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闇の救済者戦争⑬〜それでも彼らこそ

作者：黒代朝希

「――『禁獣』ケルベロス・フェノメノンの『欠落』の場所が判明した！その名は『月光城砦群』……デスギガス災群に乗って現れた第五の貴族をも凌駕する「月光城の主達」達が納める城塞群だ」
　ブリュンヒルデ・ブラウアメル（蒼翼羽剣ブラウグラムの元首『剣帝』・f38903）は『闇の救済者戦争』の戦線基地である『影の城』にて集まった猟兵達に指示を出していく。
「奴らがその城塞群の中央に隠している者こそ「ケルベロス・フェノメノンの欠落」――あの『禁獣』を撃破する為に必要な存在だ」
　故、攻略には必須であり……手間がかかる。
　だが対価として「ケルベロス・フェノメノンの欠落」を破壊した場合、禁獣の持つ「無敵能力」を無効化できるのだ。

「この「月光城」の主は……ダークセイヴァーらしい『芸術家』との事だ」
　そう言ってダークセイヴァーを主に担当していた猟兵の顔が苦くなる。
　恐らくは創造した通りの悪趣味さだろう。
「幸いなことに生きてはいてな……本来ならば『月光城の主達』と並行して救出・解放を行った方がいいのだが」
　だが、問題は月光城に施されたある魔術術式だ。
　その名は『魔空回廊』――その言葉に胸を押さえた猟兵がいる様だ。
「――『回廊内にいる限り、戦闘能力が元の『660倍』になる』。それが今回相対する『月光城の主達』が施されている術式だ。無論攻略の目途は立っている」
　それは『能力強化の源は、回廊にぐるりと取り巻かれる形で作られた｜人間画廊《ギャラリア》に「展示品」として囚われている人間達の命』である事。
　逆を言えば『｜人間画廊《ギャラリア》に「展示品」として囚われている人間達』がいなくなれば戦闘力は元のヴァンパイアと同等なのだ。
「だからこそ……今回は『｜闇の救済者《ダークセイヴァー》』と合同で依頼を行う」
　無論の事『生命体の埒外』でない存在が『660倍』となったヴァンパイアに勝てるわけがない。
　彼らが行うのは『｜人間画廊《ギャラリア》に「展示品」として囚われている人間達』の解放。
　それを猟兵達は全力で守り抜くのだ――。

第1章 ボス戦 『影絵の画家ヴィエルジュ』

POW   :    じっとしていてね？骸は拾ってあげるよ 【対象の影絵を描き出し真心 】を籠めた【あらゆる防御、耐性を無視した万年筆】による一撃で、肉体を傷つけずに対象の【魂、内臓組織、精神】のみを攻撃する。 SPD   :    観察眼には自信があるんだよ？ 【瞬時に影絵として描いた敵対 】対象の攻撃を予想し、回避する。 WIZ   :    今描いているところなんだ、邪魔しないでくれる？ 自身が【影絵を描いている 】いる間、レベルｍ半径内の対象全てに【影絵を通した攻撃】によるダメージか【自身を描いた影絵】による治癒を与え続ける。 イラスト：えな 👑11 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

「……成程……｜闇の救済者《ダークセイヴァー》。この世界の『｜正義《悲劇》』に叛逆する者達か」
　――『正義』の定義が『大勢なる者の定義』によるものならば、必ず『少なき者の意見』はあぶれる。
　そこから逸脱する事を『悪』というならば――バーン・マーディ（ヴィランのリバースクルセイダー・f16517）は『悪には悪の正義がある』として正義に弾圧されるヴィランを救う為に戦う猟兵だ。
　そして……ダークセイヴァーにおける『正義』……『大勢なる者』の『｜定義《嗜虐心》』に抗う者こそ――
「善い――我は｜悪《ヴィラン》……その叛逆の刃となろう」
　バーン・マーディにとって『｜闇の救済者《ダークセイヴァー》』は『｜救うべき者《ヴィラン》』として認められた。
　即座にオーラを広範囲……『月光城』の内部に展開し、囚われた人々の位置と｜闇の救済者《ダークセイヴァー》達と敵の能力の把握していくバーン。
「来たれ風よ……最早お前は彼のスピード怪人でもその残滓に非ず……！過去の己を超え顕現せよ！！」
　そのままユーベルコードを発動――『デュランダルスピード怪人『｜黒風《ブラックゼファー》』』によって現れたデュランダル怪人『黒風』が、備えているユーベルコードを用いてバーンと｜闇の救済者《ダークセイヴァー》達を補佐していく。
「吸血鬼の猛攻は我が引き受ける……故、お前には救出と支援を命じる」
「はっ……！マイロードもお気を付けを！」
　救出に向かっていく彼らを見送りながら、バーンは炎のオーラを展開して周囲を照らし影絵を歪め此方への攻撃の妨害と為す。
　そこに『｜黒風《ブラックゼファー》』の風のユーベルコードの支援攻撃が迫る――
「貴方方にはやらせはしません。そのやり方は……敵を作りすぎますよ？現に――こうして叛逆の芽が開いているのですから」
　その言葉は……風と共に去るが、滅びる事は無い。

大成功 🔵​🔵​🔵​

「画家か……ここでお前の芸術アートも終わりだ！」
　獰猛な表情で白石・明日香（｜欠片が集う《十字卿シュラウド》・f00254）は『あらゆる防御、耐性を無視した万年筆』による一撃を回避しながら自身のユーベルコード『｜緋燕十字斬《ヒエンジュウジザン》』を発動。
　放たれる『あらゆる魔法や精神的な護りを破る斬撃』が砕くのは『月光城の主達』――ではなく、彼らの戦闘能力を660倍にしている大本の『｜人間画廊《ギャラリア》』。
　そこで一般人を捕らえて戒めている拘束具のあらかただ。
「面倒だけど周りの人間を助けないとな……流石に660倍は、な」
　幾ら猟兵が『生命体の埒外』であろうとも、660倍に膨れ上がった戦闘能力を持つ相手には真っ向勝負は出来ない。
　故、その強化の大本を破壊する――それが明日香が取った行動だ。
「で、粗方終わったな――という事は、つまり」
　瞬間、『あらゆる魔法や精神的な護りを破る斬撃』が『月光城の主達』に飛来。
　肉体を切り裂かれると同時、次に放たれた『あらゆる物理防御を貫く致命の斬撃』が『月光城の主達』に十字傷を刻み込んでいく。
「お前の創作活動もここで終わりだ、あばよ――虚無に還るがいい！」
　冷淡にそう吐き捨て、明日香は次々と『月光城の主達』に十字傷を無数に刻み込んでいくのであった――

大成功 🔵​🔵​🔵​

「いやー強い敵と戦うのは好きだけれど、流石に660倍の戦闘能力は盛りすぎなんじゃないかな！？」
　怒涛の660倍化されたユーベルコードの威力を前に、笑顔を若干引きつらせながら緋月・透乃（もぐもぐ好戦娘・f02760）は後退していく。
　しかし、その表情に悲壮の感情は存在しない。
「とはいえ……それにある程度食らいついてこそって気もするし、やるだけやってみよう！」
　展示品になっている一般人の救出を担当する｜闇の救済者《ダークセイヴァー》を守る方法……透乃が導き出したのは、至極シンプルで彼女らしいもの。
　即ち、徹底的に囮に徹する事だ。
「とにかく戦い続けるのみだね！――敵の戦闘能力が落ちていないうちは、隙ができないことを意識しつつ、積極的に攻撃していこう！」
　迫り来る『あらゆる防御、耐性を無視した万年筆』を前に、跳躍して逆に攻撃する透乃。
　ぶつかり合う重斧と万年筆が爆音を響かせ、万年筆の切っ先を逸しながら反動で吹き飛ぶ事で透乃は『月光城の主達』の攻撃を回避していく。
「防御無視っていうのは私にとっは無防備で受けても良いって意味だから……敵の戦闘能力が落ちたら気合いだけで受けつつ」
　再びぶつかっていく重斧と万年筆の刃と切っ先。
　金属音を鳴り響かせながら透乃と『月光城の主達』は己の武器を振るっていき――
「はなむけの一撃、受け取ってね――｜緋贐滅墜衝《ヒジンメッツイショウ》！」
　――戦闘を好む前衛である透乃と、強大な｜能力値《スペック》を持とうとあくまで芸術家である『月光城の主達』……
　その差が命運を分けた。
　弾かれる万年筆。敵の戦闘能力……戦闘を継続させるスタミナが減った『月光城の主達』の動きが鈍ったのを透乃は逃さず、ユーベルコードを発動。
　左手だけで持った斧を構えて気合いを纏い、ただ振り下ろす――
　そんなシンプル故に、超威力・超高速・防護破壊の一撃となる攻撃を、透乃は『月光城の主達』に叩き込むのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

「厄介な月光城の攻略に行かなきゃならないのは気が重いが……そうも言ってられないか」
「そうですね、あの『禁獣』……ケルベロス・フェノメノンを撃破できるとなれば、ね」
　そう言いながら最後に『魔空回廊』へと飛び込んできたのはフォルク・リア（黄泉への導・f05375）と複合型悪霊の猟兵、馬県・義透（死天山彷徨う四悪霊・f28057）が一人格『疾き者』。
　その傍らにはこの作戦に志願した『｜闇の救済者《ダークセイヴァー》』達が控えている。
「という訳で、よろしくお願いしますねー」
「単刀直入に言うが、660倍化された戦闘能力を持つヴァンパイア相手では見つかる事が敗北、死に直結する……故に、隠密行動前提で動いてもらう」
　フォルクの言葉に『｜闇の救済者《ダークセイヴァー》』達は気を引き締めた後、ゆるくもしっかりとした『疾き者』の挨拶で気を和らげる。
「ええ、陰海月も霹靂も、『闇の救済者』の皆さんと一緒に救助活動を手伝いますのでー」
「俺自身も出来る限り人々の救助が行われていない状態では、流石に戦術的撤退で戦わないが――囚われていた人や闇の救済者達が危険ならば……時間稼ぎとしてでも敵と戦おう」
　包み隠さず話す事で誠意を示すフォルクと、使い魔の『陰海月』と『霹靂』の協力を取り付ける『疾き者』。
　そんな二人の様子を見て、この作戦に参加する『｜闇の救済者《ダークセイヴァー》』達は頼もしさを感じる――

「この掌に在りしは天の日輪放つ撃鉄。降り注ぐは浄戎の炎。我に仇為す汝らに、等しく光あれ――『シャイントリガー』！」
「逃がさぬ。悪霊が逃がさぬと言ったからには……絶えよ――『四更・雷』」
　戦場となる『月光城』に施されている『魔空回廊』……『月光城の主達』の戦闘能力を『660倍』にする絶大な術式で強化されている敵を前に、フォルクと『疾き者』はそれぞれユーベルコードを解き放って食い止めていく。
　その間に『｜闇の救済者《ダークセイヴァー》』達に『陰海月』と『霹靂』が、『魔空回廊』による戦闘能力660倍化の大本である『｜人間画廊《ギャラリア》』に囚われている一般人達を救出していく。
「さて、影絵を描かせないように、早業を用いてユーベルコードによる二回攻撃をしますねー」
「目晦ましで隙を作りながら……！」
　影絵を描き、影絵で攻撃する『月光城の主達』のユーベルコード。
　その影操作ユーベルコードに対してそれぞれフォルクは『太陽光にも比肩する光線、熱線、電磁波を炎のラミアを封じた魔本から創り上げた黒手袋から放ち、火傷と乾燥、目晦まし、電磁波による障害を齎す状態異常を付与する』ユーベルコードを。
　『疾き者』は『1390本の雷と風を複合した属性の追尾性能を有した、命中すれば生命力を吸収する呪詛の矢』を放っていく。

　やがて『｜闇の救済者《ダークセイヴァー》』達から『｜人間画廊《ギャラリア》』に囚われていた一般人の救出が終わったという報告がグリモア猟兵を介して二人に伝わる。
　同時に『魔空回廊』の効果が切れ、『月光城の主達』の戦闘能力660倍化の加護が消え去る――
「それでは――終わりにしようか」
「熱線よ――焼け」
　それと同時――フォルクと『疾き者』は弱体化したヴァンパイアにユーベルコードの連携攻撃を仕掛け、熱と雷でその肉体を焼き焦がしていくのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

最終結果：成功 完成日:2023年05月10日 宿敵 『影絵の画家ヴィエルジュ』 を撃破！