まれるところだった。
「己の不死性を理解している……わけではなさそうですね。どちらにせよ、捨て身でかかってくるのには違いないようですが……」
封じられた元人格はいざ知らず、傀儡としてのフェリックスの人格は、もはや完全に狂ってしまっているのだろう。だからこそ、時に自らの命さえ顧みない行動に出ることがある。
ダメージレースは避けたいと願うレナータだったが、それは難しいことだった。敵は負傷や体力も含めて完全復活するが、こちらはどうしても疲労や負傷が蓄積する。そうなれば、常に同じ条件で戦うことは難しく、どうしても引き際を見極めねばならない時が来てしまう。
そうなる前に、少しでも多くフェリックスを殺そう。自らの肉体が限界寸前になるまでは戦い続けることを決意し、レナータは蘇生を遂げたフェリックスに、再び突撃していった。
成功
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アヴァロマリア・イーシュヴァリエ
アドリブ歓迎
心情
ごめんなさい、ごめんなさい。
きっと、すごく苦しいよね、悲しいよね、痛いよね、気持ち悪いよね。
でも、やめてあげられない。あなたは本当は悪い子じゃないのに。マリアは、あなたを救えないから……本当に、ごめんなさい。
行動
ユーベルコードで蝗の群れを召喚。
蝗達は無限に復活し続けるフェリックスを無限に襲って、細胞も血煙も魔力も、何もかも食べちゃう。
紋章が姿を表すまで……ううん、紋章が出てきても、完全にたべられなくなるまでは、ずっと。
全て食べ尽くしたら、せめて祈りを。もう二度と、こんな苦しみの中で生きなくて良いように。
オブリビオンじゃない、当たり前の命として平和な世界に生まれ変われますように。
●救済の黙示碌
猟兵達との戦いで幾度となく殺され続けた生獄のフェリックス。彼女の狂気は頂点に達し、ついに形振り構わず、周囲に悪魔の血液を撒き散らすまでに至っていた。
「ぁぁぁ……ぁぁぁぁぁ!!」
仮に、これで失血死することがあっても、彼女は再び蘇るのだろう。もっとも、その苦痛は想像を絶するものであり、その度に狂気も加速度的に進行して行く。
そしてなにより酷いのは、それらの苦痛を改造前の人格も、全て感じているということだ。しかし、その人格は決して表に出てこないが故に、悲鳴を上げることさえ許されない。
泣き叫ぶことも狂うこともできず、永遠の孤独の中でひたすら苦しみ続ける地獄。そんな地獄から彼女を開放すべく、アヴァロマリア・イーシュヴァリエ(涯てに輝く・f13378)は、万物を喰らうイナゴの群れを召喚する。
「おいで、イナゴさん達。ご飯の時間だよ。食べていいのは悪い子だけだからね?」
ユーべルコードでさえ食らいつくすイナゴの大群。概念をも食らう破壊の使途は、フェリックスの放った悪魔の血でさえも食らいながら、フェリックス自身もまた食らって行く。
それは、まさしく黙示碌に記された破滅と破壊の光景だった。何も知らない者が見たら、アヴァロマリアが地獄に地獄で対抗したように見えたかもしれない。
(「ごめんなさい、ごめんなさい。きっと、すごく苦しいよね、悲しいよね、痛いよね、気持ち悪いよね……」)
だが、そんな光景に反し、アヴァロマリアは心の中で泣いていた。彼女は聖者だ。故に、誰であろうと救いを求める者に対し、救いの手を差し伸べることを厭わない。
そんな彼女にとって、痛みと苦しみを伴う死を何度も与える以外に救済の方法がないというのは、あまりに耐え難い話だった。フェリックスがイナゴに齧られる度に、アヴァロマリアの心もまた悲鳴を上げる。フェリックスの元人格は声に出して苦痛を訴えることはないが、だからこそアヴァロマリアには、彼女の心の声が感じられるような気がしてしまい。
(「でも、やめてあげられない。あなたは本当は悪い子じゃないのに。マリアは、あなたを救えないから……本当に、ごめんなさい」)
今の自分には謝罪を繰り返すことしかできない。しかし、いつまでも泣いているわけにもいかないのは、アヴァロマリア自身が知っている。
イナゴによって一片の肉片も残らず食らいつくされてしまったはずなのに、気が付けば新たなフェリックスが姿を現していた。不死の紋章を破壊しない限り、彼女は永遠に蘇生を続ける。灰になるまで焼いても、身体を木っ端微塵に吹き飛ばしても、それこそ彼女を構成する物質が全てこの世から失われても。
繰り返される死と新生。その円環の中で感じるのは、痛みと苦しみが齎す絶望だけ。
もう、そんなことは終わりにしなければならない。だからこそ、アヴァロマリアは手を抜かない。敵の撒き散らす血飛沫が、時にイナゴの群れさえも越えて、自分の頬を掠め傷つけようとも。
悪魔に改造されてしまった悲劇の天使。そんな彼女が、二度と無限の苦しみの中で生きなくてもいいように。オブリビオンとしてではなく、ましてや改造された悪魔などでもなく、当たり前の命として平和な世界に生まれ変われることを願って。
大成功
🔵🔵🔵
願祈・廻璃
(巡瑠と同行します。アレンジや共闘も大丈夫です。)
完全に狂ってしまったならまだしも、意識が残り続けているというのは地獄ですね…。
巡瑠の筆に横座りで乗って、巡瑠に後ろからしがみ付きながら戦場を飛び廻って戦います。
巡瑠が躱しきれなかった攻撃は『願いの筆』の力でいなして敵の攻撃を防ぎます。
本当はあの方を本当の意味で苦痛から解放して助けてあげたい…ですが、今の私達にはその力が足りません。
更に戦争の真っただ中で、状況を先送りにする事もできません。
ダークセイヴァーの…そしてあの方自身のためにも、せめてここで倒して地獄から解放あげましょう…!
同意してくださった味方に【願いの力】を付与して戦闘力を強化します!
願祈・巡瑠
(廻璃と同行、アドリブ・共闘OK!)
元の意識や痛みを残したまま傀儡としての意識だけ狂わせるなんて、どこまで悪趣味なのかしら……。
『祈りの筆』に跨り、廻璃を後ろに乗せて一緒に戦場を翔け巡りながら戦うわよ!
飛行による機動力で敵の攻撃を回避したり距離をとったりして致命傷を避けつつ戦うわ。
あいつがずっと復活し続けるなら、こっちはずっと倒し続けるだけよ!
付かず離れずで敵の周りを飛び回りながら【白黒の光】で敵にダメージを与え続けるわ!
同時に味方には治癒を続ける事で継戦能力を高めながら、不死の紋章が壊れて敵が本当に倒れるまで削り切るわよ!
廻璃の言う通り、延々と続くあいつの地獄をここで終わらせてあげましょ!
●天使の帰還
数多の痛みと苦しみの果てに、ついに体表へ不死の紋章を露出させ始めたフェリックス。
そうすることでしか、彼女を救う手立てはなかった。ここを通るために仕方がないという理由抜きにしても、今の猟兵達には改造された彼女を不死から解き放つ術が、殺し続けて紋章を破壊する以外にないのだから。
もっとも、だからと言って割り切れる者ばかりというはずもなく、デスギガスのやり方に不快な感情を覚える者は多い。ましてや、フェリックスは改造前の意識を残された状態で、半ば暴走に等しい形で戦わされているのだ。
「完全に狂ってしまったならまだしも、意識が残り続けているというのは地獄ですね……」
「元の意識や痛みを残したまま傀儡としての意識だけ狂わせるなんて、どこまで悪趣味なのかしら……」
狂気に染まったフェリックスの姿に、願祈・廻璃(願い廻る神秘・f04941)と願祈・巡瑠(祈り巡る神殺・f04944)は、思わず一瞬だけ顔を背けた。
フェリックスが悪魔に改造される際、彼女の意識は狂うことを許されないものとされてしまった。それ故に、門番へと改造された後も、狂いたくても狂えなかった。代わりに狂ったのは、彼女に植え付けられた傀儡の意識。そのことが、彼女の元人格を更に苦しめ、永遠の地獄へと追いやっている。
もう、ここで終わりにしてやらなければならない。彼女だけでなく、この世界に生きる全ての者達のために、絶望の輪廻を断たなければ。
「本当はあの方を真の意味で苦痛から解放して助けてあげたい……。ですが、今の私達にはその力が足りません。戦争の真っただ中で、状況を先送りにする事もできません」
だから、せめて綺麗に倒してやることが慈悲だと、廻璃は告げた。それに同意し、頷いた巡瑠の身体に力が宿る。廻璃の祈りが形となって、巡瑠に戦うための力を与えて行く。
「あいつがずっと復活し続けるなら、こっちはずっと倒し続けるだけよ! 祈りの輝きを見せてあげるわ!」
これなら行けると踏んで、巡瑠は祈りの筆に乗って宙を舞った。少しでも動き回り、敵の邪視による攻撃を避けるのが目的だが、それだけではない。
「ゥゥ……ァ……ァ……」
巡瑠の全身から放たれる白い光。それを浴びたフェリックスが、途端に苦しみ始めたのだ。巡瑠の放つ白い光は敵を穿ち、黒い光は味方を癒す。攻防一体の攻撃で時間を稼がれては、いかに不死身のフェリックスとはいえ、どうにもできない。
眩い光に目が眩み、フェリックスは邪眼で巡瑠を捉えることさえできないまま溶けていった。だが、それで終わりではないことは、巡瑠も廻璃も知っている。彼女の紋章を破壊しない限り、この戦いに終わりはない。そして……予想の通り、フェリックスは早々に紋章の力で復活を遂げた。その全身に宿る悪魔細胞を活性化させて、より悍ましい姿へと変貌して。
「ゥ……ォォォォォッ!!」
既に天使としての原型を留めず、多数の腕と骨、そして触手の中に顔が埋まっているだけの姿となったフェリックスが、巡瑠と廻璃に襲い掛かる。
「来るわよ! 避けて!!」
自分ではなく廻璃が狙われていることに気づいた巡瑠が叫ぶが、それよりも暴走するフェリックスの方が早い。異形化した触手と腕を伸ばし、フェリックスは祈りを捧げている廻璃を捉え、そのまま四肢を引きちぎらんと力を込める。廻璃の祈りが中断されれば、それで巡瑠の強化も解除されると、本能的に知っているのだろうか。
だが、そんな状況にあってもなお、廻璃は祈りを捧げることを止めなかった。自分が倒れれば巡瑠が危険に晒されるというのもあるが、それだけではない。
「私を殺すつもりですか? ですが……この程度の痛みでは屈指ませんよ」
あくまで平静を装い、廻璃はフェリックスに淡々と告げた。言葉など返ってこなくてもよい。正気に戻ってくれずとも構わない。しかし、ここで泣き言を言ってしまえば、それは今まで数多の苦しみを与えられ続けたフェリックスに対して、あまりに申し訳なく思えたから。
「こっちで終わらせるわ! 後、少しだけ頑張って!」
肉塊の中に不死の紋章を発見し、巡瑠はそこへ白き光を集約させる。黒き光が廻璃を回復し続けている間に、なんとしてもあれを破壊しなければ。
「ゥ……ァ……ァ……」
紋章に直撃を食らったことで、異形の化け物と化したフェリックスの身体が徐々に消滅を始めた。それは巨大な腕や触手から始まり、やがて悪魔と化した細胞の大半もまた、同じように消滅し。
「ァ……ぁ……」
最後に頭だけが残ったところで、フェリックスは掠れる声を発しながら口を開けた。紫色に染まっていた肌は、いつしか美しい輝きを取り戻し、閉じられた瞳もまた開かれて。
「……ありが……とう……」
それだけ言って、寂しげに微笑みながら消えて行く。紋章が破壊された影響で、改造によって与えられた悪魔細胞もまた消滅し、最後の一瞬だけ自我を表に出すことができたのだろうか。
「……最後の最後で……自分の身体を取り戻せたのですね……」
「そんな……酷過ぎるよ……。死ぬ直前の一瞬だけ……本当の姿に戻れたなんて……」
こうなることは分かってはいたが、それでも目の前に現実を突きつけられると、廻璃も巡瑠も、それ以上は何も言えなかった。
命や心を弄び、絶望と狂気で世界を覆わんとするダークセイヴァーのオブリビオン達。彼らを全て駆逐しない限り、このような悲劇もまた繰り返されるのだろう。
それだけは、絶対に許してはならない。この世界に生きる人々の願いを叶える者として、姉妹は改めて闇の根源と戦うことを誓うのであった。
大成功
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