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アタルヴァ・ヴェーダは祈りの果てか

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●小国家『ビバ・テルメ』
 かつては小国家『フォン・リィゥ共和国』と呼ばれていた場所。
 それが小国家『ビバ・テルメ』の興りであった。鉱山を背にし、廃棄された入り組んだ工場地帯のパイプや建物が要害となっていた。
 優れた立地。
 敵を寄せ付けぬ地形は、小国家『フォン・リィゥ共和国』を娯楽の都市へと変貌させていた。キャバリア闘技場が連日開催され、人も物資も流入してくる。
 プラントの数は多くはなかったが、流れ込む物資と人でもって小国家は隆盛を極めたのだ。
 しかし、隆盛を極めたということは即ち衰勢を齎すものでもあった。
 キャバリアはオブリビオンマシンとなり、猟兵の介入を見た。
 そして、他国が『第三帝国シーヴァスリー』の前進である『シーヴァスリー』によって滅ぼされる中、ただ一つ静観を続け、内部にオブリビオンマシンの蠢動を許すことになったのだ。
 そこからは早かった。

 巨大陸上戦艦を造り、『神機の申し子』と呼ばれるアンサーヒューマン部隊を造りあげてなお……いや、作り上げたからこそ猟兵の介入を招く結果ともなったのだ。
 そして訪れるの滅び。
 小国家としての体裁など取り繕うこともできなくなってしまったのは当然の帰結である。

 しかし、ある猟兵が行ったことが、この土地を再び隆盛へと導こうとしていた。そう、鉱山に秘されていた温泉資源を掘り当てたのだ。
 それまで装甲の激突する音と放たれた弾丸の放つ硝煙ばかりが立ち込める闘技場ばかりであった小国家は、今や温泉の香りが満ちる温泉小国家『ビバ・テルメ』へと変貌を遂げいていた。
「……とは言え」
「うん……とは言え、だよね」
「ああ! まったくもってどうしてこんなに書類が必要になるのだ!」
『神機の申し子』たる四人のアンサーヒューマンたちは頭を抱えていた。
『エルフ』は目の前の書類の山を見上げるしかできなかったし、『フィーアツェン』はどうにかして、この事務処理を終えなければならないと思って奮闘していた。
 また『ドライツェーン』は半ば諦めたように疲弊した顔で突っ伏していた。
 そんな中、『ツヴェルフ』だけが、一つ大きな声を上げる。

「あっ!」
「どうした?」
「これ、これを見てください。前体制の貯蔵庫の所在……!」
 彼等は今、温泉小国家『ビバ・テルメ』の前身たる『フォン・リィゥ共和国』時代の書類から、小国家運営に勤しんでいる。
 温泉を掘り当てた猟兵から運営を丸投げされてしまったことは幸いの中の不幸でもあったけれど、しかし彼等は戦うこと以外のことを成さねばならないと懸命だった。
 だからこそ、こうして嘗ての遺物とも言うべきものを整理し、新たな道を模索しているのである。そして、それは『ツヴェルフ』は示した資料が示す通りであった。
「ここに大量のレーションがありますよ! 温泉施設の近くです。これなら、プラントの生産体制を施設整備に回す余裕が出てくるのでは?」
「それだ!」
「いやでも、ちょっと待って。それは……」
「うん。敵が来ない、ということを前提としているね。この『ビバ・テルメ』の防衛戦力は僕たち四機の『セラフィム』だけだ」

 その言葉に他の三人が頷く。
『第三帝国シーヴァスリー』はこの地方のあちこちで戦乱を巻き起こしている。まるで火種を撒き散らすように、だ。
 自分たちの運営する『ビバ・テルメ』だって、標的の一つだ。
「彼等の前哨基地がある、というのが問題だな」
「この間も付近で戦闘があった、よね。向かった時には終わってたし、誰もいなかった」
「でも確実に戦闘があったんだ。となれば……」
 四人は頭を抱える。
 やっぱりどう考えたって、無理だよー! と彼等は苦悩しながらも、しかして戦い以外の何かをする、ということを心の奥底でどこか楽しみながら、解決しない問題に思い悩み続けるのだった――。

●放逐
『第三帝国シーヴァスリー』は実力主義である。
 同時に他者を蹴落とすことでもって、自らの有用性を示すことでしか暮らしていくことができない小国家でもあった。
 だからこそ、国民の全てが自分より弱き立場の者を虐げる。
 弱者を作り上げることで、自らの優位性を保とうとする。それは嘗てオブリビオンマシンによって小国家に住まう人々の思想を染められたからである。
「……わかっているんだよ」
 アルコールの匂いを纏った男が小国家『ビバ・テルメ』の街中を往く。
 明らかに悪い酔い方をしているのがわかるだろう。彼は『第三帝国シーヴァスリー』を放逐されたキャバリアパイロットである。

 確かに彼は『エース』と呼ばれる技量を持っていた。
 しかし、度重なる失敗において彼は小国家から放逐された。味噌がついた、というのならば、あの異様なる傭兵たちと交戦するようになってからである。
 統制があるわけではなく。
 ただ個で好き勝手に動いているにも関わらず、戦術でもって戦略を食い破るかのように己たちを撃退する。
「あんな連中と関わったのが運の尽きだってことは……」
 どちらにせよ、国家を放逐された己には関係ない。
 どの道、どんなに力を尽くした所で、あのような化け物連中と渡り合おうというのが、そもそもの間違いなのだ。
 だから、彼――『クィンタブル』は酒に溺れるようにして、湯煙漂う街中をおぼつかぬ足取りでさまよう――。

●湯煙
 グリモアベースに集まってきた猟兵たちを迎えたのはナイアルテ・ブーゾヴァ(神月円明・f25860)だった。
「お集まり頂きありがとうございます。今回の事件はクロムキャバリア世界。嘗ては『フォン・リィゥ共和国』と呼ばれた小国家も、瓦解し新たなスタートへと踏み切っていることをご存知でしょうか?」
 ナイアルテの言葉に猟兵たちは首を傾げるかもしれない。
 そう、新たな小国家が生まれているのだ。
『ビバ・テルメ』。
 背を鉱山に守られ、停止した生産工場地帯が城壁となっている天然の要害に守られた温泉国家である。

 その温泉国家を滅ぼそうと小国家『第三帝国シーヴァスリー』が、雪原の付近に前哨基地を築いているのだという。
「それ自体であれば問題はありません。しかし、その配備されていたキャバリアの全てがオブリビオンマシンに変えられ、致命的なまでに狂いはじめ、暴走しようとしています」
 だが、不幸中の幸いもある。
「その前哨基地には『エース』パイロットが存在していましたが、度重なる失敗によって放逐され、『ビバ・テルメ』に流れ着いているようなのです。それこそが幸運なのです」
 其の言葉に猟兵たちは理解を示すだろう。
 放逐されたとは言え『エース』である。
 ならば、前哨基地の情報にも精通しているだろう。
 その『エース』をなんとかして味方に引き込めば……。

「ええ、平和な『ビバ・テルメ』を戦禍に巻き込まずにオブリビオンマシンだらけの前哨基地を潰すことができます」
 争いが絶えないクロムキャバリア世界であるが、しかし平和を求める心は潰えてはいない。
 ならばこそ、『ビバ・テルメ』は争い以外の何かを示す一つの答えともなるだろう。
 その篝火を潰えさせてはならぬとナイアルテは猟兵たちを送り出すのであった――。


海鶴
 マスターの海鶴です。どうぞよろしくお願いいたします。
 今回はクロムキャバリア、温泉小国家『ビバ・テルメ』に攻め込もうとしていた『第三帝国シーヴァスリー』の前哨基地のキャバリアが全てオブリビオンマシンに変えられ、湯煙を戦火でもって吹き飛ばさんとしている目論見を打ち破るシナリオになっております。

 キャバリアをジョブやアイテムで持っていないキャラクターでも、キャバリアを借りて乗ることができます。ユーベルコードはキャバリアの武器から放つこともできます。
 ただし、暴走衛星『殲禍炎剣』が存在しているため、空は自由に行き来できません。

●第一章
 日常です。
『ビバ・テルメ』の温泉街は今多くの人々が流入する温泉宿がひしめいています。
 そんな中、嘗ての『フォン・リィゥ共和国』時代に溜め込まれていたレーションが大量に発見されたことにより、街中はレーション・パーティが行われております。
 そこに放逐された『第三帝国シーヴァスリー』の元『エース』、『クィンタブル』がくすぶるように酒浸りになっています。
 彼を見つけ出し、『ビバ・テルメ』にほど近い雪原にある前哨基地を潰す作戦への協力を取り付けましょう。

●第二章
 集団戦です。
 前章の結果を受けて、『第三帝国シーヴァスリー』の前哨基地へと攻め込みます。
 もしも、『クィンタブル』が奮起し、また内容次第では共闘してくれるかもしれません。
 また『ビバ・テルメ』からは二機のサイキックキャバリアも援軍で登場します。

●第三章
 ボス戦です。
 前哨基地を掌握しているひときわ強力なオブリビオンマシンとの激闘になります。
 大規模な破壊を齎す機体です。
 雪原での戦いであることが幸いであった、と言うほどには激しい戦いとなるでしょう。
 これを打倒し、オブリビオンマシンの目論見を打破しましょう。

 それでは外典は次なる因果となるのか。オブリビオンマシンのもたらす戦乱を止める皆さんの物語の一片となれますよう、いっぱいがんばります!
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第1章 日常 『レーション・グルメ・パーティ☆』

POW   :    レーションの新鮮な肉の缶詰を開けて食べる。

SPD   :    レーションの美味なパンやケーキの缶詰を開けて食べる。

WIZ   :    レーションの珍味な栄養ドリンクの飲料缶を開けて飲む。

イラスト:JunMistral

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 心の中がくすぶっている。
 どれだけ酒で薄めても、屈辱という感情は消えることはなく、心の外塀にこびりついているようにさえ思えた。
「くそ……俺が……こんな、所で……」
 湯煙が鬱陶しい。
『第三帝国シーヴァスリー』の前哨基地からほど近いからと言うだけで流れ着いたのはよかった。雪原でさまようことは即ち死であるからだ。運がよかったとも言える。
 けれど、彼にとってはそうではなかった。
 こんなことならば、雪原でくたばっていたほうが余程よかった。

 彼の目に映るのは幸せそうな人々の笑顔であった。
 温泉は娯楽だ。
 疲労も、病も、湯に溶けて消えていく。それどころか、大量に見つかったというレーションを振る舞われているため、食うには困らない。食の心配もなければ、住まう場所の心配もしなくていい。
 衣食住足りて、とは良くいったものである。
「……くそ」
 なのに、自分だけがくすぶっている。
 なんのために戦っていたのかもわからなくなっていた。こんな光景をいつかは欲していたのかもしれないが、これは自分の手で手に入れたものではない。
 酒を浴びるようにして飲み干す。
 酩酊は、心の中の澱を薄めてくれる。
 言いようのない感情をごまかしてくれる。
 だから、飲む。

 飲んで、飲んで、飲んで、薄まらぬ感情を突きつけられ、また飲む。
「……俺がやってきたことは全部間違いだったのか」
 己以外の誰かを虐げれば、己が上に駆け上がっていくことができる。そう信じてきた。
 けれど、この『ビバ・テルメ』は上下がない。
 強きも弱きもない。
 ただ只管に温泉というものを楽しんでいる。上下など意味がない。強弱にすら頓着しない。

 そんな彼等の様子を見やり『第三帝国シーヴァスリー』の元『エース』、『クィンタブル』は酒を飲み、管を巻き続けるしかないのだった――。
ソフィア・エルネイジェ
こちらがビバ・メルテ…
先日は近場を訪れたに過ぎませんでしたが…やはりあの湯気は噂に違わず温泉のものだったのですね
相見えたシーヴァスリーに狙われているというのもまたひとつの縁なのでしょう
そう、看過するには太過ぎる縁です

街中は随分と賑わっているようですね
この中からひとりを見付け出すのは生半ならない難題ですが…
酒場を当たってみましょう
お酒は荒んだ心に沁みるものですから
お会い出来ましたら一杯ご馳走させて頂きます

勝ち取ったものが大きいほどに挫折で味わう屈辱もまた大きい
私のような生娘が言えば生意気にしか聞こえないのかも知れませんが、私とて幾度も勝ち負けをこの身で経験してきたつもりです
ひょっとしたら貴方も同じなのかも知れません
人の生などいつも間違いだらけ
ですが生きているならやり直す事が出来るのもまた人の生でしょう
そして屈辱を癒してくれるのは成功で得られる勝利と栄誉しかないのですから
ですが…その為には暫しの休憩も必要となりましょう
この街は心を休めるのに良い場所ですね
もし気が変わりましたらどうかお力添えを



 湯煙漂う街並み。
 それはクロムキャバリアという戦乱渦巻く世界にあっては、あまりにも不似合いな場所であったことだろう。
「こちらが『ビバ・テルメ』……」
 ソフィア・エルネイジェ(聖竜皇女・f40112)は立ち込める湯煙の中、周囲を見回す。
 先日、妹を探して近隣の雪原で遭遇した『第三帝国シーヴァスリー』のキャバリアたち。
 かの敵を打倒した彼女は、そのまま湯煙に誘われるように『ビバ・テルメ』へと降り立っていた。
 これもまた縁。
 ソフィアは少なからず、そう思っていた。

 この地を訪れたのは彼女の妹の影があったからだ。
 けれど、オブリビオンマシンの影もまたちらつくというのであれば看過することはできない。自分がこの地に訪れたということは数奇なる運命を感じずにはいられない。
「随分と賑わっているようですね」
 平和、と言っても良い。
 丁度、旧体制の遺物でもある倉庫から大量のレーションが見つかったこともあり、街中では至る所で食料が配られている。
 湯治のついでに、という具合に人々はレーションを思い思いに頬張っていたり、開封していたりと穏やかな様子である。
「はい、おねーさんも!」
 幼い少年たちでさえ、この『ビバ・テルメ』では立派な労働力であった。

 レーションを受け取ったソフィアは礼を告げて周囲を見回す。
 この賑わいを楽しみに来たわけではないのだ。彼女は『第三帝国シーヴァスリー』より放逐された『エース』パイロットを探しに来ている。
 思えば自分はずっと探しものをしているように思える。
 妹。『エース』パイロット。
「とは言え、この中から唯一人を見つけ出す、というのは生半可なことではありませんね……もし、少年。知っていたのならば教えて頂きたいのですが」
 レーションを手渡してくれた少年にソフィアは尋ねる。
 もしも、『エース』パイロットがいるのならば、酒場などをあたってみるのもいいだろうと思ったのだ。
 酒は荒んだ心に沁みるものである。
 同時に痛むものでもある。

「酒場? いっぱいあるけど……此処から近いってなると、あそこかな?」
 少年が指差す方向にあったのは小さな酒場だった。
 大衆酒場などではない。こじんまりとした店である。傷心の者にとって大衆酒場は居心地が悪かろう。
 ならば、ああしたこじんまりとした酒場のほうが腰を落ち着けることができるかもしれない。ソフィアはそう考えて少年に礼を告げて酒場へと歩んでいく。

 酒場はどこか鬱屈とした雰囲気だった。
 いや、違う。
 この雰囲気を醸し出しているのは……ただ一人の男だった。
 テーブルに突っ伏すようにして、けれど、酒瓶と杯だけは握りしめている。明らかに酔いが回っていることがわかるだろう。
「もし、ご一杯ご馳走させては頂けませんか」
 その言葉に。その声に。
 突っ伏した男がピクリと動く。それもそのはずだ。その声を男は知っていた。勢いよく顔を上げる。
 素面ではない。
 しかし、その瞳には僅かな正気があった。
「……どういうつもりだ」
「いえ、ものさびしそうに見えましたので」
「笑いに来たか。俺のザマを」
 そのつもりはない、とソフィアはきっぱりと断るようにして店主から杯を受け取り、男の前に差し出す。

 ソフィアにもわかっていた。
 雪原で相まみえた敵。『第三帝国シーヴァスリー』の将。
 罠と機体性能を見事に引き出して己をわずかでも追い詰めた『エース』。名を後で知ったが『クィンタブル』という。
「勝ち取ったものが多いいほどに挫折で味わう屈辱もまた大きい」
「知った口を」
 進められた杯をひったくるようにして『クィンタブル』は呷るようにして酒を喉に流し込む。無理な飲み方だった。
 確かに、とソフィアは対面の席に座り、見据える。
 その瞳はあまりにも真っ直ぐであった。『クィンタブル』にとっては、逃れられない視線でもあったことだろう。

 あまりにも気品がある。持って生まれた知性。そして、オーラというものがあるのならば、それであったように思えた。
「私とて幾度も勝ち負けを、この身で経験してきたつもりです。ひょっとしたら貴方も同じなのかもしれません。人の生などいつも間違いだらけ」
「……小娘が」
 ソフィアは否定しなかった。
 此処は戦場ではない。
 力と技のみが支配する場ではない。此処は酒場だ。だから、首肯する。

「ですが、生きているならやり直すことができるのもまた人の生でしょう」
 生命がある。
 それこそがたった1つのことである。掛け替えのないことである。
 だから、とソフィアはまっすぐに瞳を向ける。
 それが王威というのであれば、そうであった。
「そして屈辱を癒やしてくれるのは成功で得られる勝利と栄誉でしかないのですから。ですが……」
 ソフィアは立ち上がる。
 これ以上は言うつもりはない。これ以上言えば、目の前の男をいたずらに傷つけると彼女は知っているからだ。

「そのためには暫しの休憩も必要となりましょう。この街は心を休めるのによい場所ですね」
 微笑む。敵であったものに向ける瞳ではない。
『クィンタブル』は少なくともそう思ったし、これが器の違いであると見せつけられる思いでもあった。だからこそ、視線を落とす。
 揺らめく酒の杯。
 その湖面が揺れる。
 投げかけられる言葉に揺れている心のように。

「もし気が変わりましたら、どうかお力添えを」
 何もかも失っても生命だけが残っているのならば。過ちに気がつくことも。正すこともできるはずだとソフィアはそれ以上告げず立ち去っていく。
 その背中に男は震えるように唇を震わせるしかなかった。
「……小娘が……」
 いや、と男は頭を振る。あの瞳が、まぶたを閉じれば浮かぶ。
 如何にして生きるのかと――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ガイ・レックウ
【POW】で判定
『またシーヴァスリー…か……』
呟くようにいってから街中を散策し、目的の人物を探し出すぜ。
『よお、元エースさん』
軽く声をかけるぜ
『あんたもうすうすきづいてんだろ?この国の在り方がいいものだって。シーヴァスリーのやり方が間違ってた部分もあるってことにさ』
一杯奢りながら言うぜ
『あの国に関してはいろいろと戦いに参加してたからな……やり方をそれしか知らなかったんだろう…そう思う。でも、あんたはやり直すことができるはずだ……あきらめなければな』
説得というべきか発破というべきかわからないがまっすぐに言うぜ
『いい返事を、待っている』



 小国家『シーヴァスリー』は名を変えた。
『第三帝国シーヴァスリー』――『サスナー第一帝国』から連なる系譜。
 その気質を示すものは弱肉強食。
 人が元来持つものが悪性であり、善性とは獲得されるものであるというのならば、それレは人の性質を良く表すものであったことだろう。
 そんな『第三帝国シーヴァスリー』より放逐された『エース』の所在を猟兵たちは小国家『ビバ・テルメ』の湯煙の中に探す。
「また『シーヴァスリー』……か……」
 ガイ・レックウ(明日切り開く流浪人・f01997)は小さくつぶやく。
 街中を歩む。

 何処を見ても人々は朗らかであった。
 これが戦乱渦巻くクロムキャバリア世界であるとは思えなかったことだろう。
 大量に運び込まれたレーションは多くの種類があった。
『ビバ・テルメ』の前体制が溜め込んでいた物資を一気に放出しているのだ。それは、この温泉という資源によって生まれ変わった小国家が新たな一歩を踏み出すためには必要なことだった。
「とは言え、何処にいるんだ?」
 ガイは街中を歩く。
 宛もなく歩むのは得策ではない。

 元『エース』と呼ばれているパイロットは、どうやら直近の戦闘で『ビバ・テルメ』の近郊から放逐されたようであった。
 度重なる失敗。
 それに猟兵が関わっていることは言うまでもない。
 彼の放逐の一端は、いや、原因は猟兵である。情けを掛けるわけではない。それは意味のないことだ。
 そんな中、ガイは一人の猟兵が酒場から出てくるのを見た。
 大衆酒場ではない。
 こじんまりとした酒場だった。

 ここが温泉街のような様相を持っているというのならば、人の多く集まる酒場に元『エース』が居るとは思えなかった。
 ならば、一人の猟兵が出てきた酒場はもしかしたら、と思うには十分だった。
「……」
 ガイは酒場の中に入る。
 そこにはうつむく男がいた。
 肩が震えているようにも思えた。あいつだ、と直感的に思えたことだろう。
「よお、元『エース』さん」
 軽く声を掛ける。
 その言葉に男はじろりと見上げる。ガイを睨めつける眼光はドロリと濁っているように思えた。
 立ち上る酒気。

「何のようだ。不躾な奴め」
 その言葉にガイは肩を竦める。
「あんたもうすうす気づいてんだろ? この国の在り方もいいものだって。『シーヴァスリー』のやり方が間違ってた部分もあるってことにさ」
「いいや。思わない」
 きっぱりとした物言いだった。
「本当にそうか?」
 ガイは対面の席に座る。断る必要などないというように座り、注文する。

「そうだとも。あれが人の本質だ。力がなければ、武器がなければ、人は互いを信じることすらできない。そういうもののはずだ」
 元『エース』の男の言葉にガイは瞳を細める。
「やり方をそれしか知らなかったんだろう」
「平和を知らず、争いしか知らぬ。平和を知り、争いを知らぬ。どちらも似ているようでいて根本的に異なるものだ。お前の物言いは」
「やり直すことができるはずだ。あんたは」
 ガイは杯を元『エース』の男の、『クィンタブル』の前に押し出す。

「生きることを諦めなかったから、あんたは此処にいるんだろう」
 雪原で死ぬことも選べたはずなのに。
 それをしなかったことをガイは告げる。
 どれだけの理屈を重ねようとも生きたいと願ったからこそ、今此処にいるんだろうと、ガイは告げる。
「良い返事を、待っている」
 説教というにはあまりにも不躾だったし、発破というには火種を相手に委ねるばかりであったけれど。
 それでも立ち止まることばかりが人の生ではないとガイは信じるように酒場を後にするのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

村崎・ゆかり
キャバリア闘技場の街から温泉街に様変わりねぇ。変われば変わるものだわ。ここにはもう、圧政の影は見えない。
ゆりゆりはもちろん、この街は初めてよね。後で一緒に温泉に浸かりましょう。でもその前に――

密やかに黒鴉を飛ばして、追放された『エース』の『クウィンタブル』がいる酒場を探し当てるわ。
ご機嫌よう、クウィンタブル。お酒の味はどう?
マスター、あたしと連れにジンジャーエールちょうだい。
彼をあたしたちが挟むように腰掛けて、お話しましょう。ゆりゆりは誘惑よろしく。
とりあえず身の上話でも聞きましょうか。『シーヴァスリー』の内幕はほとんど伝わってこなかったから。
復讐する気があるなら、あたしたちも手伝うわよ。



「キャバリア闘技場の小国家から温泉の小国家に様変わりねぇ」
 村崎・ゆかり(“紫蘭”/黒鴉遣い・f01658)はあまりの変わりように目を見開く。
 小国家『フォン・リィゥ共和国』は嘗てキャバリアによる闘技場によって物資と人の流れをコントロールしていた。
 恵まれた立地。
 天然の要害。
 多くを持つが故に彼等は他国の争いに対して無頓着だった。
 無関心であったとも言えるだろう。彼等は故に孤立していったのだ。誰にも関わらず、誰にも手を差し伸べなかったのだから当然であるとも言えるだろう。

 彼等は滅びに際して、全てを投げ捨てた。
 やけになったとも言えるほどに陸上戦艦を造り出し、アンサーヒューマン部隊である『神機の申し子』たちさえ生み出した。
 それが『フォン・リィゥ共和国』の破滅であり、また同時に小国家『ビバ・テルメ』の興りでもあったのだ。
「皮肉なものよね。変われば変わるものだわ、なんて」
 圧政というものとは縁遠いと感じる。
 目の前にはレーションを誰彼構わず手渡す市民たちの姿がある。誰もが奪おうともしないし、闘おうともしていない。
 誰もが分け隔てなく、食料を分配しているのだ。

「よかったと思うわ。こっちのほうが断然良い」
 淫雅召喚(インガショウカン)によって召喚されたリリスの女王をゆかりは伴って温泉の煙が立ち込める街中を歩む。
 温泉に入ってゆっくりしたいと思うのも無理ないことだった。 
 それほどまでに『ビバ・テルメ』の雰囲気は良いものであったからだ。本来の目的を忘れることが出来たのならば、このまま温泉に浸かってゆっくりしたいと思える。
 けれど、それはできない。

 彼女たちがこの小国家にやってきたのには理由がある。
「元『エース』のパイロットね。追放されたっていうのが、また気の毒……ではないわね。『シーヴァスリー』に属していたっていうのなら」
 小国家『第三帝国シーヴァスリー』。
 多くの小国家を滅ぼした、オブリビオンマシンによって思想を染め上げられた小国家。そこに属していたパイロットというのならば、同情は沸かない。
 けれど、彼の持つ『第三帝国シーヴァスリー』の前哨基地の情報が必要なのだ。
 ゆかりは猟兵の一人が出入りしていた酒場を見つける。

「あら……?」
 あそこだろうか、とゆかりは首を傾げる。
 猟兵が出入りしている、ということは恐らく彼等が元『エース』を説得していたのかもしれない。
「とりあえず入ってみてもいいわね。ハズレだったら、その時よ」
 ゆかりは気楽に考える。
 目一杯考えても人の心とはわからぬものである。己の心はわかるかもしれなけいれど、他人の心は同じ人間でないのだからわかりようがない。
 何が心の琴線に振れるのかもわからない。
 だから、手探りで、言葉でコミュニケーションを取らねばならないのだ。

 ゆかりが酒場に入ると一人の男が天を仰いでいた。
「ごきげんよう『クィンタブル』」
「……俺の名前をなぜ知っている」
 天を仰いでいた男がじろりとゆかりを見やる。
「元『エース』として名を鳴らしていたからではなくって? お酒の味はどう?」
 其の言葉に『クィンタブル』は答えない。応える気がないようだった。
「マスター、あたしと連れにジンジャーエールをちょうだい」
 そういってゆかりとリリスの女王が『クィンタブル』の両脇に座る。
「お話しましょう」
「俺はお前たちに用はない」
 にべにもない返答だ。けれど、ゆかりは『クィンタブル』を挟んだむこうにいるリリスの女王に目配せする。

 誘惑を、と彼女は目で訴えるのだ。
 彼の頑なさは意固地になっているからだと、ゆかりは思う。信じていた小国家から切り捨てられたこと、放逐されたことは、失敗という咎を持ってしても彼の心に影を落とすものであったからだ。
「そう言わずに。身の上話なら聞きましょうか」
「……失敗続きの上に機体を失ったのだ。放逐されるのは当然のことだろう」
「弱肉強食主義って言えばいいのかしら? 失敗なんて誰もでもするものではない?」
「誰でもする。だから、蹴落とされる。昨日の部下が明日の上司なんて日常茶飯事だ。そうやって踏みつけにして駆け上がっていくことしかできない」
「下剋上上等ってわけね。それであなたはこんなところまで追いやられたと。それは口惜しいわよね。自分を正当に評価しない上役って、嫌よね」
『クィンタブル』はやけに舌が回ると思ったかもしれない。
 彼はここまで喋るつもりはなかったのだ。

 それはリリスの女王の魅了によるものであると彼は知る由もない。
 そして、ゆかりはリリスの女王と共に彼の耳元に囁く。
「復讐する気があるなら、あたしたちも手伝うわよ」
 其の言葉がどのように彼に響いたかはわからない。けれど、ゆかりは彼の心を揺らがせればそれでいいと、リリスの女王を伴って酒場を出ていく。
 どのように動くかは彼次第だと言うように――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

朱鷺透・小枝子
大変な時期ですが、
神機の申し子達にお願いして雇用契約書を貰います。
いえ自分が就職する訳ではないのですが、必要になるかもしれませんので。

…あの荒んだ国家が随分と様変わりいたしました
……。…エースを探さねば!

裏路地や酒場等を巡り、酒精纏う『エース』を見つけ出します。

貴殿が、シーヴァスリーの元エースでありますね。

あれこれ言葉を弄するのは苦手なので手短に伝えましょう。

……死んでいるようには生きていたくはない。
もし一欠けらでも、そう思うのであれば、
これを手に取っておいてください。

契約書を差し出す。

これは選択肢の一つです。貴殿は平和を知った。
それが唯壊れるのを待つか、それとも別の道を生くのか、
貴殿次第です



 なんとも目の回る光景であることだろうと、朱鷺透・小枝子(亡国の戦塵・f29924)は小国家『ビバ・テルメ』の運営を任されている四人の『神機の申し子』たちの元を訪れていた。
「大変な時期でありますが」
 とても恐縮している様子で小枝子は彼等に願い出ていた。
 何を、と問われたのならば雇用契約書である。一体何を雇うというのだろうか。そもそも、それをどう使うのか『神機の申し子』たちは理解できていなかった。
「いえ、構わないんだけれど」
「ええ、そんな紙をどうするつもりです?」
「まさか! ここで働いてくれるとかそういうやつではないだろうか! 歓迎するが!」
 彼等は目を輝かせる。
 ただでさえ、忙しいのだ。人手がまるで足りていない。
 けれど、おいそれ他人に任せることができるわけでもない。彼等は確かにキャバリア操縦に特化して作り出されたアンサーヒューマンたちである。

 けれど、今の彼等は違う。
 与えられた戦うという存在意義ではなく。自らで選んだ今のためにこうして事務処理に奔走しているのだ。
「いえ、自分が就職するわけではないのですが、必要になるかもしれませんので」
 小枝子の断りの言葉に四人は落胆したように肩を落とす。
 仕方のないことだけれど、ちょっと期待してしまっていたのだ。
 そんな様子に小枝子は頭を振る。

 小国家『ビバ・テルメ』の前身を彼女は知っている。
 だからこそ、彼等に一礼してから街中を往く。湯煙が立ち込めている。同時にレーションを配り続ける人々たちの姿を視界に収める。
 彼等は争わない。
 限られた食料を奪い合うようなことをしていない。誰もが食料を分け与えている。争うことをしていない。
 それが温泉の効能であるというのならば、この小国家はあまりにも様変わりしたと言えるだろう。
「……」
 幸いであると言えるだろうか。
 そうであったのならばいいと小枝子は思ったことだろう。

 だが、今の彼女はそれについて考える時間をもっていない。
 彼女が探しているのは『第三帝国シーヴァスリー』の元『エース』パイロットである。彼が持つ前哨基地の情報が必要なのだ。
 もしも、このまま前哨基地を放置すれば全てのキャバリアがオブリビオンマシン化した『第三帝国シーヴァスリー』の暴走に『ビバ・テルメ』がさらされてしまう。
 そうなっては、今小枝子が見ている光景は炎に、戦火に消えゆくだろう。
 それをさせないために小枝子は疾走る。

 路地裏を走り抜けた時、座り込む男を見た。
 その男は鈍色に輝くスキットルを握りしめていた。この『ビバ・テルメ』に住まう人々とは異なる苦々しい顔が、その表情が小枝子の足を止めさせた。
「……貴殿が『シーヴァスリー』の元『エース』でありますね」
 其の言葉に男は顔を上げる。
 酒気を帯びた顔。
 うろんな視線。
「だったらなんだというのだ。今日はやけに俺に絡む者が多い」
「自分はあれこれ言葉を弄するのは苦手なので手短に伝えましょう」
 小枝子の瞳が彼を見下ろす。

 路地裏にて座り込んだ男――『クィンタブル』。
 彼に『エース』の面影はない。
 まるで死んでいるようだった。生きているようには思えなかった。
 己の存在意義を見失っている者の目だ。これまで幾人かの猟兵達が彼に接触していた。彼等の言葉が『クィンタブル』にどのような影響を及ぼしたのか小枝子はわからない。
 わからないけれど。
「……死んでいるようには生きていたくはない」
「……なに?」
「もし一欠片でも、そう思うのであれば、これを手にとっておいて下さい」
 小枝子が突き出したのは一枚の紙切れだった。

 それは彼女が『神機の申し子』たちから貰い受けたものだった。
「雇用契約書……?」
「これは選択肢の一つです」
 小枝子は突きつける。押し付けるようにして、其の手に押し付けるのだ。
「貴殿は平和を知った。それが唯壊れるのを待つか、それとも別の道を生くのか」
 選択を強いられ続けるのが人生であるというのならば、これもまたそうである。
 多くのことを選ばなければならない。
 選ぶことは喪うということだ。
 選び、選ばれなかったことを思うことすらできない。そんな暇すらなく、人は時間に押し流されていくしかない。
 けれど、人は進むことができることを小枝子は知っている。
 だから、彼女は突きつけるようにして告げるのだ。

「後は、貴殿次第です」
 選べ、と小枝子は示すように、ともすれば紙切れ同然のそれを『クィンタブル』は重たく思うようにして見上げた先にはもう小枝子の姿はなかった。
「俺にどうしろと、言うんだ――」

大成功 🔵​🔵​🔵​

ユーリー・ザルティア
判定:SPD
温泉ねぇ。
まあこの世界だとほんとに命の洗濯って瞬間よねぇ。
そこにレーションのパーティーねぇ…。
(目をそらしつつ)ふ、太りそう。うん大丈夫。キャバリアの操縦って結構カロリー消費するしね。

レーションを味見しつつ、件のエース氏を探すわね。
(もぐもぐ)うん、こっちのは口の中の水分を必要以上吸うわねぇ。戦場には向かないかも…。

っと、見つけた。見事に酔ってるわねぇ。
まさに『酒は飲んでも飲まれるな』の典型例な有様ねぇ。

はーいエース。
汚名挽回のチャンスが欲しくないかい?
間違いだと思ったのなら、気が付いたなら、あとは行動を起こすだけでやり直せる。なぜなら生きてるんだから。そう思わないかいエース?



 元『エース』パイロット。
『クィンタブル』と言う男は酒に呑まれていた。溺れていたと言っても良い。どうしようもない現状。自分の力では覆せぬ現状に憂うだけではなく、自棄になっていたと言っても過言ではない。
 猟兵たちが代わる代わる己の前に立つ。
 わかる。
 全てが一騎当千の猛者達であると。
 全てが化け物であると。
 故に彼等の言葉には力があった。どうしようもない己に再び立ち上がれと言う。
 だが、打ちひしがれた心は、もう一度同じ痛みに直面することをどうしようもなく恐れるのだ。

「温泉ねぇ」
 ユーリー・ザルティア(自称“撃墜女王”(エース)・f29915)は湯煙に包まれている温泉街を見やる。
 此処は小国家『ビバ・テルメ』。
 かつては『フォン・リィゥ共和国』と呼ばれた小国家であったが、上層部の暴走によって崩壊した後に猟兵の関与によって新たな小国家に生まれ変わったのだ。
「まあこの世界だとほんとに生命の洗濯って瞬間よねぇ」
 ユーリーは街中の雰囲気を感じる。
 悪くない。朗らかだと言えるし、戦乱渦巻くクロムキャバリアという世界を考えれば掛け値なしに平和であると言えただろう。

 配られるレーションは大量だった。
 だから、というわけではないけれど、人々は我先にとは動かない。誰もが譲り合っている。
「レーションパーティーねぇ……」
 前体制の倉庫に溜め込まれていたものであると聞いた。
 これを開放するかわりに保有するプラントからの産出を温泉施設の備品などに一定期間切り替えると小国家を運営する四人の『神機の申し子』たちから通達があったのだ。
 ユーリーも一つもらったが、なんとも言い難い顔になってしまう

 食料は確かに大切だ。
 けれど、食べすぎてしまいそうだった。太りそう。いやでも大丈夫。キャバリアの操縦って見た目以上にカロリーを消費するものだから。
 誰に言い訳しているのかわからないがユーリーは力強く頷く。
 今日のカロリーは明日のユーリーがどうにかしてくれるはずである。そう言い聞かせてレーションのパッケージを開封する。
「う……レーションとは思えないほど良い香りさせちゃってさ……!」
 これは食べすぎてしまうやつだとユーリーは呻く。
 アレも美味しい。これも美味しい。
「こっちも美味しいよ、お嬢さん」
 次々と手渡されるレーション。しっかり抱えるほどにレーションを受け取ってしまったユーリーは嬉しいやら困るやらで大変だった。

「……うん、こっちは口の中の水分持ってかれるわねぇ。戦闘糧食っていう意味では向かないかも……」
 そんなふうにしてユーリーはレーションを食べ歩きしながら街中を歩く。
 路地裏に座り込む男が見えた。
 あれだ、と直感的に理解できた。酒気を帯びたいるが、その身にまとう雰囲気までは多い隠せない。
 あれは戦場を知っている者だ。
「はーい『エース』」
「……」
 軽口のような言葉に男がユーリーに視線を向ける。うろんな視線だった。
 彼はユーリーを睨むようだった。

「屈辱って顔してるわね、『そう』呼ばれるのが」
「元をつけろ……俺は『そう』じゃなかった。本物であるお前たちに、そう呼ばれることがどれほど!」
 立ち上がる男の足元はおぼつかない。
 手にあるのは紙切れだった。くしゃりと握りしめられている。それを見遣り、ユーリーはもうひと押しか、と思う。
「今のキミはどっちだと思う。『シーヴァスリー』と『ビバ・テルメ』。どっちが間違いだと思う」
 ユーリーは問いかける。
 確かに屈辱に塗れた瞳である。けれど、その瞳で見てきたはずだ。二つの小国家を。対極とも言うべき二つを。
 ならばこそ、ユーリーは問いかけるのだ。

「間違いだと思ったのなら、気が付いたなら、あとは行動を起こすだけでやり直せる」
「何を、今更」
「今、生きているんだ。いくらでもできる。いくらでも振り返ることができるのと同じようにいくらでも人生という名の賽子は振り直せる。汚名も名誉も。何もかも」
 そうは思わないかい『エース』、とユーリーは笑む。
 選ぶのは自分だと示すように――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

月夜・玲
レーションパーティー
レーションでパーティーというのが慎ましい…
さてこのお祭りの中でエースを探して、あわよくば運営側に取り込んで…
後は仕事をぶん投げてしまえば、少しはこの国の運営もやり易くなるかな
いやー、何故か苦労してるっぽいからスカウトくらいはしようじゃないか!

どっかの酒場で管を巻いてるって?
それじゃあ酒場を片っ端からハシゴしようか
ついでにちょっと一杯…
見つけたらスカウトスカウト
まずはチラッと『求む!追放されたパイロット』的なチラシをチラリ
これ見よがしに貼ったり、目の前に置いたり、目の前で朗読したりしよう!
腐ってるそこの貴方!
今!この国は!人材が足りない!
ちょっとだけ手伝わない?
いやホントに!



「レーションパーティー」
 思わずつぶやく。
 言葉の意味を考えるまでもないことであるが、戦乱渦巻く小国家において食料というものは言うまでもなく大切なものだ。
 プラントであらゆるものが作り出されることを考えても、生命維持のためには必要なものであるからだ。だからこそ、小国家『ビバ・テルメ』の前身である『フォン・リィゥ共和国』は物資を溜め込んでいたのだろう。
 それを活用することはついぞなく滅びたのであるが。
「レーションでパーティ-というのが慎ましい……いや、むしろ、パーティーと言うのは名目か。字面が楽しいってのは大切なことだよね」
 月夜・玲(頂の探究者・f01605)は頷いて、二度目の来訪となる『ビバ・テルメ』の街中を見やる。

 前回は完全に観光気分というか、ただ温泉を堪能したかっただけであった。
 けれど、今回は違う。
 この街の中でくすぶっている『第三帝国シーヴァスリー』の元『エース』を探し、あわよくば運営側に引き込もうというのである。
「あとは仕事をぶん投げてしまえば、少しはこの国の運営もやりやすくなるかな」
 正直に言えば、そんなに大変ななのかなと玲は思った。
 そもそも、この小国家を作る切欠となったのは彼女が『第三帝国シーヴァスリー』からボーリング施設を奪い取ったからである。
 その過程で四人の『神機の申し子』たちを巻き込んで小国家を作ってしまっただけである。なにか問題があるだろうか。いや、ない。

 厳密に言えば、運営に四人はひーひー言っているのである。
「いやー、何故か苦労してるっぽいから人材スカウトくらいはしようじゃないか!」
 大半は玲のせいである。
 温泉掘り当てるだけ掘り当てて、あとは四人にぶん投げたからである。
 儲けとはそういうのは過程が楽しいのであって、維持は別に楽しいもんではないのだ。少なkとも玲にとってはそうだった。だから、ぶん投げた。
「とは言え、どっかの酒場で管巻いているっていってたっけ……それじゃあ」
 玲は形の良い唇を舌で湿らせる。
「酒場を片っ端からハシゴしようかな!」
 今ハシゴって言った。

 そんな風にして玲は明らかに元『エース』がいなさそうな酒場やら食堂やらを転々としていた。効率的ではなかった。単に飲み歩いているだけであった。
 仕事をしている風にして息抜きをしているだけであった。 
「仕事仕事じゃあ生き詰まってしょうがないよね。人間息を吐き出さなければ空気を吸い込めないんだから」
 しゃーないしゃーない、と玲はほろ酔いのまま路地裏を歩く。
 次の酒場は、おっ! 焼き鳥! と完全に目的を見失っていたが、そんな路地裏の前から同じようにゴキゲンな足取り……ではない、もつれるような足取りで男が歩いてくるのを見やる。

「……」
 男は前にいる玲の姿を認め、目を見開く。
 酔という酔が一気に冷めたように青ざめている。彼は知っている。幾度か『シーヴァスリー』のパイロットとして猟兵たちと槍を交えてきた。
 だからこそ、知っているのだ。
 眼の前の一房蒼い髪を持つ黒髪の女性を。
 赤い瞳を。
「……――超常の……!」
 彼の前身が粟立つのも無理ないものである。玲はクロムキャバリアにおいて生身単身でキャバリアを打倒する存在である。

 彼女の存在は相対した者の口からまことしやかに語られる。
 最初にその話を聞いた者はおひれがついた噂や怪談程度にしか思っていなかっただろう。けれど、幾度となく相対してきた彼は『クィンタブル』は知っている。
 あの蒼い一房の髪の色を。
「……何、を、俺を……」
 始末しにきたのか、と問いかけるより疾く玲が動く。
 彼女の手が『クィンタブル』の顔面に放たれる。死を覚悟した瞬間、彼の酔の冷めた顔に紙の感触が伝わる。

 死んでいない。
 玲はそんな彼の横を通り過ぎる。紙がはらりと顔面から落ちて、手が受け止める。
『求む! 追放されたパイロット!』
 そんな踊り文句。
 なんだこれは、と問いかけるより疾く玲は振り返って笑っていうのだ。
「腐ってるそこの貴方! 今! この国は! 人材が足りない! ちょっとだけ手伝わない?」
「な、なんだ、なにを言っている……?」
「いやホントに! ちょっとだけだから! 話聞くだけ聞いてみてよ! あっちのほうに事務所あるからさ!」
 ね! と玲は酔ったままに任せるようにして『クィンタブル』の背中をバシバシ叩いて、ゴキゲンな足取りで彼を置き去りにしてハシゴ旅へと旅立つのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ワルルーナ・ティアーメル
ふむ、UCで第6冠の部下たちを呼び出しレーションをさらに調理した料理を作らせたりするぞ。
貴様らのその技能を存分に振るうがよい!

で、特に理由もなくUCを使った後は元エースとやらだが……くく、我の前に隠し事など無駄だ!
『ワルルーナアイ』!貴様の隠している願望などお見通しである!
えーと何々…‥?貴様が本当に欲しいものとは……もごっ!ええい何をする!
この飲んだくれが心の中に隠して知らないふりしてる本音を曝け出させてやろうとしただけではないか!
な、なにをする貴様ら―!!もごごー!!(部下達に口をふさがれ連行される)

(詫びとして部下の料理人が「エネルギー充填・ドーピング」技能を駆使した料理を振舞う)



「さあ来るがよい、我が第6の軍勢よ!」
 ワルルーナ・ティアーメル(百胎堕天竜魔王(自称)・f31435)は大張り切りであった。彼女は魔王である。
 自称魔王であるけれど、彼女の欲望は他者の欲望を満たすこと。
 それに尽きる。
 そんな彼女が小国家『ビバ・テルメ』で行われているレーションパーティーを見たのならば、やることは一つであった。
「その腕を振るい、尽く倒してしまうのだ! おもにレーションに飽きた人間どもの胃袋を掴んで掴み倒してしまうのだ!」
 魔王軍招集:第6冠(ソンナコトヨリメシニシヨウゼ)によって召喚された魔族の料理人達。
 ワルルーナ麾下にあって、料理の鉄人とも言うべき者達が一斉に『ビバ・テルメ』にて貯蔵されていたレーションを次々と調理していくのだ。

 確かにレーションにしては味が良い。
 けれど、それ以上に同じ味付けなので飽きてしまうのだ。食料は大切なものである。けれど、やっぱり単調な味だったのなら……苦痛にもなるだろう。
 それを見越してワルルーナは己のユーベルコードによって魔族の料理人たちに、美味しくレーションを食べられるように腕を振るわせるのだ。
「なんでこんなことを?」
「特に理由はない! 食べ物は美味しく頂く! これが生命を頂くということである! なぬ、プラントで作られているからそんなに……? ええい、どっちにしたって美味しく食べられるのが幸せであろうよ!」
 ワルルーナの盛大なユーベルコードによってパーティはさらに大盛りあがりである。

 そんな喧騒を満足気にワルルーナは見遣り、そして彼女は本来の目的である元『エース』の元へと出向く。
 どこに居るかなどワルルーナアイで手にとるように分かるのである。
「くくく、我を前にして隠れることなどできようはずもない!」
 そこだ! とワルルーナが適当な路地に飛び込むと、丁度、元『エース』、『クィンタブル』が出てくるところであった。
 手にはなんかの勧誘の紙が握られている。
 酒気を帯びているが、しかし、その瞳は僅かに濁りを落としたようであった。

「危ないぞ、お嬢ちゃん」
「お嬢ちゃんではない! 我は百胎堕天竜魔王なるぞ!」
「わかった。悪かった。ぶつかりそうになったことは謝る」
「そうではない! 貴様、其の心にひた隠していることがあるであろう! その願望などお見通しである!」
 くぅわ! とワルルーナの瞳が輝く。
 其の様子に『クィンタブル』は苦笑いしている。

 それもそうかもしれない。猟兵とは言え、ワルルーナは見た目少女である。猟兵であるがゆえに魔王としての姿は違和感をおぼえさせない。
 彼にとってワルルーナは少女にしか思えなかったのだろう。
 度重なる猟兵達との接触で彼は酔いが覚め、また同時にくすぶる思いをどうにか払拭させようとしているようにも思えた。
 このままいけば、普通にひとりでに立ち直りそうでもあった。
「えーと何々……? 貴様が本当に欲しているものとは……もごっ」
 そんなことなど露知らずワルルーナは言葉を紡ごうとして配下の料理人達に口をふさがれる。

 余計なことを言う前に、と彼等のインターセプトは凄まじいものであっった。
「ええい何をする!」
「野暮ってやつですって、ワルルーナ様!」
「なにをー!? この飲んだくれが心の中に隠して知らないフリをしている本音を曝け出さてやろうとしただけではないか!」
「いや、だからそれが野暮ですって! 見て下さいよ、なんかもう慈愛の眼差しこっちに向けてるじゃないですか、彼! 完全に幼子を見る目ですって!」
「はー!?」
 魔王だけど!? ラスボスだけど!? とワルルーナがもがもがやっている中、部下の料理人たちがワルルーナを抱えて退散していく。

「な、なにをする貴様らー!! もごごー!!」
「すいませんすいません。うちの魔王様が!」
「いや、何。そうだな。そうかもしれないと思っただけだ」
『クィンタブル』はおかしそうに酒気帯びた頭を振るう。そうだ、と思ったのだ。
 ひた隠しにしていた。
 見ないふりをしていた。
 眼の前のことを。この小国家のことを。

『クィンタブル』は思う。ワルルーナの言葉は正鵠を射るものであった。見ないふりをしていた、と言う言葉。
 それはその通りだったのだ。
「もがー!」
 そんな彼の心の内など露知らず、ワルルーナは配下たちに連行され、暴れまくるのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ルクス・アルブス
【ステルク】

はぁ……。
この叫びを聞くと落ち着くようになってしまいました。
勇者をだいぶ踏み外しているかもです。

って……30シリーズ連続でも短いっていっていたじゃないですか(しんだめ

でもお約束も聞けましたし、
今回はレーション・パーティーってことですし、
これはわたしのお料理が火を噴く展開ですね。

レーションは基本的な栄養は満たしていますし、
あとは味付けと盛り付けでいくらでも美味しくなるんですよ!

最近は扱いがどうも雑な気がしていましたけど、ここで勇者挽回です!
ちょい足ししてレーションを美味しくしたら、ステラさんの胃袋を掴んじゃいますよ!

ついでに『クィンタブル』さんにも協力していただいちゃいましょう!


ステラ・タタリクス
【ステルク】
|エイル様《主人様》の!香りがしますっ!!
どちらかというとエイル因子っていうか、
エイル様と私の子供たち…立派になりましたね(後方母親顔)
で、ルクス様なにかいいましたか?
え?エイル様3時間コース?短くないですか?

ともあれ料理となればルクス様の出番
それに人当たりの良さもルクス様のほうが上ですし
いえ、私じゃなくて
クィンタブル様に振舞いましょう?
私の胃袋はグルメですので

衣食足りて礼節を知る、といいます
ゆえに今、貴方が物足りないと思っているならば
それはまさしく貴方が追い求めているものなのでしょう
形にするのは大変かもしれませんが
とりあえずストレス発散という手はあるかと
お手を拝借願えないですか?



「|『エイル』様《主人様》の! 香りがしますっ!!」
 ああ、とも、はぁ、とも取れない微妙な息を吐き出しながら、ルクス・アルブス(『魔女』に憧れる『出禁勇者(光属性)』・f32689)はなんとなく落ち着く思いであった。
 実家のような安心感はないけれど。
 それでも、これあるのとないのとでは雲泥の差とでも言えばいいのであろうか。
 ステラ・タタリクス(紫苑・f33899)のいつもの叫びを聞いて、ルクスはやっぱり息を吐き出す。普通に有能メイドであるステラのほうが違和感を感じるレベルになってしまっていることは、非常に残念な気がする。
 また同時に勇者としての道を、正道を、王道を尽く踏み外しているような気がする。

「どちらかというと『エイル因子』っていうか、『エイル』様と私の子供たち……立派になりましたね」
 彼女が言っているのは四人の『神機の申し子』たちである。
 此処は小国家『ビバ・テルメ』――元は『フォン・リィゥ共和国』であるが、猟兵によって温泉が掘り当てられ、温泉国家として新たな一歩を踏み出している。
 そんな様子を見遣り彼女は後方母親面で感心したように悦に入っている。
「既成事実化しようとしていません……?」
 ルクスは思った。
 別に『神機の申し子』たちはステラの子ではないし、そうした事実もない。いや、本当にまったくないのである。
 だがしかし、ステラはなんかそういうものであると言うふうに自らにすら暗示をかけている節すらある。

 下手に訂正すると痛い目を見るのは、すでにルクスが経験済みである。
 いや、本当にあのアニメ30シリーズ以上を見せられたのはひどかった。徹夜ってもんじゃなかった。若いから二徹三徹余裕! と思っていた頃が懐かしい。無理なもんは無理なのである。
 若いからって無理が聞くわけではないのだ。
「ルクス様何かおっしゃいましたか?『エイル』様3時間コースですか? いつでもできますよ」
「だから長いですって」
 死んだ目になってしまうルクス。
 もう、うんざりである。けれど、ルクスは頭を振る。

 今回やらなければならないことは多い。
「お約束をやったのであとはやることやりましょう! ふふ、レーション・パーティーってことですし、これはわたしのお料理が火を噴く展開ですね」
 きらりと輝く師匠の専属料理人(エヅケ・マスター)の矜持。
 そう、彼女はどんなゲテモノもちゃんと調理してちゃんと食べられるようにしてしまえるのである。
 元より此処のレーションの味は悪くない。
 悪くないが、味付けが単一で単調なのだ。ならばこそ、アレンジレシピでもって市民たちに浸透すれば、料理という文化は花開くだろう。
 そうすれば、温泉だけではなく、そうした料理でもまた人の流入が期待できるかもしれないと思ったのだ。

「後でお話は伺いますが、料理となればルクス様の出番」
 人当たりもルクスのほうが良い、と思ったし、なんなら其のほうが良いだろうとステラは思ったのだ。
「じゃあ、はい! まずはちょい足しレシピから!」
 ルクスは張り切っていた。
 だってそうである。最近の自分の扱いがとても雑なのことを彼女は気にしていた。吊るされたり、なんやかんや。演奏会キャンセルやら、なんやかんや。
 とてもじゃないんが勇者の扱いではない。
 雑にツッコまれるのもなんかやだ。愛情持ってツッコむからボケは生きるのである。なのにステラはそういう所わかってない。

 できるメイドだけど『エイル』というものが絡むと途端に残念というか、暴走機関車というか、もうなんか手のつけられない怪物的なあれになってしまうのである。
「はいどうぞ!」
 だから、今回はレーションを美味しくしてステラの胃袋をがっつり掴んでしまおうというのである!
「いえ、私ではなく」
『クィンタブル』に振る舞うのなら振る舞った方がいい、とステラは思う。ちょうど其処に路地裏から出てきた彼が居る。
 猟兵たちと接触し、いくぶんか晴れた顔立ちをしていると思えただろう。

「そこのあなた。どうです。アルコールを多量に取られている様子」
「ああ、それはそうだが……いや、なんだ? これは」
 差し出されるルクスのレーションちょい足しレシピ。
 ただのレーションでは味気ない。彼等にとって食事というのはそういうものであった。別に見た目であるとか味というのは二の次。
 生命維持ができればそれでいいのだ。
 だから、ルクスが差し出したレーションの色とりどりな見た目に面食らってしまっている。

「こうしたほうが見た目もいいじゃないですか。食事って楽しいものなんですよ。生きるって楽しいってことを教えてくれるんです。たしかに生きるのは苦しく厳しいこともありますけど」
 けど、とルクスは笑む。
「苦しいから楽しいこともあります。逆もそうですよね。もしも、あなたの心が苦しみではない何かを求めているのなら。苦しみこそを先に得なければならないんです」
「衣食足りて礼節を知る、ともいいます」
 ステラは『クィンタブル』の前に食事を差し出す。
 周囲を見やれば、そこには人々の穏やかな暮らしがある。それまで彼が見てきたものとは異なるもの。

 誰もが他者を弱者にしようとしていた『シーヴァスリー』ではない。
「故に今、あなたが物足りないと思っているのならば、それはまさしく貴方が追い求めているものなのでしょう」
「求めるもの。俺が、だと?」
「ええ、今の貴方は言葉にすることも、それを形にすることも困難な状況であるとお見受けします」
 だが、とステラは告げる。
 苦しみを得なければ得られぬものがある。
 それはきっと酒に呑まれ、流されては手に入らないものであるはずだと。故に、ステラは告げるのだ。

「あなたの助けを必要としている者たちがいる。それで十分ではありませんか――」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

カシム・ディーン
UC常時

レーションって軍事飯ですよね?
美味いのか…?
「国によってだけど美味しい所は美味しいよ☆メルシーの第二の故郷でも育ってるよ☆」

なら名物巡り序に奴を探すか
うん、酷い状態だなー
しょうがねー…メルシー、慰めてやれ

「ラジャったよ☆」
という訳でお酌しつつ存分に愚痴とか聞きつつ
大変だったねと共感とねぎらいを重ね

まぁ…気持ちはわからねーでもねーな…僕も所属してたまぁ…クラン…?グループ…?(盗賊団)潰されましたし

しかし…聞いてたが…全く道理もへったくれもねーな
そんな国に引導を渡したくねーか?
僕は感情論は面倒だから言わねぇ
出すのは…前金でこれだ(お金用意。尚後で経費請求予定)
協力するならもう半分だすぞ?



 レーションをもって食事の代替とする。
 それ自体は別段珍しくもないことであったのかもしれない。ただ、長期保存が効く、ということは即座に消費されるものでもないということだ。
 人は明日を見通せない。
 だから、溜め込もうとする。
 もしかしたら、明日にも食うに困るかもしれない。
 そう思えばこそ、食料の奪い合いが起こる。時にそれは殺し合いにまで発展するだろう。大げさな言葉ではない。
 なぜなら、それはプラントに置き換えればわかりやすいことだった。

 このクロムキャバリアにおいてプラントとは遺失技術である。
 新たにプラントを建造することができないからこそ、プラントを巡って争いが起きるのである。ならばレーションもそうならぬと誰が言えただろうか。
 けれど、カシム・ディーン(小さな竜眼・f12217)は小国家『ビバ・テルメ』の様子を見遣り、そうなる未来は恐らく明日にも訪れるという逼迫した事態にはならないだ朗と思えた。
 誰もがレーションを奪うこと無く、別け隔てなく与えている。
 大量にある、というのも勿論理由としては当然あるだろう。
 けれど、此処は温泉国家。
 温泉が人の心の澱を、淀みを、荒んだものを溶かし落としているのかもしれない。そう思うほどに朗らかな空気が湯気と共に漂っている。
「レーションって軍事飯ですよね? 美味いのか……?」
『国によってだけど美味しい所は美味しいよ☆ メルシーの第二の故郷でも育ってるよ☆』
 カシムは銀髪の少女である『メルクリウス』からの言葉に頷く。
 ならば、己の目的は簡単だと言わんばかりだった。

「なら、『エース』っていうのも自ずと見つかるだろ。うまいメシが在るところは、たいていなんとかなっていくもんだ」
 そういってカシムは湯煙漂う街中を歩む。
 人の流れ。
 何処を見ても空気が悪くはない。むしろ良いと思える。此処だけ切り取ってみたのならば、本当に戦乱の世界であるのかと疑いたくなるほどであった。
 そんな中、一つの路地の出口で男が猟兵たちと接触しているのを見やる。
 酒気を帯びた顔。
 だがそこには澱のようなものが徐々に落ちていっているようにも思えた。

「お、あれか……思った以上にひどい状態からは脱しているように見えるな」
『そだねー☆ でもさ、折角なんだからお酌してあげたら気分良くなっちゃうんじゃない?』
「それもそうだ。慰めるってわけじゃあないが、こっちの仲間に引き込むためには必要なこったろう」
 カシムの言葉に『メリクリウス』がぴゅーっと飛んでいって男……元『エース』である『クィンタブル』に話しかけている。
 その後をカシムは追って、その肩を組む。
「話は聞いているぜ。ことのあらましってやつはさ」
 カシムは頷く。
 彼の境遇と言うのは、少しばかり共感できるものであったからだ。

 自らが所属していた場所を喪うということと、放逐された、というのでは話が違うかもしれない。
 けれど、カシムは思うのだ。
「この街を見ればわかるだろ。『シーヴァスリー』に道理もへったくれもねーってこと」
「それは」
「おいそれ簡単にとは言わねーよ。でもよ」
 街中は穏やかだ。
 弱者を作ることでもって自らの足元を踏み固める。それが『シーヴァスリー』のやってきたことだ。
 自らが向上するのではなく。
 他者を貶めることによって、自らを安心させるやり方。人にとって、それは麻薬のようなものだ。

 他者を虐げる快感。
 自らの位置が定まる安心感。
 力を持つ高揚感。
 いずれもが、人の性ではしかたのないことだ。けれど、と思う。この『ビバ・テルメ』の様子を見れば、それもまた一つの側面でしかないことを。
「あんな国に引導を渡したくはねーか?」
 自分は感情論は面倒だと思う。
 何処まで行っても感情は歪むし、曲がる。時に霧散してしまう。だから、変わらぬ価値が必要になるのだ。

 示すようにカシムは『クィンタブル』に示す。
「現実的に考えれば良い。前金でこれだ」
「……傭兵になれと」
「いや、そういうんじゃないが……違わないな。協力するならもう半分だ」
「雇われるのならば、自分で雇い主は決める」
『ありゃー振られちゃった?」
『クィンタブル』はカシムの金を受け取らずに去っていく。まだ心が定まっていないのかもしれない。
 けれど、カシムは肩をすくめる。

「男に振られたってなんも痛くねーよ。けどさ」
 カシムは『クィンタブル』が酒も金も受け取らなかったことに笑む。
 確かに酒気を帯びていた。けれど、徐々に抜け始めているようにも思えたのだ。なら、今はそれでいいと言うようにカシムは『メルクリウス』と共に温泉街の名物どころをまた巡り始めるのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アルカ・スィエラ
【WIZ】
元シーヴァスリーのエース……彼は今の基地の動きを知っているのかしら
正直あの国のやり方は嫌いだけれど……いえ、結局そういう風に人を焚き付けたのはオブリビオンなのよね

腹の探り合いとかは苦手だから、正直にシーヴァスリーの動きの事は喋ってしまうわ
そして、その裏で蠢く存在がいる事も
……その結果どう動くかは彼の好きにすればいい
勝ち目などない、関係ないと逃げるのか
この国に恩を売ろうとするのか
あるいは別の……

ただ……少なくともこの辺りに、
いいえ、この世界に居る限り、戦おうが酒浸りになって逃げていようが、恐らくオブリビオン、そして|私達《猟兵》との縁は切れないと思うわよ?
残念だけどね



 自ら高めること無く他者を貶めることによって、自身の位置を高めるものたち。
 それが『第三帝国シーヴァスリー』であった。
 自身たちが強くなる必要はなく。
 他者に弱者であることを強いる彼等のやり方をアルカ・スィエラ(鋼竜の戦姫・f29964)は嫌っていた。
 だが、それはオブリビオンマシンによって思想を染められているからである。
 彼等は人の性によって、そうあるように自らを定めた者たちである。

 それは否定しようがない。
 なぜなら、それもまた人の側面であるからだ。オブリビオンマシンによって狂わされていなくても、彼等は彼等の思想に浸かっているだけで安寧を得られるのだ。
 そのために他者を虐げることに良心の呵責を持たない。
 そして、その毒牙にも似た思想は、オブリビオンマシンによって決定的に、致命的に狂う運命にある。
「なら、前哨基地からほど近い此処が標的になる」
 アルカは小国家『ビバ・テルメ』の街中を歩む。

 彼女が探しているのは『第三帝国シーヴァスリー』の元『エース』、『クィンタブル』である。彼は前哨基地の内情を知っている唯一のものである。
 彼を残して全ての前哨基地の人員はオブリビオンマシンによって狂わされてしまう。
 なら、アルカは彼こそが希望足り得ると理解していた。
「正直、腹の探り合いは苦手なのよね」
 駆け引き、というのも恐らく無理だと彼女は思っていた。

 そして、酒に呑まれた者の心をどうこうするのもまた。だが、それは他の猟兵たちの接触によって成されていることをアルカは知る。
 路地裏から出てきて、猟兵たちと幾度か接触した『クィンタブル』は酒気を帯びていながらも、その瞳にあった淀んだ澱の如き鈍い眼光が洗われているようにも彼女は思えたのである。
「……なんだ」
 いつのまにかアルカは『クィンタブル』の前に立っていた。
 彼の手には二枚の紙があった。
 人材を求める紙。雇用契約書。
 いずれも猟兵が手渡したものだった。

「単刀直入に言うわ。『第三帝国シーヴァスリー』。その前哨基地があるわね。そこがこの『ビバ・テルメ』を襲おうとしている。あなたの嘗ての同胞たちが」
「だったらなんだというのだ。此処から逃げ出す算段でも……」
「違う」
 アルカはきっぱりと言う。
「あなたがどうするかなんて私は興味ない。好きにすれば良い」
「ならなぜ、それを俺に伝える。伝えたところで好きにしろ、というのであれば、俺は」
「逃げる、と言いたいようだけれど」
 アルカは頭を振る。
 それは意味のないことだ、と。この戦乱の世界。この世界に居る限り、安寧は遠く、逃げるばかりでは決して手に入らない。

「戦おうが酒浸りになって逃げていようが、恐らく貴方はもうオブリビオン、そして|私達《猟兵》との縁は切れないと思うわよ?」
 その言葉は現実のものとなる。
 逃げても、戦っても。
 地獄か、辛く厳しい道程か。
 五十歩百歩でしかない。変わりない日々が待っている。だが、とアルカは告げる。彼の手にある紙きれ。
 その二つをごみのように投げ捨てず、未だ持っていることが彼自身の心であると指し示す。

「……どうやらそうみたいだな。アンタたちは、俺を逃さない。どこまでも追ってくるし、目の前に現れる」
 ならば。
「残念だけどね。そういう業みたいなものが『エース』にはあるのよ」
 アルカは『クィンタブル』を見つめる。
 その瞳を見た。
 これまで猟兵たちが彼の目の前に現れ、幾度か示したものがある。
 復讐か、金か、安寧か、それとも逃亡か。
 多くの選択肢が彼の前の前に示された。

「なら、もう一度……背負えるか『エース』の宿業――」

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『VC2『サジッターリオ』』

POW   :    ティロ・ヴェローチェ
レベル分の1秒で【サブアームを展開し、搭載兵装】を発射できる。
SPD   :    フォルマ・デル・ヴィーコロ
【脚部を折り畳み、タイヤを展開。車両形態】に変形し、自身の【悪路走破性】を代償に、自身の【隠密性と、舗装路における機動性と走行性能】を強化する。
WIZ   :    インボスカータ
レベルm半径内の、自分に気づいていない敵を【機関砲や対戦車ミサイル】で攻撃する際、ほぼ必ず狙った部位に命中する。

イラスト:エンドウフジブチ

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 多くの選択肢があった。
 復讐に生きることもできた。金で動くこともできた。安寧に浸ることもできたし、酒に逃げ込むこともできた。
 けれど元『エース』、『クィンタブル』は選んだ。
 もしも、道に正しいものと誤ちがあるというのならば、彼は思うのだ。
「いつだって正しいのは厳しく険しい長い道程だ。なら、きっとこれが正しいことだと思う」
 彼の瞳に澱はない。
 淀みもなければ、酒気さえ完全に抜けきっていた。彼の目の前には雪原。そして、彼が立っているのは一騎のサイキックキャバリアの肩であった。
『エルフ』と呼ばれる『神機の申し子』にして『ビバ・テルメ』を運営しているアンサーヒューマンが駆る『セラフィム』と呼ばれるサイキックキャバリアは赤と青のパターンたる色を持っていた。
「キャバリアは用意できなかったけれど、できるのかい」
「やるさ。そのために連中がいるんだろう」
『クィンタブル』は雪原の向う側にある『第三帝国シーヴァスリー』の前哨基地を見やる。まだ此方の動きは敵側に察知されていない。

 彼がもともとあの前哨基地に所属していたからこそできたことだ。
 完全に奇襲することができるタイミングを彼は猟兵たちに教えていた。このタイミングで突入すれば、配備されているオブリビオンマシンの挙動を完全に征することができる。
「確かにあの機体は機動性に特化している。けれど、それは雪原のような開けた場所であればこそだ。前哨基地の内部に突入して戦うのであれば……」
「特性を活かせない」
「そのとおりだ。なら、やってみせてくれよ、猟兵。アンタたちがそうだっていうんなら」
 己も背負うのだと彼は告げる。
 この道は始まりだ。長く険しい厳しい選択。
 数多の苦しみが襲い来るだろうが、それが間違いではなかったと証明するためには。

「征くぞ」
 煌めく篝火を示し、熾火の如き昌盛をもって戦場を駆け抜けなければならない――。
ソフィア・エルネイジェ
貴方には感謝しています
これで私も己の使命を果たす事が出来るのですから
あるいは…これも宿命なのかも知れませんね
決して戦いから逃れられない、エースの宿命…
インドラ、参りましょう!

私は正面から往かせて頂きます
護りが妨げとなるなら突き崩すまで
イオンスラスターとブースターを点火し超強行突進で突入しましょう
内部に突入後は混乱に乗じて積極的に攻勢に出ます
ラウンドシールドで押し込みナイトランスで貫きます
屋内ですので槍の扱いは縦軸の動作を中心に
間合いが開いているのでしたらショットガンで粉砕させて頂きます
しかしながら恐らくは反撃も苛烈でしょう
盾と装甲で甘んじて受け止めます
私もインドラも打たれ強さが取り柄ですので



 猟兵たちが迫る『第三帝国シーヴァスリー』の前哨基地。
 それは哨戒任務に出る直前を狙った突撃であった。
 敵の数を減らすことが目的であったのならば、敵の数が少なくなる哨戒機体が出た後であろう。
 しかし、元『エース』である『クィンタブル』が示したのは、哨戒の直前の突撃であった。
「アンタたちはあの哨戒基地のキャバリアの全てを破壊したいんだろう。なら敵が手薄であるかなど考えてはダメだ。むしろ、逆。敵が今から哨戒に出る、というときこそ最も油断しているときだ」
 そう、自分たちが弱者を作り上げることによって優位性を保とうとする性質を持っているのならば、オブリビオンマシンによって歪められても、それは変わらない。

 哨戒任務に出るのは立場の低い者達だ。
 基地の奥でふんぞり返っているのは、地位の高い者たち。彼等は甘んじている。自分がそうであったように。
「だから、今しかない」
「貴方には感謝しています」
「言うな……いや、先日の非礼をお詫びしたい。通信機越しではなく」
「いいえ、私もこれで己が使命を果たすことが出来るのですから。あるいは……」
 これも、とソフィア・エルネイジェ(聖竜皇女・f40112)は己の乗騎『インドラ』を駆り、一気に前哨基地へと飛び込む。
 真正面から、というのは正気の沙汰ではなかったが、しかし一番槍というのであれば彼女以上に秀でたものもいないだろう。

 王族でありながら。
 いや、王族であるからこそ彼女は矢面に立つ。自らの危険を顧みぬからこそ、後に続く者たちもまた果敢に戦場に飛び込むことを知っているからである。
「……これも宿命なのかもしれませんね。決して戦いから逃れられない、『エース』の宿命……」
 ソフィアは前哨基地の壁面をイオンスラスターとブースターによって加速した『インドラ』でもって盛大にぶち抜く。 
 雪煙が立ち込め、前哨基地は一気に混乱に陥るだろう。
「な、なんだ!? 敵襲!? 哨戒機体はどうした!」
「哨戒任務に出る直前だったんだ! 敵襲だ! 迎撃しろ!」
 混乱の声が聞こえる。
 けれど、その立ち込める雪煙の向う側に彼等は見ただろう。青く揺らめくアイセンサー、『インドラ』の眼光を。

「ひっ……!!」
「ゆきますわ、この防壁が障害となるのならば、正面から突き崩すまで」
『インドラ』が唸りを上げるようにジェネレーターの出力を上げる。突入後の混乱に乗じるように動き出そうとしたオブリビオン『サジッターリオ』をラウンドシールドで抑え込み、腕部ショットガンによって四肢を砕く。
「超強行突進(ハイパーチャージ)……『インドラ』、基地の中枢へ」
 ソフィアの言葉に従うように『インドラ』が槍を構える。
 ショットガンで持って破壊した『サジッターリオ』を蹴り飛ばし、大腿部のイオンブースターが凄まじい勢いを齎す。
 駆け出した瞬間には最早止まる事は許されない。

『インドラ』は雷光の如き輝きを解き放ちながら一直線に基地内部を駆け抜ける。
 それはあらゆる障害を無意味とする突進。
 如何なるものも止めることのできない雷撃そのもの。
「凄まじいな……あれが『断罪の竜帝』か」
『クィンタブル』はかの突進を見遣り、呻く。止められぬわけである。あれほどの突進力を有しているのならば、如何に鋼鉄の罠とてあれは食い破るだろう。
「敗北して当然である、か」
 だが、それでも彼女は己に示したのだ。
 王威を。
 頂点に立つ者の、戴かれる者を。そして、彼は知るだろう。それこそが誰固め、という感情であると。

「く、クソっ! サブアームの武装を展開しろ! 一斉射で奴を仕留める!」
『サジッターリオ』たちがサブアームを展開し、その武装を全てソフィアの駆る『インドラ』へと向ける。
 だが、『インドラ』は強靭な装甲を持つサイキックキャバリア。
 放たれる火線の尽くを装甲で受け止め、ラウンドシールドは如何なる攻勢をも防ぎ切るのだ。
「自重を、と言っても聞かぬのでしょうな、雷光の姫君」
「ええ。私も『インドラ』も打たれ強さが取り柄ですので」
「であれば、直進を」
 その言葉を受けて『インドラ』が咆哮する。あらゆる攻勢を防ぐ盾。そして、あらゆるものを貫く槍を構えた『断罪の竜帝』は迫る『サジッターリオ』たちをなぎ倒し、吹き飛ばしながら、矢のように基地内部の最奥へと疾走るのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

村崎・ゆかり
さあ、行こう。久し振りね! 機甲式『GPD-311|迦利《カーリー》』、起動!

『迦利』に乗って前哨基地まで。戦闘領域に入る前に飛び降り、『迦利』は引き続き前哨基地の弱点へ「レーザー射撃」で攻撃。
その間にあたしは、「全力魔法」「範囲攻撃」炎の「属性攻撃」「竜脈使い」「呪詛」で烈焔陣! 基地全域を、地の底から吹き上げるマグマに飲み込ませる。
ただの人間がこれを起こせるとは思わないでしょ。おそらくあたしのことは視認しても無視するはず。それでも念のため「オーラ防御」は張っておくわ。
烈焔陣に合わせて『迦利』には混乱するオブリビオンマシンへの攻撃を強めるよう指示。
これでもう、ここは基地として使えないでしょ。



 前哨基地へと飛び込んだ猟兵の駆るキャバリアの一撃が防壁を打ち抜き、基地内部に混乱をもたらしている。
 破壊の音が響き、また同時にそれがどんどん奥へと続いているのを村崎・ゆかり(“紫蘭”/黒鴉遣い・f01658)は聞く。
 猟兵の戦いの殆どが電撃戦だ。
 果敢にも、苛烈にも、そうやって戦うからこそ数の不利を補ってあまる勢いを得ることができる。
「先陣は切った。後は」
『クィンタブル』の言葉を聞く。
 敵の哨戒任務に出る機体の頭を抑えての突撃。
 それによる混乱によって、基地内部で戦うことを強いる。そうすることで敵のオブリビオンマシン『サジッターリオ』の機体特性は喪われ、また混乱を起こすことによって初動を潰すことができる。

「やってくれるわね。なら、行こう」
 彼女の背後から飛び立つ逆三角形のフォルム――機甲式『GPD-311迦利』が飛翔する。
「久しぶりね!」
 応えるように『1迦利』が空中でゆらめき、ゆかりを背に乗せる。
 無人機であるがゆえに、乗り込むことはできないが、乗り物であると割り切ってしまえば、これでいい。
 放つレーザーの火線が先行した猟兵の穿った防壁の穴を広げ、破砕する。
「これなら後に続いてくれる猟兵達も突入が楽になるってものでしょ」
「敵の数は多い。だが、やってくれるな」
「ええ、誰に言ってるの。やれないわけないでしょ」
 ゆかりの瞳がユーベルコードに輝く。

『サジッターリオ』たちは次々と基地内部から溢れ出そうとしている。彼等にとって、閉鎖空間である基地内部での戦いは避けたいということであろう。
 なるべく広い場所で戦う。
 それがかの機体の特性を最大に活かすために必要なことだったのだ。
「確かに侵攻するっていうのなら、その機体は迅速にして苛烈……でもね、それを食い物できる存在がいるってことを知るべきだったのよ! 烈焔陣(レツエンジン)!」
 彼女の詠唱と共に放たれるのは地表を割り、吹き上がる無数の火柱。
 それはユーベルコードによる天変地異の如き様相を『サジッターリオ』のパイロットたちに見せつけるだろう。
 まるで大地の怒りを表すかのような光景。
 マグマが噴出し、機体のアンダーフレームが溶解し、膝をつく。

「な、なんで地面からマグマが、火が噴出するんだよ!?」
「絶陣が一」
 ゆかりのタグるユーベルコードは地面を割る。
 例え、基地の外に出ようとしたとしても、彼女のユーベルコードがそれを許さない。飛び出せば、即座に無数の火柱が彼等を襲うし、怨念に満ちた呪詛の如き炎は、機体の装甲を焼き落とす。
「なんて熱……!」
「くそっ、これでは足回りが!」
「そうよね。躊躇うわよね。けど、もうここは基地としては使えないでしょ」
 其の言葉に『サジッターリオ』のパイロットたちはモニター越しにゆかりの姿を認める。逆三角形のフォルムをした機体。
 その上に立つゆかりの姿は、体高5mの戦術兵器こそが戦場の花形であるクロムキャバリアに置いては奇異なるものに写ったはずだ。

「あれは……人か? 機体の外になぜ」
「考えるのは寄せ、アレも敵のはずだ! 撃ち落とさねば!」
 サブアームから放たれる火器。
 その砲撃をゆかりは『迦利』と共に躱しながら、炎の柱とレーザーでもって翻弄し続ける。
「頭は抑えたわよ。次は」
「哨戒に出ようとした機体は潰したはずだ。後は最奥に残されている機体を」
「それが敵の親玉ってわけね。なら突入する」
 ゆかりは『クィンタブル』からの通信を受けて、基地内部へと飛び込む。敵の機先はそいだ。勢いの殺された敵をこのまま潰していけば、自ずと士気は下がっていく。
 敵の、『第三帝国シーヴァスリー』の強みは、数。
 けれど、彼等はその性質故に、一度瓦解してしまえば立て直すことをしない。瓦解するままに潰走するだろう。

「けど、今回はオブリビオンマシンの一騎たりとて残さない」
 全てのオブリビオンマシンを破壊する。
 この前哨基地において、それこそが本来の目的なのだというように縁は基地内部を飛び、残る『サジッターリオ』たちを打ちのめしながら、最奥を目指すのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ガイ・レックウ
【POW】で判定
『さて、いくぜ。コスモスターインパルス、道を切り開くため…暴れようぜ!!』
愛機『コスモスターインパルス』を駆り、突撃していくぜ!!
電磁機関砲での【制圧射撃】、ブレードでの【鎧砕き】と【なぎ払い】による【二回攻撃】で数を減らしていき、相手の攻撃は【武器受け】と【見切り】で対処するぜ。そして相手を追い込んでから、ユーベルコード【封魔解放『鳴神』】の雷撃で一網打尽にしてやる!!



 基地内部へと飛び込んだ猟兵たちを待ち構えていたのはオブリビオンマシン『サジッターリオ』であった。
 アンダーフレームに配された車輪は変形機構によって平原や開けた場所で性能を発揮するものであった。だからこそ、元『エース』である『クィンタブル』は基地内部での戦いに持ち込むことこそが戦いを優位に運ばせるものであると猟兵たちに語っていた。
 故に猟兵達の突撃は、哨戒任務の初動を潰し、なおかつ敵の戦力を基地内部にとどまらせることこそ肝要である。
「さて、いくぜ。『コスモスターインパルス』、道を切り開く為……暴れようぜ!!」
 ガイ・レックウ(明日切り開く流浪人・f01997)の駆る黒い機体が戦場となった基地内部へと飛び込む。

 共に戦場を疾走るのは、二機のサイキックキャバリア『セラフィム』。
 赤と青のカラーリングが混ざった機体は『ビバ・テルメ』を運営する四人の『神機の申し子』たちの駆る者であり、その二機がこの場に共するのはもう半数を『ビバ・テルメ』に残すためであった。
 その『エルフ』と呼ばれるアンサーヒューマンの駆る『セラフィム』の肩につかまっているのが『クィンタブル』だ。
 彼が指示を飛ばし、また基地内部の中枢へと水先案内人を買って出たのだ。
「このさきだ。中枢には恐らくあの機体がある……あれが動き出せば、此方の勝機は限りなく低い」
 彼の言葉にガイは頷く。
 どちらにせよ、この基地内部のオブリビオンマシンの全ては破壊しなければならない。

「それも破壊するしかないんだよ。だから」
 ガイは迫る『サジッターリオ』より放たれた銃弾を躱し、装備した電磁機関砲より放たれる弾丸をばらまきながら弾幕を張る。
 確かに『サジッターリオ』の機動性は基地内部での戦闘に引きずり込んだお陰で低下している。けれど、数の利はあちらに未だ傾いている。
 ガイは『コスモスターインパルス』を駆り、迫る砲火を躱しながら飛び込み、ブレードの一閃でもって『サジッターリオ』の機体を破壊する。
「こいつら……! まるで狙い澄ましたようなタイミングで来やがって……!」
「内情に詳しいやつがいるとしか……!」
『サジッターリオ』のパイロットたちは動揺する。
 ここまで完璧に此方の初動を抑えられるとは思ってもいなかったのだろう。

 元『エース』の『クィンタブル』がいなければ、ここまで優位に戦いを進めることはできなかった。
「それはどうかな。だが、どっちにしろ、その機体は破壊させてもらう!」
 ガイの振るうブレードの一撃が『サジッターリオ』を切り裂き、さらに迫る機体が『コスモスターインパルス』へと襲いかかる。
「数が多いか……なら、荒れ狂え! 百鬼従えし、魔人の雷よ!!」
 ガイの瞳と『コスモスターインパルス』のアイセンサーが同時にユーベルコードに煌めく。
 手にしたブレードより放たれるは魔神の雷。
 封された魔神の雷は、荒れ狂うように吹き荒れ、封魔解放『鳴神』(フウマカイホウ・ナルカミ)たる様を示す。

 紫電が基地内部を照らす。
 放たれた雷は、あらゆるものを打ちのめすだろう。ユーベルコードの奔流は、彼等の持つ兵器の全てを無力化するようでもあった。
「悉く粉砕せよ!!」
 放つ雷が『サジッターリオ』たちの内部に通る回路をズタズタに焼き切る。
「このエリアは無力化した。次だ」
 通信から『クィンタブル』の声が響く。基地内部は入り組んでいるが惑うことはない。
「何せ、こっちには内部に精通しているやつがいるんだからな」
 ガイは通信に答えながら中枢へと進む。
 敵の親玉とも言うべきオブリビオンマシンがいるのが最奥であるというのならば、そこに進まなければ事は進まない。

 打ち倒すべき敵は違えない。
 倒すべきは『第三帝国シーヴァスリー』の人々ではない。あくまで猟兵の目的はオブリビオンマシンの破壊。
 ガイは破壊された『サジッターリオ』から逃げ出すパイロットたちを『コスモスターインパルス』から見下ろし、視線を炎に揺らめく基地中枢へと向けるのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ワルルーナ・ティアーメル
くく、己の道を見出したようだな……(魔王城の最上部で腕組み)
ではワルルンガーをズシンズシンとわざと大きな音をたてながら非常にゆっくり歩かせ威嚇だ!

で、我は単身突入、幻覚ブレスをまき散らしながらUCを使用して第一の獣、魔将ワルフォンを呼び出す!

後はワルフォンに「支配する光輝」を使わせ、手あたり次第支配下に置き、操縦者を強制脱出させ他の機体とか壁とかに突撃、他の奴からの攻撃も回避させず機体は使い捨てる

外に出された操縦者も支配下に置き、
しれっと温泉欲を煽ってから外に追い出し、外のワルルンガーに回収させておこう

(ワルフォン:光輪背負うグリフォン。一人称は我で自信満々。指示はマメで自分が一番働くタイプ)



「な、なんだよありゃぁ……!?」
「で、でかい城……要塞が、動いて……!?」
『第三帝国シーヴァスリー』のオブリビオンマシン『サジッターリオ』を駆るパイロットたちは前哨基地に迫る巨大な威容を認め、慄くしかなかった。
 それもそうであろう。
 彼等の目の前に聳えるようにして立つのは『機動魔王城ワルルンガーΣ』である。ワルルーナ・ティアーメル(百胎堕天竜魔王(自称)・f31435)の居城であり、また無断で改造された経緯を持つ自律式悪魔型歩行要塞なのである。
 こんな改造を勝手に施して、さらには職務をほっぽりだして改造した第四の魔将は更迭すらされていない。ワルルーナ様の器のデカさよ。

「くく、己の道を見出したようだな……」
 そんな機動魔王城の最上部に腕組みをして慄く『サジッターリオ』たちの挙動をワルルーナは見下ろしていた。
 巨大な『ワルルンガーΣ』はわざと大きく踏み出し、地鳴りを響かせるように歩く。
 それは威嚇そのものであったことだろう。
 そう、これは敵の基地を破壊するためではない。
 敵の戦意をくじくためだけに示す威容であったし、またワルルーナの力を見せつけるために必要なことだったのだ。
 敵がこの巨大な要塞に目を取られている間にワルルーナは単身基地へと飛び込む。
 下半身の竜たちから放たれる幻覚のブレスに『サジッターリオ』のパイロットたちはさらに恐慌状態に陥るだろう。
「あ、あんなでかいのにどうやって……だ、だめだ、逃げるぞ! 叶うわけない!」
 逃走しようとする『サジッターリオ』たちをワルルーナは見据える。

 その瞳に輝くのはユーベルコード。
「中の人間は逃げても良いが、その機体は破壊させてもらおう! 第一の魔将『ワルフォン』よ! 出番だ!!」
 その言葉と共に飛び出すのは、第1の獣ワルフォン/支配する光輝(ワルフォン・ドミネーションレイ)。
 光輪背負うグリフォンは、第一の魔将。
 最も勤勉なる者。
 ワルルーナ麾下において一番働いてくれる忠義者である。
「フハハハハ! この我が! 第一の魔将!! 第一とは即ちファーストにしてファスト! つまり迅速! 果断! 即断! 即決! 貴様らの機体は我が打ち砕いてくれよう!」
『ワルフォン』の言葉と共に放たれる光線の一撃が『サジッターリオ』たちを次々と射抜いていく。

「中の人間はくれぐれも傷つけるでないぞ! この雪原の中に放り出されては、脆弱な人間はすぐ死んでしまうからな! というわけで温泉である! 貴様たち! 我が居城ワルルンガーへと集え!」
『ワルフォン』の光線によって機体を破壊され、コクピットから這々の体で這い出したパイロットたちはワルルーナの言葉を聞く。
「お、温泉……!?」
「そうだ! この先にあるのは小国家『ビバ・テルメ』! 見よ、あの湯煙を!」
 しれっとワルルーナは敵を勧誘しているのだ。
 別に自分たちの目的は敵を打ち倒すことではない。あくまでオブリビオンマシンの破壊。それが成ったのならば、敵味方はない。

「無事に温泉に浸かりたい者は、来るがよい! 上下も横の繋がりも関係ない。ただ温泉とは全てを受け入れ癒やすものであると知れ!」
 ワルルーナの臨場感たっぷりの演説にオブリビオンマシンから這い出したパイロットたちは誘われるようにして魔王城へと歩む。
 わからなくもない。
 戦いよりも素晴らしいものがあるとワルルーナは解く。その演説の凄まじさは『ワルフォン』の『支配する光輝』によるものに裏付けされるものであったけれど。
 それでも彼女の言葉に『サジッターリオ』のパイロットたちは次々と機体を捨てるのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

カシム・ディーン
やれやれ…エースってのは称号みてーなもんだろう
過去未来における自分のやった事の結果だ
「メルシー達も7thキングの候補までいったぞ☆」
そいつも名誉職だが…まぁ…目指すのは悪くねーってぐらいには思えたな

つか彼奴らもこんな所で色々やってたんだな
「凄いねー☆」
クィンダブルよー…折角の温泉なんだ
とっとと此処潰して飯と酒だ。ぜってーうめーぞ
後は娼館があれば文句なしだな
「ご主人サマ☆それは死亡フラグだぞ☆」
はっ…んなもんに好きにさせるか

【情報収集・戦闘知識・視力】
前線基地の構造と状況と敵戦力の能力把握
【属性攻撃・迷彩】
光水属性を機体に付与
光学迷彩で存在を隠し水の障壁で熱源を隠蔽

【念動力・弾幕・空中戦】
高速で飛び回り奇襲の念動光弾で無力化
不殺徹底
後は突入
【二回攻撃・切断・盗み攻撃・盗み】
UC発動
音もなく接近して鎌剣で連続斬撃で手足を切断し更に武装を強奪
同時に乗り手の魂を強奪
但し魂の糸は斬らない

時間が経てばまた目覚めるさ
まぁ目覚めた時が快適かは一切保証しかねるがな?

後は金目の物も兵器も盗みまくる!



『エース』とは即ち、人が見上げるものである。
 それが正しいのであれば、それは結局のところ称号でしかないとカシム・ディーン(小さな竜眼・f12217)は理解する。
「結局、過去未来における自分のやったことの結果だ」
 自らの轍に名が付く。
 歴史に名を残すことと同義であったことだろう。
 名を残すということは死する運命にある生命にとっては、永遠にも等しい価値を持つものであったことだろう。

 生命なくとも、己の存在が己以外の命によって連綿と紡がれていく。
 その喜びは、後ろ暗いものであったかもしれない。
 だからこそ、人はこの戦乱の世界にあって『エース』を求めるのかもしれない。
『メルシー達も7thキング候補までいったぞ☆』
 己が駆る界導神機『メルクリウス』のコクピットに響く言葉にカシムは頷く。
「まあ、そいつも名誉職だが……まぁ……目指すのは悪くねーってぐらいには思えたな」
 だから、と踏み込む。
 その機体は疾風よりも早い。
 そして、何より機体の姿を晒すことはなかった。
 光学迷彩による姿の隠蔽。温度による探知にもかからぬ超常たる機体。

 存在そのものを隠蔽する魔術めいた力は、『第三帝国シーヴァスリー』の前哨基地であっても、感知することができなかった。
 それに猟兵たちの攻勢によって基地内部は混乱に満ちていた。
「つか、彼奴らもこんな所で色々やてたんだな」
『すごいねー☆』
 本国から離れて他国にちょっかいを掛けている、とも言える。
 これまでいくつかの小国家を滅ぼしてきたのは伊達ではないと思える物量だ。

「プラントの数こそが小国家の力のものさしだ。そう言う意味では『第三帝国シーヴァスリー』はこの地域ではプラント保有数が群を抜いている」
「なるほどな。だから、この物量か」
 カシムは機体に届く通信の声の主『クィンタブル』の言葉に頷く。
「ていうか、『クィンタブル』よー……折角の温泉なんだ。とっとと此処潰して飯と酒だ。ぜってーうめーぞ」
 其の言葉に『クィンタブル』は苦笑いした気配があった。
「酒は当分絶とうと思っていた所に誘惑してくれるな」
「そいつは悪かったな。だがよ、勝利の美酒ってのは何ものにも代えがてーだろ? ああ、後は娼館でもあれば文句なしだ」
『ご主人サマ☆ それは死亡フラグだぞ☆』

 其の言葉にこそカシムは笑む。
「はっ……んなもんに好きにさせるかよ」
『メルクリウス』の機体の周囲に飛ぶは光弾。念動力によって生み出された弾丸は基地内部を自在に飛ぶ。
 如何に『サジッターリオ』が機動性に優れた機体であった所で、基地内部で戦うのならば、その機動性は十全に発揮できないだろう。
 サブアームに展開された火器だってそうだ。
「この狭い場所でぶっぱなせばどうなるかわかってるよなぁ!」
「こいつ……どこから!?」
「敵襲……!? どうなってやがる、守備隊は!」
『サジッターリオ』のパイロットたちの混乱が伝わる。上出来だと思った。確かに数の利は敵にある。

 けれど、元『エース』である『クィンタブル』の情報によって、これは封殺されているし、猟兵たちの突撃によって敵は混乱している。
 指揮系統がまともに働いていない。
「当然だよな。てめーらの中で一番強いやつを放逐しちまってんだから!」
『メルクリウス』の構えた鎌剣の一閃が『サジッターリオ』たちを切り裂く。
 武装を強奪するかのようにサブアームを切り裂き、火器の悉くを奪っていく。
「たまぬき(ソウルスティール)ってな。オブリビオンマシンの中核、魂魄って言えば、エネルギーインゴットだろ」
 カシムは『メルクリウス』のマニピュレーターに掴んだエネルギーインゴットを回収する。
 例え、敵が逃げ出しても。
 機体を放置しても。
 オブリビオンマシンである以上、動かすにはエネルギーが必要である。体高5mの戦術兵器を突き動かすのはエネルギーインゴットだ。
 これを奪っておけば、敵は最早抜け殻そのもの。

「おら、さっさと行けよ」
 小突くようにしてカシムは『サジッターリオ』の機体を転がす。敵の魂魄すら奪う魔技はパイロットのそれすら奪いかねない。
 けれど、カシムはコクピットから這い出す彼等を見下ろして言う。
「機体はどうしようもねーが、生命はあるだろ。ものだねってやつだよ。此処が快適じゃねーことはわかりきってんだろ?」
 なら、とカシムは彼らに告げる。
「さっさと逃げちまえよ。何処へなりとな」
 そう告げて『メルクリウス』は視線を基地の中枢へと向ける。

 気配を感じる。
 強靭な意志。
 傲慢ささえ感じさせる意志。
 己が絶対であるというように。強烈な力の波動めいたもの。
「いるねー☆」
『神機の申し子』たちある所に、『それ』は存在している。それを示すように感じるのだ。
 奥に。
『クィンタブル』をして、『あれ』が機動すれば勝機が限りなく0に近くなると言わしめたオブリビオンマシンが――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ユーリー・ザルティア
立ったねエース。
エースってのは間違えないんじゃない。
間違えても…あきらめないやつ。もう一度立てる奴だ。
あんたは立派なエースだよ『クィンタブル』

―行くよ。レスヴァント。
前哨基地に突撃するよ。
さて、防衛戦力がいっぱいだね。
ただ、それだけだ!!

アマテラスで『索敵』して『情報収集』。
敵機の位置を補足して『瞬間思考力』で動きを『見切り』回避しつつ、前哨基地と敵キャバリアを射程に入れるよ。
ファイナルブレイカー・モードで強化したダークマンティスによる『範囲攻撃』するよ。
アストライアの『制圧射撃』もお見舞いだね。

さて、『エネルギー充填』120%たまったね。
前哨基地に向けて、『レーザー射撃』を撃ち込むよ。



 元『エース』、『クィンタブル』は多くの猟兵達によって立たされた。いや、自らの足で立ったと言える。
 それをユーリー・ザルティア(自称“撃墜女王”(エース)・f29915)は見ていた。
 わかっていた。
『エース』というものを。
 それがどういう存在であるかを。これまでユーリーは多くの『エース』を見てきた。いずれも卓越したキャバリア操縦の技量を持っていた。
 しかし、それ自体が『エース』と呼ばれるものではないことも。
「『エース』ってのは間違えないんじゃない。間違えても……」
「諦めの悪いやつのことを言うんだろう」
「そう、そしてもう一度立てる奴のことだ。あんたは立派な『エース』だよ、『クィンタブル』」
 その言葉に通信機の向う側の彼は苦笑いしたようだった。

「まだだ、『エース』。俺はまだ立っただけだ。その先の一歩を今踏み出している最中だ。だから、まだそうは名乗れない。けれど、アンタたちが戦うというのならば、俺も戦う覚悟を決めたまでだ」
 その言葉にユーリーは笑う。
「律儀というか頭固いっていうか――行くよ、『レスヴァント』」
 白きキャバリアが飛ぶようにして前哨基地へと飛ぶ。
 障壁はすでに破壊されている。
 迎撃に出てきていたオブリビオンマシン『サジッターリオ』は次々とと撃破されている。敵の基地、その中枢を目指すには十分過ぎるほどのお膳立てがなされていた。
 しかし、それでも敵の数は多い。

「敵が体勢を立て直してきている。油断はするな」
「誰に!」
 言っているんだとユーリーは『レスヴァント』のコクピットの中で操縦桿を握り直す。
 コンソールにふれると機体よりドローンが飛び出し、周囲の情報を集める。
 集められた情報がモニターに映し出される。
 敵の数。
 動き。それら全てを統合した情報がユーリーの網膜に刻まれる。
「『レスヴァント』!」
 ユーリーの言葉に応えるように『レスヴァント』が変形する。
 武装が展開し、荷電粒子ビーム砲が二門狙いをつける。放たれる粒子ビームの一撃が『サジッターリオ』の機体を撃ち抜く。

「次!」
 疾走る。
 まさにそう言葉にするのが正しいほどにユーリーと『レスヴァント』の進撃は電撃的であった。
『サジッターリオ』に反撃の暇すら与えない。
 アサルトライフルの弾丸が『サジッターリオ』たちが現れるより疾く放たれ、まるでそこに『サジッターリオ』が飛び込んでくるように弾丸に当たり、其の機体を頓挫させるのだ。
「とんでもないことをさらりとやってくれる……!」
「やってやれないことなんてないってね。ボクの操縦テク、甘く見ないでよね!」
 ユーリーは曲芸のように、それこそ神がかった狙いを付けながら次々と『サジッターリオ』たちを撃破していく。

 そのすさまじい戦いぶりは正しくファイナルブレイカー・モードと呼ぶに差し支えない。けれど、本命はこれではない。
 初撃の一撃。
 荷電粒子ビームの一撃からすでにエネルギーの充填は終わっている。
「再充填完了! さあ、行くよ!」
 基地は破壊する。再利用なんてさせない。
 何より、此処がオブリビオンマシンの巣窟となっているというのならば、完膚なきまでに破壊しなければならない。

「こういうときのために大出力が売りなんだよね!」
 ユーリーの言葉と共に放たれる荷電粒子ビームの一撃は、奔流のようになって基地を破壊する。
 破壊の渦は止まらない。
 敵の親玉とも言うべきオブリビオンマシンがいるのならば、この一撃に黙ってはいられないだろう。
 焦れて出てくるはずだ。
「対峙する前から戦いは始まっているんだよ、さあ、おいでよ、親玉!」
 ぶっ飛ばしてあげるからさ、とユーリーは笑い膨大な一撃の負荷を冷却するように『レスヴァント』から水蒸気を排出し、さらなる敵を迎え撃つのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

朱鷺透・小枝子
広い雪原であったならば、
他の機体を持ち出していたでしょう。
感謝いたします。クィンタブル!
おかげで全て壊せる!!

ディスポーザブル01【操縦】
『灯火の戦塊』発動!
自律キャバリア、ディスポーザブル01を召喚!
その軍勢を以って前哨基地を包囲し、
オブリビオンマシンを一機も逃さず殲滅しに掛る!!

壊せ!『起動』せよ!ディスポーザブル!!
戦火が火を呑み込むなら、より大きな火を灯せ!!

【継戦能力】01達で出来た重装甲壁で機動を制限。
パルスアトラクターの電磁音波で【吹き飛ばし】で押し
パルスガトリング・ホーミングレーザー砲台の【弾幕】
念動力鞭内蔵パワークローを飛ばし、【追跡】
掴み、脚を潰し、機体を壊し、進軍する!!



 オブリビオンマシン『サジッターリオ』は機動性に優れた制圧型のキャバリアがへんじたものである。
 車輪と駆動パーツの備わったアンダーフレームは変形機構を有していて、これにより悪路もなんなく走破してみせるのだ。
 それによる機動性は平原――雪原にこそふさわしいものであった。
 だから、『ビバ・テルメ』を攻略するために集められていたのだと朱鷺透・小枝子(亡国の戦塵・f29924)は理解する。
「広い雪原であったのならば、他の機体を持ち出していたでしょう」
 小枝子は己のキャバリア『ディスポーザブル01』の巨躯を駆り、基地内部へと進撃する。
 雪原から攻め立てるのならば、敵の機動性によってこの機体は翻弄されていたに違いない。けれど、元『エース』が奮起してくれたおかげで、既知の情報を得て猟兵たちは不意を付く形で敵の前哨基地へと突入を成功させていた。

 小枝子もまた其の恩恵を最大に受けていた。
「感謝致します、『クィンタブル』!」
「礼を言われるのは、この基地を潰した後だ。俺も、アンタも、まだ何も終わらせていない」
「言われてみれば、確かに。ですが、おかげで、と言わせてもらうであります! これでオブリビオンマシンの全てを壊せる!!」
 唸りを上げるようにして『ディスポーザブル01』のジェネレーターが咆哮する。
 その咆哮と共にアイセンサーがユーベルコードに煌めく。
「起動」
 咆哮とは裏腹に小枝子の言葉は平坦であった。
 彼女の言葉と共に現れるのは百を越える自律キャバリアたちであった。百を超える機体は、まさに蹂躙という言葉がしっくり来るほどの苛烈なる攻勢でもって『サジッターリオ』たちを打ちのめしていく。

「何処からこんな数が湧いて出てきているんだ……?!」
「敵機、なおも増加中! 基地を包囲しています!」
 前哨基地の人員たちは混乱しきりであった。
 これだけの大部隊であれば、近づかれる前に感知できるはずだ。確かに数とは脅威である。しかし、数が多ければ多いほどに、その存在感は増し、接近を容易に感知できる。
 感知できるということは即ち、迎撃の準備が出来るということだ。
 なのに、それができなかったということが『第三帝国シーヴァスリー』の前哨基地の命運を断ったものであると知るだろう。
「壊せ!『ディスポーザブル』!!」
 小枝子は咆哮する。

 その咆哮は、灯火の戦塊(ライトネスト)たる証。
 敵が、『第三帝国シーヴァスリー』が、オブリビオンが戦火を持って世界を炎の破滅に導くというのならば。
 己たちは。
「戦火が火を飲み込むなら、より大きな火を灯せ!!」
 篝火の如き火を。
 希望にもにた平和を思う心に灯す火をくべねばならない。『ディスポーザブル』の軍勢が重装甲でもって機動性に勝る『サジッターリオ』たちの攻勢をすりつぶしていく。
「と、止まらない……なんて装甲……!」
「無駄だ! 全て破壊する。その機体は全て破壊する!!」
 弾幕のように百を超える『ディスポーザブル』より弾丸が飛ぶ。火線が飛ぶ。さらに宙を飛ぶパワークローが『サジッターリオ』たちのアンダーフレームを掴み、其の動きを止める。

「ひっ……!」
「生命惜しくば、其の機体を捨てろ! 破壊する!!」
 小枝子はコクピットハッチを引き剥がし、ふるい落とすようにしてパイロットを機体の外に排出してから『サジッターリオ』の機体を大地に叩きつける。
 爆炎が立ち上る中、揺らめく大気の向こうに鋼鉄の巨人が、戦鬼が、単眼のアイセンサーを輝かせる。
 火の粉が飛ぶ。
 黒煙が舞い上がる。
 けれど、パイロットたちは見ただろう。
 己達には目もくれず、悠然と基地内部、その奥へと進む膨大な数の鋼鉄の巨人たちを――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アルカ・スィエラ
そう。それがあなたの選択なのね
……別に、あなたの答えが何であれ、私のやる事は同じよ。
オブリビオンマシンを、止める……!

プロトミレス(コルヴィルクス)で行くわ
本格的に散開される前に、基地内で各個撃破を狙う
ステララディウスによる弾幕展開と、ルーナグラディウス(斬撃)による近接戦、
舗装された基地内を駆けまわろうというならツインGランチャーの重力球を地面に打ち込み機動を邪魔するわ

距離のあるうちに敵機を捕捉できたのなら、UC起動……!
【ランページ・ミラージュ】……!!
短距離空間転移を繰り返し、位置を入れ替えながら、
ステララディウス、ルーナグラディウスを使い分身しながらの連続攻撃を仕掛ける……!!



『第三帝国シーヴァスリー』の元『エース』、『クィンタブル』は奮起した。
 キャバリアを持たずとも、彼は戦線に舞い戻った。
 酒に溺れ、呑まれた日々は確かに彼にとって屈辱に塗れたものであったことだろう。しかし、それでも彼は泥を拭い、前に進むことを選んだ。
「そう。それがあなたの選択なのね」
 アルカ・スィエラ(鋼竜の戦姫・f29964)は己のキャバリア『プロトミレス』の鈍色の輝きを戦火に揺らめかせながら、彼の行動を注視する。
「そうだ。俺が選んだ。俺が掴んだ。アンタたちの言葉に背中を押されたことは事実だ。そして、それが得難いものであることも。だから」
 報いたいと思うという言葉は心の中に飲み込んだ『クィンタブル』にアルカはそっけなく告げる。

「……別に、あなたの答えが何であれ、私のやることは同じよ」
 それは無用の長物であるからだ。
 結果を示さなければならない。
「わかっている。ならば」
「オブリビオンマシンを、止める……!」
 前哨基地は炎に包まれている。
 すでに多くの猟兵たちが突入してることもある故だ。それ以上に『クィンタブル』のもたらした情報が有益であった。
 前哨基地であるがゆえに哨戒活動を行なう部隊の頭を抑え、油断と弛緩を引き出す。それによって初動を遅らせ、一気に敵の陣へと切り込む。

 これによってオブリビオンマシン『サジッターリオ』の優位性は殆ど喪われたと言っても過言ではなかった。
「散開されるのは頂けない……なら」
 ライフルから散弾が放たれ、『サジッターリオ』たちの足を止める。
「コイツ……!」 
『サジッターリオ』のアンダーフレームが変形し、車両のような形へと変貌を遂げ、速度で持って『プロトミレス』を翻弄しようとしても遅い。
 腰部より展開したルーナグラディウスの一閃が『サジッターリオ』の機体を分断する。一閃が走った後には、もはや残骸となった機体しかないのだ。

「距離を取れ! 敵の武装は近距離兵装! なら!」
『サジッターリオ』たちが『プロトミレス』から距離を取るように駆ける。だが、それはアルカにとっては思うツボでしかなかった。
「転移、分身…起動、……一気に、仕掛ける!!」
『プロトミレス』のアイセンサーがユーベルコードに輝く。
 それは、転移――ショートジャンプ。即ち、視界内の任意の空間座標への短距離空間転移である。
 それが如何に脅威のテクノロジーであるかなど言うまでもない。
 アルカの駆る『プロトミレス』にとって距離は問題にはならない。
 瞬時に距離を詰めた『プロトミレス』の頭部が『サジッターリオ』のパイロットたちの眼前に現れる。
「な、っ!?」
 分身――マテリアライズ・ミラージュ。エネルギー物質化による分身による同時攻撃。
 実体剣による斬撃とライフルによる射撃の一撃が『サジッターリオ』たちを瞬時に撃破していくのだ。

「速すぎる……なんだコイツは!?」
『サジッターリオ』のパイロットたちがたじろぐのも無理なからぬ話であった。『プロトミレス』の外観だけ見るのならば、最新鋭であるとは言えない。
 けれど、その中身は別物と言ってもいい程の性能であった。 
「圧倒的過ぎる……」
『クィンタブル』はアルカの駆る『プロトミレス』を見遣り、つぶやく。
 機体の性能もある。
 けれど、それ以上に性能を十全に引き出すアルカの技量こそ、圧倒的であるといえるのだ。
 遠近の武装を自在に使い分け、距離すら意味をなさぬ機能。
 格の違い、というのならば、まさにその通りなのだろう。
「次は」
 アルカは『クィンタブル』に告げる。
 これで終わりのはずがないと。必ず、オブリビオンマシンの親玉がいるはずだと。
 油断も隙もない。
 アルカにとって、これは結局のところやるべきことなのだ。故に彼女はその瞳を最奥へと向ける。

 その先に感じる強靭なるプレッシャーの根源に対し、迫る強烈な敵意を感じ取るのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ルクス・アルブス
【ステルク】

ステラさん、いつまで後方母親顔なんですか!
既成事実にしようとしても、『エイル』さんがいないんですから無理ですからね!

いえ、いたらできるということでもないですが。

むしろもっかいあててやろうかな、
などと考えてしまっても口には絶対出しません。ええ絶対。

そんなことより、エース復活ですよ!

ここはわたしも【ソナーレ】に乗って、
華麗なる演奏を持って、祝福を与えるべきだと思うのです。

え?なんだかプリースト化してないって?

そんなことないですよ。
勇者は何人いてもいいですし、新たな勇者を祝福するのは先輩勇者の務めですから!

ちょ、なんでフォルさんでつつくんですか!?
これじゃ演奏できないじゃないですかー!


ステラ・タタリクス
【ステルク】
え?
母である事実は永遠では…
ばかな…既成事実ではない?
いえ、エイル様が居ればそれはそれで私は最高です

ルクス様から不穏な気配…ちっ、誤魔化しましたか
ですがエース復活は事実
先手必勝、良い手段で……ルクス様?何をしようとしていますか?
それはもう勇者ではなく神官なのでは?
ええい、このままでは戦線が崩壊します
|スパロウビット《雀さんたち》、ルクス様の演奏の邪魔をして
フォル(鳥型キャバリア)も一緒に行って突いてあげなさい

その間に私が突撃しましょう
【ガレオンチェンジ】で飛空艇形態
低空とて構いません
飛翔突撃で基地の中に食い込んだら
【エールプティオー・プルウィア】一斉射撃!
一気に仕留めます!



 後方母親面。
 言葉の字面だけ聞くのならば、とんでもない言葉である。血縁も事実もない。根も葉もないことである。
 しかしながら、ステラ・タタリクス(紫苑・f33899)はなんか得意げであった。
『神機の申し子』達四人。彼等の成長を『ビバ・テルメ』で感じ、また彼女はひしひしと母性というものを刺激されていたのである。
 そんなステラにルクス・アルブス(『魔女』に憧れる『出禁勇者(光属性)』・f32689)は思わず突っ込んでいた。
 いや、突っ込まずにはいられない。
「ステラさん、いつまで後方母親顔なんですか! 既成事実にしようとしても『エイル』さんがいないんですから無理ですからね!」
 そう。
 認知してもらおうとしても、当の本人がいないのである。
 無理である。無理だから、その顔をやめてほしいとルクスはステラに言うのだが、彼女は『え?』くらいの感じで返すのだ。

「母である事実は永遠では……?」
「ですから、誰も認知できないんですけど?!」
「馬鹿な……既成事実ではない? 言い続ければそれでどうにかなるものでは?」
「なんです、その百回言ったら本当になる、みたいなの! いたら認知されるとかじゃないですからね!」
 そもそもそういう事実がないので。
 それって捏造っていうんじゃないかなって、思ったまる。

「例え、そうであっても私は『エイル』様がいればそれはそれで私は最高です」
 ふんす。
 ステラの様子にルクスは思った。もっかい当ててやろうかなって。そうすれば、ステラのあのびみょーにふんぞり返った感じの表情を、ぐんにゃ~って出来るのではと思った。
 思っただけで絶対に口に出さない。
 絶対出さない。 
 出したらどうなるかなんてわかりきっている。

「今」
 ステラの顔が真顔になる。
「今、ルクス様から不穏な気配を感じたのですが」
「えっ!? 聞こえ……口に出して……いえ、そんなことより『エース』復活ですよ!」
 ルクスはごまかすように『セラフィム』の肩に掴まっている『クィンタブル』を指差す。これまで彼を奮起させるために猟兵たちは多くの言葉を投げかけた。多くの行動をもって相対した。
 ルクスもステラもそうだったのだ。
 彼が戦う気になったというのは、喜ばしいことだとルクスが大げさに言うものだから、ステラはじとっとした顔をしてしまう。
 しかしまあ、『エース』の復活は事実っていえば事実。
 なので、仕方ないごまかされてやるか、とステラは思い……。

「じゃあ、わたしも『ソナーレ』に乗って、華麗なる演奏を持って、祝福を与えるべきだと思うのです」
 ふんす。
 こんどはルクスがふんすとしている。
 演奏しようとヴァイオリンを構えた瞬間、ステラは己のキャバリアである『フォルティス・フォルトゥーナ』をけしかける。
「『フォル』!」
 それは絶対命令であった。他の何物にも優先される命令。
 機体の嘴がステラの帽子を小突く。

「あ、痛ぁ!? な、なにするんですか!? なんで突くんですか!?」
 ていうか、オブリビオンマシン『サジッターリオ』が迫っている。
 何を悠長にコントをやっているんだろうか、と『セラフィム』を駆る『エルフ』は一瞬思ったが、いや、あれがあの人たちのいつも通りだしなぁって思った。
 下手に口出しすると巻き込まれるっていうのはもうよくわかっている。
 なんかこう、親しい人の漫才を見ている時ってこういう気分なのかなって思いながら静観していたが『クィンタブル』は違った。

「な、何をしている! 敵が来ているぞ!」
「わかっておりますとも。こっちは背後にも敵が居るのです! ルクス様を止めないと此方の戦列が崩壊してしまいます!」
 ステラはわかっているとばかりに己の姿を飛空艇へと変貌させ、己の天使核より生成したミサイルを解き放つ。
「あ、痛い! 痛いですって! なんでこんなことするんですか! これじゃ演奏できないじゃないですかー!」
「させないためにやっているのです。ええい、|スパロウビット《雀さんたち》も!」
 ステラにとって、これは前門の虎、後門の狼状態である。
『サジッターリオ』を放置してはならず。
 さりとてステラを放置してもならず。

 にっちもさっちもいかない状況をステラは懸命に打開しようとしていた。
「こちらは一気に仕留めますので! もはや勇者ではなくて、それは神官のしごとで小児!」
「えー! だって勇者は何人いてもいいですし、新たな勇者を祝福するのは先輩勇者の努めですから!」
「先輩!? 先輩面できるんですか!?」
「なっ、できてますよ! これまで何回世界を救ってきたと思っているんですか!」
 結果だけ見たらまあ、そうである。
 世界の破滅。
 オブリビオンが齎す破滅をこれまでルクスは何度も阻止してきたのだ。ならば、たしかに勇者と言っても過言ではない。
 まあ、その頭に出禁とか、破壊音波魔法とか、色々付くあれであるが。

「口喧嘩は程々にしておいてくれ! 本当にやばいやつがいるんだ!」
『クィンタブル』がたまらず二人をたしなめる。
 そう、この先にこそ、中枢にこそ強大な敵が存在しているのだ。
「だから演奏はやってはなりません! 何度言えば良いのです!」
「だってだって先輩勇者なんですもの、わたし! 祝福したいー!」
 そんなやり取りに頭を痛める『クィンタブル』だった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

月夜・玲
車のよーな、キャバリアのような…
全く全部がオブリビオンマシンだっていうんだから面倒臭い
まあいいか、遠慮なく全部を処理させて貰おう

《RE》IncarnationとBlue Birdを抜刀
基地に乗り込んで悉く処分してやろうじゃない
【Unite Dual Core】起動
雷刃を形成、目視できる敵は雷刃の『なぎ払い』で斬り裂いていこう
同時に蒼炎を放出して、近場の敵を自動追尾
斬りやすい位置まで追い込んで雷刃でトドメを刺していこう
周囲の警戒は怠らず建物の陰に身を隠しながら移動
敵のミサイルは雷刃で迎撃して『武器受け』
他は『オーラ防御』のシールドで弾こう

うーん、面白い機体なのにオブリビオンマシンなのが勿体ない…



 技術者として言わせてもらうのならば、オブリビオンマシン『サジッターリオ』の機体特性は面白い、と思えるものであった。
 特徴的なのはアンダーフレーム。
 その車輪と駆動系の付属した一体型のフレームは人型の脚部へと変形することで高い戦術性の幅を持たせる。そして、車輪と駆動系を駆使すれば車体のように悪路だって走破しきる力を持っている。

 さらにオーバーフレームはサブアームによって多くの火器を携行することもできたし、また同時に扱うこともできた。
 電撃的に侵攻する、というのならば、確かに適した機体であるとも言えるだろう。
「つまりは車のよーな、キャバリアのよーな……」
 月夜・玲(頂の探究者・f01605)は、ふんふんと頷く。
 敵の機体の特性は言うまでもなく、その柔軟性にある。
 体高5mの戦術兵器が、このクロムキャバリアの世界において戦場の花形である理由は言わずとしれた、戦術を手繰ることにこそある。

 故に、かの『サジッターリオ』は柔軟な走破性能故に、その名が示すように嚆矢のように戦場をひた走ることこそ真価を発揮する機体であると言えただろう。
「それだっていうのに、全く全部がオブリビオンマシンだっていうんだから面倒くさい」
 玲は模造神器の二振りを抜き払う。
 蒼き刀身が戦場の炎に揺らめいた。その光景を元『エース』、『クィンタブル』は息を呑んで見つめる。
 今でも信じられない。
 彼女がこれまで幾度となく生身単身で体高5mの戦術兵器を屠ってきた超常の存在であることが、だ。
「全部ぶっ壊しちゃってかまわないんだよね」
「あ、ああ……だが、本当にキャバリアなしで……」
「むしろ、じゃーまー」
 玲は踏み込むようにして戦場へと駆け出す。彼女の瞳に煌めくユーベルコードの輝きが、残光のように戦場に刻まれる。

「弐神合一プログラム…略してUDC…起動!」
 模造神器の二振りに込められた雷と焔の疑似邪神が玲の体と融合を果たす。
 強大なる力の奔流。
 それは玲の体の中で渦を巻くようして膨れ上がり、炸裂するような蒼き焔が戦場を舐め尽くすようにして迸るのだ。
 基地の障壁など意味をなさない。
 溶解するように押し広げられた障壁から玲は飛び込み、振るう模造神器の刀身の鋒が示す『サジッターリオ』のアンダーフレームを焼き切る。

「こ、こっちからも来た……!? なんだ、機影はキャッチできていないはずだ……!」
「人……? う、嘘だろ……!? 生身の人間がキャバリアを……!」
『サジッターリオ』のパイロットたちは慄くしかなかった。
 次の瞬間、瞬間的に伸びる雷刃の一閃が『サジッターリオ』の頭部を切り裂き、武装を断ち切っていたのだ。
「うーん、面白い機体なのにオブリビオンマシンなのがもったいない……」
 いや、本当に、と玲はため息をつく。
 あれだけ戦術、という意味での幅をもたせた機体であれば、数を用意できれば精強なる部隊が作り出せただろうに、という残念さがあったのだ。

「というか、作戦勝ちって言うんだろうけど、ここまで呆気ないとはね」
 玲は基地内部へと容易に侵入を果たす。
 味方の猟兵たちの戦いが誘導している、というのもあるのだろうが、呆気ない、という言葉がしっくりくる。
 それほどまでに『クィンタブル』の作戦がハマったということもあるのだろう。
「やっぱり戦いってのは機体性能だけでは決まらないんだよね」
「あ、ああ……」
『クィンタブル』は玲の戦いぶりを見て、そう言葉を漏らすしかなかった。
 内心は、いやいやいや! と思っていたが。
 生身単身でキャバリアと渡り合い、なおかつ圧倒する者がいるとは誰も思わないだろう。これまで猟兵たちと幾度か渡り合ってきた彼であるからこそ、わかることであったけれど。
 実際に味方に玲がいるだけで、こうも違うのかと彼は思うのだ。
 損害無く敵を制圧する。
 
 その鮮烈さはキャバリアという兵器をくらませるほどのまばゆい蒼い輝きでもって、戦場を照らす。
「んじゃ、行こうか。この先でしょ。親玉オブリビオンマシンんがいるってのは」
 玲は『サジッターリオ』の残骸を背に前に進む。
 気配は感じる。
 これまで幾度か感じたことのある気配。
「ああ、なるほど。神機シリーズってやつ」
 玲も過去、少なくとも二度は邂逅している。その気配を彼女は知っているだろう。
 元『エース』、『クィンタブル』をして、あの機体が動けば勝機が限りなく0に近くなると言わしめた存在。
 その強烈なプレッシャーを前に玲は、その手にした模造神器を握り直し、さらなる戦禍の気配に唇を湿らせるのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『天雷神機『ユピテル』』

POW   :    神敵撃滅機構『神の拳』
【追尾する敵Lv×100発のロケットパンチ】が命中した対象に対し、高威力高命中の【パンチの集中攻撃から合体しての巨大鉄拳】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
SPD   :    BXS万能攻防雷撃兵装『ケラウノス』
【ケラウノスより放たれる雷撃】が命中した敵を【全方位に放たれるプラズマスパーク】で追撃する。また、敵のあらゆる攻撃を[全方位に放たれるプラズマスパーク]で受け止め[ケラウノスより放たれる雷撃]で反撃する。
WIZ   :    絶対秩序維持機構『天空の神』
【殲禍炎剣へ限定的なアクセスを行う事】により、レベルの二乗mまでの視認している対象を、【殲禍炎剣による回避不能の砲撃】で攻撃する。

イラスト:柿坂八鹿

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はテラ・ウィンディアです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 それは強烈な存在感を放つものであった。
 前哨基地の中枢。
 数多のオブリビオンマシンを撃滅しながら突き進んだ猟兵たちが見たのは、一騎のオブリビオンマシンの姿であった。

 名を天雷神機『ユピテル』。

 主神の名を持つ機体。
「俺様を目覚めさせたのは貴様らだな、猟兵」
 その言葉と共にアイセンサーが煌めく。
 猟兵たちは感じただろう。眼の前の神機と呼ばれるオブリビオンマシンが放つ重圧。それははったりでもなんでもないことを。そして、基地の中枢にありなが猟兵たちは知る。
 強烈な重圧は眼の前の機体だけではないと。
 降り注ぐような重圧。
 瞬間、基地の天蓋を吹き飛ばすのは『空』よりの砲撃。

 瓦解し、衝撃波が荒ぶ最中、猟兵たちは知る。
「限定的ではあるが、まあ、致し方あるまい。炎の破滅はここから始めるとしよう」
 天雷神機『ユピテル』のマニピュレーターが天を示す。
 その先にあるのは空、否、天に座す暴走衛星『殲禍炎剣』が示す砲撃の一撃。
 本来のそれとは威力が弱い。限定的、と言った言葉がそれを示していたのならば、十全に引き出すことができないのだろう。

 だが。
「十分だ。お前たちを滅ぼし、破滅の一歩と成すことはな。絶対秩序維持機構リンク、開放。神敵撃滅機構『神の拳』展開。BXS万能攻防雷撃兵装『ケラノウス』、チャージ……」
 天雷神機『ユピテル』は内部にありしパイロットの意志を奪い、ただの生態コアとして扱い、己の意志を持つオブリビオンマシンのように振る舞い、その力を満たす。
 あれが『クィンタブル』の言う起動すれば勝機を喪う機体。
 猟兵たちは退く気はない。
 無論、『クィンタブル』もそうだ。
「……起動を止めるつもりであったが……一足遅れた、か……だが!」
 その瞳には最早屈辱も諦観もない。
 あるのは篝火。
 猟兵たちが焚べ、紡いだ熾火の如き光がある。いかに天より人を滅ぼす神の如き力が降り注ぐのだとしても。
 人は負けるようにはできていないのだ――。
村崎・ゆかり
『神機』と呼ばれる機体は幾度も見てきたけど、これまた厄介ね。
まともにやり合うのは難しい。

となると、一番の得手で勝負しようじゃない。
「全力魔法」「範囲攻撃」酸の「属性攻撃」「結界術」「仙術」で紅水陣!
戦場全域を覆うほどの絶陣でその機体を溶かす。赤い靄は、装甲の僅かな隙間からも内部に入り込むわよ。そして、関節や伝達系を腐食させる。

『|迦利《カーリー》』は、「オーラ防御」をかけた上で、あたしの直上を待機し、防御。あたしも「オーラ防御」は張っておく。
殲禍炎剣以外の攻撃も留意して、足を止めずに。

さあ、そろそろ影響が出てきたんじゃない? 『迦利』、「レーザー射撃」の「弾幕」を!
衛星を操る暇を奪う!



 あらゆるものを腐食させる真っ赤な血のような、全てを蝕む強酸性の雨。
 それが紅水陣(コウスイジン)である。
 村崎・ゆかり(“紫蘭”/黒鴉遣い・f01658)にとって、それが最も得意とする手であったことは言うまでもない。
 全て腐食させる。
 どれだけ強靭な装甲を持っているのだとしても、全てを腐食させる靄は、キャバリアが、オブリビオンマシンが機械である以上装甲の隙間というものが存在しているがゆえに、その関節部分を溶かし、さらに入り込んでいく。

「『神機』と呼ばれる機体は幾度も見てきたけど、これまた厄介ね」
 彼女が見据えるのは赤い雨靄の中に溶けていくオブリビオンマシン天雷神機『ユピテル』であった。
 その黄金を思わせる装甲は赤い靄の中に消えていく。
 しかし、次の瞬間降り注ぐは暴走衛星『殲禍炎剣』に限定的であれどアクセスした、かの機体による天よりの砲撃であった。
 例え、あらゆるものを腐食させる雨靄が降り注ぐのだとしても、天よりの砲撃は、それ自体を吹き飛ばす。
 強酸性の雨の中に砲撃の火が撃ち込まれれば、それは連鎖反応するように爆発を引き起こし、前哨基地に壊滅的な打撃を与えることになるだろう。

「適応など意味を成さない。適応などする意味がない。これは振り払う程度のものでしかない」
 天雷神機『ユピテル』は、限定的、そして威力の抑えられた暴走衛星よりの砲撃で持ってゆかりの絶陣を振り払う。
「ほんと厄介。まともにやり合うなんて難しいってものじゃないわね!」
 彼女の無人機キャバリア『迦利』がゆかりの直上を守る。
 しかし、威力が抑えられているとは言え、万雷ごとき砲撃の一撃がオーラを砕いて『迦利』を穿つ。
 足は止められない。

 生身単身。
 自らができることは敵の装甲を如何にして脆くするかということだ。
 敵は確かに己のユーベルコードによる赤い靄を厭うようだった。だからこそ、暴走衛星の砲撃で持って靄を払ったのだ。
 適応する意味がないと言った。
「逆ね。適応できないから、力技で押し通るしかないのでしょう!」
「不敬なり。俺様の機体性能を侮るか」
「事実、その装甲はあたしの絶陣に耐えられない。図星でしょう!」
「抜かせ。俺様の威光、天にありし雷を受けよ」
 放たれる砲撃。
 直上より放たれる一撃を躱す術などない。元よりゆかりは生身だ。これがキャバリアなど、そもそもの体高が違うのならば、躱す、という選択肢もあったことだろう。

 しかし、それでもゆかりは見定める。
 己のユーベルコード。
 これを維持されることを確かに『ユピテル』は嫌っている。問題は、それを維持できないということだ。
 敵は弾幕のように暴走衛星の砲撃を行っている。
 こちらの火線は的には届かない。
 しかし、とゆかりは思う。
 それはまだ余力を『ユピテル』が有しているからだ。時間が経てば経つほどに……。

「そうだ。時間を稼ぐしかない。あの機体の中にはパイロットがいるが、生態コアそのもの。つまりは」
『クィンタブル』の通信がゆかりの耳に届く。
 オブリビオンマシンである『ユピテル』だけでは機体を動かせない。意志はあれど、動かすのは人間が、パイロットが必要なのだ。
 そして、人間である以上、パイロットは消耗する。
「時間を稼ぐしかないってことじゃない!」
「そういうことだ。だが、やるしかない」
「だから、絶陣を払ったってわけ……そもそも消耗戦をするつもりはないってことね!」
 ゆかりはたどり着く。

 敵の苛烈なる砲撃は対処できない。
 けれど、敵の弱点はわかった。砲撃を繰り返すのは敵の消耗を強いることになる。降り注ぐ砲撃にオーラが幾度も砕け、『迦利』の装甲が弾け飛んでいく。
「わかった所で俺様を止められるとでも? 無駄だ。炎の破滅は訪れる。無駄と知りながら、滅びよ、猟兵」
「なら、やってやるわよ。限界まで!」
 ゆかりは敵の消耗を誘うため、ユーベルコードを維持しつづけ、そして己を守る『迦利』の限界まで戦場を。『ユピテル』を消耗という沼に引きずり込み続けるのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ガイ・レックウ
【POW】で判定
※アドリブ、連携可能
『悪いが俺たちは諦めが悪いんだ……どれだけ性能が高かろうが、神機と呼ばれていようが……最後には叩きのめす!なめんじゃねぇよ』
多重に【オーラ防御】を纏った後、機体の【リミッター解除】し電磁機関砲での【制圧射撃】とブレードでの【鎧砕き】を叩き込んでいくぜ!
相手の攻撃は【戦闘知識】で見極め、【見切り】によって回避するぜ。

『いくら強かろうが……心が折れない限り、勝機はある!』
ユーベルコード【獄・紅蓮開放『ヴリトラ・ファンタズム』】の獄炎で攻め立てるぜ!!



 万雷をもって滅びを齎す。
 それが天雷神機『ユピテル』であったというのならば、これは裁きである。
「滅びを受け入れぬ罪」
 かの機体より飛翔するは無数の拳。
「ならば見よ。これがロケットパンチというものだ!」
 放たれる拳。
 その数、実に万を数える。空を埋め尽くす拳。そのいずれもが個として挙動し、猟兵たちに迫る。
 天蓋たる前哨基地の天井は天より撃ち込まれた暴走衛星の砲撃によって穿たれている。何も遮るものはない。

 ここに来て猟兵たちは追い込まれたと言ってもいいだろう。
 これまで無数のオブリビオンマシン『サジッターリオ』の特性を無効化するために基地内で戦ってきた。
 けれど、それは機動性を駆使する機体と相対するためである。
「此処まで来て……!」
『クィンタブル』が歯噛みする。『セラフィム』と呼ばれる赤と青の機体が迫る万を数える拳を躱しながら、しかして突破口の見えぬ状況に閉口するしかなかった。
「諦めよ。諦観こそが絶望に勝るものである。俺様に勝とうなどと思うな。驕るな。騙るな。貴様らは此処で滅びる」
 迫る高鉄の拳を見遣り、ガイ・レックウ(明日切り開く流浪人・f01997)は頭を振る。
 諦めろという言葉を前にして首肯することなどあり得ない。

「悪いが俺達は諦めが悪いんだ……どれだけ性能が高かろうが、神機と呼ばれていようが……」
 ガイは『コスモスターインパルス』と共に戦場を飛ぶようにして疾走る。
 多重に張り巡らせたオーラ。
 しかし、万を数える高鉄の拳は、そのオーラこそ砕くのだ。
 一撃で砕けぬのならば十。十で砕けぬのならば百。
 迫りくる弾幕の如きロケットパンチの猛攻は、『コスモスターインパルス』を守るオーラを散々に砕く。
 電磁機関砲が撃ち落とすも、僅かに数が減っただけにすぎない。
「最後には叩きのめす!」
「無駄なあがきだ。貴様ら猟兵がどれだけ生命の埒外と呼ばれていようが」
「なめんじゃねぇよ!」
 コクピットの衝撃が疾走る。

『コスモスターインパルス』へとロケットパンチの一撃が激突し、被弾したと知る。
 だが、それでも『コスモスターインパルス』は活きている。ガイだってそうだ。ならば、こそ彼は疾走る。
 ただひたすらに。
 どれだけ機体性能の差があるのだとしても、前にでなければならない。
 そうしなければ得られないものがあるのだ。
「鉄槌を下す」
 その瞬間『コスモスターインパルス』の直上にあるのは無数のロケットパンチが集合して攻勢された巨大な拳だった。
 あまりにも巨大。
 まるで空中要塞が己に降り落ちるかのような光景。

 空を塞ぐ拳。
 その一撃が『コスモスターインパルス』へと迫る。
 ここに来て見切りなどは意味がない。
 巨大であるということは、それだけ逃げ場のないことを示している。回避しようのない一撃。
 振り落とされる巨大拳の一撃が『コスモスターインパルス』の機体へと伸し掛かる。
 荷重によって機体の装甲が砕け、フレームが歪んでいく。
 火花が散る。
 コクピットの中はアラートだ響き渡る。
「潰れろ、猟兵。お前たちの滅びは即ち、世界の滅び。故にこの鉄槌の一撃をもって」
「いくら強かろうが……」
 ガイの瞳がユーベルコードに輝く。
『コスモスターインパルス』の頭部が拉げ、明滅する。
 しかし、それでもガイは諦めなかった。

 諦観こそが絶望に勝るものである。
 ならば、諦観こそしなければ、絶望に負ける道理もないのだ。
 故に。
「心が折れない限り、勝機はある!」
 己に言い聞かせるように。
 そのユーベルコードが開放される。
 吹き荒れる炎。
 炎龍の魂たる獄炎が吹き荒れ、己を押しつぶさんとする巨大拳に亀裂を走らせる。手にしたブレード。その刃から噴出する炎は、まさに九つの首を持つ獄炎そのもの。
「我が刀に封じられし、獄炎竜の魂よ!!荒ぶる紅蓮の炎となりて、すべてを灰燼と化せ!! 獄・紅蓮開放『ヴリトラ・ファンタズム』(ゴク・グレンカイホウ・ヴリトラ・ファンタズム)!!」
 咆哮と共に放たれる炎が、そのユーベルコードの一閃が巨大拳を溶断し、断ち切る。
 それだけではとどまらぬ炎が吹き荒れ、『ユピテル』へと迫る。
 炎は正しく龍の如く駆け上がっていく。
 天を焼き焦がす一撃は、そのまま機体を飲み込んでいった。

「これが! 絶望を乗り越えた先に必ず希望はあるということだ――!」

大成功 🔵​🔵​🔵​

ワルルーナ・ティアーメル
ほう、確かにやるな……!
丁度戻ってきたワルルンガーΣの上に降り立ち、魔王的オーラを纏わせて守りを固めるぞ!
回避できぬなら回避せねばよい!

しかし、これ以上野放しにするのも面倒だな……
よし、UCを使い、第二の魔将ワルレーンを呼び出すぞ!

……こ奴は己に自信の無い自虐キャラでな。だが他者の良い所、誇るべき所を見出すのが非常に上手い
そして、こ奴の起こす「緑涙ノ大津波」は、「美点」を好きに奪い、また与える事ができるのでな…!!

敵から色々奪い、そこのセラフィムへと与えてやろう。
|貴様《ただの機械》より、こ奴らの方が上手く扱えるかもしれんぞ?そして奴が力を失った隙に…
パンチだ!ワルルンガーΣ!(ガオォン!!)



 猟兵たちの攻勢を退ける天雷神機『ユピテル』の力は凄まじいものであった。
 唯一の弱点というのならば、それはパイロットを生体コアとしているところであったことだろう。機械と違い、人の限界は高くはない。
 元『エース』である『クィンタブル』を出奔させたのは、正しく幸運であったし希望であった。本人にとってはそうではなかったのかもしれないが、結果として彼が放逐され、野を彷徨い、『ビバ・テルメ』へと至ったことは何一つ無駄ではなかったのだ。
 あの酒浸りの日々も。
 屈辱に呑まれた日々も。
 全て諦観という絶望すら上回る高い壁を乗り越えたからこそ、今がある。
「ほう、確かにやるな……!」
 ワルルーナ・ティアーメル(百胎堕天竜魔王(自称)・f31435)は、猟兵のユーベルコードを前にして一歩も退かぬ天雷神機『ユピテル』の力を前に不敵に笑む。

 確かに強大だ。
 けれど、とワルルーナは戻ってきた『機動魔王城ワルルンガーΣ』の頭部、その天頂に降り立ち、魔王のオーラをまとわせながら睥睨する。
「巨大であることを誇るか。それは意味のないことだ。俺様にとって、巨大さは意味をなさない」
 そう、『ユピテル』のちからは限定的ながらクロムキャバリアにおける暴走衛星『殲禍炎剣』を使うことができることである。
 降り注ぐ天よりの砲撃。
 本来の砲撃より威力は劣るとは言え、その一撃は強烈であった。
 如何に『ワルルンガーΣ』が堅牢堅固であるのだとしても、地形すら破壊してみせる一撃は荷が重いと言わざるをえない。
「回避できぬのなら回避せねばよい! だが……!」
 機動魔王城がきしむ。

 ただいたずらに攻撃を受け続けていては、すり減らされるばかりである。
「こういう時は貴様の出番だ! 我が第二の魔将『ワルレーン』!」
 ワルルーナの瞳がユーベルコードに輝く。
 そして出現するのは翼持つ人魚『ワルレーン』。
 そう、第2の獣ワルレーン/緑涙ノ大津波(ワルレーン・ティアーフラッド)。彼女の放つ緑色の雨と津波。
 それが『ユピテル』を襲う。

「この程度で俺様が退けられるとでも?」
「ふっ、馬鹿め!」
「ううぅ、ごめんなさいごめんなさい、こんなすごい人達ばかりが集まっている中に私が、私なんかが混じって……」
『ワルレーン』はどうにも恐縮してしまっている。
 その異能を発揮する以前の話であった。
 とても自信がない様子にワルルーナは召喚した『ワルレーン』の背中をバシンバシンと叩いて勇気づける。
「『ワルレーン』! 確かに貴様は自信がない! 自虐キャラと言ってもいい!」
「わーん! 本当のこと言わないで下さいよぉ!!」
「ええい、聞かなかいか! 貴様は他者の良い所、誇るべき所を見出すのが非常にうまい! わかっているであろう! 貴様が推挙した者達の実績を! ならば!」

『ワルレーン』は『ユピテル』を見定める。
 すでに彼女のユーベルコードの第一条件は達成されている。
 即ち、彼女の引き起こす緑色の雨と津波。それに触れているということ。そして、そのユーベルコードの効果は――!
「……? どういうことだ。『殲禍炎剣』とのリンクが切れた……なぜ」
 天よりの砲撃が止む。
 なぜだと『ユピテル』が天を仰ぐ。だが、彼の意志とは裏腹に天よりの砲撃は沈黙するのだ。
 そう、『ワルレーン』のちからは、効果や所持技能、アイテム、異能を奪うこと。
 それによって『ユピテル』より『殲禍炎剣』とのリンクを奪ったのだ。
「貴様……まさか!」
「今更気が付いた所で遅い! そこな『セラフィム』! 受け取れい!」
 ワルルーナの言葉と共に『エルフ』の駆る『セラフィム』に『殲禍炎剣』のリンクが託される。
 それは限定的であったし、一度使えばリンクを喪うものであった。
 けれど、それでも構わない。
『ユピテル』の鼻っ柱をへし折ることこそがワルルーナの目的であったのだ。

「|貴様《ただの機械》より、こ奴らのほうがうまく扱えるわ!」
 天より放たれる砲撃が『ユピテル』へと襲いかかる。
 一撃が装甲を砕けさせ、吹き飛ばす。
「簒奪するか、この俺様から! 機能を!」
「そうとも! 如何に貴様の名が主神を語るものであろうとも! 知るが良い! 自然現象すら人は克服し、征服するのだ! 故に!」
 きしむフレームの音をワルルーナは聞いただろう。
「パンチだ!『ワルルンガーΣ』!」
 敵の動きが止まった瞬間を見定め、機動魔王城の一撃が鉄槌のように『ユピテル』へと叩きつけられる。

 その一撃は、正しく神話の時代の終焉を知らしめるものであった。
 神機故に人は恐れる。
 されど、人は神話すら必要としなくなったのだ。あらゆる者を解明し、己がものとする。それを示すようにワルルーナは巨大なる一撃で持って『ユピテル』を下すのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ソフィア・エルネイジェ
限定的にとは言え殲禍炎剣を意思の下に置くとは…
冠した神名に違わぬその力、まさしく天雷の如しと言うべきでしょう
しかし本来の在り方を歪められ、オブリビオンマシンと化してしまった巡り合せは不幸と呼ぶに他なりませんが…
例えどれほど強大な神機であろうとも、それが悪ならば断罪せねばなりません
それがこの場に参じた私のインドラの宿命なのですから

百を越える神の拳、迂闊に飛び出せば餌食は必至
それでいて頭上では殲禍炎剣が狙いを定めているとなれば、悠長に機会を伺っている訳にも参りません
であるからにして攻勢に出るまで

拳を引き付けた上でスラスターを噴射し瞬間加速
崩れた天蓋の残骸や残された設備の影へ飛び込み避けましょう
ショットガンでの迎撃も行い神機との間合いを詰めて行きます
鉄拳を砕けずとも軌道を逸らす事さえ叶えば僥倖
ランスチャージの距離に達したら被弾を無視して突撃あるのみ
見据える先は常に正面
鉄拳の暴雨を盾で凌ぎ、銃で逸し、加速で振り切り、螺旋剛雷槍で巨大鉄拳諸共に神機を砕き、貫きましょう
勝負は一撃
二の槍はありません



 鉄槌の如き一撃。
 その一撃を持って天雷神機『ユピテル』は認識を改める。
 傲慢であることが天上にありし己の定めであるというのならば、その傲慢こそが己の力の源であると知る。
 天にありしは暴走衛星『殲禍炎剣』。
 あの砲撃は防げること能わず。
 故にこの世界に戦乱は満ちる。相互理解などさせぬとばかりに小国家の行き来を阻む。例え、和平が結ばれるのだとしても、欺瞞と共に破壊する。
「炎の破滅。俺様が導こうというのだ」
 機体より放たれるは万を越える鉄拳。
 その鋼鉄の天蓋じみた光景を前にしてソフィア・エルネイジェ(聖竜皇女・f40112)はたじろぐこと無く泰然自若たる振る舞いを見せた。

「限定的にとは言え『殲禍炎剣』を意志の下に置くとは……冠した神名に違わぬ力、まさしく天雷の如しと言うべきでしょう」
 鋼鉄の天蓋。
 それは恐ろしいという感情を想起させるものであったことだろう。
 だが、ソフィアは違う。
 前に立つことを宿命付けられた者。そして、そうあるべきと己が己を規定するが故に、彼女は戦いに際して。
「我が名に懸けて!いざ参りましょう!」
 断罪の竜帝『インドラ』が咆哮する。
 ソフィアの言葉に呼応する。恐れはなく。しかし、恐怖を前にして立ちすくむのではなく、立ち向かうことこそ人の業であり、人の歩むべき道であると彼女は示す。

「人は滅びるべきだ。俺様が神機が満ちる世界を齎す。そのためには」
 猟兵は邪魔だと万雷の如き鉄拳が『インドラ』へと降り注ぐ。
 その猛攻を前にソフィアは加速する。前に進む。退くことはない。退いては付け込まれるだけだと理解しているからだ。
 勇猛果敢。
 それは言葉にすればそういうものであった。
「進むか! だが愚かだな!!」
 万を越える拳が迫る。
『インドラ』のスラスターが噴射し、更に加速する。破壊された前哨基地の天蓋の残骸。それを盾にしながら疾走る。
「隠れようと無駄ぁ!」
 放たれた鉄拳が前哨基地の天蓋ごと撃ち抜いてくる。

 腕部のショットガンが迫るロケットパンチを打ち、吹き飛ばす。
「万を越える神の拳……迂闊に飛び込めば餌食は必至」
 ソフィアは前に出る。
 それはともすれば、それしか知らぬように思えたことだろう。愚直そのもの。
 しかし、彼女の思考は全て今眼の前に迫る戦いの気配だけに向けられている。雑念など何一つない。
 純然たる闘志。
 いや、闘志さえも不純と呼ぶが如き思考。

 勝敗すらも、そこには介在しない。
 眼の前の脅威を如何にして振り払うべきか。ただそれだけのためにソフィアの脳は動く。回る。活性する。
 電流が疾走るように彼女の頭が弾ける感覚。
「悠長に機会を伺うことができぬというのならば!」
 踏み込む。
 スラスターの噴射と共にラウンドシールドを構える。
 ロケットパンチの一撃は躱せない。なら、防げばいいのである。踏み込む。加速した『インドラ』の機体は嚆矢。
 鎹のように飛ぶ『インドラ』は雷鳴轟かせる。それは空気の層を機体が撃ち抜いた瞬間であった。

「雷鳴……! この俺様以外に雷を扱うなど! 不敬!」
「汝、悪なり。即ち、断罪せねばなりません。例え、あなたの名が神々の長の名を冠するのだとしても」
 ラウンドシールドで弾かれたロケットパンチが集合する。
 目の前に迫るのは強大な拳。
 鉄塊。山の如き拳。
 それが己に向けられている。

「これで終わりだ。猟兵。この万雷の鉄槌を持って、その身を滅ぼすがいい!」
 放つ巨拳。
 その一撃は基地を吹き飛ばさんばかりの勢いであった。
 だが、ソフィアは目を逸らさない。退かない。顧みない。己の轍を見るのは己の後に続く者たちである。
 その轍を見て、己に続く。
 恐怖に負けぬ勇気を持つ事をしる。己の背中を見せることによって、臣民は知るだろう。
 気高きことこそ、あらゆるものに勝る力となることを。

 それを人は王威と呼ぶのだ。
 元『エース』、『クィンタブル』が見たように。
「ソフィア姫! 正面!」
「勝負は一撃」
 ソフィアの瞳がユーベルコードに輝く。煌めく輝きが見据えるのは、巨拳の一点。それは他の猟兵によって刻まれた亀裂。
 例え万雷の如き拳を操るのだとしても。
 紡いだものがある。絆いだものがある。
『クィンタブル』が一瞬の判断で、『そこ』を見つけたのだ。

「これぞ悪鬼を穿つ雷の剛槍!」
『インドラ』が咆哮する。
 唸るジェネレーター。迸る雷撃。その集約された一点。槍の穂先。鋒に雷の力が満ちる。放たれる一撃は、螺旋剛雷槍(サンダードリル)。
 撃ち込まれた一撃は巨拳を打ち砕く一撃。
 雷光迸るようにして砕きながら、『インドラ』は止まらない。前に前に、前に進み続ける。

 砕く拳の破片を撒き散らしながらソフィアは告げる。
「二の槍はありません」
 そう、一撃。
 巨拳を撃ち抜いてなお『ユピテル』に迫る鋒があった。
「俺様の権能を砕くだと!?」
「これこそが私の『インドラ』の宿命。悪を断罪する雷鳴を聞きなさい。これこそがあなたの滅び――」

大成功 🔵​🔵​🔵​

アルカ・スィエラ
また神機……これは偶然なの?

でも、今は―――『融合合身』!!

確かに真正面からぶつかるのは得策じゃない、なら
最悪破壊されても構わない、機体右腕の手首から先をドリル化、『ストライク・スマッシャー』を放ちUCを迎撃し、更にエナジーフィールドで少しでも被害を抑えるわ
そして止めを刺すべく敵のパンチが集合したのなら――
来なさい―――『ヘキサ・アームズ』!!
|アルカレクス《私自身》の右腕を簡易修復し換装、【HXA-2 インパクトハンマー】をその鉄拳へと叩き込み「破壊」する!
そのまま左腕からのフィールドで本体を拘束、例え残骸になっていようが鉄球部をチェーンで振り回し、本体へと「命中させ」てやるわ……!



 巨拳の一撃が雷鳴轟かせる槍の穂先によって打ち砕かれる。
 バラバラと砕けていく拳。
 破片の一つ一つが万雷のごとき数を持つロケットパンチ。天雷神機『ユピテル』の権能。
「神の拳を砕くなど!」
 ユーベルコードに輝くアイセンサー。
 咆哮するように雷が満ちる。
 かの機体にパイロットはいるが、自我はない。ただ生態コアとしての機能を持ったパーツでしかないのだ。
「消耗戦に引きずり込む……! 呼吸を整えさせてはならない!」
 元『エース』、『クィンタブル』の声が聞こえる。
 アルカ・スィエラ(鋼竜の戦姫・f29964)は『プロトミレス』のコクピットの中で頷く。

 敵は神機。
 また、と言うべきだろう。再び邂逅したとも言える。
 偶然であるというのならば、数奇なることである。だが、今は考えない。
 なぜなら、目の前の敵は強烈にして苛烈なる存在。
 万雷の鉄拳を再び制御し、己へと一撃を叩き込もうとしている。あれが神であってはならない。あれは傲慢なる悪鬼。
 故に。
「――『融合合身』!!」
 召喚された『ドラグレクス』と合体することによって『プロトミレス』は『アルカレクス・ドラグソリスへ』へと変貌を遂げようとする。
「姿かたちを変えたところで! 俺様の鉄拳は!」
 迫る万雷の拳。
 
 天を覆う鋼鉄の天蓋の如き様相。
 そして、『ユピテル』には暴走衛星を限定的にコントールする力がある。
「『エルフ』!」
「わかっているよ! 合体の邪魔は!」
 猟兵によって奪った暴走衛星コントール。一射。ただの一射だけで再びコントロールは奪われてしまうだろう。
 けれど、アルカの機体が合体を遂げる一瞬。
 その隙を生み出すために放たれた天よりの砲撃が『ユピテル』へと叩き込まれる。
「俺様の権能を! 返してもらう!」
「躱された……でも!」
「ええ、十分よ! 正面からぶつかるのが得策じゃないのだとしても!」
『アルカレクス・ドラグソリス』が咆哮する。

 合体によって出力の上がったジェネレーターが唸りを上げ、右腕を振るう。
 迫る鉄拳の一撃を衝角と化した拳で叩き壊す。
 いや、穿ち、壊す。
「無駄ぁ! 俺様の権能を甘く見たな!」
 迫るは万の拳。
 あらゆる角度から『アルカレクス・ドラグソリス』へと襲い来るロケットパンチの猛攻。
 エナジーフィールドで塞ごうとしても、砕かれ、機体の装甲に亀裂を走らせる。
「耐えたか! だが! これならばどうだ!」
 万雷の拳が天に集まり、巨拳へと変貌する。
 その威容は凄まじいものであった。だが、臆することはない。
「……やはり! 如何に無尽蔵に見えても破壊されれば修復できていない。先程よりサイズが小さい」
『クィンタブル』の言葉にアルカは勝機を見出す。

 猟兵たちのユーベルコードが絆いだ道がある。
 照らした勝機がある。
 故に彼女の瞳はユーベルコードに輝く。
「来なさい――『ヘキサ・アームズ』!!」
『アルカレクス・ドラグソリス』のアイセンサーが煌めく。
 放つ『ストライク・スマッシャー』の一撃が巨拳と激突し、砕ける。だが、金属細胞は即座に再生し……いや、それは異なる形へと変貌を遂げる。

「――なに?」
「コマンド・オン……!」
 簡易修復された右腕。そこへ接続されるは『ヘキサアームズ』――名をHXA-2 インパクトハンマー(ヘキサアームズツー・インパクトハンマー)。
「打ち砕きなさい」
 振るうは射出された鉄球。
 鋼鉄の鎖が接続された鉄球が宙を斬り、唸り声を上げるようにして加速していく。巨拳を破壊しながら『ユピテル』へと迫るのだ。
「だが……!」
 天よりの砲撃が迫る。
 機体の左腕がエナジーフィールドを全開にする。
 だが、砲撃はそのフィールドすら破壊し、左腕を砕く。

「凌いだ!」
「必ず当てる! インパクトハンマー!!」
 アルカの咆哮が響く。
『ユピテル』の姿を巨拳の破片の彼方に捉えた瞬間、防御に回されていたエナジーフィールドがほとばしり、かの機体の体を掴む。
 捉えた。
 アルカの、『アルカレクス・ドラグソリス』の放つ鉄球の一撃が『ユピテル』の交差させた腕を砕く――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ルクス・アルブス
【ステルク】

神の名を冠した機体、ですか。

でも、ステラさんの【フォル】さんもわたしの【ソナーレ】も、負けていないですよ!
……さっきつつかれた件はあとで問いただしますが。

それになんといってもわたしは『勇者』です!
勇者にとっては神も悪魔もありません。この世界を乱すものは敵です!

ということで、【ソナーレ】いきまーす!

雀がいないかちょっと怯えながらコックピットでピアノを演奏し、
ソナーレを操りながら、同時に【ボレロ】で相手の動きを止めたら、
そのまま『ユピテル』に突撃です!

さぁ、ステラさん、『クィンタブル』さん、友情のトリプルアタックで……って!
なんであたま押さえてうずくまってるんですか!チャンスですよー!


ステラ・タタリクス
【ステルク】
ええ……
戦線崩壊を防いだというのになんという言われ様
承知しました
ではこのターンはルクス様の自由にさせる、ということで

あら、ルクス様よくご存じで
フォルティス・フォルトゥーナ――勇敢にして運命の女神
もたらすは敵の不運、すなわち敗北
それでは参りましょう

あと、エルフ様生きて、私は生きます(対ルクスなんちゃら耳栓きゅっ)

フォル、いらっしゃい(鳥型キャバリアを呼び寄せる)
【アウクシリウム・グロウバス】――低空&対空状態でルクス様を支援します
面倒な雷撃は|『ウェントス・スクートゥム』《風の盾》で軽減
フォル!仕掛けますよ!
スパロウビット展開!フェザーマシンガン、セット!
一斉射撃で動きを止めます!



「当たった……! 当てられた!」
『エルフ』は『セラフィム』のコクピットの中で見やる。
 一度限りの『殲禍炎剣』の砲撃のコントロール権能を奪い、猟兵によって与えられた『エルフ』は猟兵をサポートするために砲撃を使った。
 もう一度は無理だ。
 だが、けれど、これまでとは違う。
 確実に天雷神機『ユピテル』へと打撃を与えることができたと実感できた瞬間だった。
 万雷の如き鉄拳。
 巨拳が振り下ろされる光景を打ち砕くこと数度。
 漸くにして『ユピテル』本体へと損壊を与えることができたのだ。
「……俺様の躯体に。体に! 傷を!!」
 だらりと落ちた腕部。
 猟兵に放った一撃を防ぐ為とは言え、両腕を『ユピテル』は砕かれた。

 怒り滲ませる『ユピテル』は裏腹にステラ・タタリクス(紫苑・f33899)は満足げであった。いや、なんていうか、授業参観にやってきた美人ママが子供の発表に微笑ましく拍手を送っている感じであった。
 完全に後方母親顔している。
「よくできましたね、『エルフ』様……! 私、感無量です!」
「また……」
 ルクス・アルブス(『魔女』に憧れる『出禁勇者(光属性)』・f32689)は呆れた。
 もう完全に『そういう』ことにしようとしている。
「わたしが演奏していたらもっと早かったですよ! 例え神の名を冠した機体であったとしても!『フォル』さんもわたしの『ソナーレ』もそういう意味では負けてないですよ!」
 ルクスは己の機体とステラの機体を見やる。
「あら、ルクス様よくご存知で」

 名を冠することは祈りにも似ている。
 願いにも似ていることだろう。
 そうあれかし。そうであってほしいと願う心が人にあるからこそ、人の心に神を戴くのである。
 故に、その名は。
 勇敢にして運命の女神。齎すは敵への不運。即ち敗北運ぶ鋼鉄の翼。
「……さっきつつかれた件は後で問いただしますが」
「なんと。戦線崩壊を『フォル』は不正だというのに。なんという……」
「それとこれとは話が別でしょう! もうっ!」
「何をごちゃごちゃと!」
『ユピテル』の背に負った光背の如きユニットから雷撃が迸る。
 凄まじい熱量。雷撃の猛攻。

 それを前にしてルクスは『ソナーレ』のコクピットの中で鍵盤に指を下ろす。
「どんな恐ろしい雷撃が迸るのだとしても! わたしは『勇者』です! 勇者にとっては神も悪魔もありません。この世を乱すものは全て敵です!」
「『エルフ』様生きて」
「えっ」
「『クィンタブル』様も」
「なんだ?」
 ステラは耳栓を装着した。対ルクスなんちゃら耳栓。長いので正式名称は割愛させて戴く。

「雀さんの姿なーし! 準備よーし! では! 行きますよ! ボレロ!」
 それは旋律と呼ぶにはあまりにも鮮烈にして強烈な音の波。波と呼ぶのも烏滸がましい。それは最早洪水だった。
 濁流だった。
 強烈な音は『ユピテル』の生態コアとなったパイロットの三半規管を狂わせる。
 例え『ユピテル』自身に三半規管が関係ないのだとしても。生態コアとして部品としているパイロットの三半規管に感覚が引っ張られるのだ。
「雷撃のコントロールが……!? なんだ、この音は!?」
「これが魂の演奏です! さあ、ステラさん、『クィンタブル』さん、『エルフ』さん! 友情のトリプルアタック……って!」
 ルクスが雷撃のコントロールが乱れた今こそ! と声をかけた瞬間、『エルフ』の『セラフィム』の動きが止まっている。
 え、なんで?

「……めまいがする」
「え、なんでですか!? チャンスですよ、チャンスー!」
 肩部に掴まっていた『クィンタブル』が頭を抱えていた。
 だが、そんな中『フォルティス・フォルトゥーナ』だけが旋風のように低空飛行で『ユピテル』に突っ込むのだ。
「スパロウビット展開! フェザーマシンガン、セット! ゆきます!」
 そう。
 ステラだけだった。
 この戦場において唯一人鼓膜が無事なのは、ステラだけだった。彼女だけがルクスの強烈な演奏に対して対策を取っていたのだ。
 ならばこそ、彼女こそこの戦場における運命。
 不運運ぶ鋼鉄の翼が羽撃き、弾丸の雨を『ユピテル』に降り注がせるのだ。

「この場はおまかせを。これもメイドの嗜みですので」
「あー! また耳栓してますね!?」
 にこり。
 ステラはいえ、耳栓してませんが、という顔をでルクスに答え、弾丸の雨をもって『ユピテル』の装甲を打ち砕くことでごまかすのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

朱鷺透・小枝子
ディスポーザブル01達、2章で壊し尽くしたサジッターリオ。
|念動力《悪霊の霊障》が無数の機骸を更に壊し、束ね、圧縮し、
【|肉体改造《複腕を鋳造》】【禍戦機】ディスポーザブルの腕を増設、
真の姿を晒す。

神も天も、それが敵であるのなら…!
戦え!壊せ!!ディスポーザブル!!!

【|闘争心《怨念》】が骸共の狂気を捻じ伏せ、複腕稼働!
【早業】複腕で以て無数の拳を迎撃!【怪力】で殴り返す!!
【継戦能力】|【霊障】《怨霊結界》が時空を歪ませ、
速度、範囲を補い、ロケットパンチを殴り壊す!!

『壊して、壊して、壊して、その先を!!!』

『禍戦・壊帰萌』発動。殴って、殴って、殴って殴って殴って!
巨大鉄拳へ|BS-B断叫《ラーズ・デズ》・灼熱光照射【属性攻撃】

貴様が、邪魔だァァァアアアアアア!!!!!

【呪詛】機体出力、限界突破。神の拳を溶解させる!!
【瞬間思考力】天雷神機へ接近し【追撃】

壊せ!!オブリビオンを!!!

その胴部へ6本のRBX騎兵刀を使い、突き刺し、【解体切断】
天雷神機を引き裂き、コックピットを切り離す!!



 戦場の痕に残るのは躯のみ。
 それが戦場の常である。戦いが終われば、兵器であったものが屍を晒す。『第三帝国シーヴァスリー』の『サジッターリオ』も、朱鷺透・小枝子(亡国の戦塵・f29924)の召喚した『ディスポーザブル』も。
 等しく破壊され、残骸へと成り果てる。
 これが戦いの末路である。
 破滅の形の一つである。
 勝利者など何処にもなく。ただあるのは破壊の痕のみ。故に小枝子は無数の残骸を束ねる。
 その瞳に輝くのはユーベルコード。
 見据えるは、天雷神機『ユピテル』。すでに猟兵によって両腕を破壊され、その装甲には楔のように弾丸が撃ち込まれている。
 黄金の威容は亀裂走りくすむ。
「俺様を……! この神威を恐れぬか!」
 空を覆うは万雷の如き鉄拳の群れ。しかし、それは数を減らしている。猟兵たちのユーベルコードが煌めく度に数を減らしているのだ。

 どれだけ強大な敵であろうとも小枝子の戦意に乱れはない。減ずるところなどしらない。
 圧縮した残骸を持って己の機体『ディスポーザブル』――その背に腕を増設していくのだ。
「神も天も、それが敵であるのなら……!」
 超克の果に現れるのは『禍戦機』たる真の姿。
「戦え! 壊せ!!『ディスポーザブル』!!!」
 小枝子は咆哮する。
 迫る鋼鉄の天蓋の如きロケットパンチの群れを前にしても前に踏み出す。念動力で持って圧縮した機体の躯。
 その躯体に宿る怨念全てを狂気にも似た戦意でもってねじり伏せ、副腕を制御し、拳を受け止める。

 砕けても即座に念動力で副腕は形成される。
 破片が飛び散る。
 火花が散る。
 されど、戦場に刻まれるは『ディスポーザブル』の『禍戦機』のアイセンサーの残光。その揺らめく輝きを前に『ユピテル』は怖気奔る思いであった。
「壊すことしか知らぬものが! 俺様が成すは新たなる世界の創世なるぞ! 人の世を終わらせ、神機の世界を作り上げる。それが!!」
「知った事か!!」
 小枝子は『ユピテル』の言葉に答えない。
 応答しない。する意味がない。どれだけ創造を説き、己の成すことを正当化させようとしているのだとしても、小枝子にとって、それはどうでもいいことだった。
 取るに足らないことだった。

 己ができることは破壊。破壊のみだ。
『ユピテル』が望むのは破滅。そして創造。破壊の後先など考えているから、破壊の化身たる己に後れを取ることになるのだ。
 炸裂する拳を受け止め砕きながら『禍戦機』はさらに進む。
「なぜ、死なない!? なぜ、壊れない!?」
「貴様が邪魔だからだ」
 初めて小枝子は『ユピテル』の言葉に答えた。砕けた装甲の破片。拉げた副腕。いずれもが万全ともは言えない。無傷とも言えない。損壊がないともいえない。
 なのに。
 なのに、なぜ。

「俺様が恐れているだと……!? そんなことが、あるわけがない!!」
 万雷の鉄拳が宙へと集合し、巨拳へと姿を変える。
「どうした。先程より小さくなっているぞ、神の名を持つ鉄屑」
「――!!!」
 咆哮する『ユピテル』。
 怒りに塗れた咆哮だった。確かに小枝子の言う通りであった。かの巨拳は鉄拳の集合体。されど、猟兵たちのユーベルコードによって破壊された鉄拳は、復元されない。
 小枝子のように念動力で持って強引に複製することができない。
 ならば、やはり。
「消耗しているんだ。このまま押し込む!」
『クィンタブル』の声が聞こえる。
 小枝子は、関係ないと思った。

 眼の前の敵。
 あれは邪魔だ。何に対して邪魔なのかはわからない。わからないが、己の本能が言っている。
 あれは、禍戦・壊帰萌(デッドオーバー・リカーシブル)を持って黄泉路へと引きずり込まねばならぬ者であると知る。
「邪魔立てを!」
「ぬかせ……貴様が、邪魔だァァァアアアアアア!!!!!」
 咆哮が迸る。
 機体の出力が上がると同時に呪詛が機体を満たしていく。機体が崩壊していく端から変形し、機体を保持していく。
 叩き込まれる巨拳の一撃すらも、小枝子を『禍戦機』を止めるには値しない。

「壊せ!! オブリビオンを!!!!」
 胸部が展開し、放たれるは熱線の竜巻。
 吹き荒れる呪詛。破壊への意志。それら全てを巻き込んだ一撃が巨拳を粉砕し、破片の道を『禍戦機』が飛ぶ。
「オブリビオンマシン! 貴様が!」
 副腕が手にした騎兵刀を『ユピテル』は穿つ。だが、小枝子は止まらない。『ユピテル』のどうに収められた生体コアと化したパイロット。
 そのコアブロックを騎兵刀で強引に切り裂く。しかし、騎兵刀が雷でもって砕かれる。
「させるか……! これは俺様のモノだ!!」
「いいや、違う!」
 小枝子の、『禍戦機』の手が伸びる。強引に、引きちぎるようにして『ユピテル』からコクピットブロックを引きちぎりながら『禍戦機』は壊してはならぬものを奪い取り、熱線の竜巻の中へと姿を消すのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

月夜・玲
うーん、見た目通り派手な機体だなあ…
オブリビオンマシンじゃなけりゃあ、縁起物として飾っといても良い感あるよね
やり辛く…はあるけど、手が無い訳じゃないか
けどやっぱり…勿体ないなあ…

【Load[Summon Data]】起動
雷龍、不死鳥、機神召喚!
攻撃力全振り!
雷龍の『ブレス攻撃』での広域攻撃と不死鳥を突撃させて蒼炎で『焼却』してロケットパンチを迎撃
パンチ多過ぎで笑うんだけど!
それで時間を稼いでる間に『念動力』で浮かした機械の右腕を操作
オーラ防御』でシールドを拳に付与して更に硬く!
全力でユピテルをぶん殴る!
目には目を!歯には歯を!
パンチにはパンチを!
そっちが量でくるなら、こっちは質で勝負だ!



 生体コアとしてパイロットを必要としていた天雷神機『ユピテル』のコクピットブロックが猟兵によって引きちぎられ、えぐられる。
 しかし、躯体は残っている。
 その神機が神機たる所以。
 意志を持つオブリビオンマシン。
「俺様の、パーツを! 奪うなど! 貴様たちは百度滅ぼしても、飽き足りぬ!!」
 天雷の如き拳が飛ぶ。
 鉄拳。ロケットパンチが万を越える数でもって空を埋め尽くす。
 鋼鉄の天蓋の如き光景が広がる中、月夜・玲(頂の探究者・f01605)は首をひねった。

「うーん、見た目通り派手な機体だなぁ……オブリビオンマシンじゃなけりゃあ、縁起物として飾っといても良い感あるよね」
 いや、ほんと、と玲は黄金に輝く装甲、それがくすんでいくのを見遣り、やっぱ要らないなって思っただろう。
 どれだけ神の名を持ち、神威の如き力を振るうのだとしても、それは結局のところ紛い物でしかない。
「抜かせ、猟兵。この俺様を縁起物と!」
「そんだけ金ピカしてりゃあね!」
 正直に言えば、やりづらいと思った。敵の権能の如き機能は三つ。

 一つは万雷の如きロケットパンチの群れ。万を越える拳は回避することも難しいだろう。
 一つは雷撃。攻防一体の雷撃は、攻めあぐねるものであった。
 そして、最後に『殲禍炎剣』のコントロール。限定的とは言え、天よりの砲撃は回避不能である。
「でもさ、手がないわけじゃあないんだよ。読み込み制限解除。さあお祭りといこう!」
 振るった二刀。
 蒼き模造神器の刀身がユーベルコードに煌めく。
 Load[Summon Data](ロード・サモンデータ)。刀身に刻まれたデータが顕現する。

 それは雷の龍、蒼炎の不死鳥、そして巨大なる機械腕。
「攻撃に全振りっと……! ハッ、パンチ多すぎて笑うんだけど! そっちが数で来るってんならさ!」
 雷龍の放つブレスが天蓋のように、空より降り注ぐ鉄拳を吹き飛ばす。さらに蒼炎の羽撃きが鋼鉄すら切り裂くようにして炎を撒き散らし、迎撃するのだ。
「無駄だ! どれだけ防ぐのだとしてもな!」
 集合する鉄拳。
 空を覆う天蓋は、巨山の如き威容を持って玲の前に姿をあらわにする。
「この一撃で生身単身の猟兵なぞ!」
 押しつぶす。そう言わんばかりに振るわれる巨拳。しかし、玲は笑う。笑って、前に進む。

「どれだけ声高に言うのだとしても! 虚勢でしょ、それ! 中身スッカスカなんだよね!」
 そう、玲にはわかっていた。
『ユピテル』が振るう巨山の如き鉄拳。
 それは猟兵達によって削られたロケットパンチの数を考えれば、ガワを取り繕って見せているだけにすぎない。
 恐れとは即ち畏れ。
 神とは、雷を振るうもの。理解不能たるもの。其処に人の思惑など介在せず、故に人は雷を畏れたのだ。
 だが、しかし、それは過去のこと。
 正しく識ることができたのならば、それは恐れるに足りるものではない。畏れは恐れに。正しく恐れることができたのならば、それは最早征服できぬことではないのだ。

「だから、人の拳でもぶち抜けるってものだよね!」
 念動力でもって制御された機械腕が振るわれる。
 巨山のごとく見せられた鋼鉄の拳と激突する。オーラを重ねて強固さを増した機械腕の拳は巨拳を打ち砕きながら突き進む。
「目には目を! 歯には歯を! パンチにはパンチを!」
 そんでもって、と玲は『ユピテル』よりも高く飛び、その拳を振るい上げる。
「そっちが量でくるなら、こっちは質で勝負だ!」
 中身スカスカで勝てるほど甘くはないと示すように。煌めくユーベルコードの輝きとオーラを纏った機械腕の拳が、『ユピテル』の頭部へと叩き通され、その月桂樹の葉の冠の如き装飾を拉げさせるのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

カシム・ディーン
「やっほー☆ユピテル様お久し振りだねー☆ユピテル様もオブビリオンマシンになっちゃったかー…☆」
やっぱり神機シリーズかよ!?神機の申し子達で制御とかできねーか!?
「無理じゃないかなー☆ユピテル様我儘だしよほど気の合う変態じゃないと厳しいんじゃない?」
しかも世界の破滅目指すとか…ぶちのめすしかねーって事か!
「ちなみにドスケベだぞ☆あ、お近づきの印に☆」(ユピテルにナイアルテの写真データ転送
おめーは何やってんだ!?そしててめーも喜んでんじゃねーよ!?

【情報収集・視力・戦闘知識】
ユピテルの性能と周辺状況
武装の性質を分析

成程な…
【属性攻撃・迷彩】
光水属性を機体に付与
光学迷彩で存在を隠し…真水の障壁を展開して熱源と音を隠蔽し…雷撃対策と為す

【空中戦・念動力・弾幕】
UC発動
神機同士の戦い…経験がねーわけじゃねーぞ
念動光弾と真水の弾丸を乱射して動きを封殺
【二回攻撃・切断・盗み攻撃・盗み】
おめー随分ぴかぴかしてるじゃねーけ
その豪華そうな装備やパーツ
全部寄越しやがれ!
連続斬撃で切り刻み武装諸々強奪!!



 天雷神機『ユピテル』――その名を知るのならば、力の在り方を知ることとなるであろう。
 雷鳴こそが怒り。
 その怒りの発露をこそ人は恐れなければならない。
 己に対して畏敬を持つことだけが人に残されたただ一つであると傲慢たる思考を『ユピテル』は持つ。
「俺様のパーツを奪い、俺様の躯体を傷つけ、さらには俺様を討つと来たか!!」
 咆哮するジェネレーター。
 生体コアとしてのパイロットが収めらたコクピットブロックは猟兵によって引きちぎられ、奪われている。
 だが、それでもなお『ユピテル』は動くのをやめない。
 未だ己の躯体にはエネルギーインゴットが残り、そのエネルギはーは雷撃の発露となって猟兵達を襲うのだ。

『やっほー☆『ユピテル』様お久しぶりだねー☆『ユピテル』様もオブリビオンマシンになっちゃったかー……☆』
「やっぱり神機シリーズかよ!?『神機の申し子』たちで制御とかできねーのか!?」
 カシム・ディーン(小さな竜眼・f12217)は己の機体である界導神機『メルクリウス』の言葉に思わずうめいていた。
 あれだけの強烈な重圧。
 生態コアであるパイロットの収められたコクピットブロックを抜かれてもなお活動する力。規格外と言わざるを得ない。

『無理じゃないかなー☆』
『メルシー』の言葉はにべにもないものであった。
 取り付く島もない。カシムの言うところのナンバリングをふられた『神機の申し子』たちは、神機を扱うために生み出されたものではない。
『だってあの子たちは』
『セラフィム』を扱うために生み出されたアンサーヒューマンであり、因子と因子をかけ合わせたモノ。
『赤と青の申し子って感じ☆』
「また意味深なこと言いやがって! だが、あいつは放ってはおけねー! 世界の破滅を目指すのなら……!」
「俺様は神機による世界を創造するために行動している。そのためには人は邪魔であると言えるだろう。だからこそだよ!」
 振るわれる雷撃。

 視界を染め上げる白。
 これまで猟兵たちのユーベルコードによって消耗し、また機体も損壊を受け、生態コアすら奪われてなお、この出力である。
「とんでもねーな! だが、ぶつのめすしかねーってことには変わりはねー!!」
『ちなみにドスケベだぞ☆あ、お近づきの印に☆』
「おめーもしれっと何してやがんだ!?」
 カシムは『メルシー』が何事かデータを『ユピテル』に送ったことを咎める。いや、本当に何をしているのかわからないが、しかし迫る雷撃を躱す。

 存在を隠匿する光学迷彩。 
 熱源すら隠蔽するのだが、神機としての気配は消しきれるものではない。ここに来てカシムは己の駆る機体が神機同士通じるものがあるように、己の存在が完全に隠蔽できぬ不具合じみた状況に歯噛みする。
「此れは中々。供物としては上々」
「てめーも喜んでんじゃねーよ!? 今戦いの最中だぞ!!」
 カシムはイライラしてくる。
 連中のやっていることは人間の身にとって見れば、度し難いことだ。許してはおけぬことだ。世界を破滅させること。そして、神機による世界を創造すること。
 いずれも看過できない。
 だからこそ、カシムは己のユーベルコードを発露させる。

「神機同士の戦い……経験がないってわけじゃねーぞ! 何処に居ても感知されるってのならよ! 加速装置起動…メルクリウス…お前の力を見せてみろ…!」
 神速戦闘機構『速足で駆ける者』(ブーツオブヘルメース)が起動する。
 己の機体『メルクリウス』は念動光弾を解き放ちながら『ユピテル』を囲う。敵が己の存在を感知するというのならば、それを上回る速度で持って駆け抜けるのみ。
 それが出来るのが『メルクリウス』であるというのならば、成さねば勝機はない。
「光より疾く動くものなどないのだ。故に!」
 フラッシュスパークが炸裂する。
 雷撃が満ちる戦場。

 しかし、その雷撃の間隙を縫うようにして『メルクリウス』が奔る。
『それはそうだけどご主人サマの胆力ってのも中々なもんなんだぞ☆』
「うるせー! 今それどころじゃねーんだよ!」
 雷撃を掠めさせながらカシムは『ユピテル』の懐に飛び込む。
「何処まで行っても人間を生体コア扱いしてるのなら、それを喪ったテメーは心臓のない体みてーなもんだろう。その随分とぴかぴかしてる豪華なパーツ……全部寄越しやがれ!」
 鎌剣が翻る。
 華美なる装飾。
 それを施された『ユピテル』は確かに主神の名を冠するに値するものであったことだろう。
 だが、それはカシムにとって重要ではない。

 目の前に偉ぶった高そうなものを見に付けているやつが気に食わない。
 ただその一点においてのみ、『ユピテル』はカシムの心に触れたのだ。ならば、それに触れたものをカシムは許さない。
「偉ぶった名前の割には、随分と楽に仕事させてくれるじゃねーかよ! 人間を侮って、隙を見せた、それが!」
「貴様……!」
「てめーの敗因だよ」
 鎌剣の一閃が『ユピテル』の胸部を切り裂き、鮮烈なる白を戦場に満たすのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ユーリー・ザルティア
こんな辺鄙な前哨基地にこんな奴がいるとはね。
さて、どうしたものか…ん?通信…壁の工房から…そうか完成したのね!

ARICAが運んでくれた新たな愛機で戦う。
行くよ、レスヴァント…MkーⅡ!!
レスヴァントはARICAに任せるよ。『援護射撃』よろしく

オーバーブースト・ラストスパート発動!!
『限界突破』した加速を魅せてあげる。
『存在感』あふれる『残像』を囮に残しつつ、『瞬間思考力』で敵の動きを『見切り』回避しながら、ダークマンティスの『レーザー射撃』とアストライアの『制圧射撃』で牽制しつつ、イニティウムによる『重量攻撃』で『切断』だ
そしてARICAの操縦するレスヴァントの『エネルギー弾』で追い打ちだよ。



 雷撃の白が戦場を染め上げる。
 天雷神機『ユピテル』は猟兵達によって追い込まれていた。腕部は損壊し、無事なのは背面ユニットである光背の如き雷撃は放つパーツのみ。
 華美なる装飾は奪われ、破壊されている。
 生体コアであるパイロットを収めたコクピットブロックさえも引きちぎられてなお、それでも『ユピテル』は動いていた。
 その時点で規格外のオブリビオンマシンであることは言うまでもない。
「滅ぼされてなるものか。俺様は神機による世界の創造を成さねばならない!」
 吹き荒れる雷の嵐。
 戦場を染め上げる雷撃の白を前に、ユーリー・ザルティア(自称“撃墜女王”(エース)・f29915)は『レスヴァント』のコクピットモニターを見やる。

 計器が異常な数値を叩き出している。
「雷撃の暴走……!? 厄介なことをしてくれっちゃって!」
 凄まじい雷撃は機体をきしませる。
 衝撃波が吹き荒び、それだけで吹き飛ばされそうになる。
「まったく厄介な奴……! さて、どうしたものか……!」
 雷撃が迫る最中、ユーリーは『レスヴァント』を操縦し距離を詰める。だが、距離が詰められない。
 こちらの機動性は充分に発揮できている。
 けれど、それ以上に『ユピテル』の攻勢が苛烈なのだ。

「全て吹き飛ばしてくれる! この躯体を犠牲にしてでも!」
 膨れ上がる熱量。
 瞬間、ユーリーは理解した。追い込まれたものが何をしでかすかなど、古今東西、今昔を置いて変わらない。
 つまり、ろくでもないことだ。
「まさか……!」
「機体の内部のエネルギーインゴットの総量を超えている……!?」
『クィンタブル』と『エルフ』が『ユピテル』の内部にあるエネルギーの高まりを感知し、呻く。
 エネルギーインゴットを暴走させている。
 膨れ上がった熱量を機体の内に留めているのは、一気に炸裂させるため。
「つまり、ここら一体全部ぶっ飛ばそうってわけね」
「そのとおりだ。全て雷撃の中に消え失せろ!!」

 好機転じて窮地に至る。
 しかし、ユーリーは笑う。
 こういうときにこそワイルドカードを切るべきなのだ。
「ナイスタイミングって言うべきかしらね! 良い仕事してくれる!」
 彼女の瞳に映るのは新たなる光。
 纏うは短時間であれ暴走衛星に感知されぬ白い粒子。
 空より舞い降りるのは、新たなる機体。
 コクピットハッチに飛び乗り、ユーリーはシートの座り心地を確かめるまでもなく、その瞳をユーベルコードに輝かせる。
「『レスヴァント』……Mk-Ⅱ! 行くよ!!」
 そう、新造された機体。

 そのアイセンサーがユーベルコードに煌めく。
「最初っからオーバーブースト・ラストスパート! 一緒に飛んでくれるよね、『レスヴァント』!!」
 ユーリーの言葉に応えるように『レスヴァントMk-Ⅱ』のアイセンがー明滅する。
 その輝きは雷撃染め上げる白の中にありて鮮烈になお輝く。
 限界を超えた飛翔。 
 白い特殊粒子をばらまきながらユーリーは飛ぶ。
 この鋼鉄の空を。
 空に蓋をされた世界を。
 自由には程遠く。されど、今だけは確かに空を支配している。いかに『ユピテル』が『殲禍炎剣』をコントロールしているのだとしても。

 それでも、ユーリーには関係なかった。
「空を、飛ぶキャバリアだと!? この俺様の頭上を!」
「関係ないね! 空は誰のものでもないでしょ! ボクは、そんな空を、飛ぶ!」
 きらめくユーベルコード。
 放たれる雷撃を残像の如き速さで駆け抜け、踏み込む。
 純白の機体は、その力を振るう。背面に備わった荷電粒子ビーム砲の一撃が『ユピテル』の躯体を貫く。
「だが……!」
「遅い……! 此れなら行ける! ボクの操縦テクについてきてくれる!『レスヴァント』!」
 AIによる補助によって動く『レスヴァント』とユーリーの手繰る『レスヴァントMk-Ⅱ』が交差するように『ユピテル』へと迫る。

 交錯するようにしてライフルとキャバリアソードが二機の間で受け渡され、十字に弾丸と剣閃が『ユピテル』へと刻まれる。
「これが『レスヴァント』の力……みんなが作り上げてくれた力。キミの振るう独りよがりの力じゃない! これが!」
 その言葉を聞く事無く『ユピテル』の機体は空高くへと打ち上げられる。
「馬鹿な……この、ままでは……!」
 溜め込んだエネルギーは地上で炸裂させてこそ。

 だが、それをさせぬとユーリーは『ユピテル』を空へと叩き上げる。そして、その高度は……。
「己の雷で裁いてもらうんだね」
 天よりの砲撃範囲を意味する。
 何物も許さぬ天の裁き。
『殲禍炎剣』を御したオブリビオンマシンは、しかして、その天よりの雷でもって、空に爆散し、その運命を潰えさせるのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2023年04月30日


挿絵イラスト