闇の救済者戦争⑯〜流星光底長蛇を穿つ
●血の大樹のふもとにて
蛇がいた。
一匹、二匹。百、千を超えて一万の蛇が集う。
毒蛇たちの群がる先は、太陽と見紛うばかりに輝く光球だ。
やがて、光を中心に一つの塊となった蛇たちがゆっくりと起き上がる。
身を寄せあう毒蛇の群れを肉体として動き出すオブリビオンの名は『蛇王ペイヴァルアスプ』。
強大な闇の種族の一角である蛇の巨人が、辺りを見渡すように首を動かす。
その視線の先には、やはり蛇がいた。
一つ、二つ。無数に存在する|光球《・・》に群がる毒蛇たちが。
集まり、象り、動き出す。
強大にして唯一であるはずのオブリビオンたちが群れを成す、現実味のない光景がそこには広がっていた。
●穿て、蛇群の陣
「皆は、『蛇王ペイヴァルアスプ』って知っているかしら?」
人狼のグリモア猟兵が、集まった猟兵たちに問いかける。
彼女が出したオブリビオンの名は、このダークセイヴァーを舞台にした戦争で既に聞いているものも多いだろう。
肉体の中央に太陽の如き光球を持つ闇の種族であり、太陽の繭による『羽化』を許せば猟兵と言えども勝ち目はなくなると目される強大なオブリビオンだ。
「別の戦場で、蛇王の羽化阻止の為に戦ってくれた人も多いかもしれないわね。今回も同じ相手なの、もっともこの戦場には太陽の繭はないから、羽化をして強くなる心配はないのだけど……」
彼女が示した戦場こそ、天蓋血脈樹。
ダークセイヴァー第三層の中心部にそびえ立ち、この地に流れる血のすべてを吸い上げて|始祖ヴァンパイア《ライトブリンガー》に捧げるまさに世界の血脈だ。
予知に映る、不気味な赤い大樹を見たことのある猟兵も多いだろう。
ただ、今回彼らの目を奪ったのは血脈樹ではなく。
「見ての通り……ペイヴァルアスプが|数えきれないくらい《・・・・・・・・・》に待ち構えているのよ」
血脈樹を囲むように、ぐるりと布陣するオブリビオンの群れ。巨人のごとき彼らが胸に有するのは、太陽のごとき輝きだ。
決して雑兵ではない。その一体一体が、多くの猟兵が力を合わせて立ち向かうべき闇の種族、ペイヴァルアスプであった。
「これが始祖ヴァンパイアの力なのかしら。弱いオブリビオンなら数十体をまとめて相手することもできるでしょうけど、闇の種族がこれだけ居ると真っ向からじゃ勝ち目がないわ」
グリモア猟兵が、目を伏せて敵の強大さを語る。
だが、次の瞬間にはその顔を上げて、笑みを作って言葉を続けるのだ。
「でも、私たちの目的は蛇王を全滅させることじゃないわ! 血脈樹を制圧して、更に進むための進路が作れればそれでいいのよ!」
そう、強大な闇の種族が立ちふさがろうとも、猟兵が戦うべき相手はその先にいる。
ならば、この先の戦いの為に最も早く、最も負担の少ない道筋を見つけることこそが、今回の戦いにおける『勝利』に他ならない。
「要するにね、血脈樹を囲ってる蛇王の布陣にも守りが厚いところと、薄いところがあるはずなの」
つまり、その陣の急所と呼ぶべき箇所を見極めて、守りを貫き血脈樹へと辿り着く戦いが猟兵たちには求められる。
敵の布陣を観察し、弱点を見破る観察能力やその過程で発見されないための潜伏技術、一気呵成に敵の陣を突き抜ける戦闘能力等、求められる能力は様々なものがあるだろう。
だが、第四層や第五層のオブリビオンにも打ち勝ち、第三層でも決して後れを取ることなく戦ってきた猟兵たちならば決して不可能なことではないはずだ。
「多分、どんなに守りが薄いところでも複数隊の蛇王と戦う必要はあると思うわ。本当に大変な戦いになるけど、負けないでね!」
そう、最後に言葉を締めくくったグリモア猟兵に見送られて。
猟兵たちは、強大な闇が跋扈する血の大樹を目指す戦いへ身を投じるのであった。
北辰
OPの閲覧ありがとうございます。
ダークセイヴァーらしい容赦のないシナリオが来ました、北辰です。
戦争シナリオ二本目でございます。
今回のシナリオでは、【集団敵の如く無数に現れるボスフラグメント】が皆様に立ちふさがります。
現れるのは蛇王ペイヴァルアスプ。⑫の太陽の繭で羽化しようとしている彼ですね。
当シナリオでは特に羽化する兆候はありませんので、普通の闇の種族程度の強さに留まるでしょう。
つまり、真正面から相手して全滅させるのはまず不可能です。
=============================
プレイングボーナス……敵の守備の最も薄い所だけを突く。
=============================
オープニングでも説明した通り、そもそもペイヴァルアスプたちは血脈樹を守る障害であり、必ずしも倒す必要がある敵ではありません。
その為、血脈樹を囲む彼らの陣の最も守備が薄い箇所を見抜いて、最小限の戦闘で守りを突破する作戦が必要になります。
ペイヴァルアスプの感知できない遠方からの観察や、何らかの方法で姿を隠しての偵察など、相手に気づかれぬよう敵を探る能力が有効でしょう。
また、完全にオブリビオンが居ないルートは基本的に存在しませんので、純粋な戦闘能力や素早く突破する力も役立ちます。
シナリオの性質上、ユーベルコードなどを用いて敵の目を盗み、こっそり血脈樹に辿り着いても成功ではありますが、闇の種族は相応に感知能力も優れているため難易度は高くなります。ご了承ください。
それでは流星光底、鮮やかに振り下ろされる刃のように。
強大な闇の種族の守りを貫く皆様のプレイングをお待ちしております。
第1章 ボス戦
『蛇王ペイヴァルアスプ』
|
POW : 一万の蛇の王
敵1体を指定する。レベル秒後にレベル×1体の【大蛇】が出現し、指定の敵だけを【巻き付き締め付け】と【毒牙】で攻撃する。
SPD : ヴァイパースマイト
自身の【胸に埋め込まれた『偽りの太陽』】が輝く間、【蛇鞭状の両腕】の攻撃回数が9倍になる。ただし、味方を1回も攻撃しないと寿命が減る。
WIZ : 有翼の蛇龍
召喚したレベル×1体の【大蛇】に【龍翼】を生やす事で、あらゆる環境での飛翔能力と戦闘能力を与える。
イラスト:佐渡芽せつこ
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴
|
種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
白斑・物九郎
●POW
一番守りの薄いトコを狙って、ドンピシャでブチ抜きゃイイってんですわな?
オーライ
ワイルドハントの狩り、見せてやりますわ
・【野生の勘】を【狩猟】本能全開で利かせながら、戦場を遠方より臨む
・まずは大まかに「比較的守りが薄いと思われる」一帯にアタリを付け【ヒート・ビースト】発動、火を纏う巨大化け猫に変化(化術+属性攻撃)
・鬼火を「最初の一発だけ」遠くへ放つ
・その「弱い箇所から順に付け狙う鬼火」を一発だけ放つことで、即ち「一番弱い箇所」を割り出す
・己が照準するではなく、ユーベルコードに世界を参照させての照準による――脆弱箇所看破!
・鬼火の後を追い時速13,400km/hで突貫、【こじ開け】る
●狩り
蛇王ペイヴァルアスプは、その胸部に太陽のごとき輝きを宿す。
一体だけでもそう称されるオブリビオンが無数に集まっているのだから、血脈樹周辺はダークセイヴァーではあり得ないはずの強い光に照らされた空間となる。
そして、その光は必然として濃い影を落とし……|彼《・》にとって、丁度いい隠れ蓑となっていた。
「……なるほど。ありゃあ、確かに壮観ですね」
岩陰の暗闇の中、金の瞳が浮かびあがる。
その影に潜みオブリビオンの様子を伺う者こそ、黒猫のキマイラである白斑・物九郎(デッドリーナイン・f04631)であった。
猫とは、即ち肉食獣である。
獲物を仕留め食うことで生きてきた捕食者たちは、その身に流れる野生の血の中に狩りの技法を記憶する。
物九郎もその例に漏れず、半ば本能や勘と呼ぶべき無意識でその気配を殺し、血脈樹の布陣を観察していた。
(|大まかに《・・・・》見て、守りが薄いのはあの辺りか……)
そして、その動物的な勘が最も力を発揮していたのは、間合いを図る見極めだ。
ある程度のアタリは付けられる程度には近く、ペイヴァルアスプに補足されない程度には遠く。
そのバランスを見極める感覚こそ、彼の野生の勘の真髄といえよう。
しかし、此処で一つの問題が生じる。
オブリビオンに補足されない距離を見極める物九郎の野生が優れている事は先の通りだが、一方でそこから得られる情報は『ある程度』に留まるのも事実であった。
無論、これだけでもやみくもな突撃よりはずっと良いのだが、相手は闇の種族の軍勢だ。
ある程度では到底足りぬのが、この戦場におけるオブリビオンの強大さでもあった。
ならば猟兵の、物九郎の強さで押しとおるまで。
大蛇たちの頭上に鬼火が飛ぶ。
たった一発の鬼火はペイヴァルアスプの放つ太陽の輝きに敵うはずもなく、だからこそオブリビオンはギリギリまでそれに気づかない。
ゆらりと揺蕩うその火は、ある時不自然に向かう先を変える。
「――シャアアアアアア!!」
「ッ!?」
瞬間、オブリビオンよりも小さな、しかし同じく灼熱の輝きにその身を包んだ獣が飛び出してくる。
鬼火も超える大火球へと変じた物九郎が、音をも置き去りにして血脈樹を目指す。
大蛇の大軍を呼び出す敵のユーベルコードは、まず間に合わない。
それでも、敵はこの第三層の君臨する闇の種族だ。
音速の十倍かそこらの速度であるのなら、彼らは対応してみせる。
故に、物九郎へとペイヴァルアスプの牙が伸ばされ、それが寸での所で|空を切る《・・・・》のは、鬼火を追う彼の速さが理由ではなく。
「動く時は躊躇なく……狩りのキホンですわな」
鬼火は必ず敵の最弱を嗅ぎつけると、自分は必ずその道をこじ開けられると。
決して疑わなかった物九郎の強さが、彼を血脈樹へと導くのだろう。
大成功
🔵🔵🔵
ベルト・ラムバルド
アドリブ上等
うーわ!いっぱいいる!?これを突破せにゃならんとは!
だが私はベルト・ラムバルドだ!騎士だ!やってみせるとも!行くぞー!
キャバリア操縦して出撃
空中機動で飛び回りながら情報収集、索敵で敵の行動を探り
情報検索で守備が薄い箇所を見つけUCで加速しながら突撃!
襲い来る両腕は二刀の剣振るい鎧無視攻撃で切り捨て逃げ回る
そしてサークランサーから巨大荷電粒子ビームを発射、偽りの太陽目掛けて貫通攻撃でカウンターだ!
そして瞬間思考力と窮地の閃きで回避して味方同士で攻撃をさせあい同士討ちを誘う!
あれじゃ寿命減るより先に死ぬな…とにかく逃げ回って血脈樹に向かう事を優先する!
うひ~なんちゅう鬼ごっこだ…!
ヴェルンド・ラスリス
※アドリブ共闘歓迎
厄介なやつがワラワラと…
目的地に着くのが目的というのなら、守りの薄いところを一点突破するのが良さそうだな。
UC『蒼花の飛竜』を発動し、飛竜の背に乗り、空からの偵察を行おう。その後陣の守りの薄いところにめがけて、降下突撃を行おう。
自身も飛竜の背から、大剣『黒焔』、ライフル『黒茨』で攻撃を仕掛けていこう。
●死地への飛翔
天の太陽が地を照らすのではなく、血脈樹に群がるような偽りの太陽に照らされる異様な空。
大樹へと伸び、そして何処かへと送り出される血流が鮮明に映り、そのグロテスクな恐ろしさをより際立たせる世界を飛ぶ影が二つほどあった。
「うーわ! いっぱいいる!? これを突破せにゃならんとは!」
一人の声は、騎士鎧のような造りのキャバリアの中から。
眼下にひしめくペイヴァルアスプの軍勢を見て、慄くような、それでも調子を崩さぬような叫びをあげる。
「厄介なやつがワラワラと……」
もう一人は、瑠璃色の飛竜の背に揺られ。
オブリビオンの眩い光に目を細めながら、それでもしかと血脈樹を睨みつける。
「……だが私はベルト・ラムバルドだ! 騎士だ! やってみせるとも! 行くぞー!」
「だとよ。俺らも行こうか、相棒」
ベルト・ラムバルド(自称、光明の宇宙暗黒騎士・f36452)とヴェルンド・ラスリス(獄炎の復讐鬼・f35125)。
空を駆ける二人の猟兵は、強大な闇の種族の軍勢にも臆することなく戦いに挑むのだ。
さて、空中からペイヴァルアスプたちの様子を伺う彼らには一つの懸念点があった。
それはすなわち、距離の問題。
遮蔽物に乏しい空中から観察する都合上、かなりの遠方からの偵察を余儀なくされていた。
「こう遠いとさすがに見づらいな! こっちの方はビカビカ眩しいとか、あっちはぼんやりしてるなくらいしか……!」
「いや、それは十分手掛かりになるだろう。あの光は、全てがオブリビオンのものなんだからな」
ぐぬぬ、という唸り声が漏れるキャバリアに対して、ヴェルンドが答える。
彼らの言う通り、遠方からでも漠然とした光量の多寡は見て取れる。
そして、その光がペイヴァルアスプの胸部に存在する光球から発せられている以上、光の強さはそこに居るペイヴァルアスプの多さを表しているのだ。
とはいえ、やはりそれは大まかな観察ではある。
しかし、二人はこれ以上様子見に時間を費やすつもりもなかった。
「それさえ分かればいいさ。やる事は最初から、一点突破なんだからな――!」
しゅーしゅーと、ペイヴァルアスプを構成する大蛇が首をもたげ威嚇の声を放ち始める。
その眼光が向かう先は、勢いよく飛翔する猟兵たちの姿である。
高所から降下しながら突撃してくる猟兵たちに対して、巨体を誇るペイヴァルアスプたちは偽りの太陽を輝かせて戦闘態勢に入る。
「さーて、いよいよ見つかったぞ! ここからが気張りどころだな!」
鞭のようにしなる蛇の腕が猟兵へと向かい、次の瞬間ベルトが操作するキャバリアの二刀に切り捨てられる。
だが、敵陣に飛び込む形となる猟兵にとっては周りのすべてが敵に等しい。
あっという間に包囲されるベルトに対して、二刀ではまったく追いつかない量の蛇が津波のように迫りくる。
「此方への攻撃を切り払うだけでは持たないな……|蒼花の飛竜《アイリス》! そっちも合わせてくれ!」
それを受けて、ヴェルンドは相棒の飛竜に対して目の前のオブリビオンへの攻撃を指示した。
最初に、ベルトが腕を切った個体の胸部に対して、竜の獄炎とライフル弾が放たれ突き刺さる。
「まったく、鬼ごっこをする前に逃げるスペースが足りんではないか!」
更にそこに、ユーベルコードと呼べる域にまで達する操作技量を持つベルトが素早く槍を抜き放ち、キャバリアサイズの巨大荷電粒子ビーム砲が追撃として放たれる。
二人の猟兵のユーベルコードを受けたペイヴァルアスプがひっくり返るように倒れれば、そこに空いたスペースを利用して猟兵たちが陣の深くへと切り込んでいく。
「おいおい……サークランサーまで叩き込んでやったのに起き上がりそうだぞ!」
「一体一体が闇の種族というのは、虚仮脅しではないってことか……」
「虚仮脅しであってほしかったなぁ! ――って、まずい、右だ!」
ユーベルコードの連撃でも致命傷には至らぬ敵のスケールに慄くのも束の間、ベルトの叫びに合わせて二人は上下に高度を変えて蛇鞭の襲撃を躱す。
空ぶった蛇が別のオブリビオンに当たれば、それによろける隙を突く二人が脇を掠めるようにまた進んでいく。
「うひ~、これを繰り返して進まなきゃならんのか!? なんちゅう鬼ごっこだ……!」
「血脈樹に辿り着けばこっちの勝ちなんだ、気を緩めるなよ!」
既にペイヴァルアスプたちに囲まれた二人にとって、一撃でも受けて動きを止めてしまえば、そこが死地となるだろう。
まさに、一瞬の油断が死を招く極限の飛翔へと、二人の猟兵は果敢に挑み血脈樹を目指すのであった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
ロラン・ヒュッテンブレナー
・アドリブ歓迎
たくさんの闇の種族が守ってるのはほんとみたいだね
すごくたくさんの蛇の匂いがするの
上手くくぐり抜けるルートを見つけないとね
まずは風下になってるポイントへ移動なの
風下なら姿を隠せば相手に匂いで見つかることは少ないの
移動しながらUC発動、周辺の熱量を操作して、ぼくの体温をごまかしておくの
隠れられる場所があって見渡しがいい場所は…、木の上かな?
あとは流れてくる匂いと音を狼の嗅覚と聴覚で拾って分析
行けそうな所はあるね
境界面が光学迷彩になってる結界を纏ってそこに炎魂をセット
見た目も温度も、そして匂いもシャットアウトして、生後10ヶ月程度の子狼に変身して足音を立てないように慎重に進むの
●香り、熱く、揺れて
ペイヴァルアスプは群れなす大蛇で体を構成した巨人のようなオブリビオンだ。
そして、その胸部には太陽のような光球が存在し、群がる蛇が時折その光に飲まれ焼き尽くされる。
それによって放たれる死にゆくものの匂いと、生き物としての匂いが混ざったような香りは、オブリビオンとしての存在の歪さを語るに相応しいものだった。
「うん……匂いが強くなってるってことは、こっちが風下で間違いないの」
鋭敏な嗅覚でそれを感じながら、オブリビオンたちから離れた木の上で身を縮こませる小さな影があった。
獣へと変じた各部位は、その少年を蝕む宿痾の証。
蒼い炎を従えて蛇の軍勢を見やる彼の名は、ロラン・ヒュッテンブレナー(人狼の電脳魔術士・f04258)といった。
ロランは自身の匂いが伝わらない風下に陣取り、熱を奪うユーベルコードの炎によって自分の体温を隠していた。
匂いと温度を知覚する蛇、それにより身体が構成される敵を警戒しての行動だった。
「あんまり長引かせると風邪を引いちゃいそうだね、急がなきゃ……」
ぶるると身を震わせ、少年はつぶやく。
相手の知覚を誤魔化す以上、周囲の温度の操作と同時に自身の体温も下げる必要がある。
ユーベルコード自体に消耗はなくとも、本来攻撃に使用する力を自分に向ける以上、時間はロランの敵であった。
とはいえ、彼もそれを承知の上でこの方法を取っているわけだから、そこには相応の勝算がある。
重要なことは、ロランも優れた嗅覚を持つ人狼であるということと……その彼が風下に立つということは、オブリビオンたちを|風上に置く《・・・・・》ということなのだ。
最もオブリビオンの匂いが薄い地点で、一瞬景色が揺らぐ。
辺りにいるペイヴァルアスプたちは、それに見向きもしない。見たところで、何かを見いだせるわけもないのだが。
(……やっぱり、此処が一番オブリビオンが少なそうなの)
だが、そこにはロランが居た。
光学迷彩となる結界を纏い、先の炎と同じものを内側にセットした彼は、人狼としての特性により仔狼の姿に変じていた。
視覚を欺き、温度を隠し、匂いを伝える微細な粒子は結界の内側で炎に焼き尽くされる。
自分の存在を証明する情報を極限まで隠したロランは、慎重に闇の種族の布陣を歩む。
――だが。
(あれ、あのオブリビオン、こっちを見てる……!?)
運は彼には味方しなかった。
蛇に耳はない。だが、|地に足をつける《・・・・・・・》存在が近くにいるのなら、その振動を感知できるほどの鋭敏な感覚が彼らにはある。
無論、巨大なオブリビオンが密集するこの地で、小さな狼の歩む重みを感知するのは至難の業だ。
ロランの策は十分に効力を発揮していて、一体のペイヴァルアスプが彼を補足したのは、大いに偶然の要素が大きい。
(駄目なの。囲まれてる今戦ったら、絶対に……)
つまり、彼の命は偶然に摘み取られ――。
「――だったら!」
「ッ!!?」
蛇の腕が鞭のように振り下ろされる寸前に、ロランが走り出す。
たかだか不運に殺されるのであれば、この小さな狼はとうに死んでいるはずだ。
それに立ち向かい続けてきた彼の、猟兵としての勇気は前へと駆け出すことを選択させ、ロランは決死の覚悟で血脈樹を目指していくのであった。
苦戦
🔵🔴🔴
月白・雪音
…民の血を喰らい、始祖たる吸血鬼へ捧げる大樹。
敵の補給の要であり、そしてこの地に生きる民の死すらも喰らわんとする呪いそのもの。
その元凶がこの先に在る…。なれば剛敵跋扈するとて進まねばなりません。
それが猟兵として立つこの身の責務なれば。
UC発動、落ち着き技能の限界突破、無想の至りを以て己の気配、音、存在そのものを全て遮断し
姿を隠しつつ敵の群れを偵察、野生の勘も併せ敵の布陣が薄い経路を見極め最適経路を見つければ
残像の速度にて敵陣を突破し立ち塞がる敵には怪力、グラップルによる無手格闘にて相対
見切り、野生の勘にて攻撃を察知し隙を見てカウンター、無理に倒そうとはせず包囲を避けて血脈樹に辿り着く事を優先に
●静
蛇王ペイヴァルアスプは強力なオブリビオンであり、身体を構成する数多の蛇の感覚も加わる察知能力は闇の種族に相応しい鋭敏なものだ。
だが、その敏感なオブリビオンとて、目に映るもの、肌で感じ取るもの全てに関心を向けるわけではない。
単なる風の流れや、巨人からすれば塵芥に等しい小動物等には気づいたところでその意識を割くわけではないのだ。
しかし、今この地においてはそのような些事の中に、見落とすべきものではないものが混じっていた。
「……民の血を喰らい、始祖たる吸血鬼へ捧げる大樹」
暗いダークセイヴァーでは目を引くはずの白い体。
月白・雪音(|月輪氷華《月影の獣》・f29413)は、単純に物陰に隠れるだけの状態で、この世界の死すらも貪る呪いの大樹を見上げていた。
先に言った通り、雪音の白い髪、白い肌は本来この世界では目立つものだ。
けれども、今の雪音はその気配が極端に希薄であり、本来目を引くだろうその姿を目の前にしても見失ってしまいそうな朧げな存在感となっていた。
これは、特別な魔術や妖術の効果によるものではない。
雪音の行っていることは、ただその場に|馴染む《・・・》ことであった。
修練によって培われたのは、超人的な力の発揮だけではない。その逆、生物には本来成しえぬほどの脱力と、無想とすら評せるまでに鎮めた心は、木の葉一枚を飛ばす程度の風にすら逆らわないほどに柔く、静かだ。
ただ息を潜めて隠れるのではない。場に逆らわず馴染むその様は、強大なオブリビオンの眼にはそこらの枯れ木と大差ないほどに自然なものに映るのだ。
敵陣の観察を終えた雪音が、音もなく走り出す。
大地を蹴る力を余すことなく推進力として進む達人の歩法は、その静けさとは対照的に残像すら残るスピードで彼女の体を押し出していく。
「――……!」
無論、どれほど静かであっても、ある程度近づけばペイヴァルアスプたちは猟兵の存在に勘づく。
その一体一体が強力な闇の種族。守りの薄いところに仕掛けようとも、足を止めて戦えば敗北は必至だ。
そんな強力なオブリビオンが胸の偽太陽を輝かせれば、鞭のごとき蛇腕が雪音の行く手を遮るように振り下ろされる。
「――相手をする気はありません」
その、命を容易に押しつぶす質量を前にして、雪音は更に加速する。
走る勢いのままに前に転がるように手を突けば、そのまま振り上げられる彼女の足が蛇鞭と衝突する。
攻撃の為ではない。腕よりも長く力強い蹴りは、蛇に当たると同時にそれを弾いて道を開ける。
僅かによろける蛇の巨人への追撃はせず、また着地した雪音がそのまま奥へと走っていく。
例え、敵陣に進もうともその研ぎ澄まされた精神は変わらずに。
目的となる血脈樹へ向けて、雪音は最短距離を迷わず突き進むのであった。
成功
🔵🔵🔴
オリヴィア・ローゼンタール
あの蛇王が雲霞の如く……
めまいがしそうな光景ですが、それだけあの大樹が重要という証左
なんとしても護りを【こじ開け】、橋頭保を確保しなければ
バニーの姿に変身……なにもふざけているわけではない
元より蛇王は無数の蛇の群体、ならばその蛇王の群体もひとつの敵として捉えることが可能な筈
黄金に輝く【死睨の魔眼】の力を開放、【拠点防御】の知識も動員して、「蛇王の群体」の弱点を観測する(視力・急所突き)
あとはウサギの脚力で駆け抜ける!(ダッシュ)
振るわれる無数の蛇鞭腕を大鎌で【切断】
【ジャンプ】や【スライディング】、さらには敵の巨体も足場にして足を止めずに突っ走る(足場習熟・悪路走破・クライミング)
●蛇を睨む兎
血脈樹の周辺は、ダークセイヴァーでは真昼でも見られないはずの光に満ちた空間となっている。
それはつまり、光源であるペイヴァルアスプが無数にひしめいていることを意味していた。
「あの蛇王が雲霞の如く……」
遠くからそれを見やるオリヴィア・ローゼンタール(聖槍のクルースニク・f04296)にとって、それはまさしくめまいのするような光景であった。
一体であっても猟兵の力を結集して挑まねばならない闇の種族の軍勢は、まさに悪夢に例えるべき代物だろう。
だが、それは同時に、オブリビオンにとってこの血脈樹がどれほど重要なものかを示す証左でもある。
どれほどの困難であっても退くことはできぬと、オリヴィアは意を決して蛇の軍勢へと挑むのだ。
そんなオリヴィアだが、常のシスター服とは異なる装いに身を包んでいた。
網タイツに包まれた脚を引き立てるようなハイレグの肩だしボディスーツ、女性的な魅力を引き立てるように大部分が露になった胸部に、兎の耳を模したヘアバンド……所謂、バニースーツだ。
無論、彼女はふざけているのではない。
あくまで闇の種族に対抗する手段として、この|首狩り兎《ボーパルバニー》の力が必要なのだ。
「以前に戦っているからな……貴様らの性質は知っている」
彼女の金色の瞳が、妖しく輝く。
敵の中のもっとも死に近しい部分を見抜く|死睨の魔眼《クリティカル・バロール》は、本来であれば軍勢に対して使用するものではない。
だが、無数の蛇が集まって体を作るペイヴァルアスプが更に集まってできた集団であるならば……その一つの|超巨大な蛇王《・・・・・・》の弱みを見抜くことは可能であった。
本来であれば、兎など蛇の格好の獲物でしかないだろう。
だが、今だけはその立場が逆転し、金の瞳が目当ての箇所を見つけたのなら。
「――こじ開けるだけだ!」
間髪入れずに、オリヴィアがその軍の弱点をめがけて走り出す!
勿論、ペイヴァルアスプも黙って見てはいない。
例え数の少ない箇所を突かれようとも複数の蛇王が猟兵へと反応し、その腕を鞭のようにしならせて兎の命を狙う。
対するオリヴィアも冷静だ。まさしく跳ねるように初撃を躱せば、その蛇の腕を駆けあがるように走り、決して侵攻を止めることはない。
飛び跳ね、滑り込み、再度大きくジャンプをして蛇鞭を躱す彼女を、周囲のオブリビオンが一斉に襲う。
だが、その腕を構成する蛇の悉くは、オリヴィアの振るう大鎌によって首を撥ねられて。
魔眼の力で最適な突入個所を見つけた彼女は、等々血脈樹へと辿り着き、それが支える天蓋を力強い眼差しで見据えるのであった。
成功
🔵🔵🔴