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猟書家決戦~宿命を嘲うもの

#サムライエンパイア #戦後 #クルセイダー #安倍晴明 #上杉謙信

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●宿命の時は訪 、
 月を覆う『骸』が解けていく。『還って』いく。
 僅かに残っていた影すら失われ、サムライエンパイアの月は元の輝きを完全に取り戻した。

 見よ。この世界の『骸の月』は潰えたのだ。
 見、――――。

 ――このようなことが、許されてなるものですか。
 全ては『ぱらいそ預言書』の思し召しのまま。私が選ばれし者であるがゆえ。
 秀吉の孫でありながら徳川の追手から生き延びたのも、オウガ・フォーミュラとして今日まで侵攻を続けられたのも。
 全ては、私が預言書に選ばれて、この日の転覆を為すために。
 その為にこの天草四郎時貞は、クルセイダーとなりて預言書のままに。

『何処の誰が貴方を『選んだ』というのでありましょうか……』
『大した|業《カルマ》も無き貴方の躰を奪うなど、造作もありませぬ』

 ――私の、転覆は。いたずらに、地獄を顕わすものではなく。
 ――私、の……。

「……もう死にましたか。誇り高きグレイズモンキーに連なる者と聞きましたが、取るに足らぬ最期でございましたな」
 憐れなり、未熟なるクルセイダー。
 何に選ばれたかも、何を『選んでしまった』かも知らぬまま、あまりにも儚く命を終えてしまうとは。
 骸の海より還りしグレイズモンキーが、ノーライフキングを選んでしまうとは。
 あまりにも、あまりにも。

「さて……この私は何を使うと致しましょうか。実に興味深い駒を残してくれたもので」

●選ばれたはずのもの
 おどろいた、と目を丸くしたのはグリモア猟兵の出水宮・カガリだ。
 サムライエンパイアを侵攻していた猟書家の王、オウガ・フォーミュラであるクルセイダーに異変があったというのだ。
「クルセイダーは、魔軍将の憑装……ええと。何と言えばいいかな……幹部級オブリビオンの憑依、が近いかな。自らと、憑依させたオブリビオン、両方の力を扱えるようになる能力を使うのだが。
 その、クルセイダーが。憑依させたオブリビオンに、肉体を乗っ取られてしまったようで」
 猟兵としては、その異変があろうがなかろうが『クルセイダーを撃破する』という大目的自体は変わらない。しかし、である。
「この、クルセイダーを乗っ取ったオブリビオンが厄介でなぁ。
 陰陽師の、安倍晴明。これが、オブリビオンをゾンビ化……まあ、見た目は普通のオブリビオンと大差ない、のだが。耐久力が上がっていてな。
 多少の怪我や、手足が失われた程度では、勢いも力も衰えない。
 更に、生殖ゾンビ、といって。ゾンビでありながら、自ら増えるので。
 まあ、あれだ。このままだと、サムライエンパイアがゾンビの世界になってしまう。とても、よくない」
 ゾンビ化オブリビオンが増えすぎてしまう前に、速やかにクルセイダーを討ち取る必要がある。それも、『かなり速やかに』だ。
「クルセイダーは元々、空を移動する『魔空原城』を、居城としていたのだが。
 その気になれば、居城にいたまま逃走もできてしまう。
 今は、幕府の指示で、呪詛の鎖で地上に引き摺り下ろされているが。それも、そう長くは。安倍晴明も、陰陽師だからなぁ」
 地上に降ろされた『魔空原城』からは、外敵を迎え撃つべく配置された『島原一揆軍』と称されるオブリビオン達が襲ってくる。彼らも例外なく晴明によりゾンビ化されているため生半可な無力化は効果が薄く、無慈悲な、完膚なき殲滅こそが突破方法となるだろう――というのが、グリモア猟兵の見方だ。
「……ただ、なぁ。その、『一揆軍』というのが」

 こども、なのだ。

●愛を教えて
「預言の神様が来るんだって!」
「神様は愛してくれるかなぁ!」
「愛してくれるよ、神様だもの!」
 生前に、ただの一度も温かな愛を受けることなく骸の海へ落ちた子供達。
 『島原一揆軍』として配置された彼女達は、見たこともない『愛情深い神様』への異常な信仰心により昂ぶっていた。
「いっぱい殺したら愛してくれるかな?」
「隣人を愛しなさいって、聖書にあったよ。いっぱい痛くしてあげなきゃ」
「それじゃあ、たくさん殺されるのも愛なんだね!」
 傷付き、傷付けられ。殺し、殺されることでしか愛情を感じられない子供達。
 既にゾンビ化した子供達はその耐久力ゆえに、多くの傷を喜んで受けるだろう。
 慈悲を願うなら、一撃の元に。


旭吉
 |旭吉《あさきち》です。
 クルセイダーが……クルセイダーがぁ……(´;ω;`)
 オウガ・フォーミュラ『晴明クルセイダー』戦をお送りします。
 (彼を20シナリオで倒せれば、完全に滅ぼすことができます)

●状況
 サムライエンパイア、魔空原城城門付近。
 魔空原城を守る『島原一揆軍』として、『愛情欠落性殺戮症候群』の少女達が現れて猟兵を迎え撃ちます。
 彼女らを撃破してください。
 『島原一揆軍』が全滅すると、『魔空原城』の城内へと進めます。

 演出や台詞は盛っていきたいと思います(特にフォーミュラ戦)
 あんまり派手な怪我はしたくないとか、装備に万が一にも傷を付けたくないとか、そういう方には参加をお勧めできないかもしれません(判定次第では軽傷・無傷で済む場合もあります)
 ご参加の前に、ご一考くださいませ。

 どなたかとご一緒に参加される場合、お相手のIDか【】で括ったチーム名をお願いします。特殊な呼び名などあれば書いて頂けると助かります。

●プレイング受付
 1章は【オープニング公開後すぐ~10日(水)25:00の受付予定】です(以降の章は都度ご案内します)
 期間を過ぎても成功度が足りない場合、システム的に受付可能な限り受け付けます。
 なお、問題が無いプレイングでも流してしまう事があるかもしれません。
 進行が滞った場合、サポートも積極採用予定です。
 (サポート以外のプレイングが多い場合はその限りではありません)
 ご了承ください。

●オーバーロード
 必要に応じてご利用ください。失効日の関係上、通常プレイングを先に採用することがあります。
 (採用/不採用の判断には無関係です。意図された行動が難しい場合、不採用とすることもあります)

●プレイングボーナス
 1章は【『島原一揆軍』を全力で殲滅する】です。
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第1章 集団戦 『愛情欠落性殺戮症候群』

POW   :    被虐「あぁ、私愛されてるっ!!」
戦闘中に食べた【傷の痛みと味方の血肉】の量と質に応じて【それを愛情と誤認し更なる愛を渇望して】、戦闘力が増加する。戦闘終了後解除される。
SPD   :    加虐「これが愛よね?」
【殺し合いに適した人格】に変化し、超攻撃力と超耐久力を得る。ただし理性を失い、速く動く物を無差別攻撃し続ける。
WIZ   :    喰殺「もっと愛してあげる!」
戦闘中に食べた【敵対した相手の血肉】の量と質に応じて【より強く愛し合おうと歓喜し】、戦闘力が増加する。戦闘終了後解除される。

イラスト:友憂希

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●預言の神様
 呪詛の鎖で地上へ引き摺り下ろされた『魔空原城』。
 城門から城壁、天守閣へ至るまで強く鎖が絡みついているが、猟兵が近付くと路を開くように城門近くの鎖が避けた。

 門が鎖から解放されると、内側から少女達の声と共に扉が勢いよく開け放たれた。
「来てくれてありがとう! 嬉しい!」
「愛して神様! 神様じゃない? 預言の神様だよね?」
「皆で愛し合おうよ! 幸せだよ!」
 こちらへ問うているようで、聞く耳を一切持っていない少女達。
 『島原一揆軍』愛情欠落性殺戮症候群――信仰を得た、愛なき子供達の姿だ。
木霊・ウタ
心情
死して尚オビリビオンとなり
更にゾンビにされちまったとは可哀想に
歪んじまうのも無理はない

せめて速く海へと還してやろう

戦闘
俺の血潮に潜む迦楼羅を炎の翼として顕現

急降下して
一揆軍のど真ん中の上空で
焔からギター、ワイルドウィンドを具現化
空中ライブと行くぜ

アップテンポなノリのいい曲だけど
子供達への憐憫と安らかな眠りへの想いを込めて

曲に乗って炎の渦が広がり
子供達を瞬時に炎に包み焼却浄化
歪みを浄化しつつ海へと送る

子供達の攻撃を
翼での機動や爆炎の反動で回避
もし当たっても
傷ぐちから吹き出す炎のカウンターで海へと還す

事後
演奏を続けて鎮魂とする
今度こそ安らかにな

っし、城へ乗り込むぜ



●焔摩の鎮魂歌
 城門からはしゃいで飛び出してくる少女達に、木霊・ウタ(地獄が歌うは希望・f03893)は痛ましい思いがした。
 子供の内に死んだだけでなく、オブリビオンとして蘇り、更にゾンビにされて尖兵として使われる。
 あまりにも可哀想だと感じたのだ。
「歪んじまうのも無理はない……せめて早く海へと還してやろう。迦楼羅!」
 己の血潮に潜む金翅鳥を呼ぶと、その金色の炎に燃える翼を背へ顕しウタは上空へ飛び立つ。
「お兄ちゃん、何処へ行くの!」
「すごーい! 神様だから飛べるんだ!」
 少女達は興奮気味に空を見上げ、ウタの姿を追う。その声だけであれば純粋さも感じられるが、ここは戦場で、少女達は敵対するオブリビオンだ。
「お兄ちゃんな、今からここでライブするんだよ」
「愛してくれるの? 痛い? どんな感じ?」
「愛して欲しいな! どんな風に殺してくれるの?」
 『ライブ』がどんなものかわかっているのかいないのか、こちらの言葉と少女達の反応がいまいち噛み合っていない。しかし、それを懇切丁寧に説明する余裕は無い。
「ライブっていうのはな……こういうやつだよ!」
 『島原一揆軍』の集まりの中央へ移動すると、翼の焔からギター『ワイルドウィンド』を具現化する。そのギターで曲を奏で始めると、暴風と共に地獄の焔が渦を巻いて瞬く間に広がっていった。
「きゃああぁっ! あっつぅい!」
「これが……お兄さんの愛なんだ……」
 子供達の間に悲鳴が木霊するが、ゾンビ化しているせいか全員が一瞬で燃え尽きる事は無かった。
 生き残っている少女は焔を浴びながらも、これが愛だと喜んでいるのだ。
「お兄ちゃん……私からも愛させて……!!」
 燃えたままの少女が両手を広げると、燃えている長い髪が意志を持ったように襲いかかる。
「その歪みごと、綺麗に燃やし尽くしてやるよ」
 憐憫と安らかな眠りを願ったアップテンポな曲は続けたまま、ウタは翼の焔を猛らせて髪を払う。
 ウタの焔は全て浄化の焔だ。
 全ては、子供達の鎮魂のために。
「今度こそ、二度と覚めないようにしてやる。……安らかにな」

 黒髪も黒い服も、白い肌も白い袴も、等しく焼き尽くす。
 しばらく子供達の歓声のような悲鳴が響いていたが、やがて数が少なくなり、最後のひとつも聞こえなくなっていく。
 子供の声が聞こえなくなってから焔を収めると、そこには何も残っていなかった。
 手向けのように小さく祈ると、ウタは翼を仕舞って天守閣を見上げた。

「……っし、乗り込むぜ」

大成功 🔵​🔵​🔵​

護堂・結城
また遊んでやるって言ったもんな
何度蘇ろうが、何度現れようが…全力で終わらせてやるとも
それが兄貴分の役目だ

「よぉ、悪ガキ。ちょっとばかし遊ぼうや」

UCを発動して紫電双牙の封印を解き雷の刃を解放。さらに炎の魔法を纏わせる
再生できないように傷を焼く焼却切断属性の範囲攻撃で薙ぎ払いだ
刃を振れない至近距離に来た奴は念動力で武器を浮かせ、無手のまま抱きしめるように捕獲。喰らいつかれようが引っかかれようが知ったことか
生前のお前にこの強さがなかったことが悲しい

「やるじゃねぇか、愛してるぜ兄妹」

そのまま怪力で抱きつぶすカウンター
あの時助けてやれなかった俺じゃ、こんな形でしか伝えられないが…それも俺達の縁だろうな


彼岸花・司狼
その手の嗜好は好きにすれば良いが…
苦しませる趣味もない。死出の旅は美しく、とも言うしな。

まずは【目立たない】ように【忍び足】と【迷彩】で【闇に紛れ】る。
敵の位置を把握したところでUCによって【残像】を残すほどの超加速で【不意打ち】し、
刃の通りが良い【解体】しやすい部分を【見切】ったうえで【鎧無視】の【暗殺】狙い。
刃が通らなかった場合は限界距離に達するまで折り返し連続で焼き斬りにいく。

速い物に反応しても、動く速度が遅いなら意味は無いだろうに。
本能で動くだけの獣相手なんぞ、ただの【狩猟】みたいなもんだ。

愛に狂った頭では、到底愛が理解できるとは思わんがね。
愛に正気無しとも言うけれど…まぁ、良き死を。



●良き愛を
 ――また、出会ってしまった。
 『島原一揆軍』として現れた少女達に、護堂・結城(|雪見九尾《外道狩り》f00944)は一度目を瞠り、閉じる。

 同じく、猟書家の尖兵として。
 同じく、本当の愛を知らないまま。
 同じく、結城のことを覚えていない。
 何度現れても、終わりにしてやれない子供達。

「……どうした。知り合いだったか、結城」
 彼岸花・司狼(無音と残響・f02815)が声をかけると、結城は目を逸らさず肯定する。
「愛すべき悪ガキどもだよ。俺がああなってたかもしれねぇ、可愛い兄妹分達だ」
「痛くて苦しいのが愛情か。その手の嗜好は好きにすれば良いが……俺は苦しませる趣味もない。死出の旅は美しく、とも言うしな」
「悪いな。よければちょっとばかし遊んでやってくれや」
「わかった」
 司狼は答えながら迷彩技術と隠密力で景色へ溶け込み、少女達の狙いから外れる。
 対照的に、結城は目立つように少女達の前へ進むとユーベルコードで巨大な斬馬刀の二刀流『紫電双牙』の封印を解いた。
 双牙の持つ雷電に加え炎を纏わせれば、圧倒的な見た目に少女達は目を輝かせて喜んだ。
「それで愛してくれるの!」
「私達のために、そんなにすごい刀で愛してくれるんだね!」
「そうだよ、お前らのためだ。何度蘇ろうが、何度現れようが……全力で終わらせてやるとも」
 また遊んでやると言った。
 果たされないことを願いたい約束だが、出会ってしまった以上は守る。
 それが兄貴分の役目だ。
「そら、かかってこいよ悪ガキども!!」
 双牙を振り抜けば、少女達を薙ぎ払う雷撃と焼却の一撃。仲間を喰らっても再生できないよう、この炎は傷口も焼き尽くす。
 その一撃で跡形も残さず消えてしまった少女もいれば、ゾンビならではの耐久力で生き延びている少女もいる。
「すごい……すごい、すごいすごい! ねえ、あたしからも愛させてよ!」
 両腕を焼き切られた少女が興奮のままに結城へ飛びかかろうとするのを、灼熱の刀神と化した司狼が一刀の元に、正確無比に斬り伏せた。
「こっちのお兄ちゃんもすごい! もっと愛して! いっぱい愛して!」
「愛し合えたら幸せなんだって! いっぱい愛し合おうよ!」
 超加速で移動する司狼へ、歓声をあげて群がろうとする少女達。
 しかし、彼女達はその歓声で超攻撃力と超耐久力を得られはしても、速度でどうしようもなく司狼に追いつけないのだ。
(力が強くなったところで本能で動くだけの獣相手なんぞ、狩猟と何も変わらない)
 神秘の刀神が、焔の軌跡を残しながら戦場を駆け抜ける。
 一撃に耐えた少女相手にもその場で斬り結ぶことはせず、司狼はあくまで間合いの外から一瞬で駆け抜け正確に斬り捨てることを意識した。力は強いが速さのない相手への定法だ。
 斬り捨てられた仲間の肉体を喰らおうとすれば、結城が双牙を振るう。喰らわれるはずだった死体も、喰うはずだった少女も、等しく炎と雷で焼き尽くされた。
「すごい、いっぱいすごい……愛されてる、こんなにも愛されてる私達!」
「神様ってすごいんだ……こんなにも愛してくれる……っ!」
 数を減らされても、少女達は恍惚としていた。
「神様、私達も愛させて!」
「痛くするから、愛し合わせて!」
 競うように襲ってくる少女達。その表情は歓喜に満ちていた。
「何やっても愛されてるって受け取られるのか……」
 それで喜びの内に死を迎えられるなら、その者にとっては幸福な死だろう。
 司狼は再び神秘の刀を手に取った。
「愛に正気無しとも言うけれど……まぁ、良き死を」
 雷鳴の如く踏み込み、電光石火の如く斬り伏せる。
 目にも留まらぬ、一瞬の『死』だった。
 一方、結城もユーベルコードで少女達を薙ぎ払ったが、しぶとく生き残った一人が彼の胸へ歯を立てた。
「神様……痛い? もっと痛くするね、愛してるよ……」
 彼女がそのまま肉を喰い千切ろうとするのを、結城は力強く抱きしめて捕獲した。
(生前のお前にこの強さがあれば……)
 ――あるいは、こんな悲しい繰り返しをせずに済んだかも知れない。
 そんな感傷に浸ったのも一時のことだった。
「……やるじゃねぇか、愛してるぜ兄妹」
 少女が愛で喰い千切る前に、結城が愛で文字通りに『|抱き潰した《・・・・・》』。
 腕の中で潰れた少女はどす黒い血と肉となって結城にこびりついていたが、やがて風に吹かれる砂のように消えていった。

「今のが最後か。大丈夫か」
 少女を抱き潰した形のままでいる結城に、刀を納めた司狼が声を掛ける。
「……あの時助けてやれなかった俺じゃ、こんな形でしか愛を伝えられないが……。それも俺達の縁だろうな」
「……何があった関係かは知らないが。愛に狂った頭では、俺は到底愛が理解できるとは思わんがね」
「いいんだよ、俺達はこれで。次があるとしても、また俺達なりに愛し合うだけだ」
「そうかい」
 結城が立ち上がると、二人は天守閣を見上げる。
 次に目指すは――。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

蛇塚・レモン
連携◎
心情:過去最高にブチキレてる

開幕UC発動
念動力で飛翔し空中機動
敵ゾンビは空が飛べないので空中から一方的に混沌の矢を乱れ撃ち
矢に雷・炎属性の全力魔法を付与
地面に突き刺さる雷霆となって敵ゾンビを貫通攻撃
最大火力ゆえ射貫いた個体は瞬時に消し炭になるかも

矢から伝播した電撃が周囲の敵ゾンビにマヒ攻撃を与えて捕縛
動きが留まった個体から次々と混沌の矢で射貫いて極凶運を付与
他の猟兵の攻撃を通しやすくする

相手が子供だからって関係ないから
セイメイの手駒って時点で
あたいにとっては完全滅殺の対象だよ
欺瞞の愛で他人を害するのも気に食わないねっ!

これが傲慢だというなら
お望み通りに驕って祟神になってあげるんだからっ!


月隠・三日月
○☆
私の故郷であるサムライエンパイアがゾンビの世界に……身の毛がよだつ話だね。

こどもの形をしていてもオブリビオンであることに変わりはないし、情けをかけている余裕もない。あまりいい気分ではないけれど。
【紅椿一輪】で敵を攻撃しよう。多少の怪我では動きを止めないそうだからね、攻撃するときは大きく踏み込んで思い切りやろう。それでも効かないようなら、相手が倒れるまで攻撃を続けるしかないかな……

血肉や痛みで相手が強化されるのは厄介だな。……紅椿一輪は妖刀が触れたモノを断つ【呪詛】、相手の痛覚を断ち切ることで強化の度合いを緩和できないかな。うまくいくかはわからないけれど、試してみる価値はあると思うのだよね。


冴島・類
○ ☆

鎖で引き摺り降ろされている間に
エンパイアへ災い広げる企み、止めましょう

躊躇なく向けられる攻撃と、ちぐはぐな言葉
すまない
僕は君達の求めるかみさまじゃないんだ
傷つき、傷つけられることでしか実感できぬ様は心苦しいが
この子らにかつて訪れた終わり、痛みを
何度も繰り返させるのはもっと

強力な攻撃は見切り、直撃避け
旋風を放ち、炎の動きに注意を向かせつつ軌道上へ引き寄せ
狙いと体勢を崩した所へ踏み込み、2回攻撃
覚悟決め、破魔を全力で込めた薙ぎ払いで斬る

これ以上
君達の望みや身体を利用なんてされぬよう
もうおやすみ

倒し切るまで止まらず躊躇もしない
けれど…
終わった後
子らの眠りが安らかにと祈るぐらいは許されるだろうか



●混沌の嵐の後で
「蛇腹剣クサナギ、変形っ!」
 城門から飛び出してくる少女達が視界に入った瞬間、蛇塚・レモン(白き蛇神憑きのシャーマンクイーン・f05152)は有無を言わさず蛇腹剣クサナギを覚醒させ大弓『天之麻迦古弓』へ変形させると、その弓を鈍色の左手に握り空を翔る。
「相手が子供だからって関係ないから。セイメイの手駒って時点で、あたいにとっては完全滅殺の対象だよ!」
 その苛烈な怒りを滅殺の意志として、空から|傲慢なる混沌《undefined》の矢を雨と降らす。
 愛を求める声も、愛を悦ぶ声も許さない混沌の蹂躙は、雷と炎による破壊を伴って城門ごと少女達を打ち砕いていった。
「あれ……体、動かない……」
「すごかった! すごいよ神様! 一瞬で消えちゃった子もいっぱい!!」
「こんなに愛されてるのに……体が動いたらあたしも愛したいのに!」
 一帯全てを巻き込んだ混沌の矢を浴びてなお立ち上がる個体がいるのは、ゾンビ化による強化がなせる業か。少女達はレモンの攻撃を恐れるどころか感動しており、ユーベルコードを封じられたことも攻撃できない悔しさよりは『仲良くできない無念さ』のようなものを感じさせた。
 その『仲良くなる』方法が、彼女達にとっては殺し合い一択なのだが。
「そんな愛はお断りっ! 欺瞞の愛で他人を害するのも気に食わないんだからっ!」
「こちらは情けをかけている余裕もないからね。そちらからの情けも無用だよ」
 妖刀を抜き放つ月隠・三日月(黄昏の猟兵・f01960)。
 妹を持つ三日月としては、年下の見た目をした少女へ刃を振るうことに全く抵抗がないわけではない。しかし、相手は結局オブリビオンでしかなく、話が通じる相手でもない。
(レモンさんの攻撃でかなり動きは抑えられているけど、痛みによって強化されるのは厄介だな……)
 どう攻めたものか考えている間も、レモンは息のある少女達を次々に雷霆で捉え、動きを鈍らせたものから撃ち抜いていく。しかし、交戦している少女達の歓声を聞きつけたのかまだ傷のない別の少女達が城内から飛び出してくる。
「一体どれだけの数がこの城に……!」
 ゾンビでありながら自ら増えると、グリモア猟兵は言っていた。
 三日月の故郷であるサムライエンパイアがこのようなゾンビオブリビオンだらけの世界になる様は、考えただけでも身の毛がよだつ。
「何としても、この城が鎖で引き摺り降ろされている間に止めましょう」
 鎖の絡まる天守閣を見上げた後、冴島・類(公孫樹・f13398)は『枯れ尾花』の銘を持つ短刀を手に目の前の少女達へ目を向ける。短刀を鞘から抜いた類へ新たに増えた少女の一人が襲いかかると、類は彼女に痛みを与えないよう躱し続けた。
「ねえねえねえ! 愛し合おうよ愛してあげるから! 愛してよ神様痛くして!!」
「すまない。僕は君達の求めるかみさまじゃないんだ」
「預言の神様! 愛してる!」
 否定が通じない。会話が成立しない。思い込んだ通りにしか話が進まない。
 理性を失った少女が幼い腕を振るっただけで、類の頬に糸筋の朱を引く。その程度の傷で済んだのは、類が彼女の動きを見切っていたからだろう。
「伏せて!」
 言われるままに類が伏せると、三日月が妖刀で少女の背から斬り付ける。痛みを感じる『痛覚』を断つ呪詛を刃に込めることで痛みを感じさせないまま、少女はユーベルコードによって紅椿の花びらを散らしながら両断されたのだった。
 両断された少女は、蘇ることなく遺体を消滅させる。
 しかし未だ残されている少女達は、三日月の技に更に昂ぶっていった。
「切れ味すごい! すごいよ神様!」
「わたしたちも愛して! もっともっと!」
 紅に染まった刃を返して、三日月は小さく息を吐く。
「痛みを与えなければいくらか強化は緩和できると思う。このまま減らしていこう」
「ああ……しかし」
「どうしたんだい。可哀想だと思う?」
 彼女達への憐憫が意味を持たないことは、ここにいる皆が身を以て理解している。
 最初から憐れむつもりがないレモンは、隙あらば地上の二人を狙おうとする少女達へ混沌の雨を降らせていた。
 その景色は、飛べない少女達に対する空からの一方的な蹂躙に見えるだろう。
 そしてその景色の中に、あるはずの悲鳴がない。少女が断末魔や悲鳴の代わりにあげるのは歓声ばかりだ。
「……傷つき、傷つけられることでしか実感できぬ様は心苦しいが。この子らにかつて訪れた終わり、痛みを
何度も繰り返させるのはもっと苦しい」
 三日月へ背を預けた類は、抜きはなった短刀で少女を斬り付ける。
 刃は空を切ったが、その軌道上に炎を纏った旋風が巻き起こると、興奮した少女の方から集まってきた。
「愛そうとしてくれた! 嬉しい! もっと愛してよ!!」
「一度で終わらせられなくてすまないね。君たちが欲しいのは……こんなものではなかったね」
 全ての霊力を込め、風と炎を強める。空を切った短刀を風と共に返せば、炎の旋風は敵を焼き切る刃となって少女を薙ぎ払った。

 城門前を紅椿が舞い、地上を送り火の風が踊り、空からは雷と炎が降り注いでいく。
 最後に残った少女へ、空のレモンが最後の矢をつがえた。
「一方的すぎる? 構わないよっ、これが傲慢だというならお望み通りに驕って祟神になってあげるんだからっ!」
 放たれた矢が着弾し、爆ぜる。防ぐ術も無かった少女は、それでも嬉しそうに笑っていた。
「あは……、かみ、さま……――――」
 最後の一人だった彼女が肉体を崩れさせて消滅すると、城門前に静寂が訪れた。
 戦いはここで終わりではない。
 しかし、類は少女が消えていった風下を見送りながら静かに祈った。
(もう、これ以上……君たちの望みや身体を利用なんてされぬよう。
 どうか安らかに。おやすみ――)

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

ヴィクティム・ウィンターミュート
【冬と凪】
……はぁーぁ クソウゼェったらねえな
クルセイダーは言わずもがな、晴明まで出張ってくるとはよ
別に俺がどうこうってわけじゃねえんだけどさ
生まれも育ちも全然関係ねえ世界だし

ただまぁ……エンパイアで好き勝手されると困る奴が居るんでね
悪辣な手を使うようなクズには、同じクズをあてがうのがベターだよな
だから来たんだよ──始めようぜ、チューマ

おーおー、ぞろぞろ来たぜ 
ジューヴのナリをしているが、別にどうでもいいことさ
『敵』をカテゴライズしないんだよ…もうそれと定めたら、老いも若いも男も女も、消し去らなくちゃならない 今更こんなもんで手鈍るとかありえねーんだっての

こいつらバーサークしてる 鎮静かますから、処理よろしくな
───『凍戦』 魔弾は放たれ、着弾したならすべてが停滞に向かっていく
殺し合いを熱望する身体も心も、全部な
あとは鈍い木偶の坊を匡が処理するだけ 実に簡単なビズだ
早く動くものをフォーカスするなら、ついでに囮にもなるさ
どうせ追いつけやしないからリスクも小さいぜ


鳴宮・匡
【冬と凪】

別に、何が出てきたって同じだろ
出てくるのなら何度でも骸の海へ叩き返してやればいいさ

俺個人も別段、この世界に思い入れがあるってわけじゃないけどさ
過去の残骸が、屍を以て世界に死を敷こうとしてる、なんて
――そういうやり口は、気に入らないからな

誰にも愛されずに死んだ、なんて境遇に思うところがないわけじゃない
俺だって、師匠に拾われていなかったらああなっていたかもしれない――なんて
そんな考えだって過りもするさ
だけど、それで手を止めることはない
そこにいるのが敵で、倒すべき相手だと理解しているから

悪いけど、情でやるべきことを見失うほど若くも青臭くもないんだ
――そもそもが、こんなものは“情”なんて言えないかもしれないけど

理性の無い相手なんて、的もいいところだ
ヴィクティムが動きを鈍らせてくれるなら、なおさら
時間をかけたくもないからな
一撃で急所を射抜いていくよ
効率よく、素早く、無駄な抵抗もさせないように
――余計な痛みもないように、な

次はちゃんとお前たちを救い上げてくれる手に、会えるといいな



●冬の凪へ
 子供達の声がする城門を前に、ヴィクティム・ウィンターミュート(Winter is Reborn・f01172)は眉間に皺を寄せながら頭を掻いた。
「……はぁーぁ。クソウゼェったらねえな。クルセイダーは言わずもがな、晴明まで出張ってくるとはよ」
「別に、何が出てきたって同じだろ。出てくるのなら何度でも骸の海へ叩き返してやればいいさ」
 対照的にほぼ表情の変わらない鳴宮・匡(凪の海・f01612)は、愛銃の動作を確認しながら答える。
「別に俺がどうこうってわけじゃねえよ。生まれも育ちも全然関係ねえ世界だし。
 ただまぁ……エンパイアで好き勝手されると困る奴が居るんでね」
「そういうことか。俺個人も別段、この世界に思い入れがあるってわけじゃないけどさ。
 過去の残骸が、屍を以て世界に死を敷こうとしてる、なんて――そういうやり口は、気に入らないからな」
 世界そのものに対する個人的な思い入れはない。ただ、好き勝手に暴れられて滅ぼされていいとも思わない。
 二人に共通する動機はそれであったが、匡の凪いだ瞳は生前にまともに愛されなかった子供達を通して『もしも』を見ていた。
(俺だって、師匠に拾われていなかったらああなっていた可能性は――)
 しかし、それも一瞬のこと。彼女らは結局オブリビオンでしかなく、自分は今猟兵であり、手を止める理由はどこにもない。そんな感傷や情でやるべきことを見失うほど、自分は若くも青臭くもないと自負している。
 ――そもそもが、こんなものは“情”ですらないのかもしれないが。
「結局は|いつも通り《・・・・・》だ。|子供《ジューヴ》のナリをしていようが、別にどうでもいい。今更こんなもんで手鈍るとかありえねーんだっての」
 ヴィクティムもまた同じく。
 『敵』と定めたなら、それ以上のカテゴライズは意味が無い。老いも若いも男も女も、消し去るべき対象と定められたのなら。
「悪辣な手を使うようなクズには、同じクズをあてがうのがベターだよな。――始めようぜ、|相棒《チューマ》」
「愛してよ! 死ぬほど愛してくれるんでしょ神様!!」
 少女達がいよいよ迫ってくるのを、ヴィクティムが早撃ちで迎え撃つ。
 ユーベルコードの魔弾『凍戦』。あらゆる装甲と防御を貫通して被弾した者へダメージを与えるだけでなく、思考と攻撃それ自体、つまり『戦い』そのものを凍結させ『停滞』させてしまうがゆえの名である。
「匡、処理任せた」
 その台詞が終わる前に匡の狙撃が少女を貫く。その弾丸は確かに命中したにも拘わらず、匡の表情は釈然としない。
「この場所のせいか、ユーベルコードのせいか……お前の『停滞』すら振り切りそうだった。
 狙えない動きじゃないし、ユーベルコードの火力でゴリ押せないこともないけど、俺の手応えも正直いまいちだな」
「伊達にバーサークしてねえってことか。思考ごと停止させるはずの弾なんだが」
 二人の弾丸を浴びた少女はと言えば、頭部と脚にそれぞれ被弾し流血しているにも関わらずその血を手にとって恍惚としていた。
「すごい……すっごく、痛い……すごい……」
「いいなぁ! あたしも愛して神様! もっと痛いのがいい!」
「いっぱい愛し合おうね神様!!」
 仲間の傷を見て、まだ攻撃を受けていない少女達が興奮し一斉に襲いかかってくる。
「一気に大勢を相手するのは分が悪い、鎮静かますついでに囮になるわ」
「こっちはなるべく一撃で確殺していく。囲まれないようにしろよ」
「速さでは負ける気しねえけど――な!」
 ヴィクティムが地を蹴り空を舞えば、天翔る手段を持たない少女達は見上げて手を伸ばすばかり。
(今度こそ『停めて』やるよ)
 愛と称して殺し合わずにはいられない身体も心も、確実に全て――再び放たれた『凍戦』の弾丸は無心に手を伸ばす少女達を次々と捉え、彼が翔び去った後には不思議そうに空を見上げ続ける彼女達の姿があった。
 思考ごと動きを止めた彼女達は、もはや動かぬ的である。
 無駄なく、素早く、抵抗もさせない――匡の弾丸は、時間をかけず余計な痛みを感じさせないせめてもの慈悲でもあった。

 「神様」を求める声も、怪我を喜ぶ歓声も少しずつ少なくなり、最後の一人の大きな目がぼんやりとこちらを見るのと視線が合う。
「……次はちゃんとお前たちを救い上げてくれる手に、会えるといいな」
 手向けのように送る言葉と共に、その眉間を撃ち抜いた。

苦戦 🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

レン・トリチルヒスト
……いや、ターゲットがガキだからなんだよとは思ってたけど……なんだろ(敵さんを見て)
……愛とか、殺されて喜ぶとか……なんというか……俺にはよく分からん思考回路というか……だって愛で腹は膨れねえし死ぬのって普通嫌じゃね?

うん、俺が言える最大限の言葉で言うなら……変。アンタらって変なやつだな?

まあ、そんな変な奴らでも徹底的にやれってオーダーなんで……肉食いちぎられる前に【狐火ナイフ】で【急所突き】したりして殺りますかね。それでも耐久力うんぬんで無理そうなら【傷口を抉る】なりナイフに纏った狐火で燃やすなりするけど……(【焼却】使用)

多分俺、最後まで「変なやつらだなぁ」って思いながら戦ってると思う……いや、ちゃんと殺ることには変わりないけど……カワイソーとか微塵も思わねえけど解体してて楽しいかって言われると……なんか、変(首を傾げながら
ターゲット本人に殺すことを喜ばれるとか初めてだからか……?



●歓喜の死
 レン・トリチルヒスト(裂き狐・f40054)にとって、少女達は如何とも形容しがたい存在だった。
「神様! 愛し合おうよ神様!」
「神様の身体を分け合うと、皆で愛し合えるんだって!」
 彼女達の言っていることは、一言たりとも理解できない。
 グリモア猟兵から敵が子供であると聞かされたときは、だからなんだと思う程度には気にも留めなかった。愛情がどうとか、憐れな生前だとか、撃破すべきターゲットであるならそんなものに一切の同情は覚えない。
 しかし、彼女達は笑って愛を語る。戦う相手であるとわかっていて、愛し合おうと誘ってくる。
 戦うことを『愛し合う』と表現しているのかもしれないが、少なくともそれはレンが知識として見聞きした『愛』とはかけ離れている。
「…………うん。俺が言える最大限の言葉で言うなら……変。アンタらって変なやつだな?」
 『愛』を深く理解しているつもりもないが、好意的な感情なのであろうという理解はある。好意があるなら傷つけたいとは思わないはずだし、好意を持つ相手に殺されたいとは思わないはずだ。しかし、少女達は変だと言われても表情ひとつ変えない。
「言葉じゃわからないよ? 愛してくれるなら痛くしてよ神様」
「死んじゃうくらい痛いのがいいな。大丈夫だよ、あたし達もちゃんと愛してあげるからね」
 一体何が大丈夫なのか、何を心配されたのか全くわからない。その思考回路を、何一つ理解できない。
(まあ、徹底的にやれってオーダーなんで……その通りにやるまでだけど)
 襲いかかる少女達を、本能に近い勘で躱す。腰を低く落とした体勢からその刃に狐火を纏わせたナイフを呼び出すと、少女達の上から土砂降りの雨のごとく浴びせた。
 その火の雨は、降り注ぐ雨でありながら殺すための雨でもある。燃える切っ先が確実に人体の急所を貫けば、彼女達はレンの元へ辿り着く前に地へ倒れる。
「あ……ああ……!」
 刃を突き立てられる痛み。血を流す傷口から焼かれていく痛み。
 例えゾンビ化していようと、全く痛みがないということは無い……と思われるのだが。
「す、ごい……痛い……あはは、痛い、熱いよ! |ちゃんと痛い《・・・・・・》!」
「神様、すごいんだ! こんなに愛してくれてるんだ!!」
「もっと、もっと愛してよ! 愛させてよ神様!」
 彼女達は確かに痛みを感じながら、同時にその痛みを愛だと感じているのだ。もちろんレンにそんな気は全く無い。
 あらゆる殺意を一方的に愛情として受け取り、自身も愛情として殺意を向ける。
 ――それが、レンにはやはり理解できない。
(カワイソーとか微塵も思わねえけど……解体してて楽しいか、って言われると……)
 好ましいとも、汚らわしいとも違う、『変』なのだ。
 とどめを刺しながら首を傾げてしまうほどには、わからないのだ。

 多分、初めてだったから、かもしれない。
 依頼人でも、軍の上司でもない、ターゲット本人に。
 殺すまさにその瞬間――感謝でも憎悪でも無く、目を輝かせて歓喜の表情を向けられるのが。

 ――『島原一揆軍』として城門を守っていた少女達は、もういない。
 目指すは魔空原城、天守閣。その最上へ。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『軍神『上杉謙信』』

POW   :    毘沙門刀連斬
【12本の『毘沙門刀』】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
SPD   :    毘沙門刀車懸かり
対象の攻撃を軽減する【回転する12本の『毘沙門刀』】に変身しつつ、【敵の弱点に応じた属性の『毘沙門刀』】で攻撃する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
WIZ   :    毘沙門刀天変地異
「属性」と「自然現象」を合成した現象を発動する。氷の津波、炎の竜巻など。制御が難しく暴走しやすい。

イラスト:色

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●『軍神』なりし毘沙門天として
 ――上杉謙信は猟書家である。
 猟兵達が猟書家の存在を知る以前からサムライエンパイアにいたが、この世界ではオブリビオン・フォーミュラ織田信長の元であくまで『魔軍将』として、『軍神』と称されたその力を振るっていた。
 しかしその『軍神』も、信長と猟兵が戦った『エンパイアウォー』にて、猟書家が猟書家として動き始めるより前に打倒された――はずであった。

(……これはオブリビオンとしての蘇生ではない。自我は私のものだが、私が『私』として蘇ることは有り得なかった筈)
 意識が覚醒してすぐ、謙信は己の違和感に気付く。
 外見は記憶と寸分違わないが、『この肉体』に何か異質な力が備わっている。
「魔軍将『軍神』上杉謙信……ということにしておきますか、この場は。貴方が猟書家である事実は、私には些細なことですので」
「そういう貴殿はオウガ・フォーミュラであろう。これはどういう……」
 ――違う。
 謙信の目の前にいるクルセイダーは、姿も声もクルセイダーではあるが『中身』が違う。
 まるで憑装でもしたかのような。
「……得心がいった。念のため確認しておくが、|そなた《・・・》は『安倍晴明を憑装したクルセイダー』という認識で相違ないか」
「大方、それで問題ないかと。ちなみにクルセイダーはもう死にましたが……どうされますか」
「どう、とは」
 微塵も表情を変えないまま視線を返す謙信に、晴明に肉体を乗っ取られたクルセイダー――『晴明クルセイダー』は、本人であれば決してしない酷薄な笑みを浮かべる。
「殊勝に主の仇でも討ちますか。それとも」
「この肉体はそなたの仕業であろう、安倍晴明。『オブリビオンの骸』を|屍人《ゾンビ》として蘇らせた」
「いかにも。この『魔空原城』は、間もなく猟兵と戦闘になりますゆえ」
「ならば私は『軍神』の名に相応しく在るまで。それで互いに異存はあるまい」
 それ以上の議論は不要と、謙信は一礼して『晴明クルセイダー』の元から下がった。

(安倍晴明……クルセイダーの肉体を奪ったか)
 晴明の術により蘇った謙信の身も、彼に抗う術を持たない。
 何より、この城は『城主』が『|クルセイダー《天草四郎時貞》』でなければいけない。であればこそ、晴明も利用価値のひとつとして認めたのだろう。
(猟書家でないあの男が、今後もオウガ・フォーミュラとして動く理由はない……)
「――……来たか」
 もう城門の兵を破ってきたのか、猟兵の気配が近付く。

「流石はグリモアの予知を得た者達ということか。なれば私も一切の油断はすまい」

===============
 第2章のプレイング募集は【この断章投稿後~21日25:00頃】とします。
 トドメ狙いなどの参考になさってください。
 また、期間内に成功度を達成できなかった場合は追加でサポートを採用致します。
 (執筆までに間に合えばプレイングの送信も可能です)
 オーバーロードプレイングも可能ですが、執筆までお時間を頂戴する可能性があります。ご了承ください。

 かつてのサムライエンパイアでの戦争『エンパイアウォー』で猟兵と対峙した『軍神』上杉謙信が、ゾンビ魔軍将として再び立ちはだかります。
 場所は『魔空原城』の城内、天守閣前の石垣に囲まれた階段状の通路。通路の終わり(階段の最上段)に謙信が待ち受けています。
 屋外なので天井は気にしなくていいですが、それは相手も同じです。
 先制攻撃は行いませんが、ゾンビ化オブリビオンとしての優れた耐久力を持つ上に、相手によって属性を変える毘沙門刀や天変地異などによる攻撃は非常に強力です。
 上杉謙信に勝利すると、『晴明クルセイダー』の待つ『魔空原城』の最奥へ向かうことが可能になります。

 第2章のプレイングボーナスは【敵のユーベルコードへの対処法を編み出す】ことです。
 ご参加お待ちしてます。
月隠・三日月
○☆
やれ、私としては敵には油断していてもらいたいんだけどね。そうもいかないか。

あの12本の毘沙門刀が上杉謙信の攻撃の要かな。あの刀を多少なりとも壊せば攻撃が弱まるかもしれない。それで仲間が動きやすくなれば御の字だ。
毘沙門刀での攻撃を妖刀で受け止めつつ、【紅椿一輪】で毘沙門刀の切断を試みよう。12本の刀相手だ、妖刀の力で【瞬間思考力】を上げて対抗したいけど、怪我は避けられないか。最低でも右手と両脚の負傷は避けたいね、戦えなくなると拙い。

紅椿一輪は妖刀が触れたモノを断つ【呪詛】……とはいえ、あの毘沙門刀相手にどこまで効くかな。まあ、呪いというのは蓄積するものだ。一度でダメなら二度三度と繰り返そう。


冴島・類
○☆

いかに強敵であろうと
ここを通り、晴明を倒さねばならぬ
貴方も術に従わねばならない身…
なのかもしれませんけど
骸の海へお帰りを

手数の多さ、そのひとつずつの強力さを考えれば
無策で突っ込めば数本見切ったとしても
全ては難しい
ならば、共に駆ける瓜江に枯れ尾花託し
自身は黒曜の短刀を手に駆け

瓜江の薙ぎ払いで刀の軌道弾き
きれぬ分は、見切り致命傷は避け
更に、真の姿に転じ放つ炎で謙信の体の動きを僅かでも縛りたい

速さや、数多い斬撃のひとつずつが強力
それが厄介ならば
こちらも幾重にも、手を鈍らせる策を

掻い潜る隙を見出したなら…
懐へ踏み込み、黒曜で喉元を斬る

貴方は強い
されど、意にそぐうわけでない戦いでは
鋭さは増さないかと



●仰ぎ見るは『軍神』
 駆け上がる石段の先。
 最上段には仁王の如く立ちはだかる『軍神』が待ち構えており、避けては通れそうにない。
 『軍神』――上杉謙信は「一切の油断はすまい」と言った。彼の周囲に浮かび切っ先をこちらに向けている12本の毘沙門刀からも、この場を支配する殺気からも、その言葉が本気であることが窺える。
「やれ、私としては敵には油断していてもらいたいんだけどね。そうもいかないか」
「いかに強敵であろうとここを通り、僕達は晴明を倒さねばならぬ」
 見上げる月隠・三日月(黄昏の猟兵・f01960)と冴島・類(公孫樹・f13398)が視界に捉えるのは、敵の攻撃の要であろう毘沙門刀。こちらにとっても、あれを攻略せねば攻撃を届かせることは難しいだろう。
「あの刀、多少なりとも威力を落とせないか試してみよう。うまくいけばあなたも動きやすくなるだろう」
「では、僕の方でも軌道を弾くようにしよう。策は幾重にもあった方がいい」
 三日月と類が互いに目配せして頷くと、三日月は妖刀を抜き、類は絡繰り人形の『瓜江』に短刀の『枯れ尾花』を託して繰り出しながら自身も黒曜のナイフを手にする。
「同時に来るか。しかしこちらの毘沙門刀は12本。加えて――」
 炎の刀を三日月が受け止め、雷の刀を『瓜江』が体当たりと共に短刀で弾く。返す動きで氷の刀を弾けば三日月が叩き落とし、そこから斬り上げる動きで紅椿の花を落とすようにユーベルコードを発すれば風の刀がひび割れて落ちていく。
 しかし、それでも足らない。毘沙門刀それ自体の物量だけでなく、地理的な不利だ。
「|私を頭上に仰ぎ見る《・・・・・・・・・》とは、こういうことだ」
 闇の刀が踊れば他の刀を隠し、隠された他の刀が一斉に降り注ぐ。最大本数の最大火力での直撃は避けられたが、三日月は右腕と両脚を庇おうと伏せた結果背中や左腕を、類も同様の傷を刻まれた。
「利き腕と脚は守ったか」
「無傷で済むとは思ってなかったが、戦えなくなるのは困るんでね……」
 三日月の無傷の右腕に感心したような謙信。しかし呪いや毒の刀も含まれていたのか、三日月には左腕の傷口から蝕まれる感覚がある。最早一刻の猶予もない。
(呪いの刀を使うなら、こっちも呪詛を蓄積させるだけだ)
 妖刀を握る手に力を込め、構える。見上げる謙信は微動だにせず仁王立ちのままだ。
「貴方が強いのは、わかっていたことです。斬撃ひとつをとっても決して侮れぬと」
 類の頬の罅から青い呪炎が噴き出す。やがて呪炎を纏う姿へと変じた彼が真っ直ぐ見上げると、謙信も次の毘沙門刀の用意へと入った。
「されど、貴方も術に従わねばならない身……意にそぐうわけでない戦いでは、これ以上鋭さは増さないかと」
 体勢が変わるその刹那。炎と同じ青い目を見開くと、類は地獄の炎を浴びせた。その炎が謙信を縛ると、間を置かず三日月は残った毘沙門刀を叩き斬る。
「類さん!」
「骸の海へ、お帰りを」
 毘沙門刀を退けられ、懐深くまで潜り込んだ類が黒曜のナイフを逆手に握る。呪殺の刃をその喉笛へ突き立てれば、彼の僧衣がしとどに赤く濡れた。
「……っ!!」
 喉を切られては声も出せない。膝をつき倒れる謙信の脇へ駆け上がると、二人はそのまま天守閣を目指す。
 このサムライエンパイアを、今度こそオブリビオンから救うため。
 安倍晴明の企みを砕くため。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

蛇塚・レモン

所持技能有効活用

あの毘沙門刀がそれぞれ属性を有してるんだっけ
それって組み合わせ次第で災害起こし放題ってことだよね……っ!

でもこっちも負けないっ!
お願い蛇神様、あたいと一緒に踊って……!

念動力で空と飛び、周囲に念動結界を纏って防御
気配察知・第六感、幸運も駆使して
鏡盾で受け流す等で全力で危険回避!

更にユーベルコード発動
黄金霊波動による攻撃軽減効果を得てから
上空から蛇腹剣を振るいまくって衝撃波の乱れ撃ち
衝撃波自体に火水岩風雷闇草毒霊呪斬等の様々な属性を付与し
謙信が起こした現象ごと敵を破壊してゆくよっ!

ピンチになったら真の姿を晒して
天候操作からの青天の霹靂で感電させ
爆炎衝撃波で広範囲に焼き斬るよっ!



●軍神と蛇神
 蛇塚・レモン(白き蛇神憑きのシャーマンクイーン・f05152)が駆け上がった先には、僧衣の一部を赤く染めた上杉謙信が立っていた。
 その周囲には、戦闘態勢にある毘沙門刀が12本。主を守るように交差しながら、恐るべき刀達は滅ぼすべき敵を待っていた。
(あの毘沙門刀がそれぞれ属性を有してるんだっけ。それって組み合わせ次第で災害起こし放題ってことだよね……っ!)
 レモンは場を支配する殺意に細い喉を鳴らす。あれを突破することは容易ではないだろう。ゾンビオブリビオンとして強化されているのなら尚更。しかし、この『軍神』の突破なくしてこの先のクルセイダー到達はあり得ない。
 ならば――持てる全力で、撃破あるのみ!
(お願い蛇神様、あたいと一緒に踊って……!)
 宿る白蛇神に祈ると、結界を身に纏って空を飛ぶ。地形の不利はこれで消滅したはずだ。
 更に祈りはユーベルコードとなってレモンの形を変えてゆく。その背には白蛇オロチヒメの姿を、自身は神降ろしの巫女として神々しく輝く黄金の霊波動を纏っていた。
「上杉謙信、覚悟!」
 蛇腹剣をひと振りする度、衝撃波が飛ぶ。
 しかし、対する謙信も黙って地形の有利を手放しはしない。
「飛天のごとき舞姿。その美しさは穢れた世にあってこそ」
 相手が空を飛ぶのなら、雷はその上の天より毘沙門刀の一振へ収束する。レモンを射落とさんとする雷撃を、彼女は紙一重で回避し、鏡盾も使って直撃を避けていく。
「この程度、負けないんだからっ!」
 踊るように身を捻りレモンが振り下ろした蛇腹剣。謙信がこれを別の毘沙門刀で受け止めると、蛇腹剣はどれほど振り上げてもだらりと垂れ下がるばかりだった。
「この刀は重力属性……飛天には重かろう」
 更なる毘沙門刀がレモンを狙っている。このままでは受け止める術はないだろう。
 ――『このまま』では。
「あたいは飛天なんかじゃない……これが! あたいの真の姿!!」
 レモンは旭日の黄金竜神の姿を露にすると、謙信と同じかそれ以上の稲妻の雨を降らせる。謙信も風や岩の刃で稲妻の嵐を切断しようと試みるが、趨勢はやがて五分から謙信が押され始める。
「はああああああっ!!!」
 最後にひと押し、レモンが稲妻の嵐で押し込むと、謙信が嵐に呑み込まれる。嵐の中にあってなおそれを破らんと抵抗を続ける謙信だったが、ついに最後の毘沙門刀が砕けると、彼は稲妻に打ち砕かれるのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

六島・風音(サポート)
ガレオノイドのスターライダーです。
スピードなら誰にも負けません。

基本的に人の話を聞かず、スピード勝負に持ち込みます。
そんなことより駆けっこです。
普通に駆けるか、天使核ロケットエンジン搭載の宇宙バイクで駆けるか、ガレオン船形態で駆けるかは状況によります。

ユーベルコードは使えそうなものはどれでも使用し、多少の怪我は厭わず積極的に行動します。
他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。また、例え依頼の成功のためでも、公序良俗に反する行動はしません。

あとはおまかせ。よろしくおねがいします!



●戦場を駆ける
「かけっこしたいんですよね? かけっこしましょう!」
 段上で膝を付いている上杉謙信は「かけっこ」のことなど一言も言及していない。しかし六島・風音(スピードなら誰にも負けません・f34152)は基本的に人の話を聞かない。立ちはだかる誰かがいるなら|かけっこで勝つ《スピード勝負で置き去りにする》だけの話だ。
 石垣に挟まれた階段の立地は足で駆け上がるにはあまりに不利で、ガレオン船形態で駆けるにはやはり小回りが利かず不利なので、ここまで天使核ロケットエンジン搭載の宇宙バイクで強引に駆け上がってきた風音である。
「駆け比べか、いいだろう。敗北の代償にその命を貰い受けるという条件で受けようではないか」
「かけっこはかけっこですよ? 私はかけっこでは負けませんので!」
 意外にもかけっこ勝負を了承した謙信は、その順路を指定する。スタートとゴールが決まらなければ勝負にならないので、風音はこの時だけは真剣に耳を傾けていた。この天守閣前の階段を先に指定回数往復できた者の勝利らしい。
「では早速かけっこしましょう! よーい……どんっ!」
 言うが早いか、全速力でバイクを発進させる風音。階段の段差などものともせず、タイヤが衝撃を吸収しながら風を切っていく。謙信が追い付く様子は――
「おおっ!?」
 毘沙門刀が風音の頬を掠める。人型の謙信の姿は無く、12本の毘沙門刀に変身し風音の行く手を阻む。風音のユーベルコードにより刀が直接彼女を攻撃することはないが、重力属性の刀は風音のバイクを強制的に地へ縛り付ける。
『その俊足も、枷が付いては満足に走れまい』
「ずるいですよ! でもこれくらい、私のムゼカマシンなら――!」
 泥沼に捕まるように鈍くなるマシンを、ロケットエンジンを全開にして再加速させる。爆発的な火力は重力すら振り切って、スターライダーの名のままにゴールラインをぶち抜いていく!
「このままぶっちぎっちゃいますよー!!」
 直接攻撃ができない毘沙門刀を速さに任せて振り切ると、彼にとどめを刺すこともなく風音は駆け抜けていく。
 相手が猟書家であれ何であれ、彼女は「かけっこ」以外に興味も意味も無いのだから。

成功 🔵​🔵​🔴​

木霊・ウタ
屍人とされ晴明の手駒にされちまうとは
ちょいと同情するな
海へ還してやるぜ

戦闘
獄炎纏う焔摩天を振るい
毘沙門刀を薙ぎ払う
焔摩天 対 毘沙門天ってか

数は多いけど
刀身から爆炎を噴出させて
剣速を上げて十二本を撃ち払う

そうは言っても謙信の刀だ
何本かには斬られたり突かれちまうこともあるかも

ああ狙い通りだ
傷口から吹き出す地獄の炎が毘沙門刀を炎に包む

そして熾

刀を操って他刀へ攻撃させる
抵抗されるかもしんないけど
十二本の連携に隙が生じる

轟々と焔が燃え盛る
物質化で瞬時に怪我を補いながら
更に剣速が上がり
朱を空に描きながら残りの剣を薙ぎ払う

再び熾
よそ見してるからだ

十二本を互いに攻撃し合わせたり
謙信を襲わせたりしてる間に
一気に間合を詰め
踏み込みざま炎の刃で謙信を両断
紅蓮で灰に還す

事後
鎮魂の調べ
今度こそ海で静かな眠りを



●焔摩天と毘沙門天
 木霊・ウタ(地獄が歌うは希望・f03893)が上杉謙信の元へ辿り着いたとき、彼はこちらへ背を向け天守閣を見上げていた。
 しかし、その背へすぐに斬りかかる気になれない程度には、彼の纏う気配に一切の隙が無い。無策で挑めば――否。万全の状態で挑んでも無事では済まないだろうと、ウタの猟兵としての経験が告げていた。
「……屍人とされ晴明の手駒にされちまうとは。ちょいと同情するな」
「猟兵の同情を買うとは、『軍神』も大層落ちたものだ」
 ウタの僅かばかりの同情に、謙信が振り返る。
 その僧衣は自身の血で赤く染まりながらも、その眼光は些かも曇ることなくウタを射抜いていた。

 ――曇りなき眼に同情は不要。
 必要なのは全力での撃破のみ。

「かかってきな。迷わず海へ還してやるぜ」
 巨大剣『焔摩天』を振るえば、纏われた地獄の炎が軌跡を残す。対する謙信も複数の毘沙門刀を繰り、焔摩天を弾く。
「質量だけで我が毘沙門刀を破れると思うか!」
 炎を打ち消すほどの吹雪を纏った刀が立て続けに焔摩天を襲うと、焔摩天の炎が弱まりウタも階段を数段押し返される。それだけでなく、素早い連撃がウタを直接襲った。
「そこまであんたをナメてないぜ!」
 傷を負いながらも、地獄の爆炎の火力を上げて吹雪を打ち破るウタ。噴出させた炎を纏って毘沙門刀を振り払うと、彼は不敵に笑んだ。
「あんた相手に無傷で済むとはハナから思ってない……そしてそれこそ、俺の狙い通りだ」
 切り裂かれた右半身から、血が流れると共に地獄の炎が噴き出す。灼熱の獄炎は、ウタを斬り付けた毘沙門刀をも包み込んだ。
 そして。
「エンマヤ・ソワカ!」
 ユーベルコード『熾』――ウタの獄炎に包まれた刀は彼の制御下に入り、毘沙門刀同士での斬り合いが始まったのだ。
「毘沙門刀を奪うか。見事な策であるが……」
 謙信が口許で二本の指を立てると、新たに12本の毘沙門刀が生まれる。風雪と呪詛の属性を宿した毘沙門刀は、更にウタを傷つける。
 その傷から更に炎が生まれ、呪詛に蝕まれながらもウタは謙信の毘沙門刀を奪っていく。戦場はやがて、地獄の炎と呪詛の風雪が乱れ飛ぶ天変地異の嵐と化していった。
「その身に刻まれた呪詛も浅くはあるまい」
「そっちこそ、刀を無限には増やせないだろ……!」
 この膠着状態を長くは続けられない。どちらかが隙を見せた瞬間が決着の時だ。
 そして、その瞬間は待っていても訪れることはない――ならば。
「はああぁ!」
 刀を操る火力を強め、呪詛の刀をいくらか破壊する。刀が減れば間合いに幾許かの隙が生まれた。
 謙信のユーベルコードによって新たに刀が生み出されるまでの間に、ウタは焔摩天を手に間合いを詰める。
「これで、終わりだ――上杉謙信!」
 裂帛の気合いと共に、謙信が動き出す前に巨大剣で斬り付ける。
 振り下ろされた質量は、上杉謙信を脳天から両断し――その切断された傷口から空気へと溶かして、彼の形を失わせた。
 最期の瞬間、『軍神』と呼ばれた男の目蓋は静かに閉じられ――何も言い残すことなく、男は消えた。

 誇りと共に散った男へ、せめてもの手向けに。
 ウタは骸の海での静かな眠りを願って、鎮魂の調べを送っていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『憑装猟書家『晴明クルセイダー』』

POW   :    十字槍「人間無骨」
【十字型の槍】が命中した対象に対し、高威力高命中の【体内の骨を溶かす光線】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
SPD   :    憑装侵略蔵書「ぱらいそ預言書」
【預言書に書かれた未来の記述を読むことで】対象の攻撃を予想し、回避する。
WIZ   :    『魔軍転生』秀吉装
レベル×5体の、小型の戦闘用【豊臣秀吉(フェンフェンだけで意思疎通可)】を召喚し戦わせる。程々の強さを持つが、一撃で消滅する。

イラスト:kawa

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●未熟を嘲う者
 魔空原城。天守閣の最奥に、美しき『ぱらいそ礼拝堂』がある。
 礼拝堂には信者が祈りを捧げる席が並び、その先には彼らの神を祀る美しき祭壇がある。
 祭壇の後方からは硝子窓を通して日の光が降り注ぎ、それが後光となって神の像を真実の神として照らし出していたのだ。

 この祭壇で、幕府の転覆を宣言していたのが『クルセイダー』だった。
 それこそが『ぱらいそ預言書』に記された預言であると。己こそはその書に選ばれた『クルセイダー』であると。
 その為にこそ、天草四郎時貞は生き延びたのだと。

「私の憑装を試み、エンパイアを転覆に導かんとした蛮勇は見事でございましたよ、|クルセイダー《天草四郎時貞》。……もっとも、『ぱらいそ預言書』は所詮ただの侵略蔵書。貴方の思い描いていたような代物ではありませぬが」
 関わらなければ、『ただグレイズモンキーの血を引いただけの人間』として平凡に一生を終えられたものを。半端に宿命など見出してしまったが為に、斯様に惨めで呆気ない最期を迎えてしまうとは。あまりに憐れとしか言いようが無い。
 この器。この能力。この計画。このまま朽ちさせてしまうのは些か惜しいと思える程度には、この世界で安倍晴明が興味を得たものだった。
「ですから……この肉体とユーベルコードにて、これより私がその望みを叶えてご覧に入れましょう。このエンパイア全てを、屍人とゾンビで満たす。私にとっては愉快で――貴方がたにとっては、吐き気を催す地獄でありましょう? 猟兵」
 辿り着いた猟兵へ背を向けていた金髪の少年が振り返れば、玻璃の瞳は愉悦の笑みを浮かべていた。
 アリスラビリンスで本来の彼に出会ったことのある猟兵なら、明らかな違和感を覚えたことだろう。そしてその違和感の正体は、彼の傍らに浮かぶ安倍晴明の霊体であることも明らかだ。
「この肉体の主へ呼びかけよう、などという愚行は望まれますな。天草四郎時貞の意識は既に死にました。
 代わりに私が彼の望みを叶えるのですから、何ら支障はありますまい」
 『クルセイダー』ではなくなった、『晴明クルセイダー』の手に握られていた十字槍がゆらりと穂先を揺らすと、猟兵へ向けてゆっくりと構えられた。

 骸を弄ぶ陰陽師を。己が愉悦のために滅びを望む破滅者を。
 ――今こそ討ち滅ぼせ。

===============
 第3章のプレイング募集は【この断章投稿後~23日25:00頃】とします。
 トドメ狙いなどの参考になさってください。
 また、期間内に成功度を達成できなかった場合は追加でサポートを採用致します。
 (執筆までに間に合えばプレイングの送信も可能です)
 オーバーロードプレイングも可能ですが、執筆までお時間を頂戴する可能性があります。ご了承ください。

 かつてのサムライエンパイアでの戦争『エンパイアウォー』で猟兵と対峙した陰陽師にして魔軍将『安倍晴明』が、オウガ・フォーミュラ『クルセイダー』の肉体を乗っ取り『晴明クルセイダー』となりました。
 ここでは『晴明クルセイダー』との決戦となります。
 場所は『魔空原城』、天守閣最奥『ぱらいそ礼拝堂』内(屋内戦)です。
 先制攻撃は行いませんが、クルセイダーの肉体と霊体の晴明による「2回攻撃(1回の行動につき合計2回、フラグメントのユーベルコードを好きな組み合わせで使用できます)」を行います。
 なお、肉体の意識はほぼ晴明に乗っ取られているため、元のクルセイダー(天草四郎時貞)への呼びかけはほぼ成功しないでしょう(プレイング全てを使って呼びかけても、全没&マスタリングになる可能性もあります)

 第3章のプレイングボーナスは【「2回攻撃」を打ち破る方法を見出す】ことです。
 ご参加お待ちしてます。
冴島・類
○☆

愉悦の笑みを浮かべるのはいささか早計では?
逆撫でするような晴明の言葉には眉を動かさず
お言葉を借りるなら…その企みは
また、猟兵達にここで止められるのですから
『支障はありますまい』?と
決して舐めているわけでなく…
単に、覚悟しているだけ

2回行動に対し何を選択されても反応できるよう
真の姿解放し、速度や力底上げ

瓜江と共に、槍の狙いの直撃を散らすため
残像用い的を散らしつつ踏み込み
見切りで槍の動きを注視
操る腕にむけ薙ぎ払い放ち、軌道逸らしたい

預言書への対策としては
呪炎を本に放ち燃やす…と見せかけ
狙いは、神経蝕み動き縛り視線を向けさせないこと
この一手が後続の猟兵への一助になれば

この地を地獄になど、させない


月隠・三日月
清明クルセイダー、すがすがしい程にオブリビオンらしい輩だね。負けるわけにはいかないな。

預言書でこちらの攻撃は筒抜け。搦手は不利だ。正面切って戦うしかないかな。
真の姿を解放したうえで、【妖刀侵食解放・六重圧縮】で思考速度を加速させて挑もう。出し惜しみしてはいられないからね。

あの槍の攻撃は拙い。6倍にした能力で何とか見切って躱したいね。あとは、真の姿になると多少存在が揺らぐから(【残像】)少しは攻撃を避けやすくなるかな。
秀吉の召喚は……あの数全てには対抗できないな。いっそ無視してボスに攻撃しようか。邪魔はされるだろうけれど、【斬撃波】を交えつつ攻撃しつづければ、一太刀くらいは届くのではないかな。



●地獄を防ぐ炎と刃
 この世界を屍人とゾンビで満たすと、挑発するように笑みを浮かべる『晴明クルセイダー』。
 一片の同情の余地も無いどころか、打ち倒す以外の選択を考えられない相手だった。
「晴明クルセイダー、すがすがしい程にオブリビオンらしい輩だね」
「はい。しかし……愉悦の笑みを浮かべるのはいささか早計では?」
 月隠・三日月(黄昏の猟兵・f01960)の反応に笑みを深くした『晴明クルセイダー』だったが、冴島・類(公孫樹・f13398)が問うと首を傾げた。
「おや。早計とは……何故でしょう?」
「お言葉を借りるなら……その企みは|また《・・》、猟兵達にここで止められるのですから。『支障はありますまい』?」
 『晴明クルセイダー』から目を離すことなく、彼の言葉を返した類。虚勢ではなく覚悟の伴った言葉であることは態度から明らかだが、『晴明クルセイダー』はついに含み笑いを浮かべた。
「フフ……それこそ、言葉を返しましょう。その覚悟と自信こそ、『早計では?』」
 どうやら猟兵が強く覚悟する度、『晴明』の撃破を誓う度、彼は愉悦を覚えるようだ。
「こいつ……何を言っても楽しませるだけだ」
「有言実行あるのみ、ですね」
 三日月と類が察すると、二人は共に真の姿を解放する。三日月は常に姿が揺らぐようになり、類は白い肌に刻まれた罅から呪炎が噴く形へと。
「搦め手は不利だ、特にあの預言書には。私は正面切って戦うしかない」
「こちらも二人です、僕の瓜江もいます。……手は、あります。任せてくれますか」
 此度の戦い、常に同じ戦場にあった二人。いつしか芽生えた小さな信頼は、三日月を確と頷かせた。
「行くぞ!」
 赤く輝きを増して侵蝕を強める妖刀を抜刀し、ユーベルコードで思考と能力を引き上げ斬りかかる三日月。侵蝕による代償はあるが、それを惜しんで出し惜しみはしていられない。
 ここまでしても、「ぱらいそ預言書」には筒抜けてしまうだろう。それでも限界まで速度を上げればあるいは――半ば捨て身の覚悟でもあった三日月の目に、燃える預言書が見えた。

 速度が上がったところで、未来は変わらない。
 ならば余裕を持ってそれを避ければいいだけ。
 この「ぱらいそ預言書」には見たような未来が書かれてはいるが、所詮はそれだけだ。決して『宿命のクルセイダーを選ぶ』ような高尚な物ではない。
 つまりは、『手に取った者は誰でもクルセイダーとなる』のだ。
 ならば、そのように利用すればいいだけのこと。
「おや」
 青い炎が「ぱらいそ預言書」を包む未来の記述がある。そしてその炎は――。

「この世を地獄になど、させない……!」
 類の肉体の罅から噴き出て猛る炎が、『晴明クルセイダー』の「ぱらいそ預言書」を包む。
 その未来を見ていた『晴明クルセイダー』は咄嗟に預言書を引いたが、その書を庇った腕こそが類の真の狙いだ。
 青き呪炎は預言書を狙いながらも届かない。しかし、その途中にある腕を絶えず焼き続け、やがて神経を蝕み動きを阻む。
「貰った!!」
 その隙を逃さず、三日月の妖刀が斬り付ける。袈裟に斬られた『晴明クルセイダー』の手から、「ぱらいそ預言書」がついに落ちた。
「……ほう。確かに預言書の記述とは違わないまま、現実を変えましたか。いえ、そもそも……預言書は初めから『燃えるように見えていた』だけだったのか。いずれにせよ興味深いですが」
 しかし、肉体が深傷を負ったところで今の主導権は霊体側にある。もう片方の腕が動くのであれば、十字槍は主の意を汲み敵を定めた。
「瓜江!」
 三日月を狙うその穂先を、再び類が逸らす。絡繰人形の『瓜江』を繰り、柄にまで踏み込み、腕を薙ぎ払って可能な限り狙いを外す。
 ユーベルコードで能力を上げている三日月は、そこまで助けられて槍の一つ躱せない剣士ではない。しかし十字槍が届かないと見た『晴明クルセイダー』は、最後の一手に「|更なる憑装《・・・・・》」を試みた。
「隠し将『秀吉』、誇り高きグレイズモンキーよ。この『晴明』が剣となり盾となれ」
「フェン!」「フェン、フェン!」
 呼びかけに応じ、大量に召喚される秀吉達。黒い毛玉達は類と三日月へ一斉に集まり『晴明クルセイダー』から遠ざけようとするが、三日月は斬撃波を放ち強引に群れを突破する。
「その身に刻め……|妖刀侵蝕解放・六重圧縮《アロケート・アクセラレート・アベレート》!!」
 赤き一刀が、『晴明クルセイダー』の白衣を切り裂く。
 合わせて二撃、三日月の刃は確かに届いたのだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

鹿村・トーゴ
○☆
暇潰しに屍人遊び?腐り切ってンな外道

UCで全強化
代償の殺戮唆す呪詛も今は奴を殺す糧に
それ位しなきゃ奴には歯が立たねー
あの預言書のせいで手の内は丸見え
素早さ強化活かし予測不意の速さで翻弄
【野生の勘と追跡、視力】で十字槍の切っ先を寸で躱し
投げた手裏剣二枚で挟むか連続撃ち【武器受け、念動力】で槍先を逸らし懐へ接近
→【カウンター】気味に強化された膂力で握り込んだクナイで【串刺し】腹から首へ斬り上げ狙い【暗殺】
ミニ秀吉を物理盾にするなら七葉隠を分割【念動力】も使い力任せに振り回し【投擲】蹴散らす
突破口さえ出来れば【激痛耐性】で凌ぎより多く負傷させる事に集中
木っ端のオレの攻撃も積もれば深手になるはずだ



●降魔の代償
 その目的も、行動も、何一つ信念を感じられなかった。
「暇潰しに屍人遊び? 腐り切ってンな外道」
 鹿村・トーゴ(鄙村の外忍・f14519)は故郷のサムライエンパイアを脅かす猟書家を許すことはないが、百歩譲ってそれが何らかの信念を貫いたものであったなら幾ばくかの何かを感じることはあったかもしれない。
 だが、この『晴明クルセイダー』にそんなものは感じられない。万が一あったとてトーゴには理解できない。愉悦の表情でエンパイアの滅亡を語る外道など、理解したくもない。
「何とでも。私にとってはそれなりに立派な目的ではあるのですが」
「『それなり』でエンパイアを滅ぼされてたまるかよ!」
 妖怪、悪鬼に幽鬼。鹿村の血に憑く古い化生をその身に降ろすと、霊力が血と共に全身を巡り力が漲ってくる。冴え渡る感覚は些細な変化も捉えられる。
 これなら、いける。あの強力な陰陽師――の力を宿した猟書家――であっても、渡り合える。
 まずは手裏剣を次々に投げると、その未来を読み取っていた『晴明クルセイダー』は十字槍を振り回してこれを叩き落とした。そのまま突き込まれる切っ先を紙一重で躱し、更に霊力を込めた念動力で大きくずらす。
 そのまま懐へ潜り込もうとすれば、やはり預言書で察知していたのか大きく跳び退いた。
「それほどの力、何の代償もなしに得られるものではありますまいに。あるいは、敢えて暴走させているのか」
「それ位しなきゃ、木っ端のオレは歯が立たねーんだよ……!」
 トーゴは降魔の代償――殺戮を唆す呪詛に蝕まれていた。目に映る全てを衝動的に殺したくなる呪詛だ。
 常であれば忌むべきその呪詛も、今この時は目の前の敵への武器となる。
「成程。それもまた強さではありましょう……私に勝てるものではありませぬが」
 その言葉の語気は全く変えないまま、再び十字槍が繰り出される。強い筋力を感じさせない肉体からは考えられないほどの強さと速さだ。
 だが、強化を受けているのはトーゴも同じ。己を失いそうになるほどの呪詛に眉をしかめつつ、湧き出る殺意の全てを『晴明クルセイダー』へ叩き付ける。強力な槍の先端を今度は手裏剣二枚で挟み、はたき落とすと、その流れを利用して再び懐へ潜り込んだ。預言書によって回避されないよう、強化された脚力と膂力で一気に詰め寄ったのだ。
「覚悟!」
 再び『晴明クルセイダー』が距離を取る時間を与える前にクナイをその腹に突き立てると、腕力に任せて一気に首まで斬り上げた。
 『晴明クルセイダー』はその首から夥しい赤を噴き出すと、その場へ膝を屈するのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

木霊・ウタ
心情
屍人尽くしなんてイケてないぜ
エンパイアに生きる命と未来を守り抜く
晴明とクルセイダーを海へ還すぜ

戦闘
背中や足の一部を地獄の炎に変え
爆炎の勢いで一気に間合を詰め
獄炎纏う焔摩天を振るう

槍を爆炎の反動で回避したり
大剣で防御

炎の高熱で空気を歪めて
光線を歪曲させる

命中した部位を地獄の炎へと変異させ
炎で光線に抗し喰らう

予言書で
最初の攻撃は避けられちまうかもだけど
空振りの起こす剣風と共に広がる火の粉が視界を遮る

更に大剣か俺の体の火勢を一気に上げて
閃光で目を眩ませる

それじゃせっかくの預言書も読めないよな

そしてフェンフェンとうるさい奴らを
爆炎で刀身を加速した大剣と
やはり炎混じりの剣風とで
まとめて薙ぎ払う

てなカンジで
やることはシンプルだから
敵がどの組み合わせでも対処は簡単だぜ

こんな風に二回攻撃を打ち破ったら
焔摩天を振るう体の部位
背中そして腕と順番に地獄の炎に変えて
爆炎加速で剣速を上げ
更にその炎を焔摩天にも纏わせ強化

荒ぶる炎で槍を融解しながら砕き
炎に包む

紅蓮に抱かれて眠れ

事後
ギターで鎮魂の調べ
海で安らかに 



●焼き尽くす獄炎
 既に白い肌と衣を朱に染められてなお、少年は十文字槍を手放そうとしない。
 肉体は負傷を蓄積させているにも拘わらず、玻璃の瞳に宿る野心は些かも衰えない。
「身体が動く限り諦めるつもりはないか。屍人尽くしなんてイケてないぜ」
 木霊・ウタ(地獄が歌うは希望・f03893)の言葉に、少年の口角が上がる。
「生きている者にとってはそうでしょうとも。そしてこれまでの傷を受けて、尚更確信いたしました……このように深い傷で私を阻止するほど、価値がある世界ならば。やはり奪ってみたいではございませぬか」
 傷付けば、傷付くほど。猟兵が阻めば、阻むほど。この少年に宿った『晴明クルセイダー』の愉悦の心は満たされていくようだった。
「そんなことでしか満たされないなら、ますますお前をこの世界に残しとくわけにはいかないな。
 お前もクルセイダーも骸の海へ還して、エンパイアに生きる命と未来を守り抜く!」
 誓いと共にウタの背に生じ燃え盛る地獄の炎。獄炎が爆ぜて火花を散らし、爆風と共に距離を詰めれば、二人の間合いは槍より近い|焔摩天《巨大剣》のものとなる。
「――という未来はこれ、預言書の通りにて」
 確かに縮めたはずの間合いはその直前に跳び退かれ、槍の間合いを保たれてしまう。着地と同時に攻勢に転じた『晴明クルセイダー』は、抉るように十字槍を繰り出した。
 燃える大剣で叩き落とそうとすれば、その峰に沿うように槍が交差する。この槍による怪我はただの怪我では済まない。『骨』を持つ肉体で受けることは可能な限り避けねば。
 絡め取られそうになりながら一合、二合と撃ち合って。三合、四合と大剣に纏った獄炎を爆ぜさせれば槍の軌道もずれた。
「これならその槍も当たらないだろ!」
「全くもってその通り。当たらぬ槍は如何な業物も棒きれに等しく……」
「悪いな。このまま全部……焼き尽くす!」
 ここまで撃ち合ってこれたのも、本人の槍の技量だけでなく預言書による未来予知もあってのことだろう。
 ならばとウタは腕から獄炎を起こし、目も眩むほどの輝きを『晴明クルセイダー』の視界に浴びせた。
 これで眼が慣れるまでは預言書の字を認識できまい。その間に全身の獄炎を更に燃え上がらせ、ウタ自身も蝕みそうな限界の火勢を得る。
「紅蓮に抱かれて眠れ――」
 振り下ろそうとした大剣。それを握る利き手の付け根に違和感が奔る。
 ――十字槍の穂先が、ウタの胸に突き立っていた。
「……これほどの炎。これほどの灼熱。眼に頼らずとも、熱を辿れば近いものは狙えましょう……如何です?」
 突き立てられた傷から、この身を焼く獄炎とは別の力が働くのを感じる。『骨』を溶かす力だ。
 ならば、こちらは。
「……流石、簡単にはやられてくれないか。だが……燃え尽きろ!!」
 身体の外も内も、地獄の業火を猛らせる。もはや炎そのものとなりながら、ウタは炎を纏った大剣を振り下ろし『晴明クルセイダー』を斬り裂いた。

 ――後に、ウタは回想する。
 主なき『ぱらいそ礼拝堂』で鎮魂を願って奏でたギターの音を。
 二度と再び、彼らがこの世へ戻ることのないよう。

成功 🔵​🔵​🔴​

蛇塚・レモン
オブリビオンとはいえクルセイダーの真っ直ぐさ、あたいは嫌いじゃなかったんだよね……だからこういう悪辣な状況を作った張本人が許せないっ
とっとと消滅させなきゃねっ!?

まず黄金霊波動で念動力全開、空中へ飛翔
オーラ結界と斥力(念動力+衝撃波)で槍を弾き返すよ

でもこれを預言書で予知して、敵はあえて小型秀吉達で襲ってくるかも
だからこちらもオーラ結界と同時にユーベルコード発動っ!

出力全開っ! オーバーロードだよっ!
真の姿のまま蛇神様と妹ライムの御霊と一緒に踊り舞う!
すると幾何学模様を描き複雑に飛翔する1410本の霊光線が
ぱらいそ礼拝堂の隅々まで飛び交う!
(貫通攻撃+呪詛+呪殺弾+範囲攻撃+封印術+乱れ撃ち+スナイパー+弾幕)
霊光線に貫かれた秀吉達は消滅!
閉所空間で満たされる大量の霊光線を敵は回避しきれないはず!
壁や遮蔽物も貫通するからねっ!

そして一発でも命中すればユーベルコードを無効化し不運を招く
その不運で足の小指を椅子にぶつけて悶絶する敵
動けなくなったところを浄化と神罰属性乗せた蛇腹剣で切断だよっ!



●|虚《うろ》なるぱらいそより、
 ステンドグラスや厳かな装飾が所々破壊され、燃やされた形跡がある『ぱらいそ礼拝堂』。これまでの『晴明クルセイダー』との戦闘によるものだろうか。
 蛇塚・レモン(白き蛇神憑きのシャーマンクイーン・f05152)と対峙する『晴明クルセイダー』は、致命傷をいくつも負ったような肉体でいながらまだ立っていた。右手に十字槍を、左手に聖書のような侵略蔵書を抱えたまま。
 ――その姿で立っていられることすら、レモンには腹立たしかった。
「それだけの傷でも平気で立っていられるのは、所詮自分の肉体じゃないから? 殺されても痛くも痒くもないからっ!?」
「いかにも。私はこの肉体と痛覚を共有しておりませぬので。しかし……流石に少し使いにくくはありますが」
「ふざけないでっ!」
 整った顔の玻璃の瞳が、少しだけ見開かれる。
 それは、かつてアリスラビリンスで見えた本人と同じものだ。何せ肉体は本人のものなのだから。
 だが、瞳に込められる感情がまるで違う。『彼』は敵を前にしてあのような、冷めた諦念の眼で見下したりはしなかった。
 何より、『彼』には確たる芯があったのだ。例えそれが安倍晴明とはいえ魔軍将に乗っ取られてしまうほど未熟なものであったとしても、相容れないオブリビオンであったとしても、レモン個人としてその部分は嫌いでは無かったのだ。
 ――それを、最悪な形で。醜悪な形で。この男は戯れに。
「とっとと消滅させてやるからっ!!」
 気の昂ぶりに合わせて黄金のオーラを纏うと、礼拝堂の天井近くまで飛翔する。この距離ならば槍は届くまい。もし投げてきたとしてもオーラで弾き返すことができる。
「結界ですか。それならこのように……」
 『晴明クルセイダー』が胸のロザリオを握ると、黒い毛玉がそこかしこから姿を現す。『クルセイダー』の祖父にして隠し将『豊臣秀吉』だ。
「フェンフェンフェン!」「フェン!」
 余人には全く理解不能な鳴き声に対して、『晴明クルセイダー』がレモンを指差すと秀吉達は一斉に彼女を目指す。壁を登り、柱を登り、尋常でない跳躍力で飛びかかってくるものもいた。
「蛇神様っ! ライムっ! お願い、一緒に踊ってっ!」
 黄金竜神の姿を解放し、蛇神オロチヒメと妹ライムの御霊を呼び出す。
 あちらが霊を憑装させて力を得るのなら、こちらも憑装して戦えばいい。いくつもの戦いを経る中でレモンが学んだ戦い方のひとつだ。
 二つの霊の同時憑装は簡単なことではないだろう。なればこその――|出力全開《オーバーロード》!
「フェン!」「フェンフェン!」
 襲い来る秀吉達の爪が届こうかという刹那。蛇塚ミツオロチ神楽の神楽鈴が鳴り響くと、辺りの空間を埋め尽くさんばかりの光線が満ちた。
 1400を越える霊力の光線が幾何学模様を描いて交錯する礼拝堂内は、厳かな祭壇もステンドグラスも壁も巻き込んで秀吉達を破壊していく。
 当然、これだけの密度であれば『晴明クルセイダー』も無事では済むまい。

「……はて。些か困りました」
 瓦礫と化した『ぱらいそ礼拝堂』。その瓦礫を退かして起き上がったのは、『晴明クルセイダー』だった。
「その身体じゃもう何もできないよねっ!」
「ええ。先ほどの光線……あれはユーベルコードを封じるものでありましたか。預言書を読んでみても効力がないものですから。元より壊れかけの肉体もこれこの通り……」
 預言書で未来を読めなくなった結果、霊光線を避けられず肉体を複数箇所射抜かれたらしい。
 その腕では十字槍も握れず、預言書も読めず、召喚した秀吉達もレモンが滅した。
 この『晴明クルセイダー』にできることは、もはや何も無い。ここでとどめを刺せば、真実彼の野望は断たれるだろう。
「…………」
「とどめを刺されないので? 『とっとと消滅させてやる』のでは?」
 殺されるのは自分だというのに、何でも無いことのように訊ねてくるのが腹が立つ。
 このまま直接手を下しても「唆されたから」やったことになるし、下さなくても「所詮は口だけ」になるのが腹が立つ。そもそも手を下さない選択肢はないのだが。
 この男はもっと、あっけない切っ掛けと後悔に満ちた断末魔で最期を迎えて欲しかった。
 それくらいでないと、あの『彼』があまりに惨めだ。
「……もう、何も喋らないで」
「では、そのように」
 最期まで、この男には何一つ好感を持てない。
 蛇腹剣に浄化と神罰の力を宿すと、レモンはひと思いにその首へ斬り付けたのだった。

 美しい金髪に朱が散る。
 首と分かたれた胴体は、それぞれが末端から黒い霧となって空気へ溶けていく。
「……!」
 一瞬、レモンは物言わぬはずの唇が何かを紡いだように見えた。
 しかし、改めて見ても唇は固く閉ざされている。
 代わりに、首を断った時にはなかった一筋の雫――閉じた目蓋からそれが伝っていたのが、『彼』が完全に消える直前に見えたものだった。

成功 🔵​🔵​🔴​



最終結果:成功

完成日:2023年08月18日


挿絵イラスト