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古豪、陰陽の獣と邂逅す

#アリスラビリンス #ノベル

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厳・範
キャラクター設定というより、アイテム設定の話です。

阳白(WPアリスラビリンス)
https://tw6.jp/garage/item/show?item_id=191749

阴黒(WPブルーアルカディア)
https://tw6.jp/garage/item/show?item_id=191750

この二匹のグリフォンとお爺の話。
ブルーアルカディアのとある幻獣牧場に、とてもしょんぼりしているグリフォン(阴黒。このときは名無し)が一匹。
気になって牧場の人に聞いたら、『迷いグリフォン』だという。
で、お爺が『迷いグリフォン』の話を聞いたら…

「白いのがいない」
「ここの空、いたところと違う」

というのが聞けた。
これは『迷いグリフォン』というより『神隠しグリフォン』では?と思ったお爺、この『神隠しグリフォン』と仮契約して、一緒にその『白いの(阳白。このときは名無し)』を世界を跨いで探しに行くことに。

で、『神隠しグリフォン』にもう少し詳しく話を聞いてみると、どうも他の住民が『愉快な仲間たち』な雰囲気。
なので、アリスラビリンスへ!

UC【使令法:蝴蝶】
https://tw6.jp/garage/gravity/show?gravity_id=139778
このユーベルコードを使って、さくさくと情報収集。
そうしたら、『財宝山の国(仮称)』の現地住民な愉快な仲間たちから、

「山の麓の森に、歌が好きなグリフォンが二匹いる」
「でも最近、歌が聞こえない」
「白いのと黒いのがいたけど、白いのしかいない」

という話が聞けて。そこに違いない!となって。
会わせたら、『神隠しグリフォン』が『白いの』に嬉しそうに駆け寄っていった。

お爺はよかった、と思ってその場から去ろうとしたら。何か二匹ともついてくる。
何故ついてくるのか聞いたら、

「お礼がまだ」

と言ってくる。
そこから、何故か二匹の押しが始まって…それぞれに名前をつけて、一緒に旅に出ることに。
なおこの二匹、お爺(本性黒麒麟形態)と速度勝負してたら、飛ぶの速くなったとか。

お爺セリフ
「…なんぞ困ったことでもあったか?」
「ふむ、その現象は…」
落ち着いた古風な話し方です。

細かいところはお任せします!



 長引く戦乱で荒廃した都市の空に、黒き麒麟の咆哮が轟く。屍人帝国から攻め寄せる大軍勢はたちまち戦火に呑まれ、勇士達が今こそ好機と反転攻勢を仕掛け始めた。
 影滅都市エクリプス・ネクロポリス――常に暗雲が立ちこめ、黒き森に包まれたこの闇深き浮遊大陸は、常にオブリビオンの侵攻に晒され続けてきた。しかし、故郷の文化や伝統を守らんと反抗を続ける地元の勇士達の姿に心打たれた厳範は、彼らに加勢すべくブルーアルカディアの地に降り立ったのである。

「終わりだな。皆の者、大事無いか」
 はい、と答えが返る。猟兵達の活躍もあり脅威が去ったのち、厳範は破損個所の点検や残党駆除のため都市を見回る事にした。すると、都市部を囲む黒き森との境あたりに、柵で囲われた広大な幻獣牧場が見えてきた。
 様々な幻獣が飼育されている。天使核の魔力が柵と連動し、脱走を防いでいるようだ。いい戦力だし素材も採れるんですよ、と牧場主は親しげに笑った。
「あれは?」
 しかし、厳範は柵の間際で項垂れている一匹の獣が気になった。黒毛に銀の瞳を持つ美しいグリフォンであったが、この世界の魔獣独特の野性味が感じられない。
「ああ、あの黒いのですか。珍しい種類でしょう、迷いグリフォンですよ。傷ついていた所を保護したんですけど、ずっとあんな調子で……それに不思議な事を話すんです」
 猟兵さんなら何か分かるかもしれませんね、と言われ、厳範は黒いグリフォンの話を聞いてみる事にした。
「……なんぞ困ったことでもあったか? 見よ、わしは貴殿の同輩だ。話してみるがよい」
 黒い雲に覆われた空を見あげていた獣は厳範の姿を見やると、どこか似た姿に安堵を覚えたのか、ぽつりとこう呟いた。
「白いのがいない。ここの空、いたところと違う」
「ふむ。元々はどのような地におったのだ」
 どうやら、黒い獣の故郷は『銀の女王』が統治する国で、お宝でできた山があり、きらきら光る森の奥深くには白銀の妖精や真っ白な動物達が住んでいるらしい。そして――国と国とは不思議な『穴』で繋がっていたと。
「もしやその現象は……『神隠し』ではないか?」
 かみかくし? とグリフォンは首を傾げる。どうやら自身の身に起きた事を理解できていないらしい。話を聞く限り、確かにこの国とはまるで様子が違うようだ。ならば助けるのが仁獣というもの。
「相分かった。では、暫くわしに助力するよう仮契約を結ばぬか。さすればこの世界から連れ出す事も叶おう」
「ほんと?」
 黒い獣は銀の瞳をきらきらと輝かせた。そう、一時的にでも相棒となれば、グリモア猟兵の力を借りて元居た世界に戻る事ができるだろう。あまり土地勘はないが、心当たりはある。兎の穴で繋がった不思議の国――アリスラビリンスだ。

 偵察を担う胡蝶達は宝の気配にも敏感だ。立ち塞がるオウガを共に倒しつつ、蝶のゆく先を辿ってゆけば、やがてそれらしき国に辿り着いた。
 財宝が降り積もる山の頂上にそびえ立つ宮殿へ、胡蝶達が惹かれるように飛んでいく。外壁はダイヤで出来ており、太陽が当たれば白くまばゆく輝く。入口にも数多くの宝物が陳列され、武侠界の宮殿に負けず劣らず、実に絢爛たるものだ。
「この空、知ってる」
 黒いグリフォンも犬のように尾をふり、嬉しげに歌を口遊む。厳範はその伸びやかで優しい歌声に驚いた。旅の疲れも癒えていくようだ――話によれば、この宮殿には『銀の女王』が住んでいる筈だ。彼女なら何か知っているかと思い、厳範は内部に足を踏み入れた。
「まあ。宝の国シルバーパレスへようこそ、迷えるアリス……では、なさそうですね」
「……齢千の身にその呼称はむず痒くてたまらぬ。猟兵だ」
「うふふ、では猟兵のお爺さま。わたくしに何か御用でしょうか」
「黒いグリフォンに心当たりはないか?」
 厳範が尋ねると、銀の女王と城仕えの妖精たちがにわかに騒ぎだす。
「財宝山の麓の森に、歌が好きな子達が二匹いましたね」
「白銀の森のグリフォンのこと? 私、最近あそこに行ったよ。前は黒い子もいたけど、白い子しかいなかったの。寂しそうにしてたよ」
「そういえば、最近歌も聞こえなくなったような……いい歌だったのにね」
 心配ですね、と銀の女王が答える。成程、『白いの』とは、その森に残されていたグリフォンの事に違いない。
「道を教えてはくれぬか。近々また歌が聴こえるようになろう」
 厳範は女王達に礼を告げると、黒いグリフォンを連れ、白銀の森へと向かう事にした。

 白銀の森は財宝山の銀の道を下ったところにあった。その名の通り、木々や草は銀色に輝き、足元の土までがきらきらと光っている。
「お爺、ここ! いたところ」
 ここまで来ると黒いグリフォンも道を思い出したようで、いそいそと森の奥へ駆けていった。後を追った厳範は、白毛に金の瞳を持つグリフォンが泉の近くで項垂れているのを見つける。その様子は、最初に影滅都市の牧場でこの黒い獣に出会った時を思い起こさせた。
「白いの!」
 黒いグリフォンが、軽く跳ねるようにして相棒に駆け寄っていく。すると『白いの』も飛びあがって喜び、二匹は再会を祝うように歌を歌った。白い獣の歌声には活力がみなぎり、黒い獣の歌声は癒しをもたらす。
 陰と陽。相反する要素がまざり合い、調和し、奏でられる音の心地良さは、先程宮殿の前で耳にした時よりも遥かにすばらしいものだった。厳範は、二匹の姿にどこか、かつての親友と己を重ね見ていた。

 ――これで我らの旅も終わりだな。

 友と再会できてよかった。
 一時の供とした仲間との別れは名残り惜しくもあるが、ここが帰るべき場所だ。暫し獣らの二重唱に耳を傾けたあと、厳範はそろりと立ち去るべく踵を返す。
 しかし、そこで歌がぴたりと止まった。
 何かと思いふり返れば、黒いのと白いのが一緒についてきている。さしもの老兵も少々面食らった。

「契約は終わりだ。此処が郷里であろう、何故ついてくる」
「だって、お礼がまだ」と白いのが言う。
「お爺いなくなるのも、いや」と黒いのが言う。
「だから、一緒に行く!」……二匹が揃って言った。

 この国はアリスラビリンスの中でも比較的安全そうだ。厳範は異世界での戦いの過酷さや、妖精達が心配している事などを根気強く言い聞かせたが、二匹はどうしてもついてくるつもりらしい。
 ――わたくし達は、この子達の歌声が世界に響く事を望みます。
 銀の女王の言葉がだめ押しとなり、厳範はついに折れた。
「やったね黒いの!」
「うん、白いの」
 しかし『黒いの』『白いの』は流石にないだろう。厳範は二匹と出会った場所や、抱いた印象を思い返し、それぞれに相応しい名を考えた。

 黒いのは『|阴黒《インヘイ》』。
 白いのは『|阳白《ヤンバイ》』。

 供と認められ、名を与えられ、嬉しくなった二匹は空高く舞い上がった。
「お爺、勝負!」
「お爺、か……今後は貴殿らも厳範と呼ぶがいい。同志であろう」
 厳範も黒麒麟の本性を解き放つと、風に乗り空を駆けた。たちまち追い抜かれた阴黒と阳白は驚き、負けじと追い越そうとするが、全く追いつけない。
 三匹の速度勝負は夜半まで続き、宝の国も闇に包まれ眠る中、白銀の森だけは変わらず不思議な光を漂わせていた。銀河のような美しい風景を眼下に、みっつの流れ星が疾駆していく。
 黒と白は交差し、互いを輝かせる。それは遠くない未来、歴戦の士の更なる力となるだろう。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​



最終結果:成功

完成日:2023年04月09日


挿絵イラスト