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闇の救済者戦争⑩〜うらなり

#ダークセイヴァー #闇の救済者戦争

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#闇の救済者戦争


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 ここは、『合わせ鏡の城』。
 どこまでも続く鏡の景色。割れぬ鏡の迷宮城。
 無限に映し出され続ける鏡像に紛れ、黒い炎を纏う真っ赤な赤子たちは蠢き出す。

 ——オカ、ア、サン——、

 血だまりの一つが、弾けるように囁いた。

 尤も、躊躇する必要はないだろう。
 『それ』らは只の虚像。赤子のかたちをとっているだけだ。
 ——迷い込んだ者を、より効率的に屠るために。


「戦争、だね」
 鷹野・つくし(天架ける鋼糸・f38792)は集まった猟兵たちを見回すと、軽くお辞儀をした。
「今回の戦場は『合わせ鏡の城』。辺境の果てに建つ、内壁の全てが『割れない鏡』で作られた奇怪な迷宮城。鏡の壁はどこまでも同じ景色を映し続けて、踏み入る者を惑わせてしまうみたい。その鏡像に紛れて、たくさんの敵が襲ってくる」
 ここからが重要だよ、そう言って、人差し指をぴんと立てる。
「よく、聞いて。合わせ鏡の城にいる敵は、『あらゆる防護を侵食し、黒い炎に変えて吸収してしまう能力』を持つ。その代わり、視聴嗅覚は持たず……『相手が抱いた恐怖や絶望の感情を感知する』以外の手段で、攻撃対象を見つけ出すことはできないみたい」
 つくしはそこで言葉を切ると、やなもの見ちゃった、と肩を竦めた。
「敵の、姿。貴方たちに恐怖や絶望を与えて、攻撃相手、探そうとしているの。優しいみんなにとっては、攻撃し辛いかもしれないけど——どうか、負けないで」
 祈るように、つくしは猟兵たちを送り出すのであった。


TEN
 TENと申します。
 闇の救済者戦争における戦争シナリオをお届けします。
 今回は、合わせ鏡の城にて、『未来を歩み出せなかった者達』を倒していただきます。

 一章で完結する戦争シナリオです。
 早期完結を重視して執筆いたしますので、ご承知おき下さい。

●プレイングボーナス
 鏡像に紛れた「実体の敵」を見つける/狂えるオブリビオンの性質に対処する。
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第1章 集団戦 『未来を歩み出せなかった者達』

POW   :    血の羊水へと引き摺り込む
【攻撃に躊躇する者に愛情を求め群がる赤子】が自身の元へ多く集まるほど、自身と[攻撃に躊躇する者に愛情を求め群がる赤子]の能力が強化される。さらに意思を統一するほど強化。
SPD   :    広がる悪夢
【ゆっくり広がる血溜まりから生える赤子の腕】が命中した対象にダメージを与えるが、外れても地形【が血の池と化し広がり、赤子が這い出す】、その上に立つ自身の戦闘力を高める。
WIZ   :    悲劇が繰り返される
自身が戦闘で瀕死になると【血溜まりとなり、血溜まりから無数の赤子】が召喚される。それは高い戦闘力を持ち、自身と同じ攻撃手段で戦う。

イラスト:カス

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

スピネル・クローバルド
アドリブ・連携歓迎

■心情
恐怖や絶望の感情ですか、敵はそうやって私達の居場所を探ろうという算段ですね。
では、私は逆にその感情で相手を釣って炙り出してあげます。

■行動
割れない鏡の迷宮の中で怯えつつも、恐怖の感情を餌に
敵を誘き寄せて返り討ちにしてあげます。
黒い炎も【火炎耐性】で耐える様にしながら戦いますね。
恐怖に慄きつつも【落ち着き】で冷静に実体の敵を見つけ出し
『森は静寂を望む』で戦場を森に変えて、木々の蔦や根で敵を捕縛し
【スナイパー】で狙いを定めた『フォレストスナイパー』で一気に射抜いて倒します。

敵の無数の赤子に対しては、【範囲攻撃】で赤子を纏めて倒します。


ハロ・シエラ
これはまたダークセイヴァーらしいと言うかなんと言うか。
未来の希望と言うべき赤ん坊の姿を利用して人を殺しに来るとは……恐怖よりも怒りが勝りますね。
ですが鏡像と本物を見分けるには冷静でなければなりません。
【落ち着き】をもって挑みましょう。
目で見るだけでは良く分からないですが、私には【第六感】があります。
音や匂い、気配などがどれが実体かを教えてくれるでしょう。
それをもってして本物の攻撃を察知して回避し、鏡像に恐れず進む事が出来るはず。
そうなれば防護を侵食される事も無いでしょう。
後は敵の多い場所に飛び込み、ユーべルコードでまとめて【焼却】するまでです。
恐怖するのは味方を巻き込むことに対して、ですね。



●畏れるもの
「これはまた、ダークセイヴァーらしいと言うかなんと言うか……」
 無数の赤子を目の当たりにしたハロ・シエラ(ソード&ダガー・f13966)は、苦々しげに呟いた。独り言のようなその言葉に、スピネル・クローバルド(家族想いな女の子・f07667)も頷いて同意を示す。
「恐怖や絶望の感情ですか。敵はそうやって私達の居場所を探ろうという算段ですね」
 敵の思惑を理解していてもなお、恐怖や絶望から完全に逃れるのは難しい――そう思ったスピネルは、その習性を利用することを考えた。恐怖の感情を餌に、敵を誘き寄せて炙り出してあげればいい、と。
 スピネルは鏡の迷宮へそっと足を踏み入れる。鏡の回廊は無限に広がっているように見えた。
 視界に映るのは、鏡。自分を映す鏡。その鏡を映す鏡。……を映す鏡。この道に、果てはあるのかしら——そんな考えに脳が支配されそうになる。
 ずるり、ずるり。鏡の間に反響する足音に、何かを引き摺るような音が加わる。
 気付けば彼女の周りを、無数の赤子たちが取り囲んでいた。
 言いようのない恐怖に背筋を震わせながらも立ち向かうスピネルの少し後方で、ハロは静かに敵の集団を見据えていた。
(「未来の希望と言うべき赤ん坊の姿を利用して人を殺しに来るとは……恐怖よりも怒りが勝りますね」)
 だが、鏡像と本物を見分けるには、冷静でなければならない。煮え滾りそうな怒りをぐっと堪えて――ハロは目を閉じ、ひとつ大きな深呼吸をする。肺に流れ込む冷えた空気と血生臭さを感じながら、ハロは第六感を研ぎ澄ました——一撃で、敵を仕留めるために。
 赤子たちが、恐怖するスピネルへ一斉に襲い掛かろうとした、その時。
「深く広く大いなる森よ、静寂の平穏を望むのならば……」
 スピネルがユーベルコードを詠唱するや、一面を取り囲む鏡の景色が、草木生い茂る森へと塗り変わってゆく。木々の蔦や根は、スピネルを害そうとする敵たちを無差別に捕縛していった。
 虚像を映す鏡は、あくまでただの鏡。鏡を捕縛したとしても、そこに映る赤子の攻撃が止むわけではない。
 ……だが、蔦や根の絡み方から、それが|平面《鏡》であることが判れば——鏡に紛れた『例外』は、自ずと炙り出されるだろう。
「そこ!」「見つけた♪」
 ハロのレイピアとスピネルの矢が、ほぼ同時にそれぞれ別の実体を貫く。不意を突かれた赤子たちは、ごぽりと音をあげて崩れ落ちた。まだまだ、とスピネルは微笑む。愛用する木弓——『フォレストスナイパー』を構え、一箇所に集まった赤子たちを一気に射抜いていった。
「……少し離れていてください。あとは私に任せて」
 ハロはスピネルに声を掛けると、地を蹴って跳躍した。スピネルは頷いて上空へ飛び退く。
 息も絶え絶えの赤子たちが、初めてハロの方を向く。「そうでしょうとも、」蠢く血溜まりたちの群れに飛び込みながら、ハロは淡々と囁いた。
「私が恐怖するとしたら――」
 赤き瞳を煌めかせ、業火纏う剣を振り上げる。
「味方を巻き込んでしまうこと。それだけですから」
 実体も、虚像も、それらを映す割れない鏡も。魂さえ灰燼にする炎の斬撃が、辺り一帯を焼き尽くした。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

空桐・清導
SPD
アドリブや連携も大歓迎だ

「悪趣味なオブリビオンだ。
その子達を産み出すのはお前達オブリビオンだというのに…!」
恐怖や絶望さえも容易く燃やし尽くす怒りを胸に前に立つ
「この中に本体がいるって言うのなら!全てを穿つまで!
ブレイザイン!インビンシブルモード!!」
天井まで浮き上がり、白銀の炎翼を展開
「燃やし尽くす!!超必殺!ワールド・パニッシャー!!」
戦場全体に光焔の雨が降る
一切の例外なく次々とオブリビオンの虚像を撃ち、
本体にもダメージを与えていく
「―そこか!シルバリオン・カッター!!」
実体の敵に対して白銀のエネルギーを固めた
刃を投擲して撃破していく

「お前はオレを本気で怒らせた!絶対に許さないぞ!」



●濯ぐ
「「「おぎゃあ、おぎゃあ……」」」
 血溜まりを泡立たせながら、赤子たちが泣いていた。『未来を歩み出せなかった者達』——世界に殺された赤子たちのオブリビオン。彼らは与えられる筈だった愛を求め、命ある者を引き摺り込んでは、また骸の海から生まれ出るのだ。
 そんな敵と対峙した空桐・清導(ブレイザイン・f28542)の心を灼くのは、恐怖、絶望——否、それらを全て容易く燃やし尽くす『怒り』であった。
「悪趣味なオブリビオンだ。その子達を産み出すのはお前達オブリビオンだというのに……!」
 清導の瞳の奥に火が灯る——黒き炎を凌駕するほどの、怒りの炎が!
 清導は強く地を蹴り、鏡張りの天井近くまで飛び上がった。
「この中に本体がいるって言うのなら! 全てを穿つまで!
 ブレイザイン! インビンシブルモード!!」
 天高く飛翔した清導は、白銀の炎翼を展開する。【銀翼の白鎧】——慣れ親しんだ真紅の鎧から、白銀の鎧纏う戦士へと姿を変えて。清導はぐっと拳を握り、敵を睨みつけた。
「燃やし尽くす!! 超必殺! ワールド・パニッシャー!!」
 掛け声と共に、ひとたび機械の炎翼が羽搏けば、戦場全体に光焔の雨が降る。雨は、鏡と敵の虚像たちを例外なく打ち倒していった。
 そして、一条の光焔が清導の真下に落ちた時。何重にも連なった赤子の姿が、一斉に揺らめいた。
「——そこか! シルバリオン・カッター!!」
 顕になった実体に向けて、すかさず清導は白銀のエネルギーを固めた刃を投擲する。赤き血溜まりのエネルギーは、その姿ごと白銀の焔に飲み込まれていった。だが、まだ彼の攻撃は終わってはいない。
「お前はオレを本気で怒らせた!絶対に許さないぞ!」
 彼の叫びに呼応して、機械鎧は再び炎翼をひらいた。
 白銀の光焔が戦場へと降り注ぐ。
 悲劇の連鎖しか生まぬ血溜まりを、洗い流すように——。

大成功 🔵​🔵​🔵​

天御鏡・百々
※神鏡のヤドリガミです

なんとも哀れな姿の敵だな
さっさと引導を渡すのが慈悲というものか

心を強く持ち、恐怖や絶望を抱かぬように気を付けるぞ

鏡たる我が鏡像に惑わされるはずも無し
その性質は誰よりもよく知っている
実体を見つけるなど造作もない

そして……鏡だらけのこの空間を利用してくれよう
とぷりと鏡の中にその身を沈め、『鏡渡り』により神出鬼没の奇襲を仕掛けていくぞ
『真朱神楽』(武器:なぎなた)による斬撃で敵を両断してくれよう

もう苦しむことは無い
赤子たちよ、ここに眠るのだ!



●鏡合わせの
「「イタイ、イタイ、タスケテ……」」
 赤子のかたちをした血だまりが、声の如き音を発している。生まれて間もなく骸の海に堕とされた赤子達には、その言葉を知る機会さえなかったというのに――それでも、助けを乞うて泣き叫ぶのだ。
「なんとも哀れな姿の敵だな。さっさと引導を渡すのが慈悲というものか」
 その姿を見て、天御鏡・百々(その身に映すは真実と未来・f01640)は嘆息する。
 彼らを救う方法は、ただ一つ。その仮初の命を断ち、苦しみの連鎖を終わらせることだけだ。心を強く持たねばならない。信念を胸に、百々は戦場へと足を踏み入れた。見渡す限り全面の鏡の世界に、無数の百々と敵の姿が映る。尤も——鏡の罠は、神鏡のヤドリガミである百々の障害にはなり得ない。
「鏡から鏡へ、鏡の世界を通じて渡れ」
 百々がそっと手を触れると、鏡は水面の如く波立つ。とぷり――そのまま小さな波音を立てて、百々は鏡の中に身を沈めていった。うねる鏡面の歪み、無限に続く合わせ鏡の輪廻——それらに古き知人のような親しみさえ覚えながら、百々は鏡の世界を渡っていった。
 導かれるように歩んだ先、百々は造作もなく赤子たちの本体を見つけた。
 赤子たちは、困惑したようにその場でうぞうぞと蠢いているようだった。当然だろう、感知していたほんの僅かな『恐れ』が、突如、自分達が潜む鏡の中に溶け入ったのだから。
 無防備な敵目掛けて、百々はすかさず『真朱神楽』を振り下ろした。神出鬼没の刃が、どす黒い血溜まりを裂く。とぷん。振り返る赤子を尻目に再び鏡面へ身を沈め、今度は反対側から斬撃を叩き込む。
「もう苦しむことは無い。赤子たちよ、ここに眠るのだ!」
 次に世界へ生まれ落ちた時、鏡に映るのは笑顔の姿であれば好い。
 願うように、朱色の薙刀を振るい続けた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

朱鷺透・小枝子
恐怖、絶望を喰らう黒い炎が相手なら、
自分は生命を焼き尽くす黒い炎を以って壊そう!
来い!『禍埋め尽くせ!!』

『黒焔風』発動。風火輪型抗体兵器を召喚装備!
【呪詛】自身の|【闘争心】《破壊衝動》と同調した、
オブリビオンを呪い壊す呪炎の竜巻を放ち、
【第六感】呪炎に触れた実体の敵共を呪い越しに感じ取る!

壊せ!!例えそれがどんな形をしていようとも!
自分はオブリビオンを唯只管に壊すのみ!!

故に恐怖も絶望もなく、
脚に装備した風火輪型抗体兵器で飛翔【推力移動】
駆け抜け様に、赤子達へ火尖鎗型抗体兵器で【なぎ払い】
呪炎吹き上げる鎗を叩きつけ【焼却捕食】
赤子が秘めた狂気を、黒い炎を、闘争心でねじ伏せ喰らう!



●黒き炎
 無限に続く鏡の回廊へ、朱鷺透・小枝子(|亡国の戦塵《ジカクナキアクリョウ》・f29924)は足を踏み入れた。ごぽり——血溜まりが蠢く気配がする。
 顔をあげたその先に、黒炎纏う赤き群れは在った。
 鏡に映ったオブリビオン、『未来を歩み出せなかった者達』は、まったく同じ動きで、まったくの同時に――ゆるりと、小枝子の方を向いた。
 赤子たちは恐怖と絶望を喰らい、黒き炎に変え、全てを同胞として呑み込まんとする。
「ならば——自分は生命を焼き尽くす黒い炎を以って壊そう! 来い!『禍埋め尽くせ!!』」
 小枝子が吼える。召喚された風火輪型抗体兵器は、まるで最初からそこにあったかのように、小枝子の脚へ納まった。
 巻き起こすは、オブリビオンを呪い壊す呪炎の竜巻。小枝子が放つ呪炎を通して、赤子たちの実体たる感触と共に、黒き怨念が流れ込んでくる。生まれ落ちたかったという無念。祝福されたかったという願い——否、否、否——興味は無い。必要も無い。たったいま意味を持つのは、奴らを壊せ壊せ壊せ壊せと叫ぶこの|闘争心《破壊衝動》だけだ!
 小枝子は風火輪型抗体兵器を駆動させ、飛翔した。氷上を滑るように駆け抜けざま、今度は火尖鎗型抗体兵器を赤子目掛けていとも容易く薙ぎ払う。
「壊せ!! 例えそれがどんな形をしていようとも! 自分はオブリビオンを唯只管に壊すのみ!!」
 小枝子は、呪炎吹き上げる鎗を振り上げる。これは敵だ。敵は破壊する。そこに一切の疑問は無い。
 赤子が秘めた狂気を、黒い炎を、より純度の高い|闘争心《狂気》が喰らってゆく——。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ヴィヴ・クロックロック
なるほど、実に悪辣でココらしい敵だ…。

姿で恐怖や絶望を与えるなら更なる擬態の可能性もありそうだな。召喚するのも知能の無いクラゲのほうがいいだろうか。
よし、鏡の迷宮内を私の月光海月で埋め尽くして一斉起爆させよう。壊れない鏡で覆われた密閉空間、こんなにも爆破させがいがある獲物もいないだろう。
……恐怖や絶望?ちょっとグロい赤ん坊の群れや視界の悪い迷路より饅頭とお茶のほうが怖いが?
(アドリブ連携歓迎です)



●満たすもの
「なるほど、実に悪辣でココらしい敵だ……」
 先陣を切った猟兵たちに続き、鏡の回廊に足を踏み入れたヴィヴ・クロックロック(世界を救う音(自称)・f04080)が呟く。咎人と吸血鬼の血を引く彼女は、かの世界が如何に過酷なものか、充分理解している——痛いほどに。
 恐怖と絶望。感情を喰らう敵が相手ならば、召喚すべきは知能のないクラゲ——そう考えながら、ヴィヴはユーベルコード『|月光海月《ムーン・ムーン》』を発動させた。
 召喚されたのは、鏡に映る赤子にも負けないほど大量の機雷海月の群れ。赤子たちに気取られぬままに、鏡の間は極めて透明に近いゼラチン質で満たされてゆく。
 そして——。
(「壊れない鏡で覆われた密閉空間、こんなにも爆破させがいがある獲物もいないだろう」)
 BOMB!
 暫くの間を置いて、機雷海月たちは炸裂した。連鎖する爆撃の音、弾け飛ぶ液体の音。
 割れることができる普通の鏡は幸運であったのかもしれない——絶対に割れない鏡たちは、衝撃を殺すこともできず、派手に吹き飛ぶ。何処ぞにあった血溜まりの実体も、まとめて押し潰されてゆく。
 敵は、潰れながらも少しでも敵を喰らおうと、血溜まりから赤子を生み出してゆく。
「……恐怖や絶望? ちょっとグロい赤ん坊の群れや視界の悪い迷路より、饅頭とお茶のほうが怖いが?」
 それらを爆弾銃で吹き飛ばしながら、ヴィヴはけろりと言い放つ。
「……なんだ、おやつの用意はしてくれないのか」
 ヴィヴは、彼女以外何も映さなくなった鏡を見て。期待外れだとばかりに呟くのであった。

 ふと。ヴィヴは、辺りを覆う邪悪な気配が消え失せたのを感じた。
「……やったか?」
 静かに、構えた武器を下ろす。こんなときは大抵やっていないのがお約束だが——どうやら今回はそうではなかったらしい。
 黒き炎を纏う赤子の群れは、もう現れることはない。猟兵たちは、すべての敵を倒し尽くしたのだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2023年05月06日


挿絵イラスト