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潜みし揺り籠に鐘は鳴る

#UDCアース #グリモアエフェクト

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「ヤア、ヤア!猟兵の皆々サマ、ご機嫌よう。お集まり頂き光栄だよ!」
 靴底をカツカツと鳴らしながら、芝居ぶった調子で登場するのはバロン・ドロッセル。ぐるりと猟兵を見渡して、どこか楽し気に頷くと、その口元ににやりと笑みを浮かべる。

「時は金なりと言うしねえ、さっそく本題と行こうか。今回の依頼は非常に簡単、UDCの殲滅だよ」
 軽薄な笑みを携えて、バロンは手元のステッキをくるりと回す。

「場所はド田舎の山の廃墟。自動召喚術の儀式のせいで、次々に出現するUDCたちの巣になっているようでねえ。元は雰囲気のある洋館を改装したホテルだったんだけど、今やもう寂れて久しく、周囲は無人…マ、そのお陰で人的被害が出ていないのは幸運だろうね!」
 からりと笑い声をあげるバロンに返ってくるのは沈黙のみ。バロンは口をとがらせて肩を竦めると、咳ばらいひとつで話に戻る。

「いくら無人とはいえ、再開発も計画されつつあるし、放置してたらいつか被害も起こるものでね。それを防ぐ為、猟兵の皆々サマの力が必要なんだよ。とはいえ一時の露払いじゃァ意味がないよねえ。どこかに隠された召喚儀式術…そいつをサクッと壊してから、UDCの殲滅と行こうじゃないか!」
 バロンが軽く手を打つと、どこからともなく等身大の人形が現れて、キャスターを転がしホワイトボードを引っ張ってくる。人形が手際よくボードに張り付けるそれは、今回の現場である洋館ホテルの、簡単な見取り図になっているようだった。

「虱潰しなんてのも大変だからね、軽く目星は付けてあるよ。UDCの出現から見るに、二階の客室は何もないだろうけど、フロントのある大広間が儀式の中心として、食堂やスタッフルームなんかも怪しいだろうねえ」
 バロンはそう語りながら、見取り図に赤い印を書き込んでいく。

「仕掛けは恐らく、それなりに大掛かり。だから術式それらしきは、いくつかありそうだけど、ひとつでも壊せたら自動召喚の機能は失うだろう。よゥく探して、確実に壊すのが良いだろうねえ」
 人形と共にキャスターを転がし、用の済んだホワイトボードを引っ込める、その手を止めて、バロンは思い出したようにポンっと一つ手を打った。

「そうそう、ホテルは有名な心霊スポットなんだって!イイよねえ、洋館でホラーって。丁度これから日が沈むから、雰囲気も最高になるよねえ?」
 バロンはあっさりとそう語ると、からかうような笑顔を浮かべながら、指を鳴らす。

「それでは皆々サマ、素敵なホラーを」
 動揺の広がる猟兵たちを尻目に、バロンは心底楽しげな笑顔を浮かべ、彼のグリモアが大きくその扉を開いた。

 ●

 くぐもった鐘の音が、低く低く響き渡る。規則正しく刻む標に誘われ、ゆらりと揺れて、ひとつ、ふたつと鐘を響かせる。
 鐘の音に導かれた黄昏が、視界を紅へと満たしながら、ひとつ、ふたつと影を深める。
 伸び切った雑草が、朱に染まった梢が、ゆらりと揺れる。それは鐘に浮かれた風の踊り、などではなく。
 厭に褪せた茂みがごそりと蠢く。血の気の失せた舌が、ぬらりと黄昏を這いずり──そうしてそのまま、溶けるように消え失せた。


後ノ塵
 後ノ塵です。はじめまして、あるいはこんにちは。
 三章構成のシナリオになります。舞台は心霊スポットめいた洋館のホテルですが、後ノ塵の都合上、いわゆるホラーな怖さはなく、ぬるま湯になります。
 一章は入り口での集団戦、二章は内部の探索、三章は再び集団戦です。
 怖がりな方は〇、そうでない方は✕を表記していただくか、プレイングとして送信していただけますと、ボーナスとしてちょっとしたホラー体験ができるかもしれません。できないかもしれません。微妙なニュアンス等ありましたら、プレイングにてお書き下さい。ホラーの内訳はぬるま湯です。
 皆様のプレイングお待ちしております。奮ってご参加のほど、どうぞよろしくお願いします。
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第1章 集団戦 『くちなぜつづち』

POW   :    秘神御業肉食回向
自身と自身の装備、【自身が捕食している】対象1体が透明になる。ただし解除するまで毎秒疲労する。物音や体温は消せない。
SPD   :    風蛞蝓
空中をレベル回まで蹴ってジャンプできる。
WIZ   :    悉皆人間如是功徳
自身の身体部位ひとつを【これまでに捕食した犠牲者】の頭部に変形し、噛みつき攻撃で対象の生命力を奪い、自身を治療する。

イラスト:オペラ

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

エルゴ・ルスツァイア
【アドリブ、連携歓迎。怖がりでは無く慎重】

あれが例の建物か。
おお、中々良い雰囲気じゃ無いか! 廃墟なのが勿体無い位だな。
いやいや、仕事だ。気持ちを切り替えよう。

頭が冷えて行く……。

よし、敵の位置と情報の獲得と、共有を最優先にしよう。
基本的に件の建物内部に居ると思われるが、自動召喚なのだろう? 既に溢れていて「強襲したつもりが包囲されていた」何て事は避けたい。

近場の高台から索敵、及び突入援護。突入後に合流し、内部戦闘へ…と言う流れになるかな。勿論、無線での情報共有はしっかりと、だ。

オートリニアライフルへ初弾を装填し、狙いを定めた。



 人が向かうべく切り開かれた、林の中を進む道。山中のそれらしく、傾斜のついたゆるいカーブには人通りが潰えて久しく。今はもう、方々に生えた植物によって埋まりゆく隙間にかつての痕跡を残すだけ。

「あれが例の建物か。おお、中々良い雰囲気じゃ無いか!」
 そんな通りの絶えた獣道のような有り様の先を、眺め見る女性がひとり。まるで浮かれた少年のように、軽快な言葉を携える彼女の名は、エルゴ・ルスツァイア。額に手をかざし見上げるように、道の先に在る例の建物──その洋館を眺め見る。

「廃墟なのが勿体無い位だな」
 いつ建てられ、いつ無人となったのか。鉄檻のように門を固く閉じ、塔のようにせり上がった上部が特徴的なその洋館。前庭こそ荒れていたが、廃墟と言うにはさほど朽ちてはいなかった。思わず関心を口にすれば途端に、エルゴの胸には在りし日の少年のような好奇心が湧き上がる。

「いやいや、仕事だ。気持ちを切り替えよう」
 エルゴは頭を軽く振り、緩む口元を引き締め頬を叩く。ひとつ深い呼吸を落としてみれば、先程の浮かれた気持ちは隅に追いやられ、彼女の頭はまたたく間に冷えて行く。…エルゴの正体は歴戦の傭兵。瞬時なコンセントレーションはお手の物だ。
 まずやるべきは、敵の位置と情報の獲得。そしてそれらの情報共有だろう。慎重に行わなければならないだろうと見て、エルゴは此度の仕事場へと向き直る。

 門の奥、軋みながら揺れる正面ドアを注意深く観察する。古い木製のドアは雨風に晒され、金具も確かに擦り切れているのであろう。だがその動きは、風が扉を揺り動かすものではない。

「おいおい、もう溢れてるじゃないか」
 雑草の茂る前庭の中に、拭いようのない不自然さを見つけてエルゴは唸る。夕日に照らされる幾つもの長い影が、閉ざされた門の中で、雑草を掻き分けながら行き来していた。再度注意深く観察すれば、黄昏の影に潜むのは色褪せた茂み…のような風体のUDCだ。頭部と思わしき部分から、血の気の失せた長い舌がぞろりと這い出ている。
 無線のスイッチをいれながらエルゴは静かに高台を滑り落ちる。

「こちら、エルゴ。聞こえるか」
 砂が転がるような音の後に応答が聞こえ、エルゴは端的に、されど正確に、己が知り得た情報を他猟兵に伝える。次なるエルゴの役割は突入援護。合流はその後だ。洋館の裏手に回り込み、門の外の、紛れもない本物の茂みにエルゴは素早く身を潜める。オートリニアライフルへ弾を装填し、エルゴはただ慎重に狙いを定める。呼吸を整えトリガーを引く。
 黄昏の空に発砲音が鳴り響くと、周囲の木々から鳥たちが飛び去った。

成功 🔵​🔵​🔴​

緋宮・紗月(サポート)
クロムキャバリア世界の小国出身、アンサーヒューマンにしてサイキッカーのサイキックキャバリア乗りです
普段の口調は「女性的(私、あなた、~さん、なの、よ、なのね、なのよね?)」です

クールで真面目、任務に忠実な性格
戦闘では専用機「遠雷」を駆り、各種武装を使い分けます
発電系の超能力も得意です


UCは指定した物をどれでも使用し、多少の怪我は厭わず積極的に行動します。
他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。
又、例え依頼の成功の為でも、公序良俗に反する行動はしません。
後はお任せ。宜しくお願いします!



 黄昏の空の下。粛々と立地するその洋館には、確かに怪しげな気配が蠢いていた。それは緋宮・紗月がアンサーヒューマンであることである事から起因するわけではないのだろう。

 手元の無線から、ザザ、と砂の転がるような調べがこだまする。短く応答すれば、別行動中の猟兵の声が響く。端的に共有される敵の情報に、紗月が事務的に返答すれば、そのまま通信は切れた。熱を持たぬ簡素な連絡はされど、紗月が動き始めるには充分な合図だった。

「遠雷」
 紗月の声に呼応し、虚空が歪む。波打ちうねる夕焼けから人型の巨躯──サイキックキャバリア、PPDS-S遠雷が顕現する。雷を纏うキャバリアは音もなく跪くと、手のひらを紗月の前へと開くと、紗月は抱えられるようにしてその巨躯へ搭乗する。

 紗月をコックピットに収めた遠雷は、紗月の操縦に従い静かに立ち上がると、音もなくふわりと跳躍する。その靭やかな動きは人のものとまるで遜色がない。されど巨躯から想起させるもの…本来あるべきであろう重量を感じさせず、素早く坂を滑り落ちる。

 遠雷は坂の中ほどでふわりと跳躍すると、そのまま洋館の中庭へと降り立つ。やはり重さを感じさせぬ着地のままに、色褪せた茂みを蹴飛ばした。雑草の散らかる中庭で、嫌に目立つその茂み──否、UDCくちなぜつづち。血の気の失せた舌を蠢かし吹き飛ぶ様子に、隠れ潜むUDCの数々がざわりとその身を揺らした。

 在らぬ空間が声なき咆哮を響かせ空気を震わせる。いくつもの色褪せた茂みが俄に姿を消し、遠雷に襲いかかる。──だが。

「無駄よ」
 姿を消すそのUDCの特性はされど、雑草だらけのこの庭を掻き分ける音も様子も、ひとつとて消せてはいなかった。
 飛び掛る見えぬ敵を、紗月は冷静に予測し紙一重で回避する。そしてその予測のまま、在るべき空間に遠雷の拳を叩き込む。遠雷を通じてUDCの体にめり込む拳の感触。衝撃の瞬間に、雷撃が弾けるような音を立てれば、UDCはその姿を見せながら吹き飛び、弧を描き倒れゆく軌道がふいに逸れる。衝突の一瞬に垣間見えた姿に、遠雷がすかさず雷の拳を叩き込めば、敵の数はまたひとつ、ふたつと確実に数を減らしていく。
 確かに減りゆく数の中で、方々に生えた周囲の雑草が巻き上がるように渦を巻く。じわりじわりと狭まる渦は、遠雷を、紗月を焦らすようになかなか仕掛けてはこなかった。攻撃のタイミングが掴めない──ならば。

「叩き壊すわ」
 渦の中心をギリギリまで引き付け、遠雷は高く跳躍する。靭やかな機体を空中で回転させ、渦の中心へ素早くライフル「雷調」を構えると、引き金を引く。これまでの戦闘で研ぎ澄まされた瞬間思考力は、UDCの攻撃の瞬間を正しく予想する。
 遠雷の暗い銃口から特殊弾頭「雷招」が放たれる。柔らかな弾頭は何も見えない空中でぐにゃりと歪み接着すると、間髪入れずに紗月の雷撃が襲いかかる。そして雷撃に痺れ怯み、姿を見せたUDCへ、もはや雷鳴そのものとなった遠雷の神鳴拳が突き刺さる。紗月の操縦する遠雷のその高速の連撃は、UDCくちなぜつづちを跡形もなく消し飛ばした。

成功 🔵​🔵​🔴​

鈴乃宮・影華(サポート)
「どうも、銀誓館の方から助っ人に来ました」
銀誓館学園所属の能力者……間違えました、猟兵の鈴乃宮です

基本は公開中のユーベルコードや友人から教わった剣術で対応
学生時代に大概の状況は経験したのでまず動じません
状況次第ではキャバリアの制御AIである『E.N.M.A』のサポートを受けて
『轟蘭華』に接続した重火器をブッ放したり、キャバリア等乗り物を使ったりします
(※公開アイテムを自由に組み合わせて下さい)

なお、コメディ色が強い等のネタ依頼では空気を読んで
姉の『鈴乃宮・光華』の演技で語尾を「にゃ」にする等全体的にきゃる~ん☆とした言動に変わります


えっち系は断固NG
それ以外の詳細はお任せします


六島・風音(サポート)
ガレオノイドのスターライダーです。
スピードなら誰にも負けません。

基本的に人の話を聞かず、スピード勝負に持ち込みます。
そんなことより駆けっこです。
普通に駆けるか、天使核ロケットエンジン搭載の宇宙バイクで駆けるか、ガレオン船形態で駆けるかは状況によります。

ユーベルコードは使えそうなものはどれでも使用し、多少の怪我は厭わず積極的に行動します。
他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。また、例え依頼の成功のためでも、公序良俗に反する行動はしません。

あとはおまかせ。よろしくおねがいします!



 キャバリア制御AI『E.N.M.A』を通じて仲間へ新たな情報を共有し、鈴乃宮・影華は嘆息する。既に交戦中の仲間たちが着実に減らしているUDCくちなぜつづちだが、その一方で館の中から次から次へと現れていた。

「早めに一掃して自動召喚をなんとかしたいですね…」
「あ、スピード勝負ですか?私の得意分野です!」
 そう言って握った拳を元気よく天へ高く突き上げるのは六島・風音。影華の話を聞いているのかいないのか、絶妙に判断の付かない言葉を返しながら、風音は素早く宇宙バイクムゼカマシンのエンジンを駆けると、蠢くUDCの群れの中に突撃していく。

「攪乱は任せてくださーい!」
 言うが否や、風音はムゼカマシンを巧みに操り、慌てふためくUDCくちなぜつづちの間を縫うように駆け回る。文字通り、目にも止まらぬ速さの駆けっこに没頭する風音が、発動するのはユーベルコード「かけっこ」である。UDCが声なき咆哮を響かせ空気を震わせ、臨戦態勢に至ろうとするものの、風音のユーベルコードの前では意味をなさない。…もっとも、茂みの体の体当たりも、枯れ木のような足蹴りも、速すぎるムゼカマシンこと風音には当たらないのだが。

 当たらぬ攻撃にいよいよ焦れたUDCくちなぜつづち達は、激昂し再び大気を震わせる。枯れ木のようなその足は大地を蹴り、そして空を蹴る。一斉に上空に逃げ遂せたUDCは、自由落下に身を任せながら、上空を見上げ、驚く風音に攻撃を狙い定める──筈だった。

 パチン、と弾けるような音。周囲、その地面には風音と、ムゼカマシンしか居らず。先ほどまでは確かにそこにいた筈の影華の姿は跡形もなく。

「E.N.M.Aから虚言――“私は其処に居た”」
 UDCの背後に出現していた影華は静かに囁き魔剣を振り被る。一体を両断したと、そう思った瞬間の其処には、また影華の姿はなく。パチンと弾けるような音──上空に放たれた黒燐蟲がひとつ消え去る度に、影華はそこに出現し、またひとつ両断する。cogito ergo sum──放った黒燐蟲の居る其処に、瞬間移動するユーベルコード。
 二つに別たれた最後のひとつと共に、地面に降り立った影華は魔剣を振り払う。

「お疲れ様です!まだ終わってませんが!」
「ありがとうございます。もうひと頑張りしましょうか」
 振り向く二人の視界に映るのは、洋館から這い出すUDCの群れ。
 キリはなくともやるしかない。風音はムゼカマシンのエンジンをふかし、影華は赤と黒の刀身を左手に握り締めた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

木元・祭莉(サポート)
「おおー、いっぱいいるねー♪」

グラップラー×サウンドソルジャー、15歳の人狼少年です。
前衛肉弾派で、積極的に行動します。
まだまだ未熟なアホの子です。

いつも深く考えず、楽しそうにテンション高く対応します。
どどーん、ばばーん、ひゅいーんなど、擬態語を多用します。

ユーベルコードは、補助的に使うことが多いです。
状況に応じて、グラップルでの接近戦、衝撃波でのなぎ払い、浮遊とジャンプ・ダッシュを組み合わせた空中戦のどれかで戦います。

多少の怪我は耐性で耐え、肉を切らせて骨を断つ、がモットー。
いつも笑顔で、後先考えず。でもちょっとビビリ。

あとはおまかせで。よろしくおねがいします!



「おおー、いっぱいいるねー♪」
 わらわらと屯するUDCくちなぜつづちを枝の上で眺め見ながら、人狼の少年、木元・祭莉はどこか楽しそうに呟く。
 洋館から止めどなく溢れていたUDCたちは、猟兵の活躍により着実に数を減らしているが、それでもまだまだ多いもの。混戦の隙間で、フラフラと手持ち無沙汰に茂みの体を揺らしているUDCの群れに狙いを定め、祭莉は体をぐっと屈めて切り込む機会を伺う。
 ──周囲を探るような群れの動きが一斉に止まった、その一瞬。好機に飛び出すその寸前、不意に祭莉の背後の梢ががさりと音を立てた。

「うわあ!」
 茂みから勢いよく飛び出してきたUDCくちなぜつづちに、祭莉は大げさに驚くと飛び出しかけた勢いのまま枝を蹴り、ひとつ隣の枝に飛び移る。先ほどまで祭莉の居たそこ、大きくしなる枝の上にいるのは、いつから潜んでいたのかも分からぬUDCくちなぜつづちが、舌なめずりを覗かせる。

「ビ…ビビッてなんかないんだから!」
 祭莉はばくばくと飛び跳ねそうになる心臓を抑えて、驚かせてきたUDCに向かってそう啖呵を切るも、くちなぜつづちは構わず、ぽっかりと口を開くと祭莉に向かって跳躍する。
 迫りくる色褪せた舌なめずりを、祭莉は瞬時に枝にぶら下がり回避すると、逆上がりの要領でえいっと蹴り飛ばす。そのままくるんと一回転すると枝を蹴り、すかさず追い打ちをかける。
 ひしゃげ吹き飛ぶ仲間の姿に激昂するくちなぜつづち達は、次々に祭莉へ飛び掛かるも、祭莉はそれを衝撃波で薙ぎ払う。

「逃げても無駄だよ!」
 態勢を整えようと空中を蹴り、高く飛翔し退避するくちなぜつづちに向かって、祭莉は大きく息を吸い込み胸を膨らませると、勢いよく音波の咆哮を放つ。空気を揺るがす激しい咆哮、その超音波はUDCたちの体を内側から無差別に破壊する。

「どうだ!父ちゃん直伝、ちょー音波だよっ!」
 祭莉の無邪気なガッツポーズの前で、音波に倒れたUDCたちがボトボトと落ち、積み重なっていった。

成功 🔵​🔵​🔴​

エヴァルト・ヴァイスフルス(サポート)
『おや? それで攻撃をしたつもりですか?』

 貴種ヴァンパイアの魔想紋章士×ビーストマスター、24歳の男です。
 普段の口調は慇懃無礼(ワタシ、アナタ、です、ます、でしょう、でしょうか?)
 時々ド貴族(私、貴殿、です、ます、でしょう、でしょうか?)です。
 慇懃無礼で丁寧な口調の自信家です。

 ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し、多少の怪我は厭わず積極的に行動します。
 他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。また、例え依頼の成功のためでも、公序良俗に反する行動はしません。
 アドリブ連携◎ エログロ×
 あとはおまかせ。よろしくおねがいします!


終夜・日明(サポート)
【アドリブ連携歓迎】
「対象を確認。これよりエンゲージします」

○口調
一人称:僕(共通)
仲間や現地住民には二人称:あなた/敬語を使った丁寧口調
敵には二人称:貴様/男性口調(だ、だな、だろう、なのか?)

○技能
攻撃面は【ハッキング/破壊工作/砲撃/制圧射撃/誘導弾/継続ダメージ】、
防御面は【見切り/激痛耐性/継戦能力】を主に使用します。

○立ち回り
SPDかWIZのどちらかで戦闘します。
遠距離主体ですが近距離も可能です、キャバリアに搭乗しての戦闘か生身での戦闘かは敵の規模でご選択ください。

状況に応じて他の猟兵のサポートでも大丈夫です。
戦場は問いませんが、生命体や機械類が相手だとよりお役に立てるかと。



 猟兵たちの奮闘に、UDCの群れはもはや全滅の瀬戸際にあった。しかし意思なきものであればいざ知れず、UDCくちなぜつづちのその風体には意思ありしUDC。仲間を失い数を減らし、敵意に囲まれた生物がその身に宿す力を振り絞るのは、然るべき反応といえるのだろう。

「対象を確認。これよりエンゲージします」
 終夜・日明は黒き機械の翼剣、CW-MkⅢ:シュヴァルツ・シルフィスティの羽を展開する。本来キャバリアの武装であるそれは、脳波制御の特殊兵装。日明の思うがままにコントロールできるその武装は、日明自身が纏うことで空を駆ける翼となり攻撃を弾く鎧となる。
 日明は翼を広げ上空へ飛翔する。元より依頼は被害を未然に防ぐもの。一匹とて逃がすつもりはなく、向かい来るのであれば好都合だった。

 声なき咆哮を上げるUDSたちを、ライフルガンで次々に狙い撃つ。一見無差別な乱れ撃ちにも見えるその攻撃はUDCへは一発と外さずに、そして他猟兵には跳弾ひとつ当てること無く、その場を制圧せんと降り注ぐ雨となる。

「お見事、お見事」
 空から奮闘する日明を見上げ、エヴァルト・ヴァイスフルスが、パラパラと拍手を打ちながら笑みを浮かべる。

 雨が晴れた時、エヴァルトの目の前に並んでいるのは文字通り、蜂の巣となったUDCくちなぜつづち達。半死半生を彷徨うUDCたちは、その身をゆっくりともたげると、色褪せた舌を振るわせ──そのまま、体ごと飛びかかる。

 ずるりと伸びた尾の先端が、枯れた茂みのような胴体が、蛇の頭部へと、熊の頭部へと変化する。それは、くちなぜつづちのユーベルコード。これまでに捕食したものの頭部へ変化させ、自己治癒を施すべく喰い付き噛み付き──生命力を吸収する。
 次々に襲いかかるUDCを、エヴァルトは巧みに躱していくも、避けきれなかった一体の頭部がエヴァルトの腕へ噛み付いた。

「おや? それで攻撃をしたつもりですか?」
 だがしかし、当のエヴァルトは涼やかに笑みを浮かべたまま。UDCの体をむんずと掴むと片手で持ち上げ、空いた片方の指先でマントを摘むと大きく翻す。

 エヴァルトが翻したマントの内側、そこに生まれた影の──小さな闇の中。漆黒の両刃剣が、まるで浮かび上がるように這い出でたる。エヴァルトはおもむろに剣を掴むと、そのままUDCに突き刺した。
 流れるような動作はいっそ優美なほど。そのヴァンパイアは、ほんの一瞬でUDCの生命力を奪い取る。滴る血さえ残さず、出来上がったのは干からび枯れ果てた、UDCくちなぜつづちの即席干物。エヴァルトは踊るような動作で剣を振り払うと、粗雑な仕草でその干物を投げ捨てた。

「さあ、抵抗は無意味です。大人しく斬られなさい」
 謳うような口上の元、黒剣を掲げると大きく払う。ユーベルコード、闇を宿せし昏き刃──闇の衝撃波が放射状に広がり、UDCたちの体を斬り刻む。闇を纏うその攻撃は決して癒えぬ傷。のたうち回るUDCたちは体を変じて互いを食い合うが、癒えぬ傷の前でいくら貪り食おうと、生命力は無為に零れ落ちるのみ。

「滑稽ですねえ」
 エヴァルトは笑みを浮かべ乾いた音を叩き鳴らす。けれどその目は、のたうつUDCの鑑賞に浸っている訳ではなかった。
 エヴァルトの見上げる視線の先──その空の上。ユーベルコードの生み出す無数の輝きが、黄昏の空を穿つようにその存在を蒼く示している。

「逃げられるなら逃げてみろ、《蠱毒》は貴様が死ぬまで追い続ける!」
 日明のユーベルコード──《蠱毒》活性・刳り穿つ蒼き雷霆。生命を葬るために存在するその雷の槍は、蒼光の輝きを放ちながら、UDCくちなぜつづちの群れを一掃した。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​




第2章 冒険 『自動召喚儀式を破壊せよ』

POW   :    力尽くで怪しげな家具や床、調度品等を破壊する

SPD   :    絨毯の下や壁紙の裏など、怪しげな場所を調査する

WIZ   :    霊視や魔力感知によって、儀式の核となっている座標を探す

👑7
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 溢れたUDCを殲滅せしめた猟兵たちは、がらんどうの洋館へ足を踏み入れる。いよいよ沈みかけた黄昏に、濃い影が沈む大広間。誰かが手元に明かりを灯す。暗がりに沈むその有り様は鬱屈としてこそいれど、室内の空気は不思議と塞ぎ込んではいなかった。

 猟兵のひとりが、恐る恐ると足を踏み出す。人が住まわぬ家屋というのはそれ相応に痛むものだったが、床は軋みこそすれ抜ける程ではなく、よくよく目を凝らし見渡せば、壁にも目立った痛は見当たらない。

 けれどUDC達がその出現と共にこの場を荒らしたのか、家具や調度は所々、有り様の無い方向を向いているものだった。注意深く観察しながら、猟兵たちは探索の手を別ける。
 伝え聞いた星を思い出しながら、或いは違和感に身を委ねながら、またひとり、また一歩。猟兵たちは洋館の中へ導かれる。

 ──誰そ彼がまた、刻一刻と沈み往く。
エルゴ・ルスツァイア
(×、アドリブ連携ok)
中心と目された大広場を避けて手頃な窓より侵入する。先ずは自動召喚を止める事に尽力しよう。

良し、突入完了だ。……此処は、食堂近くの廊下か? 丁度良い。食堂なら少々長い物でも振り回せる。
目星を付けていた場所ではあるが、問題の術式は何処だ? 

生憎この手のモノは詳しくは無い。ヘルメットのバイザーを下ろし、マルチスキャナーを起動する。エネルギー反応を見つつテーブル等の家具類を調べた後に壁紙でも剥がしてみるか。
残敵を引きつけたくは無い。慎重に静かに行動しよう。
はてさて鬼が出るか蛇が出るか。



 エルゴ・ルスツァイアは正面玄関を向かう猟兵に、ハンドサインで合図を送る。ここから、猟兵たちはそれぞれ散開して洋館内への探索へと挑む事となる。エルゴはより一層気を引き締めて、玄関口とは逆方向へと歩みを進めた。

 洋館の側面へと回り込み、周囲を見渡してから壁へぴたりと張り付くと、すぐ側の窓に耳をそばだてる。一帯に気配はなく、他の猟兵たちが思い思いに洋館へ突入する音が、遠くから聞こえるのみ。エルゴは静かに歯抜けのガラスに手を触れる。かつては鮮やかな彩りであっただろう日光の入り口も、今はヒビ割れ欠けたガラス窓を残すのみだった。…十字のかかった木枠を、わざわざ破壊する必要はないだろう。欠けたガラスから手を伸ばし、鍵を改め窓を開くと、エルゴは注意深く突入する。

「良し、突入完了だ」
 エルゴの重みを受け止め、僅かに床が軋みをあげた。濃い影を落とす廊下はやはり静かなもの。ぐるりと一度見渡し、変わらぬ警戒と慎重を両手にもう一歩。ぎしり、と再び床が軋む。

「……此処は、食堂近くの廊下か?丁度良い。食堂なら少々長い物でも振り回せる」
 見取り図を思い返しながら視線を上げれば、少し離れた場所の扉には、影の中で小さな案内板が揺れている。エルゴはヘルメットのバイザーを下ろし、マルチスキャナーを起動する。閉ざされた視界の中はされど、肉眼で見るよりも明瞭だ。エルゴの視界に浮かび上がるのは、彩り失せた機械的な風景。小さな案内板に意識を寄せれば、ほんの僅かな音と共にスキャナーの焦点が向く。ついでのように補強され視界に浮かぶ、その掠れ欠けた飾り文字には、確かに食堂と書かれていた。

 エルゴはエネルギー反応を確認しながら、扉を開くと食堂内へ銃口を向ける。そこに広がるがらんどう…無人の食堂をしっかりと目視でも確認してから、銃口を下げる。
 食堂の中はかつての姿を忘れたように、開けた空間となっていた。クロスもかかっていないテーブルは、皆が端に寄せられ椅子を重ねられている。ところどころに破損や対の欠損が見えるのは、UDCに荒らされたせいだろうか。それにしてはやけに整然としている。
 エルゴが拾った情報は幸いにも──そして残念なことにも、この食堂が長く空白を持て余しているというだけだった。
 エルゴはほんの僅かに思案して、あてどもなく空っぽの棚やチェストをひとつひとつ開け放つ。人が去って長いとはいえ、破壊するには、少し惜しい調度だった。
 
「壁紙でも剝がしてみるか。……鬼が出るか、蛇が出るか」
 ほんの少しだけ躊躇って、剥がれかけの壁紙をひと思いに剥がす。朽ちかけた紙は壁からすぐさま手を離してくれたものの、破れた壁紙はエルゴの背丈にも及ばない。あまりの効率の悪さに、エルゴは顔をしかめる。

 渋々ナイフを取り出すエルゴの背後で、不意に床が軋みをあげた。振り向くエルゴの前には何の姿もない。だが、徐々に近付いてくるその足音と、スキャナーの熱源反応は明らかな存在を告げていた。

「見えている」
 エルゴは何もない空間へ躊躇いなくナイフを突き出す。ナイフはUDCの舌を切り裂き、柔らかな口腔からその体を突き破る。透明となっていたUDCは、先ほど会敵したくちなぜつづち。倒れ伏したその体は、染み出るように褪せた茂みの色を取り戻していた。

「む…っ」
 UDCが倒れたその時、エルゴのマルチスキャナーが僅かなエネルギー反応を掴む。誤動作ほどの僅かな反応でも、今は重要な手掛かりだ。エルゴは引き続き残敵に警戒しながら、素早く反応のあった壁へと向かい、手に付着したUDCの血液も拭き取らぬままに壁へ触れる。再び現れた反応の明滅は、先ほどよりもはっきりとしたもの。

「此処か!」
 慎重に──けれど、思い切って壁紙を剥がす。現れたのはホタルの灯りのように発光する、何かの…否、UDCの召喚術式。複雑に絡み合う文字と記号は、そうした術者であれば読み解けたであろうもの。

「だが、ワタシが読み解く必要は無い」
 エルゴは微笑みを浮かべると、しかしすぐさま引っ込める。己の装備をしばし改め、ナイフを振りかぶった。


「うん……何かの現場のようになってしまったな……」
 エルゴはヘルメットのバイザーをあげ、己の強いた破壊の跡をしげしげと眺める。
 壁紙を裂かれ、壁を砕かれ──確かに破壊せしめた召喚術式。されど、その破壊の痕跡と共にUDCの血痕が飛び散った食堂は、いっそどうしようもない程に…ある筈もない、怪しい事件を彷彿とさせる姿に変貌してしまっていた。
 原状回復は任務外、依頼外だ。どこか後ろ髪を引かれる思いで、エルゴは食堂を去っていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

御形・菘(サポート)
※語尾に「のじゃ」は不使用
はっはっは、妾、推っ参!
敵は決してディスらんよ、バトルを彩るもう一人の主役なのでな!
強さも信念も、その悪っぷりも誉める! だが妾の方が、もっとスゴくて強い!

バトルや行動は常に生中継+後で編集しての動画配信(視聴者が直視しては危ない系は除く!)
いかにカッコ良く魅せるか、見映えの良いアクションが最優先よ
とはいえ自身の不利は全く気にせんが、共にバトる仲間にまで不利を及ぼす行動はNGだぞ?

戦法は基本的に、テンションをアゲてボコる! 左腕とか尾で!
敵の攻撃は回避せず、受けて耐える! その方がカッコ良いからのう!
はーっはっはっは! さあ全力で来るがよい、妾も全力で応えよう!



「はーっはっはっは!妾が怪しげな洋館の秘密を暴いてみた!開幕である!」
 目玉を模した撮影ドローンを携え、洋館の大広間に立ち入った御形・菘が高笑いと共にそう宣言するのは、己の配信のオープニング。ライブストリーマーの菘は今日も今日とて、己の活躍を好評配信中!

「はてさて、なんとするか」
 とはいえ今回は生配信形式ではなく、Vログにも近い動画形式。菘は顎に指をあて大広間をぐるりと見渡す。菘のチャンネルのメインコンテンツといえば、やはりアクション豊かな快闊なバトルシーン。今のターンは冒険・探索といえど、普段と遜色のない配信映えを求めていきたいところではある。

「画面映えはダントツで家具やらの破壊ではあるが…迷惑系配信者かのう?」
 しかし廃墟らしい廃墟であればいざ知れず、洋館内は思いのほか整った様子を見せている。荒れた場所には荒れた振る舞いが似合おうとも、今回の舞台はそこまで荒れた場所とは言い切れない。似つかわしくない様子を見せれば、どうしても心象は悪く映ろう。

「いっそのこと編集で…いや、内容の捏造こそ避けるべきであろうな」
 菘は小さくぼやきながら広間を大きな尾で這い進み、動画映えを吟味するべく室内を再びぐるりと見渡す。菘の視線に合わせるように、撮影ドローン天地通眼もまたぐるりと室内にその眼を向ける。広間の中ほどに進み行くと、不意に菘の重みで床がほんの一瞬だけ不自然な軋みをあげる。僅かな違和感に立ち止まり、一方長く伸びた尾の先端で、他の床をタシタシ叩けばそちらは云とも寸とも言わぬもの。そこでピリリと閃くのは菘の野生の勘。

「ふふん、ここであろう」
 ぼろきれのような絨毯に素早く尾を差し込むと、勢いよく捲り上げる。持ち上げた拍子に崩れる絨毯の内側から、現れるのは一見なんの変哲もない剥き出しの床板。ただ、どうしてかそこには、板を一度剥がしたような痕がある。

「はっはっは、妾にはちと簡単すぎる謎であったな?」
 己が最も映えるキメキメの角度をカメラに向けて、菘は自慢げに言い放つと思い切り床板を引き剝がす。狭く暗い床の底、その狭い空間に収まっていたのは、小さくも怪しい何かの呪物。
 菘はチロリと赤い舌を見せ微笑むと、尾の先を伸ばし呪物を掬いあげる。

「洋館の秘密、暴いたり!」
 菘は高らかに勝鬨をあげると、その大きな左腕で謎の呪物を粉々に握りつぶした。

成功 🔵​🔵​🔴​

高宮・朝燈(サポート)
『オブリ解析…バール先生、あいつを止めるよ!』
 妖狐のガジェッティア×電脳魔術士、10歳のませたガキです。
 普段の口調は「ちょっとだけメスガキ(私、あなた、~さん、だね、だよ、だよね、なのかな? )」、機嫌が悪いと「朝燈スーパードライ(私、~さん、です、ます、でしょう、ですか?)」です。

 ユーベルコードは、レギオン>お料理の時間>その他と言った感じです。レギオンで出てくるガジェットはお任せします。補助的な役割を好みますが、多少の怪我は厭いません。オブリは小馬鹿にしますが、味方には人懐っこくなります。
あとはおまかせ。よろしくおねがいします!



 手足の付いた楕円錐が、少女を乗せて薄暗い洋館を進み行く。母特製のミリタリーに身を包む狐耳の少女は高宮・朝燈。そして朝燈の乗ったその楕円錐──髭と蝶ネクタイが特徴的なその紳士は、朝燈の騎乗型ガジェット、バール先生だ。

「魔力反応あり!場所はあってるみたいだね、バール先生」
 朝燈はバール先生の上で巧みにタッチパネルを操作する。朝燈の視線の先にある半透明のパネルウィンドウには、簡略化された見取り図の中で、移動する点であるバール先生の反応と、その先で僅かに点滅し続ける反応がひとつあった。
 それこそ寡黙に歩みを進めるバール先生の目指す目的地、この洋館のスタッフルームである。程なく辿り着いた部屋の間で、朝燈のモノクルがキランと輝く。

「よーし、レギオンガジェット、行ってみよう!」
 朝燈はえいっとバール先生のスイッチを押す。ポポンと音を立てて次々に現れるのは、バール先生をそのまま小型化したような、大量のレギオンガジェット。

「こういう時は手当たり次第に、ローラー作戦だよね!」
 レギオンガジェットはえっさほいさと整列すると、朝燈が指差す先、スタッフルームへと一斉に向かっていく。

 一糸乱れぬ動きでスタッフルームへと向かった小型レギオンたちは、部屋のドアを盛大に破壊し、そのまま部屋の中へ突入する。そして目に付く端から──例えば備え付けのロッカーや取り残されたテーブルやらチェストやらをボコボコと叩き、片っ端から家具や調度品を破壊していく。

「その調子、その調子ー!」
 レギオンガジェットたちの奮闘を楽しそうに眺める朝燈の目の前で、大騒ぎの部屋から慌ててネズミ一家が飛び出した。

 バール先生に待機してもらいつつ、朝燈はタッチパネルを操作する。周辺にはオブリ…UDCの反応もなく、生体反応はさっきのネズミ一家だけ。そうしていよいよ破壊の音が佳境に差し掛かったとき、点滅し続けていた反応がふつりと途絶えた。

 朝燈はあっと声を上げて顔をあげる。レギオンたちに信号を送れば、彼らは破壊の手を止め一目散に朝燈の前へと戻ってくる。

 静けさを取り戻した部屋の前で、整列するレギオンたち。朝燈は注意深く先ほどまで明滅していたその魔力反応…儀式召喚の反応を探るも、やはり反応は既に途絶えているようだった。

 朝燈はバール先生から降り、部屋の中へと足を踏み入れる。そこまで広くはない室内は、恐らくさほど多くの調度品もなかっただろう。だが、余すところなく破壊尽くされた内装は、もはや残骸で埋め尽くされ、足の踏み場も存在しない有り様だった。

「…どれが自動召喚術式だったんだろ?」
 あっという間に破壊し尽くされた部屋の中を見渡して、朝燈はウーンと首を傾げた。

成功 🔵​🔵​🔴​




第3章 集団戦 『ゴシゴシアヒル隊』

POW   :    大型ゴミ対応モード!
【超酸性の泡を付けたブラシ】による超高速かつ大威力の一撃を放つ。ただし、自身から30cm以内の対象にしか使えない。
SPD   :    有機汚れ対策アヒルちゃん
レベル×5本の【超強力分解酵素を含ませた、追跡】属性の【アヒルちゃんスポンジ20匹】を放つ。
WIZ   :    記憶お掃除アヒルちゃん
【混乱】の感情を与える事に成功した対象に、召喚した【BIGサイズアヒルちゃん水鉄砲】から、高命中力の【記憶を洗い流す水】を飛ばす。

イラスト:屮方

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 規則正しく刻む標はゆらりと揺れて、沈み落ち往く黄昏にくぐもった鐘の音色を響かせる。ひとつ、ふたつ…低く低く響く鐘が、五度その声を上げた時、誰そ彼がいよいよもって融け堕ちる。

 灯しを持たぬ洋館は、その内も外も泥のような影で何もかもを覆い隠していた。
 しかし猟兵たちの手によって、秘密は暴かれ破壊は成された。壊れた召喚儀式はもう新たな何かを呼ぶことはないだろう。
 ──されど、その破壊は上階に潜んでいたUDCを呼び寄せる。

 ひと時の喧騒を過ぎ去り、静まり返った洋館の中。猟兵たちはふと強い違和感を感じ、顔を上げる。上げた視線のその先…届かぬ灯りにくすみ汚れた影の深く奥底で、蠢く無数の姿があった。

「ウォッシュ♪ウォッシュ♪」
 調子の外れた楽し気な声が、幾つも重なりこだまする。濃い影はその色を増しながら、水音と共に何かを擦り合わせる音が近づいてくる。
 ──本日最後の大掃除が、猟兵たちの前に立ちはだかる。
アウル・トールフォレスト(サポート)
(基本好きにお任せします)
「今日はどんなところに行けるのかな?」

楽観的でマイペース、夢見がちで元気いっぱいな女の子
好奇心旺盛で無邪気であるが、根本が人でない故に残酷

神出鬼没に出現し、気まぐれに歩き回り、楽しげに爪を振るう
猟兵の役割は理解し依頼も遵守しようとするが、それはそれとして常に楽しい、面白いで物事を判断しているので、時にはそれを優先して行動することも

バイオモンスターの特徴として、肉体は植物の性質を持つ

戦闘では怪力の発揮や身体の巨大化、鋭い爪での引き裂き、即時回復目的の捕食等、野性味溢れる肉弾戦を好む
理力の扱いも得意で、体表で自生する蔓や苔植物を操り、防御や隠密に罠等サポートも行わせる



「ウォッシュ♪ウォッシュ♪」
 上階の暗闇から現れるや否や、泡立つブラシを床に擦り付けながら進軍するのは、マリンコーデのアヒル頭たち。テーマパークのキャラクターのような愛らしさはしかし、その身にまとう衣装にへばりついた汚れ…返り血たちが相殺している。
 可愛さに相反する残酷描写はその手のテンプレート。されどテンプレに張り付いた感情を抱くのは、その認識が沁みついた者だけだ。

「あはは、おもしろーい」
 アウル・トールフォレストはいたって無邪気な笑みを浮かべる。ゴシゴシ床を洗いながらこちらに向かい、アウルを取り囲み始めるアヒル隊の姿を、それはそれは楽しそうに座り込んで鑑賞していた。

 二・五メートルを超えるアウルの長身は、洋館の大広間ならばいざ知れず…通路や廊下といった場所では、動き回るには向いていなかった。アウルは当然、今回の依頼も理解しているけれど──それはそれで動き辛いし、それはそれで目の前の光景が面白いのだから、見入ってしまうのは当然のことだった。

 アウルの目の前へ辿り着いたアヒル隊は、スリッパで器用にキュキュッとブレーキをかけて急停止。くるんっとブラシをひっくり返すと、柄の先端で床をリズミカルに叩く。

「記憶お掃除アヒルちゃん♪」
 ぽぽんと軽快な音と共に現れるのはビッグサイズのアヒルちゃんたち。プラスチックめいた素材のアヒルは素早くアウルの周囲をぐるんぐるんと駆けまわる。
 入れ替わり立ち替わり、羽を上げ下げしながら走り回るアヒルの姿を、思わず目で追ってしまえば、アウルの目はあっという間にぐるぐる回る。

「ぐるぐる~…きゃっ!」
 ふらっと傾くアウル目掛けて、アヒルたちの口から吐き出されるのは水鉄砲。威力はないものの素早く吹き出した水は的確にアウルに命中する。

「あれ…なんだっけ」
 そうして、再び目を開いたアウルは首を傾げて、慌てたようにきょろきょろと周囲を見渡す。
 アヒルの水鉄砲は記憶を洗い流す水。どうしてここに居るのか、そして何をしていたのか。アウルは今回請け負った依頼を、もうすっかり喪失してしまっていた。唐突に記憶を失い空白が生まれれば、己を取り戻すのにしばらくかかるというもの。──しかしそれは、相手が常人であればの話だ。

「…あなたが私の相手?」
 失われた記憶は、空白は──アウルの本性、その高き森の怪物を覗かせる。
 アヒル隊が泡だらけのブラシを振り被ったまま、制止する。いつの間にかアヒル隊の腕にもブラシにもアウルの蔓植物が這い回り、その体を締め付けていた。

「…甘ぁい夢を見ましょう?」
 そうしてアウルが差し出す両手、その植物から解け出すのは甘ったるい香りを纏う幻惑の蜜。差し出されるままに、ユーベルコード魅了・蠱惑坩堝をその身に食らったアヒル隊は、次々に膝から崩れ落ちる。

「ピカピカにぃ~…」
「おっそぉ~…じぃ~…」
 暗闇に響くアヒル隊のうわ言は、そうして程なく消えていく。鋭い爪に引き裂かれ、怪力に潰されて──ひとつ、ふたつと、暗闇に飲み込まれていった。

成功 🔵​🔵​🔴​

御形・菘
ふ~む、お主らはホラー感が薄いのう
だがロクでもない儀式の後の大掃除としては適役かもしれん
もちろん、お主らが掃除をされる方なのだがな!

混乱といってもなあ…普段よく相手してるキマフュの怪人どもと比べたら、
お主らのインパクトは並程度としか思えんぞ
ゆえに、妾がお主らに、真の奇想天外予想外とゆーのを魅せてやろう!

右手を上げ、指を鳴らし、さあ降り注げ花々よ!
はーっはっはっは! だからどうしたという話か?
…花弁は驟雨の如く、だが降り止まず、そして埋もれてエモく果てるのだ
あるいはお主らのお掃除パワーで対処できるなら、試してみるのも良いかもな!
しかし妾自身は今フリーだからな? 左腕でボコるのもさせてもらうぞ?



「ふ~む、お主らはホラー感が薄いのう」
 階段の踊り場のその暗闇から姿を見せたその存在に、御形・菘は思わず苦言を呈する。マリンコーデと言うだけでも山中の洋館にはミスマッチなのに、頭部はパッチリとした瞳が愛嬌振り撒くアヒルちゃんなのだから、これではせいぜい頑張ってB級ホラーといったところ。

「キレイ♪キレイ♪」
 しかしアヒル隊は菘の感想などなんのその。泡立てたブラシを構えながら、颯爽と階段を駆け下り大広間へとやってくる。似合わぬ舞台を与えられたとて、意にも介さぬその姿には、もはや敬意を抱けるというもの。菘はニヤリと微笑むとアヒル隊の前へ立ち塞がる。

「だが、ロクでもない儀式の後の大掃除としては適役かもしれん…もちろん、お主らが掃除をされる方なのだがな!」
 そう豪語し立ち塞がる菘を、アヒル隊はお掃除対称にロックオン。階段を駆け下りたアヒル隊はブラッシングを急停止すると、くるんっとブラシをひっくり返してリズミカルに床を叩く。

「記憶お掃除アヒルちゃん♪」
 ぽぽんと軽快な音と共に現れるのはビッグサイズのアヒルちゃんたち。小さな手足をバタバタ動かし、菘へ近付くビッグなアヒルちゃんは殆ど攻撃力こそないものの、混乱の感情を与える事に成功すれば、記憶を洗い流す水を飛ばしてくる代物だ。

 記憶というものは地続きなもの。一部でも失えばそれは大きな隙となる。故にアヒルちゃんはバタバタ──ジタバタ。菘の周りを飛び跳ねたり、その場で回転したり。見た目には似合うが状況的にはマッチしない歪な行いで、菘にほんの僅かにでも混乱を与えようと画策する!
 しかし一方で、菘の反応は今ひとつ。

「混乱♪混乱♪」
 焦れたアヒル隊たちは一斉に拍を叩き合唱し、もはや状態異常を急かし始める有り様。いよいよ菘は呆れて頬を掻く。

「混乱といってもなあ…普段よく相手してるキマフュの怪人どもと比べたら、お主らのインパクトは並程度としか思えんぞ」
 常人なればいざ知れず、御形・菘はキマイラフューチャーの怪人を相手取ってきた邪神である。辛辣な言葉は当然のものであったが、アヒル隊の態度は一転し、今度は一斉にブーイング。
 バッドなハンドサインも飛び出して、もはやアンチめいた何かすら感じる手のひら返し。…もしもこれが生配信であれば、菘リスナーからは援護射撃の弾幕があっただろう。

 しかし菘は国民的スタアでありライブストリーマー。アンチに転じたアヒル隊に向かって、不満の言葉などは口にはしない。ただ──すべてを吹き飛ばすかのように、高らかな笑い声をあげた。

「ならば、妾が!お主らに、真の奇想天外予想外とゆーのを魅せてやろう!」
 菘は発破を掛けると華麗に右手を上げる。どこか艶やかな菘の所作に魅入るのは、今ここに居らぬリスナーだけではなく、UDCとて同じこと。ポカンと菘の右手を見上げるアヒル隊に、菘は赤い舌をチロリと見せると一呼吸の後に指を鳴らす。
 瞬きの間で召喚されたのは巨大な魔方陣。その眩しさにアヒル隊は背中をのけぞるが、菘のユーベルコード──その演出はここからが真骨頂だ。

「さあ降り注げ花々よ!はーっはっはっは!」
 その花弁は驟雨の如く──だが、降り止むことはない。花弁は攻撃であるが、動画を彩り映えさせるエモ要素である。アヒル隊がすっかり埋もれてエモエモしく果てるまで、驟雨が止むことはない。

 降り注ぐ花弁はアヒルを啄む棘となり、アヒル隊はまんまと飛び跳ね踊り狂う。恐らくそういう習性なのだろう、アヒル隊は見るからにもだえ苦しみながらも、上に下にと泡の付いたブラシを振り回し、花弁の掃除に耽りかけている。己の使命、その掃除に耽るその姿は敵ながら実に天晴れ。しかもなんなら、取れ高ばっちりの非常に愉快な光景である。

 だがしかして、映えにもエモにも、主役がいなければ意味がない!
 目の前の敵をいささかそっちのけで掃除しかけていたアヒル隊の群れへ菘は飛び込むと、その勢いのまま容赦なく左腕でボコっていく。

「油断するでないぞ、妾自身は今フリーだからな?」
 千切っては投げ、千切っては投げ。降りしきる花の中で始まった、どこか愉快で滑稽な大乱闘。

 ──暗闇に沈む洋館には、その姿に似つかぬほどの、高らかで軽やかな哄笑が響き渡っていった。

成功 🔵​🔵​🔴​

エルゴ・ルスツァイア
(アドリブ、連携OK)
上階より近づく敵性体を廊下の柱の影に隠れてバイザー越しに観察する。

……文字通りの掃除屋か。あの分かりやすい音で不意打ちを防げるのは幸運だが、あの洗浄剤は危険だな。酸かアルカリかは分からんが、ブラッシング箇所が相当溶けている。
近接戦闘は避けた方が良いだろうな。…仕方ない、纏めて中距離から高加速貫徹弾で撃ち抜こう。

柱から身を乗り出し、オートリニアライフルの射撃開始だ。音に釣られて寄って来たな? 後退しつつ射撃を継続。
飛来物は迎撃するか、イミディエイトナイフで切り払う。

よし、この一本道の通路でご丁寧にも一列になっている。射線上に他の猟兵は無い。纏めて撃ち抜く!



 ゴッシュゴッシュと響き渡る水音は、何かと何かを擦り合わせる音。いの一番に連想する歯磨きだろうか。エルゴ・ルスツァイアは廊下の柱に素早く隠れると、上階より近づく謎の音の正体──その敵性体をバイザー越しに観察する。

「……文字通りの掃除屋か」
 マルチスキャナーが最初に観測したのは、歯ブラシをそのまま身の丈へ巨大化させたようなブラシヘッド。そしてそのブラシを操り狭い階段を降りるのは、人型のUDC。その頭は風呂場にあるようなアヒルの玩具を思わせる。
 一見するだけでは邪気もなさそうな愛嬌のあるアヒル隊だが、よくよく見ればその見た目に相反する凶悪さを携えている事に、エルゴは閉口した。

 スキャナー越しに見える景色の中で、アヒル隊のブラッシングが壊れた家具を通過する。アヒル隊は調子を合わせて二、三擦っていくと、そこは見るからに体積が減っていた。
 最後の仕上げに取り掛かったアヒル隊のブラシが退けば、そこにあった筈の物体は既になく、ツルリとした床があるのみだった。ブラシに付着したあの泡…酸なのかアルカリなのか、定かではない洗浄剤には気を付けねばならない。

 見たところ、泡は建物自体を傷付けるものではないらしい。だが、壊れた家具をキレイサッパリお掃除してしまうのであれば、建物にとっての異物である猟兵たちは、当然のようにお掃除対象となるだろう。

「悪いが、掃除されるつもりはないな」
 エルゴは小さく呟くと、オートリニアライフルの残弾を確認する。幸いというべきか、アヒル隊の行動には一々ブラッシングが付いてくるようだった。不意打ちを警戒する必要はないと見て、エルゴは呼吸を整える。
 ここからの作戦は至ってシンプルだ。装備は万全、弾は充分。あと必要なのは──強いて言うならば、イレギュラーが発生しない運だろうか。

 己の鼓動の音に合わせて、エルゴは柱から身を乗り出す。そのままアヒル隊に向かって、間髪入れずにライフルの射撃を開始する。今は正確な狙いを付けずに、続けざまにライフルを発砲。当たればよし、当たらずとも気を引く囮になればよし。
 命中率は二分の一といったところだが、アヒル隊は、まんまとエルゴ──お掃除対象に向かって、泡立つブラシを向けて走り寄る。

「お掃除!お掃除!」
 先程まで垣間見えていた愛嬌はどこにいったのか。血走った目で暗闇を突っ切り、我先にとエルゴの元へ向かうアヒル隊はもはや、脅威と呼ぶには十分過ぎる姿を晒していた。

 エルゴは後退しながら射撃を継続する。牽制に足辺りを狙うも、アヒル隊の疾走は止まらない。エルゴは驚く様子もなく、今度は先頭のアヒルの頭部へ素早く狙いを付ける。アヒルの一体倒れるが、入れ替わった隊の先頭が、素早くブラッシングして諸共消し去り前進してくる。この数の多さでは、足止めになりそうもない。

「アタック!大型ゴミ対応モード!」
 一度改めて距離を取るべきか…エルゴの逡巡を掻き消すように、入れ替わった先頭アヒルがそう叫ぶ。かと思えば、一瞬でエルゴに近付いた。

 目前に迫るのは泡付きブラシの一撃──視界が凍り付き、思考が焼けるような感覚──エルゴは条件反射のようにイミディエイトナイフを素早く取り出し、アヒルの腕を切り払うと超酸性の一撃を何とか回避した。装備に泡が付着した気がするが、確認する余裕はない。急いで背を向けると疾走し、距離を取りながら頭に入った見取り図に従ってアヒル隊を誘導する。

 程なくエルゴが辿り着いたのは洋館の廊下、狭い一本道の通路。前方にはスキャナーからの反応はなく、勿論他の猟兵はいない。

「此処だ!」
 エルゴは踵を軸に反転すると、素早くライフルを構える。ライフルに込められているのは、走りながら出力を最大にまで調整した高加速貫徹弾。そしてエルゴの目の前に在るのは、狭い通路に阻まれて、すったもんだしながら一列に並んだアヒル隊。

「纏めて撃ち抜く!」
 チャンスは一度。だがその一度で充分だ。スキャナーに映し出されたそのシルエット、アヒルの頭部が重なる一瞬、エルゴはライフルの引き金を引く。

 轟音と共に弾は高速で吐き出され、圧縮粒子結晶製の後部が粉砕する。弾け飛ぶ粒子は爆発的な奔流を産み出し、アヒル隊の頭部を跡形もなく破壊した。

成功 🔵​🔵​🔴​

陽環・柳火(サポート)
東方妖怪のグールドライバー×戦巫女です。

悪い奴らはぶっ潰す。そんな感じにシンプルに考えています。
戦闘では炎系の属性攻撃を交えた武器や護符による攻撃が多い。
正面からのぶつかり合いを好みますが、護符を化け術で変化させて操作したりなどの小技も使えます。
全力魔法使用後の魔力枯渇はにゃんジュール等の補給で補います
名刀『マタタビ丸』は量産品なので、もしも壊れても予備があります。

 ユーベルコードは指定した物を使用し、多少の怪我は厭わず積極的に行動し他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。また例え依頼の成功のためでも、公序良俗に反する行動はしません。
 あとはおまかせ。よろしくおねがいします!


不破・静武(サポート)
年齢イコール彼女イナイ歴なので基本的な行動原理は「リア充爆発しろ」「リア充は死ね」です。オブリビオンは彼の中では全員リア充です。リア充に見えそうにないオブリビオンに対しては最初はやる気なさそうにしますが、状況を前進させる意思は一応あるので無理やり理屈をつけてリア充と決めつけます。一度敵とみなせば以降はもう容赦はしません。
オブリビオンに対しては基本的には『リア充ころし(焼却)』と『ガソリン』を併用して消毒という名の焼却を図ります。状況に応じて『リア充ころし(爆破)』や『リア充爆破スイッチ』等を併用して物理的にリア充爆発しろを実現させようとします。
見た目がやられ役なので逆襲くらう展開も可能です。


エジィルビーナ・ライアドノルト(サポート)
 私はエジィルビーナ、エジィでもルビーでも好きに呼んでくれていいよ。
困ってる人がいるなら助けたいし、倒さなきゃいけない強い敵がいるなら全力で立ち向かわなきゃ。全力で頑張るからね!
実は近接戦闘以外はあんまり得意じゃないんだけど……あっ、畑仕事ならチェリから教えてもらったから、少しはわかるよ!
力仕事はそんなに得意じゃないけど、足りない分は気合と根性でカバーするから任せといて!


ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し、怪我は厭わず積極的に行動します。他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。また、例え依頼の成功のためでも、公序良俗に反する行動はしません。
あとはおまかせ。よろしくおねがいします!



 廃墟といえば?リア充!ホラーと言えば?リア充!そんな偏見テンプレートを胸に不破・静武はこの洋館に居た。しかしいざ、UDCと対峙してみれば、そこにいるのはリア充とは言い難い、チャーミーなアヒル姿のUDCがあるのみ。

「どど、どどっどうしよう!」
 ブラシを構えて向かってくる非リア充──アヒル隊に、静武から生来の挙動不審が飛び出すのは、静武のモチベーションからすると、ある意味致し方ないところ。とはいえ状況はそうも言ってはいられない。

「キミ、武器は?」
 手の中の鉄棍の大きさを変えながら、そう問いかけるのはエジィルビーナ・ライアドノルト。静武とは相反して落ち着いた様子で、その鉄棍…青龍神珍鉄を構えると、目前に迫るアヒル隊を真っすぐ見据える。

「ぼぼ僕の武器は、りり、リア充ころし…爆弾と、がっ、ガソリンだね…!」
「うーん!流石に室内じゃ厳しいかもね…じゃあ、ここは任せて!」
 エジィは元気よく言葉を返すと、床を大きく蹴りアヒル隊の前へと飛び出す。慌てて急停止する隊の先頭を跳ね飛ばしながら、棍を操りブラシをかわすと、飛び跳ねるように立ち回る。
 青龍神珍鉄は水気を帯びた伸縮自在の棍。次に迫りくるブラシを弾いて、手の中でぐるりと回せば、飛び散る泡を渦巻く流水が流し去った。

 近接戦闘はエジィの十八番。とはいえ上層から出現するアヒル隊は想定外に数が多く、おまけに矢継ぎ早に次のアヒルが上階から訪れる。しかもここは元ホテルの洋館。上層への道を繋ぐ階段は、ひとつだけではなかった。

「う、うわあ!」
「嘘っ!?」
 エジィの背後で静武の悲鳴が上がる。振り返れば、そこにいるのは別の階段から降りてきたであろう、もうひとつのアヒル隊。

「分担!分担!」
「く…!」
 慌てて静武の助けに入ろうとするも、アヒル隊は素早くエジィを取り囲む。

 ──他の猟兵であれば、そこまでの危機的状況ではなかっただろう。されどここに居るのは静武という猟兵に他ならず、そしてリア充への感情が原動力の静武は、非リア相手にはなかなかスイッチが入らない。気弱な性格も災いして、今の静武はすっかり腰が抜けていた。
 一方で、勤勉な掃除屋のUDCことアヒル隊はこの掃除対象を、この絶好のチャンスを逃さない。

「アタック!大型ゴミ対応モード!」
「ひぃい!」
 静武を囲んだアヒル隊は一斉にユーベルコードを発動する。腰を抜かして無力な姿を晒す静武の前に、無慈悲にもアヒル隊の超酸性の泡を付けたブラシが迫る──!

 しかしそのブラシが静武に振り下ろされる、その寸前──窓の外から突如、一台のバイクのハイビームが静武を照らす。
 アヒル隊共々、静武がその眩しさに目を瞑った。次の瞬間、窓枠どころか壁ごと盛大にぶち破る。木片を吹き飛ばしガラスを粉々に砕きながら、飛び込んできたのは一台のモンスターバイク。その名を、猫車。

「待たせたな、テメェら!」
 エンジンを盛大に吹かしながら、名刀マタタビ丸を右肩に担ぐのは陽環・柳火。
 思わぬ闖入者には静武とてアヒル隊とて呆気に取られる。だが、柳火は敵が正気を取り戻す時間を与えるほど甘くはない。アクセル全開、片手でハンドルを切りながら、炎を纏った名刀マタタビ丸で無防備なアヒル隊を次々に薙ぎ払う。

「おい、オッサン!てめぇも猟兵なら根性見せやがれ!」
「でででも、ぼぼっ僕は、ばっ爆発しか…」
「はっ!ならとっておきの舞台を用意してやるよ!」
 静武の気弱な言葉にも、柳火はニヤリと笑うとユーベルコードを発動する。
 ユーベルコード火車合体──柳火は間髪入れずに己の愛車、モンスターバイク猫車と合体し、三メートル弱のロボットへとその姿を変える。巨体はそのままアヒル隊を一気に鷲掴むと、風通しの良くなった窓の向こう──室外へと次から次へと放り投げる。

「外なら派手にぶちまけられんじゃねぇのか!」
「そういうことなら、私も手伝うよ!グランスティード!」
 一足遅れてエジィもユーベルコードを発動する。雷光の星霊馬グランスティードを呼び寄せ騎乗すると、アヒル隊を蹴散らし追い立てながら、室外へと誘導する。

「出番だオッサン!」
「ぼ、僕は…!」
 柳火に発破をかけられ、静武は唸る。気弱な静武とて、成り行きで猟兵になったとて、静武にだって猟兵として戦う強い意思はある──生来の性格はなりを潜め、静武の心の内側に溢れ出す怒りと嫉妬は、燃え盛る炎が如く。

 アヒル隊は群れ…群れる者はパリピ…パリピと言えば…つまり──リア充!
 静武の連想は偏見増し増しのこじつけであれど、今この場に真実など必要ではない。必要なのは静武のモチベ、やる気のスイッチだけだった。アヒル隊にリア充を見出した静武のその顔に浮かぶのは、さっきまでのあの情けない顔ではない。怒りに歯を食いしばる静武の手のひらから、ユーベルコードの炎が溢れ出す。

「リア充は…消毒だ~~!!」
 汚物は消毒だ──静武が突き出す手の平から放たれるそのユーベルコードは、リア充への怒りにより生み出される炎。静武が抱くリア充への怒りそのものが具現化したもの。怒りに猛る高熱の炎は投げ捨てられ追い立てられたアヒル隊に次々と命中し、瞬く間に延焼していく。

「もっともっと燃えろお!!」
 ヒートアップした静武にはもはや容赦などない。燃え盛る炎に泡で対抗しようとするアヒル隊ことリア充たちに向かって、遠慮なく爆弾とガソリンをぶちまけてゆく。

 山中で夜空を照らし、勢いを増し、高く高く燃え盛る炎。その光景は──静武にとってはきっと皮肉なことに──リア充の代名詞ともいえるキャンプファイアーを連想させるもの。静武はそれを知ってか知らずか…ただ、燃え盛る炎の中のリア充に嘲笑の眼差しを向け、その高揚のままに悪役めいた笑い声を上げていた。

「マジ、か…」
 そして、最後のアヒル隊が炎の中で崩れ落ちる。アヒルの頭部が灰となって尽きる寸前、炎はふっと掻き消えていった。

 焼け焦げた臭いを掻き消すように、心地の良いそよ風が戦いを終えた猟兵たちの頬を撫でていく。

 UDCの掃除屋…否。リア充、ここに死す──。


 ──某日、夜の山中に吹き上げた炎と煙。山火事の通報を受け、地域の消防隊が慌てて駆け付ける頃にはしかし、ほんの欠片の炎もなく。ただそこには雑草が焼け焦げた跡と、燦々たる有り様の洋館の姿を晒すのみ。
 かつてホテルとして運用されていたその洋館に残された痕跡は、新たに幾つもの曰くを呼び…そうして人知れず、再開発の計画がとん挫したことは──また、別の話である。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​



最終結果:成功

完成日:2023年07月19日


挿絵イラスト