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黎明に響く戦火の歌

#獣人戦線 #ヨーロッパ戦線 #ゾルダートグラード

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●西部戦線-エリアβ-

 絶え間無く鳴り響く銃撃音。地表を吹き飛ばす爆音。見渡す限りの地平線には空を覆うばかりの黒煙が立ち上っている。

「ようヴォルフ。まだ生きてるか?」
「ああ、今はな」

 塹壕に滑り込んできた茶毛の狼獣人にヴォルフと呼ばれた白毛の狼獣人は塹壕から前線の状況を覗きながら答える。

「なぁ、このままじゃジリ貧だぜ? 何か打つ手を--」

 茶毛の獣人が土壁にもたれ掛かって地面に座り込んだ瞬間に、2人のいる塹壕付近に砲弾が直撃し、吹き飛ばされた土が2人に降り掛かる。

「うわっ! ぺっ!ぺっ! ちくしょう! 食っちまった!」
「どうだ久々の飯は。旨いだろ?」
「ああ、最高だ。お袋の飯みたいな味がするぜ」

 ヴォルフが茶毛の獣人を揶揄っているとそこに息絶え絶えとなった伝令兵が転がり込んでくる。

「やられた! α隊が潰走した! ここも時期に囲まれる!」
「くそったれ! もう限界だ! 戦線を下げるぞ!」
「いや······奴らが素直に逃してくれるとは思えん。······おい、なんだこの歌は······」

 銃声や爆音、戦場の音に紛れながら確かに歌が聴こえて来る。戦場のあちらこちらから聴こえてくるそれは1人、また1人と加わるように大きくなっていった。
 それは、この戦場を枕に、最後まで抗おうとする獣人たちの悲壮の歌だった。

●グリモアベース

「緊急作戦です。ただちにブリーフィングを開始します」

 集まった猟兵たちに向けて、星凪・ルイナ(一般通過大学生・f40157)は突然に言い放った。が、すぐに居心地悪そうに目を逸らすとわざとらしく咳払いをした。

「ごめん。言ってみたかっただけ。······それじゃ、本題に入るよ」

 古めかしい地図が広げられると、猟兵たちはそれを取り囲むようにして一斉に覗き込む。それには戦場となっている地域の簡易な地形と、敵味方両軍の部隊位置を示した印、そして予想進軍ルートが赤と黒の線で引かれている。

「獣人戦線のヨーロッパ。そこのとある前線でゾルダートグラードと獣人たちの部隊が睨み合いになってる。お互いに塹壕を構築して守備を固めたものだから戦況は膠着状態に突入。獣人たちの部隊も現状を打破しようと策を講じているけど上手く行ってないみたいだね」

 ルイナがペンで地図上に大きく丸を書き記す。そこは敵塹壕の範囲を示したもので敵部隊の印が集中しているのが分かる。それに対して獣人たちの部隊は明らかにゾルダートグラードよりも少なく、孤立している部隊も見受けられた。

「この戦力差じゃ、戦いが長引けば長引くほど戦況は悪化していく。その結果が前線の崩壊って訳。だから――」

 ルイナが地図上にペンを走らせると複数の青い線が獣人たちの部隊に向かって描かれた。

「みんなにやって貰いたい事は獣人部隊に加勢して、部隊が壊滅する前に敵を叩いて前線を押し上げる事。敵の籠る塹壕からの重火器による激しい攻撃で獣人たちはまともに近づけずに攻めあぐねている状態。でも猟兵の力があれば突破は十分可能な筈。だからまずはここを攻めて。そしてここを潰せたとしても見ての通りに塹壕はあちこちにある。だから、すぐに索敵を開始して塹壕に潜んでいる敵を見つけ出して欲しい。索敵とは言っても戦闘の真っ最中な訳だから油断は絶対にしないでね。で、後の話は簡単。見つけ出した残りの敵をみんなで叩く。それだけ」

 次々とバツ印が付けられていく敵部隊の印を見ながら猟兵たちは各々、やるべき事を胸に刻んだだろう。あくまで記号の集合体でしかない地図上の盤面にその戦場の光景を思い描いた者も居たかもしれない。

「もう後が無いほど追い詰められてる獣人たちだけど彼らは決して諦めてる訳じゃない。まだ彼らは勝つ気でいる。決して士気は下がってない。だから、その士気を維持した状態で彼らと協力していけばきっと戦況を有利に出来る筈。みんなが彼らに力を貸す事を彼らが知れば士気も上がるだろうし、彼らもまたみんなの為に勇敢に戦ってくれると思う」

 ルイナは地図から顔を上げると猟兵たちの顔を見渡し、そして真っすぐに前を見据え言葉を続ける。

「彼らは逃げる気になれば逃げる事は出来た筈、でもそれをしないのは――その戦線の後ろに街が、彼らの故郷があるから。この戦線が突破されたら――想像通りになる。だから彼らは最後まで戦う気でいるの。だから――助けてあげて」

 その言葉に猟兵たちは力強く頷いた。世界を、人々を救う。それこそが猟兵の使命だ。覚悟など既に決まっていた。ルイナもそんな彼らを見て小さく頷くと、転移の準備を始める。いよいよ持って猟兵たちの戦いの開幕だ。

「それじゃ、よろしくね」


鏡花
 ●初めましての方は初めまして。新人MSの鏡花と申します。

 今回のシナリオは獣人部隊と協力しながらのゾルダートグラートとの純戦メインとなっております。

(1章)
 友軍である獣人部隊と共に敵塹壕へ攻勢を仕掛ける集団戦です。

(2章)
 戦場を獣人部隊と共に進軍し、潜伏する敵部隊を索敵する冒険章です。索敵の成果次第では、猟兵たちに有利な状態で3章に進む事が可能です。

(3章)
 前章で見つけ出した敵軍を獣人部隊と共に襲撃し、撃破する集団戦です。

(プレイングボーナス)
 獣人部隊との協力、または、味方部隊の士気を上げる行為に関する行動にボーナスがあります。

 獣人部隊は勝手に戦っていますが何か指示があれば素直に従ってくれます。
 獣人たちの士気は猟兵の戦いをみればグングン上がっていきます。思いっきりカッコよく戦って下さい!

 では、皆さんのプレイングをお待ちしております!
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第1章 集団戦 『火炎放射兵』

POW   :    ステーキになりやがれ〜!
【火炎放射器】から【燃え盛る炎】を放ち、敵及び周辺地形を爆発炎上させる。寿命を削ると、威力と範囲を増加可能。
SPD   :    10秒後が楽しみだぜ〜!
敵を狙う時間に比例して、攻撃力・命中率・必殺率が上昇する【火炎】を武器に充填し続ける。攻擊すると解除。
WIZ   :    吠え面かかせてやるぜ〜!
【火炎放射器】を使って「どのように攻撃するか」を予想できなかった対象1体に、【火炎放射】の一撃が必ず命中する。

イラスト:うぶき

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


灰色の地平線に幾つもの黒煙が立ち昇る。どこか遠くから断続的に砲弾の発射音が響き渡れば戦場に怒涛の如く轟音が炸裂する。そのような状況下にも関らず獣人たちは武器を手に苛烈な敵の攻撃に晒されながらも必死に応戦している。逃げ出そうとする者は一人も居なかった。

「おいおいおい、こっちはもう弾薬も少ないってのに向こうの弾は無尽蔵かぁ?」
「無駄口叩いてないでとにかくありったけの弾をぶち込んでやれ。ったく、増援でもありゃまだ幾らかはマシなんだがな」
「面白い冗談だな。こんな地獄に駆けつけるような物好きなんか――」

 僅かな会話すらも許さないとばかりに彼らの塹壕に掃射の嵐が吹き荒れる。飛び散る土の破片が彼らの体を打ち付けた。その攻撃の僅かな隙を見て塹壕から顔を覗かせてみれば、火炎放射器を構えた敵部隊がこちらを殲滅せんとその瞳をギラつかせている。

「全員伏せろ!! ――畜生、クソッタレ共め……!」

 もはや獣人たちの運命は風前の灯火だ。今、その運命を否定する為。猛攻吹き荒ぶ戦場に猟兵たちは降り立った――。
ジャドス・ジャンジダ
(アドリブ、絡み歓迎)

よう兄弟(同胞)、ここが地獄だって?
なら、住み慣れた我が家みたいなもんだな。
だとすると、ゾルダートの連中を客として歓迎してやらないといけないのは道理だろう。

おまけに、やつらは肉を焼けばステーキだと思ってやがる。
本当の料理ってのを教えてやらないとな。
まぁ、ひき肉の作り方ぐらいしか教えてやれないが。

UC発動。
歓迎のパーティーはこれからだ。
殺された連中も、奴らをたっぷり丁寧に歓迎したい気持ちで溢れてるぜ。

俺が突撃するから、友軍には後方支援を頼む。
敵は見つけ次第、爪で引き裂いてやる。
遠くから撃ってくるやつには、ガトリングとバズーカで遊んでやるぜ。



 鉛弾が頭上を掠め、砲弾が大地を揺るがせば戦友が吹き飛ばされる。常に爆風に晒される戦場でその狼獣人はライフルを構えた状態で塹壕から顔を覗かせ、反撃のチャンスを伺っていた。

「神よ、我らに祝福を……って、この地獄に神なんかいる訳ねぇか……」

 巻き上がる砂塵の中からジリジリとこちらに近づいてくる敵影をその視界に捉えていると、ふと周囲に影が落ちた。

「よう|兄弟《同胞》。此処が地獄だって?なら、住み慣れた我が家みたいなもんだな」

 その声に狼獣人が振り返れば、見上げる程の体躯……第2階梯のクマ獣人であるジャドス・ジャンジダ(クマのパンツァーキャバリア・f39916)がスキットルを片手に見下ろしていた。

「うおっ!? 驚かせんなよ! アンタ……何者だ?」
「そいつは悪かったな。だが心配するな。加勢に来た」
「加勢だって!?」

 ジャドスが彼らの救援に来た事を告げると獣人は驚きの声を上げる。それを聞きつけた周囲の獣人たちもジャドスの元へと集まって来る。困惑の声もあるが、その多数は歓喜の声だった。――しかし、その声を掻き消すように轟音と共に激しい地響きが彼らを襲った。

「おっと、悠長にしてる暇はねぇな。さっさとゾルダートの連中を歓迎してやろうぜ。それが家に上がり込んで来た客への道理ってもんだ」

 ジャドスは言い放つとスキットルの中身を飲み干し喉を潤す。周囲の獣人たちもそれに同調して次々に武器を掲げた。

「よしその意気だ。奴らは肉を焼けばステーキだと思ってるようだがなっちゃいねぇ。本当の料理を教えてやろうぜ。尤も俺は挽肉しか教えられんがな」

 ニヤリと口角を上げると軍服の袖を捲り、いとも簡単に塹壕を登り銃撃と爆撃が襲う地上へとその身を晒す。

「ようし、ちょっくら行くとするか」
「おいおい、蜂の巣じゃ済まないぜ?」
「問題ない、俺が前線を抉じ開けてやる。歓迎のパーティーはこれからだからな。なぁ、お前らもそう思うだろ?」

 ジャドスが虚空に声を掛ける、その刹那、その肉体は爆発的に活力に満ち荒々しくその毛並みが変化していく。戦場で散った|兄弟《同胞》たちを従えるような、色濃く感じられる血と死の気配。血肉と呪詛に塗れた夜の森の神、その名に相応しい姿だ。

「突入する! 援護は頼んだぜ!」
「あ、ああ! 聞いたかお前ら! |兄弟《同胞》を絶対に死なせるなよ! 撃ちまくってやれ!」

 獣人たちは雄叫びを上げると皆一様に塹壕から身を乗り出し敵部隊の迫る砂塵へと一斉射撃を行う。それと同時にジャドスは地面を蹴りつけ弾幕飛び交う戦場へ飛び込んでいくと、一瞬で敵前衛部隊へ肉薄した。

「なんだ? 観念して特攻か? へへ……ならお望み通りに――ぐべっ!?」

 敵兵士がジャドスの姿を視認し、火炎放射器を構える――が、遅い。瞬時に懐に潜り込み腕を振り払うジャドスの爪がその身体を引き裂いた。

「よう、ご注文の品を届けに来たぜ」
「相手は1人だ!囲んじまえばこっちのもんだ!」

 敵兵士がジャドスを取り囲む、同時にジャドスが振り返り地面を抉るように腕を振り上げれば砲弾のような轟音と共に兵士たちは木の葉のように宙に舞った。

――刹那。

「ちくしょう! 舐めんじゃねぇ!」

 近くに潜んでいた兵士が突然飛び出しジャドスの背後を取る。火炎放射器の引きがねに掛かる指に力がこもり放射口に紅蓮の炎が放たれる――事無く兵士は地面に突っ伏した。
 ジャドスが後ろを振り向けば後方でライフルを構えた|兄弟《同胞》たちが歓声を上げていた。

「ひゃっほー! 命中したぜ!」
「後ろは任せろ|兄弟《同胞》! やっちまえ!」
「やるじゃねえか|兄弟《同胞》。後は任せな」

 背後の憂いが無くなったジャドスは敵の苛烈な攻撃の要である敵部隊の籠る塹壕をその視界に捉えるとニヤリと口角を上げる。

「さて、遊んでやるぜ。すぐに音を上げんじゃねーぞ!」

 銃撃と爆風の中、ジャドスは巨大なガトリングを構える。その砲身は回転と共に激しい音を響かせ凄まじい数の弾丸を敵塹壕に向けて発射する。その弾丸は鉛色の雨となり塹壕へ降り注ぐと其れ諸共敵兵士たちを粉々に粉砕し吹き飛ばす。思ってもいなかった反抗にゾルダートグラード軍は浮足立ちその堅強だった守備は呆気なく崩れていく。

「クソ! クソ! クソッ!! なんなんだテメェはよぉ!!」

 半狂乱になった火炎放射兵たちが堪らずに塹壕から飛び出すと、その目に映るのは本来キャバリア用の兵装である超大型バズーカをこちらに向けるジャドスの姿だった。

「おら、遠慮しないで喰らってけよ。俺様特性のご馳走だぜ」

 不敵に笑うジャドスの構えたバズーカ砲から砲弾が放たれる。それは獲物の喉元に喰らい付こうとする獣のように火炎放射兵たちへと迫ると、閃光と共に激しい爆音を掻き鳴らし世界を真っ白に染め上げる。世界に色が戻る頃には既に敵兵士の姿はおろか、塹壕すらも跡形も無く消え去り、黒煙が空へと昇るだけだ。今此処に、ジャドス・ジャンジダの手によって反撃の狼煙が上げられたのだ。

 ――戦場に獣人たちの咆哮が高らかに響き渡った。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アポリト・アペルピシア

クックックッ…勝ち目のない戦と知りながら、なおも抗うか
ならば今よりこの地を我が手によって、真の地獄と化してくれよう
さあ、恐怖と共に胸に刻め!我が名は魔王アポリトなり!

ふん、我が威容にさっそく雑兵共が群がって来たな
火炎放射器で焼き払うつもりのようだが、そんな小火は我が念動力に逸らされ届く事は無い
では返礼がわりに我が炎の魔法も披露しようではないか
おっと…「ほんの小さな火」のつもりだったが、消し炭にしてしまったかな?

…どうした獣人ども、何を呆けている?
もはや逃げるなどという選択肢は無いのだ、せいぜい無様に抗って見せよ!
ハーッハッハッハッ!

※こんな物言いですがちゃんとオブリビオンだけ倒しています



 爆音と銃声、そして悲鳴が絶え間なく響き渡り、黒煙立ち上る地獄のような戦場を一望する影が一つあった。

「クックックッ……勝ち目のない戦と知りながら、なおも抗うか。ならば今よりこの地を我が手によって真の地獄と化してくれよう!」

 銃弾飛び交う戦場を前に威風堂々と口上を述べるアポリト・アペルピシア(魔王アポリト・f31726)。その姿は敵味方問わず、注目を集めるには十分だった。

「なんだアイツは? 敵……にしては攻撃を仕掛けてくる様子が無いが……味方なのか?」
「知らねぇよ。気になるなら直接聞いてこいよ」
「あんな物騒な事を言ってる奴に近づける訳ないだろ」

 両軍の困惑する視線を浴びながら、地を揺るがす爆炎すら背景にし戦場に立つ魔王アポリトはそれはまさに悪徳と混沌の権化……真なる邪悪――と勝手に掛けられた期待に答える為、一生懸命に振る舞っている。

「さぁ、恐怖と共に胸に刻め!我が名は魔王アポリトなり!」

 アポリトが高らかに名乗りを上げると、それに答えるように眼をギラつかせた火炎放射兵たちが意気揚々と塹壕から姿を表した。

「はん! 魔王だが覇王だが知らねぇが、そんなに地獄が好きなら送ってやんよぉ!」
「親切な俺らに感謝しろよぉ?」

 火炎放射兵たちは下卑た笑みをその顔に張り付かせてアポリトの前に立ち塞がる。明らかに一人に対して過剰なまでの人数だがアポリトは怯むどころか今なお意味深に高笑いしている。

「ふん、我が威容にさっそく雑兵が集まって来たな。どれ、お手並み拝見と行こうか」
「はっはー! 燃えちまいなぁ!」

 アポリトの言葉が終わるのも待たずに火炎放射兵たちはその引き金を引いた。一列に並んだそれは一斉に紅蓮の焔を吐き出し、荒れ狂う波のようにうねる。周囲一帯はまるで太陽が落ちてきたかと錯覚するほど明るく照らされ、強烈な熱波が襲う。しかし、その炎の波はアポリトに届く事なく、彼女の目の前で海が割れるが如くに逸れて行った。

「どうした? よもや、それで終わりか?」

 魔王の力。その強力な念動力により炎をねじ曲げ、軌道を逸らしたのだ。
 そんな光景を見せられ、困惑し狼狽える火炎放射兵たちの前に降臨せし魔王。まさに地獄の支配者という言葉が相応しい。

「ククク……健気で微笑ましい小火だな。どれ、褒美に我の魔法を1つ見せてやろう。心配しなくともいいぞ? 全力は出さんからな」

 アポリトが唖然とする火炎放射兵たちにその大きな黄金の瞳を向けるとにわかに魔力が流動し大気を揺らした。更にアポリトの黄金の角の禍々しい輝きが妖しく強まる。

 妖しく笑う魔王の姿に火炎放射兵たちは戦々恐々として身構える。しかし、予想とは裏腹にアポリトが放ったのは灯火のようにも見える小さな火の玉だった。それは紅く燃える流れ星のように兵たちの元へ真っすぐ向かっていく。とんだ拍子抜けだと兵たちは顔を見合わせた。

「おいおいおい、こけおどしかよ! ビビらせやがって!」
「さっきのもただのハッタリっつー訳――」

 ――視界を白く塗りつぶす閃光。――耳をつんざくような爆音。――吹き付ける熱を帯びた爆風。

 それは一瞬の出来事だった。アポリトの目の前に広がるのは残火が揺らぐ焦土。数多にいた火炎放射兵たちの姿は掻き消えている。アポリトの放った小さな火――その焔に飲み込まれ塵一つ残らず消失したのだ。

「おっと…「|ほんの小さな火《ボリーダ》」のつもりだったが、消し炭にしてしまったかな?」

 満足そうに焦土を眺めるアポリトの背後では獣人たちが困惑の表情を浮かべ、ざわついている。

「な、なんだ今のは……? あいつがやったのか?」
「俺にはそう見えたが……味方って事でいいのか?」

 次々と困惑の声が獣人部隊から上がる中、不意にアポリトは彼らの方を振り返ると大げさに天を仰いで見せた。

「……どうした獣人ども、何を呆けている? もはや逃げるなどという選択肢は無いのだ、せいぜい無様に抗って見せよ! ハーッハッハッハッ!」

 今まさに、目の前で大量の敵を屠った魔王の威厳、苛烈さ、そしてどことなく奇妙な立ち振る舞いに獣人たちは思わず姿勢を正すと、まるで魔王の部下であるかのように整列し、アポリトに向かって敬礼をした。この苛烈な戦線の中、反撃の要となるであろう魔王軍が此処にひっそりと爆誕したのであった。

成功 🔵​🔵​🔴​

堂島・アキラ
戦場の空気ってのはいいもんだな。楽しめそうな予感がするいい匂いだ。
ここなら思いっきり暴れても誰にも文句言われないだろうしな。

|違法薬物《クスリ》キメてテンション上げるぜ。コイツがあれば地獄の戦場も天国に見えるってもんよ。
ま、実際にあの世に行くのは|火炎放射兵《アイツら》だけどな。

オレに作戦なんてものはねえ。ユーベルコードを発動して敵に突っ込むだけだ。
加速すれば10秒はおろか1秒だってオレの姿を捉える事はできやしねえさ。
瞬きする間にマンティスでぶった斬ってやるぜ。

こうやって大暴れして注目を集めりゃ、味方が前進するきっかけにもなるだろ。敵によそ見をする暇なんざ与えねえぜ。



 戦火の熱を帯びた風が肌を撫でる。火薬と煙の匂いが充満し、銃撃と爆音をBGMに兵士たちは|踊っている《戦っている》。そんな戦場には不釣り合いとも思える美しい金髪が風にそよぐ可憐な少女――堂島・アキラ(|Cyber《サイ》×|Kawaii《かわ》・f36538)は、その碧眼に戦場を映し心を弾ませていた。

「戦場の空気ってのはいいもんだな。楽しめそうな予感がするいい匂いだ。ここなら思いっきり暴れても誰にも文句言われないだろうしな」

 アキラが戦場の空気を堪能していると、その視界に動きが見えた。遥か前方、苛烈な弾幕を獣人部隊たちに浴びせ続けていた塹壕から火炎放射器を背負った一団が姿を現したのだ。現状、獣人部隊の決死の抵抗で盤面上は拮抗しているように見えるがその戦力差は圧倒的。ゾルダートグラードがその物量に任せて攻勢を掛ければその結果は火を見るより明らかだ。

「動きやがったか。こりゃ本当に地獄だな――よし、テンション上げてくか!」

 アキラは鼻歌混じりに意気揚々と|違法薬物《クスリ》――通称『EDEN』、その一錠を口に放り込む。するとその義体はまるで羽根が生えたかのように軽く感じられ、思考はやけに鮮明になる。活力はその身に溢れんばかりに漲り、高揚感は留まる事なく増していく。その名が冠する通りにまさに楽園にいるかのような夢心地だ。

「ハッ! 最高の気分だ! まるで天国だな――尤も、あの世に行くのは|火炎放射兵《アイツら》だけどな」

 その刹那、アキラは戦場を一望できる小高い丘陵を風を引き裂くかの如く、|地獄《戦場》に向かって駆けだした。

 怒号と爆音に埋め尽くされた戦場では今もなお獣人部隊が決死の抵抗を試みている。しかし、戦況は良くなる処か、確実に悪化の一途を辿っている。更にはこちらに迫りくる凶悪な火炎放射兵たち。それでも彼らに残されているのはただ戦うという道のみだった。

「おい! 奴らの射程範囲に入るまであとどれぐらいだ!」
「待ってろ、確認してやる!」

 獣人の一人が塹壕から顔を覗かせると、ニヤニヤした悪辣な表情を浮かべている火炎放射兵たちの姿がハッキリと視認できた。

「ちくしょう! 完全に射程内だぞ!」
「クソッタレ! 一発お見舞いしてやる!」

 もう一人の獣人がその身を塹壕から乗り出して一矢報おうと銃撃を試みるが、それは火炎放射兵たちに命中する事なく、お礼とばかりに苛烈な火炎となって帰って来た。二人の獣人は寸前で塹壕に転がり込み事なきを得るがもはや猶予など残されていないのは明白だ。

「最悪だ、俺の自慢の毛並みが焦げちまった」
「テメェ! いきなり耳元で撃つんじゃねぇ!」
 
 そんな二人の頭上を飛び越えていく影が1つ。

「よう、お疲れさん。後は俺に任せな」

 獣人二人が見たそれは戦場を駆ける可憐な少女――堂島アキラだ。アキラは塹壕を軽々飛び越えると飛び交う銃弾、炸裂する爆風、それらを軽々しく避け、あっという間に火炎放射兵たちへと肉薄する。言葉通り、目にも留まらぬ速さで接近したアキラの存在は未だ、兵たちの思考外だ。

「ん……今、なんか近づい――ぎゃっ!?」

 異変に気が付いた時にはもう遅い、懐に潜り込んだアキラのマンティスセイバー『MuramasaⅩ』がその喉元を掻っ切り赤い雨を周囲に撒き散らさせた。

「アタシ、可憐に参上♪ なーんてなぁ! どーだ最高にKawaiiだろ?」

 血の噴水を噴き上げる兵を蹴り倒すと、それを唖然と見つめていた周囲の兵。それらに瞬時に距離を詰め、次々とその刃で屠っていく。あちこちで鮮血が飛び散り、戦場を濡らす。兵たちは慌ててアキラの行方を探すが照準にその姿を捉える事は未だ叶わなかった。

「なんなんだよ! 一体なにが起きてやが――ぐべっ!?」
「ひぃ……!? や、やめろ! こっちに来るんじゃ――」

 アキラが戦場を縦横無尽に駆け回り、刃を振るえば鮮血の花びらが舞う。目の前の敵の体を引き裂けば、その勢いのまま回転するように返す刃で背後の敵をも沈めていく。時には敵の頭を踏み台に浮き島を跳ね渡るかのように宙を駆ければ、その通り道には深紅の血柱が噴き上げられていった。
 戦場を舞うように敵を屠っていくその姿はまさに|命知らずの死神《エッジ・ランナー》。もはや誰にも止められない。

 「おいおいおい! なんだか知らねーが滅茶苦茶ツエーじゃねぇか!」
 「あいつ等全員、奴さんに気を取られてるぜ! 今のうちに前線を押し上げて俺らも援護するぞ!」
 「ひゃっほー! アンタ最高にイカしてるぜ! やっちまえー!」

 アキラの大立ち回りにより、進軍の好機を得た獣人部隊が敵塹壕へ攻勢を掛ける為に塹壕から飛び出し進んでいく。先ほどまで圧倒的有利だったゾルダート軍の前線は死神の手によって瓦解した。怒号と爆音で埋め尽くされていた戦場は今や歓喜と声援に埋め尽くされている。

「みんな応援ありがとー♪ ――さぁ、次のお相手はどいつだ?」

 楽し気に口角を上げる、アキラの視線は既に次の得物と捉えんと戦場のその先へと向けられていた。

成功 🔵​🔵​🔴​

赤星・緋色(サポート)
なんやかんやで事件を解決に導こうとします
フリーダムかつアグレッシブなアドリブも可

合わせ等も自由にどうぞ



「あらら、こりゃ物凄い事になってんね」

 閃光と轟音が飛び交う戦場を見つめる赤き双眸。赤星・緋色(サンプルキャラクター・f03675)は荒れ狂う大海の如き戦場を一望できる丘の頂で困った様に眉を顰めていた。しかし、その表情はすぐに笑みの零れる明るい表情へと変化したかと思うと緋色はまるで短距離走者のようにその身を屈める。

「さてと……じゃあ、早くみんなを助けてあげないとね」

 そんな呟きと同時に緋色の足元……足に装着された、まるでインラインスケートの様な装置。ブースターレッドがけたたましい音と共に発動する。大気を利用し駆動力を高めるそれの力により緋色は戦闘機が離陸するかのように丘を飛び立ち黒煙立ち昇る灰色の空へと駆け上がった。
 灰色の空を切り裂くように白い線を描きながら疾走する緋空のその姿はすぐさま敵味方問わずに注目を集める。

「な、なんだ! 戦闘機が来やがったのか!?」
「違う……あれは……人か!?」

 獣人部隊が自分たちの頭上を翔けていく紅の弾丸を見上げれば、ゾルダートグラードの兵士たちは己に迫る脅威を本能で感じ取り武器を構えた。銃撃と爆撃で荒廃した大地、その上で口を開けて獲物を待つ餓えた獣の如き火炎放射器の銃口が待ち受ける、正真正銘の死地に緋色はその瞳を紅く輝かせ、笑みのままに飛び込んでいく。

「総員撃てぇー!! 焼き落としちまえ!!」

 咆哮にも近いその叫びと共に空に向かって無数の火柱が上がる。空を駆ける緋色は体を器用に宙で捻ると右へ左へ、下から上へと火柱の間を縫うように白い線を描きながら流星の如く疾走する。大地と空が逆転し、身体はとうに重力を見失った。然し、関係ない。緋色の目的は唯一つ。迷う訳など無かった。

 「ははっ! 残念でした! 次は私から行くよ!」

 灰色の空を旋回し、緋色は再び火炎放射兵たち目掛けて空を翔ける。なおも加速するその速度のまま彼らの頭上に達すれば緋色の手には銃器のように見える奇妙なガジェットが召喚される。それを器用に構えると星屑を散らすように閃光し、雨のような弾丸をその地上へと叩きこんだ。火炎放射兵たちはその弾丸に身体を撃ち抜かれ地に伏せ、或いは、火炎放射器への着弾による爆発――そして誘爆により瞬く間にその数を減らしていく。

「い、一瞬で奴らを蹴散らしちまいやがった!」
「ひゃっほー! 粘ってみるもんだぜ! こんな心強い援軍がいればこっちのもんだぜ!」

 緋色により前線は抉じ開けられ、獣人部隊は関の声を上げると、その勢いのままに敵塹壕へと乗り込んでいく。星の導きにより、彼らはまた一歩、希望へと近づいたのだ。

成功 🔵​🔵​🔴​

ヴィトレル・ラムビー
これだけ劣勢でもへこたれないとは見上げた連中だ
共闘し甲斐があるというものだな

状況的に囮か切り込み役がほしいだろう
適当に周囲に合図して、私はUC使用で一気に突っ込む
先祖伝来の力というやつだ。獣人に負けぬ脚力を見せてやろう

強化した身体能力で走って跳んで、一気に距離を詰めてやる
敵の照準がこっちを向いても構わない。その辺の対応は獣人達に丸投げだ
焼肉にされるのはごめんだからな、援護は任せたぞお前達
なに、少しくらいぎりぎりの方が上手くいった時に愉快だろう

敵の部隊に辿り着いたらこっちのもの
同士討ちを警戒させるように奥に突っ込んで、思い切り暴れよう
愛用の大斧を力任せに振るう

さあ、どちらが狩る側か教えてやる



 銃声が鳴り響けば爆音がそれを消し飛ばす。どこからか悲鳴が聞こえた気がするがあれは遠く――厭、近くから聞こえたのだろうか?混沌を極めた戦場に、ジャラジャラとした装飾に兎の耳を模した頭飾りの男。ヴィトレル・ラムビー(斧の狩猟者・f38902)の姿があった。
 
(これだけ劣勢でもへこたれないとは見上げた連中だ。共闘し甲斐があるというものだな)

 ラムビーの双眸に映るは未だ闘志と希望を失わぬ獣人部隊と苛烈な戦場。それは彼に燻る闘志の炎を燃え上がらせるには十分なものだった。
 ラムビーは周囲を一瞥し、戦況を確認する。敵の激しい攻勢により身動き出来ない友軍。着実に迫りくる敵軍。ともすればラムビーは己が果たすべき役目を心得る。

「私が切り込もう。その隙に攻勢に転じるんだ。やれるか?」

 ラムビーの提案は戦況を打破せんと作戦を練っていた獣人たちをざわつかせた。

「正気か?」
「だが、やらねばならん。そうだろう?」
「……あんた、名前は?」
「ラムビー。ヴィトレル・ラムビーだ」
「オッケーだラムビー。その気概に我々も答えよう」

 獣人の返答を聞き届け、ラムビーは泰然自若と前線に立つ。瞼を綴じ、呼吸を整える。――刹那。その身体に活力が漲っていく。その血に刻まれた先祖伝来の力はラムビーの身体能力を2倍、3倍……否、それ以上に跳ね上げた。

「よし……出るぞ」
「「「応!!」」」

 その言葉を合図に獣人たちが呼応すればラムビーは地面を蹴りつけ淀んだ戦場の空気を切り裂くように駆ける。

「進め進め進め! 邪魔者は俺らが排除する!」
「狙撃兵は援護だ! 分隊は左右から進軍! 残りは俺と一緒にラムビーの後詰めに向かうぞ!」

 戦場に吼える獣人部隊。その声を受けラムビーは速度を加速させていく。地を這うが如くに腰を落とし疾走する狩人の頭上を敵味方の弾丸が音を割き飛び交っていく。
 強行を阻止せんと敵斥候が立ち塞がれば味方の狙撃が敵の頭部に紅い華を咲かせていく。崩れ落ちていく兵と兵の間を縫うように駆けるラムビー。順調に思われた矢先、一列に並んだ火炎放射器が行く手を阻んだ。

「ヒャハハ! 残念だったなぁ!これなら避けようがねぇだろ!」

 その通り、このまま進めば勿論。例え上を飛び越えようとしても火炎の餌食になるのは明白だ。しかし、ラムビーは跳んだ。その脅威的な脚力を以てして跳んだのだ。

 「残念だったな。私には勇敢な戦士たちが付いているのだ」

 1秒。たった1秒早く、もしくは遅かったら全て失敗に終わっていただろう。ラムビーが跳んだその瞬間、獣人たちの放った弾丸の掃射がラムビーを狙う火炎放射兵を撃ち抜いて見せた。一部の弾丸は火炎放射器に直撃し爆発を起こさせた。
 その爆風すらラムビーは飛び越え、遂には敵塹壕――敵の喉元に降り立った。突如、現れたラムビーに唖然とする敵兵たち。静寂――確かにその一瞬、世界は静寂に包まれた。狩人の間合い――狩りの時間だ。

「やりやがった! マジで辿り着きやがったぞアイツ!」
「最高だぜ! クソ野郎共をぶっ飛ばしちまえ!」

 後方から上がる歓声。前線の強硬突破を成し遂げたラムビーに獣人たちは湧き上がっている。それは更にラムビーの闘争心に薪を焚べ、激しく燃え上がらせた。

「当然だ。思い切り暴れさせて貰うとしよう」

 呼吸を整え、構えるラムビーの手に握られたのは無骨な外見の長柄の斧。手に馴染む相棒、魔獣狩りの斧――それ自身も彼との共闘を待っていたとばかりに鈍く輝いていた。

「さあ、どちらが狩る側か教えてやる」

 その言葉と同時にラムビーは敵部隊の更に奥深くへ切り込むように駆けだし、地面を割る程の踏み込みと共に力任せに斧を振るう。

「――なっ!?」

 殺気すら感じさせぬ一撃、唖然と立ち竦んでいた彼らが反応できる筈も無く、複数人が纏めて木の葉のように吹き飛ばされる。その光景を見て我に返った兵たちは慌てて武器を構えた。

「囲めばこっちのもんだ! 焼いちまえ!」
「馬鹿野郎! 味方まで巻き添えを食っちまうぞ!」
 
 ここは敵陣の中、当然敵は同士討ちを恐れて自由に動く事などできない。もはや此処は狩人の庭。――音を。――呼吸を。――気配を。その全てを感じ取り、無駄一つ無い動きで次々に獲物を狩り取っていく。

「よしよし、無事だったかラムビー。そろそろ俺たちも混ぜてくれよ」
「お前たちこそな。では、仕上げとするか」

 ラムビーの陽動に乗じて前進に成功した獣人部隊が合流するとラムビーに加勢しようと次々に塹壕へと乗り込んで来る。もはや、敵にそれを止める術はなく。瞬く間にラムビーたちは塹壕を陥落せしめたのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 冒険 『地獄の塹壕戦』

POW   :    積極的に攻撃を仕掛ける

SPD   :    敵の潜んでいそうな箇所を探す

WIZ   :    敵の作戦を読み、その裏をかく

👑7
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 戦場では今もなお激戦が繰り広げられている。しかし、猟兵たちの参戦により戦局は大きく獣人部隊に傾いた。
 制圧した塹壕を新たな拠点として継戦に備えていると斥候兵が帰還する。

「すまん、空振りだ。拠点の位置は掴めなかった。奴らは前線を下げて態勢を整えようとしてやがる。戦力を集中させたのか兵の気配の無い塹壕があちこちにあるな。」
「だが、罠の可能性もあるぜ。奴らが身を潜めてて下手に近付いたら蜂の巣かもしれんぞ?」

 斥候の報告に獣人たちが唸っているとリーダー格と思われる獣人の男が彼らの言葉を遮り、そして猟兵たちに視線を向けた。

「敵陣の様子が分からん以上は下手に動けないのは確かだが、この好機を逃すのは即ち我々の敗北だ。無理矢理にでも奴らを炙り出すか、索敵で拠点を見つけ出して本隊を叩くしかないだろう」

 そう言って男はニヤリと口角を上げた。

「だが、俺たちには頼りになる味方が付いている。そうだろう?」

 獣人たちの希望漲る視線が猟兵たちに集まる。彼らに猟兵たちはどう応えるのだろうか。今、運命を別つ索敵戦が始まろうとしていた。
 猟兵、獣人部隊の攻勢によりゾルダートグラードは前線を後退させた。しかし、塹壕に潜んだ彼らの苛烈な攻撃は止まず、戦場は未だに断続的な銃声と硝煙の臭いに支配されている。その戦場の前線に仇死原・アンナ(地獄の炎の花嫁御 或いは 処刑人の娘・f09978)の姿はあった。この戦火の中ですら思わず息を飲むほどに、風が運ぶ火花の灯りがその漆黒の髪を艶やかに映し出す。その傍にはライフル銃を構えた獣人が数人同行していた。

「止まれ」

 塹壕の中を先導するように進んでいた獣人がハンドサインで後ろに続いていたアンナたちに待機の合図を送り、懐中から紙の地図を取り出すとそれを全員に見えるように地面に広げる。

「これ以上の進軍はこの塹壕帯の突破が不可欠だ。時間は掛けていられない、つまり一気に叩く必要がある。――そこで、お前さんの出番という訳だ。やってくれるか?」
「分かってる……その為に来たんだもの……力を貸すわ……」

 獣人に視線を向けられたアンナはそれに気付いているのかいないのか、どこかぼんやりとした様子で答える。

「おいおい、テンション低いな……まぁ、いい。頼りにしてるぜ。それじゃ、作戦開始だ! 行くぞ!」

 その獣人の言葉に他の獣人たちは関の声を上げ、果敢に塹壕から飛び出し敵の潜む塹壕に向かっていく。同時に彼らの頭上を飛び超えていく影が1つ。仇死原・アンナだ。ぼんやりした雰囲気は消え、処刑を執行せんとする冷徹な漆黒の双眸は戦場に向けられている。

 獣人部隊とゾルダートグラード軍双方の銃弾が飛び交おうが彼女は気に留める事など一切なく、標的に向かい疾走する。そんな処刑人の姿は敵方に脅威を感じさせるに十分であり、彼らの意識は全てアンナに向けられる。

「ちぃ! 蜂の巣にしてやれ!」

 輪唱のように銃声が響けばその弾丸の群れはアンナの体を貫かんと宙を裂いて彼女に迫る。

「ワタシは処刑人……死と救済を齎す者……」

 そんな呟きを彼女が零したかと思えば、その途端に彼女自身から噴き出した炎獄の業火がその身に纏う。その彼女から繰り出される、真っ赤な炎で彩られた鉄塊の如き大剣『錆色の乙女』の一撃はその弾丸を悉く葬りさった。

「なっ!? なにをしやがった……!?」

 銃撃を剣の一振りで掻き消す、その目を疑うような光景に思わず兵たちの攻撃の手が止まる。――それを処刑人が見逃す筈は無かった。

「故に貴様たちはもはや逃れられない。――処刑を執行する」

 炎が踊っている。燃え盛る大剣から繰り出される死を齎すその軌道は鮮やかで――炎舞と呼ぶのに相応しい。その炎に焼かれ、ゾルダートグラード兵たちは悲鳴すら無く次々と斃されていく。

「なんなんだ! なんなんだよコイツは……!!」
「此処は既に地獄だ、恐れる必要など無い。あとはただ眠るだけだ」

 断頭台の如く振り下ろされる大剣。重い一撃が敵を葬ったかと思えば、鋭い斬撃がにじり寄っていた敵を切り伏せる。敵は瞬く間にその数を減らしていき。残った敵も勝機は無いと見て我先にと塹壕を放棄して退いていく。そんなゾルダートグラード兵たちに向け、その大剣の切先を真っすぐに突き付けると静かに瞼を閉じ、深く呼吸をする。そして再び瞼を開けると共にその口を開いた。

「兵士たちよ! 進め進め進め! 仇なすものを食らい尽くせ!」

 その言葉に湧き上がる獣人たち。仇死原・アンナ、彼女の活躍で塹壕帯突破作戦は成功を収めた。
仇死原・アンナ(サポート)
普段はぼんやりですが敵前では獄炎操る処刑人と化します

鉄塊剣『錆色の乙女』,妖刀『アサエモン・サーベル』、戦闘用処刑道具『赤錆びた拷問器具』、『鎖の鞭』等装備してる物を使います

UCは指定した物をどれでも使用

普段の口調は(私、あなた、呼び捨て、ね、よ、なの、なの?)
戦闘中は(ワタシ、お前、呼び捨て、言い捨て)

捜索・探索時はぼんやりですが真面目に仕事をします
敵の出現や危険が迫ると処刑人になります
同行者とは出来る限り協力をします
一般人や病人子供には優しく接しますが悪党には容赦なし
機械の操作は苦手ですがキャバリアの操縦はそこそこ(本職に比べたら劣る)



 猟兵、獣人部隊の攻勢によりゾルダートグラードは前線を後退させた。しかし、塹壕に潜んだ彼らの苛烈な攻撃は止まず、戦場は未だに断続的な銃声と硝煙の臭いに支配されている。その戦場の前線に仇死原・アンナ(地獄の炎の花嫁御 或いは 処刑人の娘・f09978)の姿はあった。この戦火の中ですら思わず息を飲むほどに、風が運ぶ火花の灯りがその漆黒の髪を艶やかに映し出す。その傍にはライフル銃を構えた獣人が数人同行していた。

「止まれ、一旦待機だ」

 塹壕の中を先導するように進んでいた獣人がハンドサインで後ろに続いていたアンナたちに待機の合図を送り、懐中から紙の地図を取り出すとそれを全員に見えるように地面に広げる。

「これ以上の進軍はこの塹壕帯の突破が不可欠だ。時間は掛けていられない、つまり一気に叩く必要がある。――そこで、お前さんの出番という訳だ。やってくれるか?」
「分かってる……その為に来たんだもの……力を貸すわ……」

 獣人に視線を向けられたアンナはそれに気付いているのかいないのか、どこかぼんやりとした様子で答える。

「おいおい、テンション低いな……まぁ、いい。頼りにしてるぜ。それじゃ、作戦開始だ! 行くぞ!」

 その獣人の言葉に他の獣人たちは関の声を上げ、果敢に塹壕から飛び出し敵の潜む塹壕に向かっていく。同時に彼らの頭上を飛び超えていく影が1つ。仇死原・アンナだ。ぼんやりした雰囲気は消え、処刑を執行せんとする冷徹な漆黒の双眸は戦場に向けられている。

 獣人部隊とゾルダートグラード軍双方の銃弾が飛び交おうが彼女は気に留める事など一切なく、標的に向かい疾走する。そんな処刑人の姿は敵方に脅威を感じさせるに十分であり、彼らの意識は全てアンナに向けられる。

「ちぃ! 蜂の巣にしてやれ!」

 輪唱のように銃声が響けばその弾丸の群れはアンナの体を貫かんと宙を裂いて彼女に迫る。

「ワタシは処刑人……死と救済を齎す者……」

 そんな呟きを彼女が零したかと思えば、その途端に彼女自身から噴き出した炎獄の業火をその身に纏う。その彼女から繰り出される、真っ赤な炎で彩られた鉄塊の如き大剣『錆色の乙女』の一撃はその弾丸を悉く葬りさった。

「なっ!? なにをしやがった……!?」

 銃撃を剣の一振りで掻き消す、その目を疑うような光景に思わず兵たちの攻撃の手が止まる。――それを処刑人が見逃す筈は無かった。

「故に貴様たちはもはや逃れられない。――処刑を執行する」

 炎が踊っている。燃え盛る大剣から繰り出される死を齎すその軌道は鮮やかで――炎舞と呼ぶのに相応しい。その炎に焼かれ、ゾルダートグラード兵たちは悲鳴すら無く次々と斃されていく。

「なんなんだ! なんなんだよコイツは……!!」
「此処は既に地獄だ、恐れる必要など無い。あとはただ眠るだけだ」

 断頭台の如く振り下ろされる大剣。重い一撃が敵を葬ったかと思えば、鋭い斬撃がにじり寄っていた敵を切り伏せる。敵は瞬く間にその数を減らしていき。残った敵も勝機は無いと見て我先にと塹壕を放棄して退いていく。そんなゾルダートグラード兵たちに向け、その大剣の切先を真っすぐに突き付けると静かに瞼を閉じ、深く呼吸をする。そして再び瞼を開けると共にその口を開いた。

「兵士たちよ! 進め進め進め! 仇なすものを食らい尽くせ!」

 その言葉に湧き上がる獣人たち。仇死原・アンナ、彼女の活躍で塹壕帯突破作戦は成功を収めた。

成功 🔵​🔵​🔴​

三条・姿見(サポート)
招集を受けた援軍だ。…俺も力を貸そう。
指示があるならば、そのように。猟兵として務めは果たす。

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主武装は刀と手裏剣。…相手の数に応じて使い分ける。
薬液が効く相手なら、毒や麻痺薬も使用する。

---

賑やかな場所はどうにもな…だが鍛錬となれば話は別だ。
励むとしよう



 かつての記憶――それが仄かに宿る家紋が刻まれた戦装束。それに身を包んだ三条・姿見(鏡面仕上げ・f07852)。彼の目には、かつて、己の元となった鏡――その本分を果たすかのように戦場のありのままの姿を映していた。暫く、何かに想いを馳せるようにそれを見つめていた姿見に1人の獣人が声を掛ける。

「おい、アンタ。もしかして噂の援軍か?」
「……ああ、招集を受けて来た。力を貸そう」
「そりゃ、ありがたいこった。だが――」

 獣人の視線が姿見の所持する戦装束と同じ家紋が刻まれた刀――封刃・写に向けられる。大方、その弾丸飛び交う戦場で近距離武器だけな事に一抹の不安を覚えたのだろうと姿見は察し、それを否定するように言葉を返す。

「問題ない。懐に入ってしまえばこっちの方が有利だ――実際に見せた方が早いな。俺が切り込んで敵を攪乱させる、機を見て手を貸してくれ」
「ああ、アンタらの実力は十分見せられたから分かってるさ。――了解、援護する」

 砕けた敬礼をする獣人を見て、姿見は無言で頷くとすぐに行動を開始した。単身で塹壕内を移動していき、敵の籠る塹壕の近くまで接近する。姿見が塹壕から向こう側を覗いてみれば、ゾルダートグラード兵たちが塹壕の中で近づいてきた者にいつでも一斉掃射を仕掛けられるよう虎視眈々とその目をギラつかせている。

 姿見は一度、塹壕から頭を引っ込ませると瞳を閉じ、息を深く吸う。問題ない――敵はこちらの攻勢で浮足立っている。そのような者たちなど敵では無い。戦火の熱を帯びた戦場の生暖かい風が凪ぐ――その瞬間に姿見は塹壕から飛び出すと一気に敵の潜む塹壕へと距離を詰めた。

「来やがった! しかも一人たぁ、舐められたもんだなぁ!」
「これだけの銃を相手に刀とは見上げた野郎だな。お望み通り撃ち殺してやるぜ!」

 刀を抜き放ち、向かってくる姿見を視認した兵士たちは次々に騒ぎ立て、間髪入れずに銃撃を繰り出した。

「撃ってくるのが分かっていれば問題ない」

 自身に向かって放たれた弾丸。数発が姿見に迫るが、彼はそれを最低限の動きだけで躱していく。

「運の良い野郎だ! 次は確実に当ててやる――ぜ?」
「さっき当てておくべきだったな。次など無い」

 兵士がライフル銃の弾薬を装填し、再び顔を上げる頃には目の前に迫る白銀の刃――それは兵士の頸をいとも簡単に断ち切り、鮮血と共にその身体は音を立てて地面へと崩れ落ちた。姿見の襲撃にゾルダートグラード兵はどよめき立つがすぐに態勢を整え、銃剣にて反撃を試みる。しかし、其処は既に姿見の間合いだ。瞬時に切り返し、振るわれる返す刃に1人、また1人と地に伏せる。

「ひゃっほー! 俺たちも混ぜろよ!」
「奴らは混乱してるぞ! 我らも加勢する!」

 混乱する塹壕内に獣人たちが雪崩れ込んで来る。姿見がゾルダートグラード兵の注意を引き付けていた事により、足止めをされていた部隊が前進する事に成功したのだ。彼らは姿見に加勢せんと次々とゾルダート兵に攻撃を仕掛け、蹴散らしていった。

「騒がしいな――」

 三条・姿見。彼の迅速な襲撃は、また1つゾルダートグラードの拠点を陥落せしめた。

成功 🔵​🔵​🔴​

ヴィトレル・ラムビー
丁度良い、逃げた獲物を追うのは得意分野だ
特に私の相棒がな

出番だぞ、飛べエクスウェラ
UCで鷹のスピリットを召喚、的にされる前に、最大速度で低空をぐるっと飛ばしてやろう
飛行中は視界を共有
この戦場の感じからすると、上からのチェックには無警戒だと思うが…
土を被ったり死体の山に身を隠したりするものなのか?
兵隊諸君の見解も聞こうか

というかお前達、多分私より鼻が利くだろう
何かわからんのか

敵を見つけたら味方と情報共有だ
まあ、小部隊なら皆で手榴弾の遠投大会でもやるか
あの塹壕に放り込んだやつが優勝でいいな?

敵本隊なり大部隊なりが見つかったら、こちらも塹壕を駆使して忍び寄る
可能なら、一気に奇襲をかけたいところだな



 今なお、何処からか銃声と爆音が響き渡る灰色の地平線をヴィトレル・ラムビー(斧の狩猟者・f38902)は見つめていた。

「丁度良い、逃げた獲物を追うのは得意分野だ――特に私の相棒がな」

 ラムビーが片腕を静かに上げると、その腕を止まり木にするように風を纏う鷹のスピリット、エクスウェラが凛と――すました表情で降り立つ。

「さぁ、出番だぞ相棒。――飛べ、エクスウェラ」

 刹那、戦場の淀んだ空気を吹き消すように澄んだ一陣の風が吹いた。同時にエクスウェラはその翼を力強く羽ばたかせ、灰色の空へと飛び立っていく。敵の警戒を掻い潜る為、低空を最大速度で翔けるエクスウェラの視界には点在的に戦端が開かれた戦場が映る。その視界はラムビーにも共有されるが所々に掘られた塹壕、地上に転がる死体ばかりで、これといった敵の位置は掴めない。

「さて、上への警戒はなさそうだが……お前たち、この戦場で身を隠すとしたらどこだか分かるか? 土やら死体の山に隠れたりするものなのか?」

 ラムビーが継線に備え慌ただしく動き回っている獣人に声を掛けると、なんだなんだと他の獣人達も駆け寄ってきてラムビーを囲む。

「そうだな、1人ぐらいなら浅く掘った地面だとか死体の中に紛れ込めば見つかりづらいだろうな」
「嘘言うなよ、穴掘って寝そべってたら危うく尻を撃たれる所だったぜ」
「お前は目立つからな。次は痩せてから行けよ。――で、どうする? 虱潰しに死体を調べて周るか?」

 次々と言葉を発する獣人達、そんな彼らに対してラムビーはふと思い浮かんだ事を口に出す。

「というかお前達は鼻が利くだろう。何か分からんのか」
「おう、自信はあるぜ。だが、こんだけ煙だの火薬だの臭いがする場所だと何がなんだか」
「待て……やけに西側の火薬の臭いが強くないか? ラムビー、確認できるか?」
「承知した」

 共有するエクスウェルの視界に再び集中する。目標は獣人の言う戦場の西側。相変わらず変わらない景色が続くが――その視界の端。軍服を土に塗れらせた敵兵たちが塹壕内へ潜り込んでいく姿があった。

「見つけたぞ。――そう遠くない距離だ」

 ラムビーは何人かの獣人を引き連れて上空からその姿を確認した塹壕の対面に位置する場所まで移動する。

「どうする? 仕掛けるか?」
「まぁ、待て。わざわざ近づくまでもないだろう。そこでだ――1つ勝負をしよう。ソレをあの塹壕に投げ込んだ奴が優勝、なんてどうだ?」

 そう言って獣人が腰に付けた手榴弾を指すと、獣人達は顔を見合わせにやりと笑う。

「そりゃいい提案だぜラムビー。さっきはお前に見せ場を取られたが今回はそうはいかねーぞ。そら、お前の分だ」

 ラムビーを含めたその場にいた全員が手榴弾を手に取り、塹壕の壁際で一列に並ぶ。そして獣人の1人が指で数字の3を示すとその数字を口に出しながら指を折り畳んでいく。

「3――2――1――GO!GO!GO!」

 その獣人が叫ぶと同時に全員が塹壕から身を乗り出し手榴弾を塹壕に向かって投げつける。明後日の方向に飛んだ物もあれば、そもそも距離が足りていない物がある中、数個の手榴弾が綺麗な曲線を描きながら敵塹壕内部へ転がり入る。と、その数秒後にあちこちから爆音が鳴り響き、塹壕からは悲鳴が上がる。

「よっしゃ! 見たか! 俺の腕前を!」
「おいおい、入ったのは俺のだ。お前のは真っ先に地面に落ちたやつだ」

 獣人達が己の功績を主張する中、空を旋回していたエクスウェラの視界に敵の動きが察知された。塹壕の爆破によりその近くに潜んでいた敵部隊が動揺し急遽移動の準備を始めたのだ。ラムビーは即座に獣人たちと情報を共有し、すぐさま敵部隊に向けて移動を始める。空から敵の動きを察知している以上、敵に察知されないよう塹壕内を移動する事は安易だ。ラムビーたちは短時間の間で敵部隊をその射程範囲に収めた。

「いつでも行けるぜラムビー。合図は任せた」
「ふむ、合図か。なら少し趣向を凝らしてみる事とするか」

 そういうとラムビーは静かに立ち上がり、そして狩人の弓を構えた。矢を弦に番え引き絞る――重いが手慣れたものだ。

「さぁ、狩りの時間だ」

 その言葉と共に放たれた矢は、淀む戦場の空気を祓うかのように切り裂いて宙を翔け真っすぐに敵兵へと向かう――まるで世界が緩やかに感じられる。敵兵の眉間へと突き立つ矢じり。衝撃で後ろに吹き飛ぶ兵はそのまま背中から地面へと激突した――その瞬間、世界は速度を取り戻す。

「奴らを蹴散らしてやれ! 突撃だ!」

 戦場に雄叫びが響き渡る。獣人部隊は塹壕から身を乗り出し、敵部隊へ銃撃を浴びせながら戦場を駆ける。敵の位置を掌握した状態での奇襲は見事なまでの成功だ。訳も分からずに敵兵たちは銃弾、そして矢に射抜かれ地に伏せていく。堪らずに撤退の判断を下したゾルダートグラードだったがその被害は甚大なものだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アポリト・アペルピシア
クハハハハ!奴らめ、おめおめと巣穴に逃げ帰ったか!
予想外に噛みつかれたのが堪えたと見える!
このまま奴らの巣穴ごと消し飛ばしても良いが、
それではショーとして面白くあるまい?
ここはデビルキングワールドより|我が軍勢《炎の魔王軍》を喚び出し、今度は此方が数と炎の力を以て敵地を蹂躙するとしよう
我には及ばぬとは言え、一人一人がオブリビオンをも喰い破る無慈悲な怪物(気さくで良い子)の群れを相手にどれだけ抗えるか、見ものよな!

さあ獣人どもよ、汝らにも我が軍勢と轡を並べる事を許そう
我こそはと思う者は共に進むがよい!



「クハハハハ! 奴らめ、おめおめと巣穴に逃げ帰ったか! 予想外に噛みつかれたのが堪えたと見える!」

 残火が燻る、焼け野原となった戦場に高笑いが響き渡る。その声の主であるアポリト・アペルピシア(魔王アポリト・f31726)はふよふよとその身を宙に漂わせながら、先ほど我先にと逃げ出していった敵兵の姿を思い返していた。塹壕に立て籠もった所でこの魔王の前では無意味。そのまま消し飛ばしてしまっても良かったが、それではショーとして面白みが無い。なにより魔王として皆の期待に応える為に更に威厳を見せつける必要があった。
 そこでアポリトはある1つの妙案を思い立ち、ニヤリとその大きな金の瞳を細めた。

「ふむ、ならば今度は此方が|我が軍勢《炎の魔王軍》による数と炎の力を持って奴らを蹂躙するとしよう。我には及ばぬとは言え、一人一人がオブリビオンをも喰い破る|無慈悲な怪物《気さくで良い子》の群れを相手にどれだけ抗えるか、見ものよな!」

 再び魔力が胎動し、アポリトの周辺に幾何学模様で構成された魔法陣が展開される。それがアポリトの魔力で満たされたかと思うと魔方陣から強烈な光が放たれ周囲を白く染め上げた。その光が治まるとそこに現れたのは大群の炎の魔族たち。デビルキングワールドより招来されし魔王アポリトの眷属、その|悪辣《良い子》達はこの地獄にて大暴れしようと張りきっていた。

「奴らが吹き飛んだと思えば今度はなんだ?」
「あの魔王だとか言う奴が呼び出したように思えるが……一応、味方……なのか?」

 魔王アポリトの一撃により焦土と化した戦場、突如出現した魔族達。その展開に理解が追い付かず茫然としている獣人達にアポリトの黄金の瞳が向けられる。

「何を呆けておる。さあ獣人どもよ、汝らにも我が軍勢と轡を並べる事を許そう。我こそはと思う者は共に進むが良い!」

 高らかにそう告げるアポリトに獣人達は最初こそ困惑しお互いに顔を見合わせていたが、アポリトの威厳に満ちた力強い言葉は彼らの闘争心に火を付けた。

「よく分からねぇが、よく分からん奴らばっかりに活躍されたんじゃ俺らの立つ瀬がねぇな」
「ああ、俺らの故郷だ。俺らが守ってみせる! 魔王様! 俺らも一緒に戦わせてくれ!」

 獣人達はこぞってアポリトの麾下に加わる事を切望する。逃げ出そうとする者など誰一人居なかった。魔王の軍勢に獣人部隊が加わり、立ち並ぶ光景は壮観だった。アポリトはそれを見て満足気に瞳を細め、敵兵が逃げて行った方角を威風堂々とした立ち振る舞いで見据えると、アポリトの腕代わりとして念動力によって浮遊する巨大なガントレットがその先を指し示した。

「ククク……活きの良い奴らだ。よかろう! なれば我が軍勢達よ! 進め! 腰抜けの雑兵共を蹂躙せよ!」

 魔王アポリトの号令が響けば、呼応するように雷のような雄叫びを上げて魔王の軍勢が、戦場に潜むゾルダートグラード軍を塹壕ごと飲み込まんと進撃を開始する。それにはもはや身を隠すなど意味を成さず、塹壕に潜み奇襲を仕掛け反転攻勢を目論んでいたゾルダートグラード軍はその作戦を早々に破棄せざるを得なくなり、即座に一斉掃射や砲撃で反撃を試みるが魔王の軍勢は止まらず、その喉元に喰い付いた。

「ちくしょう! なんなんだコイツラは! なんで突っ込んで……ぎゃっ!?」
「ワルの俺等に後退の二文字はないぜ! コゲちまえ!」
「お、落ち着け! 装備はこっちの方が上だ! 近づく前に撃ってしまえば――ぐわっ!」
「おいおい、俺らの事を忘れんなよ? これ以上、俺達の故郷を好きにさせるかよ」
 
 一方ではアポリトの配下達が敵兵を焼き尽くし、一方では獣人部隊が撃ち倒す。魔王の連合軍はやけに息の合った連携で敵を蹂躙していく。敵の攻撃は決して生易しくは無く、負傷する獣人も居たが、いかにも攻撃あるのみと言った印象しか抱かせなかったアポリトの配下達が律儀にも獣人達を丁寧に救護した為、犠牲者は皆無だった。

「クハハハハ! 我が配下の気配りは恐ろしかろう? 攻守共に完璧な我が軍勢の布陣に恐れ戦き泣き叫ぶが良い!」

 魔王の無慈悲かつ配慮の行き届いた采配を受けた軍勢。もはやゾルダートグラード軍にそれを防ぐ術は無く、敵の構築した前線は瞬く間に崩壊し、部隊は敗走を余儀なくされ再びちりじりとなって逃げていく。
 戦場には魔王とその眷属達、そして獣人部隊の歓喜の声がまるで壮大な合唱曲のように灰色の空に響いていた。

成功 🔵​🔵​🔴​

ロージー・ラットフォード
あたしも参戦、援軍にきたよ
まずは側にいる兵士に近況を尋ねる
進行状態とか
いい感じに進めてる?
勢いに乗って攻めかかろう
がんばろ
味方側の兵士を労ったり元気づけたり
士気は大事だからね

召喚したあたしの部下たち、呪銃兵の技能【スナイパー】で後方支援をする
はい並んでー、銃を構えー
向かってくる敵をばんばん撃っていこう
味方に手を出してくるやつを優先的に始末
脳天を狙って……撃つ
あらかた一掃できたらそのまま前進
戦線を上げていくよ



 遂に訪れた反撃の機会。その二の矢を継がんと陣営内を慌ただしく獣人達が奔走する、その中に白く小柄な人物がちょこちょこと動いていた。それは僅かに欠けた耳が印象的なハツカネズミの銃兵。ロージー・ラットフォード(snuffed it・f40203)だ。

「ねぇ、状況はどう? いい感じに進めてる?」

「どうしたお嬢ちゃん。救護隊ならもっと後方だぜ」

 第一印象から兵士は小柄なロージーを救護隊だと勘違いをするが、ロージーの所持するライフルに気が付き、直にその考えを改める。

「――と、すまねぇな。嬢ちゃんも前線に出るのか?」
「うん。あたしも参戦、援軍にきたよ。だから今の状況を知りたくてさ」
「オッケーだ嬢ちゃん。簡単に説明するぜ」

 兵士の説明は次の通りだ。まず敵が塹壕内に身を隠し、待ち構えているという事。そして、前線の突破に時間を掛けられる状況ではなく、敵の目論見は分かっているが強行突破をせざるを得ないという事だ。

「もうすぐ作戦が開始されるが――まぁ、無謀だろうな。嬢ちゃんもこんな作戦に参加する必要はないぜ。命は大事にした方がいい」
「なるほどね、ありがと」

 状況を理解したロージーは何を思ったのか周囲の獣人達に向かって言葉を発した。

「みんな聞いて。これから危険な作戦が始まる。けど、心配しないで。あたしが作戦を成功に導いてあげる。ずっと頑張ってきて疲れてると思うけど、この勢いに乗って攻め掛かればきっと勝てる。私もがんばるから、みんなもがんばろ」

 ふわふわした雰囲気を醸し出すロージーのその言葉に、疲労と緊張で表情が強張っていた獣人達に笑みが浮かぶ。

「嬢ちゃんにそこまで言われちゃあ、俺らも頑張らないといけねーな」
「よっし、もう一踏ん張りするとするか!」

 重苦しい緊張感に包まれていた陣営の雰囲気はロージーの一言により好転し、兵士達の表情には活気が宿り戦意も高まっているのが見て取れた。
 
 ――間もなくして作戦決行の時間が訪れる。
 
 ロージーは後方で兵士達を援護する為に見晴らしの良い場所で待機する。そして作戦通り、獣人達は敵の潜む塹壕地帯を突破する為に前進を開始した。

「援護は任せたぜ、嬢ちゃん」
「了解、任せて」

 獣人達が前進を開始したのを確認したロージーは自らの指を噛む。その傷口からじわりと血が滲み、そして一滴の雫となり地面に落下して弾ける――。

「|九鼠急襲《キューソカムカム》――展開」
 
 ロージーのその言葉と共に、飛び散った血がそれぞれ9体の呪銃兵の形を成した。

「はい並んで―、銃を構え―」

 ロージーの指示に、呪銃兵達は規律の取れた精鋭部隊の如く整列し、素早く身を伏せ銃を構える。その光景に満足気なロージーも同じ様に銃を構えるとスコープを覗いた。スコープを通して見える光景は前進を続ける獣人部隊の姿――と、そこで状況が動く。

「伏せろ! 奴らが来るぞ!」

 誰かがそう叫ぶと同時に、塹壕内に潜んでいたゾルダートグラードの兵士達が飛び出すように姿を現した。彼らは獣人部隊に嵐のような銃撃を浴びせながら彼らを殲滅せんと移動を開始する。

「ちくしょう! 数が多すぎる! これじゃ身動きが出来ないぞ!」
「無理ある作戦なのは分かってたが……限度ってもんがあるだろ!」

 獣人部隊もなんとか応戦しようとするも敵の猛攻でそれも許されず、全滅も時間の問題かと思われたその瞬間――。

 何重にも重なった銃声が鳴り響く――。空間を切り裂くような鋭い音に呼応し紅い華が咲く――。

 頭部に紅い華を咲かせ、次々と崩れ落ちていく敵兵。その姿を遠目に見守りながらロージーはライフルに弾丸を装填する。地面に落ち、転がっていく空の薬莢、そのカラカラという音を聞きながら彼女は呟く。

「私が導くと言ったでしょ。敵は全員――排除する」

 白き魔弾の射手――その姿はまるで死神だ――。

「ナイスだ嬢ちゃん! 進め進め進め! この援護があれば突破できる!」

 ロージーの援護を受け、獣人部隊は前進を続ける。それを阻むために敵兵が動きを見せればロージー達の弾丸が即座にそれを沈めていく。進軍を阻む、敵の銃弾。護る為の白き魔弾の狙撃。それらが飛び交う戦場の中を獣人部隊は前進を続け、次々と塹壕を陥落させていく。兵を各地に潜ませて獣人部隊への奇襲を目論んでいた彼らの作戦は、ロージーの狙撃によりかえって裏目に出た。

「粗方、片付けたかな。それじゃ私たちも前に出ようか」
 
 作戦の成功を確認したロージーはゆっくりと地に伏せたその身体を起こし、軽やかな動きで味方と合流すべく戦場を駆けていく。

 ゾルダートグラードはやむを得ず、撤退を選択し身を引いた。しかし、もはや彼らに猶予は残されていない。この戦場の前線を押し上げた事により、ついに獣人部隊はゾルダートグラード本隊のその喉元に迫る事に成功したのだ。

成功 🔵​🔵​🔴​




第3章 集団戦 『突撃歩兵』

POW   :    グラナーテ!
【対人柄付手榴弾、対戦車集束手榴弾、火炎瓶】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
SPD   :    アタッケ!
【銃剣による刺突】【自身の爪や塹壕スコップによる斬撃】【取っ組み合いからの殴り合い】で攻撃し、ひとつでもダメージを与えれば再攻撃できる(何度でも可/対象変更も可)。
WIZ   :    アングリフ!
【着剣した騎兵銃を撃ちながら銃剣突撃による】突進によって与えたダメージに応じ、対象を後退させる。【砲兵隊による迎撃を阻害する突撃支援砲撃】の協力があれば威力が倍増する。

イラスト:FMI

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 激戦に次ぐ激戦にて各戦線を押し上げた猟兵、獣人部隊は遂に敵軍の喉元に喰らい付いた。もはや策を講じる必要はない。全戦力を投入した総力戦――それを制した方がこの戦いの勝者となる。
 両軍が睨み会う前線にてリーダー格の獣人が声を上げる。

「遂にこの時が来た! 我々はこの戦いに勝利し、生きて必ず故郷に凱旋をする! それは決して夢物語などでは無い! 我々には勇敢な戦友達が共にいる!」

 獣人達の視線が猟兵達に向けられる、心から信用している。友に向ける視線だ。

「総員に告ぐ! 生き延びろ! 全員で生きて帰れ!――進軍せよ!」

 リーダー格の獣人が叫ぶと、それに呼応した獣人達が吼える。それと同時に両軍が進撃を開始した。相手は今までとは違う、決死の精鋭部隊だ。しかし、怯んでなどいられない。

 今、此処に――最後の戦いが始まる
ヴィトレル・ラムビー
ははは、最後は総力戦か、血が滾るというものだな
良い機会だ、UCを駆使してもう一度先陣をやってやる
手を貸せミーリムよ
……手を貸せって。な? 今良い所なの分かるだろ? 不貞寝はやめろ

適当になだめすかしつつ突撃だ
敵に不運を、私に幸運を。心強い兵士達の援護もあるんだ、貴様等の弾など当たるものかよ
ある程度近付けたら弓を放って斧に持ち替え、嬉々として突っ込むぞ
泥臭い戦闘なら慣れたものだ、長柄のリーチを活かして近接戦闘を制し、懐に入られたら短剣を引き抜いて応戦
多少の負傷は覚悟の上
連撃を途中で断ち切り、一体ずつ確実にしとめてやる

さあ続け戦士達。食い破るべき喉笛はこっちだ
――ここまで来たんだ、祝杯まで生き残れよ



 両軍の雄叫びが灰色の空に響き渡り、今までとは桁違いの銃声と爆音が戦場を包み込む。並の者ではそれだけで戦意を喪失させてしまっただろう。だが、赤い双眸で戦場を見つめるヴィトレル・ラムビー(斧の狩猟者・f38902)は違う。

「ははは、最後は総力戦か、血が滾るというものだな」

 命運を賭けたこの舞台は狩人の魂に火を付けたらしい。その表情はどこか愉し気で、荒事に塗れた日々に身を置くラムビーの本当の姿を垣間見せていた。

「良い機会だ。私がもう一度、先陣をやってやる。手を貸せミーリムよ」

 ラムビーが名を呼ぶと、長年の相棒である兎のスピリット。不運なるミーリムが姿を現す。しかし、ミーリムはと言うと不機嫌そうにラムビーを一瞥すると顔を逸らしてしまった。ラムビーとミーリムの間になんともいえぬ空気が漂う。

「…………手を貸せって。な?」
「……」
「今良い所なの分かるだろ?」
「……」

 ラムビーが説得を試みるが、ミーリムは協力の姿勢を見せる処か、身体を丸めてしまう。

「不貞寝はやめろ。……不満があるなら後で聞いてやるから一先ず力を貸してくれ」

 そんなラムビーの言葉にミーリムは渋々と立ち上がる。

「ははは! ラムビー。お前も手を焼かされる事があるんだな!」
「手を焼かせると言えば、ガキ共が俺の帰りを待ってるんだ。だからさっさと勝って帰らないとな。頼りにしてるぜラムビー!」

 これまで戦場を共にしてきた獣人達が信頼の籠った視線と言葉をラムビーに送る。彼はそんな彼らの信頼に応えるべく、更にその闘争心を滾らせた。

「そうだな――私が先陣を切り敵陣を崩してやる。……行くぞお前たち」

 待っていましたと言わんばかりに歓声が上がる。そしてラムビーが駆けだすと、獣人達も血気盛んにその後に続き突撃を敢行する。誰一人として敗北を考える者はいない。これは勝利に向けての前進だ。
 
 突撃を敢行したのは敵軍も例外ではない。両軍は激しい攻撃を展開する。耳を劈くような銃声が響き、敵の一斉掃射がラムビーに襲い掛かる。またラムビーを援護せんと獣人部隊の援護射撃も飛び交う。――銃弾の嵐が吹き荒れる戦場でさえもなお、ラムビーの猛る魂を鎮めるには至らない。

「加護よ在れ。敵に不運を、私に幸運を――心強い兵士達の援護もあるんだ、貴様等の弾など当たるものかよ」

 |首刎ね《ラビットフット・オーバードライブ》――彼はミーリムの加護をその身に纏い戦場を駆け抜ける。

 数多の銃弾が彼の肌に一筋の赤い線を刻もうとする距離を掠り、数多の砲弾が周囲の土を吹き飛ばして土砂の雨を降らせる。しかし、不思議な事にそのどれもが彼を捉える事はない。まるで見えざる意思が事象を捻じ曲げているかのような不可思議――そんな彼の幸運とは対照的に不幸が敵兵に降りかかる。

「……ッ!? ちくしょう! 弾詰まりだ!」
「狼狽えるな! 替えはいくらでもある! 弾幕を途切れさせるな!」

 精鋭部隊なだけはあり、突如の不運にも彼らは機敏に対処する。だが、それでも僅かに隙は生まれ。その隙をラムビーは逃さない。その速度を落とさぬままに構えられた弓から放たれた矢が敵兵を貫く。

「接敵! 白兵戦に備えろ!」
「――待て! 上だ!」

 獣人部隊とゾルダートグラード軍がぶつかり合う直前に敵兵の1人が叫ぶ。敵兵達がその声に思わず視線を上に向けるとそこには驚異的な跳躍力を以てして陣中に飛び込もうとするラムビーの姿がある。その手には彼の相棒である魔獣狩りの斧がギラギラと鈍い輝きを放つ。

「さぁ、狩りの時間だ――楽しませてくれよ?」

 着地と同時に振るう斧の一撃に周囲の敵兵達が吹き飛ばされ、それと同時に後続の獣人部隊が雪崩れ込んでくる。味方と敵。銃撃と剣戟。それらが入り混じる混戦状態へと突入する。その中にはラムビーの見知った獣人達の姿も見える。

「よう! 今度は間に合ったようだな。へへ、死ぬなよ!」
「ああ、お前たちもな」

「|Attaquer《アタッケ》! 押し返せ!」

 銃剣を構えた兵がラムビーに迫る。――が、近距離において長柄の斧を持つラムビーの方が優勢なのは言うまでもなく、更に熟練の技を以てしてラムビーは敵を翻弄する。敵の攻撃に合わせ身を引いたかと思えば、距離を詰め一撃を加える。
 次々に敵を狩っていくラムビーだが敵兵も負けじと数人が懐へと飛び込み、銃剣の刃がラムビーに迫る。

「なかなかやるじゃないか――だが、そこも私の|領域《テリトリー》だ」

 目の前に迫りくる銃剣――それを目にも留まらぬ速さで引き抜かれた短剣が弾いた。響き渡る甲高い金属音。それを合図にするかのように敵兵の波状攻撃がラムビーを襲う。右から左、次々と繰り出される刺突を防ぎ、そして確実に一体一体をその短剣で仕留める。日頃、戦闘だけでなく、調理にすら使う事もある短剣だ。敵を捌くのにも手慣れたものだ。

「|Attaquer《アタッケ》!」

 視界外から銃剣がラムビーに迫る。短剣で防ぐには間に合わない絶妙な角度だ――だが、ラムビーはその攻撃すら防いだ。こともあろうに素手で銃剣を掴み、そこからはボタボタと鮮血が零れ落ちている。

「なに、多少の負傷は覚悟の上だ。惜しかったな」

 その言葉と共に振るわれた短剣が敵兵の喉元を切り裂き、敵兵が崩れ落ちたのを見届けると静かに戦場のその先を見つめる。

「さあ続け戦士達。食い破るべき喉笛はこっちだ」

 数多の敵兵が地に倒れ伏せるその場所を抜け、獣人達は敵軍の奥深くを目指して進んでいく。そんな彼らの背中にラムビーは語るように言葉を送った。

「――ここまで来たんだ、祝杯まで生き残れよ」

 敵味方入り乱れる咆哮は鳴り止まず。未だ晴れぬ灰色の空には戦火の歌が響いている――

大成功 🔵​🔵​🔵​

アポリト・アペルピシア
◎○
この戦もいよいよ大詰め
悪のカリスマを振り撒き、獣人どもを鼓舞してやるとしよう

いいぞいいぞ、勇士達よ!
今や追い詰められたのは奴らの方よ
汝らの牙を、爪を、角を以てゾルダートグラードのガラクタ共を討ち果たすのだ!

何、恐れる事などない
降り注ぐ砲弾の雨はこの魔王の念動力によって食い止めよう
それに文字通り我が「手」を貸そうではないか…
そう告げる我が周囲に浮かぶはユーベルコードによって増殖せし千を超えるアポリトアーム
これを以て敵兵を薙ぎ倒してくれよう!



 戦いは確実に終焉へと向かっている。だが、まだその時では無い。敵味方の入り乱れる戦場はかつてないほどに混沌に満ちている。その混沌すら我が物と言わんばかりに魔王アポリト・アペルピシア(魔王アポリト・f31726)は満足気にその最前線で戦場を俯瞰していた。

「いいぞいいぞ、勇士達よ!今や追い詰められたのは奴らの方よ。汝らの牙を、爪を、角を以てゾルダートグラードのガラクタ共を討ち果たすのだ!」

「そうだ! 魔王様の言う通りだぜ! 奴らなんて俺らの敵じゃねぇ!」
「魔王様の加護がある俺らに敵はいないぜ! このまま蹴散らしてやる!」

 その実力に裏付けされた魔王アポリトの威厳は混沌の戦場すら掌握する。目の前にしただけで思わず膝をつき頭を垂らしてしまいそうになる程の悪のカリスマ。その威光を前に激しい戦いを終えたばかりである獣人部隊をその麾下に加えた魔王軍の士気はこの際においても高まり続けている。

「さぁ、進軍せよ! 奴らを殲滅しこの永き戦いに終止符を打つのだ! 何、恐れる事などない。奴らの豆鉄砲などこの魔王の軍勢の前には全く持って無意味!無価値よ! 我が眷属達よ! 奴らを食い散らかしてしまえ!」

「うぉぉぉぉ! 進め進め! 俺たちは極悪人にすら泣いて命乞いをさせる悪逆非道の魔王軍だぜ!」

 目を見開きその黄金の瞳で前方に展開するゾルダートグラードの軍勢を睨む魔王アポリトが声高らかにそう告げると、地を揺らす程の大歓声が陣中を埋め尽くす。獣人達は悪逆非道でも魔王軍でも無いのだが、戦場の雰囲気と魔王のカリスマにすっかり当てられすっかり魔王アポリトの配下気分だ。故に、今の彼らにあるのは敵を蹂躙し勝利を収める事のみ。

 今、此処に魔王アポリトの軍勢とゾルダートグラードの軍勢がぶつかり合い、決戦の火蓋が切られる。

「魔王だがなんだが知らんが我らも引くわけにはいかん! 砲撃部隊――!! 放てーっ!!」

 敵指令官が叫べば数多の大砲が一斉に吠え、空を覆い尽くばかりに飛翔する砲弾の雨が地上の魔王軍に降り注がんとする。

「ククク……それで我が軍勢を捉えたつもりか? 笑止千万! 我が眼の前でそのような戯れ、余程命が惜しくないと見える」

 アポリトの大きな黄金の瞳に一睨――たった一度睨まれただけで砲弾の雨はまるで蛇に睨まれた蛙の如く、ピクリとも動かなくなる。魔王の凄まじき念動力――それがあの夥しい数の砲弾をいとも簡単に制止させたのだ。その圧倒的な力の前に魔王軍は更にその勢いを増す。

「うぉぉぉぉ!! 流石魔王様だ! はっはー! ゾルダートグラード共! てめぇらなんか俺らの敵じゃねーぜ! 覚悟しな!
「おのれ……! 総員白兵戦に移れ! 奴らに現実というものを叩きこんでやれ!」

 砲撃が無効化されたと判断したゾルダートグラード軍が白兵戦で勝負を決めるべく突撃兵を前線へと送り込めば、間もなく魔王の軍団と接敵する。銃剣突撃を敢行する敵兵とそれを迎え撃つ魔王軍。戦場は瞬く間に混戦へ突入した。

「ふはは! 絶景ではないか! ここは1つ我が手を貸してやろう。文字通り『手』をな」

 そうアポリトが告げ、戦場に現れたるは|魔王千手《ヘカトンケイレス》――千を超える巨大なガントレット。アポリトアームだ。

「クックックッ……我が手から逃れられるかな?」
「また奇妙な真似を――|Angriff《アングリフ》! 応戦せよ!」

 敵兵達はアポリトアームの出現にも狼狽えず、魔王軍へ向けて銃剣突撃を敢行する。――が、その攻撃の悉くがアポリトアームの前に阻まれる。アポリトアームが敵兵を薙ぎ倒せば、容赦なく魔王軍が追い立てる。瞬く間に敵はその兵力を失っていきいとも簡単に前線は崩壊する。――まさに蹂躙だ。魔王の圧倒的力の前に敵軍は為す術もなく飲み込まれていく。
 快進撃の止まらぬ魔王軍の雄叫びは戦場の何処までも遠く、響いた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ラムダ・ツァオ(サポート)
ラムダよ、よろしく。
戦闘なら足と手数で勝負するけど、周りに合わせて臨機応変に動くわ。
見切ったり残像を残すように動いたりと、避けるのには多少の自信があるわよ。
集団戦なら死角を減らすために数を減らすのが先決、
あとは一緒に戦う人がいればその人次第かしら。

行動指針としては以下の3通りが主。
1.味方の死角にいる敵を優先して片付ける。
2.範囲攻撃を行なえる味方がいなければ範囲攻撃優先。
3.数を減らすため、止めをさせそうな相手を狙っていく。

台詞回しや立ち位置などは無理のない範囲でご随意に。
ユーベルコードは状況に応じて使い分けます。
アドリブ・連携歓迎



 空高く黒煙が舞い上がり、花嵐のように火の粉が降り注ぐ戦場。獣人部隊とゾルダートグラード軍との全面戦闘が開始されてから数刻が過ぎてもなお決着は着いていない。今もなお多くの敵味方が入り乱れるその中にラムダ・ツァオ(影・f00001)の姿はあった。

「あちゃ~……ほんとすっごい数ね。こりゃ骨が折れそうだわ」

 過酷な戦場での運用に向く穿刃をその手に構えながら、周囲を取り囲むゾルダートグラード兵を視界に捉えたまま思わず愚痴を零すラムダの下にお互いをカバーするように獣人達が集まってくる。

「ははっ! 逃げたって構わないんだぜ? 尤もこの状況じゃ無理だろうがな!」
「冗談! ちゃっちゃと片付けて堂々と凱旋させて貰うわ!」
「そりゃ心強いこったな。――来るぜ」

 獣人の軽口にラムダもニヤリと軽口で返す。――刹那、獣人がそう呟くと同時に敵兵達がこちらを殲滅しようと突撃を敢行する。

「|Attacke《アタッケ》! 相手は孤立している! 殲滅せよ!」

 突撃銃の穂先でキラリと鈍い光を放つ銃剣。その群れがラムダ達の心臓にその刃を突き立てんと迫りくる。その様子を怯む事なく視界に収めるラムダ。そのサングラスのレンズの向こう側で力強い光がその瞳に宿る。

「まずは数を減らすべきか……刻め――|千刃《センジン》」

 ラムダの周囲に夥しい数の刃。穿刃が現れたかと思うと、その1つ1つがまるで意思を持つようにバラバラに動き出すと一斉に敵兵達に襲い掛かった。刃が敵兵を切り裂いたかと思えば仕込まれていた銃が敵兵を撃ち抜いていく。突如の襲撃に包囲が崩れたその隙を見逃す事なくラムダ達は反撃に転じる。

「今よ!」
「よし来た! お前にばっかりいい格好はさせないぜ!」

 ラムダと獣人達はほぼ同時に敵兵に向かって飛び出した。放たれた銃弾、その軌道を見切り寸前で身を屈め避けると、その踏み込みを利用し更に加速し次々と振るわれる銃剣を掻い潜る。その勢いのままに獣人達の死角となる位置の敵兵達を次々と屠れば、それに答えるように後顧を憂う必要の無くなった獣人達が果敢に攻めたて敵兵達を蹴散らしていく。包囲を突破したラムダ、及び、獣人の小隊はその勢いのまま快進撃を続け、ゾルダートグラード軍に大打撃を与える事に成功した。

成功 🔵​🔵​🔴​

ジャドス・ジャンジダ
総力戦……つまり『後』を考えなくて良いってことだな。
そんじゃ、俺が奢ってやるよ。
遠慮せず全弾喰らって逝きな。

UC発動。
デカブツがいないなら、敵陣の後ろからじっくり、弾が尽きるまで塵にしてやるだけだ。
面白味はないが、まぁ派手な祝砲だとでも思ってくれ。
今からでっかい花火をぶちまける、死にたくない奴は巻き込まれんなよ!

んでゾルダートどもは選べ。
後ろから迫る花火の一部になるか、一か八か前に飛び出すか。

前に出てくるなら俺様じきじきに相手してやりたいもんだ。
が、これは戦争。
俺だけならともかく他の奴に命を賭けろだなんて言えねぇ。
それに、俺の本分はコッチ(キャバリア乗り)だ。
悪いけど今回はこうさせてもらうぜ。



 爆音と銃声に塗れた戦場に憤激の雄叫びが反響し、駆け回る。そんな嵐のような戦場の中でも一際目立つ物。『野蛮』の名を冠する重量級パンツァーキャバリア『ディーコスチ』。大型の主砲に加え複数の副砲を搭載した火薬庫の如き愛機。その操舵部から身を乗り出したジャドス・ジャンジダ(クマのパンツァーキャバリア・f39916)はゾルダートグラード軍が大挙して押し寄せてくる光景を目の前に口角を上げる。

「総力戦……つまり『後』を考えなくて良いってことだな。そんじゃ、俺が奢ってやるよ。――遠慮なく喰らって逝きな」

 総力戦、其れに相応しい大軍を相手にも一歩も退かぬとばかりにどっしりと構えたジャドスはこの戦場の空気を堪能するかのように息を深く吸い込んだ。

「|兄弟《同胞》! 気合は十分みたいだな! それにしても……すげぇなそれ!」
「俺も戦場暮らしは長いがこれほどの物は中々お目に掛れんな」

 『ディーコスチ』付近に陣を張る獣人達が迫り来る敵軍から浴びせられる銃撃に応戦しながらも、ジャドスの愛機に興味を示す。そんな彼らにジャドスは豪快に笑って返す。

「ああ、俺様の自慢の相棒だ。見てろ、今に奴らをぶっ飛ばしてやるさ」
「そいつはいいな! また前みたいな大暴れを見せてくれるって訳か!」
「そんな所だな。面白みはないが――まぁ、派手な祝砲だと思ってくれ。さぁ、今からでっかい花火をぶちまける、死にたくない奴は巻き込まれんなよ!」

 獣人達にそう告げるとジャドスは『ディーコスチ』の操舵室へとその身を引っ込ませて操縦席に着く。そして、操作盤に手を伸ばすと慣れた手付きで操作する。

「全種ロック解除――」
 
 『ディーコスチ』が地響きのような駆動音を響かせるとその全身を纏う武装が稼働を開始する。『稲妻』『大嵐』『豪雨』『落雷』『雨』。ガトリングガンから二連砲、更にはミサイルポッド。|全部武装解放《フルバースト》モードとなったそれらが敵軍に狙いを定める。

 「咆えろ、全てを壊すまで!」

 ジャドスの咆哮が戦場に響く――それと同時に『ディーコスチ』から夥しい量の砲弾、弾丸が轟音と共に放たれる。機動力を捨て、攻撃力、射程に特化した『ディーコスチ』の攻撃は苛烈の一言。着弾した砲弾は紅蓮の爆炎を散らし敵軍の後列を悉く吹き飛ばし火の海に変えた。その光景はまさに|破滅の世界《エンド・オブ・ワールド》そのものだ。

「ひゃっほー! ド派手にやるじゃねーか|兄弟《同胞》!」
「まだまだこんなもんじゃねーぞ。さて、奴さんこのまま花火の一部になるか、一か八か飛び出すか……どう出る?」

 瞬く間に後列部隊に壊滅的打撃を受けたゾルダートグラード軍はその圧倒的火力の前に混乱、恐慌状態に陥る……かと思われたが意外にも即座に態勢を整え直した。

「嘘だろ!? 後続隊が壊滅!? 化物がよぉ!」
「狼狽えるな! 我らに敗北は許されん! 進め!」

 退路を絶たれた敵部隊は最後の足掻きと言わんばかりに手榴弾、対戦車弾、火炎瓶。ありとあらゆる攻撃で『ディーコスチ』に苛烈な攻撃を浴びせんと前進する。
 その攻勢からジャドスを援護すべく獣人達が果敢にも飛び出せば、弾幕飛び交う両者とも退かぬ接戦が繰り広げられる。
  
「させるかよ! |兄弟《同胞》の邪魔はさせねーぞ!」
「もう弾薬なんか気にするなよ! 全弾ぶちこんでやれ!」

「やるじゃねぇか。どうせなら俺様じきじきに相手してやりたいもんだが――これは戦争だ。俺だけならともかく|兄弟《同胞》達の命を賭けろとは言えねぇ」

 獣人部隊と敵部隊の銃弾が飛び交い、爆炎と黒煙の中に土砂が降り掛かる戦場でジャドスの金の瞳は敵兵の姿を的確に捉える。

「それに、俺の本分は|コッチ《キャバリア乗り》だ。悪いけど今回はこうさせてもらうぜ」

 目まぐるしく戦況が変化していく戦場の中において即座にその環境に対応し『ディーコスチ』を巧みに操っていく。精密――というには豪快過ぎるその大砲火射撃で徹底的に敵部隊を粉砕していく。獣人部隊の射撃に敵兵が足を止めれば慈悲無き砲火が消し飛ばし、弾丸の嵐が全てを撃ち抜いて行く。どれだけの時間が過ぎただろうか、ぼんやりとそんな事が脳裏に浮かび上がる頃――ついにその時が訪れた。

「ゾルダートグラード軍が退いていくぞ! 俺達の勝利だ!」

 どこからかそんな声が響き渡るとジャドスは勢いよく操舵席からその身を乗り出す。すると目の前にはすっかりその数を減らした敵兵達がちりじりとなって逃げていくのが見える。もはや対抗する戦力が残っていないのは明白だ――気が付けばあの狂乱の如き戦場は妙な静けさに包まれている――というのも束の間だ。戦場は大地を揺るがさんばかりの獣人達の歓声で包まれる。

「よう|兄弟《同胞》! マジでやっちまったな!」
「お前の足元に近づいてた敵、俺がしっかりぶん殴ってやったぜ!」
「テンパってたお前が殴ったのは俺の頭だ、この間抜け野郎」

 『ディーコスチ』の上に腰掛け、歓喜に揺れる戦場を眺めるジャドス。その『ディーコスチ』の周辺にはジャドスと戦場を駆け抜けて来た獣人達が集まり喜びを分かち合っている。その光景を肴にジャドスはスキットルの中身を喉に流し込み喉を潤す。そしてふと、空を見上げると灰色だった空はいつの間にか薄明るく淡い光を宿している。黎明の夜明けだ――

「……たく、最高の景色だな」

 ジャドスが見上げた黎明の空。そこには獣人達の歓喜の歌が何処までも――何時までも響き渡っていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2023年05月10日


挿絵イラスト