11
闇の救済者戦争⑧〜ボタンを掛け違えたのは

#ダークセイヴァー #闇の救済者戦争 #人類砦 #闇の救済者

タグの編集

 現在は作者のみ編集可能です。
 🔒公式タグは編集できません。

🔒
#ダークセイヴァー
🔒
#闇の救済者戦争
🔒
#人類砦
🔒
#闇の救済者


0




●愚者の丘
 はじめは、“森”のようにも見えた。

 枯れ木――先端の方に申し訳程度の枝葉が引っ付いている、枯れ木が沢山立ち並ぶ、枯れた森。
 けれど、地理地勢を知り尽くしている『闇の救済者』は、そこが森などではなく、ただの小高い丘――荒れた丘陵でしかなかったことを、知っていた。

「あ……、あぁぁ……」

 近づいてみれば、枯れ木だと思ったものは……そう思いたかったものは、『杭』だった。
 そして、その尖った杭の先端の方にあったのは、当然のように枝でも葉でもなくて――。

「グッ……ゲ、ェェ……!」

 屈強な、幾度となく地獄を潜り抜けてきた闇の救済者の戦士が、堪えきれずに嘔吐する。

 男がいた。女がいた。
 老人も、年端のいかぬ幼子もいた。
 杭の先で、痩せた手足をだらんと垂らして。

 まだ鮮明に思い出せる、ついこの間のこと。
 心やさしき客人たちが振舞ってくれた、あたたかな料理――ご馳走を一緒に囲んで。
 心から笑っていたはずの|仲間《少女》たちが、いた。

 そんな光景が、丘を越えて、遥か彼方まで。
 どこまでも、延々と切れ目なく続いていた。

●グリモアベース
 猟兵への案件である以上、良いニュースばかりとはいかないのは当然そうなのだが。

「……お待ち、していました」

 いつになく、顔色が悪い。
 そんなグリモア猟兵、リア・アストロロジーからの依頼は『闇の救済者』への救援。

「今、わたしたちが戦争中のダークセイヴァー第三層では『歓喜のデスギガス』の儀式魔術によって、下層のオブリビオンはその勢力を増して顕現しています。それを、好機ととったのでしょうね……」

 叛逆者どもへ“現実”を、劣等種たる人の身の程を理解らせようとして。
 とある『伯爵』ヴァンパイアの軍勢が『愚者の丘』を作り出そうとしているのだという。

「彼らは、オブリビオン・フォーミュラ『祈りの双子』の決断をどこからか知ったようで」

 全てを鮮血に沈めるその決断に、歓喜した。
 不死なる彼らにとって、死など恐怖の対象であるはずもない。
 その無価値な“未来”が繰り返す破滅だったとして、だから何だというのだ?
 オブリビオンである以上、“無限”の災いとして、何度でも蘇ることが出来るのだから。

「そうして、彼らは今生最後の“死に花”を咲かせようと、して」

 支配していた民衆の、鏖殺を決断した。

 老いも若きも、男も女も、富めるもの貧しいもの、優れたものにも劣ったものにも。
 生まれたばかりの赤子に至るまで区別することなく、平等に、公平に。

 愚者として、見せしめとなる栄誉を。
 そうして、鮮血の濁流が全てを呑み込んだ後には、再び|我らが奴隷《オブリビオン》として、蘇ることを赦そう――と。

「騎士団動員の情報を掴んだ斥候や、助けを求めて駆け込んだ人々の訴えから、『闇の救済者』側でもこれを阻止するべく動き出したようですが……」

 間に合うことも無く、敵うことも無い。
 第四層で尋常の戦となったならまだしも、敵は『歓喜の門』を潜る際に『無限災群の賦与』によって夥しい兵数に増殖してしまっているのだ。
 そして、そもそも『愚者の丘』自体が、彼らの縄張りである、要塞化された大森林から誘き出す“挑発”の一環――策戦であると考えた方が良いのだろう。

「……このままでは、夥しい数の……死体までをも辱めるような、巨大な“愚者の丘”が造られ、闇の救済者も全滅してしまうでしょう。だから、その前に、」

 ヴァンパイアのみで構成される、強力な騎士団。
 職業軍人である『闇に誓いし騎士』たちの苛烈な攻勢から、猟兵は彼らを守り抜かねばならない。

●総力戦
「では、後のことは……」
「ええ、任せておいて。“いつも通り”に」

 人類砦からの出立前、外様ながらも現在人類砦の実質的指揮官である『傭兵』は、副官的立場の『ダンピール』にこの後の動きを確認する。
 二人が目線を走らせたその先では、人類砦に“救援を求めて駆け込んだ村人たち”が、キョロキョロと不安そうに周囲を窺っていた。ここまで来るのに疲労困憊な彼らは、前線への同行を希望しなかった為、共に砦の留守を守ってもらうことになると伝えてあって。

「すまない、すまない……」
「大丈夫です! 安心して、ね? 皆さんの家族も、ちゃんと助けてきますからね!!」

 目があえば俯く彼らを、無骨な銃を背に武装した少女らが、健気にも励まそうとしていたが。

「………ほんとうに、すまない」

 その表情が晴れることは、ついぞなかった。

「………|救援《猟兵》は、来ると思う?」
「知らん。来ようが来まいが、やれるだけのことをやるだけだ」

 表情に隠しきれない憂鬱さを滲ませてダンピールが問えば、傭兵はいつも通り無愛想に答える。

「だが……来なかったら、化けて出てやる」
「あら? 珍しいわね。貴方が冗談なんて」
「………」

 クスリと笑うダンピールに、傭兵は相も変わらず仏頂面したままだったが。
 長い付き合いだから、分かる。
 その経験と立場から“最悪”を考えずにはいられない人だけど、今回の出撃は、どう考えても援軍があることを前提にしたもので。
 敵騎士団が抵抗できない者たちを手にかけるのを防ぐための、囮――時間稼ぎを目的にしたもの。
 これで仮に猟兵が来ないのだとすれば、全くの徒労、何の成果もなく無駄死にに終わる作戦行動だ。

「わたしたちが、“ここ”に居るのは」

 お仕着せの、真っ白なローブを着せられた、『雨降りの聖女』が兵たちに言葉をかけていた。

「……一人でも多くのヴァンパイアを殺すためでは、ありません」

 わたしが、わたしとして。
 あなたが、あなたとして。
 誰のためでもない、いのちを、生きるために。
 それから、一人でも多くの……仲間の、いのちをつなぐために。

「この世界には、わたしたちには、仲間がいます」

 たとえ、永遠の夜へかすかな明かりを灯そうとしたその光が、儚く散ってしまったのだとしても。
 そこに残る灯火を目指して、残り火を拾って。
 脆い心を軋ませながら、一歩、また一歩……と。
 果てなき暗闇の世界――道なき荒野を切り開き、止まらずに歩み続けようとする仲間がいること。

「どうか……それを、忘れないでください」

 聖女は『死なないで』とも、『生きて』とも言わない。そんな願望をいまここで口にしたところで、何の意味もない。今、目の前で耳を傾けてくれている兵たちにも、明日また会える者がどれくらいいるのかは分からない。
 わたし自身が生きて帰って来れるのかさえも、分からないのだから。
 けれど、

「……どうか、どんなことがあっても、最後の瞬間まで、道を探して……あきらめないで、ください」

 貴重な馬、各地転戦する『傭兵団』にとっては生命線となる馬たちが|馬車《ウォーワゴン》とつながれ。
 替えの効かない職人や幼すぎる者たち、一部の守備兵を除いて、人類砦の総兵力が出撃していく。


常闇ノ海月
 下層で予定していたシナリオが、この状況でこうなりました。
 頑張って串刺し大量虐殺を防ぎましょう。常闇ノ海月です。

●達成条件
 場所:小高い丘、ウォーワゴンに拠って戦う『闇の救済者』の陣地周辺で。
 対象:これを打ち砕こうとする『闇に誓いし騎士』たちの苛烈な攻勢から。
 目的:守り抜き、『闇に誓いし騎士』たちの集団戦闘能力を可能な限り喪失させる。

 また、『人類砦』自体にも武具の生産に携わる職人や技術者など、失えば今後に大きなダメージとなる人員、まだ戦えないような子どもたちが残っています。気になることがある方が居られましたら。

●プレイングボーナス
 |闇の救済者《ダークセイヴァー》達と協力して戦う。

●闇に誓いし騎士
 集団敵ですが、本シナリオでは、古代帝国とかとバチバチやりあってた強敵として扱います。
 いつも通りのノリでは、ゴ〇スレ世界で「たかがゴブリンだろ?」って言ってる人みたいな扱いになるかもしれないことを、予めご了承ください。主に周辺に被害が出ます。

 指揮官級の、頭も切れるのが最低4名の予定です。四天王的な。
 配置は……秘密です。

●闇の救済者
 ウォーワゴンとライフルで武装し、フス戦争のフス派みたいな戦術を展開してます。
 但し、ウォーワゴンの防御能力では『闇に誓いし騎士』の突撃を防ぎきることは難しく、心理的な安心感によって恐慌に陥らずに戦えるレベルです。
 銃を撃てるなら少年少女も兵とし動員していますが、崩れ出すと練度の低いその辺から悲惨なことに。

●傭兵
 闇の救済者の指揮官、黒騎士。
 本隊の指揮をとっています。

●雨降りの聖女
 人狼の聖者。本隊に居ます。
『ヘヴンリィ・シルバー・ストーム』相当の|極光《オーロラ》のユーベルコードを使用。

●ダンピール
 留守の人類砦を預かってます、咎人殺し。
 デバフや拘束、拷問などの裏側も担当。

●プレイング受付
 プレイングの受付は断章後に行いますので、しばらくお待ちください。
 少し長めに受付期間をとる、かも。

●他
 勝利条件達成はそこまで難しくありませんが、プレイング次第では助かる相手が増えたりします。
 回復や支援系も活躍しやすいかも。

●参考シナリオ
 闇の救済者戦争⑧〜ハチミツのスープはいかが?
(https://tw6.jp/scenario/show?scenario_id=49249)

 ではでは、皆さまのご来援を心よりお待ちしております。
57




第1章 集団戦 『闇に誓いし騎士』

POW   :    生ける破城鎚
単純で重い【怪物じみた馬の脚力を載せたランスチャージ】の一撃を叩きつける。直撃地点の周辺地形は破壊される。
SPD   :    屠殺旋風
自身の【兜の奥の邪悪なる瞳】が輝く間、【鈍器として振るわれる巨大な突撃槍】の攻撃回数が9倍になる。ただし、味方を1回も攻撃しないと寿命が減る。
WIZ   :    闇の恩寵
全身を【漆黒の霞】で覆い、自身が敵から受けた【負傷】に比例した戦闘力増強と、生命力吸収能力を得る。

イラスト:すねいる

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●このシャツを着させた誰かのせい
「ほっほっほ、よほど焦っておったのか? こうも簡単に、むざむざと“主力”を晒すとはの……或いは、すでに猟兵と合流しておったのかのぅ? それとも、そう見せかけるためあえて強気に出たのかのぅ?」

 有力な『闇の救済者』の一軍が出現したとの報せを受け、町を視界に納める小高い丘に布陣した彼らを見て、『卑劣な老軍師』はその意図を推察する。

「だが、何をしても無駄じゃわい」

 圧殺。あり余る兵力は、全てを圧し潰すことを可能とする。あの陣に何かの罠が仕掛けられていたとして、それで先陣切った騎士たちが全滅したとして、その程度は痛くもかゆくもないのだ、此方は。

「然り然り。そして、愚かなる彼奴等が此処にいると言うことは……」

 追従し、『気障な腰巾着』がスゥと目を細める。
 あえて懸念点があるといえば、予定していた主の『目』と『契約』が此度の戦では及んでいないことくらいだが――聳え立つ『天蓋血脈樹』の威容と、無限の災群と化した戦力は、それを補って余りある。

「細工は流々、後は仕上げを御覧じろってね」
「ふん。相変わらずテメェらしいいい趣味だが……俺は、ああして生意気な目をして歯向かってくる連中をズタズタに引き裂いて、身の程を理解らせてやる方が血がたぎるぜ!」

 反抗的な人間を痛めつけ、犯し、喰らい。
 その心をへし折り、絶望と苦悶に歪ませ、やがて自ら死を乞い願うようになるまで追い詰める――
 いかにも好戦的な『残虐な戦闘狂』はその時を待ちわびているかのように、武者震いをした。

「ふっ。其方も、中々高尚な嗜みで」
「ふぉっふぉ。では……卿らよ、手筈通りにの」
「ええ。光なき世界で、再び見えましょう」
「おお! 殺して、殺して、殺して、殺して、殺して、殺しまくってやるぜェ!!!」

 あの忌々しい猟犬どもが出張ってきたならば、おそらく今生で再び会うことは叶わないだろう。それは、ヴァンパイアたちにも分かっていたが。
 そんなこと何でもないかのように、今は。
 赤い赤い杯を酌み交わし、笑い合う。

 ほら、|日《光》が落ちていく。
 血のような赤に塗りつぶされた空が――

「ぬぅっ!?」

 その時、血管の大樹が支える天蓋を割って、赤い光が降り注いだ。
 まるで、光なき世界を夢見て進もうとする彼らの別れの一時を、愚弄するかのように。

 無明の天空を彩り、誘うようにはためく、赤い赤い、|極光《オーロラ》のカーテン。
 それがかつて“何のため”に造られたものなのかを、不死者――ヴァンパイアたる者たちは直感した。

「なんという……傲慢なッ!!」
「ふっ。身の程知らずのお馬鹿さんの愚行を見るのは、こうも気分が悪いモンですねぇ……」
「殺すッ! 犯し! 嬲り、刻み、ありとあらゆる苦痛を味わわせてから、殺してやる!!」

 それは、“恩人”へと捧げるための血潮であり、
 永遠の、底なしの夜へと、光なき世界を孤独に彷徨う者へと向けられた――

「愚かな……愚か者共、め」

 沈黙していた『常闇の信奉者』までもが、とうとう堪えきれぬ不快さを滲ませ、呟く。

「おお……そうじゃ。その通りじゃ」
「ふっ。ならば、今こそ卿の友をも弑殺した、あの愚か者どもを、誅殺してやりましょうぞ」
「殺すッ! 殺すッ! 穢し、嘲笑い、踏み躙り、痛めつけ、惨たらしく殺してやるぞッ!」
「……地獄で、また会おう」

 そうして、一先足に出立していく『常闇の信奉者』を見送り。
 悠然と構える『気障な腰巾着』は『卑劣な老軍師』にふとした疑問を尋ねる。

「そういえば……この者らは、首尾によっては見逃す約束だったのでは?」
「ふぉっふぉっふぉ。だから、誰よりも早く“赦し”を与えてやったまでじゃよ……」

 赤い杯を飲み干し、邪悪に口元を歪める。
 まだあたたかく、生命の残り香の匂い立つ赤い血潮と肉が、彼らの“最後の晩餐”を彩っていた。

「そして……くふふっ。お楽しみは、まだまだこれからじゃわい……」
 
栗花落・澪
【姉弟】

僕だけの力では…まだ、限界があるかもしれない
それでも、誰かに任せてるだけなんて嫌だから

姉さんの位置を悟られないよう少し離れた位置で【空中戦】
【オーラ防御】を纏いいつでも庇えるようにしながら
【高速詠唱】で氷魔法の【属性攻撃、範囲攻撃】を放ち凍結による足止め
姉さんのUC効果が表れるまでは囮になります

一般兵は騙せたとしても敵の主力級が来たら?
幻覚を突破してくる個体がいたら?

あらゆる状況を想定して油断はせずに
強化も追いつかない、逃げ道も与えない攻撃を

【紅色鎌鼬】発動
広さ的に敵の数以上いけるかな
大量に量産した鎌を遠隔操作し一斉に【なぎ払い】
一度で足りないなら何度でも
全てを殲滅するくらいのつもりで


栗花落・深香
【姉弟】

可愛い弟が、救いたいと願ったから
私なりのやり方で協力するわ

透明海月の上に乗って【空中戦】
透明になり隠れながら全体の様子を観察
いつでも危険を知らせる事が出来るように

【桜ノ夢】を発動
澪や救済者の子達を桜の香りで癒し
敵には実体のある幻覚を見せて翻弄
あわよくば同士討ちを狙ってみるわ

2時間は解けないわよぉ?
UCも存分に使ってどうぞ
勿論…お仲間さんにね♪

仮に幻と気づかれたとしても
実体がある以上無視は出来ないでしょう

リーダーさん、貴方も指揮を
幻覚と戦わせてるだけじゃ、いつかは突破される
混乱に乗じて攻撃してしまえば、きっと陣形を崩せるわ

万一突破してきた個体には銃による【乱れ撃ち、援護射撃、範囲攻撃】



●最後のデザートを、笑って
 手ずから手料理を振舞った、見知った顔の少女らが、表情を輝かせぶんぶんと手を振っていた。
 分隊を束ねる老人兵士らに大喝されても、懲りる気配もなく、千切れるほどに手を振っている。

「きて、くれた……ほんとうに、きて……」
「……ほれ、シャキッとせんかい! 情けないところをみせたいんじゃぁ、ないじゃろう」
「うん。もう、だいじょうぶ。えへへ……」

 目元を袖でごしごし拭って、やけに晴れ晴れとした顔で少女は答える。つい先刻まで、屠殺場に運ばれる家畜のように震えていた足も、今はしっかりと地面を掴んで立っていた。

「ああ、うれしいな。うれしいなぁ……」

 不思議と、体が軽い。
 私たちは、ひとりぼっちじゃなかった。
 私たちは、見捨てられてなんていなかった。

 ああ……こんなにも幸せな気持ちで戦えるなら、

「もう、何もこわくな――」
「わ、わ、だめだめ……っ!!」

 なんだか見過ごせないフラグを立てようとしていた少女に駆け寄り、栗花落・澪(泡沫の花・f03165)は慌てて口を閉じさせる。当の少女は何がダメだったのか分からないまま、澪に会えてニコニコしていた。

「ありがとう、ありがとう」
「とっても、心強いです!」

 猟兵の中でもいの一番に『闇の救済者』の救援に駆けつけた澪と栗花落・深香(暴走おねーちゃん・f03474)の姉弟は、その天使のような外見も相まって陣営の士気を大いに盛り上げていたが。

(死ぬための覚悟なんて、死んでもいい覚悟なんて、本当はして欲しくないんだよ……)

 澪としては、無邪気に喜んでくれる彼ら彼女らの覚悟の表情は、見ていると胸が痛むもの。
 そして、そんな者らが布陣する『闇の救済者』の陣営の内情は、思った以上に酷いものだった。

「攻撃は、無理なのね……これじゃ」

 深香はため息を零すと、その指揮官である『傭兵』へ提案しようとしていた言葉を呑み込む。
 人数だけは揃えている。が、老人、女、子ども――小学生以下のような子らを除く、少年少女までもが銃を持たされ、配置についている。明らかに訓練された兵士ではない、ほぼ一般人でしかない彼ら彼女らに、陣地に拠って戦い、銃の引き金を引く以外の行動を期待するのは酷だろう。

「単刀直入に聞こう。アンタらなら、“アレ”からこの陣地を守り切れるか?」

 その視線の指し示す先には、雲霞の如く湧いて出る敵の騎士団。
 闇の救済者が概ね4個中隊を四方に配置し円形の防御陣を敷いたのに対して、その全周を包囲すべく地響きを立てて機動するヴァンパイアの軍勢。
 それは二人にも見たことが無いほどの規模で、軍として高度な統制もとれているのが分った。
 だから、『傭兵』が訪ねたその言葉に、軽々しく頷くことなど出来るはずもなく。

「……僕だけの力では……まだ、限界があるかもしれない。それでも、」

 誰かに任せてるだけなんて嫌だから、と。
 強い覚悟を宿す目で答える澪に、

「私のユーベルコードは足止めに向いているわ。2時間は持つけど……それでも、その幻覚と戦わせてるだけじゃ、いつかは突破されるでしょうねぇ」

 深香もまた、現実的なラインでの判断を伝える。
 すると、傭兵はあからさまに残念そうなため息を零しながらも、その雰囲気は少し和らいで見えた。

「だろうな。ならばこちらも正直に言うが……実は、兵はハリボテ。矢も弾薬も十分ではない」

 様子見の数で来られたとして、その突撃に耐えられるのも、精々が3回程度だろうという。より多数が同時に寄せた場合や、敵が策を使うなど、実際の条件はそれ以上に厳しいことも想定しなければならず。

「逆襲の計画は、あるのぉ?」

 とは言え防御しているだけでは勝てないのが戦というもの。
 深香のもっともな疑問に、傭兵は端的に返す。

「ご覧の有様だ。今、此方は身を守るので精一杯だ」

 ならば、なぜ、ろくに戦えもしないような弱兵を連れてこんな死地へ……。
 そう考えながら、傭兵の目線の先を追ってみれば、答えは自然と詳らかとなった。

 丘の上から見渡せる、死んだように息を潜めて静まり返る町。
 ならば、あの町からも、この丘の様子はきっと見えているのだろう。
 屠殺されるのを待つばかりだった“家畜”らを救うべく、“人類”が一軍を率いて現れた、その雄姿が。

「それでも、嫌がらせにはなる」

 傭兵はそれをヴァンパイアへの“嫌がらせ”と評した。

(なるほど。あちらも“奴隷”に希望を抱かせるような存在を、出来れば無視はしたくないのね……)

 叶うならばその首を、惨たらしい死体を人々に見せつけ絶望させてから、“愚者”として虐殺する。
 今頃、ヴァンパイアはそんなことを考えていることだろうか。

「でも、それじゃ……」

 それも叶わないと知った時、敵は……そんなことを考えてしまい、尋ねようとして。
 深香は、眼下の大軍と、その先にある町を険しい顔で見詰めている傭兵に、再び言葉を飲み込む。

 彼は人類砦の人々の命を|チップ《賭け金》に、猟兵に――より多くの命が救われる可能性に、賭けたのだ。
 その戦の結果がどう転がるのかは、|第六の猟兵《ダークセイヴァー》たちの手腕にかかっていた。

●雨だれ石を穿つ
「まずは一当て、かな?」

 敵は、此方の情報――勢力や装備、防御陣地の弱点を探りに来ているのだろう。
 そう思わせるような、しかして脅威としては十二分に高い、帰還を要しない強行偵察。
 それは、例え一般兵に過ぎないとしても、

(……侮って良い相手じゃ、なさそうだ)

 部隊指揮官がさっと手をあげ合図を送る。
 重武装の騎士たちが錐形の陣で轡を並べ、並足から駆け足、そして襲歩へと。
 足並みを揃え陣形を乱さないその突撃は、彼らの練度の高さが窺える見事なものだった。

「「「――……ォォォォォォォオオオオオオオ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛ッ!!!!」」」

 命を擲って特攻を仕掛けてくる騎士の集団に、その迫力に震えあがりながら、人類砦の人々は歯を食いしばって銃を構える。あまりの恐怖と緊張で粗相をする者らがいても、誰も笑わないし気にもしない。自分だって、“それどころではない”からだ。

(姉さんの位置を悟られないように……)

 澪はやや前面に出て、上空から『氷魔法』を放つ。広範囲に振りまかれた凍結の魔力は、一撃で敵を葬るほどの威力は無くとも騎馬の足を取り、先団の騎兵たちを転倒させる。

「ぬ、おおおお!!!!」

 その転倒に後続までもが連鎖的に巻き込まれると、突撃の速度に緩みが生まれた。
 騎兵団の後方から指示が飛び、二手に分かれ迂回していく。また、転倒していたヴァンパイア騎兵が立ち上がり、後方の一団と共に澪へと接近してきていた。

「出たぞ! 猟兵だ! 心してかかれ……!!」
「羽根付きか……だが、たかがメスのガキ一匹」
「クロスボウ! 空から引きずり降ろせッ!!」

 怒号と殺気が叩きつけられ、戦場の空気がピリピリと物理的圧迫感を持って澪に迫る。
 微妙に指揮官の指示が徹底されてない者が混じるのは、こんな使い捨て部隊に選ばれた所以か。

「あらあら、あなたたち……あの子をいじめるつもりなら、容赦しないわよぉ?」

 透明海月の上に乗った深香は、全体の様子を見ながら《桜ノ夢》を発動させる。
 可愛い弟が、救いたいと願ったのだから。私なりのやり方で、支えるのだ……姉として。

「優しき桜が見せるは甘き夢。怒れる桜が見せるは悪夢。……囚われないよう、気を付けてね」

 幻で出来た桜の木と桜色の薄霧が、小高い丘のその頂上を中心に包み込む。
 それは幻覚であると同時に実体を持ち、騎兵突撃を敢行するヴァンパイアを肉体と精神の両面から加害する。そして相反するように、澪や闇の救済者たちを桜の香りが癒すユーベルコード。

「たかが! 餌の分際でぇッ!!」
「ユーベルコードも存分に使ってどうぞ。勿論……お仲間さんにね♪」

 怒り狂うヴァンパイアにおっとりと笑いかける深香だが、実のところその内心は穏やかではない。
 その名に“鬼”を冠し、不死者の中でもとりわけ強力な種族だけあって、ヴァンパイアはその肉体性能も内に秘める神秘――呪いも、破格。

「ともがらを踏み砕いて、進め!」
「――……ォォォオオオッ!!!」

 果たして、深香の思惑通り同士討ちは発生していたが……邪悪なる瞳を輝かせ、力任せに鈍器として振るわれる巨大な突撃槍は、実体のある桜の森をも滅多打ちにして打ち砕き。

「ガ、フッ……ゴボォ……」
「誇るが良い! 我が血肉となりて、あの光を蹂躙する栄誉に預かれることを!!!」

 同胞を殺し、殺した仲間の血肉を喰らい、『闇に誓いし騎士』は前進を続ける。そうして砕けた不死者の亡骸までもが、闇の残滓を撒き散らし丘の斜面を呪詛で穢していく。

「……しんどい戦いになりそうね」

 突破に備えて『MI/096』――愛用のアサルトサイフルを構える深香。
 下手をすれば、そのまま取り付かれ、陣を崩されて乱戦になる可能性も十分にあった。

「これじゃ、敵の主力級が来たら……」

 大多数は足止め出来ているとはいえ、練度のばらつきもある。

 闇の救済者の陣が大混乱に陥り、組織的な抵抗も出来ず、泣き叫ぶ人々が血だまりに沈んでいく。
 そんな最悪の“結果”が脳裏に過り――けれど、すぐに頭を振って思い直す。
 
(僕は、それをさせないために"ここ”にいるんだ)

 灯された灯火を吞み込もうとする闇の軍勢へ向け《|紅色鎌鼬《ベニイロカマイタチ》》――紅色に澄んだ美しき鎌が出現する。
 不死なる者どもの命を、刈り取るために。

「一度で足りないなら、何度でも!」
「ぬぅぁぁぁあああああ゛あ゛ッ!!!」

 騎馬の骸を、同胞の骸を喰らい、呪詛を撒き散らして。生き残ったヴァンパイアが尚も進む。
 鎧は拉げ、腕が吹き飛び、足が捥げても、それでも止まらない――その邪悪な刃がとうとう、闇の救済者のウォーワゴンにまで到達してしまう。
 その時、

「――撃てーッ!!!」

 幾百の小さな炎が星のように瞬き、炸裂音が連続して、重なって響いた。
 闇の救済者の『ライフル』による一斉射撃。

「ぐぅ……がッ……」

 有効射程を考えればもっと遠間からも発射できたそれは、猟兵の足止めの甲斐もあって、至近距離から確実な狙いをつけて、無数の弾丸となって『闇に誓いし騎士』を貫いた。

「やった、やった……!!」
「馬鹿モン! 警戒を解くんじゃぁない!!」

 もはやまともに動く者のなくなった敵軍に、ライフルをだき抱えた少女がピョンピョンと跳ねながら歓声をあげる。
 猟兵と協力して、十分に戦える感触を得て、喜びに沸き立つ『闇の救済者』の陣営。
 老人兵士に叱られながらもぶんぶんと手を振ってくる少女らへと、澪は苦笑しながら手を振り返した。

(確かに、戦える。だけど……)

 どうしてだろう。
 彼女たちが無残な肉塊に変わり果てる、そのイメージは、未だに消えてはくれなかった。

「澪。ここはお姉ちゃんが見てるから、少しでも休んでなさい」

 本来そう身体の強い方ではない澪を案じ、深香がそう声をかけた。
 この先、何があるかは分からないが――戦いは、まだ始まったばかりなのだから。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

アトシュ・スカーレット
【POW】
…オレ1人ならなんとでもなるけど、周辺に被害を出すな、かぁ…
あー、存外難しいな…

Tyrfingを使って、【呪詛/禁呪/武器に魔法を纏う/属性攻撃(腐敗)/鎧無視攻撃/切断】をベースに戦うか
移動は【残像】が見える速度で走るか【空中浮遊/空中機動】で飛んで特攻かな

敵のUCに関しては【幻想召喚・城壁式】を【カウンター】として使うぞ
具体的には奴らの足元に喚び出して脚力を潰す感じで
闇の救済者さん方の方も気にかけながら壁を配置しとこ

今喚んだ壁は、絶対に壊れない!逃げ込んで銃を撃つなり、応急処置するための拠点として好きに使え!
…ま、オレ自身を守る能力はないからオレは使えないけど



●|手段《殺すこと》と|目的《生かすこと》と
「周辺に被害を出すな、かぁ……」

 その、被害を出してはいけない最たるものである『闇の救済者』の陣容を再確認して。

「あー、存外難しいな……」

 アトシュ・スカーレット(神擬の人擬・f00811)は、その難易度の高さに頭を悩ませる。
 集団戦術をある程度はたしなむアトシュには、陣地の脆さも良く見て取れた。
 ウォーワゴンの壁に守られ、猟兵の協力もあって士気は高いけれど、雑兵以下の兵たち。

「……オレ1人ならなんとでもなるけど」

 いざとなれば一旦引いて仕切り直すなり、あえて前に出るなり選べる選択肢は多い。
 だが、後ろに守るべき存在がいて、何を仕掛けてくるか分からない膨大な数の敵から守り切るというのは、中々に草臥れる状況だ。
 これなら何も考えず殺して、殺して、殺して、殺して、殺して、殺しまくってやる方が、随分と楽な気もする。

(陣が破られそうになったら、たぶん自爆する気っぽいしなぁ……)

 ウォーワゴンの防壁内部に用意された油や爆薬。その使い道に気付いて微妙な顔になるアトシュ。
 初陣となる少年少女兵らの面倒を見ている老人兵士が会釈してくるが、その表情を察するに、彼らだって割り切れない思いを抱えて、“それでも”とこの戦場に立っているのだろう。

(……まぁ、そこまで突破されたら、打てる手も他にないんだろうが)

 パニックに陥った味方は敵よりも恐ろしい。
 新兵たちの銃には銃剣はついていないから、接近戦をやらせる気は無いのだろう。基本的に、合図を受けて、狙って引き金を引く以外のことを考えさせないようにしてあるようだ。

「……しゃーない。やれるだけやっとくか」



§



 敵は、急戦を選択はしなかったようだ。
 猟兵が共にあることを知り、強硬策は無理筋だと悟って諦めたのか、それとも、

(何か悪いこと企んでそうな気もするが……)

 眼下の、総攻撃を企図中と思われる大軍からは、断続的にハラスメント攻撃――無視できない規模の部隊による特攻が繰り返されていた。何となく嫌な予感はあるが、その正体まではわからず、アトシュを含めた猟兵はその対応に意識を割かざるを得ない状況。
 新兵たちの緊張感もいつ切れるか分からず、不吉な予感をぬぐえない――そんな最中、

「いいか、今喚んだ壁は、絶対に壊れない!」
「ぜ、絶対……?」
「ああ、だから」

 躊躇いがちに確かめる少年少女らへ、口の端を吊り上げて自信たっぷりに言い放つ。

「逃げ込んで銃を撃つなり、応急処置するための拠点として好きに使え!」

 重厚な造りのそれは《|幻想召喚・城壁式《サモン・シュロス》》により創造された“無敵”の城壁。
 可搬性を維持するため軽量化されたウォーワゴンの防壁とは比べるべくもない防御施設が、彼ら彼女らの後方に出現していた。

(……ま、オレ自身を守る能力はないからオレは使えないけど)

 ……それは致命的な|欠陥《バグ》では?

 だが、アトシュ自身はその恩恵に与れないという“制約”も持つユーベルコードは、強固な防御性能を以て、例えウォーワゴンが破壊されても後退可能な――むしろより強靭な防御陣地を構築していた。
 多少とはいえ防衛線に縦深が生まれたことで、兵の生存率、継戦能力は大幅に高まり、何よりその精神的な効果も大きい。同時に敵には突破のために多大な負担を強いることになり、戦術的に見ても非常に有効な一手と言えた。

(それでもあえて攻略するとしたら……いやいや、無敵、無敵だ!)

 能力に疑念を感じると大幅に弱体化してしまう為、アトシュ自身はその防御陣の欠陥や盲点について意識できないのが、弱点と言えば弱点か。
 しかし、完全無欠な“結果”だけを保証してくれるユーベルコードなど、本来ありはしないのだ。
 一見して無敵のような権能を用いる強敵たちでさえも、かつて猟兵の前に敗れてきたように。

「ありがとう、ええと……」
「アトシュだ」
「アトシュさん、ありがとう!」
「やるぞー! えい、えい、おー!!」

 と、いまだ士気軒昂な新米兵士たちの後ろで、

「……感謝いたしますぞい」

 それを見守っていた老人兵士たちが深々と頭を下げていた。後の憂いがひとつ無くなって、深い皺の刻まれた顔に、透き通った覚悟だけを浮かべながら。

●願いの結晶
 アトシュの城壁はウォーワゴン内部にとどまらず、丘の斜面にも展開された。

「――我が呼び声に応えよ! 無垢なる願いの結晶たる守り、我が身を滅ぼしてでも証明せよ!」

 彼自身が恩恵を受けられない制約はあれど、360度全周から攻め寄せる敵から味方を守るため、アトシュの後方や両翼をカバーするように屹立する“無敵”の壁。

「……しゃらくさいッ!!!」
「殺すッ! 壊し! 犯し! 穢し! 殺し尽くせぇぇぇぇぇ……!!!」

 もはや何度目かもわからない突撃を敢行する騎兵。
 地響き立てて迫るその脅威を防壁が分断し、制限し、流れを誘導する。
 そうして、『闇に誓いし騎士』たちが斜面を登り切りウォーワゴンに向けて突入態勢をとった頃には。

「撃てぇぇぇえええ……!!!」

 迎え撃つ『闇の救済者』側は兵力を集中させており、より密度の高い銃撃による“殺し間”が出現した。

「来る、来る、来る……ッ!」
「ほれ、次弾装填! 急げぇッ!」

 無数の鋼の弾丸が鎧を貫通し、落馬し穴だらけの身体になりながら、ヴァンパイアはそれでも尚止まらなかったが、

「……大丈夫だ。この程度ならオレが始末してやる」

 残像さえ残してトン、と宙を舞い。
 アトシュは『Tyrfing』――腐敗の呪詛を纏う魔剣を以て『闇に誓いし騎士』の首を刎ねていく。

「……忌々しい、猟犬めが!!!」

 不利を察した騎兵らは斜面に展開された城壁をその地盤である“地形”ごと破壊しようとするが。
 地形もろとも粉砕する高威力のランスチャージ。
 それはシンプルかつ強力なユーベルコードではあったが、アトシュの|“無敵”の城壁《願いの結晶》はそれでも破れず。

「……ま、こんなもんか」

 神擬の少年による適切な判断、心技一体の権能に護られた『闇の救済者』には消耗はあれど被害はなく、敵軍は徒に屍を積み重ねる結果となったのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

四王天・燦
《狐御縁》分散描写可

真威解放・神鳴を発動し飛んで行くぜ
空から敵味方を俯瞰する
プリュイの本丸に奇襲されないよう注意だね

爛の炎帝鷂で全猟兵・傭兵団の連携を取るよ
695km/hの飛翔と戦闘知識を活かして敵の戦略を読み取って潰すように動くぜ

空から符術で火炎属性攻撃×範囲攻撃で爆裂火球を浴びせよう
滅亡卿にやられた砲火の意趣返しさ

戦車に迫る騎士に高速飛行で割り込む
残像を囮に使って僅かに身をかわし、ド派手にカウンターで馬ごと切断してやるぜ
集中攻撃は結界術で障壁張ってはじき返す

漆黒の霞が厄介だ
鉄砲隊は馬の鼻づらを狙ってくれと指揮
役割を与え成功を讃えよう
怯んだ騎兵をバッサリだ

強めの敵個体は切り結んだ際にオーバーロードの力を借りて電撃属性攻撃を流し込んで感電死させるぞい

疲労は清薬でドーピング、負傷は激痛耐性で堪え顔に出さん
無理っていうか弱気は士気を下げかねんし、そも剣士として戦闘昂揚起こしているんだわな

革命の聖女の如く振舞って士気を高めるよ
死を正しく恐れ、生きる為に勇気を持って戦え!
誰も失ってなるものか


シホ・エーデルワイス
《狐御縁》
分散描写可

依頼≪鏖殺の宴≫の時
避難中の村人が狙われた事を思い出す

もし今回の敵も猟兵には敵わないと思っているのなら
なるべく一人でも道連れを目指すでしょう
そして騎兵の機動力
前線を迂回して人類砦を狙ってくる可能性も考えた方が良いかしら?


爛の炎帝鷂に敵の動向を監視してもらい
前線から離れて活動する敵がいれば味方と情報共有し奇襲されないように注意

私は【天移】で手薄な所の迎撃に駆けつけますが
人類砦が狙われたら最優先で向かい
敵を倒すより味方が駆けつけるまでの時間稼ぎを優先

私は【贖罪】が自動発動して死ねない故
皆が来るまで砦を守れれば十分


戦闘では真の姿を解放
枷の鎖は通常幻で必要な時だけ実体化し
自動的に攻撃を防御したり
騎馬の脚に絡みつかせて繋げ共倒れにする

また聖銃の追跡誘導弾で催眠術による幻惑属性の範囲攻撃
敵の感覚を晦まして挑発し矛先を私に誘き寄せる

敵の攻撃は第六感と聞き耳で見切り
ダンスの様な動きで残像回避し
激痛耐性のオーラ結界で防御

難しいと分かっていても
プリュイ達を誰一人喪わせない覚悟で戦います


エリカ・タイラー
※全員リクエスト

「闇の救済者戦争」の戦争シナリオへの参加を希望します。

シナリオ上で必要な怪我や失敗は厭わず積極的に行動し、他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。
また、例え依頼の成功のためでも、公序良俗に反する行動はしません。

キャラクターのテーマは「青い炎」。
敵フラグメントに対して、あるいは、
目の当たりにした虫酸が走る・反吐が出るような惨状を造り上げた黒幕に対しての怒りに、
時に静かに、時に激しく燃え上がります。

使用ユーベルコードの指定はありません。
「成功」以上の結果で書けそうなものを一つステータス画面からお選び下さい。フラグメント次第で不使用も可です。

あとはお任せ致します。
宜しくお願い致します。


狐裘・爛
《狐御縁》
分散描写可

あまり見たくない光景ね。でも、見たいものばかり見る、見たくないから見ないってのは綺麗じゃないの。頑張りましょ?

連絡手段のお供に最適な「炎帝鷂」を放つわ。この炎帝鷂を放って情報網を構築、なるべく多くの猟兵と敵の動向を共有するのよ。使役は得意技、私は悪魔召喚士だからね。私自身も《乖炎戯・魂魄昇華遺離》で炎帝狐に憑依変身よ。見て、そして聞いて、この戦場の情報を! 感じて、敵の動きと悪意を!
飛翔して炎の弾幕を張りながら、危険な情報は逐一キャッチ。味方に共有するわ

燦義姉、無理してないといいけど。シホが心配しちゃうでしょ。少しは頼ってよね、もう!


四王天・焔
《狐御縁》分散描写可

■心情
敵の動きの本意は、闇の救済者達や人類砦が狙いなのかな。
そっち側も注意を払わないとね。

■行動
白狐召還符(UC)を使用して、白狐様に騎乗して
俊敏に移動が可能な態勢を整えておくね。
仲間には爛の炎帝鷂を使い情報共有。
UCの白狐様を走らせつつ、敵を見回し敵が迂回していたり
人類砦を狙っている敵がいたら味方と情報共有し奇襲されない様、注意。

戦闘は、焔は白狐様の炎を【属性攻撃】で強化して【範囲攻撃】で
纏めて焼き払ってあげるね。
燦姉も無理しないでね、傷ついたら悲しむ人が大勢いるから。
爛も、連絡通達、ありがとうね!
シホ姉もテレポート凄く助かるよ!
テフラさん、皆を守ってくれてありがとう!


テフラ・カルデラ
《狐御縁》
分散描写可

あわわわ…串刺しとかめちゃくちゃ痛そうなやつですよ…
ともあれ、ここは重要な方々や子供達もいるので絶対に守り切らなきゃいけませんね…

炎帝鷂による情報共有を参考に、主に闇の救済者さんの射程圏内にて【石化ポーション】や【セメント噴射器】を使って足止めしたり、【カーボンフェアリー】や【ペイントオクトパス】を放って奇襲に備えておくのですっ!
さらにさらに!【蝋燭サンタ『キャンドルサービスメイカー』】さんを召喚!足止めに加えて蝋の壁を作って皆さんを守ります!
アイドルな彼女なのでさらにその場を盛り上げて皆さんを励ますのも忘れずに…!
皆さんも頑張っているのです…わたしも頑張らねば…!



●愚者の丘で
 グリモアに予知された、阻止すべき未来。
 その丘の上から眺める景色には、血塗られた杭が林立していた。史実では『ドラキュラ』のモデルとなったブラド3世も数千数万という単位でこの残虐極まりない処刑を行ったといわれているが、

「あわわわ……串刺しとかめちゃくちゃ痛そうなやつですよ……」

 それは流石のテフラ・カルデラ(特殊系ドMウサギキマイラ・f03212)でも「ちょっと体験してみたい」とは思えない仕打ちだ。実は興味があるから反応したワケでは、ない。きっとない。……たぶん。

「ともあれ、ここは重要な方々や子供達もいるので絶対に守り切らなきゃいけませんね……」

 女、老人、少年少女らまでもが武器を取り戦列に加わる『闇の救済者』の陣営。一度でも崩れ出せば悲惨なことになるのは目に見えている。

「ええ。その為にも」

 空を自由に回遊する炎の人工生命『炎帝鷂』。
 連絡手段のお供に最適な美しい炎が、穢れた空を彩り仲間との連絡用通信網を構築していく。

「なるべく多くの猟兵と敵の動向を共有するのよ。使役は得意技、私は悪魔召喚士だからね」

 そうして狐裘・爛(榾火・f33271)は放った無数の炎帝鷂へと命じる。

「見て、そして聞いて、この戦場の情報を! 感じて、敵の動きと悪意を!」

 敵の意図を予想し、情報を探る重要性は、戦争においては言うまでもない。
 どれだけ戦力が揃っていても、打破すべき敵を見失い、守るべき要所を放棄して迷走するのであれば、兵としての用を為さないのだから。

 炎帝鷂はドローンのように敵陣の現状を上空から偵察し、その結果を『闇の救済者』にも共有する。
 敵は丘の全周を完全に包囲した後は、大きな動きは見せていない。
 前面――町側の『闇に誓いし騎士』の一部が丘の中腹に布陣して、|嫌がらせ《ハラスメント》攻撃を繰り返す程度だ。

「時間経過の裏で、何か進めていそうかしら」

 何か裏がありそうな気もするが、それが何かまでは分からず首を傾げる爛。

「敵の動きの本意は、闇の救済者達や人類砦が狙いなのかな……」

 そっち側も注意を払わないとね、と四王天・焔(妖の薔薇・f04438)が呟けば。

「そうだな。プリュイのいる本丸にも、奇襲されないよう注意だね」

 四王天・燦(|月夜の翼《ルナ・ウォーカー》・f04448)が警戒するのは、闇の救済者の中で大きな求心力を持つ『雨降りの聖女』への襲撃。集団同士の戦闘では、その頭脳や象徴を狙うのは真っ先に考え付く作戦の一つだろう。それは、時に万の兵卒を屠るよりも決定的な痛撃となり得るのだから。

「もし、今回の敵も戦いで猟兵には敵わないと思っているのなら……」

 シホ・エーデルワイス(捧げるもの・f03442)は以前の依頼でヴァンパイアに仕える『滅亡卿』と戦った際に、避難中の村人たちが別動隊に狙われた事を思い出す。

「彼らは、なるべく一人でも多く道連れにすることを目指すでしょう」
「……ほぅ」

 傭兵が、感心した様子でシホの予想に耳を傾ける。
 敵の意図を敵の立場になって考えてみるのは、敵の作戦を真に挫くのであれば必須となる作業。
『兵は詭道』の言葉通り、騙し合い化かし合い、弱点の探り合いでもある戦争。その被害を抑えたいのであれば、より相手の嫌がること――転じれば自軍がされて嫌なことを考えるのも、避けては通れぬ道だった。

「そして騎兵の機動力……前線を迂回して人類砦を狙ってくる可能性も考えた方が良いかしら?」
「まぁ、動く時には一気に動いてくるだろうな」

 シホの予想に傭兵は是とも否とも言わなかった。
 何かを隠していそうな気もしたが、言わないということは、その方が良いと判断したのだろう。
 結局、猟兵たちは『|聖女《プリュイ》』、傭兵を始めとする『闇の救済者』、砦の『非戦闘員』、最終的には眼下の『町の人々』らまでが敵の戦術目標でありうることを確認して。

「爛の炎帝鷂に敵の動向を監視してもらっていますので、前線から離れて活動する敵がいれば」

 味方と情報共有し奇襲されないように注意。敵の策を潰すべく猟兵が動く態勢をとる。

「もしも人類砦が狙われた場合は、私が最優先で向かいます」
「……助かる。アンタも、空を飛ぶのか?」
「いえ。天移――テレポートを使います」
「シホ姉のテレポート。アレ、凄く助かるよね!」
「テレポート?」
「うん。あ、テレポートっていうのはね……」

 聞きなれない単語に問い返す傭兵へ、焔がかいつまんで説明すると。

「……」

 傭兵が何とも言えない顔をしていた。
 シホの能力《【天移】|幸せ届ける銀天使《フォーチュン・プレゼント》》は、同じ世界にいる任意の味方の元に、小さな幸運、あるいは救援物資と共に出現する権能。
 どれだけ堅牢な拠点でも、内通者の一人でも居れば自由に出入りされる可能性。こんな敵が居たら嫌だと思いながらも、味方で良かったとでも思っているのかもしれない。

「待てよ。それなら……」

 暫く、何ごとか思案して。

「一つ、頼んでも良いか。可能であれば秘密裏に友軍と連絡が取りたい」
「ええ。もちろんですが……友軍、ですか? その方は、今どちらに?」
「わからん。正直、今も生きているのかどうかも……だが」

 その猛禽のように鋭い目で眼下の町を見据えて。
 簡単にくたばるタマではない、と傭兵は評する。

「……そういえば」
「アイツ、村でも見てなかったな」

 少なくともシホと燦は、知っていた。
 傭兵が束ねる『闇の救済者』の、精強なる戦闘部隊を最前線で率いる『青年剣士』の存在を。



§



 一方、猟兵たちの話し合いにも参加せず、子犬が何をしていたかというと、

「プリュイは……後方の敵に齧りつきか」

 大森林との間に、退路を断つように展開した有力な敵の一団に“極光”を降らせ続けているようだった。町側に展開した『闇に誓いし騎士』たちと比べると、不気味なほどに静かで動きのない騎士団――だが、発する気配からは恐らく最精鋭ではないかと思われる。
 そして、

「……ちょっと蹴散らしてくるか」
「そこの義姉、ちょぉっと待ちなさーい!」
 
 狐姉妹の姉たる燦は、妹狐の爛に捕まって、何ごとかたしなめられていた。

「……敵の作戦を潰すんでしょ? なら、あまりジタバタしすぎてちゃダメよ」

 戦意高揚と連日の戦闘の疲れもあるのか、無理をしそうだとも見抜かれていたようだ。
 口をとがらせ、子どもっぽく怒ってみせる爛。

「そんなんじゃ……シホが心配しちゃうでしょ。少しは頼ってよね、もう!」
「そうだね、燦姉も無理しないでね、傷ついたら悲しむ人が……大勢いるから」
「お、おぅ……えっと」

 そこへ、焔もやってきてそんなことを言うものだから、妹包囲網を敷かれた燦としてはは無碍に出来るわけもなく。

「あ、そういえば爛も、連絡通達、ありがとうね!」
「ええ、お安い御用よ!」
「……えぇぇ」

 燦は何だか意気投合してしまった妹狐たちに両腕を掴まれ、何処かへと連行されて。

「なぜ、こうなった……?」

 敵の嫌がらせの合間を縫って小休憩中の少女兵たちと、チョコレートを齧っていた。
 闇の救済者の携帯糧食として供された物だが、元はと言えばシホが提供したモノだったりもする。

「あの、あの。この前はどうもありがとう」
「あの茶色の、じゅわっとしたの、甘くておいしかったです!」
「ああ……お稲荷さん、稲荷寿司、きつねうどんのお揚げか。気に入ったなら良かったぜ」

 そろそろ戦場の空気にも慣れてきたのか、案外お気楽なおしゃべりをする少女たち。
 本来こんな場所は似つかわしくない彼女たちを死なせないためにも、燦は思いを新たに力を溜める。

(そう。アタシの目標は)

 実際、これだけの数だ。雑魚を多少切って捨てたところで、相手は大して痛くないのだろう。

 心臓を、頭脳を、味方の急所を守るのか。
 手足として一兵卒となって攻めるのか。
 盾として前線に加わり鼓舞して回るのか。

(敵の|目標《大虐殺》を挫くこと……だったな)

 いざその時、同時には成立しえない幾つもの未来を、燦は選び取らなければならなかった。
 たとえ、それがどのような結末であれ、せめて――……後悔のないように。

●秘密の扉を叩いて
「御狐様、よろしくお願いします」
『こーん!』

 焔は《|白狐召還符《サモン・フォックス》》によって『白の御狐様』を召喚すると、背中に騎乗した状態で互いを高め合い、俊敏に移動が可能な態勢を整えておく。
 そうして白狐様を走らせつつ、丘の上から敵を見回し敵情を探る。

「こんな沢山、今までどこに居たんだろうね……」

 究極禁獣『デスギガス』が『ライトブリンガー』から貰った『フォーミュラの能力を移植する【Q】』――“無限災群”の賦与によってめちゃくちゃに増殖したオブリビオン。
 見晴らしの良い丘の上からは、嫌になるほどの数の敵が見えていた。ただし地形的に隠れ潜む場所は無い上、上空からの監視もある今、奇襲される可能性は低そうに思えたが。

「うん? どうかしましたか、御狐様」
「……こーん?」

 足元を気にしててしてしと何度か足踏み、首を傾げる白狐。
 穴ネズミでも居るのだろうか、地面に何か気になることがあるようだ。

「うーん……たしかに、何だか、嫌な感じがするね……燦姉も聖女さんのこと気にしてたし」

 確証は無かったが、仮に杞憂で何もなければそれでも良いのだ。
 けれど……もし、何かあった時は。

「炎帝鷂、早速だけどお願いね」

 焔は爛の炎帝鷂を使い情報を共有する。

 猟兵が生み出した城壁に守られた陣地。
 だが、当然だが攻撃を想定していない地点から奇襲されれば弱い。
 敵もユーベルコードを使う以上、常識に囚われていては思わぬ事態に動揺させられるかもしれない。
 この、何万日もの明けない夜が支配する世界では、確かなはずの大地でさえも揺らぐのだから……。



§



「町の……正門前で異変、と」

 そのつまらない“見世物”に、傭兵が鼻を鳴らす。
 眉をひそめ、ため息と共に爛がつぶやく。

「あからさまな挑発だが」
「あまり見たくない光景ね」

 初めに姿を見せたのは、魔獣だ。
 鎖に繋がれ、飢えた様子のそれは、闇の救済者の陣営に嗾ける為――ではなく。

「うぁ、……ぁああああ……」
「ははは。どうしたどうした、しっかり走れ」

 黒い鎧をまとった騎士たちが囃し立てる囲いの中。
 泣き叫びながら必死で駆けずり回るのは、飢えた魔獣に追い回される、町の子どもたち。
 それは、逃げ疲れた子どもをやがて魔獣に食い殺させる、ヴァンパイアの為の|見世物《日常》。
 そして今それを行う理由は、恐らく猟兵や闇の救済者に対するあからさまな挑発であり、罠。
 総攻撃を前に、闇の救済者の陣営から猟兵を引き剥がす策かもしれなかったが、

「でも、見たいものばかり見る、見たくないから見ないってのは綺麗じゃないの」

 この世界は、美しい景色ばかりではない。
 だからこそ目を逸らすこと無く、彼女は行くのだ。道は遠くとも、進み続けなければ辿り着くことも無い。願いとは、そういうものだから。
 そして爛は《|乖炎戯・魂魄昇華遺離《カイエンギ・コンパクショウカイリ》》の術を用いて『炎帝狐』へと憑依変身を遂げた。最高マッハ10という埒外の飛翔速度と最大125名の人員輸送能力、同じく125の狐火による攻撃能力を備えた、真の切り札。
 これにより、爛は人類砦を含めた戦場となる可能性のある全てへ数分もかからず到達可能となって。

「私を見て! 吸い込まれるほど綺麗よね!」

 地上へ、絆を結んだ者たちへと向け透き通った笑みを向ける。……その美しい炎を魅せるために、“何”を|捧げ《燃やし》ているのかは爛自身にしかわからないが。
 実は意地っ張りな妹狐の献身に応えるように、

「御狐・燦が願い奉る」

 ――今ここに、雷神の力を顕さん。
 不意に立ち込める不穏な黒雲から、天を割って落雷。掲げた刀――『神鳴』に注がれた稲妻は刀身に収まり切れずに燦の躰をも駆け抜けて。

「神鳴――真威解放!」

 激しい痛みに貫かれながら《|真威解放・神鳴《ライトニング・オーバードライブ》》の権能を行使した燦は、凛々しく煌びやかな戦巫女の装束に変身し、紫電を帯びた天女の羽衣を纏っていた。

「罠だろうが何だろうが、食い破ってみせるさ。誰も失ってなるものか」
「ふふ、頑張りましょ?」

 そうして、騎兵の機動力をもはるかに凌ぐ狐の姉妹は、落雷の如き速度で空を駆けていくのだった。



§



 そして、ここにもまた、遮るものなき空を駆けて行く一団があった。
 6本足の馬、スレイプニルの眷属を駆って空を駆けるそれは、『気障な腰巾着』率いる浮遊騎兵。

「ふ……計画通り」

 時間通り、手筈通り、大森林の一角に一筋の“狼煙”が上がっているのを見て、ほくそ笑む。

「人間も、こういう時だけは役に立つものですね」

 家族の、妻や子らの目玉の一つも抉って見せれば、簡単に言うことを聞いてくれる。
 そうして理由さえ与えてやれば、こうして同族を陥れることもやってのける、愚物。

「さて。では、がら空きの本拠地にお邪魔させていただきましょう」

 戦う力を持たない者を。戦士たちが必死で隠し、背に庇い護ろうとしていた|希望《未来》を踏み躙るのだ。抵抗らしい抵抗も出来ない弱者を一方的に甚振り、憂さを晴らす。それはきっとこの世にある全ての者が背負う業なのだろう。
 ――まぁ、己が、とりわけそういった行為が好きな性質だということは認めるが。

「生憎、こちらも求道者ではありませんからねぇ」

 欲求さえ満たされれば、死のうが生きようがどうでも良い。

「猟兵は確かに強い。だが、私には“勝てない”」

 戦いとは、戦力で劣っていようが、最終的に全滅しようが、目的を果たしさえすれば勝ちなのだから。

●囮作戦
「ひぃっ、ひぃぁぁ……」

 死の恐怖に晒された心臓は激しく脈打つも、その甲斐は無くいまや息も絶え絶えになって。
 その小さな子どもらは、乱杭歯の奥から腐臭を漂わせる魔獣に、遂に喰い殺されようとしていた。

『ギィィ……ガtゥtぁ?』

 魔獣の首がズルリと滑り落ちる。
 紫と赤の電がパシリと弾け――遅れて、百を遥かに超える炎の雨が、天から降り注いだ。
 悪趣味な見世物。その囲いの一角を焼き払い、身の丈七尺の魔神『炎帝狐』が高らかに叫ぶ。

「見て! こんなに美しいんだもの」
「猟兵か!」
「まんまと釣られおって、莫迦め。これで貴様らの負けだ!!」
「ち。やはり、始まったか……」

 大地そのものが動いているかのような鳴動。地響きを立てて突撃していく『闇に誓いし騎士』。
 その矛先が向かっているのは、プリュイや燦の仲間たちが籠る、闇の救済者の陣営なのだろう。
 けれど、いまは振り返ることはせずに。

「常夜の平穏を乱す、不穏分子が!」

 助け出した子どもら諸共貫こうと迫るランスチャージの一撃を、残像を残して僅かに身を躱し。
 燦は怪物じみた馬の突撃を馬体ごと切り上げて跳ね飛ばす。と、夥しいほどの血の雨が降った。

「ひゃぁぁぁ……」
「クロスボウ! ガキだ! ガキどもを狙え!!」
「……次から次と!」

 結界術の障壁を張るも、防ぎきれぬほどの矢玉に、身を挺した戦巫女の装束が朱色に染まっていく。

「燦義姉っ! ……こんのぉぉぉおおッ!!!」
「ハッ! 怒りだと? 貴様らはただ、這いつくばって悲鳴を上げて居ればいいのだ!」
「容赦しないわよ!」
「容赦など、ない!」

 闇に誓いし騎士の、その鎧ごと溶かし尽くす勢いで炎を降らせる爛。
 死を賭して猟兵を留めておこうとしたヴァンパイアたちは、それから間もなく死に絶えて、

「ははっ、ハリネズミになっちまう前に何とかなったか……」
「馬鹿ッ! 一旦戻るわよ」

 頑強な猟兵でなければ死んでいるだろう状態、体中に杭のような矢を生やした燦を、爛が𠮟りつける。

「こんなの。シホが……心配しちゃうでしょ」
「ごめんな」

 痛がる素振りも見せずに無理やり矢を引き抜き、聖なる加護の籠められた『清薬』を呷る。
 弱気になることも、立ち止まることも許されないのだ――少なくとも戦いが終わるまでは。

「そいつらを、頼むな」
「………もうっ!!」

 爛は――炎帝狐は半ば放心している子どもらを拾い上げると、上昇し、一時避難させるべく闇の救済者の陣営へと舞い戻る。八つ当たりのような炎で眼下の大軍を焼きながら。
 そして、燦は開かれた町の門のその奥へと、決着をつけるべく進み始めたのだった。

●踊る|人形たち《マリオネット》
「チィィ……鎖を掴んで引きずり倒せ! 地面とキスさせてやれ!!」

 屈強な騎士たちが、鎖につながれ奴隷のような質素な格好をした少女に、多勢で襲いかかっていた。

「全く、正々堂々と戦うのは、主義に反するのですがねぇ!」
「どこが、正々堂々、ですかっ!」

 その奴隷のような姿は、死の安息を許されぬ|宿命の人形《マリオネット》――真の姿を解放したシホ。
 枷の鎖を実体化させ、嵐の如く激しい連撃から身を守る華奢な少女の容に、6本足の馬に跨った騎士たちが一対多数で襲い掛かる姿は、およそ卑劣極まるものであったが、

「殺ったァ!! ……なにっ!?」

 力量差からいえば必ずしもそうとは言えず。
 極太の突撃槍がオラトリオの細い躰を背中から貫いた――かに見えたそれは、シホの残像。
 視覚外の敵をあえて誘い込むと第六感とその聴覚によって見切り躱し。
 巨大な突撃槍の側面に添うようにして懐へ潜り込むと、『聖剣』の剣先が騎士の喉元を正確に貫いて。

「ぐッ……ゴフ……ッ」
「ば、馬鹿な。団長がこうもあっさりと……!」

 舞踏を踊るかのような流麗なステップで、ダンスパートナーを冥府へと送り返したシホは、目に見えて怯む騎士たちへ2丁の『聖銃』に持ち替えトリガーを引く。彼女自身が生みの親である『聖霊樹』に護られた『人類砦』の一角は、シホの戦闘能力を高め不浄なる者たちの動きを鈍らせてもいるようで、

「貴方たちなどに、誰一人として……!」
「くっ、撤退だ……、仕切り直すぞ!!」

 不利を悟れば馬首を返して、一目散に逃走を図る卑劣漢どもの背を、十字の閃光を描いて発射される銃弾が穿っていく。
 バタバタと斃れていく同胞を振り切り、森を抜けるべく天へ駆ける6本足の騎馬。その足に、ジャラリジャラリと鎖が伸びて絡みついた。シホ自身の『枷の鎖』ではない、ちょっと怖気が走る気もするそれは――。

「ありがとね。おかげさまで、とっても楽ができたみたいだわ」

 闇の救済者の幹部の一人『ダンピール』が操る、シホの宿敵が残した“理想”を具現化する鎖だった。

「ま、|交雑種《混ざり者》風情がぁ!!!」
「人間などに尻尾を振りおって、恥を知ぼゲェッ」
「悪いけど、こちらも余裕が無いの。ツマンナイお話はこれから行く地獄でどうぞ」

 棘付きの鉄球――いわゆるモーニングスターが兜諸共ヴァンパイアの頭部を砕いて黙らせた。
 そうして攻撃を仕掛けたのは『ダンピール』だけではなく。彼女が率いるダンピールのみで構成される少数精鋭部隊も共に、逃げ腰の騎士たちを追撃しては戦果を拡大させていった。

「ご無事で何よりです。……襲撃を、予測されていたのですか?」
「さて、どうかしらね。それより、此方にまで戦力を回す余力はないかなと思ってたんだけど……私たちは、ひょっとして勝ってるのかしら?」

 戦闘が終わって、シホがあらためて周囲を確認すると非戦闘員の姿はなく。恐らく予めどこかに避難させ隠れさせているようだった。そして、聖霊樹が護る有利な地点へのヴァンパイアの誘引……。

(どうして……?)

 疑問に思ったシホは、ダンピールの態度に違和感を覚え、やがてあるモノに目を留めた。
 木々の陰に隠れるようにして横たわる、男たちの……恐らくは、遺体。『闇の救済者』の中では見覚えのない彼らは、既にほとんどが息絶えていたが。

「今すぐ治療を」
「だめよ」
「ですが。まだ息がある方も……」
「……彼らはヴァンパイアと勇敢に戦って、そして……戦死したの」

 微かに息がある者を見つけて、駆け寄ろうとするシホをダンピールが遮る。その苦い表情の理由は、こうも状況が揃えばシホにも察せた。

 闇の救済者を大森林からおびき寄せる罠。
 まるで人類砦の位置を知らせるような狼煙。
 それを確認するやいなや、即座に突入しようとていたヴァンパイアの軍勢……。

 それらが示すのは、彼らが内密の内に“処分”せねばならない『人類への裏切者』だったという事実。

「ぅ……ぐ……」
「……どいて、ください」
「………はぁ」

 今度は止められることなく、シホは苦し気に呻く男の傍に駆け寄って膝をつく。

「待っていてください。今、癒しを……」
「ま、まち……は……」

 治療しようとするシホの手を、男が血まみれの手で掴む。死にかけとは思えない強い力。呼吸もまともにできない喉から絞るように発せられた問いに、シホは偽ることなく答えを返す。

「大丈夫です。私の仲間たちが、解放の準備を進めていますから。だから……」
「そ、ぅか……な、ら……」

 俺だけが、地獄、か……。
 かなしい、なぁ……でも、いいか……。

「………」

 そうして、最後にシホの口から伝えられた希望に、口元にうっすらと笑みを浮かべて。
 男は、静かに息を引き取ったのだった。

●五凝六玩のうさぎ
 服用、または付着すると石化してしまう『石化ポーション』。
 火炎放射器のような形状で特殊なセメント粘液を噴射する『セメント噴射器』。

「ガハハハ! さぁ、野郎ども殺戮の時間だ――ッて、何だぁ……このうさぎは!?」
「ひゃわわわわ! こ、来ないで下さーい!!」

 それらを開通した“坑道”から出てくる『闇に誓いし騎士』たちへ浴びせていく。

「うぉぉぁぁおおおお!!? な、何だぁ……このうさぎは!?」

 メガリスの捕食によって、吐く墨が生物をドロドロに固める特殊塗料に変わった巨大蛸『ペイントオクトパス』が、動きが鈍った騎士たちに更に墨を浴びせ、触手を伸ばす。
 イタズラ好きな『カーボンフェアリー』――炭素冷凍妖精とも呼ばれる伝説の生き物が、瞬間冷凍でカチンコチンに凍結させていった。

「さらにさらに!!」

 テフラは狼狽するヴァンパイアたちにちょっと気分を良くしながら、《|蝋燭サンタ『キャンドルサービスメイカー』《キャンドルサンタ・オン・ザ・ステージ》》を召喚する。

「キャンドルサービスメイカーさん召喚なのですよ~♪」

 蝋燭サンタは大きな袋から『溶けた蝋塊・蝋触手・蝋スライム』を騎士たちへとプレゼント。騎士たちの邪悪な瞳が輝くも、《屠殺旋風》が吹き荒れることは無いように絡めとる。蝋の壁を作って、周辺へ被害が及ばないように守りつつ、まともな戦場から隔離していく。

「な、何だぁ……このうさぎは!? ……この異様なまでに周到な……この……」

 状態異常(固め)への異常なまでの執着と熱意が、『闇に誓いし騎士』たちを恐怖へと叩き落とす。

「はぁはぁ……うらやましい……」
「……ッ!??」
「???????」

 侮蔑でも、怒りでもない。
 向けられる理解不能な感情に、騎士たちは心の底から恐怖した。
 戦って死ぬことは、恐ろしくない。オブリビオンへの憎悪さえ、彼らにとっては心地よいものである。
 何なら、己の所業の報いとして串刺しにして晒された所で、これほど狼狽することは無かっただろう。
 だが……、

「……こんな、こんな終わり方は、嫌だッ!!!」

 理解不能な変態の餌食になることまでは、想定していなかった。

「皆さんも頑張っているのです……わたしも頑張らねば……!」

 だがちょっと頑張り過ぎだ!

「うぉぁああああ! 触手がッ……ヤ、ヤメロォォォ!!!」

 石化、セメント、凍結、触手、蝋、スライム――
 別の意味で地獄絵図と化した闇の救済者の陣地内で、キャンドルサービスメイカーが友軍に呼びかけてその場を盛り上げようとする。

「みんな~♪ ノってるぅ~?」
「お、おー?? おー!!!」

 アイドルな彼女の激励に、遠巻きに見守る少女らが応える。どこか逃げ腰に見えるのは、なんだか引き攣った表情なのは、きっと奇襲されそうになったのがよっぽど怖かったからだろう。

「ひゃわわわわ! あ、あんなところにまでスライムと触手が? どきどき……」
「こ、殺してくれぇ……せめて、オブリビオンとして……この大地に呪詛と流血ォォ……」

 うさぎに比べれば絶対まともそうな狐の少女を見て、慈悲を乞うてくる騎士たち。

「……え、ええと」

 焔はそれからそっと目を逸らし。
 白狐の操る炎――蒼い狐火を強化して、範囲攻撃で纏めて焼き払う。『残虐な戦闘狂』は死んだ。

「――……ああ、ありがとう……少女よ……」

 テフラの|呪縛《固め》から解放され地獄の闇に還っていく騎士たちに、なぜか甚く感謝されながら。

「テフラさん、皆を守ってくれてありがとう!」

 焔はやっぱりその声に耳を塞ぎ、とりあえず良い笑顔でテフラの功績を讃えたのだった。

●毒りんごのタルトにかぶりついて
 赤い赤い、脈打つ不気味な血管の大樹。
 聳え立つそれは大地へと流れた血を吸い上げ、第二層――“始祖ヴァンパイア”たる『ライトブリンガー』へと注いでいる『天蓋血脈樹』だ。
 命貪るあまりにも冒涜的な光景から目を背け、俯く人々の前には、『闇に誓いし騎士』の一団。

「おいたわしいことじゃ、我が主は、笑えなくなってしまわれた……」

 死に瀕した人間の、情けない悲鳴が大好きだった我が主。
 けれど、愚か者どもはその慈悲も理解せずに、こともあろうに恩を仇で返したのだ。
 闇の救済者、そして猟兵という狂人共の所為で、子どもを魔獣に食わせても、永く磨き抜かれた責め苦で人が壊れていく様を見ても、以前のように笑えなくなってしまったのだ。

「なんてひどい、理性のない、理解力のない連中なのじゃ!」

 激昂する老ヴァンパイアの声に、広場に集められ、地べたに跪かされた人々の肩がびくりと震える。

「どうしようもない、醜い、お前たちを|支配《救済》してやろうというのに……何故、それが分からぬ。なぜ、せかいの理を受け入れられぬのじゃぁ……」

 狂った老ヴァンパイアの、独りよがりで理解不能な言動。
 抗う力も持たず、押し付けられる理不尽に震えることしか出来ない人々を見下ろし。

「まぁ、よいわ。我ら何度でも、無限に蘇り……彼奴等のその精神が摩耗し尽くしたとき。虚しい繰り返しに飽いた時に、彼奴等がお前たちを見捨てる時が来るじゃろうて……」

 最後に、甘い甘い果実を味わおう。
 希望を抱いてしまったが故に、より深くなる失望を。腐臭漂うほどに、煮詰めたような甘い絶望を。

 そうして、『卑劣な老軍師』が虐殺の宴を始めようとした、その時。

「う、ああああ……やめてください。たすけてくださいいい……」
「むぅ?」

 泣きじゃくりながら、粗末な剣を振るう青年が、仲間を――群衆を無差別に殺し始めた。
 悲鳴が上がり、蜘蛛の子を散らすように逃げようとする人々を、背中から切り殺す。

「ふぉっふぉっふぉ……“同族殺し”か。汚らわしい人間にお似合いじゃて」
「妹が、いたんです。俺の目の前で、嬲られて、殺された……俺が、殺してあげれば、よかった……」

 青年は命乞いでもするかと思えば、善意から同胞を殺しているらしい。あまりに滑稽なその所業に、老軍師も思わず吹き出してしまう。そんなことをしても、何の意味も無いというのに。いずれにせよ魂は巡ることなく、永劫の苦痛に囚われたままだというのに。

「狂っておるのぅ……お主は、良い|奴隷《オブリビオン》になれそうじゃわい」

 剣を持つが、まるで様になっていない青年に向け、老軍師が近づいていく。
 ――が、その足がピタリと止まり。

「……これは、血の匂いが……?」
「間抜けが」

 蛇のような瞬発力を以て、青年剣士が老軍師へと斬りかかった。

●マリオネットに花束を
「本当に……救いようのない」

 虫酸が走り、反吐が出るような惨状を作り出す|過去の残骸《オブリビオン》。
 エリカ・タイラー(騎士遣い・f25110)は半壊した『からくり人形』の操り糸をパージして、悪あがきしてみせる『卑劣な老軍師』とその近習を迎え撃つ。《マリオネット・クラフト》で模倣した人形は多少造りは荒くとも、遠目に敵の目を欺くには必要十分だったが。

「猟兵が……潜んでおったか!!」
「どこにでもいますよ。どこにだって……行ってみせる……行かなければならない……ッ!!」

 十指から伸びた糸が戦闘用のからくり人形『ビルト』へと繋がり、手繰る糸が意思なき人形を闘争へと駆り立てる。青年剣士に貫かれ、既に死に体となった老軍師には目もくれず、一滴でも多くの血を流すべく襲い掛かる残党を捻じ伏せていく。

「その道の先が、どれだけ無様でも、血に塗れても、惨めでみっともなくたって……!」

 細い足、華奢な体躯。屈強なヴァンパイアと比べるべくもない、弱い存在だった過去の自分。
 奪われたもの、失ったもの。
 その行く末を見届けるためにも、探し続けた答えを得るためにも、エリカは進み続けるのだ。

「ならば我らはそれを殺そう。生きていれば捕らえて殺し! 死んでいればその死体を辱めようぞ!」
「相変わらず芸のない……もう、そんなつまらないことしか、貴様たちには出来ないのだろう?」
「小娘がッ! 良いか。そうすることで冷静になった愚か者どもは、きっと思い出す。恩を思い出す。尊い者に尽くす喜びと、それに逆らった時どれほど恐ろしい目に遭うかを、思い出すのじゃぁあ!!」

 猟兵が介入する事態も想定していたのだろう、激昂する老軍師の指揮が無くとも、単純明快な戦術目標を――人類の虐殺を為すべく、『闇に誓いし騎士』が広場へと突撃する。

「……ォォォォオオオオ!!!!」

 その流れを阻むように、一筋の青い炎が立ち上っていた。
 否、炎は一つではなく、呼び合い、共鳴するように、決して絶えることなく燃え上がる。
 闇の救済者と呼ばれる戦士たちが剣を、槍を――自らの武器を手に、残虐な支配者へと叛旗を翻す。

 邪悪なる瞳が輝き、巨大な槍に貫かれ、漆黒の霞に阻まれ、仲間のその命が吹き消されたとしても、膝を折る者は居ない。

「た、隊長……あと、は……」
「ああ、貴様は、良くやった」
「……剣、を……俺の……どうか……」

 死した戦友の残した意思を拾い、蒼い炎はより一層激しく燃え盛る。

「……何だというんじゃ」
「それが分からないから、お前たちは負けるのさ」
「ギィッ……ガァァアアア……ッ!」

 老軍師の胸に生えた刃が、赤い雷を弾けさせた。
 潤いを失い真っ黒に焦げたヴァンパイアは、大地に倒れ伏すと、やがて灰と崩れて風化していく。
 それが、『卑劣な老軍師』の最期だった。

「いいか! これ以上の犠牲は不要! 死を正しく恐れ、生きる為に勇気を持って戦え!」

 血まみれの天女――燦が革命の聖女の如く振舞って、戦士たちを鼓舞しようと檄を飛ばす。
 ヴァンパイアに支配されていた町の戦闘はほぼ趨勢が決定し、残敵の掃討戦に移ろうとしていた。



§



 丘の『闇の救済者』の陣地を巡る戦いもまた終盤を迎え、闇に誓いし騎士の攻撃は、燃え尽きる前の蝋燭のように最後に眩いまでの苛烈さで、その小さな領域を呑み込もうとしていた。

「市街戦でなければ、こちらも遠慮はしない」

 エリカがダークセイヴァーの『ヴァンパイア』を殺すために手に入れた力。『シュヴェールト』――異世界の剣。そんなキャバリアで相対しても、油断は決してしてはならないだろう、捨て身の特攻。

 大海に浮かぶ小島へ向けて迫る、凄惨な殺戮の波。
 その荒れ狂う海の中で、エリカは不思議な光景を目撃した。

「決して辿り着くことのない地平線だ! それは、正気を狂わせるまやかしに過ぎぬ……!!」
「ぎゃぁぁぁああああッ!!!???」

 揺らぎ、掠れゆく、頼りない赤の|極光《オーロラ》が降り注ぐ丘の一角で。
 正気を失い狂ったヴァンパイアたちが、無差別に同族をも殺戮している――地獄のような戦場。

「何故、理解らない……理解ろうとしない。それは、より深い苦しみへと堕ちる為の備えでしかない!」
「バ、バカッ! 敵は、あっち……マ゛ッ!!」

 一段と強力な『闇に誓いし騎士』たちが、凶行に惑う騎士たちを散々に打ち砕いて回っていた。

「例えそれが真実だったとしても……」

 シュヴェールトに迎撃の態勢をとらせ、エリカがポツリと呟く。
 高く飛ぼうとすればするほど、悲惨な墜落が待っているだけなのだとしても。
 深くつながればつながるほど、引き裂かれた傷は醜く、己を苦しめるだけなのだとしても。

 どれだけ進もうとも、報われることが約束された道ばかりでは、無くとも。

「足を止める理由にはならない……人の願いとは、そういうものでしょう?」

 エリカの|剣《シュヴェールト》が狂った『闇に誓いし騎士』を斬り伏せる。
 同胞の血と呪詛で赤黒く変色した『愚者の丘』で、血だまりに沈む騎士は最後に手を伸ばしていた。

「……で、あるか」

 永遠の夜を孤独に彷徨う死者へと、注ぐ光。
 死の安らぎすら奪い去られた不死者に、いつの日か安息をと願う――凍てつく夜を彩る、光の帯。

 それは伸ばした指の先からすり抜けるように、ついに力尽きたかのように、ふと掻き消えていく。
 それでも、ヴァンパイアの一部は狂ったように同族を殺し続け、この世に地獄を作り出し続ける。

 ――かくして、猟兵によって起生回死の策を封じられ、指揮をとりうる者を失ったオブリビオンの軍勢は、ろくな連携もとれぬまま、烏合の衆と化して猟兵と闇の救済者に討ち取られていくのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2023年05月19日


挿絵イラスト