●あきらめを知らない者
サムライエンパイアにおいて猟兵たちとクルセイダー……今は『晴明クルセイダー』との最終決戦は既に始まっている。その光景を遠くから眺めている者がいた。
「あっちゃあ……」
一見可愛らしい少女だが、その正体はれっきとした猟書家『獣狩りのアルヴィナ』だった。闘争を求めてアリスラビリンスより渡って来たアルヴィナが今は亡きクルセイダーに与えられた使命は首塚の一族の全滅だった。だがそれは現時点において一度たりとも成功する事はなく、そして今、その首塚の一族の力により、クルセイダーの居城『魔空原城』がかつての『魔空安土城』同様、地上に引きずりおろされる事になってしまった。
「これってやっぱり、ボクの失態ってことになっちゃうのかな」
だが、まだ間に合う。今からだっていいのだ。改めて首塚の一族を全滅させれば、また魔空原城が飛びあがる事だってあるかもしれない。そしてまさにちょうど今、首塚の一族が一か所に集まっているではないか。
「そうだよ、みーんなぶっ殺せばそれで終わり、簡単な話だよね」
アルヴィナはパイルバンカーを構えた。そして突撃の機を伺う……かくして魔空原城決戦の裏で、また別の決戦が行われようとしていた。
同時期、グリモアベース。
「……ぶっちゃけ腹いせだよね、これ」
サムライエンパイアの話という事で説明するのはエンパイア出身の大豪傑・麗刃(25歳児・f01156)であった。
「ということで、さきの戦争に続いて今回の戦争でも敵城の動きを封じるという大戦果を成し遂げた『首塚の一族』が狙われてるのだ。みんなには彼らを守ってほしいのだ」
首塚の一族は全国の隠れ家に潜んでおり、それが今回の戦争のために再集結したのだが、それが襲撃者にとってはあまりに好都合だったのだ。
「アルヴィナの部下はかの魔軍将『風魔小太郎』が憑装された忍者軍団なのだ。忍者のやり口は化身忍者が詳しいはずなので、彼らの協力を得る事はきっと役に立つはずなのだ……まあ今回は状況が状況だけに、忍者っぽい感じじゃなくて、普通の野戦ぽくなる感じではあるんだけどね」
隠れ家で一族を守っていた化身忍者たちも戸隠流忍者【筒井・哲山】を中心として引き続き護衛の忍務を継続すべく集結してはいるが、これまでの汚名をすすぐべく気合が入ったアルヴィナとその配下たちの前では分が悪い。猟兵の助けが必要であると同時に、猟兵もまた化身忍者に助けてもらうと良いかもしれない。
「確かに今回の戦いはアルヴィナの腹いせぽい感じではあるんだけど、それにしても今この状況で首塚の一族がやられちゃうのはあまりに痛すぎるし、それ以前にオブリビオンのためにこれ以上人死にを出すわけにいかないのだ。いろいろ戦争が重なってるタイミングで悪いんだけど、なんとかしてほしいのだ!」
麗刃の一礼を受け、猟兵たちは戦争真っ只中のサムライエンパイアに向かうのであった。
らあめそまそ
オウガ・フォーミュラ出現のタイミングに正直動揺しているらあめそまそです。急遽、晴明クルセイダーではない猟書家のシナリオをお送りいたします。今回のシナリオにはプレイングボーナスがあり、以下のものをプレイングに取り入れると判定が有利になります。
プレイングボーナス(全章共通)……化身忍者と協力して戦う(猟兵ほど強くはありませんが、忍者の手口に詳しいです)。
代表の【筒井・哲山】以下、化身忍者は必要があれば下記のユーベルコードを使用できます。
降魔化身法:妖怪、悪鬼、幽鬼を宿し超強化する。強力だが、自身は呪縛、流血、毒のいずれかの代償を受ける。
それでは皆様のご参加をお待ちしております。
第1章 集団戦
『葉隠妖忍軍』
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POW : 葉隠手裏剣乱舞
【手裏剣】が命中した対象に対し、高威力高命中の【超巨大手裏剣】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
SPD : 葉隠忍び七つ道具
【自身へ注意】を向けた対象に、【様々な忍具】でダメージを与える。命中率が高い。
WIZ : 葉隠隠れ身の術
肉体の一部もしくは全部を【木の葉】に変異させ、木の葉の持つ特性と、狭い隙間に入り込む能力を得る。
イラスト:橘茅つくも
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●
「敵襲!」
さすがにこれまで隠れ里で首塚の一族を守ってきた化身忍者たちの動きは素早く、敵の襲撃に素早く反応し、リーダー格の【筒井・哲山】を中心に即座に迎撃態勢をとった。だが風魔小太郎を憑装された敵忍者の勢いは彼らの予想をはるかに上回り、速く、そして強いものであった……。
九州にルーツを持つとされる【葉隠妖忍軍】の能力は以下の3つだ。
【葉隠手裏剣乱舞】は最初に牽制の通常の手裏剣を投げ、それが命中した相手に本命の巨大手裏剣を投げつけるという二段階の攻撃だ。初撃を回避すれば本命の攻撃も命中しないためなんとしてもこれを回避したいが、敵も忍者らしく初撃を当てる事に全力を傾けてくる事だろう。
【葉隠忍び七つ道具】は、隠密行動を主とする忍者にしては珍しく、自身を目立たせて我が身に注意を集め、その相手に命中率の高い忍具攻撃をするものだ。とはいえ敵に注意を向けず戦うのはまず無理なので、敵の高命中率の忍具を回避するのは困難が予想される。
【葉隠隠れ身の術】は体の一部あるいは全身を木の葉に変えるものだ。木の葉は様々な所に容易に潜れるため、予想もつかないところからの奇襲攻撃が来る事だろう。加えてひらひらと舞う木の葉は回避能力にも優れている事は容易に予想できよう。
以上、忍者らしくかなり厄介な攻撃がそろっている。そしてこれらを【風魔小太郎】の憑装により、高い技術で使ってくる事が予想されるが、それでもアルヴィナを倒すための、いわばオードブルのようなものだ。さくっと終わらせて本命のアルヴィナに備えようではないか。
ニクロム・チタノ
決戦の中だけどだからこそ丁寧に足場を堅めて戦いに備えないとね
井筒さん、忍者のみんなよろしくお願いしますね
あれ敵の姿が消えてしまったよ、井筒さんこれは何かの術なの?
成る程木の葉に化けて・・・それなら、ボクの真の名紅明日香の名を以てチタノヤタテを降臨させる
蒼焔の盾は防御だけじゃなくこんな使い方があるんだよ
盾が纏う蒼焔で焼き払ってあげる、変身を解除しないと燃え尽きちゃうよ!
たまらず解除したみたいだね重力槍発射だよ
よし、敵の体勢が崩れた井筒さん忍者のみんな攻め込むなら今だよ
猟書家の悪足掻きもこれまで、すぐに引きずり出してやっつけてやる!
●野焼き
ニクロム・チタノ(反抗者・f32208)はサムライエンパイアの猟書家とは何度も戦ってきた。獣狩りのアルヴィナとも2回戦っている。
「決戦の中だけどだからこそ丁寧に足場を堅めて戦いに備えないとね」
なればこそ、猟兵たちとオウガ・フォーミュラとの最終決戦が行われている裏で攻めてきたアルヴィナに3度目の戦いを挑むのは当然の流れといえたかもしれない。戦に先立ち、早速ニクロムは首塚の一族を守る化身忍者たちに挨拶を行った。
「おお!猟兵殿に参戦していただけるのは非常に心強い!しかもアルヴィナとやらを知る者ならなおさらでござる!」
化身忍者たちの中には実際に猟兵の助けを借りてアルヴィナの襲撃を切り抜けた者もいるため、猟兵への信頼感は非常に高い。実際にその最前線にいた事もあるニクロムならなおさらだ。
「井筒さん、忍者のみんなよろしくお願いしますね」
「こちらこそよろしくお願いするでござる……あと拙者の名は筒井でござる」
誤字なのかわざとか判断しかねましたが今回は後者と判断いたしました……さて挨拶もそこそこにニクロムは早速迎撃態勢を整え襲撃に備える。そして間もなく、その時が来た。
『あの時を思い出すな』
迎撃の化身忍者たちの中に猟兵の存在を確認し、葉隠妖忍軍に憑装された風魔小太郎がどこか感慨深げに言った。それはかつてのエンパイアウォー。あの時も今同様に『首塚の一族』は儀式のために大軍に守られ魔空安土城へと向かっていた。その兵を忍法『隕石落とし』で削るのが小太郎に与えられた忍務だった……が、それは猟兵たちに阻止され、小太郎本人もまたその居場所を発見されて討ち取られる運びとなったのだ。
『だが此度は不覚は取らぬ。我が戦をあの世への手土産にくれてやろう……!』
「敵襲!」
知らせと同時に化身忍者たちはすぐさま動き出した。彼らと一緒にニクロムもまた最前線へと躍り出る。そしてこちらに迫りくる敵を改めて目にして……
「……なるほどね、たしかに敵の動きはかなり速いね」
ニクロムは事前情報が正しかった事を改めて確認した。風魔小太郎を憑装された敵忍者はすさまじく動きが良い。化身忍者たちも首塚の一族の護衛として幾たびもの死線を潜り抜けてきたはずではあるが、さすがにこの相手には分が悪いだろう。だが化身忍者には猟兵がついている。猟兵がいてオブリビオン相手に後れを取るわけにはいかないのだ。
「投擲!」
哲山の合図で化身忍者たちは敵忍者に一斉に手裏剣を投げるが、突然敵忍者の姿が掻き消えた。後に数枚の木の葉だけを残し、その姿形が全く捉えられなくなってしまったのである。
「くっ!総員、備えよ!」
「ねえねえ井筒さん?敵の姿が消えてしまったけど、これは何かの術なの?」
「筒井でござる……隠れ身の術、我々忍者は遁術あるいは隠形術と呼んでいるが、おそらく木遁の一種でござろう」
例えば近年ではよく『火遁の術』などは火炎で相手を攻撃する技として扱われているが、もともと『遁走』の『遁』である事を思えば、本来の火遁の術は火を起こして追手の注意をそちらに引き付け、その間に逃走を図る術なのである。遁術は天遁(天候を利用する)、地遁(地形や自然物を利用する)、人遁(人や動物を利用する)がそれぞれ十法の計30が記録にあるが、今回の『木遁』は火遁等と同じ地遁に分類される。
「じゃあ木遁は木で隠れるもの?」
「うむ、しかし彼奴等はさらに高度な術を使うようでござる。自らを木の葉そのものに変える術があると聞いた事があるが、よもやそれを用いているのかも……」
木の葉と化した体は集合離散自由自在。分散して敵に気付かれぬよう隠密裏に動き、思わぬところで集合して襲い掛かって来るという、まさに神出鬼没を具現化したような忍術だ。実に厄介だが、ニクロムには対抗策があった。
「成る程木の葉に化けて……それなら、ボクに考えがあるよ!紅明日香の名を以って!反抗せよ!」
それはニクロムに宿る守護竜チタノヤタテを呼び出す言葉であった。そしてチタノヤタテの力により、青く燃え上がる盾が8つ出現した。それを見て哲山は得心したようにうなずいた。
「火をまとう盾……なるほど、木には火、木生火(五行思想における、木は燃えて火を生む、すなわち木が火の力を強めるという考え方)ということでござるな」
「えーと……まあ、そういう事」
「あとはこれで敵が来るのを待ち受けて撃退するでござるか?」
「うーん、それでもいいんだけどね、どうせならもっと積極的に行きたいかな。蒼焔の盾は防御だけじゃなくこんな使い方があるんだよ!」
8つの盾より蒼焔が噴き出した。炎は敵の消えたあたりを中心に広範囲を焼きにかかる。敵は消えた場所から然程は離れていないだろう、という判断であった。
「ほらほら、変身を解除しないと燃え尽きちゃうよ!」
『くっ、おのれ猟兵め、無茶をしおって!』
さすがに風魔小太郎を憑装された忍者とはいえ、これには木の葉化を解除しないわけにはいかない。次々に姿を現した敵忍者たちに、ニクロムは容赦なく超重力槍を叩きつけた。
「井筒さんにみんな!攻め込むなら今だよ!」
「……その件についてはまた後で良いとして……投擲開始!」
ついで化身忍者たちの手裏剣投擲も再開され、敵忍者たちは少なからぬ打撃に一度撤退を余儀なくされるのだった。化身忍者たちは喜ぶ事なくすぐに次の襲撃に備える。そしてニクロムもまた、次の戦いに向けて気合を入れるのだった。
「猟書家の悪足掻きもこれまで、すぐに引きずり出してやっつけてやる!」
大成功
🔵🔵🔵
鹿村・トーゴ
>戸隠忍
自在符見せ
オレは鹿村
化身忍の端くれだ
この裏戦…無かった様に収めて還ろーぜ
敵は風魔小太郎を憑けられてる
そいで一案
戸隠方も幾人か降魔術で底上げしてオレと先陣切って頂きたい
その裏で遠距離から弓か鉄砲での援護と攪乱
あと火薬余分に有れば変に開けた所や隠れ易そうな所火放つ?
なんか木の葉に化ける奴も居るらしーから
情報共有し【野生の勘】と【聞き耳/追跡】で対応
速さを活かし敵UC躱す為ジグザグに接近
クナイで【武器受け】弾き【念動】で即投げ返し攻撃【カウンター/投擲】
UCは視認困難多数撃ち足取り乱し高威力で【串刺し】クナイで首や腿深く掻き斬り【暗殺】
先陣戸隠忍への被弾も【念動力】で逸らしフォロー
アドリブ可
●命中率
サムライエンパイア出身の猟兵として、鹿村・トーゴ(鄙村の外忍・f14519)もニクロム同様、エンパイアに出現した猟書家とは何度も戦ってきた。当然その中には獣狩りのアルヴィナも含まれている。アルヴィナとの戦いは今回が3度目だ。
「やれやれ、敵さんも懲りねえなぁ」
もはや最終決戦の火ぶたは切って落とされ、今更首塚の一族を攻撃しても意味があるかすらわからぬというのに、それでも戦いを仕掛けてきたのは最後まで任務を全うするがゆえか、それとも単に戦いを好むというアルヴィナの戦闘意欲を満たしたいがためか。どっちにせよ戦いを止め、猟書家を倒さないといけないことに変わりはない。早速トーゴは襲撃に備える化身忍者たちの所に向かった。
「オレは鹿村、化身忍の端くれだ」
「貴殿も忍者でござるか、心強い限りでござる」
天下自在符を見せながら化身忍者の代表に挨拶するトーゴを、化身忍者の代表『筒井・哲山』は快く迎え入れた。そして忍者たちは挨拶もそこそこに早速迎撃の手筈についての相談に入った。
同じころ、葉隠妖忍軍の第二陣が攻撃準備を整えていた。
『猟兵め、緒戦では不覚をとったが、そう何度も後れを取る事はない』
憑装された風魔小太郎の戦意はまだまだ高い。改めて気合を入れなおした。
『此度の戦いで確実に化身忍者どもを滅し、そして首塚の一族を根絶やしにしてくれよう』
敵の第二陣迫る。その一報が伝わるのと、トーゴが戦闘準備を整えるのはほぼ同時だった。クナイを手にしたトーゴのすぐ背後に、哲山をはじめとする化身忍者の精鋭が数人。トーゴとともに最前線に出る者たちだ。そして他の者は後方からの援護射撃目的で弓矢や鉄砲を装備していた。さらに先刻の戦いで木の葉に化けた者がいたため、隠れる場所を事前に焼き払う提案もされた。その時の戦いに参加した猟兵の策によりかなりの部分は焼けていたが、それでもなお残された草地にも火が放たれ、敵の隠れる事ができる場所はかなり減少したように見えた。
「この裏戦……無かった様に収めて還ろーぜ」
戦いに先立ち、トーゴは言った。地に落ちた魔空原城におけるオウガ・フォーミュラとの戦いが表ならば、この戦いは間違いなく、裏戦だ。ならば裏戦らしく、忍ぶような戦いをしようではないか。いっそ誰にも気づかれずに全てを終わらせる事ができれば、なお良し。隠れる事などしないような忍者が昨今主流となりつつある感もあるが、それでは剣豪や破戒僧となんら変わりはない。忍者とはやはり忍ぶ者なのである。
『打って出てきたか、猟兵そして化身忍者どもめ』
忍具を構えて真正面から突撃する葉隠妖忍軍の前にトーゴと他数人の忍者が現れた。化身忍者たちは皆【降魔化身法】を使い、異形と化していた。それが代償を伴うが戦闘能力を上昇させるものである事は、風魔小太郎には重々承知であった。
『まずは猟兵から叩くべし、しかる後に代償で弱った化身忍者どもを片付ければ良い』
「おいでなすったな」
一方トーゴは五感を働かせて敵の動きを察知する事から始めた。今回は敵は先ほどの様に隠れる事はしないらしい。事前情報で聞いた、真っ向から突っ込んで回避困難な忍具で攻撃する策なのだろう。命中率の高い攻撃に対してどうするか。それでもがんばって回避するか、それとも回避はあきらめて防御に全力をそそぐか……
「手筈通りに行くぜ!」
「承知!」
トーゴと化身忍者たちは敵に的を絞らせないためジグザグ移動を開始した。少しでも回避率を上げるために忍者の速度を活かすつもりであった。
『それで回避しきれるつもりか、ならば試してやろう』
敵忍者たちは忍具を投擲した。トーゴのジグザグ移動にも関わらず、忍具は正確無比な狙いでトーゴめがけて飛んでくる。が、トーゴは移動だけでそれを回避するつもりはなかった。クナイを振り抜いて忍具を弾く。そしてそれだけにはとどまらない。
「お返しするぜ!」
なんと弾いた忍具を念動力で操ると、それをそのまま敵忍者たちに投げ返したのだ。念動力の使い道はそれだけではなく、味方の化身忍者たちに投げられた忍具の軌道を逸らし回避させる用途としても活用していた。だがさすがに敵は魔軍将の力を持つ忍者である。投げ返された忍具をあるいは回避し、あるいは受け止めた。
『味な真似を、だがこれならどうかな?』
飛び道具がダメなら近接戦とばかりに敵忍者たちは素早い動きでトーゴに殺到する。迫りくる敵に対しトーゴが懐から出したのは尖った黒曜石だった。
「ま、そーくるわな。ならこんなのはどうかな?」
先刻のお返しにとトーゴは黒曜石を敵忍者に向けて投げつけた。黒曜石は小さく視認困難であり、さしもの忍者といえども回避は難しい。いくつか命中するも、小さいだけあって威力はそれほど大きくない。
『なるほど確かに回避は難しいかもしれないが、この程度なら別に躱す必要もあるまい』
「それはどうかな?」
『何?……ぐわっ!?』
トーゴはダメージが低い代わりに回避が困難な黒曜石を連射し、相手が回避よりも防御を選んだ所で本命の高威力の黒曜石を投げたのだ。思わぬ打撃に敵の足が止まる。
「今だ!」
そこにクナイを構えたトーゴと、それぞれの得物を持った化身忍者たちが突撃する。完全に足並みを乱された葉隠妖忍軍はトーゴのクナイに、哲山のサムライブレイドに、後方からの援護射撃に倒されていき、残った者たちもほうぼうの体で撤退していった。
大成功
🔵🔵🔵
フィア・シュヴァルツ
「敵は風魔小太郎を憑装させたシノビたちか。さて、どう対処したものか」
ふーむ、面倒だから隕石でも落として……
『お、お待ち下さい、フィア様。ここはわたくしめに名案がございます!』
「ならばフギンの案とやらを採用しようではないか」
『筒井哲山殿に協力していただくのが良いかと。彼の者は「降魔化身法」を使えるとのこと。そして妖怪、悪鬼、幽鬼といえば、漆黒の魔女たるフィア様のことにほかなりません!』
なるほど、つまり我の魔力を宿すことで筒井哲山をパワーアップさせるわけだな!
よかろう、【魔力増幅】した我が魔力、存分に使うがよい!
「風魔小太郎の憑装と、我の魔力による化身、どちらが強いか見せてくれようぞ!」
●妖怪悪鬼幽鬼
フィア・シュヴァルツ(漆黒の魔女・f31665)はサムライエンパイアの猟書家との交戦経験は数度あったが、此度の相手『獣狩りのアルヴィナ』と戦うのはこれが初めてであった。
『首塚の一族を狙うなどとは不届きな者たちです!』
「ふむ……」
肩に止まる使い魔のワタリガラスのフギンが義憤に燃える一方、フィアは何事か思案している様子だった。
『どうなさいましたフィア様?』
「うむ、そのアルヴィナとやらと戦う前に、雑魚の群れと戦わねばならぬであろう、その方策を考えていたのだ」
そう。実際に今現在首塚の一族を狙っているのはアルヴィナが差し向けた忍者オブリビオンであり、まずはそれを倒さなければならない。そして雑兵をある程度減らしたところでアルヴィナが出てくるだろうから、それと戦うという流れになるわけだが。
『その通りでございます。しかし相手は風魔小太郎を憑装された忍び、けっして油断はできません』
「ほう、風魔小太郎とな」
『はい。風魔小太郎といえば、|かつての戦争《エンパイアウォー》で首塚の一族が魔空安土城に向かおうとした際、護衛する武士たちを隕石落としでまとめて殺そうとしたとんでもない連中でございます。その風魔めがまた首塚の一族の皆様を狙うとあっては……』
「ふむ」
フィアはフギンの言葉にしばし耳を傾けていたが、やがて押し黙ると、おもむろに口を開いた。
「よし、それでいこう」
『へ?』
「面倒だから敵のやり方にならって隕石でも落として……」
『お、お待ち下さい、フィア様!』
あわててフギンがフィアを止めた。こんな所で隕石みたいな大量破壊兵器をぶっ放したら敵忍者を倒せたとしても味方の忍者たちが被害を被りかねないし、最悪首塚の一族にも被害が出かねない。
『ここはわたくしめに名案がございます!』
「ほう、珍しいな。ならばフギンの案とやらを採用しようではないか」
フィアがあっさり提案に乗ってくれた事にフギンは内心驚きつつも安堵した。おそらくはフィアもそれほど深く考えた案ではなく、単に風魔小太郎がかつてやろうとしていた事にインスピレーションを得たから、動機としては弱かったのだろう。これがフィアが自身で考えた渾身の策だったならば、それをあっさり捨ててくれたかどうかはかなり怪しかったかもしれない。
「で、どんな案なのだ?」
『はい、筒井哲山殿に協力していただくのが良いかと』
「筒井……たしか守りについている忍者であったな」
改めて説明すると、首塚の一族たちはエンパイアウォーののち、オブリビオンから逃れるためにサムライエンパイアのあちこちに隠れ住み、その護衛をしたのが化身忍者たちであった。で、首塚の一族が魔空原城に再集結する際には当然護衛の化身忍者たちもそれに同行し、そのまとめ役となったのが筒井鉄山だった。
『はい、その筒井殿です。彼の者は【降魔化身法】を使い、それで自身を強化して敵と戦うとのことです』
化身忍者が使うユーベルコード【降魔化身法】の説明についても改めて書いておこう。
降魔化身法:妖怪、悪鬼、幽鬼を宿し超強化する。強力だが、自身は呪縛、流血、毒のいずれかの代償を受ける。
『それはデメリットを受けてしまう反面、それを上回る超絶強化の技です。そして妖怪、悪鬼、幽鬼といえば……漆黒の魔女たるフィア様の事にほかなりません!』
「!!!!……なるほど!」
フィアの反応にフギンは内心安堵した。
「つまり我の魔力を宿す事で筒井哲山をパワーアップさせるわけだな!」
『そ、そうです!そういうことです!』
読者の皆様は既にお気づきの事であろう。フギンの言葉は、たしかにフィアが解釈したような、妖怪悪鬼幽鬼で強化するようにフィアの力で哲山を強化するべきだ、という風にもとれるが、ぶっちゃけよくよく見たらこれド直球の悪口に他ならないわけで。フィアのことを妖怪悪鬼幽鬼に他ならないって言ってるわけだしねえ。まあこれまでいろいろやってきた事を考えると結果オーライでみんなの役に立っていたとはいえ、かーなーりダウト的な事やろうとしていたようだし、フギンがこう言いたくなるのもわかるような気がしないでもない。まあフギンもうまいことフィアが『誤解』してくれるように言ったのではあるんだろうけど。
ともあれ、フィアは早速最前線に向かった。既に猟兵の力を借りた化身忍者たちと、風魔小太郎が憑いた葉隠妖忍軍との戦いは激しさを増している。その最前線で勇敢に戦っている忍者がいた。彼こそ筒井哲山だろう。早速フィアは自らの魔力を増幅すべく、契約している悪魔に呼びかけた。
「我と契約せし悪魔よ、我との契約に従い、汝の全ての力を以て、我が魔力の糧となれ!」
発動した【|魔力増幅《マナ・ブースト》】により、フィアの魔力が増大する。そして。
「筒井とやら!我が魔力、存分に使うがよい!」
「猟兵どの……感謝いたします!」
「さて、風魔小太郎の憑装と、我の魔力による化身、どちらが強いか見せてくれようぞ!」
強化を受けた哲山は意気揚々と敵忍者に向かう。葉隠忍者は哲山に手裏剣を投げつけた。最初の一撃を呼び水としてさらに強力な二撃目につなげる【葉隠手裏剣乱舞】だ……が、哲山はサムライブレイドを構えてこれを真っ向から受け止めた。
「真空剣!真っ向両断!」
レーザーのように赤熱したサムライブレイドは手裏剣を叩き落すと、返す刀で妖忍を斬り裂く。妖忍はそのまま光に包まれて消滅していった。その様子に後方から満足気に高笑いするフィア。
「ふはははは!我の力、我ながら恐ろしいのお!」
『はい、フィア様の魔力はたしかにすばらしいです』
魔力以外の事について、フギンはあえて触れなかった。
大成功
🔵🔵🔵
クレア・フォースフェンサー
あの娘達は、かの風魔小太郎の力を宿している
いや、風魔小太郎があの身体を操っていると見るのが正しそうじゃ
決して油断はできぬな
先ほど、あの者達の手裏剣は見せてもらった
こちらに攻め入るというのならば、まずは間合いの外から弓矢で数を減らそう
しかし、敵は風魔小太郎
わしも目には自信があるが、類まれなる忍術やえげつない手段で距離を詰めてくるやもしれぬ
そこは、それらに精通すると聞く哲山殿に御助力を願おう
敵が手裏剣の間合いにまで入ったならば、剣に持ち替えよう
わしは、こちらが本業じゃからな
それにしても――
かつての武田信玄は妖狐のクノイチ
此度の風魔小太郎は少女のクノイチ
猟書家とはそのような趣味を持っているのかのう
●二十八般とも百般とも
ここサムライエンパイアは剣豪の本場であり、いかに他世界で剣術が盛んに行われようと、エンパイア剣術こそ最高なのだ……どこまで本気かはわからないが、グリモア猟兵は常々主張しているらしい。しかしそれは故郷びいきの入った言い分であると言わざるをえまい。他世界にもすばらしい剣技の使い手はいくらでもいる……クレア・フォースフェンサー(光剣使い・f09175)は間違いなくそのひとりに数えられる剣技の使い手であろう。エンパイアの猟書家とも何度か戦っており、その実績は確かだ。ただ、今回相手にする獣狩りのアルヴィナとは初対決であった。そして。
「あの娘達は、かの風魔小太郎の力を宿している。いや、風魔小太郎があの身体を操っていると見るのが正しそうじゃ」
敵である葉隠妖忍軍に憑装されている風魔小太郎ともなにげに初顔合わせなのであった。同じく風魔小太郎を使役する、先日お亡くなりになられたとある猟書家と戦った事はあったが、その時は、戦場に駆け付けた時点で既に風魔を憑装されたオブリビオンは掃討された後だった。真っ向からの剣の勝負ならクレアには豊富な経験と戦歴に基づいた圧倒的な自信があった。だが稀代の忍者である風魔小太郎の力で忍者の絡め手を使われたら……?
「……決して油断はできぬな」
これは当然の評価といえた。これは戦力差ではなく適性の問題だ。ならばどうするか。自身でどうにもならない事ならば、その道の専門家を頼れば良い。忍者に詳しい者はやはり忍者だ。そしてその忍者は、すぐ近くにいた。
「と、いうことで」
クレアが首塚の一族を守る化身忍者たち、そしてその代表たる筒井哲山に助力を仰ぐのは当然の流れであった。
「攻撃はわしが引き受けよう。おぬしには敵めの忍術に対する警戒をお願いしたい」
「たしかに、それが最善の布陣でありましょう。我らにできる事ならなんでもするでござる」
そしてこれまでの戦いで化身忍者たちの猟兵に対する信頼は非常に厚いものになっていた。クレアが猟兵だとわかった事で、哲山はじめとする化身忍者たちは喜んでクレアへの協力を約束してくれたのだった。
『現在の化身忍者など、所詮は戦国の世を知らぬ者たち。太平の世でいかに鍛錬を積もうと、経験を得ぬ忍術、所詮は畳の上の水練……連中の事をそう侮っていたが、どうやらその認識を改めねばならぬようだ』
これ以上の醜態を見せるわけにはいかない。次こそはと決意を新たにする風魔小太郎。
『連中の忍術は我らに劣るやもしれぬ、だが猟兵どもとの相乗効果で、その力は増強されるようだ。ならば狙うは……』
武士道を指して弓馬の道と呼ぶ。武士がおさめるべきとされた武術を指して武芸十八般などと呼び、剣術は十八のうちのひとつにすぎない。そして弓術と馬術は十八般のリストにおいてはだいたいトップに来るようである。それほどに重要なのだ。
「先ほど、あの者達の手裏剣は見せてもらった」
なので剣士であるクレアも当然弓に通じていた。エンパイアの強弓とは異なるようだが、光輝く弓矢をつがえ、敵を待ち構えていた。敵が手裏剣の二段構えで来る事、そしてその大体の射程距離は把握している。敵が手裏剣を投擲するよりも早く発見し、手裏剣より長射程のフォースボウで先制攻撃をかけるのが狙いであった。問題があるとすれば、敵が忍者である事だ。野戦のように敵が真正面から攻めてくるのであれば非常にわかりやすい。それならば弓矢の的にすれば良いのだ。だが、忍者のオブリビオンに忍者である風魔小太郎が憑装されているとあっては、真正面から素直にやってくるとは考えづらい。クレアとて武術で鍛えた動体視力には自信はあったが、風魔小太郎の類まれなる忍術やえげつない手段で距離を詰められたら……。
「それにしても――」
ふと、クレアは考えた。今回の敵は少女型のクノイチだ。そして忍者のオブリビオンといえば、かつて今川義元と戦った時に出会った事があった。あの時の魔軍将は武田信玄だったが、それが憑装されていたのは妖狐のクノイチであった。これは偶然の一致で済むのだろうか?
「猟書家とはそのような趣味を持っているのかのう」
……い、いや、両方とも忍者を採用したかったというのがあり、それが女性がかぶったのはまあ、うーん、偶然、で済むものなのやら。猟書家も男だし女の子採用したくなるのかも、と思ったけど今回のアルヴィナは女の子でした。ううむうむ。|閑話休題《ソレハサテオキ》。
「来ます!」
ちょうど思索を終えたところに哲山の声。指し示られた方向を見ると……そこには何もいない。が、よく見たら確かに敵が潜んでいる痕跡らしきものが。忍術に精通の協力がなければ、クレアひとりでは到底気が付かなかっただろう。その地点に光の矢を撃ち込むと、たまらずクノイチが飛び出してきた。
『くっ、察知されたか!』
猟兵といえども忍びの術で接近すれば容易に手裏剣の間合いまで踏み込める。葉隠妖忍の狙いは間違ってはいなかったが、それでも化身忍者への軽視がまだあったかもしれない。隠形を暴かれたクノイチたちは高速移動でクレアに迫るが、どんなに素早かろうと姿を見せたならこちらのもの、とばかりに鍛え抜かれた弓術の腕で放たれる光の矢は次々に妖忍たちを射抜いていく。しかしそれでも数を頼みに迫る妖忍は、ついに手裏剣を取り出した。
『だが間合いに入ればこちらのものよ!』
「とでも思うたか、残念じゃの」
だが、初撃が命中すれば本命の強い手裏剣につなげるはずの渾身の一投は、いつの間に持ち替えたのか、クレアが振るった光の剣の前にあっさりと斬り落とされた。
「わしは、こちらが本業じゃからな」
『くっ!おのれ猟兵!』
そしてクレアは瞬く間に残りの忍者たちを斬っていった。かくして風魔小太郎が憑装された葉隠妖忍軍はほぼ駆逐された。
『ぐっ……だが、影は不滅なり……次は、必ず……』
心底悔しそうな風魔小太郎の声は、やがて搔き消えていった。
大成功
🔵🔵🔵
第2章 ボス戦
『獣狩りのアルヴィナ』
|
POW : 零距離、取ったよぉ!
【瞬時に間合いを詰めて、パイルバンカー】による超高速かつ大威力の一撃を放つ。ただし、自身から30cm以内の対象にしか使えない。
SPD : 躱せるものなら躱してみなよ!
【対猟兵用クレイモア地雷】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
WIZ : キミも料理してあげようか?
戦闘中に食べた【調理済みの肉】の量と質に応じて【身体能力強化と自動回復能力を得て】、戦闘力が増加する。戦闘終了後解除される。
イラスト:たけ姫
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠白石・明日香」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●戦闘狂
だが猟兵たちには休む間も与えられない。手下たちの壊滅に、獣狩りのアルヴィナ自ら最前線に立ったからだ。
『性懲りもなく、またボクのことを邪魔しに来たのかい?』
性懲りもないのはどっちだ。そう言わんとする化身忍者たちの視線にも構わず、アルヴィナは巨大なパイルバンカーを抱えて既に臨戦態勢だ。
『ま、いいか。みーんなぶっ殺しちゃえば解決だからね』
そういうアルヴィナの顔は凶悪な笑顔に満ちていた。これから思う存分戦える。戦い抜き、猟兵を、化身忍者を、そして首塚の一族を殺し尽くす。戦闘と殺戮への期待に満ちた笑顔。もしかしたら彼女にとっては首塚の一族全滅という使命はあくまでおまけであり、戦闘と殺戮そのものが目的なのかもしれない。
アルヴィナの能力は以下の3つだ。
【零距離、取ったよぉ!】は自慢のパイルバンカーによる強烈極まりない一撃だ。近接距離でなければ使えない弱点を持つが、配下の忍者部隊にも負けない敏捷性を持つアルヴィナにとって、猟兵に接近する事など大した問題にはならないだろう。
【躱せるものなら躱してみなよ!】はクレイモア地雷による無差別攻撃だ。スコットランドで使われた大剣からその名を取った地雷は、大量の鉄球を周囲にばらまく事により、広範囲の敵に無慈悲な打撃を与えるものだ。名前の通り回避も困難なことだろう。
【キミも料理してあげようか?】は戦闘中に肉を食べる事で自己強化をはかるものだ。おそらく肉は最初から持参したものだと思われる。単純な戦闘力強化のみならまだしも、厄介な事に自己回復能力も得るためにタフネスも相当に上がる事が予想される。
以上、猟書家らしくかなり厄介な能力がそろっているが、こいつを倒さない事には首塚の一族を守る事ができない。折しも晴明クルセイダーとの決戦の最中だ。なんとしてもアルヴィナを討ち取り、首塚の一族を守り、そして晴明クルセイダー打倒に結び付けたい。
フィア・シュヴァルツ
「ほほう、肉とな?」
『ああっ、万年腹ペコなフィア様の瞳が肉食動物のように輝いておられます!?』
戦場で肉など出す方が悪いのだ。
その肉、殺してでも、奪い取る!
「身体能力強化も自動回復能力も、肉が食べられなければ上昇しまい!
受けてみよ、我が【極寒地獄】!」
『フィア様の氷雪魔術が周囲の気温を下げ……
肉を氷漬けにしていってございます!?』
ふっ、こうして冷凍保存してしまえば、敵を倒した後、あの肉をゆっくり食べられるというもの。
冷凍なら何年も保つであろう。
「さあ、筒井哲山よ。
我が肉を凍らせている間に、あの敵を倒してくるのだ!
そして肉を我に献上せよ!」
『フィア様、全然働いていないのではございませんか!?』
●食いしん坊万歳
パイルバンカーを構えて臨戦態勢のアルヴィナの前に真っ先に立ちはだかったのはフィア・シュバルツだった。
「アルヴィナとやら!この天才美少女魔術師が相手になるぞ!」
先刻風魔小太郎を魔力で上回ったということもあり、かなりやる気が出ているようである。アルヴィナは白兵戦主体ということで、フィアとは有利な距離がまったく違う。得意な距離を取れた方が有利になる、そういう戦いになる……そう思われていた。
『ふん、魔術師ごときがボクの前に立ちはだかるとはいい度胸だね』
当然アルヴィナもそれは分かっていた。至近距離がとれればアルヴィナが絶対的に有利がとれるだろうが、そこに至る前にはおそらく魔法の雨あられを潜り抜けなければならない。
『でもボクにはこういう手があるんだ!』
アルヴィナは懐から肉を取り出した。既に火は通されている。焼きたてではないが食べる事に問題はないだろう。これで身体能力を強化させ、さらに自己回復力を上昇させる事でフィアの魔法に耐えつつ前進し、至近距離まで到達するのが狙いだった……が。結果論ではあるが、それは最悪の選択肢だったのだ。
「ほほう、肉とな?」
フィアの目が輝いた。フギンがそれに素早く反応する。
『ああっ、万年腹ペコなフィア様の瞳が肉食動物のように輝いておられます!?』
フィアといえば不老不死の美少女天才魔術師という自称……まあまるきりの虚偽ではないのだが……が第一に来るが、彼女を表す語句はそれだけではない。フィアは魔力のキャパシティは非常に高いのだが、燃費があまり良くないようで、割とガス欠を起こしやすいらしい。その代償行為として、食事により魔力を補うとのことだ……そう。その小さな身体に見合わぬほどの非常な大食漢なのだ。で、なんかあると強大な魔力を行使するために、フギンの言う通り、1日のうち空腹を覚えている時間の割合はかなり多いようだ。そしてフィアはちょうどつい先刻、筒井哲山を超絶強化させるために強大な魔力を行使したばかりだ。フィアのガソリンゲージはエンプティに近づいていることだろう。そんなフィアの前で、アルヴィナは肉を出したのだ。それもちゃんと調理された肉を、である。
『な、何だよ、その目は……』
「戦場で肉など出す方が悪いのだ。その肉、殺してでも、奪い取る!」
そうは見せないフィアの迫力の前に、あろうことか、歴戦の戦士であり戦闘狂でもあるはずのアルヴィナが、一歩退いた。フィアの食欲は猟書家をして背筋の凍るような感覚を覚えさせたのである。その事が、今手元にある、つい先刻まで食べる気満々だったはずの肉の事をアルヴィナに一瞬忘れさせた。そしてその隙が、フィアにとっては決定的な時間となったのである。
「受けてみよ、我が【|極寒地獄《コキュートス》】!」
たちまちのうちに戦場全体が極寒で覆われた。アルヴィナも見た感じ身に纏っている布地がかなり薄そうなので、寒さにはそれほど強いようには見えない。また基本的はオウガが荒らさなければ愉快な仲間たちによって過ごしやすく作られているアリスラビリンス出身な点も、寒さには不利に働くかもしれなかった。
『さ、寒い……でもこの程度でボクを止められると思ったら!』
それでもさすがは猟書家、アルヴィナは極寒にも負けず前進してフィアに肉薄せんとした。魔術師相手なら近接戦に持ち込めばアルヴィナの有利は間違いないところだ。そして自らの勝利を決定的にすべく、今更のように手にした肉の事を思い出し……
『……こ、凍ってる!?』
「身体能力強化も自動回復能力も、肉が食べられなければ上昇しまい!」
そう。アルヴィナは極寒に耐えられたかもしれないが、その持ち物まで耐性があるわけではない。いわんや肉をや、である。さすがに冷凍された肉は食べられないし、無理に食べたとしても、冷凍された状態では自己強化の対象になる『調理済みの肉』に該当するかもあやしいかもしれない。
『氷雪魔術で周囲の気温を下げ、肉を氷漬けにて食べられなくするとは!さすがフィア様!ただの力押し以外もできたのでございますね!?』
ちょっとひっかかる点も無きにしも非ずだが、一応フギンも主人に対して高評価めいた言葉を口にした……が。
「ふっ、こうして冷凍保存してしまえば、敵を倒した後、あの肉をゆっくり食べられるというもの。冷凍なら何年も保つであろう!」
『本当の狙いはそちらだったのですか……』
たしかに主人の性分ならそう言う事は十分考えられたし、結果として戦況を有利に持ち込めたので、それでフギンがフィアをほめた事を撤回しようとは思わなかったけど、ちょっとだけ誉めた事が気まずくも思えてきたのであった。そんなフギンの様子には気づく事もなく、フィアは後方に控える哲山の方を見た。
「さあ、筒井哲山よ。我が肉を凍らせている間に、あの敵を倒してくるのだ!そして肉を我に献上せよ!」
「あ、はい!」
哲山はさすがに化身忍者だけあって寒さへの耐性はある程度あるようで、さらにフィアによる強化も続いていたため、極寒の中へも平気で飛び込んでいった。
『フィア様……あくまで凍らせたのは猟書家ではなく、肉の方ですか』
「そうだが?」
『……』
ひょっとしてフィアはこの戦いにおいて大きな働きをしたように見えて、実は全然働いてないのでは?そのような疑念が生じ、フギンは結局、先ほどフィアをほめた事を、やっぱりちょっとだけ後悔したのであった。
大成功
🔵🔵🔵
ニクロム・チタノ
ようやく姿を見せたね、もういい加減諦めたらどう?
まあ、最初から話の通じるヤツとは思ってないけど、反抗の加護あり
反抗の雷装を付与した金剛輪転ゴルディウスをチャクラムに変化させて投げつけるよ
わかっていたさ、キミならチャクラムをかわしてボクの懐に潜り込むぐらい簡単だってね
この辺りはすでにボクの重力領域さ、重力を操作するのは重くするだけじゃない、無重力にも出来るんだよ
いくらパイルバンカーが強力でも無重力空間じゃ上手く踏ん張れなくて当てられないね
ふわふわ浮いて地に足が着いてない状態でボクの攻撃と戻って来た雷を帯びたチャクラムの挟撃は防げるかい?
ここまでだよ、決戦の邪魔はさせないよ!
●近づかせない方法があるならそれに越した事はない
『さ、寒い……』
肉を凍らされて強化を封じられた上にその肉を奪われたアルヴィナだったが、それでもどうにか極寒の世界から脱出に成功した。強烈な冷気をくぐりぬけたにも関わらず、パイルバンカーの動作にも全く問題はなさそうだ。そこに現れた、新たな猟兵。
「ようやく姿を見せたね、もういい加減諦めたらどう?」
ニクロム・チタノにはそれを言う資格は間違いなくあった。繰り返すがニクロムはこれまでアルヴィナとは2回戦っている。間違いなく、性懲りもないのはどっちだと強く思ったひとりであろう。とはいえ、だ。
『そう言われて諦めると思う?』
「まあ、最初から話の通じるヤツとは思ってないけど」
基本オブリビオンはしぶといし、あきらめを知らない。言われたぐらいで翻意するようなやつはいない。出て来てしまったからには何度でも叩き潰すしかないのだ。2度倒しても出てくるなら、3度倒すしか方法はないのだった。
『わかってるみたいだね、なら、ボクを止めたいなら、やるべき事もわかってるよね?』
「当然」
あくまで言葉ではなく力による現状変更を強く望むアルヴィナは殺意に満ちた凶悪な笑顔を浮かべた。対するニクロムは無表情のままだったが、それは決して戦意がない事を意味しているわけではない。表情の作り方を知らないだけで、邪悪なるオブリビオンと戦う意思、そして何より強大なる相手に反抗する意思については誰にも負けるつもりはなかった。
「反抗の竜よ!ボクに加護を!」
ニクロムは自身に力を与える反抗竜チタノの力を金剛輪転ゴルディウスに込めた。魔界の金塊から作られた黄金球は、魔力の力によりさまざまに形を変える。今回ニクロムが選んだのは円形の投擲武器……チャクラムだった。
『なるほどね』
ニクロムの装備を見てアルヴィナはにやりと笑った。近接戦を得意とするアルヴィナに飛び道具で先制攻撃をするのが狙いだろうか。たしかに合理的な方法ではある。だがアルヴィナとて相手が飛び道具を使う事ぐらいは予想の範疇であった。そうでもなければ超近接戦用武器などは使えない。
『それでボクを止められてるってのならやってみなよ!』
ニクロムの手にするチャクラムをまったく気にする様子もなく、アルヴィナは真っ向から突撃を敢行した。迎え撃つニクロムは当然の選択としてチャクラムを投げつける。反抗竜の魔力を籠められたチャクラムは雷光を帯び、稲妻のごとき超高速で狙い違わずアルヴィナに向けて突っ込んでいった。
『こんなもの!』
普通なら正面衝突は免れない。だがアルヴィナは人間にはありえない力で無理やり軌道を曲げた。直線の動きがカーブとなり、直線運動のチャクラムを回避する。しかしチャクラムも反抗竜の加護を受けたチャクラムだ。あさっての方向に飛んでいくと思われたのが物理法則に反抗し、同じく曲線軌道を描いてアルヴィナを追跡した。
『小癪なぁ!でも魔力で動いてるものなら、その魔力のモトを断ってしまえば!』
アルヴィナはさらに速度を上げた。もう回避はやめ、狙いをはっきりとニクロムに定め、改めて真正面から突撃する。その背後から速度を上げたチャクラムが追ってきていた。チャクラムの速度はアルヴィナよりも速いが、このままだとチャクラムがアルヴィナを捉えるよりも前にアルヴィナのパイルバンカーがニクロムに突き刺さるだろう。だが。
「わかっていたさ、キミならチャクラムをかわしてボクの懐に潜り込むぐらい簡単だってね」
『何?こ、これは!?』
次の瞬間、アルヴィナの足が地面から離れていた。反抗竜の魔力は武器に雷装を付与するだけではないのだ。
「この辺りはすでにボクの重力領域さ。重力を操作するのは重くするだけじゃない、無重力にも出来るんだよ」
重力を操る……あまりにも強力な力である。ただ、単に高重力で負荷をかけるだけならばアルヴィナはそのパワーをもって無理矢理前進しかねない。さらに言うならチャクラムの動きも阻害しかねない。その逆を選んだのはうまい選択といえただろう。
「いくらパイルバンカーが強力でも無重力空間じゃ上手く踏ん張れなくて当てられないね」
『ぐっ……!』
これで相手の攻撃は封じた。さらに無重力の狙いはそれだけではない。足を封じるということはすなわち、だ。ニクロムは妖刀を構えた。奇妙な形をした剣は反抗竜の加護により蒼い焔を帯びている。
「ふわふわ浮いて地に足が着いてない状態でボクの攻撃と戻って来た雷を帯びたチャクラムの挟撃は防げるかい?」
チャクラムは既にアルヴィナの背後より至近距離にまで迫っていた。無重力に苦しむアルヴィナだったが、チャクラムの攻撃のみであったならばあるいはそれをなんとか防ぎきる事もできたかもしれない。だが真正面から無重力の影響なく突っ込んでくるニクロムとの同時攻撃ならどうだろうか?
『考えたね……なら、これならどうだぁ!』
アルヴィナの選択はチャクラムを無視してニクロムを攻撃する事だった。ニクロムがアルヴィナに攻撃を当てるためには接近しないといけないだろう。ならばチャクラムの攻撃を耐えさえすれば、パイルバンカーを当てる機会はあるし、当てさえすれば一撃で猟兵を沈める自信もあった。そして猟兵が沈黙すればチャクラムも止まる。要はパイルバンカーを当てさえすれば……。
「惜しかったね、狙いは良かったんだけど」
『……くっ……』
心底悔しそうに、アルヴィナは唇を噛み締めた。その腹部には妖刀が、背中にはチャクラムが、それぞれ刺さっていた。ニクロムは接近しなかったのだ。代わりに、パイルバンカーの射程外から妖刀を投げつける事を選択したのである。
「ここまでだよ、決戦の邪魔はさせないよ!」
『……ま、まだまだ……ボクはこんなものじゃないよ……』
大成功
🔵🔵🔵
鹿村・トーゴ
筒井殿、戸隠方もご油断召さるな
なーんて
忍びに油断は御法度だよな
敵のお嬢、可愛いけどだいぶヤバいぜ
引き続き降魔術で底上げ→投擲や射撃で敵の動き阻害と被弾回避を
オレは奴に接近戦仕掛けて大技狙うよ
そこで援護願える?
ヤバイ奴だが羅刹的には…って、さすがに自重
以降常時【激痛耐性、野生の勘と軽業】で攻撃掻い潜り接近
クナイを【投擲】
【念動力】で操作
→顔、耳へ【目潰し】
→尼僧依のベール、布を穿ち数秒でも地面に縫い付け狙い勝機に繋げたい
アンタに小技は通じねーのは承知
勝負といこーじゃねーか!あるびな嬢
声で気を引き
敵が距離詰める間にUCの気を最大に練り【カウンター】手にしたクナイでUC撃つ【串刺し/暗殺】
アドリブ可
●羅刹と忍びの狭間
サムライエンパイアにおいて猟書家と数多く戦ってきた鹿村・トーゴではあるが、そのひとつとして楽だった戦いなどないだろう。同じ相手と何度も戦えば自然に戦闘経験は増えるし、それだけ楽になるはずなのだが、なにせ相手は猟書家だ。何度戦ってもいまだ強敵であり続けている。
『さすがは猟兵、ひとすじなわではではいかないね』
実際、緒戦において決して浅からぬダメージを負ったはずのアルヴィナであったが、その戦闘力や戦意が失われたどころか、むしろ手負いの獣と化してさらに危険な雰囲気を増したように見えた。
『でも、だからこそぶっ殺せた時はむちゃくちゃうれしいんだよね!』
「やる気満々な相手か、こいつは骨が折れるな。筒井殿、戸隠方もご油断召さるな……なーんて、忍びに油断は御法度だよな」
軽口めいた言葉に反し、トーゴの顔に弛緩の空気はない。むろん筒井哲山はじめとした化身忍者たちも、トーゴの言葉に笑ったり怒ったり等せず、油断なく敵に相対していた。
「敵のお嬢、可愛いけどだいぶヤバいぜ」
「承知でござる、全身から発散される殺気を隠さぬあたり、自らに対する自信の表れと見るべきでござろう」
先ほどの戦いに引き続き、化身忍者たちは降魔化身法で自らを強化していた。時間が経つにつれデメリットによる弊害が大きくなる危険な術ではあるが、強敵相手がゆえにリスクも負わなければならないところであった。
「オレは奴に接近戦仕掛けて大技狙うよ、そこで援護願える?」
「承知でござる」
改めてトーゴはアルヴィナを見る。
「ヤバイ奴だが羅刹的には……」
そこまで言いかけてトーゴは言葉を切った。アルヴィナが戦闘狂であるのと同様、羅刹であるトーゴも強敵を前にしたらむしろ燃え上がるのが性分ではあるが、ただ戦闘狂相手にその一面を見せて真っ向からやりあうのは忍者の在り方ではない。むろん化身忍者なら真っ向勝負だってできるが、それでもアルヴィナ相手に真剣勝負を挑むよりは、忍者らしい戦い方に徹した方が勝ちの目は大きいだろう。理性で自分にそう言い聞かせた。忍びとしての修行で身に着けた野生の勘、そして痛みへの耐性、軽業。例え相手がアルヴィナであっても鍛え上げた事で負ける気はしなかった。
『行くよ!』
アルヴィナの戦術は常に一緒だ。パイルバンカーを携えて真っ向から突撃あるのみ。だがそれが強い。獣狩りの名は伊達ではない。獣を狩る者の突進は獣よりも強いのだ。そして最接近された時の破壊力については言うに及ばない。なのでトーゴとしては近づかれる前に決着をつけたい。得意のクナイを手に、迎撃の準備は整えた。
「上等!やってやろうじゃん!」
トーゴが選んだのは、真正面から突っ込んでくるアルヴィナに対し、あろうことか、こちらも真っ向から突っ込み返す事だった。これには化身忍者たちも驚愕した。やはり戦闘狂である羅刹としての血が抑えられなかったのか?そう思ったとしても仕方がない。
『やる気だね!そう来なくっちゃ!』
意気揚々とパイルバンカーを構えたアルヴィナ……だったが、ぶつかり合う直前でトーゴは軌道を変えた。
「あんたと正面衝突なんかやってられないぜ!」
そしてトーゴの代わりに飛びクナイが数本、アルヴィナの顔面めがけて向かってくる。
『まー、そう来るとも思ってたよ!』
殺意で脳が満たされているようなアルヴィナであったが、その中にも戦闘狂とは違う熟練の戦士としての冷静な部分があり、その部分が冷静にクナイに対する対処をせしめた。巨大なパイルバンカーを一振りし、飛びクナイとまとめて弾き飛ばしたのだ。だがそれもトーゴの計算内だった。弾き飛ばされたと思ったクナイが空中で静止し、再度アルヴィナに飛んでいったのである。
『え!?』
さすがに一度全力で大振りしたパイルバンカーを再度振りなおすよりも、クナイが今度こそアルヴィナの顔面に叩きつけられる方が速かった。クナイはまともに目に命中し、失明こそ免れたもののさすがに激痛でしばらく目を開ける事はできまい。
『くっ、ボクとしたことが、こんな単純な手に!』
悔しがるアルヴィナは目を閉じたままトーゴに向かっていこうとするが、その足が一瞬止まった。トーゴがクナイを飛ばしたのは顔面だけではない。アルヴィナの視界が封じられた事に付けこみ、尼僧依の裾にクナイを飛ばして地面に縫い付けていたのだ。そこにトーゴの声が飛ぶ。
「アンタに小技は通じねーのは承知!勝負といこーじゃねーか!あるびな嬢!」
『さんざん小技仕掛けといてその言いぐさ……でも今度こそやる気みたいだね!』
目を閉じたまま、アルヴィナはトーゴに向けて駆け出していった。服の裾が無理やりに引っ張られ、やがて布地が切れてクナイを地面に残していった。
(よし、来るか)
激突に備え、トーゴは気を練った。目潰しも、服を地面に縫い付ける事による足止めも、全ては必殺の一撃のために少しでも多くの力を溜めるためだった。だが敵の速度は思いの外早い。間に合うだろうか……
「お助けいたす!」
アルヴィナの進撃を止めるべく、哲山はじめとする化身忍者たちが次々にアルヴィナに襲いかかったのである。それはヒグマの突進を止めるようなもので、化身の力で強化された化身忍者たちであったが、パイルパンカーを撃ち込むまでもなく突進の勢いだけで吹き飛ばされていく。アルヴィナにしてみれば猟兵でない化身忍者たちなどものの数ではなく、猟兵しか見えていなかったのだ。
「真空剣!真っ向両断!」
『しつこいなあ、うざいんだよ!』
必殺剣を撃ち込んだ哲山も弾き飛ばされ、もはやトーゴとアルヴィナの間に立ちふさがる者はいない。が、哲山たちの奮闘は無駄ではなかった。彼らが稼いだ時間により、トーゴは十分な気を練る事ができたのだ。
「“視ずの鳥其の嘴は此の指す先に” …穿て大鉄嘴!」
『零距離、取ったよぉ!』
トーゴが作り出した超圧縮空気と、アルヴィナのパイルバンカーが真っ向から衝突し、大爆発を引き起こした。
「……やれやれ」
ようやっと起き上がった化身忍者たちは、爆風のむこうからトーゴが両の足で歩いて来るのを、たしかに見た。
「正面衝突たぁ、忍びらしくねえことしちまったぜ」
「大丈夫でござるか!?」
トーゴの生還に歓声をあげ、同時にダメージを気遣う化身忍者たち。だがトーゴには休む事は許されなかった。
「オレの事より、やつのことを気にかけちゃあくれねえか」
まだ続く爆風に向け、トーゴはクナイを構えなおした。
「やつは……あるびな嬢は、まだ生きてる」
大成功
🔵🔵🔵
クレア・フォースフェンサー
あの一撃を受けてなお動くとは流石は猟書家じゃ
ここで逃がすわけには行かぬ――いや、逃げる素振りすら見せぬか
なるほど、闘争そのものが目的ということじゃな
剣士として相対したくもあるが、それはあやつを喜ばせるだけのこと
それ相応のやり方でお相手しよう
弓を構え、敵の間合いの外から攻撃
一度放った矢は軌道を変えられぬ
こちらを認識している相手には牽制にしかならぬかもしれぬが、その動きは学べよう
剣の間合いに入ってからが本番じゃ
完全戦闘形態へと移行し、全身の機能を強化
動きを見切り、パイルバンカーの間合いに入る前に斬り捨てようぞ
なお肉薄するならば、礼装の機能をもって空中へ
すまぬが、おぬしの土俵に乗るつもりはないのでな
●剣士としてではなく猟兵として
『おのれ……猟兵!』
果たして、爆風の向こうからアルヴィナはやってきた。ゆっくりと、だが確実な足取りで。満身創痍ではあるがその危険度はまったく減少してはいない。それどころか、今のアルヴィナはまさに手負いの獣。獣狩りと称する者にこの物言いはなんとも皮肉な事ではあるが、猟兵への怒りに支配された凄まじい形相はまさに肉食獣のそれと表現せざるを得ないのもまた事実であった。
『ボクは狩る者なんだ!このボクが狩られる側に回るなんて、あっちゃいけないんだ!』
改めてパイルバンカーを構えると気合を入れなおした。大型の杭打ち機も主人とともに激戦を駆け抜け、いまだに壊れた様子もない。主人の戦意に呼応するかのようにパイルバンカーもうなりをあげる。それは今すぐにでも貫き通す獲物を求めているかのようであった。
『猟兵も、首塚の一族たちも、みーんなボクが狩りつくしてやるんだ!』
「やれやれじゃのお」
その姿を遠目に認め、クレア・フォースフェンサーは感心とあきれが半々といったような表情を浮かべていた。
「あの一撃を受けてなお動くとは流石は猟書家じゃ」
動くというのは単に体が動作するだけを指すわけではない。体をして前に進ませうる精神力を、アルヴィナがいまだに保っている事を意味しているのだ。間違いなく、死して骸の海に戻るその時まで戦い続ける事だろう。
「ここで逃がすわけには行かぬ――いや、逃げる素振りすら見せぬか」
『そこにいたか、獣!』
そうこうしているうちにアルヴィナがクレアの姿を認めたようだ。まだ遠くにいるが、あっという間に間合いを詰めてくる事だろう。
『ボクの相手になってもらうよ!』
「なるほど、闘争そのものが目的ということじゃな」
アルヴィナが本来の使命である首塚の一族の掃滅のみに主眼を置いているのであれば、隠密行動で厄介な猟兵は極力避け、一族を直接狙いに行くのが本筋だろう。だがアルヴィナは猟兵の姿を見るや、むしろ嬉々として襲い掛かって来る始末である。実にわかりやすい相手だ。それは一族を守る猟兵の任務からすると有難い一方、強烈極まりない戦意と、それに裏付けられた実力の持ち主を相手にしなければならないという厄介さと表裏一体の関係にある。
「剣士として相対したくもあるが……」
先刻の猟兵の戦いぶりをクレアは思い返していた。忍びとして絡め手主体で動きながら、最後の最後は正面衝突を選んだあの猟兵。純粋に戦術的に鑑みて正面衝突こそ最善手と判断したのか、それとも戦闘を好む羅刹としての血が抑えられなくなったのか。いずれにせよ、後者だとしてもその気持ちはよく理解できる。クレアもまた間違いなく一個の武人なのだ。だが。
「それはあやつを喜ばせるだけのこと、それ相応のやり方でお相手しよう」
クレアは思い切り握りしめていたフォースセイバーをしまい、フォースボウを取り出した。
『来たな!』
光り輝く弓矢が飛んでくるのをアルヴィナははっきりとその目で捉えていた。先ほど受けた目潰しからはすっかり回復したようだ。アルヴィナがいかに速かろうと、さすがに弓矢には負ける。アルヴィナが猟兵のもとに到達するまでに間違いなく複数本の弓矢が飛んでくることだろう。
『でも見えてるよ!』
凄まじいばかりの瞬発力と動体視力で、クレアの正確無比な弓矢の射撃をアルヴィナは次々に回避していった。確かにそれは鍛え抜かれた技ではあったが、それでもその動きは直線だ。先刻の猟兵と違い、外した飛び道具を念動力で操るような事はクレアはしないようであった。
「ふむ、やはりか」
しかしクレアにとって射撃を回避される事は想定の範囲内だった。そうこうしているうちにいよいよアルヴィナは弓矢の射程を割り込むところにまで到達しようとしていた。クレアは本命のフォースセイバーを抜くと強化回路を作動させ、完全戦闘形態を発動させた。そして間もなく訪れるであろう白兵戦の時に備えた。
『逃げる気はないみたいだね!』
「これでもわしは剣士でのお」
肉食獣の笑みを浮かべつつ、アルヴィナはクレアに真正面から突っ込んでいった。自身の力にまったく疑問を抱いていない、罠があろうと搦め手で来ようと全て叩き潰してなお前進し、そのまま敵を屠らんとする強さと自信に満ちた進軍だ。敵ながら、あまりのまっすぐさに眩しさすら覚えるようであった。本当に敵でさえなければ……。それでもなお、付け入る隙は存在した。それはパイルバンカーの射程距離である。その見た目の巨大さに反し、その射程距離はわずか30cm、まさしく零距離攻撃の武器なのだ。射程距離だけならクレアのフォースセイバーの方が長い。それでも油断すると、敵はフォースセイバーの射程距離すら瞬く間に割り込み、あっという間に零距離に入って来る事だろう。だがクレアには勝算があった。
「……今じゃ!」
『伸びる剣だって!?』
フォースセイバーの刃が伸びる。それは先刻の弓矢同様、狙い違わずアルヴィナ目掛けて突き進んでいった。
『何度やっても一緒だよ!』
「さて、それはどうかの?」
これまでと同様、回避されると思われた……が。クレアは弓矢を無駄に打っているわけではなかった。回避する時の動きをチェックするのが最優先事項だったのだ。相手の動きを見切る事、クレアはその事に全てをかけてきたのだ。相手の動きに合わせて微妙に切っ先の向きを変えてやる、と……
『え?……ぐわっ!』
ついにクレアの攻撃がアルヴィナを捉えた。光の刃がその胸に深々と突き刺さったのだ。それでもなおアルヴィナの進撃は止まらない。深手を負いながらもなおも前進を続け、ついにその杭をクレアに届かせんと……
『零距離……』
「やれやれ、本当にここまで来るとはのお」
だがパイルバンカーは空しく空を切った。クレアの純白の騎士礼装が、その体を宙に浮かせていたのだ。
「すまぬが、おぬしの土俵に乗るつもりはないのでな」
『なにが剣士だよ!逃げるなんて負け犬みたいな事恥ずかしくないのか!』
「なんとでも言うがよい」
アルヴィナの罵倒にも、クレアはまったく動じる事はなかった。
「わしは剣士である以前に猟兵じゃからな」
大成功
🔵🔵🔵
●狩る者と狩られる者
『くっそー!みんなでボクの事を馬鹿にしやがって!』
明らかに深手を負いながらも、それでもなおアルヴィナの戦意は衰える事を知らない。もはや使命など完全に忘れたただ一匹の戦鬼が、そこにいた。
『誰でもいいから出てこい!ボクの相手になってみろ!』
「そう吠えるでない」
対称的に、空から猟兵の冷静な声が降って来た。
「あの者たちが相手をしてくれるようじゃ」
その方向には……。
「まだ生きておったのか!この天才美少女魔術師に次の肉をよこしてもらおうか!」
「言ったよね、キミはもう、ここまでって」
「ここまで来たならしゃーねえや、もうちょっとだけ、がんばるっきゃねえな」
傷を、疲れを癒し、改めてはせ参じた猟兵たちを見ても、アルヴィナはまったく折れる事はない。
『……上等だよ!数だけそろえても意味がないってことを、教えてあげるよ!』
それどころか、これまで以上の戦意をもって、猟兵たちに突っ込んでいった。
……
やがて。
(……参ったなあ……)
猟兵たちの猛攻で、ついにアルヴィナの身体が大地に横たわる。その姿が徐々に掻き消えていった。
(次があるなら、もっと大暴れしなきゃな……)
猟書家・獣狩りのアルヴィナの、今回の最期であった。
いまだ晴明クルセイダーは健在であり、猟兵たちとの激戦は続いていた。
そんな最中、表舞台の裏側であまりに重要な戦いが行われた事を知る者は少ない。
最終結果:成功
完成日:2023年06月21日
宿敵
『獣狩りのアルヴィナ』
を撃破!
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