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ゴブリンは大いに繁栄しています

#けものマキナ #ゴブリン集落 #けものマキナの日常

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「ゴブリンだ」
 (自称)レイリス・ミィ・リヴァーレ・輝・スカーレット(厨二系姉キャラSTG狂・f03431)がいつもの如くゆったりと椅子に座って手を組んでいる。
「ゴブリンスレイヤー退治、続けてのイェーガースレイヤー退治もご苦労であった。まさか、予知に引っ掛かりもしない敵が現れるとはな……」
 |猟兵殺し《イェーガースレイヤー》という存在の異質さ。その名の通り、対猟兵に特化した存在である事は確かだが、分かっている事は少ない。
「今回は撃退したが、今後も現れる可能性はあるだろう。それはさておき、ゴブリン集落での危機は去ったのでお祭りが開催される。ゴブリンは何かにつけて祭りをしたがる種族なのでな」
 恐ろしい強さの人間を撃退した猟兵達をゴブリンは皆で称えたがっているようだ。
「とは言え、元よりゴブリン集落はそんなに備えがある方ではない。と、言うか色々な意味で後先考えない種族だからこの冬を越えるギリギリの糧食程度しかない。その上で祭りをしようとするとそのギリギリも危うくなる」
 同じく寿命千年ある癖に刹那的が過ぎる種族である。だからこその最弱種族なのかもしれないが。
「種族としての性質でそれなのでそれを正そうとしても無駄だろうな。何か、他所の集落や他の世界からでもいいから食料等を持ち込んでやると喜ばれるだろう。無論、食料以外でもいい。大体なんでも喜ぶ」
 与えられた物にケチを付けたりはしない。たぶん。
「今回の英雄たる猟兵諸君の言う事ならゴブリンは何でも聞くだろう、何でもな。ただまあ、一時的な物だ。凄まじく飽きっぽい種族だしな。熱しやすく冷めやすい」
 あらゆる意味で子供レベルなのである。子供の、子供による、子供の為の集落。それがゴブリン集落だ。
「たとえ、特に何も差し入れなくて食料とかヤバそうになってもまあ、近くの集落に勝手に泣き付いて何とかするだろうからそこまで気にしなくてもいい。祭りは祭りだ。楽しめ」
 椅子に深く座って偉そうに手を組むレイリス。
「私は見えた事象を解説するだけ……情報分析はこっちに任せろ」
 そして、けものマキナへと繋がる転送用のゲートを開く。
「では、往くがよい」


Chirs
 ドーモ、Chirs(クリス)です。脅威も去ったのでお祭りです。
 今回は第四章の日常と言う感じです。ゴブリン集落編はこれで一先ず終了という形になります。
 今回もいつも通りアドリブも連携もマシマシになります。ある程度の人数が集まってから書き始めます。皆さんに後先考えない子供達の祝宴を提供出来れば良いなと思う所存でございます。
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第1章 日常 『プレイング』

POW   :    肉体や気合で挑戦できる行動

SPD   :    速さや技量で挑戦できる行動

WIZ   :    魔力や賢さで挑戦できる行動

イラスト:仁吉

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

木霊・ウタ
心情
色々と謎はあるけど
今は祭りを楽しむぜ
皆と仲良くなりたいし

行動
確かに長生きなほど日々の楽しみって大切かも

備蓄用の食料、なんて持って行っても
多分備蓄しないよな
今回の祭り用のものが良さげかも

というわけで焼きそばと綿飴だ
キャベツ、豚肉、麺にソース
そして綿飴製造機にザラメを持っていく
勿論電源も

鉄板で焼きそばジュージューしつつ
綿飴製造機で綿飴を作る
もちろん鉄板の火力は地獄の炎だ
いいカンジに炒めるぜ

皆で仲良く食べるんだぜ?
独り占めはなしだ

途中から用心棒種族の誰かに代わってもらう
要領は大体分かったろ?

んでもって俺は
ゴブリンの太鼓や笛に合わせて
ワイルドウィンドを演奏して
踊り(ゴブリン音頭?を盛り上げる

やっぱ祭りには音楽がつきものだよな

未来は命の重みだ
命が未来を作っていく
だからこそ命を輝かせることが
大切って思うぜ
つまり今は存分に楽しむ時ってことだ
…まあ今更言わなくったってそうしてるけど

祭りはいつまで?
ゴブリン達が飽きるまでか
眠くなるまでだよな、多分

目一杯付き合うぜ(ぐっ



●獄炎の料理人
(色々と謎はあるけど、今は祭りを楽しむぜ。皆と仲良くなりたいし)
 木霊・ウタ(地獄が歌うは希望・f03893)は調理用の鉄板を用意した。備蓄する食料を持って行っても備蓄はしないだろうと考えて。
 後先考えないゴブリンでも流石に冬越えの分の食料まで食べてしまうほど後先考えて無い訳では無い。そう言うのは事前に仕分けしてる。別な種族が……いや、やっぱりゴブリンは考えて無いな。
 まあ、そもそも体躯の小さいゴブリンはそんなに沢山食べられる訳でも無いので春までの食糧は持つ。が、それ以降の食料までは備蓄しない。ゴブリンは祭り好きなのでなんやかんやと祭りを開いて使ってしまうのだ。
 これが短絡的思考かというと、実はそうでも無い。ゴブリンは他種族に頼らなければ生活が出来ない奉仕種族だ。生殖能力に特化しているという点でも積極的に他者と交流を深めていくのに祭りという行事は都合がいい。とにかく明るく楽しくはしゃぎまわっていれば他種族でも寄って来るという訳だ。
 それはともかく。ウタは調理用の鉄板にヘラで油を広げていく。事前に水で解した麺を広げていけばじゅぅぅーっと麵が焼ける香ばしい音と香りが広がる……手元と、対面の位置でも!
(まさか、焼きそば被りとはな)
 そう、ウタと対面の位置でも調理鉄板を置いたオークが水で解した麺を焼いていた。用意しているのは間違いなくソースだろう。このオークは、ウタに対して焼きそば対決をしようというのだ!

 そもそも、オークは食に拘る種族である。人間より大柄の体躯で、プロレスラーと力士の中間といった具合の筋肉の付き方をしているオークは、その体躯を維持する為に多めの食料が必要だ。その筋力を生かした農耕や畜産を得意とするが、弓を引かせればかなりの強弓でも悠々と引ける。ゴブリンが獲物を追い立て、オークが仕留める形の狩猟も出来る。陸で手に入る食糧なら凡そオークは自給可能なのだ。
 加えて、大量の食糧を効率よく摂取する為にも自ら調理する事を好む。食べる事が好きならば作る方も好きになるという訳だ。オークの開く料理店と言えばどの集落でも人気スポットになり得る。

 それ程まで食に貪欲なオークを相手にすればウタの方が挑戦者とも言える。
「上等だ、やってやるぜ」
 ウタは料理人ではない。チャーハンを愛し、餃子を愛し、ラーメンは殿堂入りだ。好きという気持ちでは負けてはいない。
 オークは大きな鉄板の下に炭を並べ、鉄板に満遍なく熱を通している。ヘラを操る手付きも紛れもない手練れ。正直、その辺の手際に関してはウタは勝ち目がない。だが、料理は腕前だけでは決まらず、ウタは猟兵である。
「炎の扱いなら誰にも負けやしない」
 轟ッ! 鉄板の上で獄炎が踊る! 今度はオークが目を見開く番だ。具がキャベツだけのシンプルと言うより手抜きではないかという疑い。だが、あの太麺は何だ。鉄板の上で踊る麺に黒いソースが絡まる。この香ばしさは一体何だ!?
 オークの王道屋台焼きそばに対して、ウタはB級グルメレシピを持ち込んだ。テクニックで勝てないならば、レシピで差を付けろ。何より、炎を友とするウタには焼き損じは無い! 程よく焦がしたもっちり太麺に黒いソース!

「「「「美味い!」」」」
 まあ、結局の所審査員とか居る訳でも無いし細かい味の違いで勝敗を分けるような事にはならないのだが。しいて言うなら食べに来たゴブリンの数だろうが、どっちも計測不能というか、沢山群がって来るので数える暇もない。
「やるじゃねぇか、細いの」
「アンタもな、太いの」
 焼きそば対決をしたら焼きそば友だ。
「あのソース、レシピ教えてくれねぇか?」
「いいぜ。でも、その前にだ」
 ウタはもう一つ持ち込んだ装置に電源を通す。持ち運び発電機が独特のエンジン音を響かせれば、中央の装置が過熱と回転を始める。
「なにこれなにこれ!」
「なんのざんし?」
「もうちょっと待ってな」
 ウタは装置の穴にザラメを流し込む。
「ほら、これを持ってこの中でぐるぐるしてみな」
 ゴブリンに割り箸を渡す。ゴブリンは好奇心に目を輝かせながら割り箸を突っ込んでくるくる回す。
「わ、なんだこれ!?」
「アラクネ糸?」
「なんか固まってきた!」
 箸に溶けたザラメの糸が無数に絡まり、固まっていく。そう、これは綿菓子だ!
「食べてみな」
「わー……ふわふわで、あまーい!」
「皆で仲良く食べるんだぜ? 独り占めは無しだ」
「おー、それ面白いな! こっちも作り方を教えてくれ」
「ああ、もちろんだ」

◆続きます

大成功 🔵​🔵​🔵​

ナヴァリア・エキドナ
アドリブ絡み歓迎

待たせたのぅ、皆の衆!
ちょいと知り合いのグリモア猟兵(メイド)のところから飲食物を拝借してきたぞい。
ちゃんと金貨払いしたからの、じゃから怒られないぞい。

超級料理人の作った料理やら酒やら、いっぱい持ち込むのじゃよ。
産まれた子どもがいると言ったからか、精のつく食べ物や離乳食もあるのぅ。
ま、祝いの品じゃ、飲んで食って騒ごうぞ!
足りなくなったらグリモア使って補充に向かうかのう? 便利じゃな、これ。

他の猟兵にも勧めよう。折角の祭りじゃ、大いに賑わえ!
酒が飲める奴がいるなら、遠慮するでない。ドンドン飲もうではないか。
ぷはーっ! 酒はうまいのぅ!

グリモアベースで座ってるのか、|ここ《けものマキナ》に来るかわからんが、ほれ。レイリスも飲むか食うかせんか!
お主がいたおかげで無事に済んだんじゃ、第一功労なんちゃらというもんじゃ!
遠慮せず、楽しむが良かろうて。



●グリモア使いの荒い奴
「待たせたのぅ、皆の衆!」
 ナヴァリア・エキドナ(ナヴァリア婆さん・f37962)がミニメイドに大量の飲食物を運ばせてやってきた。
「ちょいと知り合いの|グリモア猟兵《メイド》のところから飲食物を拝借してきたぞい。ちゃんと金貨払いしたからの、じゃから怒られないぞい」
 身内使いの荒い奴である。超級料理人の作った料理やら酒やらをミニメイド達に運ばせている。
「産まれた子どもがいると言ったからか、精のつく食べ物や離乳食もあるのぅ」
 この世界には基本的に離乳食の需要が無い。産まれた時から肉体年齢が6歳なので必要が無い。
「ワー、なんかすごーい!」
「これならそのまま食べさせても大丈夫なんだね」
 だが、命の儀によって乳児が産まれるこのゴブリン集落にとっては話が別だ。需要が無い離乳食は自分たちで作る必要があったが、用意してもらえるならその手間は減る。
「ま、祝いの品じゃ、飲んで食って騒ごうぞ!」
「「「わーい!」」」

 ウタがワイルドウィンドを爪弾く。ゴブリン達も楽器を打ちながら歌う。歌う、というより鳴く、という感じだ。詩にならない声を出す。
「ウララララ!」
「ワオワオ!」
「ウラーッ!」
 ウタももはやノリだけで適当にセッションしている。ブレイキングしたり、合わせたり合わせなかったり。気が赴くままに|即興《アドリブ》で弾く。いいリフが決まったと思えばゴブリンも合わせて叩き、踊る。
 台本も譜面も無い混沌の音楽。でも、不思議と心地がいい。これがゴブリン流なのだろう。

「む、酒が足りぬぞ!」
 ナヴァリアはグリモアを使ってメイド空間から酒を取り寄せた。そう、ナヴァリアも立派なグリモア猟兵の一人でありこの程度は造作もない。繋がるグリモアベースは当然私とは別の場所なので中がどうなっているかまでは知らないが、ナヴァリアが繋げるグリモアベースという時点で色々と察せる。
「便利じゃな、これ」
 便利で済ませるな、それ。
「酒が飲める奴がいるなら、遠慮するでない。ドンドン飲もうではないか。ぷはーっ! 酒はうまいのぅ!」
「あー、コイツはいい酒だな!」
「そうねぇ、いいツマミがあるから進んじゃうわ」
 ナヴァリアと張り合える酒飲みはこの集落にはそう居ない。ゴブリンも成体なら飲めるがあっという間に酔ってしまう。必然的に別な種族になる訳だが、オークは酒より食べ物。ケンタウルスもあまり好まない様子。
 と、なるとオーガとアラクネが飲み仲間となる。オーガはギリシャ彫刻めいて絞られた筋肉を持つ種族だ。個体としての戦闘力はオークより上だが、繁殖力に秀でて農耕なども出来るオークと比較するとより純粋な筋力に特化していると言える。戦闘ではもちろん、建築現場や土木工事でもその筋肉は活躍する。
 筋肉が喜ぶ食事を身の上とするオーガだが、無類の酒好き種族でもある。アルコールは筋肉を溶かすらしいが、タンパク質を多めに取り、プロテインと水を欠かさず取るようにして対処するようだ。ハレの日位は絞る事を忘れてもいい。そこまで絞るには眠れない夜もあるオーガだって、たまには飲みたいのだ。
 一方アラクネは消化器の構造が違うのか、アルコールではあまり酔わない。その代わり、カフェインで酔う。猫が木天蓼に酔うような物だろう。なので、アラクネはアラクネ用のカフェインを適度に含んだ酒を飲む。
「このゴブリン村の地酒が中々イケる!」
「イイでしょそれ。アラクネ用も結構イケてるんだぁ」
 意外にも、このゴブリン村には地酒がある。ゴブリン自体は生産性の低い種族だが、実はゴブリンには隠れた名産品がある。
 それは……その、母乳だ。常時妊娠しているゴブリンの女は常に母乳が出る。母乳は出るんだが、本来飲ませる筈の子供が別に母乳を必須としている訳では無いので余る母乳を名産品として取引できるのだ。
 そのままゴブリンミルクとして売り出す事もあれば、ゴブリンチーズ、ゴブリンヨーグルト、ゴブリンバター等々の乳製品も一通り扱っている。まあ、作るのは例によって他種族なんだが。そのミルクを使った乳酒も取り扱っている。
「おい、レイリス! 見えておるんじゃろう? おぬしも飲むか食うかせんか!」
 ……ふむ? いや、見えてはいるんだが。こうしてリプレイを認めているのは結構後のタイミングになっている。私はグリモアから得られる膨大な情報を編纂してリプレイにしているスタイルだ。実は心象とかは推測で書いてる事もあったりするが大体あっているとは思う。
 なので、今見ている私は編纂の真っ最中であり……
「こうして、今この場にいる私とは別の時間軸に居る訳だな」
「なーに、突然現れたかと思えば難しい話をしよる! 飲め! お主がいたおかげで無事に済んだんじゃ、第一功労なんちゃらというもんじゃ!」
「酒が飲めるようになるのはあと三か月くらいかな……編纂している辺りでは」
 まあ、そうだな。たまにはこういうのもいいか。
「遠慮せず、楽しむが良かろうて」
「……いや、宴会とか得意な方でも無くてな?」
 色んな意味で。

大成功 🔵​🔵​🔵​


◆MSよりアナウンス
 プレイングも来なさそうなので、今後このシナリオを『けものマキナの日常』という内容に変更してお届けします。
 過去に登場した場所や、登場していないけどありそうな場所でやりたい事をプレイングとして送ってくれればそれを書いたり書かなかったりします。オーバーロードは必ず書きます。
 例えば、マナキタ集落の収穫祭に参加したり、アルワーツ魔術学園で生徒と特別授業したり、キャバリオン自治集落でキャバリアファイトしたり、ウォール・アクアで買い物したりとか出来ます。
 好評だったら日常シナリオを常設化します。よろしくお願いします。
コニー・バクスター
「せっかくだから、コニーもゴブリン集落で遊んでみたいかな?
 コニーもお祭りに混ぜてもらうのだ☆」
 けものマキナ世界の色々な所へ行ける日常依頼らしいが。
 今さらかもしれないけれど、ゴブリン集落への参加でもいいかな。
 そういやコニー、ゴブリン編は未参加だったね。

「舞い踊れ、コニーの黒き兎よ!」
 コニーは愛機BRRをゴブリン達に見せるよ。
 UCで外部からBRRを操って、BRRにも舞を愉快に踊らせる。
 無論、コニーも楽し気に踊る。
 みんなはキャバリア・ダンスって知ってるかな?
 コニーが教えてあげるよ!

 今回のゴブリン集落でゴブリン達と共に踊るコニーでした。
 って、お話で締め括るのだ!

 アドリブ歓迎。



●すっげぇ! キャバリアだ!
「せっかくだから、コニーもゴブリン集落で遊んでみたいかな? コニーもお祭りに混ぜてもらうのだ☆」
 さて、路線変更こそした物の別に本来の内容に立ち返ってはいけない訳では無い。コニー・バクスター(ガンスリンガー・ラビット・ガール・f36434)はゴブリン集落の戦勝祭に途中参加だ。
 さて、ゴブリンとは永遠に子供の種族だ。男の子が好きな物と言えば何か。
「すっげぇ! キャバリアだ!」
「ウサギ型って結構珍しい!」
「黒ベースに金のラインが走ってるのカッコイイ!」
 そうだね、ロボットだね! 異論は認めない。
 愛機ブラック・ラピッド・ラビットで集落に降り立ったコニーは早速囲まれているぞ!
「へー、高機動の軽量機かな」
「逆関節! 逆関節機体じゃないか!」
「高いジャンプと早いクイックブースト! 当たらなければどうという事は無い!」
「あなた達、案外キャバリアに詳しいね?」
「おうよ! スクラップの寄せ集めからキャバリア作れるのは俺たち位だぜ!」
 そもそもスクラップの寄せ集めでキャバリアを組もうとする命知らずがゴブリン共だけなだけである。技術的にすごい訳では無い、たぶん。
「ふふん、コニーのブラック・ラピッド・ラビットは戦うだけじゃないんだよ! 舞い踊れ、コニーの黒き兎よ!」
 徐に立ち上がった黒き兎は優雅に踊る!
「スロースロー……クイッククイックスロー……」
「すっげぇ生き物みたいに滑らかだ」
「しかも脳波コントロールできる!」
「手足を使わずにコントロールできるこのマシーンを使うコニーを他の女と同じように見下すとは、ってコレ悪役の台詞!」
 コイツら、妙な事に妙に詳しいな? なんかの伏線ではない、たぶん。
「そ・れ・よ・り! みんなはキャバリア・ダンスって知ってるかな? コニーが教えてあげるよ!」
「「「わーい!」」」

 ゴブリンもキャバリアも猟兵もコニーも、燃え上がるキャンプの炎に照らされて中腰で手を上下にぶんぶん振りながらモンキーダンス! 大人も子供もおねーさんも! ケモノもマキナもニンゲンも! そう、君もだ!
「私もかッ!?」
 独りだけでは嫌だ! お前だけでも無理だ!
「わしもじゃよ!」
「俺もだぜ!」
 愛と勇気は言葉! 感じ合えれば力!
「イェイ!」

 集落の夜は更けていく。宴はまだまだ終わらない。楽しい夜ならきっと、明けない事を望む人もいるのだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アーネスト・シートン
ここがけものマキナっていうところなんですね。
にしても、ゴブリンとは、他の世界では襲い掛かる亜人なんですよね。
ちょっとばかし動物や獣人とは違うので抵抗感はありますけど、今回は遊びに来たんですよね。
てなわけで、超大型犬12頭(グレードデーンとかセントバーナードとかアイリッシュウルフハウンドとか)呼んで共に遊びましょうね。



●おいでよゴブリンの村
「ここがけものマキナっていうところなんですね」
 アーネスト・シートン(動物愛好家・f11928)は目前の集落に向けて歩いている。祭りはすっかり終わっているので今はのんびりムード。まあ、ゴブリンは祭り好きだからまた唐突に始まるかもしれない。
「にしても、ゴブリンとは、他の世界では襲い掛かる亜人なんですよね」
 アックス&ウィザーズ辺りでは集団戦の敵として登場しがちなゴブリン。どこぞの世界では女を攫って延々増え続けるとか言う話もあるが、けものマキナのゴブリンはメスゴブリンも普通に存在しているので女を攫ったりはしない。と、言うかケモノの中に雌雄が無い種族は無い。どの種族にもかならず雄も雌も居る。分かり難い種族も居るけど。
 まあ、ケモノ種同士であれば繁殖は可能なのでわざわざ同種の相手に拘る必要は無いのだが。同種族を好むか異種族を好むかは凡そ種族によって分かれるが、繁殖力の低い種族ほど同種族を、繁殖力の高い種族ほど異種族を好む傾向がある。

「ちょっとばかし動物や獣人とは違うので抵抗感はありますけど、今回は遊びに来たんですよね」
「「「リスの人だー!」」」
 シートンは種族的には人間である。だが、ユーベルコードの代償でリスの尻尾が生え、両足首から下の部分と左手の手首から先がリス化しているので人間には見えない。けものマキナにおける人間とは、何の種族特徴も持たない種族の事を指している事が多い。なので、何らかの特徴を持っていれば人間と見做されない傾向にある。
 シートンの尻尾は分かりやすくリスなのでリスの人になったのだろう。
「てなわけで、超大型犬12頭と一緒に遊びましょうね」
「「「わんこだー!!」」」
 ゴブリン達のテンションは爆上がりである。【|動物召喚2《サモニング・アニマルズ》】は最大12体までの脊椎動物なら何でも召喚できるが、日常で使うには代償が大きい気がする。翌日にぐっすり眠れる環境があればいいのではあるが。
 グレードデーン、セントバーナード、アイリッシュウルフハウンド、アフガン・ハウンド、サモエド、ホワイト・スイス・シェパード・ドッグ、ロットワイラー、レオンベルガー、秋田犬、イングリッシュ・スプリンガー・スパニエル、グレート・ピレニーズ、アイリッシュ・セッター。大型犬の見本市状態だ。ユーベルコードで召喚してるだけあって生息域も何もあった物じゃない。
 人間の子供程度の体躯しかないゴブリン達だが物怖じ無く触ってじゃれて、遊んでいる。
「少し位は怖がられるかなと思いましたが、そんな事は無いですね。と、言うか妙に慣れている感じが」
 大型犬ならその気になればゴブリンを襲う事だって十分できる大きさだ。ユーベルコードで召喚した犬達は命令しなければそんな乱暴をする事は無いとは言え、それにしたって慣れている。
「じゃあこっちもわんこで対決だー!」
 と、言って獣舎から飛び出して来たのは数十頭の狼。馬具のような物を取り付けられた狼も結構いるので日常的に騎乗する動物として扱われているのだろう。
 犬と狼のもっとも単純な違いは大きさである。オオカミはイヌ科の中で最も大きい。犬の中では大きい大型犬でも狼と比べれば小さくなってしまうのは当然である。
 ちなみに、この世界の一般的な動物はケモノモドキと呼称されている。賢い動物はケモノ種なので、それっぽい生き物という事でケモノモドキなのだろう。この狼たちはケモノモドキの狼だ。
「リスの者よ」
「あれ、君は違うね」
 と、思ったらケモノの狼も混じっているようだ。
「我々は君達を歓迎する。いかなる遊戯をご所望か」
 妙に硬い口調で喋る賢い狼である。どうやらこの集落の狼全体のリーダーであるらしい。
 ケモノモドキの狼とケモノの狼は見た目で区別はつかないが全くの別種族である。ケモノの狼はそれを理解しているが、ケモノモドキの狼はあまり良く分かっていないようで、同じ狼だと思っているようだ。ゴブリン達も分かってるかどうかやや怪しい。
「ええと、フライングディスクとかでいいのかな?」
「我等をただの犬扱いする気か」
「そうされるのを望んでるでしょ?」
 気押すような口調ではあるが、尻尾ぶんぶん振ってるので喜んでるのは目に見えてわかる。賢くても犬ではある。犬が好きな物は好きなのだ。
「汝は先の襲撃を退けた猟兵なる者達の一人と見受ける。ならば、そのフライングディスクはただの遊技ではあるまい」
 もちろん、持ってきたのはただのフライングディスクである。
「汝の眷属と我等、どちらが優れているのか競おうと言うのだな。その勝負受けて立つぞ」
「よし、じゃあそれで行こう」
 なんか勝手に納得したのでヨシ! シートンはディスクを構える。
「よし、取ってこーい!」
 そして、猟兵の膂力で思いっきり遠くまで投げた。
「よし、いっくぞぉー!!」
「「「おー!!」」」
 いつの間にか狼の背に騎乗したゴブリン達まで加わり、大フライングディスク祭りが始まった。

 全力で遊ぶのはいつだって心地が良い物だ。代償の眠りでも、寛げる。

大成功 🔵​🔵​🔵​

叢雲・凪
【アルワーツ魔術学園にて】


道場にマスダラ=サンを呼び出そう。

「ドーモ ジンライ・フォックス こと 叢雲凪です」

今回は終始仮面を付けずに彼と話をするつもりだ。とはいえ 重い雰囲気で話すのも緊張してしまうだろう。ここはひとつボクの渾身のギャグで

「おつかれサマンサ!!」(手を上げて猫のような満面の笑み 


「こほん!キミを呼んだのは聞きたいことがあるからだ」
座布団に座して対面し静かに問おう。
「キミの視線の先には【明確な目的】が見える。その目的の為の最短ルートが魔法やカラテに見えるんだが…違うかな?」 

しばし沈黙し
「良ければキミの事を話してくれると嬉しい」

真剣な表情で見つめ目の奥に黒雷が光る。

「今のマスダラ=サンは目的の為に【自分という刃】をひたすらに研ぎ続けているように見える」

「抜き身の刃は相手どころか仲間や自分自身まで傷つけてしまう…」
「故に機先を制する。ボクが授業で教えた『速さ』だ」(優しく微笑む


「それに仲間とは【鞘】のような物だ」
「今はそういう間柄じゃなくても、いずれ 支え合うようになるさ」



●伝承 ~アルワーツ魔術学園にて~
 早朝の冷えた空気の中、カラテする者が二人。
 その片方は叢雲・凪(断罪の黒き雷【ジンライ・フォックス】・f27072)もう片方はアルワーツ魔術学園の生徒、マスダラ・カイ。何か二回ほど間違えた事に気付いたが彼はマスダラ・カイである。いいね?
「スゥー、ハァー……」
「スゥー、フゥー……」
 向かい合って呼吸を整える。調身し、調息し、調心する。これはあらゆる武術の基本と言える。姿勢が乱れれば体勢を崩される。呼吸が乱れれば動きが鈍る。心が乱れればただ、爆発四散あるのみである。
 タツジンともなればイクサの最中の僅かな時間呼吸を整えるだけで体内をカラテで満たし、受けた傷すら癒す事も出来る。
 イクサの最中に相対する二人が突然、向かい合って動きを止める場面を見た事はあるだろう。先に動いた方が負ける、と言う奴だ。あれを見てこんな事は現実には起きないと思う奴も居るだろう。だが、あれは正しい。
 まず、攻める側と受ける側の実力が対等ならば基本的には受ける側の方が優位に立てる。相手の動きを見て後の先を打つ事が出来るからだ。平安時代の格闘家ダイゴ・ウメハラは『小足見てから昇竜余裕でした』という言葉を残している。
 また、ニンジャの死因の四割はカイシャクのタイミングの読み違いとも言われている通り、勝利を確信してとどめの一撃を撃ち込む時こそが最大の隙を産みやすい。
 何より、イクサの最中はただ相対するだけで気力と体力を消耗する。ただ向かい合っているのではない。こう動けばこう返される、イマジネーションカラテを激しくぶつけ合わせているのだ。
「スゥー、ハァー……」
「スゥー、フゥー……」
 早朝の冷たい空気を肺に取り込み、はき出す。体内でカラテが循環する。向かい合う両者の構えは別物だ。
 ジンライ・フォックスは叢雲流迅雷カラテの基本形を構える。速度に何よりも重きを置いた速度特化のカラテだ。稲妻の速さで動けるジンライ・フォックスが最も生きるカラテである。
 対するマスダラは脚を広めに開いて重心を落とし、両腕も開いた獣めいたカラテだ。ネコ科の獣人であるマスダラは最も馴染む形に落ち着いた。速さではジンライ・フォックスには勝てない。ただ同じ事を模倣するだけでは相手に追い付くのはどれだけの年月がかかるのか。ましてやジンライ・フォックスは猟兵である。
 これとは別にウタとも模擬戦闘訓練をしている事の影響もある。ウタの扱う獄炎はマスダラにとっては奇妙に馴染む感触がある。十発殴られる間に一発を通して勝つ。力のカラテだ。
「「イヤーッ!」」
 両者のカラテが激突した。先に動いたのは、ジンライ・フォックスだ。稲妻の如き踏み込みからのトビゲリ! 踏み込みの時点でこれを予測し、マスダラは外に弾いた。
「イヤーッ!」
 外に弾かれる反動を利用した逆脚での二段蹴りはもはや見慣れた動きになっている。トビゲリは距離があっても打てる半面、どうしても当たるまでに時間がかかる。ただジンライ・フォックスの速度を以ってすればその時間は避けるには短い。その結果、相手に何らかの手段で防御する事を強いる事が出来る。命中すれば当然有効打。防がれても連撃に繋ぐ速度のカラテだ。対抗する速度はマスダラにはない。だが、連撃を打つ事は分かっている。
「イヤーッ!」
 逆脚の連撃を受けながら、右ストレートでクロスカウンター! 獄炎加速した拳は片手でのブロッキングは不可能。空中に居る故に回避も不可能。ジンライ・フォックスでなければだが。
「イヤーッ!」
 胴部を狙って撃ち込まれたカウンターを両腕でクロスガード! 勢いを外に逃がし、更に空中回転!
「イィィヤァァァーッ!」
 凄まじい速度で空中回転しながら無数の蹴りを放つ! タツマキケン!
「グワーッ!」
 マスダラはこれを受けきれぬ! 後方に跳躍し衝撃を逃がすと地面から昇る獄炎纏いし竜の如きアッパーを放つ! ドラゴン・ノボリ・ケン!
「イヤーッ!」
 これが格闘ゲームであればマスダラの判定勝ちになるだろう。だが、現実のイクサは違う。何故ならジンライ・フォックスにはマスダラのカラテに合わせてカラテする速度がある!
「イヤーッ!」
 マスダラの拳に強引に足を当てカラテ相殺! 弾かれた両者はバックフリップで衝撃を逃し、着地と同時に再びのカラテ衝突!
「「イヤーッ!!」」

 早朝の稽古を終え、シャワーを浴びて着替える。今日は魔術学園の休日だ。他の生徒は町に遊びに行ったり、部屋で自習をしたり、イタズラを仕掛けたり、エッチピンナップを眺めていたりと思い思いの休日を過ごしている。
 マスダラは今日一日カラテ防衛術の自習をするつもりだった。その話を聞きつけたジンライ・フォックスセンセイがそれならば一緒に稽古をしようと誘った形だ。
 今日は一日カラテが出来る。洗濯したジュー・ウェアに袖を通し、マスダラは一礼しドージョーにエントリーした。
 だが、センセイが居ない。まだ着替えているのだろうか。
「ドーモ、ジンライ・フォックスこと叢雲凪です」
 突然のアンブッシュめいたアイサツ! 声は頭上から聞こえて来た。
「ドーモ、マスダラ・カイです」
 ジンライ・フォックスは蝙蝠めいて天井に直立していた。ワザマエ! 正しくはジンライ・フォックスではなく叢雲凪と言うべきではある。、今日は仮面を付けていないからだ。そのまま跳躍し、音も立てずに着地。
「おつかれサマンサ!!」
 手を上げて猫のような満面の笑みを浮かべる凪。マスダラは先生の意図を汲み取ろうと、少しの間沈黙思考し答えた。
「お疲れ様です」
 和ませようとした渾身のギャグが盛大に滑り、多少の気まずい沈黙の後流された凪は恥ずかしさの余りにセプクしたい衝動にかられたが、思い止まった。
「こほん! さ、さて、キミを呼んだのは聞きたいことがあるからだ」
 気まずさを誤魔化しながら座布団に座する。マスダラにも座る様に促すと、対面して座布団に正座した。
「なんでしょうか」
「キミは何故この魔法学校に入ろうと思ったんだい?」
「強くなる為です」
 即答だ。だが、この即答には僅かに疑問を挟む余地がある。
「ただ、強くなるだけかな」
「そうですが、それが何か問題でも?」
 マスダラの意志は固い。強くなりたいからという言葉そのものに嘘はないだろう。
 だが、凪はそれに違和感を覚えていた。ただ只管に強さだけを追い求めた者がどんな瞳をしているかを知っているからだ。マスダラの静かな熱を帯びた瞳には何か違う目的を感じさせた。
「キミの視線の先には”明確な目的”が見える。その目的の為の最短ルートが魔法やカラテに見えるんだが……違うかな?」
 強くなる事が目的では無く、手段であると。凪はそう考えたのだ。あどけなさすら感じる表情だが、その瞳はなにも見逃さぬと輝いている。
「……いいえ、センセイ。おれはただ強くなりたいだけです」
 マスダラは拒絶した。だが、迷いは見えた。
「教師と生徒という立場では話にくい事もあるだろうからね。ボクも教師という役柄を捨てて話をさせてもらうよ」
 そう言うと、凪は正座を崩して座り直した。
「もちろん、言いたくなければそれで構わない」
 マスダラは答えず、正座したままだ。
「ボクの両親は兄弟子……ビャクライに惨殺された」
「……!」
 それならば、と凪はまず自分から語り始めた。
「あの時からボクは彼への復讐の為、あらゆる敵と戦って、何が何でも力を手に入れようとしていた」
 凪は立ち上がり、パーカーのジッパーを下ろしてインナーシャツを捲り上げる。
 そこには凪の歩みが刻まれていた。無数の打撲、切創、銃創、火傷や凍傷の跡。超人的身体能力を持つ猟兵ならばこれらの跡を残す事無く治療する事も出来る。だが、凪はそうしなかった。その暇も惜しんでカラテし続けたからだ。その結果がこの壮絶なイクサの痕であった。見方によっては現代アートにすら見える程だ。
「その中でこれらの傷ができた……そして……これ」
 腹部の大きな傷を指す。まるで火薬が爆発したような酷い焼け跡だ。
「兄弟子=サン、ビャクライとの戦闘でついたものだ。最終的にボクは仲間の支えもあって……ビャクライを倒す事ができた」
 マスダラはただ、言葉も無く聞き入っている。
「だが……散り際の兄弟子=サン」
 そこに憎しみとは違う、むしろ愛しさのような感情が籠ったその名を言った。
「兄さんの微笑みを見たときにボクは取り返しのつかない物を失ってしまったのだと気づいたんだ。一つの目的の為にひた走るのはすごく良い事だと思う……でも、その末に大事な物を失ってしまう事もあるんだ」
 真剣な表情の瞳の奥に、黒雷が煌めく。
「今のマスダラ=サンは何かの為に”自分というカタナ”をひたすらに研ぎ続けているように見える。抜き身のカタナは意図せずキミにとって大事な物を傷つけてしまうかもしれない」
「ある意味では、おれはそうしなければならないのかもしれない」
 マスダラは、重々しく口を開いた。
「俺の周りに居る奴全てを敵に回す可能性がある。おれの一番大切な物の為に」
「……事情を聞いてもいいかな」
「ああ、分かっているとは思うが」
「絶対に誰にも言わない。約束する」

 そして、マスラダが話し始めたのはおおよそ二年ほど前からの話だ。
 当時のマスダラはどこにでもいる平凡な獣人、と言うには好奇心旺盛で既に色々な能力は高かったのではあるが、特別な背景を持っている訳ではなかった。
 けものマキナの世界では住人の身体の力の高さもあって、意外と危険は少ない。集落の外を一人で探索するのは別段珍しい物でもない。
 山の中にある清流の流れる泉に飲み水を確保しに行ったマスダラはそこに先客の姿を認めた。けものマキナの世界においては裸体を晒す事はあまり恥じらう事ではない。夫婦という概念が存在せず、秋の祭りには皆で裸体を見せあう事になるのだから、女性の裸体を見るという事に抵抗が無い。それが普通だ。
 だから、マスダラは先客の女性に対して何の配慮もせずに近付いた。それがその後の彼の人生を決める事になるとは思わず。
「えっ」
 一方、泉で水浴びをしていた少女の方は全くそんな事を警戒していなかった。これを不覚と言うにはあまりに手厳しい。誰も居ないはずの森の中で水浴びをしていただけだからだ。
「こんにちは」
 マスダラは何の遠慮もなく声を掛けた。一方で少女の方は両手で体を隠し、赤くなって泉に沈む。
 ……何か、マズい事をしてしまった。マスダラはそう察する事は出来た。ただ何がマズかったのかはすぐには分からない。数秒そのまま硬直した後、体を隠しているのを見て裸体をみられるのが恥ずかしいのだと察したので後ろを向いた。
「悪かった」
 少女は何も言わなかった。後ろを向いたマスダラに、そのまま背後から襲い掛かった。
「イヤーッ!」
「グワーッ!?」
 マスダラは咄嗟の事態にまともに対応できず、まともに背中から拳を受けた。少女はそのままマウントを取る!
「マッタ! 裸を見た事ならあやまグワーッ!」
「イヤーッ! イヤーッ! イヤーッ!」
「グワーッ! グワーッ! マッタ! 待ってくれ!」
「そんな事は大した問題じゃない! 今の私の姿を見られた以上ここで死んでもらう!」
 冗談じゃない。幸いと言うべきか、少女の力はそれほど強くなかった。むしろ、不自然に弱過ぎた程だ。
「イヤーッ!」
「イヤーッ!」
 マスダラは獣人由来の力で強引にマウントを逃れた。押さえ付けられない、と判断した少女は素早く、木陰に隠してあった拳銃を手に、躊躇なく引き金を引く!
「イヤーッ!」
 マスダラの主観時間が泥めいて鈍化した。迫る銃弾が見える。冗談じゃない。訳も分からず殺されてたまるか。
「イヤーッ!」
 マスダラの拳が銃弾を弾いた! 研ぎ澄まされた銃撃であれば出来なかっただろう。だが、今は少女も動揺している。乱れた銃撃ならば対処は可能!
 BLAM! BLAM! BLAM! BLAM!
「イヤーッ! イヤーッ! イヤーッ!」
 マスダラは必死に銃弾をブロックし、幹に身を隠して凌いだ。やがて、弾薬が切れたのか、拳銃を投げ捨てるとナイフを手に取った。
 マスダラは思考する。目の前の相手は、明らかに理性を持った存在だ。誰にも見せてはいけない物を見られたが為に自分を殺しに来ている。だが、見られたくない物とはなんだ? 裸体を見られただけではここまでするとは思えない。少女の体は、目立つような傷の一つも何もなく、綺麗だった。何も、目立つ物はない……
 目立つ物が、無い? ここまで考えてマスダラはようやくそこに至った。
 彼女は何者だ。この世界に生きる者ならあるべき何らかの種族特徴が無い。何も特徴が無い。
「イヤーッ!」
 ナイフを手に殺意を向けられる。本気で殺すつもりの手だ。だが。
「イヤーッ!」
 彼女は非力であった。考えても見ればこれもおかしい。圧倒的に有利だった筈なのにたやすく返せる程弱い。だから、ナイフの一撃も簡単に防ぐ事ができた。腕を掴み、強く握ってナイフを落とさせる。
「ンアーッ!」
 少女は必死に振り解いて逃げようとする。だが、マスダラはその手を放さなかった。
「おれは何も見てない。だから、落ち着いてくれ」
「くっ……放して!」
「駄目だ。手を離したらそこに隠してある強化服を着る気だろう。そうなったら、おれが殺される」
 マスダラは少女が気にしている木陰を見た。そこには一見普通に見える服があった。だが、この少女の非力さはその服の機能で本来カバー出来る物だと推測した。それは事実その通りだった。もし、マスダラがこの手を離したら間違いなく少女はマスダラを殺す。今度はマスダラの方が抵抗も出来ずに。だからこそ、今ここで少女を殺さなければマスダラは殺さなければならなかった。
 冗談じゃない。訳も分からず殺すのも嫌だ。
「話してくれ」
「離すのはそっちでしょ」
「違う、訳を話してくれ。俺は君を殺したくない」
「それを聞いたら、引き返せなくなる」
 少女はマスダラをまっすぐ見て言った。
「構わない。どうせ、引き返す場所はない」

「アユミは人間のスパイだった」
 話に出てきた少女の名はアユミ。人間のスパイ。集落に紛れて情報収集をする為の存在。
「おれはアユミを自分の集落に招いた。あの時期にはまだ人間は噂にも出ていなかったから人間がどういう存在か知らなかった」
 人間は敵、というのが現在のけものマキナの共通認識と言ってもいい。今でこそ多少の例外は確認されているが大部分の住民は人間を敵だと思っている。
「アユミはただ、自分の世界を守りたいだけだ。でも、その為におれ達を犠牲にしていいとは思ってない」
「なるほど」
 敵側のスパイの少女を匿う為の強さが欲しい。それがマスダラの強さを求める理由なのだろう。
「君はアユミの惚れているんだね」
「惚れる……? そうなんだろうか」
 夫婦という概念が無い世界であっても、恋愛が存在しない訳ではない。男女が惹かれあうのはどんな世界でも当たり前に起きる話なのだろう。
「そうだな、交尾したい気持ちはある」
「こうっ……ごほん、そうか」
 直接的過ぎる。まあ、この世界においてはこれが普通なんだろう。
「所で人間は敵だと言っていたが、マスダラ=サンはボクも敵だと思っているのかな?」
「いいや、思ってない」
 猟兵諸君には言うまでもなく、叢雲凪は人間だ。狐面や特有の奥床しさから生徒たちには気付かれていないがマスダラはとっくに気付いていただろう。
「だから話せた」
「そうだったのか。ありがとう、話してくれて」
「いや」
 マスダラの目は真剣だ。
「話した以上、協力して貰う」
「ははは、そう来たか」
 マスダラはどこまでも真剣だ。もし、協力しないと言えば本気で、全力で凪を殺しに来るだろう。だが、そうはならないという確信はあったに違いない。
 無論、そうはならない。
「もちろん協力するよ。ボクに出来る事があったら何でも言ってね」
「……感謝する」
 やはり緊張はしていたのだろう。感謝の言葉と同時に肩の力が抜けたような気配があった。
「その代わり、もう少し昔話に付き合ってもらおうかな。元々 ボクのおじいちゃん……先代”ジンライ・フォックス”叢雲・雷電とアルバス・ゲンドーソー校長先生は無二の親友同士だった。その伝手もあって今回ボクが教師として赴任しているんだが」
 さて、この話を聞いた猟兵諸君は疑問を持つだろう。猟兵が介入できるようになったのは約一年前。当然、先代がけものマキナに性器の手段で介入する術はどこにも無い筈だ。神隠しと呼ばれる現象はどこにでも存在する。このけものマキナも例外ではない。
「あの時のおじいちゃんは結構酔ってたからボクも本当の話だとは思ってなかった所はある。でも、アルバス・ゲンドーソーセンセイと初めて会った時そうじゃなかったと分かったんだ」
 実際の所、先代”ジンライ・フォックス”がどうやってけものマキナと行き来したのかはもはや誰にも分からない。
「おじいちゃんはカラテ、アルバス校長先生は魔術……っと一見全く道を進んでいた。しかし、おじいちゃんは生前によく話していたよ」

「相手を憎むでもない、僻むでもない。突き詰めれば、知識も武もよりよい人の暮らしの為に存在している。ならばどうするか……答えは単純明快。より武を磨き、そして……必要とされれば全力をもって力を貸すのだ!」

「ワシは結局……死ぬまで『最下級の物体浮遊術』すら扱えんようだ……!!」
 フートンの中で身を休める祖父の姿は全盛期の見る影もなく……ミイラのようにやせ細ってしまっていた。しかし、今際の時でありながらアルバス・ゲンドーソーとの話をする祖父の姿は少年のように明るかったのだ。

「でも、他の人は誰もアルバス・ゲンドーソーセンセイの事を知らなかった。それも当たり前か、こんな全く違う世界の人だったなんてボクですら考えもしなかったよ」
 猟兵になって、様々な世界を渡れるようになった後、凪は秘かにアルバス・ゲンドーソーなる人物と接触しようと試みていた。だが、どの世界にも魔道学の権威アルバス・ゲンドーソーは存在しなかった。けものマキナに来るまでは。
「縁と言うのは妙な物だ。本来出会う筈もない二人がこうして出会う」
「それが、出会う筈もない二人だったからこそ起きる変化がある」
 凪とマスダラもまた、そうした二人なのかもしれない。
「マスダラ=サン、自分という刃は磨くのであればキミを受け入れてくれる『鞘』はきみの一番近くにいるという事を忘れない事だ。一人でいる時は二人だと思い、二人なら三人だと思って」
 凪は、優しく微笑んだ。
「その一人はボクだ。いや、アユミちゃんかもしれない。どんな時でも、キミは独りじゃないよ」

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2023年10月23日


挿絵イラスト