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闇の救済者戦争⑬〜Cloister of Closer

#ダークセイヴァー #闇の救済者戦争 #月光城

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 荘厳と頽廃とを纏う闇の回廊。
 其に取り囲まれたる中心にて、騎士は独り玉座へ座す。
 冑に覆われた貌からは、その表情を窺い知ることはできぬ。只々、鎧の隙間から溢れ出る月光の如きが、生命の脈動を象るかのように明滅するばかり。
 時折、思い出したように貌を巡らせる。回廊の壁面には、数々の絵画が所狭しと展示されている。
 描かれているのは全てが人物。男、女、老人、子供、描かれている人物は様々であるが、その筆致は迫真そのもの。恐怖に歪み、怯懦に怯むその表情、|まるで生きているかのような《・・・・・・・・・・・・・》躍動感と臨場感に溢れている。
 それらを一通り眺め渡し、騎士は一つ頷く。変わらぬそれらの様相に、満足したかのように。
「――この力在らば、我が使命を果たすに不足は無し」
 確信を込めて、騎士は呟く。その使命を何としても完遂するという、確かな決意と共に。



「皆も分かっていると思うけど、この絵、人間を描いた絵画じゃないわ。『生きた人間を絵画として取り込んだもの』よ」
 グリモア猟兵、マグノリア・ステルニティ(亡き創世の七重奏・f30807)は、己の見た予知の光景についてそう補足めいて語る。
「ここは月光城砦群。ダークセイヴァーの第五層にあった月光城が、デスギガスの手でそこに棲んでたオブリビオンごと第三層に吐き出されてきたものよ」
 ダークセイヴァーに存在する「月」の謎を追う過程で存在が見出された城。第五層を支配していた『第五の貴族』の干渉すら退ける強力なオブリビオン『月光城の主』によって護られていた謎の城砦もまた、此度の戦に際して第三層に流し込まれてきていたのだ。
「この月光城の主、何の為にこの城に籠っていたのか、ずっと謎ではあったのだけれど。どうやら、この城塞群の奥にケルベロス・フェノメノンの『欠落』が隠されているみたいなのよ」
 即ち、かの禁獣もまた『欠落』の隠匿によって無敵を達成している存在ということ。これを破壊せねば、かの獣を殲滅すること叶わぬところであった。儀式魔術【Q】によって月の謎を探り続けてきた猟兵達のおかげと言えるだろう。
「で、私が予知してみた結果、その『欠落』の隠されてる場所に繋がる異空間が見つかったの。どうやら『魔空回廊』っていう名前みたいね」
 それは、不可思議なる力の満ちる広大な回廊。この回廊を踏破すれば『欠落』のもとへ至ることも叶うだろう、とマグノリアは見立てるが。
「でも、やっぱりというか簡単にはいかないのよね。この回廊を護るために、月光城の主が待ち構えているのよ」
 予知に見えたその主の名は『魔装騎士ガイウス』。剣術と闇の魔術の双方に熟達し、それらを組み合わせた魔剣術の達人である。
「月の眼の紋章の力もあって元々強い彼なんだけど、どうも魔空回廊には紋章の力を更に増幅する力があるみたいでね……」
 その力、実に本来の『660倍』である。此処までいくと最早、当の禁獣にすら匹敵する強大さだ。このような敵を果たして本当に退けられるのか。
「一つ、対処の術はあるわ。それが最初に言った『生きた人間を取り込んだ絵画』よ」
 月光城の主との交戦経験のある猟兵ならば、かの紋章の力の源が『|人間画廊《ギャラリア》』――絵画や標本、或いはボトルアート等の、生きた人間を取り込んだ『展示品』群である事を知っていよう。その|人間画廊《ギャラリア》が、この魔空回廊内にも存在しているのだという。
「この絵画に取り込まれた人達を救出すれば、それに比例して紋章の力も弱くなるわ。だいたい全体の半分も助け出せれば、敵の力は本来のレベルまで落ち込む筈よ」
 尚、絵画は一種の結界のようなものである。単純に絵画を破壊するだけでも、取り込まれた人間を救出することは充分可能だ。
「でも気をつけてね。絵画を壊す時に描かれてる人を傷つけちゃうと、取り込まれた人にも傷が反映されちゃうから」
 勿論、傷つけどころが悪ければ最悪死ぬ。紋章の弱体化には取り込まれた人間の生死は関係無いが、やはり生かして助けたいところではある。
「あと、勿論ガイウスも全力で救出を妨害してくるから、うまいこと攻撃をいなしながら乗り切って頂戴ね」
 生半な迎撃手段では数瞬の足止めすら厳しいだろう。圧倒的な強敵の猛攻を如何に凌ぐか、策の練り処だ。

「私からはこんな処ね。それじゃ、皆よろしくね」
 結ぶと共にマグノリアはグリモアを起動。猟兵達を、未だ謎多き月光城へと送りだしてゆく。
 目指すは魔空回廊、欠落護る番人と、彼の|人間画廊《ギャラリア》に囚われし人々の待つ一角。


五条新一郎
 月影に隠された真実。
 五条です。

 闇の救済者戦争、続いての戦いは第五層より送り込まれて来た月光の城。
 強大無比なる主の猛攻を乗り越えて『欠落』の在処へ至るべくこれを打倒致しましょう。

●目的
『魔装騎士ガイウス』の撃破。
 ガイウスは『月の眼の紋章』と『魔空回廊』の相乗効果で、戦闘力が本来の『660倍』まで強化されています。

●戦場
 ダークセイヴァー、月光城の奥部の魔空回廊内部、その一角。
 広間の只中にガイウスが待ち構え、その周囲をぐるりと囲むように|人間画廊《ギャラリア》が設けられています。

●プレイングについて
 OP公開と同時にプレイング受付開始、ある程度のご参加を頂いた時点で〆切予定。募集状況はタグにて。
「|人間画廊《ギャラリア》に捕らわれた人々を救出する」ことでプレイングボーナスがつきます。
 人々は絵画の中に囚われていますが、絵画を破壊することで救出が可能です。但し人が描かれている部分を傷つけてしまうと、その傷が救出された人に反映されてしまいますのでご注意ください。
 絵画を破壊するごとにガイウスは弱体化、全体の半分程度を破壊すれば強化は完全に失われます。

 それでは、皆様の月喰らうプレイングお待ちしております。
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第1章 ボス戦 『魔装騎士ガイウス』

POW   :    魔剣術の奥義
【闇の魔術】によって、自身の装備する【魔剣デスブリンガー】を遠隔操作(限界距離はレベルの二乗m)しながら、自身も行動できる。
SPD   :    魔剣術の絶技
自身の【柄頭の魔石】が輝く間、【魔剣デスブリンガー】の攻撃回数が9倍になる。ただし、味方を1回も攻撃しないと寿命が減る。
WIZ   :    魔剣術の神髄
【闇の魔術】により、レベルの二乗mまでの視認している対象を、【魔剣デスブリンガー】で攻撃する。

イラスト:かなめ

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はセシリア・サヴェージです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

紫・藍
藍ちゃんくんでっすよー!
歌うのでっす。恐怖を癒やし、怯懦を却ける歌を!
藍ちゃんくんの歌は皆様を傷つけはしないのでっす。
皆様を閉じ込める絵だけを壊し、そうはさせじとする騎士さんだけを攻撃するのでっす!
歌に閉じ込められた皆様の分だけ騎士さんへ藍ちゃんくんの歌は届きまっすれば!
660倍をもたらすだけの数分の因果応報、相応の威力になるかと!
勿論真正面から戦うつもりもなければ救出が優先でっすが!
救出そのものが攻撃になるのでっす!
オーラ防御は受けたら防御ごと貫かれそうでっすし、むしろ660倍視力への目潰し目的で!
自身で仕留めることよりも後続のための救出弱体化を優先して時間稼ぎしちゃうのでっす!


夜刀神・鏡介
660倍の能力って一体何を言っているんだといいたくなるが
弱体化の手段があるのが不幸中の幸いか……

敵の能力が強化されている状態では戦おうとするだけ無駄だろう
神刀の封印を解除し、参の秘剣【紫電閃】を発動。紫紺の神気を纏う事で行動・思考速度を強化

まずは絵画の破壊に専心。全力で敵から離れながらも適当な箇所の絵画に接近、瞬時に斬るべき箇所を見極めて切断して、封印を破壊
申し訳ないが救出した人の安全に気を配る余裕は流石にないか
一応、絵画を破壊したら即座にその場所から離れる事で少しでも巻き込まれないようにしよう

完全にとは言わずとも、幾らか程度弱体化すれば抑える目も出るだろうか
他の猟兵が動く為の足止めを試みよう


オリヴィア・ローゼンタール
660倍……考えるのも馬鹿らしくなる倍率ですね

簡易召喚した黄金の獅子を駆り、回廊を疾駆(騎乗・騎乗突撃)
【ダッシュ】の勢いを乗せた【ランスチャージ】をぶちかます
獅子より跳び下り、魔装の騎士と相対する
ここは私が引き受けます(時間稼ぎ)
獅子よ、囚われた人々の救出を頼みます(救助活動)

獅子へ向かおうとする魔剣を聖槍で叩き落とす
どこを見ている、貴様の相手はこの私だ!

魔剣を自由にさせるわけにはいかない
危険を承知で近接戦闘を仕掛ける
先制攻撃を可能とする縦横無尽の【聖槍繚乱】
極限の【集中力】で出端を挫くことに専念する

その間、獅子が爪牙を以って絵画を破壊
救出した人々を回廊から【運搬】離脱する


ヘルガ・リープフラウ
※アドリブ連携歓迎

月光城に飾られていた人々の救出には
過去何度か携わったことがあるわ
人の自由を奪い、見世物にした挙句に生命力を奪い取り死に至らしめる
こんな非道を許すものですか

660倍まで強化された攻撃を食らえばひとたまりもないわ
敵の見つからないよう慎重に動かないと

【雪割草の護り】で姿を消し、
足音を立てないように床から浮いた状態で翼飛行
気配を気取られないよう注意しながら目立たないように移動

人々が封じられている絵画は、人物の部分を傷つけないように注意して
「浄罪の懐剣」を突き立て破壊する
大丈夫。わたくしたちが必ず助けるわ。

人質を全員逃がしたら、懐剣に破魔と浄化の力を込めて神罰の一撃を



 月光城砦の奥地、数多の人間を閉じ込めた|人間画廊《ギャラリア》を成す回廊に囲まれた広間にて。
「――来たか」
 設えられた豪奢な椅子に腰かけていた、黒き鎧の騎士。近づく気配を察し、徐に立ち上がる。其に従い、男の背後、椅子の背より一振りの剣が独りでに浮き上がって男の傍らへと漂い来て――男が柄を握った、その直後。
 けたたましい音と共に弾き開けられる入口の扉。其処から飛び込み来たる黄金と白銀の風が、騎士を目掛けて迫り来る!
 響き渡る、高く重い金属同士の衝突音。突き出された黄金の穂先を、騎士は携えた剣の腹にて防ぎ止める。
 穂先を弾き、そのまま槍の主へと斬りかからんとした騎士だが、対手は弾かれるままに飛び退き、着地する。
「――成程。660倍などと、考えるのも馬鹿らしくなるような倍率を聞いていたが……」
 地を踏みしめるは、黄金の毛皮にその身を包む勇壮なる獅子。その背に跨るオリヴィア・ローゼンタール(聖槍のクルースニク・f04296)は、今し方交わした一合によって実感する。出鱈目に過ぎる数字で表されたこの騎士の力の程を。
(私と獅子の突撃を、片手一本で防ぎきるとは)
 並のオブリビオンならば防御ごと吹き飛ばし得る突撃を、あまりにも容易く凌がれた事実を前として、確信する。現状では、この敵を倒すことなど到底叶わぬと。
「この敵、途方もない強敵です」
「一体何を言っているんだと言いたくはなったが……言うだけの事はある力だ」
 獅子より飛び下り自らの足で戦場に立つオリヴィア。視線を数瞬横へと流せば、後続の猟兵が到着していた。そのうちの一方、夜刀神・鏡介(道を探す者・f28122)もまた、前方で無形に構える騎士を見据えオリヴィアの言に同意する。
(弱体化の手段があるのが不幸中の幸いか……)
 周囲の回廊に並ぶ、数十もの絵画。いずれにも、恐怖や怯懦、絶望に表情を歪めた人々の姿が描かれている。あれを救い出せば、この騎士の弱体化は叶い得るとのグリモア猟兵からの情報だ。ならば、まずは。
「藍ちゃんくんでっすよー!!」
 藍ドルたる己が今、此処に来た。其をこの場の者達に――|人間画廊《ギャラリア》に閉じ込められた人々に呼びかけるかのように、紫・藍(変革を歌い、終焉に笑え、愚か姫・f01052)は高らかに名乗りを上げる。
「あの絵の中に閉じ込められた人達、お助けさせてもらうのでっす!」
 そして堂々と己らの目的を語ってみせる。その為に、かの騎士をも打ち倒すと。
「そうはいかん。この魔装騎士ガイウス、主より賜りし|人間画廊《ギャラリア》とこの広間とを護る使命を仰せつかった者ゆえに」
 騎士――ガイウスは無論のこと人々の解放に否を示す。語る言葉には騎士らしく主への確かな忠誠心が滲むが、力なき者に対する庇護の意思は欠片と見せぬ。
 魔剣を構え、猟兵達を目掛け踏み込まんとするガイウスだが。斬りかからんと構えた剣を、すぐさま守りの形へと構え直す。直後、再度激突する金と銀の一撃。オリヴィアの突撃からのランスチャージ。
「此処は私が引き受けます……! お二人は我が獅子と共に人々の救出を!」
 そのまま騎士の剣との鍔迫り合いへと移行しながら、オリヴィアは二人へ呼びかける。己は敢えて、最大強化状態のこの騎士へ立ち向かい足止めを為す、と。
「分かった……! 出来るだけ早く済まそうじゃないか!」
 応えると共に鏡介は携えた鞘から神刀を抜く。露となった刀身が紫紺の光を帯びると共に、鏡介の身にも同色の神気が纏われ。身体も思考も、鋭敏に閃かんばかりの冴えに満ちる。
「藍ちゃんくんは歌うのでっす!」
 藍はその口元へインカムマイクを添わせる。藍ドルは歌うもの。ならば、己は歌を以てこの困難な戦局を打開してみせんとばかり。ギザギザの歯を覗かせて笑ってみせる。
「やらせはせん……! お前達をこの場で滅殺し、更なる絶望の糧としてくれよう……!」
 無論、ガイウスは猟兵達の行いを見逃すつもりなど無し。オリヴィアの槍をかち上げ弾くと、鏡介へと狙いを切り替えんとするが。
「何処を見ている……! 貴様の相手はこの私だ!」
 オリヴィアは弾かれた勢いを膂力で捩じ伏せ、聖槍を振り下ろす。己以外へ意識を向けるなど許さじ、とばかりに。
(これは早々に助け出さないといけないな……!)
 彼我の実力差は圧倒的。時間をかければオリヴィアが持たない。鏡介は頷き、|人間画廊《ギャラリア》からの救出を開始する。

 それと時を同じくして、入口から今一人の猟兵が回廊への進入を果たした。足音も、姿も無いままに。
 其は、髪にミスミソウの花を生やしたオラトリオの女性。ヘルガ・リープフラウ(雪割草の聖歌姫・f03378)。今はユーベルコードを行使して姿を、床から僅かに翼もて浮遊することで足音を消している状態。
(――始まっていたのね)
 視線を向けた先では、聖槍と魔剣とで激しく打ち合うオリヴィアとガイウス。余波の如く荒れ狂う無数の斬撃を、何とか躱し凌ぐ藍と鏡介。皆、既に小さからぬ傷を負っている。
(なんて力……これまでの月光城の貴族達と比べても桁が違うわ)
 圧倒的としか言いようのないガイウスの力を目の当たりとして、戦慄を覚えるヘルガ。彼女も月光城の|人間画廊《ギャラリア》に囚われた人々の救出任務には幾度か関わってきたが、あの時に対峙した城の主達の実力と比べても、かの騎士の力は桁が違う。
 だが、否、故にこそ。
(こんな非道、許すものですか)
 人々の自由を奪い、見世物にした挙句に生命力を奪い取り死に至らしめる。命も尊厳も奪い尽くす外道の所業。任務遂行の為以上に、一人の人間として。止めねばならぬと改めて己に任ずる。
(けれど、慎重に動いていかないと……)
 ヘルガの動きはあくまで慎重に慎重を重ねたもの。斯様に強大なる敵に見つかってしまえば、己などひとたまりもない。如何に他の猟兵達を相手取っているとて、あれ程の相手なら些細な違和感から己の存在に気付いてもおかしくはない。
(今なら、大丈夫そうね)
 絵画の一つへと到達すれば、視線を一瞬ガイウスへ。オリヴィアの振るう聖槍を再度受け止めた処のようだ。今ならば、気付かれたとて即座に攻撃は受けまい。好機だ。
 懐より、一振りの短剣を抜く。水晶の刀身は、ヘルガ共々透明化しているが故に視認すること叶わぬが、罪を贖い清めるという目的に沿った神聖なる雰囲気を纏っているようにも窺える。
 ヘルガは逆手に構えた短剣を、徐に振り上げ。絵画の中に閉じ込められた者を傷つけぬよう狙いを定める。描かれた人の表情は、恐怖に歪んでこそいたが――心なしか、少しだけ穏やかそうな雰囲気にも見えた。この広間を流れている、あの歌のおかげだろうか。
 ともあれ。ヘルガは短剣をそのまま振り下ろして――目前の絵画の、人物の描かれておらぬ側を激しく引き裂いた!
 直後、絵画から人物の姿が徐々に掻き消え――描かれていたのと同じ、初老の男性の姿がその場に現れた。だが憔悴しきったその様相、独りで歩くのは厳しそうか。
(何とか、脱出の手助けをしてあげたいけれど……)
 それは透明化したままでは困難な仕事だ。誰か、姿を現している者の中で護衛の可能な者は――と。
『ガル?』
 振り向いたヘルガは、その足元にまで歩み寄っていた黄金の獅子――オリヴィアの獅子の姿を認めた。

「斬り捨てる……!」
「させんっ!」
 ガイウスの構えた魔剣の柄頭に嵌った魔石が眩く輝く。以て斬撃を繰り出さんとしたその瞬間、横一文字に迸る黄金の斬閃。オリヴィアの聖槍によるものだ。
 近接攻撃を仕掛ける者へは先制攻撃を可能とするこの|一撃《ユーベルコード》を以て、幾度となく攻撃の出鼻を挫き凌いできた。
「まだ……まだだ……!」
 だが、それでも全ての攻撃を凌げるとは言わず。オリヴィアの身は最早満身創痍。シスター服は無残に裂け、そこから夥しい程の血が流れ出る。
(しかし、だんだん理解はできてきた)
 その力の程、未だ猟兵達を圧倒できる程ではあるが。交戦開始当初からは確実に衰えてきている。どうやら、救出が始まっているようだ。別経路からの突入を試みた猟兵――ヘルガの存在を気取られぬように、積極的に仕掛けた甲斐があろうものであろうか。
「―――ッ!」
 再度オリヴィアへと攻撃を仕掛けんとする騎士が、突如呻きを漏らす。其処に流れてきた、優しい響きの歌。聴く者の恐怖を癒し、怯懦を退けるかのような歌。
「~~~~~~♪」
 歌声の主たる藍もまた、小さからぬ傷を全身に追う。それでも彼は声を張る。歌を紡ぐ。あるがままの祈りや願い、心を籠めて。以て紡がれる歌は、穏やかで優しい響きでありながら、理屈も条理も超越する程の力強さを宿す。
 |人間画廊《ギャラリア》に囚われた人々の歪んだ表情が、少しだけ安らぐ。その恐怖を、怯懦を、藍の歌声が癒してゆく。
 そして、それと同時にガイウスへは苦悶を齎す。歌声に乗せて展開されるユーベルコードは、恐怖や怯懦の元凶たる者に対する攻撃をも行う。そしてその威力は、癒した心の分だけ増幅してゆく。
(騎士様、聞こえているでっすか?)
 歌を紡ぎながら、藍はガイウスを見る。呻きながらも魔術を行使するかの騎士、携えたる剣が浮き上がり、藍を目掛けて放たれる。
「っ! ……~~~~♪」
 回避は最早見てからでは間に合わぬ。腕を裂かれ、苦悶の声が歌を一瞬中断する。だが、何事もなかったかのように再開する。この声の嗄れぬ限り、藍は歌い続ける。閉じ込められた人々に癒しを。其の元凶たる騎士に因果応報を。重ねる歌声は、騎士の挙動の精彩を奪い。圧倒的な実力差における攻防を、如何にか凌ぎきるための力となる。
「今のうちだな……!」
 ガイウスの挙動が鈍っているうちにと。鏡介は走る。此処までは間合いを離そうとするたびに九倍の斬撃が降り落ちて来て足止めを受け続けていたが、今の状況ならば己の目的は果たし得よう。
 目指すは、ガイウスから最も遠い|人間画廊《ギャラリア》の一角。苦悶に震える人々を描いた絵画が幾つも並ぶ。
 絵画と、其を飾る額に素早く視線を巡らす。中の人物に被害齎さず破壊を果たす為、どの場所を斬るべきか――研ぎ澄まされた思考速度は、忽ちのうちに最適な軌道を割り出した。
「我が刃は、刹那にて瞬く――!」
 鏡介は神刀を振るう。一瞬九斬。命数を削るリスクも呑み込んで振るわれた刃が、一息に三つの絵画を斬り刻めば。溶け崩れた絵画の前、三人の少女達を現した。絵画から解放されたのだ。
「此処は危険だ。あちらから脱出を」
 己の状況を把握しきれていない様子の少女達に、然し一から説明するだけの余裕は無く。鏡介はただそれのみを告げ、次なる絵画の破壊へと向かう。顔を合わせる少女達だが、やがて事態を理解したのだろう。揃って脱出せんと駆けてゆく。

 ヘルガが獅子と共に絵画から人々を解放し、鏡介が神刀を振るい絵画を破壊。囚われた人々の擦り切れた心を、藍の歌声が支える。
 そんな救出活動が続くこと、数分の後。
「―――っ!」
 振り下ろした魔剣が、掲げられた聖槍に押し止められる。先程までは守りごと斬り下ろせた筈の一撃が、それすら果たせなくなった。ガイウスとオリヴィア、双方が事態を悟る。
「|人間画廊《ギャラリア》が……!」
「これで、貴様の馬鹿げた強化も終わりだ……!」
 愕然と呻くガイウス、決然と言い放つオリヴィア。此処まで弱体化すれば、最早脅威の度合いは通常のオブリビオンと大差無し。
「おのれ……! だが、まだ……!」
 なれども戦闘を放棄する訳にはいかぬ、ということか。尚も交戦の意思を示しながら、剣を構えるガイウス。だが。
「否! 貴様も、最早終わりだ!」
 振り抜かれた、オリヴィアの聖槍の横薙ぎ一閃。防ぎ止めること叶わぬまま、ガイウスは吹き飛ばされていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

夢ヶ枝・るこる
■方針
・アド/絡◎

■行動
あまりな相手ですが、何とか?

『FPS』と、それを模した『FVS』を各種探査に回し、騎士さんの居場所と『絵画』の位置を探査しまして。
【燦華】を発動、『祭礼の女神紋』により『祭器』各種共々、全身を『光』に変換しますねぇ。
凄まじい強さの相手ですが、『探知』により先に居場所を探り『光速移動』で騎士さんと違う位置へ移動し続ければ『会敵を避ける』ことは可能でしょうし、捕捉されたら『FIS』の転移と速度を併せ、全力で退避に徹すれば逃げ切ることは出来るでしょう。
十分な解放が完了するまでは逃げの一手、『絵画』破壊時は『刀』のみ実体化させ端を[切断]、中の人を傷つけない様気をつけますねぇ。


サク・ベルンカステル
「魔剣術の騎士が相手とは魔剣士として是非手合せ願いたい」

自身の随行大剣と敵が操る魔剣が空中で剣戟をかわす。
自身も手の黒剣で立ち向かうも660倍に強化された相手の装甲に阻まれダメージを与える事が出来ない。
ならばとUC赫血黒刃(POW)を使用し無数の刃を生み出し攻撃する。
その実、攻撃は目眩ましで自身の背後に生み出した刃で捕らわれた人々を助ける。

「不条理な理など不要。さぁ心行くまで魔剣の術で死合おうぞ」


ゾーヤ・ヴィルコラカ
 月光城……! あの城が、こんなところでまた立ち塞がってくるなんて。しかも、城を守る騎士様は紋章と回廊でパワーアップしてるから、今まともにぶつかったら力負けしちゃうかも……何とか絵画の皆を助け出さなきゃ。

 【UC:縛鎖の氷刃】(WIZ)を発動よ! まずは氷で足止めする〈時間稼ぎ〉、その隙に絵画へ〈浄化〉の〈属性攻撃〉で囚われた皆を助け出すわね。遠くから放たれる魔剣の一撃は〈結界術〉で強化した〈盾受け〉で防ぐように動いて、弱体化したところに〈全力魔法〉を放つわ。

 誰かを虐げて得た力なんて、そんなのあんまりよ。そこを退いて騎士様、わたしはみんなを助けに来たんだもの!

(アドリブ等々大歓迎です)


ロラン・ヒュッテンブレナー
・アドリブ歓迎

月光城までここに来ちゃったんだ…
それに、また人間画廊があるんだね
この人間画廊は、絶対存在を許さないの

月の光を放つ月光城なら、満月の魔力は吸収し放題だよね
ちょっと無茶なことをして見ようかな

防御用の結界を多重に張ってから、絵画の額縁に触れて魔力接続、ハッキング
結界も受けるよりも反らす事を優先した形状にして、割れたら張り直しなの
結界のような物なら、結界魔術師のぼくなら解除できるはずなの
構成式、把握したの
ぼくの魔力で術式を上書き、無効化して壊すよ

あなたの魔力、受けながら、たくさん解析させてもらったよ
お城の月光を吸収、満月の魔力を顔に集中してチャージ
UC発動
UC毎魔力を消し飛ばすの!



 月光城。その内に数多の人々を『展示物』という形に捕らえた『|人間画廊《ギャラリア》』を擁する要塞。猟兵達の活躍で幾つもの城が攻略されてきたが、此度の戦において現れたこの城塞は、未だ相当数の人々をその内に捕らえている事実を示していた。
「この城が、こんなところでまた立ち塞がってくるなんてね……!」
「それに、やっぱり|人間画廊《ギャラリア》もあるみたいなの」
 ゾーヤ・ヴィルコラカ(氷華纏いし人狼聖者・f29247)とロラン・ヒュッテンブレナー(人狼の電脳魔術士・f04258)、これまで幾つもの月光城を攻略してきた猟兵達は、此処にきて再び姿を現した其を前に因縁めいた感覚を覚える。なれば、果たすべきこともまた、これまでと同じ。
「この|人間画廊《ギャラリア》は、絶対存在を許さないの」
「ええ。何とかして皆を助けましょう!」
 660倍という途方もない強化を主へ齎しているという事実以上に、このような悪辣極まりなき機構は破壊し、人々は救わねばならぬ。其々の意志を胸に、ロランとゾーヤは回廊の扉を開く。其処では、既に先立って到達していた猟兵達が回廊の主たる騎士と対峙していた。

「……新手か」
 無事な絵画と魔力を接続し直し、改めて強化を施したガイウスは、其処に現れた二人の猟兵と対峙していた。
「はい。此処に囚われた人達は全員助け出させて頂きますぅ」
 緩やかな声音で応える夢ヶ枝・るこる(豊饒の使徒・夢・f10980)だが、その声は僅かに震える。こうして対峙するだけでも、眼前のこの騎士の凄まじい力の程が存分に伝わってくるからだ。
(あまりにあまりな相手ですが……)
 なれど、対抗の術が無いわけではない。己の有する武装群と|女神の奇跡《ユーベルコード》を以てすれば、恐らくは。
「魔剣術の騎士が相手とは」
 一方、何処か高揚した様子で踏み出すのはサク・ベルンカステル(幾本もの刃を背負いし剣鬼・f40103)。魔剣士として、かの騎士が修めし剣術に興味を示したようだ。
「魔剣士、サク・ベルンカステル。是非、手合わせ願いたい」
 名乗ると共に黒剣を構え、背後には四振りの大剣が随う。身に着けた魔剣術と、魂で交わりし四つの刃。それがサクの戦闘術。
「良かろう。魔装騎士ガイウス、お相手仕る」
 応じて愛用の魔剣を構えるガイウス。その構えに奇を衒った要素は無く、故にこそ隙も無い。何より感じられるは、あまりにも圧倒的に過ぎる、その身に宿されたる力の程。

 ゾーヤとロランが到着したのは、まさにその睨み合いの最中であった。
「ぼく達も戦うの。これ以上、誰も|人間画廊《ギャラリア》の犠牲にはさせない」
「ええ。囚われてる皆は、助け出させてもらうわ!」
 各々の言葉でその意志を示す二者。ガイウスの冑越しの視線が、二人を射抜いた。そんな気がした。
「|人間画廊《ギャラリア》は守り切る。我が主よりの預かり物を、損ねる訳にはいかん」
 力強く応えると共に、地を蹴り疾走――否、できない。足元を見る。――足が、凍り付いている。
「動かれるわけにはいかないわ!」
 ゾーヤである。翳した掌から放った氷の魔法が、ガイウスの足を凍らせ足止めを試みたものだ。
「この程度……っ!」
 そうと分かれば直ちに対応は可能。氷を砕いてガイウスが再び走り出そうとしたその瞬間。飛来してきた四振りの大剣が、ガイウスを目掛け斬りかかってきた!
「ちっ!」
 そのうちの一本を刃で弾きながら、四の大剣の包囲を脱出。其処へ迫り来た刃を、掲げた腕甲で受ける!
「……速い」
 その刃の主たるサクは、騎士の反応速度に舌を巻く。大剣の包囲斬撃へ対応した処への一撃にも、焦り無く対応してみせるとは。それに、この鎧。|人間画廊《ギャラリア》の力で、肉体のみならず、装甲も強化されているか。
「ふんっ!」
「ぐ……っ!」
 其処へ突然の衝撃。踏み込んだガイウスが、鎧に覆われた肩からのタックルを仕掛けてきたのだ。砲弾じみた重い衝撃に吹き飛ばされるサク。なれど態勢を立て直し、剣を構えて仕掛け直す。
「やらせはせぬ」
 そのサクから視線を外し、ガイウスは剣を振るう。魔力を帯びたる刃が振り抜かれると同時、遠く離れた空間に魔力を伴う斬痕が刻まれて。
「くぅ……っ!?」
 防ぎ止めたはゾーヤ。だが盾で防いだ斬撃にも関わらずその衝撃は凄まじく。ゾーヤの身は堪らず吹き飛ばされてしまう。
「そこだ」
 一方のガイウスは斬撃の勢いをそのまま乗せて、振り向きざまに剣を投げ放つ。飛びゆく剣の向かう先には一枚の絵画、其処へ迫る一条の光――
(くぅ……っ!?)
 それは、ユーベルコードによって光へと変じていたるこるだ。魔力を帯びた刃は光たる身に対しても一定の殺傷力を発揮。ましてるこるはたった今、己と共に光と化した刀だけを実体化させた状態。そこに刃を当てることなど、彼にとって不可能ではなかった。
 そして更に攻撃範囲を定めんとして、手元へ呼び戻した刃を以て、振り下ろされた黒き剣を押し留める。
「お前の相手は俺だ」
 サクである。態勢を立て直し、再度斬りかかってきたものだ。
「退くがいい」
 応じて放たれる魔剣を随行大剣群で食い止め、サクは尚も斬りかかる。やはり装甲にて押し留められるが、そこで諦めるサクではない。
「何があろうと、斬る……! 行け!」
 サクの身より、幾つもの黒き刃が生える。其は彼の魔の血液を凝縮した、超硬度の刃。掛け声と共に其は勢いよく射出され、ガイウスを目掛け飛翔する。
 早い、だが見えぬ程ではない。ガイウスはあくまでも落ち着いて躱すが、直後に感じるその喪失艦にも似た感覚。
「これは、もしや……っ!?」
 振り向き、悟る。射出された刃は、最初からガイウスを選んだものでもない。その背後、|人間画廊《ギャラリア》の絵画群を狙っての射出だ。
 掲げられた絵画や刃を受けたことで崩れ、その手前には閉じ込められていた人の姿。以て、ガイウスに力与えていた|人間画廊《ギャラリア》の力が衰えた。
「く、おのれ……!」
 不覚を取った。悔しげに呻きながら、剣を構え直すガイウス。だが、猟兵達の反撃は寧ろここからだ。
「――解析完了。やっぱり、ある種の結界みたいなものなの」
 一枚の絵画へと触れていたロランが、得心いったように頷く。彼が行っていたのは、|人間画廊《ギャラリア》を構成する魔術式の解析。絵画という結界を形成し、その内側に人を閉じ込める形であるならば、結界魔術師たる己の業が有効ではないか――そう考えたが故の試みだ。
 いつガイウスの攻撃が来るかと緊張しながらの解析ではあったが、他の猟兵達の戦いぶりもあって解析は無事に果たされた。この結界の構成式は、完全に把握できた。ならば後は。
「ここをこうして――えいっ!」
 魔力を注ぎ込むことで術式を上書きし、|人間画廊《ギャラリア》の維持から除外。その上で、更なる魔力で破壊を果たす。ロランが行った結界の破壊とは、そういう形であった。
(少し動きが鈍ってきたようですねぇ。でしたら、今のうちですぅ)
 光と化して回廊を飛び回っていたるこるも、解放に伴う能力低下でガイウスの反応が鈍ってきたのを見計らい行動再開。光速を活かして絵画へと文字通り瞬く間に到達、実体化させた刀で斬り裂けば。次々と絵画が破れ崩れ、囚われていた人々が解放される。
「もう大丈夫よ、皆。私達が、助けに来たから……!」
 ゾーヤも絵画へ浄化の魔力を注ぎ、以て構成式を崩壊に追い遣る形で救出を進めてゆく。そこに、背後から迫る気配。
「っ!」
 振り向くと共に盾を掲げれば、伝わる衝撃は変わらず重いものの耐えられぬ程ではない。魔剣を振り下ろしたガイウスの姿が其処にあった。
「おのれ、やってくれたな……!」
 恨めしげに唸るガイウス。主から預かったという|人間画廊《ギャラリア》を崩壊に追い遣られたことが、相当に悔しい様子。
「誰かを虐げて得た力なんて、そんなのあんまりよ」
「否だ。力は力。あらゆる手を以て、私はより強く在らん……!」
 そんなことせずとも充分に強いのに、と惜しむようなゾーヤの言だが、ガイウスの側はそうは考えておらぬ様子。
「どちらにせよ、わたしはみんなを助ける。――そこを退いて、騎士様!」
 ゾーヤの身に刻まれし六華状の聖痕が光を放つ。溢れる魔力が盾へと伝わり、冷たい光を帯びだして――数秒の後、放たれるのは極低温の衝撃波。猛烈なる勢いで浴びせられる其を、ガイウスはまともに受けてしまい。
「ぐあぁぁぁぁっ!?」
 鎧が極低温によって劣化、砕けていく。同時にガイウス自身も吹き飛ばされ、無視できぬダメージがその身へ蓄積される。其処へ駆け迫るはサクだ。
「不条理な理など、戦には不要だ」
 故に魔剣の術での死合いを、そう求めるサクに、然しガイウスは否を叫ぶ。
「|人間画廊《ギャラリア》は私が主より授かった大いなる力。其は我が力の一部。其を以て為さずして私の力と言えるものか!」
 吼えると共に、残る|人間画廊《ギャラリア》の魔力を魔剣に結集させんと身構える。このままいけば、未だ少数残る|人間画廊《ギャラリア》に囚われた人々が危険だ……!
「その魔力も、あなたの力も。全部、解析済みなの」
 だが、其処に立ち上がる者が居た。ロランである。|人間画廊《ギャラリア》以外にも、ガイウスの、そして月光城の魔力も。ロランは只管に解析を重ね。その構造の大半を理解するに至っていた。
「この力で、あなたの持つ魔力の全て、消し飛ばしてみせるの……!」
 身構えると共に、額へ魔力が集束し始める。其は月光城に宿る満月の魔力。『月の魔力』であるならば、己にも扱うことが可能な筈。そう踏んだロランの予測は正しかった。
 魔力の集束に従い、ロランの顔には魔術文字による隈取が発生し、肉体もより狼に近い形へと変異を遂げる。その只ならぬ様相、危機感を覚えたガイウスは、其処までに集めた魔力を以てロランへと斬撃を繰り出さんとするが。
「――うぉぉぉおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉんっ!!!」
 ロランの業の完成が先んじた。雄叫びじみた咆哮が回廊へ轟き、満月の魔力が不可視の奔流となって荒れ狂う。残る|人間画廊《ギャラリア》が破壊され、人々が解放され。ガイウスもまた、その身へ集めた魔力を吹き飛ばされ、鎧も半ば以上を砕け散らされ。最早、死に体とすら言える状態に追い遣られる。
「……………」
 ガイウスは、最早身動き一つ取ることなく立ち尽くす。敗北を悟ったのだろうか。ならば。
「これで、終わりだ」
 介錯めいた黒剣の斬撃を、サクが振り下ろし。抵抗なく撃ち込まれたその一撃を以て、魔装騎士の第二の生を、終わりへと至らしめた。



 以て、猟兵達は魔空回廊の一角を攻略。かの禁獣の『欠落』のもとまでは、果たして何処まで近づけただろうか。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2023年05月13日


挿絵イラスト