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ちびっこ、ふわふわ、だいぼうけん

#シルバーレイン #ノベル

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フィッダ・ヨクセム




 ふわっふわな黒豹さんをぎゅうと抱っこして、てけてけ、とことこ。
 ふらり歩いているのは、5さいのハイエナの男の子。
 そしてふと足を止め、道に立つバス停をじいと見上げてみる。
 いや、見目は5才児だけれど……彼は、ちっちゃくなったフィッダ・ヨクセム(停ノ幼獣・f18408)くん。
 そんな彼がちびっこになる事は、見た目を変えることも普段からあるから、特に驚くことではなくて。5才児どころか、人としては実はまだ3才児。
 夢路《 クロ 》も、いつもよりずっとおおきくて、ずるずる引き摺っちゃうくらいで。
 もふんと埋まるほどちっちゃくなったのは――「人恋しかった」のだ。
 そう、『ヒトに見せたがらない本質』は『寂しがり屋』だから。
 そして見つめるバス停は、自分と同じモノ。彼もまた同じ、バス停なのだから。
 けれど再び、とことこ歩きながら。
 きょろり周囲を見回すのは、「あの人」を探しているから。
 でもそれは、バス停であった自分の持ち主ではなくて。
 でかでかな子を贈ってくれた、好意を寄せている「あの人」。
 そもそも――|誰か《 ひと 》の傍に、居る機会をこれまでの人生ほぼ恵まれなかッた、と。
 いわゆる「主」に対しての熱量が、フィッダにはないのだ。
 主と居たのは数ヶ月だけで、「ホントの時間」を生きたのは、短い間だったし。
 自分は、ディアボロスランサー経由で外に持ち出された銀雨世界の詠唱兵器でしかなくて。
(「俺様には小さい姿で居た記憶も、思い出もない」)
 ……俺様には大事にしたい核がないんだ、って。
 また夢路《 クロ 》を抱きしめる、フィッダくんだけれど。
 だからといって、しょんぼりとかもしていなくて。
 むしろ、バス停にいる人達を見れば――でも、俺様は構ッてくれる奴が好きなんだよなあ……、なんて。
(「武器ではないバス停ッてーのは少なくとも、人の集まる場所にあるものだしさ」)
 それが何だかうれしくて、ちょっぴりえっへん。
 元気にぶんぶんと、しっぽを揺らしちゃうのだ。
 それに何より、夢路《 クロ 》がいっしょだから。
 黒外套を着た目つきが悪い黒豹さんは心底大事で、贈り主に似ていて。
 みんながいう主くらい好意があるかもしれない程……いや、好意を寄せているからこそ、傍に『ずッと』いたいのだけど。
(「俺様の願いは叶わない」)
 でもそれでも、フィッダくんはきょろりと探すのだ。
 そして、甘い匂いがするケーキやさんの前でちょっぴり止まったりはしたけれど。
 いざ、好きな「あの人」をさがす、だいぼうけん!
 けれど傍から見たら、完全に迷子でしかなくて……実際、迷子になっちゃったから。
「ボク、ひとりかい?」
 話しかけてきたのは、おまわりさん。
 そして、ちびっこだけどヤンキー風な雰囲気を醸しつつも。
「おう、俺様独りでも全然大丈夫!」
 無邪気に返すフィッダくんだけれど、5才児を放っておけず困り顔のおまわりさん。
 だが――その時だった。
「……フィッダ?」
 声をかけてきたのは、フィッダくんも知っている人――清史郎であった。
 同じヤドリガミだからか、特にちびっこな姿に驚きもせず、清史郎は迷子を引き取って。
 「あの人」を探すぼうけんのなかまに加わるけれど。
 フィッダくんはふと、清史郎の洋服を、くいくいっ。
 そして、元気良くおててをあげて、主張する。
 ――3時になッたから、おやつのじかん! って。
 そんなぶんぶんしっぽを振る5才児に、清史郎は微笑んで頷いて。
 フィッダくんは彼と一緒に、てけてけ、とことこ。
 夢路《 クロ 》を抱きしめなら向かうのだった。
 ぼうけん再開の前に――甘いおやつを、いっぱい食べに。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​



最終結果:成功

完成日:2023年04月16日


挿絵イラスト