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猟書家決戦~混沌の屍王

#サムライエンパイア #戦後 #クルセイダー #安倍晴明 #上杉謙信

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「……|業《 カルマ 》、か……。そうだな、貴様は……」
 ――グリモアベースの片隅で。
 北条・優希斗(人間の妖剣士・f02283)がタロットを見つめながら小さく呟く。
 そのタロットが置かれている位置は、『月』の正位置。
 其れを見つめていた優希斗が蒼穹の瞳を輝かせて顔をあげ。
 何時の間にか集まっていた猟兵達を見て、皆、と囁き掛けた。
「サムライエンパイアの猟書家達の首魁、クルセイダーがついに補足されたよ。……まあ、厳密に言えば彼はもう、クルセイダーではないけれども」
 そう何かを抑えるかの様に呟いた優希斗が話を続ける。
「クルセイダーは事情は分からないが『未熟者』と判断されたらしい。その結果……彼は召喚した筈の、嘗て皆が撃破した『安倍晴明』にその肉体を乗っ取られた。今の彼の名は『晴明クルセイダー』と言う」
 その晴明クルセイダーは……。
「嘗て自らが産み出した生殖型ゾンビに、以前、皆が倒した魔軍将達を憑依させるクルセイダーのユーベルコード『超・魔軍転生』を使用。生殖型ゾンビ達を魔軍将ゾンビとして転生させ、さらに量産化すら試みようとしているらしい」
 嘗ての戦いで猛威を奮った魔軍将達が量産されれば。
 その先に何が待っているのかは想像に難くないだろう。
「……まあ、それを止めて貰うために皆に魔空幻城が拘束されている戦場に向かって貰うことになるんだが……」
 そこまで告げて。
 そっと溜息を1つ吐く優希斗。
「先ずはそこから現れる島原一揆軍と刃を交えて貰う事になるんだ」
 彼等もまた、強化された生殖型ゾンビ部隊。
 故に……。
「完全に破壊しない限り、その息の根を止めることは出来ないだろう。幸いと言う言い方もおかしいが……俺が視た部隊は、島原一揆軍として雇われていた狂信的な浪人の部隊だ。腕は立つが慈悲を掛ける必要のある相手ではないと思って貰って良い。実力はお墨付きだが……安らかに骸の海に還らせてやることこそが最善だろうね」
 しかし……問題は次からだ。
「その浪人部隊を乗り越えた先に皆の前に現れるのは、魔軍将の時代の実力と理性を持つ上杉謙信になる。ほぼオリジナルと同等の実力の相手と考えて良い」
 それはつまり、戦闘能力も知識も折り紙つきと言うことだ。
 強敵として、猟兵達の前に立ち塞がるのは、まず間違いないだろう。
「彼を倒した先で漸く皆は晴明クルセイダーと対峙できる。彼はクルセイダーの肉体と己が精神の両方を駆使したダブルユーベルコードで挑んでくる。……まともにやりあえば、先ず勝ち目は無いだろう」
 ――それこそ、何らかの対策を講じない限りは。
「それでも、此処で晴明クルセイダーを見逃すわけには行かないんだ。どうか皆……宜しく頼む」
 その優希斗の言葉と共に。
 蒼穹の風がグリモアベースに吹き荒れて……気が付けば、猟兵達は姿を消していた。


長野聖夜
 ――我は、|業《 カルマ 》を重ねし者也。
 いつも大変お世話になっております。
 長野聖夜です。
 と言うわけで晴明クルセイダー戦をお送りいたします。
 今回は章毎にプレイングボーナスなどが若干異なります。
 第1章は集団戦です。
 現れた生殖型ゾンビ浪人を完全撃破(頭や脚を吹き飛ばす程度では無く、無慈悲かつ完膚なき殲滅を行う)がプレイングボーナスとなります。
 尚、殲滅後に魂の鎮魂などを行う事は、問題ございません。
 但し、吸収は既に信じている神がいる為、不可能かと思います。
 第2章以降に関しましては、実際に進んでから断章を投稿する予定です。
 基本情報はオープニングにも入れておりますが、断章もご参照頂いた方が良いかと存じ上げます。
 尚、第1章のプレイング受付期間は、下記からとなります。
 プレイング受付期間:5月11日(木)8:30~5月12日(金)9:00頃迄。
 リプレイ執筆期間:プレイング受付期間終了後~5月14日(日)一杯迄。
 *変更などがある場合、タグ及びマスターページにてお知らせ致します。
 また、第2章以降のプレイング受付期間及びリプレイ執筆期間も随時お知らせ致します。
 ――それでは、悔いなき戦いを。
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第1章 集団戦 『浪人』

POW   :    侍の意地
【攻撃をわざと受け、返り血と共に反撃の一撃】による超高速かつ大威力の一撃を放つ。ただし、自身から30cm以内の対象にしか使えない。
SPD   :    怨念の返り血
【自身の返り血や血飛沫また意図的に放った血】が命中した対象を燃やす。放たれた【返り血や血飛沫、燃える血による】炎は、延焼分も含め自身が任意に消去可能。
WIZ   :    斬られ慣れ
対象のユーベルコードに対し【被弾したら回転し仰け反り倒れるアクション】を放ち、相殺する。事前にそれを見ていれば成功率が上がる。

イラスト:箱ノ山かすむ

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

ウィリアム・バークリー
こういう手合いは、大威力で吹っ飛ばしますか。

魔導原理砲『イデア・キャノン』にスチームエンジン、影朧エンジンを接続。
トリニティ・エンハンスで攻撃力強化、Spell Boost開始。System:Infinite Circuit起動。Mode:Final Strike、攻撃力を5倍、移動力半減。Idea Cannon Full Burst、完了。
Elemental Cannon全力発射!

前で戦ってくれてる皆さんに退避勧告。
原理砲から発射されるビームの束は、砲身を振ることで扇型に戦場をなぎ払います。
斬った張ったじゃまだ足りない。このビームで跡形も無く蒸発してください。


鞍馬・景正
クルセイダー……いや、何も言いますまい。
エンパイアを脅かす者は斬る。例外なく。

何度でも葬って進ぜよう、晴明。


その為にもこの一歩を確実に進みましょう。

当方、鞍馬景正。
武人の礼を怠る訳ではないが、此度は蛮力にて屠らせて頂く。

相手がわざと受ける構えならば、それを利用させて頂く。
【倫魁不羈】で全霊の【怪力】を籠めた一閃、反撃も許さず微塵とするか、受け切るにしろ間合の外まで吹き飛ばして封殺。

続けて周囲の敵も二の太刀で崩し、ひとりの手足を掴んでそのまま旋回。
十分に勢い付けた上で地面へ叩きつけるか、他の浪人たちに衝突させるか。

羅刹の剛力での所業、肉片も残さぬであろうが――御免。


館野・敬輔
【SPD】
アドリブ連携大歓迎

…優希斗
君の感じ取った|業《カルマ》とは何だ?
おそらく…いや、今は口にすべきじゃないな
そのうち時がこればわかるだろうから

それはさておき
目の前の浪人は武士にも見えるけど
正体は狂信的、かつ生殖者ゾンビの集団か
かつての水晶屍人のように噛みつきはしないだろうし
無暗に増えることも今のところはなさそうだが
…生かしておけないのも事実か
ならば、一切の遠慮も躊躇もなく、完膚なきまでに吹き飛ばす

魂たちが浪人らの感情に呑まれないことを祈りつつ、指定UC発動
「ダッシュ、地形の利用」で浪人らの合間を縫うように走りながら撹乱し
黒剣を振り抜き「属性攻撃(氷)」の「衝撃波」を発射し「吹き飛ばし」を狙う
怨念の返り血が飛ばされた場合も、氷の衝撃波を発射し吹き飛ばす
…返り血は命中すれば燃えるから、炎ではなく氷の方が相殺しやすいだろう

隙あらば浪人らの背後を取り
「2回攻撃、怪力」で両断するのではなく叩き潰していこう
…二度と晴明の魔の手に運命を狂わせられないようにな


森宮・陽太
【WIZ】
アドリブ連携大歓迎

ちぃと手助けに来たぜ
ゾンビと化して尚、狂信的に戦い続ける奴らに思うところがあってな
…しかも意図せずゾンビ化した連中だろ

ところで、今突っ込むのはヤボだろうが
斬られ慣れって自分たちで言ってて悲しくねぇか?
まあ、事前に手の内(ユーベルコード)を見せる気は全くねぇけど

今回はあえてパワー重視の戦い方をする
二槍の先端をハンマー状に変形させ
敵陣の真っただ中で「怪力、なぎ払い」し片っ端から吹き飛ばして行く
動きそうな個体がいたらハンマーで徹底的に頭や胴を叩き潰し肉片に
グロい光景が広がるだろうが、手は抜かず徹底的に叩き潰す
…狂信的なゾンビほど、怖いものはねぇからよ

戦闘後、改造型ダイモンデバイスを取り出し指定UC発動
戦場全体に「破魔、浄化」の「属性攻撃(聖)」の炎を広げ、浪人たちの鎮魂を願う

…奴らも、晴明とやらに使われた犠牲者なんだろ
これくらいはしてやらねぇと、浮かばれねぇだろうさ


戒道・蔵乃祐
天下泰平故に、仕官の道を閉ざされたか。戦国の世へ生きる術を置いてきてしまった成れの果て

或いは、クルセイダーに救いを見出だしてしまった邪教の信徒
その末路といったところか

◆殺戮処刑場鏖殺血祭
妖刀の切り込み+ダッシュで血路を開きます
返り血の効果は金剛身での武器受け+火炎耐性で対抗

限界突破の早業+乱れ撃ちで切り刻み
反撃はフェイント+クイックドロウで弾いて切り飛ばし、追撃を封じる
その太刀筋、既に死に体です。


元より、時代から取り残された者には居場所等
最初から無かったかもしれません

生殖型ゾンビ、滅ぼし尽くすにはこれでもまだ生温いか
四肢を切断し急所を斬り裂いて尚延焼し続けながら蠢くゾンビは、怪力で踏み潰します




「天下泰平故に、仕官の道を閉ざされたか」
 現れた無数の生殖型ゾンビ浪人の群を見て。
 戒道・蔵乃祐(荒法師・f09466)が英雄幻妄パラドクスメサイアの柄に手を添えながら、それとも、と続けた。
「戦国の世へ生きる術を置いてきてしまった慣れの果てか。はたまた、クルセイダーに救いを見出してしまった邪教の信徒であろうか」
「……クルセイダーに救いを、ですか、蔵乃祐殿」
 その蔵乃祐の禅問答の様な問いかけに何処か達観した様子で言葉を返したのは、鞍馬・景正(言ヲ成ス・f02972)
(「クルセイダー……」)
 召喚した安倍晴明に乗っ取られてしまったクルセイダーの事を脳裏に過ぎらせつつ、景正は静かに頭を横に振る。
 その腰に納めた片刃刃造の鬼包丁の濃口を切り、すらりとその肉厚の刃持つ羅刹の剛剣を構えながら。
 ――と、此処で。
「……あいつは言っていたな。……|業《 カルマ 》と」
 腰に佩いた黒剣の柄に手を添えながら、館野・敬輔(人間の黒騎士・f14505)が此の戦場に送り出したグリモア猟兵の言葉を思い出していた。
(「君が感じ取った|業《 カルマ 》とは、一体……」)」
 誰から感じ取ったのか。それは、敬輔にも何となく分かる。
 そして、その|業《 カルマ 》とは、恐らく……。
「いや、今は口にすべき事ではないか」
 タロットの事件を予知した時にも、彼は気になる事を言っていた。
 それとも無関係な話では無さそうに思えるが、仮に敬輔が其れを口にしたとしても誤魔化されるだろう。
 そもそも彼自身が、未だ何かに対して確信を持っている訳では無さそうなのだ。
「どんな理由があるにせよ、こう言う手合いを吹き飛ばしてしまう方が先ですけれどね」
 そんな敬輔の思考に特に深入りせずに。
 ウィリアム・バークリー(| “聖願”《 ホーリーウィッシュ 》/氷聖・f01788)が事務的にそう告げるのに、景正が首肯する。
「気になる事は私にも無い訳ではありません。ですが今、正にエンパイアを脅かそうとしている者が私達の目前にいます。であれば、その相手に集中する事こそが最善でしょう」
 そう意識を敵に向け、自らの集中力を高めながら景正が粛々と告げるのに。
「まっ……それは黒髪のにーちゃんに同感だな」
 濃紺のアリスランスと淡紅のアリスグレイヴの穂先をハンマー状に変形させながら、景正に同意したのは……。
「陽太か。もう、大丈夫なのか?」
「ああ、大丈夫だ。だからちぃと手助けに来たぜ、敬輔」
 その敬輔の問いに首肯して微笑を浮かべて森宮・陽太(未来を見据える元暗殺者・f23693)がそう答えた。
「まあ、ゾンビと化して尚、狂信的に戦い続ける奴等に思う所もあるしな」
 それは嘗ての自分……今は『零』と名乗る自らの『暗殺者』の人格のことであろうか。
 そう敬輔が推測する間にも、浪人達はジリジリと此方に肉薄してきている。
「……皆さん、軽口を叩いていられるのは此処までの様です」
 そう静かに告げて。
 蔵乃祐が手を添えていた英雄幻妄パラドクスメサイアの濃口を切った所で。
「そうですね。当方、鞍馬・景正。推して、参る」
 蔵乃祐に同意する様に景正が頷くと、共に。
 ――タン、と。
 景正と蔵乃祐が大地を蹴って走り出し。
「魔導原理砲『イデア・キャノン』、召喚」
 ウィリアムが『イデア・キャノン』を召喚し、ルーンソード『スプラッシュ』に取り付けた『スチームエンジン』との接続を開始し。
「狂信的、且つ生殖型ゾンビの浪人集団……か。……行こう、皆」
 敬輔が呟きと共に、己が黒剣を抜剣、その全身に白い靄の様な『彼女』達を纏い。
 そして……。
「なら、思いっきり暴れてきな。俺は牽制も兼ねて一撃叩き込んでやるぜ!」
 陽太が濃紺と淡紅の鎚を伸長させて、迫り来る浪人達に大上段から振り下ろした。


「参ります」
 その言葉と共に。
 ズン! と大地を踏み砕かんばかりの勢いで戦場へと疾駆し、英雄幻妄パラドクスメサイアを抜刀する蔵乃祐。
 その全身を血の様に紅い何処か野性味を感じさせるフォースオーラで纏い、目にも留まらぬ速さで妖刀を振るう。
 振るわれた1の斬撃がフォースオーラを纏って、まるで9つの刃に分裂するかの様に放たれ、抜刀した浪人達を斬り裂いていく。
『……手練れか。貴殿、名を名乗られよ』
 バシャリ! と血飛沫を舞わせながら、浪人部隊の1人が静かに問いつつ刀を一閃。
 刀身に纏われた血が燃え盛る炎の様に戦場に迸り、蔵乃祐を焼かんとするが。
「生憎、邪教の信徒の末路であるお前達に名乗る名はありませんね」
『……そうか。ならばその血肉を、我等が主への貢ぎ物として捧げよう!』
 その叫びと共に。
 浪人から迸った炎を自らの筋骨隆々と化した肉体で受け止める蔵乃祐。
 その間に別の浪人が摺足と共に蔵乃祐に肉薄しようとしたが。
「貴様等に武人の礼を怠るつもりは無いが、此度は蛮力にて貴様等を屠らせて頂く」
 その蔵乃祐の影から飛び出す様に音も無く姿を現した景正が鬼包丁を大上段から振り下ろすと。
『ふむ……来い!』
 摺足で肉薄してきた浪人が其れに気がつき、抜刀した刀の背でその刃を流す様、八相に刀を構えていた。
 その堂に入った浪人の姿を見て。
「……如何に浪人と言えど、武人として磨き抜かれた技は本物か」
 そう微かに称賛の言葉を掛けながら景正が蛮力の唐竹割りを叩き込む。
 その美しき銀の輝きを伴った斬撃は、力の力点を見極め、その火力を逃がし、反撃に転じようとした浪人を刀事真っ向両断にした。
 断末魔の叫びを上げる間もなく肉塊と化したその浪人を。
「……羅刹の剛力での所業、肉片も残さぬが――御免」
 そう一瞥して、続けて景正が切り込もうとする姿を見た他の浪人が。
『手強いぞ! 回り込め!』
『挟み撃ちで……ぬわぁ!?』
 仲間の浪人に素早く呼びかけ、景正を挟撃しようとした刹那。
 伸長された深紅の鎚が大上段から振り下ろされ、浪人の足をグシャリと潰した。
「悪ぃな。少なくとも俺は、事前に手前等に手を見せる様な真似はしねぇよ」
 それは、『イデア・キャノン』に『スプラッシュ』に取り付けた『スチームエンジン』を接続し。
 影朧エンジンを起動させながら、展開されていく『イデア・キャノン』のコンソールに文字を叩き込むウィリアムを庇う様にした陽太の呟き。
 続けて淡紅色の鎚に横合いから別の浪人が殴り飛ばされ、その場で派手に回転して仰け反り倒れるのを見て陽太が溜息を漏らす。
「……ってか、斬られ慣れ? だったか。そんな事自分達で言ってて悲しくねぇか?」
『ふっ……我等は浪人! 全ての血も、肉も、クルセイダー様に捧げる其の為に、我等が此の命惜しく等……!』
 ――斬。
 浪人が格好を付けているその間に、赤黒く光り輝く刀身が浪人の首を撥ね飛ばした。
 ゾンビとは言え、人を斬る感触に微かに嫌なものを覚えながら、その剣の主たる敬輔は刎ねた首へと氷の礫と化した波を解放する。
 放たれた氷塊の波が、浪人の首を凍てつかせ砕く醜い姿に微かに顔を歪めながら。
「相手がゾンビだとは分かっているが……あまり気分は良くないな。だが、これも全て……」
「然様です、敬輔殿。全ては、彼等を生み出した晴明の所業を止める其の為には決して避けられえぬ道です」
 呻く様に呟きながら、目前の敵を黒剣の平で叩き潰した敬輔を顧みながら、次の標的を定めた景正が諭す様に言葉を紡ぎ。
 同時に放たれた二の太刀が剛力で加速し、敢えてその攻撃を身に受けようとしていた浪人の上半身を拉げさせた。
 その場に残った下半身を掴み、螺旋の回転を加えながら投げ飛ばし、蔵乃祐の9の斬撃の1つを受けた浪人に叩き付けている。
 浪人の体から舞った血が炎と化して、残されていた下半身とぶつかり其れを丸ごと焼き尽くしながら。
「……同士討ちで互いに互いを炎で焼き合うその姿。見るに堪えないですね。せめて安らかに永遠の眠りにつきなさい」
 その姿を一瞥した蔵乃祐が、大連珠で左腕を覆う様にして自らの万力を解放し、その勢いの儘に焼ける遺体を叩き潰した。
 肉片すら残すこと無く消失する生殖型ゾンビの冷たくも生温かい感触がその腕を通してはっきりと伝わってくる。
 心弱き者……救世救道の道に縋っていたであろう人々であればその感触に怯え、竦み、そして震え上がってしまうかも知れない。
 ――だが、所詮、この生殖型ゾンビ達は。
「オブリビオン。……元より、時代から取り残された者達に過ぎません。本来、此の時代にあなた達の居場所は最初から無かったのでしょう」
 その蔵乃祐の悟りを開いたかの様な言葉を聞いて。
「……そうかも知れねぇな」
 微かな憐憫と共に首肯した陽太が巨大なハンマーと化した濃紺と淡紅色のハンマーを翼の様に広げて回転を開始。
 それはまるで自らを竜巻と化すかの様。
「……行くぜ」
 その竜巻の様な暴威を纏った陽太がそう小さく沈痛さを感じさせる口調で呟いて。
 両手の鎚を振るい、敬輔や景正の斬撃で浪人から切断された部位を叩き潰す。
 部位から単なる肉塊と化したそれに思わず顔を顰めながら。
(「やっぱり見ているだけでグロイな、此の光景は。此処に居る奴等は皆、こう言うのに免疫があるみてぇだが」)
 もしも免疫の無い人間がこの場にいたら、それこそこの地獄絵図に立ち竦むことしか出来なかったに違いない。
(「或いは……昔の俺だったら、此の光景を見るのを避ける為に、『零』に入れ替わって貰っていたかも知れないな」)
 それは、自らから『死』を遠ざけるため。
 自らの『罪』から逃げるためだ。
 だが……今は、其れも含めて受け入れて、前に進むと決めている。
 語り聞かせる様な陽太の胸中の誓いに、内に眠る『零』が深く肯定の意を返す間に。
「Spell Boost術式コンプリート。System:Infinite Circuit起動確認。『イデア・キャノン』の魔導回路、出力3倍……Mode:Final Strike、能力を火力に全回し。……Elemental Power Converge……」
 カタカタカタとウィリアムのコンソールを叩く音と共に、『イデア・キャノン』の砲塔が、無数の魔力収束式仮想砲塔へと姿を変えた。
 同時に積層型立体魔法陣が、砲塔の先に複数浮かび上がり、其々が、赤・青・緑・黄・白・黒と点滅を始めて。
 それは其々に対となる色と向かい合わせになり。
結果として、魔法陣に収束されていく反発し合う精霊達の輝きがより一層強くなっていく。
(「やはり魔導回路を拡張した分、精霊力の収束が早くなっていますね」)
 そう内心でウィリアムが呟いた時。
 既にコンソールには精霊力充填率250%と表示されていた。
(「後50%……もう少しで……!」)
 そう内心で、ウィリアムが呟くその間にも。
「貴様達を生かしておけないのは事実だ。だから皆……もう少しだけ、耐えて」
 そう敬輔が自らの体に纏う白き靄……『彼女』達を励ます様に語りかけながら、景正と蔵乃祐の間隙を拭う様に走り。
「……敬輔殿」
 その言葉と共に、景正が『鬼包丁』の刀身に食い込んだ血飛沫を上げる浪人を、敬輔が向かう先にいる浪人達へと投げつける。
 互いにぶつかると同時に、喀血したそれが炎と化して襲おうとしたその瞬間。
「……ありがとう、景正」
 敬輔が下段に構えて大地を走らせていた赤黒く光り輝く刀身持つ黒剣を振り上げた。
 その下段からの斬り上げと同時に、黒剣から飛び出したのは氷結の波。
 その波が炎とぶつかり合い、絡め取る様に凍てついていくのを見て、敬輔が景正に団子状態にされていた浪人を纏めて黒剣の平で叩き潰した。
(「……寧ろ、この戦いならば、|復讐《 アヴェンジャー 》の方が良かったかな」)
 その場合、どうやって『彼女』達の力を引き出すのかに悩みそうではあるけれども。
 敢えてそんな関係の無い事を考えることで、浪人達の肉を完膚なきまでに破壊する事への『彼女』達の抵抗感を押し隠す様にするその間に。
「生殖型ゾンビ達よ、永遠の眠りに落ちよ」
 蔵乃祐が『滅』と言う名の救済を与えんと金剛の如き硬度を持つその足に怪力を籠め、瀕死ながらも抵抗の意志を示す浪人達を踏み潰した、其の時。
「出力300%。……Release. Elemental Cannon Fire! 皆さん射線上から速やかに退避を!」
 そう、ウィリアムが叫ぶと同時に。
 無数の砲塔を展開していた『イデア・キャノン』に収束された六大精霊達の反発し合う力が炸裂し、極太のビームが解き放たれる。
 後方から吹き荒れる凄まじい精霊力の爆発とその破壊力の気配を一番最初に感知したのは、敬輔と陽太。
「景正! 散開するぞ!」
 敬輔が咄嗟にその言葉を発すると同時に前に屈み込む様に回避運動を取るのを見て、景正が状況に近付き空中にバク転を決め。
「そっちの焦茶色の髪のにーちゃんも、飛べ!」
 陽太もまた、微かに焦った様に叫びながら、淡紅色と濃紺のハンマーを伸長させ、蔵乃祐の背後に回っていた浪人を叩き潰したところで。
「はっ!」
 陽太の警告と背後からの其れに気がついた蔵乃祐が横飛びしながら、英雄幻妄パラドクスメサイアを振るう。
 振るわれた妖刀の魔刃が血の様に赤い光を伴う9つの斬撃を蔵乃祐の周囲全体に亘って展開され。
 その斬撃に足を斬り裂かれ、機動力を奪われて動きを鈍らせた浪人達に。
 ウィリアムがフルブーストさせた『イデア・キャノン』から扇型に放射されたビームの束が直撃し、跡形もなく焼き尽くした。
 それこそ……肉片1つ残すこと無く。
 ウィリアムの砲撃で、此の戦場の残敵達が肉の欠片も余すこと無く跡形もなくなっているのを見て。
「……二度と晴明の魔の手に運命を狂わせられるなよ、貴様達」
 そうぽつりと敬輔が小さく囁き。
「肉片の欠片も残らぬ程の消失か――御免。だがこれも、エンパイアを脅かす者を斬る、其の為だ」
 そう残心しながら景正が呟くその間に。
「全ては、骸世を穿つ為に」
 祈る様にパチン、と両手を叩く蔵乃祐。
 と……そこで。
「……まあ、肉片の欠片も残らなくなっちまったが、それでもこのままだと魂の無念は、何時迄も此処に残り続けそうだよな」
 そう不意に陽太が呟きながら、銃型の改造型ダイモンデバイスを取り出した。
 以前までのダイモンデバイスと形状こそほぼ同じだが、サイバーザナドゥの技術を取り込んだ事で、その能力は飛躍的に向上している。
 そのダイモンデバイスを陽太が取り出した意図に気がついたか。
(「陽太……」)
 己が内に宿る『零』が囁き掛ける様に問いかけてくるのに。
「ああ……お前もそのつもりだろ、『零』」
 そう胸中で返した陽太が改造型ダイモンデバイスの銃口を天へと向けて、引金を引く。
 銃口の先に描き出された召喚陣とその中央に描かれた悪魔……。
「……アスモデウス! こいつらの魂を浄化してくれ!」
 その陽太と零の想いを乗せて。
 現れた白炎纏う獄炎の悪魔『アスモデウス』が咆哮と共に、自らの纏う白色の獄炎を上空から降り注がせた。
 祈りの籠められた炎は、既に消滅した浪人達の魂の浄化と鎮魂、弔いの炎と化して舞い、狂信的な彼等の魂を浄化する。
(「あいつらがこれで本当に救われる、とは思えないが……」)
「それでも晴明とやらに利用された犠牲者である以上、これ位はしてやらないと、な」
 そう陽太が弔いの言葉と共に、鎮魂の祈りを捧げた所で。
「……進みましょう、皆様。これ以上、此の様な犠牲をエンパイアにこれ以上増やさぬ様にする為にも、私達は向かわなければなりません」
 その景正の促しに敬輔達は頷き、鎖に絡め取られて、地上に引き摺り下ろされた魔空原城に入城した。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『軍神『上杉謙信』』

POW   :    毘沙門刀連斬
【12本の『毘沙門刀』】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
SPD   :    毘沙門刀車懸かり
対象の攻撃を軽減する【回転する12本の『毘沙門刀』】に変身しつつ、【敵の弱点に応じた属性の『毘沙門刀』】で攻撃する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
WIZ   :    毘沙門刀天変地異
「属性」と「自然現象」を合成した現象を発動する。氷の津波、炎の竜巻など。制御が難しく暴走しやすい。

イラスト:色

👑11
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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



魔空原城の凡そ中間位であろう大広間に猟兵達が辿り着いた……其の時。
 ――カツリ、カツリ。
 不意に靴音の様なそれが鳴り響き、それに合わせる様に10の刀を空中に浮遊させ。
『|白《 未来 》』と『|黒《 過去 》』の双刀をダラリと力を抜いて構えた侍がゆっくりと姿を現す。
 男……儀式『Q』を識るその男は、現れた猟兵達の姿を見て、粛々と戦士の礼を猟兵達に取った。
「流石はグリモアの予知を得た者達ということか」
 武士の作法に則ったそれを以て猟兵達を迎える『上杉謙信』
 だが、同時にその全身から放出されている触れれば切れてしまいそうな程の覇気に気圧されぬ者は早々にいないだろう。
「……例え、我が身が生殖型ゾンビだとしても。私が、私である事は、何も変わりはせぬ。そう……私が、其方達の様な強敵を相手に、手を抜くことが出来ぬと判断しているのと同様にな」
 何処か、全てを悟ったかの様に。
 そう静かに現世に生殖型ゾンビを介して顕現した『上杉謙信』がなれば、と猟兵達に向けて粛然と告げる。
「私も一切の油断はすまい。……いや、出来まいの方が正しいのであろうな。慢心程、己が腕を鈍らせる心はあらぬ」
 そう告げて、静かに佇む『上杉謙信』から発される覇気。
 ――この気配を纏う相手を前に、手を抜くことなど一切出来まい。
 そう悟った猟兵達が、此の広場で其々に武器を構え、その『上杉謙信』と対峙する。
「……そして、故に私は、其方達を貴奴の元に行かせるわけには行かぬ。いざ……尋常に勝負と行こう、猟兵達よ。……『上杉謙信』、推して参る」
 ――そんな、『上杉謙信』の神々しいまでの圧倒的な気配に、思わず威圧されながら。
火土金水・明
「以前の戦争ではご縁が無く戦う事ができませんでしたが、今回戦う事が叶い嬉しく思います。」「例え生殖型ゾンビとして蘇ったとしても、軍神としての心構えは尊敬に値します。」「あ、一つお聞きしたい事があるのですが。あの戦争当時あなたの居城である春日山城に何が隠されていたかです。別に最初から答えは期待はしていませんけど。」「さて、長々と話をしていてもあれなので、そろそろ勝負を始めましょう。(銀の剣を構える)」
【SPD】で攻撃です。
攻撃は、【継続ダメージ】と【鎧無視攻撃】と【貫通攻撃】を付け【フェイント】と【カウンター】を絡めた【シルバータイフーン】で、『軍神『上杉謙信』』達を纏めて【2回攻撃】します。相手の攻撃に関しては【第六感】【残像】【オーラ防御】で、ダメージの軽減を試みます。
「(攻撃を回避できたら)残念、それは残像です。」「私の役目は少しでもダメージを与えて次の猟兵の方に繋げる事です。」
アドリブや他の方との絡み等は、お任せします。


ユーフィ・バウム
晴明とまみえたのはもう3年半前
何らかの形でまた現れるのではと思っていたのですが――

ここからは私も助力します
遠間から衝撃波を牽制に放ち、ダッシュで近づいていきます

敵の攻撃を見切り、致命を避け武器で受け、
体に命中しそうな攻撃はオーラ防御で凌ぎます
野生の勘もフル稼働、少しの気の緩みも許さず間合いを詰め、
反撃の鎧砕きの一撃をねじ込む

共に戦う仲間とは積極的に連携を行います
時に相手の隙を作ることに専心し
時に仲間をかばうことで勝利への道を拓く

友を信じる、力を合わせること
そうして猟兵は3年半前も貴方を超えたのでしょう、謙信
今回も必ず勝ちますっ!

相手が体勢を崩したのなら、
必殺の《轟鬼羅刹掌》を打ち込みますよっ!


ウィリアム・バークリー
“軍神”上杉謙信と再び相対することになるとは。ゾンビだからと侮ればそれは自殺志願も同然。あの時以上に全力を燃やして挑ませていただきます。

今回は積極的に攻め込んでいきます。『スプラッシュ』で毘沙門刀の防御を切り崩しながら、剣の切っ先を上杉謙信に届かせるよう。
毘沙門刀は「武器受け」し「受け流し」ます。その上で、「オーラ防御」で身を守って。

天変地異が始まったらサバイバルマントで身体を包んでダメージの軽減を図ります。
術式を放ち終えた直後が狙ったタイミング。Stone Handで謙信の身体を拘束します。これが一番の狙い。それでもおそらくすぐにも振り払われる。
僅か一瞬出来た隙に、剣で謙信の腕を切り落とす。


鞍馬・景正
謙信公――見えるのはこれで二度、いや三度目か。

通せぬとあっても、押し通らせて頂く。
晴明を放置すれば、嘗て貴殿が護った越後の地も、貴殿に仕えた忠臣たちの子孫も踏み躙られよう。

天下静謐。
かつて公も追い求めたものの為に。

鞍馬景正、参る。



あの大乱の時と変わらぬ実力。
脅威なれど、私も腕を磨いてきました。

毘沙門刀には二刀を抜いて防ぎ、受け流しながら接近。
遠間には斬撃波で吹き払い、近くに寄れば刀身を怪力で弾きながら押し入って行きましょう。

防げぬ攻撃も、その間合と位置、勢いから脅威度を判断。
致命傷に至らぬものは甲冑とその結界術で受け、如何しようもないものは一度退いて慎重に。

視野を広く保ち、側面や背後に回り込む刀にも警戒。
前後左右からの同時攻撃などあれば、寧ろ一方の層が薄くなる好機。

前に出ての正面突破で一気に接近。

勝負は間を詰めた後、【羅刹の太刀】で挑ませて頂く。

太刀による袈裟を仕掛けつつ、同時に脇差も巨大化させての刺突。
一の太刀を疑わず、二の太刀にても確実に仕留める――羅刹の太刀いかに、軍神。


館野・敬輔
【SPD】
アドリブ連携大歓迎

…上杉謙信
以前姿を現したのは、4年近く前だったか?

邪法で呼び寄せられ、ゾンビに憑装しているとはいえ
強さはあの時と同等…いや、それ以上な気がする
気を抜ける相手ではないのは重々承知さ
…全力で死合うだけなんだから

以前は絶対先制があったが、今回はないから準備ができる
毘沙門刀車懸かりが厄介なのは相変わらずだから
指定UC発動し、黒剣に魂と「属性攻撃(光)」を纏わせ「カウンター」の構え
さて、今回俺の弱点は何だと判断されるのだろうか?
以前は毒だった気がするが…今は光か? 闇か? 毒のままか?
いずれにしても弱点に応じた属性の刀を「視力、見切り」で見極め、黒剣の「武器受け」で払い落とそう

刀を受け止め敵UCをコピーしたら即座に発動
制限時間いっぱいまで12本の毘沙門刀で「範囲攻撃」し移動を制約しつつ
隙を見切り懐に飛び込み、黒剣の「2回攻撃、怪力」で思いっきり叩き斬る!

上杉謙信、最後にひとつだけ問う
今の貴方は安倍晴明の邪法でゾンビに憑装させられている身
…そんな己に、後悔は抱いていないか


森宮・陽太
【WIZ】
アドリブ連携大歓迎

おいおい…上杉謙信まで復活したのかよ
…いや、安倍晴明がいる時点でこのツッコミはヤボか
周りの連中の反応を見ていれば、強敵なのはわかる
最初から手なんて抜く気はねえ、全力で行くぜ!

指定UC発動
「魔力溜め」で威力を上げた炸裂する翠色の雷を、12本の毘沙門刀+謙信本人に放ち「範囲攻撃」
雷が刀に命中し操れるようになったら、剣先を一斉に謙信に向け、至近距離から断続的に「串刺し」してやらぁ
謙信には命中しても抗われそうだが、もし動きを操れそうなら全身捕縛し行動自体を封じてやる

毘沙門刀天変地異は発動する現象を「見切り」、「ダッシュ」で範囲外に逃れ回避
発動の瞬間を潰せそうなら二槍伸長「ランスチャージ」で潰したいが…賭けになるか

…上杉謙信
骸の海に戻る前に、その身体、浄化しようか?
ゾンビに憑装したままってのは何とも気分がわりぃ

謙信が了承したら、演出で【悪魔召喚「アスモデウス・浄炎」】発動
浄化の炎で上杉謙信を焼き尽くし、魂を骸の海へと送還しよう
…これが俺なりの敬意だぜ


戒道・蔵乃祐
魔軍将にして猟書家、上杉謙信
憑装猟書家が魔軍将ゾンビに貴方を選んだのも、敵ながら慧眼と言えようか

先の戦に於いての軍神車懸かりの陣による圧倒的な用兵術
仮に晴明クルセイダーの企みが成ったならば、量産され続ける将と統率力によって采配される屍の軍勢がエンパイアを地獄絵図に変えただろうか

貴方が如何なる『識』を求めていたのか
既に過ぎ去りしことなれど
民草の未来が定まる此度の乱、我等の道を阻もうとするならば、刃を以て押し通る

◆置行堀
車懸かりの連続攻撃を早業+ジャストガードで往なし続けて機を伺う
心眼で太刀筋を見切り、投擲+クイックドロウでメダルを乱れ撃ち
属性を喪失した毘沙門刀を武器受け+怪力の重量攻撃で叩き折る




 ――その、圧倒的な覇気を感じながら。
「以前の戦争では御縁が無く、戦う事が出来ませんでしたが」
 不意に上空から、そんな声が響き渡る。
 そこには、まるで大砲(?)の様にも見える魔法使いの箒に搭乗した、火土金水・明の姿があった。
「……明か。まさかお前が来るとは思っていなかったな」
 その上空に現れた箒とそれに跨がる明を思わず見上げて。
 館野・敬輔が少し唖然と明の名前を呼ぶのに、お久しぶりかも知れませんね、と明が軽く黒色のウィザードハットを目深に被って目礼する。
「因みに皆さんの加勢に来たのは、私だけではありませんよ」
 そう微かに口の端に笑みを浮かべて応える明の言葉に応じる様に。
 箒からムササビの様な機敏な動きで飛び降りる蒼穹を思わせる光を纏った影が1つ。
(「……晴明と|見《 まみ 》えたのは、もう3年半前、ですか……」)
 振り返れば何時の間にか其れ程の年月が過ぎていた。
 その過ぎ去りし時に微かに想いを馳せながら、ウィリアム・バークリーの前に立つ様に着地したのは……。
「ユーフィさんですね」
 そうウィリアムがその少女に問いかけると、その腰に帯びた袋から1つまみの実を取り出したユーフィ・バウムがはい、と首肯した。
 勇気の実を摘まむことで、無限に湧き出す勇気を漲らせ。
 蒼穹の結界を自らの周囲に張り巡らせながら。
「頼もしい援軍が2人増えたって訳か。心強い話だぜ」
 思わず微笑を綻ばせ。
 森宮・陽太がそう軽く息を漏らしているその間に。
「……謙信公」
 そう何処か、低く抑える様にも見える一方、押し寄せてくる情感の様な何かに声音を彩らせながら。
 鞍切正宗……刃長三尺五寸の大太刀と、羅刹の膂力が無ければ、扱うことも出来ない鬼包丁の二刀の濃口を切り。
 微かに覗かせた刃から放たれる鮮烈な銀光を戦いの始まりの鐘の様に見せながら、鞍馬・景正が粛々と続けた。
「――貴殿と相見えるのはこれで二度――いや、三度目だな」
『そうか。私は既に3度もお前とやり合ったのか。やはり、グリモアの予知に導かれた者達とは、相見える宿命と言う事だな』
 景正の問いかけに粛然と頷き。
 12本の毘沙門刀の内、|白《 未来 》と|黒《 過去 》のダラリと下げていた双刀をゆっくりと構える謙信。
 その覇気と威風堂々たる姿を見つめながら。
(「……上杉謙信。以前姿を現したのは、確か4年近く前だった筈だ……」)
 ――けれども。
「邪法で呼び寄せられ、ゾンビに憑装しているとは言え、強さはあの時と同等……いや、それ以上に感じるのは俺の気のせいだろうか」
 その敬輔の独り言の様な呟きを引き取り、朗々と歌を紡ぐかの様に。
「……魔軍将にして、猟書家、上杉謙信」
 嘗て猟書家たる『真田神十郎』が『剣豪殺し』の為に配下に謙信を憑装させた予兆を思い出し。
「憑装猟書家が魔軍将ゾンビに貴方を選んだのも、敵ながら慧眼と言えましょうな」
 戒道・蔵乃祐がそう感嘆とも、納得とも取れる言葉を発すると。
『……どうであろうな。私は只、お前達猟兵が、グリモアによって私達の動きを予知出来る相手である事を識っていたに過ぎぬ』
 そう返す謙信の言葉に、そうですね、と首肯を返した蔵乃祐が話を続けた。
「……その猟兵、グリモアに導かれた我々の進軍を阻むために。先の戦に於いては、軍神車懸かりの陣による圧倒的な用兵術を用いた」
 ――故に、もし。
 もし仮に、晴明クルセイダーの企みが成ったならば……。
「……量産され続ける将と統率力によって采配される屍の軍勢が、エンパイアを地獄絵図に変えていたのでしょうね」
 そのカマを掛けるようにも聞こえる蔵乃祐の其れに、憑装された謙信は応えない。
「……僕には、貴方が如何なる『識』を求めていたのか、其れは分かりませぬ」
『……であろうな。私もまた『猟書家』たる者。故にブラキエルと同様、『識』を求めていたのは否定せぬ』
 それは猟書家達にとって、進化の徴であり。
 同時に、越えるべき轍でもあったのだから。
『然れど私が何の『識』を求めていたのかを語ったところで、お前達にそれが真実であるか否かを確かめる術は無いだろう。故に私は『晴明』の下にお前達を行かせぬ為に、只、この場で刃を交えるのみだ』
 まるで、厳粛な判決を下す奉行の様に。
 厳かにそう告げる謙信の其れに、ですね、と蔵乃祐が静かに応え。
「……確かにそれを『識る』機会もまた、過ぎ去っていますね。……ですが、民草の未来が定まる此度の乱、我等が道を阻むのであれば、我等は刃を以て押し通らせて頂きます」
 そう続ける蔵乃祐の其れに、そうだな、と首肯を返す謙信。
「成程。例え生殖型ゾンビとして蘇ったとしても、軍神としての心構えは尊敬に値しますね」
 その明の呟きには、それもまた、と謙信は微かに笑みを浮かべて。
『それもまた、軍神と呼ばれる我が宿命』
 そう返事を返してきたのに明が1つ頷いて。
「そう言えば、私からも1つ、お聞きしたいことがあるのですが良いですか?」
 そうして魔法使いの箒から降りて着陸する明の問いかけに。
『何かあるのか、猟兵よ』
「あの戦争当時、あなたの居城である春日山城に何が隠されていたのですか?」
 その明の問いに対して。
『それに対する応えは先と同じだな。仮に今、この場にいる私が何かを言ったところで、その真偽をお前達猟兵が見極めることは出来ぬ。であれば、問答そのものが無意味であろう』
 そう律儀に応える謙信にそうですね、と明が首肯しながら。
「まあ、確かに私達にあなたの言葉が真であるか、偽であるかを確かめる術はありませんね。となれば、これ以上長話をしても無駄ですか」
 そう呟き、腰に佩いていた銀の剣を抜剣する明。
 謙信はそんな明を見て、その通りだと首肯を返した。
『此処から先は、お前達と私の刃、どちらが『覚悟』を貫き通すことが出来るか、雌雄を決する時』
 その厳かな謙信の宣戦布告に蔵乃祐と明が頷き。
「……私達を貴様達が通せぬと言うのであれば、私達は押し通らせて頂く」
 更に濃口を切った双刀を抜刀し、正二刀に構えながら景正がそう告げたところで。
『いざ参るぞ、猟兵達よ』
 両手に握りしめた双刀を中段に構え、その黒と白の剣先から鋭利な覇気と殺気を放ち。
 更に周囲に浮遊していた10本の毘沙門刀を撃ち出した、軍神『上杉謙信』が襲い掛かってきた。


「天下静謐。……嘗て公が追い求めたものの為にも。鞍馬・景正、推して参る」
 空中を自在に飛び回り攻め立てて来る10本の毘沙門刀。
 其れに合わせる様に自らの手に持つ黒と白の毘沙門刀の刀身に自分達の姿を映し出す様にしながら迫り来る謙信。
「……晴明は何らかの形でまた現れるのでは、とは思っていたのですが――」
 ――まさか晴明と相対する前に、此の様な形で上杉謙信と相対する事になるとは。
 そんな微かな驚きのニュアンスを籠めながら呟いたユーフィは背に帯びていた大剣『ディアボロス』を抜剣。
 そうして地面に擦過させる様に振り上げると、巨大な蒼穹の斬撃の波が、飛来する毘沙門刀の内『火』属性の刃とぶつかり合った。
 だが、ユーフィが12本の毘沙門刀の内の1本との間に火花を散らしている内に、謙信は舞い続ける。
『行け!』
 ――11本の毘沙門刀と共に。
 その内の1本である『風』の属性持つ毘沙門刀は、同時に天へと高々と駆けていった。
「……天翔る『風』属性の毘沙門刀? 一体何をやって来るつもりだよ?」
 咄嗟に『風』属性の毘沙門刀を迎撃するかの様に濃紺の輝き伴う螺旋状の突きを陽太が放つが。
『風』属性の毘沙門刀は、そんな陽太の伸長したアリスランスの軌道など意にも介さず空の高見に上るその間に。
『行くぞ!』
 景正やユーフィから間合いを素早く取りながら、『黒』と『白』の毘沙門刀を謙信が振り下ろす。
 大地にその2本の刀身が当たった刹那、大地を砕かんばかりの勢いで斬撃の波が津波の様に押し寄せてきた。
「……全力で死合うつもりだったが……流石に簡単に完全な準備をする時間は与えてくれないか」
 状況を冷静に見て取りながら、少しでもその斬撃の衝撃を殺さんと敬輔がみずからの黒剣を振り上げる。
 振り上げと共に放たれた衝撃の波が謙信の呼び起こした斬撃の波とぶつかり合い、微かにその勢いを殺すが。
「っ! いけません!」
 その勢いの儘に自分達を纏めて薙ぎ払おうとする波の衝撃を殺しきれないと直観したユーフィがディアボロスを大地に叩き付けた。
 叩き付け、地面が隆起する様な勢いで呼び起こされた衝撃の波が謙信の放った斬撃の波とぶつかり合い、その威力を更に減じさせ。
「直ぐに肉薄するのは難しいか。だが……!」
 更に景正が逆手に持ち替えた鬼包丁で空を薙ぎ、ユーフィや敬輔の放った衝撃の波に重ね合わせる。
 重ね合わさった3人の衝撃の波が、漸く謙信の斬撃の波を鎮め、どうにか攻撃を凌ぎきった……其の時。
『氷嵐よ、生まれ落ちよ!』
 その謙信の言の葉と共に。
 空中に浮いていた『風』属性の毘沙門刀から光が発され、更に『氷』属性の毘沙門刀と互いの刃光をぶつけ合い、氷嵐を呼び起こす。
 猛威を振る暴風に晒され、魔力溜めを行おうとしていた陽太が思わず舌を打った。
「天変地異……嵐そのものを操ってくるのかよ! 周囲の反応から見て只者じゃねぇとは分かっていたが……魔力を溜める時間すら簡単にくれねぇ!」
 そう毒づきながらも、咄嗟に全身の神経を逆立てて回避運動に移る陽太。
 隙を窺っていた敬輔もまた、黒剣で其れを受け止めるのを中断し、その嵐に紛れた氷礫を躱すことに全力を注いでいる。
 ――その間にも。
『未だ未だ行くぞ、猟兵達よ』
 その言葉と共に。
 氷嵐を意に介すること無く独楽の様に回転しながら肉薄してくる謙信。
 その目にも留まらぬ速さと遠心力で強化された白と黒の二刀の閃刃に、瞬く間に残像を打ち消され……。
「くっ……。やはり、簡単に防御が出来る様な行動をしてはくれませんよね……」
 気付けば肉薄され、独楽の様に回転した二刀を以て、強かなX字型の斬撃を受けた銀の剣を巨大化させた明が小さく呻いた。
「ですが近付いてくるのであれば、迎え撃つまでです」
 呟き巨大化させた銀の剣を横薙ぎに振るい、謙信に斬撃を与えようとしたその瞬間を狙って。
「行きますっ!」
 ユーフィがディアボロスエンジンをフルスロットルさせて謙信に肉薄しようとするが。
『遅い』
 其の時には『草』属性の毘沙門刀がユーフィを守る蒼穹の結界を叩き斬らんとユーフィの至近に迫っていた。
「……くっ。ですが……この程度でわたし達は敗れませんっ!」
 咄嗟にディアボロスでその刃を受け止めたユーフィの雄叫びに答える様に。
「ユーフィさん! 今、援護します!」
 前進したウィリアムが、腰に佩いたルーンソード『スプラッシュ』を抜剣。
『スプラッシュ』の刃に凍てつく氷の精霊達の力を這わせながら、下段から撥ね上げる様に振るっていた。
『はっ!』
 その横からのウィリアムの奇襲に気がついて、咄嗟にその手の毘沙門刀『白』を振るってウィリアムをいなす謙信。
 そのまま自らの膂力を軽く乗せてその衝撃を殺して躱す謙信の様子を見て。
「まあ、あの頃と違って、謙信の速度を目で追う事が出来る様になったのは僥倖か」
 その赤黒く光り輝く刀身に、白き光を纏わせた敬輔が呟いたその時。
 漆黒の毘沙門刀が、謙信の手から離れる様に不意に姿を消していた。
「えっ……?!」
 そして、代わりに謙信の手に握られていた『草』属性の返す刃の一撃を、ウィリアムが受けそうになった直後。
「させませんっ!」
 その間にユーフィが割り込む様にディアボロスを振るって強引にウィリアムを狙った刃の軌道を逸らし。
「何を狙っているのかは分かりませんが、あなたの好きにはさせませんよ」
 続けざまにユーフィの背後から闇を払うかも知れない金の翼の魔力で飛翔した明が巨大化した銀の剣を謙信に振るう。
 その攻撃は、既に予測されていたのだろう。
 一歩身を引いて明の刃を見切り、返す刃で白刀を、胴を薙ぐ様に振るう謙信。
 その謙信と明の間に割り込む様に。
「やらせはしません」
 景正が鞍切正宗の背でその刃を受け流し、強引に鬼包丁を唐竹割りに振るった。
 だが並の相手であれば絶対に躱すことの出来ない壱の太刀を身を捻る様にして躱す謙信。
 その間に、漆黒の毘沙門刀の刃――即ち、『過去』を司る刃が敬輔を薙ぎ払い、敬輔の全身から大きく体力を奪っていた。
「……! まさか、俺の弱点が、『過去』だと……?!」
『過去』の属性を持つ毘沙門刀にマリーから与えられた傷口を大きく斬り裂かれ、其処から血飛沫を上げつつ敬輔が呻くのを聞きながら。
 続けざまに『水』属性の毘沙門刀から洪水を発生させて、景正達を押し返しつつ、『毒』属性の毘沙門刀で蔵乃祐を牽制する謙信が溜息を漏らす。
『毘沙門刀がそう判断したのだ。此は俺の憶測だが……お前は、自らの『過去』の瑕疵を断ち切り、『未来』を進む道を選んだ。だが、其れは逆に言えば、過去の瑕疵を再び呼び起こせば深き傷となるのでは無いか?』
 その謙信の冷静な呼びかけに。
「ぐっ……!」
 敬輔の脳裏を過去のトラウマが支配していき、其れが敬輔の体を苛んでいく。
 フラッシュバックの様に襲ってくるそれに。
「……それでも、此に負けるわけにはいかない……」
 敬輔が過去の幻影を振り払う様に篭手に食い込んだ『過去』の毘沙門刀を振り払い、黒剣を横一文字に振るう。
 周囲を薙ぐ様に放たれた衝撃の波が、間合いを取り直した謙信を襲うが。
『まだまだだな』
 其の時には、振り払われた『過去』の属性を持つ毘沙門刀を引き寄せた謙信がその刃を振るい、漆黒の衝撃波を解き放っていた。
 放たれたそれは氷嵐と共に敬輔の衝撃の波を搔き消し飲み込まんばかりの勢いで爆ぜて消えていく。
「やはりそう簡単に機を与えてはくれませんね」
 それは、咄嗟に『毒』属性の毘沙門刀をいなした蔵乃祐の呟き。
 その蔵乃祐の動きを封じるかの如く、畳みかける様に『光』属性の毘沙門刀が解き放たれ、蔵乃祐は咄嗟に大連珠を展開してそれを受け止めていた。
「……此の実力。あの大乱の時と変わらぬか、もしかしたからそれ以上やも知れぬ」
 その蔵乃祐とは逆の属性……『闇』属性と、『氷』属性の毘沙門刀が上空から雨の様に振り注ぐのを。
 右手の鞍切正宗で、『闇』属性の毘沙門刀を。
 左手の鬼包丁で、『氷』属性のそれを咄嗟に受け止めようとした景正もまた、頷いた……其の時。
「景正さんっ!」
 ユーフィの鋭い警告の声と同時に、周囲を俯瞰してみる様に立ち回っていた景正の背筋に寒気が走った。
 何故なら、気が付いた時にはまるで縮地の様に音を殺して肉薄してきた『過去』と『未来』の二刃を振るう謙信がいたから。
「はっ!」
 受けきれぬと判断した景正が敢えて氷属性の刃を自らの藍染仏胴事斬り裂かれる痛みに耐えつつ、逆手に構えた鬼包丁を下段から撥ね上げた。
 刹那、生まれたのは、目にも留まらぬ速さ持つ斬撃の波。
 だが、謙信はそれを恐れる風も無く、白刃の一閃で搔き消すとほぼ同時に。
 上空から降り注いでいた氷礫の嵐の出力を更に一段階上げていた。
 極風とでも言うべき全てを凍てつかせんばかりの冷風と、氷礫が容赦なく明やユーフィ達最前衛を殴りつけていく。
「きゃっ……!」
 その殆ど槌で体を殴られる様な衝撃を蒼穹の結界越しに受けたユーフィが思わずそのダメージに声を上げ。
「くっ……!」
 同様に銀の剣を通して黒い結界を自らの周囲に張り巡らした明もまた、やや苦しげに思わず声を上げていた。
「ぐっ……だが、この程度の障害で私達は敗れぬぞ、謙信公……!」
 容赦なく自らを打ち据える氷礫と強風に耐え抜くべく、景正が自らに喝を入れた時。
 気魄に応じて護りを強くする、胴鎧……藍染仏胴から鮮烈な青光が放たれ景正の周りの結界が一際強化される。
「景正さんっ! そうです、わたし達は猟兵っ! 皆さんと共に戦う今、この程度の猛威に遅れを取りはしませんっ!」
 その景正の底力とでも呼ぶべき気迫の声を聞いて。
 ユーフィもまた、容赦なく自らの体を打ち据える氷礫と強風に逆らう様にディアボロスを振るう。
 振るわれたディアボロスが大気を割って蒼き衝撃の波を以て上空から降り注ぐ氷礫を叩き落とすその間に。
「踏み込みを……もっと……もっと……」
 ――深く。
 その諦めない強靱な意志を自らの清流の様な足捌きに籠め、大地を割らんばかりの勢いで大地を蹴る景正。
「援護しますよ、景正さん」
 その景正の意気込みに其の背を押される様に。
 明が小さく呟き、自らを守る様に展開していた黒のオーラの全てを銀の剣へと収束。
 問答無用でその身を氷礫と強風に打ち据えられ、体に打撲傷を増やしながらも尚、銀の剣を横一文字に振るった。
 巨大化した銀の剣の剣閃が、束の間、周囲に展開されていた無数の毘沙門刀とぶつかり、ほんの一瞬、仲間達への攻撃を防御した直後。
「……いざ!」
 その決意と共に。
 景正が三尺五寸のその刀身を十尺以上へと変形させて。
 自ら深い疲労感を受けながらその巨大な野太刀と化した鞍切正宗を袈裟に振るい。
 更に其れに合わせる様に……。
「行きますっ!」
 明の巨大化した銀閃の間隙を拭って、景正の死角から彼を断ち切ろうとしていた『闇』属性の毘沙門刀に気がつき。
 ユーフィがその斬撃を敢えて受けながら、ディアボロスエンジンをフル稼働させる。
 凄まじい加速を得たユーフィが景正の踏み込みの後を追う様に謙信に肉薄し。
「……食らいなさいっ!」
 叫びと共にディアボロスを撥ね上げ、質量を伴う衝撃の波を解き放つ。
 その波が狙っていたのは……。
『くっ……これは……!』
 轟音と共に放たれた景正の斬撃を咄嗟に双刀で受け止め、体を傾がせた謙信ではなく。
 その謙信の足下……即ち大地そのものだ。
 そうして、少しでも謙信の動きを阻害しようというユーフィの意図を察し。
『見事な連携、流石は猟兵達だな』
 落ち着いた表情を浮かべて、熟練の歩法を以て素早く後退しようとする謙信。
 続けて踏み込もうとした景正の二の太刀を牽制する様に上空から『風』属性の毘沙門刀を放つ。
 狙うは、景正本人では無く……彼の背丈の2倍以上の刀身を持つ鞍切正宗。
「成程。今はこれ以上の追撃は難しい様ですね」
 横からの衝撃に弱いのが、刀という武器だ。
 故に、咄嗟に大地を蹴って景正が後退し、武器破壊を回避した……刹那。
「今です……ウィリアムさんっ!」
 まるでその一瞬の隙を作るのが目的であったかの様に。
 叫んだユーフィの合図に氷礫による被害をサバイバルマント『ホワイトミュート』で最小限に抑えていたウィリアムが。
「漸く皆さんの力で作ることが出来たこの好機……見逃しはしません!」
 嵐にも負けぬ勢いで叫び、謙信の立つ大地へと『スプラッシュ』の剣先を突きつけた。


 ――ゴボリ。
 その瞬間、謙信の足下に現れたのは、『岩石で出来た大地の精霊の腕』
 その腕が謙信の両足を拘束せんと迫っている。
『!』
 その岩石で出来た大地の精霊の腕に両足を掴み取られ、ほんの一瞬ではあるが、謙信が動きを止めた、其の時。
「漸くですね。隙ありです」
 その言葉と、共に。
 ずっと時期を見計らっていた蔵乃祐が懐から妖怪『のっぺらぼう』の描き出されたメダルを取りだし、無秩序に其れを解き放つ。
 解き放たれた無数の『のっぺらぼう』のメダルが、既にウィリアムのStone Handの拘束から逃れた謙信に貼り付いた時。
 不意に、それまで縦横無尽に飛来していた毘沙門刀の動きが大きく鈍った。
「! よし、これだけ動きが鈍れば……使えるな」
 そう敬輔が小さく呟いたその瞬間。
 白光を纏った黒剣の赤黒く光り輝く刀身で、独りでに謙信の腕から飛び出した『過去』の毘沙門刀を受け止め。
「今まで受けて来た攻撃を、貴様に返す……!」
 そう敬輔が叫ぶと同時に。
 敬輔の黒剣が眩い輝きを放ち、謙信が自在に操っていた12本の毘沙門刀の複製品を、その剣先から解き放った。
「行け!」
 その敬輔の命令と共に。
 12本の毘沙門刀のコピーが足下を一瞬揺るがされた謙信に容赦なく襲い掛かっていく。
 その中でも一際鮮明な輝きを解き放つのは『未来』を司る白毘沙門刀。
『……模倣されたか。ぐっ……!』
 放たれたその一撃に謙信が一瞬目を見開き、咄嗟に自らの手にある白毘沙門刀でそれを受け止めようとするが。
『……未来を視る力が失われたか……!』
 先程までの様な神々しい輝きを伴わない只の刀と化した自らの毘沙門刀の姿に気がつき、謙信が思わず顔を歪めた。
 ――其処に。
「漸くか……解き放て、稲妻の鎖!」
 その叫びと共に。
 濃紺のアリスランスと淡紅のアリスグレイヴを、陽太が大地に突き立てた。
 其れとほぼ同時に、地を這う様に稲妻の鎖が解き放たれ、蔵乃祐に力を封じられながらも謙信が念動で操ろうとしていた毘沙門刀を縛り上げていく。
 その瞬間、ある事に気がついたのか、謙信が思わずはっ、とした表情を浮かべた。
『……くっ、10の毘沙門刀の支配権を奪われたか……!』
 自分に向かって迫る雷の鎖は容易く躱しこそしたものの。
 自らの持つ今となっては只の刀となってしまった『白』と『黒』の毘沙門刀以外の刀が雷の鎖の手に落ちた事を知り思わず舌打ちをする謙信。
 敬輔が降り注がせる12の毘沙門刀のコピーを繊細な足取りと緻密に計算され尽くした動きで躱していく謙信だったが……。
「一気に行くぜ!」
 追い打ちの様に叫んだ陽太のそれを命令として受け取ったかの様に。
 10本の毘沙門刀が謙信を串刺しにするべく次々に飛来し、肉薄していく。
『くっ……』
 時に自らの手に握る双刀でそれをいなし、或いは身を翻してその攻撃を躱していく謙信。
 だが……敬輔と陽太による合計22本の毘沙門刀の連続刀射は、流石に謙信の逃げ場を殺し、確実にある場所へと追い詰めていた。
 その追い詰められていく場所がどこなのかに心当たりを覚えながら、謙信が双刀を大地に擦過させ斬撃の波を放つ。
 それは、目前に壁として立ちはだかろうとしていた明を斬り裂いたが……。
「残念ですけれど、其れは私の残像ですね」
 ――ブン、と。
 気がつけばその明が予め仕立てておいた残像は陽炎の様に消え、その間に明が謙信の背後へと回り込み。
「私の役割は、あくまでもダメージを与えて皆さんの連撃に繋げていくことですので」
 その言葉と共に。
 巨大化した銀の剣を再度横一文字に振るい、敬輔と陽太の連続刀射を躱し続けていた謙信を背後から斬った。
『ぐっ……!』
 背後からの強烈な衝撃に思わず謙信がその場に膝を突いた瞬間を狙って。
「ユーフィ殿」
 ハァ、ハァ、と巨大化した鞍切正宗を握り、肩で大きく息をつきながら合図を出しつつ景正が謙信の左に回りこみ。
「はいっ……!」
 その景正に体事頷いて、ディアボロスエンジンをフル加速させたユーフィが謙信の右側面に回りこみ。
 挟撃の形を取った所で、景正がその大太刀を唐竹割りに振り下ろし。
 更にユーフィがディアボロスエンジンをフルブーストさせて一気に距離を詰め……。
「嘗て、わたし達猟兵が、友を信じ、力を合わせる事で、3年半前、貴方を越えたのと同じ様に」
 その右拳に、鬼の剛力を蓄えて。
「今回もわたし達が、必ず勝ちますっ!」
 叫びと共に、ディアボロスエンジンによる加速の乗った強烈な正拳突きを解き放った。
 解き放たれたその万力にも等しい物理的衝撃が、謙信の全身を激しく打ち据え。
「二の太刀……参る!」
 更に景正が振り下ろした大太刀の一撃が謙信を真っ直ぐに斬り裂き。
 続けて再び自らの体力を注ぎ込み、巨大化させた脇差し……鬼包丁による刺突が、謙信を真横から容赦なく貫いた。
「ハァ、ハァ――我が羅刹の太刀……いかに、軍神」
 まだもう1つ戦いが残っているのを重々承知の上で。
 大きな疲労と共に肩で息をしながらも、尚藍色の瞳で鋭く睥睨する景正のその問いに。
『ぐうっ……!』
 謙信は全身を朱に染め上げて、喀血していた。
 斬り刻まれ、貫かれた其の体にはもう力が入らない。
 本来であれば、今すぐにでもその場に倒れてもおかしくないだろう。
 だが……軍神と呼ばれし上杉謙信は、其れを良しとせぬ。
|武士《 もののふ 》としての意地故に、それだけの致命傷を受けても尚、双刀で正面から肉薄してきた蔵乃祐達を迎え撃とうとする。
 ――けれども。
「此処まででしょう」
 その無慈悲な断罪にも思える言葉と共に。
 蔵乃祐が、謙信が全身全霊の力を込めて振り下ろそうとしたその手の双刀の内、右の刀を白羽取って。
「むんっ……!」
 鍛え抜かれた自らの筋骨隆々の体躯……金剛身の力を以てその刀を叩き折り。
 ――更に。
「未だですよ……!」
 蔵乃祐の影から飛び出す様に姿を現したウィリアムが『スプラッシュ』を唐竹割りに振り下ろして、左腕を斬り落とし。
 ――そして。
「上杉謙信、最後に1つだけ問う」
 その懐に密着する様に潜り込みながら。
 陽太が制御を奪った10本の毘沙門刀と、自らがコピーした12本の毘沙門刀でその退路を断った敬輔が問いかけた。
『何だ?』
「今の貴方は、安倍晴明の邪法でゾンビに憑装されている身。……そんな己に、後悔は抱いていないのか?」
 その敬輔の問いかけに。
『例え、晴明によって蘇らせられた命と謂えども、命そのものに貴賤はない。どの様な形であれ、命を与えたものに恩を返すのは、自明の理であろう』
 そうきっぱりとした上杉謙信の回答に。
「……そうか」
 小さくそう返して。
 敬輔が刀身を赤黒く光り輝かせた黒剣を下段から撥ね上げ、その左脇腹から右肩に掛けてを斬り裂き。
 返す刃で逆袈裟の一撃を加えると……遂に謙信はその場に膝を突いた。


『我が役割果たせぬ、か。許せ、晴明……』
 そう謝罪の言葉を口に出しながら。
 血反吐と共にその場に頽れる謙信を見て。
「……なぁ、上杉謙信」
 そう陽太が呼びかけると。
『……何用だ、猟兵。私は既に死んでゆく身。お前達に話されることももうあるまい』
 そう死にかけながらも尚、ゆっくりと言の葉を紡ぐ謙信に。
「……骸の海に戻る前に、その身体、浄化しようか?」
 そう何気ない様子で陽太が提案を掛けてくる。
 思わぬ陽太のその言葉に、謙信は頽れたままノロノロと其の顔を上げた。
『……何のつもりだ、猟兵』
「いや、アンタ程の武人がな、ゾンビに憑装されたままってのはどうにも俺としては気分が悪ぃんだよ。だから、アンタが望むならば浄化させられるんだが……」
 その陽太の問いかけに。
『……勝者は、お前、達だ。……お前達の、好きにするが、良い』
 謙信は自身の『死』に何の感慨も持たない儘に呻くように掠れた様子でそう呟く。
「そうかい。じゃあ、俺の……|俺達《 ・・ 》の好きにさせて貰うぜ」
 そう告げて。
 陽太は、懐から取り出した改造型ダイモンデバイスの引金を引く。
 その銃口の先に描き出された魔法陣の中央に浮かんでいたのは、2本の角を持つ獄炎を司る悪魔……。
「アスモデウス。上杉謙信に敬意を表して、浄化してやってくれ」
 そう祈りを籠めて引金を引かれた改造型ダイモンデバイスの先に姿を現したのは、白色の獄炎纏う悪魔、『アスモデウス』
 現れた『アスモデウス』の咆哮が白色の獄炎を空から降り注がせ、既に意識の亡い、上杉謙信の体を火葬して、浄化させていく。
「極楽も 地獄も先は 有明の 月の心に 懸かる雲なし。……あの者が謙信公そのものなのでしたら、此の様に仰るのでしょうか」
 肩で息を切らしながら。
 浄化されていく謙信の姿を藍色の瞳で見送りながらそう景正が呟くと。
「それは分かりません。ですが、誰にも看取られることも、見送られることもなく、骸の海へと還るよりは良いのかも知れません」
 その景正の呟きに、祈る様に手を重ね合わせ、そう告げたのは蔵乃祐。
 微かに何とも言えぬ空気が周囲を満たしていたが。
「……急ぎましょう。この先に晴明クルセイダーがいる筈です」
 巨大化させていた銀の剣を元の大きさに戻して。
 納剣しながら明が先を促す様に言葉を紡ぐのに。
「そうですね。……まだ戦いが終わったわけではありませんから」
(「この先にいるのですよね……晴明」)
 そう内心で晴明クルセイダーに囁き掛けるユーフィの言葉に押される様に。
「……そうですね。急ぎましょう、皆さん」
 景正が納刀し、気息を整える様子をちらりと見やってから、ウィリアムが先を促し、猟兵達はその最奥部へと向かって行く。
 ――晴明クルセイダーの待つ、その場所に。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『憑装猟書家『晴明クルセイダー』』

POW   :    十字槍「人間無骨」
【十字型の槍】が命中した対象に対し、高威力高命中の【体内の骨を溶かす光線】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
SPD   :    憑装侵略蔵書「ぱらいそ預言書」
【預言書に書かれた未来の記述を読むことで】対象の攻撃を予想し、回避する。
WIZ   :    『魔軍転生』秀吉装
レベル×5体の、小型の戦闘用【豊臣秀吉(フェンフェンだけで意思疎通可)】を召喚し戦わせる。程々の強さを持つが、一撃で消滅する。

イラスト:kawa

👑11
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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 ――魔空原城、最奥。
 そこに用意されていた礼拝堂、『ぱらいそ礼拝堂』に、その男は立っていた。
「……やはり来ましたね、猟兵の皆さん」
 その晴明の呟きに迎え入れられた猟兵達が鋭く目を細めて晴明クルセイダーを見つめている。
 その視線に何処か非難めいたものを感じたのだろう。
 晴明はああ、と何でもない事であるかの様に口の端に笑窪を刻み込んだ。
「クルセイダーは、見事な蛮勇を持つ勇者でした。私の憑装を試み、エンパイアを転覆に導かんとしたのですから。ですが……クルセイダー程度の|業《 カルマ 》で私を御す事が出来ると考えたのは、軽率だったと言うしかないでしょうね。|業《 カルマ 》は常に蓄積していくもの。私に刻まれた深き|業《 カルマ 》と、更に積み重ねられ続ける|業《 カルマ 》を、今のあなた方には知ることは出来ぬのでしょう」
 ですが……と全身から死と殺戮の気配を放出させながら、晴明クルセイダーは軽く頭を横に振る。
 その口の端の笑窪を益々深めて。
「私も少し興が乗りました。故にクルセイダー。貴方の肉体とユーベルコードにて、私がせめて貴方の恩義に報いるために貴方の望みを叶えてご覧に入れましょう」
 そう優しくあやすような嘆息を漏らした後。
 晴明はそう言えば、と猟兵達に向けてまるで禁断の果実を差し出すかの様に優しく甘い声で呼び掛けた。
「あなた方に1つだけ教えて差し上げましょう。既にクルセイダーの意識はもう、この肉体には存在いたしません。彼の意志は、私の意志です。私を倒すのであれば、彼の意識を呼び覚まして邪魔をさせよう等と言う甘い考えは捨て去ることですね」
 そこまで告げたところで。
 では……とぱらいそ聖典を捲りながら、怪しく晴明は微笑んだ。
「此処に来た、と言うことは私を止めに来た、と言うことなのでしょう。かの戦神『上杉謙信』をも下したあなた方の力、とくと見せてくださいませ。……私を止められるのならね」
 その言葉と共に。
 クルセイダー晴明の全身から殺気と莫大な魔力が、猟兵達に襲いかかった。

 *今回の章は下記ルールの下で、運用致します。
 安倍晴明はクルセイダーの肉体と、霊体である自身の能力により、1回の行動につき、合計2回、任意の組み合わせでユーベルコードを使用してきます(データ的にはダブルUC+2回攻撃に近いです)
 この「2回攻撃」に対抗し、打ち破る方法を見出すことがプレイングボーナス扱いとなります。
 但し、このシナリオではクルセイダーの意志に呼び掛けて攻撃を止めて貰うと言う説得はボーナスになりません。
 また、コピー、反射、相殺、UC封印系のUCもボーナスにならないので、その点は予めご了承下さい。

 ――其れでは、良き戦いを。
ユーフィ・バウム
「2回攻撃」に相対するには
やはり私も2人となることでしょうか
私の心はこのUCを用いることに躊躇いはあります
――けれど今は使う!

『戦士の斧剣』よ。今こそ貴方の主をこの地へ誘え
《折れぬ大樹『ユーフィ』》!

現れた、大人になった私のような女性は
私と同等の強さを持ちます
息もきっと合わせられます
2つの大型武器で、2つのオーラで
晴明クルセイダーの2回攻撃に対応していきます

攻撃はお互い2つ
けれど強引にクルセイダーの自我を消した晴明は、
どこまで行っても晴明ただ1人
対してこちらは個々の1を10にも100にもして見せます!
そして共に戦場に立つ仲間達とも連携していきますよ

折れぬ大樹よ
貴女の物語を私は物心つく前に識っています
貴女は森から出て、文明に生き
けして届かぬはずの英雄の命を救った
聖女と、母となりました

でも私は貴女とは違います
優しくはない、命を救う力もない――
どこまでも戦士、どこまでも蛮人
それでいい

最後は死力で拳を振るい、時に仲間をかばう
大切なことは勝利への道を拓くこと
叶うならばこの身が倒れることも本望ですっ


ウィリアム・バークリー
昔、あなたでないあなたに、身を以て教えられたことがあります。戦場へは複数のユーベルコードを持ち込むなと。
そのあなたが、ダブルユーベルコードとか、どういうつもりですか!
まあ、いいです。しっかり討滅して借りを返しましょう。

「範囲攻撃」でActive Ice Wall展開。氷塊で十字槍の突きを「盾受け」して受け止めます。
ミニ秀吉は「結界術」で侵入を食い止めている間に、氷塊を砲弾にして薙ぎ払いましょう。
氷塊はいくらでも用意出来ますよ。
priorityが必要な方には適宜使用権限を渡します。

皆さん、支援はこちらできっちりこなします。『晴明クルセイダー』を確実に討滅してください!


火土金水・明
「まったく、セイメイという名前を持つ存在はどこの世界でも碌な事をしませんね。」「しかし、クルセイダーも倒れましたか。生きていれば、何処の世界でオブリビオン化してサムライエンパイア世界に来たか尋ねてみたかったのですが。」「ああ、あなた(セイメイ)の業の始まった世界の事もですよ。」「まあ、答えは期待していません。」
【SPD】で攻撃です。
攻撃は方法は、まず【フェイント】を付けた【シルバースター】で相手の足元に銀製の短刀を投擲します。これと同時に【継続ダメージ】と【鎧無視攻撃】と【貫通攻撃】を付けた【巷に金色の雨が降るごとく】で、『憑装猟書家『清明クルセイダー』』達を纏めて攻撃します。相手の攻撃に関しては【勇気】【第六感】【残像】【オーラ防御】で、ダメージの軽減を試みます。
「私の勇気が砕けない限り、倒れる訳にはいきません。」「(攻撃を回避できたら)残念、それは残像です。」「私の役目は少しでもダメージを与えて次の猟兵の方に繋げる事です。」
アドリブや他の方との絡み等は、お任せします。


鞍馬・景正
|業《カルマ》、と。
生憎とどれだけの業念があろうと知らず。

ただ斬り伏せて禍を祓うのみ。


二刀構え、油断なく対峙。
想定すべきは二――否、最大三種の組み合わせ。

預言書で動きを読み、槍の狙いや豊公への指示に応用するか。
豊公で囲み槍を避けられぬ状況に持ち込まんとするか。

いずれにせよ間合を計り、動きを注視。
預言書を読まんとするなら、視線の動いた隙に地面を一撃。
砕いた床の粉塵で視界を曇らせて妨害しましょう。

豊公が現れれば結界術を巡らし防壁としつつ、薙ぎ払って退路を確保。

その間にも槍で迫るなら、斬撃波で牽制し、繰り出す軌道を読んで穂と鎌刃の交差点に打ち込み。
槍の動きを止め、螻蛄首を払って強引に弾き飛ばします。

そうして須臾でも猶予が生まれれば攻勢の機。
【懸騎万里】により、呼び寄せた愛馬と瞬きの間すら遅しと突き進むのみ。

預言書を読む暇も与えなければ、豊公の妨害も蹄にかけて蹴散らし、槍の迎え突きも飛び越えてそのまま馬体ごと衝突してくれましょう。

同時に太刀一閃――それで終いです。


戒道・蔵乃祐
◆2回攻撃対抗
【『魔軍転生』秀吉装】へ見切り+ダッシュで切り込み
早業+ジャストガードで小型グレイズモンキーの軍勢を纏めて蹴散らす怪力
【五芒業蝕符】はセーマン印を結ぶ予備動作を読心術+心眼で先読み
地形を切り裂き噴出する|業《 カルマ 》をジャンプと空中戦で躱し、念動力+破魔で怨霊を除霊して|戦闘力向上《 穢れ 》を浄化する


クルセイダーの心情、少しだけ分かる気がします
血塗られた過去は泰平の世にあって尚。純然たる真実であるが故に
数多の犠牲者達の屍の上に徳川の治世は成り立っている

嘗て虐げられた者達は、オブリビオンに限らずとも存在する事は明白だからこそ
戦を忘れ、終わってしまった時代を忘れ、過去を蔑ろにしてしまうことがあってはならぬと

しかし
徳川が勝者となった歴史が仮に|天運《・・》に過ぎなかったとしても
群雄割拠の|戦国《時代》の痛みを乗り越えて成った|平和《故郷》は
尊び、守っていかなければならないから

◆来迎会
無念夢想
限界突破の電撃を|乱れ撃ち《 焼却 》
重量攻撃で|抜き撃つ《クイックドロウ》正拳突き


館野・敬輔
【SPD】
アドリブ連携大歓迎

安倍晴明!
貴様にとっては、魔軍将とクルセイダーすら己が野望…いや、戯れの道具か!!
人のいのちを弄ぶその所業、ここで斬って捨ててやる!

十字槍は初撃を「視力」で見極め「第六感、見切り」も併用して全力で回避
憑装侵略蔵書と秀吉装は極力広範囲に「2回攻撃、衝撃波」を叩き込み回避困難な状況に追い込む
…フェンフェン鳴く生物を見ると気が抜けるけど…クルセイダーは秀吉に連なる者なのか?

凌いだら身体を前方に倒しながら「地形の利用、ダッシュ」で一気に懐に飛び込み
至近距離から「2回攻撃、怪力」+指定UCの18連撃(味方斬りなし)で徹底的に切り刻む!

ここを貴様の望む世界にはさせん!
散れ!!

…ところで、気になることがひとつある
サムライエンパイアの幹部猟書家は、魔軍将を憑装すると自身の力が制限されると知っていたのか、自身には魔軍将を憑装させなかった
クルセイダーがその事実を知らなかったとは思えないのだが、何故試みたのか?
…ぱらいそ預言書が唆した可能性が高いが…最早真相は確かめられそうにないな


森宮・陽太
【WIZ】
アドリブ連携大歓迎

この世界の安倍晴明はどうにもいけ好かねえ野郎だな
てめぇがクルセイダーにてめぇ自身を憑装するよう唆したんじゃねえのか?

|業《カルマ》だか何だか知らねえがよ
これ以上てめぇの好き勝手にさせてたまるか!
てめぇこそ、この世界の真の「敵」だ!

真の姿解放(オーバーロード)
『零』の人格に切り替わるが、今回はマスケラなし

十字槍は初撃の槍の軌道を「視力」で見極め「見切り」で回避
憑装侵略蔵書と秀吉装は極力回避場所を潰すように二槍伸長「なぎ払い」

ところで、貴様が拘る|業《カルマ》とやらを消し去ったら、貴様はどうなるだろうな?
「高速詠唱」から指定UC発動、晴明の背後にダンタリオン召喚
気配に気づかれるより早く本で頭を「騙し討ち、2回攻撃」し、|業《カルマ》の記憶を消し去ってやろう
記憶を失い狼狽したら、すかさず二槍伸長「ランスチャージ、暗殺」で頭や心臓を貫き葬る

貴様の罪は、数多のいのちを、記憶を、歴史を弄び、己が享楽の道具としたことだ
その罪深さを自覚しつつ、クルセイダーの因縁の地で沈め!




 ――その目前に立ちはだかる晴明クルセイダーの姿を見て。
「まったく、|セイメイ《 ・・・・ 》と言う名前を持つ存在は、何処の世界でも碌な事をしませんね」
 そう、火土金水・明がまるで何かを匂わせるかの如く、そっと溜息を漏らしている。
 |セイメイ《 ・・・・ 》の明の件に、微かに怪訝そうな表情を浮かべながらも。
「……けっ。どうにも、この世界の安倍晴明はいけ好かねぇ野郎だな」
 そう唾を飛ばす様に言葉を叩き付けるのは、森宮・陽太。
 晴明は明や陽太の言葉を聞き、クルセイダーの口の端に愉快げな笑みを浮かべていた。
『言いたい放題とはよくいったものですね』
 そう愉快げに眉を動かす晴明の様子を見て。
「安倍……晴明!」
 館野・敬輔が叩き付ける様な憤怒を交えた声音で叫び、戒道・蔵乃祐がじゃらり、とその怒りに呼応する様に無言で大連珠を鳴らす。
「貴方が噂に聞いていた晴明クルセイダー……なんですね……っ!」
 ピリリとした、此の相手は危険だと言う直観を覚えながら。
 先の戦いで奮い起こした勇気をもう一度……と勇気の実を1摘まみした、ユーフィ・バウムも叫ぶ。
(「わたしが、彼にこれ程までに拘る理由。その理由は……」)
「貴様にとっては、魔軍将とクルセイダーすら己が野望……否、戯れの道具だというのか!」
 その敬輔の憤怒の迸る叫びを受けて、晴明はええ、と怪しげに笑った。
『貴方方の様な私に賽を振らせることが出来る者との戦いが出来なければ面白くもありませんからね。其の為に必要なのは、貴方方の『怒り』。その全てが私の|業《 カルマ 》の糧となり得るものなのでしょう』
 その、まるで全てが分かっているかの様な口振りに。
「|業《 カルマ 》、か」
 低くくぐもった地から轟くような声音を持って。
 鞍馬・景正が鞍切正宗と鬼包丁……二刀一対とでも言うべき双刀の濃口を切っている。
 ギラリと波の様に僅かに抜き出た刀身が煌めき、その藍色の瞳に謙信との戦いの疲労を感じさせぬ鋭意な光を宿した。
『そうですね。私は数多の|業《 カルマ 》を蒐集して来ました。此処では|業《 カルマ 》の蒐集には興が乗りませぬが……故に戯れる事を選んだ、只、それだけの事なのです』
「……貴様……人の『命』を弄ぶその所業……!」
 敬輔が憤怒と共に、黒剣を抜剣。
 無論、景正の藍色の鋭い眼光宿したその瞳にも更なる苛烈なものが宿り。
 そして、全身を勇気と人の命を弄ぶ事への所業への怒りの蒼穹に身を包んだユーフィの胸中からは、ある『声』が囁き始めていた。
(「|ユーフィ《 ・・・・ 》、|ユーフィ《 ・・・・ 》……」)
(「……此の声……」)
 その声の『主』が誰なのかは、何となく分かっていた。
 いや、厳密に言えば、恐らく識っているのだ。
 けれども其れを使うことには躊躇いがある。
 そのユーフィの躊躇には、気がついた様子は無く。
「……おい晴明、てめぇがクルセイダーにてめぇ自身を憑装する様、唆したんじゃねぇのか?」
 翡翠色の瞳を細めて陽太が問いかけると、晴明は、ただ笑って肩を竦めた。
『さて、どうでしょうか? 確かに彼如きの|業《 カルマ 》で私を御することは出来ませんでした。ですが、或いは彼が自身の可能性……自らの意志で私を制御できると信じて賽を投げたのかも知れませんよ? 其の時の彼の胸中、その動機等、私には取るに足らないものに過ぎませんね』
「それも|業《 カルマ 》ってやつだと、そう言いたいのか、テメェは?」
 その陽太の問いかけに、さぁ? と嘲笑を浮かべる晴明。
 ――と、其の時。
「……どんな理由があれ、晴明クルセイダー。あなたのその戯れで、此の世界の人々を蹂躙させはしません」
 空中に青と緑の綯い交ぜになった巨大な魔法陣を描き出すウィリアム・バークリーがそう呟き。
「そうだな、ウィリアム。これ以上。テメェの好き勝手に何てさせてたまるかよ! テメェは、俺達の、そして……此の世界の真の『敵』だ!」
 その呟きと、共に。
 陽太の全身を見る見るうちにブラックスーツが覆っていくその様子を見ながら。
『まあ、戯言は此処までです。精々、少しは楽しませて下さいよ? ……フェンフェン!』
 その号令と、ほぼ同時に。
 十字型の槍で突風を巻き起こす様にしながら、晴明クルセイダーは1000を優に越える豊臣秀吉を召喚し始めた。


「行かせるものですか」
 瞬く間に呼び出された1000を越える豊臣秀吉達を叩きのめさんと。
 目にも留まらぬ速さで鍛え抜かれた膂力で大地を踏みきりながら、その筋肉隆々の拳で大連珠を振り回す蔵乃祐。
『フェンフェン!』
 其の時には召喚された豊臣秀吉軍は、互いに叫び声を上げて、凡そ100体ずつの数部隊に素早く散開している。
 肉壁の様に立ちはだかる豊臣秀吉隊の一部を蔵乃祐が屠った時には。
 ――轟。
 と言う轟音と共に十字型に振り抜かれた槍による薙ぎ払いが、蔵乃祐に迫っていた。
「って、ダブルユーベルコード!? 昔、あなたでないあなたに、身を以て教えられたことがあります。戦場へは複数のユーベルコードを持ち込むなと。その貴方がダブルユーベルコードとは、どう言うことですか!?」
 思わず一瞬、展開していた術を止めそうにならんばかりの勢いでツッコミを叩き付けるウィリアム。
 けれども其の時には晴明クルセイダーの薙ぎ払いの一閃は、ウィリアムにも迫っており、彼の体を切り裂かんとしていた。
『成程。その私は以前、貴方にその様な事を言ったのですね。ハハッ、それは愉快だ。ですが……その理由は簡単でしょう。そもそも貴方方猟兵は、私と単独で渡り合えるほどの力を持っておりますか?』
 振り抜いた十字槍の先端から。
 蔵乃祐やウィリアムに向けて、その体内の骨を溶かす光線を撃ち出そうとしながら、晴明が続ける。
「……いいえ、そうですね。わたし達は、1人、1人だけの力で、あなたに勝つことは出来ません。だからこそ……わたし達は、仲間と共に戦っているっ!」
 その叫びと共に。
 ユーフィがウィリアムを庇う様に光線の前に飛び出して創世の大剣ディアボロスから蒼穹の結界を展開するのにそうですよね、と晴明が首肯した。
『つまり、貴方方の力の方が私よりも弱いのであれば、貴方方が2つの力を使いこなそうと思えば、当然、格上の私はそれ以上の力を持って対抗する事が出来る訳です。それだけの余裕があるからこそ、其の時の私は、私の肉体のみで貴方の複数のユーベルコードに対抗したのでしょう。ですが、貴方方が嘗て私を倒したというのであれば、私は、クルセイダーの肉体を以て、自らの強化をすることも吝かではありません。その方が賽の目がどちらに転がるのか……その結果が変わるというのであれば尚更です』
 そう口の端に深々と笑みを浮かべて告げる晴明。
 其れと同時に、蔵乃祐の猛攻の肉壁と化した豊臣秀吉隊から分隊された部隊が、蔵乃祐の死角をついて襲い掛からんとする。
「……死者の軍勢。これ程のものなのですね」
 そう思わず呻いた蔵乃祐を守る様に。
 憤怒に目を血走らせ、黒剣を抜剣した敬輔が吶喊。
 地面を擦過させていた黒剣を撥ね上げる様にして衝撃の波を解き放ち、蔵乃祐を狙わんとしていた豊臣秀吉軍の一部を屠る。
 そうして秀吉軍を敬輔が斬り裂き、道をこじ開けたその瞬間を狙って。
「……生憎とどれだけの業念が貴様にあろうと、私は知らず」
 二刀を抜刀し、その銀刃を閃光の如く閃かせた景正に合わせる様に。
「|セイメイ《 ・・・・ 》。あなたの、|業《 カルマ 》がどの世界から始まったのか、私は知りません。ですが……その|業《 カルマ 》の為に人々の命を奪わせる事を、私達は良しとはしませんよ」
 その懐から銀製の短刀を抜刀し、ふっ、と息吹をかけて投擲した明が告げた。
 晴明クルセイダーの足下に向けて放たれた銀製の短刀。
 だが……其の時には。
『……その動きは既に読めていましたよ』
 まるでその未来の記述を読み込むかの如く。
 その手のぱらいそ預言書を捲ると同時に朗々と歌う様に言の葉を紡いだ晴明クルセイダーが一歩下がって明の攻撃を躱したところに。
「晴明、私は貴様を斬り伏せ、その禍を祓う」
 晴明の側面に踏み込み、正二刀に構えた双刀の内、鞍切正宗を唐竹割に振るう景正。
 三尺五寸の刀身持つ、大太刀の仄かな青白い光と共に放たれた銀閃を晴明は十字型の槍で流す様に受け止め。
 続けてその懐に潜り込んだ景正の下段からの鬼包丁による斬り上げをギリギリ迄引き付けて躱したところで。
『フェンフェン!』
 景正の死角から先程分隊された豊臣秀吉がバウンドモードと化して、景正に体当たりを叩き付けてきた。
「っ! やはり簡単には取らせてくれぬか」
 その体当たりを咄嗟に藍染仏胴の上から藍色の結界術を展開して受け止めて後退しながら小さく呻く景正。
 その間にも。
『フェンフェン!』
 雄叫びの様な号令と共に、豊臣秀吉達の中でも後方部隊に配属された者達が、一斉にその腹部区のスペードマークから漆黒の光線を掃射。
「……麻痺毒の籠められたビームと言ったところか、皆、散開するぞ」
 其の時には漆黒のブラックスーツに身を包み込んだ陽太……否、『零』が素早くそう指示を下し、更に……。
「ぼくの体を麻痺させられるよりも前に……Active Ice Wall!」
 ウィリアムが氷塊を戦場全体に放出、漆黒のビームを辛うじて防御する盾を形成する。
 無数に展開された氷盾が、豊臣秀吉が撃ち出した漆黒の光線とぶつかり合い、爆ぜて消えていきその攻撃を辛うじて受け止めるが。
 只、防戦一方となる今の状態では……。
(「……手数が足りないか」)
『フェンフェン! フェンフェン!』
 その鳴き声と共に、別の豊臣秀吉の1部隊がバウンドモードと化してその手を伸長させてくる。
 伸長された腕を、赤黒く光輝く一閃で断って倒しながら敬輔は思わず溜息を漏らした。
「フェンフェン、フェンフェン鳴いているこいつらは見ているだけで気が抜けるが……」
 ――けれども、未だ。
 未だ、全員の刃を以てしても、豊臣秀吉軍は兎も角……。
『如何しましたか? 未だ私は、小手調べの攻撃しかしておりませんよ?』
 ほぼ無傷で最初の行動を終えた晴明が微かにからかう様な笑みを浮かべた。
 その余裕の表情を見せる晴明を見て。
「……足りないのですねっ……」
 創世の大剣ディアボロスを抜剣していた、ユーフィが呻く様に呟いている。
 ――と、其の時。
(「ユーフィ……、ユーフィ……!」)
 その彼女の胸中に、また、あの|声《 ・ 》が届いていた。
 その言葉を自分に対して発してくれている『彼女』が誰なのか。
 その彼女の物語を、ユーフィは物心つく前から間違いなく|識《 ・ 》っていた。
 でも、彼女を呼び出すのに、ユーフィには躊躇があった。
 少なくとも、其の為に必要な『絆剣』は……ディアボロスではない。
 ――けれども、今は。
「晴明クルセイダーの怒濤の連撃に耐えるためには……わたしも……きっとっ……!」
|2人《 ・・ 》になる必要がある。
 その事に躊躇や抵抗を覚えるのは確かだけれども――それでも、今は……。
「――使います!」
 その誓いと覚悟を籠めた雄叫びと共に。 
 ユーフィがディアボロスを片手に構えたまま、腰に帯びていた斧剣を抜剣し、上空へと投擲した。
 その刃こそ、ユーフィと、|ユーフィ《 ・・・・ 》の不可視の絆。
 その不可視の絆を現すその斧剣の名は……。
「『戦士の斧剣』よ。今こそ、貴方の主を、此の地へ誘え!」
 その雄叫びと、共に。
 18歳の蛮人にして、セイヴァーたる彼女が大人になった戦士……≪折れぬ大樹≫|ユーフィ《 ・・・・ 》に『戦士の斧剣』が姿を変える。
 彼女……≪折れぬ大樹≫のユーフィが、『戦士の斧剣』を構えるその姿を見て。
「これで8人目ですか。漸く、私達があなたと対等に戦える土俵に立ったと言うべきでしょうね。……|セイメイ《 ・・・・ 》」
 そう明が口の端に微笑を浮かべて告げるのを見て、晴明が愉快そうに口の端を歪めた。


 ――晴明がクルセイダーに、不可思議な紋様を書かせ始めている姿を見て。
「……やらせません」
 豊臣秀吉達の群れがバウンドモードと化し、毬の様に飛び跳ねてくるのを咄嗟に自らの大連珠で受け流した蔵乃祐が肉薄する。
 蔵乃祐の動きに気がつき、晴明は笑い。
 クルセイダーの手を操って不可思議な紋様を描き出そうとしていた手を止めて、素早く引き戻した槍を突き出した。
『全ては預言書の言葉の儘に』
 その呟きと共に。
 朗々と歌いあげる様に晴明がぱらいそ預言書を読み上げようとしたところに。
「何度も同じ手で私達を謀れると思うな」
 ウィリアムの呼び出した、氷塊で軌跡を隠して。
 逆手に構えた鬼包丁を地面に突き立て、床の一部を羅刹の膂力を持って砕き、その破片を礫の様に斬撃波で押し出す景正。
 斬撃の波で放たれた大地の瓦礫が氷塊の礫と共に、バラバラと晴明クルセイダーに向かって襲い掛かり、晴明が其れを十字型の槍で防御。
 その瞬間を狙って、蔵乃祐が大連珠を構えた拳を真っ直ぐに振るい、晴明がクルセイダーの肉体に作らせようとしていた五芒業蝕符を封じる。
『……どうやら、嘗て私の肉体が使っていた技を使われる可能性まで読まれていた訳ですか。流石に其れは想定外でした』
 けれども、その口調に焦った様子は無く。
 晴明が返す刃の様に十字型の槍で蔵乃祐を払う様に振るうのを、ウィリアムが氷塊を念動で動かすと同時に咄嗟に防御。
 インパクトの瞬間に合わせて、後退した蔵乃祐と入れ替わる様に≪折れぬ大樹≫が『戦士の斧剣』による神速の突きを繰り出し。
 ……更に。
「……銀の短刀を躱すことは預言によって出来た様ですが……此方はどうですか?」
 その言葉と、共に。
 その左手に構えた七色の杖を、明が天に向けて掲げていた。
 瞬間、空・炎・森・海・闇・氷・幻属性を象徴する、その七色とは異なる黄金の輝きを伴った光が上空に撃ち出され。
 同時に金色の雨が降り注ぎ、その中に紛れた虹色の雨が、晴明が解き放とうとする光線と、豊臣秀吉達を打ち据えんと襲い掛かり。
「……行きます」
 虹色の雨と共に優しく降り注ぐ黄金の雨を受けた≪折れぬ大樹≫の神速の突きが、晴明を貫いた。
「今ですっ!」
 その動きに合わせる様に。
『ディアボロス』に搭載した加速エンジンから蒼穹の魔力を噴射させて上空を舞うユーフィが大上段からそれを唐竹割に振り下ろす。
 ――それは、まるで『ユーフィ』が2人、いるかの様で。
 それでも、その上空からの斬撃を晴明が咄嗟に新たな手勢として召喚した豊臣秀吉達の群れが盾として立ち塞がり。
『……未だ未だですね』
 更に返す刃で続けざまに神速の突きを繰り出そうとする≪折れぬ大樹≫に向けて十字型の槍を突き出す晴明。
 突き出された其れを咄嗟に受け流そうとする≪折れぬ大樹≫だったが、其の時には晴明は地面を擦る様に潜り込み。
『参りましょうか』
 その左手を掌底の様に突き出し、純粋な魔力を≪折れぬ大樹≫に叩き付けていた。
 クルセイダーの肉体から溢れる様なその魔力に蒼穹の結界ごと押し出され、吹き飛ばされる≪折れぬ大樹≫
 もし、ウィリアムが咄嗟に氷塊を彼女の背後に展開していなければ、壁に叩き付けられていたかも知れない。
 ――けれども。
「未だだ……未だ!」
 ≪折れぬ大樹≫の隙を補う様に敬輔が走り、赤黒く光輝く刀身持つ黒剣を横薙ぎに一閃。
 戦場に降り注ぐ黄金の雨と優しき雨に補助される様に衝撃の波を撃ち出しながら、晴明に強襲を掛けた時。
「……夙夜」
 とある空間に向けて、そう景正が呼びかけていた。
 ――その刹那。
「ブルヒヒーン!」
 景正の足下に魔法陣が描き出され、其処から1頭の見事な黒毛の馬……景正の愛馬たる夙夜が姿を現し。
 その夙夜の背に、景正が跨るとほぼ同時に。
「鞍馬・景正。……推して参る!」
 高らかにそう名乗りを上げるや否や、敬輔に続いて、漆黒の稲妻と化した景正と夙夜が晴明へと突進していく。
『……一気に来ますか。ならば……』
 その言の葉と、ほぼ同時に。
 敬輔の肉薄をぱらいそ預言書を読み上げて予測した晴明がバックステップをしながら、十字型の槍を突き出す。
 降り注ぐ虹色の雨に纏わりつかれ、其れに微かに嫌そうな表情を浮かべながらの晴明の刺突。
 その刺突をウィリアムが呼び出した氷塊で、敬輔が咄嗟に防御するとほぼ同時に。
「……今しかないか……?!」
 その体を前傾姿勢に傾けながら、敬輔がその怒りに満ちた右の青の瞳をギラリと輝かせた時。
『フェンフェン!』
 明の虹色の雨を受けて消滅する同胞達を盾にした豊臣秀吉部隊が、再び腹部のスペードマークから漆黒の光線を解き放った。
 解き放たれた光線が敬輔を撃ち抜き、その体を麻痺させんとした……その時。
「させません」
 何処か少し、大人びた声音と共に。
 落ち着いた表情を浮かべた大人びた姿をしたもう1人のユーフィ……≪折れぬ大樹≫が態勢を立て直して敬輔を庇い。
 更に……。
「今ならばっ!」
 氷塊を足場にしてディアボロスエンジンを更に加速させたユーフィがディアボロスを晴明の側面から振るう。
 その斬撃は、晴明クルセイダーの左肩を斬り裂き、彼に血飛沫を上げさせたところで。
「|観音《 かんのん 》、|勢至《 せいし 》、無数の化佛、百千の比丘声聞大衆、無量の諸天、七宝の宮殿と共に行者の前に至れ」
 大連珠をじゃらりと鳴らしながら。
 呪を蔵乃祐が紡ぎ出すと、プラズムストームが荒れ狂う稲光と化して生まれ落ち、戦場全体を包み込んだ。
 それは景正達の目前に磁力結界を展開し、彼等の力を飛躍的に高めていく。
 その磁力結界に守られた景正が愛馬夙夜が豊臣秀吉軍を、蹄を持って蹴散らしながら。
「はっ……!」
 短い気合いの声を、夙夜に掛けた、その瞬間。
「ヒヒーン!」
 嘶きと共に、夙夜が跳躍し。
「皆さん、氷塊なら幾らでもぼくが用意します! 支援はキッチリしますから『晴明クルセイダー』を確実に討滅して下さい!」
 そう叫んだウィリアムが用意した無数の氷塊を足場として、天駆ける黒き稲妻の如き軌跡を描きながら、晴明に上空から肉薄する景正。
 乗馬した愛馬、夙夜の上から振り下ろすのは、大上段に振り上げた鞍切正宗。
「太刀一閃――壱の太刀、参る」
 その言葉と共に振り下ろされた鞍切正宗が晴明クルセイダーの体を袈裟に切り裂く。
 ばっさりと左肩に続き、右肩に刻み込まれた肩の傷に、晴明は不敵に笑って。
『この位で倒されはしませんよ』
 その言葉と共に、十字型の槍を振り抜き乍ら、再び1000を越える豊臣秀吉軍を今度は魔法障壁の様に自らの周囲に展開。
 明の虹色の雨と蔵乃祐のプラズマストームの前に次々に片端から力尽きていく様にも思える豊臣秀吉達であったが。
『フェンフェン!』
 自身の弱点を、重々承知しているのであろう。
 鋭い命令の様な一声を挙げた豊臣秀吉に従い、他の豊臣秀吉達が隊列を為し、晴明に肉薄していた敬輔、景正、2人のユーフィを吹き飛ばした。
「くっ……!」
 バウンドモードで吹き飛ばされた敬輔が腹部に直撃を受け、苦痛を堪えながら後退し。
「流石に渾身とは言え、一太刀では取らせてくれぬか」
 景正もまた、その命を賭す覚悟と共に飛び出してきた豊臣秀吉達に敬意を表しつつ、夙夜に後方に飛んで貰い、ウィリアムの用意した氷塊に身を隠す。
 そこに立て続けに行われる十字型の槍による刺突。
 その刺突が狙ったのは、バウンドモードの豊臣秀吉に吹き飛ばされ、微かに呼気を漏らしていたユーフィ。
「くっ……! ですがっ、その程度で……っ!」
 目前に迫る十字型の槍を、ディアボロスの前に張り巡らした蒼穹の結界でユーフィが受け止めるその間に。
「其処!」
 その晴明の側面に回り込んだ≪折れぬ大樹≫のユーフィが戦士の斧剣の返す刃で神速の突きを繰り出し、晴明の胸に刺突を入れた。
「明さん! 畳みかけて下さい!」
 その様子を見たウィリアムが咄嗟に叫び、素早く明の後方に氷塊を移動。
 その移動されてきた氷塊に頷いた明が虹色の杖から迸った黄金の光で降り続ける雨を維持しながら。
「この位の連撃で私達を倒せるとは思わないで下さいね」
 その言の葉と共に。
 先程は避けられた銀製の短刀の呼びを取り出し、再びその足下に向けて投擲した。
『むっ……ですが、その動きは予測済です』
 そう呟いて。
 ぱらいそ預言書に書かれた一文を読み上げ、その銀製の短刀の軌道を読み取り、足下を貫かれるのを避けた……其の時。
「ふふ……掛かってくれたようですね」
 そう明が微かに不敵にも思える微笑を浮かべる。
 その微笑に微かに怪訝そうな表情になる晴明に明がわざとらしく肩を竦めて見せた。
「私の役目は少しでもあなたの気を引いて、皆さんの連撃へと繋いでいくことです」
 ――そう。
 それが、明が自らに課している役割。
 そして、その明の自らに課したその役割は……。
「忘れている様だな。俺達が今、8人で貴様に挑んでいると言う事を」
 低く小さく囁きかける様な声が晴明の鼓膜を叩くことによって報われる。
『……後ろですか……?!』
 そう晴明が呟き、対応しようとぱらいそ預言書を読もうとした其の時には。
 蔵乃祐のプラズマストームによって蹴散らされた豊臣秀吉達を掻き分けて、晴明の背後に突如として現れた数多の顔持つ悪魔が。
 その手の白紙の本をすかさず大上段から振り下ろしていた。
 ――バラバラバラバラバラ……!
 無数の真っ白なページを風に舞わせながら。


 その声は、ウィリアムの氷塊の影から聞こえてきていた。
 そう……それは陽太……否、『零』の囁き。
「さて、貴様が拘る|業《 カルマ 》とやらを消し去ったら、貴様はどうなるだろうな?」
 それがその、『零』の呟き。
 此のタイミングを計るために、『零』はずっと、機を伺っていたのだ。
(「明や、2人のユーフィ、敬輔に景正。……後ろを疎かに出来るだけの要素は、十分用意されていたからな」)
 それでも豊臣秀吉達の連続召喚によって、付け入る隙を見出すのは困難だったが。
 だが、ユーフィのディアボロスの一撃から始まった一連の息もつかせぬ連携攻撃が、この貴重な一瞬を『零』に与えてくれた。
 その『零』の氷塊の影に隠れて様子を窺い続けていた努力の成果が実を結び。
『ダンタリオン』が風に数ページを舞わせながら、晴明の背後から白紙の本を振り下ろす。
 振り下ろされたその白紙の本は、晴明クルセイダーのクルセイダーとしての肉体ではなく、晴明の精神に強かな一撃を与えていた。
『……!?』
 ――|それ《 ・・ 》は本当に一瞬の事ではあったが。
 そう……記憶の中の『何か』が失われ、虚ろになってしまった様な錯覚を覚えたのだ。
『……私の●を……?』
 その口に出すことが出来ぬそれに微かに動揺し、生まれ落ちた晴明の隙を突いて。
「此処を、貴様の望む世界にはさせん!」
 漆黒の風の如き赤黒い剣閃と、共に。
 肉薄した敬輔が解き放ったのは、袈裟斬りから始まる、時計回りの九の斬撃。
 一瞬、●を忘却した晴明が我に返り、即座にぱらいそ預言書の頁を捲り、その内容を読み込もうとした……其の時。
「今ですね。あなたは、強引にクルセイダーの自我を消した。ですので、晴明、あなたは何処まで行っても独りですっ」
 ――けれども。
「でも、わたし|達《 ・ 》は、この1を10にも100にもしてみせますっ! ……だからっ!」
 その雄々しい雄叫びと共に。
 敬輔の九連撃の間隙を予知するべく預言書を読み上げようとした晴明に向けて、ユーフィが氷塊を蹴って滑空し。
 ≪折れぬ大樹≫の聖女が、止める事の出来ない怒濤の九連撃の間隙を拭って晴明が繰り出した赤十字の槍の脅威から敬輔を庇い。
「やらせまん。わたしには、誰かを守りたいと言う欲がありますから……!」
 立て続けに戦士の斧剣を返して再び神速の突きを解き放った、其の時。
 十字型の槍を突き立てられた≪折れぬ大樹≫に向けて、十字型の槍の先端から光線が相打ちの様に撃ち込まれた。
 それは、体内の骨を溶かす光線。
 致命傷を免れ得ないであろう一撃を受けながらも、明が降り注がせる金色の優しき雨に癒やされた≪折れぬ大樹≫は、膝を笑わせつつ立っていた。
 敬輔は自らの九の連続斬撃の反動によって喀血し、自らの中で何かが削り取られる様な感覚を覚えて一瞬、意識を朦朧とさせている。
 だが、≪折れぬ大樹≫の神速の突きを胸に受けた晴明も、直ぐには追撃出来ない。
 そんな、空白の時間を埋める様に。
「群雄割拠の|戦国《 時代 》の痛みを乗り越えて成った|平和《 故郷 》は」
 まるで、誰かに対する手向けの言葉の様に。
 そう短く呟いた蔵乃祐が、周囲に吹き荒れさせていたプラズマストームの雷撃を戦輪に収束させていた。
「……Priorityを、蔵乃祐さんへ譲渡」
 その後ろでは、氷塊を常に操り続けていたウィリアムが、その氷塊の一部のPriorityを、蔵乃祐へと委譲している。
 その氷塊のPriorityを活用して蔵乃祐が、晴明クルセイダーの周囲を取り囲む様に氷塊の塊の一部を移動させ。
「尊び、守っていかなければ、ならないものです」
 その言の葉と共に、戦輪を投擲した。
 戦輪に収束された雷撃が迸り、それが自らが移動させた氷塊に乱反射され、虹色の雨に打ち据えられている晴明に迫る。
 ――即ちそれは、無念夢想の|乱れ撃ち《 焼却 》の雷光。
 その雷光に斬り刻まれ、全身を感電させながらも尚、その十字型の槍を振るうと同時に、ぱらいそ預言書を持つ左手に五芒符を展開する晴明。
 だが……其の時には。
「行きますっ!」
 その叫びと共に。
 明の優しい雨に打たれながらも、膝を突いている≪折れぬ大樹≫の上空を飛び越えたユーフィがディアボロスを大上段から振り下ろしている。
 ――ええ、あなたの事は、私は物心つく前から識っています。
 その膝を突き喀血しながらも尚、敬輔や景正達を優しく守り続けようとする≪折れぬ大樹≫を……聖女に、母になった女を見て。
 まるで何かを述懐するかの様に蕩々と胸中で≪折れぬ大樹≫にその胸中の想いを告白するユーフィ。
 ――あなたは森から出て、文明に生き、そして……本来であれば決して届かぬ筈の英雄の命までも救った。
 ――勇者ラズワルドの、その命を。
 そして貴女は、聖女であると同時に、母となった。
 その気高いまでの優しさを、我欲として。
 その我欲故に、人々を護り歩むことが出来たと言う、その聖女にして、母たる者が……≪折れぬ大樹≫
 そう『彼女』に向けて胸中で呼びかけながら。
 ユーフィは、きっぱりと告げていた。
「でも私は、貴女とは違います」
 ――誰かを守り、その命を賭す覚悟はあれど。
 けれども、其れは優しさでも、命を救う力ですらもないのです――
 何故なら、わたしは……。
「何処までも戦士であり、何処までも蛮人ですからっ……!」
 その言葉と、共に。
 戦士として、『蛮人』としての自らの膂力と蒼穹の魔力を籠めたディアボロスの斬撃が晴明の背に吸い込まれていく様を見つめるユーフィ。
 蔵乃祐が移動させた氷塊の影によってその軌跡が完全に隠れていたその斬撃は、今までで最も深い一撃と化して晴明を斬り裂く。
『がっ……!』
 その背を骨事、砕かれてしまいそうな程の衝撃に大量の血飛沫を舞わせながら大きく前に仰け反る晴明。
 けれども、その手の十字型の槍はまるでユーフィの動きを予測していたかの如く、滑る様に彼女の体を貫いていた。
「がはっ……!」
 ドスリ、と言う鈍い音と共に我が身を省みぬ一撃の代償に鳩尾に槍を受けるユーフィ。
 同時に体内の骨を溶かす光線がユーフィに撃ち込まれ、彼女の命を奪おうとするが。
 それよりも早く、槍がユーフィへと向かった結果、自由になった蔵乃祐が踏み込みと同時に自らの金剛身の膂力の全てを籠めて。
「破!」
 気合い一声、目にも留まらぬ速さで正拳突きを繰り出し、その晴明クルセイダーの鳩尾を抉る様に貫かんとした其の時。
「未だ……です……!」
 膝を笑わせながらも、不屈の意志を見せた≪折れぬ大樹≫が戦士の斧剣による神速の突きを晴明の足を止めるべく解き放っている。
 その≪折れぬ大樹≫の一突きが、晴明の右足を貫き。
「今ですね」
 そのインパクトの瞬間を見切った明が三度投擲した銀の短刀が、晴明の左足を貫き、晴明の体を足止めした刹那。
『ぐあっ……!』
 蔵乃祐の全力の膂力を籠った一撃が晴明の鳩尾にクリーンヒット。
 そのあまりに強烈な一撃に、晴明……否、グレイズモンキーに連なる血を持つ男の手から十字型の槍から手を放した。
 そこですかさずユーフィが自らに突き刺さった儘の十字型の槍を引き抜き、血塗れになりながら、何処か満足げに、不敵に微笑む。
「此が、わたしに出来る勝利への道を拓く術。戦士として、蛮人として、此の身を盾にしようとも、皆との勝利を得るために出来る……わたしの戦いっ……!」
 そのユーフィの覚悟に蔵乃祐もまた、静かに首肯して。
「徳川が勝者となった歴史が仮に|天運《 ・・ 》に過ぎなかったのだとしても。其処に数多の犠牲者がいたのだとしても。私達の|平和《 故郷 》を守る其の為に……」
 その蔵乃祐の言葉に合わせる様に。
「……貴様を、斬る」
 その好機の時を、見逃すこと無く。
 空に漆黒の稲妻と化した天馬の如く夙夜を跳躍させた景正が鬼包丁を滑空の要領で晴明の側面から横薙ぎに振るっていた。
 それは、ウィリアムの氷塊を騎馬に敵した下り坂にして滑らせる様に自らを加速させた景正の弐の太刀。
 その弐の太刀の一閃が晴明を横薙ぎに斬り払い、晴明の体に大量の失血をもたらした、その瞬間に。
「この弐の太刀を受けても尚、貴様は生きるか。――だが……」
 その、景正の残心に応じる様に。
「これで仕舞いだ……晴明!」
 ≪折れぬ大樹≫の影から飛び出す様に姿を現した敬輔が、再びその右の青の瞳を鋭く輝かせ。
 逆袈裟から、九連撃の斬撃を振るおうとし。
 ――更に。
「……貴様の罪は、数多のいのちを、記憶を、歴史を弄び、己が享受の道具としたことだ」
 ダンタリオンによる|業《 カルマ 》の記憶の断絶を行い、攻めきる隙を作り上げた陽太……否、『零』が。
 呟きと共に、その手の濃紺のアリスランスと淡紅のアリスグレイヴを伸長させた。
 濃紺と淡紅の螺旋を描きながらのその軌跡が、晴明の心臓を穿ち、晴明より喀血させたところに。
「だから、その罪深さを自覚しつつ、クルセイダーの因縁の地で……沈め!」
 その陽太……『零』の言葉を代弁するかの様に。
「この刃で……斬り刻む!」
 逆袈裟からの反時計回りの九連の赤黒く光り輝く敬輔の斬撃が、晴明を八つ裂きにし。
 その最後の胸への九撃目の敬輔の刺突が、晴明の胸を貫いた時。
『……この肉体では、これ以上は無理ですか……無念……』
 そう小さく呟いて。
 ぐらりと崩れ落ち、その肉体を消失させていく晴明クルセイダーを一瞥し、敬輔がさっ、と黒剣の血糊を、一振りで払い落とした。


 その戦いの決着を見届けて。
「……クルセイダーも倒れましたか。確かに此処は因縁の地ですが……」
 何処か意味ありげな口調の明の呟きに、如何した? と言う様に敬輔が見やると。
 明がいえ、とウイザードハットを被り直しながら頭を横に振った。
「いえ、もしクルセイダーが生きていれば、何処の世界でオブリビオン化して、此の世界に来たのかを尋ねてみたかったな、と思いまして」
「……つまり、クルセイダーが此の世界の生まれでは無かった可能性があると? ……確かに『グレイズモンキー』の血に連なる者、と晴明は彼の事を言っていたが」
 その敬輔の述懐に、彼はと明が黒いウイザードハットの具合を確かめつつ首肯する。
「晴明は確かに、クルセイダーをグレイズモンキーに連なる者と呼んでいました。ですが、弥助アレキサンダーも、晴明クルセイダーもあのフェンフェン鳴く存在を『豊臣秀吉』と呼んでいます。……考えすぎかも知れませんが、何か以て非なるものなのでは無いか、と思ったのです。……現に嘗て安倍晴明も又、この世界を『よく似た』と評していた様ですからね」
 その明の言葉を聞いて、敬輔が考え込む表情になる。
「……サムライエンパイアの幹部猟書家は、魔軍将を憑装すると自身の力が制限されるのを知っていた」
 故に、彼等は自身に魔軍将を憑装させていなかった。
(「クルセイダーがその事実を知らなかったとは思えないが……」)
 もし、明の仮説が1つの答えなのだとしたら。
「……ぱらいそ預言書が唆した可能性が高いと思っていたが……クルセイダーがその事実を知らなかった可能性もありうるのか」
 その敬輔の呟きに。
「まあ、答えの出ない話でしょう。彼等に聞いても答えは期待していませんでしたし。ですが、可能性の1つとしては、考慮しておくべきでしょうね」
 その明の言葉にそうかも知れませんね、とウィリアムが静かに首肯しながらも。
「いずれにせよ、討滅は無事に完了したのです。今は一先ず其れで良かったとするべきでは無いでしょうか?」
 そう重ねて問いかけてくるのに。
 そうですね、と明が首肯し、敬輔も又同様に相槌を返すその一方で。
 晴明クルセイダーが消えていったその場所を蔵乃祐が静かに見つめながら、そっと嘆息を1つ漏らした。
「どうしましたか、蔵乃祐殿」
 その蔵乃祐の様子に気がついた景正が、夙夜の首を撫でて労ってやりながら馬を下りると蔵乃祐が其方を見やりいえ、と軽く頭を横に振る。
「……今更ですが、クルセイダーの心情が、少しだけ分かる様な、そんな気がしまして」
 その蔵乃祐の思わぬ一言に。
 ほう、と景正が軽く相槌を打って蔵乃祐にその話の続きを促した。
「どう言うことです?」
「……元々、今の徳川の治世は、数多の犠牲者達の屍の上に成り立っています」
 何処か沈痛そうに呟く蔵乃祐の其れに、景正も思わず口を噤む。
 その藍色の瞳に死した者達への弔いの如き光が宿るのに1つ頷き、蔵乃祐は続けた。
「例え、今は泰平の世であっても、血塗られた過去は、純然たる真実であります」
 ――故に。
「嘗て虐げられた者達もまた、オブリビオンに限らずとも、存在することは明白なのです。景正さんには辛い話かも知れませんが」
「いや……それは、事実でございましょう」
 鞍馬の家は、サムライエンパイアで代々驍名を馳せた武家だ。
 だが、それ故にその武家に伝わる刃によって数多の犠牲者達を生み出してきたその事実は、決して軽視すべき話では無い。
 それによって数多の人々を守ってきたのもまた事実ではあるが。
 いずれにせよ、数多の弱者を守る為に、自分達の刃は振るわれるべき時代であろう。
「……ですが、今の世界の多くの人々は戦を忘れ、終わってしまった時代を忘れてしまっています。その様に過去を蔑ろにしてしまうこと……その様なことがあってはならぬと……そんな想いから、クルセイダーはオブリビオンとして戦ったのでは無いでしょうか?」
「そうかも知れません。ですが、蔵乃祐殿。それを大義名分に数多の民達の犠牲を容認する真似は、私達には到底出来ませぬ」
 その景正の飾らない回答を受けて。
 そうですね、と蔵乃祐もまた静かに首肯したところで。
「……わたしも、そう思います」
 その腹部の傷を押さえながら。
 今にも消えてしまいそうな意識を必死になって繋ぎ止める様にして、ユーフィが静かに溜息を漏らす。
 そのユーフィに肩を貸している『零』は只、静かにユーフィの話に耳を傾けていた。
「……わたしは、折れぬ大樹とは異なり、優しくなく、命を救う力もありません」
 ――何故なら、ユーフィ・バウムは戦士であり、蛮人だから。
 でも……わたしは。
「わたしは、この拳で最後まで死力を尽くして拳を振るい、其れで結果として誰かを守れるのであれば、それでいいと思っています」
 そのユーフィの誓いを聞いて。
「……そうですね、ユーフィ殿。其々に事情があることは確かですが、私達に守るべき者を守れるだけの力があるならば、其の為にこの力を使うことに何の躊躇いもございませぬ」
 そう景正が呟き、蔵乃祐も同意する様に頷くのに。
「……そう言うものなのだな、俺達猟兵は」
 そう『零』が何処か感慨深げにポツリと言の葉を漏らすと同時に。
 蒼穹の風が吹き荒れて猟兵達を包み込み、グリモアベースへと帰還させていた。
 ――晴明クルセイダーの撃破と言う、吉報と共に。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2023年06月04日


挿絵イラスト