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ようこそ美しき未知の人

#サムライエンパイア #トンチキシナリオ

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#サムライエンパイア
#トンチキシナリオ


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●scene
「あ……あれは何じゃ!?」
 なごり雪のちらつく仙台藩の城下町。そこから見える山の一角に、突如として豪華絢爛で素敵なお城が出現した。
 何事かとざわつく民たちのもとへ、さらに理解しがたいアイツがやってくる。
 パカラッパカラッパカラッ――(馬の蹄の音)(ここだけ美しいフォント)。
「は……白馬だよ、おっかあ! 城から白馬に乗った河童がきたあ!」
「およしよ熊五郎。白馬に乗った河童なんかいるわけが……白馬に乗った河童だーーーーーーー!!!!!」
 そう、河童である。
 それもノーマルな河童ではない。
 白馬に乗った白スーツの、とてもかっこいい――河童――!!
 河童は前髪をかきわけ、仙台の街並みを眺めると、朗々と賛辞を送った。
「嗚呼、美しい……美しい城、美しい雪景色、そして美しいこの私。妖怪界いちの伊達男たる私が支配するに相応しい地だ」
「な、なんと伊達な御方なんだ……河童なのに!」
「お召し物が伊達すぎる……! ははーッ!」
 その気高きオーラに思わずひれふしてしまう民たち。
 それを見た河童は、スタイリッシュにスッと右腕を上げた。
「よろしい、正直な貴君らには褒美をとらせよう。出でよ、我が美しき白馬たちよ!」

●warning
「馬は好き? 馬は世界中のヒトから、その造形美と神秘性を愛されてきた動物だ。僕も大好きだし、オブリビオンも好きみたいだね」
 鵜飼・章(シュレディンガーの鵺・f03255)は私物の生物図鑑をぱらぱら捲ると、最新のページを開いて見せてきた。
「でも今日のお客さんは、河童」
 河童。
 だがそこに描いてあるのは、少女漫画のような薔薇とキラキラをしょった、とてもスタイルがいい、美形の…………いや、紛れもない河童だった。
「アレンジ歓迎不明点お任せNGなしで描いたろ」
「大切な図鑑に虚偽を記載してどうするのさ。参照予知に忠実に描いたよ」
 鵜飼絵師がぷんぷんしているので、実際にそういう河童らしい。
 性格も見た目通りなのであろう。この世で一番美しい私が、徳川に代わってサムライエンパイアを美しくすべきだ、という迷惑な思想を持っている。
「自分磨きが好きなんだって。可愛いね」
「……お前、もしかして何にでもかわいい~って言っちゃうタイプか?」
 そんな河童が善意で(?)民たちにプレゼントしたかわいい白馬だが、やはり主に似て、高飛車な気質らしい。
 『下々の民に我を乗りこなす資格はない……』とばかりに、街中で暴れまわっているという、あまりかわいくない事態になっているそうだ。
「まずはこの白馬たちをなだめないとね。そのあと城に乗りこんで、美しさバトルで河童をおしおきしよう」
「美しさバトル!?」
「うん、美しさバトル。うまく仲良くなれたら、白馬たちがお城まで乗せていってくれるかも。それじゃあ、仙台へ妖怪退治に行ってらっしゃい。僕も手伝えればよかったんだけど……」
 留守番で正解かなと、困ったように笑って、鵜飼は猟兵たちを送りだすのだった。

 ……美しさバトルについての説明はなかったが、まあ、なんとかなるだろう。


蜩ひかり
 蜩です。
 よろしくお願いいたします。

●概要
 ナルシストな河童と美しさバトルを繰り広げるスケール小さめなコメディシナリオです。
 美しさに自信がある方も、そうでない方もたぶんなんとかなるので、気軽にご参加いただければ幸いです。

●大まかなシナリオの進行
 【一章】暴れ馬を手懐けます。
 【二章】???(集団戦です)
 【三章】河童に勝利すれば成功です。

 プレイングの指針のようなものは章の導入で説明しますので、更新をお待ちください。

●プレイングの送信
 各章の開始時に、導入として誰も出てこないシーンを追加します。
 送信はそれまでお待ちいただけますと幸いです。

●同行者/描写について
 今回は【🔵が成功数に達し次第、次の章に進みます】。
 お1人様での参加推奨です。
 描写人数は先着6名様前後を予定しておりますので、あらかじめご了承お願いいたします。
 各章のフラグメント投稿者の方は、先着6名以降でも極力採用させていただきます。
 二章以降は先着ではなく、一章からの継続参加の方が優先枠になります。

 以上です。
 プレイングをお待ちしております!
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第1章 冒険 『暴れ馬の群れ』

POW   :    馬を力尽くで止めよう。どんと来い暴れ馬!

SPD   :    馬の背に飛び乗ろう。動きを操れないか試してみる。

WIZ   :    馬の進路や目的地を推測して罠を張ろう。

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●1
 テレポートで現地にやってきた猟兵達が見たものは、往来を我が物顔で行き来する美しい白馬たちであった。
「ヒィン(なんだこの着物は。美しさが足りぬわ。我がもっと美しくしてやろう)」
「ひぃ、白馬どの、売り物をビリビリ破くのはおやめくだされ!」
「ヒッヒィン(ほう、美しい我がこの美しい白き粒を食してやろう)」
「や、やめてくれー、炊いたばっかりのお米が!!」
 阿鼻叫喚である。
 仙台が丸ごとモダンアートになってしまう前に止めないと!

 ……でも、現代社会を生きる多くの人は、暴れ馬の正しい手懐け方とかよくわからないと思う。我々、武将とかじゃないのでしょうがない。
 というか、よくわからない。すまん。グーをグルグルしてみてもよくわからないでござる。
 グルグルして得た情報は『暴れ馬は暴れると思って乗れ』であった。
 ド根性だ。だが、安心してほしい。
「ヒヒィン……(まったく、どいつもこいつも美しくない。我を乗りこなすに相応しき者はおらぬのか……)」
 この白馬は美しいものに目がない。
 大切なことなのでもう一度言う。
 この白馬は、美しいものに目がないのである。
ステラ・アルゲン
白馬とは懐かしい。我が主が乗っていた馬が白馬でしたから
……ふむ、ちょうど馬を探していた所です。白馬をスカウト……いえ口説きに行きましょうか

【情報収集】にて暴れる白馬の内、もっとも速く走るメスの馬を探します

こんにちはお嬢さん。貴女は随分と美しい走りをなさるのですね。この私を運んでくれる馬となってはくれないでしょうか?

【礼儀作法】と【優しさ】にて話しかけ【誘惑】する
私は女性の身ですがこの容姿はよく綺麗だと言われます
それを存分に発揮してこの馬を口説き落としましょう!



●2
「ヒヒィン(我々を差し置いて道を通るとは頭が高い。控えよ、下々の民よ)」
 暴れ白馬が通行人を蹴散らし、堂々闊歩する仙台の街。嗚呼、誰か止めてくれる者はいないのか――そう思い、民たちが怯えながら道をあけていた時だ。

「いったいなんの騒ぎですか?」
 ま、眩しいッ!
 甘味処の中から、星と月と太陽がいっぺんに出たような輝きが溢れている。
 まさに超新星。いや、美ッグバンだ。

「ス、ステラ様! 危険です、どうかお下がりください!」
 甘味処で働く仙台娘たちが悲鳴をあげる。
 彼女たちが熱いまなざしを送るのは、白と蒼の礼服に身を包む、澄んだ眼差しの美青年だ。
 まるで絵に描いたような貴公子、その名はステラ・アルゲン(流星の騎士・f04503)。だが、れっきとした女性である。それはそれで喜ぶ層もたぶんいるが。
 ステラは悠々と通りへ歩み出ると――まあ最初から美的演出として(ついでに仙台の銘菓をいただきつつ)待機していたのだが――往来を走り抜ける白馬たちへ視線を向けた。
「ふむ、白馬とは懐かしい。ちょうど馬を探していた所です」
 今は亡き主との日々を懐かしみ、ステラは眸を細めて微笑む。
 ちょっと回想するだけで民がバタバタ倒れた。
「お嬢さん、貴女はどの馬が一番速いとお思いになりますか?」
「ひっ! あ、あの馬ですかね……」
「違うわ、あの馬よ!」
 仙台娘たちの多数決により、一番速い馬が決定した。
 なるほど、確かにいい馬だ。しなやかな筋肉、頭ひとつ抜けた速さで駆けている。
 あのお嬢さんにしましょう。ステラはそう決めると、暴れ馬の進行方向に立ちふさがる――!

「こんにちは、白馬のお嬢さん」
「ヒヒィン!(邪魔よ優男、轢き殺されたいのかしら?)」
 なかなかのじゃじゃ馬のようだ。
 だが。
 ステラは避けもせず、その場へひざまずき、そっと手を差し伸べた。
 思わず急ブレーキをかけた馬へ、にこりと朗らかに微笑みかける。
「貴女は随分と美しい走りをなさるのですね――この私を運んでくれる馬となってはくれないでしょうか?」
 その瞬間――恋の流星がじゃじゃ馬娘(文字通り)のハートに突き刺さった!
「ブルル……(し、仕方ないわね。乗せていってあげてもいいわ。綺麗な貴方なら私のご主人様にふさわしいわ!)」
「有難うございます。よろしくお願いしますね」
 華麗に白馬に飛び乗ったステラは、颯爽と往来を駆け抜けていく。
 白い髪を風になびかせる姿――まさに流星だったと、のちに仙台の民は語るのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

出水宮・カガリ
※アドリブ歓迎
なんと。美しいが気位が高すぎる馬か
人がへつらうほど、とは…困ってしまうだろうなぁ

白馬よ、白馬よ
うむ、声を聞いてくれてありがとうな
時に、名はあるのだろうか
白馬だと、他の…お前に言わせれば、美しくない馬と、区別がつかないのでなぁ
お前だけを呼べる名が、欲しいのだが(魔性の目で見つめる・誘惑)

なるほど、美しいものに乗ってほしいと
お前から見てカガリが美しいかはわからないが
これでも城の表を飾っていたものだ、美しさには些かの自信がある
このように傷持つ身だが、お前は背に乗せてくれるだろうか
(美しい装飾を持つ本体【鉄門扉の盾】を脇へ置き、頬に手を伸ばそうとする)(確定ロール回避)(大事)



●3
 一部は大人しくなった暴れ白馬たちだが、まだまだ暴れたりないようだ。
「ヒヒィィン!!(何よ、あの子だけ抜け駆けしちゃって!)」
「ブルル……(我を差し置いて美しい主人を見つけるとは……)」
 美しくない嫉妬心にかられ、更に荒ぶる白馬たちを、穏やかなまなざしで見つめる男性がいた。紫の瞳をまん丸くして、青年は往来をしげしげと眺める。

「なんと。あれが例の、美しいが気位が高すぎる馬か」
 ぱかぱか。
「人がへつらうほど、とは……困ってしまうだろうなぁ」
 ぱかぱかぱかぱか。
 どう止めてくれよう。青年――出水宮・カガリ(荒城の城門・f04556)がむむむと考えている間にも、白馬、彼の目の前を何往復もしている。ヤドリガミってこういうマイペースな人(?)が多い。
「白馬よ、白馬よ」
「ヒヒン?(私のこと? 私こそが最も白馬らしい白馬ですわ。ところでその……盾? 素敵ね)」
 一際高飛車そうな白馬の奥様が釣れた。どうやら、彼の本体である門扉が気になるらしい。
 年代もので傷もあるとはいえ、城の表を飾るに相応しい、洗練された装飾が施された品だ。
 繊細かつ優雅。それでいて堅牢たる佇まいはカガリの容貌にも反映されており、彼自身、そんな己の見た目が心密かに誇らしかったりする。
「気に入ってくれたのか? いやはや、照れるな」
 カガリは声を聞いてくれてありがとうな、と、嬉しそうに微笑む。
 気位の高い白馬だって、温かく対応されれば悪い気はしない。
「時に、名はあるのだろうか。白馬だと、他の……お前に言わせれば、美しくない馬と、区別がつかないのでなぁ」
 カガリはすまなそうに頬をかいた。彼はものを覚えるのがとても苦手だ。おじいちゃんと言ってはいけない。
 その時、穏やかであったカガリの瞳が急に妖しい輝きを帯びた。
 そう、まるで、独占欲の強い束縛彼氏のような――!?
「お前だけを呼べる名が、欲しいのだが――(イケボ)。」

「ヒヒィンッ!!!(名前なんて好きに呼んで! あ、貴方という城に私を閉じ込めてェーーーーーッッ!)」
 決まったァ!!!
 ほんわかオーラを放っている人が、危険な香りとのギャップで相手を殺す美の夢想城壁だ。
 その瞳に吸い込まれた対象は、もう外には出られない――(※実際の夢想城壁はとても安全な技です)。
「お前から見て、カガリが美しいかはわからない。このように傷持つ身だが、お前は背に乗せてくれるだろうか……」
 がこん。
 カガリは鉄門扉の盾を民家の壁へ立てかけた。そして、白馬の頬に手を伸ばそうと――(確定ロール回避)。
「う、美しい!」
「よくわからないけど確定ろうるされたぁい!」
 見ていた民たちが倒れ伏す。
 刻まれた傷こそ歴史の重み、人間の厚みである。例え美しかろうと相手の意志を尊重しようとする、その心が何より美しい!

「ヒヒィン(感動しましたわ。私も貴方の美しさに倣いましょう!)」
 そして白馬は、カガリに自ら背を向ける。
 いつでも乗れと、そう言うかのように――(確定ロール回避)。

成功 🔵​🔵​🔴​

ユエ・イブリス
※ナルシストではありません

――君、美しき白毛の君よ
何をそんなに憂いているのか
霊峰の峰に溶け残った雪にも似た、美しき君よ

●作戦
本気で口説いて落とす
視界に入るよう視線の高さに浮遊して待機
言葉のひとつひとつを丁寧に、礼節を以て
もし蹄の攻撃などがあっても【第六感】【見切り】で予測し回避
牝馬でも雄馬でも審美眼があるならば耳を傾けてくれよう

心を落ち着け、私を背に乗せてはくれまいか
銀の鬣をそんなに逆立ててはいけない
歯をむき出しては気品が損なわれてしまう
君にそんな姿は似合わないよ

正面から鼻筋にかけて撫で【誘惑】
流し目からの微笑みを向け
……言葉はこうして使うものさ
心を絡め取る【呪詛】のようにね

さあ、目を閉じて



●4
 ――君、美しき白毛の君よ。
 何をそんなに憂いているのか。
 霊峰の峰に溶け残った雪にも似た、美しき君よ――。

「な、何だ!? どこからか圧倒的美文が聴こえる……!」
「ああ、聴くだけで心が雪解け水で洗われるようだわ……!」
 仙台の民たちは感動の涙を流してその出所を探すも、詠み人を見つけることができない。
 それは馬たちも同様であった。
 ほとんどの馬がこの美文の主を探して駆けていく中、ある雌馬は、眼前に浮かぶものを眺めていた。

 はて、これは何だろう。
 蝶のようで蝶でない。ひとの形をしてはいるが、それにしては小さいような。
 雪景色に映える白と銀。柘榴石の瞳は長い睫毛に縁どられ、上等な宵闇色の靴と衣が、長い手足を包んでいる。
「心を落ち着け、私を背に乗せてはくれまいか」
 いや、正体などどうでも良い。美しい――!
 今すぐイェカを見て『嘘……』となってほしいのだが、このユエ・イブリス(氷晶・f02441)という男性、29.6cmである。これはA4用紙より小さい。
 だが、気取らずとも溢れる天性の気品は、ユエの何倍も大きい白馬の瞳さえ釘づけにしていた。
 彼のまっすぐな目線が、発する一言一言が、種族を超えた礼儀と愛にあふれているのだ。
「ヒヒィィン!(そんな綺麗な目で見ないで! どうせ遊びなんでしょう。私なんて、皆に比べたら美しくないもの……)」
 白馬、めんどくさい事を言いだした。
 どうやら、ちょっと自信が弱めな女の子だったらしい。
 錯乱し、蹴り飛ばそうとしてきた白馬の蹄を優雅にかわしたユエは、そんな彼女にも慈愛のまなざしを向ける。
「銀の鬣をそんなに逆立ててはいけない。歯をむき出しては気品が損なわれてしまう」
 鼻筋をやさしく撫でられた白馬は、あまい声で脳が痺れていくのを感じた。
 君にそんな姿は、似合わないよ――耳元で囁かれては、もはや暴れる気力も失せ果てて。
「ヒィン……(だ、駄目。私、貴方に禁断の恋をしてしまうわ……)」
「そう――不安なのだね。私は戯れで女性を口説いたりはしない。失礼に値するというものだ」
 ユエの流し目に射止められた雌馬の瞳が、涙で蕩けている。

「君と共に往かせてはくれまいか。他でもない君とね。その憂いを帯びた瞳を、誰より美しいと感じたのだ」
 ――言葉はこうして使うものさ。
 妖精の甘い囁きは美しい毒となりて、白馬の傷ついた心に染み、やさしい呪いのように魂を絡めとる。
「ヒィンッ!!(嬉しい……私、貴方に相応しい走りをしてみせる!)」
「認めていただけたかね。光栄だよ。さあ、目を閉じて――」
 恐る恐る落とされた、白馬のふるえる瞼。ユエはその上に指を添え、そっと――。

 ちょっと待て。
 私はなぜ白馬とフェアリーのピュアラブストーリーを真剣に書いているのだろう。
 美しさは人の正気を奪う、おわかりいただけただろうか。
 ユエ・イブリス――いったいどこまで本気なのだろうか。恐ろしい子……!

成功 🔵​🔵​🔴​

花剣・耀子
えぇ……。
いや、うん、はい。
美しくあるよう努力はしましょう。
場所に合わせて着物でいくわ。

……でもそういうのって、その場の空気に流されるところが多いと思うのよ。
雰囲気を盛り上げればなんとなく丸く収まるのではないかしら。
ソフトフォーカスが掛かるようにうっすらスモークを焚いたり、
いい感じのところでいい感じのBGMを流すとしましょう。
ライティングも大切ね。良さげな所でピンホール透過光を点けてキラメキを。
まあほらあたしの武装にエンジン付いているから、だいたいのものは用意できるわ。たぶん。

そんなこんなで準備をして、ええと。えー……。
そこの馬、大人しくしなさい。


最終的に腕力でなんとかするわ。
力イズパワーよ。



●5
 観衆に紛れ、一連の光景を見物する少女がひとり。
 黒耀石の角と髪に合わせ、花柄の黒い和服に刀を携えた、凛とした佇まいの娘だ。知的な印象に磨きをかける眼鏡の下で、青い眸が冴え冴えとひかっている。
 ざわめく通りを怜悧なまなざしで見据える、その彼女は、今。
「……えぇ……」
 ――受ける依頼間違えたかなぁと思っていた。

 いや。
 ……うん、はい。
「想定の範囲内といえば範囲内ね。出発前から様子がおかしかったもの」
 馬を本気で口説く気の狂った猟兵達が見られるのもたぶんここだけだろう。
 城の方角へ消えゆく白馬達を見送った花剣・耀子(Tempest・f12822)は、言いたい事を30個ぐらい我慢して、持参した荷物の中を探り始める。

 でも、そういう常識的な感覚、大事だと思う。今回は特にツッコミが不足気味なので
「雰囲気を盛り上げればなんとなく丸く収まる、つまりそういう事ね」
 って、完全に場の空気に流されていた。常識が儚い。
「な、なんだこの煙は! 火事か!?」
 耀子が何かのスイッチを入れた瞬間、もくもくと出てきたスモークが広がり、うっすらと通りを包んだ。これにはさすがの白馬たちも驚き、一時停止する。
 ざわつく街に、演歌風味の渋いイントロが響いた。
 任侠映画でも始まりそうな、実にいい感じの空気だ。美しい音の出所を探そうとまた走り始めた白馬たちの耳に、いい感じの声が届く!
『えー……そこの馬、大人しくしなさい』
 しなさい……。
 なさい……。
 さい……(美しいエコー)。
「な、なんだあの娘は……! 美しい!」
 スモークの中に立つ耀子を見た民衆たちがざわめく。
 な、なんということだ。
 本来ならここで耀子の美しさを余す事なく報告書に記さねばならないが、スモークでいい感じにソフトフォーカスがかかって――顔がぼんやりとしか見えない!!
『さもなくば……斬るわ』
「ブルルルル!(ま、眩しいッ!)」
 耀子が刀を抜く。
 ピンホール透過光(美形がよく放つ十字型のキラキラのことだ)で刀身がキラメいて――やっぱり顔が見えない!!
「ヒッヒッフー(このあっしが! 美しすぎて直視できないだってェ!)」
 白馬は震えた。
 審美眼レベルが足りない我々は、耀子様のご尊顔を拝見する事すら許されないのだ。
 ちなみに、全ての特殊効果は耀子の提唱する『エンジン万能論』によってアレコレされた武装から生じているものだが、何をどうしたのかは彼女の脳の筋肉だけが知っている。
 その隙に馬に飛び乗った耀子は、刀の鞘を鞭代わりにして、馬の身体を軽く叩いた。
「大人しくなったようね。城まで案内して頂戴。また狼藉を働いたら……分かっているわね」
「ヒヒィン!(は、はい、姉御!)」
 気のせいだろうか。白馬、ちょっと嬉しそうだ。

 メカニックなのに、筋肉要素のほうが強い――だがそんな君が美しい。
 筋肉を鍛えると頭もよくなるし美しい。
 力・イズ・パワー。力・イズ・ビューティフルだ!

成功 🔵​🔵​🔴​

アルバ・アルフライラ
…何だこの駄馬は
我が従者のが乗り物としてずっと良いと思うのだが…
ふん、然し馬鹿にされては些か心外よな
我が玉体ほど、至高のものはそうなかろう?
光を纏えば更に輝きを増すというものよ
ふふん、私は寛容故な
良いぞ許す――存分に眺めよ、そして崇めるが良い

美しさのみで挑むのも吝かではないが…念の為の保険は必要か
【影なる怪人】を用いて白馬の動きを五感をもって追跡
地面や建物に予め魔方陣で罠を設置
誘導弾も用い、所々に設置した罠で馬が良い感じで誘導されたならば
姿が見えた所で高速詠唱、麻痺の魔術による捕縛を試みよう
命迄は奪わぬから安心せよ
捕縛後は持ち前の存在感と誘惑で白馬の篭絡を図る

…さて、お前には私がどう見える?



●6
「……何だこの駄馬共の群れは……」
 あっ、今日も美しい肖像画が納品されたばかりのビューティフル師匠!
 いやはや全くです。こんな所までお疲れ様です(平身低頭)。
「我が従者のが乗り物としてずっと良いと思うのだが」
 そして、乗り物扱いと見せかけての華麗な親馬鹿発言だ。馬だけに。

 先に来た猟兵達が良さげな白馬を篭絡していったので、師匠のお眼鏡にかなう白馬はなかなか現れない。
 しかし、そんな些末事で焦るアルバ・アルフライラ(双星の魔術師・f00123)様ではないのだ。
「ま、眩しいッ――なんと高貴なお方だ!」
 さすが師匠。ただ通りを歩くだけで透き通る長い髪が光を乱反射し(※種族特徴)、360度どこからどう見ても美しい!
「庶民の眼に我が玉体は眩すぎよう。白粉を厚めに塗してきた筈だが、矢張り輝きが溢れてしまうか」
「ははーっ! どうぞお通りください!」
「かーちゃん、あの人男の人? 女の人?」
「あの御方はきっと美の神、性別なんてないのよ……!」
 性別も年齢も超越したその美貌に、子供からお年寄りまで全仙台の民、あと結構な馬がひれ伏した。
「ふふん、良いぞ許す――民よ、存分に眺めよ、そして崇めるが良い。……む?」
 気分がよすぎてちょっと目的を忘れ気味だった師匠は、通りの角から横目でこちらを見るニヒルな視線の主に気づいた。
「ヒヒン(ふん。大した事はない)」
 おお、まさか! 尊大な白馬がアルバ様の前を平然と素通りしていく。
 一瞬むっとした師匠だったが、むしろやっと目標が見つかったと不敵に笑む。
「面白い。あやつを我が前に屈服させ、使役してやろうではないか」

 さて、その白馬だが、すこし大通りから離れた場所を散歩していた。
「ヒン……(ふん、あんな駄馬共と一緒にされては心外だ)」
 しかも誰かと似たような事を考えていたが、類は友を呼ぶというやつかもしれない。
 そんな彼(?)がふと、路地裏に佇む隠れた名呉服屋へ足を踏み入れようとした時――!
「ヒヒッ!?(な、何だ!?)」
 壁に魔方陣が浮かび上がり、中から無数の青い蝶があふれ出てきた。
 本能的に触ってはいけないものだと感じた白馬は、蝶から逃走を図る。しかし行く先行く先に同じ罠が設置してある上、蝶はすべて自分を追ってくるではないか。
 白馬は思う。
 これではまるで――どこかに誘導されているようだ。この我が!
「ふふん、此処で待っていれば来ると思っておったわ。命迄は奪わぬから安心せよ」
 その時、痺れをもたらす稲妻が白馬を撃った。
 アルバの放った“影なる怪人”に追跡されているとも知らず、呑気に仙台散策をしていた白馬の完敗だ。
 膝を折り、道端に座りこんだ白馬の頭を細い指が撫で、きらめく眸がその顔を見すえる。
「しかしあの店に入るとは、中々目が高い。さて……お前には私がどう見える?」
「……ヒン(ふん。美しいと認めてやってもいい。我の次にな)」
 やはり似た者のようだ。だが、くちびるの薔薇色を拭ったアルバは、満足そうに微笑む。

 ――この美に媚びぬ者こそが、我が供には相応しい。

成功 🔵​🔵​🔴​

ジャハル・アルムリフ
…カッパ…とは何なのだ…
先に駆けていったであろう師に聞けば分かるものか
まあ、今はそれどころではない
馬も師も放っておけばどうなるか分からん

忠告を聞かぬものなら慣れている
来い、白いの

【星の仔】に外套を預け
逆方向に向かう馬の目の前で急に広げさせ
驚かせての進路変更を狙う

捨て身が如く正面から迎え手綱を
無ければ掛けた縄を引き、力ずくで止める
馬が傷付かぬよう、しかし有無を言わさず
無理矢理にでも足を止めさせたところで
樹や欄干などに繋いでおく
首でも撫でてやれば少しは落ち着こうか

安心しろ、お前の仲間たちにも怪我はさせぬ
後で餌をやるから此処で大人しくしておけ

…美しい毛並みが台無しにならぬようにな



●7
 猟兵たちの圧倒的美により、仙台の街はいくらか平穏を取り戻しつつあった。
 それでもなお白に覆われた街の中、異質な存在感を放つ、黒があった。
 大抵の人間ならば見あげてしまう長身。しなやかな筋肉に覆われた長い手足。物思いに沈むような険しい表情は、けして触れてはならぬ事情を抱え、思い悩んでいるように見える。
「ああ、なんてお名前なのかしら。凛々しいまなざしの美丈夫様……」
 だが、仙台娘たちも話しかける事ができず、遠くからそっと彼を見つめるのみだ。それが闇纏う男のさだめなのだ。
 そして、謎の男は、なごり雪の舞う空を仰いだ。

(……カッパ……とは、何なのだ……)

 紹介しよう。
 彼がビューティフル師匠の超かっこいい乗り物こと、ジャハル・アルムリフ(凶星・f00995)君だ。
(其れは雨具ではないのか。寿司なる美食ともまた異なるのか。全て同一名称だったと記憶しているが何故だ)
 ジャハル君(29)はけっこう真剣にお悩みだった。ややこしいよね、カッパ問題。子ども電話相談とかで答えてあげたい。
 あの師にしてこの弟子ありだが、まあ、今はそれどころではない。
 また壊れるまで暴れられてはたまらない。先に行ってしまった師を早く追いかけねば。そして、カッパの正体についても問わねば――!
「急いでいる。来い、白いの」
「ヒン(ふん、断る。我に命令するなぞ百年早い)」
 だが、白馬は命令を無視して走り去っていった。
 心なしか、さっきの師匠の馬に似ている。血縁か何かだろうか。何かぴんと来るものを感じたジャハルは、翻した外套の中より“星の仔”を放つ。
「遊んで来い」
 姿見えぬ星の仔は、渡された外套をくるくる丸めて抱きかかえると、白馬を追って飛んでいった。
 駆けていく白馬の眼前に、ぱっと広げられた黒い布は、突然現れた壁のように映っただろう。
 Uターンしてくる白馬の向こうで、星の仔がいたずら大成功とばかりに外套を振っている。
「ブルルル!(貴様、邪魔だ! 其処をどくが良い!)」
「断る」
 ジャハルは駆けてくる白馬に真正面から突っ込むと、耐久力にものを言わせ、真正面から抱きとめた。
 えっ。
 白馬は――正直ときめいた。
 ま、まさか我の突進を、力ずくで止める強引なオトコがいるなんて――!?
 白馬がキューンとしているのにも気づかず、手綱をがっちりと樹につなぐジャハル。
 こういうのの扱い方は心得ているのか、鮮やかな手際だ。しかも、ちゃんと相手が傷つかぬよう気遣っているのだ。強引さと優しさを兼ね備えたイケメンは当然美しい。
「安心しろ、お前の仲間たちにも怪我はさせぬ。後で餌をやるから此処で大人しくしておけ」
 ――美しい毛並みが、台無しにならぬようにな。
 首を優しく一撫でし、ジャハルはその場から立ち去っていった。

 嗚呼、貴方も(カッパとの戦いに)行ってしまうのですね。麗しのジャハル様――。
 その背には、物言わぬ愛の目線が多数注がれていたとか。ジャハル、罪な男だ。

成功 🔵​🔵​🔴​

パウル・ブラフマン
【SPD】
【コミュ力】を使って
事前に城下町で美しい手綱を調達しておくね。

あっ、あんなトコに綺麗なお花が!

オレの声に反応して隙が生じた白馬さんを狙い
【騎乗】スキルを活かして
ナチュラルに背中にじゃーんぷ!

なんてねっ、ウソー🐙
でも君の為に
世にも美しい花飾りの手綱を貰ってきたんだ。
これを付けたら馬ちゃんさいっこーに綺麗だと想うんだぁ…!
つけちゃう?ねぇつけちゃう?

この綺麗な手綱はね
ここの町人さん達が作ってくださったものなんだよ。
その人達を傷つけるなんて
美しいものフリークとしてありえないんじゃない?
それに…あんまり暴れたら
綺麗な花飾りが落っこちちゃうよ?

白馬さんと仲良くなれたら
優雅に試走してみたいな!



●8
「これ、めっちゃイイね!✨ ねぇねぇいくら?」
「そんな、天下自在府をお持ちの方からお金なんて……!」
「え~?💦💦 そんなの悪いって、イイ仕事にはちゃんとお金を払わせてっ☆彡」
 スマ~イルっ☆
 パウル・ブラフマン(Devilfish・f04694)の屈託ない笑顔に心を打ち抜かれた職人達は、感動して最高級の品を用意してくれた。
 美しい――そう、美を提供するクリエイターの方々も人間なのである。
 だが悲しいかな、大体において人権はない。
 一説によると、彼らがよくRockをキメているのもそれに起因すると言われる――どちゃくそにイケめてるパウルさんは流石にそのあたりをよく分かっておいでだった。神か。

 D(美的検閲が入ったため自主規制)とは思えないコミュ力を発揮したパウルは、見覚えのあるキラキラした師弟が見事に馬を捕らえたのを見送りつつ、遠くを指さす。
「あっ、あんなトコに綺麗なお花が!」
「ヒヒン?(えっ、どこどこ?)」
 その大声に思わず反応したかわいらしい白馬の娘さん。パウルの瞳がキラリと光る。
「今日の相棒はGlanzじゃなくて、君に決めたっ☆」
 すかさず走り寄って、その背に向かってじゃーんぷ!
「なんてねっ、ウソー🐙」
 ……と思ったら、白馬を飛び越えて着地した。
 やだ……あたしお茶目なメンズも、好きピ――となってしまう所だが、気難しい白馬子はそっぽを向いた。
「プンッ!(美しいあたしを飛び越えるとかちょ~無礼!)」
「はわわっ、ゴメンね~💦💦 でも君の為に……これを貰ってきたんだ」
 パウルがさしだしたのは、先ほど自腹購入した世にも美しい花飾りの手綱。季節に合わせた薄紅色の梅の花は、白馬の身体によく似合うだろう。
 マ?
 という顔で白馬子がふりむく。
「これを付けたら馬ちゃんさいっこーに綺麗だと想うんだぁ……! つけちゃう? ねぇつけちゃう?」
「ヒヒィン♪(どうしよっかな~……つけてあげてもイイけど~)」
 反応は良さそうだ。そこで、パウルは急に真面目な顔になる。
「この綺麗な手綱はね、ここの町人さん達が作ってくださったものなんだよ。その人達を傷つけるなんて、美しいものフリークとしてありえないんじゃない?」
 パウルが示した先で、先程の職人たちがぺこりと頭を下げる。
 た、確かに――!
 これには白馬子のみならず、全白馬がガチ凹みした。
 なんて美しい心の持ち主なんだパウル……三千世界のクリエイターがその言葉に泣いた。やはりHip-Hopをやっている漢は相手へのリスペクトが違う。
「ヒヒン……(あたし達、美を求めるあまり、美しくない事をしてたのね……)」
「分かってくれたらイイよっ!✨ それに……」
 ――あんまり暴れたら、綺麗な花飾りが落っこちちゃうよ?(スマイル☆彡)

「ヒヒン……!(す、すこっ……!)」
 パウルのlyricに心奪われた白馬はすっかり大人しくなり、彼を乗せて優雅に走りだす。
 もうけして人を傷つけたりしない――その美しい想いを胸に、残る白馬たちも仙台の街を去っていく。
 誇り高きその姿は、以前よりもよりいっそう、白く美しく輝いていた。

成功 🔵​🔵​🔴​




第2章 集団戦 『名もなき盗人集団』

POW   :    これでもくらいな!
【盗んだ縄や紐状のものまたはパンツなど】が命中した対象を捕縛し、ユーベルコードを封じる。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
SPD   :    これにて失礼!
空中をレベル回まで蹴ってジャンプできる。
WIZ   :    ここはおいらに任せておくんな!
【なけなしの頭髪】が命中した対象を爆破し、更に互いを【今にも千切れそうな髪の毛】で繋ぐ。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●9
 さて、白馬に乗っていたりいなかったりする(※確定ロール回避)美しき猟兵たちは、河童が住まう城の前に辿りついた。
 一同はその完成度に驚愕する。
「か……河童のくせにセンスがいい!!」
 例えるなら、姫路城の優美さと熊本城の漢らしさが合体したうえに、あの聚楽第を彷彿とさせる絢爛さがエッセンスとして加わったような、マジパネェハイセンスデザインの城である。
 分からん? 別にいい。
 しかし。
 そのパネェ反りの石垣の上に鉤縄かなにかを引っかけ、今まさに降りてきている、見るからに美しくない人たちがいた――!

「や、やべえ、見つかった!」
 そう、お宝目当てで河童の城に忍び込んでいた、名もなき盗人集団である、
 こいつらもオブリビオンだが、河童さんとはまったくの無関係である事は断っておきたい。
「おいら達は何も盗んでなんかいませんぜ!!」
 嘘だ。その背に背負った風呂敷の中から、溢れんばかりの輝きが漏れだしている。

 皆は思ったはずだ。
『人のものを盗るのは美しくない!!』
 または、こう思って頭にきたかもしれない。
『河童があのような品を持っているとは……なんと勿体ない!!』
 まあどんな理由でもいい。
 とにかくいろいろ美しくない輩なので、なんか理由をつけて美しく倒してほしい。
 猟兵たちの美しさをもってすれば立っているだけで倒せるような相手だが、オーバーキルしちゃって全然かまわない。
 なお、ここで取り返したお宝に関しては、河童は気前よくプレゼントしてくれると思う。
 なぜならそれが美だからだ。
 猟兵たちよ、美しく戦え! そして、更なる美を追求するのだ――!

●参加者の皆様へ
 大変恐れ入りますが、この章は【一章に参加されている方】が優先枠になります。
 該当の方は継続参加をご希望の場合、2019/03/03(日)朝8:30までにプレイングをお送りください。
 🔵が成功数に満たない場合、制限を撤廃し、あらためてプレイングを募集させていただきます。
ステラ・アルゲン
(アドリブ歓迎)

さぁ白馬のお嬢さん、我が主のように華麗にいきましょうか!

……実は私は騎乗したことありません
ですが我が主の【戦闘知識】より騎乗戦を思い出せば戦い方が分かるはず!

……あぁ、我が主はおとぎ話に登場するかのような金髪碧眼の美青年な、まさに乙女の理想を完璧に表したような騎士でした
その美しさには戦いの中でも発揮されていて……くっ回想中の私まで魅了してくるとはさすが我が主っ!

敵の攻撃は白馬を巻き込まないように飛び降りてその攻撃をわざと受けましょう
爆発は【オーラ防御】と【激痛耐性】にて耐え、互いに繋がった事を利用して相手を凍りつかせる

宝は馬の彼女のたてがみに似合う髪飾りがあるといいですね


ユエ・イブリス
※ナルシストではないです

世には盗みを生業とし、厳重な警備をかいくぐり名品を盗み出す
華麗なる技を持つ者があると聞く
私腹を肥やす輩からのみ盗み、弱者に富を分け与える
または盗みを技の境地にまで極めた者を、私は美しいと思う

――さて、そこの古式ゆかしい盗人よ
君らの事情を聴こうか
盗みに入るとあれば理由があるだろう
飢えたか、困窮か、故郷に老いた親と病身の妻子を残してきたか
許そう、魔が差すなど誰にでも起きることだ

などと、言うとでも思ったかい?
そも、楽をして富を得ようという性根が醜い
せめて技でも披露してくれたなら愉しめたが
残念だよ

死霊蛇竜を召喚、一飲みにさせて黄泉へ
※上記、すべて白馬の頭上に座っています


出水宮・カガリ
※アドリブをしてもらおうと(確定ろうる回避)
差し出してもらった背には乗らねば
ところでお前、奥様、ということは…伴侶がいるのでは…

泥棒の
おぶりびおんを
美しく

…疑問を口にしただけで一句できてしまった(困惑)
ああ、いや、それより…だ
(【錬成カミヤドリ】で【鉄門扉の盾】を複製、手裏剣のように風を切って飛ばし進路を塞ぎつつ、空中をジャンプしていくなら檻のように囲い続ける)
カガリの盾は、【不落の傷跡】【拒絶の隔壁】…内からも外からも、通さんようになっている
何処まで逃げても、カガリの中、だ(無駄誘惑・最後に天井部分から蓋をする)

拾ったのは…随分豪華な錠前、のようだが
城の奥の方にかかっていそうな…


花剣・耀子
……あれから考えたのだけれど。
たとえば宴会の席に素面でいると、だいたい損を見るのよ。あたしはくわしい。
今回も同じ事が言えると思うの。
だから、このきらきらしい一団にもツッコまない。ぜったいつっこまないわよ。

さておき。
理論と方法と程度と人格は兎も角、うつくしいものに罪はないのよね。
それはそれでこれはこれと言うやつだわ。
敵同士の食い合いは勝手にしてと言うところだけれど、
だからといって好きに盗んで良いというのは、道理に合わないのよ。

ゴミはゴミ箱へ。
それと整理整頓。
どちらも満たせるのなら、お前たちを斬るに充分よ。
美しき事は佳き事哉。

まあ、どうせ河童も後で斃すのだけれども。
それはそれで、これはこれなのよ。



●10
 ――花剣・耀子はあれから考えた。
 宴会の席に素面でいると、だいたい損を見る。
 酒がまったく呑めないとか、あるいは逆に強すぎるとか。
 そういう状態で宴会に出席していると、周りはだんだん話の通じない酔っぱらいばかりになっていき、やたら楽しそうな連中を尻目に、死んだ目で後片付けとか迷惑をかけた人への謝罪をすることになるのだ。
 そう、正気を保っているばっかりに……あたしもくわしいからわかる。
 耀子は分析した――この戦いは、いわば酔っぱらいだらけの宴会と同じである、と。

「差し出してもらった背には乗らねば。ところでお前、奥様、ということは……伴侶がいるのでは……」
「ヒヒン……(ええ……私、高貴な血筋に生まれたがばかりに望まぬ結婚を強いられた、ただの美しい馬妻ですわ。今は貴方の美に酔っていたいの……)」
 出水宮・カガリは――引き続き確定ろうるを巧みに回避しつつ、悲しげな瞳をする白馬の奥様を馬上から慰めていた。

「さぁ白馬のお嬢さん、我が主のように華麗にいきましょうか!」
「ヒヒンッ!(いいわ、私の美しい走りを見てなさい! せいぜい振り落とされないようにしなさいよね!)」
 ステラ・アルゲンは――キラキラしたオーラを放ちながら、どこからか取りだしたマカロンを王子様っぽくさくっとかじった。

「世には盗みを生業とし、厳重な警備をかいくぐり名品を盗み出す華麗なる技を持つ者があると聞く――」
「ヒヒン?(目の前に居るこの人たちがそうなの? けれど、私の心を盗んだ貴方が一番の恋泥棒……そうに違いないわ)」
 そしてユエ・イブリスは――優雅に白馬の頭上に座り、ごく自然に妖精用グラスで伊達家御用達の銘酒をいただいていた。

 ……例え、このきらきらしい一団が普通に(?)白馬に乗って(???)いたとしても。
 そして、このまま戦闘をする気満々だとしても。
「実は私は騎乗したことがないのですが、何とかなるでしょう!」
 ステラに至っては、キラッキラしながらこんな事を言っていたとしてもだ。
「何が起きてもあたしはツッコまない。ぜったいつっこまないわよ」
 あと、実は皆動物と話す技能がないのに、白馬の声が聞こえている。
 だが――それは、おかしい判定でもなんでもないのだ。
「それはそれ、これはこれよね」
 耀子は美しさという美酒に酔うことにした。
 このフィールドでは美しければなんでもできる。美は、ビリーブのビなのだから――!

「うおおおお! なんだこのキラキラした向かい風は!! おいらのなけなしの頭髪がぁ!!」
「なんであいつらだけ髪がふわっ……となびいてるんでさぁ!!」
 猟兵たちの美を信じる心がひとつになった。
 彼らが場に立っただけでいい感じの風が吹き、名もなき盗人Aの髪が何本か吹き飛んだ。
 その光景を見ていたカガリがおもむろに口を開く。
「戦う前に一言よいだろうか」

 泥棒の
 おぶりびおんを
 美しく
         かがり

「……はて、どのような意味だろうか」
「こ、この状況に対する困惑を何気なく口にしただけで……五七五になったですってェ!?」
「雅力が……高すぎる……ぐわぁー!!」
 ちゅどーん!!!
「盗人Aーーー!!!!」
 なんということだ。カガリが一句詠んだだけでオブリビオンが爆散してしまった(※このシナリオでの描写は他のシナリオでの再現性をまったく保証しません)。
「さて、往こう。盗人に 事情あろうと 無かろうと――」
「倒してみせます 我が主のように!」
 カガリに続き、臨戦態勢をとるユエとステラの横で、耀子はかたく決意する。
 理論的におかしいことが起きまくったって、仲間が会話しながら連歌詠んでたって、あたし絶対にツッコまないから。
「駄目だ……おいらにはつっこみ、切れねぇ……!」
 ちゅどーん!!!
「盗人Bーーー!!!!」
 ビューティフルボケの圧に耐えかね、またオブリビオンが殉職した。
「本当に立っているだけで敵が死ぬのね……でも理論と方法と程度と人格は兎も角、うつくしいものに罪はないのよね」
 耀子がいい感じにまとめた。
 そう、たとえ相手が河童だとしても、同じ美の求道者として困っている時は助けあわねば美しくない。
 その気高き精神が、いやしい盗人たちにはまぶしすぎただけだ。無罪だ。
「敵が我々の美しさに気圧されています。このまま押し切りましょう。行きますよ、カガリ!」
「流星剣の……カガリは、守る事が生業なのだが。お前はやはり、剣だな」
「ええ。英雄の剣ですから!」
 友であり、互いに好敵手と認め合うステラとカガリは、白馬を駆って敵陣へと突撃した。
 とはいえ、ここまで雰囲気だけで白馬を乗りこなしてきたステラ。
 行きますよと言ってはみたものの、相変わらず乗り方はわからない。
 だが、見切り発車できる勇気と行動力こそ英雄の証だ。それもまた、美しい――!
 それに、ステラには麗しき我が主とともに馬で戦場を駆けた思い出がある。
 戦い方などすぐわかる。そう、あの時の主の姿を思い出せば――。

 🌹 🌹 🌹 🌹 🌹 🌹 🌹

 薔薇の咲き乱れる花園で、白馬に乗った騎士が星の輝きを宿す魔剣を振るい、襲い来る敵を次々に蹴散らしていく。
 敵の剣の切っ先が騎士の兜を落としたかと思えば、その中からさらりとこぼれ落ちる金糸――おとぎ話の中に出てくる王子様のようにうるわしい目鼻立ちの青年は、澄んだ碧眼で凛と相手を見すえた。
 主が意志に応えるかのように剣がきらめいて、流れ星のごとき一閃が相手の胴を両断した。
 敵の傷口より飛び散る、あの紅は血ではない。
 あれは、薔薇の花びら――いや、ステラの主の気高さと美しさが、そう見せてしまうのだ。
 乙女の理想を完璧に体現した存在であるがゆえに――!

 ※イメージ映像のため、実際のステラさんの過去とは異なる描写をしている場合があります。

 🌹 🌹 🌹 🌹 🌹 🌹 🌹

「……くっ、回想中の私まで魅了してくるとはさすが我が主っ!」
「なんか知らんが隙ありっ! お前ら、ここはおいらに任せて逃げな!」
 逆効果だった。
 うっとりしているステラに、盗人Cがなけなしの頭髪を投げつける!
「ほう……敵ながら天晴な心意気と賛辞を送るべきか」
「さすがC兄貴、名もなき盗人集団の中で一番のイケメンだぜ……!」
 ユエも称賛を惜しまない意外なイケメンムーヴに、盗人D以下もうっとりしている。
 だが、ステラはそれ以上にイケメンだった――!
「はっ……危ない、お嬢さん!」
 可愛い白馬のお嬢さんが爆発に巻き込まれてしまってはいけない。
 ステラは、盗人の髪がこちらまで到達する前に白馬から飛び降りると、みずからの足で髪の毛めがけて駆けていったのだ!
「流星剣の!」
「無茶よ。止まりなさい」
 カガリと耀子が叫ぶ。
 だが、時すでに遅く。

 ドォォォン!!!
 ――髪の毛にふれたステラは、美しいキラキラを撒き散らし……爆炎の中に飲み込まれた。

「ヒヒィィン……(そ、そんな……あの人、私をかばって……!)」
「立派な最期だった。君、気を落とされるな。君の主は英雄になったのだ」
 泣き崩れる白馬のお嬢さんを、ユエが馬上から慰める。
「薄いのよ……カガリの友を討ち、あまつさえ女性に涙させるとは。カガリは、お前を許さない」
 静かな怒りと共にカガリの周囲に降りそそぐのは、無数の鉄門扉の盾だ。
 紫の眼には、盗人Cを置いて逃げ出そうとしている他の盗人たちが映っている。
「逃がさんぞ」
 カガリは【錬成カミヤドリ】で複製された己の本体を手裏剣のように投げ、敵の退路を塞いだ。
「なんじゃこりゃあ!?」
 驚いたのは盗人たちである。まさか、目の前に突然門扉が飛んでくるなんて誰も思わない。
「へっ、こんなものジャンプで越えてやりまさぁ……ふべらっ!?」
「盗人Dー!!!」
 追加で飛んできた門扉が激突し、盗人Dも倒れた。降ってくる門扉が、鉄格子のごとく盗人たちを四方から囲いこみ、あえなくお縄。全員檻の中だ。
「こんなもの泥棒七つ道具で……き、切れねぇ!」
 刻まれた傷と強い意志で、強固に守られた美しき鉄門扉が盗人ごときに破れるわけがないのだ。
 カガリは、格子の隙間から支配者のごとく盗人たちを眺め見ると――。
「何処まで逃げても、カガリの中、だ」
 ――彼らの耳元で囁いて、禁断の確定ろうるを放つ。牢屋の天井に蓋をした。
 本当の愛を知っていますか? あなたは、もう彼の檻から、逃れられない――。

「えっ……な、なに、この気持ち……? アタイ、もしかして、あなたに――」
「盗人Eーーーー!! ちくしょう、盗人Eが乙女になっちまった!! かくなる上は……!!」
 カガリのボイスを聴くために課金しはじめそうな仲間の姿を見て、盗人Cは、紐状のもの――盗んできた真珠のネックレスを取りだす。高価なので本当は使いたくなかったであろう。
 その時――。
「おや、私をお忘れですか?」
「お、お前は……ステラとかいう奴! 生きてたのか!」
 先程、爆発に巻き込まれて退場したはずのステラが炎の中から姿を現した!
 距離をとろうとする盗人Cだったが、何かがひっかかり、ステラから離れることができない。
「こ、これは……おいらの髪の毛!」
「自分で放った技が仇になりましたね。凍てつき輝け、我が星よ!」
 そう、なけなしの頭髪が命中した相手は、盗人と『今にも千切れそうな髪の毛』で繋がれてしまうのだ――!
 瞬く【凍星の剣】。
 凍てつく冷気が千切れそうな髪の毛を伝い、盗人Cを瞬時に氷のオブジェへ変えた。
 一連のバトル漫画的展開を見ていたユエがくちびるに愉快げな笑みを浮かべ、深く頷く。
「成程……そういう事か」
「そういう事なのね。つまり、どういう事?」
「あの御仁も無為に煌々と輝いていた訳ではないという事だ。煌々を纏うことにより、自らの防御力を高めていたのだよ。美を操る事により爆発をやり過ごしたのだ」
「キラキラしたオーラも使いようなのね。美しいものはつよい、理解したわ」
 さすがユエ先生、美しいものに一講釈ある。
 それで済むかという気もするが、解説する姿も美しいのでいいのだ。
 戯れるかのような響きをもって流れていくユエの言葉を聞きつつ、だんだんこの世界観に呑みこまれつつある耀子は、日本刀に巻かれた布をほどいた。
「敵同士の食い合いは勝手にして。でも、だからといって好きに盗んで良いというのは、道理に合わないのよ」
 その刀身が、真白の輝きを放ちだす。
「これは――予想外に愉しいものが見られそうだ」
 ユエがふっと微笑みを浮かべ、美の境地に覚醒した耀子の後ろ姿を見守る。
 その美しき輝きに震えあがる盗人たちを、凍てつく青の眼がとらえた。
「ゴミはゴミ箱へ。それと整理整頓。どちらも満たせるのなら、お前たちを斬るに充分よ」
 ――散りなさい。《花剣》。
 吹き荒れる白刃の嵐が檻も氷もまっぷたつに切り裂き、背負っていた宝物だけを残して盗人たちをきれいに一刀両断した。
 その残骸すらも残さず、すべては白き光となって消える。
「美しき事は、佳き事哉」
 そして、ふたたび封印の布を巻く耀子。
 これが彼女の美の神髄である。あまりにもカッコよかった。

 そして。
「待ちたまえ」
 逃げも戦いもせず、猟兵たちの美しさに震えていた残りわずかな盗人たちにとどめを刺そうとする仲間たちを、ユエは手で制した。
 いったい、これ以上どんな美を見せられるというのか。盗人たちは思わずユエが(頭に)乗った白馬の前に整列し、正座をしてしまう。
 だが、ユエの口から出たのは予想外の一言だった。
「――さて、古式ゆかしい盗人よ。君らの事情を聴こうか」
「えっ!?」
 ユエは慈愛に満ちた名君のごとき優しいまなざして、盗人たちを眺めている。
 もう懲りただろう。これ以上の懲罰は必要あるまい――柘榴石の瞳がそう語っている。
「ま、まさか……おいら達を見逃してくれるってぇのかい?」
「事情によっては其れも考慮しよう。私腹を肥やす輩からのみ盗み、弱者に富を分け与える……または盗みを技の境地にまで極めた者を、私は美しいと思う。盗みに入るとあれば、相応の理由もあるだろう?」
 ――さあ、私に話してみたまえ。
 蕩けるような甘い声を聴けば、なんでも話したくなってしまう。
 この人は、いやこのお方は、おいら達の醜い心さえも受け入れてくれるかもしれない。
 小さき身体に憂き世の醜きを受け止め、なおも穢れぬ広く美しき心。
 それこそが至高の美なのだ――!
 盗人たちはそう感じ、顔を見合わせた――そして、泣いた。
「おいらは石川五右衛門さんに憧れてこの道に入っただけなんさ……!」
「おいらの村は年貢の取り立てがきつくて、仕方なく……!」
「年老いた両親と病気がちな母ちゃん、それに五人の子供がおいらを待ってんだ……頼む、見逃してくれ!」
 盗人たちはユエに向かって土下座した。
 ユエは穏やかに微笑み、そんな彼らに頭をあげさせる。
「許そう……魔が差すなど、誰にでも起きることだ」
 さすがユエ先生。
 美とは内面よりにじみ出るものと、彼は身をもって証明したのだ。
 建国してほしい。この憂き世に美の共和国を築けるのは、貴方しかいない――!










「などと、言うとでも思ったかい?」
「ぐわーーーーーー!!!!!!?」
 盗人たちの頭上に召喚されたユエの死霊蛇竜がぺろりと彼らを一飲みにし、一瞬で黄泉送りにした。
 そして、ユエは何事もなかったかのような涼しげな顔で、マイグラスに勝利の美酒を注ぐ。
「そも、楽をして富を得ようという性根が醜い。技は中々のものだったがね――私の趣味ではない。残念だよ」
「…………えぇ…………」
 何やってんのこの人。
 あまりの事に、耀子は一瞬正気に返った。
 前言撤回、ユエ先生に国を任せてはいけない。たぶん滅ぶ。
 でも、最期に『騙されてくれなかったか……』とかいう声が聞こえた気がするので、きっとこれでいいのだろう。
 理論と方法と程度と人格は兎も角、美に罪はない。ないったらない。

 蛇竜の口から落ちたきらきらしたものを、ステラとカガリがそれぞれ拾いあげた。
「見てくださいお嬢さん! 貴女のたてがみに似合う、蒼い星の髪飾りです」
「ヒッヒィン(もう、心配したんだから! わ、私は貴方が戻ってきてくれただけで……でも綺麗だからもらってあげてもいいわっ)」
 サファイアの髪飾りをつけてもらった白馬は嬉しそうだ。ステラとお揃いのようになったからかもしれない。
「カガリのは……随分豪華な錠前、のようだが」
 城の奥まった場所で大切なものを守っているのが似合うような、ずっしりと重みのあるアンティークの錠前だ。細かな草花の彫刻が施されながらも、頑強なつくりのそれに、カガリは不思議な親近感をおぼえた。
「ふむ……だが、緑のに返さないといかんな」
「……それって河童のこと? まあ、そうね、一応返しに行きましょうか。どうせ河童も後で斃すのだけれども」
 それはそれで、これはこれ。
 白馬の背に宝物を積んで、四人は城内へと歩きだした。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

ジャハル・アルムリフ
それでカッパとは…いや

…美の定義とは何だったろうな

まあいい、その前に人生すら見失った連中の処理だ
知らず知らず向けるは侮蔑の眼差し

この世界では詫びに自ら腹を掻き切り
首を刎ねられる…と聞いた故
黒剣を構える、が何故か触れたくない

すまんが、どうも近くで見る気にならん
少々雑になるが悪く思うな

【うつろわぬ焔】で投げられる縄ごと燃やす
城の一部や盗品ごと燃えぬようにだけは注意しつつ
連中を囲むように延焼させ、逃走も防いでおく
盗品を手に入れる気はない故、放置
師の気に入りそうな品があれば別であるが

…拷問の心算はなかったが
街の何処かで見た地獄絵図とやらを思い出す

確か、芸術も美しいものに含まれよう


パウル・ブラフマン
【SPD】
白馬子ちゃんから降りたら
他の白馬さんも含め安全な場所で待機を促すね。
大丈夫、ちゃーんと戻ってくるからさ☆彡

行くよGlanz、ごようあらためであーる!
UCを発動!
Glanzに【騎乗】したら
持ち前の【操縦】テクを駆使してガンガン追い詰めちゃうぞ✨

盗人さんがジャンプで逃げようとしたら
石垣をGlanzで疾走して先廻りを。
【空中戦】ならオレも負けないぞっ♪
魅せてあげるよ、オレの【ロープワーク】!
Saugerのフック(🐙型)を地上に向けて投擲。
誰かキャッチしてくれそうな人が居たらお願いしたいかも!
空中に居る盗人さんをワイヤーに絡めて着地を狙うね。
地面に叩きつけちゃえっ☆

※絡み&アドリブ大歓迎!


アルバ・アルフライラ
……あぁん?
おっと失礼、流石に美しくないな

然しまた、美から懸け離れた醜悪さよな
見るに堪えんとはまさにこの事
肉の器を持つ身ならば鳥肌でも立っていたところだ
…彼奴等もオブリビオンなのだろう?
ならば殺して構わんな?
――ああ、殺そう(過激派)

安心せよ、我が魔術の手に掛れば
貴様等の様な輩でも美しく散らしてやろう
魔方陣を描き召喚するは【女王の臣僕】
広範囲に展開、盗賊全てを美しく氷漬けにする心意気で術を行使
ええい汚らわしい髪を此方へ向けるでない、不敬者
頭髪は持ち前の第六感に頼りつつ見切り
又は目の前に蝶を集める事で盾とする

盗品を漁るのは趣味でないが…然しそうさな
魔術の媒介となりそうな品があれば有難く頂戴しよう



●11
 きらきらしい三人衆がいたいけな羅刹の少女をめくるめく美の世界に引きずりこんでいた、その頃――。

「ヒヒィン……(ねぇパウぴっぴ、本当に行っちゃうの?)」
「大丈夫、ちゃーんと戻ってくるからさ☆彡」
 パウル・ブラフマンは、城の駐馬場(美しい城なので馬用の休憩スペースも完備されているのだ)に白馬子ちゃんたちを繋ぎ、待機を促していた。
 さすが眼帯している漢は伊達である。生き物を慈しむその優しい心、もちろん美しい。
 いつでもビーストマスターに転職してほしい――白馬たちは、そんなまなざしでパウルの背を見送る。
「あ、あの。おいら達、いつまで待ってれば……」
「……あぁん?」
 じろり。
 アルバ・アルフライラのひと睨みで、整列待機させられている盗人どもが黙った。
「馬の避難が完了するまで待てと言っておろう。つうか話しかけるでないわ、戯けが」
 こわい。
 何とか師に追いついていたジャハル・アルムリフは、少女のように可憐なかんばせから発せられるドスの利いた声に眉をひそめた。黙ってさえいれば民に美しさを讃えられるこの師だが、美の定義とは何だったろう。
「師よ、地が出ている。人前だ」
「おっと失礼、流石に美しくなかったな。して、私に急遽問いたい事とは何だ、ジジよ」
「ああ。それで、カッパとは……」
「隙ありっ! これにて失礼ーっ!」
 美の圧力に耐えかねた盗人Fが、空中ジャンプでアルバとジャハルの頭上を飛びこえ、逃走をはかった。
「うっ……」
 美からかけ離れた醜悪な容貌。だが、動作だけは無駄に機敏で、アルバはイラッとした。
 何とおぞましい。あのような輩に我が頭上を通らせてしまったとは――それだけで手足にひびが入りそうな感覚に襲われる。肉の器を持つ身ならば鳥肌でも立っていたところだ。
 アルバはぞわぞわしながら、仕込み杖を手にした。
「ち……見るに堪えんとはまさにこの事。先にあれを片付けるぞ」
「………………」
 カッパについて訊きそびれてしまったジャハルは、心なしかしょんぼりしていた。竜の尻尾がへにょんとなっている。
「まあいい、その前に人生すら見失った連中の処理だ」
 何気にひどい事を言っているが、彼はきっとそうは思っていないのだろう。そういう男だ。

「あっ、逃げてる人がいる! 行くよGlanz、ごようあらためであーる!」
 駐馬場にいたパウルは、お宝を持って逃走する盗人Fを発見するやいなや、Glanzにひらりと飛び乗って、させじと追いかけはじめた。
「な、何でえ、あのごっつい鉄の馬は!?」
 バイクなど見たことがない古き良き(?)盗人たちはびっくり仰天している。
 蒼い光を纏い、艶やかとすらいえる軌跡を残しながら走るその姿、まさに韋駄天のごとし。
 盗人Fは逃れようと全速力で逃げるも、神をもぶっちぎる【ゴットスピードライド】からは逃れられない――!
「つーかまーえたっ☆ どっかーん✨」
「ぐわぁぁーー!!」
「ぬ、盗人F-!!」
 Glanzにどっかーんと追突された盗人Fは空の彼方までふっとび、美しい星になった。
「まだまだ! ガンガン追い詰めちゃうぞ✨」
 Glanzの車体を転倒ギリギリまで傾け、華麗にUターンをキメたパウルは、逃げ惑う盗人たちを稲妻のような走行で次々に跳ね飛ばしていく。
「う、美し……ぐはあ!」
 その操縦テクに思わず見とれ、足をとめた盗人たちは次々に星になっていった。しかし、パウルはなんだか浮かない顔だ。
「Σゴメンね、盗人さんたち! Glanzのことホメてくれたのに。ちょっと可哀想だったかなー🐙💦」
 や、優しい――!
「アニキィ!!」
 轢かれた盗人たちもなんか感動している。どこぞの妖精のお方とは違って、パウルさんの心の清らかさはモノホンなのだ。

「…………」
「……おい、ジジよ」
「……………………」
「『美は内面から滲み出るものと聞いたが』みたいな目で私を見るでないわ!」
 ますますご立腹の師匠は仕込み杖をすらりと抜いた。
 醜いからといって斬り捨てるようなアルバ様ではないが、彼奴等はオブリビオン。
 生まれながらの敵、世界に滅びをもたらす存在――いや、このせこい盗人共がどう世界を滅ぼすと? と、一瞬思いはしたものの。
 ならば、答えは必然。
「殺して構わんな? ――ああ、殺そう」
「師よ、言葉が乱れている」
 いや、やっぱり師匠は、同担拒否で有名な某皇帝といい勝負ができそうな美過激派だった。
 だが。美しいものは、横暴で理不尽だからこそ美しい。
 現に、アルバに睨まれた盗人達が『あっ……満更でもないかも』って顔をしている。
 ……師に遅れること数分、ジャハルも何かぞわぞわしてきた。
「この世界では詫びに自ら腹を掻き切り、首を刎ねられる……と聞いた故」
「ひぃ! そ、それは武士道の世界の話でさぁ!!」
 普段通りに影なる剣を構えてみるものの――何故だ。剣を振るう気になれない。
 それどころか、一歩前に踏みだすことさえも躊躇う。
 触れたく、ない――?
「アルバさん、ジャハルさん、逃げた盗人さんたちはオレに任せてっ✨ そっちはお願いしまっす!」
「……了解した」
 逃げる盗人を追いたてているパウルに声をかけられ、ジャハルははっとする。
 今のはなんだったのだろう。はじめての感覚に緩く首をひねりつつ、剣を下ろす。
「すまんが、どうも近くで見る気にならん。少々雑になるが悪く思うな」
 じろり。
 宝石のような七色の瞳が盗人たちをねめつける。そこににじむ感情の名を、ジャハルはまだ知らない。
「ぶ、侮蔑の眼差し――!!」
 無論、隣のアルバも同じ目をしている。
 師弟に氷点下のまなざしを向けられた盗人たちは震えあがった。
「ああ、そんな目でおいら達を……もっと見てくれ!!!!」
 ……その美しさに、であるが。

「うぇっ……あ、安心せよ、我が魔術の手に掛れば貴様等の様な輩でも美しく散らしてやろう」
 もうこんな戦闘さっさと終わらせたいとばかりに、アルバはささっと剣先で魔方陣を描く。
 そこから生まれ出る【女王の臣僕】。雪化粧をした城を舞う無数の青き蝶は、数多のきらめく宝を盗んできた泥棒たちの心をも奪った。
「すげぇ……この世のものとは思えん美しさだ」
「煩悩が浄化されていく……」
 なんという事だろうか。
 蝶の美しさに感動した盗人たちは、すべて晴れやかな笑顔を浮かべ、蝶と戯れるようなポーズのままで美しく氷像になってしまった。そこはまるで天国のよう――まあ、盗人は盗人なのだが。
「ふん、これで少しは見れるようになったか」
「ひ、ひええ……皆が美しくなっちまった。畜生、これでもくらいな!」
 師匠の渾身の力作に震えあがった盗人Gは、命がけで敵の技を封じようと、ジャハルに鉤縄を投げつける。
 だが……それはむしろ、命取りとなる行為であった。
「還れ」
 驚くほどにつめたい声が出た。
 裏腹に喉奥の魔方陣は煮えるような熱をもち、吐きだされた竜の息吹たる【うつろわぬ焔】が、縄ごと盗人Gを焼き払う。
「あ……あちッ! あっちぃぃ!!」
「お、おい、お前、こっちに来るんじゃねぇって!」
 盗人たちがすったもんだしている間に、延焼した黄金の焔がぐるりと輪を描き、彼らを炎の渦にとじこめた。
「火加減が難しい。料理と同様か。始めちょろちょろ中ぱっぱ、赤子泣くとも蓋取るな……そう聞いた」
「おいら達はお米じゃねぇぇー!!!」
 はて。城や風呂敷には燃え移らないよう、しっかり火加減をコントロールしているのだが、盗人たちは随分悶え苦しんでいるようだ。焼死ってめちゃくちゃ痛いらしいよジャハル君。
 あっちでは氷に閉じこめられ、動けない亡者。
 こっちでは火にあぶられ、悶え苦しむ亡者。
 ジャハルはその光景にピーンときた。
「街の何処かで見た地獄絵図とやらに似ている。確か、芸術も美しいものに含まれよう」
 ……それだと君達師弟は自動的に『鬼』ということになるが、いいのか、ジャハル君よ。

「やってられっか、これにて失礼!」
 鬼畜の如く美しい師弟の、拷問まがいな連携攻撃。大人しく火あぶりになってたまるかと、まだ焼き加減が足りない盗人たちが、空中ジャンプで炎からの脱出をはかり始めた。
「それじゃー、コッチからも失礼しちゃおっかな☆彡」
「な、何だと……!?」
 盗人たちは目を疑った。
「あ、ありえねえ……ごっつい鉄の馬が、石垣の上を走ってきてやがる!」
 登れる者はいないと言われた絶妙な勾配の武者返し。だが、パウルの操縦テクをもってすれば、これすらハーフパイプのようなもの――!
「空中戦ならオレも負けないぞっ♪ 再び、じゃーんぷっ!」
 石垣の反りを利用して、パウルはGlanzごと高く高く跳んだ。その圧倒的芸術点、金メダル間違いなしの跳躍――!
「う……美しい! 仲間内では一番の跳び手と言われたおいらより高く跳ぶなんて……!」
「そう? ありがとーっ✨ もっと魅せてあげるよ、オレのロープワーク!」
 おおっと、にぱっとこちらも百点満点の笑みを浮かべたパウル選手、たこさん型のカラビナが付いたワイヤー、Saugerを取りだしたぞ。スポンサーはもちろん、エイリアンツアーズだ。
「アルバさんジャハルさん、ちょっと手伝ってもらっちゃってもイイっすか?」
「ええ、勿論ですよ。仲間同士協力致しましょう。お手伝いなさい、ジジ」
 アルバ様は即、ビューティフルな笑みで応えられた。
 ……今更取り繕っても無駄な気がするが、パウルが前回会った時から今までずっと何も見ていなかったことを祈ろう。
「このタコ🐙をキャッチして下さいねーっ! それーっ✨」
 ジャハルが言われた通り、投げられたカラビナをキャッチする。
 空中と地上をつなぐように張られたワイヤーを自在に操り、パウルはジャンプしてくる盗人たちの手や足を、次から次に絡めとった。盗人の万国旗が仙台の空にはためく。
「な、なんだってェ!?」
「ワイヤーがタコの足みたいに見えるぜ……!」
「仕上げだよっ。せぇーのっ!」
 パウルに合わせ、ジャハルも空中高くに舞い上がる。
 そして――急降下しながら、タコの足に絡めとられた盗人軍団をまとめて地面に叩きつけた。

「ぐはあ! み、見事……っ」
 嗚呼、このような美しき連携で止めをさされ、我が名もなき雑魚人生に悔いなし。
 そう思ったかは知らないが、せめて最後に一矢報いようと、盗人Hはなけなしの毛髪をむしる。
 散っていった仲間達の無念を乗せて。
 名もなき男は、最後の髪を――投げた。

「ええい汚らわしい髪を此方へ向けるでない、不敬者」
 アルバはスッとかわした。
 なんか切実な想いがこもってようと、千切れそうな毛髪でつながれるのは、嫌。
 絶対に嫌である。
 がくりと力尽きた盗人の手の中に、なにかきらめきを放つものが握られている。鍵だ。
「…………」
「…………」
 興味はありそうだが、いかにも触りたくなさそうに『お前が取れ』とアイコンタクトしあうキラキラ師弟。
 空気を読んだパウルは鍵を取ってあげ、丁寧に拭いてからアルバに渡してあげた。神か。
 風呂敷の中を見てみれば、それらしき宝箱がある。開けば――そこにまみえたのは、己自身。
「……ふむ。八卦鏡か」
 己を見つめなおせという天からのメッセージだろうか。余計な世話だと感じつつも、磨き上げられた鏡面からはあわい光が立ちのぼり、強い魔力が感じられる。由緒ある品なのだろう。
 どうにか譲り受けられないかと考えつつ、三人もまた、河童の待つ城の中へと向かう。

 彼らが立ち去った後には――氷像と化した幸せそうな盗人たちだけが、美しく輝いていた。
 そのうち消えるから大丈夫だ。たぶん。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​




第3章 ボス戦 『サムライエンパイア絵巻『河童の怪』』

POW   :    『私の華麗なる一撃を受けよ!』
【 スタイリッシュな蹴り】による超高速かつ大威力の一撃を放つ。ただし、自身から30cm以内の対象にしか使えない。
SPD   :    『水も地も、空さえも克服した私に不可能は無い!』
空中をレベル回まで蹴ってジャンプできる。
WIZ   :    『誰がNo.1か決めようじゃないか!』
【『河童には負けられない』】の感情を与える事に成功した対象に、召喚した【特設ステージ】から、高命中力の【No.1決定戦への招待状】を飛ばす。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は雛月・朔です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●12
 華麗なる美と技で盗人たちを叩きのめした猟兵一行は、ついに河童城の最上階までたどり着いた。
「ようこそ美しき猟兵諸君。地上での貴君らの活躍、ここから拝見していたよ。我が白馬を自在に乗りこなし、利はないと分かっていながらも不埒な盗人を懲らしめるその姿。敵ながら見事な美である、そう言わざるを得ない……」
 窓から地上を眺める河童の、白スーツを着た背中が見える。
「礼として、その白馬と宝は貴君らに贈呈しよう。取っておきたまえ」
 いい感じの風を背負い、そよっと髪をなびかせるその姿。奴も、確かに選ばれし美の戦士であるのだろう――そういう風格が漂っている。
「とうッ!!」
 河童は連続バク宙をキメながら高く跳びあがった。
「な……何だって!?」
 ♪ラー……ラー……ラー……(美しいコーラス)。
 部屋の床がふるえ、四方の壁と天井が美しいBGMと共に変形していく!
「こ、これは……天空のステージ!」
 壁が取り払われ、360度美しき仙台ビューが約束された最上階に、いい感じのそよ風が吹き抜けた。なごり雪もふわっと舞う。
 呪術法力文明による奇想天外な建築ってすごい――猟兵たちは唐突にそう思った。
 遠くにアドバルーンみたいなの浮いてるし、これくらい大丈夫だろう。たぶん。

 体操選手ばりのひねりを加えながら落下してきた河童は、美しきステージの中央にシュタッと降り立つ。
「よろしい。貴君らを美のライバルと認め、公式戦を挑もう。種目は好きにするがいい。どのような勝負でも受けて立つ。さあ……誰がNo.1か決めようじゃないか!」

●3章補足
 ここまでお疲れ様でした。いよいよ河童との決戦です。
 河童には『一番自分の美しさを発揮できると思う種目』で勝負を挑むことができます。
 普通に戦闘しても、ファッションショーを開催しても、お料理バトルでも、ババ抜きでもなんでもいいです。
 河童は何に対しても真剣に挑戦者を迎え撃ち、それなりのレベルで対抗してきます。
 皆様はやりたい事を自由にご記入ください。
 奇想天外な建築と美のパワーがなんとかします。
 個人戦になるか、数名様まとめて描写するかは、プレイング内容を見て決めさせていただきます。

●スケジュールと採用について
 大変恐れ入りますが【ここまでの章に参加されている方】が優先枠になります。
 該当の方は継続参加をご希望の場合、2019/03/11(月)朝8:30までにプレイングをお送りください。
 🔵が成功数に満たない場合、制限を撤廃し、あらためてプレイングを募集させていただきます。
ステラ・アルゲン
(アドリブ歓迎)

ふっ……美しさ対決ですか。美しさなら我が主以外には負けないという自信があります!

今宵はお招きありがとうございます(招待状を手に登場)
さぁそれでは私と一曲、踊っていただきましょうか!

演目はダンス
おや一人では踊りませんよ、河童と踊ります
どちらが美しく相手をリードできるか競いましょう
相手が男だろうが河童だろうが等しくレディに接するように【優しさ】を込めて【手をつなぐ】
相手の事を気遣いながら【礼儀作法】で正しくリード

ふふ、こうして近くで見ると貴方のその目は可愛らしいですね
そう言って星のキラキラ【オーラ防御】付きの笑顔で【誘惑】

※なおUCの【天満月】は己の美しさ演出用の光や照明として使用



●13――美しきDance battle
 う、美しさ公式戦だって――!?

「そうとも。さあ、そちらの一番手は誰かね?」
 美しさとは、いったいいつから競技になったのだろうか。
 いったいどこの協会がランキングを認定しているのだろうか。
 多少困惑している者もいなくはなかったが、そこは美しき猟兵たちだ。そんな基本的なツッコミもほとんど飛ばず、ごく自然にこの勝負に乗ってきた。慣れていただいてなによりです。

「ふっ……美しさ対決ですか。美しさなら我が主以外には負けないという自信があります!」
「誰だ!」
 凛々しく響いた声を聞き、河童が振り返ると、そこには巨大な階段が出現していた。
 仙台より遠く離れた地、宝塚藩を発祥とする独自の歌舞伎で使われる、伝統の大階段である。
 優雅に階段を降りてくる、そのスタァの名は――そう、ステラ・アルゲンだ。
 勝負は既に始まっている。舞台上に落ちるやわらかな月の光がステラの玉肌をかがやかせ、河童の緑の肌を艶めかしく光らせている。
 さっきまで昼じゃなかったか? と思った君は正しい。
 しかし、実際にステラがそういうユーベルコードを持ってきちゃったので、まあ月ぐらい出そう。
 本物の美しさは時を止め、空間さえ歪めると証明されただけだ。
「ふむ……その大階段を使いこなすか。ただ者ではないな!」
 河童がぴっと指で弾いた招待状を、ステラは段上でターンしながら受け取った。
「今宵はお招きありがとうございます」
 そして流れるように招待状を胸に当て、恭しく礼をする。その仕草さえ、視線さえ、振り付けの一部として――。
「さぁそれでは私と一曲、踊っていただきましょうか!」
「いいだろう、最高の舞台を用意しよう!」
 河童が指を鳴らすと、ステージがまた変形し、能舞台とからくり人形の囃子方が出現した。
 そ、そういえば……河童がスーツを着ているので忘れがちだが、ここは侍の王国。奏でられる音楽もMIYABIなヨナ抜き音階のものである。対するステラは、どう見ても洋の人(?)だ。
「如何した、美しき異国の貴公子よ。能楽は初めてかい?」
 ステラ、どう対抗するんだ――仲間たちが固唾をのんで見守る。
 扇を手にした河童がそろりそろりと舞っていた、その時だ。
「おや、一人で踊るのですか? せっかくですから共に舞いましょう」
「何――!?」
 河童のしなやかな指を痛めぬよう、ステラはその手をそっと握った。
 驚いた河童が取り落とした扇を拾いあげ、もう片方の手は彼の背へ添える。
「私の前では皆等しくレディなのです。さぁ、力を抜いて、私に身を預けて。和の心も美しいですが、西洋の踊りも良いものですよ」
 ――美しさというものがなんなのか、私はあの方に教えていただいた。
 男だろうが、河童だろうが、敵だろうが今は関係ない。
 真の貴公子たるもの常に相手を気遣い、礼儀正しく振舞うべし。
 共に美を探求するこの時に、敵も味方もない。我が主もきっと、迷わず彼の手を取るだろう。
 この選択が、彼女の騎士道なのだ。
 
「ふふ、こうして近くで見ると貴方のその目は可愛らしいですね」
 ステラが微笑むと、月が輝き、星がまたたいた。
 河童の目にはそう映った――いや、観戦していた他の猟兵にも、そう見えていた。
 実際に月は出ているし、例の防御力高いオーラがキラキラしていたから、犬でもそう見えた。
 だが、河童の美を愛でる心に何より響いたのは、ステラの笑顔に他ならない。
 緑の肌を心なしか上気させた河童は、気づけばステラにリードされるまま、フェザーステップからのリバースターンを習得していた。
 ステラ――見事な美だ。
 和楽器の演奏でスローフォックストロットを踊った猟兵は、たぶん君しかいない。
「ふ、私とした事が、つい貴君の美に酔ってしまったよ。もう少々、教えていただけるかい?」
「ええ、お望みとあらば喜んで」
 視線と視線が交わる。己の美を誇り、高みを追い続ける者たちの視線が。
 月灯りの舞台で、二人はしばらく踊り続けて――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

パウル・ブラフマン
【SPD】
ここマジ超眺めイイじゃん!
オレとRapバトルしようぜ、キラッキラのrhymeくれてやんよ!!🐙✨
Rapっていうのはね…(優しく解説)

先攻後攻は河童くんが決めていーよ♪
UC発動!【パフォーマンス】全活性だ、Bring the beat!

河の童 変わらじの美麗?
Don't be late!押し付けは老害
仙台から出陣
骸の海へscale-up! やり甲斐しかねぇだろ?大航海!

河童くんなら骸の海もめっちゃ美しくできんじゃね?
この城下町での思い出を胸に
骸シーでもBIGな夢掴めると想うんだぁ✨

白馬子ちゃんに🐙カラビナを贈呈。
これは美しくはないかもだけど…お守り代わりに☆

※アドリブ&絡み大歓迎!



●14――美しきRap battle
「見てGlanz! すげー、ここマジ超眺めイイじゃん!」
 河童城展望台から見下ろす絶景の大パノラマ。宇宙や近未来の都市とも違う、大空広がる異界の大自然とも違う、日本(正確には違うが)の原風景がそこにある。
 仙台ツアーもイイかも、なんてプランを練っていたパウル・ブラフマンは、突然の振動に驚いてステージ中央を見た。
「Σわわっ! なんかこっちもスゴいの出てる!!💦💦」
 それから、パウルは更にスゴいものを見ることになる。
 能舞台で舞う仲間と河童――脳をshakeするMIYABIなbeat――NOとは言わせねぇ俺達のart――思わず地の文でrhymeを刻んでしまう、そんな光景だ。まあ詳しくは一番手の人を見てほしい。
 これぞRock。これこそHip-Hop。
 既存のしがらみをブッ潰す、反逆の芸術がそこにあったのだ。

 創作意欲を刺激されたパウルは、頃合いを見計らってステージに乱入した。もちろん、左手にはソウルメイトたるハンドマイクを握って。
「オレとRapバトルしようぜ、キラッキラのrhymeくれてやんよ!!🐙✨」
 ……。
 …………。
「らっぷ……とは何だね?」
 さすがの河童も知らなかったようだ。Hip-Hopの発祥は江戸時代よりずっと後なので、まあそうなるだろう。しかしパウルさんだし、そのあたりは当然想定済なのだ。
「あ、Rapっていうのはね、リズムにノッてしゃべるみたいに歌う音楽なんだけど……」
 ここから暫く、MC jailbreak先生によるはじめてのRap講座が続いた。優しい……!
「成程、重要なのはリリックとライム、そしてフロウ。言葉による暴力なき戦い、それがラップバトル……美しい!」
「そゆコト! さすが河童くん、呑み込みが早いねっ✨✨ 先攻後攻はそっちが決めていーよ♪」
「では私から挑ませていただこう!」

『ようこそお初にお目にかかる 我が信念聴いてけよ猟兵
 目の上の蛸 目付け役? だが残念捨てとけよDT
 凧でもageるこの美貌 刮目して見よ今Be born
 名乗り上げる MC river imp
 inputの準備はいいかい? I'm妖怪 I'mNo.1!』

 ――えっ、河童ほんとにラップっぽいのやってるよ……。
 観戦していた仲間たちも驚愕した。先生の教え方がよかったのだろう。
 雅な音楽もいつのまにか和風ラップビートに転調している。なんて吸収力だ――これも河童の美に対する向上心が成せる技だというのか。
 迎え撃つパウルはマイクを握り、そのdisを受け止める。パフォーマンス全開。ホンモノを魅せてやれ、Bring the beat!

『河の童 変わらじの美麗?
 Don't be late! 押し付けは老害
 仙台から出陣
 骸の海へscale-up! やり甲斐しかねぇだろ? 大航海!』

「くっ……!」
 【Lyrical murderer】でまくし立てる超絶技巧RAPがステージを震撼させ、能舞台が崩れ去る。
 かろうじて一本だけ柱を残した舞台は――まるで船だ。
「河童くんなら骸の海もめっちゃ美しくできんじゃね? この城下町での思い出を胸に、骸シーでもBIGな夢掴めると想うんだぁ✨」
 その瓦礫の上に立つ河童を見て、頷いたパウルは、応援に来ていた白馬子ちゃんへ🐙カラビナを投げる。
「ふ……真のRapとは相手をdisるのみならず。相手への愛あってこそ弱点も見えるというわけだな。いいとも、骸の海に帰ったら貴君の美しき教えを広めよう。だが、私はまだ敗北してはいないぞ!」
 固い握手を交わし、健闘を讃え合うパウルと河童。ここに美しき友情が生まれた。
「ヒヒン……(あたしもRap始めようかな……)」
 白馬子ちゃんは涙を流して思った。この🐙、ずっとお守りにするんだ――。
 その後、白馬子ちゃんが馬界のRap女王としてテッペンを獲るのは、また別の話だ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ジャハル・アルムリフ
あれは雨具ではない――ならば
生きたまま刻まれ美食の具材にされた無念で化けたか
無理もない、不憫な奴だ

そして具材と…美を競う…?

俺では役者不足だろう
が、自他共に認める人材ならば此処に

師父・アルバの後方で跪き
その人間ならざる美に一役
広げた翼からの【生まれながらの光】で師を照らす

…れふ…?
右か、承知した
提言の通りにさり気なく位置を変えながら師の背を見る
…反射が眩しい
幾度か目にした真なる姿
纏った白い衣は奇しくも河童と対のように映る
此れなるが頂上決戦か――

ああ、此の絵も何処かで見た気がするが
確かホトケ…であったか
河童とやらも心おきなく成仏できよう

無論足りぬなら我が剣で送ってくれる故、心配は無用だ


アルバ・アルフライラ
ジジ(f00995)と
…今度妖怪図鑑でも買い与えるべきか
頭を抱えつつも河童を見据える

この私が招待状に臆すると思うてか?
ふふん、貴様の中々の美を誇る様だが
――よし、許す
真の美とは何たるか、此処で証明してやろう

ジジの操る光彩を一身に浴び、徐にルチルのアウレオラを背に抱く
白き衣を纏えば我が玉体もさぞ映える事だろう
所謂レフ板効果というやつだ、うむ
美の顕現たる真なる姿――解放させた事を誇りに思うが良い
…ああ、ジジ
もそっと右へ…うむ、大義である
この位置ならば更にお前の光が私を照らすだろう、と【賢者の提言】

一人ではなく、二人故に出来る御業
我が従者の献身の美たるや貴様にも引けを取らぬ
――まあ、私には敵わぬがな



●15――美しきBeauty battle
「ラップバトル……とは、最終的に地形を破壊した者が勝者となるのか」
 ジャハル・アルムリフは、この戦いを通してまたひとつ余計なことを覚えてしまったようだ。
 一体なにからどう訂正してくれようかと頭を抱えつつ、アルバ・アルフライラはとりあえず河童の解説から試みることにした。
「見よジジ、あやつが河童だ。雨具ではなかろう? 妖怪変化の一種だ」
「雨具ではない――ならば、生きたまま刻まれ、美食の具材にされた無念で化けたか」
「いや、カッパ巻きからも離れよ。胡瓜は河童の肉ではないわ」
「つまり具材と……美を競う……? 奇怪な依頼だ」
 そのような最期では化けるのも無理はないが、とわずかに憐憫の情を滲ませだしたジャハルを見て、アルバはこりゃあかんと思った。
 我が竜、ピュアすぎる。今度妖怪図鑑でも買い与えるべきか。
 それはさておき、アルバは瓦礫を片付けようとしている河童を見据える。
「さて、ステージが散らかってしまったな。少々待ちたまえ、今至急修復を……」
「その必要は無い。此の侭で良かろう」
「うん?」
 不敵な微笑みを浮かべるアルバを見て、河童も相手にとって不足なしとニヒルな笑みを返した。
「ほう、何か勝算があると? それではステージに上がりたまえ」
「望む所よ。この私が招待状に臆すると思うてか?」
 万一にも師が傷ついてはいけないと、隣で構えるジャハルを控えさせ、アルバは投げられた招待状を受け取って舞台へと上がる。
「宝石の身体を持つ種族に、半人の竜……そういった猟兵もいるとは聞いたが、実際にお目にかかれるとは光栄だ。貴君自身が至高の美術品と、そういう訳だな」
「ふふん、分かっているではないか。貴様の中々の美を誇る様だが――よし、許す。真の美とは何たるか、此処で証明してやろう」
 河童にも太鼓判を押され、どやぁとふんぞり返った師匠が指定した、その種目とは――!

「『美しさ』、異論はなかろう?」
 美しさだって――!?
「俺では役者不足だろう。が、自他共に認める人材ならば此処に」
 ジャハルに示されたアルバは更にどやどやどやぁと輝きを増し、その存在感でステージを照らした。
 ま、眩しい――いや、でもこの人なら勝てちゃうかもしれない。
 純粋な容姿の美のみで勝負しようというアルバ、ある意味ではもっとも漢らしい選択である。

「ゆくぞ、ジジ!」
「承知した、師父」
 アルバの後方で跪いたジャハルの背から、普段は秘められている白亜の翼がひろがる。
 そこから溢れだす純白の光を一身に浴び、照らし出されるアルバの玉体。
 白い肌はさらなる透明感を得て瑞々しく、宝石の髪は光を透かして、崩壊した能舞台のそこかしこに蒼と紅の反射光を散らせる。
「こ、これは……」
 その人間ならざる美に、河童も思わず言葉を失う。
「美の顕現たる真なる姿――解放させた事を誇りに思うが良い」
 ルチル――金紅石でできたアウレオラ(よく聖人の頭の後ろで光っている神々しい輪っかのことだ)をおもむろに背負い、光を反射しながら、両腕をひろげた師匠はそう仰せになられた。
 なんということだ。
 やっぱりビューティ師匠は只者ではない。
 仙台の民に美の神と言われていたが、真の姿が本当に美の神だったとは思わなかったよ……。
「所謂、レフ板効果というやつだ――」
 天女と見紛うばかりの白い衣を纏いつつ、美しく伏線を回収したアルバは、無駄に厳かに告げた。
 その御姿を見れば、先の戦いでの師匠を思い出し、聖人……? と首を傾げた邪心も一瞬で清められてしまう。ごめんなさい。
 れふ……? と、ジャハル君も後ろで小さく首を傾げていた。後で説明してあげて下さい。
「やるじゃないか、そうでなくては面白くない!」
 しかし、河童も怯まず、空中ジャンプで一本だけ残っていた柱の上に立って、髪をかきあげながら薔薇をくわえる。
 とたんに舞い上がる薔薇の花吹雪と、絢爛豪華な煌めきから生まれる光と影が、アルバ達の輝きを翳らせようとする。仲間の猟兵達も、もはや眩しすぎて舞台を見ていられない。

 どうする、師父――師と河童の輝きのまばゆさに目を細めながらも、ジャハルは師の背を眺め、ただじっと提言を待った。
「……ジジ、もそっと右へ……」
「右か、承知した」
「うむ、大義である。この位置ならば更にお前の光が私を照らすだろう」
 それなるはただの助言にあらず。
 影なる弟子の秘めた力を解放し、ひかり輝かせる――【賢者の提言】だ。
「何だと!?」
 河童も驚愕する。
 ジャハルがさり気なく位置を移動すると、翼から溢れる輝きがさらに強さを増して、アルバを、舞台を照らした。
「くっ、これを狙っていたのか――!」
 崩壊した瓦礫がステージ上に陰影を作り、背景に立体感を与える。
 まるで西洋絵画の宗教画のような終末的世界観が、そこに広がっていた。

「かーちゃん、お山の上のお城が光ってる!」
「なんて神々しいのかしら……!」
「おい、光を浴びたら怪我が治ったぞ!」
「お、お前さん! 立ってる……病気が治ったのかい!?」
 その聖なる威光は仙台の城下町まで届き、暴れ馬の攻撃で傷ついた民や、病魔に苦しむ民を癒した――究極の美は、全てを救うのだ。

 奇跡の代償としての疲労をすべてその身に引き受けながらも、ジャハルは幾度か目にした師の真なる姿を、それでも飽きることなく眺めた。目にうつる背中は華奢でも、どうしてか広く、大きくも思える。
 アルバの纏った白い衣は、奇しくも河童の白いスーツと対のように映った。
 そう言ったら、師はどんな反応を返すのだろう。
 アルバと河童は互いに身じろぎもせず佇んで、厳かに互いの美を高め合っている。
 ああ、此れなるが頂上決戦か――七つのいろが惑う瞳は、美しいものへの憧憬を宿し、まばたきひとつせずに目の前の光景を見つめた。
 此の絵も地獄絵図と同様に、何処かで見た気がする。
 ホトケ――そう、ホトケだ。
 明滅する視界のなかで、師の姿はほんものの神のように映った。
 これなら、河童とやらも心おきなく成仏できよう。
 そう感じながら、ジャハルはゆっくりと、眠るように、その場に崩れ落ちていった。

「――ジジ!」
 一瞬、気配が消えた。アルバはすぐに振り返り、ジャハルを助け起こす。
「……心配ない。瞬間的に力を酷使しすぎたか」
 持ち前の頑強さですぐに持ち直したジャハルを見て、アルバは緊迫した表情をほっと緩める。まあ美しさをアピールするついでに仙台の民を救ってしまったのだ、疲労もするだろう。
 ……ぱち、ぱち、ぱちと、緩慢な拍手が聴こえてくる。
「素晴らしい輝きだった。影に徹し貴君という素材を引き立てる、後ろの彼も素晴らしかったぞ。役者不足だ等と謙遜するな」
 河童だ。どうやら、敗北を認めたらしい。
「いや、俺は……」
「ふふん、見たか。一人ではなく、二人故に出来る御業。我が従者の献身の美たるや、貴様にも引けを取らぬわ」
 ジャハルは否定しようとして、口をつぐむ。
 まあ、私には敵わぬがな――そうして得意気に笑ったアルバの顔は、自身が褒められたときよりなにより、今日一番嬉しそうだったから。
「なるほど。その輝きの根源もまた、愛情……というわけか。貴君ら二人は太陽と月のようだ」
 愛情。
 面食らった二人は思わず顔を見合わせる。
 師弟のような、友のような、親子のような――近くて遠い、そんな不思議な絆の形も、また美しい。
 良い物を見せてもらったと、河童はそんな彼らを讃えるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

花剣・耀子
本当に美しさバトルが始まるとは思わなかったわよ。
そうね、予知はおおよそ絶対よね……。

心情としては帰りたいけれど、
斃さねばならぬので頑張って立ち向かうわ。
頑張りたい。あたしの気力にはもうちょっとだけ頑張ってほしい。

普通に斬り伏せたのでは納得しないでしょう、お前。
未練を残されても困るのよ。

野菜の飾り切り対決で如何かしら。
技巧も芸術性も刃物の取り扱いも必要な総合競技よ。
美に拘るお前は、ちゃんと本質を見失わないで居られる?
華美さに惑わされず、無駄を出さず、食に感謝を忘れず。
食べて美味しくなければ駄目なのよ。


最終的にどうにもならなくなったら斬るわね。
力イズパワーよ。

天丼の様式美だって、美のうちでしょう。



●16――美しきcooking battle
 なんなんだろうこの戦いは。美で仙台の民救っちゃったし。
 もうやだ、帰りたい。
 ここまでの四人の戦いぶりを見ていた花剣・耀子は、真剣にそう思っていた。
 剣だけに真剣とか言うとうっかり斬られそうなぐらい、そう思っていた――。

 冷静に考えたらおかしい所はたくさんあった。それはもう、何百個もあった。
 本当に美しさバトルが始まるとは思わなかったし、なんで感動路線になっているんだろう。
 あのグリモア猟兵、もう少し詳しく説明してくれてもよかったと思う。でも、これを美しさバトル以外のなんと表現すべきなのかもわからない。
 予知はおおよそ絶対――耀子は、その恐ろしさを改めて感じた。
「如何したのだ、鬼の少女よ。私の美しさに恐れをなし、武者震いしているのかね」
「……そうね、ある意味ではそうかもしれないわ……普通に斬り伏せたのでは納得しないでしょう、お前」
 ――ツッコみたい。
 だが、この戦いが終わるまでは、絶対にツッコまないと誓った。
 耀子は、手にした日本刀を強く床に打ちつける。
「未練を残されても困るのよ」
 斃さねばならぬ。このような河童、二度と出てこられてたまるものか。
 頑張れあたしの気力、頼むからもうちょっとだけ頑張ってほしい。
「あたしは野菜の飾り切り対決を挑ませてもらうわ。技巧、芸術性、刃物の取り扱い、全てが求められる美の総合競技よ」
「ほう、面白い――かの伊達政宗公も料理を愛し、自ら厨房に立ったという。美食を制す者こそこの仙台の覇者となるのだ!」
 河童が指をパチンと鳴らすと、能舞台の残骸がやっと片付けられ、まるで料理番組のようなセットが現れた。河童型のからくり人形たちが野菜を運んでくる。
 いや、勝手に仙台の覇権を賭けないでほしいわ――別に殿様になる気などない耀子はそう思った。
「私の美しき包丁さばきを見よ!」
 河童はおもむろに胡瓜をとりあげると、巧みな包丁さばきで次々に美しくカットしていく。胡瓜の蝶々、胡瓜の薔薇、胡瓜の亀――更に彩りを添えるため、大根や人参を彫刻して作った白鳥や小鳥が出来上がっていく。
 まな板の上にひろがるのは、野菜の桃源郷――その芸術性は確かに大したものだ。
 対する耀子の作品は、菊人参にいちょう南瓜、茶せんなすなど、比較的地味で堅実なものだ。それでも見事な手際ではあったが、これで勝てるのかと、観戦している側も少々不安になる。
「ふっ。美で私に勝つにはまだ貴君は若すぎ……」
「あら、そうかしら」
「何!?」
 河童は目を見開いた。
 耀子は、切った野菜を油に入れ、揚げ始めたのだ――!

 美味しくしっかり火が通るよう。それでいて形崩れもしないよう。
 絶妙な深さの切りこみが入れられた天ぷら達を、炊きたての仙台米に乗せ、甘辛いタレを少々。
 花むきにしたスダチを傍らに添えれば、天丼の完成だ。
「美味い!!!」
 一口食した河童も仲間達も、その美味さに震える。けして派手ではない、和食の様式美に則った耀子の天丼――だが、そこには大切な美の心がつまっている。
 美味しいのおは、美なのだ。
「華美さに惑わされず、無駄を出さず、食に感謝を忘れず。食べて美味しくなければ駄目なのよ。
お前は美に拘りすぎて食の本質を見失っているわ」
「ば、馬鹿な。貴方はもしや……!」
 河童はその時、少女の背に(勝手に)伊達政宗の姿を見た。完敗だ――そう感じ、自らの美しき作品にドレッシングをかける。河童のサラダは皆でおいしくいただきました。
 終わった――あと二人残ってるけど、ひとまず出番は終わった。
 けれど、まだやる事が残っている。
 耀子は、おもむろに日本刀を抜き――虚空に向かって、剣刃一閃を放った。

「……待て、少女。今何をした?」
「あたしの刀は、固いものほど良く斬れるのよ。今何を斬ったのかはあたしも知らない。けれど、確かに手応えはあったわ。力イズパワーよ」
 よく耐えた耀子。ここまで参加してくれて本当にありがとう。
 そんな彼女の逆境にも折れぬ、強く美しい精神が今、混沌とした空気を斬り捨て、葬り去った。
 残るは二人。ここからは、まさかのボケ禁止タイムが始まる――!

大成功 🔵​🔵​🔵​

ユエ・イブリス
※ナルシストではないです
※白馬とは円満に別れました
※宝は不要です。重いし

これは中々に良い眺めだ
君(河童)、あの峰はなんと呼ばれている
謂われでもあるのか
成る程、良い話が聞けた

……所で、君の言う『No.1』の意味が理解できぬのだが
美とは、ただそこにあるだけで人を酔わせ従わせるもの
例えばあの霊峰、例えば咲き誇る花
どちらが美しいかなど比べる理由があるかい?

丹精された薔薇は美しい
だが、薔薇は美しくあろうと努めて咲いてはいない
酔わされた者が薔薇に尽くし美しさを増すのだよ
つまり美とは『在るべき姿であるもの』

君は自分を美しいと言ったね
その時点で、美に尽くす下僕と成り果てた
……私は己をそう思ったことは無いよ


出水宮・カガリ
※アドリブ絡みOK

カガリの自慢は、この扉だ
この扉が作られた都が、一番の誇りだ
『どちらが、より美しく己の都を見せられるか』を競おうではないか
先制は敢えて譲ってやろう
カガリが先では、お前が霞むと思うのでな

この街は、確かに美しい
だが、カガリの黄金の都は、決して劣らない
【亡都の紋章】に触れさせ、河童を【夢想城壁】の中へ
気の済むまでいていいぞ
(黄金の屋根が陽光や月光を反射する豊かな都。雰囲気としては大正浪漫で和洋折衷の城が本丸)
…だがな、河童
これは、もう無いのだ
城壁に閉ざされた、夢想の箱庭(ミニエスケープ)だ
ただ、美しかったのだと、知ってもらえればいい
カガリがお前によって、この都の美しさを知ったようにな



●17――美しきfinal battle
 河童サラダと天丼による食事会も終わり、いよいよ日も落ちようという時刻。
 大変な偏食家でもあるユエ・イブリスが、それらを口にしたかはわからない。気づけは雪はやみ、空は晴れ、霞ががった白い山々をやわらかな夕焼けが照らしている。
 もうじき、仙台にも春がくる。
 不思議と穏やかなひと時だ。ユエはエンパイアの四季が生む色彩を愛で、空を眺めていた。

「君、あの山々はなんと呼ばれている」
「ああ、あの七つの山か。七ツ森と呼ばれている」
「七ツ森か。謂われでもあるのか」
「昔、この都には、並ぶ者なき力持ちの巨人があったそうだ。あるとき弓の稽古をするため、彼は土を盛り、的山を作ろうとした。その道中で背負いかごからこぼれた土が七つの山となり、この地の遠景を彩っているのだ」
「ふむ――たゆまぬ鍛錬が結晶となり生じた美景か。成る程、良い話が聞けた」
「そうだろう。ゆえに私達もNo.1を目指し、己の美を研磨せねばなるまい。さて、貴君らはどのような勝負を望む?」
 ユエは己の何倍もある河童の姿を、不可解なものを見るような目で見あげる。
 彼の頭には既にあるひとつの疑問が浮かんでいたが、まだ口にすべき時ではないだろう。ゆるりと空中を漂いながら、ユエはもう一人の仲間――出水宮・カガリの動向を見守る事にした。
「カガリの番か。うむ、もう心は決まっているぞ。『どちらが、より美しく己の都を見せられるか』を競おうではないか」
 仙台の夕暮れをぼんやりと眺めていたカガリは、ふと思い出したように、しかし真っ直ぐに、勝負内容を口にする。
 その傍らにはいまも、本体である鉄門扉があった。カガリの自慢の扉。
 この扉が作られたその都こそ、一番の誇りであるがゆえに。
「先制は敢えて譲ってやろう。カガリが先では、お前が霞むと思うのでな」
「貴君も不可解な事を言うな。今この場に見えているのは仙台の地だろう? 口頭のみで私に勝とうとは……随分なめられたものだ。……見よ。じきに日が沈む」
 夕陽が山々の合間に姿を隠し、澄んだ星空にあかるい月が出ている。
 かくかくしかじかで既に一度出ているが、此度こそは天然の月夜だ。
 川面には月の幻がたゆたい、雪化粧をした街にともる灯りは、現代よりもずっと少なかった。
 それゆえ星空は澄み、あたたかな灯火と雪のなか、ぼんやりと橙にひかる仙台の街は、昼間あのような騒ぎがあった場所とは思えない穏やかな静けさにつつまれている。
 住んだことなどないはずだ。
 だが、どこか郷愁を誘う、古き良き日の本の夜がそこにあった。
「どうだ。小細工など必要ないだろう?」
「うむ……」
 この街は、確かに美しい。カガリも心から、そう思う。

「……カガリの番だな。緑のよ、ちとこの紋章に触れてくれるか。罠などではないゆえ、信じてほしい。何かの縁だ、皆ももし良ければだが、カガリの誇りを見てやってはくれないか」
 相変わらず確定ろうるの回避には気を遣うカガリだったが、ここまできて断る理由もない。河童も仲間たちも、素直にそれに触れる。
 カガリが手にしたそれは、どこかの世界で、かつて栄えた都のエンブレムだった。
 そして、その紋章に触れた者を異空間へいざなうユーベルコード――【夢想城壁】が、発動する。

 ――その都は、どこを見てもまばゆい光に満ちていた。
 黄金の屋根を持つ建造物たちは、和の趣と洋の華美さを併せ持ち、レトロで浪漫漂う独特の街並みを形成している。
 太陽に照らされれば眩しい程に明るく、月の光を受ければ神秘的な輝きを放つ、黄金の都。そこが豊かで、しあわせな国であることは、誰だって一目見ればわかるだろう。
「あれが本丸だ」
 中でも一際立派な城を示し、カガリはどこか懐かしむような、遠い目をする。
「ここが君の生まれた都か。良い国だ」
「そう思ってもらえたらカガリは嬉しい。気の済むまでいていいぞ」
 世界を巡ったとて、滅多に見られるものではないだろう。ユエも暫し遊覧飛行を楽しんでこようかと思い、上空に飛ぶ。今は都をより美しく見せるためか、太陽と月がかわるがわるに出ているようだ。
「驚いたな、このような美しい都があるとは。して、いったい貴君の故郷は何処にあるんだい?」
「ふふ、有難う。……だがな、河童。これは、もう無いのだ」
「もう無い、だと……?」
 そう、この都は、もう滅びた。
 ……守れなかったのだ。
 それゆえに、門扉のヤドリガミは『守る』ことに執心する。
 時には己の内に閉じ込めてでも、たいせつなものを守りたいと、そう願う。
 その想いで作られたのが、この黄金城壁に閉ざされた、夢想の箱庭(ミニエスケープ)――彼が人の名をなかなか覚えられないのも、故郷の記憶をなにより鮮明に留めおきたいから、なのかもしれない。
 想い出のなかで永遠を生きる幻の都は、美しくも、どこか哀しかった。
「お前に、皆に、ただ、美しかったのだと、知ってもらえればいい。カガリがお前によって、この都の美しさを知ったようにな」
 カガリはすこし寂しい目をして、皆にそう語りかけた。
 さすがの河童もかける言葉を失っているようだ。
 そろそろ頃合いか。遊覧から帰ってきたユエは、河童の顔の正面へ、粉雪のようにふわと舞い降りる。
「君もそろそろ分かってきたのではないかね。美とは、ただそこにあるだけで人を酔わせ、従わせるもの。例えばあの霊峰、例えば咲き誇る花、例えば君の都と、この彼の都……どちらが美しいかなど比べる理由があるかい?」
 確かに一理あるかもしれない。
 ユエの言葉をしばし検討した河童は、よろしいと手を打った。
「この都は美しい。だが、私も美しき仙台の地を愛している。こればかりは負けを認める訳にはいかないな。この勝負に関しては引き分けとしよう。それで、No.1は……」
「違う。そもそも君の言う『No.1』の意味が理解できぬと、私はそう言っているのだ」
「な……それこそどういう意味だ! 美しき者たちが互いに競い合い、高め合う。そこからより強い輝きが生まれるんじゃないか!」
 どうやら美の解釈違いが起きているようだ。
 ユエはゆっくりと首を横に振り、てのひらに魔力を集めて氷の薔薇を作った。
 人間がほんのすこし指を触れれば溶けてしまう、ちいさなちいさな氷の薔薇だ。
 けれどその薔薇は、ユエの手の中で、ほこらしく咲いている。
「丹精された薔薇は美しい。だが、薔薇は美しくあろうと努めて咲いてはいない。酔わされた者が薔薇に尽くし、美しさを増すのだよ」
 ここに居る者達の姿を今一度思い出すといい――ユエは謳うように言う。

 かつての主に近づこうと夢を見て、貴公子然とふるまうステラの美しさを。
 Rapの精神に魅せられ、暴力なき言葉と音楽で戦い続けるパウルの美しさを。
 類まれなる美貌に慢心せず、愛弟子と共に輝く努力を怠らぬアルバの美しさを。
 そんな師の影となり盾となり、献身的に支えようとするジャハルの美しさを。
 一行の挙動に困惑しつつも己を貫き、空気すら変えてみせた耀子の美しさを。

 みながみな、薔薇であって、薔薇ではなかった。
 人という、音という薔薇に魅せられ、そこから自然と芽吹いた新たな花だ。
 誰かと競うために咲いたわけじゃない。だからみな、誇り高く輝く。
 そして――今ここにあるカガリと黄金の都も、その薔薇のひとつ。

「つまり美とは『在るべき姿であるもの』――違うかね?」
「……ッ!!」
「緑の!」
 No.1に執着する己の醜さをユエに指摘され、河童はよほどショックだったのだろうか。都の外に走っていってしまった。みなも河童を追い、黄金の都から河童城へと帰る。
 河童は、仙台の夜景を見ながらたそがれていた。
 ユエはその隣に浮かび、最後の言葉を告げる。
「君は自分を美しいと言ったね。その時点で、美に尽くす下僕と成り果てた」
 ――私は、己をそう思ったことは無いよ。
 その言葉を聞いた河童は、ふっと笑った。どこか清々しい表情をして、笑った。
「私は戦う前から貴君らに負けていたという訳が。一度骸の海に帰り、ラップバトルでも広めてくるかな。せっかくだ、この城と残りの宝も進呈しよ……」
「不要だ。酒杯より重いものは持たないことにしているのでね」
「……そうか。それは残念だ」
 河童はユエにそう返し、ふたたび指を鳴らす。
 ふと隣を見ればもう、その姿はなかった。
 それから数秒もたたぬうちに、城も消失し、気づけば猟兵たちはなにもない山中に佇んでいた。

 すべては夢、まぼろしだったのだろうか。
 妖怪に化かされたのかと疑いたくもなるほどに、静かな夜だけが、あとに残った。
 けれど、そこから見る仙台の夜景は、やはり美しかったのだ。
 覚えておこう。せめて、そのことを。
 足元に落ちていた一輪の赤い薔薇を拾いあげ、カガリは穏やかにほほ笑んだ。

 なお今一度言っておく。
 この依頼で起きた全てのことは、他での再現性をいっさい保証しません――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年03月14日


挿絵イラスト